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1972-03-17 第68回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十七日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 進藤 一馬君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    内田 常雄君       神田  博君    北澤 直吉君       坂本三十次君    始関 伊平君       塩崎  潤君    田中 榮一君       八田 貞義君    増岡 博之君       加藤 清二君    田中 武夫君       岡本 富夫君    松尾 信人君       伊藤卯四郎君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省化学         工業局長    山形 栄治君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   米原  昶君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   谷口善太郎君     米原  昶君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 きょうは大臣がもう少しおくれるそうでございますので、それまで政府委員に数点についてお聞きしたいと思うわけでございます。  昨日のニュース等でも報道されておるわけでございますが、私たちはかねて、PCBなりあるいはBHC等のそうした問題につきまして、政府に万全な対策をお願い申し上げてきたわけでございます。しかしながら、そうした心配なケースがたまたままた出たわけでございます。そういうことにつきましては、これは人体に非常に大きな影響があるのじゃないか、こういうようなことで非常にみんな心配しておるわけでございます。特に、そうしたPCB等は、通産省の管轄の工場でもつくられておりますし、したがって、今後のそういう対策ということが一番要請されるわけでございます。  そこで、まず第一点お聞きしたいのは、大阪衛生部調査で、母乳から最高〇・七PPMという高濃度PCBが検出された、こういうことにつきまして、各省庁はどういう見解を持っておられるのか、これについて、順番にひとつお聞きしたいと思うのです。それでは、来ておられる各局長からお答え願いたいと思うのですが、まず科学技術庁からお聞きしたいと思います。
  4. 千葉博

    千葉政府委員 PCBにつきましては、科学技術庁では、昨年緊急研究ということで、特別研究促進調整費によりまして三千七百万円の経費を支出しまして、関係各省、特に厚生省、農林省、労働省などの専門家を招きまして、三つ分野につきまして研究を鋭意いま促進中でございます。  それで、実はそのPOB実態はまだ分析方法ですら確立しておりませんで、研究内容は、まずこの分析方法を確立すること、それから第二点が、魚介類とか、乳製品、肉などの食品、それから水道源水、こういったような分野につきましての汚染実態に関する研究、それから第三点が、そういったものが体内に入りましていわゆる慢性毒性、こういったものについての実態がどうなのかというような三点につきましての研究をいまやっておりまして、それでその一部分の、まず分析方法につきましては、水とか乳製品とか肉の製品、この三つ分野につきましての分析方法を一応研究が完了いたしましたので、中間的な報告としてことしの一月にこれの発表をいたしたわけでございます。そのほか、いま申し上げましたような汚染実態とか、それから慢性毒性実態とかいうような点につきましては、ちょっとおくれておりますので、四月か五月にはある程度この研究の成果が発表できるかというように考えております。  以上でございます。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 各省来ておりますね。環境庁厚生省通産省順番に……。
  6. 岡安誠

    岡安政府委員 いまお話し母乳からPCBが出たということにつきまして、環境庁としましては、その原因は、やはり製造過程におきまして排水から出るというものと、それから廃棄物の形をとりまして環境汚染した結果そういう事態に立ち至る、二つのルートだろうと考えております。  まず、排水等につきましては、水質汚濁防止法によりまして、私ども環境基準排水基準を早急につくりたいということで作業いたしておりますが、先ほど科学技術庁からお話がございましたとおり、分析方法につきまして一応厚生省のほうから、水道源水並びに食品中におきますPCB分析方法は目安がついたようでございますけれども工場排水というような汚水中のPCBだけを取り出すという技術は必ずしもまだ確立しておりませんので、私ども現在その調査をいたしておるわけでございます。そういうような分析方法がある程度わかりましたならば、少なくとも排水規制のほうは至急やりたい。環境基準のほうはやはり人体影響その他環境汚染のメカニズムがもう少し明らかになりましてからになろうというふうに考えております。  それから廃棄物につきましては、これは通産省にお願いしておりますけれども、やはり回収できるものはできるだけ回収するという方向でいま御指導を願っておるわけでございまして、これも分析方法その他が明らかになりますれば、廃棄物の処理に関します法律等によりまして規制をいたしたいということで、現在検討いたしておるという段階でございます。
  7. 松下廉蔵

    松下政府委員 厚生省関係お答え申し上げます。  昨日の大阪府の公衆衛生研究所発表の結果によりまして、大阪地区におきましては、母乳の中にかなり濃度PCBが検出されたという報告が参っております。先月の初め、福岡地区でも同様な調査が行なわれまして、この段階におきまして私ども報告を受けました濃度とは、大阪地区におきましてはかなり差がございまして、相当の汚染が進んでおると考えざるを得ない状況でございます。  それで事が母乳のことでございますので、非常に一般に与える不安も強いわけでございますので、さっそく昨日、母乳汚染の問題につきまして——これは農薬汚染等も前々から問題になったことがございまして、すでに研究班を設けておりますので、その専門家先生方にお集まりをいただきまして、急遽対策を協議いたしました。その結果といたしまして、現在の程度汚染状況では、いままでのデータに照らしますと、母乳を与えることをやめるというような段階のものではない。いままでのPCBによります健康障害といたしましては、カネミ油症の例がございますが、この際の濃度は、これはああいう特殊な事故でございまして、二千ないし三千PPMというようなけたはずれの量でございまして、昨日のデータでは、一番高いものが〇・七PPM、十五人の平均が〇・二ということでございますので、そういうような程度のものではないということは、専門家意見としてはっきりいたしております。  ただ、何ぶん御承知のとおり、PCB汚染というものが新しい事態でございまして、慢性毒性についてはなお今後検討を要する問題が多いわけでございます。そういう意味におきまして、食品等調査は、すでに十ばかりの地方衛生研究所に委嘱をいたしまして進めておるところでございまして、四月ごろには結果が出ようかと存じておりますが、母乳につきましても、特にこういう異常に高いデータも出ておりますので、大阪地区を含めまして幾つかの——特に都会地に多いと考えられますので、そういったところに対する追跡調査を急いで行なう。また赤ちゃんにつきましては、一般的におかあさんの不安もあろうかと存じますので、抵抗力の弱い世代でございますので、個々の赤ちゃん乳児検診というものをさらに強力に実施いたしまして、健康異常がないように十分な健康管理をしてまいる、そういうことを当面の対策としてとりたいと考えておる次第でございます。  またPCB環境汚染問題全般につきましては、他省庁からもお答えがございましたように、すでにPCB自体使用につきまして、閉鎖系以外は原則として使用しないという指導が行なわれておるように伺っておりますが、なおこの点所管官庁とも御相談いたしまして、これが十分守られまして自然界の中のPCB循環が断ち切れますような方策を講じてまいりたい、そういうふうに考えております。
  8. 山形栄治

    山形(栄)政府委員 通産省といたしましては、PCB毒性といいますか、非常に問題が多いものでございますので、昨年来開放系につきましては、この使用を禁止いたしております。なお閉鎖系のものにつきましても、回収が完全にできるもの以外は、原則的にこれを禁止する方向で現在検討しておりますが、昨年の暮れに官房長官通達で、PCBの問題につき関係各省でよく検討するようにという御指示もございまして、いま各省庁からお話がございましたように、関係省庁で現在、法体系法規制必要性妥当性をも含めまして、前向きに検討しておる現段階でございます。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 厚生省緊急対策会議を昨十六日開かれたということを聞いたわけですが、その結論は何であったかということです。またこの〇・七PPM程度汚染母乳乳児に与えても差しつかえないということをおっしゃっておるようでありますが、そういう科学的な根拠をここでひとつお聞きしたいと思うのです。
  10. 松下廉蔵

    松下政府委員 昨日の専門家会議におきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、現段階におきましては、特に乳児栄養につきまして、母乳がきわめてすぐれた栄養源であるということと、それからいままでの健康障害に関するデータといたしましては、一応成人の場合に、大体〇・五グラム程度POB体内摂取された場合に健康障害を起こすおそれがあるということが大体いわれておるところでございます。そういったような両面から考え合わせまして、乳児の健全な育成という意味で、この程度汚染された母乳につきましても授乳を続ける——これは現在の育児の状況から申しまして、大体四カ月ないし六カ月をもちまして離乳食に移行していくということで、昔に比べまして母乳摂取時期というのは短くなっております。そういうような点も考え合わせまして、授乳を続けることのほうが乳児育成にとって望ましいという総合的な判断、そういうように配慮をいたしております。ただ、先生指摘のように、PCB慢性毒性につきましては、なおこれは正直なところ十分なデータがございません。そういう意味から申しますと、かっちりとこういう措置をとることによりまして絶対にだいじょうぶであるということまでは、なかなか現在の段階で学問的に申しにくいという御意見もございまして、そういう意味も含めまして、これも先ほど申し上げましたように、今後乳児健康診断を十分に並行して行ないまして、健康障害が万一生じました場合にも、その早期発見早期治療を同時に進めていくということと、それから母乳調査をさらに進めまして、全体的の汚染状況も把握してまいりたい、そういうことを対策として提案されたわけでございます。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 まあいずれにしても、科学的な根拠というものは、私は非常に薄いのじゃないかと思うのです。いままでカネミライスオイル事件のそういう実証的な事例から、しかもまたおとなでありますけれども、そのときにPCB発生値というものが〇・五から一グラムであった、こういう点から割り出していらっしゃるのじゃないか、このように思うわけですが、子供なり乳児なりがどういうことになるかという点について、いま十分なデータがないということをおっしゃっておるわけです。十分なデータがない。まああれだけの被害を与えた、その事例だけでそれを割って、そして千日ぐらい——飲み続けたとしても、〇・五グラムに達するのには約千日かかる。乳児だから許容量五分の一と考えると二百日といったような点から、そうしたことをおっしゃっておるのじゃないかと思うのですけれども、事はまだそこまでの科学的な追跡なり分析というものが何も出ておらないところに、飲んでもだいじょうぶだという、これはだれだって首をかしげざるを得ないわけです。そういうあやふやなことで、そういう大胆な発表をしていいかどうかということなんです。これは、きょうは科学技術庁も来られておりますが、どう思われますか、いまの厚生省答弁を聞かれて。
  12. 千葉博

    千葉政府委員 先ほど申し上げましたように、この慢性毒性実態につきましては、まだほんとう研究段階でございまして、現在研究中でございます。したがいまして、どうも、科学技術庁からいま厚生省のおっしゃることに対しての見解をと言われましても、まだそのものさしがございませんので、何とも申し上げられないということが実態でございます。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 このPCB母乳汚染状況というものは、西ドイツでは〇・一六三PPM、英国で〇・〇六PPMアメリカで〇・〇三PPM大阪で検出されたのは、〇・七PPMという世界一高い数値が出ておるわけです。そういう点からいって、あなた方がいま答弁なさっておられるそういうことについては、もう根拠が非常に希薄である、少しも科学的にこうだからという、私は納得すべき御答弁ではないと思うのです。こういう点で、このまま母乳を飲んでもだいじょうぶかどうか非常に不安である。そのまま、放置したままでいっていいのかという問題なんです。しかも、これは大阪で出た数値でありますけれども全国調査とかそういうことについてやってきたのですか、これは。お聞ききしますか。
  14. 松下廉蔵

    松下政府委員 初めに申し上げましたように、母乳の中からPOBが検出されましたのは、一月前の福岡の例が初めてでございまして、今度の大阪の例が、私ども報告を受けております限りでは二例目でございます。ほかの数カ所につきましても、母乳の検査を行なうようにこちらから依頼はしてございますが、さらにこういう問題が起こりましたので、急速私どもといたしましても、もう少し手を広げまして調査をいたしたいと考えております。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 アメリカでは、許容量が〇・二PPMときめているわけですね。これは何によってきめておるかということです。アメリカの場合、お聞きしますけれども、どういうあれできめているのですか。
  16. 松下廉蔵

