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1972-06-06 第68回国会 衆議院 大蔵委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月六日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       上村千一郎君    奥田 敬和君       木村武千代君    倉成  正君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       坊  秀男君    松本 十郎君       村田敬次郎君    毛利 松平君       森  美秀君    吉田 重延君       吉田  実君    阿部 助哉君       堀  昌雄君    山中 吾郎君       伏木 和雄君    寒川 喜一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      中橋敬次郎君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         日本国有鉄道常         務理事     原岡 幸吉君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四五号)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  通行税法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 齋藤邦吉

  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいま議題となりました通行税法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、別途日本国有鉄道運賃改定について御審議を願っておりますが、この際、通行税法についても所要調整を加えるため、この法律案を提出した次第であります。  現在、日本国有鉄道の旧二等寝台に相当するいわゆるB寝台については、一般乗客がこれを利用することから通行税非課税とするよう免税点を定めておりますが、今回の運賃改定によりB寝台料金改定されることとなりますので、この際、通行税非課税とすべき寝台料金の範囲の規定改正し、一般乗客が通常利用する寝台にかかる料金として政令で定めるものに対する通行税非課税とするほか、所要規定の整備をはかることとしております。  以上、通行税法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由とその内容の大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 通行税法の一部を改正する法律案質疑に入ります前に、関連した問題についてひとつお伺いをいたしたいと思うのですが、それは今日非常に問題になっております公共企業体賃金に関する仲裁裁定が去る五月二十七日に出たわけでありまして、御承知のように、この裁定は、公労法の十六条によりまして、予算資金支出することが不可能だという場合には政府拘束するものではない、その場合には、しかし国会にその旨承認を求めなければならない、こういう関係になっておるわけでありますが、いわゆる労働者春闘といわれるもので、民間労働者賃金もほとんどもう決定して、春闘もほぼ終わったという段階にきておるわけでありますが、ここでちょうどきょう六月六日は、公労法上で定められた十日の期限に該当する、予算資金上、はたして不可能と政府判断をし、拘束をされない立場をもって国会承認を求める期限一ぱいの日に当たるわけであります。  そこで、この問題について、国の財政を、また国の機関財政全般をあずかる大蔵大臣としてどのようにお考えになっておられるのか、まずその点からお伺いをいたしたいと思うわけであります。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 五月二十七日に提示されましたその仲裁裁定は、総額約千八百九十五億円の財源を必要とするものでございまして、各企業体経理内容からしてなかなか容易に実施し得るものではございませんが、慎重に検討しました結果、公労法三十五条の精神を尊重しまして、国鉄を除くほかは裁定通り実施することに本日いたしました。  それで、国鉄につきましては、御承知のように、本年度の運賃改定による増収額が千七百八十八億円織り込んでございます。この増収額は、収入総額の一兆四千三十五億円に比べて一二%以上にものぼる大きいウエートを占めておるものでございますので、この運賃法改正案が成立しないというときには、既定支出予算執行すら非常に困難となるおそれがあるということでございますので、したがいまして、この改正案が通らないときには、それに加えて七百五十二億円の財源を要する仲裁裁定実施するということは、これはもう予算上全くいまのところでは不可能と考えられます。したがいまして、現段階においては、この仲裁裁定実施が可能であるということは断定できませんので、公労法十六条に基づいて国会議決を求める手続をいたさざるを得ないという立場でございます。法によって十日間の期限がございますので、これがちょうど本日になりますので、ぎりぎり一ぱい本日中に国会に提出しないというと、政府は一応予算資金上可能であるというふうに考えたということになろうと思いますし、そう考えることは、いま御審議を願っておる国会審議が、これは最終的には通過するということを一応予想した態度ということになりますので、このほうが国会に対して問題でございますので、現状に即して、法案が通ってない現在においては、実情によってこの法どおり措置をする必要があると考えて、きょう手続国会にいたしておる次第でございます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 日本国有鉄道法の第二十八条には、「職員給与は、その職務の内容責任に応ずるものでなければならない。」、二項「職員給与は、生計費並びに国家公務員及び民間事業従事員における給与その他の条件を考慮して定めなければならない。」こういうようにあるわけですね。この日鉄法二十八条の二項に従って、いろいろな経緯を経ながら公労委における調停、そしてその調停をさらにオーソライズするための仲裁裁定、こういう段階に進んで、仲裁裁定が出されている。しかも、政府がきわめて簡単な割り切り方をして、仲裁裁定労使双方拘束するのだという公労法の三十五条の規定、こういうようなものに政府が独善的に、労使双方拘束してこれが最終的な労使紛争解決するものなんだというそういう労働法上の問題を、政府がこれを予算資金上かってに不可能である、こういう断定を下すのには、そして十六条に基づく措置をとるというのはきわめて慎重でなければならぬと思うわけであります。一体予算資金上不可能であるというからには、これはあらゆる操作をして不可能であるということがなければならぬわけですが、そういう点についてはまだ努力が足りない。公共企業体における労使関係最終段階において、いわゆる最終的な争議終結の場としての仲裁裁定というものはやはり最大限尊重されなければならない、そういう意識が非常に乏しいのではないか。さらに、いま大蔵大臣は、現在運賃法がまだ未成立である、こういうことを言っておられるわけであります。このことが理由だとするならば、竹下官房長官は、予算資金上できるかできないかということについて、運賃法との関係は一応論理的にはないのだ、こういう態度をとっておられるものと矛盾をするわけですね。これはやはり閣内における不統一議論でもあると思うのですが、その辺いかがでございますか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 その点閣内で不統一という問題はあり得ないと思っております。一応政府運賃値上げを前提として今年度の国鉄予算を編成しておるところでございまして、国鉄の今年度のいろんな事業は、千七百八十八億の運賃値上げを予想してつくられておるものでございますので、この法案が通らないというときには、現在既定支出予算執行すら国鉄は不可能になるということは現在明らかでございますので、したがって、そういう状態のときに裁定による七百五十二億円の支出というものは、これはもういろいろこれまでやりくりをし、移用流用の道を考えましても結論として不可能ということでございまして、これは運賃法が通らぬ限りは、いまのところ捻出の方法はないというふうに私ども考えております。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 公労法の三十五条は、「委員会——これは仲裁委員会でありますが、「委員会裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定実施されるように、できる限り努力しなければならない。ただし、公共企業体等予算上又は資金上、不可能な資金支出内容とする裁定については、第十六条の定めるところによる。」予算資金上不可能という、これはまあ当然政府判断ですけれども最大限努力しなければならぬということも要請されておる。しかも、それではどれだけ努力したのか、そしてその結果予算資金上どうしても不可能なんだ、こういう法構成のたてまえになっている。というのは、やはり公共企業体労働者から争議権を奪っておるというようなものとの引っかえに、それだけ政府にも義務を負わせて、公的機関による仲裁裁定というものに権威を持たせる、そういうことによって紛争をできるだけ平和裏解決させようということが公労法の趣旨になっておるわけです。これに対して非常に安易に、政府予算資金上不可能なんだ、こういうことが言われている。  この予算資金上という問題と運賃法が通っていないということとの間にどういう直接的な関係があるのか。労使問題として最高の平和調整機関として仲裁委員会公労委に設けられて、その最終決定としての権威を持った裁定を出されておる、そしてそれに対しては労使双方を最終的に拘束をするのだ、政府もこれを実施できるように最大限努力をしなければならぬ、こういうたてまえになっておる。しかし、予算資金——予算資金上なんです。予算はもうすでに通過をしておる。資金計画というようなものはかなりフレキシブルのあっていいものであります。そういうものもどういう理由予算資金上不可能であるという断定を下したのか、そしてまたそれに至るまでにどのような努力政府としてされたのか、この点が公労法三十五条とのからみにおいて当然問題にされなければならない。安易に予算資金上不可能だというようなことを出したのでは、いわゆる労使紛争がまた解決をされないというようなことに新しい紛争の種を政府みずからがつくり上げる、こういうようなことにもなりかねない問題点だろうと私は思うわけでありますが、政府がどれだけどういう形で検討努力をしたのか、予算資金上不可能であるという断定をした理由というものを、しっかり納得のできるように、理屈があれば述べてもらいたい。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 三十五条の精神を尊重しまして十分各企業体についての検討をいたしました。御承知のように、給与改善費の五%が各企業体予算に計上してございますので、これをまず使用する。それから経費移用流用予備費もこれを使用する。また弾力条項によって措置することも考えるということをやりますというと、何とか予算資金上、他の公共企業体仲裁裁定に従うことができるのではないかという一応の目鼻がつきましたが、問題はやはり国有林野事業とこの国鉄でございまして、林野事業についてはいろいろ困難な問題がございましたが、企業努力をもう一歩期待するというようなことによって何とかこれは裁定に従いたいということで最後にこの問題の目鼻をつけて、これは十六条の二項の規定に基づくこととしないということをきめましたが、国鉄につきましては、遺憾ながらさっき申しましたように、あらゆるやりくり考えましてもとても七百五十二億を全部捻出するということはいまの状態では不可能だという結論でございます。詳しいことは主計局のほうから数字はお話しいたします。
  13. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 御指摘がございましたとおり、公労法規定に基づきまして、国鉄財政が非常に窮迫している中ではございますが、ことし仲裁裁定ベースアップ額を何とか政府として実施いたしたいと、いろいろな検討を加えた次第でございます。先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、国鉄運賃法改正によりまして千七百八十八億、新規収入を見込んだわけでございます。国鉄の今回の裁定の結果のベースアップは七百五十二億でございます。それに対しましては予備費を使うとか、あるいは所要の五%の給与ベースアップのための財源、すでに計上してございますものを使うとか、いろいろやりくりいたしますと、ベースアップのための新規所要財源は百八十二億ほどになる、こういうような形になるわけでございます。  ただ国鉄再建計画につきましては、広瀬委員先刻御承知のとおり、膨大なる過去の赤字をかかえている。何とかこれを十カ年間のうちに健全なる国鉄経営再建しなければいけないというようなことで、国鉄財政再建計画を出している際でございまして、政府といたしましても昭和四十七年度には一千三十四億に及ぶ国鉄に対する出資とか工事費補助等増額を行なっているわけでございます。したがいまして、そのような状態のもとにおきまして千七百八十八億の歳入欠陥が生ずる。それと同時にベースアップのために百八十二億の新規財源を必要とするということになりますと、総額で二千億にも及ぶ財源やりくりしなければならないというようなことになるわけでございます。従来でございますと、工事費の中からいろいろそれに対する国庫補助を繰り延べたりして財源を調達したらどうかというような議論も成り立ち得るわけでございますが、この二千億という財源は何とも調達いたしかねる。工事費全体が国鉄といたしまして五千五百億でございますが、その四割弱に及ぶ財源工事費繰り延べ等によりまして調達するということは現段階におきましてはやはり可能であると断定することはできないという判断に立った次第でございます。
