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1972-05-25 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十五日(木曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 山口 敏夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       天野 公義君    中山 利生君       葉梨 信行君    湊  徹郎君       木原  実君    横路 孝弘君       鈴切 康雄君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         行政管理庁行政         監察局長    小林  寧君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省情報文化         局文化事業部長 加川 隆明君         建設省道路局長 高橋国一郎君  委員外出席者         国立公文書館長 岩倉 規夫君         法務省矯正局参         事官      朝倉 京一君         法務省保護局参         事官      西岡 正之君         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         建設省都市局都         市高速道路公団         監理官     上妻 尚志君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     比留間 豊君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     平出 三郎君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)     島  守一君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第二八号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一三号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  許可認可等整理に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案の審査に関し、日本住宅公団理事島守一君、日本道路公団理事比留間豊君、同平出三郎君を本日の委員会参考人として出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、御意見質疑をもって聴取することにいたします。     —————————————
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤惣助丸君。
  5. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 許可認可等整理に関する法律案に関連いたしまして、若干の質問をいたします。  初めに、日本住宅公団理事の方、また日本道路公団理事の方々には、お忙しいところたいへんに突然出頭をいただきまして、心から感謝いたします。許可認可整理に関する問題について若干の質問をしたいと思いますので、よろしくお願いします。  初めに大臣に伺いたいのですが、行政改革三カ年計画というものが実はあるわけですね。それがことしで終わることになっているわけですが、最初計画では千六百四十一件、現在予定数を含めて措置された件数は千四百九十九件だといわれておりますね。最初計画があったのが千六百四十一件、それがいままでに措置された件数は千四百九十九件。だいぶ残っているわけでありますけれども、このあと残った件数に対してはどういうようにされるのか、まずその点から伺いたいと思います。
  6. 中村寅太

    中村国務大臣 行政管理庁の本年二月一日現在で調査いたしましたところによりますと、昭和四十六年度内に措置ができないと見込まれるものは、許認可等百四十二件、報告四十九件でございます。これらの多くは、それぞれ所管省庁でなるべく早急に実施したいとして具体案を作成中のもの、あるいは審議会等において検討中のものもございますが、行政管理庁といたしましては、今後とも引き続いて実施の推進をはかってまいりたいと考えております。  詳細なことにつきましては、監察局長から補足説明をいたします。
  7. 小林寧

    小林(寧)政府委員 ただいま大臣が申し上げましたように、現在措置できないというものが許認可百四十二、報告四十九でございます。これらにつきましては、私どものほうでさらに各省庁と連携をとりまして、できる限り措置すべきものは措置できるように推進していきたい、こういうふうに考えております。
  8. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 できる限りと言いますけれども、めどとしてはどのくらいで考えていらっしゃるわけでしょうか。
  9. 小林寧

    小林(寧)政府委員 先ほど申し上げましたのは二月一日現在でございます。四月末においてすでにその中で措置済みのものは、当初計画事項措置したものが許認可で二十九件、報告で四十一件でございます。それから当初計画以外で措置予定のものが許認可で十九件、報告で十六件、こういうぐあいになっております。また、本国会で提出した関係のも、これは法案が通りますれば当然その点が入ってくる。そしてさらに、いま申しましたようなところで、現在、検討中、交渉中、あるいは推進中のものが許認可等では九件、報告では一件、こういう状態になっています。
  10. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いま検討しているものの特徴的なものはどんなものがありますか。それで何か問題になっていますか。
  11. 小林寧

    小林(寧)政府委員 大体、未措置のものにつきましては、現在、審議会等で具体的な案を検討している、あるいは類似の他の制度のつり合いを考えている、そういうようなものがございます。たとえば薬事法関係認可、あるいは食品衛生法関係認可、あるいは労働災害補償法関係認可、あるいは技術士法関係認可、こうしたようなものがございます。また、情勢の変化で非常に困難になっておるというものは、たとえば貸家組合法関係。これは、農民の方が土地整理しまして貸し家組合をやる、最近、非常にそういう点が出てきまして、当初の計画とは全然情勢が変わってきている、こういうようなもの。あるいは火薬類等の取り締まりのようなものは、さらに強化しなければいけないのじゃないかというような点がございます。
  12. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この許認可措置状況は、三十九年の臨調答申件数は三百七十九、本年二月末現在措置済みが二百三十六で、百四十三件ほど残っているわけですけれども、その理由と内容はどんなものがあるのですか、これも簡単に……。
  13. 小林寧

    小林(寧)政府委員 三百七十九件のうち措置済みが二百三十六件、未措置が百四十三件でございますが、この未措置のうちでおもなものは、関係省庁間で漸進的に規制の緩和をはかっていくべきもの、たとえば貿易関係許認可というようなもの、あるいは現在審議会等具体案検討中のもの、これは一例をあげますれば、伝染病予防法関係あるいは薬事法関係、やはり行革三カ年計画と同じような問題になります、審議会等具体案検討しなければならないものであります。また今後、情勢の推移をまちながら地方公共団体体制整備というようなものを考えて、廃止なり権限を委譲しなければならないもの、たとえば高圧ガス製造施設検査、こうしたようなものがございます。
  14. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その中間的な資料が何かありましたら、あとでつくって提出していただきたいと思います。どうでしょう。
  15. 小林寧

    小林(寧)政府委員 早急に資料をつくりまして、御報告申し上げます。
  16. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 先ほども話がありましたけれども、中には、整理するのではなくて再認可といいますか、そういうことも考えられるのもだいぶあるように思います。その点は私たちもよく現状を分析してやってみなければわからないわけであります。必ずしも臨調答申がそうだからといって、現状にそぐわない新しいものが出た場合には再検討することは当然だと思うのですね。そういう点でやはり資料要求をするわけです。  ところで、参考人の方が来ていますから、先に道路関係のほうから質問に入りたいと思いますが、この「許可認可等整理に関する法律案関係資料」の中で十三番目に「道路整備特別措置法の一部改正」がありますが、「日本道路公団等有料道路新設または改築に関する工事を行なう場合において、すべての工事について建設大臣または都道府県知事中間検査を要するものとされているのを改め、省令の定めるところにより建設大臣等中間検査を行なうことができるものとする」、こういうふうにございますけれども、中間検査をやらないことになっている。これは一つ道路管理に対する不安が実はあるわけですね。これについてはどういうような考え方であるか。  たとえば、道路公団とかあるいは首都高速道路公団とか、こういうものがございますけれども、その工事が、私たち新聞紙上において、たくさんではございませんけれども、不正であるとか手抜きであるとか、あるいはまた原因不明ではありますけれども、しばしば事故があることを知るのであります。いまでさえも、中間検査をやってなおかつそういう事態が起きている。それをやらないことにする。たとえばそれを地方の自治体にまかせるというようなことになろうかとは思いますけれども、そういうことを未然に防ぐためには、やはり中間検査はそのまま置いたほうがいいように私は思いますが、そういった点はいかがですか。
  17. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいまの件でございますが、現在、有料道路新設または改築に関する工事につきましては、中間検査並びに完成検査を行なっておるわけでございますが、しかし、最近、日本道路公団等工事施行者におきます工事監督体制が充実してまいり、さらに工事に関します知識とか経験等が非常に豊富になってまいりましたことが第一点。第二点といたしましては、有料道路の中には、構造及び施行方法におきまして一般道路と変わらないものがありますので、そういう点を勘案いたしまして、中間検査を省略しても差しつかえないとしたものでございます。ちなみに、建設省直轄工事につきましても、補助事業につきましても、これはすでに中間検査を省略させることができることになっております。  ただ、今後、省略できることにはしておりますけれども、構造とか方法等で重要な工事につきましてはやはり中間検査を行なうべきであるということで、これらにつきましては建設省令でもって定めることにしておるわけでございます。たとえて申しますと、高速自動車国道とか首都高速道路阪神高速道路、それから本州−四国連絡橋に関する道路であるとか、それから指定都市におきます高速道路、そういうものの工事についてはすべて中間検査を残したいと考えておりますし、またこれら以外の一般有料道路についても、トンネルとか橋梁高架道路等構造にかかる工事等でもって、その施行に高度の技術を要すると認められるものにつきましては、建設大臣中間検査指定したいというふうに考えておるわけでございます。
  18. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それぞれの指定業者が非常に技術がうまくなった、それでその必要はないんじゃないかと言いますが、逆の理論もまたあるわけです。中間検査をしっかりやってきたから建設省の思うような充実した工事をしておる、こういうことが逆に考えられるでしょう。  それから全然皆無というわけではありませんね。幾つかありましたね。これはやはり何百件頼んでそのうちから一件あった。しかし考えてみれば未然にそういうことは防がなければならぬ。私は、そういうものがどういうことが障害になるかわかりませんけれども、検査というものは、その道路を使用する利用者の立場からいっても、あったほうがいいのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  19. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいま申し上げましたように、有料道路でも、高速自動車国道であるとか、都市内の高速道路構造物を主体にしたものは当然のこと、それ以外の一般道路でも、主要な構造物につきましては中間検査を残しております。一般のものにつきましては、中間検査をいたさないように改正したいということでございますが、先ほどちょっと触れましたが、建設省直轄で行なっておりますいわゆるバイパス工事、非常に大規模なものでございますが、これは中間検査は義務づけておりません。  ただ、御承知のように、補助金等適正化法というのがございまして、この法律に基づきまして、それぞれ現場には監督員が配置されて、絶えず工事チェックを行なっております。したがいまして、たとえその中間検査を今回除きましても、現実には従来と変わらず十分にチェックできることになるというふうに考えておりますので、われわれはこれは廃止してもよろしいのではないかというふうに考えている次第でございます。
  20. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 十分チェックできるということは、ほかの方法で、先ほども言ったように、大臣指定してやるということですか。
  21. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 直轄工事におきましてと同様に、ほかの適正化法という法律がございますので、それに基づくチェックは行ないます。それから、たとえば日本道路公団等有料道路につきましても、毎月毎月工事費支払いのためのチェックを行ないます。これは規制部分検査でございますが、そのつど厳重に検査しますので、実質的には何ら変わりないというふうに考えております。
  22. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 歯どめになる法律があったり、支払いのたびにやるということで実質上同じことであるというなら、私はある程度これは了承できますけれども、もう一つは、大臣指定した場合には中間検査をやる。先ほど橋梁であるとかいろいろな話が出ましたけれども、そういった工事の種類ですね。もう少し明確に教えてください。
  23. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 先ほども触れましたように、高速道路都市内の高速道路以外の道路につきましても、トンネル橋梁高架道路等構造物にかかわる工事がございまして、その施工に高度の技術を要すると認められるものにつきましては大臣指定となっております。それ以外にも、建設大臣が特に必要だと認められれば、どんな工事でも指定できるような建設省令になっております。したがいまして、まず御心配の向きのないように十分にチェックできるつもりでございます。
  24. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 高速自動車国道関係で伺いたいのですが、日本列島高速自動車国道で結ぶという計画は、前の大臣の発表ですか等によりまして大体わかるのですけれども、一つには、道路の問題を考えた場合に、つくってもつくっても非常に渋滞が続くという場合がある。しかもまた、その計画というものが常に工事がおくれるというのか、あるいは決定がおくれるというのか、利用者から見れば非常に渋滞が多い、こういう問題があるわけですね。基本的に高速自動車国道として今後こういうような問題に対してどういう考え方で臨むのか。いままでの計画が発表されておりますけれども、その計画推進するだけで、それで本来の使命というものが果たされていくのか、その辺の基本的な考え方、そういう点についてまず伺いたいと思います。
  25. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 高速自動車国道につきましては、国土開発幹線自動車道建設法という法律に基づきまして、全国で七千六百キロの予定路線がきまっております。この法律に基づく予定路線につきまして、建設省調査をいたしまして、まず審議会の議を経て、基本計画、次にさらに調査を行ないまして再び審議会の議を経て整備計画ができたあと日本道路公団施行命令を出して着工するというかっこうになっております。ただいま、わが国にできております高速道路東名名神中央道その他でございまして、大体七百キロそこそこでございます。したがいまして、法律できめられております一割にも実は達しておらないわけでございます。ただいま全国におきましてすでに三千キロの高速道路整備計画が出まして、全面的にいま着工中でございます。ただ非常にハイクラスなところでございまして、用地もなかなかたいへんでございます。従来の東名名神中央道の実績から申しますと、建設大臣から着工命令が出ましても大体七年間くらいかかっております。そのうちの大部分用地に費やされまして、工事そのものはせいぜい二年ないし二年半であります。そういう事情で整備はたいへんおくれておりますが、たとえばことしの秋には東京−宇都宮間は開通するというふうに、各所にこれから先どんどん毎年二、三百キロずつ程度の高速道路ができまして、昭和六十年には間違いなく七千六百キロができるという段取りに現在なっております。  一方、先生の御指摘の東名名神等につきましては、すでに飽和に達しつつあります。したがいまして、第二の東名名神をつくる必要があるのではないかということで、今年度から新たに第二東名、第二名神調査を開始しようという段取りになっております。  以上申しましたように、法律に基づきまして、審議会の議を経てそれぞれ基本計画整備計画ができ、着工しておるということでございます。しかし、用地買収が難航して七年という日数が必要になっておりますので、なかなか思うように進まないのが実情でございます。
  26. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 現在あるのが七百キロくらいですか。それが昭和六十年までには日本列島全域にわたって七千六百キロにわたる高速自動車国道をつくる、これは非常にいいことだと思うのですが、ただその場合、最近ありましたように岩殿山付近地すべりですか、ああいうことなんかも起きますし、工事を一方においては進めながらも、そういうことに慎重な配慮をしなければならぬと思うのですね。ですから、一つのこういう問題が起きてみなければ、法律のいい問題、悪い問題、また適正な処置ができるかできないかという判断がつかないわけでありますので、この問題について少し聞いてみたいのですけれども、あの中央高速道路岩殿山付近で大きな地すべりがあったのですが、まずその実態について伺いたいと思います。
  27. 比留間豊

    比留間参考人 ただいま御質問のございました岩殿山現況について御説明いたします。  まず最初つくりますときにわれわれどういうことをやってきたかということを多少説明いたしますが、あれは大月と相模湖というインターチェンジがございます。この間約二十五キロでございますが、非常に急峻な場所でございます。中央道は全般的に急峻な土地を通っております。事前にやはり地質調査を十分いたしておりますが、局部的な地すべりを予知するということは、現在の土木技術ではなかなか困難でございます。当該地区につきましては、調査成果をいろいろ検討いたしまして、やはりのり面をややゆるく一割二分くらいにいたしまして、その表へしっかりしたのりワクと申しますか、コンクリートのワクをつくりまして押えまして、しかもその地区でも一番危険と思われるような場所につきましては、地すべりの防止のために大きな土どめのくいを入れております。そういうことで、建設時には十分配慮いたしまして、その仕事が終わりましてから五年間、それから供用いたしましてからすでに三年間たっておりましたが、何ら異常がなかったわけでございます。  この二月の十七日にパトロールいたしましたところが、やや地すべりが起きておるのを発見いたしましたので、直ちにいろいろの観測の機械を取りつけまして、速度があまり大きくなければもちろん急に落ちることはございませんので、交通を通しておりましたが、この三月二十一日にやや動きが大きくなってまいりましたので、それで安全のために交通を閉鎖をいたしまして、直ちにこれと並行いたしまして、大学の先生方、あるいは土木研究所、あるいはコンサルタント等専門家とわれわれと十分現地で協議をいたしまして、対処方法を直ちに決定をいたしました。  対処方法といたしましては、二次的な地すべり、さらに山の上のほうがすべってまいりますと困りますので、そこへ大きな地すべりの防止ぐいを打ちまして、それから地すべり部分を取り除きまして、さらにその下段のほうへも地すべりの防止ぐいを安全のために入れていこうという方針がきまりまして、現在その仕事を鋭意工事中でございます。  なお、この区間につきましては、約二十五キロございますが、日交通が一万三千もございましたので、やや期間がかかるようにも思われましたものでございますから、仮の出口を大月のすぐ手前でございますが、約二十二キロの地点につくりまして、四月末にこれが供用開始をいたしております。そんな現況でございます。
  28. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この地すべり調査によってわかったわけですが、この工事には問題なかったですか。たとえば地すべりといってもなかなか予測できないだろうと思うのですが、工事上とか設計上も問題なかったかということを実は感じるわけですけれども。
  29. 比留間豊

    比留間参考人 先ほど御説明申し上げましたように、設計いたしましてやってまいりましたが、予備の何と申しますか、くいを入れた場所もあるわけでございます。その場所はやや端の部分になりますので、万一落ちますと、橋が落橋いたしますので、落橋いたしますと、先ほどの話にもありましたが、工事の復旧に非常に時間がかかります。おそらく一年ぐらいはどうしてもかかるようなことになると思います。そういう最低危険個所については十分配慮いたしておりますが、今度の場所はまずこれならばだいじょうぶだという処置をしてあったわけでございます。まあ予想外事故が起きたというふうにわれわれは考えております。
  30. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから、私の質問は、設計上にも工事にも、どっちにも全然ミスがないのかというのです。
  31. 比留間豊

    比留間参考人 ミスは絶対ございません。
  32. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうすると、この地すべりはいまのところどちらにも責任はない。設計上のミスはない。工事ミスもない。それで地すべりが起きた、これはどうなんですか。こういう不測の事態というのはどうにもならぬものなんですか。たとえば、こういう山は非常にくずれやすい山であるとか、この辺は関東ローム層であるからどうだとかというようなことは、地質を調べた上で本来はいろいろな設計やるのではないですか。
  33. 比留間豊

    比留間参考人 最初に申し上げましたが、地質的な調査と、それから土質の調査というのは、われわれスタートでやっておるわけでございます。最近の学問は非常に進歩しておりますので、地すべり予想、それからもしすべればどのくらいの対策をやっておけばよろしい、のりの勾配をどうしておけばよろしいということを、すべて基準できめてやっておるわけでございます。あるいは沈下問題等もございますが、これも最近は非常に進歩いたしまして、何年間でどれくらい沈むというようなこともわかっておりますので、そういう対策十分設計上に織り込んでやっておるわけでございます。現在の土木技術では最高のことをわれわれ努力をしてやっておるつもりでございますので、その点に関して遺漏はまずないというふうに私は考えております。しかし、土木技術もやはり前進すべきものだと私は考えますので、今後とも、そういう方面について、さらに土木研究所あるいは建設省の御指導を得まして、われわれ研究に励んでいきたいというふうに考えております。
  34. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私はそういう関係はしろうとですが、でも、一般的に見まして工事ミスもない、設計上のミスもない、しようがないんだ、そういうことで処理しますと、ほかにも起きてくる可能性も実はありますよ。地質学的に見て、また土質を調べてみても、そういうことについて、やはりある程度読めたんじゃないか。しかしながら、それをやると非常に費用がかかるとか、あるいは工事がおくれるとか、開設がおくれるとかいうようなこともあって、結局はそこまではきたけれども、十分な設計ができなかったというようなことになるんじゃないですか。私はそういうような問題を、やはりこれは責任を明らかにすれば、確かにそれなりの官庁のあるいは業者の犠牲が出るかもわからない。ただ、その前に、こういうことが二度とあってはならぬし、そういったことを一つの問題としてとらえて、これからも七千六百キロまで開発するわけで、まだまだそれこそ十分の一程度の七百キロまでしかやっていないわけですから、こういうときにこそ、万全の対策、指導というものを公団としてはやるべきじゃないかと私は思うのです。だから、あなたの答弁ではちょっと私は不満なんだな。われわれしろうとなんですから何も意見言ったからどうということはありませんけれども、結局は、あそこを利用する人はあの地域を非常に迂回しているわけです。その迂回するのだって、やはり大きな地震が起きたとか、予想もしない天災が起きたというんだったら、一般国民はやむを得ないと思うのですね。ただそれが自然にすべってきた。みんなあそこを通る人は、いろいろな学者を使っているのになぜそのくらいのことが予測できなかったのかとか、やはり工事の上で手抜きがあったんじゃないかとか、いろいろなことを言っていますよ。それに対して、どっちもミスがない、しょうがないんだというようなことでは国民は納得できませんね。その点いかがですか。
  35. 比留間豊

    比留間参考人 日本はたいへん地形が急峻でございまして、地質がしかも非常に複雑な地質状況でございます。そういう場所でもちろん全国的に山くずれ等がございますので、そういう危険な個所はわれわれできるだけ路線選定でもちろん避けて通っております。しかし、いろいろな制約がございまして、どうしてもそういう場所を通らなければならないという個所もございますので、そういう場所につきましては、地形、地質等を十分調査いたしまして、それに適合したのり面の崩壊の防止対策というものを十分講じておるわけでございます。なおかつ、今回のような予測外のことが起こりましたことは、どうもたいへん申しわけございませんが、最大限度の努力はいたしていきたいと考えるわけであります。
  36. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 第二、第三の岩殿山付近のような事故があっては困るのです。現在そういう危険個所といわれるようなところは、いままで七百キロつくった中でどの程度あるのですか。
  37. 比留間豊

    比留間参考人 昨年、焼津の事故がございまして、あのせつに、建設省の御指示もございまして、高速道路の総点検をいたしております。なお、われわれ日常に、毎日実は十三回ないし十四回のパトロールをしております。特に、道路のやや外まで十分調べまして、その時点で、浮き石と申しますか、石が浮いておって落ちそうな危険な個所が五カ所ほどございました。それは四十六年度中に全部処置を終わりまして、現在のところ、われわれといたしましては、高速道路については危険個所はないというふうに思っております。
  38. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その五カ所の危険個所はどことどこですか。
  39. 比留間豊

    比留間参考人 中央道で三カ所、それから名神高速道路で二カ所でございます。それはすでに四十六年度で処置済みになっております。
  40. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 場所はわかりますか。
  41. 比留間豊

    比留間参考人 名神は滋賀県の彦根市山中と申すところでございまして、これは米原トンネルの出口になりますが、そこは落石による危険がございましたので、落石の防護さくを昨年度実施済みでございます。  それからもう一カ所の名神は滋賀県の米原町でございますが、これも同様の処置でございます。  それから中央道につきましては、神奈川県の藤野町にやはり落石の危険がございましたので、これはやはり四十六年度に処置をいたしております。  それから同じく神奈川県の藤野町でございますが、これも処置済みでございます。  もう一カ所は談合坂というサービスエリアがございますが、あの付近でやはり落石の危険がございましたので、これも処置をいたしました。  大体以上でございます。
  42. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 岩殿山について言えば、事故というよりも地すべりが起きて現在迂回させている。迂回させるについては万全の対策をとっておりますか。利用する人が不平たらたらというか、こんな道を通してとか、中央高速道路のあれに反するじゃないかというようなことも言っている人もいるわけですから、そういう点ではどうなんですか。
  43. 平出三郎

    平出参考人 岩殿山につきましては、迂回させるにつきまして、これを現在のままでとめておく状況がいいか、それから一部そこを通しまして、できるだけの距離を利用させたほうがいいかということがございまして、地元の大月市のほうから特に、そういった一部でもいいから通してくれという御要望があったわけでございます。それで、私どもとしましては、そこを通すことによって非常に混乱が起こりはしないか、特に大月市内で混乱が起こりはしないかというようなことを非常に心配したわけでございますが、まずPRと申しますか、ラジオその他のいろいろな報道機関を通じましてそれを開くことになった。ただこれは、一どきにたくさん殺到すると非常におくれる可能性があるから、その点ひとつ注意していただきたいというようなPRをかなり強くやりまして、そこで四月二十九日でございましたか、三十日でございましたか、連休のときに一時非常に高速道路上に長くつながったことがございます。それが一回ございまして、そのときはかなり不平があったかと思いますけれども、そういった宣伝の効果も多少あったかと思いますし、それからもう一つ、なぜつながるかと申しますと、大月の市内で仮インターをおりまして、右折して国道に入るわけでございますけれども、そこの交差点の処理能力といいますか、これが一時間五百台ということで、そっちのほうで制約されておりますので、勢い、たくさんつながりますと高速道路上に長くつながる、こういうケースがございまして、連休のうち一日そういったことがございましたけれども、全般的に見ては、通したほうがよかったというような感覚が皆さんあったのではなかろうか、かように考えております。
  44. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 安全は大事でございますけれども、やはり公団の敏速なる対策、あるいはまたサービス精神に徹した迂回路の整備というのは必要だと思うのです。高い金を払って車を利用する。本来ならば電車でもいいのだけれども、やはり車のある人は、中央高速はあそこを除いてはスムーズな高速道路ですから、非常に期待しているわけです。ですから今後の問題として、これはよく考えて善処するのではなくて、すみやかにその対策を立てて、そして利用者が不便を感じないように十分な処置をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  45. 平出三郎

