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堀委員 そうしますと、私、いまの問題の中で、今度の円
対策で、たとえば金利を下げるとか、いろいろございますね。昨日、銀行大会へ行って、金融の責任者の
皆さんの
意見を少し聞いてみました。私は、こういうふうに聞いたわけです。要するに、いまの
日本の企業というのは、高度成長の中にビルトインされていまして、ですから、高度成長の中にビルトインされているということは、成長が下がったときにはたいへん経営が困難になる。どうしてもその経営の困難、要するに借り入れ金によるいろいろなコスト高になる要素、それがある
程度ビルトインされておるものが一体こういう過程の中でそれなりに体質が
改善されてくるならば、私は、また新しい道が開けると思うのですけれ
ども、私が見ておる限りでは、やはり水ぶくれしておる体質をそのままで維持しながらここを乗り切ろうとする。こうなりますと、やはり損益の分岐点がある
程度高い以上は、どうしても生産量が落としにくい、そういう余剰生産力というものは多少国内の景気が回復したら国内市場に行きますからね。そう簡単に国内市場も、少し景気が回復したから、その余剰がこっちへあらわれるということにならない情勢になっているのじゃないだろうか。そうすると、景気が少し回復したら輸出圧力が減るのではなくて、結局企業の採算ベースをとろうとすることの企業的な自然の動きといいますか、企業というのは、少なくとも資本主義社会では利益がなければ成り立たないような仕組みになっておるので、それは高度成長にビルトインされておるものに、どうしても一定度の操業率を維持しようとするということから、輸出圧力というものは
——私は、いまの
日本の輸出圧力というものは、単に不況だからという輸出圧力というのは、今日の
段階ではやや問題があるのじゃないか。
それはけさの新聞で私は拝見をしたQE方式による昨年度の経済実績ですね、
国民所得の統計の速々報でありますが、これを拝見しても、五・七%の実績ということは、まあ後半は
かなり立っていると私は見たわけです。いま調整
局長に伺うと、下半期、年率七・一ですか、下半期年率七・一%ということで、総合で五・七ですから、ずいぶん上期に比べたら下が立っているわけですね。ですから、七・一もこうカーブが上がってきている中で、不況だから輸出ドライブがかかっておるという話は、私はもう説得力のある表現ではないという気がするのです。だから、それはそうではなくて、現在の企業体質からくるところの輸出圧力だ、こう見るのが私は相当なのではないだろうか。そうすると、はたしていまのような円
対策で、もうともかくすきがあらばそこからはみ出そうという輸出をはたしてコントロールできるのかどうか。
日本の景気が、それではこれまでのように実質で一〇%をこえるような景気が回復できるかというと、これはおそらく長官もそんなことにはならない、こうお考えでしょうし、いまの景気をささえておるものが、まさに公共投資と個人消費、
政府の財貨、サービスの購入と個人消費でささえておるということになれば、もちろん少し在庫の積み増しもあると思いますが、ウエートとしてはそんな大きなものにはいまなっていないと思いますから、そうなると、私は、これはなかなかそんな短期的な問題ではなくて、やや
構造的な問題としてこれをとらえて対処をしていかないと、非常にこれはむずかしい問題が残るんじゃないだろうか。
まあ昨日も金融機関の方にそういう話をしたところが、
かなり同感をする幹部の方が多うございました。私は、あわせて金利の問題に触れて、それは単に水ぶくれをしておるのは企業だけではありませんよ、金融機関も水ぶくれをしておりますよ、だから、金融機関の水ぶくれについても、金融機関の
皆さん、経営者は、いわゆるここを自分で考えてみる必要があるんじゃないでしょうか、そうすると、安易な預貯金金利の引き下げということが、依然として水ぶくれをそのまま延長させることに役立つんじゃないでしょうか、ここで逆に貸し出し金利が下がることが直ちに民間の設備投資を引き起こすというような情勢にあるならばともかく、まあ、これらの金融機関の責任者たちも、金利の引き下げが直ちに民間設備投資を引き起こすとは思いませんというのが、大体の
意見でありました。それが、そういうことにならないでおいて預金金利を引き下げるということは、言うならば、金融機関にやはり安易な経営態度を許す道になり、そのことは、私は金融機関の水ぶくれの
状態がそのまま継続されることになる。言うなれば、高度成長の中でビルトインされたものはみんなそのままで温存していこうということでは、私は、このいまの対米
関係の問題は解決はされないんじゃないか。
かなり政府はそういう
意味では政治的な勇断をもって金融、産業界に対処しない限り、問題を適切に解決できないところにきているにもかかわらず、そういう預貯金金利の引き下げによって、金融機関にまたもエクスキューズを与える、そういうことで本質的な解決ができない。さっき
大蔵大臣は、景気回復こそ円
対策だと言われるけれ
ども、私は、これ以上の景気回復などというものはそう多くを期待できないというのが
日本の現状ではないか、こういう認識に立っておるわけですが、これについてひとつ
大蔵大臣、企画庁長官から、私のいまの考え、まあこれについては、
かなりの金融機関の責任者たちはその点については同感のところが多いというふうに、昨日の話を聞いたわけでありますが、
皆さん方のお考えをひとつ承りたいと思います。
大蔵大臣からそれじゃひとつ……。