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1972-06-13 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月十三日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 始関 伊平君 理事 八田 貞義君    理事 林  義郎君 理事 藤波 孝生君    理事 山本 幸雄君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 西田 八郎君       伊東 正義君    橋本龍太郎君       村田敬次郎君    阿部未喜男君       大原  亨君    加藤 清二君       古寺  宏君    米原  昶君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      上田  稔君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         経済企画政務次         官       木部 佳昭君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   太田 康二君         建設省都市局長 吉兼 三郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  関沢 正夫君         防衛庁経理局施         設課長     蔭山 昭二君         厚生省薬務局参         事官      豊田 勤治君         農林省農地局計         画部長     櫻井 重平君         通商産業省重工         業局航空機武器         課長      山野 正登君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十三日  辞任         補欠選任   土井たか子君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     土井たか子君     ――――――――――――― 六月九日  狩猟者団体法制定に関する請願進藤一馬君紹  介)(第四六七二号) 同月十日  狩猟者団体法制定に関する請願進藤一馬君紹  介)(第四七四二号)  同(登坂重次郎紹介)(第四七四三号)  同(橋本登美三郎紹介)(第四九〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月十日  自然環境保全法案に関する陳情書  (第三九  三号)  PCBによる汚染防止対策に関する陳情書  (第三九四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  自然環境保全法案内閣提出第一一四号)      ――――◇―――――
  2. 田中武夫

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出自然環境保全法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。大石環境庁長官。     —————————————     —————————————
  3. 大石武一

    大石国務大臣 これから提案理由を御説明申し上げますが、その前に一言お礼ことばを申し上げたいと思います。  この法案がこのようなおそい時期になって出てまいりました。それにはいろいろないきさつがございましたが、それをいろいろと御了解を賜わりまして、いまからわざわざ審議を賜わりますことは、まことに感謝にたえないところでございます。しかも、きょうは公明党の大会もございまして、それにもかかわらず、このような異例な審議をしていただきますことは、まことにありがたいことでございます。この委員会の御親切に心から感謝申し上げます。  ただいま議題となりました自然環境保全法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国は、戦後すでに四分の一世紀を経過し、今日世界に類を見ない経済成長を遂げ、国民の物質的、経済的水準も飛躍的に向上したことは周知のとおりであります。しかしながら、その間ややもすると経済的利益が優先し、自然がもともと持っていた復元力あるいは浄化力を越えた無秩序な開発行為により、わが国の良好な自然環境が随所で破壊されるなど、人間環境の悪化が急速に進行しております。  人間人間らしい健康で文化的な生活を享受するためには、単に経済的な豊かさのみならず、すぐれた自然環境を確保し、これとの交流をはかっていくことが不可欠であることは申すまでもありません。日本独自の繊細ですぐれた文化は、四季おりおり移り変わる自然との交流によってつちかわれてきたのでありまして、このようなことを考えあわせますとき、今日急速に進行している自然環境破壊をこのまま放置することはもはや許されるものではなく、これを阻止し、自然環境保全をはかってまいりますことは、現下の緊急かつ重大な国民課題であります。  現在、自然保護関連法律といたしましては、自然公園法首都圏近郊緑地保全法がありますが、前者は傑出した自然の風景地をその保護対象とし、また後者は首都圏近郊整備地帯における近郊緑地保全をその保護対象としている等その対象が限定されており、急速かつ全国的に進行しつつある自然環境破壊を未然に防止する制度としては不十分であるといわざるを得ないのが現状でありまして、これらの事態に対処し、自然環境の適正な保全を総合的に推進するためには、新たな法制を整備する必要がきわめて強いのであります。このような観点に立って、今回、自然環境保全基本理念その他自然環境保全に関し基本となる事項を定めますとともに、自然公園法その他の自然環境保全を目的とする法律と相まって、自然環境の適正な保全を総合的に推進するための自然環境保全法案提案いたした次第であります。  以下、この法律案内容についてその概要を御説明申し上げます。  第一に、自然環境保全は、自然環境人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであることにかんがみ、広く国民がその恵沢を享受するとともに、将来の国民自然環境を継承することができるよう適正に行なわれるべきのものであるとの自然環境保全基本理念を定めるほか、国、地方公共団体事業者等の責務を明らかにいたしております。さらに、これらもあわせて、国は、自然環境保全をはかるための基本方針を定め、総合的な自然環境保全行政を推進することといたしております。  第二に、環境庁長官は、人の活動によって影響を受けることなく原生状態を維持している土地のうち、一定地域原生自然環境保全地域として指定いたしますとともに、この地域における建築物その他の工作物設置をはじめとして、落枝、落葉を採取する行為に至るまで、自然環境破壊するおそれのある行為を広く取り上げ、これらの行為を原則として禁止し、人為が加えられることによって原生自然環境破壊されることのないようきびしく規制をするとともに、特に必要のある地域については、その地域への立ち入りについても制限を加えることといたしております。  第三に、環境庁長官は、高山性植生または亜高山性植生や、すぐれた天然林相当部分を占める森林の区域など、良好な自然環境を有する地域自然環境保全地域として指定しますとともに、この地域自然環境保全するための規制または施策に関する保全計画を策定し、この保全計画に基づいて、自然環境保全地域内に、特別地区または海中特別地区を設け、これらの地区内で行なわれる建築物その他の工作物設置土地の形質の変更等一定行為については、環境庁長官の許可を受けなければならないものといたしております。さらに特別地区内における特定の野生動植物保護のために特に必要があると認められるときは、野生動植物保護地区を指定し、その地区内における野生動植物捕獲または採取について制限を加えることとしております。  第四に、都道府県は、国が指定した自然環境保全地域に準ずる土地区域で、当該区域自然環境保全することが特に必要なものを都道府県自然環境保全地域として指定することができるようにするとともに、この地区内においては、国の特別地区野生動植物保護地区規制の範囲内で、当該地域自然環境保全するために必要な規制を加えることができることとし、現在多数の道県において制定済み自然保護条例法的根拠を明確にすることにより、国及び都道府県が相協力して自然環境保全を総合的にはかることができるよう措置いたした次第であります。  このほか、政府がすみやかに良好な都市環境を確保するために必要な自然環境保全制度を整備すべき旨の規定を設けるとともに、自然環境保全審議会設置等について、規定いたしております。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 田中武夫

    田中委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 田中武夫

    田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  6. 島本虎三

    島本委員 今回、この自然環境保全法が出されました。本来ならば審議はきょう一日よりないのであります。実質的にはきょう一日であります。その一日という限られた時間に、このような環境基本法とも思われる、また憲章とも思われるような重要な法律を出してきたという態度は、ほめられた態度ではございません。もっと国民のためにはっきり審議して、その完ぺきを期待するという態度こそ、国民の前にも、佐藤内閣の中でも人気のある大石長官姿勢でなければならないはずなんです。最後になってからこれを出してきた、その時間も限られている、これではほんとうに残念であります。ですから、この間に、どういうような内容であるのか、その内容を十分突き詰めてこれに対する態度を決定したい、こう思いますから、そのつもりで長官も御答弁願いたいと思います。まず私は、総体的にこの環境保全のあり方を見て、あと法律案のほうに具体的に入っていきたい、こう思いますから、この点をあらかじめ御了承を願います。  まず長官は、先般は国連人間環境会議に出席して、日本立場を明らかにしてまいりましたが、その労苦につきましては、私は深甚の謝意を表したいと思います。そして、その国連人間環境会議のおそらくは第二委員会だと思いますが、捕鯨に関する十年間の捕獲禁止ないしは凍結するという、こういうような件が可決されたようであります。そういうふうにして見ます場合には、勧告がそのまま今後法的な規制力になるかならないかはわかりませんけれども、これはもう背を向けることはできないという事実は当然発生するのじゃないかと思います。同時に、中国でもまた、原子力によるところの破壊こそ最大の地球環境破壊につながるものであり、戦争こそはこれに当たるものだ、こういうような訴えがなされたようであります。そして日本でも、長官がこれに出席していろいろ発言なさいましたけれども、この中で環境概念というものは、世界的に大きい一つ概念を構成してしまったのじゃないか、こういうように私ども考えるわけであります。日本としても、環境保全法もこの意味で国土全体を対象にして出されたものであるのか、それともそのうちの一部の法律として出されたものであるのか。大きい世界的流れの中で、いま出された法律案の置かれている立場というものはまず大事だと思いますから、先に長官に、この法律案を出された立場と、これを貫く一つ姿勢をはっきり伺いたいと思います。
  7. 大石武一

    大石国務大臣 先ほどの提案理由の中でも申し上げましたように、いま日本の豊かな自然環境が、無秩序な経済開発によって各地で破壊されている現状であります。当然このすばらしい自然環境、これはわれわれが健康で豊かに生存するためにもぜひ必要なものでございますが、それは祖先がわれわれに残してくれた、しかもわれわれは、われわれの現在の生活にこれを十分に活用しながら、われわれの何十代の子孫にもこれを残してまいる義務がございます。そのような意味で、われわれは、現在このような破壊から何としてもこの日本の豊かな自然環境をできるだけ守ってまいりたい。私は、日本全土にわたって、そのような守り方をいたしたいと根本的には考えております。ただ、それにはいろいろな準備も必要でございますし、いろいろな手続も必要でございますので、われわれは、この日本の豊かな自然をみんなで守ろうという基本的な考え方をここに取り入れまして、具体的には一歩一歩その方向に向かって進めてまいる考えでございますが、とりあえずいまの段階では、まず大至急、いろいろな破壊からできるだけ日本の豊かな、しかも貴重な自然を守るということに中心を置きまして、この法律内容をつくったわけでございます。  そういうわけで、必ずしも現在のこの法律案によりましては、すべての地域に対しましてわれわれが発言をあるいは権限を持つものではございません。また、日本自然環境の中のごく一部にしかすぎませんけれども、全体的には、これを守ろうという新しい心がまえをつくるという意味においては、非常に意義あるものと考えておる次第でございます。
  8. 島本虎三

    島本委員 豊かな自然を守ろうとする意気込み姿勢、それは了解いたします。それは私は尊敬いたします。ただそのためには、保護行政一元化、これはやはり一本化のもとに強力にこれを実施させるような方向を当然とるべきです。初めに出された環境庁のいわゆる要綱案というものと、現在法律として出されたこの法案というもの、これを貫いて見ます場合には、言うべくして行なわれないというような要素がないか、私はそれを危惧します。  まず第一番に、開発に対する規制が初めの意気込みに比べて後退しておるのじゃないか。原案では、要綱では、守るべき自然ということで豊かな自然を守ろうとする意気込みがはっきりあらわれていまして、四地区に分け、九段階に分けて開発をきびしく規制しようとする、こういうような意気込みがあらわれています。   〔委員長退席始関委員長代理着席〕 しかしながら、出てきたものは規制をゆるやかにして、そして規制地域の区分もだいぶ減っておるようです。緑地環境保全地域、こういうようなものに対しても、これは姿を消したようであります。これは保護行政一元化というものから、この法律全体を通じて二元化し、三元化し後退したものであって、豊かな自然を守ろうとするのはことばであって、意気込みであって、とうていこの法律によっては期すべくして得られないのじゃないかということを感じられますが、長官として、これによってはっきり自信を持ってやってまいりますか。
  9. 大石武一

    大石国務大臣 われわれが初めに理想としてやりたいと思っていた事柄、考え方からしますと、はるかにこれは後退しています。おっしゃるとおりでございます。行政も必ずしも総合的に一元化されておりません。しかし、できる限りその方向に持っていこうという努力だけはいたしてまいりました。その点はひとつ御認識を願いたいと思うのでございます。
  10. 島本虎三

    島本委員 したがって、その立場は理解するけれども、そういうような立場で豊かな自然を守ろうとする意気込み、これを貫くのは保護行政一元化でなければならないし、そういうような一本の鋭い姿勢で出たはずでありますが、今度二元化し、三元化される、こういうふうな状態で守れるかどうか。守るための努力はわかりますが、これから具体的に指摘してまいらなければなりませんが、これはなかなか容易でない。前の原案、なぜこれを通せなかったのか。どうしても通せなくてこういうようないまの法律案を出したのか。要綱のほうがはるかにりっぱじゃありませんか。りっぱなこの要綱原案としてありながら、骨抜きになったような現法案が出てくる。この辺に情勢のきびしさに対処できるかどうか危惧するところがあるというのです。やれるというならば、今後やっぱりやってもらわなければなりませんし、われわれも態度をその時点からきめなければならないのであります。十分これによって、豊かな自然を守ることにおいて一片のおそれもございませんか。
  11. 大石武一

    大石国務大臣 この法律案は、環境庁ができましてから間もなく、このようなものの考え方中心としまして取り組んでまいった法律案でございます。その考え自然保護局中心となりまして、十分に環境庁考えというものを盛り込みまして努力いたしてまいりました。その法律案がわざわざ今日でなければ提案できないという事情は、十分に御認識願いたいと思うのでございます。われわれは全力をあげて努力してまいりました。しかし、会期延長という今日においてようやく提案できたというのは、いかに日本行政の中で、いろいろな機構その他のむずかしい問題があるかということをひとつ御想像願いたいと思うのでございます。われわれはもちろんこの法案で満足いたしておりません。当初のわれわれの考え、構想よりはるかに後退しております。形も悪くなっております。しかしあらゆる努力をして、この程度でも日本の自然を守るためには相当に役立つ、理想よりは遠いものであるけれども相当に役立つ、そういう考えのもとに隠忍自重いたしまして——隠忍というのはおかしいのでございますけれども、今日まで努力してまいりましてようやく提案できたわけでございまして、もちろんわれわれはこれだけで満足いたしているものではございません。今後この法律案を土台としてさらに新しい努力を続けまして、できるだけ完全なものに早い機会にしてまいりたいという熱意だけは持っておる次第でございます。
  12. 島本虎三

    島本委員 その熱意はわからぬわけではありませんが、心配があるのです。  じゃ、事務的に聞きますが、これは自然保護のための実行法ですか、憲章ですか。これでかけがえのない地球を守るための、もう差しつかえない法律案だと理解できますか。
  13. 首尾木一

    首尾木政府委員 この法律の第一章及び第二章の部分につきましては、これは自然環境保全に関しまするいわば基本法的な部分でございまして、この部分につきましては、この法律のみならず、自然公園法あるいは現在の首都圏近畿圏等緑地保全に関する法律等も包括をいたしまして、それの全体に及ぶ基本法的な部分をなしておるわけでございます。   〔始関委員長代理退席委員長着席〕 第三章以下のところが、たとえば自然公園あるいは先ほど申し上げましたような他の法律以外の部分につきまして実質的に措置をいたしまして、この法律によりまして実体的な自然環境保全についての各種の施策を行なうという規定になっておるわけでございまして、繰り返して申しますが、本法は基本法であると同時に、一部、半分は実施法的な性格を持っておる、こういうようなものでございます。
  14. 島本虎三

    島本委員 長官、やはりこれは基本的な、憲章的な性格が半分、そして、これはかけがえのない地球を守るといういわゆる自然保護のための実行法が半分、こういうような組成になっている。したがって、これはほんとうに一本に徹して、これは実行法ならば実行法のように一元化して強力にやる姿勢がほしかったと思います。あるいは宣言に倒れ、あるいは実行法の中に埋もれて、結局はあとからほぞをかむようなことがあっちゃならないと思うのです。  現実のいろいろな実態、これからあげますけれども、法案に入る前に一つ一つ態度を聞きますけれども、それにしてもこれは自然保護のための実行法であり、憲章的基本法でもあるというようなところが特徴のようであります。しかし、やはりかけがえのない地球を守るというようなこの基本観念の上に立ってこれは完全にやるためには、もう少し強い姿勢を打ち出してしかるべきだった、私はこういうように思います。しかし、隠忍自重した結果ようやく出せたのだという現在の政府姿勢の中の苦しさ、これはわからないわけではありません。しかし最後になってこういうようなものを出したのじゃありませんか。この点は、やはり要綱程度のりっぱなやつが出せなかったというのを私は残念ながらほんとうにあなたのために惜しむのです。しかしそんなことを言ってもしようがありません。  まず第一番に長官にも、皆さんに聞きますけれども、いまこの自然環境保全法案、これを出しながら、お互いに足を引っぱり合いながら、そしてなるべくこの実態に沿わないようにするための動き各省間にあるのじゃありませんか。こういうようなことはございませんか。ないという確認の上に立って私は進めていきたいと思うのです。これを一元化して強力に実行すること、これがいまや日本一つの使命なんです。逆に、各省の間でこれを実行させまいとするような動きがふくそうしているのじゃないか。このことをおそれますが、長官、そういうことはございませんか。
  15. 大石武一

    大石国務大臣 この法案が現在に至るまでの段階におきましては、足を引っぱるというわけではありませんが、やはりいろいろな各省間の考え方の違いがありまして、いろいろと難航したことはおっしゃるとおりでございます。しかし、この法案がまとまりまして提案されましてから、一切各省の間にそのようなもうなわ張り争いはございません。これに対して、全面的に協力をいただいておるとわれわれは確信いたしております。
  16. 島本虎三

    島本委員 じゃ、一、二具体的にただしてまいりたいと思います。  御存じのように、長官も出席しましたが、総理も出席しましたが、札幌の冬季オリンピック大会、これは偉大なる成功裏に終わりました。しかし終わる条件として、国立公園であり、自然の保護だけは完全にさせなければならないというたてまえで恵庭岳復旧計画、これに対してはっきり条件をつけたはずであります。この復旧計画はどうなっていましょうか。もう実施されてございますか。
  17. 大石武一

    大石国務大臣 わずか三日か四日の滑降レースのために、あの貴重な恵庭岳の自然を破壊したということは、私は残念に思います。たとえどのような、オリンピックであろうと、大義名分とかにしきの御旗がありましても、あの自然を破壊したということは私はいま非常に残念に思います。しかしそうきまったことはしかたがありません。それは当時のいろいろな自然保護関係の人が懸命の努力をして、あのような復旧計画を約束して認めたというところに私はその努力あとを感ずるわけでございます。御承知のように、あの競技が終わりました翌日からすでに設備が取り払われております。そして寒さも去りまして雪もなくなった現在においては、それぞれりっぱな復旧工事が始まっておると私は信じておりますが、なお具体的なことにつきましては、政府委員から御答弁させたいと思います。
  18. 首尾木一

    首尾木政府委員 滑降コース復元工事につきましては、オリンピック組織委員会でほぼ検討を終わりまして、近くその実施設計が提出されると聞いております。これにつきましては、北海道知事環境庁及び林野庁に適宜照会の上、組織委員会に対しまして最終的に指示をすることとなっております。現在考えられているものといたしましては、資材運搬につきましては、七月中に集中的に実施する。ロープウェーにつきましては、可及的すみやかに撤去して、治山工事、植林及び緑化工事を強力に推進することとしております。  またこれらの経費につきましては、現在一億六千八百万円が確保されておりますが、本年中にオリンピック組織委員会清算法人となると聞いておりますので、今後これに変わる復元のための組織オリンピック組織委員会がつくり、その責任を明確にし、復元に万全がはかられるよう措置することを約束をいたしておるわけでございます。
  19. 島本虎三

    島本委員 この法律ができようとできまいと、これはやらなければならない自然保護一つの命題であります。そうすると、これを実施する実施主体環境庁ですか、林野庁ですか、北海道庁ですか、オリンピック組織委員会ですか。
  20. 首尾木一

    首尾木政府委員 オリンピック組織委員会でございますが、これが先ほども申しましたように、清算をされるということになりますので、その問題につきましては、オリンピック組織委員会でこれを責任をもって引き継ぎ団体をつくり、そこで責任をもってやっていただく、かように考えております。
  21. 島本虎三

    島本委員 実際の面で、林野庁が山の緑を保全するために請負をさせてやっておるところに不正事実がいまあらわれておるのです、木曽の山の中で。これを再び恵庭のオリンピックの場所で、オリンピック組織委員会が清算団体になり、それから請負をさせたものにやらせる、こういうような態度で、どうですか、ほんとうに緑の保全を強い姿勢で——自然環境保全法をやると言いながらもそういうような姿勢がちょいちょいあらわれる。これで完全にできますか。自信がありますか。そうすると、請負にやらせるものと同じ結果ですね。この主体は、これはどうなんですか、北海道庁なんですか、林野庁なんですか、環境庁なんですか。
  22. 大石武一

    大石国務大臣 これはオリンピック組織委員会が主体でございます。そこで責任を負っております。ただ、そのオリンピック組織委員会が責任を持っておりますが、それが形が変わったものになるということでございますから、当然それが責任を持つことになります。林野庁はその実施をするところでございまして、林野庁が責任をもって実際の仕事はする。しかし、責任の所在はオリンピック組織委員会にある、こういうことでございます。
  23. 島本虎三

    島本委員 わかりました。  林野庁、これは何年で旧に戻る計画でこれを進めておりますか。
  24. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  森林の計画につきましては、先生御承知と思いますけれども、森林資源に関する基本計画、これを閣議決定いたしました。五十年の長期計画でございます。それから、それを受けまして、森林資源に関する基本計画のもとに全国森林計画というものがございまして、これはまた十五年の計画を五年ごとにつくっております。それを受けて、国営の場合はまた地域施業計画をつくりまして、これは十年計画を五年ごとにつくるというぐあいにすべて計画的にやっておるわけでございます。実際に伐採なり造林なりその他事業を実施しました結果は、必ずそのあとを検査いたしまして、その適否を判断して、新たにまた計画をつくるというふうな手順でもってこれを行なっているわけでございまして、それぞれの現地において営林署長が単独でやるということは、これは認めておらぬわけでございます。いまの点の御指摘につきましては、あと地を十分に審査いたしまして、適正に、早く森林に戻すという計画をつくるようにいたしたい。またそのように指導いたしてまいりたい、このように考えております。
  25. 島本虎三

    島本委員 これは、やはりそれを強く要望するから、いままでのような態度じゃなく、強力に実施してもらいたい、こういう要請であります。これは何年ぐらいで旧に戻りますか。二十年ですか、四十年ですか、五十年ですか、大体どれほどの見通しですか。それと植える樹種は決定してございますか。
  26. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 現地につきましては、従来は伐採したあとは、生長のいいカラマツを植えるというのが主体でございました。しかし最近、自然保護その他を考えまして、単純な材積生長ばかりでなくて、自然保護あるいは将来の森林の状態を勘案しまして、北海道の郷土樹種でありますところのエゾマツとかトドマツ、その他広葉樹をまぜた森林を造成する計画に切りかえてきております。私は、御指摘の場所についての樹種が何であるか、ただいま手持ち資料がございませんけれども、そういう考え方に立ちまして、北海道の自然に適した樹種を中心に今後とも造成していくという計画にしてまいりたいと考えております。
  27. 島本虎三

    島本委員 法案に入る前の一つの注意事項のような質問でありますが、これはやはり長官のほうがよく知っておると思うのです。いろいろやると、これは保安林の指定要件が満たされておらないような、こういうような事例が多過ぎるのです。ましてこれが直営直用によってやる場合には、これはうまくいきますけれども、これが他の業態のほうに移管され、そのまた下請が行なう場合には、えてして全然手抜きがいままでの事例としてあらわれております。ですから、今度はそういうことがあっちゃいけない。そういうことに対する強い規制の要望ですから、これはそのまま自然保護につながりますから、これは長官も——この点は調整権は長官にありますから、十分発動して、手抜きのないように緑の保全を早く復元させるように懸命の努力をしてやっていただきたい。このことだけは私から強く要請しておきます。  それで、次に法案の一部に入りますが、まだまだ入る前にいろいろ承っておきたいこともあるのでありますけれども、まずこの国土の関係で、森林面積は全部でどれほどあって、そして今度は、長官の権限によって、本法によって規制できる面積はどれほどになるわけですか。
  28. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 森林面積についてお答えいたします。  概数でございますけれども、国土面積が三千六百万ヘクタール、森林の面積が二千五百万町歩ですから、約七割ぐらいが森林の面積になっております。
  29. 島本虎三

    島本委員 そのらち環境庁長官が、今後本法によって、今度ははっきりと自然環境保全法対象としてこれを規制し、管理する面積はどれほどになるのですか。
  30. 首尾木一

    首尾木政府委員 森林の全体の面積と申しますか、公園全部が五百万ヘクタールでございまして、そのうちの森林面積が約八割程度になろうかと考えております。  さらに、今回の自然環境保全地域の指定等によりまして、それがどの程度になるかという点でございますが、実はこの法律の実施にあたりまして、今後さらに全体としてそれぞれ原生自然環境保全地域でありますとか、あるいは自然環境保全地域でありますとか、さらに都道府県の条例で指定をいたします都道府県自然環境保全地域の総数につきましては、ただいまのところ、全体として、幾らといったような面積のものを把握をいたしておりません。これは今後私ども調査を進めまして、全体のものをやっていこうと考えておるわけでありますが、それらの面積は、当面、やはり現在の自然公園面積が大体国土の一三%程度になっておりますので、これのさらに数%が当面これにつけ加わるということでございます。したがいまして、森林全体の面積というようなことに対する公園の面積というものは、先ほど林野庁から申し上げたものに比べますと、非常にわずかなものにとどまるという結果になると考えております。
  31. 島本虎三

    島本委員 国立公園の面積、約二百万ヘクタールでございましょう。それから国定公園が百万ヘクタールでしょう。それから都道府県立の自然公園が二百万ヘクタールでしょう。これで全部で五百万ヘクタールに今度は原生地域が若干加わって、それが環境庁として管理を強力にしなければならない部門だ、大体こんなことになっているでしょう。
  32. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま仰せになりました原生自然環境保全地域も加わりますが、大きな面積といたしまして加わりますのは、自然環境保全地域として新たに指定されるところ、それから都道府県関係の条例で新たに公園以外に設けます都道府県自然環境保全地域、そういうところがかなり大きな面積として加わってくるわけでございます。これが直ちに、いまの公園全体が五百万ヘクタールというものでありますから、それに相当する程度ぐらいまでふえるかどうかということにつきましては、ただいまのところその全体の数字というものをはっきり把握はできない現状でございますが、相当のものは加わってくるわけでございます。
  33. 島本虎三

    島本委員 私が言いたいのはそれじゃないのです。いかに強力にこの法律を出してやっても、直接規制対象になるのは国土森林面積の約一五%程度なんだ。あとの八五%はノータッチである。これは森野庁の所管になっておる部門なんだ。したがって、今後は林野庁との関係、林野庁とのいろいろな調整をきちっとしなければ、真に緑の保全に対して実効をあげることができないのだ、このことなんです。したがって、この八五%、これはやっぱり林野庁が持ってやりますから、今後伐採については法律で当然規制すべきじゃなかったのかと思うのです。この点本法ではどういうふうになっていますか。
  34. 大石武一

    大石国務大臣 さっき林野庁長官からのお答えで足りない面をちょっと補足いたしたいと思いますが、われわれはこのような法律が通りますと、いろいろと原生自然保護地域なりあるいは自然保護地域なりをこれから指定してまいります。これはどのくらいになるかということはいま予測できませんけれども、できるだけ多くのすぐれた自然は守らなければなりません。それは一ぺんにきまるわけではありませんけれども、だんだん年次を重ねまして、できるだけ広い範囲にこの権限を広げたいと考えておるわけでございます。  樹木をなるべく切らないことは望ましいことでございます。しかし一方におきましては、やはり私権を尊重しなければなりませんし、林業経営というものもわれわれは尊重しなければなりません。そういう意味で、十分に林野庁とも話し合いをいたしまして、正しい指導が行なわれますように、林野庁の所管する国有林につきましては、これはお互い役所同士でございますから、十分な話し合いもできますし、いろいろな無理も言えますけれども、民有林につきましては、やはりできるだけ彼らの私権も尊重しなければなりません。同時に、国の自然を守るためには協力してもらわなければなりません。そういう意味で、これにつきましては林野庁とお互いに協力をいたしまして、ある程度規制、ある程度の指導はしなければならぬ。そうして、皆伐をするとか多数の木を一ぺんに切ってしまうということをさせないように、その保全計画を初め立てる場合には、十分な指導をやりまして、そのような自然を破壊するようなことはさせないようにいたす方針でございます。
  35. 島本虎三

    島本委員 国有林のうち、保安林に対する長官考え方はいかがでありますか。
  36. 大石武一

    大石国務大臣 この保安林の扱い方につきまして一番これが議論になったものでございます。その結果、これは妥協でございますが、いろいろな妥協が行なわれまして現在の法律案になったわけでございます。保安林につきましては、いまわれわれは伐採権というものを禁止することはできません。それは林野庁においてするわけでございます。しかし、その保安林につきましても、森林法その他の法律によりまして十分に——大体十分だと思いますけれども、十分に保護してございます。かってな、むちゃくちゃな計画は今後やっていただかないと思いますので、これにつきましてはわれわれもある程度安心をして、林野庁と相談をしてまかせることができるといま考えておる段階でございます。
  37. 島本虎三

    島本委員 では林野庁にお伺いしますが、やはり国有林の中で重要なのは保安林、保安林の中には水源涵養林その他いろいろあるようでございまして、その保安のための意味、こういうものはごうまつも失うような管理をしてはならないと思います。長官もいまはっきり、伐採権は規制できない、保安に対しては今後十分心配のないようにしていきたい、こういうふうな意思の表明がございました。私は今後、林野庁長官が権限を持つ保安林、この伐採、この管理のしかた、これがいままでのような行き方でいいのか悪いのか、これは重要だと思うのです。いままで山を荒らしているのは林野庁ではありませんか。林野庁こそ山荒らしの元凶なんです。それにいま管理を委任してそのままやらせる、これで安心だと長官は言う。いままでの実態は何も安心じゃありません。山荒らしの元凶は林野庁なんです。それはやはり経営のためです。そういうようなことで、今後も本法によって安心してまかせられるのだというこの長官考えは甘い。  私はこれで具体的な例をあげたいと思うのですが、私自身行って調査もしてきて現況を知っております。長官は、いま大石環境庁長官が、伐採権は規制できないが、林野庁の手によって安心するような管理をさせると言われましたが、この点はそれを受けてだいじょうぶですか。
  38. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘のように、最近は特に林野庁の経営のあり方については、独立採算制度というものが一つの原因をなしておって、そのために伐採をしいられておるということから、山荒らしになっているのじゃないかという御指摘を受けているわけでございます。この点につきましては、従来は国有林に対するいろいろな要請がありました。特に戦争中は軍用材の増産のための伐採あるいは戦後は復興用材の伐採をしなければいかぬ、あるいは十年ぐらい前までは、価格安定のために国有林はもっと増伐すべきであるというふうな、増伐に対する要請が非常に強かったわけでございます。しかしながら、それにこたえてはまいりましたけれども、伐採したあとは必ず造林はしております。造林はいたしますけれども、能率重点主義の大面積皆伐はいかにも山が荒れたという感じを与えると同時に、やはり大風水害を起こす一つの原因にもなるわけであります。  そこで最近は、ここ二、三年来、自然保護に対するきびしい要請がございまして、私たちも本来の森林経営に立ち返られる時点にきたということをここに御批判を受けて、衷心から私はむしろありがたいというふうに感じておるわけでございます。  したがいまして、御指摘のように今後の伐採につきましては、大面積皆伐をやめまして、小面積、具体的に申し上げますと最大限はおおむね二十ヘクタールとしておりますが、小面積皆伐にし、しかもこれは里山地帯に限る、その周辺には天然林を残す。なお山の上のほうに参りますに従いまして、択伐、いわゆる間引きする形、択伐の面積をふやし、あるいは山岳地帯は禁伐にするという方針に切りかえたものでございます。ことしに入りましてから、二月にそういう方針を出しまして、各局に一応指示をいたしておるところでございますが、やや具体的に申しますと、皆伐いたします面積は約三割減らしたわけであります。択伐いたします面積は二割ふやし、禁伐の面積は四割ふやしておる、そういう姿にしたのでございます。そういうことによりまして、今後は特に保安林の制度を強化いたしまして、伐採の規制その他、管理については適正な厳重な指導を行なってまいりたい。先ほど環境庁長官おっしゃいましたようなことで、今後は姿勢を改めて、国民全体の国有林でございます。御指摘のような方向で対処してまいりたい、かように考えております。
  39. 島本虎三

