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1972-05-24 第68回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十四日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 樋上 新一君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    内田 常雄君       小川 平二君    神田  博君       北澤 直吉君    坂本三十次君       塩崎  潤君    羽田野忠文君       前田 正男君    松永  光君       岡田 利春君    加藤 清二君       松平 忠久君    岡本 富夫君       広沢 直樹君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君  委員外出席者         首都圏整備委員         会事務局計画第         二部調整官   野本不可止君         環境庁大気保全         局企画課長   竹内 嘉巳君         運輸省自動車局         整備部車両課長 飯塚 良政君         労働省職業安定         局雇用政策課長 関  英夫君         建設省都市局都         市再開発課長  重元 良夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 五月十九日  中小企業危機打開に関する請願外一件(石川  次夫君紹介)(第三三二四号)  同(西宮弘紹介)(第三三二五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三四一一号)  割賦販売法の一部を改正する法律案に関する請  願(中川一郎紹介)(第三三二六号)  同(福井勇紹介)(第三三六二号) 同月二十二日  割賦販売法の一部を改正する法律案に関する請  願(坪川信三紹介)(第三七六六号)  中小企業危機打開に関する請願沖本泰幸君  紹介)(第三七六七号)  同(沖本泰幸紹介)(第三八二四号)  同(浅井美幸紹介)(第三九八六号)  同(有島重武君紹介)(第三九八七号)  同(近江巳記夫紹介)(第三九八八号)  同(沖本泰幸紹介)(第三九八九号)  同(岡本富夫紹介)(第三九九〇号)  同(松尾信人紹介)(第三九九一号)  同(松尾正吉紹介)(第三九九二号)  同(渡部通子紹介)(第三九九三号) 同月二十三日  石油パイプライン事業法案反対に関する請願  (木原実紹介)(第四二一九号)  中小企業危機打開に関する請願浅井美幸君  紹介)(第四二二〇号)  同(近江巳記夫紹介)(第四二二一号)  同(岡本富夫紹介)(第四二二二号)  同(松尾信人紹介)(第四二二三号)  同(沖本泰幸紹介)(第四五〇九号)  割賦販売法の一部を改正する法律案に関する請  願(正示啓次郎紹介)(第四五一〇号)  同(中川一郎紹介)(第四五一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十三日  中小企業範囲拡大に関する陳情書  (第二九〇号)  割賦販売法の一部を改正する法律案に関する陳  情書外三件  (第二九一  号)  競輪事業廃止に関する陳情書  (第二九三号)  休廃止鉱山鉱害防止対策等に関する陳情書  (第三一四号)  中小企業対策に関する陳情書  (第三五三号)  中小商業振興対策に関する陳情書  (第三五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  工業配置促進法案内閣提出第五〇号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五一号)  通商に関する件      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田泰造君。
  3. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 工業配置促進法について、数点の御質問を申し上げたいと思います。  まず一番最初に、かつて数多くの地域開発政策とそのための立法が行なわれてきました。依然として、出荷比率等を見てみましても、太平洋海岸の比重が非常に増大をしております。この原因ははたしてどこにあると考えておられるのか。政府としては、いわゆる地域開発政策をいろいろな意味でとってまいったにもかかわらず、ますます増大傾向をたどっておる。その原因がどこにあるのか。また今回の立法は、従前の政策とどこが根本的に一番違った特徴があるのか。質問に入ります前にその二点についてお伺いしたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 各種地域立法がたくさん出ましたけれども、これは地域立場から、地域振興という一つの目的を達成するためにつくられたものでございますが、しかし東京大阪、名古屋というような大拠点中心太平洋ベルト地帯のほうに産業人口が集まることによりメリットが大きかったわけであります。それは生産と消費地が直結をしておるというようなことや、すでに明治から長いこと集中的に公共投資が行なわれておるとか、いろいろな関係でそういうメリットが多かったわけでございます。そういう意味で、また日本人自体考え方政府考え方も、やはり水は低きに流れる、産業は最もいい立地に集まってくる、これはやむを得ないのだ、こういう考え方が大前提になっておった。これは学者も役人もみんなそうなんです。集まるものしようがないじゃないか、中には、憲法で、国民が自由に選択して集まるのだから、全部集まってもやむを得ない、全部集まってもいいようにするのが政治だ、こういうものの考え方がございまして、北海道東北開発法とか産炭地域振興法、まあ産炭地などは別でありますが、山村振興法とか新産業都市とかというと、こんなものは選挙運動のたぐいであるというような考え方の評価が多かった。そういうことがやはり地域立法というものにほんとうに熱が入らなかったということと、集中メリットがあった、こういうことだと思うのです。  ところが今度は公害問題が起こってまいりまして、公害投資というものをしなければならない。また企業機械設備その他がスクラップ化しておって、新しく設備を更新しなければならない。そのときに、これから膨大もない投資を、いまの東京大阪東海道線沿線にそのまま投資をして一体いいのかどうかという問題が切実に起こってまいりました。このままでいけば当然高い税金を重ねることは避けられない。問題はここなんです。自治省事務所税を徴収しよう、それから地方無料公開原則道路でも東京大阪は全部有料道路でなければならない、こういうことになってくると、だんだんと集中メリットというものがなくなりつつある。なくなりつつあるよりも、これからは増力を禁止するとか増設を禁止する、設備の更改を禁止する、地下水くみ上げを禁ずる、電気料金は上がる、これはあたりまえのことですが、そういう傾向になってくると、集中メリットというのはなくなる。だから、意識調査をやっても、一〇%は移りたい、中小企業の二六%は移転をしたい、条件さえ整えば五〇%以上が移転をしたい、こういう考え方になっておるということでございます。  それからもう一つは、地域立法と違うのは、地域立法陳情請願趣旨に立ってつくったものです。大体がそういう感じですから、選挙運動のたぐいだなどといわれたのです。私は、こういうものの考え方自体が今日の過密をもたらしたものであって、そういう簡単な議論を百年一日のごとくやってきた責任もあると思います。しかし、これは責任転嫁をするのじゃありません。人がどう言おうと、マスコミがどう言おうと、政府政治家は真の政治を追求すべきである。もちろんそのとおりでありますが、どうも前提条件という世論形成ができなかったというところに問題があったと思うのです。今度は国全体が、これから一〇%といえば昭和六十年度に三百兆円になりますが、一〇%の半分の五%でも、一体いままでのままでいいのかというと、これはもう東京大阪東海道沿線も、もう歩けなくなる。車の運行は全然できなくなります。そういうことで、正常な成長をもたらし、その成長メリット国民生活が享受をするためにはどうするかということで、国全体の政策として二次産業全国平準化政策が必要になってきたということで、地域立法とは法律立場が違うというところがポイントだと思います。
  5. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 ただいまの通産大臣の御説明で、この工業配置法の今回の立法のおもな特色といいますか、それは承知いたしましたが、私はここで大臣にお尋ねしたいのですが、平準化をはかる場合に、いわゆる過疎地域通産省がいまお考えになっているのはどのくらいの都市をお考えになっておられるか。たとえばその前段の、私の私見を申し上げますと、いままでの地域立法と今回の立法とは変わっておるといいながらも、やはり集中メリットを求めて企業が大都市に無条件に集まっていった。それが公害とのかね合いがあるにせよ、私はある程度の規模の集積の集中メリットが必要であろうと思うのです。だから私のほうの議論としては、要するに中堅都市をつくったらどうなんだ、政府考えているようなもっと小さいのじゃなくて、ある程度の十万以上の中堅都市、そういうものの考え方のほうが、むしろ現実的であり実行可能であり非常に効率的であるのじゃないのか、そういう点についてまず第一点質問を申し上げます。  それに引き続きまして、そういう考え方のほうが、現在の、いわゆるいま通産省でお考えになっておられますような、太平洋海岸の七二%の出荷比率目標年次までに五〇%に下げられる可能性というのは——私は平準化して小さい都市をつくっていく、しかも補助はするにしても、集中メリットを喪失するような、そういう考え方は夢物語で原則としてはいいと思うのです。非常にけっこうであるけれども、それがはたして実行可能な政策かどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 農村工業導入促進法もございますし、新産業都市建設法もございますし、離島振興法もありますし、山村振興法も低開発地域工業開発促進法も、また北海道東北開発促進法もあります。そういうことでこれは地域立法でございますから、個々の振興法とこの工業配置というものは二重写しになっていきます。そしてそれなりに単独立法というものは使命があるわけでありますから、まず産炭地を今度の工業配置法誘導地域の第一に指定しよう。そうすれば、産炭地振興プラスアルファで非常にメリットがあるわけでございます。また農村地帯に対しましては、農村地域工業導入促進法基本計画調整をはかってまいりますから、これは農村地域工業導入促進法よりもプラスアルファになるわけです。  そういうことでいきますが、いま言った全国的な視野に立った二次産業平準化、これはこういうことです。間違えると悪いから申し上げておきますが、太平洋ベルト地帯集中しておる七三%のものをこのままの政策で発展していきますと、それが六十年には八〇%になり八五%になる。こういうところに問題があるわけですから、七三%でもこれからスピーディーに集中をしないようにという政策のために歯どめにしたいと思っておるわけです。そうしますと、北海道一つ例にとれば、北海道はこれから六十年までは年率一〇%ずつでも工業率がふえていくが、東京太平洋ベルト地帯はその半分の五%ずつぐらいしかふえない。これはただラフな数字で申し上げておるわけですが、そうすると六十年になると、この太平洋ベルト地帯の改造もできるし、そして他の一次産業比率の高い地域工業化も促進されて、六十年度には二次産業平準化政策が行なわれる。東京太平洋ベルト地帯スプロール化というものを防ぎながら、理想的な開発が進むような状態全国平準化をはかろう、こういうことを指向しております。  それからゴマ塩のように、農村地域工業導入促進法と同じように一つの村に全部工場を入れるということを意味しでおるわけではないのです。これはやっぱり工業というものは——いままでに新産業都市産炭地が造成はされたが、工場は行かなかった。行っても国際経済の波動には非常に弱いものである。それは下請下請であるというようなものであったので非常に弱かったわけです。結局東京大阪というものが非常にいいと同じように、われわれが生まれた村でもって経営ができなければ県庁所在地に行けばできる。県庁所在地に行ってできなくてもブロックの地方拠点東北における仙台へ行けば営業はできる。仙台営業ができなくても東京へ行けば営業ができるということは事実であります。それは集中メリットなんです。ですから、それが一体五十万がいいのか三十万がいいのか十万がいいのかということは考えられますが、この法律を策定した当時考えたのは、五十万と二十五万の間であるということで考えていろいろ研究してみたりして、まず想定される理想的な姿は拠点都市は二十五万だろう、こういう考え方を持っておるわけです。  それで拠点都市二十五万ということになりますと、いまの四十七都道府県に一ずっといえば大体五十カ所ぐらいできるということにもなります。それだけではなくやっぱり衛星都市のようなものもつくらないと、そこにまた過密が起こるということになります。これは苫小牧とか鹿島や水島で多少問題を起こしておりますから、多少どころでなく問題を起こしておりますから、そういう意味ではやっぱり中核都市以外に衛星都市考えなければいかぬだろうということで、衛星都市は、いまの行政区画の中で生計別に見まして、いま山を積もって千五百億、これが全く手をつけられなかった。半分でも七百五十億だ、こう思っておったんですが、そのまた半分になってしまった。それで初年度はそのまた半分、三千億が千五百億になり七百五十億になりそれが三百億になったわけです。そして発足が十月一日ですから初年度計上額は百五十億、平年度化すれば三百億、こういうことでありまして、初めの私の構想の三千億の一〇%になってしまった。しかしできないよりもできるほうがいい。大蔵省自体もそう言うものですから、まあことしどうしても財源もないしいろいろな問題で新制度が理想的な姿で発足できないとしたならば、とにかくこれでもスタートしようということで御審議を願っておるのであって、これはほっておいたらえらいことになるのです。これはほんとうにいやな話でございますが、関東大震災と同じ地震が東京に襲ったらどうなるかというのは防災会議中間答申を見ればおわかりになるとおりに、人命確保の保証ができないということでありますから、政治としてかかる状態を看過できないのです。そういうようなものも考えながら本政策に踏み切ったということでありまして、確かに御指摘のようになまぬるい。しかしいままでの地域立法のようになまぬるいままで十年間も放置できるものでは絶対にない。だから私は、この法律が通れば、ほかの産炭地とか地域立法補助率や何かも上がっていくようなそのきっかけにもなる、こう考えております。
  7. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 大臣答弁を聞いておりますと、ほっておいてはえらいことになるのだ、そういう趣旨はもう皆さん考えておられるわけです。だから何とかしなければならぬから何とかするのだ、追い出し策、補助策も十分じゃありませんし、またいまのお話を聞いておりましても、原則はわかるのだ。しかも賛成なんだ。具体的な措置がないからこの法案をわれわれは審議をしておるのであって、ほんとうは他の産業関係のない産業、そういう少ない企業、地場の産業関連産業に全然関係のないようなほかの企業、そういうものしか移転ができないような気がするのです。あまり地域産業関係のない関連企業、必要でないような、そのものだけが単独に行ってできるような、そういうような可能性が非常に強くなるのではないか。そうすると、これは企業だけであまり付加価値がないものだから、その地域に対してのいわゆる貢献度もあまり強くない。いま大臣がおっしゃるように、追い出し策でも補助策でも中途はんぱである、受けざらの受けるほうでもあまりメリットがない。そういうような両方が——企業がワンセットになって全部出ていくような形以外にはないのじゃないか。そうすると、現在の住民感情公害問題に対する非常な高まりから見ましてもあまり可能性がないのじゃないか。やはり中途はんぱになってしまうのじゃないか。だから、いまこのまま十年間ほっておいたらいけない、何とかしなければいかぬ。その原則であるけれども、もう少しその原則を踏んまえるなら思い切った助成策を思い切ってとる。そういう中途はんぱな法律なら、前の地域開発立法とそんなに大同小異で変わらないのじゃないかという気がするのですが、どうですか。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 これはスタートをするときでありまして、スタートをするときに理想的なものが望ましいということはよくわかります。しかしなかなかスタートのときに理想的なものをやろうといっても、そのときちょうど、去年景気が非常に悪かった、財源確保ができない、そのために暫定税率の一・七五も全然手をつけられなかったということもございます。まあこの法律をとにかく先行せしむる。なおこれは十月一日といっても、十月一日からやるとことし百五十億の分は少なくとも半分くらい私は産炭地等振興にプラスされると思うのです。そうしてこの法律が通過しておらなければ、来年度の予算編成までにはこれにかわる対案があるかないか、これはないのです。お互い考えてみて、結局は全国地域の二%に集中しておるものを一〇%にすれば地価も下がる。二〇%ももし使えるとすれば、これはもう合理的になるということはだれでも知っておるわけでありますから、全地域の二%というところに七〇%も七五%も、六十年までこのままほっておけば八〇%以上人口産業集中するということは、これはもう是認できないわけですから、やはりこういう政策——私自身もこの政策、自分で通商産業省として大蔵省と折衝した原案から比べると非常に後退しておるのです。後退しておりますが、自治省も言っておるのです。こんなもの三年じゃなくて、二十五年じゃ長いにしても十五年か二十年にしなければならぬということもわかる。わかるが、それにはやはり自治体の財源の補てんをどうするかという問題と、やはりある時期地元が税を取らないようなことがあっても、人間が定着をし、いろんなことを考えると、究極的にはその地方ほんとうに出かせぎをしないでよくなり、理想的な環境をつくる一歩なんだということを納得させるにはちょっと時間がほしい。だからことしは三年でがまんしてください、こう自治省は言っているわけです。だからそういう意味ですべてが理想的なものがスタートするにはちょっとむずかしいということです。集中するように、国民税金を使うのだから投資効率ということだけばかの一つ覚えのようにして、財政政策基本投資効率の高い方向にのみ投資をすべきである。これが悪循環になり今日の過度集中になったことであるにもかかわらず、そういう理論を全く逆な方向に転換させなければならぬというところにやはり非常にめんどうさがあるのであって、この制度をもっと強いものにしなさいということを野党の皆さんなどから御叱正を得ることは、提案をしておる通産省としてははなはだ心強いことであって、ぜひそうお願いしたい、こう思うわけです。
  9. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 われわれは、それはやはりこの法律が、これは野党、与党を含めて、工業配置をやらなければならぬという原則論はみんな踏んまえた上の話だろうと思うのです。いまの答弁を聞いておりまして、結局、地域開発政策の順序というものを考えてみますと、まず地方都市拡大充実をはかることから始めなければいけないのじゃないか。理想的なことを言えば、特に生活環境をはじめとして社会資本充実がはかられなければならぬ、その後に工場進出が行なわれる。いまのこの立法では、やらなければならぬからやるのだ、まず工場進出が行なわれ、その後に地域環境整備を行なおうとしている。これではいままでの地域開発立法と同じようになってしまうのではないか。いま大臣最初の、やりかけだから十分ではないけれども、ベターだからおやりになるのだということについての意見は何ら異論はないのです。ところが、受け入れ体制地域開発を十分やって、それから工場進出が行なわれるというのと、通産省のいまの考え方とは逆になっているのじゃないか。まず工場進出をはかろう、それから地域環境整備というように逆になっているのじゃないかと思うのです。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 工場がいままで東京大阪中心とした太平洋ベルト地帯に百年間の流れと同じような流れで集まるのだということを国民考えており、そういう制度そのままであると、地域開発開発のための整備計画は実際においてなかなかできないのです。今度は集中をさせない、これは過度集中排除法でもあるのです。  同時に、そうなると、これから最低七・五%、潜在成長率一〇%以上もあるという日本の現状から考えると、少なくともいままで地域立法などでなかなか効果をあげられなかったけれども、今度はできるのだ、政府もそういう制度をつくって諸政策をやっておるのだ、さあ、これから地方は思い切った理想的な計画をやろう。いままではやはり何か、田んぼが一割減反されると、どこかのさら田を二町もつぶして、畳工場でも誘致をして、せめて村のていさいや村の財政の縮小するのを防ごうという程度のものが基本になり、県としても新産業都市というような局限されたところに集中して計画を立てる以外になかったわけです。今度は国の政策としてどうしても必要である、こういうことになれば、これは地方と国と一体になって六十年展望の理想図がかける。通産省もこの法律を提案した限り、いままででも各県との間に調整を行なっておるわけです。同時に既存の地域立法等勉強をしておるわけです。  実際において、なるほど新幹線建設促進法高速度自動車道路法や、それから港湾整備のために特別会計をつくったり、ダム特別会計をつくりながら、やがて水の特別会計になっていますが、水をためるのだ、そして水と土地や港湾交通網がちゃんと整備されれば、全国総合開発が可能なような前提条件は進んでいるんだということは、この半年間の勉強で非常によくわかってきているわけです。そういう意味方向を確認をし、誘導する法律ができないと、これは爆発的になってしまう。おそ過ぎるくらいな立法だ、こういう感じでございます。ただ内容は、もっともっと毎年これに付加して、一日も早く理想的な法体系にしなければならない、こう思います。
  11. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 それでは、次にもう一点。移転促進地域から工場移転させる方法で非常に重要な問題としていわゆる従業員対策がございます。それについて通産省がいろいろな助成策はとっておられますが、経営者としてあるいは工場移転をしたいような場合に、そこに働く従業員移転に反対したような場合、これについて政府はどういう助成を行なおうとしておるのか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 問題のポイント一つです。いま東京の中に五千人程度主力工場を持っている会社があります。この会社は移転の希望もあります。駅の前に二万坪ないし三万坪の工場を持っておる。それは車の出入りのために、トラックや荷物、貨物を搬入搬出するために住民から非常に苦情がきておる。そこは坪百万円もする。そして全部設備は更改の限度に来ておる。何も東京になければならないという工場ではない。工場設立当時、野っ原だったからやったというだけの話であります。それを一つテーマとして調べてみたのですが、それに付随する人たちは約五倍、二万五千人ぐらいおるわけです。合わせれば三万人になります。家族を入れれば、四人としても十万人をこすわけであります。そういうような状態でもって、それは制度としては圧縮記帳制度もございますから、百万円で売って、十万円の帳簿価格、圧縮記帳でもってそのまま移転ができて、三万坪が三十万坪以上の理想的なところに行って、設備は全部近代的な新しいものにつくれる。税法上の特例は受けられるようになっております。やりたいのですが、あなたの言う、ちょうど五千人のうちの五割から四割ぐらいの人たちが中高年層でございますから、移るのに、うちがどうなるかという問題、子供の学校はどうなるか、二重生活をやらないで済むかという三つの問題があるのです。それは筑波移転と同じ問題なんです。通産省関係機関が筑波に移転をする。実際はどういうことかというと、住宅がとにかくほんとうにあるのか、子供が学校に通えるのか、地方に出てしまうと定年後の再就職ができない、内職もできない、いろいろな問題があるのです。だから、いま研究しておるのは、それじゃ東京にそういうものが全部おってやれるのかというと、それには限界がある。それは本人たちが納得すれば——どん詰まりまでいってしまえば納得するだろうということでありますが、それは政策がないということに通ずるわけです。そうすれば、それを納得せしめるということで、筑波移転計画してから小十年かかりました。しかし、いまやっと、用地は少なくとも三倍以上にする、それから建物も理想的なものにする、そこには社宅を全部つくる、この社宅は将来自分のものになってもよし、社宅でもよしということになり、しかも学校の問題等片づけば、これは移転は可能であります。各企業移転のときに全部一番問題になっているのは、あなたがいま言った、最もエキスパートとしての労働者はやはり三十五、四十五、五十になっておる。この人たちを一緒に移転せしめ得るかどうかという問題でありますので、これはいま提案しておるこの法律だけでは完ぺきなものではありません。労働関係、厚生関係というものは全部しなければいけませんし、しかも中核都市をつくる場合には、その都市の中の自然環境は保護され、道路の幅員は幾らでなければならないとか、工場といえども建蔽率は三〇%にするか二〇%にするか、緑地帯を必ず持たなければならないというようなことにしなければなりませんし、ある一定規模の中に必要な学校やそういうものも、すべての環境整備をするような法律法律としてだんだんと付加されていく、私は立法当時からそういう考え方を持って研究をいたしております。
  13. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 いま通産大臣立法当時からこの従業員対策についてお考えをいただいているということでございますが、ほんとう工場移転ということを考えてみましても非常に大事な問題です。それでいまも大臣答弁の中でちょっと出てきましたが、最終的に工場移転経営者がきめた場合に、どん詰まりへ行ったら納得がつくだろう。それはある意味では納得がつかない層は解雇せざるを得ないという意味が言外にあると私は思うのです。それが非常に問題であろうと思います。なるほど会社の意思できめた場合、従業員で納得をしない人はやめざるを得ないだろう。大都会には再就職の道はあるでしょう。しかし現在の日本のいわゆる賃金ベースの年功序列型の体系の中では、具体的に給料のダウン、生活給のダウンを意味することになると思うのです。最終的などん詰まりへ来て納得をして、残る人、再就職をしなければならぬように余儀なくされる人のために、これは政府がもう少し関連法案を整備をしてこの問題を重点的に扱わないとこれはなかなかむずかしいだろうと思います。したがって、通産省以外、労働省の方もお見になっていると思うのですが、そういういわゆる生活水準を下げない配慮、通産省のこの問題、非常に長いロングランの形でやっていかなければならない再配置法に、従業員対策のきめのこまかいそういう対策をとってないとたいへんな問題になるような気がするのです。現在の政府考え方は、やはり最終的にきまればしようがないじゃないかということは生活給のダウンを意味するということ、その言外の意味をどういうふうに理解されているのでしょうか、それを労働省からひとつ……。
  14. 関英夫

