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1972-05-31 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月三十一日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 山口 敏夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    笠岡  喬君       菅波  茂君    辻  寛一君       中山 利生君    葉梨 信行君       湊  徹郎君    木原  実君       横路 孝弘君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         外務政務次官  大西 正男君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省中近東ア         フリカ局長   魚本藤吉郎君         外務省条約局長 高島 益郎君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第三課長   山田 英雄君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  平井 啓一君         労働大臣官房労         働統計調査部長 青木勇之助君         労働省労働基準         局賃金部長   廣政 順一君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     菅波  茂君 同日  辞任         補欠選任   菅波  茂君     鯨岡 兵輔君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三三号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一三号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  今国会内閣提出第三三号、労働省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 今度の設置法統計情報サービスが加わるということなんですが、これはどういうことを考えているのですか。大いに情報提供をして統計の有用な活用をはかろうということだと思うのですが、具体的にはどういうことを考えているのですか。これはひとつ立案者のほうから…。
  4. 青木勇之助

    青木説明員 お答えいたします。  従来の統計調査部におきましては、各種調査を行ないまして、それを集計いたしまして従来から発表いたしておるわけでございますが、言うなれば基礎情報と申しますか、一時情報でございます。しかし、最近におきます経済進展情報化社会進展に伴いまして、国民ないし労使一般から、さらにきめのこまかい情報、たとえば従来は全国的な数値とか府県別数値は出ておりますが、それよりもさらに規模を小さくいたしました都市圏における小地域における賃金情報がほしい。あるいは毎勤という調査がございますが、これにつきましては、特別給与等、超勤を含みました定期給与、こういうものを発表いたしております。しかし、いわゆる所定内給与、こういう情報については従来はなかったわけでございます。そういういわゆる基本給的な所定内給与というものに対する情報をつくっていただきたい、こういうような要望も非常に強うございます。そういうことで、既存の統計データ数値データを加工いたしましてそういう諸般の要望に応じてまいりたい。ただいま先生おっしゃいましたように、きめのこまかな情報を迅速に提供してまいりたい、そういうことで、統計調査部という名称統計情報部に改めるということにいたしたわけでございます。
  5. 木原実

    木原委員 これはそうしますと、定期的に迅速に情報伝達するということになるわけですか。いままでいろいろなものが出ておりますけれども、さらにそれを、たとえば日報のような形だとか、あるいは長いものでも月報のような形だとか、そういう形で、たとえば地域性を重視をして、あるいは業種別というか、ウェートをどこに置いて、それからまた迅速ということが要請されると思うのですが、その辺は具体的に考えていることがございますか。
  6. 青木勇之助

    青木説明員 お答え申し上げます。  情報提供方法でございますが、従来は印刷物によってまず頒布いたしております。この印刷物によって定期的に情報を頒布する、提供するということはもちろん続けてまいりますが、さらに最近におきますコンピューター化に伴いまして、わが省におきましてもネットワークがかなり大きなものを持っております。そういうコンピューターを用いまして通信回路を利用してとか、あるいはディスプレー装置、こういうものを通じて、地方に迅速に所要の要求要請に応ずるような形をとりたい、こういうふうに思っております。もちろん先ほど申し上げました所定内賃金指数などになりますと、これは四半期に一回とか半期に一回ということになりますし、それぞれの情報の量、質に応じまして適宜対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  7. 木原実

    木原委員 そうしますと、裏側の問題としまして、迅速に伝達をするために、あるいは調査能力、いろいろな問題があらためて問われると思うのですが、その辺の用意はどうですか。
  8. 青木勇之助

    青木説明員 結局、先ほど申し上げましたように、加工情報などをつくりますと、手集計などでやったのではとても間に合いませんので、四十六年度におきまして大型のコンピューターを導入いたしまして、そのコンピューターにいろいろなプログラムをほうり込んでおきまして、こうこういう情報が必要だという場合には、そういう計算システムを幾つかつくっておきまして、一方、各般のデータを集めておいてデータライブラリー的なものをつくりまして、コンピューターにこれを覚え込ませておく。そして必要な情報要請がございました場合は、そのプログラムを使いましてこれを作成していく。こういうふうに考えまして、従来ですと、手集計なりいろいろなことでやっておりますと、かなり時間がかかるわけでございますが、そういう面の技術的な改善、それから資料の蓄積、そういうものを逐次今後日を重ねるにつれまして改善してまいりたい、こういうふうに考えております。
  9. 木原実

    木原委員 そうすると、あらためてそれに要する人手の問題、たとえばコンピューターを新しく入れるとか、あるいは人手の充足の問題、そういう問題が部内の問題として出るわけですか、出ないわけですか。
  10. 青木勇之助

    青木説明員 したがいまして、事務合理化をはかるとともに、職員の養成、いわゆる専門技術職養成ということが非常に重要になってまいります。プログラマーとか、システムエンジニアとか、こういう人の養成も、最近民間に各種そういう研修機関等もございまして、数学を出た人とか経済を専攻した人とか、そういう人たちを、職務の合い間をぬいまして逐次研修に送り出しております。人的な質的な面、そういう面につきましても配慮をいたしております。もちろん、人数が多ければ多いほどいいわけでございますが、ただ、先生御存じのように、定員につきましてはいろいろな措置がとられておりまして、結局、現在配属されております所定定員の中で質の向上をはかり、それによって時代の要請に対応してまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  11. 木原実

    木原委員 労働省統計はわれわれもときどき利用さしてもらうわけですけれども情報伝達大いにけっこうなんですけれども、同時に権威が失われるようなことではならない。あるいはまた御存じのように、毎年かなり激しい労使の対立の状況があるし、あるいはまた、それがはね返ってきて、われわれの分野の中でもいろいろ利用のしかたといいますか、問題があるわけですから、何よりも新しいそういう方法を入れることによって権威が失われたのではどうしようもありませんから、やはり、その統計調査事務に当たる人の養成ということがございましたけれども、新しいいろいろなシステムを入れて、その上でさらに権威を増すような努力をやはりしてもらいたいと思います。新しい仕事分野を開拓をしていってサービスを広げるということは、それ自体たいへんいいことなんですが、しかし、あわせてやはり統計本来の持っている機能といいますか、あるいは権威といいますか、そういうものが多少でも乱れるということになりますと、これはアブハチとらずになりますから、その辺はひとつ十分心得てやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  12. 青木勇之助

    青木説明員 先ほど来、迅速性ということを、私、強調いたしましたが、これよりもさらに大事なことは、統計確実性正確性でございまして、ただいま先生指摘の点につきましては、十分肝に銘じまして、確実性を失うようなことがないように対処してまいりたい、こういうふうに思っております。
  13. 木原実

    木原委員 それからもう一つ分野で、今度新しく福祉ということが部局の問題で加わるわけですが、これは説明書をいただいた範囲の中でいずれもごもっともなことなんですが、ある意味では労働省行政全般にかかわるような側面を持っておるのですが、これで具体的に何をやろうということなんですか、説明をひとつしてください。
  14. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 最近、日本経済が非常に高度に成長してまいりまして、それに応じまして勤労者生活も逐次向上いたしておりますが、一面そういう生活向上に伴いまして勤労者要求多様化してまいりまして、なお、生活ゆとりとか、あるいは快適な生活環境とか、そういう人間性回復要求が高まってきているわけでございます。労働省といたしましては、そういうものに対処いたします勤労者生活全体の福祉向上のために、これまでも施策をいろいろ加えてまいっておりますが、他面、そういう最近の新しい勤労者要望多様化というようなものに対応いたしまして、全般的な勤労者生活福祉向上を推進する、そういう体制をつくっていきたいというのが福祉部を設置しようという趣旨であります。  具体的に申し上げますと、たとえば、働く婦人の家とか勤労青少年の家とかいったような婦人少年局本来の行政のもの、あるいは、勤労者雇用促進のための福祉施設といったような、安定局なら安定局固有福祉施設というものは、従来どおり引き続きその局でやるわけでございますが、近ごろは、たとえば週休二日制であるとか、あるいは夏季休暇制であるとか、あるいは勤労者の減税問題、あるいは財産形成問題といったような、それぞれの局の固有の業務のワクに必ずしも入らない問題が非常にふえておりまして、そういう問題を取り上げていく、こういうことを福祉部でやろう、こういうわけでございます。
  15. 木原実

    木原委員 いま局長がおっしゃいましたような側面の問題は、確かに新しく出てきている問題です。しかし、これが御存じのように、いろいろなものとからんでいるわけですね。ですから、部局の問題として、機構の問題として、福祉という側面を強調した部局を制定をしてやるとしても、まごまごしておりますと、部局ができたけれども何か浮き上がってしまいまして、たとえば週休二日制の問題をとりましても、これは問題が出された段階では、御存じのようにいろいろな問題があり、まだ未処理の問題ですね。これ自体政策問題としてもかなり大きな問題を残していると思います。部局をつくるということ、私は必ずしも反対ではございませんけれども、できましたら、それに裏づけをする問題は、労働省の中でも各部局関連をしておる。あるいは問題によりましては、他の省庁関連をするいろいろな問題がある。そうしますと、福祉部局をつくってやろうという熱意はわかるのですけれども焦点を据えませんと、福祉ばやりですから、各省ともやはり福祉というものは掲げてなかなか中身が伴わないという問題もあります。  しかし、労働省あるいは労働行政全体の中に、労働者福祉というのは非常に大きなウエートを占めているわけでございますから、そうしますと、福祉政策全体の中で、新しい福祉部局が占める位置というのは一体何なのか、そういう不安が残るわけなんです。ですから、ここの説明書の中にいろいろお示しがありますけれども、何かいまだこんとんとしていて抽象的で、実際にこの部局を設けて何に向かって行政仕事ウエートを置いて突進をしていくのか、そういう何か意欲が少しわからないような感じがするわけなんです。問題は、あげてみれば確かにそのとおりなんですけれども、いずれもまだ足らない要素が多い、こういう感じがするのですが、それらの問題の調整。何に焦点をしぼって仕事をしていくのか、そういう目標といいますか、努力目標はどうですか。
  16. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 確かに先生指摘のように、福祉という問題、非常に広範でございまして、それだけに何からやっていくのかという御疑念をお持ちのことは当然のことと思うのでありますが、私ども考えておりますのは、まず今後の勤労者生活ビジョンといったようなものを総合的に確立していきたい。そうして、そういうビジョン目標といたしまして、新しい施策を進めていくわけでございますが、当面考えておりますことは、まず労働条件の中で、いままでは基準行政といいますと、最低労働条件を監督し順守させるということでございましたが、先ほど申しましたような最近の勤労者生活の動向からいたしまして、最低基準の順守、確保だけではなしに、さらに、よりよい福祉のための労働条件向上ということが問題になるわけでありまして、当面といたしましては、経済成長に伴う成果配分で、賃金にばかりいままで目が向けられた、それに対しまして生活時間といったような面がやはり非常に強くなってきております。そういう意味で、週休二日制、それから休暇活用、こういったような問題が労働条件関連する問題としては当面の問題ではないかと考えております。  それからさらに、だんだんと勤労者年齢構成高齢化、人口の高齢化等もございまして、いわゆる老人問題というものが非常に大きくなってきます。それとの関連では、労働関係で申しますと、定年制の延長の問題、それに伴う退職金等の問題、こういう問題が第二番目の当面の問題ではないか、かように考えるわけでございます。  第三番目といたしましては、経済成長の結果、いわゆるフローの賃金は漸次非常に向上してまいりまして、ヨーロッパに近い水準になりつつある。しかし、ストックという面につきましては、日本はまだまだ先進国に非常に劣っている。そのために、長期的に見た労働者生活がほんとうに安定しない。そういう意味におきまして、最近、労働省が取り上げております勤労者財産形成政策、こういったものを推進してまいりたい。当面こういったことを考えているわけでございます。
  17. 木原実

    木原委員 労働省は、基準行政の中でも、安全衛生側面や、今度新しくこういう福祉ウエートを置いた前向きの政策を進めようというのは、それ自体は、いま御説明を拝聴しましても意欲はわかるわけであります。私たちも、そういう形のものは推進してもらいたいという立場でありますけれども、あわせまして、たとえば時間短縮の問題、あるいは二日制の問題、あるいはまた老人福祉の問題が出ているわけなんですが、他の省庁にかかわる問題ですね。老人福祉の問題にしましても、労働省だけでは律し切れない側面があります。そういう側面について、総合性といいますか、それらについての何か努力のお考え方はございませんか。  たとえば問題をしぼりまして、二日制の問題がいろいろ提起をされました。その時期に来ていると思いますね。それから、やや長期のたとえば夏季休暇の問題、そういう問題ももうすでに現実の問題にはなっている。しかしながら、それに対してかなりなまだ抵抗の問題もあります。そういうふうに、政治の問題でもあると同時に、行政分野の中でもまだ解決しなければならないいろいろの問題が残されておると思うのであります。それらの問題についての解決のしかたといいますか、何かお考えがございますか。
  18. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 確かに福祉の問題は広範でございますだけに、労働省プロパー分野だけではなくて、各省庁所管に属する問題が非常に関連があるわけでございます。もとより福祉部をつくりまして、まず第一には労働省プロパー分野行政を推進するわけでございますが、たとえて申しますと、先生おあげになりました、週休二日とかあるいは夏季休暇というような問題につきましても、レジャー産業と申しますか、余暇のためのいろいろな第三次産業の問題、あるいはその輸送の問題等々の問題もございます。それから、財産形成につきましても、勤労者持ち家ということになりますと建設省と関係がございましたり、あるいは、減税の関係でございますと大蔵省と関係があったりするわけでございます。そういう問題につきましては、私ども勤労者福祉という観点から、現実的な考え方というものを研究いたしまして、それにつきましては、それぞれの所管省と十分に話し合いをして、そうして労働省施策とそれらの所管省でとっていただく施策と相まちまして、福祉の実があがるように推進してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  19. 木原実

    木原委員 あわせてもう一つお伺いしますけれども、いま余暇ということばが出ました。余暇政策というものは、政策体系としてあるのかどうか、私どもはなはだ疑問なんですが、それにしましては、余暇の問題が現実の問題になっているのに、余暇を過ごす状態やあるいは余暇政策なるものを推進しているのは、いろいろ当たってみますと、レジャー産業ボウリング協会が一生懸命週休二日制を推進したりやっているような側面がいろいろあるわけです。つまり、ゆとりのある時間を確保するという問題と、それをやはり意義あるものに過ごさせるためのいろいろな施策なり行政なりというものがまだそれに伴っていない。したがって、余暇政策貧困といいますか、レジャー状態が非常に貧困だ、こういう問題もあります。余暇政策という問題については、たとえばこの部局でやることになりますか。あるいは、余暇政策というようなものについて、先ほど局長がおっしゃいましたようなビジョンの中に具体化していく、こういうことになるかと思うのですが、余暇政策について、たとえばこの部局を中心にして少し考えていきたい、こういうお考え方はどうですか。
  20. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 従来は、いわゆる余暇に対する考え方は、いわゆる余りの時間といったような非常に消極的な考え方でございまして、これに対して積極的な政府施策というものはとられておらないわけでございます。しかしながら、私ども調査しましたところによりましても、休日や休暇がふえているわりあいに、中高年の方はテレビ寝式的な過ごし方をしておられる方がなお多いわけでありますが、若い方はやはり、レジャーあるいはスポーツ、少なくともそういうものにこれを活用していこうという欲求が非常に強いわけでございます。しかしながら、現実日本はまだまだそういう施設がそういう欲求に相応じたような形で整備されておるかというと、必ずしもそうではございませんで、休暇や休日になりますと、列車が一斉に込んで、すし詰めでなければ郊外に出られないとか、あるいはスキー、スケートのスポーツにも行けない、あるいは、その施設もよほど前に予約しないと、やりたいこともやれないといったような問題があるわけでございまして、私ども労働時間の短縮とか、あるいは休日、休暇の増加、これというのはやはり勤労者生活を内容的にも充実させたい、こういうことでございますから、新しくできました休日なり休暇なり、そういうものを有効に過ごし得るような体制がなければならない。  そういった観点からいたしますと、従来のように、単に余暇余りの時間といったような消極的な見方でない、もっと積極的な観点に立ってこれを考えていくべきではないかと、私どもかように考えておりますが、そういうことにつきましても、福祉部等におきまして、余暇等を含めた勤労者生活内容的充実に関する考え方、そういうものを確立いたしまして、労働省でそれに対する一つの指針なり、指導の方針なりを出しまして、企業においてもこういう立場で、せっかくの短縮いたしました労働時間を活用させるような対策をとらせる。あるいは政府におきましても、そういうことの考えに立って産業構造なり何なりを今後考えていく。こういうような方向に持っていかなければならない、かように考えておるところでございます。
  21. 木原実

    木原委員 これは大事なことだと思うのでね。そこで大臣に少し御見解を承りたいのですが、一九五七年か八年だったと思うのですが、イギリスの労働党余暇政策というものを実は選挙向けに発表したことがあるわけです。それを伝えました当時の新聞が、外電だったと思うのですけれども余暇という問題が政策体系の問題として出てきたのは労働党の歴史の中で画期的なことだというコメントをつけて報道したのを私はよく記憶しているのです。労働者の問題、その中のやはり余暇という問題は、これは私どもの党にとりましても、本来的な問題で、実は関心を持っているわけです。  ところが、われわれの国の場合には、依然としてやはり勤労第一主義といいますか、二宮尊徳の精神がわれわれの世代には非常に強く残っておりまして、局長もちょっと触れられましたように、余暇という問題が、われわれの人生の中で、あるいは産業人としての、労働者としての生活の中でも余りの時間である、こういう概念が強い。したがって、たとえば週休二日制の問題であるとか、時間短縮の問題であるとか、あるいは長期の連続した休暇の問題であるとか、こういう問題が政治の日程としても取り上げられているわけなんでありますけれども、いまだにそれらの問題をめぐってはたいへんジクザクした考え方が錯綜をしていて、なかなか焦点がしばれない。労働組合においてもしかり。ましてや企業側面においても、結局、生産の工程と合わせてしかそのことを考えない。そういうような風潮がまだ強くて、必ずしも余暇という問題が、政策的に、もしくは行政的な問題として焦点をしぼることができにくいような状態があると思うのです。しかし、労働政策労働行政の中では、やはり余暇という問題がある意味ではもはや無視することができない一つ行政上の転換を迫るようなウエートを持ってきているのではないか。そういうような時勢の流れがあると思うのですね。  ところが、現実余暇についての行政上の取り組みは、たとえば厚生省も何がしかやっている。しかし、厚生省余暇にかかわる側面行政を見ましても、たいへんどうもみみっちいような感じがするわけです。私はやはり、労働行政のこれからの一つウエートの置き方として、話が余談になりますが、農林省がやはり流通の問題にウエートを置いて取り組まなければならなくなってきたということも何がしか関連をするような気がするわけですけれども労働行政関連の中でも、余暇という問題を福祉という問題とあわせて重視をするような時期に来ているのではないか、こういう気がするわけなんですが、大臣ひとつ御見解を。
  22. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 労働政策の基本は人間の尊重と福祉の優先にあることは、これは言うまでもないことであります。しからば福祉対策をこれまでとらなかったという御批判があるかもしれません。私はそれはそれなりにやってきたと思っておりまするが、特に昨今における労働の需給状況、また今日の産業のあり方等から考えまする場合には、これはやはり、あくまでも勤労者福祉というものを考え、これを優先させなければ今後の行政に対応することはできない、かように考えております。  そこで、労働時間を含めて、週休二日制の問題等を例にあげられました。それに関連して余暇の問題でありまするが、今日まで確かに余暇対策がなかったことは事実であります。週休二日制一つとらえてみましても、これは社会問題であり、政治問題であります。たとえば昨日でありまするか、総評関係の方ともお目にかかりましたが、第一のスローガンは、たくさん問題がありましたが、やはり週休二日制の問題と労働時間の問題に集約されるというふうに私は受け取っております。事実またそうでなければやっていけない。  そこで、余暇対策についてはどうかというと、非常にいい一つの例をここで取り上げてみたいのですが、週休二日制については、金融主導型がいいというので、この一月銀行協会にお願いしたその中間報告もいただいております。と同時に、一カ月ほど前に、木川田さんを会長とする経済審議会の中のマンパワー委員会というのが、やはり非常に前何きな週休二日制についての中間答申を出しております。これは従来の答申と違って、それをやるべしというのと同時に、対応、受け入れ側の問題に非常にウエートを置いているというのがいままでと非常に変わった点である。これがやはり木原委員の御指摘の第三次産業の受け入れの問題であります。たとえばこの間のゴールデンウィークの過ごし方等について、あるいは世論調査、それから世間のうわさを聞いてみますると、やはり受け入れがほとんどできておりませんから、せっかく休養をとるため、または余暇を楽しむための効果はあがらない。したがって快適な気持ちで快適な職場に出ていくということもできないということになれば、たとえば週休二日制をとってみても、よき作業場においてよき健康状態で働くということも、かえってそこなわれるという逆の現象があってはならない、こういうこともあり得るわけであります。  そこで、労働省といたしましては、先ほどから基準局長も答えておりまするように、今度の部局の改正で直ちに全部が全部取り上げられるとは言いませんが、そこに大きな着眼点をもちまして余暇対策というものに取り組んだということは、私は一つの進歩であろう。  これはしかし、ひとり労働省だけでできる問題ではありません。また、労働政策そのものをとらえてみましても、私、労働省に参りましてつくづく感じましたことは、最近はもう労働政策というものは、あるいは厚生省の問題であり、環境庁の問題であり、その他の省庁にまたがる問題である。極端な言い方をすれば、それらを先取りしていかなければ労働行政は立ちおくれてしまう、こういうふうにも考えておるわけでありまするから、各省庁との緊密な連携をとることはもちろんであります。  ですから、いまの労働力から考えて、ことに中年層、高年層、婦人勤労者の問題、日本の今後の人口問題等から考え合わせました場合に、そういう労働力というものを福祉という点でしっかり固めておくためには、これを最重点施策として取り上げていかなければならない。資本という事実、これをわれわれは否定できない。労働の価値観というものも、これは大いに尊重しなければならない。それを調整させるところに今後の日本産業の発展もあり、批判はあっても、戦後二十七年間の繁栄を実り多いものにすることもできる、このように考えておるわけであります。  そこで、労働時間、週休二日制その他をすべてとらえてみましても、労働基準法が最底のものを守ったというお話もありましたが、そういうものからもっともっと飛躍して——もちろん、こういう法律は順守いたします。守ります。労働安全衛生法とかいろいろなものがそこから抜け出されて、労働基準法の形骸化ということがいわれておりますが、私はこれは絶対形骸化ではない。そのものは守りますが、ことばは適当でないかもしれないが、要するに貧困の哲学から富裕の哲学に立った。これは誤解を生むかもしれませんけれども、そういう観点で、今後の余暇対策、そういうものに取り組んでいくのが今後の労働行政のあり方であろう、私はこのように考えております。
  23. 木原実

    木原委員 私は、たとえば行政上の機構の問題とすれば、総合的な労働福祉省でもつくったほうが時世にかなうような考え方を持っているのですが、そのことはともかくとしまして、やはりいま出てきておる余暇の問題というのは、労働者の問題としていえば、合理化とのうらはらの問題という感じを持つわけなんです。どこの職場の中でも、企業が伸びていく、合理化に次ぐ合理化をさまざまな形で推進をし、したがって労働がますます単純化していったり、職場の中での労働密度がやはり高まるという傾向が急ピッチで行なわれている。それだけ働く労働者の人間的な側面というものが職場の中でそこなわれている。そういうこととやはりうらはらの関係余暇というものが出てきていると思うのです。それならば、私はやはり、合理化のテンポに合わさって、余暇の問題は少なくともバランスをとっていかなければならぬのじゃないか。行政観点なんというものは案外そういうところじゃないかと思うのです。  私どもは、やはり政党の立場からすると、もう少しラジカルな要求があるわけでありますけれども、少なくとも行政はそういうところにもうすでに来ている、そういう感じがするわけであります。したがいまして、大臣のおっしゃいましたような前向きの意欲、これをさらに発展をさしてもらいたいというのが私の実は希望であるわけです。  ところで、そういう状態があるわけなんですが、現実の問題としては、どうもまだ、基準行政、相当腹を据えて最低のその基準を貫徹をする努力をしてもらわなくてはならない側面があることも事実なんです。一つの問題は、これは私どもの近辺にもたくさんあって、あらためて例示をして指摘をするというのには、もうあまりにも問題が日常化しているわけなんですが、たとえば労働災害の問題が非常に多い。依然として職場の中での人身事故、死傷に至るような事故が相次いでいる。しかもまたこれ、御存じのように、調べてみますと、大きな企業の中で、下請関係のその下請も、まあ孫請であったりひ孫請であったり、調べてみますと、だれに雇用されていたのかわからないというような人たちが職場で事故にあってなくなっている。さらに、そういう状態ですから、かりになくなりましても、それに対する補償というようなものが、もうまことにあってなきがごとし。せいぜい金一封ぐらいで済まされているような例も多々あるわけですね。そういう状態が実はあるわけなんです。これは安全衛生側面からの問題なんですが、これらの問題については、問題が日常化されているので、どうもそのまま流されているという感じがするわけなんですけれども、事やはりもうそれこそ入間の福祉以前の問題にかかわってくるわけですが、これに向かって取り組むという、何かきびしい姿勢があるのでしょうかね。どうでしょう。
  24. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先生指摘のように、労働災害、これはわれわれ、絶滅のためにかねてより非常な努力をいたしておりますが、なかなかそれによる被災者というものは減少するに至りませんで、まだ毎年多数の労働者の方がなくなられたり、あるいは病気にかかられたり、けがをされたりしておるわけでございまして、私どもこれは、労働者の生命と健康を守るということは、もう労働者福祉の、むしろそれ以前の基本的な問題である、かように考えておるところでございます。  そこで、私ども従来から努力はいたしておりますけれども、何とかこれを抜本的に改善するような対策を講じたいということでいろいろ検討いたしてみまして、いままでの基準法を中心といたしました労働災害防止法制、法体系というものが、最近の産業事情等に必ずしもマッチしていない点があるのじゃないか。たとえば、いま先生指摘になりました親企業、下請の関係等でございますけれども、基準法というのは、個々の直接の雇用関係のみを対象とし規制がされておるわけでございますが、建設業はじめ、造船だとか鉄綱だとか多くの企業においては、下請、孫請といったような関係のもとで作業が行なわれておりまして、同じ作業場におきましても、必ずしも雇用関係は直接にない人たちが入っておる。そのために統一的な安全衛生管理体制ができていないというような問題が多々あるわけでございます。最近はさらにジョイントベンチャーというような形態の作業部門もございまして、雇用関係が混在した中でやっている。そういうことが同じ作業場における安全衛生体制の確立の障害になっている、お互いに責任分野が不明確であるという、そういう点などもあるわけでございます。  それこれを考えまして、やはり災害防止体制の法制的な体係を抜本的に考え直す必要があるのではないかということで、二、三年来、鋭意検討いたしておりまして、その結果に基づきまして、今国会に労働安全衛生法を御提案し、ただいま御審議を願っておるところでございまして、その法案の中におきましては、直接の雇用関係よりももっと広い視野に立ちまして、たとえば例にあげられました元請、下請のような場合には、同一事業場の中で混在してそういうものが行なわれている場合には、統括安全管理責任者というものを置きまして、元請にその責任を負わせる、そのもとで下請は下請なりに安全衛生管理体制を確立させるというようなことで、そういう責任体制の明確化をはかるというようなことも、この法案の中には規定をされておるところでございます。  なお、下請を含みます中小企業につきましては、法制で義務づけだけをいたしましても、なかなかその能力から実施できない面もございます。これに対しましては、財政金融的な援助、技術的な援助というものを国で十分してやらなければいけない、こういう問題もございます。この法案の中では、そういう点につきましても、国や地方の援助というものも規定をいたしておりまして、単に規定するだけではなしに、四十七年度の予算におきましては、新しく安全衛生融資制度というようなものも設けまして、中小企業においてそういうものをする場合には、安全衛生設備のための融資をするといったようなことも、予算の中に盛り込んだわけでございまして、それらを総合いたしまして、この法案が成立いたしましたならば、新しい体制のもとに災害の大幅な減少、絶滅を期しまして、安全衛生については労働行政の最重点として推進してまいりたいと考えております。
  25. 木原実

    木原委員 私ども見ておりまして、安全な職場環境をつくる、それから、少なくとも基準法を守ってそういう事故を絶滅する責任というのは、局長おっしゃいましたように、やはり雇用者側にあると思うのです。しかも下請関係、元請関係の問題でそういう統一的な安全の責任者を設定をする、こういうことは非常に一つの進歩だと思います。ただ、その際に、いままでですと、基準法が実施をされまして、そういう事故を起こした、明らかに安全対策上の手抜かりがあったというような場合でも、言ってみれば、その安全責任者、企業の中でいえば、直接現場にかかわっておったような下級の人たちがいろいろ責任を追及される。あるいは刑事的な責任をそういう人たちが負う。ところが、その企業の大もとは必ずしもそうではない。これは公害の問題と同じだと思うのですね。ですから、公害の問題でも企業責任ということがあらためてきびしく追及をされている、そういうことになりますと、やはりそういう考え方というものを基準行政の中に大幅に取り入れて、せっかくそういう安全の根源の責任体制を明らかにするということになれば、同時にこの責任を追及する姿勢はきびしくなくちゃならぬと思うのですね。  その考え方はいろいろあるのでしょうけれども、従来、やはり刑法にゆだねている、そういう側面があって、この刑法が適用されますと、どうも現場にかかわっておった下級の人たちはしばしば処罰を受けるけれども、しかし、その上のといいますか、本来責任を負うべきところというものは、社会的には多少責任を追及されましても、少なくとも刑法上は免れて罪なし、これではやはりいけないと思うのですね。だから、せっかくそういう制度をおつくりになるならば、やはりその辺は、事、人命にかかわっておる問題ですから、きびしく適用の範囲、責任の所在を明らかにしていく、そういう体制が必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  26. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 従来の基準法では、義務者の対象を使用者といたしておりますけれども、使用者の定義というものは、事業主、経営担当者のみならず、それぞれの事項について権限を与えられて使用者のために行為する者ということで、先生指摘のように、下級管理者までが使用者の定義の中に入っております。そういうために、ややもすると、御指摘のように、最終責任者である事業主でなくて経営の下級管理者が責任を負う、このようなきらいがあったわけでございます。  そこで、その点につきましては、先生指摘のような御趣旨も十分わかりますので、今度の安全衛生法では義務者はすべて事業主というふうに明確にいたしております。それから安全衛生管理の管理責任者といたしましては、一定規模以上の事業には総括安全衛生管理者というものを置くことに今度の法案では明記いたしております。これは、それぞれの工場、事業場で言いますと、工場長に当たるような、その経営の全体的な責任を負う人、これを総括安全衛生管理者とすることにいたしまして、これに安全衛生、災害防止の管理の総合的な責任を負わせることを明確にいたしております。そういう意味において、今度の法案におきましては、使用者の管理責任ということを明確にするということが新法の重点の一つになっておるわけでございます。
  27. 木原実

    木原委員 私どもが二、三立ち会ったような事例から考えますと、たいていの場合は、本人の不注意だ、こういうようなことで処理される場合が多いわけなんです。したがいまして、変な話ですけれども、死人に口なしで、不注意というのはたいへんあいまいなことばですが、しかし、本人の不注意ということで処理されるような経緯が多い。  そのことと関連をして考えるわけなんですけれども一つは、これは必ずしも労働行政の対象になるとは思いませんけれども、何でもかんでも下請に出していく企業形態が、特にたくさんの人手を要する企業の中においては一般化しているわけですね。先ほど大臣ちょっと鉄鋼というおことばがございましたけれども、鉄鋼なんかにいたしましても下請の段階がたくさんある。そういうやり方。それから、これはやはりこの委員会でも問題にしたかと思いますけれども、たとえば国鉄が新線を敷く、こういうことで土砂を運ぶ例の砂利トラックですけれども、この土砂を運搬をするトラックの往来というものがあまりにも横暴をきわめる、こういう問題が起こりまして、その際、本来事業主である国鉄当局を追及してみましたところが、国鉄としてはちゃんとやっているんだ、下請といろいろな契約を結んでやっている。ところが、それを請けました国鉄の下請会社が、さらにその下請に出した。その下請はさらに、何か自分で車を持って運転をしておる連中にそれぞれ仕事をさせている。ひ孫のもう一つ下ぐらいの段階でやっている。ですから必ずしも国鉄の契約やあるいは意図が完徹をされていない。しかも、そういうものが走る道路とか現場は、そのためにたいへんな難渋を受けている、こういう問題がありまして、これは幸いに国の手の届く企業であったわけですから、改善を求めました。そういう状態が一方にあるということになりますと、やはりこれは、安全衛生の基準の原則を完徹していくためにも、何でもかんでも下請に出していくという企業形態にも、これは通産省の分野だと思うのですが、ある程度の基準というか、限界というか、そういうものをやっていきませんと、下請という企業形態、それに伴う雇用の形態、この辺にどうやら悪の根元があるような感じがするわけです。しかもそういう企業形態が、ある意味では今日の経済の成長をささえてきた。しかしそれでいいんだろうか。これは形を変えた低賃金政策といいますか、少なくとも近代企業としては好ましくない企業形態だと思うのですが、しかもそれが、わが国の独特の企業形態だ、あるいは産業形態だというようなことでまかり通っているわけなんですが、しかし、もうここまで来た段階では、そういう資本の立場から見ても不健全な企業形態や、あるいは雇用形態に対しては、相当思い切った改善措置をとる、メスを入れていく、そういう段階に来ているのではないかと思うのですが、これは労働省だけの仕事ではない。特に通産省との関係等が出ると思いますけれども、その辺のお考え方はどうでしょうか。
  28. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 下請の問題、これはたいへんな問題であることは言うまでもありません。われわれ労働省側から見れば、いま労働災害に限ってのお話を申し上げたのですが、過般、商工委員会で御審議を願った下請に関する法律等もございましたし、通産との関係も非常にございますが、私は、労働大臣としてではなく国務大臣として考えた場合に、いまのような今日までのあり方、これは相当メスを入れなければならぬ。私自身、常陸が郷里でありますので、関連、またその下請というような実態もよく知っておりますし、その経営者並びに労働組合の方々からもいろいろ聞いております。わりにうまくいっているところだとは思いますけれども、しかし、いま木原委員指摘のような点もありますので、これはひとつ関係省庁と十分打ち合わせまして、下請のあり方についての、ほんとうの根本的なメスを入れなければならぬというときに来ていると思います。  われわれがいま申し上げられることは、災害の問題は、労働基準局長が言っていましたように、確かにその下請のほうが労災の多いことは事実であります。ですから、これに対しては明確なる責任という責任体制を打ち出しましたことも、いま御説明いたしましたとおりでありまするが、われわれは、今後とも、そういった下請の者だけが、またその孫からその下の者が泣き寝入りをするということのないような措置はとっていきたい。過般、建設委員会の建設業法も一つの役割りを果たしておると思いまするが、それはごく一部にすぎません。全般にわたりまして、そういったことの、木原委員指摘のような点を十分心に体しながら、この問題と取り組んでまいる考えであります。
  29. 木原実

    木原委員 非常にむずかしい問題であることは、私どもよく承知をいたしております。しかし、近代化を進めている反面では、大きなところは近代化がますます進み、それから近代化をやるために切り捨てる部分は下請に回していく。二重構造は次第に解消しているんだという説もあるわけでありますけれども、何かそういう近代の裏側に非近代的な産業形態や雇用形態が依然として続いているというのは、これは労働行政としても非常に好ましくないということははっきりしていると思うのです。ですから、大臣お答えいただきましたように、むずかしい問題ですけれども、どこかでやはり改善のための声を絶えずあげていくということが必要だと思います。これはひとつこれからもぜひ御努力をお願いいたしたいと思います。  それとあわせて、今度基準監督官の数が相当ふえているわけでございますが、どれくらいふえているのでございますか。
  30. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 基準監督官、かねてより増員に努力をいたしておりますが、必ずしも十分ではございませんが、四十七年度は七十名ふえております。なおそのほかに、最近では、安全衛生といいますとやはり非常に専門技術的な問題が多うございますので、監督官のほかに、安全衛生専門官というようなものが三十五名増員になっておりますし、その他の事務官を入れますと、今年度は百二十名増員。前年が五十二名でございましたので、まあ不十分ではございますが、倍以上の増員を四十七年度は獲得いたしているわけでございます。
  31. 木原実