    島本委員 私どもも具体的にそれを調査し、幾多の資料もあるわけでありますが、いま長官からはっきり、この態度を是正して、今後真に自然環境保全のために尽くしたいということでありますから、いままでのようなことを再びやらしてはいけません。昔、御料林というと帝室林野局がこれをちゃんと管理しておった、戦後国有林と名前が変わり、林野庁が管理しておる、これには管理か行き届いたものであり、われわれ平民は一切手を触れることができない、こう思っておった。しかし、最近は一雨降るごとに河床が一メートルずつ高くなってくる、一体どういうわけなのか調べたところが、山の奥はほとんど皆伐で、一雨ごとに崩壊を来たしておる、こういうような状態が続いておる、これはもうどこにも持っていきようのないわれわれ自身のふんまんであるということは、市長、町長それから村長こぞってわれわれにそれを訴えたことばです。まあ、これは一つの苦言として十分に受け取っておいて、そして保安の実を十分あげるようにしてもらいたいと思います。まあ、一カ所二十ヘクタール限度にかかわらず、これをこえて伐採されている。百ヘクタールもやっておる。これはひど過ぎる。それから保護樹林帯に対する配慮、これはもう何もしておらない。これは大面積伐採によるところの崩壊、こういうようなものに対してもほとんどそのままにしておる。実際いままでのこういうようなやり方は許されない。これはもう衆議院の決算委員会並びに衆参の農林水産委員会でも十分やられたことですから、あえてここで追及しようと思いません。ただ、保安林の指定要件がございますが、この指定要件自身も満たされておらないじゃありませんか。これは一体どういうことなんですか。切り方、植える樹種、こういうようなものははっきりときまっておるはずです。あるいはこれは保安要件、三千本ときまっておる。しかし実際植えたのは二千七百本。しかし、実際、請負に回して、あとから調べたら七百三十五本より植わっておらない。これで復元できるような状態だといえますか。森林法違反をやっておるのは林野庁だということになるのです。これはほんとうに困ったものですが、今後こういうようなことを二度と繰り返してはならないと思いますから、これをやらないということで私は了承しておきたい、こう思うのです。  それから、建設省来てございますか。来ておるならば、ひとつ私自身聞いてみたいことがありますので、おりますか。
  40. 田中武夫

    田中委員長 建設省は都市局長が来ています。
  41. 島本虎三

    島本委員 では局長に伺いますが、いま林道のつけ方、これは建設省がやっておられますか、それとも現在は林野庁がやっておりますか、それとも、環境庁は、林道をつける場合、これは山の自然を守るために、林道の場合は、ノータッチですか。
  42. 首尾木一

    首尾木政府委員 現在やっております自然公園法及び今回の自然環境保全法でございますが、それぞれ公園の特別地域でありますとか今回の特別地区等につきましては、林道の設置は、これは許可制ということになっておりますので、環境庁といたしましては、それらの地区内における林道の設置については一件一件その許可を行なって実施をいたしておるところでございます。
  43. 島本虎三

    島本委員 これは、林野庁は、林道をつける場合にはそれに対して十分な注意をし、あとから点検して、そしてその管理に当たっておりますか。
  44. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 林道につきましては幹線林道、事業林道、いろいろございますけれども、御指摘のように、当初設計をいたしまして、その実行につきましては、段階で監督をし、完成した後においては十分検査をしておるところでございますけれども、最近、林道のつくり方につきましていろいろ御批判がございます。というのは、従来はやはり生産性重点と申しますか、能率重点と申しますか、そういう点に片寄り過ぎたために、土捨ての問題とかあるいはのり切りの問題等で、あと地が必ずしも完全でなかったという点がございます。そういった点につきましては今後十分、これは予算措置の必要な問題ではございますけれども、改めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  45. 島本虎三

    島本委員 やはり長官、今後管理するために、林道のつけ方一つ自然環境破壊の元凶をなしているのです。自然環境破壊の元凶というと、ことばが過ぎたように聞こえるでしょう。行ってみたらわかるのです。このつけ方のでたらめなことは、その周囲を全部もう崩壊さしているのです。よくこれを許可してやったものだと私はつくづく思いましたが、同じようなことで、今度は自然環境保全をしていくと思ったら、これは大間違いです。まさに自然の破壊につながりますから、これだけはもう十分留意してやってもらいたい、こう思うからこれを言うのです。  長官も知っておられますけれども、丸野林道、これは三十四年から開さくして、一万六千九百メートルに及ぶ、これが近くは坂下町に通ずる循環道路として観光道路の予定になっておるようであります。しかしあれは、許可は三メートルだけ許可しておるはずであります。そのほかの樹木の損傷に対しては許可ないはずです。あれをただ三メートルの幅にして、そのままブルドーザーを入れて、そしてその岩石を全部そのまま谷間に落としてあるでしょう。下の森林は全部そのために崩壊してしまっているでしょう。雨が降るとそれがまたそのまま岩と一緒に流れていっているでしょう。三メートルの道路を許可しただけで、こういうような森林の場合には許可してないはずなんです。それに対して、もうすでにこういうようなことを平気でやって省みておらない。一体、これをやっているようなのをそのままにいままでなぜ認めてきたのですか。林野庁自身が、林野庁のかつての長官その人をいただいて、林業コンサルタント、そのもとで工事の請負をやっておる。その結果が、結局はもう監督が、その営林局の土木所管の部か課で負わなければならないはずのものが、何も見てない。ずぶのしろうとのわれわれが行って、いかにこの林道開さくが森林の自然の破壊につながるか、これを見てぎょうてんしてきたのであります。何のために側溝もない、何のためにのりも不完全な、何のためにただブルドーザーでやってそれを落としていけばいいような林道をつくらせたんですか、いままで。木曽のヒノキ、木曽の杉、これは優秀なものです。林道一本のために下のほうの森林は全部いかれてしまっておる。そしてあとから、その林道並びに復急治山工事のために、五千万円も四十六年度では金をまたかけている。こういうようなむちゃなことをやっちゃだめです。  いままで私が言ったことに対してどういう処置をとりましたか。
  46. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 先生御指摘のように、坂下営林署の丸野林道につきましては、先般ほかの委員会で写真も拝見いたしました。また、先般テレビでも私、実はそういうものを拝見したのです。あそこは石英粗面岩が非常に崩壊しやすい風化地帯でございます。やはりああいったところに対しては設計を厳重にいたしまして、あと地の保全工事、特に土捨ての問題につきましては、一定の場所にそれを捨てて、その場所については植栽等の工事をするというふうな措置が必要であったと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、ただ単価を安く仕上げまして、能率よくやり、木材の生産に重点を置くということがそういう結果を招いたものだと思うわけです。十分反省いたしまして、今後はああいった地帯につきましては、特に林道の施行の問題につきましては規格を厳重にいたしまして、なお路線の選定につきましてはやはりそういった地帯を避けるとかいう配慮も必要でございます。もちろん予算を必要とすることではございますが、やはり第一はそういった木材生産を能率的にやるばかりでなくて、国民の皆さんの要望にこたえて自然保護ということを今後重点に考えますならば、この林道のあり方については非常に御指摘のような基本的な問題がございます。従来は特別会計制度でございまして、単年度収支でございます。その年にあげた収入の代金で一切仕事をやっていかなければならないという点にも、やはり財務上の問題があるわけであります。これらの林道の経費につきましては、財務のあり方についてもただいま林政審議会で検討願っておるところではございますが、御指摘の点は十分勘案いたしまして、今後いままでのようなことのないようにしていきたいと思っております。
  47. 島本虎三

    島本委員 国有林面積の約八五%を管理する、またそのうちの保安林というものの状態もそういうような状態であります。いままでと同じような状態では、これは管理にならない。怠慢になる。怠慢以上のことだ。しかし実際はもっとひどいから、長官一回行って見たほうがいい。環境庁長官も一回行って、はたしてどういうような状態か見たほうがよろしい。行った人は一様に驚愕するのです。びっくりぎょうてんするのです。これがいわゆる林野庁実態かということでびっくりするのです。あれはひど過ぎます。それにまた造林技術が十分でないのに、ただ切ってばかりおるような指導もいままでしておりました。それから水源の涵養林であるこの場所の保安林、これを切って何の水源の涵養になるのですか。こういうようなことをいままでやっていた。そのそばには自然公園保安林という表札がちゃんとある。表札だけある。あとはみんな木は切られておる。そして谷をずっと見ると、その切って捨てた岩石が下まで投げられておる。そこへ植えようとしても何にも植わりません。まさに自然破壊をしておるのは林野庁、そしてまたその直接の原因はもう林道造成、こういうようなことがいえると思います。それと、どうもわれわれわからないのでありますけれども、谷間の急な斜面の場所、そこにはりっぱな杉やヒノキが植わっている。それを一たん切ったならば植えるのに困難だ、そういうようなところを全部切ってしまって、谷間ですから怒濤のように雨の水がそこを流れている、こういう指導はしたのですか。自然保護になりません、これは。植えられない個所、せめていままで植えておったのは大事にしなければならないような急な場所、人が上がるのにもほとんどこれは綱にたよらなければいけないような場所、そこに優秀な木があったのもみんな切ってしまった。あと全部植えられない。こういうような造林のしかたありますか。これは造林技術の至らないところまで切っている。こういうようなことで、ほんとうに残念なんですけれども、少なくとも水源涵養林といわれるものは切ってはならないです。具体的な事例としてはもっともっとありますが、もうすでに長官は自責の念にたえないようでありますから、これ以上追及するのは私はやめます。  ただ、ほんとう長官、いま保安林を今後この法律によって、あなたの所管として十分責めを果たさなければならないが、いままでと同じような行き方では全然だめでありますから、この点だけ環境庁長官、もうあなたはただまかせればいいような考えでしたけれども、こういうような重大ないままでの問題点がございますから、再びこれを繰り返させないように、経済的の問題からこれがどうしてもだめだった場合には、閣議にかけてこの点は十分に考えるような処置をしなければならない、こういうように思います。  最後に、これに対する長官の意見も伺っておきます。
  48. 大石武一

    大石国務大臣 いままではいろいろのむちゃくちゃな自然破壊がたくさんあったと私も認めております。これにつきましてはいまくどいことは申しませんが、今後はこのようなことはあってはならないと考えまして、いまいろいろと考えております。現在われわれは全国の自然破壊に対するいろいろな実態を調査いたしております。これがまとまりましたならば、あるいはこれを土台として勧告をいたす考えも持っております。勧告によってその実態をはっきりとつかまえて、それに対する対策を樹立しょう。それができない、それを実際執行しない場合には、総理大臣にその勧告権をさらに発動してもらいまして、総理大臣の命令によってやることになりますが、そこまでさしてはこれははなはだまずいことになりますので、とりあえずいま実態調査をしながら、実態をもととしていろいろと話し合いをして勧告権も発動しないで済むような、そういうような今後のあり方をつくっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  49. 島本虎三

    島本委員 同じ保安林の問題でも、北海道の長沼の自衛隊の演習地として保安林を解除して裁判になり、これがやはり農民の訴えが正しいというようになったのに、もう一回国が控訴してこの保安林を伐採しようとする計画を進めておられるようでありますが、ナイキ射撃場であるならば無断で伐採して、農民が訴訟して、これがまた第一審において国が敗訴したらまた山を荒らすのに控訴する、この行き方はどうも逆じゃありませんか、長官。自衛隊はいま軍隊じゃないはずです。軍隊じゃないのだけれども、旧憲法によるところの軍隊と同じような考え方で、これは保安のためであろうと何だろうと保安林さえも伐採して、裁判に負けてもまだやろうとする長沼の保安林解除、一体どうしてこういうような事態になっているのですか、これは解明願いたい。
  50. 上田稔

    ○上田政府委員 ただいまの御質問につきましては、当庁がお答えいたすのはちょっと筋違いかと存じますので、保安林の指定解除につきましては、林野庁がおいでになっておりますので、林野庁長官からお聞きをお願いいたしたいと思います。
  51. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  長沼の保安林の解除は、保安林解除の必要性とそれによる保安上の影響などを慎重に検討して行なわれたものでございますが、これは教育訓練施設敷地と、それから連絡道路として利用されるにあたって、のり面の緑化をできるだけ行なう、それからできるだけ立木を残すようにしていますので、自然保護という面については十分配慮してきたつもりでございます。私らも実は現地を見ていないので報告に基づいてのお話なんですけれども、一応そういうことであります。  なお、経過をお話しいたしましょうか。
  52. 島本虎三

    島本委員 時間の関係上、経過は私自身よく知っているからいいです。それで問題は、ナイキ射撃場、これを使用するということで、かけがえのない保安林をそのまま今度は無断で伐採する許可を林野庁が出したら、農民のほうから訴えられた、そうして農民のほうが勝訴した、それに対して国がまた伐採するために控訴している。こういうばかなことがありますかというのだ。わかった人いないか。開発庁のほうへきのうよく調べておけと言ったから、あなたのほうで調べているでしょう。
  53. 上田稔

    ○上田政府委員 ただいま林野庁長官のほうでちょっとお答えになられましたが、防衛庁のほうでお使いになる使い方でございますが、保安林であったときの性能といいますか、状態というものがあまり変わらない状態において使っていくということでございますので、そういう面において洪水の心配が起こらないような程度にしてもらうということでございますので、許されたというように聞いております。
  54. 島本虎三

    島本委員 少なくとも保安林は、必要でないものは保安林にしないわけだ。必要だから保安林にしている。それを無断で伐採している。その許可を林野庁が与えた。それじゃ困るからといって農民が裁判に訴えた。訴えた農民が勝った。そうしたら国のほうで、今度は切るためにまた控訴をしたという事実は、この自然環境保全法が通る現在おかしいじゃないかというのです。これはやはりほかじゃだめですから、長官
  55. 大石武一

    大石国務大臣 これは国の行政内のことでございますから、私からいろいろなお答えをするのもちょっとむずかしい立場でございますが、私は、やはりできるだけ民意を尊重して、できるだけ話し合いによって穏やかな行政が行なわれることを心から希望いたしております。
  56. 島本虎三

    島本委員 長官はやはり閣内のことであればすっと逃げる。しかし、やはりここは大事なところです。あなたはそこを強くならぬとだめなんです。落陽の佐藤内閣をささえるただ一本の柱はあなただ。あなたがそうふやふやしていては困る。しかしこれはほんとに大事なところなんです。保安林の価値があるから、それを切ってもらいたくない農民が、無断でやったのに対して訴えて勝ったのですから、勝った以上、保安の立場からすると、当然国の態度としてももっともっと考えなければならないはずです。どうもその辺あいまいなんです。これで自然環境保全法を強力に一本にして守るなどというのは、この辺になると少しおかしいじゃありませんか。この辺でもき然とした態度を示してもらいたいのです。
  57. 大石武一

    大石国務大臣 私は環境庁長官という立場からいえば、できるだけ日本の自然を破壊したくありません。一本の木も切りたくありません。そういう考えでございます。ただこの問題につきましては、われわれの所管面が違いますので、いまわれわれが直接どうこうという指図はできません。したがいまして、詳しいことは所管の大臣ともよく、話しをいたしまして、できるだけ穏やかに進むように話を進めてまいりたいと思っております。
  58. 島本虎三

    島本委員 穏やかに話を進めるというのは、国の機関として、農民が勝ったならばその時点において政策変更してやるのが正しいですよ。わざわざ控訴までして自然を破壊させるようなことに環境庁長官は協力する必要はない。もしこれに協力してやるとするなら、これはとんでもないことだ。ここへ防衛庁と法務省と呼んでもう一回やらなければならないわけですが、長官としてこの際、き然とした態度をとっておいてもらって、次へ進めたほうが能率的ではないかと思うのです。こういうことがあったらどうするか、もう少しはっきり言ってください。
  59. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御趣旨は十分に体しまして、努力してまいりたいと考えます。
  60. 島本虎三

    島本委員 もう少し言えないかな。努力すると言っているのですから、その成果についてわれわれは——どうも努力だけではほんとは足りない。時間によってもう少し防衛庁のほうと法務省のほうとするかどうかあとできめます。ただ努力するということに対して私は期待したいと思いますが、少なくとも緑保全のための努力だけはあなたは欠かしてはならないと思うのです。  それで、建設省の公園緑地は都市計画の中へ入れて残したように思いますが、この問題に対して、どうしてこういうことになったのですか。
  61. 大石武一

    大石国務大臣 私どもも、この都市並びに都市近郊の緑化に対してましては、できるだけこの法律案の中に取り入れてまいりたいと考えました。いろいろと建設省と相談いたしまして、これは、大体建設省所管のいろいろな法律なり権限で、いままでそのような方向行政が進められてまいっていたわけでございます。そこにわれわれがぽかっと一つ入りましても、ちょっと異質的なものになります。そこで十分建設省といろいろ検討いたしまして、お互いに意見を尊重しながら、ほんとに都市近郊の緑地を十分に確保する、これを守るという方針のもとに、ことし一年かかって四十八年度でいいものをつくる、所管はどちらでもよろしい、お互いにいいものを、お互いに共同してつくろうということに意見が一致いたしまして、そういうことで明年度に法律をつくる、そういう方向を固めまして、そのような方針を法律案の中にうたい込んでおるのでございます。決して後退しておりませんが、さらにわれわれは両方の権限をお互いに譲り合うとか、あるいはお互いの正しい一番いい方法をとるというようなことでこれは進めてまいるという方向にありますので、その点はひとつ御了承願いたいと思っております。
  62. 島本虎三

    島本委員 ちょっとこれはおかしいです。私は、もう強力にこの国土を全面的に対象として、自然環境保全をはかるという構想の当初の原案のほうがよりすばらしいと思うのです。いまの長官ことばによると、建設省の所管になっておる公園緑地は、都市計画のほうに残しておいてやるほうがなおすばらしいような印象にちょっと私聞こえたのですが、それならば、原案のほうはだめだったということになる。その点は議会答弁としてならまだしも、長官の口からそれを聞くというのはどうも私は納得しかねます。  それはそれといたしまして、林野庁のほうから先ほどいろいろな答弁がございましたが、今後やはり林野庁へ残る保安林の管理、これについては、ひとつ長官に閣僚として、これは重大な提言をしておきたいと思うのです。林野庁は、いままで福田長官からも話があったように、独立採算制に基づいて、特別会計によっていろいろ運営しておるわけです。そうするとその機構のもとで事業を実施するとなると、収支を合わせるために伐採に重点が置かれることは理の当然になっておるわけです。いままでその結果が逆に緑を破壊するような、林道一メートルおそらく十五万円くらい認めてやらなければならないような個所を一万五千円くらいで請け負わせておる。それでも山のてっぺんから落とすから、側溝もないままに林道を作成すればするほど、今度は山が荒れていく、こういうような結果を醸成していた。やはりこれもいままでの行き方からすると、当然このままでは許されないということになると思います。したがって、緑を守るための直営用の制度、現在もこれもはっきりしているはずであります。それはもう林政振興のためにも、こういうようなことも決議されておるはずですが、どうも手抜きの多い請負方式を捨てることができないようにして、だんだんそっちのほうに追いやられているという矛盾だけは、どうしても解消させないといけないと思います。したがって、今度は森林、植林、こういうようなものに対する手抜き、それから林道によるところの森林の荒廃、こういうような目に余るようなことさえも、独立採算をたてまえとした、いわば、これとてもいままでやらざるを得なかった。こうなってくると、真に自然環境保全のためには、林野庁のあり方、それと内閣全体としていまのような行き方をどうするかという点は十分再検討して、そして緑の保全、いわば、自然環境保全の全きを期する必要がいまにしてあるんじゃないか、こう思うのです。いままでと同じようなことをしておくならば、また同じことが繰り返される、こういうようなことを言わざるを得ません。この点について長官のはっきりした決意を表明しておいていただきます。
  63. 大石武一

    大石国務大臣 林野庁中心とする国有林の経営につきましては、時代とともにそのあり方、内容が変わってきております。以前は森林資源というものは木材としての利用のしかたが中心だった、いわゆる企業的な面が非常に強かったと思いますけれども、御承知のように近来は、やはり企業というよりむしろ自然保護と申しますか、公益性を中心とした国有林のあり方にだいぶ方向が変わってきております。そういう意味では、いままでのような企業性を中心とした独立採算制では、やはりいまの林野庁はやっていけないと思います。そのような自然の移り変わり、行政の移り変わりの中において、いままでのような独立採算制をしいられたところに、いまの林野庁は自然破壊のいろいろなやり方をしいられたんだ、私はそう思います。したがいまして、これからは当然、このような日本の国有林なりそういうもののあり方によりまして、林野庁の機構なりものの考え方も変わっていかなければならぬと思います。  このことにつきましては、私もいろいろな考えを持っておりますが、ただいま林政審議会におきましていろいろと検討中でございます。おそらくそこから、妥当な納得すべき意見が出てくると思います。私はそういうものに期待いたしまして、あえて私の意見は申しませんが、当然いま島本委員の仰せられたような、一つの林政と申しますか、そういうものに対する大きなものの考え方が変わってくる、こういうことを期待しておる次第でございます。
  64. 島本虎三

    島本委員 これはあとでもう一度具体的な問題に触れてまいりたいと思いますが、長官考え方の中で、最近ストックホルムでいろいろ発言なさったり、いろいろな点でわれわれは全面的に共感をいたしましたが、長官自身はあとからそれを取り消されたというのがありました。本案に関連して、新全国総合開発計画の改定について、やはり今後は何らか考えていかなければならないのじゃないかと思いますが、これに対してどういうような意見を申し入れる決意でございますか。
  65. 大石武一

    大石国務大臣 私が新全総についてのきびしい批判をいたしまして、閣議のあと取り消したということですが、取り消したのではございません。きびしいことばづかいだけをあやまったのでございまして、私のその考えは変わっておりません。  木村企画庁長官もたびたびこの委員会なり本会議で言明しておりますように、やはりこの新全総については大きな改定が行なわれなければなりません。それはどういうことかと申しますと、私はこう思うのです。もちろん新全総そのものには非常にりっぱなものがたくさんございます。日本の正しい、平均のとれた経済の開発をつくるために非常にいい面もございますけれども、一番大事なことは、どこにその目標を置くか、理想を置くかということだと思います。残念ながらこの新全総は、昭和四十四年に内閣によって閣議で承認されたわけでございますが、それまでおそらく六年も七年もの間資料を集めて、一つのりっぱな構想をつくり上げました。当時としてはまことにりっぱな、画期的なものだったと思いますけれども、その集めた基礎となる資料は、これは経済最優先の思想であったはずなんです。そういうものを土台にして集めましたから、どうしても新全総というものは経済開発を最優先とした、現在とは人間尊重の点において多少違ったものがあったと私は思います。そういうものですから、この新全総は、形の上ではいろいろないいものがありますけれども、一番大事なことは、人間尊重のヒューマニズムを基盤とし、理想としたものでなければならない、そういうものにぜひ今後は改定されなければならぬと考えておるわけでございまして、木村長官も、そのような意思のもとに改定を意図されておるのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  66. 島本虎三

    島本委員 よくわかりました。少なくともこの緑をふやさなければならないような趨勢、これは十分理解できると思いますけれども、都市をつくるために緑を削り取る、破壊する、こういうようなやり方は計画自身がおかしいですから、環境庁も今後はやはり人間を主にして、経済最優先の考え方を改めていきたい、こういうようなことでございます。  そうであるならば、いろいろございましょうけれども、北海道開発庁に特に具体的な問題として、いま長官からそういうような意思の表明がございましたが、北海道にも北海道の三期総合開発計画があるはずであります。それは苫小牧の北方百五十町歩ほどの国有地、国有林を切り開いて三十万人程度の新しい都市をつくる計画、これを開発庁が進めておられるようであります。マスタープランも、いまの内閣の間にこれを決定に持っていきたい意向のようであります。千歳と苫小牧のちょうど中間の国有地、それも国有林の中にこれをつくり上げたい、こういうようなことになっておるようでありますが、北海道は国有林を切り開いてまでも都市をつくらなければ土地がないのですか。環境庁長官はこれを知っていますか。
  67. 大石武一

    大石国務大臣 いろいろとその話はよく聞いて知っております。
  68. 上田稔

    ○上田政府委員 苫小牧東部の計画でございますが、これはお話しのとおり、北海道の第三期計画に基づいて計画をいたしておるものでございます。その第三期計画は、全総計画に基づいて計画をいたしておるものでございます。  全総計画が十分に検討されて、そのときにおきまして必要でないということになりますと、もちろんこれはたいへんなことになるわけでございますが、私どものいまの考えでは、現在日本の国は、太平洋ベルト地帯に工場が非常に集中しておる。それがために、この東京もそうでございます。外を見られたら、このとおり灰色の空気になっている。こういうことは、結局は工場がそういう地帯に非常に集中しておるということから起こってきておるんだ。これを防ぐための方法としては、一つは工場をある程度分散させなくちゃいけないということ。それからまた、もう一つは、出る排煙とかいろんな公害、そういうものをなくするような施設をつくらなくちゃいけないということです。  こういうことを考えますと、太平洋ベルト地帯の現在の工場におきましてそれを要求いたしましても、実際上それがなかなかできないというのが実態ではなかろうか。しかしながら、新しい施設ということになりますと、そういうことが考えられてできるようになっていくのではないか。現在、首都圏の東京におきましては、既成都市区域の範囲内においては、工場の新増設というものを禁止をいたしております。また近畿圏におきましても、既成都市区域において工場の新増設というものを禁止いたしております。したがいまして、その中にある工場というものは、逐次新しい地域を求めてそこに移転をいたしまして、そうして新しい施設によって公害の起こらないような工場、そういうものをつくっていっておるのが現状でございます。  北海道にもそういうものの基地をつくらなくちゃいけないのじゃないか。そういう意味において、この第三期計画というものをそう変更する必要はないのじゃないか。特に北海道は、いままでは北海道の開発と言っておったけれども、実際は開拓にすぎなかったのじゃないか。農林の開拓であり、そして水産の開拓である。林を切り開いて農地に変え、牧地に変えた。これが北海道のいままでの開発だったのじゃないか。  しかし日本の人口というものは、私たちが子供のときに、われら国民七千万あるいはわれら国民六千万と言っておったときは、これは朝鮮が入りそしてまた台湾が入って、その人口を入れてそういうものであった。だから、したがって本土の中の人口というものは五千万あるいはそれ以下であったのではなかろうか。そうすると、いま一億になんなんとするわけでございますから、倍の人口になっている。この人口はやはり北海道も担当をしてもらって、そうしてともに日本の国の国民をささえていかなくちゃいけない、日本の国をささえていかなくちゃいけないんじゃないか。その一翼として苫小牧東部、これに夢を持っておるわけでございます。
  69. 島本虎三

    島本委員 だれもそのことを言っているんじゃないのです。あなたのほうでやったマスタープラン、これは土地利用交通体系パターン図、これを私ちょうだいしてきて、これによると、支笏湖のそばの千歳市と苫小牧市のほぼ西北方、ここに百五十町歩の国有林とそれから国有地があるのですが、その国有林を全部切って都市をつくるんだというプランができているのです。木を大事にしなければならないと言うが、これは千古おのを入れないようなりっぱな国有林です。ここに今度都市を移すというのです。そばに千歳市があり恵庭市もある。なぜそっちのほうにふやして持っていかないのですか。なぜわざわざ木を切って三十万の町にしなければならないのですか。これはどうもやることと言うことと違うんじゃないか。いま新全総も考えなければならないという。しかし、いまこの工場計画全部を変えろと言うんじゃないのです。そのうちにここに都市をつくるというのです。それも国有林を切ってやるというのです。長官、これに対してオーケーを与えたというならばあなたのイメージは急にダウンしてしまうのですが、北海道にはこれしか土地がないわけじゃない。まだまだ平地も山もたくさんある。こういうようなところにわざわざ貴重な木を切ってまでも道路を通し、そうして三十万の都市をつくる。こういうような計画を今後第三期の計画の中に入れて、そうしてこれを実施する計画にあなたがオーケーを出したという。ですから、そのやり方が緑の保全、すなわち自然環境保全法案を通過させようとする態度としては相反するんじゃないかと言っているのです。
  70. 大石武一

    大石国務大臣 いまのところその地域は残念ながら国立公園、国定公園の中に入っていないと思いますから、われわれのほうが許可するとかしないとかいう権限はなかったと思います。  ただ、私は北海道に参りまして一番痛感することは大きな木の少ないことであります。北海道というとわれわれのイメージとしては大きな自然林がたくさんあるような地域であろうと考えておりましたか、北海道に行くたびに——大雪とかあまり高い山に行ったことがありませんからわかりませんが、大体において、阿寒を中心とした天然林は別ですけれども、ほかの地域に参りますと、みんな切り払われて貧弱な森林になっているのがだいぶ多い。これは明治、大正においての行政上北海道を荒らしたいろいろないきさつはありましょうけれども、非常にさみしい感じがするのはその点であります。ですから、私はできるだけ北海道の大きな木、天然自然林を残さなければならないと思う。これは日本自然保護のための大事な使命だと私は思っております。そういう意味で、いま百五十年から二百年にわたるような木のある国有林を切り払って、わざわざそこに三十万の都市をつくるということに非常に疑問を持っております。ほかに土地がないのか、私は十分使える平地があると思うのです。  ですから、私は近く北海道へ出てまいりまして、大雪山なりサロベツなりその他を一ぺん視察してまいりたいと思いますが、その節そこに寄りまして、そうしてその自然林が非常に保存すべき価値のあるものならば、私は、この法律案が通りましたならば、そこもこの地域の中に入れまして守って、それはもちろん都市をつくらなければならぬでしょうけれども、都市はもっと別の地域考えるようなことにしたらどうかという一応の考えを持っているわけでございます。
  71. 上田稔

    ○上田政府委員 御質問の趣旨を取り違えいたしまして、どうもたいへん失礼をいたしました。  ただいまの三十万の都市の位置の問題でございますが、これにつきましては、実はマスタープランでございますので、そういうような工場の配置、それから都市の関係、そういうものでそこに入ったのではなかろうかと思うのでありますが、実施をいたしますときにおきましては、そういう保安林ということがございますればこれはもちろん十分に考慮をいたしまして、そういうところははずすようにしてやっていきたい。もちろん環境庁とも十分お打ち合わせをいたします。
  72. 島本虎三

    島本委員 私自身も、自然環境保全という立場からこの問題に対しての計画を見る場合には、何か産業優先のにおいがするんです。苫小牧のこの辺に対しては公害を出さない港づくりのはずです。コンビナートのはずです。それがこれは、この辺を全部やって住民をそこへ疎開させようとする計画です。これはもう全然おかしいのです。初めから公害をなくするようなコンビナートであったはずなんです。三十万の都市をつくってそっちのほうへ住民をやってしまおうとする、そこを荒らすだけ荒らしてしまう、こういうような計画があるとしたならば、これは再考慮を要します。これは十分慎重に考えて、それで実施調査の上でしかるべく万遺憾なきを期して、少なくとも自然破壊に通ずるような点のないように、これだけは強く要請しておきたいと思います。これはやはり一回実施を調査されて検討なすったほうがよろしい、こういうふうに思います。この点については十分配慮してやってほしいと思いますが、これは間違いありませんね。
  73. 上田稔

    ○上田政府委員 おことばを返すようですが、住民を追い出してそこへやるというような意思はございませんで、実はなるべく都市としての近代生活というものが営めるようなことを考えまして三十万都市というものを考えさせていただいたわけでございます。今後日本の国をどういうふうな形態で持っていくかはこれからいろいろございますでしょうが、ばらばらの住居ではなかなか近代生活が営めませんので、なるべく集まっていただいてというような考え方でおります、農村におきましても。そういうことでございます。
  74. 島本虎三

    島本委員 そういう考え方じゃ困るのです。これを行なおうとするそのすぐそばに千歳市があるんです。そのそばに四キロも離れないで恵庭市があるんです。都市をつくるなら現在あるそっちのほうで十分配慮してやれるのです。何のために国有林、国有地を切り開いて、その中にまた三十万の都市をつくらなければならないのかと言うんです。あるべき緑、保存すべき緑は保存しなければならないと言っているじゃありませんか。政務次官、どうもあなたは十分理解されておらないようだ。これは開発庁の人にも十分理解させるようにしてやってほしい。いまのような考えでは私はちょっと困るのです。長官、これはやはりもう一回十分に検討して、そしてその場所が適当かどうか、木を切るのはどうなのか、この辺まで十分やらないと、せっかくこの法案を通す理由がないじゃありませんか、国がやってしまうのだから。
  75. 大石武一

    大石国務大臣 私もうっかりしていましたが、四月から北海道開発庁が中心となりまして各省庁で話し合いをして、そのような都市をつくったらどうかいま内々で相談中だそうでございますから——もちろん私は簡単に木を切ることは認めません。それで、まあ視察をいたしまして、この法案が通りましたならば、それだけの価値があるものならばそのような保存地区にいたしたいというふうに内心考えておる次第でございます。
  76. 島本虎三

    島本委員 次に移ります。今度はいよいよこの本題に入りますが、自然環境保全法、これが資料とともにわれわれの手に入ってまいりましたが、これは都市部以外の国土を全面的に対象としているんです。自然環境保全をはかるという当初の構想の原案からずいぶん後退しているようです。そして自然環境保全をはかるという同様の目的を持つ自然公園法、これも中に入れて一本にしたものにしようとする本来の発想が、本法に包含することができなかった理由はどうなんです。   〔委員長退席始関委員長代理着席
  77. 大石武一