    松下政府委員 アメリカFDAの一応の基準、いま先生指摘ございましたのは、牛乳の一応のガイドラインと申しますか、許容基準だと思いますが、これはそういうことをきめておるということは私ども非公式に承知いたしておりますが、どういう基準をもってこれが定められたのかつまびらかでございませんので、現在私どもといたしましては、外務省を通じてその基礎について照会中でございます。まだ回答いただいておりません。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 アメリカでは〇・二PPMPCBがあれば、全部牛乳廃棄処分にさせておるわけですよ、御承知のように。わが国ではなぜ〇・七であれば飲んでだいじょうぶなんですか、これは。どこに根拠があるのですか。アメリカは〇・二で廃棄処分にしておるのですよ。それの三・五倍というはるかに高い数値が出ているわけですよ。これで安全という根拠をはっきりしてもらわなければ、私は納得できませんよ。
  18. 松下廉蔵

    松下政府委員 私先ほど間違って申し上げましたので、初めに訂正させていただきますが、先生指摘の〇・二は母乳基準でございました。失礼いたしました。  いま申し上げましたように、アメリカでどういう根拠をもちましてそういう基準を定めておるのかという内容が明らかでございませんので、その回答を得て科学的根拠を明らかにいたしませんと、にわかに今度の調査データを比較することはできないだろうということでございます。私どもが、今度の大阪データにつきまして、やはり児童栄養全般の立場から考えてなお授乳を続行するほうが適当であるということは、先ほど申し上げましたように専門家の間の、こういう問題の専門家も含めました方々の御意見によりまして、一応の措置といたしまして決定した内容でございます。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 科学技術庁はそれで納得するのですか。科学的にいろいろと、厚生省なり何なりのそうした見解についてきびしくチェックされ、いろいろな研究調整費等も出していらっしゃるわけですが、いまのそういうような答弁で、科学技術庁としてはそれでいいとおっしゃるわけですか。
  20. 千葉博

    千葉政府委員 私のほうは、先ほど申し上げましたように昨年の六月からこのPCBにつきまして研究促進いたしております。何せ、どうも結果がいままだ出てきておりませんので、先生のおっしゃるように当然私は、これは何らか規制する方向へ持っていく、それからこれの対策をどうするかというようなことを緊急に確立すべきだと思いますが、まだそういったいろいろな研究をちょうどいまやっておる最中でございますので、私のほうからすぐにこれを規制しろとかいうようなことを申し上げる段階じゃないといま考えております。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 参議院のほうでわが党の小平議員PCB汚染を質問をしましたときに、浦田局長が、カネミ油症事件では〇・五グラムから二グラムの体内摂取で発生したものである、したがって、魚あるいは肉の汚染を一〇PPMで計算した場合、毎日百グラム食べ続けるとすれば千日でその量に達する。そういうように答えておるわけです。そういうことで、魚にしろ何にしろ非常な広範囲で汚染をされておるということは非常に国民にとって心配なことであります。  そこで、アメリカでは、すでに一九六九年から牛肉など食品中のPCBに対して規制基準というものを定めておるわけです。ほんとう皆さん方国民のことを心配なさるなら、そういう基準もきめ、またそれに従って、通産省がいま製造させておるPCB等についてもきびしいそういう対策をもって私は臨めるはずじゃないかと思う。なぜ基準を設けないのですか、環境庁科学技術庁
  22. 岡安誠

    岡安政府委員 いまお話し食品中のPCBにつきましては、これは食品衛生法でおそらく規制がなされるものと考えておりまして、これは厚生省がいまいろいろ研究調査中の結果を待ちまして措置されるというふうに考えております。私ども先ほど申し上げましたとおり、水質汚濁防止法等によりまして環境基準ないし排出基準を設けたいということで、先ほど申し上げましたように、検定、測定の方法が確立し次第、私どもはきびしい基準を設けるということで、現在準備を進めているという段階でございます。
  23. 千葉博

    千葉政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、私のほうも、昨年六月からやっております研究は、当然厳重な環境基準に持っていきたいということで、いま鋭意研究を急いでおるわけでございます。いま環境庁のほうからもそういったお答えでございますが、私のほうも環境庁と全く同じような考え方を持っております。
  24. 近江巳記夫

    近江委員 環境基準ということをいまおっしゃったわけですが、それと同時に、私は前に科学技術特別委員会で、琵琶湖の魚が一〇ないし一五PPMで全部汚染されている、こういう事実をあげて申し上げた。そうすると、その魚はだれが食べるか、人間が食べるのですよ。そうして体内に蓄積されていく。そういう環境基準と同時に、やはり食品の中においてもアメリカがきめているようなそういう規制基準を設けるのはもう当然だと思うのです。科学技術庁はそういう環境基準だけ設ければいいんですか。厚生省に対して、もっと早くきびしく基準を設けろと勧告なり何なり当然すべきじゃないですか。どうですか。
  25. 千葉博

    千葉政府委員 私のほうから勧告をするなり何なりもっときびしく出ろというようなお話でございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、まだその実態につきましてはっきりした点が出てきておりませんので、こういった点が出てから私のほうは態度をきめたい、このように考えております。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 実態把握をしてからそういうことを言うとおっしゃっていますけれども、それじゃ母親母乳はなぜ汚染されておるのですか。母親がいろいろなものを食べて、そして母乳の中に結局出てきておるわけでしょう。いろんな食品にそれが全部入っておるわけですよ。そういうようなことで、厚生省実態調査してからやればいいんだ、そんなのんびりしたことでいいかという問題です。きょうは厚生省代表で来られているんですからね。こういう広範な汚染をされておることについてのんびりとかまえていらっしゃるのですか。実態調査に対してどういう緊急対策なり何なり考えていらっしゃるのですか。それを放置するとなれは——厚生省があるから、国民は健康やそういうことについて厚生省がおってくれるからという気持ちを持っているわけですよ。それを国民気持ちも理解せず、まあそのうちにやりますという、そういうゆっくりした気持ちでは私はよくないと思うのです。これからどうしますか。
  27. 松下廉蔵

    松下政府委員 事は、いま先生指摘のように乳児を含めました国民全体の健康の問題でございますので、厚生省といたしましても決して対策をゆうちょうな態度でやっておるというわけではございません。ただ、人体に蓄積される環境汚染物質の中でも、先生承知のように、このPCBはきわめて新しい形態のものでございまして、通常食品に直接混入する経路のない、農薬等とは違った形のものでございます。しかも脂肪に対する親和性が非常に強い。自然の循環の中で回り回って魚などを通して人体摂取されるという性格を持っておりますことと、それから先ほどから申し上げておりますように、慢性毒性に対する研究がなお進んでいない。したがって、そういう健康障害に対する診断基準等も明らかになっていない。そういういろいろな要素がございますので、私どもといたしましても、こういう国民に不安を与えておることでもあり、また一部非常に激しい害を見たわけでございますから、この環境汚染実態調査あるいは慢性毒性というようなことにつきましては、できるだけ急いで研究をしなければならぬということで研究班を組織いたしまして、鋭意できるだけ早く結果を得ますように研究を続けておるわけでございます。  ただ、いま申し上げましたようないろいろな要素がございまして、しかも蓄積毒でございます。どれくらいの量が摂取されて、半面、からだの中から排せつされるのにどのくらいの期間がかかるか。その両面から検討いたしませんと、科学的な根拠に基づく基準というものを策定することはできませんので、先ほど申し上げましたようにアメリカFDAでつくっております基準、そういうものの科学的データを至急取り寄せるということも外務省にお願いいたしておりまして、そういう資料も含めまして、あともうしばらくいたしますれば、その研究班の一部の結果が出るかと思いますので、そういった結果が出次第、暫定的な措置といたしましても順次手を打ってまいりたい、そのように考えて現在進めておる段階でございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 対策は非常に遅々としておると思うのです。それで全国的なそういう食品汚染実態を大体いつくらいまでに把握されるのですか。いろんな方法があると思いますけれども……。
  29. 松下廉蔵

    松下政府委員 現在地方に指示いたしまして幾つかの都道府県で検査をいたしておりますデータの集計は、大体四月中には出る見込みでございます。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 四月中といっても非常におそい感じがしますけれども、とにかくこれはほんとうに緊急を要する問題でありますし、アメリカもすでに六九年にはそういう規制基準を設けているわけですから、厚生省も大胆にひとつそういうことについてやってもらいたいと思うのです。それを把握した上では、大胆にやりますか。
  31. 松下廉蔵

    松下政府委員 これはもちろん国民の健康でございます。何ものにもかえがたいものでございますので、対策方向がきまり次第、これは全容が明らかになるという意味ではございませんので、一部でも行政に移し得るデータを得次第、それに従って順次できるだけの手を打ってまいりたい、そのように考えております。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 環境庁にお聞きしますが、この環境基準はいつまでになさるのですか。厚生省は四月に実態把握してきめる、こう言っているわけです。
  33. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほどお答えしたと思いますけれども、私どもまず排出基準をつくりたい。環境基準のほうは、いま厚生省でいろいろ調査しておられますデータ等をいただき、またさらに、環境汚染の経路その他につきましての調査を私どもやっておりますけれども、それらを合わせまして、多少おくれるというような状況でございます。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 それから通産省データを見ますと、鐘化が三十年からつくっておりまして、四十四年に三菱モンサントが製造に入りまして、四十四年のベースで七千七百三十トン、ところが一万一千百十トン。これだけPGBが騒がれておるのに、いま三菱モンサントもそのように製造に入ってきておる。それから数値は下がってはおりますけれども、やはり何といってもPCBをこういういろんなものに使うと——確かに用途は広いと私思いますけれども、それにかわるべき新製品の開発なり何なり全力をあげて——このPCBについてはこれだけの悪影響が出るということははっきりしておるわけですね。わかりながら、そういう技術革新なり何なりの点において力を入れているのかどうか知りませんけれども、こういう状態で放置しておっていいかということです。閉鎖系開放系とあるわけですが、この汚染源は通産省ですよ。これだけ国民心配させておいて、通産省としてはいまこれだけ製造しておりますと、ほっとくのですか、これは。化学局長
  35. 山形栄治

    山形(栄)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、PCBにつきましては昨年来、開放系につきましては原則的にこれを禁止いたしました。閉鎖系につきましても、回収絶対確実なもの以外は、これを使用禁止する方向で現在進めておるわけでございますけれどもPCBのそういうかっこうを進めるためにおきましても、代替品の開発がなされませんと、それぞれの使用分野ではこれまた困る点も出るわけでございまして、先生御存じのとおり、閉鎖系につきましては電気機器用の絶縁体として使われる用途と、それから一般の熱媒体として使われるものとがあるわけでございますけれども、この辺につきましては、すでに鉱油系の絶縁油、それから炭化水素系の合成油の開発が完了いたしております。  なお、開放系のものにつきましても、一番使われましたのは感圧紙でございますけれども、これにつきましても炭化水素系の、非塩素系の製品がすでに開発されておりまして、それに順次切りかえがなされておるわけでございますが、これらの品物は可燃性の性質を持っておりますので、今後これを不燃性にするような面での研究等もより一そう指導してまいりたい。所要の補助金等の交付等を使いまして、この辺の新しい研究につきましても十分努力いたしていきたい、こう思っておる次第でございます。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、完全に回収できるというのは何と何ですか。これは当然検討なさっているでしょう。
  37. 山形栄治

