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1972-05-12 第68回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十二日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 齋藤邦吉君    理事 木野 晴夫君 理事 藤井 勝志君    理事 丹羽 久章君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君    理事 竹本 孫一君       有馬 元治君    上村千一郎君       奥田 敬和君    木村武千代君       倉成  正君    佐伯 宗義君       中川 一郎君    中島源太郎君       中村 拓道君    橋口  隆君       橋本龍太郎君    坊  秀男君       村田敬次郎君    毛利 松平君       森  美秀君    豊  永光君       吉田 重延君    吉田  実君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       山中 吾郎君    貝沼 次郎君       小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君  委員外出席者         日本開発銀行総         裁       石原 周夫君         参  考  人         (東京大学名誉         教授税制調査         会会長)    東畑 精一君         参  考  人        (東京大学教授) 内田 忠夫君         参  考  人         (財団法人経済         調査会会長)  稲葉 秀三君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   坂元 親男君     橋口  隆君   地崎宇三郎君     有馬 元治君   中川 俊思君     豊  永光君   松本 十郎君     橋本龍太郎君   山口シヅエ君     中村 拓道君 同日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     地崎宇三郎君   中村 拓道君     山口シヅエ君   橋口  隆君     坂元 親男君   橋本龍太郎君     松本 十郎君   豊  永光君     中川 俊思君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第一九号)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、まず各案について、参考人から意見を求めることといたしております。  本日御出席いただきました参考人は、東京大学名誉教授税制調査会会長東畑精一君、東京大学教授内田忠夫君、財団法人経済調査会会長稲葉秀三君の各位であります。  参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。税制に関する諸問題について、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、各位の御意見最初十分程度にお取りまとめいただき、その後に委員からの質疑によりお答えを願うことといたしたいと思います。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  それではまず最初に、東畑参考人よりお願い申し上げます。
  3. 東畑精一

    東畑参考人 ただいま委員長のお話しになりました法律案は、実は昨年の十二月二十八日でありますか、税制調査会昭和四十七年度税制改正に関する答申と同じ趣旨のものだと考えておりますので、税制調査会の案について若干の説明をいたしたいと思います。  所得税一般減税は、昨年の末に繰り上げて行ないました所得税のいわゆる年内減税、これが四十七年度の規模で大体二千五百三十億円と思いますが、それに加えまして、四十七年度として新たに住民税事業税地方税でありますけれども、そこでほぼ一千億円の減税を行なうことといたしました。これらの所得減税のほかに老人扶養控除創設、それから寡婦控除を拡大する、それから住宅取得控除創設等所得税減税、それから配偶者及び心身障害者に対する相続税減税など、国民福祉の向上に資する改正を行なってほしい、こういう答申であります。  それから、第二番目の企業課税につきましては、法人税付加税率一・七五%の期限が四十六年度で終わるものでありますから、その期限をさらに延長する、それから輸出振興税制大幅縮減、それから金融、保険業等の貸倒引当金繰り入れ率を引き下げる、こういうことをやりまして、税負担適正化合理化をはかる答申をいたしました。  それからその次には、公害対策中小企業対策通貨調整に伴う措置等、当面の社会経済情勢に即応するいろいろな措置を講ずるとともに、また空港施設整備拡充に資するために航空機燃料税創設することを答申いたしました。これは、最後航空機燃料税は、すでに皆さんの御採決をいただいたと聞いております。  この答申案審議する過程で実はいろいろ問題がございましたので、重要なものをひとつ御説明いたします。  所得税一般減税につきましては、年内減税だけでは足らぬ、もっと追加減税を四十七年度として新たにやるべきである、そういう議論が非常に強かったのでありますが、どうしても適当な財源がございませんので、答申といたしましては、年内減税後の所得税負担推移につき、所得及び物価水準等動向にも注意しつつ、慎重に配慮するものとし、できるだけ早い機会に新たに負担の軽減を行なうべきものと考える、こういう結論に落ちついた次第であります。できるだけ早い機会というのは、まず景気情勢だとか、財政の諸情勢をいろいろ考えまして政府が機敏に適切な判断を行なうべきものではないか、こう存じております。  それからもう一つの問題は、社会保険診療報酬課税の特例についてであります。これは税制調査会といたしましては、昭和三十一年以来八回にわたりまして是正すべきものではないかという答申をしておったのでありますが、いままで遺憾ながら何の改善措置も講ぜられておりません。それでわれわれ税制調査会といたしましては、これを解決するために、ことしの去る四月の十四日の総会で社会保険診療報酬課税特別部会というものを設けまして、もっと現実的に具体的な方策を立てたい、こう存じております。過去三十一年以来この問題が解決されなかったということには皆さんの御支持というものが得られなかったということも大いに関係していると思いますので、われわれとしましては非常に努力いたしまして答申をしたいと思っておりますが、その場合にはひとつどうか御協力願いたい、こう存じております。  それから、新しく政府は例の社会経済長期計画でありますか、これの改定を行ないつつあるようであります。その改訂にあたって、当然負担のことだとか税体系あり方についても新しい考え方が必要となると思います。税制調査会といたしましては政府の要請があり次第、これらの問題につきましても審議したいというのが四十七年度のわれわれの心がまえでございます。  以上、簡単でございますが……。
  4. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 ありがとうございました。  次に、内田参考人にお願いいたします。
  5. 内田忠夫

    内田参考人 私は、景気変動税制につきまして、大体十一項目ぐらいにわたりまして、日ごろ考えておりますことをお話し申し上げたいと思います。  まず第一は、税制景気対策として正しく利用いたしますためには、景気動向を的確に評価するということが絶対必要でございます。この評価作業を進めるにあたりまして、より多くの努力が政府レベルではもちろん、民間におきましてもなされる必要があるというのが第一点でございます。いま東畑先生から、慎重に景気動向及び財政の状況を判断してというお話がございましたが、確かに慎重もけっこうなんですけれども、実際にそういうことをやる体制が整っていないというのが、率直にいって現在の体制ではなかろうかと思います。  第二の問題は、このようにいたしまして、景気動向政府あるいは民間レベル評価されましたならば、その結果は詳細にわたって公表されるべきであるということであります。現状では、この面での政府PR活動というのは決して十分とは思われませんし、また問題になっております国民の知る権利、これが十分にこの面において保障されているということにはなっていないというふうに思います。  次に第三のポイントでありますが、行政目的のために普通、予算形式あるいは税収見積もりが行なわれておりますけれども、これを経済分析に利用できるような形で予算勘定あるいは税収見積もり、こういうものが用意されるべきであるというふうに考えます。実際、国会その他におきまして予算審議が行なわれておりますが、現在のような予算形式におきまして、ほんとうにそれの経済的効果を分析できるというようなことには私はなっていないと思うのです。ですから、ほんとうにこの税制景気変動に利用するということでありますならば、経済分析に合うような形で税制あり方が、あるいは税収入の表示がなさるべきであるというふうに考えます。そしてそういう形で税制経済に及ぼします影響を推定いたしまして、これを予算提案の中に含めるべきであるというのが第三の点であります。  次に第四の点は、議会経済政策全体の中で税制役割り検討する。そして随時政府の支出及び税制機能につきまして討論する機会を持つべきではなかろうかと思います。特定な時期だけに限りましてこういう検討会を持つというのではなべて、景気というのは非常に微妙に変化いたしますから、討論の場は随時持たれるべきであるというふうに考えます。また、国会議員がこのような職務を果たすためには、必要な統計、データあるいはそのデータを分析いたしますスタッフ、そういうものが十分に用意されるということが必要でありまして、この点も現在のところは非常に不十分であるというふうに思われます。議員の方にもより多くの勉強をしていただきたい。  それから第五番目の点でありますが、議会での公式討論のほかに、経済政策全般の問題を検討する専門家委員会というものが必要ではなかろうかと思うわけであります。それによりまして、議会の内外においてこの面におきます関心が高まるとともに、知識の水準が向上するというふうに思われます。  次に第六の点であります。税制を取り扱う主税局と他部局あるいは他省庁の間の関係は、政府部門機能分割が進むにつれて希薄なものになっているように思われます。政策決定の全体の過程を見直しまして、総合的な政策調整の機構のあり方検討すべきではないかと思います。  第七番目のポイントといたしましては、民間投資活動影響いたします財政面からの措置といたしまして、交付金補助金あるいは投資課税というものにつきまして、その活用をもっと考えるべきであるというふうに思います。法人税減価償却率についても同様であります。  第八番目のポイントは、個人消費影響を与えます租税措置といたしましては、課税基盤が十分に広いことが必要でございます。この点におきまして、たとえばマイナス所得税、つまり普通は所得税というのはプラスに考えられておりますが、ある限度に達しない人についてはマイナス所得税を徴収するということが考えられてよろしいわけでありますし、一般付加価値税実施もこの点において考慮に値するというふうに思います。  第九番目のポイントは、社会保険負担金とか公共料金というものを、個人消費影響をするという政策手段としてもっと活用してもよろしいのではないかというふうに考えます。  第十番目のポイントは、景気動向に弾力的に対処するのには、租税制度は、年間を通じてどういうときでも、原則的にはそれに適応できるというものでなければならないというふうに考えられます。それには、政府税率変更にもっと強い権限を持つということがある程度必要でありまして、ある場合及びある限度内で、政令によりまして、会計年度内のいかなる時点におきましても税率変更できるというような体制を考えてもよろしいのではないかと思います。  最後に十一のポイントでありますが、実際の税率変更の手続には非常に時間がかかりますし、そのためにタイミングを失するということがございます。これに対処するために、税率変更は、最初それが提示された時期においてさかのぼって実施される、あるいは変更が提案された段階におきまして、完全審議に先立ってとにかく実施されるということが考慮に値すると思われます。  最後に、以上申しましたことは減税だけでなくて増税についても当てはまることを付加いたしたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 ありがとうございました。  次に、稲葉参考人にお願いいたします。
  7. 稲葉秀三

    稲葉参考人 私は、税制一般論議というよりも、特に最近土地問題が深刻な課題であり、またこれをどのように解決をしていくかということなしには、日本経済の将来を前向きに考えるということがむずかしい、こういったようなことと関連をいたしまして、土地税制につきまして若干の見解を表明させていただきたいと思います。  ちょうどいまから四年前に、税制調査会土地税制部会が設置されまして、私、その部会長にきせていただいたのでございますが、答申をいたしました。そしてそれが昭和四十四年度から実施をされて現在に至っておるということは、皆さま方御存じのとおりであります。そして必ずしも現在のような問題が過去になかったというわけではなくて、その後四十五年、四十六年と、土地税制に対しまするいろいろな批判が起こってまいりました。そして、いまや私たちは、そういったような情勢を再検討いたしまして、一つ土地税制臨時措置をやめるのかやめないのか、また、やめることによって土地供給がふえ、そして土地価格が安定するのかどうか、第二は、土地税制を一応臨時措置期間、つまり昭和五十年度まで実施をしていく、しかしそれと並行いたしまして、その他の税制措置もしくは土地政策そのものをもっと全体的に再検討して実施をしていくのか、このようなことにつきまして、さらに根本的に再検討をしていかねばならぬときに来ているのではないかと思います。  そこで、最近の事態を中心にして申し上げますと、個人譲渡所得につきまして、段階的にいまのような措置をとっていくのが、はたして土地価格を安くしていく、また土地供給、特に住宅用土地供給していくということに対してプラスになるのかどうか、こういう点が第一だと思うのでございますけれども、それについては次のように私は考えているということを申し上げたいのであります。  実は問題は、私たち土地税制について審議をいたしまするときにも起こった問題でございますが、税制だけで土地供給をふやしたり、また価格を引き下げたりするということはなかなかむずかしい。むしろ税制は総合的な一貫政策として運用されなければその目的を達し得られない。そのような考え方は私は現在にも当てはまるのではなかろうかと思っております。  第二に申し上げたいことは、土地供給をふやしていく、そしてそれによりまして間接価格上昇抑制していくということを、税制的にどのように援護していくか、こういうことが問題になりましたときに、実は二つの点につきまして、大きな見方考え方の相違がございました。その一つは、土地供給を増加せしめるために、一定期間譲渡所得を軽くして土地供給をふやしていくという条件をつくっていく。さらにもう一つは、利用されていない土地に対しまして、臨時にまたは恒久的に、強い税金をかけて、そして土地を利用せしめるような条件をつくっていく。このようなことに対して、一体どちらが有効か、またどちらが実行可能かという問題でございました。これにつきましては、前者的な考え方というものが採用されて現在に至っております。それによりまして、あとで申し上げますようにいろいろ問題が起こっているという事実は否定できないのでございますけれども、そこから申し上げたい点は、確かに土地供給はそのことによってふえているという要素を、どのように私たちは認識をすべきかどうかということが、今後について重要な点だと思っております。  もう一つ起こっておりました問題は、法人による土地売却益、また値上がりということにつきまして、個人の場合とどのように均衡をしていくのか、また、一般法人税制との関連をどのようにしていくのか、さらに、法人の中には、デベロッパーという、土地取得してそれを利用せしめるということに対しまして、専業的におやりになるところと、今度はそうでない、むしろ土地値上がりというものを前提にして土地を保有しているといったようなところと、二種類に分かれるわけでございますけれども、そういったような両者に対しまして、どのような措置をとるべきか、こういうことが起こってまいりました。そして私たちは、当時の事情から申しまして、個人との均衡あるいは一般法人との均衡がまたなかなか実態をつかみ得られないといったようなことから申しまして、法人土地売却ということに対するプラスについて、特別の土地取得に対する税制をここで打ち立てるということは、むしろ本来の目的である土地供給をふやしていく、また価格値上がりを直接間接抑制をするということに対しましてはあまり大きな効果を発揮できないのではなかろうか、このような見方考え方に立って答申を申し上げ、あまりこまかい説明はできませんですがそれが現在まで実行されている次第でございます。  私はここで、やはり日本土地政策全体を考えましてどのような態度をこれからすべきかということについて、税制をも含めまして再検討する、こういったようなことに対しましてやはりもっと前向きの体制がとられるということを切望いたします。しかし、申し上げたいことは、一部にいわれておりまするように、ただこの税制をなくしてしまうということによって、はたしてそういう効果が期待できるのかどうかということにつきましては、実は疑問を持たざるを得ないということを申し上げたいのであります。  そのような観点からいたしまして、第一に私の皆さま方に御検討をわずらわしたい点は、やはり土地問題の重要性、こういうものがますます真剣にかつ深刻にこれからの日本経済を左右する大きな要素である、こういったような観点に立ちまして、もっと日本全体の土地あり方、また住宅用土地供給ということについてどのような措置をとるか、こういうことにつきまして政府各省におかれましてもっと前向きの措置がとられるということを切望いたします。  第二に、税の面におきまして私たちが感じますることは、こういう譲渡所得に対しまする臨時措置と並行いたしまして、私たちはそれと並行して保有課税をどのようにしていくのか、固定資産税評価がえをどのように実効的にしていくのか、さらにそのほかの土地評価公示制度といったようなものを全体的にどのように早く大きく普及をしていくのか、また都市計画税といったような操作によりまして、全体の土地の利用といったようなことに対しましての財源をどのように確保していくのか、こういったような措置が並行的にとられないと、この部門におきましてやや不均衡ということが生じておりましても、土地供給はふえないし、地価は安定しないし、供給がふえたといたしましても、それが住宅用土地にならないといったようなことになっておりますので、まず皆さま方の間におかれまして、税の間のバランス、特に保有課税をどのように推進をしていくのか、それからさらに懸案になっております農地の固定資産の問題をどのようにしていくのか、また自治省がお引き受けになっている公示制度というものを早く確立して、それをやはり一つの権威のあるものにし、また社会の変遷に応じて三年、少なくとも五年目ごとにはそういったような地価推移を明らかにしていく、こういうことに対しまして前向きの措置というものを進めていただきたいと思います。  その次に提示をしたい問題といたしましては、法人土地入手一定歩合というものを住宅用に提供させるということに対しまして、税制とは別途何らかの措置をひとつとるということができないかどうかということであります。ことに最近の事情を見ておりますと、土地を売る人がだんだんできながら、またそれが民間住宅用土地になっていない、こういうことからいたしますと、やはり投機的なことが進行しているという事実は明らかであります。またそれを、実態を見きわめなければ適切な税が取りにくいということも事実でありますが、それがどうも私たちが期待をするように進んでおりません。ですから、そういったようなことに対しましてもっと前進をしていく、こういったようなことをひとつ推進をしていただきたいということであります。  さらにその次に申し上げたいことは、私は、土地入手をしていく、また公的に土地を手に入れてそれを活用するということに対しまして、もっと前向きの措置がとられる必要があるのではないかということであります。まあ、住宅建設ということにつきましては、ここ十数年以来政府がいろいろな措置を進めてこられました。しかしどうも肝心なことは土地にあるだろうと考えますと、これはかりの考え方でございますけれども、公共的な土地入手をもっと多くしていく、そのようなことからいたしまして、住宅金融公庫だとか日本住宅公団、こういったような機能はむしろ土地をいかに組織的に手に入れるか、こういうことにひとつ力を注いでいただいて、そして、むしろ建設ということにつきましては民間デベロッパーに対しましてそういったようなものをやらせていく、こういったようなことのほうがどうも望ましい、このように思う次第でございます。  そのような点から申しますと、いろいろな見方考え方がございますけれども、私は悪名高い土地税制臨時措置を取りまとめて、ここに会長さんがおいでになりますけれども、税制調査会に御答申を申し上げ、それが政府措置として推進をされる、こういったようなことにお手伝いをきせていただいた人間であり、また私自身は、そのようになりました結果、必ずしも最近ではないが、稲葉さんようこんな税制をつくったな、こういうことをたびたび言われてきた人間でございますけれども、要はやはり国民が必要な土地を提供していく、また価格上昇をでき得る限り抑制をする、こういったような観点に立ちますと、譲渡所得中心にした、個人的な譲渡所得に対する臨時的なことを答申をしたこの税制調査会見解が全的に間違っておったのではなくて、それと並行してとらるべき諸般の政策が十分でなかったためにどうもその趣旨が生かされなかった。できれば、むしろ昭和五十年まではこういうことを補完をして、いまほかの措置補完をして、そしてやはり土地をでき得る限り供給をする、こういったようなことのために、そのほかの税制とか一般土地問題の解決に対しまして、もっと政府が真剣に取り組んでいただくという体制をおとり願いたいということを申し上げたい次第でございます。
  8. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより質疑に入ります。佐藤観樹君。
  10. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まず、東畑先生にお伺いをしたいんですけれども、今度の税制改正については、ある部分についてはもうすでにこの委員会でも審議した部分がございます。それで私は、最後先生が言われたこれからの日本の進み方として社会経済発展計画、それに伴っての税収入をどうやって持っていくかという点についてもう少し、いつもの答申にも書いてあるんですけれども、なかなかあれも文字の読み方によってはずいぶんいろいろ幅広く読めますから、先生にお伺いをしておきたいのですけれども、将来とも直接税中心日本税制というものが間接中心の、現在の二対一の比率が逆に間接税二直接税一になるようなそういう方向におそらく変わっていくことを先生は示唆されたのではないか。そこから出てくるものは、いま非常に問題になっておる付加価値税の問題が出てくると思うんです。先生最後に述べられました社会経済発展計画を、まあこれがいい、悪いはまた問題があるわけでございますけれども、この新税と申しますか、今後の税制あり方の方向というものは、やはりそういう意味での間接中心のものである、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  11. 東畑精一