    木原委員 これは私、いつかこの委員会でも指摘をしたことがあるわけでありますけれども、せっかくいい制度があり、基準行政も次第に換骨奪胎の側面もあるという批判もあるわけでありますけれども、それにいたしましても、この行政を担当する第一線の監督官その他、何といったって人手が足りない。ところが、われわれの委員会の問題なんですけれども定員法というような一律の、たいへんばかげたような——佐藤総理によると、とにかく、理屈はないのだけれども頼むというようなものがまかり通っておりまして、しかも、国民生活に直接サービス提供する、そういう側面の人員というものがもう十ぱ一からげなんですね。これは塚原大臣も少し声をあげていただきたいと思うのですけれども、大いに行政改革をやって簡素化をやり、公務員の絶対的な人員の——限界というものはもちろんありますし、われわれもやたらにふやせというわけじゃないのですけれども、しかし、国民の生命、安全という問題にかかわる面で行政がタッチしているんだということになりますと、人手が足りないから、しばしばいわれているように、基準監督官一人が受け持っておる会社が何十とあって、十年に一回ぐらいしか作業場に回れないという状態がある。しかし、ある程度の能率をあげなくちゃいけないから、望遠鏡で監視しちゃって報告を出すなんという話が私どもよく現場で聞かれるので、これじゃどんないい法律をつくったところで、もう形骸化がその辺から起こっているわけです。やる以上は必要な人員は配置をして、そうしてやはりきちんとした形がやっていけるようにする。私は、これは定員法の問題と別に考えたい、そういう気持ちがあるわけなんです。  したがいまして、いま何がしかの人員の増加の御報告がございましたけれども、現状からすれば、わずかに何がしかをつけ加えた、こういうイージーな感じがするわけであります。ただ監督官だけたくさん数をふやすわけにもまいらないでしょうけれども、しかし、重点の置き方を間違えないようにして、必要なところには必要な人を配置をしていくんだ、そのことによってかりに一人の命でも救われるということになれば、これは行政としてはもって瞑すべきだと思うのです。国民もまた税金をそのために惜しむものではないと思うのですね。そういう気持ちを持っておりますので、これはぜひ引き続いていい制度を的確に実施に移していく、そういう側面の人員の配置については万全を期してもらいたいと思いますが、ひとつ大臣の前向きの決意を……。
  32. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 ただいま御審議を願っておりまする労働安全衛生法の審議の際にも、また予算委員会の審議の際にも、木原委員の御指摘のような問題が大きな問題として取り上げられてまいりました。確かに、いまの事業場と監督官、それから安全衛生専門官とを比べますと、十年に一回とか、あるいはもっと何年に一回か、参議院では、私初めて聞いたことばでありますが、きょろ官というような名前まである。きょろっと見ていくという、先ほど望遠鏡で云々ということと同じような意味をさしたのではないかと考えますが、まことにそういう状態にあることは認めざるを得ません。したがって、現実に約二千九百名の者で全事業場を見るという場合には、現状においてはどうするかといえば、やはり機動力を発揮することはもちろんであります。私はよく、なれ合いなどといういやなことばを聞きます。これは絶対にないと思いますが、特に抜き打ち的なものもやる必要があろう。しかし、最終的には人員の増、しかも人員の増と同時に、今後機械その他あらゆるものが日進月歩でありますから、それに対応した能力を持った方でなければならないということもあわせ考えまして、定員増の問題は、先ほどからの質疑応答の中にもありましたように、非常にむずかしい問題でありまするし、当委員会に最もそれは関連した問題でもありますので、今後、特例中の特例として、私自身、大いに明年度の予算でもがんばりますが、どうぞ内閣委員会の方々の特段の御配慮を、こういうところでどうかと思いますが、お願いする次第でござます。それなくしては、いま申しました非常に大事な労働者の健康と生命を守る、労働災害を防止することも困難でありましょうし、それだけが決して防止策ではございませんが、やはり人というものが基本になることは事実でありますので、あつかましい発言かもしれませんが、よき御理解と御協力をお願いする次第であります。  われわれは、しかし、現在置かれた人員のもとにおいて、万全の対策を講じつつ労災の発生を減少さしていきたい。この運動が徹底いたしまして、百六十五万の災害にあわれた方のうち約六千人がなくなられたという数字が、昨年度においてはやや減っておるというようなことも——決してこれはそれだけを声を大にして言うつもりはございません。もちろんドル・ショックから来る、ニクソンのトリプルパンチから来る日本の不況というものにおける日本産業のあり方にも関連があるとは思いまするが、その現象については最大限の努力はいたしますが、いま御指摘になりました、監督官、安全衛生専門官というようなものについての今後の努力は、私は最大限の努力もいたします。ひとつよろしく御理解のほどをお願いしたいと思います。
  33. 木原実

    木原委員 大臣からおことばがございました。われわれの委員長は、たいへんそういう面では理解の行き届いた方でありますから、当委員会としては、大臣の御決意があれば、いかようにでも必要なところには人員の配置をすべきだということで、これはおそらく与野党一致すると思いますので、努力はいたしたいと思います。  ただ、あわせまして、数の問題もさることながら、やはり質の問題も指摘しておかなくてはならないと思うのです。いま局長から御指摘がございましたように、やはり産業の態様、形態も非常に複雑になり、あるいは技術面の多様化が進んでおりますから、監督官といたしましても、なかなかそれに対応できないような姿もあります。そこへもってきて時間がないということになりますと、どうしても形式に流れる。まあ、なれ合いはないという大臣の御指摘がございましたけれども事務を遂行していく上に、結果においてなれ合いになってしまう。  たとえば、ある工場に何か鉛による従業員に対する影響が出ているのではないか、こういう問題が起こりまして、労働基準監督署のほうから人が出てまいった。しかし、これを検知する機械が残念ながらない、だからそれを工場が常設をしておる検知器を借りてやった。これはやむを得なかったと思うのです。あるいは、それだけではなくて、工場側のデータを借用してきて当面の報告をしたというようなことが従業員から指摘をされたなんということが、私の身近にございました。まあ、これは便宜だったと思うのです。悪意ではなかったと思うのですが、しかし、そうなりますと、結果においては、どうも企業のほうは、そういうあれはないのだ、おれのほうは基準どおりやっているんだと言っても、しかし、従業員の人にしてみれば、現実に何人かからだのだるくなった人間が出た、診断をしてもらったらどうも鉛の影響があるのではないかという診断が出た。しかし、それは別なあれだろうというような争いの中では、基準監督署としては、たいへん不本意ではあったでしょうけれども、疑われてもやむを得ない、指弾されてもやむを得ない、そういうことが間々あるわけですね。ただ、そういう状況のほかに、さらにまたいろいろな業務の中では目こぼしもしなくてはならぬ要素もあるということも、これは人間の世界ですから、ないとは言えないわけなんです。  しかし、法の原則というものが前提にあるわけであります。それに対しては、基準監督官がどういう圧力にも屈しないで、ある意味では、これだけの法律を、一つの憲章といわれるような基準法を適確に運用していく場合には、やはりさまざまな利害による圧力なり誘導なりというものはないとは言えないわけですね。そういう際に、基準監督官が自分の職業的な良心に基づいてきちんと遂行していく、その保障だけはやってやる必要があると思うのです。技術的な練磨とあわせて、第一線の監督官たちが法の原則に基づいて、職業的良心に基づいて業務を遂行していく、その保障について——これは特に大臣の指揮監督下にあるわけでありますから、彼らの働く条件といいますか、職業的良心に基づいて仕事を遂行していく環境というものについては最大限の保障をしてやる、こういうことが必要だと思うのですが、いかがですか。
  34. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先生指摘の、労働基準監督官の質の向上、士気の高揚につきましては、全く御説のとおりでございまして、われわれも、最近の産業事情の変化、技術の革新等々の中で、十分に監督官がその職責を遂行できますように、監督官の選任とともに、その後の研修等につきましては極力努力をいたしておりまして、必要な能力を絶えず身につけさせるようにいたしております。また、検査機器その他の装備につきましても、いろいろ予算の制約もございますけれども、極力必要なものを整備させるようにはかっておるところでございます。  なお、それに加えまして、御指摘の監督官の士気の問題につきましては、基準法自身の中に明確に身分保障の規定もあるわけでありますが、単なる法律の規定だけではなしに、自分の職務の重要性に対する認識の上に立って、大いに士気を振起してその職務を遂行してくれるよう絶えず配慮をいたしておるところでありまして、現在までのところ、確かに業務量の増大に人員の増が必ずしも伴わず、業務は非常に多忙ではございますが、司法処分にいたしますものが年間約千七百件ぐらいあります。そのほかに、年間六万件をこえるものを監督官が使用停止等の処分にいたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、困難の中で監督官の人たちは一生懸命その職責を遂行してくれておるもの、かように考えておるところでございます。
  35. 木原実

    木原委員 これは大事なことだと私、思うので、ぜひひとつ厳重にそういう諸条件を備えるようにお願いしたいと思います。  ここで言っていいかどうかわかりませんけれども、きょうの審議の実は対象外なんですけれども、もう一つ労働省が出して継続になっております、基準監督官の身分に関する審議会を廃止をするという案があります。これはやはり、前回のこの委員会で私ども問題にいたしましたけれども、ああいうものは私は残しておいたほうがいいと思うのです。二十年にわたってあの審議会が一回も開かれなかったというのは、いいことか悪いことかわかりません。あの審議会にひっかかるくらい蛮勇をふるう監督官、勇気ある監督官がいなかったという証明になるので、これは困るわけですが、しかし、ああいうのは、前回も申し上げたのですが、たとえば行政簡素化という側面からいえば、実体のないものなんですから置いておいて非常に負担になるというものでもない。廃止をすれば逆に、何かいま問題にいたしました監督官たちのささえが一つはずされるという、そういうものだと思うのです。ですから、行管のほうの意見も聞きましたけれども、これは別の問題で、この委員会として委員長はじめ理事の諸公の御判断をいただいて処置したいと思いますけれども、ともかく、役所の機構の問題の中で、いろいろな廃止ないしは新設の判断をする場合に、問題の強弱を誤らないようにするというか、形だけを整えるようにするのではなくて、必要なものにつきましてはやはり大胆に問題を出していただく。しかし、一見必要がないようでも、あることが必要だというような問題もあるわけですから、その問題についての判断をひとつ誤らないようにして機構の問題を考えていただきたいと思うのです。行管にいたしましても、一定の数を何とか処置をしなければならぬというたてまえがあるのでしょうけれども、これも一律に、何でもいいからこれだけ持ってこいと言うのでは話の筋が通らないと思います。私ども委員会としましても、その問題については、別途に審議なりあるいは協議なりをしたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、仕事をする、法律を運用してやっていくという第一線の士気がかりそめにも低下することのないように、くれぐれも御配慮をお願いをいたしたいと思います。  それから最後の問題、もう一つ問題を持っているわけなんですが、最近、一時帰休だとか、あるいはレイオフだとか、つまり直接雇用関係を断つという、いわゆる首を切るというやり方でない、いろいろな形態の、一種の人員整理のやり方だと思うのですが、そういうものがかなり広がっていると思うのです。そういう問題について、幾つかの例は御存じのとおりだと思うのですが、行政当局として何かお考え方ございますか。
  36. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘のとおり、最近いわゆる一時帰休制がかなり行なわれております。やり方につきましてはいろいろございますが、日本におきましては、アメリカ式のレイオフ制度、それは、景気の変動に応じまして解雇をする、ただし再雇用の際に先任の制度をからませておるといういわゆるレイオフ制度は、日本の終身雇用制がまだ根強い現状から見まして、なかなか使用者のほうも、特に組合のほうは抵抗があるわけでございます。そういうことで、日本的な雇用調整のあり方としまして、いわゆる日本的な一時帰休制度というのが行なわれているものと理解いたしております。  そういうことが行なわれます場合に、問題は、たとえば一時帰休する場合に、労働基準法に定めてある最低の給料、手当が支給されるかどうか。そのほか法律上の問題もございます。そういう点については、違法事案がないように十分に指導監督につとめることはもちろんでございますが、基本的には、この種の問題は労使の話し合いによって円満に行なわれるのが非常に望ましいわけでございますので、そういう点につきまして、労使の問題に介入するという意味ではございませんで、労使企業の置かれておる状況、それからそれに対応する対応策はどうあるべきかということを意見を交換いたしまして、納得の上でその種の措置が行なわれることを私ども期待しておる次第でございます。
  37. 木原実

    木原委員 これは私ども幾つかの事例を関心を持って調査したこともあるわけですが、まことに巧妙なんですね。幾つかの問題があるのです。法律との関係で私が一番疑問に思うのは、たとえば帝人なんかにあらわれましたように、失業保険とセットしてしまってやるようなやり方、これはどうですか。ある段階から失業保険をとればいいではないかという形の、何かセットになっておるというか、一説によるとどうも労働省、了解を与えたような話も聞くのですが、いかがですか。
  38. 道正邦彦

    ○道正政府委員 帝人におきまして、再雇用の約款つきで一部の従業員につきまして解雇をやりまして、その間、失業保険の申請をするということを実施いたしておりますことは、御指摘のとおりでございます。かつて、三十年代の初めごろまでは、一、二回、われわれ役所側も積極的に一時帰休に対して失業保険を支給するというような措置を講じたことがございます。しかしながら、当時はまだ何と申しましても、人手不足どころか過剰でありまして、やむを得ず解雇をして、その間失業保険を支給されながら新しい職場をさがそうにもございませんので、むしろわれわれといたしましても、失業保険を支給されながら事態好転の暁には当該企業にまた戻ってもらうことが望ましいというような判断がありまして、当時はやりました。しかしながら、現在、雇用、失業情勢は、不況とは申せ当時とは非常に違ってきております。したがいまして、かりにも失業保険制度が乱用されるようなことがあってはならないということで、今回の帝人の問題につきまして、役所側が了解を与えたというような事実は全くございません。これははっきり申し上げておきます。これは組合の代表の方々もお立ち会いいただきまして明言してありますから、そういう事実はございません。ただ問題は、なおかつ擬装的にやっておるのではないかという懸念は一部あるわけでございます。そういうことはないように、全くほかの失業者と同じように職業紹介もやりますし、正当な理由なく職業紹介に応じない場合には、失業保険の支給を打ち切るというようなことは厳格にやっておりますし、今後ともやっていくつもりでございますし、それから労使間の話し合いのいろいろな条件等も厳格に調査いたしまして、ゆめ脱法的な措置が労使間で話し合われることのないように、そういう点についての指導にもつとめておりまするし、今後ともつとめていく次第でございます。
  39. 木原実

    木原委員 失業保険法というのは、これは言うまでもないのですけれども労働の意思があり能力がある者が職業につく機会が与えられない、そういう人たちに対する給付ということは、これは明らかなんですね。ですから、局長がそうおっしゃるのは当然のことだと思うのです。しかし、擬装ということもあるし、何かいろいろからくりがあるやに私どもはやはり聞く場合が多いわけなんです。これはほかと問題の本質は違うと思うのですね。ですから、失業保険等の適用については、そういう側面については、企業側、あるいは暗黙の了解を与える従業員側に対しても、やはりきびしい措置をとってもらいたいと思うのです。そこから別途の方向を探り出す努力を雇用主の側に要求するというのがたてまえだと思うのです。  ちょっと話が違いますけれども、この委員会で先般林野庁の雇用の関係が実は取り上げられまして、林野庁は、御承知のように、現場で、明らかに失業保険給付を予定いたしまして、年間を通じて雇用しない。年間の中で、ともかく失業保険が適用される範囲の雇用をやって、あとの半年は寝て暮らせというわけではないでしょうけれども、何カ月かは公然と山をおりて、その間は失業保険で暮らしておる。長年のそういうしきたりがあるわけですね。これもいままで、国の仕事の中でそういう雇用形態をとっているのはまことにおかしなことじゃないか、こういうきびしい追及がこの委員会で農林省に対して行なわれたわけなんですが、問題のケースが少し違うわけなんですが、御見解いかがですか。いまだに公然とそういうことが行なわれている。
  40. 道正邦彦

    ○道正政府委員 いわゆる季節循環的に失業保険を受給する方々が、いまなお年間六百万人ございます。これに対して支給している金額が五百九十億、約六百億でございます。これは失業保険の運営にあたりまして、まことに私ども頭の痛い問題でございます。  その中の一つが御指摘の林業の問題でございます。おっしゃるように、そういう不安定な雇用を改善して、できるだけ正規の年間を通ずる雇用にしたほうがいいじゃないか、これはもう御指摘のとおりでございまして、林野庁でもそういう方向で努力をされておりますが、何ぶんにも林業自体が季節性を伴う。特に地域的に、積雪寒冷地帯とか、濃淡の差はいろいろございますが、一般論といたしまして、ほかの産業と比べて季節性が強いわけでございまして、林野庁としてもなかなかむずかしい問題があるわけでございます。にもかかわらずかなりの努力がされていると思いますが、われわれといたしましては、林野庁その他関係方面と協力をいたしまして、林業雇用に限らず、いわゆる季節循環的な労働者の通年雇用化の措置、これを補助金的なものを出しましたり、いろいろ助成措置を講じておりますが、そういうことによりまして、一人でも多く一刻も早く通年雇用化を促進したいということで、せっかく努力をいたしておりますが、非常にむずかしい問題であることは間違いないようでございます。
  41. 木原実

    木原委員 これはきょうの直接の問題ではなかったわけですけれども考えてみればまことに不合理なことなんですね。しかし、長年そういうしきたりが何となく行なわれてきていて、あらためていま問題が出されておるわけなんですけれども、どうもやはり、林野庁のほうにしましては独立採算制というたてまえがあるし、山の仕事の特殊性というものもあるし、その分についての財政的措置その他についてなかなか思いが定まらない、こういう状態があるわけですね。  しかし、失業保険のたてまえからいけば、これはもう一種のやみ取引ですね。しかも雇用主が、直接の雇用主があるかどうか別といたしまして、やはり国の仕事のうち、国有林の仕事の中でそういうことがいつまでもまかり通っているという、そういう状態でないことは、これまたあまりにもはっきりしていると思うのですね。ただ、そうかといって、現状の中で失業保険のたてまえを強調してここで切ってしまうということになると、通年雇用からはずされている人たち現実の問題としては困る。これはそういう状態ですけれども、やはり林野庁自体の姿勢の中で、仕事の中で解決をしていくという、ワクを一歩しぼって——方法はないわけじゃないと私は思います。これは、労働者省側としてはきびしく林野庁の側に、いままではともかくしきたりとしてやむを得なかった面もあるけれども、いつまでもこんな不合理なことはできないんだという、そういう表明をしていただきたいと思うのです。別のことで大石長官あたりが、どうも林野庁というのは山のものを切ることばかり考えていると言って大きな声をあげておりますけれども、まあ大石さんほどでなくても、せっかく塚原さん何でも言えるお立場大臣でございますから、この辺で林野庁も少しは、もう二十年もこういうことをやっているわけですから、少しはたてまえに戻ってきちっとやれ、こういう姿勢を示していただきたいと思うのですが、これは大臣のほうからいかがですか。
  42. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 過般、林業白書の御審議を願いました際に、労働の面からの御質問もいただきました。私はやはり終局的には、季節性の問題があるといたしましても、通年雇用制ということにいくのが一番よいと思います。しかし、職安局長が答えましたように、まあ問題はあります。しかし、問題があるといってほうっておける問題ではございません。私も、林業白書のあと、農林大臣の赤城さんといろいろ御相談いたしましたが、林野の問題は、直接は林野庁はもちろん、民間の問題におきましても、非常に労働の面から解決しなければならぬ問題もあるわけですよ。特に職業病などという特殊な問題もございまするので、これはひとつ御趣旨に従って、大石君ほど強いあれではございませんが、内に秘めるものは非常に強いものがありまするから、大いに改善のための——しかし労働省としては、通年雇用に切りかえていく、あるいは振り分けというようなことも暫定的にとらざるを得ないかもしれませんが、これはひとつ全力を尽くさなければならぬと思っております。
  43. 木原実

    木原委員 これは改善の時期に来ているという感じがいたします。私どもも、長年この問題を知らなかったわけではございませんし、おりに触れて問題にはしてまいりましたけれども、もうすでに、他の分野の雇用形態その他を考えましても、こういう状態のものが、特に国の事業の中でまかり通っている姿というのは、これは非常に不自然で不合理だ、こういう観点でひとつ努力をいただきたいと思うのです。  もう少しレイオフの問題をお尋ねしたいのですが、いまたまたま帝人の問題を申し上げましたけれども、なかなか経営者の側も苦心をいたしまして、待命であるとか、自宅待機であるとか、あるいは一時帰休制であるとか、さまざまな形態が、社会的な問題として表に出た以外にもかなりあるわけですね。中には、日立や昭和電工その他がやっているように、出向制度があるわけですね。これはやり方はいろいろなんですけれども、ともかく労働者の側からすれば、時期を限った首切りにつながっている。職場を失うということにつながっていく措置であることはあまりにも明白です。しかし厳密に言うと、いまの法律では、雇用の安定を守ってやるというたてまえの法律からすれば、確かにワクの外にあって、つまり合法的に法の外で、しかも現実にはじりじりと年限を限って、再雇用の道もあるのですよというようなことを言いながら、やはり首切りにつながっていく、職場を失っていくということにつながっていく措置だということは、個々の労働者にとってはまことに明白。しかも労働組合が抵抗しているというお話がございました。幾つかの労働組合は、確かにこれはたいへんなことだ、こういうことで抵抗しているのですが、大体、労働組合というのが御存じのように企業組合ですから、直接なま首切られるよりもいいじゃないか、こういう素地がある。あるいはまた、私どもが調べまして、たいへんどうも現代的だと思いましたけれども、ある七千人ほどの人員を擁する大きな企業が、二千人ばかり人員整理をしなければならぬという羽目に立ち至った。そしていろいろな措置を講じて従業員の意向を聞いたところが、希望者が殺到したというのですね。だから労働組合も戦いようがない。ところが、企業のほうがあわてまして、企業のほうはほんとうは、われわれのような年配の者にお引き取りを願おうという意図であったのだが、われもわれもと押しかけてきたのは、大体一番ほしいはずの若い人たちであった。こういうたいへん漫画みたいな話が出たりしておるわけなんです。しかし、実際に、自宅待機だとか、あるいはほかに働きに出たとかいうような人たちが非常に不安な状態ですから、彼らは組合に依存することもできないし、それから先行きが非常に不安だということで、もう現代的な失業寸前の風景。そういうことがやはり個々の労働者にとっては非常に大きな不安につながっている、こういう問題があると思うのです。  いままでの法律のワクその他ではなかなか律しされないから、局長もおそらく、これは労使間の中でしかるべき解決の道を見出すことが望ましい、こういうことなんですが、しかし私は、やはり新しい失業形態というものがこういう形で起こってきた、こういうふうに感ずるわけなんです。それに対して行政が、法のワク外である、追及する部分に非常に乏しいということだけで放置しておいていいかどうかという問題が残ると思うのですね。これは、新しい問題としてこれにアプローチしていく措置を講じませんと、いまの不況の状態、これから先もあるいは周期的に起こるかもわかりませんし、従来と違った環境のもとでこういう問題が起こってきている、そういう考え方も持つのですが、どうですか、何かアプローチをしていくという方法はございませんか。
  44. 道正邦彦

    ○道正政府委員 おっしゃるとおり非常にデリケートな問題でございまして、使用者側は別といたしまして、労働者側にはいろいろの意見がございまして、ある代表的なリーダーの方は、いいじゃないか、失業保険というのはわれわれの金だから、大いにそういうときに使ったらいいじゃないか。また逆に、いま先生指摘のように、とんでもない、なしくずし解雇であって、こんなことをわれわれがいいと言った日には、解雇ぐせがついちゃって、どんどんなしくずしにアメリカ式のレイオフが定着してしまう、いまにして抵抗しなければだめだ、こういう意見。いろいろございます。この日本的な調整制度の帰趨がどうなるか、われわれも重大な関心を持っております。  ただ、いろいろのやり方につきましては、先ほどお答えいたしましたが、われわれといたしましては、まず現行法のワク内で行なわれることが大前提で、いやしくも脱法的なことは絶対許されない。それから労使が完全に了解をする。それから、組合の代表だけでございませんで、個々の労働者の完全な了解のもとに行なわれるべきだということで処置をいたしております。  ただ、今後、こういう問題についてもう少し政府として線を出したらどうかという御質問でございますが、これは、解雇の問題のあり方、あるいは労働基準法その他関係の各法律に広範にわたる問題でございまして、今後の雇用・失業情勢の推移を見きわめつつ、われわれとしても検討はしたいと思いますけれども、いまここで、こういう方向でやりたいということを申し上げるまでまだ進んでおりません。しかし、重大な問題として今後検討はいたしてまいりたいと思っております。
  45. 木原実

    木原委員 雇用安定ということは、先ほどは福祉の問題から問題に入りましたけれども、一方では、時間短縮や、あるいは休日の増加や、労働条件のかなり大幅な改善という問題が、政策の大きなウエートを占める側面がある。その反面、新しい雇用安定の改策を出さなければならないような、ある意味では暗い状況があることも事実だと思うのです。ですから、私はやはり、この種の問題はいろいろな労働力の需給の関係の問題も新しい段階に入ったように感ずるわけでありますけれども、いままでの、少なくとも既成の行政政策のワク外の問題だと思うのです。そしてまた雇用主のほうも、明らかにその辺のことをねらって、ある意味では恩恵的に、すぐ人員整理をしたいのだけれども、しかし一年間はこうこうだ、こういうような形をさまざまにくふうをこらしてやっている。しかしその反面、これはまたきわめて巧妙な脱法的な、一定の期間を置いた人員整理方式であるということも間違いないような側面がある。そしてこの背景の中には、雇用の不安定をもたらすような状況が何か急速に広がってきつつある、そういう感じを抱くわけなんです。  ですから、局長の御答弁としては、いま御答弁がありましたようなこと以上には、なかなか当面の問題としては出にくいかと思うのです。しかし、労働行政のいま一つの大きな問題としては、やっぱり雇用の安定という問題があるわけでありますから、そういう観点から、どうしてもこれらの問題については、さまざまなケースについて問題の所在を掌握をして、雇用の安定政策といいますか、そういう行政上の措置を考えていく時期に来ているんじゃないかと思うのですね。そういうことを促す形でこの種の問題が出てきていると思うのです。私どもにも、これという知恵がいま直ちに浮かんでおるわけではございませんけれども、何かそういうことで取り組んでいくという姿勢が、もう少し何かないものでしょうか。
  46. 道正邦彦

    ○道正政府委員 現在、経済企画庁におきまして経済社会発展計画の見直し作業をやっております。労働力の問題も重要なファクターでございますので、われわれも参画してやっておりますが、これが四十七年度中に決定を見るわけでございます。これは、いまの経済社会発展計画の単純な延長ということではなくして、性格も、人間尊重といいますか、福祉優先と申しますか、そういう色彩を大きく打ち出していこうということで、いままでのこの種の計画と比較するならば、画期的な違った色彩の原理、原則を持ったものになると思います。  かたがた労働面につきましても非常に大きな変革がございまして、曲がりかどに来ておることは御指摘のとおりでございます。そういう段階でございますので、私ども率直に非常にむずかしい問題であることは承知しながらも、日本的な雇用政策、今後の福祉時代に適合した雇用政策の重要なファクターの一つとして、この問題も現に検討はいたしております。
  47. 木原実

    木原委員 もうそろそろ質問をやめますけれども、どこの産業の中にも新しい形のスクラップ・アンド・ビルドのような形のものが進んでいる。産業一つの大きな規模でそういう形の合理化を進めていくというのは、これはあるかもわかりません。しかし、あわせて人間のスクラップ・アンド・ビルドがやられたのでは、これはもう別個の問題ですね。中高年齢層の人たちの雇用の問題というのは、従来から非常に深刻な問題なんですが、これがますます激しくなってくる。若年労働者については、これはもうどこの企業でもいまやたいへんな問題で、かねや太鼓で引きとめ策なりあるいは雇用をやるわけなんですが、しかし、そのしわ寄せが中高年齢層に来る。そうなると、人間のスクラップ・アンド・ビルドが行なわれて、もうわれわれの年代はスクラップされる年代だ、こういうことでは、少なくとも政治的に、あるいは行政上の問題として見過ごすことができないと思うのです。  いま、一時帰休制その他のさまざまな措置が行なわれているというのも、実はほんとうのねらいはどうもそういうところにある。個々のケースを当たってみますと、そういうケースが多いわけですね。だから、背景は広いわけですし、問題は深刻であるということになれば、従来、労働省もおとりになっていらっしゃったと思いますけれども、たとえば中高年齢層の雇用安定という問題に新しい観点といいますか、問題意識を据えて行政的に措置をしていく。何かこういうことを大急ぎでやっておきませんと、このテンポでいきますと、景気が回復をしていきましても、企業の中から中高年齢層が排除されていく、こういう傾向というのはとどまらないだろうと思うのです。ですから、やはりその辺に観点を据えて、少し大きな視野で思い切った措置をいまとりませんと、こういう形態は続いていく、こういうふうに考えるわけですが、どうでしょう。
  48. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ただいまの御指摘も全く同感でございます。今後の雇用問題を考える場合の最大の問題は、ほかにいろいろございますけれども、何といっても中高年齢の問題だと思います。特に日本の場合は、終身雇用とはいいながら、定年制が一方にございまして、いまなお五十五が支配的であるという現実もございます。かたがた、年金の拡充ということも必要でございますけれども、生きがいの問題もありましょうし、それから年金の負担の問題も出てくると思います。したがいまして、老人の皆さんが六十がいいのか、六十五がいいのか、いろいろ問題もあろうと思いますけれども、とにかく五十五で定年というわけにはいかないわけでございます。そういうことを考えますと、雇用政策の最大の問題点は、中高年、特に高年齢者の雇用問題だろうというふうに私も考えます。この辺、また非常にむずかしいのでございますが、老人向きの適職の開発であるとか、あるいは定年後に備えての訓練のあり方、そういうことについて、いま抜本的な再検討を加えておりまして、経済社会発展計画にも、それからいまわれわれがやっております新しい雇用計画の中にも、大きな柱として盛り込んで、抜本的な対策を講じてまいりたいということで、鋭意検討いたしておる次第でございます。
  49. 木原実

    木原委員 これは私は大臣に申し上げておきたいと思うのです。あらためて言うまでもないことなんですが、このままでまいりますと、六〇年代と違いまして、ますます高度化していく高度経済社会の片すみに吹きだまりのように、たとえば失業者群、しかも年齢は相当高い、そういうような、スクラップ・アンド・ビルドの中でスクラップにされた人たちが大きく滞留をして、何かこれが新しい社会問題を提起していくということが目の前にあるような予感がしてしようがないわけなんです。ですから、行政が問題の先取りをして、積極的にそういう側面焦点を当てていく。むずかしい問題があることは言うまでもありませんけれども、そういう姿勢がございませんと、現実にそういう吹きだまりができてしまいましてからでは、いたずらに社会的な不安が広がり、社会のアンバランスが拡大されていくようになっていって、これは処置なくなってくるのじゃないかと思うのです。ですから、いまから問題についての的確な予見を据えて、行政の立ちおくれがないように配慮をしてもらいたい、こういうふうに考えるわけですが、最後に大臣の御見解を聞いて、終わりたいと思います。
  50. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 スクラップ・アンド・ビルドがあっては絶対ならないと思いまするし、また、そういう傾向があれば、われわれはこれをチェックするに全力を尽くします。  それから、今後産業はどういう発展を遂げていくか。いまは確かに不況であります。昨年暮れの臨時国会における大型補正予算、今回御審議を願った、暫定一カ月はございましたけれども、予算が執行されますと、景気の回復がいつであるか、下半期のいつごろであるかということは別問題といたしましても、われわれとしては、この不況を一日も早く切り抜ける。これは、雇用の面からも考え労働政策の面からも考えなければならないということを基本として、労政を進めておるわけでございます。  いま中高年の方の問題が出ましたけれども、過般、御審議を願いました中高年雇用促進特別措置法ももちろんその一つでありますし、ただいま御審議を願っておりまする勤労婦人福祉法も、いまの日本産業全体において占める労働力の需給状況から見て、勤労婦人の力、それから経験のある中高年の方の力をかりていかなければ、今後の伸びていく体制にマッチすることができないと私は思うのです。人口問題から考えて、日本の人口が一体どれだけになるか、これは厚生大臣所管でありましょうが、私個人の考えからすると、どうも一億二千五百万ぐらいで頭打ちになる。産業はどんどん伸びる、コンピューターの時代、情報産業化の時代といいながら、基礎となるべき労働力というものが確保されなければならない。そのときに金の卵だけであっていいかというと、私は絶対そうであってはならないと思います。そこに中高年の問題もあり、勤労婦人の問題も出てくると思うので、そういうものに対しては、いま御指摘のように、先取り以上のものを考えていかないと、非常な混乱が出てくるのではなかろうか。定年も逐次延びつつありますが、実際のいまの日本の平均寿命から考えても、非常にあぶらの乗り切った、また経験豊かな方をスクラップ・アンド・ビルドなどということがもしかりにあったら、これは絶対に押えなければならない。また、いま申しましたそういう中高年の方に対しまして照準を合わせて、いまのうちに万全を期しておくというのが、いま労働省考えであります。
  51. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 受田新吉君。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 一時間以内に質問を終わりたいと思いますから、能率をあげます。  労働行政の担当者であられる大臣以下政府委員の皆さんに大体御出席いただいておりますので、労働行政のおもなポイントである諸問題を三つ、四つ指摘してお尋ねをいたします。  労働省設置法によって、労働行政が能率的に適正に運営されることがきめられておるのですけれども、現在の労働力市場というものの状態をまずお聞きしておきたいのです。それは、いま木原委員からも質問がありました、中高年齢層を含む労働力の供給と需要の状況はいま一体どうなっているのか。求人と求職とのバランスは、いま一体どうなっているのか。大まかな御答弁を願います。
  53. 道正邦彦

