運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-05-09 第68回国会 衆議院 地方行政委員会 第22号 公式Web版

share
  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月九日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 豊  永光君 理事 山本弥之助君    理事 小濱 新次君 理事 門司  亮君       菅  太郎君    國場 幸昌君       高鳥  修君    中山 正暉君       永山 忠則君   橋本登美三郎君       宮澤 喜一君    綿貫 民輔君       山口 鶴男君    横山 利秋君       桑名 義治君    和田 一郎君       林  百郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣 渡海元三郎君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         建設大臣官房審         議官      小林 忠雄君         自治大臣官房長 皆川 迪夫君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     前田  宏君         大蔵省主税局税         制第一課長   高橋  元君         自治大臣官房審         議官      立田 清士君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     山手 滿男君 同日  辞任         補欠選任   山手 滿男君     綿貫 民輔君     ————————————— 五月一日  特別区の区長公選制実現に関する請願大久保  直彦紹介)(第二八五七号)  同(和田耕作紹介)(第二八五八号)  同(大久保直彦紹介)(第二九〇二号)  同(松本善明紹介)(第二九〇三号)  同(山本政弘紹介)(第二九〇四号)  同(和田耕作紹介)(第二九〇五号)  風俗営業等取締法によるモーテルの規制に関す  る請願大石八治君紹介)(第二八五九号)  同(坊秀男紹介)(第二九一一号)  地方公務員共済組合制度改善等に関する請願外  二件(桑名義治紹介)(第二八六〇号)  同(山本幸一紹介)(第二八六一号)  同(山口鶴男紹介)(第三〇〇二号)  被疑者留置規則改正に関する請願田中武夫君  紹介)(第二九二二号)  ドライブイン等において酒類の販売を禁止する  法律の制定に関する請願谷垣專一君紹介)(  第二九五八号)  同(坪川信三紹介)(第二九五九号)  同(羽田孜紹介)(第二九六〇号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三〇〇三号)  同(松山千惠子紹介)(第三〇〇四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公有地拡大推進に関する法律案内閣提出  第六九号)      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる公有地拡大推進に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 公有地拡大推進法案につきまして、各委員方々からだいぶ御質問がございまして、若干重複する点もあるかと思いますが、お尋ねをいたしたいと思います。  まず、その前に大蔵省お尋ねをいたしたいと思うのですが、連休中の新聞全国長者番付発表になりました。それを見ますと、第一位が関兵馬さんという方で、三十八億九千万円の所得をあげておられる。ところが、現在の譲渡所得に対する特例措置によりまして、所得税の場合は分離課税でございまして、税率が一〇%、それから住民税が、これまた分離課税で、四%という形で課税がなされます。そういたしますと、関さんの場合が、所得税が三億九千万、住民税が一億六千万円、合計五億五千万円の税金お納めになるということになるわけであります。これに対しまして、長者番付の十二番目の上原正吉さん。この方の場合は、土地売却による譲渡所得ではございませんで、給与所得並びに配当所得等によりまするために、所得税住民税合算いたしまして九億一千万円の税金ということになる。ちなみに、所得は十一億四千万円。関さんの所得が三十八億九千万円。上原さんの所得はその三分の一足らず。しかるに、この税金につきましては、五億五千万円に対して九億一千万円ということで、もちろん法律的には根拠があるわけでありまして、そうなることは私どもも十分わかりますが、一般国民とすれば非常に意外な感じを持ったということが報道されております。そこで、大蔵省お尋ねしたいのでありますが、昭和四十三年七月二十六日に税制調査会が出しました「土地税制あり方についての答申」を四十五年以降実施をしたためにこういうことになったということだろうと思うのでありますが、この「土地税制あり方についての答申」は、現在の税制にすべてそのまま適用されておるのでありますかどうか。このことをまずお伺いしておきたいと思います。
  4. 高橋元

    高橋説明員 ただいまの山口先生の御指摘のとおり、土地税制に関する答申の中の「当面実施すべき事項」というところに関する部分につきましては、現行法に織り込みまして、五十年の十二月までこの措置によることにいたしております。
  5. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 「当面実施すべき事項」、第四ですね。これについては全部実施をしておる。そのとおりでございますか。
  6. 高橋元

    高橋説明員 私のいまお答え申し上げましたのは、国税に関する部分でございますが、したがいまして節四の「一 個人長期保有土地に係る譲渡所得課税方式変更」、それから二番目といたしまして、「個人短期保有土地に係る譲渡所得課税方式変更」、第三に、「事業用資産買換制度及び個人居住用財産を取得するための買換制度合理化」、第四に、「収用等の場合の特例的軽減縮減合理化」、この四つの項目でございます。
  7. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 第五の「固定資産税の評価の適正化等」に関する部分。これについては別であるが、他は全部実施をしている。まあ、こういうことだろうと思いますが、そこで私はお尋ねをいたしたいことがあるわけです。  この個人長期保有しております土地譲渡所得に対する課税については、これを軽減することが、土地切り売りを防止して、かえって土地供給を増加させることになるだろうということで、先ほどお尋ねをいたしました昭和四十五年、昭和四十六年におきましては、所得税は一〇%、住民税は四%、昭和四十七年、四十八年については、所得税五彩住民税五彩昭和四十九年、五十年が所得税については二〇%、住民税が六%、こういう形の税制実施をした。そして、明年になれば譲渡所得税分離課税税率が一五彩になるから、ことしのうちに売っておいたほうが税金が安いというので、昭和四十六年に土地売却が行なわれて、今度発表されたような長者番付になった。こういうことだろうと思うわけでありますが、同時に、この「土地税制あり方についての答申」で、個人短期保有土地はやはり投機対象になるものだからというので、これは税率を高くしておるわけですね。それでは、昨年、この長期保有いたしました個人譲渡所得税を非常に軽減して、そのために一体どのくらい——通常所得税というのは、昭和四十四年までは、他の所得合算をいたしまして、そうして累進税率を適用して所得税をかけたわけですね。これと比べてことしは一体どのくらい減税になっているのか。そのくらいの数字大蔵省におありではないかと私は思うのですが、この点はいかがですか。
  8. 高橋元

    高橋説明員 所得税極数別税収いかほどであるかということは、たいへん申しわけないのでございますけれども税務統計発表にならないと正確な数字が把握できませんのでございます。とりあえず、本年の三月に四十六年分の申告所得について税務署に税務の御相談がありました中で、譲渡所得があるということで御相談になりました方の譲渡所得金額というものを概算いたしますと、約二兆五千億でございます。これらの方々がその他の所得をどれだけ有しておられるか、それによりまして、ただいま御指摘税率分離比例になりましたためにどれほど軽課されたかということがわからないわけでございますので、いま正確な数字お答えする用意がないわけでございます。
  9. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私ども、わが党として一応推計をいたしましたのでは、四兆五千億ぐらいの譲渡による所得があったのじゃないかと思っておりますが、いま大蔵省お答えでは、半分程度の二兆五千億で、一〇%ですから、二千五百億円税金があがるということになりますね。通常、従来の合算をいたしまして累進税率をかけていくということになれば、平均すればおよそ三〇%ぐらいの税になるのではないか。そうしますと、七千五百億円程度税収があがるはずである。それが今度の分離課税一〇%の譲渡所得課税ということでございますから、五千億円ぐらい譲渡所得税特例によって減税がされたということに大蔵省数字で言ってもなると思うのですが、大体そのくらいに見て間違いないと思いますが、いかがですか。
  10. 高橋元

    高橋説明員 先ほども申し上げましたように、譲渡所得がおありの方が、その他の事業所得なり利子配当給与というような所得をどれだけ有しておられるか、それから、譲渡によって得られました譲渡所得金額が幾ばくかということがわかりませんと、何ぶんにも四十万人にのぼる方の譲渡所得でございますので、本来分離比例税制がなかったならばいかほどの税額をお納めになったかということの計算がつかないわけでございます。そこで、いま山口先生からお話のございました数字がそのようなものであるかどうか、私、ちょっと責任をもってお答えすることができないわけでございますが、御例示になりました三〇%ぐらいの税率というのは、私ども考えまして、どうもやや高いのではないかと思っております。と申しますのは、本則によります長期譲渡所得総合課税の場合には、譲渡益金額から四十万円を差し引きまして、その二分の一にいたしまして合算をする。したがいまして、税率として三〇%というのはかなり高いところを言っておられると思いますので、それほど大きな金額ではないというふうに思っておりますが、正確な数字はいまのところ持ち合わせておりません。
  11. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その点は、やはり若干時間がかかると思うのです。今回の譲渡所得特例によって、土地売却による所得のあった方が非常に恩恵を得ているということについて、国民としてもいろいろな角度からの批判もあろうと思いますので、時間はかかると思いますが、一応、私が申し上げたような角度からの調査をされまして、国会のほうにご報告をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  12. 高橋元

    高橋説明員 御承知のことでございますので、蛇足にわたるかと思いますが、税制調査会が四十二年から一年有余の長年月をかけまして現行土地税制の御審議をいただいたわけでございます。その結果が現存の土地譲渡所得税制ということになっているわけでございますが、その際に、地価値上がりが、公共投資等一般国民負担によって行なわれた開発の結果によるものだから、値上がり利益公共に還元するという意味で重課すべきであるという御議論も確かにございました。それに対して、地価の安定に資し、かつ宅地供給を促進するために軽課すべきであるという御意見もございました。結局、現在ありますような長期軽課短期重課ということに落ちついたわけでございます。そのことは御承知であろうと思いますが、そういう経過を経てできております税制でございますので、したがいまして、それによりまして宅地の大最供給実現をしてくるということは、土地税制が本来ねらっておった効果実現していきつつあるのではないかというふうに私どもとしてはまず考えておるわけでございます。  その次に、ただいま御質問の件でございますが、先ほども申し上げましたように、全国にわたります譲渡所得金額が正確に把握できますのは約二年おくれになりますので、御指摘のような観点で、正確にどの程度所得金額軽減されることになったかということを把握するには若干時間をかしていただきたいというふうに思っております。
  13. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 二年と言いましたが、それは正確に出るのは二年でしょうが、おおよその正確度のある調査というのはもう少し早目にできるのではないかと思いますので、そういう意味で、できるだけ早く資料を提出いただくように要請をいたしておきます。  それから、短期保有したものに対する税の扱いですが、これについては、譲渡益が一千万円に達するまでの部分については所得税税率を四〇%、住民税は一二%程度と定め、譲渡益が一千万円をこえる場合には、現行負担に比して相当重課されることとなるような超過累進税率を設けることを考えろということが書いてあるわけですが、この後段部分は一体どの程度税率実施をしたのですか。
  14. 高橋元

