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1972-06-01 第68回国会 衆議院 地方行政委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月一日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 豊  永光君 理事 山本弥之助君    理事 小濱 新次君 理事 門司  亮君       中島 茂喜君    中山 正暉君      橋本登美三郎君    三池  信君       山口 鶴男君    横山 利秋君       桑名 義治君    和田 一郎君       林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君  出席政府委員         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         警察庁交通局長 片岡  誠君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       川崎 幸司君         大蔵省銀行局特         別金融課長   北田 榮作君         文部省社会教育         局青少年教育課         長       川崎  繁君         厚生省環境衛生         局環境衛生課長 加地 夏雄君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     平林  剛君 同日  辞任         補欠選任   平林  剛君     山口 鶴男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  風俗営業等取締法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇七号)      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  風俗営業等取締法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まず最初に法律についてお尋ねしたいと思いますが、「モーテル営業規制」第四条の六、これを拝見しますと、「モーテル営業が営まれることにより清浄風俗環境が害されることを防止する必要のあるものとして都道府県条例で定める地域においては、営むことができない。」となっていますね。この場合、「都道府県条例で定める」となっているのですが、この場合の都道府県の定める条例というものについて、おおむねこういう形の条例制定せよというようなことを御指導するつもりがありますか。あるとすれば、一体どのような条例を想定しておられますか。これをまずお伺いしたいと思います。
  4. 本庄務

    本庄政府委員 規制の対象となる地域については、「都道府県条例で定める」ということになっております。条例でございますから、その府県府県実情に応じて府県がきめるというたてまえでございますが、やはり、ある程度の大まかな基準と申しますか、線と申しますか、そういったものにつきましては指導する必要があろうかと考えております。その内容につきましては目下検討中でございますが、「清浄風俗環境が害されることを防止する必要のあるもの」という一つの判断の基準といいますか、資料といいますか、そういったものを例示的に示すというようなことが考えられるかと思います。たとえば近郊住宅地域とか、そういったような地域幾つか列挙するという……。
  5. 大野市郎

    大野委員長 速記の都合がありますから、もう少し大きい声でお願いします。
  6. 本庄務

    本庄政府委員 幾つか列挙するといったような方法をとることにたぶんなるだろうと思っております。
  7. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 委員長から御注意がありましたが、私も耳はそんなに悪いほうではないのですが、どうも本庄さんの声は聞きにくいのでありまして、ひとつ、もう少し委員会全体に聞こえるように、基準をお考えになっておられるということでありますから、その基準として警察庁として想定しておられるものについて、しさいに御説明をいただきたいと思うのです。
  8. 本庄務

    本庄政府委員 条例できめるのがたてまえでございますから、あまり細部のことまで中央で定めるということは、条例で定めることにした趣旨にも沿わないと思いますので、先ほど小さい声でたいへん恐縮でございましたが、住宅地域あるいは——表現がむずかしいのでございますが、表現を別といたしまして、実態的に考えておりますのは、住宅地域とか、文教地域とか、あるいはそういった地区でなくても、たとえば夏、キャンプに家族連れで行く、あるいはレクリエーションに行く、あるいは会社、事業場の研修の場所になるというような海岸とか、あるいは山岳地帯、そういったようないい意味での行楽地というものも入ろうかと思います。そういうふうに、人間の広い意味での生活エリアに属する地帯であって、清浄風俗環境を害されては困ると思われるようなところを一応の基準として示したいと考えております。
  9. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まくらことばに、条例できめることであるから、それぞれの都道府県自主性というものがあるから、そういうことも配慮してあまりこまかなものをお示しするのはどうか、一応概括的に大まかな基準というものを考えておる、その内容はこうだ、こういうお話でありました。その点は十分了解できます。いま、モーテルにつきまして相当世人の批判というものがある。そういう中で、市町村段階におきまして非常に苦労をして、自治体として取り締まり——まあ、取り締まりということばが適当かどうか知りませんが、モーテルについてある程度の規制をする。特に、農地転用その他について、規制をするという面に着目をしての条例というものがたくさんできていますね。これは、こういった法律が出ない段階における地方自治体の知恵だと私は思います。また、地域住民意向というものを尊重する住民自治としての自治体運営やり方としてたいへん評価すべき問題ではないかと私は考えているわけでありますが、問題は、当然基準について警察庁のほうでお示しになること、けっこうでありますが、いま言ったような経過がありますだけに、地方自治体自主性というものをいやしくも害するようなことがあってはならない。言うならば、地方自治体自主性というものを十分尊重するという立場でこの問題については対処すべきである。かように考えるわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  10. 本庄務

    本庄政府委員 まことに同感でございまして、そのためには、条例制定にあたりまして、公安委員会におきましては、各市町村とよく連絡し、市町村実態をもちろん調べ、さらに市町村長意見も十分聞く。あるいは現に条例ができておる市町村につきましては、その条例中身も十分検討いたしまして、公安委員会だけで判断してきめるということでなくして、そういったいろいろな方法実態を調べ、意見を聞いた上で条例案をつくって知事にお願いする。こういうことにいたしたいと考えております。
  11. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今度の風俗常業等取締法の一部を改正する法律案は、法律規制することでありますから、おのずからそこには限界があって、国民の側からすれば、もっときびしい規制をやってもいいのではないかという恵児もあると思いますが、その辺は、やはり法体系全般の中からの一つ限界というものもあってこのような形になったのだろうと推察をするわけですが、そこで問題なのは、たとえば公害等ですね。まあ、一昨年の国会公害立法をつくりました。国が基準をきめる、規制権限を大幅に都道府県知事に委任をするという形をとりましたが、こういう法律をつくる際にいつも問題になりますのは、すでに自治体が、法律をつくる以前に、住民の健康、正命を守るという立場から自主的な条例をつくり、規制基準をきめておった。ところが、法律ができ、国としての基準ができると、結局国の基準よりシビアな基準をきめることは問題があるのではないか、やはり条例の上に法律があるのであって、法律を越える条例というのは問題があるのではないかということがどこでも問題になりました。一昨年の公害国会では、その点配慮をいたしまして、国がきめた基準以上に自治体が、すべてではございませんが、ある程度シビアな基準もつくれるような配慮もした法律になった面があるわけでありますけれども、問題は、これは都道府県条例ですね。そうすると各市町村の、先ほど来言いましたような、地域住民意向を尊重した、地域状況に応じた、いろいろ苦労してつくった条例があるわけですが、そちらの基準のほうがきびしくて、府県できめた基準のほうがゆるいということになった場合に、結局、いままで地域住民意向に沿って当該地域でつくっておりました条例というものは、これはあかんのじゃ、もう県全体のものさしでもってはかるのであるということになったのでは、これは問題が残ると思うのです。その点はどうですか。私も法律専門家じゃありませんからこまかい議論はいたしませんけれども、いま申し上げた趣旨長官もおわかりいただいていると思うのですが、それについては一体どのような御見解でありますか。
  12. 本庄務

    本庄政府委員 幾つかの市あるいは町で条例ができておりますが、その条例中身がいろいろでございまして、建築立場からの規制をやっておるようなところ、あるいは、これは私たちが法律案で考えておりますような地域規制、そういったものを中身としているところ、いろいろあるわけでございますが、こういった地域規制中身としておる市町村条例につきましては、今回この法律に基づきまして都道府県できめる条例とどうなるかという問題は確かに出てくると思いますが、先ほども申しましたように、この法律自体では基準をきめておりません。公害の場合は、私も実は詳しく存じておりませんが、国で基準自体をきめておる。それを上回る基準を県あるいはその他地方公共団体がつくった場合にどうかという具体的な問題が出ると思いますが、このモーテルの場合には、国自体が直接の基準をきめておりません。基準の、何といいますか、方針だけを示す、それに基づいて具体的に都道府県条例できめるということになりますので、当然、その都道府県条例制定する際には、管内の既存の市町村条例との調整と申しますか、抵触をしないよう、両者が相談した上での条例をつくってもらうということによって、そういった先生が御懸念なさいますようなことは避けられると思います。  また、さらに、地域規制という考え方でなくして、たとえば建築をする際にはだれだれの同意が要るということは、この法律とは直接関係はございませんので、そういう中で抵触する心配はないのである。かように判断いたしております。
  13. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 わかりました。ただいまの考え方けっこうだろうと思います。この法律ができ、府県条例によって地域規制ができる。ただ、特定市町村においては、地域住民意向に従って、よりきびしいといいますか、違った形の規制をやらなければ地域住民が納得しないという場合に、都道府県市町村とが十分話し合いを、地域規制をやる場合にはやる。その地域規制以外の建築の面でこの認可を受けるというような違った形の規制やり方については、当然これは市町村が自主的にやれる道もあるのだ、そういう形で地域住民意向に沿った運営というものが保障される、こういうふうに了解をいたしまして、その点はけっこうだと存じます。  さて、そこで、若干法律から離れてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、現在の警察法を拝見をいたしますと、警察中立性を確保するという意味で、他の官庁とは非常に違った行政の形態をおとりになっておられます。ただ、問題は、都道府県警察というものがある。そこに都道府県警察本部本部長がおられる。同じ県庁の機構を考えますと、知事がおって、知事部局に各部長等がおる。実情を見ますと、知事部局の各部長は、農林省あるいは通産省、自治省建設省等、これらの各省からのいわば天下りと申しますか、そういう形で行っている方が相当多い状況にあります。しかし、これらの方々の身分地方公務員であって、直接知事指揮監督を受けるわけですね。ところが、警察については、都道府県本部本部長さん——そこの前にすわっておられる方はいずれも各県本部本部長さん等歴任した方が多いだろうと思うのですが、この力は、行きましても、国家公務員身分のままで行かれるわけですね。地方公務員ではない。そして、当該都道府県公安委員会の干渉は受けるわけでしょうけれども知事は何ら指揮命令権はない。都道府県本部本部長指揮監督できる権限はどなたにあるかといえば、ここにすわっておられる後藤田長官にある。こういう形をとっておるわけですね。しかし、そういう形をとっておりますが、都道府県警察は、これは自治体警察であることは間違いないわけですね。パリなんかへ参りますと、小パリ知事、大パリ知事、それから警察知事というのがおりますけれども、少なくとも、わが国の場合は、バリのようなそういう状態ではない。特に、いま具体的にお尋ねいたしましたような、条例によって警察仕事をされる面というのが相当あるわけです。そうすると、条例とは一体どうなるのかといえば、この提案権当該都道府県知事にある。それから、都道府県警察運営いたします場合の経費、これはあとでこまかくお示ししてもいいと思いますが、その経費のほとんど大部分は、これまた当該都道府県予算でまかなう。その予算提案権知事にある。それから、これは形が少しおかしいと思うのですが、当該都道府県警察官の定数、これも条例できめるわけですね。したがって、知事が議会に提案をする。提案権知事にある。ただし、これについては、警察法政令によらなければならないということになっておるので、この辺は政令どおり知事提案をしないといろいろ問題を起こすというおかしな点はありますが、それは一応おきましょう。定数についても、たてまえは知事にこの提案権があるということになっております。警察法で、当該都道府県本部本部長指揮監督できるのは後藤田さんでありますけれども、しかし、都道府県警察自治体警察である。条例提案権予算提案権等知事にあるということを考えました場合、たとえばこの風俗営業取り締まりにあたりましても、警察本部当該都道府県知事というものとが十分密接な話し合いをして、自治体警察としての十分な運営というものをしなければいかぬのではないかと、かように考えるわけでありますが、その点、長官のお考え方をお示しいただきたいと思います。
  14. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御案内のように、今日の警察制度は、政治的な中立を守るということと、民主的なたてまえを堅持するということ、こういったことで他の行政官庁の組織とは趣の違ったものになっておるわけでございます。しかし、基本は都道府県自治体警察であるということは、これは疑いのない事実でございます。したがって、知事との関係については、法律上はいわゆる所轄のもとにあるということで、所轄というのは一番弱い所属の関係を示すということで、指揮命令権のない監督であるということに法律上なっておるわけです。しかし、これは法律のたてまえがそうであるにすぎないので、やはり、当該都道府県内の治安を維持するというためには、何といっても、当該知事部局との緊密な連絡ということがなければうまくいくはずのものではございません。したがって、政治的な中立を侵されるといったことのない限界を守りながら、実際問題としては、知事との意見調整ということを十分やらなければいけない。  今回のこの条例制定についても、これは実体は公安委員会のほうがつくると思いますけれども提案権知事さんにあるわけですし、しかも行政全般責任知事が負っているわけですから、これは十分知事意見調整をし、さらに必要なことは、今回のこの条例については、地元市町村並びに地元市町村住民意向というものを十分に配慮をして、そして、具体的な、実情に合うような条例地域規制をやるべきだと、かように私は考えます。
  15. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまの、長官お話は、たいへんけっこうなお話だと思って拝聴いたしておりました。  これは少し行き過ぎた議論だとあるいはお聞き取りになる向きがあるかと思うのですが、警察自治体警察であるということを考えました場合、従来は、国家公安委員長自治大臣が兼務されるのが通例だったわけです。そうでないこともたまにはありましたが、大臣の数というものにおのずから制約があり、大臣をもって充てる役職というものが大臣の数より多い場合に、兼務ということはどうしても必然的に起こりやすいことだと私は思う。ところが、最近数回の例を見ますと、自治大臣と北海道開発庁、長官を兼務するというような例が出たり、また、国家公安委員長行政管理庁長官とを兼務したりする。そういう例がここ二、三回目立つわけです。中には、おれは国家公安委員長が本職であって、行政管理庁長官のほうはかけ持ちでやっておるのだというような御発言をされる方も出てくる。私は、実は、警察自治体警察だということを考え、しかも自治体警察運営経費を大部分自治体が持っているという状況を見たときに、ここ数例の例はいかがかと考えて、そういうことを申し上げたこともございます。  また、警察庁長官も、いまの後藤川さんは非常にけっこうだと思って、私は尊敬しているわけです。というのは、何も後藤田さんのすべてがいいと言っているわけではないので、経歴がよろしいと思っているわけです。というのは、後藤田さんは警察ばかりではなく、自治省の局、長もやられまして、地方行政地方財政というものにも十分精通しておられるし、地方自治のたてまえというものを十分熟知しておられる。また、そういう経験をお持ちだ。そういう方が今日警察庁長官をやっているというところに、自治体警察としてのたてまえをとっているわが国警察最高責任者としてはふさわしい経歴であるということで私は敬意を表しているわけであります。そういうことを考えた場合、今後いつまでも後藤田さんがやっておるというわけにいかぬでしょうから、今後とも警察畑一本の方が警察幹部を独占するという形はやはり避けるべきである。自治体警察運営する警察庁幹部は、地方自治を十分知っておる方がいい、また、そういった経歴をお持ちの方が警察庁幹部として警察運営するということが非常にいいことではないだろうか、こういうふうに実は私は思うのであります。その点、お答えしにくい面はお答えいただかなくてもけっこうでありますから、私のいまの考え方に対して、もし御感想をお漏らしいただける面がありましたならば、ひとつ拝聴いたしたいと思います。
  16. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御承知のように、今日の警察が、国家的な色彩のある業務地方的な色彩のある業務を兼ね合わせて持っている以上、その運営にあたっては、地方的な利害というものを十分考えなければならぬ。そういったいろいろなこともあって、また、過去の警察制度の反省のしにも立って今日府県自治体警察ということになっているわけですから、地方自治行政を担当しておる自治省当局とわれわれとの間の緊密な連絡、さらにはまた都道府県警察知事部局との連絡を絶えず緊密にしていなければならぬということは申し上げるまでもございません。  人事等の問題につきましては、私は、現在の、昭和二十年前後までの諸君心配ないと思います。これは、御案内のように、すべて今日でいう自治省所管仕事に従出した経験を持っております。ただ、私が一番いま心配しておりますのは、警察制度自治省から完全に分離になった後における諸君のものの考え方についてでありまして、これはよほど気をつけていないと、ヨシの髄から天井をのぞくという幹部ができやしないかという点を心配いたしております。そういうような意味合いで、今日、私どもとしては、でき得る限り若い間に、都道府県行政あるいは大蔵省、運輸省といった各方面の行政を見習わせる必要があるというような意味で、各省との人事交流ということに十分配意をして、少なくとも幹部になるまでの間には、いずれかの他の行政を担当した経験者に全部育て上げるという制度をとって、十分注意をして、視野の狭い幹部にならないようにやっていきたい。かように考えて、現にそういうやり方をとっておるような次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  17. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 さて、そこで、実は、私は、過日、本会議で、ここにおいでの自民党の中村弘海委員とともに、地方財政白書の質問をいたしました。したがって、自治省で作成いたしました「地方財政状況」というのを詳細に見る機会があったわけでありますが、これの「昭和四十五年度における国・地方を通ずる純計歳出規模目的別分類)」というのを拝見いたしますと、結局、全体の支出の中で国と地方とがどのくらいの割合を占めているかという数値でありますが、司法警察費については、地方が七二%を支出し、国が二八%を支出するという形になっております。それからさらに、この各経費内訳はどうなっておるか、警察行政費は一体どのような割合になっているかという性質別内訳を見ますと、警察費のうち人件費が八〇・四%、普通建設事業費庁舎等建設だと思いますが、これが一〇・〇、物件費が七・八%、その他が一・八%となっております。それからさらに、「警察費状況」ということで、全国都道府県警察経費が一体幾らであるか、そのうち国庫支出金が何%で、使用料、手数料が何%で、諸収入が何%で、その他特定財源が何%で、地方一般財源が何%であるかというのを拝見いたしますと、昭和四十四年度全国都道府県警察経費全体が三千二百七十億六千三百万円で、一般財源割合が九二・五彩、国庫支出金は九十六億六千七百万円であって、その割合は三%にすぎません。四十五年度はどうかといいますと、総計が四千十七億五千六百万円であって、一般財源割合が九二・五%。四十四年度と変わりません。国庫支出金が百十四億三千万円であって、その割合は二・九%にすぎないのです。  これを見ると、都道府県警察経費国庫支出金はまさに三%足らずであって、地方税交付税等当該都道府県一般財源が占める割合が九二・五%。いわば、一般財源でもって都道府県警察はほとんど運営されておるという状況がわかるわけです。それだけに、こういう状況から見て、長官の主張されるところの、先ほどお述べになりました自治体警察としての運営について、当該知事部局との密接な関係を保つということ——所轄ということば長官は使っておられたが、知事には当該都道府県本部長を指揮命令する権限は全くないけれども、しかし、自治体警察としての十分な配慮ある運営が必要だということは、この財政的な数値から言ってもきわめて重要なことだと私は思う。  そこで、実は、最近、光化学スモッグをめぐりましての東京都知事と警視庁の警視総監とのやりとりを新聞で拝見いたしておりますと、そう言っては恐縮でありますが、本多警視総監は、自治体警察として、特に当該都道府県知事部局と十分な話し合いをし、自治体警察としての運営をするという気持ちに、若干といいますか、大いにといいますか、これは私どものほうの立場と、与党さんあるいは警察庁のお立場では若干その辺の度合いは違うと思うのですが、しかし、いかがかと思う点があると考えざるを得ないのであります。この点、長官の御感想を承っておきたいと思います。
  18. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 光化学スモッグの対策問題で、新聞等に、美濃部知事本多総監の間にいろいろ意見の対立があるかのごとく出ております。しかし、今日、現実にスモッグによる被害がすでに発生をしておるわけでありまして、また、こういった被害は今後とも出るであろうということは当然予想するにかたくない。したがって、これの恒久的な対策をどう考えていくかといったようなことについて、そのスモッグの原因はいろいろありましょうけれども、車による排気ガスというものがその中の原因を占めておるということは疑いのない事実でしょう。したがって、何らかの形で規制をしなければならぬということについては、知事も総監も意見の食い違いがあろうはずはない、かように考えております。問題は、どのような規制をすればそれがより有効であるかということについて協議をしなければならぬということであろうと思います。それで、昨日、知事と総監が会いまして、今日出ておる被害に対しては、急を要するということで、具体策を郷と警視庁が協議をしようということで、そこで、副知事と副総監との間で、若干の補助者をつけて、協議会を設置して、早急に対策を練ろうと、こういうことになっておるわけでございます。したがって、伝えられるような、片方は、全く思い切ったと言えばけっこうだし、悪く言えばむちゃだということも言えるかもしれませんが、また、片方は何もやらぬといったような、そういう意味合いでの対立はいささかもない、私はかように考えております。  一番問題は、たとえて言えば、東京都のほうは、公害問題については、これを測定し、監視をし、そして具体的な被害との因果関係を明らかにする。いわば、お医者さんの役割りだと思います。したがって、何よりも肝心なことは、このお医者さんの診断がなければいけない。警視庁のほうは、その診断に基づいて、どういう薬を盛るかという役割りがあると思います。したがって、診断がないと、なかなか副作用の強い劇薬を飲ませるというわけにはいかぬではないか、そこで、両者がよく話し合いをして、その原因をできるだけ早く究明をして、そして適切な薬を調合しようではないかということで、今日協議会が設置をせられたわけでございますので、おのずからその間に妥当な新論が生まれて、そして都民不慮の行政というようなことにならないように行なわれるもの、私はかように確信を持ち、また、それを期待しておるようなわけでございます。どうか、あまり両者の対立ということはお考えにならないでほしい。と同時に、われわれも、場合によるならば、こういった問題については環境庁等とも十分連絡をして、何らかの形で早く解決をしたい、かように考えておりますので、御了承賜わりたいと思います。
  19. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案の審議の中で、条例、したがって都道府県知事都道府県警察との関係、こういう点でお尋ねをしているわけでありまして、光化学スモッグの具体的なお尋ねは、委員長からも注意をされると困りますから、その辺は避けまして実はお尋ねをいたしているつもりであります。   〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 そういう意味で、私は、都道府県知事都道府県警察本部長との関係という抽象的な問題でお尋ねをするわけでありますが、とにかく、知事警視総監とが会ったということが新聞に写真入りで大きく報道せられるというところがいかがかと私は思うのであります。通例であるならば、知事都道府県本部本部長とが会ったということがニュースになることがおかしいのでありまして、それだけ通常密接な関係にあってしかるべきではないかと思うのですね。  ところが、五月三十一日の新聞には、「スマイル抜きさや当て」というような形で見出しが出て、そうして、知事警視総監との写真が大きく載りまして、拝見をいたしますと、当日開かれた都議会においてすら、警務消防委員会というのが三十日に開かれたようでありますが、光化学スモッグをめぐっていろいろな議論があって、最後に、ある委員から、おとなになってひとつ警視総監知事とが話し合ったらどうかというような発言まであって、それに対して警視総監は、いささかぶ然とした顔で、ほそぼそと、「私は、刑に、なにもわだかまりはもっておりません。ま、オトナになりまして、虚心な態度で対処いたします」というようなお答えがあるというようなことは、国民の側から見ていかがかという気持ちを持たざるを得ないと思うのですね。いまのわが国の政治制度は議院内閣制で、しかも政党政治でありますから、内閣があり、内閣のもとに各省があって、そして各官庁の出先機関が地方にございまして、これと知事との間に若干いざこざがあるということは、——中央政府が自民党の政府であり、また知事にたまたま革新の知事が出たという場合に、考え方において若干そごがあるということは、いまのわが国の政治制度の上から言ってやむを得ない点がある。しかし、事、警察に関しては、警察法にも、「日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」ということが書いてあります。ですから、警察は不備不党なんでしょう。かつ、中立なんですね。だから、私は、国の出先機関と革新知事との間に若干意見の相違があって論争があるということはやむを得ないと思うのですが、事、警察と革新知事警察と保守党知事というものとの間に、何といいますか、会えば新聞に大きく出る、議会ではおとなになって虚心に話したらどうかというような発言が出るということはおかしいと思うのですよ。そうでしょう。警察法のたてまえから言っておかしいのですね。この点いかがでありますか。
  20. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御説のように、警察は政治的な中立を堅持しなければならぬということ、これは基本の姿勢でございます。したがって、いかような知事であれ、必要な連絡、協調ということは絶えず配意しなければならぬということは御説のとおりでございます。  いま、新聞をお読みになっての御質問でございますが、美濃部知事本多総監がなかなか会っておらぬといったような記事でございますが、これは双方なかなか忙しいというようなこともあって、そう機会がなかったのであろうと私は思いますが、一般の受ける印象は、新聞で双方の写真が載って、初めて会ったような印象を受けることではおかしいじゃないかということ、これは率直な気持ちだろうと思います。また、第一、きのう会った場所からしても、何とか会館なんというのはおかしいじゃないか、気軽に町方がどんどん行けばいいんじゃないかということも、これももう御説のとおりだと私は思うのです。しかし、御質問を承っておりまして、いかにも本多君が避けて知るかのような印象だとするならば、これは、私は、本多君に対して酷だと思います。警察としては、少なくとも事務的な連係については、絶えず東京都と警視庁は連絡しておるということはお答えをいたしておきたいと思います。  やはり、問題は、ああいった重要な問題については、案というものが新聞に出る前に、当然責任者同士でその話し合いがあってしかるべきだということで、新聞に出たあとで初めて警視庁に案が出てくるというような行政のあり方自身も、よほど双方が謙虚な立場に立って是正をしていくということが何よりも必要だろう、かように私は思います。
  21. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 後段は確かに聞くべき意見だと私は思うんですね。そこで、診断をして、そしてどのような処方せんを書くかというのは、確かに、公安委員会警察の役刷りである。したがって、その処方せんを書くにあたって、内部において十分話し合いをやって、都民の命と健康を守るためによき薬をきめるということは当然だと思うのでありますが、片方が話し合う前に案をぱっと発表したということで、今度はその仕返しのような意味で、「警視庁がでっかい案」ということで「施設分散・道路整備・無公害車…」とありまして、そして「都市構造と交通機関、環状道路の建設、放射、高速、環状道路の調整、大量公共輸送機関の充実、路線バスの増発と路線の再編成、無公害車の開発、光化学スモッグの究明、自主規制、バスレーンのための道路拡幅、パーキングメーターの増設、裏通り対策」というような、これまた本来都がやらなければならぬ事務に対して、今度は逆に、公安委員会立場でこうすることが望ましいじゃないかという話を都側と詰めるべき課題についてばっと新聞のほうに発表する、外部に発表するというやり方はこれはいかがかと思うんですね。ですから、私は、このことでどうだこうだということをこれ以上申す気は実はないわけで、私の言いたいのは、結局、警察は不偏不党中立じゃないかということです。中央政府がかりに自民党の政府であったとして、その場合、各都道府県に革新知事ができた、政党の違う知事ができたという場合に、警察とこの革新知事との間にいざこざがあるということは、警察法のたてまえから言っておかしい。事警察についてはそういうことはおかしいのであって、もしそういうことが一般国民に映ると、警察というのは不偏不党と法律には書いてあるが、実際にはそうじゃないじゃないか、時の政府の指示命令のもとに忠実に動く機関で、はないかという批判を受けかねないと思うのであります。そうなることがやはり一番問題ではないのかと私は思いますが、この点はいかがですか。
  22. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 それはもう御説のとおりでございます。警察は政治的な中立を堅持するわけで、国民のための行政をやるわけですから、どのような知事がおろうと、双方の間にいざこざがあってはいけない。これは御説のとおりでございます。しかし、これは、双方相手のあることですから、当方がそういう態度でおっても、相手が毛ぎらいせられたんではどうにもならぬということもございます。したがって、双方が虚心な立場に立って、国民のためにどうすればほんとうにしあわせにつながるのかということを双方が考えるべき問題であろうと、かように考えます。
  23. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 各都道府県本部本部長さん、東京の場合は警視総監でありますが、この方たちに指揮命令できるのは後藤田さん、あなたお一人なんですから、そういう意味で、いま私がるる申し上げたような、警察に対してあらぬ批判を受けることのないよう、長官としてひとつ十分対処をしていただきたい。このことを強く要請をいたしておきたいと思います。  それではまた今度は法案に即してお尋ねいたしたいと思うのですが、当初、このモーテル規制法の——まあ、モーテル規制法と言ったほうがこの場合わかりがいいので、そういうことでお尋ねをしたいと思いますが、この作成の過程で、警察庁案が二月に新聞等に発表されたようであります。それを拝見しますと、「官公庁施設、学校、公園、児童福祉施設、団地などから二百メートル以内はモーテル禁止区域。また都道府県が禁止区域と認めたところには建てられない」それからさらに、「建物の構造、設備については警察がチェックし、いかがわしい室内構造や設備も禁止、各個室に非常警報装置をつける」次に、「警官が立入り検査をすることができる」最後に、「違反者は最高八カ月の営業停止処分」という案であったと言われております。ところが、今回提案をされました案には、いま私が申し上げました事項のうち相当額分が削除をされている。具体的に言うならば、「二百メートル以内はモーテル禁止区域」という部分が削除されている。それから、「建物の構造、設備については警察がチェックし、いかがわしい室内構造や設備も禁止、各個室に非常警報装置をつける」ということも消えている。「警察官が立入り検査をすることができる」ということは、これは警職法等の論議の際にいろいろあったわけでありまして、これは私のほうも賛成はいたしま、せんが、それは別問題といたしまして、この二つの事項が削除されているわけですね。これは一体どういう御検討の結果当初の案ができ、さらに検討し、国会に法案を提出する過程においては、どのような論議がなされた結果削除されたということになったのか。その間の経過をひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  24. 本庄務

