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1972-03-24 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十四日(金曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 山口 敏夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君       天野 公義君    江藤 隆美君       篠田 弘作君    辻  寛一君       浜田 幸一君    湊  徹郎君       上原 康助君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         国防会議事務局         長       海原  治君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         通商産業省企業         局参事官    田中 芳秋君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      松川 道哉君         大蔵省理財局資         金課長     福島 量一君         水産庁長官官房         調査官     前田  優君         建設省河川局開         発課長     宮内  章君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同月二十四日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     江藤 隆美君   中山 利生君     浜田 幸一君   上原 康助君     安井 吉典君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     阿部 文男君   浜田 幸一君     中山 利生君   安井 吉典君     上原 康助君   東中 光雄君     松本 善明君     ————————————— 三月二十一日  国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に  伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提  出第九二号) 同月二十三日  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外四  件(安倍晋太郎紹介)(第一八〇八号)  同(小川半次紹介)(第一八〇九号)  同(大竹太郎紹介)(第一八一〇号)  同外四件(小澤太郎紹介)(第一八一一号)  同(草野一郎平紹介)(第一八一二号)  同(河本敏夫君紹介)(第一八一三号)  同(坂村吉正紹介)(第一八一四号)  同(森下元晴君紹介)(第一八一五号)  同(谷垣專一君紹介)(第一八一六号)  同(床次徳二紹介)(第一八一七号)  同外十八件(野中英二紹介)(第一八一八号)  同外一件(林義郎紹介)(第一八一九号)  同(長谷川峻紹介)(第一八二〇号)  同(服部安司紹介)(第一八二一号)  同(藤波孝生紹介)(第一八二二号)  同(倉石忠雄紹介)(第一八六七号)  同(中尾栄一紹介)(第一八六八号)  同(永田亮一紹介)(第一八九四号)  同外一件(上村千一郎紹介)(第一九二〇号)  同(奥野誠亮紹介)(第一九二一号)  同(始関伊平紹介)(第一九二二号)  同(西村直己紹介)(第一九二三号)  同(渡辺肇紹介)(第一九二四号)  傷病恩給改善に関する請願外二十三件(山口敏  夫君紹介)(第一八二四号)  靖国神社国家管理反対に関する請願山中吾  郎君紹介)(第一八二五号)  同外五件(横路孝弘紹介)(第一九六〇号)  従軍日赤看護婦に対する恩給法適用に関する請  願(小川平二紹介)(第一八六九号)  海の日制定に関する請願(山村新治郎君紹介)  (第一九二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩開発庁設置法案内閣提出、第六十七回国  会閣法第五号)  沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別  措置等に関する法律案内閣提出、第六十七回  国会閣法第七号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  佐藤人事院総裁より発言を求められておりますので、これを許します。佐藤人事院総裁
  3. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一言ごあいさつ申し上げます。  先般、再任の発令をいただきました。一向かわりばえいたしませんけれども、従来どおり御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 沖繩開発庁設置法案及び沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別措置等に関する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤惣助丸君。
  5. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 沖繩開発庁設置法案並びに沖繩特別措置法案の二法案の審議が始まる前に、防衛庁長官は十時半までのようでありますから、それまで防衛庁長官質問をし、さらに続けて法案質疑に入りたいと思います。なお、防衛庁長官はまた十二時から一時まで出席なさるということでありますので、質問は残しておきましてまたやらしていただきたいと思います。  初めに沖繩自衛隊の問題であります。このことは、久保カーチス協定において、返還時にスムーズに事務引き継ぎができるように取りきめした。しかしながら、この久保カーチス協定は単なる事務引き継ぎの取りきめでもある関係から、さらにまた国防会議にかけて変更もあり得る、こういうふうに総理から答弁を伺っているわけですが、防衛庁長官、間違いございませんか。
  6. 江崎真澄

    江崎国務大臣 そのとおりでございます。
  7. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 沖繩自衛隊派遣については、つい最近行なわれました立川の、あの夜陰に乗じてという、事前通告というものを無視して強行移駐をしたというようなことが決してあってはならぬ。特にそういう前例からもこの自衛隊配備については慎重に考慮してほしい、こういう立場で私たちは考えております。  そこでまず、この自衛隊派遣に対して現在どのようなスケジュールか。だいぶ部隊編制がかわったとか、あるいはまた、おくれるとかいうような非公式な報道またはお話を伺っているわけでありますが、具体的にその問題について伺いたいと思います。
  8. 江崎真澄

    江崎国務大臣 時間の関係もありますから、先に防衛局長答弁させます。
  9. 久保卓也

    久保政府委員 久保カーチス協定、取りきめの中身によりますと、約半年以内に三千二百人を配置する予定でありますが、現在のところ、やはり地元の県内情勢を考え、また施設工事につきましても慎重に進めるというような配慮をいたしてまいりますると、当初考えましたものよりも、部隊の規模といいますか、部隊の配置及びその時期というものについて若干ずらせることのほうが適当ではないか。またある面ではやむを得ない面もあろうと思います。  そこで、たとえば、復帰の直後に私どもは約六百名を配置する予定でありましたが、これを庁舎管理要員最小限にしぼって約四百人ぐらい。それから当初、七月の初めに陸上部隊の大部分、海上自衛隊については十月に基地隊、十二月の初めに航空隊編制、それから一〇四の部隊は十月の初めに展開というような計画でありましたが、それぞれ若干ずつずらせることのほうが適当ではなかろうかというようなことで目下検討中であります。おそらく来週ぐらいになれば一応の防衛庁の案というものができるのではないかというふうに思っております。
  10. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ちょっと補足いたしますと、いま申し上げましたような防衛庁の原案に基づきまして、今月末ごろには首相が重要事項として国防会議にかけるということを言明しておりまするが、その国防会議を開いて決定の方向づけをしたい、こういうふうに考えております。
  11. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 国防会議事務局長は見えていますか。まだ来ておりませんね。
  12. 伊能繁次郎

    伊能委員長 それでは国防会議事務局長をいま呼びますから……。
  13. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで私が申し上げたい点は、たとえば六百名を四百名に変えるとか、あるいは移駐の時期を一、二カ月ずらせる、こういうことで住民感情をやわらげることができるというふうに考えているんですか。
  14. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、施政権がわが方に戻ってくる以上、やはり従来申し上げておりまするような方針に従って自衛隊配備はしなければならぬというのが政府考え方であります。ところが、沖繩県民の複雑な感情等は察するに余りありまするので、十分理解をいただけるべく今後もあらゆる努力を続けてまいりたいと思っております。
  15. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この沖繩配備は、事務的にいいますと政令事項でありまして、法律事項になっていないわけですね。ですから総理大臣が、この沖繩配備については、きわめて重要なことだ、したがって国防会議にかける、国防会議の中で十分検討した上、沖繩県民感情考慮に入れて配備する、このように申しているわけですね。その県民感情というものを十分考慮に入れてということについては、事務当局である防衛庁としては、どういうふうに考えていらっしゃるのか。
  16. 江崎真澄

    江崎国務大臣 県民感情はやはり重視しなければならぬと思います。十分慎重に対処していく、これはもう当然なことだと思っております。やはり納得の上で事を運ぶことがこの場面として必要であるという考え方でございます。
  17. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 総理発言防衛庁長官並びに事務当局としては考えていらっしゃると思うのですね。ですから、総理の言う沖繩県民感情考慮に入れて——世論調査等によりますると、過半数方々自衛隊配備については強く反対しているという一つの統計も出ております。そのことが最近の防衛庁考え方として、七月が十月になるのじゃないかとか、六百人を四百人にするとか、この数字というのが沖繩県民感情というものを少しでもやわらげてという、そういう結果なのかどうかですね。沖繩県民感情というものは、こういう一つ数字とか時期をずらすことによっては決しておさまらない、こう私は思うわけです。  そこで久保カーチス協定による問題点といたしまして、佐藤総理もそこは強い発言事務レベルできめたことだ、変更もあり得る、政治的に幾らでもできる、こういうニュアンスの答弁しているわけですよ。ですから、慎重に対処するとか検討するとかいうことは、常に重大な問題に対する大臣答弁のようでありますけれども沖繩復帰を目前に控えまして、さらに先日のあの沖繩への物資移送問題等考慮に入れて考えてみますと、自衛隊に対する反対感情というものはますます高まっていると私は思うのですね。それについてはどう評価なさっていますか。
  18. 江崎真澄

    江崎国務大臣 何といっても新しい自衛隊性格というものが理解されていない。これは施政権も違っていましたし、自衛隊というものの実態に触れたことのない県民ですから、当然なことだと思うわけです。したがって、私どもとしては、自衛隊性格十分理解していただくということも、これは重要な仕事の一つだというふうに考えておるわけであります。したがいまして、今後も引き続き、新しい自衛隊というのはこういうものなんだ、あくまで専守防衛といいますか、防衛に徹するもので、かつての軍隊のように、攻撃もすれば守りもするという両面のやいばのような存在ではなくて、相手国からにわかに不正の侵略があったときのみ抵抗するものだ、それを排除するための存在だ、こういうことをよくわかるように説明していけば、だんだん理解を得ることは決して不可能ではない。やはりわれわれは、その理解を深めていくことも重要な任務一つと、こういう考え方に立って努力していきたいと思っております。
  19. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 国防会議事務局長海原さんが見えましたので伺いますが、総理は、久保カーチス協定も含めまして沖繩に対する自衛隊配備については検討する、また久保カーチス協定についても変更はあり得る、こういう答弁をなさっているわけです。  そこで私は、この国防会議がいつ開かれるのか、どういうことが検討されているのか、そういう点で関心を持っているわけですけれども自衛隊配備をめぐって、国防会議として現在いつごろ開こうとされているのか。また、国防会議検討しなければならない事項がいまたくさんあるわけでありますけれども、どういう点を事務的に検討し、また、事務局としては国防会議議題にしようとなさっているのか、そういう点、伺いたいと思います。
  20. 海原治

    海原政府委員 沖繩自衛隊配備関係につきましては、三月十五日に国防会議参事官会議を午前、午後二回にわたって開催いたしました。この参事官会議で、一応防衛庁が考えておられます部隊配備計画についての御説明を伺ったわけでございます。施設整備関係等につきましてはいろいろと問題がございますので、それらの点につきましての資料整備をあらためてやっていただくことにいたしました。この資料の準備ができ次第、参事官会議を開き、参事官会議でいろいろ問題点を詰めましたあとでは、各省次官からなっておりますいわゆる幹事会、ここで御検討をいただき、その結果によって国防会議がいつ開かれるかということについての御方針がきまるものではないか、こう考えております。  それから第二の、いろいろと問題のありました点につきましては、たとえば、これから先、国防会議において御検討になるべき事項、いわゆる議長あっせん案にあります主要項目、これをどういうことに限定するかということにつきましては、事務当局の間でいま寄り寄りその素案を検討中でございます。これにつきましては、まだ上のほうの方に御説明をするところまでは煮詰まっておりません。  以上でございます。
  21. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いま、参事官会議ですか、やっているのは。その次に幹事会、それから国防会議と、こう三段階のステップを踏むわけですね。  そこで、私がいま問題にしていますのは、総理は、沖繩県民感情考慮に入れて自衛隊配備は考える、こうおっしゃっております。自衛隊、これに対する沖繩県民感情といいますものは、御存じのように、世論調査なんかでも明らかなように、きわめて反自衛隊感情というものが強いわけですね。最近の世論調査でも過半数を越えているわけです。そこで私は、沖繩県民感情考慮に入れてとおっしゃった総理のことばをいろいろと考えているわけであります。ところが、最近の防衛庁で考えていることは何かといいますと、たとえば七月に六百人やるところを四百人に減らすとか、あるいはまた七月に移駐するところを十月に延ばすとか、もしか総理のおっしゃったことについて、県民感情考慮に入れたことをこの数字によって具体的にあらわしたとするならば、これは間違いじゃないか、私はそう思っておるわけです。そこで、国防会議において、国防会議議長である総理もその答弁をしているわけですから、おそらく、数を減らしたことによって、日時をずらしたことによって沖繩県民感情が決しておさまるわけではないと私は思うのです。ですから、国防会議としては、こういう点をどのように考えて参事官会議等においてやっていらっしゃるのか。  たとえば私が申し上げたい点は、私たちはまだ行かぬほうがいいと思っている。たとえそれが国防会議云々といっても、最近の国際情勢の緩和、あるいはまた中国に対するいろいろな国交回復問題等が出ておりますから、私は自衛隊は行かないほうがいいと思っております。ただ、皆さん方立場に立っても、もし行くとするならば、自衛隊にははっきりとした災害派遣であるとか民生協力というものがあるわけでありますから、まずそういう部隊から派遣することを考慮すべきではないのか、皆さん方立場に立っても。こう私は思うわけでありますが、そういう点から言った場合、たとえ久保カーチス協定の取りきめがあったとしても、これは返還時におけるスムーズな事務引き継ぎということが前提にあってきめられたことであって、変更もあり得るということでありますから、私は、この問題にとらわれず、やはりもう一回自衛隊配備については、白紙に戻せとは言いませんけれども、大幅な変更、あるいはまた日時部隊編成については考慮すべきではないか、こう思うのですが、国防会議事務局長防衛庁長官に伺います。
  22. 江崎真澄

    江崎国務大臣 現在の段階では、現地における施設工事進捗状況等々を勘案しながら配備計画をスローダウンしていこう、こういうことであって、いま県民感情が悪いから直ちにこれをどうしよう、こうしようということで、たとえば六百が四百になるというような判断をしたわけではありません。また、国防会議で従来の線をきめていただこう、多少おくれることはあっても、そういう方針でおるわけです。  われわれとしては、いま伊藤さんが言われるように、やはりこれを民生協力という面に陸海空とも協力をしていく、これはもう当然な任務だと思っております。日本ににわかにホットな場面自衛隊が動かなければならぬ事態がいま起こるとは思いません。それだけによくよく話をすればわかるのではないか。十分ひとつ沖繩県民に、自衛隊性格、また自衛隊の今後のあり方、こういったものを率直に訴えることによって理解願えるもの、こう思っておるのです。ですから、これは公明党等におかれても、自衛隊はお認め願っておるわけですから、これは主権が戻ってまいります以上、どうかして自衛隊配備でき、しかも自衛隊の新しい性格というものが沖繩県民理解されるように、また相談に乗っていただきたいものだと思うのです。これはよろしくお願いします。
  23. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私たち自衛隊を認めておるということをあなたはおっしゃいましたが、わが党には国土警備隊という構想がありまして、必要最小限自衛力は必要だと思っております。しかしながら、現在のように日米安保体制の中に組み込まれて、共産圏のみを仮想国として防衛計画を立てたりなんかするような行き方は反対だということでありますから、誤解のないように願いたい。
  24. 江崎真澄

    江崎国務大臣 わかりました。
  25. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁長官、時間ですから、けっこうです。またあとからお昼の時間にいろいろ質問したいと思います。  国防会議事務局長に伺いたいのですが、その点いかがですか。
  26. 海原治

    海原政府委員 ただいま私に御質問になりました事項は、これはもっぱら高度の政治的判断の問題でございますから、国防会議という会議体事務局長としての私には、お答えを申し上げることのできない問題だと思います。その点はひとつ御了解願いたいと思います。あくまで私どもは、国防会議なりその下部機関である幹事会でいろいろ問題点を審議されますその場合の資料整理をやるわけですから、先ほど防衛庁長官お答えになりましたような点は、当然国防会議関係閣僚方々がそれぞれ御意見をお出しになってきめるようになる、こう考えております。
  27. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで事務局長、私はなぜあなたにいろいろ言うかと言いますと、やはり事務レベル段階で相当な取りきめをしているわけですよ、久保カーチス協定という。ですから、事務局長としても、事務レベルの面で相当チェックしなければならぬし、いかに参事官会議幹事会を開いても、そのままになってしまうおそれがあるのですね。ですからその点は十分チェックしていただきたいと思います。  そこで、参事官会議幹事会、そして国防会議見通しですね。やはりこの問題については、いつまでもいいかげんなことはできないと思うのです。国防会議を今週開くとか来週開くとかいうことをしょっちゅう言われておるようでありますけれども、おおよそ国防会議がいつごろ開かれて結論をいつごろ出すような方向でいるのか。その点いかがですか。
  28. 海原治

    海原政府委員 その点は、先ほど御説明いたしましたように、私どもとしましては、防衛庁のほうでの資料のでき次第ということになっております。具体的に一つの例を申しますと、たとえば防衛庁のほうでF104の配備計画を持っておられます。現在の二千四百メートルの滑走路をそのまま使うのであれば、これは問題ないわけですが、F104の部隊配備のためには百五十メートルの滑走路の延長が必要である。またいろいろ部隊としてのいわゆる任務行動のための前提条件が要るわけです。そういうことが大体いつの時点において完備するようになるかということにつきましては、先般の十五日の参事官会議の席上におきましては、私どもの納得する御説明がいただけなかった。そこで、至急そういう点についての資料を準備していただかなければ、これは上のほうでの会議の際に困るわけでありますから、それをいまお願いしておる。いつこれが準備できるかにつきましては、昨日までのところまだ見通しが立っておりません。したがいまして、繰り返すことになりますが、そのような具体的な関係資料整備のでき次第、参事官会議幹事会を開いていきたい、こう考えております。
  29. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁の議案の出し方によってきまるというわけですね。
  30. 海原治

    海原政府委員 簡単に一言で言えば、そういうことになります。
  31. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは、これはあとまた防衛庁長官が来たときに、久保カーチス協定と、それからまたナイキハーキュリーズ、ナイキホークの買い取りの問題について続けて質問したいと思います。  外務省に伺いたいのですが、まず聞きたいことは、P3の問題と核撤去費用七千万ドルの執行状況について伺いたいと思っております。それから沖繩米軍と韓国、台湾との合同演習、あるいはまたメースBにかわる新型ミサイル発射訓練、こういう点について伺いたいと思います。順次質問してまいりますけれども、まず第一に、核撤去費用七千万ドルの執行状況について伺いたいと思います。
  32. 吉野文六

    吉野政府委員 御存じのとおりわが国は、沖繩返還に伴いまして三億二千万ドルを米側に支払うことになっております。この協定第七条を読みますと、そのうちの一億ドルを協定効力発生の日の一週間以内に支払う、自後は残額を均等年賦で支払う、こういうことになっております。そこで、核の撤去費用も、御存じのとおりこの中に含まれておるわけでございますから、そのような形で払っていく、こういうことになっております。
  33. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ちょっともう一回明確に伺いたいのですが、発効後一週間以内に支払うということですね。
  34. 吉野文六

    吉野政府委員 発効後一週間以内に三億二千万ドルのうち一億ドルを支払うのです。
  35. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 期日はいつですか。
  36. 吉野文六

    吉野政府委員 効力発生の日から一週間以内です。
  37. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 五月十五日から五月二十二日に…。
  38. 吉野文六

    吉野政府委員 以前に払うということです。
  39. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 一週間以内に一億ドル払うということですね。  それで、核の問題は非常な高度な政治判断があるわけですね。そこで、いままで何回となく、核兵器がある、あるいはまたいろいろな種類がある、こういうことがいわれてきておりまして、それは、いわば核の問題については、大統領の専管事項であってものが言えない。しかしながら、あることはもう公然の秘密ですね。しかも五月十五日には核はもう撤去してなくなる、こういうこともいわれておりますね。そこで、そういうことになりますと、現在は作業中だと思うのですよ、五月十五日を前にいたしまして。吉野アメリカ局長御存じのように、核兵器というのは米軍は何年もかかってあそこに運んだわけですよ。それが短期間に大量のものを運ぶということになりますと、いろいろな問題が考えられる。特に核兵器の輸送につきましては、ほかの弾薬と違いまして、一ぺんに何十発なんて運べない。弾頭によっても違いますけれども、大体一回に数発くらいの運搬が一つの標準だといわれております。  そこで私が聞きたいわけでありますけれども、たしか現地の方の証言によりますと、二、三回それらしいのを輸送しているのを見ているということも聞いております。ところがその作業というのは、常に朝早いとか真夜中に限っておるわけです。私はそのことについて一番心配する点は、きわめて危険なものを輸送するときに、人間が一番眠いときの真夜中であるとか、あるいはまた暗やみの中でそういうことが行なわれることが、事故やなんかにつながることじゃないかと思うのです。その点で、暗やみとか真夜中とか早朝とか、人間のからだが一番疲れて、神経が一番麻痺しているときに輸送してもし間違いがあってはたいへんだ、少なくともこういう時間にはやるなというくらいのチェックをして、沖繩県民の生命の、安全を考えたときに、当然指摘しなければならない問題だと思うのです。その点いかがですか。
  40. 吉野文六

    吉野政府委員 沖繩に核があるかどうかということにつきましては、米側は決して核があると言ったことはございません。ただし、返還時においては核は全部なくなるのだ、こういうことでございまして、福田大臣答弁などによりますと、したがってわれわれは核があると推定せざるを得ない、こういうことでございますが、いずれにせよ、その核を撤去する方法につきましては、およそ核に関する限りは一切アメリカとしてはわれわれに何も言うことができない、こういうことを言っておりますから、どのような形でそれが搬出されているかどうか、こういうことにつきましても、われわれは一切知ることができないというのが現在の立場でございます。
  41. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは感違いしてもらっては困るのです。確かに核というものは、米国の国内法によって、核がそこにあるのだと言えば死刑及び無期懲役というように非常に罰がきびしい。もう一つは軍事機密がある。だからといって、米国の政策によって、あるいは軍事機密によって、沖繩県民の生命や財産がそこなわれることがあったら、これは国際信義上いけないのではないですか。だからあるのかないのか聞くということよりも、大体返還日にはなくなっているのだということを言っておるということは、いまあるということですよ。しかも五月十五日はすぐ目の前ですよ。ですから、どこにあっていつ運ぶかということじゃなくて——私はそこを聞きたいほんとうは。しかし、そんなことは言わぬ。ひとつあなたが、日米合同委員会とかあるいはアメリカ大使館に行って、少なくとも、真夜中の輸送だとか、早朝に人間の神経が一番麻痺しているような、そんなときに行なうべきじゃない——いつ作業をするか、どこにあってどういうふうな輸送システムで運ぶか、そんなことを私は言っているのじゃない。ただ、沖繩県民の生命と財産を守る立場から見た場合には、そのくらいのことが私は言えるでしょうというのです。いかがですか。
  42. 吉野文六

    吉野政府委員 その点につきましては、すでに、わがほうから米側に対しまして、ともかく万全の安全措置をとってくれということを申し入れてございます。それに対しまして、米側としましては、これはもう何もわれわれが言わなくても、絶対危険のないよう万全の措置をとっておる。これは何も核だけに限るわけではございませんですが、あらゆる武器の扱いについて万全の措置をとっておる、こういうことを申しておりますから、われわれとしては、これに一応信頼しておらざるを得ない、こういうことでございます。
  43. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それじゃあなた、私が言ったことについて言う気がないのですか。それをアメリカに言うことはできないという考えなのですか。
  44. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれといたしましては、再び、米側のあらゆる武器の取り扱いについては、ひとつ重ねて万全の安全の措置をとってくれ、こういうことを申し入れたいと思います。
  45. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それは申し入れますね。  総務長官に伺いたいのですが、総務長官が、常に沖繩県民感情を思い、また長年のアメリカの施政権下にあった沖繩方々に対して前向きで国会答弁をなさっている。その点では私は敬意を表しております。ところで、この核撤去問題につきまして、沖繩県民の生命と財産を守る立場から、真夜中に輸送するとか、一番人間の神経の鈍い早朝だとかは避けるべきだ、私はこう思っているわけですよ。ただ万全の対策を講じてくれとしか言えないというわけですから、少なくとも沖繩県民立場に立っていらっしゃる大臣からも、やはりそういうことは明確に伝えるべきではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 私からはアメリカ側に意思を伝える職権とルートがございませんので、やはり外務省といつも緊密に相談しておりますから、正式な外務省のルートというもので県民立場を守る姿勢をとり続けていくことであろうと思います。
  47. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 やはり閣僚会議等におきましても、外務大臣総理等にも、この点は総理府総務長官からも言っていただきたい、そう思います。いかがですか。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 当然、そういう会議の機会でなくても、絶えず連絡をとって話し合っておりますから……。
  49. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで私は、沖繩国会においても常に申し上げました点は、やはり絶対核事故なんか起こしてはなりませんけれども、またあってはならないわけですね。もし核輸送中に事故が起きた場合にはたいへんなことになる。これはきわめて神経を使ってやらねばならない。その場合、核の誘爆とか核爆発というようなことはまずないだろうけれども核物質、これを核融合反応させることに使うHEという高性能爆弾がきわめて危険だと考えている。米軍としてもきわめて危険だと考えているわけですよ。そこで私は、前国会からもその点を指摘して、できるならばあの毒ガス輸送のときにとった体制、あるいはそれ以上の体制をとって万全の対策を講ずべきではないかと言ってきました。しかし、その点については、米側の絶対だいじょうぶだ、安全だということばを信じていままで来ているわけであります。  私はこの核撤去問題について、一つのケースとして毒ガス輸送の撤去の方法その他について調査してみました。ところが、沖繩の毒ガスの調査のときは、大体御存じのように、知花弾薬庫からホワイトビーチまでの間約三百メートルにわたって避難させ、そしてまた一定のいわば輸送体系でホワイトビーチまで運んだ。これは私たち、現地まで行きましてよく見て知っております。そのときに三百メートル付近にいる方々には避難させた。それに対する補償だとかいろいろなことは総理府がやった。私たちの調査によりますと、そのときの状況で、米軍沖繩にいる米軍家族に解毒剤を渡しているのですね。それからこの毒ガスはジョンストン島に送られましたね。ジョンストン島の住民には、解毒剤と、それに加えて防毒マスクも、沿道の住民に渡しているんです。総理府総務長官の英断によって、沖繩住民の避難計画であるとかいろいろな問題については、琉球政府と連携をとりまして十分な対策をとったわけです。しかしアメリカは何もしなかった。だから米軍沖繩県民に対する考え方はジョンストン島の住民に対する考え方と全然違う。そういう感覚でまた核のこともやっているんじゃないかと思う。そういう証例も実はある。ジョンストン島における毒ガス輸送についてのいろいろな付近住民に対する対処のしかたを私見ました。米軍というのは実にいいかげんだ。少なくとも沖繩に長年いて基地の町として使ってきておった。長い期間ないと言っておった毒ガスが発見された。あったらば撤去すればいいじゃないか。そのときの安全については、いやなものを、まあわかったから出す、その費用は日本が持て、何もやらぬ、自分のほうは解毒剤を配った。あるいはまた、ジョンストン島にいる住民に対しては防毒マスクまで渡したのに何もしない。  そこで私は、今回の核輸送に対しても、アメリカ軍基地としてどんな訓練をしているか調べました。ところが、米軍の嘉手納を中心として、やはり基地についても、ブロークン・アロー・エクササイズ、これは核兵器事故発生の演習なんです。これを月に二回ずついまやっております。もしか核が事故が起きた場合には、米軍のみがやって沖繩住民には全然教えない。核輸送が行なわれるぐらい当然われわれも知っております。しかし少なくともわれわれは核の知識はありません。しろうとであります。彼らは専門家です。専門家といえども、ブロークン・アロー・エクササイズというニックネームで、月に二回、あるいはまた輸送日を含めますとそれにプラスされるわけであります。にもかかわらず沖繩県民のほうには何ら知らされていない。しかも、それが真夜中やあるいは暁に運ばれて、もしかそのとき事故があったときどうするのかということを私は一番心配するわけです。なければ幸いです。あってもらっちゃ困ります。だけれども、例の毒ガス輸送についても絶対事故は起きないという、万全の対策をとった。しかしながら事故は二回あったじゃありませんか。一回は毒ガスのそばで火災があった。もう一回は、ホワイトビーチで船に積むときに、あのクレーンの鎖が切れて数メートル下に落下したじゃありませんか。もしこれが核だった場合にはたいへんなことになりますよ。少なくとも高性能爆薬HEというやつは爆発します。だから私が一番心配する点は、起きてからでは間に合わないわけですよ。ですからそういった点を考えに入れて十分な注意を喚起する必要がある。アメリカ局長おわかりでしょうか。その点いかがですか。
  50. 吉野文六

