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1972-03-30 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月三十日(木曜日)     午後零時四十三分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君       阿部 文男君    笠岡  喬君       篠田 弘作君    辻  寛一君       中山 利生君    葉梨 信行君       湊  徹郎君    上原 康助君       木原  実君    鬼木 勝利君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         総理府総務副長         官       砂田 重民君         皇室経済主管  並木 四郎君  委員外出席者         宮内庁長官   宇佐美 毅君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     松本 善明君 同月二十七日  辞任         補欠選任   上原 康助君     安宅 常彦君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     上原 康助君 同月二十八日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     安宅 常彦君   大久保直彦君     矢野 絢也君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     横路 孝弘君 同月三十日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     鈴切 康雄君   東中 光雄君     松本 善明君     ――――――――――――― 三月二十九日  同和対策事業の推進に関する陳情書  (第一四四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六号)      ――――◇―――――
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題といたします。      —————————————
  3. 伊能繁次郎

  4. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。  改正の第一点は、皇室国会の議決を経ないで賜与及び譲り受けをすることができる財産の限度価額を改定することであります。皇室経済法施行法第二条により、現在、天皇及び内廷皇族については、これらの方々を通じて賜与の価額は六百五十万円、譲り受けの価額は二百二十万円、その他の皇族については、成年に達した皇族にあっては賜与及び譲り受けの価額はそれぞれ六十万円、未成年皇族にあってはそれぞれ十五万円となっております。これらは昭和三十九年に現行の価額に定められたもので、その後改定されることなく現在に至っております。しかしながら、前回の改定以後、社会情勢及び経済情勢には相当大きな変動がありますので、今回その価額を改定いたしたいと存じます。すなわち、その間の物価指数等を考慮して、天皇及び内廷皇族については、これらの方々を通じて賜与の価額を九百九十万円、譲り受けの価額を三百三十万円とし、その他の皇族については、成年に達した皇族にあっては賜与及び譲り受けの価額をそれぞれ九十万円、未成年皇族にあってはそれぞれ二十万円に改定することにいたしたいと存じます。  改正の第二点は、内廷費及び皇族費定額を改定することであります。皇室経済法施行法第七条及び第八条の規定により、現在、内廷費定額は九千五百万円、皇族費定額は八百三十万円となっておりまして、これらは昭和四十五年四月に改定されたものであります。その後の経済情勢、なかんずく物価の上昇及び二回にわたる国家公務員給与引き上げ等情勢にかんがみ、内廷費及び皇族費について、物件費及び人件費の増加を考慮し、内廷費定額を一億千二百万円、皇族費算出の基礎となる定額を千万円にいたしたいと存じます。  以上が、この法律案のおもな内容及びこれを提案いたしました理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをお願いいたします。
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鬼木勝利君。
  7. 鬼木勝利

    鬼木委員 ただいま趣旨説明がありました今回の皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内容は、私もよく拝見させていただいたのでありますが、その本論に入る前に、宮内庁長官に二、三お尋ねをしたいと思っております。  四十七年度予算の中に、四十六年度に引き続き、皇族殿邸と申しますか、お屋敷の施設費が三億六千二十八万、こう計上されておりますが、高松宮殿下秩父宮さまの殿邸に対する経費、その四十六年度並びに四十七年の予算内容についてお尋ねしたいということと、また完成はいつになっておりますか、その時期について。なお、現在の進行状況などにつきまして、長官がおわかりでなければ係の方でけっこうでございますが、その点をひとつ。
  8. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいまお尋ねのございました秩父宮さまと高松宮さまの殿邸の建設につきましては、秩父宮さまは本年度から明年度にわたりまして大体竣工することになっておりまして、高松宮さまのほうは、明年度から明後年にわたりまして予算をいただいて竣工する予定でございます。ただ、高松宮さまの場合には光輪閣措置ということがありまして、本年度において措置をいたしまして、すでに取り払いを完了しております。したがって来年度予算から工事が始まるわけでございます。金額については皇室経済主管から申し上げさせていただきます。
  9. 並木四郎

    並木政府委員 数字のことを申し上げます。  来年度昭和四十七年度予算に計上いたしました皇族殿舎施設費は三億六千二十八万円でございまして、そのうち秩父宮邸が一億五千九百三十三万二千円、付属します官舎の予算が七百七十一万四千円。高松宮邸でございますが、それは一億九千三百二十三万四千円でございます。  それから、先ほど質問のありました四十六年度と四十七年度の振り分けの金額でございますが、秩父宮邸につきましては、家具調度一切含めまして、四十六年度が六千五百三十九万一千円、四十七年度が一億六千七百六十一万八千円、両年度合計いたしまして、二億三千三百万九千円ということになっております。これは工事費以外に、設計の依嘱謝金工事付帯事務費家具試作費家具調度費一切含めてでございます。  それから高松宮さんでございますが、四十六年度は、光輪閣をこわしたり電気水道の小さな工事がございまして、総額が五千六百七十三万一千円。来年度の四十七年度が、工事付帯事務費その他いろいろなものを合計いたしまして一億九千五百七十五万九千円ということになっております。もちろん四十八年度に及びますので、四十八年度計画もございますが、一応現在の予定では、四十八年度は九千五百三十一万三千円という計画でおりますが、この中には家具調度がまだ積算ができておりませんので、入っておりません。  以上申し上げます。
  10. 鬼木勝利

    鬼木委員 高松宮殿下殿邸は四十四年度と四十五年度で完成しているようでございますが、一億七千万程度であった。概算そのようでございますが、相当経済ベースも上昇しておりますし、単価も上がっておりますが、これで高松宮邸秩父宮邸が四十六年度、四十七年度に十分に完成できる予算が計上してあるのでございますか。
  11. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 御質問でございますが、秩父宮邸は、今年度のうちにすでに土台が建ち上がっておりまして、この十月くらいまでには完成する予定でございまして、現在の予算で、来年度もいただけますれば、不足ということはございません。  高松宮邸は、ただいま御質問に申し上げましたように、ことしは光輪閣措置というようなことが中心でございまして、来年度から工事にかかるわけでございます。大体、今後の物価騰貴等も一応考えながら設計を進めていきたいと思いますので、ただいまの予定のとおりであれば、特別なことがなければ順調に進み得ると考えております。
  12. 鬼木勝利

    鬼木委員 私がなぜそういうことを申し上げるかと申しますと、私、懸念があるのです。これは昭和四十五年度決算ですが、例の火災で焼失しました葉山御用邸改修予算不足を生じたと、ここにはっきり書いてあります。そこで庁費から四百万円流用したとこの決算書に載っておりますが、いやしくも皇族殿邸を改築したりあるいは修繕するのに予算が足らない、そこで宮内庁庁費を流用するというような、そういうずさんなことがいろいろあるんじゃないか。その点、懸念しましたのでちょっとお尋ねしたのですが、いま長官の御説明では、単価も上げておるからそういうことはないというようなお話ですが、こういう不手ぎわを、そして陛下の心を悩ますようなことはいけない。それは、先憂後楽だ、こういうことをおっしゃいますけれども、先憂後楽ということは陛下がおっしゃることであって、国民が先でいいぞ、おれはあとでいいぞというありがたい陛下のおぼしめしから先憂後楽というのであって、われわれが先憂後楽なんというようなことを口にすべきじゃないと思う。私はそう思うのですよ。われわれは、われわれ国民の象徴である陛下の御宸襟をいささかも悩ましてはならないという気持ちであって、先憂後楽ということばをそういうところに使うべきじゃない。長官お使いになったわけじゃないけれども陛下がおっしゃることであって、いやしくもわれわれは、そういう予算の面において陛下に御心配をかけるようなことはやってはいけないんじゃないか、私はそう愚考をするのです。これは決算書にはっきり載っておりますから、そういうことのないように万全を期していただきたいと思うのです。
  13. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま仰せになりました決算書内容につきまして、ちょっと思い当たることがないのでございますが、ただ焼ける前のできごとじゃないかと思います。何か修理することがあってやったのではないかと想像いたしますが、よく調べましてから申し上げますけれども、ただ、お話しになりましたように、われわれとしましては、陛下に御不自由をかけるようなことはないように、そういうことがありますれば率直に国会の御審議をわずらわすようにいたしたいと思うのであります。やはり計画を立てるときには、そういうおぼしめしをわれわれとしては無視するわけにいかない点がございます。かつてもお住まいを直すという問題が起こりまして、案を立てまして、三つの案を持って陛下に申し上げましたら、どうしても一番安い案をとられると仰せになったことがあるくらいでありまして、そこら辺は、われわれとしましては、そういうとうといおぼしめしも伺いながら、しかもわれわれとしては両陛下に御不自由をかけないという考え方で進めておるわけでございまして、ただいまの御質問のその数字はちょっといますぐお答えいたしかねますので、また調べましてお答え申し上げます。
  14. 鬼木勝利

    鬼木委員 これは、焼失した後であろうが、焼ける前であろうが、はっきり四十五年度決算書に載っております。「葉山御用邸附属邸改修に伴い各所修繕不足を生じたため庁費から四百万円流用」、こういうふうに載っておりますので、私ちょっと、皇室のことに対して予算不足をするような、そういうずさんな予算の組み方をするということは、これはまことに申し上げかねるけれども皆さまがうかつじゃないか。たいへん御無礼なことを申し上げて恐縮でございますけれども、そういうふうに私、考えましたので、その点、高松宮殿下並びに秩父宮殿下殿邸を御新築なさるに対して、金の足らぬようなことをしてもらっては困る、こういうことを申し上げたわけでございます。  次にお尋ねしたいのは、去年の秋に、九月十何日でしたか、それから十月にかけて、天皇皇后陛下イギリスを御訪問なさった。その答礼として将来エリザベス女王日本を公式訪問されるという、そういう報道があったわけであります。国会におきましても、予算委員会の第二分科会でございましたか、当時の愛知外相がそのようなことを発言されておりますが、その後これは立ち消えになったのか、なおそういうことが考えられておるのか。当時の新聞にも出ております。「愛知外相は二十三日午前の衆院予算委第二分科会で、この秋の天皇皇后陛下英国訪問答礼として近い将来エリザベス英女王が初めて日本を公式訪問される可能性が強まっていることを示唆した」と、こういうことがございます。また、「英国王室皇室とのつながりは古く、明治二年、練習艦隊の一員として王族が来日されたときにさかのぼる。練習艦隊日本寄港をきっかけに、明治天皇英国王室とのご交歓を大切にされ、明治三十九年には当時のコンノート殿下がお出でになって陛下英国では最高のガーター勲章を贈られた」と、こういうように、大正からずっと今日まで英国とは親近の度が非常に深いものがあるというようなことが当時の新聞にも出ておるわけなんですが、国際親善の上からどのように皆さん方はお考えになっておるか。なおまた、これが実現については皆さんはどういう行動をとられたか。そういう点について何かございましたら、これは外務大臣にでも聞くべきですけれども、一応は宮内庁皆さん方にも私は当然お伺いすべき問題だと思うので、お伺いするわけです。
  15. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 昨年、天皇皇后陛下のヨーロッパ御訪問に際しまして、御訪問国についていろいろ検討がなされておったわけでございますが、当時、ベルギー国王皇后陛下、それからドイツの大統領が日本を正式訪問されておりまして、まだ御答礼が済んでおりませんので、まずそれを正式に御訪問、礼を返されるということの際に、イギリス女王日本訪問なさりたいような空気も見えまして、こちらもイギリス側といろいろお話をいたしまして、相互に御訪問になるというお約束ができた次第でございます。それを踏まえて両陛下イギリスを御訪問になりたわけでございます。したがって、私どもといたしましては、いずれイギリス女王陛下日本を正式に御訪問になるものと確信をいたしております。ただ、それがいつになるかということは、イギリス慣習も、すぐ半年とか一年というようなことでなさそうでございまして、いずれあちらから御訪問の時期について打ち合わせがあるだろうと思いますが、いつごろになりますか、ちょっと見当がつきません。いずれそういうお話が出ましたときに御相談をすることになろうかと存じます。  そういうわけで、いまお尋ねの点は、確かにあのときからそういうお約束のもとに両陛下おいでになりました。あちらさまもおいでになるはずだと考えております。
  16. 鬼木勝利

    鬼木委員 そういう当時の国際間の情勢が今日までそのまま続いておる、立ち消えではないというように私、理解いたしましたが、さようなことになりますると、これはやはり国際親善の上からも、なるべくそれが早期に実現ができるように、わが国内においても、それぞれの機関、外務省あたりともよくお打ち合わせなさって御努力していただきたいということを私、要望いたしておきますが、ただ熟すのを待っておる、待っておるのではなくして、鳴くまで待とうじゃなくて鳴かしてみせようという、そういう意欲を持って国際親善のために御努力願いたい、その点、ひとつ長官御所感を承りたいと思います。
  17. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 イギリスでは、その当時われわれが耳にいたしましたことは、ちょっと先ほども申し上げましたが、大体一国からの御訪問がありまして、御答礼というのは二年ぐらい間を置くという慣習があるそうでございまして、そのときからそういうようなことを漏れ承っておるわけでございます。したがって、そういう情勢をあちらさまで見ながら、あるいは国内情勢とかいろんな情勢から、早くなる場合が若干あるかもしれません。そういうつもりでわれわれは見ておりますが、ただいま御指摘の点はわれわれも心に入れておきたいと存じます。
  18. 鬼木勝利