    ○関説明員 お答え申し上げます。  工場の再配置に伴います従業員の問題が非常に重要だということで、この法案の目的でも、雇用の安定に配慮しつつ措置を進める、こういうことにいたしておりますし、また実際に工場、事業場に関係大臣からいろいろ指導、助言を行ないます場合に、私ども、関係大臣に必要がある場合には意見を申し述べることができるということにいたしましたのも、いわば従業員対策という意味から労働省としてはいろいろ意見を申し述べていきたい、こういうふうに考えた次第でございます。先生のお話のとおりに、特に中高年層の再就職という問題は、労働力不足である大都市地域におきましても確かに賃金その他の労働条件面で問題がございます。ただ昔から見ますると若年層の供給が不足してまいりまして、最近では事業場も中高年層の中途採用ということにだいぶ踏み切っておりまして、雇用動向調査、そういったものから年齢別に再就職前と再就職後の賃金を比較してまいりますと、再就職の前後で賃金が上がった者あるいは下がった者いろいろございますが、大体上がった者と下がった者の均衡がとれてくるような状態に最近改善されつつございます。しかしながら、現状として十分ではございませんので、今後私ども、ますます中高年齢層の再就職の促進には、私どもの独自の対策といたしましても中高年齢者の雇用促進ということに特に力を入れていきたいと思いますし、また具体的に工場移転がきまりました場合には従業員対策ということを重点に考えていただきまして、まず移転先の住宅あるいは教育問題の解決をはかって、できるだけ離職者が出ないようにしていただくことが第一。それからどうしても離職者が出る場合には、離職前から私どもその再就職問題を会社やそこの組合と一緒になって相談していく、そしてそういう離職者の実態に見合った求人をその地域確保するというようなことを離職前からやっていこう、こういうような考え方でおる次第でございます。
  15. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 大体私の持ち時間も終わるようでございますので、大臣に最後に御質問を申し上げます。  それはいま労働省から、従業員対策について特にこの法案の中で慎重な配慮が望ましいということを御要望申し上げて御答弁をいただいたのですが、大臣からもその一点について、特にこの従業員対策について通産省としてはいかに考えておられるか。  それとあわせて、最後ですので、この法律そのものが、先ほど来の審議で明らかになったことは、再配置をやるべきであるという原則論だけははっきりだれもわかっているのですが、相当思い切った抜本的なことをやらないと、またぞろ過去の開発法案と同じようなことになってしまうのではないか。したがって相当思い切った、具体的には公害対策の歯どめ、従業員対策の歯どめ、そういうことをしっかりして、大胆な施策、大胆な助成策、それに踏み切らないと効果がないような気がしますので、その運用上の省令、政令をきめるにあたりまして、将来の運用ということを考えまして、ひとつ大臣の決意なりお考えをお伺いして質問を終わりたいと思います。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 この法律は、現在ある都会の工場、これは移転の希望があっても、メリットを追求して集まってきたものでありますから、これは移転ができなければ、いままでどおりになるわけです。しかし実際の問題として、時代の要請に沿って規模が大きくならなければならない。規模を大きくするには、この超過密の中では規模が大きくできないし、新しい投資もできない。また公害投資をするにしても相当巨大な投資をしなければならない。そういうことになると、それだけの集中投資をするならば、新しいところに立地を求めたいという感じは確かにあります。でもそのためには、誘導政策としては圧縮記帳の制度や低利長期の金融とか税制上の優遇とかいろいろなものがあるわけでありまして、それに今度この法律を付加して、これ以上過密に拍車をかけるような悪循環を続けるようなものには一つの歯どめをしたい。東京にみんな寄ってきては困るから、言うなれば埼玉県の向こうでもって歯どめをしたい。それから栃木県で関所を一つつくりたい。つくりたいけれども、それは関所でもって入ってこないというのでは困るので、やはりそこで産業が定着をし、発展せしめるメリットというものが追求できるような制度をつくっておかなければならぬことは言うまでもない。そうでしょう。幾らどう考えてみても、雪の降らない太平洋ベルト地帯に住むほうが、北海道、青森県に住むよりもどうもよさそうだ。沖繩は暑いから沖繩よりよさそうだという感じはみな持つわけです。だからそれなりの、そこで定着せしめるメリットというものを与えなければいかぬ。助成政策を行なわなければ定着しない。これはそういうことであります。  もう一つは、企業者が、企業投資メリットというものと魅力がなければだめだと同じように、労働者が魅力がなければ定着をしません。これは女子などは学校に出すと、お互いにそうだと思うのですが、子供を東京に連れてくると帰らなくなるのです。これが一番困るのです。若い婦人が定着をしない山間部には若い男の労働者が定着するはずがないのです。そういうことで結局労働者が定着する魅力を与えなければならないし、また都会、過密地帯から新しい産業地帯に出ていくとするならば、それなりのメリットがある。自分は都会におってもどうも月給は上がるけれどもマンションの一室しか買えない、しかし自分の郷里の新しい産業基地に行けば、少なくとも三百坪の土地を与えられ、そして五十坪の住宅は自分のものになる、自分がそこにいつく限りにおいて、それは自分のものにもなるし、会社に返還をして自分では退職時に新たなところにうちをつくってもいいという、みずからの裁量によって財産形成ができるというようなメリットを与えない限り、これは中高年齢層の労働者が、東京におる者、名古屋におる者が北海道へ行くわけがありません。だから太政官布告でもって北海道開発ができるような先行投資をしたから、また北海道民としては公共投資に対しては全額国がやってくれて、地元負担がなかったから北海道には人が居ついたわけであります。九十年間に三万九千人が五百二十万人になったというのはやはりそれなりの政策があったということでございます。ですから、やはり労働者に対する魅力ある政策というものはこの法律が企図する中の一つの面ですが、過密地帯から工場が出ていくという障害解決のためには労働者に対する対策が最も重要である。これは私自身も認め、現に検討いたしております。      ————◇—————
  17. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際、通商に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  18. 中村重光

    ○中村(重)委員 田中通産大臣に、対外経済緊急対策推進について、昭和四十七年五月二十日に対外経済政策推進関係閣僚懇談会で、財政金融政策の機動的展開であるとか、輸入促進対策、輸出取引秩序の確立、資本輸出対策、外貨の活用対策、経済協力の推進、緊急立法措置、こういったような決定をされたようでございますが、この中から外貨活用の問題について、決定の内容、それから具体的にこれをどう推し進めようとなさるのか、それら点についてひとつ考え方をお示し願いたいと思います。
  19. 田中角榮

