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1972-05-12 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十二日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君    理事 橋本龍太郎君 理事 増岡 博之君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       有馬 元治君    伊東 正義君       大野  明君    大橋 武夫君       梶山 静六君    藏内 修治君       小金 義照君    斉藤滋与史君       澁谷 直藏君    田中 正巳君       高鳥  修君    竹内 黎一君       中島源太郎君    中村 拓道君       別川悠紀夫君    向山 一人君       渡部 恒三君    大原  亨君       川俣健二郎君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       浅井 美幸君    二見 伸明君       古川 雅司君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 五月十二日  国有林労働者の雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外六名提出衆法第二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四六号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。後藤俊男君。
  3. 後藤俊男

    後藤委員 今度の政管健保の特に特別保険料のことでございますが、当分の間被保険者の受ける賞与について、賞与を受けるつどこれに千分の十を乗じた金額を徴収する、こういうことになっておるわけであります。この特別保険料の千分の十というのは単なる思いつきであるのか、まあこの辺のところでという考え方なのか、何か根拠があろうと思うのです。私はもちろんこれは賛成じゃございませんけれども、この考えられました根拠について御説明をいただきたいと思います。
  4. 戸澤政方

    戸澤政府委員 特別保険料の問題は、昨年の改正法案におきましてもこの考え方を打ち出したわけでありますが、前回の案と今回の案と内容が若干違っておりまして、前回は、前年度に支給されたボーナスについてその十二分の一を翌年度の毎月の標準報酬の中に組み入れて、それに対して保険料率をかけるという方法で出したわけであります。しかしこの方法によりますと、その負担もかなり大きくなりますし、それから扱いも非常に不便でございます。それで今回出しました改正法案におきましては、その扱いを変えまして、その当年度に実際に支給されたボーナスに対しまして、そのつど千分の十、一%の料率をかけるということにいたしたわけでございます。これによって昨年の案よりも負担は約半分ぐらいに減ります。それから事務上の扱いも非常に簡略化されるわけでございます。  それでその千分の十の根拠でございますけれども、今回の四十七年度の予算を編成するにあたりまして、その収支バランスをとるためには、本来の保険料だけによりますと約千分の六程度引き上げが必要になります。しかしこれを全部保険料率引き上げで行なうということは非常に負担過重になるおそれがございますので、約その半分を本来の保険料でまかない、あと約半分ぐらいの財源をこの特別保険料でまかなうということにいたしたわけでございます。それで本来の保険料のほうは千分の三にいたしまして、その財政効果は約三百億円近くであります。それでこの特別保険料による財政効果が同じく二百五十億円ぐらいということになっておるわけでございます。そういう収支バランス等考えて千分の十というめどを出したわけでございます。
  5. 後藤俊男

    後藤委員 特別保険料の問題については、まだまだいろいろ問題がございますけれども、とりあえずひとつ大臣にお尋ねしたいことがあるわけですが、きのうときょうの新聞だけを読んでみましても、「暴力団ニセ歯医者」ということで、東京都でにせの歯医者でかなり多くの治療をいたしておる。これはきのうの新聞に載っておったことで、大臣お読みだと思うのです。それからさらにきょうの新聞を見てみますると、脱税百億という見出しで新聞記事が出ておるわけです。この中でどういう順序になっておるかと申しますと、大口脱税の中で建設業が二十六件、次いでキャバレーが十九件、その次が医師が十八件になっておるわけであります。大口脱税の中でお医者さんが第三位を占めておるわけなんですね。これはきょうの新聞で麗々しく報道されておるわけであります。それからさらに、きょうの新聞でございますけれども、これは昭和四十四年の事件でございましたが、千葉大学採血ミス、ずさんな管理、こういうことで禁固一年間の求刑が行なわれておる。きのうきょうの新聞記事を見ましても、医療関係脱税問題から、にせ医者問題から、さらにお医者さんの管理不徹底のための人命に及ぼす事故、こういうのが連日続いておると申し上げてもこれは間違いないように私は思うわけなんです。これもすべてが医療関係の問題でございまして、こういう新聞記事を読まれまして厚生大臣として一体どういうふうにお考えになるだろうか、この点なんです。  われわれ社会労働委員会に所属する委員といたしましても、こういう新聞記事を読むたびにいろいろなことを痛感するわけなんです。医療関係の最高の責任者である厚生大臣としましても、いま申し上げますような問題がほとんど連日のように新聞記事になっておる、これは何らか具体的措置を講ずる必要があるのではないのか、何か考えるべき必要があるのではないかというふうに私としては痛切に感じるわけでございますが、こういう点、大臣いかがでしょうか。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 最近いまおっしゃいますようなことが相当新聞をにぎわしているということは、まことに遺憾だと存じております。  まずにせ医者、にせ歯科医者、これらにつきましては、率直に申しましていままでそういう点についての監督、監視というものが十分でなかったということを反省をいたしております。  そこで、これらにつきましては、前にも御答弁申し上げましたように、まず監視員監視を厳重にする。それから開業をする場合、また新しく雇い入れるというような場合には、必ず医師免許証の有無を確かめ、そしてやはり随時監視を強化をするというように指導を始めておるのであります。まだ十分徹底していないと思いますが、これは重大な問題でございますから、厚生省といたしましては府県関係当局と密接な連絡をとり、厳重にやってまいりたいと考えております。  また千葉大学医学部採血ミス、こういった医療行為ミスも絶無ではございません。これにはいろいろな原因があると考えますが、まず第一は医師のいわゆる倫理というものを十分守ってもらうように、また看護婦その他医療従事員の養成の問題、またこれらの充実の問題というものとも無関係ではございません。そういうことを十分いたしまして、こういうことのないようにいたしたいと考えております。  脱税の問題は、これは少なくとも人の命を預かる医療機関あるいは医師といたしましては、こういう面においてもやはり国民の義務である納税というものについて率先して、こういう脱税の疑いを受けることのないようにいたしたい、かように考えておりますが、具体的の脱税者の問題につきましては私まだ十分検討いたしておりません。どういうところでどういう脱税をやったか、われわれの医療監視の面から防げる脱税であるのか、あるいは単に本人のあれに基づくものかというような点をまた十分検討をいたしまして、できるだけ世間からそういったような批判を受けないようにいたしたい。場合によっては医道審議会の問題にもなると思います。そこで処分をするという問題にも及ぶであろう、かように考えますが、私の考え方なり今後の努力のしかたを申し上げる次第でございます。
  7. 後藤俊男

    後藤委員 いま大臣いろいろ言われましたけれども、この前も私追及したことがあるのですけれども、お医者さんといえば社会でかなりいいところにランクされておる地位だと思うのです。先ほど申し上げましたように、脱税問題だけ取り上げてみましても、キャバレーであるとかパチンコ屋であるとか、そういうところに肩を並べて脱税をやっておられるわけなんです、お医者さんが。さらにまた、にせ医者の問題にいたしましても、治療一万回ということで、しかも暴力団とつながっておる。これはきのうの新聞ではっきりいたしておるわけでございます。こういう実情というのは最近起こったわけじゃないと私思うのです。ずいぶん昔からこういう問題は出ておると思う。脱税問題にいたしましても、こういう問題についていま厚生大臣が、これからはそういうふうなことが起きぬように厳重に取り締まっていきたい、こう言われておりますけれども、そう簡単に解決できるような問題ではないような気がするわけであります。  たとえば、これは一例として申し上げますけれども、こういう事件には関係はございませんが、いま全国接骨院というのが相当たくさんあると思うのです。骨をつぐお医者さんですね。これは大体柔道が五段であるとか六段であるとか七段であるとかいう人——これは一例にしかすぎませんけれども、警察の署長をやって柔道が強い、こういう人が退職をされますと接骨医をやられるわけであります。その接骨医をおやりになれば、そこに必ずレントゲンが入ると思うのです。そこにはレントゲン技師がおるかおらぬか知りませんけれども、ほとんどのところにはレントゲンが私は入っておると思うのです。レントゲン技師がおったといたしましても、医師指示に従ってやらなければ医師法違反になるわけなんですね。この実情というのは全国的に一体どういうふうに厚生省は把握しておられるのか。全国一体接骨医がどれだけあるんだ、その接骨医にはどれくらいのレントゲンが入っておるのか、それにはレントゲン技師がおるのかおらないのか。レントゲン技師がおったにしたところで、医者指示に従ってレントゲン操作しておるのかどうか。そこまで厚生省として実情を把握しておられるかおられないかという点について非常に私は疑問を持つわけなんです。そういうような点が結局医療関係について非常にあいまいにされておるところに、こういうような問題発生原因がおのずからかもし出されてくるような気がするわけなんです。ですから、これは大臣でなくてもけっこうなんですけれども、全国接骨医がどのくらいいるのか。レントゲンが一体どのくらい入っておるか。このことに対するレントゲン技師操作につきまして、医師指示に従って全部やるのかどうか。この点について、簡潔でけっこうですが御説明いただきたいと思います。
  8. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ただいまその所管の医務局の者が参りますので、恐縮でございますが、ちょっとあと回しにしていただきたいと思います。
  9. 後藤俊男

    後藤委員 それじゃその問題は、待てとおっしゃるからしばらくお待ちします。
  10. 戸澤政方

    戸澤政府委員 手元の資料で柔道整復師の数だけわかりましたので、御説明申し上げます。  四十五年度で柔道整復師の数は六千九百七十四名でございます。
  11. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いずれ局長が参りましたら正確ななにを申し上げますが、先ほどおっしゃいました、たとえば警察柔道をやっておった者が、やめたらすぐ接骨医になれる、これはそういうことはございませんので、これはやはり資格を得なければ認可をいたしておりません。  それからレントゲンは、昭和何年でありましたか、当時レントゲンを使用いたしていた者については医師指示を得て使うことができるというように法制上はなっているわけであります。現実にどうかということはただいま局長が参りましたから……。
  12. 松尾正雄

    松尾政府委員 四十五年の末で全国柔道整復師を開業しているという方が六千九百七十四名でございます。  お尋ねのレントゲンの問題でございますが、これはもう御承知のとおり、レントゲン柔道整復師は使ってはいけない、こういうことになっております。われわれのほうも、何台持っておるかということは、あり得べからざることでございますので調べてはございません。
  13. 後藤俊男

    後藤委員 そうすると、接骨医等レントゲンの入っておるのは全部違反ですか。
  14. 松尾正雄

    松尾政府委員 それを使っていれば違反でございます。
  15. 後藤俊男

    後藤委員 現実に使っておるところがたくさんあるじゃないですか。私は現場を見てきておるわけなんです。違反であれば、厚生省はほおかぶりですか。
  16. 松尾正雄

    松尾政府委員 私、残念ながら使っておる現場の報告を承知しておりませんが、御指摘のように現実にあるとすればレントゲン技師法違反でございます。したがって、これは厳重にわれわれも取り締まりに当たらなければいけないと思っております。
  17. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、もう少し詳しくお尋ねしますが、レントゲン技師がおったにしても、接骨院にはレントゲンは入れられないということなんですか。そうすると、全国接骨院レントゲンが入っているのは全部医師法違反である、そういうふうに解釈していいわけですか。
  18. 松尾正雄

    松尾政府委員 診療エックス線技師法におきましても、その業務といたしましては病院診療所原則として行なう、こういうことになっております。もちろんその病院医師等から指示があって、いわば往診という形で撮影をすることはあり得るわけでございますが、原則としては病院診療所の中で行なうということが診療エックス線技師法できめられている業務でございます。したがいまして、柔道整復師いわゆる接骨院というところでそういう業務が行なわれるということはあり得ないことになっております。したがいまして、もし現にあるとすればこれは違反になります。  それからもう一つは、そういうレントゲンの問題は、御承知のように放射線の防御という問題がございます。したがって使用する場所についてのいろいろな防御上の構造設備、こういったことも医療法で規定されておりますが、それはいまの接骨院には適用されていないわけでございます。このような設備構造の面からしましても、エックス線技師法の規定する場所から見ましても、これはいまのところは認められない、こういうことになります。
  19. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、私はその辺のところをもう少し詳しく聞きたいのですが、整骨院にはレントゲンを入れるということは違反である。レントゲンが入っておる接骨院は全部違反であるということなんですね。  それとあわせて私聞きたいのは、接骨院レントゲンが入っておるところは、私たくさんあると思うのです。レントゲン技師おいでになると思うのです。レントゲン技師おいでになったところで、やはり医師指示に従わなければこれは操作ができないわけです。医師指示に従って操作をしておられる接骨院も私はあると思うのです。ところが、いまあなたの話を聞くと、接骨院にはレントゲンを入れるということが違反である、こうはっきり言明されますから、そうなると、世の中じゃ——世の中というとおかしいですか、かなり多くの違反があちらこちらで行なわれておるような気がするわけです。あなたいまおっしゃいましたのは間違いございませんか。
  20. 松尾正雄

    松尾政府委員 第一の段階としての御質問で、そういうのがあれば違反かと言われれば、現在の体制では違反だと申し上げざるを得ません。  それから、医師指示を受けてレントゲン技師を使ってやっているケースという場合はどうだという問題がございます。これも、医師指示を受けておりますけれども、診療エックス線技師法では病院診療所というような原則があるわけでございますので、接骨院診療所というような形をとっておるかどうか、医者がおってというような場合でございますれば、そういったような条件をもう一ぺんそこではあらためて検討してみる必要があると思います。そのケースについては検討してみる必要がある。  ただもう一つは、かりに診療所等であったといたしましても、いわゆる防御上の設備というものがそれぞれによって違うわけでございます。そこいらがはたして妥当かどうか、それも個別的に検討する問題であろう、こういうふうに存じます。
  21. 後藤俊男

    後藤委員 あなたに言われましたように、結局そこにお医者さんがおいでになれば、私は違反じゃないと思っておるわけなんです。ただ、接骨院レントゲンを入れること自体違反であるとあなたに言われましたから、これはおかしいなと私は思ったわけなんです。ただ、私の言いたかったのは、接骨院にしたところでレントゲンが必要であろう、レントゲンが必要である以上はレントゲン技師おいでになる、しかもそれはお医者さんの指示に従ってレントゲン操作されるんだ、これなら別に違反じゃないというつもりで質問をしたわけですけれども、接骨院レントゲンを入れること自体違反である、あなたこうおっしゃいましたから、それは実情とだいぶん違うんじゃないか。万一あなたが言われることが正しいとするなら、これは全国的に一ぺん全部調査して取り締まってもらう必要があろうと思うのです。これは大臣、間違いございませんか、いま言われましたことは。
  22. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私、先ほど申し上げましたように、大体後藤委員の言っておられるように私は思っておりましたが、医務局長がそう申しますから、もう一度これはよく調べてみます。接骨医レントゲン技師の免状を持っておる者も、相当あるのじゃないかと私は考えます。その点はよく調べた上でお答え申し上げます。
  23. 後藤俊男

    後藤委員 大臣、それとあわせて、こういう事件一つあったわけなんです。病院で、レントゲン技師免許なしにレントゲンを十年、二十年間、余裕のある限りは医者指示に従ってこれはやるわけでございますけれども、たまには医者指示なしにも——医者さん以上にレントゲンに非常に熟練されておる。たまに、レントゲン技師免許なしにレントゲンをとったというのか、操作した。そういうことで告発されておる事件があるわけなんです。そこで裁判ざたになっておるわけなんです。ところがそういうことをほかの病院でやっておらぬかというと、これは厳格にきっちりやっておる病院も私はたくさんあるとは思いますけれども、いままでの慣例に従ってやっておられる同じようなケース病院もたくさんあると思うのです。それとあわせて私考えますのは、いま申し上げました接骨院レントゲンが入っておる、レントゲン技師おいでになるけれども、医者指示は全然受けない、そういうような接骨院全国にたくさんあるのじゃないか。同じようなケースが同じようなかっこうでやられておるのに、告発された分だけが、先ほど申し上げましたようなことに事件として取り上げられて、大々的ににせ医者のようなかっこうで騒がれる。これはほかにも同じような事件があるのじゃないか。こういうのが大体病院関係の通俗的な話題になっておるわけなんです。そうなりますと、レントゲン技師の問題から、医師指示に従うという問題から、接骨院関係の問題を、厚生省としてもこれはきっちり整理する必要があるような気がするわけなんです。ですから私はこの問題をお尋ねしたようなわけでございますけれども、ただ私は、先ほど医務局長ですか言われましたように、接骨院レントゲンを入れると違反になる、こう言われましたけれども、その辺のところはどうも実情に合っておらぬと思うのです。万一あなたが言われることが正しいとするなら、そういうことで全国的に一ぺん整理をしてもらう。それはたいへんな問題になりますよ、あなたの言われたことが正しいとするのなら。だけれども、大臣として、さらに一ぺん検討してこの問題については後ほどはっきりしよう、こういうことでございますから、一ぺん十分間違いなく検討していただいて、あとからこの問題については続いてやらしていただく、そういうことで保留をしておきたいと思います。  それからさらにまた、先ほど、新聞記事等厚生大臣にもいろいろ申し上げたのですが、これはどうも、お医者さん、先生というのは世の中で尊重された立場にある人でありながら、脱税といえばイの一番に出てくる。さらに、にせ医者の問題がどんどん出てくる。あるいは、ミスの問題がどんどん出てくる。あるいはまた、去年あたりの問題じゃございませんけれども、いろいろな虚偽の申告によって医療費を受けるというような問題がいま続いて発生しておると思うのです。これらの問題につきましても、厚生省としては今後いかに考えてこういう事件が起こらない方向へ進めていくかということも、抜本改正とあわせて私は非常に大切な問題じゃないかというふうに思いますので、これはぜひひとつ、これらの問題も十分検討されまして根本的に洗い直して考えていただく必要があろう、こう私は考えるわけです。この点について、一般的な問題として大臣のお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  24. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことにごもっともな次第でございまして、先ほど申しますように、少なくとも、医師として人の命を預かるに足るだけのものでなければ困る、その見地に立ちまして少なくとも医師法その他の規定に違反をする、あるいは保険の点数をごまかすというようなことはあってはならない、かように考えます。  いまおっしゃいますことは、医療抜本改正のさらにその前の問題だとすら考えますので、そういう考えでこれから一そうつとめてまいりたい、かように考えます。御意見は全く同感でございます。
  25. 後藤俊男

    後藤委員 先ほどの特別保険料関係に戻るわけでございますけれども、千分の十の根拠につきましては先ほど説明をいただいたわけです。ところが、これは上限が全然ないわけなんです。どれだけボーナスをもらおうと、とにかくもらったボーナスの千分の十という形になっておるのですが、これは発想としてどういう考え方かわかりませんけれども、上限が全然設けてない。このことについてどういうお考え方か、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  26. 戸澤政方

    戸澤政府委員 特別保険料負担につきまして頭打ち、上限を設けるべきであるという御意見は、社会保険審議会の答申にも事業主側意見として出ておりますけれども、今回の特別保険料設定の趣旨は、すでに御説明いたしましたとおり、高額所得者ほど賞与の額も大きいという点に着目いたしまして、負担の均衡をはかるという点から設けたものでございます。その意味で、比較的高額の所得者ボーナスによる負担がどのくらいになるかと申し上げますと、今後予定しております最高等級の二十万円という標準報酬のものにつきましても、その人に対する特別保険料は年間にして平均四千二百円、月額三百五十円という程度のものでございます。これは本人負担でございます。まあその程度でございますので、上限を設けずとも負担してもらえるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  もしこれを上限を設けて押えるということになりますと、結局その分の保険料負担低額所得者のほうの負担にそれだけかぶってくるというようなことにもなりますので、一応標準報酬の高額の者に対しては特別保険料もできるだけ負担していただくことが負担の公平を期するという意味で適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  27. 後藤俊男

    後藤委員 あなたいま、上限を設けると賃金の安い者にかぶってくる、こう言われましたけれども、ある一定の赤字を何とか解消しようとする場合に、国から出す金はこれ以上出せませんよという考え方を前提にするならばそういうことになると思います。そうではなしに、下限があるのなら上限がある、やはり上限というものも考えるべきではないかということを私はお尋ねしたわけですが、この問題についてはあえてそれ以上追及する気持ちはございません。  それからさらに、法律案を読んでみますと、「当分の間」という書き方をしてあるわけです。抜本改正がいつごろどうなるか私はあまり詳しく知りませんけれども、当分の間特別保険料を取るということは、当分の間とは一体何を意味するのだろう。そうしますと、抜本改正が万一きまった場合にはこの特別保険料はなしになるのだ、それまでの間当分の間ということを意味するのか、どういうことを意味するために当分の間というのが入っておるのか。この点もひとつ御説明をいただきたいと思います。  それからさらに、これを一つ一つやっておりますと時間を食いますから——このボーナス賞与の範囲ですね、これは賞与にもいろいろあろうと思うのです。夏期と年末にもらう賞与もあれば、毎月毎月という形をとっておるところもあるわけなんです。これによりますと、「賞与に関する特別保険料の徴収」という書き方がしてありますが、この賞与というのは一体どの範囲をさすのであろうか、さらに徴収方法は一体どうなるのだろうか、また納める期間は一体どうなるのか、こういう点につきまして、これは簡単に書いてありますけれども、非常に複雑だと思うのです。いま申し上げましたところの当分の間とは一体どういうことを意味しておるのだということとあわせて、賞与の範囲なり徴収の方法なり納期の関係、これらの点をひとつ具体的に御説明いただきたいと思うのです。
  28. 戸澤政方

    戸澤政府委員 まず、「当分の間」の解釈でございますが、これは先ほど御説明いたしましたとおり、今回の四十七年度の収支バランスをもとにして保険料の改定を考える場合に、これを全部保険料で徴収するということになりますと、料率をかなり上げなければならぬことになってまいります。それで、その負担の軽減をはかるという意味もありまして、約半分近い財源は特別保険料に持ってきたわけでございます。そういう財政上の理由がございますので、将来この健保の経営、財政が安定いたしまして長期的にも本来の保険料だけでもってやっていけるというような時期になりましたならば、この特別保険料扱いを再検討いたしたいというふうに考えているわけでございます。  それから賞与の範囲でございますが、これは現行法律では保険料の算定の対象から除かれているものとして、三月をこえる期間ごとに受けるもの、これが保険料の算定の対象から除かれているわけでございます。この三月をこえる期間ごとに受けるもの、これがこの「賞与等」に該当するわけでございまして、具体的には夏と年末に支給される賞与が大部分でございます。いわゆる大入り袋といったようなかっこうでもって臨時的に支給されるようなものは含まれておりません。  それから次に特別保険料の徴収の方法、ついでに納期等もあわせてお話しいたしますと、まず特別保険料の納入義務者は一般の保険料と同様に事業主というふうにいたしております。事業主は賞与を支給したときにはその支給した賞与の総額を翌月の上旬に保険者に届け出るということにいたしております。それで、保険者はその届け出られた賞与の総額につきまして、その月の事業所ごとの特別保険料を千分の十をかけて算定するわけでございます。それで事業主に対して納入告知書を発行するということになります。これに従って事業主は、その賞与を支給した月の翌月末までに特別保険料を納付するということになるわけでございます。なおこれにつきましては、いわゆる源泉徴収といいますか、事業主は実際に賞与を支払った場合に大体その計算ができるわけでございますから、あらかじめ賞与から控除しておくことができるという仕組みを設けたいというふうに考えております。昨年の国会に出しました特別保険料扱いは、前年度に支給された賞与を翌年度に、毎月の標準報酬に十二等分して組み入れて、それに対して料率をかけるという非常にややこしい方法でございましたが、それに比べまして今回の仕組みはきわめて簡素化されておりますので、このために事業主あるいは保険者に大きな事務的な負担をかけるということは心配なかろうと考えております。
  29. 後藤俊男

    後藤委員 大体いまの厚生省としての考え方はわかったわけですけれども、さらにまた今度の改正案では千分の七十を千分の七十三に引き上げる、さらにまた弾力条項の最高を千分の八十に押えた、しかも弾力条項の下限では何も押えてない、こういうかっこうで提案されておるわけなんですね。いま申し上げましたこの三つの問題について、千分の三という根拠は一体どこから出してきたんだ、八十に押えたという根拠は一体何をもって根拠としたんだ、下限を設けなかったのは一体どういう理由なんだ、この三点をお尋ねします。
  30. 戸澤政方

    戸澤政府委員 料率千分の三の根拠でございますが、四十七年度の財政収支を、四十七年度は四十七年度末でもって過去の累積赤字をたな上げするという前提でもって、そのかわりに四十七年度以降はもう収支まかなうような運営を行なうということでございますので、そのバランスをとるためにはいろいろの対策を総合的に打ち出しているわけでございますが、標準報酬上限下限の改定、あるいは定率五%の国庫補助を組み入れる、そういう対策を講じましてもなお財源に不足を生ずるわけでございまして、それを全部保険料率でもってまかなう、保険料率引き上げでまかなうといたしますと、約千分の六程度引き上げが必要になってまいります。しかし、これをすべて保険料でもってまかなう、負担するということは、非常に急激な負担増になりますために、大体その半分程度保険料でまかない、あとの半分程度は、先ほど申し上げました臨時収入である賞与から徴収するということにいたしたわけでございます。その結果、保険料率引き上げ率は、本来ならば千分の六上げなければならないところが、千分の三でおさまったというわけでございます。この結果被保険者負担増がどのくらいになるかと申しますと、標準報酬の最低の者、月額一万二千円の者で本人負担分は月十八円の増、それから最高級の二十万円の者で月三百円程度負担増でございます。  それから次に限度料率を千分の八十にした理由でございますが、これは四十年度までに規定されておりました弾力条項におきましては上限下限の幅がございましたのでありますが、その幅が大体十程度でございます。それを考えまして、今後の収支の見通し等を考えますと、やはり上限を十ぐらいの幅を設けておきませんとその弾力規定の意味をなしませんので、一応千分の八十といたしたわけでございます。  下限につきましては、従来は下限についての規定も入れておったわけでございますけれども、下げるということは被保険者にとって負担の軽減になるわけでございますので、これにつきましては特に下限を設けずに、情勢に応じて幾らでも下げられるということにいたしたわけでございます。
  31. 後藤俊男

