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1972-03-02 第68回国会 衆議院 地方行政委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 豊  永光君 理事 山口 鶴男君    理事 小濱 新次君 理事 門司  亮君       國場 幸昌君    高鳥  修君       中島 茂喜君    中山 正暉君       村田敬次郎君    綿貫 民輔君       和田 一郎君    桑名 義治君       林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君  出席政府委員         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁長官官房         長       土金 賢三君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         警察庁警備局長 富田 朝彦君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         公安調査庁調査         第一部長    島田純一郎君         通商産業省重工         業局次長    和田 敏信君     ————————————— 二月二十九日  市街化区域内農地宅地並み課税反対等に関す  る請願外五十二件(田村元紹介)(第六五二  号)  同外四件(角屋堅次郎紹介)(第七五〇号)  同外一件(川崎秀二紹介)(第七七八号)  同外四件(角屋堅次郎紹介)(第七七九号)  同外四件(角屋堅次郎紹介)(第八一三号)  市街化区域内農地固定資産税に関する請願(  成田知巳紹介)(第七八〇号)  ドライブイン等において酒類の販売を禁止する  法律の制定に関する請願田中榮一紹介)(  第七八一号)  同(西宮弘紹介)(第七八二号)  同(山中吾郎紹介)(第八一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  警察に関する件(連合赤軍による人質ろう城事  件に対する警察措置に関する問題)      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  連合赤軍による人質籠城事件に対する警察措置に関する問題について、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
  3. 中山正暉

    中山(正)委員 それでは、自由民主党を代表いたしまして、過日、二月十九日、突始として平和な山村に巻き起こりました、連合赤軍による、人質をとっての籠城事件に対しまして、警察処置その他についていろいろと質問を展開をいたしてみたいと思います。  赤軍派は、昭和四十四年の九月四日に、東京葛飾公会堂におきまして結成大会が開かれました。このときには、「前段階武装蜂起に一応成功すれば、日帝はファシズムに転換し、米軍と連帯し反革命に転ずる。そうなれば、革命勢力支援のために、朝鮮民主主義人民共和国の南進と中国からの大規模な政治的、軍事的支援が期待できる。」ということを主張をいたしまして結成されたわけでございますが、その結果、先日は、警視庁の第二機動隊長内田尚孝さんがなくなって、二階級特進をなさって、警視から警視長になり、また、高見繁光警部、この方も死亡警視正に二階級特進をされました。このほかにも、新潟の田中さんは、勇敢な行為ではありましたが、相手人情が通じる相手ではなかった。その、人情の通じる相手でない者に対する説得を行なおうとしたために、これまたピストルで後頭部を撃たれて、そして昨日なくなられた。それからまた、この事件関連では、坂東国男父親が、責任をとるという形で、子供の親不幸な行為に対して、反作用的に自分責任を感じて自殺をされた。このようにとうとい人命が四人までもそこなわれた。  そしてまた、多くの警察職員方々けがをしておられします。この方々の勇敢な行為を記念をするためにと申しますか、速記録に載せていただくために、重傷軽傷方々のお名前を申し上げておきます。大津高幸さん、そしてまた上原勉警部中村欣正巡査部長牧喜之巡査部長八木橋幸男巡査三上博次巡査首藤英雄巡査、そしてまた遠藤正裕巡査宮崎正二巡査目黒成行巡査部長鬼沢貞夫巡査。信越放送の小林忠治という方もけがをしておられます。  そしてさらに、犯人逮捕し、人質を救い出された采女警部補塩沢警部。  この方々の勇敢な活躍があったために事件の落着を見たのではございますが、全く残念なことにと申しますか、とうとい犠牲者が出た。おなくなりになりました内田さんは、この非情な犯人と相反しまして、非常に親孝行であられた。実母の順子さんは七十歳になっておられる。おかあさまが残られたわけであります。そして、くら夫人と、長女の直子さんは十七歳の高校二年生、二女の孝子さんは十三歳。こういう、いたいけない、父親のない子供をつくってしまった。高見警視正にいたしましても、久子夫人と、それから俊明君という十七歳の高校二年生、真行君という十四歳の中学二年生の二人の子供さんを残して他界をされました。このことに対しまして、私は、自由民主党を代表し、この委員会の正式の席上を通じて、心から、おなくなりになりました皆さまの御冥福を祈りたいと思います。  この遺族補償に関しましてはあとでお伺いをするといたしまして、一応、順序といたしまして、今回の事件に関しまして、逮捕状況をお伺いいたしたいと思います。  特に、ある新聞に載っておりました世論調査の結果も、「警察はよくやった」と七割弱の人たちが認めておるわけでございますが、しかし、「よくがまんして目的を達したとほめたい」というのが三一・五%、「ほかに方法もあったろうが、まず妥当なやり方だ」というのが三五・八%、「はじめから説得できる相手ではないから、もっと早く強行作戦をとるべきだった」というのが三〇・三%、「その他」が一・七%、「わからない」というのが〇・七%ということになっておりますが、ある人に言わせますと、あの二百十八時間という時間は浪費ではなかっただろうか、外国ならば二日間で始末ができているのじゃないだろうかというようなことを言う方々もおられます。警察側としてどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。その点をお伺い申し上げたいと思います。
  4. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 今回の事件を通じまして、何よりも、たくさんの犠牲者を出したということについて一番強く反省をしなければならない、かように私は考えております。ただ、警察目的そのものは、ベストを尽くして達成はできたのではないか、その点だけは私どもにとって満足でもあり、救いでもあった、かように私は考えております。  ただ、この事件の経過でやはり一番むずかしかったのは——警察目的は何としても犯人逮捕にありますけれども犯人逮捕できるということは、疑いのない事実であり、私は確信がございました。ただ、どういう形で逮捕できるかというのが、これは一つの問題であります。したがって、私が一番中心に考えましたのは、あの人質をどのようにして救出するかということ、その方策が一番むずかしかった。それだけに、部隊の使い方としては、いつ強行救出に踏み切らなければならないのか。でき得る限り、最後の瞬間まで説得はやめない。しかしながら、やはり最後強行救出をやらなければならぬかもしらぬ。その時期の判断については、ただいまの、もう少し早くやればよかったではないかとか、結果から見てのいろいろな御批判は、私は十分承知しておりますけれども、いかなるはかり知れない危険があるかもしらぬといったような場合に強行救出をやる。しかも、その危険は、警察官のみならず、一番私ども目的としておる人質に対する危害、これがはかり知れない。こういうときには、やはり、でき得る限りあらゆる手を尽くして、人質の安否、監禁状況がわからなければいかぬ。しかし、それがなおかつわからぬ。ことばは悪いですが、敵状が不明のままに強行作戦ということになる場合には、ああいった状況下で、われわれの判断として、一体いつまで人質生命が持つであろうか、その時期まではやはり強行解決に踏み切るべきではなかろうということで、まる九日間がまんをして、あらゆる方策を通じて説得につとめた。この時期の判断が私は一番むずかしかった。  二番目は、やはり、犯人逮捕する、人質は出したといっても、これが傷ついたんでは警察目的としてはどうにもならない。こういうこと。さらに、その過程で、どのようにすれば警察官犠牲者を出さないで済むかということ。かりにそれがやむを得ないとしても、どうすれば少なくすることができるであろうか。こういうこと。  こういう点について、私どもとしては、この事件については一番苦心をしたところであったわけでございますが、今回の結果は、御案内のようにああいった結果でございましたが、冒頭申しましたように、何ぶんとも犠牲が大きかった。この点については、私ども、今後の警察の運営の上で大きな教訓事項として、何とか警察官犠牲を少なくするようにしたい、こう考えておる次第でございます。
  5. 中山正暉

    中山(正)委員 被疑者の、日共革命左派人民革命軍幹部坂口弘、二十五歳、赤軍派中央軍幹部坂東国男、二十五歳、日共革命左派人民革命軍幹部吉野雅邦、二十三歳、日共革命左派人民革命軍隊員加藤倫教日共革命左派人民革命軍隊員加藤元久、この五人の凶悪な連中によりまして、牟田郁男さんの奥さん泰子さんが人質になられた。  実は、いま、車で私を迎えにまいりました者に聞いたのでございますが、泰子さんに対する報復を考えて、赤軍派がまた軽井沢集結を始めておるということでございます。この、泰子さんが救出をされたときの新聞の記事を見まして、私いささか気になることがあったのでございますが、犯人はそれほど悪い人たちではなかったという、印象記といいますか、そういう感触に受け取れる後日談が載っておりましたわけでございますが、われわれの先輩であります山村前政務次官のお話伺いますと、北鮮へ行きますときに、飛行機に乗ったとき、赤軍連中が、人心収攪術といいますか、それを自分に教えてくれたというのですが、それによると、最初は思い切りはだ身に食い込むほどに縛りあげろ、そして、縛りあげておいて、だんだんゆるめていけ、最後には、そのなわ目をといて、そして、皆さん、便所にも行ってください、御飯もひとつ順番で食べてください、たばこがほしがったらぼくが持っていますと言う。最初はきつくしておいて、あとで柔軟な人情作戦に出るというのですね。今度の事件でも、ふしぎなことに、唯物史観によるところの人が善光寺のお札を最後には泰子さんに渡したということです。その方法を見ましても、この連中がいかに人質を懐柔をしておったかということがわかるわけでございますが、今後こういう問題が起こりましたときには、慎重にこの人質生命を保ちながらも、しかも、金と鉛と取りかえたと申しますか、四人の方々のとうとい生命を失ったというような犠牲が今後でき得る限り少なからんことの努力をひとつお願いをしておきたい。警備当局に、このような犠牲が出ないようにできるだけの努力をしていただきたいということをお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、先ほどのとうとい犠牲者の問題でございますが、遺族に対する補償の問題はどういうふうにこれからなってまいるのでございましょうか。また、重傷軽傷者への配慮。そうしてまた、勲功をあげられました方々へはどういう褒賞を与えられますのか。その点をお伺いをいたしておきたいと思う。
  6. 土金賢三

    土金政府委員 このたび殉職された内田警視長及び高見警視正遺族に対しましては、今回の事案の内容にかんがみまして、現行制度における各種規定しの最高補償を行なう方針で現在手続を進めておる次第でございます。  その内容について御説明申し上げますと、法律に基づく給付といたしましては、まず、地方公務員災害補償法による遺族補償年金というのがございますが、これは、現在の制度によりますと、内田警視長が、これは年金でございますが、年金といたしまして、年額約百十五万円、高見警視正が約九十一万円でございます。これは、ただいま、特別公務災害補償制度の改正を現在お願いしておるわけでございますけれども、現在の規定によりますと、ただいま申し上げたような額になるわけでございます。  なお、同じ法律によりまして、葬祭補償といたしまして、内田警視長が約三十四万円、これは一時金でございます。それから高見警視正が約三十万でございます。  それから、地方公務員等共済組合法による公務による遺族年金といたしまして、内田警視長に、これは年額でございますが、四十万円、それから高見警視正に二十六万円の年金が支給されることになります。  なお、弔慰金といたしまして、内田警視長に十二万円、これは一時金でございます。それから、高見警視正に十万円でございます。  それから、功労による褒賞といたしまして、内閣総理大臣の特別ほう賞金の制度がございますが、これの最高の額といたしまして五百万円をお願いすることにいたしております。  それから警察庁長官賞じゅつ金制度によりまして、その最高の五百万円をやはりお願いすることにいたしております。  それから東京都の警視総監の特別救慰霊といたしまして、同じく最高の五百万円をお願いいたしております。  なお、内田警視長及び高見警視正に対しましては、警察官としての最高の栄誉であります警察勲功賞を授与するとともに、叙位叙勲についてもただいま上申中でございます。  その他、東京都からの措置として、死亡見舞金が出る予定でございます。この中には退職金がありますが、その額としては、内田警視長が約一千万円、高見警視正が約六百二十万円でございますけれども退職金も出していただけることになると考えております。  以上の額を総計いたしますと、東京都のほうの退職金のほうがまだ確定いたしておりませんので、それを除きますと、内田警視長の御遺族に対しましては約二千四十八万円、年金としては約百五十五万円、高見警視正の御遺族に対しましては、一時金といたしまして、退職金を除くと二千四十一万円、年金といたしまして百十七万円。なお、これには、先ほど申し上げましたように、退職金の一千万円ないし六百二十万円がさらに追加されることとなると思われます。  御遺族に対する補償は、現行制度によりますと、それぞれ最高をとって以上のような状態になるわけでございます。  なお、負傷者に対しましては長官の特別の賞じゅつ金を支給いたしますほかに、さらに、その受傷等によって職務上支障を生ずるというふうな場合におきましては、それぞれ、リハビリテーションと申しますか、——その前に、受傷期間においては、もちろん治療費等は全部国費でまかないますが、そのほかに、その回復後における勤務等につきましては特別のめんどうを見て、休業が長期間にわたる場合には、きめこまかな配慮をいたしまして、家族に対しても激励を行なうとともに、不安や要望を徴しまして、生活設計、子女の進学等についてもいろいろと配慮をいたすようにいたしておる次第でございます。
  7. 中山正暉

    中山(正)委員 お子さんも小さいことでございますし、ひとつ、できる限り今後めんどうを見て差し上げていただくようにお願いを申し上げたいと思います。これは新聞で見たのでございますが、関西財界から一千万円という浄財を出したいというお話があるそうでございますし、民間からも、この事件でなくなられた方々に対する同情はたいへんなものであろうと思いますが、そういう浄財はひとつ快くお受けいただきますよう。  そして、もう一つ伺っておきたいのですが、あの河合楽器保養所浅間山荘を、河合楽器の御好意で、人質救出のために取りつぶしの許可をしていただいたということを聞いておりますが、これに対しては、何か、お礼と申しますか、そのお返しと申しますか、そういうことは考えていらっしゃいますか。
  8. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生も御指摘のように、あの建物を破壊するということにつきましては、社長の御配慮によりまして、御好意によりまして、特別の補償というか、そういうことは必要ないというふうに言っていただいておるのでございますが、私どもといたしましては、それをお受けすると同時に、なお、私ども気持ちとして、いささかでも謝意を表する措置はとりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  9. 中山正暉

    中山(正)委員 この民間の大きな財物をつぶしてまでの御協力に対しては、金額の問題ではないと思います。警察の表彰など、河合楽器に対しましては、ひとつ万全を期していただきたい。そのようにこれもあわせてお願いをいたしておきます。  それから、今回の報道との関係。朝の十時から夕方の六時十分まで全国民がテレビに集中、注目をしたということでございますが、この効果と、そして逆効果をどういうふうにごらんになっておられますでしょうか。  それからまた、警察用の短波を犯人が持っておった、FMラジオを持っておったということでございますが、これなどは市販を許しておりますのでしょうか。これは人質救出に対しまして非常な障害になったのではないかと思いますが。
  10. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 ただいまの御質問報道関係との問題でございますが、事件が発生いたしました直後、報道の諸機関が現地には相当数出ておられましたが、この各社の幹部方々と協議をいたしまして、いまもお話しのありましたように、あるいは犯人テレビラジオを聞いておるかもしらぬというような点を含めまして、いろいろ報道についての御相談を申し上げ、また、同時に、犯人が、あの九日間、足かけ十日でございますが、その間に約二百発近い弾丸を発射をいたしてああいう犠牲者も出したわけでございますが、そういう危険もございますので、そういう危険防止という点で御相談を申し上げまして、その結果、御理解のある御協力をいただいたと思っております。  ただ、何ぶんにも突発的なことでございましたので、今後、ただいまの御指摘の、犯人所持をしておったFMラジオ、こういうものについてどうするかという問題は残っておるわけでございます。また同時にテレビラジオ、いわゆる電源からとっておりますテレビラジオにつきましては、二十一日、三日目の夜に電気を一応とめましたので、その点はいわゆる正式のテレビには写らないという状態になりましたけれどもFMラジオは、私必ずしも専門家でございませんけれども、ある程度のFMラジオでございますと——ああいう地域におきましては、電波がいろいろのところを曲折しまして、テレビの音だけはあるいは入るかもしらぬ。それからラジオは入る。それから、警察のあれにつきましては、ポリスバンドというのが実は輸出用等につくられておるわけでございます。そういうものの原理をちょっと覚えて操作をいたしますれば、相当程度携帯ラジオであるならばポリスバンドを聞き得る。こういう点がございます。この点等につきましては、報道関係は、先ほど申し上げましたように一般的には御協力いただきました。しかし、そういうラジオの性能その他、これに対して今後警察がどういうふうに対処していくかという問題、あるいは、そういうラジオ自体問題等については、今後十分検討してまいりたい、かように考えております。
  11. 中山正暉

    中山(正)委員 ポリスバンドの国内での発売その他所持については、何らかの規制措置というものが考えられてしかるべきでないかという気持ちでございます。  それから、時間がありませんので急ぎますが、妙義の例の穴倉におりました連中が急襲をされて、逃げまして、あの浅間山荘に参りますまで、もっと事前処置ができなかったのであろうかという批判も聞かれます。駅の売店のおばさんから、非常にくさいにおいがするという通報があったそうでございますが、異様なふうていは一見してもわかるわけでございます。そういう事前処置について何ともできなかったのであろうかという問題と、なぜ、妙義付近に、こういう赤軍派連中が結集をする行動をとっておるのかということ。迦葉山でございますか、あの辺の近くの山にもまだアジトがあるという話も承っておるのでございますが、その点の理由をひとつお聞かせ願えればと思います。
  12. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 いまお尋ねの第二点からお答えを申し上げたいと思います。  連合赤軍山岳拠点で何をしようとしていたかという点でございますが、これは、浅間山荘逮捕いたしました五人の犯人、並びに軽井沢駅で逮捕いたしました四人の犯人、さらに、妙義山におきまして逮捕いたしました四人の犯人、これらを徹底して捜査、取り調べをいたすことによりまして、彼らの口からその真実が明らかになってくるということを考えております。しかし、彼らが出しておりますいろいろな機関紙あるいはその他の情報等から私どもが一応推測をいたしますと、連合赤軍は、昨年の七月に、いわゆる日共革命左派京浜安保共闘と俗称されておりますが、これと、いわゆる赤軍派、これの軍事組織と彼らが言っておる部門が連合してこの連合赤軍をつくったわけでございますが、それ以来、銃を軸とした闘争あるいは爆弾闘争等、そういうことをしばしば公言——公言といいますか、彼らの機関紙等において公言をし、その体制を整えてきたわけでございます。また、昨年来、御案内のように、真岡におきまして銃器を奪う、さらには、連続金融機関強盗を働いて資金をつくる——準備と見られるわけでありますが、こういうことの結果、猟銃、ライフル、拳銃、爆発物、こういうものを使用しまして、東京などに出て、警察との銃撃戦、あるいは重要防護対象に突入というようなことを企図していたのではないかと推察がされます。  そこで、彼らは、昨年来、御案内のように、年末に爆発物のああしたまことに凶悪な事件を起こし、まことに痛ましい犠牲者を出したわけでございますけれども、そういう前後から警察のきびしい捜査が行なわれておりまして、それらの追及を避けるという意味もあったと思われます。そこで、人目に触れない神奈川とか、あるいは群馬の山岳拠点に逐次そういう連中集結をいたしまして、あるいは襲撃訓練であるとか、爆発物の製造、あるいはさらには、その間には、いわゆる肉体訓練という実戦的なゲリラ闘争を重ね、いわゆる訓練を重ねておったように思われます。そういうことで、彼らは、あの周辺の榛名山、さらには迦葉山、さらには妙義山というような非常に峻険な山岳地帯のほら穴に周辺の木材を切り取ってアジトをつくるというようなことで、あそこへ集結をし、そうした企図を持っておったのではないかというふうに考えられます。  第一の点でございますが、二月七日に、一般の方から、榛名湖畔に不審な自動車がある、ときどき不審な車両が来て二、三日は放置されているといちお話がございました。それで、いままでの捜査をいたしておりましたものといろいろ突き合わせをいたしまして、これは何か一つ問題であるということで、たまたま当時、二月一日からの、いわゆる刑事関係凶悪犯人一掃捜査月間とあわせてこうしたものの捜査を展開しておりました。さらに、全国の警察に、この捜査徹底、検問、検索徹底ということを指示をして、自来、いま申し上げましたように、彼らの一味と思われるもののアジトを逐次追及いたしました。そして、二月十七日には、彼らの幹部である森、永田の両名を逮捕いたしたわけでありますが、ざらに妙義山一帯捜索、さらにはその周辺県徹底した捜索を続けてまいったところでございます。  長町県におきましても、当然、百数十名の警察官県境方町の主要な路線に配置をいたしまして、鋭意捜索検索に当たっておったのでございますが、私も、二月二十日にヘリで妙義山を越えて軽井沢に参りましたけれども、あの妙義山一帯雪におおわれた峻険の状況はまのあたり見ました。彼らの行動を、すでに逮捕した者等からの心証から申しますと、三日くらいかかってかまくらみたいなものをつくって、いわゆる普通の道でない道を通り、千二百メートルくらいある迦葉山とかなんとかいう山を経て、そうしていわゆる和美峠の辺に十九日の夜中ごろに出てきた、こういうふうに考えられます。そうして、突き当たりにあった山荘、いわゆる第一の現場でございますが、そこにころがり込んだ。こういう推定がつくわけでありまして、それを警察官がどうもおかしいということで、一帯検索の軒が発見、そして飛び込もうとしたところが、すさまじい反撃等がございまして、それがあの浅間山荘にこもったということでございまして、何ぶんにも峻険な広い場所について——いろいろ御批判の意見は承知をいたしておりますが、警察としてはこれにできるだけの措置を講じたと信じております。しかし、今後こうしたものを、犯人の取り調べとあわせまして、教訓として、さらに十分いたしていきたい、かように考えます。   〔林(百)委員委員長、ちょっと、先ほどからの日共左派という用語について……。」と呼ぶ〕
  13. 大野市郎

    大野委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  14. 大野市郎

    大野委員長 速記を始めて。
  15. 中山正暉

    中山(正)委員 私、ふしぎでならないのでございますが、いまの用語の問題でありますが、ふしぎに思われるのは、この京浜安保共闘連中と、それから赤軍派と一緒におったということでございますね。実は先日「赤旗」の社会部から私のところへ浅間事件についてどう思うかという問い合わせがありましたが、私は、これは共産党がやらしておるのだと申したわけでございます。ということは、私は、実は八百長論でございまして、昨年の参議院の選挙の際にも、共産党の本部を全学連が取り巻いたなんという、全くこんな巧妙な芝居はないと実は思っておる男でございます。  いまの用語の問題でございすますが、もう一度申し上げておきますが、共産主義者同盟赤軍派と申します共産同系と、それから労働者共産主義委員会、怒濤派、これはマル戦系でございます。それから青年共産同盟、前衛派、これもマル戦系、それからML派、日本マルクス・レーニン主義者同盟、ML同盟、そして日共系の反党分派。いま、自民党には派閥があるとおっしゃったけれども、共産党にもだいぶはでに派閥があるようでありまして、反党分派、親中共糸、日本共産党左派、日共左派、それから日本共産党革命左派九州地方委員会、日共革命左派、それから日本共産党革命左派神奈川県委員会、これが人民革命軍、いまの派閥が中央軍となっているわけでございますが、これが赤軍の連合軍ということだと思います。  京浜安保共闘がこの人民革命軍のもとにあるわけでありますが、これが一緒におりました。仲が悪いはずでございましたのが一緒に穴の中で暮らしておりましたこと、それからまた、当時二十名ばかりおりましたそうでございますが、十三名は逮捕されておると聞いております。あとの七名についてはどういうことになっておりますか。また、その逮捕方について、民間徹底をさせる必要があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  16. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 今回の一連の事件で十三名を逮捕いたしました。洞窟等に遺留をされました物品等からリュックサックが二十個出たというような報告もございますが、そういう意味では、差が七名ございますが、これは、私どもは、その差の七名だけの問題ではないと考えております。現在赤軍派の者で、いま手配をいたしております者が九人、それから京浜安保では——これが日共革命左派でございますが、これが四人、それから共産同RA、これは爆発物等を都内のアジトでつくっておったり、あるいは関西方面で活躍した爆発物事件を敢行した連中でございますが、これが十三人、こういう凶悪な犯行を重ねるおそれのある者につきましては、やはり十分徹底した捜査をいたしまして、これを検挙し、事件を解決することによって国民の御不安というものをいささかでも解消いたしたい、かように考えております。  それからもう一つ、それが一体になったのはなぜかというお尋ねでございますが、これらは、元来それぞれ違った発足をいたしておるように思われますが、また、言うておることも、ある段階までは多分に違っておったようでございます。しかし、いろいろ追い詰められて、それからまた、戦術的な武器あるいは爆発物をもって権力組織なり何なりを殺害するという点において、人数も少のうございますので、そういう点でいわば一致をして連合した、かように考えておるわけでございます。
  17. 中山正暉