    大石国務大臣 初めの考えは、おっしゃるとおり、自然公園法も、これは形を変えまして、この法案の中に一本にいたしたい方針でございました。いまでもそのほうがいいとわれわれは考えております。しかし、いろいろなほかの官庁との折衡の段階におきまして、そのような、自然公園もはずして一本の法律にすることが、場合によっては、せっかくいままで守ってきた自然公園を守る権限が、規制がある程度そこなわれるおそれが出てまいりました。そういう心配から、少なくともいままでの自然公園だけいままでどおりりっぱに守っていこうという考えで、さらにこの新しい法案による自然を守る地域を広げていきたいというこそくな考えに変わったのでございます。実は一本のほうがよろしいのでありますけれども、いろいろな折衡の段階において、このような中途はんぱな方向にいかなければならなくなったことは残念でございますけれども、やむを得ないと思います。いずれは次第次第に、これを土台として一つのまとまったすっきりした体系のものにいたしたいと考えております。
  78. 島本虎三

    島本委員 自然公園法の第四節の「保護及び利用」の「特別地域」第十七条、このうちの二項、三項、この中ではっきりしているのですが、長官自然公園法の場合には、規制対象に川が入っておらないし、湖沼並びに湿原への排出の規制、周辺一キロメートルに限ってありますから、それより離れたところでは、幾ら汚染物質を流しても、その問題に対してはもう適用されないという一つの欠点があったのです。規制は、既設の、いままですでにつくっておったところの施設に対しては適用されないのだ。いわばこの規制対象に河川が入っていないことが一つ、それから湖沼並びに湿原への排出の規制をその周辺一キロメートルに限ってあるという、この法律の持っている欠点が一つ、それからもう一つは、この規制は既設の、いままですでにできておった施設には適用されない、こういうようなことがいままで指摘をされ、これは改正しなければならないという問題点だ。ですから今度一本にした場合には、これをちゃんと規制して運営の中でやれるのですが、二本にした場合には、依然としてこういうような点が欠点として残されるわけです。これに対して、環境保全のためには万全じゃないじゃありませんか、やはり一本にして、こういうような点が不十分であるならば、この不十分な点は全部補ってそして運営しなければならないと思っていたのです。この点等はこのまま並行してやったならば、依然としてしり抜けばしり抜けにして運営することになるじゃありませんか。この点はちょっと私は残念です。
  79. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま先生の御指摘のとおりのような今回の法案になっておりまして、その点についての改正というものはございません。ただ、この問題につきましては、ただいま先生のおっしゃいました河川等の問題について入ってないという御意見でございますが、河川等につきましては、他の土石の採取の問題でございますとか、あるいは工作物その他の設置あるいは土地の形質の変更といったようなところで、かなりの問題というものを押えることができるわけでございまして、その他河川の水質の問題につきましては、水質汚濁防止法のほうで、これを厳重にやっていくというような手段によるわけでございます。  なお、この地域が指定された際に既着手でありますものの取り扱いにつきましては、依然として、法律問題といたしまして、従前から平穏かつ公然に行なっておるものを、地域の指定によりまして直ちにそれを禁止するということは、法律的に問題があるということでございまして、その点につきましても、今回も大体この自然公園法と同じような形の定義にいたしております。  ただ、原生自然環境保全地域につきましては、特にこれが非常に重要な地域でございますので、既着手の問題につきましても、三カ月はそれを認めるけれども、今後それについては三カ月間の間にあらためて許可をとる必要があるというふうにいたしまして、そこで規制ができるというような形に整備をいたしました。  一般の自然環境保全地域につきましては、従前の自然公園法と同じような規定にとどまっておった次第でありまして、しかし、その運用につきましては、既着手工事というものを十分にその指定の際に把握をいたしまして、その既着手工事がさらに今後拡大するといったようなときには、これは既着手工事として認めるわけにはいきません。   〔始関委員長代理退席委員長着席〕 したがって、そういうものにつきましては、あらためて許可をとらせる等、十分な指導をやっていきたい、ただいまかように考えておるわけでございます。
  80. 島本虎三

    島本委員 自然公園法と二本立て、これはやはり両者の調整について問題は残る。それと同時に、森林法や文化財保護法、それから都市計画法、こういうようなものの関係を整理して、やはり一そう基本的な法体系にする必要、こういうようなものが当然考えられてしかるべきじゃないかと思うのです。つまり、今後において法体系の抜本的な再編成の方針、こういうようなものは考えられているのかどうか。いま残されている森林法、文化財保護法、都市計画法、こういうようなものの関係の調整というものは当然必要になると思うのでありますが、この点は考えに入っておりますか、おりませんか。
  81. 首尾木一

    首尾木政府委員 今回の自然環境保全法は、これは現在の自然公園法その他自然の保護に関連のあります法律では十分に実施ができないということで、しかもそれを早期に、そういう新しい面につきまして、自然環境保全をはかっていく必要性に迫られましてつくったものでありまして、体系的な面ではなおこれを整備を要する点が非常に多いわけでございます。なお、地域区分等につきましても、さらに考える必要もございますし、各法律との体系づけ等につきましても、今後さらにわれわれ抜本的な検討をやってまいる必要があると考えております。  この法律におきましても、内閣総理大臣が国の自然環境保全に関する基本方針をつくることになっております。その基本方針の中で、わが国の自然の保護に関する基本構想を立て、それから各種の地域につきましての設置の基準でありますとかあるいは各地域間の調整といったようなことを基本方針ではかってまいることになっておりまして、これは関係省庁からの御意見をいただきまして、内閣として決定をする、内閣総理大臣がこの案をつくるというようなことになるわけでございますから、それらの問題を通じまして、さらに具体的に各自然関係保全に関する各法律の具体的な調整でありますとかあるいは総合的な、これらを相協力をいたしまして、この自然環境保全をやるということにとどまっておるわけでございます。  先ほども申しましたように、今後これらの点については、さらに抜本的な検討ということをやる必要を痛感をいたしておるわけでございます。
  82. 島本虎三

    島本委員 自然環境保全法案要綱の当時といまの法案として出てきたこれを対比してみますと、ほんのちょっとの部分ではなくて基本的な部分の後退があります。やはり私はこの点は十分に考えて対処していかなければならない問題点だと思っております。と申しますのは、徐々にあげていきたいと思いますが、財産権の尊重及び他の公益との調整、第三条ですね、この規定は、当初案にはなかったはずでありますが、こつ然として第三条にこれが入っているわけであります。当初案になかったものを入れなければならなかった理由というのはどういうことですか。それと同時に、尊重すべき財産権は農林水産業などの生業に必要なものに限定して、第二次、第三次産業用の財産とは当然区別するようにこれは運用されてしかるべきじゃないかと考えられまするけれども、この点はいかがなものですか。
  83. 首尾木一

    首尾木政府委員 私ども自然環境保全法をつくりました原案段階におきまして、そのような規定が入っておらなかったことは事実でございます。これは当然のことでございますので、むしろいわばこういう規定は当然のことでございますので、あらためて必要としないというような考え方でございましたが、現在の自然環境保全ということに対しまして、この法律が施行されたときに多くの方々の中で、そういったような財産権に対する過重な規制というものがかかるということに対しての心配といいますか、そういうものが非常に多くございました。この点については、いわば入念的な考え方で入れたものでございまして、実体的に考えますと、この法律の中で私権の尊重に関しましては、許可を受けなかったときの補償でございますとか、あるいは地域指定の際の公聴会開催の規定でありますとか、あるいはさらに、特にそういったような意味で実体規定においても配慮をいたしておるわけでございまして、いわばこの総則の第三条というのは入念的な規定としてまとめておるということでございます。  それからなお、農林水産業等の生業と他のものを区別すべきではないかという点でございますが、これにつきましては、自然環境保全地域のところの条文にもございますように、自然環境保全地域等におきましては、農林漁業等地域住民の生業に関するものについての尊重規定、配慮規定というものも置いております。これは特に自然環境保全地域というところに農林水産業が基盤を持っているということ、そして、農林水産業の、特に林業等について考えますとおわかりいただけると思いますが、林業が林業として継続をしていける、その適正な林業が今後続いていくということは、これはそれ自体としてやはり全体としては自然環境保全ということに資する面があるというようなことを配慮をいたしまして、かつ、地域の住民の協力なくしては、やはり自然環境保全ということはできないというようなことも考えまして、このような規定を入れた次第でございます。
  84. 島本虎三

    島本委員 そうすると、これはいわゆる要綱だったころには、第三章の十七に、「原生自然保護地域内の土地及びその定着物は、国及び地方公共団体以外の者に対して、これを貸付け、交換し、売払い、譲与し、もしくは出資の目的とし、またはこれに私権を設定することができない。2 前項の規定に違反する行為は無効とする。」いわゆる環境保全のためには私権を制限してもよろしい、環境保全はこれはいまの日本として今後重要なものだという柱を一本立てた。ところが、これがなくなって、そして第三条に、十七と引きかえに、自然環境保全のためにはわき目をふらずにやることはいけないぞ、財産権の尊重が必要である、これがこつ然として入ってきた。これは長官、重大なる決定の変更、重要なる中心点の移動だ、こう言わざるを得ないのですが、こうせざるを得なかったのはどういうわけですか。重大です。
  85. 大石武一

    大石国務大臣 この第三条は、これはあたりまえのことを言っているのでございまして、当然あってもなくても、あっても決して不都合ではありませんし、あたりまえのことです。ただあたりまえのことを入れなければならぬようなことは、やはりいろいろ折衝の過程で、あまり環境庁考えはきつ過ぎやせぬかというような心配は、他の省庁に与えたかもしれません。したがって、途中でこういうことで入ったのでございまして、これは別に第三条が入ったことは、決して私は悪いことでもなければ、あたりまえのことだと思っております。しかし、御承知のように私権は当然尊重しなければなりませんけれども、やはり公益保持のためにはある程度私権に対する制限というものはやむを得ないと思います。しかし、その思想は随所に入っておると思います。ことに、たとえば原生自然保護地域につきましては、これは全部国有地あるいは公有地にしようということもその一つのあらわれでございます。それからその他やはりいろいろな、たとえばああしてはいけない、こうしてはいけない、許可制であることも、これは十分に一つの私権の制限だと思いますし、やはり全体的に自然を守るためにはある程度の私権の制限はやむを得ないということが十分に入っていると思いますので、ことさらあまりきついことばを書きますと、どうしても抵抗が各地にできましてなかなかこの法案の成立がむずかしくなる、そういうことで、このような穏やかな形に変わったものだということを御理解願いたいと思います。
  86. 島本虎三

    島本委員 あなたはそういうふうに言われますけれども、前の無過失賠償責任法なんか見なさいな。あれは各党が修正してやってようやく体系をなした。あれがなければ、なおそのままでやったならば、どうにか運用されて困るじゃないかというおそれさえあったような原案を出してきた。それを修正してもらってありがとうございましたとあなたは言わなければならない。ところが、今度のやつです。出されたこの問題を見ますと、いま言ったのは、やはりあなたの姿勢がわかったと言うのです。それは、前のいわゆる要綱だったころの第三章の「原生自然環境保全地域」という第十七の中に、りっぱなことばが入っているのです。すなわちこれは、環境保全のためには、その中に特に私権を制限しても環境保全のために尽くすべきだというような線が一本ぐっと入っていた。これが入っていて、また無用だといわれる第三条が、普通だといわれる第三条が入るならいいのです。それを取ってしまって、三条だけこつ然として入れてきた。この辺に基本的な姿勢の変更はありませんかと言っているのです。
  87. 大石武一

    大石国務大臣 話は違いますけれども、無過失賠償責任制度では、委員長以下皆さまの御努力によりまして、りっぱな修正をしていただきまして、私も確かに前より非常にいい形になったと喜んでいる次第でございます。そのような御努力に心から感謝申し上げます。  御承知のように、委員会のすべてのお力をかりなければ、やはりこのようないい形になり得ないというところに、現在の日本行政のむずかしさがあると思います。そういうことをひとつ御認識いただきたいと思うのであります。われわれはできるだけきついもの、きびしいものにいたしたいと考えましたけれども、いま申しましたようにできるだけきびしいこと、あまりきびしくなりますと、どうしてもいろいろ各地に反発が出てまいります。御承知のように法律案というものは、政府提案というものは、政府のすべての役所の了解と協力がなければこれは一切法制局において成文化することができない。そういう意味であらゆる努力をしまして、この程度でまず持ちこたえたということでございますから、これができれば、やはりいま申しましたように、いろいろと次の段階において総合的なものに展開することもできる可能性があることでございますから、そういう、多少弱くなったといえば弱くなったかもしれませんが、決して大事な自然を守ろうという基本的な姿勢、精神は失われておらないと考えておる次第でございます。
  88. 島本虎三

    島本委員 これではどうも私は依然としてわからないのですよ。私の言っていたのは、長官に対しては少し激励の質問になっているはずなんです。いま長官が言っていたその精神は、やはり要綱のころの十七にあったのです。りっぱにあるのです。それを今度第三条のほうに、十七と引きかえに、「財産権の尊重及び他の公益との調整」というのが入ってきたのです。それはやはり私権の制限がなければ、まあいろいろと問題があるのではないか、こういうようなことも当時はわれわれも考えてみましたが、これ、どうなんですか。その目的自身は、あくまでも普通だといわれる、財産権をはじめとして、これは私権に制限を加えても自然を守るというのが目的じゃないですか。この私権は、財産権を含めて制限がなければ、普通のとおりの常識的なものだったとするならば、あえてこれは法制化する必要さえないじゃありませんか。これは普通の問題で、こんなことは入れても入れなくても普通のことだというなら、これは入れる必要はない、法制化する必要はない。ことに自然環境保全するために私権の制限をする、しなければならないからこそ、現在のこの貴重な自然環境保全法、こういうようなものができるのじゃありませんか。それだのに当然のことを、入れなくてもいいものを、常識的なものを第三条に入れている。入れても入れなくてもいい問題だ、こういうようなことだったらちょっとおかしいのではないですか。肝心な私権の制限という十七、これはもうはっきり抜いておるのです。これじゃダブルパンチじゃありませんか。
  89. 大石武一

    大石国務大臣 私は、なるべく私権というものは尊重していきたいと思います。たとえば自然環境を守るためにも、できる限りの私権というものは尊重してまいることがいまの制度では妥当だと私は思います。ただ、何でもかんでも私権を守るために自然環境保全ができないとか、あるいはいろんな問題がほかにもたくさんありますけれども、いろんな国の行政ができないという場合にはある程度私権に制限を加えることになるだろうと思うのであります。そのことが国の公益性を守ることのために大事なことだと考えております。(島本委員「それが抜かれている」と呼ぶ)ですから、できるだけ私権を尊重していこうという考え方、あくまでも自然環境を守るためには、ある程度私権の制限はやむを得ないというのは両立させなければならないと思うのです。  それで、第三条は、これは当然のことをいったのでありますから、決して入れて悪いことはございません。ただ、少しきつく私権の尊重を述べているだけでございまして、別にこれは入れて、取らなければならぬほどのことはない。入れてけっこうなことだと私は思います。第十七は原生自然保護地域のことだと思いますが、これもやはりできるだけ——私権を制限しながら日本の正しい原生自然を守ろうというために全部買い上げる。民有地をなくして、全部国あるいは公のものに買い上げるという方針を強調しているわけでございますから、これは決して自然を守るために矛盾しないと思います。
  90. 島本虎三

    島本委員 これはやはり私権の制限がなければ法制化する必要はないのですよ。そしてこの法律の目的は私権の制限ですから、そこに両方にいい顔をして、環境庁長官特有の、あっち向いてもいい、こっち向いてもいい。だからストックホルムへ行ってもそこでやられる。だから、やはりこれはどちらかということになったら、一方の顔はきつく、一方の顔はにこやかであっていいのです。あなたは両方向いてにこやかにしておる。これじゃどこか骨が一本抜けてしまうおそれがあるから、これは心配だ。  それで、まだまだこの中には以前のものと比べたらたくさんあるのです。私ども両方比較してやってみるのですが、どういうような場合にでもいろいろと出てくることばがあるのです。というのは、「保全」の場合においても自然公園法の適用、「この場合においては、当該地域に係る住民の農林漁業等の生業の安定及び福祉の向上に配慮しなければならない。」これもまた当然のことであります。そしてまた附則のほうへまいりましても、三十五条の「配慮」、ここには「自然環境保全地域に関する規定の適用に当たっては、当該地域に係る住民の農林漁業等の生業の安定及び福祉の向上に配慮しなければならない。」どこに関してもこれが入っておるのです。一カ所入れればわかるのであります、何カ所も書かないでも。この法律自身がやはり曲げて運用されるおそれがあるという配慮からですか。もっとも「配慮」というところにこれが書いてあるのですが、これを二回も三回も書いておかなければならない理由はどこにあるのですか。これは法律ですから、政府委員のほうから。
  91. 首尾木一

    首尾木政府委員 三十五条は自然環境保全地域に関する規定の適用についての配慮規定でございまして、もう一つのほうにつきましては、これは都道府県自然環境保全地域に関するところについての規定でございます。ごらんいただきますとわかりますように、こういったような問題は、原生自然環境保全地域につきましてはございません。この自然環境保全地域及び都道府県自然環境保全地域につきましては、特に林業等につきまして伐採につきましての特別規定を設けましたように、そういったような地域における林業等につきましては、その林業の健全な継続ということがこういう森林を守っていくといったようなことにも資するという意味におきまして、特に配慮規定というものを置いたというふうにお考えをいただきたいというわけでございます。  それから先ほども申し上げましたように、こういったような第一次産業、農林漁業関係等につきましては、やはりその地域におきましてそういう自然を守っていくようなにない手でもあるわけでございますから、そういったような生業の点につきましては、この法律の運用において過重な規制ということがかからないように考えておるわけでございます。もちろんこの法律の精神それ自体といたしましては、自然環境保全のためには、個人のそういったような権利につきまして法的な規制がかかっていくというようなことがこの法律全体の精神でございますので、運用におきましてそういったような点、いささかもこれを曲げて運用するというような考え方は持っておらないわけでございます。
  92. 島本虎三

    島本委員 この第五条、これもまた何のためにこういうようになったのでしょうかね。基礎調査の実施、五年ごとに行なうという当初案から、五年ごとが抜けてしまってありますが、調査体系の現状と今後の強化対策ということについてはどのように考えられていますか。何のために五年が必要なくなったのですか。
  93. 首尾木一

    首尾木政府委員 当初は五年ごとにこの調査を行なうことを考えていたわけでございますが、この点につきましては、いまだ基礎調査の内容そのものについて十分固まっていない点もございまして、今回は「必要な基礎調査を行なう」という規定にとどめたわけでございますが、私ども基本的にはこれを五年がよろしいかあるいは十年がよろしいか、あるいはさらに時間を短縮したほうがよろしいか、こういったものにつきまして十分考えまして、今後必要な経費をとり、基礎調査、全国的な調査といったようなものを考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  94. 島本虎三

    島本委員 それじゃこれは五年を入れないほうがいいという考えなんだね。
  95. 首尾木一

    首尾木政府委員 現段階においては、必ずしも五年というふうに限らないほうが、むしろ今後の進め方の上においては適当かと考えております。
  96. 島本虎三

    島本委員 十年のほうがいいのですか。
  97. 首尾木一

    首尾木政府委員 五年が十年になるということでございますと、これは調査の内容でございますけれども、非常に大きな調査で、十年単位で見れば足りるというふうな調査であれば十年でよろしいと思いますし、さらにその中における部分的なものについての調査でございますとそれは十年では困る、もっと五年以下であるというようなものも必要かと考えております。
  98. 島本虎三

    島本委員 だから、そのものさしとして、五年というのを入れてその間に基礎調査を終わらせたほうが効果があるのではないかと言っているのです。抜けてしまったから、これは底抜けです。何年と書いてないのです。だから十年かといえば、十年より長くてもいいと言っている。こんな基礎調査がありますか。だからこれは骨抜きだというのです。初めちゃんと五年を一つの時期にしてこれを設定しましょうとあったのです。それが抜けているからどうなんだと言ったら、どっちでもいいと言う。あなたの背骨抜かれたようなものだ。人間の体をなさなくなるのだ、だめです。長官、この辺もまた抜けてしまいますな。
  99. 大石武一

    大石国務大臣 基礎調査ですから、私は三年とか十年、五年と区切る必要はないと思うのです。できるだけ短い期間でできるだけ正確なものをつくりたいと思います。われわれが考えておりますそのような基礎調査をつくりました上で五年ごととか——初めのわれわれの予算要求のとき考えたのは、五年ごとにもう一ぺんそのいろいろな変わり方を調査しようということで、五年おき、十年おきということにしたのですけれども、予算も取れませんでしたからそれはできませんでしたけれども、やはり基礎調査というものは五年でなければならぬとか十年でなければならぬとか三年でなければならぬ——できるだけ短い期間でてきるだけ正確なものであればいいと思いまして、基礎調査を終わった上の段階で、それがどのように変わっていくかというのを見るのは何年ごとがいいかということは、その次の段階できめなければならぬのだと考えております。
  100. 島本虎三

    島本委員 その点はわかりましたが、一応のものさしというものがなければ、そのときの情勢にまってどうにでもなりますよというのが、一番どうにもならないのです。ですから、初めから法的に五年というものさしでやっておったならば、その前後には官僚はみな馬力をかけるのですよ。黙っておいて、なければ安心だ安心だ、予算がいずれ取れるまでということになって、五年がだんだんおくれていくおそれがないかという心配なんです。したがって、ものさしをちゃんとあてがっておきなさい、こういうようなことです。しかし、どうも、ないほうがいいんだというんだったら、なおさらこれは骨がなくなる、こういうようなことでございまして、その点心配ですが、しかし、基本的に考えが違うようだったら、これはしようがありませんな。一定するまで徹底的にやるよりしようがなくなるわけですけれども、私はそう思います。  それと、第二章の基本方針及び審議会関係、これはどういうようなことになるのですか。基本方針の策定について、環境庁案から閣議決定から公表、こういうような順序でやってきておりますが、これは内閣総理大臣の作成ということで考えられておったんじゃないですか。これがだんだん環境庁になり内閣の決定となって、だんだんこうなってきたというのは何かこの辺も少し私として、前のこの要綱の点から見ましていきさつが不分明だと思うのです。これが整備された現状だと考えられませんし、審議会の委員の数が六十人というようなことに了解してあったが、またこれもバナナのたたき売りじゃございませんが、四十五人以内ということになって、また減らされている。こういうふうなことになってまいりますと、いよいよもってこの理由がどうも理解できかねますが、これも内閣総理大臣の作成が今度環境庁案ということになり、四十五人以内に審議会の委員の数が減ってきたというような点も、これは何のために減ったのですか。
  101. 大石武一

    大石国務大臣 私は、審議会の委員というのは数が多いければ多いほどいいとは考えておりません。一番優秀な人が全部入ってくれればいいと思います。したがいまして、六十人が四十五人でも三十人でも私はいいと思うのです。ただし、六十人おりました前の委員は、それは各省の次官とかそういうものが約二十人近く入っております。今度は一切役人を入れないで、ほんとうのいわゆる民間人だけで構成することに考えましたので、四十五人で私は十分だと考える次第でございます。  それから、内閣総理大臣がこの自然環境保全基本方針をきめるわけでございます。総理大臣が権威あるということでございますから、それは一番強力なものになるかもしれません。
  102. 島本虎三

    島本委員 これは原生自然環境保全地域関係ですけれども、政令で定める面積以上の土地に限定する理由は何かということ、それと、その面積としてどの程度考えていられるかということ。それと、民有地を指定する必要が生じた場合は国または地方公共団体が買い取るのか、その財政的な裏づけがどうなっているのかということ、保安林の区域を除くこととした理由、こういうようなものはどうなのか、先ほどのいろいろな質問に関連してやはり危惧を感じますから、この点をひとつ解明してもらいたいということ、除くことによって原生の生態関係が破壊されるおそれがあると思いますが、この辺の配慮はどうかということ、三つを一緒に答弁してみてください。
  103. 首尾木一

    首尾木政府委員 原生自然環境保全地域というのは、ほとんど自然のままの状態である地域でございますので、そういったような生態系を守るためには相当の面積というものが必要だとされております。これは一応今日、そういったような自然環境保全ということにつきまして、国際的に、どの程度の広さがあればいいかというような基準がございまして、一応私どもはそれに従いまして、約千ヘクタールといった程度のものが必要であるというふうに考えておるわけであります。それだけあればその地域のそういったような生態系というものが守れるということで、こういったようなものを規定いたしたわけであります。  それから原生自然環境保全地域につきまして民有地がある場合についてはどうかということでございますが、これは原生自然環境保全地域実態的なものの多くは、現在国または地方公共団体が所有しているものがほとんどの状態考えておりますが、しかし、民有地がその中にありました際には、これにつきまして、これを買い上げて公有地にいたしまして、その上で原生自然環境保全地域の指定をいたしたい、かように考えておるわけでございます。四十七年度の予算で、国立公園地域内の枢要地につきまして、その特に重要な地域、こういったような原生自然環境保全地域相当するようなものを中心にいたしまして、年間で約六十億の買い上げ事業を認めることとし、これをことしの予算のやり方では、地方公共団体がその土地の所有者に対しまして交付公債を交付いたしまして、これを十年間で償還をする、その償還に要する経費事務費も含めまして、国が十分の十ないしは五分の四を補助するというような制度が新たにつくられたわけでございます。この制度につきましては、今後四十八年度以降につきましてもこの制度の拡充ということに努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、かりに民有地でこういう原生自然環境保全地域相当するようなものがあればそれをやっていこうというような考え方でございます。  それから次に、第十四条の本文にございますように、森林法による保安林の区域というものを除いておるわけでございますが、この保安林というのはやはり森林法上それぞれの設置目的に従いまして、そこで治山事業等の行なわれる、すなわち人間の活動の行なわれることを前提にして指定をされたものでございますから、したがいまして、こういったような人の活動の及ばない原生自然環境保全地域というものとは性質的に異なるもので、本質的に相いれないものであるということで、両者を重複させないような形の法律にいたしたわけでございます。したがいまして、この法律で保安林の区域については原生自然環境保全地域というのは指定をできませんが、また同時に、森林法をこの法律の附則で改正いたしておりまして、森林法のほうでも、原生自然環境保全地域は保安林には指定できないというふうに相互にその規定を設けておるわけでございます。もし現在保安林でございまして、そうして保安林にしておくよりも原生自然環境保全地域にしたほうが適当な地域であるといったようなものがかりにあるといたしますと、これは今後の調査にまたなければなりませんが、そういうものにつきましては林野庁とよく御相談をいたしまして、それぞれ必要な適当なほうにこれを位置づけていくというようにやっていきたいと考えておるわけでございます。
  104. 島本虎三

    島本委員 この原生自然環境保全地域関係ですけれども、指定にあたっては知事の意見を聞いたり、行政機関の長や地方公共団体の同意を得たりしなければならない、こういうようなことになっておりますが、このために時期を失するようなことがあってはならないと思いますが、その辺の配慮はだいじょうぶですかということと、あわせて国または地方公共団体か——禁止行為これは十七条でございますね、その行為をしようとするときは、環境庁に協議することになっているが、協議がととのわなかった場合には、これはどういうようなことになるのか。それから、その地域内における私権の制限に関する規定が抜けておるわけでありますけれども、その必要は当然ないのか。三つ言いましたけれども、わかりましたか。
  105. 首尾木一

    首尾木政府委員 最後のほうが……。
  106. 島本虎三

    島本委員 この原生自然環境保全地域内で、私権の制限に関する規定、当初案の十七条がこれは抜けておりますけれども、この必要はやはりないのか。
  107. 首尾木一

    首尾木政府委員 これは原生自然環境保全地域を設けていきますためには、やはりこのことについて十分に事前に相談をいたしまして、きまった以上は、これについてそれぞれの立場に応じてこの原生自然環境保全地域を守っていくということでございますので、協力ということを前提にいたしまして協議をいたすというような考え方でもっていきたい、かように考えております。  協議のととのわない場合はどうかということでございますが、協議のととのわない場合には、そういったようなものについて、これは許可をしないものについてはできないと同様に、協議のととのわないものにつきましては、そういう行為についてはこれはできないというふうに考えられておるわけでございます。  それから、譲り渡しの禁止でございますとかあるいは私権の設定の禁止という当初の原案の条文が抜けました点でございますが、この点につきましては、これはいろいろ法律上のむずかしい問題がございますが、現在国有財産法あるいは地方自治法におきまして、公用財産についての制限規定がございますので、こういったようなものの範囲内で譲り渡しあるいはそういったような私権の設定ということは規制をされるたてまえになっておりますので、あらためてこの法律でここまで書く必要はなかろうというのが、この原案から落ちた理由でございます。
  108. 島本虎三

    島本委員 これはやはりまた林野庁さんと両方で、これは重大な問題だと私は思っていますが、いわゆるこの緑の管理体制、山の管理について現行このまま実施していくのについても、十分やれないほど手薄じゃないのかということです。だいじょうぶでしょうか。何名ぐらいの人員を擁してこれは管理させるのですか。第一線の機関、これは何名ぐらいおって、今度の自然環境保全法で認められたこの緑を保全しようとするのでありますか。この問題に対しては、やはり管理体制を強化するためには、鉄道の公安官のようないわば司法警察権を持ったような、こういうような権限を付与して、十分に活躍をさせるべきではないだろうかということが第一点です。また、この問題についても、やはりあったのですね、この要綱に。これがまたこつ然として消えているわけです。ですから、こういうふうにして見ると、どうも私は、いいところが抜けて、そうして普通のところが入っている。私権を十分に制限してもいいような個所、これがあるから緑が生きる、こう思えばその分が抜かれている。今度は、それを監視するために、少なくとも鉄道の公安官または税関の職員のようなこういうような権限を持った、あるいはまた労働基準監督署員のような権限を持った、こういうような配慮も必要じゃないかと思っておったのですが、これが抜けている。これはどういうことなんですか。前の「環境庁長官または都道府県知事は、所部の職員の中から自然保護取締員を命じ自然環境保護に関する事務をつかさどらせる。」まことにいいではありませんか。これが削られた理由はどこにあるのですか。
  109. 大石武一

    大石国務大臣 われわれは日本自然環境保全しようと一生懸命努力いたしまして、皆さまの御協力を得てこのような法律案もつくっているわけでございます。しかし、かりに役所がどのように努力いたしましても、役所だけの認識と力だけでは日本の自然は守れないと思います。ほかの行政も同じことでございますが、そう思います。やはり国民全体が自然を守るという心がまえを持って、そのような愛情を持って協力してくれること、努力してくれることが一番大事だと考えます。そういう意味で、私どもは、やはりいろいろと問題がありますけれども、同じ行政官庁の中におきまして、できるだけほかの他の役所とも十分な理解と協調を保ちまして、その協力のもとに守ることが大事だと考える次第でございます。  たとえば、いまのいろいろの取り締まりとか見張りとか管理する者、そういう取締官につきましては、私は初め一つの警察的な権限を持たせることが妥当だと考えました。いまでもそのようなことは私はやはりあったほうがいいと思います。ただ、御承知のように、このようにいまこの自然環境保全法律案によりまして、われわれの守備範囲が広がってまいりますが、それに対する管理体制は必ずしも十分ではない。いままでさえも不十分です。多少今度ことしの予算では、管理事務所が二カ所ふえまして八カ所になり、五十何人の管理員がさらに六十何人になりましたけれども、これではまだまだ実際には何分の一の人員にも当たらない。ですから、できるだけ近い将来にふやしてまいりたいと思いますが、なかなか予算の関係もありまして、われわれの希望するとおりにはなりません。そういう意味で、警察庁の話では、わずか五十人や六十人でやってもとても回り切れないだろう。たとえば警察権を持たして、いろいろな書類をつくる。何か事務官はそれに忙殺されて管理的な仕事もできなくなるだろう。ですから、むしろもし環境庁のそのような自然を守る決意があるならば、警察庁としても全面的にできるだけ協力してやってやるということでございますから、いまのところはとてもそれはわずかな人間でどうにもなりませんから、むしろこのような全面的な警察庁の応援、協力を得たほうがやりやすいと考えまして、このような方向に変えてきたわけでございます。
  110. 島本虎三