    ○道正政府委員 昨年来のいわゆるドル・ショックの影響等もございまして、二時はわれわれ、経済、特に雇用問題がどういうふうになるかと非常な危惧を持っておったわけでございます。しかしながら、最近は、先生も御承知のように、工業生産もわずかながら上向いてきておりまするし、いろいろの指標を見ますると、まだ完全に好転したというふうには申し上げかねるわけでございますが、たとえば端的な雇用指標でございまする新規の求人倍率というようなものも、現在は昨年程度まで回復してきておりますし、今後の見通しといたしましても、よくなることはありましても、悪くなるというようなことは今後は万ないのではなかろうか。しかしながら、非常に微妙な状況であることは御指摘を待つまでもございませんので、細大となく全国の情報を集め、必要に応じて支障のないような応急の措置というものはあわせ講じておりますけれども、全体として見まするならば、徐々に好転していくものというふうに考えております。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 私たち日本国民は、法のもとにすべて平等の保護を受けておるわけで、労働市場においても平等でなければならないと思うのです。そして、たとえそれが女子であるとか身体障害者であるとかによって差別をつけられないようにしなければならない。みんなひとしくこの世に生をうけた者が、公平な国の愛のもとにこのとうとい人生を働き抜いて、またしあわせな生活が保障されるような、そういう労働行政が要ると私は思うのです。そういう観点から、いま労働力市場の実態を、好転はしても悪転はしないというお話がございましたが、具体的にお尋ねをしてみたいと思うのです。  法のもとに、男女は平等の原則によって差別をされないことが憲法にも規定されておるし、労働基準法においても、男女同一賃金の原則がその四条に規定されておる。これについて現実一つ取り上げてみまするが、民間企業は、労働基準法の第四条の男女同一賃金の原則をりっぱに実行しておるかどうか。
  55. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 基準法第四条は、先生指摘のように、女子であることを理由として賃金について差別をしてはならない、かように書いてあるわけでございまして、私どもも、基準法の施行を監督すべき立場といたしまして、男女の賃金について、もしそれが女子であることだけが理由で差別をされておるというようなものにつきましては、厳格に監督を実施し、そういうものを見つけた場合には、それぞれ是正措置を講じさせておるところでございます。ただ、日本の場合には、賃金制度が年功序列賃金あるいは学歴別等々のあれがございまして、一般に女子の方でございますと、平均的に申しますと、男子よりも結婚退職のために勤続年数が短い方が多い、あるいは職務の内容が、男子と女子で普通の事業所において別になっておる等々のために、実際問題としては、現実には女子の賃金というものは、平均して見ますると確かにかなりの差があるわけでございます。  これにつきましては、そういう賃金制度自身は、労使の話し合いによってそれぞれきめられるところでございますが、それらの賃金の差が、他の理由に基づくものでなしに、単なる女子であることを差別の理由とするものである場合には、それについては、個々の場合に厳重に、基準法四条の違反がないように、われわれとしては監督をいたしておりますし、絶無であるとはもちろん申し上げません、毎年かなりの違反を見つけておりますので、今後とも、それらにつきましては、厳正な監督によりまして、違反を発見いたしますれば是正させるようにいたしたい、かように考えております。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 その男女同一賃金の原則すらも違反者がかなり出ておる、見つけ次第処分しておるのだという悲しいお話をいま承ったわけです。労働行政の大欠陥が露呈されておる。つまり、労働基準法を十分こなしていないで、女子を女子であるがゆえに冷遇しておるというのが、かなりの数にのぼっておるというようなお答えがいまあったわけです。残念な話です。法律を忠実に実行していかなければならぬ、しかも必ずやらなければならぬ義務規定です。選択の自由が許されておらぬ。「してはならない」と書いてある。にもかかわらずかなりの違反者があるが、大企業の中にありますかどうですか。
  57. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 大企業にはそう数は多くございませんが、大企業の中でも発見されておる例がございます。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 具体的な事例を示していただいて、どういう大企業が男女の賃金差をつくっておるかということを天下に公表して、その企業は厳重に国民の審判にまかせるような必要があると思うのです。資料としてお出しいただき、新聞にもそのつど労働省が、女子を差別する企業はこういうものであるというのを公表することを要望します。お答えを願います。
  59. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 それらの違反にもいろいろございまして、明確な違反もございますし、細部についての技術的な違反もございますので、われわれ、発見次第そういうものについては是正をさせておりますが、もしそれにつきましてなかなか是正措置に応じないというような場合には、厳格な処置をとり、新聞等にも出しまして、そういうものを社会的な批判にも訴えるというようなことにいたしておりますが、中には、技術的な問題、細部の問題等にわたるものもありますので、それぞれの事案に応じた処置をとっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうものを発見次第是正させるようにいたしております。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 すでに注意を喚起し是正された事例を、ひとつ私にも二、三日うちにいただきたいのです。拝見して、どういう企業がそういう不届きなことをやっておるかを参考にさせてもらいたいのです。  そこで、これにも関連するわけですけれども、初任給において男女の差をつけておるというようなところはありませんか。大学出の男子が幾ら、女子が幾ら、高校出の男子が幾ら、女子が幾らというように、初任給から男女の差をつけているような企業があるかないかをお答え願いたいのです。
  61. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 初任給の場合におきましても、男女の職種が違うような場合でございますと、必ずしもそれが性のみによる差別かどうかということは言えない点がございますが、一般には、最近では普通の同じ事務のような場合には、同じ学歴であれば同じような初任給で取り扱うのが普通の例になっております。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 そして昇給昇格、そういうのに男女という意味で差をつけるというようなことはないか。
  63. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 普通に昇給の場合には査定等が入りますので、それが能力の査定による差か、あるいは単なる女子であることを理由としたものであるか、なかなか判定が困難でありますので、一がいに女子であることによる差別であるということは言えない場合が多いわけでございますが、しかし中には、明らかに昇給等について差を設けまして、それはわれわれ違反であるといたしまして是正をさせた例もございます。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 これはいま、労働省から資料を出していただいたものを中心に私なりに検討してみて、私自身も企業に個人的に当たって、男女差のあるのを発見しているのもあるわけです。そういうのを見たときに、女性というものは、法のもとに男子と平等でありながらとかく差し繰られる。たとえば昇給昇格等も、民間企業に二十年勤務した男子の場合と、同じ二十年勤務した女子の場合、十年、二十年後を比較して見ていただけばわかるのです。女子で課長とか部長とか局長とかになった比率とか、長く勤務した人数の比率もありますが、そういうものを見ると、女性はおおむね下積みに置かれておる。これは婦人少年局長おいでいただいているんですが、女性の社会的地位の向上のためにも、女性が男子よりも差し繰られておるというこの現実に、毎年注意を繰り返しておるという御答弁がしばしばあったわけですが、担当局長としても、女性の味方にあられる局長としての信念の吐露をお願いしたい。
  65. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 御指摘のように、職場におきまして、婦人が同じキャリアの男子と比べて同じような地位を得ていないということは、かなり広く見られる現象であると思います。その場合、理由がいろいろあるかと思いますが、その理由の中にはもちろん合理的なものもございますでしょうが、しかし、やはり長い間、婦人の働きということを軽視すると申しますか、要するに婦人労働に対する正当な評価ということが十分に行なわれていなかったという、それに基づくところのいわゆる偏見と申しますか、過小評価、そのようなことに起因する場合ということも少なくないのではないかと思います。  このような点につきましては、これは一律に法律で規制するということはかなり困難なことであると思いますが、私どもといたしましては、かねてから婦人自身に対してはその能力の開発向上を啓発いたしますとともに、婦人を使用する事業主あるいは社会一般に対しまして、婦人労働の正当な評価、またその能力の開発、有効発揮のための指導、援助ということにつきまして啓発をいたしております。特に事業主に対しましては、その労務管理のあり方におきまして、婦人がその能力を生かし、また正当に評価されて働き得るような労務管理の体制というものの整備につきまして、指導をいたしておるところでございます。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員の場合は男女平等の原則が一応守られております。これは非常にいいことで、号俸によってスタート以来、男女はちゃんと差別なく進められておる。政府で女性が局長になられたというような方は、労働省でいつも婦人少年局というのが女性で占められておる。高橋先生がいまやっておられるわけですけれども、たとえば職安局長が女性であってはならぬということは別にないわけです。道正さんが高橋さんにそのポストを譲られてもいいわけです。婦人少年局長だけを女性にして、ほかのところをやらないということがあってはならないと思うのです。婦人少年局長だけに女性を持っていかなくて、ほかのと適宜チェンジされてもいいんじゃないですか。
  67. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 労働省はきわめて優秀なる女性の役人がおります。たまたまいま高橋さんが婦人少年局長でありますが、優秀な方はいかなるポストといえどもこれはつけるわけですから、たとえばその一例をとれば、労政局の労政課長もいま女性が占めております。官界における女性の進出が確かにおそかったことは事実です。終戦後その進出の傾向が激しくなってきた。でありますから、したがって、能力のある者が婦人少年局だけというような考えは、毛頭持っておりません。適正なる場所にその能力に応じて配置することは当然のことであると私は考えております。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 別に国家公務員上級職試験に合格しなくても、人材であればもちろん局長に簡抜していいという形になっておるはずです。そういう試験による採用、それの年限を積んだ人が局長になっていく、次官になっていく、こういうかっこうの中に、同時に能力に応じた人物が局長になり次官になっていく、こういうふうな形が適当に織り込まれていいわけです。特に労働市場を監督、指導をされる労働省としては、そのモデルを示さなければいかぬ。婦人に大いに道が開かれていい。いま労政課長が一人婦人であるということですが、課長以上のポストが幾つあって、そこに婦人が何人おられるか、大体大まかで、数字の少々の違いはどうでもいいですが、お伺いしたい。
  69. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 本省の例をあげますと、現在、婦人少年局婦人労働課長婦人課長婦人でございますが、それ以外に、ただいま大臣からお答えがありましたように、労政局の労政課長、それから課長待遇でやっておりますが、労働基準局の家内労働室長等が婦人でございます。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 全体で幾つポストがあるのですか。
  71. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いま正確に覚えておりませんが、本省の約四十くらいの管理職のうちで、一応そういう状況になっております。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 一割程度ということですね。他の省に比べれば、婦人少年局に女性が課長をしておられるのが多いというわけです。私は、別に婦人少年局長が女性でなければならぬということはない、男性がそこへ入っていって、男性が女性の立場考えてびしびしやる、そして高橋さんにほかの局長をやっていただく、こういう適当な配置転換があって、女性もかく進出ができるのだという希望を国民に与えなければならない。もう女性は婦人少年局長に限るというような慣例をこの際お破りになって、婦人は他の局長にも適宜進出しておるのだ、こういうふうな行政の妙味を発揮される必要があるのではないか。これは大臣、味がありますね。
  73. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 性別は問題にしておりません。男女はあくまでも平等であります。ですから、公務員になられた女性がまだお若いという点もございますよ。これは受田さんよくおわかりでしょう。私は、キャリアがどうこうということに決してこだわっておるわけではございません。しかも、女性がかよわいものであるという考えは、われわれは毛頭持っておりません。だからといって、ウーマンリブにおびえているわけでもございません。優秀な者がそれぞれのポストにつくことは当然でございますから、いやしくも労働市場を監督する労働省として、率先垂範そういう措置をとることも当然今後考えられることである、このように考えております。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 企業間においても、そして行政機関においても、女性を大事にして、女性であっても男子と同様な進路が開けてくるのだ。むしろ私はこの機会に、女性のほうにいたわりを持ってあげなければいかぬ。多少能力は不足しておっても、むしろ女性を開く意味で、プラスアルファを足してそのポストにつけるくらいの配慮が要る。そういうくらいにしないと、いまのような女性の職業戦線への進出がおくれているだけに、それを取り戻すには、女性のほうにむしろウエートをかけるくらいの労働行政が要ると思うのです。このくらいの心組みが要るわけです。  それともう一つ。最近における男女賃金の問題だけでなく、賃金の形態というものがすでに労働省でも白書で発表されているようでございます。学歴の差、勤務年数の差というようなものが比較的薄くなって、その格差が漸次縮小されている傾向にあることを賃金白書でも拝見しておるのです。これは私は非常にいいことだと思うのです。   〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕 スウェーデンをしばしば例に引くわけですが、これは、公務員の賃金であると同時に、民間企業賃金にもなるのですが、大体大学出が八万円から九万円です。これがスウェーデンの初任給です。それが、総理大臣の月給は、三十万円を最近はちょっとこえておるようです。上下の格差は大体四倍から五倍の間。日本はその間が、民間給与を基準にして国家公務員の給与が大体きまる関係で、民間が上下の格差が開いておるということを対象にするので、国家公務員の上下の格差が非常に離れておる。これを是正する必要がある。そのためには、賃金の学歴差、それから勤務年数別の差、男女差というものが漸次圧縮されて、初任給から退職年齢の人に至るまでの間に賃金の幅が非常に縮まってくるという、人間を大事にする原則が民間企業に打ち立てられてしかるべきだ。御調査されている男女の賃金差はいまお答え願ったもので了承しますが、勤務年数、それから学歴別賃金の差が圧縮されている傾向をお示し願いたい。
  75. 青木勇之助

    青木説明員 お答え申し上げます。  賃金の額につきまして学歴別に見ました場合、たとえば中卒につきまして、昭和四十六年の調査でございますが、十七歳で初任給が三万二千五百円。これに対しまして五十ないし五十九歳の人が七万三千四百円、約二・何倍でございますか、それくらいの格差ということになっております。それから高卒につきましては、高等学校を卒業いたしまして十八、十九歳で入るわけでございますが、これが四十六年で三万八千五百円。これが五十ないし五十九歳層になりまして九万六千七百円、三倍までは行っておりません。それから大卒が二十ないし二十四歳層でございますが、五万円。これが同じく五十ないし五十九歳層でいきますと十五万九千四百円、こういう数字に相なっております。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 それは調査対象はどういうものですか。
  77. 青木勇之助

    青木説明員 民間の十名以上の企業についての調査でございます。賃金構造基本調査の結果でございます。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 重役は入ってないわけですね。
  79. 青木勇之助

    青木説明員 ただいま申し上げましたのは、重役は入っておりません。男子労働者について申し上げました。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 そこへ今度重役はとんでもない給料をもらっておるというかっこうになるわけですね。つまり、一般労働者賃金は上下の格差が三倍から四倍程度であるが、その上へ——十人以上の企業でそうだということでありますが、人事院の例の調査などで五十名、百名ということになるとさらにその差が広がってくる、こういうことになるわけですね。重役の賃金というものはどうですか。調べてないですか。労働省としては、重役は労働者でないと見るのかどうか。
  81. 青木勇之助

    青木説明員 重役と申しますか、代表権等を持っておる重役についての調査は私のほうでやっておりませんが、いわゆる役付と申しますか、部長課長、こういう人たちの役職別に見ました賃金というものは調べてございます。それは企業規模五百人以上についての調査でございますが、たとえば部長につきましては、三十五ないし三十九歳層の部長が十四万五千二百円。それが部長のままでずっと上へ上がってまいりまして、五十ないし五十九歳層の部長の平均が二十一万二千百円となっております。それから課長職につきましては、三十ないし三十四歳層の課長が十万六千九百円。これに対しまして課長の古手と申しますか、四十ないし四十九歳層の課長、これが十四万五千二百円、大体こういう数字になっておりまして、対前年上昇率は大体同じような率で上がっております。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 労働者という解釈の中には課長部長は入らないのかどうか。
  83. 青木勇之助

    青木説明員 当然に入ります。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、取締役以上の役員は労働者の中へ入るか入らないか。
  85. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お尋ねの点は、統計調査部長からお答えいたしておりますのは、つまり統計調査をやります場合に定義を確定する場合に、いろいろな判断があろうかと思いますが、また労働法上どの辺までを労働者と見るか、いろいろ事案によって異なる場合があろうかと思いますが、通常は代表権のある重役は労働者と見られませんけれども、たとえば取締役であるけれども営業部長であるというようなことで、雇用関係にあれば労働者と見るというのが通常の解釈でございます。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 労働賃金の比較においては、そうした者を含めた比較をされなければいけない。普通の役付でない者だけの賃金の比較では、比較としては非常に限定されたものになると思うのです。上下の格差を比較検討する上において、私たちはそういうところに気をつけていただかなければならない。  もう一つ、勤務年数による差がどうかということです。つまり、十年、二十年、三十年というふうな勤務年数の差異による賃金の上昇率。
  87. 青木勇之助

    青木説明員 手持ちの資料は男子労働者についてでございますが、全産業規模で申し上げますと、四十六年調査で、勤続年数ゼロ年、入ったばかりの人が五万八百円、これに対しまして十年ないし十四年、これが七万八千二百円、それから三十年以上が十万八千円、こういう数字に相なっております。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 勤務年数による差が非常に安くされておる。これは傾向としてはいいことだと思うのです。つまり、勤労者になって賃金をもらうようになって、最初のときから生活の最低が保障されるようなところでスタートできる。何年かすると自分の持ち家も持てるようにしなければいかぬ。勤労者財産形成促進法などというものもつくられて、持ち家をできるだけふやそうなどという御計画を労働省はやられたわけだけれども、そういうものについて・初任からの待遇を大きくしておいて、やめるときまでのテンポがおそい。それはむしろ、労働する人々に対する国家の報いとしても、企業の報いとしても、筋が通ると思うのです。やめる時点で急に賃金が上がっていくという形でなくして、最初から賃金が上がっていく、そういう政策労働省としての基本的な政策と見てよいかどうか。つまり学歴の差をできるだけ圧縮する。無学歴の者がその学歴にとらわれない、勤勉努力をした人の評価を高く見るというほうがむしろいいのではないかというようなことも含めて、学歴にたいした評価をしない、勤続年数にたいした評価をしない、多少の評価はしても、それ以上に低く評価していく賃金形態というものを労働省は期待しておるのかどうかです。
  89. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 日本では、従来、御承知のように、学歴別あるいは勤続年数別のいわゆる年功序列賃金というのが賃金体系としてかなり広く行なわれてまいっておるわけでございますが、これについては、そういう制度が出てきました社会的背景というものはそれなりにあったとは存じますけれども、現在の時点においてそれがいろいろな不合理な面を含んでおることは、先生指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、そういう賃金慣行等は、一挙にこれが変えられるというものではないとは存じますけれども、やはり学歴や勤続年数だけにウエートを置いた賃金体系は好ましいことではないのであって、それぞれの人の仕事の能力、あるいは仕事の量、質、こういうものが逐次賃金の要素に取り入れられていくべきものである、かように考えておるところでございまして、そういう意味におきまして、若い人であっても能力がある、仕事を大いにやる人はそれだけの賃金が支払われるべきものである、かように考えておるところでございます。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 次に、身体障害者の場合ですけれども、これは身障者雇用促進法というのが昭和三十五年でしたか、できて以来、相当に官庁においては目標を達しており、民間においても漸次それが充実してきておるということも、私、一応心得ておるのです。ところが身障者の雇用の場合は、非常に条件の悪いところへ雇用されておる。大企業とか中企業とかいうところに少なくて、家内工業的なところまで含めた、身障者の雇用市場としては条件が非常に窮屈なところへ当てがわれていて、それが目標を幾ら達成したなどという対象に扱われておると思うのです。  こういう点につきましては、身障の身となった側の皆さんから見ると、またわれわれ健康人から見ると、むしろ身障の方々によけいの愛情を注いだ道を開いて、多少その方々の事務能率があがらなくても、それを肢体が健全な人みんなが補なってあげる、というような人間関係のうるわしさが各職場で見られるような行政が私は必要だと思うのです。片手はない、片足はない、しかし精一ぱいその不自由を埋めて働いている皆さんに、その片手になってあげましょう、片足になってあげましょうと、同じ職場の人が心を使うような愛情のこもった労働市場が要ると思うのです。そういうことについて労働省は、身体障害者に対して、単に雇用促進によってではなくて、むしろ優先雇用法。できるだけ雇用しましょうでなくして、優先的に身体障害者をもちゃんと比率をきめて、西独方式に、何人を採らなければならないというワクを民間企業に対してもきめてかかるような、そういう労働行政が要るのじゃないか。その不幸を埋めて、せめておつりが出るくらいの心づかいをしてあげないと、その不自由に対する苦痛は、人生全体を通ずるとたいへんなものだと思うのです。いかがですか。
  91. 道正邦彦

    ○道正政府委員 身体障害者の問題は、先生指摘のとおりにわれわれも考えます、安定行政、いろいろやる仕事があるわけでございますが、私といたしましては、身体障害者の問題を最大の施策一つに掲げて全職安を督励するように、現在すでに実施に移しております。  しかしながら、先生指摘のように、何と申しましても身体障害者に対する愛情が基本になければ、せっかくの施策も画竜点睛を欠くことになりますし、かたがた、専門的な知識、経験、これも必要であるわけでございます。そういう観点で、先般、三月に上野に全国の身体障害者専門の雇用センターをつくったわけでございます。私どもまだ二カ月くらいの経験しかないわけでございますが、新聞にちょっと出たというだけで、北海道からわざわざおいでになる方、あるいは仙台からおいでになる方。あるいは八時半からそのセンターはオープンするわけでございますが、七時半あるいは七時から、もう毎日のように順番をとるために待っておられる。そんなことで職員は交代に早出をやっているというような状況でございます。いまさらのように、いかに身体障害者の方々が、ほんとうの親身の相談を希望し雇用を望んでおられるかということについて、反省もさせられ、思い知らされたわけでございます。四十八年度は大阪、名古屋にこの種のセンターをつくります。それから、全国約五百の安定所がございますが、各県に少なくとも一つくらいは安定所にこの種のセンターを併置いたしまして、そこへ行けば、職業の問題を含めまして、いろいろ訓練の問題その他親身の相談に応ずるという仕組みを早急に整備したいというふうに考えております。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 労働省の身障者に対する心づかい、非常に積極的に取り組まれておることをうれしく思うのですけれども、そのテンポを早めてもらいたい。  身障者の職業訓練という問題。私、身障者が生きるために、その不自由なからだをおかして、何かを身につけたいという努力をしている実情も、職業訓練所を幾つか見て感激しておるわけですが、人間としてこの世に生まれて、そうした身体障害者の身となってきた。それが公の仕事でなる場合もあれば、私的な仕事でなる場合もあるが、いずれにしてもその不幸を一生背負っていくわけです。それに対して国家が、予算的に、制度的に思い切った手を、もう過剰サービスになるくらいの愛情を注ぐという。私はこれは、労働大臣、あなたもそういう意味では、前々からそうした心づかいをされる人間愛に燃えた大臣でいらっしゃるだけに、御在任中、この不自由をおかしてなお生き抜こうとする身障者の生きがいある人生を実らせるための、いまのようなセンターをどんどんふやすということと同時に、職業訓練でどのような身障者でも道が開けるんだという希望を持たせるような職業訓練所を幾つもつくっていく。そしてまた、どこかの職場で働きたいのですから、身障者の人が働ける市場をできるだけ開拓していく。できれば、雇用促進でなくて、優先雇用のような法的基礎を持つような法律をつくっていただくべきじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうかね。
  93. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 労働省といたしましては、ただいま上野の例を出しましたけれども、そういったセンターの設置、それから訓練体制の整備拡充、ことに身障者に対するものには最重点を置いてやっております。ですから、私は常日ごろ思うのですが、特にロンドンの空港で感じた、またどこの空港でもやっておりますが、身障者に対して最優先的に車いすでもって乗せたりおろしている姿、あれを、いま受田委員指摘のように、労働市場において活用することが、これは人間として当然のことである。いま直ちにそれを法的措置においてというお話でございましたが、これは行政指導でいまの労働省考えていることを民間の企業者もすべての者が考えれば、そこに一つのコンセンサスを得てそういった体制がとられることをもちろん望み、その指導もいたしまするが、それでもなお足らざる場合にはまた別途措置を講じますが、ただいま現時点においてこれを法律で云々ということまでやらなくても、私は、情に満ちた、情にあふれた方々が多いということを信じておるわけであります。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 局長さん、西独の身障者の雇用についての法的性格はどうですか。優先的な要素を含んでいませんか。
  95. 道正邦彦

    ○道正政府委員 西ドイツにおきましては、官公庁の場合に一〇%、民間の場合に六%の雇用率を設定いたしております。もし達成しない場合には、一種のペナルティー、賦課金を徴収するという仕組みになっております。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 国務大臣、西独などはそうした比率をきめて、それを実行しなければ賦課金を取り立てられるというくらいのきちっとした形で身障者を優遇しているわけです。これは日本行政指導で何とかできると言っても、法的基礎をきちっとつくっておけば、塚原さん、幾らあなたが行政指導へ力を入れられたとしても、歴代のだれがあとで閣僚になられても、むしろそういうきちっとしたくらいのものがあるほうが、身障者側から見ても、われわれはもう優先雇用されるのだという期待感もあるし希望も持てるということであると思うのです。私はその意味では、いま大臣の御答弁の、行政指導で何とかできるというよりも、西独方式の比率をきめた優先雇用的性格の法律をこのあたりでもうやっていい。身障者雇用促進法ができて十二年たった時点で、もう一応の基礎ができた。さあこのあたりで優先雇用に切りかえましょうという前進が見られていいと思うのです。もう一度御検討してもらいたい。
  97. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 私の知る範囲では、いまも職安局長が答えましたけれども、雇用率はきめておりまするが、ペナルティーは伴っていない。もし間違っていたらこれは訂正いたしまするが、しかし、これは非常な進歩であり前進であります。  それから、身障者の負っているハンディキャップを克服して何とかしてあげたいという気持ちは、私はもう人一倍持っているつもりでありまするが、現時点においてどうかといえば、私は先ほどのような答弁になりまするが、これはひとつよく検討させていただきたいと存じます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 それからもう一つ。これは方面が違うようであって、やはり大事なことですが、精神障害者、精神異常者が社会復帰をしていく労働市場というものは、労働省はどう考えておられるか。
  99. 道正邦彦

    ○道正政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。現在は身体障害者雇用促進法になっておりまして、心身障害者雇用促進にはなっておりません。これは現実には、行政の対象といたしましては、心身両方とも雇用促進の対象にして行政指導をやっておりますが、たとえば雇用率を設定した場合に、これを計算に入れますと、身体障害者の場合は、御本人も、足がないなら足がないということで、これは否定しようがないわけでございますね。ところが、精神薄弱者を雇用率の対象に入れますと、どこにいるかというのをさがして回ることになって、御本人は精神薄弱と思ってなくても、だれかが精神薄弱だと、こういうことで、雇用率を計算するときには計算上あがってくるわけでございますね。そういうことで、この雇用率をきめることについて非常にデリケートな問題がございます。したがいまして、大臣からも御答弁ございましたように、心身障害者の問題は、非常に重要な問題として現在検討いたしておりますが、雇用率の対象に含めるかどうかという点については、非常にデリケートな問題があります。しかしながら、そのほかの雇用奨励制度とかそういう点については、これはもう身体障害者と区別なく現在もやっておりますし、今後もそういうふうに扱ってまいりますが、精神薄弱者の場合には非常にデリケートな問題があるということだけは御了承をいただきたいと思います。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 これは、人間としてこの世に生まれて、いろいろな社会環境、またその他先天的な要素も入っておるでしょうが、そういった精薄、精神障害者になってきて、それが病院などで治療され、また精薄者施設あるいは精神病院などで一応医師がよいと認めたような場合には、そうしたきびしい過去があるからというので労働市場を閉鎖してはいけないわけです。英国で、先般、二人の女性が、精神異常者でないにもかかわらず、精神異常者としてその青春を全部犠牲にして、五十年間そうした施設に入れられたということが新聞報道されておりました。日本でも、精神関係の治療によって一応治癒したと思われる人々の労働市場の開拓というものに、労働省の皆さま方がひとつ真剣に取っ組んでいただいて、身体障害者の中へ心身障害者雇用促進法というかっこうで精神面の分も入れたほうがいい。その中にだいじょうぶという人がもう何人か出てきます。つまり、そういう人に対する市場閉鎖でなくて開拓というところへ心を使われて、心身障害者という立場厚生省はその治療を考えられ、労働省労働市場を開拓されるという方向で、私は心のほうをひとつ取り上げてもらいたい。労働市場を開拓するために、デリケートな問題だということでなくて、積極的に取っ組んでいただきたい。精薄でも精神異常であっても、一応治療の結果何とか曲がりなりにやっていけるというなら、精薄施設の子供にしても、建築用材の組み立てなど、ちゃんと機械的に作業をしている子供たちを私はよく知っておりますが、あの子たちに、自分は働いているんだ、働いた結果賃金を得られたんだという喜びを与える、そういうことが私は必要だと思うのです。それが、ささやかであっても働くという喜び、そこに精神障害や精神薄弱の皆さまの生きがいというものがある。労働省は、どういう立場の人間であっても、それぞれの立場の人間に生きがいを与えるお役所でなければならぬです。働くことの喜びを与える行政機関が労働省なんです。局長さん、よろしゅうございますか。
  101. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御趣旨は全く同感でございまして、心身障害者は非常にデリケートな問題があると申し上げましたけれども行政の対象からはずすという意味ではございません。雇用率の計算等にあたっては非常にむずかしい問題があるということでありますがへその他の雇用促進の措置につきましては、心身を区別せず雇用促進の対象にあげております。おっしゃるように、治療中のものは雇用の対象にならぬわけでございますけれども、回復して一応医者の手を離れた方々につきましては、やはり雇用の場を与えていくということが対策の基本であろうと思います。  それで、私どもの乏しい経験の中でも、たとえば精神薄弱でまわりの人が困り果て、安定機関でももうどうにもあきらめていたところ、特殊な才能が見つかりまして、判別能力に抜群の能力があるということがわかりまして、それ向きの職場につけましたところ、常人、正常者よりも何倍も能率がいいということで、親御さんも非常に喜び、本人も非常にやりがいを持って現在働いておりますが、そういうケースもございますので、最後まであきらめずに、総力をあげて、雇用促進法を中心に労働省としても対策を考えてまいります。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、そうした精薄施設に合わせて職業訓練施設を設けてはどうか。つまり職業訓練センターを精薄施設にも設ける。あるいは精神病院の中でそういう者も一緒に職業訓練をしながら精神治療をやっていくとかいうような、そういう施設労働省としてはどこかにありますか。精神関係の人に対する職業訓練施設というのがありますかどうですか。
  103. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど先生指摘のように、身体障害者あるいは精薄者、こういった人たちの就業、雇用促進ということが非常に重要な問題であることは、私どもも十分承知しております。先ほど来、大臣あるいは職業安定局長からお答えしたとおりでございます。  そこで、身体障害者につきましても、全国に十一カ所、身体障害者専門の職業訓練校を持っております。これは、厚生省の身体障害者の更生指導所で医学的な治療あるいは肉体的なリハビリテーションをやっておりますが、これと引き続いて職業訓練を行なっておりまして、この訓練校を出た人の大部分が就職をいたしております。  そこで、これと同じような形で、こういった精薄者、精神異常者についても職業訓練を積極的にやれという御指摘は再三お受けいたしております。ただ、身体障害者の場合と違いまして、精薄者といわれるような人たちにつきましては、いろいろ問題がございまして、身体障害者と同じような形でということはなかなかむずかしい問題でございます。そこで、労働省におきましては、一昨年、昭和四十四年度から、名古屋の精薄者を対象にした職業訓練校をテスト的に設けまして、現在は、陶工、焼きものをつくるとか、製本とか木工とか、精薄者の中でも正常者と同じような能力を持った、あるいは場合によっては、正常の人よりもより能力のすぐれたような面を持った人もおりますので、こういったところを引き出していって、その能力を育て、それで雇用市場あるいは自営能力をつけるというような意味におきまして、訓練をすでに行なっております。  実は、こういった結果を十分今後検討いたしまして、その結果によって、今後さらに強力にこういった精薄者を対象とした訓練施設の拡充、さらには雇用促進の方向に努力してまいりたいと思っておりますが、現在のところ年間百名を定員といたしてやっておりまして、これを終了した人の七〇%程度が就職しております。こういう状況でございます。今後一そうその方向に努力いたしたいと思っております。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 いま百名程度で七〇%就職しているというようなことでは、あまりにも微々としています。これは、学校にも肢体不自由児の施設ができてきたし、養護学級が全国的な規模でどんどん増置されているこの機会に、職業訓練によってその道を開いてあげる。大体人間は、この世に生まれた以上は、何かの使命を持って生まれてきているわけです。それがいろいろな条件で不幸な立場になっておる。それを補ってあげるのが行政機関の責任である。行政の運営の上でその人の生きがいを与えてやる、そこへ終始私の認識はいっているわけであります。  それから、もう一つ最後に問題になるのは、木原委員からも指摘されたのですが、私、中高年齢層の皆さんの処遇、これは一つ掘り下げてお尋ねしなければならぬと思うのです。  これは、中高年齢者等の雇用促進法が、去年でしたか、一応国会を通っておる。この通った以後、一般事務員その他守衛などというような、高年齢層に適当な職種などで道が開けてきた趨勢が非常に調子がいいのかどうか、法律の効果がどう出ているかをお答え願いたい。
  105. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 御指摘の雇用促進法によりまして、中高年向きの職種をきめ、雇用率がきまっておりますが、現在三十職種について定めております。四十七年度におきましても、さらに約三十職種を定める予定にいたしております。五年以内に達成をするということに相なっておりますので、最終的な実績は出ておりませんが、それぞれ職種ごとに現在までの雇用状況等は調査がございますので、もしあれでありましたら、後ほど資料としてお届けいたしたいと思います。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 それではその資料を私いただきます。こういうものは、私、お尋ねしたら、資料を必ずほしいのです。さらに掘り下げて、私たち国政担当者として勉強してみたいと思います。  そこで、中高年齢者、中と高とあるわけですが、六十四歳までになっておるのですね。
  107. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 四十五歳から六十五歳までということでございます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、六十五歳から先はどうなってくるわけですか。
  109. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 労働省といたしまして、六十五歳以上の老人の方の雇用問題はもう所管外で知りません、こういうふうに申し上げるつもりはございませんが、一応原則といたしまして、四十五歳から六十五歳までの方は、少なくともりっぱな労働力として働いていただきたいし、また働くように援助をしようという趣旨でございまして、一応一般的な年齢としては、四十五歳から六十五歳までを主要な対象にするという趣旨できめております。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 いま労働省におられるお役人の中で、六十五歳以上の方がおられるかどうか。
  111. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ごくわずかでございますが、なお若干名おられます。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 どういう仕事をしている人ですか。
  113. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 たとえば翻訳職などで非常に古くからずっとつとめていらっしゃる方とか、あるいは図書の管理とか、そういうところで、例外的でございますが、おられます。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 一般民間には、不文律として、慣例として、大体五十五という定年制が置かれておる。これは肯定されますかどうですか。
  115. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 そのとおりだと思います。ただ最近は、定年制も若干ずつ延長の傾向にはございますけれども、大半は五十五歳ということでございます。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 平均年齢がだんだんと進んできて、平均余命も延びてきておる。七十歳以上まで生きられるようになってきている。この際にせめて六十五歳くらいまでは働きたいというのが原則だと思うのです。それから先も働きたい人は働く。いま総理だって七十をこえておられるし、かくしゃくとして、おれは老人だというような萎靡沈滞のところはなくて、心臓もえらい強くできておる。そういうことで、政治家の心臓は、大体もともと相当なものであることは皆さん御存じのとおりなんですが、それを思うときに、政治家でなくて一般の人も、六十五くらいまでは、ほんとうに全部、皆勤労、皆労働という道を開く。百まで働こうということで、百働会というような会もあるようですから、老人ということできめつけるわけにいかないし、また七十歳でないと老人福祉年金が出ない、こういうようなことで、五十五歳から六十五歳までの間のその働き、また六十五歳をこえても道を開いてあげるということを、私は労働省としては真剣に考えなければならぬと思う。  そこで、実際問題として、労働省のお役人は、官房で調べられたのでは、大まかでいいですが、平均で五十五歳で大体定年ですか。もっとふえていますか。肩たたきなどで大体普通どのくらいなんですか。
  117. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 御承知のように、国家公務員には定年制はございませんから、何歳でどうという措置はいたしておりませんが、いままでの実績から言いますと、第一線の署長クラスの方で五十七、八歳程度になれば、大体退職していただくというのが普通の例でございます。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 局長クラスは五十五までもてる人があるかないかです。
  119. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 地方の労働基準局長でございますと、五十五、六歳で大体やめていただくという例でございます。本省でございますと、いままでの例では、もう少し若くして退職される例が多いということでございます。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 本省では五十五までもてぬ。局長さん、それまでにやめねばいかぬという悲哀を感じておられると思うのですね。それは、局長にしても課長にしても、五十五、六というのは一番能力があるときですよ。それをもうやめなければいかぬ七そうすると、今度やめて後に天下りをやらなければいかぬ。労働省には雇用促進事業団みたいなのがほんにちょこちょこあるだけで、行き場がない。大蔵省や農林省のような理屈にいかぬということになってくると、そこに悲劇が生まれてくるというわけでございまして、これは大臣労働省というお役所側の労働行政に精魂傾け尽くしておりながら、五十五に足らざる局長クラスの人がやめていく。やめていった先は一体どこへいくのか。大体どこへいっておられますか。
  121. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 本省の局長クラスでおやめになった方につきましては、中には、いま御指摘になりましたような、労働省関係の団体の役員になるという方もございますし、あるいはまた、全然役所と直接関係ないけれども、民間の団体等の専務理事というような仕事についておられる方もございますし、中には政治家になった方もございます。というのが本省の局長の退職後の実情でございますが、地方の局長、あるいは監督署長、あるいは安定所長などでは、やはり地元の関係企業等で働いておられる方もいらっしゃいますし、それからまた、社会保険労務士制度というものができました関係もありまして、そういったいままでの特技を生かしていろいろな労働関係の相談業務に従事しておるという人もかなりございます。そのような実情でございます。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 中高年齢者の雇用促進特別措置法というものがいまあるわけですが、いまの労働省のお役人にされても、いまここに並んでおられる方も、大体五十五までもてぬでお引きになる。あとはどうしたらいいかということを考えるようでは、これはもう行政だって、毎日毎日深淵に臨むがごとき、薄氷を踏むがごとき感じがしてきます。安定感から職務に精励できない。そういう意味で、せめて六十五までは働けるような体制に、国民皆労働、こういうかっこうが私は要ると思うのです。  大臣、私は、労働省はやはりそういう労働行政をなさる役所でございますから、まず隗より始めよということで、労働省からこの中高年齢層の雇用促進を実現してもらいたい。だから、労働省をやめられた諸君がどこへ行っているのか、労働省自身が調査されて、労働省自身が、労働行政のゼネラル・ヘッドクォーターズがどういうかっこうになっているのかを私はお聞きしたいのです。だから、いま六十五歳くらいになられるであろう、最近十年間にやめられた課長局長以上の方の行き先を、私、資料としていただきたい。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕 それが非常に参考になる。つまり、労働行政の担当者がいまどういうところへついておられるか。これはやはり労働省であるだけに、ほかの省はやらぬでもいい、労働省だけやればいい。だから、労働行政に奉仕した皆さんの、現に六十五歳まで皆労働をやっておられる実態を参考にして、労働行政の進歩に貢献したいと思います。私は日本定年制を実際は六十歳くらいまでは延ばしていいと思う。労働省でも、五十七、八で肩をたたかないで、六十までまず延ばす。これはいかがですか。あとから続く者のために困ると思いますかどうですか。この際、あなたの発言は非常に影響が他省にもある。
  123. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 先ほど木原委員の質問にもお答えいたしたところでありますが、いま日本は平均寿命が非常に延びております。もちろん女子のほうが高いという統計も出ておりますが、そういう面から見れば、受田委員指摘のような年齢まで働き得る能力は多分にあるわけです。中高年雇用促進特別措置法も、四十五歳から六十五歳、それでは足りないからさらにまだ延ばせという意見もありました。  これはちょっと話は横道にそれますが、私、お年寄りの方々のお集まりで、非常な日本の元老が七十歳が成人式だから、成人になったつもりで大いに働いてほしいという激励のことばを申し上げましたところ、ここまで働いてなお働かせるのかという逆におしかりをちょうだいしたような場面もありますが、それはそれとして、五十五で定年ということは、これはいかにもやはりもったいない。もちろん、その方の家庭の状況、お子さんを育てなければならない方も相当あるでしょう。私も受田さんも同じ仲間でありますが、そういう困った方の状況もよく知っております。そこで定年制の問題は、いま逐次延びております。五十五歳よりも六十歳、それよりも延びておることも知っております。それは労使間の話し合い、労働協約等によってきまってくる問題でありましょうが、私は基本的には、法律で六十五歳という中高年のあれを限定してありますので、これをさらに延ばすということについては今後の検討の課題でありますが、民間産業におきましても、また今後考えられる労働力の需給関係から見ましても、そういったことにいくことが望ましいし、またそういう指導もしなければいかぬ。もちろんその間に、賃金の問題等、いろいろな問題があるでしょうけれども、やはり今日までの体験というものを生かす意味においても、それからまた今日の平均寿命の面から考えましても、それを望ましい姿であるとして、その基本に立った行政指導をやっていく考えであります。  まず労働省から隗より始めよというお話でありますが、これはやはり国家公務員として、労働省だけで独走するわけにもまいりませんので、これは関係各省、ことに総理府、人事院、また自治省も大いに地方のあれで関係がありますから、そういった閣僚の諸君との協議も非常に必要であろう。現に週休二日制の問題についても、そういった閣僚との相談をいたしておりますが、やはり定年制の問題というものについても御相談いたさなければならぬ、このように考えております。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 これで質問を終わることにしますが、塚原大臣、私、六十歳という年までは大体もうだれでも働けるような体制を、労働省自身が先頭に立ってやるべきだと思うのです。これは、いまこそ、若い人が、そのあとから続く人があまり少ない数でなくて、多いかっこうでありますが、何年かするとまた青年層というものは数が減ってくる時代があるというような意味から考えると、定年を実質的に延ばしておくほうがいい。  週休二日制の質問を用意してまいりましたが、約束の時間が参っておりますので、これと関連した問題で、私、労働市場の非常にやっかいな問題である大学新卒者の青田刈り、苗しろ刈りから種もみ刈りというところまで来て、来年三月卒業の一年前の三年生の三月のときには募集をやって片づけておる。きょうは五月の三十一日、五月の時点では、ほとんどの大企業がもう就職が決定しておるという状態じゃないですか。これは労働省は調べておられると思うのですが、これは非常に私はやっかいな問題だと思っている。大学を来年三月に卒業する者が、その三年の時点でもう道を開いていかなければならぬということでは、安心して勉強もできないし、就職がきまったら、それから先はろくに勉強もせぬようになる。教育上の大きな欠陥になってくる。きょうは文部省は来ておられないが、労働省説明が不十分なら文部省に追加して承りたいが、どうですか。つまり青田刈り、苗しろ刈り、種もみ刈り。種もみのその前の、種もみでないときにもうやっておるわけだ。
  125. 道正邦彦

