○小池参考人 私は医師の一人といたしまして、今回の
法律改正の問題に意見を述べさしていただきます。
本来われわれは
医療が良心的に正しく行なわれるということにもっぱら力を注ぐのが本筋であります。そういう
意味合いから、現在国民の
医療ということに全責任を持って当たっておるわけであります。
で、国民皆
保険という国の方策がここですでに定着いたしまして、そういう方式のもとに
医療が行なわれるということになれば、当然私たちといたしましても、これに万全の協力をするという
体制をずっととってきておるのでありますし、これからもそういう
方向で国民皆
保険の立場でこれに協力したいと考えておるのであります。しかし、現在の
法律は少なくとも私たちが
法律上の強制された立場で国民皆
保険に参与をしておるのではございませんで、医師の使命感としまして、当然、国民のためを思い、そういう使命感の上に立ちまして全面的な協力を申し上げるということになっております。そういう立場から私たちは国民皆
保険の
制度に賛成をし、また協力しているわけであります。
それで、今回の政管
健保の財政
対策問題につきましては、これのみを切り離しまして、これをどうこう、賛成であるとか反対であるとか、これを総括的に言ってしまうには、これは影響を及ぼしておる大きな問題がいろいろあるわけでありまして、いわゆる抜本
改正と称されているものがこれに関連してきております。でございますが、今回は少なくともこの政管の財政
対策という面に限りまして若干の意見を申し上げたいと思います。
医療というものは、学問の進歩が日常非常に早いテンポで進められておりまして、これを即刻取り入れるということが、国民のためにどうしてもわれわれとして主張しなければならない問題であります。したがって、その進歩とともに、あるいは薬学の進歩というものを含めまして、
医療費というものは世界各国どこでも年々ふえていく傾向にあるのでありまして、それをあえて
医療費がふえるのはけしからぬという目をもって、これに対処していきますれば、これは返り返りまして国民に対する不幸ということになるのではないかというふうに思います。
もう
一つは、
医療というものが、年々そのような質の変貌がありまして、したがって、これを金銭に換算しますればふえていくということになりまして、これによりまして
医療費というものは年々ふえていきます。どこでもふえていくわけでありまして、したがって、
保険の立場から、
昭和四十七年度は一体収支
対策はどうすべきかということを各方面でお考えになりまして、そしてこれだけの
医療費が必要だということになれば、それに対する収入の道を考えていただくのも当然なのであります。そういう
意味で、私は今回財政
対策という点に限って申し上げますれば、一応支出に見合う収入は必ず確保していただきたいということも申し上げねばならないと思います。
しかしながら、そういう操作の中で
問題点はたくさんあるわけでありまして、
健康保険の
法律はまず一年に一回、あるいは二年に一回、国会において
改正されております。その
改正が行なわれるたびに、まずその財政
対策におきまして、どういう
方向を
改正の中身としてそれに盛り込んでいかなければならないかと申しますれば、やはり皆さんの立場としては、国民全般的な立場から、その国民に御負担願う
保険料のほうを、これは全国民が公平に負担してもらうという立場からお考えになっていただかなければならないと思います。今回までいろいろと
健康保険法の
改正が行なわれてきましたが、そういう
意味から、国民の負担を公平にしていくということからは、ほど遠い
改正に今回まで終わっておりまして、そういう公正、公平な負担を心がけていくという立場から、
改正に盛り込まれたことは今回まで少しもございません。政管
健保なら政管
健保の
保険料をどうするかということだけに、そういう狭い範囲から、料率がどうだこうだという議論がなされまして
改正が行なわれてきたといたしましても、いわゆる
健康保険法の中で、これの対象になります国民の半数というものは、必ずしもこの政管
健保だけでございません。政管
健保の
対象者は二千六百万人くらいございますが、それとほぼひとしい組合管掌の
保険対象者がおるわけであります。そういう
意味から、国民の約半数を支配しております
健康保険というものは、やはりその中で少なくとも公平な立場でものごとをきめていかなければいけないのではないかと思います。これをさらに残り半数の国民
健康保険の
対象者まで入れて
ほんとうは考えるべきでありますが、それは一応抜本という立場から十分御判断願いたいわけでございまして、少なくとも
健康保険法の
改正と銘打ってこれを審議におのせになるのでありますれば、その中でいわゆる政管の被
保険者の方々と組合の被
保険者の方々は公平な立場でこれを取り扱っていただきたい、そういう
方向への
改正ということで、少しずつその
方向の
改正を盛り込んでいただかなければ、国民に対しまして不公平な取り
扱いを皆さんがなさったという批判は当然受けなければならないのじゃないかと思います。
一例をあげて言えば、いわゆる政管の方々は標準報酬の平均においても少ない。これを一〇〇といたしますれば、組合
関係の被
保険者はおそらく、これは標準報酬で言いますれば一二六ぐらいになっているのじゃないか。新しい資料は私、持っておりませんが、私が知っている範囲ではそういうふうに違うということは、これははっきり言いまして、国民の半分を政管と組合と二つに分けておる現状では、片方は収入のいい人々のグループだ、片方の政管は収入の劣っているグループだということは、はっきり言えると思うのであります。そういう
意味から言いまして、こういう