    平出参考人 今度の岩殿山のところにつきましては、たまたまあそこがちょうど路線拡幅といいますか、いまの二車線を四車線にするということで用地もかなり確保してございまして、わりあいスムーズにああいう特別な便法がとれたわけでございます。この便法等につきましては、もちろん急に、時ならぬときに予想もしないところにかなりのインターチェンジを置くわけですから、かなりの車も流入するということもございまして、特に大月の警察なり地元なりというものと十分に相談をいたしまして、その上で開設した、便法を講じたと申しますか、ということで、今後、たまたまそのような用地の遊びといいますか、そういったものがないところに特別にインターチェンジをつけるということが可能であるかどうか、はたして簡単にその対策がとれるかどうかはわかりませんけれども、いろいろな諸条件が熟しておりますところにはすみやかにそういった対策を講じていきたい。今度のやつは、仮インターを設けるにつきましても、たしか数千万円ぐらいのオーダーでこれが片づいた。これは、できてしまいますとまたもとへ戻って無に帰してしまうものでございますが、そのくらいの費用でできた、かようなことでございます。
  46. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに私がきょうここで問題にしたいことは、やはりこういう事故を二度と起こさないように、道路の開発についても慎重にやってほしいということです。いまも五カ所あってもうすでに手をつけた。しかし、こまかい危険個所はあなた方のそれぞれの所管の管理事務所で管理しているわけですね。その危険個所はもう無数にある、数も完全につかめないというくらいなんじゃないですか。その点いかがですか。
  47. 比留間豊

    比留間参考人 先ほど申し上げましたように、私どもパトロールを、技術的なパトロールを含みまして一日十三、四回して歩いておりますが、おっしゃるような数千個所あるというようなことは絶対ございません。
  48. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 数千個所とは言わないんですがね。こまかい危険個所はたくさんあるでしょう。だけれども、それは実際にあまりに数が多いのと、それから予想については今後どういうふうな状態になるかわからないので、それは管理事務所にまかせてあるということじゃないですかとお尋ねしておるのです。
  49. 比留間豊

    比留間参考人 現場には維持管理事務所というのがございまして、そこは約五十キロの延長をもってやっておりますが、この維持管理事務所の責務は、要するに技術的なそういう維持管理をやる責務でございまして、管理事務所は料金を徴収する責務でやっております。そこには約五十キロを担当いたします二十数名くらいの人員を張りつけて、常時毎日の点検その他をやっておるわけでございます。決して管理事務所に押しつけてやっておりません。そしてその上に管理局には、技術の補修課、それから交通技術課という二つの課がございまして、それで円滑なる交通を確保すること、それから十分の補修をすること、こういう態勢で仕事をいたしております。絶対御心配はないものと考えております。
  50. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もちろん、心配があってはこっちも安心して通れませんから、技術的には、この辺もこうじゃないか、ああじゃないかというようなことは維持事務所でやっていらっしゃる。それは私も聞きましたよ。それは当然だろうと思うのです。そこで私、それにけちをつけているわけじゃない。当然台風もある、あるいは水も出る、水かぶりのところもあるでしょう。ですから、道路がある限りそれは続けなくちゃならぬことだと思うのですが、ただ問題は、設計上のミスもなければ工事ミスもない、しかししょうがないというようなことはうまくないと私は思うのです。だから、こういうような岩殿山付近のことについては、建設省としては中間検査をやったのですか。
  51. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 中間検査をやっていると思います。
  52. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は正直に言って、やはりそういうくずれるような山だということは、地質学的に言うとわかると思うのです。このくらいの工事をやればだいじょうぶだろうというようなことは。それほどまでにはしなくたっていいという考え方も中にはあるかもしれない。いずれにしても、そういう動く山であるというようなことは、中間検査のときにわかったのじゃないかと思うのですね。だから、その中間検査をなくして、これはまかしてしまうというようなことになった場合、やはり第二、第三のこのようなことが起きないとも限らない。しかも、設計上のミスはない、あるいはまた、工事ミスはない、それじゃだれが責任をとるか。結局迷惑するのは国民である、それじゃうまくないですよ。今度の中間検査をはずした場合でも、こういう場合については、当然大臣指定するなり、あるいはまた中間検査が重要な一つじゃないか。こういうような山くずれのおそれのあるようなところについては、十分な中間検査をやって、設計上のミス工事ミスのないように、監督官庁としてはやるべきじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  53. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 先ほども御説明いたしましたように、高速自動車国道につきましては、今後も中間検査をいたします。ただ、中間検査をしたためにただいまのような地すべりを発見できるかどうか、非常に疑問でございます。先ほど比留理事が御説明しましたように、わが国は非常に地形も複雑ですし、断層もこまかいところがたくさんございますから、地すべり地帯を避けるということは絶対に不可能でございます。したがって、どうしても通らなければならぬというときには、十分調査して手当てをしてやるわけでございます。ところが、残念ながら現在の土木技術では、最終的までは完全な予知はできません。そういったようなこともあって、こういうような地すべりが起きたわけでございますが、幸いにして未然に防ぎまして、若干地元の方に御迷惑をかけておりますけれども、人身事故に至らずに現在処置しているわけでございます。道路公団としては全力をあげて調査し、設計し、工事をやっていることでございますので、われわれも不可抗力というふうに考えております。  また、今後もこういうような事故が起きやせぬかという御指摘のようでございますけれども、先ほどから何度も繰り返しておりますけれども、絶えずパトロールし、絶えず検査しております。こういうものがたとえ発生しそうになりましても、事前に発見いたしまして処置できるようになっているわけでございます。高速道路は最も安全な道路だというふうにわれわれは考えておりますので、そういうふうに御理解いただかなければと思います。
  54. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もちろん国民は、絶対安心だからゆうゆうとスピードを越えて通るわけですから、それはもう安心はしていますよ。ただ、いま言ったように、不可抗力だということは私は気に食わぬですよ。いまの日本の土木技術ではどうにもならぬと、監督官庁がそんなあきらめたような姿勢じゃだめですよ。二度と起こさないために鋭意研究して対策を立てます、このくらいの強い姿勢があっていいのじゃないですか。  それから、絶対なんというようなことはなかなか言えないと思うのですよ。絶対事故はありません、起こしませんなんというようなことはないですよ。起きれば、絶対はどうなった、こうなるのですから。比留理事に対しては申しわけないですがね。だからそういう点については、今後は起きないように、いままでの感覚ではなくして、そういったようなことが起きた場合には、やはり利用者である国民に大きな迷惑をかけるわけですから、十分なる対策を立ててほしいということですよ。いかがですか。
  55. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 御指摘のとおりでございますので、われわれといたしましても、今後とも十分調査もさらに入念に行ない、こういう事故のないように全力をあげたいと考えております。
  56. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もう一つ、高井戸でこの間工事中に橋げたが落ちまして、そこを通っていたトラックやその他の車両の人たちが何人か死にましたですね。あの概要について簡単に伺いたいのです。
  57. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 都市局の所管になっておりますので、直接の所管じゃございませんが、まず概要だけ御説明申し上げます……。
  58. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 わからないでしょう。——それじゃこれはいいですよ。要するに、監督官庁としてはやはり建設省ですね。ですから一番大事なことは、非常に交通混雑の中で工事をやられている、それはもう危険が伴うことは当然でしょうと思いますが、やはりこういった事故が起きたことについては、やむを得ないのだ、先ほどみたいに不可抗力だなんていうようなことになって、いいかげんな取り扱いをされては困るわけですよ。ですから十分なる監督が必要です。あるいはまた、もう起きてはならないようなことが実は起きているわけですよ。これに対しては、やはり監督官庁としては、遺族の方に対しても手厚い処置をしなければならぬと思うのです。そういう点だけ聞いておきます。
  59. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 首都高速のけたの落下によります死傷事故につきましては、建設省としてもたいへん申しわけないというふうに考えておるわけであります。いろいろ原因を調べてみますと、確かに施工者に手落ちがあったようでございます。そういうことから厳重な警告を発し、また先生御指摘のように、遺族に対しては十分な手厚い補償をするように指示してございます。また、かかる事故が今後絶対起こらないように現在総点検も行なっておりますし、厳重な注意も監督もするようにただいま行なっておる次第でございます。
  60. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、次に交通渋滞と料金の関係について伺いたいのですが、東京を中心として非常に高速道路がありますけれども、非常に交通渋滞するんですね。この渋滞が非常にひどいのですけれども、それに比例して料金が突然上げられたりして、利用する者から見ますと、現在の国鉄じゃありませんけれども、満員電車にぎゅうぎゅう押し詰められて、それでなおかつ運賃値上げ、それと同じ感じをやはり利用する人は持っているわけですね。そういう点についてはどんなふうに考えているのか。この交通渋滞については解消のめどがあるのか。その点、まず伺っておきたいと思います。
  61. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 御指摘は東京都内の渋滞の解消をどうするかという問題でございますが、これはたいへん大きな問題で、実はわれわれ政府当局をはじめ東京都も、それぞれ実は苦慮いたしまして、いろんな審議会を設け検討しておりますが、なかなか最終的なきめ手が見つからぬで困っているわけであります。  基本的に申しますと、車の台数に対します道路の面積が狭過ぎるということに結論はなるかと思いますが、しかし、ただいまの東京都内の道路を広げること自身は非常に巨額の金がかかりまして、しかも非常に近ごろの住民パワーでなかなか実施もできないという状況で苦慮しているわけでございますが、完全なきめ手はございません。  ただいま審議されております内容を簡単に申し上げますと、一応交通規制を行なうことがまず第一じゃないかという意見が出ております。たとえばマイカー等によります通勤、通学はまず規制すべきじゃないかという意見が出ております。したがいまして、そういたしますと、通勤、通学はすべて地下鉄とか鉄道等の大量輸送によるべきである、ないしは高速バスによるべきである。ただいま、東京都の道路につきましては、主として業務用に使わせるべきじゃないかという考え方一つあります。  第二点は、東京を通り過ぎる交通が非常にたくさんございます。たとえば千葉をスタートいたしまして、東京都を通りまして横浜に行くなり名古屋に行く場合も非常に多いわけであります。その逆もあろうかと思いますが、そういう交通は東京の都心に入れるべきじゃないという考え方でございます。これに対しましては、東京の外郭環状線という道路計画されております。すでに一部工事にかかっておりますけれども、これを早急につくる。ないしは東京に湾岸道路、これは百メートルの道路計画されております。これももうすでに着工しておりますが、これを早急につくりまして、東京を通り抜ける交通はすべて外側を回るべきであるということであります。  これらが完了いたしますとわりあいよくなるわけでございますが、それにいたしましても、特に込むと指摘を受けますのは首都高速であります。この首都高速の込みますのは交通網が足らないわけでございます。首都高速のまん中に環状線がございます。それから両わきに全部タコの足のように伸びているわけでございますが、ただいまの九七%ぐらいは、環状線から発していくか、ないしは環状線でおりる。つまり環状線を使う交通になっております。もうすでにこれが飽和をはるかに越えておりますので、その外側に中央環状線という計画がございます。これは、先ほど申し上げた住民の反対のために工事ができないで、すでに三年間を経過しているわけでございますけれども、これを何としても早くつくるべきじゃないかというような意見が非常に強くなっております。  なお、いろんな対策があろうかと思いますが、基本的にはそういうことしかないんじゃないかということでございますが、いずれの問題も、すべて最近の公害の問題、特に騒音公害の問題で住民の反対が強くて実現できないのが現状でございます。  なお、先ほど先生の御質問に料金を上げたということがございましたが、有料道路に関する限り料金を上げているところはございません。これはすでに設定したものはいまだに上がっておりません。首都高速をはじめこの周辺の、たとえば第三京浜、東名、すべて料金を上げておりませんので、その点を御報告いたしたいと思います。
  62. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 首都高速道路は上がったじゃありませんか。最初百五十円ぐらいだったのが二百円になっております。
  63. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 もう三年くらい前です。
  64. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 三年前だったって、つくって以来上げてないとあなたはおっしゃったが、上がったじゃないですか。  それで、いまお話を聞きました。きのうもお聞きしましたけれども、ただ、それを待っていてこの交通渋滞——要するに現在の住民パワーというのは、現在使っている道路渋滞している、騒音がうるさい、排気ガスが出る、そのことをやはり一番きらっているわけですね。だから、最初計画、あるいはまたいろいろな問題を言われましたけれども、そのことだって、何もいまあらためて指摘する問題ではなくて、つくるときからそういうことが予想されだからこそ、そういう考え方に立って実際やったわけでしょう。しかしながら、その計画を上回る車の増加というのがあって現在なかなか解消できない、これが現状でしょう。ほんとうにこの点についてはもう利用する人だれしもが思っていることですね。だから、それをただ単に交通規制で制限する、これじゃちょっと場当たり的であると思うのですがね。それは時と場合によってはやむを得ないと思う。だけれども、いまおっしゃったようなことを現在考えていると言うんですけれども、大体いつごろまでにそれを完成する考えなんですか。
  65. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 われわれの道路整備五カ年計画でもかなりの量を見込みながら実現できないでおります。いま申し上げました、東京外郭環状線であるとか、湾岸道路であるとか、あるいは首都高速の中央環状線であるとか、そういうふうなものが完全にでき上がるのは昭和六十年というふうに考えております。現在予算等も計上しているわけでございます。
  66. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 一つの提案ですが、交通規制というのはどんなことを考えているんですか。先ほど聞いたら、業務用以外にはマイカーによる都内の乗り入れば制限するということをおっしゃいましたけれども、一つの私の考え方は、たとえば現在の交通量を半分にすれば楽になりますね。半分にしますと、いろいろ理由はあるでしょうけれども、特別の人は特別の何かを持たすことにしても、車の奇数、偶数くらいを見て、今月の奇数の日には奇数の車はだめだとか、あるいは偶数の日には偶数の車を通すとか、お互いに交通が混雑する場合に譲り合わなければいけない。  それで毎日毎日私は通っているわけです。自分も畑の中に家がありますので、車で通っているんですが、自分で運転しながら毎日毎日考えている。二十五キロくらい運転してくるわけですけれども、とにかくかかるときには二時間半くらいかかる。そうして毎日同じことを考えながらどうしようもない。電車に乗っても、通常来まして一時間半くらいかかる。電車に乗ったほうがもっとおそいから私は車で来るわけでありますけれども。そういう点で私自身も、たとえばそういう規制というものができるならば、翌日はしようがない、特に朝早く起きて電車に乗ってくる。きめられた日にはまた今度は車で来るというようなことでお互いに譲り合っていく。現在できているものを利用する場合には、やはりそれを無制限にみんなに開放するということはいかぬと思うのです。ただ入り口封鎖であるとか、料金所渋滞のためといってゆっくり切られるとかしても、途中から抜けようといったって抜けられないですよ、高速道路というものは。いつも、ああしまった、乗っかっちゃったという感じですよ。そういうようなことを考えまして、いまのところ何か知恵がないかと思うのですがね。  ですから、いまおっしゃることはわかります。そんなこと最初からきまっているんですから。そして、六十年ごろがめどだったら、これはますます混雑します。だから、そういう点でもっと早く何らかの方法を講じなければ、どうにもならぬと思うのですがね。これは政治の問題ですから、国家公安委員会行政管理庁長官でいらっしゃる中村国務大臣に伺いたいと思いますが、いかがでしょう。
  67. 中村寅太

    中村国務大臣 伊藤議員の御指摘の問題は、これはやはり、根本的な対策と、それから応急的な対策とが必要だと思いますが、根本的には、先ほど道路局長が言いましたように、道路を思い切って整備する。湾岸道路は百メートルとかいっていますが、いまのような形で自動車がどんどんふえますと、そういうことじゃ間に合わぬのじゃないか。そんな大きな道路をつくってどうするのだというようなくらいの計画でないと、伊藤議員が御指摘になったように、また六十年ごろになると手を上げなければならない。だからそういうことで思い切って道路を完備する。私はそのためには十分の金をやはりかけなければならない。それで、昭和六十年といいますと十数年の計画ですが、十数年計画ならばもっと思い切った金をかけて道路整備する。それから応急処置としては、これも局長が言われたように、ある程度の車の規制をする。  それで、規制をするということは、これは非常にむずかしいと思うのですね。道路を通っていいものと通ってはならぬものとどうして仕分けるか。仕事をする者のために使わせるといったって、仕事は金もうけのためにするので、それが必ずしも優先されるのかどうかということも考えられますし、これは非常にむずかしいと私は思っておりますが、行政管理庁長官という立場ではなくて、公安委員長としていまいろいろ頭を悩ましておるのでありますが、車を規制するということは、何か自然に規制されるような方法を考えなければならぬのじゃないか。これは通っていいという権利を規制するのですから、そのものずばりはなかなかむずかしい。  そこで私は、これは私案でございまして、個人的な意見に類することでございますけれども、車を持つ者に保険というようなものを思い切ってかけさせる。そうしてそれは対人保険というものにして、相手を傷つけたり、けがさせたり、殺したりした場合には、その保険金がそのまま被害者にいくようにする。その被害者の生涯を保障できるくらいの保険金をかけさせる。そうすると、その保険金をかけ得ない者は車を持ってはならぬということで自然に規制される。まあ、そういうことがすぐに行なわれるかどうかは別として、こういうことも考えて車の規制をしなければならない。それで車を使う者が少なくなりましたならば、車をつくるメーカーも自然に生産量を落としていくわけですから、いまのように、洪水のように車がふえて、それに対する道路整備がきわめてアンバランスであるというところに大きな問題があるわけでありますから、非常にむずかしいですけれども、何とか知恵を出さないと、交通が麻痺して非常に不便を感ずるだけでない、一年に一万六、七千人の死者、九十万人のけが人を出している。こんな悲惨な姿を毎年毎年続けていくということは、あまりに私は文明国として恥ずかしいことだと考えております。  そういう意味で、根本対策、応急対策、これが私はいまの政治の中では一番重要な案件ではないかと思いますし、交通整備、それがやがて交通事故をなくすことにつながりますから、お互いに家庭の中で子供を、あるいは子供でなくておとなでも、外に出て帰りがちょっとでもおそければ、交通事故じゃないかというような恐怖的な不安感を持っている。子供なんかが外に出た場合には心配しながら待たねばならぬということ、こういうような問題は、それは画期的な政策をとらなければいかぬではないか、かように私は考えております。
  68. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 とにかくいま大臣がおっしゃるとおり、やはりもう問題はわかっているわけですから、少しでも利用する者が、この政府の考え方、あるいはまた警察の規制等によって、そしてなるほど考えているな、なるほどこういうことなら協力しようというような方法というものを模索して、それを実行に移していただきたい。私も利用しながらいつも考えてなかなか名案が浮かんでこない。ですからきょうは、特にこの問題についてはどのように考えているのかと思って私は聞いているわけであります。  ところで、都市高速道路公団監理官の方がいらっしゃったようですから一言伺いますけれども、一つは、現在の交通渋滞について何らか緩和する方策であるとか。あるいはまた、現在の交通渋滞について、どのように分析し、どう対処するか。何か考えていることがあれば答弁いただきたいと思います。
  69. 上妻尚志

    ○上妻説明員 まず渋滞対策の抜本的な対策といたしましては、都心に交通が集中するので、これをまず分散させるということが第一だと思います。それで、環状線をつくるとか、あるいは千葉方面に流れる車につきましては湾岸線の整備を促進するとか、そういうことを考えております。しかし、抜本的な対策は急場のあれに間に合いませんので、その他、まず事故が起こった場合にすぐ車をよけるという意味で非常駐車帯、それからそういう事故の連絡をなるべく早くするために緊急電話の設置とか、そういうようなことにつとめております。  それから、特に一号線の交通渋滞しておりまして、浜崎橋と汐留の間でございますが、これがいま二車線でございますけれども、上下一車線ずつ拡幅いたしまして、三車線ずつにいたしまして交通の緩和をはかる、これが大体今年度中には完成する予定でございます。  それから乗っている車の出口でございますね。そういうものをなるべく多くするほうがいいだろうというようなことで、オフランプといいますか、そういうものを増設したい。それから、そういう具体的な対策といたしまして、渋谷のちょっと内側でございますけれども、青山ランプというものをいま着工して、これも今年度中に完成する予定でございます。  それからもう一つは、交通管制システムの拡充といいますか、首都高速では中央管理局というものがありまして、そこでテレビだとかいろいろな情報網を使いまして指導しておるのでございますが、これを、ラジオ放送であるとか、あるいは警視庁と協議いたしまして、テレビを見ながら、渋滞しておるとまず車線を入口で制限する、五車線あるのを三車線にしぼるとか、そういうようなことで円滑な交通が確保できるようにつとめている、こういうことであります。
  70. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 先ほどからも大臣やら建設省局長にお話を伺ってきたのですが、やはり根本対策と応急対策が必要だ。根本対策としてはいろいろ考えているようでありますけれども、やはり一番利用する国民の側から見ますと、応急対策で何を考えているかという点ですね。確かに、いまお話にありました中で、出口をたくさんつくるということ、それはいいと思いますね。きょう初めて聞いてわかったわけでありますけれども、事故があったとき、あるいはまた渋滞したときでも、いまの出口まで行かない途中で、幾らでもおりて目的地に行くことができるわけですからね。それからもう一つは、実は一般道路も利用できるわけですから、現在の交通渋滞については、やはり何らかの抜本策を考えて、とにかく、乗っかったら最後、一時間も二時間もあそこで渋滞の解けるまでがまんしなければならぬということ、こういうところは避けるような対策だけは考えてほしいと思います。いま何かやるということをおっしゃいましたが、これからの中で何か考えておりますか。
  71. 上妻尚志

    ○上妻説明員 とりあえずは、いま申し上げたようなことを促進するということでございまして、ほかに検討はしておるのでございますけれども、なかなか具体的にいい案がないというのが実情でございます。先ほど申しましたけれども、今後はテレビを増設しまして、まず情報を迅速にキャッチするということ。それからもう一つは、コンピューター等を利用いたしまして、何かそういううまいシステムを開発できないだろうか、そういうようなことをいま検討中でございます。
  72. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 変なことを聞くようですが、簡単に二百円とかを出せば利用できるからだれもが利用するのだ、あの値段を上げれば、ばからしいと思って避けるやつがいるだろうということから、値段を上げるなんということはよもや考えることはないでしょうね。その点だけ確認をしておきたいのです。
  73. 上妻尚志