    東畑参考人 実はまだ税制調査会審議を開始いたしておりませんので、税制調査会としてのお話はできないのでありますが、私個人考え方についてひとつ申し上げたいと思います。  将来の税制という大きな問題になりますというと、どうしても日本経済動向と申しますか、それをつかまなきゃならぬ。佐藤さんがおっしゃったとおりであります。ですから、われわれも政府の今度の長期経済政策といいますか、計画についてなるべく早く案といいますか、見通しができることをいちずに希望しておるわけであります。  それから第二の点につきましても、将来の税制間接税を中心とするというお話であります。これは少し——そこまでの考えは持っておりません。御承知のように、大体は三分の二が直接税、三分の一が間接税でありますが、しかもこの間接税の割合というのは、直接税の、ことに所得税なんかの減税をやっておるにもかかわらず、ウエートは減っていきつつある。それでは少し不均衡ではないか。そういう意味で、間接税をあらためてひとつ検討したい。実際の問題といたしましては、税制調査会は長い間、間接税といいますかの検討というのは、実はあまりやっていなかったのです。新しくそこヘエネルギーを投じてやりたいと思いますが、しかし、将来の税制間接税を中心にするかというようなことはまず考えられない、こう考えております。
  12. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 貝沼次郎君。
  13. 貝沼次郎

    貝沼委員 東畑先生にお願いいたします。  一般減税についてできるだけ早い時期に政府が適切な判断をすべきであるというふうにおっしゃったと思いますけれども、このできるだけ早い時期ということについて、私は先ほど内田先生意見なども考えますと、やはり税制を考えていく時期というところから考えて、ある程度の時期というものが考えられるのではないかと思いますけれども、大体何月ごろをお考えでしょうか。
  14. 東畑精一

    東畑参考人 そう聞かれますと……。まあ昨年は、ことにいわゆる年内減税ということがございました。これは所得税でありますけれども、ことしもできるだけ早いというのは何月ごろかと言われてもちょっと困ります。と申しますのは、事実、経済動向というのは相当激変しつつあるときであります。ドル・ショックというような話もありましたが、それがまだ完全に吸収されているというところまでいっていないと思うのですね。でありますから、急いで事をやるというのもどうかと思っております。しかし、大臣の答弁のようではなはだ恐縮なんですけれども、そういつまでも待っておるわけにもいかぬと思います。
  15. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 竹本孫一君。
  16. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は付加価値税について東畑先生に簡単にお考えを承りたいと思います。  これは、具体的日程にのぼっておりますが、大体フランスが非常に参考になるように言われるのだけれども、御承知のように、フランスの場合には間接中心でいまでもありますし、しかもそれが累積的な間接税をやって、前段階控除式ということでなかったために、いま取り入れられておる付加価値税というのは、むしろ間接税の従来の間違った点というよりも行き過ぎた点あるいは困った点を改正する一つの方法として取り上げられておる。そういうものと、日本のように新たに全然白紙にそういう問題を取り入れるということについては、フランスの場合と日本の場合は事情が非常に違うということなんです。フランスは要するに所得税アレルギーがある。そして間接税はむしろ従来のやり方はまずかった。それを改善する方法として付加価値税が取り上げられておるが、日本の場合はそこが違うではないかという点が一つ。  それからもう一つは、日本の中小企業の場合は特にそうでございますけれども、記帳の能力があまりない。そういうところに、日々の段階においてそれぞれ記帳が明確でないと税の把握が困るといったような場合に新税を持ち込むということにどういう考慮が行なわれるべきであろうか。また特に日本の場合には中小企業と農業が非常に比重が大きいわけですけれども、それらに対しては見積もり課税だとか、免税点の設定だとかいうようなことで特別な考慮を行なうということは当然であろうと思いますけれども、そういうことも含めて、この税をそのまま取り入れるということには幾多の条件なり準備なりが必要であると思うのでありますがどうか。  時間がありませんから、もう二つほど簡単に申しますが、一つはこの付加価値税は一%やれば大体二千億円くらいの税収が上がるだろうと私は見当をつけておるわけでありますけれども、結局これは大規模な収入ということがねらいになるということですが、それだけのものを、ただ直接税では負担感が多過ぎるからということでそちらへ逃げるという形ではなくて、やはり大きな税収入を確保するということならば、やはりこれからは言われておる福祉社会建設という大きな政治目標といいますか、ハイポリシーというものがあって、それをささえる一つの収入の手段として付加価値税というものが取り上げられるということがきわめて当然である。特にまた日本におきましては、地方の財政が自主財源というものがなくて困っておるわけですから、地方財政についてもこの際大きく難局を打開してやるといったような政治的な高度のねらいというものが、中央、地方を含めてなければならぬと思うのだけれども、いまは日本の付加価値税の取り上げられ方というものを遠くから見ておりますと、ただ財源難だから、あるいは直接税は負担感が重過ぎるからということで便宜的に取り上げられているような感じがしますが、その点はどうか。  最後にもう一つは、オランダの失敗を見てもわかりますように、これは価値に対して非常に直接、理論の上からいえばいろいろ議論がありますけれども、結果的にはたいへんな影響があった。日本のように物価問題で悩み抜いておるこの段階において、これが取り入れられてしかるべきものと考えるべきかどうか、こういう点について先生のお考えを承りたいと思います。
  17. 東畑精一

    東畑参考人 付加価値税のお話が主だと思いますが、これは今度別に逆に考えますと、現在の物品税という問題がございまして、これが非常に不公平になっておりますので、それはどうしても改正しなければならぬ。ことに新しい商品がどんどん出てまいるものですから、その意味で、現在の個別物品税というものを改正する必要が非常にあると思っております。そこから出てきたのが付加価値税の議論だと思っておりますが、付加価値税と申しましてもずいぶんいろいろな形態がございまして、いまもお話になったような、フランス、オランダその他たくさんありますが、われわれとしてどういう形の付加価値税をとるかということはある意味で未定なことであります。しかし、一般的な意味の、一般消費税とでもいいますか、それが最切の段階じゃないかと思っております。個別物品税を修正して一般消費税にしていく、それからさらにその次の段階になってこないと、いまお話しになりました中小企業なんかが記帳もあまりしていないとか、だから技術的に非常にやっかいな問題があると思っております。またさらに、いまお話しになりましたけれども、物価問題とも関連がありますので、実施をするというときにどういう形で実施をするかということは非常な苦労を要するところでありますし、また、皆さんから実際事情につきましていろいろと、このやり方ではこういう難点があるのだということで、これは十分ひとつ検討したい。私自身の気持ちといたしましては、今年度中に一般的ないわゆる付加価値税なるものの案ができるとは実は思っておりません。
  18. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま、ハイポリシーが必要ではないか、そういうものを考えないで、ただ便宜的に収入をはかるということだけでは困るという問題と、それから物価の問題についてもう少し説明願いたい。
  19. 東畑精一

    東畑参考人 同じことを私逆に皆さんに申し上げたい。と申しますのは、税制調査会は、いつも申し上げることでありますけれども、われわれは  一種の社会技師なんですね。大きな、ハイポリシーといいますかビジョンというものはやはり国会がやるべきものじゃないか。ですから、私どもは、国会の論議というものは実は巨細に検討いたしておりまして、こういう考えがある、こういう考えがあるとやっておりますので、そこにハイポリシーが出てくるゆえんがあるのじゃないかと実は思っておるのですが、正直に申し上げましてあまり出てこないのですね。そこなんですよ、問題は。ですから、税につきましてはこまかいいろいろな問題がたくさんあるのですけれども、それはもうわれわれ技師が一生懸命やりますから、どうか大きいところをひとつどかっと出していただきたい。これが逆に申し上げたいことであります。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 小林政子君。
  21. 小林政子

    ○小林(政)委員 東畑先生にお伺いいたしますけれども、納税人口の推移というものをずっとこのところ見てみますと、非常にふえてきているわけです。特に四十七年度の給与所得者の中に占める納税人口の割合というものは、四十六年度の七七・四%、これが一挙に今回は八二%ということで、上昇しておるわけでございますし、また納税人員も二百五十七万人の増、非常に急激な増加が見込まれるわけでございますけれども、私は、やはりこの問題は、何といっても物価上昇のもとでの一つの名目所得の増ということと、同時にことしの減税が見送られた、それと同時に課税最低限というものが非常に低い、こういう結果納税人口の増というものが出てきているのではないかというふうに考えるわけでございますけれども、税調等では、わが国の課税最低限については最近西欧諸国並みに到達したのだ、こういうことをおっしゃっていらっしゃるわけでございますけれども、私は、やはりこの問題については、最近の物価の激しい上昇の状況だとか、あるいはは不況の現況、こういった点等も考え、また蓄積水準国民所得水準が低いという点等からもこれを考えてみますときに、どうしてもやはり課税最低限というものはもっと引き上げをこの際行なうべきではないだろうか、それが必要じゃないかというふうに思いますけれども、先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  22. 東畑精一

    東畑参考人 小林さんのお話に一つも反駁するような頭を持っておりません。やはり課税最低限の問題は、サラリーマンの非常な激増といいますかを考えて、できたら、もっとやりたい、こう思っております。ただ、やり方につきましては、国の所得税も大事なことでありますけれども、地方の住民税につきましても同じように考えていきたい。現在は御承知のように、両者の最低がいまは標準世帯で三十万円くらいの差ですか、これを一方においてもう少しギャップができぬようにしていきたいと思っております。だから、四十七年度につきましては、住民税のほうへ重点をかけてその課税最低限を上げていく、こういうことに努力いたしたのであります。将来とも、別に西欧と一緒になったということはただ数字だけのことでございまして、日本全体の経済というか、そこにおける給与所得のウエートなんかを考えてみますと、課税最低限を引き上げるということができればやりたいと思っております。
  23. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 広瀬秀吉君。
  24. 広瀬秀吉

    ○広瀬秀吉君 東畑先生一つ伺いたいのです。が、きのう実はフランスの大蔵省のルビロア財務調査官主税局次長と一時間ばかりお会いする機会を得たのですが、その中で、付加価値税の問題が主として議論になったわけなんですが、私の質問に対しまして、彼が非常に強調しましたのは、実は先ほど竹本先生が言ったハイポリシーという問題と深い関係を持つどういう財政支出が国民大衆のために行なわれるかという問題、特に福祉、社会保障、こういうような問題の進みぐあいとこの税はやはり非常に関係があるということを強調されておるわけです。フランスでは一九三六年人民戦線内閣成立後にこの税制ができた。こういうことはあの高揚した人民戦線、人民の力、フロン・ポピュレールという問題のあとできておるということは非常に意味があると思うのですね。ところが、日本の場合には、最近健保法の、私どもは改悪だと言っておるわけですが、そういうようなことで、むしろ社会保障の見地から見れば、あまりにも保険財政のことばかり考えて、福祉というあるいは保障という面が、後退しておるのではないか、そういうような政策が行なわれておる。こういう状況で、なかなか雄大な、国民全部が納得するような、これならば少しは受益者負担、高福祉高負担もけっこうだというようなそういうものがない状況下において、やはり税制面で先走ってということではなくて、そういうものがない限りわれわれはこの税制を受けるわけにいかぬのだというような、税調としてそういう態勢でいっていただきたいというのが実は私どもの考えなんです。  あまりあわてないで、これはやってもらいたいということなので、そこでお伺いしたいのですが、物価の問題もこれあり、そういう福祉社会のビジョンというものが打ち出されていない。先ほど先生からの御注文がありまして、私どもも肝に銘じて、その問題は国会の場においても進めなければならぬと思っておりますが、そういうものが打出されない、構想されない段階で、税調の作業のほうは、あるいはまた大蔵省のほうは財源調達で一番安易な方法だというのでこれを進め、推進する立場だと思うのです。それをやはり有効にチェックをしていただくというようなことが税調としてたいへん必要ではないかと私ども実は思うわけですが、明年度何らかの形で付加価値税、全面的ないまEC諸国でやっているような形にならないにしても、初期のフランスの付加価値税の、段階的にだいぶ来ておりまするけれども、部分的なものでも、顔を出すような、そういうような方向にまでいく可能性があるのかどうか、こういう点について一点だけお伺いしておきたいと思うわけです。
  25. 東畑精一

    東畑参考人 これはまだわれわれのほうで一度もやらぬものですから、どうなるかということでありますが、しかし、できたら一般消費税という形のものに少しでも足がつくというのですか、ということをやられたらやりたいと思っているのです。ことしの十二月までにならぬとわかりませんけれども、私はそういうふうにやりたい、こう思っております。それはもちろん付加価値税という非常な抽象的な広いことでありますが、それの一段階になるかもしれません。
  26. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 藤井勝志君。
  27. 藤井勝志

    ○藤井委員 最初東畑先生に御質問をして、あと東畑先生、どうぞもう質問は終わりましたので御退席願うとして、あとお二人の先生方に質問さしていただきます。  第一は、最近自民党の有力な国会議員である大平さんから、五千億くらいは年内減税、そして景気の立て直しという、こういったことが新聞を通じて発表されておりますが、私も実は基本的にこの考え方に、五千億がどの程度になるかは別として、ともかく日本経済が、現在GNPまきに二千億ドルという、これはちょうどアメリカの昭和二十六年前後ですかの経済力になっておる。あの当時アメリカは独力で海外に対して戦後の復興と安定のために努力した。こういったことを考えると、私は積極的に日本財政経済規模を拡大する、こういったことは、この際従来とかく国際収支が赤字だ赤字だということだけに明治から今日ずっと来たこの一つの発想を、これをまきに転換をして、思い切って減税をやる。減税財源は起債にたよっていいではないか、こういう考え方を持つのですが、これに対して東畑先生並びに内田先生稲葉先生ですね、東畑先生のお答えが終わったあと、ひとつ御教示願いたい。  それから第二は、これは東畑先生に、このきょうの議題とはちょっとそれまして恐縮でございますけれども、物品税というものが何ら税制調査会において審議されておらないというこの問題について、もう五年以来全然見直しされておらぬということ、これは消費生活が生活の向上とともに非常に変わってきている。たとえば電気製品あたりはもう生活必需品になっておる。ところがどうも物品税のあり方というのは、やはりぜいたく品であるというような考え方税制が組み立てられておるというふうに思うのです。そういうことに対して、この生活環境の変化に対応して物品税というのはひとつ洗い直しをすべきではないか。最近今度は非常にあとの始末が困るような品物をお互い消費生活に相当取り込んで非常に困っているという、こういったことはやはりある程度その使用にブレーキかけるという意味と、そのあと始末の費用をその品物を購入する人が負担をする、こういったことからも、また新たな物品税の検討が必要ではないか。こもごも世界情勢の大きな変化に対応して、五年もそのままになっているということはよろしくないじゃないか。また半面耐久消費財というのを国内で大いに需要の拡大をはかるという当面の景気浮揚対策からいっても必要じゃなかろうか、こう思いますので、まず物品税について、これは東畑先生ですね、ひとつお答えを願いたい。ほかの問題は三先生からお答えを願いたい、こう思います。
  28. 東畑精一

    東畑参考人 最初の御質問でありますが、これは財政支出の大きな問題になると思います。お隣の内田さんのほうがいいお答ができると思いますのでそちらにまかすということにいたしまして、物品税につきましてはお話しのとおりの点が非常に多いと思います。約五年間わりに固定してとっております。新商品が非常にできておる。類似の役割りを持っておるにもかかわらず、片一方はかかるが片一方はかかってないということがありまして、非常な不公平が出てくる。これは確かなことです。私は検討すべきであろうと思います。全面的に一ぺん検討し直すということであります。  それからもう一つの点は、おっしゃる点非常に私は賛成なんですが、単にぜいたく品にかけるというのは、昔の貧乏な時代の話なんですよ。わが国が非常な貧乏な時代の話が今日頭の中に残っておるという点がなかなかありますが、それをまず蝉脱しなければならない、こう思っております。やはりぜいたく品というのは、いまの現代からいえば数も少のうございますし、あっても量は知れているのですね、これは。それよりも商品のほとんどすべてというものが大衆商品になっちゃってきております。ぜいたく品だからかけるという問題じゃなしに、国の財政というものをどういうように考えるかとか、税制をどういうふうに考えるかという点から物品税も考えるというのが天下の大勢じゃないか、こう思っております。いまたしか六十九品目でしたかあるというのです。見てみますとある意味では非常にこっけいなことがあるのです、キリのたんすは税がかからぬとかね。そういうこともありまして、大衆課税ということばは悪いのですが、大衆品というものがつまりわれわれの頭にある。それが新時代の問題じゃないかと思います。国を背負っているのはもう大衆なんですからね。これは所得税でも何でも全部そうなんで、大金持ちはたくさん取っておるというが、全部取っても所得税の額は知れているのです。そういうことがありまして、思想としてはどうしても大衆商品といいますか、それについて考えたい。それに公平か不公平かという問題ももちろんあります。考え方はそういうところにあるのじゃないかと思います。
  29. 内田忠夫