    高橋説明員 この土地答申の第二の(2)のところの御指摘であろうかと思いますが、この部分答申とやや異なった形になっておりまして、最低限度国税四〇%、住民税が一二%という比例課税でございまして、分離をしないで総合したならば課せられたであろう税率というものをはじき出しまして、それの一割増し、いずれか高いほうということで課税をいたしておるわけでございます。
  15. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、私は、いま公有地拡大推進法案について審議をしているわけですから、一つ考え方を申し上げてみたいと思うわけです。  今回のこの譲渡所得特例は、切り売りを防止して土地供給をふやすということで確かに効果があったというようなことを高橋税制第一課長さんは申しておるわけですが、国民の側から見れば、必ずしもそのようには受け取っていないと私は思うのですね。こういった譲渡所得特例を設けるならば、これは、公有地売却した場合にはこういう特例を設ける、そうじゃなくて通常売買の場合は、従来の所得税法による合算所得によって税金を課するんだということにしたほうが、今回政府提案をいたしました公有地拡大推進法案について、むしろ大きく実績に進めていくてこになるのではないかというふうに私は思います。税制調査会が一年数カ月にわたって審議をして出した答申だと言いますけれども、しかし、当時税調の中では二つ考え方があったのではないですか。切り売り防止のためにはやはり譲渡所得税を思い切って軽減をするほうがいいという御主張もあったし、そうじゃなくて、いや、投機対象になっているんだから、むしろ税金をがっちり取ったほうがいいんだという見解もあったと承っておるわけです。両方意見が対立をいたしましたので、その妥協的な案といたしまして、長期にわたる保有については軽減をする、それから、五年以内の短期保有したものの売却については高率の税を課するんだという、こういう二本立てでこの答申が出たというふうに承っておるわけでありまして、一年数カ月議論をした結果だとは言いますけれども、この際、この譲渡所得特例については再検討する、そして、昭和四十七年、四十八年は分離課税で、所得税は一五%、住民税は五%、四十九年、五十年は所得税が二〇%、住民税が六%という税率をせっかく適用するならば、それは公有地として売却をしたものについてのみ適用するんだ、他の場合は通常合算所得による所得税を課するんだ、というふうに割り切ったほうがいいのではないかというふうに私は思いますが、この点、自治大臣の御見解はどうでしょうか。
  16. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま山口委員の申されましたとおり、税制面からするところの土地対策と申しますか、これはいろいろ議論がある点で、当時も相当議論が戦わされてああいった点に落ちついたというのが実情であろうと思います。今回の公有地拡大法案の中にこの税制とあわせて考えることによって、この法案の有する目的を拡充することができ、推進することができるという御議論、まことにごもっともな御議論であろうと思います。私も、よき建設的な提言として、今後検討させていただきたいと考えております。  税制そのものは、公有地拡大法そのものが当時はございませんし、考えられてなく、ただ土地税制そのものについて議論されたものであろうと思いますが、いまの御提案公有地推進ということとあわせて考える上におきましては、相当効果があることはもうわかり切ったことでございますので、今後とも建設的な御提言として検討させていただきたい。かように考えます。
  17. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 五月二日の新聞全国国民が見られて、やはり私と同じような気持ちを持った方が多いのではないかと実は思うのであります。法律的の手続から言えば、「ただし、この譲渡所得特例については、公共団体等に対して土地売却した場合に限る」と一行書けば済むわけでありまして、法律的にもそうむずかしい改正手続を要するわけではない。もちろん、そういうことをするについては、税制調査会相当議論もしなければならぬことは私どもわかりますけれども、せっかく大臣お答えがあったわけでありますが、税制調査会に対しては、自治省としても非常に関係深いわけでございますから、自治省として、公有地拡大推進法案をより効果的にするための手だてとして、私の提案については十分御検討いただくように要請をいたしておきたいと思います。  それでは、次に、法案について幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  この法案の第四条の「土地譲渡しようとする場合の届出義務」と、それから第六条の「土地の買取りの協議」の項でありますけれども、特に、第六条第四項を見ますと、「第一項の通知を受けた者は、正当な理由がなければ、当該通知に係る土地の買取りの協議を行なうことを拒んではならない。」となっております。しかし、これは訓示規定ですね。これには罰則があるわけではありません。しかも、協議期間はどうかと言えば、これは二週間以内ということに、これまた法律でなっているわけであります。そうなりますと、当委員会でもずいぶん議論になったわけでありますが、罰則はない、協議だ、しかも期間は二週間だということになれば、協議がいやだというので、ちょっとハワイヘでも行ってくるとか、あるいはグアム島へ行って横井庄一さんの二十八年間の御苦労をしのんでくるとか、そういうようなことで、ちょっと外国へ出ていけば二週間はすぐたってしまいますね。何も外国へ行かぬでも、沖繩へ行くとか、奄美大島へ行くとか、あるいは北海道へ行くとかいうようなことでも、二週間ぐらいすぐたつわけであります。そうなりますと、せっかくのこの法律の、中心とも目玉とも言うべき先買い権が全く弱いものだということにならざるを得ないと思うのですね。その場合、いつも建設省のほうは、いや、都市計画法第五十七条があります、これは三十日ですと言っておる。しかし、この都市計画法五十七条の三十日は、法律的に言えば形成権ですね。こちらの法律のほうの二週間、二週間という凍結期間は、これはあくまでも協議でしかない。形成権ではありません。しかも、協議については罰則がない。全くこれはざる法じゃないかと思うのですね。形成権でもないし、罰則もない。それで二週間だ。二週間では、ちょっと旅行に行けば簡単に日にちが過ぎてしまうわけでありますから、この一つの方法としては、協議については、協議を拒めば罰則を科するとか、あるいは形成権のような規定にするとか、そうでなければ期間を延長するとか、いずれかをとらなければ、きわめて弱いものになってしまうんじゃないかと私は思うのですが、大臣、この点はどうでしょうか。そのうちの一つぐらいは強化したらどうかと私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  18. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 この点、当委員会でもたびたび質疑応答が行なわれた点でございますし、また、本法律案審議するにあたりまして一番私たちが問題とした点でございます。私権制限という意味から非常にむずかしい問題もございましたので、本法案は、いま申されたような意味からは、これで十分であるとは私たちも考えておりませんが、私権制限といったようなこととか、また、他の法案等も考慮いたしまして、大体この辺で妥協をしたというのが実情でございます。  御疑問、御質問、御要望のある点は、私たちも十分承知いたしておりますが、この点、これは共管で出させていただいておりますが、建設省のほうの主管事項として、私たちは不十分であろうと思いましたけれども、この点で、一応提案としてまとめたような次第でございますので、主管省である建設省のほうからその点をあわせて御答弁願うことによって御了承賜わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  19. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 協議を拒んだ場合に罰則をつける、あるいは買い取り協議について形成権を認める、あるいは期間を延ばす、こういうような御提案でございますが、前の二つの点につきましては、私有財産権尊重あるいは取引の自由の尊重ということと、公共の福祉の調和という点で、現段階におきましてはぎりぎり、ことに、微温的ではございますが、この程度のことで現段階ではやむを得ないというように考えた次第でございます。  最後の期間の点でございますが、土地所有者及び売買当事者から考えますと、売買契約成立がストップを受けるという点におきまして、きわめて不安定な状態に置かれるということは、都市計画法におきましても、この法律におきましても、当事者にとっては同じでございます。ただ、都市計画法の場合は、買い取り主体があらかじめ先に知事のほうで指定されておりますので、まるまる三十日の期間が使えるわけでありますが、この法律の場合におきましては、主体をきめるのに二週間かかりまして、あと協議期間譲渡制限が二週間ということで、あとの分が非常に短いということは御指摘のとおりでございますが、これは、当事者の側から見ますと、手続一つであるか、二段に分かれているかということは、実は、公共団体内部の問題でございますので、当事者での取引規制を受けるという点については、両方とも大体同じ長さの範囲内にとどめるのが適当ではないかと考えたわけであります。  なお、協議期間が二週間というように議論されておりますが、正確に申しますと、前段の買い取り主体通知は二週間以内ということがきめられておりますけれども後段協議期間は必ずしも二週間に限定されているわけではないわけでありまして、ただ、譲渡制限がかかる期間が二週間ということになっております。したがって、六条の期間というのは、二週間をこえても有効でございます。租税特別措置法ですでに成立いたしております三百万控除の場合におきまして、第六条第一項を引いておりますが、この場合の第六条第一項は、二週間以内に成立するということと解する必要は必ずしもないと考えるわけでございます。ただ、譲渡制限という意味で二週間がかかっているわけです。実際問題、考えてみますと、ある用途をもって契約をしたいというので届け出てくるわけでございまして、したがって、どうしてもその人に売らなければならないというような事情がございますので、かりにこの期間が多少延びましても、気持ちが変わるということはあまり考えられないわけでございます。そこで、本人が、それでは、公共団体のほうから話があったので、そちらのほうにもうひとつ考えようかということでございますれば、前のほうの契約成立というものを若干延期するのではないか。したがいまして、その協議そのものは二週間をこえても実際行なわれますし、その間法律譲渡制限はございませんけれども契約成立が延びる場合が考えられるというふうに考えるわけでございます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 協議が継続しておれば、二週間を若干こえてもいいのだ、その場合、譲渡所得特例は適用になるのだということ、それはわかります。そういう議論は行なわれましたからね。ただ、肝心の制限されている期間は二週間なんですから、その間どこかに行っておれば、とにかくもう二週間が過ぎてしまう。協議にも入らなかったということになれば、これはどうにもならぬということなんですよ。ですから、少なくとも、この協議を拒んだ場合に、罰則もないし、形成権を認めているわけでもないし、期間は二週間であるということについて、この三つのうちいずれかを強める必要があるのではないか、そうしなければざる法になってしまうのではないかという懸念を実は表明をいたしておるわけであります。この点につきましては、与党の方が一人しかいないのでたいへんぐあいが悪いのですが、与党がもしこの法案成立に熱意を示して、この修正についても野党と十分に相談するということであればけっこうだろうと思うわけでありまして、この点、理事会等で御相談のあるものと思いまして、そちらに期待をいたしまして、質問のほうはこれで終わっておきたいと思いますが、とにかく、この点は非常に問題であるということを御指摘をいたしておきたいと思います。  それから、その次の、第五条の問題でありますが、「地方公共団体等に対する土地の買取り希望の申出」でありますが、この場合、申し出た場合におきましても、第六条の「買取りの協議」と、第八条の「土地譲渡制限」がかかるわけですね。そういうことになりますと、当然、譲渡所得税特例措置をこれにも適用してよろしいのではないかというふうに私は思うのであります。現実に、公有地拡大推進するということに観点を置きました場合は、この第四条の届け出を義務づけましたものについて、公共団体が希望するものを取付をするということは当然でありますけれども、同時に、この第四条の一項四号の「前三号に掲げる土地のほか、その面積が二千平方メートルを下らない規模で政令で定める規模以上の土地」について、地方公共団体が十分買い取りができるということと並んで、第五条の買い取り希望のございましたものについて、必要な土地公有地として確保するということがこの法律の趣旨を生かす大きな中心ではないだろうかというふうに私は思うのであります。ところが、拝見をいたしますと、この部分については、譲渡所得税特例措置対象にならない。第四条の一項の一号から三号は収用対象だから譲渡所得控除が一千二百万、それから第四条の四号については、収用対象のものは一千二百万であるが、収用対象外のものについては三、百万しか控除しない。一千二百万、三百万。その間に、古都保存法とか文化財保護法とかという関係で制限を受けたものが六百万というふうにあるそうでありますが、千二百万、六百万、三百万。したがって、この五条は通常の百万しか対象にしないのだということのようでありますが、これではやはり十分法律効果をあげることにはならぬじゃないか先ほど私が提案いたしましたように、譲渡所得税全般について、公共団体に売った場合は譲渡所得特例対象になるが、他はだめだという抜本的な措置を打ち立てれば、十分それで効果をあげるとは思いますけれども、それについては、税調で若干議論をしなければならぬ、時間もかかるということであるならば、この第五条の対象のものについても、せめ三百万程度所得控除を行なうということにしなければ、十分な効果をあげることは困難じゃないかというふうに私は思うわけであります。この点ひとつ大蔵省から——大蔵省のほうから先に聞くと、つまらぬ答えがくると困るので、あるいは自治省建設省に先に答えていただいたほうがいいのか。それもわかりませんが——そうですね、大蔵省あとでお願いをすることとして、自治省建設省のほうから先にお答えを願いましょうか。
  21. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 公有地拡大という政策を強力に進めますためには、いろいろな面で、公共団体土地を売りました場合の優遇措置拡大する、この五条の届け出につきましても、少なくとも四条と同様な程度のものにしてはどうかという御指摘でございますが、建設省という立場からは、そういうようなことはあるいは望ましいのではないかと私も考えるわけでございますが、従来の譲渡所得税軽減というのが、収用等の場合ということから発生しておりまして、本人の意思に反して、何らかの強制によって土地を手離すというような場合から発生しておりますので、先ほど指摘のように、この法律の強制力というのが必ずしもそれほど強くないということから申しまして、今回は、一応第四条の届け出にかかるものに限定をするということでやむを得ないと考えたわけでございます。  御指摘のように、租税特別措置法につきましては、三百万が六百万になったり、六百万が千二百万になりましたり、順次拡大の方向にございますので、来年度以降の税制につきましては、大蔵省当局とも御相談をいたしまして、拡大の方向に私たちは持ってまいりたいと希望いたしております。そういう意味で、今回、第四条につきましての問題は、非常に不十分でございますが、大蔵省としてはよく踏み切っていただいたというふうに思っております。
  22. 高橋元

    高橋説明員 譲渡所得税の特別控除でございますが、この制度は、元来は、いわば切り売りを助長する弊害も持っておりますので、これは本来あまり多くあってはいけないものだというふうに私どもは考えております。  そこで、現在、土地譲渡の場合には百万円の特別控除を一般にはいたしております。これは、従前の二分の一合算総合であった場合には三十万円でございます。この特別控除が振りかわってきたわけでございますが、これを拡大をいたしまして、御指摘のように三百、六百万、千二百万という三つのランクがございますが、こういうふうにふやしましたのは、売買当事者の意思に関係なく強制的に行なわれるという場合に限定をいたしておるわけでございます。したがいまして、土地収用によって、本人が売りたくない土地を売らされるという場合に、実現した所得というものに課税いたします場合には、千二百万を控除いたしますし、住宅公団等の行ないます特定土地区画整理事業とか、御指摘の古都保存、文化財といったものにつきましても、これは売買の意思が制限されておりますので、それについても六百万円の控除をしております。  それから、いま御審議いただいております公有地拡大法によります部分につきましても、これは若干弱い形ではございますけれども、本来第三者に売りたいということで売買契約がととのっておりますものを、地方公共団体に届け出まして、そこで売買協議に応ずるということになるわけでございます。その協議がととのえば市町村長に売らなければならぬという意味で、本来の意図しない相手方に売るという場合の権利の制限がございます。その権利制限に着目いたしまして、これは三百万の特別控除ということになっております。  御指摘のございますように、土地税制というのは、四十四年以来七年間の長期間にわたりましてセットされておりまして、当初の軽課から徐々に比例税率を上げていくという形で、供給の促進をはかるという体系をなしております。それに対し議して、特別控除額というのは、申し上げましたように、一種のマイナスの作用といいますか、反対の効果を持っておりますので、これをいじりますことは土地税制の基本であろうと私どもは思っております。
  23. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 おっしゃる理屈は、大蔵省の立場としてはそういうことをおっしゃりたいだろうということはわかりますけれども、しかし、肝心の、先ほど来私が指摘いたしました土地税制あり方に対する答申、四十五年、四十六年の措置国民が見て、これはいろいろな意味での批判なり考え方というものを持っていると私は思うのです。やはりそういう時期だということを、まずもって御認識をいただきたい。ですから、私とすれば、冒頭申し上げたような、公共団体に対する売買についてのみそれを適用するのだというぐらいな抜本的な措置を行なってしかるべきだと申し上げたわけでありますけれども、しかし、ここでそのことばかりやっておってもしかたないわけですから、百歩譲っての議論をしておるわけであります。  そこで、大蔵省、いま、とにかくわが国の景気が停滞している。この景気をいかにして回復をするかということで、一兆九千五百億の公債を発行し、公共事業費を大幅にふくらませて、わが国の立ちおくれている社会資本を充実していくのだという面から有効需要を喚起して、不況対策を何とかなし遂げていくのだということで本年度の予算を編成されたわけでしょう。ところが、社会資本の充実といっても、肝心の、一番ネックになっているものは何ですか。いわば公共団体、国等が土地を買うのに非常に苦労しておるというところから、いま、大平さんとか、いろいろな自民党の有力な方も、結局本年度の予算措置だけでは不十分ではないかという意味でいろいろな構想を発表しておられるじゃないですか。そういう中で、この社会資本の充実の一番ネックになっている土地をどうするかということが焦眉の急の問題でしょう。そういうときに、公有地拡大推進法案というものを政府として出してきた意義はやはりそこにあるのだろうと私は思うのですが、公有地拡大推進するという趣旨に立ってものを考えまするならば、いまのようなことばかり繰り返しておったのでは、公有地というものは現実にさっぱり拡大もしていかぬだろうと私は思うのです。昨年、私、ストックホルムに参りまして、ストックホルム市の状況を聞きましたら、ストックホルム市の行政区域のうち八〇%はストックホルム市の市有地だというじゃありませんか。わが国から見てほんとうにうらやましい状況だと私は率直に思いました。わが国ではそういうことは無理だろうと思いますけれども、せめて少しでもその方向に向かっていくということが必要ではないのですか。とするならば、収用対象だから、本人の意思にかかわりなく土地が買われるんだからということで、特別控除を千二百万、六百万、三百万とするんだというときに、この五条だって、本人が買い取り希望を申し出ることは間違いないのですけれども、一たん申し出れば、買い取り協議期間も一応拘束がかかるわけですね。それから、そのために土地譲渡制限もかかるわけなんです。一応の制限というのがかかるわけなんですから、とすれば、せめて三百万くらいの特別控除をやってやるということでなければ、公有地拡大にならぬだろうと私は思うのです。そういう意味では、もう一度考え直すつもりはないですか。大蔵省、どうですか。
  24. 高橋元