    ○道正政府委員 中卒、高卒につきましては、ほぼ完全に青田刈りの防止が実行されております。これも若干時間がかかりましたけれども、現在はほとんど問題ないかと思います。問題は、御指摘の大学卒でございますが、御指摘のように、三年の暮れあたりからもう企業訪問等やりまして、就職がだいぶきまってしまうのが、私ども文部省へ確かめましても、事実のようでございます。しかし、制度的には大学の選考開始は七月ということで、協定が関係者の間で行なわれておるにもかかわらず、これが空文になっております。したがいまして、すでに文部省に労働省から申し入れをいたしておりまして、文部省も、非常にむずかしいことだけれども、原則的には青田刈り防止にかねてから賛成でございまして、この際、青田刈り防止をやろうじゃないかということで、文部省と労働省と意見が一致しております。  具体的には、中央雇用対策協議会というのがありまして、関係者が集まって、民間も入りまして雇用問題を検討する場がございます。そこに呼びかけまして、日経連、日本商工会議所、中小企業団体中央会等から成ります中雇対協の幹事会の場でこの問題を検討して、できましたら、四十八年のものはもうきまっておりますので、四十九年から青田刈りが行なわれないように実施に移したいと考えております。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 遺憾なことですが、労働省というものは、労働行政の上で、各企業の中へ申し入れて、そして、三月とか四月とかいう時点で大学卒の、高卒でも同様ですけれども、就職者をきめるようなやり方を絶対にさせないような指導ができないのですかね。来年は何とかしたいと言うが、現実に去年よりも一カ月早くなっておる。こういうような状況では、労働省というのは一体、企業に全然にらみがきかないで、もう全く無能力者がそろった役所だということが言えるような感じがしてならないのですがね。
  127. 道正邦彦

    ○道正政府委員 無能力者かどうか、御判断を仰ぎたいわけでございますけれども、たとえば高卒の青田刈りにつきましてはいろいろ問題があったわけでございますが、関係者の協力を得まして、十月一日からということで青田刈り防止を達成したわけでございます。次は大学だということで、一部の企業におきましては、七月にきまっているから、おれのところはもうがんとしてやらないとがんばっておられる企業もありまして、そういう企業からは逆に激励を受けております。そういうことでありますので、若干時間をいただきまして、四十九年の三月卒業者からは、極力努力いたしまして、青田刈りが行なわれないように最善の努力をいたしたいと思います。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 塚原大臣、青田刈りというものに対しての世間の批判もあるわけです。それからその対象になった学生そのものも、勉強の能率があがらなくなる。そうして、できるだけ各企業が話し合いをして、別に人材を吸収するのに競争しなくても、自然に人材は集まってくるものです。みんなで国家公務員の採用のほうの基準に合わせてこれをやっていけばいいと思うのです。ところが、労働省行政指導というものが、これは一向に実を結ばないで野放しになっておる。現実に野放しですよ。労働省の言うことを現実に聞いておらない。三月に採用しているところがある。だから四月には終わっている。いかにも数が少ないようなことをおっしゃったが、現実に大企業でいままでに採用していないところがどれだけあるのですか。三、四、五月のうちに採用したのと採用しないのは、株式の一部市場に上場分だけで大体見られて……。
  129. 道正邦彦

    ○道正政府委員 これは、金融関係はまだ正式の決定を見ていないというふうに聞いておりますが、しかしながら、一部内定者はどうもあるようでございますので、そういうものを決定と見るか、決定と見ないか、問題がありますが、最後までがんばっておられるのは、これは先生の御趣旨から見ればいいことでございますので、具体的に申しますと日本航空なんかは、七月からでなければ絶対採用しないということでがんばっておられます。そのほか、一、二大きな企業で七月まで採用しないということで青田刈りをやらない企業もございますが、率直に申しまして、現状は大部分の企業が、内定者という形を含めまして青田刈りをやっておるというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 日本航空とかNHKとか電電公社とかいうのは、これは国が金を出しておる企業ですよ。いわゆる半官半民ですわ。半官半民がもしやったら国会でつるし上げを食うから、これは七月に入ってやるということになっている。NHK、電電公社、日本航空は六月三十日から七月二日までに大体やられるわけです。ところがほかの企業は、労働省のにらみは一つもきいておらぬ。だから私は無能力だと言ったのです。これに関する限りは無能力です。つまり、青田刈りをやめさせる指導が全然ききめがないのだから、無能力です。行政指導の効果があがっていない。大臣、四十九年には何とかすると局長がおっしゃっておられるのだが、私は質問の時間をこんなにかける予定じゃなかったのだが、この問題一言で質問を即座にやめますが、どうしてこういうことになったのか。
  131. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 現実に今年相当のところが終わっておると私も承知いたしております。この前の大学紛争で、卒業生の問題等であせっている会社もあるのではなかろうか。だからといって、やったのがよろしいというわけではございません。しかし、中学校、高校まではやれて大学がやれないのは、労働省は無能力であると盛んにいま御指摘を受けました。しかしそれは、文部省との相談もありましょうが、労働省といたしましては、受田委員指摘のような、そういうことでは困りまするので、四十九年度において、私はいかなる場所におるかはわかりませんが、ひとつぜひ御趣旨に沿うような行政指導をする。労働省は決して無能力ではありませんから、いまからも力を入れて御趣旨に沿うような最大限の努力をいたします。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 それでは質問を終わります。
  133. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 午後一時四十分、委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇—————    午後一時四十六分開議
  134. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  135. 大出俊

    ○大出委員 昨日いろいろ御質問を申し上げたのですが、本来ならばもう少し時間をいただいて、安保それ自体の基本になるべきものを、七つ八つ問題点がありますので、具体的に大臣の御意見をいただきたいと思いますけれども、時間の制約もあり、きょう外務省関係法律を処理しようということになっておりますので、あらためてまた続けさせていただきたいと思います。  とりあえず、きょうのニュース等でちょっと出ておりますが、少し前に外務省のほうに連絡はしておきましたけれども、何かイスラエルのほうで航空機の乗っ取り事件が起こって、その報道によりますと、乗っ取ったのがどうも日本のゲリラである、こういう言い方になっておるわけでして、二十六人ばかり死んだ人が出て、七十何人か負傷者があったなんというようなことで、どうも真偽のほどがはっきりしない点がございます。したがって、外務省のほうでどういうふうにこの間の事情を聴取されておられますか、まず承りまして、一、二点ひとつ承りたいのです。
  136. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 お答え申し上げます。  本件につきましては、実はイスラエル政府が目下調査中でございます。犯人等に関する詳しい情報はまだわれわれは得ておりません。在京イスラエル大使館にも参っておりません。また、わがほうの在テルアビブ大使館にも連絡しておりますが、いまだにそれに関する確認した情報はございません。  ただ、わが大使館員を空港へ派遣いたしまして、空港で関係者よりいろいろ事情を聴取させましたところ、ほぼ次のような状況でございます。  実は昨夜、三十日の十時ごろ。現地時間ですから、日本時間でけさの五時ごろになりましょうか、そのころに、日本人と思われる者三名が、空港に到着したエアフランス機よりおりまして、機関銃と手りゅう弾によりまして、乗客、送迎人及び空港従業員等を銃撃したようであります。その結果、死者二十一名あるいは二十二名、負傷者六十二名ないし六十三名の犠牲者が出たようであります。また空港の軍責任者は、本件についてはなお調査中である、したがいまして、犯人がはたして日本人であるかどうか、あるいはまたその氏名はどういう氏名であるか、また傷を負われれ人、あるいはなくなられた人がどこの国籍の人であるか、そういうことについては一切まだ発表がございません。そういう段階でございます。  ただ、そのイスラエルの通信、いわゆる外国通信でございますが、その報告によりますと、どうも日本人らしい、そのうちの一人は死亡し、もう一人は負傷し逮捕された、なおもう一名は行くえ不明だ、こういう趣でございます。  なお、在イスラエルわが大使館は情報収集に全力をあげておりまして、目下、犯人が日本人であるかいなか、この点も確認を急ぐ、そういうことでございます。
  137. 大出俊

    ○大出委員 赤軍派事件をめぐりまして、何人かの方々が国外へ出ているという事実は確認をされているわけでございますが、何かそういう関連があれば、これは私ども政治立場考えなければいかぬという気がいたしまして承ったわけでありますが、そこから先の事情が全く不明であるということになるとすれば、いまここで意見を申し上げても、これ以上質問を続けても意味がないと思いますから、ひとつ早急に的確な事情をお調べいただきまして、もちろんこれは、それなりに国際的な意味における政治問題でもございましょうから、できるだけすみやかに私どもに御報告をいただき、その上で申し上げたいと思うわけでございます。
  138. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まことにこれは遺憾な情報であります。しかも確度がかなり高い情報、つまり三人の犯人、これがわが日本人であるそうだ、こういうことであります。そうしますと、わが国といたしますると、はなはだこれは不名誉なことに相なるわけであります。また事実といたしますれば、それに伴うところのいろいろな措置、そういうことが必要になってくる、こういうふうに思います。  そこで、とりあえずとにかく実情を早く調査しなければならない。また現地でとるべき措置、そういうこともあります。そういうようなことで、中近東アフリカ局の参事官を急遽現地へ派遣をさせる、それと一緒に警察庁の専門家、これも加えよう、こういうふうに考えておるわけであります。とにかく大至急実情の調査をいたし、こういうことに関し所要の措置を講ずる、かようなふうにいたしたい、こう考えております。
  139. 大出俊

    ○大出委員 私のところには、死んだ人たちが二十六名で負傷者が七十三名という連絡をもらっているのであります。機関銃を撃った側に三人の日本人がいる、こういうことなんですが、あるいはもっと多数いるような話もある、こういうことですが、いずれにしてもこれは、やはり大臣がおっしゃるように、事と次第によっては相当大きな問題になりかねない。特に死者が出ているとなりますと。したがって、いまお話がございましたように、日本側でひとつなるべく的確に実情を調べ真実をつかむ、これが必要だと思うのでありますが、いまの御趣旨に沿いましてぜひひとつ早急な御努力をいただきたい、こう思います。その上で、また角度を変えて御質問をいたしたいと思います。  そこで、時間の関係もございますので、きょうはできるだけかけ足で申し上げたいのでありますが、岩国からの私どものほうの組織から連絡がいろいろございまして、また横田、立川周辺からもこれまたいろいろ連絡がございまして、幾つか当面の問題で緊急に明らかにしておいてもらいたい、こういう事情がございます。  そこで承りたいのでありますが、一つは、先ほど連絡は申し上げておきましたが、防衛庁まだお見えになっていないようですな。
  140. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 施設関係だけです。
  141. 大出俊

    ○大出委員 では、先に施設庁から承りますが、例のミドルマーカーと申しますか、グリーンゾーンがありまして、これは滑走路の延長上に航空制限区域を設けてここに人を入れない、つまり当時の人たちを表へ出した、そして施設庁がこれを買い上げたといういきさつがある。これは担当の方方御存じでありましょう。  長い説明をいたしますと時間がかかりますから、要点だけ申し上げます。昭島市との間に昭和四十三年の十二月に約束が一つある。それは昭島市長と防衛庁との間に、基地の拡張については、先ほど申し上げたような理由でどけたのですから、つまり延長したわけですから、そういう意味で、これが返還される場合は、事の性格上基地の拡張には使わない、こうなっていた。ところが、今回、東京防衛施設局の高野施設部長さんが昭島においでになって、二十九日から工事をする、こういうことを言って帰られた。これは約束が違うじゃないか、現地にすれば市長と防衛庁との約束はどうなったのだという問題があるわけでありまして、ここらは、一体どういう経緯で、市との間の四十三年の十二月の話し合い、結論があるにもかかわらず、こういうことになったのかという事情について明らかにしておいていただきたい、これが第一点であります。
  142. 平井啓一

    ○平井説明員 ただいまのミドルマーカーの施設は、計器着陸施設の一部として、従来のものに加えてさらに計器着陸の安全度を高めようという施設でございまして、昨年来米側から、その施設を横田滑走路の南端の地区に設置したいので、しかるべき用地として提供してもらいたいという申し入れがあったわけであります。その申し入れがあった土地そのものは、ただいまお話しのございましたように、周辺整備法第五条に基づきまして、騒音地区として住んでおられた方々に集団移転をしていただいた土地でございます。当時、集団移転をしたそのあと地につきましては、一応国有地となっておるわけでございますが、基地の拡張に将来使わないでもらいたい、そういう申し入れが地元からあったことも事実でございます。  しかし、今回の施設そのものは、計器着陸の安全度をさらに高めて、周辺の方々に対する安全度、もちろん米軍の操縦の安全度、そういう両方の目的を持った施設でございますので、その趣旨を地元の昭島市長はじめ議会の筋の方々にも御説明申し上げ、そういうことなので従来の経緯にかかわらずひとつ御協力いただきたいということで、かねがねお願いしていたわけでございます。本年二月十五日、こういう施設を設置するための用地として提供することについての閣議決定を得まして、米側に一応その土地を提供したわけでございます。  なお最近、工事を始めるにあたっても、再三再四にわたって市長のほうにはその趣旨を十分御説明して、納得をいただくように努力したわけでございますが、今後ともそういう趣旨で十分の御理解を得るように努力したいと思います。
  143. 大出俊

    ○大出委員 どうも、昭島市がだめだ、こういう約束があるのだからこれは約束どおりやってくれ、こう言い続けているにもかかわらず工事を始めてしまうということは、私はいささか穏当でないじゃないかという気がする。また立川のときのようなことになると、私や伊藤さんが一緒に出かけていって、現地のまん中にはさまって苦労しなければならぬことができ上がる。私はそういう非常に大きな心配を持つのです。したがって、これは工事をやはり中止をして、強引に着工するのではなくて、せっかく努力なさっておるとおっしゃるなら、これは長官、いま私の申し上げたような横田の昭島市との関係なんですが、私は立川の件で往生しておるのですよ。あと始末を予算委員会からこの委員会に引き継がされて、何回も立川まで行って苦心惨たんした経験が、私も、ここにおられる伊藤さんもありますので、だからここのところは、まだいまならば手は打てるのですから、一応その工事はやめておいていただいて、その上でもう少し意を尽くした話し合いを続ける、この必要が私はとりあえずあるように思う。  なぜならば、四十三年の十二月の市当局との皆さんの話し合いの決着があるんですから。だから、まだ何年もたっているわけじゃないんで、集団的に移転をさせられたことも事実なんだから、そうすれば、その方々にすれば、そこに拡張工事に類する施設をつくられれば、これはミドルマーカーというのは、御存じのように計器着陸の装置の一部ですから、そうなると、これは約束が違うじゃないかという意見は出ますよ。だから、そこのところは、強引にやるというのはどうもまたあとに問題の尾を引くことになる。その点、大臣御存じだということであれば、一言御意見をいただきたいと思います。
  144. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この問題は、御指摘のように、また立川の繰り返しのようなことになりましてはなりませんので、実は過般、野呂政務次官に市長を訪問をさせたわけです。そして、これはすでに米軍側からは十月ごろ、ぜひひとつ安全確保のためにこのミドルマーカーをつくってもらいたいという申し入れを受けて、今日までだんだん延ばしに延ばしている、したがって、何とか御協力を願えぬかということを懇請したわけです。で、ただいま市長、議長、関係委員長さん、こういった人たちに会って、当方としては懇請を繰り返す。先方側としては、まあ市議会の決議もあり、いいとは言えません、しかし、どうも安全確保ということであれば、これはやはりあなたのほうのおっしゃることもわからぬことではない、しかし、われわれの立場からいって、どうもよろしゅうございますと言うわけにはまいりません、というあたりで別れておるわけであります。  で、一昨日、東京の施設局長をやりまして、ぜひ三十一日がら着工をしたい。これも、まさに立川のああいう抜き打ち的なことにしてはなりませんので、手順としては、われわれのほうとしても実は十分尽くしたつもりでございます。それから地元の新聞記者諸君にも、この着工のことを、あらかじめ二日ぐらい前ですかに、段取り等について表明をしまして、これはひとつぎりぎりのところでぜひやらせてもらいたい。これは、部隊の移駐とか、そういう性格のものとは違いまして、もとよりそこには施設は拡大しないという話し合いのあることは、私もよく聞いて承知しておりまするが、ただ問題は、安全確保のための施設である。いや、それも付属施設だということになれば、これは問題なわけでありまするが、けさから実は着工しまして、現在、私、防衛庁で報告を受けたところによりますると、三、四十人の反対の人たちが工事を見守っておられるという形で、警察当局の情勢報告によりますると、実力行使やそういうことには及ばない。しかし、御指摘のように、まさに円満妥結の上の工事とは言い切れないものがあるわけでございます。しかし、これは相当懇請に懇請を重ねて、先方側もいいとは言っていただけませんが、まあある程度の御理解というか、そういうものはそんたくし得るのではないかという情勢判断に立ってやっておるわけでありまするが、今後十分注意をしながら、また、いま警告の点等については配慮を重ねていたしながら、進めていきたいと思っておりますので、これはひとつこの程度で説明を御聴取願ったことにしたいと思いますが、いかがでございますか。
  145. 大出俊

    ○大出委員 こうしてくれませんか。ともかく、きのうも私、実はこの連絡をもらいまして、また、岩国の現地から別な連絡が一つありました。これは問題が違うのですが、きのう実は承ろうと思ったのですが、大臣の時間の関係もあり、外務大臣の時間の関係もあり、したがって、問題の安保の焦点だけ申し上げてやめたのですけれども、実は何とかきのうのうちにもう一ぺん話し合いをじっくりやってもらいたい、こういう話だったのです。だから、着工をされて、四十人ばかりいるということなんですけれども、どう発展するかもわからぬわけなんですから、あわせてひとつ、言い置いて帰ったという形のままでなしに、さらに話し合いを早急にしていただく、こういうふうに進めていただけませんでしょうか。  これは、実は私が聞きました限り、間違いがあるかもしれませんが、東京防衛施設局高野施設部長さんが二十九日に現地に行かれて、三十一日から始めますよと言って帰ってきちゃったわけですね。それで始めているということですから、やはりここらあたりは、どうも部長さんだからいけないというわけじゃないけれども、しかるべき人が行って、やむを得ざる事情でこうなんだがという話をやはり引き続きしながらいくということにしていただきませんと、現地もなかなかおさまりにくいことになると私は思いますから、とりあえず話し合いの場をやはりつくっていただくということにしていただきたいと思うんですけれども……。
  146. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 たいへんごもっともなサゼスチョンでございまして、これはやはりお願いしてしつばなしということでなしに、今後も話し合いを続ける、こういう姿勢を保持する意味からも、いまの御趣旨の線に沿うように努力いたします。
  147. 大出俊

    ○大出委員 やめていただきたいと申し上げましたが、長官のほうでこういう事情でやったと、こういうのでありますから、これは平行線でございますから、したがって、話し合いの場をつくって、あくまでもひとつ問題がこじれて大きくならないように、どうなるにせよ、話し合いを続けるということでないと、私はやっぱり地元の輪は広がっていくと思いますので、それだけは申し上げておきたい一つであります。  それから、もう一つの問題は福田外務大臣に承りたいのでありますが、大臣、これは岩国にからむ問題でございますけれども、これは防衛庁の皆さんのほうが詳しいのかもしれませんが、まず、岩国の基地からトンキン湾あるいはハイフォン、ハノイ、この辺まで大体何キロぐらいございますか。どなたか御存知でございますか。——久保さんがいればわかるんだろうけれども。実は私、こう長いものを持っているんですが、ものに書いてあるものだけでは心配ですから、地図の上で調べてみたのでありますが、大体キロ数にいたしまして四千二百キロぐらいなんですね。岩国からハイフォンまで四千二百キロある。  そこで、P3Cオライオンという対潜哨戒機が米軍にございます。このP3Cオライオンというのは、航続距離、滞空時間はどのくらい持っておりますか。大体、時間にいたしまして、十八時間の滞空時間があります。これは皆さんがざっとお考えいただけばわかりますが、私がかつて、これは外務大臣おられましたが、横須賀−那覇あるいはホワイトビーチはどのくらいキロ数がありますかと言ったら、即座に久保防衛局長が、おおむね二千キロとこうおっしゃいましたが、このおおむね二千キロのところを、皆さん沖繩に行った経験がたいていおありになると思うのでありますが、参りますと二時間ちょっとで行ってしまうということをお考えいただきますと、十八時間の滞空時間を持つP3Cオライオンの機能というものがどの程度のものかはおわかりをいただけるのでありまして、普通のジェット機で、横須賀からホワイトビーチまで正確に直線ではかりますと千八百キロでありますが、コースがございますから、二千キロという久保さんのおっしゃるのはごもっともで、私も肯定をいたしますが、この二千キロを二時間何がしで行くとすると、そうしますと、四千二百キロということになりますと、横須賀−ホワイトビーチの二千キロの倍ちょっとになる。そうすると、普通ならば四時間何がしで行ってしまう勘定になる。ところが、P3Cオライオンなるものの滞空時間は、何と十八時間ございます。  そうなりますと、P3Cオライオンなる飛行機は、横田を飛び立ってハイフォンまで行きまして、かつ帰ってくることさえできる。しかし、これは戦闘作戦行動という事前協議のワクがかかっておりますから、再び帰ってくるということについてはなかなかめんどうな政治情勢がある。機能的には帰り得る機能を持っていますけれども、これは本来滞空時間を長くして飛しょうしながら敵の潜水艦を探すのですから、ソノブイを投げる日本のP2V、P2Jといったような性格のものでありますから、滞空時間が長くなければ任務はつとまらない飛行機であります。特殊な性能を持っている。  ところで、三月三十日の例の北爆拡大以後、機雷封鎖という事件が起こります間に、そのときに岩国におりました九機のP3Cオライオンがいなくなっている。で、自後連絡がひんぴんと入ってきておりますけれども、どうやら岩国で七種の機雷の連鎖装置というものをこしらえて、P3Cオライオンがこれを運んだ、こういう相当的確な情報が入ってきている。このときに相手方、つまりアメリカの側は岩国から運び出して持っていった。つまり封鎖のための機雷をどこかほかで装置するということは非常に困難である。いま日本に残っている基地で、アメリカ軍だけで操作ができるところというのは岩国ぐらいしかない。だから、スビックベイ経由でということにしてみても、かえってぐあいが悪い。そうすると、足の長い飛行機が直接飛んでいかなければならない。当然P3Cオライオンが出てくることになる。こういう事後調査の結果が出てきている。  ここらあたりについて、外務省、防衛庁を含めまして、一体この間の事情についてどこまで皆さんはお調べになっており、かつ情報をお持ちかという点を、ひとつ承っておきたいのでありますが、いかがでございますか。
  148. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 P3Cという問題につきましては、まだおそらく事務当局でもアメリカと直接話し合ったことはないように思います。しかし一般的に、今回の機雷の封鎖には日本の基地はかかわりなし、こういうことをアメリカは非常にはっきり言っております。これは特にわがほうでもアメリカに確かめたわけです。これに対しまして、日本の基地が機雷封鎖に使用されたということはありませんということをきわめて明確に言っておりますので、私どもといたしましてはそのように受け取っておる、こういうことでございます。防衛庁のほうで何かありましたら……。そのような状況でございます。
  149. 大出俊

    ○大出委員 いままでF4ファントム二個飛行隊が岩国から飛んだ。これは二個飛行隊になりますとちょっとはでですからね。一飛行隊十八機といたしますと三十六機ですから。これもアメリカは最初は公にはものを言っていない。外務省のほうが先でございまして、移転するという連絡をもらった、こういうこと。あとになりましたらその詳細は明確になって、事故機がその中で一機出ていることまで明らかになった。つまり、米軍のものの言い方というのは、世の中に流れてしまって、これはしようがないとなりますと、実はこうだったということになる。フランスのル・モンド紙が日本の横田、岩国等で核訓練をしているんだということを書いた。これも最初はそういうことは全く知らないという発表があった。ところが、久しくたちましてから、ル・モンドは核訓練と言っているのですけれども、やはり核の搬出、つまり搭載、積みおろし等の訓練をやったということを認めているし、将来やるであろうということをさらにアメリカ側はつけ加えているというふうに、権威あるル・モンドあたりが書いてしまえば、あとになって次々に追認をする。かつて、これは昨年の沖繩国会で、私と楢崎君で福田外務大臣に岩国の核の問題を中心に質問した、こういう経緯がございます。  ところで、いま私が取り上げましたP3Cオライオン、これは厚木飛行場にもおった。五機であります。ところが、九機の岩国のP3Cがいなくなった時点で厚木を調べましたら、厚木のも一緒にいなくなった。こういう現実がある。そうなると、これもP3Cの持っている任務その他からいきまして、じゃ機雷封鎖のあのときにどこかに行って遊んでいたのか。そういうことはいかなる専門家であっても考えられない。これはだれが考えても、これだけ足の長い飛行機というものはほかにない。そうなると、当然P3Cというのは機雷封鎖にきわめて大きなかかわり合いを持っていた。これだけは間違いない。艦船で運ぶ以外、じゃ航空機でほかに何で運べるか。ずうたいの大きなB52で運ぶわけにはいかない。そうなると、どうしてもこの程度の飛行機しか使いようがない。これはもう専門家の意見は一致するところだ。だから、世の中に名のある専門家の皆さんはその後の情報というものを、私もいろいろ情報を持っておりますが、同じような情報をいろいろ選別をして、このP3Cというのは、ハイフォンの封鎖にあたって機雷を運搬した飛行機である、こういう定説になっておる。  ここまでまいりますと、これはずばり外務省がアメリカに対してものを言っておかないということは、先般来、事前協議をめぐって質疑を繰り返しておりますように、やはり手落ちであろうと私は思う。やはりそのつど注意を喚起してまいりましたと皆さんおっしゃっておるから、P3Cについてはものを言ってないといま大臣はおっしゃるから、それならば、いまになって、P3Cオライオンが当時やったことに対して、世上、軍事専門家を含め、私どもも含めて、私もこれを不用意に言っておるのじゃない、いろいろある情報というものを詰めてみると、やはりそうなる。だから申し上げておる。だから、ここらのところは、やはり皆さんが実情を調べてチェックすべきものはする、これだけの姿勢があっていいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  150. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもは、これは念を押しておるのです。つまり、わが国の基地から機雷敷設をしたというような事実はあるか、ありません、わが国の基地は機雷の敷設にはかかわりはありません、こういうふうに非常に明確に答えておる。まあ、それを信用しておる、こういう状況ですから、具体的な案件としていま御指摘がありますから、これは調べてみます。そういうような種類のいろいろな問題がありますれば、私どもはよく調査いたします。国民が疑念を抱かないというための適正な措置を講ずる、こういうことにいたしたいと思います。
  151. 大出俊

    ○大出委員 実はきょうの読売新聞でありますが、「今度は魚雷が運ばれた岩国・核の不安再び」、こうありますね。私、いまこの問題を取り上げましたのは、例の色を塗りかえたという現実が当時あった、核の問題に触れたときに。これは外務大臣の御答弁によれば、アメリカというのは、日本の国民感情を非常に心配しておるので、間々そういう抜けたようなことをするという話がこの間ありました。それなりに、さすがに大国アメリカというものは大きな力を持っておりますけれども、とかくとんでもないとちったことをやるケースがいままでありましたから、そういう御答弁がわからぬわけではない。わからぬわけではないんだが、事、岩国に関しては、そうですがといって済まされない問題が実はある。  そこで、きのう私はこの情報を現地からもらった。現地からもらったところが、けさ新聞に出た。もう少し実は調べてからものを言おうと思ったのですが、私の持っておる資料には深くは触れずに、これは佐藤内閣、末期だから資料はもったいないという意味だけではありませんが、福田総理にでもなったらまたあらためてやりますが、きょうは当面新聞にありますので承っておきたいのでありますが、私が当時写真を持って総理のところに参りました。楢崎君は質問席にいる。私、理事でございましたから、持っていって、監視塔というのはこれでございます、海浜に位置しておる第六の倉庫がこれでございます、ここに監視塔がございますというふうに説明いたしました。核点検室、こういう名がついおるのはここでございますというふうに説明を申し上げた。そうしたら、なるほどそうですかと総理はおっしゃった。外務大臣がお隣においでになったところで。この核点検室に室に向かって、問題の核があるではないかと楢崎君が指摘した第六倉庫、この倉庫から、こういうふうに読売新聞が写真をとっておりますが、これは新聞社にお願いすればすぐ出してくれる。写真がありますから。つまり、この写真に見えている、つまり運び出された黒い弾頭の魚雷、これは軍事年鑑その他参考資料を見ましても——伊藤さんの時間がございますから、私、多く触れませんが、実はホーミング魚雷と一般にいわれているもの、弾頭が核である場合が当然ある。そういう性格の、スクリューの音その他を追ってホーミングをする魚雷です。これだけの魚雷がここに貯蔵されていたことに間違いない。市民が見ている。運び出されて核点検室に入った。写真まで出ている。  そうなりますと、当時、防衛庁の皆さんは、伊藤さんという方を調査におやりになった。そしたら、当時大臣説明によると、地下倉庫なんてない、普通の倉庫でございまして、そこにいろいろなものが置いてあるだけです。そんな倉庫の中に、核魚雷であるかもしれないホーミング魚雷が、しかもこれは明確にP3Cオライオンの搭載兵器なんです。だからここにP3が常駐していたわけでありまして、そうすると、ここにこの魚雷があるということになると、この見出しに書いてありますように、「核の不安再び」、あたりまえです。だれが見ても、専門家が見れば。この新聞が取り上げている事実を、皆さんは御確認いただいておりますか。
  152. 吉野文六

    ○吉野政府委員 岩国の先生指摘の倉庫につきましては、すでに防衛庁から伊藤空将補が行きまして、実地検証したことはすでに御指摘のとおりでございます。その際われわれ、この倉庫の中には魚雷、爆雷及び魚雷用爆薬が貯蔵されておるということをすでに御答弁申し上げまして、まさにそのような魚雷が初めからこの中には入っておった、こういうことでございます。  なお、先生のおっしゃる核弾頭のついたいわゆるホーミング魚雷であるかどうかということにつきましては、われわれの見解では、まず第一に、核兵器のようなものをそう簡単に写真のとれるような形で運び出されるはずはない。第二段は、もちろん日米間には固い約束がございまして、核弾頭は一切持ち込んでないし、またアメリカ側もこの点については、すでに昨年、楢崎議員その他から、この点について御質問があったときも、政府は絶対核はないということを答弁したとおりでございます。  なお、P3が魚雷を運ぶかどうか、これは御指摘のとおり、P3はそういうものを搭載する能力がございます。しかしながら、現在P3は主として第三国の艦船及び潜水艦をいわば追跡しておるわけでございまして、魚雷を運んで戦闘作戦に入るというような事態にはなっていないとわれわれは了解しております。  また先ほど、P3でハイフォン港を封鎖したかどうかという点につきましても、御存じのとおり、P3という飛行機は非常に高価な、もっぱら潜水艦を探索するための飛行機でございますから、わざわざP3のようないわば長距離の高価な飛行機を用いなくても、艦載機から簡単に魚雷はは敷設できる、こういうようにわれわれは了解しております。
  153. 大出俊

    ○大出委員 吉野さんの一生懸命にお答えになっているのはわかるのですけれども、外務省に長くおいでになってアメリカ局長をおやりになっておられるわけでございますから、まさにその道の専門的な立場にはおいでにならない。だから私は、いまP3の話をなさるけれども、滞空時間をどれくらいと承ろうと思っても、お答えは出てこない。つまりP3というものをほんとうにお調べになってはいない。おそらく、アメリカといろいろおやりになっている過程で、そういう話があるいは出たのかもしれない。ここが限度だろうと私は思うのです。  そこで問題は、まず分けて承りたいのですけれども、横田なり岩国なり日本の基地で核の搭載あるいは積みおろし訓練をやっているということは、アメリカは認めたように新聞には書いてありますけれども、アメリカ局長さんの立場で、その点はどうなんですか。しかと認めているのですか。
  154. 吉野文六

    ○吉野政府委員 核の訓練につきましては、主として核爆撃があったときに、これに対する安全訓練とか、それから場所によっては、核に関するその他の訓練も、訓練としては別にこれを排除していないというのが先方の返答でございます。
  155. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほどP3Cオライオンの能力、性能等について御質問でしたが、にわかでしたので、ちょっと手元に資料がございませんでした。いま調べましたところによると、時速は七百六十キロ、航続距離は九千二百五十キロ、したがって行動半径は、これは哨戒機ですから、八時間哨戒する場合には約二千五百キロである。装備は、爆雷、魚雷、ロケット、こういうことになっております。
  156. 大出俊

