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○
大原委員 いままでいろいろ議論をしてきたわけでありますが、それらの問題の中で残っておる問題、さらに質問を重ねて問題点を明確にする問題、これは五点ぐらいありますけれども、その問題を含めて、これから質問をいたします。
きょうは大蔵省、経済企画庁、その他全部見えておるわけですが、企画庁長官は外国に行っておるそうであります。最初に、これはこの根底で議論をされている問題で、われわれは、医療の問題は必ずしもイデオロギーを出発点として、あるいは帰着点として議論をしているわけではないけれども、保険主義か保障主義かという問題が常にあるわけです。ただし、この問題については、この保険主義か保障主義かという問題についての問題点のしぼり方、理解のしかた、こういうものにおいてもあまりにも粗雑な議論もあるわけです。答弁もあるわけです。そこで、まず第一は、やはり当面の赤字対策について議論をする不可欠な前提として、この問題をまず第一に取り上げて質問をいたします。
これからの
医療保障を総合的、長期的に改革していく際に、保険主義と保障主義に対して、大臣としては、どのような考え方で今日まで——関係法案の三つがいま閣議決定になっておりますが、この問題を取り上げてきたのか、この点をまずお尋ねいたします。
-
○斎藤国務大臣 広い意味の
医療保障という点を考えますると、原則といたしましては、いわゆる医療保険というものを原則とする、そういう意味で保険主義でございます。しかしながら、保険にはふさわしくないという面、公費負担をしていかなければならないという医療の面もございますから、しかも社会の今日の情勢は、いろいろな変化によって公費負担の面を拡大をしていかなければなりません。しかしながら、いかに拡大すると申しましても、原則はやはり保険というものを原則としてやる、こういう考え方でございます。
-
○
大原委員 保険主義という場合に、その保険主義の中身といいますか、保険料の負担と給付に関係する問題があるわけですね、これについては具体的にどう考えておりますか。
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○斎藤国務大臣 原則といたしましてはやはり保険料負担でまかなう、しかしながら、保険料負担にたえないという低額の保険集団には、適当な国庫負担をするということで今日まで参っておりますが、今後もその方針で参りたいと考えております。
-
○
大原委員 こういうように考えてよろしいか、つまり保険制度の整備の問題が一つあるわけですが、制度の整備という問題は、厚生大臣独自の見解を持っておるかもしれませんけれども、これはかなり議論のある問題です。そういうばらばらな制度があるけれども、保険料の負担と給付についてバランスをとっていくという問題、それからもう一つは、保険制度を整備するにあたって、所得の低い階層の保険集団に対しては、これは保険主義のたてまえからも公費を導入していく、国が補助をしていくということは、皆保険の現状においては当然である。いままでの議論、いろいろやってきたけれども、その二つの考え方をもって整備をしていって、国民の立場から皆保険の実施を総合的に進めていく、こういうように考えてよろしいかどうか。
-
○斎藤国務大臣 そのとおりでございます。
-
○
大原委員 大蔵省もそういう考え方で進んでおるのかどうか、いかがですか。
-
○長岡政府
委員 厚生大臣のお考えのとおりでございます。
-
○
大原委員 そこで、保険料の負担と給付のバランスをとるという意味において、いままでここで、最初に
山本質問以来議論したけれども、国民健康保険と、政府管掌の健康保険と、組合管掌、共済組合の健康保険があるわけですが、これら全体を通じて、言うなれば実質論ですが、形式論でなしに国のささえを含めての議論ですが、保険財政の収入、つまり保険料の負担と国費の導入と、それから給付についてのバランスをとっていく、これを私どもは議論をしながら、具体的な当面の赤字問題や抜本対策の問題を議論する、そういう方向であるというふうにいままでの議論から考えてよろしいと思うわけですが、これでよろしいですね。
-
○斎藤国務大臣 そのとおりでございます。政府もそういった考え方でいままでの公費の補助、あるいは公費負担を出しておるわけでございまして、考え方は変わりはございません。
-
○
大原委員 それでは、具体的にさらに議論になったことを進めてまいりますが、政府管掌健康保険と組合管掌の健康保険において、これは設立以来双方の経過があって、いろいろ制度上の矛盾もある。たとえば、五人未満の問題を議論いたしました。あるいは、これはまだ詰めていないけれども、国民健康保険の所得の階層を見てみると、たとえば日本最高の長者番付に入る土地成金もいる。あるいは、いまの
健康保険法では任意包括加入ということになっておるが、新しいレジャー産業の面も第三次産業の面も出てきておる。そういう点から考えると、国民健康保険の所得の構成と政府管掌の所得の構成について比較をしてみるならば、これは突っ込んだ質疑応答はなされていないけれども、この実態について政府はどのように理解をいたしておるかという問題です。この点については、どの程度的確な資料があるかは別にいたしまして、ひとつ政府
委員からでも御答弁いただきたい。
-
○斎藤国務大臣 政府
委員から答えます前に私からお答えいたしますが、国民健康保険に加入している人たちの所得、それから健康保険に加入している人たちの所得、これを比較いたします場合に、国保のほうは保険税という名前で取っているところもございますが、保険料、保険税いずれにいたしましても、これは税金のようにどこまでも累進的に取っていくとか、あるいは担税能力のある者はそれに応じてどこまでも出すかといいますと、やはり一定の上限というものが考えられなければならない、これが一種の保険の特徴だ、かように考えます。したがいまして、いまおっしゃいました長者番付に載っている人たちの保険料は、そこまで全部取ってしまうのかということになると、そういうわけにはまいらない。健康保険におきましてもやはり上限というものをきめておって、今度の上限の引き上げは、適当と思う限度まで引き上げの原案を出しておりますが、しかし、上限なし、青天井ということは、保険料の性質として考えられない。そういうように考えてまいりますと、国保に所属する人たちの保険料の担税能力といいますか、あるいは支払い能力といいますか、それと健保というものを比べてみますと、政管健保と比べましても、国保に所属する人たちの保険料の支払い能力は若干低い、かように認識をいたしております。
-
○
大原委員 国民健康保険の保険税の都道府県別の負担の比較の資料がありますか。
-
-
-
○戸澤政府
委員 最高と最低の例を申し上げますと、一番高いのは岡山県の茶屋町の一万一千五百九十円、低いのは東京都の利島村の六百九十六円、これは昭和四十六年度の一人当たりの年額の平均でございます。
-
○
大原委員 それでは、国民健康保険による給付、これは事業主の市町村から持ち出しがありますが、給付についての県の比較について、高いところと低いところ、これをひとつ……。
-
○戸澤政府
委員 県の比較で申し上げますと、一番高いのが広島県で一人当たり医療費二万三千八百二十一円、一番低いのは鹿児島県で、一万三千二百三十円でございます。
-
○
大原委員 広島は原爆の被爆者が多いから、自己負担がないから受診率が高くなるので、これは老人医療をやったら、また反映してくるのだから、そのことはまたやるけれども、つまり、保険料の負担では、一人について年額一万一千五百九十円が最高で、最低は六百九十六円、こういうのがありますね。それから給付においては、最高が二万三千八百円で最低が一万三千円というふうに、半額とはいわないけれども、約倍、半分の関係になっていますね。政府管掌の健康保険は、保険料は標準報酬に対して千分の七十ですから一律ですが、給付についての府県別の最高と最低をお答えいただきたい。
-
○穴山政府
委員 県間の問題になりますと、一件当たりで見たものがいいのじゃないかと思いますが、一件当たりの金額で見ますと、一番高いのが、四十五年度におきましては、京都が四千三百九十五円、それから最低が千葉の二千七百二十九円でございます。
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-
○穴山政府
委員 これは四十五年度の平均でございます。
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-
-
-
○穴山政府
委員 一人当たりは奈良の五万四千九百四十九円、それから東京の二万八千五百二十二円という数字が従来出ております。ただ、この一人当たりの問題は、たとえば奈良にいたしましては、大阪あるいは京都、そういったようなところに、政府管掌の場合でいいますと、所属します被保険者もこれに入っているわけでございます。したがって、そういう意味で奈良県の被保険者が一人当たりというのとちょっとこれは——大都市の周辺では居住地と勤務地とが違いますので、その辺の修正をいたしませんと正確に出ないわけでございます。むしろ県の間の医療費の傾向というものを見ます場合には、その県で基金が支払いました医療費の総額を、基金に出てまいりましたレセプトの枚数、すなわち件数で割れば一件当たりが出ますので、そのほうが正確にその県における医療費の傾向というものが出るわけでございまして、そういう意味から申しますと、先ほど一件当たりで御説明いたしました京都が四千三百九十五円、それから千葉が二千七百三十九円、これが一件当たりの最高と最低でございます。
-
○
大原委員 保険主義の立場に立っても、やはり格差を是正していかなければならぬと思うのです。保険料の負担を所得に応じてやっていくということと、給付について公平に支出をしていくということです。給付の面では一人当たりあるいは
一件当たりで算術的に出す場合もあるが、もちろんその中には、無医地区とかその他の問題が含まれているわけです。
そこで私は、この改革を通じてやるべきことは、やはり格差、不公平というものを是正していくという観点が一つ要るわけですね。その中では、できるだけ質問を早めるために申し上げるのだけれども、三つの点で格差の是正が私はあると思うのです。第一は保険制度間の格差がある。日本の保険制度は、皆保険に至るまでばらばらであったから、保険制度間の格差が非常にあるということ。それから、国民の立場に立ってみると、地域的な負担と給付の格差、特に給付の格差というものがここにある。国民の立場に立ってみたらこれはたいへんなことです。特に無医地区とか僻地の問題を含めてたいへんなことです。それからもう一つは、外国、先進国にはこれはほんんどないことであるといわれているけれども、本人と家族の格差がある。これは日本的な特色です。ですからこの格差を縮めていきながら、結論的に保険料の負担については、能力に応じて公平に負担をしながら、たとえ保険の制度であっても、負担をしながら——一律の負担ではないのだ、純粋の商業的な保険ではないのだけれども、生命保険のようなことではないわけだから、それぞれの負担能力に応じた保険料を負担をしながら、給付については、やはり国民の立場で納得できるような公平な給付をしていく、こういうことがわれわれの保険法の議論を通じて実現をするようにならなければならない。最初に申し上げたことになるのですが、この点については御異議ありませんね。
-
○斎藤国務大臣 基本的な考えといたしましては全く同意見でございます。
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-
-
○
大原委員 そこで、もう一回お聞きいたしますが、国民健康保険と政府管掌の健康保険は、所得の構成において、私が詰めました観点においては——私も議論を持っておるわけですが、いま政府
委員からの答弁では若干の開きがあるような議論がありましたけれども、所得の構成については——いま保険料負担については別ですよ、国民健康保険の保険料負担は上を切っておるから、切り方というものは政府管掌とは違うわけです。土地成金でもやはり頭を切られておるわけです。そういう面においては、国民健康保険が発生した経過の中で問題があるわけですけれども、そういう面においては国民の立場から納得できない。これは問題がある。あるのですが、所得の構成においてはピンからキリまであるけれども、国民健康保険と政府管掌の健康保険については、この点についての資料はどのようなものを持っておるのか、どのような分析をしておるのか、その点をひとつ明確にしてもらいたい。
-
○戸澤政府
委員 政管健保と国保の被保険者の間におきましては、確かに所得の格差がございます。数字的に申し上げますと、四十五年度の実績から申し上げますと、政管健保の家族を含めた加入者一人当たり所得は二十万七千三百四十六円、それから国保被保険者一人当たりは十四万三千六百三十七円でございます。さらに四十七年度の見込みとして推定しております数字を申し上げますと、政管健保のほうは一人当たり三十万一千四十九円、国保は一人当たり十九万二千三百八十一円というふうに見込んでおるような状況でございます。
-
○
大原委員 念のために年齢構成について御答弁いただきたい。
-
○穴山政府
委員 最初に政管のほうをお答えいたします。政管のほうは、年齢階級が五十四歳までが八九・一六でございまして、五十五歳から五十九歳までが四・七七、それから六十歳から六十四歳までが三・三三、それから六十五歳から六十九歳までが一・六八九、七十歳から七十四歳までが〇・七四、七十五歳以上が〇・三一でございます。
〔
委員長退席、小沢(辰)
委員長代理着席〕
-
○戸澤政府
委員 国保につきましては、少し大まかなくくり方ですが、四十五年度について申し上げまして、零歳から十四歳までが二四・三%、十五歳から五十九歳が六〇・三%、六十歳以上が一五・四%でございます。それから五十五歳以上で申しますと二一・六%でございます。
-
-
○穴山政府
委員 五十五歳以上が一〇・八四でございます。
-
-
-
○
大原委員 そこで、
老人福祉法を来年一月からやるわけですね。
老人福祉法によって適用される国保と政管健保との関係はどうなりますか、自己負担分が無料になるもの。
-
○穴山政府
委員 政管の場合につきましては、七十歳以上が四十七年度は六十一万四千人と見込んでおります。
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○戸澤政府
委員 国保のほうは満年度で見まして、人数は二百三十七万四千人と見込んでおります。
-
○
大原委員 それから、ついでに資料ですが、いままで議論になりました中で、政府管掌も国保もそうですけれども、一人当たりの医療の給付費あるいは一件当たりの医療の給付費、国保は自治体に住んでいるのだから、自治体ごと、市町村ごとになっているのだから、だから私は、県に出てくる一人当たりの医療費というものは、その県の大体の医療給付の水準を示しておると思うのだけれども、それはともかくとして、ここは
健康保険法だから、政府管掌の健康保険で大体五万円をこえるものと三万円を下るものとあるわけです、一人当たりの医療費で言うならば。そういう実態を生じている原因というものは一体どこにあるのか。原因がわかれば、これは是正の方策があるわけですけれども、高いところへそろえるのか、中間のところがいいのか。たとえば診療報酬体系を議論する際も問題になるわけだけれども、大体この問題は、議論は別として、どこに原因があるのか。同じように政府管掌で標準報酬の保険料千分の七十払っておっても、給付が倍、半分、五万円以上ということと三万円以下というふうなことですね。そういうことは、国民の立場になってみると、どのように解決をされるのか、あるいは今後さらにどのようになるのかという議論があるわけですから、その原因は何であるか、これはいままで問題を提起されたけれども、十分はっきりしていない。
-
○戸澤政府
委員 都道府県別に非常な医療給付費に食い違いがあるというのは、先ほども申し上げたとおりでございます。一般的に医療費の食い違いが出てくる原因としましては、給付率の違い、それから医療を受ける機会の違い、その医療を受ける機会の違いというのは、たとえば
医師数、医療機関の種類とか数、交通の便、不便、そういったようなことと、それからさらに患者の所得の違い、あるいはさらに年齢構成とか性別の違いとか、あるいはさらに衛生思想、衛生知識の差、そういったようないろいろな要素が考えられるわけでありまして、それらの複雑なからみ合いでそういう結果が出てくるということであろうと思いますので、どういう要素がどの程度の影響率を持っているかということは、なかなか数字的に分析することは困難であると思います。しかし、全体として見まして、政管と国保とマクロ的に見てみますと、一応の傾向というようなものが見られます。
たとえば、例を申し上げますと、広島県は国保は全国一位になっておりますが、政管健保は二十位でございます。これは先ほどお話しのとおり、国保被保険者には原爆の被爆者が多いということがはっきりと言えるわけでございます。それから、大阪とか東京、愛知、神奈川、こういった大府県は、国保の順位は比較的高くて政管健保の順位が低いというような傾向になっております。たとえば大阪は国保が三位で健保は三十位、東京は国保が十二位、健保四十六位、そういったようなぐあいでございます。
これは先ほどちょっとお話ししましたとおり、統計上のとり方の違いが一つは大きく影響しておる。国保のほうはその住所地をもとにして医療費とその被保険者の数というものが出るわけですが、政管のほうは住所地と勤務地が違うというところから出てくる違いもございます。それからまた、こういう大都市を含む県では、政管のほうは比較的若年層が多い、元気な者が多い。これに対して国保は被保険者が老齢化しているといったようなことのために、国保のほうが相対的に順位が高くなるというようなことがあろうかと思います。そういったようないろいろの要素がからみ合いまして、都道府県間のそういう医療費の格差が出てくるものであろうと考えられるわけでございます。
-
○
大原委員 給付率とか、医療を受ける機会とか、患者の年齢とか、衛生思想とかいうふうなものは、そう府県によって日本の国内で差があるのですか。そういうものは差があるのかな。たとえば給付率によっての差異はありますよ。本人と家族の差というものは出てくる。七割と五割の差は出てきますよ。しかしながら、それらを含めてみな散在しているところで——過疎地帯と過密地帯ということがあるでしょう。過密地帯のほうが環境が悪いし、交通の傷害者も多いだろう、労働災害も多いだろうから、労災保険や特殊な保険でやる以外の他の問題が、疾病の治療等が健康保険に及ぶ問題もあるでしょう。しかし、それでないのに一般的にこういうようなことを羅列するだけでは、私はそういう給付が倍、半分であるというようなことの理由にはならぬと思うのですね。
-
○戸澤政府
委員 給付率の違いは、政管と国保におきまして、国保のほうは三割の自己負担があるということがやはりその受診率に影響を及ぼしていると思います。しかし、一番大きい原因として考えられますのは、その医療を受ける機会の違い、それは換言すれば
医師数とか医療機関の分布状況、これが大きく影響しているということは、これは政管、国保を通じていえることでございます。そのほか、そういう年齢構成からくる健康度の違い、そういったようなものもある程度は影響しているのかと考えられるわけでございます。
-
○
大原委員 医師の数、医療機関の配置の濃密度あるいは環境、こういうものが健康に影響を及ぼし、医療費に影響を及ぼすということはあり得るわけですね。そういうことはあり得るわけです。あり得るわけですが、たとえばそういうことについての原因を突き詰めてみて、医療機関とか
医師の足りない中における公平な配置というものについて、これはあとでも議論になるけれども、こういう問題についていままで政府はどのような政策をとってきたのか、これからどのような政策をとろうとしているのか。これは国民の一人一人の立場に立てば、このほかにもプラスアルファがありますよ。この倍、半分というような、同じような保険料払っていて、片方は五万円以上の保険給付があって片方は三万円以下だというのは、国民から見ればおかしいわけですよ。それは半分の保険料でいいじゃないかという、保険主義でいけばそうなんですよ。保険主義でいうならばそういうことになるわけでしょう。これを保障的にやっているから、全国的に調整しているから、こういうふうになっているわけだけれども、その原因の突き詰め方の問題もさることながら、これについてどういうふうな政策をとろうとしているのかということは、次の問題に進める前にぜひとも明らかにすべきである、問題点を究明すると一緒に明らかにすべきである。
-
○戸澤政府
委員 確かに、お話しのとおり、保険の実効をあらしめるためには、その前提として医療機関の量的な整備、さらにまた、地域的な適正配置ということが伴うことが必要であろうと思います。そういう意味におきまして、これは別の観点から医療機関の供給体制の整備をはかると同時に、保険の被保険者につきましては、どこの地域でも医療を受けることができるようにする。たとえば国保は現在、本人の住居する都道府県の医療機関で受けることが原則でありますが、契約によって、近辺の府県とも契約を結んで医療を受けられるようにしておるわけでありますけれども、今度の抜本改正におきましては、国保につきましても、全国のどこの医療機関でも受けられるというふうにするようなことも考えておるような次第でございます。
-
○
大原委員 国民の立場から見たら、一人当たりの医療費というものが五万円以上があり、三万円以下のところがあるということは、たとえば三万円以下の一人についての医療があるということは、保険料値上げなんかということは、これは政府管掌だから全然問題になるべき筋合いじゃない、こういう議論が出てくるわけです、いまの議論は。そういう立場からいえばそういう議論が出てくる。ですから供給機関の整備をすることについて、具体的なそういう政策はあるのかないのか。われわれはいろいろ考えて一つの提案をしておるけれども、この点についてはどうなのか。これは念のためにひとつ医務
局長……。
-
○松尾政府
委員 医療機関の分布あるいは医者の分布を公平にするということは、私どもはこういう医療保険の万全な運営というものの前提といたしまして、非常に大事な問題であると思います。ただ、この問題は非常にむずかしい問題がございます。従来も、たとえば過剰地区といったようなところに、
医師なり医療機関の集中を排除するというような意味での病床規制というようなものも行なわれてまいりました。また、それと同時に、公的な機関のみならず、私的な機関に対する融資という面からも、同様な趣旨でもって押えていこうということはやってまいりました。しかしながら、それだけでもってすべての問題がきれいに片づいているという実態ではございません。私ども、今後そういうような観点から、それぞれの地域における医療の需要というものを一方では設定をいたしまして、それに応じた、地域内で供給できるような計画を具体的に立てていく、そしてそれを実現していくということがやはり基本的に大事であろうと考えております。
特に、そういう場合におきましても、今後おそらく医者の分布あるいは特に若い医者の分布というようなものを考えました場合には、医者が勉強できるようなチャンスというものを与えなければならぬ、そういったようなことからいえば、いわゆる医学部を設置する分布の問題もございますし、同時に、それ以外に医者が喜んで勉強できるような医療機関というものの分布を、そういう大きな観点からもひとつ考えていかなければならぬ、こういうふうなことをある程度われわれとしても考えております。そういうプランによって地域ごとの需要に応ずる供給体制というものの万全を期してまいるべきだ、基本的にさように考えております。
-
○
大原委員 それは考え方をずらりと述べたので、具体的にはいままで何もやってもおらぬし、ますます矛盾は拡大しているわけだ。ここにも一つ国民の立場から見れば問題がある。
もう一つは、いままで十分議論されてないけれども、つまり皆保険下において、私はまぎれもなく漸次話を進めておるのは、保険財政の赤字の問題に関係をして、財政負担をどのようにすべきかという議論も生じておる。先回りして言うなれば、一つの問題があるから赤字対策の問題に関係して財政負担の問題を議論しておるわけだが、問題は、最近の高度成長下の急速度の情勢から、医療の問題については治療だけに矮小化して考えたのでは解決できない。こういう問題と一緒に、大臣から話がありましたが、保険で負担すべきものと公費で、税金で負担をすべきもの、こういう問題についての区画整理をしていくことが大切である。きょう経済企画庁や大蔵大臣の出席を求めたのは、そのことも一つの大きな問題であって、大蔵大臣は十二時半に出席されるそうだけれども、つまり保険財政で分担すべき面と、保険財政のいまの運営で限界に来ておる面は、いまの給付の面で一つはっきりしておるけれども、問題は公費で負担をすべき面が、国民経済全体、国民の負担全体からいうなれば、その区分けを整理をすることが大切ではないか。その問題について長期的な展望を立てることが大切ではないか。政府の新々五カ年計画の中でそのような問題を、資金の配分、資源の配分をどのように考えるべきであるか。こういう問題は、私はこれは与党の立場に立とうが、われわれの立場に立とうが、今日の医療をどうするかということにおいては、突き詰めてみる必要がある問題である。大まかな議論は今日までしたことはありますけれども、公費で負担すべき面は一体何であるか、これを私は明確にすることが、これからの保険財政の長期的な展望を立てる上においては不可欠のことではないかと思うわけです。その問題に対して政府はどのような考え方で今日まで臨み、これからどういうふうにしようといたしておるのか、この点をひとつお答えいただきたい。
-
○斎藤国務大臣 ただいままでは、申し上げますように、社会防衛的な疾病、結核とか精神病あるいはまた伝染病とかそういったようなもの、それから国家補償的なもの、戦傷病者でありますとか、あるいはこれは国家補償という名前はつけておりませんが、社会保障的なものとして原爆の疾病であるとか、最近はだんだんと公害がひどうなってまいりましたから、公害に基づくような疾病、これは原因者がわかれば原因者が負担をしなければなりませんが、一般的に原因者究明のできないというようなものについては、やはりこれは公費という考え方で臨んでいくべきものではなかろうか、こういう面が今後相当ふえてくるのではないであろうか、かように考えております。
-
○
大原委員 ただいまの御答弁にも一つ問題は残っておるわけです。たとえばいまの原爆とか公害とか老人医療の問題も、自己負担分を国が負担するわけです。そういたしますと、医療費全体へはね返ってくる面は保険財政へはね返ってくるわけです。ですから、老人をたくさんかかえているグループには医療費がたくさんはね返ってくるような、そういう仕組みになるでしょう。ですから、そういうものは税金の中で助け合う、公費で負担をして税金の中で助け合うというふうに割り切るべきではないか。たとえば精神や結核については、沖繩においては日本のようなきびしい制限を加えないで、精神病や結核になった場合には公費で負担しておるという例があるわけです。全額やっておったわけです。それを本土並みということで過渡的な措置をとっておると思いますけれども、そういうふうに全額やるということになりますと、老人医療の問題を年次的にやって全額やるということになると、それは社会保障的に全国民が福祉年金などと同じような考え方で負担をしていくという考え方があるはずでありますから、それを年次的な計画でやりながら、社会保障に対する国民所得における全体の計画をどうするかという方針をきめながら長期的な計画を立てるということは、保険財政と密接不可分の関係にあると思うが、いま私が二、三列挙した問題だけに限定いたしまして厚生大臣のお考え方をお聞きをいたしたい。
-
○斎藤国務大臣 ただいまお述べになりました例示的な問題については、これは非常に問題であろうと思います。全額公費で負担をするか、あるいは公費を一部導入するかという問題、大体ただいまは公費を一部導入していくという考え方でございます。社会的な要因によって起こってまいるというような疾病は、これは将来は原則として公費で見ていくといういき方をすべきではないだろうか、私は一応さように考えております。
-
○
大原委員 大切な問題ですが、社会的な要因で起こってくる疾病については公費で負担するのを原則とすべきである、よろしいですか。
-
○斎藤国務大臣 そういう考え方に立つべきではなかろうかと私はただいま個人的に考えております。
-
○
大原委員 大蔵大臣いないけれども、大蔵省、どのように考えておりますか。
-
○長岡政府
委員 公費負担をどういう場合に行なうかということについては、ただいま厚生大臣おっしゃったとおりだと思うのでございますけれども、公費負担のあり方につきまして、現在は、たとえば生活保護費のようなものにつきましては、これは全額公費でカバーしております。しかし、その他のものにつきましては、基本的なたてまえ論かと存じますけれども、やはり国民皆保険のたてまえからいきますと、国民全体をカバーしている保険制度を前提といたしまして、その上で特殊な場合、たとえば社会防衛的な伝染病あるいは国家補償的なものにつきまして、自己の負担を国民全体の税金で肩がわりするという現在の考え方で私はいいのではないかと考えます。
-
○
大原委員 あなたはきょう来たばかりで、いままでの議論を踏まえないで答弁するから、そういう考え方が大蔵省の中に蟠踞しているから、問題があるわけなんです。頭の切りかえができていない。そこに赤字対策をどうするかという問題で、後に具体的な問題を指摘するけれども、ちぐはぐな問題があるから、大蔵大臣を呼べと私はこう言っている。大蔵大臣は事務当局とは違って、年金については賦課方式を積極的に前向きに取り入れるべきであるという見解を持っているわけですよ。だから、あとでまたぼくは質問するけれども、いまの赤字の問題は、いまの社会環境とか疾病構造に深い関係があるのですよ。その特色を把握しないでこれからの赤字問題は議論できない。
いまの問題についてはしばらくおいて、これは大蔵大臣とも論争するけれども、いま全く二つは違っておるのだから、総理大臣を呼ばなければいかぬわけだけれども、いままでずっと積み上げてきて、原則的に賛成しておきながら、がたっと変えてきた。それはあなたの、主計局次長の限界はあるでしょう。いままでのやってきた方針もあるから、予算に関係した法律案を審議しているときに、新しい将来の方針について事務官僚として言えないこともあるかもしれないけれども、だから大蔵大臣に出席を求めたわけだ。それほど今日のこの問題は重要な問題であるということだ。国庫補助の議論をしておるけれども、厚生大臣、いまの高度成長の中で、この数年来急速度に変わってきているのは、環境の破壊とか交通戦争とかの被害とかいうものが急速度に進んで、過密過疎の問題が起こってきているわけです。無医地区が一方にあって、しかしながら、集中したところにはいろいろな病気が発生しているわけです。環境破壊と健康破壊は、たとえば、あとで議論するけれども、医薬品自体が健康を破壊しているのです。スモン病その他サリドマイド、ベーチェット、わからないものもあるけれども、化学物質であることは間違いない。ですから、内外からの環境破壊というものが健康破壊と密接不可分の関係になってきて、病気の構造が一変しておるわけですよ。
これは数字的な議論をしたいけれども、一般的な常識であるから。であるから、この健康管理という問題をぴしっと国がどうするのかという考え方を出さなければ、医療の問題を議論することはできないわけですよ。政府が閣議決定をした医療基本法の中でも、医療の問題は、治療だけではなしに、健康管理とか、あと社会復帰、リハビリテーション、そういう問題を含めて医療の問題を考えなければならないような段階に来たという認識なんですね。この認識について厚生大臣どうですか。
-
○斎藤国務大臣 いま
大原委員のおっしゃるような同じ認識のもとに立って医療基本法も閣議決定をいたして提案いたした次第でございます。
-
○
大原委員 この医療基本法は閣議決定したのですか。
-
○斎藤国務大臣 さようでございます。
-
-
○斎藤国務大臣 国会へ提出の手続をとったはずでございます。
-
○
大原委員 これは本気で提出しているのか。これは提出したかどうかということと、本気で出しているのかどうかということを答弁してくれ。
-
○斎藤国務大臣 きょう提出いたすそうでございます。手続はもう終わっているそうでございます。
それから、全くの本気でございますから、ひとつさように御了承の上、御審議を願いたいと存じます。
-
○
大原委員 きょう二十四日ですよ。会期はあさってで終わりだというのに、それが本気、何を言っているんですか。
この医療基本法の中には、医療の範囲についてはどういうふうに規定をしておるのですか。