    山形(栄)政府委員 現在主として電気機器用ということで、関係部局間で検討を進めておりますけれども、大まかに言いまして、非常に大量のPCB使用する大きなトランス等であり、そのユーザーが国鉄とか電力会社とか、ユーザー自身が非常にはっきりとこの所在を確認できるようなもの、そういうものはこれを回収いたしまして、PCBをその中から抽出して、もとのメーカーに戻し、これを熱分解して完全に無害にするということができると思います。こまかい電気用品等につきましては、末端のところへいきまして数多い各家庭にも入るものでございますので、なかなか回収は困難ではないか、こう思う次第でございます。目下その辺の仕分け、その流通形態、回収の難易等につきまして検討を進めている段階でございます。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 大体いまおっしゃったそういう点を目安として、そして回収できるものについては熱分解をやっていく、できないものについてはこれはもう使わせない。これは大体いつの時点でおっしゃるのですか。これから長い将来といったって、期限があるわけです。これだけ汚染されているのですからね。それはいろいろな影響があるかもしれませんけれども汚染源は通産省のあなたのところなんですから、その点はどうですか。
  39. 山形栄治

    山形(栄)政府委員 現在の段階におきましては、四月中にも一つの方向を出したいと思っておりますけれども、何ぶんにも小さなコンデンサー、トランス等につきましては、設計の変更等、メーカー側におきましても工程の変更をしなければいかぬ問題がございますし、ユーザー側におきましても、これをそれぞれ設置いたしますときの仕様の変更等が必要でございます。その辺の全体の感じを含めまして、若干の経過期間というものは必要だと思いますけれども方向の決定は四月中にも行ないたい、こう思っておる次第でございます。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 かなり前向きの御発言をされたと思いますが、それはそのようにいろいろ現在使われておる。それをやっていこうと思えば、勇気も要ります。要りますけれども、事がこれは人体にかかわることでありますから、佐藤さんがよくおっしゃっておりますが、勇断をもってやってもらいたいと思うのです。  きょうは副大臣の立場にいらっしゃる次官も来ていらっしゃるわけですから、私は次官の強い決意をひとつお聞きしたいと思うのです。
  41. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)政府委員 御指摘の点については局長並びに各省がお答えいたしておりますが、今後は最も安全性の高い代替品等々について、開発等に全力をあげてまいりたい、こういうように考えております。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 いずれにしてもこの問題は深刻な問題でございます。人体に蓄積されていくということで、カネミライスオイルのようなああいうことにもなるわけであります。ましてや乳幼児、子供は抵抗力も少ないし、そういう点が非常に心配であります。何らそういう追跡調査も行なわれておらない。これはほんとう政府一丸となって真剣にこの問題について今後対処をしていただきたいと思うのです。  それで、もう間もなく大臣来られると思いますので、私はまた大臣に御質問しますが、あとまた吉田委員にかわりたいと思いますが、それまで若干時間をいただいて、中小企業の問題をちょっとだけお聞きしたいと思います。きょうは長官も来ていらっしゃるわけですので、お聞きいたします。  昨年は年度末対策というものをやったわけです。政府も初めて、わずかではあったけれども、ああいう年度末の対策もとったということで、われわれとしてはそれなりの評価はしておったわけです。御承知のように一昨年からのああした不況が続きまして、そこへもってきて政府間協定あるいはドル・ショック、円の切り上げ、そういうことで中小企業がもろにその波をかぶっておるわけです。そういう点で、長官も現況についてはいろいろ把握されておると思います。ただ倒産が昨年に比べてちょっと少ないじゃないかとか、かなり資金が回っておるとか、そういうことをおっしゃっておるわけですが、不景気の中で、設備投資一つを見てもなかなか遅々として進んでおりませんし、全体の景気がとまっておる、沈んでおるわけです。そういうことで、もうほんとうに三すくみのような状態じゃないかと私は思うのです。企業においても非常に活気がございませんし、そういうことでどうにか食いつないでおる。まあことばは悪いですが、そういう現状にあるのじゃないか。そういうことで、倒産というような線においても細々とつないでおる、こういう状況じゃないかと思うのです。ところが今後いろんなことをやっていきたいと思っても、現実にはなかなか資金ワクが少ないとか選別融資をやっておる、歩積み両建てをやっておる。まだまだそういうような悪例がたくさんあるわけです。中村委員もこの間予算委員会でやりましたけれども、そのとき歩積み両建てのことも政府から報告があったわけですが、現実に私たちが地方におってもいろんなそういうことを聞くわけです。そういうことを考えていきますと、ただ倒産が昨年に比べてちょっと少ないからとか、そういうような理由で——もう年度末が、ほとんど終わりにきておるわけです。そういう点においても、何回も私ら申し上げておるわけですが、やはり昨年もあれだけのルートを一つつけたわけですから、意欲を持って政府としてやるのが当然じゃないかと私は思うのです。その点、長官としてはどのようにお考えですか。
  43. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 お話のように、倒産件数は確かに前年同期に比べまして、数の上では減っておりますけれども、中小企業の収益性というものを考えますと、決して楽観を許さないものがあると思いますし、例年三月、四月というのは倒産の多い時期でもありますし、私たちとしては非常に注意をしながら事態を見守っておるということでありまして、決して楽観などいたしておりません。  いまお話のございました年度末金融のことにつきましては、全般的に申しますと、金融緩和によりまして相当程度お金は借りやすくなっているということは申すことができますけれども、しかし、こういうような景気の低迷下におきましては、やはり滞貨減産資金のような民間金融機関からはなかなか借りにくい資金需要が非常に根強いものがあるということも事実であると思います。昨年度と四十六年度との違いは、数回にわたりまして三機関の貸し出しワクにつきまして追加措置を講じてまいりまして、中小企業の資金需要に応ずることができるように努力をしてきたつもりでございます。それから、信用補完面におきましても保険の引き受け限度額を思い切って大きくいたしております。しかし、年度末において、特に小規模零細企業に対する融資を行ないます国民金融公庫を中心としまして資金需要の強いのは事実でございますので、中小企業庁といたしましては、国民金融公庫を中心としまして貸し出しワクの所要の追加をぜひ行ないたいという方向で連日財政当局と折衝を進めておりますので、何とかして近々、しかも年度末の金融として間に合うように結論を得たいということで努力をいたしておるところでございます。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 折衝中ということでございますが、長官、御承知のようにきょうはもう十七日ですね、四月に近づいておるわけです。そういう点で、いま国民金融公庫を中心としてという御答弁でございましたが、長官の腹づもりとして、決定ではないにしても、長官としては、大体このくらいの額については財政当局と交渉してひとつ何とか出資したいという腹づもりを持っていらっしゃると私は思うのです。それについてはどうでございましょう。
  45. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 貸し出し規模の増加につきましては百二、三十億円はぜひ実現できるようにしたいということで折衝いたしておるわけでございます。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 この百二十億というような額も、全国のそうした需要に比べますとわずかだと思うのです、水をさすわけじゃございませんが。そういうことでさらに積極的に上のせをできるようにがんばっていただきたいと思うのです。私たちも応援できる面があれば全力をあげてまたやっていきたいと思いますし、ぜひともこれを確保して、さらに上のせをしてやっていただきたい。特にこの点要望しておきます。  それからあと一、二点申し上げたいと思いますが、この中小企業基本法の改正につきまして、前からも申し上げておるのですが、この点についてどこまで作業が進み、今後の見通しについて一つはお聞きしたい。  それから中小企業者の定義の改正ですね。当然その中味に入ってくると思うのですが、これについてはどうですか。まず、この二点お聞きしたいと思います。
  47. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 基本法の改正問題と定義の改定問題についてのお尋ねでございますが、中小企業政策審議会に企画小委員会というのがございます。ここで昨年の十一月に第一回の会合を持っていただきまして、今日までに専門委員会六回開催をいたしまして、七〇年代の中小企業政策のあり方について審議をしていただいておるわけでございまして、めどといたしましては、本年六月末ごろまでに中間答申をいただきたいと思っております。その上で私たちの中小企業政策の基本方針を定めることにいたしたいと思います。そういう討議の過程におきまして、基本法の改正問題あるいは中小企業関連法規の改正問題、またその一環として中小企業の範囲をどう見るかということがいろいろ討議され、結論が得られるものと考えておる次第でございますが、いずれにいたしましても、いま中小企業政策のあり方全般について討議をお願いしておる。もちろん私たち事務的にいろいろな資料の提供あるいは討議についての助言というふうなことについてせっかく努力をいたしておる状況でございます。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 六月に答申が出るわけでありますが、そうしますと、法案の改正は次の通常国会にお出しになるわけですか。
  49. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いま総括的な討議をしていただいておりますので、基本法そのものの改正とかあるいはいろいろな関連法規の改正をどの程度まで行なうかというようなことについては、まだはっきりしためどは立っておりませんけれども、いずれにしましても、中小企業政策全般についての討議ということについて、中間的にでも一応の結論を六月末までに得ていただきたいということで、いま申し上げましたように私たちもいろいろ作業に参画しておる次第でございます。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 六月に答申が出るわけですから、それから政府部内で作業を進めてやれば期間的には次の通常国会までには十分時間があるわけですよ。長官としては、それがまとまり次第政府部内で検討を終えて通常国会には出したい、こう思っていらっしゃるのですか。やはり何といっても最高責任者の意思というものが大きく作用するものですよ。これはわれわれだけではない、与党の皆さんもおっしゃっておるわけですよ。これを改正するのは中小企業者にとって時代の趨勢であります。時代におくれたそういう硬直したような、慎重さというよりもそれであってはならぬと思うのです。当然改正しなければならぬことは山ほどあるわけですから、めどをやはりある程度おっしゃっていただかないと、答申は出たけれどもほうりっぱなしか、そういうことではよくないと思うのです。その点もう少しはっきりした意思を持って御答弁を願いたい。
  51. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 おそらく非常にむずかしいさまざまの問題が提起され、またそれにどう対処していくかということで中間答申の中身もいろいろな問題を含んだものになろうかと思いますが、中間答申をいただきました場合には、私といたしましては、法改正を必要とする場合、これは通常国会を目途にいたしたい。これは私の考えでございますが、先ほど来るる申し上げておりますように、いま審議会の作業はまだ総括的な段階でございますので、その進捗状況もよく見させていただきたい、こう思います。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 吉田委員がおりますのであと一点だけお聞きしますが、世の中が非常にスピードを持って動いておる。また、すべての企業の形態にしても多種多様化してきておるそういう中、また国際化というような波、いろんなことを考えますと、私は実態把握にしろ、そうした情勢把握にしろ、いまは確かに商工会議所なり商工会とかいろいろな手はあるとは思うのですけれども、一つのテーマを与えて、それから調査をもらうということでは、私はスピードが非常におそいと思うのです。したがって、当然中小企業庁の中なり政府全体の中でもけっこうですから、中小企業をほんとうに重視されるならば、中小企業の動向の把握のための調査機関の確立ということが私は一番大事じゃないかと思うのです。この点、長官としては設立していかれる決意がおありかどうか、この点についてお聞きしたいと思うのです。
  53. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いかなる政策を立てるかということにつきましては、実態を把握するということが一番大切なことであるという認識に立って毎日やっておるつもりでございまして、中小企業庁の部内におきましてもいろいろと調査活動を行ない、一例といたしましては、先般のいわゆるドル・ショックの対策としまして、主要輸出産地につきまして動向調査を今日までずっとやっておりまして、これによって産地の実態というものも従来以上に解明されてきておると思いますが、このほかに通産局、都道府県あるいは中小企業団体からの情報を総合いたしましていろいろなデータを整備し、またその中身についていろいろ分析を加えておるところでございます。それから、御指摘のように民間のいろんな専門機関の調査結果というものも十分活用しているつもりでございますが、こういうようないわゆる現在の組織でやっておりますことと、民間のそういう調査機関の調査結果というものを総合して中小企業の実態についての把握につとめてまいりますことが一番現実的であろうと思いまして、かりに専門の独自の機関を設けまして、これを全国の都道府県なり市町村に人員を配置してまで措置をとるということはいかがかと考えられますので、極力現在の機構を存分に活用して調査の万全を期していきたいと考えております。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。  あとは大臣が来てからにします。
  55. 鴨田宗一