    吉野政府委員 ただいま先生のおっしゃられたことは、われわれも承知いたしまして、米側に対してさらに万全の措置をとるように申し入れいたします。
  51. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで、この事故というのは、何も弾薬そのものの事故だけが想定されておるのではないと私は思うのですよ。相当のスピードで輸送しますから、やはり人家に飛び込むことだってある。あるいはまた酔っぱらいをはねることだってある。弾薬の爆発のみじゃありません。いろいろな事故が想定されますよ。そういうときの補償は、一切を含めてどこがやるのですか。
  52. 吉野文六

    吉野政府委員 そのような場合は、もちろんその状況、事故の性格その他によるだろうと思いますが、明らかに米側の弾薬の扱い方によって沖繩の市民が被害をこうむった、こういうような場合には、もちろんアメリカ政府に対しまして、政府としても補償を要求できますし、また個人といたしましても、アメリカ政府に対して、あるいはアメリカの軍に対して、それぞれの方法で補償を要求することができるということになっておると思います。
  53. 山中貞則

    山中国務大臣 これは毒ガス撤去のときにも、米軍側の事故によって被害が起こった場合には米側が補償するということもはっきり言っておりますから、当然核兵器についても、より以上おそろしいものですから、その前提をくずすことは、すでに約束した毒ガス兵器撤去の言明から見てもあり得ないことだと思います。
  54. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私がなぜこの点を言いますかというと、こういうことですよ。事故が起きてはなりませんけれども、この在日米軍基地の秋月という弾薬庫があります。これは広島県下にございますが、そこでもって、ベトナムから戻ってきた弾薬を日本人労務者が扱ったときに、爆発しまして即死した事件があるのです。そのときは、米側の弾薬を日本人労務者が運んで即死をしたのですから、当然米側が払うものだと思っておったところ、半年ももめ続けて、結局はどこが払ったかというと防衛庁が払ったのです。こういう事例もある。だからこれも明確にしておいてもらいたい。七千万ドルの中に、事故が起きてはならぬけれども、もし起きた場合のものも全部含んでおるのかどうか。あるいはまた、そのことによって派生的に広がった事故については総理府は全く関係ないのか。全く関係ないと思ったから予算を一銭も組んでいないのか。その点も確認しておきたいのです。
  55. 吉野文六

    吉野政府委員 秋月の事故の件につきましては、われわれ承知しておりませんものですから、具体的なケースを調べる必要があると思いますが、かりに沖繩で先生御指摘のような核に関する事故が起きた場合は、われわれといたしましては、先ほど申しましたように、政府といたしましてもこの問題を直接取り上げますし、また住民といたしましても、外賠法その他によりましてアメリカ政府に対して請求をできるかと思います。いずれにせよ、われわれといたしましては、このような事故が起きないように、先ほど申しましたように、さらに米側に対して万全の策をとるように申し入れたいと思います。
  56. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私が聞いているのは、七千万ドルの中に入っているのか入っていないのかということなんです。そういうことについては、総理府としては一切米側に依存していいのかどうか。長官いかがですか。
  57. 吉野文六

    吉野政府委員 この三億二千万ドルの内訳につきましては、第七条で、日本国政府は、共同声明第八項にいう日本国政府の政策に背馳しないようにこの協定を実施すること、そういうこと等を考慮して三億二千万ドルを払う、こういうように書いてございまして、この中に核撤去の費用も入っているわけでございます。しかしながら、この三億二千万ドルの内訳は、あくまでも第七条に規定された内容のみしかカバーしておりませんから、核事故による損害賠償というふうなものは、われわれとしてはこの規定の範囲外であると思っております。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 これは外務省のことですけれども、核がどこにある、そしてどこに運ぶ、どんな手段でいつ運ぶということは一切秘密にしているわけですね。で、いかんともしがたい。したがって、やはりそういう事故の起こらぬようにということと、最悪の場合起こったら、これはおそるべき事故になるわけです。これはアメリカの軍人も含めてですね。だからそういうときには、毒ガス撤去の際も、アメリカ側の責任において事故が起こったら賠償の責任を負うと、はっきりしているわけですから、その点は間違いなくアメリカ側が責任を負うわけですよ。それはゆるがせにできない前提ですけれども、かといって、ではいつ運ぶかということになると、私の立場からもちょっとアメリカ側からの言明を得ることは困難だろうと思います。
  59. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうしますと、核撤去中に事故が起きた場合には、協定に基づく取りきめの規定の範囲外だとおっしゃったのですね。だからその中には入っていない、そうですか。
  60. 吉野文六

    吉野政府委員 この第七条の三億二千万ドルは、まず第一にアメリカの資産を引き継いだこと、次には共同声明第八項にいう日本国政府の政策に背馳しないようにこの協定を実施すること、それからアメリカ政府復帰後に雇用の分野等において余分の費用を負担することになること等を考慮し支払うこと、こういうように書いてありまして、必ずしもこの三億二千万ドルは、いま申し上げました三つの主要な事項に対する支払いということではなく、そういうものを考慮して支払いをする、こういうことになっております。したがって、核事故による損害賠償というようなものは、少なくともこの文面上ではそういうことは明らかでございません。
  61. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの三億二千万ドルのうちの七千万ドルは、これは外務大臣がつけるというのですから高度の政治判断であって、要するにわが国の非核三原則に背馳しないような措置をとるためのものであるということになっているわけです。その中に、もし事故が起こったときに、アメリカ側の責任における賠償金が入っているか入っていないかわからぬということは、そういう答弁はちょっと外務省局長に求められても困るので、この日本からアメリカに支払った金について、日本人も含めて被害があったときに、その金をわれわれが払った金から賠償金として出させるという、そんなばかなことは、私は外交折衝上においてあり得ることではないと思うし、そういう意味の金は入っていないのである。そういうことが起こったら——万が一、百万が一でもとにかくあってはいけないのですが、それはアメリカが国家として日本の国民に対して責任を持つべく別途の支出をすべきものである、私はそう思います。
  62. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私もそう思うのですよ。もしそれが入っていなかったならば、当然国際信義上、ほかの法律適用してでも何でも払うべきだと思うのですよ。だから、そういうようにアメリカ局長がどこまでも条文にこだわったり、そのときのことにこだわる必要は私はないと思うのです。事故があってはならないと思うのですけれども、もしあった場合に、明確にしておかないと、これはあとでたいへんな問題になる。そういったことで、日米親善というものは強めてこそすれ弱めてはいけないのに、あなた方の答弁はいつも、われわれが質問すればするほど大きな疑惑を与えてくる。私は別にアメリカに敵意を持っておりませんけれども、どうもあなた方の答弁を聞いておると、何となく言いたくなってしまうという面があるのですよ。ですから、そういう点については前向きにはっきりしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  63. 吉野文六

    吉野政府委員 ただいま山中長官の申されたとおり、この三億二千万ドルのうちにはそのような金は一切入っていないとわれわれも確信いたします。
  64. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だからそれは、ほかのところで補償は求めるのでしょう。これは外務省が窓口なんですから、もっとしっかりしてもらわなければ困ると思うのですよ。
  65. 吉野文六

    吉野政府委員 仮定の問題といたしましても、損害というものは幾らになるか、幾ら起こるかわかりませんですから、もちろんこの額とは全然別個の観点から支払いをするものと思いますから、明らかにこの中には入っておりません。
  66. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから、事故が起きた場合には、要するにいま総理府でも一銭も組んでいないわけですよ。毒ガスのときには組みましたよ。組んでいない理由は、事故が起こったらアメリカが当然補償すべきだと考えているから、それは組んでいないわけですよ。またどうしても、そういうことについては範囲外だから、何かあったという場合にはというなら、これは総理府で組まなければいけない。また、組まないということであれば、総理府長官の大きなミスですね。ですから私は、事故が起きた場合にはアメリカが責任を持つ、たとえそれが範囲外であっても、ほかの法律適用してでも払うべきじゃないか、それを外務省はどう思っているか聞いているんですよ。はっきり言ってください。たくさん質問はあるんですから、はっきりしてくださいよ。
  67. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほどの山中長官の御説明のとおりでございます。
  68. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それで、この撤去後の確認について、これは沖繩国会におきまして、私たち野党が言う言い方によりますと、返還後も核は残るんじゃないか、あるいはまた、核のことについては、日本にいかに非核三原則があっても、米戦略上からいえばどうしても持たなければいけないということから、軍事機密であるとか米国の政策によって、核については一切ノーコメントだということによって沖繩にそのまま引き継ぐのではないか、さらに、日本の基地にも持ち込まれているんじゃないかという問題点の指摘を、私たちずいぶんいたしました。そこで、総理や外務大臣は前向きに、必ずそれは明確にするとおっしゃった。ところが、最近、その点の経過を見ていきますと、国防省から明確な報告なりあるいは何らかのメッセージがあるかといえば、それはあるのかないのかわからない。あるというようなニュアンスの報道もあれば、あるいはまた、それがどういう形になるかもわからぬというような、非常にあいまいな形になってきているわけですが、そこでもう一回確認してみたいのですが、どのような形で核を撤去したという撤去の確認方法について、どういうふうに外務省としては米国に求めているのですか。
  69. 吉野文六

    吉野政府委員 この点につきましては、御承知のとおり、核をわが国には持ち込まないということにつきまして、すでに岸・アイゼンハワー声明以来、アメリカ側はわがほうに何回も保証しているわけでございます。また、一九六九年の共同声明第八項におきましても、また今度の沖繩返還協定の第七条におきましても、この第八項を引きまして、日本国政府の政策に背馳しないようにする、こういうことを条約上もわが国に保証しているわけでございますから、これ以上われわれとしてはさらにアメリカの保証は必要ない、こういうように考えておりますが、しかしながら、核問題に対する国民の疑惑というものが依然としてあるわけでございますから、この点も考慮し、また前回の国会の討議、あるいはそういうものも考慮いたしまして、去る一月六日、七日のサンクレメンテの巨頭会議におきましても、佐藤総理からニクソン大統領に対しまして、この点についてわざわざもう一回、ともかく返還日には核がないということを保証してほしい、こういうことを申し入れたわけでございます。これに対しまして米国政府は、ともかく返還日までにはこれをきちっと保証するような方法を考えておる、こういうことを言っております。したがって、この点につきましては、われわれは、返還日には何らかの保証があるんじゃないか、こういうふうに期待しておる次第でございます。
  70. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 サンクレメンテ会談で佐藤総理議題にあげておっしゃった、これは聞いております。だから、その何らかの形でということが、国民の納得できる形でなければ、ますます疑惑が強くなるわけですよ。だから、すべて向こうを絶対視するのじゃなくて、やはりこのくらいのことを言ってもらわないと国民が納得できないというのをみずから示すべきですよ。そうじゃないですか。あなた方局長ですから、事務的には幾らでも折衝していますし、あなたも長いことアメリカにいらっしゃっているんですから、そういう点の話し合いなんかはもちろんされると思うのですね。  そこで、この核撤去について、もし何も声明がもらえなければもらえなくてもいいと私は思っているんです。なぜというと、過去に実例があるんです。たとえば毒ガス撤去のときには、専門家の方々に、ここにあった毒ガスはこのようになくなりましたとちゃんと見せているんです。前例がなければ、私はたいへんだと思うのですね。ですから、われわれとしても、また外務省防衛庁側としても、そこにミサイルがあれば、これは核だったのか非核だったのかわかっておりますから、その所属の部隊はここの弾薬庫を使ったということは明確になっているわけです。ですから国防省からそういうものがなければ、具体的にあの毒ガスの点検方法で十分調査をして国民の前に明らかにすることができるのではないかと思います。その点いかがですか。
  71. 吉野文六

    吉野政府委員 一応御存じのとおり、わが国は安保条約によって米側に基地を提供しておる。そしてこの基地につきましては、その中の一切の管理その他は米側が行なう、こういうことになっておりますし、また一般に国際法上も、米軍の基地ないしは米軍の軍艦、そういうものの中に対して立ち入り検査をするというようなことは、先方としてはこれを拒否できる、こういうことになっておるわけでございます。それにもかかわらず、先方が特別な好意ないしは必要から、わが国に対して基地の一部を点検させるとかそういうことは、理論上の問題としてはあり得るわけでございます。ところが、この核に関する限りは、先ほども申し上げましたように、米側立場は、一切あるともないとも言えないし、ましてやどこにあるのか、どうやって運び出すというようなことは一切言えない、こういう立場をとっておりますから、われわれがたびたび点検を要請いたしましたが、先方の答えはこれに対してノーということでございます。しかしながら、過去におきまして、たとえばメースBの基地を見せてくれた、こういうような前例もございますしいたしますから、具体的な事例につきましては、さらにわれわれといたしましては、先方に対して要請していきたいと考えております。
  72. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 やはり窓口ですから、私たちはそれを期待するわけですよ。メースBは、三木一佐さんが防衛庁から派遣されて、ちゃんと確認している。それから岩国においてはやはり制服の自衛官の伊藤という人ですかが行って立ち会って見て、ないと言っているわけです。それぐらいのことは、私は、あなた方の交渉によって、それまでして心配しているのだということであるならば、やはりできるのではないかと思うのです。その点、アメリカ局長、これはぜひ前向きで米当局に交渉してほしい、そう思います。その点よろしいですね。
  73. 吉野文六

    吉野政府委員 先生のおっしゃるようなことは、われわれもよく承知しております。ただし、このメースBの基地の点検につきましては、いろいろわれわれとしては苦労いたしました。しかしながら、メースBの基地を米側が最終的に立ち入り検査させてくれたのは、御存じのとおり、メースB自身はもはや古い形のものであり、これを撤去するということは米側も公表しておりましたし、またその撤去の一部はもう一般の知るところであったのであります。したがってこれについては先方も態度は柔軟であった、こういうことがあるのではないかとわれわれは考えております。
  74. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから撤去でも、何も核はあるかないかなんて見る必要はないのですよ。弾薬庫をみんな見ていけばいいわけなんで、そこにあったのとか、ここにあったのとか、それは何だなんという、何もそんな見方をするんじゃなくて、幾らもないのですから、弾薬庫でも見れば、核が入っている弾薬庫の構造はまた違うわけですから、そういう点で、CBRの兵器の入っている倉庫は大体似ているわけですから、全体を見ながら、その中で危険なものはないということぐらいは私は言えると思うんですよ。そうして、見せてもらうことによって、それははっきりすることができると思うんです。ぜひその点も言ってください。  それからもう一つ、先ほども申しましたように、ブロークン・アロー・エクササイズ、こういう核事故発生せりの訓練をやっているのです。だからこれはフランクに、あなたのほうで核事故が発生したときの練習をやっているようだけれども、一部のこの地域の方々も避難訓練に参加させてもらえませんか、というぐらいのことは言えませんか。
  75. 吉野文六

    吉野政府委員 ブロークン・アロー・エクササイズというのは、われわれもいかなる性格のものであるか承知しておりません。しかしながら、われわれの想像するところは、これは運搬中に事故が起きたということではなくて、おそらくもっと軍事的な性格のものではないかと思います。いずれにせよ、このような演習に市民が参加するということは常識として考えられないわけでございますから、したがって、先生の御指摘の点は、念のためにもう一回聞いてみます。ただし、これについて先方は答えができるかどうか、おそらく何も言えないということだろうと思いますが、ひとつやってみたいと思います。
  76. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その前向きでいいんですよ。要するにブロークン・アロー・エクササイズなんて、あれはスペインの沖で核兵器が落っこっちゃったでしょう。あのときもブロークン・アローエクササイズということが出て、ああこれは核事故発生せりだなということを世界の人がみんな知っちゃった。ですからこれはだれも知っているのですから。エクササイズというのは練習なんですね。これはあなた方が聞けば、やっていますと必ず言います。私たちしろうとでさえもわかるんですから。ただ聞かないだけです。これは飛行機の運搬とか船の輸送中に起きた場合を想定していろいろやっていますよね。そういうことを米軍のみやって、沖繩県民が無視されるということは、私はたまらないのです。だからフランクに言ってほしいということです。その点はぜひあなたのほうで言っていただきたい、と思います。  ところで、P3の問題に入ります。このP3の問題について、何か野党が暫定予算に組むことを反対したために那覇空港の全面返還がおくれる、野党が反対したために沖繩の完全返還がおくれる、こんな印象を新聞なんか見ますと受けるわけです。そこでもう一回私はP3の問題について調べてみたのです。ところが、これは去年の委員会において福田外務大臣は、P3は返還時には必ず撤去すると、こう言っているのです。それは四十六年十一月九日の参議院の予算委員会です。この部分を読みますか。これはわが党の多田省吾君に答えて国務大臣の福田さんがこう言っています。「まず那覇空港におけるP3の問題ですが、これは、返還時までには撤去する、そうしてきれいにして日本にお返しいたします、こういうことになっておりまして、これには一切変化はありませんです。何かけさの新聞を見ますと、どうもそれが怪しくなったんだというような記事が出ておりますが、そういう状態はありません」、こういうふうに答弁しております。これはもう議事録ですからね。そういう答弁をしながら普天間に移る、普天間が今度は岩国や三沢に移る、そのことについて少し解せないわけですよ。私は、いかなる条件があろうとも、このP3というものはこの沖繩から撤去する。これが日本本土に来たり、そんなことで米軍側と話し合っていない、その点確認をしたいが、どうですか。
  77. 吉野文六

    吉野政府委員 P3の那覇空港からの撤去は、長い交渉の歴史がございまして、昨年の一月ごろからずうっとこのP3の那覇空港からの撤去ということで先方と交渉をしてきたわけでございます。先方は最初は、もちろんとても話にならない、こういうことであったわけでありますが、次第に先方もわがほうの強い要請を考慮しまして、それではいま那覇空港におるP3その他二、三の哨戒機を一体どういうようにして処理しようか、こういうことで部内で非常に長い間討議いたしまして、結局、協定署名の数日前に、ともかく次のような条件であれば撤去いたします、こういうことを申し入れてきたわけです。その条件は、ともかくP3が日本国内のほかの基地に移る、したがってそのために必要な施設の建設その他の費用は日本側で持ってほしい、こういう交渉の末、先方はようやく那覇空港を返還のCリストに載せることに応諾したわけであります。その後も、しかしながら、このP3及びそれに付属するいろいろの移転の結果につきましてどうするかということで、ずうっと先方と交渉してきまして、その辺のいきさつがときどき新聞などに漏れまして、P3の移転が困難だとかいろいろのことがおそらく報道されたんだろうと思います。いずれにせよ米側は最終的に、ともかく普天間の飛行場を整備してほしい、その他いろいろの施設も備えてほしいし、また、P3が普天間に入るために、そこにおるKC130という輸送機をどこかに持っていかなければいかぬ。そういうこともいろいろ考慮しなければいかぬが、少なくとも返還日までには最小限度次のことをやっていただきたい。それは、普天間の滑走路整備してほしい、すなわち一・五インチかさ上げしてほしい。あそこは飛行場の滑走路自身が亀裂が生じたり穴があったりしておりますようですから、そういうことを要請してきたわけでございます。そのための必要な費用三億五千五百万ドルを今回の暫定予算にわれわれとしては要請していた次第でございます。しかしながら、いろいろ折衝の末、結局組めないということにきまったことはわれわれも承知しております。したがって、それに伴う工事をわれわれは行なうことはできない。したがって、先方としては普天間に移り得ないということになるだろうと思います。しかしながら、いずれにせよこの善後策につきましてはなお米側と交渉中でございます。
  78. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで、まずP3について、最初から日本側のどこかの基地に移転するということで、そのことが前提で話し合ってきたんですか。これは私が聞いたことと違いますね。大体、P3を撤去させて那覇空港を返還してもらうために、ほかの面で相当に譲歩したと私は聞いております。最初から日本の基地のどこかに移転するということで話し合ってきたわけですか。
  79. 吉野文六

    吉野政府委員 米側は、P3が那覇空港から出る以上は、その代替の飛行場に移らなければいかぬ、こういうことを最後まで主張しておりまして、したがって最終的には普天間に移る、こういうことにきまったわけでございます。これはあくまでも先方が那覇空港をあけるための条件だったわけでございます。御存じのとおり、那覇空港からP3を移転させるために必要な費用はこちらが持つということをわが国は言いまして、P3の移転を強く要請したわけでございます。したがって、その点からも、この交渉はこの条件で——条件というのか、われわれが代替施設を提供しない限り先方は出ない、こういうことでございます。
  80. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 移転費用を出すことと日本のどこかに基地を持ってくることとは、性格が別なんですよ。たとえば核撤去だってそうですよ。何であんなにかかるのか。どこかに核を貯蔵する弾薬庫をつくる。だから日本が出しているわけですよ。P3についても最初からそうです。日本側のどこかに代替地を求めて、じゃ開放しますから那覇空港を出てくださいということであれば、これは交渉における一つの新しい中身です。その点いかがなんですか。日本のどこかにP3を移転することは最初から話し合いの上に出ておったのですか。最終的には、いろいろな経過があって普天間にきまったという前に、最初の話し合いのときに、もう日本のどこかの基地にP3を移すというようなことを前提にして話し合っておったのですか。
  81. 吉野文六

    吉野政府委員 那覇空港の完全返還ということは、沖繩全体におけるその他の基地の整理縮小という問題の一環としてわれわれは交渉をしていたわけでございまして、したがって、われわれといたしましては、一方においては、安保条約によって米側に必要な基地、施設を提供する、こういう義務がございますから、これにはわが方は柔軟な姿勢で臨みたい。しかしながら、少なくとも沖繩に関する限りは、那覇空港の完全返還を含めてひとつ基地の統合をしていただきたい。こういう交渉の一環といたしまして、P3も、それではそれに代替する施設に対して日本側が必要な費用を持つならどきましょう、こういうことに最終的になったわけでございます。
  82. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 よけいなことを言ってもらわなくてもいいのですよ。要するに返還交渉の段階で、あれを撤去してもらうということで那覇空港の返還を要求したために、いろいろと無理を言われて、相当譲歩していろいろな含みのある費用を出すことをのみ込んだと私は聞いておりますよ。だから、P3を移転する場合に、最初から日本のどこかの基地に移転するということを前提にして話し合いをしているのかということですよ。それだけです、聞きたいのは。
  83. 吉野文六

    吉野政府委員 もちろん、われわれの最初の立場は、P3は、少なくとも那覇空港から出る以上は、日本のどこかの基地に入ってもらっちゃ困る、こういうことで最初は先方とかけ合ったわけでございますが、これはだめだ。御存じのとおり、日本が安保条約において日本及び極東の安全のために基地を提供している以上、P3をどこかの飛行場で受け入れてくれなければ困る、こういうことが先方の立場でありました。のみならず、そもそも那覇空港を出ることは、これは応じられない。というのは、御存じのとおり、P3というのはそれに対応するいろいろの地上の施設もございまして、そういうものも同時に移転せざるを得ないから、那覇空港からなかなか出られない、こういうことでございました。したがって、それに伴う諸施設はわがほうで負担する、こういうことでようやく那覇空港を出ることに先方は応諾したわけでございまして、これがいままでの交渉の経緯でございます。
  84. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 じゃ向こうは、どこまでも日本一のどこかの基地にP3を移転させてほしい、それについてはその移転費用を全部持ってほしい、それを外務省は認めた。したがってこちらは、P3はもう撤去してほしい、日本のどこの基地にも入ってもらいたくないと言ったけれども、向こうがどこまでも、安保条約に基づいて基地を提供しているんだから、P3をどこかの基地に移してくれということを最初から明らかにして、そして最終的に普天間にきまった。こういうことですか。
  85. 吉野文六

    吉野政府委員 大体いま先生のおっしゃられたとおりで、結果的にはそういうことでございますが、われわれといたしましては、ともかく那覇空港は沖繩としても民間航空あるいは自衛隊移駐のために必要であるから、ぜひここをクリアーしてほしい、こういうことで交渉したわけでございます。  なお、P3が日本のその他の基地に行くということは、先方はもう絶対の条件であって、ともかく日本以外の地域にP3が飛び去るということは、先方としては初めから話にならぬ、こういうことでございました。
  86. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 まあ最初から認めておったわけですね。そこで、まずP3の任務とP3の装備について局長御存じですか。
  87. 吉野文六