-
○松尾政府
委員 医療につきましては、単に治療のみならず、健康の増進、疾病の予防並びにリハビリテーション、そういうことになっております。
-
○
大原委員 そこで、一番大切な問題は、治療の前の段階とあとの処理、治療のあと始末をするということです。治療だけをやっておると、赤字基調は原則的には変わらないということです。その本質の問題について政府全体がどのような認識を持っているかということがこれからの医療の問題に対する考え方になると思うのですね。
それじゃ端的に質問いたしますが、厚生大臣、いま申し上げた健康管理、健康の増進、こういうふうなものを含めて医療と考えるのだ、こういうふうにはここには書いていますね。その健康管理は一体だれがやるのか、どこでだれがやるのか、だれが行政上の責任を持つのか、こういうことについてお答えいただきたい。
-
○斎藤国務大臣 健康管理の最高の責任は国でございます。それからさらに、これが実施は地方公共団体がまず第一次責任を持つ。それから集団で人を使っている、あるいは寄せているというようなところ、事業所あるいは学校、また健康管理とは申しませんけれども衛生的な施設とかいうようなものは、そういった施設を経営する者がこの施設についてはやはり衛生上の責任を持つというのが、そういう考え方が原則でございます。
-
○
大原委員 大蔵大臣も、経済企画庁もそうですけれども、長期計画を立てる際に非常に大きな問題になるのだが、健康管理をやらなければならぬわけです。治療だけに矮小化して、しかも、あとで議論するけれども、投薬を中心に日本の医療が行なわれているから赤字基調というものがくずれないのですよ。これは大蔵省の諸君は合理的に考えるからわかるはずなんだ。議論しているはずなんだ。その赤字基調をまともにしていくというのが赤字対策でなければならないのです。これは弾力条項に関係いたしますよ。これは本質論に関係いたしますよ。
だから、そこで議論をする問題は、そういう健康管理については国がやるのだ、あるいは事業主体がやるのだ、こういう抽象的な議論があったわけですが、その他公費でやるべきものはまだたくさんあると思うのですよ。というのは、僻地医療の問題がある。それから救急病院の問題がある。あるいは無医地区とか過疎地帯のお医者さんの問題もあるけれども、いま大都会も夜は無医地区なんですよ。大都会は夜間は無医地区なんですよ。厚生大臣、それを知っているか。大蔵省知っているかね。大都会において医療機関が集まっているところも無医地区なんですよ、いま夜は。そういう現実があるわけですから、そういう現実の認識がなければいかぬわけです、政策を立てる場合には。だから、救急医療の問題が一つあるわけです。救急医療についても国の責任、自治体の責任、公的医療機関の責任を明確にしなければならないし、これは保険というものでやらないということはいまの制度の上からも漸次なされているけれども、しかしながら、保険にかぶさっている面がたくさんあるわけです。
それから第三は、たとえばスモン病にいたしましても、あとで議論いたしますが、原因ははっきりしておるのですよ。キノホルムということを厚生省は言っているのです。サリドマイドだってまだほってあるのですよ、患者は。ベーチェットの病気にいたしましても、じん臓病や心臓病、肝臓の薬をやりましての疾病もあるわけです。さらに公害関係も広いわけですから、つまり難病奇病といわれているものは、原因はわかっておるあるいは原因はわかっておっても治療の方法がわからない、こういうものが日本の高度成長の中で日本的な特色を持って随所に出ているわけだ。だから、言うなれば食品添加物の食品衛生法の問題を含めて、残留農薬の問題を含めて、PCB、BHCの問題を含めて、全国民は、病気であると言われたならばとだれもが不安を持っているのだ。ですから、難病奇病といわれている、社会病といわれているものは、個人の責任でやれという保険主義の原則とはなじまない。受益者じゃないのです。そういう人々は被害者なんですよ。給付は受ける、それは直接には受益者であるけれども、しかしながら、この病気の原因は自分の責任に帰する問題ではないわけです。自分の不養生という問題ではない。寿命という問題ではない。これはやはり社会的な原因ですよ。ですから、その点の区画整理をきちっとする。たとえば救急医療問題と難病奇病の問題と、あるいは非常にたくさん金のかかる医療の問題、そういう問題等を含めて、所得との関係で言うなれば、自己負担の原則で、自分が保険料を払って保険財政でまかなうという範囲を越えている問題ですから、国全体が総合的な長期的な施策を立てるべき問題である。費用の負担を含めてそういう問題である。私が申し上げたことに対して、厚生大臣は反論があるならばひとつお聞かせいただきたい。
-
○斎藤国務大臣 反論はございません。ただ、その境界をきめるのは非常にむずかしいわけでございます。原則といたしましては、私は大体同じ考えを持っておる、先ほどからお答えをいたしておるとおりであります。そこで、その限界をどうきめるかという点に非常にむずかしい点があると思いますが、しかし基本的な考え方は、
大原委員のお考えのような考えで整理をしてまいりたい、かように考えます。
-
○
大原委員 そういたしますと、保険財政は国民健康保険も政府管掌もよく吹きだまりといわれるのだけれども、かなり保険財政は変わってくるのです。長期計画の中で違った展望を持つのです。つまり、いままでの議論の中で厚生省、大蔵省、こういう議論をやってきたわけです。あなた方は原則的に一致いたしたわけですが、つまり所得に差があるのだから、その場合には国庫負担を導入していく。そしてげたをはかしておいて、保険として成立する条件をつけながら給付を公平にしていく、こういう議論を一つしてきたわけだ。保険財政は一般財源から補助するというそういう側面の問題は、それは政策論は別にして、それはあってもいい。保険料を所得に応じて取っていくという議論も一方においてあるわけです。いまの前者の私が議論した問題については、原則的には一致があると思うのです。問題は、高度成長の中で最近急速度に変わりつつある、交通事故を含めて、健康管理の問題を含めて、公費で負担すべき問題を私は指摘をいたしましたけれども、この問題は保険給付の対象としてはなじまない。政府全体が総合的に、計画的にやることが、国民の立場に立つと、税金で負担しようが保険料で負担しようが、そういうことは別にして、社会的な問題として公費でやるということが、総医療費を含めて全体の健康の問題について医療の問題は考え方が広くなっているのだから、広くしなければいかぬのだから、治療だけやつちゃいかぬのだから、そういう問題についての考え方をぴしっとして、そして総合的な長期的な計画を立てるべきだ。厚生大臣は、私の議論に対しましては原則的にオーケーと言った、賛成であると言った。
〔小沢(辰)
委員長代理退席、橋本(龍)
委員長代理着席〕その問題について大蔵省はどのように考えておるか。主計局次長としてどのくらいの答弁をするかは別にして、ぎりぎりの答弁をひとつやってみなさい。
-
○長岡政府
委員 環境破壊あるいは健康破壊と申しますか、そういうものの責任をどこに求めるか、そういうものに基因する難病奇病等の問題をいかに解決していくかという問題につきましては、私は
大原先生の御説のとおり、また厚生大臣のおっしゃいましたとおり、国家の一種の社会的な責任という観点から、当然来年度以降の財政事情も考えなければなりませんけれども、公費で負担をしていくものの範囲をもう一回考え直すとか、あるいは広げていくとかいうようなことについては、大蔵省といたしましても前向きに考えていかなければならない、かように考えております。
-
○
大原委員 しかし、来年からはそういうふうにするというのだから、厚生省はしっかりしなければいかぬ。そこで問題は、厚生大臣もお話がありましたが、その中から議論が出るのは、たとえば限界の問題だ、こう言う。そこで私は、まあそういうことですが——経済企画庁のほうは、いま
局長見えたらしいけれども、いますぐ質問したらろくな答弁にならぬだろうと思うからしばらく聞いておってもらいましょう。スモン病というのがあるわけです。スモン病の原因はキノホルムである、これはおおむね間違いない。厚生省は、こういう結論を出すことは間違いないか、いかがですか。
-
○滝沢政府
委員 スモン調査研究協議会の御報告の概要を申し上げますと、「疫学的事実ならびに実験的根拠から、スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を起こしたものと判断される。しかしながら、各部会の報告に述べられたように、スモンの発生機序にはなお不明の点が多く、またキノホルム剤非服用スモン患者の問題なども残されており、これらの点は今後引続き研究しなければならない。」実態として、スモン患者の八五%はキノホルムに関係がある。一五%がいろいろな意味でキノホルムとの関連を必ずしも明快に解明できておらないというのが結果でございます。
-
○
大原委員 キノホルム関係の患者は、実態把握した患者は一万名、九千何百名というふうに政府はとっているけれども、実際には十万名はいるだろう。その中の八五%、それにしても十万名はいるだろうといわれているが、私はこれは調査や治療や対策が進んでいけばふえるべきものと考えるが、いかがですか。
-
○滝沢政府
委員 キノホルムに関係があるという結果に立ちますると、四十五年の九月、このキノホルム剤の使用を禁止いたしておりますので、現在先生のおっしゃるような、われわれがつかんでいる約一万という、九千何百という患者数以上に存在することは、必ずしも否定できませんけれども、私は、十万という患者がはたして医療的に把握されているかどうかという点につきましては、必ずしも同意しかねる面がございますが、一面また、今後キノホルム以外のいわゆるスモン症状を出す患者が発生するかどうかということは、学会としてはたいへん注目している問題でございます。そういう点も踏まえまして私は、今後キノホルム剤による患者の発生というものはほとんどなかろうと期待しておりますが、スモンと同様の症状の他の疾患としての存在がまだ否定されておらないという意味のスモン様疾患というものがまだ発生する余地がある、あるいは懸念があることは否定できないのではなかろうか、こう思うわけです。
-
○
大原委員 そこで、スモンは八五%はキノホルムである、こういうことでありますが、そのキノホルムは、世界各国では整腸剤、下痢どめ等としては非常に有効な薬として利用しておるわけです。禁止してないところもたくさんあるわけです。使用規制で、非常に貴重な薬として活用しているところがあるわけです。つまり、薬はすべて毒ですが、薬と毒のけじめがつかないのが日本の特色です。だから難病奇病がたくさん出ておるのです。そうでしょう。いかがです。
-
○滝沢政府
委員 問題のキノホルムの使用量につきましては、〇・六グラムというのが一日の使用量でございますけれども、研究班の成績の中に、必ずしも各キノホルム関係患者の服用量についての明確なデータはわれわれ承知いたしておりませんけれども、かなり量の多い、二グラムというような服用をした患者があるという事実は聞いておりまして、この問題と、それからキノホルム剤そのものの、からだへの吸収機構の問題、いわゆる発生機序の問題、こういうことがキノホルムとスモン病症状との関連の問題で医学的には一番問題になっている点でございまして、われわれは常識的に、薬品として〇・六グラムというキノホルムが二グラム近い服用の例があるということは、先生のおっしゃることを裏づけていると考えております。
-
○
大原委員 あなたは先に答弁しているけれども……。日本薬局方という公文書では、キノホルムの使用量については、どのように規定しているのですか。
-
○武藤政府
委員 いま公衆衛生
局長から答弁しましたように、〇・六五を標準として記載されております。
-
○
大原委員 私は一万名プラスアルファと言っておきましょう。十万名ともいわれておるけれども、そのことを議論しておると時間がかかるから、私もできるだけ協力しなければ与野党に対して申しわけないです。それは何かというと、調査の方法がまだ不正確なんですよ。通院者等についても十分把握されてない。あとの対策の問題に関係するけれども、それはいい。
日本薬局方という公文書で規定されたことが守られなかった、これがスモン病の原因でしょう、いかがですか。
-
○滝沢政府
委員 研究学者の見解によりますと、先ほど申し上げましたように、服用量についてはそれぞれ個人の服用量に差がある、しかしながら、症状としては同じような症状が出た。症状が同じで服用量が違うという、いわゆる個人差の問題については、これが発生機序について必ずしもまだ解明されておらない、こういう見解につながっているものと私は考えます。
-
○
大原委員 局長、いまのようなことは明確じゃないですか。そんなことでごまかしちゃいかぬ。つまり、スモン病を発生せしめたのは、訴訟が起きているけれども、薬局方の——これは公文書である。公の法律、政令と同じようなものである。これは公の規定だ。これが守れなかったのは、どこに責任があるのか。メーカーが責任を持つのか、医療機関が持つのか、または政府が持つのか。
-
○武藤政府
委員 先ほどから薬局方の〇・六の標準のことが問題になっておりますけれども、これは一応の標準でございますので、やはり病状に応じて治療者がそれぞれ管理をして用いるというのが通例でございます。
-
○
大原委員 そうすると、医療機関の責任であるということですか。
-
○武藤政府
委員 キノホルムによってスモン病が具体的に起きたかどうかという個々のケースの問題につきましては、やはり一般的には帰納はできないと思います。具体的にその患者と使用された薬剤の量、それから患者の体質その他が十分に究明されないと、具体的にだれが責任があるかということはなかなかむずかしい問題であると私は考えます。
-
○
大原委員 日本薬局方にある〇・六五グラムという基準をこえて使用した、これが通常化しているということについての責任は一体だれが持つのか、これは非常に明確なんです。薬局方では〇・六五グラムである。それが守れないのは治療者の責任だ、こう言った。個人差によっては〇・六五グラム以下を用いても、スモン病になるかもしれないという議論であろうけれども、しかしそれは、安全帯として〇・六五グラムというものが国際的な基準としてあるんだろうと私は思う。それ以上連続投与した責任者があるはずである。これは治療者だけが責任を負うのか。サリドマイドと同じようにメーカーが訴えられておる。政府も訴えられておる。たとえば十万人の人が五百万円の補償金を要求したならば五千億円かかるのです。百万人としたら五兆円かかる。けたは間違っていないと私は思う。
こんなにルーズな使い方をされておって、営利主義のためか何かという議論はあとにして、そして下半身を麻痺し、視界が悪くなり、目が見えなくなったり、神経がおかされたりするということで、あるいは死んだりするということが起きている。これは何も個人の責任じゃない。全部社会の責任です。犯人はだれかあるはずだ。こういう問題は随所にある。だから、この問題については、だれが責任があるんだということを明確にしなかったら対策は立ちやしない。でなかったら、そういう副作用のあるものは、日本においては全部禁止しなければならぬ。毒と薬のけじめがつかないのが日本の薬務行政であり、医療行政であり、医療保険である。そこが日本の国民の健康破壊であり、環境破壊である。だれが一体責任を持つのか。
-
○斎藤国務大臣 これは、たとえば損害賠償とかなんとかいう法律上の問題になってくると非常にむずかしいものですから、薬務
局長も非常にむずかしい答弁をいたしておりますが、個人が買って飲んだという場合には個人の責任ということにもなりましょうが、それにいたしましても、そういう状態があることを知らなかったとか、医者にしても、これは過剰投与をやればこういうことになるということを知りつつやれば、これはむしろ刑罰上の責任にもなりましょう。過失責任にもなりましょう。しかしながら、そこら辺が相当あいまいであった、あいまいにしておいたということは、結局、結論的からいえば政治責任、政府の責任、こう私は感じます。
そこで、キノホルム患者の治療は、これはやはり公害に準じた公費でやるべきではないか、こう思って、前からも私はそういう答弁をいたし、いま事務当局にもその立案を命じているわけであります。国会がこういうぐあいで医療関係の問題でも非常にあれしておりますので、大蔵省と財政的な打ち合わせをするまでにはまだなっておらぬと思いますが、一応片づきましたら、大蔵省とも折衝をして、そしてこういうものは一応公害に準じたような公費でまずめんどうを見る、それが社会の責任であり国の責任である、私はさように考えて、そして今後事務的にこれを進めてまいりたい、こう思っております。
-
○
大原委員 私は、難病奇病や社会的な原因の病気の疾病構造等の問題の議論の一つにスモンを言っているわけですが、そういうスモンで指摘しているような問題についての治療は、少なくとも医療、それと生活手当、そういうようなものは国が見るべきである、公費で負担すべきであるという原則を確立すべきであると思うけれども、大蔵省はどうですか。
-
○長岡政府
委員 現在の段階では、治療研究費という形で国が財政負担をしておるわけでございます。いま
大原先生のおっしゃいましたような点につきまして、実は問題全体が非常に大きな問題でございますことと、スモン病対策等につきまして、まだ実は私どもと厚生事務当局との間では話を詰めておりませんので、現在の段階では確たるお返事はいたしかねますけれども、今後私どもも十分に事務当局間で協議をしてまいりたい、かように考えております。
-
○
大原委員 大蔵大臣が見えたならばこの議論も私はしようと思ったわけだが、こういう問題は議論というより決断の問題だということははっきりしているのだ。決断の問題なんですよ。そして、そういうふうに一つ一つ公費負担の問題を詰めていくならば、これは保険財政の赤字基調の問題にも関係があるのです、この政策を詰めていくならば。
それじゃもう少し詰めてまいりましょう。キノホルムによるスモン病の問題については、実態についてはかなり解明をされつつあるけれども、厚生大臣はしばしば新聞紙上等でいまのような発言をされましたが、その人々に対しまして治療研究費という範囲内で医療費を出すのですか。いまの程度の予算でよろしいのですか。
-
○斎藤国務大臣 私はたしか予算
委員会でも答弁をいたしました。そういう範囲ではなくて、少なくとも公害に準ずるようなそういう手当てをする必要がある、かように私は考えておりますから、そういう意味で今後大蔵省とも折衝をいたしたい。いま大蔵省のお話がありましたように、事務的にはまだ詰めていないとおっしゃいますけれども、それは国会で大蔵省も非常に忙しいものですから、そこまではもうちょっと待ってくれと言われるのはあたりまえだろうと思います。それで、国会が一応大蔵省関係も一段落しましたら取り組んでまいりたい、かように考えておりますが、私は、これは一事務の問題ではなくて、与党の中にも、また野党の方々も、それは当然であろうという御賛成があるものですから、そういう社会の情勢を背景にして、そしてこれは一つの突破口——ということばはおかしいですが、いままでの考え方を相当大きく変更していく手始めだというように考えております。
そういうことをやることによって保険財政が非常に楽になるかというと、数字の上ではそうたいした数字にはなるまいと考えますし、今後そういう社会的な要因で起こってくる疾病が多くなってくるであろう、そういうものには先ほど申したような考え方で対処をしていかなければなるまい。しかし、いままでの保険財政を非常に楽にするかというと、それほどの数字にはなるまい、かように考えております。
-
○
大原委員 その問題はあとでまた詰めてまいりますが、つまりこれは一つの例を言っているのですよ。例を言っているのであって、いま社会的な疾病に対する公費の原則の問題の話を進めているわけです。いまのスモン病についての、そういう公害病に準じたような措置をとる、総合対策をとるということについては、大蔵省は理解をいたしておりますか。
-
○長岡政府
委員 ただいまの段階では、たいへん恐縮でございますが、先ほどお答えを申し上げましたような考え方の範囲にとどまっておるというお答えをせざるを得ないと存じます。
-
○
大原委員 これはまたあとに残しておきますけれども、厚生大臣、スモン病の——いま九千何百名というふうに把握しているのですが、スモン病の患者に対しましてそういう措置をとれば、内輪でほぼどれだけの予算が必要か。あなた、保険財政に関係ないと言われたけれども、どのくらいか。
-
○斎藤国務大臣 事務的に検討を命じておりますが、まだ総予算がどのくらいになるか、事務的なものは聞いておりません。
-
-
○滝沢政府
委員 スモンの、大臣のおっしゃる公費負担のほうの試算につきましては、まだいたしておりません。治療研究の面から昨年以来四十七年度も引き続き実施いたしております入院患者に対して国が一万円、県にも御協力願って一万円自己負担を軽減し、治療研究に協力していただくという施策は引き続き実行しておりますし、またそれにつながる外来の治療についても、治療研究の拡大をいたしまして、ただいま実数把握等に努力いたしまして、大体八月一日ぐらいをめどに外来も治療研究の面で実施したい。大臣のおっしゃる公費負担の試算につきましては、まだいたしておりません。
-
○
大原委員 これは増岡代議士の地元だけれども、呉の国立病院にぼくは行ってみたのです。そうすると、通院患者が——入院患者もさることながら、長く入院できないから通院するわけですよ。松葉づえでやっておるわけだ。あるいは自家用車で運んでもらってやっておるわけです。家におって少しでも手伝わなければならぬ、子供の教育のこともあるからやっておるのですけれども、スモン病の患者の通院の人々に対する措置ですね、医療と手当の措置、
生活保障の措置をやらなかったら、これは全然総合対策になりませんよ。いま厚生大臣の言われたような対策になりませんよ。これは特別法でやるのですか、私が指摘いたしましたような点を考えてやるのですか、いかがですか。
-
○滝沢政府
委員 われわれとしては、スモン患者の約一〇%に非常に視力障害あるいはからだの障害が強い方がおりますので、公害に準じてという考え方の中で、医療費の負担の軽減と申しますか、公費による面のほかに、特定の重症の患者に対する問題点として考えられる点は、介護面についてこれをめんどうを見るという対策が、公害に準ずるものとなれば考えられるのでございます。以上のような点までが、われわれ事務当局としてスモン患者に対する対策として一応考えておる点でございます。
-
○
大原委員 この原因について私はもう少し議論したいのですけれども、原因をきちっとしなかったら、他に類似のなにが一ぱいあるわけですから……。たまたまキノホルムとスモンの関係がわかったのですよ。非常に偶然と言っては何だけれども、これはたまたまわかったわけです。これまでは遺伝であるというので、自殺をしたり犠牲者がたくさんおったわけです。こういう深刻な問題がまだあるわけですよ。だからそういう場合には、程度の問題はあるけれども、一割程度という話があったけれども、スモン患者は、少なくともキノホルムによって社会的にも家庭生活にも支障がある者については、政府がやはり医療の問題と手当の問題は、軽重はあっても対策を立てるべきですよ。その問題を含めて、総合的な対策を立てるためには特別立法が必要ですよ。これはいまの治療研究費という名前で出す場合には、実際に五億円の予算をやったとしてもスズメの涙です。焼け石に水です。だから、特別法をつくってきちっとやれば、これはかなり波及する範囲が大きいですよ。これはかなりの予算規模が必要なわけです。この点については、厚生大臣は、私が申し上げるようなそういう点を含めて対策を立てるというふうに考えてよろしいかどうか。
-
○斎藤国務大臣 これは私は予算措置で行くべきか、あるいは特別立法が要るか、あるいはいま公害病と申しましても、非常に多数の原因によって起こる公害ですね、たとえば自動車の排気ガスとかあるいは大気汚染にいたしましても、はっきりしておる場合にはいいですけれども、大気汚染もおそらくどの工場にどの責任を負わせるというわけにまいりません。これはしかし公害病患者の治療等に対する措置でありますから、それに準ずるようなものとしてどういう立法が必要であるか、それも含めていま事務的に検討してきているのですが、最終的には判断をしなければなるまい、特別立法に行くべきか、どれかの立法の中にこれをもぐり込ませられるか、そういう点もこれは考えてまいらなければならない問題でございましょう。それらの点について事務当局でもどういうことにするのがいいか、ひとつ検討をしてみてくれと事務当局に言っておりますが、最終的には大臣の私の責任できめてまいらなければなるまいと思います。しかし、そうなりますまではいろいろ大蔵省にも意見がありましょうし、他のほうにも御意見がありましょう。そういう御意見も参酌しながらきめてまいりたい、要はそれを実現いたしたい、かように考えております。
-
○
大原委員 この点はつまりこういうことだと思います。これはまた医薬品の管理の問題等にも発展するわけです。当然議論しなければいけないのですが、つまりスモン病はキノホルムの過剰連続投与が原因であることは間違いないのです。規定違反の、規定をこえた過剰連続投与が原因であることには間違いない。そういうものをなさしめた責任がやはりあるわけです。被害を受けた人から見ましたならば、そういう責任があるわけです。そういう責任は私は少なくとも医療については国が持つという原則の上に立ってきちんとすべきですよ。訴訟で決着できなければ対策は立たないというのは、私はうそだと思います。そういうことはいけない、行政ではないと思います。そうだとするならば、サリドマイドだってずっとほってあるじゃないか、飲んだ個人に責任がある——たとえばカネミのライスオイルだってほってあるじゃないですか。黒い赤ちゃんが生まれたりしているじゃないですか。これは治療研究費は一部見ていますよ。しかし、生活面に対する影響ということになれば、結婚とかその他のところまでいくかどうかは別にいたしましても、これはたいへんでしょう。そういう点から考えてみたならば、この問題は医薬品の管理、分業とか、医薬品の管理責任とか、あるいは薬事法改正問題に議論が発展しますが、これは中医協の答申にもあるから、医薬品産業の体質
改善の問題とからめて私は質問しますけれども、問題は、このようなスモン病のような患者をやる場合に、独立採算の公的医療機関がやるのは非常に無理がある。ましてや私的な病院が、私どもはお医者さんに、開業医の皆さんに話をしてもそうですが、私的な医療機関にスモン病の治療をやりなさいと言ってもこれは非常に無理がある。なぜかというと、治療と研究と一緒にやらなければいかぬ。だから、そろばんづくで独立採算ということで公的医療機関にその責任をぶっかぶせて、ちょっとつまみの研究予算だけやってもこれはできないわけであります。だから公的医療機関は、救急病院だって、都会のまん中は夜中になったら無医地区だということを言ったけれども、そういう問題を含めて、治療の問題を含めて、あるいは難病奇病の問題を含めて、精神病とか結核患者の問題を含めて、精神系統の問題を含めて、公的医療機関はいまの独立採算制をはずして、少々の持ち出しを国がしてもわずかなものです、総医療費の三兆円から言うならば。そういう持ち出しをしてきちっとやることが——私は公的医療機項のあり方についての再検討をすることは、保険財政には大きなことになりますよ。
私は例を申し上げて質問をいたしますが、私が言うそういう原則については、厚生大臣はどうお考えになりますか。
-
○斎藤国務大臣 公的医療機関として私的医療機関以外に責任を持たせなければならないというものも今後多くなってくるだろうと思います。その範囲においては、やはり公費でもってその範囲をまかなうということは、これは当然であると思います。そこの一般の患者の治療費でそれをまかなうべきものではない、かように考えます。
-
○
大原委員 つまり、そういう私が申し上げたような問題については、今日疾病構造が変わっているのですから、あとで健康管理の問題についてもう少し話を、いままで議論のあったやつを踏まえて進めてまいりますけれども、公費の負担の面を公共医療機関のあり方を国民医療の面から考え直してみなければ、この保険財政だけやったってこれはいけないわけですよ。というのは、私は医務
局長にお尋ねしたいと思うが、私が資料を出してもらいたいと言っているのに私の手元にないが、たとえばよく問題になる京都の医療費の四けた運動というのがありますが、これは地域ごとにおいてのいろいろな問題、給付の問題を議論する際に、これをほおかむりしてみな議論しておるけれども、この問題を議論しなければならぬわけですが、しかし京都の開業医の諸君に聞いてみましたら、京都の国立病院が一番濃厚診療をやっているのじゃないかとこう言う。薬剤を一番たくさん使っているのじゃないか。他の国立病院との比較、他の一人当たりの医療費、県の医療費の比較、こういうものについて私は京都の国立病院の問題について詰めてもらいたい、こう言って私はあらかじめ資料と一緒に要望、意見を出しておる。質問事項を出しておるけれども、これについてはどのように現状把握したか、ひとつお答えいただきたい。
-
○松尾政府
委員 京都府内にございます国立病院は三つございます。一日一人当たりの診療費、四十六年五月分でございます。京都病院ですと、入院の場合三千六百九十一円、舞鶴病院が二千六百七十八円、福知山が三千六百八円。全国の国立病院の平均が三千二百八円。それから政管健保の全国の場合は、ちなみに申し上げますと、三千六十七円ということで、京都病院が高い、福知山、舞鶴はむしろ低いという現象が出ております。ただ、この京都病院の場合でも、それじゃそこだけが高いのかということになりますと、そのほかの地域、たとえば大阪の国立病院になりますと、入院の場合の費用が四千百四十六円になりますし、また姫路でも三千六百七十九門、奈良では三千百六十九円、岡山で三千七百四十二円、呉で三千四百三十九円というようなぐあいでございまして、必ずしも京都の病院だけが特に高いという問題ではないと私は考えます。むしろ治療の中身と申しますか、一定の機能、いろいろな重症患者が入ってくる、あるいはむずかしい患者が入ってくる、いろいろ検査をしなければならない、そういういろいろな要素が重なりまして、一般にこういうところは比較的高くなる。同じような国立病院でも、一定の慢性の患者の多い病院のようなところは非常に低い額になっております。私は、全体としまして特に京都病院だけが地域的関係を受けて高いと
いうようには考えられないように思います。
-
○
大原委員 いまの点はあとでひとつ私のほうへ資料を出してもらいたいという点が一つ。
そこで、たとえば大臣、大蔵省とも、キノホルムの例ですが、これは薬局方の規定の〇・六五グラム以下使ったのでは病院で採算がとれぬというのであります。だから、一般的な傾向だけれども、一日二グラム、ひどいところは五グラム使っているわけです。十倍も過剰投与している。それを連続投与をすればスモン病になるわけであります。これはスモン病だけではなしに、やはりベーチェットでも何でも、難病奇病がたくさん名前があがっているけれども、原因不明とか、一たん病気にかかったら治療法がないとかいうことで、そういう問題は病名であげてもたいへんでありますよ。正体不明で、肝臓が悪いとかどこが悪いとかいうふうにやられているのもあるわけです。ですからこれは、医薬品と経営の結びつきを断つ、〇・六五グラム以下のキノホルムを整腸剤に使って赤字が出ても、公的医療機関は医療機関としての任務をちゃんとやる。病院の中の薬剤師が要求したか、医者がこれをもっともうかるように使えと言ったかは別ですよ。別ですけれども、薬局で自分で買う場合には、自分で買うということになって薬剤師の責任だけれども、知らない国民はそれは何も罪はないと思う。制度の問題だけれども、いずれにしても採算と治療というものを結びつけてやれば、いまの問題は京都の問題だけを私は示して調べてもらったけれども、他のほうだってみなそういう傾向があるのだから、公的医療機関ほどそういう弊害があるというのだから、独立採算ははずすべきである。言うならば医薬品や注射等を最小限度やる、良心的にやるというところがあってしかるべきである。そういうことがなければ、いまの外部からの汚染があり、内部からも健康破壊があるということが急速度に進んでいくのではないか、そういうことが日本の医療費の増大に大きな要因をつくっておるのではないか。これに拍車をかけているのは、必要な国費は入れると言うけれども、やはり独立採算で病院に営利主義を取り入れている、交通機関と同じような考え方でやるという考え方の基本を改めなければならぬ。そういうことを改めるならば、別な観点から公的医療機関に対する財政措置をするということであるならば、これは保険財政に対する請求にもはね返ってくるのであって、これは非常に大きな関係がある問題であるから、少なくとも抜本改正について、政府の案は空気のような案であるけれども、はっきりわかったことで、たとえばスモン病のような問題が起きてきてはっきりしてきている問題については、政策を直ちに改めて、公的医療機関が大きな社会的な任務を果たせるように、そういう採算ベースから特別措置をとっていくような措置をすべきだと私は思う。これは保険財政の赤字基調の問題と深い関係がある。関係ないようだけれども独立採算と関係があることは、キノホルムの過剰連続投与の例でわかる。厚生大臣いかがですか。