    鴨田委員長 吉田泰造君。
  56. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 田中通産大臣並びに経企庁長官がお見えになるまで……。  いま近江委員の質問の中で、たしかおととしの当委員会だったと思うのですが、私は公害のことで要求したことがあるのです。いま通産省環境庁厚生省答弁を聞いておっても、非常に隔靴掻痒といいますか、もどかしさを感ずる点が一つだけあるのです。そのことは、科学的根拠に基づいてとかあるいは被害の実態を見てとかいろいろな話がございますが、その中で、日本の戦後二十数年間の流れというものは、私は合成化学は非常な発達をしたけれども分析化学は発達してないと思うのです。そう言っては分析化学の学者におこられるかもしれませんけれどもほんとうはそういう実態があると思うのです。したがって、論拠を出す場合、科学的な根拠と一言で言ってしまいますが、私がおととし言ったのは、公害を撲滅するのはいま目前のことではない、もう少し十年くらいのロングランでまず分析化学、基礎化学を興しなさい、そういう提案をおととしした記憶がございます。ところがその後の各委員会の議論を見てみましても、科学的な根拠というそのことが私は非常にあやふやであると思うのです。きょうちょうど科学技術庁調整局長がお見えでございますが、ちょっと時間の予定があるかもしれませんがお残りいただいたのは、実はそういう発想で、はたして政府は真剣に少し長い形で分析化学の振興を考えているかどうか。非常にいまの公害対策に間に合わないみたいな感じですが、ほんとうはそれをしなければ公害論争にはならないと思います。そういう意味で、たとえていいますと、科学技術庁はどういうことを考えていかなる手を打ってきたか、はたしてそれにふさわしいような研究者がいるのか、その科学的根拠を攻撃するだけの材料があるのかどうか、どうしようとしているのか、ひとつ調整局長からまず御答弁をいただきたいと思います。
  57. 千葉博

    千葉政府委員 ただいま非常に重大なポイントを御指摘していただきまして、実は私どもこの分析の問題、特に最近起こっております公害で、いま御質問のありましたPCB、これを例にとりまして申し上げますと、先生の御指摘のとおりこの分析技術が確立しておりません。したがいまして、たとえば先ほどいろいろ問題となっております母乳の中のPCBの含有率でございますが、こういった点につきましても実際のところはその分析技術ほんとうに確立しているかという点になりますと、非常に問題があるかと思います。それ以外に私ども、いま盛んに公害の一つとしてこれから問題となります光化学スモッグの問題、さらに最近いろいろな微小物質につきましての慢性毒性の問題がございますが、こういったものの分析につきましては、御指摘のとおりまだ明確に確立しておらぬ。公害問題の分析の一番基礎が科学的、技術的な原因究明にあるという点からいたしますと、この分析が確立しなければ、とてももとが狂っておるのでどうしようもないのじゃないかという御指摘はもっともだと私どもいま考えておりまして、私どももいま分析関係の学者を糾合をいたしまして、たとえばPCBにつきましては、厚生省の衛生試験所の所長さんを中心といたしまして八名ばかりの学者を集めて、いま分析の確立をはかっておりますけれども、いろいろな公害問題の全体の分野分析、これにつきまして私どもとしましても特に環境問題につきましては環境庁に権限をいろいろ移管いたしましたけれども、これは各省庁みんな関係しておりますので、今後もまず分析を確立する、そしてそれを中心として汚染実態の機構、メカニズムを究明していく、さらにそのあとの対策が出てくるといったようなことを、私どもの立場といたしましては、科学技術的な面から総合的に、やはり先生のおっしゃるような分析の点は、いままでもうやってきておりますけれども、さらに一段と力を入れまして、そういった基礎を確立しながら——それだけやっておりますとまた対策その他のことはできませんので、その応用のほうももちろんやるといたしまして、私どもといたしましても、その前段階のそういった分析を中心とした基礎技術の開発と、それから先生いま人的にもないのじゃないかというような御指摘でございましたけれども、これにつきましては、相当な人材がおりますので、こういった方々を糾合いたしまして、私ども鋭意これを推進していきたい、かように考えておりまして、これのための資金の面では、私のほうは御案内のとおり特別研究につきましての促進調整費というのを持っておりますので、これを十二分に活用し、さらにまた、科学技術庁の調整権限がございますので、各省庁の予算の見積もり方針の調整などにこういったような権限を使いまして進めていきたい、かように考えております。
  58. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いま調整局長から御答弁をいただきました。大臣が来られなくても私ちょっと一言だけ触れてみたいと思うのですが、これは政府自体がほんとうは思い切ったことをやらないことには、いまたとえば科学的根拠という根拠についても、非常にあやふやな議論である。また千葉さんは、いま学者はたくさんおると言いますが、日本の現状の大学のたとえば理化学系統で分析化学に携わっておる人は——私と千葉さんとは認識がだいぶ違うと思いますね。私は非常に少ないと見ておるのです。それは具体的な数字を、きょう突然質問しておりますので、あなたからお答えをいただとうとは思っておりません。これはもう少し研究してみてください。日本の分析化学者というのは非常に少ないはずです。だから、そういう認識は、ちょっと私と違っていると思います。いまここで調整局長に思いつきで申し上げたのじゃないのです。たとえていいますと、イギリスがロンドンのスモッグを直そうというときに、一番先に何をやったかというと、第一項目が、十年間で分析化学者を育てよう。決して遠回りじゃないのです。この公害戦争というのは、非常に長期に、ロングランに起こるものです。したがって、いま出ている数字は、マスコミでも何でも私はある意味ではきわめて無責任だと思うのです。知らなくて議論をしておる。そこに、公害が糊塗策になっていかざるを得ない。各局長の御答弁を聞いておりますと、みんなおざなりな意見です。だれでも答弁できるような答弁しか出てこない。もう少し長い目で、政府が腹をきめて、思い切った金をかけてやらなければ、私はこの公害戦争には勝ち目がないと思います。母親母乳を見ても、いろいろトップ記事として出てくる。しかし、それをどうするかという議論、それをもう少し掘り下げていかないと——おととしくらい、私は言ったのです。公害論争、そんなことをする前に、思い切って予算を組んで、分析化学者を育てたらどうなんだと言ってみても、ただ言いっぱなしで終わっております。きょうの同僚委員の質問を聞きながら、どうしてもこれだけは、技術者の養成というのは科学技術庁がやるのでしょうから、ほんとうは思い切って——企業を育成するというような形のいわゆる科学振興ではなくて、ほんとうに真剣に、人間の命に関係してくるのですから、思い切ってやってもらいたいという要望をして、調整局長、時間外で残ってもらいましたので、どうぞお引き取りいただきたいと思います。
  59. 千葉博

    千葉政府委員 きわめて重要な点を御指摘でありまして、特に分析学者でございますが、これにつきましては、まあ私は非常に一面的に見ましたわけで、全体的に見ると非常に足らないかもしれませんので、その点よく調査いたしまして、今後こういった人間の養成あたりから、私のほうも十分にひとつ調査し、これの対策を立ててまいりたい、かように考えております。
  60. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまのは公害問題でちょっと、おととしくらいから私が唱え続けておりますので、それを再確認の意味で、ちょうど科学技術庁千葉局長がお見えになっておられましたので、留意をしていただきたいという御要望を申し上げました。  大臣がお見えになるまで二、三の質問をさせていただきたいと思います。  まず、通産省参事官に景気のことでちょっとお伺いしたいのです。これは非常にむずかしい問題だと思うのです。私らも非常に不勉強でよくわからないのですが、現在のいわゆる景気の見通しといいますか、そのことについて、評論家、学者、政府筋非常にまちまちに、特に疑心暗鬼にいろいろな論評を加えておるようでございます。この場で私聞きたいのは、まず具体的に、第六次公定歩合の引き下げの談話を両角次官がつい数日前に発表なさいましたね。これははたして通産省としては公定レートを引き下げるほうが望ましいと考えておるのか。日銀は反対しているようでございますが、どういう意図があって談話の発表を行なったのか、いかなる意図があったのか、やろうとしているのか、まずその点から御答弁いただきたいと思います。
  61. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいま吉田先生から、公定歩合の問題につきまして先般新聞に出た両角次官の第六次の引き下げが必要ではないかという談話につきまして、通産省意見はどうかということで御質問がございましたが、四十五年の十月以降五回にわたりまして公定歩合が引き下げられ、現在四・七五%になっておるわけでございますが、しかし、公定歩合につきましては、諸外国と比較いたしますと、西ドイツは先月たしか三%になっておりますし、またそれ以外でも、アメリカは四・五%ということで、さらに日本の公定歩合を引き下げる必要があるのではないかということが一つ。それからもう一つは、どうも景気の回復が思わしくない、景気を回復するためにはやはり産業の金利負担をできるだけ低める、このためには実効貸し出し金利を引き下げる必要がある。現在、公定歩合と実効貸し出し金利との間の関係は、いわゆる都銀の日銀借り入れがほとんどなくなっておりますので、これが直ちに連動して引き下がることにはなりませんが、しかし、公定歩合を下げることによりましてやはり実効金利の引き下げを促進いたしたい、これによりまして結果的には景気の回復のための振興策をやりたい、こういうことでございます。ただ、公定歩合の引き下げにつきましては、御存じのごとく預金金利あるいは郵便貯金の金利とかいろいろ複雑な問題がございますので、簡単に結論を出すわけにはいきません。現在大蔵省のほうともいろいろ相談いたしておりますが、通産省といたしましては、先ほど申し上げましたように、国際的に見て日本の公定歩合はまだ高いのではないかという点が一点、それからもう一つは、景気の振興のために実効金利を引き下げる、そのために公定歩合の引き下げを考えたらどうかということで、現在大蔵省にも検討を依頼し、またいろいろ打ち合わせをいたしておる、そういうことでございます。その途中の段階で新聞に出たということでございます。
  62. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 これは田中通産大臣が来られても再度その意向を確認してちょっと聞きたいと思いますが、通産省としては公定レートを引き下げるといいますか、そのプロセスで漏れたと言いますが、大蔵省との詰めの段階で近い将来にやろうとしているのかということですね、第一点は。もう一つは、これは通産省の増田参事官にお伺いしたいのですが、いわゆる景気回復の予想が、だいぶん政府の四十七年度の予算の編成当時から変わってきているように思うのです。言うなれば、政府の予測に誤りがあったのではないかという気がするのです。四十七年度の予算案を編成するにあたって景気回復のパターンをどのようにとらえておったか。その二点についてお伺いいたします。
  63. 増田実