    内田参考人 財源の問題あるいは公債発行の問題でございますが、これは原則としては現在の財政法できめられております建設公債の範囲内でということは全く形式論理的なものでございまして、実質的にはあまり意味がない。しかしながら実質的に考えていきます場合に、公債発行が持っておりますいろいろな効果、たとえば需給バランスにどういう影響を及ぼすか、あるいは資源配分に対してどのような効果を持つか、あるいは個人所得の再分配という効果を持ちますので、貧乏人から金持ちへの所得の移転が生じないかどうか、さらには非常に重要なことは、そういうことを国会におきましてちゃんと節度のある形でチェックできるかどうか、こういうことが保障されましたならば、私は公債発行に関して形式的なワクは設けるべきではないというふうに思います。
  30. 稲葉秀三

    稲葉参考人 簡単にお答え申し上げますと、当面の景気対策とか、また最近の金融事情から申しますと、さらに減税をすると同時に公債を発行していく、こういうことによりまして日本経済の浮揚効果はさらに高まっていく、こういうふうに思います。  ただ、私は直ちに五千億の減税ということに同意しかねる。こういうふうに思いまする一つのゆえんのものは、最近、日本経済の姿というものがいま大きく変わりつつあるのではないか。GNPもおそらく、二千億ドルと先ほどだれかおっしゃいましたが、昭和四十七年度で三千億ドル見当になるのではないかと思います。一人当たりの国民所得も二千三、四百ドル、こういったような形になってまいります。そういうことからいたしますと、どうしても私たちはここで環境整備ということに対しまして、非常に抜本的な措置をとっていく必要があると思います。いま過去一年間、そういったような問題を専門家の方々と討議をきしていただいた次第で、まだ具体的な結論は出かねるわけでございますけれども、そういったようなことを今後どうしてもしていかねばならぬとなりますと、民間の支出もそれに対して必要でございますけれども、国の支出というものも非常に大きな形になる。そして財政日本経済を引きずっていく割合、それはさらに高まっていく、そしてそれに対しまして、内田先生が先ほど申されましたように、節度のあるふやし方、減らし方というものをどのようにしていくのかということが必要だと思います。  そういう観点に立ちますと、私は財政主導型に漸次日本はなっていかざるを得ない。大きく経済を引っぱっていかねばならない。こういう観点からいたしますと、むしろ思い切ってさらに福祉国家に前進をしていくということから申しますと、過去の中央とそれから地方におきまする比率を思い切って洗いがえをしていただく、そしてさらに相当大きな支出というものをひとつやっていく、そしていろいろな情勢を見きわめながら、公債を弾力的に発行して調整をしていく、こういう措置が必要だと思います。  やはり長期的に税を安くしていくという形はどうも日本としてはなりにくいのではなかろうか、こういうふうに考えますので、短期的な対策と中期的、長期的な対策ということになりますと、私は減税のしっぱなしということはインフレを刺激するということに結局なってしまう、こういうふうに思いますので、必ずしも同意をしかねる、こういうことを申し上げたいと思います。
  31. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 東畑参考人には御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。どうぞお引き取りになってけっこうでございます。どうもありがとうございました。  質疑を続けます。佐藤観樹君。
  32. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 内田先生にまず、先生がお話なされた第三点の問題と第十点の部分についてお伺いをしたいと思うのです。  第三点でございますけれども、税収というもの、あるいはその景気動向に伴って税制と申しますか、税率というものを変える。これは非常に純経済学的に言うと、確かにそれがそのままうまく利用できればそれにこしたことはないと思うのです。ただ、何と申しましても、景気というものは、いいなと思ってある程度押えますと、これが押え過ぎて、それで終わってしまったときに今度は実はもう過ぎてしまっているという、非常に財政支出面からいっても、景気が悪いからといっててこ入れをし過ぎて過熱をきしてしまう、そのタイミングが非常にむずかしい問題、その裏腹が私は税制との関連の問題だと思うのです。先生が第三番目に言われた問題でございますけれども、税収入というものが景気動向に従って表示が予算の中でうまくできるようにされるべきであるというお話でございますけれども、これは具体的にどういうようなやり方をすればそういう税収入というものが予算あるいは景気動向に伴って表示できるのか。先生はお時間がなかったものですから、非常にはしょった御説明になっていると思うのですが、その三番目に言われた内容についてもう少し詳しく御説明を願いたいのですが。
  33. 内田忠夫

    内田参考人 現在の予算形式というのは、御承知のように、明治の初めにできましたものをずっと踏襲しております。ところが、その後経済分析というものが非常に発達しておりまして、特に政府経済活動に及ぼす影響というのは当時と比べると飛躍的に拡大しております。これに応じまして経済学の分野におきましては、どのような経路を通りまして政府経済活動が民間経済活動に影響するか、逆に民間経済活動が政府の収入その他に対してまたはね返っていくかということにつきましては、かなり進んだ分析ができるようになっております。しかし、そういうような分析を生かすような形で現在予算形式というものが組まれておりません。このことは、たとえばよく一般会計の伸びが幾らだということが議論になりますけれども、しかしながら、そういうこと自身が重要なのではなくて、そういった一般会計におきます財政の支出あるいは財政の収入が経済実態とどのように関係するかということが、問題でございます。  ですから、一つの例を申しますと、たとえば公共投資を行ないました場合に、それがほとんど土地の代金の収入に入ってしまう。こういうようなことは、実は景気振興というようなことから申しましても、効果がないということでございますし、あるいは予算の表示が景気動向との関係において不的確であるということのしるしであるわけです。実際には、もしそういうことがありますならば、土地代金を抜いた形で公共投資ということをはっきりと表示すべきであります。そういうことを含めまして、現在つくられておりますこの予算のいろいろな形式、これをもっと実態経済と的確に結びつくような形に直していくということが急務でございまして、この点につきましては、たとえばアメリカはかなり進んだ段階に来ております。
  34. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 先生の前半の部分については私も理解できるのですが、後半の具体的な、じゃわれわれの審議する場合にどういうふうになるだろうかということになりますと、どうもその具体的な部分がわからないのです。私の不勉強で申しわけないのですが、それでは先生、末尾に言われたアメリカの例というふうになると、どういうふうなやり方を具体的にしているのでございましょうか。
  35. 内田忠夫

    内田参考人 御承知のように、国民経済計算というのがございまして、これは経済実態の動き、特に経済全体の動きを表示できる非常に便利な形になっております。その中に政府の勘定形式というのがございます。しかしながら、そういう政府の勘定形式と、現在たとえば一般会計支出あるいは一般会計収入、それから重要なことでございますが、地方財政との関係、こういうものが的確な形で連結できるということにはなっておりません。したがいまして、そういうような経済分析に合った勘定形式と、それから予算目的のためにつくられております勘定形式、こういうものの接合ということをもっと積極的にはかる必要がございます。わが国におきましても、もちろん事後的にはこの間の両者の関係はつけられるようになっておりますが、重要なことは予算審議の段階あるいは予算作成の段階におきましてそういうことがしっかりとやられるということだと思います。
  36. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、先生が十番目に言われた問題ですけれども、この税率変更の問題については、以前私も法人税の問題で考えておったことがあるわけです。特に景気動向との関連ということになりますと、やはり法人税という問題がずいぶん大きな問題になってくると思うのです。ただ、私たちも、税制を論議しているときに、やはり納税者のほうの便宜ということも考えなければいけない。それはたとえば私なんか、サラリーマンにもっと必要経費をということで項目別にやるべきではないかと高木主税局長と話をしたことがありますけれども、しかし、それは大蔵省サイドから見ると、今度は納税者にたいへんな負担をかけるのじゃないかというような問題と同じように、税率変更の場合ですね、たとえば納めるほうの会社が、毎月毎月税率が変わっているということになると、一体どういうことになるだろうか。それから具体的に、たとえばいま三月に法人税を納めるというときに、七月、八月に税率が変わる、九月がまた変わる、十月が変わる、そんなに短くなるかどうかわかりませんけれども、ということになると、そこで税率を変えたということが、納税時期との問題からからみ合わせて、はたして景気変動税制というものはほんとうに結びついたことに具体的になるのだろうかということをたいへん疑問に思うわけなんです。どうも私自身もまだいろいろ認識が違っているところがあるかと思うのですが、その辺は先生、いかがでございましょうか。
  37. 内田忠夫

    内田参考人 率直に私の意見を申し上げます。  税率がある特定期間変わらないものであるという考え方は、現在の慣行に沿った考え方でございまして、必ずしもそういうような慣行をいつまでも守らなければならないということではないと思います。実際の問題といたしまして、いろいろな形での収入、これは企業の収入にいたしましても、あるいはわれわれの個人の収入にいたしましても、これは変動するのが普通でございます。したがいまして、そういう変動ということを特に景気変動との関係で調整しようと思うならば、原則としては、税率はむしろ伸縮的に変化できるのが望ましいのであって、固定しているほうがおかしいというような考え方を私は持っているわけです。  で、その裏におきましては、たとえば景気対策におきまして、これまでは公共投資支出を使えということがあったわけですが、これはわが国の経済がこれまで行なってまいりましたような運営から振り返って考えてみてわかりますように、非常に失敗しているわけです。景気がよろしいときに公共投資を減らして、悪いときにはふやす。これは公共投資を景気調整に使うという意図からだったと思いますが、その結果は、結局、公共投資不足、しかも能率の悪い公共投資ということを実現しております。そうであるならば、公共投資はもっと着実に伸ばす。しかしながら、財政景気を調整できる面におきましては、税率に対して弾力性を持たせる。これが私は現在一応原則的に同意されている方向ではなかろうかというふうに思います。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その原則については先生、私もわかるわけなんです。その際に、実際の予算をつくるときには一年周期で、一年十二カ月でつくっているわけですね。ところが、実際には税収の伸びその他のことがございまして、事実上は、年二回予算を組んで、大体七月か八月になると補正予算を組むというのが通例でございますから、事実上は二回予算を組んでいる形になる。ですから、先生が言われるように、確かに景気変動とあわせて税率が変えられる、あるいはそれが景気を安定的なものにしていくためには非常に大切なことだと思うのです。  ただ、それではひるがえって具体的に考えた場合に、関税ですね、貿易の関税なんかの場合には季節関税というのがあって、四月からたとえば八月ぐらいまではどれだけの関税と、入ってくるものによって季節関税というものがあるわけですけれども、こういうふうに明らかに初めから何月から同月まではどれだけの関税、何月からどれだけは他のパーセンテージということが年間を通して初めからわかっているならいいけれども、景気変動のように、非常に分析がしにくいものについて税率を変えるということになると、これは公定歩合の引き下げじゃありませんけれども、きょう以後は公定歩合はこれだけ下がるというようにはっきりしているものならまだしも、その景気動向という非常につかみにくい部分によって税率変更されるということは、先生の言われる基本線はわかるのですが、具体面になると、はたしてどういうことになるだろうかということを非常に心配するわけなんです。そのあたりは先生どの辺までお考えなのかということをお伺いしたいわけなんです。
  39. 内田忠夫

    内田参考人 この景気調整ということが政府の面からうまくいくためには、先ほど御指摘になったようなタイミングが必要なわけです。したがいまして、タイミングよく行なうということが一つの重要な要件になるわけでありますが、その場合に一番よろしい方法は、自動的にタイミングがとれる、たとえばある信号がございまして、その信号が赤あるいは青というふうに変わったらそれに応じて税率変更していくというような一つの方式ができていれば一番よろしいわけです。ただし、これについてはいろいろ問題はあるかと思います。  それからもう一つは、自動的にやらないで意図的にやるということなんですが、その前提には、先ほど私が申しましたように、十分な景気動向に対する調査機能、あるいはその機能を生かすような弾力的な体制ということがあるならば、そうでない場合に比べましてはよりよい調整が行なわれるのではなかろうか。ただし、御指摘の納税者の立場からいたします非常に不確実な事態の発生ということは、これは問題の性質が、全体の経済の調整ということになりますと、ある程度やむを得ない面が出てくるということは、率直に認めなければいけません。したがいまして、そういう面における不確実性を減少きせるという意味でも、私が申しましたように、政府の段階で行なわれます政策が十分に国民の納得を得られるように、結局、知る権利を満たすような形でPRがいつも行なわれる必要があるだろう、このように思います。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まだまだ先生にお伺いしたいのですが、時間も迫ってまいりましたので、稲葉先生にお伺いいたします。  実は私も土地税制について、あるいは土地問題について非常に興味を持っているわけなんです。きょうも実は順番からいって、私も土地税制についてこのあと大蔵省とも審議をすることになっているわけなんですが、たいへん興味を持って先生のお話を聞かせていただいたのです。まず、先生も言われていましたように、土地問題というのは、私は税制だけではどうにもならぬと思うのですね。先生も審議会の中で、この土地税制をつくられたお一人でございますので、その面では、先生が最終的に、結論的に言われたこと、私、わからないわけではないのです。今度の所得番付を見ましても、一番の方、あるいは百人中の九十五人までが土地を譲渡した収入になっているという面では、確かに土地供給させたという面では、今度の土地税制臨時的な土地税制というものが効果をそれなりに発揮したと思うのです。ただ、問題は、土地供給されたけれども、それが、では普通の民間住宅用になったかならないか、ここが一番問題なのであって、そこから見ると、残念ながら結論は、なっていないと思うのです。問題は、土地供給された、しかし、その買ったのが大手の不動産業あるいは金融業、そういう民間の大手のところにたまってしまって、最終の住宅需要者まで行っていないということが問題だと思うのです。その面で、これは私、冒頭に申し上げましたように、税制だけではどうにもならぬ。そういうふうに税制によってプッシュして出てきた土地というものを民間の最終需要者まで行かせるようにしなければいかぬと思うのですね。  そこで、先生にまずお伺いをしたいのは、あくまで税制というものは補完的なもの、あるいは誘導的なものだと思うのです。私が思うには、土地開発公社のようなものを日本的な大規模な形でつくって、ある程度ここを通さないと、公示価格で売らないと売買ができないというようなところまでいかないことには、この土地税制というものは生きてこないと思うのですね。その点、まず税制だけではできない、税制というのはあくまで補完的なものである。では主体は一体先生の頭の中でどういうふうになさっていこうとされているのか、その点はいかがでしょう。
  41. 稲葉秀三

    稲葉参考人 先ほど時間がございませんので、やや簡単に申し上げましたが、私はやはり根本的な解決策というのを進めるということはなかなかむずかしいと思います。しかし、段階的に土地供給を増加する、また価格をでき得る限り抑制をするということについて、もっとはっきりしたステップをこの際お踏みを願う必要があるだろうと思います。  その一つは、先生が先ほどおっしゃいましたように、確かにこの税制効果が出まして、土地供給は増大をしたんだけれども、それが庶民の土地になっていない、こういったような点をどのように是正をしていくかということになりますと、それを税制でやるということはなかなかむずかしいと私は思います。したがって、一応参考的な意見と申し上げましたのは、ある一定量大きく土地をお買いになった法人については、それの何%かはもっと庶民用の住宅にいくように勧奨するとか、場合によっては法的な措置をとっていただく、こういったようなことを進めることによって庶民的なものをふやしていくということは必要じゃないか。  それから第二の手段といたしまして、やはり補完的にその土地保有課税といったようなものが実は臨時措置と並行してとらるべきだったんですが、それがいろいろな都合でなかなか進んでいないんですが、むしろ国会の決議でそういうこともやりなさいというふうに、せめて大蔵委員会では議をまとめていただきたいということが第二点でございます。  それから第三点として申し上げたいのは、昭和四十五年の八月の地価対策閣僚協議会の決定でも、その土地の仮需要の抑制ということにつきまして、むしろ実態をできるだけ調べて、そうして投機か投機でないのか、また、ほんとうデベロッパーが善意でそういうふうなことをおやりになっているのか、それとも値上がりを待つために持っていくのか、そういうことについて実態をはっきりしろ、こういうことをおきめになっているわけです。ところが、現在になりましてもそういったようなことがなかなか結果として出てきていない、こういうことではやはり困りますので、ひとつ今度は一年後までにせめて実態がどうなっているかということを、建設省さんが中心になられてひとつお調べ願う、それを国会にも御報告願う、こういったようなことをやはりおとりになるということは、事態の前進の上に私は役に立つのではないかと思います。しかし、それで土地問題が根本的に解決するかと申しますと、そうではございません。むしろ私たちはどうしてもいまの住宅用土地のほかに、今度は日本全体の土地の配分方法をどうしていくのかということまで構想していかねばならぬ。場合によりましては、大都市から工場をよそへ移転をするにはどうするのか、あるいは緑化を進めていくにはどうしていくのかということをしていかないと、どうもほんとうの福祉国家になっていかない。といたしますと、やはり全体としての土地をどのようにしていくのかということについてもっと政府が真剣な配慮をしていただきたい。そして、むしろいままでの住宅ということよりも、金はあっても土地がないからいろいろなことが進み得られないというのがだんだん加速をしていく現実であるとするならば、これも参考的な見解でありますけれども、むしろ土地入手の公社をつくる。しかし、それと並行して金融公庫や住宅公団もひとつそういうことを統合したような形になって、そして土地入手をする、そしてそういったようなものが、将来日本全体について公示制度が行なわれていくとするならば、やはり個人が買うよりはそういうところが買って、それを開発していくとか、あるいは良心的なデベロッパーに売るということになれば、事態は相当進展をしていくだろう。  それからもう一つ大きな問題は、私はやはり農地の転用をどこいらまで全体の土地利用計画において認めるかという問題を、真剣にいろいろな角度から配慮をしていただかないと、実は根本的に問題は解決しない、このように思っております。しかし、これは経済的にもまた地域的にも非常に大きな問題でございます。先ほど東畑先生がおっしゃいましたが、私、過去一年間、今度は新しい経済社会発展計画のやりかえの研究の仕事を担当してやらせていただいているわけでありますが、産業立地の問題、住宅の問題あるいは公害対策の問題、交通対策の問題で一つ大きな問題に私たちが逢着いたしまするのは、土地を一体どのように私たちが利用していくかというやり方であります。そういうことにつきまして政府部内の抜本的な体制がとられる、こういうことが必要であります。   〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  またもう一つ指摘したいのは、最近のようにお金が余ってまいりまして、そのような結果として株と土地のほうへお金が流れていく、それがやはり地価をつり上げているということになっておりますので、むしろ金融政策上の配慮といったようなことをどのようにしていただくのかということをも一つ進めていただきたいと思います。
  42. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに先生言われるように、建設省においても土地の移動がではどういうふうに行なわれているのかというのは、たいへん私も驚いたのですが、やっていないのです。調べていないのです。これは事実だと思うのですが、ことしからやるということですので、その点はそれでいいと思うのです。先生とそのお話をしてもしようがありません。貴重な時間でありますからしようがありませんが、ただ、先生が言われた保有課税を強化するという問題、いわゆる問題になりました宅地並み課税の問題ですが、それにしてからも、たとえば宅地並み課税をして農民から農地を手放させたとしても、それは今度の関兵さんですかの問題と同じように、民間デベロッパーなり不動産業なりあるいは大手の銀行なり、そういうところに全部買われていってしまうのでは、これは私は結果は同じだと思うのです。ですから、そういう面で保有課税というものもちょっと考えてみなければいかぬじゃないかという気もするわけです。  それから、私は、現在やっている土地税制臨時土地税制について、いわゆる分離課税の問題ですけれども、これが今度の所得番付の問題からいろいろ考えてみますと、どこに売っても、土地を売った方は分離課税になっているわけです。これはやはりちょっと矛盾があるのではないか。これは最終需要者に売る場合あるいは土地を公共用地なんかに収用される場合、これは分離課税でいいと思うのです。ただ、大手の不動産とかあるいは金融業とか、そういうところの最終需要者じゃないとみなされる者に売った場合には、これは総合課税にすべきじゃないか。逆に、法人土地の売買にしましても、これは先ほどの資料の問題とも非常にからんでくるのですけれども、法人の場合には分離課税にして、そして分離課税にしますとそれだけ税務署でわかりますから、統計をつくるのがつくりやすいという利点があるのと同時に、こういう明らかに投機的と思われるものについては法人税率をかけるというようなことを考えるべきではないか。現在の分離課税でもいろいろ矛盾が多いのではないかという気がしているわけですが、その点はいかがでございましょうか。
  43. 稲葉秀三