    中山(正)委員 残存の連中についても、追及の手をゆるめずに、この社会の静謐を乱す凶悪な連中に対しての御処置を的確にお願いをしたいと思いますが、それについても、全国でテレビを見ておられた方々は、警察の装備はあれでいいのだろうかという御疑問を持たれた方もずいぶんいらっしゃると思います。アメリカあたりの警察の装備を見てみますと、拳銃、自動小銃AR15というやつ、それから鎮圧用の連発式のショットガン、催涙弾と、その発射銃、ヘリコプター、——これはロサンゼルスの警察でございますが、六フィートの鉄鋼製のプレッシャー、それから建物の屋根をはぐ消防用のジェッタアックス、装甲車というように、非常な重装備をしておられるようであります。民間からもいろいろな御意見の開陳もあったそうですが、私ども、見ておりましても、あの犯人逮捕にしても、焼もけっこうですが、消防用の発泡、あわを出すやつ、ああいうものを使ってはどうかしらというような気持もで見ておったのですが、警察の装備につきましては、何か今度のことで参考になりましたことがおありでしょうか。  それからまた、相手が二百発くらい撃ったということですが、警察は、一体どの時点で発砲してもいいという御許可を与えられたのでしょうか。そして、警察のほうは、一体何発たまを今回の場合お使いになったのでございましょうか。
  18. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 武器の使用命令の点だけ、私からお答えいたしておきたいと思います。  今回の事件につきまして、私はいろいろ指示をいたしましたが、そのうちの一つは、あらゆる手段を講じて人質の無事救出のために全力を尽くせということ、それから二番目に、警察官の受傷防止、一般人の受傷防止のために最善の努力を払って、そうしてそれがための必要な体制、準備、心がまえを整えろということ、三番目に、ただいま申した一と二のために必要やむを得ざる場合における警察行動は、いかなる行動も支障なしということ、こういう指示をいたしました。したがって、その行動の中には、武器の使用差しつかえなしという指示をいたしてございます。あとは、現地のそれぞれの本部長のあれでございますので、官房長もしくは警備局長からお答えさせたいと思います。
  19. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  装備一般につきまして、装備関係の充実の問題につきましてお答え申し上げますが、過激派集団の動きに対応して、警備の万全を期するために、警察におきましては、これまで、主として、投石あるいはゲバ棒、火炎びん等の防護用の個人装備品の拡充製備をはかってきたわけでございますけれども、銃器、爆発物使用等の事態も出てまいりましたので、これに対応しまして、警察といたしましても、機動隊を中心とした警備の基幹部隊につきましては、挙銃弾等に耐え得る鉄帽あるいは防弾着等を保有いたさせましたほか、特殊金属製の防御たてを携行させることにいたしておるわけでございます。このほか、ライフルにも耐え得るような特殊鋼製の防弾たて——これは個人個人が持っております先ほどの特殊金属製の防御たてのほかに、特に強固な特殊鋼製の防弾たて、それから防弾板、あるいは特型警備車等を保有しておるわけでございます。  今後さらにこの面の充実を期しまして、銃器、爆発物に対しまして防御力のある特殊車両、いわゆる防爆車というふうに呼んでおりますが、この防爆車や、あるいは受傷防止用の、軽量で高性能の個人装備等を緊急に開発整備することにいたしますとともに、拠点に籠城する相手方の制圧方法等について、器材も含め、さらに検討を加えてまいりたい。このために、つい最近、外国等にも視察員を派遣いたしまして調査いたしておるところでございます。
  20. 中山正暉

    中山(正)委員 今回の事件を参考に、ますます市民の安全を守り、また、国家の治安を守るために御努力をいただきたいと思います。  それでは、次に、今回のこの貴重な体験に基づきまして——昭和三十九年、トニー谷さんのむすこさんが誘拐をされましたのを契機に身代金誘拐罪というものが設定をされましたが、今回のこのことに関して、人質罪ですね。今回はまことに奇妙な事件で、人質をとっていながら、全く何の要求も出してこなかった。赤軍派がハイジャクをいたしましたときには、人質を利用して、北朝鮮に行くまでのいろいろな要求を出してまいったわけでございますが、今回の場合は、特殊な形となっておるようでございますが、この人質罪に関して、いかに対処をなさるおつもりでございましょうか、その点をお伺いいたしたい。
  21. 高松敬治

    ○高松政府委員 人質罪を設ける必要があるかどうかということは、かなり前からいろいろ研究をしてまいりました。特に昭和四十五年の六月の法制審議会の刑事法特別部会、そこの小委員会でこの問題が取り上げられ、改正されるべき刑法の中に人質罪を入れられるかどうかということを、かなり長い期間をかけて議論がございました。その結果、昨年の十一月に法制審議会刑事法特別部会の刑法の改正案が発表されておりますが、その中には、三百二十三条の二の条文に「人質による強要罪」というものを新たに設けるということで、特別部会の段階までは、そういうことで一応了承をされておるところでございます。ただ、これは、今後総会にはかられ、また、いずれ国会に提出されて改正になるわけでございます。非常にその間に期間があるという問題がございます。  それからまた、その他の改正された条文で、これで十分であるかどうが、たとえば、そのときの改正された条文の中には、構成要件として「第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行なわないことを要求した者は」というふうな構成になっておりますが、いま中山委員のおっしゃったような点からいって、これで十分であるかどうか、そういうふうな問題もございます。そういうことで、私どもとしては、今回のような事件もございましたし、法務当局ともこれからよく相談をいたしまして、これをどういうふうにするか、いろいろ検討を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  22. 中山正暉

    中山(正)委員 今回の人質事件も、あるいは人質がなかった場合にはもう早く制圧されておったと思いますが、あの人質というのは、何も要求をしてこないうちに、暗黙のうちにたいへんに大きな要求をしておるのが現状であろうと思います。ここに私「都市ゲリラ」という本を持っておりますが、この「都市ゲリラ」の中にもいろいろと「都市ゲリラ部隊の人数は、四ないし五人を一グループとするのがよい。」「都市ゲリラに、もっとも基本的に求められるものは、規律と判断力である。そして、彼らの武器は、すばやく逃げてかくせるように、個人統御川のものであるべきで、そのために最適なものは、一挺のカービン銃(連発小銃)と一〜二挺の短銃身の散弾銃以下とし、ほかのメンバーは拳銃をもつべきである。」というように、言っておりますが、今度の事件は全くこのとおり地でいっているわけであります。そして、人質をとっても、その人質の顔が元気かどうかを見せるなとか、それからまた、人数を相手にわからせてはいけないというような、ゲリラ戦法のこういう教科書といいますか、そういうものを地でいっておるというところが見られます。そしてまた、連中は悪いことをしておるという罪の意識の観念がありません。「都市ゲリラの行動は、無法者のそれと同一視されやすいが、根本的に異質なものである。なぜなら、無法者の目的は個人的な利益であり、そのため多くの一般人が被害をうける。しかし、都市ゲリラは政治的目的のために、行動するのだから、政府・大資本家・外国資本だけを襲撃する。これが、無法者とゲリラが訣別する条件である。都市ゲリラの主要任務は、独裁政権・軍国主義者・人民抑圧の軍隊などをかく乱し、徹底的に疲れさせて体制を弱らせ、変革への道をひらく。同時に、外国資本と、それに頭を下げている上流階級に痛打をあたえることである。」その他、社会体制に対する転覆を意図しておるのでございますから、一般の利益を得るための人質という観念で考えていただいては困る。特に、またすぐにも行動を起こそうとしておる連中がおるわけでございますので、できる限りの早い機会に単独の立法としてもお考えになっていただきたいと私は思うのでございます。  刑法改正というのは、もうたいへんに長い歴史を持っておりまして、改正、改正という話はありましても、実は表面には全く出てこないという、主観主義刑法論者と客観主義刑法論者が刑法改正仮案を舞台に大論争を展開する材料でございますので、それが出てくるのを待っておるというのでは、国民に対しての義務を立法の府にあるわれわれ国会議員として果たし切れないのではないかと思いますので、早期に御提出を願うように、私はこの際にお願いをしておきたいと思いますが、それに対するお答えをもう一度いただきたいと思います。
  23. 高松敬治

    ○高松政府委員 人質罪自身というもの、人質事件というものは、件数的に見ましてもやはりかなりふえてまいっております。特に、いままで年間一件ないし二件であったものが八件、七件というのが昭和四十五年、六年の数字でございます。ことしも、今度のものを入れますと四件すでに発生をしております。非常に悪質かつ卑劣な事件でございますし、また、私どもからいって、処理の非常にやりにくい事件である。そういう点で、私どもも、御趣旨の点よく承知いたしておりますが、ただ、こういう人質罪という新しい形の犯罪の類型をつくる問題については、実はいろいろ議論がございます。その点で、どういう形のどういうものが一番いいのかというようなことについては、必ずしも意見が全部一致しているわけではないように見られます。まだ多少のいろいろの曲折はあると思いますけれども、私どもとしては、やはりこういうものについての何らかの処罰規定は必至であろうというふうに考えて、これからいろいろ進めてまいるつもりでおります。
  24. 中山正暉

    中山(正)委員 学者の議論の問題ではなしに、現実に対処する方法として、重ねてお願いを申しておきますが、自由民主党を代表する質問者として、この問題に対処する法的な処置をぜひひとつお願いをしたい。もしそういうことでありませんでしたら、党内におきまして議員立法ということも考えられるわけでございますので、その点も申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、急ぎたいと思いますが、今後の過激派に対する対策でございます。  ニクソン訪中という、世紀の事件と申しますか、これについての私自身の評価といたしましては、五千年の歴史を持つ中国に対して、二百年の歴史を持つアメリカ、特に、カリフォルニアの州知事にまで落ちたニクソン大統領が、選挙のためにこの問題を利用したのではないかということなんですが、しかし、アメリカでは、共産党というものは一九五四年に非合法化されております。共産党としての、団体としては解散をさせられておりませんが、とにかく、共産党のない国である。私ども見てみますと、北京放送によりますと、ニクソン大統領に対する誹謗がいつも非常にはなはだしい、それに比べれば、日本政府のほうがまだやわらかかったはずでありますのに、遠交近攻と申しますか、アメリカ政府をねらうということでなしに、日本の佐藤政権よりも、米帝国主義、帝国主義の本山であるニクソンのほうを中国へ招いた。その事件の最中に、毛沢東語録の——ここに、私、実は、毛沢東談録を持ってきておりますが、「鉄砲から政権が生まれる」共産主義者はみな、その銃口から政権が生まれてくるということを考えていなければならないという、その考え方に立つ人たちが、ちょうど同じ時期に浅間山荘にこもったというのは、自由主義、民主主義による政治に対する大きな警告になったと私は思います。  この「都市ゲリラ」の中に、「強化される急進派の組織と理論」ということが書いてあるのですが、その中で、「体制側がいっているような暴走は、われわれはやりません。もちろん、武装闘争はいずれかの時期に到来するでしょう。しかし、それには十分な戦略的な読みと、軍事的な準備が必要とされます。」として、「全体的な戦略 六〇年以来の流れにしたがった戦略を、より高いものにしていく時期であろう。それは、たんに理論的な革命戦略ではなく現実の闘争のなかにとらえていく。重要なのは、内なる問題では沖繩、」まあ、沖繩の問題は済んだといたしましても、「外では中国である。」と言っております。そのほか「現実的な戦術 これまでの戦訓を生かし、地味な教育・訓練の時期に入っている。短期的な作戦では、戦略を有利には展開できない。」「武装 相手は重武装の警察と軍隊であるが、武装闘争にはなにも戦車、大砲はいらない。せいぜい自動小銃、機関銃まで持てればよいだろう。やがてわれわれも持つであろうし、その方向に進んでいる。しかし、銃火器もやたらに使えるというものではない。それを十二分に活用できるにはじゅうぶんな技術が必要である。未熟な人間が使用することは効果がないばかりでなく、みずからも、組織を亡ぼすことになる。」これは、今度がいい例だと思います。「話題にのぼる爆弾は、組織のなかの優秀な技術者が各種の完全なものを製造できるところにまで至っている。しかし、爆弾の使用はきわめてむずかしいものであり、じゅうぶんに使用は制御されるものでなくてはならない。一般市民に被害や悪影響を与えてはならないからだ。どこでもやたらに使ってよいものではない。もし、使用されるとすれば、日本の場合、もっとも多くの人々に憎悪されているところに向けられるであろう。たとえば、首相官邸、警視庁、機動隊本部などである。全般的に武器の使用はきわめて管制していく。」「組織「組織の状況は、しだいに安定しつつある。日本的状況からいまだに多くの分派活動となっているが、各派の中枢との連絡機構、つまり横のつながりもつくられつつある。いずれにせよ、各派とも自派のみが絶対ではないことを認識しつつある。」これは過激派の者が言っておるところでございます。「訓練 解放闘争には肉体の強靱さが求められる。したがってアナーキイな生活を健康的な方向へ転換し、日常のなかで肉体的訓練を行なっている。そしてまた、集団行動も重要であるため、その訓練も怠らない。」「モラル 解放闘争にはある意味での禁欲主義が必要だ。現在では、内部的に不純分子は淘汰されていっている。性の問題でも興味本位にアナーキイな状態が宣伝されているが、そのような非常識な乱れはない。人間関係として許容される範囲で男女問題もあるのはとうぜんだろう。しかし、訓練と学習のために規律が求められている現実は、モラルを闘争するものとして正しいものに淘汰しつつある。原則としては酒類の禁止、あるいは制限も行なわれている。」「情報 情報収集はわれわれの生死に関係する。したがって情報網の展開には万全を期している。とにかく予想以上に体制側の動きは事前につかんでいる。体制側は人民の目にとり囲まれている事実を甘く見ているようだ。」「根拠地 警察は、いまだにアパートなどをアジトと考えているようだが、その段階はもう過ぎている。たとえば、拠点は都内にも存在するが、それは発見できないだろう。しかも、武器集積所などは短期間で移動しているため、発見は困難だろう。」と言っております。「資金源 街頭カンパを行なっているので資金難と思われているようだが、あの種のカンパにはすでに何ら期待していない。闘争のメンバー自身正業についていて、資金にはさほど困ってはいないし、じゅうぶん利益を提供している資金源もある。銀行強盗を計画しているだろう、などとうわさされているが、日本では銀行襲撃などは困難と思えるような条件が多く、単純に行なえるものではない。そんな必要も現在はない。じゅうぶんな資金源を保有している証拠に、たとえば六八年度だけで三派は全体で一億三、〇〇〇万円の資金を使っている。今後はさらに増大する見通しである。」「見通し 闘争は長期にわたるだろう。しかし、われわれもじっくりと腰をすえて状況に対処していく。急進派の真の戦略は、部外者に全貌がとらえられるはずはないが、彼らの戦略がたんなる暴走路線をはしるものではないことがうかがわれる。もちろん、現実の闘争のなかでエキサイトして出てくるものや戦略を欠くグループの行動は別であり、それで全体をとらえては対応する側としても誤りを犯すものとなるだろう」このように、いろいろと現実の状態と符合をするようなことを、この「都市ゲリラ」という、いわゆる連中の教科書にも書いてあります。  私は、破壊活動防止法を適用して、こういう過激な集団は解散団体に指定するなど、そういう行為はとっていただけないものだろうかと思うのですが、破壊活動防止法の今日までの運用、また今後の方針などについても、時間がないので、簡単にひとつお答えを願いたいと思います。
  25. 島田純一郎

    ○島田説明員 お答えいたします。  過激なこれらの集団につきましては、私どもも、平素から関心を持ちまして、その動向について厳重に調査、解明を急いでおるところでございます。  ただ、破防法によりますところの団体規制につきましては、団体活動の制限と、解散の指定と、二つの種類がありますが、これらの団体につきましては、その法律にこまかく規定されておりますように、第一には、団体が存在するということ、そういう意味では、特定の共同の目的を達成するための多数の人の継続的な結合体またはその連合体であるということが必要であります。それから、その次には、所定の暴力主義的な破壊活動が団体の活動として行なわれるということが必要であります。そういったことのためには、いわゆる正規の意思決定の機関により、成規の手続を経て団体意思の決定がなされており、その意思を実現するためにいわゆる暴力主義的破壊活動が実行されるということが必要になってまいるわけであります。したがいまして、一部の構成員が、団体の全体の意思とかかわりなく、はね上がって、暴力主義的な破壊活動を行なうような場合には、これを、その団体の行動としてやったということはできないとされております。また、三つ目には、継続または反覆して、将来さらに、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行なう明らかなおそれがあると、十分な理由がある場合に限られております。  したがいまして、先ほど来御指摘のありました、いわゆる連合赤軍につきましては、わが庁としましても、かねてから鋭意調査しておったところでありますが、現在の状況では、これを直ちに団体規制をもって臨むということにつきましては、その組織の実態といったようなところから、若干問題があるかとも考えられますので、これらの点を十分に解明するために、目下、調査に全力を傾注しているところでございまして、慎重にやってまいりたいと考えております。
  26. 中山正暉

    中山(正)委員 時間が参りましたので、あと、大臣が来られましてからまたいろいろと……。  私は、実は、三軍の統帥権、自衛隊を動かす統帥権を持っていらっしゃる総理大臣、そして、警察権を持っていらっしゃる総理大臣——先ほど人質の問題を申し上げましたが、そういった戦前の天皇陛下以上の権限を持っていらっしゃる個人としての総理大臣がもし誘拐された場合には、一体どうなるのだろうかということを心配する。いまの内閣法九条でも、総理大臣に事故ある場合、または総理大臣が欠けた場合というようなことが書いてございますが、戦前は、一人の大臣が辞表を提出いたしましても、内閣は総辞職しなければなりませんでしたが、いまでは、内閣総理大臣は大臣の首を幾らでもすげかえることができます。もし、内閣総理大臣が化きておって、どこかで命令を出した場合には一体どういうことになるのかということを、前にありました三島事件、そうして今度の事件などで、私は痛切に感ずる。日本の、何と申しますか、氷の張った上に大仏さまをすわらせたような現状を、この「都市ゲリラ」なんというものを読んでみまして、はだえにアワを生ずる思いがいたすのであります。そういったことに関しまして、警職法の問題に関しましても、あと、大臣が来られましてから少し時間をいただけるそうでございますので、その際に質問をいたしますが、公安調査庁という、公共の安全を守る組織も、破壊活動防止法の成立とともに存在をいたしておりますわけでございますし、国防と治安の維持、これが国家の二大支柱であると思いますので、どうぞひとつその責めを十分お果たしいただきますようにお願いをし、時間が足りませんので、いろいろと私見があるのではございますが、申し上げる機会をまたの機会に譲りたいと思います。  たいへんにありがとうございました。
  27. 大野市郎

