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1972-04-21 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十一日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君    理事 増岡 博之君 理事 山下 徳夫君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       有馬 元治君    井出一太郎君       大橋 武夫君    梶山 静六君       藏内 修治君    小金 義照君       斉藤滋与史君    田中 正巳君       竹内 黎一君    中島源太郎君       中村 拓道君    野中 英二君       別川悠紀夫君    渡部 恒三君       大原  亨君    島本 虎三君       平林  剛君    八木  昇君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    西田 八郎君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   井出一太郎君     田中 正巳君   大原  亨君     平林  剛君 同日  辞任         補欠選任   平林  剛君     大原  亨君     ————————————— 四月二十一日  緊急雇用安定臨時措置法案田邊誠君外六名提  出、衆法第二四号) 同月二十日  ガダルカナル島及びセントジョージ島における  旧日本兵遺骨収集並びに生存者救出に関する  請願進藤一馬紹介)(第二六三〇号)  同(田代文久紹介)(第二六三一号)  同(中島茂喜紹介)(第二六八三号)  同(山崎平八郎紹介)(第二六八四号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第二七一〇号)  同(石井光次郎紹介)(第二七三〇号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第二八〇四号)  同(細谷治嘉紹介)(第二八〇五号)  国民年金法年金内容改善に関する請願田代  文久紹介)(第二六三二号)  医師看護婦の増員に関する請願田代文久君  紹介)(第二六三三号)  同(田代文久紹介)(第二六八八号)  同(山原健二郎紹介)(第二六八九号)  同(田邊誠紹介)(第二七三一号)  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案反対等に関する請願田代文久君  紹介)(第二六三四号)  同(田代文久紹介)(第二六八六号)  同(山原健二郎紹介)(第二六八七号)  結核対策拡充強化に関する請願田代文久君  紹介)(第二六三五号)  同(寺前巖紹介)(第二六三六号)  同(田代文久紹介)(第二六八五号)  全国全産業一律最低賃金制法制化に関する請  願(勝澤芳雄紹介)(第二六三七号)  同(勝間田清一紹介)(第二七〇六号)  同(加藤清二紹介)(第二八〇七号)  通勤途上交通災害労働者災害補償保険法適  用に関する請願勝澤芳雄紹介)(第二六三  八号)  同(勝間田清一紹介)(第二七〇七号)  同(加藤清二紹介)(第二八〇八号)  要指示医薬品に係る厚生省告示第四百八号の撤  廃に関する請願外五件(鯨岡兵輔紹介)(第  二六三九号)  同外二件(田中榮一紹介)(第二六四〇号)  同(山村新治郎君紹介)(第二六四一号)  同(石井一紹介)(第二六八一号)  同外五件(鯨岡兵輔紹介)(第二六八二号)  同外七件(鯨岡兵輔紹介)(第二七〇八号)  同外一件(田中榮一紹介)(第二七〇九号)  同外二件(田中榮一紹介)(第二七三四号)  同(森美秀紹介)(第二七三五号)  同外二十九件(小此木彦三郎紹介)(第二八  〇九号)  同外二件(田中榮一紹介)(第二八一〇号)  健康保険法改正反対等に関する請願春日一幸  君紹介)(第二六五一号)  同(田畑金光紹介)(第二六五二号)  同(塚本三郎紹介)(第二六五三号)  同(渡辺武三紹介)(第二六五四号)  看護職員育児休暇法制定に関する請願田中  龍夫君紹介)(第二七三二号)  海外引揚者福祉施設建設等に関する請願(田  村良平紹介)(第二七三三号)  ソ連長期抑留者の処遇に関する請願外三件(大  久保武雄紹介)(第二八〇一号)  同外三件(園田直紹介)(第二八〇二号)  同外三件(西岡武夫紹介)(第二八〇三号)  老人医療費無料化措置における所得制限撤廃  に関する請願橋本龍太郎紹介)(第二八〇  六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四六号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案審査のため、参考人に御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 森山欽司

    森山委員長 健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山下徳夫君。
  6. 山下徳夫

    山下(徳)委員 弾力条項についてお尋ねしたいのですけれども、医療費というものは、シーズンあるいは年によってかなり動くものであります。たとえばインフルエンザ等が発生いたしますと、医療費というものは急にかさむものでございます。したがって医療保険においては、毎年の支出状況、そういうものに応じてその収入を調節できるような制度にしなくてはいけない。そういう観点からすると、弾力条項というものは当然でありますが、いま申し上げたような対応性という面からすると、むしろ上限はないほうがいいんではないか、私はそのように思うのでありますが、今回の千分の八十という上限をきめられた根拠と、この八十という数字は一体何に基因しているのか、そのあたりから……。
  7. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お話のとおり、こういう短期保険におきましては、毎年の実施状況の変化に即応しまして、ある程度保険料につきましても、弾力的な運営がなされなければ運営上支障を来たすということは、当然のことではなかろうかと思うわけであります。それで、いまほかの保険政管健保以外の保険組合健保あるいは労災、失保、そういったものにつきましては、いずれもこういった弾力的な保険料運営が認められているわけでございまして、政管健保につきましても、四十年度まではそういう弾力条項が認められておったわけでございます。それで、今回の改正につきましても、やはりある程度弾力的運営をひとつお認め願いたいという趣旨でもってお出ししたわけであります。  ただ、保険料料率弾力条項は、従来国会でもって保険料率をきめておったものを、保険者保険庁長官の判断にまかせるわけでありますから、これを上限なしに無制限に認めるというのもどうであろうか、行き過ぎであろうというところで上限をきめる。それからまたこの変更につきましては、社会保険審議会にはかってきめる、保険者の独断でなくて、審議会意見を聞いてきめるという歯どめをつけてあるわけでございます。  それから八十の根拠でございますが、これは以前御配付いたしました法律案参考資料の中に入っておりますが、かつて政管健保につきまして、その弾力条項を実施しておったときの、その弾力性の幅が大体上下十というようなところが例でございましたので、その辺のところが適当ではなかろうかというふうに考えております。
  8. 山下徳夫

    山下(徳)委員 社会保険審議会に諮問してきめるから、上限がなくていいのではないかという立場から私はお尋ねしたのです。そういう審議会に諮問しなくて、長官一人でできるということになれば、これは当然上限をきめなければいかぬわけです。時間がありませんからその問題は打ち切ります。  次に、特別保険料の問題。ボーナスというものは、もともと月々もらう給料とおのずから性格が違って、言うならば臨時収入的なものなんですね。したがって、そういう臨時的な収入まで保険料対象にするということに、何かわれわれ心情的に一つの反発を感じるわけなのです。このことについては社会保険審議会でも、かなり反対意見が強かったと聞いておるのでありますが、まず最初にお尋ねしたいことは、賞与にまでかげなければならなかった理由ですね。もちろんこれは一般保険料を低減するということでしょうけれども、ただ単にそれだけの理由ボーナスまで対象としたものか。
  9. 戸澤政方

    戸澤政府委員 現在政管健保保険料の取り方は、定期的な収入だけを保険料対象にしておりまして、ボーナスのような臨時的収入対象からはずしているわけでございます。その結果どういうことになりますかというと、大体給与に関する実態調査の結果から見ましても、給与の高い者ほど賞与も多いという結果が出ております。国税庁の調査いたしました民間給与実態調査の結果によりますと、民間における賞与平均年額は大体給与の三・五カ月分というのが平均でございます。ところが、これを所得階級別に見てみますと、所得の低い人ほど賞与の率も低い。高い者ほど賞与の額が高いという結果が出ております。大体所得が二十万円、三十万円程度の人ですとボーナスも一カ月分ぐらい。ところが所得が一千万、二千万以上というような人になりますと、賞与も四カ月分、五カ月分というふうに非常にふえてきております。ということは、従来のような政管保険料の取り方ですと、給与の低い者ほど相対的に保険料負担が多くなる、高い人ほどその負担が少なくなっているという不公平があります。そういうところから、累進的効果というようなものをねらいまして、賞与の一部を保険料の中に入れようということにいたしたわけでございます。  それからまた、今回の政管健保財政収支均衡をはかるためには保険料率で約千分の六程度引き上げることが必要な見込みになってまいりますが、これを本来の保険料として千分の六、一挙に引き上げるということは、ちょっと酷であろうというところから、料率引き上げは千分の三にとどめまして、あと残りの財源をこの特別保険料ということで徴収するというようなことにいたしたわけでございます。
  10. 山下徳夫

    山下(徳)委員 それは月給の多い人ほどボーナスも高いということは、数字的にはっきり出ているのですからわかるのですけれども、本来この保険性格から申しますと、これは加入者ひとしくだれでも恩恵を受けるというたてまえからするならば、ある程度受益者負担という形にあることが望ましい、私はそう思うのです。しかもボーナスというのは非常に動きます。変動が激しい。そういう面からすると、むしろ先ほど申し上げた弾力条項よりも、このボーナスにこそ、私は青天井にしないで、ある程度上限を設けるべきだ、このように思うのですが、この点どうです。
  11. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ボーナスに対する特別保険料についても上限を設けるべきであるという御意見、これは審議会答申にも、主として事業主側からも出ております。  ただ、今回の特別保険料ボーナスの一%を対象にしているものでございまして、それほどこれによる負担増というものが大きいとも考えられないわけでありまして、標準報酬最高等級の二十万円の人の特別保険料がどのくらいになるかといいますと、標準報酬二十万円の人のボーナス平均大体八十四万円くらいと、この実態調査から見まして見込まれております。そうしますと、それに対する特別保険料は一%ですから年に八千四百円。それで本人負担分はその半分ですから、四千二百円ということになりますので、まあこの程度ならば、いわゆる高額所得者については、そう大きな負担でもないんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  12. 山下徳夫

    山下(徳)委員 私はそう大きな負担ではないからいいということではなくて、保険の本質から見た場合に、そういう姿ではおかしいんじゃないかということをいま指摘したわけなんです。  そこで、次に、この問題については昨年の二月に出されました同法の改正案にも、たしかボーナスから徴収するという条項があったと思うのですが、今度のと昨年のと比較した場合に、法律的な仕組みの上で何か相違点がありますか。
  13. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ボーナス保険料対象に入れるという考え方、これは昨年六十五国会に提出しました法案にも出したわけでありますが、その中身は今回と若干変わっておりまして、昨年は、前年度に支給されたボーナス等の三分の一を毎月の標準報酬の中に織り込みまして計算するという方法をとったわけでございます。今回の案はそれと違いまして、その現年度に実際に支給されたボーナスの額、それを対象にしまして、その一%をそのボーナスの出たつどに徴収するという仕組みになっておるわけであります。両者の負担関係から申し上げますと、今回の案のほうが負担がずっと少のうございまして、こまかい計算は省略いたしますが、前回の案の大体半分くらいになっております。  それから、その扱いの上からどちらが簡便であるかと申し上げますと、前回の案ですと非常にやっかいでございます。前年のボーナスの額を申告させて、その三分の一を計算し、それを十二分の一して毎月の標準報酬の中に織り込む。しかもこれは健康保険厚生年金保険料計算を別々にしなければならぬというようなことになって、非常に事務的な負担増になります。今回の案によりますと、ボーナスの出たつど事業主から申告させまして、その翌月徴収する、しかも法律でもってボーナスの中から源泉徴収できるような仕組みになっておりますので、非常に簡便にできるわけでございます。
  14. 山下徳夫

    山下(徳)委員 その事務量の問題については、次に質問しようと思っていましたが、いまそこまで答弁がありましたので申し上げません。要するに昨年の三分の一標準報酬繰り入れという問題については、非常に煩瑣で事務量が増加するということは聞いておりましたが、ただいまの答弁で、まあ今度のはさほどではないということですが、どうかひとつその点は十分配慮をしていただきたいと思います。  次に、先ほども申し上げましたように、賞与というものの性格からすると、これを対象とするということ自体が決して好ましいことじゃないと私は思うのです。しかしながら一応バランスをとるためにやむを得なかったという事情は私もわかりますが、どうですか、これは永久にお続けになるつもりじゃないでしょう。そうでないとするならば、大かたのめどをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  15. 戸澤政方

    戸澤政府委員 法案はさしあたりという考え方になっているわけでありますけれども、ボーナス保険料対象にするという趣旨は、先ほど申し上げましたとおり累進的効果をねらう、つまりいま所得の逆配分になっておる不都合を是正しようという考え方でございますので、それなりに合理的な理由はあると思うわけでございます。しかし、本来保険は正規の保険料でもってまかなうのが筋でございますので、今後抜本改正その他この健保の今後の経営状況を見まして、本来の保険料でもって順調に運営できるというような見通しがつきました段階では、また検討してみたいと思っておるわけでございます。
  16. 山下徳夫

    山下(徳)委員 この標準報酬についてお尋ねしますが、標準報酬上限改定、これは最近賃金の水準がかなり高く上がっておりますので当然だと思いますが、ただ問題は一気に二倍に引き上げたということであります。審議会におきましても、これは指摘されておるようでございますが、段階的に引き上げるという措置がとられなかったものかどうか、ここらあたりをひとつお尋ねいたします。  同時に下限を一万二千円にされたこの一万二千円の数字根拠についてお尋ねいたします。
  17. 戸澤政方

    戸澤政府委員 標準報酬上下限改定につきましても、審議会からは、これは賃金実態に合ってないので、この改定については異存はないけれども、その改定の幅が少し大き過ぎやせぬかという答申をいただいております。しかし、実態から見ますと、賃金の上昇の状況から見て、きわめて実態に合わない結果になっておるわけでございまして、現在の、まず上下限改正は四十一年になされたわけであります。それ以来賃金は二倍以上に上がっておりますが、標準報酬上下限改定がなされておらなかったわけであります。  それで、現在の一番上限の十万四千円、このランクに位置づけられる被保険者分布がどのくらいになっておりますかといいますと、四十六年十月では約九・七%に達しておるということでございます。四十一年四月に改正したときの分布率は約一%であったわけでございます。それが九・七%、組合なんかに至っては、さらに二六%といったような大きな数字になる見込みでございます。そういったところから見まして、やはり上限は適当な分布まで調整すべき必要があるというところでもって、今回二十万円ということを考えたわけですが、この二十万円は四十七年の十月、今年の十月には約二%ぐらいになる予定でございます。そういったところから二十万円というような数字は、そう大きな引き上げではないであろうというふうに考えるわけでございます。  それから下限のほうを一万二千円にするということでございますが、これは現在の最低等級三千円は二十八年の十一月以来据え置かれておりまして、当時は四・四%の分布率でございましたが、四十六年の十月ではほとんどネグリジブルな数字でございます〇・〇〇〇一%、被保険者の数にしまして十二名という、ほとんどゼロに近い数字でございます。それで、現在船員保険のほうが最低等級を一万二千円としておりますので、船員保険並み改正をしたいというわけであります。
  18. 山下徳夫

    山下(徳)委員 今後の保険あり方について一言お尋ねしたいのですが、御承知のとおり、今日病院を開業するにはたいへんな資金が要るわけですね。特に都市部においては非常に高い土地代建築費、あるいは相当完備された設備というものは、ばく大な費用を伴うものでありますが、今日日本病院診療収入によって独立採算制をとっている以上は、こういった建設費というものも診療報酬によってまかなわれることはやむを得ないことでありますが、先進国のそれに比べますと、この設備費に対しては、別途何らかの措置をとる必要がある。  極端に申し上げますと、大学病院等においては研究費の一部まで診療報酬によってまかなっておるということを聞くのでありますが、これは保険趣旨からいうとおかしいのであって、やはり先進国のそれのように、建築費とか、そういう研究費というものは徐々に国がめんどうを見てやる。そうして、診療報酬というものは診療費のみに見合うような制度にしていく、こういうことのほうが私は正しい保険あり方ではないかと思うのでございますが、この点いかがですか。
  19. 登坂重次郎

    登坂政府委員 お説のとおり、診療報酬によって研究費病院施設費建築費等を見るということは、時宜に適していないものと思います。現在でもこの点において十数%、あるいは地方公共企業等においても補助はいたしておりまするが、必ずしもこの実態に即していないということにかんがみまして、今後お説のような、いわゆる看護婦養成所とか、あるいは病院研究費とか、そういう新築、建築等に関しましては、政府として資金の援助あるいは起債等を活用いたしまして、なるべく診療報酬からくる負担を軽減するようにひとつ努力せねばなるまい、そういうふうな方向で検討し、また今後もそういう努力を払うつもりでございます。
  20. 山下徳夫

    山下(徳)委員 次に、一律保険料制度についてお尋ねいたします。  今回の保険料料率が上がっておりますけれども、依然として全国一律保険料というものは貫かれており、この点については全然メスが入れられておらないということであります。やはり保険改正前提となるものは、医療機関適正配置ということを行なわなければ、私は非常に不公平であると思うのです。  おととい出された社会保険審議会答申の冒頭にも、いわゆる前提制度、つまり医療供給体制、この前提制度の整備と医療保険は、車の両輪であるということが述べられておりますが、私も全く同感であります。現に沖繩においては、人口比のお医者さんの数というものは、内地の二分の一なんですね。施設も悪い。これは沖繩に限らず、日本の離島、僻地においてもいえることであります。  一週間ばかり前の新聞によると、これは伊豆七島の新島というのですが、そこの異常妊婦の、胎児が横になっているやつを、どうしてもそこではできないというので、ヘリコプターで東京かどこかへ運ぶ途中で、ヘリコプターの中で出産した。これは珍しいことなんですが、うまく生まれたからいいけれども、こういうものを見るたびに、やはり医療機関適正配置というものは、これは早急にやらなければいけないと思うのであります。大都市になりますと、専門の医師もたくさんいるし、あるいは大学病院とか総合病院、あるいは個人病院にしても、かなり設備のレベルは高いのであります。しかも、入院外の一人当たりの医療費にしても、全国で大体六割ぐらいのばらつきがあるということなんですね。  こういう点を考えると、しかもまた全国に無医地区というのがまだ三千カ所もある。国民保険趣旨からいうと、こういう面にやはり早くメスを入れなければ私は意味がないのじゃないかと思うのですが、これについて、これは政務次官の御意見をひとつ。
  21. 登坂重次郎

    登坂政府委員 お説のとおり国民保険下におきまして、医療を均等に、また医療質等においても均等にあるべきだということは、これは当然の理論でございます。そういう意味合いにおいて今度の医療基本法及び健康保険抜本改正についても、特に医療の給付の均衡化ということに最も重点を置いておるわけでございます。  今日、過疎現象あるいは都市集中化人口移動等に伴いまして、お医者さんはどっちかというと生活程度が高い、また研究意欲もある等によって、どうしても都市に集中される、そういうことであってはいけないというので、無医地区解消及び地方医療体制強化のために、いわゆる検診車を派遣するとか、あるいは地方公立病院基幹病院として僻地医療等均衡をはかるように移動性を持たせるとか、なるべく地方のそういう過疎地帯医療供給体制強化ということに今後も十分留意して、またそれが解消のために、あらゆる努力をしなければならない、こう思う次第でございます。
  22. 山下徳夫