    高橋説明員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、五条に基づきます譲渡と申しますのは、本来その土地の所有者が公共団体に売りたいという希望を持って、公共団体との間で契約を締結する意思で土地を売るわけでございます。したがって、それに伴って実現をいたしてまいります譲渡所得というものは、これは本来本人の意図した結果に基づく所得でございますから、これにつきましては、一般譲渡と同じように取り扱うというのが税制上のたてまえであろうと私どもは考えております。先ほど小林議官から建設省のお立場のお話がございましたが、私どもは、税法のたてまえからいたしまして、先ほど申し上げましたように、千三百万、六百万、三百万、百万、この特別控除のランクというものは軽々に動かしがたいということで申し上げておったわけでございます。
  25. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵省、そんなことを言うんだったら、一兆九千五百億円の公債発行をして、公共事業を大いにやって景気を刺激するんだ、そういう中で当面する深刻な不況を克服するんだなんて、そんなことを言うのは今後やめたらどうですか。それでは、現実にその公共現業をやらなければならぬ主体はどこですか。自治体じゃありませんか。そうでしょう。その自治体が土地の確保のために非常に苦労しておる。そういう状況なんですよ。それをせめて少しでも有利に動かしていったらどうだろうかというのがこの法案の趣旨なんでしょう。あなたのほうは主税局で、予算を組むのは主計局だから、木枯し紋次郎じゃないけれども、私のほうは関係はございませんと言うんならいいですよ。しかし、同じ大蔵省の屋根の下じゃありませんか。その中で一兆九千五百億円の公債発行をして、何とか景気刺激をやっていくんだ、社会資本を充実していくんだ、それでもって不況対策を何とかやっていくん、だということを大蔵省は言っておるんですけれども、そういうことは今後はもうおっしゃらぬほうがいい。そういうふうにひとつ水田大蔵大臣におっしゃってくださいよ。
  26. 高橋元

    高橋説明員 おしかりをいただいてどうも恐縮に思いますが、私どもの立場を申し上げさせていただきますと、公共事業を実施いたします主体、国、地方公共団体、その他収用権を持っておりますそういった事業者の方が土地を収得なさいます場合に、収用法その他の強制的な法規を持っておられるわけでありますが、それによって事業認定を受けた場合に、千二百万という控除というのは本来適用があるわけであります。本年の税制改正でこれは行政事項になっておりますけれども、収用対象土地を地方公共団体が用事業者にかわって収得する場合について、千二百万の特別控除を認めるというふうに拡大をする。もう一つ、事業認定前に、収用事業の認定を受けておらない場合でも、幼稚園とか、じんかい処理場とか、そういった施設の用地については、地方公共団体が収得いたします場合に千二百万の特別控除を認めるという形で、弾力的に、公共用地の収得についてこれを容易にする措置を講じてきておるということを申し上げておきたいと思います。
  27. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ただいまの山口委員の御質問の点、私たちといたしましては、この分に対しましても、地方公共団体の政策に協力していただける善意の方という意味で強制をかけた者だけを、むしろ善意に政策に協力していただく方に対しても当然税制の特別措置、控除措置をしていただきたいという要望をいたしたんでございますが、他の特別措置との税制の体系上困難であるというので、やむなく御審議願っているような法案で落ちついた次第でございます。  大体、今回の公有地拡大推進に関する法律は、その自的にも書いてありますとおり、地方公共団体が地域の秩序ある都市づくりをなしていくために公有地を確保していくんだということが本来の目的でございます。しかしながら、これが、いま最も重要な問題になっております地価対策、土地対策の大きな一つの間接的な効果をあらわすんでなかろうかということも期待しておるわけでございます。そういう意味から言いまして、この法案がほんとうにそれだけの効果も持っておるんだということの実をあげ、認識を賜わったなれば、おのずから、いま山口さんが述べられたような土地対策税制事項公有地の場合には特にこれを限定するんだ——まあ、税制調査会等においても御認識願い、そういった税制が生まれてくるんじゃなかろうかと私は思っております。私たちも、単に、この公有地拡大法が目的といたしておりますところの、地方公共団体公共事業の推進、秩序ある都市づくりに役立つ直接の目的だけでなくして、このこと自身が、現在最も必要な地価対策、上地対策の間接的な効果というものがあらわれてくる大きな有力なる力になるんだということの御認識を願うまで運用の面において努力をし、そのことを通じて、いま御要望の税制等も、他の税制との均衡上というような点を離れての御認識を願い、そういった特別措置が講ぜられるように今後とも努力をしてまいりたいと、このように考えておるような次第でございまして、この点、まことに微力でそこまで進みませんでしたが、今後におきましても努力してまいりたい。このように考えておるような次第でございます。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵省に考えていただきたいのは、それは収用対象事業でも、土地収用法をかけてやるというようなことは、現実その自治体へ行けば困難なんですね。そんなことをやったら、これはもうたいへんなことで、収用対象の事業であろうとも、いかにして話し合いの中で土地を売っていただくかということで自治体の関係者は非常な苦労をしているのが実態だということを十分御認識をいただきたいと思うのです。そういうときに、その市が他に土地を持っておって代替地等のあっせんも当然できるということになれば、その話し合いも十分スムーズにいくわけなんでありまして、そういう意味で、自治体が、収用対象を、ここに学校をつくるから土地が要るんだということばかりではなくて、単に公有地をたくさん持つということでこの収用というような伝家の宝刀を抜かないで、話し合いで物事を解決をしていくことがやはり基本なんだということを御認識をいただいて、大蔵省に答弁求めてもしかたがありませんから、もう聞きませんけれども、そういう趣旨で、この第五条の扱いについても御考慮をいただきたい。当然、自治省並びに建設省としても、この五条についても、譲渡所得特例対象になるように今後御努力をいただきたいということを実は申し上げておきたいのであります。  ついでにいま一つ税金の関係についてお尋ねいたしたいと思うのですが、いま、建設省は、昭和四十九年には市街化区域内すべてに、一平方キロ一地点を求めまして地価を公示するということで御努力をいただいておるようであります。したがって、四十九年になれば、全国の市街化区域について一応の地価の公水制度というものが完成をする。そうしますと、この法律でも、売買の基準は公示価格によるということになっていますが、公示価格を上回って土地売買が行なわれたという場合に、その間の差益については重税を課するということをやらなければ、この地価の公示制度というのは空文に帰するだろうと思うのですね。そういう意味で、公示価格を上回れば、上回ったものについては重税を課するということについて、この際、税制調査会等でも御検討いただいておるだろうと思うのでありますが、一体これを実施する気があるのかないのか。この点いかがですか。大蔵省建設省、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  29. 高橋元

    高橋説明員 昭和四十五年八月でございますが、地価対策についての地価対策閣僚協議会の決定があるわけでございます。その中に「今後早急に検討すべき事項」として、いま御指摘のございましたように「土地投機取引を抑制し、土地値上がり益の帰属の適正化を図るため、」「公的土地評価の適正化に応じ、適正評価額をこえる土地売却益についてとくに高率の課税を行なう税制として、土地高価譲渡所得税の創設を検討する。」というふうになっております。このことは、ひるがえりまして四十三年の、先ほど来お話しのございます土地税制答申の中にも、将来の検討課題として書いてございます。この問題は、現在建設省で進めておられます公示地点というものが、私どもは二千八百というふうに承知しておるわけでございますが、逐次ふえて、昭和四十九年でございますか、一キロメッシュで一万二千というふうに全国でなる予定に伺っております。一万二千の公示価格地点だけで、全体の土地売買について、公的な価格というものが、税務の執行上も容易に把握できるような形ではっきりきまるものかどうかということが一つの問題だと思います。  もう一つの問題は、公示価格をこえる譲渡所得について重課をいたします場合、それが転嫁をして、かえって売り手市場のもとでは土地の価格を高くするという弊害も考えられないことはないというふうに考えます。そこで、今後、公的な土地評価の適正化、それから保有課税の基礎となります価格との一体化ということがございませんと、いま御提案のような施策も現実のものになっていかいかと思いますが、そういうものとのつながりを考えまして、私どもとしても検討を進めてまいりたいと思うわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、このような税制を取り入れますことによって、かえって税が転嫁されて地価高騰に拍車をかけるようなことにならないように、その面からの配慮も必要であろうと考えておるわけでございます。
  30. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 ただいま大蔵省から御説明がありました昭和四十五年の地価対策閣僚協議会の決定の中の「今後早急に検討すべき事項」の中に、「土地税制の改善」というのがございますが、これは三項目からなっておりまして、一つは「土地の仮需要の抑制等」でございまして、これは法人の投機土地取引の抑制についての法人税の問題。その次に、「土地の有効利用法の促進」といたしまして、「地価公示法による公示価格との関連において公的土地評価の適正化と一本化を図り、時価による土地保有課税を行なうことにより土地の有効利用を促進する。」ということになっております。その次に、「投機土地取引の抑制」として、「土地高価譲渡所得税の創設」ということがあがっております。  ただいま大蔵省から、一キロメッシュの地点ではたして一筆の評価ができるかどうかというお話がございましたが、その点につきましては、2によりまして、地価公示法の公示価格は、一キロメッシュ以上にこまかくするということはおそらく不可能ではないか。毎年毎年そういうことをやることは不可能かと思いますので、この地価対策閣僚協議会の検討事項にございますように、地価公示との関連におきまして、保有課税土地評価の適正化と一本化をはかるということがまず前提になりまして、その上で初めて土地高価譲渡所得税ということが技術的に可能になろうと思います。
  31. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵省のほう、私があとで尋ねようと思いました法人のことを先にお答えになったわけでありますけれども、やはり、昭和四十五年八月十四日、地価対策閣僚協議会の決定いたしました地価対策について、「当面緊急に実施すべき施策」「今後早急に検討すべき事項」。一つは、私が先ほど指摘いたしました公示価格をこえて土地売却が行なわれたものについて高率の課税を行なう。いま一つは、わが党が、今度の予算委員会におきまして、野党各党の皆さんの御協力を得て提案いたしました組み替え動議の中でも主張したわけでありますが、法人の土地投機というものが現在完全に野放しになっている。しかも、現在非常に金融がゆるんでいるという関係で、本来の不動産会社のみならず、他の企業におきましても、土地投機に非常に力を注いでいる。これが野放しになっている現状は無視しがたいではないか、したがって、評価差益について相当課税をしたらいいのじゃないかということを提案をいたしたわけでありますが、この法人による投機に対する課税の強化ということを考えるとともに、せっかく地価公示制度というものが発足して、四十九年におきましては一応全国の市街化区域をカバーできるというときに、それをこえた売買については高率の税を課するのだというくらいのことはやはりやってもいいのじゃないか。そうでなくて、この市街化区域の固定資産税を上げることにばかり政府が夢中になっているということは筋違いではないかということを私どもも申し上げたわけであります。早急に検討すべき施策なんですから、大体いつごろおやりになるつもりですか、その点だけ大蔵省に聞いておきましはう。法人課税の強化、それから、この公示価格を上回る取引に対する課税の強化、これはいつごろから実施をされるつもりですか。
  32. 高橋元

    高橋説明員 当面、土地問題は、低廉、良質の宅地供給ということが非常に緊急の課題でございますので、税制調査会におきましても検討が進められるというふうに思いますが、具体的にいつごろからということのスケジュールはただいま持ち合わせておりません。
  33. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういう重要なことをいつになってやるかわからぬというようなことで、そのかわり、五条の三百万はどうだというと、非常に抵抗されるということは、大蔵省、それはおかしいのですよ。その点はおかしいということをやはり申し上げまして、当然、これはまた各党の理事会で十分御相談があることだろうと思いますから、そこでいい結果を生み出していただくように御期待を申し上げたいと思います。  次は、土地開発公社の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  私、ここで特に欠けておると考えますのは、土地開発公社に対する議会のコントロール、住民のコントロールというのが非常に不定しておるのではないかという問題であります。地方自治法の第九十六条によれば、議会の議決事件がずっと列記をしてございますが、この第七に「前号に定める場合を除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。」となっております。したがって、一定規模以上の土地売却をする、あるいは取得をするという場合は、一々議会の議決が必要なわけですね。これは、やはり、土地の取得、処分についての議会の権限というものを明確にうたっているものだと思うのですが、この場合の政令は一体どの程度の基準になっていますか。
  34. 立田清士

    ○立田説明員 お尋ねの政令は、御承知のとおり、地方自治法の施行令でございますが、その施行令の別表におきまして、不動産または動産の買い入れあるいは売り払いにつきまして、土地につきましては、その面積が、都道府県にありましては一件二万平米以上、指定都市にあっては一件一万平米以上、町村にあっては一件五千平米以上のものにつきまして、金額のほうは、都道府県は七千万円、指定都市は四千万円、市は二千万円、町村は七百万円。こういう基準になっております。
  35. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そのいずれか、面積はそれ以下だが、金額は上回っているという場合は、当然議決の対象事項になるわけですね。
  36. 立田清士