    稲葉参考人 確かにそのような点が存在をしていると私は思います。ただ、いまおっしゃったような方向へ歩むことによって土地供給が円滑になるかどうか、またそのほかの措置とのバランスがとれるかどうかということが一つ問題でございます。  したがって、私個人が申し上げたいことは、たとえば法人のそういったような用途に対しまする譲渡法人税額につきましてはある一定の付加税をかけるようにするとか、そういったようなことも必要で、この点も私は法人入手をした土地ほんとうに建てるところにどのように向いて、そして保有しているところにどのように向いておるという実態をやはり明らかにするということが必要ではないかと思います。そして、税の均衡といったようなことから申しますと、私自身は今度の臨時措置を五十年を待たずに廃止をしてしまうということは、むしろ土地供給に対しましてまたマイナスであり、かえって土地値上がりを促進するということになるというふうに心配をしているのでございまして、そのほかの措置関連をして実態調査をして、そして今後、四十六年にあらわれました状況がないように、場合によっては付加税を課するといったような措置をおきめ願ってもけっこうではないかと思っております。
  44. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 先生が言われた公示制度の問題、これなんかにしても、いろいろ考えていくと、いわゆる公示価格を上回ったものに対して、その額に対しては一〇〇%たとえば税金をかけるといったやり方も一つ考え方としてあると思うのです。そんなような問題もまだいろいろお伺いしたいのですが、残念ながら時間でございますので、たいへんありがとうございました。
  45. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 貝沼次郎君。
  46. 貝沼次郎

    貝沼委員 初めに内田先生にお尋ねをいたします。  先ほどのお話の中で、景気動向を見るのに政府のみでなく民間でも見る体制が必要である、その結果は公表されるべきであるというような話があったと思いますけれども、こういうような体制というのは私も必要だと思いますけれども、先生は具体的にはたとえばどういうような形のものをお考えでこういう意見をお持ちなんでしょうか。
  47. 内田忠夫

    内田参考人 政府に関しましては、毎年年末及び年央におきまして発表されておりますが、それとほとんど同時期に、現在のところ各民間の金融機関あるいは調査機関が景気動向というのを発表しております。形の上ではこのように民間政府が同時に発表して、そして国民にいろいろな情報を提供するということになっておりますけれども、しかしながら、その景気動向の分析のやり方というものをよく検討してみますと、端的に申しまして、たいへんやっつけ仕事的なものが多い。つまり、そういうものを参考にいたしましてほんとう経済政策というものを考えていくようなしっかりした資料であるかどうかということにつきましては、たいへん私は問題があると思うわけでございます。現在、天気予報のためには非常に多くのお金、人員その他がかけられていると思いますが、経済予報につきましても、それに劣らない大きな人間あるいは資源というものが使われるべきではなかろうか、そうしてこういうものについては、ある場合には公的な資金で民間機関がそういうものを客観的にやってみる。そうしてお互いに景気動向に対する見通しを、単に発表するというだけでなくて、その間でまたディスカッションが行なわれる、そうしてお互いに見通しの違うところ、それが違ってくる理由、そういうものについて詰めた議論が必要である、こういうふうに考えております。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点は、議会専門家委員会のようなものが必要ではないかという御意見があったようでありますけれども、これは具体的にどのような発想のもとにあるのでしょうか。
  49. 内田忠夫

    内田参考人 この税制の問題といいますのは、ある意味では非常に技術的な問題でございまして、したがって、それだけに深入りしてまいりますと、いわば木を見て森を見ないというようなことになってまいります。そのためには、私の意見供述の中で申しましたけれども、ほかの経済政策あるいはその他のものとの関係を十分に考慮して税制あり方について評価すべきではなかろうか。そういう場合には、どうしても専門的な立場からの一般評価というものが必要になると思うのでありまして、その点から、私が提案いたしました議会内における専門家の会議といいますものは、単に税制だけではなくて、税制を含めましたいろいろな総合的な経済政策検討を行なうというような性質のものを考えているわけであります。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、円切り上げ後の日本経済というものは大きく性質の上で変わってきていると思いますけれども、今後はやはり国民福祉の向上に直結するような政策推進するためのいろいろの税制というものがなされなければならないと私は思います。こういうようなところから、あるいは先ほど内田先生のお話にもありましたけれども、増税、減税を含めての御意見があったわけでありますけれども、政策的に今後増税あるいは減税を特に迫られているようなものとしては、大体どのようなものが考えられるとお考えでしょうか。
  51. 内田忠夫

    内田参考人 本日は景気変動税制との関係において意見を求められましたので、それに限りまして私、意見を申し上げたわけでありますが、いまのお話で、国民福祉との関係あるいは為替相場変更との関係ということになりますと、私の意見は、これはむしろ景気対策という意味ではなくて、国民生活の充実あるいは経済構造の変化というような形で税制をもっと利用すべきであったというふうに思っておりますし、いまでももっと利用すべきだというふうに考えております。しばしば、円切り上げによりまして国内が不況になる、したがってその対策として減税を行なうというふうに考えられておりますが、しかしながら、ほんとう趣旨は、円切り上げによりまして日本経済の持っております力というのが国際的には非常に高い、あるいは逆に申しますと、その高い力というものが国民生活の犠牲の上にある程度築かれているということを是正するための減税が必要でございまして、これは景気がいいか悪いかということと、極端に申しますと、関係ございません。したがいまして、八月十五日、ニクソン声明が出ました段階におきまして直ちに所得税減税というものが大幅に行なわれるということが実は私は必要であったと思いますし、しかも現在の状況を見てまいりますと、単に景気が悪いということだけでなくて、やはりニクソン声明以前に存在いたしました日本経済の体質というものもまだそんなに大きく変わっておりません。したがいまして、この際におきまして所得税減税ということはきょうからでも必要であるというふうに考えております。
  52. 貝沼次郎

    貝沼委員 政府は高福祉高負担ということをいっているわけでありますけれども、この高福祉を実現するためには、やはり財源の調達というものが大きな問題になってくると思うのでありますけれども、今後財源の調達ということを考えた場合に、どういうところに力を入れるべきとお考えでしょうか。
  53. 内田忠夫

    内田参考人 まず、この財源の調達というのは、何か必要な場合支出を行なうためにお金を持ってこなければいけない、こういうことではなくて、財源を調達するしかたが経済の状況にどういう影響を及ぼすのかということが一番中心だというふうに考えます。先ほど申しましたように、需給バランスの問題、あるいは資源配分の問題、さらには所得の分配の公正化の問題、そういうものとの関係において財源調達を考えるべきでございまして、支出に見合って財源をどうするかというような考え方は、私はとらないわけであります。  しかしながら、現状におきましては、特にわが国におきまして、公共投資が不足しているというような状況がございます。このための費用をどういう形で捻出してくるか。これにつきましては、もっと公債を活用すべきである。単に景気が悪いからそうするということでなくて、一般的にそのような原則を採用してよろしいかと思うわけであります。  と申しますのは、たとえば公共投資というのは、ことしだけでなくなってしまうものでなくて、ずっと来年、再来年、長い間その効果を発揮いたします。その効果はあとの世代も十分に享受をするわけでありまして、それに対しての負担というものは、後世の世代も十分にになうべき義務を持っているかと思います。  そういう観点から申しまして、特にこの公共投資を充実していくということから申しますと、公債発行ということはもっと積極的に利用されてよろしいというふうに考えます。
  54. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、ずっと言われておることでありますけれども、国民税負担に対する不満というもの、不公平であるという不満が非常に多いわけであります。この不満の中身を見ますと、税制上の不公平なもの、それからさらに課税所得の把握率が異なるために不公平であるということ等があると思いますけれども、こういう問題に対して、今後どういうふうに解決すべきとお考えでしょうか。
  55. 内田忠夫

    内田参考人 御指摘のように、税制の持っております大きな目的一つに、所得分配の是正ということがあるわけであります。それによりまして公平を実現化する。しかし他方、税金につきましては、いわゆる能力説というのがございまして、能力に応じて支払うということがございます。能力に応じて支払うということになりますと、真の意味における付加価値税というのがその最も端的なあらわれだというふうに考えてよろしいかと思います。  この場合、問題なのは、税がかかる以前におきます所得分布の不平等、こういうものが現在の社会において存在するという点でございます。これを、あとをしりぬぐいの形で税制で始末するということはもちろん必要ではございますけれども、もう一歩進みまして、税をかける以前において発生いたします所得の不平等分配、これを是正するような何らかの社会機構の変化というものが、私はまず第一に必要ではなかろうかというふうに思うわけです。こういう点で、現在賃金が平等化する傾向がある、あるいは賃金格差がなくなる傾向があるということがいわれますけれども、この方向は逆転しないようにもっと進められるべきではなかろうかと思います。そういうような前提に立ちましたならば、一般消費税あるいは付加価値税の導入というのは、むしろ私は非常に望ましいものではなかろうかというふうに思います。  しかし、現状ではなかなかそのようにならないということであるならば、やはり先ほどから問題になっておりますような土地課税あるいは大きな収入に対する課税というものは、私はこの際もっと累進度を高めるべきである。そしてその分に見合って低所得層の減税をはかるべきである。税体系の累進性を現在よりもっと強めてもよろしいのではなかろうかと思います。  ただし、御指摘にありましたように、税がかかってまいります範囲が非常に広範なものでございませんと、一部の調整しかできません。したがいまして、きょう申し上げましたように、たとえば所得税で調整するというような場合でも、単にプラス所得税だけでなくてマイナス所得税、つまり標準課税に達しない人々に対してはお金を逆に政府が支払う、こういうようなことがあってもよろしいわけでありまして、そういう意味でのいろいろな検討の余地、及びそういう新しい制度の導入の余地は幾つか残されているというふうに考えます。
  56. 貝沼次郎

    貝沼委員 土地税制のことで稲葉先生にお伺いいたしますが、現在の土地税制昭和五十年までの臨時措置法になっておるわけですが、この五十年を過ぎた後、五十一年以降についてどうあるべきかということがもう検討されなければならないと思うわけでありますけれども、先生の率直な考え方、御意見というものはどういうふうにお持ちでしょうか。
  57. 稲葉秀三

    稲葉参考人 ちょっとお答えのしにくい問題で、と申しますのは、私たちは租税特別措置土地について行なえば、大体五十年くらいになりますと情勢が変わってくる、したがってその後におきましてはもとに返してもいいじゃないか、こういったような考え方から出発したわけであります。ところが、いまの状態から申しますと、必ずしもそういったようなところに帰着するというふうには思えそうもございません。したがいまして、五十年以降のあり方につきましては、むしろいまからどのような形でやっていくのがよいかということについて、もっと土地問題そのものを含めてどうしていくかという方針を確立すべきであって、税だけを五十年以降どうするかということはどうも本末転倒じゃないか、こういうふうに思います。
  58. 貝沼次郎

    貝沼委員 税制だけをどうするという考え方ではなくて、土地政策というものがいま予定どおりいっていないわけですけれども、土地政策というものが思うようにいかなかったという現時点において、先ほどからいろいろの先生から、たとえば公団の話やいろいろ出ておりますけれども、いますぐこうすべきであるというふうなお考えがありましたら、聞かしていただきたいと思います。
  59. 稲葉秀三

    稲葉参考人 それにつきましては、先ほど私まず申し上げましたように、保有課税の問題とかあるいは投機の実態をもっとはっきりするということを明確にするとか、そういったようなことをやはり進めていただくと同時に、各省特に建設省では、いま申し上げましたことと並行して、農地というものを食糧政策との観点において、あるいは農民のこれからのあり方関連をして、都市近郊及びそれぞれの地域において利用せしめるということに対して、どのように窓を開いていくのかという方針が一つ確定せられねばならない、このように思います。  そして、やや根本的な措置といたしましては、やはり公共的な組織が土地を持っていく、こういうことが必要だと思いますので、そういったようなことについて、もっと前向きの方向をとるように推進をしていただきたい、こういうふうに申し上げたいと思います。
  60. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 竹本孫一君。
  61. 竹本孫一

    ○竹本委員 内田参考人に三つほどお伺いしたいのですが、時間がありませんので全部一緒に言ってしまいますから、あとで適当にお答えいただきたいと思います。第一は、日本財政には長期財政計画というものが昔はありましたけれども、御承知のようにいまありません。これから福祉社会建設ということになりますと、公債の発行もあとで申し上げますが、いろいろそういう問題も出てまいりますので、何としてもこの辺で経済の総合計画について、いろいろ御意見もありますが、財政そのものに長期的な計画性がなければならぬだろう、こういうふうに考えておりまして、特に私ども、民社党でございますが、一定の福祉社会建設を五カ年計画としてこの間一つのビジョンを描いてみました。そしてそれを財政でききえていくためには大体二五%ぐらいの財政の膨張といいますか、拡大が必要であるというふうに考えておるのでございます。  そこで、先生にお伺いいたしたい第一点は、長期財政計画が必要ではないか。その場合に、福祉社会建設について先生は、経済の成長率、物価等も勘案をいたしまして、どのくらいの財政の成長率を考えておられるかということをお伺いいたしたいということが第一点。  それから第二点は、公債の発行でございますが、いろいろ税制改革をやりましても、なお福祉社会建設には公債の発行ということが必要になってくるであろう。私ども五カ年間で大体十五兆円というような考え方に立っておりますが、そうした意味で、先生は公債に対してどういう態度をとっておられるか、また、発行するとすれば、どのぐらいの規模を少なくとも五カ年間にお考えになっておられるだろうか。それに関連いたしまして、いわゆる建設公債市中消化という原則がありますが、これとの関連の赤字公債問題、それから日本政府一つの特色は、償還計画というのがほとんどないのですね。政府提案される予算等の書類を見ましても、何年何年に償還すると、こう一行書いてあるだけなんです。これは少なくともだれが考えても償還計画ではないと思うのです。そういう意味で、先ほどの長期財政計画との関連もありますが、これから公債発行が多くなればなるほど、償還計画というものはもう少しまじめな、計画性のある資金繰りの計画でなければならぬと思います。償還計画というのは、いまは償還という文字があるだけで、計画は全然ない。こうしたあり方について先生、どういうふうにお考えになるか。  最後に第三番目は、予算の問題が中心ですけれども、前向きに経済の総合計画、先ほどは経済の専門委員会のお話も伺いましたが、そういう前向きの計画をやる場合に、一つは、科学的管理、いわゆるPPBSといったような問題について、もう少し真剣に取り入れなければならぬのではないか。それからもう一つは、予算をあとからやるのに、いま御承知のように、会計法上の当、不当ばかり問題にしておる。しかし実際は、われわれが国の施策ということから考えますと、それがはたして能率的にその金が使われたものであるか、特に公益目的を持っておる予算の金あるいは財投の金が、ほんとうの意味でそういう公益目的を追求し確保するということに役立っておるかという、会計法とは違った、次元の高い再検討が必要であろうと思いますけれども、それに対するメカニズムなり制度のあり方なりについてのお考えを伺いたいのです。この間も、いま問題になっておりますが、開発銀行が三兆円ほど金を出した。それは一体、公益目的をはたして達したのかどうかという質問をいたしましたところが、開銀総裁の御答弁では、いろいろ金というものは、イヤマークはないのですから、あれこれ一緒になってやるのだから、それはどうかわかりません、こういう無責任きわまる答弁をきれたのだけれども、そういうことも含めて、もう少し財投にしても財政にしても、会計法以上の次元の高い再検討が必要ではないか。この三点について、時間もありませんからきわめて簡単でけっこうですが、お考えを承りたいと思います。
  62. 内田忠夫