    本庄政府委員 先生の御質問の、最初の警察庁案というのは、たぶん二月の上旬に新聞に出ました保安部試案のことだと思いますが、これはとりあえずいろいろ検討をいたしました結果、警察庁の保安部として一応の考え方をまとめたものが新聞に出たわけでございまして、その内容は、いま先生から御指摘いただきました幾つかの点を含んでおったわけであります。その後さらに、実態的に、あるいは法律的に、また、関係行政機関の意見あるいは世論等を織り込んで多角的な検討をいたしたのでございます。その結果、先般も申し上げましたように、いわゆるモーテル営業の特殊な性格といたしまして、秘匿性というものを一番大きな要素として考えるべきじゃなかろうかという点に考えを集中いたしまして、今度提案をいたしました地域規制を主たる内容とする法案ということになったわけでございます。  具体的に申しますと、先ほどの御指摘の中で、一番大きな問題は、構造、設備の規制がこの提案の原案から抜けておるということであろうかと思いますが、この点につきまして、いろいろ実態的に、あるいはさらに法律的に検討をいたしたのでございますが、私たちといたしましては、結論としては、モーテルは御案内のように旅館業の一種でございまして、旅館業の構造、設備につきましては、旅館業法にすでにそういう規制ができることになっておりますので、旅館業法のワク内で所要の規制をするのが妥当であるという判断に、至りまして、今回の地域規制を三たる内容ということになったわけでございます。それに伴いまして、立ち入り権の必要もないということで、これは当然落ちるわけでございます。  簡潔に申しますと、そういう経過でございます。
  25. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 厚生省の言い分を拝見をいたしますと、「もともと旅館業法は公衆衛生の保持と善良な風俗の維持を柱にしているが、公衆衛生上の問題を保健所がチェックするだけで、風俗問題にはノータッチ。建物の構造や室内の設備の規制はむずかしく警報装置をつけることも強制はできない」と厚生省は言っているというのであります。いまの保安部長のお答えですと、旅館業法があるから云々ということでありましたが、きょうは厚生省は呼んでありませんけれども、厚生省のほうは、いま私が申し上げましたように違った見解を出しているということになりますと、その点どうもおかしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  26. 本庄務

    本庄政府委員 この立案の過程におきましては、厚生省ともいろいろ相談をし、意見の交換をいたしております。御案内のように、旅館業法には構造、設備の規制ということができるような規定になっておりまして、厚生省は当然それは承知しておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような私たちの考え方で、とにかく、モーテルはもちろん旅館でございますから、モーテルであろうと一般旅館であろうとを問わず、旅館についての構造、設備の規制はずばりこの旅館業法でやれるわけですし、また、やるのが妥当であろうということで、そういう方向でいろいろさらに継続して協議をいたしております。
  27. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 過般当委員会で現地調査をいたされたわけでありますが、私、不幸にいたしまして、国会の火災予防装置の点検等に従事をいたしておりましたために現地調査に参加できなかったわけでありますが、調査に行かれた方々のお話をあとで拝聴いたしますと、いろいろな設備、装置のたぐいがあるそうであります。この車庫と個室が一緒になっているものを今回規制をするというわけでありますが、その構造を変えて、車庫と個室が連結しておらないという形にすれば、この法律上は差しつかえないということになる。そして、中にある施設、設備等は、それは外部から見えぬといえば見えぬわけでありますから、その点では周辺にどうこうという影響はないとは思いますけれども、現実にいかがわしい設備、施設等がそのまま堂々と存置をしておるということでは、どうもこの規制法は少し手ぬるいのではないかという国民の側からの批判というものもあるだろうと思うのですね。そういう点でお尋ねをしているわけでありますが、その点は、今後どのように具体的にお考えになるわけでありますか。
  28. 本庄務

    本庄政府委員 いわゆるいかがわしい設備、これはいろいろあるわけでございまして、単に抽象的にいかがわしいというだけでは、はたして法律を、もって禁止すべきものであるのか、そうでないのか、その辺の区別がなかなかむずかしいわけでありまして、先生がおっしゃいましたように、いわゆるいかがわしいものであっても、個室の中で隠密のうちに用に供せられるという場合は、いわゆる善良の風俗を害するとは必ずしも認められない、つまり、法律をもって制約する必要のないというものもありましょうし、中には、ものによりましては、法律をもって制約をしなければならないものもあろうかと思います。こういったものにつきましては、あらゆる角度から十分吟味いたしまして、振り分けをして、そういった設備、施設というものがあるならば、それに対する措置は必要であろうかと思います。  その措置の方法といたしましては、行政指導ということも考えられますが、最終担保としては法律的な手続が必要になろう。その場合の方法といたしまして、現に存する旅館業法の規定に基づいて所要の制限をする。そのために、私たちのほうでも十分検討もしつつ、厚生省と協議をして、政府として一体的な法律の改正と申しますか、手続をするように最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  29. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 じゃ、次のことをお尋ねしたいと思うのですが、先日、「マンモス書類送検」ということで、「日活映画会社の堀雅彦社長をはじめ、映画俳優、映画館支配人、それに映倫審査員など計九十五名をわいせつ図画公然陳列罪などの、容疑で書類送検する。」ということが報道されておりました。どのような状況でありましたのか、私もつまびらかには知りませんけれども、やはり、戦前検閲というようなものがあり、わが国の憲法の規定等もありまして、警察が、文書、図画等を検閲をするということはできるだけ避けるべきではないか。ただ、善良な風俗を守るという意味で自主的な規制というものが当然必要であるという立場で映倫というものも設置をされておると思うのでありますが、この映倫の委員を取り調べ、これを書類送検するということは問題ではないだろうかというふうに思います。映倫自体が反省をして、その運営についていろいろ改善を加えていくということは必要でありましょうが、自主規制の機関である映倫を八年越しの執念を持って調べて送検をするというようなことは行き過ぎではないかという感じがするのでありますが、この点はいかがでございますか。
  30. 本庄務

