○
田中国務大臣
計量法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
計量法は、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的として制定されたものでございますが、同法につきましては、最近における社会情勢の変化に対応して、計量による取引や取り締まりの適正化、消費者保護等の観点から、諸
制度のあり方に幾つかの
改正を加えるべき事情が生じておるのでございます。これにかんがみ、政府といたしましては、昭和四十六年四月から計量
行政審議会に
計量法における諸
制度のあり方について審議をお願いし、昨年十一月答申を得て以来、その
趣旨に沿って同法の
改正を慎重に検討してまいりました結果、ここに成案を得て提案をすることとなした次第でございます。
次に本法案の要旨につきまして御説明申し上げます。
第一は計量単位に関する
改正でございます。第十三回国際度量衡総会の決議及び日本学術
会議の意見等に基づきまして、時間の計量単位であります秒の定義を従来の天文学的方法から原子物理学的方法に改めるほか、温度及び光度に関する現示の方法の
改正、波数、熱伝導率、比熱等に関する計量単位の追加を行なうこととしております。
第二は計量器の定義の拡大でございます。近年、地域冷暖房の普及に伴い、この取引に使用される熱量計の性能確保に関する要請が高まっておりますほか、主として公害の取り締まり等に使用される濃度計及び振動計についても同様の要請が高まっておるのでございますので、これらを
計量法上の計量器として追加して同法の規制の対象とすることといたしておるのでございます。
第三は家庭用計量器についての規定の新設でございます。ヘルスメーター等の家庭用計量器につきましては、その性能等の面で種々の問題点が
指摘されておりますので、これについて技術上の基準を定め、製造
事業者及び輸入
事業者に対してこれを順守せしめる等の
措置を講じてその性能の確保をはかることとしておるのでございます。
第四は指定検定機関の
制度の導入でございます。新たに検定を実施することとしております濃度計、騒音計等の計量器の検定について、民間の能力を活用し得るよう検定に必要な技術的能力を有する等適正な検定を実施し得ると認められる民間の機関で
通商産業大臣が指定するものを検定の主体として追加することとしております。
このほか、計量証明
事業者が計量証明に使用する計量器の検査に関する計量士による代検査
制度の導入、計量
行政審議会の諮問事項の
整理、検定手数料に関する
改正、罰則の整備等について所要の
改正を行なうこととしておるのでございます。
以上がこの
法律案の提案理由及び要旨でございます。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
現行
特定繊維工業構造改善臨時措置法は、わが国の繊維
工業を取り巻く内外の経済環境がきびしくなりつつある情勢の中で、その構造的脆弱性を克服し国際競争力を強化するため、特定繊維
工業について総合的な構造改善をはかることを目的といたしまして、昭和四十二年に制定されたものであります。本
法律の対象業種としては当初、特定紡績業及び特定織布業の二業種でありましたが、昭和四十四年の
改正でさらにメリヤス製造業及び特定染色業の二業種が追加せられたのであります。
しかしながら、その後のわが国繊維
工業をめぐる内外の経済環境は、当初の予想をはるかに上回る急激かつ広範な変化を遂げております。すなわち、海外におきましては、発展途上国における繊維
工業の目ざましい発達があり、これら諸国における自給度の向上と第三国市場におけるわが国製品との競合によりまして、従来、海外市場において圧倒的地位を誇っていたわが国の繊維製品が次第に後退を余儀なくされつつあります。
また、わが国市場におきましてもこれら諸国からの輸入は、近時急激に増加しつつあり、この傾向は、昨年八月一日から特恵関税が発展途上国に供与されましたこともあって、今後ますます進むものと予想せられておるのでございます。さらに、過般の日米繊維問題に見られますように、先進国におきましては国内産業に対する保護主義的な動きが台頭しており、今後のわが国繊維製品の輸出に対する制約は大きなものがあると考えられます。これに加うるに、昨年末には、国際的通貨調整が行なわれ、わが国の繊維製品の国際競争力は、この面からも大きな影響を受けるものと予想せられるのであります。
