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安井委員 いまいろいろ御説明がありましたけれども、半製品とか仕掛け品とかあるいは養育中の家畜というふうなお話がありましたね。ここは農林水産ですから、たとえば家畜にしましょう。その家畜にしても、養育中の家畜そのものを保険に付するという方法はないわけではありません。中途段階、原料の途中、半製品を火災保険の
対象にするということもできないことはないと思います。しかし、
果樹共済その他
農業共済では、中途段階のものは保険にできないのです。そうでしょう。あくまでも最後の
収穫だけしか保険
対象にならぬわけですね。そういうところでも、普通のいわゆる損害保険というのは一種の権利だ、権利にまで拡大されておることはわかっておりますけれども、この
農業共済の
制度とはどうも質的な相違があるのではないか、私はそう思うわけです。施行令の百三条にたなおろし資産の所得価額の規定があります。この第三項には、
農産物を
消費した場合、その他のたなおろし資産の
計算のしかたが書いてあります。ここはまさにたなおろし資産だと思います。物なんですから、しっかりしたものをとらえて、それを
消費したときにはあるいはそれを所得した場合には、たなおろし資産としてどう
計算するかという規定だと思いますから、これはまさにたなおろし資産だと思いますが、どうも
収穫保険というその
制度そのものをたなおろし資産という言い方で呼ぶのはおかしいのではないか、そういうふうに私は思うわけです。
もともと、この
制度は、名前は
農業災害補償法、名前だけからいいますと、政府が補償するというような印象を与えるわけでありますが、そういうふうな勢い込んだ形でこの法律立案が行なわれたわけですけれども、しかし、だんだんいろいろな話が入ってきて、
収穫保険的な、補償から保険的な性格がずっと強くなって、そこに国庫補助という仕組みが入って、何か補償と保険の中間的なものという形で今日まで定着してきているわけです。ですから、単純な損害保険というのとどうも違うのではないか。国庫の補助までが行なわれているという、非常に農業保護政策的な色彩の強いものだというふうに私は言わなければならぬと思います。なるほどたなおろし資産に似たものでしょう。たなおろし資産に似たものだというふうな気は私もします。しかし、この九十四条たなおろし資産ということばがあるのだから、農業所得からすぽっと税金を取るというそういう仕組みじゃなしに、むしろどうしても取りたければ、この九十四条の第一項に、
農業災害補償法による課税の
対象にするということがどうも
一つ入らないと、私は、はっきりした税金を取る仕組みにいかぬのではないかと思うのです。たなおろし資産ということばだけじゃなしに、どうしても取るのならば、この法律を引用して、この法律によるものも同じような扱いをするという規定が
一つなければ納得できないような気が私はするわけです。何かそう言いますと、規定を入れて税金をうんと取ってくれり言っているようにお聞きかもしれませんけれども、私が言うのは、それと反対な
意味でいま申し上げているわけです。
そこで、農業政策的な
要素を強めた形の中で、私は、この問題をもっと
考えいかなければいかぬ、こう思うわけでありますが、一番問題になりますのは、米の
生産調整奨励補助金についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律であります。これとのバランスということになるんだろうと思います。例の作付制限によるこの奨励金は、政府はこれへの税の軽減措置をあまり好まなかったわけでありますけれども、国会が必要を認めてこういう法律をつくって、一時所得扱いにし、四十万円だけ控除をするという仕組みをつくっているわけです。所得税法なりそれから政令の中では、あれに対しては普通いまの
共済金と同じように税金を取るというふうにはっきり書いてあるわけですね。書いてあるにもかかわらず、国会がそういう特別立法をして、一時所得扱いにし、四十万円の控除をしているわけであります。そのことが逆に、去年の北海道の冷害のような場合に、農村の中では、一方はもう草ぼうぼうにしてどこかに出かせぎに行っている
農家が隣にいる、その人の奨励金は、出かせぎの収入もあるし、その上に四十万円の控除があって、ほとんど税金はただ。しかし、一方は、その
生産に総力をあげて一生懸命につくっている、ところが、冷害の打撃でもう皆無に近い被害あるいは深刻な被害——
程度はいろいろあると思いますけれども、深刻な被害を受けて
共済金をもらった。しかし、これは所得税が、税金取られますよといってすぽっと取られる。どうもこれは政治が間違っていませんかと、私は農村へ行くと言われるわけです。そういうような中から問題は新しく発展をしてきているのではないかと思います。だから、大蔵省の望まないような政策立法を国会がしたのはけしからぬ、こう言われるかもしれませんけれども、これは法律ですから、法律ができた以上それは定着をしているわけであります。一時的な所得だからこれは違うのだと言われるかもしれませんけれども、
農業共済金だって、突発的な事故がなければ、こんなものもらわないで、きちっと自分の
生産で経営が成り立っていく。それが一番なんですからね。ただ突発的ないろいろな自然やその他の事故が起きることによつて
共済金の所得がある、そういう
意味においては私は同じようなものではないかと思うわけであります。そういう農業政策のサイドからものを
考えるということも、私はこの際大事ではないかと思います。そこまで大蔵省側からお答えをもらうわけにはいきませんけれども、今度これは
農林省の農業政策のサイドからもう少しこの
農業共済の仕組みについて
考えていく必要があるのではないか、こう思うわけです。
いずれにしても、強制
加入あるいは
任意加入というので若干ニュアンスは違いますけれども、掛け金に対して国庫補助がきちっとある。今度の
果樹共済にしても五〇%ある。事務費にも補助がある。そういう点、私は、一般の保険とは
もちろん違うし、
農家の所得の補償というのを第一義に掲げた
制度ではないかと思います。だから、せっかく所得を補償しても課税
対象にされるというのでは、その趣旨が十分貫かれたとはいいがたいわけでございますから、税制の適用についても政策的な配慮が必要ではなかろうかと私は思うわけであります。ですから、農民が言うように、これは全部税金
対象にしてくれるなという要求も
意味がないわけではないと思いますけれども、たとえば一時所得の扱いにするという仕組みをつくるとか、あるいは異常災害については特別な配慮をするとか、いろいろな考慮をしてもよいのではないかと私は思うわけであります。しかし、これはもうその
制度ができて以来ずっといままでやってきたやつを、ここで新しい方向に向け変えるというふうな私の提案でありますから、これはなかなかたいへんだと思いますよ。これはたいへんだとは思いますけれども、私はもう少し農政のサイドから
問題点を
考え直してみる必要があるのではないか。特にあいまいになってきたわけですね。その固定的な資産に対するものと
収穫保険との仕組みが、課税
対象がどんどんふえるに従って非常にあいまいになってきています。これではますます農民は悪くなってくるだろうと思います。そういう
検討も必要ではないかと思うのですが、
農林省のほう、これはどうでしょう。