    内田参考人 まず、長期財政計画でございますが、これは御指摘のように、経済総合計画の一環といたしまして必要なことは全く同感でございます。ただし、その場合には、国内問題だけではなくて、長期ということを考えますと、国際的に非常に大きな問題が生じてまいります。したがって、国際的な経済の動きの中における長期財政計画、こういうものがこれから本格的に必要になってくると思われますので、たとえば援助の額あるいは産業転換に関連いたしまして生じますいろいろな問題の処理、そういうものを十分に考えた上で計画を立てていただくことが必要であろうと思います。  それで、そういうことを考えました上での財政の膨張の規模でありますが、これは先ほど申しましたように、この財政の支出といいましても、単にお金を出すということじゃなくて、それが実需につながっていくということが必要でございます。しかし、そういうものにつきまして、将来、五年ぐらいの期間を考えた場合には、おそらくコンセンサスとして最低二〇%の拡大、これはどうしても確保しなければならないのではなかろうか、こういうような見通しが立てられると思います。そうしてそのもとにおきます経済の実質成長率はおそらく九%ないしは一〇%ということに落ちつくのではなかろうかと思います。  第二の公債発行の問題に関しまして、この公債の償還計画、こういうものが十分でないというお話でございますが、これは当然のことでございまして、わが国の場合にまだ本格的な公債時代というものを迎えておりません。御承知のように、アメリカあるいはイギリスにおきますと、国民所得よりも大きな額の公債発行がなされているというような現実もしばしば起こるわけでございます。したがいまして、わが国におきましては、公債の償還計画を含めまして、いわゆる公債管理政策というものが非常におくれております。この点は、しかしながら、大蔵省におきまして、このような公債時代に入ってくる一いま申しました毎年二〇%以上の財政が膨張することになりますと、おそらく竹本さんが御指摘になりました以上の公債が場合によっては発行されることになるであろう。そうしますと、この管理政策というものの重要性が高まってくることは御指摘のとおりでございます。  それから三番目に、支出されました金の効率的な使用の問題でございます。PPBSの手法といいますのは、これは一ころ非常に騒がれましたけれども、やはり実際に使ってみますといろいろ制限がある。そうしてその制限には、技術的なものあるいは実質的なもの、特にそういう評価をする場合にどれだけデータが公開できるかというような点がございます。したがいまして、必ずしも財政の金の使い道の効率につきましては、いわゆるアフターケアというのがほとんどなされていない状況でございます。予算の段階におきましては、非常に多くの議論がなされますが、実施された後におきましては、ほとんど御指摘のような会計法という形式的なものでしかチェックされていない。しかしながら、ほんとう財政が効率化をするというためには、このアフターケアこそ重要でございまして、これがわが国の場合に、銀行の場合でも、貸し付けした後におけるアフターケアが私は非常にまだ不十分ではなかろうかというふうに考えております。審査は非常に厳重にいたしますが、一度貸してしまえばその効率というものについてあまりチェックしない。ましてというと悪いのですが、政府レベルではそういうことが行なわれない。これはしかしながら、広い意味で責任体制というものを社会がどのような形で受け入れるかということでございまして、財政だけにこういう問題を期待するということはむずかしいかもしれませんけれども、しかし、少なくとも一つ言えることは、議会におきまして、その財政で支出されました金の行くえの追及というものをもっと真剣に取り上げていただきまして、そうしてそれを民間の協力あるいは場合によっては官庁の協力を得まして、十分に討議されていくならば、単に技術的なPPBS、そういうような手法によってその効率をはかるということよりも、もっと実質的なチェックが私はできるのではなかろうかというふうに考えます。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。終わります。
  64. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  65. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣は、前回私が当委員会で開発銀行に関する質問をいたしましたことは事務当局から御報告を受けておいでになると思いますけれども、この際ちょっと私は開発銀行の退職者あるいは出向者等の関係について少し申し上げておきたいと思うのです。  今度の開発銀行法の改正の中で、実は出資ができるということに法律が改められることになりました。この問題について私は、先般政務次官に、出資ができるという場合にはおおむね人を派遣するということになるのではないか、そのようなことが出資をするということで道が開かれることは適切でないので、この際出資をした当該企業に対して開発銀行としては天下るようなかっこうで人を出さないようにすべきだと思うがどうかというふうにお尋ねをいたしましたところ、原則としてそのように取り扱いたいという実は政務次官の御答弁があったわけでございます。私も実はその時点におきましては、開発銀行から融資先にどのような形で転出をしておられるかつまびらかにしておりませんでしたので、そのような答弁で了解をしておったわけでありますが、その後私の調査をいたしました結果、その次の委員会で開発銀行の総裁から御答弁をいただきました限りでは、実は特に職員の場合でありますが、職員のうち企業への就職をしておられる方が六十二名だと思うのでありますが、そのうちに実は四十五名も融資先に就職しておられるという事実が明らかになりました。これは私は一般的な取引の関係でいうならば、いわゆる不公正な取引に当たるように思えてならないのであります。もちろん開発銀行としては財政資金を運用しておることでもあるし、御答弁の中には、新しい企業でもあるから中立的な人間を確保してほしいんだ、こういうお話がありましたけれども、本来私は金融機関が金を貸したならば人を出さなければ監督ができないというのであれば、これはたいへんなことだと思うのであります。ですから、本来は金融機関は金を貸しても、あとはその企業のいろいろな報告を受け、必要によっては調査を行なって、自分たちが融資をしておる原資が安全確実に運営されておるということを確認するのが正常な金融に対する態度であって、金を貸したら必ずそこへ人を入れなければ、その貸した金の保全について不安があるなどというようなことでは、これは私は金融機関としての態度としてもいかがであろうか、こういう感じがいたしておるわけであります。  そこで、これらの問題について少し論議をしてまいったのでありますが、ちょっと政府に伺いたいのでありますが、政府関係金融機関の中ではやや開発銀行と似た立場にありますのは輸出入銀行でありますが、この輸出入銀行は一体その退職者はどのような形になっておるのかお答えをいただきたいと思うのであります。
  67. 近藤道生

    ○近藤政府委員 輸出入銀行の退職者につきましては、次長クラス以上の職員で延べ五十四名となっておりますが、そのうち融資先の民間企業に就職した者は九名でございます。役員につきましては退職者二十二名、死亡された方がほかに四名ございますが、延べ二十二名のうち融資先の民間企業への就職者は六名ということに相なっております。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、輸出入銀行のほうを伺いますと、五十四名中九名ということでございますから、約六分の一程度でありますから、これは私も常識的な措置であろうかと思うのでありますが、少なくとも試算をいたしてみますと、開発銀行の場合には、就職をした人たちの約七四%が融資先へ行っておる。これはいかように考えましても適当な措置ではないというふうに私は考えるわけでございます。そこで、ちょっと重ねて開発銀行にお伺いをしておきたいのでありますけれども、これらの融資先に転出をする時期でありますが、いま四十五名ぐらいおられるわけですが、この人たちが、融資をしたときに関連企業に出向という形にしろ転出にしろ行った人、それからその後に、かなり融資残がまだ半分以上あるというようなときに行った人、あるいは融資がほとんど返還をされているけれども、依然として融資は残っておるけれども量としてはもうたいしたことはない、こういうふうに大略三つに分けますと、どういう分布になっておるのか、ちょっと開発銀行のほうでお答えをいただきたいと思います。
  69. 石原周夫

    ○石原説明員 転出いたしましたときに残高のございます会社が、役員四名、職員二十二名、合計二十六名でございます。それから、転出をいたしました年度に、したがっていまの例には入っておりませんが、転出した年度に融資をいたしましたものが三十七名、それ以外は融資と関係がないと見ていいわけであります。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお答えがありましたように、融資をした年度に就職をした者が三十七名ということでありますから、言うならば、融資とその人が就職するのとがほぼ同一に行なわれておる。これなどはやはりいろいろ事情はありましょうけれども、私どもは、これを一般的に理解をすれば、開発銀行が、要するに政府政策目的に基づいて財政資金を貸し付ける、貸しつけるについてひとつ人間をそこへほうり込む。貸し付けるときと人間が行くのが同じであれば、これは企業側としては、それは事由はいろいろあろうと思いますが、私どもは客観的に感じる限り、これはやはり開銀の融資というものによって、企業側がある程度やむを得ずそれらの転出者を受け入れているのではないかという感じを持っても、これは私はやむを得ざる実情ではないのか。それが二、三の例にとどまらず、いまお話しのように、途中で行った者は二十二名でございますが、当初に行ったものが三十七名ということは、いかようにも私はこのような転出のあり方は、公正な転出だとは考えられないのでありますが、大蔵大臣のまず御見解をお伺いしたいと思います。
  71. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 開発銀行の役職員が民間企業へ転出する問題について、以前から御指摘があったことは十分報告を受けております。この問題は、かりに純民間資本の金融機関であっても、いろいろ問題があることでございますので、まして政府関係の金融機関の性格上、これは融資の公正というようなことから、これが疑われるようないろいろのことがあるということは、当然ある程度自粛すべき問題でございまして、私は御指摘の点、非常にごもっともな点が多いというふうに考えております。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとしまいのほうの声が小さ過ぎて、ちょっと聞き取れなかったのですが、もう一ぺんしまいのところを……。
  73. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、御指摘の点はごもっともであるというふうに考えます。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣も、私がいま問題を提起いたしましたことは、もっともだという御意見でありますから、これ以上にその問題について触れませんが、この際、ひとつ私はこれらの問題について提案をいたしたいと考えるわけであります。  そのことは、まず原則として、私が前段で申し上げましたように、開発銀行の融資をいたします場合にでも、特別に必要がない限りは、出向したり転出をきせないで、少なくとも正常な金融業務として開発銀行がこれらの融資に対して、その融資の安全なり保全といいますか、そういうものを考える場合には、十分ひとつ事情の報告を受け、調査をすることをもって、まず第一段階の処理をやるべきである。  さらに、しかし問題の性格上、やむを得ざるものであれば、原則として、しかしこれは出向者をもってひとつ処理をするということにしてもらいたいと思うのであります。何も私は開発銀行というのは、人間を出すために政府機関までつくっておるのではないと思うのであります。これは財政資金を適正に開発銀行法に基づき、あるいは政府政策決定に基づいて運用するために開発銀行はあるのであって、そこまで企業にまで入り込んで、そこで監督をしなければならぬというほどのことを開発銀行法はどこにも定めていないわけでありますから、その点はやむを得ざる場合は出向をもって処理するということを最小限ひとつ原則とするということにしていただきたいと思うのであります。  第三点に、しかしいろいろな事情のために、企業側のたっての要請があって、どうしてもいろいろな諸般の情勢から見て、いま私が申し上げましたような不公正な状態でないというふうに客観的にも確認をきれる場合には、転出をするということもあり得るかと思うのでありますが、この転出数については、これまでのように七四%も転出をするなどという非常識なことを取りやめて、少なくとも三〇%程度を限度として取り扱うという程度の歯どめをかける必要があるということを私は考えたい。その程度のことが行なわれるのでなければ、これは非常に重要な問題になるかと考えるのでありますが、この問題についての大蔵大臣の見解をひとつ承りたいと思います。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御指摘を受け、また御提案を受けたこの趣旨に沿っていくことは、私はいいと思いますので、そういうふうにしたいと思います。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣はそういうお話でございますが、開発銀行の総裁はいかがでございましょうか。
  77. 石原周夫

    ○石原説明員 ただいま大臣の御発言のございましたように、その趣旨にのっとりまして善処いたしたいと思います。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私が申し上げました考え方に大臣も了承していただきましたので、ひとつどうか今後も、開発銀行のこれらの問題については、このようなことで世間の批判を受けることのないようひとつ十分注意をして、今後の出向、転出その他の問題は取り扱っていただきたいということを強く要望いたしておきます。  最後に、これは大臣にも、この前おいでになりませんからやはり一言だけ申し上げておかないといかぬと思うのでありますが、これまで開発銀行の借り入れ限度額につきましては、資本その他の六倍ということになっておりましたのが、今回は二十倍ということに法律が改正されます。これまでは、一倍から二倍、三倍、四倍、五倍、六倍、こういう形できたと思うのでありますが、いま六倍ですが、それを一ぺんに二十倍にするというのは、私は、たとえそれが長期銀行法等の援用をしたとはいいながらも、これまでの沿革から見、たいへん不当な処理であるというふうな感じがいたします。そのことは、言うなれば国会で法案としての審議を避けるための方法としてとられたということは明らかでありまして、そういうことが行なわれるのは私たちとしてはやはり望ましくない。言うなれば国会軽視といいますか、こういうことが私ども非常に今度の法案の中で了解のできない点であります。少なくとも六倍からすぐまた七倍、八倍というのが問題があるというならば、私は六倍の次には十倍程度にするといって法案が出されるなら、常識的な措置としてやむを得ないと考えるのでありますが、二十倍にするということは、今後この倍率に関しては当委員会で開発銀行法の改正を行なうことはおそらくないであろう、こう私は考えるわけであります。大蔵大臣はこれについてどうしてそんなに非常識な取扱いで二十倍にすることにされたのか、この点についてひとつ率直な答弁をいただきたいと思います。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 前回の附帯決議の趣旨説明のときに、自己資本の五倍を六倍にするという改正案であるが、きわめて安易な御都合主義、便宜主義のそしりを免れない、こういう観点から根本的にこれを検討し直せということがこの前の趣旨説明のときになされたと思っておりますが、それによっていろいろ検討の結果、債券発行銀行は全部いま二十倍ということになっておりますので、これに合わせてこれもそのような改正をしたといういきさつだそうでございます。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 附帯決議には、いまあなたが読まれたようなことは書いてないのです。それは少なくともそういう余分のことばがだいぶ入っておるわけですが、そこで、私どもが附帯決議で求めたことは、要するにそういう倍率の問題というものを安易にやってはならぬということをそこで申したのであって、決してそういう五倍から六倍にということをやるのが適当でない、こう言っているわけじゃないのです。逆の話なんですね、附帯決議の趣旨というのは。私どもはそういう意味で附帯決議をつけたという考え方に立っておるわけであります。  それは理解のしかたが違うということになれば、水かけ論になりますからおきますが、それはおきますとしても、長期信用銀行の発券限度の問題と開発銀行のこのワクの問題は性格が少し違うのではないでしょうか。財政資金をこちらから持っていってそれによって処理をするということと、要するに市中から債券を発行して、その債券を発行したことによって融資活動を起こすということは、ちょっと話が違うのじゃないでしょうか。開発銀行が開発銀行債というのを市中に発行して資金を得ているというならば、これはまた長期信用銀行の例を見習うということもあり得るでしょうが、原資の出方は、これは全然違うのではないか。これは財政投融資として資金運用部資金が来ているのでありますから、ですから、そこの意味で資本に対する歯どめのかかっておる意味といまの長期信用銀行の債券発行限度とは、私はやや性格が異なるものだ、こう思うのでありますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題を検討しました銀行局からその点はお答えします。
  82. 近藤道生

    ○近藤政府委員 確かにただいま御指摘のように、債券発行銀行の限度と、それからこの開発銀行の限度とは趣旨が違うことは御指摘のとおりでございます。ただ根本的に検討をいたします場合に、何を基準にするかということでございまして、借り入れ金ということと債券発行ということでは、いずれも資金調達の手段という意味におきましては借り入れ金等の限度額を六倍から二十倍、貸し付け、債務保証の限度額を御承知のように七倍から二十一倍ということでございますが、そういう趣旨で借り入れ金及び債券発行、いずれも資金調達の手段といたしましては、一応これらの二十倍という横並びの水準を基準にして検討をいたしたということでございます。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 債券発行の際における資本の二十倍ということは、それ以上の債券を発行きせることについて、基準になる担保といいますか、その関係からそれ以上の債券を発行きせることは要するに長期信用銀行の運営上危険があるという考え方のもとに私は長期信用銀行法はあると思うのです。一体、開発銀行が資本と財政資金の借り入れとの関係で財政資金をたくさん借り入れたら、そうしたら、一体開発銀行というのは危険になりますか。資本とこの関係は私はいまの長期信用銀行の関係とは違うと思うのです。片や政府機関であり、片や民間の機関でありますからね。ですから、民間の機関である金融機関が安全に運営をきれるための限度としては二十倍というものを限度として考える。これは一つのそれなりの考え方でありましょう。しかし、開発銀行法でなぜその限度を設けてきておるのかというのは、いたずらに借り入れ金を多くして政策金融に名をかりて安易な金融をしてはならないぞということが私は立法によって規制をされておるもとではないのか。要するに国民が納得をする範囲の限度において政策金融を行なえ、これがいまの開発銀行法で資本の何倍ということを法律に定めた趣旨だと私は思うのです。  ですから、その点は長期信用銀行の問題と開発銀行の問題は全然私は次元の違う話になっておる。次元が違うものをすりかえて、たまたま似たようなものがあったから、それで二十倍ということでは、これはわれわれとしては納得ができないのであります。だからこそ一倍から二倍に、二倍から三倍にとやって、これを六倍まで持ってきた。この長い経過というものはそのつどやはり国会審議にって国民のこれは一つの国に委託をしておる原資でありますから、資金運用部の資金はいずれも国民の原資でありますから、その国民の原資であるものをいたずらにそこで使ってはならぬぞということで、私はこれを国会にかげて、そうしてその限度額、要するに貸し付け限度額というものは、借り入れ限度額がきまればおのずから貸し付けの限度がきまってくるわけでありますから、そういう考え方に基づいて私はこの法律が定められてきておる。それを安易に二十倍にするということは、まさにそういう意味での開発銀行法のこれまでの趣旨を無視して、要するに国民のそういう理解を得る道をふさぐことになる。安易に開発銀行が恣意的にこれらの問題の処理をすることを開発銀行にまかせるということになるのは、私は納得ができない、こう思うのであります。  大臣、いまの話について、もう中身の話をしましたが、あなたがこの問題についてどう考えるか、お答えをいただきたい。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は、この限度をきめるということですから、この限度内の運営というものは適切に行なわれるでしょうし、私は限度として他の機関との横との均衡をとったきめ方ということは別に問題はないのじゃないかというふうに考えております。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 限度のきめ方が、要するに長期信用銀行法というのは初めから債券発行の限度は資本金の二十倍ときめられておるわけです。これは最初から変更しましたか。
  86. 近藤道生

    ○近藤政府委員 長期信用銀行法制定当時から二十倍ということになっております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 開発銀行のほうは違うのですよ。大臣、よろしゅうございますか。第一点、違う。それが一つですね。  もう一つ、じゃちょっと開発銀行のほうにお伺いをしたいのですが、開発銀行法が制定をされてから今日まで、要するに資本に見合うものの増加というのは幾らから幾らになったんでしょう。
  88. 石原周夫