    ○立田説明員 両方の要件が必要ということになります。したがいまして、いま申し上げましたのは、ちょっとそのまま棒読みで申し上げましたので、それに関連づけて申し上げますと、都道府県については、一件二万平米以上で、七千万円以上ということになります。指定都市については、一件一万平米以上で、四千万円。それから市町村につきましては、市につきましては一件五千平米以上で、二千万円。それから町村につきましては、一件五千平米以上で、七百万円。こういうことになっております。
  37. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 わかりました。金額がその程度のものでも、一々議会の議決を経なければならぬということですね。ところが、土地開発公社が発足をすれば、とにかく、それ以上の土地の取得についても、これは何も一々議会にはかる必要はないということになるわけでありまして、そういう意味では、この土地開発公社ができたために議会の権限がずいぶん縮小するといいますか、本来かけるべき案件が対象にならないということが起きると思うのですね。しかし、現実には、各自治体が自治法の財政に関する規定がなかなかきびしいために、民法上の法人をつくりまして、地方公社なるものがたくさんできて、そうして売買をやっているという現実があります。しかし、それが各自治体の汚職の温床にもなっているということもあるわけでございまして、今度公法人たる土地開発公社ができたからといって、議会のコントロール、さらには住民のコントロールというものが全くなくなるということであってはいけないだろうと私は思うのです。  そこで、お伺いしたいのですが、土地開発公社の設立、これは第十条ですね。これは議会の権能。それから、土地開発公社に対する出資、これは第十三条ですか。これは当然議会の議決が必要ですね。それから、定款の変更、第十四条でありますが、これは議会の議決が必要である。それから、第二十五条の債務保証ですね。これについても、当然議会の議決が必要だろうと思います。しかし、これだけでは十分ではない。事業計画、決算というものについても当然議会にかけるべきだと思います。それから、また、監査につきましても、議会の監査委員会に監査を行なうことを求めて、その報告を当然議会が聴取するということが必要だろうと思います。それから、さらに、自治法の第七十五条によるところの住民の監査請求ですね。これも、土地開発公社の財務についても監査請求の対象にするということがしかるべきではないかと私は思うわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  38. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 法律規定をいたしました点は、ただいま先生から御指摘のあった点でございまして、監査の面につきましては、特にこの法律には指摘しておりませんけれども、地方自治法の原則によりまして、議会も監査請求できますし、住民からの要求もできる。監査委員独自でももちろん監査できる。こういうことに相なっております。  それから、議会の審議の資料として、事業計画あるいはそういうものが必要じゃないかというお話でございますが、この点につきましては、現在、地方自治法の施行令百五十二条に、議会に提出をしなければならぬようなものを規定いたしております。この規定を改正いたしまして、新しくできます土地開発公社につきましても、事業計画書あるいは決算書等を提出させるようにいたしまして、議会の十分な監督が受けられるようにするつもりでおります。
  39. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いただきました公有地拡大推進に関する法律施行令案要綱の中に、最後にお答えいただきました事項が入っておりますことは非常にけっこうだと思います。そうしますと、事業計画並びに決算については議会に提出をする。よろしいわけですね。それから監査委員会の監査はできる。住民の監査請求もよろしいわけですね。七十五条には、どういうものについてできるかということがずっと書いてありますが、この法律だけで、土地開発公社についても監査請求の対象になると読めるわけですか。
  40. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 住民による監査請求は、地方公共団体の事務、これについてあるわけでございまして、その事務を公社がかわってやるという法律体系になっておりますので、よろしいわけであります。
  41. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、「地方公共団体の事務」というのがありますが、その範囲でこれはカバーできるという解釈ですね。——はい、わかりました。  それから、ここで地方開発公社ができるわけですが、そうしますと、いままで地方公社として千四百三十二社あるそうでありまして、このうち、土地関係の公社が八百四、五六・一%ばかりあるそうでありますが、これはすべて土地開発公社にするように行政指導するわけですか。公法人たるこの土地開発公社があり、そのほかにまた別の、従来ありました他の性格のものならいいですよ。しかし、同じような土地取得を目的とする地方公社がなお残るということであってはぐあいが悪いのではないかと私は思うのですが、この点はどうですか。
  42. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 その点につきましては、土地の取得を主たる目的とするものはなるべくこの公社に切りかえるように指導していきたいと思います。
  43. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 なるべくというのではなくて、土地に関するものはすべてこの土地開発公社にして、土地開発公社と、それから同じ性格を持つ従来の地方公社が併存するということだけは避けてほしいと思うのですが、この点はどうですか。
  44. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 そのような考え方で進めてまいりたいと思っています。
  45. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それから、この職員はどういうことになるわけですかね。いま、地方公社の職員を見ますと、二万九千七百十八名おる。このうち、地方公共団体の職員が七千九百二十一人おる。二七%が地方公共団体の職員だというのが実態だそうであります。今度公法人たる土地開発公社ができますと、その職員は、地方公共団体の職員がいわば出向といいますか、兼務といいますか、そういう形でやるわけですか。それとも、従来、公法人たるものとしては、住宅供給公社がありますが、そういうような職員ということになるわけですか。この点はどう考えていますか。
  46. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 職員の関係につきましては、大体、住宅供給公社なり、地方道路公社と同じような取り扱いにしてまいりたいと思っております。
  47. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、いまのようなお答えでありますと、従来の地方公務員とは別個になるわけですね。その当該地域の職員の方がはたしてどういう希望を持つかということで非常に違ってくるだろうと思うのです。したがって、この点は、法律ができました過程におきまして、職員団体の諸君とその身分の扱いについて十分相談をして、そうしたトラブルのないようにしたらいいんじゃないかと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  48. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 その点につきましては、基本的には、お話にありましたようによく団体と相談をするか、あるいは個人的な相談になるか、これはいろいろな地方のやり方があろうかと思いますが、十分に個々の職員と話をしまして、無理のないような扱いにしてまいりたいと思っております。
  49. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、やはり一つお伺いをしておきたいと思うのですが、主として都道府県だと思いますが、自治省の職員でありました方が、たとえば何々県の総務部長で行かれるとか、あるいはまた副知事になって行かれるとかということがよくございますね。官僚の天下りということでよく問題になりますが、公社、公団に対する天下りもあるが、地方公共団体に対する天下りもある。自治省の幹部の皆さんが地方公共団体の役職を経験して、地方自治体の実態というものを十分承知しておくということが一切いかぬとはもちろん私は思いません。そういう経験をお持ちの方が自治省の幹部におなりになるということも、それはまた一つの意義があろうと思います。しかし、その地方公共団体に対する天下りがあまりにも頻発であり過ぎますと、これまた、地方公共団体の職員の間にも当然反発があるでしょうし、また、私もかって地方議会の議員をいたしましたが、中央から部長さんなんかが来るわけなんですが、一年か二年おりますと、すぐまた本省に帰って、一格上がるわけですね。群馬に骨を埋めて、群馬の農政振興のためにほんとうに力を尽くすとか、あるいは群馬の建設行政振興のために働くとかいうことでなくて、要するに、一年なら一年、二年なら二年、大過なく過ごして本省に帰りたいというような気持ちだけ持っておるというような人も、見ますと、中には相当いるんですよ。実は、私ども、地方議員でありましたときに、そういう傾向の方については率直に批判を申し上げたことがございました。   〔委員長退席、大石(八)委員長代理着席〕 そういう意味で、自治省が新たに採用しました方が全部、何といいますか、地方に身分があるのをとりあえず自治省が二十人なら二十人採用する。しかし、現実にはみんな地方公共団体の職員であったというようなことは少し行き過ぎではないのかと私は思います。そういうことについて、参議院でたまたま議論があったようであります。その際、任用上からもいろいろ問題がある。自治省が職員を採用する場合は、当然、これは人事院規則にのっとって、人事院が試験をいたしました名簿から採用するわけでありましょうが、採用する。ところが、現実にはその方の身分が地方に行っている。これはやはりおかしいじゃないかということで、参議院でいろいろ議論になったのを議事録でもって実は拝見いたしておるわけでありますが、たまたまそういう自治省の職員の方々の天下り等の問題が議論されておりました際に、自治省課長のある方が「当省の幹部が地方団体に行っているのは、天下りでもなんでもない。本来、自治省の役人は、国家公務員であると同時に、地方公務員の“幹部”でもあるからだ」と言ったというのです。私は、こういうふうに言い切ることは問題だと思うのですね。ですから、自治体からほんとうの意味で請われて行って、そうして、単なる腰かけでなくて、ほんとうに地方のために仕事をする。そういう幹部の方が地方に行く。また、そういう方の中から優秀な方を自治省が引っぱってこられて自治省の幹部にする。そういうことはあってもいいと思いますよ。しかし、何か、自治省に一たん入れば地方に天下るのがあたりまえであって、自治省の職員たるものは地方の幹部なんだということを頭からきめつけて、天下りがあたりまえであるかのような概念を常時持つということであれば、これは問題だと私は思うのです。この点、大臣、どうなんですか。一応大臣としての御意見を承りたいと思うのです。
  50. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 この点参議院で御質問がありまして答えたんでございますが、任用の点でございますが、人事院を通じまして任用試験をやっておりますが、葵祭は地方公務員であるという点、これは、従来、地方団体から自治省が依頼を受けまして、人事院を通さずに、自治省自身が依頼を受けた分に対する任用を国家試験合格者の中から行なっておったといういきさつがあったそうでありますが、しかし、そういうことを別途にやると、国家試験を受けた者の採用に対して、他省との関係があるので、やはり込みにしていただきたいというような点があって、いまのようなことができた。しかし、これを長く続けておることは、いま申されましたような疑義の点もございますので、本年は全部自治省の国家公務員として採用といろことで行ないますということを答弁させていただき、また、ことしはそういうふうな措置をさしていただき、その後において、本人の希望を入れまして、ある程度の研修期間を終わりましてから地方自治体に行くという姿で任用してまいりたい。こういうふうな姿で、今後、御指摘になったような弊害の起こらないように持っていきたい。かように考えております。  もう一つの天下りという点でございますが、私も地方議会を経験いたしまして、いよ申されましたように、地方だけで上がってまいりました職員との間の、いわゆる本省から参ります幹部との異和感、これが存することは事実でございます。また、それが県の行政運営の支障になってはならないと私も考えます。半面、また、ほんとうに自治省の幹部をした者が地方へ参りまして、その土地に骨を埋めるのだというつもりでやっていただき、もう帰らずにそのままその県にとどまるというふうな事例もたくさんあることでございまして、この間は運用によって、いま言われましたような弊害の起こらないように持っていくべきが当然である。このように考えております。いま、天下りということばがございましたけれども、少なくとも、いわゆる私の手元まで決裁判の回ってくる幹部諸君におきまして、私在任さしていただ虫ましてから、天下り的にと言われる観念のようなやり方で人事を行なったというふうなことは厳に戒めてまいっておりますし、そういったものは行なわれていない。私のところへ参らぬものも、その方針で次官以下が扱ってくれておると思いますが、少なくとも、私の決裁いたすものに対しましては、そういう姿でやっております。その中には、自治省から手放したくない、私のそばで自治省の幹部として置いておきたいという者も二、三ございましたが、地方が望まれるのであればというので、私あえて地方へ出したというふうな例も二、三ありますが、少なくとも天下りという姿での運用はしたくないし、また、すべきでない。こういうつもりで運営を行なっておりますので、御了解をお願いしたいと思っております。  なお、その総務課長の発言でございますが、私、帰りまして、本人にもよくただしました。ことばが足りなかった点がある。むしろ、あの当時に、総務課長が、統一見解として、私がいま申し述べましたようなあり方のことを答弁要旨に私のためにつくったというようないきさつがある時期にそれが出たものでございますから、それは本旨と違うじゃないかということをよく申しました。本人も、その新聞に出ておりますような気持ちでなくして、地方自治体を振興することが自治省の幹部の一番の目的だから、そのためには、地方自治体を自治省の幹部たる者は当然知っておらなければいけないのだ、だから、本省の役人になると同時にこれは地方でも働く、地方自治体と一体のものなんだ、という意味を表明したのがそういうふうな姿で、ことば足らずで申しわけないということを本人とも話し合ったような次第でございますが、他意がなかったにいたしましても、そういうふうな誤解を受けるような発言は十分慎むようにということをよく申しておいたような次第でございます。  いずれにいたしましても、私も地方議会におりまして、いま山口委員指摘のような点を痛感いたしておりますので、長所である点は伸ばしていく、欠陥である点は、お互いが努力をいたしまして、これをできるだけ押えてまいる。こういう姿で運営してまいりたいと考えております。
  51. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣がおっしゃるような意味なら、私もよくわかるのですよ。ところが、問題は、これを見ると、たまたま国会、参議院で、自治省の職員の地方公共団体に対する天下りが問題になっておるときに、「自治省の役人は、国家公務員であると同時に、地方公務員の幹部でもあるからだ」と言えば、自治省の役人は地方へ天下るのがあたりまえなんだというふうにもとれるわけなんですね。そういうふうにとりますと、これがたまたま国会で問題になっておるときに、その問題に反発するようなことをあえて言うということは、これは議会軽視であるというそしりは免れぬと思うのです。かつてこの方は、お名前を言うのは恐縮ですから私は言わぬですけれども、公務員第一課長でありましたときに、たまたま衆議院の地方行政委員会でありましたが、人事院勧告の実施の国会の議決に関して非常に誤った見解を当委員会発表されまして、反対をいたしました野党側ではなくて、むしろ、国家公務員の給与に関する法律を通した与党側の諸君が非常に激高したというようなこともあったわけであります。ですから、この自治省の職員の方が、国会の議論に対して誤った認識を持って、誤った見解発表する、そういうことを一度ならずも二度、三度やるということは厳に注意していただかなければならぬと私は思うのです。自治大臣がいまお答えになった趣旨で意見を申し上げたのならもちろんわかりますけれども、この新聞に出ております文章だけでは、どうもそうは受け取れない面がありますので、少なくとも、国会で自治省の職員の方の天下りが問題になっているときに、自治省の職員はもう地方の幹部なんだ、天下りはあたりまえなんだというようなことを言われることは厳に慎んでいただかなければならぬ。また、そういう趣旨であるならば、十分注意もしていただかなければならぬと思います。
  52. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ただいまの御論議、ごもっともでございまして、実は、私、就任いたしましてから、本人が人事を担当する総務課長でございますから、私の趣旨なり、地方に出します幹部の地方との協議事項なり、絶えず私も具体的に申しておりますから、本人もそのことはよく承知しておったと思うのであります。特に、あの当時、問題になりました参議院に対する答弁書き、どういうふうな意味でやるのかということで本人がつくってまいりました答弁書きからながめましても、その話を初め聞いたときに、実は、私、びっくりしたのでございます。私もふしぎに思いまして、あれだけの答弁をし、私とあれだけ話し合って答弁を練ったような人間がそのようなことを言うはずはないと思って帰ってから聞いたのでありますが、そうではなくて、そのことを意識せずに、たまたまその新聞にも書いてありますとおり、このころ自治省を志願する者が非常に多い、これは、自治省を志願すれば地方のいろいろな職にもなっていけるからだという議論の過程の中におきまして、自治省に採用される人間は地方の者でもあり、本省の者でもあるのだという、私が申したような趣旨のことをつかまえてやったのであって、たまたまそれが時を一にしたものでございまして、議会のことを意識せずに、そういう問題についての話し合いのときにしたものでございまして、決して他意はなかったのであるというふうな本人の意見も聞いて、この問題についていままで私が本人と話し合ったときから、当然そんな言が出てくるはずがないと思えた点を、何がゆえにそういうふうな誤解が生じるようなことが起こったかということがわかったわけでございます。しかしながら、今後こういうようなことが起こらないように十分注意してもらいたいということで厳重に注意したような状態でございますので、何とぞ御了承賜わりたいと思っております。
  53. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 御本人が政府委員であれば、私も議運理事ですから、政府委員については当然議運の理事会で問題にしなければなりませんが、幸か不幸か、当該の方は政府委員ではございませんから、私ども、議運のほうで問題にするということの対象にはなりません。それだけに、自治省として、今後こういう遺憾な言動のないように、しかるべく御注意をするなり、対処いただきますように要請をいたしておきたいと思います。  最後にお尋ねをしてやめておきたいと思いますが、第十七条の土地開発公社の業務の範囲の問題です。これを見ますと、「国、地方公共団体その他公共的団体の委託に基づき、土地の取得のあっせん、調査、測量その他これらに類する業務を行なうことができる。」となっております。そこで、問題は、たとえば国が行なうところの国道について、自治体が委託をされて、その土地の収得のあっせんをするということはあり得ると思います。しかし、最近問題になっております新幹線あるいは高速自動車道というものは、国有鉄道なり、鉄道建設公団なり、あるいは道路公団なり、そういった公社、公団が本来実施すべき問題ですね。ところが、最近、こういうものの土地取得について地方公共団体に委託をする。これは民法上の委託契約だと思いますが、契約をするというのが相当あるわけであります。その場合、その地方公共団体に押しつけて委託契約をさせることは問題ではないかということを、当委員会でも、実は、私は指摘をいたしたのであります。したがって、お尋ねするのは、国ばかりではなくて、公社、公団についても民法上の委託契約をすることを一応考えておるのかということが第一です。  それから、特に問題になりますのは軍事基地の問題であります。実は、昨年の暮れの沖繩国会で、土地の暫定使用に関する法律が大きな議論の焦点になりました。その際に、現在の土地収用法や公共用地の取得に関する特別措置法については、自衛隊の基地は収用の対象になっていないじゃないかということが議論されたのですが、かつて、昭和三十九年、土地収用法一部改正法案審議の際に、当時の河野建設大臣が「軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない、これはもう社会通念じゃなかろうかと私は思います。」と答えておる経過が実はあるわけです。したがって、軍の施設というものは、土地収用法や公共用地の取得に関する特別措置法の対象になっていない。ましてや、五年間強制的に使用するという軍公用地の使用法案の中に軍の施設が入っていることは問題ではないかというのが、実は、沖繩国会の大きな焦点でもあったわけであります。私は、そのときの議論をここで繰り返そうとは思いませんが、とにかく、土地開発公社ができる。国等の委託によって土地の取得あっせんができる。そういう場合に、問題は、市街化区域内ですからね。そういう市街化区域内に、自衛隊の演習地だとか、自衛隊の飛行場だとか、あるいは米軍の基地であるとか、米軍の飛行場だとかいうものを取得するために土地開発公社が走り回るというようなことは、私は、現実の問題としてはあり得ないと思う。法律的な解釈は、われわれの側と政府の側とで、沖繩国会でもいろいろ問題になりましたけれども、それは一応おきましても、実体論として、軍の施設あるいは自衛隊の基地等がこの対象にはならぬというふうに考えるのが常識だろうと思うのです。そうでありませんと、土地開発公社というものは、何かよけいなもののためにできたのではないかという国民の批判があってはまずいと私は思いますので、この点、ひとつ、あわせて政府の御見解を承っておきたいと思います。
  54. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 土地開発公社は、地方自治体にかわって、地方自治体が必要とする土地を確保するのが本来の任務でございます。したがって、地域の発展とか地域住民の福祉の向上のために必要である土地の取得ということを、地方公共団体にかわって行なうのが土地開発公社の任務である。かように思います。そのような意味から、国からの公共事業の中で、その地域の発展をはかり、住民の福祉をはかるようなものの委任を受ける。こういうことは考えられますが、いま仰せられましたような軍のための施設といったものはこの中には私たちは考えておらない。このように御理解願ってけっこうでございます。また、そのように運営してまいりたい。かように考えております。
  55. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、この公社、公団の取得する場合は、民法上の委託契約でやる場合がある。しかし、それは、あくまでも、大臣お答えになったように、都市の開発といいますか、だれが見ても、その地域の開発に資するにふさわしいような、たとえば高速道路あるいは新幹線等——これは一部に議論はありましょう。ありましょうが、しかし、当該地域の発展に資するものだということで、民法上の委託契約土地の取得のあっせん等をやる場合があるが、少なくとも、米軍の施設あるいは自衛隊の用地の取得については、市街化区域内にそういうものを取得するということ自体が常識から言ってあり得ぬことだし、また、そういうことは、その地域の開発、発展に資するものとは考えられぬ。したがって、そういうものに対する収得のあっせん等は土地開発公社が行なうものではないんだということに明確に確認してよろしいわけですね。
  56. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま御質問のありましたとおりに私たちも考えております。今後もそういうふうに運用してまいりたい。かように考えております。
  57. 大石八治