    吉野政府委員 これは、おそらく防衛庁の専門家のほうがより詳しい内容は知っておると思いますが、われわれの知る範囲では、P3は対潜哨戒機である、こういうことでございます。
  88. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それは私も前の委員会防衛庁から伺っております。防衛庁いませんか。——じゃ私が申し上げますが、こういうことを知っていらっしゃるかどうか。航続距離は四千キロです。それで任務はまずフィリピン、東南アジア、中国沿岸、それから韓国並びに北朝鮮沿岸、日本海、小笠原周辺、明確にこれはきまっているんです。それで搭載する兵器は何か。魚雷、機雷、爆雷。爆雷の中に核爆雷。アメリカは必ず核ということを言わない。ニックネームで言う。その核爆雷は古い名前ではベティーという。最近のP3の核爆雷はルルというのです。同じ名前ですけれども、かぜ薬じゃないですよ。これをほとんど常時搭載しているんです。この疑いがあるんです。御存じですか。
  89. 吉野文六

    吉野政府委員 いま先生の御指摘のような詳しい内容は私は存じておりませんが、いずれにせよ、かりに核爆雷というような核兵器をP3が搭載しておると仮定いたしましても、沖繩返還後はこういうことは一切なくなる、これは確信いたします。
  90. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 アメリカ局長はそんな簡単におっしゃいますけれども、要するにP3の任務を聞いたらびっくりすると思うのですよ。向こうはきわめて重大視しているんです。米核戦略空軍や潜水隊がありますけれども、極東周辺にはポラリス潜水艦が六隻ないし七隻でもって常時十六発のポセイドン並びにポラリスを装備して、いま常時警戒しておりますね。もちろんソ連も同じようにこれに対抗しているでしょう。それから御存じのようにB52は、H型でも積めますけれども、新型はG型です。このB52、これもグアム島から常時飛んでおりますですね。日本の上空をかすめて飛んでおるのです。  そしてP3も同じように対潜哨戒としてそういうものを搭載して飛んでいるといわれているのです。もしP3のそういう任務というものを認めて、また日本の基地にそれを認めるということは、わが国の非核政策に反することになると私は思うのです。  そしてこのことは、私もいろいろな方々からの証言を聞いております。最近の対潜哨戒で大事なことは、普通の爆雷や魚雷ではどうにもならぬです。少なくとも原子力構造の潜水艦はきわめてがんじょうだ。水中を四十ノットくらいで走る。しかも、長い期間深海をもぐることができる。軍事専門的に見ましても、原子力潜水艦はもう核爆雷以外に撃沈することはできないのだと言われております。だから当然任務上P3が積んで飛ぶこともあたりまえだと私は思うのです。ですから私は、そういう軍事常識がなくて、あるいは知ってて言わないのか、それはわかりませんよ。それを日本の基地に玉つき移駐だとかいって、それを普天間に持っていく、普天間を今度は岩国、岩国がまた三沢なんて、とんでもないと私は思うのです。  そこであなたは、日本には非核三原則もあるし、そういうことはあり得ない、こうおっしゃっても、向こうは何と言うかわかりませんよ。ですから、このP3についてもし日本にそのまま認めるとするならば、歯どめが必要なんです、絶対に積ませないという。しかし軍事専門的に言うと、そうしたら飛ぶ価値がなくなるのです。いかがですか。それをはっきり交渉の中で、核爆雷ルルというものは積ませない、少なくとも核というものは積載させない、しないという、そのことがただ簡単な常識で言うのではなくて、確約がとれますか。
  91. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれの受けているインフォーメーションによりますと、ともかく日本周辺におる多数の自国ないし第三国の潜水艦のあとをP3が追っかけていく。もちろんこれは平和時でございますから、何も戦争するなんということはお互いに考えていないわけですから、ただ演習のために、あるいは訓練のために、潜水艦を発見してそのあとを追跡していく、これがP3の任務であると心得ております。したがって、核爆弾を、あるいは核爆雷を常時それに搭載する必要はないと常識的に考えられますが、かりにそのような事態があるといたしましても、沖繩返還後は、先ほど申し上げましたように、わが国の非核三原則に従う。したがって、一切核兵器は搭載できない、こういうことになるわけでございますし、また先方もこれを保証しておるわけでございますから、そのようなことは絶対できないとわれわれは確信いたしております。
  92. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから、たとえばアメリカとの交渉の中でその話をしていますか。
  93. 吉野文六

    吉野政府委員 御承知のとおり、われわれといたしましては、核を一切日本に持ち込んでもらっちゃ困る、あるいは日本に置いてもらっては困る、沖繩についてはいまある核は撤去してほしい、こういうことを強く交渉いたしまして、そして協定第七条になったわけでございますから、この点についてわれわれは一点の疑いもございません。したがって、P3につきましてもこのことは当然だとわれわれは心得ておりまして、そのようなことは絶対ない、こういうことを私は確言いたします。
  94. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私はやはり国民の側に立っていろいろな問題に対処するのが外務省だろうと思うのですね。B52が何カ月かあそこにおりました。あれは迷彩を施して、通常爆弾によるベトナムの攻撃にいくんだからいいじゃないかといっても、沖繩方々は絶対反対だ。なぜか。核搭載可能であるからなんです。またわれわれはポラリス潜水艦を認めない。もちろん沖繩に入っても大問題になるでしょう。それはなぜか。核を持ったそういう潜水艦が、沖繩へでも日本へでも来ることは、非常に非核三原則に反するし、われわれが核アレルギーといいますか、そういうものからいってもすべきではない。してならないわけです。いま言ったP3のブリーフィングというやつはそういう任務説明をちゃんと受けているのです。  そして、あなたは大ざっぱに核をまとめて言っておりますけれども、核といってもいろいろあるのですよ。それは戦術核兵器、小型のものなんです。ですから、P3について発言したが、この間の防衛庁長官は、言ってない、これから深刻に日米合同委員会においてそのことを提起する、こう言っていましたよ。日本を基地としないで飛ぶことについてはわれわれは何も言いませんよ。B52が飛んでいる。潜水艦がいろいろ通っている、日本海にも入ているし、日本沿岸にもうろうろしている。日米安保条約は核のかさですから、日本は、皆さん方立場に立てば、それは当然過ぎるほど当然かもしれない。だからP3が飛ぶことについてまで私はけちをつけているわけではない。そういう対潜哨戒機であるがゆえに、日本に基地を置くことは、非核三原則に反するから置くべきではない。グアム島なんかに置いてどんどん飛べばいいじゃないですか。そういう交渉ができなかったのか。いまからでもおそくない、そういう交渉をすべきではないかと私は思うのですがね。  先ほど言ったように、B52というのは、つけようと思えばつけられる、核装備可能だということで、みんなで反対して出たじゃありませんか。そのP3のいま言った装備の問題は、任務説明、これが天下に明らかになった場合は、沖繩県民の人はもちろんのこと、みんなどこにP3が着いても騒ぎますよ。私は防衛局長から、核爆雷ルルというのがP3に載っていますというふうに、去年の沖繩国会で説明を受けるまでわからなかった。そういうことは防衛局長もちゃんと知っていらっしゃる。ですから私は、こういうような常時核搭載をして哨戒するような飛行機は日本に置くべきではない。もちろん玉つき移駐なんか反対であります。そういう点で交渉する考えはないかと思うのですが、いかがですか。
  95. 吉野文六

    吉野政府委員 沖繩に核がなくなるということは、もちろん、その核の中には戦略核は言うまでもなく、あらゆる戦術核も含むわけでございますから、したがって、これを米側が厳守する以上、沖繩には一切の核兵器、あらゆる核兵器はなくなる、こういうように御理解願いたいと思います。
  96. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、ここで一番大事なことは、私たちの調査によりますと、日本本土にだって核が置いてあるという疑いがあるのですよ。このことについて政府はついに回答なしで終わったのです。横田基地に核兵器が持ち込まれた疑いがあると私は質問しましたね。しかもその核輸送中に、核そのものの事故ではないけれども、ほかのことで事故が二回発生しているじゃないかと、去年の沖繩国会で指摘しました。それについて防衛庁側から、横田基地へ行っても回答はありませんでしたで終わっているのですよ。持ち込んでおりません、ありません、と言ったって、われわれの言っている疑いについては、何ら前向きで話されていないじゃありませんか。そしてそのP3の問題についても、日本に飛んでくるやつには核はありません、しかしグアム島から飛ぶP3にはありますなんというような答弁では、私は納得できないわけですよ。  だから、私が言っていますのは、先ほども言いますように、やはりここで大事なことは、沖繩県民のことを思い、さらに日米の親善のことも考えながら、国民の疑問に思っている、また疑惑を抱いている点については、前向きに率直明快にすべきじゃないか。であるならば、私はあなたが窓口だから言いますけれども、P3についてはどういう任務があるのだ、核爆雷を積んでいるようなことを言っている人があるけれども、どうなんだ、そしてまた、もし返還になってどうしても日本の基地が使いたいというならば、絶対核爆雷は使わない、搭載しないということを確約できるか、このくらい言えるでしょうと私は言っている。いかがですか。簡単なことですよ。
  97. 吉野文六

    吉野政府委員 この点については、たびたびお答えいたしましたとおり、一切の核兵器は沖繩にはない、こういう確言を米側から受けるわけでございます。また、将来、あらゆる核を持ち込むことに対しましては、事前協議条項が適用されるわけでございますから、したがって、先生のおっしゃられるような心配はないと思いますが、念のためにP3につきましても念を押しておきたいと考えております。
  98. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そう言ってくれればいいのですよ。その点またあらためて質問したいと思います。交渉の結果をまた教えてください。  それから、四月六日から一週間にわたりまして、沖繩米軍と台湾、韓国の合同演習があるようにいわれておりますけれども、その概要。さらに、四日、五日と沖繩のボロー・ポイントというところから中国に向けて新型のミサイルの発射実験が行なわれるようでありますけれども、その概況について伺いたい。
  99. 吉野文六

    吉野政府委員 最初の米台韓合同演習につきましては、われわれは何ら通報を受けておりません。したがって、残念ながらこれについては、私は何らの情報も持ち合わせておりません。  それから、四月四日、五日にボロー・ポイントで行なうミサイル発射訓練につきましては、これはわれわれの情報では、本来一月行なう予定であったのが延期されたものである。場所は残波岬の沖合いで、百八十五キロメートル北西の水域において行なわれる。で、四月四日、五日は午前八時から午後六時までその地域の立ち入り禁止という事前通報が行なわれておるはずでございます。いずれにせよこのボロー・ポイントは、われわれとしては、復帰後もAリストによりまして提供することになっておりますから、先方がこれを射撃場として利用することはやむを得ない、このように考えております。
  100. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 まだ質問が続きますから、この沖繩での台湾、韓国との合同演習、電話でけっこうですから聞いてください、どんなことをやるのか。  それから、私、新型ミサイル発射実験について重大に考えておるのですよ。なぜかと言いますと、ナイキハーキュリーズとかホークなら対空ですが、これは新型ミサイルですよ。どういう、ミサイルの発射なのか。もうこの問題については、かつてメースBは古過ぎて使えない、メースBにかわるものを配備しなければならぬという話を私は聞いております。メースBにかわってこういう新型ミサイルを沖繩配備する。たとえ短距離弾道弾であっても、これは中国に向け、あるいは北朝鮮に向くようなものであっては、これは重大な問題ですよ。どういうミサイルですか。
  101. 久保卓也

    久保政府委員 これはナイキやホークの年次射撃訓練であると思います。そして、短距離誘道弾でありましても、沖繩に配置されているという情報は持っておりません。したがいまして、従来ありまする、おそらくナイキハーキュリーズであろうと思います。これはわれわれの常識で言いましても、当然防空ではありますが、飛距離が約百四十キロばかりでありますから、いまの百八十キロばかりの扇形の中で発射訓練をするというのは当然であって、やはりナイキか、もしくはホークであろうと思っております。
  102. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 あなた、すぐ前向きに答弁なさるのはいいのですが、見てないのでしょう。そんな発言だめですよ、私はちゃんと調べているのですから。ミサイルが飛ぶのは百三十キロじゃないですか。ちゃんと防衛年艦に書いてありますよ。ということは、ホークでもなければハーキュリーズでもないということじゃありませんか。ホークなんか四十キロしか飛びませんよ。であるなら、これは私の調査によりますと、もう二十メートルの発射台が二基備えつけられています。その追尾が補助飛行場にちゃんとあるのです。ハーキュリーズやホークの類だったら、いまある基地でやればいいのですよ。これはまだ防衛庁には窓口がありませんよ。だから外務省で調べてください。しかも、四日から五日にかけて撃つようでありますから、私たちは新型ミサイルの発射訓練だと思っているのですよ。当然このことは、そのまま沖繩配備することを想定してのミサイルの発射実験だと私は思っているのです。いまのような状況しかわからないわけですね、局長は。
  103. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれの受けておるインフォーメーションは、先ほど久保防衛局長が申し上げましたように、年次射撃だろうと思っておりますが、念のためにもう一回、この点につきましても、先生の御指摘の点を含めまして、先方に照会してみたいと思います。
  104. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはまたあと質問を留保しておきますから……。  現在、沖繩の周辺に訓練海域は幾つありますか。
  105. 吉野文六

    吉野政府委員 訓練海域で公海上のものは四つでございます。
  106. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 水産庁の方に伺いますが、漁業組合で、その米軍の訓練海域へ出漁させてほしい、魚をとるためにそこに出してほしいという申し入れがあっても、米軍の訓練海域のためにだめだという話を私は聞いておるのですが、実態はいかがですか。
  107. 前田優

    前田説明員 お答えいたします。  水産庁といたしましては、毎年、外務省を中心にいたしまして、米軍側と種々この問題について折衝を続けております。で、まだ返還前は、なかなかアメリカ側としても当方の要求をのむ段階までいっておりませんけれども、年々、いわゆる区域の縮小または制限の緩和という形で、沖繩の漁業者の意見がかなえられつつあるという状態でございます。
  108. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 かなえられつつあるというが、四つの制限海域の中で、どこの地域とどこの地域がその問題が出ているのですか。
  109. 前田優

    前田説明員 これはいま外務省から四つの大きな区域の問題が出ましたのですが、小さく分けますと、かれこれ三十七くらいございます。で、この三十七ございますけれども、前年度までは四十九ございました。四十九が現在三十七になっておりまして、なお三十七の中でも、相当広い区域をとっておりましたのを縮めたり、または期間的に長い期間を縮めてもらうという形で漸次是正されておりますが、返還後はできるだけ必要最小限度にとどめていただくように強く要求してまいりたい、そういうふうに考えております。
  110. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 アメリカ局長、わかったでしょう。四十九カ所もあったのですよ。もう島じゅう、あんなきれいな島の回りにはたくさん魚がいるといってとりたくても、訓練海域がたくさんあるためにとれなかったのですよ。それから沖繩に地場産業を育成するとかいっていますけれども、やはりこういう問題については、外務省が窓口なんですから、水産庁の意見を十分聞いて、現在の三十七カ所をさらに縮小して、できれば全部返してほしいと思いますがね。前向きでやってもらいたいと思うのです。その点いかがですか。
  111. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど私が、公海上の演習水域としては四カ所あると申し上げましたのですが、それはそのとおりでございまして、実はいま三十七カ所ないしは三十九カ所、いわゆる制限水域と申しますが、それは領海で基地に接岸しておる区域のいわゆる制限水域と称しまして、この中においてもいろいろな漁業権その他が制限されておる、こういう地域がまた別にあるわけでございます。この点は、A表の注二には「接続する制限水域の提供を必要とするもの」、それから注三には「公海上の演習水域に関し、引き続き準備作業を行なう」、こういうふうに書いてございます。それをわれわれは指摘したわけでございます。  なお、これらの制限水域及び公海上の演習水域につきましては、われわれとしても先方に対して、これらを撤廃ないしは縮小してくれということは常時やっておりますし、今度の返還に伴う基地の縮小につきましても、これらの水域を減らしてほしいということで目下鋭意交渉中でございます。
  112. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これはきわめて大事なことです。私は何も公海と領海を分けて言えなんて言った覚えはないですよ。要するに制限されている海域はものすごくある。だから地場産業に大きな影響を与えている。これは言うならば、領海なんてものは全部取っ払ってもらって公海でやってもらう。しかも米軍には主要な部隊がいなくなるのですから。マリンを中心とした一部の部隊だけになるといわれているのです。そんなものは要りませんよ。だから前向きにやってもらいたい。このことを次の日米交渉のときに強く言っていただきたいと要望しておきます。  それで、少し時間がありますから、設置法の本文に入りたいと思います。  まず開発庁設置法案の問題でありますけれども、まず通貨問題について伺いたいと思います。これはいままで委員会等においてもよく議論されておりまして、沖繩県民は全く責任がない、いわば日米間の政策によって生ずることであって、日米間において責任はとらなければならぬ、基本的には沖繩県民にしわ寄せしてはいけない、こういう基本線でいままで来たのでありますけれども、まず沖繩通貨の一ドル三百六十円の即時切りかえについて、これは、過日、内閣委員会理事沖繩をたずねまして、そして各労働組合、経営者の団体、いろいろな関係各界の方々に会ってきました。そこで言うことは一様に、一ドル三百六十円の即時切りかえというものが必要だ、早急にしてほしい、即時にしてほしい、こういうふうに要求があったわけです。私もこの問題についてあらためて大蔵省から見解を伺っておきたいと思うのです。  いままでの答弁では、技術的には無理だ、あるいはまた、いろいろ無理ではあるけれども前向きで沖繩県民に対して何とか少しでも支障がないようにしていきたい、こういうふうな答弁があったことは知っております。その点についてあらためて、その後少しは前進しておるのじゃないかと思うので、その問の答弁を願いたいと思います。
  113. 前田多良夫

    前田政府委員 ただいまお尋ねの件は、一ドル三百六十円の問題と即時切りかえの問題、こういうふうに分けられるかと思いますが、確かに沖繩方々からは、一ドル三百六十円による即時切りかえという御要請をしばしば受けておるわけでございますが、まず一ドル三百六十円での交換ということは、復帰前であろうと復帰時であろうと不可能であるということを申し上げたいわけです。その理由は、御承知のように、通貨交換と申しますのは、これは、債権者と債務者両方ともに損をしない、両者の間の公平をはかるということが非常に必要なことでありますし、また大量の投機資金が流入するということは目に見えておるわけでございます。したがいまして、ドルと円との交換というのはあくまで等価の交換でなければならないわけでございまして、そういう意味におきまして、一ドル三百六十円での交換ということは、復帰前あるいは復帰時を通じまして不可能である、こう考えるわけでございます。しかし、  それでは、実勢レートによる交換によりましてなるべく復帰前に早くやれないものであろうかどうか、こういう観点から、これは一月初旬におきますところの日米首脳会談で、大蔵大臣から先方のコナリー長官に提案をいたしました。これはひとつ日米で技術的な問題について検討しようということになりまして、その後ずっとその問題について検討してまいりましたわけでございますが、御承知のように、実勢レートによります通貨交換におきましても、やはりただ交換しっぱなしではならないのでありまして、日本の本土でしかれているような為替管理というものを沖繩にもしかなければならぬ。そうしますと、それはだれがやるかといえば、日本政府が出ていってやるわけにはいかないので、そこには、琉球政府を含めて民政府の布令の改正も必要になりましょうし、あるいは琉球政府における立法も必要になりましょう。それからまた復帰前に通貨交換をやるということになりますと、いろいろの警備体制、こういうものにつきましても非常にむずかしい問題があるというようなことがだんだんわかってまいりまして、現在におきましては非常にそういう問題がなかなか解決できないような状況になってきておりまして、技術的に見ますと、事前の実勢レートによる交換につきましても非常にむずかしい情勢になってきている、こういう事情でございます。
  114. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いずれにしても、先ほども言いましたように、たとえば、通貨の即時切りかえができないで復帰時に一ドル三百八円の新レートで換算されるならば、円の切り上げ率は一六・八八%でしょう。そうして換算されていきますから、非常に実質賃金のダウンということが考えられるわけです。こういうような中で、もう一つは物価上昇という問題があるわけです。ですから、働く労働者、公務員の方々はたいへん困るわけですよ。非常にその点で不安を持っているわけです。特に現在ですら賃金の水準というのは本土の八割程度なわけで、それがさらにまた一割以上も格差がつくということになると、たいへんな問題になる。  そこで伺いたいのですけれども、賃金の一ドル三百六十円による読みかえ補償についてですが、公務員の場合の補償と軍雇用者の場合あるいはまた民間労働者の場合、こうあるわけでありますけれども、まず人事院に、国家公務員の場合の補償についてはどうするのか、この点について、いままでまだ言っておりませんから、前向きでひとつ答弁していただいて、公務員の方々の不安が少しでも解消するように明快な答弁をいただきたいと思っております。
  115. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 とにかく復帰の機会にわれわれの仲間が新しく帰っていらっしゃるわけでありますから、前向きで答えるばかりでなしに、前向きで問題を考えてやるということは申すまでもないことでございます。ただ前提として、一般の企業の場合と一緒に考えられがちですけれども、公務員の場合は、それらとは違ってだいぶん、卑俗なことばで言えば有利な条件がそもそも整っておるということが申し上げられると思います。  第一点は、一般の企業の場合であれば、これから新たに、素朴な言い方ですけれども、円建ての俸給表をつくらなければならぬ。ドル建ての俸給表から新たに円建ての俸給表をつくるときに、いかなる換算で円建ての俸給表をつくるかという問題があるわけです。幸いにわがほうは、強力なる円を基礎にしての一般職国家公務員の俸給表というのがすでにちゃんとできておりますから、それに乗り移っていただくという点において基本的にだいぶん違うということと、もう一つは、われわれの扱い方としまして、これは琉球政府等とも緊密な連絡をとってやっておるわけですけれども、まず、沖繩政府にその人が採用になったときに、内地の一般職国家公務員に採用された者とスタートをそこでそろえてしまいまして、わがほうの給与法でずっと歩んできた場合に、五月十五日にどこまでたどりついておられるかという計算で、これは一人一人について仮計算をやりまして、わがほうの俸給表の何等級何号俸に、その人がいままでの経歴からいって当然乗りかえられるかという形で持っていっておりますから、一般の民間企業の場合とはよほど違った、むしろ有利な条件がそこにできているというふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。  したがって、三百六十円で換算したらどうかこうかというようなことも、仮定的には考えますけれども、そんなに損にはならないはずだ、むしろある程度有利になるのじゃないかというような気持ちさえ持っておるわけでございます。
  116. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 施設庁長官、いま法案審議にちょっと入ったわけですが、賃金の一ドル三百六十円による読みかえ補償の問題についていま質問しているわけです。国家公務員の場合の補償について人事院総裁から伺ったわけですが、軍雇用者に関してこれはどのように考えておるのか、その点お伺いいたします。
  117. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 軍雇用者につきましては、復帰後は本土並みの間接雇用に移行するということで、いま日米間で協議をいたしておるわけでございますが、基本給の決定につきましては、復帰日の前日における基本給に定期昇給の待機期間ということを言っておりますけれども、たとえば一年間の定期昇給期間でありますれば、それまでに八カ月経過いたしておりますれば、その八カ月分を考慮いたしまして、それを基本給に合算いたしまして、それに所要の調整を加えて基本給を決定する。諸手当もその基本給をもとにして決定するということで考えているわけでございます。  そこで、基本給の調整の問題につきましては、本土の労務者の賃金の事情その他各種の事情を勘案いたしましてきめるわけでございますが、全般的に見まして、現在沖繩において受給いたしております給与の額を下回ることのないように、できるだけ高い額において決定するような方向でいま日米間で協議をいたしておるということでございます。
  118. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 民間労働者の補償について、総務長官、いかがですか。
  119. 山中貞則