    ○増田(実)政府委員 お答え申し上げます。四十七年度の経済見通しにつきましては、これは経済企画庁から、一月の二十八日に閣議決定されました一応の景気の見通しが出ておるわけでございまして、これにつきましては、当然通産省もいろいろこの経済見通しにつきましては十分相談してつくったものでございますが、その考え方といたしましては、景気の回復が大体秋ごろに徐々に出てくるんではないかということで、沖繩の分を除きましては、GNPの実質成長率が七・二%、ただし、これにつきましては、やはり上期はなおも不況が続く、しかし、秋ごろから相当戻ってくるんではないか、こういうことで見通しを立てておるわけでございます。通産省の考え方もまた経済企画庁の考え方も、ここで一致いたしておるわけでございます。ただ、その後のファクターを見ますと、輸出につきましてはもう少し落ちるんではないかと思っておりましたのが、輸出につきましてはなお、たとえば認証ベースでは前年度同月比二二、三%アップということで、当初私どもが見ておりましたよりは輸出は落ち込んでおらないというようないろんなファクターは出ておりますが、しかし、大勢的な考え方といたしましては、先ほど申し上げました四十七年度についてGNP実質成長率七・二%、それから景気の回復が大体秋ごろだということについては現在も変わっておりません。それにつきましては、別に変わった考えを持たなければならないというふうには考えておりません。
  64. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 通産省に対してはもう一回あらためてお伺いいたします。  新田調整局長お見えになっておられますね。——経済企画庁は、いまの参事官の、いわゆる四十七年度の景気回復のパターン、同じようなお考えかどうか、再度、確認のためにひとつ御答弁願います。
  65. 新田庚一

    ○新田政府委員 経済企画庁といたしましても、ただいま増田参事官からの説明と同じでございます。  御承知のように、現在非常に景気がなお停滞基調にございます。まあ、官公需が少し出てまいっておりますけれども、設備投資を中心にして、総需要が依然として停滞しておる。経済指標にはまだはっきりした回復のきざしは出ておりませんが、今後の経済の動きにつきましては、経済見通しを私ども作成した当時と考え方を変えておらないわけでございます。  これからの筋道としましては、やはり輸出は依然としてドルベースでは高水準ではございますけれども、円の手取りベースとしてはやはり今後鈍化していくだろう、しかし一方官公需、これが今年度補正の関係、それから来年度の積極財政によって相当需要としてついてまいる、そういったものを背景にしまして、一番いま落ち込みのひどい在庫投資、これが一昨年の春あたりの水準の四分の一くらいに落ちておると推定されますが、これが回復に向かう、そういったこと、それから設備投資の中でも非製造業の設備投資というものがかなり強い、製造業に比べればかなり強いというふうな基調にささえられまして、本年度の、四十七年度前半については急激な景気の回復は見込めませんけれども、年度後半に入りました場合に、かなり経済環境が変わってまいるのではないか、そういったものを背景といたしまして、製造業設備投資も弱いながらも逐次回復してくる、そういうふうな路線を描いておりまして、年度としては、先ほど説明のありましたように、実質七・二%の成長率ということを変える必要はないというふうに考えております。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
  66. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 その景気回復の、いまの通産省並びに経済企画庁の見通しとはやや意見が違うのですが、それはあとで大臣もお見えになってやりたいと思います。  ただ、もう一点、その前に新田調整局長にお伺いしたいのですが、この経済見通しの中で、民間設備投資二・七%、製造業、非製造業入れてですね。これを具体的に、まずこの内訳を聞きたいのであります。現状、これさえも危惧があるのではないか、これでどうなのか、この二点だけ、具体的な質問としてお答えいただきたいと思います。
  67. 新田庚一

    ○新田政府委員 ただいま申し上げましたように、設備投資の中で製造業と非製造業の動き方が、過去の不況期と違いまして非常に違った、対照的な動きを示しておるわけでございますが、来年度の設備投資二・七%という見通しは、その他の需要項目とのバランスを考えましてマクロ的にはじいたもので、厳密な積み上げをやっておりませんけれども、一応の試算としましては、非製造業の設備投資が九%ぐらいふえるのじゃないか。それから、製造業のマイナスが——本年度に引き続いてマイナスになると思いますが、マイナスが八%ぐらいのマイナスというふうな感じでつくっております。  なお、本年度、四十六年度は、これは製造業の落ち込みが激しいわけでございますが、製造業の設備投資はおそらく一〇%をこえるマイナスになっておると思われます、これは推定でございますが。それから、非製造業は一方、八%くらいのプラスになっておる、そういうふうなことで来年度の推定をしておる次第でございます。
  68. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 最近の日銀調査によりますと、四十七年度の企業の設備投資意欲が非常に低下していますね。製造業では前年度比一一・一%減、開銀調査でも三・四%ぐらいの減。したがって、経済企画庁がこの四十七年度予算を立案なさったその景気回復のパターンと、現実的にだいぶ違ってくるのじゃないか。われわれの受ける印象では、いま通産省並びに経済企画庁ともに、予算編成当時の想定とは変わっていないという議論ですが、私は案外この付近で政府が非常に認識の誤りがあるのじゃないか、予算編成当時はおそらく、一−三月非常に不況で、秋ごろには回復するというような想定があったと思うのです。最近の各調査によりますと、具体的にそういう政府の考えておられるような徴候は出ていない。むしろ秋ごろになっても、あるいはほんとうの底入れ期になるのじゃないか、後半になっても景気が回復しないのじゃないか。極端な悲観論者は、もうことし一ぱい景気が回復しないのじゃないかというようなことも出ておりますね。それは各界で出ておることは御承知のとおりだと思います。そういう状況がありながら、なおかつ、四十七年度の予算編成当時と変わっていないという論拠はどこにあるかということです。  もう一つは、今回の不況の特色を聞きたいのです。それを聞かなければ、いま全然変わってないじゃないか、われわれが予算編成当時の景気回復パターンと同じような考え方でいけるのだという論拠が出てこないと思うのです。今回の不況は、四十一年の不況なんかとは非常に異質だと私は思うのです。したがって、もう一回、再度、どう思われるかということと、もう一つは、今回の不況の特色をどういうようにとらえておるか。そのとらえ方によって、私は、景気回復のあり方の考え方が変わってくると思うのです。この二点について、通産、経企両省庁からお伺いしたいと思います。
  69. 新田庚一