    鬼木委員 次にお尋ねしたいのは、これも新聞にも報道しておりましたが、昨年の六月に皇居内と東宮御所の二カ所に、光化学スモッグ測定するところのオキシダント連続測定記録計というのですか、むずかしい名前ですが、こういうのをお取りつけになった、あるいは粉じんや亜硫酸ガス測定するところのいわゆる大気汚染自動測定記録装置を設定された、このように新聞に載っております。しかも、昨年、皇居東御苑光化学スモッグが発生して、職員の方が被害を受けられた。これは当時の新聞でございますので、何も私が実地に調べたわけでも何でもございませんが、今日この公害排除ということに対しては、国をあげて非常にみな熱意を示しておるわけでございますが、それは皇居といえども限界はございませんので、こういう大気汚染などがあったということは私も想像できるのですが、それに対していち早く測定器なんかをつけられた。  ところが、皇居内の皆さんに、新聞では十名とか二十名とか被害があったようですが、その被害程度あるいはその後の被害状況とか、あるいはこれに対してどういう手を打たれたのか、ただ測定器をつけられただけでは防除になりませんので、もし万一のことがあれば、これは陛下にも及ぶ、皇族皆さま方にも及ぶということになったら非常にたいへんなことでございますからね。そういう点をどのようにお取り上げになっておるのか。その後どのようになさっておるのか。万全を期していらっしゃるのか。これは決して長官を責めるわけじゃありませんが、その点を承りたいと思います。
  19. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 宮内庁といたしましては、先ごろの皇居造営にあたりましても、将来のこともございますので、いろいろ空気の汚染問題も調べまして、当時としては、あの辺は郊外の石神井辺汚染程度ということで、比較的軽く考えられておったわけでございます。その後の情勢は悪くなる一方でございます。ただ、いつか新聞にもございましたような、少数の人が気持ち悪くなったということは確かにあったようでございますが、きわめて軽微なものでございました。その後、厚生省等、あるいは宮内庁の中におきましても、実情を調査する必要があるのじゃないかということで、調査をしておるわけでございますが、とにかく御承知のとおり、皇居の周辺というのは大通りがたくさんございまして、そこにたくさんの自動車が動いております。赤坂の東宮御所の辺も同様でございまして、そのためにそういった問題はだんだん悪くなるのじゃないか。  もちろん、そういう点もございまして、陛下の日常のお住まいあるいは宮殿の中には、空気浄化装置がございまして、屋内におきましては、われわれとしてもそう御心配申し上げることはないと考えておるわけでございますけれどもただ外お出ましになりますと、これはもう大気の中にあることでございますので、これを防ぐということは都全体の公害対策の進展を待つよりしかたないことであろうと考えております。もちろん測定も相変わらず続けまして、われわれとしても十分注意はいたしますが、いますぐ即効的な対策というものはなかなかむずかしいのじゃないか。できるだけ気を配っておりますが、そういうような状況でございます。
  20. 鬼木勝利

    鬼木委員 長官の御答弁はしかあるべきだと存じます。しかし、調査をなさったとか、あるいは測定をなさった、そしてそれは軽微なものであった、そのように安易なお気持ちで油断をされておることは私はよくないと思う。陛下のお部屋は防除施設をしている、これは当然だと思いますが、しかし陛下とても、やはりお散歩をなさることもありましょうし、外にお出ましになることもあるわけでございますから、いやしくも公害陛下に及ぶということになれば、これは私はたいへんなことだと思う。また、それは人命はとうといのですから、陛下のみならず、一般国民であろうが、公害が及ぶということはむろん私は大問題だと思う。  そこで私は、これはもっと意欲的に積極的によく御調査測定をなさって、しかるべく万全の策をとっていただきたい。これは長官がおできにならなければ、総理府厚生省環境庁もありますので、すべてを動員してでも全きを期していただきたい。私の申し上げることは無理かもしれませんけれども、いやしくも陛下がいらっしゃるところですから、われわれが十分に考えてあげなければならないその立場にあるのだ、かように存じますが、長官いかがお考えになりますか。
  21. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 東京のまん中にお住みあそばします以上は、外の大気にもお触れになるわけであります。それは両陛下はじめ皇族さまだけが被害のないようにするということは、実際にむずかしい問題である、私は率直にそう思います。  それから、もしそういった方々被害があるならば、東京都民の重大問題でありまして、東京都としてもいま力を尽くしているはずでございますから、だんだんよくなるのじゃないかとは思いますが、そういう問題に対する陛下の御健康の一助にも、ときに、那須とか葉山とか、あるいは下田のほうに行っていい空気を吸っていただくというようなことも、われわれとしては加えて考えておるわけでございます。御指摘の点は、われわれとしても重大な責任があることでございますので、できるだけのことは今後とも考えてまいりたいと存じます。
  22. 鬼木勝利

    鬼木委員 私は先ほども申し上げたのですが、それは誤解のないようにしていただかなければ困るのですね。一億国民は全部公害を受けても陛下だけお守りする、そんなことを私は申し上げておるのではない。一億国民の生命を守らなければならぬというので、今日公害問題が非常に大きく取り上げられて、その点にあらゆる観点から対策を講じておるわけで、国もそのために環境庁までつくったわけでございますから、そういうことを私は申し上げておるのではありませんが、陛下とても人間であらせられる以上、外に出られて、大気汚染陛下だけをよけて通る、そんなことはありません。それはあなたのおっしゃるとおり。しかしながら、いやしくも陛下をお守りしておるとこのあなた方側近皆さんが、十分この点に対しては意を用いて、万全を期すように十分手を尽くしていただきたいということを申し上げておるので、私の申し上げておることはひとつとして御理解いただきたいと思いますが、長官、いかがでございますか。
  23. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 御熱心な御議論でございまして、私も何もそういう片寄った議論でお答えしたつもりもございません。私どもといたしまして、皇室のことをおあずかりしております以上は、ただいま御指摘のようなことでできることは考えてまいりたいと思います。御発言の趣旨はよくわかっております。
  24. 鬼木勝利

    鬼木委員 これは少し話は古いことでございますけれども、まだその点がはっきりしておりませんし、その後どういうふうになっておるのか、ちょっとこれは参考のためにお尋ねしたいと思うのですが、昨年の一月に葉山御用邸火災がありました。直接の原因は何であったのか、当時の新聞も持ってきておりますが、漏電説とか、あるいは異常な男のたばこの不始末とか、いろいろあったようでございます。新聞にも載っておりますが……。これは将来のこともございますので、昨年のことでございますけれどもお尋ねしたいのですが、警備上の遺憾の点はなかったのか、むろん、漏電、あるいは異常な男が来てのんだたばこだとか、いろいろありましたが、それを事前に防ぐところの警備上のミスはなかったのか。これは将来のこともございますので、その点をはっきりお尋ねしたいということと、その後、葉山御用邸の現況はどうなっておるのか。再建計画はお持ちであるのかないのか。また昨年、下田に須崎御用邸が完成いたしておりますが、これに対して、防災あるいは警備、そういう点は遺憾のないようにできておるのかどうか、その点をちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  25. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 葉山の御用邸の本邸が炎上いたしましたことは、われわれとしてもまことに申しわけないことでございます。当時、原因についていろいろいわれたのでございますが、最終的に、警察の調査によりまして、ある青年が入り込んでたばこをのんで火が発したということのようでございます。もちろん、当時の平素いたしております警備あるいは取り締まりのやり方というものについて、何か規定どおりやらなかったのではないかということも十分調べてあるのでありますが、しかしそれは、ほとんどいつものとおり調べて歩いておったようでございまして、与えられた計画を粗漏にしたということはまずないと思います。  ただ、全体として考えますのに、御用邸というのは、那須でも葉山でも非常に広い範囲がございます。そこで平素おります職員は三、四人にすぎません。それから警察も、陛下おいでになりますとにわかに増員になって十分な警備がございますが、平素は二、三名程度の人が見ているだけでございますので、実際それだけの人々にそれだけの責任を負わすということは、なかなかむずかしい問題があると思います。したがって、今後におきまして、あの広い地域における警備をどうするかというのは、われわれとしても非常な問題でございます。いろいろ現場におきまして研究もし調査もいたしまして、特に最近のような、いろいろな情報が流布されるような時代におきましては、相当警備をする必要もあるように思われます。そういうことで警察当局のほうも、二、三名のところを、ただいまは県や皇宮警察を含めまして十名ぐらいにみんなふやしておるようでございます。これはもう定員もないところでもございますが、事務をとっておる者は事務をやめても警備をするというような、悲壮な覚悟で警察当局はやってくれておるわけでございます。  そのほかに、われわれといたしましては、そういう警備について、単に人手のみならず、機械的に侵入を知るいろんな設備があり得るわけであります。そういうこともおもだったところにはすでに手配をいたしておるわけでございます。そういう設備とともに、人を急にふやしまして、警備を厳重にいたしておるわけでございます。  ただ、この人の配置も、警察のほうでは非常手段としてやっておりますので、今後におきまして、先の遠いことでございますので、本格的なことをするように希望をしたいとわれわれは思っておるわけでございます。今後はそれでも、那須のような非常に広いところでは万全を期し得るかどうか心配でございますが、できるだけの知恵をしぼりまして、万一のことがないようにしたいと考えておる次第でございます。  葉山の御本邸が焼失いたしましてから直ちに、葉山町民はほとんど全戸というくらい多数の方が再建を願い出ております。あそこは、御用邸ができましてあの葉山という町ができたような歴史もございますので、非常に強い希望でございます。ただ私どもといたしましては、皇族殿邸の建設とか、あるいは下田御用邸の建設とかいうこともございまして、ただいままでに、再建をどうするかということには最終的な結論はつけておりませんが、ただ葉山といたしましても大事な場所でございまして、それがどうなるかは、町といたしましても重要なことのように考えておるようでございます。ですからわれわれとしても、結論を何とかつけたいと検討をいたしておるわけでございますが、昔のままやるかどうかいろいろな考え方もあろうかと思います。もう少し時間をいただきまして、将来の方針を考えたい、かように考えておる次第でございます。  下田の御用邸は、そういうような経験もございまして、また海岸地帯でして、風も相手あるところでございますので、そういうようなことを考えまして、建設上にも配慮をいたしました。そういうことで、簡単に外部からの侵入はできないようないろいろな構造も考えてもらっておるわけでございます。新しく建てます際には、今後もそういうことを取り入れてまいらなければならないと考えておりますが、おかげで下田御用邸も落成いたしまして、二月には初めて両陛下おいでになり、また近くお出ましになる御予定でございます。そう広いものではございませんけれども、両陛下も再びおいでになる御予定になっております。そういう状況でございます。
  26. 鬼木勝利

    鬼木委員 昨年の葉山御用邸の件について、私はいまからまた掘り起こしてどうだこうだと申し上げるつもりはございませんが、今度の下田の御用邸は、いまおっしゃったように、海岸でしかも陛下の非常に御希望である臨海研究所とでもいうべき御用邸である。敷地内には、海洋生物の採集に便利のように船着き場や倉庫も設けられ、本邸の研究室に海水をくみ上げる設備もある。緑の自然林やきれいな海など、美しい環境、地形をそのまま生かすようにくふうした、こういう天皇の臨海研究施設が非常によくきめこまかい配慮が行き届いておるというようなことが新聞にも載っておるようで、まことにけっこうだと思いますが、葉山御用邸も、同じくこうした海に面した立地条件から言っても、何か特色のある、陛下の非常にお喜びになるような御用邸として地元の要望もある。いまおっしゃるように、葉山は御用邸によっていんしんをきわめてきたんだ、栄えてきたんだ、こういうことになりますれば、やはり地元の人たちも非常に陛下に親しみを持っておる、こういうふうに私は理解をする。そういう点におきましては、将来そういう御計画もあってしかるべきではないか、かように考えるわけでございます。そういうことを長官のお口からは言いにくいというお考えもあるかもしれぬと思いますけれども、このままあの御用邸を放置しておくということに対しては、私はどうかと思うのですね。そういう点について、お漏らしできる範囲内において少しお話を承れれば、まことにありがたいと思いますけれども、あなたがおっしゃったから、それを現実にどうだこうだというそういう下心も何も私はありません。淡々として、もうただ陛下を思う情から申し上げておるんですからね。
  27. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 葉山にはもう一つ付属邸がございます。そこには普通よく皇太子殿下の御一家の皆さまお出ましになっております。焼失後に、陛下葉山おいであそばすということで、この付属邸にお泊りいただいたこともございます。ただ付属邸が非常に民家に接しております。何か付近に火事でもあると少し危険じゃないかと思うくらい近い。それから非常に古い建物で不便な点がはなはだ多いわけでございます。でございますが、両陛下なり皇太子さまなりの皆さまおいでになるのに非常に東京から近いわけでございます。下田でございますと、現在のところどうしても二時間四十分くらいかかって参りますが、あそこでございますと、自動車でも一時間少しあったら行けると思います。そういうようなことを考えますと、葉山にあることもいいのではないかと思うのでございます。  まあ、そこは率直に言えと仰せになられましたが、総理大臣も総務長官も、災害復旧だから早くやってはどうかとおっしゃっておるわけでございますが、私といたしましては、ただいま、先ほど申し上げましたように、下田御用邸もまだ途中でございましたし、いろいろな点を考慮いたしまして、まだ結論に達しておりません。しかし、さっき申し上げたように、あまりこれがきまらないでおりますと、葉山としてもいろいろな問題が出るかもしれません。方針だけは早くきめられるならきめたいという気でおります。御趣旨はよくわかりまして、また私も十分検討いたしたいと思います。
  28. 鬼木勝利

