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大出委員 江口さんでございましたですか、率直なお話をいただきまして私もたいへんありがたいのですが、私も実は
税務署の第一線で一生懸命やっておる人の仲人などもいたしておりまして、私の仲人の第一号はそうなんです。ですから、私も実際その本人ともよく話しておりますから、何をやっているかということもよく知っている。だから私はさっき例を申し上げたので、例示をしてみるとこういう
ものが出てくると私は言うのです。たいへん御努力願っているのはわかるが、しかし、
納税者の側からすると、
税務署に対する
ものの考え方という
ものはそう変わっていない。何かといえば取られるという感じ。いまだにそうです、それは。
だから、さっき黙っていたのは悪かったかもしらぬとおっしゃるけれども、私は冒頭に申し上げたように、庶民一般はなかなか
税法という
ものは理解しにくい
ものですから、だからもっともっと、これは
行政管理庁に申し上げたいのだけれども、きょうは
行政管理庁の
方々に主として承ろうと思っているので、その前段でいま例示したのですが、何とかもう少し効果のある、庶民一般の
税務署との
関係について、何か
税務署の呼び出しでも食わなければ行く
ものじゃないというかっこうになっていない形のところまで持っていけないかという側面で、あなた方のほうで
監察をやっておられる——ちょうどこの
監察が出ているのは、
江口さん、いまの
異議申し立てがじゃんじゃんふえているときで、いま四十三年ごろは減っているとおっしゃいましたが、これは監査期間というのは三十九年の五月以降なんですね。そうですね。これ以後やっていないでしょう。これ以後やっておれば、いまの
江口さんが言った努力のほどは
行政管理庁におわかりになるのです。この
行管の「
監察結果の概要および勧告」、この中ではどんどん
異議申し立てもふえてくる。
税務署の職員の数がまさに足りないと言わぬばかりのことを書いているわけですね。都市化現象が激しくなってくる、だから、過疎地の
税務署の職員を減らしても、過密地域の
税務署の職員をもっともっとふやさなければならぬ。日本橋だ京橋だという例をあげたりしましてね。そうでしょう。これはそういう時点にとらえているわけですね。だから、私どもが間接的に
ものを見ようとすれば、
行政管理庁にどうなんだと言えば、今日この報告しかないのです。これ以後ないのです。そうでしょう。国税庁が出しているのじゃないですから。つまり権威ある
ものの見方というのはこれしかない。そうでしょう。いま幸いに減ってきているとおっしゃるので、それがどういう原因によってどういうふうに減ったのかという点は、
行政管理庁が今度御
調査をいただければ、そこに出てくる
筋合いだと私は思う。
だが、にもかかわらず、古くて新しいとさっき申し上げましたが、そういう問題が依然として所々に見受けられるという
現実。だから
監察局長に申し上げたいのは、これを三十九年にやりましたというだけで済ますのか、それじゃ困るじゃないか、言いっぱなしでいいのか、それじゃ困るじゃないか、
追跡調査をなぜしないか、こう言っているわけです、私の言っているのは。こういうふうにして
回答をいただいて調べてみた。前進していた。そうするとなぜ前進したかというと、前進しているのには、いま国税庁の言っている姿勢があるのでしょう。それならばそこを強調して、足らない
ものはふやせとここに書いてあるのだから、もっと具体的にこうすべきだと言わなければいかぬでしょう。そこを言いたくて例をあげたというだけです。
だから、
江口さんおっしゃっているように、私も
横浜市内におりますけれども、
横浜市内のどこの
税務署の
方々ともけんかしたことはない。何かといえば話し合いをしておりますから、きわめて仲よくしておりますから、けんかしたこともありませんが、ただ個々の
納税者の側にすると、
調査官はひどいやろうだという、まさにぐちだらけです。それは取られるほうだからしようがないといえばそうなんですが、そこらあたりの人間
関係を何とかできないかという気がするのです。私だからけんかにならぬのかもしれないけれども、呼ばれた