    ○新田政府委員 第一点の民間の設備投資調査の見方の問題でございますが、一般的に毎年の二月現在の調査というものはいつも非常に低目に出る傾向がございます。特に景気停滞期には低目に出る。これは、企業としてはっきりした年度計画をつくるのは大体四月から五月ころに入ってやりますので、こういう時期には非常に控え目につくるというふうなくせがございます。そういった点が一つございます。  それから開銀にしろ日銀の短期観測にしろ、大体二、三%のマイナスになっております。その内訳を見ますと、非製造業はやはり一〇%内外の強い数字になっておりますが、製造業の見方がどう見るかということだと思います。大体最近出ましたアンケート調査の対象企業は大企業でございまして、これが第二点の問題につながるわけでございますが、非常に設備の過剰に苦しんでおる業種が多いわけでございます。それで私ども一〇%未満のマイナス、アンケート調査では一〇%以上のマイナス、そこら辺が全体としての伸びに影響しているわけでございます。私どもとしましてはやはり弱いと思います。製造業の設備投資は非常に弱い。けれども、最近の機械受注その他を見まして、その中身を見ますと、製造業の機械受注、これは半年の先行性があるわけでございますが、この四カ月ほどプラスになっているという面もござ  います。   〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕 そういったことで、やはり設備増強につながらない合理化投資とかあるいは公害関連投資とかいうもので、弱いながらも上昇カーブというものは期待できるのではないか、そういうふうに見ているわけでございます。  第二点の問題の今回の不況の特色、確かに先生おっしゃいますように、過去の不況のように在庫投資あるいは設備投資の単なる景気循環的な問題ではなくて、やはり技術革新がある程度一段落したというふうな問題、それから過去五年間に年率二四%程度の設備投資を続けて、そしてそれがかなりの設備圧力になっておるというふうなこと、したがいまして、最近企業収益の落ち方がこの前の四十年の不況時よりももっと大きいというふうなことになっておるわけでございまして、設備投資、特に製造業の設備投資というものが、過去の不況のように簡単に一年くらいですぐ急上昇するというふうなかっこうに私どもは見ておらないわけでございます。したがいまして、年度の経済見通しとしても、二・七%という過去の見通しにないような非常に低い見通しの数字を立てておるわけでございまして、私どもとしましてはそういうふうな認識で経済見通しをつくっておる次第でございます。
  70. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいま新田局長が答えましたと大体同じようなことになるかと思いますが、第一点につきましては、確かに吉田先生指摘のように、たとえば開銀の調査あるいは日銀の調査をとりましても、きわめて設備投資の先行きが暗い数字が出ておるわけでございます。民間設備投資につきましては、たとえば四十五年あるいは四十四年、四十三年、この過去の各年の伸び率を見ましても非常に高い。ことに四十三年、四十四年は二五%以上の設備投資の伸び率であったわけでございます。それが四十七年度につきましては、製造業、非製造業両方合わせましてわずか二%という見通しを立てまして、それにもかかわらず全部でGNPの実質成長率七・二%という見込みがしてあります。ですから吉田先生指摘のように非常に設備投資が暗い、設備投資の回復がおくれるのではないかということにつきましては、その数字を見込んで一応先の見通しを立てておるということでございます。  それから第二点につきまして、特徴と申しますか、大臣来られましたので簡単に申し上げますが、従来の不況ですと、たとえば輸出あるいは設備投資が起動力になりまして不況の回復が行なわれるわけでございます。レートの切り上げ、設備投資が、先ほど申しましたように完全に民間では冷却化しておるということで、不況の回復は、従来のパターンと違いまして、やはり公共投資それから民間の個人消費というものが戻らない限りは、なかなか景気が回復いたさないということでございます。そういうことを全部考慮に入れまして、秋ごろには何とか回復のほうに向かうであろうということで、先ほど申し上げましたような見通しを立てておるわけでございます。
  71. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 ちょうど田中通産大臣がお見えになりましたので、経済企画庁並びに通産省の増田参事官に、いろいろ四十七年度の経済企画庁が立案をいたしました予算編成当時の景気回復のパターンの考え方を聞きまして、その後の数字を見まして、いわゆる秋ごろには景気回復になるだろうという想定が、政府の見通しの甘さで大きくくずれたのではないかということの質問をしておったのです。  これは大臣見解をお伺いしたいのですが、いま非常に景気のいわゆる悲観ムードが出ております。秋ごろには回復しないのじゃないか。もっと先、ことし一ぱい回復しないのじゃないか。現状の日銀の調査なりいまのその数字のとらえ方で云々することは当たらぬという新田調整局長の御答弁がありましたが、通産大臣としてはどういうふうにこの景気回復のパターンをとらえておられるか。四十七年度の予算を編成した当時の政府の考え方と現状とちっとも変わっていないか、誤まりがなかったかどうか、そのことについてお答えを願いたいと思います。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 私は比較的積極論者でございますので、景気浮揚をはかろうとするときには、七%の景気浮揚をはかるならば一〇%の施策を行なって、そして景気浮揚の見通しがついたならば締めればいいんだという考え方の論者でございます。しかし、健全な考え方を持つ方々は、まずこれでできるだろうと思うところでやってみて、だめであったらもう少し追加補正をすればいいじゃないかということでございます。ここらをちょうど調和して、足して二で割ったようなところが今度の予算だと思いまして、私はそれなりに考え方は本筋だと思います。  しかし予算は、もうすでに三月の半ばを越したわけでございますし、年度内になかなか通過をさしていただけないのじゃないかということで、これが一カ月くらいおくれたらどのくらいになるのだということでいろいろ計算をしてみると、予算の一〇%分くらい影響するかもしれぬ、こういう説もあります。四−六月でもって公共投資の八〇%から九〇%くらい投資をするという考え方であれば、私はそうも考えないでいいんじゃないかということも考えておりますが、しかしやはりおくれても、なかなか当初考えたよりも景気浮揚の速度が高いとは言い得ないと思います。七・二%年率といいますと——いま四%から五%台だと思います。実勢は四十六年度は三%台であったと思うのです。そこへ輸出が少しよかったので、その分を加えると四・五%くらいになるのじゃないか、もう少しいくかもしれませんということでございますが、そうすれば、いま大体五%台、七・二%年率平均やるには、十−十二、一−三月は一〇%台にならないと、七・二から七・五にならぬわけでありますから、よほど施策をやらなければいかぬと思います。ですから私は、施策いかんによっては七・二%、七・五%確保できないとは考えておりませんが、相当な努力を必要とする。ですから先ほど言ったように、四−六月でもって、予算が通ったから一ぺんに公共投資を出してしまうというくらいな措置を行なう必要があるだろう、こう思います。
  73. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 景気論争というのは短い時間でなかなか——それぞれの主観が入りますので、私の考え方としては、政府の四十七年度の予算を編成した当時の現状では少し判断に誤りがあったのではなかろうか、こういう気がして議論をしておるわけです。その議論はさて譲りまして、公共投資を含めて大胆な調整を行なうという大臣の御答弁ですが、通産省として、四十七年度の民間産業のリーディングセクターとして過去家電とか自動車、そういうものが非常に産業界をリードしてきた。この前、次官の、たしか両角さんの発言だったと思うのですが、住宅産業をとらえてみたいというような談話が出ておったように記憶しているのですが、通産省がお考えになって、新しく積極的に取り組んでいこうとしているような産業界の育成といいますか、そういうものはございますか。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 家電製品や自動車というほど強力な影響力を持つものはいまちょっと見当たらぬと思います。しかし、これからやるとすれば住宅産業も一つでございます。この住宅産業などもいまのように量的拡大ばかりではなく、これは規格的に質を拡大していく。四階十一メートルの軒高というようなものをやっていけば、それに適合するファーニチャーができたりいろいろなものができますから、そういうところでは台所製品がほとんど規格製品化される。これは西ドイツ等が戦後やったことでありますので、住宅産業が重点産業にならない、牽引力にならないということはないと思うのです。また今度の予算でもこれからいよいよ本格的にやろうとしている電子計算機産業、それから飛行機産業——飛行機産業は特にYXを中断しておりますからまことに遺憾でございますが、そういうものは牽引力にはなる。もう一つ考えて、十月一日発足はおそかったなと思っておるのが、これから五年、十年間のリーディング産業的な役目をやるのが工業再配置だと思うのです。これをやらないと、公共投資が先行してもその上に、みんな設備過剰の状態でありまして、設備投資がわき起こってこない。公害問題や過度集中ということの対応策として出しておるこの工業再配置は牽引力にはなる、こういう考えでございます。
  75. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの大臣の御答弁で幾つかの業種、たとえば住宅産業あるいは電算機の産業、そういうものが出ましたけれども通産省自体としていま具体的に計画を立てて、たとえば住宅産業が話題になったように、これはいろいろな非常にむずかしい要素があると思うのですが、両角次官が前に発表なさいましたようなそういう考え方が具体的にあるかどうか。大臣、これは具体論としてはあるのですか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 いまの電子計算機は具体的に軌道に乗っておるわけでございますし、制度も発足したわけでありますが、しかし自動車のように爆発的に、また家電製品が爆発的な状態で大きくなったというようなものは、いま経済自体が沈滞をしておるときでありますのでそれはむずかしいと思います。また、テレビなどは大量免許をやったために十五年間で九十万台から二千九百万台に一ぺんに上がった、そういう大きなものはないわけであります。ただ鉄道の新幹線九千キロ六十年までとか、そういう計画というものは各省にもございますし、通産省では、いまちょっとつかむと住宅産業ということで、事務当局は非常に研究しております。また研究もさせております。これから転換しなければならないものもありますので、私も入って、そういうものに対しては早急に各省と連絡をとりながら一つの案をまとめたい、こう思います。
  77. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 結局、通産行政として相当思い切った景気浮揚策、公共投資だけではなくて、産業界自体もそのことを真剣に御検討をお願い申し上げたいと思います。  次に、あまり時間がありませんし、大臣答弁時間が限られておりますが、この席で通産大臣に輸出入政策のドル対策、これを通産省として具体的に——非常に広範な問題にわたりますが、このままほっておいたらいけないということは自明の理でございますので、具体的なドル対策通産省がお持ちかどうか。大蔵省ベースじゃなくて通産省がドル対策をどのように考えておられるか。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、生産をとめなければならない、輸出は罪悪であるというような考えには全く反対であります。生産は伸ばさなければならない、輸出は伸ばさなければならない。これは輸出立国である日本が、輸出が伸びないで国民所得が上がるはずもありませんし、公害投資ができるはずもありませんし、社会保障が確保できるはずがない。そういう意味でこれはやらなければならない。しかし、やっておってかせいだ金をため込んでおる、定期預金をしておるという考えでは外圧に耐え切れるものではない、こう思いますので、よく働き、よく投資をするという意味で、海外からの圧力を待つまでもなく、やはり開発途上国に対する援助は拡大していくべきだと思います。  同時に、やはりこれは日本の長期的な輸出輸入、原材料輸入というものとのバランスをとって、有機的なつながりを持つような計画的投資を行なうことだと思います。  もう一つは、チュメニなど取り上げれば十億ドルというものもございます。そういう意味で相当大きなプロジェクトに踏み切るべきだというふうに考えております。そういうことで外貨を使うということが本筋であります。  もう一つは、緊急対策としてどうするかというと、やはり戦前は日銀が無利息の金を横浜正金銀行に貸し付けておって輸出を振興した例もあるのでありますから、それはいま円をドルにかえればいいわけであります。そういう意味で、いまのネックとしては外為法を改正しないでやろうとしておるところにあれがありますが、金属とか鉄鉱石もすべてのものをやはり貯炭をしたり貯蓄をする、私はこういうことが必要だと思います。  それから外貨の直接貸し付けというものをどうしてもやりたいと思っておるのですが、円の収縮率を伴わない外貨の流出はいま禁じておるわけであります。やはりアメリカの財務省証券を買うのに三分何厘でありますから、この程度のもので二十億ドルとか三十億ドルとか、少なくとも今年中外貨がふえると思ったらその分くらい何とか使わせる。それが、ただ土地を買え、何を買えというのには私は反対なんです。そういうことでなくて、やはり日本の経済と密着をした中で外貨は使わるべきだ。私は外貨は百五十億ドルでもって頭を押えたいというようなことで具体的なものを考えておりますが、大蔵省がなかなかのまないで、三億六千万ドル、言い出したものの十億ドルの三分の一程度ではないかということでありますが、ここらが突破口になって、これから一、二カ月のうち、国会が終わるまでには、国会の開会中にやはり外貨の急増を押える。外貨の活用を押えるのではなくて、外貨の活用をどうするかという具体的なものを大蔵省と詰めたい、こう思っております。
  79. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いま大臣答弁の中で外貨を使う何か大きなプロジェクトを考えたい、考えなければいかぬということですが、具体的に何か大きなプロジェクトを大臣の頭の中で考えていることはいまございますか。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 それがなかなかむずかしいのです。いままでは一億ドル以上のプロジェクトが出ると一年くらいかかったのです。それで入札が間に合わなくなってあとからやあやあ言ったことがあるのです。ところが去年の七月から相当なものを出しました。これはアルゼンチンに対する鉄道とかイランの石油プラントとかいろいろなものを出しましたが、大きなものがあればいまこそいいときだと言っておるのですが、業者自身もなかなか慎重であって、いまいいものを持ってきておりません。持ってきておりませんから、政府ベースで考えられるものは、チュメニという大きなものが一つあります。私はこんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、せっかくの御質問でありますから、私の夢のような考えでございますが、中国大陸に鉄道でも年間二、三千キロずつでも建設できれば、それは日中間も非常によくなるしというような感じがありますが、これは出しても、こういうものは相手とよく話がつかなければならぬ問題でありますので、こっちが押し売りするわけにはまいりません。そういう意味で、業者も政府もいろいろな観点において外貨の活用ということの具体的なものをひとつ考えてまいりたい。いいことがあったら、どうぞひとつ教えていただきたいと思います。
  81. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 近江委員大臣への質問を保留されておりますので、時間がございませんのでこれでやめますが、大臣、あなたがいまおいでになるまでに、通産省の問題じゃなくて、公害問題で政府委員の方々に質問をしたのですが、党内きっての実力大臣だから、大臣ならできるという要望を一つだけさせてください。  それは、いま公害論争、非常に行なわれておるのです。ところが、その科学的根拠が非常にあいまいなんです。その上で議論をしておるのです。その原因は何かといいますと、私は経済企画庁長官に質問をしたのです。それは、思い切って政府分析化学者を育ててくれ、そうしなければ幾ら議論をしても、企業も逃げるだろうし、たいへんな問題ですよ、いまのこう薬ばりの気持ちでほっておけば、永久に公害戦争に勝てませんよという議論を当委員会でしたのです。先ほど科学技術庁千葉研究調整局長に質問をして、あと大臣が見えたときに私は要望したいのだということを言っておったのですが、ほんとうはこのままでは日本の公害戦争はどうにもならないと思うのです。だからもう少しロングランで、十年くらいの計画で、予算もうんと取って学者をつくって分析をやらないと、非常に私学的に希薄な、根拠のないデータで議論が行なわれておる。だから逃げもできるし、非常にむずかしいのです。被害はある、ところが正確なデータではないような気がするのです。大学の機構を見ても、合成化学には行くけれども分析化学には行かない。企業が採用してくれない。役所もなかなかっとめるところがない。現実に非常に少ないのです。したがって、こういうのは民間ではできないと思うのです。政府が思い切って予算——いまの予算ではいわゆる公害征伐はできないだろう。これは思い切って発想を変えて、十年くらいの長い計画でやる。そのことがいまの公害対策にとって決して遠い解決ではない。いま解決をするために思い切った研究投資が望ましい。これは田中通産大臣だから、無理をしたらそんなことできると私は思うのですよ。あなたの実力をもってしてできないことはないと思う。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に適切なお尋ねでございます。公害罪法ができ、無過失賠償責任制度ができ、しかも推定をやろうと一時考えたことさえもあるのでございます。どうも公害というものが、科学的、医学的にこれがどういうような害を及ぼすかというものがまだ解明されておらないものがたくさんあります。これは、被害が完全に証明されないときには法律上の罪を受けることはない、こういう法律の大原則から考えると、相当なものでございます。ですから非常に古い法律で、きのうも御質問ございましたが、鉱業法などには無過失責任というように書いてあります。それと刑法の規定の「意ナキ行為ハ之ヲ罰セス」という原則からいうと、これは事情やむを得ずつくらなければならない法律であることはわかりますが、国民の間に非常に大きな紛争を巻き起こすということは事実でありますので、いまあなたが御指摘したとおり、これは国があらゆる機関をつくって、あらゆる努力をして、やはり被害があるのかないのか、あるとすればどういう方程式があるのだということを明らかにしないと、裁判所でも、いまは判例を出さないうちに下級審で事件がおさまっておりますからいいですが、これが最高裁まで争われてやったら百年裁判になるおそれがある。そういう意味で科学的、技術的な分析というものを確固として確立するためには、もう党とかそういう問題じゃなく、政府をあげて英知を傾けて結論を出すべきだと思います。  最後に、さっき一言忘れましたが、どうも夢のような話ばかりでは申しわけないので、ここでマラッカの問題などがいま問題になっております。少なくとも二億四、五千万トンもことしは使おうという石油の備蓄があまりない。それではOPECの攻勢にも耐えられるわけがありません。そういう意味で、やはり石油というものはできれば半年分くらい所有すべきである。そういう考えでやれば外貨は有効に使えるわけであります。いまとっさのことでありましたのでちょっと申し忘れましたが、国内的に外貨を二十億ドルや三十億ドル、五十億ドル使う仕事がない日本の現状ではない、こういうことだけ申し上げておきます。
  83. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 終わります。
  84. 鴨田宗一