    鬼木委員 これはさっきお尋ねするつもりでしたけれども、また同じようなことをお尋ねしてまことに恐縮ですが、先ほど言いました、昨年の九月から十月にかけて、ヨーロッパ訪問をなさったときに、アラスカの首都ですか、アンカレジでニクソン大統領とちょっとしばらくお話しになったということを新聞で書いておりましたが、その内容はどういうことであったか、われわれが知る由もありませんが、陛下にアメリカ訪問をなさるお気持ちといいますか、あるいはそういう態勢になっておりますか。その点、御承知になっておりますか。
  29. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 昨年ヨーロッパにおいでになりますときは、北回りの飛行機でおいでになりましたので、アメリカのアラスカ州のアンカレジで給油のために一時間ばかりおおりになることになりました。いよいよ御出発が近づいたころに、アメリカのニクソン大統領から、御夫妻がそこまでお出迎えに出てお話をしたいというお申し出が急にございまして、向こうからも人が来ましていろいろお打ち合わせして、一時間では少し足りないので、いろいろくふうをしまして、こちらの御出発を少し早めたりいたしまして、一時間四十分ばかりでございますが、向こうの大統領御夫妻ともお会いになったわけでございます。  非常に丁重な歓迎陣でございまして、まあ、あちらさんの係の人の申しまするには、公式に御訪問になっていたしますいろいろな行事を一時間四十分に詰めて全部いたしますというような、たいへんな歓待ぶりでございました。そういう趣旨で、そのときも、とにかく日本天皇陛下が初めて外国においでになって、わがアメリカに最初の足を入れていただいたということ、それから、昔、副大統領のときに日本に見えまして、両陛下が午餐を催して歓待されたこと、いろいろなことを述べられて、大へん喜んでそういうことが行なわれたわけでございます。  陛下が昨年初めて外国にお出ましになるときには、今後外国の御旅行というものをどう考えるかというのは、当然われわれとしても頭に持って考えたことでございます。もちろん、一ぺんお出かけになりますと、各国では必ず両陛下をお待ちするという風が出てきます。しかし、御年齢の点その他から考えまして、全部お出ましになるということはなかなか困難であろうと思います。ですから、たとえ御答礼の問題でも全部御自分であそばすということは、実際問題としてむずかしい問題が起きるであろうと考えております。そういうことでございますが、しかし今後も、外国においでになりますことがないということはないだろうと思っております。それは、御健康なりいろいろな諸情勢というものが熟しますれば、そういうことがあるだろうと思います。ただ、昨年、アメリカでなくてヨーロッパにおいでになりましたのは、とにかく御答礼が済んでいないということが主たる理由としてヨーロッパが選ばれたわけでございます。アメリカと日本は戦争後において非常な特殊な関係にございますので、私は率直に申して、いつの日か御都合つけばおいであそばしてよろしいと思います。これは、現在の政治情勢とかいろいろな点を考えまして、政府の判断もしていただかなければならぬところでございます。まあ、こちらからお出ましになりますと、大統領の御答礼ということも出てまいりましょうし、そういうことも政府としてはいろいろな配慮をなさることと思います。ただ、陛下が今後アメリカにおいであそばすことについて、私どもは何ら反対する点はないと思いますけれども、いつどういうふうにしておいであそばすかということについては、なかなかやはり御議論があろうかと思います。まだ熟したものは何もございません。
  30. 鬼木勝利

    鬼木委員 よくわかりました。まさにおっしゃるとおりで、国際情勢もありましょうし、陛下の御健康の問題もありましょうし、時期という問題もありましょうし、いまここでどうということも、全くお説のとおりでございます。その点はよく了解いたしました。  そこで、陛下のヨーロッパ訪問についてちょっと話題をかえてお尋ねいたしますが、当時、皇太子殿下が臨時代行をされたということでございますが、これは天皇の国事行為ということで憲法に規定してございます。第四条に、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。」とある。むろんこれは、摂政ではなくして国事を委任されたということでございまして、当時、憲法に定めるところの天皇の国事行為ということでございましたが、また将来もこれはあることでございますので、私長官の御見解をちょっとお尋ねしたいのでございます。  ただ国事行為のみを委任された臨時代行だ、摂政としての意味はない。むろん、それは委任をしておいでになったのですから、表面どおり解釈すればそのとおりだと思いますけれども、もし皇太子殿下が委任をお受けになって、陛下のお留守のときに、国事行為のみでない、いわゆる摂政としての内容を持ったようなことが起きた場合ですね。これは将来もあると思うのですが、そういうような場合にはどのようにお考えになるのか、その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
  31. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 摂政と今度の法律に基づきます国事行為の代行委任ということがどういうところで違うかと申しますと、いまさら申し上げるまでもございませんが、国事行為の委任というのは陛下が御委任なさることでございます。摂政を置きます場合は、陛下の御意思によらずに皇室会議でやるという差があると思います。ですからこの場合は、陛下の御判断によらないということが起こって、そういう前提に立っての必要性が出るという場合が摂政であろうかと私は思うわけでございます。ですから、そういう場合の摂政というのは、大体天皇のあそばす国事行為のほか、天皇の行なわれまする公的なこと等につきましてもかわってなさるということでなければ、いろいろな国政と申しますか、運営上に支障が来るだろうと思うわけでございます。片一方は、ともかく法律にはっきりと、天皇の国事行為に関する権能ということでありますから、これは憲法で非常に限定的に羅列しておるわけでございます。それ以外にわたるということはまずないわけでございます。ただ予測し得るようなことがございますれば、それは、公的色彩のあるようなことを御委任なさるということは、必ずしもいけないという規定はどこにもない。しかし、陛下がちゃんとしておられますのに、やたらにそれをふやすということは、私はあまりおもしろくないことである。ですから、外国においでになりましても、非常に重大な国事行為外のことが起こりますれば、当然陛下に伺うこともできる。いまはもう国際電話もございますし、そういうことはやはり陛下のお示しを伺うということが大切じゃないか。  ですから、いま公的な問題としましては、いろいろ各国と親電を交換なさる場合がございます。これなんかはやはり御所在の場所から打つということで、昨年の場合、ヨーロッパでパリにおいでのときに、必要な公電を打つことがあれば、パリから打っておるわけであります。そういうわけでございますから、ある予測できることで、やはり委任しておいでになるほうがいいということがあれば、可能ではあるというふうに思います。まあ、そういうふうに解釈しておりますので、御質問趣旨がどういう具体的なことか、ちょっととりにくかったわけでございますが、私は総括的にはそう考えておるわけでございます。
  32. 鬼木勝利

    鬼木委員 これは天皇陛下が、いまおっしゃるとおりに、臨時代行として国事を委任される。その委任するということ、文書なら文書を殿下にお渡しになる。そうすると、それを内閣がその旨を公報で出す、そういう順序になっておると思うのですよ。それもあなたのおっしゃるとおりだと思う。そうでしょう。それが国事委任ですね。ところが、殿下が実際御執務なさる場合に、東宮御所から御出勤になって宮殿にお入りになる、それで陛下の代行をなさる、その国事委任の限界ですね。これは国事行為ということになりますと私は広範囲だと思うのですよ。摂政がなさるようなことまでなさらなければならぬと私は思う。たとえば法律の公布でも、あるいは国会の召集であろうが、総選挙であろうが、国務大臣の任免であろうが、たとえば今度のような批准書の交換であろうが、あるいは栄典の授与、勲章をやるとかやらぬとか、あるいは外国の大使、外国の国賓とお会いになるとかいうような、一切の国事があると思うのですよ。そういうものを全部委任されるというわけですか、お留守中は。
  33. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 法律に申しまする国事行為の委任ということは、憲法に書いてある天皇の国事行為ときめられたものに限るはずでございます。それは憲法第七条に十項目ございます。それからそのほかに、総理大臣の任命とか最高裁長官の任命、それから、ただいまの国事行為を委任するということも一つの国事行為として、内閣の助言と承認に基づいてなさるということになろうかと思います。いま御指摘になりました、いろいろな勲章の授与とか、それから政治的な解散にしろ、任免にしろ、みんな憲法で含まれていることでありまして、それは全部御委任になっていかれるわけで、そのときにどういう御書面になるかということまで、法制局とも相談いたしましてつくってあるわけであります。ですから、そういう憲法上の当然の天皇陛下の権能というものは残らずなさっていただくというたてまえでございます。そのほかに何があるかと申しますと、公的なことでございます。たとえば、どう申したらいいかわかりませんが、国会の開会式があって陛下お出ましになるというふうなことは、これは私的なことでなく公的なことでございましょうが、憲法上の国事行為とは申せないと思います。それも、陛下にかわってお出になるということを、陛下が、御名代という形にしろ何にしろ、お出しになりますことはできようかと思っております。ただ私は、あくまで陛下は健全においでになるわけでございますから、むやみやたらに全部をおまかせするということはちょっとおかしいのではないかというふうに考えておるだけでございます。
  34. 鬼木勝利

    鬼木委員 それは私わかりますよ。これは憲法にもはっきり規定してございます。第七条には、「内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」として、十項目までございます。一、二申し上げたのですが、では、これ以外の国事行為がもしあっても、これは差しつかえないということですね。たとえば、いま開会式なんというのは国事のうちに入らない、こういうような御見解ですね。だから結局、陛下のお留守の間は、憲法で定める十カ条の国事はむろんのこと、それ以外もこれに対して付随したものは差しつかえない、このように解釈していいわけですね。完全なる臨時代行ができるということですね。いま陛下はお留守だから困るということはないというわけですね。その点ちょっと……。
  35. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 いわゆる国事行為というのは法律的のことでございますけれども、これは憲法にはっきりしていることでございます。これは、やたらに国事行為を解釈上ふやすということはできないと私は思います。ですから、その範囲においては、憲法にありますように、陛下の国事行為の権能は、内閣の助言と承認において全部御委任になっていかれるわけであります。それに近いような公的なことがいろいろ問題かもしれませんが、これはいろいろやりようがあると思いまして、このためにそういう公の行事その他ができなくなるということはないと思います。それから、外国から人が来ましても、お会いになるという事実は、皇太子様がお会いになってちっとも差しつかえないことでございます。御心配はないと私は思っております。
  36. 鬼木勝利

    鬼木委員 それは、いま御指摘のように、「内閣の助言と承認により」、こう書いてございます。「国民のために」だから、国民のために行なう行事であれば、国事として十項目出ておるわけですから、お留守であっても、国事を委任していかれれば一切それで万事処理できる、こういうことですね。そう解釈してようございますか。——わかりました。  前置きが長くてはなはだ恐縮でございましたけれども、最後に内廷費並びに宮廷費のことでお尋ねをしたいのでございます。  先ほど趣旨説明でもありましたように、これは前回、四十五年でしたか、四十四年でしたか、長官ではなく瓜生次長さんであったと思いますが、盛んに先憂後楽ということばをお使いたなっておられた。これは私、先ほど冒頭に申し上げましたように、先憂後楽ということは天皇陛下がおっしゃることであって、われわれが先憂後楽、先憂後楽と言って、予算であろうが何であろうが、それを遠慮して控え目にするということは考えが違っておるということを、瓜生次長にも、前回でしたか、お話し申し上げたのですが、今度のこの皇室経済法の法案を見てみますと、昭和三十九年に現行の価額に定められたものである。その後改定されることなく現在に至っておる。これはどういうわけでこんなに長い間——ことばが悪かったらごめんいただきますが、こんなに長い間放置しておられて、いまになってこれを改定するのか。それは陛下が先憂後楽、おれのことはあとでいいぞとおっしゃったので、こんなに長いことそのままにしてあったのか。経済情勢はずっと変わっております。事情もあらゆる観点から変わっておるはずなんです。その点が、どうしても私、理解に苦しむのですが、ひとつ承りたい。
  37. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま御質問の中に、内廷費、宮廷費が三十九年以来云々というのは、今度内廷費皇族費を御改定願う案が出ておりますが、これは四十五年以来の改定でございまして、そんなに長い問題でございません。大体二年半ぐらいの間のあれでございます。仰せになりました三十九年というのは、この法案の中に賜与あるいは譲り受けの制限額というのがございまして、それが三十九年に直って今日までそのままになっていた、おそらくそういうことであろうと存じます。そう解釈しておいてよろしゅうございますか。
  38. 鬼木勝利

    鬼木委員 ええ。
  39. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 そもそもこれは、陛下のほうから下さるもの、あるいは一般からおもらいになるものは、両方とも、陛下と内廷におられる方全部で年に百二十万という制限がございます。これは申し上げるまでもなく、憲法八条において、皇室がそういう賜与あるいは譲り受けを受ける場合には、国会の議決を経なければならないという規定がございまして、お菓子一つでも国会の議決を経なければもらえないというのが法律の趣旨でございますが、それでは一々たいへんでございますから、皇室経済法でこれまでの間は一々議決を要しないというのが、ただいま問題になっております制限額できめられた問題でございます。初め百二十万というのが、三十九年に直りますまでに約十二年ぐらいかかっておると思うのでございますが、結局、すべて皇室の経済というものが、内廷費とか何かで国家予算の御審議を経ることになっておりますので、いただくとか賜わるということを、そう簡単にふやしていくわけにまいらない実情もございます。ですから、なるべくその範囲で、一般の世の中でいういわゆる献上とかその他のものをふやしていかない。要するにそれをあまりワクを広げますと、憲法八条をのがれるようなかっこうになってまいりますので、ある程度の制限をすべきものだろうと私は思っております。しかし、その後のいわゆる物価上昇あるいは生活程度の上昇というようなことを考えていきますと、いつまでもほうっておけないということで、今回、三十九年でございますから、八年目に御改定をお願いするわけでございます。前例に従いまして、その間の物価上昇の率が五三%ぐらいになりますので、要するに五〇%というものをそれにかけまして、そして今度御審議を願って直したいという趣旨でございます。
  40. 鬼木勝利

    鬼木委員 いや、それは長官わかっています、ここに出ていますから。四十五年に改正して、それが四十四年の時点の物価指数を一〇〇として四十六年は一一四・一となっている。しかも東京物価指数にこれは合わせたのだ。陛下東京にお住まいになっておるのだから。皇族もですね。それでやられた。それはわかっていますよ。だけれども賜与と譲受は三十九年以来そのままになっておる。ようでございますか。そうすると、それは憲法八条にもむろんありましょうけれども、いずれにしても、実態として、陛下がお下げ渡しになるのでも、物価は非常な高騰をしておりますから、高いものをおやりにならなければならない。今度はまた陛下が譲受なさる場合でも、民間で高いものを買って差し上げておるわけなんですから、これはやはり陛下がお下げ渡しになるのも、おもらいあそばすのも、これは当然そのときそのときの物価指数によるべきじゃないでしょうか。何もむちゃにこれを上げる、根拠のないのに上げるのじゃないのですから。陛下がおいただきになるのはずっと安いもので、今度はおやりになるのは高いもの、そういうわけじゃないでしょう。お受けになるのも、お下げ渡しになるのも、同様にその当時の物価にならって行なわれておるのだと思うのです。それを三十九年に直して今日までそれをほったらかしておくということは、これは私はおかしいと思うのですよ。どう考えてもおかしいと思う。お互いの生活でも同じです。三十九年の物価で全部押えられたらどうなりましょうかね。長官いかがですか。これは私は憲法の第八条の趣旨を曲解しているのだと思います。いかがでございますか。
  41. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 毎年のように物価が上がっておりますから、それにならって直すべきであるというのも、もちろん一つの御議論であると思います。ただ私どもは、陛下がお受けになるということなんかをあまり奨励をすべきものでないような感じもいたします。ですから現在でも、何かそういう希望がいろいろ出てまいりますけれども、相当お断わりすることもございますし、値段の高いものは御辞退をしているわけでございます。そういうような意味で、ただ世の中がはでになったから、そういうものもなるべくはでにするのじゃなくて、何かこう静かにいきたいという感じから、そういう心情でいたしているわけでございます。ただ、もう八年もたちますと、物価ももう五割もふえておる。で、今回若干のワクを広げていただくということでないと、あまり世間とけたはずれのことになってくると困るからということでいたしたわけでございます。どうぞそれをお察しをいただきたいと思います。
  42. 鬼木勝利

