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野村政府委員 ただいま
先生から総合交通の問題につきまして
お尋ねがございました。これは
運輸省の、全般的な交通、まさに総合交通体系の基本に関することでございますから、
自動車局長である私が自分の領域以外のことをお答えするということで、適当なお答えができるかどうか、私もその点、自信ございませんが、省議のメンバーとして、総合交通体系が省内で議論をされましたとき、そこに参画した者として、そういう立場から私はお答えいたしたいと思います。
御
指摘のように、従来の運輸行政というものについていろいろ不斉合な点があったことは、これは私
ども部内として率直に反省しております。たとえば、自動車は自動車の視野だけからものを見る、鉄道は鉄道の立場からだけものを見る、航空は航空、海運は海運というそれぞれの
輸送手段の立場からだけものを見て、そして、
全国的な視野、あるいは
地域的な視野から
考えて、そういう
輸送手段というものが、国民の日常生活、あるいは生産と消費を結ぶ物資の
輸送というような立場から、もっと総合的に斉合性をよくして、
輸送手段の、特に交通施設の整備ということの横の連絡が必ずしもよく行なわれていなかったという実は反省の上に立って、こういうことではいけないから、
全国的な立場から、交通機関の、主として交通施設の整備ということを
考えるべきであるということで、数年来こういう問題を
考えてきたものがこの一つでございます。
それからもう一つの
考え方は、交通機関を利用する場合には、交通機関の特性といたしまして、それぞれの特性がございます。それは総じて言いますと、安全で低廉で迅速で正確な
輸送サービスを利用者に提供するということでございます。利用者から見れば、そこに、現在の社会経済
体制のもとにおきまして、やはり選択の自由というものがあるわけでございます。そういうものは、結果的には、市場原理によって形成される運賃あるいは
輸送の便益というものを、どういうふうに選択するかという問題であろうと思いますが、それに関連いたしまして、当然やはり運賃のあり方というものが、これは経営に関連して出てくるわけでございます。その運賃を決定する、あるいは企業の収益というものを決定する場合に、それぞれの交通機関というものが、いままで違った原理の上に実際決定されておった。たとえば自動車というものは、道路が整備されれば、もちろん税金はかかっておりますけれ
ども、その上は比較的自由に走れる。それから鉄道というものは、線路を敷かなければ鉄道の開設ということはできない。航空は、空港を整備し航空保安施設というものを整備しなければ、飛行機は飛べない。またそれを動かす人に至っては、自動車も鉄道も航空も、それぞれ技術的ないろいろの要件というものに合致する人を必要とする。それを養成するには相当の時間がかかる。そういうものから
考えましても、現在の社会経済
体制のもとで、利用者の選択にゆだね、市場原理を基礎としながらも、一つの調整された
輸送機能というものを国民に提供するというような立場からもっと検討をすべきではないかということで、この問題をこの二、三年間検討をして、そしていわば一つの序論といいますか、総論といいますか、そういうものがここにでき上がったわけでございます。これは、ある
意味で非常に抽象的なものでございまして、さらにこれを具体的にどうするかということについては、これから掘り下げて、各部門、部門の連絡をよくしながら検討しなければいけないと思います。
そういう
意味で、いま
先生がおっしゃいました、いままで非常にちぐはぐであったという問題、これは私
どもも率直に認めざるを得ないと思います。特に、
運輸省で交通機関の斉合性をはかりましても、いま言われました住宅政策との斉合性、あるいは都市計画との斉合性、そういうものを
考えていきますと、これは一
運輸省の問題ではございません。したがって、政府部内におきましても、経済企画庁を中心に建設省の
意見や警察庁の
意見も取り入れて、政府としての総合交通体系というものの一つの素案ができておるわけでございますが、まず、
運輸省部内の各部門、部門の計画的な発展計画というものをつくると同時に、今度は運輸部門と結びつきますところの住宅政策あるいは都市政策、そういうものとの結びつきというものを
考えた計画を、さらにこれからいわば各論として
考えていかねばならないということではないかと思います。
御例示になりました新空港の問題にしましても、あるいは多摩ニュータウンの問題にいたしましても、そういう
意味では、いままで、住宅政策とかあるいは都市政策その他とのすり合わせというものが十分できてないままに事態が今日に至ったということ、これは確かに
仰せのとおりでございます。その点については、今後そういうことのないようにするためにも、この新しい総合交通体系をさらに具体化していく。そうして直すべき点は、また見直しをしてよりよいものにつくり上げていくということを、
運輸省全体としてしなければならないと思います。
私、
自動車局長の立場でお答えしまして、この問題について、全般的な視野でものを見る立場にございませんので、必ずしも適切な
答弁でなかったかと思いますが、その点、御了解いただきたいと思います。