    山下(徳)委員 現在の政管健保対象人員は千三百万と聞いておりますが、これはたいへんなマンモス経営ですね。これじゃ私はやはり、政府がすみずみまで、こまかいところまで掌握して指導していくということは、おそらく困難だと思うのです。外国あたり先進国西ドイツ等の例を見ましても、こういった保険制度というものは、使用者労働者によって運営されるというのが正しいのですね。そのように、今度の抜本改正にもその趣旨は——その方向に向かうということは、きのうの大臣の答弁でも、あるいは抜本改正にも盛り込んであるということを伺っておるのであります。  したがって今後は、やはり行政指導によってこの政管健保をなるたけ少なくして、小さな事業場等はブロック別に一つにまとめるというような努力を払って、そうして最後に残った小さな集団だけを政府が財政的援助あるいは行政指導をやるというふうにいくのが私は理想ではないかと思うのですが、そうであるとするならば、ひとつすみやかにその方向に向かって指導してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  23. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お話しの御意見ごもっともでございまして、保険運営方式につきましてはいろいろな考え方がありますが、完全に負担とか給付の均衡を実現するためには、全国民一本にした保険に統合するというのも一つの行き方かと思いますけれども、しかし各国の保険には、それぞれ発達してきた沿革とかまた社会情勢等も違いますから、その情勢に応じた最も能率的な方法を考えて前進さしていくことが必要なことではなかろうかと思います。  日本の場合、被用者保険は、沿革的には初め組合方式を中心に発展してきたわけでありますけれども、その後皆保険、被用者保険については政府管掌による保険というものが生まれてきたわけであります。しかし経営内容等から見ますと、お話しのとおり、組合方式のほうは非常に能率的であるというメリットがあることは事実でございます。したがいまして、そういういい点は伸ばしながら、体質の弱い政管健保については、これをできるだけいろいろな面でもって是正していくということが必要であろうと思います。  今回考えております抜本改正方向としましても、一応現在の各種の保険経営方式はそのまま認めまして、その中においてできるだけ効率的な運営をはかるということ、それで組合につきましても、そのメリットを十分に認めて、これはむしろ現在よりも大いに奨励していく、組合方式でもって自立できるものは、できるだけこれを認めていくという方式をとりたいと思っております。そのことによって一方残った政管健保は非常に体質の弱いものが取り残されるということになるわけでありまして、これに対しては、やはり社会連帯の立場から被用者保険相互間の財政的な援助調整というものが必要ではなかろうかという考え方で財政調整の考え方を盛り込んでおるわけでございます。  もちろん国としても、この体質の弱い政管健保については、従来以上に援助を強めておるということは、きのう来御説明のあったとおりでございます。今後大体そういう方向で進みたいと思います。
  24. 山下徳夫

    山下(徳)委員 どうも私ふしぎでならないことは、ここに医務局長も来ておられますけれども、医務局長に質問じゃないのですが、これだけ予防医学というものが発達して、また最近病院施設設備というものは格段とよくなっておりますね。にもかかわらず、医療費は毎年毎年上がっていく、かさんでいくということは、どうもふしぎでしようがないのです。特に政管の場合、それがいえるのですが、これはやはり健康管理というものがどうもうまくいっていないのじゃないか。組合保険においては保険の管理者が日ごろ、いわゆる病気の予防にまで非常に熱心に管理をしておる。ところが政管健保というのはどうですか。医療費が減ったからといってお役人にメリットがあるわけじゃないし、極端に言うならば、親方日の丸というような観点から管理が不十分じゃないかと思うのですが、この点をお尋ねしたいのです。  それから先ほど申し上げたように、今後の方向としては、やはり再びまたこの健保問題に手をつけられるならば、もっとダイナミックな抜本的な改正をおやりにならなければいかぬのじゃないか、このように考えます。  たとえば先ほど申し上げた千三百万人の問題にいたしましても、何か政府政管方式をいつまでもしっかりつかまえておこうという御意思があるのじゃないかという気がするのです。人間だって子供が一定の年齢に達すれば必ずこれは独立していく。親が幾らつかまえたって、ある程度の年齢に達すれば人間も独立するのですから、これと同じように育てて独立させて、どうしようもないやつだけを政府がめんどうを見る、こういう方向に持っていっていただきたいと思うのであります。  そこで、政管健保組合健保と違って非常に零細企業が多いと思うのです。千人未満から二、三十人とかいろいろあると思うのですが、この事業所の規模について一体どういう程度のものが多いのか、いわゆる零細事業所がどの程度なのか、この点ひとつ伺っておきたい。
  25. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 御指摘のとおり政府管掌健康保険は中小企業、中小零細企業をかかえておるわけでございまして、現在一事業所当たりの平均をとりますと、被保険者の数が約二十名でございます。これに対して健康保険組合の一事業所当たりの平均をとりますと、約百三名くらいになりますので、零細企業が非常に多いということは御指摘のとおりでございます。それから昭和四十五年十月末の調査を見ますと、政府管掌健康保険の適用事業所のうち十人未満の事業所の占める割合が五一・七%でございまして、半数以上が十人以下の零細企業ということになるわけでございます。  そこで先生が御指摘になりましたように、こういういわゆる中小零細企業をかかえまして、いろいろと行政努力をするわけでございますが、非常に困難な面が多々あることは御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、たとえば収入の面につきましては保険料の収納率の向上でございますとか、あるいは標準報酬の適正な把握というようなことに努力いたしておりますし、また支出の面につきましては、いわゆるレセプトの点検でございますとか、あるいは現金給付の支給の適正化というようなことに努力をしているわけでございまして、昭和四十五年はレセプト点検——これは事務的な点検でございますが、約三十九億くらいの財政効果をあげていたわけでございます。  ただ、私どもの努力が至らない、まだまだ不十分であるということは、ほんとうにその御指摘のとおりでございまして、私どももこの点につきましては、さらに一そうの強化をしていかなければいけないと思っております。  特に健康管理の面では、健康保険組合に比べまして非常に劣っておりまして、率直に申しますと、いままで赤字財政に追われておりまして、健康管理の面まで手を回すゆとりもなかなかなかったというような事態もあるわけでございます。今回御提案申し上げております法案が成立いたしまして、財政が安定しましたときには、これを契機といたしまして、健康管理の面についても、さらに一そう充実をはかるように努力しなければいけないというように考えております。
  26. 山下徳夫

    山下(徳)委員 ただいま収納率のお話が出ましたが、この問題についてもう少し伺ってみたいと思いますが、いまの部長さんの答弁でも、五一・七%が十人未満の零細企業ということですね。零細企業になればなるほど資金的にも苦しいはずなんです。事業主負担能力も低いにきまっています。しかも保険料の半分はその苦しい中から事業主負担しなければならないということになっているのでありますが、一体保険料の徴収率はどの程度になっているのですか。一応数字的にわかっておれば、そこに手元に資料をお持ちであれば、過去一年とか二年とか五年とか適当でけっこうでありますが、ひとつ地方税とか国税との比較において——保険料も滞納処分ができることになって、やや税に似た面があると思うものですから、ひとつ税との比較において御説明願いたい。
  27. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先生のおっしゃるとおり、非常に中小零細企業もたくさんかかえておりますので、保険料の徴収ということには非常な苦労を払っているわけでございます。社会保険事務の第一線の職員が、これについては非常に苦労に苦労を重ねているわけでございます。  それで、どのくらいの収納率になるかと申しますと、四十一年から政府管掌健康保険の収納率の動きを数字であげてみますと、四十一年が九六・九%、四十二年が九七・八%、四十三年が九八・二%、四十四年が九八・七%、それから四十五年が九八・八%でございまして、したがって逐年、あらゆる努力を払って収納率の向上につとめているということでございます。この面につきましても、なおさらに一そう努力をしなければいけないと思います。  それで、たとえば国税、地方税の比較をしてみますと、四十五年度の国税関係は九四・九%、それから地方税は、都道府県税が九六・四%で、市町村民税と平均いたしますと、九六・五%くらい徴収しているというように聞いております。
  28. 山下徳夫

    山下(徳)委員 ただいまの御説明によると、逐年徴収率がよくなっておる。これは行政指導もさることながら、やはり零細企業の事業主が非常に保険に対する高い認識を持っておる。税よりもこれは徴収率がいいんですからね。ですから、これはこの事業主の認識に報いるべく、ひとつ大いに運用についても努力をしていただきたいと思います。  次に、医療機関の広告について一言お尋ねしたいのですが、これもたしか制度審の答申の中で指摘されておったと思うのですが、今日の医療機関の広告、私はこれは必ずしも適当ではないと思うのです。保険では医師の選択の自由は認められておるけれども、広告が適当でないために患者のほうで非常に戸惑いがある。そのために方々に行ったりして、むしろ乱診のきらいがあるんですね。そういう面が出てきておるということであります。要するに、選択を安易にできるような医療機関の広告を改めるべきではないか。  私の伺っておるところでは、これはうそかほんとうか知らぬが、今日学名としてある病名というのは、六万幾つかあるというんです。昔は四百四病と言ったんですが、非常に専門化、細分化されて、学名としては、それだけあるそうであります。これを全部取り上げるわけにもいかないけれども、たとえば、外科でもいろいろ発達してくると、脳外科とか、肺臓外科とか、あるいは外傷外科とかいろいろあるのですよ。あるいはまた、よその病院にあまりないような特殊な機械、あるいは特殊な検査、そういうものまで含めた公告制度に変えることのほうが親切であり、また保険のむだ使いをなくする方法であろうと思うのですが、この点についてお伺いしたい。
  29. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいまの御指摘のように、広告の内容がいまの医学の進歩と分化という面から見ますと、そぐわない面がございます。当然、こういった点については、私どもも手を加えるべきだというふうに、御指摘のとおり考えております。また、広告自体が放任されますと、行き過ぎた広告でかえって患者さんが戸惑ってしまうという問題があります。  やはりこの二つの問題を兼ね合わせながら検討するということが、基本的な問題だと存じますが、いま一つ、御指摘のような問題になりますと、実は現在私どもが内心反省いたしておりますのは、何科に行くかということは、だんだんその診療科の科目も分化してまいります。学問も進歩いたしますと、患者さんが自分の判断で、自分は何科であるということを見きわめて行くということは、実は考えてみますとこれはおかしなものです。したがいまして、御指摘のような広告の問題を適切にすることとともに、私どもは、基本方向でも改革をしたいと考えておりますような、医療機関自身が相互に有機的な連携をとっていくことが、きわめて適切な診療を受けるように配慮する上からも必要ではないかというふうに考えております。そういった点もあわせまして広告問題も検討をいたしたい、かように考えております。
  30. 山下徳夫

    山下(徳)委員 保険制度というものは、今後やはり国民の健康管理という面から考えて、ますますその使命は重大であります。しかも、先ほど指摘しましたように、政管健保は千三百万というたいへんな対象人員を持っておる。したがって、先ほども繰り返して申し上げましたように、政府がこれを完全に掌握して、かゆいところに手の届くような指導をやるということは、おそらく不可能に近い。  私は、そういう保険の将来あるいは使命等から考えると、この政管健保というものはだんだん少なくしていって、なるたけ組合健保へ育てていって、どうしても手の施しようがないものだけは政府が財政措置、あるいは行政指導をやっていくというところまでいかなければ、将来保険の安定というものはないのじゃないかと思いますので、その点を最後に一つ要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  31. 登坂重次郎

    登坂政府委員 山下先生の仰せのとおり、国民保険下におきまして、特に政管健保が、財政的なあるいは運営的な面において今後大いに改善さるべきものが多々あるという御示唆をいただきました。またわれわれもそういうふうに痛感いたしておりますので、政管健保の育成強化ということは、先ほど保険局長も言いましたが、私ども、大臣もそういう方向で鋭意努力いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、国民が安心して医療の供給を受けられるような、そういう仕組みにし、予防等も兼ね備えられるような、そういう健全な政管健保あり方に置きかえていくということは、仰せのとおりであります。今後、御趣旨に沿うような方向努力をいたします。
  32. 森山欽司

    森山委員長 次に、中島源太郎君。
  33. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 このたびの改正案につきまして、総体的なことは山下委員から質疑がございましたので、なるべく重複いたさないように御質問いたしたいと思いますが、最初に、改正案の提案の根本的な考え方、これだけはやはりもう一度政務次官から伺っておきたいのであります。  今度の改正案そのものは、いわゆる抜本改正案と総合的に検討さるべきものだという考え方は必然だと思いますが、いわゆる財政対策的な今回の改正案をいまここに出さるべき理由であります。この点を政務次官から最初に一言伺っておきたいと思います。
  34. 登坂重次郎

    登坂政府委員 仰せのとおり、政管健保あり方は、国民保険下の中で一番弱い財政的な立場にある。しかし、財政的な問題だけを取り上げて、これを法案にことさらに抜きんじて出さなければならなかった理由というのは、今日まで政府といたしましても、あらゆる努力をいたしてまいりましたが、現在赤字が二千億になんなんとする、また今日このままで放置しておくと三千億をこえるというような非常に異常な事態になっております。  そこで、そういう見地からいたしまして、今後健康保険全体のあり方、皆保険下医療供給及び予防という面の一連の国民の健康を保つための健康保険の正しいあり方、そういうことから考えて、今後健康保険法抜本改正というものをぜひともやらなければならぬという国民的な課題、また政府においても責任者として当然そうあるべきである、こういうことになりまして、さてそういう段階において、一挙にこの健康保険抜本改正に踏み切るまでの段階といたしまして、今日までの赤字財政をどうするかということが、まず基本の問題になってまいります。財政的には過去のものをたな上げして、そして過去の保険財政を正しいあり方に直して、それから抜本改正と関連した——抜本改正の意義を充実せしめる上においては、どうしても過去の累積赤字を整理しておく必要がある、こういう見地に立って今度の健康保険法の一部改正を御提案したわけでございます。引き続いて健康保険抜本改正は早急にお出しして、そしてその関連性において御検討いただきたい、こうお願いする次第であります。
  35. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そうしますと、一言で申しますと、このたびの改正案は、いわゆる抜本改正実現の前提としての財政対策であるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  36. 登坂重次郎

    登坂政府委員 そのとおりでございます。
  37. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そういたしますと、財政的に多少伺いたいのでありますが、改正案を主体といたしましても、保険料並びに一般会計からの受け入れ、これはいわゆる厚生保険特別会計に入るわけであります。そうしますと、私は最初の疑問として質問いたしたいのは、いわゆる特別会計であれば先行きの支出規模が明確であって、初めてこの特別会計の規模というものが設定されてくるべきものではないか、理論上はそう思います。しかし、この抜本改正が審議中に出されると思いますが、いま現在は支出規模が将来において明確とはいえない段階でこの財政対策が出されるのは、私は理論上そこに疑問がわく点があろうかと思うのです。  そこで、これを明確にいたすためには、少なくとも今度の改正案においては四十七年度の見込み赤字の解消の対策が一つ。さらに四十八年度以降に対しましては、いわゆる弾力条項が四十八年度以降に対応するのである、こう考えれば筋は通る。そう考えてよろしいかどうか、この点を冒頭に伺っておきます。
  38. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お話しのとおり、特別会計の当然のあり方として将来の収支の見通し、計画を立てて、その上でもって見越して組まるべきものであることは当然のことであります。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕  そこで、今回の財政対策は、ただいま政務次官もお答えしましたとおり、単なる四十七年度の赤字対策ということではないので、四十八年度以降に予定されておる抜本改正の財政問題も含めて、踏まえて考えているわけであります。  そこで、抜本改正の内容が最終的にどういうことになりますかは、これは国会でもって御審議願わなければきまらないことでありますが、一応私どもが考えて提案しております現在の抜本改正案についての収支見通しというものは、一応四十八年度あるいはそれ以降につきましても、大体の見通しをつけておるわけでありまして、それは今回の、このただいま御審議願っておる財政対策法案がこの姿でもって成立すれば、この抜本改正運営にも実施にも支障を来たすことはないというふうに考えております。  その場合、弾力条項、これは不時の支出あるいは医療費改定、そういったものによって既定の保険料でもってまかなえないという場合の措置として予定されているものでございまして、抜本改正等についてのいろいろな給付改善、そういった問題につきましては、本来の保険料、それから財政調整によるものだとかそういったいろいろな面を勘案して考えているわけでありまして、弾力条項をそういう何か給付改善とかいうような財源として、すぐに発動するというようなことは予定していないわけでございます。
  39. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いま弾力条項のお話がありましたが、弾力条項を発動しない前の状態で、いわゆる四十七年度の見通しといたしましても、四月発効であると約十三億の赤字が出る。たとえば料率を三%上げ、定額を定率に直しましても、四月からですと大体見通しとしては十三億の赤字が出る。いわゆる満年度で三億くらい、とんとんにいくということでありますから、そこで要するに、四十七年度でとんとんなんだから、四十八年度以降の不測の事態とおっしゃるが、将来を見通した面ではこの弾力条項が四十八年度以降に対応するものであろう、これはそう思って正しいと思うのです。  そこで財政的に少し伺いたいのは、山下委員から御質問がありましたが、国庫補助五%の根拠というもの、これは伺っておりましたが、もう一つ明確さを欠くような気がいたしましたので、五%国庫補助の根拠を伺わせていただきたいと思います。
  40. 渡部周治

    渡部説明員 定率国庫補助五%の根拠についてのお尋ねでありますが、これにつきましては、昨日も山下委員からもお尋ねがございましたが、われわれといたしましては、政管健保の収支が非常に悪化しておる、これをこのまま放置しておきますと、制度崩壊の危険すらあるという危機感を持っております。そういう意味で、本来は保険料収入をもってまかなうべき保険制度からいたしますと、予算の範囲内という従来の規定の考え方、つまり定額国庫補助が本来の考え方ではありましょうが、このような政管健保の財政の状況から、給付費に対しまして定率の補助をするという、いわば今度給付費がどんどん伸びますれば、それに応じてどんどん国庫補助もふやすというかっこうでもって定率国庫補助に切りかえたわけでございます。定額国庫補助から定率国庫補助に切りかえる、これはわれわれからいたしますと、質的な大きな改善でございまして、国の積極的姿勢を示すものというぐあいにお考えいただきたいと思うわけであります。  この五%の根拠は何かというお尋ねでございます。これにつきましては、今回の措置といたしましては定額国庫補助二百二十五億に対します給付費の割合が、四十五年度予算におきますと三・九%くらいでございました。そのようなものも勘案いたしましたし、さらにこの財政措置といたしましては、定率国庫補助以外に過去の累積赤字を保険負担からはずしまして、全額今後一般会計によって補てんするというような措置もとることにいたしました。これも国庫負担としてはね返ってまいるわけでございます。そのようなことを総合勘定いたしまして五%という率をきめたわけでございますが、これらは最終的には財政事情といったようなものも加味したわけでございます。  結果的には、それによります国庫補助額といたしましては、従来の定額二百二十五億に比べまして、四十七年度予算で三百七十三億、これは十一カ月分でございますので、満年度計算でいきますと三百八十九億ということになります。予算額にいたしましても相当大幅な増額になりますし、今後給付費がふえますれば、それに増してふえるということで、われわれといたしましては、政管健保の財政対策といたしまして相当画期的な措置であるというふうに思っております。
  41. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いまお話しがありました中で二つ問題があると思うのです。一つは定額を定率にしたこと、これは意義を認めるわけであります。私の伺ったのは五%の根拠であります。いまちょっと聞き漏らしましたが、四十五年度は何%とおっしゃいましたか。
  42. 渡部周治

    渡部説明員 四十五年度の保険給付費に対しまする二百二十五億の国庫補助額の割合は三・九%でございます。
  43. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 四十五年度が出ましたので、ついでに伺いたいのですが、四十五年度は実は赤字が三百八十三億円出ておる年であります。そうしますと、それを言われますと過去のことをもう一度見直したくなるわけでありますが、過去十年の要するに単年度赤字が出ております。そのうち三十七年、三十八年は、いわゆる取りくずしがありましたから累積赤字にはなっておりませんが、三十九年度以降一応単年度の赤字が減りましたのは、四十二年度、四十三年度あたりであります。四十二年度、四十三年度あたりの、このころの一般会計からの受け入れば二百二十五億円に上がったときでありますが、そうしますと、この当時、四十二、四十三年度の二百二十五億というのは、支出規模に対して何%に当たりますか。
  44. 渡部周治