    後藤委員 それでいまの御説明を聞きますと、あくまでも赤字対策としてどういうふうにしてつじつまを合わせたらいいかということがやはり根拠になっておると思うのですね。この改正の趣旨がそういう趣旨ですからね。  さらにまた「千分ノ四」というのが出てくるわけですね。千分の七十三から一%上げて千分の七十四にした場合には、千分の四国庫補助がふえますよ、こういうことだと思いますが、これは非常にこまかい計算をされて、計算上はぴったり合うようになっておると思うのです。根拠を聞いてみたところで、計算を合わせるための根拠でございますと言う以外にないと思いますけれども、その点ははっきりそう言うてもらったほうがいいと思うのです。  それからさらに標準報酬上限を二十万にし、下限を一万二千円にしたということも、これはやはり厚生省の皆さんがいろいろ御相談なさって、赤字をうまく持っていくための計算上の都合としてこういうふうに持っていったらよかろうというようなことで御努力なさった結果だろうと私は見るわけでございます。  そこで私、政管健保の関係についてお尋ねしたい点があるわけでございますけれども、組合管掌の健康保険とそれから政府管掌健康保険との関係で、組合管掌健康保険につきましては、これほどの赤字じゃないと思うのです。政府管掌健康保険のほうが非常に赤字である。この資料によりましても昭和四十七年度になると二千数百億というような形になってくるわけですが、政管健保としてどういう行政努力をしておられるだろうか。全国に健康保険事務所ですか、これが二百四、五十あることは記憶しておりますが、どういうふうな行政的な努力をしておるんだろうか、この点をお尋ねしたいと思うわけです。
  32. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、第一線としては社会保険事務所が全国に二百二十三置いてあるわけでございます。そこで、そこを通して私どもがやっております行政努力は、まず第一には収入の面についての行政努力といたしまして、保険料の収納率の向上の問題、それから標準報酬を適正に把握していくという調査、指導の問題でございます。そういったようなことをいたしております。  それから支出の面につきましては、レセプトの点検調査ということをやっております。これは御承知のように医療機関から基金にレセプトが出ますと、審査、支払いを終わりまして、大体二月後くらいにはそれぞれの所管の社会保険事務所に戻ってまいるわけでございます。戻ってきましたレセプトについて、これはいわゆる事務的な点検でございますが、第三者行為の問題でございますとか、業務上の問題でありますとか、あるいは無資格の問題でありますとか、そういったようなことの点検を行ないまして、あやまって払われているものはこれを取り戻すというようなことをやっているわけでございます。  それからもう一つは、傷病手当金その他現金給付の適正な支給が行なわれるように調査、指導をするというような行政努力を現在はいたしておるわけでございます。  それで、いま大体金額としてまとまっておりますのは、昭和四十五年度まででございますが、いま申し上げましたようないわゆるレセプト点検をいたしました結果、大体三十八億ないし三十九億ぐらいの行政努力の効果があがっているわけでございます。  それから保険料の収納率につきましては、これは四十五年度九八・八%という収納率を示しているわけでございまして、国税、地方税あたりが大体九五、六%というのに対して、第一線の職員が相当努力をしているというように私どもは考えております。  それから標準報酬の適正化とか現金給付の適正化というようなことを通しまして、四十五年度には約三十九億ぐらいのいわゆる行政努力の効果があらわれているというように考えております。もちろん、私どもの立場からいたしまして、これで決して満足しているわけではございません。比較的少ない定員でできるだけ効率的にやるということに努力をしているわけでございますが、今後ともこの行政努力をさらに充実して伸ばしていくためには私どもも格段の努力をしなければいけないというように考えております。
  33. 後藤俊男

    後藤委員 それとあわせてお尋ねいたしたいのは、業務上のけがですね、これがかなり健康保険で取り扱われておるのではないか。これは前々からいわれておる問題ですけれども、一体実情はどういうふうなことになっておるのか、これが一つです。  それからその次は、疾病予防の被保険者の健康管理の問題です。これは一体どういうふうにやっておるのか。  それからその次には、政管健保と組合管掌の健康保険との比較をした場合に、構造面であるとかいろいろな差異があると思うのです。組合と政府管掌と構造面でどういうふうな違いがあるのか、この点も重ねてお伺いをいたしたいというふうに思います。  それからその次は、先ほど局長のほうから話しになりましたが、もう一ぺん重ねてお尋ねいたしますけれども、四万八千円の給料でございますと、現在納めておる保険料が幾らであるか、今回政府が提案されておるものに基づいて計算すると幾らであるか、この点をひとつ明確にお答えいただきたい。この四つをひとつお答えいただきたいと思います。
  34. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 第一点の業務上の問題でございますが、先生御指摘のように、ただいま御説明いたしましたレセプト点検の結果におきましても、業務上の傷病関係の問題が相当あらわれているわけでございまして、私どもも、これの排除と申しますか、是正には重点項目として取り組ませているわけでございます。それで、あわせて事業主、被保険者に対しましても業務上外の区別についての知識の普及徹底ということを、できるだけ機会をつかまえてはPRをしているわけでございます。それで、現在私どもの手でどのくらい是正されているかと申しますと、昭和四十四年度におきましては、件数で三万四千件、金額にいたしまして二億八千六百万円でございます。それから四十五年度につきましては、件数で四万一千件、金額にいたしまして四億一千九百万円でございまして、先ほどレセプト点検の効果額といたしまして三十八億と申し上げましたけれども、三十八億の中の約四億二千万がこの業務上の関係の是正された額でございます。  それからその次に、被保険者に対して健康管理のためにどういう疾病予防策を講じているのかという御質問でございますが、現在私どもが健康管理の諸施策としてとっておりますのは、保健施設の一環として成人病検診でございますとか、結核検診、それからインフルエンザの予防接種というようなことをいたしているわけでございます。ただ、御承知のように、昨日も御指摘をいただいたわけでございますが、何ぶんいまの予算はきわめて少ないわけでございまして、従来まではいろいろないきさつがあったわけでございますが、それはそれとして、今後はこの健康管理の問題に私どももまっ正面から取り組んで充実をしていかなければいけないというように考えております。  それから第三番目の、いわゆる政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の構造的な差異がどこにあるかという問題でございます。一番の基本的な問題は、組合健保というものは大企業を中心に成り立っておりますし、政府管掌健保というものは中小零細企業を対象としているというところに、いろいろな問題の基礎があるわけでございます。  たとえば被保険者の分布をとってみましても、組合健保は大体千人以上の大企業が中心になっておりますが、政府管掌健康保険につきましては、五十人未満の事業所の被保険者が全体の被保険者の五二・八%、すなわち半分以上を占めているわけでございます。それから事業所の形から見ますと、従業員十人未満のいわゆる小零細企業が五一・七%を占めているわけでありまして、非常に零細企業の集まりであるということが明らかになると思われます。この結果、私どもの財政に影響いたしますのは、標準報酬が低く、したがって保険料収入が伸び悩むということが結果としてあらわれてくるわけでございます。  それから被保険者の実態を分析いたしてみましても、たとえば平均年齢を見ましても、政府管掌の健康保険の被保険者は五十五歳以上のいわゆる高齢者が一〇・八%おるわけでございます。それに対して組合健保は五・六%と約半分の率を占めているわけでございます。特にこの老齢化現象というのが最近政管健保のほうには強まってきているわけでございまして、このことが及ぼす影響は、結局医療費の支出増。高齢者のほうが若年者よりも一人当たりの医療費の支出が高くなりますので、どうしても医療費の支出増を招くということになると思います。  それからもう一つ、被保険者の性別を見ましても、女子の被保険者が、組合健保に比較いたしまして政管健保のほうが割合が高いわけでございまして、大体組合管掌のほうが二八・七%に対して政管健保のほうが三六・五%、すなわち政管が六、四の割合、それから組合が七、三の割合というようなことで、女子の被保険者が多いわけでございます。このことの影響は、女子の被保険者の賃金、いわゆる標準報酬は男子の被保険者に比べまして低いわけでございます。したがって、女子の被保険者が多いということは、やはりそれだけ標準報酬の水準を押し下げるという作用が働くと思います。また一人当たりの医療費を見ましても、女子の被保険者のほうが男子の被保険者よりも高いわけでございます。これは著しいわけではございませんけれども、やはり高く出ておりますので、支出の面についても影響があらわれてくるというように考えるわけでございます。いまのような面が健康保険組合の管掌するものと政府管掌のものとの構造的な面の差異になってあらわれてくるというように考えます。
  35. 戸澤政方

    戸澤政府委員 御設問の、標準報酬月額四万八千円の者の保険料が現行と改正後でどう変わるかということでございますが、現行では保険料月額が千六百八十円、改正後では千八百十八円と、百三十八円の増でございます。  ちなみに内訳を申し上げますと、料率引き上げによる負担増が七十二円、それからボーナス特別保険料関係が六十六円でございます。この百三十八円の増、これは労使折半でございますから、被保険者本人負担は六十九円の増ということでございます。
  36. 後藤俊男

    後藤委員 それから、この厚生省から出ておりますところの資料で、一番最初のページでございますけれども、政府から提案されるような方向で改正するならば、満年度で三億円のプラスになる、四月実施で十三億円マイナスである、こういう計算が明確に出ておるわけでございますけれども、この中では四十七年の労働者の賃金というのを一体どういう見方をしておるのか。春闘でかなり上がったところもあれば、これはいろいろあると思いますけれども、まだ実績は出ておらぬと思うのです。実績が出ておりませんから、去年並みの計算がしてあるというのなら、かなりこの計算は変わってくると思うのです。どういう根拠でこういう計算がなされておるのか、さらに春闘のベースアップの関係をどういうふうににらまれて計算の基礎になっておるのか、この点につきまして御説明いただきたいと思います。
  37. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ただいま四万八千円の標準報酬月額者の保険料負担につきまして、労使折半で被保険者本人分は半分と申しましたが、これは誤りでございまして、これは被保険者負担分でございますので、百三十八円が被保険者負担増でございますので、訂正させていただきます。
  38. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 四十七年度の標準報酬をどういうふうに見込んでいるかという御質問だと思いますが、これは四十七年度予算を編成いたします場合にも、従来の予算の積算と申しますか、手法を踏襲いたしまして計算をいたしたわけでございまして、すなわち予算の編成時には四十六年の十月までの実績がわかっておりますので、その後の各月の見込みというものを、過去二年間の伸び率の実績を用いまして各月ごとの標準報酬の計算をいたしました。さらに、それを四十七年の三月から四十八年の二月までの各月の計算に伸ばしてまいりまして、それで四十七年の標準報酬の見込みを立てるという手法をとったわけでございます。  ただ、先生が御指摘のように、標準報酬の水準をきめる場合に、一つ春闘のアップの問題が出てくるわけでございますが、これも従来の手法と同じように、四十七年十月の、私どもで言いますと、いわゆる標準報酬の定時改定の時期になるわけでありますが、それをどう見るかということが問題になるわけであります。四十七年の予算を編成いたします場合には、四十七年の春闘の結果、その影響というものを的確に把握することができませんので、四十五年から四十六年に伸びた率、すなわち四十五年の十月と四十六年の十月とを対比いたしました伸び率、これが一二・四%でございますが、その一二・四%をもとにいたしまして四十七年の十月の積算を計算いたしたわけであります。ただ、これは頭打ちの関係その他がございまして、一二・四%をもとにして計算をいたすわけでございますが、実際には四十七年の十一月は一一・八%の伸び率ということで十月の標準報酬を推定したわけでございます。そういうことで四十七年度のいわゆる法改正前の状態の標準報酬を推計いたしました。それが結論から言いますと、その見込みが、これは年間の平均でございますが、五万九千六百八十九円でございます。その上に今般御提案申し上げております法改正の標準報酬の上下限の改定によって影響が出てまいりますので、それを加算をいたしまして、四十七年度の標準報酬の最終的な値として六万三千二百二十五円、これが四十七年の標準報酬の平均であるというように推計をいたしたわけでございます。したがって、四十七年度の見込みを立てます場合には、四十七年の春闘の状況というのは加味していないと申しますとおかしいですが、それとは離れまして、ただいま申しましたように、四十五年の十月、四十六年の十月、これが各年度の春闘の影響で変わってくるわけでございますが、その率を使って推計をしたということでございます。ちなみに、四十六年におきましては、大手のアップ率が一六・六%、それから中小のアップ率が一八・五%で、これに対して四十六年十月の標準報酬、これは実績の伸び率でございますが、それが一二・四%であったわけでございます。
  39. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、資料として出ておるこれは、大体この辺のところであろうということで、あまり確実性のないものですね。そう思っていいですか。
  40. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま申し上げましたように、昨年の十二月に予算を編成いたします場合には、本年の十月に春闘を反映いたしまして標準報酬は幾らくらいになるかということは、これは厳密に正確には把握できませんので、私どもといたしましては、従来の経験に基づいてできるだけ正確な結果が出るような手法をということで、いま申し上げましたような積算をいたしたわけでございます。
  41. 後藤俊男

    後藤委員 それから先ほど説明されましたこの政府管掌健康保険と組合健康保険との構造面による差異のところで、五十人以上の事業所は五二・八%と言われましたが、それは四十一年の話ですね、この資料に基づくと。一番最近の昭和四十五年では四八・三%になっておるわけなんです。これは間違いですね。九ページです。
  42. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先ほど私がお答え申し上げましたのは、被保険者の数、すなわちこの九ページの資料で言いますと、下の表に相当するわけでございますが、これは五十人以上と五十人未満に限って御説明をいたしたわけでございまして、この九ページの資料は一人から九人までと十人以上に分けて切ってございます。それから事業所のほうは、従業員十人未満の零細企業が幾らであるかというのが上の表に相当するわけでございまして、先ほど私が御説明いたしましたのは従業員十人未満の零細企業は五一・七である。これは一番下でございますが、一人から九人までの割合は五一・七である。それから十人以上が四八・三ということになるわけでございます。
  43. 後藤俊男

    後藤委員 そこでこの資料に基づいて質問をするわけですが、四十五年の十月調べで一人から九人までの事業所で、政府管掌健康保険に加盟しておる被保険者の率というのは一二・四%、これは間違いないのですか——間違いないですね。そうしますと、そこで私一つの疑問が出てくるわけでございます。先ほども局長説明しておられますように、この政府管掌健康保険というのは、たとえば千分の七十といたしますと、使用者のほうが千分の三十五を負担するわけです。被保険者のほうが千分の三十五を負担するわけです。たとえば、いまこれがきまったとした場合の話ですよ。特別保険料の千分の十というのは千分の五、五にこれは分かれるわけです。そうしますると、この一人から九人までの小さい事業所、いわゆる五人未満の事業所というのは、いままでかなり論議になったところなんです。そういうところが政府管掌健康保険に入っておらぬ。そういう事業所の労働者は国民健康保険に入ると思うのです。そこで政府管掌健康保険に加盟をしておれば半額は使用者負担になるわけなんですが、この政府管掌健康保険に入っておらないばかりに、国民健康保険でまるきり本人負担をしてしまう。しかもそういう人が、この資料によりましても一三・四%しか政府管掌健康保険に入っておらぬわけなんです。残りの八七%というのは、たとえば千分の七十にすると、千分の三十五は使用者が負担すべきものを、そういうことでなくしてまるきり自分が国民健康保険料負担をしておる、おのずからそういうかっこうにこれはなってくるわけなんです。前からこの五人未満の事業所につきましては一体どうするのだということがやかましくいわれておりました。国会が開かれるたびに、この五人未満の事業所につきましても促進するのだ促進するのだということは、これは幾つかの附帯決議にもついておると思いますし、通常国会のたびにこれは問題になっておるわけなんですね。この実情というのは一体どうなっておるのか。この表によりますと、一人から九人の事業所におきましてはわずかに一割余りしか政府管掌健康保険に加入しておらぬわけです。加入しておらぬということは国民健康保険で、そこで働いておる労働者の人はまるっきり負担をしておる。一方におきましては、政府管掌健康保険に入っておる労働者の人は半額が使用者負担になる。同じ労働者が働きながら、こういう差異が出てくるわけなんです。しかもその差異がわずかならともかくとして、八七%の人がそういう差別扱いを受けておるわけなんです。これは私は非常に問題だと思うのです。ですから、実情としましていま申し上げましたように、五人未満の労働者が働いておる事業所の数は一体どれくらいあるのだ。そこで働いておる労働者なり家族の数は一体どれくらいあるのだ。さらにまた国保の組合ですね、既設の組合もありましょうし、あるいは去年できました新設のものもありましょうけれども、こういう関係で五人未満の事業所というのは一体どれくらいあるのだ、この点について御説明いただきたいと思います。
  44. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 この表について私の説明が足りませんでしたので、ちょっとおわかりにくかったかもしれませんが、この九ページの下の「被保険者数」というのは、これは一人から九人と書きましたのでおわかりにくかったと思いますが、これはいわゆる強制適用の五人から九人までの被保険者がほとんどで、一人、二人、三人、四人というのは、これは任包で入ってきておる数でございます。それでもう一つは、そこに書いてございます百七十七万人というのは、現在政府管掌の被保険者になっている人の数でございまして、現在の被保険者の総数約千三百万人を十人未満と十人以上とに分けました場合にこういう数に分かれるという表でございます。したがって千三百万の被保険者の中で一三・四%のものがいわゆる九人未満の事業所につとめている被保険者である、こういう数字でございます。  それで、しからば五人未満の事業所なり、あるいは五人未満の未適用の人間は幾らいるのかということでございますが、これは私どものほうで推計いたしましたところでは、現在事業所の数で約百十三万事業所でございます。それから被保険者の数にいたしますと約二百九十五万人でございます。これがいわゆる一人から四人、すなわち未適用の事業所、それから御承知のように健康保険は現在サービス業その他は強制適用になっておりませんので、そういったようなものも含めまして約二百九十五万人が未適用の被保険者であるということになるわけでございます。それで、これは国保の被保険者になっているはずでございますが、いま申し上げました二百九十五万の、約三百万の被保険者の家族が何人かといいますと、これはちょっと私どもも現在把握しておりませんが、被保険者の政府管掌の健康保険の扶養率、これが一でございます。すなわち千三百万人の被保険者と大体千三百万人の家族がおりまして、二千六百万人ということでございますので、それと同率であると仮定いたしますと、未適用の被保険者それから家族、合わせまして約六百万ということになるわけでございます。  それから国保組合の中にそういったような者が何人属しているかということの推計でございますが、新設、既設を含めまして、これは被保険者の数でございますから百十七万九千人。したがって、政府管掌の健康保険でいいますと、本人と家族と合わせた数が約百十八万人であるということでございます。
  45. 後藤俊男

    後藤委員 いま御説明がありました未適用が二百九十五万人ですか、家族を含めると大体六百万人ぐらいじゃないかということになるのですが、そこで私は、これは大臣にお尋ねするのですけれども、先ほどからも話をいたしておりますように、政府管掌健康保険に加入をしておれば使用者半額負担になるわけなんです。たとえば千分の七十にすると、千分の三十五というのは使用者負担あとの三十五が被保険者負担、こうなるわけです。ところが五名以下の小さな事業所におきましては、政府管掌健康保険に入るところまでまだ行政指導なり手が届いておらない。ですからこれは国民健康保険に入るわけです。その人が六百万からおるわけなんです、家族を含めますと。これはだれも負担してくれませんから、まるっきり本人負担ということになるわけなんです。そこに同じ職場で働いておりながら——職場は違うにいたしましても、同じ労働者でありながら、片方においては半額使用者負担、片方においてはまるっきり本人負担、しかもそれがわずかな数ならともかくとして、家族を含めると六百万からそういう不当差別を受けている労働者がおる。これが現実なんです。この差別扱いをしている労働者の人をこれから一体どういうふうに政府管掌健康保険に加入させて同じような扱いをさしていくか、ここに私は厚生省としても問題があると思います。いかにしてこの問題々解決するか。これは早急に解決していただかなければ、何べんも言いますけれども、片方では半額負担してくれる、片方はまるっきり本人負担だ。しかも内容においても差異がある。さらにまたあなた方が言っておるように、特別保険料ということになってきますと、これまたいろいろ問題が出てくるわけでございますから、厚生省はこの問題を一体どういうふうに解決しようと考えておられるのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  46. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 五人未満の未適用の被用者をどうするかということは、長年の懸案の問題でございます。ただいま国保の中に入っておられる。そこで国保では国庫負担が四割五分ということになっておりますので、国庫負担が相当高くかぶっております。現実にこの人が政管健保にきたならばどうなるかという計算はいたしておりませんが、個々に具体的につかまえてみて、現に国保の保険料を何ぼ出している。そして政管健保に入れば、すぐそのままはじき出せるわけですが、どうなるのかという点は見ておりませんが、まあたいした違いはないのじゃないかと思います。これはもっと具体的に調べる必要がある、かように思います、負担の面から考えますと。  私はいま健保の抜本改正を近くお出しをして審議をしていただきたいと考えておりますが、将来の考え方としては、一体働く者、被用者とその家族、それから自営業者とその家族、これは差別をするのが国民医療という面からいいのかどうかという大きな疑問を私は持っておる。これは今日の国民医療という考え方から申しますると、むしろ差別すべきじゃないのじゃないか、そこで国保にいたしましても、家族にいたしましても、その給付を引き上げていく。そしていわゆる被用者とあまり差のないようにまで持っていく必要があると思います。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 そういうことをやることによって、いわゆる被用者であるという立場とその家族という立場と、自営業者の立場、その家族というものは将来は同じような費用の負担、また給付も公平というように持っていく必要がある。これを念頭に置いて考えますると、五人未満のいまの未適用をいま直ちに問題のある健保に入れるということははたして適当かどうか、かように考えて検討をいたしているわけであります。今度の抜本改正におきましては、少なくとも家族の給付も、また国保の七割給付の家族も、これは自営業者、働いている人の家族も同じことでありますが、いわゆる高額医療は全部保険で見るというようにいたしまして、そして国民みなひとしく、労働者も——労働者といったって人に雇われている者と、それから自分で労働している者と区別をつけるのは一体適当かどうか、こう判断をいたしますると、いまにわかに未適用を入れるということをそう急いでやるべきではない、かように考えて、これらの人たちの給付の改善ということをまず第一にやっていきたい、こういうような考え方でただいまおるわけでございます。
  47. 後藤俊男

    後藤委員 いま大臣が言われましたその説明ですけれども、ちょっと局長にお尋ねいたしますが、いま大臣言われましたのは、国民健康保険に入っておる保険料と、さらに政府管掌健康保険に入っておるときの保険料とたいして差がなかろうと、こういう話でしたが、ぼくはかなり差異があると思うのです。片方は半分は使用者が負担するんですから、これは簡単に計算できると思うのです。たとえば四万八千円の賃金だったらどういうことになりますか。それは簡単にひとつ計算をしていただきたいと思います。  それからさらに、大臣、いま抜本改正のことも言われましたのでお尋ねしたいと思うのですが、一般の国民というのは抜本改正に対しましては、給付の内容が非常によくなるんだという大きな期待を持っておるわけなんです。これはもう大臣も十分御承知だと思うのです。それから審議会等の答申内容を検討してみますると、被用者保険と国民健康保険の二本立てというような方向に答申は出ておると思うのです。抜本改正につきましても、遠からず話が出てくるのじゃないかと私は思っておるわけですけれども、現在政府としては、いま申し上げました二本立てということを考えておるのかどうか。さらにまた、考えておるとするのならば、被用者保険の経営主体を組合管掌の健康保険にしようとするのか、政府管掌の健康保険にしようとするのか、これもやはり問題になると思うのです。たとえばそれを全部政府管掌の健康保険にするということなら、先ほどあなたが言われましたように、こういう差別抜いをするということはまた根本的に問題になってくるわけなんです。いま大臣の話を聞いておりますと、抜本改正でそれらの問題も解決するような印象を受けた聞き方を私いたしましたからこのこともお尋ねするわけなんですが、いまの二点を、一体どういうふうに政府としてお考えになっておるのか。このことをまずお尋ねいたしまして、そのあとで四万八千円の場合に、国民健康保険の掛け金と政府管掌における被保険者負担保険料、どれくらいになるかという計算をしていただいてお聞かせいただきたいと思います。
  48. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国保に入っている人は、各市町村それぞれ保険料のかけ方が違うわけでありますから、したがって、当該の人が現実にどこにいて、そしてどの国保に入っていて、その人は何ぼ保険料を出しているかということから見る以外にいまないわけでございます、保険料の取り方はいろいろ違いますから。そういう意味で申し上げておるわけであります。  それで、一体将来どう考えるかというお尋ねでございますが、私は、将来の考え方としては、やはり健康保険は、政府管掌であっても組合管掌であっても、これはその間に保険料なり給付に不公平のないようにする必要がある。この経営を政府管掌に一本にしてしまうか、いまのような組合の経営にするかということは、これは具体的な問題として大事な問題ではございますが、やはり組合管掌の、組合のやり方をやるのが適当ではないか。いまの政府管掌の中でも、組合をつくれるところは組合をつくらしていく。しかし、組合ではあるけれども、組合相互の中はもちろんのこと、政府管掌の間においても保険料と給付の間に不公平がないようにやっていく必要がある、かように考えております。そういうようになった場合に、いまおっしゃいました国保の被保険者保険料負担、国保のいわゆる被保険者の給付というものも、これは健保と変わりのないように調整していく必要がある、それで初めてほんとうの国民医療という考え方から立つ国民皆保険の実が実現をする、かように考えます。しかし、なかなか一挙にしてやれませんから、まず第一歩、二歩と段階的にいくことが現実的であろう、かように考えておるわけでございます。
  49. 戸澤政方

    戸澤政府委員 四万八千円の所得者に対して、健保と国保の保険料負担の比較ができないかということでございますけれども、両者は給付率も違いますので、その辺の調整をしなければいけない。それから国庫負担が違いますので、その調整もしなきゃいかぬ。それから国保のほうは保険料の取り方が非常にまちまちでございますから、これを的確に負担の比較を計算することはむずかしいと思います、ある前提を置いて試算はしてみますけれども。これができましたらまた後ほどお答えいたしますが、ちょっと、的確な比較を、数字を出すことはむずかしいんじゃないかと思います。
  50. 後藤俊男