  14. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まあ数字をあげて事務的な考えを聞いたわけですけれども皆さんの場合に、やはり公共企業体における賃金をめぐる紛争、こういうようなものを労使問題としてとらえて、最終決定である仲裁裁定が出た場合にはこれを最大限に尊重して実施をするんだという、その労使関係における正常化を促し平和的な解決を促進するために設けられた公労法権威というものに対する感度というものは非常ににぶいのではないか、こういうように思うのです。  それで、いま吉瀬次長のお話を伺いますと、まあ給与改善費として五%は組んである、これがあります。おそらくこれは三百数十億になるだろう。さらに予備費が二百五十億組んであるはずであります。これなどもやはり五%しか組まないのですから一二、三%になる。給与改定ということが裁定で出されたという場合に、これは予想せざる事態なんだからこれを流用するということも当然であるというようなことになるわけです。そうすればまあ百八十二億くらい新規財源をどうしてもどこからか見つけなければならぬ、予備費流用あるいは給与改善費を充てる、それでもなお給与改定のために百八十二億くらいは不足をするということで、そしてそれをどこから持ってくるかということについては可能性を認められない、こういう論理でありまするけれども、これはいろんなやり方がある。  予算総則におきましてもあるいは日鉄法におきましても経費流用というものが認められておるわけであります。たとえば修繕費、これは減価償却分といってもうらはらのようなものであるけれども、そういうものを一時——これだって年間これだけの予算があるということに対して何も一番先に修繕費上半期なら上半期に現時点で全部使っちゃうわけじゃないのですから、これはもうずっと年間を通じて使っていくわけでありますから、あとでその分は補充だってできる。その間流用しておくというようなことだって、これは可能なわけであります。もちろん予算総則において給与総額というようなものに対してかなりきびしい制約、制限というものはあるけれども、この予算総則を見ましても道は開かれている。政府がやろうと思えばこの予算総則に従って処置はできる道は開かれているのだ。「給与総額等」というところを読んでみますと、前段は給与総額基準内給与幾ら基準外給与幾ら、そして合計が六千九百五十七億二千八百七十七万三千円と、こう千単位まできまっておるわけです。そして「予算の基礎となった給与準則実施するため必要を生じた場合、第十三条の規定により給与支出する場合又は給与に関する公共企業体等労働委員会裁定企業経営に及ぼす影響等を考慮した上で実施することが適当であると認められる場合において、運輸大臣大蔵大臣に協議して定めるところにより、運輸大臣の認可を受けて、経費使用若しくは流用予備費使用又は第十三条の規定による経費増額により、これらの額が変更されたときは、その変更された額とする。」ということで大蔵大臣決断をするならば、こういう道がちゃんと開かれておるわけでありますから、その点これがあるからということでは理屈にはならないわけですよ。したがって、大蔵大臣がやはり決断をして、あと補正なり是正なりできる、その間だけでも他からの流用、他費目からの流用ということを考えていけば、これはできない相談ではないはずであります。それを不可能だと断定するところに今日の国鉄における問題点がやはりあるんだろうと思うのです。  と申しますのは、国鉄再建再建だという、そしてそのために運賃値上げもやっていこうという、また国のほうでもようやくことしから、まあいままでからいえば確かに皆さん方大臣以下、主計局もかなり思い切った国鉄に対する財政支出あるいは投資、こういうようなものに踏み切られた、こういうことについては私どももそれはそれなりに評価はいたしておるわけですけれども、しかし何といっても国鉄再建をめざすという場合に、何としても重くのしかかっているものはやはり長期債務の問題であり、この利子圧迫という問題、そしてまたそれから派生をする固定資産の取得、そうすれば減価償却をさらに増大させなければならぬ、こういうような国鉄経理における最大の問題点、こういうようなものをもっとすっきり解消をしてやらなければ、大体再建への意欲がわいてこない。しかも給与の問題が、せっかく労使がかなり激しい対決をしながら平和的解決の道として仲裁裁定によって収拾された。それがまた政府によって予算資金上不可能という断定を安易に下されて、これすらだめなんだ、こういうことでは、再建意欲なんというのはまたわくはずのものでもない。そういう長期の展望に立って、ほんとうに再建の道を力強くたくましく発足させようというような場合に、この問題についてやはりその辺まで考えた配慮というものがあってしかるべきだ。そうだとするならば、予算資金上不可能だと——なるほど赤字が千八百億にものぼる、給与改定のための新規財源も百八十二億、合わせれば大体二千億をこえるかもしれないというようなことになるのだからこれはもうだめだ、こういうようにきめつけてしまわないで、現在通過をした予算の中で、将来運賃法とは切り離して補正も組まなければならぬというようなことにもなる。しかしながら、少なくとも日鉄法の二十八条の精神に従って、仲裁委員会が諸般の事情を考慮して労使紛争裁定という形で出したものに対して、これすらも実施しないということになったのでは、これはまたきわめて再建意欲もそぐ措置といわなければならない。皆さんもせっかくかなり金も出してきたと言うけれども、そういう出したものが、人間が意欲を持って再建に取り組むというようなものに結びつかない。これはやはり死に金のような形にもなりかねない。ここのところは、やはり金を出すついでに、もう一つこの問題についても大臣予算資金上不可能だというようなことを——あらゆる努力をしてやれないはずはない。そういう立場で、この苦しい中で大蔵大臣予算資金上不可能ということを、いままでの考えならば言ったかもしれないけれども、ここで予算資金上不可能というようなことで、十六条を援用して不可能ということによる手続などをとることをしないでやったということは、やはり国鉄労働者に対する新しい再建意欲を持たせることになるのではないか、そういうことを踏まえて私はもう一つ努力が足りないのじゃないか、このように思うわけですが、大臣、いかがでございますか。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 何かもう国会審議の先をきめてしまっているようにも承るのですが、そうじゃございませんで、もともと国鉄再建案というものは政府は取り組んでおる。その結果として運賃法案国会に出され、そうしてそれが一応通過するという場合には、この国会であらかじめきめていただいたこの予算執行が可能になるということで、すでに予算衆議院段階通過し、またこの運賃法案ももう衆議院段階議決を願っておるところで、いま参議院にこれが参っておるということで、いずれこの法案は私ども通過するということを期待しておることでございますが、現在はまだ通っておりませんので、いま、現在の段階においては予算上可能でないということははっきりしておりますので、もしそうだとすれば、法に従って十日以内にこのことを国会議決を求める措置をとっておかなければならないということでございますので、現在その措置をとっておるところでございまして、もしこれがかりに国会において議決が得られないとかいうような場合があったとすれば、これはどうするのか、いま私ども考えて不可能であるものを可能にする方法は何かということは、いずれこれはたとえば補正予算とかいろいろな形で国会の御審議を願わなければ処置のできない二段目の問題であると私は思います。  現在、私どもがこの再建案と取り組んでおるときに、この法案は通らないかもしれない、そのときに穴があくからあいたものはみんな借金でやればいいとかあるいは何とかというような、再建を今度は逆に妨げる案をもって可能だという結論を、私どもとして政府責任をもって出すわけにまいりませんし、この再建案予算執行しようとしますなら、この法案が通らないときには、いま次長説明しましたように二千億円以上のやりくりをしなければならないということになりますと、とても普通のことでこの国鉄会計の中で二千億円のやりくりができるというふうに私ども考えませんので、どう考えてもこれは予算資金上現在の段階では不可能ということは言えると思います。そうはっきりしておるということでしたら、一応こういう手続をとるということはもうやむを得ない措置であるというふうに考えております。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 現段階でやむを得ないのだ、こういうわけでありますが、現段階でもやりようによっては国鉄における給与問題というものの解決を、政府がその決意さえすればやれる可能性はある。たとえば先ほど百八十二億くらい新規財源をさがさなければならぬということでありますが、この問題についてもそういう手だってはあるじゃないか。あるいはまた短期の借り入れをやって一時しのいでおく。そしてまたこの予算が瑕疵なく実行できるという段階を迎えればそれでよし、もし運賃法が通らなければ、それはそれなり補正予算を組む、こういうようなことで、その問題を含めて処置はやはりできるはずだし、そこまでやるのが公労法における仲裁裁定権威を尊重していく道であり、安易に予算資金上不可能であるという断定を下す態度、これに私どもは非常に政府に対する不信の念を抱くわけだし、したがって労使紛争解決するという、それは最後まで賃金について仲裁裁定を実現をする、あらゆる努力をして実現をするということに対する熱意がやはり不足をしておる、こう見ざるを得ないわけです。  したがって、その辺のところの判断なんですね。財政的な予算資金上ということを優先させるか、労使紛争というものを、政府もあらゆる手段を講じて最終決定されている仲裁裁定を実現をした、そういうものを示すことによって再建への道を歩んでもらうのだ、歩む意欲を喚起していくのだ、こういうところに立つか、これこそがやはりいま一番大事な大臣としての決断のポイントであろうと思うわけでありますが、この労使問題をやはり円満に解決をしていく。そして解決というのは、要するに仲裁裁定がほかの公共企業体と同じように、三公社五現業同じようにみんな足並みをそろえて実施できる、そういう段階をつくる。そういうことについて政府がかなり無理をしてでも踏み切ったというようなことが、国鉄再建意欲にも結びついてくるのだ。それを困難なんだからということで、そのまま予算資金上不可能だというようにやって、あとはどうなるのだということについて、これはまた労使紛争が再燃をしてたいへんな事態にもなりかねない。一そう、日本のいまの景気浮揚をはかろうとしていろいろな施策も練っている段階において、かえってそういうものに水をかけていくことにもなりかねない。そういうことも踏まえて、労使問題としてもう少し仲裁裁定権威というものを優先させて認めていく。こういうようなところからこの景気浮揚の問題についても福祉への転換という問題をも含めて、ことしあたりは予算資金上不可能という断定をせずに、それは先に延ばして、いま当面やるべきすべての手を打ってこれをまず実施をする、そういう決断に立つのが私は正しい態度だと思うのですが、いかがでございますか。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 労使関係の円滑化をはかるために仲裁裁定には従うということを原則とすべきであって、法もそれを求めているところでございますが、しかしそうかといって、裁定予算上もし不可能というような場合にはこういうことをしなければならぬという一つ規定が置かれておるということは、こういうことがあり得る場合を予想したことでございますが、まさに国鉄の現在の場合はこれに該当するものと思っております。決して私どもは安易にこういう決定をしているわけではございませんで、千七百八十八億の増収を新予算の中で見積もっておりましても、すでに御承知のように、四月、五月が延期するということによりましてもう三百億円の狂いが国鉄予算の中にはいま現在見通されているところでございます。そういたしますと、さっき百八十億と言われましたが、それと、もし千七百八十八億が通過しなかった場合には二千億ということでございますが、もうその数字もいま違ってきておりまして、三百億のこの二カ月における予定の狂いというものをどうやりくりするかということになりますと、決して安易に考えているわけではございませんで、私どもは真剣に考え資金予算上、この問題だけは全く捻出不可能じゃないかという見当からいまのような結論が出たという事情でございます。
  18. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連。いまのお話で私わからないところが少しあるのです。いま主計局次長は、予算上としては百八十億だけ原資が足らない、こういう答弁がありました。具体的に過去にさかのぼって少しお伺いしたいのですが、私が当委員会でやかましく申し上げて、少なくとも五%分だけは給与費として計上されるように二年前からなったのですね。その前、五%の給与費を予算上計上しなかったときにはベースアップの原資というのはゼロだったわけです。ゼロであったときに、予算ベースアップによってその与えられておった予算から支出した額というのは、私は百八十億なんてものじゃなかったと思うのです。だから、四十三年、四年、五年の予算上の足らなかった額というのは一体幾らだったのか、ちょっと答えてくれませんか。
  19. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 四十三年が三百五十九億、四十四年が四百九十七億、四十五年が七百一億、これは補正で若干補正しております。四十六年が七百四十三億、こういうような状況でございます。
  20. 堀昌雄