納税者との話というのはもっと激しいです。そうでしょう。そこらのところを、せっかくこういう勧告もしておるんだから、もう少し何とかできないか。納税時期が来ると年百年じゅうノイローゼになって飛び込んでくる人ばかりじゃ困るので、そこらのところ、もう少し何とかできないかという気がするのです。
もう一例申し上げますが、これはいま
調査のさなかですから、そこから先に立ち入る気はありませんが、実は御存じのとおり、これは私、泣き込まれて話を聞いてみて、ここに書いて私
なりに分析してみたのです。どういうことかと言いますと、くつ屋さんがありまして、これはきのう担当の方がお見えに
なりましたから、
名前と
場所は話しておきましたが、店を二軒持っている。
横浜の伊勢佐木町の場末のほうに本店があって、また野毛の本通りを離れたところにもう一軒店舗がある。本店のほうは兄貴がおりまして、支店のほうは弟がいる、こういうわけなんですが、まことに兄弟仲がよくない
関係なんです。私も長年世話しておりますからよく知っておるのですが、弟のほうは十何年も兄貴のところで
経理をやってきたわけですから、本店と支店と両方一緒に
経理しているのです。だから、やめるということになれば、兄貴は一千万ぐらいの金はくれてもいいじゃないか、自分だってこれだけ十六年も苦労したんだから。役員でも何でもない。合資
会社ですが、出資も何もしておりませんから、その
意味じゃ従業員です。だから、やめるにあたって
幾らかくれてもいいじゃないか。先般、ほかに店を何とか借りてと思って、兄貴に四、五百万何とかしてくれと言ったら、ぽんと断わられたというようなこともあった。だから、彼は自分の心覚えの売り上げ等を記入していきまして、
経理をやっていますから、ときどき水増しをしながら、それをずっと持っている。何に使うんだと言ったら、おれがやめるときに兄貴のやつはどうせ金をくれやしない、兄貴をおどかすんだというのですね。一千万ぐらいくれ、でないと、これを
税務署に持っていくぞというおどかし材料をつくる。
ところが、たまたま今回
税務署の
方々が来た。それでぽかりこの書類を持っていったというわけです。ところが、あわてて一生懸命抱いたんだけれども、悪いようにはしないから出しなさいと言われたので出した。そこから
ものが始まったといういきさつなんです。ところで、こんな
ケースはよくあるのだけれども、もう死にたくなったと言って泣き込んでくる。いろいろ聞いてみたらそういう話が出てくる。
そこで、これは時のいきさつでありますが、中身というのは、結局荒
利益になる形で出てくる。仕入れと両方ありますけれども、やはり両落ちではあるんだ。私はそうだろうと思うのです。ただ、その度合いの問題なんですよ。置かれている店の位置等からいきまして、この店で
一体どのくらい売れるかということが、くつ屋というのは山ほどあるのですから見当がつく。伊勢佐木町の場末とまん中では違う。そうすると、その置かれている位置からすると、そのとき持っていった全くのメモですね、正式の
帳簿じゃないから。そこにあらわれている数字を売り上げに加算をしていきますと、そんなに売れる店ではないということになる。だがしかし、持っていった
調査官の方にすれば、両落ちで、このくらい落ちているんじゃないか、これを計算すると八千万ぐらいになるというのですね。
そこで、まず話の中身というのは、また
江口さん立ち上がって、
一言言わしてくれなんといわれると困るが、誤解しないでくださいよ。私は決して
税務署長なんかとけんかしたことはないのですから。
そこで、申し上げておきたいのは、まず本人、つまり
調査される対象である人間は
税法に詳しくない。そうすると、
調査官の
方々が
説明をされる。その
説明の中で、あなたは私の言うようにしないとたいへん不利ですよというようなことを言われる。そうすると、これはさからうとえらい不利になるかもしれないと、その前にすわって混乱した頭で考えておるわけです。そうすると、これは五年間、近いほうから計算して、
最初の三年間は
更正決定できます、そこから先の二年間は修正をだしてください、こう言われたという、話を聞いてみると。ところが、私は全くしろうとじゃないから、
帳簿を調べてみた。これは御存じのように国税通則法がございますが、七十条がつまり更正の期限に関する定めです。言うならば時効ですよ。それからもう