    ○大出委員 九千何百キロありますから、岩国の基地から、さっき申し上げましたように、ハイフォン港まで四千二百キロでございますから、往復してもこれは八千四百キロでございますからね。だから、たいへんな機能、たいへんな能力を持っているということに間違いない。そういう性格の兵器。だから、おっしゃるように、間違いなくたいへん高価なものですよ。  しかし問題は、どういう状況にあったかと言いますと、いまのお話では核訓練は否定していない。核というものは、核体系、核システムとしてとらえなければならぬ筋合いの問題です。だから、安全点検室もあれば、監視塔もあれば、その他の核施設がございます。レーダーもございますし、もちろん保管倉庫もございます。つまり一つの核体系としてとらえる。そこで訓練が行なわれている。つまりそこに核弾頭のついたものを持ってくればいつでも使える状態にある、核システムというものは。それば、楢崎君の指摘した電話帳について、全部あとで訓練を上にのっけてつくりかえた。これも、福田外務大臣のおっしゃる、日本人の感情を非常にデリケートに心配しているのだということかもしらぬ。それまではなかったのだから、訓練じゃなかった。だから、核システムがそろっているということは、そして核訓練が行なわれているということは、いつでも核が使える状態にあるということ。ただ、御指摘のように、その倉庫にある魚雷なり爆雷なり——爆雷だって、サブロックというものは、サブ々リンロケット、潜水艦ロケットというものは、すべて核だという防衛局長の答弁もある。しかとある。だから、その爆雷がサブロックであれば、当然これは核爆雷なんであります。爆雷倉庫だといったって、核か非核かということはわからない。核、非核両用という形がほとんどいまはすべてですから。そうすると、ホーミング魚雷があった、それは核でないとは言い切れない。核か非核かということは、実際は爆発させなければわからない。われわれだって、そこまでのものは持たないのだから。そうでしょう。そうなると、「核の不安再び」という見出しは妥当な見出しなんですよ。  そこで私は例をあげますが、高価なものとおっしゃるが、ハイフォンに機雷を敷設するというあの時点はどういう状態にあったかということです。アメリカは、アメリカ本土にあるB52は全部それぞれ核搭載をして待機をした。民間空港まで使って戦略爆撃機は全部核搭載をして待機をした。つまり戦略的核兵器と称するものはすべて第一線の使えるものは動員をして出撃体制をとった。その中でハイフォン港を封鎖をやった。だから、厚木にしても、岩国にしても、全部体制が変化した。つまり出撃体制の命令が出たから。それは全部核体制ですね。  これはなぜかというと、ホットラインがあってないであろうけれども、キューバ危機ではありませんけれども、ソビエトというものを意識するから、圧倒的な物量を誇っているのですから、先制核戦略という形のものを前に出して待機をさせた、これが当時の状況ですよ。これはもう国際的にどこの軍事雑誌だって書いていることで間違いない。ソビエト側も実際それを認めていることであって、英国でも、ああいう体制だからソビエトというものは手が出ないと。しかしソビエトは脅威を感じてはいなかった。ホットラインによって話がされているんだからということ。つまり、あらゆる持てる核体制というものをフルに活用して、その中でハイフォン港封鎖をやったわけでありますから、いかに高価なものであろうと何であろうと、すべて使える能力を動員するのは、この戦闘に関する限り常道であります。  そうすると、岩国のP3Cというものについての、あるいはP3Bの機能、あるいは、この核システムがあり、核訓練が行なわれており、しかも、ここに具体的に運ばれておる写真が出てくるということになりますと、アメリカはこう言っておりますからと言って、ただすましていられないということになってくる。皆さんだってそういう心配を当然しなければならぬのですよ。そこはいかがでございますか。
  157. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 核がもし日本に存在するということになったら、これはもうたいへんな事態です。アメリカは厳粛に、わが国において核は保有しない、核は持ち込まぬ、こういうことを宣言をいたしておるわけです。よもやアメリカがその宣言に反してそういうことをしておるということは、私どもは断じて信じません。しかし、もしそういうことがあるとすれば、たいへんなことであります。そういう事実がありやなしや、そういうようなことにつきましては、なお調査するということにいたしたいと思います。
  158. 大出俊

    ○大出委員 ここに「航空情報」のファントム特集というのがございまして、この中身に、横田の基地におけるファントムに核搭載をした写真が載っておる。ところが、これは核爆弾なんだけれども、模擬爆弾であろうというふうに注釈が入っておる。この「航空情報」なる専門雑誌でさえ、これはだれが見たって、形を見れば明確に核であることはわかる。だがしかし、これが核であるかないかについてはわからない。わからないから、ここに積んでいるのは模擬爆弾であろう、こう注釈をしている。つまり模擬爆弾であるかないかわからぬということなのです。これは四十三年の写真だ。四十三年には横田において、模擬爆弾か核爆弾かわからぬものを搭載している飛行機があったということなのです。だから、それは模擬爆弾だとするならば、模擬爆弾を使って訓練をしていたことになる、日本の国内で。模擬爆弾でないということになれば、いまおっしゃるようにこれはたいへんなことだ。そうでしょう。「航空情報」のファントム特集をお読みになればわかりますよ。核ですという言い方はしていない。つまり模擬爆弾だろうというわけですよ。こういう状況にある。四十三年だ。今月号ごらんになってください。これは模擬爆弾と断定していないのですよ。この写真は模擬爆弾だろうというのです。  だから、そういう意味では、沖繩が返還された今日、沖繩の琉球新報、沖繩タイムスを読んでみても明らかなように、沖繩県民百万は、沖繩から核がなくなったなどとは夢にも思っていないのです、だれに聞いたって。そういう特集をしております。つまりそれだけたいへんな不安がある。だから、ベトナム戦争のエスカレートと機雷の封鎖のあの状況の中で、核という問題はもう一ぺん浮かび上がっているわけです。なぜならば、アメリカが持てる核能力をフルに発揮をして待機をさして、その中でハイフォン港の機雷封鎖をやったからなんです。  私はその意味では、大臣は一ぺん否定をされておるけれども、核点検という形のものをいみじくも福田外務大臣に質問しておるさなかに——岩国を点検しようじゃないですかと二つ例を申し上げた。そうしたら、努力してみましょう、ただアメリカのことだからどこまでどう言うかわからぬ、わからぬけれども、国民が不安があるんだというならば調査するように申し入れるにやぶさかでない、何と言うかわからぬが努力してみるという答弁のところで強行採決だったので、私が宙に浮いちゃったわけだ。だから、そのことの発言もあったわけですし、そういう意味で、今度沖繩が日本に返ってきたわけですから、本土内の核という問題について——私はここに議事録を持っているけれども、私が総理に核点検の質問をした。中曽根さんが点検してみたいと言ったことについて、だんだん後退するものですから、私が総理にこの問題について詰めてみた。ここに線を引っぱっている。これは私の議事録ですが、返ってくる沖繩の基地については点検をやってみたい、返ってくるのだから調べたい——これはあたりまえです。だから、それではだめだ、あなたは参議院の予算委員会等ではっきりものを言っているじゃないか、返ってこない米軍の引き継がれた基地の中に核があるのが問題なのだから、それを含めてなぜ調査をする気にならぬかと申し上げた。そうしたら、それを含めて調査をいたしますということを最後に言った。内閣委員会です。議事録をお読みになればわかります。昭和四十六年、昨年の五月十四日の議事録、総理の答弁であります。だから中曽根提案というものが後退をしたけれども、その努力をする、返らぬ基地、それも含めて点検する努力をすると総理が言っているのですから。  そうなると、やはり国民が心配をして、「岩国の核の不安再び」となるのです。それをなくす意味で国内基地についての核点検をする。どういう形でやるかということは、まさに相手があるのですから別として、そういう努力は、外務大臣として、外務省としてなさるのが至当であろうと思うのでありますが、いかがでございますか。
  159. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 日米関係は相互信頼の上に立っておるわけです。日米安保条約はその象徴とも申すべきものである。でありますから、アメリカがわが国におごそかに約束したこと、それは一〇〇%私ども信じていきます。アメリカは、核は日本に持ち込まない、日本では保有しない、こう言っておるのですから、それは信用いたします。したがって、アメリカが日本の基地において核を保有しているのかしておらないのかということを総点検をする必要はないし、また日本政府としてはそういう意図は持っておりません。持つ必要もない、こういうふうに思います。  ただ、こういうケースがあるわけです。大出さんあたりは、いろいろと御調査なさって御指摘がある。そういう疑問がある、こういう案件が起きてくる、そういう際において国民に信頼していただかなければならぬという立場にある政府といたしましては、当該ケースについて、間違いがあるのかないのか、真相はどうだ、こういう調査はいたします。ただその場合も、権利として立ち入り調査するとかそういうのはできませんけれども、事実上の調査はいたしてみる。そうして国民に対しまして、核整策というものが適正に行なわれておるということを明らかにする。これはまた政府のとるべき当然の責務である、私はそういうふうに考えております。
  160. 大出俊

    ○大出委員 どうですかね大臣、たとえば沖繩で言うならば、私も沖繩を知り過ぎておるせいもありますが、何も何カ所も見せてくれと言っているのじゃないのです。総点検、そんなことを言っているのじゃない。やってくれれば一番いいけれども、おやりになるはずがないから。問題になっておる辺野古なら辺野古の弾薬庫、これは米軍の地図がちゃんとある。弾薬庫の構造から、どういうふうにできているものかということまである。サンゴ礁を爆破して、あの前を水深八メートルから八十メートルまでにしている。それもわかっている。くり舟に乗って調べてみたのですから。そうすると、辺野古の弾薬庫は、全部じゃありませんけれども、核貯蔵庫である。だとすると、辺野古の弾薬庫のその部分について、大臣いま御発言になったように——ほんとうを言えば、われわれ一緒になって調べさしていただいて、構造上そうでないということが明らかになれば、いや、調べたけれども明らかになかったと言えば国民は安心する、ああ、そうだったかと。だから、あなた方が私どもを引っぱっていくわけにはいかぬというのなら、それは防衛庁と御相談いただいて、しかるべき人間が行って、実はこうだった。それでもやらないよりはいい、やっていただきたい。  岩国でなおかつこういう問題が起こった。近いですから、それじゃ第六の倉庫というのは、諸君、米軍と話してみて、内閣委員会として調査団を派遣して行ってみたらどうだ、それだっていい。各党一人ずつ行ってみたらどうだ。見たら、なるほど、さっき吉野さんが言うように、これは単なる通常の魚雷を置くところであり、通常の爆雷を置くところである。核はどういうふうに貯蔵するかということは、ぼくらはよく知っているのだから。核ハンドブックだって読んでいるのだから、扱いは。だから、私どもは内閣委員会に長くいるのですから、行こうということになって行ってみれば疑惑が解ける。そうでしょう。それをしいて断わるとなると、国民の目から見れば、どうもおかしいじゃないかということになる。ことに沖繩なんかの場合はそうなる。だから私は、何も総点検と言ってない。いままで各党が問題を提起してあげているのですから、そこのところを何カ所か、そうであるのかないのかという点をアメリカに対して明確にさせる意味で、これは目で見なければどうにもならぬのですから。われわれは入れない、それならそれでもいいが、しかるべき人が行って見てくる。そしてその実情についてものを言ってもらえれば、それなりに意味がある。だから大臣、そうかたくなにおっしゃらぬで、事、国民の心配なんですから、できることはやるのが筋だと私は思うので。この間の沖繩国会の御答弁でも、それはやればできる、アメリカと話すことはできる、やってみましょう、ただ相手がアメリカだから、それは何と言うかわからぬと大臣はお答えになった。それはしようがないが、その努力日本政府としておやりになるのが至当じゃないか、こう申し上げておるのであって、決してむちゃなことを言っているのじゃない。いかがでございますか。
  161. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは私もかたくなに申し上げているわけじゃないのです。おっしゃること、そういう点については国民が疑惑を持ってはいかぬ、国民の疑惑に対してこれを解明するための努力は、政府としてそういうことをいたすことが当然である、こういうことを申し上げておるのであります。せっかく努力をしてみます。
  162. 大出俊

    ○大出委員 最後でございますが、ひとつ気になるのですが、さっき、この記事と昨日、私の持っているこっちの資料と合わせて見ておりましたところが、その下に「将来、原潜保有も」という見出しがある。おやと思って見たら、「自衛艦隊司令官が表明」、こうあるのですね。北村謙一司令官。これは一体何ごとでございますか、防衛庁長官。しかも、このあとのほうで、「石田海幕長は否定」、こうある。これまた陳腐な話でございまして、しかもこの中には、将来は攻撃型空母も持ちたいなんて言っている。これはそこまで言うと、防衛庁がおつくりになったいわゆる防衛白書の中で、攻撃型空母は持たぬことになっているのでしょう。ここらはどういう心理状態でこういうことをおっしゃったか。  四次防の中で九隻おつくりになる潜水艦は私も知っているが、その中の五隻は涙滴型であるはずだ。しかも燃料電池を使うとか使わぬとか取りざたをされている。川崎重工も研究していることは事実です。燃料電池はアポロ宇宙船の動力源です。確かに燃料電池の開発が成功すれば、一週間以上もぐっておったってもぐれますよ。そうすると、これは原子力潜水艦であるかないかということは、まず鋼板の問題なんだけれども、鋼板だってアメリカの原潜とそう違わないものが考えられている。動力源が違う。となると、原潜という問題はそう遠い話じゃない。しかも、ホーミング魚雷などを積もうというのなら、なおのこと。だから荒唐無稽な発言だとは私は思えない。五次防で出てくるだろう。名古屋製鉄なんかだって、潜水艦ドックヤードも持っているのだから。だからふしぎではないという気はするが、この時点になぜこれを言わなければならぬのか、ふしぎな気がする。あわてて石田海幕長がなぜ否定しなければならぬのか、ここらのところを明確にしていただきたい。いかがでございますか。
  163. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは昨日の佐世保総監部における自衛艦隊司令官の発言なわけなんです。私もいろいろなこういう情報が伝わってまいりましてから、海幕長の報告を一々受けているわけです。幸いテープにとってありまして、そのテープ等も聞いたわけではありませんが、それを翻訳した文章を見ましても、いろいろな場合を想定してものを言っておるわけなんです。ですから、海幕長が言っておりますように、原潜は持つ必要はないし、攻撃型の空母を持つことは憲法上も適当でない、この石田海幕長の言っておることのほうをひとつ正しいものということで御了解を願いたいわけであります。  この場合、自衛艦隊司令官が言いました原子力潜水艦を必要とする云々というよりは、これはもうはっきりと原子力潜水艦が——中曽根防衛庁長官当時にもお答えしておりまするように、商船、タンカーその他が原子力によって航行できる、そういう時代が来れば原子動力で動くいわゆる潜水艦を持つこともあり得る。将来のものの考え方として、これは中曽根君時代にもそういう答弁をしておる記録があるそうでございます。これは私も全くそうだと思います。核兵器というものと、いわゆる核エネルギーによって潜水艦そのものが動く、これは区別できるのではなかろうか。しかし、それも現在にわかにそれを持とうというのではなく、少なくとも世界の情勢が、運航は核エネルギーによって——ちょうど、いま発電がだんだん原子力発電という形に変わってくるということがだんだん常識化されれば、原子力発電ということがそんなに変わったものではない。そういう常識論を踏まえてのかつての中曽根発言、そういう意味にわれわれは解釈しておりますし、この艦隊司令官の発言もそういうことを言っておるわけで、そのあたりは新聞にもはっきり出ておると思います。  問題は、攻撃型空母の問題だ。この攻撃型空母の問題も、私、新聞なども各紙を取り寄せていろいろ検討したわけでありまするが、要するに北村司令官は、現在のアメリカの第七艦隊というものが日本の防衛上非常に大きな役割りを果たしておる、日米安全保障条約というものがなくなった場合、日本がまさに自主防衛といいまするか、自力だけで日本の防衛というものを考えたときは一体どうなるであろうか、こういう想定に立った仮のやりとりをしておるというふうに思えるわけであります。したがって、外部から侵略があった場合、日本の防衛は第七艦隊の支援がなければちょっと困難である、日本の防衛のためには、もしこの第七艦隊の力がなく、日米安保条約というものがなくなった場合には、航空母艦のようなものがあったほうが防衛上ぐあいがいい、しかし、それはあくまで日米安保条約が必要ということなんだということを注釈してものを言っておるわけでありまして、直ちに攻撃型空母を——自衛艦隊司令官といえば海幕長の次といってもいいような責任ある立場にある者でありまするから、軽率な発言はしていないわけでありまして、いろいろな想定に立って、安保がなくなった場合とか、もし安保というものが全然稼働しない場合の防衛、日本独自の防衛というようなことになると、いろいろまた必要なことも考えられるが、現在はそういうものは要らない。サンケイ新聞ですか、これなどは、「日米安保体制下で米第七艦隊の支援があるので攻撃型空母は必要ない」というような記事もあるわけでして、その辺のところも踏まえながらものを言っておるわけであります。それが、そこのところを抜きにして攻撃型空母を持つべしなんというふうに表にあらわれますと、これははなはだ不穏当な発言ということにもなります。これは防衛庁長官としてはっきり申し上げておきまするが、現在、防衛庁において攻撃型空母を持とうなんというようなことは考えておりません。これは念のために申し上げておきます。
  164. 大出俊

    ○大出委員 長官のいまの御発言、これは重大な問題です。あなたが艦隊司令官のおっしゃったことを取り上げて、これは将来の想定であって、いま第七艦隊に守られておるが、安保条約がなくなったらという想定をしておるのだから、妙なことを言っているのじゃないということをあなたは言っておる。肯定をされたんですね。そうなると、あなたはお認めになったじゃないですか。そうだとすると、安保がなくなった将来において攻撃型空母を持つことをあなたがお認めになったのなら、これは重大な問題ですよ。もしそれならば、防衛庁防衛局がつくりました自前防衛の長期構想がある。一昨々年の六月にこしらえた。ある議員がものを言ったからと書いてあるけれども、あの中にはこれと同じことが書いてある。安保がないとすればということから始まって、まず攻撃型空母を持つことになっている。一番最後は、フランスの核開発を例にあげて、二兆円かかる、運搬経費が八千億かかる、二兆八千億円でフランスが核開発をした、日本も計画的にやればこれだけかかるんだ、そこに行ってしまう。  これは大臣、あなたのいまの御発言からすれば、一つもおかしなことを言っていないということになるとすると、安保がなくなったら攻撃型空母を持つことをあなたは肯定することになる。そうじゃなければ、言ったことのほうが間違いでしょう。とんでもない話じゃないですか。何ということを言うのですか。
  165. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私のことばが、それではちょっと足らなかったかと思いますが、これは私は前にそういう説明をしたつもりでしたが……。要するに、攻撃型空母というものは憲法上持てない、こういうことを前提にして私は答弁を申し上げておったように思いますが、このやりとりの間において私のことばが足りなかったとすれば、これは補足させていただきます。  それから、同時に艦隊司令官の言いました意味味は、日米安全保障条約がない、第七艦隊の協力がないという場合には、攻撃型空母というものは、いまは持つ必要がないということになっているが、それからまた、そういうものがなくなった場合、自主防衛なんということになるとそういうことになるから、日米安全保障条約というものに一そう力を入れなければならぬ、ここにウエートを置いて言っておるのがやりとりのようであります。したがいまして、安保条約がなくなった、なくなったらこっちが持つんだという直訳的なことを直線コースで言っておるわけじゃありませんで、その点はひとつ訂正しておきます。
  166. 大出俊

    ○大出委員 あなたの言っておるのは支離滅裂じゃないですか。そんなことないでしょう。いまは第七艦隊に守られておるから安心だ、だいじょうぶだ。第七艦隊がなくなった、つまり安保がなくなった、それが前提なんでしょう。だから攻撃型空母が必要だということになるんじゃないのですか。そう読まなければどう読むのですか。どこの新聞を見たって書いてある。中に大きく書いてあるものと小さく書いてあるものと両方ありますが、サンケイの方がどう書いたか知りませんが、ほかの新聞はみんなそう書いてあるじゃないですか。いま第七艦隊があるから、安保があるから心配がない。しかし、安保がなくなれば第七艦隊がなくなる、裸になってしまう、そうなれば日本はどうするんだ。攻撃型空母は要らないことにならないじゃないですか。いま第七艦隊が守ってくれているからいいというのだから、いまは要らないというのだ。要らないけれども、それは話が逆なんだ。よくお読みください。いまは要らないけれども、安保がなくなったら第七艦隊が守ってくれなくなってしまうんだから攻撃型空母が必要になる、ただし国民が納得してくれればとついている。そうでしょう。  そこで大臣、もう一つはっきりしてください。よろしゅうございますか。あなたがいま憲法上の制約だとおっしゃっている。攻撃型空母は持てないのは憲法上の制約である。さて安保がなくなったら憲法はなくなりますか。憲法はなくならぬでしょう。安保があろうとなかろうと、憲法が厳として存在する限りは、憲法上の制約で攻撃型空母が持てないということになるならば、この発言というのは憲法上不穏当じゃないですか。そうでしょう。攻撃型空母を持つということは憲法上の制約だ、だから持てないということになるならば、あなたは、安保がなくなったときのことを言っているのだからふしぎはないと言うけれども、安保がなくなったって憲法はなくなってないでしょう。現存するでしょう。そうであれば、憲法上の制約であるならば持てないものは持てないのだ。だから、こんなことを口にすること自体が間違っている。はっきり言って憲法違反だ。そうでしょう。攻撃型空母が憲法上の制約ならば、安保があろうとなかろうと、攻撃型空母が云々だなんということを、事もあろうに海上自衛隊の責任者が口にすること自体が憲法違反、そうでしょう。  もう一つ、大体自衛隊というのは、政治的発言をしちゃいけないんじゃないですか。反安保と腕章をつけて郵便局員が中に入っただけで——あなた楢崎君の質問を聞いたでしょう。それだけで、政治的なものだから反安保の腕章ははずしてくれ、それだけ政治的に気を使っている。自衛隊法その他があるんだから。そうだとすれば、制服の責任者が、安保条約がなくなるとかなくならないとか言うのは、これは重大な政治問題。そんなことに口を出すふざけた話がありますか。そうでしょう。原子力潜水艦だって世の中には賛否がある。これは大きな政治問題です。サバンナ号のように、「むつ号」のように、エンジンに原子炉を使ったからといって、だから持てるか持てないかということは、時の政治判断です。そういうことを口にすることをあなたが擁護するとは何事ですか。そんなことは不届き千万。何が政治的中立だ。そんなことは成り立たないでしょう。憲法の問題はどうするんです。
  167. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはどうぞそうお怒りにならぬで……。憲法上持てないという前提で私は答えておったわけですが、本人が、安保がなくなればこうするのだ、ああするのだでなくて、安保がないということになったりなんかしますと、これはどうなりましょうねとか、そこにやりとりがあるもののようです。したがって、そういうのにちょっと乗ってものを言い過ぎた。この点は確かに、制服としてはいささかどうも不用意な点があったと私、思います。しかし、本人みずからが、安保が破棄されたり安保が空洞化した場合にはどうだということを、自分が前提としてものを言ったものじゃない、こういうことを私、申し上げたかったわけですが、言い回しがへたで、そういうふうに聞き取っていただけなかったとすればいま訂正しておきますが、そういう意味ですから、どうぞひとつ御了解を願いたいと思います。  しかし、かりそめにもこういうことで誤解を生むような話題をさらすことは、海上自衛隊のナンバーツーでございますから、それだけに今後よく注意を喚起していきたいと思います。
  168. 大出俊

    ○大出委員 だって大臣、この記事は国民が見るんですから。そうでしょう。国民が海上自衛隊ナンバーツーの方のこの記事を見たときにどう思いますか。それならば、私のように防衛をやっている人間でなくたって、いよいよこれは攻撃型空母まで持つのかな、たいへんなことになるということになるでしょう。安保がなくなったらなんて、そうなれば、自主防衛の行き先は、安保もなくなって核武装までするのじゃないかということになっちゃうんじゃないですか。私の言っていることは、そういうことがあってはならぬということです。  あなたが、部下を、部内の諸君をかばおうという気持ちは、よくわかります。だから誤解もロッカイもしていない。論理的にそうなるではないかと私が詰めただけだ。憲法上の制約だと、あなた言い切ったでしょう。それならば、安保がなくたって憲法が存在する限りは、憲法違反に間違いないでしょう。そういうことを制服の方が、聞かれたからといって言うべきじゃない。そうでしょう。言ってしまったんだからしようがないけれども。だからその点は、あなたの責任ですぞと言っておるわけです。隊法があると言っておるわけです。そこのところを、あなた擁護しようとする気持ちはわかるけれども、国民の目に触れた記事だから、その意味で、その点は明確にしておいていただかぬと、事、簡単に引き下がれない、こういう筋合いです。  ところで、録音があるということなら出していただきたい。いかがですか。私は伊藤さんの時間をだいぶ食いつぶして申しわけないのだけれども、事が事でそうなったから、簡単にそうでございますと言えぬからそういうことになってしまったのだから……。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはどうぞひとつ、私さっきから何べんも申し上げておりますように、まことに制服としては不用意な答弁だったと思いますが、質問がそういう仮定の上に立っておったということでありまするので、これはひとつここで私におまかせいただきまして、あとの処置については、責任をもって、自今こういうことのないように部内の統制をしたいと思います。よろしくお願いしたい。
  170. 大出俊

    ○大出委員 私は、大臣、何もその方をどうしてくれと言っているのじゃないのですよ。一に制服にという責任の転嫁のしかたはきらいなんだ。それじゃシビリアンコントロールできないというのだ。そうではなくて、一にかかって私の責任だでいいんだ、こんなことは。そうでしょう。あなたがいち早く本人や皆さんにものを言えばいいんだ。百も一もない。人間だから言うこともあるのだから。ただし、問題の所在というものは明確にしておいて、シビリアンコントロールというものは長官にあるのだから、そこのところをはっきりしてくれればいい。だから、事の真偽のほどは明確にしなければなりませんから、ここでとは申し上げぬけれども、幸いにあなたは、録音がある、テープがあるとおっしゃる。あなたはあると言ったんだから、あるのなら出していただかぬと、いろいろやりとりがあったからというのだから、いろいろやりとりを聞かしていただかぬと、つながらぬじゃないですか。あなたはあると言ったんだから、いまから消してはいけませんよ。処分せいとかなんとか責任問題は一つも触れてないのだから。そんなことではなく、日本の将来の展望の上に立って安全と言わなければ困るのだから、そのほうが大事なんだから、そんな個人の問題よりも。そういう意味でひとつあるものは出してください。
  171. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 どうぞひとつ、これはさっきから私が申し上げておりますように、私が責任をもってこの問題は対処します。まさに御指摘のように、シビルコントロールにも触れる問題だと思います。しかし、その真相について、私このテープを聞いたわけじゃありませんが、そういうものもあるらしいということを聞いたものですから……。
  172. 大出俊

    ○大出委員 あるらしいじゃない。いまさら何ですか。あなた消したのですか。
  173. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはひとつ私におまかせいただいて、この内閣委員会でそのまたやりとりということになりますと、これはやはり問題もまた派生的にいろいろありましょう。ですから、これまた詳細については大出委員にも申し上げますが、どうぞひとつこれは私の責任におまかせを願いたいと思います。
  174. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの関連で一言長官にお聞きしたいのですが、いまのやりとりを聞いておりますと、新聞の報道を中心にしてやりとりをなさっておる。長官は、いまの海上自衛隊の司令官がこういう意味であったというような話をなさっておる。こういう問題は、長官、せっかくテープがあるならば、全体のやりとりをみなに見せて、これは全部で悪ければ秘密理事会でいいから、全体のやりとりを見せて話をして、そしてこの問題の真相を明らかにするという態度をとってください。そうでないと、新聞の報道したものは、限られた紙面ですから限られた部分しか報道していない。もしそれで誤解を与えておるとすれば、防衛庁として、当然これについての真偽を、全体のやりとりの中から明らかにしてもらわなければならない。こういうことを伏せてはいけませんよ。ぜひとも私はお願いしたい。近い機会にテープの全文を出して、そしてしかるべき場で審議をしてもらうようにしてもらわなければだめだ、こういうことは。新聞は限られた紙面です。しかもデリケートなことを言っておれば——この司令官はいろいろ言っておられるでしょう。前提をいろいろ言っておられるでしょう。そのことが明らかになってこういうものの処置をきめないで、いいかげんな状態できめてはいけないということですね。そのことを特に感じますから、長官にいまのテープの全文を全部コピーしてもらって、そしてしかるべき場で明らかにできるように審議をしてもらいたい。長官は、先ほどの御答弁によれば、安保がなくなればこうなるから、なくならないようにということを焦点にこう言ったという。それはよくわかる。もしそうであれば、この司令官の言ったことも真意もよくわかる。そこらは大事なことですから、それを全部を明らかにしてもらいたい。こういうことは大事なことだから、大事なところを大事なところで、いいかげんなことにしないようにしてもらいたいということです。
  175. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 おっしゃる意味は十分よくわかります。それで、またあれば、私、何も提出するにやぶさかじゃありません。ただ、私、あるとはっきり言ったようですが、これはどうも私の言い違いで、あるように聞いたがということです。ですから、あるいはなかったときに、江崎は隠したのだということでも困るので、これはあるようでということに言い直しておきます。  それからもう一つは、どうでしょう、こういう問題については、主として防衛庁長官が責任をもって、また海幕長等とも相談をして今後誤解のないようにする、これは大事なことです。かりに録音があって、おっしゃる意味はよくわかりますが、そういうものでまたこういう公の場でいろいろやりとりをしますと、一方からいえば、またナンバーツーが非常に神経質になることがあるかもしれません。いろいろな意味で、またわれわれ政治家が反応するのとは違った反応を制服全般が受けるということもあろうかと思います。ですから、これはひとつ私に処置はまかせていただきまして——処置という意味は処罰とかそういうことでなしに、今後、制服なる者は慎重に配慮をしてものを言うべきである、かりそめにも新聞の話題になり議論になることのないように。これはやはり今後といえども大事なことでありますので、その辺一般を含めて、ひとつ私にあと始末についてはおまかせを願いたいと思います。御要望の点についてはよくわかりましたので、なおひとつ検討をさせていただきます。
  176. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私の申し上げるのは、新聞は全部正しいことを書いているわけじゃないこと。そういう例はたくさんあるわけです。しかも紙面は限られているから、かえって逆に誤解を起こすようなこともあるわけですよ。いま長官の答弁には、司令官の真意が伝わっていないというような感じのところもあるので、これは大事な問題ですね。こういう問題を不問に付しなさんなということなんです。防衛庁として明らかにするところは明らかにしなさいということなんですよ。そういう、ことをしないもの、だから、いつでもこういうことがもやもやになってしまう。これは少なくとも私には、理事として、そのテープがあると思われるから、そのテープをとったものをいただきたいと思う。それはどうですか。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはもしあれば、私、自分もまだ聞いておらぬわけですから、そういう話を伝え聞いたものですから、その辺一ぺんよく確かめ、また私も聞いてみます。あれば、委員長と御相談申し上げるということでいかがですか。
  178. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 じゃ、終わります。
  179. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 伊藤惣助丸君。
  180. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣がおりませんので、いまの問題に対しまして私も質問したいと思います。  この国会は、御存じのように四次防の先取り問題から始まりまして、沖繩の自衛隊物資のもぐり輸送の問題、さらには立川の強行移駐の問題等々からみまして、今回のこの北村艦隊司令長官の発言は重大である、このようにただいまも発言があったわけでありますけれども、まず私もその点から伺いたいと思います。  この記者会見は実は二つあるのですね。三十日に佐世保の海上自衛隊佐世保総監部、ここでやったのが、現在まで質問のありました記者会見の内容ですね。もう一つあります。二十九日。これは鹿児島県の鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空隊を訪れた際に、鹿屋市役所、ここで記者会見をやっています。それで、ただいまの発言もきわめて重大でありますが、この二十九日に行なわれた記者会見での司令官の発言がさらに重大である、こう私は思います。  その第一は、専守防衛というのは、政府段階の発言で意味がはっきりしない、また防衛海域は公海上ならどこにでも行ける、こういう点が報道されているわけであります。私は、先ほどの質問に関連しまして、まずこの記者会見で北村艦隊司令官が述べたことについて、もう少し詳しく伺いたいと思います。
  181. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 二十九日の鹿屋発言については、いま政府委員にもただしてみたわけですが、聞いていない。私も全く聞いていないわけでありますが、専守防衛は政府段階がかってに表現するものだというようなことを言っておるわけですね。これはきわめて不穏当だと思います。これはとんでもない話です。
  182. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間はたっぷりあるそうでございますので、このことをすぐ調べて、その内容について、質問中に実態について御報告願いたいと思います。いかがですか。
  183. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 至急調査させて報告いたします。
  184. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それではまず、先ほどありました佐世保総監部での記者会見の内容、もう一回要約して、どういうことを言ったのか。新聞社の報道によりまして多少ニュアンスの違うのがあります。まず防衛庁として、これだけ新聞に出たわけでありますから、それなりの方法で、どういうことを発言したのか正確に掌握しているんじゃないかと思うのです。もし正確に掌握していないでいままで発言したとすれば、これはきわめて無責任でありますし、問題であります。もう一回伺いたいと思います。
  185. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 原子力潜水艦があれば、いろいろ制約を受けるが、自分で持てば一体どういうことになるのかという質問があるわけですね。これについてはすでに長官も、と言っているのは、これは中曽根長官当時の発言のことですが、言っておられるように、原子力推進と核兵器の問題は別個の問題です、金がかかる問題もある、また一般国民が原子力推進と核兵器を混同する、これが、いますぐわれわれも理解されがたいと思うが、原子力推進というものが普通になったその時代においては、海上自衛隊も原子力で推進する潜水艦というものは持ち得るのではないか、これが第一点。  それから、現在、涙滴型の潜水艦というものがあるが、それは原子力潜水艦に改造することができるかどうか、こう聞かれているわけですね。それはできません、またそういうことにはなりませんとはっきり言っておる。これが第二点。  それから第三点において、いまの安保と空母の問題に入るわけでありますが、憲法上の制約はあるが、ヘリを載せるより空母がよいと思いませんかという質問があるわけですね。そこで、日本は第七艦隊にすべてを依存しておる、これは第七艦隊の支援がなければ国土防衛は成り立たない、裏を返せば、日本の防衛は米国とのタイアップだけしか考えられないというようなのが現況であるということを言いながら、したがって日米安全保障条約はきわめて大切だ、こういうものがなくなったりなんかするということになると、いまのヘリ空母だとか、いまの空母だとか、そういったものが必要になる、だからやはり安保は大切だ、こういうふうに話を運んでおるもののようでございます。
  186. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどもありましたように、前日の二十九日に鹿屋市役所で記者会見したその内容についても、テープがあればそのテープを出すなり、または正確な発言をもう一回御披露願いたいと思います。  そこで、いま長官がいろいろお話しになりました。一つは、原子力潜水艦といっても、船の場合は燃料と兵器とは違うんだ、こういうお話がありました。前の中曽根長官も、これはもう現在の憲法上の面からいっても理論的には持てる、しかもこれを五次防段階ぐらいで考えるという発言があったわけであります。そういう点について現在の防衛庁としての見解ですね。そういう点についてはどういうふうに考えておるのか。
  187. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 四次防段階ではもとよりでありますが、いまここに防衛局長もおりますが、五次防、とんでもない、それは考えられませんと、彼は私に耳打ちをいたしました。   〔委員長退席、佐藤(文)委員長代理着席〕 それはとても考えられることではありませんので、中曽根長官が過去において発言した場合も、あくまでも原子力で商船、タンカー、あらゆるものが推進、航行できるようになる、そういう暁には原子力潜水艦ということも考えられるということを言っておるわけでありまして、これが直ちに原子力潜水艦を何次防段階で考慮するとか出現するとか、そういうことにつながらないことは、これはもう誤解を生ずるといけませんから、はっきり申し上げておきます。
  188. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 世界の時代の推移によりまして、原子力商船等が常時使われるという段階が来た場合には、当然原子力潜水艦、原子力を燃料とした潜水艦のことも理論的には可能であるし、考えられる、こう言っておるわけです。現在、日本でも「むつ」ができ上がっておりますし、さらにソ連なんかにおいても原子力砕氷船、米軍にももちろんあります。さらにまた、商船については多少問題はございますけれども、現在、着々と開発されていることも長官御存じだと思うのです。そうしますと、やはりそういった時代は、原子力商船というものを世界の国々が開発し、それが使われるころにはということになりますと、やはりここ十年、そしてまた五次防と先ほど申しましたけれども、五次防、六次防ぐらいの段階では、それがもうあたりまえになるのじゃないか、こう考えることができるわけです。そこで、そうなりますと、やはり防衛庁としても原子力を機関とした潜水艦も考えられるのじゃないか、こう私たちは思うわけです。ですから、そういう点からいっても、ここで基本的には、たとえそれが原子力商船というものが開発されようがされまいが、世界の常識としてそういう商船が航行しようがしまいが、やはり基本的な考え方を明らかにしていかなければならぬと思うのですね。そういう点についてはいかがですか。
  189. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私は率直に申しまして、世の中の船が、原子力時代になれば当然潜水艦ばかりでなしに原子動力で動く自衛艦隊というものは考えられるのじゃないか。これはもう世の中の進歩に従って当然やらなければならぬことのように思います。しかし、それが十年ぐらいの時点で実現するとは思えません。そればかりか、特に原子力潜水艦の必要性ということは——よくいわれますように、在来型の潜水艦というものは蓄電式なものですから、やはり潜水能力にも限界がありますし、したがって、浮上をして海上を走ることによって蓄電をするとか、非常に不便な面がある。潜水艦としての機能からいっても非常に低いものがあるわけです。そういうことが、だんだん原子力潜水艦が先進国においては重用されておるゆえんでありますが、そうかといって、専守防衛の立場に立つ日本が、それをすぐ持たなければならぬというふうには考えておりません。むしろそれよりも、原子力潜水艦をどう駆逐するか、これがやはり専守防衛の立場からいって日本の装備でなければならぬと思います。そういうものが、ヘリ搭載の母艦であるとかいろいろなことがいわれるわけだと思いますが、これとても、先ほど来議論になっておりますような攻撃的な空母を持つというようなことは、日本の自衛隊としてはできないというふうに考えております。
  190. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在、原子力商船が世界にも多少ありますけれども、いま何が問題かということですね。非常に燃料が少なくて、いわば航行には非常に燃料を節約できる。しかもかつて原子力潜水艦がもぐったまま世界を一周した。ノーチラス号ですか。そんなものもありましたね。ですから、商船会社といたしましても、こういうことに目をつけないわけはない。  何がいま問題になっておるかと言いますと、一つは安全性の問題です。しかし現在の商船の安全性は、少なくとも原潜のように第一次冷却水というものは出さなくても済む。ですから、、安全性についてはきわめて完ぺきになってきている。その次に問題は、非常に大きな原子炉、これは重い。ですから、原子力機関をつくった場合には、あまり荷物を載せることができない。非常に重いものができる。それがいま一つの課題になっているわけです。しかし、これも最近の原子炉の開発、あるいは各国が核の平和利用ということについて研究をしているわけでありますから、これは非常に小型の原子炉、さらには安全性については、いままでにないようなりっぱなものが早晩できることが考えられます。  私は、こういうような世界の情勢の中で、防衛庁がそういうことを前提に言ったということについては、やはりある程度の草案として、あるいはまた現在計画決定はないかもわかりませんけれども、検討の段階では実はあったのではないかと思うのです。あとになって急に、政府はいつの場合でも態度を変えるようなかっこうで新しいことを打ち上げますけれども、私は、国民にわかるように、防衛庁が考えているようなことを、こういう機会に長官から率直に伺いたいわけです。私は、原子力潜水艦について自衛艦隊の司令官がこういう発言をしたということについては、国会での論議を政府の方々は非常に気にしておりますけれども、必ずしも不用意に発言をしたのではないと思うわけです。そういう点についてどのように考えますか。
  191. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 潜水艦については、私も常識論として申し上げたわけで、現在の防衛庁において、原子力潜水艦を建造しようとか、あるいはまた、そういう技術の検討を進めるとか、そういったことは片りんだにございません。これは現実に何もないのです。ですから、世の中がそういうふうになってきた場合どうするかと言われるなら、それは当然そうしなければならぬでしょうという、これは常識論としての意見表明でありますから、いま防衛庁長官がそういうことを考慮しておるとか、それを志向して研究しておるとかということは一切ありませんから、これは国民的疑惑のないようにはっきり申し上げておきたいと思います。
  192. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だからそれでは、中曽根防衛庁長官が言ったように、世界の各国で原子力商船等がどんどん使用される、竣工するという時点、これは私は早晩あると思う。その場合、やはり中曽根長官が言ったその発言から見ましても、早い時期にそういうことを考えるということの前提にも私は思えるわけですよ。もしも長官が、原子力を燃料にした軍艦または自衛艦をつくらないと言うならば、早晩そういうような世界情勢があったにしてもやらないと、これは私は国民の前に向かって言うべきだろうと思うのです。いかがですか。
  193. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それはいまおっしゃるとおりでありまして、かりにわれわれが原子力潜水艦を持ってどうしようこうしようということを、いま言っておるわけではない。  ここにちょうどいま、その当時の中曽根君の発言の資料がありますが、これは六十三国会における予算委員会、四十五年の四月の発言です。「推進力として普遍性を持ってくる場合には、自衛隊がこれを推進力として使っても、との基本法には違反しない」。もう一つの発言は、「将来原子力推進による船舶というものが一般化した場合には、自衛隊もその場合には考慮していいと思っておる」。「科学技術庁長官及び法制局長官とも、ただいま私が申し上げたような考えにおいて一致しております」。高辻法制局長官の場合、そのあとを受けて「一般化したものに従ってやっても、それは殺傷力、破壊力に用いられるのではないから、原子力基本法に違反するとまでいうことはあるまいというような結論になって、統一見解としてお話を申し上げたことがございます」、こうありますから、先ほど私が申し上げたのもこの意味を申し上げたわけで、いわゆる原子エネルギーを破壊、殺傷ということには絶対用いない。むしろこの場合は平和利用というものをいかに推進するか、こういうところに重点があるわけでありまして、私ども、核エネルギーの平和利用ということには、日本はほんとうにもっと力を入れるべきだという論者です。しかも、核エネルギーの犠牲になった日本民族というものは、これを人類に貢献させる、平和利用としてうんと高度なものをかちとったときに、日本人は原子エネルギーを征服した、こういうことが言えると思います。そういう一般論、常識論としての見解であるというふうに受け取っていただきたい。
  194. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに防衛庁長官もその考えは変わらぬというわけですね。中曽根長官と同じだということですか、まず第一に。
  195. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そのとおりでございます。
  196. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、原子力商船等が一般化した場合には、一つは、当然自衛隊においても原子力を燃料とする艦艇ももちろん考えていく、こういうことになりますね。
  197. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そのあたりはちょっとことばのむずかしいところでして、これは間違わぬように聞いていただきたいと思います。  そういう時代になれば当然検討される題目になり得る。これは御承知のとおり、私が一人でこうやると言ってみたって、四次防一つにしても、これが国防会議の議を経る、国会の議を経る、いろいろな段階を通るわけでありまするから、いろいろな各種の船舶が原子力で航行するのが世界の常識になるということになれば、原子力で推進される——いわゆる破壊兵力でない、推進するという意味になれば、これは検討される余地は十分あります、こういうふうに聞いていただいたほうが間違いがないと思います。そういう意味を申し上げておるのです。
  198. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 自衛隊の戦略の見積もりは、常に十年、二十年先を見通して、技術的にあるいは戦略的に見積もるわけですよ。先ほど私が指摘しました原子力商船というものの一般化はもう早晩来る。そうなりますと、そのことを見通さない方はいませんよ。ましてや専門家であれば、そうした場合、当然防衛庁としては、何年度計画にのっけてどうのこうのじゃなくて、やはり検討されたんじゃないかと思うのですが、その点いかがです。   〔佐藤(文)委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現在までにそういうことを検討したことはありません。早晩というふうにおっしゃいましたが、まさに早ではなくて晩のほうに力点があるわけで、これはコスト高で、実際問題として、まだここ五年や六年では商船としても採算が合わないというのが現状であります。これをどう克服するかということは、これから平和利用の重要な点でありますが、一般化するのには、まだ十年、もっとかかるんじゃないですか。したがって、そういう段階が来ればその段階で検討をする。したがって、戦略見積もり等においても、そういうことを検討したことはございませんし、また、いまそれを考えておるというようなことは一切ございません。
  200. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま防衛庁長官ちらっと漏らしましたが、コスト高であるとなぜわかったのですか。それで、大体いま潜水艦や艦艇をつくっているのはどことどこですか。
  201. 久保卓也