    山中国務大臣 民間の労働者の賃金はきわめて困難な問題でありまして、いまのように、公務員あるいは公社、あるいは発足する沖繩電力株式会社、沖繩県に引き継ぐことになる水道供給公社、こういうもの、さらに、公務員と同じように性格上国が雇用して米軍に労務を提供する軍労働者、このように割り切れない問題になるわけであります。  すなわち、企業の収支の中でコストとして労働者に幾ら払えるかという問題にどうしてもぶつかってくるものでありますから、沖繩側の要望としては、その補償金を出してくれという話もありましたけれども、これはまた、算定と配分とにきわめて困難な問題があるし、性格上もなかなか問題がある。気持ちは補償金を出したい、沖繩の人には何の罪もないという気持ちで私もおります。しかしながら、いままでとりました措置としては、まず第一に、いままでのような行政措置で配慮ができるもの、すなわち収入に貢献できる措置をとり得るものとして、許認可料金等の復帰後の定め方については、新料金の設定の際に、三百六十円に換算はできませんが、三百六十円に換算したと仮定したらどういう金額になるかということを念頭に置いた新料金設定を行なうことによって収入がふえますから、したがって雇用者に対して実質上換算したと同じ円の給料が払えることになる。この面は一応当事者間も納得しておるわけです。  その次に、制度として処理できますのが金融機関、銀行、生命保険会社等でありますが、これらについては、当初百億の手持ち外貨の預託、あるいはそれができなければ日銀の預託というような意見がありました。しかし、これはいずれも外貨の運用については、復帰の時点における問題がありますし、また日銀預託については、日本銀行の独立性の立場から検討をして、日銀法上やはりできかねるという回答がありましたので、断念をいたしまして、百億を預託をした場合の運用益、すなわち金利差ですね。それによるものを金融関係が幾ら見ていたかというと、約三億であります。そこで、たまたま本土においては、ことしの三月開始事業年度から、現在の金融機関の貸し倒れ準備金の繰り入れ率を千分の十五から千分の十二に下げるということを閣議で決定いたしております。しかしながら沖繩は現在千分の十であります。これを千分の十五にする。現在その時点においては本土に千分の十五が存在したのですが、復帰時点において存在しない千分の十五を適用した場合には、沖繩においては千分の五だけ非課税繰り入れができる。しからば、その能力があるかということで実績を調べてみますと、大体、銀行、相互銀行等で、千分の十五、いわゆる千分の十の非課税分の上を課税留保しているわけなんです。そこで、その能力は完全に持っているわけでありますから、千分の五分だけ非課税措置を復帰後の五月十五日以降開始される事業年度とともに沖繩だけ特例を当てはめますと、約四億のメリットが出る。手持ちの金が非課税になるわけでありますから。このことで納得をされて、一応労使紛争は解けました。  そこで、そのような行政手段、税制手段等が講じにくい——沖繩の法人税だけ一カ年取らないとかなんとかいう、きわめてやりにくい問題に遭遇するが、そういう政策的な体系の中に入っていない零細中小企業の多いであろう民間の普通の事業者ですね。これも、商店街も含めて、雇用者を二、三人持っていてもやはり同じ問題に遭遇しているわけでありますから、その問題は非常に頭の痛いところでありましたけれども、一応琉球政府としては、現在の琉球政府の資金の運用状況、融資状況から見て、産発資金に十億円、それから大衆金融公庫に七億六千万円。大衆金融公庫の場合は、一種の生業資金もこの際は対象にしてくれということの条件を付して、それだけの融資をしてもらうならば何とかやっていけるということで一応妥結して、大蔵とも合意の上その措置はとったわけです。しかしながら、その後の実態を見ておりますと、その融資だけでもって、理論的にも大体コストプッシュ要因の永続すべきものを融資してやるというのは、借り入れで泳ぐというのはおかしな話であって、しかし現実には、低利長期の借り入れが一般の市中負債の肩がわりに、おそらく会社経理としては行なわれるでありましょうから、それぞれの範囲内でメリットを見出して可能なところは妥結していくようであります。  しかし、まだ沖繩の中小零細企業全体に、はたしてこの金額等で十分であるかという問題は、私自身も疑問を持っております。したがって、現在沖繩金融開発公庫もまだ衆議院で継続審査になっておりますが、これの発足に伴うことと符合しながら、何らかの新しい沖繩並みに設定される条件とワク、そういう賃金切りかえのショックというものに企業が対応できるような条件とワクとを設定したものが可能であるかどうか、現在検討中であります。これを目下のところ金額や条件その他について明確にでき得ない段階でございます。私一人の立場だけで発言できない立場も一方にありますので、現在その意味では、最悪の場合でもだいじょうぶだという自信の持てるような措置を検討中であるということであります。
  120. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その点について大蔵省にまた伺いたいのですが、いまの総務長官、前向きで答弁なさいましたそれについて、大蔵省はどう考えているのか。そして金融逼迫という問題については、沖繩経済の景気浮揚のための緊急措置ですか、これをとられたわけですね。いま総務長官も答弁なさいましたけれども、しかしこれで私は問題が解決するとは思えないわけです。この中にも、資金需要の実態を勘案後追加融資することとした、こういう含みのある回答があるわけであります。これについて大蔵省はどんな考えを持っているのか。  さらに、現地の各界の要望として、沖繩の金融機関に対して日本銀行の預託をしてほしい、こういう要望もあるわけでありますけれども、その点について大蔵省はどう考えているのか、伺いたいと思います。
  121. 福島量一

    ○福島説明員 ただいま長官から御答弁申し上げましたように、琉球政府の一九七二年度に当初から予定しておりました金額、産発会計に十八億九百万円、大衆金融公庫に十五億二千二百万円でございますが、合わせて三十三億三千百万円の金額にのぼっております。これの消化状況等を勘案いたしまして、さらに十七億六千万円の資金ワクの追加を検討したいということでございます。  ただ、現在までのところ、先ほど申し上げました三十三億三千百万円にさらに七一会計年度からの繰り越し分を加えまして、かつ大衆金融公庫におきましてすでに融資されております金額を差し引きまして、産発会計並びに大衆金融公庫からの未融資残高というのは三十五億八千万円にのぼっておるわけです。このうち年度内に十億円弱の支出をする予定でございますが、なお二十五億円残っておる。これに先ほどの十七億円を加えますと、四十二億円のワクがまだ残るわけです。したがって、四月から五月十四日までこの消化がどうなるか、これが一つのポイントでございまして、この辺の帰趨を見定めながらその後の措置を考えていきたい、かように考えております。
  122. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するにやってほしいのですよ、考えているのじゃなくて。
  123. 福島量一

    ○福島説明員 ですから、産発特会と大衆公庫に対しまして財投資金から出ますものが、すでに二十五億円いままでの分で残っておりますし、それから先ほどの追加の要請があったのが十七億円、合わせて四十二億円まだ未融資残高があるわけです。現地ではけなければから振りになって意味がない、そういうことでございますから、その消化状況を見ながら考えていくということでございます。
  124. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それを見ながら追加融資を考えるということですね。わかりました。  それでもう一つとして、現地金融機関に日本銀行で預託できないか、こういう各界の非常に強い希望があったのですが、その点はいかがですか。
  125. 松川道哉

    ○松川説明員 現地の金融機関に日銀が預託をするというその理由づけでございますが、これは先ほど先生の御発言の中にもございましたが、一体、沖繩で一般的に金融が逼迫しているかどうかという問題が、まず前提にあろうかと思います。  そこで、沖繩の場合、まだ私どもが直接いろいろなデータをとれる範囲の外にございますが、とれる範囲でいろいろなデータを調べてみますと、金融の逼迫の度合いを示すいろいろな指標の中に、いわゆるコールマネーの市場に金を出しているのかどうか。余裕のある銀行はそこに金を出しますし、逼迫している銀行はコールマーケットから金を借りるのであります。ところが、沖繩の特に琉球銀行、沖繩銀行、中央相互銀行、この三行をとってみますと、二月の初めも金を東京に持ってきて出しておりました。二月の末になりますと、出しておる金がさらにふえておる。銀行によって、若干減ったところ、ふえたところございますが、三行合計でふえているという形になっております。ということは、沖繩全体としてみれば、一体金詰まりなのかどうか、本土へ金を出しておるのに、それでもさらに金詰まりと言えるのだろうかという疑問が一つございます。  また別な見方をいたしまして、預貸率、預金に対してどのくらい貸し出しをしているかという率を見ますと、琉銀、沖銀の八四とか八八とか、そういうパーセントになっております。それに対しまして日本の全国銀行の計数が、同じように一月末でございますが、九一・四%。ということは、本土の全国銀行の預貸率よりも低い預貸率である。貸し出しが少ないというかっこうであります。ということであれば、そこが金融が非常に逼迫しているから、これは日銀が直接やるかどうかは別問題にいたしまして、何らかの形で資金を持っていく必要があるかどうかという点について、私ども疑問に思う次第でございます。
  126. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 現状を分析をすればそうかもわかりません。ただ見通しとして、必ず近い将来にそういうことになり得る、こういう見通しを持っているからこそ、そういう要望を強く言ってきているんだと思うのです。ですからやはりその点についての考え方ですね。
  127. 松川道哉

    ○松川説明員 将来、返還後になりますと、これは当然本土の一部になりますし、そこで、金融の調節というのは、日銀が直接責任をもってやらなければいけないことになります。そういたしますと、五月十五日以降におきましては、日銀が金融情勢を常に見ながら、必要があればすぐ適切な手を打たねばならない、これは当然のことであり、当然そのようにいたすと思います。
  128. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それから日本政府から二十億円の生活必需物資価格安定資金を出しておりますね。これが現在ではその金が使われていない。いろいろ調査したんですが、現在は七億程度しか出してないわけですね。これは手続上非常にめんどうくさいらしいんですよ。これをもう少し簡素化したほうがいいんじゃないか。この運用の改善ですけれども、これについてどう考えていますか。
  129. 山中貞則

    山中国務大臣 これは大蔵省に答弁させるのはちょっと酷でありますから、私から答弁いたします。  十二月分までで二十億、さしあたり物資だけに限りますと支出をいたしましたが、さらに一−三月で二十億、四月と五月の十四日までで十三億というふうに五十億を上回る金を準備いたしておりますが、先ほどおっしゃったように、琉球政府も、初めてこういうようなことをやらさせるわけですから、実際気の毒なことですけれども、事務のこなれや正確を期し——また何のために金が出されるか、それは物価が少なくとも八月末の状態より以上に上がってはならないという目的をもって出す金であって、価格は上がってもその金を取るというんだったら、一体どこが中間で——それはもう国民の税金が五十億以上も消えてなくなるという結果になることは、琉球政府も絶対に避けたいという気持がありますから、したがって、慎重にやりまして、手続もずいぶんめんどうだったらしいんです。そして末端価格が消費者に転嫁されてないことを確認した後支払いに応ずるというようなことをやっていたようであります。  そこで、昨年の末から相談をいたしまして、現在では琉球政府も、申告があれば直ちにまず金を払って、そして価格が据え置かれたり、あるいは目的を達していない場合はそれの返納を命ずる、あるいはその会社については今後価格差補給金の対象にしないというようなペナルティーも科するようなことを作業としてやっておりますし、手続も書類その他で合理化、簡易化する努力をしておるようであります。したがって、十二月末までに支払いの申し込みだけは八百万ドル出ておりますから、支払う態勢、能力さえあれば、二十億も完全に十二月までに消化しているということになりますので、したがって、これからは順当に予定された五十数億のものが支出されていくであろうと思っておりますが、それらの作業のおくれから、末端で若干の舶来品と申しますか、日本本土以外の輸入物資や、あるいは島産品等の値上がりに比して、本土からの四百四十品目の値上がり率は低いという効果は一応見えておりますので、さらにこれを捨て金にならぬよう、そして沖繩の人たちの日常生活が本土の通貨対策の犠牲にならぬよう、さらに努力をしていきます。
  130. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これから防衛庁関係だけの質問にしますから、総務長官、人事院総裁、どうぞ食事に行ってきてくださってけっこうでございます。  久保カーチス協定とナイキハーキュリーズ、ホークの買い取りの問題について質問をいたします。  まず第一に、久保カーチス協定事務レベルで引き継ぎをスムーズにするためにこの協定をきめた、こうおっしゃっているわけですが、私は、この協定の中でナイキ、ホークを買い取るなんということは、事務手続ではないと思うのですよ。一つは、武器というものを他国から買う場合はきわめて重要事項ですよ。ですから、これは当然事務レベルの問題ではなくて、国防会議なり、あるいはまたもっと上の政治レベルで取りきめるべきであった。まず私はその点を指摘しておきます。  そこで、ナイキ、ホークの問題でございますが、この久保カーチス協定の最後にあるわけですね。まず私が伺いたい点は、ナイキハーキュリーズの買い取りが予算に組み込まれているというのですけれども、本年度予算のどこにそれが入っているわけですか。
  131. 黒部穰

    ○黒部政府委員 沖繩から買い取る分のナイキ及びホークの予算は、国産の調達分と合わせまして一括して「予算要求の大要」のほうに表示してございます。
  132. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これでしょう。
  133. 黒部穰

    ○黒部政府委員 はい、さようでございます。
  134. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 少なくともこれは大問題ですよ。一生懸命さがしてもわからない。こんな「予算要求の大要」がありますか。
  135. 黒部穰

    ○黒部政府委員 二三ページでございます。
  136. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ではこの中に沖繩分も入っているわけですね。
  137. 黒部穰

    ○黒部政府委員 そのとおりでございます。
  138. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 わかりました。だけれども沖繩分は別だと言っていたじゃないですか。そうしますと、このナイキ、ホークの金額は、沖繩分については幾らですか。
  139. 黒部穰

    ○黒部政府委員 実はナイキ、ホークにつきましては、米国側よりの売却の申し出がありまして、わがほうも調査の結果、ほぼ良好なる状態であるということで買い取る意思を表示いたしまして、現在その価格について交渉中でございます。したがいまして、実は金額を、沖繩分これこれということを申し上げるべきかと思いますけれども、公の席でこれを申し上げますと、米側では、日本側ではすでにそれだけ用意しているかということで、価格引き下げの交渉ができませんものですから、公表を差し控えさせていただきたいと思います。
  140. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 しかし事務的には、買い取るといっても、値段も何もきめないで了解するなんておかしいじゃないですか。大体のところはさまっているのでしょう。申されなくてもかまわないですよ。
  141. 江崎真澄

    江崎国務大臣 もちろん、予算に計上してあるのですから、きまっているわけです。いま申し上げましたように、価格の折衝中ですから一括して計上しておるわけですね。それが伊藤さん御指摘のように、非常にわかりにくいということだと思います。これはまことにどうも恐縮なことですが、もうしばらく時間をおかし願いたいと思います。あるいはまた委員長において、内閣委員会が責任をもって秘密保持をするとおっしゃっていただけるならば、予算委員会等の前例もありまするので、出すことにやぶさかではない。しかしできれば御容赦を願いたい、こういう意味でございます。
  142. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それじゃ、委員長の取り計らいで、この問題は、予算委員会に準じて、秘密理事会なり、あるいは非公開の理事懇なりでけっこうでございますから、お取り計らい願いたいと思います。いかがですか。
  143. 伊能繁次郎

    伊能委員長 本件につきましては、理事会において協議をいたした上、決定いたしたいと思います。
  144. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは、わかる部分だけ教えていただきたいと思う。  まず、沖繩から買い取るナイキハーキュリーズは何基あるのか、そしてたまは何発あるのか。
  145. 黒部穰

    ○黒部政府委員 一個隊分でございます。
  146. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 一個隊何基ですか。
  147. 久保卓也

    久保政府委員 ナイキが三十六ランチャー、たまが八十二発、それからホークが二十四ランチャー、たまが百四十四発であったと思います。
  148. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 間違いありませんか。ナイキ八一キュリーズが三十六基ですね。八カ所に展開して、一カ所に四基ずつですね。そしたら三十二になるのじゃないですか。
  149. 久保卓也

    久保政府委員 ナイキは通常、本土でありますと四個中隊で一つになります。その場合に四、九、三十六でありますが、沖繩の場合には一個隊で十二ランチャーあります。それが三つの部隊でありますから三十六基。これに一ランチャーについて通常二発プラス予備ということであります。それからホークのほうは、六ランチャーの一個隊が四つですね。四、六、二十四、こういうことであります。
  150. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 日本サイドでものを言ってください。一個中隊なんて言うから、ずいぶん少ないなと思ったら、それはアメリカのことであって、日本に分ければ四個中隊になるでしょう。  それで、これはいろいろ私は問題があると思うのです。このナイキハーキュリーズは、御存じのように核装備可能で、もちろん核のハーキュリーズもあったわけです。その点については、どういうふうな改造とか、どういう取り扱いをするのか。
  151. 黒部穰

    ○黒部政府委員 確かにナイキハーキュリーズでございまして、わがほうが通常持っておりますのはナイキJタイプでございます。したがいまして、ハーキュリーズタイプでございますから、これは核をつけ得るわけでございます。ただし、わがほうで先般調査いたしましたときには、はたしてついているのかついていないのか、その点は確認できておりません。そこで、買い取りの場合は、かりに核があるならば、全部撤去した上でわがほうはこれを受け取ります。受け取りましたあとJタイプに改装いたします。Jタイプに改装いたしますやり方は、弾頭部分について核弾頭がつけられないような遮蔽板を入れます。その他若干の手直しがございます。手直ししまして完全なJタイプにいたすわけでございます。
  152. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまアメリカでナイキハーキュリーズはつくっておりますか。
  153. 黒部穰

    ○黒部政府委員 現在は生産は停止されていると聞いております。
  154. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するにその辺が問題なんですよ。前にもDASHという無人ヘリコプターを買いましたね。それだって生産停止のものじゃありませんか。  それで、私が言いたいのは、これはもうだいぶ言いなりの値段で折衝しているのじゃないかと実は思うのです。たとえば私が申し上げたい点は、もちろん核を取るのは当然ですよ。ナイキだって非核と核があるんですから。核は少し長いだけです。ランチャーは変わりませんよ。そしてナイキハーキュリーズミサイルの先端には核の場合は赤がついてますよ。私は見てきています。それでもちろんナイキJにやるには、うしろのブースターを短くするわけですね。あるいはまた、核がそこにつけられないような状態に改造する、こう先ほどおっしゃいましたけれども、このハーキュリーズにしても向こうは生産していない。いわばもうアメリカはつくっていない兵器ですから、どこかに置いてあって、部品がないから使えない。そんなどうしようもない兵器を、幾ら日本が器用だからといって買い取りするということは好ましくない、私はこう思うのです。
  155. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ナイキが生産停止されたから、すでに陳腐化した武器であるかどうかということにつきましては、米軍は大量にこれを調達いたしまして、それで米軍当局者に聞いてみますと、まだ少なくとも十年は第一線兵器である。かつまた、各国にもこれを輸出いたしておるわけでございます。そのために、また米軍といたしましても、部品については十分の在庫を所有いたしております。調達のしかたが、わがほうと若干違いまして、結局、大量生産によってコストを下げるという考え方があろうかと思いますが、一たん採用をきめますと、大量に調達いたし、将来の分の部品まで用意しておくというやり方でおりますので、現在停止しているから第一線の兵器でない、DASHのようなものであるというわけにはまいらぬかと思います。  それから価格の交渉の点につきましては、これは何といっても新品ではございませんので、その点を強く主張いたしまして、相当強硬なる交渉をいたしております。先方も、なかなか事務的に日本側以上に複雑なようでございまして、何べんも応酬をいたしておる最中でございます。ですが、かなり新品に比べますと安い価格のほうで持っていけそうな感じでございます。
  156. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁長官、伺いますが、いまつくってない兵器、それが部品が供給できるとおっしゃいますが、たとえネジ一つなくても、飛行機じゃありませんけれども、やはりミサイルなんというものは非常に性能というものが精密にできておりますから、それに付属した部品が生産停止されると、いままでの会計検査院の防衛庁に対する指摘にもありますように、そこにいろいろな兵器があっても、部品が補充できないでだめになったものがたくさんある。これは事実あります。さらにまた部品を購入しても来ない。そういう点の指摘も検査院のほうにはあるのです。私はそういった点から考えた場合に、たとえ向こうが、性能が十年くらいまだ使えるとか、部品はありますよとか、それは売るときには、商売ですからいろんなことを言いますよ。だけど、人がかわり、また多少もう年月が過ぎますと、そうはなかなかいかぬと私は思う。そこで、そんな中途はんぱな古い兵器は要らないと、まず言うべきだと思うのです。  一つは、なぜ買うことに取りきめをやってしまったのかということです。相当安く買えるというお話でございますが、自動車の例を見ましてもわかりますように、一回乗ってしまえば、たとえ何百万であろうと、もう半分以下になる。ましてや生産しておりませんなんと言うからには、非常に安くなるわけですから、あとでまた、委員長からもございましたように、理事会にはかってその点を十分に説明をなさるといいますから、よく聞きたいと思いますけれども、その点についてはまだ交渉中であって値段はきまってないということですね。
  157. 黒部穰

    ○黒部政府委員 そのとおりでございます。なお、部品の点もございましたが、御承知のように、ナイキは現在日本で生産いたしておるわけでございます。ある特殊の部品は米軍から輸入する、かようなことになっております。かつまた、ハーキュリーズとJタイプとでは、核の点を除きましては、共通の点が非常に多いわけでございます。将来の維持、補給には何ら心配はないと考えております。
  158. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁長官、いまのような経過を経て買うことにきめたようでありますけれども、これはやはり、米軍と自衛官の話し合いによってきめたということは、私はちょっと問題だと思うのです。このことは当然国防会議にかかる問題だと思います。  そこで、私が言っていることは、まずそんな古い、いま生産停止をしているものは、たとえ現在性能がどんなにいいかもわかりませんけれども、ほかに持っていってもらう。それで、日本にあるナイキJのほうが、日本は器用ですから、アメリカのハーキュリーズよりも、ある面においては性能がいいという話じゃありませんか。それを配備したほうがいいじゃありませんか。もし皆さん方が買ってやるとしても、そういう点についてもっと弾力的な交渉ができるのじゃないかと思うのです。その点いかがですか。
  159. 江崎真澄

    江崎国務大臣 買い取りの時期は、ナイキが四十八年六月と言っておりますから、これはやはり今後突っ込んだ交渉ができるというふうに、これはもうお説のとおり考えます。ただ問題は、さっき装備局長が言っておりましたように、取得したあと核弾頭をつけない、いわゆるJ型に改修をするということで、改修方途などについても具体的に部内で進めておるわけなんです。ですから、これはただ新しいものを追うということよりも、改造が可能であるというならば、ひとつそれは御理解を願いたいと思います。
  160. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 装備局長に伺いますが、一個について幾らというのではなくて、まず全体の金額だけは言えるでしょう。ナイキは数字が百万単位ですからね。
  161. 江崎真澄

    江崎国務大臣 委員長、どうでしょうね。これは実際手に入るのが、いま申し上げたのは四十八年六月ですね。そこで、いまあなたが御指摘になりましたように、古いものだし、こちらも、それを譲り受ければJ型に改造する必要があるわけですね。ですからこれは、ほんとうはもう何も隠す必要がないのです。お互いに日本人同士ですから。しかし、そのことがすべて米側に伝わると、やはり相当な予算を用意しているじゃないかということになり、そうすると、それより安くなることはありませんね。まあそういう意味で申し上げておるので、ことさらに言を左右にしてあなたの御質問をはぐらかそうとか、そういう意味で言っておるわけではありませんので、できればこれはひとつほんとうにまかせてくれませんか。これはお願いします。
  162. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それは相談であって、これでは質問にならぬですね。これはやはり言えない問題ですか。
  163. 伊能繁次郎

    伊能委員長 伊藤君に申し上げますが、さいぜんの理事会で協議しようと言った趣旨は、総額の点について明らかにすれば、当然価格の算定がそれによって結論を直ちにつけられるわけですから、この点はその趣旨を含んでお尋ねをいただきます。
  164. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 では装備局長、すでに購入している分のナイキJ一基は現在幾らですか。
  165. 黒部穰

    ○黒部政府委員 一基というのは一発というふうに……。
  166. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 撃つにはいろいろございますが、まず一式、それからたま。ナイキハーキュリーズの一式は幾らで、そのたまは幾ら、あるいはホークは一式幾らで、たまは幾ら、そういうふうにおっしゃってください。
  167. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ナイキのほうは、単価は一発当たり約九千万円でございます。一発当たりのたまの価格でございます。それから……。
  168. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 もうちょっと正確に調べてください。私も大体わかっているのですよ。たまが一発九千万円もするのですか。そんな高いたまないでしょう。
  169. 黒部穰

    ○黒部政府委員 そのとおりでございます。一発当たり九千万円でございます。
  170. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはナイキハーキュリーズですか。
  171. 黒部穰

    ○黒部政府委員 これは国産のJを調達する場合の予算単価でございます。それで、これは四個中隊で一個群、こう申しておりますが、これを先ほどおっしゃいました一式ということでまとめますと、撃つためには、地上のランチャーとか、あるいは電算機の一ぱい入った指揮装置とか、その他の装備品を入れますが、約百五十億円というふうにお考えいただくとよろしいかと思います。  ホークにつきましては、やはり国産のもので、予算単価で言いますと一発当たり約三千九百万円でございます。これもうランチャー、指揮装置その他の装備品を入れまして四個中隊で一個群と申しておりますが、一個群の標準の価格は約百八十億円でございます。  それで、装備品だとか指揮装置については、そのときそのときによって出し入れがございます。でございますので、常にホーク一個群は百八十億、あるいはナイキの場合では百五十億というわけには必ずしもまいりませんけれども、常識的な形で一式というようなことでお尋ねいただけば、大体さような数字になるわけでございます。
  172. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そうですか。そうしたら、ずいぶん値段が上がったというか、高いわけですね。要するにナイキ一個群の一式分が百五十億円、そういうことになりますと、一個中隊はそれの四分の一だから約四十億円弱ということですね。それからホークは一式、一個群当たり百八十億円ですから、一個中隊はこれも約四十五億円、こういうことですね。
  173. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ちょっとそういう割り算はできないわけなんでございます。なぜなれば、一個群ということで指揮の装置がございます。この指揮の装置は、レーダーを持ちまして、それで各中隊に指令を出すわけでございます。この飛行機を追跡せよという指令が中隊にいきます。したがいまして、これを四分の一に割って一個中隊分幾らというわけにはちょっとまいらぬわけでございます。
  174. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 わかりました。しかし、一つのものを買うのに、あるいはまた見積もる場合に、そういうふうにあまり大きく言わぬで、これは一発幾らだ、じゃ一基分幾らだと、こう私は聞きたいわけですよ。それで私はあえて言ったわけですが、おっしゃることはわかりました。  ですから、こういうふうな高価なものですから、買い取る場合については、たとえ高価であっても、いわば生産停止した中途はんぱな兵器であるから、この点については、防衛庁長官、交渉の余地はまだあるわけでしょう。もう買いたくない、もっと性能のいいナイキJがあるんだから、核装備可能なんというのはかえって誤解を受けるから持っていってくれ、この交渉もうできませんか。
  175. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはひとつ安く買おうというわけですからね、むろん改修費を見積もって。だから相当折衝の余地はあると思うんです。まあ従来とも折衝はしてまいりましたが、あるいは時を得て申し上げることができるかと思いますが、これは相当値打ちに引き取ろう、こういうわけですから、国家的にも決して損のないようにしたいといます。
  176. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 まあ、いろんなこまかい話については、また理事会のときに長官に説明してもらうことにいたしまして、私はこういう久保カーチス協定について疑問視しておったわけですよ。総理は予算委員会において、事務レベルできめたんだから、久保カーチス協定変更あり得ると言われた。ですから、いまのような問題も含めまして、もう一回国防会議にはかって、やはり国民の納得がいくように、さらにまた国民の税金を使ってのいろんな兵器の購入でもありますから、その点は慎重にしていただきたい。  国防会議事務局長に伺いますけれども、こういった問題について、少なくとも佐藤総理は、久保カーチス協定も含めて国防会議にはかると言っておるわけでありますけれども、現在参事官会議であるとかいろんな会議が開かれておるようでありますが、どういうことを審議し、久保カーチス協定についてどんな取り扱いをしているのか。
  177. 海原治