-
○斎藤国務大臣 私は、保険財政の赤字を少なくするために云々ということではなくて、あるべき姿としては、いまおっしゃいましたのは、私はその御議論には賛成でございます。そういう方向に進めたい、かように申しております。
-
○
大原委員 それは私の言うのが悪かった。あなたの答弁のほうがいい。大蔵省は厚生大臣の答弁についてはどういう考えですか。
〔橋本(龍)
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○斎藤国務大臣 もう一度申し上げますが、公的病院については、公的病院としての性質上発揮しなければならぬ点については、やはりそれだけの措置を講ずべきだ、これは原則だと思います。
-
○長岡政府
委員 公的医療機関のあり方につきましては、ただいま厚生省で予算上も調査費を計上いたしまして、あり方の検討をしていただいておるわけでございます。大蔵省といたしましても、その検討の結果を待って、厚生省とも十分に相談をいたしてまいりたい、かように考えております。
-
○
大原委員 これは、日本の制度からいえば非常に重要な問題である。政策の問題としては法律がなくてもできる問題です、考え方を切りかえればね。それは、公的医療機関というのは、そういう新しい分野、救急医療の問題——救急医療だって、私的な病院の話を聞いてみますと、たとえば頭がこわれたときに三万円だというのです。六人ぐらいお医者さんと従業員がかかって、六時間から七時間やるというのだ、機械をたくさん使って。採算上から見れば全然ペイしないという。そうすればあの手この手を使って、私的医療機関は、保険やその他からも、個人の負担からも取るということになるわけです。ですから、採算ベースでいったら乗らない制度があるのですから、公的医療機関は、研究の問題等含めて、研究しながら治療しなければならぬ面があるのですから、そういう問題を含めて、やはり独立採算制をはずして、公的医療機関が持っている社会的任務を果たせるように、
医師やその他従業員に対してもそうだし、患者や国民に対しても私はそういう政策をとるべきである。そのことは国民の負担からいうならば、保険財政にも大きな影響を及ぼすのです。公的医療機関がそういう方針をとればそういうことなんです。そのことははっきりいたしておるわけですから、ここのところは、厚生大臣からかなりはっきりした議論があるわけですが、私は、この問題は
佐藤総理はじめ政府、特に大蔵省がこの点を理解をして決断をすべきであると思うわけです。これは検討しつつあるという話でございますが、事務当局では答弁に限界があると思うので、水田大蔵大臣からこの問題については意見を聞きたいわけです。つまり、総医療費がだんだんふえていって、赤字基調が増大しているという問題は、医療費の値上げとは別個の問題です。医療費の値上げとはちょっと性質の違った問題がある。その中で投薬や注射代の比率が非常にふえている、その比率は、大学病院とか公的医療機関は最近かなりチェックしているけれども、このほうの外来のほうが一番ひどいという意見もある。医務
局長、反論があったら言ってください。そういう意見がある。公的医療機関に行くと、私的医療機関ではチェックを受けるやつをやって、そして売るほど薬をくれるし、馬に食わせるほど薬をくれるという公的医療機関がある。総医療費の半分をこれが占めている。ある場合には、キノホルムのように内部から健康破壊を進めているというそういう正体不明の病気の原因にもなっている。であるならば、公的医療機関は姿勢を根本から正すべきである。保険財政と深い関係がある。私が指摘をした点について反論があれば、政府
委員でもよろしいし、大臣でもよろしい、だれからでも答弁してください。
-
○松尾政府
委員 公的な機関の中で、かなり御指摘のような薬の多用と申しますか、たくさん出しておるということは、われわれも全部が全部ないという否定はいたしません。ただ、そういう場合のいろいろな、その病院全体といたしましての投薬のしかたというものが、すべて採算ベースだけに左右されているというふうに見るのは、これはまた一面行き過ぎもあろうかと存じます。ただ、やはり一面はそういう診療報酬体系のあり方ということにも関連をいたします。また、先生御指摘のように、公的な病院というものの使命、性格といったものをよりはっきりさせまして、特にいわば研究的なものあるいは不採算な医療あるいは僻地等の医療に代表されますようなそういったものを、やはり国立なり公的病院が率先して担当するというのは、私ども当然だと考えております。
-
○
大原委員 私が言ったことで誤解があればこれを訂正いたします。公的医療機関のやることが全部採算ベースで悪いというような印象を私が与えたら取り消しますが、しかし一般的にはそういわれているのです。今度点数は改正になりましたけれども、前の場合だったら、三十円以下のものだったらもうけにならぬとか、三十円以上はというふうな計算のしかたですよね。そういう計算のしかたを逆にして採算ベースで考えていくということを普通公然とやっているということについては、私的な医療機関からも指摘をされておるわけですね。ですから、薬の問題は健康管理の問題と深い関係があるのですから、きびしい観点で規制するということは、単なる財政上の観点からの医薬分業ではなしに、薬剤師に責任を持たせるということにもなる。しかし、八千も薬価基準に登載をしているという、こんな国はないわけですよ。八千も薬価基準に登載して、専門でもない人が八千勉強しようと思ったら、それだけで終わりになってしまう。結局はメーカーが宣伝してプロパーが売り込むのを聞いて勉強するという結果になってしまうわけです。採算ベースという頭もあるわけです。経営者の中には常にあるわけですから、それをいまや高度成長の中で健康管理がこれほど問題になっているのですから、公的医療機関がまず独立採算をはずして姿勢を正すこと、こういうことをはっきりやるべきだ。そうするならば、日本の医療費の赤字基調の問題については、国民が納得できる立場でこの医療費の問題が議論できるし、技術の問題が議論できるわけですから、私は、その点については、明確なこういう議論を通じて方向を出してもらいたいと思う。
重ねて、答弁は要りませんが、厚生大臣は二回にわたって原則的に同意をされ、大蔵省はこの問題は検討するということですから、実際には大蔵大臣にこの問題の議論を聞いてもらって、そうして国がやっている医療機関のあり方や研究の問題のあり方やあるいは社会的な原因の病気のあり方について、政府の責任を明確にしたような方針を出してもらいたい。そうすることがわれわれの審議である。そこで赤字の問題を議論するならば、これは直接の赤字の問題と関連があると思うわけであります。医療費の問題、赤字の問題で議論すべき問題は、国民の立場から健康の問題で議論するわけですが、健康管理をどう進めるかという問題が一つ十分論議が尽くされていない問題として残っているわけです。ですが、もう一つはやはり薬剤に片寄っている制度というものをどうするかという議論があるのは、中医協の答申にあるとおり、中医協の答申はあとで議論いたしますが、製薬企業の体質
改善までこれは触れておる。議論を尽くすと、そこをほおかぶりで置いて、日本の医療の問題やあるいは財政の問題の議論はできぬわけです。
そこで私は、議論を進めてまいりますが、保険料の値上げ、保険料率の改定の問題と医療費の値上げの関係です。私は医療費の値上げというものはやるべきである、先般の一二%のときも私は賛成だったのです。あんなにもたもたしないで早くやれということを私は公然と言っておる。そのために努力することがあれば努力すると言っておる。医療費の値上げはやるべきですよ。それは何かといえば、保険料は、賃上げをやったならば標準報酬が上がるのですから、料率は一定しておっても、個々の標準報酬が上がれば千分の七十で増収になるのです。賃上げをやるという理由があるのは、十月に計算することになるが、なるのは、医療費の面においても、技術とか労働というものを、百万の関係労働者の賃金や技術を引き上げていくという材料の裏表の関係ですから、これは原則は保険料を上げる上げないにかかわらず、正当な医療費の値上げというものは計算をすべきなんです。私はそう思う。この議論については厚生大臣は反対ですか、賛成ですか。
-
○斎藤国務大臣 原則は全く同感でございます。
-
○
大原委員 問題は——
委員長もよく聞いておいてもらいたいです、議事進行の区画整理をするのに。というのは、問題は弾力条項を含めて保険料率の値上げと医療費の値上げを直接リンクするという方法をとるならば、そうすると、いままで議論した、これから議論するいまの赤字要因をこのままにしておくならば、保険料率は幾らでも上がってくる。弾力条項ではない。下へ下がるということはない。すべて上がることになる。標準報酬は、物価その他賃金引き上げ、生活の向上に従って、同じ料率であっても、これがふえていくんだから、その問題はこちらの医療費値上げとタイアップして考えていく、そういう原則を確立すべきである。それは厚生大臣は賛成であるという。しかし、保険料率の値上げの問題を議論をする際には、料率に関係しておることであるから、赤字基調の問題を議論しないでこの問題だけを上げることはできない。その問題の議論をしなければいかぬ。弾力条項ではない。包括的な委任条項であり、答申もあるとおり、国会軽視の議論が出てくる。だから、その問題について私どもが議論を詰めなければ、全体の総合的な改革をどうするかという問題とも関係をして問題の処理はできないということになる。この私の議論に対しましては、厚生大臣はどうですか。
-
○斎藤国務大臣 どうもちょっとつかみにくいところがあるんですが、標準報酬、これは賃金の増加率に従って保険料もふえてくることはこれは当然でございます。しかし、中小企業の賃金の増加率とそれから医療従事者の賃金増加率は必ずしも一定ではございません。そのほかにも医療費の増加をする原因がございますから、したがって適正な診療報酬の改定というものは、医療に従事する方々の給料の点も考えなければなりませんし、その他の点も考えてまいらなければなりません。そうしで出てきた改定が、保険料の自然増収といいますか、いまおっしゃいました賃金のベースアップに伴う料率よりも多くなるという場合もあるし、また少ないという場合もあるわけでございますから、それによってやはり保険料率の上下ということは必要になってくると思います。
-
○
大原委員 私は原則を言っているのです、厚生大臣。最初の原則はやったわけですよ。つまり標準報酬は、春闘、賃上げ等で値上げが十月に反映できるようになっているわけです。こっちが上がってきたら、千分の七十という率は上がらなくても自然増収があるわけでしょう。大蔵省のほうがわかりがいいかもしれぬ、そういう点は合理的だし、合理的な計数をはじくから。そこでお医者さんのほうも、物価が上がり、賃金が上がると、あとで議論する薬価基準等については問題がありますが、その他議論をする大切な問題が三つくらい残っているが、こっちは上がるわけです。医療労働者百万といわれているでしょう。それ以上プラスアルファでしょう。その生活費を見てやらなければならぬわけですよ。この医療従事者については非常に無視されているんですよ。そうして医者の場合の技術料が賃金の中に入ると思いますから、そういうものは上がるべきなんですよ。それは標準報酬の賃金の引き上げに見合って、こっちは当然に上げるべきなんです。ある程度の上昇というものは、中身はいまあるのです。それが原則なんです。いまのような矛盾をかかえた制度の中では、国民の立場から納得できない問題は、薬剤投与の問題その他ありますけれども、原則はこれでいいわけです。
もう一つ、保険料を値上げをする場合は、家族手当の給付率を五割を六割、七割にするという給付の
改善の場合には保険料の負担率は上がってもいいわけです、原則としては。生産手段を持っていない場合は傷病手当を出すとか、そういう給付の
改善を伴っている場合にはこれはいいわけですよ。もちろん、短期的には医療費の問題と関係ありますよ。ありますが、私は原則を言っているのです。その原則はそういうふうに立てておかないと、弾力条項でも何でもないということになる、白紙委任状になる、国会でチェックできない、そういうことは原則に反するから。国民の立場から見たらそうです。あとから議論する問題を含めてそうです。私はそのことを言っているわけです。
そうすると、医療費の値上げの問題は公共料金の問題ですけれども、私はある場合は賛成だと言ったのはどういうことかといえば、毎年ある程度上げなければならぬという、これは堀君も議論されたとおりです。だけれども、こっちと弾力条項、保険料率を上げるごととリンクいたしましたら、保険料率というものはずっとベース改定とリンクされるから料率は上がってくることになる。こっちも上がってくるということになると、上がる内容について国民が分析をしてみて納得できるような措置をとらなければいかぬということになる。ですから、私が言っておる二つの原則というのは、厚生大臣いかがですか。
-
○斎藤国務大臣 初めの原則はわかるのですが、それと弾力条項になってくると、ちょっと私わかりにくくなってくる。と申しますのは、たとえば医療従事者も、給料がただ春闘その他によってそれに応じて上がってくるというだけでなしに、医療従事者の数も御承知のように非常にふえてまいる。医療従事者が足らないというんで医者、
看護婦その他の医療従事者も年々増すようにいたしておりますが、これは数がふえてまいりますということが一つ。そのほかに医療従事者の給料のふえ方というものは、中小企業の労働者の賃金の上げ幅だけでいいかどうかというと必ずしもそうでない場合もある。また、中小企業の賃金の増加のしぐあいと総医療費の増加のしぐあいと、そういう中で、あるときには一方が多くなれば、あるときにはこうということもありましょう。
そこで、単年度間の赤字を出さないというためにはやはり弾力条項は必要ではないだろうか。弾力条項を発動いたします場合には、事業主も被保険者の代表も入って内容を分析して結論を出してもらうわけでありますから、ただ役所でこうだということだけでやるわけでないので、十分分析してもらう手段もそろっている、かように思うわけであります。
-
○
大原委員 それでは大蔵大臣が見えたから……。いまの点は議論をしたことだし経過もあるわけですが、これはまた私は整理して議論しなければならぬ。社会保険審議会も、あなたのところの事務次官が出ている制度審議会も、あんな明快な答申をしているんですからね。私が言うように、いまの二つの原則を踏まえて——例外的なことはあるんですよ、あるんですけれども、そのことを言うておるわけです。そこでこの問題は、大蔵大臣が見えたからひとつたな上げにしておきましょう。薬剤の問題、薬務行政の問題、それから健康管理の問題を含めてこれはあとにしておきます。
これは赤字基調の問題と関連して非常に重要な問題だから、私がいま整理をしてあとで答弁してもらいたいが、つまり標準報酬は、春闘その他がすでにできているのだから、十月に改定して、保険料率は一定であっても保険財政の収入はふえるようになっている。わかりますか。もう一回言いますよ。標準報酬制度があるわけですね、上限下限の。それは賃上げが反映できるような仕組みで、十月に、上がった賃金に標準報酬を合わせるようにしているわけです。そうすると、千分の七十という率は一定しておりましても自然増収があるわけです。というのは、国民の立場で見れば、お医者さんや医療従事者のベース改定があるのですから医療費値上げは当然あるわけです。医療費値上げに反映するわけです。だから医療費値上げということは、程度はどうであっても、議論はしなければならぬけれども、反映すべきなんです。これは原則なんです。ただ問題は、医療費が赤字が出たからといって、医療費の値上げの問題と関連をして、標準報酬でなしに料率のほうをこれにリンクさせると赤字基調を背負うことになるし、あるいは医療費の値上げをすぐリンクすることになれば、医療費は上がることだけなんですから、千分の七十が八十になり九十になるという方針を変えないではないか。だからこっちとリンクするのはいいけれども、こっちとリンクするのはおかしいのであって、こっちの場合は、赤字基調の問題は、いままで私が議論いたしましたような問題を議論いたしましてそうして総合的な納得できる対策を立てるべきである。私のいままでの議論はこういう議論なんです。
そこで、時間が限られていることですから、まず大蔵大臣に見解を聞くわけですけれども、いままで議論した中で、公的医療機関の独立採算制というのは、私はスモン病、キノホルムの例を申し上げたわけですけれども、いまのように難病とか奇病とか原因がわからない、原因がわかっても治療法がわからないとか、社会的な病気が非常に多いとか、環境の破壊が健康破壊につながるような、疾病構造が高度成長の中でどんどん変わっているような時代における独立採算制ということで、薬剤の投与との関係では、公的医療機関等は、キノホルムの問題、スモンの問題が起きていることが示しているように、このけじめがつかないために国民の健康を内部から破壊する要因にもなっているわけだし、採算をとるために薬剤をたくさん使うということで、よく人が言うけれども、公的医療機関のほうがむしろ薬剤をたくさん出しておって、ピルの袋を一ぱいかかえて帰るようなのがたくさんおる。これは点数のきめ方その他いろいろな矛盾がありますよ。ですから問題は、そういう観点からいうならば、公的医療機関の独立採算制というものをはずしていって、そして公的医療機関は、治療だけでなしに研究もやる。私的な医療機関はできないですから、公的医療機関がやる。あるいは治療のしかたにおいても、採算ベースを無視したような頭の切りかえをすることが、保険財政に影響するだけでなしに国民の健康管理に対して責任を負う道ではないか。公的医療機関についての独立採算制をはずすことは予算を伴うことである。
医療保障をどうするかということである。社会保障の長期計画をどうするかということである。年金の問題と同じように賦課方式と同じように頭を切りかえる問題である。そういう問題の一つを、こういう議論の機会に大蔵省当局も、政府全体として——厚生省は、私の原則については実態はそのとおりであるということを言っておるわけですが、大蔵省としてもそのような決断をすべきではないかということです。いままでの政府
委員や主計官の答弁は、問題はよくわかっております、調査いたしております、検討いたしております、こういう議論ですが、いまの問題は、ことしだけではなしに、将来の赤字基調の問題を議論し、国民の健康をどう守るかという問題ですから、この問題一つをとってみても、切りかえる問題があるのではないか。政府
委員だけの答弁では限界があるだろうから、大蔵大臣の見解を聞きたい。
もう一つは、公費で負担すべき健康管理とかその他の新しい部面ができている。医療の問題は治療だけに狭く解釈してはならぬというのが政府のいまの基本方針でもあるし、私どもの考え方でもある。予防、健康管理、社会復帰、そういうものを総合的に一貫して考えるときに、健康管理の問題とは保健所の問題を含めて、政府は制度を整備して、健康管理という区画整理をやらなければ、病気について国民が納得できるような医療機関から治療を受けることができないじゃないか、こういう二つの問題があるわけです。そこで私は、大蔵大臣がこの問題にこの機会にどう取り組まれるかということについて、ひとつ見解をお聞きをいたします。
-
○水田国務大臣 この公的医療機関のあり方については、今度の予算で調査費を計上して、いまおっしゃられたような問題がございますので、この問題はやはり私どもは徹底的に調査する。そして、できるならば来年度の予算編成までに結論を出したいということを考えております。
-
○
大原委員 これは日本の医療制度にとっては非常に重要な問題です。疾病構造が申し上げたようにどんどん変わっている中で、一億人は何らかの病気を持っていると感じているようなときですから、治療だけを保険にまかせておいて、ここで赤字の問題を議論するだけではいけない。予防とか医療、健康管理、社会復帰とか、全体を医療として議論すべきだ。保険でやるべき問題はこれである、国がやるべき問題はこれである、こういう点を明確にしなければならぬ。そのためには、保険とか公的佐渡機関のあり方とか、その経理のあり方について、やはり発想を変えて長期的な計画を立てるべきだ、社会保障の水準をどうすべきかということを、年金の問題と一緒に立てるべきである。水田大蔵大臣、これは年金の問題と一緒に積極的にやってくださいよ。あなたに期待するところは大きいわけですよ。いかがですか、もう一回。
-
○水田国務大臣 この各機関の赤字、最近はほとんど赤字はみんな国の責任で、国の施策が至らなかったために出た赤字であるから、国が当然これは決済すべきだという議論が普遍的になっておりますが、それならば、国が全部の施策を直営でやればいいということになるわけですが、そうではなくて、ちゃんと保険制度でやるべきもの、そうでないものというふうにはっきり制度で規定してある問題でありますので、したがってこの給付も掛け金も保険料も、これは保険制度の中で赤字を出さぬように行なわれるというのが制度の筋でございますので、その場合に、やはりこれは当然国が負担していいというようなものがほんとうにはっきりされるのなら、私はそれは望ましいことであって、当然国がその責任を持って負担をしてもいい問題でございますし、そこらが区別されることができるのなら、私はいいことだと思います。そういう意味におきまして、いま言われたような公的医療機関などの問題で、いろいろ赤字をつくっている原因がそういうところに相当多く存在しておるということでございましたら是正しなければなりませんし、是正できないという限りにおいては、やはり政府が負担することの合理性というものが出てくると思うのですが、これがあまりはっきりしないんで、赤字は全部政府が負担するんだ、しかもこれは保険制度でありながら、この保険計算に基づかない政府負担をいたずらに多くしようという方向はとにかく好ましいものじゃございませんので、いま言った政府がやるべき仕事のほうは、調査費をもってもこれはやりたいと思います。
-
○
大原委員 いままでの議論を全部やるわけにいかぬですけれども、つまり無医地区、僻地でお医者さんを——あなたは知っておられますか。お医者さんを病院に雇う場合に、五十万円では雇えなくて、実際に七十万円の収入がなければお医者さんは雇えぬというところが多いのです。それから都市の場合は、夜は無医地区になる、こういうのです。救急医療はどこが責任を持つかということになるのです。救急医療の問題あるいはスモン病その他の問題、難病奇病の問題、社会病の問題、たくさんあるわけです。ですから、そういう問題を処理するのはどこがやるのか。保険料だけは皆保険で税金並みに取っておいて、そういう問題はどうするのだということがある。そういう問題の中には、新しい近代的な病気の中には、治療だけではいけない、研究をやらなければいかぬ。一時的には私的医療機関でできるけれども、究極的に責任を持つのは公的医療機関でなければいかぬ、こういう問題をとにかくたくさんの問題点の中で議論したわけです。ですから、公的医療機関の責任はどうするかということを考えた場合に、考えを切りかえてもらいたいのは、いままでの公的医療機関については、赤字が出たならばそれをぬぐうておる、補てんをしております、こういうあなたの答弁ですが、これはいまのところではけっこうなことでしょう。当然のことでしょう。しかし、そういうことであと始末をするというのじゃなしに、公的医療機関はどうあるべきかということで、新しい観点に立って、国民の健康を守るという観点で区画整理をしていくならば、公的医療機関の任務づけが明確になるだけではなしに、保険財政にも直接間接に大きな影響があるのではないか、こういう議論です。議論だけはおわかりになりましたか。
-
○水田国務大臣 そのとおりだと思います。保険会計に相当な影響を与えることでございますから、公的医療機関の問題について十分調査費も計上してあるわけでございますから、これは十分調査して対策を講じたいと思います。
-
○
大原委員 あなたは非常にまじめに受け答えされるから、私もそのことは理解して進めている。そして、できるならばあなたが総理大臣になってもらいたいと思うくらいです。ほかの方なんかは、大体あまりにもふまじめきわまるのが多い。
そこでもう一つ。いままで議論しましたことで、ぜひ大蔵大臣、いま健康管理ということが非常に重要になっている。各保険制度がばらばらになっているのですが、一番健康管理に手が届いていないのが政府管掌なんです。国民健保は市町村がやるのです。組合健保は事業主が保険財政では一対二の負担等でやるわけです。そこで問題は、このこと自体が、あとで厚生大臣と議論いたしますが、赤字問題で一ぱい大てんぷらの資料を出している、これはいまばれてしまったけれども。あとで議論いたしますが、いまの保健所は、非常に大切ないい法律ですよ。しかし、保健所は占領軍の命令でできてきたのですが、建物も内部も全部空洞化しているのですね。健康管理の役目を果たしていないのですよ。健康管理というのは区画整理ですよ。治療と密接不離の関係ですから、私どもの考え方は、開業医の皆さんにも出来高払いでなしに、固定報酬を導入して健康管理をやってもらいたい。しかし保健所をぴしっとしてもらいたい。経済企画庁長官は外遊中ですが、経済企画庁の新々五カ年計画の中にもぴしっとこれは入れてもらいたい。公的医療機関を独立採算からはずす問題と一緒に入れてもらいたい、こういう議論を私たちはしているわけです。この趣旨はおわかりになりますか。
-
○水田国務大臣 これは健康保険と関係のない予算の問題でございますので、これは予算措置を考えればいいということであろうと思います。
-
○
大原委員 いいのはいいのだけれども、なかなかできておらぬということです。ますます悪くなっている。それで現在の要請と離れていっているわけです。なるお医者さんもいないのです。
そこで問題は、大蔵大臣のあとでお聞きしたいのでありますが、文部大臣、あなたにも質問いたしますが、その前に厚生大臣、昭和四十年から四十二年ごろに医療問題をずっと議論してきましたが、最近、社会問題となっております私立医大と歯科医大の設立の問題です。一千万円も二千万円も三千万円も出さなければ医者の学校に入ることができない。優秀な適材を入れるという制度にならぬようになっている、だんだんと。
医師の需給計画その他についての大蔵大臣その他の大臣との議論は端折っておきますが、
医師の養成とか医療担当者の養成、
看護婦さん、保健婦さん、その他検査士も含めてそうですが、私は学校教育の体系の中でぴしっとやって、必要な教育費は国が出すべきである。その一つの原則として私どもが主張いたしておりますのは、いまはないところの十五の府県には即時計画的に国立のそういう医療従事者の養成機関を総合的に設けたらどうだ。それはお医者さんや歯科
医師だけではない、薬剤師や検査士、作業療法士その他も含めて、今日医学が進歩するにしたがって仕事は分化し専門に分かれていく、そういう面があるわけですから、そういう
医師の養成について厚生省はいまの医療改革の方向から発言すべきである、厚生大臣の発言を保障すべきである。
いままであなたは二回ほど厚生大臣になられておるけれども、どういふうに発言をしてきたのか、あるいはそういう需要に、厚生省の意見が反映するそういう政府全体のシステムになっておるのか。これは真接赤字の問題と関係ないとはいいながら、保険料を上げる際には、供給の面としては欠くことのできない面ですよ。勤務
医師を採用する際に、私は先般兵庫県へ行ってお医者さんに聞いたけれども、いま百万円というところもある。それでなければ私立の医大——阪大に入るのに不正入学があった。あれは試験問題を盗んだものを、ブローカーがおって一千万円か五百万円で売ったらしい。それにしても入るのに金がかかる。長い間金をかけて研究しなければならぬということ等でそういうふうにいわれているわけですね。ですから教育に金を注ぐということは、保険料負担と保険の倫理との関係があるのです。倫理の基本にかかわる問題だと私は思う。この問題を放置しておいて、そういう
医師の供給の目標を立てないでおいて保険料を上げるだけではだめじゃないかという議論は、国民の立場から見れば当然じゃないか。厚生大臣はどういうふうに関与をされてきたのですか。
-
○斎藤国務大臣 ただいままでは制度的に厚生省が特に関与するという制度がないわけであります。最近になってやっと、医務
局長を医学部を設置する場合の審議会の
委員に入れてもらって、制度的にはそういうつながりができておる。実際の運営といたしましては、閣僚の一人として文部大臣にいろいろ意見を述べ、また協力を願っているわけであります。しかし私は、本来医療行政と医療従事者の養成というものは密接不可分でありますから、将来制度的に担保される必要があるのじゃないか、かように考えて、いま諸外国の、たとえば医療従事者の養成というものとそれから一般の文部教育というものとがどうなっているかも調べているわけでありますが、まあ私の知っている限りでは、むしろ医療従事者の養成は、医療を担当する省に大きな責任を持たせるという考え方を推進してまいる必要がある、かように考えております。
-
○
大原委員 厚生大臣、もう一回文部大臣に質問する前に伺います。
つまり、
看護婦とか准
看護婦とかいうのが非常に不足しているのですよ。非常に供給の質が悪いのですが、それをいままで病院が負担しているのですよ。それは従軍
看護婦を日赤が負担して供給したときと同じなんです。その伝統が残っているのです、ナイチンゲール精神で。いまは名前だけ残って、ナイチンゲール精神はないけれども、しかし病院が負担しているのはおかしいですよ。それでなくても独立採算とか赤字の問題が議論になっているときに、若干の手伝いのメリットはあるにしても、やはり分化した教育機関があって——こちらがそっちへ出ていって教育する場合はそういう制度をつくればいいのであって、その問題を含めてどういう医療担当者を養成するかということについては考えなければならぬし、作業療法士や理学僚法士、検査士その他放射線技師等たくさんあるけれども、これも各種学校にちょっと毛がはえたくらいのところでやるということでなしに、ぴしっとそれにふさわしいようなことをやることが医療の中身を充実さすことになるのではないか。分化と総合という両面を統合するのではないか。病院経営の財政に関係することではないか。そのことを私は、厚生大臣も文部大臣も、大蔵省を含めて政府全体で協議すべきではないかと思うが、文部大臣いかがですか。
-
○高見国務大臣 予算分科会で
大原委員の御意見をいろいろ伺っております。私、全く同感であります。
この問題は厚生大臣とも寄り寄り相談をいたしております。いま国立の医科大学をつくるということになりますと、総定員法で定員が大体千人であります。その割合で申しますと、ここ二、三年の間で総定員法はパンクするという状態になるわけであります。そういう観点から申しますと、国立の医科大学をふやすということが実際問題としてできるかということになると非常な困難を伴うのであります。伴うのでありますけれども、これはやらなければならぬことだと思っております。
そこで私は、厚生大臣の国立病院を国立大学の教育関連病院として利用してみたらどうだという御意見を、非常に貴重な御意見として拝聴いたしております。できるだけ国立病院を教育関連病院として、基礎教育病院の病棟数と申しますか、病室の数を減らすことによって、
看護婦などの需要をあまり多く要らないようにするというようなことを考えることが、やはり国立を中心に考える場合には非常に必要なことじゃないだろうか。ことに、御指摘のような医療技術者の養成につきましては、ことしも国立で金沢大学に短期大学をつくることにいたしました。けれども、これではとても間に合いません。間に合いませんから、やはり各医科大学にそういう医療担当の技術者養成の機関を、各種学校並みのものでない専門の養成所をつくらなければならぬと考えております。私、先ごろもお答え申し上げましたように、一千万も二千万も、場合によれば三千万も出して私立の医科大学に入っていくというような状態で日本の医療水準が維持できるものではないと確信をしております。できるだけこれは国公立でやるべきものであるという考え方に立っておることは、先ほどお答え申し上げたとおりであります。
-
○
大原委員 いま私は質問しなかったのですが、大臣から答弁になったのですが、大蔵大臣、大学の付属病院というのは、講座制その他で閉鎖的でかなり議論があるのですね。ですから、各都道府県その他で国立や県立等の国公立の医療機関を基幹病院にしまして、定員もきちっとやっておいて、付属病院はそこの部長とかそういう者が教授と分担して医学を教えるというふうにする。そのためには、外来なんかはもう三時間待って三分というようなことは整理をして、診療所、開業医のほうにある程度ぴしっと区分けをしていく。そして、そういう公的医療機関というのは、採算を度外視した、研究を含めて、僻地の