    ○上妻説明員 そういうことを一応検討されたことは、率直に申し上げますとございます。しかし、これは非常に大きな問題でございますので、道路審議会というのがございまして、そこで料金問題を審議するわけですが、まだいまは白紙の状態でございます。こういうふうに御理解願いたいと思います。
  74. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この関係大臣建設省ですか。いまのように、すべてのものに差別をつけて、金のある者だけ利用させるとか、あるいは特定の者だけにサービスをするということはいけないと思うのです。ですから、値上げをして交通混雑を解消するという考えがもしあったら、これは国民に向かって大へんな大きな影響を与えるわけですから、こういう点について、大臣じゃありませんけれども、局長はどう思うのか、その点、しかと承っておきたいのです。
  75. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 ただいま上妻監理官から御説明がありましたように、道路審議会というものがございまして、その中でいま、首都高速、阪神高速等の都市内の高速道の料金の問題を審議しておるわけでございます。まだ審議が始まったばかりですから、そういう話は出るまでに至っておりませんか、一部部内にも——部内と申しますのは、首都高速道路公団の中につくりました審議会、これは公的なものではございませんが、その中には、やはり混雑料金的な考え方を述べる先生方もあったやに聞いております。今後、建設大臣の諮問機関である道路審議会の中でどういうような意見が出るか、私も存じませんが、少なくとも現在の乗用車とトラックの二百円、四百円、この率がいいかどうかという議論がございます。トラックはもっと高くすべきじゃないか。というのは、先ほど東名名神中央道というような高速自動車国道と比較しますと確かに安いようでございます。そういうふうな議論は現実にされております。そういうようなことから、料金全体についての議論をされますと、いま先生からおしかりを受けましたが、中には混雑料金的な意見もあるいは出るやに思われますけれども、最終的には一年ほどたってからでないと結論は出ないと思いますが、必ずしも絶対出ないという保証は別にないわけでございます。
  76. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それは問題ですね。あなたは道路関係を監督しておられますからお伺いしますけれども、伊豆半島を有料道路で一回りしたことがございますか。
  77. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 残念ながら半分しか回っておりません。全部回っておりません。
  78. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 どのくらい金がかかりました。
  79. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 伊豆半島を私が回りましたのは、真鶴有料道路を通りまして伊東有料通路でございます。それからその先に日本道路公団の東伊豆、この三つを通ったわけでございますが、ちょっと料金を覚えておりませんが、この三つで千円弱だと思います。
  80. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 今度ひまがあったらどうか一回りしてくださいよ。有料道路の料金が一万円以上かかるのですよ。そういう点、別に監督不行き届きとは言いません。そんなことと関係ありませんが、とにかく高過ぎるということですよ。  私はいつも思うのですが、大体金もうけのために道路をつくる、こんなことを基本的に認めるべきじゃない。歩くぐらいはただでいいのです。けれども、やむなくつくる場合については、多少徴収する、こういうことを私は考えているわけですよ。大体空気と水と歩くことぐらいはただでなければだめですよ。それを、伊豆半島でちょっと景色がいいなと思うところを歩こうとすれば一万円かかる。車で行く人は、旅館に泊まる金がないから、車で行ってながめのいいところを回ってということかどうかわかりませんが、一回りしてこようという人が多いわけです。ぐるっと回ると一万円以上。頭にきて、もう二度と行かない、こういう人がいるわけです。料金の問題は非常にでこぼこがあるわけですよ。一個別に検討すれば、それだけ取らなければ合わないところがあるかもしれないが、メインの道路は予定の料金徴収よりはるかに越えているということはわれわれ聞いています。そういうところと調整できないかという問題が一つあります。  それからもう一つ、やはりいつの日にか、回収さえつけば、もうただにするのだろうと思うのですけれども、それをあわてて取る必要はないですよ。洋服買っても、一ぺんに払うことができない、月賦なら払える、国民の立場からするならばそういう感じです。道路が通りたい、しかし高い、もう少し安くしてもらいたい。何にも伊豆半島あたりは交通混雑なんか普通の日はありません、土、日を除いては。それでも高い。こういう点についてはどんなふうに考えておりますか。
  81. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 御指摘のとおり、道路は本来、無料公開を原則としておるのは日本だけでなくて、世界各国すべてでございます。したがいまして、有料道路というものは、たまたま無料でつくる金がないために、われわれとしては必要悪と申しておりますが、やむなく有料道路でつくって、そのかわり建設、維持管理に要する費用がペイしましたら無料に開放するという原則をとっておるわけでございます。これがわれわれの公道に対する態度でございます。  一方、別に運送法に基づく有料道路がございます。これは企業者が料金を徴収して利潤を得ておるわけであります。これは未来永劫に有料である。これは実は公の道路でありませんので、運輸省が主として料金等のきめ方について専管しております。工事その他については建設省と共管になっております。先生先ほどお話しになったのは、運送法のほうの道路のことをおっしゃったのじゃないかと思いますが、伊豆にもあります。日本道路公団がつくっておりますのは決してそう高くありません。これは無料ではありませんが、そう高くはありませんけれども、その点があるのじゃないか、私はいまのお話をちょっと聞きながらそう感じたわけでございます。  いずれにいたしましても、われわれといたしましては、現在、交通量がどんどんふえまして、無料の道路をつくりたくてもどうしても間に合わないというところに有料道路をつくっておりますので、最小限の料金を取るような計算をされております。ただ、たまたまわれわれの積算した交通量より実際の交通量がうんと多い場合がありまして、予定よりも早く無料に開放する場合が大体一般でございます。中には例外がございまして、なかなか償却できずにそのまま終わるものがございますが、大多数は、いま申し上げましたように、早く無料に開放しておるのが現状でございます。伊豆の道路につきましても同様でございまして、特に伊東のほうは、最近は全部プールいたしますので、若干延びておりますが、一部無料に開放させております。一番最初つくりましたものにつきまして四月一日から無料に開放させております。  以上であります。
  82. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 車に乗る人にとって、これが道路公団道路だとか、これがどこかの会社の有料、そんなことはわかりませんよ。道があればそこに行きますよ。これは道路公団だから行こう、これは企業者が金もうけのためにやっておる道路だから避けよう、そんなわけにはいかないですよ、利用者から見れば。だから建設省とすれば、道路管理することはだれがつくっても同じだと思うのです。その面から私はそう言っておるのです。許可してしまったものについて取り消せとは私は言いませんけれども、しかし、それなりの企業のペイがあった場合には、むしろ道路公団が買い上げるとか、あるいはまたそれなりの何か善処策を考えていくことが当然だと思いますが、一つはそういう調整はとれないものでしょうか。  それから、先ほど言いましたけれども、混雑料金をほんとうに考えてやろうとしておるなら問題ですよ。私がさっき言ったように、混雑料金なんて取るのじゃなくて、何かほかのほうの規制を考えることのほうが正しいのじゃないか。あなたのお話のように、予定よりも利用者が非常に多いことは事実なんです。事実であるということは、予定の線でも十分ペイするものがそれ以上来ておるのですから、企業的にいえばもうかるわけですから、それをきめられた期間でやる。しかも、値段を上げるなんということを考えた場合には、ますますもって利用する者にとってたいへんな問題なんですよ。そういう点はいかがお考えですか。
  83. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 先ほどの私の説明が非常にへたでしたので誤解を招いたようでありますけれども、混雑料金を設定しようというふうに建設省は考えているわけではございません。ただ、審議会のいろいろの委員さんの中に、そういう意見が出るおそれがあるということだけ申し上げておきます。いずれこれは審議会の結果、一年たたないと結論が出ませんが、そういうことを申し上げておるわけでございまして、われわれ自身は混雑料金などは考えておりません。
  84. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もう一つ言ったでしょう。いろんな道路公団以外の有料道路、これとの問題はいかがですか。たとえば、さっきも言ったように、道路公団ができなかったところをだれかがかわってやったとか、あるいはまた観光料金として永久に料金を取るということがありますけれども、私はそれはうまくないのじゃないかというのですよ。監督官庁としてどう考えるか。
  85. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 日本道路公団並びに各都道府県が行ないます有料道路、ないしは都道府県の地方道路公社——最近各県にぼつぼつでき上がってきておりますか——が行ないます有料道路につきましては、料金等は建設省チェックいたします。ただ、これはそれぞれ区々まちまちであることは、ただいま法律建設、維持、管理に要した費用を償うという料金を設定することになっておりますので、どうしても区々まちまちになりがちでございます。したがいまして、トンネルとか橋の多い道路は高くなる、非常に安くできる平地の道路は料金が安いというふうな結果はどうしても免れないわけでございまして、これを統一することは現行法では非常に困難なことでございます。また一方、先生御指摘の運送法に基づく民間の企業が行ないます有料道路でございますが、これは運輸省が料金については専管になっております。運輸省とわれわれが協議すれば意見を出すことは可能かと思いますけれども、やはり向こうは営利が一つの目的になっておりますので、調整することは非常に困難でございますが、なお、先生の御趣旨を体しまして、なるべく均一と申しますか、あまりでこぼこの大きくないように相談をしたいというふうに考えております。
  86. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もう一点聞いておきますが、お金のかかるところは高い、平地は安い。だけれども距離によって、短くても高かったり長くても安かったりするところがたくさんあるわけですよ。それを全体でペイするように考えて調整はできないかということを私は言っているわけです。もしそれが法律上できないことになっているならば、われわれとすればその法律も考えなければいけないわけですからね。その点はいかがですか。
  87. 高橋国一郎

    高橋(国)政府委員 東名名神中央道をはじめとする全国にただいま建設中の高速道路につきましては、均一料金制度がとり得るように先般の審議会できまりましたので、これはそのように準備したいと思いますが、いまほど御説明申し上げておりますのは、高速道路以外の、いわゆるわれわれ一般有料道路と言っておりますけれども、それに関する問題でございまして、これは現行法では個々の路線について個々に採算制を検討いたしまして料金をきめておりますので、やはりバランスが乱れると申しますか、でこぼこがあるようでございます。ただ地域的の場合にこれはプールできます。たとえば阿蘇の山を登る場合に、東から行っても西から行っても、料金が倍も違うということになると困りますので、こういうときにはある程度料金の統一はできますけれども、たとえば北海道の端につくりました有料道路と九州の端につくりました有料道路をプールするということは現行法ではできないわけでございます。ただ若干、損失補てん金という名称で利潤のうちの一部をとっておきまして、料金等もしペイしない道路につきましても無料に開放するということになりますと、その損失をそれでもって補うために若干ずつ金をストックいたしますが、それを利用いたしまして若干のでこぼこは直せるという程度でございまして、完全な高速自動車国道みたいに、北海道でも九州でも一キロ走ったら七円五十銭というふうな、そういう計算には実はなっておらないのが実情でございます。
  88. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはやはり今度、法律改正だとかいうことで真剣に考えてすべきではないかと思います。ある地域は非常に金がかかった、したがってそこではいつも高い道路を利用している人がいる。あるいは長い区間を非常に安く利用している人もいる。それは一つの年度計画で、それを  一年幾らで割って、一日幾らぐらい負担してもらえばいいという一つのあれでやっているのだろうと思うのです。これはやはり、もうかっているところはたくさんもうかっている、あるいは赤字はどこまでも赤字であるという一つの実態が実は出てくると思うのです。これは全体の問題で調整しなければならぬ問題であると思うわけです。ですから国民も、短いところも長いところも、ある程度距離できめてもらえれば、利用者はそれでいいし、また不満に思わない。また、全体の中で赤字を解消することもできるし、それをうまくいろいろ調整することができるのじゃないかと思うのですね。これは法律の問題ですから、私たち検討しまして、いろいろ考えてみたいと思います。  道路公団の参考人の方々、どうもたいへんありがとうございました。住宅公団はもうしばらく残っていただきたいと思います。  まず第一に、住宅公団のグランドハイツのあと地利用についてはなんですけれども、現在、大体の話は大蔵省から聞いておりますけれども、皆さんのほうでどういう計画を考えておられるのか、その概要をまず伺いたいと思います。
  89. 島守一

    ○島参考人 グランドハイツの総面積は百八十二ヘクタールほどございます。それのうち、公園としまして六十ヘクタール、それから道路として十七、学校として十九ヘクタール、その残りの八十六ヘクタールを住宅に回す、そういういまの大蔵省の処分計画でございます。そしてその八十六ヘクタールの住宅用地のうち、都営住宅の用地として十九ヘクタール、都の住宅供給公社の用地として十ヘクタール、住宅公団の建設用地として五十七ヘクタール、これは概略の数字でございますが、そういう処分計画になっておりまして、そのうち、五十七ヘクタールの住宅公団の建設予定地のうち、現在まで三次にわたりまして三十一ヘクタールほどの建築交換契約を結んでおります。  そういうふうな状態でございますが、これは全体的に、住宅部分にいたしましても、都営住宅あり供給住宅あり公団がある。そしてその建設位置もいろいろ入り乱れております。そういうことで、あのあと地を住宅地として使用する部分については総合的に考えなければいけない、そういうことで関係方面といろいろ打ち合わせしながら現在処分計画検討中というような段階でございます。
  90. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 きまっていないのに言えと私が言うことはちょっと酷かと思うのですが、こういう考え方だ、でけっこうなんですよ。私も実はいろいろなことを知っているのです。だから伺いたいのですが、あなたたちが建てる三十一ヘクタールは高層住宅ですか。何階くらいのやつを何戸予定されておりますか。
  91. 島守一

    ○島参考人 住宅公団の五十七ヘクタールにつきましては、公団としましては、そういうふうな残された貴重な土地でございますから、高密度利用をしたい、こういうことで約一万七千戸ぐらい建てさせてもらえればけっこうだというふうに思っているわけでございますが、どのくらいの高さの建物を建てるかにつきましては、一応通常の場合、高層住宅は十四階程度までをやっているわけですが、したがって当然ここも十四階程度のものが中心になると思います。ただ、ああいった建物を全部十四階で埋めるということはかえって町の景観としてどうか。むしろ一部には、もう少し二十階、二十五階の高いものを建てて変化を持たせたらいいじゃないかという考えがないではないのであります。ただ、高い建物を建てました場合、まだいままで経験が少のうございますから、それについてどういうふうな問題点があるか、それについてもいまあわせて検討中でございます。ただ、それは住宅公団の取得予定の土地についての計画でございまして、都営及び都公社につきましてはまだ具体的な話を聞いておりません。そういったものを持ち寄りまして今後検討を進めてまいりたいと思います。
  92. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私も何回か書きかえていますので、見させていただきました。二十階とかあるいは十数階というのを見ました。立体的なものも見たことがございますが、これは全体の中で公園住宅になる、これは聞いているわけですよ。やはり地元の意見を十分聞いた上でやるべきだと思っております。  大体、最近公団の家賃がものすごく高いわけですよ。この場合はどのくらいの家賃を予定しているわけですか。
  93. 島守一

    ○島参考人 これは実はまだ米軍の宿舎が建っておりまして、この夏から秋にかけまして移転が始まるということであります。したがいまして、われわれのほうが着工して竣工し、一部入居するまでにどのくらいの時間がかかるかということは、いまのところはっきり言えないわけです。そこで、その間に建築費の値上がりもございますし、そういう点で、いま幾らくらいの家賃になるかということはちょっと申し上げられないのでございますが、あの隣接地にやはり公団が建設中のものがございます。これは、睦台と言っておりますが、二DKでまだ工事中でございますが、来年早々には入居できると思います。そのときの予想でございますが、いままだ工事中で確定した数字は出ておりませんが、二DKで二万六千円くらいの家賃になるだろうと考えております。
  94. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうすると、それを上回ることは必至ですね。住民は安い住宅をつくってくれと言っているのですよ。あなた方もペイしなければ安くはできないとおっしゃるかもわかりませんが…。  そこで、実はグラントハイツの中に、メイドさんで二十年間も寮に入って住まわれている方々がいるわけです。このグラントハイツの移転によりまして、二十年もつとめられた方々が動かなければいけないわけですね。ところが、この方々は、米軍直接雇用という関係で何ら補償がもらえない。沖繩の場合はちゃんとそれなりの理由をつけてもらっています。米軍直接雇用の方々についてももらえるような仕組みになっている。ところが本土の場合、二十代からつとめまして現在平均しますと四十七、八歳から五十歳です。中には六十八歳にもなりまして、半分もうろくしながらもやはりメイドをやっている。しかも、その月給というのは日給月給で、一週間に三日働いて千八百円です。夜、子守をして一時間百円で小づかいをもらう。そして気に食わないと、もう来なくていいと言われる。こういう状態で住んでいる人がまだまだ百人以上もいるわけです。しかも寮則がありまして、米軍の雇用がなければ、いわゆる仕事を失ったときには三日間の猶予期間しかない。その三日間の猶予期間を過ぎている場合には追い出されるのです。ですから私も、防衛庁に何とかその点は守ってほしいということを話してあります。  つい最近ですけれども、三人ほどグラントハイツで仕事がなくなったので、一週間に三日働いて千八百円では食えないので表へ働きにいった。それをチェックされまして、憲兵隊に、ピストルはつきつけなかったらしいけれども、だいぶ威嚇されまして、命からがら出ていった人が三人もいるのです。そういうような状況が実はあるわけですね。  そこで、その方々の願いは何かと言いますと、いまさら四十、五十、六十にもなりますと結婚も考えられない。ですからその方々は、家を何とかしてほしい。政府に一時退職金とか見舞い金がほしいと言うけれども、なかなかそれはもらえない。だから私も、その方々に対しましては、法律がありませんので、何らかの善後策、善処のしかたをいま防衛庁と検討しておりますけれども、問題は家の問題です。皆さんの要求は、二十年間グラントハイツに住んでおった。いまさらあっちこっちへ行ったところで生きる自信がない。だから、このグラントハイツの近くの板橋とか成増とか、あの近辺ならば、多少の知り合いもあることだから、家さえ何とかしてもらえればこの辺で働きたい、そして余生を何とか過したいという人が多いわけですね。私は何回か交渉したわけです。きょうも正式に申し上げたわけですが、やはりそういう方々の寮も実は来年からこわし始めるわけです。だから、そういう方々を優先して睦台の住宅に、いま建設中ではありますけれども、収容できないかどうかということが一つありますね。もしこの睦台に独身住宅がなければ、二DKですから二人住んでもらうとか、そういう便宜をはかって、そういう方々に対しても前向きで協力してもらえないかというのが私の公団に対する希望なんですが、その点いかがですか。
  95. 島守一

    ○島参考人 公用は一般的に家賃が高いということを御指摘になりました。実は私もまことに同感でございます。われわれできるだけ家賃を安くするように努力をしますと同時に、いまのような制度そのものを、何とか家賃コストを下げるとか、そういうことをいろいろお願いしておるわけでございますが、ただ、そういたしましても、やはり公共住宅の中で、公営住宅、公社住宅と公団住宅とでは制度的に一番家賃が高くなる制度をねらってつくられた組織でございます。どうしても公営住宅よりも家賃が高くなるのはやむを得ないことだと思います。  それはそれといたしまして、いま御質問のございました、睦台へ優先的に入居できないかという御質問でございますが、われわれ、ちゃんと募集いたしますときには、ことに二十三区内におきましては、職住近接ということを一つのねらいにいたしまして、そこに職場のある方、その近くに職場のある方は優先的に、ということは当せん倍率をよくして入りやすくする、もう一つは地元に住んでおられる方にもそういう措置をとるということは考えてやってきておるわけでございます。ただ無抽せんでという制度はいままでやっておりません。当せん倍率をよくする、そういう制度でございます。それともう一つ、公団の制度といたしまして、いま家賃の四倍の証明された収入——もっともこれは月給だけではありません。年間の税込みの総収入でございます。そういう制度がございます。そういうふうな点で適格であるかどうかという問題も一つございます。いま初めて伺いましたので、また私の直接の担当でもございませんので、先生の御意見を帰りまして伝えたいと思います。
  96. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは防衛庁と労働省に関連があるのですから、この問題は十分に——こういう人こそ保護されるべきであって、こういう人こそ、日米の真の親善と友好のためにという、そういう高い理想を持ち、使命感に燃えて二十年間一生懸命尽くしてきた。しかも最初は職安の募集で集められた。それが途中から直接雇用に切りかわった。そして最後はどうでもなれ。それで皆さんは、そんなふうな安い日給月給ですから、いままで長年貯金をした方も最近では全部おろしてしまって、食うや食わずでいる。これが現実なんですね。そういった方々に対しては、私たちも全力をあげますけれども、公団にそういう制度がないとしても、皆さんにがんばられる場合には移転計画もおくれますし、また、がんばられれば、それだけの立ちのき料とかいろいろな問題があるわけですから、その点も十分に御検討願って善処していただきたい。そのことを希望として申し上げておきたいと思います。  建設省に伺いたいのですけれども、東京都の住宅供給公社が十ヘクタール、それから東京都営住宅が十九ヘクタールですか、これを使うことになっておりますけれども、これはどんなものを建てるのですか。
  97. 島守一

    ○島参考人 私、住宅公団でございまして、東京都のほう及び公社のほうについては全然関係を持っておりませんので、私からはお答えいたしかねます。
  98. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大体でいいです。
  99. 島守一

    ○島参考人 全然その具体的な計画は伺っておりません。
  100. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうですか。わかりました。それじゃまた全体の問題として、いろいろ地元の考え方、それから皆さんの考え方と多少の食い違いがあるところがあるのですね。そういう点を私きょう述べたかったのですが、それではまた次の機会にこの問題はいろいろ検討したいと思います。島さん、きょうはどうもたいへんありがとうございました。  次に、法務省に伺いたいのですけれども、この法案の中に地方保護司法の一部改正があるわけですね。そうして、保護区及び保護司の定数を定める法務大臣の権限を地方更生保護委員会に委任することができる、こういうふうに今度は改正するわけですけれども、これに関連しまして二、三、質問したいと思います。  一つは行政相談委員の問題です。現在、三千六百五人いる、こう聞いております。そして行政相談委員の手当が年間一人当たり五千五百円と聞いております。沖繩が五十五人いるというふうに聞いておりますが、この実態は正確ですか。
  101. 小林寧

    小林(寧)政府委員 今年度沖繩が五十五名ふえましたので、三千六百六十名になります。それから実費弁償金、これは報酬じゃございませんでして、実費弁償金が五百円上がりまして年間五千五百円でございます。
  102. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 人権擁護委員の実態、これはどうなっているのか、簡単に御説明願います。さらに保護司の実態について伺いたい。
  103. 小林寧

    小林(寧)政府委員 人権擁護委員は定数が一万九千百六十八名、そして現在員は九千七百三十名おります。これはやはり行政相談委員と同じように実費弁償制度をとりますので、年間実費弁償金一人当たり平均五千五百円でございます。保護司の場合も、同じように実費弁償金は五千五百円でございますが、人員につきましては定数が五万二千五百人、現在員が四万六千三百五十一人でございます。
  104. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 まず行政相談委員のことについて聞きたいのですが、年間一人当たり五千五百円というのは非常に安過ぎるのじゃないかと思うのですが、大体どういうような業務をやっているわけですか。
  105. 小林寧

    小林(寧)政府委員 行政相談委員は行政相談委員法によりまして、国民の苦情なり相談を受け付け、そしてそれを関係の機関に連絡し解決をはかる。あるいはむずかしい問題は地元の監察局に取り次ぎまして、そして解決をはかっていく、こういう制度でございます。当然、非常に人格、識見に富まれまして、行政運営の改善に熱意を有する方について行管長官が委嘱する、こういうことになっております。
  106. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 具体的にこれはどこが主体になっておるか。地方自治体のどこかに所属しておると思うのですが、年間に何回か集まって会議をし、何回か相談するわけでしょう。その実態をもう少し詳しく言ってください。
  107. 小林寧

    小林(寧)政府委員 これは管轄区域が大体市町村単位になっておりますので、そこの住民がおもになります。年間に本庁で一回は研修会、これはしかし全員が集まりますことは不可能でございますから、各府県単位に一名程度、それから地方監察局、あるいは管区監察局では年間四回ぐらい集まりまして、当該管内全相談委員の研修をやっております。それ以外に地元監察局管内を数ブロックに分けまして、たとえば大阪は八地区というようなブロックに分けまして、そのブロックごとに相談委員が集まりまして、そこに地元の監察局あるいは市町村の自治体のほうの人も参加いたしまして、行政相談委員がやっているいろいろな技術的あるいは実際的な仕事の打ち合わせをする、こういうような仕組になっております。
  108. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、何もなくてもそういうところで年間四、五回、あるいは本庁で一回ということですが、遠くにおれば電車賃を使い、時間に間に合わなければタクシーに乗ってくる。結局、年間五千五百円なんという、はっきり言えば電車賃にもならないような、こんな安いのをこのままにしておく。このままで来たことは大体私は問題だと思うのですね。これは委員の手当といっても、ほんとうに小づかいにもならないような金額なんですけれども、この点についてどう思って  いらっしゃるのですか。
  109. 中村寅太

    中村国務大臣 伊藤議員の御指摘のように、これは非常に安過ぎる、これは率直に私もそう思います。ただ、たてまえは名誉職といいますか、地方の有力な方に委嘱して、社会奉仕的な気持ちでお力添えを願うというたてまえになっておりますので、非常に少額でございますが、やはり保護司とかいろいろ法務省関係の人数は非常に数が多うございます。国の予算関係でなかなか思うように差し上げにくい。私は、ことしは皆さん方にお願いいたしまして、予算面で五百円ふやしていただいたのですが、逐次もっとふやしていく必要がある。何と申しましても、いま御指摘のように、諸物価、経済事情から考えますと、あまりに少額過ぎる。おそらく電話料にも足らぬだろうと思っております。そういうことでございますから、今後は、増額の方向で検討もし、努力もしてまいりたいと思っております。
  110. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大臣、増額するということはわかるのですが、ことしは五百円上げるのですか。
  111. 小林寧

    小林(寧)政府委員 本年度予算が通過いたしまして、五百円上がって五千五百円になったわけでございます。確かに、先生のおしかりを受けるような、情けないような金額であることは実情でございます。
  112. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 地方の人格、識見ともにりっぱな方々にこういうことを御委嘱する。そういった方々は忙しいですよね。忙しい方々に問題があればやってもらうというならば、ほんとうに電車賃にならぬようなこんな安いものでお願いすることは、かえって非常識ですよ。だから、五百円ふやすなんてとんでもないので、私は、委員の手当がそうであるならば、そうは言っても手当というのは、いろいろな法規の取りきめがあって倍額に急にできないとかなんとかというならば、少なくともこのほかに、交通費であるとか、あるいはまた電話料であるとか、これは別に制度をまずつくって、それだけは本人に出させないでこれを負担するように、そういう制度をつくるべきじゃないかと私は思うのですが、その点、大臣どうでしょうか。これは大臣在任中に、思い切ってそういった方向を打ち出されておいたほうがいいのじゃないかと私は思うのですがね。
  113. 中村寅太