    大野委員長 山口鶴男君。
  28. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 一連の連合赤軍事件関係いたしまして、特に、殉職をきれました内田警視長高見警視正、それから、これに関連いたしましておなくなりになりましたお二人の方々の御冥福を、心からお祈りをいたしたいと思います。  また、今回の事件に関連いたしまして、長野県警察本部、警視庁、また、群馬県警本部、埼玉県警本部等の御努力に対しましても、心から感謝をいたしたいと思います。   〔委員長退席、豊委員長代理着席〕  また、後藤田長官はじめ、富田警備局長等、最高責任の位置にあります方々の御努力に対しましても、心から敬意を表したいと思います。  さて、今回の行動でありますが、後藤田長官は、日ごろから、いわゆる警察の任務と軍隊の任務というものは大きく異なるのだ、警察の任務は、軍隊とは違って、相手をやっつけるということではない、あくまでも、犯罪を犯した人々を逮捕する、あるいは人質等になった方々救出するということに全力をあげるべきものだ、ということをかねがね言っておられました。今回の方針を拝見いたしましたら、まず第一に、人質となりました牟田泰子さんを救出をする、二番目に、警察官負傷者をできる限り出さないようにする、三番目には、犯人逮捕する、この三つの原則を掲げて行動されました。お二人の犠牲者を出し、多数の負傷者を出されたことは非常に残念でありますけれども、とにかく、後藤田長官の、警察官の任務として日ごろから主張しておられます方針を堅持いたしまして、今回の事件に対しまして対処をいたしましたことは、私は、きわめて適切な処置であったというふうに考える次第であります。  そこで、私は、時間もあまりありませんからお尋ねしたいと思うのでありますが、特に、犠牲者方々の処遇の問題であります。先ほど官房長から、具体的に、いろいろな措置がなされることの御報告がございました。わが党もまた、近く提出されるであろうところの地方公務員災害補償法の改正案につきましては、その実施の時期につきましては、四月一日ということじゃなしに、二月一日、あるいは暦年として区切りのいい一月一日というような形にいたしまして、犠牲者方々に十分お報いをするということにつきましては、与党はじめ各野党の皆さんと十分相談をいたしまして、対処するつもりでありますことをまず申し上げておきたいと思いますが、ただ、問題は、今日まで、各種の事件によりまして多数の殉職警官を出していることです。昭和四十三年九月の警視庁の第五機動隊の西条巡査部長昭和四十四年四月の岡山県警の有木巡査、昭和四十六年の神奈川県警の福島警部補、柏村巡査部長昭和四十六年十一月の、これは琉球警察でありますけれども、山川巡査部長、同じく昭和四十六年十一月の関東管区機動隊の中村巡査等、多数の方々が殉職をされておられます。また、殉職には至らなくても、非常に重傷を負った警察官方々も多数おられるだろうと思います。事件当時は、マスコミ関係もあるいは国民の人たちも、非常に御苦労であったという謝意を表しますし、いろいろ記事にもなりますし、また、当時、警察といたしましてなし得る最大のお報いをしておられると思うのでありますけれども、結局、一時に入ったお金というのは、これは限りがあるわけであります。問題は、過去において殉職されました警官の御遺族方々が、現在一体どのように暮らしておられるだろうか、また、重傷等を負って不具等になりました方々警察官をおやめになりました方々等が、その後どのような生活をしておいでであろうか、ということに対して、親切な追跡調査をするということがやはり必要ではないだろうかと私は思うのであります。特に、最近、極左に限らず、極右の暴力の激化というものも予想されるわけであります。そういう際に、身を挺して国民のために対処をいたします警察官方々が、事故がありました一時だけ称賛されましても、その後の御遺族あるいはけがをされた方々の生活が悲惨であるということであっては、私は、これはやはり申しわけないと思うのであります。その点、過去における殉職されました警察官方々の御遺族の追跡調査、あるいは、けがをされました警察官のその後の身の振り方、こういうものについて、警察当局としてはどのような御把握をいたしておられますか。まず、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  29. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  公務災害を受けて殉職された警察官遺族は、多くの場合、先生の御発言のように、生活の支柱を突然失いまして、将来の生活に大きな不安を抱いて、その悲しみは察してなお余りあるものがあるわけであります。したがいまして、これらの遺族方々に対しましては、警察といたしましても、ほんとうにその立場に立った気持ちで、細心の配慮をいたしておるところでございます。  まず、その措置といたしましては、一つは、先生のいまおっしゃいましたような実態把握でございます。そのために、まず、第一の措置といたしまして、各都道府県警察におきまして、公務災害負傷者及び殉職者の遺族の処遇事務の取り扱いに関する要綱を定めまして、カードシステムを採用して、長期にわたって、常時継続的に遺族の生活の実態を把握しているところでございます。  二つ目の方法といたしましては、生活相談援助事業を行なっておる点でございます。つまり、突然血清の支柱を失った遺族は、生活設計上の不安が大きいと思われますので、その遺族の特殊事情をよく考慮いたしまして、親身になって生活相談に乗り、また、その要望にこたえる措置と申しますか、たとえば、未亡人の就職等についてもお世話申し上げ、あるいは、子弟の教育の問題については、警察育英会を通じまして学費援助を行ないますほか、住居その他、生活上の各般の問題について支援をするようにつとめているわけでございます。  三つ目の方法といたしましては、遺族との連絡を緊密にとる、これは当然のことでございますけれども、そういうことをやっております。つまり、時期の経過とともに警察遺族との間が疎遠となることがあってはなりませんので、幹部はもとより、各警察職員が、激励かたがた遺族を訪問いたしまして、親密な関係をいつまでも保持するようにつとめているところでございますが、特に、遺族の生活の関係の問題につきましては、子弟が学業を終え、就職するまでの間は、絶対にあたたかく見守って、随時相談に応ずるよう、各県警察の担当者に強く指導いたしておるところでございます。  また、山口先生の御指摘の、警察官の長期療養——治安警備のためにこうむった災害によって長期療養をしておる警察官でございますが、これも、現在二百人近くおるわけでございます。これにつきましても、身分及び給与につきましては、もちろん、その職務ができなくなったからといって、これがすぐ休職になったり、あるいは昇給停止になったりするというふうなことはいたしておりません。これについては、場合によっては、昇給等についても、あるいは昇任等についても、むしろ有利に取り扱っておるというふうなことさえとっておるところでございます。  それから、負傷者の手当てにつきましては、地方公務員災害補償法の規定に基づきまして、十分な費用を、これはもちろん全額支出いたしておりますほか、病状の回復に合わせまして、リハビリテーション施設における機能回復訓練等による回復促進をはかっておるところでございます。  また、療養が長引く、あるいは不具廃疾というか、そういうふうなことになりまして長期間にわたって休業しなければならない、こういう場合におきましても、きめこまかな配慮を欠くことのないよう、各都道府県警察本部に専門の担当者を置きまして、長期にわたって、常に、罹傷者及び家族に対して激励を行なうというふうなシステム、つまり、そのときどきに思いついてやるということでなく、専門の担当者を置いて、システム的に、組織的に、組織としてこれをバックアップし、援助して、支援していくという組織をとっているわけでございます。  なお、職場復帰——すぐに失職するとか、あるいはやめなければならぬというふうな措置はとっておりませんので、職場復帰できるようになりました場合には、もちろん、あたたかく迎えて、適当な職場の転換をはかって勤務できるように配慮しているところでございます。
  30. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 このような、みずからの危害をも顧みず活動しなければならぬ立場の人といたしましては、警察官はもちろんでありますが、警察官ばかりではなしに、消防関係職員などもまさにそのとおりだろうと私は思うのであります。ところが、警察官にしろ、それから消防職員にしろ、現在の法律では、労働組合を組織することができないたてまえになっております。それだけに、先ほど来官房長からいろいろ御説明がありましたけれども法律の上からいってもそういった措置がなされておりますが、しかも、一番危害が予想される事態に対して身を挺して活動しなければならぬという立場にもあるということを考えまして、遺族方々への今後の対処のしかた、それからまた、負傷された方々の身の振り方等に対しましては、より十分配慮ある措置をとっていただくことが必要じゃないか、私はこう思うのです。  といいますのは、ちょっと話は違いますけれども、たとえば、ダムをつくるとか、あるいは港湾の埋め立てを行なうというような形で、一時に大金の補償がお入りになる人たちも現にあるわけです。しかし、こういう方々に対して、それでは官庁が一体どうしているかといいますと、いわば、補償を与えたからそれで終わりということで、その後何ら生活再建対策というものは講じていない。判こを押すまでは官庁の方は非常に足をしげく運ぶわけでありますが、一たん事が解決してしまうと、あとはもう全然知らぬ顔だというような状況が現に非常に多いわけであります。今度の場合はそれとはもちろん違うことは承知をいたしておりますけれども、私の申し上げましたことをぜひとも十分おくみ取りいただきたいと同時に、長官として、今後こういう問題に対してより十分な対処をいただく御決意があれば、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  31. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御説のように、この種の救護の措置というものは、遺族の立場に立って考えれば、一番必要なことは、やはり救援措置を恒常的にあとあとまで続けてやるということだと私は思います。そういう意味合いで、現在、いろいろな立法措置その他についても、現行法に不備がございますので、そういう点はぜひとも改善をしていきたい。同時に、また、警察の中でのやり方としては、やはり、これは、仕組みをつくっておくということが何よりも肝心だということで、御説の趣旨を体しておるつもりではございますが、いろいろネック等もございます。しかし、さらに一そう努力を重ねて、遺族に、生活上いろいろな面での不安感を与えないように、できる限りの措置をとってまいりたい、こういう決意でおります。
  32. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 さて、今度の連合赤軍行為でありますが、彼らの書いておりますもの、あるいは主張しておりますもの等を拝見をいたしますと、中国、ベトナム、あるいはキューバの革命に学び、日本における革命戦争というものを目ざすというようなことを言っておるようであります。私ども社会党は、この議会を通じて、日本における、日本の歴史的経済的条件にふさわしい社会主義を実現するということを主張いたしております。そういう意味では、中国あるいはベトナム、キューバの革命のあり方は、革命を達成したということにつきましては、私どもはそれなりの評価もいたしますけれども、このようなあり方がわが国においても通用するとは断じて考えておりません。しかし、中国なり、あるいはベトナムなり、キューバなりにおいて、それぞれ人間性回復を掲げ、人民に支持され、人民の中で活動する中で一つの革命政権を打ち立てたということの意義は、私どもやはり十分評価をいたすつもりであります。しかし、連合赤軍の彼らが言っておりますようなこと、あるいは今回の行動を見ますと、私は、革命家と呼ぶに値せず、まさに狂気の行為ではないだろうかというふうに思います。なぜならば、人質をとるというような、きわめて人間的に卑劣な行為を行ない、見さかいもなく人を殺傷する。これは、人間性回復どころか、まさに人間性に対する挑戦であり、社会に対する挑戦であるというふうに言わなければならないと思います。そういう意味で、連合赤軍行為というのは、口にすることと行ないとが全く反対であり、日本の社会のいわば敵として、これら連合赤軍につきましては、徹底的に彼らの意図を打ち砕く。そういう意味では、連合赤軍なるものの組織を壊滅させるということの必要性を私は痛感する次第であります。  連合赤軍に対しましては、今後一体どのような形で対処をするおつもりでございますか。念のためにひとつお伺いをしておきたいと思います。
  33. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 ただいま先生御指摘のように、彼らが連続して引き起こしておりました凶行のあとを考えてみますと、先年の御指摘のとおりの集団である、かように考えております。  これの今後の措置でございますけれども、先ほど来申し上げましたように、現在すでに、相当数の指名手配者というものを指名手配いたしまして、厳重に捜査を続けておるところでございますが、できるだけ早期にこれらの犯人を検挙して、その組織自体がああいう凶悪な行為に出ようとする意図をくじくということが何よりのことであろうと思っております。また、その必死の努力は続ける覚悟でございます。と同時に、いろいろな角度から、彼らの不穏な動向というものをいち早く私どもが握りまして、そして、それに対応した措置をとるということが今後十分に考えられなければならないと思っております。その意味で、国民の皆さんの御協力等をわずらわしまして、また、私ども努力徹底することによって、そうした不穏の動向を事前察知する、そのためには、警戒取り締まり、警戒体制といろものを、私ども自身の問題として、警察の各部門の総力をあげて、昨年末見られましたような、爆発物を使用して一般市民を巻き込むとというような事態は事前に防止する、また、現場で検挙する、こういうような方針のもとに、さらに警戒あるいは検索を強化してまいりたい、かように考えております。  また、先ほどもお読み上げになった本の中にもございましたが、私ども重要防護対象というふうに考えておりますようなものに、あの狂気の徒がある犯行を犯そうということは許されないことでありまして、これまた、警戒警備を十分にしてまいらなければならないと思っております。  その他、彼らが、先ほど申し上げましたように、銃撃戦をもって彼らの目的を達する——昨年の十二月十八日、彼らの集会でもそうしたビラを配っております。また、その他の彼らの機関紙にもそういうことばが見られるわけであります。そういう面からいたしましても、銃器、爆発物等の危険物の管理というものを、法的の面からも、また、現実警察努力の面からも徹底して、再び彼らにそうしたものを奪われないというような管理の徹底をはからなければならないと思っておりますし、また、警察の装備器材につきましても、銃の携帯というようなことについての面は、こういう凶悪な特殊犯罪にはどう対応するかという装備面の問題、あるいはそうした専門家の養成というようなことについてもいろいろ知恵をしぼり、また、実現に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  34. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いろいろ今後の手当てについてもお述べいただきましたが、連合赤軍の、指名手配になっておりますが、まだ未逮捕というのが相当あるようであります。  さて、そこで、警察方々に少し苦言を呈したいと思うのでありますが、この連合赤軍捜索の端緒を開きました埼玉県警、群馬県警の努力を私は高く評価いたしたいと思います。ただ、しかし、犯人逮捕されました経過、たとえば迦葉山、あるいは榛名湖畔、あるいは妙義山、さらには軽井沢の駅等における犯人逮捕の経過を見ますと、結局、民間人の方々の通報と申しますか、いわば協力というものがあって初めて逮捕に至っているというケースがきわめて多かったようであります。タクシーに乗った、非常にひどいにおいだ、異様なふうていをしておる。あるいはバスに乗った、バスの運転手あるいは車掌の人たちから、これは非常に異様な人だというような通報があった。それから軽井沢の駅におきましても、警察官の諸君がおったようでありますけれども、現実に逮捕に至った経過は、売店の御婦人の通報によって逮捕になったということを見ますと、どうも、これら民間人の方の協力がなければ、なお犯人を逃がしたのではないかということが言えると思うのですね。そういう意味では、警備当局も非常な御苦労をしておることはわかるのでありますが、どうも、捜査に手落ちがあったのではないかという感じがいたすのでありますが、この点はいかがですか。
  35. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 犯罪の捜査につきましては、この連合赤軍捜査のみならず、一般の犯罪捜査においてそうでありますように、警察官の聞き込みとか、いろいろなことで犯人逮捕の出発点があり、また、それにつながりまして犯人逮捕といろ事実で解決するわけでございますけれども、その意味におきまして、民間の一般の方々が、この連合赤軍捜査につきましては、非常に多大の御協力と申しますか、関心を持たれるとともに、協力をしていただいておったということは、私どもも非常に厚く感謝をいたしております。したがいまして、その契機を民間の一般の方からいただいたということがいろいろ報道もされておりますが、そのとおりの場合が多いわけでございます。しかし、この契機をいただいて、それを織り込むというところの警察官努力というのは、群馬県警においてもたいへんな努力であったと思います。しかし、私どもも、現行犯で、というか、あるいはうろうろしておるのを目撃してつかまえてしまえということができれば、これは一番望ましいことでありますし、たとえば爆発物捜査爆発物の対策なんかはそうであるべきだと思いますが、そういう点におきましては、私どもも、十分その教訓を生かして、全国の警察官を指導してまいりたい、かように考えております。
  36. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 もちろん、民間人の方の御協力が必要なことは私ども否定するわけじゃありませんし、きわめて重要なことだと思います。ただ、そういう経過を教訓として、十分念頭に置いていただきまして——群馬県警あるいは長野県警の努力が足らなかったと言っているわけでは決してないのでありまして、そういう経過も十分に念頭に置かれて、警察当局として、反省すべき点は反省して対処いただきたいということを要請いたしたいわけであります。  さて、そこで、長官にお尋ねしたいのですが、今回のこの浅間山荘事件が一つの契機ともなりまして、相当右翼を刺激しているという感じもいたすのであります。実は、昨日、私ども社会党、それから公明党、総評あるいは日中国交回復国民会議、あるいはその他の団体の共催で、日中国交回復に関する演説会が行なわれました。その際にも、右翼が大量にその会場になぐり込みをかけるというような、あるいは脅迫とも見られるようないろいろな情報等があったやに聞いております。この点はまた日を改めていろいろ議論はいたしたいと思っておりますけれども、昨日、春闘共闘委員会の整斉たる行動に対して、学純同という、行動右翼だと思いますが、この装甲車まがいの宣伝カーが突っ込みまして、一人の方に対して重傷を負わせるというような遺憾な事態もございましたが、今回の浅間山荘事件を契機にいたしまして、警察官がもっとライフルその他重装備をすべきじゃないかとか、あるいは、この際徹底的に火力をもって対処すべきじゃないかとかいう批判は一部新聞等でも拝見いたしましたが、これはどうも無理な御意見じゃないかと思う。特に、牟田さんという人質の方がおられる状況においてそういう無理なことはすべきでもないし、また、そういう主張は誤りだと思っておりますが、それと同じような形で、特にまた、最近、ニクソン訪中、日中国交回復、あるいは最近におきまして、国会の四次防をめぐるいろいろな混乱等がございまして、これらのものが総合して右翼を刺激するというような事態が現にあるのではないかということを縣念いたしております。私は、そういう意味では、極左も断固取り締まるべきだと思いますが、同時に、きわめて暴力的な右翼の行動というものに対しても、この際断固対処する必要があると思います。特に、左翼に対する資金源も問題でありましょうが、右翼に対する資金源は一体どうなのか。その資金源を断つ。そういう中で、暴力的な右翼の行動をやはり押えるということが必要ではないかと思います。特に、最近における右翼の動向、また、右翼に対する警察としての対処のしかたというものにつきまして、長官あるいは関係の方からひとつお答えをいただきたいと思います。  後段のことは具体的に答えなくてもいいです。要するに、右翼全般に対してとうかということでけっこうです。
  37. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 ただいまの先生の御指摘、御意見の中にありましたように、私どもとしては、暴力行為を展開するような、右翼といわれておるグループに対しては、常時関心を持ち、警戒をいたしておるところでございます。したがいまして、これらの不穏な行動等については、そういうことのないように極力事前に制止をすると同時に、徹底して取り締まるという方針で臨んでおります。しかし、ときとして妙な事態が起こる。妙な、といいますか、犯罪行為を犯すというようなことは昨日も実はありまして、その点は、負傷された方にたいへんお気の毒であると思いますが、ああいう行為は許せないのでありまして、今後とも、右翼に対しては、極左の取り締まりと同様、不法行為については厳重に対処していくつもりでおります。
  38. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでは、幾つか具体的な問題をお尋ねしたいと思います。  特に、今回の浅間山荘事件に関連いたしましておなくなりになりました内田警視長高見警視正の殉職に至りました経過を拝見をいたしますと、いずれもライフル銃によって狙撃をされたということが原因のようでございます。この非常な威力を持つライフル銃は、真岡市の銃砲店から盗み出したものが連合赤軍に渡ったというようなことが書かれてございましたが、その出所はいずれといたしましても、ライフル銃がこういった凶悪な連中の手に渡ったというところに、今回の悲惨な殉職者を出さなければならなかった大きな原因があると考えております。私は、かつて、真岡市の銃砲店の盗難事件に際しまして、ライフル銃というようなものを、国内で製造して輸出するならけっこうでありますけれども、国内で販売をする、あるいは、外国の威力のあるライフル銃を輸入いたしまして国内で販売をするという必要が一体あるのか、この点については十分再検討すべきではないのかということを実は申したことがございます。最近、環境庁におきましては、自然保護といろ立場から、全国を禁猟区にするという構想も発表されております。これに対しまして、政党の一部から、全国を禁猟区にするのはけしからぬじゃないかというような異議も出ておるという話も聞いておるのでありまして、どうもその点は遺憾に存じますが、それは別といたしまして、そういう自然保護という立場から、全国を禁猟区にしたらどうだという提案も、責任ある大臣の口からもなされている現在であります。しかも、それでは、わが国には、ライフル銃をもって対処しなければならぬようなどうもうなけだものがおるのかといえば、あげるとすれば、せいぜい本上におきましてはイノシシ、北海道におきましてはヒグマというような程度だろうと思うのですね。  通産省から数字をちょっとお聞きしたのでありますが、昭和四十五年におきまして、国内で生産され、販売されたライフル銃が三百三十丁、それから、外国から輸入されて、国内で販売されましたライフル銃が四千八百丁、昭和四十六年は、一応見込みだそうでありますが、国内で生産され、販売されますものが二百丁、外国から輸入されまして、国内で販売されるものが九百丁、さらに、国内で生産をされて、輸出に向けられておりますライフル銃が、昭和四十五年におきまして一万九千丁、昭和四十六年におきまして三万四千丁、こういう数字だそうであります。国内生産及び外国から輸入したものを含めまして、一年間五千丁を上回るようなライフルが国内で販売されている。こんなにライフル銃が国内で出回らなければならぬような理由というものが一体あるのかということを私は非常に疑問に思うのです。警察庁は、銃砲刀剣所持取り締まりに関して所管をいたしておりますところであるが、一体、これほど大量なライフル銃が国内で販売されなければならぬ理由というものはどうお考えですか。ライフル銃というような、人に対して非常に危害を与え、非常に威力を持つものが国内に大量に出回っている。したがって、それが、不心得者と申しますか、乱暴者の手に渡る可能性もそれだけふえるということが、やはりこの際こういう問題を引き起こすのではないかと私は思いますが、ライフル銃がこれだけ国内に出回ることについて、銃砲刀剣所持取り締まりの任に当たる警察庁として、一体どういうお考えですか。お聞かせいただきたいと思います。
  39. 本庄務

    ○本庄説明員 ライフル銃のいまの制限の御趣旨につきましては、同感でございます。御案内のように、そういった考え方に基づきまして、昨年、銃刀法の一部改正が行なわれまして、その許可要件というものを、散弾銃に比べましてたいへんきびしく制限をいたしたところでございます。  今後、日本におきまして、はたしてライフル銃が必要かどうかということにつきましては、すなわち、全面的に禁止するかどうかということにつきましては、先ほどお話しのございました有害獣であるクマとか、イノシシ、トドといったものの駆除のためには、現在のところは、ライフル銃は若干は必要な銃器であるということになっておりまして、したがいまして、基本的には、狩猟制度との関連を無視するわけにはまいらないのではなかろうかと思います。御案内のように、昨今、自然環境保全の一環といたしまして、狩猟問題の抜本的な検討が論議されているのでございまして、これらの動向をよく見きわめて、早急に検討して、御趣旨のような線で進んでまいりたいと考えております。
  40. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 通産省の重工業局の次長さんがお見えになっているようですが、製造、販売という面から見て、これほど多数のライフルが国内で製造され、販売されているということについて、どうお考えですか。
  41. 和田敏信

    和田説明員 ただいま先生から御指摘がございましたような数字で生産が行なわれておりますので、重複いたしまして恐縮でございますが、ちょっと述べさせていただきますと、現在製造されておりますライフル銃の大部分は輸出向けでございます。国内向けの出荷といたしましては、四十六年の見込みでは二百丁でございます。輸入を加えましても、国内販売用としての供給は、四十五年と比較いたしますと大幅に減少いたしまして、約千二百丁ということに相なっております。これに対比いたしまして、四十五年度の供給合計は約五千二百丁でございます。供給数量としては著しく減少を見ておるわけでございます。  また、ライフル銃の国内需要といたしまして、有害大型獣の捕獲あるいは射撃用として、最小限の数量が必要ではないかというふうに考えております。製造も、輸出向けを除けば、必要最小限なものに限られておると考えられますので、特に製造、販売を禁止する必要は、現状においてはないのではないかと考えておる次第でございます。  なお、国内向けに販売されておりますライフル銃は、銃刀法上適当な構造のもののみに限られておりますことは申すまでもないことでございます。  以上でございます。
  42. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それは適当な構造のものか知りませんけれども、それがそういう凶悪な連中の手に渡るならば、きわめて適当でないほうに使われるわけですから、そういうことを懸念して申し上げているつもりです。  銃砲刀剣類所持等取締法を改正いたしまして、本年になりましてからは、昨年に比べて、国内で販売された量が五千二百丁から千二百丁に激減しているということはけっこうだと思いますが、一体、わが国には、ライフル銃は全体でいまどのくらいございますか。
  43. 本庄務

    ○本庄説明員 正確な数字は、いま手元に資料を持っておりませんが、約三万だと思います。正確な数字につきまして、後刻また資料をお出ししたいと思います。
  44. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 約三万国内にあるということですね。  長官、どうですか。この際、環境庁においても、全国禁猟区というような構想も出しておる。それは、本土においてもイノシシはいるでしょう。しかし、ライフルでなければこれを退治できぬということは言えないと思うのですね。しかも、もうすでに国内に三万丁ものライフルがある。こういう状況であります。この際、銃砲刀剣類所持等取締法については、より再検討いたしまして、国内における禁猟区をどうするか——狩猟に対するこれからの制度の改正と相まって、やはりこのことには抜本的に再検討する必要がある、かように私は思いますが、御感想がございましたう一応お答えをいただきたいと思います。
  45. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 先般、いつの国会でしたか、同じような御質問がございまして、私は、日本のような、人口が非常に稠密で、しかもそれほど大型な有害鳥獣がおるとも思えない国で、ライフルを使わなければならぬ必要性が一体あるかどうかはなはだ疑問に思っておるというお答えをいたしましたが、私は、今日でもその考えを持っております。しかしながら、現実には、聞いてみれば、クマとかなんとかで、どうしてもライフル銃が要る場合があるんだということでございますので、その限度においてはやはり必要であろう、しかし、今日国内に三万丁あるということについては、こんな必要性は全然ない、私はさように考えているような次第でございます。したがって、銃刀法の御改正等も願いましたので、この運用については、きびしく運用してまいりたい、かように思いますが、同時に、今日、ただいま通産省からお話がありましたが、武器等製造法の関係の規定がございます。しかし、これについては、私どもの立場から申しますならば、販売店等の盗難防止については、やはりいま少しくきびしく規制をしてしかるべきではなかろうか、かように私は考えまして、今日、通産省に、そういう点で鋭意折衝を重ねておるような次第でございます。
  46. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 この点は、特に各省にわたる問題ですから、大臣等が参りましたときにまた御所見を承りたいと思いますので、先へ進みましょう。  最後の問題ですが、先ほど中山委員からもお尋ねのありました刑法の問題であります。  法務省から刑事局長さんにもお見えいただいておるので、お尋ねしたいと思いますが、現在の刑法の規定、それから六法全書に載っております改正刑法準備草案関係条項を拝見をいたしますと、現行刑法では、二百二十条で、「逮捕監禁」は「三月以上五年以下ノ懲役」ですね。それから、同じく刑法二百二十五条ノ二の「身代金誘拐」は、「無期又ハ三年以上ノ懲役」というような規定があるようであります。改正刑法準備草案を拝見いたしますと、三百二条に、「代償目的の誘拐」「二年以上の有期懲役」というような規定があるようであります。先ほど来中山委員も言われましたが、今回の人質事件は、代償を要求していない。もちろん、人質をとっているということ自体が、警察力に対する、いわば無言の脅威になっていることは事実でありますけれども、現実に身のしろ金を要求しているわけでもない。あるいは、おれたちをキューバならキューバに逃がせというような代償を要求しているわけでもないということであります。そうなりますと、現行刑法では、牟田泰子さんを不当に逮捕監禁したということで、いわば、この「三月以上五年以下ノ懲役」というような条項にしか当たらぬということでは、現在人質事犯が頻発をし、しかも、それが、従来の人質事件と違って、身のしろ金あるいは代償を要求するというケースと非常に異なる人質事件が頻発をしているという状況のもとにあって、現在の刑法あるいは六法全書に載っております改正刑法準備草案の条項では、現在の頻発する事件にきわめてなじまないのではないかという感じが私は強くいたすのでありますが、この点、法務省としてのお考え方をお示しをいただきたいと思います。
  47. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいま御指摘の、いわゆる人質犯罪に対する処罰規定でございますが、ただいま御指摘のとおり、現行法におきましては、刑法二百二十条の不法監禁罪、あるいは二百二十三条の強要罪というのがなまで当たるわけでございます。その場合には、ただいま御指摘のように、不法監禁罪ということになりますと、現行法のもとでは「三月以上五年以下ノ懲役」、それから強要罪の場合には「三年以下ノ懲役」ということになるわけでございまして、この法定刑の低さということは一応問題外といたしますと、これは必ず一応は処罰される犯罪行為であるということは、現行法のもとにおいても明らかでございます。  ところで、それでは現行法のこの法定刑が低きに過ぎるという点が問題になるわけでございまして、この点につきましては、いわゆる人質というものを、そのものずばりで見てまいりますと、ただいま申し上げたような法定刑になるわけでございますが、御案内のとおり、この種の事件につきましては、他に犯罪が伴う場合が相当多うございます。たとえば殺人であるとか、殺人未遂であるとか、強盗でございますとか、強盗未遂でございますとか、そういう犯罪が他に伴っておりまして、そしてまた、監禁罪であるとか、強制罪であるとか、こういうことが同時に成立するというケースが過去の事例を見ますと多いわけであります。そういたしますと、殺人が伴っておるとか、強盗が伴っておるということになりますと、これらの罪は法定刑が高うございますから、結局、処分をいたします場合には、この高いほうで処罰をされるということになるわけでございます。そういう意味におきまして、現実には、大多数の場合には重い刑で処罰できるという現状でございますけれども、理屈の問題として、殺人や強盗や、そういうものを伴わない単純な——単純と言っては恐縮ですが、人質という場合、先ほど申しました五年以下三月以上というようなものでは怪いのではないかという点でございます。  私どもは、その点痛感をいたしておるわけでございまして、ただいま御指摘のように、一応単純な監禁なら監禁、監禁して何かを要求するというような形の人質罪につきまして、これはそれ自体でもっと刑を重くする必要があるのではなろかうかという観点で、現在、当省で進めております刑法改正作業におきましては、新たに人質による強要罪というものを設けまして、これは二年以上の有期懲役に処するという法定刑を一応案としてきめておるわけでございます。そういたしますと、単純にこれだけで懲役十五年まではいくということに相なるわけでございます。  こういうことで、現に、当省におきまして、法制審議会において、この案を十分検討いたしておるわけでございますけれども、この、現在の法制審議会でやっております刑法の改正案の、ただいま私が申し上げました人質による強要罪は、これまた、ただいま御指摘のとおり、人を逮捕し、もしくは監禁し、または略取し、もしくは誘拐し、これを人質にして、第三者に対し義務のない行為をすること、または権利を行なわないことを要求した場合に成立する、というふうに考えておるわけでございます。  そういたしますと、この刑法の改正案で現在考えております人質による強要罪は、今回の浅間山荘事件におきまして、この要求行為がないということを前提にいたしますと、この、現在の刑法改正案で考えておりますものが、今回の事態には、それ自体として、理屈の上では間に合ってこないという問題がございます。そこで、私どもは、今回の事案にかんがみまして、この要求行為のないようなものについてどうするかということを含めまして、現在刑法改正案で作業いたしております人質による強要罪の検討を進めますとともに、新たな形の、こういう要求のない犯罪についても、どういうふうに改正案を持っていこうかということにつきまして、鋭意検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  48. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういった要求のない行為につきまして十分検討するということでありますから、私は、この際、やはりいまお答えのありましたような趣旨で十分検討していただきたいことを強く要請しておきます。  大臣が参りましたので、一応ここで……。
  49. 豊永光

    ○豊委員長代理 ただいま中村国務大臣が出席になりました。大臣の出席時間が限られておりますので、先ほどの理事会での申し合わせのとおり、これより大臣に対する質疑を行ないます。中山正暉君。
  50. 中山正暉

    中山(正)委員 大臣がいらっしゃる前に、一時聞ほど質問をさしていただいたわけですが、時間があまりありませんので、要点のみにすぐに入らせていただきたいと思います。  このたびの浅間山事件について、大臣御自身も非常な御努力をいただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思いますが、実は、最近、非常に不穏な情勢になってまいりました。名もないと申し上げるとあれでございますが、要人を殺さずに、警察官方々に対する、非常に残酷な、火炎びんを投げて殺戮をするというようなケースが非常に横行をしております。これは、連中の考え方としては、要人、つまり、名のある人を殺すと、その反感が自分たちの組織に返ってくるから、そこで、物情騒然とした世間の感覚を生み出すために、すぐに話題から消えてしまうような人をできるだけ暗殺するというようなことではないかと思いますが、しかし、ここで考えておかなければならないことは、これが要人に対する誘拐、暗殺その他の問題に発展をしてくる段階に到達をするということも考えられるわけでございます。私は、一番心配をしておりますことは——これは、総理大臣御自身に実はお伺いをしたいと思っておったのでございますが、現段階では大臣にお伺いをしたいと思うのですが、実は、いまの憲法では戒厳令規定というものがございません。旧憲法には、十四条に、天皇大権として、戒厳令規定というものがございます。ところが、二・二六事件のときに、岡田啓介という総理大臣が行くえ不明になられましたが、実は、このとき、日本では革命は起こりませんでした。しかし、もし、いま総理大臣がどこかへ拉致されるというようなことが起こった場合——総理大臣は、三軍の統帥権をいま御自身の手の中に一手に持っておられます。その上、警察権を持っておられます。大臣を自由に罷免をできる権限も持っておられます。これが赤軍その他過激派のような方々に拉致される——また、先ほど山口先生のお話にもありましたように、右翼の問題もあるわけであります。三島事件のときに、三島さんが増田総監のところにいらしたときに、増田総監が、私は、総理大臣から電話がかかってこない限りは自衛隊を出動させるわけにはいきませんとおっしゃったという話でございますが、それでは、三島由紀夫というような人が、総理大臣のところに行ったら、一体どうなっておったか。総理大臣の背中にピストルを突きつけて、どこかテレビ局を占拠しておいて、NHKならNHKの面面の前にすわらせて、日本は社会主義国家に本日より改変をされましたということを総理大臣がもし宣言をするような場面ができたら、一体日本はどうなるんだろうという不安を私は持っております。日本はそんな状態ではないということかもしれませんが、政治というものはあらゆる面を想定をしておかないと——特に、日本の政治の場合には、社会主義体制をとろうとする政党と、自由主義、民主主義というものを保っていこうという政党と、両政党が実は対決をしておる。政党は五つありますが、たとえば公明党さん——本日いらっしていて悪いんですが、公明党が中共という国家に初めて党の代表団を送られたときに、私はふしぎに思ったのです。宗教というものを中心に立党をされた政党が、宗教というものを否定する国家に対してなぜ接近をはかられるのであろうか。私は、これがふしぎでなりません。私はこれがふしぎでならないのですが、とにかく、五つの政党の中で、保守、自由主義者と、そして祉会主義者とが対決をしておるという状態でありますから、これはいろいろと考えておかなければならない。特に、日蓮正宗は、峻厳派と寛容派の二つに分かれておりますが、この峻厳派、折伏派という段階は、これは、実は、日蓮正宗一宗教による独裁ということを考えておる政党でございますから、民社党の塚本さんのお書きになった本の中にも、公明党は左であるということが書いてあります。藤原弘達さんの本には右だと書いてありますが、私はそうは思いません。ですから、私は、いろいろな段階を想定をしておくのが当然じゃないかと思う。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)  よけいなことじゃないですよ。いつもほかの政党から自民党に攻撃を加えられて、われわれはそれに対して反論をする機会を持っていないのは、私は、一年生国会議員として、いささか不満に思っておるのでありますから、私は、何もやめる気はありませんので、この際堂々と言わしていただきたい。全体主義を標榜する政党と、そして自由主義を標榜する政党との対決という、そういう現象が世の中に現出をしておるのは、これは現実でございますが、そういうことが起こった場合に、戒厳令規定のない日本の国家として、一体どういうふうに対処をされるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  51. 中村寅太

