○山下政府
委員 現在、輸出を従来のように政府が振興すべきなのか、あるいは輸出を抑制しなければならないのか、一つの日本経済の転機に臨みましてそこに混乱が生じておりますことは
先生御
指摘のとおりでございまして、その点私
どもがどう考えておるか、一言で申し上げますと、過去十年間、一九六〇年代には、日本は世界のあらゆる国に対して、あらゆる品物で安くていいものであればどこにでも出すということで来たわけでございます。事実輸出振興策も多々実施してきたわけでございます。しかし、去年の十二月二十日に、日本の貿易収支があまりにも黒字が激し過ぎるということも一つの原因となりまして、先進諸国で通貨調整をやったわけでございまして、そのとき及びその後、わが国は諸外国に対しましても、日本は世界で例を見ない一六・八八%という円の切り上げをしまして世界経済に協調するわけであるけれ
ども、これが実際の世界貿易の調整として効果をあらわすのには一年ないし二年はかかるから、そのつもりでいてほしいという意見を申し述べました。また、諸外国でもそういう点は了としたわけでございます。
ところが、実際には、その後一、二、三月と国際的な通貨不安の情勢は思ったほどおさまっておりませんし、特にヨーロッパの為替市場における激しい動きなどから、再び円の再切り上げもしくは世界の通貨再調整が必要ではあるまいかという憶測を生じております。これには私
どもとしては、単に各国間の貿易収支のみならず、現在アメリカの手元から離れた数百億ドルにのぼるユーロダラーというものがある現状でございますので、投機的な要素も多々あると見てはおりますけれ
ども、といって各国の貿易収支と無
関係ではございませんので、そういう情勢に対処して日本の貿易政策をどうしたらいいかということも真剣に考えておるわけでございます。
一、二、三月の輸出実績を多少数字を入れて申し上げますと、現在通関実績でわかっておりますのは二月でございますが、この実績では、去年一年間の激しい日本の輸出の伸びから若干増加率は衰えてはきておりますけれ
ども、依然として高い水準でございます。ただ、
通産省は、さらに先行指標といたしまして輸出認証統計及び輸出信用状統計を日々見ておりまして、輸出認証統計で申し上げますと、これは三月の実績が手元に入っておりますが、二月に比べて著しく下がってまいりまして、三月の前年同月比の比率は二〇%以下でございます。また信用状のほうは、三月の信用状実績は前年同月に比べまして一〇%以下でございます。これは、最近月々の数字としましては相当に下がってきておる。私
どもがかねがね言っておりますように、為替切り上げの影響がそろそろ出始めて、そして五月、六月ごろから輸出の平常化というような
状態まで落ちてくるのではあるまいか、こう考えております。
ただ、さらに細目として、品物別あるいは
地域別に見ますと、二月の通関実績で申せば、自動車の対ヨーロッパ向け輸出は前年同月よりも三倍になっておる。アメリカは八八%増というところまで落ちてきておりますが、EC六カ国で二倍、周辺のEFTAを入れまして三倍という、一カ月間ですがそういう情勢がある。またテレビあるいは電卓、陶磁器等におきましては、相当激しい増加率を示しております。こういう
状態がそのまま続くと仮定すれば、ヨーロッパ側で対抗措置を考えざるを得ないという事態が今年中に起こらないとはいえませんので、私
どもは相手国市場に激しい撹乱を起こさないように
地域別、品物別に対策を立てまして、国際摩擦を最小限にしていくことによって日本の円の再切り上げを防ぎたい、こう考えております。
しかしながら、これは別の理由でございますけれ
ども、現在造船とかプラントとか、前年同期に比べまして四割、五割の受注減になっておるという暗い面がありますし、御
指摘の
中小企業においては、
地域によって現在の三百二円なり三百五円という為替平価では非常に受注契約のできにくい面ができております。前国会におきましてこのための救済法案を御
承認いただいたわけでございますけれ
ども、そういう施策とあわせて、輸出を振興したりあるいはそのための
被害を救済したりする施策もあわせ考えていかなければならない、こう考えております。