    後藤委員 ただ、私は数字的に何円何銭まで正確に出してくれとは言うたつもりはないんですがね。どう考えてみましても、政府管掌健康保険は使用者がその二分の一を負担するんですから、そこに加盟しておる被保険者が有利であることは間違いないと私は思うのです。だから厚生省だっていままで、五人未満の事業所の加入促進に努力してこられたんじゃないですか。そういう方向で来られたと思うのです。それが、先ほどの話じゃございませんが、家族を含めて六百万人からがまだこの政府管掌健康保険に加入しておらぬ。一般の国民健康保険に入っておるんだ。そうなりますれば、政府管掌健康保険という保険がありながら、一般の労働者と違った差別扱いを受けておるわけなんです。それは本人みずからが好んでやっておるわけじゃないんです。厚生省として行政指導をして、それらを全部、一〇〇%加入させる、そういう方向で努力いたしますということは、いままで何回もこの委員会でも言明があったじゃないですか。だから私は、そういう差別になっておるのを一体どう解決するんですかということを質問しておるわけなんです。そうしましたら厚生大臣としては、抜本改正のときにはそういう問題についてもいろいろ考えてと、こういう話でございますけれども、そうすれば厚生省としては、このままでもうよろしい、六百万の人はもうこのままでよろしい、このままで進んでいきましょうと、こういうことなのか、あるいは五人未満の事業所につきましても政府管掌健康保険に加入させるように行政指導を十分行なっていくんだ、こういうことなのか、その辺のところぐらいははっきりする必要があると思うのです。さらにまた、はっきりさせるというんなら、一体どういうふうに行政指導をするんだ。全国にいま二百二、三十しか保険事務所はないと思いますが、それだけの要員で、はたしてやれるのかやれぬのかということも問題になると思うのです。その辺のところを私は詳細に聞きたいわけなんです。ざっくばらんにひとつお答えいただきたいと思います。
  51. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ざっくばらんに私は申し上げております。ざっくばらんに申し上げて、いままでは五人未満の未適用もやはり適用したほうがいいんじゃないかというように進んできておりました。それは事実でございます。そして、その方向で検討をするように言っておりました。しかしながら私は、抜本改正考えます場合に、いわゆる国民の健康をどう保持をさせるか、そして保険によって、ということを考えますると、いわゆる雇われている人とそうでない人との関係を、そう五人未満にまで及ぼしていくことがはたしていいのかどうか。いまであれば、政管に入れば、御承知のように家族は五割給付でございます。本人はなるほど十割になりますが。ところが家族の五割給付で非常に困るという声がいま非常に強いわけでございます。少なくとも七割にしてもらいたい、できたら八割、九割にしてもらいたい。そこで当初は、私は健保のほうも家族七割と考えておりましたが、今度は当分は六割でいかざるを得ない。しかしながら高額医療は、たとえば月額二万円あるいは三万円をこえるというものは全部保険で給付をするようにしたい、そういうように考えてまいりますると、いまそう急いで政管健保に入れるということを考えるよりも、やはり給付を引き上げていく、そして国保の保険料負担というものも適正な負担にやっていく。そして、国保と健保との負担に不均衡のないようにやっていくというやり方が望ましいのではないか、かように考えまして、いま問題のあるいわゆる政管に入れるということはちょっと待って検討したほうがいいというわけで、方針を変更したわけでございます、ざっくばらんに申し上げまして。さように御承知をいただきたいと思います。
  52. 後藤俊男

    後藤委員 いま大臣が言われました政府管掌健康保険であろうと国民健康保険でありましょうとも、その内容というのはできるだけ引き上げて同じようにいくべきである。このことは私わかるわけなんです。それはそうあるべきである。そこで、先ほど大臣にお尋ねいたしましたのは、今度の審議会の答申というのは、被用者保険と地域保険の二本立てを答申しておるわけなんです。これをどう提案されるかはこれからの問題です。だから二本立てを考えておられるとするのならば、この被用者保険というのは組合管掌にするのか、政府官掌にするのかということが問題になってくるわけなんです。そうなってきた場合に、二本立てを認める以上は組合管掌であろうと政府管掌でありましょうと、やはり使用者と被使用者という関係が出てくると私は思うのですよ。そうなってまいりますと、いままでと同じようにやはり使用者の負担と被使用者の負担、被保険者負担ということで分かれるわけなんです。そうすれば働いておる労働者というのは、まるきり負担するよりかは半半負担というほうがどれくらい有利かわからぬわけです。しかも大臣が言われるように、いわゆる二本立てになってくれば、地域健康保険も同じ内容になるのならば、かえって労働者のほうがよけい問題になってくるわけです。だから、その辺をどうお考えになっておるかということを、先ほど私はお尋ねしたわけなんです。そのことがはっきりしないのに、政府管掌健康保険に五名以下の事業所については加盟することを現在のところ中止をしておる。考え方を直したんだ、こう言われたって、その話は納得できませんよ。これはまだ抜本改正の問題が中身がどうなるかわからぬ話ですから、そのことについては私はとやかく言おうとは思いませんけれども、ただ二本立てに、地域と被用者の二本立てにしようとするのならば、政府管掌であろうと組合管掌であろうと、やはり労使の間で関係が出てくるわけなんです。そうだとするのなら、この政府管掌健康保険、現在のものも加盟しておることと、しておらぬことによりまして、二本立てのどっちに入るかということによって中身は変わってくると思うのです。ですから、私はこの問題を言っておるわけなんです。この点がどうも大臣の話だとすっきりせぬわけです。ただ、中身をよくして、被用者であろうと国民であろうと同じような内容にするんだという、その気持ちは私はよくわかるわけです。これは十分わかります。わかるけれども、二本立てを前提という考え方に立つならば、当然この問題はまた再燃するわけなんです。だからその点を私はお尋ねしておるわけなんです。それじゃ政府としては抜本改正はこういうふうにやります、こういうふうにいけば、政府管掌健康保険でやったとしても五人未満の事業所はもう関係ございません、全部これは該当しません、これはまだ正式には発表いたしておりませんけれども、政府としてはこう考えておる、ここをはっきり言うてもらうならば、私としては一応の話として聞けるわけです。その辺をはっきりさせずに、あいまいにしておられるところに私はわからぬところがあるというわけです。いかがですか。
  53. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まあただいまおっしゃるような問題もありますから、そこで検討をする。ただむやみにいま政府管掌に入れるということはちょっと待って検討をしたい、こういうわけであります。いま、政府管掌になれば事業主の負担があるじゃないかと、こういわれる。事業主の負担といえども、やはりこれはいわゆる人を雇うための費用になるわけであります。事業主が何もあれするわけじゃない。政府管掌に入れば、人を雇えば、いままでの賃金のほかに、それだけのペイをしなければならない。これはやはり労務者の雇用費であります。その雇用費が、いまの国保に入ったからといって、賃金が安いか高いか私は知りませんけれども、いわゆる五人未満の事業者にそれだけ雇用費として付加されるわけなんですね。現在は国保には四割五分の負担をしておりますが、四割五分の負担が適当かどうかわかりませんが、これはやはり事業主負担がないから、そのかわり国が政管に補助をするよりも、国庫の負担を国保のほうがよけいしている。四割五分の負担をしておるわけであります。この負担が適当であるかどうかというこの議論もございましょう。そこらを勘案いたしまして、将来五人未満をどうするかということをやはり考える必要がある、かように考えるわけであります。
  54. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと関連して。  後藤委員質問は、いままでの質問から見ますと、別の方向から問題を提起したわけです。いままでの質問とは違った方向なんです。しかし違った方向から問題を提起いたしましたが、厚生大臣はきわめて重要な答弁をいたしておるわけです。つまり、従来私どもが国会で議論をいたしました点は、五人未満の未適用の労働者に対しても、政管健保を適用する方向で議論しておったわけです。そういう決議をしばしばしておったわけです。しかし、厚生大臣はそれにストップをかけた、こういうわけである。これは全体の国保と政管健保の制度のあり方について重大な問題があるからストップをかけた、こういうわけである。後藤委員質問は、事業主負担という観点で、たとえば具体的に四万八千円の月収の人の問題を提起したけれども、これは政府は答弁しなかった。山本委員からずっと質問をしておるところは、国庫補助の観点からこの問題を取り上げたわけです。しかし、全体の抜本改正の議論から言うならば、制度については自営業者と被用者の二本立てにする。二本立てにしながら、水準を引き上げて格差を是正していく。保険料負担と給付の水準の均衡化をはかっていこう、こういう議論をしておるわけであります。あなたはそれに待ったをかけているわけである。それならばそれに対応するような考え方があるべきだ。いま赤字対策を議論しておるけれども、保険料負担と給付の水準の均衡化ということは、皆保険のずうっとの経過の中でいろいろの段階を経ておる。矛盾のある中を整理をしながら、皆保険であるからこの問題を、格差是正の問題を含めて赤字の問題について考える、こういうことを私どもは中心的な議論の一つにしておるわけです。それに対して、いままでの議論の方向や答申の方向から言うならば、斎藤厚生大臣は重大な答弁をしておるわけです。いまのあなたの答弁はきわめて重大である。それがあなたの思いつきか、独善であるかどうかということのために、それはあなたの姿勢が正当である、こういうことについて明確な答弁をする必要がある。その答弁をしておかないで、疑問だけ投げておいて、そういうことをこの問題について明確な答弁をしないということはおかしい。したがって、私はこの問題については、四万八千円の問題と一緒に、後藤委員が指摘された問題点を整理をして、それに私が指摘をした点をつけ加えて、納得のできるような答弁をしてもらいたい。私の関連質問に対して答弁ができるというのであれば答弁してもらいたいし、できなければ、これは後藤委員の問題とあわせて保留しておきたい、こういうことであります。
  55. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はただいま申し上げるような意味合いで、五人未満をいま直ちに政管に入れるという方針をさらに検討して、入れるように努力するかどうかというと、これはやはりもうちょっと検討したほうがいいというので、検討して、その意味ではいままで五人未満のそれを政管に入れるのは当然である、そういう答弁をしていたようでありますが、それはどうかという点は十分検討する必要がある、かように申し上げておるわけです。
  56. 後藤俊男

    後藤委員 いま大臣、最終的に、抽象的に言われましたが、先ほども方針を変えたのだということをはっきり言われたわけです。そういうことになりますと、いままで進んできた方向と全く百八十度転換になるわけであります。及ぼす影響というのはかなり大きいと思うのです。ですから、いま大原委員から話がありましたように、いまの問題なり、さらに先ほど申し上げました問題につきましては、引き続いて次の委員会におきまして答弁をしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。それからさらに、まだまだ問題が少し残りましたので、その点につきましても、引き続いて次期委員会質問をさしていただく、そういうことできょうはこれでやめさしていただきます。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 浅井美幸君。
  58. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、大臣並びに答弁の皆さんに申し上げておきますけれども、先輩諸氏あるいは同僚委員からいろいろお話、質問等も出ております。私は、具体的な問題の前に、まず基本的な問題から触れたいと思います。答弁はいわゆる簡潔にして、ほんとうのことをおっしゃっていただきたい、このように要望しておきます。  まず第一番にお聞きしたいことは、四十二年に、この政管健保の赤字によって、いろいろと法律の改正を行ないたい、特例法を設ける、そのときには総理をはじめ大臣が、必ず抜本改正はいたします、いわゆる政管健保の赤字は、暫定的な措置として赤字対策を行なうのだ、こう言って今日まで来ました。その間六年間でありますけれども、これは国民の期待にそむいて、いまだ抜本改正ができていない。しかるに今回政府の提出しておる法案は、単なる政管健保の赤字対策、そういうことをいわれております。政管健保の問題だけに、大きな国民の注目を集めておる審議でありますけれども、この政管健保の破綻の責任は一体だれがほんとうに負うべきかということが、私はまず第一番の問題であろうと思うのです。私は、そこに政府として本気になってこの問題を進めてきたという実体が見られない、こういうふうに私は思いますけれども、この点についていかがでしょう。
  59. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 四十二年から抜本改正をやると言いながら、それが今日までおくれてまいった、抜本改正をやっておれば政管の赤字も出なかったのではないかという、そうはおっしゃいませんでしたけれども、おそらくそういうことであろうと思うのであります。そうだといたしますると、赤字の出ないような抜本改正ができておれば、まさしくそうであったと思います。ところが、御承知のように、抜本改正が非常にむずかしい、各方面から、こちらによければあちらに悪いというようなことで、社会保障制度審議会、保険審議会に四十四年に諮問をいたしたのも、二カ年審議をしてもらって、そしてやっと昨年の秋に答申をもらったというような、それに基づいてさらに政府案を諮問をいたしましたが、これについてもいろいろと意見があるというくらいに、なかなかむずかしい問題でございます。しかしそのむずかしさをもっと早く克服してやれなかったのか、こう言われれば、まさしく政府の責任と、こう言わざるを得ません。これはもう率直にさように思いますが、しかし政府といたしましても、できるだけの努力をして、抜本の糸口になるようなものをいま提案をいたしたいということになっておりますので、その点は御了承をいただきたい、かように思います。  そこで、しかしそれが実施されるまでの間においても、やはり赤字を解消をしておく必要かありますし、抜本改正するにいたしましても、やはり政管の赤字というものがないという体制において、そして抜本を考えということが適当である、かように考えますので、したがって、政府の責任は重々認めますが、まず赤字を解消する、政管の健全化をはかって、その上で抜本をやるということにいたしたいというのが政府の考え方でございます。その点は御了承いただきたいと存じます。
  60. 浅井美幸

    ○浅井委員 私どもは、いま大臣が御答弁になった、抜本改正をやるためにいろいろな努力をしてきた、非常にむずかしい問題があった、私もそのいきさつは聞いております。しかしながら、最大の赤字の原因——抜本改正をやることによって、大きく赤字の解消をはかれることは当然であるはずであります。抜本改正というのは、いま大臣、何だか答弁がよくわからなかったけれども、抜本改正をやったからといって赤字が解消するとはきまらないというお話を聞いたのですけれども、私は赤字を解消するための抜本改正であり、また国民に機会均等の医療を供給するための抜本改正でなければならぬ、それをやらないで、政府の責任においてやらなければならないこと、これを置いておいてまず財政対策を出してきたことは、本末転倒だと私は申し上げたい。公約違反は、それは食言です。やるやると言いながら、六年間やってこなかった。そしてまたさらに、その自分の責任は置いておいて、国民に負担だけをさせようというのが今回の改正案じゃないですか。
  61. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まあそうおっしゃられても、ある意味においてはやむを得ないと、率直に私はお受け取りをいたします。私は、抜本改正をやってもなおかつ赤字が出ると申したのではございませんで、それは抜本改正をやる前提として、政管の財政対策というものを整えて、そしてその上で抜本改正をやるというのが適当ではなかろうか、政管の赤字を解消するために政管の財政対策も講じないで、抜本改正だけでその赤字を解消するという考え方は、これはちょっとよろしくないのでけないかという批判も非常に強いわけでありますので、したがって、政管がこのまま続くとすれば、こういう財政対策を講じれば赤字が当分解消いたしますが、しかしながら、負担の公平とか給付の公平という点から考えて、こういう抜本改正をこの際やっていかなければならないというふうにしたほうがフェアである、かように考えたわけであります。
  62. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから大臣、率直に公約違反であり政府の怠慢を認めなければならぬですよ。その間の事情を御了承願いたいというのではなくて、これは政府は国民におわびをしなければならぬ問題なんです。抜本改正をする前提として財政調整と言うけれども、抜本改正というものをやらなければ幾らたっても赤字は解消しないという、この論理を私たちが言っていることは間違いですか。あなたは抜本改正をするための前提条件として今回のこの法改正を行ないたい、こう言っておる。そうではないんだ。たとえばざるで水を受けているようなものなんだから、そのざるを、入れもののほうをかえなければ幾ら財政対策をしてもまた赤字が重なるではないかということが、これが四十二年からの議論ではないですか。またこれを何年か、同じことを繰り返すのですか。大臣、どうです。
  63. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は抜本改正は、必ずしも政管の赤字を解消することが目的だということで抜本改正ということを言うていたのではない、かように考えます。そこでいま赤字解消のために抜本改正をやるというのではなくて、負担の公平、給付の公平という面から抜本改正をやります、そうなればあるいはいま政管に入っている人たちの保険料もいまよりも下がるであろう、給付ももっといい給付ができるであろうということになるわけであって、このために、赤字を解消するというのではなくて、そういうことを考えたのがほんとうの抜本改正であろう、私はかように考えております。そこで抜本改正ができなくても、この財政対策を講じていただければ将来赤字が出ないことが保証できる。しかしながらこのままで置いたのでは、保険料に不公平があるし給付にも不公平がある、それを抜本改正で公平をはかりたいというのが抜本改正のねらいでございます。
  64. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま、赤字の解消のための抜本改正ではないとおっしゃった。そういう言い方もできるでしょう。しかしあなたのおっしゃったように、赤字も当然解消されてくるのが抜本改正です。したがって、赤字の解消のためといっても間違いありません。じゃ、いま給付は公平ですか。負担は公平化されていますか。負担の公平化も給付の公平化もはかられていないのにかかわらず、またそれを国民にしわ寄せして財政だけを押しつける、政府の責任だけを押しつけるということはけしからぬ、こう言っているわけです。それは政府の考え方がおかしいのじゃないか、あくまでも本末転倒じゃないかというのが私どもの議論じゃないですか。それは大臣どうです。
  65. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 負担の公平をはかった、しかし負担の公平をはかる前に政管健保というものの財政を堅実にして、これならば政管健保は赤字が出ないという形にして、そしてその上で今度は各保険者間の負担の公平、給付の公平ということをはかっていくというのも一つの行き方であって、政府はその方向をとりたいというので、いま財政対策法案を先に御審議をいただいているわけであります。
  66. 浅井美幸

    ○浅井委員 平行の議論になってきてしまったのですけれども、考え方が基本的に違うのです。これは重大な政府の責任だと私たちは申し上げているわけです。その重大な政府の責任を、あなたは何だかあるようなないようなお話なんですが、責任をお感じになっているのかどうか。厚生大臣も古い経験をお持ちなんです。あなた自身だって本心から納得をしているかどうかの問題なんです。これで国民に大いばりで、いや財政対策をやれば抜本改正できますよなんて言えることなのか。国民が疑問に思い、政治不信におちいっている最大の原因はここにあるわけですよ。何回も何回も公約をしておきながら実施してもらえない、今回もまたそれで食い逃げするんじゃないか、こういう考え方を持っているわけです。ですから私たちはそれは何回も何回も確認をして、総理自身も抜本改正を四十三年度に実施をすると言ったじゃないですか。ここに本会議の議事録がありますよ。昭和四十二年の八月七日の本会議で総理は「今回の健康保険の臨時特例法、これはどうしても緊急に処置しなければならない、さように政府は考えたのでございまして、」「何としても抜本対策を立てなければなりません。各種の審議会等がすでに政府にもたびたび勧告をしております。抜本的対策を立てるように、かように申しておりますので、政府もその考え方でございます。したがいまして、四十三年度におきまして、」これを実施するために「準備をしておるような次第でございます。」こう言っているじゃないですか。いま何年ですか、大臣。いま四十七年ですよ。これができなかった政治責任は重大じゃないですか。どうなんですか。
  67. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃるとおり、四十二年、三年から言っておりながら今日まで提案もできなかったということは、これは非常に責任を痛感をいたしておりますが、ただ怠慢で手をつかねておったのではないということだけはひとつお認めをいただきまして、まあ一生懸命、審議会にも諮問をし、あれをし、やって、やっとここまでこぎつけてまいりました。その間ばんやりして何もしないでおった、やりますやりますと言ってほっておったというのでない点だけはお認めをいただきたいというふうに思います。
  68. 浅井美幸

    ○浅井委員 一国の総理やあるいは大臣というものをたよりに、政治あるいは行政というものが行なわれておるのです。それが六年も七年もかかって、何にもやらなかったわけではございません、やってきた努力だけは認めてくださいなどと言うのは、子供だましの答えですよ。あなた自身が、本気になってこれをやるという決意にまだまだ立たないんじゃないですか。いろいろな団体がありいろいろな関係省があって、その実施がむずかしいんだ。英断がないからですよ。国民に対してほんとうにこたえる医療制度をつくるんだ、医療供給制度をつくるんだ、医療基本法をつくるんだという決意がないからできないんじゃないですか。それはどうですか。
  69. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も、政治生命をかけるぐらいなつもりで抜本改正と基本法に取り組んでまいりました。どうやらその第一歩に類するものを近く提案できるようになってきた。私は、四十四年の健保改正の際に確かに二年後には抜本改正を出します、こう言って通していただきました。そしてその国会の終わる前に審議会に諮問をいたしました。そして私は退任をいたしましたが、昨年拝命いたしたときに、ちょうど二年の期限が切れてどうしてもやらなければならないというので、答申をいただいて以来日夜——今日までまいったわけでございまして、その点だけはお認めをいただきたい。これは認める認めぬは別にこちらでしいるわけではございませんが、私は悔いるところのないだけの努力をして、力の足りなかったことはおわびを申し上げますが、やっとここまでまいりました。ひとつ提案をいたしましたらそれを中心に御審議をいただきたい、かように申し上げておきます。
  70. 浅井美幸

    ○浅井委員 要するに、あなたは力が足りなかったことをおわびするということでありますけれども、あなたは国民に対してほんとうに明確な公約違反であり食言であるということを認めなければならぬと思うのです。あなたは、しかしながらと言う。やってきたことを認めろ。認めろという言い方というのは、私は責任のがれだと思うのです。できていないものはできていないのです。あなたは近く成案を見て出す予定だと言っているけれども、この国会は二十六日が会期末だ。じゃなぜこの国会の冒頭にそれを、国民の信託にこたえて出さなかったか。これはあなた方の重大な責任だと私は思うのです。それを言っているのですけれども、あなたは答弁の中で、感じておるのでが、しかしながらわれわれの努力も認めてくださいというようなあいまいな、そういうあなた方の姿勢という問題を私はまず聞きたいわけです。これは政治姿勢ですよ。その基本的なことが確認されなければ、この委員会においてただ単に、公約違反をしておきながら、また財政対策ですと出しているのをわれわれ野党委員が審議していること自身がおかしいのです。過去二回強行採決をやっているのです。そういう法案をまた再び三たびここに出してきて、審議してくださいといって、はいはいとわれわれが審議していること自身もおかしいのですよ。あなた方自身がほんとうにいままでの姿勢を改めて、これから新しい決意でこうやっていくんだというものがなければ、われわれは審議に応じられないのです。それを審議に応じておる立場から、私はあなたに質問しているわけです。どうですか。
  71. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことに今日まで至ったのは政府の責任だ、かように考えます。そこで抜本改正はただいま法制局で条文整理をいたしておりますから、これができ次第、来週早々には御提案申し上げたい、さように思います。
  72. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開をいたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  73. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案の質疑を続けます。浅井美幸君。
  74. 浅井美幸

    ○浅井委員 先ほど本会議の始まる前にお伺いしたわけですけれども、公約違反の問題であります。  先ほどの大臣の答弁では、抜本改正案が出るかのようなお話でありますけれども、この抜本改正案が実現できる見通しを大臣はお持ちなんですか、その点をお伺いしたいと思います。
  75. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 提案をいたしましたら、ぜひ御審議を願って、そしてひとつ四十八年度から実施のできるように、ぜひお願いをいたしたいと思っております。
  76. 浅井美幸

    ○浅井委員 今度の抜本改正案は、聞くところによれば、第二次財政対策なんだといわれております。そういうものを出してきて、あなたが成立するかのような期待を持っておる、あるいはまた希望を持っておるというならば、これは大きな間違いだと私は思うのです。  この健康保険の法案については、過去にいまわしい、いろいろな経緯があるわけです。いわゆる強行採決という経緯をもって過去二回やってきております。今回もまたそのような抜本改正案を——あなた方は審議を経ましたと言うけれども、その内容は、聞くところによれば、はなはだ不満足なものである。その中において、抜本改正の審議をこれからお願いするといっても、とうてい成立の見込みはない。また、さっきも申し上げたように、会期末に至って、審議の日数もない時間もない、その中で抜本改正がはたして成立するか。だれも私たちは成立するなんということは思っていない。それをあなたは、そういうふうに成立するというふうにお考えであるということなら、これは基本的に、大臣考え方が違うということを私は言わなければならぬが、ほんとうに抜本改正が成立するとあなたは思っていらっしゃるのですか。
  77. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、この国会で抜本改正が成立いたしますというような、そんなおこがましいことを申し上げるなにはございません。提案をいたしますから、ぜひひとつ御審議をください、それより以外には申し上げるなにはないわけでございます。よろしくお願い申し上げます。
  78. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、いつあなたは抜本改正の法案を成立させようと思っていらっしゃるのですか。今国会において、おこがましいと思っておるならば、では国民が最も望んでおるところの抜本改正はいつできるのですか。まためどが立たなくなるじゃないですか。あなた自身が言っておることと、国民が期待しておることとは、また大きく食い違ってくるわけです。その点どうですか。
  79. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私のお願いを申し上げますのは、少なくとも四十八年度から実施できるように、御審議を願って成立させていただきたいという懇願をいたすわけでございます。
  80. 浅井美幸

    ○浅井委員 四十八年の一月から、あなたは実施の見込みだというお話でした。では、今回の政府のいわゆる改正案なるものも、一月までお待ちになったらいかがなんですか。審議会の答申も、あるいは大方の各界の期待も、このいわゆる政府の改正案なるものだけではなくて、一切のものを含めた抜本改正を望んでいるのです。したがって、それの審議のときに、並行して今回の政府案の審議をしたら、どうですか。
  81. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま御審議願っております財政対策法案は、本年度の単年度赤字を出さないように、これは蔵に火がついたような状況でございますので、本来なら、四月一日から実施をいたしたいというので提案をいたしておりまして、もうこれは日が切れましたが、一日も早く御成立をお願いいたしたい、かように考えております。
  82. 浅井美幸

