○門司
委員 これ以上だんだん聞かなければならぬことが非常にある。
警察が政治に関与してはならないということは当然です。その、政治に関与してはならないということは、一党一派に偏してはならないということであります。正義として、世の中の矯正をはかっていこうとする第一線の
警察官が、そのゆがめられた社会の根源がどこにあるかということが言えないようでは、これも、ある意味においては、一党に偏した一つのものの考え方である。私は、
警察の公平なものの考え方ではないと考えている。これはほんとうなんですよ。
警察法に公平でなければならぬということを書いているのは、これは一つのうたい文句であって、非常に強い国家権力の背景を持っております
警察が一党一派にくみされたら、これはかなわぬのでありまして、だから、これは
警察法で戒めておるのは当然であります。だからといって、
自分たちはただどろぼうさえつかまえればいいんだ、こんなものは幾らでも、できればできるだけ、
警察の人間を動員して、費用を使って、どろぼうを取り締まっていればいいんだ、
あと起こってくるのは、そっちが悪いんだから、それはおれたちのせいではないんだというようなことでは、これは結局、本来の
警察のたてまえの上からいっては違うのじゃないか。むしろ、そういう問題を直接担当している
警察官としての、率直な意見というものが披瀝されて、その中から、政治を担当する者が大きく反省をするということは、私は、非常に重要なことだと考えている。それは何といっても、直接に当たって取り調べをする人は、その人の心情がわかるわけでありますから、どんなにえらい佐藤さんが総理大臣であっても、
赤軍の諸君に直接ぶつかって話を聞いているわけじゃないのです。みんな入れ知恵だと言うと、佐藤さんはおこるかもしれませんが、大体、ほかから集めた情報を継ぎ合わせて、こうじゃなかろうかと、あの人は
判断するだけでありまして、これが日本の
警察の総元締めである。これではどうにもならない。直接
犯人にぶつかって、
犯人の心境なり、あるいは
犯人の今日までの
行為等に対する動機というようなものを一番よく知るのは、私は、
警察だと思います。したがって、その
警察の意見というのは、この種の問題については、政治上に大きく反映することは、
警察が政治に関与するものとは非常に違いがあることであって、私は、
警察官としての当然の一つの責務だと考えておる。それがなければ、
国家公安委員長といったって、現場で取り調べるわけじゃございません。直接
犯人にぶつかって、思想を聞き出すわけにもまいらぬのでありまして、さっき言ったように、みんな入れ知恵だと言うとおこるかもしれませんけれ
ども、いろいろな情報を総合して
判断をするにすぎないのであって、この点は、いまの
警察行政の中で非常に大事なことで、これをはき違えて
——いまの
長官の言うことをはき違えだと言っておるわけではありませんけれ
ども、遠慮して、そうして、われわれ政治に関与してはならないと書いてあるから、政治向きのことは一切申し上げません、われわれはどろぼうをつかまえていればいいんだ、犯罪人さえつかまえていればいいんだということでは、ほんとうの治安の確保というものは得られないのではないかということであります。したがって、私の持ち時間はまだかなりあるようでありますけれ
ども、もうこれ以上責めてもどうかと思いますが、どうなんですか。
それなら、
最後に一つ聞いておきますが、いまの
警察制度の
状態でよろしいかどうかということであります。この
警察制度の中で、ほんとうにこの種の犯罪がなくなるようなことを考えられるかどうかということであります。これらの犯罪については、もう少し十分実態を知ることができる
警察行政がやはり必要ではないか。これは、日本の
警察が国家
警察と地方
警察と二つに分かれて、地方の自治体におけるいろいろな
警察行政については、地方の自治体においてこれを取り締まって処理していくという考え方で、国家犯罪等については、国の
警察官でこれを補うといういき方だったのが、それが廃止されて、さらに、
国家公安委員長は、これは文民というふうには私は申し上げませんが、一般から、しかもきわめて公平な見識のある人を選んでおったのであるが、これが
内閣総理大臣の任命する国務大臣になっているということであって、いわゆる
警察行政というものが、政府につながる一つの形をとっておる。いま、
長官は、政治にくちばしを出してはならないと言うのだけれ
ども、政治にくちばしを出してはならないというよりも、一党の総理大臣が任命した国務大臣が
警察の一番親分ですから、これは政治につながっている。これほどはっきり政治につながった
警察は、どこを調べてもありゃしない。やはり、
警察というものはそういう形でなくて、自由にものの言える立場で、
警察庁の
長官は、さらに公安
委員長に報告が十分できる、公安
委員長の首は、五年間なら五年間は保証されているという、そういう立場における公安
委員長の発言なら、内閣に対してもかなり強い圧力を持つはずである。ところが、いまの公安
委員長は、いつでも首切られる。いまでも首を切られるのです。総理大臣が、おまえやめなさいと言えば、それきりですよ。私
どもの考えは、
警察の行政自身が、政治にそういう関与をしてはいけないというならば、政治と縁をはっきり切ったほうがよろしい、そうして、新しい憲法のもとにつくられた民主的の
警察制度にこれを直していく、そして、
警察官は
警察官としての独立した立場で、自由にものの言える立場をとる必要がありはしないかということであります。いまこの種の事犯が起こっていて、そうしてその原因を追及するというのに、
長官のいまのような
お話があるということは、やはりそこからきているのじゃないか。くどいようでありますけれ
ども、これが従来のように、公安
委員会が完全に独立をしておって、そして、公安
委員長は、
法律の命ずるとおり、五年間なら五年間というものはその席に着くことができる、何人にもこの地位は侵されない、何人にも遠慮しないで日本の治安に対するものが言えるという地位、あるいは立場が必要ではないか。いまの
中村公安
委員長は正直な人で、非常にりっぱな人であります。私は郷里が同じでありますから、人格も知っているわけでありますけれ
ども、りっぱな人であります。しかし、何といっても、総理大臣の任命による国務大臣であるということに間違いはないのだから、任命権者に対する遠慮というものが、人間である限りにおいては、ありはしないか。そうして、同じ行政を行なう内閣に籍を置いている限りにおいては、
自分はこう考えておるといっても、それが行政の面に率直に反映するような進言ができないのではないかという考え方がございます。したがって、ほんとうに日本の
警察行政というものを民主化していこうとするなら、いまの
警察制度を改めるというよりも、昔に戻して、そうして公安
委員長が、この種の社会現象に対しても、率直に、政治のあり方がどこまでどういう形できているからこういう問題が起こるんだ、こういう問題はどういうわけだから起こるんだと言えて、しかも、それが、貧困な、非常に困っておる社会から反発して出てきたものではなくして
——世の中には、失業者もほとんどないといっていいくらいである。みんな昔のような苦しい生活をしているわけではないのである。労働者も、週休二日制をとろうというようなところまできておる社会になって、なおかつ、この社会を暴力によってひっくり返さなければならないというような社会思想の起こるところに問題がある。この問題を真剣に検討し、追及して、そうして、よってきたる原因がここにあるということを率直に、政府に、政治の中に反映せしめるという
制度が欠けておるというところに問題の所在がありはしないかということである。こういう面に対して、これまた言いにくいかもしれませんが、率直に
長官のお考えをひとつお聞かせ願いたい。この種の問題を解決するには、いまの
警察制度、いわゆる、内閣につながる国務大臣の公安
委員長というものについては、どうしてもこの際一考をわずらわすことが必要ではないかということが考えられる。こういう点についての御所見を、言いにくいではありましょうけれ
ども、もう一度、片りんだけでもいいから聞かしていただきたい。