    中村国務大臣 委員の人それぞれ、それから受け持っておられる場所等によりまして、実費も非常に違うと思うのです。そこでやはり基本的には、五千五百円というものを一万円にするとか、そういう形で一律に考えないといかぬだろうと思っております。私はやはり、年々増加の方向に努力していくということですが、実は御承知のように人数が非常に多いわけでございますので、金額が張ります関係でなかなか財政当局も渋いのでございます。微力でございますが、ことしは五百円上げてもらう、来年はまたふやすというような方向で努力してまいりたいと思っております。
  114. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから、いま大臣もおっしゃったように、ある地方、ある地域によってお金のかかり方が違うわけですね。だから、平等であることが平等ではない、差別のあることが平等だと私は言いたいわけですね。いま言ったように、交通費または電話料、これは別に実費で、請求があった場合にはこちらが払ってあげる、こういう制度をつくったらどうか。財政当局のこともあるでしょうけれども、考えて見ますと、三千六百人ですよ。何十万もいればこれは別ですけれども。増額の点も、五百円といわず、やはり時勢に合った一つの方向で行くべきじゃないでしょうか。特に最近のベースアップは、一万円アップだとか、あるいはまた平均八千円アップだとかいいまして、非常に大幅なのですね。それに比べて、十分の一にもならぬような五百円アップなんというのは、どうも私はこの点がおかしいと思うのですね。ですから、現在の時勢に合わせて思い切って大幅アップして、そしてその処遇改善をしていけばりっぱな行政相談をやってくださるんじゃないか、こう思うのです。私は、このまま放置したら、やる人がいなくなるんじゃないかと思いますよ。やっても、会議だけやって実際の仕事はやらない、こういう一つの実態になりやしないか、その点を心配するわけです。どうでしょうか。
  115. 中村寅太

    中村国務大臣 御指摘のようなことではあると思いますけれども、現在では、行政相談委員というのは、私から考えますと、もったいないくらい非常に熱意のある方が多うございまして、自分の金を使ってやっておられるというようなことが目に見えますから、先ほどから申しますように、できるだけふやしてあげたい、こう考えておりますが、御承知のように、保護司とか、法務省関係の人まで合わせますと、大体七万人ぐらいになるんじゃないですか。そういうことで、これとの均衡ということもございますので、行政相談委員だけでは三千六百人かそこらでございますが、そっちのほうとの関連もございますから、非常にむずかしさが現実になっているわけでございます。御指摘のように、これは法務省とも相談いたしまして、今後できるだけそういう方向で努力してまいりたい、かように考えております。
  116. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 法務省の方いらっしゃっていると思いますが、人権擁護委員のほうにも影響を与える、保護司のほうにも影響が来るということですけれども、やはり大事なことは、熱意があるからただでも動いてくれるのだから、幾らかでもやればいいのじゃないかという考え方がもしあったらいけないと思うのですね。そういう方々に対して、言わなくてもこちらから真心込めてやってあげる。強く大きな声で言えばそれを受け付け、言うことを聞き、黙っておれば言うことを聞かない。どうも政府はいままでそういう姿勢がありますよ。私はそれはいかぬと思うのですよ。黙っている方々にこそ手を差し伸べて引き上げてあげる。何か言ったからといったって、それはやはり制度があるものは厳然と守らなければいけない。それが私は社会秩序にとって大事なことだと思うのですね。だから、現在のように世の中が乱れているときに、またたいへんよくない時期に人権擁護委員という方々の活躍を期待し、また保護司の方々の活躍を期待しなければならない社会体制でもあるわけでありますから、それを数が多いからということで、今度逆に上げ率を少なくする。少なくとも、現在の時勢にのっとった、いわゆるベースアップの時流に乗っける、スライドする、こういうふうに基本的に考えたらいいのではないかと思うのですが、そういう点で大蔵省とも折衝してきめるべきじゃないかと思うのですね。こういう点について法務省で、保護司のこと、あるいは人権擁護委員のことについて何かありましたら、御答弁願いたいと思います。
  117. 西岡正之

    ○西岡説明員 保護司関係の待遇のことについて申し上げたいと思いますが、保護司につきましては、保護司法の十一条の規定によりまして、「給与を支給しない」ということになっておりまして、ただ「予算の範囲内において、その職務を行なうために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる」ということで、いわゆる実費を支給するということになっておるわけでございます。実費と言いますといろいろございまして、まず、保護観察を委嘱した場合に一件幾ら、一月幾らというふうになっておりまして、これは年々物価上昇程度以上のものがアップになっておるというふうに考えております。ただ、もともとが低かったものですから、現在四十七年度で最高額が千四百円以内ということになっております。これを四十六年に比較しますと、四十六年度が千三百円でしたから、百円上がっておるということであります。その他ケース研究等に出席された場合の出席実費として、四十六年度で二百七十五円であったのが三百二十五円。それからまた、矯正施設に入っておる者が釈放になりましてからの受け入れ体制調査、調整をしてもらっておるわけですが、これが一件やっていただいた場合に、四十六年度で二百七十五円であったのが、五十円アップしまして、昭和四十七年度では三百二十五円。これをトータルいたしますと、昭和四十六年度、実費弁償金が十一億一千六十二万二千円、これが昭和四十七年度におきまして十二億七百六万九千円ということで、九千六百四十四万七千円ほど増加したわけであります。もちろんまだこの増加額は十分とは言えませんで、今後とも法務省においてもこの増額には努力したい、こういうふうに考えております。
  118. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 同じことを二回繰り返したくありませんけれども、いま三百二十五円に上げたってタクシー代にもならぬじゃないですか。そうでしょう。大体、それを上げたからといって、全体の金額にして十一億が十二億になった。それは確かに大きいかもわかりませんけれども、二百七十五円が三百二十五円に上がっただけじゃないか、一人にしてみれば。こんなに安くて、それでこうせい、ああせいといっても無理だと私は言っておる。いま一般の会社だってそうでしょう。月給が安いから働かない人がいるじゃないですか。それで、文句言えば上げる、言わなかったら上げない、そんなのじゃだめだと私は言っておる。  最近のベースアップだって、ものすごいじゃないですか、一万円台が多くて。それはそれなりの物価高です。あるいはまた、運賃だって何だって、もういままでと違って二〇何%。それからもう東京瓦斯がいま申請しているのは三二・六%。借金もないのに、ほんとうにそういうような大幅な値上げを申請してきている。そういうものについてはいろいろ政府が前向きで検討しながら、何も言わないこういった方々には、たかだかそれくらいの上げ方で、これから順次考えて値上げの——値上げといっても、一円だって値上げなんだから。だから、こういう安いのではなくて、大幅にやるべきじゃないかと思うのです。  人権擁護委員関係も同じですよ。私もやっている人を知っております。この方は自分が仕事を持ちながら一生懸命やっていらっしゃる。やはり好きでもなければできないだろうと思います。また社会のために何とかという奉仕の精神はわかります。わかりますからこそ、こんな安くてはだめじゃないですか。もう少し考えてあげてください。しかもその方は毎月呼ばれるのです。行政事務といいますか、それは地方自治体がやっているわけでしょう。ですからその方は、問題がありますと、どうなっておるんだということで毎月一ぺん集まることになっているのです。それで、上げても年間で五千五百円でしょう。話のほかですよ。この値上げについては法務大臣がきめることですか。この値上げはどこで検討するのですか。
  119. 西岡正之

    ○西岡説明員 主としてそれぞれの原局におきまして、そろそろ始まりますが、予算要求作業におきまして、部内で一応検討して、さらに大蔵省と折衝するという形になっております。特に保護局におきましては、実費弁償金の増額を毎年重点的な政策としまして大蔵省に要求しておりますし、また今後もそうしたいと考えております。
  120. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ことしは交渉は終わったわけですか。上げたわけですから……。
  121. 西岡正之

    ○西岡説明員 これから大蔵省と交渉する段階でございます。
  122. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 であるならば、私の言ったことをよくわかったとおっしゃるのですから、大幅に率を上げるように思い切って大蔵省に交渉していくべきだと思うのです。その点の決意をひとつ……。
  123. 西岡正之

    ○西岡説明員 御指摘のとおり十分努力したいと考えております。
  124. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 たくさんいろいろありますけれども、同僚議員の質問もありますので、きょうはこの辺でやめておきますけれども、行管長官、先ほど関連していろいろな問題を指摘しましたけれども、特にこういった方々に対しては十分なるあたたかい施策を講ずべきだと思うのです。その点で大臣の所感を承って質問を終わりたいと思います。
  125. 中村寅太

    中村国務大臣 四十七年度は五百円アップで予算が通りましたから、今年度はしかたがないと思いますが、四十八年度、来年度はまた法務省等とも力を合わせまして、そしてできるだけ御苦労に報いるような方向でひとつ努力したい、かように考えております。
  126. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ありがとうございました。  もう一つあるのです。一言法務省に伺いたいのですが、練馬区にある少年鑑別所の件です。住民から移転してもらえないかという希望があるわけですが、法務省としてはそういうことを検討したことがあるのか。また、こういう公開の席上で発言するのは私が初めてだと思うのですが、練馬区の最近の発展によりまして、あの地域のまわりにはびっしりと家が建つようになりました。町のどまん中に少年院があるということは今後大きな問題になろうかと私も思うのです。問題になってからその対策を考えてもおそいので、もし何も考えてなければ、今後移転の方向で検討し、問題が起きない前に対策を講ずることがいいのではないかと私は思うのですが、その点についていかがですか。
  127. 朝倉京一

    ○朝倉説明員 御質問いただきました少年鑑別所でございますが、現在、家裁その他の関係から一応適地だと認めております。  それから地域社会との関係でございますが、鑑別所は非行少年の鑑別ばかりではございませんで、一般の青少年の就学、それから就職その他についても、青少年の鑑別センターとして御相談に応じておりまして、地域社会との関係もわりに問題ないように理解いたしておりましたが、いま仰せになりましたように、そういう住民の声がございましたら、私、直接関係いたしておりませんが、持ち帰りまして検討させていただきたいと思います。
  128. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 全体としては騒いでいないかもしれない。ただ、一部といっても数多くの方々の一つは、そこが発展しておるのだから引越してほしいということがあります。何かがあったらこわい。最近ありませんけれども、昔はありましたね、少年院を出てまわりを荒らすとか。実はそういうことも考えられる。あるいはまた、あの地域をほかの面の開発に使ってほしい、こういう希望も実はあるわけなんです。初めて問題提起いたしましたけれども、帰って十分検討し、そうして地元の声を聞いて善処していただきたい、こう思います。
  129. 朝倉京一

    ○朝倉説明員 そのようにいたしたいと思います。
  130. 伊能繁次郎

    伊能委員長 東中光雄君。
  131. 東中光雄

    ○東中委員 法案に関連しまして、一点だけお聞きしておきたいと思うのです。  少年院法と婦人補導院法の「法務大臣認可を受けて、在院者の処遇に関する細則を定めることができる」から、「法務大臣認可を受けて」という部分を削除することについてでありますが、これをやられる趣旨を最初にちょっとお聞きしておきます。
  132. 小林寧

    小林(寧)政府委員 少年院、これは二十三年にできたものでございます。それから少年鑑別所も同じでございます。なお婦人補導院、これは三十三年にできたものでございます。これらの被収容者の処遇に関しまして、法律及びこれに基づく処遇規則できめておりますが、長年にわたる運用上の過程で、処遇上の重要なものについては訓示、通達等によって詳細な基準が示されております。したがって、これらの基準に基づいて各施設の現地的事項を定めておる細則につきましては、大臣認可する必要性が薄くなりまして、今回、認可の廃止をして事務の簡素化をはかろう、こういうものでございます。
  133. 東中光雄

    ○東中委員 私、細則自体を見せてもらったんですが、非常に細部にわたって規則詰めになっている。これで少年院あるいは婦人補導院のほんとうの行刑というか、更生というふうなことができるのかということについて非常に疑問を持つわけであります。  たとえば、ここにいただきました青森少年院の、昭和四十四年三月二十五日、達示第二号、「生活のしおり」というのがありますが、これを見ますと、規則を守れということがずっと通達にも出ておるわけですが、その規則の内容がひどい規定をしている。これは法務大臣認可をしてやってきた細則ということになるわけですけれども、たとえばこういうことまで書いてありますね。「人が見ていていやらしいと思うような行ないをすること」は禁じられておる。これに違反すると規則違反、謹慎処分の対象になるわけです。あるいは「心がけなければならないもの」として、「陰語や符牒をつかったり乱暴な言葉を使ったり下品な言葉を使わずいつも正しい言葉で話そう」、こういうことが書いてある。「自分達の使う道具や品物は常に大切に」「食事は感謝していただく、食べ残したものを人にやったりすることは禁じられている」「人をばかにしたり人を不快にするようなアダナをいうことはやめよう」「動作や態度はいつも機敏に姿勢は正しく背中をまるめたり肩をふって歩いたりしない」「団体動作特に整列行進は心を合わせて整然と行なおう、列をみだしたり話をするのはやめよう」「お客さんや先生お互の間でも礼儀を守ろう」「どんなものにでも落書や傷をつけるのはやめよう」、これが規則の内容になっているわけであります。いわばつけなんですけれども、少年院といっても幼稚園や児童と違うわけでして、少年院へ入ってくる人というのは、社会経験からいえばもう全くおとなですね。そういうところへこういう規則がつくられておって、その規則に違反したのではいかぬという形で出てくる。しかもそれで懲罰される。こんな細則、これは行刑上、自発性を涵養したり更生をさしていくなんというようなものとは、およそ縁遠い縛りにかけているというふうに思うのですが、こういう方向が、たとえば通達なり訓令なりできまっておるからもうそのままいける、だいじょうぶだというふうに考えていらっしゃるのか。法務省のお考えをお聞きしておきたいわけです。
  134. 朝倉京一

    ○朝倉説明員 ただいま御指摘いただきました処遇細則の点でございますが、先ほど監察局長の御答弁にもございましたように、一応私どもは、法令、それから大臣訓令、通達その他の範囲内で、施設内の生活に必要な、たとえば日課、それから院生が守るべき事項、面会、通信その他の外部との交通の手続なんかをこまかに書いております。この点、相当規制がかかっているように理解いたしておりましたが、ただいま御指摘いただきましたように、少しこまか過ぎると申しますか、そういう点、十分考え直してみる点もあるように感じます。  ただいまおっしゃいましたように、少年院の処遇はやはり、院生の自発性、それから本来自分で改善更生にいそしむ、そういう責任があるということを自覚させることが非常に必要だと思います。院の職員はそれを助けてやると申しますか、援助してやるという気がまえが非常に大事だと思います。本質的にはそのことが大事なんでございますが、実際には相当多くの青少年を収容いたしておりまして、集団生活をさしております。そして、先ほど申し上げましたように、やはり院内生活のしつけということによりまして、従来の、どちらかと申しますとふしだらな生活を直そう、そういう気持ちもわりに少年院なんかの現場では強いように思います。そういう点も一がいに悪いと言うわけにもまいらないような気もいたします。私どもも、いま御指摘いただきましたような御趣旨を十分体しまして、今後検討さしていただきまして、いまおっしゃいましたような点から、かりにも行き過ぎの点があるようなことのないように、本省その他の行政指導も十分いたしたいと思いますし、それから本省でも監査を行なっております。矯正管区では相当ひんぱんに監察を行なっております。その際には、当然その処遇の実態を見ます際に、処遇細則も点検するわけでございますので、もし、あまりにも行き過ぎがあって適正を欠くというようなことがございましたら、十分チェックいたしまして、ただいま御指摘いただきましたような点、十分気をつけてまいりたいというふうに考えます。
  135. 東中光雄

    ○東中委員 「少年院処遇規則」という、昭和二十四年九月十二日、法務府令第六十号。三十年八月五日に改正されておりますが、これを見ますと、たとえば「日常生活における訓練の方法」というのは、「日常生活においては、少年院の職員は、つとめて在院者と行動をともにし、自ら範を示すことにより、秩序を尊び自他を敬愛し、併せて物を大切にする習慣を養成するように訓練を施さなければならない」、こうなっておりますね。これはこのとおりでいいと私は思うのですよ。ところが細則になると、こういうふうに非常にこまかいことになってくる。  先ほど言いましたほかに、たとえば「学寮生活で注意しなければならないこと」というこの内容を見ますと、「ほかの室への出入りはみだりにしないこと」「用事のないのに廊下やホール、便所などウロウロするのはやめよう」「清掃用具は大切に使おう、使い終ったらきめられた場所にきちんと整頓しよう」「用便は就床準備までにすませておき、就寝後はなるべく行かないようにしよう」「余暇時間やいこいの時間は何もせずブラブラしないこと」「室内でさわいだりふざけたりしないで静かに過すようにしよう」、こんなことまでやられたら、聖人君子でもたまったものじゃないですよ、こういう規則づめで。こういうことになっておる。これは少年院そのものからいっても当然考えられなければいけない。  それから東京婦人補導院の、昭和三十五年十一月一日、達示第十八号「生活手帳」、これも細則でありますが、これもやはり同じような規則づめ。たとえば「言葉づかい、態度などに気をつけ、友だちなかまでも、親しい中にもれいぎをわすれないよう心がけましょう」「仕事は根気よくおわりまでやり抜きましょう」「正直でかげひなたなく、そして人の教えをよくきき、深く考えてから行動しましょう」「団体生活であることをよくわきまえて、きまりや約束を守りましょう」。書いてあることはいいことなんですよ。ただ私の言うのは、こういうのを細則できめて、規則ということでやりだしたら、これはもうたいへんなことになるんじゃないか。「食堂に入る前に口をすすぎ、手を洗いましょう」「感謝の心で食事をいただきましょう」、これは規則なんですね。これはむしろ教育とか補導とかということではなくなってしまうんじゃないか。これは子供のしつけ。おとなだって、それに従うこと、そういうふうにやるのはいいことだと思うのですよ。ただ、感謝の気持ちで食事をいただこうというところまでいきますと、要するに心の持ち方ということまで入って規則づめにしていくわけですから、その所長の世界観なり、あるいは教育観なりによって、それぞれいろいろな規則ができてくる可能性がある。そうなったのではこれは非常にまずいわけですから、しつけの問題はしつけの問題として、おとなに対する、特に更生補導をするという婦人なり少年なりに対する規則というものは、むしろ自発性を出していく、そういう姿勢が必要だということです。この婦人補導院処遇規則を見ますと、「婦人補導院の職員は、在院者の処遇にあたり、明るい環境のもとで在院者がすすんで更生に励むように、理解ある態度をもって親切に接しなければならない」、これは原則なんです。こういう「すすんで更生に励むように」ということとは全く逆なんですね。全部規則です。  私はそういう点で、細則のあり方というものは、これは法務大臣認可をされておってこうなっておるのですから、認可がなくなってしまったら悪くなるというふうなものではなくて、現在のことについては、私、批判的な考えを持っているわけですけれども、規則のあり方というものは、通達で出されている段階だといいんですけれども、具体化されると非常に危険な方向へ行く可能性がある。これはぜひ行政指導で、行刑上の問題、特に少年に対する行刑の問題に対しては十分考えてもらわなければならないと思いますが、その点についての御意見をお聞きして質問を終わりたいと思います。
  136. 中村寅太

    中村国務大臣 直接は法務省の所管でございますが、この大臣認可を廃止する件についても、行管長官としてお答えいたしたいと思います。  いま読まれました細則というのは、一つ一つ東中君の御指摘のようにあたりまえなことですが、私はかつて法務政務次官をいたしておったときに、少年院とか補導院をいろいろ視察に行きましたが、集団で二十人も三十人もあの若い元気のいい少年が一緒に入っておりますから、やはり、いま読まれたようなしつけというものはみんな守ろうという一つワクの中に入れないと、それはもう個人個人にかってなことをやらしたらどうにもならない。やはり私は、これは一つの集団生活の指針だ、そのためには一人一人がこういうふうにやらなければならぬということの細則だと思うのです。それから婦人補導院のところも、これはいろいろと皆さん方が想像のつかないような姿がやはりあるのですね。一人一人が人間としての道をやって人に迷惑のかからぬようにしつけていって、それが一緒になってこうやっていくのですが、きびし過ぎるように考えられる点もあるいはあるかもしれませんが、集団生活、しかも少年院なんていいますと、元気一ぱいで、一つの中で行動していきますから、やはりこういう基準というものがあればいいのじゃないか。  大臣認可というものを廃止した一つには、基本的にやはり処遇を厚くするということ、人権を尊重してできるだけ処遇を厚くしていく、これは最近の方向としては当然のことでございます。補導院に入っておる婦人でも、あるいは少年院に入っておる少年でも、やはり基本的人権を尊重しながらまっすぐな道を歩くように補導していく必要があります。  それから、大臣認可というようなものは、いまお読みになったことは、これはもう当然のことであるから、ことさらに必要がないということだと思うのです。ただ、いま仰せられたように、いま読まれたことを強制的に押しつけようとしたって、なかなかそれをすなおに聞くようなことにはならないと思いますから、自然のうちにみんなが守っていくというような、そういう細則というものは、実際ああいう者を一カ所に収容して指導していこうとすればやはり必要じゃないか。ただそれが、さっき指摘なさいますように、強制という姿で出てきたらまずいと思うのです。やはり自発的にやっていかせなければなりませんが、その一つの基準としてはああいうことじゃないか、かように考えております。
  137. 東中光雄

    ○東中委員 細則、これは規則としてつくって、これに違反すると処分ができる、そういうたてまえになっているわけです。しかもそれは謹慎というような処分も含むということです。私は社会主義国の刑務所を見にいったことがあるのですけれども、あそこは、たとえば監獄の中へ入る出口にかぎをつくっていない。要するに自発的に更生さしていくという、そういう体制こそが必要なんであって、自由が拘禁されているわけですから、ある程度はそういう意味では懲罰的なものが入っているわけです。しかし、更生させるとか教育するというのだったら、当然引き出すような体制をとらなければだめなんだ。細則ということで、まさにこまかく規則づめでがんじがらめに縛ってしまう。それで規則違反というかっこうになっていくと、問題が非常にこまかいことであるだけに、個人の人間そのもの、内心的な問題までも規則で縛っていくような形になったのでは、これは行刑上の効果をあげられないし、それから、むしろいま大臣の言われました人権侵害の方向が規則づめでは出てくるわけです。自発性を尊重するような、そういうものにすべきではないかということを特にこれは強く申し上げて、質問を終わります。
  138. 伊能繁次郎

    伊能委員長 午後三時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十八分休憩      ————◇—————    午後三時三十七分開議
  139. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  140. 木原実

    ○木原委員 ちょっと質問に入ります前に委員長にお願いがあるわけでございます。  一昨日の本委員会で、同僚の大出委員が広島県の毒ガスの問題を取り上げました。そのときのやりとりで、あの問題も両三年前にこの委員会で問題が提起されておりまして、結局、政府のほうの措置調査その他において十分でなかった点が再び事故を起こしたのではないかというふうに、私どもも聞いたわけであります。ところが、御承知のように、その後、新聞報道等で、各地に、戦争中ないし戦後、海上にイペリットその他を投棄をしたままになっているという報道が見えます。委員長御存じのとおり、銚子沖にもそういう問題がございまして、これまた当委員会の問題になりまして、いろいろと関係当局に御努力を願った経過がございます。そのときも、私の記憶では、結局、主務官庁がないものですから、そのときは、総理府のほうに何かお願いして、防衛庁やあるいは水産庁その他おいでいただいて、ある程度やったわけでありますけれども、何か最終的には、これまた費用の問題で、どこにも予算がないものですから、まあこの程度でということで、事実上打ち切りになっている、こういう経過があるわけでございます。  したがいまして、こういう形で事故の問題が出てきた、あるいはまた、まだそのままになっているという状態がいろいろと報道されておりますので、その真偽も含めて、しかるべく政府が調査をするような、責任の所在を明らかにして適当な予算をつけてすみやかに措置をするように努力をしてもらいたい、こういうことで、ぜひ当委員会としても、理事会その他でおはからいをいただきまして、委員長の御裁量で、政府に申し入れをするなり働きかけるなりしていただきたい、こう考えますので、ひとつよろしくお願いをいたします。
  141. 伊能繁次郎

    伊能委員長 申し出の点は、明日の理事会等で御相談いたしますが、なお、政府から一言答弁もあるようでありますから……。
  142. 砂田重民

    ○砂田政府委員 毒ガスの問題は、ただいま木原委員御指摘のような経過で、しり切れトンボのような形で一応終わっているわけでございます。いままで問題になりましたのが、別府湾、播磨灘、銚子、それと広島県の大久野島、この四カ所でございますが、先般、参議院の決算委員会で総理も明確にお答えをいたしましたとおりに、毒ガス対策の担当省庁をはっきりさせなければなりません。そこで、きょう四時から、総理がお答えをいたしましたとおりに、環境庁が中心になりまして、内閣官房の協力を得ながら、関係各省全部集まりまして、どの省庁で明確に担当をしていくのかという問題。それから毒ガス総点検の実施につきまして、さらには大久野島の被害の問題もございますので、被害者救済等の問題にも触れて、それの政府内の連絡会議を開くことになっております。連絡会議をやりました結果、これらの点がはっきりいたしてまいりますので、その段階でまた衆議院の内閣委員会のほうにもお答えを申し上げたい、かように考えております。
  143. 木原実