    ○石原説明員 いま手元にちょっと正確な数字を……。調べまして申し上げますが、大筋を申し上げますと、復興金融金庫ができておりまして、それを開発銀行が引き継ぎをいたしましたその額がたしか六、七百億であったかと思います。それに対しまして、御承知のような見返り資金というものがございまして、これの残高を政府が現物出資をされたわけであります。合計いたしまして二千三百三十九億というのが現在の資本金でございますが、復興金融金庫から引き継ぎましたのは昭和二十六年でございます。見返り資金の現物出資をいただきましたのはその翌年くらいであったかと思います。これは一回でなくてたしか二回くらいに分けてきたと思いますが、合計いたしまして二千三百三十九億円になりましたのは、二十七年度中にはその額になっておるかと思います。自後そのままであります。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 二千三百三十九億がもしふえないとしまして二十倍といったら幾らになるでしょうか。
  90. 石原周夫

    ○石原説明員 いまの二千三百三十九億に積み立て金その他の自己資金が入りますので、二十倍で合計いたしますと七兆六千百六十一億という数字になります。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの本年度の政府関係金融機関に対する資金運用部からの貸し出しといいますか、本年度幾らですか、政府関係金融機関全部で。
  92. 近藤道生

    ○近藤政府委員 財政投融資全体の数字で二兆四千三百五十二億円でございます。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 それは一体何と何ですかちょっと言ってください、政府関係金融機関としては。中身はいいです、名前だけ。
  94. 近藤道生

    ○近藤政府委員 輸銀、開銀、北東公庫、公営公庫、国民公庫、中小公庫、商中、環衛公庫、医療公庫、住宅公庫、農林公庫、沖繩公庫。以上でございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 現在十二の政府関係金融機関全部あげて二兆ですね。今度は開発銀行だけは七兆六千百六十一億円ことしから使えることになるわけですね。これはいまの財政投融資計画全体として見ても、このようなことが一体常識的だと大蔵大臣思いますか。今度の財投は全額九兆幾らですね。幾らですか、財投総額は。
  96. 近藤道生

    ○近藤政府委員 五兆六千三百五十億円でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 本年度の財投よりも、開発銀行という一政府関係金融機関がそれの五〇%増しというようなことで、そういう制度をつくるなどということは非常識だと思いませんか。大蔵大臣、どうですかこれは。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 だからさっきから申しておりますように、いますぐその限度に達するということはないので、限度として、この際改正しておくなら一般限度にならったところでやっていこうということであります。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この七兆六千百六十一億が実際の限度として役立つのは一体何年後ですか。
  100. 近藤道生

    ○近藤政府委員 この正確な予測は、いろいろな条件を当てはめませんと、なかなかむずかしいのでございますが、大体貸し付け額の伸びを年率一五%という前提で計算をいたしますと、おおむね六十年代ということになろうかと存じます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 政府経済計画でも、よろしゅうございますか、一番長いので十年じゃないのですか。一体十三年先のことをいまからやろうというのは、ちょっとこれも非常識なように思いますけれども、大蔵大臣、どうでしょうか。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえば長期信用銀行の二十倍なんというものはもう限度一ぱいに来ている。いずれは改正ということになるでしょうし、何回も改正するというよりも、これは当然年々大きくなっていくことはわかっておるのでございますから、限度としては一般と歩調をそろえた限度を設定しておくということは、そう不適当なことじゃないと私は思います。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、私さっき長期信用銀行の問題と開発銀行との次元が違う話をしましたね。それは大臣、理解されたのでしょう。要するに、長期信用銀行法でいうのは、債権者の安全と利益を確保するために資本金の二十倍というのをきめておるのであって、そのことと、開発銀行が資本及び資本準備金その他に対して何倍の借入金ができると法定しておるのとでは違うでしょう。開発銀行がそれだけしておかなければ、開発銀行がそれじゃつぶれるということですか。違うのじゃないですか、その考え方のもとは。それを持ってきていきなり、ただたまたま二十倍というのがあったからそれを利用したということでは、それなら要するに何も関係がなくても何でも持ってこれるわけですよ、そういうことになれば。  これは私はやはり立法というのは国民が民主的に納得をしてきめることであって、多数であれば何をしてもいいのだということにはなっていないと思うのです。少なくとも民主主義というのは、常識的な処理をするというのが私は民主主義の基本だと思うのですね。そうすると、さっき私がちょっと申し上げましたように、なるほど六倍の次は七倍ではたいへんだろうから、とりあえず十倍にするというのなら、これが三兆八千億ぐらいで、三兆八千億にしても相当、何年かいけますね。銀行局長、いまの年率一五%で伸ばしてみたら、三兆八千億になるためには何年かかりますか。
  104. 近藤道生

    ○近藤政府委員 計算をいたしてからお答え申し上げます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いたいのですけれども、いまの七兆六千億というものは、現在開発銀行が毎年内部留保ですね、資本準備金がふえておりますね。このふえてくるもの、過去のトレンドで積み増したものに対して二十倍ということになっているのでしょうね。十三年先に資本はまたふえるわけですね。資本準備金がどんどんつくられてくるわけですからね。十三年先における資本準備金と資本の合計は幾らに推定されているのですか、ちょっとお答え願いたい。
  106. 石原周夫

    ○石原説明員 先ほど申し上げました数字は、四十六年度末現在におきまする自己資本金総額をもとにして計算いたしております。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっといま過去における資本準備金の増加分を引き伸ばして、十三年のところまで一応かりに引き伸ばしてもらって、そこで二十倍にしてみたら一体何兆になるのか。十兆こえるのじゃないでしょうか。ちょっともう一ぺん試算をしてお答えをいただきたい。
  108. 近藤道生

    ○近藤政府委員 先ほどの計算でございますが、昭和五十一年ごろでございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのかりに三兆八十億ならば、五十一年といいますといまから四年先ですね。四年先までいけるのなら私はそれでいいじゃないかと思う。と同時に、四年先になれば、いま私が言ったようなあれでいきますと実はもっとふえるのですよ、これはいまの資本準備金が毎年四年間入ってきますからね。ですから、いま資本準備金のふえ方が年に二百五十億くらいですか、大体それくらいじゃなかったですか。そのくらいふえるなら、四年間で約千億です。その千億の十倍というと一兆円です。一兆円がその上に上積みされるわけですからね、だからもうちょっと先に延びる、四年が六、七年くらいになるのじゃないかと思うのです。   〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  だから、いまの二十倍というのは、十三年と言われたけれども、とても十三年じゃなくて、いまの資本準備金が入ってきたものに倍率がかかるわけですから、さらにずっと先のことになるのじゃないでしょうか。私どもがもうおそらく、ここにおられるみんながほとんど議員としていなくなったころにようやく次の回りがくるということじゃないでしょうか。まごまごしたらこれは二十年かもしれませんね。そうすると、たいてい二十年もすれば——私らもうすでに十五年もやっているわけですから、三十五年もつとめられるはずがないのですから、おそらくここにおられる皆さんがおおかたいなくなるのじゃないかと思うのですが、一ぺんちょっとそれを試算して出してみてください。
  110. 石原周夫

    ○石原説明員 現在の割合で自己資本、法定準備金、これが積み立てられてまいりますと、限度額にまいりますのは六十五年から六十六年くらいになると思います。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり私がちょっと申し上げたように、約二十年近くになるということです。大臣、どうですか、一体このようなことが常識的な措置として考えられますか。ちょっとひど過ぎるでしょう。これまでは大体二年か三年に一回ぐらいは限度を上げていった。それが多少問題があるというなら、私がさっき提案したように十倍にしたところでかなり先になるのですよ。六年か七年先になる。その程度が、少なくとも過去にやってきた経過、沿革から見ても常識的な処理と思いますが、どうですか大臣。これはいかにもおかしくはないですか。
  112. 近藤道生

    ○近藤政府委員 確かに、先ほど来御指摘のように、二十倍という数字自体については一種の腰だめと申しますか、特にはっきりした根拠がないことは確かでございます。ただ、それによりまして国会審議を軽視するというような意図はさらさらございませんので、これは先般も御答弁申し上げましたように、おそらくは、開発銀行につきましては従来とあまり変わらない頻度でまた御審議をお願い申し上げなければならないような事態になるのではないかということを、私個人的には予想いたしておるわけでございます。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 二十倍がいまおっしゃったように確かな根拠はないということになったのですから、大蔵大臣、これはこのままで通すわけにはいきません。そうなりますと、これはちょっと新しい問題ということになりますし、大蔵大臣も御答弁なさるのがちょっと問題があるようなふうでありますので、ちょっとこの際、委員長、どうですか、理事会を開いてこの取り扱いについて協議をお願いしたいのですが、委員長いかがでしょうか。
  114. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  115. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 速記を始めて。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題については、今後の国会審議を通じて政府においても善処されることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  117. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  118. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 本案に対し、自由民主党を代表し山下元利君より修正案が提出されております。
  119. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 この際、提出者より趣旨説明を求めます。山下元利君。
  120. 山下元利

    ○山下(元)委員 ただいま議題となりました日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、私よりその趣旨並びに内容について御説明申し上げます。  修正の案文はお手元に配布してありますので、案文の朗読は省略いたします。  本法案は、その施行期日を昭和四十七年四月一日とすることとして法文中に明記いたしているのでありますが、法案の施行期日もすでに経過いたしました事情から、この法案の施行期日を公布の日に改める必要が生じたのであります。  以上、各位の御賛成をお願いし、提案の趣旨といたします。
  121. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。
  122. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の通告がありますので、これを許します。広瀬秀吉君。
  123. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私は、ただいま議題となりました日本開発銀行法の一部改正に関する法律案に対し、日本社会党、公明党、共産党を代表して反対の討論をいたします。  日本経済は、今日まで戦後一貫して生産第一、輸出優先の政策のもとに高度成長を遂げてきました。この間、開発銀行の産業経済発展への寄与はきわめて大きいものがありました。しかしながら、昨年来のいわゆるドル・ショック、昨年末の国際通貨調整、円切り上げの段階を迎えて、産業経済成長のひたむきな成長政策に対し基本的反省を加え、いわゆる経済財政金融政策における発想の転換が国民的一大合意のもとに推進されなければならないこととなり、国民生活優先、福祉への転換が期待されているのであります。  今回の開銀法の一部改正についても、その第一条の目的について改正が行なわれたのも、このような情勢を反映したものと理解されるのであります。それにもかかわらず、今日の開銀融資の事態を本委員会における審議について見ましても、この方向への重点移行がきわめて不十分であり、依然として産業優先、経済発展にとどまり、社会資本の充実、生活環境基盤の整備充実、国民の福祉面の開発に対する国民的要請にこたえていないというべきであります。  第二に、開銀の融資貸し出し限度額を、今回、自己資本の六倍から一挙に二十倍に引き上げるといたしておるのでありますが、これは前回の審議の際の附帯決議の趣旨に沿ったものといっておりまするけれども、審議過程を通じて具体的な根拠がありません。このことが明白になりました。これは明らかに開銀法の国会における審議機会を回避する、こういうことが考えられるわけであります。さらに、このことは国会軽視につながるものといわなければなりません。それとともに、開銀の融資態度の放漫性、安易性を助長することにもなりかねないのでありまして、開銀法の運営の実績から見て不安なきを得ないのでありまして、特にこの問題については政府側がすみやかに善処をしなければならない、このように考えるところであります。  第三に、開銀が全額政府資金の出資法人であり、貸し出し資金も全額政府資金、財政資金であることにかんがみまして、その運営は公正であり、国民的立場に立って公益性を確保する見地から最も効率的に運用されなければならないにもかかわらず、その運用をめぐり特定産業あるいは企業との癒着が多い、こういうことが国民から指摘をされているところであります。しかも、本委員会審議を通じて明らかになったごとく、開銀の人事、役職員の融資先企業への無謀ともいうべき押しつけ的天下り人事、まきに目に余るものがあるのでありまして、これでは債権管理あるいは政策目的の遂行というような美名をもってしてもこれを正当化することはできないのでありまして、開銀にも重大な反省を求めるものであります。これはまさに開銀の非民主性のあらわれであり、承服できないところであります。  以上の反対理由によって、本法案の一部改正に反対の意思を表明して討論を終わる次第であります。
  124. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  これより日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、山下元利君提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  125. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  126. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 起立多数。よって、修正部分を除く原案は可決し、本案は修正議決いたしました。     —————————————
  127. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 ただいま議決いたしました日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表し、藤井勝志君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。広瀬秀吉君。
  128. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ただいま議題となりました日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表し、私よりその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文でありますが、案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略いたします。  日本開発銀行は、わが国の経済の再建及び産業の開発を促進するための長期資金の供給を行なってまいったのでありますが、一方、経済社会の発展に伴いまして、近時においては都市再開発、地方開発、流通近代化、公害防止等、いわゆる社会開発に資する比重が高まっているのであります。  このような状況に即応し、さらに最近におきまして既成市街地の整備改善、大規模工業基地の建設等の新しい要請もあって、より一そうの資金の需要に対応していかなければならない実情に立ち至っているのであります。このたびの改正機会に、日本開発銀行は今後ますます社会開発金融の重責を負うことは明白となるわけであります。  したがって、日本開発銀行としては、第一に、その融資並びに出資にあたって、融資先企業等の周辺の地域住民の生活環境の保全と福祉の向上をはかるため、国民生活優先の分野に重点を置くよう運営することであります。  第二は、本改正によりまして開銀の借り入れ金等の限度額が六倍から二十倍に大幅な引き上げを行ないますことに伴って、同行は必然的に資金量は増大されることになるわけであります。そこで、資金量の増額に伴い、開銀が融資並びに出資に際しては、その資金が公益的かつ効率的な運用を欠くことにならないように特段の配慮をすることであります。  第三に、日本開発銀行の役職員の民間企業への転出についてであります。  現在、開銀の役職員の民間企業への転出の実態は、それが出向の場合も含めて、ほとんど融資先企業と相なっております。このようなことは、開銀と融資先企業との相互におきまして癒着を持つことにもなり、開銀の公益性及び資金の効率性を侵すことにもなりますので、開銀としては十分慎まなければならないところであります。  したがって、今後開銀としては、人員を融資先企業等への押しつけを絶対行なわず、資金の効率性の確保、債権の管理の必要がある場合には、出向制を活用しつつやむを得ない最小限度に限ることになるように、慎重、厳正を期すべきであります。  以上で提案の趣旨説明を終わりますが、何とぞ各位の御賛同をお願いいたす次第であります。     —————————————   日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、経済社会の発展に伴い、今後の新しい社会経済情勢の進展への要請に対応して、日本開発銀行については、次の点に関して十分配慮すべきである。 一 わが国の経済社会の発展に対処して、日本開発銀行の融資等にあたっては、生活環境の保全と福祉の向上を図るため、国民生活優先の分野に重点を置くよう運営すること。 二 日本開発銀行の借入金等の限度額の大幅な引き上げに伴い、同行の資金量の増大から融資等に際して資金の公益的かつ効率的な運用を欠くことにならないよう特段の配慮をすること。 三 日本開発銀行の役職員の民間企業への転出については、融資企業への押しつけを排し、出向制を活用しつつ止むを得ざる最小限度にかぎることとなるよう慎重厳正を期すること。     —————————————
  129. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。  おはかりいたします。  本動議のごとく附庸決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。水田大蔵大臣。
  131. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って十分配慮いたしたいと存じます。  特に、第三項の日本開発銀行役職員の民間企業への転出につきましては、政府金融機関としての本来の使命にかんがみ、先方から要請のある場合に限ることにいたし、いやしくも押しつけのごとき誤解を受けぬようつとめますとともに、この場合におきましても、極力出向制の活用によるものとし、転出はやむを得ざる最小限度にとどめるよう配慮してまいりたいと存じます。
  132. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 石原日本開発銀行総裁。
  133. 石原周夫