    大石(八)委員長代理 林百郎君。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 この法案については、各委員があらゆる観点から質問をしておりますので、私のほうとしても、それとダブらないようにいたしたいと思います。  まず、土地開発公社の役員の選任ですが、これは十六条の二項と三項に規定があるわけですが、これは議会の承認を必要としないわけですか。
  59. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 議会の承認を必要とする事項ではございません。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 議会の承認を必要としないという回答ですね。そうしますと、これはどういう人が選ばれるかという、一つの基準がなければならないと思いますが、それはどういうようになるのですか。普通の欠格条項だけで、あとの条件は考えないということになるわけですか。
  61. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 先ほど、議会の同意を必要としないと申し上げましたが、法律的に同意を必要としないということでございまして、その選任について、設立団体の首長が議会に政治的な責任を持つ、これは当然だろうと思います。したがいまして、設立した後、この役員によって、公社が円満に、しかも不正等が行なわれることなく仕事が行なわれるという責任を議会に対して持つわけでございまして、そういうことに最も適任な能力を判定して選任するということになろうと思います。ここに書いてありますのは消極的な欠格事項でございまして、積極的にこういう要件が必要であるということを一々法律では指定してございませんけれども、この点は公社の運営の基本でございますので、十分議会に対して信頼のおけるような方を地方団体の首長が選任をするということになろうかと思います。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 地方自治体の長が議会の信頼を得るような人を当然役員にすると考えられるというのは、法的な根拠はあるのですか。それは道義的にそう考えるということなんですか。
  63. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 地方公共団体の長は、この土地開発公社を設立し、どういう専業をやっていくかという計画を持つわけでございますが、それにつきましては、議会の議決を経て設立をするということになります。そういう前提でございますので、その議会の同意を得て新しい機構をつくります以上、これに最も適任な人を選ぶということは、法律上当然な地方団体の首長の責任であろうかと思います。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 定款には役員の定数があって、この定款は議会の議決を経るのですけれども、具体的な役員の任命は議会の承認を経ることに条文上はなっていないんじゃないですか。
  65. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 法律上同意を得るというたてまえにはなっておりません。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどから山口議員も言われておりますが、この土地開発公社に対する議会のチェックという問題が非常に重要だと思うのですよ。こういう議会の目の離れたところで、ばく大な——たとえば、資本金百万の土地公社が、これは民法三十四条で設立された公社で、前の公社ですが、それが百億円も借り入れをしている。それで、それを自治体が保証するというようなことを行なっている。そのほか、私は、きょう、山形県の観光開発公社のことで具体的な例をお聞きしたいと思いますけれども、議会のチェックから離れたそういう状態の法人をつくるということは、自治法の精神から言っても好ましいことでないんじゃないでしょうか。  そこで、お尋ねしますが、十八条に財務諸表がございますね。財務諸表も長にだけ提出するんだが、これは、さっきいただきましたものの中では、はっきり施行令で議会の承認を得るとはならないように見えるのですけれども、財務諸表についてはどうするのですか。
  67. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 自治法の施行令を改正いたしまして議会に提出をする。こういうことにいたしたいと思っております。
  68. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうように、施行令は、どこでどういうようにきめるのですか。
  69. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 地方自治法施行令の百五十二条に、現在「普通地方公共団体が設立した地方住宅供給公社及び地方道路公社並びに当該普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの二分の一以上を出資している民法第三十四条の法人、」というようなものについて書類を提出しろという規定がございます。その中に新しくできますこの土地開発公社も入れるという考えであります。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これは提出をするとありますが、提出をして議決を要するわけではないのですね。提出をするということだけなんですね。
  71. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 議決事項ではございません。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう議会のチェックあるいは議会の目の届かないような公益の名をかりた法人で、地方自治体の一部であるかのごとく、また、ないがごとき、あいまいもことした性格を持った公社ができるということは非常に重要な問題だと私は思うのです。  私、一例を申しますが、これはおたくのほうへ調査を依頼しておいたんですけれども、実は、山形県に山形県観光開発公社がございまして、この観光開発公社は民法三十四条の財団法人だと思いますが、これはもちろん公益性を持たなければならないわけですが、この県観光開発公社の会長は山形グランドホテルの社長で、山形新聞社社主で、YBCの社長で、県経団連会長だ。知事は観光開発公社の顧問だ。副知事は観光開発公社の理事長だ。この公社の会長をやっている服部敬雄氏が知事に対して五千万円の出損金を県から公社へ出捐させて、そのうちの半分の二千五百万円を、内分が社長をしている山形グランドホテルに流用している。こういう事態があるわけなんです。こういうようなことが公然と行なわれている。こういうようなことは許されることなんでしょうか。だから、こんな人を公社の会長にしておけば、県の財政と、自分のやっている山形グランドホテルの経営と、全く公私が混同してしまう。それで、県民に言わせれば、知事は服部氏で、安孫子知事はグランドホテルの支配人だというような悪口まで言われているということなんですが、そんな不見識なことがこういう形で行なわれていいでしょうか。自治省は、これを調査され、適当な行政指導をされたでしょうか。
  73. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 前段にお話のございました、今度新しくできます土地開発公社の役員の選任の問題について、先ほど私が法律上の要件というものは規定していないと申し上げましたが、従来民法法人でやってまいりました公社の中にもいろいろな形態があろうかと思います。ただいまお話のありました山形県観光開発公社につきましては、私も詳細には存じておりませんけれども、こういう一つの営利企業を営んでおる方が新しくできます土地開発公社の責任者になるというようなことは、私たちは、きびしく戒めていくように指導してまいりたいと思っております。御承知のように、現在までは、任意的な民法法人という形で行なわれておりますので、そういう点についての十分な指導が行き届かった点があろうかと思いますが、新しくこの公社ができます機会に、十分な指導を徹底してまいりたいと思っております。  御指摘のありました山形県の具体的な事例につきましては、私も詳細には存じておりませんけれども、これは当然予算を通じて議会で御審議をいただき、地方団体として、それが公共の目的に合致するという決定をされたものであろうと思いますので、そういうことであれば、違法というような問題ではなかろうと思っております。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 ここは国会ですから、もし、地方自治体が誤った行政処置をしたり、議会が好ましくない運営をしていれば、それに対して行政指導を促す権限を国会としては持っているわけなんですが、あなたが、県議会が議決したのだからたぶんこれは公益性があるだろうと言われる山形グランドホテルというのは、昭和四十六仲の四月に設立され、資本金が五億円、地下二階地上八階建て、客室が八十室、その規模は県内随一だと言われており、山形市本町の繁華街にそびえている。そのグランドホテルの社長がたまたま観光開発公社の会長であるからということで、公社へ県から出された金の半分を社長個人が経営しているこの営利法人へ持ち込んでいくということはできないことじゃないですか。地方自治法には、営利を目的としているところへ地方自治体の財政を投入してはならないという規定が二百三十二条の二にあるんじゃないでしょうか。「公益上必要がある場合においては、寄附又は補助することができる。」とあって、「公益上必要」となっている。地方行政の実例でも明らかなように、この公益性というのは、長の自由裁量行為ではない。客観的に公益上必要があると認められたものでなければならないというようにあるわけですね。そういう規定がある場合に、観光開発公社の会長が、自分個人が営んでいるホテルヘ、公社の金、すなわち県の出損金と称する金から半分も融資するということは、それでも公益性があるとあなたはお考えになりますか。どういう公益性があるとお考えになるのですか。  もしそれが正しくないなら、自治省としても十分調査をして、そういうことは好ましくないと——私は、これは刑法上の背任罪になると思うのですよ。自分が社長であるグランドホテルへ公社の金を半分持っていくわけなんですからね。それから、さらには、民法にいうところの公益性を害した行為をするこういう公社というものは解散をさせるべきだと思いますし、それからまた、この二千五百万という金は、ホテルから公社へ返させるべきだと思うのです。このくらいの措置をしなければ、いま言ったように、知事の権威が全く落ちて、ホテルの支配人だと言われるようなことになる。知事自身はそういうことを耳にしているかどうか知りませんけれども、そういうような不見識な地方行政が行なわれていることになるわけなんですけれども、官房長はどういうふうにお考えですか。
  75. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 私、実態をよく存じておりませんので、お話にありましたような問題が背任になるか、あるいは地方畠治法に違反するかというような点については、にわかに断定しがたいと思うのですが、地方の観光開発という観点から、一般に民間で行なわれているような事業をある程度地方団体が援助してやる、自分が片棒をかついでこれを実施していくというようなことはしばしば見られるケースでございまして、そういう問題が公共の目的、公共の利益に合致しないということになると問題があろうと思いますけれども、認定はいろいろむずかしい点があろうと思いますが、そういう形をとった場合においても、絶対にこれは公益性がないということを直ちに判断することはむずかしいんじゃないかというふうに考えましたので、先ほど、地元でも十分に議論をされたことであるので、一応そういうことではないだろうかということを申し上げたわけであります。最終的にどうであるかということは、直ちには私どもとしてここで認定はできないだろうと思います。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、このことを質問するから、山形県に命じてよく調査をしておいてくれと、特に自治省のほうに頼んだはずですよ。  これがあなたの言うように、公益性があるんだ、観光事業に尽くすんだということなら、たとえば旅館組合全体に、山形の旅館施設を近代的にしてそこの観光客の需要にこたえるようにするといって出すなら、これは公益性があるかもしれませんよ。しかし、グランドホテルの社長で、しかも開発公社の会長という、その個人のところへだけ二千五百万も出している。しかも、県のほうは、それを出損金として、もう返ってこない金として出しているわけでしょう。それがどうして公益性になるのですか。少なくとも観光に公益性があるというなら、もっと公共的な要素を持たなければならないんじゃないですか。あなたがもしそんな考えを持っていたとすれば、こういう事態は直りませんよ。方々にこれは事例があるのですからね。電力会社と癒着した県の企業局だとか、不動産会社と癒着した土地公社とか、いろいろありますよ。官房長がそんな考えで今度の土地開発公社をつくられても、この人事は、あなたの言うように必ずしも議会のチェックが及ばないということになれば、これは不正の温床になりますよ。二人の談合へ県当局が、あるいは土地開発公社が口を入れるのですから、これはどうにもなるわけですよ。それじゃひとつこの話はこわしましょうか、デベロッパーにこれだけで売りましょうか、そのかわり、この話をこわしたので、幾らか手数料をいただきましょうか、あるいはデベロッパーへこれだけ売るなら、公示価格の基準はこれだけだけれども、これだけで買いましょう、そのかわり、高く買ったお礼はいずれ何とかいたしましょう、と、そんなようなことが行なわれる。それは、土地開発公社の職員は、刑法の適用上、公務員の適用を受けるという規定はありますけれども、いまの山形県の事例は、明らかに背任だと私は思うのです。しかし、あなたのようなそんなあいまいな考え方土地開発公社の今後の行政指導をしていかれるということになると、これはたいへんだと思うんですよ。土地は値が上がる一方ですし、デベロッパーや、各商社や、不動産会社が土地を買いあおっているときに、それに一枚県当局が加わるのですから、そこには、利害が非常に錯綜して、複雑な事態が起きてくると思うのです。そういうときに、県はもっとき然として筋を通さなければいかぬと思うのです。グランドホテルへ二千五百万県から行っても、それだからといって、観光に寄与しないとはにわかに言いがたいですなんて、そんな答弁をされていたら、あなたは指導できないと思いますが、どうですか。
  77. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 いまのお話でございますが、このグランドホテルの事例が、これが非常に望ましいとか、あるいはこれを新しくできます開発公社にも適用していこうとか、こういうことではもちろんございません。現在民法法人で行なわれております開発公社の場合にはいろいろな事例もあろうかと思います。これを公法人化し、また、自治省なり、あるいは府県の監督規定もはっきりいたしまして、むしろ、そういう民法法人で行なわれております行為にきびしいワクをある意味においてはめていきたいというねらいもこの法律にはあるわけでありまして、この法律を通じて、責任者の人選なり、あるいは業務の執行については、厳正に行なわれるように私どもは指導してまいるつもりであります。ただ、山形県の御指摘になりましたものは、現在民法法人として行なわれておる公社についてそういう事例が出たわけでございますが、それを直ちに背任であるとか、あるいは自治法違反であると言うには、何といいましても、やはり議会において議論をされ、そういう場を経ておりますので、予算も議決をされているということでございますから、これがどの程度の違法性があるかということの断定は直ちにはいたしかねるということを申し上げたわけでございます。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 少なくとも、これは好ましい事態だとお考えになりますか。もう服部氏はやめているのですよ。自分で責任を感じてやめているのに、まあ責任をどの程度感じたかどうか知らぬけれども、国会で審議しておるときに、自治省が、そのやめた人までも弁護するがごとき印象を与える答弁をここでなさるということは好ましくないと思うのですよ。少なくとも、こういう事態は好ましくない。実情を十分調査して、少なくとも疑わしい事態があるならば、厳正な行政指導をする。こういうことは大臣回答できますか。
  79. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 山形の事件につきまして、林委員質問があるということで、私も、事務当局から、詳細に調べました事項を聞かしていただきました。林委員の御見解は、好ましくないことであるから、自治省としてこういうようなことがないようにということであろうと思いますが、いま、会長は服部さんがやっておられる。その方がまたグランドホテルを持っておられるから、自分の会社へ自分が会長をやっているものを持っていったんだというふうな論法でございました。しかしながら、そういうふうな方がそういうふな立場に立って、開発公社の会長であり、また、一つのホテルの代表、社長となっておられるということもあり得るんじゃないかと思います。ただ、その方がそういうふうな立場で自己的に動かれたかどうかということが問題になってくるんじゃないかと思います。いま服部さんはやめられたということでございますが、そういうふうな疑義を生ぜしめないために、むしろみずから進んでやめられたんじゃないかというふうに聞いております。責任を感じてやめられたんだ、悪いと言われたからやめられたんだ、そんなものでなかったのじゃないか。そういうふうな立場にあるものですから、やめるほうがよかろうと、むしろ進んでやめられたのじゃなかろうか。これは私の想像ですけれども、やめられたということを事務当局から聞いたときに、そういう話がございました。  これは、三十九年から運輸省が許可いたしました公益法人でございます。結局、五千万円の出損金を公社に対して行ないますときに、議会からそれの決議をもらっておるわけであります。しかも、その五千万円の中で、このホテルに出捐するということも知事が申されて、議会の議決を経ておる。もちろん、そのときは共産党は反対であられたということも聞いておりますけれども、とにかく、議会の議決を経て、明らかにしてやられておる。問題は、一営利会社であるホテルに公益法人がそういったものを出捐することが妥当であるかどうかという客観的な問題であろうと思いますが、山形に本格的なホテルがないということで、いわゆる観光施設の先駆的な一つの設備としてのホテルが建ったのに対して公社が出捐するということであれば、これはあながち違法な行為であると直ちに申すことはできないのではなかろうか。おそらく、観光公社の民法上の寄付行為の事業目的にも逸脱するものでない。観光施設の開発というような、寄付行為の事業目的の範囲内に入っておるのではなかろうか。かように考えております。したがって、その間に個人的に表面にあらわれた、それだけの事件じゃないか。裏に、いま林委員指摘のような背任事件か何かがあれば知りませんけれども、そうでない限りにおいては、私たちが、こういうようなことはよくないから改めろと言うような不当な行為ではない。かように私自身事務当局から事実を聞きまして、判断したような次第でございます。私たちが知り得ぬ何ものかがありましたら、また別でございますが、本来聞きました限りにおきましては、五千万円はちゃんと議会の議決をとった。その中の金がグランドホテルへ出資されるということも議会は承知した上の議決でございます。公益法人である観光開発公社のそういった事業がはたして公益性のある観光施設事業となるかという点につきましては、県会で議決されるほどのものでございますから、第三者的にながめて、観光開発公社の寄付行為を定めております事業目的の範囲内と考えてしかるべきようなホテルであり、ホテル出資である、こう思います。現物を見ていないですから、山形の観光の施設がそんなものを必要とするかどうかということは、私の判断をいま申しかねますが、少なくとも、そのことを承知で議決されるということは、客観的に寄付行為の示す事業目的の範囲内である。私はこういうふうに判断したような次第でございます。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの話を聞いていると、いかにも自民党のイデオロギーがむき出しに出てくるような感じがするんですよ。いいですか、安孫子知事は県の商工労働委員会でこう言っているんですよ。四十六年度に不用額が五千万出た、この際これを利用して、そして五千万を観光開発公社に出すと言っているんです。予算が余ったと言うんです。ところが、余ったと言いながら、失業対策費は九百四十四万九千円の減額補正をし、労働福祉費は三千七百十万六千円の減額をし、成人病対策費は五百八十七万円の減額をし、生活保護扶助費は六千五百二十万円の減額をしているんですよ。要するに、県民の生きなければならないぎりぎりの県からの出費というものは、みんな減額しているのですよ。そして、余ったからといって、あなたは先駆的な役割りを果たすからということで、資本金五億で、地下二階、地七八階、客室八十の県下随一の規模のホテルのここへ、失対費や、成人病対策費や、あるいは労働福祉費を減額までして捻出した金を出す。それが何で観光の先駆的な役割りなんですか。そんなことを平気で自治大臣が言うとなれば、私はあなたの人格を見直さなければならぬ。林さんの言うように、県民から見ても、これはどうも疑わしい点が十分ある、今後はそういうことをしないように、少なくとも、観光とはいいながら、民法三十四条の公益法人として設立された公社であるから注意をするようにしましょうと、一言あなたは言えないのですか。あなたの言うことは、安孫子知事の言っていること、そのことですよ。先駆的な役割りを果たすといっても、そんな山形県随一の大ホテルへ金を出すことが先駆的な役割りですか。あとやれるかやれないかで困っている旅館業者がたくさんおるでしょう。そういう旅館業者へ、山形へ来た人たちに安い旅費で静養ができるように設備を改善しろといって出すことのほうが、それが観光の先駆的な役割りじゃないですか。
  81. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 私は、林さんのそれは政策論だろうと思うのです。五億のホテルへ先駆的に出すと言われる知事のやられることがよいか、もし出すのにしても、もっと小さいところへ補助をしてやって、安く泊まれるような旅館を設けるのがいいか、これは政策論だと思う。私は、自治大臣である以上は、地方自治体の議決されたものが、したがって、向こうが政策的にきめられたことが、林さんの言われる政策に合っていなくても、また、私自身が個人渡海元三郎として考えました政策に合っていなくても、自治大臣として、直ちに、そのことを、それはよくないですからこうしなさいというふうな処置をすること自身が、地方自治そのものを守るゆえんであるかどうか、もし、林さんの言われる政策がよかったとしたら、県民自身がいろいろな面において、地方自治としてチェックしていただけるのでなかろうか、かように考えまして、自治大臣が持っておる権限で、それはよくないからということを直ちにこの事件で私は申し上げかねるということを申し上げておりますので、ひとつその点だけは御了解賜わりたいと思います。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 同じ自民党の知事だから、あなたが擁護することはわかりますよ。わかりますけれども、おのずから常識というものがあるわけですよ。だから、ここでこの問題をいつまでも論争していれば限りがありませんが、少なくとも、実情をお調べになって、そして疑わしいような公益法人として、あるいは地方自治法の二百三十二条の二から言って、国会でもこういう点が論議になったからということで、十分配慮をしろと言うことはできるわけでしょう。常識で考えたってそうじゃないでしょうか。県はただでさえ乏しいと言っているときに、また、地方行政委員会では、地方自治体の財政をどうして豊かにするかと言っているときに、余ったから、山形県随一のホテルへ、開発公社の会長をやっていられる服部さんの経営しているホテルへ出捐しましょうということは、どう考えたっておかしい。自治大臣として、これは国会でも論議になったから、今後は十分注意されてしかるべきだ。大体、議会だって、自民党の与党が多いわけなんですから、知事がかりに間違ったことをやっても、議会は通っちゃいますよ。しかし、おのずから常識というものがありますからね。だから、その辺を十分お考えになって、この点を調査されて、そして、注意されるべき点があったら注意するということはいいでしょう。それもできないのですか。
  83. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いまの一番最後の点ですが、調べて注意すべき点があったら注意する。そのことは申し上げます。しかしながら、議会で議決までされたのです。いま、林さんは、どうせ自民党の安孫子さんが知事だから、そんなものは議会へ出した以上通るのだとおっしゃいますが、私はそんなものじゃないと思っております。議会で議決までされた。共産党は反対であったということを聞いておりますが、しかしながら、議会で議決されたという中には、そんな意見も出たであろう、その上での議決であろうと思いますから、調べてはみますし、そして、もし注意すべき点があれば注意する。それ以上の要望が先に出ておりましたが、その点はこらえていただきたい。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、この問題はこれで終わります。  法務省の方に来ていただいて恐縮でしたけれども、いまの点、私としては、背任のにおいが非常にするわけなんですけれども法律的に背任として割り切れないにしても、好ましい事態であるかないか、その辺の法律的な解釈をお聞きして、それで退席していただいてけっこうだと思います。
  85. 前田宏