    海原政府委員 先ほどもちょっと御説明いたしましたようにこの際の国防会議で何を検討事項とするかにつきましては、とりあえず配備されます部隊計画につきましても、まだ昨日段階でも、防衛庁のほうからの具体的な資料をいただいておりません。このナイキ、ホークにつきましてはさらにそのあと段階になります。そこで、これも含めまして一括して国防会議で御審議いただくことになるかどうか、これは私の立場では何とも申し上げられない次第でございます。先ほど先生の御質問お答えいたしましたように、防衛庁のほうからのお考えを伺ったあとのことになるわけでございます。  それから第二のナイキとかホークのこういう具体的な装備の取得につきまして国防会議検討すべきじゃないかという御意見でございますが、これは、昨年までの過去の扱い方としましては、そういうものは国防会議の論議と申しますか、検討の対象ではないことに一応なっております。しかし先般の、これも先ほど御説明いたしました例の衆議院議長のごあっせん案の第三項に関連いたしまして、どのようなことをこれから審議していくかということの問題がまだ決着がついておりませんが、一応私の手元での検討案の段階ではこのミサイルは入っております。したがいまして、長期的な計画において、どのようなミサイルを何群設置するということがきまっておれば別でありますが、それにつきましてはあらためて今後検討するという形においてのきめ方でございますと、その具体的な取得につきましては、先般来の皆さま方の御意見を考えれば、国防会議で御検討いただくのがしかるべきではないかというふうに考えておりますが、これは先ほどもお答えいたしましたように、まだ事務的には煮詰まっておりません。
  178. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは防衛庁長官、やはり防衛庁長官が原案をつくって出す当事者でありますから、当然このことはかけるべきだと私は思います。  そこでそのことを伺いたいのですが、それに加えまして申し上げたいことは、要するに防衛予算の先取りだというような問題で国会が十七日間も空転しました。そして新規装備分について、この三機種だけなんというのはわれわれは不満でありました。こういう問題も含めてすべて凍結すべきだと私は要求もしてきました。しかし、これはこの中に入っておるとは思っておりませんから、私は見のがしました。これは日本の国内でやるのかと思っておりましたから。うまく隠したと思っておりますが……。  そこで確かに、議長あっせんによって、第三項目、第四項目において、今後、防衛庁主要項目については重要事項として国防会議にかける、そういうふうに明確に、議長あっせんについて総理もそれを了承したわけです。ということになりますと、当然この問題についても、国内に対するナイキハーキュリーズ及びホークの配備ということになりますから、私は主要項目になると思うのです。しかもそれは外国から買い取って配備するわけでありますから。その点いかがですか。どう考えますか。
  179. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、防空任務をわがほうは当然独立国として引き受けよう、こういうことで事務的に折衝をしてまいったわけですが、防衛任務遂行の上からいいまして、今度の沖繩というものは全く新しい自衛隊配備でありますので、その実人員張りつけ等の具体項目を国防会議に付議するということの中に含まれるものというふうにお考え願いたいと思います。
  180. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 やはりこの問題は、シビリアンコントロールの面からも、わが党でも、こうあるべきだという見解を発表しました。そこで、やはりこういった重要なもの、すなわち、こういう高い——高いと言っても安いのだろうと思います、先ほどの装備局長の話を聞きますと。それをうんと安く買うということでございますから。しかし私は買うことに反対ですよ。はっきり申し上げますけれども。それこそすぐに行くべきではないと思うし、たとえそれが事務レベルで一応話し合ったとしても、国防会議にかけてこの点については前向きにはっきりさせていただきたいと思ってはおります。ですから、買い取り問題、それからこういう配備も含めまして、重要事項として国防会議にかけて十分検討した上で慎重に対処すべきだと私は思うのですが、その点いかがですか。
  181. 江崎真澄

    江崎国務大臣 だからおっしゃる意味とそう違わないと思うのです。沖繩配備国防会議にかける、こういうふうに申し上げておるわけですから。沖繩というのは新しく配備するわけです。したがって、それを重要な問題であるというふうに総理が解釈をして、これから最も近い機会にかけていこう、こういうわけですから、全体の四次防計画とは切り離して国防会議にかける、こういうことには変わりはございません。
  182. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 配備と購入のことですよ、はっきりしていただきたいのは。配備はもちろんかけるのはあたりまえです。これをやはり、中古品を購入するということでありますから、当然国防会議にかけてから購入するということになりますね。
  183. 江崎真澄

    江崎国務大臣 従来のしきたりは、必ずしもそういうふうじゃなかったわけですが、御意見としてよく承っておきます。
  184. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこが今度の国会で大きな一つの問題にもなっておりますし、またきわめて大事なことですよ。総理が、国防会議にかける、主要項目についても重要事項としてはかる。その主要項目は何と何と何か。当然、武器の購入とか、金額の大きいこういうミサイルの購入であるとか、あるいはまた配置についても、これは重要事項になるということは一いままでも、一重要事項であったけれども国防会議で扱ったり扱わなかったりしておったわけですから、シビリアンコントロールの面からいって、国防会議にこういった問題についてすべてかけると総理が言っているのですから、それをやった上で、購入するための交渉とか、あるいはまた、国防会議一つの基本方針にのっとってやることがシビリアンコントロールを明確にするものだ。また、それが初めて機能したということになろうかと思うのですよ。その点明確に伺っておきたい。
  185. 江崎真澄

    江崎国務大臣 よく検討をいたします。
  186. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 検討するということは、もうすでにある程度話が進んで、今年度の予算において手金を打つとかいう問題はどうなんですか。要するにあなたは、私がいま言ったことによって、そうなれば当然、このナイキ、ホークの入っている予算というものは凍結すべきだと思うのですよ。その点いかがですか。
  187. 江崎真澄

    江崎国務大臣 沖繩への人員の配備はもとよりですが、この兵器の問題等につきましても、これはもう全く新しい問題ですから、そこで重要事項と考えて国防会議にかける、こういうふうに総理が言ったわけですね。したがって、その中にやはりナイキ、ホークの買い取り問題等も当然含む、こういうわけです。したがって、伊藤さんがいろいろな御心配で新しく御提案になっておられますから、そのことはよく傾聴いたしましたので、十分配慮して国防会議で善処していきたいと思います。
  188. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは予算上にあるのは幾らかわかりませんけれども、この予算についてはそれまでまだ執行しない、こういうことでよろしゅうございますか。
  189. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、沖繩施政権がとにかく戻ってくるわけですから、まあ、そういうふうにはおっしゃらないで、国防会議で決定したら、これはひとつ、話し合い、すべて具体化するということを御了解願いたいのでございます。
  190. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 だから、国防会議でちゃんときまればけっこうですよ、あなた方の立場に立って言えば。われわれは反対でありますけれども。それまでは凍結だ、一切執行しないということに了解していいですね。
  191. 江崎真澄

    江崎国務大臣 現実にはそういうことになると思います。
  192. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは大出委員山と交代します。あと質問がありますけれども質問を留保しておきます。   〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕
  193. 坂村吉正

    坂村委員長代理 大出俊君。
  194. 大出俊

    ○大出委員 きょうは、質問者の都合がございまして、私が少しの時間、委員会中断もできませんので、まん中に入らしていただくことにいたしましたが、実はそういう事情もございますので、たいへんじみな質問になると思うのであります。ただ、じみではございますが、たいへんに深刻な問題でございまして、沖繩によしんば防衛施設局ができたにいたしましても、そう簡単にものごとは進まない土地の問題でございます。しかもこれは沖繩国会でも、ついにこの土地問題については深い論議が全く行なわれなかったという事情にございます。  先般、二月の七、八、九日に、この委員会の皆さま方と一緒に、現地に再度行かせていただきまして、地主連合会その他の諸君と会いまして、公式にお話を聞きましたが、以来今日まで、多少は所有権確定等に関する問題は前進をしたか、こう聞いてみたのでありますが、全く前進をしない。まさに方法がない、売買も取りきめもできない、実はたいへんに困窮の限りである、こういう実はお話でありまして、しかもこれは強制収用という形で、よしんば五年間というふうに押えましても、しからば五年間で片がつくかと申しますと、片がつきません。結論を先に申し上げれば、何らかの特別立法が必要であるというふうに思うのであります。  その前に、少し法的にこまかくなり過ぎるけれども、御意見を聞かせていただきたいと思うわけであります。ただいま申し上げますのは、現地の専門家諸公に集まっていただきまして、しかも琉政の担当の方々の意見も入れまして、どういうふうに解釈すべきかということについていろいろ検討した結果であります。したがって、私個人だけの考えではないのでありまして、経済企画庁が国土調査法という法律の所管庁でございますから、そういう意味で少し突っ込んだ御意見がいただきたい、こう思うわけです。以上が前置きであります。  順番に質問してまいりますけれども、まず最初に、この琉球政府でいま実施中の土地調査、この進展状況を経済企画庁の側、これは総理府でもけっこうでございますが、どういうふうに把握をされておるかという点、これをまずひとつはっきりさしていただきたいと思います。
  195. 山中貞則

    山中国務大臣 現在は本土の国土調査法に相当する土地調査法というので地籍調査としてやっておりますが、土地調査帳というのを持って職員が一生懸命やってくれておるわけでありますけれども、一応進捗率が五七%に達しております。これは客観的に言ってみますと、各県平均は大体一〇%ですから、非常に進捗しているように見えるのですけれども、これは境界確定等の簡単な、あるいは戦争等の被害が比較的なかった離島その他の全部を含めてのパーセンテージでありますから、沖繩本島の中南部、いわゆる第二次大戦末期で地域ぐるみ戦場と化したそのあと、住民が全部立ちのかされたり、あるいは強制的に土地を奪われたり、変容してしまったり、いろんなことで中南部においては遅々として手につかない。読谷とか、飛行場あと地などを返してもらっても、みんなで相談してみるけれども、どうも前の地形と全く違うみたいで、何としても話が進まない。あるいは与那原町なんというのは、みんなかってに戻ってきて入り込んで、そしていまでは、これは確かに人の土地だとわかっていても立ちのきしない。あそこは自分の土地だとわかっていても出ていけと言えないということで、私権が完全に入り乱れたままでそこに居住しているという状態で、これは中南部に普遍的な事態でございます。  そこで私どもとしては、そのような状態をすみやかに解消しないと、沖繩の経済計画も発展計画も書けませんので、これを何とかしたいと思っておりましたが、当初沖繩のほうでは、土地調査庁の職員を国の職員にしてくれぬかというお話があった。国の職員にするといいましても、これは実務をやるわけでありますから、一義的には法務省だろうと思って相談したけれども、法務省は、自分たちはそのような職員を預かって調査をして、そして最終的には民事で争うべき私権の確定には、自分たちがやった調査について自分たちが訴えられるということになるので、これはいままでも例のないことだからどうにもならぬということで、やむを得ず琉球政府との間で、土地調査庁の機構、職員ともに一応交付税その他で算定対象にしますから、置いてもらって、来年度予算で、与那原町が最も困難である、したがって、できればこの与那原をまず全額国費でテストケースとして調査しようと思ったのですが、その予算の編成の直前になって、実は持ってきておる与那原町の計画が、単純に言って埋め立て計画であったわけです。これは確かに、居住地を新たにみんなが合意して定めていくために必要な土地の取得というのが要ると思うのです。しかし、その埋め立てがどうもそれだけではないような、村長さんにも、あなた便乗ですねと言ったら、ええとおっしゃったくらい、膨大な埋め立て計画だものだから、これはどうもまずいということで間に合いませんでしたので、調査費を計上して、どのような形ならば全額国費でモデルケースとして沖繩における境界確定というようなものができるかという試験は一年ずらさざるを得なかった、こういう経緯であります。質問されないことまで一応答弁しておきましたけれども、そういうことを申し上げておきます。
  196. 大出俊

    ○大出委員 これはさっきも申しましたように、せっかくの沖繩国会でも論議されておりませんので、実はこの際正確にお答えいただきたいと思っているのです。  そこで、沖繩は全島で二千二百五十平方キロ、こういうことになりますが、そのうち大体土地調査が済んだというのは何平方キロくらいになって——実はいま五七%というお話しでございますが、私が二月九日の日に琉球政府の法務局の民事部長に会いまして確かめました、いささかどうも五七%という数字が違います。向こうの答弁は六一%でございます。そこらのところ、どういうものをどういうふうにおとらえになって受け取られているのか。非常にこまかい問題でございますから、はっきりさせていただきたいと思います。だから平方キロでおっしゃってください。
  197. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 さっき総務長官からお答えしましたのは、大体千二百七十一平方キロ、これが五七%の進捗率ということで答えられたのですが、その後の進捗を見ますと、アメリカのは一九七一会計年度ですから、ことしの六月末までの見込みも入りまして、それが加わりますと、百十一平方キロ加えますと、千三百八十二平方キロ、六一%、こういう数字が出るわけであります。
  198. 大出俊

    ○大出委員 これは私が二月九日に聞きましたのが、多少の数字の違いはありますが、所管の部長の資料に基づく説明によりますと、いま長官の言っておられる目標がありますけれども、二月の時点で千三百七十九平方キロ、もう少し伸びるだろうという見方でございますから、見通しをお入れになればいまの数字、六一%に大体なるだろうと思います。しかしこれは困難なところは何も入っていない。さっき山中長官のおっしゃったとおりでありまして、簡単に言えば、やれるところをやったということであります。  そこで第二の問題ですが、そうすると、土地調査未済の地域、その現地の土地調査が非常にむずかしい点はいま長官がおっしゃられたとおりなんでありますが、そうしますと、復帰後、法令の根拠というものを含めまして、どこがどう実施するかということ。さっきのお話で概略は御説明いただきましたが、それが恒久的なものになるのかどうかという、そういう意味で法令的な根拠をはっきりさしていただきまして、その上でこういう機関にというふうに御説明を再度いただきたいと思います。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 山中貞則

    山中国務大臣 一応、土地調査庁の機構、職員に努力をお願いしまして、そのルートで引き続き今後は一番困難なところに取り組んでいくつもりで、先ほど申しました、どこをどういうふうにやったらこれがモデル的な地籍確定の作業になるかという意味の調査費をつけているわけですが、そのほかにも経企庁のほうとして予算をつけてもらっておりますので、その点は別個の問題として経企庁長官からお願いします。
  200. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 沖繩復帰しますと、当然わが国の国土調査法に基づく国土調査に切りかわるわけです。それと同時に、国土調査促進特別措置法、例の十カ年計画の地籍調査の法律がまた別個にございます。これが十カ年にわたって調査をやるわけですが、その際に、沖繩の今後の土地の調査は、国土調査、全体の十カ年計画の総面積から比べますとわずか一%ぐらいのものであるので、この十カ年計画に基づく予算の範囲内で十分やれるというようなことを考えております。ちょっと申し忘れましたが、その調査主体は、沖繩県が政府の補助に基づいてやります。
  201. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、機関は沖繩県において国土調査法によって行なう、予定としてはこういうことですね。  そこで、経済企画庁が所管をされる所管庁でありますね、国土調査法でございますから。ということになりますと、国土調査法に基づいて実施できる、こういうふうにお考えでございますか。
  202. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 結論的に申し上げるとなかなかむずかしい点があろうと思います。もうすでに調査済みのところ、たとえば六一%、これは琉球政府でもうやったところでございますので、これから残った三九%というものは、もういままででもなかなか手がつかないものが多かろうと思います。ただ問題は、基地として立ち入りができなかったものが返還されますので、その返還された部分については調査がまた始まるわけですけれども、その面でどの程度の進捗があるか、まだいまのところちょっと予測しておりません。
  203. 大出俊

    ○大出委員 これは先ほど山中長官がお話しいただきました読谷の場合なども、たいへん広い地域が開放されておりますが、この間私、参りまして読谷の話をしてみたところが、地元の村長さん以下関係者を大量に集めまして、そして琉政の関係者が一緒について、米軍のDEの連中を引っぱっていきまして、全部で行ったというのです。地元の市町村がずいぶん苦心して調べたというわけですね。これはたいへんな努力だ。それでやってみても、まずどこからどう開放されたかがわからぬというのです。これは米軍の将校に、どうなんだ境界はと言ったら、こう手を広げて、まあこの辺から向こうだろう、こう言ったのです。そうすると、開放された境界がまずわからぬ。だから、幾ら苦労したって、国土調査法持っていったって調査のしようがない。これはたいへんな地元の協力を得なければ、まず何もできない。いまのお話は、その協力を得て可能であろうとおっしゃるだけであって、私のように、ちょっと不可能だと思っている人間もいるのですから。  現に、いまたまたま山中さんがおっしゃった読谷を例にあげても、私が申し上げたよう拳ことだ。だから、毎日畑に出ていって野ら仕事をする、人が一人そこで耕している、かきねをこうやった、そうすると、暗くなるのを待ってかきねをみんなひっこ抜いた、け飛ばした、何でやったのだと言ったら、これはおれのところだと言った。何でおまえのところだ、何の証拠があるんだ、おまえのところはもっと向こうだと言ったってわからぬですね。いまこういう状態です。だから、畑をやるよりも、間で、おれはあそこだ、おまえはあそこだになっているのが現状ですね。だから、夜、人のところをこっそりどけて、またなわを張る、そいつをまたどけて向こうからまた張る、連日これが続いている。復帰後もこれは続くのですね。もう一ぺん念を押しますけれども、国土調査法でおやりになれるとお思いになりますか。
  204. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 やはり国土調査法という法律そのものに限界がございます。したがって境界が不明だとか筆界が不明のものについてはできません。しょせんこれは民事訴訟の対象になるということでございます。  ただ、いろいろ境界がわからないものを一体これからどうするか。もちろん、現地の積極的な協力が必要ですが、その際に、これはちょっとしろうと考えかもしれませんが、米軍が基地に造成する前にとった航空写真、そういうもので境界を確定できるような材料になりはしないかという程度のことしか、いま申し上げられません。
  205. 大出俊

    ○大出委員 これは論争というか、そういう意味で言っているのじゃないので、できるだけひとつ御協力を申し上げたいと思って言っているわけですからお聞きいただきたいのですが、これは私の持論なんですよ。一〇・一〇空襲の十日前にとっているのですね。DE、つまり地区工兵隊にある。上原君の傘下の方々はみんな見て知っている。土地裁判所の争いの中で全部負けてしまいまして、一件しか勝った例がないのです。これはここに資料がございますが、一九六六年のころに土地裁判所ができましたね。民政府と土地裁判所です。ここに件数も全部載っておりますが、たいへんな件数ございますが、ついに勝ったのは一件だけ。これは伊江島ですよ。この間、国会で問題になりました、射爆場がありまして、実弾演習、核模擬爆弾なんか落としているところの伊江島、ここだけなんです。原野であるか宅地であるかという争いなんです。  そのときに宮良寛歳さんという弁護士が入手した地図があった。この地図は、宮良さんに会って私聞いてみましたが、米軍の空中写真ですね。これに基づいてつくったというのですね。ここに実は現物がございます。これが現物でございまして、伊江島の裁判のときに宮良さんがお使いになったというのです。これは非常によくわかります。これは宮良さんに返さなければいけませんので、二部ばかり写しをとりまして、これはごらんいただきたいのであります。これが写しです。これは非常によくわかります。この原図のほうはもっとよくわかります。少しぼけております、写しましたから。  私は非常に残念だと思いますのは、なぜ日本政府が、いまいみじくも木村さんがおっしゃったように、せっかくこれだけ詳細なものがある。しかもこれは一〇・一〇空襲の前ですから、沖繩は原形をとどめたままなんです。しかもこれは米軍の基地があるわけじゃない。そうしますと、米軍の基地はないんだから、出したからといって米軍は困らない。ただ、こういう原形であったものがこんなにも変えられたかという県民の皆さんの批判というか、そういう悔いが出てくることはあると思います。がしかし、この資料を宮良さんが出して、現にその宅地も原野もはっきりしているのですから、さすがに民政府裁判所も手も足も出ない。だからこの地図があったために、その伊江島の裁判だけ、一件だけ勝っている。  そこで、あとでどうなったかといいますと、宮良さん自身に聞いてみますと、おまえはどこから手に入れたという厳重な追及を食った。御本人が私にそう言っておりました。それで、いままたこれを出すと、どこへやった、どこかへやっちゃったと言って逃げた。それで実はおたくにしまってあったのですね。弁護士ですから、まさか家宅捜査もできない。それで持っていたという、これが証拠なんです。唯一の証拠なんです。沖繩の土地争いの歴史の中に残った唯一の証拠。だからこれがある限りはほかもあるに違いない。あたりまえだ。  そこで、上原君の全軍労の組織は、直接そこに人がいるのですから見ている。ブロック別に現にある、こうなっておる。それがなぜ対米折衝の中でとれないか。私は琉政の土地関係の責任者の方にも話してみましたが、あればまず大きなワクはきまるというのです。それから小字で分けていっていますけれども、ここに道路があったんだ、ここに何があったんだという目標が全部きまるというのです。そうすると、たくさんの争いはうんと縮小される。それだけは間違いない。だからぜひこの点は国会でもお取り上げをいただいて、政府の側からアメリカに対して、これだけ困難を感じているのに、しかも基地依存そのものについてこれから沖繩でいろいろな仕事が進んでいく過程で、賛成の地主さんもいるのですから、その進捗度合い、あるいは五年と押えたものについても何かなければ、五年たったって片づきませんから、そういう意味ではアメリカ側は当然協力すべきであろう、向こうの義務として、そこまで言ってくれという実は地元の皆さんの御意見です。こういうものが現にあるわけですから、他の地域においてもあるはずでありまして、出させる努力をお願いしたい、こういうふうに思うわけであります。  そこで、答弁関係で話が横道にそれましたが、非常に困難である、まあやれるであろうという程度のことしか考えられぬという現段階だと思うのでありますが、もう少し事務的に詳しく承ってからにしたいのでありますけれども、いままで琉球政府が、土地調査事業の一つの方法として、地図の編さん、俗称はめ込み測量。いろいろな名前がありますが、公に使われていることばとしては地図の編さん、これを現地で境界を測量しないでやって——ここが問題なんです。土地調査法でいえば測量はしなければならぬ。つまり現地で測量しないで図上だけで地図をつくり上げる方法をとっている。これが現状です。これは国土調査法の趣旨から見て、はたして法的にどういうことになるかという点、いかがでございますか。
  206. 岡部保

    岡部(保)政府委員 ただいまの五月十五日の引き継ぎを受けます際に、従来、琉球政府で公的にこれが地籍調査の結果であるというもの、いわゆる先ほどお話しございました六一%までできておるというものについては、それを国土調査法によって実施されたものとみなすという考え方をとっております。
  207. 大出俊

    ○大出委員 つまり関係者が納得して境界をきめてもらうということだからということでしょう。はたしてそれで国土調査法の趣旨に合致しますか。もう一ぺん聞きます。
  208. 岡部保

    岡部(保)政府委員 ただいまのいわゆる地籍調査で、地権者の立ち会いを得てやるということが前提になっておりますものと、琉球政府時代にやりましたものと、手続という点で若干の食い違いはあるかと存じます。しかしながら、この段階で必要があれば、また見直しをするという要望があれば見直しをするということは、当然起こると思いますけれども、現段階では、一応国土調査法に従ってやったものとみなさざるを得ないという考え方をとっております。
  209. 山中貞則

    山中国務大臣 質問者と答弁者と対象が違って議論をしているのですね。いまの五七とか六一というところは、正常な状態で全部の権利者が立ち会って全部が確認をして合意しているのですよ。これはいいと思うのです。そのあとの、いま大出君の言ったのは図上編さんされたものでしょう。これについては、琉球政府においても昭和三十六年に、これはどうもこの調査では、最終時効が発生をして所有権が確定をしたということを宣言するには問題があるということで、時効の到来する三十六年に、これは時効の対象にしないということで時効を延ばしているわけですから、これはもうつくった人たちがみずから不正確なものだと認めている。これは参考にはできますけれども、確かにこれは、あたりまえに基地内の立ち入りその他は完全に全所有者にできないという現状はありますから、残る部分も空白が相当面積あると思いますけれども、先ほど申しました読谷とか、軍用地に接収されなかったけれども戻ってきてかってに住みついた与那原、こういうところは、あらためて関係者が立ち会い、そうして関係者が確認し合意するというような作業が行なわれれば、これはもう最終的に民事の争いも含めて片づいたということになるわけですから、いまの図上編さんされた公簿、公図というものは、琉球政府がもう時効の対象にならぬと言っているのですから、これはやっぱり洗い直すということでなければいかぬ。だから問題の議論の対象が、つかまえどころが、質問者の意向どおり答えておりませんから、私のほうから一応答えておきます。
  210. 大出俊

    ○大出委員 私こういうものを書いて質問することはないのです。初めてなんですが、中身が中身だけに、現地の皆さんと相談しましたことを順序立てて書いてみたのです。だから、いまも長官に御心配いただいて、そのとおりなんですが、後ほど逐次出てきますので、そのときお話し申し上げようと思っておったのですが、せっかくいまお話しいただきましたので……。  実は琉政の考え方も、国土調査法の趣旨に沿わないという結論なんです。この図上編さんと申しますのは、測量を何もしてないのですから。したがって、御指摘にございます天願、安慶名地域なども図上編さんです。これは具志川の役場にあります大きなうちの一部持ってきたのですけれども、ここは別なところですけれども、おのおのこういうようになっているわけです。図上編さんの形です。これはAさん、Bさん、Cさんということできめていきましたが、全部筆界未定なんです。それじゃほんとうにどこがこの筆と筆の境かというと、すべてが筆界未定なんです。将来何が起こるかさっぱりわからない。その種のものをとらえて国土調査法の趣旨に沿うとは言えない、そういうことなんです。ここのところをはっきりしていただきませんと、公式の場所ですから、さっきのように答えられてしまいますと、たいへんなあとで問題が起こりますので、じみなんですけれども影響が大きいものですから、その意味でもう一ぺん、長官御心配になっておるとおりでありますから、お答えいただきたい。
  211. 岡部保