    鬼木委員 いや、長官、あなたのお考えは少し私の言っていることを誤解していらっしゃるようですが、陛下が譲受される、平たいことばで言えば、おもらいなさる。陛下が賜与なさる、お下げ渡しをなさる。その全体額を上げろと私は言っているのじゃありません。予算を増せと言っているのじゃありませんよ。増すのじゃない、いわゆるスライドをしろ、ようございますか、当時十円で買えておったものが今日十円というわけにはいかぬから、いまから九年前百円で買っておったものがいま二百円するなら、これを二百円の予算を組みなさい。当時百円であったものを、五百円も六百円も千円にもしろ、予算の額全体を上げろと申し上げているのじゃないのですよ。いわゆるスライド制なんです。これはもう全部諸事百般そうですよ。今日最も私どもやかましく言っているのは、恩給なんかもそうですよ。月給百円時代の恩給は月に三十円か四十円、それをいま三十円や四十円やってどうしますか。それでは恩給を十年もほったらかしておいていいかというと、そんなことでは、とてもあなた話になりませんよ。非常に聡明な長官は私の言っているのがおわかりいただけると思うのだが、いかがですか。私が言っているのはそうじゃないんですよ。昔百円で買っておったものがいま二百円だということになれば、陛下が賜与なさる、お下げ渡しなさるのも、やはり百円のものが今日三百円も五百円もしておれば、それをお出しにならなければならぬ。品物は同じ品物であっても、昔はこれだけであったが今日はこれだけになっているという、いわゆる物価指数が当時を一〇〇%としたならば、いまが一五〇%になっておるならば一五〇%にしなさい。今度ほかの皇族費や宮廷費はそれをやられたんじゃないですか。それをやっていらっしゃるんでしょう。四十四年は一〇〇%であったが四十六年は一一四・一%になった、だからそれにそれをかけてこうなった、こうやっていらっしゃるんじゃないですか。それはやるけれども、譲受や賜与はやられない、その点、私は理解に苦しむのです。  いま長官は、はでと言われたが、決してはでじゃないでしょう。十年前にもらったものもいまもらったものも、品物は同じだから、いささかもはでじゃない。何ら変わりはない。そこを私は申し上げているのですよ。そこを理解できませんですかね。それでは陛下は御不自由ですよ。一般国民は全部物価にスライドしておるのに、陛下だけはそうはさせない、十年据え置きだ。政務次官もここに見えておるが、あなたもお客さんじゃないんだから、答弁してください。
  43. 砂田重民

    ○砂田政府委員 お客さまではなくて、やっと御質問をいただきましたので、お答えいたします。  鬼木先生の御意見は、私は全く同感だという感じをもって承っておりました。ちょうど私が、一年足らずでございましょう、副長官在任中にこの改定ができますことはうれしいことだと思っております。率直に申し上げますが、四十五年に内廷費皇族費の改定をいたしましたときに、なぜ賜与、譲り受けの改定がされていなかったのだろうかということにちょっと疑問を持ちます。先生もさっき御指摘になりましたように、物価の指数五三・六%というものの値上がりはもうはっきりいたしておりますし、ちょうど四十三年の十二月に皇室経済に関する懇談会で、このときは内廷費皇族費についてのことでございましょうけれども、一〇%以上増額する理由が生じたときに改定するという申し合わせができているそうでございますが、これは私の率直な感じでございますけれども、今後賜与、譲り受けの額につきましても、宮内庁を通じてこういったことの改定を積極的に、そういう変えなければならない理由が生じたときにはおすすめをいたしたい。陛下のお気持ちにもよることでございますけれども先ほどから先生の御議論を聞いておりまして、そういう感じを私は持っております。総理府といたしましては、宮内庁を通じてこれの改定を、今後その値上げ理由の生じたときにはおすすめを申し上げたい、かように考えておりますことを御報告申し上げておきたいと思います。
  44. 鬼木勝利

    鬼木委員 長官いかがですか。
  45. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 どうも内輪のほうからただいまのような御趣旨の御説明がございまして、私も将来にわたってよく検討いたしたいと存じます。
  46. 鬼木勝利

    鬼木委員 いま政務次官がおっしゃったとおりですよ。まさにそのとおり。あなた方がおっしゃらぬと私はその点をひとつ申し上げようと思っておった。さすがに政務次官よく調べておる。  四十六年十二月二十七日です。経済会議をやっておる。そして一割増の場合にはこれを増額するということをはっきり決定している。そういう点を長官あたりは、何のために経済会議やっているんだとどんどん押していただいてけっこうです。やはり大宮人ともなると、お上品で、やんごとなきお方だからお上品でありますけれども、徹底的に追及していただいてけっこうです。これは皇室経済法の第四条にはっきり明記してある。ですから、いま政務次官の御答弁をいただきましたので、私も大いに満足します。ぜひそうしていただきたい。  これは何回も私申し上げますけれども、これは政務次官もいま一言お触れになった。陛下のお気持ちもあろうということをおっしゃった。いわゆる日ごろ使われておるところの先憂後楽というのは、それは陛下がおっしゃることなんです。おれはあとでいい、国民を先にしてくれ、こうおっしゃる陛下のありがたいおぼしめしにわれわれは甘えてはいけないと思う。陛下に御不自由のないように、それだと私は思うのです。ですから、どうぞひとつ今回の法案に対しては私らは全面的に賛成でございますが、惜しむらくはそういう点がまことに私は遺憾であったと思いますので、今後そういう点については格別の御配慮をいただくように長官に切に要望いたしておきます。最後に締めくくりでひとつ……。
  47. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 きわめて心を込めた御激励の御質問をいただきまして、私まことに感激にたえません。私どもも足りないことが多いと思いますが、これは皇室のために私どもは微力を尽くして十分将来にわたって勉強したいと存じます。
  48. 鬼木勝利

    鬼木委員 じゃこれで私の質問は終わります。どうもありがとうございました。
  49. 並木四郎

    並木政府委員 鬼木先生、さっき四百万円の葉山庁費の流用の問題がございましたが、判明いたしましたので答弁いたします。  本邸が昨年の一月二十七日に焼けましたので、陛下が付属邸を御使用になることが考えられますので、そのために四百万円の金をかけて補修繕をやったわけでございます。それだけ申し上げておきます。
  50. 伊能繁次郎

    伊能委員長 木原実君。
  51. 木原実

    ○木原委員 今度の改正案についての法案をもらっているわけですが、残念ながら、私どもは、宮廷費等の増額の問題につきましても、基礎になる天皇家の日常の御生活なり、特に経済生活なりについてはほとんど知る機会がないわけであります。したがいまして、先ほども論議がございましたように、物価が上がっている、基本的にはそれにスライドをして、こういうことなら、それはそうだ、こう申し上げる以外にございません。  ただ問題なのは、物価が上がるだけではなくて、たいへんに生活の様式も、われわれの場合も急速に変わっていっている。そういう中で、従来踏襲をしてまいりました天皇家、あるいは宮廷費をお使いになる、そういう基礎がかなり変わってきているのではないのか。だからお伺いをいたしたいのは、つまり今度は一億一千二百万円ですか、そういう形で増額になっているわけなんですが、従来の様式を踏襲をしてそれでこの程度、こういうことだと思うのですが、しかしそれだけでよろしいのか。いろいろと生活様式が変わり、あるいはその他の局面の場合にも費用を要する面が出てきているのではないのか。それはあえて押えているのか。何か基礎的に宮廷の費用を使う面について改善を加えていく、そういう問題はないのか、そういう点が疑問なんですが、いかがなものでしょうか。
  52. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 内廷費と宮廷費というものが並立しているわけでございますが、申し上げるまでもなく、内廷費というのは天皇陛下と内廷におられる方、すなわち皇后陛下、東宮両殿下と東宮さまのお子さまお三方という方の日常経費でございます。ですからこれは、お身回りのものを買いますとか、あるいはお食事であるとか、それから若干の内輪の御交際の経費とか、そういうような御日常の経費でございまして、大きな臨時的な経費というものはまずない、毎年あるような経費でございます。  そういうことでございまして、公にたとえば国賓が来ますとか、あるいはその他の公の訪問者があるというような場合等における接遇、儀式、儀典というような問題は全部宮廷費に入っておりますから、これがいまの時代に合わなくなりますれば、新しいものをだんだん加えていただいて、毎年御審議を願っておるわけでございます。ですから、内廷費というのは御日常のことでございますから、そう大きく変わってまいりません。  ただ、ときに過去のことを考えますと、非常に物価の上昇に伴いまして、国民のふところもよくなるというのでございますか、いわゆる生活程度が上がってくるということがあるわけです。そういうものと比べて、ただ物価のスライドだけでいいということばかりじゃないだろうということは言えると思います。そういう点から、過去において、皇太子さまの御結婚その他の場合に、そういった意味の趣旨を加えた御改定を願ったこともございます。そうでない限りは、大体、物価の上昇、それから職員のベースアップを公務員に準じていたしておりますので、そういうのをお願いしているわけでございます。ですからまた、何か大きく世の中の生活程度が非常に上がりまして、皇室ももう少し引き上げるようにしなければいけないというようなことが起こりますれば、またその機会にお願いしたいというふうに考えます。いまのところは、たとえば吉凶禍福のお見舞いというようなものもわりあい少ない。今回のあれでそういうものも今回は幾らか上げていくことができようかと思っております。  そういうようなことで、そう基本的に機構が変わるようなことはない、普通の家庭のような内容のものでございますから、まず特にここで考えなければならぬということはないんじゃないかと思っております。そういうことが起こりますれば、またその機会にお願い申し上げたいと思っております。
  53. 木原実

    ○木原委員 御説明を聞けばそのとおりだと思います。ただその場合にも、しからば今度の増額分が適切であるかどうかということについては、残念ながらわれわれは資料を持たないわけであります。その点がたいへんどうもくつを隔ててかゆいところをかくような感じがいたします。これは、こういう機会が一番いいとは思いますけれども、機会あることに私の申し上げたいことは、もう少し国民との間のつながりのようなものが緊密になっていくことがほしい、こういうことを含めまして、たとえば今度の予算の増額等の問題にいたしましても、金額からすればさほどのことはないと思いますけれども、あまりプライバシーに立ち入るわけにもまいりませんけれども、おおむね御生活の中でこの程度のものがさらにまた必要なんだということが、どこに言っても話が通ずるような、何かそういう点をときどきひとつ明らかにしてもらいたい。私どもあらためて何か予算の裏づけになる資料を出せということは申し上げませんけれども。また、長官がいまお述べになりましたような範囲のことですと、それはそうであろう。特別に異を差しはさむ問題点はないように思います。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 ただやはり税金の問題でございますから、審議を尽くすということになりますと、残念ながら、適切であるかどうかの材料というものがございません。民間の給与あるいは国家公務員の給与等を上げる場合には、御承知のように、かなり問題を詰めてやっておるわけであります。それと同一に論ずるわけではございませんけれども、できますことならば、皇室経済会議その他の機関等を通じても、少なくともわれわれが、なるほど、客観的にも妥当であろうと思われるような資料なり何なりをひとつお出しを願えるように、御努力願いたいと思います。いずれにいたしましても、長官の御説明で、この増額分については、私どもも特別に異を差しはさむ余地はない、こういうふうに考えるわけでございます。  あわせまして、幾つか御意見を承っておきたいことがあるわけでございます。  一つは、先ほど鬼木委員が若干触れておりましたが、私も、新しい宮廷が皇居の中にできました前後にこの委員会で申し上げたことがあるのですが、現在のような状態でいまの皇居にお住まいになる、はたしてこれが適切なのかどうかという問題を痛感しておる者の一人なんです。せっかく新しい宮殿ができましたし、それからいろいろな意味で、長年お住まいになっているところですし、いろいろな従来の条件というものはあろうかと思います。それからまた聞きますると、日常なかなか御多忙でいらっしゃる、こういう話も聞いております。しかし一つは、鬼木委員の御発言にもございましたように、やはりここは空気の悪いところなんです。それでどうだということにはまいりませんけれども、われわれの場合ですと、郊外なり離れたところから都心に通勤をするわけなんですが、かなり御老齢になりました陛下、御一族にあそこにずっとお住まいをしていただき、そこでまたお仕事をなさる、これでいいんだろうかという疑問が一つあるわけであります。  それからあわせまして、いまの皇居というものは都心の中のたいへん重要な部分なんですが、たとえば東京の都市計画を抜本的に考えるというような場合には、別の議論ですけれども皇居国民に開放するという視点もないわけではございません。あれこれ考えますと、きょうあすの問題ではございませんけれども、しかしいずれは皇居のあり方という問題を考えていく時期がくるんではないのか、こういう感じがするわけであります。したがいまして、これは多くを申し上げませんけれども、いまどうこうという問題ではありませんが、そういう観点はあるいは飛躍があるのか、穏当を欠くものなのか、御意見をひとつ承っておきたいと思います。
  54. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 いまの皇居ができますときに、皇居造営審議会というものが置かれまして、国会からも多数の方に御参加いただいて、あるいは言論界、各方面からお集まりいただいて審議されたわけでございます。そのときに、皇居をつくるのにいまの皇居でいいかどうかというのはもちろん一つの問題となったわけでございます。しかし、これは当時の議長が、各委員一人一人に意見を聞かれまして、大部分が現在のところに置くべきであるという議論でああいう結果になったわけでございます。これはなかなかむずかしい問題で、いま仰せになりましたように、すぐ解決できる問題でもないと思いますが、ただ皇居は、天皇陛下のいわゆる人としての立場からは、なかなか日常においてもいろいろ関係の深い問題でございます。遠くに陛下だけがいらっしゃってうまくいくだろうかということは、現状のままとすれば非常に問題が多いと思います。ですから中には、郊外にお住まいをおつくりになって、専用道路でもつくって、毎日あそこにお通いになってはどうだというような議論をする人もあらわれたり、いろいろでございましたが、結局はいまのとおりになったわけであります。  しかし、こういうふうに公害等がふえてまいりますと、またそういった意味の心配をする方もだんだん多いようでございます。しかし、この公害の問題は、先ほどからもいろいろ鬼木委員からもお話しございましたが、結局、皇室だけの問題でなくて東京全体の問題として、これは解決しなければならぬ重要な問題であろうと思います。ですからそういう問題は、よくするという、そういうことの見きわめもつけました上での将来のことを考える必要がございます。  それから都市計画皇居の位置の問題も当時出たところであります。しかし、都市計画の専門家にも、あれがあるから大きなロータリーとして東京の交通公害を避けておるんだという論をする人もございました。なかなかむずかしい問題がたくさんあったのでございますが、結局ああいう結論になりまして、しかし将来、東京の発展なり都市計画から別な意見が出てくればこれは別でございますが、いまのところ、直ちに皇居を他に移してはということの結論にはすぐいきかねておる次第でございます。
  55. 木原実