    本庄政府委員 映倫の審査委員を被疑者として書類送検をしたことは妥当ではないのではないかという御質問でございますが、この映倫につきましては、映画の自由規制機関として長年にわたって果たしてきた機能あるいは実績といいますか、そういったことについては高く評価されるべきものがあろうかと思います。しかしながら、ここ数年来を見ますと、刑法の百七十五条ですかに該当すると思われるものが幾つか出ておるわけでありまして、その取り締まりを受けるつど、当時の国家公安委員長からも警告をいたしておりまして、また、その後、第一線である警察庁幹部からも、警告というか、話し合いと申しますか、あるいは注意喚起と申しますか、いろいろそういった接触をやっておるわけでございまして、その間自主規制というものがかなり効果的に行なわれておるということは事実でございますが、やはり、ときどきはそういったわいせつ罪に該当するものが出ておるというので、ことしになりまして二件、三回ですか、取り締まりをやったわけでございまして、いろいろ捜査をいたしました結果、この映倫の審査委員についても一応共犯の容疑があるということで、調べをして、送致をしたわけでございまして、なるべくならば自主規制というものが望ましいということは、もう先生仰せのとおりでございますが、一定の限度を越えました場合には、法律に従った措置をとるということもやむを得ない場合があるということを御了承願いたいと思います。
  31. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先日、自民党の綿貫委員が、この問題について、直接ではありませんでしたが、最近の世界の傾向等に触れまして御質問をしておられましたが、映倫維持委員会の岡田委員長が替われておりますように「警視庁の直接介入は絶対によくない。しかし、映倫の審査基準もこれまでより、細部にわたる規程改定をし、きびしくしたのを機会に世論の幅広い理解と支持を得て映倫の権威を高めていきたい」という趣旨運営されることが望ましいのではないかと私は思うのです。最近の映倫の傾向が悪いから、直接介入といいますか、捜査もやって、ショック療法でショックを与えなければどうもいかぬというようなおつもりがあったのかどうか私は知りませんけれども、そういうことは何も捜査をするという方式をとらなくても、各官庁と映倫との間の話し合いということも十分できると思うわけでありまして、そういう中で、あくまでも自主規制の形で、そして、好ましい運営をやってもらうということで足りるのではないかと私は思うのです。そういうことではとてもだめなんだ、やはり捜査もやって、マンモス書類送検もしなければいかぬのだというおつもりでやられたのかどうか知りませんけれども、争ういうことをする以前に、もっとよりよい解決の方法があったのではないか。そうでないと、検閲の復活だというような批判も受けることになりはしないかと思うのでありますが、この点、長官、いかがですか。
  32. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私どもは、検閲をやるとか、検閲的なものの考え方で対処するというつもりはいささかもございません。映倫の自主的な活動によって善良な社会の風俗が維持せられるということが何よりも肝心であると、かように考えております。したがって、映倫自身も、社会的な使命というものを十分お考えになって、善良な社会風俗を維持するという観点から、一般の社会通念上、節度として守らなければならぬなと思われる点々十分お考えになって審査をしていただきたいと思います。  いま本庄君から答弁いたしましたように、警視庁としてももこういうものの捜査権といいますか、いきなりそれを発動したわけではないので、勧告なり注意なりは事前に十分しておるわけです。しかしながら、いかんせん守られない。私は、こういった取り締まりは、与える影響等から見て、事柄はきわめて重大であるということで、私自身映画は見ましたが、ああいうものが堂々と映倫を通るということであるならば、映倫は自主規制機関であるとはいうものの、自主機関としての役割りを一体ほんとうに完全に果たしておるのかどうか、非常な疑問を私は持ったわけであります。したがって、私自身警視庁の防犯部長取り締まりをやってよろしいということを申しました。何といっても私が許されないと思うのは、今日の節度のない商業主義によって、善良な風俗が非常に犠牲になっておるのではないのかということと、いま一つは、あの映画を見て、この映画に出演をしておる俳優諸君の人権は商業主義の犠牲になっておるのではないかということ。こういうことはとうてい許されないということで、あえて強制的な処置といいますか、警察権の発動をするということもやむを得ないという決心をきめたような次第でございます。  したがって、私どもとしては、望むらくはやはり自主規制でありたい。そこで、映倫御自身もいろいろお考えになったのでしょう。その後内々の警視庁等との話し合いもあったようですが、新聞等に出ておりますように、審査基準というものも御変更になったようでございます。したがって、今回変更になられた新しい基準で、節度のある自主的な審査ということが行なわれることを強く私は期待をいたしておりまして、捜査権をどんどん発動するといったような考え方は決して持っていないのだということを申し上げておきたいと思います。
  33. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの、長官の御答弁の中で、ちょっと奇異に感じた面があるのです。というのは、部の防犯部長ですかに対して、これは取り締まってよろしいと指示したというようなお話がありましたが、警察法のたてまえから言えば、第十六条に「警察庁長官は、」「警察庁の所掌事務について、都道府県警察指揮監督する。」とあるが、この場合は、直接都道府県警察の職員に対して指揮監督するのではなくて、あくまでも当該都道府県警察本部本部長を通じて指揮監督をするものと私は考えておったのですが、一々長官都道府県警察の職員に対して、こうせい、ああせいと指揮監督をおやりになるのですか。
  34. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 だいぶ形式的、法律的な御議論でございますが、もちろん、法律的には本部長を通じてやるというのがたてまえでございます。また、この種の事件は本来地方的な問題でございますので、私どもがかれこれ言うということは、よほどのことでなければ申しません。ただ、問題が表現の自由に関連をするもので、しかも、これは一警視庁の問題ではない。こういう取り締まりをやるならば他府県へも当然影響があるということで、私ども警察法第五条による調整権ということでさような指示をいたしております。本件の場合も、総監に私は連絡をして、こういうことの取り締まりをやるという話を聞いておるが、自分に事前にひとつ見せてもらいたいということで、警視庁の映写室で私はそれを見て、そして部長にこれはいいということを申した。部長は当然総監にそのことを報告してやっておるわけでございます。別段、私自身、今回の法律を犯したというつもりはさらさらございません。
  35. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 警察法第五条を拝見いたしますと、十三に、「前号に掲げるものの外、警察行政に関する調整に関すること。」というのがありますので、これでおやりになったというお話でありますが、私は、それが違法だとかどうとかというこまかい議論をしようとは思わないのですが、とにかく都道府県警察について——警視庁だってこれは自治体警察ですよね。その自治体警察がおやりになることについて、長官が、警視総監あるいは本部長を通じてではなくて、一々具体的な御指示をするということは、それが違法かどうかということじゃないが、そういうことを頻発をされることはどうかと思うのです。やはりこれは、都道府県警察本部長を通じて長官指揮監督をするというたてまえを堅持していただきたいという趣旨で申し上げておるわけであります。  議運の委員長から用があるというので、このあとさらにお尋ねをしようと思ったのでありますが、割愛をいたしまして、最後のお尋ねをいたしたいと思います。  この法律を拝見いたしますと、「一年間は、当該施設を用いて営むモーテル営業については、適用しない。」ということでありまして、一年たてば車庫と個室が連結をしているモーテルについてはいかぬということになるわけですね。その場合、実は業者からたくさん請願書をいただいております。まあ、この請願書は私ども決して賛成ではありませんが、ただ、ここで、特にこの請願書の内容で聞くべき意見ありとするならば、「われわれが職業選択の自由にのっとり、やっとの思いで資金を捻出し、多額の資金を投資してつくり上げたモーテルが、全く予期しないきびしい法改正によって一瞬のうちに営業ができなくなり、右投下資本の回収もできないまま財産を失うということは、関係者多数の、死活問題にもつながり、業者は期待を裏切られて、多大の負債を背負う結果となります」というようなことが書いてあることでございます。法律によってこういう施設はいかぬということになって、少なくとも一年たてばいかぬということになれば、他に転業するなり、あるいは施設を改造するなり、法律が禁止をしている個室と車庫とが連結している施設を改造して、車庫と個室を分離するというようなことも当然しなければならぬと思います。そうした場合に、転業するなりあるいは改造するなりということについて、ずいぶんもうけておって、資金も潤沢にあるという人は何も心配する必要はないと思いますけれども、建てたばかりで、たまたまその施設が法律にひっかかる施設であって、一年のうちに改造するなり転業しなければならぬという事態が起きたときは、せめてこの改造なり転業の資金ぐらいは、法律規制するわけでありますから、考えてやらねばいかぬのではないだろうかというぐらいの気持ちは実は持つのであります。  そこで、大蔵省の特別金融課長さんがお見えでありますが、この点についてはいかがですか。どのようにお考えでありますか。お聞かせをいただきたいと思います。
  36. 北田榮作

    ○北田説明員 モーテル等の改造資金ないしは転業のための資金の融資についての御質問でございますが、現在、政府関係金融機関の一つといたしまして、環境衛生金融公庫というのがございます。同公庫は、中小企業に属します環境衛生関係営業につきまして、その衛生水準の向上をはかり、近代化を促進するために必要な施設の整備資金の融資をいたすことになっておりまして、旅館業につきましても融資の対象にすることになっておるわけでございます。  ただ、常業の実態等からいたしまして、社会的な批判を受けるおそれのあるような営業のものにつきましては融資の対象にいたさないということから、モーテル等につきましては、融資の対象にしないことにしておるわけでございますが、したがいまして、このモーテルを改造いたしまして、その結果、従来の実態とすっかり変わりまして、社会的批判を受けるおそれのない健全な営業になるという場合には、これは通常の改造資金は融資をし得るということになっておるわけでございます。あるいは、その他の事業に転業する場合につきましても、その事業として適正なものであれば、もちろん融資の対象にし得るわけでございます。ただ、実際に融資をするかどうかは、個々の申請を受けました場合に、公序が実態に即しまして判断をするということになろうかと思います。
  37. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法律でこういう形式のものはいけないということになるわけでありますから、法律で禁止されていない施設に、そういう意味では風俗を脅しない施設に——害しないといっても、一〇〇%害しないというわけにはいかぬだろうと思うのですが、法律に禁止されていない施設に改造するという場合、しかも、個々のケースに当たってみたところが、非常に同情すべき状況もあるという場合については、法律によってやむなく改造するという点も考慮されて、配慮ある措置をとっていただけたらよろしいのではないかという趣旨からお尋ねを申し上げたわけでありまして、争ういう趣旨をくんで配慮をしていただいたらまあいいのではないだろうかという気持ちであることを最後に申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  38. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 午後一時に再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  39. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため出席がおくれますので、委員長の指定により、理事の私が委員長の職務を行ないます。  質疑を続行いたします。和田一郎君。
  40. 和田一郎

    ○和田(一)委員 質問をいたします。  各委員の方の御質問がございまして、重複する点があると思いますけれども、ひとつ明快なる御答弁をお願いいたします。  まず、今回の風俗営業等取締法の一部改正、これはモーテル法案という名称を使わしていただきますけれども、少年等の教育等にも思わしくない、または社会環境等にも思わしくないということでこういう規制が出てきたわけであります。これはわかっていることですけれども、文教地区であるとか、または住宅地区であるとか、そういう風致地区からなぜそれを除くのか、その理由をひとつ教えいただきたい。
  41. 本庄務

    本庄政府委員 簡単に申し上げますと、いわゆるモーテルというものがあちらこちらにできてきて、それが一つ、二つならず、一年間に何百とふえてきておるわけです。そういうモーテルというものが、本来の意味である自動車旅行者が泊まるモーテルではなくして、いわゆる性の享楽場所と申しますか、そういった形においてもっぱら利用され、そういう形でのモーテルがどんどんふえてきている。したがいまして、そういうものができることによって、その地域清浄風俗環境が害されてきておるという状況があちらこちらに出てきておるわけでございまして、そのいわゆる性の享楽ということがいいことか悪いことか、法律的な評価はどうかというような理論上の問題は別といたしまして、そういった意味モーテルができることによりまして、いまも申しました清浄風俗環境がそこなわれてきておるということにつきまして、その地域社会の善良なる住民の方々から好ましくないという声が——この好ましくないというのは、一般的な風俗的な観点からの好ましくないという意味、あるいは青少年の教育という観点からの好ましくないという意味、あるいは、中には、モーテルの秘匿性というものからして、性関係の犯罪もぼつぼつふえてきており、そういう意味での好ましくないという声もありますが、いずれにいたしましても、そういったいろいろな意味での好ましくないという住民の素朴な声というものがだんだん盛り上がってまいりまして、何とか措置をしなければならない、措置をしてもらいたいという具体的な運動あるいは陳情というものが出てまいったわけでございまして、私たちも、そういった世論というものを見まして、これはやはり各地域社会の人々のいわゆる自主規制、良識にまかしておくということではいけない、国として何らかの所要の措置をとる必要があるということで、直接には都道府県条例で、自主規制という形で今回処置をとることを考えたわけでございますが、そういった過程を経まして、今回のような規制を行なおうというような趣旨でございます。
  42. 和田一郎

    ○和田(一)委員 清浄な風俗がこわされるから好ましくないということですけれども、その好ましくないという、いろいろな具体的な事例があろうと思いますけれども、こういうことが好ましくないという例を二、三並べていただきたい。ただモーテルがあるから好ましくないということじゃないと思うのですね。いわゆる社会環境に何らかの影響があるから好ましくないわけですね。だから、どの程度のものが好ましくないのかということを言っていただきたい。
  43. 本庄務

    本庄政府委員 具体的にお答えするのは非常にむずかしい御質問だと思います。好ましくないという抽象的な表現でありますと、実は具体的に何か事例がないか、こういうことだろうと思いますが、先ほど申しましたように、モーテルというものが性の享楽場所にもっぱら用いられているのが実態であることは御案内のとおりでございまして、その性の享楽場所といったような場合に、正常なる性関係、あるいは正常でない性関係、いろいろあると思いますが、いわゆるいかがわしい性の享楽場所というふうに、大部分がそういう形で利用されておるというのが実態に近いようでありますし、また、社会一般としてもそういうとらえ方をしておる。ですから、構造、外見あるいは看板といったようなもの、あるいはそこへ出入りする人間、車というものの状況、そういったモーテルに関連するいろいろな要素を総合いたしまして、その周辺のアトモスフェアというものが乱れているというのが率直な実情ではなかろうかと思います。したがいまして、そのどれか一つ一つをつかまえてみて、それじゃ看板だけ規制すればいいじゃないかとか、あるいは出入りする人について何か手を打てばいいじゃないかとかいうふうに一つ一つ分析して考えることは妥当でないと思いまして、いま申しましたような幾つ——幾つかというよりも、多数の要素が総合されて一つの特殊なアトモスフェアというものをかもし出している実態を率直に認識をして、それに対する手当てをしていくということだと思います。そういったアトモスフェアが出てくる一番根源になるものは何かと申しますと、これはやはり現今のモーテルの秘匿性という、要素が一番根源ではなかろうか。それが原因となりまして、幾つかの好ましくない要素が出てきておる。  説明としては非常に不十分であるかもしれませんが、問題が問題でございますので、その程度でひとつ御推察をお願いいたしたいと思います。
  44. 和田一郎

    ○和田(一)委員 理論的な理屈としてはわかります。おっしゃったことは、性の享楽場所である、不健全なるセックスの場所を提供している、こういうことでございますね。それじゃ、ちまたには止まれたばかりの子供から、十代、二十代、三十代、四十代、果ては八十代、九十代までいらっしゃいますが、どの辺の層に悪影響を及ぼすのか、ここが問題だと思うのですが、その点、どうなんですか。九十歳のおじいさんに及ぼすかどうかということも問題です。
  45. 本庄務

    本庄政府委員 九十歳のおじいさんにどうこうということになりますと、これは特殊な例であろうと思いますが、やはり、一般的には、成熟期にある少年、青年からある程度の成人。いわゆる老年という人々にとってどうかということになりますと、これは同じ年齢でも、人によりましていろいろの差がございますから、一がいに幾つぐらいということは言えないと思いますが、そういった年齢層でどうかということよりも、早い話が、一家そろって、子供もおとうさんも、あるいはおばあさんも一緒にどこかへレクリーションに行った、ところが、変ないかがわしいモーテルが林立しておるという場合、そのことは、おばあさんとしては特別の影響は受けないと思いますが、しかしながら、子供に、あのモーテルって一体なあに、あれ、変なところだねと聞かれた場合に返事に困る。そういうようなことは健全なるレクリエーションでかりに一家六人がそろって行ったという場合に、理屈は別として、決して愉快なことじゃないと思うのです。それは一家の団らんのためにはよくない。これはある意味においては、一つの社会問題であると言えば大げさであるかもしれませんが、ある意味での公共の福祉につながる問題ではなかろうか、かように判断いたしております。
  46. 和田一郎

    ○和田(一)委員 よくわかりました。成熟期にある青少年に対して悪影響を及ぼす。それから、一家団らんの円満なる家庭をこわす。とにかく、青少年に対する影響が強いということはわかりました。これは保安部長の御意見でございますけれども、それじゃ後藤田警察庁長官はどういう御意見でございましょうか。そういう一連のものに対して、ですね。
  47. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 いま本庄部長からるるお答えをいたしたとおりだと考えております。
  48. 和田一郎

    ○和田(一)委員 私は何もこのモーテル法案に対して、反対の立場をとってやっているわけじゃないのです。いろいろな問題に波及しますので、もう少し詰めて議論しているわけですけれども中村国家公安委員長、いまいらっしゃらなかったものですからやりとりがわからないと思いますけれども、いろいろな御答弁の中で、結局は、不健全な男女関係のいわゆる性の享楽の場所にモーテルが供されている、だから、風致地区であるとか、住宅地区だとか、文教地区とかには好ましくない、人間は十代から九十代ぐらいまであるけれども、特に成熟期にある青少年の環境によくないと、こういう御意見に詰まってきたわけなんですけれども、国原公安委員長の御意見はどうでしょうか。
  49. 中村寅太

    中村国務大臣 私も全くいま、長官その他から申し上げたとおりでございますが、こういう最近のモーテルの傾向を見てみますに、風致地区とか、住宅地区とか、文教地区とか、あるいはその他の地域にこういうものがあるということはよくないということは、最近の国民的な大多数の空気だと私は思います。そういう意味からも、やはりこれは規制すべきである、かように思います。
  50. 和田一郎

    ○和田(一)委員 三人の方の御意見はわかりました。  それでは、モーテル規制して、確かにモーテルがなくなって、石板が塗り変えられるかどうか、それはわかりませんけれども、考えてみれば、ワンガレージ・ワンルームというのですか、ワンルームといっても、密室ですね。ですから、性行為そのものは外から見えないわけです。ただ出入りするだけです。それから、いわゆるムード的な問題で好ましくないという面が多いと私は思うのです。しかし、国家公安委員長、学校の子供が朝晩通っている通学道路であるとか、または小学校の入口に近いところであるとか、とにかく皆さん方が規制の対象にしているような地区で。ポルノ映画の看板が堂々と出ているというのは一体どういうわけですか。その辺のことをひとつ御答弁願いたいのです。
  51. 本庄務

    本庄政府委員 モーテルから一転して今度はポルノの石板の問題でありますが、モーテル規制についての趣旨には御賛同いただいた上での御質問だと思いますが、ポルノというのは、要するに、ややわいせつ的な要素を多分に持った映画の看板だろうと思います。これらにつきましては、法律に触れる場合には法律によってきびしく取り締まる。しかし、必ずしも法律に触れないという場合には、いろいろな青少年団体の力によって、業者に協力を求めてそれを除去していくというようなことも行なわれているようであります。あるいは、地方によりましては、青少年保護育成条例というようなものによって措置をするようなことも講ぜられておるようでありまして、やはり、それぞれの地域社会の実情によりまして所要の手がある程度は打たれておる。しかし、それは現在完全かと申しますと、必ずしも完全とは言えないと思います。こういった点につきましては、私たちの取り締まるべき対象につきましては厳重に取り締まってまいりたい。しかし、警察の直接の取り締まりの対象とならないような程度のものにつきましては、いま申し上げましたようないわゆるボランティアによる活動、あるいは県の関係条例による規制措置、こういうものによってきれいにされるということを期待している次第でございます。
  52. 和田一郎

    ○和田(一)委員 先ほども山口先生から話があったと思いますが、いわゆるポルノ映画に対する警視庁のいろいろな問題がございまして、その中で、こういう説明があるのですね。某映画会社のポルノ映画三木を警視庁は摘発した。その摘発理由は、警視庁の保安一課が一月の二十九日に発表したらしいのですが、これらの映画の性行為シーンが、下着なしであからさまに演じられたためという具体的な摘発理由が明らかにされた。こうなっているのです。下着なしで——まあこういうことはなかなか言いにくいのですけれども、下着なしで映画に映っておる。ところが、ポルノ映画というのは、御承知のように、十八歳未満は入場お断わりでしょう。十八歳未満入場お断わりの、いわゆるおとなだけの、密室で映写される映画ですよ。それすらも下着なしはいけないといって摘発されているわけです。私は何もここでポルノ論議を、やるわけじゃありません。それは警視庁と映倫のほうでだいぶ話がついたようでありますから言いませんけれども、十八歳未満の人は入場お断わり、それ以上の方はごらんなさいという映画でしょう。しかも、その十八歳以上の方が見る映画についても、警視庁はこのような強い態度で臨んだ。その映画の宣伝がちまたに置いてあるということは、十八歳未満の子供も見ることなんです。これはどうなんですかね。保安部長、あなたはごらんになったことがありますか。ポルノ映画はいずれにしても、看板を。
  53. 本庄務

    本庄政府委員 映画も看板も、仕事でございますから、ときどきは見ております。
  54. 和田一郎

    ○和田(一)委員 その看板をごらんになって、何ともお感じにならなかったですか。
  55. 本庄務

    本庄政府委員 具体的に、この看板についてどうかという現物があれは答弁がしやすいのでございますが、そういうような現物に即さない一般的な御質問でございますから、これはやはりものによりまして、かなりひどいなと思うもの、さほどではないなと思うもの、その中間のもの、いろいろとあるというふうにしか、とりあえずお答えできないと思います。
  56. 和田一郎

    ○和田(一)委員 さほどでないなと思うというのは、どういうものがさほどでないのですか。
  57. 本庄務

    本庄政府委員 これはやや議論になって恐縮、でございますけれども、説明の便宜のために、少し長くなるかもしれませんが、申し上げますと、セックスというものに関する一つの社会通念というものがあると思うのです。その社会通念というものはもちろん時代によって変わってまいると思いますが、健全な一般人の良識によって判断をして、羞恥心を著しく感ぜしめるもの、あるいは嫌悪の情を抱かせるというようなものはやはり好ましくない、けしからぬということになるのじゃないかと思います。そういう意味におきまして、われわれの社会において一般的に守られている規範というもの、これは目には見えないかもしれませんし、あるいは紙に書いてないかもしれませんが、そういったものが厳然として存在するのではなかろうかと思います。その規範をさらにむずかしく言いますと、これは一言で言えば、性行為非公開の原則ではなかろうかと思います。したがって、いま先生がおっしゃいましたような、映画館という特定の施設の中で見せておるのだ、広場で常々と公開しているのではないのだという、そういう見方もあるいはあるかもしれませんが、金を出せばだれでも自由に見られるという意味において、これは公開されている。看板の場合はもちろん外でございますから、これは当然公開されておるわけであります。そういった性行為非公開の原則にもとるようなものは、やはり看板としても除去すべきであろう。しかし、その性行為非公開の原則を破る程度には至っていないというものについては、まあさほどでもない。説明としてはきわめて不十分かもしれませんが、原則的にはそういうことではなかろうかと思います。
  58. 和田一郎