医師の確保を含めて、あるいは大学のそういう
医師等を含めて、そういうものの一つの病院にしていくというふうな考え方等、考えをできることで切りかえる問題も私はあると思う。
それから私は、文部大臣にそういう持論の上に立ちましてお尋ねをいたしたいわけでありますが、大体昭和四十二年ごろから抜本改正の議論をしておって、それで私立の医大とか病院というものがどんどんできておりますね。昭和四十五年、六年、七年にかけてどんどんできておりますね。それは当時から高見文部大臣ががんばっておられて、われわれが議論してそういうことをチェックすればよかったが、あとの祭りというような議論もある。これはあなたの前任者の話であるけれども、昭和四十五年、六年、ことしにかけまして、私立の医科大学の設立の状況を、政府
委員でよろしいからひとつ答弁してもらいたい。
-
○安嶋政府
委員 医科大学でございますが、昭和四十五年度におきましては三大学、四十六年度におきましては二大学、四十七年度におきましては七大学でございます。この七大学のうち、三大学が四十六年度から引き続き継続審査になったものでございます。それから歯科大学でございますが、四十五年度におきましては二大学、それから四十六年度におきましては二大学、四十七年度におきましては三大学ができております。合計、医科大学が十二大学、歯科大学が七大学でございます。
-
○
大原委員 最近は近畿地方の浪速医大、あるいは北九州の医大等が問題になっておるわけですけれども、最近私どもが実際に手を入れて調べてみて、いま時間の関係で言わないけれども、一千万円や二千万円、三千万円というふうな入学金や帯付金というものに依存をして医大を経営しようという考え方、私立大学を採算ベースで経営しよう、営利の対象として経営しようという考え方は、これは
医療保障の問題、医療問題を議論していることから言うならば全く逆ではないか。これでほんとうに政府が赤字基調の問題、供給面で問題になる医療の問題について責任を持って対処する態度であるかどうか。あるいはほんとうに医療担当者の教育ができるのか。総合改革の根本の問題は、
医師の養成、医療担当者の養成が基礎だ、こういう議論があるのです。これは私は卓見だと思っている。日本
医師会の武見会長の議論については、やけくそのわからぬことがたくさんあるけれども、しかし私は、このことは武見会長の卓見だと昔から思っておる。実際はどうかわからぬですよ。だから、この問題のこれからの処理方針について明確にしないで、あるいは国立医大等について明確な方針を出さないで、医療の赤字の問題なんか議論したってこれは全くナンセンスですよ。
私は念のために聞いておくけれども、水田大蔵大臣が
理事長をしている私立医大がこの中にあるはずだけれども、それはどうなっているのですか。
-
○安嶋政府
委員 それは城西歯科大学かと思いますが、四十五年に認可されております。
-
○
大原委員 とにかくこの私立の医大とか歯科医大の場合に、たとえば前、藤原銀次郎さんが慶応の理工学部の藤原大学を設立したときには、私財をなげうって、それを基礎に設立している。入学金とか、父兄から取る寄付金とか、それから借り入れ金ですよ。私の調べたところによると借り入れ金だ。あとは採算をとって返すというのだ。そういうもので医大や私大をどんどんこういうふうに二十近くも設立をしていくというふうなことが公然と行なわれておるようなことで、ほんとうに医療の改革はできるのか、こういう議論は国民の側に立てば当然成立するじゃないですか。一体それはだれが責任を持ってやっているのかということですよ。文部省はこれから以後どうするのですか。この問題についても、内容を見ると良心的なのも若干あるけれども、全く財政的な基礎というのは、現在並びに将来の入学する子弟に対して負担をかけている。ひどいものになると、幼稚園に行っている子供から取ったりしている。そういうことで医者の養成や歯科
医師の養成をしておいて、そして一方においては抜本改正をやります、やりますというふうな議論は、それは聞こえませんよ、私どもは。そういうことはでたらめじゃないですか。
〔「文部大臣、何百万以上の寄付は許さないとか、具体的に返答してもらいたい。金持ちのぼんくらむすこばかり入れたのじゃしようがないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
-
○高見国務大臣 これはお話しのとおり、金持ちのぼんくらむすこからという不規則発言がございましたけれども、私もそういう感じがいたします。これは学校設立当時は、寄付金は一切取りませんという誓約書をとって認可をしております。ところが、残念なことには、学校というものは一ぺん認可いたしますと、この認可を取り消すということになりますと、学生という人質がおるのでありまして、ここに非常にむずかしい問題があるのであります。
それで私は、
大原先生に分科会でお答え申し上げましたように、認可方針を一段審査でなくて二段方式にしたいということを申し上げました。実は大学設置審議会のほうの総会を今月末に開きまして、文部省としての案をお示しいたしまして、御了解を得まするならば、その方針に従いまして、初年度は財政計画あるいは教授陣容の的確な計画を把握をして、これなら申請してもよかろうというものについて申請をさせ、次の年次においてそれがはたしてできておるかおらないかということを確認をした上で認可をするという形をとることが望ましいのじゃないかという考えに立って、いま設置審議会のほうへ御相談を申し上げておるところであります。基本的に申しますと、医療機関の
医師養成というものはあくまで国公立であることが望ましいと考えております。この点については、今年度予算におきましてもすでに三校の創設準備費を大蔵省に認めていただいております。年次を追いまして無設置県に医科大学の設置を進めてまいりたい、かように考えておるわけであります。
-
○
大原委員 私立大学を設立していけぬというわけじゃないです。これはいまの法律でできるわけですね。しかし、その基礎が明確でないものをつくったのでは、
医師の教育については、いままでの私立大学に対する援助、公共性を考えて補助をどんどんしなさい。これはもうやるべきですよ、医療改革の基本的な構想から。しかし新しくつくるものについては、四十五年、四十六年、四十七年と、私は一々全部あげてやってもよろしいが、具体的にそういう誓約書をとられると言うけれども、実際にはどうやっているかということをあげてもよろしいけれども、調べていったら、その中には、あなたが
理事長をやっている城西大学が出ているじゃないですか。ほかにもありますよ。だから、そういう問題は、具体的にやる、ぴしっと私どもは国民の立場から見てけじめをつけておいて、そうしてやらなければ、私は、医療改革などというのは、とてもじゃない、できやせぬ。できることをやらないというのはいけない。
私は最後に、大蔵大臣お聞きのところで、これからのそういう設立については、文部大臣の御意見にありました、そういう方針に従って、それはぴしっとしたものについてはもちろんよろしい、財政的に基礎がばんとあって、ほんとうの私学としてよい点が発揮できる点はよろしいけれども、事医療に関する、
医師の養成等については、やはりきちっとしてやっていただくということをお答えいただきたい。
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○高見国務大臣 お話しのとおり、私は、私立大学なるがゆえにいけないというふうに議論はいたしておりません。私は、私立大学の中にも、建学の理念とそれだけの資本的な裏づけがあってやろうとおっしゃる方については、ひとつこれは進んで認可をいたしたいと思いますけれども、残念ながらいままでの経過から申しますと、そうじゃなかったということを認めざるを得ないのであります。だから、審査を厳重にするために二段審査制度をとろうということでありまするし、望むらくは国公立の大学を未設置県に設置していきたいものである。これは単に
医師を養成するというよりは、地域の医療水準をあげるという意味から申しましても、国公立の大学があるということは非常に意義があるという考え方に立っておるわけであります。
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○
森山委員長 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。
午後一時二十五分休憩
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午後二時四十五分
開議
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○
大原委員 けさほどからの質問ですが、問題は、国内の新しい計画を立てる際の立て方、福祉優先、こういうのを具体的にどのように位置づけるか、こういう議論であります。これは厚生省側の意見も大切であるし、もちろん財政当局、財政審議会、産業審議会等の議論も受けて議論するわけですが、経済企画庁が経済社会発展計画をやり直r、やり直して新しい計画を立てる際に、けさほどから議論した問題で、大蔵省を含めて質疑応答した点について、あらましどういうふうな考え方で作業を進めておるのか。その作業はいつごろまでにでき上がるのか。この二つの点をひとつお尋ねいたします。
-
○矢野政府
委員 まず、この長期経済計画の改定の問題につきましては、昨年の春、経済審議会に幾つかの研究
委員会を設けまして、おおむね一年間にその研究報告をするということになっておりましたが、ほぼその報告が出そろいまして、今月の十二日に正式に各研究
委員会の報告が経済審議会の総会に出されまして、その際、各研究
委員会の報告をもとにして取りまとめたものを総会に出し、一般の参考にも供するために公表もしております。そしてこれからいよいよ計画作成の段階に入るわけであります。この点につきましては、おそらく二、三カ月後になるかと思いますが、経済審議会をもう一度開きまして、そこで政府として長期の経済計画についての考え方を出し、そして諮問をする予定であります。それから本格的な審議に入り、現在の予定では本年末までに新しい長期計画の政府決定をする方針で取り組んでおります。経済審議会の答申がいつ出るかは、まだいまのところきまっておりません。審議会の答申と同時にすぐ政府決定をするか、あるいはそこを切り離すか、この辺も中の議論が煮詰まっておりませんので、そこはまだきめておりません。いずれにしましても、ただいま申しましたようなスケジュールで進んでいくことになると思いますが、その間引き続き事務的には、経済審議会の
委員及び関係各省と連絡をとりながら問題の詰めをこれからやっていこうと思っております。
その場合の重点方針といいますのは、たびたび総理あるいは経済企画庁長官からも申しておりますが、ともかく発想の転換を必要とする。その焦点は、いままでは何といいましても経済の成長、所得の増大、これがいわば中心の課題であった。しかし、現在国民は、生産なり所得の増大だけでは満足しない。そういうことを通じて国民生活がよくなる、福祉が向上するということだけでは満足しなくなってきている。もう少し直接的に福祉の増大を目ざしていかなければならない。その場合、もちろんいろいろな問題があるわけでありますが、やはり大きな柱は、生活環境の
改善等を目ざすための社会資本の整備、社会保障の充実、こうしたところが特に重点になっていく、大体そういう方針でいま準備を進めております。
-
○
大原委員 社会資本の充実や社会保障の水準の引き上げという議論でありますが、問題はいままでの立て方、中期経済計画、経済社会発展計画、新経済社会発展計画、ずっとやってきましたけれども、いままで一番——その長期計画が全部一年くらいでインチキがばれたわけだけれども、計画が五年間も続いたことはないわけだ。それで、経済企画庁のあり方が基本的に問題になるのですけれども、しかし問題は社会福祉や社会資本の充実、社会保障の面からいえば、国民所得に対する振替所得の比率をどこに置くかということの中で、いま言ったようないままでの議論を盛り込んでいくかどうかということですが、そのワク組みをどうするかということですね。いままでは国民所得に対して大体二ポイント程度を上げていくのだということを五カ年計画ではずっと示して計画の中に入れてやったことはないわけだ。そういう非常に経済成長一本やりの計画であった。あなたのほうのことばをかりればだいぶ変わるように御答弁になっておるけれども、そういう裏づけがなかった。私どもは国民所得に対して少なくとも社会保障の給付費、振替所得で計算してもよろしいが、社会保障給付費でやるほうが通俗的であるから、そういう観点で言うならば、やはりわれわれがGNPに匹敵するように、先進国に匹敵するような目標に向かっているのだということを具体的に示すような裏づけのある政策をやらなければならね。具体的にはいままでの計画の欠陥を克服するに足るどういうふうな裏づけのある政策を厚生省に要請し、厚生省からも引き出し、あるいは他の省庁からも引き出していくのであるか、具体的な点をひとつお答えいただきたい。
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○矢野政府
委員 まず社会保障についての考え方でございますが、御承知のように従来の計画では、指標としては振替所得の国民所得に対する比率を二ポイント程度上げるということが数字として中心になっております。その後の経過を見ますと、振替所得そのものの伸びはおおむね計画で描いた線を行っておりますが、何ぶんにも経済の成長率がそれをかなり上回っていく、予想よりも上回っておりましたために、その割り算をした比率というのはどうもあまり上がっていないという結果になっております。
それで、今度計画をつくります場合、これから検討してまいることでありますが、検討するやり方としましては、単に国民所得に対する比率がどうかということ、これはむしろ結果において出てくることであろうかと思いまして、それを中心の指標にするというよりも、むしろ中身のほうが重要かと思います。たとえば年金につきましては、先生御承知のように、制度的には、これが十分その制度どおりにいく、若干年限がかかるわけでありますが、その場合には欧米等の水準にもほぼ近いものに、匹敵するようなものが描かれておりますが、ただその途中経過をどう考えるのか、そうした問題がかなり大きな課題になるかと思います。あるいは社会福祉関係につきましても、いろいろわれわれが目標にして考えるものに比べますと、かなり隔たりがあります。おくれております。それをどこまで引き上げていくのか。また、けさほど来御議論がありました医療保険の問題につきましても、十分御議論が行なわれましたようないろいろ問題を含んでおります。そうしたことにつきまして、今度の計画、何年計画にするかまだ最終的にはもちろんきまっておりませんが、五年かあるいは昭和五十五年を対象にしますと八年になりますが、その辺の考え方もまだ煮詰まっておりません。しかし、いずれにしても、十年なりあるいは場合によれば二十年なりの展望を描きながら、具体的には五年なら五年どうするのか、その辺につきましてはなるべく具体的な目標を立て、そのための対策もなるべく具体的に描きたいと思っております。もちろんこの場合に、ほかの社会資本整備につきましてもいろいろやらなければならないことが多いわけであります。それらにつきましてもやや長期的な展望のもとで、なるべく具体的な目標を立てていきたい。問題は、それぞれのいろいろやりたいことはたくさんあるわけでありますが、それぞれの優先順位をどう考えていったらいいか、この辺の検討がこれから非常に大きな課題になると思います。いずれにしましても、個々の問題につきましては実施官庁であります各省庁でいろいろ詰めていくかと思いますが、私どもとしましては全体の関連、特に福祉政策へ重点を志向するというそういう観点のもとで、重点になりますところは経済審議会及び各省庁と連携をとりながらなるべく具体的な目標設定と対策をそこに描き出してまいりたい、そういう方針でいま準備を進めております。
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○
大原委員 先般来議論していることですが、たとえば公共投資をやるといいましても、土地を確保するのになかなかたいへんなわけですよ。用地買収のために半分以上の金を使っているわけです。ある場合には、都市なんかでは三分の二以上の金を使っているわけですね。それはある意味で土地の値上げを通じまして土地成金をふやすだけであって、インフレを促進するだけになってしまうのですよ。それが法人の土地所有という形になって出てきているわけです。具体的な問題はいいから、あまり突っ込んだ話は質問いたしません。
そこで、たとえばこの間以来議論しているけれども、保健所というのは用地はあるのですよ。建物は荒廃しているのです。しかし、健康管理という面からは、懇談会を設けていろいろ議論いたしておりますけれども、これはいまや、占領直後にできたバラックですから、どこへ行ってみても木造建築です。そういうふうなものを五カ年計画等を立ててきちっと整備をしていく。それは、公害のGメンまでそこにおるのですからね。職員とかその他関心の深い者は一ぱいあって、衛生研究所等が併置されているのですけれども、それがいま機能していない。そこに公衆衛生や環境
改善の問題があるわけです。環境保護の問題があるわけです。ですから、これはかなり重点的にやるならば、用地等がかなり確保してあるわけですから、計画を積極的にやるとか、あるいは国公立その他公的医療機関の任務をきちっとやる。たとえば老人の専門病院とかあるいは老人住宅とか、老人ホームとかの問題、これは原健
三郎さんがあとをしっかりやれと言っておられますから。非常にありがたいことばであるかどうか知らぬけれども、まあやらなければいかぬようなことになっておる。だから、そういうこと等を含めてとにかく老人ホームあるいは保育所とかそういうもので、それをプラスアルファするような、拡大するような実のある政策を五カ年計画等で、施設の、社会資本の面でも社会福祉、社会保障関係の五カ年計画をきちっとつくらせるようにし、つくる裏づけをもってやっていく。
もう一つは、社会保障の中では年金と医療がやはり一番大きな問題ですが、医療の中では公共医療機関のいま申し上げた社会資本の整備と一緒に、公費負担の面についてどのように考えていくかということを、保険制度を生かしていくためにも、国費負担の面をきちっとするということがなければいけない。こちらの開業医なり診療所の主張を生かすという面においても、公共医療機関をきちっと整備しなければ、国民の立場から納得できないような面があるわけですから、そういう面を総合的に思い切って五カ年計画等で裏づけをして、そうしてその上に国民所得に対する適正な比率でヨーロッパに追いつき、追い越すような、そういう展望を持った政策の計画的な前進、総合的な前進を期することが必要ではないか。そういう面においては発想を転換して、道路とか住宅とか港湾とかという五カ年計画だけでなしに、この面における重点的な、戦略的なそういう社会資本の五カ年計画と、公費医療の問題等に対する総合計画をぜひとも新々経済社会発展計画に組み込むべきである、こう思いますが、いかがです。
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○矢野政府
委員 医療問題につきまして、それぞれ内容に関しましては、きょう午前中来の質疑応答、非常に傾聴しておりました。計画全体をつくります場合、やはり今度よくここで考えなければなりませんことは、一口に言えば福祉の増大、その場合にもちろん健康の保持、医療の充実ということ、それと負担の問題をどう結びつけていくか。いずれにしてもその関連性を明らかにしていくということが、これは医療問題に限りませんが、非常に重要な課題になると思います。その目標なりがはっきりしておれば、またそこに負担をお願いすることもできるかと思います。その辺の関連づけを明らかにしながら、あとどう選択するか。これはむしろ国民の選択の問題でありますが、そこの関連づけを明らかにした上で、最後にどうするかの結論に持っていくという、まだその段階に至っておりませんが、そういう準備をしております。その中でいまお話しのような点も十分考えていくべきことだと思います。
また、私どもが計画を立てます場合に、それぞれの点につきましては各省がいろいろプランを持っておられますが、やはりそれを総合するといいますか、関連する問題が非常に多いと思います。ただいまお話しの中でも、たとえば老人の生活の安定のことにつきましても、年金の問題もあるでしょうし、あるいは医療の問題もある、あるいは住宅の問題もある、あるいは老人の職場をどうするか、職場を確保していくという問題もあるでしょう。あるいはいまお話しのように、老人ホームのような福祉施設の問題もあるかと思います。それらのうちどの一つというより、それをワンセットにしてどう老人の生活を安定していくか、そういう角度からなるべく、各省に関連することでありますが、そこに一つの目標を描き、そのための対策を十分相互に連携をとれるようなものとしてつくり上げていきたいということで、そうしたねらいでいま検討を進めております。
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○
大原委員 いままで大蔵省や経済企画庁はよく言ったのでありますが、たとえば第四次防とかいうのは、計画はきまっておらぬでも予算をつけるわけだね。それから道路とか住宅とか、そういうものはぴしゃっぴしゃっとあるわけです、ある程度ウエートが重い、軽いは別にしまして。しかし社会福祉関係は、厚生省ひとつよきにはからっておけ、こういうことで、私生児的なのがあるわけです。大蔵省も、うんうん私生児なら見てやろう、こういうところがある。経済企画庁がやったって、大蔵省は平気でけ飛ばしたりするからね。いろいろ厚生省側の熱意の問題もあるでしょうし、実際の計画の中身もあるでしょうが、しかしそれはともかくとして、社会資本の関係、そういうものをきちっと計画的に整備していくんだという、今度は頭を変えて、老人ホームや老人住宅にしても大部屋主義で整備したのではしようがないのですから、今日の段階だったら一人一部屋の老人ホームをつくっていいはずですから、そういう発想を変えた計画というものをそれぞれ充実させていって、それを裏づけとして認めていきながら社会資本をほんとうに生活面に密着した形で充実させる、こういうふうに考え方を切りかえるというふうに考えてよろしいですか。
-
○矢野政府
委員 社会資本にしましても、あるいは社会保障に関連しましても、具体的にはいろいろな中身があるわけであります。たとえば社会資本にしましても、道路とか公園とか下水とかいろいろあります。私どもこれから全体の計画をつくってまいります場合に、あるいはそこへ福祉重点というねらいを盛っていきます場合に、一番問題なのは、それぞれの優先順位をどう考えていったらいいか。経済的な問題ですと、市場メカニズムの中で自然にきまっていく分野がありますが、福祉に関連する、あるいは社会資本とかこういう部面になりますと、自然のメカニズムできまるというルールがありませんので、どうやってその優先順位をきめていくか、基本的に、あるいは抽象的に考えますと、国民の選択の問題であり、その点に関して今度の計画をつくるための準備の一つとして、国民選好度調査というのを昨年予備的に実施いたしました。現在本調査を、全国一万四千世帯を対象にして、国民は何を望んでいるかという、一口にいえばそういう観点の調査もしております。それからすぐ機械的に出てくるわけじゃありませんが、そういうことも参考にし、そのほか幾つかの観点から、何か優先順位についての国民の要望する方向を描き出すようなものを何とかつくっていきたい、そういう努力をしております。これはなかなかきちっとした細部のところまできめるようなものができるとは思いませんが、考え方としましては、そうしたものをつくっていくということが重要だと思います。そういうものがありませんと、どこに重点を置くとか置かぬとかいっても、往々にして水かけ論になってしまう。非常に抽象的な言い方で恐縮でありますが、そうした方向にさしあたり非常に努力をしております。
そうしたことをもとにして、福祉の増大というものを具体的なイメージとして出てくるようなものに何とかつくり上げたいという考え方で取り組んでおります。どこまでそれがうまくいきますか、ある意味では新しいやり方でもありますので、必ずしもいま十分な自信を持っておるわけではありませんが、考え方としてはそうしたことで取り組んでまいりたいと思っております。
-
○
大原委員 たとえば午前中も議論いたしましたが、医療担当者を養成する、
医師その他を養成する教育機関にいたしましても、今後は厚生省の中で
看護婦の養成をやるという考え方でなしに、
医師やその他を含めて医療担当者を学校教育法の体系の中でもやる、その際は学校教育法というのを文部省だけに矮小化しないで、他の省にまたがっておる面については厚生省の計画の中でやっていく、こういうことがないと実際のニードに沿うたようなことにならぬで総花的になってしまう。それではこういう特殊性、特殊な任務を持っておる大きな大切な面が抜けてくるということもあるわけですから、だから厚生省の計画とも関係があるし、病院の構想だって変えるということになれば、どの省かということになれば非常に大きな問題だし、これは文部大臣自体が病院の管轄というものを医療機関の関係に回すべきだという議論すら言っておるのです。ですから、そういうことについてもやはり発想を変えてやっていかなければ、やはり私立大学なら私立大学、大学なら大学の設置のワクの中だけでこの問題をやったならば、いまあなたがお話しになったような福祉優先とかそういうものはできないじゃないか。そうすれば、医療の改革というものは国民的な合意の上にできないじゃないか、こういう面があるのじゃないかと私は思うのです。ですからそういう面においてはかなり急ピッチの改革にいたしましても、計画立案過程にいたしましても、そういう問題を計画的にやらなければ、計画の領導性というか、イニシアチブは私はないと思うのです。結果としては矛盾を拡大するだけになる、こう思うわけです。したがって経済企画庁の立案やあるいはこれが実施についての権限自体の問題もあるのですが、私は福祉優先とか社会資本の充実とかいうふうなものは、ほんとうにそういう目標に従って体制を整備することだと思います。したがって、この問題については特に要望しておきます。
それで、その新々計画というのは、先ほども言いましたけれども、二、三カ月という話もあったが、いつごろでき上がるのですか。
-
○矢野政府
委員 先ほど申し上げましたが、年内に政府決定をする方針で取り組んでおります。
-
○
大原委員 厚生大臣、来年度の予算編成との関係はどうなるんですか。
-
○斎藤国務大臣 来年度の予算編成に間に合うように新々計画もつくってもらいたいのでありますが、いま年度内にというお話で、大体並行していくということではないかと思います。
-
○
大原委員 これを先に取ったからといって、先取りだといって四次防みたいなことは言いませんから、安心してやったほうがいいですよ。それは福祉優先ですからね。
それでは、次に質問を進めてまいります。ことしの四十七年一月二十二日に、中央社会保険医療協議会が斎藤厚生大臣に対しまして答申を出しまして、診療報酬の改定、薬価調査、第三は製薬産業に対する指導、こういうことがあったわけであります。私はやはりこの際、いろいろな問題について頭を切りかえる必要があると思うのです。診療報酬の問題を論議する際に、いまのような薬価調査、薬価基準の設定のしかたから、点数の問題から、製薬産業に対する指導の問題がある。私は、この問題についてはしばしば、特許法の改正のときも議論したわけですが、OECDでは原則として特許法は製法特許だけでなしに、物質特許を併用しているわけですね。ということは、物質特許で、届け出ができて簡単に模倣薬ができない、類似薬ができないような仕組みにしているわけですね。しかし、これを絶対、一生独占にするということになれば、技術開発の結果というものが普及しないという面もあるかもしれないけれども、日本のように類似薬を簡単につくれるような仕組みであったならば、これから自由化の激しいときになってくると、外国製薬資本の植民地になる、そういうおそれもあるわけです。ですから、日本の製薬企業の体質
改善を議論する際には、いまの製法特許を物質特許に変えるということについては、ぜひとも、従来方針を示したわけですから、具体的にどうするんだということを明確にすべきではないか。この点について、いままで議論をいたしたことがあります。特許法のときも出てまいりまして議論いたしましたが、いままでの経過と現在における見解をひとつ示してもらいたい。
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○井土政府
委員 物質特許の問題につきましては、昨年の八月、工業所有権審議会に諮問いたしまして、制度改正部会におきまして審議を開始をいたしております。以来、現在までに四回審議を重ねておりまして、物質特許の功罪あるいはこれを採用した場合の影響等につきまして現在審議をいたしておりまして、この審議の結果を待ちまして、物質特許制度をいかなる制度を考えるかという検討をいたしたいと考えております。
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○
大原委員 それは大体いつを目標にやっているんですか。
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○井土政府
委員 制度改正部会の審議は一応四十八年一ぱいに終えていただきまして、その段階で中間報告を出していただきまして、これを一般に公表いたしまして、これは制度の抜本的改正になりますし、社会的影響もかなりございますので、一般の意見を聞きながら最終的な改正案をまとめてまいりたいと考えております。
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○
大原委員 やはり技術開発について投資をするということは必要でありますが、しかし投資しましても、すぐ類似薬が出る。いま、行政上の措置で二年間を三年間に延ばしたわけですね。しかし、延ばしましてもすぐ模倣する。大体二、三年かかって宣伝しておいたならば、すぐちょっといじって類似薬が出てくる。それを申請したならば、さっと薬価基準に登載されて、実際八千もお医者さんや病院なんて知っているわけはないから、結局メーカーの売り込み競争できまっていくということになる。厚生省、そうでしょう。医務局も知っているけれども、いままであった佐賀県の藤川というお医者が、保険薬に採用されていない、薬価基準に登載されていないニクビタンというのをすりかえて使っておった、そうすればばく大なさやかせぎができる、そういうことはある意味ではいま、私どもの資料でも、やっているのじゃないのですか。薬価基準に登載されて、類似薬は大体ビタミンB1と書いてあって、それに近いようなものをすりかえてやってしまう。こういうことをやれば、現品添付は制約を受けておりますけれども、できるわけですね。ですから、特許法だけの改正ではいけない、やはり薬事法の改正をしなければいけないけれども、これからの研究開発は、副作用の追跡、そういう問題について、やはりメーカー責任が大きいわけですから、その責任に対応するような技術に対する保障措置をとる、そういうことが良心的なメーカーを育てることになって、悪貨を駆逐していくということになる。いま一番の問題は、良心的な
医師が悩み、あるいは良心的なメーカーが行き詰まる、こういうことではないかと思うのです。ですからそのポイントは、かなりのコンセンサスが要ると私は思うけれども、やはり特許法を物質特許に変えていくことが必要である。従来の討議を言うならば、二カ年間の準備期間を置いてやるということだった。これがあまり進んでないというふうに思うけれども、その間のいきさつはどうなんですか。
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○井土政府
委員 従来は製法特許しか認められておりませんでしたので、物質特許は制度の抜本的な改正になります。現在物質特許が認められておりませんのは、医薬のほかに化学物質及び食品がございまして、この三者を一本にいたしまして、現在工業所有権審議会で御審議をいただいておるわけでございます。したがいまして、この問題はきわめて抜本的な改正になりますし、関係する産業界あるいは国民生活も非常に広範にわたりますので、慎重に御検討をいただいておる次第でございまして、やや時間を要しますが、時間をおかしいただきたいと考えております。