一つ、七十二条がありますね。これは通則法でいえば裏表でしょうが、七十二条のほうは国税の徴収権の消滅時効ですね。そうでしょう。そうすると、五年とおっしゃったというのだが、私が調べてみると、この
会社は合資
会社ですが、四十一年の九月が決算ですから、申告は十一月に
なります。そうしますと、これを起算点にいたしますと、実は四年間しか押えられない
筋合いなんです。だから、この
調査官の方が本人に言うにあたって、三年間は
更正決定でございますが、そこから一番先の二年間は修正を出してください。それはいやですと言えば四年なんですね、これは時効ですから。九月決算で、申告は四十一年の十一月なんですから。そう
なりますと、これは通則法からいって四年しか対象にはならない。ところが、不利に
なりますよと言われて、本人は、それじゃ一番遠い二年間は修正を出さなければいけないのかな、こうなるでしょう。私、副
署長さんに会っていろいろ聞いてみたら、四年じゃございませんかと言ったら、いや四年ですとおっしゃる。
そうすると、さっき私が例にあげましたように、
調査をする側の人は、やはり国民全体が
税法は知っているという——
現実は知っておりませんけれども、知っているという前提で
ものを言ってくれぬと、この三年は更正ですよ、あと二年は修正ですよ、こういうぐあいにぶっかけられると、実際私が計算してみれば四年しか有効でないのに、本人は、拒否いたしますと言ったんじゃまたたいへんなことになると思って、それじゃ二年間修正で応ずるとなれば、五年取られてしまう。そうでしょう。ここらのところは非常に大事じゃないかと思う。決してその方が私は悪いと言っているのじゃないのですよ。
調査官の方が懸命に実効をあげようと思っていろいろ努力されているのですから、その点では私は悪いと言うんじゃないんだが、事のあり方としては、納期はあくまでも四年なんですから、この点はやはりそういう姿勢でいかなければいけないんじゃないかという気がするのです。
そこでもう
一つ、法人でございますから、
社外流出というお話をさっきなさいましたけれども、はたしてこの
ケース、これはここで数字をあげてもお話にならぬかもしれませんけれども、私、
税務署が
帳簿を持っていきましたから残っている
ものを見たら、四十四年十月から四十五年九月までの
帳簿がある。これを見たら、四十四年十月から四十五年九月までの間の売り上げが六千六百八十六万円、仕入高が四千九百五十五万円です。そうすると、六千六百八十六万円から四千九百五十五万円を引きますと、この荒
利益が千七百三十万円です。荒
利益率でいって二割六分なんです。これは例ですよ。そうすると、さっき私が申し上げました裏
帳簿と
税務署がお考えになる
帳簿でいきますと、大体年間千五百万
脱漏があるのです。そうすると、年間千五百万の
脱漏を乗っけますと、六千六百八十六万円プラス千五百万円ですから八千百八十六万円になる。仕入れが動かないんだとすると、仕入れの四千九百五十五万円を引きますから三千二百三十万円の荒
利益になる。
利益率は四割になってしまう。そうすると、
税務署の側で仕入れという
ものをがちっと立証できなければ、四割という荒
利益率は高過ぎることになる。メーカー
もののくつであっても、荒
利益率を調べてみましたら大体三割ですね。そうなると、いずれにしても四割というのは少し高いことになる。これは
調査の
過程ですから、私は例として申し上げているのです。その点はお含みおきをいただきたいのですが、これは
一つの事例です。そうしますと、値引きもありますし、あるいは型が古くなって安売りする場合もありますから、三割といってみてもやはり二割何分かに落ちるというのですよ。あの辺の
場所は銀座なんかと違いますから。そうするとこれは、裏
帳簿と目される
ものの中に、確かに本人が言う水増しもあったかもしれぬという気がする面もある。兄貴のほうとの
関係でそんなことがあるのかもしれないという気もする。全くそう思って話を聞いているわけではないけれども。だから
税務署の側がどこまで立証するかという問題が
一つある。
もう
一つ、
税務署の基本的な姿勢としてここが聞きたいのですけれども、千五百万の年間の