    渡部説明員 四十二年度は六・三%、四十三年度は五・四%でございます。
  45. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そういたしますと、これで単年度赤字が解消されておればよろしいのですが、過去十年間の中で単年度の赤字が多少少ないという時期を申し上げたのです。しかもそのときの支出に対します国庫補助は四十二年度においては六%をこえておるわけですね。そうですね。  そこで、いま三百億以上の三百八十三億出した、四十五年度が三・九%ということを例に出して、五%の定率はある程度これは大幅な改善だとおっしゃいますが、そうなると、多少ここに五%をそういう根拠で言われていいかどうかということが一つあります。ここは慎重に検討すべきところだということを申し上げておきたいのです。  それからもう一つは、いま累積赤字をたな上げ、こうおっしゃったわけですね。しかし累積赤字のたな上げというのは、まあ一言でいうと、さっぱりしてよろしいのですが、いわゆる累積赤字のたな上げということは、一般会計からの受け入れであります。そういうことになりますね。そうしますと、その一般会計からの受け入れというのは、過去十年間の赤字解消のための一般会計からの支出であります。そうしますと、過去少なくとも十年間、三十七年から——四十七年を入れるべきかどうか、これは五%の定率になりますし、四十七年度は単年度の見通しでありますから、少なくとも三十七年から四十六年までの十年間の累積を見ますと、赤字が約二千六十億でありましょう。そうしますと、これに対して、いわゆる定額補助並びにこの二千六十億を一般会計からの支出によってまかなったといたしますと、過去の赤字を埋めるべき一般会計からの支出というものは、この十年間の総支出に対しまして何用に当たりますか。
  46. 渡部周治

    渡部説明員 まず数字を申し上げますが、お尋ねの過去の累積赤字総額約二千億を、十年間で元金だけを償還するという考え方に立てば、一年二百億ということになります。しかし、これはもちろん利子がつくわけでございまするので、正確に計算いたしますと、元利を均等償還するということにすれば、二千六十億と申しますのは、この中には資産見合いの損失もございます。その資産を見ますと、実質的に、いわゆる累積損失というのは千七百六十六億になります。それの利子等含めまして、十年間で均等償還するということにしますと、二百四十六億という数字に相なるわけであります。  それからお尋ねの点、二点ございまして、一点は、四十二年ないし四十三年当時の保険に対する国庫負担の割合は、われわれが今度提案いたしております五%の率よりもふえておるではないか。  それから第二点目は、まず累積赤字の取りくずしは、いわば過去やるべきものを今度やるので、それをカウントして考えれば相当大幅なことを過去やらなければならなかったのではないかというお尋ねであったと思うわけであります。  われわれとしましては、過去の累積赤字を一般会計で見るということは、これは国としましては非常に画期的な措置をとったつもりでございまして、本来ならば、過去の累積赤字は、それが保険の赤字である以上は、その保険集団の努力で取りくずしていただくということがたてまえでございまして、四十二年あるいは四十三年当時で二百二十五億の定額国庫補助をやりました際には、この累積赤字を一般会計で持つということは考えておらなかったわけでございます。これは当然保険会計の努力でやっていただくということを考えておったわけでございます。  ところが、その後やはり収支が改善されない。そして累積赤字が二千億にも達するという非常に危険な様相を呈しましたので、今回国庫補助を定率に切りかえると同時に、従来保険会計で見てもらうと考えておりました累積赤字は全部保険負担からはずしまして、国庫負担として今後持つということを考えておりますので、いわば考え方といたしましては、われわれは五%の国庫補助に、さらにその二千数百億にのぼります——十年均等償還にすれば二百四十六億になりますが、それが国庫負担としてはね返ってくるわけでございますから、両方加えていただきまして、今後の施策を御評価していただきたいというふうに考えておるわけであります。
  47. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 支出面からすればそういうお考えはある程度理解できるわけです。ただ私が質問申しましたのは、三十七年度から四十六年度までのいわゆる支出の計は、私が荒々見てみますと、三兆五千八百億円ぐらいだろうと思います。それに対して、一般会計からの定額補助の十年間の総計は千五百四十五億円、十年均等に割りますと一年間百五十億円ぐらいに当たるであろう。それに今度の二千六十億を十分の一にいたしまして足しますと、大体三百六十億円ぐらいになる。そうしますと、総額で見ても十年ですから同じですけれども、三兆五千八百億円の総支出に対しまして、一般会計からの受け入れというものは、結果的には三千六百億円に達するではないか。要するに、総支出に対します一般会計からの受け入れというものを総額で比較いたしますれば一〇%をこすのじゃないか、こういうことになりますね。  ですから、過去の十年間の赤字をいま解消していくという使途の面から見れば、過去の累積赤字を消したのだ、そのための一般会計からの支出というものが、総給付に対しまして総支出が過去の面では一〇%をこすということが一つ現実にいえるわけです。そういう過去を踏まえて、今後この改正案におきましては五%と定め、しかもその五%を上げるについては、いわゆる弾力条項との連動でなければ上げられないと、ここで規定してしまうということは、より慎重な検討がここになされる余地が相当多く残されておる、私はこう思います。  それからいまおっしゃった過去の赤字の補てんというものは、支出面からすればこれからの支出でありますから、今後の五%にプラスされるべきものだとおっしゃいますが、これは支出面はそうでありますが、使途の面から見れば、いままでの累積赤字の解消である、補てんであるということから考えれば、そういう過去の総給付に対しまして総支出は一〇%をこえておる。にもかかわらず、新しい改正案においては五%に定めて、この条章については弾力条項との連動でなければ上がらぬというのは、ここに一つ検討要素がありはしないかという疑問を提起しておきたい。
  48. 渡部周治

    渡部説明員 お尋ねは、過去の累積赤字分を十年間に平均した額を補てんいたしまして、定額国庫補助、当時の国庫補助額と加えますると、平均的に一〇%程度になるのじゃないかというお話でございまして、私のほうが申し上げましたのは、五%の国庫補助に、さらにこの累積赤字分は今後われわれは国庫負担分として見る。それは支出面の話で、計算の内容は過去の分ではないかということではございましょうが、問題になります国庫負担というのは、今後の税金負担の問題でございます。今後納税者が負担する国庫負担といたしましては、五%の定率国庫補助相当額、この累積赤字の一般会計からの穴埋めというものが今後の納税者の負担に返ってくるわけでございますから、われわれといたしましては、あくまでも国庫負担といたしましては五%の国庫負担分、すなわち累積赤字分は今後の問題として考えていくべきものではなかろうか、そのように考えているわけでございます。基本的に、保険料と国庫負担という問題は、社会保険を考える場合に非常にむずかしい問題であろうかと思います。  しかしながら、国庫負担も租税財源でございまするので、保険に対する保険料負担をするということと、それから国庫負担で、いわゆる税金財源で負担をする、いずれも国民負担であることには変わりはないわけでございます。本来、保険制度の本旨からいたしますると、保険料をもって保険給付を行なうというのがたてまえであろうと思うわけでございます。  したがいまして、われわれは基本的には、安易に国庫負担に依存することは適当ではないと考えておるわけでございますが、昨日来申し上げておりますように、政管健保の収支は極度に悪化しておる。このまま放置いたしますと、被用者保険の中核をなします政管健保制度崩壊の危機すらある。そういう危機感をもちまして、そういう国庫負担あり方といたしましては定率国庫補助、それから累積赤字のたな上げ、それからお話のございました、今後の弾力条項発動の際の国庫補助の連動でございますが、これも保険料を千分の一引き上げます場合は国庫補助を百分の〇・四引き上げるということになりますと、限界的な率といたしましては千分の七十三、平均的には千分の七十三に対します百分の五ということは、千分の一に対しまして百分の〇・〇六八五という国庫補助率でございますけれども、それが弾力条項の発動の場合には、千分の一に対しまして百分の〇・四ということになりますと、限界的には六倍の国庫補助をするということになります。  したがいまして、今回の財政措置によりまして収支均衡がはかられますが、今後収支の状況が変わりまして、そういう保険料率の弾力適用を行なう必要があるという場合には、国庫補助といたしましても、そういう非常に大きな限界の負担をするということで、いわば国庫といたしまして、非常に大きな措置をとったとわれわれは考えておる次第でございます。
  49. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いまおっしゃった、いわゆる弾力条項であります。ただいま支出の面では明らかにされたと理解いたしましたが、四十七年度末の赤字を相殺するということでございます。しがし弾力条項の発動は、四十七年四月一日からできるという規定でありますが、これは厚生省に伺いたいのですが、今後の見通しとして四十七年度中にも発動し得るという状態があり得るかどうか、その点の見解を伺っておきます。
  50. 戸澤政方

    戸澤政府委員 弾力条項の規定は四十七年度末でもって過去の累積赤字をたな上げしまして、そのかわりにそれ以降は収支均衡、見合うような経営ができるという制度的な裏づけが必要であるというところから、たな上げの問題と一緒に制度として確立しておく必要があるわけであります。それを四十七年度中に発動する可能性があるかどうかという問題につきましては、四十七年度の収支見込みは、最近の資料に基づきまして相当厳密に見込みを立てておりますので、途中でもって特に大きな医療費改定とか不測の事態のない限り四十七年度中に発動するおそれはなかろうと思います。
  51. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そうしますと、今度は総体的な財政面の収入増というもの、つまり弾力条項を含めてでありますが、弾力条項の、かりに参考に伺うわけでありますが、要するに千分の七十三から始まりますが千分の八十、上限に達した場合、いわゆる国庫支出も〇・四%ずつ七倍に上がっていくわけであります。総体的にどのくらいな増になりますか。
  52. 戸澤政方

    戸澤政府委員 弾力条項、千分の八十になった場合を想定して計算をしてみますと、保険料は八千六十億ということになります。それからそれに対して国庫負担は五%の上に二・八%加わりますので給付に対しまして七・八%になるわけでございまして、その額は六百八十億になります。
  53. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そうしますと、今日までの現状と合わせまして大体一千億弱プラスになりますか。国庫補助と、つまり千分の七十三並びに五%でいった場合と、それから千分の八十プラス〇・四ずつ上げた場合は、私の大体の計算では九百二十億前後である、こう思いますが、それでそれが対応できるかどうかということと、私はその中でまかなわなければならないという責任問題もここに出てくると思うのですね。  そこで次の質問に移りますが、そのくらいな中で、たとえばこれは抜本策がまだでありますが、いわゆる家族の医療給付の支給率を五〇%から七〇%に上げたとした場合に、それによる、いわゆる支出増はどのくらいになりますか。
  54. 戸澤政方

    戸澤政府委員 四十七年度をもとにして推算しますと、約七百四十億であります。
  55. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 念のために伺いますが、先ほど冒頭に伺ったのはその点なんです。要するに、四十七年度に千分の七十三プラス五%でこれは対応しますが、四十八年度から先は弾力条項によって対応するのであろう。しかし弾力条項による収入増は大体九百二十億前後ではなかろうか、計算上はそう成り立つわけですが、たとえばいまの支給率五〇%を七〇%に上げると、それだけで七百四十億になりますと、意外とその幅が少なくなってくるような気がしてしようがないのです。これに対しまして、いわゆるほかの要素があれば、ここでひとつ教えておいていただきたい。
  56. 戸澤政方

    戸澤政府委員 抜本改正で給付改善としましては、家族七割給付、この分の負担増が約七百四十億ほどになります。そのほかに高額医療という給付改善がございます。これが約九十億くらいの支出増。合わせますと八百三十億ほどの支出増になりますが、一方一部負担改正を計画しておりまして、このほうは財政効果として減の要素になるわけでありまして、三百六十億ほどの減になります。差し引きしますと四百七十億ほどの支出増になる。料率にしまして大体千分の四ないし五くらいでございます。ですから、こういった給付改善と並んで、一部負担の問題、改正が成立いたしますれば、この弾力条項の発動範囲内で当分やっていけるのじゃないかと一応思っている次第でございます。
  57. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いま伺うと、大体九百二十億ということでありますが、支出を含めましても、歳入その他を含めると大体四百四、五十億、あとの四百五十億くらいが予備としてまだ幅があるということになろうかと思いますが、そこで一つ医療費の自然増というものがあると思うのです。この医療費の自然増というものが生じてくる理由は、どんなものがありますか。
  58. 戸澤政方

    戸澤政府委員 いわゆる医療費には医療費改定といったような政策的なもののほかに、自然増といわれる毎年自然にふえてくる分があるわけでありますが、この自然増の原因としましては、一言で言えば、医療の多様化と申しますか、そういったものによる受診の傾向、受診率とかそういったものの動向が変わってくることと、それからもう一つは、医学あるいは薬学の進歩に伴う医療技術の向上、医療の質的な進歩と申しますか、そういったものが多いのではなかろうかというふうに考えられます。もう少しそれを具体的に考えてみますと、そういう医療技術の進歩あるいは新薬の開発によって、やはり検査とか、またよくきくが、高い薬がたくさん使われるようになる、そういったことによる増が相当あると思います。  それから二番目としましては、いろいろ医療供給面の増が考えられます。医療施設のベッドの増、それからそれに伴う医療従事者の伸び、それから新しい機械器具等の整備、こういったものによって医療の内容が充実する、あるいはそれに伴う医療従事者の処遇面がふえてくるというようなこともあるわけでございます。それからもう一つは、先ほど申しました医療の多様化と申しますか、医療需要の中身が変わってまいります。いわゆる公害病とか、あるいは難病、奇病、そういったようなものがふえてくる。それからまた人口の老齢化に伴って、いわゆる老人病、成人病的なものがふえてくる、そういったものがいわゆる自然増といわれるおもな要素ではなかろうかというふうに考えております。
  59. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いま言われた中で、一つだけちょっと伺いたいのですが、医療施設あるいは医療従事者の充実によって、これがいわゆる診療報酬にはね返るというのは、現実にはどういう形で出てきますか。その一点だけ……。
  60. 戸澤政方

    戸澤政府委員 医療施設がふえ、医療従事者が増員になりますれば、その給与関係、人件費関係がものすごく変わってくるわけであります。たとえば医療施設の従事者は三十七年には約七十万人ほどでございましたが、それが四十五年には百九万、一五四%の伸びになっております。そういうところからくる人件費の伸び、これは相当のウエートを占めると思います。
  61. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 そういう意味では、たとえば一つの要素としてベッド数とか看護婦さんあるいはお医者さん、こういった伸びも入るわけでありますね。そうしますと、昭和三十七年度と比べまして、たとえば看護婦さんあたりは六二%人員として伸びておりますが、それでも絶対数の供給バランスとしては非常に不満足な点がある。自然増の一つの要素として取り上げられたわけでありますが、この自然増というものはわりに大きな伸びを示すのじゃないかと思いますが、この医療費の自然増というものの伸びの見通し、これは私は資料を持っておりませんが、年間どのくらいな伸びがありますか。
  62. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いままでは普通政管健保では、年間大体一一、二%というようにいわれております。
  63. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 いままでおもに財政面で伺ってきたわけでありますが、今度の改正案によりましては、財政面は大体対応できるということは理解できました。同時にいわゆる政管健保の財政建て直しというものは、財政対策ということで財政面からずっと伺ってきたわけでありますが、その内容面につきまして、やはり実質の改善面がいろいろと検討されなければならないと思いますが、過去十年の財政の推移と別に、きのうも質疑によってある程度明らかにされたわけでありますが、政管健保の赤字が出てきた具体的な原因というものを、ここで財政面のいろいろな検討からもう一つ別の面の内容に入りたいために、その前提としていま一度伺っておきたいと思います。
  64. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 この赤字の原因の問題は、昨日御説明いたしましたように、収入の面では先ほども御質問ございましたように、中小零細企業をかかえておりまして収入が非常に伸び悩んだというような問題がございますし、また、質に影響いたしまして、大体政管健保組合健康保険に比べまして倍くらいの高齢者をかかえているというような問題もあるわけでございます。そういったような、いわゆる体質的な問題もかかえて、これらが一つの赤字の要因になるのではないかというように考えます。私どもといたしましては、それと離れて、やはりこのマンモス的な対象を一つの制度として運営してまいります場合に、できる限り適正な運営をはかってロスをなくしていく、あるいは効率的に運営していくというようなことに努力をしなければいけないと思うわけでございまして、先ほど御説明いたしましたように、収支両面にわたりまして、レセプトの点検でございますとか、あるいは標準報酬の適正な把握でございますとかいうようなことを現在やっておるわけでございます。支出の面に影響する一つの大きな問題としては、やはり被保険者の健康管理という問題があるわけでございまして、残念ながら、いままでの状態を率直に申し上げますと、実は赤字で追われて、なかなかそこまで手が回りかねたというような実態もあるわけでございますが、私どもとしては、やはりこの健康管理ということについては、今後より一そうの努力を払わなければいけないと思うわけでございます。そういう運営の面からも私どもは収入なり支出の適正化というものをはかって、財政の健全化を行なわなければいけないというふうに考えております。
  65. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 同時に、いまおっしゃったように、被保険者の数が事業所単位で見ると、平均二十人くらいである。非常に零細でありますから、なかなかたいへんなことはわかりますが、一面において、やはり企業努力が不足しておるのではないかということがよく指摘されるところであります。企業努力というか、経営努力というか、環境整備というか、あるいははっきりいえばそのチェック機構の不備な点も含めて、おりおり指摘されるのでありますが、こういう点についてはどう考えますか。
  66. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 私どもが担当いたしておりますいわゆる事務的な面では、支出の適正化をはかりますために行なっておりますのは、ただいま申しましたように、レセプトの点検というようなことをやっておるわけでございます。医療機関にレセプトが参りましてから二カ月たちますと、社会保険事務所のほうにそれが返ってまいりますので、それについて点検を行ないまして、私どもは事務的な点検でございますから、たとえば、第三者行為によって本来他で負担すべきものがこちらに入っているときには、それを返させるということによって支出の適正化をはかるということに努力しておるわけでございます。
  67. 戸澤政方

    戸澤政府委員 ただいま保険者の面からするいろいろな経営努力についてのお話がありましたが、医療費適正化のための直接的な監督方法としましては、いわゆる行政庁による監査、指導といったものになるわけでございますが、これはその監査、指導に当たる専門官がなかなか得られないというような事情もありまして、非常に苦慮しておるところでございますけれども、しかし、少ない人員を効率的に使いまして、重点的監査あるいは予防的な指導を行なうというような方法によって、最大の努力をいたしておるわけでございます。従来、医療機関に対する監査、指導につきまして、三十五年に厚生省と医師会、歯科医師会との協定文書がありまして、その協定の解釈等があいまいなために十分効果があがらないというような点もございましたので、昨年二月にはそういった面の改正もいたしまして、この指導、監査の厳正な実施ということには最大の努力をしておるわけでございます。
  68. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 一部にいわゆる過重請求等の疑念を持つ向きがあろうと思いますが、そういった面の医療機関の監査、指導というものはいまのお答えにもあったわけですが、一般に被保険者とすると、自分が不測の傷病によりまして保険給付を受けたその結果を、たとえばその単位は月単位になるが、自分の手元で医療内容まで、薬剤内容まで示されるということは非常な煩瑣でもあり、医療内容、薬剤の内容まで伺っても、それは当人でも非常にあれですが、たとえば昭和四十七年度の四月には、何回医師にかかり、病院に通い、あるいは入院し、その結果給付を受けた分はこれだというようなことを手元に確認したいということはあろうと思います。こういったことについて、これはこの次に出される中に盛られると思いますが、要するに、行政指導あるいは監査、指導と同時に、そういった一般被保険者一人一人に対して確認の意味の何らかの手だてを盛り込まれる用意があるかどうか。この点の見解はいかがですか。
  69. 戸澤政方