    田中国務大臣 五月二十日に関係閣僚会議を開きました。それから二十三日に閣議報告をいたしました。本日中にはおそくとも提案をいたしたいという考え方を持っております。これは持ち回り閣議で処理をすることをきのう閣議了解を行なっております。  この中で外貨の活用の問題でございますが、この外貨の活用に対しては、長いこと、去年の円対策八項目の中の八項目目に外貨の活用というのがありまして、それはなぜできなかったか、七項目が実施に移されながら、外貨の活用の中で鉱石の輸入等に対してわずか三億五千万ドルばかりの融資を考えた、特別措置を考えた、外貨預託を考えたというようなもの以外に画期的なものがないままに百六十五億ドルという外貨準備を持つに至った、こういうことでございます。それは一体どういうことかというと、外為特別会計法によりまして外貨は中期運用や長期運用というのができるのかどうかというような問題がいろいろ議論をされておったわけでございます。そういうことで第二外為をつくらなければならないというような議論をずっと続けておったわけです。ところが、その後、この二十日の関係経済閣僚会議までに、法制的その他、現行法で外貨の中長期の活用も可能である、こういうことになりまして、あとは第二外為をつくるかどうかという問題になったわけです。ところが現在の外為会計法により外貨の中長期の運用ができるとするならば、第二外為をつくるということよりも現実的に金をどう運用するかという問題である、こういうことになりました。そして輸出入銀行、それから外為銀行——外国の為銀、それから日本の外為銀行等に金を貸せることはいまの法律でできるわけでございます。またこれは、言うならばころがしていっても運用はできるわけでございます。外貨預託、輸入及び活用ということでできるわけでございます。ところが輸出入銀行それから石油開発公団、それからその他の金探事業団等に対して、一体やれるのかどうかという問題があるわけでございます。これはやはり外為銀行ではないので、これは法律で輸入することができるということにしなければなかなかできないじゃないかというような議論をいたしたわけでございます。ところが結論的には、いまの外為特別会計法によって外貨を直接貸し付けるということになれば、これはやはり法律を改正してやらなければならぬけれども、いまの外為法の精神そのままで円を各機関に入れまして、そしてその円で外貨をあがない、そしてその外貨を国民に貸し付けるということをするならば、現行法でちゃんとできるようになっておるじゃないかということで、そとまでだんだんと十カ月間研究しながら詰まってまいりました。そして最終的には約三十億ドル、これは金額はおおむねの問題でございますが、三十億ドル程度を運用するということを目標にして法律整備を行なおうということにいたしたわけでございます。大ざっぱな話は、三十億ドルのうち半分の十五億ドルは外為銀行に預入をする、あとの十五億ドルを輸出入銀行、石油公団その他を対象にして考えればいいじゃないか、その内訳はこれかう検討をしよう、こういうことにいたしたわけでございます。そうすると、あと残るものはどういうことかというと、金利の問題があります。金利は安くなければならないというのは、これはウランを買い付ける場合とか石油の備蓄をする場合とかいうことになりますから、普通の金利ではとても手を出さない。政府が事業団をつくって備蓄をしなければならぬとさえいわれているものを民間にやらしたいということであるならば、やはり低利長期のものでなければならないということで、その金利に対しては、実効金利との差額に対しては利子補給の道を開こう、こういうことで政府部内としてはようやく話し合いをまとめたわけでございます。  しかし、これは法律を出さなければいけません。それでまた愛知代表がUNCTADに参りましてアンタイイングの問題に対して発言をしてまいったわけでございます。そうすると海外経済協力基金法の改正が必要でございます。特にアンタイイングの中の商品援助に関しては、商品援助もできるようにするには対外経済協力基金法の一部改正をしなければいけません。そういう意味で、輸出入銀行法の特例としまして、輸入金融——いままでは輸出が大宗であったのが今度は輸入を促進するためでありますから輸入金融、海外投資金融、開発事業金融の拡大ということができるように輸出入銀行法の改正が第一点でございます。第二点は、いま申し上げたアンタイドの商品援助ができるように海外経済協力基本法の特例を設けるのが第二点でございます。第三点は、外貨の多角的活用について、輸銀、石油開発公団、金探事業団等に対し、その行なう融資で輸入の促進、資源の開発、備蓄等外貨の多角的活用に資すると認められるものにつき利子補給を行なう、これが第三点であります。第四点は輸出に関する勧告等で、輸出貿易の健全な発展に支障が生ずるおそれがあると認められるとき、通商産業大臣関係輸出業者またはその団体に対し、必要な措置を講ずることを勧告する、また必要な情報の提供を求めるというような問題、これはどうしてもうらはらになるわけであります。これが第四点。こういう問題を前提としまして、三十億ドルということを一応考えております。これは十カ月かかったことでございますが、最終的にはこのような内容で、外務、大蔵、通産、経企の四省でこの問題をまとめました。あとは法制局の段階に入っておりますので、時間的な問題であるというのが現実でございます。
  20. 中村重光

    ○中村(重)委員 詳細にお答えいただいたわけですが、そこで、外貨は大体どのくらいあるのですか。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 外貨は百六十五億ドルということでございます。しかし、日本の外貨は、非常に健全な外貨運用と、外貨の非常に精密な計算をやっておりますので、日本の公称外貨百六十五億ドルというものはほとんど流動性を持っている、こう申し上げてもいいと思います。  これはほんとうからいくと、七、八十億ドル外国銀行から借りているものもございますから、百六十五億ドルから七、八十億ドルを引けば九十億ドルぐらいじゃないか。そうすれば、月間二十億ドルにしても、四カ月分とすれば八十億ドルでちょうどいい外貨だという見方もございます。ございますが、いま日本から引き揚げるというような外国為銀もなかなかありませんし、そういう意味では百六十五億ドルほとんど流動性を持っておるものである、こう見ていいと思います。私が答えられることは以上でございます。これ以上の正確なことは大蔵省からお聞きになっていただいたほうがいいと思います。
  22. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣が正確な数字を把握しておられるかどうかわかりませんが、ただ百六十五億ドルとか九億ドルとかいわれたのはずいぶん前なんでして、貿易収支からいいまして相当黒字が出ているようでありますから、実際はもっとあるのではないかという推測でございますが、その点は、私で答弁できるのはこの程度であるというお答えがございましたから、数字の問題はあらためてまたお尋ねをすることにいたしますが、先進国家からは実際にはもっと外貨があるのではないかというような見方をされているのではないかというように思いますから、その点はひとつ明らかにされる必要があるであろう、それが日本のさらに信頼を回復する道にもつながってくるのじゃないかという感じが私はいたします。  そこで、外貨活用のねらいなんですが、いま大臣から外貨活用はこういうような面を考えているというお答えがございました。そこで、ポイントなんですけれども、外貨活用というものが円再切り上げというものを回避するということにねらいがあるのか、そうではなくて、輸入であるとかあるいは資源開発であるとか、これは円ではどうすることもできない、やはり外貨を活用しなければならぬというような考え方の上に立って外貨活用をお考えになっているのか。ほんとうポイントというか、ねらいはどこなんですか。
  23. 田中角榮

    田中国務大臣 これはいまでは輸入の促進、備蓄の増大ということが、正規にはそうお答えするわけですが、これは先ほど申し上げましたように、去年きめた円対策八項目の中の外貨活用というのが残っておったわけですから、これはやはり円対策の中の重要なものであったということは事実でございます。それでやはり日本の外貨準備が伸びるという——本格的には輸出入ということでございますから、日本の景気浮揚ということが前はり外貨がたまる、国際流動性が阻害されるということになれば、これは相当な問題になることは事実でございます。日本が外貨をかせいだならば、やはりこれは国際流動性を確保しながら、日本だけがため込んでおくということではなく、これはやはり援助に使ったり、ひもつきをなくするアンタイドや、いろんな問題に対して活用するということがどうしても必要でございます。そういう意味で、特に外国において予定どおり鉱石を引き取れないなどといってトラブルを起こしているものもございますし、必要なものは輸入しなければならないというウラン等の問題もございますし、そういう意味で外貨を寝せておかないで活用する、こういういろいろな目標がございますが、せんじ詰めてもっと明確に言えといえば、やはり景気を浮揚し、輸出入のバランスをとるという過程において、いままで積み増しをされた外貨というものはできるだけ活用するということを目標にしております。
  24. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほどお答えがありましたように、輸出入銀行とか石油開発公団あるいは金属探鉱事業団、これら機関に対して四千五百億程度財投から融資をするということが伝えられているわけですが、そうすると、いまもお答えがありましたようにこの財投からの融資、これでもって外貨をあがなう、こういうことになる。そこで企業に外貨を貸し付けるということになるだろう。さらに外貨の多角的活用の促進という中にも利子補給ということをうたっているわけですし、お答えの中からもそれが出たわけなんです。財投金利は六・五%ということで、これでは無理だ。この間石油備蓄の際も利子補給をおやりになることを御説明がありましたし、私どももそれを伺っているわけですが、いま考えております利子補給というのはどの程度考えておられるのですか。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろこれから政府部内でも検討しなければならないし、国会でもって法律を御審議いただくときには、それまでには十分答弁ならぬと思います。まだ正確な数字を詰めてはございませんが、いま御指摘がございましたように、これを資金運用部資金を使うということになれば六・五%であります。いま外貨は何に一番多く使われておるかというと、証券とか中期証券、そういうものを購入しておる。その金利はどうかというと三・七五%であります。ところが六・五%マイナス三・七五%というのが差額になるわけであります。ですから、いまでも輸銀の金利があってもなかなか輸入はできないということ、ですから相当安い金利でなければそれは輸入はできない。為替リスクの問題と金利にかかっておるわけです。そういう意味で私が主張しておりました限りにおいては、六・五%マイナス三・七五%の差額を利子補給する、こういうことを主張しております。大蔵省はこれに対してノーと言わないということでございますが、これを了承して、確実にきまって積算をすれば百数十億になるということを言うのには、ちょっと時期が早いような気がいたします。しかし、ここまで申し上げるのですから、相当話が詰まっておることは事実でございます。
  26. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の知り得た情報によりましても、大臣がいまお答えのとおり。そうなってまいりますと、二・七五%の利子補給というその金額は、百二十三億七千五百万円というような数字になるようでありますが、この利子補給はどこから支出をするということになりますか。
  27. 田中角榮

    田中国務大臣 それはまたこれから法律の問題がございますし、補正予算を提出するのか予備費から支出をするのか、これはまだ全然具体的にはきまっておりません。おりませんが、これは法律を提案するときには政府としての明確な答えを準備いたします。
  28. 中村重光

    ○中村(重)委員 私もいまお答えがありましたように予備費の支出が考慮されているということも伺っております。大臣、いかがでございますか、補正予算を提案するということになってくるとこれはおのずから別でありますが、予備費から利子補給をするということについての是非については大臣はどのようにお考えになりますか。
  29. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう純法律論もございますし、国会開会中でもございますので、これは法律提案に至るまでの間には正式な答弁を用意いたします、こう申し上げておるわけです。これはなかなかむずかしい問題なんです。物議をかもすような御答弁はできないということで、ひとついまのところごかんべんをいただきたいと思います。
  30. 中村重光

    ○中村(重)委員 政府は利子補給を予備費からという考えが大体固まりつつあるように私ども伺っておる。この間予算が参議院を通過したばかりであります。それも予備費から利子補給なんということは考えられていなかったし、またそういう説明もなされていない。予備費から利子補給をするということは絶対にやるべきでないということを私は申し上げたいわけです。  御承知のとおり国鉄運賃は多数をもって衆議院を通過する。参議院ではまだお経読みもなされておりませんが、これを減額修正するといったようなことは考えていないようであります。健康保険法の問題にいたしましても、私ども野党は最低大体二〇%国庫補助が妥当であるということを考えておりましたが、この前の予算の中で一二%の国庫補助を私どもは野党共同でもって組みかえ動議を出した。それにすらいま政府・与党は応じようとはいたしておりません。物価はどんどん上昇しておる。その上に大衆に対して犠牲を要求いたしておる。そうした段階において、予備費の中から利子補給をするなんということは私はもってのほかだと考えておる。そのような企業べったりのことをやるべきではないと私は考えますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  31. 田中角榮

    田中国務大臣 これは企業べったりという議論じゃないのです。円の切り上げなど行なわれたらもっとたいへんになるたいへんな問題なんです。ですからこの段階において立法審議をお願いしなければならない、こういうことでございますから、それはいままでのように企業でもってやらなくたっていいのです、企業でやらなければ国がやればいいのですから、国が事業団をつくっても輸入促進をやらなければならないといっているのですから、これを長期低利というような制度によって民間をしてやらしめられるかどうかという問題なんです。それでも民間はやらないかもしれません。これをウランの開発輸入ということを一つ例にとればすぐおわかりになることであります。九電力はウランの輸入は直ちにしてもらいたい、しかしこれは九電力ではなく政府が事業団をつくってやってもらいたい、政府がやれば利息も何も要りません、そういうこととのかね合いでやる仕事でございますから、これは企業べったりとか産業保護とかそういうものじゃないのです。これは国の政策としてやらなければならぬかどうかというのがこの制度を踏み切らなければならぬかどうかということなんです。ですからこれは法律をもって審議をいただく。だからこれは、いや、そういうものは要らない、外貨の活用もしないでよろしい、大臣の勧告権などは要らない、そんなことをやるとまた日米繊維交渉のようなものをやるおそれもあるから、やると悪いから私たちはやめた、それは要らぬということなら、国会の決議がそうであるならばそうなるわけです。  ところがそうなった場合には、それで円の切り上げが行なわれたらもっともっといろんな問題が起こる可能性があるわけです。しかし、そういうことを未然に防ぐためにはこういう政策をやらなければいかぬということであって、これは産業政策考えることはない。国際経済に対応する対外経済調整に関する臨時措置法であるということで、全く別な立場でございます。けさの新聞にもちょっと何か書いてあったが、そんな考え方では——まああなたは全部承知されておって言っておられることですから私もむきになって答弁するつもりはありませんが、しかしこれが十カ月もかかったのは、そういうめんどうな状態であってしかももう避けがたいところまできておるので、どうしても最終的には立法処置で国会で意思をきめていただきたい、こういうことでありますので、この問題、ちょっといま私も的確なお答えはできませんが、御了承願いたい。
  32. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣企業べったりではない、そういうお答えであります。日本の国策である、円の切り上げをやられたらどうするんだ、日本の経済はまた大混乱におちいるではないか、それは泣きどころという形になっていますね。ところが大臣、なぜにそういう結果になるかということをお考えにならなければだめなんです。輸出の伸び、輸入の伸び、経済成長見通しの問題、国民消費の伸びをどう見積もったかということです。私は資料を持ってきておりませんが、記憶のまま申し上げますと、国民消費の伸びにいたしましても四十六年度が二二・五%、四十七年度一三・八%でしょう。横ばいにしか国民消費は伸びを見ていないじゃありませんか。国民消費の伸びを押えるということは、これはたとえば賃金にいたしましても、あるいは農業であるとか中小企業であるとか、いわゆる庶民生活というものを伸ばしていこうとする考え方の上に立っていないということです。したがって、国民消費が伸びないということは購買力がそれだけ伸びないということなんです。購買力が伸びなければしたがって輸入もふえてこないということです。当然輸出入という面において、輸出は思うように減らなかった、輸入はそうした経済見通し、輸入見通しの点から十分伸びてない、伸びてないから勢い外貨がたまってこざるを得ないじゃありませんか。また経済見通しを見ましても、外貨は七十一億たまるようにちゃんと見通しはできておるじゃありませんか。だからそうした外貨がたまらないように、政府がはっきり打ち出しておりますように、GNP中心主義、輸出中心主義ではなくて、国民生活優先主義、人間尊重、公害をなくするとか、生産性の低いものを生産性を高めていく、国民の生活水準を高めていくという方向に経済見通しを立て、それに対するところの予算編成をしておったならば、いまのような結果にならなかったし、外貨はたまらないと思う。外貨はたまるべくしてたまっておるのじゃありませんか。それを外貨がたまっておるから再び円の切り上げということになるから、いま外貨の活用をやらなければならない。予算の通った直後に予備費から利子補給をするなんという、そういうでたらめなことが許されてはならない。私があえて企業べったりということを主張するのは当然じゃありませんか。政府が善政を施してなお外貨がたまってしようがないのだということで外貨を活用されるということであるならば、これはわからないでもありません。しかしそういうことをやらずして、外貨がたまったから円の再切り上げになるからこれはやらなければいけないんだ、企業べったりじゃないんだ、その考え方を改めろ、こうおっしゃられても、私も納得しないし、国民も納得しない、私はかように思います。そうはお考えになりませんか。
  33. 田中角榮