    岡部(保)政府委員 ただいま総務長官のおっしゃいましたとおりでございまして、私、明らかに誤解をいたしておりまして、先ほど申し上げました六一%のものについては、すでに国土調査法に基づいたものとみなす。それ以外の問題でございます三九%のものについては、あらためて国土調査法の手続に従って実施をする。したがって、これは実施上非常にむずかしいということはよく存じておりますが、現段階では、それはまだ国土調査法によって認められたものではないということでございます。
  212. 大出俊

    ○大出委員 もちろん大蔵省の沖繩事務所が地籍を調べて登記をしたのです。それが全部焼けてなくなった。離島にまだ残っておりますが、そういう状況なんです。ですから、そういうたてまえからするとこういうことなんです。つまり、話し合って認めた図上編さんのものを調査法の趣旨に沿うたものだということになれば、これは登記できるわけですよ。そうして取得すると、焼けてはいますが、以前に登記をした原型があったはずです。そうすると、昔、登記してあったもののところに、つまり他人の土地に自分の所有権を確定させるという意味の登記が行なわれてしまう。そうすると、将来争いというものが起きないかということになる。ここのところはどうですか。
  213. 岡部保

    岡部(保)政府委員 ただいまのお話しの、要するに国土調査法に従いましての地籍調査というものは、関係の地権者の同意を得て、それの立ち会いによって筆界を定めるというのがたてまえでございまして、この筆界をどういうふうに定めるか、裁定するかというようなことは、この権限全くございません。したがいまして、ただいまお話しのとおりだと思います。
  214. 大出俊

    ○大出委員 調査法自体は、こういうわけだからこのところ調査してくれということで調査するたてまえなんですね。私も専門家じゃありませんけれども。  そこで、いまの話一歩進めさしていただきますが、さて図上編さんがかりにまとまったとする。おっしゃるように、納得し合ったということになった。そこで境界をかりにきめた。法律的には問題がありますけれども、かりにきめた。そうしておのおの所有地がきまった。ところが、そこにそうではないという証拠が一つ出てきた。たとえばたまたま井戸があった。井戸があった場所もございます。石がきが出てきた。この石がきは何のだれ兵衛さんのひいおじいさんが千九百何年ごろにつくった石がきだなんて、みんな知っているのです。そうでしょう。この井戸は掘った人までわかっているのです。井戸が出てきた、それは何のだれ兵衛さんの所有地の庭のこの辺のところにあった。そうしたら、とんでもないところにその人の所有地は図上編さんできまっていたということになると、その井戸があったということは、それを大衆が全部確認しているということは十分な証拠になり得る。そこで訴訟が提起された場合にどうなりますか。
  215. 山中貞則

    山中国務大臣 だから、先ほども言ったように、図上編さんにかかる部門については、不動産登記法上の地図としてそれを確定することはできないということなんです。したがって、これからの作業は、そういうような物証の残っておるもの——あぜとか水路とか農道とかいうものは消滅しているでしょうが、先ほどの航空地図の確実な捕捉要因がもう一つある。それに、そういう残っている井戸とか石がきのくずれたのとかがあれば、そういうものが有力な根拠になってくるわけです。ところが今度は、そういうことを知っていても、与那原地区あたりは、あすこはもとおれの屋敷だったんだ、しかしあれが住んでいるからいまはこっちに住んでいる、おれの住んでいるところはおれのところじゃなかったんだ。みんな知っていて一応住まっているところなんだ。だから村長さんは、やむを得ず海岸を埋め立てて、みんなで相談して、ここのところはなかったことにしようよ、そして必要な土地を割り当ててここでみんな合意ということで、そのときには、私は権利を確定して登記ができると思っております。そういう作業が要るだろうということです。
  216. 大出俊

    ○大出委員 もとへ戻しますが、一点だけ。  つまり、さっき局長お話しの約束というのは、法律的にはいわゆる既判力みたいなものは持たない。だから井戸がでてきた、石がきが出てきたということになると、ひっくり返ってしまう。そうすると、そこを一カ所動かすと押せ押せになりまして、全部変わってしまいます。つまりこの一件で登記無効なんです。だから、そうなると、これは国土調査法から見て一体どうなるかというところへ返っていく。そこをどうしたらいいかという点、この辺で一ぺん皆さんのほうのお考えを聞いておきたいのです。お考えございますか。
  217. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私どもが担当しておる国土調査法ではどうも処理不可能、こう申し上げざるを得ないと思います。
  218. 大出俊

    ○大出委員 先ほどは国土調査法でやるというお話でございましたから……。そうでしょう。協力を得れば可能であるというお話だったですね。だから私は、それはいささか言い過ぎじゃないですかと冒頭に結論を申し上げておきますと申し上げたのは、何か別に法的措置を考えないと国土調査法ではどうにもならぬ。現実にどうにもならぬ。そういうケースであろう、こう思いましてそう言っているのですけれども、いま長官は、先ほどと違いまして、国土調査法ではどうにもならぬというお話なんです。どうにもならなければ、じゃどうしたらいいかという問題がなお残る。ここを承りたい。
  219. 山中貞則

    山中国務大臣 私が一番現地に詳しいですから、法律上間違っていたら経企庁に直してもらいますが……。  要するに、現在の国土調査法において、最終的な境界、筆界の確定というものについては、異論がある場合において強制することはできない。そうすると、やはりそれを何らかの権力を持った形で確定しなければならぬ。琉球政府の土地調査庁をできれば法務省という国の機関、職員にしてくれと言ったのは、実はそこにあるわけです。ですけれども今度は、登記官と別に、登記官のような権限を与えたものが登記官以外の分野の行政職員として、そういうような最終確定の作業を営む機関がつくれるかどうか。これは立法の問題にもなりましょうが、ここのところはきわめて問題のあるところだと思います。したがって、法務省、経企庁と十分詰めなければなりませんが、かといって、これは行ってみたらわかることですが、このむざんな土地所有権の現状というものをほうっておいたならば、個人個人の問題、家庭の問題としての永久に解決しない大問題と別に、沖繩県の県政発展のためにも、私権を確定しないでかってに公権を発動できないわけですから、これは重大な支障を来たすもとになります。  ことに中南部が一番経済の中心地区になるわけですが、そのかわり基地も多い、こういうことになりますと、やはり現在は、予算上とりあえず調査費でどうしたらいいかについて具体的な検討もしますが、テスト的な地域を全額国費でやってみることも一つの手でしょうが、その間にやはり立法措置を沖繩だけに特別にとらなければならないのではないか。しかし、とるとすると、それはいかなる権限を持った、いかなる法的な立場を与えられたものとしての機構、あるいはその職員の身分になるか、この問題が非常にむずかしいだろうと思うのです。ここらはもう少し検討させていただきたいと思います。
  220. 大出俊

    ○大出委員 幾つかの提案は実はあるのですけれどもね。これはちょっとお話が出ましたから聞いておきたいのですが、調査費というお話が出ておりますけれども、これは予算的にどのくらいございますですか。
  221. 山中貞則

    山中国務大臣 これは一千万円です。
  222. 大出俊

    ○大出委員 続けますが、つまり境界、筆界が非常に不明確な土地である、ここまでは間違いないですね。  ただしかし、話し合いをまとめようという努力をしている、約束ができた、しかし約束は法的な既判力は持たない。だから事実認定ができる証拠が出てくればひっくり返ってしまう。登記無効というところに行ってしまう。押せ押せで全部変わってしまうかもしれない。そういうケースが現にある。さっき与那原とおっしゃいましたが、井戸が出てきたところもあります。そういう現実がある。ただしかし、開放されたのですから、金に困れば売らなければならぬ、あるいは金を借りるには抵当権を設定しなければならぬという意味の権利関係の登記がまだありますね。あるいは表示関係の登記がありますね。そこらのところは、とりあえずはどういうふうにお考えになりますか。返ってきたのですから、ここらはどういうふうにお考えになりますか。
  223. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと法務省も呼んでもらわぬといかぬようですが、そこらに弁護士さんもいるので、私は答弁を間違えると困ったことになるかもわかりませんが、やはり登記の効力を持つ地図でないということになると、その上に立って、いま言われたような、地上権設定だの抵当権設定だのということも、法的には私はやはり認められないものになると思うのです。やはりすみやかに最終確定をする証拠が先だと思います。
  224. 大出俊

    ○大出委員 つまり、登記をするとなれば、法務省がおいでになりませんが、これは登記官が行って測量しなければ実際に登記はできない。そうすると、この権利関係の登記はあるいはできるかもしれない、抵当権だ何だというのは。ところが、少なくともこの表示関係の登記というのは、たとえば地籍の更正登記だとか、これはございますね。あるいはその地目が変わった場合の登記だとか、あるいは分筆登記だとか、そういうふうな問題は、これはもう全く測量できない限りはどうにもしょうがない。つまり表示関係の登記というのは全くできない、こういうことになる。  いま私、法務省を呼ばなかったのはミスかもしれませんが、実はきょうは、冒頭に申し上げましたように、昨日、突然、穴があくので何とかこの時間を有効に使ってくれという皆さんのお話がございまして、したがって、手配にちょっと落ちがありましたが、本来、沖繩問題は関係大臣全部いていただくように申し上げてあるのですが、ぜいたくは言えないので、しょうがなく質問しておりますが、この点は、ぜひひとつ木村さんのほうで法務省あたりと一ぺん御相談おきをいただきまして、問題点だけひとつあとでまた抽出をして質問させていただきたいと思っておりますから、取り上げて、あいまいなままで終わるわけにまいりませんので、ぜひひとつこれは御相談おきをいただきたい、こういうふうに思うわけです。
  225. 山中貞則

    山中国務大臣 これは現時点においては、まだ復帰前でありますし、もし国会を法律が通過いたしますと、沖繩開発庁が総理府に置かれることになりますから、一義的には私のほうがやはりお世話申し上げる形で、経企庁、法務省等と新規立法も含めて検討すべき事柄かと思います。
  226. 大出俊

    ○大出委員 いま気がついたのですが、これも法務省の問題になると思うのですが、この所有者間で境界をどうしてもきめられないというケースがありますね、さっきからお話ししているように。この場合に、裁判所に持ち込んで訴訟、つまり境界を確定することが可能かという問題が一つ出てくる。お答えをいただければいただいて、かつ、あとでまた法務省と御相談いただくならいただいておきたいのですが、この辺はいかがですか。
  227. 山中貞則

    山中国務大臣 これはやはり法務省がおりませんと的確な答弁ができませんが、たとえばそこに数百世帯、数百軒の人たちがおりまして、そのうちの隣合わせた二人だけが、自分たちの境界だけはまあいいだろうといって相談が整ったからといって関係者全体が——先ほど追せ追せになると言われたように、すべてが一つの地域について関係をしているわけですから、かりに典型的な例として、その二者だけが合意したから、それを登記すればそれは認められるかというのは、沖繩に限っては私は非常に問題があろうかと思うのです。やはり全体の中で最終的に個々の境界なり筆界というものがきめられていく作業でなければならぬだろうと思っております。
  228. 大出俊

    ○大出委員 これは結論を私申し上げますと、裁判で確定できないですよ。なぜかというと、原告と被告がまずはっきりしない。たとえば訴えを起こしてみても、じゃだれを相手に訴えるんだ。これは境界が全くわからないわけですからね。どことどこの境界に争いがあって、三尺出ているとか引っ込んでいるとかいうなら裁判官の判定ができる。その争いなら原告と被告がはっきりしている。ところが大体原告も被告もはっきりしない。これは訴えだから、訴えたのは原告だから、これははっきりしている。訴える対象は何かというと、一山幾らで地主全体が入っている、どこにどう入っているかはわからない、境界がはっきりしない。そうなると、裁判官だって、おのおのはっきりしないものを、十ぱ一からげにしてきめつけるということはできない。あり得ないことであります。そうすると、裁判所に持ち出してもこれは片づかないということになりはせぬかと思うのですが、そこのところはいかがですか。
  229. 山中貞則

    山中国務大臣 それはやはり、私が先ほど答弁したように、地域全体が不確定の中にみんなかりに住まっている形であれば、これは一人か二人の人が被告、原告という形もおかしいですが、合意した者であっても、訴えた者であっても、最終的な確定は、少なくとも裁判所はできないという判断を下すのじゃないでしょうか。
  230. 大出俊

    ○大出委員 これはここでもう一つ続けて聞いておきたいのですが、土地がどこにあるかわからない、面積が正しいかどうかもわからない。売買の登記といっても、これまたどうにもしようがない。そうなると、これは所有権者といわれる方はいるわけですからね、個人の財産ですから。それを復帰にあたりまして、どうにもいたし方がないといって、非常に不安定なままでほうっておけるかという問題なんですね、今度は。沖繩県になった場合にほうっておけるか、国の責任というものはどこに行ってしまうんだということになる。これだけは間違いない事実として残る。そうすると、ここでも何かの措置をお考えにならなければならぬことは間違いない。だからどうすればいいかという問題に、もとに返る。これは何としても確定をさせてあげなければならぬことになるだろうと思うのです。そこらのところはいかがですか。
  231. 山中貞則

    山中国務大臣 これはやはり、復帰の日に確定するということはできないことですから、四十七年度予算の調査費というもので、どのような手段、どのような手続でできるか、あるいはできないか、どの方式なら可能であるかということを、これは、部落とか区とか、そういうところのみんなと相談もし、琉球政府とも相談をしながら——沖繩県になるわけですが、いろいろな手段の発見に努力をしなければならぬと思うのです。  でなければ、復帰の時点ですぐに問題になるのは、全滅家族で、だれも親類縁者がいなくて、屋敷もそのままで、へいだけが残っておる。もちろん、全滅家族の墓所、田畑もそのままである、こういう人たちは、法律は冷酷ですから、返ってきますと国有財産になってしまうわけです。これは私の助言がよかったのか悪かったのかわかりませんが、おととし主席に、復帰すると本土法はそういうふうになりますから、部落やみんなで相談をして、それぞれそれの帰属を定めて、適当な対価をだれかに支払って、それを部落で積み立てて、永代供養やそれの費用にしたらどうか、それだけは何とか復帰までにやりましょうということになっておりますから、そのような、あちらこちらの部落の中に国有財産が点在するというような、そういうとんでもないことだけは何とか防げると思っております。
  232. 大出俊

    ○大出委員 ここでもう一ぺんもとに戻らしていただきたいのですが、山中さんもあるいは木村さんも、国土調査法に基づく沖繩県の機関、こういう形でやりたいというお話ですね。いま私が、まだたくさんありますが、こういう形でここまで質問してきた過程で、にっちもさっちも、どうにもこうにも手も足も出ない。しかも根本に一番金がない、こういうような状況になっているにもかかわらず、国土調査法に基づいて沖繩県にやれというが、国土調査法じゃできませんという御答弁が出てくる世の中に、できないものに立脚して機関をこしらえて沖繩県でやれとおっしゃるのですか。それならば国の責任というのはまことに無責任だということになる。そこをどうお考えになりますか。
  233. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 お答えにならないかもしれませんが、とにかく国土調査法に基づく国土調査はできません。しかしながら、国土調査法の限界を越えるという権利の問題、そういうことになりますと、民事訴訟は原告と被告がなければならぬのですから、これにも入らない。そういたしますと、さっき総務長官がお答えしたように、これは国の責任で特別立法をつくるとか、あるいは第一義的に行政に裁量をやれるような第三者機関をつくって、ある程度の公告期間を設けて異議申し立てを許し、それに対する民事訴訟の提起は、これは別にそれを妨げないというような何らかの特別立法、それでもなければどうもしようがないような気がします。
  234. 大出俊

    ○大出委員 これは沖繩国会でも問題提起ができなかったのです。詰めた論議をしてない、私の調べた限りでは。(山中国務大臣「中谷君からちょっとありました」と呼ぶ)だけれども沖繩側であの期間に、琉球新報、沖繩タイムス、いろいろ書いておりますが、そこに載っておりますものは読みましたけれども、現地側にすれば、実は非常に不満なんですね。つまり、あくまでも国土調査法なんだ、あるいは促進法なんだ、ほかに法律はないから。それで機関は沖繩県にやったができない、わからないんだから、ということでずっと来ているわけですね。ようやくここへ来て、いま私がやりとりしていて、特別立法という話、あるいは苦情処理調整機関その他の話が出てきた。やはり私は、国の責任でやる、国の責任で解決をするんだというまずその根本的な姿勢がはっきりしないから、沖繩の地主さんにすれば、ずいぶんひどいじゃないか、何もみずから好んでこんなことをしたんじゃない、施政権が向こうへ行っちゃって、基地に押えられちゃって、みんな押えられちゃって、その結果こうなって、にっちもさっちもいかないで困っている、ひとしく日本人だということになるとすれば、国がこの特殊なケースについて——もう復帰するというのに、いまだに何らの法的措置もお考えになろうとしない。かくて、実際上国が責任を負ったんだという、そういう形のものも出さない。のんべんだらりと琉球政府にまかせっぱなしで遅々としてやっている、さっぱり進まない、こういう無責任な話があるか、こう沖繩の地主さんに開き直られて、私も国会に席を持っている人間の一人として答弁のしようがない。そうでしょう。  私は、具志川の役場の二階に日曜日なのに参ったら、お年寄りが三々五々歩いている。何だと思って聞くと、きょうは国会の代議士が来るそうだが、何としてもおさまらぬからといって、日曜日であるのにみんな部落の地主さんが集まって、入り切れないくらい集まって、そこで長講一席演説をぶたれた。さすがに何とも言いようがない、理屈はそのとおりだから。だから私は、じみな問題でございますけれども、詰めた質問をしてみる気になったのです。  だから、そういう意味で、どうしてもこの際国が責任を負って、法的措置なり、機関を設定するなり、そういうものを真剣に考えて結論を出し、国の責任においてやるというところまで踏み切っていただきませんと、これは沖繩の皆さんの感情に沿わぬです。それは自衛隊の派遣賛成だ反対だという以前の問題そういうふうにこの際お考えいただけないかと私は思うのですがね。
  235. 山中貞則

    山中国務大臣 これはおっしゃるとおりで、私たちが逃げたわけでは実はないのです。この沖繩の境界の確定、それぞれの所有権の確定をどうするかというのは大問題だったものですから、したがって、現在の土地調査庁の権限とその作業状況——琉球政府は、あなたのおっしゃるように、土地調査庁を国で受け取ってもらいたい、そして国で法務省あたりの直轄の機構として行政権限を持つものとしてきめてもらいたいという要望だったのです。私もごもっともだと思って、これは政府部内でも相談をして、法務省がそれは困難だと言ったのは、先ほど理由を申しましたけれども、そうすると、しからばどうするかということは、さしあたりは調査庁というのは本土各県にはありませんから、そういうものも交付税の算定要素にしようじゃないか、また、そういう特殊の地域の調査は全額国費でもってやることにしようではないかということで進んでいたわけです。ですから決して責任をのがれているわけじゃないのです。ところが、先ほど申しました実態が、直接にモデル的に全額国費で作業を開始するのには、あまりにもその以前の状態であったことが予算編成の途中でわかったものですから、急遽調査費に切りかえて、ではいかなる手段を講ずることが妥当な手段であるかということの発見をするために調査費に置きかえたということでありますので、これは国がのがれているわけではなくて、国土調査法だけではやっていけないということで、現在の向こうの土地調査庁の職員のあり方、その権限等も含めて、私たちのほうで引き続き検討している事柄です。  したがって、これは協議を続けていきまして、そして法律等が必要であれば、その法律に準拠して沖繩においてのみ特例として認められる行政権の権限の行使の限界までやっていく。これは司法権を排除できませんけれども、それらのことについては努力をするつもりなんです。ですから、そういうようなことが、琉球政府の上層部との間の相談ですから、まだ末端までたぶん伝わっていないだろうと思いますので、なお、そういうことがわかるように努力します。
  236. 大出俊

    ○大出委員 私、二月の七、八、九日に、心配になりまして、相当な時間をさいて、坂村さんたちと御一緒できなかったりして恐縮だったのですけれども、法務局長にも、かわりましたから会いまして、民事部長にも会いまして、ずいぶんこまかくいろいろ聞いてみた。ところが、やはり現地は、年じゅう地主連合会や何かから、どうしてくれるんだといって、毎日争いが絶えないものですからと言われる。もう往生し切っているわけですね、正直言って。だから、国が意思表示をはっきりしてもらえぬか、われわれではどうにもならぬのだ、国がと言ってくれぬかという。はっきり国が責任を持ってやろう、みんなで知恵を集めて、法務省も経済企画庁も総理府も沖繩北方対策庁も一緒になってやろう、国会もその気になってくれる、そういう熱意がほしいという、せんじ詰めればそういうことなんです。だから、国土調査法をお持ちになっているのは経済企画庁長官ですから、そちら側からも、沖繩現地の皆さんの気持ちがありますので、これは決して私の選挙区に関係ないのですから、そういう意味で私、真剣に言っているのですから、ぜひひとつ前に出た答え方をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  237. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 総務長官の先ほど発言されましたとおりでございまして、総理府と私のところと法務省、この三者でまず話を詰めてみたいと思います。
  238. 大出俊

    ○大出委員 さらに問題は少し発展をいたしまして、時間の関係もありますからかけ足をいたしましたが、この権利関係が明らかにならぬと登記のしようもないということから始まりまして、かりに登記をしてみてもひっくり返るかもしらぬという不安定な状況が続くと、筆界、境界はさっぱりわからぬ、こういうことになっていますと、国家の行政機関のほうも困る。開発庁設置法がこの委員会に提案されているわけでございますが、さて開発庁設置法に基づいてあそこに総合事務所ができる、各行政機関の末端組織が全部並ぶ、各法律が流れて入っていく、こうなるのですが、幾つか例をあげますと、たとえば建設省が道路や水路をつけるといってみても、どだい境界も筆界もさっぱりわからぬところに道路も水路もつけようがない。そんなものをかってにつけた日には訴えられてしまう。ここはあれの土地だということになる。そう思っている人がいる、まだきまらないというのだから。そうでしょう。  そうすると、沖繩がさあ復帰して返ってきた、よくしてあげよう、金を流し込むといったって、建設省は道路をつけようにも、水路をつけようにも、手も足も出ない、いきなりこういう問題にぶつかってしまう。そうかと思うと、国有地を利用しようと言ってみても、周辺の民有地の境界も筆界もきまらない。ここに国有地があるはずなんだ、その国有地と民有地の境界も筆界もきまらない、そうなると、国有地を利用するといったって、うっかりものを建てれば、あとになって調べてみたら、いや違った、人の地所だったということになりかねない。国有地はもっと向こうだったということになる。そうすると大蔵省は何を考えたってできない。そうかと思うと、農地法を適正に運用するのだといって農林省が考えてみても、まさにこれは手も足も出ない。運用しようがない。それから今度は、土地収用法なども通ったからというので、防衛施設庁が何を考えても、筆界、境界もさっぱりわけのわからないところに自衛隊の基地をつくると言ったって、手続はとってみたって手続にならぬ。そうすると、施設庁が行って、じゃ実際には何をやるのだということになる。ここまで来て、だからつぶすんだと言っているわけではないけれども、さっき向こうの分科会で防衛庁に話をしたのですが、出先に行ってやっている人は何もわからずにかってなことをやるものだから、あっちもこっちも文句ばかりです。一番の基本がきまらないで何をやろうといったってできないじゃないかと私は言っているのですが、こういう問題が派生的に全部出てきてしまう。  ですから、なおのこと、復帰したら国の行政権が末端までいかなければならない。しかも複雑な社会現象ですから、一番末端の住民のいるところにおのおの行政機関がなければならないことになっている。そういう意味のサービスが必要になってくるのだけれども、何一つこの問題のために手も足も出ないということになる。ここのところを一体政府はどう考えるか。大きな問題として残る。民生安定には向かわない。ここのところはいかがですか。
  239. 山中貞則

    山中国務大臣 これはまさにお話しのとおりで、たとえばかってに道路をつくって賃借料をあとで払ってやるというようなことをやっているのは軍だけかと思ったら、実は琉球政府も、琉球政府ができて政府道というものをつくるときに、アメリカのほうにこういうわけで予算をくれという都合もあったということですけれども、地主さんの了解をとらないで道路をつくって、そして賃借料も払っていない、まして買収費も払っていないというような事実がありまして、この間、琉球政府との話し合いで、大体四十億近くなると思いますが、最終的には、沖繩県に生まれかわる琉球政府の店じまいをするときに、こういうものが残っていてはいけないということで財源措置をすることにもしたのですが、こういう例が示しますように、これから起こる問題も、琉球政府がつくる道路でさえそれですから、これは容易なことじゃないということは想像できます。  したがって、また先ほどお話しのことに戻るわけでありますけれども、すみやかな境界、筆界確定ということは、沖繩においてはあらゆる問題の前提であるということは、私も十分認識しております。
  240. 大出俊

    ○大出委員 経費の話がちょっと出ましたので、この際、経済企画庁長官にちょっと承っておきたいのですが、この境界確定までに施行者みずからが行なわなければならぬ幾多の問題がある。たとえば調査業務とか調停的な業務とかございますね。これらに伴って境界確定のための測量業務も必要になってまいりますね。そうすると、一般の国土調査法のワクの中に押え込めない問題が、さっきから申し上げているようにたくさんある。となると、国の場合の国土調査法に基づく単価がありますね。ここらのところと、沖繩の現地の今日的事情の中で、いまは法律は国土調査法しかないのですから、そうすると、その単価というものはどのくらい開くだろうか、あるいはどのくらい金が必要だろうかというふうなことをおそらく御検討いただいているのだろうと思うのですが、現地の側からすると、たいへんに不満なんですね。ここらは、たとえば本土は一体どのくらいであり、向こうの場合にはどういうふうにしたらいいかというような点について、お含みがあったらお知らせいただきたいのです。
  241. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 あとでまた事務当局から申し上げますが、今度予算に計上しましたのは、本土に比べて単価で一三%増でございます。
  242. 伊能繁次郎