    島本委員 私は、警察の協力を得ることは、その考えにおいて否定いたしませんが、その前に、林野庁の職員の協力によらなくては、盗伐や山荒らしに対しては焼け石に水だということ、いまも現に二万も三万もいる職員の人、それと同時に、環境庁の、所管が変わるけれども国立公園の取締員もいる。ふやしたって、たった六人か九人ですか、そればかりでは、日本国じゅうの緑を守るためにはどうしようもありません。やはり林野庁の協力と相互の意思の疎通を十分にした上でないと、これは今後緑の保全に対する管理体制は完ぺきを期せられないと思うのです。警察に頼むのもけっこうです。しかし、山の中で四、五人盗伐していた、それを発見した、こっちが二人ぐらい、向こうが集団であったら、警察に行くのにてくてくやっていく間にみんな逃げられてしまうじゃないですか。やはりそういう点を考えて、もう少し権限を与えると同時に、都道府県の職員、それから林野庁の職員、これと環境庁の職員それぞれ協力し合ってやれるような体制にしないとだめだ。そのためには、まことにいい取締官の設置、辞令一枚でできることである。どうも私はいいような気がしていたのですが、この点も抜けてしまった。どうもこの点は私はまことに残念だと思っております。これは非常にいいと理解していたのに残念だと私は思います。  それと、林野庁によるところの保安林の伐採については、事前に計画として認められておる場合には、そのルールに従って進められるのであれば、環境庁長官の許可は要っても要らなくても、これはもう環境破壊の免罪符になってしまう、こういうおそれがないかどうか心配ですが、この点については長官はどのように考えますか、両方の長官に所信をお願いしたい。
  111. 田中武夫

    田中委員長 重ねて一ぺんに質問してしまってください。
  112. 島本虎三

    島本委員 では、いまのやつを一つだけやって、あとは全部まとめてやります。
  113. 首尾木一

    首尾木政府委員 仰せのように、木竹の伐採につきましては、自然環境保全地域では、事前に保全計画に基づきまして環境庁長官が農林大臣と協議をいたしまして定めた伐採の方法及び限度内における伐採については許可を要しないで行なうことができるというような調整をいたしたわけでございます。これは、林業が非常に長い間投資をいたしまして、いざ切るという段階において許可を受けられないというようなことがあります際には、林業経営そのものが金融的な面におきましても行き詰まってくるというような配慮から、特に事前にその伐採の限度というものを明らかにできるようにという配慮でそれを行なったわけでありますが、その際に農林大臣と協議をいたしまして、経営ができる限度というものと自然環境保全というものとの調整を十分にはかりまして、それぞれの地域ごとにきめこまかく伐採の方法あるいは限度というものをきめていこうというふうに考えておりますので、私どもはその協議にあたりまして自然環境保全という立場から十分にそれが守られるような線を主張をしてまいりたい、かように考えておるわけでございまして、基本的には林野庁におきましても、今後森林法の改正によりまして地域森林計画の策定につきましては自然環境保全ということを考えて、その伐採の限度、方法等についての計画を立てられる、その計画を法的にこれを単なる最終的な勧告ではなくして、規制命令あるいは罰則にまでかけてこれを守っていくということでございますので、こういう体系の中でこの自然環境保全地域につきましては木竹の伐採に関する問題というのは非常に前進をするというふうに考えておるわけでございます。
  114. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま環境庁首尾木局長が言われましたが、全く同じことでございます。よく連絡をとりまして万全を期してまいりたいと思っております。
  115. 田中武夫

    田中委員長 島本君、あまり言いたくないんだけれども、もうだいぶん時間の予定も済んでおるから、まとめてやってください。
  116. 島本虎三

    島本委員 これは大事な問題ですけれども、まとめて言うから一つ一つ答弁してください。  三十二条の「公害等調整委員会の裁定」というのがあります。これはどうなんですか。「公害等調整委員会に裁定を申請することができる。」言っても言わなくても、こんなことは裁定できるんですけれども、これをすれば、これ以外ではだめだということになれば、司法裁判に移行したりすることはできないということなんですか。できるならばなぜ書かないんですか。これを書いたということは、これは特に「公害等調整委員会に裁定を申請することができる。」に重大な意味があるのだったら、それを解明してもらいたい。書かないものに対してはどうなのか、司法裁判は受け付けないのかどうか。それ以外の調整機関に対してはこれはどうなのか。せっかくこう書いてありますから、書いたことの意味をはっきりさしてもらいたい。それが一点ですよ。三十二条。  それから附則の二条の都市の環境の緑の問題勝負がつけられないままに、白紙のままで今後の問題にゆだねられた。長官、これは私は姿勢の一歩後退である、こういうふうに思っているわけですが、長官の場合はこれは別に後退ではないようないままでの答弁ですけれども、そうだったならば一本化してこれは十分に所期の目的、成果を求めるのがやはり行政態度です。これに対しては姿勢の一歩後退でないかということ、これが二番目。  三番目、これは土地の買い上げの制度化ができなかった。買い上げ対策の充実に対しては制度化すべきじゃなかったのかどうか、これが制度化に対してはどういうふうなことになっておりますか、この点をひとつはっきりとさせてもらいたいということであります。  それと林野庁です。いままでの林道のつけ方のでたらめなことはよくわかりましたが、国としてやる以上、建設省のほうに、林道その他こういうようなものはきちっとしてやって、環境保全に沿うような道路をつけさせるのがいいのじゃないのかと思いますが、いままでと同じような方法を踏襲していきなさるのかどうか、この点について建設省の吉兼都市局長からこれはお伺いしたい、こういうように思うわけであります。  以上まとめて言いましたけれども、一つ一つ……。
  117. 首尾木一

    首尾木政府委員 まず公害等調整委員会の裁定の規定でございますが、二十五条第四項と申しますのは、許可、認可に関する規定、二十七条、二十八条もそういうものでございます。その「処分に不服がある者」でございますから、たとえば不許可になったというような際の不服の申し立てにつきまして、公害等調整委員会の裁定の規定を設けたものでございます。これと不服申し立てとの関係でございますが、この場合には行政不服審査法による不服申し立てをすることができないというのがその解釈でございます。  それから第二点は附則の第二条の問題でございますが、すでに長官からお話がございましたように、都市の自然環境保全ということにつきましては、都市計画の種々の関係も考えながら一体的にこれを行なうことが必要でありますので、そういったような点でより自然環境保全について必要な各種の手段といいますか、そういうものを考えていかなければならない、きめこまかな手段というものを考えていかなければならないということでございまして、すでにことしの四月に中央都市計画審議会におきまして答申が出ておりまして、その新しい法律の立案につきましての答申が出ておりまして、それをもとにいたしまして今後検討をするということでございます。この点につきましては、私ども建設省それから環境庁ともどもにこの問題につきましては検討いたしまして、次の一年後の国会にこれを提出いたしたいというような考え方でおるわけでございます。  第三点の土地買い上げの制度化の問題でございますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、予算におきまして四十七年度から国立公園の枢要な地域につきましての都道府県の公債交付による買い上げというような新しい措置ができましたか、この問題につきましては、さらに適地の調査でありますとかこの買い上げ制度化の問題につきまして、どの程度のものを範囲とするかといったようなこと、その買い上げの主体をどこでやるかといったような問題につきましてなお検討の要ありということで、一年間これについてはさらに検討をするということで、今年度の予算の決定のときに、そういう意味のことで今回の予算をつけたわけでございます。その問題につきましては、したがいまして予算上調査費が組まれておりまして、これに基づいて、この制度化を含めまして買い上げの問題については検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。しかし、土地買い上げ制度につきましては、どうしても買い上げる必要のある地域についてはこれを制度化していくことが必要でございますが、また環境保全というのは、先ほど先生もお話しになりましたように、ある意味において私権を制限していくといったようなことでございますので、何でもかんでもみな買い上げるというようなことにつきましては、これはいろいろ問題もあろうかと思われるわけでございます。そういったような点も含めまして、土地の買い上げ制度をどの範囲で、どういうふうな形でもっていくのが最も適当かというようなことについては、さらに検討をする必要があるということで、今回の法律にはその制度化を見送ったものでございます。
  118. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 林道につきましては、従来のような、経費をできるだけ安くして延長をかせぐということは、御指摘のように、自然破壊につながるわけでございます。そういうような点を改めまして、今後は森林の造成、これは当然自然保護という考え方に返るわけでございまして、規格もしっかりした林道をつくっていくようにしたいと考えるわけでございます。この林道につきましては、ただいまの財務制度では単年度の収支ということになっておりまして、同年度の収入でまかなっていくというのが一つの問題点でございます。これにつきましては、治山治水緊急措置法に基づきまして、治山事業は五年間の計画を立てまして、予算もきちっときめているわけでございます。したがいまして、林道というものはやり林業生産の基盤をなすものでございますから、林道法というようなものを制定して、これはやはり治山事業と同じような予算措置を講ずべきではないかというような御意見も非常にあるわけでございます。  これらの問題を含めまして、財務制度一般の問題の中で、林道につきましても、ただいまの林政審議会で検討されているところではございますが、今後は自然保護に十分配慮した林道ということで、その施行につきましては林野庁が責任をもって実施してまいりたい、かように考えております。
  119. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 林道についてのお尋ねでございますが、林道は道路法の道路じゃございませんので、建設省の所管でございません。したがいまして、いまの林野庁長官のお答えのとおりで、林野庁の責任において林道というものが整備されるということでございますが、将来林道がまた道路法の道路に編入されるというようなこと等もございますので、その構造等につきましては、これは直接、私のほうは道路局の所管でございますが、両者において十分調整をとって今日までやってまいっておると私は伺っておりますが、そういう点につきましては、私のほうからまた道路局のほうに十分お伝えを申し上げておきたいと思います。
  120. 島本虎三

    島本委員 まだまだ意を尽くせない点がたくさんあるわけでございますが、すぐ阿部君があとを継ぎますから、それにすべてをゆだねて、十分意を尽くすまで質問し、検討してもらいたい、こう思います。残念ながら、いままでの質疑の中では、自分自身の見当は、わりあいに慎重であるというようなほうになっているような傾きは否定することはできません。今後の皆さんの回答の努力を心から期待して、私の質問をこれで終わります。
  121. 田中武夫

    田中委員長 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後一時五十四分開議
  122. 田中武夫

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部未喜男君。
  123. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 まず長官にお伺いしたいのですけれども、この法案審議を求むる政府姿勢に問題があるのではないかという気がいたします。自然環境保全法要綱につきましては、かねてわれわれも検討を加えたところですけれども、いま成案を得た自然環境保全法は、実はこの委員会の部屋に入ってやっといただいたわけでございます。直ちにこれを審議せよと言われましても、前の要綱に比べてずいぶん変わっておるところがあるようでございます。いまこの場でこれを審議しようとすることは、私はこれは物理的に困難な問題だと思うのですけれども、こういう提案のしかた、取り扱いについて、長官はどうお考えでございましょうか。
  124. 大石武一

    大石国務大臣 この自然環境保全法案は、私どもが環境庁をつくりまして以来、初めから一番大事な法案考えまして、日本自然環境保護するための基本的な姿勢を示すという考えでこれを予定してまいりました。これは初めから今日まで約十一カ月余りにわたりまして、自然保護中心となりまして、ほんとに、言ってみれば、心血を注ぐような思いで努力してまいったわけでございます。この成案は一月末にできました。それが大体以前にお手元に差し上げましたあの要綱でございます。ただし、御承知のように、これを政府提案といたしますには、各省との完全な了解、理解がなければできないわけでございます。そういうことで各省庁との折衝に入ったわけでございますが、いろいろと困難な事情が一ぱいございまして、たとえば林野庁との調整は四カ月かかりましてもこのとおりでございます。ですから、われわれは、予定の三月十七日を過ぎましてもこの成案を得ることができず、あらゆる努力を重ね、何回かやめようと思いましたけれども、これを途中でやめたのでは国民に申しわけないということで考え直しまして努力をしまして、ようやく六月に入りまして初めて法制局でその内容ができ上がったわけでございます。そんなわけで、延長国会に入りましてからこんなことを提案するというのは、いままでの歴史にほとんどない、まことに申しわけない次第でございますけれども、決してわれわれがなまけておったのではなくて、あらゆる努力を重ねた結果今日に至ったのでございます。  それで、実は私は五月三十一日からストックホルムの会議に参りまして、十六日まではおらなければならなかったわけでございます。ところが、この法案の問題もございまして、どうしても帰れという政府の命令でございますので、私は二日目の演説を終わりまして、直ちに三日目にこちらに戻ってまいりました次第でございまして、まことにおっしゃるとおり、法案の出し方、並びに審議期間が少ないこと、これはまことに申しわけないことでございますが、そういう事情で、懸命の努力をして今日に至ったわけでございますので、その点御考慮を賜わればありがたいものだと思う次第でございます。
  125. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官が非常に意欲的に自然環境保全法案に取り組んでこられたことは了解ができます。しかし、私が申し上げましたように、物理的に非常に困難で、いまここで法案を渡されて直ちに審議せよということは、私は、率直に言って、酷だと思います。しかもその裏に、私は、いみじくも長官からも申されましたように、政府全体として公害対策なり、この自然環境保全に取り組む姿勢は一体どうなのだろうかという気がいたします。  たとえば、この自然環境保全法にしましても、森林法の一部改正と並んで一つの体をなすものである。さらに欲を言うならば、もう一つ加えて、この附則の二条にありますところの都市環境の問題が加わってほんとう自然環境保全法律だということができると思います。しかし、仄聞するところでは、森林法の成立につきましてもこの国会では困難ではないかといわれております。まして、都市環境の問題については、附則の二条で、先ほどの説明では、来年の国会に提案をしたい、こういう様子のようでございますから、そうなりますと、環境庁長官努力とは違って、政府全体のこの問題に取り組む姿勢については私は大きい疑問を持つのでございますけれども、その点についての長官のお考えを承りたいのです。
  126. 大石武一

    大石国務大臣 政府部内におきましては、各官庁ではいろいろなそれぞれの考え方があると思います。それから、しきたりもあると思います。また、なわ張り主義もあると思います。そういうことでいろいろな困難な問題がございますが、とにかくこのような案がまとまりまして、政府提案として出ている点から考えましても、政府が別にこれに情熱と申しますか、それがないとは決して申されません、私はこう考えております。少なくとも、環境庁という役所はこれに対しては心血を注いで努力をいたしているのでございます。森林法の改正にもしましても、これは非常に無理な話でございますけれども、幸いに農林省でも、森林法を同時に改正して、この環境保全法に対して協力しようということになりまして、これまたすでに国会に提出してございます。そういうことで、これもぜひ通過できるものと考えておるわけでございます。ただ、建設省との都市緑化につきましては、これは残念ながら——基本的な考えは同じでございました。基本的な考えは同じである、お互いに協力しようという意欲も同じでございましたけれども、ただ、いろいろなほかの省庁との折衝、交渉の段階になりまして、十分に建設省と詰める時間的な余裕がございませんでした。そこで、中途はんぱなものをつくるよりはお互いに十分話し合いまして、同じような思想を持っておりますから、次の国会でりっぱなものをつくって補完しようという合意になりまして、このような、必ずつくるという法律の一条を入れまして、お茶を濁すような形になったわけでございますけれども、熱意がないわけではないということを御認識願いたいと思うわけでございます。
  127. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 くどくは申しませんが、先ほどのお話でも、環境庁としてはことしの一月から自然環境法案に取り組んで努力をされてきております。その中においては当然、森林関係よりもむしろ都市環境のほうが優先をして考えられなければならない問題だったと私は思うのです。にもかかわらず、これが一年見送られた。そこに、幾ら長官政府の責任者の一人として強弁をされてみましても、われわれが受ける感じとしては、どうもまとまった政府姿勢としては熱意に欠けるものがある、こう言わざるを得ないが、これは水かけ論になりますから、ただ、私どもそういう感じを受けておるということについて、長官に十分留意をしていただきたいと思います。  次に、この法案の第一点についてお伺いしたいと思うのですけれども、第十二条で、自然環境保全基本方針をつくるということになっております。私は、この自然環境保全基本方針のほうが先につくられて、しかる後にそれぞれの法案が出てくるのが本筋ではないかという気がいたしますが、この点はどうでしょうか。
  128. 大石武一

    大石国務大臣 普通の場合ならば、いわゆる基本法的なものが先行いたしまして、その方針なり、ものの考え方基本的な考え方を打ち出すのが当然でございます。ただ、われわれもそのようなことは考えておりましたけれども、御承知のように、現在の自然破壊状態は目に余るものがございます。一日でも一時間でもぬるがせにできないような感じがするわけでございます。そこで、もちろん、将来の大きな見通しを立てた基本的な構想は絶対必要でございますけれども、とりあえず、どんな小さなものでも、少しでもいいからいまの日本の自然の環境を守りたいというのが、いまわれわれの本心でございます。そういうところで、この二つ突き合わせまして、基本的な方針も入れながら、とにかく一時間でも一分でも早くこの自然を多少でも守る土台をつくりたいということで、このような形になったわけでございまして、阿部委員の御趣旨はよくわかるのでございますけれども、いまの日本のせっぱ詰まった自然破壊現状から、このような形になったものと御理解を願いたいと思います。
  129. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 実は、私は、そこにも政府全体の自然環境保全に取り組む姿勢の一端がうかがわれると思うのですけれども、ほんとう政府全体に熱意があるのならば、まず先にこの基本方針を明確にして、そしてこの法案提案をされる、そういう筋道になるべきであったと思うのです。その点は長官も同じ意見のようですが、しかし、現実は逆に、この自然環境保全法の中で基本方針をつくるということをうたわなければならないという、さか立ちをしたかっこうになっておると申し上げても、私は言い過ぎではないという気がいたします。そういういわゆる政府全体の公害なり自然環境保全に取り組む姿勢と、そしていま現実に環境庁として担当されておる大臣との間には、私は何か食い違いが感じられてならないのです。  それに関連をして二、三お伺いをしたいのですけれども、ごらんになったと思いますが、六月十一日の毎日新聞に、「大石長官に「待った」」「問題の外務省至急電」「次の環境会議招致の言明こうして消えた…」「“公害国”印象恐れる」「基金10%も出せば十分」として、横のほうに、外務省の出した極秘至急の訓電が掲載をされておりますが、こういう事実があったのかどうか、お伺いしたいのです。
  130. 大石武一

    大石国務大臣 それは政府部内の問題でございますから、私はあまり内部のことを申し上げるわけにはまいりませんが、大体毎日新聞に出ております——きのうかおとといあたりと思うのでございますが、大体そのとおり御理解いただいてけっこうでございます。
  131. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官はいま、政府部内の問題ですから、あまり申し上げにくいとおっしゃいましたけれども、新聞によりますと、この訓電は六月五日に発せられておりますが、六月六日に長官はストックホルムの日本大使公邸で記者会見をされて、訓電の内容について長官のお考えを発表されたような経緯はございませんか。
  132. 大石武一

    大石国務大臣 六月いつでございましょうか。
  133. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 六月六日となっております。
  134. 大石武一

    大石国務大臣 六月六日は、私が向こうで一般演説を終えまして、そして夜は、報道関係を御招待いたしまして、一緒にめしを食べておったのでございますが、その節そのような話はいたしたと考えております。
  135. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 新聞記者会見で発表のできる内容が、この国会の委員会でお話しが願えないものでございますか。
  136. 大石武一

    大石国務大臣 それはできます。ただし、新聞に出ておりますようなこまかいことは申しておりません。それは訓電ですか、電報の内容、そういうことは一切申しておりませんので、この新聞記者の会見で話しました内容なら幾らでもこちらでお話しできるわけでございますが、その新聞に出ておりますのはそれ以上の内容があるようでございますので、そのことについては、これは秘密電報でございますので、あまり申し上げることは差し控えたいと思います。
  137. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 おそらく、秘密電報ですから、いろいろと問題のあるところと思うのですけれども、それでは、一体、六月六日のこのストックホルムの日本大使公邸での記者会見で、長官はどういうことをお話しになったのでございますか。
  138. 大石武一

    大石国務大臣 こまかいことは忘れましたけれども、ただ、要するに、問題は、私の演説の一番終わりに、第二回目のこの種の会合が——国連人間環境会議でございますが、この種の会合が必要になってくるのではなかろうか、そのような各国の理解が高まり、そのような方向に進んできた場合には、次の会議の開催についてはわが国は全面的な協力を惜むものではないという内容に私変えましたのですが、その前の内容は、このような必要が高まってきて第二回目の会議が開かれる場合には、わが国はホスト国になることはやぶさかでない、受け入れ体制があるという内容だったわけでございます。それを、いけない、変えろというようなことで、そのような内容に変えた、そのようなことを申し上げたわけでございます。
  139. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官、帰ってきたら、だいぶ遠慮してものを申されておるようですけれども、それでは、この新聞に出ておる記事が、私ちょっと読んでみますから、内容に違いがあるかどうか、お答えを願いたいと思います。  まず、この見出しは、「大石長官“霞が関外交”を批判」「意思の疎通欠く」「“環境会議招致”などで」ということで、「外務省の次官、局長をはじめとする首脳部は国際間の情勢を十分掌握するようにすべきだ。今のように現実の国際意識のない事務的な外交では、日本の外交は立ち遅れるばかりだ」と述べた。」とあり、そして、   大石長官の発言要旨次の通り。   一、カナダが第二回環境会議の招致を表明したのは結構なことだ。日本で開きたいと私は思っていたが日本政府からの訓電がきてやめろといってきた。出発前福田外務、水田大蔵両相と第二回会議の招致について話がついていたのに、このような訓電がきたのは言語道断だ。大蔵大臣がこれほど気にするとはこっけいなことと思う。しかし演説の表現は日本が開く可能性を残している。   一、本国と出先との連絡がきわめて大切なことが当地へきてわかった。本国からの訓電を受けるのではなく逆に本国へ訓電を打つべきだ。外務省次官、局長は大使経験者を当てるべきだが、みんないい加減であきれかえった。外国のことがわかり、国際間の情勢がわかる人が大臣の決裁をとって訓電を出すならかまわないが、そうでないと、えらいことになる。   一、滞在期間があと一週間か十日あれば中国と接触する機会もあったと思うが……。政府や国会の都合で帰国しなければならないのは残念だ。  これが長官の発言要旨ということになっておりますが、この内容に食い違いがありますか、ありませんか。
  140. 大石武一

    大石国務大臣 ことばづかいや何かには多少の違いはあるかもしれませんけれども、内容にはそうたいした——大体それに近いようなことを考えておったと思います。
  141. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうしますと、それに間違いがなければ、長官が御出発になる前に、外務大臣あるいは大蔵大臣と打ち合わせをされて、第二回の会議はできれば日本に招致をしたいという趣旨の演説をさるる、そういう御予定になっておったことになるのでございますが、これは間違いございませんか。
  142. 大石武一

    大石国務大臣 出発の前の日、閣議の前でありますが、私は外務大臣、大蔵大臣と御相談いたしました。環境基金の日本の出資、負担の割合ですね、それを最初に相談いたしまして、いろいろと大蔵大臣と折衝いたしまして、これはある方針をきめました。その次に、二回目の招集をどうしたらいいかを相談しましたところが、無理無理日本に招致する必要はない、そのような主張はしないほうがいいという外務大臣のお話で、私もそのとおりである、無理無理引っぱるような演説はしませんというお話はしました。そのかわり、いまの話で、ホスト国となる用意はある、この程度でよろしゅうございますかと話しましたら、それならよかろうということでございました。それに対しては大蔵大臣も反対されませんでした。私はそのような方針で行ったわけでございます。ところが、一片の電信が参りまして、そうして招致の話は一切するなという話でございました。私は、大臣同士話したのだから、そんな心配はない、おそらくはだれかがいいかげんなことで訓電をよこしたのだと思ったのです。ですから、そのようなやり方はいかぬと言ったけれども、現地の者があらゆる努力をして、本国において各省折衝して、ちゃんと方針をきめて現地へ出向いておるのだから、現地へ出向いておる現地の者の意見を当然聞くべきだ、それが一番正しい行き方だ。それを単なる下っぱの者が——下っぱと言ったら失礼ですが、あれがただ簡単な判断でそのような訓電をよこしたことははなはだ不当である、妥当でない、そういうことで意見を述べたのです。ですから、当然、現地であらゆる努力、苦労をしているのだから、よく現地の報告を聞いて、それから大臣なり、あるいは局長なり次官なりの、十分に国際的な見識のある大使なんかを経験した人の意見を判断して訓電をよこすべきであって、下っぱのわずか一部の、国際情勢のよくわからない者の判断によってこのような訓電をよこすべきでない、私はそう判断したのです。大臣がそういう訓電をよこしたとは思いませんから、約束して行ったのですから……。ですから、そのような一部の者がかってな判断をしてはけしからぬ、そういうことをすべきではない、正しい交渉なら、大局のわかる者が判断して訓電を出すべきであるという話をしただけでございます。
  143. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官の真意はわかりましたが、しかし、私は、この訓電は、日本が国際的に日本の公害対策なり環境保全について示す態度として非常に重要な内容を持っておると思うのですが、先ほど長官は、機密の問題だからとおっしゃいましたけれども、これだけ新聞に明らかになった以上、これはもう国民は知る権利として、当然、黙っておればこれをそのまま信頼しますから、事実かどうかについて明らかにしてもらわなければならないと思いますので、まず、大臣が受け取られた電文の内容はこういうものであったというふうに先ほどお話がございましたが、この中で特にわが国姿勢を示すものとして重大なものは、「第二回人間かん境会議日本開催を、この段階で表明することは、わが国がいわゆる公害先進国であるという悪いイメージをさらに印象づけることにもつながるおそれがあること、わが国のかん境問題に対する積極的なし勢は一〇%」云々、こういうふうになっておりますが、こういう内容は間違いございませんか。
  144. 大石武一

    大石国務大臣 これは実際私にあててきた電報ではございません。ですから、私は、その内容について、それが妥当であるかどうか申し上げるわけにはまいりませんので、ひとつごかんべん願います。
  145. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ただ、長官に明らかにしてもらいたいのは、少なくとも出発前に外務、大蔵の各相と話し合いをされて出ていかれたときから考えれば、この訓電を受けて、やはり若干の制約を受けたということは間違いないわけでございますか。
  146. 大石武一

    大石国務大臣 私も制約を受けたと感じました。
  147. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 外務省、見えてますか。
  148. 田中武夫

    田中委員長 見えてます。
  149. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 外務省のほうにお伺いしますけれども、この毎日新聞に明らかにされておる極秘、至急の国連かん境会議あての訓電は、毎日新聞に報道されたとおりに間違いがないのかどうか、お伺いします。
  150. 影井梅夫

    ○影井政府委員 毎日新聞に掲載されております電文は、ほとんど正確ということでございます。ほとんど正確と申し上げました理由は、こまかいことでございますが、たとえばその秘密の指定が、新聞ではたしか極秘になっていたと思いますが、これは秘でございます。それから、これもこまかいことでございますが、至急電という指定になっておりますが、これは大至急ということで打っております。  それからもう一つ、電報の件名でございますが、「国連かん境会議大石長官演説)」、新聞にはそうなっておりますが、これは、私ども今回の会議国連人間環境会議と呼んでおりますので、その人間が抜けているということでございます。それから本文の中に入りまして、ただいまお読みになりました日本のイメージ云々のところに、一カ所、国際的にということばを私どもは入れておりましたが、それが入っておりません。それを除きましてはそのとおりでございます。
  151. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうしますと、環境庁長官が出発をさるる前には、外務大臣とも打ち合わせをされて、第二回の会議日本に招致をするということについておおむねの了解があったということになっておるのですが、それが長官が現地に着かれた後にこういうふうに急遽変更になった経緯はどういうわけですか。
  152. 影井梅夫

    ○影井政府委員 申し上げるまでもなく、私ども事務当局といたしまして、日本立場というものを正確に現地の首席代表にお伝えする任務がある、そういう意味におきまして、事務当局といたしまして政府立場というものをもう一回再確認するという意味で、これは事務当局限りではございませんので、日本政府立場というものをもう一回再確認いたしまして現地にこの電信を打った、こういう次第でございます。
  153. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 日本の政治が官僚政治であると呼ばれるゆえんを私はそこにまざまざと見せつけられた気がするのです。すでにそれぞれの責任ある大臣の間で話し合いがついて行かれておるものを、何で事務官僚がもう一ぺん確認をして、わざわざこういう訓電を発するような手続を踏まなければならないのか、大臣同士の話し合いというものはそれほど権威のないものなのか、環境庁長官はこれをどうお考えですか。
  154. 大石武一

    大石国務大臣 私は、大臣であるからとか大臣でないからとか別にしまして、とにかく、その話の内容は、いわゆる公の席であるからとか公でないからとかは別として、やはり約束したものは約束だと私は思います。そういう意味で、私は別に大臣だから大臣でないからといって違いありませんが、約束したものは約束だと考えております。
  155. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それにもかかわらず、長官はやはり制約を受けた。そうなりますと、大臣と約束したことと、あとから来たこの訓電との関連についてどういうふうに判断をされたわけですか。こういう訓電が来ても、長官おっしゃるように、すでにちゃんと約束して出ていっておるのですから、何もそこで遠慮をさるる必要はなかったのじゃないか、そんな気がするのですけれども……。
  156. 大石武一

    大石国務大臣 おっしゃるとおり、私も非常に奇異な感じがしたのです。そこで、一体だれがこういう電報を打ってよこしたのだろう、大臣が打ってよこすはずはないと私は考えました。約束して行ったのですから……。もちろん閣議の席で約束したわけではありません。雑談といえば雑談かもしれませんが、約束したのでありますから、そういう方針で行ったのでありますから、私は大臣が打ってよこしたとは思いませんでした。ですから、あまり重要でない立場の者がいいかげんな考で簡単に打ってよこしたのだろうということで、私はそういう発言になったのです。もっと慎重に考えて、現地の者を尊重した責任のある訓電を打たなければならぬ、私はそのときはそう考えたのでございます。
  157. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうなるといよいよおかしくなってきますが、外務省のほうは、それでは特に大臣から命ぜられてこういう検討を加えたのか。事務段階でこういう検討を加えて、大臣に進言をしたのか。これは最終的な責任は大臣が持たなければならぬでしょうけれども、その間の経緯、その訓電を発するに至った経緯をもう少し詳細に述べてもらいたい。
  158. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは事務当局が発動いたしましてそしてこういう電信を打ったということではございません。
  159. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう少し詳細に、それはどういう経緯でこうなったのか。大臣は長官と約束をされておったのにこういう訓電を打ったということは、少なくとも前の考えを変えられたわけでしょう。変えるに至った経緯が、大臣の発想によるものか、事務当局の進言によるものか、その間の経緯をお伺いしたいのです。
  160. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御承知のとおりに、本件環境会議に関しまして日本の国内で関係する省庁はかなりあるわけでございますが、そのうちの一省から、その大臣の御注意というものに基づいて私のほうに連絡がございました。その連絡に基づきまして種々事務的に協議を重ねて、最後に大臣の御決裁を得て発令した、こういう次第でございます。
  161. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 国連局長に申し上げますが、ここは国会ですから、歯にきぬを着せぬでずばっとあったまま答弁をしてもらいたいんです。そうでないと、あなた方の秘の電報がここに出てきておるのも問題になりますよ。先般の沖繩国会のときにも、外務省の言い方は、常に議員をだまそうだまそうとしてかかっておるんですけれども、いまの、ある省からというのは、どこの省からだれがどう言ってきたんですか。はっきりしてください。
  162. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは、ただいま申し上げましたように、事務当局から発動いたしましてそうしてこういう電報を出したのではない。さらに、ただいま先生御質問の、具体的にどこの省の大臣からどういう経路という御質問でございますが、これはひとつ私どもの立場をお考えいただきまして御了承願いたい、こう考える次第でございます。
  163. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は、冒頭から申し上げておりますように、日本政府全体として公害の対策なり環境保全に取り組む姿勢に疑問があることを申し上げておるのです。したがって、閣僚の中で関係をする環境庁なり、大蔵省なり、外務省なりで話し合いがついておったものが、それ以外か、その中か知りませんけれども、ある特定の大臣の指示によって変更が加えられたとするならば、これはきわめて重大な問題ですから、この国会の中で明らかにしてもらわなければなりません。はっきり答えてください。
  164. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  165. 田中武夫

    田中委員長 速記を始めてください。  影井局長
  166. 影井梅夫

    ○影井政府委員 まことに申しわけない次第でございますが、先ほど申し上げました私の立場、これをひとつ御了承願いたいとお願いする次第でございます。
  167. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は局長立場が理解できぬわけではございません。しかし、関係のお役人の皆さんが御存知の内容が、国会議員に知らされないといういまの日本の国政について、私は非常に不満であります。この点について長官はどうお考えか。政府の責任者の一人として長官からお伺いしたいのです。
  168. 大石武一