    ○木原委員 それではぜひひとつお願いをいたします。  それから、あわせまして、外務大臣御出席をいただいておりますし、本論に入る前にぜひ外務大臣にやっていただくことがございます。  と申しますのは、実は沖繩も返ったし、いろいろとアメリカとの関係一つの区切りがつくような時期なんですが、実は、占領中にいろいろな公文書その他が、アメリカに接収をされた、あるいはまた個人のコレクションというようないろいろの形で向こうに行っている。こういうことが、特に最近アメリカに渡りましたその方面の二、三の学者の方から具体的な提示があり、何かぜひこういう機会にあらためてひとつ返してもらうような措置を講ずべきではないのか。かなり大事な現代史といいますか、歴史になりつつあるいろいろな問題についての貴重な資料、その原本が、たとえばアメリカの国立国会図書館であるとか、あるいはまたマッカーサー記念館であるとか、あるいは大学の図書室であるとか、そういうところにあるのを現認をしてきておる。そういうことではちょっと困るのではないのか。実はこういう問題の提起がございまして、いかような手段でどうするかという問題があるわけでありますけれども、ぜひそういう方面について努力をしてもらいたい。少なくとも外務省が窓口になって御努力を願いたい、こういうことなんですが、いかがでございましょうか。
  144. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御注意いただきまして、まことにありがとうございます。わが国といたしますと、アメリカに対して権利としてさようなものを要求をするという立場にはないわけなんです。しかし、日米関係のことでございまするから、これは頼めば私はできないことはない、こういうふうにも考えます。そういう貴重な資料がどこにどういうふうに保存されておるのか。外務省のほうでも調べてみますが、また木原さんのほうでもそういうお気づきがございましたら御教授を願いまして、ひとつ外交ルートで交渉をしてみるということにします。アメリカに押収されたいろいろな資料の中には貴重なものがありましょう。あるいは個人が持っているというようなものがありましたら、その個人にも頼むという道もあるし、買うというようなことも、ものによってはしてもいいかと思いますが、できる限り努力をいたしますから、御協力のほどをお願いいたします。
  145. 木原実

    ○木原委員 実はおっしゃいましたように、二、三の学者がかなり具体的なレポートは出しているわけでありますけれども、実際にそれがどういう形でどのくらいあるかというのは、個人の学者の人たちの努力だけでも必ずしも全貌が明らかであるわけではありません。したがいまして、きょう総理府の総務副長官にもお出ましを願いましたのは、何人かの学者がたいへん貴重な資料があるということを現認もし御報告をしているわけでございますので、できましたら、公文書館なり、あるいは国立国会図書館なり、それぞれの機関があるわけですけれども、ひとつ総理府のほうでお骨折りをいただきまして、まず、どういうものが向こうに行っているのか、少なくともそれを調査をするような小機関をぜひつくって御努力をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  146. 砂田重民

    ○砂田政府委員 内閣、総理府の関係の公文書で米国にいまだ接収されているそのころの確認を、実は国立公文書館のほうでも御努力を願っているところでございますけれども、私も、いま木原先生御指摘の学者の方が、アメリカでたいへん御苦労なさって調べてこられた資料も拝見いたしました。たいへんな御苦労であったと思うのですが、これを拝見いたしましても、どうも公文書の接収は各省にまたがっているようでございますから、各省並びに外務省とも十分協議いたしまして、できるだけ返還を急ぐような努力をしてまいりたい。どうしても返還がむずかしいものにつきましては、コピー等でも何とかとってきたい、かように考えております。せっかく努力をいたします。
  147. 木原実

    ○木原委員 いろいろな問題がすでに出ております。昨日、参議院のほうで同じような問題提起がございまして、実は総理が御答弁なさっているそうであります。それによりますと、これは大事な問題だから、外務省をひとつ窓口にして返還するように努力しよう、こういう御答弁があったやに聞いておるわけでございます。おそらく、返還ということになりますと、いろいろのルートは外務省に御努力願わなくてはならぬと思うのですが、一体何がどの程度にあるのか、はたしてその中でどれだけのものが返してもらわなくてはならないような性質のものなのかということが必要だと思うのです。  それで砂田副長官、いま御答弁いただきましたように、ぜひ御協議願うような調査機関をつくっていただきたいということとあわせまして、一部のもの、たとえば防館庁関係のものは戦史関係で早くに返っておりまして、これは戦史室に保管をされておる。これはどういうわけか非公開という形なんだそうです。向こうの担当者に言わせますと、おまえの国へ持っていったなら非公開のマル秘のほうが多い、おれの国に置いといたほうが利用価値があるのだという発言があったという話も聞いております。ですから、必ずしも返還について心証がいいというわけではないんだ、こういうふうに申す学者の人たちもおるわけであります。したがいまして、私どもとしましては、歴史的な資料は言うまでもございませんが、公文書その他は、現にやろうとしておりますように、公開をする、こういう措置も含めまして、ひとつ返還に向けての努力をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  148. 砂田重民

    ○砂田政府委員 やはり二つに分けて考えなければならないかと思います。一つはまず返還をしてもらう、それから返還をしてもらった図書、公文書類をどう保管していくかという問題、二つに分けて考えなければならないと思います。  いま木原委員のおっしゃいましたように、防衛庁の関係資料等はほとんど返っているやに聞いております。これは防衛庁の史料編纂の係のほうで保管をして、防衛庁自身で戦史等の作業をしておられるように聞いております。各省庁によりまして、自分の省の関係の文書で返ってないのは何と何だということを明確にしておられるところもあるし、同じものがコピーの形でこちらにもほとんどそろっているので、あらためて返還というものはさして必要でないというお考えの省庁もあるようでございます。歩調が十分合っておりませんので、まず返還をしてもらうという問題につきましては、私どもで各省庁の人と協議をいたしまして、窓口は外務省にお願いをして折衝していただきたいと思います。  それから、返ってまいりましたものの公開、非公開の問題は、いろいろ問題があろうかと思うのです。公文書の場合は、必ずしも全部が公開できるかどうかは問題があろうと思うのですが、ただ図書類につきましては、当然公開をするべきだと考えますし、その場合は国立国会図書館等に返してもらえば、これは公開が原則でございますから、先生の御心配のようなことはなかろうと思います。せっかくひとつ努力をいたします。
  149. 木原実

    ○木原委員 それからもう一つ、これは学術会議が、先般沖繩の復帰に関連をいたしまして、ちょうど復帰した時点で、占領関係のさまざまな布令、そういうものが散逸をしないように、あるいはまた日本の占領当時の例等にかんがみまして、それらをたとえばアメリカのほうが本国のほうに持ち帰るというような、あるいは措置があるかどうかわかりませんが、いずれにしましても煙滅をしたり散逸をしたりしないために、大急ぎで沖繩の裁判資料を含めた公文書等について厳重にひとつ保守をするように、こういう申し合わせが行なわれたやに聞いております。何か政府のほうにそれが提出されるのだというふうにも聞いておりますけれども、ちょうど大事な時期でございますので、沖繩関係につきましても御配慮をいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  150. 砂田重民

    ○砂田政府委員 確かに五月十二日付で学術会議の会長名をもって要望書というものを受け取っております。もっともな御要望でございまして、政府といたしましても、前もって、沖繩の資料等のことで心配な点もございましたので、四十七年度予算でこういった資料の収集等について予算を計上して準備をしているところでございます。これは沖繩開発庁が直接、沖繩県あるいは文部省を通して琉球大学、こういうところと十分に準備をいたしまして、散逸のないように、またこちら側に残るように努力をすることにいたしております。
  151. 木原実

    ○木原委員 いずれにいたしましても、たいへん熱心に学者の人たち事態を憂慮いたしておりますし、何か聞くところによりますと、西ドイツ等では、たとえばナチスの資料につきましてはその原本がほとんど完全に返っている。四カ国の占領であったわけですけれども、ソ連側のほうからも、あるいはアメリカその他の側からも返ってきて、その資料はドイツの本国で見ることができるようになっている。ところが、日本にとりましては、戦中ないしは戦後にかけて、非常に大事な基本的な資料の原本がどうもアメリカにあるというのではぐあいが悪い、こういう要望も強いわけでございますので、ぜひひとつ御配慮をお願いをいたしたいと思います。  それでは、以上のようなことをぜひひとつ御努力をお願いをいたしまして、別の問題に移りたいと思います。どうも副長官ありがとうございました。  外務大臣に少しばかり前回の委員会に続いて問題をお尋ねをしたいと思いますが、先般もこの委員会で、あるいは他の委員会でもそうでございますけれども、事前協議の問題がずいぶん論議をされました。私も聞いておりまして、どうしてもはっきりいたしません。というのは、事前協議の場合に、政府の考える戦闘作戦行動というものの規定というか、カテゴリーというのが一向にはっきりしない。あらわれました現実について、どうもそれは戦闘作戦行動ではないのだ、それは補給活動であろうとか、あるいはそれは割り切ったのだとか、こういういろいろな具体的な事例についての御答弁がございましたけれども、しかし、そのよるべき基準になる戦闘作戦行動というものについて、ちゃんとした概念なり規定というものをお持ちなのかどうなのか、疑わざるを得ないのですが、どうでしょう。
  152. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 防衛局長、来ておりませんので、条約局長のほうからお答えさせます。
  153. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま先生の御質問の趣旨は、戦闘作戦行動とはどういうことかというお話でございますが、事前協議に関しまする条約第六条の実施に関する交換公文というものがございまして、そこに書いておりますことは、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」、これが事前協議の対象になる、こう書いております。そこで、従来から私たち政府のほうで、この対象になる基地の使用と申しますものはどういうことなんだということで一般的に説明しておりますのは、米軍がわが国の施設、区域から発進していくときの態様が直接戦闘に従事することを目的とした作戦行動である、そういうものをいう、こういうことでございまして、要するにわが国の基地を発進するときの態様自体が戦闘任務を持って行なう、戦闘任務を持って発進するということをとらえてこの事前協議の対象になるというふうに申しております。
  154. 木原実

    ○木原委員 たびたびそういう話を聞いてきたのですが、それに関連をしておるのです。大臣の御答弁その他も聞いてきたわけですが、きわめてあいまいなんですね。しかも具体的の事例としてあらわれてくるものは、これは客観的に見れば、明らかにベトナムならベトナムの戦闘に少なくとも関連をして作動をしておる、そういう分野のものが多い。しかも、いままでの事例の中でもそうですけれども、どこからどこまでが戦闘作戦行動であって、あとはそうでないのかという、つまり基準がはっきりしないものだから、これが戦闘作戦行動であって、これはそうではないのだという、それを検証するものがこちら側に何もない。向こう側の通告だけですか。たとえば、岩国からファントムが飛び立った、向こうに行ったらしい、こういうことがあるのですが、しかし、それが飛び立つときは、たとえば戦闘任務を授けられていなかった、その場合にはしたがって事前協議の対象にならないのだというような議論がございましたけれども、しかし、そのことを検証する、はっきりさせる権限はこちら側にはないわけですね。
  155. 高島益郎

    ○高島政府委員 事前協議はもちろん米側の義務でございますので、米国がそういう目的のために日本の施設、区域を使用するというときは、日本側に事前協議をしなければならないということでございますので、これは当然米側の義務としてわれわれとっております。ただ、義務だけにまかしておいて全然事前協議を回避するということになりますと、非常に重大な問題でございますので、わがほうといたしましても、そのような事前協議の対象になるような事態があった場合には、これは米側に、随時協議によりまして種々協議の上、その実態を確かめる。確かめた上で、事前協議の対象になるという場合には、当然米国からあらためて日本側に同意を求めるようにしむけるということであります。その場合の検証のしかたといたしましては、これは従来から政府が申しておりますとおり、米軍の日本の施設、区域の使用の実態、態様と申しますか、そういう観点からとらえて検証いたしますので、命令を受けたかどうかというだけが問題ではございません。
  156. 木原実

    ○木原委員 態様、実態を調べたことはございますか。
  157. 吉野文六

    ○吉野政府委員 たとえば、岩国からファントムないしはA4のスカイホークの中隊がベトナムに向かって移駐したわけでございますが、これについてわれわれが調べた結果を申しますと、まず第一に彼らは単に移駐命令を受けておる。しかも彼らは、岩国を立ちまして、たいていはフィリピンの基地に向かって飛んでおるのでありまして、そこでしばらく給油なり休んで、それから南ベトナムに向かう。南ベトナムにおいてさらにいろいろ整備した後に、おそらく戦闘作戦行動に入っているのではないか、こういうことでございまして、いずれにせよ岩国を立つときは、戦闘作戦行動に直接参加するという命令を受けておりませんし、またそのような準備をしておりません。
  158. 木原実

    ○木原委員 大臣にお伺いしたいのですが、ベトナム戦争の見通しというものについてどんなふうに御判断なさっているのですか。
  159. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ベトナム戦争につきましては、これは南北両国民の間に和平を求める空気、これが非常に多い。私はもう満ち満ちておるというような感じがするのです。そういうようなことから考えまして、これはいずれは和平というか、平和の日が来るであろう、こういうふうに見ております。ただ、そこへ至るまでのかけ引きというか、それがある。今日はその段階である。そんな感じがしてならないのです。ですから、いまアメリカのほうではたいへんきびしい政策をとっております。とっておりますが、一方においてアメリカは抜け穴というか、和平への道も開いておる。即時停戦ということになれば、四カ月以内には全米軍の撤退をする、こういうようなことも公にしておりますが、これはかなり思い切ったそういう意欲を示しておる。そうすると、お互いに武器を捨ててテーブルに着くという日がおのずからやってくるであろうと思いますが、その際も私は、おそらく南北両当局、お互いに七項目、八項目ということでいままで対処してきましたけれども、かなり私は含みのある交渉が行なわれるのじゃないか、そんなような感じがしております。とにかくこれは、私の見通しでありまして、そういうふうにいけばけっこうですが、あるいはいかない場合もないとはいたしませんが、私はそういうふうにならぬように、もう一日も早くという気持ちで情勢をながめておるということでございます。
  160. 木原実

    ○木原委員 国民の中ではやはり、ベトナム戦争が、あるときは平和的な解決の展望が立つやに見え、それがまた一転してたいへん激しい戦闘状況が展開をする。しかも戦闘の態様が激しくなれば、このたびのようにさまざまな角度で、ともかく日本の基地がベトナム戦争につながっているような状態が目の前に出てくる。さらに戦闘が激化すればこのような姿が続いていくのではないのか、こういう心配を持っていると思うのですね。したがって、これは大臣おっしゃるように、いろいろなかけ引きもございましょう。しかし、いずれにしましても、戦闘が激化していくのじゃないのか、激化をしていけば次第にいまのような形で日本の基地がともかくベトナムにつながっていくような姿が相次いでまた出てくるのではないのか、こういうところに一番心配を持っていると思うのです。ですから、もしそれであるならば、そういう状態に対して、国民の願いというか、意思を体して、しからば日本の政府としてやることはないのか、何をやったのか、こう問わざるを得ないような姿があるわけです。全然離れた遠い関係のないところならばそういうあれも出てこないわけでありますけれども、いかんせん、現実の問題としては、沖繩の基地あるいは国内の本土の基地がつながっていくような態様が出てきておるだけに、そういう心配が強いと思うのです。ですから、もし、そういう展望であれば、そういう状況の中で日本のベトナム戦争に対する一つの意思表示というか、立場というか、和平への努力というか、やはりそういうことについてのお考えというものは全然お持ちじゃございませんか。成り行きにまかせるということでございますか。
  161. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもは戦争の当事者じゃございませんから、決定的な影響力というものは持っておらないわけです。それからまた、その戦争の背後勢力でもありませんものですから、大きな発言もできないような立場です。しかし、私は、とにかくわが日本は、ベトナム半島というものは、これはわが国の隣邦地域である、こういうふうに見ておるわけです。隣邦といたしましてああいう悲惨な状態を座視するということはよろしくない、こういうふうな考えを持ち、戦争の当事者でもなく、また戦争の背後勢力でもない日本ではありますけれども、何か機会がありますればそれをとらえて和平への貢献をいたしたい、そういうような気持ちを持っておるわけなんです。さらばこそ、いまそういう方向の努力もささやかながらいたしておるつもりなんです。ただ、いかんせん、今日のこの時点におきましては、非常に南北の関係が灼熱をしておるので手の出しようもないのですが、機会が到来する、鎮静化する、そういうような際におきましては、また、かねてからの考え方に基づきまして最大限の努力をしてみたい、こういう気持ちでございます。
  162. 木原実

    ○木原委員 安保条約のいわゆるわれわれの協力義務ですね。そういうものがやはりベトナムの事態を控えて、われわれから見れば何か拡大解釈されて、それに引きずられて、たとえば基地から発進したり、戦争につながっていくような姿を日本の政府はどうも黙認をしているのではないのか、こういう感じもするわけであります。逆に、たとえば沖繩が復帰をすれば、あそこには安保が適用され、したがって事前協議制というものでチェックができるのだ、こういうことが繰り返しいわれてき、今日を迎えまして、それが必ずしもそういうふうには作動をしない、むしろ不安のほうが拡大をしていっている、こういうような状態があるところに私はやはり問題があると思うのです。したがって、安保条約のやはり解釈上の大きな問題がそこにあるわけでありますけれども、しかし、もしいまの大臣のおことばでございますと、それにもかかわらず、何らかの機会をとらえ何らかの問題をとらえて、日本の国民の意思を体した平和への努力なり貢献なりをしたい、こういうことだと思うのですが、具体的にはどうですか。安保条約との関係その他でわれわれはなし得ることをなし得ない状態にあるのかどうか。
  163. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 安保条約との関係におきましては、わが国は米軍に基地を提供しておる。この基地から補給を行なう、あるいは兵器の修理を行なう、そういうことは認めておるわけでありますから、これはそのとおりして差し上げる責任がわが日本としてはあるわけであります。  それから、安保条約によりますれば、わが国の基地から米軍が戦闘作戦行動のために発進する、そういう場合におきましては事前協議にこれを付する、アメリカ側にそういう義務があるわけです。それに対してわが国は、たとえ事前協議がありましても応諾をしないという方針をきめておる、そういうくらいなかまえをとっておるのでありまして、その点は私は、北ベトナム側におきましても高く評価してしかるべきわが国の政府の態度である、こういうふうに見ております。  現実はどうか、こう言いますると、北爆が始まったあの最中に北ベトナムの産業視察団が来訪をしておる、わが国の各地をあの爆撃が行なわれておる最中に視察いたしまして、そしてわが国に世話になったことを感謝しながら帰っておる、そういうような状態でございまして、私は、北ベトナムが日米関係で置かれておる立場というものにつきましては十分な理解は持っておる、また日米安全保障条約の運用におきましても、きわめてつつましやかな行動をとっておる、こういうことも理解してくれておると思うのです。ですから、いまはとにかく灼熱状態の南北状態でありますから手がつきませんけれども、私どもはこれが鎮静化いたしましたその暁におきましては、できる限りの努力をしてみたい、またそれができる状態は決してそこなわれておらぬ、そういうふうに見ております。
  164. 木原実

    ○木原委員 私はこの席で申し上げていいかどうかわかりませんけれども、ざっくばらんに申し上げたいと思うのですが、私は一昨年ハノイへ参りました。北ベトナムのほうも日本に対して感謝をしておるんではないか、評価をしておるんじゃないかというおことばがございました。しかしハノイの人たちは、たとえば沖繩の基地の問題の成り行きについて非常に注目をいたしております。北の人たちにとっては、日本との関係はまだ国交の回復が未処理でございますし、それから、あの戦争のあとの問題も未処理、そういう状態の中で、現実にやはり、沖繩の基地から発進をしてくる飛行機や艦艇によってわれわれは攻撃を受けているんだ、こういう認識があったわけであります。しかし、それにもかかわらず、大臣のことばの中に、たびたび南北の灼熱をしたというお話がございましたけれども、私どもが北側から見ました印象では、これは朝鮮の三十八度線の事態とは違って、南北というものは事実上、そういうことばを言っていいかわかりませんけれども、ないような印象を受けました。北は北として社会主義的な国の建設をはかろうとしておるし、南は、これから独立した民族国家、民主主義の国家としてやっていくんだ、こういうたてまえがございますけれども、民族的な交流といいますか、同和といいますか、そういうものは非常に旺盛でございまして、三十八度線をわれわれが見た印象では、不幸なことに、朝鮮の場合には非常に南北関係がきびしい姿がございました。しかしベトナムの状態は、やっておるのはなるほど南の政府軍というのはありますけれども、どうもやはりアメリカとベトナムの戦いだ、こういう印象が非常に強いわけであります。また南出身の人たちが北にはたくさんおるわけですね。そのようなことから考えますと、どうもわが国で見ておるような状態ではなくて、やはり民族的な交流というものが非常に強い。したがってどう見ましてもこの戦争はアメリカとベトナムとの戦いだ。それで、もしアメリカのような外国の勢力がいなくなれば、民族同士の話というのは幾らでもできるんだ、こう申しておるような姿でございました。現在、南の政府を代表しておる、たとえば大統領であるとか総理であるとかいう人たちについては、責任上一緒にやれないけれども、そういう責任者を除けば、われわれはいつでもサイゴンへ協力をして、民族の自立の政府をつくってやる条件が熟しているんだ、こういうことを断言をしてはばからないような空気があるわけですね。一種の民族的な自立を目ざすような戦いですから、複雑な要素がございますけれども、われわれのいままでの概念で割り切れないような姿が満み満ちている。アメリカの読み違いも何かその辺にあるように考えるわけなんです。  したがって、そういう意味では、私どもは、北のほうとはいまだ国交が回復をいたしておりませんけれども、いま外務省の中でいろんな努力をなさっているという動きは、私も承知はいたしておりますけれども、ベトナム全域がたいへん流動的な状態の中でいまのような戦闘が行なわれておる、こういう事態を的確に把握をすれば、わが国としてもやることができるいろんな問題があるのではないのか、こういう感じを私は抱いておるわけであります。  そこで、やはり一つ問題になりますことは、そういう状態の中での戦争について、われわれはアメリカとの間に安保があるから、この戦争に対しては少なくとも中立的立場というものは守れないという立場なのかどうなのか。あるいはまた、安保があるにもかかわらず、われわれはそういうベトナムの状態を踏まえた上で、独自にベトナムの平和のためになすべき道があるのかどうなのか。こういう問題が残るのですが、わが国の厳密な立場というのは、このベトナム戦争に対しては中立ではないんだ、こういうことなんですか。心情的にはともかく、安保を前提にしてアメリカとの関係の中で、厳密な中立ということではないのだとお考えなのかどうか。ひとつお伺いしておきたいと思います。
  165. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 戦後、中立という国際法上の概念がないというか、きわめてあいまいになってきておるわけなんです。でありまするから、私は中立ということばは使いませんが、はっきり言いますると、わが国は戦争の当事者ではない、こういうことだと思います。でありまするけれども、日本はこの戦争に対しましては、日米安全保障条約を締結しておるその関係から、在日米軍基地からする補給でありますとか、あるいはその基地における兵器の補修でありますとか、そういうことにつきましては、アメリカにその行動を許容するという責任がある。そういう限りにおきましては、これは関連がない、こういうふうには言いません。関連がある。あるけれども、どこまでも私どもは北ベトナムに敵性を感じておりませんから、私はわが国民の中で、北ベトナムと戦争をしているのだというような考え方を持っている人は一人もおらぬと思います。また実際問題として、日米安全保障条約に基づく補修、補給というような行動を米軍に許しておくというだけのことなんです。おそらくまた、北ベトナムの方々にいたしましても、日本に敵性を感じておる、日本は敵国である、こういうような考え方、そんなものを持っておるはずがない、そういうふうに思います。もしそうであれば、あの爆撃下において視察団がわが日本各地を視察して回ることはあり得ないことじゃないか、そういうふうに思います。
  166. 木原実

    ○木原委員 しかし、そのアメリカは現に激しい攻撃を加えているわけでありますから、戦闘をやっているわけでありますから、その戦闘当事者に対しては、われわれはもう少しシビアーなきびしい措置をとるべきではないのか。つまり、北に対して、あるいはベトナムに対してはわれわれは何らの敵性も感じていないのだ。安保条約上の一定の制約はあるにしても、ともかく少なくとも当事者ではないという立場を堅持をするというならば、いろいろ論議をされてまいりましたように、事前協議制のいろいろな問題がありますけれども、そのことを含めてもう少しやはりシビアーできびしい措置を戦闘当事者に対してとるということはできないものでしょうか。
  167. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 一方だけに対してとるわけにはまいりません。双方に対しまして、もう戦争はやめてテーブルに着いてください、こういう呼びかけをする、これは私はもうわが国の当然なすべきことである、こういうふうに考えます。また現にそういう行動をとっておるわけなんです。どうもアメリカだけに対して、アメリカの戦闘行動に規制を加えるという行動、これはわが日本としてはとれません。
  168. 木原実