    ○前田説明員 お尋ねの件につきましては、警察あるいは検察庁で捜査をしているわけでございませんので、断定的なことを申し上げかねるわけでございます。御承知のとおり、背任罪はいろいろ条件がございまして、端的に申しまして、自己または他人の利益をはかる、あるいは本人に損害を加える目的を持つということが必要でございますし、また、特に、財産犯でございますから、本人に財産上の損害を与えるということが要件になっておることは申すまでもないことであります。そういう観点からいたしまして、先ほどからお尋ねのございましたように、そのホテルに対する出資が公社としての業務の範囲外であるかどうか、つまり、任務に違背があるかどうかという点も問題でございます。さらに、また、財産犯的な面から見まして、この事態が公社に財産上の損害を与えたと言えるかどうかということ。これは相当疑問ではないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、直ちに背任罪と断定するかどうかということは言えないのではないか。また、その当否につきましては差し控えたいと思います。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 法務省の方に聞くのも何ですけれども、こういう事態が好ましい事態だと思いますか。損害を与えないといっても、観光開発公社へ五千万円の出捐が県からあったのです。そのうちの半分が、本来の使途だと私は考えない山形グランドホテルに行っているのですから、これは観光開発公社へ損害を与えて、そして、観光開発公社の会長である服部敬雄氏が、自分が社長をしておる法人山形ホテルの利益をはかったとしか思えない。これは観光開発公社へそれだけの損害を与えたことにならないのですか。それが正しいのだと言えば、話は別ですけれどもね。
  87. 前田宏

    ○前田説明員 最後にも、当否はちょっと差し控えたいということを申し上げたわけでございますが、いまの点、重ねてお尋ねでございますが、要するに、財産犯ということでございますから、貸し付けたことが、いわゆる不良貸し付けであるとか、とても回収困難であるということがあれば別でございますけれども、そういう点は、どうも直ちには出てこないように思われます。そういう意味におきまして、公社の財産的な被害、損害というものがあるかどうかということは疑問じゃないかというふうに申し上げたわけでございます。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 官房長にお聞きしますが、出損金というのは、もう県へは返ってこないのでしょう。
  89. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 県の観光開発公社に対して県が出損をし、観光開発公社からホテルに出しているのは、出資金として二千五百万出している。こういうことでございます。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、県へはもう戻らないわけでしょう。公社へは出捐金として県が出しておるわけですから、これは寄付と同じことになるわけでしょう。それから、山形グランドホテルは出資ですから、これも貸し付け金ではないから、戻らないのじゃないですか。清算すれば別ですけれども、そういうことですね。
  91. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 清算とか寄付とかいう特別な行為がなければ、当然戻る命ではないと思います。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 前田さん、そういうわけなんですよ。わかりましたか。そういう金は、これは県民の税金ですよ。これが山形県随一のホテルへ行っておるということですから、少なくともそういうことは好ましくない。法律上から言っても、そういうことは好ましくない。好ましくないと考えたから、自分でもやめたのでしょう。そういうことは言えますか。少なくとも、疑いを持たれる可能性もあるということは言われるのじゃないですか。
  93. 前田宏