    ○浅井委員 あなた自身が考えておることと、われわれとは基本的に違うわけですので、私は次に進めたいと思います。  保険制度という問題と医療保障という関係について、私は伺いたい。  わが党の公明党は、社会保障制度の一環として、医療保障の確立を従来から言ってきております。本来医療保障というのは、生命の安全と健康の増進を社会が責任をもって保障するということなんですね。生命の尊厳を基本として、国民の健康を完全に守っていく保障制度がいま確立されなくてはならない。  わが国の医療はすでに実施されてきたとおり、数多くの健康保険制度をいま持っております。それによって、ささえられてきましたけれども、健康保険とは、生命の安全と健康の増進を達成するための財政上の一手段なんです。収支の均衡とか受益者負担などという保険原則を満足させるために健康保険があるのではない。保険の持つ限界によって医療保障という目的が達せられない場合には、その保障の目的を達成するために、国が責任をもってこれは補っていかなければならないのです。特に現代社会は、個人の責任の限界を越えて多くの社会的要因によるところの健康被害が多発しておる今日から、国民のすべての人たちに平等、公平な医療保障を実現すべきであると私たちは思っております。ですから、政府の考え方自身が、あくまでも保険主義に立っておるのか、社会保障という立場に立っておるのか、この点から、まず伺いたいと思います。
  83. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国民の医療、健康、これを確保するということは、もちろん政府の責任だ。先ほども申しましたが、そのとおりに私は考えます。そこで、これを全部保険でやるのか、公費でやるのか、これを社会保障としてどう把握をするかという問題がございます。  私は原則として、国民の健康の保持、疾病の予防というようなものは、公費でやるのが原則である。そしてまた社会保障というような——社会保障を非常に広く言えば、これも社会保障の中でございますが、先ほどおっしゃいました本人負担の限界を越えるような、こういった健康破壊時における本人負担、これは私は公費で見るべきだ、かように考えます。  したがいまして、今日まで公費負担の中にも医療扶助というものも設けて、まるまる公費で医療扶助を行なう、また本人でない、社会の必要によってどうしても防除しなければならぬという疾病に対する費用は公費で持つ、あるいは公害からくる場合とか、そういった個人的な原因でなくて、社会的な事柄から起こってくるというようなものは、やはり公費で社会的に見るべきである。そうでない一般のものは、これは自己負担原則であるけれども、その自己負担をお互いに保険をし合うという相互扶助でやっていく。この最後に申しました相互扶助でやるという分野は、これは保険だ、かように考えております。
  84. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから私はいま冒頭に申し上げたように、いわゆる社会保障の一環としての医療保障という問題を真剣に政府は取り上げていないといわざるを得ないのです。いまあなたが相互扶助と最後におっしゃったその相互扶助論というのが保険主義なんですよ。  いわゆる財政対策としての単なる国民に対する医療という問題をとらえるときに、あなたのは保険主義の立場に立っての医療制度なんです。私が申し上げておるのは、福祉国家としての社会保障体制の一環としての医療保障体制、これでなければならぬのではないか。医療保障体制の上に立つならば、国家の責任というものは大きくそこに課せられなければならないし、重大な責務を負わなければならないわけです。それを一般の保険の主義と同じように、生命保険やあるいは火災保険と同じような考え方の上に立ったいまの医療保険という基本的なものがあるから、あなたの言う相互扶助論の問題が出てくるのです。あるいはまた保険主義という立場から受益者負担という考え方が出てくるのです。私はその基本的なものが変えられなければ、いつまでたっても財政対策という問題だけで、政府が責任を転嫁して国民にしわ寄せがくるということを申し上げたいわけです。その点はどうですか。
  85. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは議論するつもりではございませんが、私の申します相互扶助による保険というものは、先ほどおっしゃった保険主義とは違うと思うのです。保険主義であれば、危険の多そうな者がよけい保険料を出すということでありますが、そういうような保険主義ではございません。お互いに苦しいときは助け合おうという保険であって、名前は保険でありますけれども、しかし、これは普通民間でやっている、ああいった保険とは全く性格の違ったものである、かように考えますので、そういう意味で現在の保険というものは不完全ではあっても、やはり社会保障の一環だというふうに考えます。
  86. 浅井美幸

    ○浅井委員 そこは私とあなたと基本的に全然考え方が違うように思うのです。あなたは、保険主義だということではない、保障制度なんだというお答えでした。それではなぜ国がもっと財政的にめんどうを見ないのですか。あくまでも保険という立場をとっておるから、相互扶助ということばが出てくるのでしょう。あなた方が保険主義をとるから、相互扶助ということは、あるいは受益者負担ということばになってくるのです。  ひとしく国民の健康と生命を守るという立場に立った憲法の基本にのっとってくるならば、国の責任においてそれを実施しなければならないのが、現在の要求をされておる医療制度なんです。この社会保障制度の一環としては、医療制度の中において、それらの責任は全部政府が負わなければならない。保険によって相互扶助だというので国民に肩がわりされるものではないと思うのです。一切の者が平等に給付される、その国民としての立場に立って私はいま申し上げているわけです。  あなたは、いわゆる公害とか社会の要因によって起こった疾病は、国がめんどうを見るけれども、個人において起こった疾病は個人がめんどうを見るのだという考え方、ここに私は食い違いがあると思うのです。そこに一貫した医療保障の体制に厚生省はまだ踏み切っていない、厚生大臣は踏み切っていない、そういう考え方が端的にあらわれているじゃないですか。
  87. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はいまの医療保険制度はやはり政府が責任をもって保険制度を法律でつくり、これを施行していると思う。これを全部国費でやるかどうかということはまた別問題で、財源をどう出すかということ、全部税金でやるか、それならもう保険じゃございません。あるいは保険税という形でやるか、保険料という形でやるか、それに国庫負担とか、あるいは補助というものをどの程度やるか、これは別問題であって、いずれにしても政府が責任をもっているからこそ、いまの抜本改正も政府の責任だ、なぜやらないかと責められて、そのとおりでございますと言っておるのです。これは政府の大きな国政だと私は思っております。  問題は、いわゆる相互扶助の保険でいくか、全部公費負担でいくか、全部税金でまかなうか、あるいは医療国営でやるかという手段のやり方であって、国民の健康保持という点で完全を期するための一つの手段としては、いろいろな方法があるだろうと私は思います。いままでのいきさつと今日の状況から考えまして、先ほど申しますように、やはり相互扶助による医療保険というものをあるべき姿に育てていくというのが政府の責任ではなかろうか、かように考えております。
  88. 浅井美幸

    ○浅井委員 そこに私は問題があると思うのです。私は、いまの保険料を全部皆無にしろという極端な議論を持つものではない。しかしながら、政府の責任において解決するから法律の改正をやる。法律の改正をやるというのは、一体政府がどれだけの責任を持ったかということなんです。法律の改正というのは、都合よく国民に負担を増大させるという法律の改正だけではないですか。政府は責任をもって何をしたのかということなんです。そこに戻りますよ、あなた。政府の責任において行なわれておるところの政管健保です。それが、政府が何にもしないで、そうして国民だけに負担を強要しておるのが今回の法律の改正案の趣旨じゃないですか。ですから、そこに問題があるんだ。医療保障という立場に立てば、その保険主義という、相互扶助という立場を捨てていかなければならない。捨てようとしないから、法改正だけで国民に負担をさせるんじゃないですか。私は、限度の問題だと申し上げたいわけですけれども、その限界、あなた方の片寄っておる限界は保険主義のほうの限界になっている考え方に立っているから、もっと医療保障という立場に立てということを言っているわけです。  私は、全面的に保険をやめろと言っているんではない。また保険料を全部やめて、税金で肩がわりしろと言っているんではない。そんな暴論を私たち公明党は持っておりません。しかしながら、あなた方の考え方は常に、保険なんだから、その出てきた赤字の対策としては保険料を値上げすれば、それで解決するんだという考え方じゃないですか。それではあくまでも保険主義じゃないですかと私は言っているわけです。このあなた方の見解と、医療保障だと叫んでおる国民の声との懸隔に大きな問題がある。その立場に厚生省はいつ立つのかと私は言うんです。医療保障の充実だ、保障制度に立つんだと言いながら、いつまでたっても保険主義にこだわって保険主義を貫いてきているのではないかと私は言いたい。どうなんですか。
  89. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 どうもそこのところがわからないのですが、今度の場合も、ただ保険料引き上げだけに終始しているわけではなくて、いままでの二千億に余る赤字はたな上げをして、これは一般会計から出す。一般会計といっても、これはやはり国民の負担でありますが、いままで定額補助であったのを定率補助に直して、五%の定率補助をいたします。政府もやるべきところはやる。その出し方は足るか足らぬか、これは御議論がありましょうが、しかも私は政府管掌だから政府の責任だ、組合管掌だから、これは組合の責任だというているわけにはまいりません。組合の保険であっても、そういう制度をつくって、そうして保険組合をつくらしてやっている。それがうまくやっていける。もしいけなければ何とかしなければならぬ。そこに政府の責任もあるわけであります。  いま医療費が上がってまいった。これは人件費や物件費も上がってきますから、医療費も上がってくるのは当然であります。組合健保のほうは保険料収入も多いし、したがって同じように保険料も上げていかなければならない組合が、私は相当多いだろうと思います。それには政府は補助金を出さなくても、まだ組合は保険料収入が多いから、千分の五十平均くらいで大体やっておれる。政管のほうは千分の七十も出さなければならない。これはその保険の内容の体質が違うものですから、そういうことになるわけでありますが、あまりに高い保険料ということになるところには、国の補助金も出したらよかろうというので、補助金も、いままでの二百二十五億の定額補助を五%の定率補助に直そうというわけでございます。ただ単に被保険者保険料をふやすということだけに終始しているわけではございません。この補助金が多い少ないによって、政府のその責任の果たし方が多い少ないということはいかがなものであろうか、これは、議論としては私はさように思います。
  90. 浅井美幸

    ○浅井委員 政管健保の赤字という問題は、大臣いろいろ言われております。その責任といいますか、そのよってきたる原因というのは、私は政府と医療供給側と受診者の国民と、この三つにあると思うのですよ。その辺のところについて、その三つの責任を、政府は今回二千億の一般会計からのたな上げをしたから、私は政府の責任において果たしました。じゃ、国民が悪いのか医師会が悪いのか、一体この問題は、どこに赤字の原因があるのですか。最大の原因者は一体だれなんですか。私はそこを聞きたいわけです。  政府は、二千億を一般会計から補てんをしてたな上げにしたから、それで責任はのがれるのですか。どうでしょうか。
  91. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは結局、先ほど申しますように物件費、人件費が上がってくる。そうすれば診療報酬も改定して上げていかなければならない。診療提供者側だけにいままでどおりの診療報酬でやれというわけにはまいらない。これは物価が上がってくるので同じことです。同時に、医療の進歩等によって、あるいは疾病の変化等によって多額の医療費を要するということになってもまいる。また疾病も、罹病率も多くなってくる。だんだんと人口の老齢化によって中高年者の人たちの疾病もふえてくるというようなことから、治療費もかさんでくる。治療費をかさませたのはだれの責任だ、一言で言えば政府の責任だから、それは全部政府で持てという議論も立つかもしれませんが、物価その他が上がってきて、そしてこれらの上がってきただけは全部政府で持てといっても、これは実は持てないわけですから、保険がなければ個人が負担をしなければならぬわけであります。  そこである程度保険料も上がってくるのはやむを得ない。いま問題になってはおりませんけれども、組合健保の保険料も上がってくるわけなんです。上がってこなければやれない。それよりももっと、いわゆる賃金のベースアップが医療費の改定よりも上回って、そして収入が支出よりも上回るというところでは、保険料の値上げは必要がないと思いますが、そうでないものは、いままでよりも保険料を上げてこなければならない。それは政府管掌であろうと組合管掌であろうと同様だと思います。ただ政府管掌は組合管掌に比べて、先ほどからも申し上げておるように、標準賃金も非常に低い者の集まりである。疾病率も高い者の集まりである。だから保険料は組合管掌に比べて、平均すれば非常に高くなる。そういう者をかかえておりますから政府も一部国庫補助をする、こういうことでございますので、これは十分おわかりの上の御質問だと思いますが、さように考えておるわけでございます。
  92. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから私は言いたいわけなんですよ。あなた自身があくまでも保険主義の上に立っていらっしゃるから、そういう答えが出てくるのです。医療保障という一貫した態度に立つならば、政府が一切のめんどうを見なければならぬわけですよ。それを物価が上がりました、医療の近代化が進みました、受診者がふえました、これは一体何ですか。物価が上がることは、あなた方、総理府の統計を見たってわかっておるわけです。年々物価は上がるのです。物価が上がったら保険料を上げるのだ、保険主義じゃないですか。保障制度じゃないじゃないですか。医療の近代化が進む、こんなことははっきりわかっておることじゃないですか。それらも推測して抜本改正というものを立てる、六年前から言っておることじゃないですか。あなた方の議論というものは、あくまでも社会保険ということをたてまえにしておるから、そういう答弁が出てくる。物価が上がろうが、あるいは医療の近代化が進もうが、老齢化が進もうが、これを一切めんどう見てあげましょうというのが医療保障じゃないですか。  老人医療の問題もあとで伺いたいと思っておりますけれども、そういう実態というものを把握をして、将来計画の上に、ビジョンの上に立った抜本改正が必要だということが四十二年からいわれているんじゃないですか。それをやろうとしない政府の怠慢、そして今回また保険という立場に立って、物価が上がりましたから値上げをしてくださいという立場は、これは保険主義じゃないといえるのですか、どうなんです。
  93. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 保険主義の考え方でございますが、いま政府のとっている、あるいは日本の現行法の医療保険は、先ほど申しましたような考え方に立って、個人の負担するものをお互いに助け合って保険をしようという考え方でありますから、したがって個人の保険料というものがもとで、保険料を出し合ってというのがもとになっているわけであります。そういうふうにして保険料、が集まる。その保険がいかぬということであれば、これは考え方の相違だといわざるを得ないと思います。
  94. 浅井美幸

    ○浅井委員 佐藤内閣は、福祉なくして成長はないといっているのですよ。ことしの昭和四十七年度の予算は福祉予算だといっておるのです。一体どこに福祉があるのですか。どこに医療保障があるのですか。それがないのです。あなたいま言ったように、保険経済主義に立っておるじゃないですか。口先だけで医療保障だ、社会保障制度充実だということを言っておる。ところが医療保障なんというものは、全然考えていないし、まだその緒にもついていない。単なる保険の財政的な赤字を何とか解消しようというだけの糊塗策じゃないですか。あなた方は、口ではりっぱなことをおっしゃる。国民の医療の実態というものは、あなた方が考えておる以上にもっともっと深刻です。その立場に立っての行政をするのがほんとうの厚生行政じゃないですか。  私は、ここで大蔵省に聞きたいのです。定率補助五%は満足な数字ですか。社会福祉国家にふさわしい医療保険に対するところの補助は、今回きめた五%で十分ですか。
  95. 渡部周治

    渡部説明員 医療保障の立場に立って、今回の政管健保に対する国庫補助率が適正な率かどうかという御質問でございますが、これは考え方の基準によりまして、いろいろの評価のしかたがあろうかと存じます。  そこでわれわれとしましては、今回の措置の根拠を申し上げる以外に答えようがないわけでございますけれども、財政当局といたしましては、従来から社会保険につきましては、保険という立場で保険集団の自主的努力でもって、その給付金をまかなうというのが本来の筋道だと考えておるわけでございますが、中小企業の従業員を対象としております政管健保におきましては、その被保険者実情等からいたしまして、最近保険財政が非常に悪化してきておる。このまま保険集団だけの努力にまかしておきますると、わが国の社会保険の中核を占めまする政管健保の財政が破綻するおそれがある。これは非常にゆゆしき問題であるということで、そういう意味で今回の財政対策につきましては、国といたしましても、その政管健保の財政の危機を救うために応分の負担をすべきである、そういう意味で、従来の定額補助を定率補助に切りかえた。これは従来の定額補助でございますると、予算の範囲内で据え置かれるわけでございますが、今回の定率補助によりますると、給付費が伸びれば、自動的に国庫補助額がふえるということになるわけでございまして、結果的には金額は従来の二百二十五億から三百七十三億というふうに国庫補助額の増額をいたしておるわけでございます。さらに先ほどお話も出ましたような、本来ならば累積損失はその被保険者によって解消をしていただくのが保険のたてまえでございまするけれども、先ほど来、言いましたような政管健保の財政状況にかんがみまして、これを特に保険負担の外にはずしまして、全額税金財源から見るという措置を新たに講じた次第でございます。
  96. 浅井美幸

    ○浅井委員 私の聞いたのは、あなたにそんなことを聞いたのではない。福祉国家予算としての医療保障という保障制度の立場で、いまの予算は十分なのかということを聞いたのです。あなたはいみじくもいまおっしゃった。保険だから保険相互の間で解消してもらうのだ。けれども、諸事情によって財政補助をするのだと言ったじゃないですか。これは大臣、明らかに大蔵省は保険経済主義をとっておるじゃないですか。あなたはさっきから社会保障の一環として医療保障を考えると言っておるけれども、大蔵省自身は保険主義をとっておるじゃないですか。
  97. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そういう意味において、これは保険主義だとおっしゃるなら、保険主義でございます、保険ですから。
  98. 渡部周治

    渡部説明員 問題は医療保障の財源をどういうかっこうで調達するかということであろうかと思います。国庫の補助といいましても、これはいわば国が別なところから出すわけじゃございませんで、いわゆる国民の税金から出すわけでございます。したがいまして、これを税金というかっこうで財源を調達するか、保険料というかっこうで財源を調達するかという手段の問題でございまして、いずれにおいても国民の負担であることは変わりがないわけでございます。  そこで、このやり方につきましては、もちろんいろいろなやり方がありまして、各国におきましてもそれぞれのやり方があるようでございます。わが国の場合は沿革的に保険というかっこう医療保障を形成してきておるということがございますので、保険料というものでもって財源を調達するということが従来のあり方であったわけでございます。ただ今回の措置におきましては、その保険だけの努力では政管健保の財政が破綻に瀕するおそれがあるということで、いわゆる税金財源からの充当も従来以上にふやした、こういうことでございます。
  99. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は十分であるか十分でないかということを率直に、具体的に聞いているのです。福祉国家の予算として医療保障の体制をとっていく、そのいまの五%の定率補助というものは十分なのか、それとも十分でないのか、大蔵省としてはどう考えているのかということを聞いているのです。  四次防予算には四兆八千億円の予算を組むのです。軍国主義国家としての体制はできますけれども、福祉国家の予算としては、政管健保には定率補助は五%しか出せないという考え方、それがはたして社会保障国家を目ざすわが国として十分なのかと聞いている。十分か不十分かだけの返事をすればいいのです。
  100. 渡部周治

    渡部説明員 十分、不十分という判断はなかなかむずかしいわけでございますが、われわれといたしましては、この原案でもってお願いをしておるわけでございますから、五%が適当であるというふうに考えた次第でございます。
  101. 浅井美幸

    ○浅井委員 そんなものは不十分というのです。十分とは言えないのです。  厚生大臣、いまあなたはそういう意味ならば保険主義だとおっしゃった。重要な問題ですよ。そういう意味意味合いもなくて、保険主義の上に立っておるじゃないですか。政管健保内におけるところの赤字は、政管健保内において解消していくのだという考え方、これがいまの佐藤内閣の一貫した姿勢じゃないですか。それを口先だけで福祉国家を目ざしているのだ、あるいはまた社会保障の体制を充実しようとしているのだということを私は言わないでもらいたいと思うのです。国民を欺くのもはなはだしいと思う。  そこで私はお聞きしたいのですけれども、政管健保の収支が破綻しておるほんとうの原因は、一体何なんですか。昭和三十七年来、そういうことはいろいろいわれてきて、十年の歳月がたっています。ほんとうの原因というものは追及されていません。私はそう言いたい。もし原因がわかったならば、それに政府は当然対策をとっていらっしゃるはずだと私は思う。一体政管健保の赤字の原因はどこにあるのだ、またその対策を講ずるのにはどうしたらいいのか、こうやれば財政の安定ができるのだということを明確にお答えください。
  102. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政管健保の赤字は、御承知のように、先ほども申し上げておりますように、医療費のいわゆる給付費をまかなうのに、いまの保険料収入では足りなくなってきつつある。なぜかといえば、医療費のアップ率に標準報酬のアップ率が伴わないというところにあるのです。
  103. 浅井美幸

    ○浅井委員 それが原因ですか。
  104. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 それが一番大きな原因でございます。なぜか。先ほども他の委員にお答えをいたしましたが、政管健保には大体疾病率の高いものが多い、年齢層も高い、また女も多い、そこで疾病率も高い。また被保険者の給料所得は一般に低い、そのベースアップ率も一般に低いというところから、赤字がいつも生じやすいという状況にあるわけであります。
  105. 浅井美幸

    ○浅井委員 そんな抽象的な原因で解決するはずはない。伸びてきた伸びてきたといったって、医療の近代化でいわゆる給付費が伸びてきたというのならば、政管の都道府県別の、年度別の一人当たりの医療給付費順位は、奈良が昭和四十五年度において一人当たりの金額は五万四千九百四十九円、東京は二万八千五百二十二円、どういう原因でこの差があるのですか。私は一例をあげているのです。あなたのいまの答弁は、抽象的でわからぬ。  給付費が伸びたというのは、一体どの辺が伸びているのですか。なぜ一人当たりの給付費が府県別によってこんなに違うのですか。京都や奈良は医療の近代化が進んで、合理的な、あるいは高度な技術を供給しているということをいうのですか。東京は高度な技術や、あるいは医学を持ってやっていないというのですか。この格差はなぜ一体出てくるのですか、お答え願いたいと思います。
  106. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 詳細は政府委員からお答えをさせますが、これは政管健保の中においてそういう差があるだけでなくて、組合健保の中にも、あるいは国保の中においても、府県間の相違というのは大体いまおっしゃるような相違があるわけであります。
  107. 浅井美幸

    ○浅井委員 その原因は何なんですか。一体格差の出ている原因は何なんですか。
  108. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その原因は、いまおっしゃるような、あるいは医療施設が多いところでは病院あるいは診療所に行く人が多いというようなことが一番の原因であろうかと考えます。
  109. 浅井美幸

    ○浅井委員 一人当たりの金額ですよ。総医療費を私は言っているのじゃないのですよ。昭和四十五年度において、奈良県は一人当たりの金額は五万四千九百四十九円、東京においては一人当たりが二万八千五百二十二円、病院に行く人の数が多いとか少ないとかいう問題じゃないのです。総医療費じゃないですか。この格差は、なぜできているのですかと聞いているのです。
  110. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 一人当たりの金額はほとんど変わりがございません。その同じ一人が十日間行く人もあれば、あるいは五日間行く人もある、あるいは診療機関が多ければよけいかかりやすいというわけですから、その点はそういったようなことで変わってくるわけでございます。一人の一日当たりの診療費はどうかということになると、これはほとんど変わりはございません。
  111. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 一人当たりの府県間の金額は、いま先生が御指摘になりましたように、奈良が一番高くて、東京が一番低いわけでございます。それで一人当たりの医療給付費は、普通私どもは三要素といっているわけですけれども、三つの要素に分解して考えるわけでございまして、一つが一日当たりの金額でございます。それから一つが一件当たりの日数でございます。もう一つが受診率でございます。それでこの三つの要素がかけ合わさって、結局一人当たりの金額が出るわけでございますけれども、たとえば一日当たりの金額が高いけれども、受診率が低いという地域もあるわけでございます。それから逆に一日当たりの金額は低いけれども、受診率は高いというところもありまして、この三つの要素がかけ合わされるために、かりに一日当たりの金額が高いところでも、いろいろな現象が出てくるということがあり得るわけでございます。  しからば、その受診率がなぜ高いか、あるいは一件当たりの日数がなぜ長いか、あるいはまた一日当たりの金額がなぜ高いのかという分析になりますと、これはいつもおしかりを受けるわけでございますけれども、私どももこれの解明にいろいろ努力しているつもりでありますが、なかなかわからない。たとえば医療機関の数が受診率あるいは一日当たりの金額に影響をするのだというようなこともよくいわれておりますけれども、そういったような現象も否定できないところもございますが、それではなぜ医療機関が多いところに、それがそう影響を与えたのかという因果関係になりますと、私どもとしては、そこがまだ究明のできていないところであります。  したがって、一人当たりの医療費の格差というものがなぜ出るかというときに、その一番もとの要素の因果関係というものがなかなか解明できないために、いまだにその原因をつかみかねている、あるいは生活程度が高いというのもかかわりがあるかもしれません。あるいは交通事情が便利であるというような要素もあり得ると思いますが、それらのものが、どう因果関係としてつながっていくかということは、まだ私どもとしても解明しきっていないわけでございまして、これは今後私どもとしても、あらゆる資料なり、あるいは知恵をしぼって解明していかなければならない問題だと思います。
  112. 浅井美幸

    ○浅井委員 局長の答弁は正直でよろしい。原因が解明できないと言った。こういうものがあって、私はなぜ赤字が出るのかと聞いても、あなたさっきお答えになったけれども、原因がわかっているようなことをおっしゃった。ほんとうの赤字の原因なんというものは、いろいろたくさんあるはずなんです、要素が。そのたくさんのファクターの中において赤字が積み重なってきておるのです。それも解明もしないで、解明できないで、保険料だけ上げれば、財政援助をちょっとすれば解決する問題ではないということを、私たちは前々から指摘しているじゃないですか。これはほんの一例です。診療報酬請求制度の中にもいろいろ問題があるでしょう、医師会の中にも問題があるでしょう、薬剤費の問題も一ぱいあるでしょう、それが原因じゃないか。あなたそういうことは一つもおっしゃらない。医療の近代化が進んだ、老齢化が進んだ、掛け金が少ないから、低いから、だからこういう赤字が出てきたんですといわんばかりじゃないですか。これらをほんとうにいま解明できないところに、ほんとうの保険財政の赤字があるんじゃないですか、どうなんですか。
  113. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの府県間あるいは地域間の相違というものが、政管健保の中にあるだけじゃないということを私は申し上げた。(浅井委員「あるんでしょうが」と呼ぶ)だから政管健保の中にもあれば、組合健保の中にもあれば、あるいは国保の中にもある、その地域差というものが。その地域差はなぜ起こるかというと、これは数字的に、たとえば医療機関の数と、こういうように比例をいたしますとか、あるいは交通状態と、こう比例いたしますとか——数字的にはなかなか交通状態というものとの関連を出すことは非常にむずかしい。医療機関の数あるいは医師というものの数は若干わかりますが、それが何%影響しているかということは、数字的にはなかなかむずかしいということを事務当局が言っておるわけであります。  それから生活程度の問題もございます。東北地方はおそらく医療機関も少ない、あるいは交通が不便だというようなことから、医者にかかる機会が他の地方に比べて少ないということもいえるわけであります。これは何も政管の中にある原因だけではない、こう申し上げておるわけであります。  政管と他の保険との一番違うところはどこだというと、先ほど私が申し上げた点が一番顕著である、そのためにいつも政管は赤字に悩まされているということを申し上げたわけであります。
  114. 浅井美幸

    ○浅井委員 それは私はわかっておるのです。あなた、たしか給付の平等や負担の平等ということをおっしゃった。これが給付の平等ですか。これは純然たる格差じゃないですか。ですから給付の平等や、あるいは負担の平等をはからなければならない。医療制度というものに手をつけない。これにしたって私は赤字の原因は完全にあると思うのです。これは全然赤字の原因になりませんか。どのような事情があったにせよ、一人当たりの給付費が倍も違うということ自身はおかしいじゃないですか。不平等じゃないですか。  じゃ、なぜ東京都と同じように奈良が二万八千五百二十二円の一人当たりの給付費にならないのか私は聞きたいのです。なぜならないのです。なぜそこに倍になるような原因があるのです。東京と同じ給付費でいいじゃないですか。そうしたら、健康保険の財政というのは、もっと助かるじゃないですか、それはどうなんですか。
  115. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは給付費を総額で何ぼというように制限をするわけにはまいらない。やはり医者にかかれば、かかったその給付だけは支払ってやるというのが制度でございますから、これはやむを得ないと思います。比較的にいえば東京にいる勤労者の人たちは疾病率も低いということもいえるわけでございましょう。地域的な不均衡をどうするのかというのは、またこれは別の問題であって、私の申し上げるのは、同じ東京都内において医療供給の状況のもとにおいて、同じ府県のもとにおいて、保険集団が違うからといって給付が違い、保険料率が違うというのは、これは明瞭に不公平じゃないか、まずそれを直そうというのが抜本改正のいまの入り口でございます。  地域間のそういった医療事情によって違ってくるものをどうするかというのは、これは次にくる問題であって、そこまで地域的に公平を見なければならないかどうかということは、次にまた検討しなければならない問題だ、かように考えます。
  116. 浅井美幸