    ○石原説明員 ただいま御決議のありました事項につきましては、日本開発銀行といたしましても御趣旨に沿いまして十分配慮いたしたいと存じております。  特に、第三項につきましては、ただいま大蔵大臣の御発言の趣旨にのっとりまして、遺憾なきを期してまいりたいと存じます。     —————————————
  134. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  136. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次に、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  137. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、具体的な質問に入ります前に、委員の差しかえの問題については、これは認められておるところですからいいと思うのです。しかし、大蔵委員会にも出る、また同じ日に他の委員会にも出る、こういうことになれば、これはきわめて国会の権威を失墜することになる。ですから、ここへいま正規の委員でない方がお見えになる、その方は当然他の委員会には出ないというけじめはきちっと確認してもらいたい。そうしないと、員数だけそろえて、極端にいえば一日に三つも四つもの委員会に顔出しだけする。採決するときだけ正規の委員になるということでは私はいけないと思うです。これは国会の権威、それとお互いのまじめさというものは具体的事実の中で立証される必要がある。ですから、その点のなには事務当局を含めてあとで私は確認をしますから、・そのことを指摘をしておきます。  私はまず、所得税関係について質問いたしますが、少しく事務的な数字をまずもってお尋ねします。本会議における私の質問とも関連するけけですが、課税最低限の引き上げの問題について、ここ数年来の課税最低限の引き上げ率及び物価の上昇率並びに予算編成時における計算の基礎となった物価上昇率、そういったものの数字をまず示してもらいたいと思います。
  138. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 まず、課税最低限の引き上げの割合から申し上げます。夫婦と扶養親族二人が、子供二人と言っておりますが、その場合について四十年から申します。四十年が一三・五、四十一年が一三・三、四十二年が一七・九、四十三年が一三・九、四十四年が一〇・九、四十五年が九・九、四十六年の最初減税、これが九・五、かりにこれに例の年内減税を加えまして、それを四十五年のベースと比較いたしますと、つまり二回分の減税を一緒にして四十五年と比較しますと、一四・〇、それから四十七年は四十六年の当初減税に対しまして七・七であります。  それから次に、消費者物価の状況でございますが、ただいま御指摘ありました予算編成時のという数字が手元に直ちにございませんので、最初に実績率を申し上げます。四十年の消費者物価の伸び率六・六、四十一年五・一、四十二年四・〇、四十三年五・三、四十四年五・二、四十五年七・七、それから四十六年は、これはまだ実績が出ておりませんですが、いまの結果についての暫定調査ではたしか五・七になっておるはずでございます。それから四十七年は、これは実績ということはないわけでございます。  それから、予算編成時の見込み数字、四十年の数字がちょっとありませんので四十一年から申します。予算編成時に立てました経済見通し、その前提となっておりましたときの消費者物価の伸び見込み、四十一年五・五、四十二年四・五、四十三年四・八、四十四年五・〇、四十五年四・八、四十六年五・五、この五・五がその後直りましたわけですが、これはいずれも当初の伸びの見込みでございます。それから四十七年の、現在の経済見通しの四十七年分は五・三、以上でございます。
  139. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私が事前に調査した数字と若干の違いがありますけれども、予算編成時における計算の基礎となった物価の上昇率については全く同じです。今度課税最低限の引き上げがいまここに昭和四十年来の実績経過が説明されたわけですが、それとの対比でいきますと、あとでも具体的な時点をとらえて指摘をいたしますが、いまの局長の答弁を聞きましても、予算編成時の物価上昇率と課税最低限の引き上げ率、これとの対比においては、最低のところで昭和四十五年の五・一、それ以外は多いところでは一〇%以上、この課税最低限の引き上げ率が物価の上昇率を、いわゆる物価調整の条件を入れてなおかつ、課税最低限というものは最低五%以上上がっておるわけであります。ところが、ことしの計画からいきますと、計算の基礎となったものが五・三だ、そうして課税最低限の引き上げが七・七ということになりますと、過去の実績に比べて、ことしはわずか二・四ということで、きわめて課税最低限の引き上げというものが低いわけです。これはどうしてこうなったのか。  政府経済政策、昨年の年内減税趣旨からいってもますます、税全体の減税額の問題と関連して、課税最低限の引き上げというものは、一昨年よりも、あるいは昨年よりもことしのほうがなおその率において大きく引き上げることが不況対策という観点から考えても必要だ。ところが、いま数字の上にあらわれてきておるものは過去の半分以下、こういうことになっておるわけですが、なぜこうならざるを得なかったのかということが一つ。  いま一つは、これは大臣は、そのまま引き続いてここにおられると思ったのですが帰られたものですから、政務次官にお尋ねせざるを得ないわけですけれども、私が三月七日の本会議で質問をした物価との関連における課税最低限の引き上げについては、いま私が指摘しておる七・七と五・三との関係において、物価よりも減税率のほうがはるかに上回っておる、こういう表現の答弁のしかたをしておるわけですが、はるかに上回っておるということは、どの条件中心にこういう答弁をなさったのか、これをひとつお答え願いたいと思うのです。
  140. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 所得税減税は、戦後今日まで、ほとんど例外なく毎年行なわれております。その場合に、年によりまして、また若干四、五年あるいは六、七年という期間によりまして、重点の置き方が変わってきておるわけでありますが、大体、昭和四十年代に入りましてから最近までの所得税減税の最重点は、よくサラリーマン減税ということばであらわされておりますが、給与所得者を中心といたしまして、課税最低限の引き上げに置かれてきたことは御高尚のとおりでございます。この間におきましては、基礎控除、配偶者控除、扶養控除等の基礎的な諸控除が年々確実に引き上げられましたほかに、給与所得控除の定額控除と定率控除が、毎年というわけではございませんでしたが、かなりの頻度で改善をされてきたわけであります。ちょうどその時期はまた一方において、給与所得者と他の事業所得者の課税の均衡の問題というのが各方面から非常に強調されたわけでございまして、これは単に制度だけではなくて、制度と税務の執行とからめて、公平論、あるいは不公平論と申し上げたほうがよろしいかもしれませんが、そういう意味で、サラリーマンを中心とするところの課税の軽減ということに非常に重点が置かれたわけでございます。  それで、ただいま最初にお答えいたしましたときに、私、説明が不十分でございましたが、ただいま申しました夫婦と子供二人の課税最低限の数字は、これは給与所得者についての数字でございまして、給与所得者については、給与所得控除を働かせましたあとの課税最低限の数字でございますから、給与所得控除が働きました後の課税最低限の比較の数字を申し上げたわけでございますので、そこで、この間においては、非常に大きな給与所得控除が働いたわけでございます。そこで、四十七年度に課税最低限の引き上げ幅が比較的小さいというのは、四十六年のいわゆる年内減税においては、給与所得控除の改定をいたしておりませんからして、したがって、課税最低限の引き上げ幅は、給与所得者についてみれば、比較的小さいということになってくるわけでございます。  なお、今後の問題といたしましても、しばしば申し上げておりますとおり、一つには諸外国の制度との関係等から見ましてもそうでありますし、それから最近事業所得者サイドからまた逆の意味において公平論が主張されておりますこと等からいたしまして、四十年来続けてまいりました、いままで御説明いたしましたような考え方については、一つの転機に来ているものと考えております。
  141. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いまの答弁の中で、四十年以来の、ある意味において転機に来ておるというのはどういうことなのか、これはあとで説明を求めたいのと、私はこの四十六年度と四十七年度の課税最低限の引き上げ率において七・七という数字を使ったのは、これは政府答弁による数字を使ったわけですけれども、私どもが課税最低限の引き上げ率ということで、昨年の年内補正をやった、それを基準にすると課税最低限の引き上げ率はわずか三・四。そうすると、計算の基礎となった物価上昇率の五・三%の比較において、ことしの課税最低限の引き上げについては、その物価調整分さえ見ていないわけですね。これは四十年来の数字を見てもわかりますように、予算編成時においては、少なくとも物価上昇分と課税最低限との率の差というものは五%以上毎年あるわけです。ことしだけは政府の数字をとってみてもわずか二・四%、補正後の数字をとってみれば逆にマイナスの一・九%ということできわめて課税最低限の引き上げというのは無視されておる。にもかかわらず大臣はこのように答弁をきれておるわけですが、私は少なくともこの予算編成時における課税最低限の引き上げ率としては、ことしはいまの経済状態全般から考えても、また主としてサラリーマン、勤労者を中心とする勤労所得税実態からいっても、課税最低限自身を思い切ってこれは引き上げる必要があるのじゃないか。そうしないと昨年末に政府年内減税をやったその趣旨にも合致しないと思うわけです。そういう点からいって、ことしの課税最低限は少なくとも過去数年来の実績ぐらいまでは引き上げる必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、そのことについての見解をひとつ承りたい。
  142. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 年内減税という形で行なわれました四十六年末の減税の意味をどういうふうに理解するかということによっていろいろな判断が違ってくるわけでございます。しばしば大臣も申し上げておりますとおり、先般の年内減税は四十七年度の減税である、ただ、それを一回だけよけいに経済効果が四十六年度に及ぶというふうに私どもは理解をいたしておりますので、制度的にものを考えます場合には、前回の基礎控除、配偶者控除、扶養控除、各一万円の引き上げというのは、税の制度の議論といたしましては、四十七年度の制度改正である。ただ、その制度改正を昨年の四月から九月まで及ぼして、そして昨年の十二月の年末調整の際に春の改正と重ねて効果あらしめる。それは景気浮揚の趣旨で、消費需要刺激の趣旨で行なったものであるというふうに理解をいたしておりますものですから、私どもといたしましては、四十六年度ベースと四十七年度ベースとの比較の議論といたしましては、二段目に行なわれました所得税減税の各控除一万円の引き上げは、やはり制度としては四十七年度分というふうに理解しておるわけでございます。  その点につきましては、しかし見方によりましてそれはいわば強弁である、四十六年の暦年中に現実に二回実現をした以上、それは四十六年分の減税と見るべきであるという御議論もあるわけでありまして、そういう意味から言えば、ただいま藤田先生御指摘になりましたように、四十六と四十七の差というものは、一年分のたとえば一万円の基礎控除の引き上げということがありましても、四十六年にはその四分の三ずつを二回やったというのを四十七年度は平年度化したということでございますから、ごくわずかしか四十六と七の差はないわけでございまして、そういう意味から申しますれば、四十六と七の控除の差というものは、計算上きわめて小さいものとして、ほとんどネグリジブルなものとしてしか出てこないということになるのかと思います。  政務次官からお答えいただけると思いますが、大臣が本会議でどのように答弁いたされましたか、私、手元に速記録を持っておらないので正確には申し上げかねますが、大臣の頭の中にあることから想像いたしますると、大臣の理解といたしましても、年内減税は制度としては、経済効果は別にいたしまして、制度としては四十七年度税制改正ということで考えておられますので、消費者物価上昇率を上回ることは確実であるという意味で言われたものと考えておるわけでございます。  それから、先ほど私が申し上げましたこととの関連でお触れになりました、四十年来の課税最低限の変動、毎年毎年課税最低限をかなり大幅に引き上げてまいりましたが、それがある意味で転機に来ておるのではないかということにつきましては、それは何とか早く諸外国との比較においてもかなり負担の低いものにしたいということが長年の所得税制の一つのねらいでございましたから、毎年度の税制改正を通じてではありましたけれども、長期展望といたしましてはやはり課税最低限の引き上げに最大の焦点が置かれておったわけでございまして、その一つの目標でありました百万円ラインというものを今回こえることになりましたので、またそれが諸外国との制度と比べまして決して遜色のないことになっておりますから、そういう意味で私は一つの転機ではないかというふうに申し上げた次第でございます。
  143. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 大臣は物価と課税との関係をはき違えて言っているのではないかという御質問ですが、これは先ほど局長が言っておるとおりに、水田大臣は年内減税のこれは繰り上げ減税であって、いわば四十六年度に二年分の減税が行なわれたことと同様のことであって、したがってそういう計算からしますと、結局四十五年に対して二年分の減税が行なわれて、結局四十七年度はどうなったかという観点から判断したことでございまして、こういう観点から見ますと、四十五年度に対し四十七年度はちょうど消費者物価が一一・七%と上昇しておる。課税最低限は給与所得者でいいますと、独身者で一七・八、夫婦子二人で一七・九というような引き上げ率になっておりますので、そういう見方から言ったのじゃないかというふうに思われます。
  144. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大臣は、本会議で「物価との関係の御質問でございましたが、年内減税の前に比べまして、課税最低限の上昇率は七・七%になっておりますので、そうしますというと、来年度予定されておる物価、公共料金も含めて五・三%という、物価よりも減税率のほうがはるかに上回っておるということでございます。」こういう答弁をしておるわけですね。これは本会議における答弁なんです。ところがここで一つ問題になることは、七・七%という引き上げをやったと言うけれども、これはあくまでも計算の基礎になっておる物価が五・三%というものを基本にしています。しかしこの数年来の物価上昇の実績を見れば、予算編成時よりみんな上回っておるわけですよ。局長の答弁が先ほどありましたが、私の調べたここ二、三年来の実績を見ても、たとえば昭和四十四年の予算編成時は物価上昇率五%と見込んでおったそれが六・四%、四十五年が四・八%と見込んでおったものが七・一%、四十六年に五・五%と見込んでいたものが六・一%というふうに、ごく大ざっぱな数字として見ましても予算編成時に見込んでおった数字よりも一%ぐらい消費者物価というものは上回っておるわけです。そうすると大臣がここで答弁されておることしの七・七%というものをかりに仮定として基準に置いたとしても、五・三%というものは、この一連の公共料金の値上げ等を試算の段階では五・三%の中に含めておるのだと言うけれども、おそらくことしの物価上昇の見通しとしてはこれまた最低六%以上になるだろうということになれば、これは課税最低限の引き上げというものは補正後を基準にするのでなくて当初予算予算編成時のものを基準にしても、ことしの課税最低限の引き上げでは何ら減税効果というものはないじゃないか。  ですから、私は、ぜひこの法案の審議の中で課税最低限というものを大幅に引き上げてもらう、われわれの主張としては四人家族で百三十万、五人家族で百五十万目標に課税最低限を引き上げていくべきだ、こういうふうに考えておるわけです。われわれのその要求がもしいれられないという場合であっても、ことしは補正予算を組む時期があるとすれば、その段階ではこの課税最低限の引き上げを含めた減税をやるかどうか、そういうことしの年度末までの見通しを含めてお尋ねしておきたいと思うのです。
  145. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 仮定の問題でございますので、事務当局といたしましてたいへんお答えいたしにくいわけでございますが、御質問も仮定ということでございましたので、私どものただいま考えておることを申し上げますと、先ほど来申しておりましたとおり、四十年以来課税最低限の引き上げが所得税減税の最大の中心課題でございました。税制全体として減税中心所得税であり、そしていわゆる所得税の中でやはり課税最低限、特に給与所得者の課税最低限の問題が最大の焦点であったことは御承知のとおりでございます。ところで四十七年度でようやくにして夫婦と扶養親族二人とで課税最低限が、給与所得者についてだけでありますけれども百万円台を突破した。こういう状況においてひるがえって考えてみますと、これはたまたま非常に間接税の高い国である、したがって所得税の低い国であるフランスと同水準である、それからまた日本よりもさらに課税最低限が上にありますのは、全体的に一人当たりの国民所得も非常に高いアメリカだけである、こういう現状になってきたわけでございます。必ずしも諸外国との比較だけが万能ではございませんので、外国がそうでないからといってそれだけを見て制度をきめるという必要は決してないわけでございますけれども、しかし、何と申しましてもやはりそういう現状にあることはこの際一つの問題点として考えられなければならないものというふうに考えられるのでございます。  そこで昨年、四十六年の八月に調査会答申が出されましたが、その調査会答申が出されます前におきまして、専門家の方にお集まりいただきましていろいろ議論がありました。今後の所得税制のあり方についても若干議論がありましたときにもそれらの点も含めて議論されたわけでございますが、その際にも、もちろん今後の問題でありますからして決定的な結論的なものは出なかったわけでございますけれども、やはり課税最低限のあり方ということについては、四十年来ずっと歩んできたかなり速いスピードでの引き上げテンポというものについては、この辺でもう一度別の角度から考える必要があるのではなかろうかといった意見の方もあったわけでございまして、私どもといたしまして四十八年度以降、まあしいて言えば、先生が仮定ということでおっしゃいました今後の所得税改正にあたりましてそこをどう考えるかは、私どもといたしましてもかなり慎重を要する、つまり従来と全く同じような意味で課税最低限の引き上げということを考えていくことはいかがかというふうに考え始めておるところでございます。  最近いろいろな形で公平論が議論されております。いわゆるクロヨンであるとかトウゴサンであるとかという議論は従来どおりいわれておりますが、同時に非常に強い議論といたしまして当委員会においてもときおり御議論が出ております事業主報酬問題というのがありますが、事業主報酬問題というのはとりもなおさず個人事業者の事業所得につきまして給与所得控除を働かせろという主張とうらはらをなすものでございまして、このことは、給与所得控除の定額なり定率なりの幅が拡大すればするほどそういう声が事業所得者サイドから出てきておるわけでございますので、そういう意味におきまして、全体としての給与課税最低限の水準の問題とサラリーマン、給与所得者についての課税最低限の問題と別の問題ではございますが、相互に関連させながら、今後課税最低限のあり方というものをもう一度ここで十分に議論すべき時期に来ておるように思うのでございます。私ども事務屋の立場といたしまして、その方向がいかにあるべしということをここでお答え申し上げますのは差し控えたいと思いますが、従来の方向をただ従来と同じような方向で歩んでいくということはかなり困難な事情になりつつあるという事情だけは申し上げておきたいと思います。
  146. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いまの答弁を聞きますと、慎重であるとか、あるいは課税最低限の引き上げについては慎重に議論しなければいかぬといういろいろな表現がありましたが、その答弁はむしろ私が質問しておる方向とは逆の方向、たとえば欧米諸国との比較において、アメリカを除けば大体国際的な水準にまで課税最低限が上がってきた、端的に言えば課税最低限の引き上げというものはそんなに考慮を払わなくていいんだ、こういうふうに聞こえるのですが、これは私のひがみでしょうか、ちょっと明確にそのあたりを答えてもらいたいと思います。
  147. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 端的に言えばそういうことでありまして、先生がお考えになっておるのは、おそらく給与所得課税最低限を今後とも従来どおりのベースで引き上げていくべきではないかというお考えではないかと思いますが、もしそうだとすれば、私どもは必ずしもそういきにくい事情になりつつあるというふうに感じておるわけでございます。  ただその場合に、一つここで問題がありますのは、だんだん福祉の時代というふうに変わっていって、いろいろの福祉政策がとられていくという場合に、税制の対象になる所得者と、それから生活保護のように全く歳出予算といいますか、そういう福祉政策の対象となるような所得階層、それからそのどちらにも入らないまん中の階層、そこらをどういうふうにつないでいくかというふうな問題も漸次福祉政策との関連において議論されていくわけでございまして、午前中の参考人の御意見の中に負の所得税の御議論が出てき始めておるわけでございますが、こういった問題との関連も今後は社会福祉政策が進めば進むほど何か考えなければならない。そこのつなぎをどうするかというような問題も控えているわけでございますので、私どもはそういう意味でやや長期的に見ました場合には、課税最低限から上と下と、さらに生活保護等の下のところとの間のつなぎをこれから長期的に考えていくかということをにらみながら、課税最低限の問題と取り組んでいく必要があるのではないかという意味もありましてたいへん申し上げにくいのでございますが、従来どおりのペースでずっとただいくというわけになかなかいきにくいという感じを持っているということを申し上げているわけであります。