    ○前田説明員 先ほども申し上げましたように、出資でございますから、それ自体、公社のほうの債権といいますか、財産であるわけだと思います。そういう意味で、先ほど来、財産上損害があるとは言いがたいのではないかということを申したつもりでございます。なお、私どもといたしましては、検察庁の判断が出るかどうかということの観点からの意見しか申し上げかねるわけでございます。その出資の行政的な意味での当否ということは差し控えたいというふうに思います。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、どうぞ帰ってください。  次にお尋ねしますが、土地開発公社の資金面の問題なんですけれども、公営企業金融公庫から融資が十億円だというんですね。最初自治省では、土地開発金融公庫の構想を持っておられたようなんですけれども、それがなくなって、そして、結局、公営企業金融公庫から十億ということなんですけれども、この資料によりますと、地方公社の四十四年度の事業実績、これは調査室の資料ですが、「事業費総額で六千五百五十四億となっており、これは、地方公社出資総額八百十億円の八倍となっている。」この事業費の約七三%に当たる四千七百五十七億円を借り入れ金によってまかなっておるということなんですね。こういう状態。それで、六千五百五十四億円というのは、地方公社出資総額の約八倍の仕事をしているということになるわけなんですけれども、この前の自治省の答弁から言いますと、この五カ年間に三十三万ヘクタール、印に六万と若干の土地を取得する。それには約二兆円の資金を必要とする。こういう資料がここに出ておるわけなんですけれども土地開発公社をせっかくつくったけれども、これに対する融資の道がこれで足りるわけなんでしょうか。どういう運営でやり抜くのでしょうか。
  95. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 いまお話にありましたように、当初は、中央に土地開発金融公庫という特別な金融機関を設けまして、これによって低利、長期の融資の世話をしたいという構想を持ったのでございます。しかし、そういった長期の特別な資金を用意することが直ちにできないという状況になりましたので、多少後退をしたということになるかもしれませんが、主として民間資金を活用する。そういう方法によってもなお、土地の先行取得をしたほうがいい。こういう判断に立ちまして、民間資金の活用に主力を置くように考え方を変えたわけでございます。しかし、できれば公営企業金融公庫からの融資の道も講じたい。その金額は、お話にありましたように、本年度は十億というきわめて僅少な額でありますが、できれば、これも状況に応じて逐次ふやしていきたいというような考えのもとに、とりあえず本年度はこういう形で出発をすることにしたわけでございます。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 本法案については、先買いの形成権がないとか、あるいは都市計画法の五十六条ですかの買い取り権がないとか、そういうようなことで、土地売買についての、地方自治体が仲介に入っての協議が法制化されているんだというようなことから、非常にざる法じゃないかという意見が各委員から出ているわけですけれども、しかし、これは財政の面から言っても、約二兆円ぐらい必要だというこの資金をどこからどういうように融資するつもりなんでしょうか。たとえば農協中央会からも融資を受けると言っていますけれども、それがあるにしても、二兆円という数字と、公営企業金融公庫からの十億という金とではあまりにかけ離れているし、それから、民間宅地開発事業には、日本開発銀行から四十六年度五十億円の融資、四十七年度八十億円の融資、そのほか住宅金融公庫から三十億ぐらいの融資、民間にはこれの何倍という融資が——まあ、絶対額から言えばそう大きいとは言わないけれども、融資されているのに、公有地を獲得するというこの公有地拡大法案に対する金融的な措置としては、あまりに貧弱ではないでしょうか。どういう財政的な見積もりをお持ちになっているのでしょうか。
  97. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 お話のように、十分ではないと思います。ただ、本年度は、この法律が施行されましてから新しい公社が発足をして事業を行なっていく、年度後半に発足するという関係もございまして、まあ、公営企業金融公庫から融資の道を講ずる。その量はきわめてわずかでございますが、そういう方法が講ぜられるということによって将来に期待を持ちたいということでございまして、本年度、あるいはまた将来においても、大部分は民間の資金にたよらざるを得ない。こういう状況でございます。なお、その中で、農協の資金だけはワク外の制限もある程度緩和をいたしまして、活用ができるようにはかっておる次第でございます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、お尋ねしますが、この法案によって一体どのくらいの面積の公有地を、まあ、何年間なら何年計画でいいですが、獲得しようとお考えになっているわけですか。
  99. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 法案を作成する段階におきまして地方の状況を調査したのがお手元にありますような数字でございまして、地方としましては、この五カ年間に三十三万一千ヘクタールの土地をほしい。こういう状況でございます。そのために、現在予想される価格から算定しますと、この金額が十一兆円ばかり要る。こういうことになるわけでございます。ただ、この調査の時点後、公共事業もさらに拡大していきたい、こういうような状況にもなっておりますので、土地の需要はもっとふえるんじゃないかというように私たちは考えております。したがいまして、単年度平均にいたしますと、先ほどお話がありましたように、六万六千ヘクタールの二兆二千億円ということになりますが、少なくともこれ以上のものを獲得していかなくちゃならぬだろう。かように考えております。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、二兆二千億円の資金が必要だ。かりに、総額二十二兆として、それを十一年か十年で割りますと約二兆円という金額が出てくるわけですね。  そこに土地開発金融公庫の機構を書いた図面がありますか。ありましたらちょっと見せてください。つぶれてしまった土地開発金融公庫の構想を——わかりました。   〔大石(八)委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、官房長、その二兆円というのはどこからどういうようにという計画を立てているんですか。財政的な計画がないということはおかしいですね。
  101. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 この需要は、もちろん、地方公共団体として直接予算で買う分も入っておるわけでございます。公社に二兆二千億全部買っていただくということではないわけでございまして、たとえば昭和四十五年度を見ますと、地方公共団体で取得をした面積が三万九千ヘクタール、金額にしまして六千七百二十四億円、これに対して公社のほうでは、約一万八千七百ヘクタールの土地を四千五百四十二億ぐらいで取得をしておるわけ下ございます。したがって、四十五年度におきまして、地方公共団体と公社と合わせますと、すでに五万八千ヘクタールの土地を取得し、一兆一千一百六十六億の金を必要としておるわけでございます。これが四十六年度になりますと、まだ見込みの段階ではございますけれども両方合わせますと、すでに約七万ヘクタール近くなるんじゃないだろうか。金額にしましても、一兆七、八千億になるんじゃないかというふうに考えております。この資金面につきましては、公社に期待すると旧時に、一般予算におきまして、先行取得あるいけ土地公共事業の取得に伴う地方債等を拡充いたしまして、これにつき策しては、低利の資金もできるだけ用意をしていきたい。こういう両面からこの資金の手当てをしてまいりたい。かように考えております。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣は、最初に、この法案の金融的な裏づけとして、土地開発金融公庫の構想を持ったのですけれども、これはどうして実現に至らなかったのですか。
  103. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 土地開発公社、これが民間団体で、民法上の法人として、現在すでに八百四生まれておる。なぜ自然発生的にそのようなものができたかと申しますと、一つは、効果的な迅速な行政活動をあげる必要があるということと、もう一つは、民間資金の活用という部面から生まれたんでなかろうか、かように考えるものでございます。私たち、いま、昭和四十七年度からもすでに二兆円余りのものになるであろうと、こういう予測をいたしております。したがいまして、その半分ぐらいのものが土地開発公社で買われるという姿になるのであろうと思います。地方公共団体が半分ぐらいを直接買う。その部面に対しましては、各事業に対する土地代金という姿で、起債あるいはその他の措置で、補助均等で財源措置をしておるわけでございますが、本来、地方土地開発公社は民間資金の活用というもので生まれたものでございますから、民間資金の活用をはかっていくということになりますが、しかしながら、公共団体が身がわりとして行なうものでございますから、弱い自治体におきましてもできるだけそのような資金の調達ができるように、また、できるだけ低利なものによって買い取りができるように、民間資金の活用にいたしましても、土地金融公社等をつくりまして、政府の出資等を得まして、地方土地開発公社にかわって、民間資金をその公庫で操作することによりまして、できるだけ安い、低利なものを安定して供給するという必要から、そのような構想を出した次第でございます。しかしながら、機構その他の関係で、これが実現するに至りませんでした。そのかわりといたしまして、微温的でございますが、現在ありますところの農協系統資金の員外規制、この点に関しましては、制限を取っ払っていただいて、農協系統資金を活用しやすいようにさしていただいたことが一つと、もう一つは、いま十億という金額は少ないじゃないかということで、御指摘のとおりでございますけれども、これで芽を出したのでございまして、公営企業金融公庫という、地方自治体にそういった部面で民間資金を供給するための公庫がございますので、一応ここからも出し得るのだという道を開くことによりまして、将来の土地開発公社の財政需要に応じまして、これを伸ばし、公営企業金融公庫の業務の拡充を通じて、前に構想を描きました土地開発金融公庫の役目を果たしていくように今後努力いたしてまいりたい。このように考えておるような次第でございます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど私も数字を出しましたけれども、地方公社出資総額が八百十億、事業量はその八倍の六千五百五十四億、そのうちの約七三%、約四千七百五十七億円が借り入れだ。この公社に対しては、自治体が保証ができるわけですね。こういう出資金の八倍もの事業量をまかなっていく。そのために、その八倍の事業量の、金額で言って七割が借り入れ金だ。そういうものを地方自治体が連帯保証していく。おそらく、ほとんど保証していくのじゃないかと思うのですけれども、そういうものは地方財政を大きく圧迫することになりませんか。そんな出資金の八倍もの大きな金額を運営していく。この調査室で出した例によりますと、百万の資本の公社が百億の金を使っているというような実情なんですね。社団法人か財団法人か知りませんけれども、そういうような実例もある。それを地方自治体が一々保証していくということになりますと、非常に大きなリスクを地方自治体がしょうことになりませんでしょうか。
  105. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 将来、その土地公共事業として利用されるような場合は、一般会計に繰り入れて支出されるというふうなことで回転していくのでなかろうか、かように考えます。したがいまして、民間資金を導入して買っておる土地そのものによりまして、直ちに地方財政を圧迫するという姿にはなるようなことはなかろう。債務保証するにいたしましても、将来、その土地が何の財産的価値もないようになるのだというふうな点はチェックされていくのではないかと思います。また、将来の公共団体等の利用との回転等も考えての債務保証が行なわれるのでなかろうか。かように思いますので、直ちにそれが地方財政の圧迫につながるものであるというようには考えておりません。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 建設省お尋ねしますが、本法案による先買い権対象になる土地は、これは都市計画法の五十六条、五十七条等の、買い取り請求権あるいは先買い権対象になるような、場合によっては土地収用もできるような、都市計画事業が非常に具体的になっているものじゃないですね。だから、ある程度これは土地を持っていなければならない時期があるわけでしょう。そういう間の金利というものはどういうように考えるのでしょうか。大臣は、これはまた土地を売ればそれだけの財産があるいうと言うけれども、すぐ売るようなものじゃない。すぐ売るようなものは、都市計画法なり土地区画整理法で、そういう土地については、もっと強力な買い取り権なり先買い権がちゃんとあるわけなんですから、これはばく然とした、その手前の土地を買うわけでしょう。だから、その出資金の八倍もの金、あるいは百万の資本金で百億の金を使うというような、その間の金利というものはどういうように考えたらいいのですか。
  107. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 土地開発公社が借入金で買いました土地を、数年後に都市計画興業等の用に供します場合、あるいは建設省の直轄事業の用に供する場合、あるいは各種の公団等が事業用地に使うという場合につきましては、補助金なり事業費の算定におきまして、半年複利七分五里という金利を見まして、そのほかに事務費等の諸経費を見るという算定で、補助金なり事業費の算定をいたすわけでございます。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そういう事業費なりそういう金利は、補助金として見るのですか。
  109. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 そのとおりでございます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に、これも土地問題と関係してきておる問題で、一応聞いておきたいと思うのですけれども宅地開発指導要綱というものを各自治体で最近つくりだして、私の手元にも、いま、大宮の例と町田市の例があるわけなんですけれども、大都市周辺の市町村が、宅地開発に、自治体の財政が追いつかないために、宅地開発指導要綱をつくって、宅地開発の規制をし、必要な関連公共施設の費用を開発者に負担させるということが出てきているわけなんですね。これは、人口の急増地域の市町村に対する財政対策がおくれていることからくることで、これについては、自治大臣からも、早急にその対策を立法化しなければならないということが言われているわけですけれども、武蔵野市では、マンションの建設や宅地造成の無秩序な進行を食いとめるために指導要綱をつくったところが、デベロッパーのほうから、それなら訴訟を起こすのだというようなことまで言っている。武蔵野市の市長は、訴訟を起こすなら受けて立つ、しようがないのだと言っている。こういうような事態が起きたわけなんですけれども、指導要綱としては、こういうものを作成することは、自治体としてはほんとにやむを得ない事態だと思うのです。大宮の場合などは、教育及び福祉施設についての相当強力な条件などがいろいろ出てきているわけなんでありまして、これについて、自治大臣は、早急にその対策を立てなければならぬという答弁をされているわけなんですけれども、内治省としてはどういうようにお考えになっていますか。
  111. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 人口急増地域におきまして、一時的に大きな財政需要が、公共施設をつくるために必要である。その人口急増地帯でも、特に団地建設等が集団的に行なわれるような地帯がそういった宅地開発指導要綱というものをつくっておられまして、開発を都道府県知事が認可するときに、当該公共施設を行なうところの管理者である市町村長の同意または賛成を得た上で許可を行たうという点がございますので、一応、その同意または協議を行ないますときの目安として、指導要網を名自治体がつくっておられる。これは、私は、現在の人口急増地域の財政需要から考えまして、市町村のやっておられます指導要綱というものは、緊急的なものとして、やむを得ないものであるというように考えておるものでございます。しかしながら、やむを得ないものであるにいたしましても、その指導要綱の内容が、社会的通念から考えまして特に過重なものであったり、あるいは要望が個々にわたって不平等があったりしてはならない。したがって、合理的な適正なそういった負担協力を求められるように、今後とも、関係省とも、行政指導してまいらなければならない。このように考えておる次第でございますが、少なくとも、そういった公共事業は、地方公共団体の当然行なうべき任務として行ない得ますように、財政力を地方財政におきましてつけていくことが最大の私たちのつとめである。このように考えますので、人口急増地域に対する財源措置を早急に講ずることによりまして、このような指導要綱も、できるだけ合理的な、適正なものだけにとどめられるようなものにしなければならないと考えておるような次第でございます。さしあたり、昭和円十七年度におきましても、そのつもりで、人口急増地域に対するところの財政措置の国庫補助金等の率の特例を、各省の協力を得まして予算要求をした次第でございます。その中の一部には実現を見たものもございますが、全部実現を見ることができませんでしたので、総合的なこれの財政措置に対する立法ということは見合わせた次第でございますが、引き続いて今後も、補助率のかさ上げ等を中心として財政措置実現してまいりたい。そのためには、ぜひ法律を立法化して総合的な対策を講じていきたい。こういうふうに考え、目下努力をいたしておるような最中でございまして、他の委員会におきましても、私は、その点ぜひ立法化に持っていくように努力したいということを——いまご指摘になりましたが、そういうふうな意味で努力しておりますということを答弁させていただいたような次第でございます。今後ともに努力してまいりますので、せっかく当委員会におきましても、できるだけの建設的な御助言を賜わりたい。かように考えておる次第でございます。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、開発行為が当該市町村の公共施設の整備指導基準に合わないから、あなたのところの開発行為は当市においては許すことはできませんと、そう言ってもよろしいのでしょうか。
  113. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 ただいまの指導要綱はいろいろなケースがございますが、いま大都市周辺で行なわれておりますのは、都市計画法の第三章の開発許可に関連をいたしまして、自治大臣が御答弁をされましたように、現在、人口十万以上の都市には開発許可権が与えられることになっておりますので、その開発許可権を持っておる市もございます。しかし、いま問題の東京都等におきましては、許可権者が知事でございますので、市町村は開発許可の経由という立場にある。都市計画法三十二条によりますと、自治大臣が御説明になりましたように、あらかじめ、その開発許可を申請する前に、開発行為に関係のある公共施設の管理者の同意と、それから開発行為により設置される公共施設を管理することとなるという立場における市町村の意見を聞いているわけであります。開発許可そのものの要件といたしましては、都市計画法三十三条によりまして、市街化区域の中等におきましては、次の各号に規定する基準に適合している場合には開発許可をしなければならないということになっております。その場合の公共施設の基準というのは、同条第二項によりまして、技術的細目は政令で定めるということになっておりまして、都市計画法の政令におきまして、設置すべき公共施設等の基準がわりあい詳細にきまっているわけであります。そこで、法律的に申しますと、この基準に合致しているような計画でございますれば、法律によりまして開発許可をしなければならないわけでございます。これは、知事としてはしなければならない責務があるわけでございますが、その開発許可の法律で定めております基準を上回ったようなものを指導要綱できめまして、その指導要綱に合わないものは知事に申達をしないという形で市町村が押え込んでおるというのが実情でございます。  そこで、問題は二つあるわけでございまして、一つは、先ほど自治大臣がお話しになりましたような財政需要の問題でございます。本来市町村なり自治体が負担すべき公共施設の設置の費用を開発者に持たせるという、財政面の問題が一つございます。その点につきましては、いま自治大臣が御答弁になったとおりでございますが、もう一つは、都市計画法及びこれに基づく政令等で定めております基準以上の公共施設の整備をする、これは財政問題と申しますよりは、むしろ、地元の住民その他で公共サービスに対する需要がだんだん高くなってまいりまして、特に、環境問題について非常に敏感になっておりますので、法律で要求している以上の水準の公共施設の設置を求めているわけであります。そこで、それが、指導という段階で話し合いがつけばいいわけでございますけれども、これを持ってこなければ申達しないという形になりますと、これは、法律上は、行政的にやや不当な行為ではないかというように考えるわけであります。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 こまかく聞いている時間がありませんけれども自治省としては、いまの建設省のそういう意見もありますし、指導要綱が方々でできてきますので、その指導要綱の基準が法律のワクを越えているものか、あるいは法律のワクの中のものか、その辺を検討することと、そうして、法律のワクの中なら条例にして制定しても差しつかえないものかどうか、そういう点を検討して、至急指導する必要があると思います。現に武蔵野市では、デベロッパーと市長との間に訴訟事件が起きるという事態になっておりますので、そういうことをぜひひとつ考慮してもらいたいと思います。
  115. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 法律論でございますので、ちょっと私から申し上げます。  そういう法律できめられている基準以上のものが条例でできるかどうかという問題でございますが、憲法の二十九条で、財産権に対する公共の見地からする制限というのは法律で定めるということになっておりますので、ただいまお話しのような、条例で制限法律の根拠なしにできるかどうかということは、法律的に検討させていただきたいと思います。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ最後に、これはもう各委員が聞いたところでありますから、二問ほど聞いておきますが、最近冬新聞で毎日のように土地問題が取り上げられていて、いずれも、大企業や私鉄資本などの土地買い占めに対する適切な措置新聞、マスコミ等も要求しているわけでありますが、たとえば五月四日の読売には「日本にもう土地はない!?」とか、それから五月二日の同じく読売に「買い占め商魂、辺地なし 自然公園岩洞湖畔ズタズタ」だとか、それから朝日の四月三十日に「土地投資に血まなこ レジャー業界」というように報じている。こういう状態でありまして、本法案は、市街化区域内の公有地を確保しようとするものであるが、このような大企業の全国的な土地買い占めを放置しておくならば、公有地拡大は木によって魚を求めるようなもので、はなはだ困難な事態になると思うのですね。大蔵省、日銀が金融機関を指導して、土地に流れる貸し出しを押えるようにすることや、また、建設省大蔵省が、法人の投機規制するために、土地譲渡益税金を累進的にかけることなどを検討していると聞きます。それらが効果的になるかどうかということも重大な問題でありますが、とにかく、投機的な土地の買い占めを規制する方法を、きょうは大蔵省はおりませんので、建設省自治省にお聞きしておきたいと思うのですが、そうでないと、このような、だれが考えても非常になまぬるい公有地拡大法案では、このような大企業の土地買い占めを押えることはとてもできないと思うわけなんです。  大企業の買い占めた土地は、一例を申しますと、東京周辺だけで約一億平方メートル。首都圏における民間の全宅地造成実績の七年から十年分に及んでいる。三井不動産、三菱地所、東急、西武、東武などは、一社で一千万平方メートルをこえていると言われている。これは、西武の実績に照らしてみれば、向こう三十三年間にわたって売り出せるだけの土地をかかえ込んでいる。  また、大企業の所有地は、今国会で何度かこれを取り上げておりますが、和光証券の調査によりますと、東証一部上場会社七百七十一社の所有地は四十五億八千平方メートルで、全国の市街地面積に匹敵するだけの広さを持っている。これらの土地のうち、投機的なねらいを持って所有しているものだけを公有地として使用するだけでも、都市及び周辺地域における公有地の問題が相当緩和することになると思うのですね。本法案による届け出だけでなくて、将来は、土地所有と売買の実態を全面的に明らかにして、これを把握する措置をとるとともに、少なくとも、公有地の確保が緊急に必要な地域、都市及び周辺地域についてだけでも、これらの大資本、大土地所有者投機的ねらいを持って保有している土地を、適正な価格で公的機関が収用できるようにすることが必要ではないか。この公有地拡大法案でねらっておる時期においても、適正な価格で収用できるような強制力を持たせることが必要ではなかろうか。  さらに、金融的には、土地投機行為を厳禁して、当面、金融機関、私鉄、商社の不動産業への進出を禁止すること。そして、これらの、会社、系列会社の進出に対しても同様な措置をとるということが必要である。そういう措置をとらなければ、この法案だけでは、各委員がみんな首をかしげているように、どうしてもほんとうに公有地拡大されるということにはならないのじゃないかというように思うわけなんですけれども、その辺について、大蔵省は見えておらないようですから、自治省建設省お尋ねします。  最後に、米軍の基地と自衛隊の基地ですね。立場が違う委員の皆さんもおいでになるわけですけれども、われわれとしては、やはりこれらも解放すべきであるというように考えるわけですけれども、本土の米軍基地と自衛隊の基地の総面積は一体何ヘクタールあるのか。これをひとつ防衛施設庁に明らかにしてもらいたいと思います。これは、もし資料として出すなら、ぜひ出してもらいたい。こういうように思うわけです。それだけ聞いておきましょう。  だから、いま言った大企業の買い占めの土地を、この段階でも適正な価格で買い取り、収用できるような措置を講ずる必要があるのではないかということと、もう一つは、金融機関、私鉄、商社の不動産業への進出を金融の面でチェックすることが必要ではなかろうかということと、さらにもう一つは、米軍の基地や自衛隊の基地を将来解放して、これを真に地域住民の公有地として開放することが必要ではないかということ。この三つの点を最後に質問して、私の質問を終わりたいと思います。
  117. 小林忠雄