    ○木原委員 この議論はあれなんですが、しかしわれわれは、ベトナムとは国交も回復をしていない。これに発言権がある立場ではございませんから、われわれの立場を貫いていこうとすれば、戦闘当事者であるアメリカの側に対しても、やっぱりきちんとした姿勢を示すべきだと私は考えるわけなんですが、大臣のおことばですと、問題がやや一般的になりまして、そうなると、日本としては適切な何か行動なりアプローチなりができないような感じもいたします。しかし、そのことはもうこれ以上議論をいたしません。  もう一つ、そういう中でも北ベトナムとの関係は改善をしていきたい、あるいはまた、視察団が来たというお話がございましたが、そういう経済交流なり、あるいは人事交流なり、文化的な交流なり、あるいはまた、その先の見通しとして国交を回復していく、こういう展望と立場は貫いてお持ちになるお考えでございますか。
  169. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 不幸にしてベトナム半島は南北に分断をされておる。その南の政府とわが国は平和条約を結んでおる、こういう関係にありますものですから、おのずから北に対しましては、南と同じようなつき合いはできません。できませんが、それはそれなりに南の様子も見ながら逐次北との間でも交流を始めていきたい、そういうふうに考えております。つまり、文化あるいはスポーツ、あるいは経済、そういう面におきまして、いまはちょっと灼熱状態下ですからむずかしゅうございますけれども、これが平静になりますれば、そういうような順序で逐次交流を広めてまいる。それがまた南北の和平というような問題にも私どもが介入し得る基礎囲めにもなるか、かように考えておるわけであります。
  170. 木原実

    ○木原委員 そういう状態の中では、ある意味ではこれこそ南北平等という形になるかと思うのですが、交流のほかに、たとえば人道上的な援助、そういうようなものを南に対しても従来も何がしかあったやに聞いておりますけれども、北のほうに対しても当然、いわば平等のような原則でそういうことをやっていく、こういうこともやるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  171. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 人道上の援助につきましては、北につきましてもこれをいたします。現にかなりの金も出して、チョウライ病院という病院を建設しておりますが、これはサイゴンの近辺につくるわけです。しかし和平でもできますれば、これは南北両方の方々のために奉仕するという役割りを尽くさせたい、かように考えております。
  172. 木原実

    ○木原委員 この問題でもう一つ最後に伺っておきたいと思います。  そういうことになりますと、御承知のとおり現在はたいへん灼熱した状態です。そうしますと、北との国交回復の問題は、あるいは和平の成り行きの中でいろいろ対応が変わってこようかと思いますけれども、先ほど来私ども申し上げましたような、交流を重ねていく中で国交回復はすみやかに実現をしたいんだ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  173. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 とにかくベトナム半島の問題は、パリ会談が再開される、これが先決問題だと思うのです。そしてジュネーブ精神というか、これに従って南北の間に平和が到来する。さらに先に行けば南北が統一されるというようなことになれば、一番理想的な形じゃあるまいか、そういうふうに考えております。そういうふうな過程をたどるその段階、段階においてわが国が北にどういうふうに対処するかという問題か、かように存じますが、そのケース、ケースに応じて友好の精神を持って対処していくということでしょうと、まあいま思っておりますが、とにかく友好裏に北とも接触を続ける精神は堅持してまいりたい。はっきりそういうことを考えておるということを申し上げておきます。
  174. 木原実

    ○木原委員 もう一つ問題をお伺いして終わりたいと思うのですが、実は気になっております例の尖閣列島の問題でございますけれども、少し伺っておきたいと思います。  これは、御承知のように、あらためて防衛庁のほうでは尖閣列島に防空識別圏を設定いたしまして、しかもそれが現在のところアメリカの飛行機によってパトロールされる、こういう状態になっているわけなんですが、この尖閣列島の問題につきましては、何か中国のほうからも国連のほうに領有権を主張する文書が提起された。わが国としてはそういうものに対してどういうふうに領有権を主張していくつもりですか。
  175. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 わが国とすれば、尖閣列島がわが国の領土であるということについては、一点の疑いも持っていないのです。それに対しまして、一昨年ごろからあの近辺で油が出るという話が出始めると、まず国民政府が、尖閣列島はわが国の領土であると言い出す。続いて今度は北京政府のほうも、そういうことを言い出す。心外に思っております。しかし私どもは、あの島はわが国の領土であるということについては一点の疑義も持ちませんから、持ちませんという立場に立って諸行政措置を講ずる、こういうふうに考えておるわけであります。  この間、いま御指摘のように、国連で中華人民共和国のほうからサーキュラーが回されたという通知を受けました。これをほっておくわけにはまいりませんものですから、わが国もそれに対して、あれはわが国のものであるという内容のサーキュラーを回すということにいたしておりますが、しかし、もの言いがついておりますから、これは荒立てないほうがいいと思っております。荒立てないような措置、これは国民政府側に対しましても、わが国としては要請をしております。そういう御主張があるにしても、これは荒立てないような態度で善処してもらいたいということを要請して、かたがたわがほうにおきましても、ことさらこれを荒立てるというようなことはしないようにいたしながらも、わが国の領有権につきましては、これが誤りなくそういうふうな結論になるように万全の対策をとっておるというのが現状でございます。
  176. 木原実

    ○木原委員 荒立てないという御方針なんですが、現実にわがほうも領有権を主張しておる。一点の疑いもない。しかしあらためて中国のほうから領有権が主張されてきておる。そうなりますと、さしあたって私ども一番心配いたしますのは、先ほど申し上げましたように、尖閣列島を含むたとえば防空識別圏が設定をされて、パトロールが行なわれる。そうしますと、中国の側からも領有権を主張しておりますから、やはり同じようなパトロールを行なう権利を向こう側も主張すると思うのです。だから一番心配になりますのは、荒立てないというわけですけれども、パトロールで接触その他の不測の事態が起こらないかどうかということです。その点についての見通しみたいなものはどうですか。心配しなくてもいいことなんですか。
  177. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いまのところ私は心配はないと思うのです。当面の問題は国民政府でございますが、国民政府側においても、主張は主張といたしまして、行動についてはたいへん注意深い態度をとろうとしておる。そういうようなことから、問題は当面は起こらない、こういうふうに見ております。
  178. 木原実

    ○木原委員 もう一つ先ほど大臣がおっしゃいました、油の資源がたくさんある、こういう問題ですでにわが政府にも、調査なり発掘なりの申請が出ているやに聞いているわけであります。そうしますと、これはさしあたって、なかなか許可をするという段取りにはならぬと思うのですが、それらについても慎重に扱っていくという方針でないと、何か手をつけますと、それぞれの主張がエスカレートしていくような感じがするわけですが、その点についての配慮はどうでしょう。
  179. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは尖閣列島の島並びにその領海の問題とは違う問題なんです。つまり大陸だなという尖閣列島領域外の問題なんです。これは、それに対して権利を主張する国々と話し合って、そうして処置をするという態度であります。これについては問題はなかろう、かように思います。
  180. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、そのことを含めてと申しますか、先ほど来ありましたが、たとえば国連の場等で中国側もあらためて主張しておるわけでありますから、中国側と接触をして話し合うという状態はなかなかできないと思うのですが、どうですか。何か話し合いをしていかなくてはならない状態になっていると思うのですが、中国との関係が根本的に改善をされるまでこの問題はこのままの状態で残っていくものなのかどうなのか。
  181. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 事、経済の問題ですから、あるいは政治問題に関係なく話し合いがつけばやっていけない問題じゃないと思います。しかし、実際問題とすると、やはり日中国交の正常化ができないと話し合いができないのじゃないか。実際問題とするとそれを待つほかないのじゃないか、そういうふうに思います。
  182. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、成り行きによりましては、中国との改善の問題があるわけでありますけれども、その中でやはりこの領土問題というのはどうもなかなか深刻な問題をはらみがちなものですから、いろいろ不測の問題が起こってきはしないかという心配がわれわれにもあるわけであります。そうしますと、尖閣列島の問題は、結局、中国との国交回復の中の一つのテーマとして、条件がお互いに整って国交回復について論議が行なわれるとか、あるいは話し合いが行なわれる、そういう中で解決していく以外にはないのだ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  183. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 尖閣列島問題は大陸だなとは別ですけれども、これはどこまでもわが国の領土ですから、これは譲るわけにはいきません。しかし、大陸だなの問題は別の問題といたしまして十分話し合っていきたい、こういうふうに考えております。
  184. 木原実

    ○木原委員 私がお尋ねしましたのは、大陸だなの問題ではなくて、尖閣列島の領有権の問題。私ども、尖閣列島は本来わが国固有の領土である、  こういう立場をとっておるわけであります。しかしながら、台湾を含めまして中国側はそうではないのだ、異を唱えているわけでありますから、やはりそれの措置の問題は、国交回復について話し合う中の課題なのか、あるいはもう全然別のテーマとして、向こう側の異論に対しては別個の対抗措置をとっていくということなんですか。
  185. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 とにかく私のほうでは、尖閣列島の領土問題を話し合う考えはありません。これはもうわが国のものであって、これはわが国のものであることを確認してくださいよなんという話をする必要のない問題である、わが国の領土であるということでどこまでも主張すべき問題である、こういうことでございます。
  186. 木原実

    ○木原委員 これで終わりたいと思いますけれども、ただその際、やはり何か問題が残ると私は思うのです。というのは、いま申し上げましたように、心配いたしますのは、現在はアメリカの空軍その他が、来年度からはわが国の自衛隊か何かが、当然領土であるという前提で尖閣列島をパトロールする、飛行機なり艦艇なりがこの周辺を警戒する。そうしますと、その際に、領有権を主張しておる中国側がやはり同じようなパトロールをする権利を主張すると私は思うのです。そういう際はどうなさるのですか。
  187. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういう際には、どこまでもわが国の領土であるというたてまえを堅持して対処——していくほかありませんです。それは、九州はおれの領土だと主張されたら、何かそちらと話し合いを始めなければならぬか、それはそういうことではありません。わが国の領土はどこまでもわが国の領土である、それに対して領土としての所要の措置を講ずる、こういうことなんです。ただ、いま非常に機微な国際関係があることは、木原さんも私ももう同じ考えだと思います。そこで、事を荒立てないというところに主眼を置いて対処していきたい、こういうことだと思います。
  188. 木原実

    ○木原委員 事を荒立てないという原則は私も賛成です。しかし現実にそういうパトロールが行なわれ、しかも沖繩にあるアメリカの部隊が、暫定的ですけれども、来年の一月ごろまでは日本側にかわってパトロールをするような仕組みになっておる。しかも、現にベトナムで戦っておる戦闘部隊と直結をしているアメリカの部隊が沖繩には存在をしている。あれこれ考えますと、事を荒立てないのだというわけですけれども、どうもこちらとしてはあたりまえのことをやっていることが刺激を与えるというようなことにもなる。そういうことになりますと、ほかの分野にもいろいろ影響を及ぼしていくのではないか、あるいはまた不測の事態が起こってくるのではないかということを実は心配をするわけなんです。  ですから、事を荒立てないという大臣の御答弁の中には、やはりセーブすべきものはこちら側としてもセーブして、そしてこの領土権の主張についてはしかるべき話し合いをする場なり主張する場があるわけですから、少なくともそれに影響を与えないようにいろいろな面ではセーブしていく。大陸だなの開発の問題につきましては、大臣からいまたびたびお答えをいただきましたように、これは別個の経済問題として、半分に割るというような原則があるそうですけれども、そういうような形で処理をしていく。そういう段取りで、特に大事なことは、事を荒立てないという中に、パトロール等についても一定のセーブを加えてなるべく穏やかに持っていくのだ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  189. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 大体そういうことですね。当面の必要最小限の措置を講ずるにとどめておく、そういう考えでおります。
  190. 木原実

    ○木原委員 終わりたいと思います。
  191. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田耕作君。
  192. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 去年の七月の中ごろにニクソンの訪中声明が行なわれてから早くも十カ月を経過しているということでございます。私たちも、あの訪中声明を聞いたときには、これは様子が変わってきたなという感じを持つ中に、やはり二、三割は、こういうことはなかなか一ぺんには解決しない、国際状態に新しい平和の風が吹いてくるとはなかなか思えないという心配もあったのですけれども、その後十カ月の経過を顧みてみまして、その直接の影響と思われる、国連では中華人民共和国が中国の正統政府として承認をされる。そのあとで印パ戦争が起こって、これはどうかと思ったけれども、これも大きな新しい流れを変えるようなものではなくて、逆にこれを促進するような結果にもなっている感じもする。そういうような事態が続いてまいって、そうしてニクソンの訪中が実際に実現をされる。予想以上に何かの平和の話し合いがあったのではないかという憶測が行なわれてきた。そうして五月十五日には沖繩が返還をされた。時あたかも、いまのベトナム戦争が予期に反して相当の緊張状態に達しておるけれども、これは一つの極地的な平和への最後の難産のような感じにも受け取れるし、しかし、ことによってはこれはたいへんめんどうな問題になるという感じもするのですけれども、その過程で、裏で戦っているといわれるニクソンさんとソ連とは現在モスクワで平和的な会合をやっておるという十カ月の大きな流れを顧みてみますと、やはりこのニクソン訪中以後、国際状態は新しい局面に入ってきたのだ。つまり、その方向は、いままでの冷戦構造から新しい、何はともあれ、もっと平和な緊張緩和の状況に入っておる、そういうふうな変化は確認していいと思うのですけれども、大臣はその問題について、この十カ月の経過を見て、この流れをどのように判断なさっておるのか、それを最初にお伺いしたい。
  193. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ニクソン訪中発表以後十カ月の間にはいろいろな紆余曲折があります。地域的にはかえって緊張激化というような面もありますが、これは本質的には緊張緩和のムードを大きくかもし出しておる、こういうふうに私は思うのですよ。つまり、これはニクソン訪中とは関係ありませんけれども、ヨーロッパではソビエトと西欧諸国との間に緊張緩和態勢がかなり前進した。それと相呼応いたしまして、アジアにおきましては、対決の姿勢にあった米中が対話の姿勢に転ずる、こういう大きな変化があったわけです。そういう世界的な大きな規模におきまして、この十カ月に緊張緩和という空気が大きく出てきておる、私はこういうふうに思うのです。しかし、だからといって、局地的に、あるいはそれの副作用として反対現象が出てきておる幾つかの問題もあるようでありますが、まあ非常に大きくとらえますと、緊張緩和の方向である、こういう見方です。
  194. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私もその見方には同感なんですけれども、そういう状態のもとで、日本の外交というのは、特にいままで台湾、韓国あるいは南ベトナム等々のアメリカの影響下の国々と密接な関係のあった直接現場の日本なわけですから、外交を推進していく場合に非常に御苦労なさっておることはよくわかるのですけれども、しかし、大きな方向としては、この十カ月に展開された方向に向かって、日本もできる限りこの方向に沿うように前進をしていかなければならないというふうに私は思うわけです。  そこで、昨日、佐藤総理大臣が外務委員会で、中華人民共和国は中国を代表する唯一の正統政府であるというお答えをなさったようです。大臣も同席なさっておられたと思うのですが、これには大臣もむろん異議はございませんね。
  195. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは前と同じことを総理はおっしゃっているのです。つまり前のことばでは、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういうのですが、代表する政府であるということは、中国は一つであると言っている総理でありますから、これは唯一正統だ、こういうのとちっとも違いません。
  196. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その場合に、台湾も中華人民共和国の領土であるということも含めてのことばと理解していいですか。
  197. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それはそうじゃないと思います。領土問題については、統一見解が出ておりますので、あのとおりに御理解願います。
  198. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それはそれとして、中華人民共和国は中国を代表する唯一の正統政府であるということを確認された意味は、台湾の領土問題についての表現のしかたは、いろいろなニュアンスのあるものとして私は受け取るわけですけれども、それはそれでいいとして、外務大臣、六月十四日に韓国でASPACの会合があるわけで、そこに御出席になるという報道もあったのですけれども、御出席になるおつもりでございますか。
  199. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまのところは出席する予定でおります。
  200. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 同じ六月の末に、南ベトナムのサイゴンで東南アジア開発閣僚会議というのが開かれる予定のようですけれども、これに対してはどうなんでしょうか。
  201. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これに対しても出席する予定であります。
  202. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 このような問題と、先ほど申し上げたこの十カ月の流れの変化という問題とを考え合わせてみますと、ASPACの会合でも、アジア太平洋協議会といわれておる会合でも、世間ではこれは反共軍事同盟だとかいろいろなことがいわれておるのですけれども、政府はそういうふうな理解はしていない。そういうふうな政治的な色彩、軍事的な色彩があっても、これは緩和しようと努力しておるのだということだと思うのです。しかし他の諸国は、これはやはり反共の軍事同盟的な外交の組織だというふうに見ておることは否定できない事実でもあるわけです。現にASPACに参加しておる幾つかの有力な国が、アジア地域の中立と言ったら語弊があるでしょうけれども、中立的な動きを始めておるということも事実なわけで、フィリピンとかインドネシアとかマレーシアとか、そういう国々がそういうふうな方向で動き始めておるということも事実のようですけれども、こういう動きのあるときに、しかも中国とアメリカとが新しい共存関係にもう入ったというときに、このような会合に無条件に出ていくということはちょっと問題があると思うのですけれども、そこのあたりの感じ、御出席になるとすればどういう態度で外務大臣はお出になるおつもりか、そのことについて伺いたい。
  203. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ASPACにつきましては、かつて、いまお話しのように、これは反共軍事同盟だというような話のあることがあった時期があるのです。しかし今日はそういう色彩は全然認めません。これは、もっぱらアジアの代表者が集まって、アジアの経済をどうしていくのだ、文化をどうしていくのだ、平和をどうしていくのだ、そういうことを論ずる場になっております。私は、アジア諸国がいろいろな仕組みでそういう場があることは、いいと思うのです。ある一つの国がその解消論を持っております。それは私も承知しておりますけれども、やっぱりそういういろいろな協力の仕組み、場というもののあることが望ましい。やはりアジアでは、わが日本は何といっても四方八方から注目されておる国ですから、わが国がそれに参加しないというようなことになれば、自然その会議は有名無実というような状態になってしまう。わが国はやはりそういうところに出席して、そうしてアジアの平和、アジアの繁栄を取り進めるという役割りを尽くし、同時にみんなもそういうことに協力するように働きかけを行なう、これがいいのじゃないか。そういうたてまえで私はソウルのASPACには出席をする、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  204. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 特にこの会合には、台湾も中心的な一つの勢力として入っておるし、南ベトナムも入っておる、韓国はむろん入っておるという状態の会合ですから、お出になるとしても、日本の外務大臣としてその場で御主張なさるしかたがあると思うのですね。もう近く迫っておる六月十四日ですけれども、その場でどのようないままでとは違った調子で御主張なさるか。つまり、平和を、緊張緩和をもっと高める、あるいは中国の問題について何とか平和的な共存あるいは調整をしていこうじゃないかとか、そういう趣旨の御主張をなさるおつもりがあるかどうかということなんです。
  205. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 どういう基調演説をしますか、まだそこまでは考えてもおりませんが、とにかく私は、アジアにかもし出された緊張緩和ムード、これは非常に大事なものである、これを育てたい、こういうふうに思っておりますから、そういう私の考え方はにじみ出る、あらゆる機会にそういうことになっていくであろう、そういうふうに思います。
  206. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 特に台湾の政府との接触というものが、私どもも非常に興味を持っていると言っては失礼ですが、そういう感じがあるわけですけれども、どういう態度で蒋介石の政府とお接しになるのか。そこのあたり、もしお気持ちがはっきりしておれば、お聞かせ願いたいと思います。
  207. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま国民政府はわが国に大使を派遣しておるのですからね。そういう関係にありますから、それはそういう関係にある国としてのおつき合いはするわけです。まあ、それ以上どういうふうにお答えするのか、ちょっと聞かれてもお答えのしようがありません。その辺でひとつ御了承願います。
  208. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょうの日本経済新聞は、社説でわざわざこの問題を取り上げまして、かなり建設的と思われる提案をしておる。つまり日本の外務大臣として、大きく変化していく状態に対して、重要な会合だからこの会合に対して出席するとすれば——出席自体も問題にしていいと思うのだけれども、出席するとしても、どのような態度で出席するかということをもっと閣僚、政府で話し合ってみたらどうかというような趣旨の論説だと思うのですが、外務大臣、こういう論説に対してどのようにお考えになりますか。
  209. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 閣僚が話し合えというのですか。
  210. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 政府部内で……。
  211. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それはその必要もないことなんです。私の外交方針というものは内閣において是認をされておる外交方針でありまして、あらためて話し合わなければならぬという問題はありません。ただ、たとえばその場で、あるいは二国間の問題で、金銭の問題なんかで問題が起こるというような可能性があれば、その関係大臣、あるいは大蔵大臣だとか通産大臣と相談をしていくという必要があろうと思いますが、私がこのASPACでどうふるまうか、これはもう閣僚全体がつとに承知しているところでありまして、あらためて相談をしなければならぬというほどのことじゃないと思います。
  212. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 多少政府内部にも問題があるというふうにこの社説も書いておるのですけれども、そういう問題は完全に閣僚、政府部内で意思疎通しておる、このように了解してよろしゅうございますか。
  213. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、もう日々ほとんど毎日というくらい外国の使臣と会いまして、重要な話もしておるわけなんですが、一々閣議に相談してするというようなことはいたしません。それの少しまとまったものだ、そういう性質のものでありまして、これを閣議にはかって私の発言を相談しておくということ、そういうことはいままでやったこともありませんし、また、この会議の性質上そういう必要もなかろう、こういうふうに考えております。
  214. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは大臣は、この二つの会議には、緊張を緩和する、新しい中国との関係を体して、逆流するような役割りは絶対に果たす気持ちはないというようなお気持ちで出ると理解してよろしゅうございますか。
  215. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それはそのとおり御理解願ってけっこうです。
  216. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それではもう一つ、それと関連したソ連との問題ですけれども、きょうのお昼のニュースを聞いておりますと、NHKのニュースですが、ソ連で今度、シベリアの天然ガスの開発のために、アメリカから五十億ドルくらいの金を出して、そして二十年間にわたって天然ガスの冷凍したものをアメリカに送って、そうして返していくというような協定が、ニクソン訪ソの声明の中にも入るかもわからないというようなニュースがあったんですけれども、この問題は、一月二十三六日でしたか、グロムイコさんが日本に来たときに、シベリア開発の問題について日本側の協力を要請すると同時に、北方領土を含めて平和条約の話し合いをしたいという申し出があったと思うのです。このシベリア開発の問題について、一月の下旬に大臣がグロムイコに会ったあのときからどのような進展が見られておるのか、ちょっとお伺いしたい。
  217. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 グロムイコ外務大臣から、私どもの国ではシベリアの開発にたいへん熱心に取り組んでおる、それに対してもし御希望があるならば日本の御協力も観迎します、そういうことばだったわけです。その例として、チュメニという、あのウラルの東のほう、オムスク川沿いの地帯の油田の開発の問題、それからヤクーツクの無煙炭の問題、森林資源の開発の問題、そういうような話が具体的にあったわけです。私どもはそれに対して、なお私どもとしてはそういう問題の可能性を調査しましょう、こういうお答えをしたわけです。なお、その際グロムイコ外務大臣は、非常に金のかかる問題であるので、もし日本側が希望するならば第三国の参加も歓迎します、こういうことを言っておる。第三国というのはおそらくアメリカのことじゃないか、こういうふうに思います。そういう状態でグロムイコ外務大臣との会談は終わっておりますが、その後二月になりまして日ソ経済合同委員会というのが開かれまして、そこでかなり具体的にこれらの諸問題の話し合いが行なわれた。しかし結論が出ない。出ないで、なおこれは調査を要するというので、特にチュメニ油田の問題なんですが、近く六月下旬にわがほうからソビエトに専門家が出てまいりまして、そしてそれらの問題を調査する、そしてその上日本側としての結論を出す、こういうことになっております。
  218. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外務大臣としては、この問題に積極的にひとつ取り組んでみようというお考えと理解してよろしゅうございますか。
  219. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 このチュメニの油の問題は、私ども非常に興味のある問題なんです。つまりわが国は、ほとんど全部というくらい石油資源を中近東に仰いでおる。これは非常に不安な状態です。この資源依存の偏在を是正する必要がある。そういう意味から、チュメニ油田の開発というのは、わが国にとってたいへん関心のある問題なんです。そういうようなことでありますが、いずれにしてもこれは、遠いウラルの東、オムスク川のほとりの問題であるというので、ただ図上で見ただけでは、フィージビリティというか、実現の可能性についての判断、これはなかなかむずかしいし、またこれが油田があるにいたしましても、非常に酷寒の場所です。そういう場所でどういう工事を行なうか、それが可能であるかという問題もある。またそれをわが国に供給するということなんですが、それにはパイプを引かなければならぬ。あのシベリアの凍りついた地帯に延々と五千キロぐらいのパイプを敷く、そういう技術を一体どうするかという問題もあるし、またソビエトロシア自体の石油の需給上、わが国が希望する石油が安定的に供給されるかというような問題もあるし、まあ、いろいろの問題を調べなければならぬわけです。調べまして、そしてそれらが大体よかろうということになれば、これは取り組むべき問題である。その際には、ソビエトがサゼスチョンしておりますが、アメリカの参加、これがぜひ好ましいことである、私はこういうふうに考えております。
  220. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ウラルのすぐ近くのところでは、これはとても遠いところなんですけれども、もっと近く、あるいはアメリカとの話し合いのような天然ガスの問題等については、具体的な話はないんですか。
  221. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはサハリンの大陸だなですね。これに天然ガスがあるんじゃないかという話はありまして、これも日ソ間で調査をしておる、こういう状態であります。
  222. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これと関連があると思いますけれども、国後、択捉等の問題については、何かそれらしい向こうからの発言、あるいはニュアンスのお話があったのでしょうか。
  223. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは非常にデリケートな問題なんですが、いままではソビエト側は、この話が出るたびに、この問題は解決済みである、こういうふうに言い張ってきたのです。ところが、今度の私とグロムイコ外相との会談、これでは、とにかくそこまでは言わない。平和条約問題は残されておるわけです。この平和条約ということは何だというと、日ソ間の領土確定という問題なんですね。ところが、その平和条約交渉をことしじゅうにひとつ始めましょう、こういうことに合意する、こういうことになったわけであります。その辺に微妙な変化がある、こういうふうには見ておるのですが、しかし、わがほうは国後、択捉を含めて領土返還を主張しておる。この主張について、にわかにソビエト側がそこまでついてくる、こういうような感じもしませんが、微妙な変化はある。その変化をとらえまして、粘り強くひとつ交渉を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  224. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 日本は、一貫して国後、択捉を含めての北方領土の返還を求めておるということは、先方もよく知っているわけですけれども、これを承知の上で、それを含めるニュアンスを持った話し合いをするということになれば、これは非常にいいことだと思うのですが、そのために、少しは金がかかってもシベリア開発の問題に積極的に乗り出していくということはいいことだと思うのですけれども、これはひとつ積極的に話を進めてはどうかという感じを持つのです。これは大臣の気持ちの中には、中国との問題であまり刺激をしたくないというような感じはありますか。
  225. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いろいろデリケートなお尋ねで答弁がなかなか弱るのですが、チュメニの問題というのは、もし私が先ほど申し上げましたような諸元が調査され、立証されるということになると、私は、日本としてたいへん石油政策上大事な問題と取り組むことになる、こういうふうに考えておるのです。しかし、いまお話がありましたが、北方領土問題との関連、これにつきましては、日本がシベリア開発に取り組むから領土問題が引きかえに解決になるんだというような甘い見方は私はしておらないのです。ただ、こういう問題はあると思う。シベリア開発あたりに日本が協力関係を持つということになると、日ソ友好の関係というものは非常に推進される。推進されますから、その領土問題交渉に対するムードづくり、これにはかなりの影響のある問題である。条件といって取引の材料になるという考え方じゃないのです。しかし、ムードづくりの種としては、私は好材料を提供することになるであろう、こういう見方をしております。
  226. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大体ソ連との外交の問題についての外務大臣の気持ちはわかるような感じがするのですけれども、さてここで沖繩が返ったというとたんにベトナム戦争がたいへんむずかしいことになってきた。沖繩の基地、あるいは日本の幾つかの基地からの軍艦やあるいは飛行機の発進について、事前協議の問題がやかましくなってきておるわけですけれども、事前協議の三つの項目の最後の、戦闘あるいは作戦地域への発進の問題の事前協議というのは、これは非常に協議のしにくい状態が多いと思うのです。作戦、戦闘というのは緊急の事態に入っていくわけですから、あしたからこういう戦闘があるからこの飛行機が飛ぶが、これはどうか、というようなことを日本に相談をするということは、できる場合もありましょうけれども、なかなかできない場合が多いという性質のものだと思うのですね。  そこで、沖繩の基地は事実上直接あるいは間接にベトナム戦争と関連づけられておるということは事実ですね。これは作戦命令を受けておるかいなかは別として、嘉手納あるいはその他日本の基地から直接、間接にベトナムの戦域にアメリカの飛行機あるいは軍艦が出ておるという事実は、これは否定できないですね。そういう状態のもとで事前協議がどうのこうのという議論が繰り返されておるわけですけれども、大臣、こういう問題は、事前協議という一つの事務的なワクだけでこの問題を解決することは非常に私は困難だと思う、のです。したがって、この事前協議の問題については、いろいろ検討すると同時に、明らかに直接、間接にベトナム戦域と関係づけられているわけですから、そういう問題について日本に返ってきたこの機会に、アメリカに対して、ベトナムの戦争にあまり日本の基地を深入りさせてくれるなというような、アメリカの自粛を要望するとか、あるいは明らかに参加しておるものについては遺憾の意を表するとか、そういうような、外務大臣として、沖繩が返った機会に、アメリカに対して自粛要望、あるいは警告、あるいは抗議というような——抗議までまだいかないかもわかりませんが、そういう外交上の一つの手は打っておく必要はあるのじゃないかと私は思うのです。  事前協議が、日本の基地を出るときに作戦命令があったとか、ないとかいう、これはいわば架空の議論みたいな感じもする。国民の多数も、あまりいいかげんなことは言わぬほうがいいじゃないかというような感じもあると思うのですけれども、しかし、大臣が苦労なさって答弁なさっておられるいろいろの答弁のしかた、これは大事だと思いますが、それだけこの問題、日本の基地がベトナム戦争と関係づけられておるという問題に対しての対策には、私は、事前協議の問題だけでこれに対処することは、非常にむずかしいと思う。したがって並行してもっと他の方法が必要だと思う。江崎さんは、あまりひどい状態になれば自粛を要望するということを答えたということを聞いておりますけれども、そういう政治的な日本の立場をアメリカに対して表明する、必要であればアメリカの反省を求める、そういうような政治的な申し出といいますか、そういうふうな形のものがこの問題については必要な感じがするのですけれども、将来にわたってもしアメリカがあまり無視したことをやっておれば、日本としても発言をする根拠にもなるわけなんで、黙って過ごして、ことばの上だけでこの問題を言いのがれをするということになると、大臣、不服かもわかりませんけれども、そういう心がまえだけではこの問題の解決にならないのじゃないか。ちょうど沖繩が返ったいい時期じゃないですか。政府として、日本の領土に沖繩がなったのだから、そういうおつもりで沖繩の基地に対してアメリカも対処してもらいたい、あまり行き過ぎるような、国民が誤解するようなことはしてもらいたくないのだというような趣旨の申し入れを、アメリカにしかるべき方法でやることが私は効果があると思うのですけれども、そういう問題についての大臣の御所見をお伺いしたい。
  227. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話ごもっともなことと思うのです。私は機会あるごとにアメリカに自粛というか、日本側の状況を理解した上の行動をとってもらいたい、こういうことをすでに申し入れておるわけです。アメリカ側もかなり気をつかっておる、こういうふうに私どもは見ておるわけです。  いま和田さんは、直接、間接と、こう言うが、直接という私どもは立場をとらないのです。間接的に補給、補修、そういうことでは関連があります。それからまた、あるいは横須賀港を出港した第七艦隊が、回り回ってではありまするけれども、ベトナム水域に行って戦闘に参加する、そういう意味においてまた関連がある。しかし、国民が、心配するのは、わが国の米軍基地が作戦行動の基地、つまりわが国が戦闘行動そのものの基地として使われるか使われないか、その辺にあるのじゃないか、こういうふうに思うのです。その辺につきましては、政府におきましても十分心しておりまするし、またアメリカにおいても非常に注意をしておる。そういうことをひとつ御承知おき願いたい、かように存じます。
  228. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 随時協議、いろいろな形で大臣はおっしゃっておると思うのですけれども、何かやはり区切りをつける意味で、日本に返ったのだから、沖繩の基地の使用についてはアメリカもそのつもりでおってもらいたいというようなことを、ひとつ区切りとして申し入れをしておくというようなことが、これは直接効果があるかどうか知りませんけれども、そういうことは国民に対しても、日本の領土になったんだ、日本の本土と同じようなつもりでわれわれは運用していくんだということを示すことにもなるし、アメリカにとっても、日本はやはり重要な国なんだからあまり日本を無視したことはできないというような反省にもなるし、そういうふうなことが私はこの事前協議の字句的な解釈よりももっと重要だと思っておるんです。  この問題で私はよく地域で座談会をしているんですけれども、この字句の解釈によってこれに対処していくということは、これは新聞の報道にもありますけれども、そういうふうな大臣がおっしゃろうと思うような気持ちを、ほとんど国民は理解していないのです。事実、これは言いわけをしているというような感じの人が圧倒的に多いと思うのです。これは報道のしかたもあります。ありますけれども、確かにそういうふうに見える。たとえば、日本の基地を発進するときにはベトナムに行くつもりはなかったけれども、途中で作戦命令が変わってベトナムに行ったというような記事が新聞に出る。これはおかしなことだというふうにだれでも感ずるわけなんです。しかし、そういうふうなことは法文があるんですから、法文の解釈としてそういうふうなことを問題にすることも、また私は必要でないとは申しません。それよりももっと大事なことは、日本の政府の意思表示をアメリカに違った方法でしておくということが欠けておりはしないか、こういう感じがするんです。そのことについてひとつ外務大臣の一そうの御努力を要望したい、こういうふうに思うのです。
  229. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはしばしばアメリカ側にも、そういうように注意を喚起しております。おりますが、それにもかかわらず、アメリカが注意に反するような行動がありますれば、またその際あらためてお話のようなことを考えてしかるべきかと、かように存じます。アメリカもかなり気をつかっておるのです。そのことだけは御了承おき願いたいと思います。
  230. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 こういう重要な問題は、特に国会の議論でも形だけの議論にしない。これは野党のほうに問題があると思います。いちゃもんをつけるから政府がごまかす。この前の沖繩交渉の機密文書の問題も同じだと思うのですが、そういうことはできるだけ少なくするようなことをしないと私どももがっかりするわけです。意味のないことを言ったり、あるいはあげ足をとったり、政府がまた答弁ごまかすような気持ちばかりになるというようなことではいけないのであって、やはりアメリカに対して外務大臣がそういう意思表示を何かの形でするということは、私は効果があると思うのです。そういうことをひとつぜひともやってもらいたいと思うのです。そうでないと、政府としてはアメリカとの協力というのを非常に大事に考えておる、それはわからぬことはありません。したがって、アメリカの飛行機がベトナムに行くようだが、絶対行くなということはなかなか言えない立場——また言うことがいいとも思わない。これはアメリカ自身がもっと自粛してもらわなければならぬ問題だと思うのです。あまり日本をなめたようなかっこう、国民がそう思うようなかっこうをさせてはいけない。そういうようなことで、ぜひともひとつ大臣として善処をしてもらいたいと思うのです。重ねて要望いたしたいと思います。
  231. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御見識と思います。ですから、先ほど申し上げましたように、アメリカも自粛をしております。しかし、自粛をしないような事態がありますれば、そういう機会でもとらえましてまた注意を喚起するということもしかるべきかと、かように考えます。
  232. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう問題がございますけれども、最初に申し上げたとおり、やはり極東、アジアの状態は緊張緩和の方向に向いておる。ベトナムでアメリカとソ連あるいは中国は火を吹いた戦争に関係をしておるのに、片方で話し合いをしておる。しかも平和裏にいろいろな成果をあげつつあるということですから、政府のほうも、とにかく中国の問題は解決していかなければならないと思うのです。そうしてそのためには、いろいろとめんどうな問題があると思いますけれども、昨日の総理大臣のように、中国を代表する政府は中華人民共和国政府であるというようなことを含めて、もう台湾の問題は国際的な状態から見れば解決をされなければならない過渡的な一つの状態だ、率直に私そういうふうなものだと思うのです。しかしこれは、千四百万の人たちの意思を無視するわけにはいきません。それはだれが考えてもわかることですから、ひとつ明らかにすべき原則的な立場は明らかにしながら、そして台湾の人たちの気持ちもできる限りこれを守ってあげるというような態度を、もうあけすけに出していくべき時期じゃないかと私は思うのです。そういうふうなものについても、ぜひともひとつお願いを申し上げたいと思います。  また最後に、こういう時期に日本としては、超党派外交ということを私どもは言ってきているんですけれども、現在、日本の多数の人が、ほんとうに平和なしには生きられない日本ですから、平和外交を推進をしていく、国内では福祉国家をつくり上げていくということで、ほんとうに合意を政府自身が取りつけていけば、アメリカでもソ連でも中国でも、この一億の国民の意思を何ともできないと私は思うのです。強力な正しい外交ができると思うのですけれども、そういうところで大臣、少し野党からあげ足をとられるような危険性はあっても、自信を持ってひとつ堂々と平和を求める、平和なしには生きられない日本の外務大臣として所信を出していく、こういうことがつまり国民合意の一つの布石になっていくわけですね。それは、野党がいちゃもんをつけるから自分もうそを言う。うそもだいぶ言うたと思うが、いいかげんなことを言うということは、野党はやはりいちゃもんをつける立場におるんですから、それは承知の上で大臣としては、堂々とうそを言わないで、あるいはいいかげんなことも言わないでやっていく。国民が見ればわかる。野党だってわかる。将来、日本の国を背負う可能性を持っておる大臣ですから、ひとついまからそういうふうな態度を出していってもらいたい。大臣、やはり多少危険をおかさないとだめですよ。多少危険をおかして大胆に出ていかないとだめだと私は思うのですね。ひとつそういうことを含めて御要望しまして、私の質問を終わります。
  233. 伊能繁次郎