  148. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 非常に遠慮しながら答弁しておるようで、私は、見解の違いは見解の違いでいいわけですから、ほんとうのことをそのものずばりで言ってもらって差しつかえないと思うのです。大体わかりましたが、課税最低限の引き上げはいままでのようなテンポではいきませんぞと、長期的な見通しを含めて考える場合は、むしろ課税最低限の引き上げということをやるのはもうむずかしいんじゃないかというふうに私は理解しました。そういう前提に立って質問しますが、これは本会議で触れたことですけれども、なるほど表面上の形式的な数字の比較からいけば、西ドイツとかあるいはフランス程度のところまで課税最低限の額がきておりますけれども、この課税最低限の実態たるや何かということですね、ここが私は問題だと思うのです。政府が出しておる四人家族で百三万七千八百六十円という時点の生活状態というものはどうかといいますと、こまかい数字は省略しますが、総理府の統計局が発表しておる最近の実態というのは、いわゆる課税最低限の百三万七千八百円程度のところでどういうことになっているかといえば、消費支出総額毎月八万八千円というところが一つの基準になろうかと思うのです。同じ政府部内で国民の勤労者の生活実態というものを調査しておるわけですが、それによると四人家族で食費が約三万円、これは一人、一日で計算していけば二百五十円、一食が八十円、こういうところがこの百三万程度の課税最低限の水準になるわけなんです。  この総理府の資料を見てみますと、この実態自身が問題だと思うのですが、食費のところをとれば、いま私が言った程度になる。教育費の関係でいくと、一カ月二千二百五十円ぐらいしか出ていないのです。こんな低いことで子供の教育は二人を、それは高等学校と大学あるいは高等学校と中学校、小学校と中学校というふうに若干の違いはあるにしても、一カ月の教育費が二千二百五十円なんということはちょっと考えられないんですね。一人の子供を私立大学へ入れたら授業料だけでも七千円も八千円もかかるということですから、ここまで切り詰めなければ生活ができない。ですから統計自身はわれわれの生活実態からちょっとかけ離れた数字として出ておるわけですけれども、食費の関係は、いま言ったように、この数字では二万八千三百七円となっておりますが、約三万円と見て一日食費一人当たり二百五十円、そういうあえて言えばみじめな生活をしておる者に、課税最低限が数字の上ではヨーロッパ並みになったのだからけっこうだと言っておるけれども、そこへかかる人たちの生活実態というものは何かという実態論に根ざしてみたら、こういう貧弱な生活しかできていない者に税金をかけておるわけです。こういう絶対的な生活実態に根ざした立場から比較をしないと、単なる形式上の表面上の数字だけで日本の課税最低限はヨーロッパ並みになったのだといっても、ヨーロッパの社会保障の充実の度合いなりあるいは経済状態、生活状態の度合いと比較して、私は実態に相当かけ離れたことになり得るのではないか、このように思います。  そういう立場からいくなれば、いま局長が答弁したようなものの考え方は根本的に改めてもらう必要がある。むしろ従来以上のピッチで思い切って課税最低限を引き上げる必要があると思うのですが、そういう観点からものさしを当てた見解というものを事務当局並びに政務次官から承りたい。
  149. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘がありましたのは家計費調査による消費支出の数字であろうかと思いますが、私どもも課税最低限というのは家計費との関連において検討いたすべきものと思っておりますので、絶えず家計費調査の数字については関心を持っておるわけでございます。  ただいま御指摘のありましたように、この消費支出、家計費調査の中身からいたしますと、これは多くの世帯の平均でございますので、たとえば教育費のように、教育費が非常にかかっている家計とそうでない家計とあるに違いないわけですが、それが平均的に出てくるものでございますから、必ずしもこの統計の数字というのは実態とぴったりこないということは確かにおっしゃるとおりでございまして、私どもも日ごろそういうことを感じておるわけでございます。そこで、いまおっしゃいましたことは統計との関連もあり、それから諸外国の実態等もあることであるから、必ずしも現在の課税最低限が制度上諸外国のものと比べてかなりまあまあの水準であるといっても、それだけでものごとを律してはならぬではないかという御指摘でございますが、私どももまきにその点はそのとおりであろうと思っております。そういう社会実態というものとの関連がなくしては議論はできないという意味においてはおっしゃるとおりだと思いますので、そういう面は今後ともよく研究していかなければならないと思っております。  ただ一つ申し上げておきたいことは、現在私どもの手元に持っておりますのは四十六年の家計費調査の数字でございますが、それによりますと、四人世帯で大体百十万円くらいの消費支出になっております。したがって、課税最低限をごくわずか上回っているところに平均的な消費支出があるようでございますが、課税最低限はそれをこえたところから課税にはなりますけれども、税率はこえた部分について一割から始まるわけでございますので、必ずしも消費、支出の平均をこえるということと、いまの課税最低限とは絶えず直接リンクきせるべきものというふうには考えていないわけでございまして、その点と、それから諸外国の制度との関係ということは今後ともよく研究するということをお答えしておきたいと思います。
  150. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 実態をよく見て課税最低限をやれということ、しかもそれも積極的に前向きにやるべきである。私どもも、実態をよく見ろということは結局質的によく検討しろということにもなると思います。したがって、課税最低限につきましても、質の問題で、たとえば局長が言っているように、普通の所得者とそれから生活保護者あるいはその中間というようなことを質的によく見て、家計費との関係なども十分調査した上で、いままでのただ対外的あるいは対内的な資料にとらわれず、質的に前向きに検討していきたいと思っております。
  151. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 前段の局長の答弁と、いまの政務次官の答弁との間には若干差が出てきたというか、私が質問をしているような方向でいま答弁があったと思うのですよ。これは局長はさっき家計費調査のなにを出しておりますが、これは総理府の資料、これでとっておるのは四人家族のところをとっておりますから、だからその点ではあなたのほうからお示しになったのも大体それに合っていると思いますが、五万以上の都市の実態をなにしますと、私は、食費が一日二百五十円の食費に税金をかけるというのはこれは問題があると思うのですよ。これは失礼だけれども、局長あたり一日どれくらいな食費をおとりになっておるのでしょうか。二百五十円といったら——これは実態として出ておるのですからね、これだけ政府の一応権威ある資料として、毎月調査したものが。ですから、私は欧米との比較とか、他の条件の比較もこれは必要だと思うのです。必要だと思うのですけれども、国民の、サラリーマン、勤労者の生活の実態というものは現実にどういうものであろうか。ここまで食費を切り詰めないと、多様化した今日の消費生活には耐えられないのですよ。そういうみじめな貧弱な生活しかできてないところに向けて税金をかけること自身に問題があるだろう。ですから、この最低生活費には課税しないというこの原則からいくならば、こういう実態中心にして課税最低限というものは思い切って引き上げるべきじゃないか。  その点では政務次官がいま言ったように、税制調査会で長期税制について検討する場合にも、前段の高木局長が答弁をされたようなものの考え方で、まあいわば課税最低限というものはヨーロッパ並みに来ておるのだから引き上げる必要はないのだ、むしろ横ばい程度だ、こういう考え方を持っておるとすれば、これは私は根本的に改めてもらわなければいかぬと思うのです。そうしないと、だんだん勤労所得税をとられる層が広がっていくのと同時に、いわゆる最低生活費に税金をかけるということになると思うのです。そういう点で、私は根本的な問題として、やはり国民の勤労者の生活実態というものを中心にして課税最低限の引き上げについては十分前向きで検討する、こういうことにならなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  152. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 家計費調査について私どもかねがねいろいろ疑問を持っておりまして、これはまさに御指摘のように食費が非常に低いという点、そして一方においては自動車関係諸費の支出が非常に多い。飯を食わずに自動車に乗っておるというようなことでございまして、平均的なものであるがゆえにそういう数字になるのだろうと思います。ですから、それを個別の家計について分解してみろと、どういう数字になるのかもう少し勉強したいとかねがね思っているところでございます。先ほど申しましたように、多少課税最低限については場合によって考え方を変えようかと考えておるときでございます。ですから、そうなりましたら、まきに御指摘のようなことをよく研究しなければならぬところでございますので、私どももまきに先生御指摘になったような家計費調査の関係から見て、いまの百何万という数字は決して楽な生活を示すものではないのではないかという御疑問は、私どもも日ごろちょっと家計費調査との関係上持っておりますので、もう少し勉強してみたいと思っていることを申し上げたいと思います。
  153. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 それは政務次官、前向きでいま言った実態に根ざしてやるということは間違いないですね。
  154. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 私と局長の言っていることはちぐはぐだというのじゃなくて、やはり同じ方向でよく質的に家計費等の中身をよく検討してやっていこうということでございますので、これは前向きに検討するということになると思います。
  155. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま少し具体的な答弁がほしいところですが、時間の関係もありますから前に進みます。その点については諸外国の比較というようなところだけにものさしを当ててどうこうということを考えるのではなくて、生活実態に根ざした、具体的な事実に根ざしたところから課税最低限の引き上げについては十分検討する、前向きで検討する、こういうふうにやってもらいたいと思います。  次に私は、退職金の退職所得控除額の引き上げの問題について質問いたしますが、現行の退職控除引き上げを行なったのは、たしか昭和四十二年であったと思いますが、それから五年経過しておると思うのですけれども、間違いございませんか。
  156. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 御指摘のとおりでございます。四十二年に改正してから改正しておりません。
  157. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 先ほども物価の上昇率はこの数年来どういうことであったかという数字を聞いたところですけれども、大体若干のとり方の違いはあるにしても、昭和四十二年以降の物価上昇率は大体平均にして五・八から六%程度、厚生年金なり国民年金の見直しも、これは私どもの主張としては物価が五%以上も上がる社会情勢の中では厚生年金、国民年金等についてはスライド制を採用すべきだ、こういうことを主張しておるわけでありますが、私はこの退職控除額の引き上げについても、われわれの側から要求が出るまでもなく、ほんとう政府が、勤労所得税の問題についてもそうでありますが、退職金の控除額の引き上げについても、少なくとも五年の今日、見直しをした引き上げを行なう必要があるのではないか。たとえば現行は三十年勤続で三百五十万、三十五年勤続で五百万、こういうことになっておるわけですが、きわめて算術的な計算をしましても、物価が約五、六%上がったということになりますと、当然三十年勤続のところで五百万程度の控除額の引き上げというものはいまの社会情勢の変化の中で当然そういう改正がなされてしかるべきだ、こう考えるわけですけれども、それについての見解を聞かしてほしいと思います。
  158. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 退職金につきましては昨年の八月の長期税制答申の中におきましても、「この控除額はそのまますえ置かれてきていることでもあり、その後における平均的な退職所得水準や物価水準上昇考慮すれば、これに見合って見直しを行なうことが望ましい。」こういう御指摘をいただいておりますこともありまして、実は四十七年度税制改正としても一応検討してみたわけでございます。後に申しますような事情で実は今回は御提案を申し上げなかったのでございますが、私どももなるべく近い機会に何らかの措置をする必要があるのではないかと考えております。  それで、今年度にいたしませんでした理由は、実は先ほど御指摘のように四十二年来直してないのでございますけれども、四十二年に直します前は、勤続一年につき五万円という額でございましたから、たとえば三十年つとめて百五十万円という控除であったわけでございます。現行制度でありますと三十年つとめますと三百五十万までいくわけでありますから、四十二年改正というのはかなり大幅なものでありまして、百五十万から一挙に三百五十万まで相当思い切った、このときには物価とか退職金水準値上がりとかいうようなことでなしに相当思い切った改定をやったわけでありまして、まあしばらくの間、そう毎年改正しなくても済むようにという配慮で思い切ってふやしたものと思っておるわけでございます。そこで、どうしても一年を待てないというほどではないというふうに判断いたしましたことが一つでございます。  それから第二点は、最近退職者に対して支払われます給与につきまして形態がだいぶ変わってまいりました。わが国では伝統的に退職金が払われるというのが多かったのでございますが、最近漸次退職年金制度へ乗りかえる者が出てまいっております。ところが、退職年金制度につきましての税法上のもろもろの取り扱いというものは必ずしも十分整備されておりません実情にありまして、近く何とか退職年金の支給を受ける方と退職金の支給を受ける方とのバランスをとりながら一ぺん基本的に直すことにいたしたいというふうに考えまして、実は率直に言って申しわけございませんが、事務的に時間的にその検討の時間がなかったものでございますから、四十七年度は見送りにさしていただいた、なるべく早い機会に退職金とそれから退職年金と合わせて御指摘のように軽減の方向で改正の案を立ててみたいというふうに思っております。
  159. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は少しくデータも集めてみましたが、関東経営者協会、この関東経営者協会の資料というのは中労委があっせん、調停等の作業のときにも十分使われる数字ですし、労働組合の退職金あるいはその他の労働条件の改善問題をやる場合にも、経営者のレベルでどういうことを考えておるか、経営者が調査をしたものでさえどうなっておるかという立場からこの資料は生かされておりますが、それによりますと、参考までに申し上げれば、全産業で規模が五百人から九百九十人まで、いわゆる千人未満のところで旧制中学のところでは六百六十三万円、これは勤続三十八年。勤続三十年のところで四百三十九万円。旧制大学のところで三十年勤続で五百九十二万円。規模別に申しますと、千人から三千人未満のところで旧制中学の三十年勤続で四百八十万。三千人以上になりますと、これも大学、旧制中学を含めて五百万以上、こういう実績が出ています。  いまのは関東経営者協会の資料ですが、中労委が最近発表しておりますモデル退職金の定年の部類を学歴別に調査したのを見ても、たとえば製造業全体で見れば、二十五年勤続になりますともうすでに五百三十八万、これは大学出ですが、三十年勤続で七百七十八万という実績が出ています。あらゆる産業を含めて調査産業の全体の数字からいけば、かれこれいずれも百万以上を上回って六百二十万とか八百八十万という数字になっております。これは大学出の場合。高校の場合でも製造業でいきますと、これまた三十年勤続になれば五百三十九万円、三十五年勤続で六百九十五万というふうに、中央労働委員会という第三者機関が半ば公平に調査しておる資料によりましても、もう三十年勤続でかれこれ五百万以上、こういう実績が出ています。そういう観点から見ても、なるほど四十二年の法改正というものは、額の面においてそれまでの基準があまりにも低かったということがあると思うのですよ。  退職金に対する性格論争は、それぞれの立場で見方の相違もありましょうけれども、一般的に勤労者は退職金を前借りをして子供の養育費なりあるいは奨学資金に充てる、少しく余裕のある者はせめてこの退職金で持ち家をやろうかという人が多い、またそういう考え方を持っておる人がある意味ではほとんどじゃないかと思うのです。そういうことからいくと、なるほど局長が言ったように五年前の法改正は思い切ってやったかどうか知りませんが、今日の五百万というこの絶対額というものはどれだけの価値のあるものだろうか。私は相場師じゃないですから十分なことはわかりませんが、東京のいわゆるここから約一時間あるいは一時間半で通える周辺の土地を買うにしても一坪十万円くらいの土地というものはないだろう。かりにそういう安い土地があったにしても五十坪の土地さえ買うことができないのです。いわんや上乗せの家を建てることができない程度の額なんです。なるほど五百万という数字は一見して政治の立場から見れば多いと言われるかもしれませんが、三十年も三十五年も働いた人の退職金が五百万、まるまる五百万もらったって、人によってはほとんど持ち家の土地さえ買うことのできない金額じゃないですか。してみれば先ほどの課税最低限の問題ではありませんけれども、現在の基準はどうだ、五年前の基準がこうだったからその倍率はこの程度でいいだろうということではなくて^やはり今日の社会情勢なり生活の実態に合わして、私はこの際三十年勤続で、いまの基準は三十五年で五百万ということになっておるわけですが、三十年で最低少なくとも五百万というところまではこの退職金の控除額を引き上げていく。これを最低の条件として、そういう方向で私は少なくとも今回やってもらいたいわけです。少なくとも来年度の税制改正の中には、最低の条件としていま私が指摘した程度のものは改正案として出されるべきであろう、こう思うわけですが、そこらの考え方ですね、これは政務次官を含めてお答えいただきたいと思います。
  160. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 どのような改正案の内容になりますか、いまここでにわかに申し上げることはできませんけれども、方向といたしましては確かに退職金は先ほども申しましたように改正の時期に参っておりますので、ただいま例示として御指摘がありましたことも頭に置きまして、そういう方向で、いずれにいたしましても長年の勤労の結集が退職金でございますから、十分そういう方々にまあ安んじていただけるような制度にいたすべく研究したいと思います。何とか来年度においてできるならば間に合わしたいものと考えております。
  161. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 事務当局としてもすでに本年度やろうかという気持ちを持っておったくらいでございますし、私どもとしても来年度はぜひその方向でやりたいと思います。
  162. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 政務次官のぜひやりたいというその決意をそのまま私は了承したいと思います。ぜひ退職金の五百万程度の額というものは、申し上げるまでもなくわずかなものですから、ひとつ思い切って改正をやってほしい、こういうふうに思います。  ごらんのとおりで、委員長はうしろにすわっておられますけれども、私はやり出したら、あえてやれといえば一人でもやります。しかし、これはあまりにもぶざま過ぎます、少なくとも与党の皆さんとしては。これはこの間の分科会じゃないけれども、一人で委員長と二人でやった社会党の議員もおりますから、やるのはやりますよ。天井と質疑応答するようなかっこうになっても私はやるけれども、しかし常に呼び出し、動員みたいなことをかけないと成立できないということであれば、これは私はもうきょうは審議はやりません。与党の皆さんがそこまで法案の成立に対して熱意のないものを、われわれ野党は協力する必要はないと思うのですよ。こんな実態の中でわれわれ自身が審議を続行したといえば、もう率直なことを申し上げますが、国対レベルではわれわれの立場はなくなりますよ。  ですから、私は申し上げておきますが、きょうはこれで散会し、あとは五月の二十六日までだ。与党の皆さんは会期延長のことをどう考えておるか知りませんが、われわれは絶対反対の立場で会期延長にも臨みますが、五月二十六日までの段階で、時間がないから質問の時間を縮めるなんといっても、そういうことは私は了承しませんよ。(「理事会で」と呼ぶ者あり)理事会じゃないですよ。何でも理事会、理事会と言っていて、そんな適当なことはいかぬですよ。理事会だけできめて、この種のことを平場でやらぬからだめだ。何でも理事会、理事会と、そういう悪い慣行は直していくべきだと私は思う。  ですから、私どもは質問の内容の良否を越えて、少なくとも国民の利益を守るという立場からまじめに質問だけはさせてもらいます。その点については、会期の問題と関連して時間が足らぬからということは、委員長も含めて与党の皆さんはおっしゃらないように念を押しておきます。そういうことで私はきょうはやめます。
  163. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次回は来たる十六日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することといたし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会