    伊能委員長 大出君に申し上げますが、木村経済企画庁長官は二時に参議院の大蔵委員会のほうから呼ばれておりますから……。
  243. 大出俊

    ○大出委員 大体二時のようですが、もう一つ制度論として考えなければならぬ点があるのですね。  沖繩における土地調査事業というのは、国土調査法に基づく地籍調査という測量技術的な調査事業じゃない、これははっきりしていますね。これは一九五一年の所有権の確認事業——さっき山中さんもおっしゃっておりましたけれども、これのやり直しなんですね、さっき冒頭の御答弁のときに、この御発言をいただきましたから、長官そこまで御研究であることに、たいへん私うれしいわけなんですけれども、まさにこれはやり直し事業なんですね。ということになると、民事法関係の分野というものもあわせて考えていかなければやれないですね。そういう制度的な面の考え方がもう一つないといけないのじゃないかというふうに思います。  それから、法律論的に言えば、境界が不明であること、これはどういうことかと言えば、権利関係が不明であるということなんですね。だからそうなると、いまのたとえば不動産登記法の分野の問題だとかいろいろなものがひっかかってまいりますけれども、この私権の調整という問題が最後には出てくるのです、どうしてもきめようとすると。たとえば天願なら天願という地域に面積がこれこれあった、そこに住んでいた人を集めて、おまえさんはどのくらいあったのだということを出してくれということで出してもらう。そうすると、おばあちゃんが死んじゃったから、親戚のおじさんが百五十坪のところを七百五十坪と出した。だから天願の三倍ぐらい大きな要求になってしまったのです。一番最後はすべて私権の調整なんですね。  そういうことになってきますと、そういうものがスムーズに進んでいくような私法の分野における措置がなければ、これはとても解決しない。ただ単に、先ほどおっしゃる、国が行政権という関係で前へ出てくるだけでなくて、法律は排除できないですから、そういう意味で、私が冒頭に申し上げたように、単なる行政措置でなくて、もう少し何か立法措置がなければ実際にはできないのじゃないかという結論になる。ここらのところを、これは皆さんの分野でないとおっしゃるかもしれませんが、なければ、ひとつ法務省等をお入れいただきまして御検討願っておきたい、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  244. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 やはり先ほど申し上げたとおりに、国土調査法というものの限界、これははっきりしておりますから、それを越えた部分については、いま出ましたような特別立法というものが必要になってくるであろう。これはひとつ総務長官ともよく相談いたしたいと思います。
  245. 大出俊

    ○大出委員 一時間という目途でお出かけいただきましたので、私、たいへんかけ足で申し上げたのでありますが、ぜひひとつ御理解いただきまして、国が本腰を入れてやってまいるというふうに受けとって、復帰までわずかでございますから、そういうふうにひとつどんどん前に具体的に進めていただく。こういうことで相談をするならこういうことで相談をするというふうに、こういう機関をつくって相談をするとか、現地の者も入れて相談をするとか、何かそういう法的な措置、行改的な措置というふうなものを相談する、そういう形をお考えいただきながら、現地の不満というものを、どうせこれはすぐ解決しないのですから、そこへ吸収していくというふうなことをお考えおきいただきたい。  特に、私、ただいま差し上げました地図でございますが、これが出てくればという、現地の調査関係方々の気持ちがやはりそこにあります。したがいまして、ぜひひとつ、民政府の土地の裁判で取り上げられたただ一件の資料でございますけれども、それはただそこだけとったはずはないのでありまして、間違いなく全土をとっておるわけでございますから、そこらのところをひとつぜひ米側に出させる、こういうことでお進めいただきたいと思うわけでございますが、その点だけ最後に申し上げて、何か御見解ございましたら承って、終わらしていただきたいと思います。
  246. 山中貞則

    山中国務大臣 その航空写真の米側への折衝、並びに沖繩のそれらの個々の人たちの心配、不満、こういうものに対してこたえる手段、これは特別立法の可能性も含めて至急に検討します。
  247. 大出俊

    ○大出委員 どうもありがとうございました。
  248. 伊能繁次郎

  249. 東中光雄

    東中委員 通貨切りかえのことで最初にお聞きしておきたいのですが、政府沖繩返還されるまでは円の切り上げをしない、こう言ってこられて、通貨切りかえになってからは、沖繩県民に不利益を与えるようなことはしないということをずっと言ってこられたわけですが、御承知のように、沖繩県下では、労働組合もそうでありますし、立法院も満場一致で一ドル三百六十円即時切りかえを要求しておるわけですが、結局、政府としては、この要求に対してどうされることになったのか、あらためてお聞きしておきたいのです。
  250. 山中貞則

    山中国務大臣 ほんとうは、この通貨の問題については大蔵省が答弁しなければ、専管事項でありまして、私から答弁するのは本来はいまでもおかしいわけなんです。しかし、おかしいのですけれども沖繩の人たち立場に立って考えた場合、担当大臣たる私がこの問題で考え方なり推進をしなければ、沖繩は国際通貨調整の中で、世界のどこの地域にも見られない現象のたった一つとして、ドル圏の円物資を使用して生活している地域として埋没してしまうおそれがあったわけです。したがって、私としては通貨担当大臣ではありませんが、昨年十月九日のドル・チェックも、変動相場制を発表する晩に、自分としてはこれは危険だということを考えて、その晩の私の談話に、三百六十円という基本レートは、変動相場制に移行しても、上限、下限がなくなっただけであって全然変わっていないのだ、三百六十円は存在しているということを一応談話として出しておきまして、それから極秘裏の作業をやって、渋る大蔵省と言ったほうが適切だと思うのですけれども、それを何とか最後には同意させまして、ドル・チェックということをやりました。しかしながら、その後円の切り上げによる固定相場制に、沖繩にかかわりなく、国際通貨の調整の一環として日本はそういう姿勢をとることになったわけでありますから、これはやはり沖繩にとっては大問題でありますので、私としては、それに対する生活物資その他の措置とか、いろんなことをやってきたわけですけれども、最近は、賃金の実質上復帰のときの円の問題がどうなるかという問題も含めて、沖繩の人たちはやはり、ドル・チェックのことはわかった、しかしその後の問題等があるので、復帰前に円そのものを通用さしてくれ、そうしたらもう賃金の三百六十円換算の問題も何も全部解決してしまうのだ。労使ともに、これはもう一〇〇%の県民の要求だと私は思うのです。  しかしながら、これは御承知のように施政権がありますから、施政権下にあるうちは、アメリカの了承なしでは、先般のドル・チェックは抜き打ちにできましたけれども、今回は現物を運びますからとてもできません。そうすると対米折衝が要るということで、総理にもお願いをしました結果、サンクレメンテで、一応アメリカ側が施政権イコール布令イコール通貨の制定権というような姿勢を改めて、話し合いに乗るという態度を示してきたわけなんです。しかし、それでも、先ほど大蔵の答弁をお聞きになったと思うのですけれども、それは復帰前に交換するにしても、実勢レートによる交換でなければならぬということを大蔵としては一歩も譲らないわけです。三百六十円でもう一ぺん交換しろと言っても、三百六十円というものはすでに十二月の円切り後は存在をしていないという考え方が大蔵です。しかし私は、存在していなくても、三百六十円というものは沖繩に関する限りは厳然と存在しているという気持ちでありますので、それを推進しておりますが、その際には十月九日のチェックしたものを御破算にしなければならぬ。予算は二百六十億ですが、推定大体三百億近くに達すると思われる金を御破算にいたしますと、その当時の、不意打ちでしたけれども、確認を受けた人たちの所有権というものと、現在所有しているドルというものが大きく変わっているわけだと思うのです。みんなが一〇%、一二%の成長率に見合った、ドルの確認以後の通貨のふえた分を手持ちしておれば何でもないことなんですけれども、そうするとこれは、琉球政府としても政治的に大問題を起こすので、確認を御破算にはできない。そうすると、理論的にも実態的にも、少なくとも九七、八%の通貨並びに通貨性資産を、もう一ぺん、二回、三百六十円でかえるという議論になるわけです。さすがに私もこれは大蔵省に持っていけませんし、琉球政府もそこまでは自分たちとしてはできないということで、琉球政府としてはもうそのような主張はしておられませんけれども、しかし立法院とか民間の大多数の人たちは、三百六十円で自分たち復帰前にかえてもらわなければ、この復帰前の経済的な大混乱というものを乗り切れないという素朴なお気持ちから、なおまだ依然としてその要求が強いことを私は承知しております。  しかし大蔵省としては、復帰前にやるのであるならば、アメリカのオーケーをとった上でやるのであれば、当然の条件として実勢レートであることがまず第一だと申し上げましたが、沖繩の人たちは、実勢レートでかえてもらうのだったら、たとえば三百一円九銭というものであるなら、何もそんなに早々とかえてもらわなくてもいいのだという、率直に言ってそういう気持ちもあります。あるいはまた、復帰前であって施政権があるときにかえますと、アメリカの関係者、いわゆる沖繩県民もしくは日本人あるいは居住を許された者以外の非居住者についても、全部かえなければ今度は承知しないと思うのです。そうすると、アメリカのドルの威信低下によって起こった大混乱を、アメリカの人たちの持っているものまでかえなければならぬということは、私は断然反対ですし、そういうことまでする必要はないと思っておりますが、それをやらなければ今回は向こうはイエスとは言わぬだろうと思う。布令の改廃になりますから。そういうこともあります。  そして、これは一ぺんかえてしまいますと、日本の施政権の及んでない地域で日本の通貨たる円が通用しているわけでありますから、為替管理法がない限りは、沖繩はいわゆる国際通貨のフリーゾーンであることは間違いありません。そうすると、いまのような円高傾向というものは続いており、同時にドル安になっているわけですから、そういう中でどのレートでかえるかも問題になりますけれども、実勢レートによってかえた場合でも、為替管理法が存在しない状態が十日でも一カ月でも続いた場合は、やはり大きな問題を惹起するであろうことは、私も想像できるところでありますが、アメリカは本来、為替管理には日本と違ってややルーズでありますから、日本のきびしい本土法をそのままアメリカの布令として沖繩に制定することには、きわめて強い疑義を表明している。それならば、琉球政府に立法させてそれにアメリカが従うかというと、施設権がある以上は従わぬというような空気もあります。  ここらのもろもろの問題点がありまして、現実には、復帰前に実勢レートで交換することも、また実勢レート交換は無意味であると沖繩の人たちが受け取ることも現実であるならば、きわめて困難な情勢に立ち至っておると言わざるを得ないと思います。
  251. 東中光雄

    東中委員 私はいずれにしても、大蔵が承知しないというお話もありましたが、アメリカがなかなか動かないという問題もいわれておるわけでございます。結局は、時期がおくれてくればくるほど、よけい問題が複雑になってきているわけですけれども政府のはっきりした腰が、当初、円の切り上げをやるときに、あるいは変動為替にかわるときにきまっておれば、こういう問題はやろうと思えばやれたのじゃないか。施政権がアメリカにあるといっても、施政権がアメリカにあるときから日本の国会議員を選出する選挙はやったわけですから、結局それは日本の政府の腰次第というふうになると思うのです。いまこういう状態で推移してきて、結局、いわゆる返還前の三百六十円交換というのはもう無理だ、やれないというふうにいわれていると思うのです。  それで問題になっている民間の給与の問題です。これはもうよく御承知のとおりでありますが、もともと沖繩の労働者の賃金が、本土と比べて八割弱、七割余りというところへ、もし実勢レート三百円で交換すれば十何%さらに下がる。そして物価はまたずいぶん上がっているということも含めれば、本土の半分余り、六割そこそこになってしまう。そういう低賃金の中で、三百六十円の読みかえをやられないで、三百八円の切りかえに基づいてやられていくとすれば、これは、休業補償をもらっている、あるいはそれ以下の賃金になってしまうわけですから、たいへんな問題だと思うのですが、これに対して、これをどうするのかということで緊急措置が二月十六日に出されておりますけれども、これでは全く解決がつかない問題が起こると思うのですが、それに対して何か施策を考えておられるのかどうか、ひとつ明らかにしてほしい。
  252. 山中貞則

    山中国務大臣 これは先ほども答弁いたしたところでありますが、現在とりました一連の措置では、完全に沖繩の雇用者あるいは労働者の立場の人たち全部にその措置が行き渡っているとは私も思いません。また、それが全部可能だとも思えない節があります。  しかし、かといって、この賃金を三百六十円で読みかえるか読みかえないかという問題に関する限りは、沖繩の労使の間で争うべき問題では実はない。実際はそうなってしまっているのですけれども。これは本土政府のとった通貨措置の沖繩に及ぼした影響によって、使用者も労働者もその被害を受けているということだと私はとらえているわけです。ある意味では私も大被害を受けているわけですけれども。  しかし労働者の人々は、去年設定された賃金が大体現在の賃金の根底になっているわけですけれども、去年の賃金がきまったときには、三百六十円ということも念頭になければ、あるいは変動相場、円切り上げということも全く関係なく、むしろ復帰時に幾らになるかということすら考えないで、ドルの給料というものを労使で妥結していると思うのです。しかし、その後、八月中旬、下旬、十二月というふうに、一連の変化が起こりまして、それから、自分たちがもらっている賃金は一体日本国民として本土に復帰したときには円では幾らになるのか。いまおっしゃったように、本土と現在でも格差があるのに、さらに今度は、みなされる措置によってさらに実体的にこれが切り下げられるということにはたえられないのだ。かといって企業者のほうは、給料だけを高く払っても収入のほうを伸ばす手段がないという矛盾が、沖繩において県民同士の労使の紛争になっておるのであります。  私としては、非常に申しわけないことで、おわびしても済むことではありませんので、何らかの解決策をとりたいというのでとってまいりました一連の措置ですけれども、なおこれに対して、もっと有利な条件を設定した手段を講じなければならないだろうということで、先ほど金額や条件等は言えないと申しましたけれども、いま検討中でありますが、そういう措置をとったならば、沖繩について復帰の日以降起こる問題でありますから、復帰の日以前の混乱は回避できるところまで来るかもしれないという手段についていま検討中であります。
  253. 東中光雄

    東中委員 沖繩での賃金は、それは労使とも意識してなかったかもしれないけれども、三百六十円で換算をして七割強、八割弱だという前提で言っておるわけです。しかもそれに物価高。物価高も円切り上げによる物価高、及び円切り上げそのものによってさらにそこから二割減る。それについての責任は、いま総務長官が言われるとおりに、労働者にもなければ経営者にもない。政府の施策によっての結果なんですから。だからこれに対して、私たち内閣委員会で調査に行ったときにも、経営者側から、一定期間分の賃金の差損額の補償をしろという要求が出されたわけですけれども、これはぐあいが悪いということになっておるように聞いておるのですが、これはなぜできないのか、どうしてぐあいが悪いのか。全く政府の責任でそうなっているのだから、永遠にというわけにはいかないことはわかりますけれども、これは一定期間やるということは、むしろ当然と言ったら語弊がありますけれども、そういう方法しかないのじゃないかというふうに考えられるわけですが、この点の差損補償についてはどう考えておられるのか。なぜぐあいが悪いのか。その点を明らかにしてください。
  254. 山中貞則

    山中国務大臣 これは琉球の経営者の三団体等で相談をして、当初は十年間くらいそれを補償という形で見てくれという話がありました。それからだんだん、一年補償で見てくれれば、あとは今度は十年の低利長期融資でいい、場合によっては無利子という要望等もありました。  ということは、経営者のほうとしても、さて要求する根拠もなかなか積み上げにくくて、ただ一応のつかみ的な感じの金額になっておりましたけれども沖繩の労働者の二十二万のうちの十四万人の月額を一応幾らと見て、政府の措置のなされなかった分野、これについて計算が一応できておるわけですけれども、やはりこの根拠についても積み上げたものでありませんから、そうすると、それをかりに補償であっても、それを今度は分配ということになると、またきわめて困難な問題もある。そこでやはり最終的には、これは融資であっても、きわめて有利な条件の融資であるならば、本土にいままでとられた特例なんかと飛び離れていい条件であるならば、私たちとしては、融資でもって過去の負債の借りかえその他によってメリットを出すことによって何とかできるかもしれないというような話にいまは変わってきておりまして、やはり現実性のあるものとしては、必要な金を出す、出し方は融資の形であって、それを借りかえメリットその他でもって当てがっていくということでありませんと、ただ要求された補償が幾らであるということで、補償された形で出しますと、これはきわめて大きな問題になるし、その積算の根拠は、要求している人たちも、これははっきりした根拠でないことを認めておられるわけでありますので、それはなかなかとりにくいところであります。
  255. 東中光雄

    東中委員 差損が約二割ほど起こっておる。あるいは形式的に言えば一六・八八かもしれませんけれども、とにかく起こっておることは事実なんです。ただ、それをどういうふうにしてつかむかという問題は、これは政府がやる気になって本気に調べてやられたらいいことなんで、それを補償するというたてまえに立ってなぜやられないのかということなんですよ。すぐ融資ということじゃなくて、少なくとも復帰のときに極端に下がるわけですから、もともとの低賃金がさらに、労使双方に責任が全くなくて下がるということははっきりしているわけですから、それをやるという方向でなぜやられないのか。技術的な困難があれば、その困難をどういうふうに解決していくか。要求している側が積算の基礎を役所のようにきちっとやっていけるという、そんな性質のものではないと思うのですね。だから、差損を生じたことは事実なんだから、それを補償するという方向での検討は、もう積算の基礎がはっきりしていないからだめなんだという、あるいはなかなかつかみにくいからだめなんだということではどうか。私は、つかむものはつかめるだけつかんで、この分はあやふやだからこういう推定にするとか、これは合理的な、不当なことにならないような措置を考えたらいいことだと思うのですけれども、そういう角度からの調査、あるいは積算、実情調査というようなことはやられないままでアウトにされたのかどうか、伺っておきたいのです。
  256. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、沖繩の人から言えば、補償というのは当然のことばとして出るのでしょうけれども、補償ということばが本土政府で、私は受けとめられますが、全体として受けとめられることであるかどうかの問題と、民間労使の問題でありますから、したがって、収入が確保できるものは、そのまま労使でバランスをとった賃金が設定できるはずでありますから、しかし、それをコストで商品に転嫁できない人たちもおりますし、許認可料金のようにはまいりませんから、制度外のものでありますし、そこらのところで、かりに一年間の分を補償しろと言われて、それを補償して、そうすると沖繩の対策はそれで終わったかといえば、それではやはり一年間の差額の分だけ必要な金がもらえたというだけのことであって、その間において、合理化、近代化というようなことで本土企業との競合にもたえ得るとか、あるいは今後そのような月給を払っていっても企業として採算のとれる企業運営ができるとかいうものには結びつかないということになるわけです。でありますから、これは要求して却下したとかいうことでなくて、要求する側とも、琉球政府も交えながら、これは十分に協議をした結果、もう少し融資の関係についてもっと抜本的な考え方をしてもらいたいということにいま落ちついているわけでありまして、私どものほうが却下ということではありません。十分相談の上、やはり単純に一年間補償しろといっただけでは片づかない問題だということでは、これは両方とも確認をしたわけなんです。
  257. 東中光雄

    東中委員 私はこれは、要求して、それに対して応じるか応じないかという、労使間の賃上げ交渉のような性質のものではない。これは総務長官も先ほど言われたとおりなんです。労使に関係なくて、円切り上げから来た反射的なというか、そのもの自体の結果なんですから、そういう点でそれに対する措置をどうするか。しかもこれは、単にもうけるとか、もうけないとかいう問題でなくて、もともと低賃金のところがさらに下がることによって、これは生きる権利に直接関係していく問題だといってもいい。二割といえば非常に大きなことですから、そういう問題としてその差損を補償するという、そういう姿勢での政府の取り上げ方というのはされなかったのか。要求があったからいろいろ話したけれども、むずかしくてできない、要求した側ももう引っ込めた、こうおっしゃいますけれども政府自体の責任で差損を補償するという方向で、当初の公約からいけばそうなんですから、三百六十円の切りかえということなんですから、不利益をかけないということなんですから、そうされるべきではないかということを強く思うわけです。  それで、融資のやり方としていまとられております三項目ですけれども、結局この三項目の二番目に出されている、大衆金融公庫に七億六千万の追加出資をやって、生産資金の貸し出し、要するに中小零細企業融資、そこへ向かっての対策というか、措置というふうにされておるわけですけれども、これは大衆金融公庫の線に乗せてしまえば、結局は金融機関の貸し出しの法則といいますか、それに乗ってしまって、ほんとうの零細ですね、たとえば沖繩で最も多いわけですけれども、三人四人使っているような零細企業に行く保証というのは全くないのじゃないか。そういうところの労働者というのはさらに低賃金なんですから、そういうことについての何かの措置を具体的にこの三項目以外にやられておるのかどうかということをお聞きしたいわけです。
  258. 山中貞則

    山中国務大臣 その三項目は琉球政府と私とが合意した線で、琉球政府はそれでやっていけると、こう言っているわけですが、しかし先ほど来私が言っていることは、やはり一種の貸し付け対象にもそれを当てはめていくといっても、先ほど大蔵省はまだ四十億くらい融資残があるというようなことを言っておりましたけれども、そういう全部消化するという前提でやっているわけですが、それをやったにしても、いまおっしゃったように、その零細な雇用主——まあ雇用主とは名のみで、実際には家族労働に毛の生えたみたいな人たちも全部、その問題には逃げられない問題として対決させられているわけですから、したがって、いま検討しておるものは、大蔵と合意に達しないとちょっと言えないわけですけれども沖繩側についてもっと大規模な、もっと有利な条件によって、問題は、今回の復帰に伴う円の賃金の読みかえに関する資金需要ということでいま検討しておるということでありまして、何とか実を結ぶようにしたいと考えております。
  259. 東中光雄

    東中委員 私たちは、三百六十円に読みかえができるようにするために、十月九日の確認部分の三百六十円切りかえだけではなくて、それ以後の増加分、それから法人、各種団体の預貯金、要するにプラスの面は全部三百六十円で切りかえるということをやった上で、たとえば民間企業については、復帰前の現にある債務を低利の政府融資で全部切りかえてやる、肩がわりしてやるというふうな方法をとっていけば、差損補償はやるとしても、これは一時的なものですから、とにかくそういうルートに乗せて、それから企業が本土と同じ基盤での出発をしていけるように、そういう措置をとるのが非常にいいのではないか、こう考えているのですが、いかがでしょうか。
  260. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう御意見であれば、いまそういうことも含めて検討中なんです。したがって、あとは金額とその金利の条件ですね。こういうことに尽きると思いますが、それはただいま検討中である。  さらに、復帰しますと、近代化、構造改善、こういうものをやはり今度は、沖繩のみそ、しょうゆとか、いろいろと職種ごとにそういう資金の準備もしておりますから、本土においてはすでに指定を終わってもう対象業種でないものも、全部沖繩で対象になりますので、こういうもので全面的に近代化、構造改善等の金も別な角度からつぎ込んで、体質強化に資してもらいたいと考えております。
  261. 東中光雄

    東中委員 民間企業の復帰前の債務を政府が低利で肩がわりをするということも検討しているということでございますか。
  262. 山中貞則

    山中国務大臣 これははっきりと表に出すかどうかは別にしまして、企業としては相当な規模の、相当な低利の、相当な償還期間の金であれば、当然その金を借りるときの——今回は、復帰に伴ってドルを円に賃金の換算をする問題でその融資をしようということでありますから、そうすると、そのためには借り入れ条件は、いままでの融資の前提である、融資してしかるべきかどうかという議論じゃなくて、そのようなメリットを生み出せるかどうかという融資対象の資格に変わるはずでありますから、当然、過去の負債の借りかえによって低利長期のものによってメリットが出たということによって処理する。実際の貸し出しの審査の対象の場合にはそういうことになるだろうと思っておりますけれども、負債の借りかえのために融資ワクを幾らにするのだということをいま検討しているわけじゃありませんが、結局はそういうことになると思うのです。
  263. 東中光雄

    東中委員 もう一点だけ申し上げておきたいのですが、電気、ガスあるいは県内航路、南西航空等の料金を三百六十円に変えて、こうした企業下の民間労働者の賃金が下がらないようにしようという措置が二月十六日に出されている第三項目ですけれども、これは結局、復帰に際して物価を引き上げていくということになってしまうので、むしろ復帰によって公共料金を上げないようにする。いまでさえ、円切りの関係での物価値上げというのは非常に問題になっているわけですから、特別に大幅に補助金をふやして、公共料金も上げないということをやっていくのが実質賃金を下げないということにもなるわけです。そして差損の補償といいますか、そういった問題については、私が先ほど申し上げたような、政府が差損を補償するという姿勢で、具体的にどの対象に対してどの程度やれるかということを追求していくべき性質のものじゃなかろうか、こう思いますので、その点を強く要求しておきたいわけであります。  この点では以上にしまして、今度は政府補助率の問題ですけれども、十分の十でやられているのがずいぶんあるわけですが、本土よりは上げておられるということはよくわかるのです。十分の十でやられているのは、たとえば五つの一周道路ですか、あるいは工業用水道事業費あるいは港湾整備費なんかはそうなっております。ずいぶんたくさんありますけれども、直接沖繩県が米軍施政下にあったことによって起こってきている特殊な問題と言いますか、たとえば学校給食施設というのは本土ならもうずっと前にできているわけですけれども、今度やられるということになるわけですが、この学校給食施設の補助率が四分の三です。あるいは高等学校教育施設の公立高等学校危険校舎、寄宿舎、屋内運動場は三分の二となっているのです。危険校舎なんかが三分の二というのは、要するに直接県民生活に結びつく問題ですね。あるいは沖繩県の医療の問題にしましても、これは非常に重要な問題でありますが、乳児院及び精神薄弱児施設あるいは身体障害者更生援護施設、こういったものは三分の二になっております。あるいは下水道流域下水道、あるいは消防施設は三分の二です。都市公園は二分の一。精神病院も、保健所の施設及び設備整備費も四分の三、伝染病院等も四分の三。私は、こういう県民の生活に直接結びつくような問題、二十五年間やられてなかったことで今度やらなければいかぬ問題がたくさんあるわけですが、そういうのが十分の十にならないで、あるものは二分の一あるいは三分の二、四分の三というふうになっている。これは、県民の福祉あるいは豊かな沖繩県つくり、県民に直接結びつくものとしては、こういうようなものこそ十分の十にすべきなんじゃないかというふうに思うのですが、総務長官、どうでございましょう。
  264. 山中貞則