    ○堀委員 四十五年の七百億というのは、五%の給与費が組まれていなかったときですね。大臣、そうすると七百億ものものが予算資金上使えない状態が明らかであったときに、仲裁裁定で、四十三年が三百五十何億、四十四年が四百九十何億、四十五年が七百何億ですか、これはみな仲裁裁定実施してきたわけですね。そしてことしは百八十億しか予算資金上不足がないのに、ことしは仲裁裁定というのは、ちょっとこの取り扱いはあまりにも政治的に過ぎるんじゃないですか。ちょっとこの百八十億という話とこの話、これは私は判断の問題だと思うのです。これを仲裁で実施をするか、あるいは十六条によって国会議決を経るかということは政府判断ですから、私はそれは別個だと思うけれども、ちょっといまの形でいくと、私が言う百八十億に見合うもので、おそらくそうだったと思います、ゼロだったのですからね。要するに予算ゼロで組んであったものを出しておったということは、当初組んだ予算というものは、私は当時三公社五現業について言えば全く正確を欠いた予算を組んでおったわけですね。そうしてその正確を欠いた予算を組んでおいて、給与費を、あるいは事業費とかまたあるいはその他の部分の削減によってつくり出すという、まことにふかしぎな予算編成をやっておった。だから今日五%を組むことになって予算というものはやや現実に近づいてきた。まだ現実に近づいていませんね。率直に言えば、大体のベースアップに見合う分だけを私は予備費で組むべきだと思います。そうしておけば、その他の款項目をきめたものがそのとおりに実施できるけれども、今日なおかつ百八十億国鉄の場合にはどこかから持ってこなければならぬ。ということは、事業費を削るか何かを削ることを想定した予算をつくるなんということは、私は国会権威に関すると思うのです。そういういいかげんな予算を出しておいて、なおかつ百八十億足らなかったら、そしてそれは今度の場合は国鉄予算が出ておるから公労法十六条だ、国鉄予算国鉄値上げが出ていないときには、これは仲裁裁定で処理をする。こういう首尾一貫しない態度というのは、私は公共企業体に対する職員賃金問題としては、まことに筋を通していない問題だと思いますが、どうですか。
  21. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 御指摘のとおり、四十五年には七百一億、こういうような財源調達をやっておるわけでございますが、七百一億の内訳を申し上げますと、予備費で百九十億円、それから経費流用で六十一億円、工事費の削減で四百五十億円、こういうような資金調達によりまして実施しておるわけでございます。  御指摘のとおり、給与改善費、これを五%以上組むべきであるという御議論があるのは、私ども十分承知しておるわけでございますが、ただ、今年度特異な事情は、やはり運賃改定、それと同時に政府の援助、それから国鉄企業努力というようなことを前提といたしまして、国鉄経営全体の収支を見越しているわけでございます。すでに大臣から先ほど御答弁申し上げましたとおり、二千億円、千八百億円の歳入欠陥、しかもそのうち三百億円はすでに審議期間の経過とともに千八百億円の増収が期待できないというような事態にもなっているわけでございます。従来の例でございますと、工事費を二百億とか三百億とかいうような削減は可能でございますが、やはり二千億、千八百億円にも及ぶ歳入欠陥が、現段階においてはまだ歳入が確保できるかどうか予想できない、こういう段階でございまして、その場合にその分に見合う工事費削減というのは、やはり国鉄の経営の実態から見まして、たとえば新幹線に対する投資とか交通運輸の安全のための維持修繕とか、そういうような種類の経費をこのように多額に落とすということも可能であるとは断定できないというような状況でございます。過去における一つの収支の予想体系と今年度における国鉄の収支の予想ということは、大幅に事情を異にしている、こう考えざるを得ないわけです。それから、これはもちろん堀先生御存じのことと思いますが、百八十二億と申しますが、そのうちには二百五十億の予備費のうち、災害等に予想される四十億を除いた二百十億というものも入れましての百八十二億でございまして、七百五十二億のうち給与改善費の三百六十億を除きますと、現在は百八十二億プラス二百十億、要するに四百億近いやり繰りをする、こういうことになるわけでございます。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いますが、国鉄がいま借り入れ金をしておりますね。借り入れ金の総額幾らですか。
  23. 小林正知

    ○小林説明員 お答えいたしますが、現在四十六年度末で申し上げますと、まだ決算は確定しておりませんが、借り入れ総額では約三兆八百億程度、それは政府管掌債務、それから一般国鉄自体で調達しています債務、両方含んでおります。長期借り入れ金の残高が三兆八百億でございます。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの三兆八百億ですか、これは政府のほうですか、このうち政府幾らですか。
  25. 小林正知

    ○小林説明員 政府管掌資金、たとえば資金運用部でございますとか簡易保険特別会計、そういったいわゆる政府管掌のほうから拝借をしております分が約一兆四千億でございます。民間のほうから国鉄で借りておりますものが残りでございます。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 民間から借りている問題は、これは国の内部の処理ではありませんから、私はここに手を触れることはできないと思うのですけれども、いまの一兆円に余る政府からの借り入れですね。要するに資金運用部あるいは簡保からの借り入れというものは、私はこれは操作のできる資金だと思うのです。国がその気になって考えれば操作のできる資金ではないか。この一兆円に対する利子は六分五厘だから、六百五十億ぐらい年間利子を払う。もうちょっとになるか、六百五十億見当じゃないですかね。政府関係に対する一年間の利子、幾らですか、ちょっと答えてください。
  27. 山口真弘

    ○山口政府委員 一兆四千億でございますから、それに対しましてかりに七%の利子ということにいたしますと、約一千億、六・五%でございますからそれより若干低くなっております。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、私は国鉄運賃値上げが通るか通らないかは別問題として、一応公共企業体等職員仲裁裁定が出た場合に、もしかりに国鉄運賃値上げが通らないと仲裁裁定実施できないとなると、よろしゅうございますか、どういう事態が起こるというふうに大蔵大臣考えていますか。三公社五現業の中の他のものは全部、よろしゅうございますか、全部公労委仲裁裁定が出て四月にさかのぼって給与は改善された。民間も全部春闘給与は改善をされてきておる。国家公務員もやがて人事院勧告が出て賃金は上がる。要するに国会運賃値上げが通らない。国会運賃値上げが通らないということは国民の意思ですね。国民の意思によっていまこの物価上昇の中で運賃値上げは適当でないという国民の判断が下されておる。その中で国鉄労働者だけは賃金が上がらない。どういう事態が起こると考えておられるのか、大蔵大臣お答えいただきたい。
  29. 水田三喜男