    中村国務大臣 現在、治安当局といたしましては、要人その他の身辺には万全の処置をとっております。いま中山議員の御心配なさるような事件が起こるというようなことは全然ないと、自信を持って申し上げ得るのでございまして、御心配になるようなことはございませんから、その点は御安心願いたいと思います。
  52. 中山正暉

    中山(正)委員 世の中には、突発的に何が起こるかわからないということがございます。全然心配はないと言うけれども、私は、水田政調会長のときにこれを申し上げたら、そうなったら、総理大臣に自殺をしていただくほかにないだろうとおっしゃいました。田中大臣に申し上げたら、だいじょうぶ、薬を持っておられるから、飲んでもらって自殺をしてもらうんだとおっしゃいました。それじゃ、薬を飲めなかったら一体どうするんですかと私は申し上げたことがあるが、この問題は別にそういう心配はないということでございますが、私は、政治家として、そのくらいの心配をしておく必要があると思う。総理大臣が車を連ねて走っておられるときに、トラックをぶち込んで総理大臣を誘拐するということも考えられる。この国会に来られる姿を見ておっても、私は、そういうことが起こるんではないかという心配をしております。取り越し心労ならばけっこうでございます。  それから、もう一つ伺っておきたいことは、警職法が以前に問題になったことがございますが、警察として、いまの警察官職務執行法のままで一体いいんだろうか、どうだろうかという問題もあわせてお伺いをして、時間もありませんので、これで質問を終わりたいと思います。
  53. 中村寅太

    中村国務大臣 警職法は、警察の職務を遂行するために必要な職務質問、あるいは保護、避難等の処置、武器の使用その他、基本的な権能について規定しておりますが、警察としては、これを十分に活用し、対処しておりますので、これを改正することは考えておりません。  なお、これに関連して、火炎びんに対する取り締まりについては、別途罰則の面に法的措置が必要であると考えております。  こういう考え方でございますが、いま中山委員の想像なさるようなこと、これは想像としてはあり得ますけれども、治安当局といたしましては、そういうことは万に一つもないということを力強く自信を持って申し上げ得るだけの体制で、それぞれの要所を警備しておるということでございます。御理解願いたいと思います。
  54. 中山正暉

    中山(正)委員 日本の警察力を私は信じております。要人を擁護していただくということが、日本の自由主義体制というものをいかに守るかということになると思うので、この際、ひとつ、心を新たにして突発事故に対して御対処を願いたい。「リーダーズダイジェスト」の一月号には、KGBのメキシコ乗っ取り作戦——メキシコの過激分子を北朝鮮に持っていって軍事訓練している)いう各国の実態が載っております。ソ連憲法外は、百二十五条に、社会主義を伸ばすためにだけ言論の自由を保障するということが書いてあります。小兵は一ぺんも選挙をしたことがありません。そういう国家にわれわれがなってしまわないために、どうぞひとつ万全の御措置お願いいたしまして、私の質問を終わります。
  55. 中村寅太

    中村国務大臣 私の申し上げました要人というのは、政府の要人、各党の首脳、あるいは外国から来ておる人たち等、重要な人たちを含んでおりますので、この点を申し添えておきます。
  56. 中山正暉

    中山(正)委員 わかりました。
  57. 豊永光

    ○豊委員長代理 山口鶴男君。
  58. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いろいろかなりの議論がありましたが、今回の連合赤軍行為は、まさに、国民に支持される行為ではなくて、全く国民から遊離した、いわば国民を敵とした行為であるというふうに私は思います。わが国の将来についていろいろ御意見がありましたが、要は、政府当局者あるいは政治に携わる者が、いかに国民の信頼を集めるかということで、そういう意味では、世論の動向にのっとった政治をとっていくかどうかということが、わが国の治安を決定する一番の重要課題であるというふうに私は考えております。それだけに、今回の連合赤軍行為というのは、口ではいろいろなことを言いますけれども、まさに国民を敵にした行為である、それだけに、こういった極左暴力というものに対して断固対処しなければならない、私はかように考えまして、そういう立場から、先ほど来、警察庁長官、その他の方々に御質問したところであります。  最後に、大臣からお答えをいただきたいのでありますが、一つは、今回の内田警視長高見警視正の殉職、非常に御苦労だったと思いますし、私は、御冥福を心からお祈りいたしたいと思いますが、それ以前にも、警察官で殉職された方々が多数おります。また、重傷を負って職務につけない方々も多数あるようであります。なくなったときに、あるいはその事件が起きたときに、それなりの、なし得る最大の措置をなされることはもとより必要でありますけれども、その後遺族方々が一体どういうふうにお暮らしになっているのか、また、重傷を負った方々がいまどのような形でお暮らしになっておられるのかということについて、長期にわたって、これらの方々のその後の追跡調査を十分やっていただきまして、長い目で見た処遇というものをすることが最も必要ではないのかということを私は申し上げ、長官あるいは官房長から、それについては現在十分な対処をしておられるというお答えをいただいたのでありますが、国家公安委員長として、この問題に対して、より十分な対処をいただきたいが、その御用意ありやなしやをお尋ねしたいのが一つであります。  それから、第二といたしましては、極左の暴力。もとよりこれは対処しなければなりませんが、最近の動向を見ますに、右翼の動向についてもやはり十分注意をしなければいかぬと私は思います。極左、極右にかかわらず、暴力に対する対処について、国家公安委員長としての御信念をお伺いしたいのが第二であります。  最後に、第三の問題でありますが、大石環境庁長官、佐藤内閣が現在支持率が非常に低下をしたという中で、佐藤内閣のために大いに努力をしておるようであります。大石環境庁長官が、自然保護という立場から、全国を禁猟区にすることが必要ではないのかということを提唱いたしております。私は、非常にけっこうなことだと思います。特に、今回の、内田警視長及び高見警視正が殉職されました原因は、いずれもライフルによる狙撃であります。ライフルというような、非常に威力のある銃が、国内に三万丁もあるほどはたして必要なのかどうか、ライフルでもって対処しなければならぬような危険な有害猷が、わが国にはたしてたくさんいるのかどうかということを考えますと、私は、必ずしもそうではないと思います。銃砲刀剣類所持等取締法を改正いたしまして、ライフル規制については強めたことは私も十分承知をいたしておりますが、今後、こういった危険な銃砲が凶悪な連中の手に渡った場合に、いかなる事態が起こるかということも十分考えまして、この際、ライフルの規制については、わが国の狩猟制度の改正と見合って、抜本的に検討する必要があるのじゃないか。特に、そういう立場で、大臣は、閣議においてこの問題を提起し、できれば、このライフルというようなものが三万丁も国内にあるという事態は解消するということが必要ではないかと私は思うのでありますが、この点、国務大臣としての御所見をひとつ承りたいと思う次第であります。
  59. 中村寅太

    中村国務大臣 殉職者の遺族に対する処置でございますが、殉職者の遺族方々の生活に万全を期さなければならぬということが原則でございますが、当事者がなくなられたことによって、子供さんがふしあわせな運命に落ち込むとか、あるいは、その次のお孫さんまで悲惨な運命に入るというようなことのないように、山口委員の仰せられましたように、気長くめんどうを見るというかまえで対処しなければならぬと私は考えております。そういうことで、遺族に対する弔慰金等につきましても、そういう基本的考え方に立って額をきめ、あるいは補完をしていく、そうして、子供さんや、次のお孫さんあたりのところまで、この事件のために犠牲になった当事者の——この場合は、内田、高見両氏の事件によっての殉職が、子供や孫のふしあわせにまでつながらないように、これはわれわれが責任を持って対処しなければならぬと考えております。  それから、第二点の、過激派に対しましては、申し上げるまでもなく、こういう事件は、国民全体の協力を得ながら、一刻も早くこういうことの根源を断つ、絶滅させるという基本方針で対処してまいりたい、かように考えております。  第三点の、ライフルの問題でございますが、環境庁の長官の、全国を禁猟区にして、そうして特殊のところだけ許していくという、あの方針。私は、本来、基本的には大石君の考え方に賛成でございます。私は、やはり、ものの命をとって楽しむという楽しみ方は、人間の楽しみとしてあまり上等じゃないという考え方を持っておりまするし、今日では、渡り鳥等が、公害等の関係で非常に減っておるという時点でもございますから、山とか、あるいは自然を残すだけでなく、自然に生息しておる人間に被害を加えないこういう鳥獣というものは、やはりある程度保護していく必要がある、それが自然の中に生きておるという姿が美しい姿であるという考え方を持っております。そういう考え方を持っておりますが、やはり、ものによっては、農作物に被害を与えたりする傾向もございますので、そういうところは、適当にこれを防いでいくということもまた必要だろうと思っております。  ライフルの点でございますが、今日、一つの、国民的な殺風景な空気がだんだん醸成されて、各所に危険なことが行なわれてくる。われわれの若い時代と今日の実情を比べて見ますと、やはり、隔世の感のあるような相違点が出てきておると思いますが、そういうことを考えますときに、ライフルのような危険なものは、なるべく、だれでも持てないようにしていく、持つ人は、絶対にそういう不安を起こさないような人以外は持てないようにするという配慮が必要ではないか、かように考えております。私は、こういう危険なものはなるべく数を少なくしていく、そういう方向で対処していくべきだ、かように考えております。
  60. 豊永光

    ○豊委員長代理 桑名義治君。
  61. 桑名義治

    ○桑名委員 今回の事件につきましては、非常にわれわれも憂慮した事態が起こったわけでございますが、こういった一連の反社会的な行為につきましては、私たちとしては、どうしても承認できない、あくまでも絶滅を期していかなければならない、こういうふうに考えているわけでございますが、いままでの学生の、こういう過激派集団というものは、それぞれの集団が一つの過激な行為を起こして、戦闘的な立場に立った場合には、その主導権をまた奪い返そうというような動きがいままであらわれてきたわけでございます。そういった立場から考えますと、今度の連合赤軍行為に刺激をされて、新しく、他の過激派集団が同じような行為を起こしてくるという可能性が十二分に考えられるわけでございます。そういった一連の過激派集団の行為に対して、どのような処置をとり、また、大臣として、今後どのような決意をもって臨まれるか。その点をまず伺っておきたいと思います。
  62. 中村寅太

    中村国務大臣 国民のすべてが驚くような、凶悪な犯罪行為にまで走ったこの過激派集団の狂暴な姿というものは、断じて許されぬことでございまして、これは、一刻も早く絶滅するということが警察の任務でございますが、それには、やはり、事前に彼らのそういう傾向を察知して、これを未然に防いでいく、あるいは、全国一斉にそういうものの捜査をきびしくやって、そういう過激派集団の行為が行なわれないような空気を醸成していく、という必要があると思うのであります。警察当局としましては、こういう既定方針にのっとりましてきびしくやってまいりたい、努力を一段と強くしてまいりたいと思っておりますが、何と申しましても、警察官の数にも限度がありますし、活動範囲にも限界がありますので、広い国民的な協力と御支援が必要である、国民の理解がまた必要であると考えておりますので、今後は、国民の理解と協力を一つの力に育てながら、警察当局といたしましては、警察精神に徹して、各自が緊張して対処していくという体制で臨んでまいりたい、国民が一日も早く安心をしてしあわせな生活のできるような社会環境をつくり上げていかなければならぬと、警察当局全体がきびしく自省しながら、今日、体制をさらに一段と強化しておる段階でございます。
  63. 桑名義治

    ○桑名委員 今回の事件内容をいろいろと見てみますと、彼らのとっておるゲリラ戦術というものは、先ほどの質問の中にも出ておりましたけれども、一連のゲリラ戦術を書いた本が一つの教範になっているということも見のがせない事実だと思うのですが、こういった本の市販に対してどのようにお考えになっていらっしゃるか。まずその点も伺っておきたいと思います。
  64. 中村寅太

    中村国務大臣 私も、実は、爆弾をつくる本というようなものが市内に流れておるということで、いろいろ見せてもらって驚いたのでありますが、爆弾というようなものは、人間生活に役に立つ点はみじんもない。こういうものをつくる書物が横行しておるということは、私は、程度の高い社会の姿であるとは思われないのです。それで、出版等にも、できるだけそういうものはつくり得ないように、ある程度の規制がやはり必要ではないか、ただ、出版の自由とか、言論の自由とか、あるいは思想の自由とかいうものとの限界を十分気をつけまして、そういう百害あって一利なしというような、爆弾をつくる書物なんというものを横行させないような配慮が必要である、かように考えております。できれば、国会において、そういう立法措置まで、皆さん方の手でひとつお願いしたいものだと考えております。
  65. 桑名義治

    ○桑名委員 最後に、時間がありませんので、要望にとどめておきたいと思いますが、先ほど来山口委員のほうからもお話がございましたように、最近は、一連のこういった事件が勃発しまして、警察官の死傷が非常にふえておりますので、こういった人々に対する手厚い処置をとられることを望みまして、終わりたいと思います。
  66. 中村寅太

    中村国務大臣 殉職者、あるいは負傷者の手当て等につきましては、先ほど申しましたように、万全の措置をとってまいるつもりでございます。
  67. 豊永光

    ○豊委員長代理 門司亮君。
  68. 門司亮

    ○門司委員 私は、率直に聞いておきますが、事件内容、経過等についてはあとでまたお聞きすることにしまして、いろいろ問題はあろうかと思いますが、公安委員会は、御承知のように、総理大臣を頂点としてある委員会であって、中村大臣はそれの委員長ということになっております。その中にあるのが警察庁であることは間違いない。こういう指揮系統を持っております。それから同時に、警察庁は、何といっても、治安の維持に当たるということで、あらゆる犯罪についての取り締まり、あるいは検挙、事前の防止というようなことが任務になっておることは事実である。しかし、問題の起こったものを、そのままの姿で追及しようということは、時間もありませんから私は考えておりませんが、一つだけ大臣に聞いておきたいこは、この事件発生以来、国家公安委員会としてどういう会議を開かれたかということ。それから、これらの問題に対してどう対処するかということについて、いまお考えがあるのかどうかということ。もう一つは、よって来たる原因が、単なる若い者のはね上がりだけではない。いわゆる社会の一つの現象としてあらわれてきた以上は、その現象になる根底がないわけではない。それが新聞には、批評として、政治不信とか、飛び上がりがどうのこうのとか、いや、家庭の事情がどうだとか、いろいろな批評がありますが、国家公安委員長としては、それらの批評の中で、一体どれがこういう事件の起こる要素であるかというようなことをお考えになっておるのか。その点をひとつ率直にお答えを願っておきたいと思います。
  69. 中村寅太

    中村国務大臣 公安委員会といたしましては、この事件が起こりまして、委員との間に、委員長として連絡をとりながら、やはり、原則としては、人質をまず健康な状態のままで奪取するということが第一番、それから、犯人を全員検挙するということが第二番、第三番目には、警察官犠牲を出さないようにというたてまえでこの問題に取り組むようにということ、これを公安委員会としても十分注意をして、警察当局に指示したわけでございます。  それから、今後の対策でございますが、今後の対策につきましては、おそらく、刑事局長その他かうも申し上げたと思いますが、今後こういう危険をおかしそうな者をある程度マークしておりますので、そういう人たちがそういう行動に移らないように、事前にこれを防止していくという姿勢が必要である、かように私は考えておるのでございまして、現在も、そういう、事前にこれを防止するという基本姿勢に立って、全国的に手配をし、努力をしておるところでございます。  こういうことの起こってきた原因でございますが、これはいろいろあると思います。いろいろあるとは思いますが、総合的に考えなければ、このためにこういうことになったというきめ手はなかなかないと思いますが、根本は、日本の若い人たちの教育から出発しなければならぬのじゃないか、教育の出発から、こういうきわめて凶悪なことをやることのないような若人をつくり上げていくということがやはり必要であろう、こう思っております。あるいは、社会の責任だとか、政治の責任だとか、いろいろ言われますが、それはそれなりにいろいろ責任はあると思いますが、総合的に考えるときに、若い人たちの育っていく姿に政治というものはもう少し目を向けなければいかぬのじゃないか。私は、これが必ずしもきめ手になるとは思っておりませんが、終戦後、今日までの日本の政治を考えますときに、若い者に対するいろいろの配慮というものが少な過ぎたのではないかと思う。  私は、かつて、昭和三十年に西ドイツに行きましたのですが、西ドイツで、青少年に対する戦後の対策を聞きましたときに、やはり、戦争というものは若人からすべてを奪う、若人の欲望等を満たすようなものをことごとく戦争というものは奪うのだ、その戦争によって西ドイツの青少年がきわめて殺伐な気分になっておる、こういうものを直していくためには、若い者の要求するものを十分に与えていく、そういうことが若い人たちを健全に育てていく根拠であるということを聞きました。これは非常に示唆に富んだ話であると思ったのであります。運動のしたい者には、健康な運動ができるように、山登りのしたい者には、山登りができるように、あるいは、ダンスや音楽を好む者には、そういう好みに応じた、エネルギーを発散することのできるような若人対策というものがやはり必要ではないかということを考えまして、教育、あるいはいま申しますような若人対策というものに、政治というものがもっと心を配っていかなければならぬのじゃないかと思っております。きわめて迂速な考えのようでございますが、こういうことは、根本から出発して、時間をかけて、金をかけて、そうして、若人のエネルギーを正常な方向に向かわせるような政治が必要ではないか、かように私は考えております。
  70. 門司亮

    ○門司委員 時間が制約されておりますから、押し問答はやめたいと思いますが、ただ、ただいまの大臣の発言の中で私ども注意をしなければならぬと思いますことは、大臣は、若い者について、そのエネルギーの発散の場所をどこに求めるかというようなことをお考えになっていると思いますけれども、これは枝葉末節の一つの議論であって、その基本になるものは、社会情勢に対する——いわゆる社会に対して反抗するという、俗にこれを反社会的行為と言っておりますが、これを起こすには起こすだけの原因があると思うのです。土壌がなければ芽は出ないのであります。そういう素地をつくる土壌が一体どこにあるかということを考えた上でなければ、ただ末梢的に教育をどうするこうするということも一つの方法ではあろうかと私は思いますが、それが必ずしも根本の問題ではないのではないか。日本の政治の方向というものが、ややともすれば、そういう形で若い者に失望を与える。失望を持った若い者は、これを何とかはね返していって、自分たちの理想を実現したいと考える。これが間違っているとか、間違っていないとかいうことは別の議論にいたしまして、そういう反発をするのは、若い者の当然の帰結だと私は考えます。  したがって、きょうここでこれ以上同等はもういたしませんが、大臣にもお考えを願い、さらに、この種の問題については、正規の委員長がおいでになれば、正規の委員長お願いをするのですが、少なくとも、治安の責任は、警察法によって、総理大臣にあるのであります。国家公安委員長は、総理大臣の指揮のもとに公安委員長としての職務を執行されているのであって、あげて責任は総理大臣にあるのである。といたしますならば、こういう問題を審議する場合には、総理大臣に出てもらって、日本の政治のあり方というものをお互いにとことんまで議論し合うということを、謙虚な立場で国会でなさるべきではないか。そうしないと、ただここで、起こった現象面だけをとらえてお互いが議論しておっても、この種の問題の解決はつかない。この種の問題は、どんなに警察力を動員して、どんなに弾圧いたしましても、土壌があれば、必ずいつの時代にか芽を出して、大きくなって、必ず実を結ぶということは自然の原理であります。これを押えようとすればするほど、横にねじ曲がったものがはえてくるというのも事実であります。  私は、これは答弁は要求いたしませんが、ただ、委員長にもそういうことを申し上げて、ひとつ総理大臣にぜひ出てもらって、この問題だけはとことんまでこの機会に議論する必要がある。そういたしませんと、新聞その他を通じて見ますと、赤軍の残りもまだかなりおるようでございますし、その一部で、北朝鮮にも行っている者がおりますし、これらの者が連絡があったのかなかったのかということを私はここでただしたいのでありますけれども、それをただす時間もありませんが、これが、国内だけのゲリラから、やがて国際ゲリラという形にまで発展してまいりますならば、かなり大きな問題になる素地を持っているということであって、そういう点を委員長にひとつ強く要求しておきまして、私は、きょうの質問は終わらしていただきます。
  71. 豊永光

    ○豊委員長代理 林百郎君。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、今度の、長野県の南軽井沢の山荘で、山荘管理人の夫人である牟田泰子さんを人質にして立てこもった、いわゆる連合赤軍を名乗るトロッキストのやり方には、広範な国民の怒りがわき上がっている、こう考えております。日本共産党は、これまで一貫して、この反社会性を持ったトロッキストの本質を暴露し、糾弾をしてきたのでありますけれども、ここで大臣に質問をしたいのですけれども、政府、自民党の首脳部、警察の首脳部もそうですが、これはあと警察にお聞きすればいいと思いますが、こういうトロッキストを適当に泳がして、これを、共産党や民青、そのほかの民主勢力に対する対抗勢力として適当に利用をしてきた。こういう責任をどうお感じになり、どうおとりになるのか。この点を私はお聞きしたいと思うのです。  実例を申しますと、一九六七年の十一月、当時の保利茂官房長官は、「三派全学連は泳がせておいた方がよい。そうしないと全学連は日共系一本にまとまる。そのほうが危険だ」ということをはっきり言っておるわけです。それから、一九六九年三月五日の日本テレビで、当時の荒木萬壽夫国家公安委員長は、東大安田講堂を占拠した学生に対しては、「あわれさを感じ、いたわりの気持ちをもって排除した」ということを言っているわけですね。それから、一九六八年十月十六日の教育学術新聞で、坂田道太文部大臣は、「私は、三派系全学連よりもいっそう警戒すべきは日共系民青の動きだと思う」ということを言っておる。それから、一九六九年五月三日の朝日新聞には、中曽根康弘氏の談話として、「佐藤内閣をささえているのは、反代々木系学生だという見方もある。彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果している。」と載っている。それから、一九六九年三月六日の産経新聞で、稲葉修自民党文教制度調査会副会長は、「ゲバ棒に明け暮れる三派征伐は簡単だ。しかし問題は大学当局とつるんだ民青にある」ということを言っているわけですね。それから、当時の川畠広守警察庁警備局長は、あの「よど号」の乗っ取り事件に対して、参議院で、一九七〇年の四月一日に、一九七〇年三月の赤軍派による日航機「よど号」乗っ取り事件に関する共産党渡辺武議員の質問に対して、「赤軍派に限らずいろいろな団体に協力者を得ていろいろと情報を収集していることは、御理解の通りである」と言っています。そしてまた、今度は、同年四月十三日、衆議院の連合審査での不破哲三議員の質問に対して、やはり川島警備局長が「協力者には当然謝礼金を払っている。しかし、これはいわゆる協力の度合いであるとか、先ほど申したようないろいろ協力関係内容によってきまるわけであって、実際問題としてはいわゆる実費程度の金を渡しているわけである。いまお尋ねの赤軍派協力者に対しても実費程度の金を渡していることは事実である」と、警視庁の首脳部から金が渡っているということも言われておるし、それから、自民党の首脳部の、こわいのは日教系だ、あるいは民青だ、だから、これは泳がしておいてもいいんだという態度が、こういう連合赤軍派、いわゆるトロッキストの根を断たず、いつまでも横行濶歩させ、しかもそれがエスカレートしていく。そうしてまた、中村さんも、これをとらえて、警察力を強化しなければならないというようなこともおっしゃっている。これは、私は、非常に高度な政治的な政府・自民党の泳がせ政策だと思うのですが、こういうことをお考えになりませんか。また、今後こういうことは一切おやめになるということをここではっきりと断言できるかどうか。お尋ねしたいと思うのです。
  73. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、政府はもちろん、自民党といえとも——私も自民党の一員でございますが、この反社会的な凶悪集団を泳がせておるというようなことは断じてないと思います。また、私は、公安委員長として、そういうことをやるというようなことは断じて許されぬことだと思っておりますし、警察当局といえども、そういうことをやっておることはないということを、私は断言申し上げてはばからぬと思います。まあ、林さんはどういう根拠でおっしゃるのかわからぬけれども、ものは見ようですから、何と見られようとそれはしかたないことですけれども、意識的にそういうことをやっておるということはございません。  ただ、犯罪を捜査したり、つかまえたりする場合に、先ほど私が申し上げたように、国民の協力というものがやはり必要であるということは林さんも御理解していただけると思います。そういう意味での協力をしてもらっておるということはあり得るかもしれない。それは、いま林さんが指摘なさるような、何も、そういう変な意図をもってやっておるものではないということを私ははっきり申し上げておきます。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんから、この点についてはまた徹底的にやりたいと思いますが、ただ、トロッキストに金をやっておるということは、背叛社事件の判決でも、ちゃんと裁判所では認めておりますから、中村さんもその点を留意しておいていただきたいと思います。
  75. 豊永光

    ○豊委員長代理 午後一時四十五分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後一時五十七分開議
  76. 豊永光

    ○豊委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件について質疑を続行いたします。桑名義治君。
  77. 桑名義治