    戸澤政府委員 次に予定しております抜本改正法案の中で、医者に対して患者が一部負担を窓口でもって払った場合に、領収書を請求した場合には、医療機関はそれを交付しなければならぬという義務規定を入れてございます。しかし、これも支払った金額に対する領収書、受け取り書でございまして、いまお話しのような自分の受けた診療内容の中身まで確認できるというものではございません。これは医師のほうの守秘義務等がございますので、患者にも言えない場合もございますし、それから、現在レセプト、請求書は、医療機関から基金に行きまして、基金から各保険者に戻されるわけですから、各患者が自分の診療の中身について知りたいと思えば、それを尋ねる道はあるわけでございます。それを何かその診療の内容を必ず患者に知らせるように行政的に措置するということは、むずかしいかもしれませんけれども、保険者においてそういう点を点検しようと思えば、これは現在でもできるわけでございます。
  70. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 あと二点ばかり伺いたいのですが、結果的に、今回の改正で、この改正が通りました場合には被保険者負担増は一体どのくらいなものになるか、わかりやすく平均的な所得あるいはわりに高額あるいは低額とこう分けまして、できれば具体的にどのくらいな被保険者の方々に対して負担増になるのか、その数字を出せましたら示していただきたい。
  71. 戸澤政方

    戸澤政府委員 お話によりまして説例で申し上げますと、今回の改正による被保険者負担増は、中身としましては料率千分の三引き上げによる増と、ボーナス対象にした特別保険料と、それから標準報酬上限引き上げによる増と、この三つのものがあるわけでございますが、それを合計して申し上げますと、給与月額二万四千円の者は月五十七円、それから六万円の者——六万円というのが大体平均標準報酬額でございますが、その者は月百七十円くらい、それから最高上位の二十万円の者につきましては月約四千円くらいということであります。これはいずれも被保険者本人の負担でございます。
  72. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 もう時間でもございますので、最後に、私は今回出されました改正案の財政体策上の問題について、その内容並びにそれに関連して伺ってまいりましたが、最初政務次官がおっしゃいましたように、いわゆる抜本改正実現のための前提としての財政対策として見てよろしいということでございますので、これが成立いたすにいたしましても、あくまでもいわゆる抜本策の改正、これには取り組んでいかなければならぬ、この取り組む決意をひとつ政務次官に伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  73. 登坂重次郎

    登坂政府委員 お説のとおり、保険では被保険者の健康を守るということ、また医療供給を円滑ならしめるというのがわれわれの責任と心得ておりますから、単なる財政対策、当面の保険の赤字を解消するということであってはならないと思いまして、抜本改正を中心にした医療基本法をまたつけ加えまして、そうして今後国民医療の円満なる供給あるいは健康管理になお一段の努力を払う決意でございます。
  74. 中島源太郎

    ○中島(源)委員 終わります。
  75. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 午後二時四十分再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十六分開議
  76. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本政弘君。
  77. 山本政弘

    ○山本(政)委員 昨日私どもの党の田邊委員あるいは公明党の大橋委員、民社党の田畑委員から質問がありまして、その際大臣は、再三にわたる政府の公約が今日まで実現できなかったということを、政府を代表しておわびをする、こうおっしゃった。同時に、審議会答申に示された意向を盛り込むことができなかったことを非常に遺憾に思っておる、こうおっしゃいました。政府管掌の健保財政の赤字解消策である健康保険法の一部改正について、いまいろいろの悪評をかかえておる。抜本改正に積極的に取り組まない、それで赤字対策だけを取り上げておるという政府の態度に対して非常に強い不満を私は持っておるわけであります。  まず、赤字を解消するための健康保険法の一部改正案というのは、自民党がすでに政府案と同一のものを、昨年の十二月末議員提案をしておる。本来ならば、健康保険法一部改正案というのは、たびたび私どもの党の委員がお話をしたように、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の十分な審議を得て、そして結論を待って出すべきだ、こう思うのでありますけれども、議員立法という形で、それをたてにとって、ある意味では審議会に対して心理的な圧力を加えたと私は思うのです。そういう意味で、社会保険審議会はこのような背景のもとでの諮問は非常に遺憾だ、こう言っているのは私はそれを実は立証しているのだ、こう思うのです。  両審議会政府批判の要点を一言でいえば、抜本改正を欠く健保改正、そして抜本改正案と赤字対策を切り離して審議するのは本意でないといって、赤字対策ということで実は政府がつまみ食いをしておるのだ、こういうことを指摘しておるのだと思うのです。そして安易に保険料引き上げなどに走る体質というものを両審議会は批判をしてきた、こう思うのであります。  二月十八日でしたか、閣議後に厚生大臣は、健保答申無視は法律上やむを得ない、こういうふうな談話を発表なされた。これは私はたいへん遺憾だと思うのであります。大臣のお考えというのは、予算関連法案については審議会答申を尊重することはむずかしい、審議会にかけること自体に無理があるという趣旨の見解をそのときに明らかにしたのだと私は思うのでありますけれども、まず第一に、私はその真意を大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  78. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 まず、財政対策の法案と抜本対策の法案と二つになったことについての山本委員の御意見も、私はごもっともに思います。私も、本来ならこれは一つにして提案をすべきである、かように考えておったのでございますが、抜本改正につきましては四十四年に諮問をいたしました。諮問案の答申をいただいたのが昨年の秋でございまして、それをもとにして抜本を考えてまいらなければならないということになり、関係するところが非常に範囲も広い、そういうことで抜本に対する成案を得るのに相当時間を要するという見通しが一つありましたのと、抜本は四十八年度からでなければ実施できないであろうということは、準備に相当時日を要する。ところが、財政対策はこれはどうしても四十七年度から実施をいたしませんと、御承知のように赤字がますますふえてまいって、これは場合によれば支払い遅延というようなことも起こるかもわからないというような心配も起こり、いま一つは、抜本改正はこれは政管の赤字対策としてやるのではないということをはっきりいたしますために、政管の財政対策は財政対策として、そしてこの財政対策ができれば、政管としては将来永遠にとは申しませんが、相当の間はやっていける。政管の赤字というものをまず解消し、そしてその上に立って、皆保険あり方から考えた抜本改正を、抜本的な考え方を変える。一つの法律にいたしましても、考え方はそう二つに分けて考えなければならないと思うわけでありまして、抜本において政管の赤字を解消するのだということではないという観念をはっきりするという二つの観点から、この法案を二つに分けるということになったわけでございます。決して、つまみ食いをして財政対策法案が通ればあとはどうでもいい、こういう考え方では毛頭臨んでおりません。抜本改正がおくれてまいりましたことは非常に申しわけございませんが、審議会において予想外に慎重審議のために時間をとられましたので、社会保険審議会は、一昨日でしたか、十九日にやっと答申をいただいたということになりまして、おくれておりますことは申しわけがございません。  もう一つ、予算関連法案の諮問ということになりますると、結局予算を政府が決定した後でなければ諮問ができない、そして答申を尊重するということになれば、予算を変更しなければならぬというような羽目になるわけでありますから、したがって、その答申をもらいましても、その答申に従って政府原案を改めるということは、予算と関係を持つものでありますから、きわめて困難である。そこで、社会保険審議会の、どういうものを諮問すべきであるかということを見ますると、法律案要綱というようになっておるものでありますから、それを厳重に解して、いままでの政府の予算の決定、そして、それに基づいて諮問というやり方をいままでやってまいったのであります。今回そういう事態に当面をいたしまして、これからは予算を伴う法律案であっても、事前に諮問をして、そしてできたら予算決定までに答申をもらって、そうして予算関連法案として提出するほうがいいのじゃないか、かようにいま考えているわけでございます。審議会のほうにおかれましても、その点はもっともだ、ひとつ諮問のやり方をこれから後は変えるようにしてもらったらどうであろうか、自分のほうでもそれを検討するから、こういうことになっておるのであります。その間の事情は御了承をいただきたいと存じます。
  79. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣の御意見によれば、予算関連法案については、予算がきまらない限り法案要綱は決定できない。審議会意見をいれれば、予算を政府自身が組みかえざるを得なくなる。そうすると、四次防と同じような問題が起こりはしないだろうかというようなことを実は危惧されたと思うのです。  しかし、昭和二十三年十二月十一日の参議院だったと思いますけれども、厚生委員会の議事録を見ますと、これは社会保障制度審議会の設置法を討議したときの議事録であります。そのときにすでに、「社会保険による経済的保障の最も効果的方法について」ということでございますが、つまり「健康保険のような疾病に関する保険とか、年金保険のような養老保険あるいは傷害事故に対する保険というようなことになりまして」云々というようなことで、経済的保障の効果的な方法を講ずるのだ、こう当時の保険局長である宮崎政府委員は説明しておるわけです。そうすると、当然そのことを頭に入れながら審議会にかける場合にはやらなければいかぬので、いまさら諮問の方法を考えなければならぬ、そうおっしゃっていることに私は政府の怠慢を実は感ぜざるを得ないわけです。しかもこの財政的な問題については、四十二年この方何回もそういうことで国会の大きな論議の一つになっているわけですから、いまになってそういうことをおっしゃるということは、私は実は理解できないわけです。  そして同時に、この設置法の説明による限りは、政府のなさっているやり方というのは、健康保険法二十四条ノ二の、厚生大臣は政管健保運営に関する事項で、企画、立法または実施の大綱に関するものは社会保険審議会に諮問するものとするということに違反しているのではないだろうか。あるいは社会保障制度審議会設置法の二条の2の、総理大臣と厚生大臣は、「社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会意見を求めなければならない。」こういうことに違反をしているのではないかという感じがするわけです。つまり健康保険法違反、社会保障制度審議会設置法について私は違反をしているのではないか、こう思うわけでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これはいままでとにかく予算が政府できまって、それに基づいて法律案要綱を諮問するというやり方をずっとやってきていたわけであります。おそらくいままでそれで問題なかった。ただそうしますると、問題になるのは、審議を非常に急いでもらわないと、予算審議中に関連法案が出ないというので、審議会に非常に急いでもらっておったということだけが頭にあったわけです。今度こういった事態に当面をいたしまして、予算を変えなければ尊重ができないというような羽目になりまして、そこで私としては、これは考えてみて、政府の予算決定の前にやはり諮問をしておいたほうがいいのではないか、こう考え直し、社会保険審議会委員長も同感で、ひとつそういうような考え方に変えてもらおうかという話し合いになったということでありますが、いままでは一種の惰性的でありましょうか、まだ政府でこれを出すか出さないか、それには予算をどうするかということがきまる前に法律案要綱ができないということで出していなかったと思うのであります。これは大蔵大臣とも相談をいたしまして、これからできたら予算編成前にもっと早目に出してやってみたらどうであろうか、検討しようというような話し合いにいまなっております。
  81. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それなら、私は決して譲るわけではありませんけれども、あなたのほうでは、政府としては、これからは必ずそういうことをお約束していただけますか、それが第一点。  第二点は、抜本改正の案というのがまだ出ておりません。しかし抜本改正案というのは、いま大臣がおっしゃったように、永久的とは言いませんけれども、相当の長期間にわたってこの抜本改正がもし——仮定の問題です、もしできれば当分の間はその抜本改正によってできるという、そういうお考えですね。この二つを私は確認をしておきたいと思います。
  82. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、これからは、政府の予算決定の前にそれに間に合うように諮問案を出したい、これは再びその決意を申し上げたいと思います。  それから抜本改正は、これは国民保険という理念のもとに立っての第一歩でありますから、したがって抜本改正ができたらもう当分改正しないとは私は申しません。いろいろこまかい点の改正はあるであろうと思いますが、方向はその方向でやってまいりたい。その方向に従ってまた必要な改正は要るであろう、かように考えます。たとえば、五人未満の被用者の保険をどうするかというような点も、この抜本がきまったら、その線に沿って考えてまいらなければならない。今度の抜本は、ただ基本的なあり方に基づいての第一歩の踏み出しでありますから、それに沿うていろいろこまかい改正も必要に応じてやっていかなければならない、さように考えます。
  83. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いまのお答えについては、私はあとで時間があればまたということにして、保留させていただきます。  政管健保というのが、しばしば財政上の赤字の問題で問題になっている。私は政管健保というのは、政管健保が持たなければならない一つの宿命というものを持っておるのではないか、こう思うのです。一つは、組合健保に比べて賃金が安い。たとえば平均標準報酬を比べますと、組合健保を一〇〇としますと政管健保は八〇・七、それから保険料については、組合健保を一〇〇とすれば八二・三%。ところが医療費については、組合健保を一〇〇とすれば一二二・〇になる。  それからもう一つは、政管健保には高齢者が多いということも事実であります。これは四十五年の十月に、政管健保は五十五歳以上が一〇・八、組合健保では五・六、約半分であります。しかも政管健保については、五十五歳以上の人の占める割合の伸び率というのが毎年ふえてきておることも事実であります。つまり組合健保は、たとえば採用なら採用する前に精密な検査を行なって、健康な者を採用する。そして定期的な検診も行なうことができる。しかし政管健保というものに従事しておる労働者というものは、少なくともそういうことについてはなかなかできにくいという条件が一つあるだろうと思います。そしてこのことは、被扶養者についても言えますね。しかも男女の割合からいけば、政管健保のほうは女性のほうが多い。しかも女性の賃金というのは男性の約半分ですから、保険料も低くなっておる。そして医者にかかる率は女性のほうが多いというデータもここにある。しかも政管健保というのは、だんだん零細化が進んでおるということも事実であります。しかもその零細化が進んでおる中で、実は零細企業であるほど今度は医療費が高くなっておるということも数字的に出てきておる。そうすると、政管健保というのは実は免れがたい宿命を持っておるのだとぼくは思うのですよ。そういう免れがたい宿命を持っておる政管健保というものに対して、特別な考え方というものがあるはずだと思うのです。ところが財政赤字になれば、料率を上げるとかあるいは一部負担をするとか、あるいは標準報酬下限を上げていくとか上限を上げていくとか、そういうようなことをして要するに処置をしてきておる。つまり条件的に悪い人たちに対して、赤字が出ればそれに対してなお負担を負わしていくという事実が、いままであったと思うのです。本来ならば、そういう性格を持った政管健保であるならば、もっと国としては考えなければならぬものがあるだろうと思うのだけれども、しかしそれをなさっておらぬ。つまり政管健保の持っておる一つの特殊性というものを無視しながら、赤字が出れば財政措置をして、そして財政効果をあげていく、こういうことを私はずっといままでやり続けてきたのではないだろうか、こう思うのです。そうすると、これに対して、私が申し上げるように、そういう姿勢で来たのだけれども、一体政管健保についてあなた方は何らかとるべき措置がないかどうかということをお考えになったことがないのかどうか。この点はどうなんですか。
  84. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 組合健保にも赤字を出しているような組合もありますが、大部分はいまおっししゃったとおり。そして政管健保組合健保との体質的な相違というものは、山本委員いみじくもおっしゃいましたとおりでございます。これはそういった宿命だとおっしゃいますが、そういう宿命に仕組んでいるいまの健康保険法あり方がいけないのではないかというのが、抜本の根底の考え方でございます。給料が高くてそして疾病率も少ないという人たちのグループと、給料が低くて疾病率が高い——疾病率が高いという中には、いまおっしゃいました高年齢者が多い。もともと健康にそう恵まれない者も中小企業の労働者として働いている。また大企業の被用者で、定年になれば中小企業のほうへ行って働かれる。本人には何の罪もないわけであります。同じ労働者、あるいは同じ国民としての健康保険であるならば、同じ給料に対する同じ保険料率で、そして同じ給付があってしかるべきではないか。これが国民保険の精神ではないか。財政の豊かな、しかも体質的に豊かなところにおいては法定外の給付までまるまる見られる。そして保険料はといえば、政管よりも非常に低い保険料率で済む。政管に入ってきたが最後、いままで法定外給付も全部安い保険料率で見てもらっていたものが、今度は見てもらえない。これは仕組みが悪いからであって、仕組みが悪いということは、保険制度の出発したときには皆保険を頭に置いて考えたわけではないと私は思います。まず最初の健康保険制度ができたときには、本人の医療保険をする。事業主と一緒になって保険をする。当時はいわゆる被用者、働く人たちの給料も低かった。労働力を搾取されるというような状況のもとに、まずある意味においては医療を労使で見てやるということは、一つの何と申しますか、労務対策でもあったろうと思います。労使対策、労務対策、そこから出発してまいって、そのときにおいてはそれはそれでよかったであろうと思いますが、しかし国民医療というものは全部ひとつ皆保険にしようということで皆保険にまでなってきた場合に、いま新しく皆保険制度をつくろうとした場合にはいまのような制度を私は初めから考えないと思いますが、自然発生的の必要に応じてできてきて、そして最後皆保険ということになったわけでありますから、もう皆保険をやって十年たつわけでありますから、一ぺん皆保険の精神に立ち返ってというか、これを新たに考えて、そしていくべきではないであろうか。宿命的な保険の組み合わせ方ということで、中小企業の被用者は非常に割りの悪い医療保険ということに向けざるを得ない。そこで、それじゃ足の弱い者を全部国費で見たらいいじゃないか——国費で見るということになれば、大企業でやっているいわゆる法定外の給付、これまでも全部見てやるということになれば、これは私は少し皆保険考え方から逸脱していくんじゃないだろうか。政府管掌として国庫が負担するのはどの程度が適当であるか、それをまず考えて、そして国庫の負担もあるべき姿にする。するけれども、しかしながら国庫負担といってもやはり税金でありまするしいたしますから、ある程度の国庫負担をやって、そして政管としてはそれで財政の恒久対策がとれるということをまず一方でやり、そして抜本においていまの宿命的な仕組みというものを何らかの方法で直していく。ところが、皆保険だといって一元的な保険に全部改組してしまうということはできないし、皆保険考え方からここで白紙に戻って考えてみましても、やはりある単位をつくって、そして効率的な運営をしなければならない。いまの健保組合はそういう運営においては効率的な運営ができますから、いま政管健保にあるものでも、三百名以上は組合がつくれるということになっているけれども、しかし組合で独立をすれば赤字になってしまうというので、組合はつくりたくてもつくらせないということになっておりますから、したがって、財政調整はなるほどいいんだという御賛成を得るならば、その背景に立って、いわゆる組合経営の効率化という点を高く評価し、三百名以上あるいは二百五十名以上単位組合として、収支の赤字は度外視して経営がやっていける。三人、五人で一つの組合ということになると、これは組合経費が高くかかって私は不適当と思いますが、少なくとも二百五十名あるいは三百名以上であれば、そこは保険料収入が少なくて、そして疾病率が多いというても、これは組合経営にして、そして先ほど申しますような意味で財政調整をやっていくということであればいいのではないであろうか。一本にしてしまうという場合においても、経営の単位は、しょっちゅう顔を見合わしている事業所単位というのは、私は運営としては能率的であり、また民主的である、かように考えますから、そういうような単位にして、そして赤字、黒字の宿命的なものはこれは調整をするというのが一番いいんじゃないか、こういう考え方で抜本を考えているわけであります。
  85. 山本政弘