    大石国務大臣 考えてみれば、結果的には実はあまりたいしたことはなかったのです。あの演説をしましても、私はやはり日本に招致したいという気持ちはありましたけれども、そのような訓令で、一応あらゆる協力を惜しまない旨の心がまえであるということを申し述べましたが、向こうの現地では、英語に翻訳する場合に、協力はサポートですが、サポート・アンド・コオペレーションと二つ書いてくれたのです。私の気持ちを察してそのようにしてくれまして、仲をうまく取り次いでくれたわけでありますから、私自身は、演説の内容は多少弱い、招致からは弱まりましたけれども、必ずしも日本日本の国で開催することに協力しないということではございません。ことに、次の二回目の会議を開くか開かないかということは今度きまりませんで、しかも、そういうことがきまったあとでも、どこでやるかということとは、もうおそらく来年、一年ぐらいあとになると思いますので、私は政府部内の了解を求めまして、さらに今後開くような努力をいたしたいと思っております。そういうことでそのような話し合いをしました結果、みんなでこう直しましょう、サポート・アンド・コオペレーションということで心がまえの意気を示してやりましょう、こういうことで実は話がついたのです。ただ、急に話を変えられたということで多少私は感情的になった、憤りを覚えたこともありますが、済んだことですし、まあそうたいした問題でもなかったんです。ですから、この際は、あんまり役所同士のけんかの話になりますと、あとでまたどこかの役所からかたきをとられたら行政上困ることもございますので、その点ひとつ御了承いただきたいと思います。これは局長連中が悪いんではありませんから、どうかひとつ役人の立場考えられて、その点穏やかに御了承賜わるようお願いいたします。
  169. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官、そうおっしゃいますが、長官がおっしゃった中にもそういうような意味のことが出ていましたよ。次官、局長をはじめとする首脳部はと、こうばちゃんと出ていまして、どうも私はそこら辺に何かあるような気がしてならないのです。長官のおことばの中にもちゃんと、新聞記者の発表の中に、次官、局長クラスがどうもよくないというようなことばが出ておるようでございますが、そこまでおっしゃるならば、私は率直に申し上げて、事務当局が知っておる内容が、国会議員であるわれわれにも知らされない、しかもそれが、日本の公害なり環境保全に取り組む基本的な姿勢の問題として論議をされておる中で、なお秘匿されなければならないといういまの政治のあり方については不満でございます。その点だけを明らかに申し上げておきます。  それからもう一つ、外務省のほうにお伺いしますけれども、十一日の毎日新聞にはこういう記事が載っておるわけですが、翌十二日の朝日新聞には、三ページにこういうのが載っておるのです。「外務省の幹部は嘆いた。」というのですがね。「われわれは国連人間環境会議のストロング事務局長に二回もしてやられた」ということで、その内容一つは、国連人間環境会議の二へん目を日本で開くはずであったのを、ストロング事務局長にだまされてやりそこなった。二つ目は鯨の問題です。鯨の問題もあとでやりますが、そうしますと、この朝日新聞の十二日の記事に限らず、外務省のある幹部は、第二回会議日本に招致する気持ちがあったんだけれども、ストロング事務局長にしてやられて日本の招致が困難になったんだというふうな言いわけをしている。しかし、十一日の毎日新聞に発表された訓電の内容は、早く言えば、日本に持ってきちゃ困るという意味ですよ。イメージダウンになるじゃないか、困るじゃないかというのがこの訓電の内容です。明らかに、第二回会議日本で開催することを、拒否ではないが、期待していなかったのにもかかわらず、十二日の朝日新聞では、外務省の幹部が、期待しておったけれども、ストロング事務局長にしてやられたというような言い方をしておるのですが、大体外務省の感覚はどっちがほんとうですか。
  170. 影井梅夫

    ○影井政府委員 私、その朝日新聞の記事は、実はうっかりして見落としておりました。それから、いま拝聴いたしました記事の内容、どの幹部からどういうふうに話をされたのか、これは私全く知らないというのが、正直なところでございます。
  171. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それではこれはあとでよく読んでおいてください。しかし、少なくとも日本の大新聞が、外務省の幹部ということをはっきり名ざしで、しかもこれだけ詳細に内容を書く以上、だれかの話を聞かずにかってにでっち上げて記事を書いたとは国民は思いませんよ。やはり外務省のだれかが話したものだということは、みんなそう考えますから、そうすると、外務省の考え方は、片方では、日本に第二回の会議を招請したくないということを訓電を打っておきながら、片方では、あたかも、そういうことではなくて、ストロング事務局長にだまされたというようなことを印象づけようとしておる。国民を欺瞞しようとする外交以外の何ものでもないのです。これは特に注意しておきたいと思います。  もう一つ外務省にお伺いしておきたいのでありますが、この前外務省の持っておる極秘の文書が漏れたときには、蓮見さんとかいう事務官を首にしたか何か処分したそうですが、今回、極秘ではない、秘だそうですけれども、大至急の電報が漏れたことについては、だれが責任をとることになるのでございますか。
  172. 影井梅夫

    ○影井政府委員 現在、これがどういう経路で新聞に出るに至ったか調査中でございます。この調査の結果によらなければ——これは私の所管外になりますけれども、おそらく見通しは現段階では申し上げられないということではないかと思います。  なお、ただいま先生御指摘の極秘、秘の点でございますが、この電報は私ども最初から秘という扱いにしておりました。秘密性の重さと申しますか、これをどういうふうにして判定するか、なかなかむずかしい問題だと思いますけれども、この電報は私どもは秘という取り扱いにしておった次第でございます。
  173. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 秘なら漏れてもかまわない、極秘なら漏れては困るというなら、極秘とか秘とかせぬほうがいいんだ。秘という以上は、重さはあるかもしれぬけれども、漏れては困るから秘であり極秘であるはずです。性格からいうと私はこういうのは大きらいです。大体国民にそういうことを知らせるのが政治の原則でなければならない。しかし、少なくとも外務省はこの前それをたてにとって蓮見さんの首を切ったのだ。しかも警官まで入れて捜査をしたのです。今回もちゃんと警官を入れて捜査して国民の前にその責任を明らかにするようにしてもらいたいと思いますが、どうですか。あなた、所管外ではありましょうが、ひとつ代表して……。
  174. 影井梅夫

    ○影井政府委員 私から現在責任をもって申し上げられますことは、現在調査中であるということ以上にはお答えできませんので、御了承願いたいと思います。
  175. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それはそうでしょう。そうでしょうけれども、あなたは外務省を代表して来てもらっているわけですから、帰ったら大臣に、この委員会でそういう意見があったということについてとくと伝えておいてください。  それから次に、これは長官お帰りになったあとではないかと思うのでが、鯨の問題です。  捕鯨禁止は、私は思想としてはいいと思うのですけれども、日本の場合には、従来の経緯から考えて、これが油以外に食用にも供されておる、そういう関係から、いろいろ困った問題が起こるのではないか。しかも私どもの知る限りでは、絶滅に瀕しておる鯨の種類もありますけれども、そうでないものもあるように考えられますが、長官はこれについてはどういうお考えを持っておられるわけでございますか。
  176. 大石武一

    大石国務大臣 ストックホルムの会議では鯨が相当重大な問題になろうということは、予想しておりました。そこで、私どもも、立つ前には、水産庁なりあるいは業界の代表を集めたりあるいは学者を集めたりして、この問題についてのわれわれの基本的な考え方を十分取りまとめて参りました。おっしゃるとおり、鯨を守るということは非常にけっこうなことだと私は思います。私も個人的には、できることならば鯨はとりたくないと思います。ことに、いま日本とソ連が鯨をとっておる元凶のようにさんざんいわれますけれども、鯨をこんなに絶滅に導いたのは西欧諸国であります。アメリカとかノルウェーとかイギリスとか西ドイツのような国がさんざんむちゃくちゃにとり尽くしまして、そして少なくとも五つの種類の鯨については捕獲禁止をきめまして、その間にわずか数百頭とか数千頭しか残っていないような状態をつくったのは、西欧先進諸国であります。あとから日本とソ連がそれにくっついていって鯨をとっておるものでありますから、まるで日本とソ連が鯨絶滅の元凶のようにいわれますけれども、そういう絶滅の機をつくったのは彼らなんです。  それはそれといたしまして、鯨は残したいと思いますが、現在日本で鯨をとっておるそのことによって幾つかの企業が成立しておるわけです。何万人かの従業員と家族が生活しておるのです。これを一挙にやめろといっても、急にはできません。しかも、おっしゃるとおり、だいぶ絶滅に瀕しておる鯨もたくさんございますけれども、イワシクジラとかあるいはマッコウクジラについては、資源の保護考えてやればまだまだ実際はとり得る——とり得るといっても、これを減らさないで済む状態になっていますから、やはりしばらくの間はいわゆる商業捕鯨を認めまして、しかもそれは資源の保護考えながらある時期までは認めるべきであるということが当然だと思います。  それで私は、渡り鳥の問題でさきにモスクワに参りましてソ連の連中と会いましたときにも、その問題に触れようとはしませんでしたが、向こうから一言出まして、鯨では共通の問題であるから、ぜひがんばってもらいたいということを言われたわけであります。  そういうことで、鯨はやはりあのような決議をさせたくない——ああいう決議案かすでに提出されておったわけでありますから、決議されては困ると思いましたので、実は短い期間でありましたが、私はイギリスの代表のウォーカー環境大臣に会いまして話をしまして——IWC、インターナショナル・ホエトリング・コミッティーというものがロンドンにございまして、世界の十四カ国が入っております。これは日本もソ連も入っておりまして、そこで大体鯨をどのように守ったらいいか、どのくらいとったらいいか、どうするかということをきめるのがこの委員会でございまして、これは相当規制力もあれば権限もあります。ここで世界じゅうの鯨の専門家が集まってやるわけですから、これが一番権威があるわけです。ですから、ここで鯨をどのようにするのか、十年間モラトリアムというものでやるのか、あるいは数年、五年なら五年をとって資源を調査してそのあとで判断するかということは、ここできめるべきであると思います。そこで、人間環境会議の中の鯨の問題の決議はある程度うまくぼやけさせて、最後の結論はIWCで出すべきだ、そのような方向に持っていったらいいと考えまして、ウォーカー氏にそういう話を持ちかけたのです。ちょうどロンドンでやるのだから、あなたがそういうまとめ役をしてくれませんかということを頼んだのです。彼自身は、私のほうでは、実際のことを言うと鯨なんかとっていないのだから、あまり興味もない、重大な問題ではない。だけれども、せっかくの話だから、われわれ代表として話をして、できるだけ努力しましょうという返事をもらいました。  アメリカの代表のトレイン氏にも、さらに今月の下旬にロンドンで開かれるIWCのアメリカの代表でもありますから、この人に会いましてゆっくり懇談した。日本のいろいろな実情なり、現実にこうしたらいいということをいろいろ話しましたところが、彼は日本の事情はよくわかる、十分理解できる。だが、自分のことも考えてくれ。下院では十年間のモラトリアムの決議がされておる、上院では十五年のモラトリアムの決議がされておる、すべての鯨について両院でそういうものが決議されて、どうにもこうにも動きがとれない。だからおれの事情も察してくれというようなことになりまして、お互いに理解し合って何か妥協案をつくってもらって、IWCで決定的なものをきめてもらおうという考えでいろいろな話をしてきたのでありますが、結論的にはあのようなきびしい決議になったわけでございます。しかし、ここでは強制力はありません。問題は今月下旬のIWCに持ち込まれると思いますから、ここであらゆる努力をして、もう少し何年間かそれをやって、その間に実態を調整して、その結果によってどうするかということを判断するようなことに持ち込まなければならないと考えます。  ただ、あまり日本の捕鯨を守るために何でもむちゃくちゃなことをがんばって、ここから脱退するようなことになりますと、なるほど、ある程度捕鯨はまだできましょうけれども、そのかわり、国際世論に反して日本の国が孤立するということもございます。したがって、この点は十分に両方考えまして、両方がうまくいくような方向にこの会議を進めるべきではなかろうかと考えております。
  177. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官のお考えは非常によく理解ができました。しかし、やはりこの決議がされた以上、道義的な責任を負わなければならない。会議を構成する、しかも指導的な役割りを果たしてきた日本としては、この決議を無視するわけにはいかないと思います。  そこで、水産庁のほうに来ていただいているつもりでございますが、見えておりますか。
  178. 田中武夫

    田中委員長 来ています。
  179. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 水産庁のほうにお伺いしますけれども、この対策についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  180. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 お答え申し上げます。  先生の御承知のとおり、採択された勧告案は、第二委員会で採択されたわけでございますけれども、国際捕鯨委員会を強化して国際的の調査努力を増進し、かつ国際捕鯨委員会の主催のもとに、全関係国を含めた商業捕鯨十年間禁止のための国際協定を緊急に求めることについて各政府が合意するよう勧告する、こういうことが委員会で採択されまして、当然本会議でも採択されることになろうかと思います。ただいま大石長官からもお話のございましたように、私どもといたしましては、従来、科学者の集まりでございますところの、国際捕鯨委員会におきます科学者の部会におきまして、的確な資源評価に基づきまして、すでに絶滅の危機に瀕しておりますところの鯨類につきましては捕獲禁止をいたしておりますし、資源評価に基づきまして資源の保続上ある程度とっても差しつかえないというふうなものに限りまして、関係国間集まりまして捕獲をきめておったわけでございます。しかも、最近におきましては鯨種別の規制、従来はシロナガス換算何頭ということをやっておったわけでございますけれども、鯨種別規制にも踏み切り、さらに国際監視員制度というようなものを実施いたしまして、基本的にはそういったことを強化しながら鯨の捕獲を続けてまいったというのが実情でございます。しかし、御指摘のございましたように、ああいったことが人間環境会議で決議されたことでもございますし、私どもといたしましては、的確な鯨の資源状態の把握のための科学調査面の改善も含めまして、この勧告にもございますように、国際捕鯨委員会の強化に積極的に協力する、これは私どもも全く異論はないところでございます。そしてなおその上に立ちまして、科学的根拠に基づきますところの合理的かつ効果的な資源管理措置のもとに捕鯨を考えてまいりたいということでございまして、二十六日から始まりますところの国際捕鯨委員会の場におきまして、私どもといたしましては、いま申し上げたようなことを基本的な立場として折衝に当たってまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  181. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大石長官もお話しになっておりましたように、十分調和のとれた、世界世論に反しないような対策を講じてもらいたいと思います。  鯨の問題につきましてはもう少し聞きたいのですけれども、約束の時間がだんだん近づいてまいっておるようでございますから、あと二点ほどお伺いしたいのですが、この法案の中にも、海中特別区域というものを設けて海の自然も保護するということになるようでございますけれども、いま現に、戦時中に製造された毒ガス、イペリットとかルイサイトとか、そういうものが大量に海中に投棄をされておるという問題が起こっております。私の出身の瀬戸内海、大分県の別府湾にも、終戦時のどさくさに大量の毒ガス弾が海中に投棄されておるようでございますが、まず自然環境を守るという意味から、こういう問題についてはどういう措置をとったらいいというふうに長官はお考えでしょうか。
  182. 大石武一

    大石国務大臣 毒ガスの問題につきましては、非常に困っておるわけでございます。そこで、先日委員会におきまして総理が答弁いたしまして、まあ環境庁が世話役をしたらよかろうということになったわけでございます。われわれもそう思いまして、環境庁と内閣審議室の両方が中心になりまして、関係のある各省が集まりましていろいろ対策を立て、実行する場合の世話役をいたすということに方針をきめまして、直接情報を集めたり、どこにどういうふうになっているのか実態を調べたり、そういうことをしまして、実際の今度はいろいろ取り除いたり調べたりするのは防衛庁、こういう手はずをきめまして、いま防衛庁であっちこっち重点的にそのような毒ガスの実際的な調査並びにその収容を計画いたしておるわけでございまして、われわれが中心になりまして世話役になりまして、そのような方向一元化してこの対策を進めてまいりたいと考えております。
  183. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 環境庁が世話役をつとめていただくことは私は大賛成でございますし、歓迎をいたしますが、そこで、いま申し上げました瀬戸内海、別府湾に大量に投棄されておる毒ガス、イペリット、ルイサイトについてはどういう措置をとるように考えておられるのか。前に小澤政務次官は、環境庁というのは頭脳であるから、手足はないので、手足はほかのほうに借りなければならぬというふうに申しておりましたが、その頭脳のほうは事務当局のほうで一体どのようにお考えになっておられますか。
  184. 首尾木一

    首尾木政府委員 別府湾の毒ガスの問題につきましては、まだ私ども詳細にその内容について存じておりませんが、この問題につきましては、先ほど長官からお話がございましたように、環境庁が世話役といいますか、そういう問題につきまして内閣審議室と相談を持ちまして、各関係の省庁に集まっていただいて、それぞれどういう形でもって今後その問題を進めていくかということを検討いたしておる最中でございます。
  185. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 時間がありませんから、その問題はそれではおたくのほうでひとつ計画を立てて、その措置する方法等について、別途私のほうに文書ででも回答いただけますか。
  186. 首尾木一

    首尾木政府委員 先生のほうにそのようなものを持ってまいりたいと思います。
  187. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 毒ガスに関連してもう一点。  厚生省来ていただいておると思うのですけれども、これが毒物及び劇物取り締まりの対象になるかどうかは別にして、いま幸い環境庁ができてこういう仕事をやってもらっておるのですけれども、厚生省として今日までほうってあったというのは一体どういうことだろうという気がするのですけれども、厚生省のほう見えておりましたら、どういうふうにお考えになっておったか、ちょっと承りたいのですけれども……。
  188. 豊田勤治

    ○豊田説明員 毒物・劇物取締法のたてまえは、主として市場に流通する化学薬品についての取り扱い上から、諸種の保健衛生上の危害を防止する趣旨で毒物なり劇物なりを指定しているわけでございまして、先生御指摘の化学兵器であるイペリット等につきましては、流通している化学薬品ということではございませんので、現在毒物、劇物には指定されておらないものでございます。しかし、このようなものが他の製品の原料となるようなことも考えられますので、そういう点につきましては、今後調査の上、関係方面と協議してまいりたいと考えております。
  189. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう議論しておる時間がありませんが、厚生省は国民の健康を預かっておるところだと私は思っておるのですけれども、こういう問題が、今日まで戦後二十数年間、三十年になんなんとする期間放置されておったということについては、少し責任を感じていただいて、それが毒物、劇物の取り締まりの対象にしておるとかおらないとかいうことではなくして、もう少し積極的に国民の健康を守るという立場で対処していただきたいということを要請いたしておきます。  それから最後に、きのう十二日に羽田空港へ超音速旅客機コンコルドとかいうのが飛来したようでございますけれども、何とスピードも超スピードであれば、騒音もまた超大型のようで、百五ホンということが報道されております。すでに今日、長官も御承知のように、基地周辺の住民がその騒音に苦しんでおることは、これは環境保全の上からもきわめて大きい問題だと私は思っておりますが、こういう大型の騒音をまき散らす、あるいは考えようによっては、衝撃波の問題もございましょうし、排気ガスによる成層圏の自然的均衡の破壊という問題も起こってくると思うのですが、時代の要請とはいえ、人間環境破壊してまでこういうものが日本に飛んでくる、あるいは日本でこういうものを注文をしてつくるというようなことになるとするならば、長官は一体どうお考えでしょうか。
  190. 大石武一

    大石国務大臣 いま日本では、運輸省もそのような考えでございますが、このようなものを使用する考えはないようでございます。また、現在におきましては、運輸省もわれわれも——運輸省も相当考えておりますが、このようなものを定期的にこちらへ着陸させるようなことは考えない、そのようなことはさせない方針でいまおるわけでございます。
  191. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 通産省に来ていただいておるつもりでございますけれども、それでは通産省のほうでは——新聞報道によると、すでに日航か三機の仮発注を行なっておるというようなことが報道されておりますけれども、いま環境庁のほうからも政府態度をお話があったのですが、こういうものについては、騒音それ自体は、これは航空局かどこかになるのではないかと思うのですが、日本の産業としてこういうものを発注して入れるというようなことについて、通産省はどう考えておるか。行政指導として、まず国民の健康なり環境なりを守るという立場で何らかの措置を講ずる意思があるかどうか、通産省の関係の方の答弁をお願いしたいと思います。
  192. 山野正登

    ○山野説明員 ただいまのところ、日本航空はコンコルドをまだ正式発注をいたしておりません。通常、航空機の輸入の申請がございました場合に、これを審査するにあたりましては、国内にこれと同等の競合機があるかどうか、それから契約の内容が妥当であるかどうか、さらに機材の整備計画が妥当であるかどうかといったふうな諸点から審査をいたすわけでございますが、特に機材の整備計画が妥当かどうかという件につきましては、監督官庁でございます運輸省のほうとも十分に協議をしてやっておる次第でございます。御指摘のこういう騒音の大きな飛行機の輸入申請がございました場合にも、当然この機材の整備計画の中で騒音の問題というのも十分に配意してまいりたいと思っておりまして、この点につきましては、従来同様、運輸省とも十分協議いたしまして、慎重に処理したいと思っております。
  193. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 たくさん聞きたいことがありますけれども、約束した時間ですから質問をやめますが、いま提案をされましたこの自然環境保全法案につきまして、まだ私は——先ほど来島本委員からもたくさんの意見が述べられましたように、従来の要綱に比べてきわめて不満足なものであると思いますし、今後よりよくしていかなければならない点がたくさんあると思います。とりわけ、農林省との関係になりますけれども、森林法の一部改正の問題を速急に措置をするとか、あるいは都市環境の問題についても、遅滞なくひとつ次の国会には提案をしていただいて、この自然環境保全が十分なものになるように今後の努力を期待いたしまして、質問を終わります。
  194. 田中武夫

    田中委員長 次に、岡本富夫君。
  195. 岡本富夫

    ○岡本委員 ただいま議題になっておりますところの自然環境保全法案について若干質問いたします。  まず、この法案基本的なことをきめておるのか、あるいはまた実体法なのか。中を見ますと、相当実体法的なところがあるのですが、これについてひとつはっきりお答え願いたい。
  196. 大石武一

    大石国務大臣 大体は実体法を中心考えております。
  197. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、実体法でございますれば、抽象的なことではぐあいが悪いのではないか、こう思うのであります。  そこで、本法の第一条、目的のところで「その他の自然環境保全を目的とする法律と相まって、自然環境の適正な保全を総合的に推進」するということでありますので、この「相まって」というのが非常に抽象的のように考えられるわけであります。しからば、どういう法律とどういうように相まって保全をするのか、この点をひとつ説明願いたいと思います。
  198. 首尾木一

    首尾木政府委員 この法律と相まって自然環境保全を行なうことを考えておりますのは、まず自然公園法がございます。それから首都圏近郊緑地保全法、近畿圏の保全区域の整備に関する法律、そういったようなもの、それからさらに、今後、これは附則の第二条にございますが、良好な都市環境を確保するために必要な自然環境保全のための法律といったようなものにつきまして、これはいま申し上げました首都圏及び近畿圏緑地保全以外に、さらに新たに、都市における公園緑地等の整備保全に関する法律という——これは仮称でございますが、そういったようなものの検討をいたしておるわけでございまして、そのような法律が相まちまして、それぞれの法律において地域を指定し、それを全体としまして自然環境保全を行なうというような考え方になっておるわけでございます。
  199. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこであなた一つだけ抜かしましたがね。森林法もこの中に入るのではないですか。
  200. 首尾木一

    首尾木政府委員 森林法そのものは、それが全部が自然環境保全そのものを目的とする法律ではございませんで、その一部分が森林の公益目的ということで関連をするという、いわゆる関連をする法律でございます。
  201. 岡本富夫

    ○岡本委員 要するに、関連する法律が、それと相まってというのか、そういう意味じゃないのですか。何か先ほどあなたの答弁を聞くと、森林法だけ抜いちゃって、自然公園法——自然公園法なんか、もとこの中に入っていたのじゃないですか。それを抜いておる。それと一緒にやろう、こういうのだったら話はわかりますけれども、森林法だけ、何か林野庁に非常に気を使っておるようなところが見受けられる。
  202. 首尾木一

    首尾木政府委員 先ほども申し上げましたのは、自然環境保全そのものを目的とする、そのすべてが自然環境保全を目的とする法律という意味におきまして、この三法をあげたわけでございます。森林法は、それ自体としましてやはり林業に関する法律でございまして、そのような意味で関連する法律でございますので、そこに書いて規定をしておりますのは、自然環境保全そのものを目的とする法律ということで書いてあるわけでございます。もちろん、そういうような意味におきましては森林法も関連する法律でございますし、さらに、古都保存法あるいは文化財保護法、そういったようなものもすべて関連する法律でございますから、この自然環境保全ということにつきましては、これらのものと相まちまして行なうことは当然でありますが、そういったような意味におきまして、この法律で、たとえば森林につきましては、同時にこの法律自然環境保全地域というものをダブらせてそこにかけてというようなことも行なうわけでございますから、そのような意味におきまして、森林法そのものの目的が、すべて自然環境保全を目的とする、それに徹した法律ではないという意味におきまして、純粋に自然環境保全を目的とする法律という意味でただいま三法をあげたわけでございます。
  203. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこはどうもはっきりしない。これはちょっと事務当局としては答えにくいかもしれません。森林法、すなわち林野庁が所管しておるところの保安林ですね、こういうものは、これを見ますとやはりダブってくるんだろうと思うのです。そうしますと、環境庁のほうで自然を保護するためにそこをダブってかけたところで、林野庁のほうでは、四万人の人たちを食べさせていくという特別会計がありますから、それはどんどん切っていく。こういうことになりますと、いかに、関連をしておるだけであって目的は違うと言いましても、これにやはりきちっとした一つの同じような目的——まあ全部は違いますけれども、一部は自然保護というものと関連して、それと相まってこなければ、この法案が制定されてもほんとう自然保護はできないのではないか、こういうように考えて聞いているわけですが、長官、いかがでしょうか。
  204. 大石武一

    大石国務大臣 森林法というのは相当きびしい法律でございます。したがいまして、この法律は、森林が十分にりっぱな森林として存続ができるように、意義を持つようなきびしい規制がなされております。その森林法の中では、たとえば一時的な炭焼き小屋をつくるとか仮設小屋をつくるとか、木材を運搬する小道をつけるということはできますけれども、大きな建造物であるとか大きな道路であるとか、大量の森林の伐採は、ただいまできないことになっております。そういうことで一応の環境保全はできますが、かりに非常に大きな建築物をつくるとかあるいは大きな道路をつくるとかなんとかいうことになりますと、これは保安林の問題ですけれども、いままでは、林野庁では保安林を解除いたします。保安林を解除して、保安林でないとして施設をさせておるわけでございます。そうしますと、せっかく森林法で守ってきた保安林がめちゃくちゃにされるおそれがあります。そこで、今度森林法を改正して、森林法が解除になったとたんにわれわれの環境保全法が働いて、かってなことはできない、今度は環境庁の許可を得なければそのように大きな手はつけられないということにいたしまして、森林法と環境保全法と相まって、相補完して、今度森林の環境を守るということになりましたので、やはり森林法もわれわれの自然環境法に相協力してくれるとも言えると思うのであります。
  205. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、林野庁のほうで伐採あるいは皆伐というものをやろうとしたときに、環境庁のほうから待ったをかけるとか、あるいはまた、その計画について環境庁長官がチェックしなくても、林野庁まかせでいい、いままでの林野庁考え方でいい、それが保安林解除になって初めて環境庁からものが言える、こういうことになっておるわけですか。この点についてどうですか。
  206. 首尾木一