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○井土政府
委員 やるとした場合にはどういう方法でやるべきか、あるいはやった場合の具体的な問題について十分に御審議をいただきたいということで、諮問をいたしておるわけであります。
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○武藤政府
委員 物質特許の問題につきましては、十年くらい前にはいろいろ消極論もございましたけれども、現在では、関係業界並びに私ども事務当局は、この問題については積極的に前向きに検討したほうがいい、こういう態度でございます。
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○
大原委員 それでは、産業政策との関係もあるし、それから大蔵省の為替管理とも関係あると思うのですけれども、自由化の問題とも関係がある。医薬産業に対する自由化の要請がアメリカやヨーロッパからあるのです。というのは、資本の自由化の問題ですが、これは主計局とは直接の関係ではないけれども、これは銀行局だったと思いますが、これは厚生省の態度について聞きたいのです。
とにかくこの自由化の要請、資本の自由化の要請がある。日本ぐらい薬を申請して許可が簡単におりて、使えるところはないわけです。たいへん薬好きの国民で、薬であればもうかるような、そういう仕組みになっているわけです。それがどっと入ってきて、資本まで入れてきて、そうしてこの薬価基準のこういう仕組みの中に入ってくる、あるいは一般の販売の中に入ってくるということをやるならば、技術が保護されていないから、あるいは許可が非常に簡単であるから、類似薬が簡単に出せるから、あるいは外国ではなかなかきびしい条件があるのに簡単な手続でやれるから、そこで日本においては、薬価基準がやたらにふえて輸入業者等が殺到し、外国資本が殺到する、こういうことになっておるのではないか。したがって、自由化の問題についても、いまフィフティー・フィフティーですけれども、五〇%までの資本の自由化は認めていると思うが、これを一〇〇%にしろという外国からの圧力が当然ドルの問題に関係してあるわけです。私はこの問題とも関係があると思うのです。私がそういう知識が足りないということになれば別でありますが、私はそれは関係があると思う。国内において開発した技術、あるいは許可その他が慎重であるということになれば、外国で副作用があるかないかわからないようなものをここでテストするというようなことはないはずですし、それから一方では、日本においては、メーカーは技術開発について資本投下して力を入れるならば、日本でつくったものは外国で売れる。いまはほとんど売れない。こういうことで、GNPが幾ら大きくなっても、国民はそういう経済とは質的に縁がない。逆の面が出てくる。こういうことですから、自由化の問題についても、私はこれから当然外貨の問題と関連してあると思うのでありますが、これについては厚生省はどういうふうにお考えを持っておりますか。
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○武藤政府
委員 昨年の夏に、先生の御指摘になりましたような問題も、五〇・五〇の原則が現在残されたわけでございます。その当時におきましても、やはり日本の製薬企業は体質が弱い。新薬開発能力が少ないということで、やはりその問題を解決しないと、この問題については積極的になれない、こういう態度でございます。したがいまして、この問題につきましては、研究開発能力の強化なり、あるいは物質特許の問題、あるいはその他の流通制度の問題等、自由化体制に対処できる体制を整えないと、私どもは消極的な考え方でございます。
-
○
大原委員 このことに関係をしまして、薬事法の改正をすべきだという議論をしばしば議論したことがあるのです。
まあ、薬効調査をしておるわけですが、これはどういう見通しかということも聞きたい。薬効調査の結果はいつ出るのか。それから順次どう出ていくのかということも見解を聞きたい。それから薬事法を改正して——いけない薬はもう取り消しの方法がないと思うのです、日本の法律では。自主的に製造や販売を禁止させるだけになっておる。だから、そういういけないということがわかったならば、疑わしいものがわかったならば、これは許さないというふうに、許可を取り消す、こういうことも薬事法改正で必要ではないか。
以上の点について、まず……。
-
○武藤政府
委員 薬事法の改正問題でございますが、先生御指摘のように、現行の薬事法では、医薬品につきましての取り消し権あるいは販売停止権、回収権等の明文の規定はございません。しかしながら、問題が起きた場合には、私どものほうで法律があると同様の措置をとって、その後の問題がないようにしているわけでございます。この点につきましては、現在薬事法の改正は、なかなかこれはいろいろ問題点が多うございまして、そういう問題も含めて現在検討をしておるのでございます。
それから、ちょっと質問されました薬効問題につきましてお答えいたしますが、これは昨年の十月に薬事審議会に大型の薬効再評価特別
委員会というものを設けまして、その下に薬効群の調査会を設けて、現在調査検討に入った状態でございます。現在までに四調査会が設けられ、近くまた三調査会が設けられます。約二千の医薬品につきまして現在検討が行なわれております。この問題につきましては、約四万の医薬品が現在市場に出回っておりますが、これにつきまして五カ年程度をもって薬効の再評価を終了したい、こういう計画でございます。
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-
○武藤政府
委員 四十六年の秋に始まりましたので、五十年に終わる予定でございます。
-
○
大原委員 その際には薬事法を改正しなければいかぬでしょう。
-
○武藤政府
委員 必ずしも薬事法を改正する必要はないと思いますけれども、当然その問題も検討したいと思っております。
-
○
大原委員 薬事法の十三条であると思うのですが、その製造所や薬の販売業者についての許可の基準です。許可の基準があるわけですが、アメリカの薬の製造所は、たとえば設備や構造や環境の基準をきちっときめておる、一つは。それから、試験担当者の資格要件もきめておる。また研究費や副作用の追跡についても、追跡の能力や設備があるかどうかの問題も許可条件にしておる。日本は歴史的に零細な企業が多いということもあるのですが、販売薬や配置薬やその他のことであるわけですが、福井や富山や滋賀から奈良のほうへかけてずっとあるわけでしょうが、しかし、いまや医薬品の問題を扱う場合には、いままでの考え方で、漢方薬的な伝統と考え方で扱うことは、これは許せないのではないか。中小企業の対策という面は、企業の合同やあるいは協同組合化等によってやるとしましても、やはり新しくそういうことについては十分な、製造、販売についての資格がないものは、製造所としては一定の期限を設けて、この目標を示しながら、法律の中身を改革することが必要なのではないか、こう思うのですが、これは、私が考えておることについて誤りがあれば指摘をしてもらいたいし、これに対する考え方を明らかにしてもらいたい。
-
○武藤政府
委員 薬事法には、先生御指摘のように製造業につきましての許可基準というものがございます。これは、具体的には省令に詳細に書いてあるわけでございますが、たとえば一般的な製造所、それから注射剤を製造するところの基準、それから生物学的製剤をつくるところの基準、その他いろいろございます。先生御指摘の点は一般的な製造所の問題を御指摘になったと思いますが、この点につきましては抽象的でございまして、いまアメリカの例示をあげられましたような問題とはちょっと異なっております。
御指摘の、たとえば新薬の開発に重点を置くとか、あるいはいろいろの厳重な検査ができるようにする。そういう点の問題につきましては、現在の製造業を見ますと、非常に大きなものから小さなもの——むしろ小さなものが非常に多いわけでございますが、こういう点につきまして、この設備基準というものをもう少しきめこまかく、あるいは類型的に考えていくべきではないか、あるいは開発の能力、あるいは動物実験等の薬理実験等も行なえるような状態に、いろいろ基準をきびしくする必要があるのではないか、こういう意見も昨今出てきております。こういう点につきましては、私のほうとしては、やはり積極的に取り組む必要があるのじゃなかろうか、こういう考えでございますので、この方向で研究を進めたい、かように考えております。
-
○
大原委員 漢方薬とか化学物質による薬品ですね。そういうものはおのずから取り扱い方が違うのがほんとうではないのか。この点も何も一緒にして扱っているというのは、これはどちらも中途はんぱになるのではないか。いかがですか。
-
○武藤政府
委員 私がいま申し上げましたのは、規模の大小の点は申し上げましたけれども、そういうものも漢方薬あるいは家庭薬的なもの、薬の性質によってももう少しきめこまかく製造基準というものをつくる必要はあろうかと思います。現在ではあまりにも、先生御指摘のように、一般的過ぎる。もちろん注射剤とか、あるいは生物学的製剤とか放射性医薬品とか、そういう問題につきましては特別の基準を設けておりますけれども、先生御指摘のような薬剤の大方の類型的なものに必要な構造設備基準あるいは実験設備基準、こういうものが必要ではなかろうかと思います。
-
○
大原委員 サリドマイドとかキノホルムもそうですけれども、ずいぶん医薬品による事故ができておるわけですね。これは分業の問題や医薬品管理の問題とも関係があるわけですけれども、やはり企業責任を明確にする。そのことによって追跡の責任とか、あるいは医薬品の管理についての方針の責任とか、あるいは表示のしかた等について、きちっとした責任を持たせることができるのではないか。普通の食料品とは違う点が必要であると思うわけですね。
ですから、この問題を突き詰めておりますと、医薬品の中小のメーカーをどうするかという議論が必ず出てまいります。これはこの問題に関係して二千数百も事業所があるということで、さらに最近は伊藤忠だとか大きな商事会社がどんどん医薬品部門の別会社等設けて、外国薬品と提携してやるというような、非常にこれがもうかるというようなことでありますが、薬価基準の登載のしかたもさることながら、そういうメーカーや販売業者の一定の自覚について、企業責任が明確にできるような措置をきちっと法令上、省令の改正だけでいかない場合には法律を設定してやらなければ、私どもはこれからの国民の要請に対応することはできない、こう思うわけですが、いかがです。
-
○武藤政府
委員 物品の製造、特に医薬品につきましての製造、これにつきましての製造責任というものは、当然製造業者にあるわけでございます。ただ、先生も先ほどの御質問で言われましたように、医薬品というものは多少にかかわらず副作用というものはすべてあるわけでございます。したがいまして、この副作用に関します企業責任を、一般的にその企業にあるというふうに断定することは非常にむずかしい問題でございます。しかしながらこの副作用につきましては、現在の知られた科学技術の水準に基づきまして、使用上の注意につきまして厳重に記載させているわけでございます。それからまた新薬を発売する場合にも、従来は二カ年間で、昨年から三カ年でありますけれども、副作用の報告をメーカーにさしております。そのほか公立病院を中心としまして副作用モニター制度をとっておりますが、これの拡大も本年度から考えております。そのほか国際モニター制度、これはWHOの国際情報モニター制度でございますけれども、これにも本年度から加入するつもりでございます。
こういうふうに副作用の情報をやはり多角的、国際的にいたしまして、それを的確に判断をしてこの処理をするということが、実質的には一番大切ではなかろうか、かように考えております。
法律問題につきましては、先生の御指摘の点につきましては、検討の際には十分考えたい、かように考えます。
-
○
大原委員 外国はせいぜい四、五百くらいの業種なんですが、日本は二千数百あるのですね。ちょっと念のために聞くのですが、十人以下の規模の事業所というのは、どのくらいあるのですか。
-
○武藤政府
委員 製造所で申しますと、現在製造所は二千二百四十二でございます。これはもちろん一社で二、三カ所の製造所を持っている分もありますが、二千二百四十二のうち、十人未満のものは千三百、約半分でございます。
-
○
大原委員 すごいものですね。ですから現実問題、これで生活しているという方もあるわけですけれども、しかし、これはやはり一定の規格を設けて、そして合併するなり共同化をするなりして協同組合、そういう施設を持っておらなければいかぬとか、
〔橋本(龍)
委員長代理退席、増岡
委員長代理着席〕
そういうふうに一定の機関を設けて規制をして、漢方薬は別ですけれども、そういうことについてきちっとしなければ、何も監督することはいいことじゃないですけれども、日本はそういう点については目が届かないのじゃないですか。つまりこういう小さいところでもつくっておいて、そうして薬価基準の中に入れておいて、どことなくきくというふうな宣伝をしておけばもうかる。こういう仕組みであるならば、医療費の問題は、赤字の問題はどんな歯どめをしたって、これは処置なしじゃないですか。だから私は重ねて、そういう点については一定の機関を置いておいて、企業の社会的な責任は他の企業よりもさらにあるわけですから、そういう点について明確な措置をとるように私は要望しておきます。
それから、これは保険局ですが、薬価基準に八千も登載しているという国はあるでしょうか。しかも類似薬で、ああいう登載もオリジナルでやるのがいいのか、商品名でやるのがいいのか、いろいろあるでしょうけれども、ああいう八千も登載しておって、必要な薬は登載しなければいけませんけれども、これはとてもじゃない、目が届くというか、診療所や病院等にいたしましても、見当がつかないのじゃないですか。売り込みをするほうがよくなるということになるのじゃないですか。
-
○戸澤政府
委員 外国では制度がいろいろ違いますけれども、そのようにたくさんの保険薬を使っているところはあまりないと思います。
-
-
○戸澤政府
委員 ちょっといろいろ制度が違いますし、保険制度も違いますし、医薬分業制度の区分等によっても違いますので、ちょっとその数字は……。
-
○
大原委員 厚生大臣、この間フランスの薬務
局長にもパリに行って会いましたけれども、医薬品のキノホルムだって許可しているのですよ。これはよくきく薬です、事故は起きません、こう言っている。たまたま事故が起きることがあるかもしれないけれども、このときには企業者が責任を持つ、こう言うのです。しかし使用方法を誤った場合には
医師が責任を持つ。これは分業しているからです。だから日本のような野放しの状況でしたら、保険薬というものが八千の中にずっと入っているわけですよ。これは国際的に、薬効については非常に疑義がある、問題があるわけです。そういうものが入っていて、薬が医療費の中に食い込むということですね。ところが、一方ではあぶない薬の使い方というものがある。OECDは概してそうだと思いますけれども、薬を扱えるお医者さんというのは、全部のお医者の中で百何名しかいない。特にその人は許可を受けている、こういうことで責任が明確なわけですね。だから、医薬品の問題は、単に分業というだけでなしに、医薬品の管理ということは、医薬品の中身を整理するということからも、さらに財政上の観点からも、いまの薬剤師では——大体は商売人になる目的でなる場合があるわけですが、それにいたしましても一定の目標で、やはり専門家である薬剤師は、医薬品管理については責任を持って、
医師に対しましても一応の発言ができるようにしておいて、責任を負わせる、こういう体制をとらなければ、いままで議論したようなことが結実しないのではないか。これはいろいろしきたりがあるだろうけれども、私どもが主張し、発言をしても、これはいろいろな支障がある。あるけれども、この問題はよその国ではやっているのです。社会主義とか資本主義とかいう議論ではないんです。だから、この問題については、具体的なスケジュールを立てて分業は進めるべきである、私はこう思いますが、厚生大臣、いかがですか。
-
○斎藤国務大臣 先ほどからのお話、いわゆる医薬品の製造、薬価基準、それから医薬分業、現在ほんとうに何とかしなければならないという問題に全部お触れになったと思います。私もこのままではいけない、かように思っております。
まず医薬分業、これを推進をする。そのためには、薬剤師の資質の向上もはかる。そして薬剤師の管理の徹底化をする。まずこれをいたしたいと思って、保険の抜本改正の中にはそれを入れております。これが一つの推進の手段だと、かように考えております。それにはいまおっしゃったような事柄をしなければなりません。したがって、きょう言ってあすというわけにまいりませんから、二年か三年の猶予期間をおいて、そしてそれまでにいま言われたような条件を整えさせる、かようにしてやってまいりたいと思います。
また、特許の問題から触れられまして、類似薬品といいますか、あるいはモデルチェンジの薬品というものは、いまのようなルーズなやり方でいいのかどうか。これはいけない、かように私は思います。しかし、それには中小企業の問題もありますので、それとからめて検討をしてまいらなければならぬ。基本的なお考えは、私も全く同感でございまして、どこから手をつけてどうやっていくかということが問題であると思うわけであります。
-
○
大原委員 これはイデオロギーの問題ではないわけです。責任体制の問題ですから、これはやはり少々支障があっても、やるときには決断をしなければいかぬ。それはお互いに政治をやっている者は、支障があるのはさまっているわけです。しかし、そのことを決断しなければ、これはどんなことを議論したって、保険料を上げたって、何をやったって、弾力条項を大幅に設けたって、基調が変わるわけはないですからね。どんな説明をいたしましても、これは説明にならぬと私は思うわけですよ。やるべきことは、きちっとやる。しかも、現実を踏まえながら、方向をきちっと示すというふうな決断がなかったら、どんな議論をしても、非常に非生産的なことになると思う。だから、そういうことについては、抜き打ち的にやるというのではないけれども、やはり方向を示して決断をもって順序よくやっていくということがないと、これは私どもがお互いにこういう問題について、長年議論をした値打ちは私はないと思う。
念のためにお聞きいたしますが、四十六年度は総医療費三兆円といわれておりますが、その中で投薬、注射、いわゆる薬剤費の占める比率は、入院、外来を分けまして、最新の資料はどうなっておりますか。私どもは一部はいただきましたが、最新の資料はどのくらいの比率になっていますか、総医療費の中で。
-
○戸澤政府
委員 総点数中に占める投薬、注射の薬剤費の割合を申し上げますと、最新の四十五年五月現在で、総数におきまして四三・二%、入院が二六%、外来が五一・一%でございます。
-
-
-
○
大原委員 しかし、どこかで出ておったんだけれどもね。
それにいたしましても、四三%というのは、三兆円の中では大きいわけです。これはたくさんなんだからいいということはないわけです。これはむしろ逆に問題を起こしているわけです。事故を起こしている原因は、一つはそこにあるわけです。環境汚染の問題は、内部環境の汚染の問題と関係をしているわけです。残留農薬の問題その他化学物質の問題等が関係しているわけですから、医療行為自体が健康を破壊しているということがあるならば、それは許しがたいことですからね。財政上の問題だけではないわけです。分業にしておきましたならば、私は責任体制がはっきりすると思う。もし問題が起きた場合には責任を持たなければならない。そうすれば患者のことをほんとうに考えてやるということになるわけです。問題は患者とか国民ですからね。ですから、四三%も占めて——この前の議論以来、外国ではせいぜい一三%から二〇%の問題だ。机の上だけで計算するわけじゃないけれども、もし半分であるとするならば、これは一兆三、四千億の半分で六、七千億円というそろばんだってはじけるわけです。私どもは、現実の問題の中では、そんなことにすぐなるとは考えないけれども、技術上の振りかえ、ここでさやかせぎをするということは、医者の技術や薬剤師の技術や歯科
医師の技術や医療担当者の技術をべっ視しておる、侮辱しておるということになる。薬をたくさん売れば売るほどさやかせぎができて、医療費が重なってもうけができるということは、良心的な
医師にとっては侮辱ですよ。医者はみんなそう言っている。集団としてはいろいろ文句があるけれども、個人的にいったならば、みなそういうことを言っている。自分の良心に従った措置をとりたいと言っている。そこは、技術の軽視ということと、売薬医療ということは同じことであるわけです。ですから、そういう問題については、私どもは繰り返し議論を重ねてきたわけですけれども、実効ある措置をとらなければ相ならぬと思う。赤字の問題なんというのは、二百万円です、三百万円です、五百万円ですなんというのは、皆さんわからぬけれども、これはもうたいした議論じゃない。逆にいえば、負担すべきものはどこかでぱっと負担すれば、国民経済からいえば解決できる問題です。
大体、内田厚生大臣も、最後ごろはいいことを言って、すぐいなくなったりしている。斎藤厚生大臣はぴしゃっとやって、あとへ残るようにしてくださいよ。これだけでもぎゅうぎゅう言わせることができるんだけれども、そういうことでなしに前向きの議論をして、ゆるやかな議論をしたからといって野放しにしておくということはいけない、どこかから文句が出るんだから。そうすればすぐ医療費が下がるということではなしに、国民が納得できるということ、患者が納得できる、安心できるということが問題だから、その上に医療費を負担しましょう、保険料を上げてくださいということを議論するならわかると言うのですよ。そういう赤字基調の構造的な問題をほおかぶりしておいて、その矛盾を全部国民にひっかぶせるようなことをするから、この問題は繰り返し大きな問題になるのですよ。厚生大臣、ひとつ決意のほどを聞かしてもらいたい。
-
○斎藤国務大臣 私も全く同意見でございます。そのほうは決してなおざりにいたすつもりはございませんし、これについては医療基本法に逃げるわけではございませんが、ここで国民的合意を得た上で、ひとつそういった計画を樹立をし、閣議で決定をし、そして、逐次計画的に実施をいたしてまいりたい、総合的にさように考えるわけでございます。いま御審議を願っておりますのは、とにかく当面、蔵に火がついているわけでございますから、まずその火を消しとめるだけはやっていただいて、そうして抜本改正といまおっしゃいました医薬の供給体制、これをほんとうに真剣に取り組んでまいりませんと、日本の国民医療の健全化というものはできないというふうに考えております。
-
○
大原委員 そこになると見解が違うわけですよ。つまり、矛盾を拡大するという結果になるのではないかという議論があるわけですから、そこは両々相まってという妥協案もあるだろうけれども、しかし、そういう方向なしにこんなことを繰り返したのでは、赤字体制を繰り返したのでは、四十二年以来試験済みではないかという議論は依然として残るわけですね。しかも、問題点はかなり明確になってきておるのです、いままでに。
実際の
医師養成の私立大学の認可のところで、受験料、入学金のことなんかもけしからぬわけですよ、あの問題は国民といたしましては。そういうことが、認可について非があろうがなかろうが——あなたは陳情に見えぬでしょうねというなまいきなことを言った官僚がおるが、大学の設立の認可に陳情に見えませんでしょうねと言われたやつがおるが、もってのほかのことです、こういうことは。いいものでしたら、陳情に行きますよ。
もう一つの問題は、三時間待って三分という議論もあるのですが、いずれにしても開業医に聞いてみると、一日に五十人以上診断して治療するなんてできぬ、こういうことを言う。良心的にそういうことはできない。それは七十人とか百人とか二百人もやっているという現実があって、二重診療、三重診療、二重投資、三重投資ということが——個人の責任ですからリスクを個人が持っているのですから、借金をするわけですから、そうすると、やはり問題が起きてくるわけですね。ですから、こういう問題について薬のさやかせぎということが出てくる。できるだけ安くて、あるいは振りかえしてでもやろうということになってくるわけです。実際上、開業医が全部が全部楽だということではないわけです。非常に良心的な人は苦しんでおる。
先般もあるところで聞いたけれども、大学の心臓外科の先生が小児科の機械もなしに寒々としたところで小児科の先生をしておる。自分の学者としての良心や何も生かすことができないという人がたくさんおる。いまの中では、開業医から大学の助手や講師になったら六万円か七万円で、とてもじゃない、生活ができません、こういう人もある。ですから、一つの問題は、いまの技術を軽視して、この薬の問題等についての——ほんとうにいい薬を最小限度使用して、国民が安心できるようなそういう制度を考えることを軸にして、その中で医療費が幾ら要るのだ、保険料を上げましょう、こういうような議論をするのでなければ、これからは絶対に納得できないだろう。ましてや今回のそういう弾力条項を設けておいて、当分の間安心しておれるという、ぬくぬくやろうということを考えておるようなことでは、これは全然チェックにも何にもならぬから、そういうことは困るということです。
最後の問題はともかくとして、特に前の問題等については、ひとつ私どもとして強く要望をいたしておきます。
〔増岡
委員長代理退席、
委員長着席〕
あと大切な問題が一つ残っておる。
健康保険法の提案説明によりますと、二ページ「依然として悪化を続け、昭和四十六年度末の累積赤字は二千億円をこえる見通しであり、さらに、本年二月から実施された一三・七%にも及ぶ医療費の引き上げの影響等を考慮いたしますと、このまま放置する限り、昭和四十七年度には、約千三百億円の単年度赤字が見込まれるところであります。この結果、昭和四十七年度中に年間給付費の約二分の一にも及ぶ三千数百億円の巨額の累積赤字をかかえるという破局的状況を招き、」この前、
後藤委員の質問がありまして、例の赤字の問題でありますけれども、この問題は一部修正があるわけでありますが、これは間違って入れたのですか。なぜ固定資産と未納分を累積赤字の中に入れたのですか。
-
○穴山政府
委員 御承知のように私どもの官庁会計は、現金収入と申しますか、現金の入るのと出るのとを経理をするというような形になっております。したがって、従来からも現金のいわゆる収入と支出との関連を見まして、その差額がどうであるか。結局、支出が収入を上回りますと、その差額が従来から借り入れ金という形になっていたわけであります。こういうことで、単純に官庁会計の従来のやり方としては、現金の収入と現金の支出との関連において、その差がどうであるかということを見てきたわけでございます。したがって、従来表現の問題はあったわけでございますけれども、従来からも単年度赤字と申しますのは、単年度における収入と支出の差、それから累積赤字と申しますのは、その差が借り入れ金となってあらわれまして、その借り入れ金の累積を単純に累積赤字と称していたわけでございます。ただ、これは企業のように複式的に考えますと、この前御指摘になりましたような問題が出てくるわけでございますが、従来は、いわゆる現金主義としての官庁会計というようなことから、単純に収入と支出の差、そのあらわれとしての借り入れ金、その借り入れ金の累積というようなことで四十七年度末の借り入れ金の総額が二千百九十四億で、それを従来と同じように累積赤字と称していたわけでございます。
-
○
大原委員 累積赤字がこんなに出たのであるから、赤字対策を当面やってくれ、こういう厚生大臣の繰り返しての答弁であり、趣旨説明です。それから、であるから弾力条項も設けてくれ、長期的な財政安定をやってくれといって、当面の赤字とは関係のない問題までここに出してきているわけです。この出し方というのは、考えようによっては非常に悪質なというか、非常に意図的なものではないか。お聞きいたしますが、未納分の百二億円というのは、見通しとしてどのくらい入りますか。
-
○穴山政府
委員 ただいま推計しておりますいわゆる未収金の総額は約百三十億余りと見込んでおりまして、そのうちの約三十億余りが、従来の経験から申しましても取り立てることができないであろうということからそれを落としました。残りの百二億が、私どもとしていま将来に向かって取り得る額であるというように考えているわけでございます。
-
○
大原委員 未収金の百二億というのは取れるのですね。
-
○穴山政府
委員 私どもとしては、将来に向かって取れる額ということで考えておるものでございます。
-
○
大原委員 それを累積赤字の中に入れたのはどういうことなんですか。
-
○穴山政府
委員 結局、未収になってそこに穴があいておりますので、その分は借り入れ金の対象になるということで、四十七年度末の借り入れ金の額の中に含まれているわけでございまして、それを累積赤字といったのは、私どもとしてもちょっと不正確と申しますか、従来の用語を単純に使ったという誤りはあったわけでございますけれども、借り入れ金の中にはそういう意味で入ったわけでございます。
-
○
大原委員 それは実際に国民の立場から見たら、そんなごまかしはないわけですよ。会計帳簿の面で未収であるから、穴があいているから累積赤字の中に入れて、それで赤字だ赤字だという中に入れるのは、何らかの注釈があってしかるべきですよ。何も注釈しないでおいて、こんなでたらめな百二億円も——百億や二百億はこの財政からいえば何でもないかもしれぬけれども、それにしても、普通だったら百二億円というのはばく大な金でしょうが。そういうことは、たとえば弾力条項を設けようなどという考え方と一致しているのだよ。国会に対して、あるいは国民に対して、何とかごまかそうというふうなことがあるのではないか。
〔
委員長退席、橋本(龍)
委員長代理着席〕
もう一つは、固定資産見合い分とありますが、三百二十六億円の中身をもう一回明確に言ってください。
-
○穴山政府
委員 三百二十六億の中身は、土地、立木竹、建物、工作物、機械器具、そういったものに分かれるわけでございまして、一番多いのが建物の百五十億、工作物が四十四億、土地が九十六億、それから機械器具が三十四億というふうに分かれております。
-
○
大原委員 土地の九十六億というのはわかります。これはいつの時点の評価なんですか。
-
○穴山政府
委員 土地は九十六億でございますが、これはすべて国有財産の台帳に載っている価格で、これは五年ごとに評価がえすることになっております。いま申し上げました額は四十七年度末の予定額でございます。
-
-
○穴山政府
委員 評価をいたしましたのは四十五年度末でございます。四十六年三月三十一日で評価したわけでございます。
-
○
大原委員 建物の土地はともかくとして、建物の中身は、使用目的に従って分類するとどういうものですか。
-
○穴山政府
委員 これはいろいろございまして、たとえば病院の病棟、管理棟あるいは
看護婦宿舎、それから保養所の建物も入っております。
-
-
○穴山政府
委員 建物の種類から申しますと、病院、診療所、保養所、それの本体及び付属の建物でございます。
-
○
大原委員 この前の答弁のときには、健康診断とかそういうものについての財産を答弁されたと思うのだが、そこがよくわからないから私は聞いているのだ。
-
○穴山政府
委員 従来、病院のほかに診療所を持っているわけでございますが、最近診療所の機能を変えまして、いわゆる健康管理センターとしての機能を果たすように変えて現在運営をしているというものがございます。
-
-
○穴山政府
委員 三カ所ございます。それをこの前は診療所——ですから、正確に申しますと、診療所及びそういった意味の健康管理センターというふうに訂正さしていただきます。
-
○
大原委員 そういう保養所あるいは健康管理センター、特に保養所について、組合健保の施設との比較、共済組合の施設との比較、こういうものがあればひとつ示してもらいたい。
-
○穴山政府
委員 共済組合のが、ちょっといま手持ちがございませんが、政府管掌健康保険の保養所は現在八十三カ所ございます。それから組合健保は千六百二十五カ所ございます。
-
○
大原委員 大体どういう考え方なんですか、厚生大臣。あるいはどういう考え方を持つべきなんですか。これはまだあとの問題があるわけですが、つまり私は、保養所というものは、やはりいまの健康管理からいえば積極的な意義があると思うのです。特に五日制ということになれば、都会から出ていかなければ——あるいは工場地帯から家族ぐるみで保養するということはいいことなんですね。それから保養所の一部を、診療所の一部を健康管理センターにされておるということも、私はいま聞いた限りにおいて、中身はたいしたことはないにしても、発想としては、病院や診療所が要る要らないの問題は別といたしまして、健康管理的なセンターを設けるということは、政府管掌の健康保険で一番おくれた点を充実させるのだから、これは私はやるべきであると思うのです。考え方についてはどうなんですか、厚生大臣。