    ○山本(政)委員 いまの大臣の御答弁というのは、ぼくは根本的に誤りがあると思うのです。政管健保の体質の特異性というものがある、その特異性が赤字を実は生んでいるのだ、だから組合健保に持っていって財政調整をやればいいのだ。結局、大臣の中にあるのは、いみじくもおっしゃったように、組合経営の要するに効率化という視点にのみ焦点が当てられておって、政管健保自体に入る前から、その人たちはもうある意味では大組合の従業員とは別個にふるいにかけられた人が入ってくるということなんですよ。本質的にはそういうものがあるということなんです。それに対する手当てをまずやらなければいかぬはずでしょう。だから、要するに日本医療体制というものをきちんと整備した上で、そしてなおかつそういう問題が出てくるというなら話はわかる。あえてぼくは全国民とは申し上げません。しかし少なくとも政管健保の人たちに対して、そういう特異性があるのだったら、まずそれに対する措置というものをやってみて、そしてなおかつ財政的な問題が出てくるというならば、それに対する処置というものができなければならぬと思う。ですから、現に二、三日前の新聞で、巡回健診をやっておったけれども、それが要するに医師の免許を持っておらぬ人たちがやっておったというのが新聞に出ておりましたし、そしてそれをやっている人は実はほとんど大部分が政管健保の人だったでしょう。もちろん大企業の人がありましたよ。大日本インキとかそういうところがあった。これは論外ですよ。しかし、何で定期的な安い巡回車を利用しなければならぬかという背景というものを考えなければならぬと私は思う。そういう措置をやってみて赤字財政ができるというなら、これはまた別途に考えればいいだろう。もともと、病人が出るという、そういう政管健保のひよわさというものがあるわけでしょう。企業をどうしようというわけじゃありませんよ。しかし、企業が持っているそういう体質の弱さがあるならば、それは厚生の面か何かで補強をするということが必要でしょう。そういうことなしに、赤字が出ることは当然のことであるとして、その赤字というものを、今度は安易に組合の財政と結びつけて、財政的な、要するに経済的な効果をねらっていくということは、本末転倒じゃありませんか。私は少なくとも本末転倒だと思うんですよ。もう一度、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  86. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、本末転倒ではないと思います。山本委員のおっしゃいますように、もう体質的に違う。政管健保なるがゆえに体質が違うんでなくして、体質の違う弱いものを政管健保でいまやっているということなんであります。本来ならば組合健保でもいい。組合健保では赤字になるから、したがって政管に入れて、事務費も全部国が見る、一定の国庫補助もやる。今度は、それも定率化しよう、そこまでやってですよ、それでもなおかつ体質上の違いというものは依然として存するわけでありますから、その体質上の違いというのは、これは本人が好きこのんで体質が違うわけじゃない。おまえは病気にかかりやすいから、収入が少ないから、したがって給付も違うんだということは、皆保険の精神に反するじゃないか。それで、収入が少なくても、あるいは病気をしがちな者でも、あまり病気せぬ人でも、やはり病気をしがちの人を助けるというのが、これが私はやはり医療保険の本質でなければならぬ、かように考えますから、その本質に立ち返ってやるのには、経営の効率化を考え、そして、いま申しました保険料の公平と給付の均一というものを考えますると、そこに財政調整をやる以外に道がないじゃないか、こういう考えであります。幾ら手当てをしても、体質の違うものの手当てをするのにはおのずから限度があるので、その限度はここまででございますと、その限度でいかがでございましょうというのが、いま御審議をいただいている、財政対策と称する法案でございまして、これを、まあ早くいえばどこまで国が見るか、そうして、それで妥当であるかということに落ちつくと私は思うのであります。しかしながら、大企業の組合が享受しているだけの給付もできないわけでありますし、それらの体質上の違いというものを、これは宿命だということではなくて、やはり国民相互扶助という考え方で財政調整をするのが適当ではないか、そういう考え方です。医療供給体制を整えないでということは、いまの議論とはちょっと違うと私は思います。いかに医療供給体制を整えても、いまの体質の違いというものを変えるわけにまいらないわけでありますから、その点は御了解をいただきたいと思います。
  87. 大原亨

    大原委員 関連。関連ですから簡単に言いますが、厚生大臣、あなたは基本的に、医療保障については保険主義をとるのですか、保障主義をとるのですか。それが一つ。基本的な問題ですよ。あなたの説明を聞いておると、長い説明だけれども、ぐるぐるあっちいったりこっちいったりしている。それが一つ。それから、三百名以上の事業体について組合方式を許可しないのは、どこが許可しないのですか。  もう一つこれに関連をして、昭和四十二年の特例法のときに二百二十五億円出したでしょう。二百二十五億円の国庫補助を出したのです。その率は当時何%になっておるかということは非常にはっきりいたしておりますが、その後そのつまみ銭で全然ふえてないでしょう。体質上の欠陥があるんであれば、やっぱり国庫負担をふやしていけばいいじゃないですか。実際上は率が減っているでしょう。だんだん医療費はふえているけれども率が減っているでしょう。つまり、三兆円の医療費を税金で負担するのか保険料負担するのか、あるいは自己負担をどうするんだということの調整をやるのが政策でしょう。たとえば政府管掌健康保険で予防とか健康管理について、政策やっていますか。だから私がそういう観点で質問しているのは、あなたがぐるぐる長いこと言って、わけのわからぬ答弁をされておるけれども、あなたの考え方が一致してないじゃないか、全然矛盾しておるじゃないかという点を私は別の角度から言っているんです。  もとへ返れば、保険主義をとるのか保障主義をとっておるのか、政府管掌健康保険運営はどうなんだ。実際には、ヨーロッパはみなそうですが、公務員でも大きな企業体でもそうですが、定年は六十五までやるんですよ。六十歳から社会保障の年金やその他の医療保障についても考え方を変えるけれども、大体雇用というのは、定年は六十五歳までやっているんですよ。つまり、年金で食えるところまでやっているんですよ。日本は、大きな企業やそれから共済等は五十五とか五十七とかというところで切るでしょう。そうすると、今度は政管へ流れていくわけです。そういう構造的なものは国が見るということで、国が見ることが必要であるということが四十二年の特例法のときに議論になって、政府もそれを認めて二百二十五億円、当時の医療費で二百二十五億円だけれども、一つもふえちゃおらぬでしょう。率からいえば、どんどん減っているでしょう。たとえ五%であったって、そうですよ。ですから、その一貫した方針がない。構造的な欠陥に対して政府はどういう責任を果たすのかということについて、国民の立場から見れば、一貫性がない。かってに言うときは保険主義ということを言うんだ。それで一方では保障のようなことを言っておる、財政調整をやろうという根拠づけとしてはですね。しかし私どもは、私の議論は後にするけれども、保障について何をなすべきか、保障的な考え方で何を行なったか、当面のところでは保険は何をなすべきか、私どもはそういう議論をこれからも展開していくわけですけれども、あなたの考え方というものは、国庫負担についての考え方が——国庫負担について、私は、結論的にいうならば、政府管掌がそういう条件であるならば、政府の責任で一定の底上げをしておく、そうすることによって保険料と給付の均衡をはかることができる。そういうことをするならば、それが進んでいくならば、全体としては被用者の健康保険というものは、組合政管を含めてどうすべきかという議論ができてくる。そうすると、労務対策にも労務管理にも適用されないのです。こういう展望をつけるのが、私はいまの議論の一番大切な点ではないか。政府の立場の保険主義を認めた場合においても、保険の長所を生かすという観点で社会保障全体を考えるならば、国庫負担の問題について、構造的な欠陥に対してやはり保障的な考え方を入れていくんだと、そういう議論をやはり十分しなければならぬ。あなたの話はぐるぐると回っておって、あっちからもこっちからも言うけれども、全部反対のことを言っておる。そういうふうに思うわけですよ。いかがですか。
  88. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 基本的な考え方が違うからかもしれませんが、医療は、保険主義を中心にして、そして保障的な考えも加味するという行き方でございます。政管健保に国庫補助を入れていくのはやはりそういった考え方でありまして、これが二百二十五億が少な過ぎる、さように思いますから、この前は二百五十億という提案をいたしました。これは流れました。それから今度は五%、二百二十五億から考えますると、三百七十何億になりますから、これも約七〇%ぐらいのアップになるわけであります。したがって、いま国庫補助としては相当思い切って上げたと政府は考えているわけであります。これが十分であるかないかは十分御審議をいただきたいと思いますが——そして、これがいわゆる足の弱い人たちに対する社会保障的なもの、こういうように観念をしていただいてけっこうだろうと思います。これが十分であるか十分でないかは十分御審議をいまいただいているわけでありますが、その観点のもとに立ってもなおかつ、先ほどの山本委員のおっしゃいます体質的な違いというものは、これは解消ができません。これは私はやはり皆保険という立場に立って、そしてまず保険料料率においてもまた料額においても、また給付においても、中小企業の労働者も大企業の労働者も同じ負担で同じ給付が受けられるというのが精神ではないだろうかと考えております。
  89. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  90. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて。
  91. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、保険医の総辞退が昨年ありましたね。保険医の総辞退による意味からいえばあれですけれども、財政上からいえば政府にとっては、妙な言い方をするようですけれども、つまりこれはプラスの条件であったわけですね。国民にとってはたいへん私は不幸なことだったと思うのだけれども、厚生当局からいわせれば、あえて申し上げますけれども、財政上ではプラスになっていたはずです。そうすると、そのことによってあなた方の立場でいってプラスになった、それによって支出が少なくなった額というのはどれくらいなんですか。それが一つ。  そして「政府管掌健康保険の財政について」という政府の資料によれば、「その後も鎮静化の傾向が見られる」こう書いてある。ですからそのこともあわせて、保険医総辞退並びにそれの影響によって、当然支出すべきものがどれだけ支出しないで済んだのか、その額が一つ。第二番目は医療費改定による影響額は幾らか、この金額をひとつお示し願いたいと思います。
  92. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 総辞退の影響によります額は、これは厳密に計算することはちょっとできませんけれども、一応推定ということでお許し願いたいと思いますが、大体医療費の支出が減りましたのが二百五十億でございまして、逆に、御承知のように総辞退中は療養費払いをいたしましたので、通常のいわゆる現金給付の額がこれに伴うものとして推定されますのが百五十二億ぐらいではないかということでございまして、大きく申しまして約百億の支出の減があったのではないかというように推定しております。それからその後の鎮静化の状況は、御指摘のとおり、七月の総辞退後、わりに医療費の伸びがゆるい状態が続いております。これが厳密に申しましてこの鎮静化によってどのくらいになったかということは、やはり厳密には推計できない面があるわけでございますけれども、いまの大体の見通しと申しますか、これでは、こういったいろいろな要素が加味された医療費の減というものが約二百九十億ぐらいあるのではないかというように思われます。それから医療費改定によります増は、四十六年度は一カ月分でございまして、これは五十八億と推定いたしております。
  93. 山本政弘

    ○山本(政)委員 じゃもう一ぺん確認いたしますけれども、総辞退による医療費の減が約百億と見ていいわけですね。そしてその後の鎮静の分として二百九十億ですか、見ていいわけですね。そして医療費改定による支出増が五十八億、そうすると全部で四百四十八億ですかね。そうでしょう。大まかな計算ですけれども、一応の計算としては。  それじゃお伺いしますが、この「政府管掌健康保険の財政について」の三ページに、四十六年度及び四十七年度の収支見込みということでここに説明が書いてある。「昭和四十六年度は予算編成時では何らの対策を講じないとすれば、予備費を含め九百七十六億円の単年度赤字が生ずる」こういっている。そしてそのあとで、抜本改正の一環としての標準報酬制の合理化による改善対策を四十六年十月から実施すれば単年度赤字は四百十一億円となる、こう書いてある。そしてずっとそのあとに、これらの実績を基礎に推計してみると、医療費改定五十八億円を含めて単年度で約百五十八億円の赤字にとどまる見通しとなっておる、こういうわけです。そうしますと、九百七十六億の単年度赤字というものが、保険医の辞退とかあるいはその後の鎮静化の傾向とかいうものを考えても、九百七十六億の半分以上に単年度赤字がなることになるのですよ。そうでしょう。ところが単年度赤字が百五十八億円にとどまる見通しになった、こうおっしゃっておるのです。そうすると四十六年度の赤字の見通しというのは、非常に膨大な赤字の見通しをとっているわけです。私が申し上げたいのは、赤字というものを非常に大きく見積もっているのが、実際にはこれだけ少ないわけです。九百七十六億円の見通しというものが何で実際には百五十八億円の赤字にとどまるのか、実は私は理解ができないわけです。しかもその中に保険医総辞退とかなんとかいうファクターを入れても、なおかつ四百億以上の赤字見通しになるはずなんです。しかし実際は百五十八億。厚生省はいつでも赤字というものを過大視して、そして赤字です、赤字です、こう言っておって、財政効果というものを何らかの形でつけ加えて、そして政管健保の場合、労働者負担をかけていこうとしている。一体どうしてこの見通しはこんなに食い違うのですか。
  94. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先ほどの、私が四百四十八億になりますということに御返事いたしましたのは、間違いでございまして失礼いたしました。総辞退の百億と鎮静による二百九十億のこの和というのは赤字を減らす要因でございますけれども、医療費改定は逆に赤字をふやす要因になりますので、その計算だけにつきましては三百九十億から五十八億を引きました三百三十二億が減るということになるわけでございます。それで、当初九百七十六億というものを想定いたしまして、百五十八億に至るそれは何だという御質問だと思いますけれども、まず第一に、九百七十六億の赤字を見込みましたときには、予備費三百億の支出を含んで予算を計上したわけでございまして、これは予算に組んでいたわけです。ところが総辞退でありますとか、あるいはいま申しました医療費の動向というようなことによりまして、四十六年度は大体この予備費は使わないで済むというような状態になりました。したがって九百七十六億の赤字というものが、三百億の予備費支出を切り捨てると申しますか、使わないで済むということで六百七十六億に減ったわけでございます。結局六百七十六億がスタートになるわけでございますが、この六百七十六億の場合には、これは国庫補助の導入前でございまして、したがって、国庫補助二百二十五億を六百七十六億から引きますと四百五十一億になるわけでございます。そこから今度は赤字をふやす要素と減らす要素に分けて御説明を申し上げますが、赤字をさらにふやしていくという要素が二つございまして、一つはいま御説明いたしました五十八億という医療費改定の問題でございます。それからもう一つは、四十五億ばかりの保険料収入減が見込まれる。大体そのくらいに減るのではないかという見込みをいま持っているわけでございまして、この理由は、当初予算を組みますときには、大体標準報酬の年間の平均の伸び率というものを一四・六%ということで組んだわけでございます。これは年間平均でございます。ところがいまの見通しでは大体これが一三・六くらいに実際にはなるということで、私どもが見込みました標準報酬よりも現実には若干伸びが下回りましたので、それによって保険料の減ということで、これは赤字を押し上げる要因になるわけでございます。  それから次に、今度は赤字を減らす要因でございますが、それがいま御説明申し上げました保険医の総辞退で大体百億近い金額が推定されるわけでございます。それから一人当たりの医療費の鎮静による減が、大体二百九十億くらいではないか。それから被保険者が若干減りましたことによって現金給付が減りまして、現金給付の支出が十億ばかり減りましたので、合わせまして大体三百九十九億くらいが、これは赤字を減少させる要因になるということになるわけでございます。この結果大体百五十八億の赤字におさまりそうであるということになったのでございます。
  95. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうしたらおかしいじゃありませんか。三百億というのは予備費でしょう。予備費を含めて九百七十六億というふうにいま御説明があった。そうしたら予備費を含めた四百五十八億の赤字になるはずじゃありませんか。あなたは予備費をいつの間にか横へやってしまっておるけれども、百五十八億にプラス三百億円というのがここに出てこなければならぬはずでしょう。そうじゃありませんか。それならまだ話がわかる。それなのに、ここには百五十八億円の赤字になっておる。予備費を除いて百五十八億円の赤字にとどまる見通しだというなら、これは理解がつきます。しかもそのコメントが何にもないようです。
  96. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 どうも説明がへただったかと思いますけれども、結局三百億というのは支出しないで済むことになりますので、それだけ支出しないということでその分の赤字がそれだけ減るということになるわけでございます。
  97. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ですから見通しの場合には、要するに単年度の赤字を見通す場合には、予備費まで含めて九百七十六億円とする。しかし出てきたものは予備費を除いて百五十八億円になった、そういう言い方というのはおかしいじゃないかと言っているのです。だから赤字というものを、いつでもあなた方は、これだけ赤字がありますから何とかしなければならぬ、こう言って財政的な措置をとる理由になさっておるんじゃないかとぼくは言うのです。そして結果的にはそういう財政的な措置をやらぬでも——現実に出てきたときにはそういうものをどこかに置いてしまって、そして百五十八億円だ、赤字はこれだけしかありませんというふうな言い方をするところに、非常に作為的な、常に赤字でございます、赤字でございますと、年度の初めにはそういうことを言って、こういう一部改正というようなものに手をつけたがる、ぼくは厚生省にはそういう宿痾があると思うのです。そうじゃありませんか。
  98. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 過去には見込み違いもいろいろございまして、そういう印象をお持たせしたことはまことに申しわけないと思いますが、九百七十六億と申しましたのは、これは予算を編成するときの予算の数字でございます。いま百五十八億というのはこれから夏にかけて——七月末に結了いたしますが、決算の数字を申し上げたわけであります。決算上はこういう数字になって出てくる見込みであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  99. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十七年度の政管健保の財政支出の百二十億円というのは、かなり大きな金額だと思うのです。この予想される内容というのは何ですか。
  100. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先生御承知のように、医療保険医療費というのは、一種の生きもののようなものでございまして、たとえばちょっとインフルエンザがはやると非常に支出がふくらむとか、そういうような非常に流動的なものでございますので、やはり私どもが予算を組みますときには、予備費というものはどうしても組んで不時の支出に備えるということが必要ではないかと思うわけでございます。そういう意味で、四十七年度には百二十億の予備費を計上したわけでございます。
  101. 山本政弘

    ○山本(政)委員 四十六年度に三百億、四十七年度は百二十億。私は、常識的に考えれば、四十六年度の三百億よりかはるかに多い予備費というものが四十七年度に組まれるのがほんとうだと思うのです。  それでは、要するに四十六年度の予備費というのはまるまる使わなくて済んだわけでしょう。使わなくて済んだからこれを今度は半分近くに減らせ、こういうことになるわけですか。つまり、四十六年度は三百億という予備費をやりながら、四十七年度は何で百二十億にしているのですか。
  102. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 予備費はその年々で、いろいろその状況によりまして金額をきめて計上してきたわけでございますが、四十一年から四十五年までは、毎年大体百億の予備費を計上してきたわけでございます。  それで、四十六年度に限ってなぜ三百億円にしたかという御質問でございますが、これは昨年廃案になりました法律改正を、予算を編成するときには前提としておりまして、新しい給付改善のシステムが取り入れられておりまして、その実施によって、給付費というものが私どもが予想したよりもふくらむ可能性もあるのではないかというようなことから、三百億の予備費を四十六年度は計上いたしたわけでございます。本年度、四十七年度につきましては、これは大体従来のペースに戻しまして、百二十億を計上したわけでございます。
  103. 山本政弘

    ○山本(政)委員 標準報酬を三千円から一万二千円に上げましたね。それから十万四千円の上限というものを上げて二十万円にしましたね。要するに、それによるおのおのの増収というのは幾らになりますか。
  104. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 下限引き上げによります金額でございますが、これは四月実施ということで御説明を申し上げますが、四月実施の場合、下限による増は千九百五十一万円でございます。それから上限の場合は、三百七十六億円でございます。
  105. 山本政弘

    ○山本(政)委員 下限の三千円の人が一万二千円に上げられたわけですね。そうすると三千円の人たちは、いままで二百十円の保険料の半分だから百五円とられておったわけでしょう。それから六千円の人は四百二十円の半分、労使折半ですから二百十円。一万円の人は七百円だから三百五十円。それで今度一万二千円になると、八百四十円になりますね。その折半だから、負担分が四百二十円。そうすると、現行の一番下の人たちはほぼ四倍の保険料をとられることになる。六千円の人たちは二倍以上の保険料をとられることになる。一万円の人たちは七十円ですね。そうすると、保険料のアップ率というのは、下限の三千円の人たちは四〇〇%の値上げ率になるわけですね。それから六千円の人たちは二〇〇%以上の値上がりになる。これは少し上げ過ぎじゃないかと私は思うのですよ。あなた方は、人間が少ないからがまんしてもらうよりしようがないというようにお考えになっているのかもわからないけれども、しかし考えてみれば、三千円とか六千円とか一万円とかという給与の人は、一番底辺の層ではないだろうか。なぜ下限を一万二千円まで上げる必要があるのか。いまのお話を聞きますと、収入としては千九百五十一万円しか増収にならぬわけですから、そうしたら何も下限というものを上げる必要はないだろうと思う。これは一体どういう理由でそういうことをなすったのか。
  106. 戸澤政方