    ○和田(一)委員 文部省の青少年教育課長さんのほうの御意見はいかがですか。いまもいろいるな話が出てまいりましたけれども、人に羞恥心を与えるとか、どうのこうのということについてですね。六歳、七歳から、小学校、中学校の子供たちと、だんだん大きくなってくるにつれて、男女の性器の違い等がわかってくる。だんだんもの心がつくといいますか、そのときに、学校の行き帰りに、男女の裸の写真が、おとなが見れば性行為を連想させるような、そういう写真がはっきりと張ってある。しかも、その題名にはどぎつい題名がついている、それは女子高校生が売春しているというようなことを明らかにうたっている題名もあるし、それから、こういうことをこの委員会で、国会で言っていいかどうか私にはわかりませんけれども、ひとつ聞いてもらいたいのですけれども、電車の中から見たものですが、大きな看板ですよ。それが、女性が前かがみになっていて、そしていわゆる一番下のものですね。これにうしろから男の手がのびて、半分脱げかかっているところがはっきり見えるのです。これはおとなが見ればわかりますよ。しかし、青少年に対してモーテルをきびしく禁止しようというこの国の姿勢が、ああいう、看板は何ともお思いにならないのかと思うのですがね。国家公安委員長なんかごらんになって、御自分のお孫さんなんかにああいうものを見せられますかね。モーテルばっかり禁止しても、モーテルばかりやっても、それこそ、モーテル業者の方々がこれでまたうんと金がかかることになるのですよ。その辺の見解というものがどうもあいまいだと私は思うのですよ。ですから、いま文部省の方にお聞きしたのですから、ひとつそちらのほうから御意見を伺いたいと思います。
  59. 川崎繁

    川崎(繁)説明員 いま先生御指摘のように、特に絵看板の問題につきましては、事青少年に関する限り、私どもも、青少年に与える影響ははなはだ大きいと思っております。いまお話の中にもございましたが、発達過程にあります青少年、一人前になるまでの青少年の生活の中にしばしばそういう情景が目に入るという環境は、これは決して好ましいものとは思っておりません。したがいまして、これは各都道府県におきましても、関係機関が一体になりまして、あるいは団体も一体になりまして、関係業苦への自粛を促したり、また必要な調査をいたしましたり、社会環境の浄化という、ような形でいろいろ努力されているところでございます。私ども文部省といたしましては、こういう社会環境の中に青少年を健全に育成していくという立場からいろいろな施策をしておるわけでございます。特に、先生御指摘のような児童生徒の問題につきましては、学校外における活動をもっと健全な形で展開できるような方策をとりたいということで、特に重点的に青少年教育施設の整備をはかっておりますし、さらにはまた、青少年の指導者、これはボランティアも含めてでございますが、そういった指導者の層を厚くするための養成でございますとか、あるいは研修でございますとかいったようなこともやり、さらにはまた、必要な青少年の団体活動助成のための事業をいろいろ補助もいたしておるわけでございます。
  60. 和田一郎

    ○和田(一)委員 いわゆるポルノブームで、青少年の非行化が大きく進んでいる。これは警察庁の発表の文が新聞に載っているのを見たわけでございますけれども、いわゆる成人向けの映画は青少年は見られないわけですね。どこで見ているかわかりませんけれども、いずれにしても、映画館の中に入ればこれは見られますから、その部分でわいせつであるか、またそうでないか、芸術作品であるか、それはそのほうの論議でいいと思うのですけれども、入ってからなら私は問題ないと思うのですよ。入る前に「十八歳未満は入場お断わり」とはっきり書いてあって、しかもばっとどぎつく出ているのを——これは私が見たってひどいなと思いますよ。どうですかね、国家公安委員長、お孫さんに見せられますか。もしそういう映画があった場合、これは十八歳未満の人は入っちゃいけないんだよ、おまえたち見ちゃいけないよと言いますか。
  61. 中村寅太

    中村国務大臣 私も、先般ポルノ映画を見てみたのですが、これは十八歳未満でない、良識を持ったおとなの世界でもひどいという考え方を皆さん持つと私は思うのです。特に、いまおっしゃるような文教地区なんかに張ってあるきわめてと露骨なポスターなどというものも、私は好ましいと思いません。ただ、最近は非常に規制がむずかしい。やはりその時代時代で、ああいうものを規制する一つの雰囲気というものに違いがあり、規制することに協力あるいは共鳴する空気というものが非常に強い時代はそういうことがやりやすいと私は思いますが、最近の情勢というものは、ああいうものを規制することが非常にむずかしい雰囲気があると思うのですね。それで、その地域の婦人団体とか、あるいは教育を援護するような団体とか、あるいは青少年等の自主的な団体の自発的な意向というものを世論化して、そういうものが文教地区なんかに張られないような一つの社会的な雰囲気をつくり上げることがやはり必要じゃないかと思います。そういう意味で、あらゆる面に、そういう良風をはばむといいますか、犯罪等を醸成しやすいような空気がだんだん起こってくることをみんなの力で防いでいかなければならぬ。そういうことを考えますときに、最近のモーテルの蔓延状態というものは、やはり、国民の大多数によって何とかしてこれを防がなければならぬ一つの力であると思うのです。いま御指摘になりますように、いろいろ問題もあるかと思いますけれどもモーテルというようなものを、できるだけ国民のひんしゅくするような姿でない形のものにしたい。一般の正常な旅館であれば、それが一軒、二軒あってみてもこれほど環境に影響はないと思いますが、想像されるようなモーテルというようなものが文教地区なんかにたくさんできてくるということは、これはもうその地域の人も許しがたい姿だと思います。そういう気持ちを受けて、やはりこれを規制しなければならぬ。さような観点からこの立法が出発したと考えております。私も全くそのとおりに考えております。
  62. 和田一郎

    ○和田(一)委員 性の解放というような問題で北欧がよく例にとられますが、ところが、フリーセックスというのですか、ポルノグラフィーであるとか、そういったものを売っている店、そういった看板のあるところは、その国の人たちでさえも子供が近寄るとしかると言うのですね。だめだと言っておこるというのですよ。ですから、青少年にとっては、これはもうほんとうに不健全きわまりないものだということは世界的な常識だと思うのですがね。そういったポルノ映画であるとか。ポルノグラフィーについて私は論議しているわけじゃないのですが、それはその場でもっともっと論議してもらい——また、そういう世界だけでやる分には私はいいと思いますけれども、いま本庄さんがおっしゃったように、青少年に与える影響が一番大きい、だからモーテル規制するんだということは、確かにそれはそうかもわからない。しかし、ちまたには、モーテルだけではなくて、さかさくらげの温泉マークもありますね。温泉マークの場合、あれはどうなんですか。いろいろあると思いますよ。そういうことでこの問題を取り上げたわけです。  それで、いま、公安委員長から規制はできないというお話がございましたけれども、それじゃ、そういった自粛を要請されたことがあるのかどうかという問題です。これは文部省にもお聞きしたいと思うのですが、警察庁には、四十七年度に三十七万二千円の。ポルノ対策費の予算がとってあるという話ですけれども、どういうところにお使いになるのかということ。そういうこともひとつお聞きしたい。まず、文部省からひとつ……。
  63. 川崎繁

    川崎(繁)説明員 いまの、何にどういう形でという御質問についてですが、ちょっといま資料を持ち合わせていないのでたいへん申しわけないと思いますが、戦後この問題はいろいろ指摘をされました件でございますので、私もその記憶が残っております。特に、これは、青少年問題審議会におきましてもも取り上げられたことがあると記憶いたしておりますし、各県におきましても、たとえばやはり総理府関係でございますが、青少年育成国民会議等で非常にこの問題を取り上げて、関係方面への自粛を要望したということを記憶いたしておるわけで、あります。
  64. 本庄務

    本庄政府委員 予算は、これは、外国から輸入される文書の中でわいせつの疑いがある文書が昨年あたりかなり入ってきておるわけでありますが、洋書でございますから、英語その他の外国語でございまして、それは日本語に翻訳してみないとわいせつであるかどうかわからない。現に、昨年も、翻訳してわいせつであると認定をして、東京あるいは大阪等で取り締まった実例もございますが、本年もさらに多数入ってくるのではなかろうかということで予算をお願いした次第でございます。
  65. 和田一郎

    ○和田(一)委員 そうするとポルノ対策費というのは外書だけで、もともと日本語で書かれたものに対しては予算はないのですか。
  66. 本庄務

    本庄政府委員 いまの予算は外国語の翻訳の費用でございまして、日本のものにつきましては、日本語でございますから翻訳する必要がないので、翻訳謝金の要求はいたしておりません。
  67. 和田一郎

    ○和田(一)委員 では、話をもとへ戻しまして、この法律が通った場合には、モーテルの経営者の方々は改装しなければならなくなっててくるわけですね。そのときに、ワンガレージ・ワンルームの形式のものが規制の対象になる。そのほかに、ガレージを一緒にしてしまったりするのは普通の旅館の形態になるわけでございますね。いまのところは、大体どこでも、ワンルーム・ワンガレージの場合は、自動車が入ってしまうとシャッターは締まるわけです。金属性のシャッターの場合もあるし、または、シートのようなものを引き幕のような形で引くものもありますけれども、その場合に、ガレージの形態をなく、してしまって、シャッターをなぐ、してしまって、ただ下を物置きのような形にして、そこにたまたま自動車が入ったというような形になると思うのですけれども、そういう場合はどうなんですか。シャッターをとってしまった場合ですね。
  68. 本庄務

    本庄政府委員 個室あるいは車庫の形態がいろいろ千差万別でございますので、これも具体的なものがあればお答えしやすいのですが、一般的なお答えとしては、先ほど申しましたように、今回対象といたしておりますのは秘匿性の濃い施設でございますから、その車庫を改造して秘匿性がなくなるとか、あるいはきわめて薄くなるというふうな形のものになれば該当はしないということになっております。
  69. 和田一郎

    ○和田(一)委員 そうしますと、シャッターさえとってしまえば規制の対象にならないということですか。
  70. 本庄務

    本庄政府委員 必ずしも、一枚のシャッターさえとってしまえばいいということにはならないと思います。
  71. 和田一郎

    ○和田(一)委員 もう一つは、よく説明を聞いたり読んだりしますと、帳場も通らないし、従業員と顔を会わすことができないようになっておるのですね。しかし、旅館業法から言えば、いわゆる帳場を通らなければならないし、宿帳も備えつけなければならないことになっておりますね。だから、帳場を通らないというのですから、こういう場合は、もともとからこれは旅館業法には違反していることじゃないですかね。その点はどうなんですか。
  72. 本庄務

    本庄政府委員 四十五年度の法律改正によりまして帳場を設けることになっておりますから、そういったいわゆる帳場という施設を全く設けていない旅館は、モーテルであろうとなかろうと、違反ということになろうと思うのです。正確に申しますと、「宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。」という規定がございますから、これを設けていないものにつきましては、旅館業法の違反ということになります。
  73. 和田一郎

    ○和田(一)委員 私、二、三軒モーテルを視察させていただいたのですけれども、いわゆるカウンターは一応つけてあるのですが、これはこれをつくっておかないとまずいのでつけてありますと言うのです。お客さんは自動車のまままっすぐ入っちゃうわけです。ですから、今度は、いわゆる規制の対象になった以外のモーテルでこういう形が出てきた場合はどうなるのですか。
  74. 本庄務

    本庄政府委員 規制対象外とおっしゃいましたのは、つまり、規制されていない地域において、いわゆるモーテルができておる、そうして宿泊者との面接に適する玄関、帳場その他これに類する設備を設けていない、あるいは形だけ設けていても、設けていると法律上は認められないようなものを設けているという場合は、これはやはり旅館業法の違反になろうと思います。
  75. 和田一郎

    ○和田(一)委員 もう一つは、自動車のキーを全部帳場へ預けて、そうしてワンガレージ・ワンルームのような形になる場合——現在ではキーはほとんどお客さんが自分で持っているわけですが、それを全部帳場へ預けて、面通しもして、そうして宿帳をつけて、それからワンルーム・ワンガレージ形式のような形のところへ行く。こういう場合はどうなんですか。
  76. 本庄務

    本庄政府委員 自動車のキーを預けるか預けないかということは、この法律とは直接関係がございません。
  77. 和田一郎

    ○和田(一)委員 わかりました。  いずれにいたしましても、青少年に与える影響というのは大きいということでいままで議論してまいりました。まだその結論は出ておりませんけれども、特に文部省の方にお聞きしますが、あなたもごらんになったことがあるでしょうが、立て看板ですね。これは文部大臣がごらんになったって、おそらくあまりよくは思われないと思うのですけれども、しかも、子供たちがそういうものを見た場合にどういう影響を受けているかという問題ですね。この点、子供たちがどういう影響を受けているかということについてはどうですかね。
  78. 川崎繁

    川崎(繁)説明員 そういう面からの、言うなれば、はっきりとしたデータというようなものは十分用意されていない現状でございますが、私どもが、たとえば父兄などから話を聞き、あるいはまた、ときたま関係の先生方からお話を承った。した範囲内で感じますことは、いまるる御説明がありましたように、そういうことが未成熟な子供たちの性的な感情というものを著しく誤った形で刺激したり、あるいはまた、青年前期にある、特に中学生等のそういう感情に非常に大きい刺激を与えるというような形で、これはいろいろな困った問題だということでお話を承っております。私どもも、こういう点については、十分今後考えまして、いろいろ対処していくことを考えております。
  79. 和田一郎

    ○和田(一)委員 サンケイ新聞が「コンピューター一〇〇〇人調査」というのをやっていらっしゃいますが、二月十五日のサンケイ新聞によると、モーテル規制については、住民の方々が圧倒的な賛成をしている。しかも、「教育上、よくない」という意見が八四%だということですね。ですから、モーテル規制については、確かに国定的な賛意を得ているわけなんです。モーテル規制に対して賛意を与えたこういう方は、そういういわゆるポルノが町に堂々に出ていることについてはやはり賛成はなさらないと私は思います。規制についてこういう国民的な賛意が、満作的ですけれどもあるのですが、いろいろな雑誌を見たりしまして思いますことは、あまり。ポルノのことをきつく言うと、時代おくれの感覚だというような批判を受けるようなおそれもあるいはあるかもわかりません。しかし、それはその世界ならば私はいいと思いますよ。十八歳以上なら十八歳以上で大いに論議してもらったっていいと思いますけれども、これをちまたにあふれさせるということについては、これから大いにさらに力強く検討してもらいたい。特にこれは文部省にお願いしたいと思います。  最後に、いままでの質問を総括して申し上げますが、モーテル取り締まり強化については、八四%の人が、教育上確かに好ましくないということで、圧倒的な賛成をしているわけです。モーテルだけではなくて、ほかのいわゆるちまたにはんらんしているポルノブームについてもこのような方々の規制賛成があると思うのですよ。ポルノに賛成ではなくて、好ましくないという考え方が多いと思うのですね。そういう点について、今後の考え方をひとつおっしゃっていただきたい。
  80. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、文教地区なんかには、そういう看板等をかけていることは好ましくないと思いますけれども、それかといって、いまの情勢では、これを警察の力で取り除けというようなことも非常にむずかしさがありますので、やはり、一つの国民的な良識というものが強く働いて、そういうことをだんだんやらなくなるというふうな雰囲気をつくる必要があると思うのです。私は、ああいうきわめて露骨な看板、映画、そのほかのことが青少年の肉体を非常にむしばんでいくような、傾向にあると思うのです。いまの性の解放というか、われわれのような明治生まれの者から考えると、とにかくルーズ過ぎるようなこの姿というものは、これは決して好ましい姿であるとは私は考えない。ですから、あらゆる機会をとらえて、若い人たちみんながいい方向に行くように努力をしていく必要はあり、この努力は続けなければならぬと思っておりますが、先ほど言いましたように、公権力等でこれを規制するということは非常にむずかしゅうございますので、われわれとしては、そういう一つ地域の世論といいますか、それによって、そういうものができるだけ排除されるのが好ましいと思います。私の個人的な考えとしては、これが法的な規制ができればけっこうなことだと思いますが、これはひとつ立法府で検討していただくことを期待しておるものであります。
  81. 和田一郎

    ○和田(一)委員 私は、必ずしも、規制をしよう、摘発しろというようなことを議論しているわけではなくて、やはり、そういう世論を盛り上げる必要もあろうし、または、どんどんそういった良識に対しての呼びかげをすることも必要であろう思うのですが、先ほどの警察庁長官山口先生との議論を聞いておりましたが、ポルノのことに対しての警察庁長官の御答弁がありまして聞いておりますと、ああ、日本の良識はまだまだすばらしいなというふうに私は感じたのです。そういう面は、やはり一般人もすばらしい良識を持っていろわけですから、そういうところへ訴えて、この辺で青少年を守っていかなければならない。次の時代になっていくかわいい子供たちをしっかりそういうところから守っていくような、そういう施策をお願いしたいと思うわけなんですけれども、その点については御答弁はけっこうでございますから、以上で終わります。
  82. 中村寅太

