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高木(文)
政府委員 広告費は交際費とよく比べられるわけでございますが、交際費の
課税は本来、税の問題というよりは、何かそれがむだ使いであるというところからこれを抑制するという
意味で、税がそういうむだ使いを抑制するのに役立つということで、現在の交際費
課税制度が行なわれているわけでありますが、交際費と広告費を比べますと、交際費のほうはとかくそれが個人の利益につながっておる。特に飲食費等になりますと、名前は交際費ということになっておりますが、
関係者が飲食をする、あるいはたとえばいろいろのお祝いごととか悲しみごととかいうときに、お祝い品とか弔慰金とかいう形でお金が動くわけですが、結局それは法人間で動くというよりは、法人から取引先の個人、まあ役員さんとか幹部の方とかに動く。こういうことになって法人から個人に流れていくという
関係があるので、交際費のほうは税の面からいいましても、いわば公平論からいって相当問題があるという面があるわけでございます。
やや、むだ使い的色彩の点では、広告費も交際費と似てはおるわけですが、広告費のほうはその出した、支出の結果が、だれか
特定の個人に著しく受益になっていくという
関係が明確でないというか、そういうものがあまりないという点で、同じ社用、社用というような
感じはありますけれ
ども、そこでまず
基本的に違うという問題がありますので、税としていわば抑制税的な
意味での広告税というのを、交際費と全く同じように
考えるということについては、
基本的にちょっと理論の立て方でなかなか問題があるという点が第一点でございます。
第二点は、交際費については、
日本の商慣習等から見まして、諸外国に比べてどうも少し多く使われ過ぎておるんじゃないかという
感じがあるわけでございますが、広告費は、このよしあしは別にしまして、十分な統計等はございませんけれ
ども、一応いま国際広告協会等で世界の広告費を調べて——どうやって調べているか詳しくは知りませんが、調べているところによりますと、
日本の広告費はそう著しく高くない。人口当たりとか
国民所得当たりとか非常に大ざっぱなつかみ方でございますけれ
ども、そういうもので見ますと、アメリカ、西ドイツ、イギリス、カナダ、スイス、スウェーデン、オーストリアというような国などに比べまして、まだ
日本のほうが低いということで、
日本がそう著しく広告費を使っているという現象が
指摘できない。それが交際費の場合とは違う点でございます。そういう点から、従来は交際費と同じようにはなかなか扱いにくいという
考え方で否定的な——これまでも何度か
税制調査会等でも議論ありますけれ
ども、その二つの事情が主たる理由で、今日までは見送りということできたわけでございます。
それで、今後の問題として一番問題となるのは、おそらく交際費のように一種の
所得課税といいますか、法人税の問題として一応損金ではあるが、税務上は損金として一部認めないというような形での扱い、そういう形で取り上げられるのか、あるいは流通税のような形で取り上げられることになるのか、そこらの問題も交際費とはちょっと違った
意味で問題が起こってこようかと思うわけでございます。
それからもう
一つは、広告というのは、ものを周知徹底するためにやるわけでありますが、同時に販売のための
一つのテクニックであるわけです。販売のためのテクニックとしては、広告のほかにリベートというような方式で、販売員を使って、販売員に多くのリベートを与えることによって、どんどん売り込んでいくというような販売形式がありましたり、それから交際費をたくさん使って、相手の
企業といろいろ連絡をとってやっていくというやり方があったり、いろいろするわけです。その広告費を押えるといいますか、そういう
方向をとった場合に、いろいろな販売形式がまた変わってくるんではないかということ。
それから、広告費の範囲をどの程度にすべきものなのか。いわゆる広告の概念には
一般に入っておりません、何といいますか、郵便を使いまして、メールでどんどん送るというような方式、そういったものとのバランスというような問題がいろいろあります。そういうことで、まだ広範囲に
検討すべきものが残っていると思います。