    戸澤政府委員 一万二千円以下の報酬の者を一万二千円までまとめて上げることによって、いま先生の言われたような階層につきましては、確かに保険料が数倍になるというような結果にはなるわけでございます。しかし、一つの保険の技術上の問題としまして、この標準報酬のランクのつけ方は、最低と最高のランクをどの程度に持っていくか、あまりにも少ない、もう最低のところにつきましては、非常にネグリジブルに近いような数字である場合には、ある程度のところまで上げる。逆に上限のほうは、そこにたまる率が非常に大きくなった場合、適当なところまで引き上げるというのが、いままで保険の扱い上とってきたところでございます。  それで、この一万二千円以下の人たちは、四十五年度で員数にして一万二、三千名まだおることになっておりますけれども、この就業形態は、大体アルバイト的のものが多いようでございます。主婦などのパートタイムとか、そういうものが多いようでございまして、これだけでもって生活しているということはちょっと考えられないわけでございます。最低賃金についてのいろいろな例を調べましても、二万円を下回る賃金というものは考えられないわけでございますし、それから四十七年度予算でもって予定しております生活扶助の基準を見ましても、二十歳の単身男子で一類、二類合計いたしますと一万二千四百円ということでございまして、生活保護の基準よりも少ないというのはちょっと考えられないわけでございます。まあ、そんなところを見まして、一応船員保険の例にならいまして一万二千円というところにまとめたわけでございます。
  107. 山本政弘

    ○山本(政)委員 パーセンテージからいって保険局長はネグリジブルだとこう言った。パーセンテージからいってそれだけのものだったら、なぜいっそのこといい意味のネグレクトをしないのですか。標準報酬等級別の第八級、これは一万円ですけれども、これだって一万六千三百二十一名おるのですよ。四十五年十月で九級、一万二千円になるのは二万九千九百四十五名おるのです。一級から九級まで合わせると五万一千百八十三人。パートとかアルバイトをやっているとおっしゃるけれども、パートとかアルバイトをやって生活をしているんでしょう。しかもそれが被保険者であるというならば、病気にかかったときには、その人たちは被扶養者である場合よりも被保険者ですから、支出はなくて済むわけです。底辺の層に対して、数字として無視できる〇・〇何%であるから、あるいは〇・何%であるから、これは知らぬ顔をして上げてもいいという理屈にはならぬでしょう。底辺層だからなおさらのこと下限というものを引き上げないでいくという配慮が、なぜできないのか。私は保険局長のお話では納得できないです。
  108. 戸澤政方

    戸澤政府委員 この下限につきましては二十八年十一月以来据え置かれておったわけでありまして、当時は最下限の三千円にランクされるものの分布率が四・四%であったわけでございます。そこで、今回一万二千円までこれを引き上げるということにした場合、その一万二千円のランクの分布率がどのくらいになるか推算しますと、四十七年十月で約〇・一四%というように推定されるわけでございます。数字だけでもって、非常に少ない数字だからこれをネグるという意味ではありませんけれども、保険のたてまえからしまして、保険料負担によって給付費用をまかなうという原則から、所得の低い者にもある程度保険料負担はやってもらう、そのかわりに現金給付などは標準報酬の一万二千円に対応して支給されるわけでございますので、そういう保険料と給付とのバランスも考えまして、この程度はひとつ負担してもらいたいというふうに考えております。
  109. 山本政弘

    ○山本(政)委員 標準報酬が低い者というのは給与が低いということでしょう。そういうことでしょう。その人に対して四〇〇%の負担をかける。月収が百万の人なら、ぼくはそんなこと言いませんよ。しかし少ない人だから、四〇〇%もあるいは二〇〇%もの保険料負担させるという気持ちがぼくはわからぬと言うのですよ。数的に〇・三%とかあるいは〇・三八%であるから、これはもう無視していいということにはならぬだろうと言うのですよ。いみじくも大臣が言ったでしょう、政管健保は特異な体質を持っているんだからと。その特異な体質を持っている五万人やそこいらの人たちが、なぜ保護できないのか。それまでして下限引き上げなきゃならぬだろうか。事務上の手続が繁雑になったからというのでは、これはあまりにも冷たい仕打ちでしょう。どうも私はいまの御答弁ではまだ納得できません。
  110. 戸澤政方

    戸澤政府委員 まあ、下限を一挙に一万二千円まで引き上げるのが少し上げ過ぎであるという御意見であろうと思いますけれども、三千円のものを一万二千円に引き上げますと、引き上げ後の保険料月額が四百二十円になるわけでございます。それで国保の均等割り、平等割り保険料平均額を調べてみますと、四十五年度でもって月額約五百四十円となっております。まあ、低所得者層の多い国保における均等割りの平均額よりもさらに百円ほど低いのでございますので、被用者保険の立場として、この程度保険料はそう過大なものではないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  111. 山本政弘

    ○山本(政)委員 国保が政管健保よりか貧しい人が多いという理屈にはならぬですよ。現に今度最高限が五万円から八万円に上げたじゃありませんか。しかも国保を使っている人の中には、大きな商店の人たちもおりますよ。あなたがおっしゃるように、国保が政管健保よりか貧しいということが立証できますか。立証できるんだったら、あなたそうおっしゃるんだったら立証してください。
  112. 戸澤政方

    戸澤政府委員 あくまでも平均的な話でありますけれども、一人当たりの保険料政管健保と国保と比べてみますと、政管のほうが平均額においてはかなり高いということが出ておりますし、まあ一般的に見れば被用者保険のほうが所得が多いということは言えるわけでございます。被用者保険のほうの保険料の最低額というのは、一応船員保険等の例もありますので、なるべく統一をしたいというところでもってそれにならったわけであります。
  113. 山本政弘

    ○山本(政)委員 じゃ、あとの質問との関連がありますので、国保と政管平均保険料は幾らぐらいですか。
  114. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの御質問を伺っておりまして、たとえわずかな数でも一万二千円よりも低い給料の人がある、それを無視するということはいかがなものであろうか、私もそれは同感でございます。そこで私といたしましてはその点をよく検討いたしたのでございますが、一万二千円と申しますと、今日の最低賃金法の最低よりもなお低いわけであります。それからまた生活保護のあれから考えましても、一万二千円の標準報酬というものを下限にとることは、私はそう高過ぎるとは思いません。現実に三千円あるいは五千円という名目給料で働いておる人が、〇・一四%であっても若干あることは事実でありますけれども、これは名目賃金であって、実質は私は生活保護の基準よりは収入は得ておられるだろう、かように考えまして、〇・一四%の低い人があっても、実質的にはそう困ることはないんであろう、こういう政治判断に立ってきめたわけでございます。  いまの国保と組合との間の関係の数字は見つかり次第御答弁いたします。
  115. 戸澤政方

    戸澤政府委員 四十五年度の実績でございますが、国保の保険料は、国保は一世帯当たりで計算しておりますので、一世帯当たり一万六千百二十三円、政管健保が被保険者一人当たり一万八千九百四十四円でございます。
  116. 大原亨

    大原委員 厚生大臣は私どもの質問に対しまして、二百二十五億円の国庫補助であったのが、四十七年は三百七十三億円にしたんだ、思い切って上げたんだ、こういう話です。その点についてだけ私は言っておきますが、昭和四十二年は、御承知のように、二年間の時限立法の特例法を出したのです。そしてこれは非常に大きな政治問題になりまして、そして強行突破したわけです。強行採決したのです。そして一方では保険料を上げたわけです。一部負担も設定したわけです。その議論は私はまたあとであらためていたしますが、問題は、四十二年に二百二十五億円の場合には政府管掌健康保険による給付費の比率は六・三%でありました。政管による法定給付費の六・三%。それから政管による医療費全体からいうと五・九%でありました。昭和四十七年に三百七十三億円になったといっても、法定給付の関係からいえば六・三%が五%に下がっております。それから総医療費の関係からいうと、五・九%が二・七%になっております。これはどういうことかというと、一部負担であなたらが議論したように、賃上げやその他による保険料の自然増収に比較をして、総医療費が非常に大きくなっているということなんです。これはいろいろ議論しなければならない。その間、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と強行突破をしながら、保険料を上げながら、自然増収はふえていきながら、政府の国庫負担はふやさなかったのです。二百二十五億円に据え置いたのです。その差額を同じような調子でふやしている政府は、負担だけでも四、五百億円はずっと出していなければいかぬわけです。それを、当時からいえば、強行突破をして国庫負担を出した経緯からいえば、出していなければならぬ。だから、あなたの答弁は二重の誤りがある。というのは、二百二十五億円を三百七十三億円にしたから五割も上がっておるじゃないかというようなことを言うのは少しおかしい。もう一つは、政府の立場を一貫して貫いてない。いままでずっとほっておいて、そういうものが合計いたしますとそれは五百億円以上ですよ。こういう問題について触れてない。実際には四十七年の比率で見ると、下がっている。比率は、三百七十三億円でも、下がっている。たとえ五%にしても、下がっている。比率からいえば下がっている。六・三%が五%。  問題は、ここで一言だけ均衡上申し上げておくのだが、国民健康保険は四五%、調整を含めてやっておるのですが、これは総医療費に対して四五%なんです。七割の法定給付に対しましては六四%に当たるのです。私は、これは筋が通っている。これは国民健康保険の、吹きだまりということもあるし、ある程度、これでいいとは言わないけれども、もう五%くらいふやす必要があるのです。法定給付に比較いたしますと六五%に相当するのです。  厚生大臣、政管健保が雇用問題その他全体からいって構造的な欠陥があるというなら、国が責任を持ちましょうといって、四十二年には、非常に少ない、問題にならなかったけれども、それを出した。そのとおりに大体負担をしてないじゃないかという議論があるわけです。私はその問題だけを指摘しておきます。あなたが答弁されたことは全く納得いかない。
  117. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私が答弁いたしましたのは、いままでの二百二十五億円に比べてこうだという数字を申し上げて、政府としてはいままで二百二十五億でよろしいというてきたわけのところを奮発してこういたしましたと……。いま先生のおっしゃる、過去においての比率からいうとこうじゃないかとおっしゃるのは、私は数字的にはそれも正しいだろうと思います。そこで、政治的にどう判断するのだという問題であって、国保の補助率が高いというのは、先般も申し上げましたように、事業主負担もない、また、いまおっしゃるように、これは吹きだまりだという、いろいろなことがあってそうなっておりますが、健保のあれからいいますと、およそうそを言っているのではございませんので、前年に比べてこうなります、こう言うただけであって、それが十分か十分でないかということは、私は十分御議論いただけたらけっこうだと思います。
  118. 山本政弘

    ○山本(政)委員 では、大臣お見えになったから、あとでこれは御質問しますけれども、私が申し上げるのは、政管健保の体質が組合健保と異なるというお話だった。つまり老齢化をしていく傾向があるという。そうしたら、老齢化をしている人に対して打つべき手というものを打たないで、財政措置だけでもってカバーをするのだという話が納得いかぬというのですよ。それでは老齢者に対して健康増進とか予防とかという手を政府は具体的にお考えになっているかといったら、何もお考えになってないわけですよ。そうして、いまの話になりますけれども、政管健保が特異的な体質を持っているのだ、だから国庫補助をやるのだということになれば、そこにもやはり一つの問題があるだろう、私はこう申し上げているのです。  さっき大原さんがお話しになったけれども、あなた方は、国庫負担率を五%、今度は定率にやりますからと、こう言っているのですよ。おっしゃっているけれども、政管健保の今度の国庫負担率というのは、保険給付に対する負担率ですね。そうでしょう。保険給付に対する負担率でしょう。そうしますと、すでに四十一年には比率に直せば五・五%の国庫負担率になっているのですよ。四十二年は六・八%の国庫負担率になっておる。四十三年が五・八%国庫負担率、四十四年が五・〇%、四十五年に初めて五%を割って四・三%になっておる。かつて国庫負担率は五%以上だったわけです。いまあなた方は五%の国庫負担率をやるということは前進だと声を大きくして言っているけれども、何も前進ではないわけです。過去に国庫負担率は、試算をしてみると、五%をこえたことが四十一年以来ずっとあるわけでありませんか。ということになれば、大原委員の言うように、政府管掌保険の特異な体質ということを考えれば、もっと大きな国庫負担をやったって一向差しつかえないはずですよ。しかるに政府は国庫負担率五%、これは定額よりか、定率ですからきわめて前進です、こう言ってごまかしているとぼくは言うのですよ。相関関係があるでしょう。政管健保の要するに特異体質の中には、私が申し上げたように高齢化になっておる、女性が多いというようなことから診療費が高くなっておる。なぜか、それは高齢化であり、女性が多いというような一つのものがあるならば、それに対する政府措置というものがあるべきではないだろうか。それは大きな意味で言えば、健康増進も含め、あるいは予防も含めて……。そうしたら、本来ならばこの国庫負担というのはもっと考え直していいじゃありませんか。それを二百二十五億円が今度は三百七十三億ですか、そういうことになったといって、金額が多くなったということだけで言われては、大臣のおっしゃる筋が通らぬでしょう。そうじゃありませんか。現に定率五%以上をあなた方は国庫で出してきているじゃありませんか。前に出したよりも少ない五%でもって、これが前進だというのはおかしいでしょう。その点はどういうことになっているのですか。
  119. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの四十二年度、三年度、四年度、五年度、これはそのときの医療費との割合を考えると五%を上回っていた、四十三年度だけは下がっておった、これはそのとおりで私も……(山本(政)委員「いや、四十五年だけが下がっているのですよ」と呼ぶ)四十五年度だけは——その数字は否定はいたしません。ただ、そういう状態で定額の補助であった。今度は定率補助ということになれば、今後上がってくれば自然に定率で実額というものはふえていく、定率に踏み切っただけでもひとつ評価をしてください、こう言っておるので、政府としてはいまのところこれがぎりぎりでありますというて出しておりますので、うそを言っているわけでもなし、それ以上出すのは出し過ぎだというわけでもないわけでございますが、政府考え方はこうでございますということを御説明申し上げている。  それからだんだんと高齢現象に入っていく、高齢者に対する疾病の予防その他というような点につきましては、、これは高齢者の定期診断やいろいろやっておりますが、これもまだ十分だとは申しませんが、今後進めてまいりたい、かように考えます。しかし、政府の考えます高齢者というのは大体六十歳あるいは六十五歳以上であって、もちろん六十五歳以上七十歳でも、それは働いておられる人もありますから、政管健保にもまた組合健保にもおられる人もある、かように思いますが、これはこれで、そういった方々の健康の維持、健康検査、予防というようなことについては今後もさらに進めてまいりたい、かように考えております。
  120. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは、大臣のおっしゃるように五%という定率というものが実質上の改善でないということになるのだったら、今回の改正というのはすべて労働者負担をかけているということになるじゃありませんか。政府は、では何にもしないということですか。そういう理屈になるじゃありませんか。
  121. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 いままで定額であったのを定率に変えていくということで、今後医療費がふえてまいればこれは自然にふえてまいるという、この考え方が、いままでとは一段と変わってきた、こういうわけであります。
  122. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だから私の申し上げるのは、繰り返して申し上げますけれども、五%が大臣のおっしゃるように実質上の改善でないというのだったら、少なくとも今回の一部改正というものは、政管健保労働者への、要するに負担増だけではありませんか、こう聞いておるのですよ。それはそれだけの話で、イエスかノーだけでけっこうなんですよ。  なぜ私はそんなことを申し上げるかというと、いままで政府はいつでも健保財政の赤字問題というものを労働者負担に寄せてきたわけでしょう。労働者負担の原則といったらあるいはおこられるかもしれませんが、私どもに言わせれば、これは労働者負担の原則ですよ。それで対処してきているのですよ、あなた方は。そうすると、今回も一部改正で、あなた方に迷惑はかけるけれども政府のほうもこれだけのことを負担します、こういってきているわけでしょう。ところがいま私が例をあげたように、そして大臣もそれを積極的に否定をしていないわけですよ。とするなら、五%というものは実質上の改善にはならぬわけでしょう。そうすると、あとは下限を上げる、上限を上げる、料率を上げる、そして賞与に対しては負担をかけるというようなことだけでしかないじゃありませんか、というのですよ。一切を労働者負担にしわ寄せをしている今度の一部改正案でしかないということを、私は申し上げているのですよ。
  123. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 今日のままでおけば、政府の補助は二百二十五億。今度定率に変えたという点とさらに五%ということで三百七十三億でありますから、百五十億ほど補助金を増した。また保険料率も千分の幾らかを増すというので、現時点から考えれば政府の補助金も増し、そして保険料率も増すということであって、ほっておけば、これは保険料率だけにかからなければならぬということでございますから、やはり私は、改善のしかたが不足だとおっしゃるかもしれませんけれども、改善なしというわけではない、こう申し上げておるわけであります。
  124. 大原亨

    大原委員 一つだけ関連。  つまり昭和四十二年、あの強行突破のとき以来抜本改正を約束しながら——これは制度上の欠陥があるのだから、いまこれから議論するように、そのことを放棄しておいて、ずっと累積してみれば、当然国が責任をもって出すべきものを出しておらぬ、それを合計してみただけで五百億、六百億ある。いまの時点において、若干増した、増したというけれども、二百二十五億円の当時から見たら、一つも増しておるのでなしに、率からいえば悪い。それで政府がきちっとやるべきものはやりました、保険料を上げてください。それで財政調整では、一部負担も要求しておるし、財政調整と称するガラガラ計算もやっている。保険主義をみずから否定するようなことをやっておる。これはおかしいじゃないか、あなたの答弁は一貫しないじゃありませんか、こういうことを言っておるのですから、問題点だけはっきりしておいて、これを一々これから整理しておきましょう。きょうはここまでかどうかわからぬけれども。——あなた、何か答弁してくださいよ。
  125. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 数字はおっしゃるとおりだと私は申し上げるのであります。これは否定はいたしておりません。かつては、計算してみれば五%以上になっておったときもある。しかし四十五年、四十六年とずっと二百二十五億できておった。それを今度、保険料率も上げなければならない。そこで定額であったのを定率にするとともに、金額にしては百五十億ほど増しますという事実を私は申し上げておるわけであります。  それで、体質が違うとおっしゃいますが、これは平均して体質が違うわけであって、同じ——これは抜本のほうになりますから議論はあとでまたゆっくりやっていただきたいと思いますが、同じ組合の中でも、法定外給付として家族一〇〇%給付ができて、しかも保険料率の低いものもあれば、同じ健康保険組合の中においても、それのどうしてもできない組合もある。おまえは大企業に入らなかったからそれでがまんせいというのは、あまりひど過ぎるんじゃないか。政管健保の中にも体質がある、そういう考え方で抜本をいたしておる、こういうわけです。政管健保の中にもこさいに各事業場を見れば、たとえば若い従業員であって、非常に高給を取って、そして健康な人たちの事業場もありましょう。しかしこれは、人数が少な過ぎるからといって政管の中に入っている、そういう人たちもある。また給料が少なくて病人の多い、そういう事業場もある。政管は全くガラガラ計算でやっているわけですから……。そこで保険者間のそういったものを調整をするということは必要じゃないか、これは先ほどお触れになりました抜本のほうの考えであります。ただ政管なるがゆえに貧乏であるわけではないわけです。その点は御了承いただきたいと思います。
  126. 大原亨

    大原委員 だれがそんなこと言っている。厚生大臣、政管へ入ったんだからきびしい条件でがまんしろと、私どもが言っているか。そんなこと言っているか。だれがそんなこと言ったんですか。あなたはそういうことを言っているけれども、だれがそんなこと言ったんですか。取り消しなさい。
  127. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、おっしゃっているとは申しませんが、ほっておけばがまんしなければならない。先ほどもおっしゃいましたように、これが体質上の違いであって、そして宿命だとかおっしゃいましたが、宿命だといってあきらめているわけにはまいらないから、その宿命でないようにするにはこういう方法がいいんじゃありますまいか、こう言っているのです。
  128. 大原亨