    中村国務大臣 そのような方向で政治を進めてまいりたいと思っております。
  83. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 横山利秋君。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 いまの質疑応答を聞いておりまして、私の感想をまじえながら少し政府側と議論をしてみたい。決して完ぺきなお答を聞こうというのではなくて、私もまだ完ぺきではありませんが、少し議論をしてみたいと思いますから、ひとつ、そのつど自由にものを言ってもらいたい。  いまのような社会現象——特に、いま。ポルノ映画が出ているんですけれども、これが二十年前にああいうものが突如として出てきたら、もうびっくりぎょうてん、世の中がひっくり返ってしまう。二十年前にああいうものができたら、警察は何をしておるかといってどなったやつがおるかもしれぬが、それが時世時節の移り変わりと同時に、何とかならぬのかねという御質問のようです。これがもう十年たったら一体どういうことになるだろうかということを私は考えるのです。そういうことを大臣長官もどうお考えなんでありましょうか。あるべき姿というものは一体どういうものなのか、あるべき判断の基礎というものは一体どういうものなのか、われわれは一体何を判断の基礎として厳命をすべきかということをちょっと思うのですが、判断の基礎というのは、いまはある。しかし、それはきのうとは違う。あすでも違うのじゃないかと私は思うのです。先ほど中村さんは、いまの状況についてはまことに残念だとおっしゃいましたが、あしたもおっしゃるでしょうか。あさってもおっしゃるでしょうか。一生あなたはおっしゃるでしょうか。生涯明治の人間として通しますか。
  85. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、この傾向がやはりいろいろな弊害を出しておると思うのです。これは一つの例でございますが、私が昭和四十一年に運輸大臣をしておるときのことでございますが、時の厚生大臣が、ある女子高等学校の身体検査の結果、二〇%が花柳病を持っておる者であったということを報告したのです。横におった大臣が、それはマル一つ間違えていないか、二%の違いじゃないのかと言いましたら、そうじゃない、二〇%であると言うのです。そして、その他の地方の例も名前を出して申しておりましたけれども、名前を申し上げることははばかりますが、一六%、一七%というのはざらであると言うのです。その話を聞いて佐藤さんがびっくりして、それは特別の対策を早急にやれということを言われたことを私は記憶しておりますが、こういうふうに日本の若い人たちの肉体がむしばまれていっておるというようなことは、一般の人は気づかないのではないかと思うのですが、そういうものは、こういう風潮からかもし出された弊害の一つではないかと私は思うのです。そして、こういう傾向の場合には性犯罪等はだんだんふえる傾向にいくことは間違いないと思うのです。だから、まず、性の解放というものがはたして文明の姿であるのかどうかということは非常にむずかしいことでありましょうけれども、少なくとも、いまのわれわれが良識のある社会生活を続けていて、国民がみんな平和なしあわせな生活を続けていくという一つのたてまえを考えますときに、長い間に定着してきた性に対する一つ考え方というものはあると思うのです。そういうものをまだわれわれは基本にして、そして、国民大部分の人が良風であると言い美俗であると言う線を守りながら行くということが必要ではないかと思います。これは、横山委員が御指摘になりますような遠大にものを考えたときに、私がいま考えておるようなことが二十年先に通るか通らぬかわかりませんけれども、しかし、私は、この性の秘匿性というものは、ずっと何百年も前からの、あるいは何千年も前からの人間の負ってきた一つの風じゃないかと思うんですね。非常に文明のおくれている、裸で生活しておるような民族の中にも、前のほうはちょっと木の葉のようなもので隠すという風習がある。そういうことがだんだん進んできて今日では、やはりみんな隠す形になってきている。  それから、性行為というようなものは公衆の前ではやってならぬ、やらぬほうがいいということになっておるということもありますので、現時点でこの問題はとらえて処理していくべきじゃないか。そういうことを考えますと、やはりものには限界があるんじゃないか、そして、その限界を守っていこうということの一つが今度のモーテルなんかの規制法律になっておると、かように考えております。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 私は、中村さんは近代的な政治家だと思っているのですが、いまはお立場がお立場かもしれませんけれども、とにかく、明治生まれの人間で、現在の性道徳なり、性に対する状況なり、あらゆるものが一切なっておらぬ、慨嘆にやえぬということで生涯を終わられることはあるまいと思うのですけれども、いま——きょう現在と言ったほうが正確かもしれないが、きょう現在のポルノ映画なりモーテルはけしからぬ、この状況判断においてはこうせざるを得ないと言うのが正確なのではありますまいか。  そこで、あなたは、神代以来わが国においては性の一定の定着した概念があると思われるとおっしゃるのですが、それがあったら、一ぺん聞かしてもらいたいと思うのです。一夫一婦制のことでもおっしゃるつもりかどうか知りませんけれども、何か定着した概念があるなら、一ぺん参考のために聞かしてもらいたい。私も実のところを言うと、このポルノに対するものの考え方について苦しんでおるのです。私ども革新政党としても、これはいかにあるべきかという原理については苦しんでおるのです。ただ言えることはこういうことだろうと思う。この限界というものは働く、良識も社会に従って働く、それから取り締まり限界も社会に従って動く、そういうように流動的に問題をとらえなければ間違いが生ずる、いつまでたっても昔のようなことを言っておったんでは動く、というのが一つの私の考え方なんですが、この考え方といまのあなた方のお考え方とは違いがあるのでしょうか。
  87. 中村寅太

    中村国務大臣 私も、やはりないと思います。私も、ことばが違っておったかもしれませんが、あなたの考え方と同じようなことだと思います。私は、やはり、自分が心から賛成できるようなことというものがこういうものの一つののり、基準ではないかと思うのです。自分の娘がだれの子供かわからぬようなものを自由に生み散らかすというような形が自分ではたして認められるかどうか。これはやはり皆さんも認められないと思う。そういうところから一つ基準というものが生まれてくるんじゃないか。そういうことを考えまして、考え方の筋としては、横山議員の考えていらっしゃることと同じ考えじゃないかと思うのです。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 そういう点で対話の共通線ができましたが、今度はもう一つ青少年と一般との問題なんであります。  私は、青少年と一般との間に一つの線を引くことについては賛成なのであります。賛成なのでありますが、ある日突如として未成年者が成年者になるわけではない。これは言うまでもないことであります。だから、そこのところには庁少年に対する性教育もあってしかるべきであって、青少年に対して、全く戸だなに押し込めておき、箱入り娘にしておいて、ある日突如として、おまえはもう性は解放されたんだ言ったところで、その接着点は全然ないわけでありますが、そこのところは一体どういうふうに考えたらよろしいのであろうか。私はきわめて原則的なものの考え方を言うのでありますが、私ども成人者の心理というものは、ポルノに対して、いかぬと言えば、言うほど見たがる、やりたがる、ためしてみたがる、こういう心理が働いておると思います。もう一つ、未成年舌はわざわざ見せたりなんかする必要はないし、そういうような環境に置く必要はもちろんないのですから、一つの線は引いておきますけれども、しかし、何が何でもそういうことについての禁止、抑制の措置をとっても意味がないではないかという気がするわけであります。  いま「警察のあゆみ」の四十六年度版を注意深く見ておったわけでありますが、常業の増減状況を見ますと、風俗営業の件数はちっとも変わっておりません。深夜飲食店が非常に伸びておる。モーテルが非常に伸びておる。トルコぶろがやや頭打ちになってきた。ヌードスタジオ、ストリップ劇場は横ばい状況であります。ヌードスタジオとストリップ劇場が横ばいになってきたというのは、もう飽きてきたということなんでありましょう。トルコぶろもやや飽きてきたという感じだと思うのであります。私は、取り締まりがきつくなったから、もうからぬからこれが横ばい状況になったというふうには決して考えない。そうしますと、この種の問題について、取り締まればなくなるどころか、取り締まればますます見たがる、やりたがる、ためしたがるという観点の人間認識については、はずしてはならぬことだ。本を発禁にすれば、わっとその瞬間に売れる。映画を禁止すれば、わっと世間の関心が集まる。そういう弊害がありますし、それならそのようにまた別な角度でやってみるというような状況があると思う。私は、何が何でも取り締まってはいかぬというわけではないのですが、取り締まりが妙手ではないということと、それから、取り締まりが基本的にこの種の問題の解決点ではないという点を考えるのでありますが、どうでしょう。
  89. 本庄務

    本庄政府委員 いま先生がおっしゃいました数点につきまして、たとえば禁止をすれば見たがるというのは、これは確かに人間の通性だと思います。また、取り締まりによってのみ目的を達せられるものではないことも、これも同感でございます。しかし、こういったセックスの問題、あるいは広い意味の風俗の問題、これはいろいろな角度から検討をしなければならないわけでございまして、そういった風俗あるいはセックスの面につきましては、いわゆる権力的な取り締まりよりも、それ以前に、事実行為といいますか、人間社会の良識、健全な世論と申しますか、そういったものを基盤として必要な是正措置を講じていき、それで健全な社会が維持されていくということが最も望ましい理想であると私は思います。しかしながら、実態といたしまして、現実の姿として、その理想どおりになかなかいっておらない。なかなか理想どおりにいかない要素は幾つかあると思いますが、人間が生まれながらにして持っておる幾つかの天性あるいは文化の発達、文明の進化、そういうようなことは逆に悪い方向に作用しているということもあろうかと思います。そういう意味におきまして、最も好ましい方法によって社会の健全化がはかられない、維持できないという場合には、すなわちある限度を越えた場合におきましては、やむを得ず国家権力によって取り締まりをやって、健全な社会の維持をはかっていくということはやむを得ない措置ではなかろうかと、かように私は考えておるわけであります。取り締まりをやれば、それで目的が達せられるというふうには決して考えておりません。取り締まり以前の幾つかの多角的な措置というものを、取り締まり当局としても期待をしておるわけでありまして、それらと相まってといいますか、それらをある意味においてバックアップしながら、あるいはそれらの措置が講ぜられない場合にやむを得ず、という場合もありましょう。そういったような形において取り締まりを行なっていく。かように考えておる次第でございます。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 私も外国で、特別な機会がありまして、ポルノ映画を見たわけでありますが、お客さんはおりゃしません。見ておるのはせいぜい外国人ぐらいなものです。それはアメリカでしたが、ヨーロッパ、北欧の話を聞いてみましても、もうあまり関心がないという状況なんです。日本ではポルノ映画をじゃんじゃんやっておるようでありますが、ある時期に来たら下火に入る。私はほんとうにそう思うのですよ。いまこれほど問題になってきたから、また新しい関心をかき立てたような気がする。あなたの話によれば、ほかっておいてはいけない場合において、これがすべてだとは思わないけれども限界をきちんと示すというお話ですが、その限界というものは、先ほど中村さんが同意をされたように、動く限界であって、今日時点の限界だと思うのです。そうすると、今日時点の限界は、警察当局が示したのがもうオーソリティーであって、他の介入を許さぬという、その時点においては一番オーソリティーになる。こういうことになりますと、いろいろ世間が言っておりますように、警察は少し行き過ぎじゃないか、かってじゃないかという話にもなってくるわけであります。  四十五年のさる裁判の判決を見てみましても、最高裁判事においてもいろいろと意見が違う。田中裁判官は、「刑法のわいせつ表現物の規定は、憲法の保障する表現の自由に内在する制約の一つだから、憲法の規定と調和するように解釈すべきだ。とすれば、わいせつの概念も、厳格に限定的に解釈されなければならない」と言い、横田裁判官は、「人間と性欲の関係には深刻かつ微妙なものがあるので、正常な性的社会秩序の維持は、究極的には宗教、道徳、社会良識にまつべきで、処罰の対象を制限することが望ましい」と判断した。ところが、佐川裁判官は、「たとえ、低俗な娯楽作品でも、娯楽が大衆社会の必須の要求である以上、そこに何がしかの社会的価値の存在を認めうる」という判断をされておるわけであります。今日、とにかく、映倫の自主規制という制度がある。映倫のいろいろな意見を聞いてみましても、自分たちとしては自分たちなりに努力もし、制限もしてきたと言っている。自主規制をやってきた、かりにどういう非難があろうとも、自分たちの努力をしてきたことだけは認めてほしい、しかも、自分たちはその努力の結果が評価し得るものだと思っておると言っている。ところが、警察のほうは、何か映倫と日活との共同謀議のごとく扱い、映倫がいいと言ったなら、そこまではいい、ああ、それなら直せと言ってきた。ここで共同謀議が成立したというような解釈をとっておるように言う人がありますが、その映倫の努力といいますか、映倫の自主というものについて、今後放置が許されない、それほどの害毒を社会的に流すというなら、それは警察として、この際積極的に頂門の一針をしなければならないが、社会的にどんなに、大きな問題になってもそうすることが必要だという積極的な理由は一体何でありましたか。消極的な理由はわかる。どうしても放置は許されないという積極的な理由は一体何でありましたか。
  91. 本庄務

    本庄政府委員 映倫の問題につきましては、先ほどの山口委員の御質問のときにも出たのでございますが、映倫が、過去十年余りだったと思いますが、その長きにわたって果たしてきた使命につきましては、私は、それ相当に高く評価すべきものがあろうと思います。業界の自主規制という原則を貫いていくという一つ方法として映倫というものが設けられて、それが審査基準というものをつくって、それに基づいて審査をしてきた、その実績というものは、それ相当にやはり評価すべきものであると私は思います。しかしながら、現実に市中に公開されてまいります映画の中には、残念ながら、現実の刑罰法規に触れると認められるものがときどき出てくるわけでございまして、そういったものにつきましては所要の取り締まりを行ないまして、取り締まりを行なったときに、当時の国家公安委員長あるいは第一線の都道府県警察から、警告あるいは注意喚起、平たく言えば話し合いということをやっておるわけであります。したがいまして、映倫の審査というものはおおむね十分機能を果たしておるわけでございますが、しかし、必ずしも完全に果たしておるとは言えない。世論から見ましても、また、私たち警察当局から見ましても、これは明らかに既存の法令に触れるものであるというものがある以上は、所要の取り締まりを行なわざるを得ない。そして、先生も御案内のように「黒い雪」の判決だったと思いますが、映倫の審査をパスしたということがわいせつでないということに必ずしも直接結びつくものではないというふうな判断も示されております。先般、警視庁においてわいせつ映画についての取り締まりを行ないましたが、これらにつきましても、慎重に資料を検討いたしまして、取り締まりをやる必要があると認定をして取り締まりを実施したという次第でございまして、映倫というものを無視するとか、あるいは頭越しであるとか、決してそういった考え方ではございません。今後も、映倫が健全な良識の主に立って、一定の合理的な審査基準を設けて、その基準に基づいて厳正な審査をされる、そして、社会的な使命を十分達成されるということを心から希望し、かつ期待をいたしておる次第でございます。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 私の聞いておるところの、積極的な理由は何かということについて端的に伺いたいのであります。どこがいけなかったか。
  93. 本庄務

    本庄政府委員 いま私が少し長く申しましたが、その表現の中に、一部積極的な理由が出ておるわけでございます。と申しますのは、先ほどから申しましたように、既存の、現行の法令に明らかに触れると思われるいわゆるわいせつ映画、これを取り締まった際に、映倫には必ず、警告といいますか、注意喚起といいますか、そういったことをやっております。書面でやっておる場合もございますし、あるいは口頭の場合もあろうと思います。また、取り締まりを実施せずに、最近の傾向としていかがであろうか、もう少し検討する必要があるのではなかろうかという形での、やわらかい相談といいますか、注意を促すというか、そういうこともやっております。これは、そのときそのときの状況に応じて所要の措置をとっておるわけでございます。それにもかかわらず、先般の日活映画につきましては、明らかに既存の法令に該当するというよりも、あまりにもひどいという実態であった。そこで積極的な取り締まりをやった、こういうことです。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 明らかに現存の法律に触れるということなら、抽象的なことならだれだってわかっているのですが、どういうところが明らかに触れるのかということを具体的に言ってもらわぬとちっともわからぬ。映倫規程の中に、「一般にいんぺいすべき習慣として認められる事がらの推算や観客の嫌悪を買うような下品な描写を避ける。特に次の事項には充分注意する。イ裸体、着脱衣、身体露出及びそれらによる舞踊。ロ全裸。ハ温浴。ニ性器。ホ排泄行為。」とある。これは映倫規程第六項の「性及び風俗」からなんでありますが、どういうところが明らかに触れるということがあなたの言うようにはっきりわかっておるなら、これは映倫に持ち込まないとぼくは思うのですよ。明らかに法律に触れるか触れないかという点について争いがあるのではないかというところなんですね。  それからもう一つ、一般的に言えることは、外国映画と日本映画とを区別して、そういう同じ描写においても——外国映画については、つまり私が推察するところによりますと、直接親近感といいますか、日常の実態感というものから映画的な感覚が違うから、外国の映画は同じ場面であってもいいけれども、日本の場合はいかぬということを言われるが、それはそうか。それから、同じものであっても、税関のやり方警察庁やり方とはまた違うと言われるが、それはどうなのかという点を聞かしてもらいたい。
  95. 本庄務

    本庄政府委員 具体的にわいせつであるかどうかということが結局問題になるわけでございますが、法律そのものには、先生御案内のように、はっきりした規定があるわけでございます。その法律に該当するかどうか。つまり、わいせつ性の判断ですが、法律の解釈ということになるわけでございますが、これも先生御案内のように、私たちとしては、最終的には裁判所の見解、判例を基準とするということになろうかと思います。現在のところは「学徒らに性慾を興奮又は刺戟せしめ且つ普通人の、正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義概念に反するものをいう。」という、抽象的ではありますが、かなり具体的な一つ基準というものが示されておるわけでございまして、当該映画を見ました場合に、たとえばほぼ全裸に近いようないわゆるベッドシーン、その他これらに熱するような場面が数々出てくる場合、これは要するに、裸であるとかないとか、単にそういう静止的な様態のみならず、その動作、アクションの形態あるいは国民性といったような、そういうすべての場面の状況というものを総合して、いま申し上げました裁判所の基準に該当するかどうかということを判断するわけでございます。映倫の審査基準を私いまちょっと持っておりませんので、具体的には御指摘できませんが、映倫の審査基準にも明らかに触れると思われる場面は数々あったように記憶いたしております。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 映倫がいいと言った。しかし、警察がいかぬと言った。そして警察は製作関係の人を起訴したわけですね。いいと言った映倫はどういうことになりますか。
  97. 本庄務

    本庄政府委員 映倫につきましては、映倫の——映倫と言っても、管理委員、審査員とあるわけですが、現実に審査に従事した審査員につきましては、幇助ということで立件をいたしております。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 幇助というのは、世間常識から言うとたいへんおかしいと思うのです。幇助というのは、それをやれやれというのが幇助であり、一般常識ですよ。専門家がそうではないと、言ったって、一般的には、幇助というのはやれやれということです。映画の場合、映倫が一つのにしきの御族になっているんです。だから世間は、ごく素朴に、常識的に、おかしいと言うんです。映倫がいいと言ったではないか、映倫さんがいいと言ったからやったんだ、ところが、それをつくった人間だけがばかを見て、映倫は幇助でまあまあというところだ、そんなおかしなことがあらすかと名古屋では言っておるわけです。そういうことを考えまして、警察庁としては、警視庁としてもそうでありますが、映倫があんなにおこったから、まあつくったやつが悪いということにしておけ——映倫も今度あなたのおっしゃるようにやっていかんならぬが、映倫がまつ向からいかぬ言うわけにもいくまい、こう言っている。ところが、映倫のほうは自分たちのメンツというものがありますから、また正面から、それじゃけんか売るなら買ってやろうというような状況になっていると思う。  いまのあなたのおっしゃるのは、要するに、一つ一つの場面でなくて、総合的に判断して、というようにおっしゃるわけですね。一つ一つの場面も問題なんですか。(本庄政府委員「はい」と呼ぶ)そうですか。一つ一つの場面も問題であり、かつ、総合的に判断して、ということになると、一つ一つの場面にありましても、全く性器と性器が触れ合っておるという場面はないのですから、やはり、これは人によって感覚が違うんじゃないですか。いわんや、総合的ということになりますと、ますます感覚的に人によって判断が違うというように私は思われる。こういうような問題であり、かつ、きわめて流動的な、十年前と、二十年前と、十年後と非常に違う問題について、警察というところが、言うならば断の一字だということになるんです。そういう断の一字をあえて行なわなければならなかったという積極的な理由がどうしても納得ができないのです。基本的に納得できない。まあ、頂門の一針で、とにかくやってもあまり効果はないけれども、この際やっていけという軽い意味でやったとすれば、少し軽率ではないのか。これが信念で、基本方針で、最高首脳部の決断を仰いでやったというなら、その最高首脳部の決断というのは、一体どういう長期展望に立ってやっておるのかということを伺いたい。
  99. 本庄務