    ○浅井委員 地域的な問題は検討しなければならないけれども、局長のほうではその原因がまだ解明できていないのです。検討できないはずなのです。そうですね。ですから、こういう明らかな格差がある問題が、これは一例なんだといって、私はそれらの原因が全部解明されなければ、あるいは解決していかなければならないのじゃないかと申し上げる。ただ単純な原因において政管健保の赤字ができているのではないことは私も十分知っておるのです。私もかつて医療に従事してきた立場なのです。ですから、このことについてはよくわかっておるのです。それらの問題を抜本解決しないで、これだけのいわゆる当面の問題としての赤字対策の財政対策では、まだ赤字が重なりますぞと、そしてこれは国民に負担をしいるものですぞということを私は言っておるわけなのです。おわかりでしょうか。  時間がないので私は次に進めますけれども、今回の政府の提出法案がいかに財政調整に終始しているかは、私はいままでも述べましたが、各論にわたって申し上げたいのですけれども、まず第一に国公立の病院です。  公的病院を地域的、機能的にその役割りを再編し、計画的にその整備を行なうということは、これはいろいろな委員から言われております。     〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 したがって、この公的病院の整備について加えられている不合理な制度、いわゆる公的医療機関の病床規制、法律でベッドの規制があります。これについては私は撤廃すべきじゃないかと思いますけれども、どうでしょう。
  117. 松尾正雄

    松尾政府委員 医療法にございます、ただいま御指摘の公的医療機関の病床規制、これは御承知のとおり三十九年から国会の御提案によって生まれたものでございます。当時の趣旨といたしましては、公共的なそういう資金というものが特定の地域だけに集中するというようなむだはやはり排除しなければいけない、こういうことが趣旨でこういうことが生まれたものと私は聞いております。  ただ、これを数年にわたって運用してまいっているわけでございますけれども、あのきめ方、たとえば保健所単位を一つの地域とするようなものの考え方だとか、あるいは単に人口幾らについて何ベッドというような基準といいましょうか、そういう問題、あるいは、はたして医療機関の機能自体がいわゆるベッド数だけで議論していいのかどうかというような、いろいろな問題が途中で出てまいっているわけでございます。     〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、そういうようないろいろな社会事情の変化というものを考えれば、これはせっかく生まれたものではございますけれども、当然やはり時期を見て検討すべき問題だというように私どもは考えております。そういったような問題をどういうふうに織り込むかは、これからの大事な問題でございますけれども、私どもはやはり一つの地域地域において医療機関というものの整備、お互いの機能の合理化提携ということがはかられなければならない、そういう一つの大きなプランの中でこれが消火されるようなことが最も望ましい方向であるというように考えておりますが、いずれにいたしましても、従来のままの姿というものをこのままで通していいかどうかは、私どもは十分検討を要する問題だというふうに考えております。
  118. 浅井美幸

    ○浅井委員 大臣、いま検討さるべき問題だという答弁でした。公的医療機関のベッドの規制というのは、いまの実情にそぐわない、いわゆる入院患者の希望に比してベッドは非常に少ない、あるいは差額ベッドやいろいろな問題で入院患者が非常に迷惑をしておるわけです。こういう規制は現状に合わないという立場から早急に撤廃を、私は政府の責任において——きょうでもできるんです。いつごろおやりになる予定ですか、大臣
  119. 松尾正雄

    松尾政府委員 私は、先ほどちょっと申し上げておりましたけれども、やはり地域的な医療供給体制の取り組みというスケジュールは、これは一応基本法を考える段階では、その中に織り込んでいきたいと考えております。したがいまして、そういったような運びの中で実は清化すべきではないか、こういうことでございます。  なお、若干つけ加えますと、確かに公的病床についての規制はあるわけでございますが、しかし、特定公的病院としていま期待されておるところの、たとえばガンの病床でございますとか、あるいは救急、あるいは各種の特殊な病院対策、あるいは精神対策といったようなものについては、かりにその地域において基準値を全体の病床がこえておりましても、要するに満タンであっても、そういうものについては頭を出してもいいという特例の方法を認めております。そういうところで運用上は、いわば公的機関に期待されているような機能を、そういう面で伸ばしたいというふうに運んでおりますけれども、そういったことだけでは、やはり不十分な面もあるので、私は、時期としては、基本法ができて、それが実行される段階で初めて考えるべきだと思います。
  120. 浅井美幸

    ○浅井委員 基本法はなかなかできそうもないのですけれども、早急に実施してもらいたいと思います。  それから、次の問題ですけれども、医者の問題です。医者に対する国民の不信が非常に強いのです。医業は本来営利を目的とするものでは私はないと思うのです。医療の公共性あるいは非営利の原則と、医師その他医療従事者の職責の協調がほんとうにされなければならないと私は思うのです。  ことしの第十八回日本医学会総会で掲げられた「医の倫理」というスローガンですね。これは単に医学界の指導者たちだけの問題ではないと思うのです。  昨年ですか、保険医総辞退という不祥事が起こりました。国民は安心して医療の供給を受けられないという立場に追い込まれたわけです。こういうことに対して政府は何ら政策を講じない、こういう強い批判があります。ですから、それらの姿勢が、私は国民不在の政治だといわれる一つのゆえんだと思うのですよ。  医者やあるいは医療従事者に対して、その職責、機能に応じて公正な処遇が与えられること、これは私も何ら異存はございませんけれども、いわゆる自由開業医制であるところの今日、国民には皆保険を強要し、医療供給側であるところの医師のほうには自由開業制であって、保険医にならなくてもよろしい、こういう矛盾した論理がいま現実にありますけれども、こういう保険医に対する義務化というもの、医者たるものは全部保険医にならなければならないという強い義務化をはかって、医療制度の大きな前進をはからなければならないというのが、私たちの考え方ですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  121. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 医師はすべて保険医たるべしというのも、これは一つの行き方だろうというふうに考えますが、日本の保険制度は、御承知のように保険医になるかならないかは医師の自由というところから出発してきて、今日の運用を見ているわけでありまして、これで非常な支障がある、かまうに思いませんし、医師、歯科医師は全部保険医たれ、医療機関は全部保険機関たれというように義務づけをしなくても、まあ今日うまく運用をされておる、かように考えますので、いま直ちに義務制にしようという考えは持っておりません。
  122. 浅井美幸

    ○浅井委員 医療の公共性という問題について、あなた考えているのですか。不平等じゃないですか。国民の側は皆保険じゃないですか。義務化じゃないですか。じゃ、保険も任意制にしたら、どうなんですか。そういうあなたの論法ならば、保険のほうは義務化にしておいて、受診折側のほうは拘束しておいて、診療側のほうは自由にしておくというのは不平等じゃないですか、公共の原則に反しませんか。
  123. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、これで保険医療の提供が行なえているという現状においては、義務制にしなくても不平等じゃない、かように思います。
  124. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから、あなた自身の考え方が変則なんですよ。保険医総辞退といったら、どうなんですか。そのときに、あなたは、どれだけの政府としての強い態度において国母医療供給の体制を整えることができるのですか。国民は義務化じゃないですか。皆保険じゃないですか。供給側はなぜ全部入れぬのか、問題ですよ。いい医師に見てもらいたい。その医師が、おれは保険医じゃないから保険はお断わりですよ、そのときには機会均等じゃないじゃないですか。医療保険というのは機会均等にということがほんとうのたえまえじゃないのですか。不平等でないとあなたはおっしゃるのですか。平等だとおっしゃるのですか。
  125. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これをやはり義務制にするということは、せっかくこうして自由診療制で出発してきているものを、いま特に理論上不平等であるからということで、この制度を変えることはいかがなものであろう。私が先ほど申し上げたとおりでございます。
  126. 浅井美幸

    ○浅井委員 これでは抜本改正はできませんぞ、あなた。社会保障制度審議会の答申によっても、「保険者や被保険者は制度上強制的にその位置づけがなされているのに、医師や歯科医師の立場については、完全に近い自由が与えられていることがある。少なくとも、医師や歯科医師の発意を基として、医療保険制度への参加又は不参加が決められる建前であることとのバランスからみて、この制度から離脱する場合の仕組みに被保険者の立場からみて、より現実に即した規制が考えられるべきだったと指摘されているのはこの点である。」あなた、一体答申を尊重しようという考え方をお持ちなのか、お持ちでないのか。それでは、あなた、答申を全然尊重しないという——今回の政府案自身も答申を無視したといって、両審議会はおこっているじゃないですか。それといまあなた、同じじゃないですか。  せっかく前向きに内閣にあるいは厚生省に設けた審議会の意見なんて全然無視して、よそ向いているじゃないですか。この答申は、これは全然関係がないのですか。
  127. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、先ほどから申しておりますように、これはいま突如として義務制にするかどうかという問題が起こってきたわけではございません。保険制度が始まって何十年、皆保険になって十数年、いままでの義務制でない保険医制度でやられてきているわけでありますから、これをいま変更しようという考えは持たない、その点は、審議会でそういう御意見があっても、いま直ちに従うわけにはまいらないというのが政府の見解でございます。
  128. 浅井美幸

    ○浅井委員 まあ平行論議か知りませんけれども、あなたのそういう考え方では、ほんとうに日本の将来の医療制度の抜本改正というものは危ぶまれます。私は、あなた自身に対して非常に尊敬もしてきたけれども、そんな考え方厚生大臣が持っているのでは、質問するのがほんとうにいやになった。若干あと残っているのですけれども、誠意ある答弁をしてもらいたいと思いますよ。再度要望しておきます。  医薬分業の問題ですけれども、これは従前からいろいろの角度から叫ばれてきております。今日までそれが、医薬分業ができなかった理由、そしてその反省の上に立って、いつまでに完ぺきな医薬分業を行なおうとしておるのか、これをお答え願いたいと思います。
  129. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いままでできなかった理由の大きな一つ原因は、受け入れ体制が十分でなかったということ、それからまた医師は医薬分業をしたくないというような関係というものから今日までだらだらきた、かように思います。  そこで、受け入れ体制を至急に整備をしてもらって、そうして医薬分業の実施を促進をいたしたい、かように考えまして、やはりこれは日限を切ったほうがよかろう、かように考えて、いま提案をいたしたいと考えております。抜本改正の中で地域を指定して、そして時日を限って医薬分業を推進をするというような方法でいきたい、そういう方向で薬局の整備も急速にはかってまいりたい、かように考えております。
  130. 浅井美幸

    ○浅井委員 医薬分業も早急に実施しろというのが、いまや大きな声でございます。私は早急に実施していただきたいと思います。これは要望しておきます。  次に、老人医療ですけれども、四十八年一月から実施が予定されている老人医療は、若干前進しました。しかし、その中身は、また非常に問題になっております。年齢制限、所得制限、これらは私は撤廃あるいはまた緩和をしていかなければならない問題だと思います。七十歳は、当然もう六十五歳あるいは六十歳までに引き下げなければならぬと思う。四十八年一月に七十歳以上を、一歩というあなた方のお答えでありますけれども、その次の段階に、六十五歳、所得制限の緩和、これをいつおやりになるのですか。
  131. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 所得制限はできるだけ、ことに扶養者の所得制限というものは撤廃をいたしたいと思いますし、本人の所得制限ももう少し上のほうへ上げたほうが適当であろう、かように考えております。  年齢の問題は、いまやっと出発をしかけたところでございますから、いろいろ御議論はございますが、七十歳で出発をしてみまして、そしてその経過を見た上で善処をいたしたい、かように考えております。
  132. 浅井美幸

    ○浅井委員 まだまだ残っておるわけですけれども、私たちの考え方とあわせてお答え願いたいのです。  いわゆる福祉国家というか、新憲法がつくられてから約三十年、いま政府でやっていることは、常に政管健保の赤字対策というものに終始しているわけです。私どもはかねてから医療制度の確立ということでいろいろと言っておりますし、医療保障に対するいろいろな提言をしてきております。この際、ほんとうに政府が抜本改正をして、そしてこういう審議をやって、国民に医療に対する非常に強い安心感を与えることが一日も早い緊急課題だと私は思うのです。この抜本対策をやって、既存の保険制度を一元的に再編成をする。まず職域保険と地域保険に分ける、そしてそれも統合していく、いわゆる機会均等というか、一切のものを平等という立場に立ってのこういう制度に一日も早くしなければならぬと私は思うのです。  ですから、国民の負担の能力に応じた公平な保険料負担のもとに平等、完全な給付が行なわれるような抜本改正、これを直ちに着手すべきだと私は思うのです。そういう意味におけるところの財政調整ならば、私たちは賛成したいと思う。しかしながら、今回の財政調整という問題については、あまりにも国民負担だけにしわ寄せしているから、私たちは強くこれに反発しておるわけですが、このことについての考え方はどうなんですか。将来計画……。
  133. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 将来計画におきましては、ただいま浅井委員のおっしゃるのと私も完全に一致でございます。ぜひそういうように持ってまいりたい。今度の抜本改正は、おそらくそれにはまだほど遠いとおっしゃると思いますけれども、あれを一里塚として出発をするというようにおとりをいただきたいと思います。将来の目標はいまおっしゃいますような、そういう方向にぜひ医療保険を持っていくべきである、かように考えております。
  134. 浅井美幸

    ○浅井委員 二分の一財政調整とかいろいろな話が出ておりましたが、あの考え方はどうなっておりますか。
  135. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 あの考え方は、両審議会とも公益委員の方たちは、考え方には賛成である。しかし、周辺を整える必要がある。ことに政管健保の運営の効率化をもっとはかる必要がある。その上でということでございますので、周辺の整備をまずはかり、その上でいたしたいというので、二分の一財政調整というものをしばらく見送りまして、別の高齢者共同事業ということで出発をいたしたい、かように考えております。
  136. 浅井美幸

    ○浅井委員 結論として私は申し上げたい。  いろいろとあなた方も考えてはおられると思いますけれども、私は、厚生省の努力あるいは政府の努力が国民の期待する方向、この方向にすみやかに対策がとられなければならぬと思うのです。したがって、いわゆる抜本改正というあなた方が考えておられるのは、医療の基本法案をつくる、あるいは医療供給体制を整えるための基本法だというふうにおっしゃっておられます。あるいはまた健康保険抜本改正案というものを今度はつくるのだ、その上に立った今度の政府のいわゆる政管健保の修正案なんだ、こういうようにおっしゃっておりますけれども、私はこれは三位一体のものだと思う。三位一体になってこそ、真のわが国の目ざす医療制度の確立ができるのであって、それが一つ一つ切り離された場合、特に今回のように財政調整だけを目的としたような改正というものは、国民は望んでいないと思います。私は、今回この健康保険の審議にあたって痛感することは、やるべきことが逆であると思うのです。したがって、抜本改正という問題をまず基本にした、これをベースにした審議をし、論議をし、これをつくり、しかる上の財政調整でなければ、私は六年間の公約違反の食言であり、また国民に対する医療の供給という責任ある立場に立つ政府としての態度を一貫してとっていないということを私は指摘せざるを得ない。  したがって、私たちは、本国会でこの法案の審議をいたしておりますけれども、私は最後に強く望んでおきたいことは、このような悪法は早急に撤回されて、もう一度新たなる決意をもって抜本改正をこの改正法案とともに——その一環としての中で私は審議をし直していかなければならぬ、そうでなければ、いままでの愚かな、いわゆる財政調整だけに終始した、国民にしわ寄せした、そういう法案の結果になってしまうと思います。私は、厚生大臣がこの保険というものに対して一生懸命やっておられる、こう信じたい。そうならば、私はそのような立場から抜本改正をまず審議をして、しかる上の財政審議をしてもらいたい、このように望んでおきたいと思います。  さらに、いろいろと問題はございますけれども、私は時間があれば、さらにほかの問題に触れたいわけですけれども、もし委員の諸君、あるいは理事の皆さん方、委員長の許可があれば、私は再度この問題について、さらに深くお聞きしたいと思っております。  私の質問は、これで終わりたいと思います。
  137. 森山欽司

    森山委員長 次に、寺前巖君。
  138. 寺前巖

    ○寺前委員 私に与えられている時間は一時間でございますので、問題をしぼってお聞きしたいと思います。でき得れば医療全体との角度で政府管掌健康保険の問題もお聞きしたいところなんですが、時間があればやらせてもらうということにして、私は、さしあたって問題になっている政府管掌健康保険のいわゆる財政赤字対策なるものについて解せない幾つかの点についてのみ聞きたいと思います。  この間も大臣とお話しをしておったときに提起した問題ですが、医療費の中における薬剤費の占める位置というのが非常に高いということは、これは否定することのできない事実だと思うのです。  一般的に見て、昭和三十年時分の医療費の中に占める薬剤費の位置というのは二〇%前後じゃなかったかと思うのです。それが今日四十数%、半数近くまでになってきている。これは国際的に見ても、日本の薬剤費の占めている位置が非常に高いですね、という批判を私もちょいちょい聞くのです。ですから、この薬剤費の問題を避けて保険財政の問題を見ることはできないだろうと思うのです。もちろんこれは財政面だけではなくして、薬の問題は治療上の問題にもかかわることですから、治療上もこれでいいのだろうかという問題もあわせて出てくる内容だと思うのです。  そこで私は、ほんとうに諸外国との関連性において日本の薬剤費が高いのか、従来の歴史的な条件から見て、薬剤費がほんとうに今日高いのか高くないのか、政府はどういう見解を持っておられるのか、この薬剤費の位置についてお聞きしたいと思います。
  139. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 保険診療報酬の中で薬剤費の占める割合は四五%前後だという比率は、私は、これは高いと思います。ただ、これは一つは、本来の医師の技術料、そういったほうの報酬が低過ぎる。だから薬剤と比べると、こうなるのだという議論もあります。その点も私は確かにあると思います。同時に、薬のマージンを得るために無用に薬を使うのじゃないかという声もあることも私は存じております。また事実としてそういうような投薬のしかたをする医療機関が絶無とは申しません、あることは事実です。しかし、すべてがそうかというと、必ずしもそうではないと私は思う。  そこで国際的に見てどうかというと、先ほど申しますように、日本は四割五分というのは高い、かように考えますが、それは他の診療報酬が低いから、割合が高いのかどうかということで、私は試みに日本の国民が一人当たりの年間に使う薬剤費というものを各国と一ぺん比較をしてみろと言うて、いろいろと検討をさせました。  その国でできる薬剤の総額、輸入、輸出、それを差し引いたもの、それを国民一人当たりで割ってみますと、日本人の一人当たりの薬の使用量というものは、必ずしも高くないのであります。日本人は非常に薬好きだといわれておりますが、保険薬も非常にたくさん使うといっておりますけれども、それでもなおかつ、そう高くないというところを見ますると、いわゆる薬の乱用ということは、いわれるほどではないのではないだろうか、これは大まかな見当をつけるためにやってみたわけでありますが、さような結論が出てまいっております。  それから日本の薬そのものは諸外国と比べて高いのかどうかということを検討いたしてみますると、やはり日本の薬価というものは、世界の薬の標準に照らして必ずしも高くない。やはり国際価格というものに順応した価格である、かように考えているわけです。しかしながら先ほどよく言われますように、薬が多用であるというような点は、私は絶無ではない、かように思います。そういう点は十分配慮をして今後監督、指導に当たらなければならない、かように考えております。
  140. 寺前巖

    ○寺前委員 乱用とは言えないとか、いまお話がございました。しかし問題は、日本の総医療費の中に占める薬剤費の位置が四割を占めている、そういう位置というのが国際的に見て高いんじゃないだろうかということは、私は否定できないんじゃないかと思います。それは未開発の国もあれば、諸外国といったっていろいろありますから、われわれが比較する場合には、やはり高度に発達したフランスとかイタリアとかイギリスとかこういう国々と対比してみるときに、われわれの場合はどうだろうか。確かに医療費の中に占める薬剤費の位置というのは四割ないし五割近くまでなってきておる。非常に高いということは言える話だと思うのです。  それでは高いという問題について、乱用でその分が高く使われているという面があるということと、それから単価の面において高いという面があるということと両面にわたって分析をしてみなければならないだろうというふうに思うのです。  私、この間も大臣に指摘をしておきましたけれども、たとえば製薬主要十二社の収益指標というのをこの間調べてみたのです。そうしたら、私がここで感じましたことは、いまの問題と非常に関係するのですけれども、昭和三十年時分には医療費の中に占めるところの薬剤費の位置は二割くらいだった。それがどんどんふえていく。ふえていくのは、やはり両面持っているということが言えるわけです。  たとえば製薬主要十二社の収益指標を読むと、一九六五年のときの売り上げ高純利潤率というのを見ますと、この当時には五・七%、五・五%という数字が上半期、下半期に出ている。ところが、これが一九七〇年代になってくると、六九年度下半期を見ると八・〇%、七〇年度上半期にいくと七・八%というふうに、この製薬主要十二社の純益においての利益率というのがだんだんふえていっているという事実があるのです。そうしてこれに対して、一般の産業のほうはどうなんだろうかというのを見ると、一般の産業のほうは三・三五%前後という数字しか出ていないのです。ですから私は、ここで言えることは、一般の産業における純利益と比較して製薬の主要会社の利益というのは倍の利益をあげてきているということがこの数字の結果から明らかに出てくるんじゃないかと思うのです。  ですから、私はこの医療費の中に占めている薬剤費、この薬剤費の中で製薬会社がもうけているところの利益、これが国民皆保険との関係において、ますます利益をあげてきて、この十年間の間に六倍近くも薬をたくさん生産するようになってきている。この辺の事実を考えてみたときに、これの利益率をどうしても押えるということを考えないことには、何しろ薬剤費の占める位置が保険財政の半分近くになってきているんだから、これはどうしたって私は理解に苦しむ内容である。いま政管健保の医療費はどのぐらいでしょうか。八千億から一兆円近くになってきていると思う。その中の四千億からが薬剤費だ。非常に大きい問題だと私は思うのです。  だから、ここにおいて一般産業から考えて、よその倍の利益を得てきているとするならば、たとえば半分におろしてきたって一般産業と同じ状況になる。まあちょっと冒険的なものの言い方ですけれども、四千億の半分なら二千億にぱんと減らすことができる。まあそうは言わなくたって、二割やそこらのものを押えるということはできるのじゃないだろうか。そうしたら、健保財政の中において薬の分野における利益を押えることによって、赤字財政に対する大きな変化を与えることができるのじゃないだろうか。ここのところに、なぜメスが入らないのだろうか、メスを入れる必要がないと思っていられるのか、メスを入れる必要があると思っていられるのか、見解を聞きたいと思うのです。
  141. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど私は諸外国との比較をやってみたと申しましたのも、これは英、米、独、仏という先進国の薬の使用量を調べてみたわけであります。そういたしますと、一人当たりの薬の使用量は日本は高くない、あまり変わりがないということを申し上げたわけであります。それからまた、それじゃ日本の薬は外国の薬に対して高いのかというと、それもそうではない。やはり薬も国際価格というものできまってくるということを私は申し上げたわけでございます。  いまおっしゃいますのは、製薬会社は非常にもうけがあるじゃないか、こういうお考えでございますが、製薬会社もこれはいま自由企業でお互いに競争し合っているわけでありますから、薬が寡占価格になっている、あるいは独占的な傾向が多いということであれば、これはまあ公取委員会でいわゆる独占禁止法に違反するかどうか、公平な競争を妨げているかどうかという点からいくべきであって、おまえのところは、もうけが多いからという理由だけで、何とか攻める方法はないかとおっしゃっても、日本の自由主義経済、そして価格は自由主義のからくりによってきまっていくというこの立場をとっている以上は、いまおっしゃるように、おまえのところはもうけが多いからどうだというわけにはまいらないと私は思います。  まあ製薬会社も大きな製薬会社は、ひとつ新しい薬を開発しようというためには、やはりよほどの投資もしてまいらなければならないという関係もあり、外国の製薬会社よりも日本の製薬会社のほうが総利潤は多いのかどうかというと、それは必ずしも同じではありますまいが、やはりそういう性格を持ったものではないか。かように考えておりますので、厚生省として価格にまで手を入れるということはいかがなものであろうか、かように考えております。
  142. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、外国の製薬会社はもうけが少ないということを言っているわけじゃございません。同じものだろうと思います。私はいま日本の論議をやっておりますので、あえて外国のことまでは申し上げませんが、日本の場合において保険財政の中で薬剤費の占める位置が明らかに多い。ところが、その多い薬剤費の分野というのは製薬独占にとられていっている。ものすごい利益になっている。そうすると、患者がたくさんできているということを市場にして、べらぼうに利益をあげていっているという問題に対して、日本政府としてメスを入れるというのは、当然のことではないかという問題として検討すべき必要があるということを私は提起しているわけなんです。  それで、いま薬価基準というのがあるでしょう。この薬価基準というのを見ると、九〇%バルクライン方式というのをとっているでしょう。いわば一〇〇という単位の事業を、まあ上位の十社日の位置、要するに一〇%の分を、悪い言い方をするならば、市場のシェアとして占拠してしまったら、そうしたら、そこで薬価基準をつくってしまうことができるという、これは独占的な価格ですよ。九〇%バルクライン方式をとっている限りにおいては、一〇%あまりの市場を支配することによって決定づけることができる。そういうやり方を日本の薬価基準ではとっているということが——私は、日本におけるところの製薬独占といったって、そんなに大きい規模とは思いませんけれども、それでもそれの得ていく利益が大きくなっていっている原因があるんじゃないかと思うのです。私はこの九〇%バルクライン方式自身も検討する必要があると思うし、全体として独占薬価の問題についてメスを入れていかなければ、今後十数年間の歴史を見たら、二〇%段階から三〇%、四〇%、この調子でいったら、保険財政の過半数以上に発展していくという位置をこの薬剤費によって占められていくんじゃないか。将来必ずこの問題が重要な負担問題になってくるだろう、こういうふうに言わなければならぬと私は思う。  そういう意味において私は、自由販売の時代だということで、この問題を放置しておくということは、国民の医療生活を守るという立場から見た場合に許すことのできない問題だと思うんです。だから私はこの問題については、政府として独占価格を押えるという——そのために政府でやる、やらぬというんだったら、国会の側においても調査権をもってでも、これを押えるという方向の研究をする必要があると思うんです。私はそういう方向で政府においても、どうしたら独占薬価を押えることができるかという問題について、バルクライン方式も含めて検討を要する段階にきているというふうに思うんだけれども、再度大臣の答弁を聞きたいと思います。
  143. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まあ製薬が独占かどうかという問題だと思うんであります。もうけが多ければそれをやる薬屋もまたふえてくるじゃないか。まあ現実に薬屋がふえているわけでありますから、必ずしも独占価格を形成しているとは私は思いません。  問題は、いまおっしゃいますように実勢価格と薬価基準、これがほんとうにマッチしているかどうかという問題だと思うんです。お互いに同じ種類の薬で非常に競争し合って、下げ合っているわけでありますから、したがって、前向きに薬価基準を改正するたびに五%なり六%なり薬価基準を下げていっておる、これは御承知のとおりだと思います。今日の医療は薬剤医療と言うていいくらいに薬を使っていることは御承知でございましょう。あるいは制ガン剤ができた、あるいは結核にまた新しいこういう何ができた、非常に高い薬でもぜひ保険に使ってほしいというようなわけで、以前と違って治療に薬を使うという面が非常にふえてきている、しかも高い薬を使うということがふえてきているというようなことも、これは事実であります。  しかし、いまおっしゃいますように、薬の実勢価格と薬価基準とどうマッチさせていくか、それから九〇バルクラインでいいのかどうか、この問題は確かに私は図星だと思うわけであります。そして、これが七〇バルクラインがいいのか、あるいはそうでなくて、薬の各品目ごとに薬価基準をきめろという議論もあるわけであります。これは一番適切であろうと思うのでありますが、そうすると、四万ほど薬価基準をつくらなければならぬというので、事実上非常に困難ではないかと思っているのでありますが、そういうことも含めまして、この九〇バルクラインですか、七〇バルクライン、そういう問題も検討いたしたい。  これは中央医療協議会においても一つの検討の材料になっておりますが、いままではこの九〇バルクラインというのが一番いい方法だというので、中央医療協議会で、これは保険者、被保険者も、公益委員も入った中でおきめいただいた方式でありますが、しかし、それをさらに検討をしていただきたいし、私のほうでも検討する必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  144. 寺前巖