    田中国務大臣 いま中村さんのお立場で言えばそういうことになるんでしょうな。それは私もよく理解できますよ。理解できますが、これはそう単純でもないのです。なぜかといいますと、去年の一月には外貨準備高は四十五億ドルでしがなかったのです。それがちょうど一年間で百六十五億ドルということでございますから非常に異常である。これは日本の経済政策だけの関係じゃありません。これはやはり国際経済の波動である、こう見なければならない。そうでなければ——私は三十七年、八年、九年、四十年と大蔵大臣の職にあり四十年にやめたのですが、やめるときには四十年不況でありました。外貨準備高二十億ドルでありましたから……。それから六年間で四十五億ドルになったわけです。それが一年間でもって百二十億ドルもふえたということは異常である。異常であるといっても、これは国際波動だけではなく、何で主要工業国が全部低金利政策に移行したときに二カ月ずつおくれたんだ、これは経済政策の失敗だとか、いろいろ指摘されることがあろうと思います。おととしの一月に四十五億ドルならば、おととしもっと、三千億か五千億財政を膨張させなかったか、それも自民党の失敗である、いろいろな指摘はあると思うのです。まあそれは確かにいろいろあるわけでありますが、ほんとうに経済の見通しの的確性という面に誤りがありました。そうでしょう。四十六年度の経済成長率は一〇・一%だと思っていたら、あれだけ景気浮揚策をやって——予算も組み、財投の追加をやり、あらゆることをやってどうなったか、景気浮揚策をやって四・七%しか上がらないのですから、それはもう問題にならないくらいの違いがあります。ですから、それをあなたから御指摘いただけば、いずれにいたしましても今度はしっかりやります、こういうことで御理解をいただく以外にないわけです。ですから、外貨はいずれにしてもたまっておるのであって、国際的な見地から流動性を確保しなければなりませんし、活用しなければならない。だから、去年の八項目の対策の中には外貨の直接貸し活用というのがあったわけであります。それが今日まで延びたというのは、制度の問題現行法の制約があったというような問題で参ったわけでございますが、やはりここらでどうしても、さっき申し上げた四つの項目というのはなかなかみんなそれなりの理由がある事項でございますが、四つの政策の中の一つとして外貨の活用策ということを実行に踏み切らざるを得ない、こう考えております。これは国会で御審議をいただくわけですから、いやそんなことをやるよりも下村理論のように百億ドルを国際機関に出したほうがいいという議論もありますし、いろいろ議論はあるのです。あるけれども、私はいまの日本の状態考えますと、国民がためた外貨でございますし、将来やはり国民生活向上のために活用されるというものでなければならない、そういうものに使われるということでなければならないという考え方から考えますと、百六十五億ドルくらいの外貨を持っておったからといって、これをみんなよそにやってしまったほうがいいというのはどうも荒っぽい政策のような気がいたします。   〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕だから、まあ議論は存在しますが、何らかやらなければならない。当面する問題解決の政策一つだ、こう考えております。  しかしいろいろな議論がございますから御審議の過程においてこれはいろいろ変わってくると思いますよ。政府考え方は、いろいろな角度で十カ月間詰めましたが、こうでございます、国会の御審議等いろいろなあれがございますから、そういう意味では謙虚に国会の御議論を伺いながら、これこそ国民がためた国民の財産の活用でありますから、非常に真剣に、厳密に運用しなければならぬ、こう思っております。
  34. 中村重光

    ○中村(重)委員 実は、関係閣僚会議の決定が新聞に報道されておりまして、けさの私のほうの党の国会対策でこの点を重視しまして、そこで商工委員会と大蔵委員会とで緊急質問という形になったわけであります。党といたしましても政府に申し入れをすることにいたしております。きょうは一般質問でなくて緊急質問ということにいたしまして、非常に重要な問題でございますからあらためて十分私どもの見解も申し上げ、さらに深くお尋ねをし、また大臣考え方をひとつ明らかにしていただきたい。  ただ申し上げたいことは、国民から非難されるといったようなことは厳に避けてもらわなければならないということであります。それと同時に、かつての円対策第八項目の中に、生産性の低い産業の生産性を高める、これは農業とか中小企業といったようなものが中心考えられていたわけであります。したがいまして生産性の低いものは高めていく、国民生活を向上させる、社会投資であるとかあるいは福祉優先、そういう政府が掲げたスローガンを着実にまじめに実行する、そういう方向で積極的に施策を推進することによって外貨もいまのような形でたまってくることはない、そのように私は思いますから、いま大臣が謙虚に国会の意見を聞いて対処していきたいというお答えであったわけでありますから、そういう線に、ただ単に答弁ではなくて、それを実行してもらいたいということを強く要望いたしまして、きょうは緊急質問をこれで終わります。      ————◇—————
  35. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 引き続き、工業配置促進法案及び産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  36. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、工業配置促進法案につきまして、通産大臣に数点にわたってお伺いしたいと思います。  工業配置構想につきましては、今日の経済情勢、社会情勢並びに今後の経済発展の上から考えましても焦眉の急であろう、一応その構想としては評価しなければならないと思うわけでございますけれども、今日まで各委員からあらゆる角度からこの構想につきましては議論されてまいりました。端的に言いまして、この法案ができました場合においてどれだけの効果をあげ得るかということがやはり一番問題であろうと思うわけであります。昨今いろいろ述べられておりますように、少なくともこの法案をつくる前提でありましたいわゆる田中構想といいますか、それよりも現状のこの法案を見ました場合には相当後退している、こう思わざるを得ないわけでありますし、十二条から成り立っておりますこの工業配置法案は、内容はほとんど政令にまかせられている。いわゆる運用にまかせられている面が相当多いわけであります。そういう面から、これは実際に効果をあげるかどうかということが、いままで種々答弁をいただいておりますけれども、まだ判然としないわけであります。まず最初に、その基本的構想を練られた大臣の具体的な考え方について、ひとつ明らかにしていただきたいと思うわけでございます。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 いままで申し上げておりますように、確かに私が当初企図いたしましたものよりも非常に後退をしております。しかし精神的には後退をしておらないのです。スタートではやむを得ず理想的な形がとれなかったというのは、これは半期百五十億、年間で三百億程度のものでやれるわけがございません。これは、かっこうなビルを一つ建設すれば約三百億ということでもございますから、そんなものでやれるわけはないと私は思います。その程度のものではない。それだから、スタートのときは最小限でもまるが一つ足らないというぐらいなことを私自身も申し上げておるわけであります。それは根拠なく申し上げておるのではないのです。去年千四百億円の収入であった一・七五の暫定税率がことしは千五百億になる。ちょうど私が道路整備の財源等に関する法律道路三法をやりましたときには、かっこうはついておったのです。これは私が提案者の代表でございましたが、これは各党とも与野党とも一体となって議員立法をやったのです。ですから、これはていさいとしては非常にりっぱなものです。これは道路法という基本法を書きかえてしまったのです。それで有料道路制度をあわせて採用いたしました。同時にそれに対しては、ガソリン税を目的税にするという相当激しいことをやりました。しかしこれは各党全部の提案であって、政府は反対したんです。政府は相当な反対をしました。衆議院はあっという間に通りましたけれども、参議院では百日間政府は反対をした。反対したけれども、与野党全員の提案でありましたので、それは国会最後の日に立法となった。立法となっただけに、十七、八年間で、当時道路事業費が二百億であったものが二兆三千五百億、ラウンドの数字は二兆円でありますから、一七、八年間に道路事業費は百倍になった。百倍になったけれども、車もまたふえたわけだ。当時百三十万台が二千万台になってしまって、車は動かないようになっておる。そのときに、各党提案であったガソリン税を目的税にした道路整備の財源等に関する法律がもし立法されなかったら、日本の経済はどうなっておったかということは、これはもう非常に明確なことでございます。ですからそういう意味で、同じ考え方で一・七五%プラス同じ額といえば、千五百億と千五百億ですから三千億、その十分の一になったわけでございますから、金額の点についてもたいへんであります。  先ほどまた御質問がございましたが、工業の再配置というのは、出ていく者がきちっとどのように出ていく、それに対しては具体的にどういう政策が必要である、それからそのまま流入してこないような歯どめにするためには一体どういう政策でございます、それからその地域の地場産業拡大していくためにはどういう政策が必要ですというふうに、具体策を並べるべきなのです。しかし、なかなかそれは各地域立法もございますし、今度のこの法律立法化されましたら当然地域立法との問題も全部調整しなければなりませんし、私は十月一日までに、この法律施行までに、いままで府県でばらばらであって——府県の東京事務所が、私の県の二十年後というものだけを持ち歩くために東京事務所があるんじゃないかとさえいわれる県もあります。そういうものが非常に苦労しながらメリットがない。今度通産省は、少なくとも政府全体の責任として二十年後の青写真はこういうことでございます、各府県との調整はこういうふうにいたしましたというものが全部できますから、これに対しては今度運輸省は鉄道の計画を入れますし、ガソリンの計画を入れますし、それから通産省工業用水計画を入れますし、建設省はダムの計画を全部地図の中に入れます。ここではじめて東京からなるほどどこへ出ていけるんだなということがわかるわけでございます。だから鹿島でも大分でも四日市でも水島でも、ちょっとしたプロジェクトをつくるとわあっと行くわけです。あのくらい青写真を提示すれば、青写真が爆発するような状態で新しいところに移転をしたいという素地があることを見のがしてはならないと私は思うのです。  そういう意味で、今度のこの法律ほんとう政策的には完ぺきではない。これは税制、特に地方税制が抜けておってどうもだめなのです。この地方税制というものの穴をあけないようにして、必ず一般財源で補てんをするという一番大きなところがこの法律では抜けておりますので、御指摘になるように、この法律ができれば政策目的は達成されるのか。達成しなければだめなのです、全力をあげます、こういうことを申し上げる以外にないので、これは皆さんのお力をほんとうにおかりして、この法律ができておれば、毎年、私は政府立場ではありますが、この法律に付加するものは、今度は各党がお互いに協力をしながら議員として修正案を付加してもいいと思うのです。そういうケースのものなんです。これは一省でここまで持ってくること自体が実際たいへんなことなんです。ですからそういう意味で、これをしなければならないということは皆さんも全部承知しておるのですから、やはり法律に盛る条文、政策が不足であるならばこれは盛ってもらうように、これはもう私はそういう立場をとっておることを申し上げて御理解を得たい、こう思います。
  38. 広沢直樹

    ○広沢委員 言わんとしておる趣旨はよくわかりますが、いまの話を聞いておりますと、この法案はあくまで誘い水である、あと充実するのはそちらでやれと言わんばかりのお話でございますけれども、しかしやはり法律を出される以上は、それなりの効果をあげ得ることを考えていかなければならないことは事実です。いまもお話しのように精神的には後退していない、確かにこれはいまの経済情勢、今後の経済情勢から考えても進めなければならぬというその精神的なことは何びとも反対はしないだろうと思うのです。ですからそういう面から私が申し上げておるのは、やはりお出しになる法律にはもう少し実行力を持った具体性のある出し方をすべきではないか。いまそういうようなことをおっしゃいますからそう言わざるを得ないわけです。  さらに経済審議会、この中の交通研究委員会ですか、そのほうからの中間報告、研究報告ですか、それによりましてももう少し具体的にこれを指摘しておるわけなんです。それは大都市地域工場に対する水あるいはエネルギーの供給制限、公害規制の強化、賦課金制度の導入あるいは交通施設の整備、大プロジェクトヘの地域住民の参加等幅広い具体的なものをここに掲げなければならない、こういうようにいっております。特に報告が強調しておるのは、必ずしも大都市に来なくてもいい工場地方へ追い出すには、大都市にとどまる不利益というものをはっきりさせなければならない、高めなければならない、こういうことを指摘しておるわけですね。そういう観点から見ますと、この十二条にわたる法律の中では、地域指定をしたりあるいは旧来のいわゆる新産都市とかあるいは工業整備特別地域だとかあるいは低開発地域工業開発地域だとか、それぞれの各法律にありますように、その方向としてはそれは一応うたってあるわけでありますけれども、具体的に誘導策はうたってありますが、実際に促進していくという面が明確じゃないのではないかと思うわけです。それは全然ないとはいえません。しかしいまこの法律に盛られておる範囲内においては、どれだけの効果をあげるかということは疑問にならざるを得ないのですけれどもその点いかがでしょうか。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 それはもう御指摘のとおりでございます。これだけのものをやるなら、先ほども申し上げたとおりもっと具体的なもの。総合的なものが付加されなければならない。世界の立法の中で一番この種のものとして整備されておるものは、ニュータウン法というのがある。これはロンドン八百五十万からの都市において、第二次大戦でもって爆撃を受けまして困ったわけです。これは一次産業と二次産業の比率が非常に少なくなって、都市集中できるものはすべて集中をさせたわけです。集中メリットというものを追求できるならばその際限一ぱいやろうということをやったわけですから、一次産業と二次産業というようなものは全部整理をされてしまった。そして日本でいま問題になっております人口に比例する議員選出方法をとったわけです。そのためには一次産業の応援者などは全然なくなってしまった、都市政策だけになってしまったともいえるわけであります。  そこで、今度日本が第二次戦争で爆撃を受けたときには、東京の人の過半数は地方へ疎開したけれども、イギリスでは政策とのつながりがなかったために全然疎開もできなかった。毎日じゅうたん爆撃を受けては夕方は帰ってくるという悲惨な歴史を繰り広げたわけであります。その民族的な悲劇の中から起こったのは、びっくりするような法律でした。完ぺきに近い法律である。それはニュータウン法というのであります。これはいわゆる三権、裁判権さえも——裁判をまたずして換地できるような、収用権も換地権も公社の総裁にみんな与えておりますし、政府は公社の総裁の要求する予算は計上しなければならないという、予算編成権さえ拘束しております。これは日本の制度の中で考えられないほど強大な権限を持つものであります。しかし、ほんとうに日本はその程度まで考えなければならぬほどの状態になっておると思います。その後ブラジリアの建設という新しい建設ができたわけですし、いまのニューヨークの不良街区の改良に対してどのような措置がとられておるか。それは申すまでもない、明確な政策が盛られております。  しかし、日本のいまの体制と法体系の中において考えますと、支持と理解を前提としながら、国民的な盛り上がりを待ちながらだんだんとやっていくということでなければならない。そういう意味通産省が初め検討したのはいまの法律よりももう少しりっぱなものだったのですが、先ほど申し上げたように、各省の意見もまだありますし、習熟をしないものもある。あなたがさっき言った各審議会や委員会で出しておるものはほんとうにそのとおりなんです。誘導政策をやり、助成政策をやり、一方においては禁止政策をどんどんとやっておかなければだめだということは、そのとおりなんです。そのとおりなんだけれども、労働者対策というものが完ぺきでないときに、すぐ東京大阪からは工場——工場にはうんと高い税金をかけるのだ、自然にそうなっていきます。東京都知事はもう地下水くみ上げるのを禁止しているのですから……。公害問題でこれから毎日押しかけますよ、水をよごすのですから。そうすれば、それが実際は禁止政策の代行になるわけです。きのう申し上げましたように、政策としては国民が選択できるように、それでもなお町の中におったほうがいいのか、政策に沿って誘導地に出ていったほうがいいのかという選択ができる道を開いておかないで禁止政策だけを先行すべきではない。私も相当そういう立場で検討した結果、これはまず誘導政策を先行さすべきだ、その次には、あなたがいま指摘をされた各審議会から出てきた追い出し政策というものは黙っておっても付加されるものである。それならば政治がもっと責任を持って一ぺんに出したほうがいいという議論はそのとおりですが、いまの制度の中ですぐすべてを網羅するには反対が多くて時間的になかなかまとまらないという面も実際あったのです。そういうことが事実でありますので、皆さんからそういう御意見を出していただいて、これは追い出し税もかけるべきであるし、第一、工場が敷地の六割も七割も工場を建てることはよろしくない、少なくとも都市計画地域内においては工場は延べ二割でなければならない、二〇%でなければならぬ、そうしなかったら都市機能を確保できない、こういうことを法律に付加すべきだというような御議論をしていただくことは、私は非常に感激をするのでございます。
  40. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常に回りくどくいろいろ御説明いただいておるわけですけれども、端的に申せば、先ほど申し上げました新産都市建設促進法にしましてもあるいは工業特別地域整備法ですか、あるいは低開発地域の問題にいたしましても、それなりの誘導措置というものは法律の中に盛り込まれておるわけです。たとえば国からの助成措置もそうでありますし、起債を大幅に認めることもそうでありますし、それを受けて各都道府県、市町村においてはこれまた工場誘致条例等をつくりまして、いまこの法律に盛られております税制の軽減措置もとっておるわけです。ですから、少なくとも工業配置促進法案については、端的にいま工業の再配置をしなければならない情勢になっているということと、あとからお伺いしようと思っておるわけでありますけれども、今後の急速な経済の成長考えられるわけでありますから、それに対しては当然いままでの法律と少し内容を異にして移転促進地域というふうにはっきりと銘を打たれるならば、促進策というものがこの法案の特徴でなければならない、私はそういうふうに理解しているわけです。その面に関しては促進地域の指定をしただけで、おもな点はほとんど誘導策といいますか、誘導地域における企業の優遇策、それも従来とあまり変わらない線にとどまっているということであります。今後についてはそれを改善しなければならないというわけでありますから、それならばいままでのなにと同じではないか、あまり効果は期待できないのではないか、こういうふうに考えざるを得ないわけです。工業配置の究極の目的というものは国土利用の均衡、要するに過密過疎というものを早急に是正しなければ大問題です。ですから、単に工業配置だけでこのことが達成されるとは私は思いません、特に産業構造だとかあるいは都市構造だとかあるいは環境の問題だとか総合的な対策というものがここに立てられた、その中に占める工業配置促進のあり方はどうかということを考えてみなければならないと思うわけであります。  そこで、いま企画庁からわざわざ来ていただいておるので開発局長にお伺いしますけれども、新全総の中で第一次産業、第二次産業、第三次産業ですか、その占めておる現状と今後の方向を一応御説明いただきたいと思うのであります。
  41. 岡部保