    ○久保政府委員 私の所管でありませんので不正確かもしれませんが、三菱の長崎造船、それから石川島播磨、それから浦賀、それから神戸の川崎重工、それから舞鶴の舞鶴重工ですか、ちょっと違っているかもしれませんが……。
  202. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私たちはこの防衛産業を見た場合に、とにかく一番防衛庁に中心的な存在として、防衛産業の中でも一生懸命やっているのは三菱でしょう。三菱重工を含む川崎重工業とか石川島播磨とか、非常に密接不可分の関係にありますね。最近、原子力の燃料の研究を実は三菱でやっているでしょう。これは埼玉県に研究所をつくりまして、そしてやっているじゃありませんか。住民からは、その件について、中で何をやっているのだ、三菱は防衛庁の、昔で言うならばもう軍需廠である、防衛庁と関連があるだろうと、これは地域住民が騒いでいますよ。  私は、常に防衛というものについては、三次防のときに四次防を考えているし、また二次防のときにすでに三次防、四次防を考えていました。今回の、現在まだきまっておりませんけれども、かつての中曽根長官は四次防と言わなかった。新防衛力整備計画と言った。なぜかならば、十年間の一つの整備目標というものがあるからそういうことを言うのだと言った時期がある。それが、西村防衛庁長官あるいはまた増原防衛庁長官は、やはり年度別でいくことが正しい、きめるならば四次防だ、こういうふうに言って、十年間の目標を五年間に詰めて、そしてわれわれにまた防衛庁原案を出しました。結局その中には、そういうことが私もないと思っていました。しかし、防衛庁と密接不可分である三菱はすでにそういうことを研究し始めている。しかも中曽根長官が防衛庁長官のときにアメリカに行って、あなた方何をやってくるのだと、こう言ったときには、お互いに防衛問題について話し合うテーブル、これを年一回か、あるいはまた、軍事でなくて向こうの専門の政治家とも話し合いをするテーブルをつくってくると言った。それ以外に何があるか、何もありませんと言いながら、向こうに行って一生懸命になって原子力のことを彼は見てきたじゃありませんか。そして、なぜそういうところを視察した、こう言ったときには、彼は何と言ったか。それは日本には原子力がなくてはならないエネルギーである。そんなことは通産省の問題であり、ほかの燃料公社の問題ですよ。防衛庁長官がそんなことを言って、あのときずいぶん国民から疑惑を受けた。私はいないところで中曽根さんの悪口を言うわけじゃありません。ありませんけれども、そういう経緯がある。もしそうであるならば、率直に、前向きに検討したこともあった、ところが、コストは高いし、一般商船もまだまだ十年ぐらいは一般化されないだろう、だからその次にしようというぐらいの話し合いはどこかで話したのでしょうと言っているのです、私が言っているのは。
  203. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 中曽根君がどうして原子力施設を視察して歩かれたかということについては、私はよくわかりません。私が察するのに、彼は過去において科学技術庁長官をしたことがあります。したがいまして、非常にそういう問題に関心が深い、こういうこともあろうかと思います。それから私がコスト高であるというようなことは、これもやはり一般論を申し上げたので、「むつ」を製作しておる段階において、とてもじゃないが、商船としてはこれはコストに合わない。私は、平和利用はいま世界の六番目くらいということがいわれておりますが、ナンバーワンかツーになるべし、そういうことがまた核兵器の抑止力にもなってくるのだ、平和利用のワンかツーになればもっと日本の評価というものが変わるんじゃないかという論者ですから、多少自分でもそういうことに関らを持っておるから、そのことを常識論で申し上げた程度で、防衛庁において検討したということは、これは一切ございません。これは、私がございませんと言うより、防衛局長のように、政府委員としておる者がお答えしたほうがいいと思いますが、そういうことは一切ありません。
  204. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから先ほど、原子力商船というものが一般化した場合には、防衛庁長官も同じように、原子力を燃料にするのは、必ずしも原潜だけじゃないですね。やはりほかの艦艇なんかにも考えられます。そういうときにはどういう見解かと私は申し上げているのです。
  205. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういう時期が来れば、これは防衛庁としてもそういうものを採用するかどうか、それは私が一人できめられることじゃございませんので、検討台として十分検討に値するものになる、こういうことを申し上げたわけです。どうぞ誤解のありませんように。
  206. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ところで伺いたいのですが、燃科電池による艦艇の推進力、このことの研究はどのような成果があがっていますか。
  207. 久保卓也

    ○久保政府委員 これも私の所管ではありませんが、たしか昭和三十年代から進めておりますけれども、非常にむずかしい開発のようでありまして、この燃料電池が将来でき上がるかどうかの見込みというものは必ずしも明確でない。むしろネガティブではなかろうかといま見ております。したがいまして、もう少しやってみまして、見込みがないということであればやめたほうがいいんではないか、これは私の防衛局としての見解であります。
  208. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 アポロで推進力に使われたのは燃料電池じゃないですか。
  209. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのように伝えられておりますが、私はよくは存じておりません。
  210. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、アメリカでできるものを日本はできないことはないと思いますよ。アメリカでは燃料電池をアポロで使って、そして月に行って岩石を持ち、いろいろやっております。そういう先進国があるにもかかわらず、わが国はできないからやめますか。
  211. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはもう二、三年やってみまして、その成果を見てみないといけません。ただし、三十年代から相当力は入れているつもりですが、なかなかはかばかしくない。そこで、一定の経費のワクの中で研究開発をする場合に、あれもこれもというわけにいきませんので、われわれの能力の中で、つまり科学技術陣の中で非常に特徴とするもの、あるいはわれわれが得意とするもの、そういうものに重点を向けたほうがより得策ではなかろうかという選別の問題でありまして、やってやれないという問題ではないと思います。
  212. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、たとえば燃料電池が開発された場合に、これを潜水艦に使った場合にどれだけの潜航能力がありますか。
  213. 久保卓也

    ○久保政府委員 燃料電池の場合には、これは原子力潜水艦に使わないで、現在の電池にかえるものであります。現在の電池ですと、二十四時間の中で数時間は浮上しなければいけません。この燃料電池ですと、たしか、数字があるいはちょっと違っているかもしれませんが、一週間ぐらいは浮上しなくて済むのではないかというふうに思っております。
  214. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、わが国は、決して外国に軍事援助とか、あるいはまた、どこまでもどこまでも侵略者を追撃していくというような可能性はまずないですね。そういうことから考えた場合、先ほどもいろいろお話がありましたけれども、たとえ原子力商船が一般化するような時代になった場合に、防衛庁も原子力潜水艦を考える、原子力を燃料とした艦艇を考えるという前に、現に先進国ではアポロで使って大きな成果をあげている、そういう実例があるのですから、私は燃料電池の開発にもっと力を入れるべきじゃないかと思う。そしてまた、それを二年ぐらいやってだめならやめるなんというのは、私はおかしいと思うのだな。だから私は、先ほど来言っているように、もう最初から原潜を予定して、国民が納得すれば使いたいという、そういうものがあるのじゃないかと私は言いたいわけですよ。だから、そういう誤解を受けたくない、また使わないのだとどこまでも言うならば、そういうものに力を入れて、たとえ原子力商船というものが一般化した時点においても、わが国とすれば燃料電池を開発して、それが成功すればそれをやるのだ、こういくべきじゃないかと私は思うのですが、長官いかがですか。
  215. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 非常におもしろいサゼスチョンだと思います。そういう形でいくことが、やはり段階的にいくことが望ましいので、いきなり原子力アレルギーのある国民に、原子力関係の潜水艦を、それが推進力で動くだけだと言ったとき、理解されがたいところもありますから、伊藤議員の言われる意味は非常にりっぱだと思います。そういう意味でこれをうまく成就させることが大事なことだと思いますが、十分考慮に入れながら、これはあくまで今後の問題でありますが、検討に値するものだと思います。
  216. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が申し上げたいのは、防衛庁とすれば、現時点においては国民の感情が原子力潜水艦を持つことについて強いアレルギーがあるという見方をするのじゃないかと思うのですね。ですからやらないというような考え方じゃないかと思うのです。だからそれが、国民感情がもしかよくなればやるというのではなくて、そのほかのものの開発に力を入れて、そういう軍事艦艇には——これは平和利用は別ですよ。先ほど長官、おかしなことを言いましたけれども、原子力潜水艦に核燃料を使って、そしてこれを攻撃に使わなければいいとか、あるいはまた、それが、ミサイルや何かを積まないのだからいいなんというようなことは、別々に考えることはおかしいですよ。私たちは、どうしても国民感情として言えることは、いわゆる自衛艦が、たとえ専守防衛のためであっても原子燃料を使えば、これはやはり完全な一つの軍艦であるし、その搭載する装備によってこれは攻撃型だから悪いとか、あるいはもっぱら守るのだからいいというようなことの限界、あるいは判断の基準というのはしにくいと思うのですよ。だから私は、そういう意味でも原子燃料を使うことはやめたほうがいい。ほかの方法で解決すべきだと思います。その点、私は明確に言っておきます。  それから、先ほどの北村艦隊司令官の発言になりますけれども、この攻撃的空母を持たないということ、それじゃ専守防衛のヘリコプター空母みたいなものは持てるのですか。その点はいかがですか。
  217. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 前段の話については全く同感です。それは段階的にということでしょうし、それから、あくまで先ほどのは、私、何べんも繰り返すように、常識論として、一般の船が原子動力で動いておるというときには検討に値すると、なかなか大事なところですけれども、すぐやってしまうと言ったわけじゃありませんので、どうぞその辺は十分御理解を願いたいと思います。  それから後段の点については、ヘリ空母等々は、やはり防衛というたてまえからいって、これが憲法に抵触するとは思いません。
  218. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、ヘリ空母というものは憲法に抵触しない、それが現在考えられている次の段階で出てくるのではないかと思いますが、ヘリコプター、現在は三機載せる護衛艦、これはいま一番の最新鋭艦ですね。次に考えられるのは、やはりヘリコプター六機ですか、搭載できるものを考えているようです。これはヘリコプターであれば、それが六機載せようと十機載せようと、あるいは五十機載せようと同じですよ。その甲板が、たとえばたくさん載せようとすれば広くなりますよ。最近考えられるのは、イギリスなんかも常時使っておりまするハリアなんというのは、垂直の離着陸できる海軍機がありますね。日本にも来て、横田の基地に来まして、その実験なんか公開されたことがありますけれども。ですから私たちは、この攻撃型空母とかヘリ空母とかいったって、これはまた非常に問題だろうと思うのです。たとえばヘリ空母として甲板を考える場合、あるいはまた攻撃空母として考える場合、どこに明確に違うという考え方があるのですか。
  219. 久保卓也

    ○久保政府委員 これば兵器でありますから、システムとしてとらえてみますと、必ずしもおっしゃるような区別はないと思います。しかしながら、かりにたとえば一万トンのヘリ空母ができまして、それがヘリコプタ三を搭載するためにつくられたものであり、そういうようなシステムになっておるという限りにおいては、かりに二十機積んでおりましても、これは憲法上認められるところであろうと思います。しかしながら、同じように一万トンの船でありましても、これがたとえばハリアのようなものであって、しかもハリアが将来性能が向上いたしまして、システムとしてとらえた場合に、それがたとえば海外の領域を攻撃するような任務を与えられるようなものとして設計され、つくられておるということであれば、これは一種の攻撃型空母に変質するということではなかろうか。したがいまして、単純に形だけではなくて、やはり具体的なシステムとしてとらえて区別をしないといけないのではなかろうか、そういうふうに思います。
  220. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのシステムとやらあまり詳しくわかりませんけれども、要するに、甲板は同じであっても、そこに搭載する戦闘機であるとか、あるいはまた飛行機の種類によって、攻撃空母になるし、またはヘリ空母という。そしてヘリを載っけた場合に限っては憲法に抵触しない、あるいはまた、ハリアだとかほかの艦載機などを積んだ場合には攻撃型になる、こういうことになりますか。
  221. 久保卓也

    ○久保政府委員 同じ船で単純に飛行機の機種が違うというだけではないと思います。たとえばヘリコプターを搭載する場合には内部の構造も違うでありましょうし、それから甲板の厚さも違うでありましょうし、したがいまして、ヘリコプター搭載専用につくられておるようなもの、これは問題ないと思います。しかしながら、相手国の領域を攻撃するようにつくられたような船、これはやはりおのずから、単にその大きさだけの問題じゃなくて、内部構造そのものも違ってまいると思いますので、そういう意味システムと申し上げたわけでありますが、そういうようにつくられたものが、いまのようなハリアその他と結び合わされますと、やはり一種の攻撃型空母ではなかろうかというふうに思います。
  222. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 局長システムシステムとよく言われますけれども、要するに空母といいますものは——確かに甲板の薄い厚いはありますよ。ハリアの場合、日本の艦艇には載らない。なぜかならば甲板が薄いから、こういわれておりますね。だから攻撃型の艦載機を載せる場合にはもっと厚くしなければならぬ。ヘリコプターの場合にはもっと薄くて済む。あるいはまだ、発進する場合にパチンコのようにぽんといくやっと、あるいはまた、着陸したときにあれを引いて、そこでひっかけるというようなことの違いじゃないかと思うのです。あとは船そのものは、ただこれはもう航行しているだけであって、攻撃する場合には飛行機そのもの。編隊の先頭に立つ編隊長の考え方で、攻撃もすれば、あるいはまた警戒もするわけですよ。システムといったって、結局、甲板を厚くすることと、いわば簡単な発進をするときのパチンコみたいな、ひもみたいなものとか、そのくらいの違いじゃないですか。ほかにあるのですか。
  223. 久保卓也

    ○久保政府委員 必ずしもそうではありませんで、ヘリ空母という場合には、やはり対潜掃海、潜水艦狩りに使われるわけでありますから、船自身も、なるべくんばソーナー、つまり潜水艦を捜索するための機材を搭載するというようなことが必要であります。反面、今度は攻撃的な母艦でありますと、まず相手国の航空優勢下に入る可能性があるわけでありますから、防空任務ということが非常に重要になってまいります。そういうことで、対潜の場合でありますと、相手国の領土から離れた外洋に出かける、そういう意味での防空の面は、あったほうがもちろん望ましいわけでありますが、弱くなるけれども、攻撃型の空母の場合にはその面を強くしなければいけない。そういったもろもろの相違というものがやはり出てまいろうと思います。
  224. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは、私は前にも観艦式なんか欠かさず見ておりますけれども、要するに作戦によっては、対潜哨戒に力を入れる場合と、あるいはまたその他の攻撃の場合と、それは持ちものが違うのですよ、船そのものは同じであっても。それで結局は、対潜航空母艦で一番問題になりますのは潜水艦攻撃ですよ。対潜設備のない攻撃型空母なんてないですよ。要するに攻撃型空母と守るためのヘリ空母の違いというものは持ちものによって変わってくるだけのことであって、そう変わらないと私は思うのです。そこで、もちろん攻撃型空母というものは持たない。憲法に抵触する。しかしながら専守防衛のためのヘリ空母ならいい。ここにも一つ大きな問題があることを私、指摘しておきます。   〔委員長退席、佐藤(文)委員長代理着席〕  そこで、ずれてしまいますから申し上げますが、二十九日の日わかりましたか。
  225. 久保卓也

    ○久保政府委員 まだです。
  226. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 すぐ調べてくださいよ。この北村艦隊司令官が言っているのは、政府段階でいう専守防衛なんていうのは意味がわからないというのですよ。これはほんとうにわからないのか、それともそんなことはあり得ないと考えているのか。その点どうなんです。
  227. 久保卓也

    ○久保政府委員 新聞の記事だけいま手元にありますが、この中で書かれておりますのは、専守防衛というのは政府段階の発言で意味がはっきりしない、こういう表現でございます。これは私ども実はよく聞かされておる事柄でありまして、専守防衛というのは、おそらく中曽根長官が使われたことばではないかと思います。このことばを軍事的に申しますると、戦略守勢ということばを普通使っておりまして、これは従来の国会答弁でも、戦略守勢と同意義であるというふうに大臣方が御答弁になっておると思いますけれども、これならば軍事用語だからわかる、こう制服の連中は言うわけです。専守防衛というのはどうもよくわからないということを言っておるようであります。しかし、戦略守勢的な観念であるし、戦略守勢のほうは制服連中にはわかりやすいけれども、常識的にはむしろわかりにくい。むしろ専守防衛といったほうが何となく普通の人にはわかりやすいし、すでに防衛庁では、一昨年だと思いますけれども、それ以来定着していることばであると思いますので、私はたいへんわかりいい表現ではなかろうかと思います。
  228. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたそうおっしゃっても、海上自衛隊で一番えらい人は艦隊司令官でしょう、この人がわからないと言っているじゃないですか。専守防衛という意味がわからない。よく教えていないのか、それとも見解の相違があるのか、あるいはことばであっても実際はないということなのか、その点いかがですか。
  229. 久保卓也

    ○久保政府委員 実体はもちろんございます。ただ特に、現在の自衛隊の幹部の人たちが旧軍の教育を受けておるというようなことで、昔のことばがやはりなじみいいということであろうかと思います。ときどき私どものことばの中でも、今日あまり使わない、旧軍が使っていたようなことばを申し上げて私どもしかられるわけでありますが、そういった意味で、戦略守勢ならば彼らにはわかりいいけれども、専守防衛ということばはわからない、こういう意味であったろうと思います。
  230. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、国民がやはりわかるようなものの言い方、こういうことが一般常識化している場合には、当然このくらいのことはわからしておく必要があるのじゃないかと思うのであります。  私はここで一番指摘したい点は、専守防衛なんてあり得ないのだ、要するに、専守防衛も、攻撃的な訓練も、あるいは守るための訓練も特に差別はない。むしろそういう意味で専守防衛ということがおかしい、こう私は感じてしようがないわけですよ。だからこそ、原子力空母が必要だとか、安保がなくなったときには、第七艦隊のあとを海上自衛隊が引き継ぐような場合には、現在、第七艦隊を中心にしてこの極東におります米軍の原子力空母、あるいはまた攻撃型空母、これを想定しているのじゃないか、私はこう思うのです。  そこで、もう一つ伺いたいのですけれども、防衛海域ならば公海上はどこまでも行けるんだという考え方、この点についてはいかがですか。
  231. 久保卓也

    ○久保政府委員 これがもしこの表現どおりであれば、これは不適当であると思います。
  232. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは公海上の防衛の限界はどうなっていますか。
  233. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、厳密にどの程度と言うことはなかなかむずかしいわけでありますが、やはりわが国を守り得るのに必要な範囲と、抽象的に言うのが適当だろうと思います。しかしながら、四次防原案の場合に、それを一応千マイル程度というふうに申しておりまするし、さらに、四次防原案は白紙に戻した今日、江崎長官は数百マイル程度というふうに申しておられます。
  234. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が言うのは公海防衛のことであって、領海上における防衛ラインをいまあなたおっしゃった。これは、江崎防衛庁長官になって、中曽根長官の述べた千マイルを数百マイルに縮めた、そうですね。それはわかりますよ。しかし、私がいま質問しているのはそうではなくて、公海上の防衛です。公海上については、どこまでも行って防衛することができるんだということ。もしそれを間違いであるとはっきりあなたおっしゃるなら、それでは公海上については、どういう一つの限界、あるいはまた、どういう防衛のための作戦を制服と話し合っているのか、その点、伺いたい。
  235. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在の防衛構想からいたしますると、公海上でありまするから、御承知のように内航と外航に分けて考えています。そして内航の場合には、これは本土から比較的近い、数十マイル程度離れた、あるいはせいぜい百マイル以内の範囲でありましょうが、もう少し遠い外洋につきましては、いわゆる外航の分野でありまして、これが先ほど申し上げました数百マイルということで、この範囲内におきまして、一般に艦艇を二群ないし三群遊よくさせて潜水艦の掃討を行なうというようなやり方もありますし、あるいは航路を南西航路と南東航路を想定いたしまして、その範囲内においては、なるべく相手国の潜水艦が近寄らないような活動をやるというようなやり方もあります。場合によってはまた、船団護衛を組んで航行の安全をはかるというようなやり方もあります。いずれの場合におきましても、大体本土からそういった場合に数百マイル離れた範囲内において考える。したがいまして、マラッカ海峡とかインド洋というのがちらほら限界として出てまいりますけれども、それは本土の専守防衛というような範囲からは逸脱するのではなかろうかというように私ども考えております。
  236. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうも意味がわからない。意味がわからないということは、やはり向こうもあなた方の言わんとすることはわかっていないから、こういうことも平気で言うのではないかと思うのです。  公海上の防衛は、まず原則的にある、これは認めていますね。それじゃ、その公海上の防衛の限界はどうなっておるのですか。日本には安保関係がありますから、それは日米関係における防衛ラインだとか、公海防衛上における話し合い、こういうものはあると私は思うのですね。それから、そういう点については、任務分担も明確になっておるのではないかと思う。私は毎回長官に聞いても、あるのかないのかさっぱりわからぬ。その点はいかがですか。
  237. 久保卓也

    ○久保政府委員 おっしゃるように、私も実はあるべきだと思うのですけれども現実にはございません。なぜかと申しますと、やはり一般的に、日本の周辺海域の防衛は日本でやる、これは抽象的に米側も考えておるわけでありますが、何マイルまでは日本でやる、どの海域まで日本側がやり、どの海域から以遠は米側がやるというような打ち合わせはなかなかできない。これは米側としてもそれだけの責任が負いかねる。つまりそのときの国際情勢によってどの程度艦艇を回せるかというような動く要素がありますので、その辺がなかなか明確には一線を画せないというのが現状であります。
  238. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから防衛海域というのは、公海上はどこまでも行けるといわれても、じゃそれは否定できないのではないですか、なかなかむずかしいということでは。しかも日米関係としてきまっておるのかといえば、それもきまっていなければならぬのだけれども、きまっていない。これでは防衛の任務につく者にとっては迷うじゃないですか。そうして公海上の防衛についてはどこまでも行ける——それはおかしいんだ。これは、あなた方と制服の考え方に大きなズレがあって、あなた方がはっきりしなかったら、技術的にかってにきめておるということも考えられるのではないですか。
  239. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、私、あるいは防衛局、あるいは内局がかってにきめた構想ではございませんで、まず海幕が立案し、私どもも同意した考え方、そういうように御認識いただきたいと思います。
  240. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、公海上はどこまでも行けるというのは誤解である、どこまでも行けないというなら、その限界はどこかということです。
  241. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、何マイルまではよろしいが何マイル以遠は適当でないというふうに、明確な数字を申し上げることはやはり困難であろう。しかし観念的に、たとえばマラッかだとか、あるいはインド洋まで行くのは不適当である、やはり日本の周辺数百マイル程度というのが日本本土の防衛上は適当であろうというふうな考え方であります。その点については、海幕ももちろん了承、というよりも、海幕の考え方に基づいてわれわれも了承しておるというのが現状であります。
  242. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、マラッカ、マラッカと言われるけれども、マラッカだけではないのですよ。これにはアメリカ航路もあるし、ハワイ航路もあるし、いろいろなところがあります。ずっと前も国会で問題になっておりますが、公海上の防衛については、そこに船舶があり、いろいろな問題が起きておる、そこに自衛艦が行くという場合に、やはりある程度その船舶を守るためのいわゆる防衛上の考え方というのはあると思うのですね。前の、これは外務大臣防衛庁長官かわかりませんけれども、私の記憶では、やはりその公海上にある船を守る範囲である。あなたの場合何もわからないわけですよ。ただ海上自衛隊がきめているだろう、それにのっとっているというだけで、じゃどういうふうにきめているのかと言ったって、あなたはいまは言わない。まず、大体それをきめているのですか、そういう作戦の見積もりや何かについて。それをあなたは、聞かないからわからないのか、あってもわからないのか、全然ないものなのか。その辺はどうなんですか。
  243. 久保卓也

    ○久保政府委員 この問題については、純粋の憲法論で検討したことは実はないわけでありますが、たとえば船団を護衛する、あるいは一つの船でもよろしいのですが、重要な船を戦時に護衛をする、その必要があってあるいは豪州まで行く、あるいはインド洋を越えていく、それはその船を守るために必要なんだという場合に、それをやるのは一体専守防衛という立場の憲法上の観念からいって適当であるかどうか、ここのところはまだ不明確であります。なぜかならば、われわれのほうでまだそういう計画は全然立てておらない、むしろ専守防衛という立場から言うならば、日本周辺の数百マイルで足りる。この前、防衛庁長官が申し上げましたように、南西航路とか、あるいは南東航路をとる場合に、延ばすとしてもせいぜい千マイル程度であろう。一般的な海上交通の安全の保護をはかるためには数百マイルで足りるであろうというのが、いま一応の防衛庁の考え方であります。
  244. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私、ちょっと疑問に思うのですが、前に海外派兵と海外派遣とは違う、海外派遣はできるのだという議論のときには、やはり船団護衛とかなんとかいうような議論が出ましたね。まだ検討しないというのは、あなたが言いたくないからそう言っているのか。あるいはまた、あいまいな答弁しかしないのか。そこらはわかりませんけれども、じゃまず海外派遣は、たとえば領海、領空を越えて、それから数百マイルを越えて——それじゃ海外派遣とも言えるようなあれはできないのですか。
  245. 久保卓也

    ○久保政府委員 海外派遣というのは、一応、日本の防衛に必要な範囲を越えての派遣というふうに抽象的にはいわざるを得ないと思うのですけれども、それではどういうことなのか。具体的に海外派遣であるか。これが、外国の領土にわが自衛隊の部隊を派遣することは、明確に海外派遣、海外派兵になると思いますけれども、海洋である場合に、それが海外派兵になるかというと、必ずしも一がいにはそうは言えない。もちろん、領海に入ってしまえば海外派兵は明らかでありましょうけれども、公海の場合はそうは言えないのじゃないかと思っております。
  246. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから、公海上はいいわけでしょう、いまあなた方の解釈だと。私は何もそれに賛成しているわけじゃないのですよ。だから、いまあなた方の土俵で議論しているのですから、そこを誤解しないようにしてもらいたいのですね。  いままでは、海外派兵はできないけれども海外派遣はできる。これは当然、先ほど言ったように、わが国の領海あるいは領空を越えて派遣はできると言われてきたわけですよ。その中で、当然、公海防衛については、これはもう海上自衛隊で、実際、具体的に日米関係の合同訓練なんかでも公海上でやっているわけですから、当然その場合、日本の場合には公海上ではここまではやるのだ、あとは米軍に負うのだ、核戦略は米軍に頼むのだ、通常段階について全部自衛隊がやるのだ、こんなことくらいは、あなたはさっきから、ない、ないとおっしゃるけれども、あってあたりまえだ、なくてふしぎだと私は思うのです。そうして、ことしだってずいぶん日米合同演習をやっているじゃないですか。しかも千葉の銚子沖で、漁場の最盛の時期にアメリカの原子力潜水艦を借りてやっている。これは公海防衛の一つのパターンじゃないですか。それでいて、いまごろ、なかなかむずかしいなんて議論は古過ぎるのじゃないですか。そう思いませんか。
  247. 久保卓也

    ○久保政府委員 米側との接触では、日本の周辺の海上交通の保護、これは当然日本の任務であるとされているわけです。しかし、それでは日本の周辺と言っても、たとえば三百マイルであるのか、あるいは六百マイルであるのか、これを具体的に数字で見るということになりますと、日米でそういった合意というものはない。したがいまして、日本周辺というのはおよそ数百マイル、三百マイルもあるし、七百マイルもあるかもしれませんが、およそ数百マイル。これは、そういった範囲内で、そのときの海上自衛隊の能力、それから相手国の潜水艦の進出の状況というものによっておのずから違ってくるというふうに言うべきでありまして、必ずしも具体的な数値をそこできめることが適当であるというふうにも思えないのであります。
  248. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は何メートルを言えと言うのではないのですよ。たとえば日本の領海、領空を守る範囲、これをあえて言うならば数百マイル、数百キロ、これは江崎防衛庁長官がおっしゃったことですね。たとえばこの前の発言はそうじゃないですよ。領海、領空を守れる範囲ということを言ったわけです。それじゃあいまいだからと言われて詰められて、一千マイル、それから数百マイルになったわけです。公海防衛上についても言うなら、私はその原則論があると思うのですね。だから、いままでの皆さんの発言から見まして、公海上においても、そこに商船がいる、あるいはある侵略者から攻撃されている、その場合には、その船舶が通るところはやはり領海である、だからその領海を守る範囲でそれを防衛の限界とするのだ、というくらいの考え方があるのかないのか。
  249. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまお話しのような考え方はございません。ただし、商船を保護するということは、領土といいますか、財産といいますか、日本のものそのものと考えて、その商船そのものを保護するに足る必要な範囲。これはしかし、商船そのものが非常に動きますから、特定海域だけであるとは限られないというようなことになると思います。
  250. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 結局、私はあなたにそのことを聞きたいのですよ。だから私は例をあげたわけですよ。当然、公海上の防衛も考えるのでしょう。考える場合に、相手が足が長い、それこそたとえばサブロックのようなもので攻撃をされるようなことになりますと、あれは一回水中で発射されたものが海上に出て、空を飛んで、そばに来てまたもぐって、それから出てくるのでしょう。非常に長距離から撃てるわけですよ。そうした場合は、やはりそこまで守るために何らかをしなければならない。すなわち、公海防衛というものの原則は、航行している船舶、その船員の生命と財産を保護するためには、何らかの措置を講じなければいけない。しかもそれが海上自衛隊に助けを呼んできているときに、そうなった場合、やはり公海上防衛はあり得る。海賊船が出た場合だってある。その場合、ある程度の限界というものは明確にしておかれないと、いま言ったように、どこまでも行けるのだ。このことが事実かもしれない。しかしその場合、あるいは第三国の領海あるいは内水にまで及ぶようなことがあるかもしれない。だから私は、ある程度の原則論を、海上自衛隊の言うなりじゃなくて、どこまでも専守防衛ということを言うならば、公海防衛についての考え方はこういうことなんだ、いままで言ってなかったが、いまこの時点では明確にしてもらいたい。いかがですか。
  251. 久保卓也