    ○木原委員 そういう御議論で、結局は私は、かなりことばが悪いですけれども、お堀の中に陛下をとじ込めているのじゃないかという気もするわけです。私は大正生まれなものですからそれほどのあれはないのですが、どうもやはり明治の人たちは、依然としてあそこに大事に天皇さまをかかえておれば安泰で大過がないというあれがあるのじゃないかと思うのです。外国のことなんか申し上げたくないですけれども、やはりイギリスのキングの場合も御通勤だという話も聞いておりますし、常識はやはりあると思うのです。また、あそこを開放することによって都市計画がどうのこうのということは、私はあまり賛成ではございません。そのことよりも何よりも、やはりあそこにいていただくと、昔からここにいらっしゃるのですからという前提があるし、その限りの中ではたいへん大過なくいくと思うのですね。しかし、どうも時世が変わってきますと、この空気の悪いお堀の中に天皇を擁して、かえって御不自由な目にあわしているのじゃないか、こういう感じもするわけです。いかんせん、これはやはり一つは時世の流れであるし、周囲の環境その他の変化の中で、そういうものが形になっていると思うのです。いまのところは新しい皇居もおできになったことだし、昔からあそこにお住まいになっていることだし、別にこれで不自由なくいっている、こういうことに落ち着くと思いますけれども、しかし、やはり時世の流れの変化というものは、もうお堀ばたの近くまで押し寄せてきていることも事実です。したがいまして、陛下の御日常にかかわる大きな問題なんですけれども、そこはやはりあらためて別の観点でそのことを検討する段階に来ているのではないのか、こういう考えを私は持っているわけなんですが、その辺はどうでしょうか。
  56. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 公害でございますとか都市計画以外の観点からというようなことなら、いまは別段変えなければならぬという考えは私どもは持っておりません。ただ、いろいろ御意見があると思いますので、伺って今後の参考にしていきたいと思います。
  57. 木原実

    ○木原委員 それからもう一つ、これは副長官もいらっしゃいますので……。  五月十五日に沖繩返還ということで、その際に陛下が沖繩においでになるという問題は、多少議論があったように私たちは聞いておるわけでありますが、この問題については、もう政府のほうとしては結論めいたものをお出しになっていらっしゃいますか。おいでにならないとか、あるいはそのあと何か式典等に沖繩の現地に陛下おいでになるかどうかという問題について、まとまった最終的な結論はお持ちですか。
  58. 砂田重民

    ○砂田政府委員 五月十五日に沖繩復帰の記念式典を、東京は武道館で、同時に那覇の市民会館で行なうことはきめております。東京の武道館で行ないます記念式典行事に両陛下お出ましをいただきたい、こういうふうなことは内定をしておりますが、まだ記念式典行事の中身が固まっておりません。したがって、まだ宮内庁へ正式にはお願いに出ておりませんですが、記念式典の行事そのものの中身が決定次第お願いにあがりたい、このように考えております。
  59. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、当然現地のほうにはお出ましにならないということですね。そうしますと、引き続いて、復帰後適当な時期というか、そういう時期にお出ましになる計画もいまのところはない、そういうふうに承知してよろしゅうございますか。
  60. 砂田重民

    ○砂田政府委員 正式にきまったことはまだございません。  一つ申し上げておきたいと思いますことは、復帰記念の植樹祭が沖繩で行なわれることになっております。木原委員も御承知でございますが、植樹祭と申しますのは、国土緑化推進委員会と当該府県、したがって今度の場合は沖繩県でございますが、沖繩県の共同主催になるわけでございますが、主催者としての、陛下お出ましについての宮内庁へのお願いにあがるということも、まだ最終的にきまったように私どもも伺っておりません。
  61. 木原実

    ○木原委員 その次にもう一つお伺いをしておきたいことがあるのです。  御承知のように、ごく最近、例の奈良県の明日香村で古墳の発掘が行なわれまして、まことにすばらしい古代美術というものに接することができた、こうニュースが伝わっておるわけであります。それに関連をいたしまして、私どものところにもたいへん篤実な考古学者の方々がいろいろなお話をしに見えました際に、宮内庁のほうで所管をいたしておる歴史的な陵墓、皇室あるいは天皇の陵等の調査あるいは発掘等についても、あらためて考える時期が来ているように思う、こういうような話がございました。宮内庁の立場では、歴代の天皇の陵墓を守る、それが基本的な任務だと思います。しかし、やはり明日香村で偶然の機会にすばらしい歴史のあかしになるようなものが発掘をされますと、一面では、やや便乗をしてムード的にあそこもここもと発掘のブームが出るのを戒める声も強いわけでありますけれども、しかしながら、同時に、国会の中でもすでに定説になりつつあるような幾つかの、歴史的というよりも文化的な価値の高いと思われる陵墓等について、言うまでもなく、国の仕事として適切な方法をもって調査あるいは発掘の事業、こういうものをやるというような場合に、これは一体どういうふうに対処をされるのか。宮内庁の所管にかかわることであると同時に、他の分野にも大きくかかわる問題なのですが、そういう問題についての長官の御見解をひとつ承っておきたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  62. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 陵墓というのは、私がいまさら申し上げるまでもなく、陵は天皇皇后、皇太后、太皇大后のお墓で、それからその他の墓というのは皇族のお墓でございます。要するに、御遺骸を納め、御冥福を祈り、そうして後世の人が御祖先を祭るという精神のものでございまして、非常に精神的な意味が強いものであると私は思います。したがって、普通の史跡やなにかのように、公開し、調査し、発掘しという考えはとうてい考えられません。調査というようなことは、あるいは限度によってあり得るかもしれませんけれども、そういうような発掘をしてあばくというような感じは、現在の私どもの範囲においてはとうてい考えられないことだと思います。  ただ私どもも、陵墓というものを管理し、あるいは修理をするのでございますが、何か大きくくずれたような場合には、手をつけるについても、一応詳細な準備をして、学会のそういう専門家にも御相談をしてやっておりますし、特殊なことがありますれば、これを宮内庁が出版をいたしております雑誌にも調査報告を出して公開をしているわけでございます。それ以外に特別な意味でこれを公開し、興味を持ってやるというようなことは、私どもはとうてい考えられないというふうに考えておるわけでございます。
  63. 砂田重民

    ○砂田政府委員 ただいま木原先生がお話しの、明日香の今回発掘された非常に貴重な場所は、宮内庁の陵墓ではございません。宮内庁予算の中には、皇室の陵墓につきましては、維持管理費、改修費等が計上されているわけでございますけれども、明日香のあの場所はそうではない場所でございます。まだ詳細は伺っておりませんけれども、考古学的にとか美術的にとかいうことだけではなくて、出てまいりましたあの壁画には当時の星座がかかれていて、天文学的にも非常に貴重なもののようでございますので、明日香村の支出し得る費用だけでこれを保護し、管理し、また研究するわけにはまいりませんことは、もう当然のことでありますので、政府といたしましては、文部省の予算を使うか、あるいは予備費を計上するか、何らかの政府としての予算措置をいたしまして、管理、調査等に十分配慮していきたい、かように考えております。
  64. 木原実

    ○木原委員 今度出てまいりました高松塚の問題については、副長官がおっしゃいましたように、これはたいへんなことだと私どもも思いますので、できるだけの費用といいますか、措置をお願いしたいのは当然でございます。ただ、私が申し上げておきたいのは、宇佐美長官の御答弁は、おそらく宮内庁としてはまさにそのとおりだろうと思うのです。あるいは、一たび手をつけますとこれはたいへんなことになるというのは、私ども国民の一人として痛感をするわけであります。しかしながら、ある特定の、限られた一つなり二つなりの陵については、学会の中でも、そのお墓、陵の持っている歴史的な価値、あるいはその中に含まれているかもしれない文化遺産といいますか、相当な高い、われわれの民族文化の伝統を豊かにしていく、そういうものが含まれているに違いないと考える学者の人たちもいるわけなんです。それが、私も詳しい事情はわかりませんけれども、いま長官が御答弁になりましたような考え方の前でいわば立ちどまっている。  いままでいろいろな調査が行なわれたのも、私ども若干は知っております。外形から、お墓の形態の調査であるとか、あるいは破損をした場合に修理に立ち会われました方々が若干の部分の調査をして推定をしたものであるとか、こういうようなものがいろいろと学会等に報告されておるのは私どもも承知をいたしておりますけれども、ただ、私がここで考えたいと思いますことは、確かに、そういうふうにお墓を守っていくという大きな前提があるわけでありますけれども、同時にまた、皇室の歴史はかなりの部分が日本の文化を代表するそういう分野の歴史でもあったということになれば、やはり歴史ですから、現在の時点の中に立ってもう一度伝統文化の真実といいますか、あるいはまた豊かな本質を実証をする、そういう面に寄与をするということは、長官の御発言の中にございました精神やいろいろな皇室の伝統というものを決して冒涜するとにはならないような感じもするわけであります。つまり、進んで文化的に寄与をしていくという側面があってもいいのではないのか、こういう感じがするわけであります。したがいまして、いままではそういう形で大事に宮内庁がお守りになってきたことなんですけれども、きわめて限られた、そして非常に可能性の高い文化財については、一つの文化財として、国の仕事としてそういう立ち入った調査の機会を設けられることがほんとうにできないのかどうか。くどいようですけれども、重ねてお伺いをして御見解を承っておきたいと思います。
  65. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 重ねてのお尋ねでございますが、たとえば関西には陵墓が非常に多うございまして、道路をつけますとか、いろいろな公共的な事業の場合にも、それに触れる問題がございますが、私どもは、できる限りにおいて公共のためにはそういう点を譲るということもいたした例がたくさんあるわけであります。  それから、陵墓参考地というものがございます。こういうものにつきましては、いろいろ過去においてもございますが、たとえば京都市内の公園のまん中に小さく残ったものは、なるほど公衆のためにぐあいが悪いというようなところは、これをお祭りをいたしまして発掘をし、別段大きなものは出なかったわけでございますが、とにかく出たものは全部別のお寺に移して丁寧にお祭りをしまして、あと京都市のほうに渡したというようなこともあるわけでございます。ですから、陵墓参考地のうちには、事態によって何かそういうことができるのもあるのかもしれません。これは具体的に当たらないとわからないことでございますが、ただ陵墓というような問題は、お名前のわかっているお墓というものは、そう簡単に私どもはやりにくいことだと思います。
  66. 木原実