    山中国務大臣 十分の十でやれば自治権の侵害だというふうに批判を受けるし——沖繩国会でそういう批判があったわけです。今度は、少し十分の十から引っ込んでいれば、いまのような御批判をいただくのでたいへんつらいのですが、私としては、大体現在の本土の補助率、あるいはかつて本土のいずれかの地域に短時間でも存在したことがある補助率などは全部拾って、最高の補助率にしているつもりであります。  また、今日まで沖繩については交付税等もなかったわけでございますが、平年度五百十億、累積赤字を全部たな上げにしましたから、これはもう全部が固有財源として県市町村に流れていくわけであります。一方、起債もありますし、これらの問題が全部十分の十でなければいかぬというふうには考えません。しかし、補助率は多ければ多いほどいい、高ければ高いほどいいものであることは私も同感であります。しかし、現在設定いたしました補助率は、大体この程度の措置でもって——この程度といいますか、これで精一ぱいであるというところまで持ち上げたつもりであります。  なお、沖繩の医療問題等について、あるいは学校問題についていろいろありますが、沖繩の学校環境整備、校舎の施設整備等については、五年問で本土の五年後と同じようなスピードで追いつけるような計画も立てておりますし、あるいはまた精神病院とか結核療養所というものは、これは沖繩県にまかしておいては、沖繩の罹病率も高いし、ベッド数も少ないということで、国立病院を新しくつくるということにしております。もろもろの面も相まって、単に補助率だけを十分の十で全部あるべきであるということは私もわかりますけれども、そうなると、もう沖繩県は、何も国の補助率が全部十分の十であるといえば、あとはもう単独事業の財源が必要だというぐらいのことになってしまいますので、やはり都道府県、市町村の固有事務というようなものについては補助率はなるべく高くするということのほうで、あとは起債とか交付税で見るべきものではなかろうか、そう思います。私のつくった案がこれで最上だとは私も思っておりません。
  265. 東中光雄

    東中委員 結局、私たち言いたいのは、これでは全体として上げられているのはよくわかるのです。わかるのですけれども、いわば産業基盤づくりの点は十分の十の線がずっと貫かれている。県民生活に直接結びつくもの、特に公立学校、高等学校の危険校舎なんというのは、こんなのはそれこそ当然十分の十で、二十五年間の罪滅ぼしと言ったら語弊がありますけれども、そういう点から言ったら、危険校舎なんというものは急を要することなんですから、十分の十でやっていくというふうに当然すべきじゃないか、こう思うわけなんです。こういう点で、いわば私たちのよく言う大企業本位になってしまった。なぜ十分の十に生活に直結しておる部分ができないのか。そうしたからといって何も、国が吸い上げる、あるいは自治権を剥奪していく、そんなことはやらなければいいのであって、補助率を上げろということは、国が自治権を侵害するようなことをやれと言っているわけではないわけですので、その点を特に指摘をしておきたいわけであります。  時間がありませんので、法案について聞いておきたいのですが、この振興開発事業計画ですが、振興開発法では知事の原案作成権があるということを強調されておるわけですけれども、この法案では、開発庁が計画及びその調査をする権限を持っていることになっています。この関係は一体どういうようになるのか、ひとつ聞きたいのです。
  266. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩の場合には、沖繩県知事が原案をつくりますから、原案作成権というものはこれは厳然として知事にあります。ここにいう「計画の作成」というのは、その知事が上げてまいりました原案を、審議会等の議を経て最終的な計画に決定いたしまする際の調査、あるいはそれらの計画の策定作業のことをいうのでありまして、そういう知事の権限と競合したり、あるいはそれよりか上回って先取りしたりするものでもないということであります。
  267. 東中光雄

    東中委員 沖繩の開発庁の場合は北海道の開発庁とはずいぶん違うのだということを、政府はいままで強調されてきたわけです。北海道開発の場合は、国民経済の復興と人口問題の解決に寄与するためなんだ、こういうふうに言われておりましたし、沖繩の場合は、沖繩の本土復帰という特殊事情に対処して県民の生活と福祉に資するための開発だ、目的が違うのだというふうに言われてきたのですが、北海道開発庁の場合は、知事は意見具申権がある、沖繩では原案作成権がある、ここが違うのだ、こう言われておりますが、実際上はどういうふうに違っていくのか。実際上は同じことになるのじゃないかというふうに私思うのですが、その点どうでしょうか。明らかに違うのでしょうか。
  268. 山中貞則

    山中国務大臣 それは読まれたとおり、目的も明らかに違いまして、北海道の場合には、日本国全体の立場から北海道の開発が必要だということを言っているわけです。沖繩の場合においては、沖繩のために振興開発が必要であるということを言っているわけですから、そのことばどおります違いますし、知事の意見を申し出ることができるというのと、知事が原案を作成する権限が与えられるというのとでは、非常に大きな違いですから、それを実際上どう違うかと言われても、そのとおり違うわけであって……。
  269. 東中光雄

    東中委員 北海道の場合は、意見具申権と言っていますけれども、意見具申権だから意見を出すというようなものじゃなくて、知事が北海道総合開発委員会に諮問をして、そこで開発計画書をつくって、答申をつくって、計画書案ということで道議会にかけて、それで議決をして内閣に提出しております。こういう経過でやはり案を出しているわけです。沖繩の場合も計画案を出す。そこでどういう違いが出てくるのか。その点はどうなんでしょう。そういう点では同じなんじゃないですか。実際上の運用としてどうなるのですか。
  270. 山中貞則

    山中国務大臣 北海道の場合は「意見を申し出ることができる」となっているのじゃないですか。だから、原案を作成するというのとでは全然違いますよ。
  271. 東中光雄

    東中委員 意見具申権ということになっておりますけれども、実際にやっておるのは、いま申し上げたような計画案をつくって出しておるのです。知事が諮問機関にはかって計画案をつくって、議決をしてそれで出しているわけです。ところが問題は、意見具申権だから、意見を一方的に出せばそれでいいようなものだけれども、法文上はそういうたてまえになっているけれども、実際上は、北海道の場合に、この総合開発委員会、ここは、開発庁と開発局と、そして北海道の道側の企画部ですか、企画室ですか、この三者構成でやってつくっているのです。知事の意見具申権で意見を述べるその意見のもとになるものさえ、もうすでに開発庁から別に国側が入ってやっている、こういう状態になっているのです。ところが沖繩の場合は、計画案の作成権はあるけれども、開発庁が計画をし、その調査をする権限さえ持っているわけです。こうなったら、意見具申だから、具申する意見の内容にあらかじめ国側が入ってくるというようなことは、普通は、長官の言われるように、文書に書いてあるとおりなら考えられぬことだけれども、現に起こっておるわけなんです。沖繩ではそういうことにならないか。絶対にならないということを言われるのだったら、これははっきりしておいてもらったらいいと思います。
  272. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩ではそういうふうにならないということを言えと言われますが、北海道の場合は、法的に知事が原案作成権を持っているわけではないので、「意見を申し出ることができる」という法的な立場しか与えられていないわけです。沖繩の場合は、法的に沖繩県知事が原案を作成するわけですから、それについて開発庁なり何なり本土中央政府が原案作成の段階でそれに介入するということは考えられないことであって、全く違うわけです。違うと言えばいいとおっしゃったのですから、全く違います。
  273. 東中光雄

    東中委員 意見具申の内容が計画案という形で北海道では出しているのです。それが知事の意見具申する意見の内容なんです。普通の条文の解釈からいえば、そこへ意見具申を受ける側の人が入ってきて三者構成でつくろうというようなことは考えられぬことなんだけれども、現に起こっている。だから文言は違うけれども計画案をつくる権限は知事にあっても、計画及びその調査をする権限が開発庁にある状態では、これは北海道より以上に事前介入の可能性というのはきわめて多いわけです。膨大な陣容を持っている開発庁が進んでいってそういうことになる可能性というのは、北海道の例から見ても非常に危惧されるわけですけれども、そういうことは絶対ないというふうに言われるんだったら、それははっきりとこの委員会でしておいていただきたい。
  274. 山中貞則

    山中国務大臣 申しましたように、北海道の知事は法的に原案作成権を与えられているわけではない。法的には意見を申し出ることができる立場にあるだけである。沖繩の場合は、原案作成権が知事にあるわけですから、その原案作成の段階で、中央政府が立ち入ってそれをやる資格は法的にないわけです。したがってそういうことはあり得ません。  しかし、それならば開発庁は、そういう計画の調査、作成というものは要らぬじゃないかと言ったって、それは、沖繩県知事が持ってきたものをそのまま全部国が実行せよという法律になっているのなら、当然要りません。しかし、沖繩県知事のつくった原案について、最終的に内閣総理大臣の決定する計画として、国の責任ある計画として推進されていくわけでありますから、その原案として作成されたものについて、原案といっても県の原案ですから、国の原案になるべき具体的な調査なり計画の作業というものは要るわけですので、北海道のような事態が起こらないかとおっしゃるなら、たてまえが全く違うのですから、そのようなことは起こらないということをむしろ結論としては申し上げておきます。
  275. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、県の原案と国の原案とが両方進んでいくことになるわけですか。決定するのは内閣総理大臣ですけれども、いま県の原案だと言われたのですけれども、そう聞いておいていいのですか。
  276. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩県知事が作成した計画に基づいて国の計画とするための作業をするわけですから、そこで国の計画が始まるわけであって、その原案を沖繩県知事がつくるというわけでありますから、同時にやるということはあり得るわけはないと思います。
  277. 東中光雄

    東中委員 内閣総理大臣が最終的に決定をする振興開発計画の原案を知事がつくるのである、県の原案があって、そして国の案がまたあるというようなものでなくて、県で知事がつくった原案によって内閣総理大臣が決定するということではないのですか。
  278. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう御質問ならばわかりました。沖繩県の計画というもののほかに、政府計画案の原案がもう一つあるのじゃないかということですが、そういうことはないのです。沖繩の県知事がつくりましたもの、原案は一つであって、それを国の計画にするための作業なり調査なりというものは当然行なわれる。最終的には、沖繩県知事のつくったものとそっくり、寸分違わないものであるかもしれないし、場合によっては、調査の結果、それは単年度の実現は困難だとか、あるいはそれは十カ年計画でもちょっとむずかしいとかというようなことも起こってくるでしょうから、そこらは、上から押しつけるのではなくて、相談ごとで、審議会等も委員会の修正がありまして、学識経験者が五名ふえましたので、沖繩関係の人が過半数を占めるようにいたします。そうすると、そこを経て決定するわけですから、いまおっしゃったような危惧の点は実際上は当たらない、私はそう思います。
  279. 東中光雄

    東中委員 審議会の構成が、政府の役人、職員が過半数だった。これはさすがに訂正されたわけですけれども、あの構想の発想方法からいきますと、これは政府方針が全部貫くようになっていたわけですね。訂正されたことは事実ですけれども。私たちが、決定権を総理大臣でなくて知事が持つべきだ、そういう主張をしていることは御承知のとおりですけれども、ただ、振興開発法ができたあとのいまの時点で見て、開発庁が、計画作成権とそのための調査権、そういう権限を持っているということになれば、これは実際問題として、県の意見というのは、政府の了承を得ること以外は全部変えられてしまう。そういう自治の侵害の問題が起こってくるということと、計画の調査というのは原案が出てきてからやるわけじゃないでしょう。そういう性質のものじゃないと思うのですね。事前に、あるいは並行して進んでいくことになるのじゃないか。そうすれば、必ず介入の問題が起こってくるのじゃないかと思うのですが、開発庁がやる計画のための調査、計画作成の作業というのは、知事が出す計画原案が出てくるまではやらないということになるのかならないのか。やるのだったら、計画の原案の中へ介入していくように思うのですけれども、その点どうでしょう。
  280. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろんそういうことはやりませんが、自治権の侵害とおっしゃいますけれども沖繩県知事が地方自治体の長として持っておる普遍的な固有の権限を侵すべき余地は、どこを見たってないわけです。国の計画を策定するのに沖繩県知事の原案の作成、提出の権限を認めているわけでありますから、それをもとにして作業が始まり、それをもとにして決定がなされていくわけであります。  たとえば、党が違いますからいたしかたありませんが、沖繩県知事の復帰前につくりました長期計画で、十年後の沖繩には——これは今後の十年計画と一年手前の十年後ですが、軍事基地は全くないという前提で作業がされておる。しかし、私ども自民党というものは、あくまでもこれは安保条約も一応肯定をしておるわけです。それまでに両国合意でやめていない限りはですね。そうすると、全然基地がない状態というものの計画が立てられるかというと、そこはやはり現実的には問題の存するところの一つなんです。そういう意味の現実と理想との間の調整ということは当然行なわれなければならぬと思いますが、しかしそれは、自治権の侵害という意味でとらえるべき問題じゃないと思うのです。やはり話し合うべきことだと思います。
  281. 東中光雄

    東中委員 私は北海道との関係で言っているのですけれども、北海道の場合は、知事が意見具申をするについて、どういう形で意見具申をするかというのは、これは知事がかってにきめればいいことですね。その意見具申の内容は、こういう計画にしてほしいという意見具申をすることができるわけですね。それをやるために、知事がきめ、議会で議決をして、それを出すのだけれども、ところが、その意見をきめるときに、前に三者構成でつくられていくというかっこうになっている。そういう点から言えば、沖繩の場合はもっとひどいことになりはせぬか。(山中国務大臣「ならない」と呼ぶ)だって、開発庁が作成権をちゃんと持っておるのですから……。
  282. 山中貞則

    山中国務大臣 北海道のことについて、岡田部長に答弁させます。
  283. 岡田純夫

    ○岡田(純)政府委員 ただいま大臣の言われたとおりなんでございますけれども、北海道の場合は意見を申し出ることができる。御承知のとおりなんですが、したがいまして、十分尊重して実際に運営はなされておると考えておりますけれども法律論としては、あくまでも意見を聞くという立場であって、原案なり考え方の主体をなすものは、北海道開発庁長官がつくられるというのに対して、こちらのほうと申しますか、沖繩の場合においては、原案そのものをます沖繩県知事が作成して、総理大臣が決定されるまでの間、開発庁がその手続を進めるということでありますので、本質的に違うと思います。それからまた、構成につきましても、審議会にかけることについては、そのこと自体は同じでございますけれども、構成からいきましても、沖繩の場合には、市町村長あるいは市町村議会議長という人たちが入っております。御承知のとおりでございまして、したがって、実態からいきましても、法律論からいきましても違うと思います。
  284. 東中光雄

    東中委員 法律問題で違うのはわかっているのです。私の言っているのは意見具申権がある。これは「意見を申し出ることができる」というのだから、意見具申権があるわけです。その意見をまとめる過程で、これは知事あるいは北海道が道としてきめることなんですけれども、その過程の中に、総合開発審議会ですか、というものがあって、いわゆる三者構成で道と開発庁と開発局が入っている。北海道の意見具申をするそのもとを開発庁や開発局が入ってやっているというのがいまの実態なんですよ。条文の規定からいったら、そんなこと考えられぬことでしょう。意見を尊重するだけなんだから、どんな意見が出ていたっていいわけなのです。ところがその中に入ってやっているわけです。そういう事態になっているから、沖繩だって事実上そういうことになりかねないということを言っているわけです。いわんや沖繩の場合は、計画の作成権ということになっているから、今度は、計画作成権者が原案作成段階でいろいろ意見は言っておいたほうが案としてはいいから、ということになってしまう、そういうふうにはならないということをここではっきりと断言されるのだったら、そうしておいていただきたい。北海道はそうなっていないですよと言っているのです。
  285. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうことにはならないということをさっきから申し上げているわけです。北海道の場合は「意見を申し出ることができる」です。その次にもっと権利を認めれば、「意見を聞かなければならない」というのがもう一つあると思うのですね。それよりかもっと前の段階なんです。実際の運用上、北海道も一緒になって作業しようという仲よしムードでやっているのかもしれません。沖繩法律のたてまえから、沖繩県知事が原案をつくって出す権利を法的に持っているのですから、その権利の中に入り込んで権利を有名無実のものにしようという、そういう陰謀とかなんとかいうものは考えていないし、できないことだ。したがってそういうことは起こり得ない。
  286. 東中光雄

    東中委員 私の言っているのは、「意見を聞かなければならない」という前の、意見を出すことができる、尊重するという程度の意見の作成にさえも国が入っていっているというのが現実だと言っているのです。(山中国務大臣「それは親切な話でしょう、北海道の場合はですよ」と呼ぶ)あなたは親切だというふうに言われるから、そういう感覚だったら、原案作成のときも、作成権者がおるのだから、原案が作成権者とまるきり違うことを言っていたらいかぬから、親切に言っていくということになりかねない。そういうことは一切しないということを何回も言っているとあなたはおっしゃるが、私がそれを言っている趣旨は、開発庁の作成・調査権を削ってしまったら、そんなところに入っていけないわけですね。開発庁が計画作成権及びそれに対する調査権を持っているわけですから、それがなかったら原案作成のところに入っていくわけはないのだから、計画作成権を持っているところが、原案作成権者のところへ親切にいろいろやっていくということになったら、もうこれは原案作成権というのは有名無実になってしまうということで、開発庁の作成権限及び調査権限を削る、あるいは、少なくともどういう形においても事前に原案作成過程に親切はやめて介入しない。北海道はそれをやられているから、もう北海道道議会は何のために道議会をやっているのかわからぬ。そうしてつくられたものを知事に質問したって、意見具申する計画を審議するときに、これは社会党の人が本にも書いているのですけれども、つくったほんとうの人たちが議会にあらわれてこないのだから、議会は何をしていい一のかわからないということで陳情合戦になって、ここの東京事務所はものすごく大きくなってしまう、こういうかっこうになっているわけです。そういう点で特に、そういうことをしないということを——これはもう何回も言っているとおっしゃるからあれですけれども、その調査権限及び計画作成権限を削るべきだということについての御所見をお聞きしておきたい、こう思います。
  287. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたのいまの発言の速記録だけを読むと、北海道の親切心は、沖繩でも親切だと称して何か介入するように受け取られると思うのです、きっといまの文章だと。私の言ったのは、とにかく北海道は、「意見を申し出ることができる」わけですから、申し出ないでもいいんですね。しかし今度は受けるほうは、北海道の知事が意見を申し述べたことについて、耳を傾けてもよし、傾けなくてもよしということだと思うのですよ、法律のたてまえからいえば。しかしそれでも親切に、おそらく作業の手伝いなどを一緒になってやっているでしょうということを言っているのであって、沖繩でも親切という名の羊の皮をかぶってオオカミがそろりそろりと入っていこうなんという、そんなさもしいことは考えてはいやしませんよ。  沖繩の場合は、法律のたてまえから言って、知事にそのような権限があるのですから、したがってその証明として、開発庁の仕事の内容から計画の作成とかあるいは調査の条項を削れとおっしゃいますけれども、そうすると、開発庁は全然何にも作業はできないで、沖繩の知事が持ってきた案はそのまま国の計画としなければならないという法律が別途なければ、それは責任が果たせないということでありますから、これは何を目的にそういうことをさっきから言っておられるのかよくわかりませんけれども、革新政権だからやっつけてやろうとか、そんなことを考えているわけでも何でもないので、沖繩県民のために自分たちがしなければならないことは何かという、国家の、いわゆる本土の心として私たちが出した答えがこれだということでありますから、全然そういう私心とかよこしまな心というものはないわけですから、その点はひとつすなおに受け取ってもらわないと、この論争をしておりますと、何か疑心暗鬼で、これはでき上がってしまうとどえらいことが起こるのじゃないかというふうに誤解されると困りますので、あなたは誤解させようと思っていらっしゃるのかもしれないけれども、そういう気持ちは、原案作成のわれわれにも、政府にも、今後沖繩に対してかかる不遜な気持ちを持つことは許されない、それが沖繩県であるということを確認しておきたいと思います。
  288. 東中光雄

    東中委員 くどいようですが、疑心を持たせるように言っているという、そういう言い方をされるとはなはだもって心外なんです。尊重をすればいいという程度の原案の作成過程にさえ、あなたは、親切で入っていっているのだろう、こう言われるから、そんなもの、どんな意見を言ったって尊重するだけなんだから、それに基づいてやるわけでもないのだから、たいしたことはないのだから、国は何も介入していくことは要らない。すらっと読めばそうなるのですよ。それを三者構成の審議会という形でやる。議会でも、「北海道開発の虚像と実像」ですか、本にまで書いて訴えているというような事態があるのだから、それを私は指摘をしているわけなんです。決して疑惑を抱かせるという問題じゃないということだけはっきり申し上げておきたいと思うのです。  もう時間がなくなったのですが、通産と建設から来ていただいたので、一点だけお聞きしておきたいのです。  この計画との関係で申し上げたいのですが、水資源というのは非常に重要な問題だと思うのですが、沖繩県の開発庁の設置については、これは北海道と違って、県民の生活と福祉に資するためのものなんだということを先ほども総務長官は言われたわけですが、この水資源で生活用水優先確保、農業用水、工業用水の確保をどうするかという問題があると私は思うのですが、いま通産省から出されておる工業用水の十年先の計画ですね。琉政が長期経済開発計画を出しておりますけれども、その計画とこれは、ずいぶん大きな食い違いがあります。その点で通産省に八〇年推定の生活用水、農業用水、工業用水はどういうふうに見込んでおられるか。建設省がその水資源を開発していくのにどういう計画を持っておられるか。時間がありませんので、ひとつ簡単に伺いたいと思います。
  289. 田中芳秋

    ○田中(芳)政府委員 お話には八〇年までの通産省の計画があるやに承ったわけでございますけれども、私どもといたしまして、そのような計画は実は持っておりません。琉球政府のほうでは、一九八〇年までの長期経済開発計画を、一九七〇年、一昨年の九月に出しておるわけでございます。  私どもといたしましては、沖繩におきます水資源の開発の可能性、これを十分踏まえまして、そうした全体的な水供給の可能性のもとに、今後立地が予想されます金武湾沿岸沿い、あるいは勝連半島、宮城島周辺、さらには南におりまして、自由貿易地域あるいは工業団地等の需要を、当面日量にいたしまして約十万トン程度見込み、ただいまそうした需要量を満たし得るに足る工業用水道の建設に対しまして、沖繩県に対しまして補助事業を行なう、こういうことで、大体明年度から二ないし三カ年このテンポで事業を推進しよう、こういう考えでおるわけでございます。
  290. 宮内章

    ○宮内説明員 水資源開発の問題につきましては、建設省といたしましては、琉球政府の調査の結果に基づきまして、当面、一九七六年の需要を目途に、北部の東海岸の安波川、新川、普久川の三つの川に、それぞれダムをつくって水資源開発を行なっていくとともに現在、琉球水道公社が行なっています福地ダムの工事の早期完成をはかっていきたいということで、当面は一九七六年を目標に進めていくわけでございますが、さらにその後の水需要に対しましては、北部、西海岸の多くの川あるいは湾がございますが、そういうものの開発について調査を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  291. 東中光雄

    東中委員 通産省の企業局立地公害部が「沖繩の工業立地条件と工場適地」というのを発表して、一九八〇年度推定として生活用水は二十六・六万トン、それから農業用水は十二・五万トン、工業用水は四十四・四万トン、こういう数字を発表しておりますが、通産省、そうじゃございませんか。
  292. 田中芳秋

    ○田中(芳)政府委員 ただいまの数字は、通産省といたしまして、沖繩の長期開発をはかりますために、その産業基盤等について調査をいたしました調査団としての中間報告でございます。ただいまの通産省の考え方といたしましては、先ほどお話し申し上げたとおりでございます。
  293. 東中光雄

    東中委員 通産省の調査結果だということですからそうだと思いますが、これを見ますと、生活用水は二十六万トン余りになっておるのです。琉政が出しておる長期経済開発計画を見ますと、一九八〇年は四十九・二万トン。琉政の計画の約半分なんですね。生活用水は半分。工業用水は通産省のほうは非常に高いわけです。いま沖繩県全体の一人一日生活用水の使用量というのは百六十リットル、本土の約二分の一です。最も生活の水準の高い那覇市で一人一日平均二百リットルくらい、東京と比べて半分くらい。こういう状態で昨年もずいぶん水飢饉の問題があったわけです。工業用水を非常に優先される通産大臣は、沖繩の発展のために工業立地条件を整備していくことを優先さすべきであるということを言っておられるわけですけれども、琉政が言っておるような、生活用水あるいは農業用水というところから出発すると、見通しが二、三割違っているというのじゃなくして、倍も違っているというふうな形になっておる。  こういう状態で、水の問題というのは非常に重要な問題ですし、こういうことの調整を開発庁でやられることになるのだと思いますけれども沖繩県民の生活福祉、そこから出発する、自治体がそれをまとめて出していくという姿勢をとらないと、通産省のいわれているような方針で工業用水優先という姿勢でくると、これは結局、沖繩県の県民の生活福祉向上という面じゃなくて、全体の経済開発、その中へ組み込まれていく。北海道方式に結局なるわけですが、そういうことになる危険を持っていると思いますので、そういう点について、総務長官、水資源の問題を含めて御所見を聞いておきたいと思います。
  294. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩における水資源確保優先順位は、まず生活用水、これはあのようなサンゴ礁の島々から成り立っておるところであり、ことに本島において相当な集中人口がありますから、まず第一は生活用水、第二はやはり畑かん等を含めた農業用水、第三は工業用水という順序で考えて今後進めていきたいと思います。
  295. 東中光雄

    東中委員 防衛庁に聞きたいと思ったんですが、時間がありませんので、あとへ残していただいて、きょうはこれで終わります。
  296. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、来たる二十八日火曜日、午前十時理事会、十時半より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十九分散会