    本庄政府委員 私たち警察は、これは取り締まり当局でございまして、政策を決定する当局ではございません。したがいまして、きわめて事務的な言い方になるかもしれませんが、やはり現在する幾つかの——幾つかというよりも、数多くの法律というものを適正に執行していくというのが私たちの仕事でございます。したがいまして、刑罰法規に明らかに触れると思われる行為があれば、映画に限らず、すべてについて法を適用していくというのがたてまえであろうかと思います。しかし、その法の適用にあたっては、いろいろな要素というものを考えて、慎重に、かつ適正に行なうべきものであろう。これが一般的な原則であろうかと思います。  いま問題になっておりますわいせつにつきましても、先ほど申し上げましたような、最高裁で示されておる基準といいますか、考え方、これを基本の根底といたしまして判断をいたしておるわけでありまして、確かに、先生がおっしゃるように、人によって感じ力の個人差がかなりあるということは、私は否定はいたしません。しかし、やはり、社会通念と申しますか、健全なる社会常識と申しますか、そういった目には見えませんが一般的に守られている規範というものがあるということも……(横山委員「一般的に守られている規範というのはどんなものですか」と呼ぶ)いま申しましたように、目には見えませんが、健全な社会良識によって守られ維持されている一つの規範ということになろうかと思います。したがいまして、そういった一般的な一つの規範といいますか、基準といいますか、これらをはずれるものについては、やはり肝要の措置をとらなければならないということではなかろうかと思います。  それから、先ほどの先生の御質問で、実はお答えをしなかった税関との比較の問題がございましたが、税関当局も私たちとほぼ同じような考え方で臨んでおるように承っております。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 目には見えないが、一般的に社会に存在をしていると思う規範というものを規範にして自分たちは仕事をするのだいうこと、これは非常に大事なことだと思うのです。私も、そういうものが、社会のいい意味での良識として人間社会にないとは言いません。ないとは言いませんが、法律をつくり、取り締まりを行ない、行政を行なう上において、そういう抽象的なことで説明ができないようなものをたてにして権力ある人に仕事をしてもらっては困ると思うのです。あなたの言うところの、あなた一個の個人として、社会人として、そういうものがあると思うという点については私も決して否定はしませんけれども法律をつくり、法律を運用する上において、おっしゃるように、目には見えないしも音には聞こえ、ないけれども、この社会に存在すると思われる規範というものがあるはずだということは、法律制定論の中においては、率直に言えば、これはかってな議論であって、そして無稽な議論であって、ある場合には悪用されるおそれもある理論の立て方であって、よくないと私は思いますよ。もしあなたが、そうでなくして、自分の人生観として存在をすると言うなら、それは納得しまし、よう。しかし、役所が行政運営する上において、そういう説明もできないようなものをたてにして言われたのでは困る。それとも、目に見えないこの社会に存在する一定の規範というものについて、もっと学問的であれ、あるいは法律輪的であれ、何か御説明が願えるならば、この際承っておきます。
  101. 本庄務

    本庄政府委員 いま私が申しましたことは、私価人の人生観として申し上げたわけではございません。もちろん、私個人の人生観も述べろとおっしゃれば、おそらくいま申し上げたこととなると思いますが、これは、実は、昭和三十二年の三月十三日だったと思いますが、最高裁判所の判例の中で、表現は全く同じではございませんが、そういったことが述べられておるわけでございまして、裁判官のいろいろな考え方の個人差はあると思いますが、これは最高裁判所としての公式の見解でございまして、私が個人的に考え出したものではございません。  これをことばをかえて説明をすれば、性行為非公然の原則というふうにも裁判所ではうたっておりました。この性行為非公然の原則というのは、同じ行為であっても、密室で行なった場合には問題ではないが、公開してはならない、公開すべきでない行為というものがあるのだというのが性行為非公然の、原則だろうと私たちは思います。そういった意味におきして、これで先年の御質問に端的にお答えしたことになるかどうかわかりませんが、私が先ほど申しましたのはそういう意味でございます。私個人の人生観で申し上げたわけではございません。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 その判例は全部を読んでみなければ私も議論ができませんし、また、引用なさいました性行為非公然の、原則というものも、いまあなたのおっしゃるような、目には見えないけれどもこの社会の一つの規範だというものの一例にしかすぎないじゃないか。あなたがおっしゃりたかったことは、私はそう思うのでありますが、その論争はともあれ、こんなことでたくさん時間がかかってしまいまして、法律案についての御質問を少ししておかなければ私も職責上いけないのでありますから、少し聞きますが、そういうような前提が長くなったけれども、この性のあるべき姿について、非常に流動的であり、人によってどう解釈もできるという、そういう共通の基盤がなければ、このモーテルについても、きょうはこれでいい、しかしあしたはどうだかわからぬという非常な流動的な問題であるということを私も審議の前提として申し上げたかったわけであります。  さて、この法案を一言にして申しますと、ワンルーム。ワンガレージはいかぬ、地域制限はありますけれども、ほかのパターンならいいという点で、まことに法律体系としておかしなことだと思います。自動車と客室とが、入った瞬間から出るまで目に見えないというだけの原因でワンルーム・ワンガレージというふうに制定されたのか、このモーテル規制をするならば、もう少し別の規制のしかたが法律体系としてはあり得たのではないかという感じがするわけです。私も先般業界の人にちょっと聞いてみましたが、簡単なことですよ、先生、それがいかぬというなら、下のガレージのうしろへ共通の通路をつくって、ガレージから一たん外に出て、廊下を通らして、それで客室の上の廊下を通るということをすればきわめて簡単なことですと言うのです。もちろん、ガレージはさっと入って、そこから階段を上がってすっと上に上がっていくという便利さはなくなりますけれども、ガレージへ入るとシャッターがおりる。そして、そのうしろに通路がある。その通路へ出て、ずっと共通の通路になって、上から行って、ガレージに入った番号はわかっていますから、それに入ればいいでしょう。こういうわけたんです。方法を講ずればどうにでもなる。こんなことを言ってもおかしな話ですけれども、ワンルーム・ワンガレージだけがいけないという理論も理論なら、抜け道はいかようにでもできそうな法律体系だということを私は感ずるわけです。その点は、法律案をおつくりになります場合にどういうふうにお考えになりましたか。
  103. 本庄務

    本庄政府委員 先生から御指摘いただいた点は、まさに、この法律をつくる際に一番苦労をした点でございまして、幾つかの不安といいますか、いろいろな考え方が部内にもございました。私たちもいろいろ検討をいたしたのでございますが、問題の発生の原点に戻って考えまするに、こういったものが、いわゆるモーテルがどんどんふえてきておる。そしてまた、ふえたことに伴って、地域社会の反対の世論が巻き起こってきた。その問題の原点に立ち返ってみた場合に、一番大きな要素となっているものは行動の秘匿という点ではなかろうかと思います。相客といいますか、よそのお客さんにも見られずに、あるいは通りがかりの人にも見られずに、あるいは極端な場合には、その施設の営業者にも、従業員にも顔を見られずにモーテルに入って、そこで一定の行為をして帰ってこられる。金さえ払えばできる。そういう秘匿性というところが一番の大きな要素ではなかろうかと思います。そういう観点から、ここに定義いたしましたようなものを対象として考えたわけでございまして、したがいまして、先生のおっしゃるように、脱法的な行為は絶対できないかと申しますと、これはもうほかの法律でもそうでございますが、いろいろ悪知恵を働かす脱法行為というものが完全にできないということは私は申しませんが、しかし、実は、この内容につきましては、具体的に総理府令で書くことになっております。その総理府令につきましては、秘匿性を排除するという考え方でまとめたいと思っておるのですが、目下、その表現等につきまして苦労をしておる最中でございまして、できるだけうまい表現で、なるべく脱法行為が防がれるように規定をしてまいりたいと考えております。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 いま、とにかく五千軒内外のこういうモーテルがあるが、あなたはモーテルで体験したことはありますか。
  105. 本庄務

    本庄政府委員 体験があるかというのが、モーテルを視察したことがあるかという意味におきましてならば、視察したことはございます。
  106. 横山利秋

    ○横山委員 秘匿性なくして見学したってだめですよ。秘匿性があって、自分がその立場に立ってやってみて初めてわかるのです。要するに、モーテルへ行くというのは、秘匿性があるから行くわけですよ。ワンガレージ・ワンルームでなくても、車置き場が合同であっても——ワンガレージ、ワンルームはいかぬけれどもほかのやつならええというわけですが、ほかのやつでも秘匿性をかなり尊重されてつくられておるわけですね。だから、あなたの言うワンガレージ・ワンルームという場合には、彼と彼女が行って、従業員にも見られない。ほかの人にも見られない。それはよくないから、そこをどうしたらいいかということなんでしょう。そこをどうかするためにはワンガレージ・ワンルームだけがだめだと言ったって何にもならぬと私は思う。この法律はたいへん法律効果がない。やってみてもむだだと私は思う。あなたは、せめて、そこの経営者なり従業員には顔を見てもらいたいのでしょう。しかし、行った連中同士は、会っても顔をそむけて行きますわ。わざと見ぬようにして行く。そういうものですよ。あいつ、あの女と行ったななんて、そんなのはおりませんよ。行った人間は顔をそむけて入るものです。ところが、行った人間同士が顔を見合わせるようにしたたって、そんなものは顔をそむけて行くし、また、そこを見られたからといって、行った人間が、あいつがこの間来ておりました、あいつが人殺しの犯人でしょう、おそれながらと訴えるやつはおらぬでしょう。まず、おらぬと見なければならぬ。そこで、せめて、従業員なり経営者にきちんと顔を見てもらいたい、見させる仕組みにしてもらいたい、そういうようなことによって犯罪を防止するようにしたいというのでしょうが、それならば、そこに焦点をしぼらなければいかぬと思うのです。そこをどうしたらうまくいかということを考えなければ法律効果はないですよ。ワンガレージ・ワンルームだけがいかぬ、けれども、顔を見られぬように銭を払うならうまいこと払えるというのだったら、何のために法律をわざわざ国会に出すか。そして、地方行政委員会で、私が声を大にして、一時間もこんなつまらぬことを議論をしたって、法律効果がないことをやったんじゃだめじゃありませんか。われわれの言うことについてどうなんですか。
  107. 本庄務

    本庄政府委員 御質問の御趣旨ごもっともでございますが、二点お答えいたしておきます。  相客と顔を見合わせてもたいした支障はないじゃないか、旅館の営業者といいますか、従業員がぜひ顔を見るようにすることが肝心ではなかろうかという点、私は両方とも必要だと思います。と申しますのは、旅館のおやじに顔を見られるよりも、場合によっては、相客といいますか、偶然一緒に来ている隣のお客さんの顔を見て、なんだおまえも来ているのか、ぐあいが、悪いという旅館であれば、特定の旅館の特定の経営者はきまっているわけですが、ところが、お客さんというのは、だれが来ているかわからない。隣の者が行っておるかもしれないし、あるいは自分の親戚の者にばったり一緒になったということもあり得る。要するに、不特定多数の者が行くわけですから、そういう可能性が非常に多いわけです。これは考え方の相違かもしれませんの、で、議論しても始まりませんが、相客からも見られない、従業員からも見られない、要するに、だれからも見られないというのがここでは一つの問題点だろうと私は思います。しかし、先生の御趣旨は決して否定するわけではございませんから、旅館の経営者または従業員は必ず見るというようにする必要は、やはり立法論としてはあろうかと思います。  その点につきましては、先ほどもちょっと申しましたが、四十五年の旅館業法施行令の改正によりまして、「宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。」というのが一項新たに加わっておりまして、面接に適する玄関帳場を設けなければならないということで、そういうものを設けることが必要要件になっております。したがいまして、現実に帳場を設けておっても、経営者あるいは従業員がそこにいない、奥で寝ておるという場合には、これは現実には顔を見ないということがあるわけですが、これは行政指導によりまして、厚生省系統の主管庁によって厳重に励行するようにやっていただいておるようでございまして、その点につきましては一応の手当てはいまできておる。これが完全に効果を奏しておるかどうかにつきましては、若干問題がないとは言えないと思いますが、法律上の手当てとしてはできておる。これは四十五年の改正でございまして、これを完全に励行していくようにすることによって、先生の御疑問を解消することができるのじゃなかろうか、かように考えております。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 それはだめですよ。部長長官も実際にやっていない人間らしいですね。実際に体験していない人間に何ぼそのときの雰囲気を私が話したってだめなんです。そんなもの、知らぬ同士がばったりそこで行き会ったときに、あ、おまえもか、おまえも来ておるのかなんて、そんなばかなことがあり狩るはずがないですよ。   〔「いや、そうは言っていないよ」と呼ぶ者あり〕
  109. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 御静粛に願います。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 いずれにしても、お客さまにも見られることに効果があるという——犯罪防止で議論しているのですからね。しかし、そんなお客さまの証言を、何か得る場合がないだろうかというたわいもないことを考えているようなことではだめです。それから、従業員と経営者によく顔を見られるようにするためには帳場をつくってとおっしゃるけれども、大体、帳場というのは、全部の大きな帳場ではないのですよ。このくらいの窓ですわ。こうやって見れば別ですが、顔が隠れちゃうのです。声だけ聞こえる。それで帳場ができておりますなんて言ったって、それはだめですわ。それは、経営者なり従業員がきちんと見るように、ほんとうに見るようになっておるかどうかといえば、帳場はかっこうだけ、窓口ができておって、あごはこの辺で、向こうのあごもこの辺だ。そして銭を取る。そんなことじゃだめだと思う。  それから、もう一つ考えられることは、私がある経営者に聞いてみたら、ワンガレージ・ワンルームで困ることがあるかと言ったら、どろぼうが物をとっていくというわけですね。お客が、自分でいいことをやってきて、帰りにテレビをとっていっちゃったというのですね。また、ふとんをとっていっちゃった者もあるというんだ。ひどいやつがおるもんでかなわんねと言ったおった。それでどうしたかねと言ったら、各室にみんなチーフを備えつけましたと言う。テープを備えつけてどうするんだと言ったら、帳場で聞いておりますと言った。これはひどいことをやるんだなと言ったら、先生、そんなことを言うなら聞きたいですかと言うたわけです。そして、私ども商売ですから、声を聞いたってあんまりおもしろくありません、たとえば紙がないじゃないかとか——そんなことより、テレビをとっていったろうかとかというような場合の盗難防止につけておりますと、こう言っておるのです。そんなことを本気で言っておるかどうか、私笑っちゃったのですが、確かに、密室における解放感から、おお、これもちょっと持っていったろうかという者もないではない。ないではないけれども、経営者が各室にテープをつけて、適当に耳をくっつけて、あっ、あいつテレビどろぼうすると、言ってるぞ、行ってみよう、というようなこともいかがかと思うんです。要するに、私の秘策というものは、ちゃんと面接をするならするということにきちんと——面接こそまさにオーソドックスな方法であって、それがきちんとなるものならば、何もワンガレージ・ワンルームだけ縛ってやることはない。そんな実際の法律的効効果がないようなことをやったって無意味じゃないか。目的がどこか違っておりはせぬか。本来あるべき目的から、だんだん苦心惨たんして、ワンガレージ・ワンルームだけいかぬというようなところに落ちついたのは、御体験が足らないのではないか。この法律をつくるについて、奥さんでよろしいから同伴して、長官部長も一ぺんやってみたらどうか。どういうことになるのか、体験してみなさい。ほかの法案なら、あなた方もほんとうに自分の体験上でやっておられるけれども、こういう体験をしとりもせぬくせに、全くわかったような話をして、ワン、ガレージ・ワンルームなら、これでもう法案の目的を達するなんということを言っても効果がない。私はかく断定をせざるを得ないのです。  中村さんは体験がおありだろうと思うから、私の意見が、なま身で触れてよくおわかりだと思いますが、どうですか。
  111. 中村寅太

    中村国務大臣 私は横山議員と同じような体験をしたことはございませんから……。まあ、いろいろ方法はあろうと思いますが、衆知を集めて一つ基準をつくり、さらに、地方公安委員会でいろいろ場所等も指定していくというようなことになりますと、大体目的の大半は達し得るんじゃないかと考えておりますから、どうかひとつ御賛成を願いたいと思います。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 中村さんは何か勘違いをされて、私がよく体験をしておるというふうな勘違いをされたとしたら迷惑千万でございまして、国会議員として、法案を審査するにあたって、あらゆる人の意見を聞き、体験者の意見もなま身で聞いて、そして率直に御忠言を申し上げた次第でございますから、私の意見が十分採用されて、所期の目的が——基本理念なり基本的な基準なりから言って、流動するこの社会において、これが適切な方法だとは私も思っておらぬのでありますが、当面こういうモーテルに対する規制をおやりになるとするならば、もう少しずばり目的が達せるようなやり方をしないと法律効果がないですぞということを御忠言申し上げまして、私の質問を終わります。
  113. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 林百郎君。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 横山委員の後半の質問の部分、私もはなはだ同感だと思うんですが、このモーテル営業の定義を見ますと、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設であって総理府令で定めるものを設け、」そして「異性を同伴する客の宿泊に利用させる常業」だというように規定されているわけでございますけれども、「異性を同伴する客の宿泊に利用させる営業」ということは、これは他の連れ込み旅館とも区別がつきかねる。何も、モーテルだけが特別なものではないと思うわけですが、したがって、このモーテルの規定を正確に言うとすると、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設であって総理府令で定めるもの」を設けているということ、これが非常に重要なモーテルの規定の部分になると思うんですね。  そこで伺いたいのですが、この個室に車庫が接続していない状態にする、要するに、個室と車庫が一定の空間が設けられているということにすれば、それはモーテル営業ではないということになるわけなんですか。かりに、そこに異性と同伴で出入りしようが、しまいが、モーテルにはならないということになりますか。
  115. 本庄務

    本庄政府委員 先ほど申しましたように、秘匿性という要素を欠くか、あるいは非常に希薄になる程度に車庫とルームが分離されておるというふうにみなされる場合には、この法律のいうモーテルではない、したがって、異性を同伴していく施設であっても対象にはならない、かように考えております。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 実は、われわれも視察に行ったわけなんですけれども、私も驚いたわけなんですけれども、内部の構造ですね。その実態を見ますと、たとえば回転ベッドがあるとか、鏡が至るところに張りめぐらしてあるとか、それから新幹線ベッドと称するベッドで、汽車のようにレールの上を行ったり来たりするベッドもある。さらに、テレビにはポルノのビデオが放送になっている。そうすると、こういう現状が変わらなくても、車庫と個室の間に一定の空間が設けられれば、これはモーテル営業にはならない。そして、現在もこれは旅館営業法で取り締まりを受けていると思いますが、旅館常業だということになるわけでしょうか。私は、あんなものの備えつけられている旅館というものを見たこともないのですけれども、それでも、個室と車庫が接続しておらないということになれば、これはモーテルにはならないということになるわけでしょうか。   〔塩川委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 本庄務

    本庄政府委員 御見解のとおり、部屋の中の設備がどういう設備であるかということは関係ございません。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 これは付属にひとつ聞いておきますが、あそこでやってていたポルノビデオですね。これは、あの建物の管理者があの一群の建物のテレビに映すためにやっているわけなんですけれども、ああいうものの取り締まりの規定というのはないんでしょうか。さっきポルノ論争がだいぶありましたけれども、ああいうものは映倫を通らなくてもやれるわけなんでしょうか。
  119. 本庄務

    本庄政府委員 室内で映されておるポルノビデオにつきましては、映写されておるそのビデオの内容法律に触れるものであれば、そちらのほうの法律取り締まりをするということになっております。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、現在、モーテルが旅館業法の適用を受けているということは、これは間違いないですね。  そこで、そうなりますと、車庫と個室の間の空間があるかないかということだけでモーテルかどうかということになるわけなんですけれども、それは、つまり、車からおりて個室に入るまでの一定の距離というものは別に規定はないわけなんでしょうか。たとえば、歩いている間に同じ泊まり客に顔を合わせるようなこと、あるいは管理者に顔を合わせることができるというような一定の距離が必要なのか。あるいは、ガレージとルームとの間に狭い通路といったものがあって、ほんのわずかな空間があって、そこへカーテンでも引いておくということだけでも、これはモーテルではない、普通の旅館だ、だからこの取り締まりの対象にならないということでしょうか。そのワンガレージ・ワンルームの分離のしかたというものは一体どういう基準があるのでしょうか。基準というものは別にないのだ、それは業者の自由にまかされているのだということになるのでしょうか。
  121. 本庄務