    ○木原委員 終わります。
  67. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 受田新吉君。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 法案に関連する国の基本に関する問題、特に憲法第一条、象徴天皇の御身分に関する基本問題をお尋ねしてみたいと思います。  憲法の第一条、それを受けて皇室典範が法律として誕生をしております。憲法の規定から、特に第一章の天皇の規定から皇室典範が生まれている。そのことの中に、法律的に解釈を明確にしておかなければならない諸点があるわけです。私、従来しばしばお尋ねしていることでありますけれども、きょうは宮内庁長官として、法律論争という意味でなくして、通常の形で宮内庁が解釈されている法律の解釈を承りたい点があります。  それは、憲法の第七条に書かれてある十に及ぶ天皇の国事行為というものは、一部委任ができるのか、全部でなければならないのかということをちょっと伺いたい。一部委任ということがあり得るか。国事行為は全部委任しなければならないのか。憲法第四条の二項の規定によって生まれた国事行為委任法は、そうした一部委任を可能と解釈してよいかどうかをお答え願いたいと思います。
  69. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 委任をなすべき条件に当たる場合におきましては、一部委任もできると考えております。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 摂政が置かれた場合に、天皇の名で国事に関する行為を行なう場合は、一部委任はできないと解釈してよろしいですか。
  71. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 摂政の場合は、一々の委任行為ということはなくて、当然その行為をなさることだと思います。イギリスなんかでは、たとえば国会の解散というものはできないというような規定を設けたようでございますが、わが国はそれもありません。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 摂政という地位を持った方が天皇のお仕事をなさる場合に一部委任はあり得ない。それは身体もしくは精神の重患であり、また重大な事故ということであって、天皇がその職務を行なうことが不可能であるという事情であると私は思うのです。しかし、一般的な憲法第四条の二項に規定したこの法律の対象となる国事行為は、一部委任が可能であるといま長官が御説明になりました。  そこで私、一つ指摘したい問題点があるのですが、陛下の年齢がだんだんと進んでこられて、しかも非常に精励恪勤しておられるお姿というものには、国民がひとしく心から敬意を表しておると言って過言でありません。午前九時御出勤、午後五時御退庁、そうした御殿における出務状況というものは、もって国民の範とするに足るような御勤務、ときに超過勤務をしておられる。年齢七十に達せられた陛下がこれだけ精励恪勤せられておることは、民間では予想もできないことで、まさに模範的な御勤務をしておられる。私はそのことを伺いまして、国事行為が十に及んでいる憲法第七条の規定の中で、このあたりで陛下の御任務を一歩一歩軽くして差し上げる意味で、どの項かを幾つか国事行為委任法によって皇太子に御委任をなさって、陛下でなければならないという項だけを残されるという行き方をなさる時期が来ているのではないか。つまり国事行為委任法を常時発動して、その一部を委任をされるという形がとられるべき時期が来ておるんではないか。摂政を置く段階には来たらない、しかし、国事行為を交代してお差しつかえない適当な項を適宜取り上げて、一部委任をするということを直ちに実行に移される段階ではないか。これを見ますると、どの項にいたしましても、なかなかそう軽やかなものはないようです。しかし、第十の「儀式を行ふこと」というようなところは、皇太子に御委任されてもよろしいことだと思いまするし、また国会の召集、衆議院の解散、「国会議員の総選挙の施行を公示すること」、こういう条項は、国会のお互いが理解をすれば、皇太子におまかせされてもけっこうではないかと思いまするし、また「憲法改正、法律、政令」の中の政令などは皇太子でやられてもいい。こういうような点は一部委任の可能性を持つものものだと思うのですが、いま私があげました事例は適当でないかもしれませんが、この中で、陛下が午前九時から午後五時、ときに超過勤務をされるというあの誠実なお方であるだけに、私は陛下に健康上の障害が起こっていただいたならば非常に残念だと思いまするので、この点を特に、日常陸下の側近におられて勤務しておられる長官から御答弁願いたいのです。
  73. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいまはたいへん陛下を思われた御発言でございますが、私は現状において、陛下の御健康、御気力から言って、そんな時期ではない、御心配はない。われわれもおそばにおります以上は、常にその御健康なり御気力をいろいろつぶさに拝見いたして、御負担が重くなる場合においてはいろいろなくふうをいたしておるわけでございますが、現状においては、そういうような特別に法律上の委任までしてなさるというような状態ではないと思っております。もしいまそういうことを発言したら、むしろ陛下はがっかりなさるのではないかと思うくらい御元気でございます。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 六十歳になると、普通定年という制度が一般社会にはあるわけです。それは正常な形で勤務するには年齢的に期限が来ておるという意味で定年ができておる。それをいまのように、国家公務員と同じような形で七十までも一般の人が勤務したとしたならば、これは非常な過重負担です。つまりお互いで、も六十でも定年になる必要ない、七十まではやれると意気込んでおっても、事実的には健康というものが漸次後退してくるのは、もう人間の自然の情勢であって、一般社会で、七十歳になるまで、陛下のように午前九時から午後五時まで、超過勤務もされるというような、そういう勤務をされる——国民のごく一部にはそういうかくしゃくたる人もおるのでございますが、通常は、六十歳ないし六十四、五歳をもって、午前九時から午後五時までの精励恪勤というものは、もう一般人においてすらも、これを漸次交代せしめていくというのが一般社会の情勢です。にもかかわらず、陛下がよわい七十をこえられて、なおその御勤務ぶりは壮者時代と変わらない。むしろ陛下のお目を通す案件はますますふえておるだろうと思うし、大使、公使の接受、認証、こういう問題、また羽田へのお出迎え、お見送りというようなことを考えていくと、たいへんな負担になると私は思う。おそばにおられてだいじょうぶだと見られておっても、そのうち一部をなくしてあげるような心づかいを周囲の人が考えてあげないと、陛下はがっかりされるといっても、全部委任していただくわけじゃない、陛下でなくて済む場合には代行せしめられてはいかがかということでございまするから、陛下に対する心づかいは陛下御自身がすなおにお受けになられる可能性があると私は思うのです。この機会に陛下に摂政を置かれてはどうかという提案をしているわけではなくして、せっかく国事委任法が出ておる、この法律は一部を委任できるのだということになるならば、この配慮というものを、側近で奉仕されておる長官たちがなされないと、御健康であると思っておっても、人生七十古来まれであると昔はいわれたし、特に、長い間、若いときから精神的にも肉体的にもたいへんな御苦労をされた陛下であるだけに、その重荷が一挙に出てこられる危険がないか。徐々にからだを休められる方向へ持っていかれる配慮を、側近第一号であられる宮内庁長官がされるほうが、私はむしろ陛下に対して忠実な公僕であると思うのですがね。
  75. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 るるお述べになりましたが、私どもも、ただいま気にしておりますことは、御年齢が進むということ、それが日常の御活動にどういうふうに影響するかということがやはり一番問題でございまして、これは侍医をはじめ詳細にみんなで見ておるところでございます。したがって、たいへん朝の早い、あるいは夜おそいというような問題はだんだんと軽くしてお願いしているわけでございますが、そういうことを申し上げるたびにおしかりを受けてしまうぐらいのお元気でございます。しかしわれわれは、いままでの過去の天皇さまのお例や何か調べていろいろ申し上げて、要するに非常に御無理になりそうな問題については真剣に考えておりますことだけを申し上げておきたいと思います。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 国会情勢どもきわめて目まぐるしく動いておる関係で、大臣の首切りもひんぱんに行なわれておる、そしてその認証式も時間をかまわず陛下のお前で行なわれておる、こういうようなことが最近ひんぱんに出ておるわけです。そういうときに、真夜中に衆議院の解散をやらなければいかぬというような場合も起こるでしょうし、いろいろな陛下の御健康に影響のあるようなことがおありだと私は思うのです。そういうものの配慮、つまり午後六時、あるいは七時以後の国事というものは遠慮する、事実こういうことになっているのかどうか、お答え願いたい。
  77. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 いままで、たとえば内閣の改造等でおそくなった例もございます。十二時になったときもたしかあったと記憶いたします。それはめったにないことで、最近は、なるべくおそくならないように、内閣でもいろいろ御配慮になっているようであります。そんなにおそくなることは、最近ほとんど記憶がないくらいでございます。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 長官、私は陛下国会おいでになって歩いておられるお姿などに、お足の歩行の状態がやや不安定になっておられるのじゃないかという懸念が一つあるのです。それから、ヨーロッパの旅へ出られるときに、アンカレッジの空港へおおり立ちになるときの陛下の足取りの不安定さというものをふと懸念して、陛下よ、御旅行よ、つつがなかれという祈りをささげた一人です。そういうことは日常そばにおられると案外気がつかぬが、われわれ大所高所から陛下のお身の上を思うておる者どもにとっては、そうしたことが非常に気にかかる。特によわい七十歳をこえられておられる今日、しかも皇太子はまさに壮者である三十代の男盛り、皇太子に国事の一部を負担させるというようなことは、むしろ親や子の間柄においてうるわしい光景である。しかもせっかく国事行為委任法が三十九年にできた。しかもその一部を委任することが可能であるという解釈も成り立っておる。こういう段階では、親子でそれぞれ分担をされて、一部を御令息に当たる皇太子におまかせなさるということなどは、これは私、親子の情においてもうるわしいことであって、陛下御自身も、皇太子に一部を譲ることを、おれは譲らぬ、朕が生ある限りやるのだというおぼしめしは私はないと思います。陛下御自身、この頃は皇太子にまかせられてよろしいときっと仰せられると思うのです。御相談なさってください。きっと陛下はそう仰せられる。私は陛下に御相談されておらないと思うのです。宮内庁長官、一部委任はいかがかということを御相談されたことはございますか。
  79. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 そういう御相談を申し上げたことはございません。そういう必要は私はおそばにいて感じておりませんからでございます。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 御相談をされないで、感じておられないというところに私は危険があると思うのです。これは私、もし陛下にそのために障害が起きられるということになれば、長官は罪万死に値することになるわけですけれども、私はそうした常時発動できる法律がせっかくできた。そうして一部委任はできるのだという解釈もできた。摂政を置くまでには至らないけれども、国事行為はもう一部委任して差しつかえないという段階をお踏みになることが、これはいまの日本に非常に大事であって、国民はそのことについては、だれ一人として、陛下にあくまでもやっていただこうなんという無理を頼むという意味ではなくして、陛下にそういう思いやりを持ったやり方をして差し上げることには好意を持ってくれると思うのです。これは世論調査をされても、きっと国民の願いがそうしたところに出てくるということを私は考えておるわけですが、長官が、みじんも陛下の御健康には不安がない——私は輔弼の任に当たって断じて誤っていないという強烈なる御信念がおありでございますので、私はこれは、陛下の真意をお確かめする方法があるとほんとうは助かるのですけれども、まあ長官、適当な時期に、ふとそういうことを御相談される。それで陛下が、いやいや私がやるのだとおっしゃるならいいけれども、相談もせぬといて、だいじょうぶというようなことは、これは強制であって、やり方としては民主的でない、こういうことになるわけですから、私はそういう意味で現に施行されている国事行為委任法を十分生かす道をとっていくことを要請をしておきます。  次に、きょうは少しかぜを引いてのどを痛めておって、日ごろの澄んだきれいな声でないのが申しわけないのですが、この皇室に関係する問題として、今度の経済関係にもつながるわけですが、ちょっと解釈が正確にならない問題点を取り上げて、お答え願いたいと思うのです。  かつて私がお尋ねしたことがあるのですけれども、そのときに明答ということになっていない。しかしいまの時点では、答えを出さなければならぬ問題があると思うのです。それは皇室経済法の中にも規定が書いてあるのですけれども、第七条に、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける」、こういう規定がある。三種の神器のごときものはそれに該当するのではないかと思います。皇太子のつぼ切りの剣などは一体どういうものであるかは別として、この「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」は国有皇室財産か、あるいは陛下の私物財産か、財産権の所在はどこにあるかをこの機会に明確にしていただきたいのです。
  81. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」ということには、この制定当時の金森大臣の答弁では、三種の神器等をさしますという御答弁であった。これはもう御承知のとおりであります。ただ、皇位とともに伝わるべき物は、ただそれだけではないんじゃないかと私ども思うわけであります。それで、ただいま皇室にはいわゆる不動産というものは一つもございませんけれども、そういった代々伝わってきておる由緒あるお品は他にあるわけでございます。これがやはり将来にわたってお代がわりごとに分散するということは、皇室として耐えられないことであろうと思います。したがって、この範囲というものをとらえてはっきりする必要があるかと思います。これは現在も作業を進めておるところでございますが、なかなか点数も多く、その評価という問題もございまして、まだ正確な結論に達しておりませんが、いま漸次進めつつあるところでございます。もちろん、由緒あるものとそうでないものとの境目というものは、なかなかむずかしい問題が一つございます。正確な整理にもう少し時間がかかるわけでございます。そういう次第でございます。  この所有権はどこにあるかということでございますが、これは皇室の内廷におられます方々の所有であるということになれば、かってにそれぞれのお考えで処分できるという結果になります。ここら辺の法律論というものはなかなかむずかしい点がございまして、私もかつて我妻先生なんかともお話し合いしたことがあるのですけれども、先生も名案が出なかったわけでございます。一つの財産のようなものでないだろうかというようなことを言われたこともあります。しかし結局、皇室というものに皇位とともに一種の公的に伝わっていくと申しますか、一つ一つが私的財産とも言いかねる。まあ皇室財産というような形でいくものじゃないか。はなはだあいまいなようなことでございますけれども、そこら辺を踏まえませんといろいろ支障が出てくるのじゃないか。いまいろいろ検討中でございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 その三種の神器ですが、いま入門鏡は伊勢神宮にお納めして、そのかわりが陛下のおそばにある。玉は本ものがある。剣は熱田神宮に伝えられておりますね。そういうこともあるものとして、これを盗まれた場合、そのときのその責任はどうなってくるかということ。つまりこれは、皇宮警察がしっかりしているから盗まれるようなことはしないだろうと思いますが、そこにまことにすばらしい盗賊がおりまして、これを巧みに奪い去っていった場合の責任はどうなるかということになるわけです。単なる窃盗としてやるべきかどうかという問題ですが、御答弁願います。