    首尾木政府委員 森林の立木の伐採につきましては、これは保安林の場合もその他の場合も、自然環境保全地域に指定をされておる地域につきましては、林業施業の場合には、あらかじめ環境庁長官と農林大臣とが協議をいたしました伐採の方法または限度内において行なう場合においては許可を必要としないということになっておるわけでございまして、その点につきましては、その協議の際に十分に環境庁としての意見をそこに反映をさせるというような考え方で対処いたしておるわけでございます。   〔委員長退席、八田委員長代理着席〕  それから、もしそういったような伐採の限度を越えて行なうというような場合につきましては、これはもちろんそのようなものについては、原則が許可行為でございますから、そういう許可を受けないで行なうということでありまして、したがって、それに対しては環境庁長官も、これに対する中止命令でありますとか、あるいはそれに対する復元あるいは復元にかわる措置命令といったようなものが出せるようになっているわけでございます。  それから、保安林につきましては、立木の伐採につきましてはただいま申し上げたのと同じことでございますが、木材の伐採以外の問題につきまして、保安林の中で、森林法によりまして許可行為にされているものと、私どものほうの自然環境保全法で許可行為になっているものと、ダブったものがございます。そのようなダブった項目につきましては、森林法のほうでの許可行為というものはごく例外的な短期間のもの、あるいは仮設的なもの、そういったようなものに限って許可がされるという実態になっておりますので、そのような程度のものであるならば、これは一ぺん保安林のほうで許可を受ければ、その受けたものについては、重ねて環境庁長官の許可を受けることは要しないというふうにしたわけでございます。ダブっていない項目もございますので、それはもちろん環境庁長官の許可をかけることになります。  それからさらに、大きな行為でございますが、大きな行為は、ただいま申しましたように、保安林制度の中ではこれは許可ができないものでございますから、もしそれを認めようとするならば、保安林地域を解除して行なうほかはない、そういうことになっておりますが、私どものほうの地域とダブってかかっておりますので、解除されれば当然、そういったものについては許可を受けるという実体がないわけでございますから、私どものほうではこれについて、その可否について、許可によってこれを規制をしていくとかいうことを環境庁長官の権限でやっていく、このように考えているわけでございます。  なお、補足でございますが、これは自然環境保全地域の話でありまして、原生自然環境保全地域につきましては、一切そのようなものは禁止をしているわけでございますから、これにつきましては、もっぱら環境庁長官の権限でございますし、そのような伐採行為あるいはその他の行為については一切禁止をされるというような、非常に強い規制がかかっております。さらに、自然公園関係につきましては、従前どおりの形で、環境庁長官ないし都道府県知事の許可をもってやるというようなたてまえになっておるわけでございます。
  207. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうももう一つはっきりしないところがあるのですけれども……。  そこで、林野庁長官来ておりますね。いま四万人の従業員をかかえ、特別会計になっておる林野庁立場として、この特別地区あるいはまた厚生自然環境保全地域自然環境保全地域、こういうように指定しまして、環境庁長官の許可がなければ伐採はできない、あるいはまた道路をつけたりすることができない、こういうことになりますと、この四万人の人たちが十分生活できるような状態になるのかどうか。四十五年だけでも相当の赤字を出しているわけですが、それではたして林野行政の四万人の人たちの生活がやっていけるような状態になるのかどうかというのが非常に私は疑問なんですが、これについてはいかがですか。
  208. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、林野庁の会計は、戦後特別会計制度になっております。戦前は一般会計でございまして、森林の伐採の収入が約半分くらいしか収入に入ってなかった、あとは開拓財源その他に回っおったわけでございます。それじゃいかぬ、治山事業なりあるいは林道事業なり造林ということをやって、木材の販売収入は山に返すべきであるということから、戦後特別会計制度になったわけでございます。  目的はよかったのでございますけれども、実はこの特別会計の収入の九割以上は木材販売収入でございます。最近、木材価格は横ばいになっております。一方、支出の約六割は人件費でございます。人件費は他産業並みに上がっていくということで、昭和四十二年度は決算におきまして、損益計算でも収支計算でも二百億以上の黒字を出したのでございますけれども、その後急速に状況が悪化しまして、四十五年度は、先生御指摘のように赤字に転落し、四十六年度、四十七年度それぞれ約二百億、百億の収支の赤字となったわけでございます。  したがいまして、国有林の問題は、日本林野の全般のちょうど縮図のような形になっておるわけでございまして、ただいまの国有林のあり方をどうするかという問題につきましては、御指摘の財務の面につきましても、ただいま林政審議会において国有林部会を設けて検討中のものでございます。職員は四万人、そのほかに定員外の現場作業員が約三万五千人おります。しかもこれは臨時を除いてございます。臨時を入れますと頭数で四万人、ほかに実は最盛時七万七千人くらいおるわけでございます。したがいまして、木材販売収入だけですべてをまかなっていくということは、まずこれだけ見ても不可能でございます。さればといって、放漫な経営は許されません。やはり国有林の経営におきましては、国民の皆さんの納得のいく近代的な合理的な——労働条件の犠性においてだけではなくて、ほんとうに合理的な仕事のできるような形をまずつくった上で、最近公益的な面に対する非常に需要の大きい、たとえば治山事業であるとかあるいは造林事業、林道等におきましても、公益的な面についての一般会計の財政援助と申しますか、一般会計の繰り入れということをやはり検討していただかなければならぬと思うわけであります。それらを含めまして、ただいま林政審議会の国有林部会で検討いたしておりますが、近く総理大臣からの諮問という形でその答申をいただいて、四十八年度からの抜本的な制度改正に踏み切ろうというふうな段階にただいまあるわけでございます。
  209. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体植林してから四十年くらいたたぬと、木材の価値といいますか、それを売って財源にならない。そうなりますと、いままで相当乱売をやって、あっちこっち見ていますと、皆伐してみたり、相当なひどいことをやっておるわけです。そしてさらに約二百億余りの赤字が出ておる。そうしますと、特別会計ではもう早晩行き詰まるのではないか。そうなってくると、さらに皆伐しなければならぬ、伐採を多くしなければならぬ。そうすると、今度は自然環境保全に大きな支障を来たす。こういうことになりまして、私ずっと一つずつ見まして、どうなるのか。あなたのほうではこの四万人から七万人ですか、こういう林野庁に付属しておる人たちの生活、あるいはこういうものをどういうようにして将来やっていこうという見通しがあるのかないのか。審議会にかけております、審議会にかけておりますと、こう言いますけれども、林野庁長官としてはどういうような考えでおるのか、これをひとつはっきりしてもらいたい。
  210. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 早晩行き詰まるのではないかとおっしゃいますが、もうすでに行き詰まっておるわけでございます。そこで私は、国有林の経営と申しますのは、順序としましては赤字を消す、これは当然合理化、近代化はいたさなければなりません。しかし、目的はやはり国民全般の要望にこたえて、ということは、従来は木材生産が第一重点でございましたけれども、今後は国土保全、たとえば水源の酒涵であるとかあるいはきれいな空気を製造する機能であるとか、あるいはレクリエーションとしての機能であるとか、木材以外の森林そのものの持つ効用、換言しますと多目的効用と申しますか、そういうものを実現するようにこたえていくということが、国有林経営上非常に大事な問題であると思うわけでございます。  そういう観点に立ちまして、去る二月以降、各現場に対する一つの指導方針を出しておるわけでございます。それは従来の大面積皆伐をやめまして、小面積の皆伐にする。しかもそれは、限度はおおむね二十ヘクタール以下。従来は実は連続して五十、百町歩となった場合もございますけれども、それではやはり自然を破壊するということにつながる。能率はあがりましょうけれども、先ほど申しました公益的な機能にはそぐわないものであるということから、小面積にしまして、しかも分散する。その周囲には自然林を残すという形にし、なお日本は山岳地帯でございますので、中腹に行きましたならば皆伐をやめる。それで抜き切り、択伐と申しますか、本数にして一〇%か二〇%、材積にしても二、三〇%、こういうものを抜きまして健康な森林に仕立てていく、皆伐はやらない方針。それからなお上に行きましたならば禁伐林、禁伐にするというふうなことにいたしたい。特に国有林は奥地林が多うございます。そこで、皆伐にしますと約三割減少し、択伐を約二割増加し、禁伐林を四割増加する、こういうふうにしまして、近くこの基本法におきまして、五十年先の森林計画をつくることになっております。いまお話ししましたのはその基礎になる数字でございますが、そういう考え方に立ちまして閣議決定を見ていただくという予定になっておるわけでございます。そういうことになりますと、当然従来よりも収支の状態は悪くなるわけでございます。  職員は、いまお話ししましたように定員内四万人、定員外職員が、半年以上来ます者が三万五千人、一日、二日の臨時を入れますと最盛期七万七千人でございます。合わせますと十数万人の職員がおるわけでございます。これは仕事が減少いたしますとどうするかという問題が出てまいりますけれども、木材の生産以外に、ただいまお話ししましたように、いろいろな森林管理の面の仕事がふえてくるわけであります。森林の中にレクリエーションのためにたくさんの人が入ってくる。火災が起きる心配がある。そういう場合の見回りでありますとか、あるいは現在国有林の中に自然休養林という公園を、この三カ年に約三十五カ所つくりまして、そこでキャンプをやったり、あるいは遊歩道をつくって、そこを散歩して樹木の勉強をしてもらうとか、自然の観察をしてもらうというふうな設備をしているわけであります。そういう方面に対する一つの管理の仕事とかということがふえてくるわけであります。できるだけそういったような従来の伐採とか造林以外に、そちらの仕事が減った分につきましては、森林管理のほうに人を仕向けていくというふうな方向で人の活用をはかってまいりたいと思っておるわけでございます。  いずれにしましても、従来のような特別会計の発足の考え方はよかったのでありますけれども、木材の販売収入だけですべてをまかなうということは不可能でございますので、そういう方向に持っていく。なお、四十七年度からは、治山事業につきましては一般会計から約六十六億の導入をしていただいたわけでございます。従来は、治山事業につきましてもすべて木材販売収入でまかなってきたのでありますが、いままでお話ししましたようないきさつもございまして、四十七年度は、治山事業費の約半分でございますけれども、六十六億は一般会計からの負担をお願いしたわけでございます。そういう方向で今後は財務制度についても検討していただかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  211. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、特別会計は、結局はこわれてしまいますね。  そこで、長官にお聞きしたいのですけれども、はっきり言うと、いままで木を切って売って生活しておった林野庁の職員さんが、今度は自然を保護するほうの立場にならなければならぬということでありますから、この林野行政については、環境庁ほんとう相当いろんな面で——省が違うから非常におかしい話でありますけれども、こういった面について相当環境庁のほうからアドバイスもし、あるいはまた計画をよく聞いて対策も立てていかなければならぬ、こういうように私は思うのですが、いかがですか。
  212. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御意見、まことに妥当なことで、私は参考にいたします。そうしてできる限りそういう人に——どうせわれわれだけではとうてい自然環境は守り切れませんから、ぜひそのような協力と理解を得たいと考えております。
  213. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、長官、きょうは私ども公明党の大会でありまして、そのときにこうして審議をするというので、長官から丁重なおことばが先ほどありました。それに対しては非常に謝意を表するわけでありますが、私はちょっと心配になることがあるのです。それは、この前長官が奈良で新全総について、この新全総計画では、日本列島を分割してどんどん自然をよごしてしまうというように思われるのだというような、それに近い御発言がございましたが、この新全総計画については——経企庁の政務次官見えていますね。これについては各省いろいろ調整あるいは連絡をとってやったんではないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  214. 木部佳昭

    ○木部政府委員 新全総計画につきましては、ちょうど三年ほど前に、御承知のとおり計画が策定されたわけであります。ところが、最近の経済情勢や、豊かな環境をつくらなければいかぬとか——そういう諸情勢に対応して、われわれのほうでいま総点検を準備をして実行いたしておるところであります。
  215. 岡本富夫

    ○岡本委員 この新全総はそのときは沖繩は含まれてなかった。そうしますと沖繩も含め、長官からもお話があったわけですが、再検討をして新しく新新全総といいますか、新が五つも六つもついたら困るわけですが、こういうようにもう一ぺん計画をやり直すというのが現在の段階ですか、いまのお話は。
  216. 木部佳昭

    ○木部政府委員 ただいま申し上げましたように沖繩も含めまして総点検の作業中であるわけであります。
  217. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、この新全総はいつごろまでに洗い直して、もう一ぺん発表するという見込みなのか。この新全総に基づいて、いろんな計画が都道府県あるいは地方自治体では行なわれていくと思うのですが、それについてひとつ……。
  218. 木部佳昭

    ○木部政府委員 先ほど申し上げましたように、特に環境問題を重点にいたしまして、大体目標といたしましては十二月ぐらいのところを目標にいたしまして、総点検中であります。
  219. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、長官のおっしゃったとおり現在の新全総ではぐあいが悪いというわけで洗い直しをして、この十二月ごろまでに再計画をしようということになっているわけですが、閣議ですぐあやまられると困るわけです、つい口がすべったなんて。やはり自信を持って——ぼくは、長官ほんとうにいい人なのかあるいはまたどうなのか、非常にその点が懸念されるわけですが、やはり環境庁長官としては、思ったことを言ってそのとおりさせていくというような強い姿勢でなければならないと思うのです。
  220. 大石武一

    大石国務大臣 私の新全総に対する考え方は、別に変わっておりません。それで、私の考え方が変わったということで閣議であやまったわけではなく、ただ発言がいかにも少しきつ過ぎたので、そのきつい発言に対しては十分注意いたしますということを申したのでございまして、別に考え方は変わっておりません。
  221. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、長官がこの間ストックホルムに行かれたときに、自然環境破壊について現地のだれだったか質問があったときに、ベトナム戦争は非常に大きな自然破壊ではないかということに対して、次元が違うからここではお答えできないというような御発言があったように承っているわけですが、その点はそうですか。
  222. 大石武一

    大石国務大臣 それは外人記者との会見の場合に、ベトナム戦争についてのいろいろな話がございました。自然破壊はよろしくないということ、戦争そのものは実際話し合ってやめなければならないということはそのとおりであるけれども、いま戦争をどうするこうするという問題については、この段階ではちょっと議題が違うので、この際はそういう議論はしたくないということを申したのでございます。
  223. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、外人の記者でしたからそうでありましょうが、いま地球的な環境破壊、これが問題になりまして、今度国連人間環境会議が開かれたわけでありますが、やはりベトナム戦争というものは大きな環境破壊になっている。外人に対しては言えなかったかわかりませんが、私は日本人ですから、いまの長官の率直な考え方はいかがですか。
  224. 大石武一

    大石国務大臣 私も、ベトナム戦争の現場をよく見たわけではありませんから、その正確なことは言えませんけれども、あのような大きな戦争になりますと、ことに枯れ草作戦とかいろいろなことが行なわれましたから、おそらく相当大きな自然破壊が行なわれていると思います。このことは当然、世界自然環境あるいはいろいろな野生動物、鳥類のいろいろな生態にも大きな影響を与えるということは確かだと思います。そういう点では、ベトナム戦争は私決して望ましくないと考えております。
  225. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは詰めておきたいと思うのですが、長官、同じことを言って悪いんですが、鳥類やあるいはまた自然破壊、なお人間のほうの破壊、こういうものに対しては、非常に長官は言いにくいかもしれませんが、一日も早くやめたほうがいい、こういうような考えではないかと思いますが、その点だけひとつ……。
  226. 大石武一

    大石国務大臣 私はいまはそう思っております。ストックホルムの記者会見でもそのようなことは申しました。要するに、罪もとがもない一般の民衆が、戦争によって家を奪われ、生命を奪われ、あらゆる苦労をしていることは、非常に悲しいことだと思います。そういうことはぜひ早くなくしたい、こう願っております。
  227. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、環境庁長官もやはり閣僚でありますが、いまの閣僚の一員として、こういったベトナム戦争を一日も早くやめたほうがいいということに対して傍観しておっていいんだろうか。これは日本政府の問題になりましょうが、その点についてはどういうようにお考えなのかということをひとつお聞きしておきたいと思います。いかがですか。
  228. 大石武一

    大石国務大臣 これは傍観していていいとは私は思いません。できるものならわれわれも、このような戦争をやめさせることに世界の国々がお互いに協力して努力したほうがいいと思います。ただ、どのような手段でどのような方法でやったらいいかといいますと、私はここで的確なお答えができませんのですが、あなたと同じような考えで、われわれも、このような戦争に対しては、できるだけ世界の国がこれをやめさせるように努力すべきであると考えます。
  229. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に本論に戻りまして、本法では原生自然環境保全地域、あるいはまた自然環境保全地域特別地区野生動植物保護地区海中特別地区あるいは普通地区、国のほうでいろいろとやるについてもこういう地域がありますが、四十八年の四月から実施するというような状態だということを承っておるわけですが、何年計画で、人員はどれくらいだ、予算はどうだ。国立公園にしたって二十三区、百九十万ヘクタールですか、国土の五・三一%、国定公園が四十四区九十九万ヘクタール、二・六八%、自然公園二百七十九地区で二百二万ヘクタール、五・四七%——国土の一三%を指定しておりますけれども、相当地域であろうと私は思うのですが、さて何カ年計画でこういうものをやるのか、綿密な計画ができておるのかどうか、これをひとつお聞きしたいと思うのですが、いかがですか。
  230. 大石武一

    大石国務大臣 そのような将来に対するいろいろな計画とかビジョンというものは、つくらなければならないと考えております。ただ、この法律がいま通りますと、それを土台にしてそういうことを計画づけていくわけでございますが、一応の目安はつけなければならないと思います。ただし、今後この法律によりまして指定される地域は、もう何%であるときまっておりません。私は、できるだけ大きくこの地域が広がることを望んでいるわけなんです。一応われわれはいま、ここが大切であるとかどうであるとかいろいろ考えておりますけれども、それだけでなくて、さらにいろいろと、もっと残したい地域がたくさん出てまいりましょうし、そういうものを今後広げてまいりますから、これは三年でこの計画ができる、五年でできると言いかねますけれども、一応いま考えております段階でやはり計画を立てなければならないと思います。たとえば原生自然環境保全地域につきましては、御承知のようにことしは六十億円の金で、それを国有地並びに県有地にすることにはいたしております。しかし、この予算もことしきりの予算でございまして、来年度からは別な形で、一つ方向を持った、たとえば金額はどのくらいにするか、何年計画でこれを実行するか、どのような面積にするかということもことし一年で見当つけて、来年から明確な年次計画を立てて実行に移すことになっているわけでございます。そのように、いろいろといわゆるビジョンというものをつくらなければなりませんので、これはいま作成中でございます。
  231. 岡本富夫

    ○岡本委員 なぜ私がこういうことを言うかといいますと、かって昭和三十三年に水質保全法ができた。その後、ぼくが四十二年に当選させてもらったのですが、これができてからもほとんど指定してないのですね。こういうように法律ができた、しかし実体がいつまでたってもできてない、こういう苦い経験を私は見ているわけですが、こういうことになりますれば何にもならない、絵にかいたもちになってしまう。全部が全部でありませんが、ほんの一部だけやったというようなことでは、私は結局、自然環境保全するという意味からしましても非常に問題があろうと思うのです。そこで、ひとつすっきりした計画あるいはまたスケジュールというものを何カ年計画かできちんと立てて、そういうものによってやっていかなければほんとう自然環境保全にはならないのじゃないか、こういうように私は思うのですが、その点だけお聞きします。
  232. 大石武一

    大石国務大臣 それはおっしゃるとおりでございます。われわれもいまスケジュールをつくっておりますので、それによりましてできるだけ早く地域を広げ、その内容を充実してまいりたいと考えております。  ただ、水質保全法は、十年余り前にできましたけれども、いま考えてみますと、それはあまり十分な法律ではありません。しかし、当時の政治情勢を考えますと、やはりこれはなかなか考えたものだと思います。努力した法律だと思います。当時、十年余り前と現在とでは、自然保護なりあるいは環境保全、公害対策というものにつきましての考え方は、ずいぶん政治的情勢は変わったと思うのです。ですから、当時、十年前にせっかく水質保全法ができましたけれども、必ずしも思うような大きな発展はしなかった。確かにそうでありますが、このように時代が変わってまいりますと、われわれももちろん懸命に努力しますけれども、政治の方向がますます人間尊重の方向に進んでまいりますから、十年前の姿とはまるっきり違った進み方をするのではないか。またそういう歩み方をしなければならないと私は考えております。  しかし、いずれにせよ、おっしゃるとおり、確かにいろいろな計画を早く立てまして、それを進めてまいることが大事であると考えております。
  233. 岡本富夫

    ○岡本委員 なぜ十年前からこういうようにくるっと変わってきたかというと、決して自民党政府が変わったのと違うのです。結局住民運動、世論、こういうものによって変わったわけです。だから、かつて三十三年に水質保全法ができたけれども、なかなかできなかった。これはそのまま自然にできたのではなくて、結局住民の力、世論の力によってできたのです。それと、長官、いま私が計画を立ててやらなければならぬというのと一緒にしてもらっては話にならぬと私は思うのです。次元が違う。ですから、ひとつ実施計画をきちんと立てて、これはほんとうに実体法であるならば、実施できるようにしてもらわなければならないと思うのです。自然環境保全地域、これは確かにこれから指定してやるということはわかるわけですが、それを守るためには、光化学スモッグあるいはまた、そういった現在起こっておるところの公害問題を処理しなくては——光化学スモッグ一つ見ましても、地域内よりも地域外からどんどん出てきているわけですね。指定した地域外から出ているわけでしょう。これがたとえば森林、緑を残そうといたしましても、その地域外からどんどんそういった汚染物質が入ってきてよごされてしまうわけですから、こちらの公害対策についてもこれは必要であろうと私は思う。もっともっとしっかりやらなければならないと私は思うのです。  おととしでしたか、公害国会におきまして、われわれ野党でもって環境保全基本法案を提出したわけでありますけれども、今度の政府案を見ますと、これがだいぶ取り入れられておるように思うのです。ところが、現在の公害対策基本法基本的な理念といいますか、今度の自然環境保全法のこの理念がここに入ってこなければならないのではないかと私は思うのです。この基本法では人の健康と生活環境保全する、ただ簡単なものでありますが、要するに自然環境保全法の精神を見ますと、後代の人、つまり次の時代、次の国民生活を守っていこうとする、要するに地球を守っていこうとする、ほんとう環境を将来守っていこうとするのがあらわれておるわけでありますから、その根本に立った、理念に立ったところの公害対策基本法でなければならないと私は思うのです。たとえば排出基準をきめるにしましても、環境基準をきめるにいたしましても、結局、何といいますか排出されたものが自然の中に、空気の中に入り、そしてこれかリンクされるような——リンクするというとおかしいけれども、自然浄化されていくようなそういう環境基準でなければならないのではないか。ただそこで生活できて、そういった汚染物質が飛んでしまうからそれでできるのだということでは、将来行き詰まるのではないか。これが田子の浦のヘドロの姿です。したがって自然環境基準、こういうものも制定して——われわれが提唱しておりますけれども、要するに排出されたものが自然に浄化されていくというそういった基準、それはどちらかというといまのような濃度規制じゃなくして、やはり量規制になってくるであろうと思うのです。そういった将来の環境基準、公害対策基本法の目的とそれから環境基準の洗い直し、これを長官はやろうという考えがあるかどうか、これをひとつお聞きしたい。
  234. 大石武一

    大石国務大臣 公害対策基本法をどのように直すかということについては、いま具体的なことを申し上げる段階ではございません。しかし、環境基準につきましては、十分にこれを洗い直しまして、さらにより高い環境基準をつくりたいと、いま私どもは考えております。
  235. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、一つは、将来環境基準をもっと洗い直して、もっときびしくしてやっていこう、これについていま言いましたように、濃度規制だけでは、たとえば煙突を高くしてやっておりますけれども、たくさん量がふえればふえるほど、今度は自然浄化ができないのですね。したがって、私は量規制が必要ではないかと思うのです。そういう考えがあるかどうか。  もう一つは、先ほど私言いましたように、公害対策基本法の精神も、やはりこの自然環境保全のような考え方が一番根本にならなければならないのではないか。そうでなければ、私は環境基準が変わってこないと思うのです。そういう考え方にお立ちになるかということをお聞きしたい。
  236. 大石武一

    大石国務大臣 いま私どもが環境基準を考え直さねばならぬと申しましたのは、一つは、いまの環境基準そのものが必ずしもすべて理想的なものではないと考えられるからでございます。もう少し十分に検討いたしまして、もっといろいろな実験なりいろいろな検討の段階を経まして、どのような環境基準がわれわれにふさわしいか、妥当なものをわれわれは早く選びたいと考えております。  それともう一つは、妥当なものでありますけれども、いろいろな段階をつくりまして、最も理想的なわれわれの環境基準というものも何かきめまして、その理想基準に達することによって、企業がそのような努力をすることによって要するに公害が少なくなっていくわけですから、企業がそのような努力をすることによって、その企業努力に報われるような一つの将来のあり方を考えたい、そういうことも含めた環境基準をつくりたいと願っておるわけでございます。  そういうことを考えますと、おっしゃるとおり排出基準も、それに従っていろいろな考え方が変わってまいると思います。もちろん、総量の規制ということが将来は必要なことだと思います。いまの段階でも、総量の規制考え方を取り入れたものが一部ございますけれども、まだまだこれは不十分でありますので、おっしゃるとおり、われわれはやはり総量というものに対して一番最後の排出基準を置かなければならぬと思います。ただ、それにはいろいろなむずかしい段階がございますし、また、それに対する設備なりいろいろな装置というものが必ずしも十分できておりませんので、そういうものを開発しながら、御意見のとおり総量というものを一つの排出基準の大きな根本に取り入れたものにいたしたいと思いますし、それから、そのようなすべてのことを勘案いたしまして、われわれの自然環境、われわれは結局自然の中で生きておるわけでございますから、公害、公害と申しましても、自然の一部をぶっこわしたものが公害でございますから、そういう意味では、やはりおっしゃるとおり、これが十分に、ただ何といいますか循環すると申しますかあのような形で、自然がわれわれによりよいものであるような形に持っていきたいと考えております。
  237. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、基本的なことをもう一点だけ聞いておきたいのですが、いままでの公害対策基本法の精神は、生活環境保全、健康を守るということでありますけれども、企業の努力できる範囲の、要するに防止できる範囲によって行なわれた基準であった。そういう意味において少しでもというような考え方。いまここに自然環境保全法が提出された。後代の人たちの、要するにこれからの将来の国民の健康を守っていこう、次に生まれてくる人たちも守っていこうという精神に立ったのでありますから、公害対策基本法も、今度はそのほんの一部になるわけです。目的はもっと大きいわけですからね。ですから、ちょうど私ども三党が出した環境保全基本法、要するにこの中間にこれがなければいかぬわけですね。ぱっとそれが縁が切れたから、先ほど阿部さんでしたか言っておりましたが、何か奇異に感ずるのだ。ですから、公害対策基本法の目的も、そういうように修正しなければならぬのじゃないか。  それからもう一つ、先ほど申しました、それによって起こってくるところの環境基準をきめるにしましても、やはり将来の自然を守る——人間も自然の一部でありますからね、そういう基準に変えていかなければならぬのじゃないか、それによって、私は公害防止の技術も進んでいくと思うのです。長官が勇断をもって——初代か二代か知りませんが、山中さんはちょっと名前だけですから、まあほとんど初代の長官として、いま一つここではっきりとした将来の姿勢というものを打ち出しておいてもらいたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  238. 大石武一

    大石国務大臣 おっしゃるとおり、いまわれわれは、公害基本法自然環境保全法と二つに分けて、公害対策と自然環境対策を別なように考えておりますけれども、これは私は、元来根が一つにつながっておるものだと思います。そういう意味では、近い将来にはこれを一本にした、いわゆるいつか二、三年前に野党から出されました環境保全法案ですか、これのいろいろな考え方、それをこの法案にも多少取り入れてはありますけれども、そのようなものを、将来は大きなまとまったものをつくり上げる必要が私はあると考えます。ただ、いまのところは、何せ、とにかく山のような公害に対して体当たりでぶつかっていくことと、めちゃくちゃな自然破壊に対してとにかく一時間でも早くとめなければならぬということに忙殺されまして、いま申しましたような非常に総合的な、大きな高いものになかなか取りつけないでおりますけれども、こういうふうにだんだん方針もきまってまいりましたので、いまおっしゃるような、そのような総合的な、もっとより高い次元のものに、われわれはものの考え方基本を置いてまいりたいと考えております。
  239. 大原亨

    大原委員 関連して。  いま岡本委員から、英断を持って答えてもらいたい、こういう話がありましたが、私は一言、関連してぜひともこの際聞いておきたいのですが、いままで議論になりましたように、経済企画庁の政務次官お見えでございますが、新全総をやり直す、これは十二日と、いまの質疑応答の中でありました。それから新経済社会発展計画をやり直すのも年末。総合的にいままでの経済成長政策をもう一回見直す、こういうことでありますし、いまそれに関連して自然保護法案をやっておりますが、ひとつ環境庁長官に英断を持って答えてもらいたいのは、最近、重化学工業や経済に深い関係のある田中角榮通産大臣が、日本全土大改造、工場大分散案というふうなのを出されたわけでありますが、これは一方でいいますと自然をなくするということではないかというので、日本国土大破壊法案ではないか、こういうことがいわれておりますが、この計画の立案等については、大石長官や経済企画庁の長官は相談にあずかっておられるかどうか。それに対してどういう見解を持っておられるか。これは全然関係のない人が言ったんじゃないですから、国務大臣ですから。ですから、このことについては、総裁の立候補宣伝だともいわれておりますが、この点はきわめてこの法案と関係深し、いまの質問と関係深いと思いますので、明快に簡潔に御答弁をお二人からいただきたい。
  240. 大石武一

    大石国務大臣 田中通産大臣が、日本大改造論ですか、都市改造論ですか、あの日本列島の改造論を出されたことを新聞の記事の表題だけを見まして、詳しいことはまだ全然聞いておりませんから、いまそれをどうこうという批判する能力もありません。ありませんけれども、私は、将来総理大臣になるかもしれないそのような人がこのようなものの考え方を出されたことに、心から敬意を表します。  と申しますのは、いまいろいろ日本の公害の防止のために、あるいは自然環境保全のために、要するにわれわれの日本環境保全するためにいろいろなことがやられております。そのためには、たとえば自動車の規制であるとか、あるいは工場の分散であるとか、あるいは研究学園都市を新しくつくるとか、いろいろな政策が立てられ、それが実行に移されておりますけれども、こんなものはほとんど効果を奏しておりません。残念なことです。それはそう言っちゃはなはだ失礼ですけれども、目先だけの思いつきなんですね。あるいは一部の考え方でやるからだと思うのです。  いまこの段階ほんとう日本の公害を防止して、豊かな、健康なわれわれの自然環境をつくろうと思うならば、ほんとうに思い切った、徹底的な政策の大転換、発想の大転換が必要だと思います。そのような考え方とそれを実行する勇断が、いま一番日本に必要な時期だと私は思うのです。単なる思いつきや目先だけでちょこちょこやってもどうにもなりません。実は、美濃部知事が私のところにお見えになりまして、さしで光化学スモッグ対策を話したいということでございますから、お目にかかっていろいろ相談します。いろいろ協力はするつもりでおりますけれども、単なる自動車規制ぐらいではおさまらないと思うのです。実際の内容はわかりませんけれども。ですから、私は、そういうことで田中通産大臣が——ですな、まだ。この人がそのような思い切ったことをやろうという構想を発表されたことに対して、非常な敬意を表します。内容は知りません。知りませんが、よほど思い切ったものに違いないと思うのです。ですから、この人がこのようなことを実行するような地位にもしつかれましたならば、われわれは喜んであらゆる協力をしてりっぱな案をつくりまして、思い切った勇断を持ってこの日本列島の新しい考え方に着手させなければならぬと思う次第でございます。
  241. 大原亨

    大原委員 一言。内容はよくわからぬがたいへんな英断だというのはおかしい。非常に不可解な答弁があったわけですが、それで経済企画庁の政務次官、あなたのところも総合官庁、こちらも総合官庁ですが、総合官庁が機能を果たしていないところにこういう環境破壊がある。各省は企業と密着して、日本国株式会社のまあ支店みたいなものです。そういうのが非常に強力な発言をして、実際上、環境庁や経済企画庁の総合官庁が機能を発揮していない。計画はつくるけれども、総花的な計画であって、中身というのは全く変わっている。  そこで問題は、旧全総は拠点開発方式、大都市方式をやって、これを地方分散開発方式にしたのが新全総だと思うのですね。それをまたばあっと全国にばらまこうと、こういう非常に威勢のいい議論です。もちろんGNPの一〇%以内にという議論がある。そういう議論等があって、環境保全生活優先という観点をどういうふうにやっていくかという、そういう観点等については明確でない点があるわけです。これは自然はできるだけ残しておこうという、そういう考え方と実際上はぶつかっていく議論ですね、ここでいま議論している議論と。そこで経済企画庁はこれについてはどういう見解を持っておられるか、一言お答えいただきたいと思います。
  242. 木部佳昭

    ○木部政府委員 われわれ、新全総の総点検にあたりましては、たとえば、いま当委員会審議されております自然環境保全法が実施された暁におきましては、その運用にあたりましては、その法の精神というものを十分われわれは尊重して、そうして高度福祉国家にふさわしい均衡のとれた国土の実現に努力してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  243. 大石武一

    大石国務大臣 私思うのですが、たとえばこの新全総あるいは新新全総でもけっこうですけれども、日本にかくこまかく企業分散するということだろうというふうに思うのです。私、そういうことも入っておると思います。それもいいと思うのです。ただ、それの前提として、日本のこれからの経済、産業構造というものは、いままでのような高度経済成長に達するまでの段階のような歩み方をしたらいけないと思う。このような高度経済成長に達した以上は、いままでと違ったような行き方をしなければいけないと思う。たとえば、いままでの日本の高度経済成長の土台は、外国からできるだけのあらゆる原材料を輸入して、それを日本の技術、労働力によってものをつくり上げて、国内で使って外国にどんどん輸出してもうけたということが、いままでのあり方だったと思うのです。今後もそのようなあり方を続けるようでは、おっしゃるとおり、日本全島に公害をばらまく。そういう前提のもとでこの新全総がやられるならば、日本に公害をばらまくことになります。  これからの日本の産業はそのようなものであってはならないと思うのです。たとえば、もうこれ以上石油基地を倍にふやすことも三倍にふやすことも不可能です。ですから、石油基地なんというものはふやす必要はない。ただ、石油の需要量が多いならば、そういうものはむだな、五十万トン、百万トンのタンカーで運んで海をよごして、日本の内地をよごすよりは、当然原産地を中心にしてそのような工場をつくって、そこでその途中までのいろいろな生産をするとか、たとえば鉄鋼にしても原産地を中心にして、そこへ日本から工場を持っていって、そうしてそこで製品を、半製品なりあるいは適当なものをつくり上げて持ってくる、そのものを使って日本がさらに高度成長するというのでなければ私はだめだと思うのです。  そのような場合に、産地にそのような工場を持っていくのは公害の輸出じゃないかという非難がありますけれども、それはもっとわれわれがその場合に公害を出さないような心がけをすればいいのでありますし、また御承知のように、日本のような国土で、人間が住む平地が一万平方キロぐらいしかない、そこで一億の人間がごちゃごちゃ住んでおって二千億ドルのGNPをつくり上げるというような、そういう条件とはまるっきり違います、国の大きさも何もですね。そういうことですから公害の程度も違ってくると思いますし、そういう配慮をすれば、公害の輸出はそうならないと思いますから、そういうことを前提として、産業のあり方を全部変えた上での日本全体の正しい平地の利用ということになれば、私は、自然を十分に守りながら日本の正しい開発ができると考えるわけでございます。
  244. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと長官、いまの考え方は、「国及び地方公共団体は、すべての産業政策及び企業利益に優先して公害の防止に関する施策を実施しなければならない。」という野党提案のこの環境保全基本法案の中にこういう一項目を入れているのですが、それに賛成ですね、いまの考え方からいきますと。
  245. 大石武一

    大石国務大臣 ちょっともう一ぺん読んでください。
  246. 岡本富夫

    ○岡本委員 「国及び地方公共団体は、すべての産業政策及び企業利益に優先して公害の防止に関する施策を実施しなければならない。」
  247. 大石武一

    大石国務大臣 ことばづかいにもいろいろよりますけれども、大体そのような精神は賛成でございます。
  248. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ次に、最初環境庁要綱を出された時点では、取締官制度といいますか、環境取締官制度のような準司法的な取り締まりの項目があったように思うのですが、今度はこれが抜けておる。そこで、先ほど長官のこれに対しての答えは、警察のほうでいろいろとやってやろうというような話だったから抜きましたというようなことでしたが、警察庁来ておりますね。たとえば、原生林あるいはまた自然環境破壊、こういうものの犯罪捜査ですか、こういうものが警察官でできるのかどうか、非常に私は疑問なのであります。いまこの法案を見ると、そういう訴えがあったら実地調査をしてあとでこうやる。これはやはり現行犯でなければだれがやったかわからない。こういうことを考えますと、警察でこれがほんとうにできるのかどうか、ちょっとこれを一ぺん警察庁のほうからお聞きしたいと思うのですが、いかがですか。
  249. 関沢正夫

    ○関沢説明員 お答えいたします。  お尋ねの点について、対象になりますような国立公園の中とか、そういったところにつきましては、最近はそれは同時にレジャーの対象地域ともなっております。当然に警戒、警備の対象になっている区域でありまして、むしろ、どちらかといいますと警察官が非常に動員されている、こういう状況でございます。  それから、一方特にお尋ねの点は、たとえば、そういう高山植物その他自然公園法違反のような犯罪の取り締まりについて非常に特殊の知識を必要とするのではないかという御質問かと思いますが、これは必ずしもわれわれとしては高度の知識を必要と思っておりません。現に過去におきましてもそういう取り締まりをやってきております。今後も引き続いて、そういう取り締まりについては、やはり自然環境は守るという強い時代の要請もございますので、取り締まりを強化していきたい、こういう考えでございます。
  250. 岡本富夫

    ○岡本委員 原生林の中へは人が立ち入ってはいけない、そういうような立ち入りを規制したようなところもあるわけですが、そういうようなところ、あるいはまた人がほとんど通ってないところ、あるいは行っていないところ、こういうようなところをやはり警察官がパトロールするわけですか。その点を一ぺんお聞きしたい。
  251. 大石武一