    水田国務大臣 一般と同じベースアップを確保しなければならぬということから、国鉄全体の再建策がやはり立てられておることでございますので、それによって運賃値上げの問題も出ておることでございますし、政府の助成も考えられているということでございますので、私どもとしましては、もうそれはある程度前提でございます以上、運賃値上げはこれはできるものといまのところは期待しておりますが、これができないということになりますというと、この国鉄職員だけ一般公共企業体職員と別にしていいかどうかということは問題になろう。当然問題になると思いますし、それはどう解決したらいいかということになりますと、これは国会で一たんきめた予算執行が不可能になることでございますから、それと関連して、やはり国会によって予算補正なりいろんなものを処置してもらわなければできないという事態に立ち至るだろうと思いますが、そういうことにならぬように私どもは……
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 論理が合わないのじゃないですか。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、それを前提としておることですから、それができなかったら、国鉄既定予算そのもの自身の執行が不可能でございますので、これは国会がまたこの問題をどう処置をするかは別に考えていただかなければならない問題だろうと思います。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣はできるものと期待をしておる、こう言っておられますね。あなたのいまの答弁は、おそらく運賃値上げが通って、そうして値上げができるものと期待をしておるがという、こういうことでありますけれども、しかし実際に値上げ法案が通らない、値上げ法案が通らないことで、ずっとこのままいくとすれば紛争が起きますね。そうなるでしょう。あなたのほうは値上げ法案が通らなければ仲裁を実施しない。御承知のように国会は終わってしまうわけですからね。公労法第十六条は「公共企業体等予算上又は資金上、不可能な資金支出内容とするいかなる協定も、政府拘束するものではない。又国会によって所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」「前項の協定をしたときは、政府は、その締結後十日以内に、事由を附しこれを国会に付議して、その承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中のときは、国会召集後五日以内に付議しなければならない。国会による承認があったときは、この協定は、それに記載された日附にさかのぼって効力を発生するものとする。」  この国会は十六日までしかないわけですね。よろしゅうございますか、十六日までしかない。そこで国鉄運賃値上げができなかった。よろしいですね、そうしたらこの国会ではあとの処理はできませんよ。当然運賃値上げができなかったという事態では賃上げはできないということになります。国鉄については、次の国会で何らかの所定の処置が講じられるまではベースアップできませんね。そういう状態で一体日本の国鉄労働者がどういう反応をするかということは、大蔵大臣どういうふうに見ていられますか。静かに黙って自分たちの賃金が上がる次の国会まで待っておる、こう考えられますか。どういう不測の事態が日本の交通機関の中で起こるかということは、あなたはもう御存じであろう。そのときに国民がどういう反応をするか。すべての者が賃金が引き上げられておるにもかかわらず、国鉄だけが運賃値上げができないからといって、給与が引き上げられないということについては、国民の支持は国鉄労働者にくると私は思いますね。今日の国鉄がこうなった原因というのは、労働者が働かなかったから国鉄がこうなったんじゃないでしょう。今日こうなったのは、私どもがこれまでも指摘をしておるけれども国鉄に対しての投資が不十分であって、そうして政治的な諸般の拘束国鉄拘束をしておるために、企業としての本来の活動が拘束をされて今日こうなったんじゃないですか。言うなれば、あげて国の責任なのです。国の責任国鉄をこういう状態に追い込んで、国鉄労働者が一生懸命日々国民の安全な輸送のために努力をしてきて、あげくの果てに国民の負担で運賃を上げようということに対して、国会がそれを反対で通さなかった。国民全体は喜ぶでしょう、この物価上昇の中で運賃が上がらないというのはたいへんけっこうだと国民は喜ぶ。国民の喜ぶことをした結果、国鉄労働者賃金が引き上げられない、各種ストライキが起こるでしょう。国民はあげて国鉄労働者を支持して、政府のやり方がひどいということに私はなると思うのですね。そういう、政府があらゆる角度から非難を受けることをあなたは承知で、こういう取り扱いをするのですか。  私が言っているのは、物理的に十六日で国会は終わるのでしょう。この国会は、御承知のように通常国会ですから、会期の延長は一回しかできません。そう簡単にすぐ臨時国会なんというわけにいきませんよ、おたくのほうのいろいろな事情があるわけですから。だからそうなれば、この問題は非常に重要な問題で、私は、広瀬委員も指摘しておられるように、賃金問題は賃金問題として片をつける、政治的な問題は政治的な問題で処理をする、ここらは筋を分けてやらないと、賃金問題をてこにして法案を通そうなどというような考えをやめてもらわなければいかぬと思うのですよ。全くけちなやり方だ。私は、おそらくあなたがこれに賛成したのだろうと思うけれども、こんなもの賛成したら、水田内閣なんてできやせぬですよ。あなたは水田内閣をつくるつもりで水田派のリーダーになったんだろうと思うけれども、もう少しやはり政治的な判断というものは国民の考え方に沿った方向で処理をするということにならなければ、私は国民から総スカンを食うと思うのです。どうですかね、大蔵大臣
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 賃金と経営はおそらく無関係ではないと思います。そういう賃金が可能であるために国鉄再建策がいま練られておることでございますので、その一環としての法案通過しないということは、この再建策を練り直す以外に方法がないというところへ追い詰められることだろうと思います。したがって、そういう事態が来たら、この再建策は、これはもう事実上できないことでございますから、この練り直し、それに伴って国鉄職員の労賃が確保されるような再建策が立てられるべきであるということになろうと思いますので、そういう事態には、これは政府がかってにやれる仕事ではございませんで、また国会をわずらわしてこれはいろいろ御相談をしていただかなければならぬ問題になるということでございます。そういう重要な問題であることは間違いございませんが、さっき申しましたように、いま衆議院通過して、そうして法案が参議院に行っているときでございますので、そこで、この先を見通してどうこうという細工をいまするときではございませんし、ことしの予算できめた既定予算があるのに、かってに国鉄工事費を切ってそれを賃金にして、ここで解決するというような性質のものではございませんし、現段階で可能か不可能かという問題で、現段階で不可能であるとするならば、それは国会に対して不可能であるということの議決を求める行為を国がしなければならぬという法律上の要請がございますので、それに従った措置をとるというだけのことでございまして、私どもはこの国鉄再建策が、これがつぶれないで、いま考えておるような、すでに衆議院でもお認めいただいたことでございますから、これは通過することをいま期待しておるということでございます。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 国会のことですから、政府は期待されるのは自由ですよ。政府は期待されるのは自由ですけれども国会を通るか通らないかは、特に現在の段階では参議院における議院の判断による問題でしょう。そうしたら、少なくとも政府はこれだけの重要なものをやるときには、通らない場合のことも考えているんじゃないですかね。そうでしょう、通らない場合。通るのだという前提じゃないのでしょう。あなたもここでできるものと期待しておる、こう言っている。必ずしも通るか通らないか、やってみないとわからない。  私が言っているのは、通らなかったときは一体どうするのかと言っておる。通らなかったら、次の国会で、あなたがいま言ったように、国鉄予算をつくり直して、要するに、工事その他の計画を全部やり直して、そこで給与費がそれだけ組めるように、もう一ぺん給与費をちゃんとして、それから賃上げをする、こういうことですね。次の国会というのはいつになるかわからないけれども、だから少なくとも一カ月か二カ月かは国鉄労働者賃金は上がらないということをあなたは考えて取り扱いをきめたのでしょう。違いますか。通るか通らないか、それは参議院のやることだからわからないでしょう。だから私は通らなかった場合のことを聞いているのですよ。通らなかったときに国民がどういう影響を受けるのか、そのこともあなたは含んでこういう取り扱いをきめたのですか、こう聞いているのです。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 期待はしておりますが、これは通るか通らないかわからない問題でございます。したがって、これを通るときめてかかって、通れば予算上可能であるという立場に立って、この十六条に従わないで政府がここで何らの行動もとらないということは、むしろ国会審議政府はかってに予測するということになりますので、これは政府としてやるべきことではございません。現段階において、これが通過していない限りは、一応不可能として、そうして法に基づいた措置をとるということが当然でございまして、それ以外のことをいまの段階政府がいろいろすべき問題じゃないと思います。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。そうすると、通らないというほうへ比重をかけて十六条を運用したということですね、通るというほうに比重がかかっておるのなら、これは必要はないのだから、通らないというほうに対して比重をかけた、国鉄の大混乱を予想してやった、こうなるわけですね。そうなるんでしょう、実際は。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうはなりません。もし余裕があったんでしたら、まだこの国会議決を求めることは期日を延ばしてもいいのでございますが、法律によって裁定が下されてから十日以内ということになりますので、きょうが最後の日でございますので、余裕がありません。したがって、きょう現在において通過していない場合にはこれは不可能ということで、本日出さなければいけないということでございまして、余裕があるのでしたら、何もきょう出さなくてもいいという問題であろうと思います。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。そうすると、いまの仲裁後の実施期間がきょうだから、それをしたのであって、もし法律が通らなかった場合でも、会期中に処理することはあり得る、こういうことになるわけですね。
  39. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 これは先般の国鉄の経営再建計画の一環として、法律が通らないという見込みができたときに判断いたしたい、こう思っておるわけでございます。したがいまして、国鉄再建計画、それに伴う国鉄運賃値上げ法案、この審議とからんで、国会がどのような承認に対しての意思表示をされるかどうか、これをまさに十六条二項によりまして私ども求めておるわけでございます。これについての国会の御判断を待つということになるわけでございます。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、要するに、政府はここで手を引くけれども、もし国鉄法案が通らないときも、国会の意思によって賃上げをすることはあり得る、他の公社並みに処理することはあり得るということだということですね、そういうふうに政府考えて取り扱いをきめたということですね。
  41. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 十六条二項の手続は、まさにそうでございます。ただ、蛇足になりますが、国鉄再建計画が基本的に練り直さなければならない段階において、そのような資金の相当窮迫した段階において、ベースアップを行ない得るかどうかという国会の御判断を待つわけでございます。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 国会のことは皆さんに聞く必要はありません。これは国会自体が考えることですからけっこうですが、政府はそういうエクスキューズも含めて処理をしたということですね。私がちょっとここでひっかかったのは、私どもは、いろいろな政策なり行政の問題を処理するときには、かりに最悪の場合についての一応の配慮もなしにいいかげんにやってもらったのでは、国民はたいへん迷惑をするので、その点はどうかということを明らかにしておかないと、過去の例から見て、さっきの百八十億という問題はそれほど大きな問題ではない、判断の問題だ。だから、あなた方がともかく国鉄の賃上げはしなくてもいいのだ、混乱が起きようとどうしようとどうでもいいのだということでは、これは政治の姿勢としてはたいへんおかしい、こう私は考えたから、やはりそういうことのないように処理をされることが望ましい。しかし、それは政府としては自分たちが出しておる法案通過をすることを期待するのは当然のことですから、その限りにおいてはわかるけれども通過しなかった場合においても政府はどうでもいいのだということは重大な問題だと思ったものですから、その際にも、やはり賃上げについては政府は、これは国会の意思であるけれども、賃上げについてはできるだけ望ましい姿がとられることを期待する、こういうことになるのであって、それはいろいろな法律手続上の問題ということに関してのみこの十六条の適用があるというなら、もっと議論は別の段階になる。政府のかまえとして、いま私が言ったように、賃上げはやはり三公社五現業が一律に行なわれることが望ましい、こういう立場に立って、ただ法律技術の手続上の問題だけの処理としての考え方をするというならわかるけれども、どうもわれわれは、これをてこにして国鉄法を成立させようなどという下心があるかのように感じられるものだから、そういうやり方は適当でない、こういうことを申し上げておる次第でありまして、以上で私の質問を終わります。
  43. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま関連質問でいろいろ議論がありましたけれども国会手続をとられる、承認を求める、国会がこれを承認をすれば、これはまたこれなりに問題は十六条二項後段で処置ができるわけでありますが、国会でこの承認が得られなかったということになれば、賃金問題は依然として今度は解決されないで、紛争が再燃するということにならざるを得ないわけです。そうなった場合の混乱というものをどう予想しておられるのか。このことについては先ほどの関連質問で堀委員からも出されたけれども大蔵大臣は何も答えられていない。その点はどうなんでしょうか。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申し上げましたように、そういう事態になれば再建計画の練り直しをやって、紛争解決するような方途をとらざるを得なくなるだろうと思います。
  45. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうしますと、きょうの段階仲裁裁定国会承認を求めるということに手続がとられる、そしてこれがずっと審議はされても承認結論に至らないということになって、十六日が終わってしまう、こういうことになると、その間は、三十五条によって政府予算資金上出すことが困難だと判断をしておるわけですから、したがって、何らの支出もこの協定実施のためには国鉄側もとり得ない、政府もとり得ない、こういうことになっていくわけですね。そうしますと、この間にたいへんな事態も起きる、こういうことも当然に予想されるわけです。しかも、国民の側からすれば、先ほども委員から指摘したように、運賃値上げができなければ国民はたいへんよろこんでおるわけです。そしてそのあおりを食って、今度は国鉄労働者だけがひどい目にあうのだ、賃上げも実施されないでひとり取り残されるのだ、こういうことになったら、まさにこれは大きな政治問題でもあるし、社会問題にも発展するような大きな紛争が再燃する、こういう事態、これはやむを得ない、そのときには再建計画を練り直す、こういうことだけれども、いまこの手続をとる前に、もう一つ私は、そういうような事態というものを避けるために、先ほどの修繕費を削ってそこから出すとかなんとかというようなことについてもかなり問題があるだろう、そういう場合には、やはり借り入れ金の限度額等についても予算総則の十二条にちゃんと定められて、千八百億まで短期の借り入れだってできる。そういう再建計画というようなものの練り直しなりあるいは補正予算なり、こういうようなものでそのあと始末はつけるにしても、そういうもので一たん仲裁裁定権威を尊重して実施をして、手当てをそういう——たとえば借り入れ金の限度額もきまっておるのですから、また、そんな借り入れ金の限度に至るような借り入れは、現に国鉄は新年度においてやっているはずはないわけです。したがって、そういうようなもので一時この手当てをしておいて、補正予算なり再建計画の練り直しというようなことを当然やってしかるべきだ。それがやはり正しい政治姿勢のあり方ではないか。私はその点に焦点を合わして先ほどから質問をしているわけです。  したがって、政府がいわゆる予算資金上不可能であるという結論を出して、国会にこれを持ち込んでしまうという前に、こういう決断をすればそれだって処置ができないはずではないのだ。それほどやはり重大な問題であるし、あと、これを否定したあるいはそういう形で予算資金上不可能という結論を出して国会に持ってきたという段階になると、もう政府としても再建計画を練り直しますといったところで、それは何の結論にもなっていないのです。それでは、取り残された、裁定を受けながらそして拘束をされてそれに従うのだという立場にある国鉄労働者にとって、再建計画の練り直しということでどうするのだということが何もそこから出てこないじゃないですか。そういうことをする前に、やはり決断を下して、あらゆる方法、先ほどは修繕費というようなことも言ったけれども、これは予算権威にかかわるというならば借り入れ金で一時手当てをしておく、そしてそのあと再建計画の練り直しもやりましょうしあるいは補正予算ということに期待をしてその段階で始末をつける、こういうようなことをやるのが労使紛争を円満に解決するという公労法の平和的条項としての諸般の規定にこたえる道である、公労法制定の本旨に従う政府のあるべき正しい判断であり、態度であると思うのですが、そういう気持ちは全くありませんか。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、言われる御趣旨は一応わかるような気がしますが、ずいぶん無理な話だと思います。政府はいま国会議決を得てきめられた予算がございます。その予算政府が無視して、まだ法案国会にかかっておって最終判決が下っていないときに、国会できめていただいた予算政府側からかってに借金をしたりいろいろなことをして、予算上できないもののさいくをいまの段階政府について出せということは、私、ずいぶん国会としては政府に対して無理な注文だと思います。現状においては明らかにこれができないことでございますし、予算執行もあぶないということを非常に心配しているときに、予算をかってに動かしてこうすればできるのじゃないかというものを、いまの段階政府にこれを求めるということは、政府立場としてそういうことをやりましょうということは、私、どうしても承服できません。
  47. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣決断をしさえすればできないことはないと思うのですよ。予算はある。予算はもうとにかく両院を通過して成立しておるわけです。それで、その予算と関連をする法案が通ってない、こういうことでしょう。とにかく予算は成立している。この予算総則も、これはもう有効に成立をしているわけです。そういうようなものだって活用し得る段階があってもいいじゃないですか。そうでなければ予算関連法は必ずその年に通らなければもう何もできないんだ、こういうことになるじゃありませんか。そういう一般的な問題と、この労使関係の問題を円満に解決していくという問題はやはりこれもまた違うだろう。したがって、そういう面での新しい時代にふさわしい決断というものは当然政府にあってちっともおかしくない。あと補正予算というようなことだってこれは当然できるのですから、そういう道も何にもないんだと言うならば不可能と最終的に断定してもいたし方ないかもしれないけれども、そういうことが予算としてはもう成立をし、予算総則を含めて全体的にもう有効なものとして働いているわけでありますから、関連法であるこの運賃法が通らぬということで何ものもできないのだということは、いかにもこの問題をてこにして運賃法の成立をはかろうという政治的意図以外にはないんだ、そういうことにならざるを得ないと思うのですが、もう一ぺんひとつ……。
  48. 山口真弘