  83. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 三種の神器というのは、いろいろ説もあるわけでございますが、伊勢御鏡、熱田神宮の刀、それからそれを模したお鏡と太刀がある。それから玉がお手元にあります。ですから、御践祚の場合にはお手元にあるものが伝わるというのが、いわれているところでございます。したがって、非常におそば近く神聖なところに納まっているわけでございますが、これが万一の場合どうかという点、もちろんわれわれの責任でございます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 宇佐美長官はこの三種の神器は直接ごらんになったことがありますか。
  85. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ありません。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、ごらんになった経験がない方が、これは神器かどうかがわからぬままに、今度の外務省の事件のような機密が漏洩することが平気で行なわれるような役所の危険があるとするならば、宮内庁にもそういう危険がなきにしもあらずだ。長官御自身が、その三種の神器がどういうものであるかをごらんになっていない。これは陛下以外の方は、皇太子に引き継ぎされるときには、だれか側近、侍従長は、これを拝見できるわけですか。これは、皇太子に皇位とともに継ぐときに、どういうやり方で継がれるのですか。だれか立ち会うのですか。立ち会わないのですか。
  87. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 もちろん私どもは、一々拝見しておりません。常におそばに、一番お近いところに非常に厳重に保管してあるわけです。それはやはり侍従がお手助けをしておりますから、万一の場合の、そういう神剣が移るというような場合は、侍従が奉持をしていくという昔からの制度になっております。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁のことは全部長官は御存じかと思ったら、まだお知りにならない面もあるということになるのですけれども、私、そう秘密にすべきものでなくして、陛下のおそばにある三種の神器というものには、非常に神聖さはあるけれども、しかし、長官はこれをごらんになっておるべきだ。さっそく拝見をされたらいいと思います。それは決してそのために神厳を侵されるというわけではありません。宮内庁を担当する最高行政官がごらんになるということは当然であって、陛下も御安心されるわけです。私は、そうした何か長官御自身がわからぬようなかっこうでいくような宮内庁の古いしきたりというものに、このあたりでピリオドを打たれてよい。それを強く感じておるのです。  宮中には三殿があります。賢所、皇霊殿、神殿と。私もいつか皇居へお参りしたときに、その三殿の前を拝して通りました。この宮中三殿というものは皇室財産か。あるいは、これもかつてちょっと触れたことがあったのですが、神殿は神を祭ってあるから神道に関係がある。それを皇室財産として扱うということになると、特定の神道に対して国家が強制的な予算の振り当てということにもなる。こういうことでありますが、賢所、神殿、皇霊殿、この三つの御殿は、大体陛下に一番大事な御殿でありますだけに関係があるわけですけれども、しかし、宮中三殿の性格は、皇室財産か、あるいは陛下御自身の私有財産かということを、御答弁願いたいのです。
  89. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 三殿のお建物、施設につきまして、それがどこの所有かということは、この前にも御意見ございましたし、われわれもその当時もはっきりとお答えできなかったわけです。なかなかいろいろ議論がございまして、数年前から真剣な論議をいたしております。法制局その他大蔵省等ともいたしておりますが、意見がなかなかまとまっておりませんで、はなはだ申しわけないのでございますが、ここでどうなるかということはまだ申し上げかねております。われわれとしても、はっきりしないといろいろな御修理その他にも困るわけです。まあ論議といたしましては、私有財産と見ることもできる、あるいは公有、国家財産と見ることもできるというわけでございます。ただ、将来あれを建て直すということが起こりましたときには、とても内廷費の私有財産としてはできかねるだろう。そういう意味からいくと、国有財産にしていただくほうがいいのではないかという議論も強いわけでございます。いまだに関係方面で結論が出ておりません。何とか早く結論を出したいと思っておるわけであります。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 これは結論を出されてしかるべきだと思うのです。つまり神殿ということになると、神道の性格を持っておられる御殿、皇霊殿も大体それに似通っている。賢所には、これは古来の日本の伝統である皇室の御縁があるわけでございますが、賢所大前の儀が行なわれるというような立場から言うならば、やっぱり神に通ずるような感じもしないこともないけれども、私はこれは、陛下御自身の私有財産ということにして、しかしそれは、内廷費を大幅に増額して、象徴天皇御一家の大事な三殿であるとする。言うならば、憲法第一条に規定してある象徴天皇御一家のそうした大事な私的財産に対して、内廷費を大幅に増額し、その修理等に陛下御自身のお気持ちで思い切った措置をされることは決して差しつかえない。国民はそれに対して反対者はない。特別の人は別として、それに対しては、象徴天皇御一家に対する愛情として文句はないと考えておるのですが、その性格を明確にされて、そしてそれは、家をつくりかえる、屋根をふきかえるというような相当高額の予算を必要とするような場合でも、内廷費の増額をそのときに限り、ちょうど伊勢神宮の遷宮式と同じような形で行なう。伊勢神宮はいまは国家の予算からはずれてしまっておりますけれども、それと同じように、陛下の御自身の側近にある大事な御殿ですから、それは内廷費として計上してよろしい、こういう行き方で私は差しつかえないと思うのです。これはもう戦後二十七年もたっている今日ですから、その解釈を明確にして、その予算については内廷費をもって処理できる。そうした大幅に経費を必要とするときは、特別増額措置国会で承認して差し上げるという形が私は適当ではないかと思うのです。そうしないと、皇室財産、国家財産というような関係になると、いろいろと宗教上の問題も起こってくるという懸念を私は感じますので、そういう意味で陛下の個人の財産であるとする。ヨーロッパなどには、王室の私有財産というのが相当あるのです。ところが日本では、皇室の私有財産というのは非常に制約をされておる。全部皇室財産ということにされて、陛下御自身にとっては、ヨーロッパの王室に比べて非常に御窮屈だろうと思うので、御自身で処分されるようなものがあってもいい。御自分が非常に信頼する国民に対しては、陛下御自身のお持ちになってるものを贈与される。別に内廷費などで金額の増額をはかって、一千万をこえない金額にするという今回の措置などというかっこうでなくて、陛下が個人の財産をお持ちになっていいと思うのです。陛下御自身、国有財産の中に埋まって、個人の自由というものを財政的にも全くお持ちにならぬような形になっておる。これは私、陛下御自身の個人の私有財産というものとされれば、宮中三殿のごときは、その意味では陛下御自身がほんとうに満足されると思うので、それに対する必要経費は一般的に内廷費から振り向ける、こういうようなかっこうで、すべて国家が陛下の周辺を縛っていくような形でない、皇室、象徴天皇御一家の自由というものを財政的にもある程度つくってあげることが必要である。これは皇族の場合も同様ですが、皇族であると自分で月給取ってサラリーマンになられるという御自由がある。また臣下に下られると全く自由になる。そういうようなことで、皇室及び皇族の関係というものに対してのあまりにもきびしい財政的な縛りつけというものをある程度解放して差し上げる配慮が私は宮内庁長官に必要だと思う。  これはイギリスの王さまなどは、国会に対していろいろの注文をつけられるようである。あの歴史と伝統の古いイギリスでさえも、国会に対する要望、政府に要望があるのに比べると、陛下はそういうものを一向におっしゃらない。仁徳天皇の仁慈の徳を実践されるだけであって、お年を召されて何ら個人の欲望をお持ちにならぬ崇高な陛下に対して、何かの自由のお気持ちを、そうした財産の上でもくんで差し上げるような配慮を私は必要とすると思うのです。  私の意見を申し述べたわけですが、それに対してお答えをなさるのは容易でないと思うけれども宮内庁長官というものは、そうした陛下御自身が人間天皇としての立場で希望される面が何であるかを終始配慮しながら宮内行政の責任をとっていただかなければならない。  また、陛下が外出されるときの警備ども、私は厳重に過ぎると思っているのですが、日本の場合は、ヨーロッパと比べてちょっと事情が違うので、ある程度やむを得ない。皇宮警察はきょうよろしいと申し上げたのだが、ここまで来ると皇宮警察に質問をしたくなってきましたけれども、よろしゅうございます。よろしゅうございますけれども陛下の御外出に対して、皇太子御夫妻も同様ですけれども、もっと自由性を持っていけないものか。私自身、富士山の頂上で義宮さんと私の子供たちと一緒に輪を組んでお話しし合った。そしてきわめて楽しい写真を私何枚か持っておるのですが、義宮さんがそうした庶民の中へ飛び込んで、一緒に私たちのグループの中で楽しく山登りをされた。ああいうかっこうは、これは国民的な規模で皇室並びに皇族に対する親近感がわいてくると思うのです。そういう配慮をなさる努力をひとつ宮内庁長官はやってほしい、御期待を申し上げたいのです。  私、もう一つ法律的な解釈で、長官としては何を考えておられるかをお伺いしたいのですが、摂政を置かれる条件の中で、精神、身体の重患という場合と重大な事故という場合がある。ところが国事行為にはそれがない。つまり、身体の疾患、精神の疾患、または事故とあります。この摂政を置く場合の重大な事故というのは、たとえばどんなのを宮内庁長官は想定されておるのでしょうか。
  91. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 先ほども申しましたが、国事行為の委任と摂政の違いは、要するに、摂政を置く場合を除いて、天皇に精神あるいは身体の故障、あるいは事故というふうに法律はできておると思います。それで御外遊の場合には、その事故というふうに考えております。ただ、摂政の場合の重大な事故ということは、どういうことでございましょうか、身体的障害のことを考えているのか、私どもいま、どういう例ということはちょっとすぐ申し上げかねます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 身体、精神の重患ですから、これは非常に重い。執務される状態には全然ない。このほうは身体と精神のほうで、大正天皇の場合などはその中に入られたわけですね。事故というのでなくて、重大な事故で陛下がみずから執務できないという場合は、たとえばクーデターなどによって陛下が監禁される、こういうような場合は絶無とは言えないわけです、そういうような状態なども、私、含むのではないかと思うのです。  私は、この皇室に対する規定は、いろいろの場合を想定しておかなければいかぬと思うので、わざわざこれを例示したのですが、皇室典範の条項を見ると、宮内庁長官、これは総理府がなさる筋でなくて、何とか宮内庁御自身で考えていただきたいところがあるのです。総理府長官は横から御答弁いただく程度でけっこうだと思うのですが、たとえば、皇室典範の第二十四条には「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う」、第二十五条には「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」。即位の礼はどういうかっこうで行なうのか、大喪の礼とは何か。大喪は国葬の最高のものだと私は思うのですけれども、国葬の規定もないときに、大喪の規定というものもまだできていないわけです。こういうものは何か政令で、大喪令とかいうようなものを考える。昔はそういう勅令があったが、国葬令、大喪令、そんなものはちっともない。つまり皇室典範に伴う政令というものは一向にないのです。これは、陛下の不幸を予想することは、私、好ましくありませんけれども、しかし、法律的にはこういうことをきちっとしておかなければいかぬ。つまり皇位継承があったときの即位の礼はどういう形で行なうかということは全然白紙です。元号がそれです。元号はどうなるのか、これは私はしばしば申し上げているから、きょうは元号には触れますまい。しかし即位の礼、大喪の礼、こういうものは一体どうなるのですか。これに伴う政令でこの規定を設けるべきじゃないですか。法律でやるわけですか。
  93. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 先ほどお尋ねで、重大なる事故ということをちょっとはっきり申し上げかねておりましたが、解釈的には、天皇の失踪あるいは戦時中の捕虜というようなことが一応考えられるということでございます。  それから、いまの即位の礼、大喪の礼というようなものにつきましては、お説のとおりに、何ら規定的にはできてはおりません。ただ、即位の礼のほうは、まあおめでたいことに属するのかもしれませんけれども、そこの規定を、正式にあるいは政令なり何かできめるというのは、何でもないときにやることは、非常にむずかしい感情のものでございます。しかし、われわれの内部におきましては、そういったもので過去の例とかいろんな前例を調べ上げてございまして、一応のものの考え方というものを内々は立てているつもりでございます。しかし、そうは言いましても、たとえば、即位の礼というものは昔は京都で行なわれておりましたが、今後は一体どこでどういうふうに行なうかというような重大な問題が、これは相当論議を要するところであろうと思います。そういうようないろいろな点の資料を集め、問題点は拾い上げているつもりでありますが、まだ政令までには進んでおりません。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 きょうは、お久しぶりに宮内庁長官がお見えになりまして、おなつかしく存じ上げておるのですが、宮内庁の場合は、次長が政府委員になって長官説明員という主客転倒になっておる。これは正常に返していただきたい。今後、長官御自身でこうして進んで御説明されるということは、皇室に対する尊厳を加えることにおいても、たいへん効果があるといろ意味で要望しておきます。政府委員を次長と御一緒にやっていただきたい。いけないときには次長にやってもらえばいいのであって、政府委員をやられて一向差しつかえないと思います。  それから総理府長官は、長官と相談され、部内をよく引き締めてもらいたいのだが、公式制度を調査をするための機関を開いていただきたいのです。一向にらちがあいてない。たとえば、元号をどうするか、国旗をどうするか、国の歌をどうするか、外国のお客をどうするかというような問題等を審議する機関を一応設けていただいておるにもかかわらず、その機能は麻痺しておる。やる気がないならないと言ってもらいたい。そういうものは国家の形態の上に非常に大事なものだ。いま日の丸の旗が日本の国旗として、これは正規に何かの法律的根拠を持つのか。あるいは国の歌は一体何が国の歌になるのか。君が代が正規の歌なら、これをぴしっと国歌として制定されるのがよい。ついこそこそと国旗と国歌が適当なところで使われておる。この扱いは、国の体面上、レッテル上において残念です。これをいいかげんに扱っておるところに、総理府の非常に怠慢がある。元号の問題だってそうなんです。これもどう扱うか。西暦を用いるのか、あるいは元号を引き続き一世一元というものを使うのか。わが国の元号は法律的には拘束力がない。しかし、慣例として使われておるということになっておるのですけれども、そういうものを今後どうするのかというようなことは、これは国家形態の基本です。副長官は、この公式制度連絡調査会議というのが総理府の御所管の中にあるのを御存じか、全然御存じないか、御答弁を願います。
  95. 砂田重民