    ○久保政府委員 それは明確にはなり得ないように思います。たとえば、いまお話しの例でわりあい具体的に議論しやすいのは、船団護衛のようなときだと思います。船団護衛のときに、たとえば五十マイルの範囲が船団護衛をするために必要な範囲であるとかりに仮定いたしますると、これは戦時でありまするから、そうすると敵性の潜水艦が百マイル外にいるというときには放置しないといけません。しかしながら、放置しておきますると、敵性国の潜水艦でありますから、わが海上自衛隊が護衛しているときはよろしいのですけれども、その他の場合わが商船を襲ってくるかもしれないということで、発見をしてそのまま放置するというわけにはやはりいかない、そういうふうに思うのです。そういう意味で、それが千数百マイルも遠くまで行ってやるということではありませんが、本土から数百マイルの範囲内においては、やはりそういうものを追っかけて掃討すべきではなかろうかという観念に立ちますので、個々の船あるいは船団単位で何マイル程度が防衛の範囲であるというふうにきめるのは不適当であろうと私は思います。
  252. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたは私の質問を、すぐにわが国の領海を守る方向に持っていって答弁される。数百マイルにあなたは固執している。私はそんなことを聞いているのではない。こういうことは起こり得る可能性があるのです。たとえば海賊があらわれる。今後だってこういうことはありますよ。たとえばつい最近ですが、沖繩に現金を輸送しましたですね。ああいう場合だってやはり公海上を通りますよ。その場合、攻撃された場合には、それじゃどこまでも行くのか、あるいはまた、ある程度のところでやめるのか、そういう議論が大事になるわけですよ。またそういったことを想定して作戦というものは練っているわけです。今度の現金輸送の場合にそういうこともある程度想定したと思うのですね。具体的な事実関係から聞きますけれども、どんな作戦で行ったのか。その点いかがですか。
  253. 久保卓也

    ○久保政府委員 現金輸送の場合には、必ずしも海賊を予想したわけでもございませんが、特定の戦術的な、つまり軍事的な意味での護衛を考えたわけではございません。これは訓練としましては護衛訓練になることは確かでございますが、しかしながら、現実問題としましては、掃海艇が非常に古いので、これが故障した場合の連絡、曳航、そういったような任務に当たる、あるいはまた病人その他の事故があった場合にそれを搬送するといったような任務に当たる、こういったような通常業務の範囲内で護衛艦をつけたわけでございます。
  254. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 海上自衛隊としては当然のこと、事故があった場合を想定して護衛艦がつく、ヘリコプターがつく、また揚陸艦が現金を幾つかに分けて運んだと思うのですよ。ただ単に警察官が沿道につくみたいなものじゃないと思うのです。その想定していることはよくわかりませんよ。わかりませんけれども一つの簡単な例で申しますと、立川に移駐するときだって「ふじ作戦」という名前を使ってやったじゃないですか。いろいろな想定でああいう作戦が緻密にできているわけでしょう。防衛庁の制服における訓示だって、実にこまかく書いてありまして、ここで冗談を言う、ここで笑わせる——いいですか、訓示の中だってちゃんと書いてあるじゃないですか。そのくらい自衛隊というものは、命令一下、一から百まで詳しい一つの具体的なものをずっと書くわけですよ。そういうことをやっている自衛隊が、公海上において侵略者か何かがあった場合に、何の作戦もありませんなんていうことで行くわけないじゃないですか。  そこで私は、その例をあなたは言いたくなければ、ほかの例でもかまいませんよ。いずれにしてもその考え方ですが、公海上において船がいる、その海域を何と言いますか。
  255. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは必ずしも名称はないように思うのですが……。
  256. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それはちょっとおかしいですね。公海上において船が通っている。たとえば日本の場合は、そこが日本のいわゆる領域、領海として守るのじゃないですか。条約局長、言ってください。
  257. 高島益郎

    ○高島政府委員 安保条約の関係から申しますと、第五条というのがございまして、安保条約を発動しますケースを書いてございますけれども日本国の施政のもとにある領域、これが武力攻撃を受けた場合に初めて日米安保条約が動くということになっております。したがいまして、日本の領域、領海、この部分だけでございます。したがって、公海におきまして日本の船舶がたとえ他国から攻撃を受けましても、これは安保条約に全く関係のない事態でございます。  ただ、公海において自衛隊が安保条約の関係において活動する分野がもしかりにあるとしますと、これは第五条によって安保条約が発動されて戦争になった場合に、この日本の領域を守るために必要な限度で公海に及ぶということでございます。  元来、公海というところは、全く領海外の自由に航行できる水域でございまして、そこに日本の自衛隊の艦船あるいは日本の一般の商船等が自由に航行できる。その場合に、国際法上、俗に動く領域、こう申しますけれども、これはあくまでもたとえでございまして、これは日本の財産であるという意味で、しかもその領域の中では日本法律がもっぱら施行される、そういう意味日本の領域というふうにいっております。しかし、その艦船あるいは商船の周囲の水域は国際法上特別な地位を持つということは全然ございません。それはあくまでも公海でございます。
  258. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は前の国会論議の中で、そういうことにたいへん関心を持ったことがありました。数年前だと思います。あとで議事録を調べればわかると思いますが、その議論が実はあったことはあるのです。それで、船が通るところは、そこは内水であり、あるいはまた領海ともいえる。——違いますか。違うというなら私の聞き間違いかもわからない。いずれにしても、そこにある船舶を守る、そこにいる船員の生命、財産を守る、そこの乗客の生命、財産を守るための具体的な行動を起こす、これは当然考えられますね。安保条約が全然関係ないから日米関係はありませんというなら、それはそれでいいでしょう。それはそれでそういう見方もあると思う。  ただ、日本の自衛隊とすれば、SOSとか攻撃を受けた場合には行かなければならない。しかも自衛隊の四次防、五次防というのは何を想定するか。やはり船団護衛である。ここに一つ焦点が合っているじゃないですか。当然、公海上の防衛を考えているからこそ、ヘリ空母であるとか、あるいはまた足の長い飛行機であるとか、あるいはまたターターの新型、非常に距離の長いミサイルを開発するのはそういうところにあるじゃないですか。公海防衛を前提とした海上の整備があるじゃないですか。艦艇の大型化、そうじゃないですか。だから私は、ここが大事だからそのことを明確にすべきだと言っているわけですよ。だから、いま言ったように、あなたの議論で言うならば、それは一がいに言えない、攻撃してくる敵性国家の、あるいは敵性艦の性能によってそれはきまるというならば、では、ここでいう北村自衛艦隊司令官の言うとおりじゃないですか。公海上どこまでも行ける。だけれども、あなたは一番先それを否定した。おかしいじゃないですか。
  259. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先に、先ほど御質問の二十九日の北村発言、これの内容が届きましたので申し上げたいと思います。  これは、「専守防衛のもとにおける防衛水域の範囲はいかん」、こういう質問に対して、「専守防衛ということばは軍事的な用語にはないが、私としては侵略を受けた場合にのみ立ち上がることと解釈している」、こういうあと注釈があるわけですね。防衛水域の範囲は、そのときに与えられた任務と、そのときの情勢及び自分の能力によってきまるので、あらかじめ一方的にきめるのは適当でない。かつ実際的でもない。たとえば国土防衛の場合には沿岸水域であろう。それはその範囲で任務を達成できるし、また海上自衛隊としては遠くに出ていく能力もない。次に海上交通保護の場合には相手の情勢によって変わる。相手が近くに出れば近くでよいし、遠くに出れば遠くまで行かねばならぬことになる。政府の従来の見解においても、海上交通保護のために公海上に行動をすることは海外派兵ではないというたてまえをとっている。しかし、遠方まで範囲が広くなれば備えは薄くならざるを得ないので、重点的に行なわざるを得ないであろう。一方、対潜作戦には飛行機との共同が必要であるが、陸上を基地とする飛行機の行動範囲は数百マイルに限定されるので、したがって艦艇の行動範囲もおのずから限定される。  これは大体、海幕長がいまこの時間に間に合うようにというので調査した、何か本人から聴取したもののようでありますが、以上、そういう答えになっております。  したがって、さっきからのやりとりでありますが、われわれとしては、海上自衛隊の目標は沿岸海域、三海峡、これは責任を持つ。そして貿易立国でありますから、やはり数百マイル——これは五、六百マイルと解してもいいし、三、四百マイルと解してもいいというのが、さっきからの久保君の発言でありますが、数百マイル、五、六百マイル——海里ですか。五、六百海里程度を海上自衛隊のいわゆる守備範囲とする、こういうことを一つの標準としてきめておるわけであります。  これも、言っておりますように、現在のところ日本は貿易立国でありまするが、直接的な脅威は受けないわけですね。いま、資源を運んでいる輸送船がどこかで撃沈される憂いがあるとか、そういうことが全然ないものでありまするから、したがってわれわれとしては、沿岸海域、三海峡というものを中心に航行の安全をはかっていく、こういう方針で海上自衛隊を指導しておるわけで、公海上どこまででも行ける。これはよほど危険でもあった場合、その危険をどう防止するかということに対して答えて、そういうことは事実上問題としては薄くなら、ざるを得なかったし、不可能だということを言うために発言をしておるようですね、これを全部聞き取ってみますと。ですから私どもは、平素言っておることと彼の発言とがそんなに大きな食い違いはないというように思います。
  260. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官は、まず第一に、二十九日の記者会見での内容はいいとおっしゃるのですか。それから、敵性艦とかそういう防衛については、短いのもあれば長いのもある。長いという一つの限界は明確じゃありませんけれども、新聞が報道したように、それがどこまでも行けるということになると思うのです。それはテープじゃないですから、新聞の報道がほんとうなのか、どちらがほんとうなのかわかりませんよ。テープでもあれば、それを公開してもらいたいと思いますけれども、いずれにしても、あなたがそれを支持するなら支持するでかまいませんけれども、そういう公海でどこまでも行けるという。防衛庁長官はそれを否定したのだから、それはどうかということです。
  261. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この表現は私、適当でないと思っております。こういう記事になるということは、新聞記者の諸君というのも相当良識を持って会見をしておりますから、その諸君が何となく疑義があるような印象の発言を、海上自衛隊の指導者格の人が言うということについては、適当だとは思いません。ただ、ここでも言っておりますることは、海上交通保護のために公海上に行動をすることは海外派兵ではないというたてまえをとっているが、しかし遠方まで範囲が広くなれば備えは薄くなるというところと、あとはっきり言っておりまするのは、飛行機との共同が必要であるが、陸上を基地とする飛行機の行動の範囲は数百マイルに限定されるので、したがって艦艇の行動範囲というものもおのずから数百マイルであるということを言っておるのでありまして、私どもの言っておることとそんなには違わない。ただ表現が、何せ武人でありまして、適当でない面が多分にあると思います。こういう点については、今後、特に海上自衛隊のナンバーツーというような人の発言というのは、こういうようにいろいろ反響を呼んだり疑惑を生じますので、十分に私の責任において注意を喚起しておきたいと思います。
  262. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私の質問に答えてもらえればいいのです。あなたの態度はわかりますが、どうも私、いつもごまかされちゃうんですよ、慎重に検討して善処しますなんというのは。最近は、検討するということばを聞くたびにむかむかして、もう一回言いたくなるのです。  要するに、いままでの、近距離のものに対しては近距離のものをやるけれども、長いものにはそれなりの対処をするんだということが、やはり話の中で、どこまでも行けるんだろうということになったのだろうと思いますよ。それについては、それを支持するのか。いま防衛局長は、一番先にそれを否定したんですよ。だけれども、あなたがそれはおおむねいいということになりますと、どこまでも行ける。あなたと防衛局長の見解が違うということになりますよ。それはどうなんだと聞いているのです。
  263. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 よくわかりました。それはどこまでも行けるという考え方は私は支持いたしません。それからまた、当然、現実の問題として、日本の海上自衛隊の能力からいっても、どこまでも行けるという能力もないし、そういうことは適当な発言とは思いません。ただし彼の言っている意味も、いま私が全部読んだ上から言うならば、そういうことを必ずしも指摘していない、そういうことを言っておるわけではないということを申し上げたわけです。
  264. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 では久保防衛局長、最初に、どこまでも行けることはない、もし行けたらたいへんだとおっしゃったでしょう。それはどういうことですか。
  265. 久保卓也

    ○久保政府委員 わが国の防衛のために必要な範囲、これはおのずから限られてくるわけで、海域についても限られてくるわけです。わが国の防衛のためにマラッカであるとかインド洋までも必要であるというのは、専守防衛の立場から見て不適当であろう。ただ、一つ問題が残りますのは、御指摘のように、特定の商船あるいは船団というものが豪州なら豪州に行くときに、それを護衛していくことは憲法違反であるかというと、どうもそうでないように思える。具体的にそういう事象が生ずればそういうことも出てまいろうかと思いますが、しかしそれは常態においてはやらない。また商船の護衛につきましても、われわれが考えているのはせいぜい千マイル程度以内のことであるということを申し上げておるわけであります。
  266. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから、どこまでも行けないんだという考え方は変わらないわけですね。長官の言うことを支持するわけですね。
  267. 久保卓也

    ○久保政府委員 当然であります。
  268. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最初あなたはそう言ったのじゃないのですから……。  私はこの問題についていろいろお話ししましたけれども、結局は行けないだろう。燃料もないし、それだけのあれもない。だから長く行けないんだ。そんな議論じゃなくて、行こうと思えば、たくさん物を積めなければ、途中で補給を受ければどこまでも行けるわけですから、基本的に大事なことは、公海上どこまでも行けるか、あるいは行けないのかということ。それからまたいろいろ発言があった。そういう発言に対して、皆さまは内局として、シビリアンコントロールという面から厳重にチェックしなければならぬ。しかも今国会においては、四次防をはじめとして、先ほども申し上げましたように、防衛問題が中心となって空転したこともあった。であるならば、艦隊司令官の発言はきわめて重大だと思うのです。それについては先ほどからもお話がありますけれども、おおむねいいという長官のいまのお話があるようでありますが、そのことだって、私はあなたの書いているものを読んだ。必ずしも私は正確だとは思わない。新聞も必ずしもうそだとは思わない。専門家の新聞記者の皆さんは問題だから報道したのだろうと思います。問題がなければこんな報道になるわけはない。そこで、先ほどからも言いますように、そういうことを公開し、さらに問題点を明確にして、もし誤解が起こるようなことがあれば、そういうような点についてもはっきりすべきではないかと思うのです。いかがですか。
  269. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 こういう誤解を招くような言辞を海上自衛隊の指導者がするということは遺憾なことだと思います。しかし、ものの考え方においては、そんなに大きな食い違いはないと思いますので、これはひとつ私におまかせいただきまして、十分責任をもってこの問題を解決したいと思いますから、私に預からせていただきたい。こういうことを和田さんに申し上げたわけでございます。同じことを伊藤さんにもお願いしたいと思います。
  270. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 テープがあるのですか、ないのですか。一番最初の二十九日の記者会見のテープはあるのかないのか。
  271. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 テープがあるやに私、聞いたわけです。ですから、口がすべって、あると言ったわけですが、これはまだ確かめておりませんから、後刻確かめまして御返事をいたします。
  272. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま詳しく書いたような書きものがありましたけれども、それは何でどこで書いたものですか。
  273. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは私どもの石田海幕長が本人に電話連絡して聴取したメモでございます。
  274. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで海幕長が否定していますね。要するに、三十日の記者会見で北村自衛艦隊司令官の発言について、海幕としては原潜のことや攻撃空母のことは全く考えていない。しかしそのことだって、先ほどの長官の答弁とちょっと違いますよ。これは一般的に原潜がどんどん竣工するようなときには考えるというような考え方は、いまでも変わっていないのでしょう。そうですね。
  275. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま原潜をつくる意思は毛頭ございません。これは何べんも申し上げたとおりです。ただ、先ほど申し上げた意味は、北村司令官が元長官が言ったようにということを言いますから、その元長官とは中曽根長官である。この中曽根長官の言動はこれこれということを記録をたどって申し上げたわけで、私、必ずしも中曽根長官の言っておることが間違いだとは思いません。したがって、原子力であらゆる船が推進されるようになれば、自衛隊において原子力で運航推進する船をどうするか、これは検討に値する問題です、こういうふうに私の意見は申し上げておるわけでございます。
  276. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから検討に値するなんというようなことはごまかしであって、一般的にそれが一般化されればやはり保有することも考えるということでしょう。ということは、石田海幕長よりもあなたはさらに右翼的な意見ですよ。
  277. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 伊藤さん、私はそうじゃないと思うのです。これはたとえばプロペラ機がジェットエンジンにかわる、そうすれば何もジェット機時代にプロペラ機でなければならぬということに固執する必要はないという程度の常識論を申し上げておるのであって、いま原子潜水艦だとか原子艦艇をつくろうということを言っておるわけではありませんから、これは誤解のありませんように。  それからまた、われわれ政治家が、原子力ですべてが推進する、電灯までが原子力時代になったというときに、原子兵器の犠牲を受けた国の政治家だからというので、それに目をおおうというようなことを言うたら、そのこと自身が私は時代錯誤じゃないかというふうに思います。私は一般論、常識論からこれは何べんも申し上げておるのですから、どうぞそれは誤解のありませんように。
  278. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから私は、先ほど提言したでしょう。燃料電池があるじゃないか。これはアポロで使われて成功している。防衛局長は最初は、そんなものは二年くらいでだめなようだから、もうやめるなんて言う。それじゃ何を考えているのか、やはり原子力を考えておるのじゃないか、こういう考え方をわれわれは感じますよ。プロペラ機からジェット機、それならいいのですよ。核の問題については、平和利用はいい、しかしこれの軍事利用は問題だ、こういわれておるわけですよ。自衛艦が商船になるはずがないのですから、やはり原子力というものを燃料にして使うときには軍事利用ですよ。たとえそのものが燃料として開発されて、それを取りつけるにしても、平和に使う、たとえば原子力発電所に使う、あるいはまたその開発に使う、山をくずしたり、あるいは資源開発のときに使う、これは完全な平和利用ですよ。しかし、そうではなくて、今度は自衛艦に——わが国では自衛艦といいますけれども、各国では軍艦といいます。そういうものに使う場合は、これはやはりたいへん足が長いものになる。わが国がいう専守防衛というワクをはるかに越えて行動できる。たとえば燃料電池を開発すれば少なくとも一週間ぐらいは行動できる、そのくらいのことまでいわれておるわけです。技術的には、理論的にはできておるのですよ。だから私は、何もプロペラがジェットというならば、原子力を越えて、一般のディーゼルからさらに燃料電池といったっていいじゃないか。そういう意味では、そういう時代に来たら検討することを考えるというのではなくて、将来はやらない、むしろそういうものでいいものができればそれでもってやる、このくらいの前向きの見解があってもいいのではないか。  もう一つは、先ほどから何回も言いますように、石田海幕長は原潜の保有について考えていない。しかしあなたの発言は、一般化すればさらにそれは検討し考える。要するに、あなたのおっしゃることは、自衛艦隊司令官の発言を支持している。この発言に対して海幕長は否定をしているのだけれども、あなたのほうは艦隊司令官の北村さんの発言を支持している、こういうことになりますよ。いかがですか。
  279. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 分析をされるとそういうことになりましょうかね。私はそういうつもりで言っておるわけではないのです。現在は全然考えておりません。私は平和利用をあくまで推進しなければならぬ、死ぬまでそういう信念は変わらぬと思います。私は総理大臣になかなかなれませんが、総理になったら、科学技術庁の予算をうんとふやして、そして原子力の平和利用を徹底させて、これを実施に用いようという論者ですから、ついそういうことを言いたくなるのですが、いまの防衛庁では全然考えておりません。だから、各政党がコンセンサスを得ておる日本の平和利用というものについては、粘り強く今後やりたいという意味で言っておるのであって、いま自衛隊が、時を得て原子力推進の艦艇を、潜水艦ばかりでなく建造しようということを申し上げておるわけではありませんから、どうぞその点は御安心を願いたいと思います。   〔佐藤(文)委員長代理退席、委員長着席〕  いま現時点で君はどう思うと言われるなら、石田海幕長の言われるとおり、原子力潜水艦は考えておりません。その必要もありません。きわめて明快であります。
  280. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたの発言の中に、一般化すればなんというところにウエートを置いて発言なさっているように思えますから、それは将来防衛庁としては、そちらのほうに道を開くような場合、あなたの発言がひっかかっては困るというような、そういう配慮があるのかないのかそれはわかり、ませんけれども、燃料電池でいいじゃないかと言っても、なかなかそこのところは納得されない。いいサゼスチョンであるというようなところで終わっているわけです。だから私はそういうことを重ねて申し上げたわけです。  いずれにしても、社会党の大出先生も、和田先生も、はっきりしろ、テープがあるなら公開しろ、そういうような発言があったわけですが、私もやはり同じでありまして、いずれこの問題についてはまたの機会にお伺いしたいと思います。  あと外務大臣に質問があるのですけれども、外務大臣については大事な例のアラブゲリラの問題について伺い、答弁していただきたいと思います。  警察庁の方、来ておりますか。——たいへんおそくなりましてどうもすみません。もうしばらくお待ち願いたいと思います。
  281. 木原実

    木原委員 関連して。  同じことなんですが、伊藤さんがだいぶん詰められましたけれども、原潜問題はどうしても疑問が残る。それはいま伊藤委員指摘をいたしましたように、やはり大臣の発言の中に、将来、推進力として一般化するようになれば検討するのだ、そういうある意味ではよけいなことが入るから、当然いまの問題とつながってくるわけです。  伊藤委員指摘をされましたように、潜水艦に原子力の推進力をつけるということは、これは商船が同じ原子力の推進力をつけるということとは質的に違うんです。潜水艦というのは言うまでもなく兵器ですから、それに原子力をつける、こういうことになれば、質的に違うのだというところに一つもけじめがないわけです。それだから、北村艦隊司令官のような、ほしいという発言が出てきてもぼやかされてしまう。だから長官がそこまでおっしゃるのならば、少なくともいまやらないというわけですから、そうすると、いまの時点で五年なり十年の戦略見積もりその他のこともあるわけですから、少なくともその限度の中では、原子力を潜水艦に推進力としてつけるというようなことはあり得ないのだ、やらないのだ、こういうふうに言ってもらわなければ困ると思うのです。そうしませんと、いまはやらないのだ、しかし将来は一般化して、こういうところにいつも問題がぼやけていく問題があるし、あるいはそのことばの背景の中に何かあるのではないのか、こういうふうに疑わざるを得ない。その徴候はさまざまあるわけです。だからその辺をひとつはっきりしてもらいたいと思います。
  282. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点、それから御心配になる意味がよくわかりました。現在、五年、十年そういう場面では考えておりません。
  283. 木原実

    木原委員 少なくとも五年、十年の戦略見積もりの中では原子力潜水艦につきましては考えていない、こういうことですね。  それからもう一つあわせまして、いま伊藤委員のほうから戦略見積もりの問題等が出まして、専守防衛ということが、たとえば新聞の報道等による北村発言によると、どうもはっきりしないというやりとりがございました。私はこの問題を、ここでは時間がありませんから触れませんけれども、皆さんが国会で御答弁になっている、政治的に政策的に明らかにしている専守防衛論なるものと、第一線の自衛隊の各級の指揮官の諸君、やはり本音はここらにあるんじゃないかと思うのです。つまり、専守防衛というのは政策論としては成り立っても、実戦としてはそんなものは成り立たない、そういう前提があるんじゃないかと思うのです。だから私どもは、こういう発言をたまたま聞きますと、やはり第一線の本音が出ている、こう思わざるを得ないわけです。その点についての政策的な言いくるめではなくて、主として装備の面、あるいはまた戦略姿勢という問題がございましたけれども、戦略姿勢は当然のことですが、装備の面においても限界をきちんと定めていく。そういうものがなければ、こんなあいまいな形のままで、引き続いて四次防だ、五次防だ、こういう問題を出されましても、政策的な発言と、第一線の実際に防衛の任に当たっている各級の司令官との間に、そんな食い違いを思わせるようなものがあるならば、われわれとしては不安で、とてものことには、四次防、五次防については、どういう角度からも取り組めないと思う。その点いかがですか。
  284. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そのとおりだと思います。ですから私は、やはり内局において、防衛とは何ぞや、特に専守防衛というものの哲学といいますか、深いものの考え方、こういったものを十分検討させたいと思うのです。そして攻撃もするが守りもするという、いわゆる在来型の軍隊よりも、守りに徹する自衛隊というものは従来の軍隊より一次元上のものである。それは、武術の心得のある者がこれを暴力としてふるわない、護身のみに使う、何か事があったときにだけ用いる、これはお互い良識ある社会の通念であります。そういった通念に世界の軍隊がなぜならないのか。少なくとも人間の英知が平和を求めるというたてまえであるならば、相手が不当な侵略を加えたときにのみ防衛をする、これは私は、やはり日本の敗戦の結果というものが非常にけわしかったわけでありますが、そこに築き上げた日本人の英知がこの自衛隊になった、こう思っております。またそうでなければならぬと思います。これが攻撃もするが防御もするという在来型の軍隊に変貌していくというなら、何をかいわんやです。これは意味がない。したがいまして、そういった理論づけも内局の経験者を今後登用して防衛研修所で十分ひとつ練り上げたい、こんなことを考えております。  ですから今後いまのお尋ねの防衛の限界とか、日本の防衛というものをどうあらしめるかということについては、ただ口先だけでない、ほんとうに理論的に確固たる裏づけのある、そして総理大臣や外務大臣が国連の場に行って堂々と日本の自衛隊の特殊性を説いて、軍縮を説く前に世界の軍隊は防衛に徹する軍隊になれという、大向こうをうならせるような演説のできる論拠をこれから作成しようということで一生懸命になっておりますので、もうしばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  285. 木原実

    木原委員 これで終わりますけれども、最後に……。  そういうことなんですが、しかし本来、武力というものには、防御も、それから攻撃も一枚のものなんです。それだけに問われるのは結局政治姿勢です。その政治姿勢が、長官の理想は理想といたしまして、あいまいになりますと、武力の論理が発展をしていくわけなんです。ですからこれをとどめる方法というのは、武力それ自体に対する政治によるコントロールしかない、そういうことに帰着をするわけなんですけれども、その辺は別の問題ですからあれします。  伊藤委員からも触れましたように、今度の北村司令官の発言に対して、預からせてくれとおっしゃいましたけれども、具体的にどういう措置をとりますか。それだけ聞かせてください。
  286. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 海幕長が責任者として、適当でないという発言は、やはり私といたしましても適当でないと思っております。したがいまして、これについては、十分真相、実情を調査して注意を喚起し、また、ものの考え方等においてもし間違った点がありますならば、これは十分話し合いを進めて、ナンバーツーになるくらいの男ですから、理解をさせていきたいと思います。  ただ、先ほど来テープの問題がありますが、これは私、たぶんあるだろうくらいの話からあるやに申し上げたわけでありますが、何も、それは押し隠すとか、ごまかすという意味じゃございません。一つのそういう発言が、またこういう委員会で問題になりましていろいろ議論になってまいりますと、別な面から申しますと、自衛官そのものの士気にも影響する点もあろうかと思いますので、私が責任者として十分責任をもって処置します、こういうことを申し上げた意味は、いま申し上げたようなことをしたいという真意に出るものでありますので、これはひとつ私に預からしていただきたい、これをお願いしたわけでございます。
  287. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たいへん長らく待ったわけでありますけれども、やっと外務大臣にお会いできまして……
  288. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ちょっと伊藤さん、イスラエル問題でその前に……。  先ほどお尋ねのありましたイスラエルの問題でありますが、これにつきましては、イスラエルの外務省から現地のわが国の大使館に対しまして、問題のゲリラ三名は日本国発給のパスポートを持っておる。つまり、それから当然類推できますことは、日本人であるということが通報されたわけであります。  なお、イスラエル政府の連絡によりますれば、死者は二十五名、負傷者は七十八名の由であります。  これに対しまして、わが国といたしましては、今晩十時、中近東アフリカ局の田中参事官を現地に向け調査のため出発させます。なお、ローマまたはパリの警察庁出向者、これを現地に派遣することといたしまして、訓令をいたしております。なお、イスラエルにつきまして経験の深い服部バチカン大使、これを現地に急行せしむるということに手配しようといたしております。  取り急ぎ御報告申し上げます。
  289. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実は私は、イスラエルのテルアビブのロッド空港でゲリラといいますか、日本人三人がやったということにつきまして、たいへん重大な事件であると思いますし、私もここに来るまでに、このようにたくさんのファックスを持って事態の推移を見守っておったわけです。ただいま外務大臣から、今晩十時に中近東アフリカ局の参事官を派遣し、さらに実態を調査するということでありますから、私もその場合のわが国のとるべき姿勢について何点か質問したいと思うのです。  まず第一に、いままでの海外からの通信によりますと、スギサキとかナゴという者が旅券を持っておった、こういうことでありますが、この事実関係について警察庁のほうでわかりましたら教えていただきたいと思います。
  290. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その三名の人の名前は、一人はナンバ・ダイスケ、一人はトリオ・ケン、一人はスギザキ・ジロウ、いずれも男子でありまして、年令は二十三歳でございます。いま得ておる情報はその程度であります。
  291. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この報道によりますと、警察庁のほうで調べた報道ですが、これもファックスで読んだわけですが、これがどうも日本の左翼系の者じゃないか、こういう疑いのようなことが報道されております。その点について警察庁としてはどのように掌握されておりますか。
  292. 山田英雄

    ○山田説明員 警察庁といたしましては、日本人が関係しておる重大凶悪事件でございますので、早急に事実を確認する必要があるということで、外務省を通じまして事実確認をお願い申し上げたわけでございます。  ただいまの段階までいたしましたことは、外電でスギザキ、ナゴという氏名が報ぜられましたので、その氏名につきましては、極左暴力集団の構成員、警察庁で把握しております分について照合いたしましたが、その照合を得ておりません。ただいまトリオ、ナンバという両名の氏名の通報もイスラエルからあったということでありますが、当然、私が委員会に出ております間に、警察庁もその通報を受けまして照合いたしておると思いますが、この両名の者の照合については、私、ただいまその結果をまだ入手しておりません。  なお、パレスチナ・ゲリラとの関係につきましては、極左暴力集団各セクトについて特に深いものはございません。わずかに指摘できますのは、赤軍派についてその交流の二つの事実があるわけでございます。  その一つを申し上げますと、昨年の二月でございますが、赤軍派の当時の幹部であった重信房子という女性がございますが、これがいわゆる赤軍派が志しております国際根拠地を求めるB作戦というような計画でベイルートに参りまして、現地でパレスチナ・ゲリラと交流しておるという事実がございましたが、最近の情報では、非公然活動に従事しておらず、ベイルートの治安当局も特に重大な関心を重信房子には払っていないという情報を入手しております。  それから、重信房子がベイルートに参りましてから、赤軍派が資金活動の一環として宣伝の映画を、映画のプロダクションと提携いたしまして、「赤軍——PFLP・世界戦争宣言」、PFLPというのはパレスチナ解放人民戦線のゲリラ組織の略号でございますが、そういう題名の、中身はいろいろなハイジャックなど写しましたラッシュを編集しただけの無声映画で、たいした内容はないのでございますが、これを昨年九月三十日から東京で上映したのを皮切りに、全国を上映しました。あまり大きな収入はなかったようで、宣伝としては失敗に終わったと思っておりますが、その間、PFLPの関係者といわれるイエメン人一人が昨年の十月二十二日から十一月十八日まで参りまして、福岡での上映の際にあいさつをしておる。しかし、特にPFLPの重要人物ではないという当時の判断でございまして、特別の動向は見受けられなかった。  以上、二つの点が赤軍派とパレスチナ・ゲリラの一つのセクトであるPFLPとの交流でございますが、それ以上の事実については、特に交流状況を判断する材料を持ち合わしておらないということでございます。
  293. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 きわめて大事なことでありますし、さらにすみやかにその実態を明らかにする必要があると思いますので、私、まだまだ質問いたしますので、その間、電話なり何なりでけっこうですから、先ほど外務大臣から明らかにされた二名の者についても調査をして、そしてまた、できればこの場で報告をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  それから、この報道によりますと、イスラエル在住の日本人は約四百名で、このうち過激な行動に出ると見られる人物も若干いるということがファックスに出ております。それはどういう関係の人がどのくらいいるか、掌握しておりましたらば、それについて伺いたいと思います。
  294. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 お答え申し上げます。  私のところにございます数字によりますと、四月一日現在でイスラエル在住邦人は百五十七名、そのうちにテルアビブ及びその近郊に在住しております者が三十二名でございます。
  295. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このうち過激な行動に出ると見られる人物も若干いるというのですが、これは警察庁で身元を急いだということから出ておるわけですが、掌握しているわけですか。
  296. 山田英雄