    ○岡部政府委員 新全総の中でいまおっしゃいました問題点、産業構造の変化と申しますか、御承知のように四十四年五月に閣議決定いたしました。立案をいたしましたのは四十二年、三年の時点でございますが、現実に産業構造の変化というところまで、いろいろの議論はございましたけれども、今後の見通しということで一つの思い切った提言といえるところまではいけなかったわけでございます。そこでただ一つ考え方としては、四十二、三年の起草いたしました時点までの一つのトレンドと申しますか実際の動きというもの、こういう計画ではとかくトレンドを伸ばすやり方をいたしますが、そういうものであってはいかぬ。したがいまして、たとえば一つの例を申しますと、人口の配分という問題にいたしましても人口の問題研究所などといろいろ御相談をしたわけでございますが、いまの一つの趨勢というものを、逆に地方に分散させるようなファクターを考えなければいかぬというところまでは取り入れております。ただその取り入れ方も必ずしも十分であったとは私どもも考えておりません。この委員会においても前にも御指摘があったわけでございますが、現実にたとえば首都圏で人口集中というものをこのままのトレンドで伸ばせば四千万をこえるだろう。そういうことであってはいかぬといって分散を考えてみましても、いささか中途はんぱと申しますか、三千八百万程度に押えるべきではなかろうかというような、もっと分散させるところまで徹しられなかったという点がございます。  そこで産業構造の具体的な問題についてもいろいろ議論はございましたけれども、計画として具体的にどうあるべきだという問題といたしましては、一次産業人口のシェアから申しますれば減少するであろう。減少するけれども、いやなことばかもしれませんが、生産性と申しますか効率と申しますか、そういうもののもう少し上がった一次産業に転換していくべきであるという考え方で、人口のシェアから見ればずっと下がるであろうけれども、所得としては、いわゆるパーセンテージにいたしますともっとずっと上げなければいかぬという考え方、これをこの計画基本的な考え方といたしておる次第でございます。
  42. 広沢直樹

    ○広沢委員 通産大臣、今後の経済の動向については、宣告の質問のときに大臣は新経済安定論者であるというふうにおっしゃておられましたね。今後GNPの年率の伸び率をどの程度考えていらっしゃるのか。工業配置促進法は今後の経済の動向を十分加味してお考えになっていらっしゃると思うわけですが、その点いかがなりましょうか。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 四十五年価格で申し上げますと、GNPはこれから六十年まで五%増しでずっといく。五%というのはいまくらいですね。いまくらいの不景気でずっといくわけです。息もできないということがいわれておりますが、この程度でずっといくということです。しかしこれは主要工業国から見ると、五%でも高いのです。日米間とかECでもっていつでもけんかになるのは、四・六%も四・七%もGNPがふえればいいじゃありませんか、こう言うのです。しかし日本では五%台ではとてもいけません。五%台でいくと、あとからでも数字を申し上げますが、社会資本のアンバランスも是正できませんし、社会保障を拡大していく原資も出ませんから、そういう意味では五%ではとてもやっていけないと思いますが、五%で試算をいたしますと、六十年度には百五十二兆円になります。コンスタントに五%で四十五年から六十年までいくと百五十二兆円、七・五%でいくと二百十六兆円。経済企画庁長官が七%ないし八%、場合によると九%になるかもしれませんというその中間値をとって八・五%とすると二百四十八兆円、まあ二百五十兆円であります。潜在成長率は、いまの就業人口別で見ますと、四十七年度は一次産業は一九・三%であります。六十年には七・三%になるであろう。これでもまだまだECより高いわけであります、ECは六%でありますから。アメリカは四・四%であるということから見ればずっと高いわけです。そういうような数字を前提に置いて見て、それが二次産業に移っていく。いままでと違いますが、それは、沖繩はどうかというと、沖繩は三次産業比率が四七%であります。基地経済の中で沖繩は限度一ぱいということで四七%であります。ところが、四十七年度の本土の三次産業の比率も四六・八でありますから、沖繩とはほとんど違わない。ただ日本の本土よりも沖繩のほうが所得比率から見ると高いわけです。ドル経済でありましたし、月給も基地では少し高かったということですね。そういう意味で四六・八。これはいまの新全総ではありませんが、日本列島改造試算でやって四六・八。三次産業が五九・一%になるというふうにしておりますが、そうすると二次産業は三三・九%、六十年までいっても三三・六%、全然横ばいであって下がるくらいだ。そんな試算はないのです。四七から五〇という三次産業比率は、世界的な傾向から見ても頭打ちです。これは限度一ぱいである。そうすると一〇%二次産業に付加されると見なければならない。三三・九%は四三・九%になる。これは西ドイツ並みになる。そういうふうに計算せざるを得ないのであります。そうすると国民総生産の潜在生産力というものは幾らあるかというと、一〇%以上あると見ざるを得ない。これは政策でもってそういうふうに野放しにするかしないかは別ですよ。別ですが、潜在生産力は一〇%以上可能である。過去二十九年から三十九年まで一〇・四%、三十五年から四十五年が一一・一%という十六、七年間の平均成長率を見ても、政策さえよろしきを得れば潜在成長率は一〇%の成長は可能である。これはまた純然たる数字の問題ですが、そうすると四十五年価格で計算をして六十年には三百四兆円になります、こう言っておるわけです。ですからこれは相当なもので、いろいろなものを入れて計算をして三百四兆円になるというのでもないし、するというのでもありません。しかしやろうと思えば、潜在成長率はここまで計算ができますというのが三百四兆円という数字である、こういうことであります。
  44. 広沢直樹

    ○広沢委員 確かにいま御説明いただいたとおり、ここに具体的にあらゆる角度から指標を出していらっしゃいます。そこでこの工業配置考える場合に、そういう今後の経済の見通し、成長、そして先ほどからお話がありますように、主体になるのはやはり御二次産業であろう、こう思うわけであります。それを含めて考えていかなければならないわけです。いまの大都市集中している過密的工業を分散させることも一つの目的でありましょうけれども、当然いま言うような見地に立って考えていかなければならない。三百四兆円というものは一兆ドルということになりますね。そうすると、いま日本全体が公害問題で非常に大騒ぎしている段階にあるわけです。したがって、アメリカと比べるわけですけれども、国土の面積は二十五分の一しかない。そしてまた可住面積もその中で二〇%しかない。そして農業面積を引けば全体の四%程度しかない。そういうところにこれ以上に拡大されていくということになりますと、いま公害だとかあるいは環境破壊だとかいうことが盛んにいわれておりますけれども、将来のそういうようなことを考えていくとたいへんなことになるのじゃないか。その点に関しては、いま集中しているところは分散するということと、それから全体的な構想ということは、この工業配置促進の中ではどのように考えられておるか、簡単でいいですから、ひとつ言ってください。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 とにかく三百四兆円というのは一兆ドルであります。ちょうどいまのアメリカ全部の国民総生産が九千七百何十億ドルでございますから、約匹敵するということでございます。アメリカの人口は、日本の二倍でもありませんが、約二倍と見れば、アメリカよりも倍も働くということになるわけですから、三百四兆円というのが必ずしも実現するということではない。ただ、八・五%の四十五年価格二百五十兆円というのは不可避である。不可避ということでもって政策を進めませんと、これは公害問題も何も片づかないのです。いままではその成長率を小さく小さく見たから、道路も公園もすべてがだめになってしまったのです。そうではなく、三百四兆円計画を進めていって二百五十兆円であるならば、社会資本の蓄積比率も拡大してきますし、環境も整備されてくるということであります。いまあなたが指摘したように、全国土の二%に七〇%以上の生産も人も集中しているわけです。このまま自然発生を是認していくと、その二%の中に八〇%ないし八一%の人が住む。それは先ほど説明がありましたが、新全総の中で考えてみると、どうも六十年に関東地方には四千万人以上集まる。これは抑制しても三千八百万人である。これは都市政策大綱の中に書いてあります。首都圏半径百キロ圏の人口は二千七百五十万人である。これが昭和六十年には千万人ふえて三千七百五十万人になるおそれがある。しかも、そのままそれを是認するとどうなるかとコンピューターに聞いてみたら、東京二十三区の空気中に占める亜硫酸ガスは、人間の生存許容量をこすという数字が出ている、こう指摘しているのです。集中させちゃだめなんです。二千万台の車が四千百万台になる可能性があるのですから、もう全然いまのロサンゼルスなんてものじゃないのです。大原町の交差点、牛込柳町というものが全東京二十三区になるというのは、間違いのない事実でございますから、それはやはり四%に拡大をすれば、いまの状態でもその半分になるということだけは間違いありません。しかし、それは技術的に改良してどんどんと公害を除去してまいりますから、そういうことではないし、しかも、複合公害になる場合には、化学方程式のように非常に加重された計算になり、自乗計算にもなりますが、しかし、平面的な拡大をしておけば、自然の浄化作用というものもあるし、いろいろな面から計算は変わってまいります。ですから、二%という地域を四%に拡大するか、もう少し拡大できると思うのです。山地農業という問題とかいろいろな問題と調整をしますと、もっと二次産業の基地は拡大できる。こういうことでこの計画を進めておるということでございます。
  46. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いまお答えいただきましたように、第二次産業がこれはまだ伸びますね。そういうことになりますと、やはり重化学工業も相当な高い率になってきているわけですけれども、これはまただいぶ伸びなければならない。そこで、全国的には北東地域あるいは西南地域に大きく分けて、遠隔地の大工業地域というものを考えているようでありますけれども、そうすると、現実に公害問題や過密問題やいろいろなことが大騒ぎしている問題が、いまの経済成長、そして第二次産業の伸び、それにつれて、各地にそういうような大プロジェクトをつくった場合に、やはり同じような公害問題だとか環境破壊問題だとか、そういう問題が起きはしないかという一つの問題があるわけです。まあ、簡単に申し上げても、工業配置という場合においては、やはりその誘導地域における住民感情といいますか、今日問題になっております環境破壊、いわゆる公害の問題というものがより具体的に明確に除去できることがなければ、話し合いというものは進まないわけでありますね。その点、どういうようにお考えになっていらっしゃるかということです。  それから、時間がありませんのでいろいろなことを聞きますけれども、新全総におきましても、一応いまの大臣のお話のGNPにしても約半分でありますけれども、年率約八%で計算されております。工業出荷額においても約半分ということになっておりますけれども、これもいまのような経済情勢からやはり考え直していかなければならない段階にきているのかどうか。これはいま経済企画庁のほうで作業をしていらっしゃるようでありますけれども、その点はどう考えているのか。この工業配置がいま大臣の御説明のような経済成長工業出荷額というものを一応念頭に置いて考えているということでありますから、それと新全総との関係は倍くらい違っておりますので、その点はどうかということを総合開発局長にも重ねて伺っておきたいと思うわけであります。  まずその点、もう時間がありませんので簡単に……。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 私はいま経済企画庁長官臨時代理でございますから、その立場からも申し上げますが、これは同じ数字なんです。これは経済企画庁の数字をいま半分くらいと言ったのは、四十年価格と四十五年価格で述べておりますから、経済企画庁でもって、八・五%、百九十四兆円というは、四十五年価格に直すと二百四十八兆円になるということであります。年次の価格のとり方だけでございますので、数字は変わりがない。私が先ほど申し上げた、経済企画庁長官の八%ないし九%と予想いたしておりますという国会の正式答弁の中間値八・五%をとりますと二百四十八兆円、まるく申し上げると二百五十兆円でございます、こう申し上げておるわけでありますから、これは変わりはございません。  それから、大型プロジェクトでもって公害の基地化しないかという問題。ざっくばらんに言うと、これは知識集約型産業に移ってまいります。いまある工場が移るということも考えるとそうでございますが、いまの重化学工業比率で、昭和六十年になると石油だけでも全世界の三〇%以上を搬入しなければならない。これは原材料をほとんど一〇〇%輸入する国でありますから、いままでのように明治から百年間の重化学工業中心ではどうしてもいけない、やはり付加価値の多いものに転換をしなければならない、こういうことを申し上げておるわけであります。もう一つは、過密なところに工場地帯を設定しまして、それで複合公害ということが起こっておるわけです。ところが今度は、道路中心線から片側二メートル下がって建築線を設定させるというから、とにかく四メートルあれば工場工場ができるわけです。そういうことは少なくとも、これから北海道でもって一万坪、二万坪の工場をつくるときに、一万坪の敷地の中に六〇%の建蔽率で延べ六千坪つくってよろしい、そんなことをこれでやることは全然考えておりません。これは先ほども述べたように、新しいところの基準は東京大阪の既存都市の何倍かゆとりがなければならない。言うならば、逆に条件はきびしくなければいかぬということで、水の排出基準の問題でも、遮断緑地をつくれという問題でも、いろいろな問題は、住宅地域における建築基準法よりももっときびしいものが当然できるわけです。そうして企業の内容そのもはそこでも真剣に考えなければならないわけです。私は、工業発展、産業発展の過程で公害が完全にないものということは、これは極論だろうと思うのです、その、ある公害をどう処理していくかということを明確にしていくことが住民の方々を納得させ得ることだろうと思うし、これがなければ、公害のない企業を持ってこいと言ったって、これは私は無理じゃないかと思うのです、限定されたものでありますから。ことばは知識集約産業かもしれませんけれども、しかし、それだけのことでこれからの日本の経済が保つとはいえません。まだまだ第二次産業、重化学工業もある程度伸びなければならないし、現状あるものはお説のとおり分散しなければならないという問題も出ているわけでありますから、これはやはり、この考え方から公害をのけるというわけにはいきませんですよ。  それからもう一つは、もう最後ですから重ねて申し上げておきますが、この第四条の中には、通産大臣あるいは事業所管大臣は、工業配置計画の目標を達成するため必要があると認めるときは、いわゆる企業に対して指導助言ということがあります。これはまあいままでの新産都市だとかあるいは工業整備特別地域だとか低開発地域の中には、明確にこういう条項がないわけでありますけれども、特にこれが載っておりますね。これはやはりどの程度のことをおやりになるのか。先刻大臣は、景気対策との関係で、輸入制限の問題については通産大臣に勧告権を与えろ、そういうようなことを申されたということが新聞報道に載っておるわけでありますが、焦眉の急となっておる今日の過密地域工業配置についてそれぐらいな強い考え方を持っておられるのかどうか。これも一つの運用いかんによってきまってくると思うわけでありますけれども、最後にそのお答えをいただきたいと思うのです。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えします前に、さっきの発言、ちょっと私も補足させていただきますが、何か公害問題は除外してということは、私の発言のほうがおかしい発言のようでした。それは私のほうで訂正をいたします。私が言ったのは、あなたの言うとおりで、公害というものは必ず幾ばくかずつはついて回る。これは自転車でも騒音公害があるし、ころぶ公害もありますし、相手にぶつかる公害もあるのですから、これは公害が絶対ないなどとは考えられない。しかし、私がこの工業配置法を提出すると、これは全国公害をまき散らす法だというような発言があるものですから、つい頭へきて、そういうことをなくするための法律でございますから、どうぞそういう発言はないようにと、こういうことを申し上げたのでございまして、これはそういうことではなく、やはり公害をなくするためにはあらゆる角度から全力をあげなければならないということはもう当然でございます。そういうことで御理解をいただきたいと思います。  それから勧告とか指導助言ということは、これは新しい一つ政策目的をもって工場移転、再配置を行なうわけでございますから、法律的にはまだ明確に条文整理をしなければならないところがあります。将来的にいろいろ実情に合わせた条文を整備しなければならぬところがありますが、いまのところは、やはりこの法律目的を達成するためには所管大臣として助言、勧告等が行なえるように、こういうことをしるしておるまででございまして、これは事業主体に対しては建設大臣が建設省関係の仕事をする場合には指導助言をするということと同じ意味で書いたわけでございまして、この目的達成のための指導助言である、こういうふうに理解していただきたい、こう思います。
  49. 広沢直樹