    本庄政府委員 「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設であって総理府令で定めるもの」と書いてございますので、この個室と自動車の車庫との接続関係につきまして、法律でこまかく具体的に書くよりも総理府令で書こうという考え方でございまして、その総理府令の中身考え方といたしましては、先ほども申しましたように、秘匿性というものがなくなること、あるいは全くなくならなくても、きわめて希薄になること、そういうことをねらいといたしております。ただし、その表現につきましては、これは非常にむずかしゅうございますので、いま検討をいたしております。  先ほど横山先生からも御指摘がございましたように、実態というものを、これはいろいろな形態がございますから、さらに十分視察をいたしまして、妥当な規定をつくるようにいたしたいと考えております。しかし、基本的な考え方としては、いま申し上げたようなことで、きわめて抽象的で恐縮でございますが、そういう考え方で臨んでおる次第でございます。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に抽象的でわれわれわからないのですけれども、要するに、ガレージとルームとの間が、これで言えば「接続する施設」ということになっていますから、その接続を切りさえすればいい。切って、そして、そのほか「総理府令で定めるものを設け、」ということになっておるわけでありますが、その総理府令もここで説明がないということになりますと、どの程度のガレージと個室との間の間隔があれがいいのかということが全然わからないわけですね。だから、場合によっては、ガレージと部屋とをほんのわずか接続を断ったという形をとっただけで、旅館業として残り得る可能性も出てくるわけですね。だから、これは全く取り締まりの対象にならない。むしろ、そこのところで、業者のほうは簡単に本法の取り締まりからのがれることができるようになるのじゃないでしょうかな。
  123. 本庄務

    本庄政府委員 その点につきましては、一般の旅館のように、車庫とルームとがだれが見ても完全に分離しておると見られるように分離している場合は、これはもちろん関係ございません。また、接続しておっても、側壁があり、シャッターがあって、秘匿という要素があれば別ですが、シャッターや側壁もなくて、たとえ車庫が接続しておっても、秘匿性という要素はないというような場合は該当しないと思います。しかし、いま先生の御説明のように、ちょこっと空間をあけて、その間通路みたいなものを設けて、それをカーテン等で仕切って、あるいはカーテンでなくても、ベニヤ板で通路を設けて、外からは見えないようにする。形の上では一見車庫とルームとが分離されているようには見えますが、機能的には分離されているとは見えない。こういうふうないわゆる見せかけの分離のような場合は、当然該当するような考え方で臨みたいと思っております。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いまモーテル全国で何軒あって、部長の言われるような、ワンルーム・ワン、ガレージで接続していると考えられるものはそのうちの何%ぐらいあると考えられるのですか。
  125. 本庄務

    本庄政府委員 昨年の数字でございますが、いわゆるモーテルというものは全国で約五千、そのうちワンルーム・ワンガレージ形式と認められるものが約三千四百、そういう数字でございます。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、相当の割合のものがワンルーム・ワン、ガレージになって、モーテルと言われるものになると思うのですけれども、業者のほうでは、せっかく多額の投資をしてモーテルをつくって、これを廃業するというわけにはいかないということで、いろいろの手を考えると思うのですね。したがって、車庫と個室の接続という、このモーテルの規定からはずれるために、なるべく構造の変更に多額な投資を新たにしなくてもいいような方法をいろいろ考えてくると思うのですよ。そういうようなわずかな形式的な改造によって、事実上のモーテルの機能はそのまま温存しておいて、ワンガレージ・ワンムールのモーテルの規定のここだけを切り離そうということに対しての取り締まりというか、その、あなた方の考えておるモーテルモーテルでないかの判断の基準というものは、この国会で、この法案に関連して説明できないのでしょうか。もっと詳しく言えば、総理府令もわれわれ聞きたいと思いますけれども、その基準が、たとえば、ただベニヤ板なんかでつないでおいて、事実上接続していればそれに該当するのだ、モーテルになるのだという説明だけでは、われわれちょっとわからないのですが、それではベニヤでなくて、そこのところを切っておけば、そしてその間が二尺であり、三尺であり、五尺であり、一間であるという、そういう場合には何を基準にしてモーテルとなる、あるいはならないという判断ができるのでしょう。
  127. 本庄務

    本庄政府委員 先ほども申しましたように、ベニヤ板云々というのは一つの事例として申し上げたわけでございまして、物理的には、ルームとガレージとが、距離は別として、形態的には分離されておる。しかし、その間に通路をつくりまして、ベニヤ板でも鉄板でも何でもいいのですが、歩く人が完全に外から見えないような形での通路をつくって、機能的には接続しておる。要するに、秘匿性を残しておるというような場合には、これは該当するいう考え方で臨みたい。一つの例として、通路ということで先ほど申し上げたわけでございます。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 通路がなければ——かりにルームとガレージの間が三尺離れていたとしますね。三尺でもいいのでしょう。なぜ、ガレージからルームへ入るまでの間に人から顔を見られるような間隔にしなければいけないのですか。そういうようにすれば、一間なり二間なりの間隔が要るようになるわけでしょう。そこの基準というものはなくて、ただ、個々の個室と自動車の車庫とが接続する施設、そこだけを切り離せばいいということになれば、これは非常に大きなざる法になってしまうと思うのですがね。
  129. 本庄務

    本庄政府委員 三十センチとか、五十センチとか、あるいは一メートル、そういうぎりぎり詰めた数字になりますと、これはなかなかむずかしいと思うのでありますが、やはり、秘匿性がなくなっておる状態だと見られるという離れ方の場合には、これは該当しないということになろうかと思います。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、これはもう一年以内に改造しなければいけないわけですから、あなたのほうでやるか、厚生省でやるか、これはどういうようになるかは別としても、あなた方はもう具体的に指導しなければならないわけでしょう。そういう場合に、三尺では狭過ぎるとか、一間必要だとかなんとか、基準がなければ指導できないじゃないですか。そういう判断を業者にまかしておいて、あとから、いや、これはまだ短いからもっと長くしろだとか、これでいいとか——ある業者に三尺でいいと言うなら、他の業者も、あそこは三尺だから私のほうも三尺でいいでしょうということになるでしょう。  だから、法案を提起してわれわれ議員にその通過を求めるなら、われわれもこの法案にあえて反対をする意思は別に持っておりませんけれども、非常な、ざる法ではないでしょうか。ワンルームとワンガレージがどのくらいの基準で分離されなければならないかということもきまらないで、この法案を通せと言っても、それははなはだ無理じゃないでしょうか。
  131. 本庄務

    本庄政府委員 先ほどから再三申し上げておれますように、非常にむずかしい、かつ重要な。ポイントになる事項だと思います。したがいまして、念には念を入れ、慎重に実態調査もいたしまして、先ほど横山先生から御指摘がございましたように、私たち視察もいたしまして、きわめて不十分であったということを深く反省しておりますので、さらに各地の実情もよく見まして——と申しますのは、これは冗談でなくして、実は、モーテルと申しましても、先生のおっしゃいました三十センチか、五十センチかという問題もございますが、やはり形状がいろいろございます。上下、つまり立体的なものもございますし、平面的な接続もございます。平面的な接続と申しましても、ハモニカ長屋的な接続のしかたのものもございますし、形態的に、また機能的に、まことに千差万別でございますので、単に、いま先生から御指摘を受けましたその距離的な数字だけを——これも場合によっては大きな要素になるかと思いますが、形態あるいはそういう計数的なもの、その他いろいろな要素というものも勘案して、最終的に最も合理的なものを出したいと思っております。もちろん、これは法律が施行になるまでにきちっときめなければならないわけでありますが、考え方の基本といたしましては、先ほど申しましたような秘匿性というところに判断の、要素というものを置きたい。目下のところ、かように考えております。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 ルームとガレージの接続のしかたについていろいろの形態があるということは、皆さんの案内でわれわれ実情を見せていただいただけでもわかりますし、また、調査室からもいろいろの形態がある図面をいただいているわけですけれども、あなたの言う秘匿性というのは、何が秘匿されてはいけないというのですか。部屋のほうが秘匿されてはいけないのですか。それとも、自動車が秘匿されてはいけないのですか。どういうことなんですか。それが一体となって秘匿されてはいけないという意味なんでしょうか。それなら、ガレージとルームを離せばいいので、あなたの言う秘匿性というのがよくわからないのです。部屋の構造の秘匿性がもしいけないということになれば、部屋にまで手を入れなければいけないということになるのじゃないでしょうか。それとも、ガレージの秘匿性がいけないということになれば、これはどういうことになりますか。業者に言わせれば、二面壁で、一面部屋に接して、一面シャッターになっている、どっちの壁か一つこわせばそれでいいですよ、あるいは屋根をとればいいですよ、と、われわれが行ったときも簡単に言っているわけですね。だから、あなたの言う秘匿性ということで答弁が秘匿されてしまうとわれわれはなはだ困るわけですが、どういうことなんでしょうか。
  133. 本庄務

    本庄政府委員 その秘匿性と申しますのは、部屋の秘匿性とか、部屋の秘匿性ではございません。そこを利用する人間の秘匿性、つまり、私なら私が普通の旅館に行きますと、だれに顔を合わせるかわからない。要するに、本庄何がしという者が行っているということが通常外から見てもわかるわけであります。あるいは本庄ということがわからないにしても、こういうお客さんが入っていった、あるいは帰っていったということがわかるわけであります。そういった利用客についての秘匿性という意味でございます。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、それは旅館業法にあるのじゃないですか。旅館業法と施行令の中に、経営者は客に必ず接しなければならない、そして、その宿泊の記帳をしなければならないということがあるのだから、それはいまの旅館業法だって取り締まりできるのじゃないですか。そうすると、もし、経営者が客と面接もしておらなかった、あるいは宿泊もとっておらなかったというならば、それは、厚生省とあなた方のモーテルに対するいままでの規制が悪かったのであって、何も、ガレージとルームと切り離すことによって解決される問題じゃないのじゃないでしょうか。
  135. 本庄務

    本庄政府委員 先ほどの御質問のときも出ましたが、これは、旅館の営業者あるいはその従業員に対する秘匿性ということもございます。それ以外に、相客と申しますか、他の利用客あるいはその周辺を通る人間等いろいろな人間がいるわけであります。そういったように、要するに、他人に対する秘匿性ということでございます。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 それは重大なことだと思うのですよ。それは人のプライバシーに関係する。たとえば、本庄さんが愛人を連れてどこかに行かれたとする。それを人に見せなければあなたはその旅館に泊まることができないなんて——それは普通の旅館だってそうでしょう。だれだってプライバシーがあるのですから、それをその旅館の経営者以外の人にも見えるようにしなければならないなんていうことはおかしい。われわれはもちろん、異常な形での異性との関係について奨励するわけではありませんけれども、いまの社会情勢から言って、そんなことは無恥なことを求めることになるのじゃないですか。旅館業法でいうところの、要するに、経営者がどういう人が泊まっているかということがわかり、精油簿をとっておれば、それで秘匿性というものは旅館業法によって一応取り締まりができるのであって、そのほかに、相客に顔が見えるようにしなければいけないということで、異性を連れてきた人の顔を相客に無理に見えるようにしなければならない、そういう施設にしなければならないということになると、それは、いまあるモーテルばかりではなくて、普通の旅館や連れ込み旅館だってみんな改造しなければいけないことになるのじゃないですか。あなたの考えは少しおかしいと思うのですよ。だからといって、私は何も連れ込みをやれといって奨励するわけではありませんけれども、それはいろいろのプライバシーがあるでしょうから、人のプライバシーに介入することになると私は思うのです。
  137. 本庄務

    本庄政府委員 あるいは見解の相違ということになるかもしれませんが、私たちの考え方は先ほど申し上げた考え方でございます。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 中村さんにお尋ねします。お眠いようですが、お尋ねしますが、中村さんがどなたかを連れて旅館へ泊まりに行くとして、中村さんがどなたかを連れているところを、旅館の経営者、旅館の責任者でなくて、相客が見えるようにして旅館へ泊まりに行かなければ旅館へ泊まらせないんだなんて、そんなことを取りきめていいのでしょうか。中村さんのようなお固い方ですから、まさかお困りになるような方をお連れになることはないと思いますが、こういう世の中ですから、いろいろの異性との関係はあると思うのですよ。そういう場合、どういう人を連れて行くか、相客にその顔が見えるような施設にしなければ旅館業としての許可を与えないという本庄さんの解釈はおかしいと思うのですよ。これはワンガレージ・ワンルーム、この接続しているということが問題なんで、これだけ切ればいいというだけの取り締まりですね。それでも取り締まりにならないと私は言いませんけれども、それでは本質的な取り締まりにならないということを言っているわけなんで、私のほうも、何もこの法案に、反対するつもりはありませんけれども本庄さんの話のような、そこまでいけば行き過ぎだと思いますが、大臣、どうでしょうか。これは人のプライバシーに関する重要な問題ですから、大臣からお答え願いたい。
  139. 中村寅太

    中村国務大臣 法案の、具体的にきわめて関係が深いことでございますから、長官から答えさせていただきます。
  140. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 横山さんの御質問も林さんの御質問も、要するに、ざる法じゃないかという御趣旨から発していると思います。私も、確かに、御心配のような点がないと断言はできないと思います。業者はいろいろな手を講ずると思います。しかし、実は、私どもの基本的なものの考え方は、警察規制法律というものは、あまりにもすみずみまできちっとした規定をすることは——これは一つ方法ではございますが、警察規制法というものは最小限なものにとどめて、そして行政の運用でうまくやっていくというのがいいのではなかろうかという基本の考え方が一方にございます。この問題を考えましたときにも、一番むずかしいのは定義規定なんです。それで、率直に言いまして、これをぎりぎり、脱法行為も一切いかぬというような法律にしようとすれば、たとえ言えば、当該施設を不純性性交の場所を提供することを目的としてつくるようなものはいかぬとか、いろいろな書き方はあるのです。しかし、国の法律として、不純性性交云々なんということばを使うことはいかにも適当でないだろう。それでは今日一体付が一番悪いのだろうかということを考えましたときに、先ほど来本庄君がるる言っていますように、一つは秘匿性の問題なんです。秘匿性ということは、この種の施設を利用する人にとっては便利性の問題である。この便利性はとかく周辺の風俗を乱すという悪性にまで発展してきているのだろう。そこで、その典型的な例をとらえて、そしてそれをまず禁止をしてみよう、地域住民意向を反映して条例で禁止をしてみよう、その上で、他の問題もいろいろございましょうけれども、そういった点については、旅館業法の問題もあるしするので、旅館業法によって適切な取り締まりをするなり、あるいは行政指導をするなり、場合によれば、足りなければ、室内の構造設備等については、これはまた厚生省との話し合いでしかるべき御処置をお願いをするということにしよう、そして、全体として、今日のような異常とも思われるようなものはなくしたらどうであろうか、こういう趣旨で立法をしたのであるということをひとつ御了承賜わりたい思います。  そこで、問題は、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」です。これが今日一番便利性を提供している。したがって、これがいろいろな悪性の根源につながっておる。これが七〇%弱ある。そこで、これをどう押えるかということで、総理府令でそれを押えていこうということで、総理府令の考え方は、本庄君から、抽象的な答弁ではありましたが、いろいろお答えしたように、要するに、車庫から部屋に直接行けるということでなしに、必ず外へ出なきゃならぬというような押え方が総理府令でできないであろうかという点を実は考えております。それが先ほど言ったように、三十センチとか、五十センチとか、いろいろ問題がございましょうけれども、たとえ三十センチ、五十センチ離れていても、中席からいきなり部屋へ行けるということはやはり紡ぐような総理府令の書き方にしたい。ともかく、一たん外へ出て行かなければなるまい。こういうような総理府令の内容にいたしたいということで、せっかく検討させているような次第でございます。いろいろ御心配の点は私もよくわかります。したがって、総理府令の内容については、あまり、ざる法になるというようなことでは問題になりませんので、そういうようなことのないように何とかくふうをいたしたい、こういうように考えております。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 厚生省の方に伺いますけれども、客が旅館へ泊まった場合に、管理者である旅館の経営者あるいは管理者と客との間には、どういうことをまずしなければならないのですか。面接だとか、宿泊帳簿の記載だとか、そういうようなことがあると思いますが、まずどういうことをしなければならないのですか。それが完全に遮絶されて、泊まった人の顔を旅館のだれもが一度も見ないでいいようなことは、旅館業法にはたしかないと思いますが、それはどうですか。
  142. 加地夏雄

    ○加地説明員 お話しのとおりでございまして、玄関帳場を経まして、そこで室に案内するわけですから、そのあとも、当然、宿泊者名簿を書いてもらうとか、そういったことをやっておりまして、宿泊者が旅館の営業者に全然わからないという形で入っていく場合はないわけでございます。現に、先ほどからもお話が出ていますように、四十五年、一昨年の改正のときにこのモーテルの問題が出まして、旅館業法の改正をした際にも、モーテルにも玄関帳場をつくるということを構造設備上の条件としたわけでございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、モーテルでも、いまあなたの言われました旅館業法で規定されている管理者が客と面接する、そして宿泊者名簿に宿泊者の一定の規定の条項を記入するということはやっているのですか。その点、一体そういうことが行なわれているかどうか、厚生省は行政的な指導をしているのですか。
  144. 加地夏雄

    ○加地説明員 いま申し上げましたように、一昨年の改正のときにそういう形が一つ規制の条件として加わりましたものですから、そういう指導を保健所を通じて、やっておるわけでございます。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 本庄さん、いま言ったように、モーテルに泊まっても、管理者は客と必ず面接する。われわれ聞くところでは、二度面接の機会がある。一度はお茶を持っていくときに面接し、一度は金を受け取るときに面接する。まあ、少なくとも二度は面接しており、それから宿泊者名簿も備えてあると聞いているのです。そうすると、あなたの言う秘匿性というのはどういうことかよくわからぬ。秘匿性ではなした、むしろこの法律のねらうところは、ワンルーム・ワンガレージのこの接続を断ち切り、とりあえずはそこへ足がかりをつくる。あとはいろいろやりたいことがあるけれども、まあ、モーテル業者はモーテル業者としてのいろいろな営業の自由だとか営業の権利もあるというようなことも言われるとすれば、まずそこへ足がかりをつけるというのが本心じゃないでしょうか。そうでなくて、旅館の責任者が客と面接をし、それから宿泊者名簿も響いているのに、そこへ泊まる人がなおその以外の人から顔を見られるような、そういう入り力をしなければならないということが本法の目的だとすれば、それは私は行き過ぎになるのじゃないかというように思うのですが、どうでしょうか。
  146. 本庄務

    本庄政府委員 先ほど相客云々ということばを使いまして、それをかなり強く、言ったようなきらいがございますので、そういう誤解をあるいはお与えしたかとも思いますが、やはり、先ほど来話が出ておりますように、そういう旅館の経営者なり従業員が顔を見るシステムになっておるといいますか、それに見てもらうということもたいへん必要なことでございまして、いずれにいたしましても、先ほど長官が申しましたような趣旨での、足がかりということばは適当かどうかわかりませんが、そういったいわゆる秘匿性というものを一つの主体として、とりあえずモーテル規制する。しかし、これでこの法律モーテルのすべてについて規定するという意味ではございません。旅館業法あるいは旅館業法のこの運用、あるいは体制とも相まって、さらに総合的な取り締まりをやっていくということも考えられるわけでございます。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 その、あなたの言う秘匿性というのがよくわからないのですが、だれに秘匿するのか。一たん旅館に入った以上は、その旅館の管理者が管理権を持っているのだから、旅館の管理者が、どういうお客が泊まっているか、そして、どこから来てどこへ立つのか、あるいは何時間休むのかということをつかんでおれば、それで旅館業の目的を果たされるのであって、それ以外の人、たとえばもし私服の警察官がいて、私服の警察官が見ることができないからいけないと言うなら言うで、そうはっきり言えばいいのですが、まさか、そこまでは本庄さんも言わないと思うのですね。だから、あなたの解釈は、法令にあることを少し拡大して解釈しているので、これは要するに、部屋と自動車が密接につながっているという、ここを切り離すということであって、旅館の管理者がそこへ来た人についての掌握はちゃんとしているわけですね。それを、それ以外になお見せなければならないということはわからないわけなんですがね。そして、犯罪の発生についても、業者のほうでは、管理者にわかるように鈴のなるボタンの施設もしてあるというようなこともわれわれは業者からも聞いておるわけなんです。だから、秘匿性、秘匿性と言うけれどもモーテル全体の雰囲気がその地域の善良な清純な環境を害するものだから、せめてルームとガレージを離すことによって、そこから出てくる雰囲気を清純化に一歩進めようということならわかりますが、どうも秘匿性、秘匿性と言って、その秘匿性が、ちゃんと知っていればいい人以外の人にも知らせなければならないというところまでいけば、これは行き過ぎじゃないか、こういうように私たち思うわけですがね。
  148. 本庄務