-
○斎藤国務大臣 政管健保においてはやるべきである、かように考えます。ところが、財政が非常に苦しいものですから、やり方がいままで非常に微々として、やっているかやっていないかわからぬような程度であった。それは今後大いにやらなければならない、かように考えております。
-
○
大原委員 特に保養所などは、病後の施設として、そういうものは普通のごみごみしておるところではたいへんなんですから、ある意味では給付などについても助成してやるというようなことがあってもいいわけです。そういう方法についてはいろんなことがあるでしょう。しかし、そのことを含めて、土地の問題その他は国有財産に備えつけてあるというのですが、保険料で買ったのでしょう。保険財政の中から買ったのでしょう。保険財政の中から買っても国有財産の台帳に入れてあるのですか、その土地についても。
-
○穴山政府
委員 どの金で買ったかといいますと、私どもは、収入の面では保険料収入あるいは国庫負担、雑収入というものを一括して収入とみなして、それから支出をしてまいりますので、はっきり色をつけるということはむずかしいと思いますが、いずれにしましても、理論的には国有財産の台帳に登載してあるわけでございます。
-
○
大原委員 私が聞いておるのはこういうことですよ。買ったのが、三百二十六億円の財産は時価に直したら幾らになるかわからぬけれども、この財産を買った合計の財政は、保険収入から買ったのですか。保険財政から支出をしたのですか。国の費用だったらこの内訳を言ってください。
-
○穴山政府
委員 いま申しましたようなものを保険収入といい、それから保険の給付費あるいは支出面に載せてあります項目を保険の支出と申しますと、保険の支出から出したということになると思います。
-
○
大原委員 それはおかしいですよ。いままでは国が出したようなことを言ったり、保険財政が一部出しておるようなことを言ったり、そうするならばこの財産は国有財産の台帳にあるわけです。国有財産ですが、これがなぜ累積赤字の中へ入ってきたのですか。先に大蔵省に聞こう。大蔵省は、なぜこの説明のように、一般会計から繰り入れの対象とならない見込み額の中に入れたのか。一般会計からなぜ繰り入れをしないのか。むしろ政府が——国民健康保険では市町村がやる、あるいは組合健康保険では事業主がやる。事業主に要求してやる場合もあるけれども、そうでなしに、保険財政は、保険料の負担は一対二とかいうふうなことがあるわけですが、結果としてはそういうのを被保険者の要請で事業主がやる場合があるわけです。そして、こういう施設なんかにしましても、健康管理の施設が充実しておるということになるわけです。今日の事態を見越してやっておるとかどうとかということはわからぬけれども、しかし政府では、数少ない保険財政という赤字の出ておるものからつくられることはないし、中身が悪いというのも、むしろこれは政府がやっておるのだから、政府自体が低所得階層に対するてこ入れと同じような考え方で財政上の措置をとってしかるべきではないか。それを累積赤字の中へ一方では入れておきながら、一方では一般会計から繰り入れをしない、そういう措置をとる、これは一体どういうことなんですか。どうしようというのですか。
-
○長岡政府
委員 政府管掌の健康保険制度につきまして、国がどの程度の負担をすべきであるかというようなことにつきましては、現在御審議をお願いいたしております財政対策の中でも、政府としては、従来の定額補助を改めて定率補助を行なうという姿勢をお示し申し上げてあるわけでございます。その問題と、ここにございます累積赤字の処理の問題これを一応切り離して考えるべきではないかと考えます。
累積赤字二千億円をこえる見通しであるという提案理由の説明の数字は、先ほど厚生省側からも御説明がございましたように、官庁会計が、収入、支出がいわば平面的な経理で成り立っております関係上、その足らざる部分が借り入れ金に依存いたしておる、これを累積赤字という表現で申し上げたのだろうと思います。ただ、過年度分の相当額にのぼる赤字を別途国民の税金から穴埋めをするということになりますと、ただいま
大原先生が御指摘になりました三百億円をこえる固定資産と申しますのは、やはりこれは一種の財産でございますから、この財産の分まで国民の税金をもって穴埋めをするというのは、企業会計的な経理の面から言いますと当たらない。したがいまして、二千億円をこえる過年度分の借り入れ金につきまして、大蔵省といたしましては、ただいま申し上げました固定資産と未収金を除きました分につきましては、一般会計からの繰り入れによってその赤字を処理してまいりますが、その分については、現在のところは、一般会計で穴埋めをすることなく、特別会計の経理上資金繰りがつかない場合は、借り入れ金をもってその分をカバーするというような考え方の整理をいたしておる次第でございます。
-
○
大原委員 それはこういう意味ですか。一般会計から繰り入れの対象とはしない。これは借り入れ金でずっところばしていく。そして利子は保険財政のどこからか出していく、あるいは国から出していくという考え方もあるだろうが、しかし問題は、いまのような火の車の保険財政の中で、病院をつくり、診療所をつくり、特にこれから健康管理センターを社会保険事務所単位ぐらいには設けて、巡回自動車であるとか、検診車とか、
医師を一定の契約をしたりしまして、そういう健康管理の一番おくれておる政府管掌健康保険の健康管理等に力を注いでいこうというときに、こういう財政の仕組みでいいのですか。私は、市町村だって——市町村がやっておるのですよ。組合健保だって、ぜいたくだの何だのと言われるけれども、ぜいたくじゃないのです、いまの情勢においては時間があるのですから。特に健康管理センターをやるという場合に、政府がやっておる、政府が経営しておる管掌保険であるならば、財産は固定資産として政府が持っておってもよろしいから、政府として金を出して、そしてこの措置をしていく。健康管理は原則としてこれは公費でやるという考え方があるわけですから、保険財政との関係で、そのほうがかえってプラスだという考え方もあるわけです。ですから、その考え方については、法律その他があると思うけれども、十八条ノ九の問題等であると思うけれども、この問題をもう少し前向きに、こういう議論をする際に処理をするという考え方でもあるのならば、私はこれはそう悪質な意図とは思わないが、官庁から出てこういうふうになるといっても、中身を説明しない。四百数十億円の未収金を含めて、これが赤字でございます——二千億はふえていないのです、四百二十六億円引きましたならば実質はこうですよという説明がつくはずじゃないですか。それをほおかむりしておいて、あっちもこっちも保険財政にしわ寄せをしておいて、赤字だ赤字だ、そういう考え方というものはないですよ。もう少し私は——こまかな規定はこれから調べるけれども、こまかな処理規定等の可能性については追及したいと思うのですけれども、処理のしかたについて前向きに処理できないのかどうか、いかがですか。
-
○長岡政府
委員 政府管掌健康保険制度全般につきまして、国庫がどのような負担をするか、どのような補助を行なうかという基本的な問題につながる御質問であろうと思います。
大原先生のようなお考え方も十分成り立ち得るとは思いますけれども、私どもといたしましては、今回の財政対策の一環として、従来の定額補助を定率補助に切りかえることによりまして、五%の定率補助は非常に僅少であるという御指摘を受けてはおりますけれども、財政的には定額補助時代に比べますと六割もしくはそれ以上の増額をあえて行なっておるわけでございます。一方におきまして、過去の赤字の中でも、ただいま御指摘がございましたような資産見合いのものを除きましても、なおかつ千六百あるいは千七百億にのぼります巨額の保険会計の重荷になっております赤字も、別途一般会計、すなわち国民の税金を財源とするものによってこの際将来負担していこう、しかしそのかわり、一方におきましては事業主あるいは被保険者も応分の負担をしていただきまして、財政的な措置を講ずることによりまして、政府管掌健康保険制度も体質的には非常に
改善されるであろう、そうなった暁には、そもそもこの保険集団が利用いたします療養施設なりあるいは健康管理センターなりというものは、その保険の財産として、当然その利用者の負担において維持し、運営し得るもの、かように考えて、私どもといたしましては現在のところ、おことばではございますけれども、このような制度に対する国庫負担を考えているわけではございません。別途に定額補助を定率補助に改めることによって国の負担を増額して、保険財政の
改善につとめるというのが基本的な考え方でございます。
-
○
大原委員 あなたはきょう突然あらわれてきたからそういう答弁をするのだけれども、大体昭和四十二年以来二百二十五億円の定額補助ができたのですよ。それは前からの議論があって定額補助になったのですが、定率補助の議論がその後ずっと続いているのです。しかしその当時から、定率に直せば六・数%であったのです。その議論はいままでやった。卒業したのだ。赤字の問題をあなたはからめて答弁したけれども、であるとするならば、医療費がどんどん——政府が抜本改正を、約束したことをやらなかったのだから、そのために赤字が出たのだから、二百二十五億円はずっと続けてきたのです。それをむしろ六・三%を七%にし、八%にし、一〇%にする、健康管理の面も含めるというのだったら一〇%を一二%にする、こういうことも含めて、健康管理についてはこういう予算を組みなさい、こういうふうに前向きに答弁するならいいけれども、いままでのものは全部けしからぬからこんなに赤字があります、こういうことを言いながら、しかもこの問題の処理はどうぞひとつかってにやってくれということで逃げるというようなことで、苦しまぎれに厚生省は累積赤字でございますといって、固定財産まで加えている。こういう問題は、営利目的でやっておるのじゃないのだけれども、処理できないでしょう。処理できないだけじゃなしに、荒廃しているのですよ。病院やその他施設というものは他に比べて悪いわけですよ。必要な面はたくさんあるわけです。ぎゅうぎゅう締めておいてそういうことを言ったって、できやしないでしょう。もう少し前向きに答弁しなさい。大体取り組む基本的な姿勢が間違っている。厚生省もつまらぬと思うけれども、大蔵省もつまらぬ。何たることだ。
-
○橋本(龍)
委員長代理 関連質問がありますので、これを許します。
後藤俊男君。
-
○
後藤委員 いま大蔵省から説明があったのですが、私もわかろうわかろう、こう思っておるのですが、どうしてもわからぬのですね。未徴収分の百二億ですか、これは単年度会計であるからという説明があれば一応それはわかるわけであります。ところが、三百二十六億というのは固定資産ですね、二千百九十何億の中にはその固定資産も赤字だということで含まれておるわけなんです、あとから借り入れということで整理はされておりますけれども。そこで、赤字だということで判定するならば、赤字たな上げの際にその固定資産も入れるべきではないか、大方の皆さんはそういうふうな考え方に立つと思うのです。赤字として評価したものなら赤字のたな上げのほうへ含めるべきではないのか。二千百九十何億の中には固定資産を三百二十六億含めて、それだけの赤字でございます、借り入れ金になりましたけれども。ところが、たな上げする金額になってまいりますと、固定資産は差っ引いてあるわけなんです。売るわけにまいらぬからという説明もあったわけなんです。そういうことになってきますと、先ほどからの
大原議員の話じゃございませんけれども、赤字を誇大にPRをするという形になってくると、ただ私はいま二千百億何ぼの赤字という宣伝は宣伝と認めるならば、たな上げの際に、なぜ一体三百二十六億を赤字たな上げのほうへ合計しないのか。入れないのか。入れさえしましたら、先ほどの話じゃないけれども、一応の筋としては通るわけなんです。その辺が、何ぼ大蔵省の説明を聞きましても、会計がどうの、規則がどうの、こう言われますけれども、国民の皆さんというのは、規則がどうの何がどうのというむずかしいことはわからぬわけなんです。なるほど政府管掌健康保険というものは二千二百億近くの赤字がある、赤字があるというのはこれだけの借金があるという単純な考え方をするわけなんです。その中に売り飛ばせば三百二十六億というお金があるわけなんです。それまで含めて二千二百億という誇大なPRは何だろう、そこまで突っ込んで考える国民はないと思うのです。こういう
委員会で詳細に検討すればこれはそういうことになってくるわけなんです。それならそれで、三百二十六億も赤字のほうへ含めて、たな上げ分へ含めればこれはいいと思うのです。いわゆる赤字のたな上げ分には三百二十六億は含めない、落としてしまうわけなんです。ここが、どういうふうな説明をされましても、再三再四ここでも問題になっておるのですけれども、なかなかわからないわけなんです。これは厚生大臣、どうでしょうか、もう少し、われわれ頭の悪い者でもよくわかるような説明をしてもらえませんか。
-
○長岡政府
委員 私のお答えが不十分であったかもしれませんが、たな上げの対象には含めておるわけでございます。これは今回の法律改正でも実施しておりますが、特別会計法の十八条ノ八を加える、その第二項に「政府ハ健康勘定ノ昭和四十七年度末ニ於ケル借入金ニ係ル債務ヲ弁済スルタメ必要アルトキハ同勘定ノ負担ニ於テ借入金ヲ為スコトヲ得」これがいわゆるたな上げのための借り入れ金でございますが、この中には当然ただいまの三百数億の固定資産も、百二億の、未収金も入っておるわけでございます。これは私どもも、資産価値がございますけれども、直ちに換価できない、したがって、この会計上も、直ちに現金化して資金繰りをつけるわけにはいかないというような意味から、いわゆるたな上げの借り入れ金の対象には入れております。ただ、そういうようにいたしまして、今後の保険財政の立て直しのために負担となるであろう過去の借り入れ金債務を、一応たな上げしたものには入れますけれども、その分を今後一般会計から繰り入れて埋めていく対象としては、現在直ちに換価すべき資産ではございませんけれども、資産価値を保有しておりますただいまの四百数億につきましては、これは一般会計で穴埋めしていくべき性格のものではないということで除外いたしておる、この二つに分けてお答えを申し上げるべきであったと思います。実態は、今回の法律改正も、御承知のように整理をいたしまして、たな上げの対象にはいたしておりますが、一般会計からの繰り入れによる補てんの対象からは除外しておる、このように御理解いただきたいと存じます。
-
○
後藤委員 そうしますと、まことにむずかしい話になってきたのですが、三百二十六億というのはたな上げの対象になっておるのですか。そうしますと、あなたのおっしゃるように、たな上げの対象にして、国からは三百二十六億を含めて借り入れをする。ところが、一方におきまして、赤字を埋める場合には三百二十六億は入っていない。百二億も入っておらぬ。三百二十六億と百二億は入っていない、こういうことになるわけです。そのたな上げした三百二十六億というのは、たな上げ分として一般会計から借りてあるのです。その三百二十六億というのは、それじゃ一体どういうふうな位置づけになるのですか。そこがわからないわけなんです。
-
○長岡政府
委員 この特別会計の貸借対照表には、借り方でございますか、資産の中では三百二十六億の固定資産と未収金は財産としてあがるわけでございます。ただそれに見合うものとしては、自己資本がそれだけあれば資本金にあるいは自己資本に裏づけられた資産という形になりますけれども、それが不足いたしますので、反対側の勘定には借り入れ金が残る。その未収金と固定資産見合いの分につきましては借り入れ金が残る。その他の過年度分の借り入れ金につきましては、今後一般会計から財政事情を見ながら埋めて減らしていく、こういうことになるわけでございます。
-
○
後藤委員 いま言われた、その借り入れ金が残るということは、どういうことを意味するわけですか。
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○長岡政府
委員 これは別にただいまの固定資産等の価値に影響があるわけではございませんで、あくまでただいまの固定資産はこの政府管掌健康保険の財産として、保険を利用する方々の利用に供せられるわけでございますけれども、企業会計の面からいきますと、まあ固定資産を持っておりましても、それがそれに見合うだけの、いつでもそれだけのものに見合うだけの自己資本を持っておれば非常に健全な経営であろうかと思いますけれども、その一部は現在のところこの会計としては借り入れ金でまかなっていく。その借り入れ金は、これは御承知のように、今後のこの特別会計の資金繰りとしては、借り入れ金その他を相当きびしくいろいろ規制を加えておりますけれども、この分につきましては、昭和四十七年度末の借り入れ金の中に含めておりますから、今後も資金繰りだけは決して保険財政にしわ寄せがされないように、運用部資金の借り入れ金でまかなっていく、こういう形でございまして、借り入れ金をそのまま残しておけばどうなるかという御質問でございますけれども、まあ借り入れ金が残っておりますということではございますけれども、その借り入れ金を直ちに返せということを資金運用部のほうが申し上げますと、この保険財政が非常に支障を来たすわけでございますが、私どもとしましては、この固定資産見合いの借り入れ金については、先ほど申し上げましたたな上げの中に入れておりますので、保険財政の資金繰り等が許すまでは、その借り入れ金をそのまま存置するということはやむを得ないのではないか、かように考えております。(「わかった」と呼ぶ者あり)
-
○
後藤委員 そうしますと、そのわかったという話も私はわからぬのですが、三百二十六億の固定資産がある。財産があるわけですね。その財産に見合うだけの借り入れ金三百二十六億円の金がある。これはしかし、赤字の対象として消えてなくなるのではない。三百二十六億というお金はあるのですよ。ところが、固定資産を売って金にできるならば不自由はないけれども、そういうことはできませんので、それに見合うところの三百二十六億というのは一般会計から借りて、それでそれは運用資金というか、どういうかっこうで使うか知りませんが、使っていく、そういう説明だと思うのです。そうしますと、その三百二十六億というのは、赤字の対象にもならぬわけです。赤字のほうの、この一般会計から穴埋めする分のほうにはこれは入らないわけなんですね。百二億と一緒にこれは入らないわけです。一般会計の分には含まないわけなんです。いわば三百二十六億というのは、これは遊び金というとおかしいけれども、余裕のある金に運用操作されるわけなんですね。そういうことですよ。そうするとこれは、一体、将来どういうことになってくるのですか。どういうふうにこれは処理されていくのか。このままでございますというのなら、そんなものはきれいさっぱり赤字のほうへ入れてパアにしておけば、みんなきれいになるじゃないですか。ああ、なるほど固定資産分の三百二十六億も赤字のほうに入れて、一般会計から穴埋めをしてきれいになりました、さてこれから政管健保は一体どうやっていくかということになれば、これはきれいになると思うのです。あなたの言われた説明を聞くと、なかなかこれは、わかったようなわからぬような、まことにわかりにくい話なんですね。ですから、赤字のほうに入っておるわけじゃなしに、一般会計からは、固定資産に見合う分の三百二十六億はお借りをして、その金はそのまま運用でずっと来年も再来年もいきます、いきますけれども、これは将来一体どうなるかといえば、将来のことは、聞いたところでこれはわからぬというお答えだと思うのです。そんなことなら、そんなことをせずに、三百二十六億も赤字のほうに入れて、一般会計の中からきれいにすればいいではないかと私は思うわけなんです。そこへ、先ほど
大原議員からも話がありましたように、当然政府機関としては、そんなものは、国有財産と申しましょうか、あたりまえのことだと思うのです。それを、何もかも保険料でまかなっていくというような考え方になるわけなんです、いまの説明だと。そんなことをやめて、きれいに赤字の中へ入れてしまって、一般会計のほうからきれいにすればいいと私は思うのです。
そうしますと、残りの百二億というのは残るわけですが、これは単年度会計でございますから、一応百二億ということは意味がわからぬことはないのですけれども、これはことし一ぱいを考えると、百二億の赤字ということはわからぬわけじゃないのです。ところが、先ほどの話じゃございませんけれども、これは徴収できない金ではないわけなんです。これはどんどん回収していくわけなんです。二年たち、三年たち、回収していく、五年もたてばこれはきれいに百二億入るかもわからぬわけなんです。そうだとするならば、百二億も三百二十六億も全部赤字のほうへ入れて、一般会計からきれいにしてしまう。そのほうが、だれが聞いたってこれはわかりやすい話じゃないですか。どの会計がどうだとか、規則がどうだとかむずかしいことを言うて、ややこしいことをやらなくても、すぱっと思い切ってやるべきことはやる、それくらいのことをやらぬことには、政府管掌健康保険の今後の運営というのはたいへんなことになると私は思うのです。ですから、いま言われたようなややこしい考え方ではなしに、きれいにする、そういう方向へはっきり切りかえたらどうかと思うのですが、これは厚生大臣いかがですか。
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○斎藤国務大臣 いまおっしゃる考え方も、それは私はあり得ると思います。思いますが、まあ大蔵省との話し合いによりまして、とにかく資産に見合う分をたな上げをして、それと百二億、四百億は一応たな上げをして、そして預金部から返せ返せとは言わぬ。これは毎年借りかえをして貸してやろう。それを入れて二千億ばかりになりますが、そこで政府が一般会計から将来全部見てやろうというのは、いま言った四百億を除いた部分は見よう、そうすると、その四百億、百二億は、これは大体毎年過年度で入っていくわけでございますから、常時それだけあるわけです。それは預金部から貸してやるけれども、しかし、それまでもきれいにしないぞ。それから、資産に見合う三百億余りも、これも資産があるんだから、何も政管は解散することはないけれども、いざといえばそれだけの見合う資産があるんだから、その資産に見合うだけは預金部から貸してやる。返せとは言わぬ、当分の間は。差しあたって千七百億というものだけは毎年計画的に一般会計から全部きれいにしてしまってやるというので、千七百億を一般会計から全部きれいにしてしまうということがまず先決でありますから、そしていまの何といいますか、バランスシートの組み方から見れば、それも一応理屈は立つというので、私のほうも了解をいたしたわけでございます。
-
○
大原委員 千七百億円の実質的な赤字を、これも吟味してみなければならない。どういううそを言っているかわからぬ。これは一事が万事であって、どういうことを言っているかわからぬ。二千百九十四億も赤字が出るなんということを宣伝をしておいて、こういうようなからくりをやっている。これが一つはけしからぬ。これは政治責任を追及する。
もう一つは、健康管理その他積極的な施策をするという場合に、こういう消極的な、いびつな財政措置をやっておいてできるものかということだ。一番問題の健康管理、これから問題になる健康管理でこういう財政措置をすることがいいかどうか、そういう問題について基本的な検討をすべきを、消極的、消極的にいま言われたけれども、そういう財政措置だけしておいて、そして荒廃をしていく施設が利用されないということなんかについては、これはもってのほかである。定率の中に繰り込んでおいて、そうしてこれは健康管理に使うのだとかいうふうな措置をとるやの含みも言っておられたけれども、その問題等を含めて私は、この問題については明確な政府側の答弁、見解を求めたい。
それから、スモン病その他も残っておりますが、私は一応これで質問はとどめておきます。
-
○橋本(龍)
委員長代理 この際、暫時休憩いたします。
午後四時四十三分休憩
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午後九時二十二分
開議
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○
森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
休憩前の質疑を続けます。
田邊誠君。
-
○
田邊委員 日本の医療制度、医療保険制度に対して重大なかかわり合いのある
健康保険法の改正案について、審議をいたしてまいりました。このことは、現在の日本の国民のための医療を確立するために非常に重大な内容を含んでおるとわれわれは考えておりまして、慎重審議を続けてまいったわけでございます。この際、最高責任者たる
佐藤総理は、一体この医療の問題に対していかなる所信をお持ちであるかということについて、簡潔にその考え方をただしたいと思うのであります。
御案内のとおり、いま日本の医療はたいへんな危機にあります。公害があり、交通事故が多発化し、そして難病、奇病あり、いわば国民の命と健康はいろいろな面でおかされようとしているわけであります。これらの要因のうち、実は特に最近大きな問題になっておりまする社会的要因による疾病の増加というのは、これはやはり社会全体、国全体が責任を負わなければならないものがあることは当然の成り行きでありまして、公害企業に対するところの無過失賠償責任の問題、その他いろいろと実は論議をいたしていることは、そのためであろうと私は思います。
そういった面から見て、現在の日本の社会保障の中で重要な役割りを果たすべき
医療保障に対して、一体国はどのような責任を実は負ってきたのか、経済の高度成長下において国民の所得はたいへん伸びたというようなことをいっておるけれども、事実はいま申し上げたような非常な格差がある。大きな実はいろいろな悩みがある。特に医療については、いろいろな矛盾をはらんでおるわけでありまして、皆保険化といわれておるけれども、国民は高い負担をしながら医者にかかる、こういう実情にあるわけであります。したがって、国民の健康、国民の生命というものを、これをひとつ大切にするという政治が今日、日本に十分に行き渡ってないためではないかと私は言わざるを得ない。いわば高度経済成長に名をかりて、これらの問題に対してないがしろにしてまいりました政府の責任は、まさに重大であると私は言わなければならぬと思います。
特に、医療制度の中における重要な柱といわれておる医療保険制度については、総理、あなたは御案内のとおり四十二年以来、これの抜本的な改革をやると、実は国民と国会に約束をされてきた。忘れもしないと思いまするけれども、四十四年の本会議においては、
健康保険法の改正案の趣旨説明に先立って、あなたはみずからあの壇上でもって、この約束が守れなかったことは、まことに遺憾である。すみやかにこれに着手するという、こういう発言をされていることをお忘れでないと思います。
いわばこういう医療の全体的な体制というものが、今日まで十分国民の間に行き渡っておらない、その政治責任、その公約無視、これを私はまず総理は一体どのようにいまお考えであるか。
確かに、つい最近抜本改正案なるものが国会に提案をされてまいりました。しかしその間、まさにこれは六年になんなんとする間、実は無為無策に過ごしてきた、こういう状態であります。
佐藤さん、あなたは人間尊重を言い、福祉優先を言っているけれども、その他の施策に比べて、あまりにもこの問題に対する措置は、いわばないがしろに過ぎたのではないか。こういう国民の大きな批判と不満があることを、この際正しく認識をしなければならぬと思うのですが、どうですか、総理、所信をひとつ承りたい。
-
○
佐藤内閣総理大臣 田邊君からいろいろ私どもの政治責任、また公約等についてお話があり、どちらかといえば批判されたかのように私受け取ったわけでございます。しかし御承知のように、わが国の社会保障制度、これは発足間もない、歴史はまだ浅い、そのために私はずいぶん基本的な問題で、取り組み方も先進諸国に比べましてたいへん違っておる、かように思います。またこの問題自身は、私が言うまでもなく、受診者あるいは負担側と、また診療側と、そこらにもいろいろ利害も錯綜しております。したがいまして、簡単に抜本策を立てる、かように申しましても、なかなか利害衝突している。ことに最初申しましたように、歴史の浅い、そういう点からは、これは取り組むその姿勢がたいへん大事だろうと思います。したがって、そういう際に、むずかしい錯綜している関係のものを断ち切って、そうして思い切ってこの問題と取り組んでいく、まあ考え方によっては歴史が浅いだけに取り組み方もやさしい、こういうことも言えるかと思いますけれども、私は実はたいへんむずかしい問題があると思います。
したがいまして、各種審議会等の答申を求めておりましても、なかなか長年月を要しておる。その事情は皆さん方のほうがよく御承知だと思いますけれども、私はいわゆる豊かな社会、あるいは福祉国家を形成したい、こういうことをお約束をしておりますし、まあその一つの社会保障制度、さような意味からも医療保険、こういうものの中身の充実、それをはかっていかなければならない。その充実をはかる場合に、どういうような方式によるのか、そこらにもいまのところ、これは単一でないだけに非常に扱い方がむずかしい。こういう困難さがあること、これは私が申すまでもなく
田邊君も御承知だろうと思います。そういうものが、その複雑性が今日まで
改善をはばんできている。そうして時間がたてばたつに従って、いわゆる赤字といわれるもの、累積赤字もふえ、一そう困難になる。本来負担を軽くするつもりで発足したものが国民の負担を逆に重からしめる、こういうようなことにもなるのじゃないか。そこらにむずかしさ、これはまあ申せば、いろいろ尽きない点でございます。
しかし、何としても社会保障制度、その中身を充実をしていく、そのために、やはり医療制度、
医療保障、そういうものをもっとりっぱなものにするように努力していく、これが私どもの基本的な態度でございます。
-
○
田邊委員 いま総理から、あなたの念願とするものは日本の社会保障の充実であり、そのために医療の問題は非常に複雑であり、利害が錯綜しておるけれども、発足がおくれているだけに取り組みやすい点もあるから、それらを勘案してやりたいという、こういう考え方のようでございます。
私は、その限りにおいては、そのとおりだと思うのですよ。しかし、あなたのいまのことばと現実に行なってきたもの、そしてまた、今回の改正案と比較してみた場合に、まさに羊頭狗肉だろうと私は思う。特にいろいろの意見を聞いてやると言われた、けっこうです。その一つの象徴的なものは、社会保険審議会なり社会保障制度審議会なりの答申です。実はこれも相当いろいろな意見が錯綜しておったから、その答申もおくれてしまった。この答申をあなたのほうは一体どういたしました。今度の
健康保険法案については、この両審議会の答申を全く採用されてない。一体、この審議会というものの存在を何だと——これは厚生大臣に言わすれば、いや予算を組んでおるから、その上でもって審議会に諮問をしたために、答申も実はなかなか守れない、こう言うのです。そんなやり方というのが一体ありましょうか。
これは、まず国民の声に耳を傾けるというあなたの日ごろの、いわば口癖からいえば、その一つの集約的な表現である審議会の答申を全く無視して法律を出してくる。五月十六日に出してまいりました抜本改正案なるものも、まさにこれは抜本に値しないものであるという審議会の答申がありましたが、われわれは今国会において、審議の対象にもならぬようなしろものじゃないかと実は思っております。こういういわばあなたの、政治責任を負ってこなかったという事実と、そしてまた、国民の声を聞きながらやるという、こういう考え方とは全く相反した、この答申を無視した形において、いわばあなた方の独断でもってこの法案を出す、これを押し通そうという態度では、国民は断じて承知はできない、こういうふうに思うのであります。
これらの問題も踏まえて、いわば過去の批判と反省の上に立って今後に処しなければ、これは口頭禅に終わる、百万べん同じことを言っても、日本の医療制度は確立しない、国民のいわば負担増、国民のいわば不満というものは、さらにうっせきをする、こういうふうに私は考えるのでありまして、その点に対するあなたの謙虚な反省と今後に立ち向かう決意があれば、ひとつあらためて表明してもらいたいと思います。
-
○
佐藤内閣総理大臣 こうして夜おそく皆さん方に御審議をいただいておる。これは各党の