    ○広沢委員 終わります。
  50. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 午後二時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  51. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米原昶君。
  52. 米原昶

    ○米原委員 過密過疎の問題の解決のために工業配置をやる。これは非常に重要な問題点だと思うのであります。そのこと自体に反対するいわれはないのでありますが、問題はそれを目的とした今度提出されている工業配置促進法案それから産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案、これがはたしてその目的に沿ったものであるかどうかという点について、若干疑問を持つものであります。そういう点についてお尋ねしたいのであります。  この法案は一見しますと、いま、ある工場移転する場合に助成措置をとるというようなことで、いままでの国土開発立法を補完するというような形を見るとそういうふうになっておりますが、実際には全国総合開発計画、新全総あるいは新々全総ですか、そういうものの路線を全面的に遂行していく上できわめて重要な法案であります。  そこでまず第一に伺いたいのは、第三条に定めてある工業配置計画全国計画になるわけであり、国民的な合意も必要であろうと思います。したがって、計画決定にあたって通産大臣関係行政機関の長とともに関係地方自治体の長とも協議することを条文に加える必要があるのではないか、こう思います。これはきのうまでの審議の中で田中通産大臣も実質的には認めておられますので、その意思があるかどうか。つまり関係地方自治体の長とも協議をすることを条文に加える、こういう意思があるかどうか聞きたいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 お説のとおり、工業配置対策を進めていくためには、いままでの審議会で検討されておったもの以外にも新しい角度からも見直しをしなければならないという問題もたくさん出てまいるわけでございます。そういう意味で、特に地方の仕事でございますから、地方公共団体の長を審議会の中に入れるということは当然なすべきである、またそういうような予定でございます。ですから審議会においては地方公共団体の長の意見も十分反映されるようにいたします。
  54. 米原昶

    ○米原委員 私の聞いていますのは、そういう意思があることはいままでの審議で言っておられるので、問題は、条文にそのことをちゃんと加える必要があるんじゃないか、こういうことを聞いておるのです。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 これは条文で書かなくとも当然そういうことを考えておりますが、しかし皆さんの御意見で、何らかのそういう条文が入ることが望ましいということであれば、私がしいて反対するものではありません。そういう条文が入らなくとも、あたりまえのことであるし、当然そう考える、そういたしますということでございますが、条文の中にいま御発言のような表現が入ることが望ましいということであれば異議は唱えません。
  56. 米原昶

    ○米原委員 それから再配置計画を決定する際に、いまおっしゃったのは工場立地及び工業用水審議会、通産大臣が意見を聞かれるこの審議会ですね。これに入れるということですか。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 地方公共団体の長は、当然いままでの三十名の審議会の委員拡大するわけでありますから、その拡大した部面の中には必ず入りますということでございます。  もう一つの御質問の点は、地方公共団体の長が意見を述べることができるとするか、述べさせなければならないとするか、意見を聞かなければならないとするかは、そういう条文をどこに入れるのかという問題は審議会とは別な問題でございますから、これは条文整理の段階において入れることは可能である、こういうことでございます。
  58. 米原昶

    ○米原委員 それから工業配置工場の進出計画ですね、これが実施される際に地元の住民に著しい不利益を与えた場合などは、その移転を取り消したりまたは与えた損害を補償させる権限を持った調停機関を設けてはどうかと思うのでありますが、その点についての御意見を伺いたい。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 工場移転計画の認定にあたりましては知事の意見を聞き、問題がないときに認定をするということでございます。問題ないということでありますから認定をするわけでございますが、しかし地域社会との間には何らかの問題が起こるかもしれません。これはやってみたら、決定をしたらまた問題が起こってきたということもあり得ることであります。そういうときにその調整機関、特に苦情処理機関というか、何らか調整するような機関が必要であるかということでございますが、これはやはり地方公共団体、県、市町村こういうものを活用する、そういう機関を調整機関として調整してもらうということが望ましいことであって、新たに法律的に特別な別段の調整機関を設ける必要はない、こう考えております。
  60. 米原昶

    ○米原委員 次にこの再配置計画と、いままでいろいろきまってきたその他の地域開発立法との調和を、条文では調和させるようにするということが書いてある。私が先日予算委員会の分科会で、この問題について若干大臣質問したのですが、そのときにこの再配置計画と新全総をマッチさせて、そうして新々全総作成の際に幾つか改定しなければならぬというような答弁もありました。そういうふうになりますと、もう一つの問題点は、通産大臣が立てた計画に、いままでの国土開発計画を従属させることになるのじゃないかという気がちょっとするのです。それとあわせて、いままでの審議会の構成が大企業中心になっているという点を考えましても、この国土開発ということが非常に危険な意味を持ってきはしないかということを実は若干心配しているのであります。この点について大臣考え方を聞きたい。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 法律は御承知のとおりみな優劣はなく並列的なものでございますので、新しい産業配置法律が優先をしていくということにはなりませんし、従属関係が起こるというようなことは全くないと考えます。ただ既存の法律と新しい法律との間に調整が必要であるということはもう当然でございまして、地域立法やいままでの地方振興を目的とした立法との調整というものは当然行なわなければならない、こう思います。しかしその調整をしていくことによって、大企業中心というような考え方は全く持っておらない。これはこの法律のどこを見ても大企業中心でやりますとか、大いに経済メリットを追求いたします、弱いものでもペイしないものは切り捨てますというような合理化、いわゆるそういう意味の合理化追求というものではないわけでございますから、だから理想的な生活環境確保していくためにもこのようなものでなければならない。生産第一主義的な立場立法でないということでひとつ御理解いただきたい。
  62. 米原昶

    ○米原委員 ひとつその問題、具体的に聞きましょう、抽象的な議論をしてもけりがつきませんから。  たとえば先日もちょっと触れましたけれども、例の鹿児島県の志布志湾、あそこの開発計画はたいへん住民の反対運動が起こっている。あるいはむつ小川原の開発、ここでも大きな反対運動が起こっているわけであります。私も志布志湾まで行きました。それで事情を聞いてみますと、何も新全総の中にいま言った大企業中心だなんて書いてあるわけじゃないのだけれども、実際に具体的に出ている計画を見ますと、石油コンビナートの大きいのをつくって、それを起爆力にして新たな開発をやるということが公然と書いてあります。そうして農業、漁業が全くつぶれてしまうのじゃないかということは、だれが見たってわかるのです。おそらく大臣もその点はある程度わたっておられると思うのです。   〔橋口委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、いま非常な反対運動が起こっている。一つは、いまの新全総のあの計画は、実際は地方、たとえば志布志湾の場合、鹿児島県が主体になって計画を立ててやる、こういう形になっております。そういう形で進んでいるから、その地方自治体が地域の住民の意向を十分に反映してやった場合にはそれはいい面なんですけれども ところがそれが地域の住民にマッチしないようなああいう形の計画が出ると、非常な反対運動が起こる。そうすると、やはり実行がなかなかできなくなる。ところが、今度の促進法の場合、法律を見ますと、工業配置計画通産大臣が専権事項でできることになっているわけです。そうしますと、いままでのような地方自治体が反対するものを通産大臣のほうが別の計画で突破していく、こういうことにも使われるのじゃないかという気がするのであります。もっともこの問題についても、この前予算委員会でちょっとお尋ねしたときにも、大臣は、地域住民の反対があれば工場立地はできません、と答えておられるのです。  そこで聞きたいのですが、今後そういう地域開発を進める場合に、地域住民の合意がなければ計画を実施しない、そういう考え方なんだということをここではっきり約束していただきたいのです。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 地域の利益と国の利益をお互いにマッチさせなければならない、これはこの法律が企図するものでありますし、それは大体いかなる場合でもそうだと思うのです。ですから、住民が絶対反対であるというような状態において新しい仕事が強行されるということは、原則的にないわけでございます。  ただ、声は大きいけれども、実際的にいうとごく少数の人が反対をやっておるのだ、それも事実は反対じゃないのだが立場上反対であるとか、いろんなことがあります。事実、そういう問題には反対ではなく、イデオロギー的な反対、他の目的達成のための手段としての反対、こういうものがだれが見てもわかるような状態ということは、地域住民の反対とはいえないわけであります。反対しておると思って一人ずつ聞いてみたら、地域の人はほとんどおらなかった。大学の紛争も、騒ぐから調べてみたら本学の学生はごくまれであった、こういうようなことでは地域住民の反対とはいえないわけであります。これは、法律に基づいて住指定地域にならない自治体は——全国的なワクを考えまして法律できまった地方交付税のワクがあるでしょう。ところが一方の地方税の減収を生じたところに地方交付税で補てんするということになりますと、簡単にいえば指定地域にならないところは逆にこのために交付税が減るわけですね、そういうところに交付税を出すわけですから。そうすると、指定されない地域のほうは交付税が少なくなる、そういう不公平が生じてくるのではないかという感じがするのです。ですからそういうアンバランスを起こさないようにしなければいけないのではないか。現在地方自治体の財政が非常に危機になっておるわけでありますが、こういう場合にやはり地方交付税全体の税率を引き上げる——私たちは四〇%に引き上げるべきだといっておるのでありますが、そういうやり方で一方で引き上げも考えませんと、いまの地方交付税のワクの中でそういうやり方をするとアンバランスが生ずるのではないか。この点について通産大臣のほうの意見を聞きたいと思います。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの述べられた問題点は二つポイントがあります。  その一つは、減収補てんということが行なわれない限りにおいては、当然交付されるべき地方交付税がそれだけ減るということで、指定されない地域のものに損害を与えるのではないかということでございますが、これは理論的な問題でございまして、原案は三段階に分けて、排除しなければならないところからは新しい税金をいただく、それから、ほうっておいても工業比率が上がっていく中間地帯は現行税率にしておく、誘導地域は滅免税を行なう、そういうふうに分けることによって流れが変わるようにしようということでございますから、地域によっていろいろな影響があることはやむを得ないことでございます。ただ、そういうものは、あなたがいま御指摘になったような状態でそのまま過ごすものではなくて、この政策を進めていくためには何らかの新しい財源を必要とする、これはそういうことです。ですから将来の問題として、私がこの立案当時にはやはり第二交付税が必要である、特別交付税というものが必要である、それも一・七五を特別財源にしようということを考えましたときに、補てん財源というものをどうして得るのかということで考えたわけでございます。これから過密地帯において特別税が徴収せられるとかいうことになれば、これは当然目的税に使われるべきでございますから、その場合には第二交付税というものに繰り入れて、そして補てん財源として使用すべきである。私自身がいまの法人税の一・七五に非常に執着を持っているようにおとりになるでしょうが、私は執着を持っているのです。この税は私がつくった税だったのです。四十年の不況のときに地方交付税率を二%引き上げたのと法人税率を二%引き下げたのは、私がやったわけであります。いろいろな議論がありましたが、景気浮揚のためには法人税率を二%引き下げざるを得なかったのです。引き下げることが一番効果がある。引き下げると、主税の見返りで交付税が減りまして地方団体が困るので、地方交付税の税率を二%アップした。しかしこれは景気が直ったらもとへ返すという暫定税率であったわけです。ですから法人税は二%もとへ戻すんだというときに、まあそうもいかないので〇・二五を切って、一・七五をもう少し暫定税率としておこう、こういうふうにしたわけでございます。地方交付税率の二%引き上げはそのままになっております。ですから、地方交付税はもう一ぺん見直しをしなければならないときにきておると私は思っております。いまの三二%がいいと思っていない。ある時期にこういう特別財源として政策を行なわなければならないときには、交付税率をもう一ぺん考えて、もう一%上げて、その一%を特別財源にするのかいろいろな問題があります。特に電気ガス税という地方税になっておるものを政策税に転換するときには、どうしても交付税率というものとかみ合わせて考えないと調整ができないという問題がありますので、この補てん財源の問題に対しては、これはこの次の段階の問題として具体的に十分解決をいたしたい。現在御審議をいただいておる限りにおいてはいろいろな議論が存在することは、そのまま認めます。
  65. 米原昶