    伊能委員長 東中光雄君。
  234. 東中光雄

    ○東中委員 那覇空港のP3等の残留の問題についてお聞きしたいんですが、P3とその他の海軍機が残留することにきまったということでありますが、その期間、残る機数、それからその任務、目的、それを明らかにしていただきたい。
  235. 伊能繁次郎

    伊能委員長 東中君に申し上げますが、防衛庁関係者はすぐ参りますから……。
  236. 吉野文六

    ○吉野政府委員 P3がどのくらい那覇空港に今後残るかという御質問でございますが、御存じのとおり、P3は復帰と同時に那覇空港から去ることになっておった。しかしながら、そのためには必要な施設を嘉手納及び普天間にしなければならぬ、こういうことでございましたが、その工事が御承知のような事情でおくれて結局できなかった。したがって米側としましては、いまP3を那覇空港から撤去させるために新たにわれわれと協議しているわけでございます。で、その一つの内容は、普天間の滑走路をはじめP3を受け入れるための諸施設を整えてほしい。それから嘉手納にトランジェントジェットとかその他の三、四十機の小型の飛行機が那覇空港におるわけですが、これを嘉手納に移すために、嘉手納のエプロンその他の工事をしてほしい。これらの工事が整えば、P3及びその他の飛行機も那覇空港から出ていく、こういうことになっております。  そこで、その工事にどれだけ時間がかかるかと申し上げますと、これは施設庁もなかなか見通しがつきかねておるわけでございますが、実際の工事としてはそんなに長くかかるものではないとわれわれは見ておるわけでございます。ただ、御存じのとおり普天間の飛行場につきましては、すでに宜野湾市当局からP3の移転反対の声もあがっておりますし、周辺の人たちの納得も得なければいかぬ、こういうような問題があるわけでございます。
  237. 東中光雄

    ○東中委員 P3の目的その他については、防衛庁が見えてからお聞きするとして、この五月十四日に合同委員会を持たれて、那覇空港に関する合同委員会の合意書ができておるはずでありますが、その内容をひとつ明らかにしていただきたい。
  238. 吉野文六

    ○吉野政府委員 合同委員会の文書そのものは発表できないことになっておりますが、政府の発表した要約を申し上げますと、ここに書いてございますが、これは少しわかりにくいかと思いますから御説明申し上げます。  まず第一に、今度のP3の暫定的な那覇空港に残るために、那覇海軍航空施設という、特別なこれをカバーするための基地をつくりまして、ここにP3を納める、そういうことになっております。で、この中には、建物は大体二万二千平方メートル、それから土地が八十二万平方メートル、こういうことにしてございます。そのほかに滑走路と誘導路の部分を一時使用を許す。そこで新たに、いま申しました那覇海軍航空施設というものにつきましては、これはP3が移転するまでということで、いわゆる二4(a)で先方に管理をゆだねて提供する。それから滑走路及び誘導路は、これは二4(b)で一時使用を許可する、そういうことになっております。
  239. 東中光雄

    ○東中委員 滑走路、誘導路についてお聞きしたいのですが、これは「一定期間を限って」ということになっておるわけですが、その合意書上は、一定期間どういうふうに限ってあるのか。
  240. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、二4(b)の一定期間を限るということにつきましては、政府の昭和四十六年二月二十七日の統一見解がございます。これには四つの方式がございまして、一つは年間何日以内というように日数を限定して提供する方法。それから二つは、日本側と調整の上そのつど期間を区切る。三番目は、米軍の専用する施設、区域への出入のつど使用を認める。それから四番目は、その他、右に準じて何らかの形で使用期間を限定する。こういう四種類がありますが、那覇海軍航空施設につきましては、一番最後の、右に準じて何らかの形で使用期間を限る、こういう形で提供する、こういうことになっております。
  241. 東中光雄

    ○東中委員 政府の統一見解の内容についてはあとでお聞きしたいと思うのですけれども、いま言われている統一見解の第四項、「右に準じて何らかの形で使用期間が限定されるもの」、これは一つの態様なんです。この那覇空港の場合は、何らかの形でどのように使用期間が限定されておるのか、それをお聞きしているわけです。
  242. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましては、先ほども申し上げましたように、代替施設完了次第P3が撤去されるということでございますから、代替施設完了までということをはっきりとうたっております。
  243. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、二1(a)で貸しておるという部分と全く同じことになりますね。
  244. 吉野文六

    ○吉野政府委員 現実の問題としてはそのとおりでございます。
  245. 東中光雄

    ○東中委員 この滑走路へ誘導路の管理は日本側運輸省がやる。だから日本側の施設、飛行場、滑走路をアメリカ側が一時使用する。その期間が、施設、区域を提供しておるすぐ隣の格納庫その他建物、土地と同じだということであって、しかもそれは「一定の期間を限って」ということになるのだ、これは全く詭弁であると思うのですけれども、何か違うところがあるのですか。「一定の期間を限って」といっているけれども、一つも限っていない、二条一項(a)と全く同じことだということになるわけですが、どういう解釈でそういう適用をされておるのですか。
  246. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点は、先ほども申し上げましたように、代替施設が完了し次第P3は撤去されるわけでございますが、この代替施設の完了ということは、技術的には非常に短時間にでき得るわけです。ただ、政治的にいろいろの問題がありますものですから、いまその調整に手間どっておる。したがって、いまのこの時点におきましてこれを何カ月と限ることはできなかった。しかしながら、いずれにせよ代替施設が完了次第これに移る。したがって、これは政府の統一見解の、何らかの形で使用期間を限定するというものに該当するというのがわれわれの解釈でございます。
  247. 東中光雄

    ○東中委員 地位協定二4(b)は、わざわざ「一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」と、「一定期間を限って」ということがいままで何回も論議をされてきておりますし、年間六カ月をこしてはいけないのだ、それをこすようだったらむしろ日本側に管理が移っておるのではなくて、主が日本ではなくて米軍側のほうになってしまう。それでは「一定期間を限って」ということにはならないのだ。これは先ほど言われた四十六年二月二十七日の統一見解が出されたときの国会答弁でも出ています。ところがそれが何かわからない。二条一項(a)で貸しておるものと同じ期間だということで、どうして「一定の期間を限って」ということになるのか。それじゃ限ったことにならないじゃないかということをお聞きしているわけです。
  248. 吉野文六

    ○吉野政府委員 「一定の期間を限って」という二4(b)の文字の解釈につきましては、先ほど答弁いたしましたとおり、何らかの形で使用期間を限定する。そこで、何らかの形というのは代替施設完了まで、こういうことでございます。なおこの点は、われわれとしてもこの日にちを限定すべく非常に努力したわけでございますが、何ぶんいろいろな政治的な状況がございまして、どうしても日付を明記することが客観的に無理である。したがって、代替施設完了まで、こういう期間にせざるを得なかった。しかしながら、代替施設の完了はそんなに困難なことではない、こういうように思います。
  249. 東中光雄

    ○東中委員 代替施設が完了するまではP3なりその他の飛行機が連日ここを使うということでございますね。
  250. 吉野文六

    ○吉野政府委員 滑走路その他につきましてはそのとおりでございます。ただし、P3以外のトランジェントジェットだとかその他の小さな海軍機につきましては、嘉手納の施設が整い次第そこに移る、こういうことでございます。
  251. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁に来ていただいたので、お聞きしたいのですが、那覇空港に残って滑走路、誘導路を使う飛行機は、P3B、それからUC45、UB26といわれておるのですが、どういう飛行機が何機ぐらい、どういう目的でここを使うのか、その点をひとつ……。
  252. 吉野文六

    ○吉野政府委員 P3以外の飛行機といたしましては、第五艦隊混成スコドロン、すなわちVC5と言っておりますが、これはいろいろの小さな飛行機からなっております。およそ三十機ぐらいいるんじゃないかと見ております。
  253. 東中光雄

    ○東中委員 P3Bは九機いて、第七艦隊隷下で第十七対潜哨戒飛行隊に所属をして、P3はP3でも、AではなくてBのほうですね。これは全天候で、最も対潜哨戒あるいはスパイ機だとまでいわれているぐらいには、日常的に、あの周辺の哨戒、それからソ連艦艇なんかの監視、そういうこともやっておるというふうにいわれておりますが、そうではございませんか。
  254. 吉野文六

    ○吉野政府委員 まだ防衛庁の防衛局長が来ておりませんものですから、確たることは申し上げかねます。
  255. 伊能繁次郎

    伊能委員長 東中君に申し上げますが、防衛局長の出席の要求がなかったものですから、いまのような問題については、ちょっと答弁は困難だと思われますので……。
  256. 東中光雄

    ○東中委員 防衛局長がおいでにならなくとも、外務省は当然知っておらなければ、この二4(b)の協定は結べなかったというふうに考えておるわけであります。そういうものを知らぬままで結ぶということになったら、この統一見解が発表されたときと全く考え方が違っているということを言いたいわけです。  といいますのは、先ほど言われた統一見解では、日本側のものではあるけれども、米軍の使用が認められ、その使用する期間が何らかの形で限定されておるものをいうが、その施設、区域としては次の四つの態様があるということで、第一は、「年間何日以内というように日数を限定して使用を認めるもの」、第二が「日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用を認めるもの」、このいずれでもないことは、これはもうはっきりしているわけです。第三の態様としてここに書かれておるのは、「米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの」、これは日本側といわゆる共同使用になる場合であります。第一、第二の場合は時間的に共同使用にならないのです。時間的に分かれておるのであって同時に、日なり月なりがきまっておって、その間の一定期間米軍が専用する場合です。ところが第三は、同じ日であっても日本が使い米軍が使うという場合なんです。那覇飛行場は、滑走路、誘導路はまさに外形的にはそういう形をとっているわけです。ところが、第三の場合というのは、「米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの」と、きわめて限定しているわけです。目的をはっきり限定しているわけです。だから、この第三の場合の例を現にいまある態様として言っているわけですが、いままであった例というものはどういうものがあったのか。
  257. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは板付の例でございます。
  258. 東中光雄

    ○東中委員 それは専用施設への連絡のための出入り、修理のための出入りではないのですか。
  259. 吉野文六

    ○吉野政府委員 板付の場合はそのとおりでございます。
  260. 東中光雄

    ○東中委員 その連絡、修理のために専用地域へ入っていくその出入りのため以外に、同じ期間内に、日本の飛行機と米軍用機とが、二4(b)ということで入れかわり入っていくという例がいままでありますか。
  261. 吉野文六

    ○吉野政府委員 二4(b)でわがほうに返ってきている施設の、たとえば厚木とか木更津とかそういう基地は、そういうことではないかと思われます。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 それはいずれも現に連絡及び修理ということに限定されていますね。そこで軍事行動をやっておるという例があったら聞かせていただきたい。
  263. 吉野文六