    ○桑名委員 今回の軽井沢事件につきまして、まず、最初に、この解決に当たられました警官の中で、内田警視、高見警部が殉職なさいましたことに対しまして、心からお悔やみを申し上げたいと思います。さらに、今回の事件に当たられました警察当局の御苦労に対して、心から謝意を表しておきたいと思います。  この問題でございますが、このような重大問題が発生をしたときには、緊急捜査にまず入るわけでございますが、この緊急捜査について、はたして手抜かりがなかったかどうか。この問題は先ほどから提起されておりますけれども、私は、この事件が起こったときに、すぐに思いついたのは、いわゆるハイジャックの問題であり、シージャックの問題であったわけでございます。今回のこの事件の簡単な経過をながめてみますと、二月の十四日の日に、榛名山麓でアジトが発見された。それから、十六日に、同じく、迦葉山山麓でつくったばかりのアジトが発見された。そして、十六日に、妙義湖畔で二人が逮捕。次に、十七日に、妙義山中で永田洋子ら二人が逮捕。十九日に、軽井沢駅で四人逮捕。同じく十九日に、あの「さつき山荘」の中に逃げ込んだという一つの経過があるわけでございます。  そこで、シージャックのときを考えてみますと、これは、かつてのシージャックの委員会のときに、長官のほうから反省された点を反省をしてみると、すなわち、三点に大きく分かれているわけです。まず、山口県における検問のときに、自動車をとめたけれども、うしろのトランクの中に銃が入っておることを見過ごしてしまった。それから、二番目に、広島県内に入って、小型の四輪車の人質を脅迫し、そのときに挙銃を取られた。それから、第三番目に、猟銃店に入って、宇品に停泊中の「ぷりんす」乗船までの一時間の間、これは何らかの手を打つべきであったろうというような報道がなされておったわけでございます。こういった立場から、同じように今回の事件を考えてみたときに、はたして緊急捜査が完全なものであったかどうか。これは大いに反省をしなければならないし、今後このような事件が起こってはならないわけでございますけれども、そのときのことを考えてみなければならないと思うわけでございます。いろいろな報道陣の中から、裏をかかれた警備陣というふうに評論をされたこともございます。というのは、群馬県警は、十六日以降、妙義山の山道と林道の警戒に当たって、まだ山中にいるだろう、だが、冬の山中であるため、装備もなく、徒歩で逃げるようなことはまず不可能だ、道路さえ押えておけば、長野県には逃げ込めないだろうというような、そういう判断があったのではないか。地元の古老の話によると、何十年か前にも、妙義山に猟銃を持った凶悪犯がこもったことがあるが、そのときに、警察が道路を固めているうちに、山中を歩いて軽井沢へ出てしまった。それで、雪の少ない年は思わぬところに通路があるのだというふうに早くから指摘をされておったということも報道されております。また、長野県警も、十九日に四人をつかまえたとはいいながら、軽井沢駅からの通報があって、現場に着くまでかなりの時間がかかっておる。また、これも先ほどからいろいろと議論の対象になっておったわけでございますが、民間人の協力によるものである。こういうふうないろいろな報道がされておる事実等を積み重ねてみますと、ここに、緊急捜査についてのミスがあったのではなかろうかというふうに考えられるわけです。警察の任務というものは、先ほどから長官もしばしば申されておられましたけれども、まず、こういう重大なる事態が起こる前に、いわゆる事前捜査をやり、事前逮捕をし、事件の解決をするということが最も大事なことだと思います。そういう立場から、今回とられた緊急捜査についての追及というよりも、今後の反省の意味を込めて、この問題についての見解をまず伺っておきたい、このように思うわけです。
  78. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 ただいま御指摘事前制圧といいますか、事前にこうしたものを検挙するということは、私どもが念願としておるところでございます。先ほど来申し上げておりますように、情報の入手、その他、いろいろ手を尽くしておるところでございます。その点の御指摘等につきましては、これは教訓として今後十分に生かしてまいりたいと考えております。  先ほども御説明いたしましたように、二月七日に、榛名山におきまして不審な車両が放置されておるというお話が一般の方からございました。一月以来と申しますか、年末以来、こういう問題について、全国警察的に相当に注意を集中いたしましてやっておったところでございますが、いわゆる、そこに犯人がいたという場合には緊急配備といもことになりますけれども、自動車がときどき来ておったという情報でございますので、直ちに、捜査ということのために、群馬県警を、いわば総動員したような形で、二月七日からずっと足取りを追い、いろいろな聞き込みを続けてまいったわけでございます。この中の永田洋子というのが、二月十七日に、いまお話がございましたように、妙義山中でつかまっておりますが、この永田洋子が大学時代に山岳部におったということと、しかも、何か、妙義山には、かつて数年前鉄砲水を見たことがあり、その鉄砲水の話なども知っておるというようなこと等の話がありましたので、さっそく、榛名山、迦葉山妙義山というところに捜査力を集中いたしまして、群馬県は、その妙義山周辺に約五百名の警察官を投入をして、まず山をシラミつぶしにかかったのでありますが、雪、その他の関係で、思うような進展がそうなかなかないままに捜索を続けておりましたところ、先ほど申し上げました二月十六日、十七日の妙義山中での犯人逮捕になったわけでございます。その時点におきまして、すでに——これは長野県ばかりではございません。山梨も、それからあの周辺の埼玉も、すべてこういう体制に入っておったのでありますが、長野にいたしますと、軽井沢から県境に向けまして、約二百名警察官を動員をいたしまして、あの地帯の検索に当たっておったのでございますが、先ほど申し上げたように、彼らは、いわゆる道なき道を通って、雪中泊をしながら和美峠の付近に出て、そして軽井沢に入った。結果から見ますと、先生の御指摘のような点もございます。そういう点は、私どもとしても、将来の教訓として、やはり大いに考えなければならぬと思いますが、いま申し上げましたように、あらゆる努力を、広範な地域に対して、しかも山岳地域に対してやっておったということは、それぞれの県本部として、持てる力を最大限に発揮しながら努力をしておった、かように私どもは考えております。どうぞよろしく事情を御了承いただきたいと思います。
  79. 桑名義治

    ○桑名委員 また一つの、反省見なるわけでございますが、いよいよ十九日に立てこもって、その後いろいろと銃撃戦やその他が行なわれたわけでございますが、先ほどの質問の中にありましたように、FM放送でこちらの情報が一々キャッチをされておったというふうにいわれているわけでございます。この問題は、いわゆるシージャックのときも、ハイジャックのときも、同じように、電波で犯人から裏をかかれたというような事実がいままでにあるわけでございまして、それに気がつきまして、三日後にいよいよ電気を切った、こういうことになっているわけでございますが、この、電波によってこちらの情報が傍受されているという事態に対して、なぜ最初から対策を立てなかったのかという一つのうらみがあるわけです。それと同時に、今後の捜査にあたりまして、この電波をどういうふうに監理をしていくかということが一つのポイントになってくると思うのですが、それに対する対策をどのようにお考えになっておられるのか。  それから、電話線が切断をされていなかったのではないかというようにけさのNHKの放送で言っておりました。最後最後まで、いよいよ突撃の時点まで、外部との電話連絡がなされておったのではないかというような放送がなされておったわけでございますけれども、そういうふうに、こっちの手の内が全部わかってしまえば、捜査も非常にたいへんにもなってきますし、また、被害者も多く出てくるというおそれが十二分にあるわけですが、その点はどのようになっておったのか、伺っておきたいし思います。
  80. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 第一のFMの件でございますが、これは、主人の牟田さんが持っておったラジオ、いわゆるポータブルラジオと、それから、先日からその日の朝にかけて、河合楽器関係の人が六人泊まっていたわけですが、そのうちの一人がそういうものを持っておった、それを犯人らが使ったということでございますが、これは、三日目に電源を切ったことは直ちには関係ないわけでございます。FMラジオが彼らの手にあるということが、主人の牟田郁男さん等からかいろいろ事情を聴取いたしました結果わかりましたので、当然持っておるだろうという推定で、そういうことから、私どもとしても、通信については、いろいろなくふうで、相手のほうのラジオに入らぬようにというくふうはいたしましたが、何ぶんにも大ぜいの人間が動いているあれなわけでありますから、その一部はFMラジオに入るということを想定して、いわゆる内部の事情、つまり、人質の安否その他の内部の事情を探るような場合におきましても、接近行動をとる場合においても、十分そこは注意をしてやってきたのでありますけれども、いま御指摘のように、一部といえども入るということを——今後は当然その前提に立ちまして、こういう事態に対してのこちらの措置におきましては、それを十分計算に入れて対策を立ててまいらなければならぬと思っております。  それから、いまの電話の件で、けさラジオで放送があったということでございますが、これは、すでにもう犯人逮捕しまして、現場を検証いたしておりますから明確になっておりますが、逮捕後の検証では、いわゆる電話線が切断されているとか、切れているという状況はございません。ただ、受話器が取りはずされているといいますか、ほうり投げられているような状態になっておった。そういう状況は、管理人の牟田郁男さんから、どういう状況であるかということを当初いろいろ話を伺ったわけでありますが、三階にございます管理人室に電話があるということでありましたので、警察も再三電話をかけてみましたところが、いわゆる話中状態であります。軽井沢の二局の一〇三〇というのがあの電話番号でございますが、私も、土曜日、日曜日に数回、いわゆる遠距離通話になりますが、東京からかけてみましたけれども、約一分間くらい受話器を耳にあてておりましたが、やはりブーブーという話中状態のような感じの応答しかございませんでした。そういう意味で、やはりこれは常時そういう状態——これはさらに電気的に調べてみなければならぬと思いますけれども、ただいまの推測では、外部との通話状態にはなかったというふうに考えております。また、これは自動交換を通る電話でございますので、その結果、もし使っておれば郵政省のほうで度数が上がるわけでありますけれども、その点は、度数は全然上がっていないというように連絡を受けております。  それから、先ほどのFM関係のことで、こちらの通信というのは、いろいろ通信の技術のあれで、ああいうラジオが聞いてもわからぬようないろいろなくふうもございますので、そういうくふうもこらしておりました。
  81. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 ただいまの答弁で、あるいは誤解を受けるといけませんので申し上げておきたいと思いますが、今後の反省点ということでお答えをしたわけですけれども、だとしますと、今度はまるっきり抜けておったのかという誤解があっては困りますので申し上げますが、FMは当然持っておる、それで聞いておる、また、電話線は非常に危険であるということ、これらすべて計算済みでございます。テレビ等についても、電源は切りましたけれども、電源を切ったこととは別の観点で、テレビは見ておるという前提に立ちまして当方としては対策を講じたつもりでございます。なお、テレビについては、たとえ電源を切っても、音声のほうはFMに入るということの前提の上に立っての措置を講じたということでございます。  したがって、ただいま局長の言った今後の対策という点については、今日の情報化社会といいますか、マスコミの時代に、私ども、こういうことはすべて織り込んだ上で、さらにこれをどうして乗り越えていくかということ、これを検討の課題といたしたい、こういう意味でございますので、誤解があるといけませんので、つけ加えておきたいと思います。
  82. 桑名義治

    ○桑名委員 今回の捜査によって、連合赤軍はほとんど壊滅状態にあるというふうなことがいろいろと報道されているわけでございますが、その反面、まだ中堅幹部等が逃走を続けておるので、非常にまだ危険な状態にあるというような報道もあるわけですけれども、今回のこの事件を通して、連合赤軍が現実に大体どういう状況にあるというふうな認識を持たれておるのか。まず、その点をお伺いしておきたいと思います。
  83. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 連合赤軍は、昨年の七月に、京浜安保のいわゆる軍事面でありまする組織と、赤軍派のいわゆる軍事面である中央軍というものがいわば連合したようなことで、自来行動をともにしておると推定しておりますが、先ほど申し上げましたように、赤軍につきましては、今日まで、連続金融機関強盗事件爆発物事件、その他いろいろな犯行をやっておりまして、すでに百三十三件、二百八十人を逮捕いたしております。しかし、これは、逮捕いたしましても、すぐ保釈で出てくるとか、いろいろなことで、さらに罪を重ねていくという状態にもございますが、現在、先ほども申し上げましたように、指名手配をして追及をいたしております者は十六人。このうちには、いわゆる「よど号」事件の、ピョンヤン周辺にいるというふうに言われておりまする五人を含んでおりますが、この十六人。それから、京浜安保関係では、四十三件の犯行を犯し五十一人を逮捕いたしております。これにつきましては、指名手配をして追及いたしている者が三名。それから、共産同MLというものを相当数追及いたしておりますが、この連合赤軍はどの程度の勢力であったかということでございますけれども、非公然の軍事組織でございまして、その意味からは、人数はある程度限定されておるように考えられます。京浜安保関係の人民革命軍は約三十名前後。それから赤軍の中央軍関係が五十名前後。そのほか、いわゆる非公然組織として、京浜安保共闘なりあるいは赤軍革命戦線といわれるものなり等があります。したがいまして、その中枢部分については、今回の事件の検挙とともに、相当の主要人物は逮捕いたしております。それで、また、逮捕留置中の者、あるいは収監中の者等があるわけでございますが、なお、この赤軍が、かつて、四十四年に、山梨の大菩薩峠で、爆発物を相当つくり訓練しておったところを五十数名逮捕いたしましたが、これは、その主要な者を残してではありますが、逐次、保釈とかそういうもので出てまいってきております。したがいまして、いま申し上げた指名手配者を追及する以外に、そうした者等につきましても、再び非公然の形においてああした行動に出るという可能性は十分ありますので、そうした面についても厳重に注視をして、指名手配のある者はこれを検挙して、勢力を壊滅する、こういう方針で臨んでおります。
  84. 桑名義治

    ○桑名委員 ただいま、連合赤軍の残存勢力について、あるいはその行動について、いろいろとお尋ねをしたわけでございますが、先ほど、大臣の見えたときに、連合赤軍以外の過激派集団に対する取り締まりを今後強化をしてほしいという要望を私はしたわけでございますが、そのときに申し上げたように、かつての過激派集団というものが、それぞれの先陣争いをするというような行動がずいぶんと見られたわけでございます。これに刺激をされて——先ほども、山口委員のほうから、右翼の動きといったお話がございましたけれども、同じように、この過激派案団の苛烈な動きを今後誘発をしてくるのではないかということが憂慮されるわけでございますが、中核とか、革マルとか、反帝とか、いろいろあるわけでございますが、それらのおも立った過激派集団の現在の動向について、どの程度掌握をされ、今後具体的にどのような取り締まりをなさろうとしておられるか。これをお伺いいたしたいと思います。
  85. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 こうした連合赤軍の凶悪な行動に関連しまして、いまおあげになりましたところの、言ってみれば、極左暴力集団の既成セクト、これの反応でございますが、中には、たとえば革マルというような集団は、これはナンセンスであるという受けとめ方をしているのがごく一部ございます。革マルというのは相当の数がございますが…….しかしながら、いまおあげになりました中核派、それから反帝学評系、それから、非常な多数の派に分かれておりますが、赤軍派のかつて母体であった社会同系のもの、共産同系のもの、これらはやはり、こうした一連の動きに対して相当強い刺激を受けておる反応がございます。したがいまして、今後、こうした少数によるゲリラ活動ということも当然予想されます。それから同時に、街頭における、いままでやってきましたような行動の中におきましても、手段その他が相当凶悪化してくるということも十分考えて対処してまいらなければならないと思っております。中核派等においては、やはり、昨年の秋の諸闘争において、相当街頭における行動をはね上がらせたわけでございますが、その結果は、約二千名近い検挙者を出しておりまして、組織としては相当ダメージを受けておると自分らで言っております。その一面、そこから、いわば公然のふうに一部を走らせようじゃないかという動きもやはり見えております。そういう点を踏まえまして、街頭におきまする彼らのそういう行動はもとよりでございますけれども、ゲリラ的な諸行動につきましても、これらの警戒視察体制を十分強めまして、事前に検挙する、こういうことを一つの目標にして、十分対処してまいりたいという強い決意で臨んでおるところでございます。
  86. 桑名義治

    ○桑名委員 「過激派にたいする警察の取り締まりは、もっと強化すべきだと思うか、それともいまのままでよいと思うか。」というふうに、サンケイ新聞で、過日二月二十二日にいろいろとアンケートをとっておるようでございますが、その中で、「もっと強化すべきだ」というのが八六・四%「いまのままでよい」というのが九・九%、「もっとゆるめたほうがよい」というのが〇・八%、「わからない」が二・九%。これは一応千人を調査対象にしておりますけれども、「もっと強化すべきだ」という意見が八六・四%という、非常に圧倒的な意見でございます。そういった立場から考えてみますと、こういう過激派集団に対しては、もっと適切な強力な取り締まりを今後とも実施をしていかなければならない。これは、世論も支持しているという立場に立って、今後ともこの問題には対処していただきたい、このように思うわけでございます。  それから、先ほどから同じように出ておった問題の一つですが、今回の警備に当たられた警察官の中から二名の殉職者を出したわけでございますし、また多くの負傷者も出しました。これは、この一、二年急激にこういうふうな負傷者が増大をしてきたわけであります。それについて、いままで不幸にも負傷を負われたこういう方々に対する追跡調査という意見も出たわけでございますが、それもまた最も大事なことでもありますし、それと同時に、今後こういうことは二度と起こってはならないわけでありますが、仕事の性格上、どうしても危険な場所に飛び込んでいかなければならない警官の方々が、安心して職務に専念ができるような体制をこしらえていかなければならない、このように強く訴えたいわけでございます。  それについての法改正をする場合、どのようなお考えがあるか、あるいは法改正をする意思があるかどうか、この点伺っておきたいと思います。
  87. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  法改正の問題でございますが、殉職した警察官に対する補償の問題につきましては、一つは、一時金の制度がございます。これは、総理大臣の特別ほう賞金制度とか、あるいは警察庁長官賞じゅつ金という問題がございます。これにつきましては、すでに、昨年の成田事件の三名の殉職警察官の際に、特にお願いをいたしまして、最高額を引き上げる措置をとっていただいておるのでございますが、もう一つの問題といたしましては、年令の問題があるわけでございます。  この年令の問題といたしましては、いわゆる地方公務員と国家公務員の公務災害補償という制度がございます。  いま一つ、共済組合の年金制度がございますが、このうち問題になりますのは、公務災害補償のほうの問題でございます。  公務災害補償につきましては、現在の制度を見ますと、警察官凶悪犯人逮捕する場合のように、危険が予想されるにもかかわらず、これを顧みず、敢然とその職務を遂行した場合、そのために不慮の災害を受けて殉職するに至った、あるいは不具廃疾となるに至った、という場合についての補償制度でございます。これが、一般の、普通の公務災害の場合と同じになっておるのが実は現状でございます。同じ額になっております。これは、私どもとすれば、少し適当でないのではないかというふうに考えまして、昭和四十七年度予算の編成期にあたりまして、これについての法律改正ということをお願いしたわけでございます。  なお、この法律改正に至る前の段階におきまして、私どもは、慎重を期しまして、これにつきましては、かねて、学識経験者に、警察官の給与制度研究会というものをお願いいたしまして、研究をしていただいた結果、昨年の七月に、警察官公務災害補償制度に関する報告という答申を得まして、これに基づきまして、人事院はじめ関係機関に対して要望を行なったわけでございます。この要望を受けまして、その予算の編成にあたってお願いいたしました結果、これについては、四月一日から適用することを目標にして法律改正をするというふうな御了承を得ておるわけでございますす。そういう線に沿いまして、ただいま、人事院におきまして、この制度の創設につきまして鋭意検討をしていただいておる段階でございます。
  88. 桑名義治

    ○桑名委員 いま、法改正の問題につきましては、公務災害補償の分について、給与制度研究会の七月の答申を受けて、四月一日からの実施の段階に一応こぎつけておるということでございますが、そういうふうに認識してよろしゅうございますか。
  89. 土金賢三

    土金政府委員 そういうことでよろしいと思います。
  90. 桑名義治

    ○桑名委員 先ほどから何度も申し上げておりますように、このような不幸な状態が起こった場合の、遺族に対する生活の保障につきましては、くれぐれも手厚い保護をしていただきたい、このように思うわけでございます。  現在長期療養をしておられる方はどの程度いらっしゃるのか、あるいはまた、過去三年くらいの例でけっこうでございますが、こういった負傷を受けられて、そして、不具同然の姿になられておる方がどのくらいいらっしゃるか、また、そういった方々にあっては、具体的にどのような職につき、どのような生活をなさっていらっしゃるのか、その点についての実態を報告していただきたいと思います。
  91. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  現在、公務災害に基づきまして、長期療養いたしております方々の数でございますが、現在、入院中の者が八十名でございます。それから、休業中の者が百三十三名でございます。それから、勤務のかたわら療養いたしておる方が千十八名。合計いたします千二百三十一名になるわけでございます。  なお、このうち、治安警備のためにこうむった災害によりまして、長期療養いたしております者の数を、四十七年の、ことしの一月一日現在で申し上げますと、入院中の者が四人、休業中の者が十九人、勤務かたがた療養中の者が百六十一人、合計百八十四人と相なっております。
  92. 桑名義治

    ○桑名委員 先ほどお尋ねした中のもう一つの点。重傷を負われて、そして不具同然になられておるような方が、現在、どのような仕事につかれて、どのような状況にあるのか。一、二の例を、わかりましたらお話し願いたいと思います。
  93. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  例を申し上げますと、たとえば、この前の広島のシージャックの事件において、重傷を負いまして、からだのぐあいが悪くなった警察官がおりますが、現在、この警察官は、脊髄をやられまして、通常の職務に復帰することができませんで、なお引き続き療養をいたしておりますが、その警察官につきましても、なお現職に、引き続き警察官としておる、こういう状況でございます。  なお、ほかの件でも、そういった重傷を負って、相当長期にわたって療養いたしておる警察官がおりますが、この警察官につきましても、これを直ちに退職にするとか、あるいは休職にするとか、そういうふうなことはいたしませんで、引き続き療養を続けていただいて、なおかつ、これが職務に復帰できるように、いわゆるリハビリテーションと申しますか、特別の歩行練習とか、さらには、特別の職務ができるような、仕事ができるような、そういった職業訓練とか、そういったリハビリテーションにつきましても、そういう施設をつくっておりまして、警視庁にもそういうリハビリテーションの施設がございますが、そういう施設でなお訓練——訓練と申しますか、復帰に備えてのいろいろな練習と申しますか、そういうことをしていただいておるというのが実情でございます。
  94. 桑名義治

    ○桑名委員 このような負傷された方々、あるいは殉職なさった方々、これは金銭であがなうことはもちろん当然でございますけれども、金銭であがなうだけで事は済まされないのであります。また、したがいまして、金銭では、これはもう当然に十分な生活の保障をしてあげなければならないし、あるいは、いまお話がございましたように、リハビリテーション的なもので、完全に社会復帰ができるように適応することも、またこれは当然なことだと思います。負傷なさって、一応回復はしたけれども、正常なからだにはどうしても戻れないという方々が、そのままつとめを続行されておるけれども、何か知らないが、つとめることにだんだん気おくれがして、とうとうやめなければならないような状態に追い込まれているというようなお話も間々聞くわけです。  だから、そういうことが今後ないように、どこまでもあたたかい目でこういった人々に対して対処をしていただきたい。あるいはまた、こういうような制度を完全な制度にして、安心して職務に精励できるように、ひとつ十二分の配慮をしていただきたい。このことを最後お話し申し上げて終わりたいと思います。
  95. 豊永光

    ○豊委員長代理 門司亮君。
  96. 門司亮

    ○門司委員 私は、長くはお聞きをいたしませんで、ごく簡単にお聞きをしておきたいと思いますが、事件内容であるとか、さらに、その後のいろいろな現象等については、同僚からかなり突っ込んで聞かれておることだと思いますので、率直に申し上げておきたいと思いますが、この赤軍派と称せられる連中の職業というか、あるいは、学校で学んでおる経済だとか、法科だとか、いろいろあろうが、それらのものを分析されたことがありますか。私がこういうことを聞きますのは、従来、社会運動をする場合において、環境というか、たとえば職業がかなり影響するということです。従来からある日本の社会運動の経過をずっと見てみると、一つは、やはり印刷というような業に従事している人がわりあいに多い。これは、文字に接触する機会が多いからであって、社会のいろいろな問題がそこに出てくる。それから、その次には、たとえば、働く者の仲間であれば、職種としては、旋盤工のように理屈で仕事をしている人。理論的にものをこしらえるという仕事に携わっておる人。それから、その次には、今度の問題も、婦人の諸君は大体そういう職だと思うが、いわゆる看護に関係しておる人。社会の底辺を始終見せつけられている人。こういうふうに、おのおのの職業において、あるいは勉強している過程において、社会の矛盾というものをだんだん見つけ出していくという経路があるわけであります。法学を調べている人は、やはり法学的に見て、一体社会のゆがみがどこにあるかというようなことを考える。そして、その中からくるところの、弱い者たちにも法は平等だとは言っているが、現実にはなかなかそうなってはいないじゃないかというような観点。いわゆる生活の環境、職業の環境、自分の育っておる環境、これがかなり大きく思想支配をするということは、これはいなめない事実である。  それらの問題について、警察では、この赤軍との関係の中で、どこまで調査が行なわれているか。あるいは、これは一応公安調査庁の仕事かもしれないが、そういうことで検討されたことはございますか。
  97. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 今度の赤軍あるいは京浜安保の、いわゆる連中の犯行を捜査していくという過程において、われわれは、その点につきましては、一応非常な関心を持ちまして調べております。ただ、先生御指摘のように、一般的な非常に広いおい立ちの状況とか、環境あるいは学校の専門別というような点は、実は、残念ながら、総体的にはそういう資料を整備いたしておりません。この点は、先生御指摘のとおり、われわれとしても十分心を配ってやるべきことであったわけでありますけれども、その点は完備したものはございません。今後の問題として、十分御趣旨を生かしてまいりたいと思いますが、ただ、いまの連合赤軍等のあれを見ますると、大半の——大半といいますか、約七割程度は、いわゆる学校に籍を置いた。つまり、学生の経験、体験を持っておる。その中で、一部の者は理科系の者が入っておりますが、これは必ずしも数の上では多くございません。現在指名手配中で、まだつかまっておりませんが、梅内とか、そういう式の連中は、理科系の学業を学んでおったわけであります。それからまた、学生でない者につきましては、たとえば看護婦の職業をあれしておるとか、それから、この間つかまりました永田洋子は、四年中退でございますが、いわゆる薬剤師の免許を持っておるというように、特徴というような意味での、何か、そういう方面の者も散見されるわけでございますが、やはり、おしなべて多いのは文科系統。それから、国立大学あるいは私立大学と分けてみますと、これは大体半々ぐらいではないか。しかし、今回の連合赤軍幹部の、たとえて申しますと、吉野は横浜国立大学というようなことで、わりあい国立系統の学校に学んだ者が多い。  それから、育った環境も、普通の家庭というものが約半分ぐらい見られます。しかし、その一面、父親を失って、おかあさんが非常に苦労して育ててこられたという家庭も、たとえば坂口の家庭のごとく、見られるわけでございます。  非常に断片的なことを申し上げてまことに恐縮であったのでありますが、これは、総体的な問題としては今後十分資料を整備してまいりたい、かように考えております。
  98. 門司亮