    ○山田説明員 極左暴力集団が海外に渡航するということにつきましては、私ども関心を払っておりまして、いろいろな情報を収集しておりますが、現在までのところ、赤軍派その他の極左暴力集団の活動家が現在海外に旅行中であるという事実につきましては、先ほど申し上げた重信房子以外には特段に確認しておる者はございません。ベイルート居住者についても同様でございます。
  297. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 じゃこの報道は間違いなのですね。若干いるというのは、その一人のことをいっているのですか。いまの重信房子という人物の名前だけをいって、若干名といっているわけですね。わかりました。  それで、私はこの事件を見まして、もしそういう組織が海外にあればまた起こるということが一つ。それに対してわが国とすればどうすればいいのか。  それからもう一つは、すでにもう二十数名死んで、あるいは重軽傷がまた七十何名かいるわけですね。ということでありますと、イスラエルにおります日本人に対して、いまやはりたいへんな日本人に対する感情が盛り上がってきていると思うのです。その場合、この事件を事実関係の究明をすることは当然でありますが、同時に、外務省としては、何にも関係のないほかの日本人に対する生命、財産を守るための処置をしなければならぬと思うのです。そういった点で、外務省では盛んに電話なり電報なりで向こうの情勢を現在キャッチしているようでありますが、そういった点についてどんな現在の情勢なのか。あるいはまた、イスラエルに住む日本人はいまどういうような状態でいるのか。その点について伺いたいと思います。
  298. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 お答えを申し上げます。  私の知っておりますところでは、ただいまイスラエルにおりますのは、大部分は大使館員とそれから商社の方、そのほかは各地にありますキブツへ行っておられる方が非常に多いようであります。なお、観光に常時かなりの数が行っておられる、こういう状況でございます。  今回の事件は非常に残念なことで、確かにイスラエル国民みんなが感情的になりまして、日本人に対するそういう感情の高まりがあるということは非常に心配でございますが、いままでわれわれはイスラエル政府とも十分に連絡をとりまして、万々そういうことがないようにお願いもするし、また、今後われわれもいろいろな措置を考えたいと思っております。
  299. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 イスラエルにいる日本人は百五十七名と、ロッド空港付近には何名ですか、三十二名と伺いました。そのほかに、商社マンであるとか、あるいはまた観光ビザで行った方々がいると思うのです。これはどのくらいおりますか。
  300. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 観光で一体どのくらい行っておるかということにつきましては、これはちょっと把握しにくいのでございまして、いまイスラエルとの間は査証免除協定をつくりまして、査証なしに行けることになっております。したがいまして、ローマあるいはパリ、あるいはイスタンブール、特に夏のシーズンでありますとかなりの数が観光に行くと思います。われわれがつかんでおります一応の数字は、大体長期的な滞在者の数字でございまして、それ以上の数字がかなりいるかと存じます。
  301. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これはベイルート三十日AFP時事、このファックスですが、これによりますと、「パレスチナ・ゲリラの左派勢力であるパレスチナ民族解放戦線(PFLP)は三十日夜ベイルートで声明を発表、同夜イスラエルのロッド空港で起こったテロ事件が、PFLPの責任で行なわれたと述べ、これはベルギー・サベナ航空乗っ取り失敗事件で今月八日二人のパレスチナ・ゲリラが殺された「殺人ダヤン(国防相)による冷酷な虐殺」に対する報復行為だと言明した」、こういうこと、そのほかずっとありますね。そして「このテロ作戦が「ゲイル・ヤミン」という暗号のもとに実施されたごとを明らかにしている。ゲイル・ヤミンはパレスチナにある村落の名前で、一九四八年のアラブ・イスラエル戦争の際、イスラエル側が多数のアラブ人を虐殺したところである。声明はまた「デール・ヤミン作戦」が、六七年中東戦争でのアラブ側の敗北五周年記念日と一致させて実施されたと指摘している」、こういうふうに報道があります。  そこで、これは日本にとってはたいへんなことで、イスラエルに対して、パレスチナ解放戦線と連絡が非常に密接にあって、日本そのものがそういうパレスチナ・ゲリラと関連があって今回起こしたのじゃないかという誤解を、何にも知らない国民は思うと思うのですね。ですから、先ほどあなたがおっしゃいましたように、たいへんに感情が高ぶっているということでございますから、やはり緊急に何らかの措置を講じなければならぬと思うのです。  ですから、こういう事件が起きた際に一番大事なことは、その事実関係を究明することは非常に大事であるけれども、同時に、残された日本人、またそこに住む在住の観光客、または商社マン等についても、私たちは適切な措置を講ずる必要がある、こう思うのです。もう事件が発生してだいぶたつわけでありますが、どういうことを考えられていまどう対処されようとしておるか、その点について伺いたいと思います。
  302. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まさに御指摘のとおりの重要な問題であります。一番問題はやはり、私ども日本人がこのゲリラであった、こういうことが判明した、そうなりますと、わが国として、これはもう遺憾の意の表明ということがなくてはならぬことである、こういうふうに存じまして、官房長官の名前をもちましてその趣旨の談話を発表いたします。同時に、このゲリラが日本人であった旨が確認されたという通報を受けた直後に、在イスラエル大使をして、イスラエル外務省に出頭いたして遺憾の意を表明せしめております。そういうようないろいろな措置をとりながら、とにかくわが国に対する感情の高ぶりとかそういうものに対する処置をとっておりますが、しかし同時に、どういう事態が起こるかもしらぬ、そういうことでもありますので、現地とは緊密な連絡をとりながら万全を尽くしておるというのが現状でありますが、なお、こういう際には、イスラエルにおります大使も心細いと思うのです。そういうようなことを考えまして、在バチカン大使、これはたしかイスラエル駐在のいまの大使の前の前の大使だったかと思うのですが、あそこの状況に通・暁しておる先輩であるこの方を急派する。また本省からは、中近東アフリカ局の田中参事官を今晩出発せしめる。またローマあるいはパリから警察庁出向者を現地へ急派する。こういうようなことで、諸般にわたっていろいろな問題が起こると思いますが、万全の対策をとるようにしておる。なお状況が刻刻と判明するでありましょうから、それに従いまして必要な処置をとる。これは十分気をつけてまいりたい、かように存じます。
  303. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、何か佐藤総理もこの問題について、参議院本会議の終了後、記者団に対して、このテルアビブ銃撃事件について、日本でやらずに外国でやっているのか、ひどいことだ、こう遺憾の意を表明したようでありますけれども、やはりこれには相当の調査がついておって、極左であるというような見通しの上に立っての説明、報告を聞いたから、そういう発言をしたんじゃないかと思うのですね。いま聞きますと、この重信房子なる者以外は確認されていないという状況でありますが、大体海外に出る場合、チェックすると言っても、ただチェックだけして行き先だけ確認するということだけでは、こういう事件を防ぐことができぬと思うのですね。それについて警察庁としては、日本の国際的な信用の面、さらにまた、そういう極力暴力団についての考え方については、こういう事件を通してやはり何らかの適切な処置を講じなければならぬと思うのですね。そういう点で、警察庁のほうでもし考えがあれば言っていただきたいことと、また、先ほど言いましたことがわかったらお知らせいただきたいと思います。
  304. 山田英雄

    ○山田説明員 旅券法に旅券発給拒否事由もきめられておるところでございますが、警察庁といたしましては、そういう拒否事由に該当する、たとえば指名手配者、そういう者につきましては、外務省とも緊密な連携をとりまして、現に拒否事由に該当する者の渡航申請を拒否していただいた例もあるわけでございます。しかし、拒否事由に該当しない者につきまして渡航申請が出た場合は、それについて、警察庁といたしましてそれ以上の関心を持つということも、この渡航自体についてはできない次第かと思います。しかし情報で、たいへんな危険な動向のある者が海外に渡航する、こういう際には、私どもといたしましても、その動向視察については十分の体制をとっていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、照合の点、まだ回答が私の手元に来ておりませんが、あるいは多少全体との照合時間がかかるかもしれないと思いますので、その点あしからず御了解いただきたいと思います。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この際ですから伺っておきますが、外地に過激派のグループというものがどのくらい存在しているのですか。掌握していますか。
  306. 山田英雄

    ○山田説明員 それは、わが国の極左グループが渡航して出ていっている……。それは従来も若干の者は、国際交流と称して渡航した事実は確認しておりますが、グループとして意図的に出ておるということは従来からもございません。単独で一定の交流のために渡航した、こういう事実は若干確認されております。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 掌握しているけれどもいまは資料は持っていない、こういうことですか。
  308. 山田英雄

    ○山田説明員 他の例につきましては、詳細な資料をただいま持ち合わせておりません。過去にあった渡航事例、それはちょっと手元に持ち合わせておりません。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あるけれども持っていないわけですね。  先ほどイスラエルから、日本のパスポートを持っておったという通報があったということでありますが、大体イスラエルにどういう経過で入っていったのか、その点は調べがついているのですか。
  310. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 何せさっき四時にそういう通報に接したばかりでありまして、その人物がどういう人物であるか、そういうような調査はまだできておりませんので至急いたしてみたい、かように考えております。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 早く実態を明らかにしながら、他方において、イスラエルに在住の日本人、あるいはまた商社マン、さらに観光ビザで入国している日本人に対しては、やはりこれは保護するという処置を講ずべきじゃないか、そう思うのです。その点はいかがですか。
  312. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもがとる措置のうち重大な措置、それはもちろんその問題を含むわけでありますが、とにかくこれはもう電報で往復しているというような問題ではない。電話で往復しておりますから、逐次情勢も判明するだろうと思います。それに伴いまして必要な措置は十分とる、こういうふうに御承知願います。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この事件で、たとえどういう形であれ日本人がイスラエル人を殺害したということについては、やはり国際信用の面からいっても、これは必ず国家間の問題として補償の問題が出てくると思います。そういう場合についてはどういうふうにされますか。
  314. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはもう事態の究明を待って妥当、適正な措置をとります。これはほんとうに国際社会においてわが国の信用を傷つける非常に遺憾なことだ、こういうふうに考えておるわけであります。国際社会で信用を失墜するということは残念でありますが、これを補うためのできるだけの措置はとらなければならぬ、かように考えます。
  315. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在、七十何人かの方々が重軽傷を負って入院されていらっしゃるということでありますが、こういった方に対しては、すぐに大使を出すなり、あるいはまた何らかの方法でお見舞いをするというようなことは常識じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  316. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いろいろそういう点も含めまして、できるだけ妥当な措置を急速にとるように考えております。
  317. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 なくなった方に対しては、これはもちろん外務大臣がですか、直接、間接にお見舞いとか弔電とか打つべきであろうと思いますが、その点いかがですか。
  318. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、具体的にどういうことをするか、これは逐次状況が判明するに伴いましてその措置をとりますが、いずれにいたしましても、わが国の国民がそういう遺憾なことをしでかしたということで、これに対しましては、私どもとしては道義的に非常に大きな責任を感ずるわけであります。その責任に対しましてはもう十分措置をとらなければならぬ。その具体的な一つ一つをどういうふうにするかというようなことはまだそこまで段階が至っておらぬ、こういうことでございます。とにかくあらゆる手を尽くしまして、わが国の立場、これが国際社会において、非常に遺憾なことでありましたけれども、その中においても日本は最善なことをしておるということをいたしたい、かように考えております。
  319. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 意外と当事者というものは気がつかなくて、第三者から見て気がつく場合があるわけですね。私は、日本人としてやはりそういう事件について具体的な誠意ある態度を示すべきだという中で、具体的な例をあげて申し上げたわけです。当然、私が言ったことについてはすみやかにやるということですか。
  320. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 もちろんすみやかにやるということでありまして、機を失せず妥当な措置を講ずる、こういう考えでございます。ただ、死亡した人がイスラエル人であるのかどうか、これはまだ非常にはっきりしてないんです。エアフランスの乗客は大部分がプエルトリコというとアメリカ国籍でございますから、そういう方々、その人たちが死亡しておるのか、そういう点がまだはっきりしておらない。あるいは、空港の従業員なんかに犠牲者がおったのかもしれませんし、その辺だんだん明らかになってくると思います。それに応じまして機を失せざる措置はとる、こういうふうに考えております。
  321. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 何か一人が死んだ、そうしてあと二人が逮捕されたというんですが、先ほどは三人とおっしゃいましたね。それはみな逮捕されて元気でいるわけですか。それともその状況はいかがですか。
  322. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 イスラエル国政府からの連絡によりますと、一人は射殺された、一人は負傷その後死亡、一人は逃亡をしたがその後逮捕したということでありまして、一人だけ生きているということであります。
  323. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、この身柄を、事態の究明を急ぐ場合、向こうの警察にまかせるのか。あるいはまた、日本から行って、ある程度の調べがついたならばこちらに連れてくるのか。その点はいかがですか。
  324. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 当然イスラエルの現地の警察にゆだねるわけであります。
  325. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現地の警察にまかせるということですね。
  326. 魚本藤吉郎

    ○魚本政府委員 はい。
  327. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 しかし、通訳が入るのでしょうけれども、事態がこういう事態ですから、警察庁のほうとしても、やはり思想関係とか今後の対策の一環として、向こうに行って一緒にいろいろ調査のお手伝いをするとか、あるいはまた、この事件の概要についていろいろ調査するという考えはないんですか。私がなぜ聞くかと言いますと、国家公安委員長がきょう記者会見で、だいぶ前向きの答弁をやっているんです。中村国家公安委員長は、三十一日名古屋市において行なわれた講演会で向こうに行ったのですね。その後、愛知県警本部で記者会見をして、テルアビブのロッド空港で起きたゲリラ事件について次のように語った。ロッド空港のゲリラ事件については外務省を通じ確認を急いでいるが、ゲリラの中に日本人がいたことが事実であれば、国際的にも日本人の信用を著しく落としたことになり、まことに遺憾だ。今後、若い極左活動家の出国については何らかの形でチェックするなど十分気をつけていきたい、こういう答弁をしております。だから、先ほどもありましたように、外務省はきょう行くわけですけれども、警察庁のほうとすればどういう対策をいま考えておるのか。
  328. 山田英雄

    ○山田説明員 警察庁といたしましては、先ほども答弁申し上げましたように、外務省を通じまして事実確認につとめ、ただいま第一報が参りましたが、三名については、手持ちの資料では極左団体の構成員に該当者なしという報告が参りましたが、引き続き、その該当者の有無、該当者があった場合には、行動経歴、出国の経緯等、詳細に調査してまいりたいと思っております。
  329. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外国で起きた事件ですから、事実関係が正確に伝わるということはなかなかむずかしいときもあると思うのです。ですから、いままで質問いたしましたけれども日本の国際的な信用を落とすことのないように最大の対策を講じて、そして今後こういうことが二度と起きないように善処するのが当然だと思うのです。この点についての外務大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  330. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま伊藤さんからいろいろ御質疑あり、またたいへん示唆に富んだ御意見も承りまして、私もありがたく存じておる次第でございます。何せ今回は、日本人がこういう行動をとった、ほんとうに日本国民のために遺憾千万、不名誉この上もないことである、このように存じます。  もうすでに香港の報道なんかを見ておりますと、日本人は何をするかわからないというようなこともいっておる。あるいはイギリスのデーリー・テレグラフなんか、狂暴なジャップということもいっておる。たいへんどうも日本のために残念千万なできごとだ、こういうふうに思うのです。これは起きたことだからしようがありませんけれども、この際、日本としましては、できる限りの努力、いろいろな方面での配慮をしなければならぬ、機を失せず措置をとりたいというかたい方針でありますから、何とぞ御協力くだされるように切にお願いいたします。
  331. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、前回の外務省設置法で幾つか質問いたしました、その中で何点か留保したことがあります。きょうはその問題について外務省からの回答を承り、さらに相模原の兵器補給廠の問題について若干質問したいと思います。  まず、この間私が質問いたしましたことは、横須賀基地から岩国または厚木に機雷が輸送された。弾薬専用船で運ばれた機雷が厚木には七十数発、また岩国には数百発。弾薬輸送一覧を私、呈示しまして、運ばれたじゃないか。そしてそれが最近、五月の十日ごろですか、トンキン湾の機雷封鎖、機雷の敷設に符合するものがある。実は、その問題について外務大臣は、参議院の外務委員会かわかりませんけれども、いずれにしても日本から機雷を輸送して敷設することは事前協議の対象になるし、たいへんな問題である、こういう答弁をしたあとであっただけに、私もたいへん関心を持ちまして、その事実関係の問題についてアメリカ局長に質問を留保しておったわけです。その点をきょう承って、さらにまた次の問題に入りたいと思っております。
  332. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まず第一に、今回のベトナムにおける米軍の機雷敷設、これはわが国とは全然関係がないことであるという通報を受けておる次第でございます。問題は、しかし万一そういうことがあったらどういうことだ、こういうことかと思いますが、万一そういうことがあれば、これは重要な問題です。つまり、その機雷の敷設行為が直接戦闘作戦行動の一環として論ぜられるべきものであるかどうか、こういう判断が必要でありますが、もしそれが直接戦闘作戦行動の一環であるという種類のものでありますれば、これは事前協議の対象となる、こういうふうに考えておる次第でございます。現実の問題は、冒頭に申し上げたように、わが国の基地から直接機雷敷設というような行動はアメリカとしてはとっておらぬということは非常に明白に申しておりますので、それをわが国としては信用いたしておる、こういう状況でございます。
  333. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは現地調査をしたアメリカ局長から答弁いただきたいのですけれども、実はこの飛行場に七十数発あるいはまた数百発というものが運ばれたということ。この事実関係について、まずそれを調査したのかどうなのかというのがありますね。  それから、その機雷敷設につきまして、北ベトナムの内水に入って対空砲火を激しく浴びながら、三十メートルぐらいにわたって機雷というものを敷設した、こう報じられているわけですね。ですから、現在、岩国であるとか、あるいはまた厚木であるとかいうところへ、ベトナム戦争の激化に伴って運ばれてきているという事実関係を私、指摘したわけでありますけれども、どうもそうなりますと、やはり機雷を敷設する場合には、軍事的にいいまして、海の深さをはかり、そしてそれが浮遊しないように、あるいはまた、きめられた——最近は非常に機雷というものは高度に発達しておりますので、扱いはきわめて慎重でなければたいへんな事態になるということで、この機雷を敷設する場合にはたいへん時間がかかる。しかも十分に敷設する場合には、海の深さをはかり、それが海の底であれば船に当たりませんし、そうかといって浅くて浮いてしまえば発見されるということで、機雷敷設というのは非常に高度の技術を要するといわれているわけです。ですから、当然長期間にわたって機雷の敷設については検討され、そうして実行されたということになろうかと思うのです。ですから、飛行場にそれが運ばれたという輸送一覧がある限り、何らかそういう一つの輸送手段で直接持っていったのではないか、こういう疑いを実はどうしても私たちは持つわけです。その点についてアメリカ局長から答弁いただきたいと思います。
  334. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、われわれも事の重大性を十分認識いたしておりますので、いろいろ調査してみましたところが、確かにこの横須賀の田浦及び吾妻地区にかつては機雷が貯蔵してあったということは事実でございますし、これからまたいずこかへ搬出されたという事実はあったようでございます。ただ、これらの機雷がいつ通び出されたかという時期についてはつまびらかにしておりません。また少なくともこれが直接ベトナムに輸送されたということはないようでございます。いずれにせよ他の場所に搬出されたものと思っております。しかしながら、時節柄、問題の重要性にかんがみまして、米側に対しては、安保条約や地位協定の義務ということもさることながら、わがほうの気持ちを十分伝えてありますし、先方も細心の配慮をもってこれに対処すると申しております。なお、事実関係についてはさらに調査を続けております。
  335. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時期はわからないけれども、持っていったことは事実であるという事実関係はお認めになったわけですが、ただアメリカに対してそれを言うのじゃなくて、注意を喚起する。そうしてほんとうに運ばれた疑惑として私は指摘したわけでありますから、やはり前向きに当然強く——日本に機雷を持ってくることについては、これはそのまま事前協議の対象になりませんし、一応問題はないようになっております。しかしながら、これは戦闘作戦行動と密接不可分の関係において、ベトナムに機雷を敷設したという事態があれば、その時点からもちろん事前協議の対象にして、戦争に巻き込まれない歯どめをやる、こういう意味から外務大臣は言ったわけでありますから、その点については私は厳重に注意を喚起すべきだ、こう思うのです。その点についてもう一度いかがですか。
  336. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど外務大臣もお答えのとおり、もちろんわが国から直接に機雷等通んだことはなく、また、もちろん事前協議の対象になるような事項につきましては、われわれもそういう場合には当然事前協議の対象になるということを厳重に先方にも申しておりますし、先方もそのようなことはいまのところない、こういうように答えております。しかしながら、この点につきましても再度先方に注意を喚起してまいります。
  337. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私たちとすれば、それ以上事実関係について資料がありませんから言うことはできませんけれども、注意を喚起するのかしないのか。注意したいと思いますとしか聞こえないのだけれども、もう一回明確に国民に向かって、そういうことに対しては厳然たる態度で臨んでいただきたいと思うのです。その点いかがですか。
  338. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、厳然たる態度で先方に臨みますし、それから事前協議の問題につきましては、もちろん常に先方に注意を喚起しております。
  339. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、この間も質問いたしましたけれども、横浜の北埠頭、ノースピアというのですが、ここで北ベトナムから来た戦車をそこから入港させ、そして相模補給廠に輸送している。また逆に言うと、相模補給廠で修理を仕上げた戦車をノースピアに陸上輸送し、そこからまたLSTに載せてベトナムに通ぶ、こういうことが新聞報道で明らかになっているわけです。  そこで私は一つ伺いたい点があります。それは、最近この戦車の輸送について、戦車の中に、あるいはまたベトナムから返送される物資の中にいろいろな微生物がいる。あるいは物資の中に毒ガスとか、あるいはまた何かわかりませんけれども、その物資を輸送しまたは戦車など清掃する人間が皮膚病を起こしたというようなことも実は報じられているわけです。そういう事態についてまず伺いたいのですが、そういう事実関係についてはどのように掌握していますか。
  340. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これはわれわれも新聞紙上におきましてこのことを知りまして、さっそく先方に事実関係調査を依頼しております。まだ先方から確認が参りませんから、その点につきましてはここでお答え申し上げることはできませんですが、しかしながら、御承知のとおり、これらの地位協定によりまして、わが国に輸入される米軍の物資につきましては、いずれもわが国の法令に従いまして検疫にかかるわけであります。したがって、これは主として厚生省なり農林省の管轄でございますが、いずれにせよ、植物につきましては植物防疫官が検査を行なっておりますし、また動物につきましては、ものによっていろいろ取り扱いが違いますが、生きた動物をそのまま入れてくる場合には、米国政府の獣医官によって検査を受けた証明書を持って日本に入る。そのあとで検疫されるとか、その他詳しい検疫の手続が、地位協定上は明文はございませんが、日米の合同委員会において取りきめられております。それらの点につきましてはすでに公表されております。
  341. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 事実関係が明らかでないのに、ずいぶん手回しのいい回答がいまあったわけですが、大臣、聞いていただきたいのですが、これは新聞報道でもあるわけです。  一つは、ことし三月二十三日に起きたことは、ノースピアに陸揚げされた貨物をトラックや貨車に積み込む際に、検疫作業中の日本人従業員四、五人の全身がかゆくなり、手でかくと赤くはれ上がってきたため、基地内の診療所にかけ込んだ。注射などの手当てを受けた結果、半日から一日ぐらいでかゆみがとれた。この原因としては、全駐労の横浜支部での話なんですけれども、ダニなどの害虫、あるいはまた何らかの細菌、あるいはまた有毒ガスの一種、このように考えて非常に不安だということを表明しています。  また翌二十四日、ベトナムから船で運ばれた木箱の中から、ムカテ、アブラムシ、ゲシゲジ——ゲジゲジが向こうにもいるんですね。そういう害虫がぞろぞろ出てきた。これは南ベトナムのカムランで土の上に野積みされていた貨物の中から、それが出てきた。  それから弾薬の爆発事故。これはことしの一月二十四日、ノースピアの役務部、MHEですかの職場で、コンテナ修理のため基地作業員が破損個所を溶接中に、コンテナ内部のくぼみに残っていた弾丸が爆発した。さらに三月二十二日、コンテナのとびらをあけたところ、三百四十発の実弾がばらばら出てきた。また三月十四日、基地従業員が小型ドラムカンを積んでいて倒れ、中の薬品が流出したため、目から涙が出てのどが痛くなり、基地内の病院で手当てを受けた、こういう事実。また今月、五月二十日、基地従業員がベトナムの戦地から来た大型コンテナ、十五トン積みのとびらをあけたところ、から薬きょうがバケツ一ぱい出てきた、こういう一つの事実があるわけです。  これは問題は、こういうものが日本に検疫なしで入ってくるということを私は重視するわけです。私もいろいろ調査しました。ところが、人間については地位協定上の取りきめがありますけれども、物についてはない。要するにノー検疫で日本にはいれるということです、逆に言いますと。その点についてまず伺いたいと思います。
  342. 吉野文六

    ○吉野政府委員 検疫につきましては、この日米合同委員会の合意によりまして、検疫ができることになっております。たとえば植物につきましては、先ほど申しましたように、日本の植物防疫官が検査を行なっておる。それから動物につきましては、公用のため合衆国軍隊によって合衆国から輸入されるものにつきましては、米国政府の獣医官によって検査を受け、かつ証明されたものに限られ日本に輸入後検疫される。それから合衆国以外から日本に輸入される動物及び畜産物は輸入後検疫される。それから米国軍隊の構成員、軍属、家族が私用のため輸入した動物及び植物は、日本法律の定めるところによりまして、家畜防疫官がこれに当たる。こういうようにそれぞれ規則がございまして、これによりまして日本側が検疫を行なう、こういうことでございます。
  343. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私も実は持っておるのです。これは人の検疫だけではないですか。「安全保障条約第三条に基づく日米行政協定の本文中に直接検疫の取扱についての明文がないが、外国軍用艦船等に関する検疫法特例(昭和二十七年法律第二百一号)の範囲内において、次の措置を実施することに同意している」、これは三十七年四月の参議院において外務省から見解として出されたものですよ。しかし物についてはないのですよ。  そこで、この問題につきましては、いまはノースピアでこういう作業に日本人が従事してやっておりますが、昔はもっとひどかったんですよ。昔は、あそこで消毒もしない、洗いもしないで、まっすぐ相模補給廠に入ってきた。そこで相模原の基地従業員が騒ぎまして、このノースピアで洗浄したり、または消毒したりすることになったわけです。  しかし、こういう実態を明らかにしていく中で問題になってきますことは、地位協定の中にないということですよ。人についてはこういう見解を出した。物についてはないじゃありませんか。だから、日本に向こうから、そんな取りきめはないから自由なんだと言われれば、われわれ何も言えないということでしょう。合同委員会でそういうことをやるということをきめたって、具体的なものがなければ、それは実施できませんよ。しかも、御存じのように、最近の新聞報道によりますと、ノースピアに入ったものが、国道十六号線ですか、そういうところをノンストップで信号を無視して走っている。貨物やなんか、そんな勢いで走ったら、ついてきたゲジゲシ虫とかいろいろな害虫が、そのまま飛ぶじゃありませんか。私はだからこういう点について、皆さん、もう地位協定は直さなくたっていい、あるいはまた完ぺきだなんてよく言いますけれども、たいへんな穴があいていると思っているのです。先ほどアメリカ局長答弁したことは、これからやるということの一つのタイプだろうと思うのです。だから一つは、この事実関係について調査するということ。それからもう一つは、こういう穴のあいているところについてはすみやかに合同委員会において、人の検疫ということについて前にもちゃんときめたわけですから、同じような取りきめを結ぶべきだと思うんですよ。いかがですか。
  344. 吉野文六

    ○吉野政府委員 おそらくこの点につきましては、先生誤解をなさっておられるかと思いますが、動物検疫に関しましては、昭和三十六年十一月の日米合同委員会において改正されております。動物検疫につきまして改正もありますし、それから植物につきましても、先ほど私が読みましたように、合同委員会の議事録がございます。したがって、それらによりまして、日本側が当然検疫ができるたてまえになっております。なお、現実にそれでは本件につきましてはたして検疫が行なわれたかどうかということにつきましては、さらに施設庁を通じてひとつ調べさしていただきたいと思います。  なお、その国道十六号線をタンクを積んだトラックが走って、信号を無視して暴走したという件につきましては、われわれも先方に厳重注意をいたしました。今後このようなことが起きないようにということを申し入れてございます。  したがって、検疫につきましては、先ほど申しましたように、すでに合同委員会で規定がきまっております。
  345. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたのおっしゃるのは人間あるいは動植物でしょう。私の言っているのは艦艇とか兵器そのものですよ。戦車、人員輸送車、あるいはまたM48、たくさんありますよ。その物の検疫について私言っているのですよ。動物とか植物とか人間については、当然合同委員会の取りきめによってやっていますよ。しかし、それよりももっとひどいんですよ、こういう物についてくるものは。それから貨物、これについてだって取りきめがあるのですか。
  346. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点は結局同じことでございまして、その梱包の中に植物なり動物なりが入っておるという疑わしき場合には、それぞれ動物、植物の検疫を受けることになっておりますが、タンクその他の、通常動物、植物がひそんでいないようなものにつきましても、疑わしい場合には検疫を行なう、こういうことになるわけでございます。  それで、事実関係につきましては、なおこのような新聞報道もございましたから、施設庁に事実関係をあわせて調べてもらうというように、いま手配をしております。
  347. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その辺の解釈が不明確だから問題だと思うのですよ。というのは、やはり武器については武器の機密もありますし、そう簡単に検疫なんかさせませんですよ。  それで、いままでの事実関係、ここにも出ておりますけれども、こういう問題が出たために、神奈川県の横浜渉外労務管理事務所を通じて、ベトナムから運ばれた軍事物資を扱う場合の事前検疫または検査徹底を文書で米側に要請をした。それで基地側からはポー少佐、これはサービス部長のようですが、その名前で、ベトナムなどから船積みされる場合、現地の軍司令官などが武器などの検査、消毒を徹底させる、こういう回答があったというのですね。ということは、向こうではやるけれども、こっちではしないということですよ。だけれども、この回答があったあとで皮膚病の発生だとかムカデが出てきたというのです。だから、それはやはり、こちら側においてそういう体制がないから働く従業員は心配するのだし、実は消毒を十分やったはずだと言っても、日本にもしかアメリカシロヒトリみたいに繁殖することがあった場合に、これはたいへんなことになりますよ。前に沖繩から来た学童が土を持ってきた。そのときに、これは持てないんだといって、沖繩の土は羽田で捨てさした。いまは国内になりましたから別に問題はありませんけれども、返還前はそういうことが実はあった。今度はアメリカのほうは、地位協定にないから、自分たちがかってに消毒しただけで、どんどん日本の基地に、土だけじゃない、いろいろな物を持ってきておる。こういうだれが考えてもおかしい事態が実はあるわけですよ。あなたが言ったように、同じことだ——同じことじゃないのです。人や植物や、あるいはまた動物についてはやるけれども、戦車について、ないと言ってしまった場合にはそれまでの話ですよ。ついていてもつかなくても、やはり検疫としてはやるべきではないか。わが国はどうも軍事優先といいますか、そういう点については甘い考えがあり過ぎる。この点で合同委員会ではお話しになったでしょうけれども、具体的なものはないでしょう。
  348. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生の御指摘の点はわれわれも十分承知いたしましたから、なお事実関係をよく調査の上、今後適当な措置をとりたいと思いますが、御存じのとおり、たてまえとしてはすでに検疫ができる立場にあるわけでございますから、ただ実際上それが行なわれていなかったということでありますれば、これは重大なことでございますから、もしそのような事実があれば、それは改めるようにいたしたいと思います。
  349. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 駐留軍の組合の方は、米側から連絡があったときだけ日本人が行ってチェックしていると言うのですよ。私は、こういうところにこそ常駐させて、こういった問題についてはきびしくチェックすべきだと思うのです。ノースピアなんというのは日本に全く関係ないのに、自衛隊の制服のほうは常駐しておって、問題の検疫のほうはだれも行っていない。連絡が来たときに行く。私は逆だと思うのですよ。制服自衛官は米軍司令部の一角にいて、日本に物資が来なくても常駐している。そういう事実がある。こういう検疫については、連絡があったときだけ行っておる。おかしいでしょう。ですからその点については、いままでのようないき方ではなくて、こういう問題が実際発生しているわけですから、厳重なチェックを、こういう面こそ拡大解釈して、地位協定の取りきめもなければ、どんどん適用してやるべきだと思うのですね。しかし、これだけでは問題ですから、これはやはり、新たに合同委員会なり、あるいはまた何らかの話し合いの中で取りきめをつくったほうがいいと思うのです。その点はいかがですか。
  350. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほども申し上げましたとおり、原則として、わがほうがあらゆるものにつき一応検疫ができるたてまえになっておりますが、実施の面においてなお十分でないという面もあり得るかと思いますから、まず事実関係調査の上、必要ならばさらに合同委員会によって補足的な協定をつくりたい、こういうように考えております。
  351. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 必要ならばということですが、こういう事態が起きないために当然必要である。これは皆さんの政府の土俵で話した場合のことでありまして、もちろんわれわれはないほうがいい。だけれども、当然それはつくってきちっとした体制のもとにやるべきである。暫定措置とか、連絡があったときとか、いままでのようなやり方ではよくない。この点はっきり指摘しておきます。その点、外務大臣からも、いま必要があればということでありますから、御答弁願いたい。
  352. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまアメリカ局長からるるお答えいたしましたとおり、よく実情をまず調査いたしてみます。そして、これはもうわが国も関心事でありますけれども、同時にアメリカのほうでも関心事であろう、こういうふうに思うのです。ですから話を十分になし得る、こういうふうに思いますから、よく話し合ってみるということにいたします。
  353. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 話し合ってみるのじゃなくて、いま必要ならば協定もちゃんとつくりたいという、やはりそこまでしなければこの問題は解決しないのじゃないかと思っているのです。その点についてどうかという点ですね。
  354. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 話し合ってみるということは、話し合った結果必要があれば必要なる措置を講ずる、こういうことでございます。
  355. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最近、わが党の調査で明らかになったのですが、横須賀の従業員がフィリピンのスービックに行っているということ。そしてあるときは厚木から軍用機でノーパスで行っておる。しかもそのことが実は技術研修であるという目的で行っているわけです。この点についてはどういうふうに外務省としては考えておるのか。
  356. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましても、われわれは先ほどの神奈川新聞によりまして事実を見たわけでありますが、御存じのとおり、在日米軍の労務者は地位協定第十二条第四項によって間接雇用によって充足されておるわけでございますが、当該労務者の勤務地につきましては、地位協定は特別に規定していない。しかしながら常識として、在日米軍が使用する労務であるから、実際上は安保条約第六条の目的のために提供されておる基地内で、すなわち米軍の施設、区域内において勤務することが原則である、こういうふうにわれわれは見ておるわけでございます。しかしながら、安保条約の目的のために駐留する米軍のために必要を満たすという限度において、海外へこれらの労務者が派遣されることは例外的にはあり得ることだと考えられます。御存じのとおりMLC付属書の第十八章に、従業員の海外旅行のための経費支弁に関する規定がありますから、こういうことを予想しておったものと思われるわけであります。しかしながら、このような海外への派遣を行なう場合も、この用務はあくまでも、先ほど申しましたように、在日米軍の関連業務の範囲内において安保条約の目的に沿うものであるということでありまして、現にMLCの従業員の海外旅行を審査しておる防衛施設庁においては、旅行の用務が研修、訓練、連絡の場合にのみこれを認めております。これらの海外渡航は、もちろん出入国管理令などの関連の国内法に基づいて所要の手続を経て行なっているわけでございますから、その意味で、特にわれわれはこの問題について異議をはさむことはないというのがわれわれの見解であります。
  357. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまあなたの答弁を聞いて私は大きな危惧を持ったわけです。というのは、厚木基地からノーパスでフィリピンに技術研修のために行ったというのですよ。そのことは神奈川県横須賀の渉外労務管理事務所で認めているのです。しかもこれが技術研修でスービックに行ったのはたしか旅費も支払った、こういうふうにあるのですけれども、まず、その事実関係についてはどうなんですか。
  358. 吉野文六

    ○吉野政府委員 厚木地区からノーパスで出たということはかつて三十九年にありまして、これはわがほうも厳重にアメリカ側に抗議を申し入れまして、自今は必ず日本のパスポートを携行して出入国管理令によって手続をとって出発する、こういうことになっております。
  359. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、観光という目的以外に、向こうに行って修理をしたり、あるいはまた向こうに行って自分が持っている技術を行使するということは認められない、こういうことですか。
  360. 吉野文六

    ○吉野政府委員 防衛施設庁が旅行の用務として規定しておるのは、研修と訓練と連絡、この三つになっておりますが、これらの三事項に該当する限りは差しつかえない、こういうことだとわれわれ観念しております。
  361. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまあなたが申したその三つのこと以外にはできないというわけですね。要するに安保条約というものは、日本施設、区域において基地を提供し、さらにまた地位協定に基づいて、そういう米軍の修理だとか、あるいはまた米軍の業務に協力する、こういったことがありますけれども、海外まで行って協力することはないわけでありますから、ましてやノーパスで向こうに行ったなどということはたいへんなことですよ。その点はチェックしているのだろうと思いますが、いずれにしても、そういうような事実関係をきびしくチェックしなければ、前回も指摘をしましたように、日本の基地は自由に使われ、また自由に持ち込まれ、さらにはいつの間にか戦争に巻き込まれていく、こういうことになる可能性がある。私たちがいつも指摘するのはその点なんですね。ですからこういった点について、厳重に実態を調査して、二度とそういうことがないように対処されるよう要望いたします。その点についていかがですか。
  362. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生の御指摘の点につきましては、さらに事実関係をしさいに調査するよう、防衛施設庁を通じて関係者にお願いしておきます。
  363. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままでアメリカ局長といろいろ議論しましたけれども、最後に外務大臣から、最近のベトナム情勢、さらに相模補給廠とのかかわり合い、そしていま指摘しましたような問題点、それについて所信を伺いたいと思います。
  364. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いろいろ伊藤さんから御指摘をいただきました。それらの点につきましては、十分調査をいたし、またそれに対して必要な措置はとる、こういうことにいたします。ただ、安全保障条約は、私どもはこれは必要だという立場に立ちますものですから、あるいは一〇〇%お気に召すようなことにならないような場合もあるかと思いますが、できる限り国民感情というようなものを考えながら適正な措置をとるということにいたしたいと思います。
  365. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 終わります。
  366. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  367. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 ただいま委員長の手元に、加藤陽三君より本案に対する修正案が提出されております。     —————————————
  368. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。加藤陽三君。
  369. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案のうち「昭和四十七年四月一日」となっている施行期日は、すでにその日が経過いたしましたので、これを「公布の日」に改め、在勤基本手当の額、住居手当の限度額及び研修員手当の額に関する改正規定等は、本年四月一日より適用することに改めるほか、五月十五日沖繩が本土に復帰したことに伴い不必要となった改正規定の整理等を行なおうとするものであります。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  370. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  371. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、加藤陽三君提出の修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  372. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  373. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  374. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  375. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、明六月一日木曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二分散会