    ○寺前委員 バルクライン方式の問題についての問題点のメスと、それから蔵出し価格と、実際に売る間の金額、これが製薬会社の大きな利益のほうになっていくのですから、こっちのほうにもメスを入れなかったらだめだ。私は両方の面を政府として検討する必要があるのじゃないか。  よく例に出される問題ですが、これは一般市場では使わぬのですが、アリナミンF25というものですね、これの場合なんか考えてみても、ビタミンB1五ミリグラムの原材料価格というのは五銭くらいだというのですね。だから二十五ミリグラムだと、これの五倍の二十五銭ぐらいだ、これをまぜ合わして一つの錠剤にすると言うたら、おそらく六十銭から八十銭でできるであろうといわれている。ところが実際に、これが例の添付禁止以後の現状において見ると、一錠当たり六円四十銭くらいでもってこれが事実上の販売となって手に入ってくる、薬価基準では十円九十銭になっている。これが現在の大体の状況だというのが常識的な、薬をなぶっている人の見方なのですね。  だから、そこで私は先ほども言ったように、バルクライン方式の問題におけるあの薬価基準のきめ方の問題、それからべらぼうに実際に生産原価と、それから売っている価格との間、この間の利益というのも非常に大きい。だから私は、どうしたってこの問題について、両面にわたってメスを入れていくということが、保険財政の将来にとっても重要な位置を占める。このことをはっきりしないことには、保険財政の赤字だといって受け取るわけにはいかないということを国民が考えるのも当然だと私は思うのですよ。だから、そういう意味において、私は、原料とあるいはまぜ合わしてつくり上げる一番もとの生産価格と、それから販売価格との間の利益率があまりにも大きいのではないかという問題について、再度大臣のこの件に対する見解を聞きたい。
  145. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 製薬会社の利益率をどうするかという問題は、いまおっしゃるようなことが事実かもわかりませんが、今日におきまして、これはやはり公取委員会で十分見ていただくということであって、私らが薬事行政としてやるのはいかがなものであろうか、これは何も楽に限らない、暴利をむさぼっているというようなことがあり、これは自由主義経済を阻害するようなやり方でやっているなら、私は、公取委員会の問題だ、かように考えます。私、責任のがれを言うわけではございませんが、われわれ薬事行政をやっているものが薬の価格の中にそこまで立ち入るということは、ちょっといかがなものであろうか、かように考えますので、よく公取委員会にも、いまのお話の点はよく話しまして、何か善処する道があればやっていただきたいということであります。
  146. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣自身も確かにここにメスを入れなければいかぬということについては、お考えになるんでしょうね、どうなんです。私は保険財政を検討する場合には、メスを入れる必要があるのかないのかということは大きな位置だと思うのです。その位置について、どういうふうに思っておられるのか。
  147. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は先ほどから申し上げておりますような趣旨によりまして、一体もうけが多いのか少ないのか、この薬にはもうけが多いとか、この薬にはもうけが少ないとか、きょうはもうけが多かったけれども、競争会社ができてきてもうけが少なくなってきたとか、いろいろなことがあるわけですから、そう一がいに、私の立場から、あるいは私の検討しているところから申し上げるわけにはまいらない、かように思います。  しかし、いまおっしゃるように、薬九層倍だというようなことが前からよくいわれておるわけでありますが、それをそのままにしておいていいのかどうかということは、これはいわゆる経済企画庁であるとか、あるいは公取委員会というところでよく検討してもらう問題であり、こういう声が高いということは、きょうの委員会でもこういう話があったということは、公取委員会にもよく話してみて、検討する必要があるならしてもらうというようにいたしたいと考えております。
  148. 寺前巖

    ○寺前委員 私は財政問題として持ち出してこられた以上は、半数近くを占める位置の問題についてメスを入れないで出してこられたということで、この法案をそのままそれじゃよろしゅうございますというわけにはいかぬということを、この問題についてはきわめて遺憾に思うのですよ、ほんとうのところ。半数近く財政上占めるのですからね。ここの問題についてメスを入れないで出してこられたという点については、私は重大な法案提出上の問題だと思います。これについては、私はもう一度研究してもらって、もう一度この席で聞かしていただきたいというふうに思います。  次に、問題を移しますが、今度の値上げの中に占めるもう一つの問題は、診療報酬を上げるという問題が予算上の中に赤字の分の内容として出てきていることだと思うのです。それじゃはたしてこの診療報酬でいいのかどうか、将来にわたって保険財政というのを検討されるのだから。だから政府の補助率は五%という問題を将来にわたって提起した、労働者に向かっては掛け金を千分の七十から七十三にします、将来にわたって八十までは保険庁の長官の手もとでやらしてもらいますよという提案をしてきた。それじゃいまの薬剤の問題が一つの位置を占めると同時に、診療報酬問題、これが一体いつまで続く問題だろうかという問題が、どうしても一つの、将来、財政の問題として関連してくる問題だと思います。  そこでお聞きしたいのですが、この間やったところの診療報酬がはたしてどういう役割りをしているのだろうかという問題です。どんな役割りをしているのか開業医さんの話を聞きますと、大体開業医さんというのは国民の医療の六七%、患者さんの六七%を、われわれがめんどうを見ているんだ、こういうふうにおっしゃっております。私は、開業医さんというのは、第一線において多くの患者さんの直接の相談を受けていると思うのです。その開業医さんの場合に、聞いてみたら、ほとんど皆さんおっしゃるのは、外来のほうは収益はあまりあがっていません、入院患者のほうがあがっているのです。しかも、それは精神とか結核とか、そういう分野のほうはあがっておりますというお話を聞きました。また、技術を伴うところの外科の分野があがっております。確かに、国立病院や療養所の増収率というのを予算上から見ても、国の場合に病院の入院が三〇・二%で、外来が一七・〇%、療養所の場合に入院が五九・一%、外来が三六・一%、確かに国立あるいは公立のこういう分野を取り扱うところの病院は、収益はあがるであろうということを、これは予算の結果からも、あなた方自身が示しておられる内容だと思うのです。  ところが大部分の一般の開業医さんにしたら、開業医さんは今度の診療報酬の引き上げ問題というのは、われわれとしては決していいということにはならない。たとえば大病院の場合には、看護婦さんと患者との比率の問題の場合でも、従来一から三類まであったものが特類というものが設けられて、そうしてその看護婦さんと患者さんとの比率が非常に高い、すなわち大きな公立病院の場合なんかはかなりそういう看護婦さんを集めることができるというところには特類というのがあって、そうしてその計算方式によっていくと、非常によくなるとか、そういうような問題が出されております。  そういう問題の中で特に重視すべき問題点として出されているのは、老人医療の問題です。お年寄りというのは慢性疾患にかかる。ところが慢性疾患にかかった場合に、今度新しく診療報酬で二週間一回二十六点という点数制度を設けられてきたけれども、毎回変わった診断書をお年寄りに一々書くというわけにはいかぬというので、この制度ができたからといって、必ずしもその指導文書を出すわけにはいかぬという問題に直面する。そうして逆に従来あったところの血圧の測定とか、尿の検査などは、従来は点数評価をされていたものが、今度は点数がゼロになってしまう。あるいは再診料の問題にしたって据え置きになっているだけではなくして、今度は調剤の問題においても一回四点ということで、お年寄りは毎回何回も出てくるというわけにいかぬのだから、実際上調剤料におけるところの収益は減っていく。  ですから、今度の診療報酬の引き上げによって、公的病院に対して保険財政でもって運営を保障してやることになって、開業医の場合には大部分が今度の診療報酬によって決してよくならない。ですから、したがって、従来ともとやかく言われたところの薬でもって利益をあげるとか、あるいは検査料をもって利益をあげて、その経営をやっていかなければならないという運命が、今度の診療報酬の引き上げによっては、改善されることにはならない。  簡単に言うならば、大病院のための、公的病院のための保険の料金を上げるという結果になるのではないか、こういう批判が私は多くの人から、特に開業医さんの中から出ていると思うのです。  そこで、私はお聞きしたいのですが、ほんとうに今度の診療報酬の引き上げが大部分の一般の開業医さんにはあまり上がらず、そうして公的大病院中心に多く利益があがっていっているという批判は事実なのかどうか、これが事実だとするならば、その次に問題になっているのは、例のお薬とか、検査費でもって経営を考えていかなければならないという問題について、これを改善するための診療報酬の引き上げを再度直ちに検討しなければならないことになるのではないか、この二つの問題についての意見を聞きたいと思うのです。
  149. 戸澤政方

    戸澤政府委員 今回の二月一日の医療費改定の結果が、どういうふうに実際に反映しているかということは、これは二月以降の診療費請求書の結果をある程度長期間にわたって検討しませんとわかりませんけれども、まだ出だしたばかりで、的確にその影響を判断するまでに至っておりませんので、数字的に正確なことは申し上げられませんが、しかし今度の医療費改定が大病院とか、公的病院に非常に厚くて、一般診療機関に酷であったというようなことはないと思います。この医療費改定について中医協で毎回審議する場合にも、病院診療所の格差をどういうふうにするか、それからさらに各診療科ごとのバランス、公平化をどういうふうにはかるか、これはもう大問題でございまして、各側からそれぞれいろいろの意見も出ますし、その点に問題の論議の相当部分が費やされているのであります。  今回の二月一日に行なわれました医療費改定は、技術の評価という点で、手術料をたとえば倍にするとか、そういう点に重点を置いておるのが一つ。それから入院料がやはり非常に現実に合わないということでもって、入院料の中には部屋代・看護料・それから食事料等が含まれるわけですが、そういうものを分離しまして、その増額をはかるというような点に重点が置かれております。そのために結核とか、精神とか、そういう長期慢性入院患者を扱っているような病院に比較的有利に作用しているということは事実予想されるところであります。  それから、それは何も公的病院だけ有利になっているというわけではありませんで、公私病院とも同様でございます。  それから一般開業医につきましても、今度は初診料はだいぶ増額しましたが、再診料は据え置きになっていますというようなこともありまして、内科の伸び率がほかの科に比べて若干低いということも結果としてあらわれております。それを若干修正するために、いまお話のありました慢性疾患指導料というようなものを新しく二十六点創設したわけでありますけれども、この成果が予期するように的確にあらわれてくるかどうか、まだわからないわけであります。そういったところからお話のような影響が若干はあろうかとも予想されますけれども、また病院と開業医でそう大きな格差が出てくるとか、あるいは公的病院、国公立病院に厚くて、一般の診療機関に非常に不利である、そういうようなことはなかろうかと思います。  それで、今度内科が薄かったとか再診料据え置きというようなことを是として認めているわけではないので、問題点は意識して保留しているわけでございまして、次回以降の診療報酬改定につきましては、そういう点に検討を加えまして改善が加えられるものと期待しているわけであります。  それから薬の問題につきましては、お話のとおり薬価基準のあり方、薬価を実勢価格に適正に合わせるためのいろいろな努力、そういったことは中医協でも非常に問題にされているわけでありまして、今回の医療費改定に伴って出ました建議でも、薬価調査を厳重に行なって薬価の適正化をはかるというようなことが特にうたわれているわけでございます。  したがって、今後の診療報酬、医療費の適正化をはかるために、薬価の問題というものが、やはり大きな影響を持ってくることは御説のとおりでございまして、先ほどの九〇バルクラインの問題なんかも一つの問題点として指摘されているわけでありますけれども、こういった問題は今後中医協を舞台とし、あるいは厚生省におきましても、いろいろ検討を進めなければならない問題であろうと思います。
  150. 寺前巖

    ○寺前委員 いまお話のありました診療報酬の引き上げの問題は、全国自治体病院協議会が、二月十四日から二十日までの一週間を対象にした結果調べというのを新しい診療報酬に基づいてやっているわけですね。その資料の事実から見ても言えることは、病床規模の大きいところほど結果的に伸びが高い。それから精神、結核の病院の収益は非常に高くあがっている。外来部門より入院部門のほうが影響が大きい。これはあの基準を改定した内容から見て当然考えられる内容なんですね。明らかに考えられる内容です。そうすると、患者さんの六七%のめんどうを見ているといわれている、こういう開業医さんの診療報酬がほんとうに改善されなかったら、国民の中にあるところの薬の問題をめぐって災いが出てくるという問題を解決するということにはならない。ほんとうに一人一人の総合的な分析能力を持っておられる開業医さんの経営が成り立つという状況をやはり考えてみる必要がある。むしろそういう立場に立った診療報酬というのをもっと考える。そうして公的病院の経営問題については、公的病院というのは、もっと救急医療なり、結核や精神なんかそうですね、こういうような問題に対して積極的に受け入れる条件を別個に、保険財政で問題を見ていくというのじゃなくして、それこそ公的病院としての使命の立場から、国家の助成をやってつくっていくという立場に立たなかったら、独立採算制で、保険財政でこの分野の収益があがっていくという結果が事実となってあらわれてきている点を見るならば、保険財政をもって経営のめんどうを見ていくというような考え方をほかさなければだめなんじゃないか。私は、保険財政の赤字問題を論ずるならば、公的医療機関の問題について全面的に援助する体制というのを別の角度から考えていく必要があるのではないだろうか、そういうふうに思うのです。  この前も大臣に申し上げておきましたけれども、精神の場合だったら七十何%ですか、八十何%ですか、民間の医療機関にお世詰になっている。命令入所の制度を持っているところの精神、これがその圧倒的部分を民間にお願いをする、あるいはまた、救急病院の指定病院の場合も、圧倒的部分を民間にお願いをしている。こういう公的病院がやらなければならない性格の分野、これが国自身の責任においてめんどうを見るという体制に、一体いつまでに入れるのかということを私は大臣に聞きたいと思うのです。民間体制でなくして、国の責任において救急医療、過疎医療あるいは精神とか結核とか、こういうほんとうに公的にやらなければならない性格のものを、いつの段階までに必ず国の責任において整備されようとしているのかという問題と、それから、財政問題でいうならば、今回の健保財政から見るならば、保険財政でもってこういう病院経営を成り立たすという結果になっている診療報酬の引き上げ方に問題があるのじゃないか。むしろ開業医のほうに診療報酬の改定をもっとやるべきであったのじゃないか。これは同じ保険財政の角度から問題を見る場合に、力の入れ方が少し違っているのじゃないだろうか。この問題についての大臣の見解を聞きたいと思うのです。
  151. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先般の診療報酬の改正は、保険局長から申し上げましたように、国立や公的病院を優遇しようという趣旨で改正をしたのではございませんので、そういう意図は毛頭ございません。適正な診療報酬ということを頭に描いて中央医療協議会でいろいろと審議をされたわけであります。御承知のように、開業医よりも病院が経営が非常に苦しいという声が高かったことは事実であります。それはやはり医療従事者に対する給料の支払い、また食費や、そういった点をいろいろ考えますると、なるほど、これは公的であろうと私的であろうと、病院経営が非常に行き詰まってきたということは、もう事実であります。そういう面からいわゆる技術料あるいは人件費というようなものを相当頭に入れて診療報酬の改定が行なわれた。しかし、これで、病院でない普通の診療所を経営しておられる開業医は非常に悪くなったかというと、必ずしもそうではない。よくなり方が少なかったということはあるかもしれませんが……。そういうことでございます。したがって、その公的病院をどう扱うかということは、診療報酬とは別個の問題として、公的病院や国立病院等のあるべき姿を診療報酬の中で何とかしようという考えはもう全く間違いであります。そういうことがあるとすれば、これは間違いであります。そういうような考え方でやっておるのではございません。  いまおっしゃいました、最近のいろいろな医療事情の変化によって、どういうものを公的病院としてやる必要があるか、また、私的病院に対しても、そういうものをやるについてはどういうような援助のしかたをする必要があるか、これはまた別個の問題としてやっていく必要がある、さように考えます。それを全部公的病院でやってしまって、そして私的病院にはそういうものは扱わせないという行き方をするか、いまのように、公的病院が主になりながら私的病院も協力してもらうという形でやっていくかという問題があるわけです。現行のやり方を中心にしながら、公的病院のあるべき姿を、そして公的病院としてやらなければならぬものは、その意味における公的病院の費用の出し方というものを公的に考えていかなければならない、かように考えます。
  152. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もあれですから、ちょっと詰めていきますけれども、公費負担の問題ですね。私はやはり公費負担とか労災とか、こういう問題について、これも保険財政に関係してくると思うのです。  たとえば最近印刷や新聞などで鉛の公害、鉛の労働災害というのですか非常にふえてきているわけですね、労働者の中で。ところが労災保険の申請を監督署に出す、一年も一年半も長期にわたってあたためられてなかなか認定がおりない。その間それじゃ、お医者さんには労災申請を出しているから、お医者さんのほうが、いわばめんどう見たかっこうになって、本人から取るわけにもいかぬしというような状態が続いていく。あげくの果ては特定の人だけが認定になって、そうでない人が生まれてくる。しかし、認定になるかならないかというのは、一定のラインを引いて、そこの職業に起因しているということは事実だけれども、だからといって認定して補償の対象にするかどうかという問題として取り扱う労働災害というものがふえてきているのですね、そういう問題が。よく監督署の人に言うと、それはちょうど認定するかどうかのボーダーラインにあるのだ、こういう話をよくする。  しかし考えてみたら、そこの仕事に起因している病気である以上は、実際にめんどう見てもらうのだから、当然そこの企業でめんどう見るということを、ボーダーラインだとかいう、いまの話はおかしい話だと思うのです。そこの職場に起因していないということを、明確にしていないという根拠を出されて、だからそれは保険を使ってくださいというのだったら話はわかります。ところが、そうではなくして、ボーダーラインだなんという言い方、あるいはこれはもうすでに法的にもなっている問題として、じん肺の場合なんか、この場合は労災だ、この場合は保険だというのを分けているやつがあるでしょう、これはおかしい問題だと思うのです。だから、ああいうのはその職業に起因しているということが明確になるまでは全部労災の保険でめんどう見ていくのだ、そういうふうに保険財政を確立するという問題を検討する場合には、私はこういう問題をはっきりしなければいかぬと思うのです。  ところが、いまのやり方というのは、どっちつかずなことになっておる。法的に言うたら、健康保険では労災は適用してはならぬということになっておる。しかし実際問題としては、認定されないのなら健康保険で、こうなっておるのですよ。そうでなかったら、本人はふだんから掛け金しておって、労災は資本家のほうからやってもらって、どうしてくれるのだということになりますから、実際そこが非常に不明確になって問題だ。  この保険財政を明確にされるのだったら、私はこの問題を明確にしてもらう必要があると思うのです。責任をもって労災で、その監督署だったら監督署が、そこの仕事場に起因していないということを明確に言えない場合には、労災でやるべきだ。私は、そういうふうに大臣から明確にこの問題についての態度を示してもらわぬことには、保険財政の確立と言ったって、これはまた筋の通らぬ話だと思うのです。ちょっとお聞きしたい。
  153. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 業務障害の問題はいろいろ個々のケースで問題があるわけでございます。いまこういう場合にはこういうということは、これはむしろ労働省のほうでどう判断をしていくかという問題であります。  それとは離れまして、私先ほど申し上げましたように、財政対策の一環として大いに行政努力をしなければいかぬ。先ほども数字で申し上げましたが、いわゆるレセプトの点検にも非常に多くの業務上のものがまじっていることが発見されまして、私どもとしましても、それを是正していくということをやっているわけでございますが、私どもとしましては、いわゆる適正な支出ということを確保し、財政を安定させるためにもレセプト点検というものを強化して、誤ってこちらにまじり込んでいるものは、これを正していくという努力をしていかなければならないと思います。
  154. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、私は事務上の話をしているのではないのです。
  155. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いまの事務当局の御答弁では御不満であろうと私は思います。おっしゃいますように、工場、事業場で起こった疾病、健康破壊、これは労災で見るべきである、そういうように法律では割り切っているのですけれども、事実判定として、これを労災と認めるか認めないかとおっしゃれば、手続上もうるさいし、本来なら労災に行くべきものをこちらで背負っているというものが私はあると思います。これはひとつ労働基準監督局、あるいは大きく言えば労働省等とよく話をいたしまして、いまおっしゃいますように、できるだけ、これはもう労災でないということでない以上は、労災で払うのだというような方向にひとつ話を進めてみたい、かように思います。お説のとおりに思います。
  156. 寺前巖

    ○寺前委員 それは、ですから私はこういう問題について、たとえばこの間の老人医療の問題ですが、老人医療の場合だって、私はそういう立場に立って今度はお年寄りのめんどうを国が見るんだということになったら、これも保険財政から切り離してちゃんと公費として全面的に見ていく。そういうように、特定疾患というような問題、これも社会的に全体としてめんどうを見ていかなければならない疾患だ、こういうような問題について、私は公費負担として、この保険制度と切り離してめんどうを見ていくという体制を確立する必要があるのじゃないだろうか。私は、労災から、さらに公費、全面にわたって明確にそういうふうにしていく必要があると思うのですが、見解をお聞きしたいと思います。
  157. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 たびたび申し上げておりますように、労災のごときは、その疾病の原因を事業場が与えているから、原因負担ということでやるのは当然であります。また一般の疾病に対しましても、原因そのものが社会原因によって起こっているというものは、これはやはり将来公費に進んでいくべきものであろう、かように考えます。それぞれ各個人個人の体質その他によって起こってくるという疾病は、これは保険で見ていく、そういうように大体いままでも考え方をそういう方向に進めているわけでありまして、今後やはり社会原因によって起こってきた疾病、あるいは社会的にどうしても捨ておけないという疾病、これはふえてくるだろうと思いますから、公費負担の面も今後ずっとふえてくるだろう、方針はそういうような方針で行きたい、こういうふうに考えております。
  158. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは私は最後に、労働者保険の基本的な考え方について、ちょっとお聞きしたいのです。  というのは、フランスやイタリアの先進的な労働運動をやっている諸君たちと話をしておりましたら、いつもふしぎがられるのですね。働いている労働者が賃金をもらう場合に、その賃金というのは、自分が御飯を食べるだけではなくして、家族の御飯を食べることから、健康から教育、すべてにわたって再生産をやっていくことのできる、そういう条件を保障するというのが、これが資本家と労働者との関係じゃないか。そういう立場から、フランスやイタリアの労働者の場合に掛け金の状況を見ておったら、日本の労働者の掛け金と比較にならないのですね。たとえばフランスの場合だったら、労働者の掛け金は収入の〇・三五%なんです。それに対して資本家のほうは、支払い賃金総額の二・五%なんです。イタリアの場合を見たら収入の〇・一五%が労働者、資本家のほうが九%から一二%くらいの範囲です。資本家負担というのが非常に多いのです。考え方からいえば、そういうものと違うのかと私ら言われて、それはそうだなという話になるのですね。日本の場合には、あまりにも——資本家と労働者の関係からいうならば、資本家がもっと責任を持つという体制でなければならないんじゃないだろうか、これがお聞きしたい一つなんです。  お聞きしたい第二番目の問題は、そういう立場から見たときに、政府管掌健康保険というのは、大資本の場合と違う企業の場合だから、特別に中小企業を擁護するという立場から、またしたがって、そこの労働者の労働条件は悪いという立場から考えたときに、積極的に国の援助がこの分野にされていく性格があるのではないか、したがって私は、そういう意味において、もっと積極的な支援をこの保険財政には国がやっていく必要があるのではないか、こういう考え方に立つべきだと思うのですが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  159. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの問題は賃金、給与体系に関係する問題だと私は思うわけでございます。外国の保険制度は、国によって非常に違いますが、労使問題というところから発展してきた制度もあれば、またそうでない制度もあるわけであります。そういうことによって掛け金のしかたも変わってきている、違っていったというように考えるわけであります。  私は、国民皆保険という考え方から言うならば、被用者であるのと被用者でないのとの区別というものは、そう重大に考える必要はないんじゃないかという感じがいたすわけであります。いまおっしゃいますように、労賃あるいは給与の内容というものにどういうものを含むかといえば、これはいろいろな考え方がありますが、能率給のところもあれば年功序列型等のところもあるわけでございますから、したがって一がいに、賃金体系の違うところの制度を持ってきてこちらにというわけにもまいるまい、かように考えるわけでございます。  ただ、おっしゃいますように、政管は比較的足の弱い中小企業の労働者を対象にしている、その意味において、政府はめんどうを見るべきじゃないかというお考えもわからぬことはございません。そういう意味で、大企業の組合には国の補助金はないけれども、まあ政管には補助をしておるというのは、そういう次第でございまして、この補助金の額が少な過ぎるとおっしゃるのは、これは寺前さんの御意見であろうと思いますが、その程度が、どこら辺がいいかという点が問題点であって、政府としてはこのたびの措置がまず適当と考えられるということを申し上げているわけであります。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、終わります。
  161. 森山欽司