    ○砂田政府委員 受田委員指摘の公式制度連絡調査会議は、あるということは承知しております。ただ、たしか前回開かれたのは昭和三十六年だったというふうに記憶しております。先生御指摘の国旗、国家の問題、また、先ほどお話のございました即位の場合あるいは大喪の場合等、何もきまっていない。すべてこういうことはもう国の基本に関する問題でありまして、公式制度連絡調査会議が一向検討、研究、勉強もしてないということは、まことに残念なことであると思います。こういったようなことにつきまして、私が副長官在任中に間に合いますかどうですかわかりませんけれども、できるだけ私の在任中に公式制度連絡調査会議というものを一ぺん開会いたしまして、そこで問題点を検討の爼上にはあげていきたい、このように私は、先般、元号の問題に端を発して、そういう気持ちを持っておりますことをお答えをしておきます。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 砂田先生いつまで御在任でやっておるかということですが、御在任中に処理をしたいという御熱意のほどは見上げたものです。これはやってください。日本の国の形態の基本ですから、それをもっと具体的に掘り下げて皆さんの意見を聞けば、自然に答えが出るのです。そしてきちっとしておかれる必要があるのです。もう独立国家となって二十年、総理府長官も少しなまけておられるのです。去年、私、御注意したにかかわらず、以後何もしてない。去年、ちょうど木原先生も知っておいでですけれども、私がここで厳重に注文したにもかかわらず、一年たって何にもしてないとなると、副長官御自身、隣にお聞きにならなければ様子がわからぬということでは、これは前代未聞と言っては何ですけれども、相当な罪万死に値するものがある。これはほんとうに大事なことですから、お気をつけていただきたい。  私、おしまいに、皇室国民とを直結するためには、桂離宮とかあるいは修学院離宮、これは両方とも京都にある。こういうものをもっと国民に開放して、ことに、人数を一日四十人と制限を加えて、一年も前に申し込んでやっとこさ希望が果たされるというようなかっこうだが、私は去年の秋見せてもらって、これはいかぬなと思った。もう少し国民に開放して、このりっぱな文化財を、離宮としての貫禄を、これを国民がよく理解するようにしてあげてしかるべきだと思う。大体、京都の御所、こっちのほうを京都市に払い下げて、修学院離宮とか桂離宮とか、そうした別の次元の低い離宮のほうをいまなお宮内庁の所管にしている理由はどこにあるのか、これは私ちょっとわからぬところがある。お答え願いたいです。
  97. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 京都御所は払い下げておりませんけれども、二条離宮じゃございませんか。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 二条離宮です。二条離宮を京都市へ払い下げておる。
  99. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 修学院離宮とか桂離宮というのは、もともと天皇さまとか桂宮さまがお建てになった、古くから皇室に御縁故のあるものでございます。二条城というのは、徳川のお城であったものを、徳川幕府がなくなりましてからいろいろのところを転々といたしまして、市として持っていたこともございますが、明治十七年に宮内庁の所管になったわけでございます。また府であるとか陸軍等が持っていたときもございます。そしてこれを京都市へ払い下げたのは昭和十四年でございます。そういうわけで、まあとにかく皇室の御縁故というものは非常に少ないわけでありまして、方々ございますが、いろんな離宮を整備された、そういうものの一環として京都市にお下げになったわけであります。もともと皇室のものであった桂とか修学院は、いまだに皇室の所管に入っているわけでございます。そういういきさつでございます。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つの答弁をお願いせなければいかぬ。つまり、桂離宮、修学院離宮は、大ぜいの参観申し込みをごく一部しか実行できていないのです。職員が足らぬのなら増員すればいい。定員が足りないならわれわれで手伝いしましょう。こうした高度な文化財を国民に公開する必要がある。私もそのときに案内してくれた職員の方と話して、あなた方の御苦労は非常にたいへんなものであると思うが、もっと多くの国民がこの離宮の文化財をじかに見ることができるような努力をしてほしい。いや、人間が足らぬのでやむを得ませんということでしたが、そういう人間が足らぬということから、宝の持ちぐされのようなことで京都の一角に眠っているということになるのです。これをもっと大幅に開放するということはどうですか。
  101. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 桂離宮と修学院離宮とは、規模その他から若干違う点もあろうかと思いますが、桂離宮のほうは、非常に小さい、きわめてデリケートな文化財でありまして、かつては非常な制限を一定の資格の人とかいうようなことでいたしましたが、いまでは、その資格というものをまずはずしまして、とにかく申し込みによって受け付けておるわけであります。ただ数の上では非常に少ないので、あまり小さい少年なんかは入れておりません。初めは桂離宮も邸上に上げて見せていたのでございますが、人数が多くて非常に荒れてくる、そういう面から、いまはもう上に上げないという措置で、庭のほうから拝観するという形にいたしております。要するに、ああいうものを観賞するということ、保存ということ、それから公開するということは、いつも限界の問題が出てまいります。お庭のほうでも、参観が非常に数が多くなりますと、やたらにコケを踏みつけて荒らされてしまうということもございまして、幾らでも入れられるというものでもないと私は思います。ですから、ああいう大事なものを保存しながら、また多くの人に見てもらうという方針をとるほかはないと思います。  ただその場合、いまなお案内する人が三人ぐらいしかおりません。そういう人数の問題はございますが、その三人が、しかも事務もやり、一部には清掃をやる人の監督もしているというようなことで、なるほど案内する人が言ったように、人数の少ない点もございます。人員をふやすということは非常にいまむずかしい問題がございます。われわれも努力しておりますが、そういう事情であります。  それから修学院のほうも、人数は少しよけいになっておりますが、あるいはもう少し手がございますれば、一定の人数をふやすことができるかもしれません。また修学院のほうは、ああいう土地柄、いつも地元の市の要望で、時期を得て特に大ぜいに公開というようなこともいたしております。そういうようなことで、われわれとしましても、もう少し手をふやしながらできるだけのくふうをして広く見てもらうということは、だんだん考えてまいりたいと思います。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 これでおしまいにしたいと思うのですが、長官、それによく似通ったようなことで、下田、葉山、さっきから論議されておる那須、こうした御用邸に、ちょうどここの赤坂離宮、大宮御所のあとで園遊会をされるような形で、地元の皆さん等にどの日か御用邸を開放して、国民とともにある陛下という形で一般市民と喜びを分かつような計画も、私やられていいと思うのです。つまり地域、地域で、御用邸の周辺に住居する人々中心の国民的規模のそうした催しを考えてはどうか。  それからもう一つここでお尋ねしておきたいのだが、陛下が御用邸に冬、夏、避寒、避暑される期間がどのくらいあるのか。その時期における国事行為はそこまでやりに行くのかどうか。その二つをお答えいただきましょう。
  103. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 陛下が那須においでになりますのは、土地柄、大体七月、八月、九月の上旬くらいでございます。それから葉山のほうは、むしろ真夏は非常にこみまして、現実にはおいでにならない。いまでは、一月とか二月、あるいは三月はございますか、それから秋、十二月ごろ、これもいろいろなお行事とかみ合わせて考えておるわけでございます。  そういうようなことでございますが、そこで、国事行為と申しますのは、いろいろな政府からの御裁可をいただくものとか、それなんかは内閣のほうから持参されます。那須、葉山まで持ってまいります。それから認証式等で急ぎますものは、現場に来て各御用邸で式が行なわれております。それからあとは、別段、その他の公的なお客さまや何かが行かれたりという例はほとんどないくらいでございます。主としてお休みになるというのを中心にしてやっておるわけでございます。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 そこで一つ問題が出るのですがね。そういう御用邸におられる間は、午前九時から午後五時までの御勤務というのが、今度はお休みであるから、ないわけですね。
  105. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 はい。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 皇居におられて執務される、吹上御殿におられて執務されるかっこうは、御用邸の場合には解放されていらっしゃるということであるならば、この国事行為というものは、御用邸におられるときはあなた方が整理しておられるということになるのですね、事実問題は。それを私はお願いしたいのです。つまり陛下に、吹上御殿の御勤務から、御自由な時間、それを多くつくってあげるように、九時にはきちっと出勤されて五時に退庁されるという、この御勤務のきびしい形態から解放してあげるように御努力すべきじゃないですか。いまの別邸におられるときには陛下が解放されておる。認証は数少なくできないでしょうが、法律や政令をまとめて処理するとか、くふうしておられるのです。  それからもう一つは、それに伴うて、木原さんが質問された、陛下御自身は那須や下田におられて、ある時期を宮城へおいでになっていくという形。今度は逆に考えて、陛下空気のいいところに原則として住まっていただいて、御皇居へは御執務のためにある期間出られる、あとは御用邸で処理されるというような配慮、そういう方法が一方であると私は思うのですがね。そういうことによって陛下の御健康を守ってあげるやり方が新しく生まれてくると私は思うのです。そういうところへ、ひとつ長官、頭をお向けになられるか。私のいま指摘した、御用邸を中心にされて陛下皇居に御出勤になる。途中の警備がたいへんだということが一つあると思うのですけれども、原則は、そうした空気のいいところにお住まいになって、ある期間を皇居おいでになる。そして国事行為は御用邸でされる。いま三月も御用邸におられる期間があるという話があったなれば、これはたいへんな期間おいでになるわけですから、私のいまお話ししたことは、孟子にある五十歩百歩で、このまま御用邸におられても皇居におられても同じことだと思うならば、御用邸におられることが筋論として通ると思うのです。
  107. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 那須に七月、八月、九月ぐらいまでおいでになる。その間、たとえば八月十五日のような特殊な日だとかは随時お帰りになっているわけでありますが、その他は、夏というのは外交関係はほとんどございません。昔からの慣習で少ないわけです。それからあと、葉山のほうは、大体一週間とか長くとも十日ぐらいの短い期間でございます。  それから、先ほどから、陛下皇居で朝九時から夜五時まで詰めておられるということをおっしゃいましたが、そういうことでもないわけで、大体十時ごろ新宮殿のほうに出ていらっしゃる。お昼ごろまでは確かに何か御用がございます。それから午後も、あるいは信任状捧呈式があるとか特殊な人に会うとかいうことで、おいでになることもございますが、午後はそれほど詰まっておりません。それから、いろいろな政府からのあれも、大体閣議終了の後の火曜日とか金曜日が多いので、その他はそうないわけであります。国会があれば、国会で上がりました法案とか政令——政令はあれでございましょうが、そういうものがどっと来るときはございますが、そういうものも国会がないときはそうないわけでございます。ですから、そう朝から夕方までずっと詰めていらっしゃるというわけでもございません。ですから、そういった長い期間のときは事柄が少なく、短くおいでになるときは何とかやりくりができるということでございます。しかし、葉山にも、内閣から書類は急ぐものは持ってまいります。そういうことはございます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃこれで終わりにしますが、長官、私、願いたいことは、象徴御一家に対する行政責任の最高地位にあられる長官として、陛下国民をよくつないでいく役割りを終始頭に入れておいていただきたい。陛下国民から遊離させられるような配慮をできるだけ避けてもらいたい。世間においては、宮内庁陛下国民から遊離させる傾向があるという批判が盛んに出ている。私さっきから承っておると、長官の心づかいの中にそれがちょいちょい見られるんですよ。私自身がひしひしと感じました。海外旅行にいたしましても、次はどこへ行くかということに、おそらく陛下は夢を持っておられると思うのです。さっきから議論があったと思うのですが、ヨーロッパの次はどこかという希望など、長官が伺い立てられるというところまで行っているんですか。側近におられて陛下の御希望などもよくわかっておられると思うのですが、いま私が指摘した海外旅行に対する陛下の御希望など、政治問題でむずかしければ、私はあえて答弁を要しませんが、沖繩の御旅行等もある程度政治問題があると思うので、ヨーロッパに次ぐ海外旅行はどこか。西半球に対する、あるいは東南アジアに対するというようなものが、何か話題にのぼっておるのかどうか。去年の御旅行でおしまいだという感じかどうか。こういうことも、私はそうあってはならないと思いますので、御答弁をいただいて、それで質問を終わります。
  109. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 海外御旅行についてお尋ねでございますが、昨年初めて御外遊になります際、一ぺんおいでになりますと、また将来いろいろ問題が出てまいります。またお出かけ願うというふうにみんな期待をするわけです。そういう面から、一体世界のどういうふうなことを考えておられるかというようなことは、陛下ともお話し合いを私は何べんもいたしました。ただ、これからどうするかというようなことをここでいま申し上げるのは、ちょっとむずかしい問題がたくさんあると思います。もちろん、ですからそのときも私は報道のほうにも申しましたが、おいでになるというのは、御健康もよし、いろいろな点が差しつかえなければおいでになる。しかし、外国から元首の方が見えるとか、あるいは公式訪問があるということは、全部お答えはできませんと私ははっきり言っております。できるときはできる。ですから、ないとは申したことはありませんし、私はあってしかるべきだと思っております。ただ、いつ、どういうふうにということは、まだ煮詰まっていないということだけは申し上げておきます。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 長官、あなたはいま陛下と終始話しておられるそうだから、私は、木原さんも鬼木さんも、野党ながら象徴天皇御一家に非常に敬意を払って、天皇御一家に幸い多かれと、統合の象徴の御一家に対しての敬愛の情をみなささげておるわけです。こういう国会の論議などというものについては、速記録か何かを陛下にごらんに入れることがあるんですかどうですか。  それからもう一つは、その一部をかいつまんで、どういうところが論議されておる、陛下のお気持ちをわれわれある程度はかってみたい。つまり陛下気持ちを押えて、宮内長官国会でかっこうをつけた答弁をするとなれば、われわれのこうした陛下に対する敬愛の情が遮断されるわけですから、そういうものについては、大事なポイントは、国会で論議されたうちで、陛下にためにならぬことは報告せなくてもいいが、陛下自身が判断をされて、こういう行為が国会で論議されておるならば私はそれをひとつやりたい、というようなお気持ち長官にでもすなおにおっしゃっていただけるようなかっこうであるならば、だれがどう言ったということは必要ないですが、国会の論議で陛下に対してこういうなにがあった——野党はみな、その意味では天皇制擁護の政党ですよ。天皇制擁護の政党からそういう声が出ておるんです。そういうことを陛下御自身にすなおに伝えられておれば、もっと長官のわれわれに対するはね返りがあると思って私は期待しておるのですけれども、今後、そうした天皇御一家に対して、国民と連結する、敬愛する御一家たれと祈っているそれが、その橋渡しをなさる長官によって遮断されては残念だと思うのです。非常に品のいい、人格も高潔な長官であるだけに、陛下に対して庶民の声が忠実に耳に入るような役を果たしてもらいたいのです。よろしゅうございましょうか。私の申し上げることがいけなければいけないで、ひとつまたあらためて長官のお考えに対する論議を次の機会にさしていただくこととして、御意見だけ承っておきます。
  111. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 きょうは各委員からの御質問が、仰せのとおり、非常に皇室を思ってわれわれを激励していただいたと私もとって、ありがたく拝聴しておりますが、今回に限らず、ここで申し上げていいと思いますが、私がきょうここに出ますことは陛下も御承知でございます。おそらく、あしたかあさってかわかりませんが、どういう論議があったかと、お召しがあってお聞きになると思います。ですから、こういう方からこういう御質問があって、私はこう答えたということをいつも申し上げておるわけで、それは単に国会のことばかりでなく、たとえば、そこにだいぶ見えております宮内庁の記者クラブなんかと会いましても、御旅行のあとなんか、記者は私の行動に対して何か言ってないかといつもお尋ねがあるくらいで、何か意見があれば私は聞いて申し上げます。批判もあり、あるいはある意味じゃお耳の痛いととも申し上げるのが私は忠義だと思っております。ですから、ここの大体の趣旨というものは、陛下にも必ず通ると私は感じております。
  112. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 次回は、明三十一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会