    小林(忠)政府委員 現在法人が持っております土地が、新しい市街地の開発の予定地等で、法律的な手続によりまして都市計画等が決定いたしますれば、現行法におきましても収用ができるわけでございます。  なお、今国会に政府から提案しております新都市基盤整備法におきましても、そのようなものに対する収用権というものを規定しておりますので、計画的な開発を公共でいたします場合には、こういう大法人の持っております土地でも、当然収用ができるわけでございます。  そこで、一般にいま言われております法人の土地買い占めの段階につきましては、非常に悪い点が強調されておりますが、必ずしも悪い点だけでもない点がございますので、実態を明らかにする必要があろうかと思うわけでございます。通常悪い点と言われておりますのは、結局、金融緩和に乗じて土地を買い占めて、いわゆる不労所得と申しますか、開発利益を大企業が独占する。こういう点が一つ批判をされているわけでございますが、他面、従来、社会開発産業というものに対する金融が非常に貧弱でありまして、住宅宅地供給というものに対してもう少し金融を緩和してほしいということは、土地対策の面から建設省も言っていたわけでございます。したがって、実際の住宅なり、住宅用宅地として供給されるような土地を買っておりますものにつきましては、あながち悪いとは言えないわけでございます。  和光証券の調査のお話しございましたが、これは事業用資産一般について調査しておりますので、最近数年間においてどういう土地が取得され、どういうふうに処分されたかということを、昭和四十一年から昨年三月までの客年につきまして、東京証券市場第一部、第二部上場千三百社につきまして、現在、建設省がアンケート調査をやっております。その結果、来月早々にまとまると思いますが、それによりまして、実需に結びつくような土地収得がはたしてどの程度であって、いわゆる資産保有なり、開発利益だけをねらったような投機取引がどれくらいあるかというようなことを明らかにした上で対策を立てたいと思います。  いま、収用のお話しがございましたけれども先ほどほかの委員の御質問お答えいたしましたように、地価対策閣僚協議会の決定によりますと、仮需要の抑制のため「法人による投機土地取引については、早急にその実態を調査し、個人譲渡所得に対する課税との均衡を考慮しつつ、土地売却益の課税の強化の措置を講ずる。」ということになっております。ですから、投機土地取引を抑制いたしますためには、税金を高くしてこれを抑える必要があるわけであります。なお、それに付言いたしまして、「この場合において、民間開発事業者による早期かつ適正な価格による宅地供給を促進するための措置につき配意する。」となっておりますが、すでに持っているものを吐き出させるということになりますと、これは、保有課税を極化するか、あるいは、最終需要者に対して適正な価格で供給した場合に何らか別の恩典を与えるか、その二つに尽きるわけでございます。  そこで、税制上の措置というのは、金融上の措置と並行して一番有効かと思うわけでございますが、いま申しましたように、投機取引に対しましては重税で押える。吐き出させるほうは、保有課税の強化と逆に、譲渡所得に対する課税を若干緩和する。両面のことを同時にやらなければならないわけでございまして、そのためには、ほんとうに開発して供給する事業なのか、それとも、投機的な値上がりを目的としているのか、この実態をまず明らかにいたしまして、それをどういうぐあいに仕分けていくかという点について、大蔵省自治省とも御相談の上、早急に案を考えたいと思っております。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣に答えていただきたいと思うのですが、だれが考えても、公有地拡大法案ではどうしてもなまぬるいし、せいぜい協議権があるだけです。もっとも、都市計画法の五十六条、五十七条があるから、いざというときにはこれを発動するのだということでありますけれども、それにしても、自治省が初めて土地問題に意欲を示した——初めてじゃない。いままでも意欲はあったと認めますが、意欲を示した公有地拡大するための法案としては、非常にざる的な法案だと率直に言って言わざるを得ないと思うのですね。だから、いま言ったような買い占めた土地や、いろいろありますので、この法案をもう少し強力な、適正な価格で何とか賢い取り権を持たせるようなところまで行かせる必要があるのじゃなかろうか。そういうことと、一方では、いま言った推進要綱などの研究によって、土地会社が土地を買い占めすることを防いでいく。そういうようにしませんと、地方自治体が地域住民のために土地を公用に用いようと思っても、もうそのときにはすでに時期おそしという段階が来るのじゃないか、というふうに患いますので、もう少し積極的に法案を考慮すべきじゃないかと思いますが、それに対する見解をお聞きしたいのです。
  119. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 土地対策というものはこの法律だけで解決するものではなく、あとへ続くと申しますか、総合的な一貫の対策としてやらなくちゃならないしということは、前の連合審査会のときにも私答弁させていただいたと思っておりますが、閣僚の一人として、今後とも努力してまいりたいと思います。  なお、この法案の中で、先買い権は市街化区域の土地だけでございますが、土地開発公社その他の部面につきましては、これは市街化区域に限ることなく、全区域でございますので、この法案成立によりまして、現在やっております民法上の土地開発公社の活動を法制化し、公法上の人格を与えることによりまして活動をしやすくし、また、資金の面におきましててこ入れすることによりまして、より一そう法案の目的に沿うように運用してまいるように指導していきたい。かように考えておるような次第でございます。
  120. 薄田浩

    ○薄田政府委員 先生の御質問に、多少経緯をまぜて御答弁したいと思います。  御指摘の駐留軍の関係の施設でございますが、これは、講和発効時は約二千八百件ございまして、面積にいたしまして十三億五千三百万平方メートルでございます。  それで、現時点で申し上げますと、件数にいたしまして百二件、約二十五分の一ということでございます。それから、面積にいたしまして、約一徳九千六百万平平方メートルを現在専用として提供いたしております。  他方、自衛隊のほうは、現在、全国に約二千百件ございまして、九億三百八百万平方メートルを使用しておる。こういう形になっております。  ちなみに、先ほど申し上げましたが、十三億、講和発効時にございまして、現在一億九千でございますが、返りました面積といたしましては、約八億三千九百万平方メートルを、民間なり一般の方が御使用になっておる。そのうち四億七千三百万平方メートル、これは十三億の三六%くらいに当たりますが、これは現在自衛隊が使用しておる。こういうことでございます。  それから、御指摘の、いわゆる駐留米軍、自衛隊の施設と民間との調整の問題でございますが、これは、条約上もそういう義務を政府として負っております。われわれ防衛施設庁といたしましても、いわゆる国防の問題と地域開発の問題の吻合に絶えず努力しておりますので、御参考までに申し上げますと、不要のものは返還を求めております。それから、必要であっても、あまりにも市街化地域にあるものは、国家の予算をお願いいたしまして、相当金額をかけまして集約移転という形をやっております。  ちなみに申し上げますと、東京では、グラントハイツ、グリーンパークというようなものを集約して他の地域に持っていく。こういう形によって、いろいろ地元の御利用に供していくというような形にしております。  以上でございます。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、大臣、これで終わりますが、いま防衛施設庁からお話しがありましたように、こういう基地の返還については、地域住民が熱心に運動もしておりますし、あるいは地域の首長がその返還を強く要請しておるところもございますので、自治省としては、国務大臣としての立場も渡海さんにはいろいろあるかもしれませんが、しかし、地域住民の利益を守るという立場で、この基地の解放のために一そうの努力を重ねていっていただいて、それがほんとうに地域住民のためになるように使用するという方向で努力していかれることを強く要望して、私の質問を終わります。
  122. 大野市郎

    大野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来たる十一日木曜日、午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十九分散会