委員の方々、これはもちろん、各党とも社会保険制度がたいへん重大な意義を持ち、さような意味合いにおいて、夜おそくこうしてまで審議をしておられるわけであります。また、政府自身が出した案がたいへん不十分だ、こういうおしかりを受けておりますが、政府はもちろん、十分各種審議会から答申を得て、それに沿うべく努力はいたしてまいりました。しかしながら、所期した時期にそういう答申を得ることができなかった、こういう面もあります。また、どうも意見倒れに終わっているという節もあります。
本来、各種審議会が、いわゆる三者構成必ずしも中立的な意見ばかりでもない、こういうところにむずかしさもあったと思います。私は、そういうことで各種審議会の答申の出方について批判をするわけではありません。もちろん、政府自身が社会医療制度と真剣に取り組む、こういうことでなければならないと思っておりますけれども、これはいま御指摘になりますとおり、深い反省の上に立ち、まあ一歩でも二歩でも、よりいいものをつくる、こういう努力をしなければならない、かように実は思って御審議をいただいておる、これがいまの現状でございます。
私はもちろん、いまのものをもって最善、これなら万全だ、かようには申し上げかねますけれども、とにかくいまの状態を
改善する、それには必ず役立つ、かように思っております。したがいまして、そういう意味では皆さん方とも十分意見を交換して、そして、よりいい制度を確立するように努力するのが政府のつとめだろう、かように思っております。
-
○
田邊委員 総理、あなたは、いわば答申もいろいろな利害反する面があるから、あなたにはあなたの意見がある、こう言うのですね。われわれもそれは承知しますよ。しかし、
委員のすべてが、この政府の考え方に対しては批判をしている部面もあるのです。共通して、これはいかぬのだ、これはけしからぬ、こう言っている。こういう点もあるわけですから、それすらもがあなたのほうは尊重しないという、こういう立場に立っておるわけでありまして、その点私は、あなたの認識がまだまだ足らない点であるというふうに言わざるを得ないと思うのです。
そこで総理、今度出しておりますところの
健康保険法案は、三月十七日の本会議であなたに対する質問を行ないましたが、それ以来当
委員会で慎重に審議をしてきました。審議をすればするほど、いわば問題点が出てくるのであります。これはなぜかといえば、その改正案のどこを見ても、国民の利益になるものはないのです。あなたのほうは財政対策だ、これによって赤字がなくなれば経営が健全化するという話がありますけれども、今度の改正案はすべていわば国民の負担をしいる、そういう改正であります。
昨年までの改正案については、悪いものもあるけれども、いわば国民の目をごまかす意味からかもしれませんが、いろいろと給付
改善やあるいはその他が若干織り込まれたような要素もあったのですけれども、ことし出してまいりましたものは、全くそういういい要素は一つもないですね、大臣。そういう形の中でもって、この国民の批判が実はこの法案に集まってきたのは、当然の成り行きだろうと私は思うのです。
しかも、私が何といっても批判をしなければならぬのは、これはあくまでも受益者負担的な原則、いわば医療保険は個人の責任である、健康はあなたの責任で守りなさい、こういう立場です。これは社会全体が包んで、国が最終的な責任を負うという、いわば社会保険から社会保障へ移ろうという、こういった政府の発想の転換、考え方の発展、そういった展望は何ら見受けられない。ここに実は問題があるのですよ。ここに基本的な誤りがあるというふうに私は思うわけでありまして、やはり今度の改正案というものは、基本的な姿勢というものを改めなければ、私は
佐藤内閣の、総理のいまのことばというのは、国民はすなおに受け取ることはないだろうと思うのです。
佐藤総理、どうですか。あなたも長い、いわば政権を担当してきた総理大臣として、国民に喜ばれる施策というものを、あなたはその将来に残していかなければならない責任が私はあると思うのです。そういう意味合いから、ほんとうに国民がいわば総ぐるみで反対するような、そういう法案というものを提案したことに対して大きな憤りを感ずると同時に、その基本的な考え方も、いわゆる転換を私どもは求めなければならない、こういうふうに思うのです。いかがですか。
-
○
佐藤内閣総理大臣 田邊君もすでに御承知のように、実はことしの予算はすでに審議を経て成立しております。それで、ただいま御審議をいただいておるものが、予算のでき上がった後の審議である、実は財源を使い果たした、こういうような状況のもとであります。したがいまして、この際に一体何ができるか、そういうことをやはり考えていただきたい、かように思っております。私は皆さん方の御意見、全然耳をふさぐ、こういう意味ではなく、よりいいものをつくりたい、かように念願しておりますが、ことしの事柄として考えれば、できることとできないことがある。また、そういう方向に将来はしますとかいうようなことがあるのじゃないか、かように思いますので、それらの点は、厚生大臣からも十分答えて、皆さん方の納得のいくようにいたしたいものだし、またこれからのあり方としては、私も皆さん方とほんとうにひざを突き合わせて話し合っていく。これは全体から反対される、こういうものでも実はないであろうと思います。けれども、それはそんなに議論をしておりましても、いかぬと思います。とにかく各党の座談会を開けば、自民党は政府原案に賛成しておりましても、皆さん方はみんなそれを反対だ、こういうような状態ですから、各党の反対案なんだ、かように見えますけれども、しかし私は、それが必ずしも国民の大多数の意見、こういうところまで批判するのはいかがかと思います。
私はそんなことを申し上げるよりも、こうして夜おそくまでも御審議をいただいておるこの熱意から、何らかよりいいものをつくろうという、そういうものが出てくるのではないであろうか、私はそれを皆さんとともに探求する、こういう態度でこの際、
委員会に出席いたしたのであります。だからそういう意味で厚生大臣からも、ただいま
田邊君がいろいろ述べられた点について、ことしはどうも間に合わないが、これからはこうするとか、こういうような問題もあるだろうと思います。
-
○
田邊委員 厚生大臣、いま総理の発言を受けて、いままでいろいろ聞いておりますから一言だけ伺っておきたいのは、この中身は、いま申し上げたとおり値上げ法案、国民がもうほんとうに反対だと考えておる。したがって、これがたとえば通った場合でも、あなた方のいわば今後の考え方でもって、これは改められる点は改めなくてはいかぬ。したがって、法案に盛られていることもさることながら、盛られていない行政的な努力、当然やるべきことはたくさんあります。一々私はここで申し上げない。申し上げないけれども、それを怠ってきたところに、いわば赤字を生んだ原因があるわけですから、それはひとつ早急にやってもらう。
それから、この法案は、われわれは通ることに対して、中身については絶対に容認できないというものがあります。料率の引き上げ、あるいは特別保険料の新設、これは総報酬制につながるという批判がある。ボーナスからも取るのかという批判がある。これは政府原案では当分の間取る。これはやはりあなた方の考え方でもって、なるべく早い機会にやめる。暫定的な措置、こういうふうにあなた方も言っておるわけだから、やめる、そういうふうな決意と考え方でもって当然やらなくてはいかぬ。したがって、行政的な努力、法案に盛られている中身についても、あなた方の手でもって将来直せるところ、悪いところをなくすという点、こういった点も努力はひとつ早急に、全力を尽くしてやらなければいかぬ、こういうふうに思うのです。いかがですか。簡単でいいですから。
-
○斎藤国務大臣 いままでずいぶんとこの
委員会で御意見、御指摘の点がございました。私は、一々ごもっともと答えた点が非常に多いわけであります。そういう点につきましては今後極力行政努力と、また法律の改正を要するものは改正をする。そして日本の国民医療というものが社会保障の面も、今後、健保の法案でない面においても、さらに充実をさしてまいりたい。また政管健保の運営のあり方というようなものにつきましても、
改善を加えるべき点は、私は相当あると皆さんの御意見の中からも受け取りました。これらは十分に配慮をいたしまして、御期待にこたえるようにいたしたいと思います。
なお、特別保険料につきましては、政管健保の
改善とともに、これはただいま「当分ノ間」ということになっておりますが、できるだけ近い機会にそういうことのないように保険財政の安定をはかるように努力をいたしたいと思います。
-
○
田邊委員 時間がありませんから総理、最後に、何といっても大切なのは医療の供給体制をどう充実させるか。医者も足りません、医療機関も足りません、なかなか医者にかかれない。しかも、かかったら金がかかる。こういう状態というものはなくさなければいかぬ。そのためには、日本の医療制度の向かうべき方向というのを明らかにしなければいかぬ。政府は何か医療基本法というものを出してきているそうであります。それからまた医療法の抜本改正、これは医療保険の、いわば将来の抜本的な制度の改革ですけれども、これまた、われわれの主張も、まだ審議の対象になっておりませんけれども、もう抜本の名に値しない、これはつじつま合わせである、こういうことであります。
したがって、総理、あなたがいろいろなことを言われるけれども、最終的には、
医療保障と所得保障というのは、日本の社会保障の二大柱である。その一つが、財政的にも行政的にも解決の方向に向かい、国民が安心して、いつでも、どこでもよい医療というものを受けられる、こういう体制をつくらなければならない。これが七〇年代の政治の最大の課題であると私は思うのです。これはそういった点で総理がいろいろと述べられたけれども、ひとつ国民医療を
改善、充実し、国民の信頼のできる医療体制をつくる積極的な、あなたの、ほんとうの意味における政治生命をかけた姿勢というもの、この懸案に、あなたが取り組むというこういう決意というものを国民は知りたいと思っているのであります。
佐藤さん、あなたのいままでの長い総理としての経験の中から、この際、私はあなたのそういった心底からの決意、展望というものをひとつ端的に明らかにしてもらいたいというふうに思います。
-
○
佐藤内閣総理大臣 とにかくお互いが病気にかかって病院に入れない、あるいはお医者さんがいない、また
看護婦もいない。薬だけは多量に薬屋で売っている。こういうような状態、これがいまの社会情勢、たいへん心配なのじゃないかと思っております。
私は、いわゆる住みいい社会をつくる、そういうことを申しますのも、いわゆる病気になったら医療機関が自由に利用でき、さらにまた、お医者さんもいつでも電話一本で出てくれる、手厚い看護をしてくれる、診療を受ける、こういうような世の中になってほしいと思います。しかも、そのために国民の負担が重くなるようでは困ります。同時に、これは保険制度でありますから、ある程度保険料の適正、これは考えなければなりませんけれども、政府といたしましても、その保険料の適正化をはかると同時に、ただいまのような医療施設、医療人員等の整備について積極的な態度が望ましい、かように私思います。
ただ私、この日本の場合において、ある組合の医療保険はたいへん進んでおるけれども、あるものはおくれておる、こういうような非常な不均衡がある。組合健保、それからもう一つは老人、あるいは小児、この辺になってくると、これが一番病気になる率も高いし、またそういうところへ、ほんとうにあたたかい救いの手を差し伸べなければならないのだが、そういうところの財政状態、組合の財政状態が一番悪い。そこで、最終的に受益者負担というような形でこの手入れをする、これでは真の福祉には、なかなかつながらない。そこで抜本的な改正として何かいい、打って一丸としたような制度は生まれないのか。これはあらゆる機会に云々されておりますけれども、これはなかなか三者構成、そういう立場で一致しない。いままでのところでは、経過的に見まして最も気の毒な方たちだけを政府がやはりめんどうを見ていく、こういうことにならざるを得ない。そこで、いまのような制度のもとで保障制度と取り組んでおる、医療制度と取り組んでおる、こういうことでございます。
私は、しかし、これももっと時間をかせば、冒頭に申しましたように、どうも歴史の浅い、そういうところに未熟な点があるのだから、もう少し時間をかしてもらえば、さらにまた各方面の意見が、ただいまもっと充実すべきはこの点だ、こういうところに力を入れられれば、大いに
改善されるのではないだろうか、かように思います。
たいへん長い時間申し上げて、また要領を得ないようなお話で恐縮でございますが、私は、ただいま一面で国民の最も望んでおる姿、しかもそれがあまり直接の負担でなしに、国民全般としてそれがまかなわれる、こういうような形であってほしい、そういう方向で努力すべきは努力する、またそういう方向でいかなければならないと思います。ただいまはすでに予算もでき上がった際でございますから、先ほども申しました、ことしいま直ちにどうこうは、なかなかできかねますけれども、方向をはっきり示すこと、これは可能なことのように思いますので、私はそういう意味で努力すべきではないか、かように思います。
-
○
田邊委員 いろいろと意見がありますけれども、どうかひとつ国民が——いま医療保険制度の中身について触れましたが、やはり負担は公平、そして受ける給付、利益は公平、平等ということでなければならぬ。それは政府の責任で乏しき者はだんだん上げていく、このたてまえが貫かれなければならないと思う。
いずれにいたしましても、どうかひとつ医療の問題、あなたの脳裏に、その将来の
改善というものを、どうしてもしなければならぬという、こういうことをひとつ永遠に刻み込んでいただきたいということを、私は特に要求をいたしておきます。
終わります。
-
-
○
大橋(敏)
委員 佐藤総理、人生において人の出処進退ほど重要なものはないということを聞いておりますが、あなた自身一国の行政府の最高責任者でございます。当然そういう立場にいらっしゃるあなたならば、もうすでに心の中ではおきまりであろうと思います。私も、遠からず去っていかれることと思いますが、そのあなたに、うしろから切りつけるような感じにはなりますけれども、私は、きょうはあなたにどうしても言わなければならぬことがございます。
まず、私が初めてこの国会に参りました昭和四十二年、そのときもこの健康保険の改正案が提出されておりました。私は、御承知のとおりに医療に関しては全くのしろうとでございます。しかし、
社会労働委員会に所属いたしまして、その医療の混乱、矛盾、それが勉強すればするほどわかってまいりました。そして、私は党を代表して代表質問に立つことになったわけでございます。しろうとの私は、いかにして、この実態を総理に知ってもらい、訴え、そして
改善してもらいたいかという気持ちから、きのうも、きょうも、あすもと現場に飛び、苦しい状態を目で見、そして私は代表質問に立ったのでございます。しかし、あなたは私のその代表質問に対して、答弁は何でございましょうか。会議録を開いていただきたい。二分にも及ばない冷淡な答弁でございましたですよ。
源遠ければ流れ長しといいます。つまり、原因をつくれば、原因が生まれれば、結果は当然あらわれるわけでございます。今日の医療のこの矛盾、混乱の原因は一体どこにあるか。私はあなただと言いたいのです。なぜならば、いまから五年前も、あなたのこの医療に対する熱意、根性というものは、私は当時の会議録を振り返って見まして、なるほどだ、今日のこのような矛盾や混乱が出てくるのは当然だ、あなた自身にやる気がなかったのだ、このように見ざるを得ません。その証拠に何回抜本改正をやります、提出しますと言いましたか。一回、二回とわれわれは裏切られましたが、当然今国会には出るものだと思っておりました。あなたはおっしゃるでしょう。つい先ごろ、いわゆる抜本改正案なるものを内閣で閣議決定しましたと、国会に出しましたと言いますけれども、その中身が大問題でございます。話になりません。これは出したうちには入りませんし、審議するひまなどは、どこにもありません。
まず、あなたにお伺いしたいのですが、なぜその抜本改正が間に合わなかったのか、はっきり答えていただきたいと思います。
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○
佐藤内閣総理大臣 いまも
田邊君にいろいろお答えをしたのですが、
大橋君からも大体政府の怠慢、これを責められるようであります。また、抜本対策について熱意を欠いておるではないか、こういうおしかりでございます。
私はしかし、いままで政府がいろいろ努力をしてきておる、その努力を十分理解されるならば、政府が全然この問題について努力しなかった、こういう批判は当たらないのではないかと思っております。(発言する者あり)これは、できなかったことは、そのとおり私も認めざるを得ない。しかし、これがいかにむずかしい問題であるか。これは御承知のように、お調べになればなるほど、いまの各種審議会は三者構成でできておる、利害衝突しておる、そういうところに原因がある、これはおわかりだと思います。
私は、あらゆる面でやはり各方面の意見を聞いて、いわゆる調和のとれた方向で、そういう案がつくられるべきではないか、かように実は思っておりますので、われわれは努力はしながらも、その実があがらなかった、これは私もまことに残念に思っております。そのことを率直に申し上げて、お答えといたしたいと思います。
-
○
大橋(敏)
委員 先ほどから言いますように、これだけやった、あれだけやったけれどもできなかったでは、国民は納得いきません。御承知のとおり政管健保というのは、中小零細企業でございます。そこに働いておる労働者も中高年齢層が多いし、罹病率も高い、低賃金である。それはそれは悪条件が重なった方々ばかりでございます。こういう政管健保に対しては、社会保障的見地に立って、大幅なあたたかい国の援助を差し伸べるのは当然でございます。これがなされない。いわゆる赤字の起こってくるほんとうの意味の対策をやらないで、計算の上だけで財政対策をやるというところに問題があった。そこを指摘されてきたわけです。
私は知っております。私自身あなたから任命を受けております社会保障制度審議会の一員でございます。やればやるほどいかにむずかしいかわかっておりますけれども、このむずかしさはいまに始まったことではないのでございます。もう十年、あるいは二十年前から、このことはいわれていたと言っても過言ではないでしょう。当然これはむずかしいことはさまっております。だからこそ総理の熱意、情熱にたよらざるを得ないのじゃないですか。
よろしいですか。今回の抜本改正案なるものは、先ほどの
委員が言っておりましたように、抜本改正の名に値しないという社会保障審議会、社会保険審議会の答申の指摘でございますよ。それよりももっと後退した中身が出てきているのです。私は厚生大臣にも言いたいです。実は、抜本改正案というものは昭和四十六年の九月に、このような分厚い長文の中身ではっきり答申が出ておりますよ。なぜこの答申を尊重なさらぬのですか。総理、あなたは答申に対して尊重なさるのか、それともなさらないのか、まずそれを聞きたいですね。
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○
佐藤内閣総理大臣 もちろん審議会を設けた以上、審議会の答申は尊重しなければならない、そのことはわかります。しかし、その中にそのまま実施できるような状態のものと、そうでない場合とがあるわけでございます。それらの点は、十分御理解をいただきたい、かように思うのでございます。
-
○
大橋(敏)
委員 私がいま言わんとしていることは、抜本改正というものは、いいですか、医療機関の適正配置。いま国民は、国民皆保険で強制的に保険料、保険税を取られておりますよ。そうして国民の気持ちは、日ごろこのように保険料を納めているのだから、病気したときぐらいは、いつでもどこでも安心して医療が受けられるものだという気持ちでいるわけですね。どうですか。いまだに医者もいない無医地区がございますよ。これはどうなんですか。あるいは公的医療機関はきわめてまずい姿であります。こういうことをそのまま放置していいのか。また医薬分業の問題もしかりでございます。あるいは医者の養成、確保の問題、そのほか診療報酬の適正化、こういうことを一つ一つ実現していかない限りは、幾ら財政の上でそろばんをはじいてみたって根本的解決にはならないのであります。
だからこそ四十六年に、社会保障制度審議会が医療制度というものは、こうこうこうあるべきですよ、医療保険制度はこうあるべきですよとちゃんと答申を出しているじゃございませんか。ところが、今回の抜本改正の中には、その医療供給体制側の問題に対しては、ほとんど触れてないじゃないですか。これでも答申無視でないとおっしゃるのですか。どうですか。
-
○
佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、ただいま御指摘のように、無医村、全然医者のいない山村、離島等々のあること、これは瀬戸内海でも、あの島々にお医者さんがいない。ましてや相当の報酬を出しても、小笠原諸島にも医者が出かけない。そういうことで診療機関の整備には、各自治体も政府も非常に努力はしながらも、これが不十分でございます。ただいまのところ、そういう点が非常に欠けておる、かような御指摘であります。私もそのとおりだと思っております。
またこれは、それならば医者がそう簡単にできるのか、またそういう方をそういう場所に送り込んで、これが希望が持てるのか、こういうことも考えなければならない。いろいろ社会制度そのものとも関連がございます。ただ単にその報酬だけの問題ではないように思っております。もちろんお医者さんが研究を主に考えると、どうもいつまでも、終生あの離島にいるというわけにいかない、こういうことを言われるのももっともだと思います。しかし私は、これらについても克服する方法もあるのではないか、あるいは年限を限ることによって、さようなことができるのじゃないか。お医者さんが足りないことについては、あるいは地方自治体から学資が出るというか、そうしてある程度の義務を負わすというようなことも考えられて、やはり医者をふやすこともいろいろ考えられております。
私はこういう制度がだんだんできてき、同時にまたそういう事柄についても協力が積極的にされる、同時にまた医薬分業、これなどもいろいろ考えられておりますが、理論倒れにならないで、真にそういう方向に進むならば、いまの病気の診療、その状態が非常に変わってくるのじゃないか、そういう変化した進んだ状況をここへ出してこなければならない、かように思いますが、先ほど申しますように、ただいまは各種の医療機関がございます。また各種の組合制度がある。その間においてどうも調整がうまくできない。ここらにも非常なわれわれが
改善しなければならない問題があると思うのです。抜本改正、抜本改正と口では言うが、何にもやっておらないと言われる、これらの点も、私はまことに恥ずかしい思いをしながら、ただいま申し上げておるのであります。この不足し、また不十分なもの、これをただいま何とかしてよりいいものをつくろうとして、いろいろ基本法その他のものを提案し、皆さま方の御審議をいただいておるのでございます。私はそういうものを具体的な問題についてこの点が不足だ、あるいはここをこう直せ、こういうことがあれば、そういう意味においてもちろん検討をするつもりでございます。
しかし、私いま抽象的な議論をいたしておりましても、具体的ないまの診療制度、そのほうがよりどういうように進んでいくか、そこに思いをいたさなければならぬのではないか。
大橋君の言われるのも、たぶんそうだろう、かように私はとっておる次第でございまして、これはやはり具体的な問題だろう、かように実は思っております。
-
○
大橋(敏)
委員 いろいろおっしゃいましたけれども、その気持ちをなぜ抜本改正案の中に示さないのですか。私が言いたいことは、あなたは答申などをほとんど見てもいないのじゃないかと思われるくらい無視なさっておる、軽視なさっておる。それが言いたいわけです。
今回の財政対策案に対して、やはり答申が出ておりますよ。この答申の中にこういうことがあります。「医療保険の抜本的な改正の前提条件といわれている。もし長期的展望をも含んだものであるならば、医療保険の抜本的改正とあわせて総合的に検討さるべきである。にもかかわらず、本件を切り離して答申を求めようとする政府の態度は、不合理であり無理といわなければならない。」切り離して今回の対策案を出していること自体がもう間違いだ。もし審議会の答申を尊重なさるのならば、これは撤回すべきですよ。
またさらに、今度の標準報酬の上限下限の引き上げが行なわれておりますが、これは労働賃金の上昇に応じて変動していくことは私にもわかりますが、一挙に十万四千円を二十万円まで引き上げるなどとんでもない話でございます。あるいは下限を三千円から一万二千円、これもけしからぬ話でございます。こんなに大幅に一挙に上げるなんということは行政のあるべき姿ではございません。だから答申の中にもそれを指摘しております。
もう一つ言いますよ。今回の特別保険料というものは、財源あさりのためにボーナスから取ろうとなさっておりますよ。審議会は、この姿は財源あさりである。「負担の対象を標準報酬以外の賞与に求めたものにほかならない。賞与は安定的な財源ともならないし、この特別保険料によって真の被保険者の間の負担の公平を期せられるものでもない。」つまり政管健保は貧乏ですよ。その貧乏な被保険者から特別保険料まで取るのだ、組合保険はお金持ちですよ、そこには特別保険料は取らないのですよ。負担の公平という立場から見たならば、大いにアンバランスじゃないかと言っているのですよ。「しかも、組合管掌健康保険と取り扱いを異にしていることにも問題がある。」いま私が言ったことです。「したがって、新設に強く反対し、また、」云々ということばがございます。答申の中には、この特別保険料はだめだ、反対だと言っているのですよ。
あるいは弾力条項千分の八十、この問題もしかりです。この千分の八十を限度とする保険料率の弾力的調整の規定は、保険財政の長期的安定をはかるためには必要なものと政府側は説明しているが、少なくとも四十七年度においては、すでに収支は均衡され、発動の必要はない。あなたがいま考えている財政対策案は四十七年度は安定するような中身じゃないか。だから、この財政対策案の中に、こういう弾力条項を持ってくること自体がおかしいのだ、こう言っておるのです。こういう点については、どうお考えなんですか。
-
○斎藤国務大臣 こまかい点でございますから、私から一応答弁をいたしまして、必要に応じて、また総理からお答えがあるだろうと存じます。
先ほどおっしゃいました特別保険料の点は、制度審議会のほうでは、総報酬制をとることも一つの考え方であるが、他の保険とも考えて、もう少し検討したほうがよかろうという意見もあるわけでございまして、根っから根本的に反対であるという意見でない面も制度審議会から出されているわけでございます。
なお、弾力条項の点は、これは赤字をたな上げをする。そして単年度赤字を将来生ぜしめない。四十七年度は、おっしゃるとおり、これで均衡いたすが、将来も単年度赤字を出さないために必要であるということで、この制度をお願いをしたわけであります。制度審議会といたしましては、この点はわかるが、これは抜本改正に入れるべきではないかということでございます。
そこで、抜本改正は、財政の安定をはかるという趣旨ではなくて、それ本来のあり方に直していくということにいたしたい。ただいまお願いいたしております財政対策は、将来の財政も安定するように、四十七年度はもちろんのこと、そういう意味で赤字のたな上げと、そしてそれに見合って——見合ってというのはおかしいかもしれませんが、それと一連の制度として、赤字はたな上げをするかわりに、単年度赤字は将来出さないという保障をこの弾力条項につけてまいりたい、こういう趣旨でつくったわけでございます。
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○
大橋(敏)
委員 だからこそ、審議会では「抜本的対策の成立後において諸条件の変化をおりこんだうえ、長期的財政見通しにつき十分検討を加え、」云々とあるのです。いいですね。抜本対策をやった後にとあるのですよ。よく覚えておいてくださいよ。
それから、国庫補助の問題でございますけれども、先ほど言いましたように、政管健保は体質的に赤字になる中身なんです。昭和三十九年三百二十五億円、そのときに国庫補助は五億円なんですよ。それから、四十年は四百九十七億円、そのときはわずかに三十億円。四十一年は国庫補助百五十億。四十二年で二百二十五億、それがずっと四年間据え置きですよ。二百二十五億そのままだったのです。その利子だけでもばく大なものです。四十六年の国庫補助の半分以上が利子に支払われているという事実があったのです。ほんとうにもっとこの状態を知って、国が大幅な国庫補助をしていったならば、こんなばかなことにならなかっただろう。利子だけでも、そうなんです。私は、時間の関係もございますので、またほかに移っていきますけれども、これはよく覚えておってほしい。
もう一つ言っておきますが、私は東京の荒川で中小企業に働いているAさんの実態を調べてみました。保険料が千分の七十三ということになればどうなるか。この人は標準報酬八万円です。いまの七%ならば二千八百円、七・三%になれば二千九百二十円、年間負担増が一千四百四十円になります。その上に、ボーナス四カ月分取られますと、三千二百円が加わります。ですから、合計四千六百四十円が上積みされるのです。こんなめちゃくちゃな話がございますか。
私は、時間が過ぎておりますのでこの辺でやめますけれども、総理、言っておきます。
先ほど言いましたように、あなたは去っていかれるでしょうが、次期総理に対して、われわれの気持ちを必ずや伝えていただきたい。これを言っておきますが、どうでしょうか。
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○
佐藤内閣総理大臣 政局を担当する政党、そこの総裁、これはもちろん皆さん方の御意見も十分伺い、また国民の声を聞き、国民にこたえる、そういう姿勢でなければ政局は担当できない。このことははっきり、私だけではなく、みんな承知しておる、かように思います。
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-
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○田畑
委員 前二者の質問にもありましたように、この十年来の政府の医療行政、医療政策のあとを振り返ってみますると、常に財政対策、それはほとんど政管健保の赤字対策に終始しておるわけであります。
今回の法律改正の内容を見ましても、抜本改正に至るためには財政の安定がなければならない、そういうことを厚生大臣もしばしば言われるわけでありますが、確かにそれも認めるにやぶさかではございません。しかし、政管健保がなぜ赤字になってきたのかという、その原因の追及ということがないわけです。ある県と別の県と比較しますと、政管健保という同じ制度のもとにありながら、一人当たりの医療給付に六割も七割も開きがあるということです。
なぜそのような開きがあるかという原因を探求してみますと、私は今日の医療にからまるいろんな矛盾が解明されてくると思いますけれども、政府・厚生省はその努力を怠ってきておる、そういうような怠慢の上に立って、今回もまた政管健保の赤字対策が出されてきた。私は、この法律がかりに実施されるにいたしましても、二年間は持つだろう、こういう感じがするわけです。
遺憾ながら、総理が昭和三十九年に政権を担当されて以来、人間尊重である、あるいは福祉優先、こういう公約をとられてまいりましたが、医療の面からながめてきますと、皮肉なことには、昭和三十九年、四十年といいますと、政管健保について見ますと、医療費の赤字が一番大きな額が出ておる年であります。かくして四十二年の健保特例法、四十四年の健保特例法とつながれてきたわけでありまするが、振り返ってみますると、この十年来の
佐藤内閣のもとにおける医療政策はすべて赤字対策に終始をしてきた、こういうことであります。
この問題の解決をはかるためには、いまの医療問題の処理のためには、こういうもろもろのひずみを是正するために、どうしても抜本改正、それは一つは給付の
改善の問題もありましょうし、いまの医療に伴うひずみの是正のためには、たとえば診療報酬の適正化の問題もありましょうし、医薬分業の問題もありましょう。ところが、そういう問題について何一つ手を染め得ないままに今日に至ってきた。ようやくこの国会に抜本改正という名の
健康保険法等一部改正を出しておいででありますが、先ほど来批判がありますように、関係審議会も、結局これもまた財政対策にすぎないじゃないか、こういう批判をしておるわけであります。
その当否はともかくといたしまして、私が申し上げたいことは、この抜本改正法案を閣議決定されて国会に提案されたのが、わずか一週間前です。この財政対策法と抜本改正法案というのは同時並行的に審議をするのでなければ、医療問題の解決はできない、こういわれていたにかかわらず、抜本改正法を国会に出されたのは、わずか一週間前。