国内に眼を転じますと、若年労働者を中心とする労働力需給の逼迫とこれによる賃金の上昇は、当初予期していた以上のものがあります。また、国内需要面においては、製品の多様化、高級化、ファッション化等の需要構造の変化が顕著にあらわれてきており、繊維
工業の供給構造の変革を強く迫っておるのでございます。
このように繊維
工業をめぐる内外環境は近年著しい変化を遂げておりますので、本
法律に基づき昭和四十六年度末を目標として進められてきた特定紡績業及び特定織布業の構造改善
事業は必ずしも順調な進捗状況とはいえず、本年度末までに当初計画の目標を達成することが困難な状況となっております。このため、
通商産業大臣の諮問機関であります繊維
工業審議会及び産業構造審議会繊維部会において慎重な審議を重ねてい
ただきました結果、この時点において構造改善
事業を打ち切ることは、これまで積み上げてきた構造改善の成果を減殺することとなることだけでなく、紡績業及び織布業という繊維
工業における基幹的な産業が大きな打撃を受けるおそれがあること、また、
関係業界ではこれまでの構造改善への反省と内外環境の一そうのきびしさに対する認識に基づいて新たな構造改善への意欲を高めていることなどの理由から、この二業種についての構造改善の計画期間を二年間延長し、構造改善を促進するための
措置を引き続き講ずべき旨の答申を得た次第であります。また、最近における需要動向の変化に適切に対応して、わが国繊維
工業を高付加価値産業あるいは、知識集約型産業に脱皮させることは、発展途上国のきびしい追い上げの中にあるわが国繊維
工業を合理的な国際分業の中に位置づけるためにも必要な道であります。この観点から、今回の臨時繊維産業特別対策の一環として、繊維製品の需要動向の変化に即応するための
事業を助成することとなし、そのため十億円の政府出資等をもちまして新たに振興基金を創設することといたしておるのでございます。
政府といたしましては、以上の施策を実施するのに必要な
法律的裏づけを得るため、
特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を
改正する
法律案を作成し、提案することといたした次第でございます。
次に
改正の要旨につき、御説明をいたします。
第一は、特定紡績業及び特定織布業の構造改善
事業の計画期間につきまして、従来、本年六月三十日までとなっているものを二年間延長し、昭和四十九年六月三十日までとすることであります。
第二は、新たに繊維
工業構造改善
事業協会に振興基金を設置する旨の規定を置くとともに、同協会の業務として新商品または新技術の開発、海外市場動向調査等の繊維製品の需要の動向に即応するための
事業に対する助成金の交付の業務を追加することであります。
以上が、今回の
改正の主要点であります。
何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、
工業再
配置促進法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
戦後のわが国の経済社会は、
工業化と都市化を基調として成長、発展を続けてまいり、その結果国民の生活水準は著しく向上いたしました。しかしながら、成長、発展の過程において、国土面積の二〇%にしかすぎないいわゆる太平洋ベルト地帯に
工業生産の七〇%強、人口の五〇%が集中し、一方では人口の著しい
減少と財政窮迫に悩む市町村が全市町村の約三〇%にも及ぶに至り、これにより、住宅難、交通渋滞、環境悪化等の過密問題と過疎問題とが、同時に発生しているのが現状であります。
こうしたいわば国土資源の片寄った利用による諸弊害を是正し、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、国民生活の向上をはかっていくことが、われわれに課せられた重大な使命であると考えます。
本法案は、かかる見地から
工業生産の全国的な平準化の促進を柱として国土利用の再編成を進めるため、
工業が過度に集積している地域から
工業の集積の程度が低い地域への工場の移転及びその地域における工場の新増設を環境の保全と雇用の安定に配意しつつ推進しようとなすものであります。