    大石国務大臣 立ち入り制限ということは、たとえば尾瀬のようなところがございます。現在五十万人の人が一年間に出てまいります。これが七十万、百万になりますと、私はとうてい収容しきれないと思うのです。そういう意味で、そのような場合には立ち入りを制限するというようなことが骨子でございまして、原生林の中にだれも一人も入っていけないように見張りをするというようなことは考えておらないのでございますので、その点御了承願いたいと思います。
  252. 岡本富夫

    ○岡本委員 この法案の「立入制限地区」十九条の第三項「何人も、立入制限地区に立ち入つてはならない。」ただし、許可を受けた者あるいは非常災害のときあるいは保全事業をする者、まあ大体こういうような者以外の人は立ち入ってはいけないというような規定があるわけですね。そういうようなところを警察のほうで全部パトロールして、そういう立ち入らないようなことができるのかどうか、これは私非常に疑問なんですが、いかがですか。
  253. 関沢正夫

    ○関沢説明員 端的に申し上げて、原生林を全部パトロールするというふうにお答えすることはたいへん無理だと思いますが、たとえば、今度特に問題になりました特別司法警察職員制度の予定しておられるような人員の程度の活動は可能でありましょう。こういう趣旨でございます。
  254. 岡本富夫

    ○岡本委員 たき火をしたりいろんなことをやっているのを、山の中では、なかなかそう何もかも全部警察ではわからないのではないかと思うのです。そこで、この二十九条第三項において「第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」こういう一項が入っているわけですが、警察で全部こういうことはできないのではないか。政府法案には、公害問題の調査にあたっては、ほとんどこういう犯罪捜査のために認められたものとは違うんだというように全部入れているわけですが、こういうことから、結局は公害あるいはまた自然破壊、こういうものの取り締まりのポイントが薄らいでしまうのではないか、こういうふうに私は考えるのです。これはアメリカあたりでは保安官というのがおりまして、それが映画に出てくるわけですけれども、非常に効果をあげているわけですよ。日本ではなぜこれができないのか。せっかく最初の環境庁要綱の中には入っておったわけでしょう。ただ、警察でできるのだからよろしいなんて、そう簡単にこれを抜いたとは私は思われないのですが、その点のいきさつをひとつお聞かせ願いたい。
  255. 首尾木一

    首尾木政府委員 原案には、司法警察職員としての権限を行なう職員を環境庁長官または都道府県知事は命ずることができるというふうになっておりまして、この規定を置きましたのは、先生のおっしゃいましたように、この自然環境保全法についてのあるいは自然公園法につきましての各種の犯則に対しまして、司法警察職員のそういう肩書きを与えておくことが予防的な意味におきまして効果があるというような考え方から、そういうような規定を置いたわけでございます。しかしながら、その後、この司法警察職員の問題につきまして関係法務省あるいは警察庁とお話し合いの段階におきまして、現在のような手薄な管理員の状況のもとにおきましては、こういう職権を付与するということによりまして、他に行なう必要のあります各種の指導の事務でありますとか、あるいは管理の事務でありますとか、そういったようなものが、この職権の行使のために非常に多くの時間をとられるということになりまして、むしろ現段階では不都合な結果になるのではないか。それよりもむしろこの問題については、今後警察のほうで、この自然環境保全法のような考え方で、自然保護についての犯則に対する態度というものをきびしくやるということであるならば警察のほうでも大いにやろうというようなことでございましたので、現段階ではこれを制度化するのを見合わせたわけでございまして、今後われわれこの管理員の充実と相まちまして、さらにこういう問題につきましては検討をし、将来においては、このようなことについて、実際の問題としてこれが動くようになりますれば、そういう制度を実現したいという希望を捨てておるものではないわけでございます。
  256. 岡本富夫

    ○岡本委員 まあ将来そういうような考え方で入れていきたいということですから、了解しておきましょう。  そこで、次は国民の理解も得るとかいうような、これは第七条になっておりますが、「知識の普及等」というところですが、これは官報あたりに載せたところで、一般の方にはなかなか理解できないわけです。官報を絶えず見ているわけではありませんからね。そこで、この「国は、自然環境に関する知識の普及を図るとともに、自然環境保全の思想を高めるように努めるものとする。」と、非常に抽象的なんですね。われわれ野党三党では、これを環境保全基本法案の三十三条「国民の理解」というところで、「国及び地方公共団体は、学校教育、広報活動その他の手段により、良好な環境の確保の必要性についての国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。」というように、非常に実体法として親切に書いているわけです。ところが、この自然環境保全法案を見ますと、非常に抽象的ではっきりしていない、こういうところをひとつやはりきちんとしなければならぬのではないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  257. 大石武一

    大石国務大臣 これはおっしゃるとおり、あまり具体的に書いてございませんが、要するに、われわれ環境庁としての心がまえでございます。でございますから、ただいま岡本委員のおっしゃいましたような学校教育とか、社会教育とか、あるいはいろいろな講演会とか、いろいろな行事であるとか、そういうことを通じまして、できるだけ国民に自然を愛するような、自然環境を守るような思想を徹底するように努力をいたす、その心がまえを高めてまいりたいと考えます。
  258. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、こういうように修正をして、野党三党案のようにきちんとしておいたほうが法律としていいのではないか、私はこういうように思うのですよ。いかがですか。
  259. 大石武一

    大石国務大臣 私がいま申しましたように、これは環境庁の心がまえの問題でございます。国民にこうせよというものではございません。したがいまして、別にいま学校教育とか社会教育とかを並べなくとも、われわれの心がまえの中にそれをはっきりと——われわれ心かまえを持つことか第一でございます。そういう意味で、国民にこうせよというものではありませんから、われわれの心がまえとして御意見を十分生かすよう努力をすればそれでけっこうだというように思うわけでございます。
  260. 岡本富夫

    ○岡本委員 国民にこうせいというのじゃないのです。野党案を読みましょうか。「国及び地方公共団体は、学校教育、広報活動その他の手段により、良好な環境の確保の必要性についての国民の理解を深めるように適切な措置を講じなければならない。」これは国や地方公共団体に言っているわけです。国民に言っているのじゃないのです。このほうがいいでしょう。どうですか。
  261. 大石武一

    大石国務大臣 それもけっこうですけれども、それだけでもほんとうを言えば足りないのです。「その他」ということには一ぱいございます。「その他」の中には講演会もありましょうし、いろいろな行事もございましょうし、幾らでもございます。ですから、一つ二つの例をあげてもあげなくても、要するにこれはわれわれの主宰者側がそういうことを守る、実行する、行政をやるほうの心がまえでございますから、いまのおっしゃるようなことは、当然それを考えなければ行政はできないわけですから、われわれ環境庁といたしまして、学校教育、社会教育その他のことによって、はかるとか努力をしなければならないとか書かなければ環境庁の役人が思いつかないとか、そのような指導、努力をしないとか、そんなことは考えられません。ですから、もし、そういうようなことを書かなければ環境庁の役人がそういうことをしっかりできないというのなら、五十も百も、あらゆる考えられる項目を並べたらいいと私は思うのです。その二つだけを並べて「その他」と言ったって、そういうことぐらいは当然考えなければ、環境庁としてはこのような行政の指導はできないはずでございますから、おっしゃるようなことは十分心に入れまして、そういうことをやらせる方針であるわべでございます。
  262. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも居直っておるような状態ですが、これはやはり長官、私はここできちっと、それこそ各所管庁といいますか、学校教育は文部省ですよ。先ほどもお話があったように、環境庁は手足がないのですからね。しかも、国あるいは地方公共団体に対して、こういうような一つ規定をきちっとしておくほうが、私はほんとう自然環境を守る大きなもとになると思うのです。いまの「知識の普及等」は、「国は、自然環境に関する知識の普及を図るとともに、自然環境保全の思想を高めるように努めるものとする。」これは努力規定ではないですか。われわれの言うのは、きちっと講じなければならないという、はっきりとした政府あるいは地方公共団体に対しての要請であって、国及び地方公共団体に講じなければならぬというような案を私どもは出しておるのです。たなたのほうでは「努めるものとする。」ですよ。それでは、この一つを見ましても、この法案というものがいかにしりすぼみというか、いいかげんになったというか、あるいは弱くなったというか、この法案が後退した、後退したといわれるのもそこに原因があるのではないかというように私は思うのですが、もう一ぺんひとつお聞きしたい。
  263. 大石武一

    大石国務大臣 御意見はごもっともでございますから、そのように、言われるように留意してまいります。
  264. 岡本富夫

    ○岡本委員 次には審議会の問題ですが、自然環境保全審議会は非常に大事だと私は思うのです。なぜかなれば、これは農林省ですか建設省ですかが出した調整区域の問題、要するに、調整区域の線引きの件で非常にもめたことがありましたが、これを見ますと、審議会できめて、そしてここを特別区域にするとか、そのときに相当個人的な利害関係が発生しまして、いろいろな紛争が起こるのではないかと思うのです。したがって、こういったいたずらな紛争を避けるためにも、この審議会がしっかりしておって、そしてその審議会の中に公聴部会といいますか、そういうものを設けるというようなことを規定しておくことが私は大事ではないかと思う。しかも、野党三党では、この環境保全会議というもの、これはシンクタンクみたいなものをつくっているわけですが、それでいろいろな問題に当たろうとするのですが、これは「自然科学者及び社会科学者を含む学識経験者で組織する」そうして「環境保全会議委員は、両議院の同意を得て任命される」なおその上に、この際ですから、そういった審議会の中に公聴部会を設ける。これはもうアメリカあたりではできてるわけです。そうしますと、いたずらに紛争が起こったりしなくてきちっとうまくいくんじゃないか、だからこの審議会についてはもう一ぺん考えなければならぬと思うのですが、これについてはいかがですか。
  265. 大石武一

    大石国務大臣 私は審議会というのは相談相手だと思います。環境庁の相談相手が審議会だと考えておるのです。ですから、審議会というのは、できるだけ有能な人、りっぱな人、見識のある人にお集まりを願いまして、われわれの相談相手になっていただきたいというのがわれわれの考えでございます。したがいまして、そこにはあまりめんどうくさい、それを拘束するようなものは設けませんで、できるだけ自由濶達な考え方において、その審議会の委員は、おかしなことをするような人にはお願いしません。高い見地から、自由濶達な運営において、考えにおいて、われわれに正しい判断なり意見を出していただくようにお願いしたい、こういうのがわれわれの審議会に対する考えでございますので、あまり拘束するようなことはいたしたくないというように考えております。
  266. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのほうのこの政府案でも、審議会についてはいろんなことが出ておりますよ。あまり拘束するようななんておっしゃるけれども、これは人員とか、そういうことでありますけれども、審議会のメンバーを、審議会の人たちの活動を拘束するのではなくて、この審議会のメンバーには自然科学者あるいは社会科学者、こういうものを含めた学識経験者、こういうことをきちっと明記しておいたほうがいいのではないか。学識経験者ならだれでもいいというわけにいかないと私は思うのです。これがまず第一点。
  267. 大石武一

    大石国務大臣 私は学識経験者ということばはあまり好きじゃないのです。何が学識経験者か、それに自然科学者、社会科学者という名前も好きではありません。一般人でけっこうであります。ただ、高い見識を持った、りっぱな判断力を持った人をお願いしたいと存じます。別に肩書きとか、そういうものは要らないと思いますので、自由潤達な民間人ということでけっこうだと考えております。
  268. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、あなた、そういう考えでは、ほんとう自然環境を守ることはできない。あなたもお聞きになったと思いますけれども、たとえば生態学者、そういったいろいろなところから論議できる学者、そういう人でなければほんとう自然環境を守ることはできなくなるのではないかというのが一般の考え方であり、また長官もそう考えていらっしゃることだと私は思う。一般の人ならだれでもかまいませんなんて、そんなめちゃくちゃなことを言ったら話になりません。そんなことだったら私は質問をやめます。   〔八田委員長代理退席、委員長着席〕 だれでもいいんだ、一般の人でいいんだなんて……。審議会のメンバーというのは大事なんです。この審議会のメンバーの中に色がついたりあるいは利害関係を持つ者がおったら話にならない。しかも、私どもが提唱しておるところの自然科学者あるいは社会科学者、こういったほんとうの専門的な意見を述べられる人があって初めて自然環境というものは守られるのではないか。いかがですか。
  269. 大石武一

    大石国務大臣 これは基本的には全く御意見のとおりでございます。われわれは、一般人と申しましても、もちろんりっぱな見識を持った、正しい判断力と専門的な知識を持った方をお願いするのでございますから、岡本委員と全く同じ考えでございます。そういうことで、われわれはおっしゃるとおり、たとえば、いろいろ生態学者であるとか社会学者であるとか、もちろんそういう中から選ぶということを考えております。われわれの気持ちはそういうことであるので、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  270. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういって理解をしていただければ非常に今後進むであろう、こういうふうに思います。  そこで、もう一つ提案を申し上げているのは、先ほど申し上げました審議会の中に公聴部会というものを設けて、そうした第三者の人たちがその地域の皆さんの意見を聞いてあげて、そしてここを特別地域にするとか、やはりこの了解をとらなければ、いたずらに紛争が起こって、これは環境庁あるいはまたそういった所管の人が行きますとめちゃくちゃになっちゃう場合もあると思うんです。ですから将来——いますくとは言いませんけれども、審議会にそういった公聴部会を設けてやっていくという一つの方法もあるのではないか、こういうように私は提案をしておるわけですが、いかがですか。
  271. 大石武一

    大石国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。ですから、審議会ができましたならば、われわれもそのような考え方を述べまして、正しいそのような運営をしてもらうように極力要請いたしたいと考えます。
  272. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、この自然環境保全法案の中には、原子力発電というものの規制と申しますか、立地についてのいろいろな考え方が全然含まれておらないのでありますけれども、いま福井県あるいはまた関西電力の那智勝浦ですか、あっちのほうの計画を見ましても、そうした自然公園の中につくろうとしているわけでありますが、これについての環境庁考え方、あるいはまたそれに対する申し入れあるいは調整というか、こういうものはできないのか、あるいはやるのかやらないのか、これもひとつ……。
  273. 大石武一

    大石国務大臣 御承知のように、原子力につきましては、従来は全部原子力委員会が所管いたしまして、なかの省庁は口出しができないことになっておりました。ところが、最近科学技術庁長官の賢明な御理解によりまして、それが環境問題に関しては、原子力委員会よりも環境庁で所管すべきであるという発言がございまして、そのような方向のもとにいま行政が進められているわけでございます。われわれも、原子力の問題についての環境保全につきましては、やはりわれわれが責任をもってそれに当たらなければならないと考えて、そのような意見の調整をいたしておるわけでございます。  そういうことで、おっしゃるとおり、原子力問題については相当問題があると思いますが、これはやはりいまのそういう行政方向に従いまして、われわれも十分所管してまいるという心がまえを持っておるわけでございます。この法案の中にはそういうことは書いておりませんけれども、当然われわれの行政基本的な態度は、原子力についての環境保全の問題については、十分に注意してその所管をするというふうにつとめたいと考えております。
  274. 岡本富夫

    ○岡本委員 では政府は、大体法律に基づいて事が行なわれるわけでありますから、この原子力の設定あるいはそういうものについてのどの法律に基づいて行なおうとなさっておるのか、それだけ一つお聞きしておきます。
  275. 大石武一

    大石国務大臣 原子力発電所を設置するかしないかということはどの法律ですか私はよくわかりませんが、ただ、私のほうとしては、自然公園法並びに新しいこの法案によるわれわれの守備範囲内におきましては、いろいろな大きな構築物をつくる場合にやはりわれわれの了解、許可が必要になります。そういう面で十分に意見の調査がつくと考えておる次第でございます。
  276. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから次に、長官が今度ストックホルムへ行かれて一番問題、また特に気がつかれことは、やはり環境問題についての国際協力、これについて非常に協力しなければらぬというような御決意を承ったように思うのですけれども、また新聞記事を見てもそうでありますが、われわれ野党で環境保全基本法案をつくったときに「国は、世界的な規模において環境の汚染及び破壊を防止することが現在及び将来にわたって良好な環境保全するために欠くことのできない要件であることにかんがみ、良好な環境の確保のための対策に関し、積極的に国際協力を推進しなければならない。」という非常に先を見通した条項を入れているわけですが、これに対しては、非常に賛成だと思うのですが、いかがですか。
  277. 大石武一

    大石国務大臣 環境保全基本法案は二、三年前に出されたものと聞いておりますが、そのような時代にそのような見識を示されましたことに対して心から敬意を表します。全くわれわれも現在の立場においては同感でございます。やはり世界環境をみんなの協力によって守っていかなければならないと考えております。
  278. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで長官自然環境を何とか守らなければならぬと言うが、毎日毎日自然破壊をしておる田子の浦の問題ですね。新聞にも出ておったと思いますが、これに対してはどういう政策をとり、どういう計画をあなたのほうでは指示をしておるのか。どうも静岡県においてもまた富士市でも、いまどうしようもない状態ではないかと思うのですが、これについての見解をひとつ承っておきたいと思います。
  279. 大石武一

    大石国務大臣 田子の浦のヘドロを中心とする汚染問題につきましては、非常に長い以前から問題になっておりまして、いろいろとおととしあたりから対策を立てておりますが、なかなか実効があがっておりませんでした。現在は、まず第一に、ヘドロを流す下水を十分に整備することが一番大事でございます。そういう意味で、われわれは汚水の処理に対して全力を尽くしてまいりました。幸いに静岡県庁並びに各企業の努力によりまして、いま下水整備に当たっておりまして、この六月だったか、七月までには、全部完全にその汚水を処理することにきまって、いま努力いたしております。一応大企業は大体下水の処理ができておりますので、中小企業を合わせまして一つの総合的な処理場をつくってやるという方針でありましたが、この計画がうまくまいりませんで、各企業独自でおのおの単独でその汚水を処理するという方針に変わりまして、去年の秋からそのような設備に取りかかっております。大体ほとんどいまでき上がったと思います。まだ最近の報告は参っておりませんが、六月か七月には全部それは仕上げることに約束しておりますから、大体でき上がったと思いますので、今後汚水を田子の浦に流し込むことは非常に少なくなると考えております。  同時に田子の浦のヘドロの処理も、御承知のように、いま三十万トンだけはとりあえず富士川の河川敷に、これをポンプアップしまして、ここで脱水をして乾燥をして、そこに緑地をつくる一つの下地にするということで大体うまくいっているようでございます。しかし、まだ百万トンくらいヘドロがございますので、これをどうするか、いま非常に考慮中でございますが、一応まずヘドロを流し込む設備だけは大体出そろったのではなかろうか、そういうのができ上がりましたという報告をいま待っておる段階でございます。
  280. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、きょうは時間があれですから、それはまた一般質問のときにしますが、もう少し認識を——一ぺん調査していただけませんか。ほんとうのことを申し上げますと、いまのは違うのです。そういう報告が来ておるかもしれませんけれども、毎日毎日ヘドロあるいはPCBの入ったものがどんどん流れ込んでいるわけですね。このままいったらどうなるのかという現在の状態です。ですから、これは一度あなたのほうから調査をひとつしてもらって、そしてまた答弁をいただき、またさらに施策を加えてもらいたいと思います。  そこで、最後一つだけ聞いておきたいことは、この自然保護法とひっかかる鳥獣取り締まりですが、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の改正をしようというようなことで、長官が、狩猟者に対して五万か十万くらいの狩猟税を取ればよいというような構想を発表させたという話がございましたが、金さえ取ればいいのだという考え方は、私はちょっと早計ではないかと思うのです。と申しますのは、私どもの選挙区でイノシシなんか出て非常にぐあいが悪いことがあるのです。作物をやられてしまうというようなこともありますので、そういった面をも考えた方法でなければいけないのではないか。こういう長官の発表と申しますか、考え方は、ひとつ白紙に戻される考えがあるのか、これをちょっとお聞きします。
  281. 大石武一

    大石国務大臣 いまの五万か十万というのは、これはたとえ話で、決して私の構想の核心ではございません。私は、いつか申しましたように、やはり日本の鳥獣を保護するためには、どこでも鉄砲を撃っていいといういまのやり方を変えまして、鉄砲を撃つところは——狩猟というのはスポーツでありますから、スポーツということになっておりますから、を楽しむには、やはり一定のルールを守って、一定地域、競技場でやるべきであると考えまして、猟区を各地にたくさんつくってもけっこうですし、各県何カ所でもけっこうでございますが、猟区をつくりまして、そこでスポーツを楽しんでいただく、ハンティングを楽しんでいただく。それ以外の地域は、どこから鉄砲のたまが飛んでくるか何も心配しないでもいいような、安心して鳥やけだものが住めるような地域にしたい、鉄砲を撃つところは猟区においてやっていただきたいということを中心考えたのでございます。そのときに、スポーツですから、十分に鳥やけだものと楽しむなら五万や十万の入場料を取ってもよかろうというたとえ話をしただけの話でございまして、それは金額のことは問題でございません。そういう考えで、私はいまもその考えを捨てる考えはございませんが、ただイノシシがどうだこうだということは、もちろんこれはわれわれ人間に害になる問題はそれだけの処置をしなければなりません。そういうことはもちろん考えなければならぬけれども、基本的にはそのような形で猟区によってスポーツを楽しむような制度にしたらいいのではなかろうかという考えを持ったのでございまして、それだけでございます。
  282. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、長官考え方は、全国を禁猟区にして、そして許可するところをきめるというのじゃなくして、そういう何といいますか、スポーツを楽しむ人もいるでしょうが、しかし反面、今度はそういった農家に害毒を及ぼすところのイノシシとかいうものに対しては、そういう区域を指定してやらせよう、こういう考え方なんですね。そして五万か十万取るというのは一つのたとえであって、そこまではいっていないのだ、こういう考え方なんですね。これだけをお聞きして終わりたいと思います。
  283. 大石武一

    大石国務大臣 大体そうでありますけれども、全国を禁猟区にするということばは使いたくないのであります。これは猟友会の方が非常に気にしておられますので……。つまり日本で鉄砲を撃つときは猟区において狩猟をやっていただきたい。猟区で鉄砲を撃っていただく。それからもちろん場所によってではなくて、そういうような事態において害獣駆除なり何かをする必要がある場合には、具体的なことはよくわかりませんが、県知事の権限なりだれかの権限によって、随時そういう駆除を行なうべきところはもちろんやる必要があるということで、もっと弾力性のあるものにしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  284. 岡本富夫

    ○岡本委員 あと古寺委員に譲りまして、一応きょうはこれで終わります。
  285. 田中武夫

    田中委員長 次は、古寺宏君。
  286. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に林野庁長官にお尋ねをしたいと思いますが、きょう午前中からいろいろ論議をされた問題ではございますが、今後の国有林の財政の問題でございます。国有林会計が非常に赤字がふえつつある。この問題について、はっきりした林野庁としてのお答えがなかったわけでございます。今後この赤字が相当にふえることが予想されるわけでございますが、この対策についてまずお尋ねしたいと思います。
  287. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  国有林の会計は、戦後特別会計制度になりまして、収入の大部分は、木材の販売収入でございまして、九割以上を占めております。また支出は、人件費が六割くらい最近は占めておるわけでございます。戦前は、木材の販売収入のうちの半分くらいしか実は山に入ってなかったということがございまして、あとの半分は、開拓財源とか、その他一般会計のほうに回っておったわけでございます。したがいまして、治山事業であるとか、林道の事業とか造林事業、こういったような仕事が十分に行なわれなかったといううらみがございまして、戦後、いま申し上げたような特別会計制度が発足したのでございますけれども、最近は、御承知のように、外材が五割以上を占めておるというふうな状態、その他いろいろな原因がございまして、木材価格は横ばいになる、人件費は他産業並みに上がるということから、御指摘のような財政上の赤字の問題が出てまいったわけでございます。  しかし、国有林経営の目的は、実は赤字をなくすることが目的だとは私は考えておりません。職員は、定員内職員が四万人、定員外の職員、これは主として現場の作業に従事する中堅の職員でございますが、これが半年以上一年未満というのが一万九千人くらいございます。それから一年間継続で勤務する者が約一万六千人、合わせますと三万五千人。定員内職員以外に、いま申し上げたような半年以上つとめておる者が三万五千人、そのほかに臨時を入れますと七万七千くらいになるわけでございます。こういうふうな問題をかかえまして、人件費が相当高騰していく、収人は減少していくという中で、国有林の経営をどう持っていくかという基本的な問題になるわけでございます。  従来、森林に対する国民一般の要望というものは、私から申し上げるまでもなく、主として木材の生産にあったわけでございます。戦争中は軍用材の増産、戦後は復興材の増産、つい十年くらい前までは価格安定材の増産に国有林は協力すべきであるというきびしい要請があったわけでございます。最近ようやくにして木材生産以外の自然保護に関する非常に強い要望が出てまいっております。私は、この点につきましては、まことに当を得た要請であり、森林そのものを国民の皆さんが見直してくれておるというふうに感じ、内心実にうれしく思っておる次第でございます。  そこで、今後の国有林経営の目的は、木材を出すことももちろん大事ではございますけれども、やはり森林そのものの機能、公益的な機能性重視と自然保護を重点とした林業に切りかえていくべきであるということにあると思うわけでございます。そういたしますと、やはり大面積皆伐をやめなければならぬ。択伐とか禁伐をふやさなければならない。木材収人は減ってまいります。これにどう対処するか。従来皆さんの御指摘を受けておりました、もっと能率のいい経営をしなさいということも、もちろん大事でございましょう。したがいまして、そういう近代化、合理化をいたしました上で——これにも限度かございますが、そういう一つの計画を立案した上で、たとえば治山事業についての経費であるとか、造林事業あるいは林道についてのそういった生産基盤の造成についての経費は、一般会計からの負担あるいは融資についての金利の補てんとかいうような、いろいろの方法を考えていただくことが必要であろうと思うわけでございます。  これらの問題を含めまして、特別会計制度のあり方その他事業の近代化のあり方一切含めて、ただいま林政審議会国有林部会で検討を願っておるところでございます。四十七年度を最後としまして積み立て金もゼロになっております。四十八年度からは抜本的な制度の改正を行なわなければならない段階に立ち至っているわけでございます。そういう意味で、近く林政審議会の答申をいただきました上で政府原案をつくり、今後の合理化についての方針を確立してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  288. 古寺宏

    ○古寺委員 今度のこの自然環境保全法ができるとしますと、いろいろな地方においては問題が起こるわけです。一つの例をあげますと、国有林活用法というのがございます。現在各市町村から国有林を活用さしていただきたいということで県に申請をいたしまして、林野庁と現在調整中でございますが、この国有林活用法と今回提案になっております自然環境保全法との関連性は一体どういうふうになりますか。
  289. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  二つの法律の間に直接の関連はないわけでございますけれども、活用法は、主として農業の振興のためにこれを用いるという場合に、たとえば農地あるいは草地といったようなものが少ない、農業振興のために国有林をぜひ活用したいという場合、あるいはまた、その他公共的な使命を達成するためにぜひ必要であるという場合に、林業経営との関連を勘案しながら最小限度にこれを活用していただくということになっておるわけでございます。  なお、あわせて、活用しました場合にこれを売り渡す場合もございますし、売り払う場合もございますし、貸し付けする場合もいろいろございます。それらの収入につきましては、できるだけ国土保全上必要な保安林の買い入れであるとか、その他の林業経営の投資に必要な財源に充てるというたてまえになっておるものでございます。  いずれにしましても、森林の経営、つまり森林といいますのは、先ほど来申し上げておるように、木材の生産以外の公益的な機能を発揮するための森林経営、これに支障ないように最小限度にというふうに考えておるものでございます。
  290. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうふうに活用するのはけっこうなんですが、活用することと環境保全法とのいろいろな問題点が生じてくるのじゃないかということも考えられます。  さらに、現在青森県の例で申し上げますと、下北郡にいたしましてもあるいは津軽半島の弘西林道等の周辺にいたしましても、林野庁長官のお話とは全く違う伐採が行なわれております。山奥になれはなるほど——けさほど島本議員からも御指摘がございましたが、林道の問題もそうでございます。大規模な自然林に対する伐採というものが現に続けられておる。こういうことは、結局はこういう法律ができても、自然環境保護するという面で非常にむずかしくなってくるのじゃないか。  さらに、先ほど申し上げましたように、国有林会計の赤字が将来どんどんふえていく、そういうかみ合いというものが今回の自然環境保全法の大きな問題点であると思うわけです。私の考えとしては、いままで木材生産庁であった林野庁が、先ほど林野庁長官からもお話になりましたように、自然を保護する、緑を守る林野庁に変わらなければいけないわけです。したがいまして、先ほど大石長官は、公害を防ぐためにあるいは環境保全するためには大勇断をもって臨まなければならないというようなお話がございましたが、今回の自然環境保全法提案するにあたっては、環境庁の中に日本の林野行政というものを包含した、そういう考え方に立った環境保全法でなければこの目的を達成することは不可能に近いのではないか、こういうふうに考えるわけなんですが、大石長官のお考えはいかがですか。
  291. 大石武一

    大石国務大臣 いまの御意見に私は賛成なんです。ただ、これはやはりいろいろな所管が分かれておりますので、他の所管官庁の権限にまで言及することはちょっと遠慮しなければならぬと思いますので、あまり具体的なことは申し上げかねますけれども、いまの国有林保護並びに活用にあたっては、これは公益性を守る分と企業性を守る分、こういうふうに分けて、公益性を守る分については、やはり環境庁においてこれを指導なり所管することが一番妥当ではなかろうかと、私も心ひそかに考えているわけでございます。
  292. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、林野庁長官にお尋ねしますが、現在、林政審議会で審議をしている中では、日本自然環境保全するという問題についても審議が行なわれておりますか。赤字のための審議か、あるいは自然環境保全していくというところに重点を置いた審議か、その内容についてお答えを願いたいと思います。
  293. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 お答えいたします。  林政審議会でこの国有林の経営の問題を取り上げた動機は、いま御指摘のように、国有林の特別会計制度が赤字になったということから、今後どうしようかということが一つの動機でございます。ただ、それらの問題を解決いたします場合に、ただ赤字であるから、では将来どうしたら黒字になるかということだけでは、この問題は解決しないのでございまして、その点は、林政審議会の中におきましても十分議論し、昨年の秋からでございますが、国有林部会でもすでに十数会検討しております。いわゆる国有林の役割りというのは何であるか、国有林に対して国民一般の方々からどういうふうな要請が出ているか、国有林の役割りと申しますか、国有林の使命と申しますか、そういうことから問題を究明していく必要があるということが論議の焦点になっておるわけでございます。  そこで、森林そのものの持つ機能、これは、従来は木材の生産ということに重点が置かれておったのでございますが、森林の中から出てくる木材ばかりでなくて、森林そのものと人間との関係、つまり国土の保全の問題であるとか、水資源の確保の問題であるとか、あるいは土砂崩壊の防備の問題であるとか、あるいはきれいな空気を供給する、あるいは植物ばかりでなく、動物とか、その他一切の有機体としての森林と人間との関係から出発して、国有林はどういう役割りが必要であるかということから論議が始まっているわけでございます。
  294. 古寺宏

    ○古寺委員 林野庁は、結局国有林会計の赤字のために、人目につかない山奥をどんどん電気のこで切ります。ブルドーザーでどんどん林道をつくります。そうしますと、国民の財産であり、またかけがえのない自然を全部食いつぶして、残ったかすをこの環境保全法というもので環境庁がどうにか守っていかなければならない、そういう感じがするわけなんです。したがいまして、当然国有林の赤字会計というものは今後の一番大きな問題点になると思います。  そこで、大石環境庁長官に、政府を代表する大臣としてぜひお尋ねしておきたいのですが、この自然環境保全法というものを実効あらしむるためには、何としてもこの国有林会計の赤字の問題に政府がまず取り組まなければ、この法案の実効を期すことはできない、こういうふうに考えるわけです。そこで大臣の、今後の国有林会計の赤字に対する政府としての取り組む決意、こういうものをひとつお答え願いたいと思います。
  295. 大石武一

    大石国務大臣 私は、政府全体としての意見はまだ取りまとめておりませんので、政府全体の意見としては申し上げられませんけれども、一国務大臣としてはっきり申し上げますことは、日本の国有林の使命というものに対する考え方、認識というものは変わってきております。それに従いまして、やはりいろいろな会計上の制度も変えていかなければならないと思います。そういう意味では、独立採算制によってこれをもっていくというやり方は当然変えるべき時期がきたと考えております。
  296. 古寺宏

    ○古寺委員 大石長官が本気になって日本自然環境を守ろうという熱意がもしおありであるとするならば、この法案提案する以前においてこの問題に取り組むべきである。片手落ちである。こういうことをきちんとやらないでこの法律をつくるということは、これは骨抜きです。むしろこの法案提案する前に、そういうような、まずやるべきことをやりて、しかる後にこの法案提案すべきではなかったか、私はこういうふうに考えるわけなんですが、いかがでございますか。
  297. 大石武一