    ○山口政府委員 仲裁裁定につきましては、これを最大限に尊重をしなければならないということは先生御説のとおりでございます。また、これの実施のために各般の規定が整備をされております。たとえば先ほど御指摘のございましたような流用規定等があるわけでございますが、ただこれらの問題につきましては、流用規定につきましても、先ほど先生御指摘がございましたように、これは企業運営に及ぼす影響等を十分に考慮して流用することができるというように予算総則にも明示されております。  そこで、現実の事態を考えてみますと、今回の運賃改定の千七百八十八億円というものを含めた予算の姿というものがわずか五百数十億の黒字というにすぎないわけでございまして、かりにこれがないというなれば、ベースアップをしない段階におきましてすでに千二百億円の償却前の赤字が生ずるというような段階でございます。したがいまして、そういう実態におきましてさらに七百五十億ものベースアップをするということになりますと、当然予算上これが可能であるということが断定できないわけでございまして、そういうような事態につきましては、そういう国家的な事業であるところの国鉄の運営というものと労働者の利益の保護という面との調和をはかる意味におきまして公労法十六条の規定があるわけでございますから、したがいまして、その法律に従いまして国会に提出をし国会の御審議を仰ぐという趣旨でございます。
  49. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣予算は通っているけれども、関連の運賃法が通らない、その運賃法で予定した千八百億、千七百八十八億ですか、これが予算に組み込まれておるのだから現状ではだめだ、予算資金上不可能だという見解を改めない、こういうことを言っているわけでありますが、われわれは、政府決断をしてやはり賃金問題は賃金問題として、国鉄だけ積み残しにして置き去りにしてほかは実施する、こういう措置について政府決断を促しておるわけですが、やはり予算との関係においてできない、予算資金上不可能だという結論を変えない、こういうかたくなな態度を堅持しておるのだけれども、私はその点については政府がそういうかたくなな態度を固執しないでやり得る道はあり得る、政府決断幾らでもやり得るのだということは当然あってしかるべきだということを主張して、これはなかなかかみ合わない議論でどこまでいっても並行線のようだからきょうはその問題はやめます。  ところで、一体こういうような事態に国鉄が今日おちいっているという問題について、衆議院の運輸委員会の連合審査の際にも私、質問したのですが、何といっても一番大きな問題は今年度を基点として五十六年度までに新十カ年計画で一兆円政府が投資をしましょうということになった。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 これを政府が十年前にこれだけの決断をしておったら今日のような国鉄の事態にはならなかったろう、そういう点ではまさに政府自身に問題がある。国鉄自体としては昭和三十二年の第一次五カ年計画から四十六年度に至るまで四兆二百七十億の投資をしているわけですよ。これも運賃収入の中から、労働者が働き出した中からやってきた、しかしとうていそれでは足りないので、すべてこれ借金にたよってきた、九九%まで長期の借り入れをもってこういう投資をやってきたというところに今日利子の負担、そしてまたその投資に見合った減価償却がどんどんふえてくる、こういう事態の中で今日の国鉄経営赤字というものが出ている、こういうように見られるわけです。まさに国の投資不足、こういうことがいわれるわけであります。  一体公共投資というのは何なんだ、道路、港湾など、あるいは空港整備なり、こういうようなものは公共投資であるが、国鉄に投資をして国鉄の新幹線をつくる、こういうようなものは一体公共投資じゃないのかということすら疑問になってくる。公共企業体なんだからそれは自前でやるのだ、これだけで済む問題じゃないだろうと思う。その証拠に、いまやそういうことは誤りであった、もはやにっちもさっちもいかぬところまで国鉄の経営を追い込んでしまった、だから国もようやく目ざめて、目を開いて、これからそれじゃ一兆円出そうという。ところがこの新十カ年計画——四十四年に始まって五十三年を最終年度とした再建十カ年計画では三兆七千億の投資予定額である。ところが今度の新十カ年計画、なるほど一兆円政府が出しましょう、投資をしましょうということになった。ところが今度は総投資額は三兆七千億から七兆円に膨張する。そうしたら、ことしも運賃値上げをやります、また四十九年にもやります、五十三年にもやりますというようなことでやっていって、それで一体これだけの投資量が、一兆円ふやしたんだからいいだろうというけれども、そのかわり今度は国鉄の投資額も当初の予定から見て三兆三千億もふえているのですから、その三兆三千億ふえた分の一兆円であって、二兆三千億というのはこれはやはり投資が絶対的にふえる、借金もまたふえる、こういうことにならざるを得ないわけです。こういう問題について政府責任というものを大蔵大臣はお考えになりませんか。
  50. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 あるいは運輸当局から別に御答弁申し上げるかもわかりませんが、全体として七兆の投資、それに対しまして政府の出資といたしましては十年間一兆ということでございますが、そのほかに再建債の発行による負債のたな上げ、工事費の補助金等、総合的な施策を講じているわけでございます。もちろんその間に運賃値上げは何回かを予定いたしますが、そのような現在の計画によりますと、十カ年後には国鉄財政再建、償却後の黒字も単年度に発生するという状況も予想されるわけでございまして、国鉄自体の企業努力と相まちまして利用者にも応分の負担を願うという骨組みをもって現在の再建計画が成り立っているわけでございます。
  51. 山口真弘

