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山中国務
大臣 ほんとうは、この通貨の問題については大蔵省が
答弁しなければ、専管
事項でありまして、私から
答弁するのは本来はいまでもおかしいわけなんです。しかし、おかしいのですけれ
ども、
沖繩の人
たちの
立場に立って考えた場合、担当
大臣たる私がこの問題で
考え方なり推進をしなければ、
沖繩は国際通貨調整の中で、世界のどこの地域にも見られない現象のたった
一つとして、ドル圏の円物資を使用して生活している地域として埋没してしまうおそれがあったわけです。したがって、私としては通貨担当
大臣ではありませんが、昨年十月九日のドル・チェックも、変動相場制を発表する晩に、自分としてはこれは危険だということを考えて、その晩の私の談話に、三百六十円という基本レートは、変動相場制に移行しても、上限、下限がなくなっただけであって全然変わっていないのだ、三百六十円は
存在しているということを一応談話として出しておきまして、それから極秘裏の作業をやって、渋る大蔵省と言ったほうが適切だと思うのですけれ
ども、それを何とか最後には同意させまして、ドル・チェックということをやりました。しかしながら、その後円の切り上げによる固定相場制に、
沖繩にかかわりなく、国際通貨の調整の一環として日本はそういう姿勢をとることになったわけでありますから、これはやはり
沖繩にとっては大問題でありますので、私としては、それに対する生活物資その他の措置とか、いろんなことをやってきたわけですけれ
ども、最近は、賃金の実質上
復帰のときの円の問題がどうなるかという問題も含めて、
沖繩の人
たちはやはり、ドル・チェックのことはわかった、しかしその後の
問題等があるので、
復帰前に円そのものを通用さしてくれ、そうしたらもう賃金の三百六十円換算の問題も何も全部解決してしまうのだ。労使ともに、これはもう一〇〇%の
県民の要求だと私は思うのです。
しかしながら、これは御承知のように
施政権がありますから、
施政権下にあるうちは、アメリカの了承なしでは、先般のドル・チェックは抜き打ちにできましたけれ
ども、今回は現物を運びますからとてもできません。そうすると対米折衝が要るということで、
総理にもお願いをしました結果、サンクレメンテで、一応アメリカ側が
施政権イコール布令イコール通貨の制定権というような姿勢を改めて、話し合いに乗るという態度を示してきたわけなんです。しかし、それでも、先ほど大蔵の
答弁をお聞きになったと思うのですけれ
ども、それは
復帰前に交換するにしても、実勢レートによる交換でなければならぬということを大蔵としては一歩も譲らないわけです。三百六十円でもう一ぺん交換しろと言っても、三百六十円というものはすでに十二月の円切り後は
存在をしていないという
考え方が大蔵です。しかし私は、
存在していなくても、三百六十円というものは
沖繩に関する限りは厳然と
存在しているという気持ちでありますので、それを推進しておりますが、その際には十月九日のチェックしたものを御破算にしなければならぬ。予算は二百六十億ですが、推定大体三百億近くに達すると思われる金を御破算にいたしますと、その当時の、不意打ちでしたけれ
ども、確認を受けた人
たちの所有権というものと、現在所有しているドルというものが大きく変わっているわけだと思うのです。みんなが一〇%、一二%の成長率に見合った、ドルの確認以後の通貨のふえた分を手持ちしておれば何でもないことなんですけれ
ども、そうするとこれは、琉球
政府としても政治的に大問題を起こすので、確認を御破算にはできない。そうすると、理論的にも実態的にも、少なくとも九七、八%の通貨並びに通貨性資産を、もう一ぺん、二回、三百六十円でかえるという議論になるわけです。さすがに私もこれは大蔵省に持っていけませんし、琉球
政府もそこまでは自分
たちとしてはできないということで、琉球
政府としてはもうそのような主張はしておられませんけれ
ども、しかし立法院とか民間の大多数の人
たちは、三百六十円で自分
たちは
復帰前にかえてもらわなければ、この
復帰前の経済的な大混乱というものを乗り切れないという素朴なお気持ちから、なおまだ依然としてその要求が強いことを私は承知しております。
しかし大蔵省としては、
復帰前にやるのであるならば、アメリカのオーケーをとった上でやるのであれば、当然の条件として実勢レートであることがまず第一だと申し上げましたが、
沖繩の人
たちは、実勢レートでかえてもらうのだったら、たとえば三百一円九銭というものであるなら、何もそんなに早々とかえてもらわなくてもいいのだという、率直に言ってそういう気持ちもあります。あるいはまた、
復帰前であって
施政権があるときにかえますと、アメリカの
関係者、いわゆる
沖繩県民もしくは日本人あるいは居住を許された者以外の非居住者についても、全部かえなければ今度は承知しないと思うのです。そうすると、アメリカのドルの威信低下によって起こった大混乱を、アメリカの人
たちの持っているものまでかえなければならぬということは、私は断然
反対ですし、そういうことまでする必要はないと思っておりますが、それをやらなければ今回は向こうはイエスとは言わぬだろうと思う。布令の改廃になりますから。そういうこともあります。
そして、これは一ぺんかえてしまいますと、日本の
施政権の及んでない地域で日本の通貨たる円が通用しているわけでありますから、為替管理法がない限りは、
沖繩はいわゆる国際通貨のフリーゾーンであることは間違いありません。そうすると、いまのような円高傾向というものは続いており、同時にドル安になっているわけですから、そういう中でどのレートでかえるかも問題になりますけれ
ども、実勢レートによってかえた場合でも、為替管理法が
存在しない状態が十日でも一カ月でも続いた場合は、やはり大きな問題を惹起するであろうことは、私も想像できるところでありますが、アメリカは本来、為替管理には日本と違ってややルーズでありますから、日本のきびしい本土法をそのままアメリカの布令として
沖繩に制定することには、きわめて強い疑義を表明している。それならば、琉球
政府に立法させてそれにアメリカが従うかというと、
施設権がある以上は従わぬというような空気もあります。
ここらのもろもろの
問題点がありまして、現実には、
復帰前に実勢レートで交換することも、また実勢レート交換は無意味であると
沖繩の人
たちが受け取ることも現実であるならば、きわめて困難な情勢に立ち至っておると言わざるを得ないと思います。