    ○門司委員 私がなぜそういうことを聞くかといいますと、この種の事件について、よって来たる社会の状態というものを知らなければ、これのせん滅はできないのであります。こういうものは、一般の犯罪と違いまして、でき心や、それから非常に生活に困っておるからというようなものとは違って、思想的にかなり強い意思を持っておる諸君でありますので、それに影響を与えるものが一体何であるかということをずっとせんじ詰めていけば、結局は、一つは、青年に将来に対する希望も与えるという——さっき公安委員長は何か言っておりましたけれども、そんなことでこういう思想が直るわけじゃないのであって、教育が悪いから——いま教育がみんな悪いかということになると、そうじゃないと私は信じておる。これはやはり、教育のあり方というよりも、むしろ、日本の政治のあり方の中で将来への希望を青年に持たせるかどうかということであって、その中で、さっき申し上げましたような職業を通じて、あるいは学問を通じて、世の中の矛盾を感得する。いわゆる感じ取ることの早い職場におり、早い学問をしておる連中が往々にしてこういうことに流れることは、これは若い青年としては当然であります。したがって、そういう思想に流れつつある社会の現状というものの見方というものが、私は、非常にむずかしいと思っておる。  同時に、いまの御答弁のように、いままで警察がこれについて何らの調査をしていなかったということは、私は非常に遺憾だと思う。そうして、その調査した結果が政治に反映してくるという形でなければ、この種の問題の将来への防止はやはり困難である。出てきたものだけをどんなにせん滅しようとしても、せん滅されきれるものではない。先ほど大臣にもお話を申し上げましたように、土壌がそういうものの育つ土壌である限りにおいては、どんなに小さな一粒の種でも、必ず大きく育って実になるということは自然の理でありまして、だから、もし、警察の諸君が、そういう現象だけでなくて、根本の問題に触れて調査をしていないということになると、今後の日本の治安の計画を立てる上において非常に大きな問題があるのではないか。単に一日に政治不信だと言ったところで、その政治不信はどの辺にあるかということです。さっき申し上げましたように、今度の事件でも、たとえば女の人は、看護婦であるとか、薬剤師であるとかいうようなところに職業を求めた諸君がいるということは、底辺の諸君に始終接している人であって、そういう人は、何か社会が間違っていやしないか、これだけ苦しい病気を出しているのに、これだけひどい事態にあるのに、これを救う手段はないのかというようなことを突き詰めて考えると、いまの社会が間違っているのだということは当然出てくるわけである。私は、必ずしも、こういうことの思想調査をせよと言うわけでもありませんし、思想調査をする必要はないのでありまするが、起こった事件の背景をなすものをもう少し真剣に見詰めていく必要がありはしないか。これは、私ども政治家に課せられた一つの仕事であります。今回の事件は、私どもは等閑に付するわけではありませんし、われわれの責任だと考えております。そうした土壌をこしらえるものは何かといえば、政治であることに間違いはありませんし、したがって、その政治に携わる者に一面の責任があることは間違いありません。しかし、むしろ、それよりも、現実にそういう衝撃を与えておる行政の責任者というものは、やはり、そういうことに気がつかなければならない。その、気のつく材料を提供されるのが、直接こういう問題にぶつかって困難しておる警察の仕事だと私は考える。警察の職務は、ただ単に出てきたものだけをつめばいいというようなものの考え方でなくして、政治的に、この問題の背景がどこにあるかということまで突き詰めて考える必要がありはしないかということで、いま私はお聞きをしたわけでありますが、これに対して、別段お考えがないようでございます。  それから、それに関連してもう一言聞いておかなければなりませんが、そうすると、こういう赤軍派というふうな分子ができる政治のあり方というものに対する見方がなされなければならない。これは、同じ政府の中にいて、しかも治安関係を受け持っておる警察当局として、いまの政府のやり方が、ここが悪い、あそこが悪いといって指摘するわけにもまいらぬかと思いますが、しかし、原因は、そういう一つの職業を通じ、自分の置かれておる立場を通じて——しかも、それは、大体中流あるいは中流以上の階級というか、家庭に育った人が多いと考えられるが、しかし、それらの問題は、原因は、いま申し上げましたように、どこか社会に間違ったところがあるからこういう間違った人間が出てくる。社会が間違っていなければ、間違った人間が出てくるはずがない。これについて、警察庁の長官として——これは長官に聞くのはちょっと酷かもしれませんが、どうお考えですか。一体、社会のどの辺にそういう者を醸成するゆがみがあるかということについて、警察としての率直な考え方と態度をこの機会に披瀝されることがいいと考えるのですがね。
  99. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私は、たいへん含蓄のあるお話だと思ってお伺いをしておったのですが、それだけに、私の答弁は、立場上非常にむずかしい、こう考えます。ただ、私どもが担当いたしますのは対症療法でございます。したがって、対症療法の面では全力を尽くさなければならない。体質の改善という点にまで至りますると、場合によれば、政治批判にわたることもありましょうし、教育批判にわたることもありましょうし、マスコミ批判にわたることもあろうかと思います。そういった意味合いで、私は、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、ただいまの門司委員の御質疑は、まことに含蓄のある御質疑であり、私どもとしては、対症療法の上で得られた資料を生かしていくというだけの素材を提供する、ここまでは、私どもも、これから先十分検討をしてやっていきたい、かように考えておる次第でございます。  なお、また、門司委員のような分析のしかたも当然非常に重要なことですが、私は、実は、最近の状況を見ておりまして、こういった赤軍派のような、特に過激な者が出てきておるのは、どうもやはり学校別に非常なあれがあると思っております。たとえて言えば、水産大学であるとか、あるいは横浜国立大学であるとか、そういった特殊の学校に多い。これは、やはり、そういった学校の中に、これらの学生を指導しておる教育といいますか、そういう人もあるいはおるのではなかろうか。こういう点については、私どもは、さらに調査の手を伸ばさなければなるまいと考えておりますが、この点もつけ加えてお答えいたしたいと思います。
  100. 門司亮

    ○門司委員 いまの長官のせっかくの答弁ですけれども、対症療法であるということ、それ以上に出られないということは、警察の一つの仕事として考えられるが、しかし、その素材は、少なくとも、よって来たる原因がどこにあるかということ。その素材の一つとしていま私なりに分析いたしました。私ども、過去に労働運動を長くやっておりますと、大体そういうことが言えるのでありまして、運動する人の前身というものを一応見てみると、やはり、職業的な、社会的な地位というものがかなり大きな影響をしておる。あるいは、職業を通じて社会の裏を知ることのできるというような形のものがあるわけであります。したがって、その社会の裏を知ってくると、その炎にあらわれているものと異なった考え方を待つのが当然であって、そういう点から私は申し上げたのでありますが、対症療法であるという考え方に、もう一ついまの次元では踏み込んでいただいて、そうして政府内部でありますから——政府の外なら別の話でありまするが、政府内部であって、しかも、警察庁は総理大臣直属であって、途中に公安委員長という国務大臣はおりますけれども警察法のたてまえからいえば、総理大臣がこれを統括するということになっているのであって、国の政治の元締めにこれが直結しているのであって、組織の面で、警察庁の長官という立場が、政府のいろいろな機関の中に出かけていって、発言の機会と発言の自由がどれほどあるかということについては、私どもは、どうしても考えなければならぬ問題が多少あろうかと思う節が実はございます。それは、警察法の改正その他の問題のときに話してもよろしいかと思うが、しかし、問題は、対症療法だからという考え方だけで対処されると、これは非常に大きな誤りをおかす危険があるということであって、出てきたものに対して、これをつみ取ることは簡単ですけれども、そのよって来たる原因を十分把握しない限りにおいては、往々にして逆な結果を求めることになりはしないか。警察のあり方というものは、どこまでも犯罪を出さないという形のものでなければならない。出てきたものを対症的に療法するという考え方であるとするならば、警察の将来のこれらの問題の取り締まり、絶滅というようなことは警察にはたよっていられない。結果、政治の面でこれを補う以外にないのではないか。もとより、政治が根本的にあることは当然でありまして、いまの政府の行き方について、希望を失った青年がたまたまこういう形で出てくる。それがだんだんエスカレートしてきて、しまいにはこういう手段に訴えてでも、自分たちの存在というものを明らかにしていくということが考えられるわけであります。  そこで、長官にもう一つ、現実の問題として聞いておきたいと思いますことは、いま申し上げましたように、この赤軍派というものを——午前中の自民党さんの質問の中にいろいろなことが読み上げられておるようでございますけれども長官はどう考えますかね。ああいう思想的な一つの大きな目的のためにこういう行動をしているのか。あるいは、さっき言いましたように、社会の裏側があまりにも醜い状態が続いており、これに反抗するという、青年の反抗期の一つのあらわれとしての単純なものの考え方であるのか。そういうようなことについて、どういうふうにこれを判断されているか。どっちにウエートを置いているか。どっちとも言えないと私は思いますけれども、どっちにウエートがあるというようにお考えになっておりますか。
  101. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私は、御質問の二つの点の、双方の原因があると思います。そして、やはり、彼らは彼らなりに、いろいろな革命理論を信奉しておるのでしょう。自分たちが銃を持って立ち上がらなければ革命はできないのだ——今日の既成の政党等の動きを見ていると、自分たちが立ち上がらなければ、これらの中に、若い者の、世の中を改革したいと言っておるような情熱が吸収されてしまって、とてもじゃないが、革命情勢なんかできない、そこで、自分たちが銃を持って立ち上がれば、つまり先兵となってやれば、革命情勢というものが次第につくられていくであろう、こういう考え方を持っておったことは事実であると私は思います。しかしながら、今日の彼らの姿はどうかといいますと、私は、革命というものは、必然的に、その時代においては反社会性を持つものだと思います。それだけに、革命を志す者は、鉄の意思を持っていなければ、手段というものが目的になってしまう。つまり、そこで堕落現象が始まる。これが今日の赤軍派等の現象となってあらわれ、彼らは、もはや、今日は、そういった高い理想を掲げて戦うというよりは、手段が目的化してしまって、単なる凶悪犯罪者集団に堕してしまっておる。私はこういう考え方をいたしております。
  102. 門司亮

    ○門司委員 どうも、長官の答弁は、必ずしも私の聞いた核心に触れないようでありますが、私は、これらの事件を通じて考えることは、一つの彼らの幻想にひとしいものだと言って片づければ、それで片づくと思うのです。そう大きな問題ではない。同時に、一部の飛び上がりの連中がやっているのだと言えば、それはそれで片づく。手段だけで、自分たちの理想が達成できるかどうかというところまで深い思慮はなくて、一応こういうことをやってみるという考え方。したがって、これらの諸君について、もう一つ私どもが注意して見なければならないことは、いずれも犯罪意識というのがないのであります。彼らは、彼らなりに、これは正義に基づく行為だと考えております。親がどんなに説得しようと、大義親を滅すということを昔は言われておりましたが、おれたちは大義に殉ずるのだ、単なる親子の関係だけでやめるようなことでこういう大事をあげたのではないのだ、こういう誇りを持っておると思うのです。社会から見れば、とんでもないやつだということになるかもしれませんが、彼らは、彼らなりに、一つの誇りを持っている。そういう行為が、社会から見て、きわめて醜悪な行為のように鏡には映ってくるけれども、彼らの心情としては、これは決して犯罪行為とは考えておらない。あくまでも、自分たちは社会主義のために動いているんだということを考えていやしないかということが考えられる。この辺の分析について、長官はどうお考えになるか。これも、今後の、これらの問題を処置する上の一つの参考というよりも、むしろ、非常に大きなポイントになりはしないかと私は考えるのでありまして、そういう点についてどうお考えになっておりますか。  彼らは、犯罪意識があまりなくて、一つの誇りを持っているのだという考え方すらできるのであります。今度の事件では、さっき言ったように、親が説得しても聞かなかったということは、肉親の情よりも、むしろ、われわれは社会の正義に殉ずるのだという、ある意味においては、非常に崇高な一つの理想を掲げておったかもしれない。その理想が行為として間違っておったということが今度の事件のようなことになろうかと私は思うのであります。したがって、そういう彼らの行為と、彼らの考えておる思想的な背景というものとの、その関連についての長官の意見をこの際聞かしておいていただきたいと思います。
  103. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御質問の中にございましたような、彼らは、誇りを持っての、おれたちはこういうことをやっているんだというほどまでにはまだ考えていなかろう、しかし、少なくとも、主観的には、従来から言われておりますように、確信犯特有のものの考え方を持っておるであろう、そこまでは、私は言い得ると思います。それだけに、彼らの今日の行為を、単に、夢を見ておるんだとか、あるいは幻想であるとか、そういったような単純なものの見方をしてはいけない。それだけに、こういった動きを根絶するためには、よほどのことでないと、警察だけの療法では、絶滅することはなかなかむずかしいであろうというふうに考えております。ただ、先ほど言いましたように、客観的には、もはや、目的と手段を取り違えてしまって、犯罪者集団に堕落をしてしまっておるのではないか、こういうふうに見ております。
  104. 門司亮

    ○門司委員 だんだん核心に触れていきたいと思うのでありますが、いま長官が言いましたように、また、先ほどから私が申し上げておりますように、これを根絶するには、そうしたすべての情勢というものを把握して、その上に立った分析の中から、初めて根絶をする方法が生まれてくるのであって、それをばく然と、政治のあり方が悪いとかいいとかということだけでなくて——一面において、社会がこれだけ経済が成長して、レジャーブームで、世界でも日本人が一番よく外国にも出かけるというようなことが言われておって、世の中には、何か、岩戸景気だの、元禄景気だのと、いろいろなことで浮かれておるような情勢が今日あると私は思うのです。その反面、世の中を変えなければならないという深刻な思想が出てくるところに問題の所在があるのであって、単なる、国民の生活が非常に困窮しておって、その困窮の原因は一体どこにあるか、この原因を打ち破るには革命以外にないのだという、昔の革命理論とはやや異なった社会情勢がありはしないか。  いままでの世の中の、いろいろな、騒動ということばを使えば騒動でありますが——たとえば、これは警察関係のあることでありますが、大塩平八郎の乱などについて言うと、あの人の前身は、いまでいえば警察官ですからね。しかも、大体、地方の警察署長よりも少しえらい、本部長ぐらいの職責にあったこの人が、なぜ一体ああいう騒動を起こさなければならなかったかということですが、あの人が現職にあったときは、全くりっぱな与力として、犯罪の取り締まりに弁償に優秀であったということがいま書かれておる。しかし、その優秀であったところの、いままでいう警察官が、どうして一体反逆行為に出たかという、この背景をなすものは、一つの、あの当時における政治のあり方であって、あのときは、いまと違って、かなり貧困で、飢饉が続いたり、いろいろな問題があったとは思いますが、しかし、そうした立場にあった大塩平八郎が、いまの政府の行き方は誤りだというふうに考えて、社会正義のために決心をして、あの騒動を起こさなければならなかった心情というのは、やはり、警察行政の上で考えさせられる一つの示唆を彼は与えておるのではないかということを私は常々考えておるわけであります。したがって、今度の事件にいたしましても、起こった問題の一つ一つの解決は当然でありまして、犠牲者に対しまする十分な補償、これはお金で補償したところで償えるものではございませんけれども、現在の社会で、それ以上にものがないというならば、そうした物質の面から最高の御慰労を申し上げることは当然でありますが、しかし、こういう事件が将来に発生しないように、より以上の努力をするということがいまの警察の立場であって、それについて、先ほどから、言いにくいだろうけれども、少しはっきり言ってもらいたいと私は考えておりますけれども、起こってくる要素というものが、社会現象の中で——世の中というのは、いまは、大塩平八郎のときとは違いまして、ある程度みんな裕福になっていることは間違いがない。しかし、その裕福である反面に、まだ欠けたところがたくさんある。その欠けたところが一体どこにあるかということになれば、あまりにも事が物質的に過ぎておって、精神面が忘れられておりはしないかということ、社会面が忘れられていはしないかといろことである。高度経済成長の陰に、年とった諸君が自殺をしなければならないという事件は、毎日のように起こってきておる。こうした社会悲劇の中に、こうした問題の生まれてくる素地があるということは、先ほど私ちょっと申し上げましたけれども、多くのこれらに関係する人が、そういう社会面に関係した職業を持ち、そういう社会面に関係した勉強をしている人がわりあいに多いわけでありますから、こういうことから考えると、どうしてもそういうことが考えられる。  そこで、はなはだくどいようではございますが、私どもの考え方としては、何といっても、いまの政治の姿勢を正す、そうして国民に希望を持たせる、若い者に希望を持たせる、という政策を一応立てていき、人間の生きがいのある社会をつくっていく。年をとれば必然的に——どこか施設に入ることがいいとか悪いとかいうことは申し上げませんが、結局、孤独を非常に嘆かなければならないというような社会現象がないわけではないわけである。これらは、いずれも本人の罪でも何でもない。いわゆる社会の構成の中から出てくる一つの現象であって、そういう社会的の要素というものを断ち切らない限りは、この種の問題は根絶はできない。そうするならば、これの直接の担当官である警察庁の長官は、いろいろな問題はあるでしょうけれども、これも、大義親を滅するということで、思い切って、この際、この種の事件が起こる原因はここにあるじゃないかということを言われても、ちっとも差しつかえはないと私は思うのですよ。それで、もしいろいろな圧迫を加える者があるとするならば、それは赤軍よりももっと悪い連中であって、それこそけしからぬ連中である。そういう意味で、勇気を持ってこの際は——これは、ほんとうは公安委員長に言ってもらいたいのですけれども、公安委員長に聞く時間があまりなかったものですから、一応、警察庁長官としての立場から、言いにくいではあろうけれども、さっき言われたような、対症療法をしているのだということで逃げないで、その原因を突きとめていく、その原因は私としてはこう考えるぐらいのことは、この機会に言っても、ちっとも差しつかえないのじゃないか。もし、そのことがいけないということでしかる人があるとすれば、先ほどから申し上げておりますように、その人のほうが赤軍よりこわい考え方を持っていやしないかということを、私は露骨に言えるのじゃないかと思うのですが、どうですか。話し合いの中でもう少しはっきり言えませんか。  政府内部からそういう反省が強く出てこない限りは、こういう問題はなかなかなくならない。これは一つの政治の課題でありますから、政府内部の反省、政府内部のそうした声というものが出ない限りは、対症療法だけで、出てくるやつだけ頭をたたいていればいいのだということになると、これは、いつまでたったってイタチごっこで、しまいには、これがだんだん大きくなって、ちょうど赤軍が考えているような、おれたちは犠牲になるんだ、おれたちはどうなるかわからぬが、しかし、いずれ、必ず、おれたちの考えているような社会ができるんだという、彼らなりの夢といえば夢、幻想といえば幻想かもしれませんが、——彼らにとっては幻想ではない。やはり、夢を描くということは、若い者としては当然だと私は思うのです。だから、こういう意味から、きょうの委員会では、私は、ぜひそれだけをひとつ聞きたいと言って長くしゃべっているのですから、こういう問題の起こる原因が、われわれの立場から見てこうではないかというようなことが長官のほうから言われれば、私は、いますぐ質問をやめたってちっとも差しつかえないと思うのでありますが、一体これはどうなんですか。やはり、こういう機会に、もう少し思い切って言うということが、民主政治の中では正しいと私は思うのですよ。この辺を、一応、もう少し長官を攻めておきたいと思うのですが、どうですか。
  105. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 門司委員は百も御承知の上で、ずいぶんと酷な攻め方をせられるものだというふうに私は感じております。ただ、門司委員の、ほんとうに何とかしなければならぬというお気持ちは、重々わかるつもりでございます。仰せのように、今日、各方面で、精神面の重要性ということが失われておるということも大きな原因だと思います。また、若者に希望を持たせるとか、あるいは、人間である以上、人間には生きがいを与えてやるといったようなことが必要であるということも、仰せのとおりだと私は思います。ただ、繰り返しになりますが、何ぶんにも、私はやはり対症療法の担当者であり、警察というものは、政治と厳に一線を画さなければならぬ。こういう今日の警察法のたてまえもございますので、そこらはひとつ何とぞ御了承をしていただいて、これ以上の答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  106. 門司亮

    ○門司委員 これ以上だんだん聞かなければならぬことが非常にある。警察が政治に関与してはならないということは当然です。その、政治に関与してはならないということは、一党一派に偏してはならないということであります。正義として、世の中の矯正をはかっていこうとする第一線の警察官が、そのゆがめられた社会の根源がどこにあるかということが言えないようでは、これも、ある意味においては、一党に偏した一つのものの考え方である。私は、警察の公平なものの考え方ではないと考えている。これはほんとうなんですよ。警察法に公平でなければならぬということを書いているのは、これは一つのうたい文句であって、非常に強い国家権力の背景を持っております警察が一党一派にくみされたら、これはかなわぬのでありまして、だから、これは警察法で戒めておるのは当然であります。だからといって、自分たちはただどろぼうさえつかまえればいいんだ、こんなものは幾らでも、できればできるだけ、警察の人間を動員して、費用を使って、どろぼうを取り締まっていればいいんだ、あと起こってくるのは、そっちが悪いんだから、それはおれたちのせいではないんだというようなことでは、これは結局、本来の警察のたてまえの上からいっては違うのじゃないか。むしろ、そういう問題を直接担当している警察官としての、率直な意見というものが披瀝されて、その中から、政治を担当する者が大きく反省をするということは、私は、非常に重要なことだと考えている。それは何といっても、直接に当たって取り調べをする人は、その人の心情がわかるわけでありますから、どんなにえらい佐藤さんが総理大臣であっても、赤軍の諸君に直接ぶつかって話を聞いているわけじゃないのです。みんな入れ知恵だと言うと、佐藤さんはおこるかもしれませんが、大体、ほかから集めた情報を継ぎ合わせて、こうじゃなかろうかと、あの人は判断するだけでありまして、これが日本の警察の総元締めである。これではどうにもならない。直接犯人にぶつかって、犯人の心境なり、あるいは犯人の今日までの行為等に対する動機というようなものを一番よく知るのは、私は、警察だと思います。したがって、その警察の意見というのは、この種の問題については、政治上に大きく反映することは、警察が政治に関与するものとは非常に違いがあることであって、私は、警察官としての当然の一つの責務だと考えておる。それがなければ、国家公安委員長といったって、現場で取り調べるわけじゃございません。直接犯人にぶつかって、思想を聞き出すわけにもまいらぬのでありまして、さっき言ったように、みんな入れ知恵だと言うとおこるかもしれませんけれども、いろいろな情報を総合して判断をするにすぎないのであって、この点は、いまの警察行政の中で非常に大事なことで、これをはき違えて——いまの長官の言うことをはき違えだと言っておるわけではありませんけれども、遠慮して、そうして、われわれ政治に関与してはならないと書いてあるから、政治向きのことは一切申し上げません、われわれはどろぼうをつかまえていればいいんだ、犯罪人さえつかまえていればいいんだということでは、ほんとうの治安の確保というものは得られないのではないかということであります。したがって、私の持ち時間はまだかなりあるようでありますけれども、もうこれ以上責めてもどうかと思いますが、どうなんですか。  それなら、最後に一つ聞いておきますが、いまの警察制度状態でよろしいかどうかということであります。この警察制度の中で、ほんとうにこの種の犯罪がなくなるようなことを考えられるかどうかということであります。これらの犯罪については、もう少し十分実態を知ることができる警察行政がやはり必要ではないか。これは、日本の警察が国家警察と地方警察と二つに分かれて、地方の自治体におけるいろいろな警察行政については、地方の自治体においてこれを取り締まって処理していくという考え方で、国家犯罪等については、国の警察官でこれを補うといういき方だったのが、それが廃止されて、さらに、国家公安委員長は、これは文民というふうには私は申し上げませんが、一般から、しかもきわめて公平な見識のある人を選んでおったのであるが、これが内閣総理大臣の任命する国務大臣になっているということであって、いわゆる警察行政というものが、政府につながる一つの形をとっておる。いま、長官は、政治にくちばしを出してはならないと言うのだけれども、政治にくちばしを出してはならないというよりも、一党の総理大臣が任命した国務大臣が警察の一番親分ですから、これは政治につながっている。これほどはっきり政治につながった警察は、どこを調べてもありゃしない。やはり、警察というものはそういう形でなくて、自由にものの言える立場で、警察庁の長官は、さらに公安委員長に報告が十分できる、公安委員長の首は、五年間なら五年間は保証されているという、そういう立場における公安委員長の発言なら、内閣に対してもかなり強い圧力を持つはずである。ところが、いまの公安委員長は、いつでも首切られる。いまでも首を切られるのです。総理大臣が、おまえやめなさいと言えば、それきりですよ。私どもの考えは、警察の行政自身が、政治にそういう関与をしてはいけないというならば、政治と縁をはっきり切ったほうがよろしい、そうして、新しい憲法のもとにつくられた民主的の警察制度にこれを直していく、そして、警察官警察官としての独立した立場で、自由にものの言える立場をとる必要がありはしないかということであります。いまこの種の事犯が起こっていて、そうしてその原因を追及するというのに、長官のいまのようなお話があるということは、やはりそこからきているのじゃないか。くどいようでありますけれども、これが従来のように、公安委員会が完全に独立をしておって、そして、公安委員長は、法律の命ずるとおり、五年間なら五年間というものはその席に着くことができる、何人にもこの地位は侵されない、何人にも遠慮しないで日本の治安に対するものが言えるという地位、あるいは立場が必要ではないか。いまの中村公安委員長は正直な人で、非常にりっぱな人であります。私は郷里が同じでありますから、人格も知っているわけでありますけれども、りっぱな人であります。しかし、何といっても、総理大臣の任命による国務大臣であるということに間違いはないのだから、任命権者に対する遠慮というものが、人間である限りにおいては、ありはしないか。そうして、同じ行政を行なう内閣に籍を置いている限りにおいては、自分はこう考えておるといっても、それが行政の面に率直に反映するような進言ができないのではないかという考え方がございます。したがって、ほんとうに日本の警察行政というものを民主化していこうとするなら、いまの警察制度を改めるというよりも、昔に戻して、そうして公安委員長が、この種の社会現象に対しても、率直に、政治のあり方がどこまでどういう形できているからこういう問題が起こるんだ、こういう問題はどういうわけだから起こるんだと言えて、しかも、それが、貧困な、非常に困っておる社会から反発して出てきたものではなくして——世の中には、失業者もほとんどないといっていいくらいである。みんな昔のような苦しい生活をしているわけではないのである。労働者も、週休二日制をとろうというようなところまできておる社会になって、なおかつ、この社会を暴力によってひっくり返さなければならないというような社会思想の起こるところに問題がある。この問題を真剣に検討し、追及して、そうして、よってきたる原因がここにあるということを率直に、政府に、政治の中に反映せしめるという制度が欠けておるというところに問題の所在がありはしないかということである。こういう面に対して、これまた言いにくいかもしれませんが、率直に長官のお考えをひとつお聞かせ願いたい。この種の問題を解決するには、いまの警察制度、いわゆる、内閣につながる国務大臣の公安委員長というものについては、どうしてもこの際一考をわずらわすことが必要ではないかということが考えられる。こういう点についての御所見を、言いにくいではありましょうけれども、もう一度、片りんだけでもいいから聞かしていただきたい。
  107. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 赤軍の犯罪の捜査の過程で明うかになってくるこういった種類の犯罪の動機、あるいは、赤軍派という団体の中に入っていった動機、こういうものも当然明らかになってくるわけでございます。したがって、警察として判明をし、また、必要な資料というものは、私は、公安委員長に報告をいたします。そこで、そういった対症療法の過程で得られた各種の資料の中から、体質改善のために、どのように考え、どのような手を打っていくべきかということは、国務大臣かる公安委員長判断をしていただけるものと、かように私は考えます。そういう意味合いで、私は、今日の警察制度が最善であるとというふうに考えます。むしろ、完全な政府からの独立ということになると、せっかくわかったことでも、なかなかそれが政治の上に生きないというようなこともあり得ようかと思います。そういう意味合いからも、現在の制度がいいのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  108. 門司亮