方向をそのままにしておきまして、政管のほうからだけ
保険料を上げていって赤字を埋め合わせるという
方向は、
基本的には私は賛成しがたいのであります。
そういう
意味から言いまして、今回の
改正の要点は五つあるというふうに、過般、大臣が御説明になったわけでございますが、この
保険料の上限、下限の問題とか、これは当然社会の、あるいは経済の
状況に合わせまして、おそらく毎年でも
改正していっていいことでございます。
また
保険料率の問題、一体何%がいいかということを私たち医師の立場からあれこれこまかいことを議論することも論外の人間ではないかというふうに思っておりますが、いずれにしても、この上げるべき料率というものは、国庫負担をどれだけ
政府が負担してくださるかということによって、自然的に、この支出のワクがきまっておれば収入のワクもきまる、その中で動かすことでございますから、国庫負担のほうに重点を置きまして、そちらのほうで可能な限りの最大の支出を願いまして、その上でこの政管の方々の
保険料率のアップをできるだけ押える
方向への努力をしていただきたいわけであります。
また、いわゆる特別
保険料につきましては、私たちは、筋といたしましては総報酬制を考えておるのでございます。賞与につきましても、これは賞与をいただく立場の方々が、いまもいろいろお話に出ましたように、もらう際には、何か臨時的なものではなくて給与の
あと払い的な、もうきまったものだという概念でこれを受け取り、そこから支出をする場合には臨時的の収入だからというような気持ちも、今度は何か持っていられるように感じるのでありますが、いずれにしても、この被用者
保険ということそのものに、いろいろな疑問を私は持っておるのであります。そういう
意味から、今回は申し上げませんが、給与だけに限って
保険料を課するということになりますれば、少なくともこの特別
保険料として賞与も合理的な計算の上で加算をして、総報酬制に一歩でも近づける
方向へ
改正していかなければいけないと思うのであります。
ただし、先ほ
どもどなたかお触れになりましたように、いわゆる政管と組合の公平という立場から、組合のほうはもう賞与からは一銭も取らなくてもいいような解釈ができる
法律というのは、私はきわめて不可解でございます。そういう
意味で、公平という立場から、特別
保険料に対する料率も、今回の
改正では、組合で自分の財政
状況で自由にできるようになっておるようでありまして、千分の十をあえてとらなくても、千分の一でも二でも、それは組合で自主的におきめになるというような
法律のようでございます。そういう立場から、一方の政管は千分の十、つまり本人負担はその半分とはっきりと
法律できめてしまうという不公平な立場を強制することにならないようにこれはお考え願いたいわけであります。
現状でも、すでに負担の不公平ということがはなはだしくなっておりまして、特にこれは
健康保険組合で出されている年報にあることだから、はっきりしたことだろうと思いますが、一方の政管の被
保険者は千分の七十の半分、三十五は、きちんきちんと月給から差し引かれる。しかし、組合
関係者のほうは、これは御自分で自主的にある範囲の中でおきめになっている。千分の二十あるいは十五というのもあったようでありまして、ことしはどうなっているか存じませんが、少なくとも公表された資料では、千分の二十しか本人は出していないというところも多々あるわけであります。こういう不公平ということは、私は国民の立場にかわって、ひとつ考えなければいけないのではないかというふうに思います。特に、いろいろ資料を拝見しますと、マスコミ
関係の新聞社とか、あるいは放送
関係とか、そういったところの組合は、事業主によけい出させて、本人は千分の二十とか、きわめてわずか出してすまし込んでいるということも、これは組合自身がはっきり数字でお出しになっている。
それから、いろいろ差しさわりがあるかとも思いますが、市役所とかああいうところは、本来共済組合であるべき形で出発したのが、
健康保険組合のほうが都合がいい――というのは、料率をかってに減らせるから都合がいいのでありまして、私に言わせればそう思うのでありますが、これがみな
健康保険組合をつくっている。そして料率は、市役所と労組が交渉なさるかどうか私は知りませんが、マスコミと同じように千分の二十ぐらいに減らして、
あとは市役所に出させる、こういう姿は不公平の最たるものでありまして、そういうものはぜひ
健康保険改正のたびに頭に入れながら
法律改正をしていただかなければいけないのではないかというふうに思うのであります。
時間が参りましたので、また御
質問にお答えをする形でいろいろ述べさせていただきますが、国庫負担の
関係につきましては、これはもう少しふやしていただきたい。それによって
保険率を減らすことが可能になるという
意味から、可能な限りふやしていただきたい。
そして累積赤字のほうの、厚生
保険特別会計のほうでは、いわゆる赤字のたな上げをしてくださるということであります。本来ならば、これまでの累積赤字というものは、収入の道を講ずる上におきまして非常に不公平があったというところから出てきている、それも原因の
一つになっているのでありまして、ひとり政管の被
保険者が負うべきものではないと思いますので、これを今回国庫により一応解消いたしまして、四十八年度から新しい立場でりっぱな
保険制度にしていただくという
意味を感じまして、私としてはこれも賛成いたす次第であります。
以上、私の述べましたことは非常に概念的なことで、お役に立つかどうかわかりませんが、
法案の審議にあたりまして私が申しましたことが、いささかでも御参考になれば幸いと存じます。どうもありがとうございました。(拍手)