次に、本法案の概要について御説明いたします。
第一は、
工業再配置の基本となる移転促進地域と工場の誘導をはかるべき誘導地域を定めることとしていることであります。移転促進地域は、大都市とその周辺の地域のうち、
工業の集積の程度が著しく高い地域について、また、誘導地域は、
工業の集積の程度が低く、かつ、人口増加率の低い地域について、政令で定めることといたしております。
第二は、
工業再配置計画を策定し、公表することとしていることであります。この計画は、目標年度における
工業の業種別、地域別の配置目標、移転促進地域から誘導地域への工場の移転に関する事項、環境の保全に関する事項等について定めるもので、今後の
工業再配置政策の基本となり、また民間企業の立地に関する指針としての役割を果たすものであります。
なお、計画の策定にあたっては、新全国総合開発計画その他各種の地域振興計画、農村地域
工業導入基本方針等と調和のとれたものとなるよう十分調整をはかることとしておるのであります。
第三は、移転促進地域から誘導地域への工場の移転及び誘導地域における工場の新増設を促進するための税制上、財政上、金融上の
措置を講ずることとしていることであります。
まず、移転促進地域から誘導地域へ移転する工場については、移転計画の認定
制度を設け、この認定を受けた場合には、企業に対し償却の特例を認めるとともに、固定資産税の減免をした
地方公共団体に対し減収分の補てん
措置を講ずることとしておるのであります。
また、財政上の
措置といたしましては、誘導地域において企業が立地した場合に、主として市町村に交付される
工業再配置促進補助金、
地方公共団体等の造成する
工業団地に対する
工業団地造成利子補助金を昭和四十七年度予算において要求しております。そのほか、誘導地域における産業関連
施設及び生活環境
施設の整備の促進等に関し所要の規定を設けて一おります。
なお、本法に関連いたしまして、
工業再配置促進対策の重要な
部分を実施させるため、現在の産炭地域振興
事業団を改組拡充して
工業再配置・産炭地域振興公団とすることとなし、別途
産炭地域振興事業団法の一部を
改正する
法律案を提案いたしておりますので、よろしく御審議を賜わりたいと存じます。
以上が本法案の提案理由及びその要旨でございます。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げる次第でございます。
次に、
産炭地域振興事業団法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
戦後のわが国の経済社会は、
工業化と都市化を基調として成長、発展を続けてまいりましたが、近時、過密過疎の弊害が顕著になってきており、今後とも長期にわたってわが国経済社会の活力を持続し、国民生活の向上をはかっていくためには、太平洋ベルト地帯、特にその大都市圏に
工業と人口が過度に集中している現状を改め、各地域の開発可能性に対応した国土利用の再編成をはかることが急務となっております。
かかる観点から、地域開発の主導力となる
工業に着目し、昭和四十七年度から新たに各種の
工業再配置対策を推進するため、別途本法案とともに
工業再
配置促進法案を提案している次第でございます。
工業再配置促進対策におきましては、工場の移転関連融資、工場用地の造成等の諸施策が重要な役割りをになうこととなりますが、これを円滑かつ効率的に実施するため、現在内容的に類似した業務を行なっている産炭地域振興
事業団を改組拡充して、
工業再配置・産炭地域振興公団にいたしたいと考えております。
御高承のとおり、産炭地域振興
事業団は、昭和三十七年に設立されて以来、石炭鉱業の不況により特に疲弊の著しい産炭地域における鉱
工業等の計画的な振興をはかるために必要な業務を積極的に行ない、産炭地域の振興に多大の貢献をしてまいりました。今回の改組拡充により、公団は従来からの産炭地域振興
事業を積極的に推進するほか、新たに
工業再配置
事業を行なうこととしたいと考えている次第であります。
次に、本法案の主要な内容について御説明いたします。
第一は、産炭地域振興
事業団を
工業再配置・産炭地域振興公団に改組拡充するため、名称の変更、役員の増員等所要の
