○
前田参考人 私
どもはいままで明年度
予算編成と
関連して、四回続けてきた
長期構想の情勢に合った変更をいたしております。第一次、第二次まではこれを
長期計画といっておりました。第三次から
長期構想に変えました。私
どもがいま検討を終わりつつあるのは第四次
長期構想であります。
第一次の場合の
NHKを取り巻く社会情勢はどうであったかと申しますと、テレビのネットワークを
建設する初期の時代に当たります。しかも、所得倍増政策のあおりを食って、待遇改善ということが主
目標の
一つになった時代でございます。
第二次の
長期計画は、この第一次
長期計画の四年度の経過を踏んまえて、その上に立って第一次の最終年度を初年度とする第二次
長期計画を考えたわけです。申しますのは、世の中はきわめて流動的であり、社会情勢は日々に変化するからでございます。
続いて、御
承知かと思いますが、環境的に
聴視料、たとえばラジオ料金を廃止せよとか、あるいは白黒料金を下げろという情勢が起こりましたので、第二次
長期計画の最終年度を打ち切って、そういう情勢にこたえるために第三次
長期構想をつくりました。この第三次
長期構想の考え方を土台として、皆さまの御
審議によって、簡単に申しますと、その年度の事業
計画と、それに
関連する将来の見通しを御
審議いただいて、そして新しい料金制度というものを設定していただいたわけであります。この第三次
長期構想の発展の過程においての社会環境はどうであったかと申しますと、御
承知のようにいま端的に申しますと、ラジオ料金が存続し、白黒料金がその当時の
現状を維持し、さらにカラーの発展に応じた特殊の考え方を御
理解いただけるならば、おそらく今日の
財政状態は現在よりははるかによかった、妙な言い方ですが、そういう印象を私は持っております。しかしながら、
NHKの内部だけがよくても、
聴視者との
関係がよりよくならなければ、
NHKの存在の
意味はございませんので、私
どもはその
意味でラジオ料金を無料とし、白黒料金を十五円引き下げて、従来の
構想とのかかわりの中では、三百億円をこえる赤字になるであろうという想定のもとに、この期間に
全力をあげて経営
責任を追及していきたい、こういう考え方できたわけでございます。
今日の情勢においては、それでは社会的環境はどうであるかと申しますと、御
審議いただいている
NHKの明年度
予算の中に内在している問題は、簡単に申しまして
人件費は
受信料収入額のおよそ三二%になっております。それから明年われわれが消化しなければならない公共料金の値上がり分は、大体七億二千万円になっております。
これらを踏んまえながら私
どもとしてはさらに第四次の
長期構想を一応検討しまして、そして、その上に立って昭和五十一年度までのわれわれの長期見通しを一応立てているわけでございます。この立て方から申しますと、けさほ
ども申し上げたわけですが、経済企画庁の最近の発表によりますと、昭和四十三年から四十六年にかけての物価の値上がりは、昭和四十三年を一〇〇としますと、三二%の増高になっております。これらもいままでの
長期計画もしくは
長期構想の中でわれわれとしては消化してまいりました。今後の問題は、主としてやはりこの問題にかかっていると私は考えております。この問題をどう想定するかは、現在のところ確かな考え方を申し述べることは不可能です。今日以後の社会情勢がどうなるか、これを踏んまえない限りはっきりしたことは申し上げられません。しかし、少なくとも毎年五%以上の物価の上昇が平均してあると仮定しても、われわれとしては五十一年度までの経営の基本的
数字をどこに置くかということを考えるわけでございます。この際考えられることは、昭和五十一年度末のいわゆる契約
目標の
世帯数としては、国勢調査の結果あるいは総理府の統計その他を勘案いたしますと大体三千三百万
世帯、そのときにわれわれが獲得し得るカラー契約の契約数はおおよそ二千四百万
世帯と計算しているわけです。この上に立って今後五カ年間の
受信料の総収入は現行制度を維持して幾らになるかと申しますと、大体われわれの腹づもりでは六千四百億円を上回ることになると思います。こういうたてまえを土台として、私
どもはその初年度としての明年度
予算の御
審議を願っているわけで、その
意味においても私は四十八年度まで値上げする必要がないという基礎的計算の上に立っての
発言でありまして、感傷的ないし印象的
発言ではございません。
さらに今日具体的な問題としては、代々木に
建設している放送センターは明年八月には建物が完成する予定であります。これと
関連いたしまして、私
どもは不要になる内幸町の処分を考えておりまして、評価益あるいはその他の
関係で、これの処分によって百億近い利益を上げ得る、これを将来の
財政の補完的作用を果たさせ得る財源と、こう考えているわけです。ですから私が、四十九年度以降についてははっきり申し上げられないというのは、そういう幾つかの
条件が完成されていないこと、それから社会環境について見通しが立てられないから、そう申し上げておるのでありまするが、かりに一応社会環境が五%
程度の物価上昇を続けていく、これを見合う待遇の改善を行なっていくというたてまえに立つならば、私としては四十九年ばかりでなく、あるいは五十年ころまである種の見通しを持ち得るのではないかという予感を持っております。しかし、これは予感でございます、正確な計算をまだ終わっておりませんので。ただ
一つ申し上げ得る点は、先ほど来申し上げましたように、今日においてたとえば明年度
予算で
受信料の面で九十幾億の収入増がある、しかしながら、これはいま申し上げたような物価の騰貴率その他を差引きしますと、この成長率はノミナルには九%をこえますけれ
ども、実質的には三・一%にとどまるというのが実情でございます。しかし私
どもとしては、単に印象的な
数字を申し上げているわけでなく、かなりの確信を持って今後五年間の見通しを踏んまえた上で、正確でない
部分もございますが私
どもとしては善処してまいりたい、こういう考え方でございます。