    森山委員長 次に、大原亨。——ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  162. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。
  163. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほどの後藤委員の御質問、これに関連しての大原委員の御質問に対しまして、五人未満の事業所の適用問題について私は所見を申し上げましたが、その真意は次のようでございますので、御了承を得たいと存じます。  政府としましては、五人未満事業所の適用問題に対する姿勢に変更はないわけでありますが、これら事業所の行政的把握の方法など、種々検討しなければならない問題がたくさんございますために、直ちに結論を得ることが困難であり、一方家族給付の改善などの問題が急を要することから、五人未満事業所の具体的取り扱いにつきましては、今回の抜本的改正に含めることができなかったわけでございますが、今後検討を急ぎまして、すみやかに解決をはかってまいりたい、かように考えますから、御了承いただきたいと存じます。
  164. 大原亨

    ○大原委員 いまの厚生大臣が御発言になりました統一見解は、統一見解としては中身のあいまいなところもあるわけですが、そういう統一見解が述べられた、こういう客観的な事実を否定するものではありません。ありませんが、大体あなたのいろいろな発言等を通じまして、私がぴんときたことは、どういうことかといいますと、厚生大臣は、当面の問題を処理するのに、抜本改正について当然並行して議論をしてきたところであるから、その際には、保険制度についてどういう考えを持っているんだろうかということを私は日ごろ疑問に思っておる点があるわけです。はしなくも後藤委員質問、私の関連質問等の——その前からでありますが、厚生大臣はそういう保険制度の問題について地域医療一本にしていく、私も原則は賛成ですよ。そういうことから考えてみて、この問題については、五人未満の未適用事業所の問題については、これは前向きに取り扱うべきではない、この際これはストップをして再検討する、こういうあなたの発言があったのであります。私は議事録を全部は集約してないけれども、あなたの発言があったわけです。そこで私は、私の関連質問にもなったわけです。  私どもがいま赤字の問題を議論いたしておりますが、赤字の問題も、将来の展望なしに議論するととは、国会としてはいまやできない。昭和四十二年以来われわれやってきたことであるから、その繰り返しはできない。この赤字の問題といえども、将来どのような展望を持ってやるんだ、いままでのように矛盾を拡大するものかどうか、こういう議論をしなければ国会としては議論にならぬ、こう思っておるところです。一つの制度はすべてオールマイティーではありませんが、しかしどのような方向づけをするのかということは、きわめて重要なことであるから、私どもとしては、いままでの経過を無視した厚生大臣の見解に対しましては、真意を確かめる必要があるというふうに私も思うわけです。  質問の順序ではありませんが、またきょうの質問で私の質問が完結するというふうには思いませんけれども、この審議というのは問題点を解明することが中心ですから、私もあえて質問に立ったわけでありますが、いままで、衆参両院における審議や附帯決議等はもちろんですが、国会における論戦も——ここに議事録を私も取り寄せられるだけとっておりますが、各種の審議会においても、五人未満の未適用事業所について、これは被用者保険として処理をしていくということについては、保険主義をたてまえとしておるいまの現状においては、これは当然の道だということを答申をいたしておるのですが、あえてこれに対して厚生大臣は違った意見を持っておられるということであるならば、これは一つの見識であります。であるならば、どういう考え方厚生大臣は、そういう考えを持っておられるのかということを明らかにする責任があると私は思う。この点について厚生大臣の率直な見解を聞かしてもらいたい。
  165. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまも申し上げましたように、先ほども申し上げましたように、いま抜本改正をやり、そして家族給付も引き上げていくというときに、これも同時にという場合には、まだ考えなければならない点があるから、もうちょっと——この前にはほとんど同時にやるように言っておりましたが、それは同時にはちょっとやれないから、さらにしばらく検討いたしたい、こう申しておるわけであります。その点は御了承いただきたいと思います。
  166. 大原亨

    ○大原委員 それじゃ別の観点で質問いたしますが、あなたは保険制度については、どういうふうに改革すべきだという見解を持っておられますか。
  167. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、医療保険制度はやはり国民の医療を確保をするという見地から改正を加えてまいりたい。それには先ほどから申しておりますように、負担と給付の公平をはかって、そうして国民全体がこの保険制度によって医療の万全を期することができるというような方向に持っていくべきである、またいきたい、かように考えております。
  168. 大原亨

    ○大原委員 制度としては、具体的にどういう考えを持っておるのですか。
  169. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 制度としましては、とにかくずっと発達、発展をしてきたこの健康保険制度と、それから地域保険の制度と、この二つの制度をうまくかみ合わしていくということであって、いまの健康保険制度を全部地域保険にしてしまうということは、ほとんど不可能に近いことである、私はかように考えております。制度はそういう制度であっても、実質がいま申し上げますような制度になればよろしい、かように考えております。
  170. 大原亨

    ○大原委員 保険制度の議論はいろいろあるのですが、しかし、いろいろな議論を集約してみまして、いまのように、被用者保険は、政府管掌健康保険あるいは組合管掌健康保険、共済組合もたくさん分かれております、船員保険、日雇健康保険、こういうふうにばらばらに被用者保険の制度が分かれている。そうして保険料負担と給付の中身についてアンバランスがある。  そこで考え方としては、国民健康保険、地域保険一つ考える、それから被用者保険を一本考える、そしてそれら全体をバランスをとっていくように考えていく。将来、医療を国営、公営にするということになれば、一本でよろしい。それは供給機関もそういうことです。それは私ども社会党としては、そういうことも究極には考えるけれども、しかしこの問題は、当面の現実の問題を処理するそういう考え方ではないと私どもは思っている。たとえば政府管掌健康保険が一番いい例である。一番非能率であって、そして健康管理が、われわれ議論したように欠陥を持っておる制度である。官僚的で、中央集権的であって、住民が参加できない。住民が、健康管理の問題について、みずからの問題、医療の問題を考えるような考え方になれない。こういう、言うなれば保険主義の一つのメリットである責任主義というものが、無責任主義に流れておる。であるから、そういうことを公営に一本にやってしまえ、こういう議論があるかもしれない。学者の中には、最近そういう議論がちょいちょい出ておる。しかし、私どもはそういうことは考えない。究極の問題としては、私どもは、社会主義であるならば、そういうことが理想ですけれども、いま当面の問題で、この問題を十年やそこいらで処理できる問題であるとは全然考えていない。そうすると、いまのような構想がある。しかし、それをばらしてしまって、いろいろと自民党でも出たことがあるし、医師会からも出たことがあるけれども、地域保険を中心にしてやる考え方もあるけれども、それにはたくさんの問題がある。  ですから現実の案としては、ばらばらの被用者保険を一元的にしていって、負担と給付の公平をはかりながら、こっちとの公平をはかっていくというような整理のしかた以外にないのじゃないか、こういう意見を私は持っておるわけです。来週早々出す医療保障基本法の、われわれ野党のこの構想の中にも、そういう構想があるわけです。議論した結果であります。そういう考え方については、厚生大臣はどう思われるのか。いかがですか。
  171. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も、そういう考え方でいく以外に道がないであろう、またそれが賢明であろう、かように考えております。
  172. 大原亨

    ○大原委員 珍しく意見が一致したね。  社会保障制度審議会にこういう答申がある。「零細企業と国民健康保険」これは社会保障制度審議会が日本の医療保険についての長期総合展望をやったときの例の議論の答申でありますが、それで十年計画を出したことがあります。ヨーロッパの水準に追いついて追い越す。追いつくというところに重点を置いたのがありますが、その基礎になりました答申案の中には「これらの健康保険の未適用者については、もちろん、健康保険の適用を行うように改めるのが本筋である。ところで、これについては、むしろ国民健康保険を利用させる方が現実に即した解決法であると主張する者もないではない。」省略「しかし、本来の筋合からいって、従業員に関するかぎり、」つまり腕一本すね一本で働いているということですね。生産手段を持っていない。自営業者じゃないということです。「これを国民健康保険に持ちこむのは問題である。その上に事業主についても、むしろその希望があれば、これらの人びとをも一括して、健康保険を適用する方がはるかに筋が通っていると考えられる。」つまり人を雇う以上は、事業主には社会的な責任がある。こういう点でありますけれども、そういうふうにいっておって、そういう議論があったが、それを否定して答申の基礎になっているわけですが、「従業員五人未満の零細事業所に雇用される労働者に被用者保険を適用し、一般の被用者と同様の保障を行なうことは今後の社会保障の総合的な発展のために絶対に必要である。」中略。「この場合は、企業の負担能力は概して小さく、賃金水準は低いから、国庫負担の率は当然多くなるであろう。」こういって、答申の中で別の条項で、これの裏表の議論を集約をして答申をいたしておるわけです。  ですから、後藤委員が午前中に指摘をされました点は、いまのあなたの統一見解では、少しわけのわからぬところがあるわけですが、しかし私は、そういう方向に進むんだ、つまり労働者とか国民の医療をどうするかということが問題ですから、それぞれの国民の立場に立つならば、腕一本すね一本で生産手段を持たないで、こういう過密過疎で、激動する社会で生きておる場合には、被用者の保険についても体系を整備して、そして格差を是正していくという考え方が必要ではないか。であるならば、この政府管掌健康保険の際にこの問題を、やはり積極的に赤字の問題を処理する場合に、長期の展望としては見解を明らかにしつつ当面の改革を進めることが必要ではないか、こういうことを思うわけでありますが、同じ見解とは思いますが、私だけしゃべりましてもいけませんから、質疑応答ですから、厚生大臣の御答弁をひとついただきたい。
  173. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そういう答申もあり、そういう御意見は、いままでの主流をなしておるということも私ども承知をいたしております。そこで、しからばいますぐそれをやるかというと、なかなかいろいろ問題がありますから、もうしばらくそれを考えさせてもらいたいということでございまして、頭から否定をしているわけではないということを御了承いただきたいと思います。
  174. 大原亨

    ○大原委員 それでは、後藤質問に対しましての午前中のあなたの御答弁には、頭から否定したやに思われるような見解があったけれども、それは是正したと考えてよろしいか。
  175. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 しかるがゆえに、いま特に発言を求めて、こういう趣旨でございますと申し上げたわけでございますから、もし頭から今後否定するのだというようにおとりになったとすれば、その点は私のことばが足りなかった、あるいは間違いであった、かように御了承いただきたいと思います。
  176. 大原亨

    ○大原委員 そこで問題は——この議論は議論としてちょん切ると、前向きの議論にならぬから、続けるわけですが、問題は、国民健康保険と政府管掌健康保険の接点が、いまのようにたくさんあるわけです。これはいままでの論議を通じて明らかなように、政府管掌の健康保険、組合管掌の健康保険、国民健康保険、この故事来歴がずっとあるわけです。そこで出てきておるのがあるわけですが、しかし、いまや皆保険の観点に立って、これを考え直してみなければならぬ。  たとえば政府管掌、組合管掌の間においてもそうだし、共済組合関係——官業関係、公務員関係の共済組合の短期給付においても同じである。そのことは、官業とか国家公務員とか地方公務員、教職員は別だという考え方は今日いけない。ですから、それは一緒に考えながら、官尊民卑ではない、そういう公平な制度というものを前向きにする必要があるだろう。その議論の中で、私どもが議論する中で、あるいは赤字問題等を考える中で大切な点は、国民健康保険と政府管掌の健康保険の問題は、山本質問以来今日まで質問があったことなんでありますが、そこで私が一つ質問いたしたい点は、これは大臣でなくてもよろしい。  大臣は聞いておって判断してもらいたいが、健康保険法によって任意包括加入という制度がある。強制加入でない制度がある。任意包括という制度の中で、つまり国民の立場でみれば、労働者であれば腕一本すね一本であるから、生産手段を持っていないから、同じような立場であるけれども、しかしこの制度の経過の中から、政府がやっておる政府管掌健康保険の中から出た労働者がある、事業主がある、産業がある。この任意包括加入として強制加入の対象になっていない——十二条ですが、その業種について、最近問題となるであろうおもな業種について列挙してもらいたいと思います。
  177. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 現在任意包括制度で適用されております事業所で、職種は二つに分けますと、一つはいわゆる適用業種であるけれども、五人未満であるということで、これはいろいろな種類があると思います。  それから五人以上であっても、法律のたてまえ上未適用の業種になっているものがございまして、これはサービス業とか旅館とかそういったようなものがございますけれども、そういったものは必ずしも五人未満でなくて、かなりの人数でありましても、法律は未適用業種になっておりますので、そういったようなものは相当にあるかと思います。
  178. 大原亨

    ○大原委員 私が質問しましたのは、あなたがいま言われた、そのようになっているようなものとごしゃごしゃ言われた、それを聞いたわけであります。  私が言ったのは、これは任意包括加入として強制適用から除外された、しかも最近の産業構造の変化の中で問題となっているおもな業種をあげてみてください。労働者の立場に立てば、腕一本すね一本で同じですよ。被用者の場合ですよ。こういうことで質問したわけです。
  179. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 被用者の数から申しますと、いま私が申しましたのは四十四年十月一日現在の数字でございますが、飲食店、それから宿泊所、対個人サービス業、映画娯楽業、それからその他のサービス業、そういったようなものが数多く出ております。
  180. 大原亨

    ○大原委員 産業としていろいろあるでしょう。たとえば農業とか林業とか漁業か……。
  181. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 それでは一応被保険者がおります業種といいましても、ほとんどの業種にまたがっておりますが、建設業、繊維工業、それから木材、木製品製造業、金属工業、機械器具製造業、それから卸売り、小売り業、それから食料品、たばこ製造業、化学工業、それから運輸通信業、対事業所サービス業、修理業、そういったような種類のところにございます。(大原委員「適用除外」と呼ぶ)いわゆる任意包括適用として入っている被保険者が属する事業所の種類でございます。
  182. 大原亨

    ○大原委員 そこで、その任意包括加入で強制適用の外にある、そういうことのために入っていないという労働者、被用者の実態はわかりますか。
  183. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 これは、午前中御説明いたしましたのは、いわゆる健康保険に入っていない、すなわち国保に加入しておる被保険者が二百九十五万と御説明したわけでございますが、その中でおもな業種は卸売り、小売り業が約七十五万、それから飲食店が約四十三万、それから対個人サービス業が約二十三万、対事業所サービス業が約二十七万、そういったところが大どころでございます。
  184. 大原亨

    ○大原委員 その場合に、五人以上の場合には任意包括加入の業種でも、実際にほとんど入っているのですか。
  185. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いわゆる強制適用業種でございましたら、五人以上は全部入っております。それから強制適用業種でないところにつきましては、これは強制適用になりませんので、任意包括として入ってくるものは、それは被保険者として受け入れるということで、先ほど御説明いたしましたような職種の事業所の人たちが入ってきているわけでございます。(大原委員「それが二百九十五万、家族を入れて六百万ですね」と呼ぶ)先ほど御説明いたしました、いわゆる四十四年十月の任意包括適用の被保険者の数は九十二万でございます。その九十二万のうちに先ほどの飲食店その他がおるわけでございます。九十二万が任意包括適用で入ってきておるわけでございます。
  186. 大原亨

    ○大原委員 任意包括適用の業種で、九十二万以外の実態はわかっているかどうか。
  187. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 九十二万以外の、いわゆる強制適用でない業種の人たちというのが先ほど御説明いたしました二百九十五万でございます。  もう一ぺん御説明いたしますと、千三百万という被保険者がいま政府管掌にはおるわけでございます。千三百万の被保険者は強制適用のものと任意包括適用で入っているものと二つに分かれます。任意包括加入で入っているものが四十四年には九十二万おるわけでございます。それから、いわゆる事業所でございますけれども、強制適用でないために健康保険にはそのままはいれない、対象にならないという業種、それからあとは五人未満の問題でございますが、五人未満を省きまして、いわゆるサービス業のような強制適用にならないような業種の人は——先ほど二百九十五万と申し上げましたのは、いわゆる強制適用でない業種の事業所で任意包括の申請をして入らない人たちと、それから、いわゆる強制適用だけれども五人未満のために対象にならない、それの合わさったものが二百九十五万いるわけでありますが、いわゆる五人未満のものと、それから強制適用でないものとを分けた数は、いまちょっとここにないものですから、先ほど込みで二百九十五万と御説明したわけです。
  188. 大原亨

    ○大原委員 わかった。あなたもよくわからなかったわけですけれども、最後にはそれがわかった。つまり家族を含めたら、四、五百万人の労働者の立場に立ってみると、生産手段がない、日々賃金収入で生活している人がこれに入ってない経過がある。それからサービス業その他、農業だって、漁業だって、それから林業だって、構造改善でだんだんと企業化しておるわけだ。企業化して、資本主義化してきておるわけです。そういう場合もあるわけです。これは出かせぎその他で議論になっているけれども……。そういう産業構造が変わっていって、工場労働者の伝統をずっと引いている。労働者、被用者に対する政府管掌の伝統をこれは引いているわけです。家族的な企業等は除外しておったわけですよ。工場労働者がずっと引いてきたわけですよ。そのしっぽがずっと残っておって、産業構造が変わっておるけれども、労働者や国民の立場で見れば、いま議論した被用者保険に入るべき人が、ずいぶん除外されているわけですよ。入れないわけですね。しかしながら、五名どころでなくて、十名、二十名、三十名のところも、そういう事業所が一ぱいあるわけですよ。労働者の立場に立てばやはり不安です。そういう立場の人があるわけです。  ですから、そういう問題を整理して、どういうふうなカテゴリーの中に、これを包んでいくのかという方針を全体として立てるべきではないかということが私は問題です。ですからこれは、政府管掌の五人未満の未適用の事業所の問題と一緒に、国民健康保険との接点があるわけですから、その接点の問題を明確にしておかないと、いま厚生大臣との質疑、やりとりをしておるような、これからの改革の方向については、六百万人とは言わぬけれども、家族を含めて少なくとも四、五百万人はあるわけですから、この問題についての解明ができないのではないか。ここに実態を把握してないということについては、きわめて遺憾である。これは国民健康保険のサイドでやるのか、市町村のサイドでやるのか、労働問題のサイドでやるのかわからぬけれども、私は、この実態をすみやかに把握して、それに対応するような被用者保険の体系を考えることが一つではないか。これはけしからぬと言って開き直るようなことはせぬが、その実態を把握してもらいたい、この点を追跡をしてもらいたい。
  189. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま大臣もおっしゃいましたように、五人未満の適用の問題は、これからその解決に向かって前進をしていかなければなりませんが、一番最初に、どのような対象の人たちがいるかという把握が先生おっしゃるとおり、まず第一の基礎になりますので、私どもとしても、その対象の把握ということを、まず確立をしていきたいというように思っております。
  190. 大原亨

    ○大原委員 もう一つは、政府管掌健康保険と組合健康保険の接点です。この境の問題です。  健康保険法は政府管掌の健康保険を中心につくってあることは御承知のとおりです。これはそれぞれ他の保険にも適用されるわけですけれども、三百名というワクを法律では設けておるが、実際上は自立経営の問題等があるでしょう。政府の行政指導の問題があるでしょう。たとえば三百名と、実際上の健康保険組合設立の条件である一千名、そういう中におる労働者のウエートというものの実態はどういうものであるか。いま実際上の組合認可の基準は千名以上でやっているでしょう。この法律と実際上の行政指導との間のギャップの実態というものを把握したことがあるかないか。
  191. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 お答えになりませんので、まことに申しわけないのですが、政府管掌のほうで把握いたしておりますのは、規模と申しますか、規模別に把握いたしておりますのは、三百人から四百九十九人まで、それから五百人以上ということになっておりまして、三百人から四百九十九人までが五・六%、それから五百人以上が七・三%で、これは被保険者の数を合わせますと約百七十万ぐらいでございます。
  192. 大原亨

    ○大原委員 家族は……。
  193. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 家族は、大体政府管掌の場合には一でございますから、家族合わせますと、倍になるというふうにお考えいただきたいと思います。
  194. 大原亨

    ○大原委員 つまり、中小企業といいましても、一がいにはいまいえないわけですよ。人数は少なくても、非常に経営の配当もいいし、基礎のしっかりしておるところもあるわけですよ。だから一律な、画一的な指導というものは、これはおかしいのです。私ども過渡的に公営論を主張しているわけじゃないのだから、保険主義を是認しておるのですよ。  保険主義のいいところというのは、ただ一ついいところというのは、これは経営者もそうですが、労働者も身近に参加できることです。つまり、いまの時代の要請からいうならば、治療だけでなしに、予防とか健康管理、早期診断、早期治療においては完全に利害が一致しているわけです。早く回復する、たくさん病気にかからない、そういうことで元気で働く条件と一致しているわけですよ、健康保険は。ましてや、公害や職業病では労使は対立する局面があるけれども、しかし、それを一歩退いて全体からいうならば、環境破壊の問題と健康被害の問題は、これは経営者の問題であるし、労働者の問題です。日本の国全体の環境のことを考えれば、事業主も逃げるわけにはいかない。ですから、そういう点があるわけですから、そういう自己責任の原則で、あるいは参加できるような道を保険制度の中で開くという保険主義の長所を取り入れるというふうな場合には、いままでのような画一的な行政指導ではいけないのではないかと思うのです。いかがですか。これからどうするのです。
  195. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お話しの点、ごもっともなことでございまして、従来までの設立の認可基準も法律は三百人となっておりますのを、実際の運用基準としては単一組合千人、総合組合三千人というふうなことで運営しておったわけでございます。これは施行以来の産業状況から見まして大事をとって、組合としてあぶなげなく経営をしていくためには、ある程度の規模が必要であるというようなところでもって、そういう方針をとってまいったわけでございますが、これを最近の情勢に応じて、その運用方針をこれからは少し改めまして、法律になるべく忠実に運営してまいりたいというふうに考えております。  それで、そういう組合の中でも大きいもの、小さいもの、いろいろあるわけでございまして、さらに政府管掌の中にも、そういう規模に応じていろいろな形態があるわけでございます。そういう状況を的確に把握しまして、その経営規模なり、収支状況なり、経営の内容なり、そういったものに応じた指導をしていくことが、健康保険の運営というものを正確に把握する意味で必要なことであろうと思います。  次の抜本改正考えております、いろいろな政管健保の今後の指導方針につきましても、そういうたてまえから各都道府県ごとに、また事業所の規模、内容等に応じた指導、監督というものを厳格に実施していきたいというふうに考えているわけでございます。
  196. 大原亨

    ○大原委員 私は見通しを立てることが必要だと思うのですが、たとえば三百名以下であろうが、それは自分でやる能力があるところがあるわけです。いま企業の形態はそうですからオートメ化しておって、ほとんど労働者がいないというところもあるわけです。しかも石油コンビナートというような、環境が非常に悪いところもあるわけです。職場の環境はいいけれども、地域の環境が悪いところがある。四日市とか、あるいは大竹、岩国というふうに亜硫酸ガスが一ぱい出ているところがある。この人数は非常に少ないのですよ。機械が働いておって、人間がおらないというようなところがあるわけです。だからといって、四百名、五百名、一千名といっても、前近代的な職場も日本の中にはたくさんあるわけですよ。  だから、一律にはいかぬわけですから、そういう一律な行政指導は私はおかしいのではないかということを指摘したのが一つと、それからセクト的企業内、だけに閉じこもるのが労務管理の問題ですから、医療保険と労務管理の問題がやや進歩的なポーズで議論されますが、それは企業内に閉じこもることが問題ですから、この問題はまた別の問題で、どこかで議論するといたしましても、私は組合管掌で自己責任の原則でやれるようなものについては、ある程度行政指導の方針を変えるべきではないか。そうすれば、国庫補助の対象となる健康保険の吹きだまりである——山本質問で「宿命的」といわれているが、そういうものに対する対策ができるのではないか。それを何でも機械的にやっておいて、いけないいけないといって、いままでどおりのことをやっておいて、しかも工場労働法というのは、昔から労働組合もそこから出ておる、健康保険も出ているわけだ。その歴史の中でいままでの方針どおりをやっていくという考え方は改めなければいけないのではないか。  政府管掌政府管掌ということを言うけれども、政府管掌自体の運営の改革もそうだけれども、政府管掌でやるのは何かというものを明確に整理すべきではないか。そうしないと、力のあるものがどんどん補助をとっていくということになる。政府管掌にもぐって取っていくということになる。逆にいうと、必要なほうに国庫補助が流れていかない。国民の全体の税金は、当然ここには出すべきだという議論を出しておるけれども、みそもくそも一緒にしておるから悪平等になってきて、実質的な格差の是正ができない、こういうことが大きな政府管掌の赤字の原因になっているのではないか。これは頭を切りかえる必要があるのではないか。  小さな職場がどんどん地域的に連合して、一つの市で連合してつくらしてもよろしいし、そしたら地域単位に組合管掌ができるから、地域的な健康管理ができる。その企業内だけで考えないで、いまの実態に沿うようにして、そして政府管掌健康保険の結果が何かということで全体をどうするかということで、私は頭を切りかえて考えたらいいのではないか。赤字の問題と、これは密接な関係があると思いますが、いかがですか。
  197. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お説のとおりでございまして、従来健保組合の設立の指導につきましても、そういう何人以上というような数だけにとらわれて、片寄っておったようなきらいがございますので、今後はそういうただ数的な規模だけでなくて、内容をあわせ考えまして、その設立の認可また指導をやってまいりたいと思っております。  それから、いまお話しの地域単位の組合、こういったものも、現在でも法律上はできることになっているわけでありますけれども、実際はほとんど認められておりません。こういったものも、今後実態に応じて経営の見込みのあるものは認めていくというような方向でもって検討してまいりたいと考えております。
  198. 大原亨