    ○米原委員 もう一つ。この法案では工場移転させることについてはいろいろあるわけです。問題は、過密地帯の都市から工場移転させたそのあと地をどうするかという問題です。私は、あと地の対策が非常に弱いのではないか。簡単に言いますと、工場移転させたあとのあと地にまた工場を建てたのではしようがない。どうしてもそのあとを都市計画のために地方自治体が買いやすいようなやり方をやっておくべきじゃないかということを感ずるわけなんです。そこがこの法律ではほとんどないですね。第五条の認定の際に、あと地には再び工場を建てさせないことを条件とするというようなことも考えておられるようですが、あと地を売却した際、あと地を買い受けた第三者まで縛ることは困難だろうと思うのです。その点でどんな効果的な措置があるか。あと地は地方自治体が買って、都市計画の中に組み入れるべきだと私は思うのです。今度の国会に出されているいわゆる公有地拡大法では、地主が届け出をしてから四週間以内に買い取りの交渉が成立しなければ、先買い権はなくなります。これは買い取り価格が公示価格であるため、業者などが経済ベースで買い取り価格を引き上げてくれば、移転費用の必要な工場は当然業者のほうに売却することになるだろうと思うのです。つまりこの地価の問題が解決しないと、あと地の問題の解決はなかなか困難じゃないか。せっかく工場移転させても、そのあとがとんでもないことに使われたのではほとんど意味がなくなってしまう。この点について通産大臣はどう考えておられますか。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 あと地については都市改造の用に供するものということであって、この法律がさいの川原の繰り返しになるようなことは絶対にいたさないつもりでございます。初めは私の考え方では、いろいろ検討いたしました結果、世界各国の例などに徴しますと、都市改造銀行と都市改造公団というものがあって、都市改造銀行が金を貸し、都市改造公団があと地は引き受ける、そうして都市改造の用に供する、これが一番理想的なんです。しかし今度の法律で、工業配置公団が金を貸すという道は開きました。だからこの融資をするときには厳密な条件を付するということになって、もちろん担保も取っておくわけでございますから、そういうことであと地というものは合理的な使用以外には使わないということにしなければならない、こう思います。これを今度の法律の中でそこまで全部しぼって、合理的なもの、完ぺきなものにすることはなかなか時間的に制約もあったし、むずかしかったわけです。しかしあと地というものは分配の問題でもあるのです。あと地を対象にして金を貸すわけです。そして貸した金は圧縮記帳をされますから、税法上は恩典を受けるわけです。そして企業者はこれで他の土地を入手して、そこに新しい工場を建設する。そうするとそのあと地は、工場移転した後、建物を除却して、地上物件を除却して後でなければ売れないわけです。売れた場合は一体どうするのかというときに、高く売れた場合、それから融資金額に満たない場合——融資金額は大体かけ目を見て貸しますから、売り払い金額には至らないものであります。そうすると七〇%、六〇%、かけ目を大きくしても九〇%ということになります。しかし工場建設の途中で非常に高くなった場合、それを一体どうするのか、融資金額を差し引いた残りの金額を都市改造公団と工場地主との間にどういう分け方をするか、これは普通民間同士で売買する場合はそういうような問題が起こるわけです。しかし民間同士でもってあと地の売買を行なうものに対して、それまで制限をするということはちょっとむずかしいのであります。別な法制を考えないとむずかしいのです。いま御指摘になっておるもの、私たちが考えておるものは、この法律に基づいて貸し付けが行なわれる、金を借りて移転をするあと地の整理ということになりますから、その場合は当然条件がついて、他に転売されまた工場をつくる悪循環を繰り返すということは絶対にしない、こういうことが原則的に行なわれるのであります。
  67. 米原昶

    ○米原委員 あと地の利用というのがこの法案ではやはり非常に重要だと思うのです。いまある法律でちょっと調べてみますと、かなり大きなあと地、広いあと地だと、むしろそれを処理したり制限する法律があるのですが、中小零細企業といいますか、工場の面積も比較的小さいものなんかが移転した場合——またそういうところはかなり移転させる必要があるだろうと思うのですが、移転した場合、そのあと地の処理のしかたというものはほとんどいままでの法律ではできないのじゃないかという感じがするのです。  そこで、首都圏整備委員会の方に来ていただいたので伺いたいのですが、首都圏の既成市街地のあと地については、工業制限法によって、今回の改正も含めて五百平方メートル以上のものが規制の対象になるということになっております。つまりそれ以下のものには規制できないのです。いまの首都圏整備の場合にも工業制限法の適用を受けないのです。この点どんな対策をとっておられるか、首都圏整備委員会の方に聞きたいのであります。
  68. 野本不可止

    ○野本説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、私どものほうの工業等制限法、現行では千平米以上の工場、作業場の新設、増設を原則として禁止しております。今回の改正法で五百平米まで引き下げるということでございますが、私どもの法律はあくまでも直接の規制といいますか、工場、作業場の新設、増設を押えるわけでして、それによりまするあと地の制度につきましては直接には関与しておりませんが、この点につきましては、その他の都市開発資金の関連あるいは自治体のあと地の買い上げ制度等につきまして私どものほうもいろいろお願いして対策を講ずるというような形をとっております。
  69. 米原昶

    ○米原委員 建設省の方に聞きたいのですが、地方公共団体が土地を取得する際に利用できる方法として都市開発資金の貸し付けを利用する方法がありますが、公園、緑地という用途の制限がある、そして面積を十ヘクタール以上ときまっているので、かなり広いものでないとこの都市開発資金の貸し付けが得られない。実際は東京都内の二十三区でこういう問題が非常に起こっているのです。区としては、たとえば緑地にしたり公園にしたりするのでその開発資金を借りたい。ところが面積は十ヘクタール以上でないと借りられない。実は東京の二十三区の人たちでも、工場なんかが移転したあとできるだけ緑地化するとか、非常な過密状態でありますからどこでもそういうことを考えているんだが、なかなか現実はいまでもできないのですよ。そういうこともありますので、大きな工場のあと地でなくて比較的小さい工場のあと地ですね、こういうのも地方自治体が買い上げて利用できるように、いまきまっているような用途指定なんかはずして、面積ももっと引き下げる。いまのは十ヘクタール以上でないと金が借りられないですからね。もうちょっと引き下げるというようにすれば、いまそういう考え方は非常に持っているのです、東京都区内の区長さんたちが。できるだけそういうものをたくさんつくって緑地地帯をつくっていきたい、小さい公園とか子供の遊び場とか、こういうのがないと、過密の弊害が起こっているわけですから、非常に考えている。ところが実際にはやろうと思ってもいろいろこういう点が妨害になってできないのです。ですから、工業配置というのは考え方自体私自身も賛成なんですが、そのあとを完全にうまくできるようないろいろな点があるのですよ。こういう点を考えていただけるかどうか、建設省のほうがこの問題担当されているんで、建設省の意見を聞きたいのです。
  70. 重元良夫

    ○重元説明員 お答えいたします。  都市開発資金の貸付けに関する法律に基づきまして、国が地方公共団体に土地の買い取りの資金を貸し付けるわけでございますが、これは大きく分けまして二種類ございます。そのうち一つ工場あと地の買い取りでございまして、工場あと地の買い取りは、首都圏の工業等制限施設の敷地ということでございますので、先ほどの首都圏の説明にもありましたように、制限施設の範囲で千平方メートルから五百平方メートルまで縮小されることになりますと、工場あと地の貸し付け対象も五百平方メートルまで拡大するということになるわけでございます。なお、工場あと地のあとの使用につきましては、他の用途に転換されまして都市の機能の維持増進に貢献する、大体公園、緑地あるいは公営住宅というふうなもののために転用されるということを条件といたしておりまして、個々の工場につきましては五百平米以上の敷地で対象になるわけでございますが、やはり全体としての再開発の核としたいというようなことがありますので、大体一ヘクタール以上くらい全体としてはまとまることが望ましいというふうに考えております。  それから第二番目の、先ほどの公園の十ヘクタールの制限があるという問題は、これは工場のあと地ではございませんので、最初から都市施設の用地として都市計画決定をしました土地につきまして民地を公共団体が買い上げる場合の対象でございますし、道路、公園、緑地それから下水道、終末処理場といったもののための施設用地でございますと、確かに公園につきましては最低限十ヘクタール以上の土地を貸し付けの対象とするということにいたしております。御質問の点で、個々の工場につきましては五百平方メートル以上ということでございます。それから工場あと地でなくて一般の都市計画上の土地としましては、十ヘクタール以上の公園を建設いたします場合にその区域内の土地を貸し付けの対象とするということでございます。
  71. 米原昶

    ○米原委員 時間が来たのでもう質問できないのですけれども、最後に、いまの問題はいろいろそのあたりが制限があるわけです。これを突破しないとあと地の問題はほんとうには解決しないのじゃないか、この点を大事に考えてもらいたい。それから中小零細企業工場移転する場合、移転したくても地方自治体のほうではあと地を買う資金がないし、今度できる公団が買ってくれるかどうか問題があると思うので、面積の広さに関係なく、小さいところも対象にするようにしてもらいたい。これはもう時間がありませんから、希望意見を述べまして、要するに税金の問題や地方公共団体の先買い権の確保の問題、それから地域住民の意見を十分に反映させるような措置をとってもらいたい、こういうような点を保証してもらわないと不十分ではないかというのが私の見解であります。  これを言いまして私の質問を終わります。
  72. 鴨田宗一

  73. 岡本富夫

    岡本委員 ただいま審議されております法案で、私に時間を少しいただいて若干お聞きしたいことがございます。  この工業配置促進法、この法律が通りましたならば、相当工場分散ができるかどうか。先ほど大臣のお話では新しいところへどんどんつくるのだというようなお話でございましたが、その点について、効力についてまずお聞きしたいと思います。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 この法律産業の再配置を促進するために効力のある法律だというふうに考えております。ただ、ほんとうに理想的な法律かというと、理想的な法律というふうに私は声を大にしては申し上げられない。これは私が当初考え大蔵省に要求したこと自体がこの十倍もあるものでございますから、これはほんとうにそう思います。いま米原さんからも指摘ございましたが、やはりあと地の問題とかいろいろな解決しなければならない問題がまだあります。先ほど労働問題もございましたが、移転するなら労働者の施設やそういうものまでみな整備をしなければならないとか、整備するためには制度を付加しなければいかぬとか、いろいろな問題があります。そういう意味で、完ぺきなものとは申し上げませんが、しかし意欲的なものであって、この法律制度化されれば、とにかく全国的な視野に立って青写真というものがかけますし、各地域立法との調整も行なわれますし、そして誘致をする側も意欲的になると思いますし、また現に分散を希望しておる中小企業を含めた各産業も、これでいよいよ自分で移転先を見つけようという意欲的な動きが始まり、そしてこれが十月から動き出すということになれば、いま見ておる百五十億にこだわることもないと思いますし、まだ来年までの間に予算措置等もできるわけでありますので、なだれのごとくというわけにはまいりません、しかしとにかく国の一つの方針が明らかにされることによって、工業分散というものに対しては大きな推進力になる、こういう考えでございます。
  75. 岡本富夫

    岡本委員 次に担当局長にお聞きしたいのですが、この法律を作成するにあたって、いままでの工業団地だとかあるいはまた既成の法律で相当そういった団地なんかつくったりしておりますが、そういったものの点検をして、そうしてまたこの工業配置促進法に合うように、そういった面の関連をよく確かめておかないと、この法律が結局は無意味になるのではないか、あるいはどこかでそごを来たすのではないか、こういうふうに思うのです。そこで、あちらこちらいろいろなものを点検をやった後に、これと合うのかどうかということを調整したことがあるのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  76. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  現在の工業用地が十四万ヘクタール程度でございますから、今後の工業生産の増加を考えますと、工業用地としてはその二倍近いものが必要になるのではないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、今後工業用地の取得という際に対象となりますのは、やはり誘導地域にあります既存の工業団地で企業の進出が行なわれていない用地の活用ということがまず第一に重要になると思います。もちろん、それと並行して各地域で団地の造成を行ないまして、そして特に地方の中核団地を中心とする工業団地の造成を進めて、ここへも企業の進出を進めることに相なろうと思います。  既存の工業団地につきまして今回の施策が行なわれますと、その団地に企業が立地する場合には工業配置促進補助金の交付があるわけでございまして、移転地域から出る場合には市町村と企業に、新増設の場合には市町村に補助金の交付があるわけでございます。また、そういう団地に過密地域から移転する場合には、公団から、移転あと地融資、移転運転資金の融資があるわけでございます。また過密地域にあります企業がそれらの地域に出る場合には、税制上加速償却の特点が認められますし、移転企業に対しましては固定資産税の免除があるわけでございますので、さしあたって過密地域にある企業の中で移転の希望が大企業中小企業を通じて相当数あるわけでございます。これらの企業はまず既存の団地について移転が検討されるというふうに考えるわけでございますから、御指摘の問題点については、当然それらの用地を含めてわれわれとしては考えておるわけでございます。
  77. 岡本富夫

    岡本委員 それではお聞きいたしますけれども、私どもの調査で、秋田県の井川村、ここに二十六万六千二百八十平米、この団地が昨年の八月にできました。もう満一周年を迎えようとしておるのですけれども、いまだにどの企業も来ない。ここへ企業が来ればそこへ働きに行けるのだということを信じた農家の方が、保有米を取るような土地まで全部手放して、そうしてきれいな団地をつくってもらったけれども、あとどうしようもない、こういう現実の姿があるわけです。あなたは、こういった工業団地、いろいろなものを点検をして、そうしてこの法律に合うかどうか、そういったものに対してお調べになったというお話でありました。では私聞きますが、これは一つの事例ですけれども、このほうの調査をなさったことがありますか、これをひとつ聞きたい。
  78. 本田早苗

    ○本田政府委員 この団地は農村工業導入促進法拠点団地に該当する団地でございまして、完成したのはごく最近のことでございます。われわれのほうの調べでは、有力な企業が数社、この団地への進出につきまして具体的に検討を始めつつあるということでございます。われわれとしては、この計画が実現することを期待いたしておるわけでございまして、一応用地の考慮の中には入っておるわけでございます。
  79. 岡本富夫

    岡本委員 通産大臣、この団地ができましてから満一年たっております。先ほど申し上げましたように、百二十一人の方々の大部分は出かせぎ農家である。この団地が来るというので、保有米をつくる水田も、企業が来たらそこで働けるのだというような話で全部手放したわけでありますけれども、いま写真を見るときれいに団地ができておりますが、このごみがぱあっと飛ぶだけで、それらがうちに入ってくるだけで、収入が入ってこない。ごみが入ってきただけでは食べていけない、こういうわけで非常にショックを受け、また、工業団地が来るのだということを信じて農地を手放した農家の皆さんは結局いま非常に犠牲になっている。こういうことが起こり得ることになれば、やはりこれに対してどうするかという手を打っておかなければ、この工業配置法によっていろいろやったときにこんなことがあっちこっちに起こるのでは、これは農家はたまったものじゃない、こういうふうに私は思うんですがね。その点について、ひとつ大臣から御意見を伺いたい。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ秋田県が起債事業としてやったわけでございますし、また各県でも工業団地をつくっているところがあります。これはみんなつくっております。しかし一次産業比率の特に高い豪雪単作地帯というような県の工業団地というのは、比較的に、いま御指摘になったように、一年とか二年とか、あく場合はございます。ございますが、それは非常に短い時間であって、大体埋められておるということでございます。栃木県の小山団地などは、もうあっという間に足らないぐらいになっておって、もっと団地造成をしなければならないということで北関東地方各地に工業団地の計画がございますが、まあ秋田というところになると、これは将来的に見ると、秋田湾がございますし、八郎潟もあるし、これはもう相当ないいところであるということはだれが見てもわかるのですが、いまのところは交通が一番不便なところ——まあ秋田の方おられるかもわかりませんが、交通が一番不便なんです。あそこは飛行場ができておりますが、横風が非常に強いので満足に飛行できる日が何日もないということであるし、冬季は何カ月間も飛ばないというような問題があって——秋田というのは、水はあるし、土地はあるし、労働力はあるし、非常にいいところなんです。いいところなんで、将来は一つの大きな基地になるといわれておりながら、いまのような、県がつくった団地でさえもすぐ利用できない。いろいろな迷惑をかけているということがありますが、これは県も草の種などをまいて、公害いわゆる砂やほこりというものの害を起こさないようにやっているようでございます。これはそういうものが全然起こらぬということはいえないと思うのです。起こらぬということはいえないと思いますが、やはりいつでも受け入れ体制ができるように、今度は県だけではなく、県と通産省も十分連絡をとりながら、また各企業との間に連絡をとりながら青写真をかいて、また青写真の実行を行なうということにいたしますので、いまのようなことがなるべく起こらないようにいたしたい、こう思います。いまの秋田県の問題は、これはまだ私もよくその状態も聞いておりませんが、これは相当見込みをつけて工場団地造成を行なったわけでありますから、これは県も見込みを持っているんじゃないか、こう思います。私もよく事情を承知いたしておりませんので、これはひとつ検討いたしてよく調査をいたします。
  81. 岡本富夫