    本庄政府委員 ことさら他人に顔をさらすことをねらいとしているわけではございません。そういうふうな意味でとられるように私が申したとすれば、その点は間違いでございます。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ、時間も参りましたので次に進みたいと思いますが、地域規制についてですが、本法によりますと「清浄風俗環境が害されることを防止する必要のあるものとして都道府県条例で定める地域においては、営むことができない。」となっているわけですが、規制する地域は、これは条例にまかせることになると思うのですが——それとも、一定の基準警察庁として示して行政指導を行なうことになるのでしょうか。この一定の基準というのはどういうことになるわけでしょうか。
  150. 本庄務

    本庄政府委員 府県条例で定めることになるわけでございますが、各府県が全くてんでんばらばらに条例をきめるということもいかがかと思われますので、そういった点につきましては、大まかではございますが、一応の指導はいたしたいと思っております。  その次の御質問の、大まかな指導の中の、いわゆる基準的なものでございましたら、担当課長のほうからお答えをいたさせます。
  151. 川崎幸司

    川崎(幸)説明員 ただいま部長が御説明申し上げましたとおりに、法令は、具体的な地方地域実態に基づいてきめていくべき筋合いのものであろうと思うわけでございます。したがいまして、中央におきまして具体的な基準をきめてどうということではなしに、この条文の解釈しこういうふうな姿でなければならないというふうな、考え方の具体的な基本になるといいますか、そういうものをつくって指導したいというふうに考えておるわけでございますが、それの中身につきましては、住宅地域でございますとか、あるいは都市近郊地域でございますとか、あるいは健全な行楽地域でございますとか、そういうふうなもの、つまり、現在に清浄風俗環境というものがあって、そこにモーテルができることによって風俗環境が害されるおそれがあるところというふうな考え方に立って、具体的な中身も、ただいま申し上げたような例示において指導してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 私が先ほどから、ワンルーム・ワンガレージの接続さえ切ればモーテルでなくなるじゃないかということをくどく聞いたのは、その程度のことでは、モーテルから出る雰囲気、そして、ことに中にある設備——これは本庄さんもわれわれも行って見てきたわけですが、そういうものは全然改善されないわけですね。ところが、際は、ワンガレージ・ワンルームが切られたから、もうモーテルではなくなった、そして、旅館業法の適用になるのだといいましても、旅館業法の規制の規定を見ますと、学校教育法、児童福祉法、社会教育法に基づくそれぞれの施設の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合、それぞれの施設の責任者または監督者の意見を聞くという程度であって、これは非常にゆるやかなことになっているわけなんですね。あとは自由に建設できることになっているわけです。しかも、すでに建っているモーテルは、ワンガレージ・ワンルームの接続は切り離されているが、しかし、その雰囲気は依然としてモーテル的な雰囲気がみなぎっている。しかし、それはもう、モーテルではなくなったということで、旅館業法が適用になるということになれば、これは学校教育法あるいは児童福祉法、社会教育法に基づくそれぞれの施設からおおむね百メートル以内でなければいいということになると非常に寛大になるので、モーテル営業からはずされても、実態モーテルでも、何ら変わらない。普通の旅館と同じようにこの程度の規制を受けるというだけにとまるのじゃないでしょうか。  これは厚生省と警察庁にお尋ねしたいのですけれども、これが旅館業法の適用だけを受けるということになれば、そうなると思いますがね。いかがですか。
  153. 加地夏雄

    ○加地説明員 御覧間のように一昨年の改正の際に、従来学校だけを中心にしたものを、児童福祉施設とか、その他を加えたわけであります。そのときの改正の際には、当然モーテル問題の意識はございましたけれども、旅館業全般に適用する基準ということで考えたものでございます。当時、やはり旅館業法の改正の審議の際に、いろいろ御議論がございまして、当時の厚生大臣国家公安委員長が、旅館業法として、そういった配置規制の問題については、その改正が実は限度である、したがって、ねらいは主としてモーテルでございますが、そういうふうに配置規制をやりまして、なおその実態を見まして、モーテルがさらに風俗営業上問題になるような実態があれば、その場合には風俗営業等取締法でさらに配置規制を考えましょう、と、こういうことを四十五年の改正のときに申し上げておるわけでございます。それで、いま直接の問題として、そういう配置規制が、今回の改正によって、ワンルーム・ワンガレージのモーテルにかかりまして、かりに一部の構造をそういうふうに直しまして、通常の旅館業務に近い構造設備になった場合にどうかというお話でございますけれどもモーテルの問題は、御承知のように……。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 その点、正確に言いますと、通常の旅館と同じにならないので、ただワンルーム・ワン、ガレージを切り離して、モーテルという定義から離れて、しかも雰囲気、アトモスフェアはモーテルと同じようになっている。しかし、適用法は、今度はワンルーム・ワンガレージを切ってしまったのですから、旅館業法の適用をされるということになれば、いま言ったように、学校の施設であるとか、あるいは社会保障施設だとか、そういうものが百メートルの区域内にある場合には、それぞれの施設の責任者、監督庁の意見を聞けばいいのだ、それから離れていればいいのだということになるのではないですか。普通の旅館のとおりになれば、それはいいのですけれども……。
  155. 加地夏雄

    ○加地説明員 いま申し上げましたように、構造設備上の問題が、そういう形で一般の旅館業法の適用を受ける場合に戻ってくるということで申し上げようとしたのですけれども警察庁が、今回の法律改正につきまして、こういったモーテル基準について非常に御苦心をなさってつくっておられるわけですけれども、それがもし一般の旅館の構造設備の形に戻ってきて、なおかつ、先生の御指摘のように、運営実態モーテル実態に近い状態が行なわれておるという場合にどうするのだ、こういう御質問であろうと思うのですけれども、いま風俗営業法で考えておるようなモーテルについての規制基準がかりに旅館業法でできるならば、これは確かに旅館業法の改正という問題がもう一つあるわけですけれども、それが、そういった先ほど申し上げたような経過から、あるいは実態面から、旅館業法ではなかなか規制しにくいということで、今回の風俗営業法の改正になっているわけでございまして、そこで、そういったモーテルが構造設備上改善をした場合、問題は、一つは構造設備の問題と、一つは旅館としての運営の問題と、二点あると思うのです。  構造設備上の問題につきましては、旅館業法としての構造設備の条件というものはおのずから限界もございますから、先ほど申し上げましたように、四十五年のときの手当てで、これ以上のことは非常にやりにくいということでございます。  もう一つは、実は運営面の問題につきまして、そこにやはり行政指導というような問題も入ってこようかと思います。例としてはあまりよくないのですけれども、私も、実は、最近モーテルの例を東京の近県で見たのでございますけれども、東京近県の場合は、先生もおそらくごらんになったでありましょうし、よく御承知だろうと思うのですけれども、私の拝見した県では、営業君は地元の方が約半分でございます。あとの半分は、いわばよそ者として、東京から人っていってつくっている。大体五〇%くらいがそうであります。そこで、その県は、実は行政指導がある程度成功している例でありますけれどもモーテル業者で、いわゆる旅館業法の許可を受けた旅館業君でありますけれども、御承知のように、旅館には旅館の環同組合というのがあります。一つは私どもの指導が非常に、至らない点もありましたけれども、現在、モーテル関係の営業者は、大体環同組合に入っていないという例がむしろ多いわけであります。その県では一応環同組合の中に入れまして、旅館の同業組合という中で、自粛なり、そういったことをやっているわけであります。同時に、県の衛生部もそれに対して適切な業界指導をやっております。そういう点で、たとえば非常に世上問題になっておりますような内部構造の問題なんかも、そういう意味で相当自粛をしていっているという問題がございます。したがって、私どもといたしましては、構造設備上の点につきましては、旅館業法としての制約はございますけれども、むしろ、業界指導といいますか、環同を通じての業界内部のそういう自主的な自粛といいますか、そういう方向の指導を重点的にやっていくべきではないかと、こういうように考えております。
  156. 川崎幸司

    川崎(幸)説明員 先生御指摘のように、ワンルーム・ワンガレージのものとそうでないものとがアトモスフェアとして同じかどうかということの考えは、認識の問題であろうと思っておるわけでありますが、私どもモーテル営業実態について調査した限りにおきましては、そのワンルーム・ワンガレージの秘匿性というのは、他人から見えないという意味で、その場合の他人といいます場合には、経営者並びに従業員が中心的な観念になるわけでございますが、しかし、経営者、従業者以外の者が見えない状態であることを排除する意味じゃございませんでして、そういう意味で他人から見えない、そういう意味の秘匿性ということを言っておるわけであります。  そういう場合に、そういうワンルーム・ワンガレージというのは、そのような秘匿性がある場合、それからワンルーム・ワン、ガレージが切り離されて秘匿性が非常に薄らいでおるもの、そういうふうなものにつきましての風俗上の問題、弊害について考えてみました場合に、たとえて申し上げますと、ワンルーム・ワンガレージのもの、それからその他の形式のものと比較しますと、大体大ざっぱに言いまして、開放性のものが千五百に対して、ワンルーム・ワンガレージのものが三千八百くらいあるわけでありますが、それに対して犯罪の起こりましたのは、ワンルーム・ワンガレージのものは二千二百七十七件、それ以外のものはわずか五百五件にすぎない。それから、強制わいせつというふうなことになりますと、ワンルーム・ワンガレージのものでは何十件か発生いたしておりますけれども、その他のところでは発生いたしておらないというふうなかっこうでございまして、したがいまして、車庫と個室が切り離されておるというふうな形式のものの風俗上の弊害の害悪性と、ワンルーム・ワンガレージであったものの風俗しの弊害の害悪性というものは相当開きがある。同じような状態のものであるというふうには認めがたい。そういう実態にあると思っておるわけでございます。  したがいまして、そういうふうなモーテル営業につきましては、御指摘のように、切り離された形のものもあれば、接続の形のものもあるというふうなことでございますけれども、現状について見ました場合には、切り離されたものよりか、車庫つき個室のほうが圧倒的に数が多いし、かつ、そういうふうなものの持っておる風俗上の弊害というものが、その他のものと比較いたしまして、非常に飛び離れて悪いというふうな実態にございますし、また、そういうふうな実態について、御承知のとおり、理屈づけというものは思考できますので、そういうものについて規制しよう、そういうふうに考えておるものでございます。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 だからワンルーム・ワンガレージを切り離すということが中心である、それがあって、それから秘匿性があるから犯罪が起きるのだ、だから、まずワンルーム・ワンガレージを切るのだ、それが主たる目的だということはわかりますよ。しかし、その切り方がどの程度の切り方でいいのか、基準がまだきまっていないわけでしょう。そうすると、業者は幾らでも脱法的に、遠い距離で切ってみたり、あるいは短い距離で切ってみたり、いずれにしても接続はしていないのだと定義していってこういうことになり、ざる法になるのではないか。また、秘匿性という点でいけば、いま、旅館業法でも、旅館の管理者が泊まり客との接触をしなければならないと書いてあるし、それから名簿に書き入れなければならないと書いてあるから、それでできるじゃないか。それ以外に、自分がこの旅館へ泊まりに来たのだということをあえて他人に見せる必要はない、それはプライバシーの問題があるんだからと考えているわけです。だから、あなたの言うところの、ガレージと部屋が密接しているから犯罪が発生するんだ、だからこれを切り離すんだということはわかりますよ。そこはわかっているけれども、それじゃどの程度切り離したらいいのだ。業者もさるものですから、いろいろの知恵を働かしますから、それを取り締まる基準すらまだ皆さんから説明されないというのでは、この法律がほんとうに実効ある法律になるかどうかという評価は、われわれ議員にはできないということなんですよ。答弁は、時間がありませんから、あとで一緒に答弁してください。  それで厚生省にお聞きしたいのですけれども、そういう事態もありまして、本法・案のモーテル営業の定義からうまく抜けて、事実上はそこから出てくる雰囲気はモーテル的な雰囲気を存続している。こういうことでは正常な風俗、環境が害されることになる。それで、旅館業法では非常に甘い条件でありますので、したがって、個々の条例をきつくするという場合に、旅館業法よりきつい条例をつくったという場合に、これに対して厚生省のほうが、それは旅館業法が優先するのだから、それよりきつい条例は認められないのだというようなことの指導をなさるのですか。どうなるのですか。
  158. 加地夏雄

    ○加地説明員 先ほど申し上げましたように、二つの問題がございまして、配置規制の問題につきましては、これは現在の旅館業法そのままでも配置規制になりまして、これ以上の規制はもちろんできないと思いますが、問題は、そういったモーテル的な運営が依然として行なわれる問題については、やはり構造設備上何がしかのチェックはできるかという問題が一つと、それからあとは、要するに、営業者の営業態度とか、そういった行政指導の問題と両方あると思うのです。構造設備上の問題につきましては、これは実は、かつて私どもも十分研究したことがあります。たとえばお話にありました回転ベットとか、あるいは鏡の間とかいう密室の中におけるそういう雰囲気について規制ができるかどうかというようなことも実は考えたのでございますけれども、これは実は非常にむずかしい問題でございまして、したがって、構造設備上の問題につきましては、それ以外の面で何がしかそういった規制ができるかどうかというのは十分検討しなければいかぬと思っております。  それからもう一つの問題は、先ほど申しましたように、業界の環衛組合内部における相互のそういった自主的な活動をできるだけするような形で行政指導をやったらどうかということを考えているわけでございます。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは警察庁にお尋ねしますが、この山正義のワンルーム・ワンガレージをもし切り離した場合、モーテルという名前はまだ使ってもいいのですか。規制される法律は旅館業法が適用されるとして、名前はモーテルという名前を残してもいいのかどうか。  それから、これを旅館業法で取り締まりをするということをしなくて、風営でやったのはどういう理由なのか。犯罪が発生するということも聞いておるわけですが、この二つの点を部長から……。
  160. 本庄務

    本庄政府委員 モーテル賞美という用語をこれは使っておりますが、名称の専用に関する制限はございませんから、どういう名前を使っても、モーテルと言おうが、ニューテルと言おうが、カーテルと言おうが、この定義にはまるものがモーテルでございます。しかし、この定義にはまらないものがモーテルという看板をかけても悪いという規定はございません。これは差しつかえない。ただし、法律にいうモーテルではないということになろうかと思います。  それからもう一つ、旅館業法でやらずになぜ風営法でやったかということですが、これは前にもちょっと申したと思いますが、このいわゆるモーテル営業が旅館業であるということは、これは御案内のとおりでございます。しかし、このモーテルにつきましては、先ほどからいろいろ議論が出ておりますが、いわゆる風俗的に特殊な要素を持ったいわば特殊旅館業とでも申すべきものであろうかと思います。御案内のように、トルコぶろは公衆浴場でございます。これも風俗的な観点から見ますと、特殊の、要素を持った特殊公衆浴場でございます。それから飲食店につきましても、深夜飲食店はやはり、厚生省のほうの所管になる飲食店ではございますが、特殊な風俗的な要素を持つものについて、風俗営業等取締法でそういった風俗画での規制をしておる。トルコぶろについてもさようでございます。そういった一連の考え方、いままでの立法例ということも考えまして、こういった特殊な風俗的な観点からだけの規制ということでございますので、従来の例にならったということでございます。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、これで最後にいたします。  事実上は旅館業法で取り締まられるようになる、しかし、モーテルという名前はつけても、別にこれを規制することができない、ワンルーム・ワンガレージを切り離せばいいのだ、そこから出てくる雰囲気については業界の指導にまかせる、と、こういうことでは、各委員とも言うように、これは非常にざる法だと思うのですよ。ただ、警察庁が一般の世論の盛り上がっている中で、何とか足がかりでもつけたい。善意に解釈すればそういう意味で、委員の皆さんからは非常に不満の意が表されているけれども警察並びに厚生省としてはこの程度のことからモーテル規制に入るのだというように、善意にわれわれも解釈して、この法案にはあえて反対しないつもりです。  そこで、最後に警察庁と厚生省に望んでおきたいことがあるのですが、まず、警察庁に対しては、本法案が施行された場合に、違反者は廃業させることになるわけですが、違反者であるかないか、これをどういうようにチェックするか。これはモーテル常業だ、これはモーテル営業ではなく旅館業に構造変更したといったようなことを厳重に点検するかどうか。また、施行後も、一定期間ごとに、定期的にこれを点検するかどうか。立ち入り検査はできないわけですけれども、せめて、この法案の効果がどの程度及んでいるかということを十分監視をする意味で、モーテル業を旅館業に構造変更したんだということのチェックを今後どのようにしてしていくかという決意のほどをお聞かせ願いたい。  それからまた、厚生省にお尋ねしますが、旅館業法とその施行令。構造基準とか、宿泊者名簿をつくらせるとか——「宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに熱する設備を有すること。」という規定が旅館業法施行令にあります。さらに「利用基準」といったようなものもありますけれども、この旅館業法としての対象となる施設がいわゆるモーテルであったものに対して、ちゃんと適正に適用されているかどうか、こういうことを十分今後監視をされていくかどうか。また、業界の指導だけにまかさなくて、これをやっていかれるかどうか。第一、いままで旅館業法が適用されるといいながら、厚生省の加地衛生課長さんのいまのお考を聞くと、私も最近東京で見たばかりだと言われているところを見れば、ほんとうのところ、旅館業法が適用されているけれども、厚生省では、モーテルというものに対しての行政的な指導をあまりしていなかったのではないか。いままでどの程度の指導をし、今後この法律が適用された場合には、さらに業界の指導と相まって、旅館業法が適正にこれに適用されるようにどのような指導をしていくか。  これを警察庁と厚生省にお聞きして、最後に中村国家公安委員長に、国家公安委員長としての今後の行政指導の決意のほどをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 本庄務

    本庄政府委員 モーテルであるか、あるいは一般旅館であるかという区別はなかなかむずかしいのでございますが、お説のように、立ち入り調査権がございませんので、立ち入り調査という方法で調べるわけにはまいりません。したがいまして、妥当、適切な方法で調査をいたしまして、モーテルであるか、あるいは一般旅館であるかという判断を下し、適切な所要の措置をとるというふうな方針で臨みたいと思っております。
  163. 加地夏雄

    ○加地説明員 旅館業法の指導の問題は、環境衛生監視員というものが各保健所に配属されておりまして、全国で大体五千人くらいおるわけであります。私が非常に不勉強と申し上げましたのは、最近就任いたしまして、モーテルを実は見ていなかったという私の不勉強のせいもございますけれども、実際は、各保健所の環境衛生監視賃がいろいろ指導をやっておるわけであります。  なお、この風俗営業法の改正が成立いたしまして、営業に入る場合には、当然警察庁との連絡を緊密にいたしまして、十分趣旨を徹底するようにいたしたいと存じます。
  164. 中村寅太

    中村国務大臣 厚生省といつも連携をとりながら、この法の趣旨を徹底して、一般大衆の要請にこたえてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  166. 大野市郎

    大野委員長 次回は、明二日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会