    ○大原委員 組合管掌の認可については非常に機械的であると思う。たとえば昔は広島でも、広島瓦斯と広島電鉄は全く企業の中身は違うのだけれども、組合健康保険の経営は一つだ。同じ組合管掌をやっている。これはうまくやっているのですよ。ですから地域的に連合してやれば、地域に密着する。ですから大きな産業別で機械的にやるよりもいいのです。むしろ大きな企業は三菱重工というように大合併して何万とかいうふうになって、自動車工場だって何千とおるわけですよ。大合併して、あらゆる産業別に分けようといったって、全部不動産やって、もうかるところで国民をしぼる。もうけることは何でもやるわけだから、土地問題なんかしぼることのいい典型ですよ。含み資産だって、一番しぼって、企業のリスクはみなそこへ持っていっているわけです。商社だって不動産会社をやっている。零細農地なんか解放させて買い集めて、ばっと投資している。そういうことになると、大合併すると何万のグループができるわけです。そうすると産業別とか地域別に整理しようと思ったってできぬわけだ。だから一つの企業が一緒になるということは必ずしもいいことじゃないのです。  これは厚生大臣、こういう点だけは私は——まあほとんどあまり一致点はないけれども、武見会長なんかの地域に密着した医療というのは、被用者保険だって組合管掌の保険だって、地域へ密着するような組織のしかたはあるわけですから。保健所や地域に密着した、きのう議論したようなやり方はあるわけです。だからそういうやり方をやれば、地域的な健康管理ができるのです。問題は運営の問題ですよ。だからいままでの組合管掌の認可の方針とは頭を切りかえてやるべきだ。厚生大臣、いかがですか。
  199. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この点でも大原委員と私は全く同感でございます。そういうようにいくべきであると私も強く申しておるわけでありまして、少なくとも自主管理ができるというようなものは、できるだけむしろすすめてでもやったらどうだ、そのほうが私は効果が多い、かように考えております。  いまおっしゃいます中で、一つ違うのじゃないかと思うのは、いわゆる赤字を出しそうだというところをどうするかということです。自主管理はやりたい。しかし自主管理であれば、いまの仕組みであれば赤字が出るというところをどうするか。そこで私は二分の一財政調整といったのは、そういうことなんですが、何もこれは政管と組合とだけでなしに、組合の中でもそういったことをやれば、そうすればそういうところもやれる。これをそういうような組合間における財政調整ではなくて、そういうものはみな補助でやれという意見もあるかもわかりませんが、しかし負担の公平という点から考えると、それは組合の中において、やはり財政調整をやっていくというやり方ができれば、赤字が目の前に見えておっても、自主管理をやりたいというところはやれる。その点は若干私は意見が大原委員に同意してもらえませんかもわかりませんが、それ以外の点においては、自主管理をやれるというところは、どしどしやらすべきである。そのほうが私はあらゆる面において保険行政の実質が上がる、かように考えております。そういうように指導をいたしたい、かように考えております。
  200. 大原亨

    ○大原委員 あなたのそういう点は、これはかなり小さい差のように見えるけれども、大きな開きかもしれない。案外これが大きな議論のもとになる。こういう点になるとあなたと議論するということになるかもしれないと私は思っておりますがね。  つまりこれから議論は、時間がもうかなり、労働基準法でいえば五時に近づいておりますから、なんだけれども、つまり、一つ、老人医療をどうするか。二つ、僻地医療をどうするか。それから難病、奇病、原因のわからない、原因はわかっておっても治療法がわからぬ難病、奇病をどうするか。いま特別保険との関係等で問題になっておる救急病院をどうするか。あるいは精神、結核、特に過密過疎で双方からその原因をたくさんつくっておる精神神経系統の病気はどんどんふえておるけれども、そういう精神病院をどうするか。幼児の医療をどうするか。妊産婦の医療はどうするか。こういう私どもが社会的に考えてみなければならぬ、単純な保険主義ということで考えられないような、そういう国全体で考えてみなければならぬというふうな分野が最近は非常にふえておる。これが自由民主党の高度成長政策の国民の立場に立ったひずみである、犠牲である。一つの大きな問題である、社会問題である。老人福祉法は通ったけれども、自己負担をやって、老人医療無料化をやっているけれども、保険との接点をどうしていくかという問題があるわけです。だから、そういう問題について、一つ一つここで実態を追及をしながら政府の施策の怠慢を私どもが指摘をしていくことが、私は国会の任務であると思うけれども、これは別の時間に譲るとして、これは赤字の問題にもみな全部関係があることだ。この問題は単純に個人責任に帰することができない問題です。社会問題ですから、この問題は。  だから、そういう問題についてはやはり国民はお互いがそれぞれの立場に立って、生活水準はもちろん考えなければいけないけれども、社会的に保障していくという考え方保険と一緒に保障主義を取り入れていくという考え方、逐次それを拡大していくという考え方、つまり税金というものはそういうふうに——公平に取られているとは言いませんよ。あるいは保険料のほうがある意味じゃ公平かもしれませんよ、所得に応じて取っているのですから。所得の再配分ですから、保険税ともいうのです。これは全部源泉所得で取っていったり、あるいは差し押えしたりしているのですから、これは税金と同じような所得に応じた一種の付加金です。だから、そういう機械的な議論はともかくとして、税金というのは個人、法人その他に対しまして、社会的に平等、公平の原則で国民の負担をきめて国の財政をまかなうのですから、そこからある程度金を注ぎながら、国民の立場から見て、税金で払うか保険で払うか自己負担でやるかということの整理をするのが、私どもはこれからの医療改革の課題であると思うわけですよ。そういう考え方をしないで、斎藤厚生大臣は財政調整だ、へっちゃくれだと、何か中身のわからぬことを言っているのじゃないかというのが私の意見です。  だから、世の中は時代は変わっているのですから、申し上げましたようなことについて、十一兆円の予算の中で、そういう国民の立場では何で負担すべきかということを考える。保険負担するといって保険料負担するのが悪いとは私はいえない、取り方に問題があるわけですから。これは修正した付加税ですよ、所得税の。しかしながら、これを機械的に進めていったならば、事業主の八千億円の負担はだれが負担するのだという議論になってくる。事業主の社会的の責任の問題になってくる。あなたが、がらがら計算をずっと進めていくと、あなたのような考えを進めていくと、そうすると付加給付をやって、できるだけ早く治療しようとか軽いうちに治療しようとかいうことができなくなる。家族の五割の問題だって——保養所があるのは私はいいと思う。保養所があるのだったら、個人個人が別荘を持てないのだから、五日制になるのだから、そこへ行って土曜日曜休んでそういうところを使えばいい。これは特に病後の人なんかについて適用できるような、そういう運営のしかたをすればいいのであって、何も目のかたきにする必要はないわけです。少々の付加給付をいたしましても、いま日本では足りないのですから、不十分なんですから、そういうことは責任主義でやったらいいと思う。ある程度やったらいいと思う。  そういうことができないような条件、客観的な条件のそういう労働者や国民に対して国の保障をどうするか、政府管掌の国庫負担をどうするかという議論を私どもはいましていると思うのです。  だから、いま私が幾つか申し上げたやつは、これはまとめて私どもはいま議論いたします。私どもの考え方も提示をいたします。いたしますが、そういうことの考えを総合的にやらないと、主観的に十分コミュニケーション、議論しないのに、厚生大臣意見が一方において独走するということになれば、かえって全体を混乱させるのじゃないかということを私は客観的に見ている。一々について答弁すれば長いことになる。でありますけれども、厚生大臣は、その点は十分議論を踏まえて、自分の考えの誤りなきを期してもらいたい、私はこういう希望を持っておりますが、大臣いかがですか。
  201. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの御意見も、大筋においては私も同感でございます。ことに社会原因から起こってきた健康破壊は、これはやはり公費で見ていくということの原則は私はしかるべきだ、かように考えております。いまおっしゃいました大筋では、私は賛成でございます。
  202. 大原亨

    ○大原委員 そこで、その賛成、賛成ということはいいけれども、原因の究明と実態を踏まえての対策がないということが、日本国厚生省の最大の欠点である。最大の欠陥はそれである。だから、これは具体的に議論しないと問題は一歩も前進しない。厚生大臣も、私どもから言うならば、当事者能力のありやなしやということが議論になる時代でもあるし、あなただけの責任ではないが、あなたは前に厚生大臣をやったことがあるから責任はあるけれども、ほかの厚生大臣もたくさん責任があるけれども、佐藤総理の責任もある。佐藤総理がこういう問題について何ら決断しない。決断しないことが日本の史上最長の内閣であったという理由である。唯一の理由である。だからこれと議論をして、日本の医療改革を論ずることは、非常に時間的にも労力的にもむだじゃないかという疑念を持つ者は私だけではない。そこで、国庫補助の問題を、この前からずっと議論があるから詰めていきたいと思う。  この間の山本委員の質疑応答を、議事録が出てまいりましたから、ちょっと読んでまいりましたが、こういうのが議論になっておるわけですね。つまり山本委員質問は、後藤委員質問とは観点を変えている。後藤委員のは制度上の問題を頭に置きながら議論している。山本委員質問医療費のベースで国の助成を考えていくか、国費を導入していくか、給付費のベースでやっていくか、その前提があるわけですよ。私が議論したような前提があるわけです。貧乏というのも結果的に見れば、社会的な原因ですからね。老人問題も社会的な原因ですからね。ですから、そういう議論はもう一応、卒業していないけれども、卒業したとみなして進めるわけだけれども、またもとへ返るけれども、そこで問題は、総医療費ベースで計算をしていくのか、給付ベースで計算をするのかということで、かなり議論が前向きで詰まっていると思うのですが、それを私はもう少し議事録をたどりながら質問を進めてみたいと思うのです。  いろいろと質疑応答がありまして、大蔵省の渡部主計官は三度、四度にわたって答弁いたしておりますが、渡部説明員、前略でありますが、「それで単純に、国民健康保険で被保険者が一〇〇の総医療費がかかるといたしますと、百分の三十は保険給付外のいわゆる自己負担になります。」これはそうだ。七割の負担だからそういう計算になる。「残りの百分の七十につきまして、その分を事業主負担というような考え方で折半負担したということにいたしますと、これは総体の医療費に対して百分の三十五相当になろうかと思います。そうすると、国民健康保険に対する国庫補助は百分の四十五でございますから、百分の十が百分の三十五以外に出ておる分になる、こういうことになろうかと思います。」山本委員、以下略。この意味厚生大臣はわかりますか。はなはだ失礼でございますが、大切な点ですから、失礼を顧みないで質問いたしますが、これは御理解になりますか。
  203. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 わかります。
  204. 大原亨

    ○大原委員 しからば厚生大臣質問いたします。  つまり百分の七十、国民健康保険に対する補助というのは、私が説明する必要はないんだが、わからないことを質問するのがいいんだけれども、四割五分、四五%というのは、総医療費に対する四五%ですね。政府管掌とは違うわけです。政府管掌に対する定率補助とは違うわけです。そこで百分の四十五というのは、渡部主計官のことばが二回、三回出ておるけれども、三十は自己負担であるが、七割、七割だから、七十の半分、給付の半分を事業主負担とすると百分の三十五だというわけです。そうすると百分の四十五、国が出しておるわけですから、調整交付金でばらまいておるのがありますけれども、出しておるから一〇%、百分の十ほど国民健康保険では医療費ベースで補助をしている、こういう見解ですね。国民の立場でバランス考えると、こういう注釈が前についております。これは何かというと、国民健康保険と政府管掌の健康保険の問題です。そこで五%定率補助の問題がいままでかなり集中的に議論になっておるわけです。表面に出たり出なかったりして議論になっておる。それは一つの問題のポイントです。これだけではないですよ。私は三つくらいあると思うのですけれども、一つのポイントだ。  そこで、政府管掌では五%ということになっておるけれども、本人十割、家族五割の政府管掌において給付ベースで考えたならば、国民健康保険の一〇%の医療費ベースは何%になるか。この〇%をこえるということはわかるでしょう。厚生大臣質問するんだから、大ざっぱな質問をするわけだけれども、こまかいことは政府委員に聞くが、一〇%をこえるということはわかるでしょう。国民健康保険医療費ベースでいう百分の十というのは、政府管掌の給付ベースでいうならば一〇%をこえるということはわかるでしょう。それはわかるかわからぬか、ノーかイエスかで答弁してもらいたい。
  205. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  206. 戸澤政方

    戸澤政府委員 給付ベースに折り返しますと、約一二%弱になります。
  207. 大原亨

    ○大原委員 ここで参考人をせっかく呼びましてやりましたときに、社会保障制度審議会の近藤会長代理が、これもすぱっとしたものでしたが、一四%というのが出たわけです。いままで議論になりましたけれども、川俣委員からも議論になりましたが、一四%という近藤委員説明根拠を政府委員は検討したことがありますか。
  208. 戸澤政方

    戸澤政府委員 これもきのうでしたか、御質問がございましたけれども、近藤先生の一四というのは、どうも国保の国庫補助、調整交付金を除いた部分の国庫補助が四割それを二で割ってその七割というような計算のようでございますけれども、どういうことでもってそれを二で割り、さらに〇・七をかけたのか、ちょっと私どもにはわかりかねます。
  209. 大原亨

    ○大原委員 そこで、これはきわめて重要な議論をしておるわけですが、やはり考え方として、政府管掌健康保険は、山本委員も指摘をしておりましたが、賃金の面においても、ある意味においては労働条件においても、あるいは保険料負担においても、給付の支給においても、あるいは年齢構成からいっても、社会問題をかかえ込んでおると思うのです。ですから、ガラガラ計算という考え方は一応留保しておいて、やはりそういうものに対しては、たとえ組合をつくっても、将来組合の情勢が変わる、石炭みたいなことがあるのですから、国全体の社会的な問題としてつき合っていく、そういう政治があってしかるべきです。それは保障の考え方ですが、保険といい、保障というのも、突き詰めてみれば、中身を具体的に議論すれば、百八十度違った問題ではないと私は思っております。  問題は、中身の運営、実質だと思っていますが、そういうことから考えてみて、政府管掌の中へ——国民健康保険とかあるいは組合管掌の健康保険等との考えを大まかに置きながらも、国庫負担、国の責任をどれだけ導入をしておいて、そこで保険の改革を進めていくか、こういう議論というものは、これからの長期的な展望の上に立って正しい議論である、そういう原則的な立場は正しいというふうに私は思うわけです。  これは私の大まかな見解で、こまかな議論をしておるわけではありませんから、その大まかな見解について、厚生大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  210. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大まかな御見解について、私も大まかに、やはり賛成でございます。
  211. 大原亨

    ○大原委員 定額を定率に変えていくということは、これはよい改正でありますが、当然の改正です。昭和四十二年以来の議論を、私は先般もやったから蒸し返しませんが、全く政府の責任である。そういう政治責任からいっても、国庫負担を増大することは当然のことであると思うし、また政治責任の問題、これからの制度上の改革の問題から考えてみても正しい議論である。矛盾を拡大する議論ではない、私はこういうふうに考えるのです。  私は、自営業者の保険と組合の被用者のばらばらの保険を、格差を是正して水準を引き上げていくためには、被用者の保険は連合体をつくって連合会を運営していく。あるいはあまり大きくなってもいかぬから、地域においても組織をつくって参加をしていく、こういう道をやはり開くべきである。そういう改革をすべきであって、単に全部これを政府管掌にしてしまうということではない、日雇健康保険はそういうことではない、そういうふうに考えるわけです。これは余談であります。  こういうことで、制度上から考えても、四十二年以来のこの問題を扱ってきた佐藤内閣の政治責任から考えても、この赤字を処理する問題は、抜本改正や総合対策を考えるという観点の上に立って、大幅な国庫負担をやるべきだ、こういう理由が一つ加わっておりますが、この問題につきまして、厚生大臣からもう一回、追加されました意見を含めて、見解を述べてもらいたい。
  212. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大幅ということになりますと、小幅ということになりますから、そういう考え方で、いままでの定額補助という考え方を定率にしたということは、これは百八十度考え方の違いである、かように思います。  先般も大蔵省から、国保、それから政管健保の五%、この比率はどうかということについてお話がございまして、政府の見るところでは、これで国保と大体つり合いのとれた国庫補助あるいは国庫負担であろうというように御答弁を申し上げたわけであります。
  213. 大原亨

    ○大原委員 いままでは序論の序論を議論したわけでありますけれども、ここで私どもが赤字問題を考えていく際に、今日まで議論した点を踏まえて明らかにする点は、何といっても、一つは薬剤の問題であると私は思います。日本の総医療費の規模、保険財政で負担し、国家財政で負担し、あるいは自己負担する、その総医療費全体が三兆円の規模になっておって、この中身の分析を、私どもはこの際財政問題として議論しなければならぬ。その際に避けて通ることのできないのは、やはり薬剤、注射の問題である。そういう日本的な特色の問題である。  そこで、具体的な問題について私は質問をいたしたいと思うのだが、これはちょっと時間がかかるから、あと回しにしましょうか。  そこで問題は、薬や注射代でかせいで、病院やその他の公立病院に至るまで経営を考えなければならぬとか、個人の医師もそのことを考えなければならぬというふうなことくらい、医師や歯科医師や薬剤師その他を含めて、医療担当者を侮辱するものはないと私は思っている。そのさやかせぎをやる者がもうかるというようなことがあれば、これはメーカーにとっても、自分の企業の公共性については誇りを失って、他の企業、ラーメンやその他と同じような——ラーメンはともかくとして、それと同じような話になってくるのではないか。いろいろと患者との信頼関係を妨げておるのは、これでかせぐというその誘惑である。逆に言うならば、技術料を軽視しておるという裏づけでもある。だから、さらに言うならば、一方環境破壊や内部からの汚染の問題等を含めて、化学物質から健康を守るという大きな課題があるときに、医薬品の管理責任が明確でないということは、国際的な例から見ても国民的な立場から見ても納得できないことではないか。  そういう、本論に入る序論の意見に対しまして、厚生大臣はどういう考えを持っておられるか、ひとつお聞かせいただきたい。
  214. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 医薬品の管理責任は、やはり薬剤師、薬局に持たせるべきだ、かように考えております。
  215. 大原亨

    ○大原委員 それで、私はこの資料を出してもらいたいと思うのです。  国が経営をしておる国立の病院の中で、実際に薬価基準に搭載してある、保険薬に採用してある医薬品で、実際に購入している価格は一体幾らなのか、国がやっておることであるから、そのデータを出してもらいたい。  バルクライン九〇方式でやっていることは私も知っているけれども、そのギャップがあることを私どもは承知をしておるという前提で聞くわけだけれども、いまの制度はだれが悪いというようなことは言わない。独立採算を強要している政府や大蔵省が悪い。特に大蔵省は、それに圧力をかけたやに思われる。あるいは独立採算の制度というものが、むしろ赤字が出るほうが、国民の負担からいうならば軽くしているということになる場合が多い。しかも、化学物質による人間の体内汚染、残留農薬、食品添加物、洗剤等が問題となっているときに、たとえばスモン病やその他の難病がたくさんあるとかという例を示すまでもなく、これが国際的な常識から考えても、あるいは一般的な常識から考えても、医療事故を起こすような、健康を破壊するような原因になるということはもってのほかである。  そこで、私が具体的に議論をする際に必要だから出してもらいたいのは、これは重要な問題であるけれども、それらのことを知っての上の議論であるけれども、実際の医薬品の購入価格は薬価基準との間において、国立の病院においては、どのようなギャップがあるものだろうか。私は長い間議論してきたことですから、この問題についてまず資料を出してもらいたい、それをお答えをいただきたい。
  216. 松尾正雄

    松尾政府委員 国立病院で使っております薬品全部と申されますと、ちょっと時間がかかりますが、主要品目とでも申しますか、かなりひんぱんに使っている品目につきましては、私ども調査しておりますので、調製をいたしまして提出いたしたいと思います。
  217. 大原亨

    ○大原委員 保険局はどうかな。医務局にはその資料ありますか。
  218. 松尾正雄

    松尾政府委員 いま申し上げましたように、全品目ということになってまいりますと困りますが、国立病院で購入いたしておりますものの中で、主要品目については私どもの手元にございます。
  219. 大原亨

    ○大原委員 国立病院、療養所その他は、医薬品の購入は一括購入なんですか。個別的に経営で購入しているのですか。
  220. 松尾正雄

    松尾政府委員 全部が共通でやっておりますのは抗結核剤あるいは、らいの薬、これは特別なものでございます。これらにつきましては、中央で一括購入という形をとっております。  その他の品目のその他の薬品は各医療機関ごと、各病院ごとに、それぞれ成規の手続で競争入札等によって行なっております。
  221. 大原亨

    ○大原委員 いまのデータに加えて、地方公共団体の病院においてはどのような購入の実態であるか、ギャップがあるか、これも資料を出してもらいたい。これはどこが担当いたしますか。
  222. 松尾正雄

    松尾政府委員 地方公共団体でございますので、自治省のほうでそういう十分な資料を持っておりますかどうか問い合わせます。  それから薬価の品目別の価格ということになりますと、いまのようなことで自治省のほうにも相談をしてみませんと、ちょっとにわかにお答えできませんが、何と申しますか、別の指数にいたしましたようなもので、各自治体の団体の病院の総括的なものを私ども検討した記憶がございます。そういったようなものが、あるいはお役に立つかもしれませんが、そこいらを自治省とも少し相談をいたしますので、余裕をいただきたいと思います。
  223. 大原亨

    ○大原委員 そういう文書は機密文書ですか。
  224. 松尾正雄

    松尾政府委員 機密じゃないと存じます。
  225. 大原亨

    ○大原委員 私は最も必要な資料について要求いたします。いま出せれば出してもらいたいし、出せなかったら用意して出してもらいたい。医療担当者はOT、PTその他含めて最近は非常に多いわけです。医師、歯科医師、薬剤師、看護婦というものがいつも議論になるけれども、その他非常に多いわけです。その医療担当者の種類をあげてください。そしてその人数が出せますか。それから大切な問題は、点数計算の中では、それはどういうふうな処理をされているか。その人たちの技術の評価、労働の評価というものはされておりますか。それから養成計画については一貫した計画がありますか。答えられるものだけ答えて、あとで検討して資料を出す場合には検討して出す、こういうふうに言ってください。
  226. 松尾正雄

    松尾政府委員 医療従事者の数、種類等につきましては、われわれのほうで調べたものがございます。ただし非常にたくさんの種類がございますから、まとめまして資料として提出させていただきます。  それから、いま御指摘の点数の分布の問題、評価の問題は、社会保険におけるいわゆる診療報酬の評価だと思いますが、これもまたいろいろな形で入り組んでいると思いますので、これは私どものほうが保険局と相談いたしまして、これも一つの資料としてまとめさせていただいたほうが便利かと思います。  それから養成計画等につきましても、ある種の見通しというようなものを持ったものもございますので、これらもまとめまして提出させていただきたいと思います。
  227. 大原亨

    ○大原委員 ひとつ例をあげて説明いたします。リハビリテーションとか、予防とか、健康管理というものを一貫して医療考えようということを厚生大臣はねらっている。そういうことを一貫して医療考えようという基本法があなたのほうにあるが、その厚生省の基本法はまだ出てきておらぬ。出てきておらぬから、こういう議論をするのは、ばかばかしいと思う。そういう議論をする責任はないと思う。これは全部ガラガラにして、こてんばんにしてばっとやればいいと思うけれども、あの中でリハビリテーション、それから予防、健康管理について一貫して医療考えるんだという考え方一つある。しかしあとは全部審議会一任だ、審議会でやってくれという、そんな不見識なことはいまどきありはせぬ。そういう無責任なことをするから混迷するのだ。  その中で、一つの例ですが、OTですね、作業療法士。これは点数計算の中に入っているんですか。これは重要な人ですよ。作業療法士は重要な職務です。これは医療費の中の点数の基礎になっているんですか。
  228. 戸澤政方

    戸澤政府委員 作業療法士は、医療費としては入院費の中に入っておるようであります。
  229. 大原亨

    ○大原委員 入院料の中に幾ら入っておるか。
  230. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ちょっとこまかいことは、さだかでございませんので、後ほど調べましてお答えいたします。
  231. 大原亨

    ○大原委員 さだかでないということですが、一ばいあるから、ひとつ全部調べて出してもらいたい。これは十幾つあるよ。  それからこの資料をいま出せますか。いままで差額ベッド、付添婦が議論になったが、それを現実にどのようにとっているか。国民の患者の立場に立ったら、これは負担です。保険料負担が増大するのと同じだから、幾ら十割給付だってだめですよ。そういうものの実態をどういうふうに把握しているか。その把握している資料があればいま出してもらいたい。いまなければ、あとで出してもらいたい。
  232. 戸澤政方

    戸澤政府委員 差額ベッドにつきまして、少し古い資料ではございますけれども、差額ベッドを実施しているベッド数とか病院数とか、そういった資料がございますので、それは後ほど提出いたします。しかし、どのくらいの差額をとっているか、これは調査したものはございません。
  233. 大原亨

    ○大原委員 医療機関にはベッド数があるわけですから、そのベッドは何割が差額ベッドでどの程度とっている。基準看護のそういう法令の基準はあるけれども、実際上付添婦を雇わなきゃいけない、看護婦が足りない。これは患者の立場に立てば二重払いだ。こういう問題についての実態を私ども赤字を議論する際には、当然問題にしたいから、これも出してもらいたい。  しかし、問題はまだたくさんあるわけですよ。医薬品の問題等については、まだあるわけです。私はきょうぜひ聞いておいて議論したいのがあるわけです。たとえば製法特許を物質特許に変える、技術を尊重していく、こういうたてまえ、あるいは医薬品の製造工場の基準は改革するという問題、前から議論したことがある。この問題はどうしているんだ。外国では医薬品を製造する工場の基準というものが非常にきびしい。日本でもやるのだということをやっているから、どういう過程にあるのだ。最近は輸入商社の伊藤忠その他も薬品部を設けて、販売するだけの会社を設けているというところがある。日本の特許法はでたらめであるから、もぐれるから、そこで日本人をモルモットにして、ここで一かせぎしようというものもある。医学教育の問題もある。一千万円、二千万円、三千万円負担をしている問題もある。これは直ちに医師のモラルに関係する問題だ、医道に関係する問題。これをどうして弁償するかという問題になる。大臣の中にも、実際上こういう問題の渦中にある人がおる。そういう人にも出席してもらいたい。こういう問題等、あげれば切りがないわけです。ですから、この際、医療保険の赤字の問題を国民が負担する際には、こういう問題は厳粛に一つ一つを国民の立場に立って聞きただしておかなければいかぬ。  ですから、委員長、いまいろいろ質問しましたが、重要な資料についてはほとんど出ません。私は、これで質問は中断しておきます。きょうは予定の時間を少しオーバーいたしましたから中断をして、またこれは理事で相談をして、この問題を質疑を深めていく。私どもは何もこの問題については、時間かせぎなんか考えてない。問題を徹底的にこの際究明する。赤字の問題を中心として、日本の医療のあるべき姿を究明するというのが私どもの責任ですから、それをやるということをひとつ明確にしておく、責任を明確にしておく。  そういうことで、私の質問は一応ここで保留をいたしまして、終わりたいと思います。
  234. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  235. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて。      ————◇—————
  236. 森山欽司

    森山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  労働関係の基本施策に関する件、特に政府関係特殊法人に関する問題について、参考人に御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は、来たる十六日火曜日午前九時五十分理事会、十時より委員会、また大蔵委員会及び物価問題等に関する特別委員会との連合審査会は、午後開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会