    ○門司委員 これ以上聞きませんが、どうも、ばかに遠慮してものを言っているようですけれども、先ほどから、警察は政治に関与するなと言っているが、いまほど政治に関与していることはないのですよ。総理大臣が親方であって、公安委員長は国務大臣ですから、はっきり言えば、これはもう自民党の警察だと言うことは、あるいは言い過ぎかもしれませんし、おこられるかもしれませんが、系統から言えば、そういうことが言えるのですよ。総理大臣が自民党の総裁であり、公安委員長が自民党の党員である委員長であることは間違いがないのであります。私は、ほんとうに警察が政治に関与しないというのは、政治と全く切り離した姿、そうして、自由にものの言える立場、そうして、政府に勧告をし、政府に犯罪等の所在というようなものを明確に伝えられ、それに対処する態度をとっていく、ということのほうが形としてはよろしいのではないかということであって、これが、いまの長官の御意見のように、かえって悪いんだというなら悪いのかもしれませんが、私はそうは考えない。もし、長官からそういう御答弁を願うなら、それならば、そのよってきたる原因をもう少しはっきり聞きたい。社会現象というものがどれだけ作用しているかということの分析が一体どこまでできているのか。私は、仮の社会で、あの諸君があんなことをやっているとは思いませんよ。自分けが栄達しようと考えてあんな苦労をしているとは考えません。そのよってきたる原因は、社会のどこかに間違いがある。この間違いはやはり正さなければならない。さっき申しましたように、彼らは彼らなりの——私は、彼らの味方をするのではありませんけれども、彼らなりの正義心と、誇りと、希望とを持ってやっておるということは言えると思う。それが間違っておるというなら、その間違っておることを正さなければならない。それには、やはり、内閣に向かって、言いにくいことも言える人、あるいはそういう制度、というものが必要だと私は考えておるのであって、この事件が起こって、警察制度の問題をもう一ぺん考え直す必要がありはしないかということを、実は、私は痛切に考えさせられたのであります。  これは、これ以上議論をいたしませんから、最後にもう一言だけ聞いておきたいと思いますことは、今後こういうことが起こるというようなことは、見通しとして、一体どういうふうにお考えになるかということであります。これは全体をまだ把握されていないでしょうが、まだ、かなり逃走している人もあるようです。新聞で見ると、まだ十三人、幹部でつかまらない者がいるとか、名前が書いてあるとか、いろいろありますが、こういう問題、それから、さっき大臣にも申し上げましたように、これが国際ゲリラというような形で、おかしな姿にそれはしないかということ。みんなが日本国内にいればいいのでありますが、赤軍派の一部がいま飛行機で朝鮮に脱出しておることも、これは隠せない事実であります。こういう問題を総合してまいりますときに、なかなか国民は安心していられないのじゃないかというように感ずるわけでありますが、これらの見通しはどうですか。これは、警察庁の長官としては、だいじょうぶだと言えますか。非常に危険だという考え方に立たれますか。どっちにそのウエートがあるかということでありますが、これは、私どもとしても考えなければならないことであって、警察庁の長官がだいじょうぶだと言えば、それを信ずるということもあり得ようかと思いますが、どうもあぶないというなら、もう少し何とかしなければならないという考え方に立たなければならないと思います。しかし、赤軍の規模から、今日まで検挙されて、皆さんで一応逮捕された者との関連性からくる感じでありますが、そのことだけ最後にひとつ聞いておきたいと思います。
  109. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 この種の犯罪は、赤軍派だけとは限定できないと思います。私どもとしては、全力をあげてこの種の事件の再発防止につとめたいと思いますが、絶対起こらないかということについては、私は、いま、私の口から言えるとするなうば、絶無である、絶対起こらない、ということは言い得ないというぐらいではなかろうか。これが私の判断でございます。  なお、また、国際ゲリラとのつながり等は起こりはせぬかということについても、これは、起こり得る可能性は絶無ではない。こういう程度が一番正確じゃなかろうかと私は思います。
  110. 門司亮

    ○門司委員 終わります。
  111. 豊永光

    ○豊委員長代理 林百郎君。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党も、牟田泰子さんが無事に救出されたことについては、心から喜んでいるわけですが、門司さんも、先ほどから、非常に熱心に、この問題の本質をえぐり出そうとして質問していたわけでありますが、私も、警察庁の長官にお聞きしたいのですけれども、率直にひとつあなたの考えをお聞きしたいのですが、この諸君に対して、警察としては、どういう心情、どういう評価をされているわけなんでしょうか。先ほどのあなたのお話の中には、主観的には確信犯であって、特有の信念を持っているというお話もありましたですね。それから、いまの政党は革命的情熱を持っていない、だから、おれたちがこうやって銃を持ってやらなければいけないのだということを彼らは主観的には考えている、というようなお話もありましたが、その辺のところを、もう一度詳しくひとつ聞かしていただきたいと思います。
  113. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 先ほどお答えしたように、彼らは、少なくとも、入り口では、彼らなりに、自分たちが立たなければ今日の青年労働者は奮起せぬであろう、今日の青年労働者の情熱というものは、既成の左翼の連中の翼の中に入れられてしまっているのだ、だからいけないのだ、だから、今日革命をやるためには、自分たちがそれをはねのけて、先兵となって、銃を持って立ち上がれば、それらの青年労働者も自分たちについてくれるであろう、ということを考えてこの行動に入ったということは事実であろう。しかしながら、それは入り口であって、今日の段階まで進んできますというと、先ほど申しましたように、革命家にとって最も必要な強固な意思というものをなくしてしまって、目的と手段を取り違えて、手段そのものが目的になってしまった。だから、今日彼らに私どもが言えることは、文字どおりの凶悪犯罪者集団であるということ、こういう認識のもとに厳重な取り締まりをやるということ、こういうことで私どもは対処いたしております。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし——しかし、ということになると、あなたも警戒するから、しかし、ということばは、一応前置きとして言ってはおきますが、率直に言っていただきたいのですが、主観的には確信犯特有の信念を持っているというのは、それは、それじゃ、いつどういう時期まで持っていたということになるわけですか。あるいは、私の理解があなたと一致しないなら、あなたの言った意味を説明してくれればいいのです。
  115. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 先ほどお答えしたように、入り口でございます。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 妙な理論になって、入り口論と出口論になってしまったのですが、それでは、どの辺までが入り口で、どの辺から入り口がなくなってしまったのですか。どういうところから入り口がなくなるのですか。
  117. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 彼らがこういった団体に入るというところまでは、私は、そういうことであったであろうと思います。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、こういう組織が存在し、こういう組織へ入るというところまでは入り口だ、こういうことなんですね。そうすると、連合赤軍というのも、長官の考えからいえば、入り口なんだから、これは革命的情熱を持っておる確信犯である。だから、この仲間へ入ること自体は、入り口へ入ったのだ。しかし、入った後に、こういう行為をすることになって、出口のほうへ行ってしまったのだ。こういうことになるというのですか。
  119. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 全く違います。赤軍派あるいは連合赤軍といった団体そのものは、先ほど言いましたように、もうすでに凶悪犯罪者集団になってしまっている。そこへ新しく加わって入っていこうとする者は、そういう実態がよくわからぬから、自分たちは自分たちなりの、確信犯的な考え方を持って入っていった。入っていって、行動をとるときには、もうすでに彼らの中に入ってしまって、凶悪犯罪者集団になってしまっている。こういうことを言っているわけであります。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、入り口と出口とくっついていて、入るところまでは、そういう確信犯的な信念を持って入っていく。ところが、入ってみれば、あなたの評価から言っても、連合赤軍ですか、そういうようなものは、もう非常に反社会性を持った犯罪の集団である。そこへ入るまでは、また、入ったその時期は、そういう善意を持って、革命的な、世の中を変革しようという意図で入っていくのだということですが、そういうように理解していいですか。
  121. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 はい。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 その辺のところに、警察の評価について問題があるのじゃないでしょうか。今度の問題につきましても、これは二月二十六日の毎日新聞に出ておりましたが、ある警察の首脳部のことばでありますが、「権力とは無関係の一女性を監禁、殺傷することは、彼らの論理と矛盾しており、彼ら自身悩んでいるのではないか。」と言っているのですけれどもね。だから、あなたの、入り口へ入るまでは善意だが、入ってしまえば、もうそこで終わりだというのではなくて、入ってしまった後でも、彼らの持っている論理と、権力と無関係な女性を監禁しているということについて悩んでいるんじゃないかと、こういう心情的な評価が警察の首脳部にもあるんじゃないですか。これは毎日新聞に出ています。  なお、もう一つ念のために、私の言うことは主観的ではないということで例を言いますと、二月二十九日の東京タイムズで、今回の救出作戦の総指揮官の長野県の警察部長が、「犯人人質を大切にするとの基本原理があるので、望みはあった」と言っている。だから、人質を大切にするという気持ちを彼らは持っているはずだ——あなたの言う人り口、とば口説ですね。それを持っているんだから、だから、権力と関係のない人質に対して、これを殺害するようなことはないというように考えている、彼らの持っている基本原理からいって、と、これは、東京タイムズの、二月二十九日の警察部長の談話として出ております。やはり、こういう気持ち警察の首脳部は持っていたわけなんですか。これは大事なことですから、長官から答えていただきたいと思います。
  123. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 警備局長から、お答えいたさせます。
  124. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 その新聞報道は、だれが語ったかはよくわかりません。後者のほうは、本部長というあれがあるようでありますが、そのいずれにしましても、私どもは、人質の牟田泰子さんを元気で救出するということが至上の任務であったわけでございまして、その人質の安否というものを、十日間にわたって、何とかして確かめようというあらゆる努力を続けてまいったわけでございます。そこで、そういうことばがもしだれかから出たのであるとすれば、犯人逮捕いたしました瞬間において、人質をかかえ込むようにしていたという状態があるということは、つまり、利用すべきものは最後まで利用する、つまり、人質をかかえておるということによって、警察のいろいろな手段を制約するということにあったと思われますが、そういう意味のことを言ったのであろうというふうに想像をいたします。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、こういうことを言ったことはお認めになって、そして、その評価は、あなたがいま言ったような評価だ、こういうことなんですか。要するに、「権力と無関係の一女性を監禁、殺傷することは、彼らの論理と矛盾しており、彼ら自身悩んでいるのではないか。」と、警察自身が言っている。国民から見れば、あれだけの極悪犯人に対して、彼らは悩んでいるだろうと警察の首脳部が言ったということになりますと、これはもう、彼らを甘やかすことになるわけですね。そういう心情を警察の首脳部が持っているとすると、きょう一日の当委員会質問、答弁にもありましたように、そこから、捜査の上からいろいろのこぼれが出たり、下落ちが出てきたりするわけです。  それでは、こういうことを言われたことは言われたが、あなたの言うような意味だ、こういう意味にとっていいんですか。
  126. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 それを言うた者がだれであるか、私、はっきりいたしませんので、あれでございますけれども、その権力と無関係云々ということは、彼ら連合赤軍のいろいろな機会での発言——集会その他での発言やら、あるいは機関紙やら、配ったものの中に、「銃撃戦を展開してでも、警察官を、あるいは権力を殺すべきである、」ということを言うておるわけでございます。したがいまして、権力と無関係の者は、そういう意味の対象には直ちにはなっていない。しかし、爆発物をしかけて一般市民を巻き込んだという行動を、彼らは犯してはおりますけれども、そういう意味から、いまのような発言がかりにあったとすれば、そういう意味であろうと思いますし、しかも、その意味は、私が先ほど申し上げたような意味で、最後まで人質の安否を確かめたいという気持ち、また、安全な——まだ、牟田泰子さんが十日を過ぎてぎりぎりであるけれども、もうこの段階において、立ち入って救出をせざるばなるまい——その瞬間に、警察としては、それを指揮する者としては、人質が元気でいるということを信じてやるのは当然だと思います。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 長官にお尋ねしますが、この連合赤軍に入るときまでは革命的な情熱で入るのだ、こういうようにおっしゃるのですけれども、しかし、赤軍派がどういうことをやったかということですね。たとえば「よど号」の乗っ取りをやった。それから、昨年からことしまでにかけてやったことを、記憶を新たにするために——これは警察のほうがむしろ詳しいかもしれませんが、私のほうでおもなものを一応ずっとあげてみますと、昨年の二月十七日に、真岡の猟銃強奪事件をやっている。それから、昨年の二月から三月に、郵便局の襲撃、神奈川の銀行の強盗をやっている。それから、昨年の六月十七日には、原宿で、機動隊に爆発物を投げつけて、三十七名の負傷者を出している。それから、四十六年の八月七日には、警視総監公舎に時限爆弾を装置している。昨年の十二月の十八日には、警務部長の奥さんのところへ小包の爆弾を送って、夫人を死亡さしている。昨年の十二月二十四日には、クリスマスツリーの爆発があった。こういうところへ入ることが、あなたの言う、入るときまでは、革命的情熱と確信的な信念を持って入ると評価していいと言えるでしょうか。もう、こういうことをやっているということはわかりきっているものでしょう。そういうところへあえて入っていく者に対しての心情をあなたのように評価するということは、ここへ入っていく者を甘やかすことになるのじゃないですか。何をやっているか、もうわかり切っているじゃないですか。そこへ飛び込んでいくまでは、入り口まではよかったが、じゃ、出口はどこだと言ったら、出口ははっきり言いません。入ったらもうすぐ出口になるのか、長い出口があるのか知りませんが、それは、あなたはどうかしていませんか。そういう警察首脳部の態度でもってこういう事件を取り扱っていけば、今後こういう者が横行濶歩することは、これは火を見るより明らかになるのじゃないですか。どうでしょうか。
  128. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 あなたの御議論は、全く私は理解できない。私が言っているのは、彼らは彼らなりに、入るまではそういう気持ちで入ったであろう、こういうことを申し上げておる。私は、何もそれを高く評価しているわけでも何でもありません。私は、だから、彼らのやっていることは、もはやこれは犯罪者集団と同じことをやっているのだから、それはきびしく取り締まると言っておるのであって、また、かりに、入ったときに彼らがそういう気持ちを持っておったからといって、それについて警察が取り締まりを左右するなんていうことはあり得ない。われわれが取り締まりの対象にするのは、彼らのやっている行為そのものが犯罪になるかならぬかということですね。したがって、私は、彼らのやっている行為を見て、警察としては厳重な取り締まりを加えるのだ、こういうことを申し上げておるのであります。彼らが入る動機がどうであったからといって、別段、それを高く評価しているわけでも何でもございません。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 別に、高く評価するとも何とも私は、言っているわけじゃない。私こそ、あなたの言ったことそのままに言っているんですよ。この諸君は、今日の政党は革命的情熱を持っていない、だからおれたちがやるんだ、主観的にはこういう確信犯の信念を持って入っていくのだ、こう言っているのでしょう。しかし、それを確信犯と言えますか。そこに甘さがある。まだあなたは私の言うことを気がつかない。あなた自身が甘さがあるから気がつかないんですよ。入っていくにも、事によりけりですよ。こんな強盗、殺人の仲間に入っていくのに、入っていくまではこういう信念で入っていくのだなんて、そんな評価を警察でしていたら、それは、取り締まりにだって手落ちが起きるのは当然ですよ。ぼくこそ、あなたの言うことがおかしいと思いますが、ここでお互いに感情的になってもしかたがないけれども、そうじゃないでしょうか。さっき、門司さんに対するあなたの答弁はそういう答弁ですよ。
  130. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私は、いま申し上げたように、何も、彼らのそういう考え方を容認しているわけでも何でもないので、彼らが絶えずそういう主張をし、そして、そういう動機で入っているのは事実であろう、こう言っているだけであって、私は、それを認めておるわけじゃない。彼らがそういう考え方のもとにおいて犯す犯罪についてはきびしく取り締まる、こういうことを私は申し上げたいと思います。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう動機で入っていくのだという、そういう動機というのはどうしてわかるのですか。
  132. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 彼らの今日までの各種資料、及び、彼らの、今日まで逮捕せられた者の取り調べの過程からでございます。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの持っているそういういろいろな資料から、そこへ入るまではそういう革命的情熱で入っていくというふうに判断しているのだ、こういうことですね。まあ、これはもう繰り返しませんけれども、ところが、入っていく対象が、今度のこと一つを見ましても、たとえば、平和な生活をしている主婦を二百十八時間も、これは日本の犯罪史上かつてない監禁ですけれども、監禁をし、さらに、ライフル銃や爆弾などを見さかいもなく使って、一般の報道関係者や一般人まで巻き込んで、多くの死傷者を出している。こういう客観的な行為がずっと積み重ねられておる。そういう行為を積み重ねていることが明らかなその組織へ入っていくこと自体が、もう、こういうことをすることを前提として入っていくことになるのじゃないですか。入るまでは善意を持って入っていくけれども、入ってからのことは、こういう犯罪的な行為になって、警察は取り締まるのだと、そんな区別はできないはずじゃないか、こういうように思います。もう、わかり切っているじゃないですか。強盗の仲間か、あるいは強盗だと、世間はだれでも認めておる。それを、しかしあれは、その中へ入るまではいい人だったけれども、入ってから、強盗の仲間へ入ったから強盗になったのだ、こんな評価のしかた、矛盾した評価のしかたが、警察庁の長官としてできますか。
  134. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私のお答えいたしているのが、ことば不足でおわかりになっていただけないのかどうか、ちょっと理解に苦しんでいるのですが、あなたのおっしゃるように、あなたのような健全な常識を持っていらっしゃる方——私もその一人だと思いますが、そういう者の目から見るならば、いかにも理解できないではないか、こう思います。しかし、私が先ほどから言っているのは、彼らは彼らなりに、そういう考えかをして入っているようだ、こう申し上げておるのです。私は、それを何も容認しておるわけでも何でもないので、私の常識から判断すれば、まことに理解に困難を来たすことであることは間違いない、こういうことを言っておるわけです。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 長官はそういうように弁解なさる。私は、そこに甘さがあるのではないかというように思います。  そこで、これはもう、各新聞社、あるいは週刊誌等も指摘している捜査上のミスですが、警察のミスとも言っていますが、皆さんは、自分でこれをミスと認めるかどうかわかりませんが、たとえば一月五日から二月十三日までを一区切りにして調べてみますと、一月五日に、神奈川県の丹沢のアジトを発見した。それで、二月七日の夕方、不審な車と小屋を発見という地元からの情報があった。ところが、こういう情報があったにもかかわらず、この小屋を二月七日に捜査をしたかどうか、この点が一つ。——これはだれが答弁されますか。
  136. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 私がいたします。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 では、続いて言いますが、それから、子供連れの不審な女性がおってこれを保護したけれども、これは釈放した。二月七日ですね。ところが、二月八日になって、前日の不審な女性が再びあらわれて、警視庁に問い合わせた結果、これは京浜安保共闘の一味であるということがわかった。これは、一たん釈放しているわけですね。これもそういう事実があるかどうか。次いで、二月十日、警視庁は、この不審な女性宅を訪れ、事情を聴取。そのころから群馬県警の榛名アジト捜索が始まった、こう言われています。そして、二月十三日に、群馬の迦葉山アジトが発見されておるのですが、二月十日から十三日の間は一体何をしていたのか。この不審だといって逮捕した女性をなぜ保釈したのか。それから、七日に、地元民から不審な車と小屋があるがという情報があったのに、これを捜査したのかどうか。この辺のところをひとつ説明していただきたいと思います。
  138. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 いまあげられました日にちの順序で、簡単に御説明をいたしておきます。  一月五日に、西丹沢の山奥でアジトを発見したことは事実でございます。これは、直ちに、神奈川県警本部におきまして、相当の人間で、あの辺のアジトあと一帯の捜索を行なって、いろいろな押収物を押収して、彼らがどういう者であるのか、どういう者がいたのか、何をしていたのかということを克明に調査をいたしております。これは、自後の調査には非常に役に立っておるわけであります。当然、その当時から、いわゆる町中以外のさような場所につきましても、連合赤軍といいますか、こうした凶悪な犯行を犯す連中が山中にアジトをつくっておるかもしれぬということで、一斉の手配をし、捜索をいたしておったところでございます。しかしながら、これは林委員のおことばとも思えないのでありますけれども捜査には、数日、数時間でつかまる場合もございますし、非常にむずかしい捜査の場合には、その足取りをたどり、また、いろいろな聞き込みをして捜索をするということもいつもあるわけでございまして、それはいろいろな局面があろうかと思います。  さらに、二月七日でございますが、これは小屋があったわけではございませんで、キャンプあとがあったわけでございます。即日、これはやはり群馬県警察本部におきまして、その現地の厳密な調査をいたし、いろいろなものから、さらに今後の捜査方法等の資料を得たわけでございます。  それから、子供連れの話でありますが、子供連れのあれは、二月七日に、ちょうど榛名のキャンプあとを発見いたしましたその日に、榛名湖の警察の派出所で、子供連れの女の人がうろうろしておるので、一応保護をして、そして、どこから見えたのかということを聞きましたところが、東京のこういうところから来たのだということで、私の身元はこういう人に聞いてくれればわかるということでありまして、当然、そこの派出所の警察官としては、これはひょっとすると家出人じゃないかということで、警視庁に、その、いわゆる身元がわかるのだという人のところにいろいろ連絡をしてもらったところが、いや、それは私がよく知っておる人だから、これは東京に連れ帰してくださいということであったので、これは何ら犯罪の容疑もございませんし、令状が出ておるわけでもございませんので、これは逮捕する質のものではないと判断した当該警察官判断は、私は、正当であると思います。  それで、その翌日、いわゆる、自分の身元がわかっているのだという人が参りまして、引き取っていった、高崎警察署から、身元引き受けをして、東京の方向に帰った、こういうふうに聞いております。しかし、これは、榛名の捜索というようなことから、どうもおかしいなということで、いろいろ調査をしておったところが、二月十六日になってから、いわゆる京浜安保の構成員の女の人であるということがわかったのであります。これはなかなか、急にはわかることではないのであります。  それで、その後……。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 答弁途中ですが、どうしてわからないのですか。数名の人間がおるわけでもないのに、その京浜安保の女性だったということがどうしてわからないのですか。
  140. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 全部わかっておりますれば、これはたいへんけっこうなことでありますけわども、京浜安保も、いわゆる軍事組織を構成している面と、公然組織として、京浜安保として、いろいろ集会をやったり、街頭宣伝をやったり、いろいろなことをしておる人もあります。だから、これは非常にいろいろなところに入り組んでおるわけでございますし、あるいは人の出入りもりましょうから、全部を把握しているというわけではございません。この当該の婦人は、いわゆる爆弾づくりをやっておったという形跡も何もございませんし、そういうことで、いま申し上げたようなことであったわけでございます。  そういう過程で……。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、結局、こういうことですね。結論を申し上げますと、この女性が、京浜安保の軍事的な任務に携わっておった女性だということは当時わからなかったということなんですね。
  142. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 これは、ただいまも、軍事的任務に入っておるかどうかは疑問でございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの言うことはおかしいよ。それでは、ただいまでも、京浜安保の中で、軍事的な任務に携わっている者はだれとだれかということははっきりわからぬ。こう聞いておけばいいですね。それならそれでいいですよ。
  144. 富田朝彦