改正を行なうこととしていることであります。
第二は、この公団に、
工業再配置業務を新たに行なわせることとしていることであります。
工業再配置業務としましては、まず過度に
工業が集積している地域内にある工場を
工業の集積の程度が低い地域に移転しようとする製造
事業者に対し、移転資金融資を行なうとともに、その工場
あと地を買い上げ得ることとしておるのであります。次に、
工業の集積の程度が低い地域において、
地方公共団体の要請に応じ、地域発展の中核となるような
工業団地を造成することとしております。
第三は、
工業再配置業務と産炭地域振興業務をそれぞれ積極的に進めるため、両者を明確に区分経理させることとし、所要の規定を設けることとしておるのであります。
以上が
産炭地域振興事業団法の一部を
改正する
法律案の提案理由及びその要旨でございます。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
最後に、
熱供給事業法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
今日、暖房、冷房、給湯は、より豊かな生活環境を形成する上で不可欠のものとなっておりますが、従来の暖房、冷房等の方式は、個々の部屋ごとまたは建物ごとに設備を置くものが通例でありました。しかし、近時、いわゆる地域冷暖房を主体とする熱利用方式が登場し、その社会的、経済的にすぐれた
性格から、急速に普及の段階を迎えようとしておるのであります。本方式は、暖房、冷房等に使用される蒸気、温水または冷水を
事業者が集中的に製造し、導管を用いてこれを多数の消費者に供給するものであります。
政府におきましては、このように集中的な熱サービスを行なう
事業を熱供給
事業として位置づけ、この種
事業に歴史を有する欧米諸国の実情を調査する一方、総合エネルギー調査会の審議等を通じて、その経済的、社会的意義と必要な施策について検討を進めてまいりました。その結果、地域冷暖房
事業等の熱供給
事業については、第一に、これが地域全体の生活環境の改善に寄与するのはもとより、エネルギーの有効利用、都市災害の防止、大気汚染の防止等にも大きく貢献することから、国としてその健全な発達をはかる必要があること、第二に、その際特にこの
事業は、一たび
事業が開始された後は、その区域について独占的地位を保有するようになるため、消費者の保護が必要となること、第三に、現在法規制が行なわれていない導管等について早急に保安規制を導入することが必要であること、について結論を得た次第でございます。
本法案は、以上の実情にかんがみ、熱供給
事業を新たな公益
事業として位置づけ、必要な
限度で国が監督を行なうことにより、消費者の保護と保安を確保し、あわせて
事業の健全な発達をはかろうとするものであります。
次に、本法案の概要を御説明申し上げます。
その内容の第一は、熱供給
事業の開始を、
通商産業大臣の許可制とし、経理的基礎、技術的能力等を備え、かつ、確実、合理的な計画を有する
事業者により
事業が遂行されるよう
措置したことであります。なお熱供給
事業の
範囲は、一般の需要に応じて熱供給を行なう
事業であって、一定規模以上の供給能力を有するものとしております。
第二は、熱供給
事業者に対して、供給区域内の需要に対する供給義務を課するとともに、熱供給の料金その他の供給条件については、これを供給規程に定め、
通商産業大臣の認可を受けさせることとしたことでございます。
第三は、熱供給
事業の用に供する設備の保安を確保するため、これらの設備は、
通商産業大臣が定める基準に適合するように維持すべきものとし、さらに、導管については、工事計画の届け出、使用前検査等の義務を課することとしたことであります。なお、この導管の保安に関する
措置については、熱供給
事業に該当しない同種の
事業に対しても、準用することとしております。
また、熱供給
事業に対しては、その健全な発達をはかるため、既存の公益
事業と同様の税制上の特例を認めることといたしましたが、このために必要な法人税法及び
地方税法の一部
改正は、本法の附則であわせて
措置しております。
以上がこの
法律案の提案理由及びその要旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。