    ○山口政府委員 ただいま先生御指摘のように、今回の再建計画におきましては十年間で七兆円の投資をするということでございますが、この七兆円の投資というのは国民が必要とするような、あるいは大都市間におきまするところの旅客輸送であるとか、あるいは通勤通学の輸送だとか、あるいは中長距離の貨物輸送だとか、その他の国民の必要とするところの設備投資というものをこれはどうしても推進しなければいけないという前提に立ちまして七兆円の投資を考えておるわけでございます。そうしてその七兆円の投資をする場合におきましては、先生御指摘のように、当然利子負担等がかかるわけでございますから、これに対しましては、ただいま大蔵省から御答弁申し上げましたように、一兆円の政府出資というものをてこといたしまして、さらに工事費補助金といたしまして工事費に対しまするところの大幅な利子補給というようなものもいたす。さらにこれに対しまして、過去の債務の負担が国鉄経営を非常に圧迫しているという事態にかんがみまして、四十六年度末の政府管掌債務並びに四十六年度末の政府保証にかかわる鉄道再建にかかわる債務というものにつきましての利子というものを全額再建債という形で資金運用部資金から貸し付けをいたしまして、そうしてこの孫利子につきましては全額これを国庫が補助をするようなことにいたしまして、そうして過去債務に対する負担を軽減するという仕組みでもって国鉄再建をしようというのが今回の再建計画の基本的な考え方でございます。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういうことはわれわれもわかっているんだけれども大蔵大臣に聞きたいのは、道路投資というようなものは、今日計画が発表されるたびに、十兆円であるとか十五兆円であるとか、これは全額国が出しておるわけです。その結果、今日ではえたいの知れない光化学スモッグというようなものなんかが排気ガスによってああいう公害を引き起こしている。国鉄には公害は公害でも、黄害というようなものが一部にはあるようだけれども、いわゆる庶民大衆に対して無差別の被害を及ぼすようなポリューションというものは別に出していない。そういうところに対しては国は一切投資しないで、国鉄に借金でまかなわしておって、公害を発生することがわかり切っているその道路ばかりふやして、自動車をふやして、公害をどんどん生み出すために、公共投資という名のもとにそういうところには惜しげもなく金を出している。国鉄に対してはようやくことしから六百十六億を起点にして五十六年度までに逐次ふやしながら九千八百五十億ですか、これだけ出そうという。十年間で一兆円に満たないわけだ。  こういう問題に対して、これはもう考え方の根本をやはり大蔵大臣にも改めてもらわなければならない。これは大蔵大臣、とにかくそこまで気がついて、新たに公共投資としてそういう投資をやろうということ、これはやはりあなたはまさに先見を持った政治家としての一つの誇るべき点であろうと思うけれども、いかにもこれがみみっちいのだね。そのほかにも再建補助金であるとか利子補給だとかいろいろある。そういうようなものを含めればほかにも一兆円近くいくだろう、いま運輸省から説明されたのはこういうようなことのようでありますが、そういうことではしかし、これからの国鉄のあるべき姿——最近ヨーロッパあたりでも、自動車を抑制してレールによる鉄道輸送というものを公害の見地から、国民の最終的な福祉が、どちらがほんとうの福祉なのかというようなことの原点に返って鉄道の役割りをもう一ぺん見直そうというようなことももう出てきておる。そういう段階において、道路や港湾やあるいは空港整備というようなもの以上に、少なくともそれと同じレベルで国の責任というものも、国鉄に対する投資の面で考えていくという問題意識が、もう一度原点に返って考え直さなければならないだろう、こういうように思うわけです。この点は大蔵大臣、そういう方向に一歩でも二歩でもこれから着実に進めていく気持ちがあるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 今回の再建案もそういうような方針に基づいてつくられた案であるというふうに考えています。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これからも……。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 この再建計画で大体十年間政府の助成すべきものも一応きまっておりますので、これを忠実にやっていくということとあわせて、国鉄の企業の合理化ということによっていきますならば、私はこの赤字財政が立て直せる、いまの計画で立て直せるというふうに思っております。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その間にも少なくとも三回の運賃値上げを予定している、こういうことが前提になっているのです。これはやはり国民に犠牲を負わせる。受益者負担だ、利用者負担だという言いのがれもあるでありましょうけれども、国民に負担をさしていく、犠牲を負わしていくという形の中では、国鉄再建というものがそういうものを予定して、それを組み込んでの再建計画になっているという点についてやはり大きな問題点がある、こういうように思うわけです。したがって、そういうものをできるだけ少なくして、やはり国鉄に対する投資というものも、これは道路と同じように政府が、全面的にとはいわぬけれども、少なくともいまの倍以上の投資を国鉄に金をつぎ込んでいく、投資を強化する、こういうような姿勢がなければ、国鉄の健全な、ほんとうに国民の要望にこたえた形の理想的な再建というものはできない。常にこういう運賃値上げというものを予定するのですから、そのたびに国民的なものすごい抵抗にあうというような形がとられなければならぬわけです。そういう点はやはり国が公共投資というような観点を強めて、国鉄に対する投資をそういう角度から考え直していくという、このことを強く求めておきます。  それからもう一つ赤字の原因として、旅客の面ではむしろ黒が出ておる、それを貨物の面で大きく赤字を出している、こういうような点が問題だ。その中で、これは国鉄に聞きたいのだけれども、総原価主義というようなことで客貨別の原価というようなものの算定をやめちまった、こういう問題がある。これは国民の前から、一体どこに赤字の張本人があるのだ、元凶があるのだということを知らせないための政治的配慮としか思えない。やはりあからさまにどこにその赤字の原因があるのだということを、総原価主義をとるならとってもいいけれども、その内訳として貨物はこうだ、旅客はこうだということを対外的にもちゃんと正直に発表しておかなければいかぬと思う。そこで今度の運賃法案におきましても、いかにも弱い者いじめ、国民いじめで、大企業にはそのかわり奉仕する。今日までの貨物運賃がそういう形で赤字が累積してどうにもならぬところにきている。これもやはり大企業の原材料あるいは国民のための生活必需物資の輸送というような点もその問題は適用されておったけれども、主として大企業の必要とする物資に対するきわめて低廉なコスト割れの運賃制度をとって大企業に奉仕してきた。そのことがやはり今回の運賃法改定なんかでも改められないばかりか、より一そう強められたというようなことになりますので、まさに国民不在の運賃値上げ法案を出している、こういうように言わなければならないわけであります。  たとえばリンゴ一箱東京から名古屋に送った。いままで百八十円で送れたのが百二十円値上がりして三百円になる。六六・七%だ。東京−大阪間は二百五十円が四百円になって百五十円の値上がり、六〇%のアップだ。こういうことになっておるわけです。しかも、零細企業が商取引で仕入れをするというようなものを、いわゆる小口扱いを廃止して手小荷物制度にしてしまって、そして五十キロまで単位にして、五十キロ以下は全部同じだ。三十キロくらいの包みで間に合ったものも五十キロ見合いの運賃を取られるというようなことになるということで、小零細企業などに対してもきわめて不合理なことになっておる。それでいながら、たとえば自動車輸送というような問題なんかにつきましては大企業は非常に優遇された形をとっておる。貨車輸送になりますから、実重量が四トンのものでも九トンくらいに換算をされて運賃計算の基礎になってくる。こういう点でも小さな品物を一車貨し切りで動かす小零細の荷主にとっては、これはまさにたいへんな不合理になっているわけです。一般の国民が自動車一台貨車で送るということになると、東京から仙台まで貨車を借り切って送るということになりますと、一万七千二百十円につく。これが日産とかトヨタとか、こういうようなところで八台専門の車運車にのっけて送りますと、一台当たりは四千七百円にしかつかない、こういうことになる。しかも、年間の契約を通じてどれだけの数量を国鉄に頼んでくれたら二十何%も割引をしますよ、こういうような御丁寧な条項まで入っている。そうしますと、そういう面では今度の運賃値上げというのはほとんど響かない。これは、収入がなくて値上げをするのだといいながら、そういう大企業と、中小企業あるいは国民消費者大衆、そういうようなものの需要に対してはまことに冷たい措置をとっている。ここらのところは一体国鉄側でも貨物運賃の問題についてどういう考え——まさに国民不在の運賃値上げじゃないか。貨物輸送における大企業優先、そしてそのために大赤字を生んでこういう状態になっている。そういうようなことからして、今度の運賃法改正においてすらそういうことをあえて強化をして、その格差、不平等というものを拡大している。この感覚は一体国鉄はどういうふうに説明されるのですか。
  57. 山口真弘