    鴨田委員長 近江君。
  85. 近江巳記夫

    近江委員 先ほど大臣は予算委員会のほうに行かれておりましたので、政府委員の方にはいろいろとお聞きしておったわけであります。  大臣もお聞きと思いますが、PCB母乳汚染というものが昨日もきょうも報道されておるわけです。大阪のほうで母乳から〇・七PPMという高濃度PCBが検出をされました。これにつきましては、アメリカでは最高の許容限度というものは〇・二PPMで、はるかに低いわけです。また西ドイツにおきましても〇・一PPMになれば危険信号を出しておるわけです。このような点からいたしますと、今回のこの数字というものは三・五倍から七倍という異常な高さであります。これは世の中の母親にとりまして非常にショックなことでありまして、厚生省も少なくとも母乳は一番いい栄養なんだということで、推定三〇%くらい母乳を飲んでおる、このようにいわれております。まあ田中大臣もかわいらしいお孫さんがいらっしゃるようにお聞きしておりますが、私これはほんとうにたいへんな問題じゃないかと思います。それでこのPCBというものは一体どこから出てくるかといいますと、これは大臣承知のように、化学工業の工場でつくっておるわけです。三菱モンサントとかいろいろございます。  そこで、先ほど政府委員の方からは、PCB環境基準を早急に設ける、あるいは山形化学工業局長からは、この四月中に回収できるもの、できないものをはっきりしてやっていきたい、こういう前向きの答弁もございました。しかし回収といっても、それが一〇〇%回収できるかどうかも疑問がございますから、早急に新製品を開発して、これは使用禁止に踏み切っていく。結局これができる、できないは、これは通産省、なかんずく大臣の決意できまるのじゃないかと私は思うのです。そういうことで、ほかに代替の品物もだいぶ開発されておるように聞いておりますし、この辺についてほんとう大臣の決断をしてもらわなければいけないときが来たのじゃないか、このように私は思うわけです。その点ひとつ大臣の所感と今後の対策をお願いしたいと思うのです。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 PCBは非常に人体に有害でございますから、人体に触れるようなものには絶対に使わせないということは、もう当然でございます。そして開放性と閉鎖性の中で、開放性のものは、いままでつくったものがなくなればなくなるわけでありますが、これはちり紙からすべてのものまで、幾ばくかずつ再生紙はみな入っているかもしれません。そういう意味では手も触れられないということになりますから、これは全部回収するというのは不可能であるかもしれませんが、しかし閉鎖性の中で放置をさせる、放置をすることによってこれが流れ出るとか、人体影響を及ぼすということは、これはもう禁止すべきである。これはコンデンサーとかそれからトランスとか、そういうものであります。たとえば国鉄とか電電公社とか、そういうもので確実に回収できる機能、回収義務をやはり課せるということでないと使用禁止せざるを得ない。青酸カリを工業用に使っておりますが、これは、これに代用するものがないので青酸カリは使うけれども、非常に厳重な管理使用をしております。このPCBというものは回収させなければいかぬし、これは中だと使っている人にも相当な影響があると思いますから、そういう工場の中における危害予防も万全を期さなければならないと思います。そういう意味で回収義務づけをする。二つあったところの三菱モンサントはもうやめまして、カネミだけということでありますが、これも劇薬と同じ、それ以上にひとつ使用制限をする、義務を課すということをまずやりたいと思います。  それからもう一つは、これにかわる製品を早く、——これは押えが非常にきくから何にでも使いたいわけであります。これは同じ原材料を使うにしても、カラーテレビなどは八十キロ、五十キロもあるような大きなものと、手で持って歩けるカラーテレビの差は、そういう新しいもので、非常に分厚くなるものを紙のような薄いものを張るだけでもって足れりということで、非常に容積は小さくなり、持ち運びにも非常によくなる、こういうメリットがあるわけであります。そういうものをどう開発するか、これは緊急な問題として国が理学研究所に求めるとか大学に求めるとかいうことでやはり開発をして、そして置きかえるということをやるべきだと思いまして、通産省自身も、そういう意味ではこまかい、いま被害を最小限、というよりももう絶滅であるというようなところまでこの問題はやらざるを得ない。そうでなければこれは禁止をせざるを得ないという考えで、いま検討いたしております。
  87. 近江巳記夫

    近江委員 もう少し具体的にお聞きしますが、先ほど化学工業局長は、四月中に回収できるものとできないものとに分けて、その方向をはっきりする、こういう御答弁でございました。そこで、大臣もいま禁止をするということをおっしゃったわけですが、それは全面禁止を全部やってしまわずに、回収できる分については一応経過措置として使わせて新製品を開発する、そして早い機会に全面禁止をする、こういうことですか。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 完全に回収ができるという処置ができ、何人もこれを容認するということになれば用途を限ってこれを使わせるということもあるでしょう。毒物と薬は紙一重でございますから、使いようによってだということでありますからそうなると思いますが、しかし、幾ばくかでもこれが人体影響を与えることは避けがたいということであれば、これはやはり他の製品にかえることにしなければいかぬ、他の製品ができれば当然禁止になる、こういうことであります。
  89. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、四月に出される回収がもう不能である——PCBの害につきましては大臣も非常によく御承知でありますから、回収できないというものには全面禁止にする、こういうことでございますね。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 回収できるもの、コンデンサーとかそれからいまのトランスとかいうものは、これは九電力、鉄道、電電公社等、これは有線設備その他にも使われております。そういうものは回収を義務づければいいわけであります。これは回収できます。ただ、閉鎖性のものは回収できますが、開放性のものはこれは回収できません。現実的に市場に出回っておるちり紙を全部回収するわけにはまいりませんから、これは製造禁止をし、使用禁止をいたしておりますから、現実的にはこれらがなくなればもうそういうものはなくなるわけであります。ですから、人体にあるPCB影響というものはいまが一番大きいのであって、これからは下降線をたどる。それは使用しない、人が手を触れない、なめないということでありますから、そうなると思うのです。そうしなければならない、こういう考えです。
  91. 近江巳記夫

    近江委員 局長のほうで何か補足ありましたら……。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 閉鎖性であっても、全部が全部回収できるわけではありませんから、小さなコンデンサーその他は放置されるものがありますから、そういうものは必然的に禁止の方向で検討してまいります。
  93. 近江巳記夫

    近江委員 人体影響する問題でありますし、どうかその点シビアに大臣のほうで御処置をお願いしたいと思います。要望しておきます。  それから、経済問題でございますが、英国と中華人民共和国の大使相互交換の取りきめに関する共同コミュニケ、これは三月十三日発表されておるわけですが、連合王国は十三日より両国相互に大使交換を決定する、英国は台湾が中華人民共和国の一つの省であるという立場を承認するし、台湾にある領事館を閉鎖する、こういうようにもはっきり言っておるわけでございます。そうしますと、この英中間の合意というものは米中共同声明の表現よりも非常に進んでおるように思うのですが、この点について政府はどのように評価されていらっしゃるか。また、今後英米間のこの点に関する調整ということにつきまして何か情報、報告のようなものを受け取っていらっしゃるかどうか、これをお聞きしたいと思うのです。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 特別な情報は得ておりません。新聞その他の報道によって得たものでございます。しかし、米中よりも中国と英国との間のほうが歴史的にも深いつながりを持っております。香港租借地もあるわけでございますし、そしてまた英国のほうが身軽い立場にあると思います。そういう意味で、私は、やはり中国問題に対して最も先鞭をつけるのは英国だろう、こう思っておりましたら、英国があのようにやったわけでございます。いままでの日中間の貿易もポンド建てで支払われておるということでもございますし、これから円・元決済になると思います。思いますが、しかしいままではスイスやロンドンの英国系銀行を使っておる。こういうことからいっても、イギリスと中国とは非常に長い歴史があり、親密な状態にあり、利害も米中よりも親密なのだ、私はこんな考えでございまして、緊張緩和というか、中国問題を解決する方向にだんだんと動きつつあるんだなという感じでございます。
  95. 近江巳記夫

    近江委員 そのように英国も中国に非常な接近をしてまいりましたし、米国にしてもそうです。フランスにしてもそうであります。そういう点で考えていきますと、われわれとしては非常にさびしい気がするわけです。一番近くにありながらそのように置き去りにされていくような気持ちもいたしますし、大臣は、この日中貿易の点の見通しにつきましては、そのバランスの点も考え、今後はまあまあ前進するという見方もしていらっしゃるわけですが、この政経分離という方向でいつまでもほんとうに期待し得るのかどうか。やはり何といっても政治の重みというものがこれからは表に出てくるのじゃないか、このように思うわけです。先ほど大臣は、夢だけれども鉄道も敷きたいというようなこともありましたし、国交が回復すればやはり夢も実現できていく、そういう可能性がはっきりしてくるわけです。そういう点ではこれは一日も早くやっていかなければならぬ、このように思うわけです。この点、大臣ほんとう政府を動かす力を持っていらっしゃるわけですから、抽象論かもしれませんけれども、国交回復にかける大臣の最近のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 私は通産大臣でございますので、輸出をしたり輸入をしたりということをまず考えておるわけでございます。ですから、さっきの夢のような期待感、中国で、非常に大きな国でありますから、鉄道でも敷いてくだされば、そのレールでも買ってもらえば相当出るな、こういう商売上の考えからいつもそういう夢を見ておるわけでございます。どんな政体の国でも貿易は行なう、こういうことが国是でございまして、未承認国でも貿易はやっておるわけでございます。中国というのは七億五千万、とにかく全地球上の人類三十五億の四分の一に近い、少なくとも五分の一以上の国民を擁する大国でございます。二千年以上の交流を持つものでありますし、日本は中国文化の中に今日がある、こういうことを考えれば、やっぱり日中間というものは友好の道が開かるべきだ。ですから、政府が日中国交の正常化を行なうために前向きに、積極的な努力をいたします、こう言っておるのでございまして、やはり日中がすみやかに国交が開かれるようになることはほんとうに望ましい、そのためには、日本から物を買ってもらう、また向こうからも、片貿易でバランスがとれなければお互いに困るわけでありますから、中国から買える物があったならばそれはひとつ大いに輸入するように努力しましょう、まずそういうところから最終的な目的を達成しよう、こう思っておるわけでございまして、できるだけ早く日中間の道が開かれることが期待されるわけであります。
  97. 近江巳記夫

    近江委員 それから北ベトナムからの大型の視察団の受け入れの点です。十三日に法務省が入国を許可したという報告もあったわけですが、今回のこの視察団の受け入れ交渉の経路あるいは接触は、第三国を通じてやったのかあるいは直接交渉かというようなこと。また、こういう視察団の目的というのは一体何を考えておるのか。やはりお互いに双方のねらいというものがあると思うのですが、この辺について大臣としてはどういう報告を受け、またどのようにお考えですか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 北越からの経済団体の一行十名余がわが国に入国することに対して、法務省は入国許可を与えたようでございます。これは工場を見たり貿易拡大に対して現地を視察する、こういうことでございまして、政治的な問題は全く持たないということでございます。
  99. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、経済交流ということが目的だと思いますが、北ベトナムは現在でもホンゲー炭を大体四十万トンぐらい出しておると聞いております。これをさらにふやしていきたいという希望があるようにちょっと聞いたようにも思うのです。それで、先方はやはり何といいましても金の制約を受ける。こういう点において、輸銀の使用ということについては向こうも非常に期待しておるのじゃないか、このように思うのです。この点について、政府としては、先方がそれをそのように言ってきた場合、どういう姿勢で臨まれるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 北ベトナムからは千万ドルぐらい物を買っておるようでございますし、また向こうがほしいものもあると思います。漸次貿易は拡大をしていくだろう、こういうふうに考えられるわけでございます。輸銀の使用に対しては、これは間々申し上げておりますように、ケース・バイ・ケースでございます。こういうことでひとつ御理解いただきたいと思います。
  101. 近江巳記夫