    大原委員 つまり、あなたのほうがやるべきことをやっていなかったのじゃないですか。しかも今回、この段階に至って何も出しておらぬですよ。出したといえば、抜本対策も財政対策だけじゃないですか。宿命でも何でもないんですよ。あなたの言うことは、二重にまた悪いことを言っておるんですよ。どうですか。
  129. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 議論はいたしませんが、そういう考え方でこちらがあるということだけは御了承をいただきたいと思います。
  130. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、保険庁でも保険局でもけっこうです。政管健保の五%の国庫負担ということをかりに日雇健保に当てはめてみたら、あるいは国保に当てはめてみたら、何%になりますか。待ちますからどうか数字を出してください。——国保は総医療費の四五%ですね。そして五%というのは調整額ですね。これは総医療費でしょう。そうなるでしょう。日雇健保というのは違うでしょう。給付金の三五%ですね。政管健保の場合は国庫負担率五%といっているけれども、それを要するにそのまま日雇に当てはめ、あるいは国保に当てはめた場合には、国保は何%あるいは日雇は何%になるのですか。そのデータを出してほしいと言うのです。
  131. 森山欽司

    森山委員長 速記をとめておいて。   〔速記中止〕
  132. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めてください。
  133. 山本政弘

    ○山本(政)委員 主計官でもけっこうです。
  134. 渡部周治

    渡部説明員 お尋ねの点でございますが、国庫負担につきまして、日雇健保政管健保は定率国庫負担でございますが、ベースは同じでございます。給付金に対する割合でございます。したがいまして、政管は給付に対して五%、日雇は三五%こういうことになっております。それから国民健康保険の国庫負担はベースが総医療費に対する割合でございますので、給付ベースに直しますと六四%ということになります。それから逆に政管のほうを国民健康保険並みの療養費ベースに直しますと、四十七年度予算の政管の総医療費八千三百七十二億に対しまして三百七十三億の国庫補助の割合は四・四%ということになります。
  135. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうしますと、先ほど保険局長がお答えになった国保の場合の一万六千百二十三円、政管の場合には一万八千九百四十四円の保険料、こう言っているのです。これがそれぞれ収入に見合った保険料だとするならば、本来ならば政管健保はもっと高くなっていいはずでしょう。国保の場合は六四%出しているのですよ。議論だけから言えば政管には四〇%ぐらい出したっていいはずなんです。そういう議論が成り立つでしょう。
  136. 渡部周治

    渡部説明員 国庫負担についてのお尋ねでございますので私のほうから答えさせていただきますが、国民健康保険に対します国庫補助、これにはいろいろ沿革もございますけれども、政管健保と基本的に違いますのは事業主負担がないということでございます。政管の場合は保険料の半分は事業主が持ちます。そういう事業主負担がないというところが違っているわけでございます。
  137. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ぼくはそういうお答えをもらうと思ったんですよ。だからあえてお伺いしているんです。そういう条件を差し引いても二五%ぐらい出すのがほんとうでしょう。それじゃ、事業主負担だとすれば、国保の場合は幾らになるべきか。それを出してください。
  138. 渡部周治

    渡部説明員 各医療保険に対しまする国庫負担あり方というものにつきましては、医療保険のそれぞれの特殊性、それから被保険者性格というようなものを勘案しながら決定をしなければなりませんので、国民健康保険に対します事業主負担分を除きました部分のベースでどれくらいで権衡がとれるかということにつきましては、なかなか一がいに言い切れる問題ではなかろうかと思います。  さらに国民健康保険につきましては、制度的に国民保険を達成する過程におきまして、当時その給付改善の費用を保険料負担にはね返させないために一部国庫負担を増してきたというような沿革的な理由もあって、現在のような率になっておるわけでございます。  また政管健保を考えます場合には、政管健保の全体の被用者の負担とそれから一方保険料負担とを、税金負担という意味での国庫負担あり方、これはやはり政管健保の中においてそれなりのバランスを考えて決定しなければならない、かように考えておるわけでございます。  われわれといたしましては、従来の二百二十五億の定額国庫補助を定率国庫補助に切りかえますと同時に、これはもう一つ、国の今後の措置といたしまして、いままで二千億に達しております累積赤字、これはいままでの措置でございますれば当然保険費の負担で消してもらわなければならないというたてまえになっておったわけでございますが、今回の財政対策におきましては、これは被保険者負担からはずしまして、たな上げして一般会計から見る、つまり租税負担から見る、国庫負担をするということにしたわけでございます。この点もひとつあわせて御了解いただきたい、かように思います。
  139. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ですから、二百二十五億が三百七十三億にふえたということですね。ぼくはふえた分について何も言っているわけじゃないのです。つまり国民健康保険とそれから政管健保とのバランスから考えたとすれば、六四%の国庫補助だ、こういうわけでしょう。六四%くらいになるはずです。そうすると、事業主負担ということを考慮に入れても、かりに半分にすれば三二%。ぼくの議論が間違ったら教えてください。事業主負担だということだったら、かりに半分にしてもいいですよ、そうすると三二%。さらに保険料負担の一万六千百二十三円と一万八千九百四十四円ということを考慮に入れて、もう一つのファクターを入れても二五%くらいの国庫負担になるべきじゃないか、こう言っているのです。ぼくに納得のいく説明をしていただきたいと思います。
  140. 渡部周治

    渡部説明員 先ほど六四%と申し上げましたのは、給付費ベースに直しまして国庫負担がそうなる、こう申し上げたわけでございます。  そこで、いま、事業主負担を入れたらどういうバランスになるかというお尋ねでございますので、この点を別な角度で御説明申し上げますと、国民健康保険の関係は……
  141. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっと待ってください。要するに、事業主負担というものがあるというお答えだったから、そういうことを勘案をすれば六四%というものは実は減るわけですね。そうでしょう。あなたのおっしゃることに従えば、減るわけですよ。つまり政管健保並みに労使折半ということになれば、国庫の負担率は一体幾らになるだろうか、ぼくはそれだけのお答えでけっこうなんです。
  142. 渡部周治

    渡部説明員 それでは一〇〇の医療費をもとに御説明申し上げますと、一〇〇の医療費の場合に、国民健康保険の場合は三〇は自己負担でございます。七〇が保険負担になります。保険負担にかかわるもののうち、百分の四十五を国が見ておるということになりますと、百分の四十五のうち——かりに百分の七十の半分を事業主負担と見ますれば、百分の三十五相当分を国がかわっておる。そうすると、残りは、被保険者の持ち分の百分の十を国が見ておるということになろうかと思います。そのうち百分の五相当額はいわゆる財政調整といたしまして、これは全体に渡る金ではございません。そういうかっこうの率になっておるわけでございまして、制度も非常に違うわけでございますので、一律にバランスをとる議論としてはむずかしいかと思いますけれども、しいてバランスをとった答えを求められますならばそういう形になると思います。
  143. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると何%になりますか。
  144. 渡部周治

    渡部説明員 総体の医療費に対しては、事業主負担分が百分の三十五、そうしますと百分の十相当分がそれから上に出ておる、こういうことになります。それが被保険者負担を国が肩がわりしておるということになろうかと思いますけれども、そのうちの百分の五相当額は、これは財政状況の悪い市町村に対しまする財政調整というかっこうで渡しておるわけでございます。療養給付費に対しましては、残りが百分の五相当額、こういうことになろうかと思います。
  145. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうものみ込めないのですが、いまの要するに国民健保との性格の差異とかその条件の違いはわかりますよ、それを理解した上で再度お尋ねいたしますけれども、政管健保の五%というものを国保に直して国庫負担分が幾らになるか、何%になるかという質問なんです。ですから一〇%になるか一五%になるかというパーセンテージだけを示してほしいわけです。いろいろな条件を言われてどうも頭が整理できないのですけれども、ゆっくりひとつ説明してください。
  146. 渡部周治

    渡部説明員 もう一度申し上げます。  実は国民健康保険に対しまする国庫負担率を政管健保の国庫負担率と比較してどうなるかというお尋ねでございます。しかしその場合に単純な比較ができませんから、国民健康保険の場合における国庫負担率には、政管健保にない、事業主負担分を見るという性格もございますので、それをカウントして先ほど来申し上げたわけでございます。  それで単純に、国民健康保険で被保険者が一〇〇の総医療費がかかるといたしますと、百分の三十は保険給付外のいわゆる自己負担になります。残りの百分の七十につきまして、その分を事業主負担というような考え方で折半負担したということにいたしますと、これは総体の医療費に対して百分の三十五相当になろうかと思います。そうすると、国民健康保険に対する国庫補助は百分の四十五でございますから、百分の十が百分の三十五以外に出ておる分になる、こういうことになろうかと思います。
  147. 山本政弘

    ○山本(政)委員 その後段がちょっと……。
  148. 渡部周治

    渡部説明員 百分の四十五が国庫負担率でございますから、総体の医療費に対しまして……
  149. 山本政弘

    ○山本(政)委員 要するに、百分の三十五というのが国庫負担分になるという話ですね。
  150. 渡部周治

    渡部説明員 要するに、保険給付費の半分を事業主負担するという考え方に立てば、それを国がかわっておるという考え方に立てば、その分は百分の三十五ではなかろうか、こう考えるわけでございます。そういたしますと、全体の国庫負担が百分の四十五でございますから、百分の三十五の事業主負担分を除いた部分は百分の十である。その百分の十の中の百分の五相当額は、これは各市町村全体にいくのではございませんで、いわゆる財政調整交付金というかっこうで財政状況の悪いところにいくわけでございますから、その部分を、百分の五でございますから、それを除いて、一般的に事業主負担分をさらに上のせしている分は総医療費に対して百分の五ではなかろうか、かように申しておるわけでございます。
  151. 大原亨

    大原委員 大体それなりには筋が通っている。しかし最後の説明のしかたが悪いのだ。つまり五%の財政調整の考え方です。これは全体としては五%出しているのだから、その財政調整の考え方というものは、たとえば地方財政の交付金のように、基準財政需要を計算して、赤字のなにに対しては底上げするのですよ。だからそれを政管とか国保とかその他と全体で組合健保との関係で見た場合には、やはりそういう考え方で五%は入れて考えたほうがいい。そうすると一〇%の差になる。あなたの最後の説明のしかたが悪いわけだ。
  152. 山本政弘

    ○山本(政)委員 復習しますが、百分の七十というのが労使の折半になるわけでしょう。そうですね。つまり政管に当てはめてみれば、三十五と三十五になるわけですよ。それから先に実はぼくはごまかしがあると思うのですよ。いいですか。国保の場合の負担金は四十五でしょう。そこで三十五を引いて残りが十になる。これが、十のうち五は調整分でございます、こうあなたはおっしゃっているのでしょう。そうでしょう。ところが問題は、三十五というのが実は問題になるわけですよ。折半だから三十五というのが問題になるわけです。だからぼくは、かりにその十というものをのけてもいいですよ。要するに十というものを調整分としてのけてもけっこうです。そうすると三十になるでしょう。(「調整分は五だ」と呼ぶ者あり)五だから、要するに問題を簡単にするために、四十五から三十五を引いて十だ、こうおっしゃっているのだから、その十はそのまま横にのけていいのですよ。いずれにしても、しかし国保の補助金としては三十というものは、これは最低見積もってあり得るはずなんですよ。要するに四十五マイナス三十五イコール十、そして十のうちの五というものは調整分だ、こうあなたはおっしゃっているわけですね。だから五を引いてみたらいいのですよ。なおかつ三十何ぼというものが国民健康保険の国庫補助分になるでしょうとぼくは言うのです、政管に引き直した場合には。そうしたら、先ほどの局長の話じゃないけれども、一万六千百二十三円が国保の保険料であり、そして一万八千九百四十四円がつまり政管保険料だ、こう言っている。その差額というのは二千何ぼになりますね。そういうファクターというものをかりに入れても、国庫の負担率というものは五%じゃ少な過ぎやしませんかと言っているのですよ。
  153. 渡部周治

    渡部説明員 いまのお考え方をちょっと私なりに整理させていただきますと、その百分の五相当額は全体にいかないんだから別にカウントせよ、こうおっしゃいますと、結局百分の七十のうちその分を引いて百分の六十五を今度は基準にして考えるから、その百分の六十五のうち三二・五は事業主負担分、こういうことになります。そういう計算でいきますと、残りは七・五、こういうことになります。
  154. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そういうことになると、国庫負担分の五%というのは少な過ぎるじゃありませんか。同時に、定額を定率にすると言うけれども、これは極端な言い方をすると四・八%だっていいのですよ。四・九%だって定額を定率にしたらふえていくわけですよ。だからあなたの理屈は理屈にならぬわけですよ。そうでしょう。前は四十一年が五・五%ですよ。四十二年が六・八%、四十三年が五・八%、四十四年が五%。初めて四十五年に四・三%と下がっているわけですよ。そしてあなたは、定額を定率にしたと言っていばっているわけだ。しかし五%なくたって四・九%でも上がるわけですよ。私が言いたいのは、五%にして、定額を定率にしたといって、国の出す金額というものがだんだん比率に従ってたくさんになりますということは、弁解にならぬと言うのですよ、一つは。もう一つは、政管健保と他の要するに国保やあるいは日雇のあれに引き直してみて、国庫の補助率としてははるかに低い数字になるじゃありませんか、こう言っているのです。
  155. 渡部周治

    渡部説明員 先ほど来、四十二年度以降の医療保険給付に対する国庫補助の割合が五%をこえておったじゃないか、こういうお話でございますが、資料で申し上げますと、四十二年度は六・三、四十三年度は五・四、四十四年度は四・七、四十五年度は三・九、四十六年度はいまのところ私どもの見込みとしては三・五、こういう割合になろうかと思います。  それでわれわれは決して口の率が、五%がどうという議論をこれをもとにやっておるわけじゃございませんで、私どもは先ほど来大臣もおっしゃいましたように、定額の国庫負担を定率の国庫補助に切りかえたということで、まずいままでのように据え置きになるのではなくて、保険給付費がふえれば自動的にふえていくというシステムをとったことが一つの質的な改善であろう。  それから五%というものにつきましては、確かに四十二、四十三年は五%をこえておりましたけれども、最近におきましては四・七%あるいは三・九%といったような率になっております。しかしながら今回の財政対策におきましては——四十二、四十三年当時国庫負担率が確かに六・三、五・四とこえておりましたが、そのときは累積赤字に対しましては何ら対策をとっていなかったわけでございます。今度の措置は、累積赤字につきまして、これをたな上げいたしまして全額国庫で見る、こういうのが加わっておるわけでございますので、これは五%の国庫負担にもう一つ別な大きな要素として御理解いただきたい、これをかねがね申し上げておるところであります。
  156. 大原亨

    大原委員 関連して。つまり山本委員の質問は、主計官、あなたの立場に百歩譲って立っても、金額と率と一緒に考えた場合には、これは多いということは口が裂けても言えぬだろう、こう言っているのです。昭和四十二年に特例法をやったときに、二百二十五億円はあの保険給付費、すなわち法定給付費に対しては六・三%だったのです。それがそのときには、これは政治論で言うと、そのときには抜本改正をやりますという担保だったのだ。政策上は、政治上は担保だったのですよ。二年間の中に何もやっておらぬだろう。これは供給面、制度全体のことがあるからこそ一部負担の問題が起きたのです。それをチェックする考え方があったのです。これについては反対があったけれども、薬代を含めて四十二年は通ったわけですよ。その後の経過を見て、四十四年には、斎藤厚生大臣のときは、どたんばできんちゃく切りのようなことをして本法に繰り入れたわけだ。それでずっと定額法を据え置いて、その間少なかったじゃないか。そのことを考えただけだって、正当に片一方の被保険者のほうは自然増収があるわけですから、一定料率であっても、料率は四十四年に上がったけれども、つまり収入はふえているわけですから、当時の給付費に対するそういう関係から言うなれば、国庫負担は、われわれの立場、国民の立場に立つならば、努力すべきだった。もちろんたな上げ分については、これは政府全体の政治責任だ。何で頭をひねっているんだ。その問題を全体でやったということから見て、そういうことの処理は当然だということで、大蔵省も今回の措置を去年以来主張してきているわけでしょう。ですから、かってなことを言っているばかりではなしに、皆さんの立場に立ってみても、この率というものは決してよくない、あるいは金額は多くなかったり、その累積もあるし、われわれの立場で見れば、国民の立場で見れば、政府がやるべきことについて何もやってないじゃないか。それは大蔵省ではないけれども、これは厚生省、厚生大臣だ。そういうことからいうなれば、定額が定率になったからといって、これは政府としては当然だ、やりましたといって胸を張るようなものではない、こういうことを言っているわけだ。私の主張はわかったでしょう。
  157. 田邊誠

    田邊委員 いまの点は、説明をもうちょっと整理して、わかるように説明してもらいたいのですが、私は、こういうふうにもう一度やり直したらどうかと思うのです。  ベースを、給付費のベースならベースにまず合わせる。その場合に一体国保は、四十六年なら四十六年をとって、どれだけの金を出したか。それから政管はどれだけの金がまず出ているか。その中で、国の出した額は一体何ぼか。これは、国保についても政管についても何ぼか。それから今度は、いわゆる事業主負担というのがあるのですね。これは支出面ではかるわけにいかないのですよ、これはいわば保険料の折半なんですからね。  ですから、その年に事業主政管健保負担をして出したものは一体何ぼか。だからそれに見合う国保の中でそれに相当する事業主負担額は、見合って、それを直してみた場合には一体何ぼか。だからそれ以外の、事業主負担に相当するものを除いた国の負担というのが国保の場合に一体何ぼか。政管の場合何ぼか。それを率で出してみたら、一体何ぼと何ぼになるか、こういうやり方をしないと、いまのあなたのように千分の三十が自己負担だから、それ以外の千分の七十は折半だ、そういう理屈はない。あなたが考えたっておかしいでしょう。そういう考え方というのはないわけなんだから。  いま私が言ったように額でもって出してみて、それでもって率に直すというやり方、それから事業主負担というものを一体どこに据えるかということについては、単純に支出面だけでその半額が事業主負担だから、それを政府が持ったら何ぼ、こういうふうにならぬと思うのです。だからその辺のことをちょっと整理して、あなたのほうでもって数字をここで明らかにしたらどうですか。私の言うことはわかったでしょう。
  158. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  159. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めてください。  渡部主計官。
  160. 渡部周治