    ○山口政府委員 具体的な少量物品貨物並びに具体的な貨物の車扱いの運用の実際につきましては後ほど国鉄から申し上げますが、全般的な問題といたしまして、まず第一番に、先生御指摘のように、客貨別の営業係数についてでございますが、これは現在確かに御説のように、対外的には発表いたしておりません。これは実は客貨別の営業係数の把握のしかたというのが非常にむずかしい各種の会計上の問題を含んでおります。これは一つは、国鉄の線路の上を旅客も貨物も通る、あるいは駅も共用するというような場合がありまして、非常に共通費の全経費の中に占める割合が大きいというようなこともございまして、したがって、それを客貨別の営業係数という形で発表するということは適当ではないということで、現在発表していないわけでございます。ただ、これはもちろん経営上そういう数値を把握する必要がございますので、国鉄部内ではその計算をいたしております。それで、先生御指摘のように、この点につきましては、貨物が非常に営業係数は悪いわけでございまして、たとえば四十五年度をとってみますと、旅客におきましては営業係数が九四、そのうちで特に新幹線は四四というような非常にいい成績をおさめておりますが、貨物は一七三というような状況でございまして、貨物の営業係数が悪いということは事実でございます。  ただ、それではその貨物の営業係数が悪いということで国鉄の貨物の運賃をどうするかという問題をいろいろ考えてみますと、一体貨物がこのように現在営業係数が悪いにもかかわりませず、また貨物輸送があまり伸びていないという実態がございます。この実態をよく考えてみますと、これは貨物運賃の水準が高いとか低いとかいう問題よりも、むしろ国鉄の貨物輸送の体質というものが従来の体質から改善されていないというところに根本的な原因がある。地域輸送の構造の変化にもかかわりませず国鉄の貨物輸送がこれに対処し得ないということ、特に国鉄の貨物輸送の近代化がおくれておるというようなことにつながる問題があるわけでございます。そこで、こういうような国鉄貨物輸送の問題に対しましては、運賃問題以外に、近代化のための設備投資その他につきましてもこれを大いに行ないまして、そして体質を改善していかなければならぬというところにあるわけでございます。  それから、少量物品並びに具体的な貨物につきましては国鉄から後ほど申し上げますが、基本的な考え方といたしましては、少量物品においては従来これが非常に能率が悪かったものを合理化していこうという考えに基づくものでございますし、それから大量の貨物につきましては、これの能率的な運営によりまして国鉄の能率も高めていく、そういう趣旨に基づくものでございます。
  58. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 貨物の輸送なり運賃の問題、これをどうするつもりなのか、こういう御質問で、いま運輸省の鉄監局長から御説明があったとおりの方向でございますが、まず、大企業のほうに奉仕して一般の荷主さんは非常に不平等な扱いをしているのではないか、この点に対するお答えでございますが、いろいろな観点から申し上げることができると思います。まず運賃負担そのもの、これを見た場合に、貨物には現在一級から四級までの等級がございます。それでいわゆる大資本というのは一級なり二級なりという運賃負担をしていただいておるのが多いわけでございます。一般の荷主さんは三級、四級というような負担が多いわけでございます。これを厳密に原価計算と運賃収入と比較するということはきわめてむずかしいのでありますけれども一つの仮定を置きまして、一級なり二級なり三級なり四級なり、こういうものが一トンキロ当たり幾ら運賃をいただき幾らの原価になっておるか、こういう数字で比較することがまず一番端的な一つの比較じゃなかろうか、こう思うわけでございます。この数字を申し上げますと、四十五年度の貨物の一トンキロ当たり収入は四円二銭でございます。これは原価では六円九十三銭で、したがって一トンキロ当たり二円九十一銭の赤字、こういうぐあいになっておるわけでございます。これを品目別に見ますと、先ほど申し上げましたように、いわゆる一級の品目でございますが、家庭電気器具とか自動車とか板ガラスとかこういうようなものは一トンキロ当たり一円五十銭ないし二円五十銭程度の赤字ということになっております。そうして米とかなま野菜、鮮冷凍魚というようないわゆる一般消費物資、これは一トンキロ当たり三円ないし四円程度の赤字、このような状況になっております。  もう一つの問題といたしましては、小口扱いの貨物をやめてしまったじゃないか、そして荷物と一元化して非常に高い運賃を取るじゃないか、そういうことでございますが、そういう運賃改定内容をいま考えておるわけでございますが、これは先生御承知のように、すでに七、八年前に小口扱い、いわゆる少量物品の貨物を集約的に輸送するということがこれからの方向としてとるべき方向である。ちょっと横道にそれますが、これからの貨物輸送というものは、鉄道貨物輸送の特性を生かすということで、物理的な施設も、あるいはその物理的な施設が生かせるような運賃制度といいますか、いわゆるソフトウエアといいますか、そういうようなものを整備していく、こういう方向でございまして、余談は別といたしまして、その方向の一つとして、すでに七、八年前に、いわゆる小口扱い貨物を混載化して集約して輸送する、こういう体制になっております。すでに小口扱い貨物はほとんど全部といっても過言でないほど、車扱いの中で集約して輸送されておるというのが現状でございます。  具体的に申しますと、年間で小口扱い貨物はいま二十四、五万トン、これが小口扱い貨物として残っておるという状況でございます。小口扱い貨物は、そういう方向で、七、八年前に非常に近代的な方向をとったわけでございますけれども、残る二十四、五万トン、これは一つにおいては、きわめてサービスとしてフリケンシー、そうして輸送手段も非常にコストもかかるという状況なのでございまして、数年の経験を経まして、この際、いわゆる小口扱い貨物というものを一本にするということが、輸送経済上もあるいはまた荷主さんの利用サービス上も非常に望ましい方向じゃないか、こういう考え方から、先生御指摘のように、運賃といたしましては、キロ刻みも違うし、それから重量刻みも違う、こういう異質のものを一本にするというのは、非常に実際問題としていろいろな影響があるということは承知でございますけれども、輸送方式としてはできるだけサービスをよくしよう、こういう方向で一つの輸送の絵を描き、そうしていま申し上げましたように、キロ刻み、トン刻みの異質のものを一本にすることに伴う非常に大きな急激な負担増というものは、何とかして避けなければいけないという方向で、先ほど申し上げましたように、小口扱い貨物が非常に小量で、しかも特定的な荷主、特定的な区間という運送実態にかんがみまして、具体的な荷主さん、具体的な運送区間、具体的な輸送サービス、こういうものを一つ一つ当たりまして、この際、この小口扱い貨物を一元化することによって、急激な負担増にならないような、運賃制度の面においてあるいは輸送サービスの面において、そういう方向で、具体的な対応でもって対処していきたい、このように考えておる次第であります。なお、いろいろまだございましたけれども、具体的な御指摘の中でおもな点だけお答えしたわけであります。
  59. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いろいろ御説明をされたのですけれども、現実の問題として、いまおっしゃったようなことはあるでしょう。しかし、この今度の運賃法改正について、先ほど私が例をあげて申し上げたような実態になるということは、これは二三、四%の貨物運賃値上げだというようなことを言いながら、そういう部分については六十何%も上がっているというような現実になっているということは、これはおおうべくもない事実なんです。  それと同時に、今度は国鉄の合理化の路線の中で、小駅をみんな無人化する、あるいは廃駅にしてしまうというようなことをどんどん進める。そうしますと、たとえば大阪に行っているむすこさんのところに正月にもちを送ってやろうという親心も、もう何十キロも離れたところまでいなかの母親が行かなければならぬというようなことで、全く国鉄というのは国民の実生活からどんどん疎外されていってしまう。そうして過疎地帯、閑散線区というようなものはもう線路まではずしていくんだというようなことをどんどん進めよう。まさに国鉄は一体だれのためなんだ。これは国民のものじゃない。大企業優先で、大企業のために、その荷物が多くなって、経済の中核なんだから、そいつに奉仕しよう、これだけのものになってしまう。これが鉄道の使命なんだというように、これはなるほど、諮問委員会審議会あたりで、いわゆる都市間の輸送であるとか、中長距離の貨物輸送が重点であるとか言っておられるけれども、すべてそういうもので、国民の生活を完全に疎外し、無視し、じゅうりんして、国鉄が新幹線、新幹線へとなびいて、国民と一そう離れたものになっていくというようなことは、やはり非常に問題があるということだけ指摘をしておきます。  それで、その大企業サービスの面で、これは大量に自動車の製造工場からどんどん、何分間に一台というような割でできるものを輸送する、そういう需要にこたえる、フレートライナーで専用列車が何百キロを何時間かで突っ走る、それだけでもうサービスはたくさんじゃないですか。それを、年間何万トン出たらそれに対して二割八分ぐらいの値引きをいたしましょうというようなことまで一体必要あるのかどうか。フレートライナーで専用車できわめて短時間のうちに送り届けてあげますという、そういうサービスだけでたくさんだ。それをさらに今度の運賃値上げ値上げ率も非常に低くしておいて、そうしてそういうサービスまでつけ加えるというのは、あまりに大企業に対する過剰サービスだ。一方においては、一個一個送る商売道具を三十キロ、四十キロというようなところでいままで買っておったというのは、全部五十キロの料金を払わなければならぬというようなことで、片方は損害を受ける。片方は、たいへんな国鉄のまさに至れり尽くせりのサービスを受ける。こういうようなことになったら、これは非常にやはり国民の感情からいっても、経済における民主主義の面からいっても、国鉄というのは一体それでは何なんだという原点に返っての疑問というものは、国民の中からきゅう然として出てくるのはあたりまえのこと、そういう問題点について、これだけの自動車責任出荷トン数契約ということによって年間何万トン、たとえば東小金井駅から出るというものについて、四万二千三百トンですか、これだけ年間出れば二割八分値引きします、運賃をまけてやります。この分だけはまるっきりよけいじゃないのか、サービスはもうずいぶんしている。こういうような点等について、なぜこういうことまでやらなければならないのか、こういう問題点についてどうなんですか。
  60. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 いま先生御指摘の点は、営業割引という制度を不当に使っておるのじゃないか、こういう御質問じゃないか、こう思いますが、国鉄の営業割引といいますのは、輸送力を活用してできるだけ多くの荷物を運ぶということは経済的であるという場合に考えているわけでございまして、いま具体的に御指摘の東小金井からの自動車輸送の問題でございますが、これはいま手元に数字がございませんので、個々にそれがいかなる理由でこういうふうに分けているかという御説明をちょっと具体的な数字でできないのは恐縮でありますけれども、御案内のように、鉄道輸送はもう独占性は全くない。あたりまえの話でありますが、ないのでありまして、個々の輸送の需要に対しまして、一般の輸送供給状況あるいはそれに対する供給の状況、こういうものを勘案して、その中で、鉄道輸送の特性をいかに考えていくか、その点がまず必要であります。  それから、国鉄のそのものの原価をそう厳密に究明はできませんけれども、原価はこうすることによって多少安くなる、こうやることによってちょっと高くなる、そういう事情を勘案して、具体的には、いわゆる営業割引といいますか、そういう形の運輸政策をとっているわけでございます。したがいまして、特定のものにだけそのようなことをするということでございませんで、たとえば車運車——自動車を輸送する車でもって八台あるいは十台というものでまとまっていくならば、これはだれの荷物だからそのような一台当たりの運賃になるということではございませんので、どなたがそういうような八台なり十台なりの車を送ってもそのような運賃をいただくということで、特定の荷主だから割引する、こういうものではございませんで、この点につきましては、具体的に申し上げますと、新宿から車運車で一般のお客さんの車を京都まで送るというサービスを実はいたしたことがございます。しかし、それもあまり需要がなくなったのでやめておりますけれども、いま先生お話しのように、そう申しても、実際問題として、そのサービスが非常に広くサービスされれば別といたしまして、需要から見ましてどうしてもある程度利用が特定されざるを得ないということは現実の問題としてあるわけでございます。
  61. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま言った責任出荷トン数契約というようなことを超過したら二八%まけてやりますというような、そんなメリットをつける必要は私はごうもないと思うのですよ。これは相手の企業は自分の必要に基づいて送るのであって、これをそれだけのメリットをつけてやるから私のところへというようなことをやるというのは、これはもういささか過剰サービスもいいところであり、まさに大企業優先の典型的なものでありますから、この辺のところは、これは法律事項ではないはずだから、それらの問題については十分に検討して、そういう批判を受けないように考えてもらいたい。このことだけ要求しておきます。  きょうは、この運賃法全般について、運輸委員会審議を蒸し返すつもりはないのですけれども、特に問題のある点だけ私は指摘したわけですけれども……。  ところで、今度の通行税法改正の問題ですが、現在グリーン車の施設利用というものに着目をしてグリーン料金、さらにA寝台という、この二つにだけ通行税がかかっておるわけですが、これを今度は電車寝台が、下段が千九百円に三百円値上げになる、こういうことから、いまの法律ではこれがカバーしきれなくなる、こういうようなことで今度の法改正が行なわれるわけですけれども、一体、この国鉄の最近のA寝台の利用者、さらにグリーン車の利用者というのは、人員にしてどのくらいあり、金額にして、料金収入としてどのくらいあるのか、さらに税額が、通行税額がその面で幾らになっているのか、数字をはっきり聞いておきたいと思います。
  62. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 あとでまた国鉄のほうから収入についてのお話があると思いますが、国鉄関係におきましては、先ほど御指摘のように、A寝台とグリーン料金について通行税がかかっておるわけでございます。それで大体四十五年度の数字で申しますと、国鉄のそういうものの利用者から約二十一億円の通行税を取っております。その中でまた、いわゆるいま問題となっておりますところの電車寝台につきまして、その二十一億の中でグリーン料金について取っております通行税が約十七億円でございます。それからA寝台料金について取っておりますのが約四億円でございます。それから現在の問題になっておりますところの免税点を引き上げるものとしまして、一番いわばB寝台の中で値段の高い寝台料金につきまして取っております通行税といいますのは、約一億円でございます。
  63. 原岡幸吉