    ○吉野政府委員 那覇空港のP3B、われわれの見解では、軍事行動といいましても、普通の基地にいるアメリカ軍が行なっておるいわゆる軍事行動ということでありまして、戦闘に参加するという意味の行動はやっているわけではない、こういうふうに理解しております。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 直接戦闘行動とは、何もこの場合、事前協議のあの問題になっておるようなことは一つも言っていないのであって、対潜哨戒行動というのは当然の軍事行動であります、単なる補修とか連絡じゃなくて。一定区域を限ってやる対潜哨戒というのは軍事行動であるということは明白なことですから。そういう軍事行動をやっておるというようなものは、日本側で管理をしている基地ないし施設を、米軍が軍事行動に直接参加するために二4(b)で使っておるというような例はいままでないわけですよ。ないから、それをそういうふうにしたいということで、逆共同使用ということで中曽根さんが一昨年出されて、ずいぶん問題になったわけです。そういうことはないということじゃないですか。あったんだったら、具体的にどの基地だと言ってください。——答弁がないところを見るとないのですね。  サイミントン委員会でジョンソン次官がこういう答弁をしておるのは御承知だと思うのです。「ある特定の米軍基地に関し、それを日本側の民間用に転換するが、わが方の再使用権を留保するといった具体的なケースについては討議したことはない。われわれは、日本当局と日本の基地の共同使用の問題、すなわち米国が日本の自衛隊の基地を使用する問題につきしばらくの間討議したことがある」。要するに日本側が管理しているところを自衛隊が使用することについて討議したことがある。「ごく最近、私は十一月に総理が当地を訪問した際にこれを討議した」「日本との間の地位協定には、この種の取極については特に予想せず、また、規定もおかれなかった」、こうはっきり言っています。「わが方の法律専門家は、現行地位協定の枠内で、何等の変更ないし改正なしにそのような取極が可能であると考えている」、しかし、「これまでのところ、日本の法律専門家はこのような結論には到達していない」、「われわれは、日本側に対し、この点に関する原則的な了解に達し、事情が許す限りこの方向に進むことができるよう、種々働きかけている」、こう言っている。これは明らかに、日本側が管理をして、そこを適宜米軍側が使って軍事行動をやるということになれば、日本の基地なり日本の施設なり、日本がその管制、管理をしているわけですから、その軍事行動に積極的に協力をすることになるということで、日本の法律家——法制局、来ていただいたと思うのですが、これは法制局なり条約局だと思うのですけれども——が、それは解釈上ぐあいが悪いと言っているのだ、だからそれを変えるようにできるように働きかけているのだ、こういうふうにサイミントン委員会でジョンソン次官が答弁している。これは外務省が出されたこの訳本の中にはっきり出ている。だから、いままでそういうものはなかったということが、はっきり言えると思うのです。サイミントン委員会でジョンソン次官が言っておったことは、これはかってにうそを言っておったのだということではないと私は思うのですが、いままでの法制局なりあるいは条約局なりの考え方は、どういうふうに解釈されておるか、この点をまず明らかにしていただきたい。
  265. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま先生のお示しのサイミントン委員会報告につきましては、私いま初めて聞きましたので、たいへん不勉強で申しわけございませんけれども、そのような事情があったということは全然承知しておりません。実は私この問題については、つい最近就任したばかりでございまして、二4(b)の問題についてどういう日米間の交渉の経緯があったかということは全然承知しておりません。
  266. 真田秀夫

    ○真田政府委員 法制局でございますが、地位協定の二4(b)でいまおっしゃったようなことができるかできないかというようなことを詰めて、外務省なり防衛庁なり、しかるべきところから具体的に御相談を受けたということは、私の承知している限りではございません。
  267. 東中光雄

    ○東中委員 法制局の当時の第一部長だった山内一夫さんが、昭和三十五年八月二十三日の「時の法令」、一応政府の準機関誌になっておるわけですが、そこで、二4(b)については「「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」とは、たとえば、春秋二回何月何日から何日まで使用とか、毎週日曜日午前八時から午後六時まで使用とかというように、一定の期間を限って提供される施設及び区域をいう」。これは明らかに統一見解でいわれている一と二ですね、地位協定にはそう書いてあるのですから。そういう見解を発表されているわけです。これは個人的見解だと言われるかもしれませんけれども、政府の準機関誌、しかも法制局第一部長という役職をつけて発表されているのですから、明白にそういう解釈をされておるのではないですか。
  268. 真田秀夫

    ○真田政府委員 本日、東中先生から私の前々任者の山内当時の第一部長が「時の法令」にこういうことを書いているじゃないかということを聞くぞという御通告をいただきましたので、私も「時の法令」を引っぱり出して読んでみたわけでございますけれども、山内元第一部長の論説には、冒頭のはしがきの部分に、なるべく政府の見解に従うけれども個人的な意見が入ることもあるぞ、ということは実はお断わりしてございますし、もともとが個人の資格でお書きになったものであると思いますので、特に政府が、あそこに書いてあるようなことを統一見解として公式に発表したというものではないだろうと思います。  それから、その点はさておきまして、いまの問題の個所でございますが、そこのところを読んでみますと、「「一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」とは」こうこうこういうものであるというように例示をしているわけでございまして、そのほかには絶対ないというふうに排他的に説明してあるものではないということは、これは文章上明瞭でございますので、その点から見ましても、政府が統一見解を変えたとかいうようなものではないだろうというふうに思う次第でございます。
  269. 東中光雄

    ○東中委員 「たとえば」と例示してあるのが二つ、そしてまとめてあるのは「一定の期間を限って提供される施設および区域」。いまの場合は一定の期間は限られていない。そして、日本側が管理をしておって、そこへ軍事行動のできるP3その他が適宜に入ってこれる、こういう関係ですから、明らかにこの文脈からいって違います。サイミントン委員会でそういうふうに言っているかいないかは、条約局長、知らぬとおっしゃいましたけれども、ジョンソン次官がそう言っているということは議事録に出ているわけです。しかし、そういう見解を日本側がとっておった、そして問題になっておったのだということは、これはまぎれもない事実なのですね。だって、中曽根防衛庁長官のころに、このことでずいぶん論議がされたわけですから。そしてそれについて、中曽根氏が一昨年の訪米をされたときに、ジョンソン次官に会って、そのことについての問答をしています。これは、一昨年九月十日、十一時から十二時五分まで、牛場駐米大使も同席されておりますし、当時の宍戸防衛局長も同席されております。その席上でジョンソン次官から、「リエントリーと共同使用については日本政府側に法律的困難があるのではないか」ということを述べたのに対して、「外務大臣と話し合い、法の柔軟な解釈によって事実上可能であるということで合意している」。この共同使用については、訪米される前に、この問題が国会でも当委員会でずいぶん議論になったわけです。そして、外務大臣とも話し合って、解釈を広げていってやるのだということをここでわざわざ言っているのですが、この間のアメリカとの交渉について宍戸官房長にひとつ経過をお聞きしたいのです。
  270. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 御指摘のように、私、当時の中曽根長官に随行してまいりまして、長官がジョンソン国務次官にお会いになったということは承知いたしております。ただ、私は一般的な補佐役として随行いたしておりますので、個々の会談の内容について正確に記憶しているわけではございません。御指摘のようなことにつきましては、私の一般的な知識として、中曽根長官が、共同使用の弾力的運用と申しますか、そういうようなことの構想についていろいろこの委員会等でお話しになったということは、私もばく然と承知いたしておりますが、私の直接の所管の問題でもございませんので、そう正確に記憶はいたしておりません。率直なところそういうところでございますが、当時のいろいろな共同使用等の問題におきまして、防衛庁等で論議されましたことにつきましては、担当の正参事官が来ておりますので、鶴崎参事官のほうから御説明申し上げたいと思います。
  271. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 中曽根長官の時代に、基地の関係で一番重要なテーマとして主張されたのが、米軍基地の自衛隊管理ということでございまして、米軍基地といえども日本の国内にある限りは、それを自衛隊が管理するというような主張をされたわけです。そこで、具体的にどういうふうにするかというようなことについていろいろと詰めがなされたわけですが、一つの形としては、二4(a)という形で事実上自衛隊が米軍の基地を使っていくような形。それから今度は、使うだけでなくて管理権を日本側が持つ、米側の一時使用を認めるという二4(b)の形。それから完全に米軍から返還をしてもらって自衛隊が管理するという形。それから全く米軍も自衛隊も必要としないというようなものについては、これはもう民間に開放するというようなことをいろいろ検討されたわけです。  そのとき、ただいま宍戸官房長からお話がありました共同使用の弾力的運用ということについていろいろ検討されたわけですが、当時の一つの大きな問題は、有事駐留といいますか、米軍が常時日本にいなくても、いざ必要というときに来られるような体制をつくっておけばいいのじゃないかというような議論がありまして、いわゆるこのリエントリーの問題をどういう形でやっていけるかということを研究をされたわけです。  ところが、この問題は、いろいろ研究をして何とか弾力的な運用でいけないかということもあったのですけれども、最終的には、どうも現行の地位協定のワク内でそれを読んでいくということは非常にむずかしい。したがって、このリエントリーをやるということになれば、どうしても地位協定の改定ということにつながってくるわけですが、この地位協定の改定は、やはり当時非常に問題になっておりました沖繩返還問題が片づくまではできないようなことから、改定問題は一応沖繩復帰後検討するというような話にはなっておったわけです。したがって、現行地位協定でこのリエントリー問題を読むということはできないというような結論になっておるわけでございます。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 リエントリー問題ではなくて、日本側でアメリカの常時軍事用に使っておる基地の管理をやるというのは、これは従来の地位協定の二4(b)の考え方からいってもワクを越す、だからこそこれは法律的に難点があってできないんだ、日本側はそういう主張をしてきた、そういう経過ではないんですか。
  273. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 いまの米軍基地の自衛隊管理に関連しまして、ただいま先生のおっしゃったように、常時継続的に専用的に米軍が使っている基地を日本側が管理するということは、これはできないということでございます。しかしながら、考え方によると思いますけれども、那覇空港の滑走路、これは常時米軍が専用的に使っているわけじゃない、日米が交互に使っておるというようなことで、このP3の駐機場とか、あるいは修理施設のあるところは、これは常時専用ですから二1(a)。しかしながら、滑走路については日米相互で使っているから、その管理権が日本側に来た限りにおいては、これは二4(b)の形で提供することも可能である、こういうことではないかと思うのです。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 そういう解釈をするということが、中曽根さんのいう弾力的解釈をやって、いままでの二4(b)とは違った、日本側の管理によってやっていく管理によっても米軍が使えるようにする。そういう弾力的な解釈によって——弾力的じゃないですね。「柔軟な解釈によって」と、こう言っていますね。明らかにこれは従来の解釈を広げていくということで、愛知外務大臣と話し合って合意ができた。  外務大臣、これは防衛庁長官がアメリカでジョンソン次官にそう言っているわけですから、日本の外務大臣がそこで柔軟な解釈をして、広げるんだということに合意に達したんだということをわざわざ言っているわけですから、これを外務大臣御存じないとは言えないと思うのですが、そういう、解釈を広げる、沖繩協定に関連をして広げていく、柔軟な解釈をやるということでの外務省の態度変更というのは、この時点であったんではないでしょうか。いかがですか。
  275. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この二4(b)でいままで、日本側が管理権を持ちながら米側に先生のおっしゃるいわゆる軍事行動を許して、そのつどないしは期間を区切って使わせたというような例は、必ずしもP3だけではなくて、たとえば、長坂の小銃の射撃場だとか、富士の演習場だとか、こういうのはやはりわれわれとしては軍事行動だと見ておるわけです。P3が那覇空港から出発していかなる行動をするかということにつきましては、先ほど先生のおっしゃいましたように、哨戒して第三国の潜水艦なり艦隊のありかを探るということもあるだろうと思いますが、いずれにせよ飛行場の滑走路は、これはそのつど使うわけでございますし、管理権も管制権も日本側が持っておるわけでございます。そうかといって、これは米側の軍事行動まで管理しておる、こういうことにはならずに、飛行場の着陸に至る前の短い期間を管制する。これは滑走路である以上当然のことであると思います。  そして那覇海軍施設につきましては、先ほど申しましたように、二4(a)で先方に管理権を渡して使わしておる。したがって、この点に関しまして、従来と異なっておる点があるとすれば、第四のカテゴリーで代替施設の建設が完了するまでともかく使わせる、これだけが従来なかった例でありますが、これについてはすでに政府の統一見解が当時からもあった、こういうことでございます。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 政府の統一見解でいわれている、年間何日以内というように日数を限定して先方に提供する第一の方法、これがあなたがいま言われている長坂の小銃射撃場だ、こういうふうにはっきり言っているじゃないですか。年間何日以内と限ってやっているんじゃないですか、長坂は。そうじゃありませんか。
  277. 吉野文六

    ○吉野政府委員 長坂の場合は、年間百六十日以内、こういうことでやっております。そこで、おそらく滑走路について先生は問題にしておるのだろうと思います。それにつきましては、代替施設の建設まで、こういうことになっておるわけでございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 長坂の小銃射撃場の場合は、百六十日以内、その何日間は専用するわけでしょう。その期間は米軍が使っておるんであって、日本が使っておるんじゃないわけです。一定期間を限って使っておるんですから。それから第二の「日本側と調整の上そのつど期間を区切って認めるもの」、それは東富士演習場のやり方だ。これは自衛隊の演習計画と沖繩の米海兵隊の演習についての調整をやって使う。これは入れかわって使うわけです。これも明らかに、いまの滑走路、誘導路の那覇空港の場合とは全く違うわけです。あなたがいまあげられた例というのは、一、二の例をあげておられるわけで、三の例というのは、「米側の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの」というのは、これはどんな例があるのですか。
  279. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいま先生のおっしゃいました、実際の使用に際して日本側との事前調整を通じて使うことを特定するもの、これは東富士演習場などがその例でございますが、これは、必ずしも使用日が異なるということではなくて、同じ日に東富士演習場の地域を分けて、この部分は自衛隊、この部分は米側というふうに使うのがむしろ多い状態でございます。  それから第三番目の他の「施設・区域への出入のつど使用を認めるもの」、これはたとえば硫黄島に米軍の通信施設がございますが、そこに補給、連絡その他で必要がある場合には、その硫黄島の飛行場あるいは港を米軍がその出入のつど使用できる。あるいは南鳥島の通信施設についても同様でございます。それから板付の場合におきましても、米軍の専用の区域に出入する場合に、そのつど滑走路、誘導路等を使用できる、こういうことに相なっておるわけでございます。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 硫黄島にしても、板付にしても、厚木にしましても、連絡、補給等必要のたびにやってきて、自衛隊が管理しているところへ入ってくる、あるいは通信施設に出入りするたびに入ってくる、そういうことなのであって、那覇の場合は、ここにP3がおって、そして適宜に出ていって帰ってきている。連絡とか補給とかいうものじゃなくて、まさにここを拠点にして活動をやる。しかも普天間に行ったらまさにそうやるわけでしょう。普天間に移るまでの間、ここでそういうふうに使っているわけですから、全然連絡とか補給とかいうものじゃなくて、ここを拠点にして、しかもこの基地を使う。しかもその期間はといったら、不確定期間になってしまっている。一定の期間を限ったんじゃないんです。使わなくなったら返すというのは、これは地位協定の原則じゃないですか。使わなくなったら返すということになっているんですから、それはあたりまえのことであって、これこそまさにこの那覇で初めてやられた。日本の管理によって日本が責任を持たなければいけない。単に滑走路なり誘導路が日本の土地であり施設であるというだけじゃなくて、それを日本が管理をしておって、そこを今度は拠点にして使っていく、こういう二4(b)の協定というのは今度が初めてであります。そのことについては、中曽根さんが行き、あるいはその前に佐藤総理が日米共同声明を出すときにも、この問題について話し合ったとジョンソンは言っているわけです。大きな転換を沖繩協定を契機にしてここで初めてつくられたことになる。もしこれが、自衛隊の管理による自衛隊との共同使用ということに今度なっていったとすれば、これは日米共同作戦の体制が基地使用ということで一そう強まっていくということになっていくわけであります。これは、地位協定の内容の柔軟な解釈という、中曽根さんが言っているこの言い方で現実に非常に質的に変えていくというふうな方法になっている。サイミントン委員会の論議の中でも、ポール議員が改定したらどうかということを言っています。ジョンソン次官は、あれは改定すると全部を変えなければいけなくなって非常にまずいんだ、だから何とか解釈を変えるようにしたいんだ、そのために働きかけているんだ。質問の前後、答えの順序は逆になっておりますけれども、全体としてはそういう趣旨になっている。そういう中で、今度の那覇空港の使用というものは、共同使用、逆共同使用という形でいままで一つの概念をつくられてきた。それはできないんだということになっておった。二4(a)なら共同使用、(b)は一時使用だ、それとは別の概念として逆共同使用といわれておったものが、いま那覇のこの問題で新たに初めてつくられた。こうして地位協定が実質上変えられたというふうに私は解釈せざるを得ないわけですが、大臣、その点どうでございましょう。経過から言いますと、突然事務当局側から出てきた問題じゃないんです。総理が行かれたときもその話が出たと言っておりますし、中曽根さんが行ったときにもそういう話をしてきているわけですから、これは私は非常に重要な問題だと思うのですが、いかがでございましょう。
  281. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この問題は、東中さんのお話を聞いておりまして、どうせいというのか、私にはよく理解が届かない。米軍のために基地を残しておって、そうして日本側がそれを借りるような形にせい、こういう御主張を込めての御意見なのかというふうな受け取り方もしてみたのですが、そうすると、かえってぐあいが悪いのじゃないかというような感じもいたしました。  いずれにしてもこの問題は、そう前から計画的にやった問題じゃないのです。私はこの国会でも前半では、P3は五月十五日にはいなくなります、こういうふうに言い続けてきたのです。それが御承知のような諸般の事情でできなくなった、そういうための措置なんです。しかし、事務当局は自信を持って、これは法的に正しいことをやっておる、こういうふうに申しておりますので、別に私は悪いことをしておる、そういうふうな感じはいささかも持っておりません。これははっきり申し上げます。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 あの基地に関する限り、了解覚書からいっても、P3その他が当然撤去されべきだ、私たちそう考えています。それがいろいろもう何回も言われておりますから繰り返しませんけれども、とにかく残ることになった。私は、これは残ることはけしからぬ、こう思っているわけです。しかしその機会に、地位協定の解釈とか、いままでできないと言ってきたことをやってしまった。これで今度道を広げていくことになるわけです。だって、まさにこの前例でいけば、自衛隊の管理のところに米軍が適宜にいつでも入ってこられる。入ってこられるというか、そういう意味での二4(b)のあれができるようになっている。日本の管制下において米軍が軍事行動を反復継続してやっていくというふうなことになると、これは米軍の軍事行動に対する日本の加担行為になるわけですね。単なる基地提供じゃなくて、管理をするわけです。だから管理をして、出ていってよろしいということを言って、それで出ていく、こういう形になるわけですから、質的に変わったものになるわけです。地位協定の解釈が柔軟な解釈といわれている。そのことばで、実質的に地位協定の内容が変質されていくという事態なんです。  これは外務大臣、よくわからぬとおっしゃるけれども、わかってもらわないと困るのです、現にそういうふうになっているのですから。自衛隊が管理しているところから米軍が軍事行動にどんどん出ていく。これは単なる基地の提供じゃなくて、積極的に共同の作戦行動に加わっていくことになる。これは前にそういうことで議論になったのです。そういうことで、非常にぐあいが悪いということだったわけであります。
  283. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点は、先ほども御説明したとおり、滑走路につきまして二4(b)を引いておる。滑走路は運輸省の管轄である。大部分は民間航空が使っておる。ただ、給油機のうちの幾機かが、P3Bの目的のために、飛び立つとき、あるいは着陸するときにこれに使用を許す。しかも、これは代替施設が完成するまでの間、すなわち那覇空港にとどまっている間だけ許す、こういうことでございます。  それから、P3Bが常時いるところは、那覇海軍航空施設といいまして、これはまさにれっきとした基地としてわれわれは提供しておる。しかも、これも代替施設が完成するまでの間だけに限られておる、こういうことでございますから、自衛隊の管理しているところにアメリカ軍が入ってくる、こういうことにはならないと思います。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 格納庫があって、そこにP3がおるわけでしょう。そのほかの海軍機もいるわけでしょう。それは、ここでしまっておくのじゃなくて、行動を起こすためにいるわけです。その行動を起こすについて、日本の国家機関が管制しておる、そういう日本の国家機関の管制行為にいわばささえられて、作戦行動、軍事行動、直接戦闘作戦行動ではないけれども、そういう行動を起こしておる。そうすると、飛行場の滑走路及び誘導路の利用というのは、格納庫は専用するのはあたりまえなんで、P3がおらぬ間に日本の飛行機を入れる、そんなばかなことはないわけですから。しかし、滑走路、誘導路の利用は、その利用を日本の責任で管理しておって、そして米軍がその中で行動を起こすということになれば、その範囲では共同の行動ということになるわけです。そういうことはいままでやっていない。ただ、連絡とか、補給のために寄るとか、たとえば厚木のように補修のために寄るとかというのじゃなくて、P3自体が任務を持っておって、その任務を遂行するためにその飛行場を使うわけです。その飛行場を、この場合は運輸省になっておりますけれども、認められれば自衛隊もそういうことになるわけですが、自衛隊が管理するということになっていくと、これは明らかに地位協定の拡大ですよ。いままでそんな例はないのです。いままでそういう例があったらおっしゃっていただきたい。厚木の例とか硫黄島の例とか板付の例とか、これはまさに統一見解三の例ですよ。
  285. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  P3が那覇の専用地域に駐機し、格納され、それが滑走路を使用して飛ぶ、この実態が、過去、本土において全く同じような形での先例を持っていないことは、先生御指摘のとおりでございます。しかしながら、厚木の場合、ただいま御引用がございましたけれども、この場合といえども、厚木以外におります米軍のもろもろの飛行機が、厚木の専用飛行場に用があって出入してまいるときには、海上自衛隊の管理いたします滑走路等を使用して入ってまいります。その入ってくる飛行機の運航はもちろん戦闘作戦行動ではございませんし、その意味においては、P3と沖繩の場合と何ら変わらないわけであります。また、運輸省の管理する飛行場につきましては、これまた御指摘の板付の場合は、板付の飛行場の敷地内にあります専用施設への出入ということで入ってまいりますが、これまた広い意味での米軍機の運航上の一端として入ってまいります。かかる意味での運航上の必要を満たすために、二4(b)によって一定の行動を許容しておるという範囲においては、P3の場合と本質は変わらないものと私どもは考えております。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 押し問答になりますからやめますけれども、それは明らかに違うのです。板付とか厚木の場合に、その専用する施設、区域への出入のつど使用を認めるもの、その主眼はまさに専用施設を使用のためなんです。ところが那覇の場合は、その専用施設が置いてあるのは格納庫なんだから、その滑走路を使って出ていって、軍事行動をやるために滑走路が置いてあるだけなんですよ。逆なんですよ。だから質的に変わってきている。非常に拡大されてきている。中曽根さんが、柔軟な解釈で拡大していくんだ。ポールは変えたらどうかと言っても、ジョンソンが、いま変えたらぐあいが悪いのだ、こう言っている中で、まさに拡大した柔軟な解釈で、これは新たにやられた地位協定の実質的な改悪というか、拡大です。沖繩協定によって、いまこういう形で拡大され、そして地位協定がこれがまた先例になってやっていく、そういう必然性を持っています。そういう点でこれは非常に許されない事態が起こっているんじゃないか。合意書の内容を明らかにされないというのも、これもアメリカとの関係でということでありますけれども、当然明らかにすべき性質のものです。それを明らかにしないで、そういうふうに質的に変わってくるということは、はなはだ遺憾な事態だ、こう思うわけであります。  外務大臣に最後に、こういう事実上のなしくずし、変質というものについていま安保課長の言われたことは、いまの那覇の場合とは違うわけですから、その点、どうお考えになるか。
  287. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま安保課長が、きわめて明快に本土における例を説明したと思います。それと態様は違うけれども、本質は少しも変わりはない、私はこういう感じで受けとめておったわけであります。いずれにいたしましても、ああいう緊急事態において、もし東中さんの御主張のような話であれば、これは米軍基地としてあの那覇飛行場を残す、そしてわが国の飛行機をそこでとめるということになるのだろう、こういうふうに思いますが、そうじゃないのです。わが国に返ってくる、それをアメリカに貸してやるのだ、たいへんけっこうじゃないか。しかもそれは、いま全部御説明申し上げたように、法的にも正しいことである、こういうのですから、何もそう御議論になられる必要はないんじゃないか。東中さんのお話を伺っていますと、少し邪推と言うと悪いが、何か計画的に地位協定の拡大を考えて、これを前例として、そしてまたさらに何かたくらんでおるというような御認識の御発言のように思うのですが、そういう意図は全然ございませんから、御安心願いたいと思います。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、私が邪推をしているとかいう性質のものじゃなくて、この問題については、サイミントン委員会でも論議をし、佐藤総理が来たときにもその問題について話し合ったんだと言っているわけです。この委員会でも論議になったことなんです。そして中曽根長官が行って、ジョンソン次官がわざわざこのことについて向こうから質問があり、答えていることなんです。そして、柔軟な解釈でやるのだと言った、そのとおりのことがいま起こってきているのですから、これはたまたま起こったというような問題では決してないと私は思う。私の邪推じゃなくて、現に経過がそうなっているわけですから、これは、そういうふうにむしろ言いくるめておられるように思って、私ははなはだ遺憾に思うわけです。  質問を終わります。
  289. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、明二十六日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会