    ○冨田(朝)政府委員 そういう者はわかっております。軍事組織を構成しているような、凶悪な犯罪を犯すおそれのある者、あるいは、犯した者、これはわかっております。しかし、先ほど申し上げましたように、いわゆる公然組織として、その外にある程度の人間がおるのでありますが、これは出入り等もあって、一面わからない面もあります。そういうことであります。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは続いて申しますが、この十九日の日——詳しく言っていくと限りがありませんから飛びますが、どうも不審な点が、捜査の過程にたくさんありますが、十九日の午前八時に、信越線軽井沢駅で、幹部の、元弘前大学生徒であった植垣康博二十三歳ら四人、内女性二人、を逮捕した。午後三時十分ごろ、軽井沢町のレイクタウンの「さつき山荘」——これはあき家ですね。その近くにもぐっていた赤軍派五人と、周辺捜査中の長野県警察機動隊員四人とが銃撃をした。そうして大野耕司巡査長ら二人が負傷した。それで、この「さつき山荘」と浅間山荘との間に、約一時間の空白があるわけですね。「さつき山荘」で長野県の警察機動隊が衝突した。そして、時間たって後に、四時何分ですかに、五人のうち何人か、あるいは全員か——実は全員だったのですが、「さつき山荘」上方六百メートルの河合楽器浅間山荘に逃げ込んだ。この、時間の間というものは、どうしてここに一時間空白ができるのですか。
  146. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 林委員は長野県の御出身でございますから、軽井沢の地形等は十分御承知のことと思いますが、あの現場は、非常に新しい開発地でございますが、南軽井沢のまた一番辺境の地でございまして、いわゆる地平から数百メートル高いところに浅間山荘があることは御推察いただけることと思います。  そこで、この一時間何をしておったかということでございますけれども、「さつき山荘」で彼ら一味を発見をいたしまして、これに踏み込もうとしたところのいききつにつきましては、先ほど御説明をいたしたとおりでありますが、彼らは、手に持っておりました銃を乱射しながら、相当急勾配の道を坂上へ向けて逃走したわけであります。これを追っかけていったわけでありますけれども、実際問題として、その乱射が激しいために、一時身を伏せている間に見失ったわけであります。そこで、さらに、この一帯を捜索をしておりましたところ、三時二十五分から三十分くらいの間に、捜索をしておりました警察官が、やにわに上方から銃撃を受けまして、そして、腰部に銃弾を受けたわけであります。そこで、これは、先ほど銃撃をし、銃をかかえて逃走した、あの連中がここにいるに違いないということで、その山荘の所在がわかり、そこを突きとめたということでございます。しかし、これ以上のいろいろな行動につきましては、今後犯人の公判その他の問題もございますし、そういうことでありますので、詳細は省略さしていただきます。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどから、警備局長は、林さんは、林さんは、と言われていますが、これは、私は、別に、警察が憎くて主観的にものを言っているわけじゃなくして、いろいろと、新聞やその他の材料でこう言っているから、それで、客観的な立場で質問しておるわけですよ。  今週の週刊ポストに、「初動捜査への住民の疑点」という見出しがある。警察庁では、これをお読みになりましたか。こういうのはすぐ見る必要がありますね。世間で今度のことをどう見ているかということがよくわかる。今週の週刊ポストです。そこにこう書いてあるんですね。「榛名のアジトを見つけられた連中は、いったん妙義山に逃げた。ここで一部がつかまったとき、残った連中が逃げるルートとして想定されたのは1、秩父へ2、下仁田から和美峠をへて信州へと、この二つだったはずだ。1、の秩父への脱出を警戒した埼玉県警はただちに非常線をはったんだが、長野県警は2、のコースは素人では無理な山越えコースだ、とかるく判断したのではなかったろうか。」ここは警備線が張られなかった。こういう記事が出ています。私は、この記事が事実かどうか知りませんけれども、しかし、世間ではこう見ています。確かに、初動捜査に非常な疑点を持っている。もっと早く逮捕できたはずだ、ああいうところへああいう形で逃げ込まさせなくともよかったはずじゃないかという疑点を持っておりますから、それで私は聞いておるわけですよ。埼玉県警のほうは直ちに非常線を張ったのに、昔の女街道と言われた、群馬県から和美峠を越えて信州に入る山道はどうしてあけておいたのですか。あけていたとすれば、どうしてあけておいたのか。
  148. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 それは、全くあけておりません。厳重な警戒をいたしておりました。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 厳重な警戒をしていて、どうして長野県に入るのを逮捕できなかったのですか。
  150. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 それは、逮捕できれば、それにこしたことはないのでございますが、あの妙義山の地形は、私も実際に見ましたが、先ほど申し上げましたように、彼らは、数日間にわたって雪中を歩くなど、いわゆる、通常の林道というものはほとんど利用していないと思われます。これは本部の取り調べに待たなければなりませんが、そういうことで、通常の道から和美峠に出てきたというふうには見られません。しかし、和美峠並びに軽井沢一帯には、長野県警はもう二月七日以降——これはときによって人間の多少はございますが、少なくとも、あの前後におきましては、二百人余の警察官で、あの一帯の検閲並びに検索に当たっておったわけでございます。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 検索に当たっても、通しちゃった。検索に当たっても、ああいう形にしたんじゃ、何の効果もないじゃないですか。そんなことじゃ、あなたは、何らかの責任を感じる必要があるんじゃないですか。いまここでそういうことを言っていたって、とにかく、無事に通って、あそこに入っていったじゃないですか。それじゃ、検問をされていたけれども、逃げて通ったとお考えになりますか。
  152. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 いま申し上げましたように、和美峠の、いわゆる通常街道と接着するような道からは出てこなかったわけでございまして、その点から言えば、今後の問題としては、ずいぶん、教訓としては残ります。その点は、今後、教訓として生かしていきたいということは、先ほど来申し上げているところでございます。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、その点は手落ちがあったんでしょう。まさか、そこを通るとは思わなかった、だから、そこへは非常線を張らなかったということでしょう。非常線を張らなかったところを、そこを突破された、こういうことになるわけでしょう。
  154. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 長野県の全警察官が、二千数百名でございますが、それをかりにあの一帯に張りつけたといたしましても、その間を絶対縫わないというわけにはいかないと思うのです。あの広大な地域でございます。したがって、こちらとしては、いままでの経験則なり、あるいは捜査上のいろいろな過去の教訓からいたしまして、必要だと思われる個所には、警察官の配置をして、検問をしたわけでありますが、そこにはぶつからなかったということでございます。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 いまの点で、それじゃもう一つ聞いておきますが、あなたは、和美峠を通らなかったと断言できるのですか。
  156. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 和美峠の、いわゆる通常のルートに配置された警察官の検問個所は通っていなかったということでございます。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 犯人逮捕するのに、通常のところだけを守っていて、それで十分だったというような答弁をなさるのはどうかと思いますね。しかし、その点は、その点でおきましょう。  これは先ほども聞いたのですが、赤軍が「よど号」のハイジャックをしたときの答弁で、川島警備局長が、一九七〇年の四月十三日の衆議院の連合審査の際、わが党の不破議員に対する答弁として、赤軍派に限らずいろいろの団体に協力者を得ていろいろと情報を収集していることは、御理解のとおりである、協力者には当然謝礼金を払っている、しかし、これはいわゆる協力の度合いによって、いろいろの内容によってきまるわけであって、実際問題としては、実費程度の金を渡しているわけである、赤軍派協力者に対しても、実費程度の金を渡していることは事実である、というように答弁しているわけです。それから、続いて、この問題について、これは参議院の予算委員会で、やはり一九七〇年の四月一日に、川島警備局長が、赤軍派による日航機「よど号」乗っ取り事件に関し、赤軍派に限らずいろいろの協力団体に協力者を得ていろいろと情報を収集していることは、御理解のとおりである、協力者には当然謝礼金を払っている、やはりこういう答弁をしているわけです。赤軍派の中にも、謝礼金を払って情報を取得している者がいるということは、これは国会で答弁しているわけです。これは、このときはどうなったのですか。そんなに金を使っていたのに、大事なこういうときに、和美峠を越したか越さないかわからないなんということで金なんか使っていたんじゃ、むだ金じゃないですか。
  158. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 和美峠とか、そういう戦術的な情報は、残念ながらございませんでした。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、いまでもいることはいるけれども、そういう情報を提供してくれなかった。こういうことですね。大事な和美峠を通ったか通らないかという、そこの戦術的な情報は提供してくれなかった。そうすると、どういう情報は提供してくれたのですか。
  160. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 そういう戦術的な情報がなかったので、いま先生がいろいろ御指摘のあるような事態があるわけでございますけれども、それ以外のことについては、私ども、ちょっとここでは差し控えさせていただきます。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 何で急に、そんなにおとなしく差し控えるのですか。いままではえらく勇敢に、林委員は、林委員は、と言っていたでしょう。だから、いるのですか、いないのですか。赤軍派に謝礼を出していたと言っているわけでしょう、国会で。そういうのは、まだいるのですか、いないのですか。それとも、いるけれども、そういう戦術的な情報は提供してくれなかったんだというのですか。何を差し控えるのですか。
  162. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 警察は、犯罪捜査に必要なための情報収集はいたしております。また、その情報収集に必要なために、部外の人の協力も得ております。その協力を得た場合には、協力の度合いなり、あるいはそういうことも考えて、実費程度の支払いをいたしております。しかし、具体的に、どの団体にどのようにそういう金を支払っておるかということは、私は、犯罪捜査の上から、ここでは答弁をいたしかねるわけでございます。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、急に後藤田さんが答弁を買って出たのですが、私は高松さんに聞いているのですよ。国会でもはっきりしていることですかう、だから聞いているのですよ。国会の、「よど号」のハイジャックのとき、ちゃんと、赤軍派にも謝礼金を出して、そうして情報を得ております、しかし、それはほんの謝礼程度です、と言っているから、じゃ、その赤軍派京浜安保共闘が一緒になって連合赤軍ができたのだから、その赤軍派のほうの、謝礼金を出していた情報網というのはどうなったのか、国会であなた方が言ったから聞いているので、何も、言わないことを聞いているわけじゃないですよ。どうですか。
  164. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 ただいまの、戦術的な情報はなかったということを申し上げましたことに対しまして、その他の内容はどうであったか、こうお尋ねがございましたので、それについては差し控えさせていただきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 いま、事務当局から注意がありまして、高松刑事局長と私がいままで言っていたのは、富田警備局長ですから、そういうように訂正いたします。  そうすると、ちょっとわからないのですがね。率直に言ってくださいよ。戦術的な情報はなかったが、他に何かの情報の提供があったかと先生がお聞きになったから、それは差し控えますと言ったというのは、情報網はあるけれども、その情報網は、戦術的に、この本件に役立つようなものではなかったのだ、そう聞いていいのですか。
  166. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 そのように御理解いただいてけっこうです。
  167. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、赤軍派の中には、情報網があるけれども、しかし、その情報網からは、今度の浅間山荘の問題についての戦術的な情報は、提供はなかった。それじゃどういう情報の提供があったかといえば、そのことは、捜査の秘密にも関するからここでは申し上げられません。それでいいですか。
  168. 富田朝彦

    富田(朝)政府委員 それでけっこうです。
  169. 林百郎

    ○林(百)委員 それでいい。はあ、そうですか。じゃ、金が役に立たないということになるわけですね。  それじゃ、ちょっと予算のことを聞きますが、予算のわかる人、いますか。——今年度のそういうことに使う捜査費ですね。警備費のうちの捜査費。これはどのくらいですか。私のほうでは、二十一億と、この前皆さんに来てもらって、説明のときお聞きしましたが、そうですか。
  170. 土金賢三

    土金政府委員 いまここに資料をちょっと持ってきておりませんので、ちょっといま申し上げることができませんですが、あとでお知らせすることで御了承願えませんか。
  171. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、ここに警察庁発表の、昭和四十七年の予算の概要がありますから、これを見てください。  この中のどれへ入って、どうなっているか。私のほうは警察庁に問い合わしたのですから……。
  172. 土金賢三

    土金政府委員 この捜査費二十九億八千九百七十四万九千円の中には、警察捜査費が全部入っておるわけでございます。これは警備、刑事、保安関係、全部入っておるわけでございます。
  173. 林百郎

    ○林(百)委員 そのうちの警備費ですね。いわゆる謝礼だとか、いろいろなものに使うもの、これを私のほうはちゃんときのう警察庁に問い合わしたのですね。本年度はそのうちの二十一億だ、こういう答えがありました。そうではない、そんなではないという資料もないんでしょう。あなたのほうの資料は大体そんなものですか。
  174. 土金賢三

    土金政府委員 この捜査費の内訳というのはちょっとわかりませんです。その内訳を持っておりませんので……。
  175. 林百郎

    ○林(百)委員 わからない。だって、私のほうへはちゃんと電話で答えているじゃありませんか。ちょっと、それじゃそれを貸してください。私のほうへ答えているんです。警備費の中には活動旅費、捜査費とある。活動旅費は二十七億、それから捜査費は二十一億、合わして四十八億というのは、あなたのほうが来て説明してくれたんですよ。それをどうして国会で説明できないのですか。だから、私の言わんとするところは、いずれにしても、旅費と捜査費と合わして警備費が四十八億あるわけですよ。これだけの多額の金を使って、そして、赤軍の中に協力者も置き、そして、それへ金を渡しておる。これは、私のほうは、背叛社事件の判決がありますから、先ほども中村国家公安委員長は、林さんの言うような意味の金は渡したことはないと言いますが、これも参考までに読んでみますと、「当公判延における被告人の供述および第九回公判調書中証人間々田敬作、」これは警察官ですね。「同深沢亮治の供述部分によると、被告人が同年七月八日ごろから九月二十五日ごろまでの間約五回にわたり警視庁公安第一課所属の警察官たる右間々田と(うち約二回は右深沢を加えて)会合し、同人らの依頼により背叛社等に関する情報を提供し、その謝礼として合計一一万円の金員を受け取っていた事実が認められる。」これは裁判所の第一審の判決ですね。これだけの金を使って、そして国民の税金を——合わせれば、捜査費だけで二十一億、旅費やいろいろなものを入れますと、四十八億になる。そこで、こういう判決でも認められているように、情報網を持っていながら、今度は、こういう大事なときにどうしてそれが役に立たないのですか。それは、警察庁長官、国民の税金をむだに使っていることになるんじゃないですか。飼っていて、むしろ養ってやっているだけじゃないですか。
  176. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私どもは、経費は、すべてこれ国民の税金でまかなっておるわけですから、その経費を最も効率的に使わなければならぬという責務を持っております。そういうふうな意味合いで、われわれも鋭意努力をいたしておるところでございますけれども、犯罪の捜査というのは、先生がおっしゃるほど簡単にすべてがわかれば、これはもう何ということはありませんけれども、わからない場合もあり得るのだ、場合によれば、捨て金だってあり得るのだということでなければ、実際は、私は、犯罪の捜査にはならないと思います。今回の場合だって、私どもだって、それはできるだけ捨て金は捨てたくないし、出した経費にふさわしいだけの成果をおさめたい。しかしながら、今回の事件については、残念ながら、そういった事前の情報を的確につかむことができなかった。こういうことでございます。
  177. 林百郎

    ○林(百)委員 捨て金だって使いますよ、と、堂々と国会で答弁できるのは警察庁だけでしょう。どこの役所が、先生、捨て金だってありますよ、なんて言う役所がありますか。それは、後藤田さんの答弁だから聞いておきましょう。しかし、そんなことが平気であなたから言われることは心外ですよ。
  178. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 念のために申し上げます。私の言う捨て金というのは、文字どおり、役に立たない金というのではないのです。金の使い方には、即効のあがるものもあるが、しかし、捨て金のようなものであっても、いつの日にか役に立つものもある、そういう意味合いで申し上げておるのです。私は、むだに使っているという意味で申し上げているわけではさらさらございませんので、誤解のないように願いたいと思います。
  179. 林百郎

    ○林(百)委員 捨て金どころじゃないじゃないですか。あなたのほうからもらった金で爆弾をつくって、そうして共産党の本部を襲撃したり、そういうものの費用に使っているじゃないですか。捨て金なんという甘い考えを持っているからこそ、だから、われわれは、あなた方はトロツキストを甘やかしているんだ、あるいは、泳がせているんだということばも使いますけれども、単なる捨て金なんということでは済んでいないんですよ、そこに問題があるんですよ。その責任をあなたは感じなければ……。この背叛社事件だってそうでしょう。あなたのほうからもらった金で爆弾をつくっているんですよ。実際は、判決はそこまでは言っていませんけれどもね。だから、そんなことを平気でここで言うあなたの感覚を私は疑わざるを得ないわけですよ。しかし、この問題は、時間がありませんから、これで打ち切ります。  もう一つの問題で、私、時間が参りますから質問を終わりますが、これも週刊ポストで、「気になるショーの逆効果」という題で記事があるわけですね。考えてみると、犯人は五人、それに動員した警察のほうの勢力を新聞記事でまとめてみますと、装甲車が十台、放水車が四台、警察車両が二百八十五台、最後の三日に土のう、ざんごうをつくり、動員された警察官は千三百人、それで要した費用は一億円。そして、テレビは、一日じゅうこの放送だけやっているわけですね。そして、そのあとで、今度は、中村国家公安委員長は、二十九日の閣議で、さっそく、早急に装備を強化しなければならぬ、と言っている。これほどの大げさなことをしなければ逮捕できないんですか。五人に対して、千三百人の武装警官が行かなければ、五人の犯人逮捕できないんでしょうか。これこそ国民の税金をむだに使うと言われても答弁のしようがないじゃないですか。そうして、かかった費用は一億円。しかも、国家公安委員長は、これでもまだ足りないから、早急に警察の装備を強化しなければならないと言う。このことについて、何か責任を感じませんか。
  180. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 今回の事件につきましては、多くの犠牲者を出したということが一番反省を要することであろう、こういうふうに私は考えておるわけでございますが、ただいまの御質問のように、わずか五人の犯人逮捕するのにこれだけの人間がおらなければできないのかと言われることは、まことに心外でございます。警察官は身命を賭してやっております。これだけのものは要るんです。人質を無事に、あれだけの地形で、あれだけの建物の中で、あれだけの武器を持っておる人間を傷つけないで、どのようにして警察官逮捕するか。しかも、あれだけのマスコミあるいは一般の見物人、と言うと、まことに失礼ですけれども、そういう人が大ぜいおる。この人たちを、どのようにして、たまを当てないで、安全に守るかというようなことになれば、これだけの犠牲はがまんをしていただかなければならぬ、私はそのことを申し上げておきたいと思います。
  181. 林百郎

    ○林(百)委員 警察当局はそう言いましても、「警察当局も、この大取材陣を十分に計算にいれていた。ある日の記者会見で、こんなシーンがみられた。」云々、という記事があるわけですよ。だから、一般は、警察も、この取材班やいろいろ全部計算に入れて、そして、一種のショーをして、警察力の強化の一つの材料にしたと見ている人たちもいるということですよ。その点も将来あなた方に反省をしてもらわなければならない。それは、常識からいったって、犯人逮捕専門家で、しかも、警視庁でそれだけを訓練している警察官が、五人の者を逮捕するのに千三百人、そして、警察車両二百八十五台、装甲車十台というのは、だれが考えても、これだけしなければとらえられなかったのかと考えるのは、国民の常識なんですよ。私は、国民の常識をここで代表してあなたに言っているわけです。何を言っているんだとあなた方警察当局は思うかもしれませんけれども、国民の側から見ればそうなんですよ。その点、反省する余地はないのか。今後もっと手ぎわよく、こういう点の逮捕については研究をするとかなんとか、そういうことはないのですか。一億円くらい使うのはあたりまえだと言わんばかりのあなたの答弁じゃありませんか。
  182. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私どもは、この種の事件というものは、できるだけ手ぎわよく処理したい、また犠牲者も出したくない、そういう努力はさらに重ねていきたいと思いまするけれども、これがすべて国民の常識だというあなたの御意見は、私は賛成できません。私どもとしては、全力を尽くしてやったつもりでございます。
  183. 林百郎

    ○林(百)委員 それは、一線の警察官は善意をもってやった。命がけでやった人たちもいるでしょう。しかし、これだけのことをしなければ、わずか五人の者を、しかも、捜査からいえば、もう、ことしの一月五日からやっているのでしょう。それを、最後に、これだけの大とりもの陣を展開して、一億円の金を使わなければ逮捕できないのかということを不審に思う国民がいるのだ。そういう国民の気持ちを、今後、適正な警察権の行使の上から、やはり考えていくべきではないか。あなたは、何でも、私の言うことをけんか腰で聞くから、まるで反発ばかりしていますけれども、率直に警察は考えてみるべきじゃないでしょうか。どうですか。
  184. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 先ほどお答えしたように、できるだけ手ぎわよく私どもはやれるように努力したいと思います。  しかしながら、あなたの御質問を聞いていますと、週刊誌にこう書いてあるとか、こういうことを言う人もおるのですよとか——その中のおことばを聞いておれば、警察はショーをやっているというようなことばも、人のことばとしてあなたはお聞きになった。しかし、そういうようなつもりで言われたのでは、警察の立つ瀬がない。あれだけの事件に、だれがショーをやるつもりでやりますか。私は、その点を、ほんとうに皆さんに理解していただきたいと思います。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 それならそれで、そういうことを言えばいいじゃないですか。しかし、どちらが常識かといえば、五人の犯人逮捕するのに、千三百人の武装警官を動員し、そして、二百八十五台の警察車両を動員し、放水車を四台、装甲車十台、国費を一億円使うのをショーと言われても——私が言っておるのじゃないですよ。こう言う人たちもいるから、これは他山の石として、これからの警察権の行使の上からいって、やはり考えている点があるのじゃないか。こう私は言っておるのですよ。何も、あなたが私に食ってかかることはないでしょう。そう言っているだけです。  それで、もう時間がありませんから、私は、最後に、このことについて私たちの最後の考え方を申しますが、こういう事態が起きた。この政治責任を、私たちはこの際明らかにしなければならないと思います。それは、明らかに、政府・自民党が、共産党や民衆運動に対する高等戦術として、トロツキストをいままで甘やかしたり、あるいは金をやって、いわゆる泳がせ利用をしてきたことが、彼らを、今日のように、こういうようにのさばらせてきた大きな根本的な原因である。政治的には、こう私たもは指摘せざるを得ない。国民とともに、私たちは、政府・自民党あるいは警察首脳部の政治的な責任を十分追及すると同時に、われわれは、このことについては、今後もさらに徹底的に追及して、こういうトロッキストのような連中を、国民と力を合わせて孤立化させ、これをなくしてしまうことについては、わが党としては全力を尽くすつもりです。しかし、今日こういう事態を起こしたことについての政府・自民党、そして警察の、ことに首脳部の政治的な責任については、わが党としては許すことはできない、こういうよように考えます。  これで私の質問は終わります。
  186. 豊永光

    ○豊委員長代理 小濱新次君。
  187. 小濱新次

    ○小濱委員 最後になりましたが、一、二点御質問をしたいと思います。  まず、官房長にお尋ねしたいのですが、いま、いろいろと論議を聞いておりまして、私どもは、生命の尊厳という立場から、命ほどとうといものはないというふうに理解をしております。そういう立場から、先ほど官房長が、殉職警官の遺族に対しての補償内容をこまかく御説明がございました。いろいろと検討中のものもございましたし、また、年金等もございますけれども、いつからそれは支給されていくのか。あるいはまた、私どもの耳には、二月に事件がありまして、ああいう結果になりましたので、早目に、二月から支給すべきではないのかという声も入るのでございますが、いろいろと関係省庁との関係があるようでございますが、その点についての御説明を、官房長から承りたいと思います。
  188. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問のように、特別公務災害補償制度年金支給について、増額するよう、特別公務災害補償制度の創設ということで、関係方面に法律改正方をお願いしているわけでございますが、その適用につきましては、私どものほうとしては、四月一日から適用するようにということでお願いしていることは、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  これにつきまして、今回の二人の殉職警察官の場合についても適用するように、こういう御趣旨かと存じますが、私どもといたしましても、そういう御配慮はまことにありがたく感ずる次第でございます。ただ、これにつきましては、今回の殉職警察官のほかにも、たとえば、本年の一月の二十一日でございますが、当時の新聞にも出ておりましたけれども、静岡県の掛川警察署におきまして、指名手配中の殺人犯人逮捕しようとして、やはり凶刃に倒れて、なおかつ、二カ所刺されて重傷を負いながらも、百十五メートルを追跡して、これを逮捕して後、ついに力尽きて壮烈な殉職を遂げたという事案等もあるわけでございまして、これらの被災者との均衡の問題もこれある次第でございまして、ただいま、この制度を検討されております人事院その他に対しましても、そういうふうな点を十分に御勘案願いまして、善処したいと存じておる次第であります。
  189. 小濱新次

    ○小濱委員 一そうの御努力お願いをしたいと思います。  最後に、長官にお尋ねしたいのでございますが、さきに、成田の空港事件における殉職のこともございます。それから、いまもお話がございましたし、また沖繩で、せんだっても事件がございまして、なくなりました。今回、また、こうした警察官の殉職者が出たことに対して、多くの国民の声の中には、あたたかい同情の声が起こっております。私どももそういう声を聞いておりますが、何といっても、こうした警察官の殉職ということになれば、若い警察官の多い部内では、何らかの動揺が起き、あるいは士気に影響しているのではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。  そこで、いろいろとお感じになっているかと思いまするけれども、部内のそうした姿といいますか、動きについてはどろであろうかということが一点でございます。そして、さらに、今後いかようにして士気を鼓舞していかれるのか。まあ、いろいろとお考えになっていることも多いかと思いますが、今後の問題について、長官のお考え、決意を伺っておきたいと思います。
  190. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 最近のように、各種の事件で殉職者を相次いで出しておりますことは、私は、まことに申しわけなく考えております。やはり、一家の主柱を突然に失うわけですから、家族の悲嘆はもちろんのこと、また、その遺族の将来を考えまするときに、私どもとしては、こういった犠牲になった方々に対しては、将来にわたってでき得る限りの救援の手を差し伸べる方策を何とか講じたい。私に今日課せられておる最大の課題の一つは、やはり、警察官の士気をどう維持させるかということでございます。それには、こういった殉職をせられたような方々に対してでき得る限りの措置を講じて、事件発生の際はもちろんのこと、将来にわたっての家族のめんどうまで十分見るということ、これが何よりも必要なことであろう、こういうことで、必要な措置については、先ほど来お答えいたしておりますように、できるだけ次善の措置も講じて、万全の体制をとってまいりたい、かように私は考えております。  なおまた、こういった事件の際の部内の士気はどうかということでございますけれども、こういった際には、私どもも、実は、内心はたいへん心配いたしております。それだけに、各県の幹部にこういった事件内容等もよく伝え、われわれがとっておる措置も伝え、同時に、警察官自身、さらには、家族がこういう事件をどう見ているであろうかということをしさいに調査をさせておりますけれども、いままでのところは、おかげさまで、少なくとも、部内の現職の警察官について、この種事件で士気が動揺しておるということはいささかもございません。まことにありがたいことだ、私自身としてはかように考えておるような次第であります。
  191. 小濱新次

    ○小濱委員 これからもたいへんなおつとめをしていただくわけですから、一そうの深い御配慮を心からお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  192. 豊永光

    ○豊委員長代理 次回は、来たる七日火曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会