ことに私は、総理に考えていただきたいことは、先ほど来お話がございましたが、昭和三十六年以来わが国は皆保険制度に入った。申すまでもなく、それはすべての国民がどこにいても、いかなる職業にあろうとも、必要なときはいつでも医療を受けられるという制度の中に入ったのが昭和三十六年。ところが今日残念ながら、どこにいても必要なとき医療を受けられるかというと受けられない。この問題が今日の医療制度の一番大きな問題じゃなかろうか。この問題にこたえるために医療基本法案というものを、政府はこの国会に出すということを、あの三月の衆議院の本会議における私の質問に対しまして、厚生大臣も総理もお答えになりましたが、その医療基本法案というものがいま一体どうなっておるか。二十三日に閣議決定をされたということがようやく新聞に報道されておる。国会の会期は、二十六日と申しますと、あと二日後に終わるという状況です。しかもその医療基本法案を見ますと、一体あれによって今日の医療制度の問題なり、医療担当者の養成の問題なり、あるいは医療機関の整備の問題など解決できるのかどうかというと、あの医療基本法案では、具体的な計画などは示されていない。
この間竹下官房長官は、NHKの討論の座談会で、いや、あれは哲学だ、哲学だと言うんです。われわれが求めているのは哲学ではなくて、現実に具体的に、いまの医療供給体制をどのように国民の需要にこたえていくかという具体的な解決案を出すことが大事なんだ。ところが、竹下官房長宮が指摘されるとおり、実は政府の出しております医療基本法案は哲学なんです。きれいな文章なんです。ただ医療計画審議会の設置法にすぎない。
私はこれを見ますと、やはり
佐藤内閣は、医療問題については口先だけのから手形に終始したなという感を深くするわけです。公害発生の問題を見ましても、環境の汚染を見ましても、
佐藤内閣七年有半の政治のもとにおいて、遺憾ながら、経済は高度に成長したが、その結果われわれの生活環境は破壊される。おまけに、あまりにも輸出中心、生産中心に走り過ぎて、円の切り上げ、あるいは再切り上げ、こういうかっこうに追い込まれてきた。私はこういうことを考えてみますと、
佐藤総理がいろいろな面において、それぞれのりっぱな成果をあげられたことは、正しく評価したいと思いますが、内政の問題、医療の問題に関する限りにおいては、何一つできなかったということを、
佐藤総理もつくづくと反省されると私は考えますが、ひとつ総理の責任ある見解なり、今後について、どうあるべきかということについてお答えをいただきたいと思います。
-
○
佐藤内閣総理大臣 田畑君からいろいろお話しになりましたその御意見の中には、哲学めいたものもありました。私はさように受け取ったのです。しかし、政府の施策の貧しさについて非常に御批判があり、それがいわゆる医療保険の対策、対策、社会保障の対策、対策といいながら、結局それがいつも政管健保の赤字に終始している、この一言はたいへん強く私の胸を打っております。
なぜ政管健保が赤字に苦労しているのか、この点は私から御指摘するまでもなく、これはよくおわかりのことだと思います。わが国の
医療保障制度の面から見ましても、たいへん特異な健保、これは国がほんとうにめんどうを見なければならないような立場に置かれておる保険とは言いながら、そういう実態を持っておるものだ、かように割り切らざるを得ないと実は思うのであります。どうもそこらに国と組合との関係が割り切られておらない。ただいま言われるように、政府がもっと負担をすべきだ、こういうような割り切り方をしなければならないものか。
さらにまた、医療の各種保険制度を統合して、もっと負担の公平をはかるべきではないか、ことに給付の公平をはかるべきではないか、これは私は積極的な意味においてそういうことが望ましい。これには別に異存はないだろうと思います。ただ、現状において直ちにそこまで持っていくことができない。これは経過がありますから、そうかってに新しくつくるような筋のものでもない。そうすると、ただいまのところでは、やはり政管健保に対する赤字対策に終始せざるを得ない。かような非常に狭義の意味においての皆保険の対策を立てられておる、かように私は理解しておるのです。
その意味において、これはもちろん国が中心になるべき筋のものだ、かように言われることもわからないではございませんけれども、やはりそれかといって、全部国の負担、ということは、やはり納税者負担、国民負担ということにもなるのですから、それらの点を考えると、やはり受益者の負担も考えざるを得ない。やはり負担の公平、それにも思いをいたす。やはり政管健保の財政の基礎も堅実でないと、診療の給付は劣るということにもなります。それらのことなどを考えながら、今回の制度の
改善はやむにやまれない措置であった、かように御理解をいただきたいと思うのであります。
私は、いまやっておる事柄が、胸を張ってたいへんりっぱな、もう最上のものだ、かように申しておるわけじゃありません。しかし、現状においては、これ以外には実は方法がない、かように考えて皆さん方におはかりをしておる、そうして皆さん方の御意見も伺いながら——政府案を無理やりにどうでもこうでもというような考え方じゃなしに、やはり皆さん方の御意見も聞きながら所要の改正をも加え、ぜひひとつ案は成立させていただきたい、かように実は申し上げておるのでございます。
ただいまいろいろお話を聞いて、今後私どもが取り組むべき方向については、私どももさらに反省に基づいて建設的な方向へ努力すべきだ、かように思いますが、ただいまの御所見に対しまして、私の感じ方を率直に披露いたしまして、お答えといたします。
-
○田畑
委員 時間もありませんから、私は総理にもう一問だけお尋ねいたしますが、私の質問の内容についても、総理は正しく理解されていないようであります。しかし、それを繰り返してもしようございませんからやめますが、もう一つ私がお尋ねいたしたいことは、いま御承知のように皆保険制度で、すべての国民は、いずれかの医療保険制度に入っておるわけです。そうして保険でありますから強制加入であり、保険料を強制的に取られるわけであります。しかし需要側、国民の側からいうならば、社会化された制度になっておりますけれども、さて、それでは医療の供給側はどうかというと、そうにはなつでいないわけです。それが無医地区となり、必要なときに医療を受けられないような無医地区は三千カ所にも及んでいるということは、総理御承知のとおりであります。
このことは、やはり諸外国、ヨーロッパの国々においては、公的医療機関が医療の中心の役割りを占めておるけれども、日本においては自由開業医制度であるということ。保険として需要側は社会化され、計画化されておるけれども、しかし、供給側は自由開業医制度、ここに、皆保険に発足したその当時から、この問題について深く対策を立てて、保険制度、医療制度を需要、供給の両面から一体化すべきであったにかかわらず、それを怠ってきたのに問題があろうと私は思うわけであります。
昨年の七月のあの日本
医師会の保険医総辞退を見たときに、われわれといたしましては、あらためて日本の医療機関のあり方というものを国民はすべて考えさせられたと思うのです。やはり公的医療機関というものは、整備をすることが必要ではなかろうか。ところが、今日わが国の医療行政の中においてどうかというと、たとえば医療法という法律がございますが、公的な医療機関における病床等については、これを増設するについても、いろいろな規制措置がとられておるということ。また、三時間待って三分間の診療などといわれておりますが、やはりこれは病院と診療所との関係等、もっと機能が分化されて、診療所の役割りはこう、病院の役割りはこうだというような体系的な整備がなされないところに問題が出ておる、私はこう思うわけであります。
こういうことを考えてみますと、このような問題こそ医療基本法が取り上げる問題でありますが、すみやかに解決策を打ち出すことが、国の医療政策の一番大事な基本ではないのかという問題。ことに私が最近痛感する問題としては、医療担当者の養成の問題、
医師なり歯科
医師なり薬剤師なり
看護婦等々、こういう医療担当者の養成というのは、やはり何といっても国が責任をもって養成するということでなければならない。国がこういう面に思い切って責任をもって養成をしていくということでありますならば、医療担当者もそれなりの社会的な義務というものを当然負うべきだ、私はこう思うのです。
ところが、わが国の医学教育を見ると、私立大学に大きな比重がいっておる。国立、公立大学に対する国の助成策と、私学振興財団等を通ずる私立大学に対する補助を見ますと、雲泥の差があるわけです。私は、国立も公立も私立の医科大学も、国がそれなりの補助政策を通じ、国の必要とする医療担当者養成に助成を講ずべきだと思う。しかし、今日の私立医大はどうかというと、浪速大学の設立に伴うあの問題を見ても、昨年の大阪大学の入学不正事件を見ましても、ああいうふうにしなければ経営ができないような状況に置かれておる。しかも、それが国民の生命と健康をあずかる医療を担当する学校の実態であるかということを考えてみますと、われわれは、将来のわが国の医療の荒廃を非常に痛感するわけでありますが、私は、こういう面に国がもっと責任を負うべきじゃないかということを考えるわけであります。
そういう意味におきまして、私は、医療については、国民の健康と生命を守るということは、やはり最も大事な、憲法の基本的な精神から出発しておることだし、医療の公共性ということを政府ももっと大事に考えて、責任をもって取り組んでいただきたい。医療基本法を見ますと、このような問題にこたえるはずであるのにかかわらず、ようやく閣議決定をきのう済ましただけだ。この国会に提案するかしないかわからぬが、しかも、提案するのは単なる哲学にすぎない、それでは問題の解決にならぬ。
私が総理に要求することは、ほんとうに勇気と決断をもって、こういう問題について、もっと責任ある施策を講ずべきであった。この七年有半を振り返ってみますと、総理のこの面についての責任は免れない、私はこのように考えておるわけで、一体総理は、そういう点について反省されるのかしないのか、また私がいま申し上げたような点については、今後さらに熱意をもって御努力なさるかどうか、あらためて決意を伺って、私の質問を終わります。
-
○
佐藤内閣総理大臣 田畑君のただいまの御所説、御所論には、私も実は賛成でございます。私は、そういう方向で、国民皆保険という以上、診療についてもっと行き届いた、診療供給者と申しますか医者のほう、医療機関、そういうもののほうがもっと積極的な整備がされなければ、これは何としても不十分である、国民から納得がいかないように思います。したがって、ただいま公的な医療機関というものに発展せざるを得ないのじゃないか、こういう御指摘は、私もそういう点もあるだろう、かように思っております。
私は、とにかくただいまの状況のもとにおいては、診療者側、需要者側、双方ともにもっとほんとうに一体となった国民皆保険の実をあげなければならない。それには政府自身も、さらにさらに過去を反省しながら、積極的な前向きの施策と取り組むということでなければならぬ、かように思っております。ただいまのお説、しごくもっともだと共感を覚える点が非常に多い、こういうことを申し上げておきます。
-
-
○
森山委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————
-
○
森山委員長 ただいままでに
委員長の手元に、小沢辰男君より本案に対する修正案が提出されております。
-
○
森山委員長 まず、修正案の趣旨の説明を聴取いたします。小沢辰男君。
-
○小沢(辰)
委員 ただいま議題となりました
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
政府提案の改正法案は、政府管掌健康保険の財政の健全化と、その長期的安定をはかろうとするものでありまして、その趣旨は了とするところでありますが、種々の事情を考慮し、若干これを修正することといたしたのであります。
修正の要旨は、
一、政府原案では、国庫補助の割合を百分の五としておりますが、これを百分の十に引き上げることとし、昭和四十七年度に限り百分の七とすること。
二、特別保険料については、報酬月額五万円未満の者について免除措置を講ずること。
三、保険料率の弾力調整規定及びこれに伴う国庫補助の調整規定は削除すること。
四、
厚生保険特別会計法の改正は、取りやめること。
五、施行期日について、政府原案では、昭和四十七年四月一日としておりますが、これを本年七月一日とすること。
以上であります。
何とぞ
委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
-
○
森山委員長 修正案について御発言はありませんか。——御発言ないものと認めます。
この際、本修正案について国会法第五十七条の三により、内閣の意見があればお述べ願いたいと存じます。斎藤厚生大臣。
-
○斎藤国務大臣 ただいま議題となっております修正案につきましては、政府といたしましてはやむを得ないものと存じます。
—————————————
-
○
森山委員長 これより本案及びこれに対する修正案を討論に付します。
討論の申し出がありますので、これを許します。
山下徳夫君。
-
○
山下(徳)
委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案につきまして、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の意を表するものであります。
すなわち、医療保険の中核をなす政府管掌健康保険の財政は、かねてより問題とされてきたところでありますが、依然として悪化を続け、さらに本年二月に診療報酬の引き上げが行なわれたこともあって、その財政は極度に悪化し、破局的状況におちいることが懸念されるに至りました。
したがいまして、まず何よりも、このような事態の解決をはかった上で抜本改正への円滑な移行を実施するため、本改正案は、その第一として、昭和四十一年以来据え置きとなっていた標準報酬を賃金の実態に即し、改定を行なうものであります。
第二に、保険料率の引き上げにつきましては、去る二月に、医療費が引き上げられた点をも考慮して、その引き上げ幅も低率でありますので、若干の引き上げを行なわんとするのであります。
第三に、特別保険料の徴収につきましては、労働者の賃金から一定率で徴収される一般の保険料のほかに、賞与から徴収しようとするもので、これも当分の間の財政措置としては、やむを得ないものと考えられるところであります。
第四に、国庫補助につきましては、この法案においては画期的な定率国庫補助を導入した点に、きわめて意義深いものがあります。
第五に、保険料率の弾力条項については、一定の限度を付して、政府に変更権限を授権することは必要ではないかと考えるところであります。
また、われわれとしては、以上のような政府原案の趣旨を一応これを了としながらも、第一に、政府原案では、国庫補助の割合を百分の五としておりますが、これを百分の十に引き上げることとし、四十七年度に限り百分の七とすることとし、政府案より、さらに高率な画期的な国庫補助導入に踏み切ったことは、将来とも高く評価できるところであります。
第二は、特別保険料について、報酬月額五万円以下の者について免除措置を講ずることは、低所得者援助のため、当を得たものと存ずるのであります。
第三に、保険料率の弾力調整規定及びこれに伴う国庫補助の調整規定は削除すること。
第四に、
厚生保険特別会計法の改正は、取りやめること。
第五に、施行期日について、これを本年七月一日とすること等の五項目の修正は、本
委員会審議を通じ、最善の努力を尽くした上での結果であり、きわめて妥当なものと存ずるのであります。
以上のように、今回の改正案及び修正案は、今日及び将来の医療保険の充実発展をはかるために必要な保険財政の長期的安定を確立するためのものであり、わが党としては、修正案並びに修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
なお、最後に、国民医療の中における健康保険制度、なかんずくその中枢である政管健保のあり方については、きわめて重要かつ現下の国民の重大関心事であり、本案につきましては、本
委員会においては、過去の国会審議に増して、終始、民主的議会主義のルールにのっとり、実質四十時間以上にのぼる審議を尽くし、協議を重ねてまいり、本日討論に至った点は、きわめて意義深いものであることを痛感いたしておる次第であります。
これをもちまして、私の討論を終わる次第であります。
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○川俣
委員 私は、日本社会党を代表いたし、提案されました
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について、いずれも反対の態度を表明いたします。
すなわち、今日のわが国の医療制度の大きな危機は、高度経済成長政策下において、医療の充実、
改善を怠ってきた政府の責任であります。高度経済成長に伴うさまざまな公害などにより、国民の健康は破壊され、病気にかかる国民は、ますますふえつつある。こうした社会的要因による保険財政の赤字増加に対し、政府・自民党は、病気の自己責任原理を強調して、赤字を労働者、患者に押しつけようとしておるのであります。
国民の医療に関する関心は大きく、現在の保険中心の医療から保障中心の医療への転換を期待する声は大きい。しかし、政府提案のこの
健康保険法及び
厚生保険特別会計法改正案は、国民の期待を全く裏切るものでしかなく、むしろますます患者、国民に犠牲をしいるものであることが明らかであります。
本来、医療は、公共サービスとして、国の責任によって給付すべきであり、したがって、政府の保険主義、受益者負担を原則とするこの改正案には断じて賛成できません。
また、自民党が提案した修正案についても、弾力条項の削除、国庫負担の増率など、若干の
改善ではあるが、しかし特別保険料の新設、保険料率引き上げなど、依然国民負担は大きく、国民の
医療保障の観点から反対であることを表明し、討論を終わります。
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○
古川(雅)
委員 私は、公明党を代表いたしまして、
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案、この政府案及びこれに対する修正案に対し、反対の意を表します。
政府提案になる原案は、政府管掌健康保険の赤字を理由に、標準報酬の上下限の改定、保険料率の引き上げ、賞与からの特別保険料の徴収、さらには保険料率の弾力的調整まで行なおうと意図する改悪法案であります。すなわち、中小企業及び零細企業従事者を対象とする政府管掌健康保険の被保険者に過酷な負担を押しつけ、取れるだけのものは取るという内容が露骨にあらわれておりました。
今日、政府管掌健康保険が膨大な赤字をかかえるに至った理由は、言うまでもなく、政府の無為無策によるものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)政府管掌健康保険の財政対策は、社会保障制度審議会及び社会保険審議会の答申にも示されているように、医療保険の抜本改正と一括して総合的に検討されるべきものであって、
医療保障制度の確立にはほど遠く、いたずらに保険主義にとらわれ、財政対策のみに終始したことは、きわめて無暴であり、不合理であり、国民無視といわざるを得ません。政府が数度にわたる公約を踏みにじり、抜本改正を達し得ない政治責任は重大であります。
保険財政を安定させるためには、収入面の対策のみではなく、支出面にも対策を講ずることによって初めて完全なものとなることは、あらためて申すまでもなく、今回の改正案のように、収入面だけに幾ら努力を払っても、財政の長期的な安定は、とうてい望むべくもありません。
国民の健康と福祉の増進をはかるためには、医療保険制度の前提である医療制度等の関連諸制度を整備し、健康の増進、疾病の予防、治療及びリハビリテーションを通ずる一貫した健康管理体制の確立、無医地区の解消等医療供給体制の確立、医薬分業の促進、公費負担医療の確立等をまず行なうべきであり、その後に保険財政をいかにするか検討するのが筋道であって、政府の行なおうとする今回の措置は、全く本末転倒であります。
本日示された修正案の中で全面削除された、いわゆる保険料率の弾力的調整の条項につきましても、その原案の提案のしかたには、全く納得のできないものがあります。政府は、保険財政の長期的安定をはかるためには、弾力的調整が必要だと主張しておりましたが、この弾力的調整の発動に際して、社会保険庁長官は、一応社会保険審議会の意見を聞くようになっておりましたが、しかし、今回の改正案を提出した経緯にも明らかなように、政府には審議会の答申を尊重しないのを慣例とする傾向さえ見受けられ、とうてい信用しがたい上に、被保険者にとっては重大な問題である保険料率の引き上げを一行政官にゆだねることは、きわめて危険なことであります。さらに、このような措置は国会の審議権を無視するものであって、この条項を修正案において削除したことは、しごく当を得た処置と言えます。
しかし、国庫補助については、定額制を定率制に改めたことは、一歩前進ではありますが、いかんせん五%という低い率であり、修正案はこれを本年度七%、次年度以降一〇%に引き上げようとするものとはいえ、両審議会でも大幅国庫補助を強く指摘していることは周知のとおりであります。
政府管掌健康保険が組合健康保険等とは異なり、被保険者の所得水準も低く、健康管理も行き届かず、高齢者も多い等疾病の発生率の高い層をかかえて、構造的にも特殊な要因を内包していることは、御承知のとおりであります。したがって、これらの点を考慮するならば、高率の国庫補助を行なうのは当然であり、被保険者層の類似している国民健康保険の四五%国庫補助に比較するならば、定率七%はあまりにも低く、さしあたり少なくとも一二%の国庫補助を行ない、以後段階的に二〇%程度までは当然引き上げるべきであります。
したがって、修正案の内容は、はなはだ不満足であり、何ら被保険者の負担の軽減ははかられず、修正の名に値しないナンセンスなものであると指摘せざるを得ません。
以上述べたように、政府管掌健康保険の健全な発展と、その財政の安定のためには、まず大幅な国庫補助を行ない、被保険者の負担の軽減をはかるとともに、医療供給体制を含む医療制度の改革と、支出面の思い切った合理化を行なう抜本改正の法制化こそ、まず必要であり、保険料の引き上げ等被保険者のみに負担を負わせようとする政府案並びに修正案には、強く反対するものであります。
以上。
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○
西田委員 私は、民社党を代表して、ただいま議題となっております
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案並びにその修正案に対し、反対の意見を申し述べます。
それに先立って、本法案の審議に関し、多大の努力をなされた
理事各位に対し、深甚の敬意を表します。どうも御苦労さまでした。
そもそも、この法律案は、医療保険制度の抜本的改正とあわせて審議すべきものでありました。にもかかわらず、政府は、ただいたずらに政府管掌保険の赤字を埋めることだけに重点を置き、保険制度そのものに対する基本的な問題を解決しようとする意思すら見せないのみならず、社会保障制度審議会、社会保険審議会の両審議会からも痛烈な批判を受けつつ、この提案をされてきましたことは、実に遺憾であります。
そもそも、政府管掌保険が年々赤字となり、その累積額が二千億をこえるに至った要因として、一つには政管健保が中小零細企業を中心にしているだけに、被保険者の保健対策や健康管理がきわめて困難であるという前提があることは、いなめません。しかし、そのことは、この制度の発足当初から予測されたことであります。それよりも重大な要因は、政府のこれに取り組む姿勢の問題であります。
すなわち、この赤字問題を根本的に解消するためには、国民の医療を総体的にどうするかという基本的な問題をはじめ、その供給体制の整備、診療報酬体系、薬価基準など、あらゆる角度から検討し、よりよい医療体制の確立をはかる努力がなされなければならなかったはずであります。
にもかかわらず、先ほど来総理の答弁を聞いていても、制度発足後日が浅いとか、まず中身の充実が先決だとか、全く言いのがれの答弁に終始しております。
しかし、この受益者負担の名に隠れて改悪をされる、その中身で犠牲になるのは一体だれでありましょう。それは中小零細企業主であり、そのもとで働く労働者であります。
私はかかる法案には、断じて賛成するわけにはいきませんし、修正案に対しても、賛成するわけにはいきません。
大臣、あなたは憲法第二十五条を御存じでしょう。あなたこそ国民の福祉を守り、社会保障の向上と増進につとめなければならない主務大臣であります。私は、あなたがその点を深く反省し、すべての国民が、国民皆保険の名にふさわしいところの公平な負担、平等な給付の原則のもとに、その健康を保持するに足る制度の改革に、身をもって実践されんことを強く要求いたしまして、私の反対討論を終わります。
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○
寺前委員 私は、日本共産党を代表して、内閣提出案並びに自民党の修正案に強く反対の意思を表明するものであります。
今日、政管健保に二千億円からの累積赤字を出してきた基本的要因は、自民党の大資本本位の高度成長政策にあることは、もちろんであります。同時に、中小零細企業の労働者を対象としているこの政管健保に、政府が責任を持つべきものであるのにもかかわらず、必要な財政援助をしなかったからであり、膨大な利益をあげている製薬独占企業の利益にメスを入れ、薬価の引き下げを行なわなかったからであります。
強く反対の意思を表明する理由は、何といっても、赤字財政について、政府がその責任を回避し、保険料の引き上げという、労働者の保険料負担を重くするところにこの問題があります。
政府原案による国庫補助率五%というのは、過去の実績から見て、政府が責任をもって管理する保険運営にならないことは、きわめて明らかであります。
修正案は、ことしは七%、引き続いて一〇%の国庫補助にするということをいっておりますが、それと引きかえに赤字分のたな上げ案を削除しております。これはあたかも政府が積極的な援助を政管財政になさすような顔をして、ごまかすところの対策であって、料率の千分の三アップ、ボーナスその他の掛け金の負担増などを考えるときに、労働者の負担を重くし、政府の責任を回避するものといわなければなりません。
今日、労働者は健康保険、
厚生年金、失業保険など合わせて賃金の七・三五%、年間実に二十六・八日分という高額の保険料を負担しているにもかかわらず、さらに負担増を押しつけることは許されないことであります。
そもそも国際的に見ても、日本の労働者の保険料負担の割合は、きわめて高いものであります。当然国は政管健保に対する今日までの赤字については、たな上げをするという態度をとるべきであって、今日の修正については、反省をすべきであるというふうに思います。
この際、私は一言弾力条項について述べます。
政府案には、保険料率を千分の七十三から千分の八十まで引き上げることを社会保険庁長官の権限にしておりました。これは、今後発生する政管健保の赤字を労働者の負担増によって処理しようとするものであって、保険料率引き上げを国会審議から切り離し、単なる行政処理の問題とすることは、議会制民主主義の原則に反するもので、断じて容認できないところのものであり、国民の批判を受けてきたところのものであります。修正案が、これを削除したのは当然のことであって、政府は、この点を深く反省すべきであります。
さらに私は、重大な問題点を一、二指摘します。
その第一は、保険財政を圧迫する主要な原因となっている薬剤の価格を引き下げる問題に、何らの措置も行なわれていないことであります。
医療費総額に占める薬剤費の割合は、今日実に五割近くにもなっており、製薬大企業は他産業の利益率に比べて、著しい高率をあげております。この製薬大企業の利益を押えるために国会の調査、勧告権を確立し、卸値を下げ、薬価基準を下げることは、きわめて重大な問題であります。
第二に、資本家が当然負担すべき労働災害や、加害企業が当然全額負担すべき公害医療に健康保険が使われている問題があります。また公費負担とすべき幾つかの問題があります。
これらのことを考えて当面やるべきものは、第一に、国庫負担を二〇%以上にすることであり、第二に、薬剤の価格を二〇%引き下げることを実施し、一切の保険料を引き上げることなく赤字を解消し、家族医療費の給付を十割にすることを当面の要求といたします。
以上でもって、私の反対討論を終わります。
-
○
森山委員長 以上で討論は終局いたしました。
これより
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、小沢辰男君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
-
○
森山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいまの修正部分を除く、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
-
○
森山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————
-
○
森山委員長 この際、小沢辰男君、
後藤俊男君、
大橋敏雄君及び田畑金光君より、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を聴取いたします。
後藤俊男君。
-
○
後藤委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずるよう努力すべきである。
一 政府管掌健康保険の管理運営体制の確立を図るため、必要な人員及び予算の確保に努めるとともに、その経営の効率化を図るため、経営
委員会の設置等の方途をすみやかに検討し、これが実現に努めること。
二 医療費の地域格差についてすみやかにその原因の分析、究明を行ない、適切な対策をすみやかに講ずるものとすること。
三 公費負担医療の
拡充強化に努めるとともに、国民医療の確保を図るため、医療従事者の確保、医療供給体制の整備等につき、年次計画的に、これが実現に努めること。
なお、公的病院の病床規制の撤廃及び差額の規制については、すみやかにその対策を講ずるものとすること。
四 保険医療機関に対する指導監査の徹底を期すること。
五 薬価基準の適正化及び診療報酬体系の合理化に一層の努力をすること。
六 未適用事業所に対する適用拡大の問題について、すみやかにその具体的方策を検討し、早期にこれが解決を図るものとすること。
七
日雇労働者健康保険制度の
改善について、早急に具体策を講ずること。
八 特別保険料は、可及的すみやかに廃止できるよう保険財政の健全化に努めること。
以上であります。
何とぞ
委員各位の御賛同をお願いいたします。
-
○
森山委員長 本動議について採決いたします。
本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
-
○
森山委員長 起立多数。よって、本案については、小沢辰男君外三名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。
この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣。
-
○斎藤国務大臣
健康保険法及び
厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案につきましては、文字どおり慎重に御審議を賜わりまして、ただいまは修正可決をしていただいて、厚くお礼を申し上げます。
なお、ただいま御可決になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重をいたしまして、これが実現に努力をいたす所存でございます。ありがとうございます。(拍手)
—————————————
-
○
森山委員長 おはかりいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する
委員会報告書の作成等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
—————————————
-
○
森山委員長 次回は、明二十五日午前十時
理事会、十時三十分から
委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後十一時七分散会