    近江委員 それ以上の答弁は出ないと思いますが、今後のわが国の展望をしたときに、やはり積極的に——いままで中国貿易にしてもケース・バイ・ケース、だいぶ政府も変わってきましたけれども、いままでそのケース・バイ・ケースということは全然だめだというような印象をわれわれは非常に受けておったわけです。このケース・バイ・ケースということは、積極的に真剣に、これは前向きでほんとうに検討してやっていくという強い姿勢、そういう意味でのケース・バイ・ケースですか、もう一度お聞きしておきます。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 ココムも大幅な緩和をいたしたい、私は全廃をしたい、こういう姿勢でございますし、いまパリで交渉を行なっておるわけでございます。そういう基本的な姿勢に立っておりますが、しかしココムがいますぐ全廃にはならない、どの程度の品目が残るか別にしまして、やはりその程度のものはどうしてもあるのです。これは国益を守らなければならないという立場がありますので、品物は買っていただいた、それは非常にいいのですが、しかしこちらが買うものが一体どうなのかという問題もございますし、国際情勢の推移に徴し、国益を考えながら、しかも貿易は拡大の方向に慎重に対処してまいります、こういうことで、これはなかなかそれ以上のいいことばがございませんので、どうぞひとつ実績で評価をいただきたい。
  103. 近江巳記夫

    近江委員 それからマラッカ海峡の問題でありますが、インドネシア政府の方針として、インドネシア、マレーシア、シンガポール、この三国のナショナリズムから発する政治的な背景からと思うのですが、マラッカ海峡通過の規制措置、この問題が具体化してきているわけです。御承知のように、二十万トン以上のタンカーを迂回させる、こういうような報道もされているわけです。こういう決定について日本政府への連絡、あるいは規制措置をする理由、あるいはインドネシア、マレーシア、シンガポール三国の合意による規制であるかどうか、この辺についてはどういう報告を受けていらうしゃいますか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 マラッカの問題については三国が一致点を見出しておるのではないようであります。利害お互いにみな違うのでございますので、そういう結論に基づいて行動されていることではないようでございます。この推移というものは日本としては相当重大な関心を持たざるを得ないわけでございます。石油搬入量の九〇%以上も、それ以上もマラッカを通るというような現状から考えれば、これは日本の生命線ともいうべき問題でございますので、これが推移を十分見守りながら一この三国とはみんな日本も交渉がございます、非常に親しい国々でございますので、いま報道されておるような事態になることはない、そんなことになったら、これは非常に拡大均衡というものに歯どめをかけることでございますし、局地にそういう問題が出てくる。パナマの問題、スエズの問題、マラッカの問題というふうにやってきたら、これはお互いが不利益をこうむるわけでありますので、そういうことにはならない、ならないためには外交的交渉も十分進めてまいる、こういうことでございます。
  105. 近江巳記夫

    近江委員 現実にわが国では、三十七万トンの日石丸をはじめとして、どんどん運んでおるわけです。エネルギー政策からいきましても石油が最大のエネルギー源であることは当然ですし、特に所管大臣として、エネルギーがこういう打撃を——このまま規制どおりいくとなると経済的にも時間的にも、あるいは航海の安全性、水路調査といいましょうか、そういう問題も出てくるだろうし、やはり非常に大きな問題だと思うのです。この点、大臣も今後積極的にその解決に乗り出したい、このようにおっしゃっておるわけですが、非常に自信のあるそういう御答弁でございましたが、ひとっこうした点、平和裏に、しかもまたいろいろな点でスムーズに解決をひとつはかっていただく、これはやはり一番大事じゃないか。大臣としては非常に自信のある御答弁でございましたが、その点は心配なくこれは解決できますか。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 これはもう、マラッカはいま二十万トン以上の船が三十五隻程度通っておるわけでございます。これがちょっとよそを回らなければならないということになれば四日も五日も損をするわけでございます。これは数字をちょっと計算すれは八十億から百億もということになります。しかし油を積んでいるから海洋を汚染するというようなことであるなら、じゃ、片道はから船になればどうなるのだというような問題もあります。しかし国際紛争を武力をもって解決しないという金科玉条があるわけでありまして、すべてを話し合いで片づける、こういうことでありますので、私は、非常にこれらの国々とも深い外交関係にあるのでありますから、日本がマラッカの問題で非常に困難をするような結果にはならないように十分な外交交渉は可能である、またそうしなければならないという強い決意を持っております。
  107. 近江巳記夫

    近江委員 まあ、こうした三国も発展途上国ということにもなっておるわけですが、当然そういう今後の経済援助というような形にも私は大きな影響が出てくるんじゃないか、このように思います。  そこでUNCTADの第三回総会が四月十三日、チリで行なわれるわけですが、今度は中国も参加するということで、どういうように展開していくか、非常に注目するところであります。そこで、この発展途上国に対しての援助というのはほとんど贈与に近い形にする。これはUNCTADの準備会議でそういうように決定したようでありますが、わが国として現在六八%の贈与ということになっておるわけでございますが、これに今後政府としてはどういう心がまえで臨んでいかれるか、もし具体的な数値もわかれば発表いただきたいと思います。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 国連貿易開発会議における最大の問題、これは開発途上国に対する援助、量もさることながら質へ、こういうところがいまちょうど山にかかったところでございますから、サンチアゴにおける会議の主題は、問題はそこになると思います。  質の問題に対しては——日本は現時点において十八億二千四百万ドルぐらい出しておるわけでございまして、これは国民総生産の一%という申し合わせ、一%を下らないように努力をしよう、努力目標一%、これに対しては〇・九三%でございますから、数字の上では非常に量的にはよくなっております。ところが、この中における政府の開発援助というものが一体幾らかというと〇・二三%ということであります。これはアメリカが〇・三一%、フランスが〇・六五%、西独が〇・三二%、イギリスが〇・三七%、十六カ国合計は〇・三四%である。この〇・二三%をDACの平均数字である〇・三四%まで引き上げろ、また引き上げなければならない、ここがポイントでございます。ですから、そういう意味で、まあ日本側の代表が出れば、これをいつまでにこの数字まで上げるのか、同時に、十六カ国の合計ではなく、テンの国家の平均に対してどうするのかという問題が当然出てまいると思います。そういう意味で、そこらが問題でございます。  いままでの国際的な、四五年からの、第二次戦争直後から二十七年くらいのものを見ますと、これは世界的な金融は三つになっております。一つはIMF、一つは世銀、一つは第二世銀、それにアジア開銀のように地域的な開発銀行ができている。言うならば四つかもわかりません。しかし大ざっぱにいうと三つであり、まあフランの暴落やポンドの暴落に対しては、これはIMFがスタンドバイクレジットとかSDRの制度、十カ国が四十億ドル、四十五億ドルで、拠出してささえるということで調整をとっております。中進国から先進国に移行する過程は世銀がめんどうを見ております。だから日本は、戦後の鉄道、電力、鉄鋼、これはすべて世銀の力によってできたといっても過言でないわけでございます。  それから第二世銀というのは無利息五十年でございますから、これはもう発展途上国へということでございます。一部には無利息九十九年にしなさいという議論もあったということでございますが、しかし今度はほんとうに必要なものは、第二世銀無利息五十年でやろう。そうして無利息五十年の第二世銀と第一世銀をだき合わせることによって、半分ずつだき合わせれば、世銀の七・二五%は三分七厘になるわけでございます。そのだき合わせのやり方によって、五分にもなるし三分にもなるし七分にもなる。そうしてそれによって自動的に、償還年限が五十年までの間、三十年にする、二十五年にする、二十年にするということになるわけでございますので、これは合理的なのです。日本もその意味で合理的になっているのです。これは海外経済協力基金がありまして、無利息ではありませんが、三分何厘ということであります。アメリカの財務省証券と同じ利息で貸そうということでありますから、できてはおるのですが、この量が足らないということと、これと輸銀とのだき合わせの比率がよくないんだ。だからそういう問題でありまして、まあいま外貨を使わなければならぬというようなときでありますから、そういう意味では日本も質の改善に何らか寄与できるということでございます。そういうところが国際会議における南北問題のポイントでございますし、日本がやはり平価調整のとき受けたと同じくらいな状態で日本に対する外圧がかかるだろうというのはこの一点でございます。
  109. 近江巳記夫

    近江委員 大臣も昼からの予定があろうかと思いますので、もうあと一点だけで終わりたいと思いますが、このチュメニ油田につきましてはいままで長い経過がありまして、昭和三十五年から、第一回日ソ経済合同委員会のときから話題にのぼってずっときているわけです。大体民間ベースで話を進めておったわけですが、大臣としては、非常に大きなプロジェクトである、こういうようなことで今後政府間でやっていかれるのか。しかもいままで話にのぼりながらも十数年は過ぎておる。ほんとうにそういう点から考えて、今度はこの問題について本気で政府が主体になってやっていかれるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 チュメニ油田は、これは非常に大きなものでございまして、日本も長いこと話し合いを続けてまいったわけであります。この間のグロムイコ外務大臣の来日を契機にして、この問題、一つの結論が出ました。それは、いままで文書や地図でもって明確な書類の提示がなかったわけでございますが、これは書類や数字を提示をしてまいりました。五月にはこちらから調査団が現地に向かうということになり、これは非常に大きな問題なんです。アメリカにおいて石油というものは戦略物資でございますから、これはもう商工関係の範疇にはなくて、国家安全保障会議の決定がなければならないというものでございます。これはもうソ連においても同じことだと思うのです。これは東京−モスクワ間の航空路によって、あそこを日本の飛行機を飛ばさぬと言ったと同じことであって、これはなかなかのめんどうな問題であったにもかかわらず、これに対しては日本から借款を求めよう、しかもアメリカの民間が下請として参加をすることも異議はないということでありますから、相当、東西緊張緩和のためには、こうまで緊張緩和をしたのかとさえいわれ得るものでございます。これはイルクーツクまでのパイプをもう一本複線にしなければならぬ。イルクーツクからナホトカまで四千三百キロくらいですか四千二百キロくらいでございますか、これを相当大きな口径のパイプでもって持ってくる。そしてナホトカの港もやらなければならない。それは三十億ドルくらいであって、日本の負担分が約十億ドルというのでございます。まあ通産省は七億ドルとか七億五千万ドルとか八億ドルとか、いろいろなことを計算をしておりますが、これはさだかな数字に基づいて計算をした数字ではないのです。これは向こうは政府だから、こっちもなぜという。それは政治体制が違うから、商売は全部民間でございます。しかし、買い受けるということに対しては、十カ年、十五カ年の保証はだれがするのだ、それは政府がそんなものは引き受けますということは言えます。それは二千五百万キロリットルから四千万キロリットルを五年後に出そうというのでありますから、そのときになれば、日本に搬入する総石油量の五%ないし一〇%以下である、引き受けられないはずはない。こういうことでいま交渉をしておりまして、この間、どうしても政府がというなら国債を出したらどうですか、こう私が提案しましたら、国債を出すということを考えたことはないが、しかし国債というものの日本があずかっておるものの状態を知りたいということで、これはきっと書類を提示しておると思います。  そういう状態であって、要は五月の現地調査団の視察後に相当事態は明らかになる、そう考えていただきたいと思います。
  111. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がありませんから、これで終わります。
  112. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十二分散会