    ○原岡説明員 四十五年度の数字で申し上げます。人員でA寝台が百七万九千人でございます。それから、グリーンが二千百四十万四千人でございます。収入を申し上げます。A寝台が三十九億五千万でございます。それから、グリーンの収入が百六十三億八千三百万でございます。以上でございます。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今度はこの通行税の対象になる料金については、法律で定めないで政令に委任をするということになるわけですけれども、この料金関係国会の、いわゆる法律事項でない、値上げの際に、運賃だけがこの法律事項であって、料金の部分については政令にまかされている、こういうことになっているから、それとの見合いで、やはり通行税においてもそういう料金の部分しかないのだからということで、これは政令にする。これは法律体系の言うならば整合性という問題だから、やむを得ないかもしれぬけれども、政令にまかされたのだから、この国会に出す必要もない。したがって国民の審議の場というようなものがないのだということ、安易にこの料金引き上げというものが、国鉄が苦しまぎれに何かというと大蔵省と相談しては料金をどんどん上げていくというようなことになっては、これはならぬわけであって、そういうものを担保する国鉄側の、そうめちゃな、政令に委任されたからといって、国会審議がないのだからといって、何らか適正な歯どめというものが当然これはあってしかるべきだと思うのですが、そういう点について運輸省はどのような気持ちでその問題について考えておるのか、これは運輸省と大蔵省と、両方から伺いたい。
  65. 山口真弘

    ○山口政府委員 現在、国鉄運賃料金につきましては国有鉄道運賃法にその決定のしかたが定めてございますが、運賃の基本的な賃率等につきましては、これは運賃法自体が法定をいたしております。料金につきましては、一応国鉄自体が定めるということにいたしまして、しかしながらそれの中で第九条の二というのがございまして、たとえば特別急行料金だとか、急行料金だとか、あるいは寝台料金だとか、あるいは特別車両料金だとか、そういうふうな料金につきましては、これは運輸大臣の認可を受けることを要するということに定められております。  それで、したがいまして、国鉄限りでは出し得ないところでございますが、この運輸大臣の認可につきましては、これは国鉄から申請がございまして、そうしてその申請された事案につきまして、これは運輸審議会に諮問をいたします。そうして運輸審議会に諮問をいたし、運輸審議会はこれを官報に公示をいたしまして、そうして一般の公聴会の申請等がありますれば、公聴会をいたします。そうして公聴会の手続を経まして国民各位の意思が十分に反映をするというようなことを考えまして、その結果運輸審議会から答申がございまして、その答申を待って運輸大臣がこれを認可する、こういうような慎重な手続でやる、こういうことでございます。今後とも、これにつきましては国民の利害に関することでございますので、十分に慎重に取り扱ってまいりたいと思います。
  66. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 最初に、先ほど私答弁申し上げました際、今回免税点で一番高いB寝台料金について通行税を取っておる額が一億円と申しましたが、これは誤りでございます。取ってはおりません。取ってはおりませんが、問題になっております一番高いB寝台料金に対応しましての通行税をかりに計算すれば、一億円ということでございますので、訂正さしていただきます。  それで、今回の通行税法改正案におきまして、一般乗客が通常利用する寝台料金というのを掲げておきまして、それについて政令で定める金額を通行税免税点にするものでございます。これは御指摘のように、確かに一つはそういったいわゆるB寝台料金が運輸当局の認可事項になっておるということに対応して政令というものを考えたことも理由一つではございますけれども、むしろ私ども考えましたのは、いわゆるB寝台、通常の一般のお客が利用する寝台というのは、大体最近の通行税の経過から見まして非課税にしてまいったわけでございます。昭和三十六年にいわゆるいまのB寝台に対応しまして千円という免税点を設定しましてから千四百円、千六百円と上げてまいりましたけれども、これはいまのB寝台につきましては通行税を課さないほうがいいんじゃないかという考え方でやってまいったわけでございます。四十四年の改正の際にも実は今回のような改正ということも考えたわけでございますけれども、何しろそのときにはもう一つ基本的にグリーン料金の取り扱いという問題もございましたし、はたしてB寝台というものが一体どういうような利用状況になるのかということもございましたから、その際は従来の沿革に従いまして金額を引き上げるということだけにいたしたわけでございます。今回の改正でお願いいたしておりますのは、先ほど御批判のございましたように政令でもって免税点を恣意的に上げ下げするというよりは、むしろ私どもとしましてはいまの通行税法の体系のもとにおきましては、いわゆるB寝台というものは従来どおり非課税にしたい、そういうものを法律だけの文言で何とか規定できないかということを研究をいたしたわけでございます。なかなかそれもむずかしいということで、両方組み合わせまして政令の金額でもってはっきりとそういうものを示し得るような改正案としてお願いをしておるものでございます。先ほども運輸当局からもお話がございましたし、私どもも現在の通行税法の形、いわゆる上等のお客さんが利用するグリーン料金なり寝台料金について通行税をかけておるという考え方のもとにおきましては、従来どおりのそういった考え方というものを踏襲してまいりたいと思っております。
  67. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 国鉄の運輸収入は、ことしの予算書によりますと一兆三千五百八十四億四千八百万円、こういうことになっておるわけですが、この運賃分と料金分はどういう内訳になりますか。
  68. 山口真弘

    ○山口政府委員 今回の運賃改定を行ないました姿の収入額の中の旅客の料金分は三千百三十一億円でございます。
  69. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 あと運賃ということですね。
  70. 山口真弘

    ○山口政府委員 ただいま申し上げました三千百三十一億円は料金収入でございます。ただし、これは改定によります利用減がございまして、それを差し引きますと二千九百六十三億円というものが料金分でございまして、それ以外が運賃分でございます。
  71. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 あとで一兆三千億の内訳を、料金毛各種貨物、旅客それぞれありますから、そういう内訳を資料として出しておいてください。これはいいですね。
  72. 山口真弘

    ○山口政府委員 よろしゅうございます。
  73. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ところで最後に聞きますけれども料金の引き上げということも命令事項になる。いままでもそうだったのだけれども、これは中間に政府だけで、運輸省の認可を得る、そういうたてまえにはなっておるけれども運賃値上げと関連をしないで、料金だけ先ほどのような手続さえすれば民主的な手続を経たのだというのでどんどん上げる、こういうお考えなのか、やっぱり運賃との関連ということでしか上げないのか、上げたり下げたりというようなことはやらないのか、その辺のところはどうなっておりますか、どういうお考えですか、それだけ聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  74. 山口真弘

    ○山口政府委員 国鉄運賃料金でございますが、これは全体としてやはり調和のとれたものでなければならぬわけでございまして、従来とも料金だけを上げるということは非常に少ないわけでございます。従来から大体運賃と同時に料金改定をいたしておったわけでございます。しかしながら、その実態によりまして具体的にその料金改定をすることが適当な場合には、これはやはり上げざるを得ない、改定せざるを得ないということになるわけでございます。ただ、これにつきましては、運輸審議会に諮問いたしまして、慎重に私どもこれは対処しなければならぬ、このように考えております。
  75. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 最後に、今回の運賃値上げの場合でも、民主的な手続を確保するために運輸審議会にもかける、さらに公聴会なども規定に従ってやるということだけれども、いかにもつくられた国鉄ベースというか運輸省ベースというか、そういう公述人だけそろえて政府考え方を裏打ちさせるような議論だけ出させるというような、そういうおかしなやり方というようなものは慎んでいただいて、公平な立場で自由な意見、国民の意思が反映するようなことを十分考えていく。ですから、総袋だたきにあうようないわゆる虚構の公聴会というようなものをでっち上げるというようなことなどやらぬように、国民の意思を正しく反映させるということでなければ、これは単に隠れみのにすぎない、こういうことにもなるわけだから、その点十分考えて、政令にゆだねられておるというようなことによって、この料金面について不当なことが行なわれないように、この点を特に要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 次回は、明七日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会