    渡部説明員 それでは、ただいまの点につきまして総括してお答え申し上げますと、たてまえとしまして給付費ベースで比較したわけでございますが、国民健康保険の場合は、給付費に対しまして国庫負担の割合は六四%でございます。このうち日雇と政管と比較する場合に、全体に行き渡っておらない財政調整交付金の五%相当部分を除きますと、これは給付費に対して五七%、つまりこれが国庫負担の率でございます。この性格につきましては、先ほど言いましたように、事業主負担分が加わっておる。したがって、これが国庫と、いわゆる事業主負担分の総額に相当するものであり、日雇と政管とで言えば、これと同じベースで日雇健康保険について申しますと、この国庫負担事業主負担相当部分が六七・五彩になります。それから政管健保がその同じベースでいきますと五二・五%になる、こういうことであります。
  161. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、この表にありますが、要するに、だんだんと政管健保事業主というのは零細化しつつありますね。そうしますと、つまり政管健保事業主の場合には、ある場合にはきわめて零細な人たちは、自分も働いて、まさに労働者とあまり変わらぬですよ。五人か六人で、自分も働くわけですからね。そうすると、片一方、今度は国保の中でも、商店で三人とか四人とか使っている人がおりますね。そうすると、どこに一体政管健保と国保との違いがあるだろうかということになるでしょう。これは政策的な問題になりますけれども、そうでしょう。そうしたら、いま主計官が御説明になったような、国保六四%、日雇六七・五%、政管五二・五%というようなあれが、一応諸条件を捨象したといってお答えになったのですけれども、私は国保と比べた場合にだってまだまだ差があり過ぎると思うのです。そうしたら、国庫の負担金というのはもっともっとふやすべきはずではありませんか。  大臣はいま、定額を定率にしたのだからとおっしゃっているけれども、定率にした場合に、なぜもっと上げないのか、五%なんというちびったことをおっしゃらないで、うんと上げたらいいじゃありませんか。私は、国保と同じにしろとは言いませんよ、言いませんけれども、しかし、かなり上げることができるはずだろう、それがなぜできないのだろう。大臣のお話によりますと、国保よりか政管のほうがはるかに条件的にいいようなことをお話なすっておられる。しかし、実態はそんなものじゃないですよ。政管事業主というのは、いまさっき申し上げたように、事業主自身が労働者と一緒に働いているところがたくさんある。同時に、商店の中には、店員を四人も五人も使ってやっているところだってあるわけですから、そうしたら、しかく言うほど国保と政管の間の条件的な違いがあるのか、その点はどうなんですか。
  162. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、政管の中にも、六人、七人を雇用してやっているというささやかなものもございますし、六百人、七百人と使うておるところもあるわけでございます。そこをやはり平均してみますと、国保ほどではないというように、われわれ一般的には把握をしているわけであります。もともとは、この政管健保は、事務費を持つけれども、国庫補助という考え方なしに当初出発しておったわけですね。だんだんえらいというので、定額補助をするということになり、今度その定額補助を定率補助に変えようというわけです。これは定額でおれば、法律改正しない限りはそのまま二百二十五億でいくわけですから、定率補助にしただけでも性格的によくなったといえるのじゃなかろうか、こう私のほうは言うわけなんです。  これで十分かどうかという点は、いまいろいろ御審議をいただいているわけでありますから、十分御審議をいただきたいと思いますけれども、もともとの成り立ちから考えてまいると、やはり一歩前進したという評価をいただいてもいいのじゃないだろうか、こう政府としては考えておるわけでございます。
  163. 山本政弘

    ○山本(政)委員 これはやはり少し問題として残しておきたいと思うのです、先の問題がありますので……。  定率ということで、五%ということに対してぼくは非常に問題があるということを指摘したいわけなんです。何で一五%か一六%か、あるいは二〇%かというようにすることができないのか、この辺が非常に疑問なんだけれども、大臣はそのことに対してはお答えくださらないのです。ぼくは、国保と同じとは言わぬけれども、もっともっと上げる必要があるのではないだろうか、それがさつき言った政管健保の特殊性というものになりやしないだろうか、こう言っているのですけれども、それに対して何かお答えが平行線のようなことで、お答えいただけないので、これはあとへ残しておきます。  保険料率を千分の七十とした場合の昭和四十六年度の賃金水準に対して昭和四十七年度の賃金水準、つまりベースアップに伴う保険料増収というのは幾らになりますか。
  164. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 申しわけございませんが、千分の八十でございますか。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕
  165. 山本政弘

    ○山本(政)委員 千分の七十、あるいは七十三でもいいですよ。
  166. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 四十七年度の予算で保険料率を千分の七十から七十三に引き上げるということで、四月実施で二百七十四億増収になるという計算をしております。それから標準報酬の等級改定を、下限を三千円から一万二千円に、上限を十万四千円から二十万円に上げることによりまして、同じく四月実施で三百七十六億でございます。
  167. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それはわかるのです。要するに、いま春闘をやっていますね。そうすると賃金水準が上がりますね。その保険料の増収というものは、どのように見込んでおるわけですか。それはいまの二百七十四億というものに含まれているわけですか、含まれていないわけですか。
  168. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま行なわれております春闘の影響と申しますのは、結局それが直接反映してまいりますのは、ことしの十月の標準報酬の定時決定のときに反映してくるわけでございます。したがって、私ども四十七年度の予算を編成いたします場合に、四十七年の十月の時点の標準報酬をどのぐらいに見ているかということになるかと思いますが、四十七年度の十月の私どもの推定は、これは見込みでございますが、六万二千二百七十二円と推定いたしております。
  169. 山本政弘

    ○山本(政)委員 六万二千二百七十二円、これが十月の時点ですね。そして、そのことを頭の中に入れた上で、二百七十四億というのが出たわけですか。
  170. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 ただいま申し上げました六万二千二百七十二円と申しますのは、従来分と私どもは普通称しておるのですが、これは今度のような改正をしない場合に四十七年でどうなるかということをまず計算するわけでございまして、それをベースにして、今度は改正によりましてどのぐらいの増収になるかという計算をいたします。それが先ほど申し上げました三百七十六億と二百七十四億になるわけでございます。
  171. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうしますと、政管健保平均標準報酬月額と春闘賃上げ額との比較等というのを資料をいただいておりますが、そこにありますね。四十七年度は、不況下の春闘だというふうに俗にはいわれておるのですけれども、かりに不況の影響によって上昇率が想定に達しない、つまり想定と実際とが異なった場合、これは収入見込み違いが出てくるはずですね。この表によると、四十六年度の春闘の賃上げの状況では、中小のアップ率は一八・五、平均標準報酬月額の対前年十月比というのは一二・四。一八・五と、アップ率からいえば、私は今度はこんなに上がらぬと思うのですよ。そうしますと、かりに収入見込み違いがあったときには、赤字はどうなるのですか。大幅にふえるわけですね。そういうことを私は実は危惧するわけですよ。この点はどうなんですか。
  172. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先ほど申しました十月の標準報酬のアップ率が、ただいま先生のおっしゃいました一二・四に対しまして、大体一一・八ぐらいに相当するのじゃないかと思います。  この私どもが見込みましたのが、見込み違いになればどうなるかということでございますが、それはもちろんそれだけ収入に欠陥が生ずるおそれがございますけれども、私どもといたしましては、今度の予算を計上いたしました手法というものが、やはり収入を推計するのに一番適当な方法ではないかということで推計をして、予算を計上いたしたわけでございます。
  173. 山本政弘

    ○山本(政)委員 その手法というのは、御説明によると、要するに不況になってきますね。不況になるときに前二年の平均をとってずっといくわけですから、トレンドとしてはずっと高くなってくる感じですね。要するにそういう想定をして二百七十四億というものを組んだわけでしょう。しかし、それが現実には不況といわれているわけですから、想定されたよりか賃上げはできない、こういうふうになることが当然予想されると思うのです。そうすると、これは二百七十四億じゃなくて、もっと下のほうになるのじゃないだろうか。そうすると、これは赤字がもっとふえるのじゃないか、こういう感じが私はするわけなんです。そのことに対するお答えをいただきたい、そうならぬかなるかということです。
  174. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 従来の手法と申しましたのは、先生御承知のとおり、二年平均の伸び率をもちまして推計をしていく方法でございます。よりトレンドを正確にあらわすような手法というものがあれば、これは私どもも採用して予算をつくっていくのにやぶさかではないわけでございますが、いろいろな問題がございまして、なかなかむずかしいことで、私どもとしては四十七年度予算を編成いたします場合には、一番値が正確に出る手法ではないかと思ってこの方法をとり、一一・八という伸び率になったわけであります。
  175. 山本政弘

    ○山本(政)委員 今度は特別保険料を新設しますね。私は特別保険料の新設というのは、これは政管に働いておる労働者にとっては大きな問題だと思うのですけれども、一体千分の十というふうに割り出した根拠はどこにあるのですか。
  176. 戸澤政方

    戸澤政府委員 四十七年度の収支見込みを立てましていろいろの対策を考える場合に、収支の計算からしますと、大体収支のバランスをとるためには五%の国庫補助等入れまして、千分の六ほど保険料を上げなければバランスがとれないという計算になるわけでございます。これを全部正規の保険料で取るということになりますと、一挙に六の引き上げということは非常な負担の加重になるであろうという配慮が一つございます。  それからもう一つは、特別保険料というのはボーナスに対して課するわけでありまして、現在の保険料の取り方は、ボーナス等臨時収入対象に入れておりません。ところが昨日も御説明いたしましたとおり、給与の高い者ほどボーナスも多いという実態にございまして、その意味では給与の高い者ほど現行の保険料の取り方からしますと、相対的に有利な立場になっており、給与の低い者ほど不利な扱いになっておるということがあります。そういう逆累進的な弊害を矯正するために特別保険料ということを考えたわけでございます。  それで、正規の保険料による財源と特別保険料による財源を半々と考えまして、保険料率のほうを千分の三とし、残りの千分の三の財源をこの特別保険料に求めることにいたしまして計算をしまして、大体一%という数字を出したわけであります。
  177. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どっちにしても負担の加重は同じじゃありませんか。保険料からたくさん取るのは、一挙に保険料が上がるから、これはうるさいからボーナスとか、あるいは臨時収入が入ったら、それにかけていく。結果的に取られるのは、同じ人間から保険料にかわるべきものを特別保険料として取るわけですから、労働者に過重な負担をかけないのだというけれども、結果的に同じになるのじゃないですか。
  178. 戸澤政方

    戸澤政府委員 保険料の中身でございますから、それは事業主並びに被保険者負担になるわけでありますが、同じ保険料の賦課する方法としまして、この特別保険料という、ボーナスに対するものを加味したほうが、その所得の配分という意味において公平なやり方になる、累進税率的な行き方になるわけでございます。  このボーナスに対する保険料の賦課につきましては、昨年の六十五国会にも、扱い方は違いますが、ボーナス保険料対象にするということを出したわけでございますが、このときに、関係の審議会におきましても、これは一つの考え方だけれども、賞与ボーナスへの依存度が高過ぎるというような批判もございましたので、今回はそれを前回の案とは中身を変えまして、現年度に支給されたボーナスの一%という考え方に修正をして提案したわけでございます。
  179. 山本政弘

    ○山本(政)委員 保険局長いみじくも言ったけれども、前年にボーナスにかけることに対して審議会云々という話、将来総報酬制というもので、そういうことで野放しにこれが拡大されるということを私は一番心配するわけですよ。しかし千分の十で、それ以上上げないという約束をあなた方はできますか。これに歯どめはどこにもないわけでしょう。千分の十以上は絶対上げないということをあなた方は言えますか。  保険料でかけていったらうるさいから、要するにボーナスとか臨時収入は、考えようによれば、これは別な収入だから、そこにぶっかけていこう、こういう考え方だとぼくは思うのですよ。しかもそういうものが出てくれば、今度は最後に来るときには総報酬に対して幾ら幾ら、こういうことが当然次の問題として出てくるのではないだろうか、これは……。
  180. 戸澤政方

    戸澤政府委員 特別保険料の徴収は、この法文上も明らかにしているわけでありますが、当分の間の措置と考えているわけでございます。それで本来の保険料でもって円滑な運営ができるという時期になりましたならば、これはまた再検討するというつもりでおるわけであります。それでその間もし収支の財源に不足を来たすということになりますれば、まずその弾力条項による保険料の変更、このほうを優先してまかなうことになるわけでありまして、この特別保険料の千分の十という料率を変更するというようなことは考えておりません。  それからまた、この特別保険料の設定を将来の総報酬制の足がかりというようなことは考えておりません。
  181. 山本政弘

    ○山本(政)委員 「当分ノ間」というのが、ぼくは一番心配なんですよ。いままで財政問題がずっと出てきて、私が健保にかかわりあった四十二年からずっと四十七年まで「当分ノ間」でここまで抜本改正がきているわけですよ。いつまでたっても片づかぬですね。「当分ノ間」というのは、期限がないじゃありませんか。そしたら、このまま依然としてずっと最後まで残されていく危険性があるでしょう。  しかも、なおさら悪いのは、弾力条項というものを、今度はこれで片づかぬときには適用するというわけですよ。かって弾力条項があったけれども、それは要するに国会の審議をやるべきだということで弾力条項というものが取り去られたわけでしょう。それをもう一ぺん復活させるわけですからね。あなた方は簡単に、これができなければこれをやるんだ、要するにこれに強い世論があるならば、これを適用いたしまして、こっちのほうでやりましょう、適用は自在なんですよ。そして弾力条項がかりに千分の八十ということになっていけば、そこでまた財政上の問題が出てくれば、今度はまた特別保険料の復活ということで千分の十になってくる。そして千分の十が、また千分の十一になったり、十二になったり、十三になったりする。そういうことに対して、そういうことはあり得ませんという保証は何にもないじゃありませんか。私は、弾力条項に対しては反対ですよ。全く反対なんです。  これは要するに国会の持っている権限というものをこの機会に行政官が剥奪するのと同じでしょう。(発言する者あり)法律改正という声がありますが、だけれども、局長がおっしゃったから、ぼくはそう言っているのですよ。意図がちゃんとあったから、そう申し上げているのですよ。また意図があるから、そうおっしゃったのでしょう。こわいのは、千分の十というのをこのまま「当分ノ間」ということで据え置かれて、そして赤字が出ないという保証はないのですよ、現実には。だから私どもは国庫負担というものをもっと定率で大幅にしろ、こう言っているのですよ。そういうことをなさらないで千分の十というのをつける、これは「当分ノ間」ということで期限がありません。そして、そこでもう一ぺん赤字が出てくるようになったら、今度はこれを取り去って保険料を上げるというようなことになります。これをこのまま据え置きにしておって、保険料を上げる結果というものはあり得ないということを保証できますか、あなた方は。そしたら先ほどの大原委員の話じゃないですけれども、何と厚生大臣がおっしゃろうと、保険というものに社会保障を加味したものだという、それすら保証はなくなってくると思うのですよ。そうなりませんか。  一体歯どめをどこに置くのです。歯どめがないじゃありませんか。歯どめがない上に、今度は弾力条項、これは弾力条項というのではないのです。これはエスカレーター条項です。弾力条項というのは、こういうのが弾力条項です。しかし明らかに厚生省が考えていることは、悪ければだんだん上げていくということで、下がることはないわけですよ。そんな弾力条項はない。ぼくに言わせたら、エスカレーター条項です。それをもう一ぺん今度は加えようとしているわけでしょう。一体この千分の十というものに対して歯どめはどこにあるのですか。それをお聞かせください。   〔谷垣委員長代理退席、森山委員長着席〕
  182. 戸澤政方

    戸澤政府委員 弾力条項につきましては、こういう短期保険を円滑に運営させるために、ある程度情勢に応じて保険料率の変更をできるような方途を講ずることが普通の行き方でもございますし、ぜひ昔に戻ってお願いしたいと思っておるわけでありますけれども、その歯どめとしましては、無制限保険者に変更権限を与えるものではありませんで、上限を設ける。それからまたその実施につきましては、社会保険審議会において十分に御討議願って、その意見によって行なうという方針にいたしておるわけでございます。  したがいまして、そういう制度によってできるだけ本来の保険料でもって収支まかなっていくというのが本筋でございますので、特別保険料というようなものを徴収しなくても政管健保運営が円滑にできるという見通しができましたならば、この特別保険料については撤廃をするという趣旨において「当分ノ間」というふうに考えておるわけでございまして、この千分の十という料率を変更するというようなことは法律改正を要することでもございますし、やはり保険料のほうを優先的に考えておりますので、私どもは当面この千分の十を引き上げるというようなことは考えておらないのでございます。
  183. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は実はそういう御答弁をいただいても信用する気にならぬわけですよ。  率直に申しましょうか。あなた方健康保険法違反を犯しているじゃありませんか。犯しておらぬと自信があるなら大臣お聞かせ願いたいと思います。みずから犯しておりますよ。
  184. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 どういう点で犯しているのかちょっとわかりませんので、教えていただきたいと思います。
  185. 山本政弘

    ○山本(政)委員 日赤というのは公的病院ですね。公的医療機関ですね。いいですか。盛岡の日赤は総病床三百十八ありますよ。そのうち差額病床が三百十八です。全部差額病床ですよ。日赤の横浜、総病床三百十のうち差額病床二百八十六ありますよ。富山の日赤は総病床五百三十五のうち五百三十五が差額病床です。全部です。一〇〇%ですね。神戸の日赤は総病床百のうち九十が差額病床ですよ。三原の日赤は二百二十六の病床のうち二百二十六が差額ベッドです。  厚生大臣は健康保険を所管しておるのでしょう。要するにあなたの管理しておる公的病院で差額を取るということが——これはもう一〇〇%取っておるところがあるじゃありませんか。つまり、ぼくの言いたいことは、保険料取るとか云々されて、特別保険料上限下限の問題、そうしながらプラス差額というものが加わるわけでしょう。健康保険法趣旨というものがそこで生きておりますか。どこに生きているのです。あなた方のおっしゃる健康保険法趣旨はどこに生きておるか教えていただきたいと思うのです。私は私的な病院ならまだそういうことを言いませんよ。しかし、公的な医療機関でしょう。それがいま言ったように一〇〇%差額ベッドだなんということは、あなた方のおっしゃっている健康保険法というものに対して、しかも大臣は健康保険法を所管しておられるのですよ、一体趣旨が生きておるのかおらないのか、生きておらぬじゃありませんか。ぼくは、これたいへんなことだと思うんですよ。そういうことが現実にあって、そしていまは赤字が解消されたら特別保険料はやめますと、こう言っておるけれども、そんなこと信用ならぬでしょう。一〇〇%差額ベッドのところを、差額ベッドは公的医療機関だから、なくなす必要があると私は思うのですよ。なくしたら、これはまた費用が要るわけですよ。  質問したいことは、たくさんここにまだあるのですけれども、ぼくがなぜあなた方のおっしゃることが信用できないかということについて一つの例証をあげているのですよ。それだけお聞かせ願いたい。何か十分前までということなんで、あとは質問を保留さしていただきますがね。
  186. 戸澤政方

    戸澤政府委員 この差額ベッドの問題につきましてはいろいろな面から批判もされ、中医協等におきましても、この問題を取り上げておるわけではありますけれども、一応厚生省の指導方針としましては、一般的に差額徴収の病床数は、それぞれの病院の全病床数の五分の一ないし四分の一程度にこれをとどめることが望ましいというような方針でもって指導しているわけでございます。しかし、現実はいまお話しのような、それ以上に差額ベッドを設けておるところがあるのも現実でございます。  ただ、われわれの指導方針としましては、差額ベッドは、あくまでも保険診療でもってやってほしいという希望がある者には、その希望を最優先に取り入れて実施しなければならぬ、つまりこの差額ベッドは、保険でもって希望する者がある場合に、もし一般の保険ベッドが足りない場合には、その差額ベッドにも保険診療費でもって入れなければならぬというたてまえにしているわけでございます。患者があくまでも希望する場合には、そういう差額の個室に入れているわけでございまして、この辺の指導が十分に励行されておらないような向きに対しましては、今後厳格な指導をしてまいりたいと思います。
  187. 山本政弘

    ○山本(政)委員 指導は要するに差額ベッドを五分の一か四分の一にしろというのですけれども、ここにあるリストでは十八の日赤病院ですよ。十八の日赤病院がことごとく五分の一とか四分の一とかという差額ベッドの病床ではないのですよ。  たとえば中央日赤は差額ベッドの率は四九%、八戸の日赤は四九・七%、盛岡の日赤は八四・八%、成田の日赤は五七・五%、武蔵野の日赤は五六%、新宿の産院は五一%、横浜の日赤は九二%、高山の日赤が八七%、ほとんどが——ほとんどというか、ここに書いてあるのは全部、いまあなた方のおっしゃっておる指導に違反しておるわけだ。上限を上げ、下限を三千円から一万二千円に上げ、保険料を上げ、特別保険料をつくる。そうしていま言ったように、定率の国庫負担というものは、実は実質的には定率国庫負担という意味をなさないで、ことごとくが労働者負担になっておる。政管健保労働者負担になっておる。そうして入ろうとする公的医療機関のほとんどというものが差額ベッドである。ぼくは現実にこのリストを見て驚いたわけですけれども、それであなた方のおっしゃることを信用しろといっても、ほんとうに信用できないですよ。ですから、きょうはぼくは次回に質問を残さしていただきたいと思うのです。
  188. 森山欽司

    森山委員長 本日は、この程度にとどめ、次回は、来たる二十五日火曜日、午前九時五十分理事会、十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時五十七分散会