    岡本委員 それでこの調査をほんとうはしてなければならないのですが、まだしてない。要するに工場団地が来るといって喜んで土地を提供した、こういうところですから、そう高く売ってないんですね。結局一年あるいは二年と、つとめるところがなくて遊んでしまって、それをみんな食ってしまうというような、農家の被害というものは非常に大きいわけです。私はそういう、まあ大の虫を生かして小の虫を殺すというような考え方ではないと思いますけれども、したがって私は、この工業配置促進法、これはまあ必要だと思いますけれども、特にこういった農家の皆さんが、いままでは食べていけた。米をつくって、そして出かせぎに少し行けば食べていけたのが、たちまちこうやって、満一年たっておる。まだ、それから何ぼ、いつごろ来るかわからない見込みでは、一家は食べていけなくなる。こういうようなものに対するところのやはり調整あるいは救済という面も考えたところの工業配置でなければならない。この点について、大臣にもう一ぺんだけ答弁を願いたい。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 工業配置というのは、過密地帯の弊害を排除して、一次産業比率だけが高くて出かせぎに出なければならない、親子、夫婦も別れ別れに住まなければならない、しかもそのうちにはおばあさんまで連れて都会に出なければならない、過疎県というものはどんどんと人口が減っておる。そういうところは水もあるし土地もあるし、家を持つ労働力、質のいい労働力もあるわけです。そこで働く場が与えられれば、出かせぎにも出ないでいいし、家族の都会への移動もなくなるわけであります。そうすれば、社会保障対象人口もふえないで済むわけです。だからそういう一石何鳥ということを目標にしてこの政策を推進しようとしているわけでございますから、いま御指摘になった事態、現象から見ますと、確かに工場ができると思って売ったのだ、工場が来たらつとめようと思って待っているんだが工場は来ない、その間に土地の売買代金まで食いつぶしてしまうおそれがある、そういう特殊なケースもあると思います、実際。そういうものをなくするためにも工場配置を行なう、地方工業化を行なうということでありますから、だから農村工業導入法も新産業都市建設法も低開発促進法もみなそうなんです。ですから法律の目的は非常にいいことである。いろいろなことを言いますけれども、私も新潟県でございますが、私の選挙区のほとんどすべては、何とかして工場を持ってきてもらいたい、工場を持ってこないで総合農政とは何だ——実際そうなんです。総合農政でもって減反をする、耕作を休め、耕作を休んで一体どこに働きに行くんだ、実際ヘビのなま殺しにあっているわけです。これは新潟県や東北だけではありません。北海道は現に人口が減りつつある。九十年間ふえ続けた北海道人口が減りつつある。こういう事実に徴して考えてこの法律をつくろうとしているわけでございますが、現象としては、いまのような例、これは大きなものではないようです。二十町歩ぐらいのものだということになれば、一町歩三千坪にしても幾らでもないものではありますが、しかしどういうふうにしてそれを、県がその程度のものの工場誘致ができなくてそういうことになっているのか私はその事情はよく知りませんけれども、これはそういうことにはならない。これはちゃんとした計画を立てながら、全日本の列島改造ということを目標としておりますので、そういうことが現象として絶対なくなるということは申し上げられませんが、しかし原則的にはそのような事態が起こらないように十分な配慮をしていくべきだと思います。
  83. 岡本富夫

    岡本委員 大臣、私の言わんとしているところは——あなたは新潟の話をいろいろされましたけれども、そういう事情はわかるんですよ。しかしこういうように私がいま秋田県の一つの現象を取り上げて申し上げておるのは、結局その陰に泣くところの、工場が来ると思って土地を放した、そうして保有米、自分のところで食べる米まで——五反百姓ぐらいだったら、たいがい自分たちの食べる分だけつくるのですが、これも全部提供してしまった。ところがそれが来ない。そうなるとどうしようもなくなってくる。こういう人たちの救済も、あるいはどうするかという手の打ち方もやはり考えた今後の政策を立てなければだめだということを私は申し上げておるわけです。ですから、話をすりかえてもらったのじゃちょっと困る。私はこの法案を見まして、そういう対策が一つもないんです。ただ、これは工場の再配置を促進する、それに対して金も貸そう、あるいは税金をまけよう、こういうことだから、そういった陰の一番きめのこまかい手も打つことも考えておかなければいかぬということを私は申し上げておるわけです。こればかり言ってもしかたがない。これはひとつ調査をして、そして御返事をください。  そこで次に、目的の中に、環境の保全——工場の新増設を環境の保全及び雇用の安定」というところの環境の保全、これはおそらく私は自然環境生活環境であろうと思うのです。そこで、東京大阪、あるいは工場の少ない私のほうの選挙区でありますところの宝塚、こういうところにおきましていま一番問題になっているのが、公害の中でも工場から出るものについては何とか規制もできるのですけれども、できないのが光化学スモッグですね。光化学スモッグ、この現状がどんどん急テンポに日本列島を襲おうとしておる。この原因は、いろいろな学者の説がございますが、その中で一番大きな原因になっておるのがやはり自動車の排気ガスではないかということで、私はこの工場の再配置をいたしましても、同じように、いまの東京都あるいは大阪あるいは神奈川あるいはまた私がいま言いました工場の少ない宝塚、これらも相当光化学スモッグが出ているわけですね。そういった面をやはりきちんとしておきませんと、結局日本国じゅうに光化学スモッグを起こして、そして病気をばらまく、こういうことを懸念をするわけであります。  そこで、まずお聞きしたいのは、米国におきまして、一九七〇年にマスキー法、これが制定されて、そして自動車の排気ガスの規制をしようということになったわけでありますけれども、わが国におけるそれに対するところの対策、これについてひとつお聞きしておきたいと思うのですが、まず自動車をつくっている重工業局、それから環境庁、自動車の排気ガスを特に担当しているところの運輸省、この三者からひとつお聞きしたい。
  84. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 マスキー法は先生のおっしゃるように七〇年に出たわけでございますが、その前にわが国におきましては運輸技術審議会において、自動車の排気ガスの長期的に逓減する目標が設定されておりまして、それに応じてこの目標達成の技術開発をやるということに相なっているわけでございます。それで、この各年次別の目標もできておるわけでございますので、その目標達成のために自動車業界においては鋭意研究開発を行なってきておりますし、通産省もいろいろな方策を講じまして、この研究を助成し、これを指導してまいっているわけでございます。  ところで、マスキー法がその後できまして、マスキー法の数値とこの運輸技術審議会の数値を比べますと、マスキー法のほうが、これはいろいろ見方もございますけれども、これのほうがきびしいわけでございます。いずれマスキー法が成立すれば、わが国の自動車を多数アメリカに出しておるので、この規制も受けなければならないし、そしてアメリカにおいてマスキー法が成立し、そのとおり実施されるということになれば、当然わが国におきましても同じようなことを考えなければならぬということでございますので、その運輸技術審議会の目標だけでなくて、さらにマスキー法のほうも達成できるように努力していかなければならないと思っております。したがいまして、業界の努力はもちろん、さらに政府といたしましても引き続きその助成とそれから強力な指導とを進めてまいりたいと思うわけでございます。ただマスキー法につきましては、御案内のとおり、技術的に不可能な場合においてはこれを延期ができるという規定がございまして、現にスウェーデンのボルボ社をはじめといたしましてアメリカのビッグスリー等計五社から先般延期申請がありまして、延期の公聴会が行なわれ、その結果に基づきましてアメリカの環境保全局がそれに対する裁定を行なっているわけでございますが、一応それでは延期はできない、さらにもう少し勉強しろということになっております。さらに延期の申請をする動きがあるので、その動きを見守っているというのが現状でございます。
  85. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  わが国における昭和五十年、一九七五年でございますが、昭和五十年以降の自動車排出ガスの許容限度の強化につきまして、環境庁といたしましては積極的に厳正な態度で臨みたい、かように考えております。そのために、昨年の九月、中央公害対策審議会に対しまして、米国のいわゆるマスキー法に定められておりまするところの規制値を十分考慮した自動車排出ガスの許容限度の長期的設定方策というものについて諮問をいたしておりまして、同審議会におきましても専門委員会を設定いたしまして現在検討を重ねておるところでございます。私ども環境庁のほうといたしましては、この専門委員会の結論が出ました段階ですみやかに所要の措置を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 運輸省といたしましては、先ほどお話がございましたように、運輸技術審議会自動車部会で長期計画を定めております。二年ほど前にこの答申が出まして、現在は自動車の排気ガス規制につきましては、その答申の内容に従って道路運送車両の保安基準に盛り込みながら進めているという現状でございますが、その後マスキー法が出まして、かなりシビアな目標が米国では掲げられておるということでございまして、現在私どものほうでは、環境庁の中央公害対策審議会自動車専門委員会昭和五十年以降の排気ガス規制というふうなものの答申がもうすぐなされるということを聞いておりますが、その結果を十分勘案いたしまして、今後の自動車の排気ガス規制というふうなものに対処してまいりたいと思っております。
  87. 岡本富夫

    岡本委員 それで、わが国の規制はパーセンテージであらわしておるのですが、マスキー法、アメリカのほうでは量規制ですね。ここに大きな相違があろうと思うのです。  そこで重工業局長にお聞きしたいのですが、環境庁が環境基準をきめなければそれに到達する開発——開発をするのに環境基準をきめる。それを待っているのだ、これは運輸省もそういう話だったけれども、米国の環境保護局はもう延期申請を却下しておるわけですよ。そうすると、輸出の場合これに合わせなければ車は輸出はできないわけです。ですから、わが国の環境庁がこれよりゆるいのをきめましたら、これは輸出はできないでしょう。そういうことを考えますと、やはりマスキー法に合わせた施策でなければならないと私は思うのですが、案外のんきなことを言っておるように感じるのです。  そこで、いまトヨタ、日産それから東洋工業、こういうのがありますけれども、どこの会社の分は大体このマスキー法に該当するようになったのか、これがおわかりになったらひとつ知らせてもらいたい。
  88. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 マスキー法は、昭和五十年の規制値を、窒素酸化物につきましては昭和五十一年の規制値を規定しておるわけでございます。したがいまして、日本のどのメーカーがこのマスキー法をパスするかどうかという、まあ五十年になってみないとわからないわけでございまして、現状におきまして、どのメーカーのものがこれにパスするかいなかということは申し上げられないわけでございます。もとより各メーカーともマスキー法が予定どおり施行されることもあるべしということでいろいろな努力をしておるわけでございます。
  89. 岡本富夫

    岡本委員 現在の開発状態をあなたがいまここで話しするわけにはいかない、こういうことですからしかたがありませんけれども、いずれにしましても一九七五年というとあと二年半しかないわけですね。そのころになりますと、一九七〇年の約十分の一ですか、これは一酸化炭素と炭化水素ですか、それから窒素酸化物が七一年の十分の一、こういうような技術開発をしなければ輸出はできない。同時にまた、輸出できないだけでなくして、わが国もこういうような、いま自動車の排気ガスによるといわれておる光化学スモッグ、こういうものを防ぐためにはやはり相当努力をしてやらなければならないと私は思うのです。  そこで、審議会の諮問、審議会の諮問といっておりますけれども、環境庁に言いたいのですけれども、環境庁、責任のある人来ておりますか。——結局結論としては、マスキー法と同じ程度の規制にしなければならないのじゃないでしょうか。その点についてひとつお聞きしたい。
  90. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃるとおり、当然マスキー法の基準値というものを十分考慮したものでなければならないことは自明の理でございます。ただ具体的に、また個別に見てまいりますと、走行方法の問題あるいはそれぞれの規制のしかた、先ほど御指摘いただきましたように走行キロ当たりのグラム数というような問題、こういったような問題の調整というものも入ってまいるわけでございます。私どもとしては、基本的な線といたしましては、あくまでもマスキー法の基準値は十分満たし得るそういった許容限度というものについての検討を専門委員会から答申をいただけるのではないか、またそういうつもりで私どものほうも準備を進めて検討も進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  91. 岡本富夫

    岡本委員 これは特に前向きの答弁がありましたけれども、いずれにしましても輸出、それから国内で使用する。それにつきましても、やはりこのマスキー法というものは非常にきついということでありますけれども、そうしなければ自動車産業ももっていかないし、また日本の国の自然環境の保護、生活環境の保護もできない、こういうわけですから、最後にひとつ大臣に、若干担当は——しかし、あなた実力大臣であり、次期総裁であるといわれておるような方ですから、これについての御意見をひとつ承っておきたいと思うのです。ではないか。それについてやはり最近、円の再切り上げを規制するとかいろいろなことで金利の引き下げを考えておる、公定歩合の引き下げも考えておるわけですが、したがって私はこの政府三機関の金利の引き下げも考慮しなければならぬではないか。これはいろいろと問題もございましょうが、これについてひとつ最後に大臣考え方、あるいはどうするかということをお伺いして終わりたいと思います。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 二つお答えいたします。  一つは、中小企業対策としての三機関の金利の引き下げ、これは質の面でございますから、当然低金利政策に対応していけるように、また政府関係機関としてその地位を確保するためにも、普通の民間の銀行が下げておるのに政府機関が依然として高い金利というわけにまいりません。これは引き下げのほうに努力すべきであることは当然であります。  もう一つは、地方開発とかいまの移転をする希望者に対する資金の融資、これはこの公団だけでなく、この公団ができますと、この公団プラスいろいろなものが出てくるわけです。一つには北海道東北開発公庫があります。開発銀行の地方開発融資ワクがございます。それだけではなく、中小企業三機関ができたことによって民間銀行にも中小企業部ができて、その資金の一〇%、二〇%というものを中小企業に貸したいというような制度がおのずからできましたように、これはもう当然金融機関の中にも低利長期——いまハウスローンというのではそういうことをやっているのです。ハウスローンでやることもさることながら、ハウスローンでやっておることは当然工業配置等に対しては行なうべきであります。もう一つは、系統金融の中でもこういうワクをつくってもらう、そういうことによって総合的に地方工業化また過度の集中の排除というものもあわせて行なえる、だから希望がある者に対しては金を貸せられるように、希望はあるけれども金はないというようなことは絶対起こさないようにしてまいりたい、これはつけ加えて申し上げておきます。
  93. 岡本富夫

    岡本委員 理事会があるそうですからこれで終わりますけれども、大臣、ハウスローンは計算しますと大体〇・九%くらいの金利になっておりますから、そこらもひとつそれと同じにするのだといわれたら、いまよりも上がってしまうのですから、下げてもらいたいのにまた上げてやろうかというのは、そんなことは困るから……。じゃ政府三機関の金利もそういったようなぐあいで下げるということですから、これる終わります。
  94. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会