脱漏があればおむね八千万ぐらいになる。そうすると、八千万ということになると、そのまま考えられたのでは、この小さな合資
会社はつぶれちゃうのです。そこで隠し財産があるのだろうというので徹底的に調べられたのですね。
土地があった。わずかな
土地なんでありますが、綱島ですから、坪当たり単価が高い
ものですから、おおむね五百万円ぐらいのことにはなる
土地です。ところが、これは私も知っているのですけれども、女房のほうの兄貴が自分の持っていた
土地を二つに分けて、半分、妹の亭主だからというので、妹のほうにやった。だから贈与の形になって、
登記も贈与とされておって、贈与税も払っている。ところが、今度は
税務署側は、それは贈与じゃなくて買ったんでしょう、そうでないとあなたのほうがこれまた不利になると言う。
私はこの不利になるということばを考えたのだけれども、おそらくこういうことだろうと思う。兄弟で、役員ではない、出資者ではない、従業員。だがしかし、法人ですから、みなし役員という
ものの考え方の規定はある。みなし役員だということになると、その人の賞与というのは損金にならない。そうなると、法人に課税される。つまり所得にもかかってくる。こういうことをとらえて言っているんじゃないかという気が実はするのでありますが、しかし私は、やはり贈与であり、
登記が行なわれて贈与税を払っているという
現実が明確にあるとすると、それを、いや、それはおまえさん、
帳簿をごまかしてその金で買ったんだということを認めさせる。本人はくやしがっているのだけれども、それは私はこの辺のことは、いささか無理があるという気がする。
さらに問題は、これは結論を急ぎますけれども、どういうふうにやってみても出てこない。
税務署の
方々がみんな銀行を調べている。確かによくやることで、
架空名義の預金など持っていたりする。みんな出てきている。だけれども、現金というのは、つまり
会社の決算時における金というのはおおむね五、六百万しかない。そうなると、さてこの法人をとらえてどういう
立場で基本的に考えるか、私は三つあると思うのです。
一つは、対象になる資産確認はできないけれども、かまわず
脱漏なり八千万
なりというのでぶっかけるという方法が
一つ確かにある。それからもう
一つは、
社外流出だという考え方で決定するという方法が
一つある。もう
一つは、おおむねの資産を当たっていって、多少プラスアルファがつくかわからぬが、資産に見合う形で決定をするという方法がある。つまり法人
関係の例を見ると、私は一番
最後のところが、
ほんとうならば考え方のポイントでなければならぬという気がするのですよ。そうでなければ法人はもたないのです。だから、その場合にただ残るのは、とはいっても全部飲んじゃったり食っちゃったり——飲んだり食ったりは
幾らの金でもありませんが、つまりそういうことをやって、やり得になっちゃいけないというさっきのお話に類する考え方があるいはあるかもしれないと思いますけれども、しかし問題は、その
企業がおかしくなってしまったんじゃ困る。この人はまさに自殺しかねまじき状況ですよ。
だから、そこまで追い込むということは、どこまでの確認ができたかということとからみますけれども、そこらのところに、今日の
中小零細な商店あるいは法人
企業という
ものに対する、国の徴税の基本的な方針として何かなければならぬという気がする。念のために申し上げておきますが、決して私は
税務署をたたいているのではないのですよ。聞いてみていただけばわかりますが、決してそうじゃない。つまりこういう問題をどう理解すればいいか。
行管が
納税者の声をと言っているのだが、しからば
一体この種の問題をどう見たらいいか。本人は、しようがない、妹の零細な預金まで持ってきて、まだないか、まだないかと言われる
ものだから出しているということになっている。きのう私はお話をしておきましたからあれでしょうけれども、
調査過程でございますから確たることは申し上げません。申し上げませんけれども、こういうふうな見方が、当初のやりとりの中から、私が聞いた限りではこういう
判断ができるので、そこらのところは
一体どういうふうに考えておられるのかということが
一つですね。あと
行管のほうにまた伺っていきますが、
江口さんのほうからひとつ……。