    大石国務大臣 いまの古寺委員のお話は、全く本筋の話であります。それが当然の行き方でございます。ただ残念ですが、そのような行き方をしてまいりますと、御了解もつくと思いますが、この法案提案できません。二年か三年かかります。それにしては、あまりにも日本の自然破壊がひどいので、とりあえず守ろうという心がまえから、確かに順序は逆でございますけれども、まずささやかな手がかりでも得たいということで、この法案を先に提出したのでございまして、筋からいえば、あなたのお話が本筋でございます。
  298. 古寺宏

    ○古寺委員 さらに、この法律を実効あらしむるためには、それだけの組織なりあるいは人員が必要になってきます。それをいかにこの林野行政とかみ合わせていくかということが大きな問題になってくると思います。現在、国立公園の管理事務所には、わずかに六十二人の人員しかおりません。しかしながら、先ほどお話がございましたように、赤字の国有林には七万七千人の人員がいらっしゃるわけです。こういう林野行政との調整、この法律をいかに実効あらしむるかというそういう準備、体制については、今回全く配慮がなされていなかった。そういうふうにしか考えられないわけです。確かに森林保護の問題については林野庁との間にいろいろな意見の相違があって、この法案提案がおくれたということは承っております。しかし、その問題と同時に、国民のために法律をつくるのですから、やはり実効あらしむるだけの準備、体制が必要ではなかったか。そういう熱意大石長官の場合には欠けておったのではないか。確かにスウェーデンにもお出かけになりましたし、いろいろ御多忙ではございましたでしょうけれども、こういうような大事な、いわゆる柱というものが抜けておったのではないか、こういうふうに思うわけなんですが、この点について再度承りたいと思います。
  299. 大石武一

    大石国務大臣 あるいはおっしゃるとおりかもしれません。私としての手落ちだったかもしれません。またそういう努力も足りなかったかもしれません。その点については率直に反省をいたします。  ただ御承知のように、日本のいままでの行政のあり方というのは、ほかの省庁に対するいろいろな発言、それをするということは大体タブーになっております。そういうことを考えますと、これからはやはり新しい時代に入ります。新しい時代に、やはりそのような旧来の陋習を変えまして、新しいものの考え方、大きな発想の転換が絶対必要になってまいると思います。先ほど田中通産大臣は日本列島改造論を唱えた。中身は知りませんが、たとえば中身がどのようなものであろうと、そのような大きな変革を来たそうというその心組み、意気が必要だと私は思うのです。そういう意味で、この問題に対しまして、われわれは当然ごく近い将来には、そのような新しい発想の転換が行なわれなければならない、またわれわれもあらゆるその努力をするという考え、決意を持っておるわけでございます。
  300. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、現在津軽半島が国定公園の指定の申請をしているわけでございますが、現在車力村のコケ萢それから隠れ沼、こういう非常に重要な湿原地帯が公園の特別保護区域になるかどうかという問題でいろいろ問題になっております。  そこで私は農林省にお尋ねしたいのですが、こういうような当然保護しなければならないような地域を一体開畑計画の中に組み入れておったのかどうか、また現在こういう自然公園の申請が起きているのにそういうものを競合さしておくのか、その点についてまず承りたいと思います。
  301. 櫻井重平

    ○櫻井説明員 まず現在行なっております国営の屏風山地区の概要についてちょっと触れさせていただきますが、この地区は青森県の木造町、車力村、両町村にかかっておる地区でございますが、地元の申請によりまして昭和四十二年から四十五年まで調査を実施しております。それから四十六年に全体実施設計を行なっております。そういたしまして、四十七年、本年度から五十三年までの七カ年の完了の予定で国営で農地開発事業を行なうことにしておるわけでございますが、国定公園との関係につきまして申し上げますと、昨年、昭和四十六年に青森県知事から私どもの地方機関でございます東北農政局長に国定公園指定予定につきまして協議があったわけでございます。両者の間で十分協議を行ないまして、結果、公園計画案とそれから国営の農地開発の開畑予定地区の重複部分約二百ヘクタールでございますが、これは普通地域とされる予定だということで、農地開発の事業につきましては差しつかえないということで、事業を進めることにしてまいったわけであります。その後、先生もお触れになりました地区が、公園の地域の拡張ということになるかと存じますが、そういう問題が、一部の拡張の意向があるというようなことで、現在県内で検討中であるということを私ども聞いておるわけでございますけれども、先ほど申しました地域の機関でございます東北農政局にもまだ正式に協議が参っておりませんので、その具体的な内容につきまして私ども、どういう地域でどういうぐあいに私どものほうの事業に影響があるかということがまだつまびらかになっておりませんものですから、ただいま直ちにお答えするわけにまいらぬわけでございますが、調整を要するというような場合には十分協議いたしまして、両者の調和をはかってまいりたい、こういうふうに存じております。
  302. 古寺宏

    ○古寺委員 私が昨日ですか、御説明を承ったときと全く変わってしまって、これは非常に残念なんですが、簡単に申し上げます。  現在その特別保護地域に指定しようとしている湿原地帯があるわけです。非常に重要な湿原地帯、しかも泥炭層でもって地下一メートル幾らあるのです。こういうようなところをもしこの開畑計画に使おうとすれば何億という金がかかるのです。それがいまこの国定公園の指定の一番大きな目玉商品なのです。ところが開畑するためにこれは売るわけにいかぬとかいろいろな問題が起きているわけです。なぜこういうような何億もかかるようなところを、湿原地帯をわざわざそういう計画の中に組み入れなければいけないのかということをお尋ねしているのです。おたくのほうでは調査をしてこの計画をもう指定したわけでしょう。その点をぼくはお尋ねしているのです。いかがですか。
  303. 櫻井重平

    ○櫻井説明員 計画を決定する際には、まだそれを特別保護地域に予定するというようなことがございませんので、青森県のほうと東北農政局のほうで十分協議いたしまして、計画に取り入れて開畑する地区につきましては差しつかえないというような結論になったわけでございますが、これは正式の話ではございませんが、県等を通じまして聞いておりますが、一部に現在水田で、これを畑地に転換するというような地区が、おそらくただいま先生のおっしゃっておりました地区に該当するのではないかと思います。そういう地区が含まれておるようでございまして、事業発足の際には、地元の申請によりましてこれこれの地区を開畑したい、あるいは水田を畑地に転換したいという申請が参りまして、その地区につきまして私のほうでは計画を立ててまいっておるわけでございまして、正確な数字はわかりませんが、その部分が数億かかるというようなことはないのではないかというように存じております。
  304. 古寺宏

    ○古寺委員 いいですか、これは時間がないのでほんとうはあれなんですが、岩木山ございますね。二十七億もかけて開墾したんです。行ってごらんなさい、もうススキの山ですよ。あるいは津軽半島に行ってごらんなさい、もう減反でたんぼが草ぼうぼうです。そういうときにこういう大規模の農地開発事業をやるのに、なせわざわざこういう重要な湿原地帯を——自然公園として残したい目玉商品なんです。そういうものを何億も何千万もかかるところをわざわざその計画の中に組み入れなければいけないという、ぼくはそのお考えがよくわからぬのです。どういう関係でそういうふうになっているのかわかりませんが、これは今度の法案にもございますね。いろいろな問題が起きてまいった場合に、各省庁とのいろいろな調整の問題が出てくるわけです。そうすると、こういうふうに、農林省のようにこれはもう農地開発事業のためになくてはならぬのだと、こういう計画の中に組み入れてどこまでもがんばった日には、どうにもならぬわけです。これはだれが見てもわかるのです。こういう問題についていま農林省にお尋ねしますと、まだこれから調査をしますというようなお話でしょう。それじゃ、全然知らなかったのですか。もう一回お尋ねします。
  305. 櫻井重平

    ○櫻井説明員 これも言いわけになりますが、最初に、特別保護地区が今度の地区にかかるのかかからないのか、正式な話がございませんでしたので、わからないのでございますが、初めの地区の指定につきましては、先ほど申し上げましたように、協議がございまして十分承知しておりまして、しかも、その地区が普通地域として重複しているというふうに理解しておりまして、その後、特別保護地区の指定問題が起きているということは、新聞あるいは県の関係部課を通じまして報告がございますが、正式の話として農林省あるいは農政局のほうに参っておるわけではないということを申し上げる次第でございます。
  306. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、この三十五条でございますが、とかくいままででも公園の地域にする、こういうと反対する人が出てくるわけです。そういうわけで、いままでは利用して保護するという形でございます。そのために結局は利用されて、破壊されて、何にも残らない。そういうことを知っている住民というものは、まず自分の生活という問題を考えます。当然、今回の津軽国定公園のコケ萢とかあるいは隠れ沼という問題もそういう問題がからんでいると思うわけです。今後、こういうような問題については、国立公園の場合には買い上げ制度がある。しかし国定公園にはございません。この法案によっていろいろな地域を指定いたします場合、そういう問題が起きた場合に、環境庁としては買い上げをするとかあるいは地域住民の将来にわたるいろいろな生活の問題、そういう点にまで配慮をしてあげるお考えがあるのかどうか。たとえば今回の場合でいうならば、現在予算は国立公園の六十億かの予算でございますが、こういうような問題については、やはり弾力的に準用して、これを買い上げて国定公園に指定して、こういう問題を解消しながら自然環境保全していくという考えをお持ちになっていらっしゃるかどうか、承っておきたいと思います。
  307. 大石武一

    大石国務大臣 六十億円の国立公園内の民有地買い上げの方針につきましては、いろいろな意見がございました。実はわれわれは初め交付国債を希望したのでございます。ところが、大蔵省は公債にしてほしいということで、ことしは公債になりました。私は、考えてみますと、やはり大蔵省の考えどおり公債のほうが正しいと思う。やりやすいと思うのです。それをどのような形にするかですね。どのような金額にするのか、何年計画にするのかというようなことにつきましては、ことし一年お互いに調査をして、四十八年度からその方向をきめるということになっておりますので、この期間にいろいろ検討したいと思いますが、私の考えとしては、実はこれはもっと幅広いものに使いたいと思うのです。幅広く国立公園であっても、国定公園であっても、あるいは保護条例でつくられました県立公園のようなものについても、それは国でなくても県で発行してもよろしいから、そのような後代負担の交付公債制度が認められてほしいということを考え、それらの方向に持っていくように私は努力する考えでございます。そういう方針でおります。私どもが考えるのはやはりどうしても自然環境保全中心でありますから、その地域住民の生活をどうするかという幅広い問題まではまだ手が及びません。ただ、それが国立公園なりに指定することで私権に制限を加えます場合のことを考えまして、買い上げ制度ということを中心考えてまいりたいと考えておる次第でございます。
  308. 古寺宏

    ○古寺委員 私は、今回の自然環境保全法が通っても、そういうような地域住民に対する配慮という裏づけがなければ、やはり結局はこの法律というのは骨抜きになってしまうと思うのです。  そこで、次にお尋ねしたいのですが、青森県の東通村に防衛庁の下北試験場というのがございます。この下北試験場の中には、本州では最も古い、また最も貴重だといわれる砂丘地帯がある。あるいはこの試験場の隣には左京沼とかいろいろな沼がございまして、そこにはヒメマリモであるとかいろいろなものが生息しております。そこで、私がお尋ねしたいのは、この砂丘地帯についても今度のこの法律でもって地域を指定することができるのかどうかという問題です。
  309. 首尾木一

    首尾木政府委員 お尋ねの地域につきまして、私どもまだ十分に現況を把握いたしておりませんので、結論的なことを申し上げることはできませんが、しかし、そのような貴重な植物あるいは砂丘地帯というようなことでありますれば、当然に今回の自然環境保全法に基づく地域指定の対象になり得るところだというふうに考えております。したがいまして、そういう点につきましては、この法律が施行になりますれば調査の対象にいたしまして考えてまいりたいと思っております。
  310. 古寺宏

    ○古寺委員 防衛施設庁にお尋ねしますが、自然環境保護地域環境庁が指定したいというふうになった場合には、防衛施設庁はどうしますか。
  311. 蔭山昭二

    ○蔭山説明員 先生御指摘の下北試験場には左京砂丘、田代砂丘、赤沼砂丘、大沼砂丘、この四つの砂丘があるということでございます。これを保護いたしますことは、防衛庁におきましても、従来からその環境を保持するという意味努力をしてきているところでございます。特に、ここは各種の技術試験弾、領収試験弾というものの発射をいたしておるわけでございますが、この試験の際にはこうした砂丘をそれぞれの弾種によりまして距離をとりまして避ける、砂丘を傷つけないというふうな配慮でこの試験を実施しておるわけでございます。  なお、具体的に、この砂丘の観光のための場内開放といいますか、こういう御要望も受けております。その面につきましては、いま私どものほうとそうした観光関係の方々とのお話し合いの中で、場内の不発弾等も、全部が全部とるということで努力しておりますけれども、一部やはり残るというふうなこともございまして、危険でございますので、特に赤沼砂丘あたりは境界にわりあいに接しておりますので、その附近にいわば砂丘をごらんになるようなそういう施設をしていただくとか、そういうふうなことでお話し合いは進めておるわけでございますけれども、なお環境庁方面ともいろいろ協議をいたしまして、何とか、わがほうの試験の必要性もございますし、環境庁のほうのそういう御調査にも御協力をするということで、両者が相両立しますような考え方を今後検討してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  312. 古寺宏

    ○古寺委員 こういうふうにたくさん自然保護協会が調査をした文献がございます。あるいは文化庁で調べたこういうような文献もございます。当然こういうところは将来ひとつ残すように配慮をしていただきたいと、こう思うわけです。  次に、むつ小川原でございますが、六カ所湖沼群といいまして、たくさんの重要な、ここにもマリモがおりますし、いろんなものがございます。こういういわゆる自然環境保全というものを考えた上でいまの新全総を進めているのかどうか、むつ小川原の大規模工業開発というものを進めているのかどうか。今回青森県から第一次のマスタープランを経済企画庁のほうに、十省庁会議にこれを提案して見ていただくために持ってきているはずでございますが、そういうことが十二分に生かされたいわゆるマスタープランであるのか。   〔委員長退席島本委員長代理着席〕 あくまでも、このいままでの新全総の考え方でそういうようなマスタープランをつくらしているのか、その点について承りたいと思います。
  313. 岡部保

    ○岡部政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたように、むつ小川原地域の第一次の県のプランの御説明が昨日事務当局にあったことは事実でございます。それで現段階各省と御相談しながら、これをどういうふうにしていくかという考え方でこれから検討していくわけでございますが、その十省庁会議環境庁の係官も入っていただいております。したがいまして、いまの先生のおっしゃいましたような自然保護と申しますか、自然環境保全するという考え方は十分織り込んでこの計画をチェックしていくという考え方でございます。  ただ、一言ちょっとお断わりをさせていただきたいのでございますけれども、新全総の考え方で進むということで、新全総自身全く自然環境保全しなければいかぬということを相当強く強調いたしております。したがって、ちょうど今回の法律と同じように約四つの段階に分けまして、いわゆる原生自然環境地域のような考え方、あるいは自然環境地域のような考え方、あるいは都市近郊のような考え方、そういうところでの自然の環境保全ということを相当に強調しております。したがいまして、そういう線にも従って自然環境の問題は十分考えていくつもりでおります。
  314. 古寺宏

    ○古寺委員 そういう地域についても今回この法律によって網をかぶせることはできますか。
  315. 首尾木一

    首尾木政府委員 これはこういったような計画とも調整の上で各省協議の段階で具体的な問題となってこようかと考えておりますが、そういうようなものにつきまして残された自然というものがあり、これを保全することがやはりその地域の必要から見て重要であると考える場合には、当然対象としては考えられるところでございます。
  316. 古寺宏

    ○古寺委員 このむつ小川原でございますが、小川原湖があります。この水は塩水なんです。ここへ経企庁のほうでは鉄鋼の大企業を持ってくるつもりだ。塩水です。しかも水には限界がある。そのために今度は、鉄鋼がだめになりまして、石油コンビナートをいま持ってこようとしているわけです。ところが知事さんは公害のない企業という、いまこの日本の国内で公害のない石油コンビナートというものはないわけです。そういうことを問題にして住民は非常に混乱しているわけなんですね。そこでぼくは環境庁長官に、これはおやめにすぐなるのか、あるいはまた環境庁長官におなりになるのかわかりませんが、新全国環境総合計画というものを、まずいわゆる自然浄化力あるいは許容能力というものをまずきめて、その中で開発計画というものをやっていく手法でなければいけないと思う。現在は逆なんです。こういう点についてもっと、やはり大石長官は国際的にも有名になられたのですから、こういうような問題こそ真剣に取り組んでもらわなければならない。私これは大事業だと思うのですが、いかがでございますか。
  317. 大石武一

    大石国務大臣 いまの古寺委員のお話は、正当な意見だと思います。私も当然そのような全国的の正しい環境条件と申しますか、環境容量ということばを便っておりますが、そういうものを十分調査した上で、それを踏まえた上での総合開発でなければならないと思うのです。ただ残念ながらそれが順序が逆になっております。いままでのような政治行政なりいろいろな政治思想なりの方向でこうなったわけでありますから、非常に残念でありますけれども、今後はそういうような考えにおいて、残された地区はそのような考えで、やはりできるだけ正しい国土の保存ができるように、自然環境が保存できるように努力していかなければならないと考えまして、その環境容量というものを中心日本国土を全部総点検をいま考え努力しようと考えておる最中でございます。
  318. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど一つ防衛庁に対しての質問、忘れたのですが、いま下北半島が自然公園に指定になる。あるいは農地開発事業がこれから振興しようとしているわけでございますが、問題のいわゆるミサイル射撃場の問題、これは地域の住民が全部反対でございます。これをまだ断念していないかどうか、また今後これをどういうふうに断念していないとすれば進めようとしていらっしゃるか、承っておきたいと思います。
  319. 蔭山昭二

    ○蔭山説明員 車力村のミサイル試射場の設置問題につきましては、お説のような、これは取りやめたらどうか、反対であるというふうなことの意思の表明があることは十分承知しておるわけでございますが、防衛庁ではこれまでもたびたび申し上げておりますように、現在ナイキ、ホークの年次射撃訓練は米国内で実施しておるのでございますが、やはり本来こういった射場は国内で保持して訓練を実施するのが望ましい。また米国内の試射場は今後とも長期にわたって使用できる保証が必ずしもございません。そういったようなことから、射場建設のためのいろいろな調査を昭和三十八年ごろから続けていたわけでございます。そこでいろいろ国内各地の候補地を調査いたしました結果、やはり最終的には車力村がそうした必要な条件を満たす候補地として一応決定をいたしました。もとよりこの射場の必要性それからミサイルの安全性それからその運用方法それから漁業の若干の操業制限を伴うものでございますから、そういう面でなお今後十分、必要な関係方面に説明を行ないまして、関係各方面との調整を行なった上で、十分御理解をいただきながら進めてまいりたい。もとより地元との調整がつかないままに設置を強行するようなことは考えておりませんが、現在のところ、ほかに候補地を移すということは考えておりません。
  320. 古寺宏

    ○古寺委員 私は、これは今度自然公園指定にもなりますし、この自然環境保全のみならず、漁業の問題、農業の問題、いろいろございますので、これは早くあきらめて、他に適当な場所をひとつ求めていただきたいということを強く要請しておきます。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕  次に、第十七条の問題でございますが、原生自然環境保全地域内の十四番目でございますが、農薬の問題だと思うんですが、「政令で定める」と、こういうふうになっておりますが、その原生自然の環境保全するためには、一番大事なのはこういう除草剤であるとか、農薬を使わないことだと思う。そういうものを、なぜこういうふうに小さく、「政令で定める」というふうに今回提案してきたか、非常に不可解なんですが、その点についてお尋ねします。
  321. 首尾木一

    首尾木政府委員 この第十七条各号列記の行為といいますのは、これはいわば代表的な自然破壊といいますか、自然の変容といいますか、そういったようなことについて代表的な事例ということでそういうものを掲げたわけでございますが、第十四号に書いてございますように、「原生自然環境保全地域における自然環境保全に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの」ということで、広くいろいろなものがここに規定をできるというようにいたしておるわけでございます。第十七条は、いわばこの各号列記を通じまして共通をいたしておりますのは、原生自然環境保全地域における自然環境保全に影響を及ぼすおそれがある行為、つまり、原生自然環境保全地域というのはほとんど人為の入っていない地域ということで把握をするわけでございますから、これに全部人間行為というものを列記をいたしますとたいへんなことになるわけでございまして、そういったような意味で、薬剤の散布といったようなことにつきましても、これは一つの例でございますので、十四号関係として整備するということでありまして、特別にその点を軽視をしてこれを政令にゆだねたというような趣旨のものではございません。
  322. 古寺宏

    ○古寺委員 林野庁長官にこれと関連してお尋ねしてみたいのですが、青森県の下北半島に除草剤をたくさん散布しました。これについては、その後の調査を行なっているはずでございますが、その調査の結果、実際に動植物に対してどういうような影響があるということが判明したかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  323. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 下北半島の御指摘でございますが、これは一昨年、大間の営林署、サル、珍しいサルでございまして、日本では最北限、北海道にはもういないわけでございます。そういうことで、特にこのサルを保護してほしいという、地元からあるいは県内からの要請がございまして、実はここで使っておりました薬は二・四・五Tでございます。この下北半島の森林に対して、伐採したあと、杉なりあるいはヒノキ、あの辺ではヒバでございますが、杉、ヒバを植裁しておったわけでございますが、二・四・五Tは催奇性があるという疑義がございまして、これは使用を中止いたしまして、昨年からこれは使っておりません。下北半島では、四十五年の十一月にサルを天然記念物に指定いたしました。さらに重ねて四十六年の十一月一日に一千九百ヘクタールを鳥獣保護区に指定したのでございます。これに伴いまして国有林の伐採計画も大幅に変更いたしまして、この地区では二百二十ヘクタールを皆伐しておったのでございますが、伐採面積は二百二十から三十ヘクタールに減少いたしました。そういうことで、非常にめずらしい天然記念物であり、このサルの保護を重点に考えまして、その後聞きますというと、だいぶサルはふえているそうでございますが、サルは、よくまたほかの植物なりに被害を及ぼすという話もございますが、ただいまのところでは、ことしの春の調査では、サルの子供なんかもだいぶふえたようだということで、別に被害はない、こういうことでございます。御指摘の植生の変化がどうなっているかということにつきましては、ちょっと手持ち資料がいまございませんので、あとでまた御連絡申し上げてよければ……。
  324. 古寺宏

    ○古寺委員 この除草剤については再三地元からも、あるいはこの公害の委員会でも前長官にも申し上げて、やっとこれは中止したわけなんです。したがいまして、この除草剤の毒性の問題については林野庁そのものの、いろんな原生林の問題、自然林の問題、そういうものがどういうような影響を受けているかということは、やはりだれよりも真剣に考えて、いろいろ調査報告その他があるわけですから、知ってなきゃならない。ところが林野庁長官は、もうおサルさんのことは一生懸命知っているようですけれども、自分の一番大事な林野のほうについてはあまり詳しくないようでございますので、ひとつ自後の調査についても十二分に調査をしていただきたいと思う。  そこで、もう時間になって、終わりになってしまったわけでございますので、最後長官に申し上げたいんですが、今回のこの法案というものは非常につぎはぎだらけの感じがするわけです。ですから、やはりもって総合的な前向きの姿勢の、大石長官がいつも発言していらっしゃるような、やはりそういう総合的な立法というものが今後必要であるかと思いますので、そういう点を強く私どもも痛感しておりますので、長官の御決意を承って質問を終わらせていただきたいと思います。
  325. 大石武一

    大石国務大臣 せっかくわれわれが苦心をして努力しましたこの法案が、おっしゃるとおりつぎはぎなものであることは確かで、そのとおりでございます。われわれとしても、非常に不完全であり、残念に思います。しかし、ようやくこの程度でも提出することができたのでございます。今後はさらにこれを土台として、もっと総合的な、りっぱな、いいものにつくりかえていく、そのような努力をいたす決意でざいます。
  326. 田中武夫

    田中委員長 西田八郎君。
  327. 西田八郎

    ○西田委員 最初にお伺いたしたいことは、自然環境保全法が出てまいったわけでありますが、その案文の中に、国は、地形、地質、植生及び野生動物に関する基礎調査を行なうものとすると、こうなっているわけですが、自然環境保全をしようという姿勢としてこうした法律案が出てきた限りは、あらかじめその調査が進んでおると思うんですが、調査はすでに進められておるのか、あるいはこれから行なわれるものか、一体どちらなのかをお聞かせ願いたい。
  328. 首尾木一

    首尾木政府委員 私ども実際に自然環境地域といたしましては、実態的に従来権限を持っておりましたものは、自然公園法に関する区域でございます。したがいまして、こういう自然公園地域以外の地域につきましては、十分な実態を調査をいたしておるというものではございません。この法律の施行によりまして、十分に、早急にこの調査をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  329. 西田八郎

    ○西田委員 一体その調査はどれくらいかかるのですか。
  330. 首尾木一

    首尾木政府委員 自然環境の調査でございますが、これはもちろん従来からこういったようなものにつきまして、学術的な調査とか、そういったような資料、あるいは各省関係におきまして手持ちの資料というものもございます。そういったような資料、あるいは都道府県等におきましても、そういったような実態の調査の資料もございますので、そういうようなものが、当面といたしましては、この調査のきっかけ、あるいは制度の運営のきっかけになってくるわけでございますが、完ぺきな調査ということになりますと、それはやはり相当の時間をかけてやりませんとできないと考えております。
  331. 西田八郎

    ○西田委員 その相当な時間というのは一体どれくらいかということを聞いておるのです。
  332. 首尾木一

    首尾木政府委員 四十八年度にはぜひ実施いたしたい、かように考えております。
  333. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、四条ですか、「国は、自然環境を適正に保全するための基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」、こういうことになっておりますが、そうすると、それまでは基本的な施策というものはできないというふうに判断していいのですか。
  334. 首尾木一

    首尾木政府委員 私が四十八年度にぜひ実施をいたしたい、こう申しましたのは、全国的ないわば基礎調査でございまして、もちろんこういったような法律を実施をいたしますためには、全国の基礎調査がなければこれが実施ができないというものでは、必ずしもないと考えております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、各種の既存の資料もございますので、四十八年度のその基礎調査の完了を待たないでも、そういったような第一次的な基本方針といったようなものにつきましては、十分検討ができるというふうに考えております。
  335. 西田八郎

    ○西田委員 それで長官、大ざっぱにぐっと網だけかぶせようというふうに理解していいわけですか。
  336. 大石武一

    大石国務大臣 現在の自然環境破壊考えますと、せめて網だけでもかけておきませんと手おくれになりますので、そのような考えも入っておると御理解いただいてよろしゅうございます。
  337. 西田八郎

    ○西田委員 それではあまりにもずさん過ぎやしませんか。これはいろんな問題がからんでくるわけですね。自然環境保全法が施行されて、それが実際に適用されるということになってくると、それにからむ利害関係というものが非常に多く出てくると思うのです。鉱業権を設定しておるところもあるでしょうし、また観光開発等をやっておるところもあろうと思いますし、そうした問題について非常な利害関係が生じてこようと思うのですが、そういう問題を考慮した上で、いま言われるように、いわゆる網をかぶせる、そういうことになるわけですか。
  338. 大石武一

    大石国務大臣 たとえばこの法律を施行します場合には、やはり一番問題になるのは林業との関係でございます。これにつきまして、やはり林野庁との調整に非常に時間がかかったのでございまして、こういう点につきましては、十分に配慮——十分と言えるかどうかわかりませんが、配慮しておるつもりでございます。またわれわれが原生自然環境保全地域考えておりますのは、すでにわれわれの頭の中に十カ所なり十何カ所ぐらい入っております。こういうことも、いろんな状況を考えておりますので、必ずしもただいいかげんに網をかぶせるのではなく、ある程度のことを考慮しながら、とりあえずとにかくできるだけ範囲をまず——いたずらな破壊から防ごうという意味で網をかぶせたという表現のしかたでございます。
  339. 西田八郎

    ○西田委員 それで理解しましたが、やはり目の荒い網をかぶせるか、こまかい網をかぶせるかによってだいぶ違うと思うのですが、いま長官は、すでに十数個所にわたって調査あるいは実態を把握しておるからそうした点についての処置をしたい、こういうことであったので、私もほぼ了承はいたしますけれども、しかしやはり少なくともこういう法案の提出をされた過程にあっては、第一次的にそういう施策を策定するのには、少なくとも私は準備をされるのが至当ではなかろうかというふうに思うわけでありますが、ぜひひとつその点は遺漏のないようにしていただかないと、これは非常に問題が出てくるように思いますので、特に注意を促しておきたいと思います。  次いで「知識の普及等」というところで「自然環境に関する知識の普及を図る」ということで、先ほど岡本さんとの質疑応答の中でだいぶ長官はエキサイトされて、何をぬかすという答弁であった。私はそれを聞いて、多少やじりたくなったわけでありますが、そもそも環境破壊されるようになりましたのは、そういう自然環境を愛しようという気持ちがなくて、何でもかんでも利益に結びつけようとする、そういう産業活動なり生産活動、あるいは国民の自然を愛しようというか、そういう気持ちのなさ、そこにやはり公徳心というのですか、そういうもののなさが今日のような結果を生んだと思うのです。ですから、長官は、おれがやるのはあたりまえだ、こうおっしゃるけれども、いかに長官があたりまえだとおっしゃっても、私は、そうは簡単にいかないように思うのですよ。これは変な例を引くようですけれども、私は、アメリカで、ワシントン広場でフィルムを入れかえて、箱を何げなしに捨てたのです。日本におった習慣が出たと思うのですが、ところがそれを捨てたときに、はたを歩いていた親子連れの子供が、まだこんなに小学校にも上がらないような子供が、私の捨てたあき箱を拾って、そしてごみ箱に捨てた。私は、外国であんな恥をかいたことはないのであります。それはやはり日本国民全体にそういう考えがあるのじゃないか。ごみは川へ捨てるものというのが、私の子供の時分から教えられた教育の一つであります。そういう生活慣習の中から来ておるものを、そう一挙に、自然環境保全しよう、守ろうと言ったところで、なかなか守り切れない。特に今日環境保全しようといわれておるこの環境とは、いわゆる公害におかされている地域というふうに理解されておられると思うのです。まだ原生林から自然を保護しようというところまでは、私は、発展していないように思うわけですが、そういうような今日の社会環境の中で一体知識の普及を、先ほど答弁されたような形では事実むずかしいのじゃないかと思います。これをどう考えておられるか。またどういう対策を具体的に進められるか。
  340. 大石武一

    大石国務大臣 いま西田委員からそのような非常に御理解のあるお話を承りまして、うれしく思います。実は、私は、日本の公害並びに自然環境破壊、これは一つのものと思いますが、こういうものの一つの大きな原因は国民性にあると思うのです。ですから、かりに政府がどのような努力をして、どのようなきびしい法律をつくって、どのような、百万、二百万のいろいろな監視員を置いて、環境保全、公害防止に努力をしましても、国民全体の理解と協力がなかったならば、私は、その完全な遂行は不可能だと考えておりますけれども、ただ、こういうことを申しますと、政府の責任のがれだ、国民に責任を押しつけるようなことだと非難されますので、あまりそういうことをしょっちゅう言えませんけれども、ただいま西田委員のそのようなこれに対する御理解のあるお話をお聞きしまして、私、非常にうれしく思います。そういったような国民性に一つの大きな問題がある。つまり日本国民は自分のものは大事にする。非常に大事にしますけれども、人のものは一切大事にしない。いいかげんにする。ここに私は、公害の発生の土台があると思うのです。ですから、いま西田委員はフィルムの箱をうっかり捨てて非常に恥をかかれたということでありますけれども、おそらく日本人は自分の座敷の中、玄間の中で、あるいは門の中でたばこの吸いがらを捨てたり、はなをかんだ紙のくずを捨てないと思うのです。おそらくは捨てないと思うのです。そういう人が一歩外に出ますと、どこへ行っても、人の集まるところ——駅の待合室、待っておるところ、あるいは人の集まるところにたばこの吸いがらを捨てたり、あきかん、あきびんを捨てたり、あきびんはわざわざこわして、人がさわるとけがをするというふうな状態で捨ててあります。そういうことは、自分の屋敷ではしないと思うのです。こういうことが日本を不潔にし、公害を発生させていると思うのです。ですから企業そのものも、いろいろな有害物質をたれ流して公害発生の大きな元凶になっておりますけれども、これだって、彼らといえども決して公害を起こしてやろうと意識してやっているのじゃないと思うのです。資本を集め、技術を集め、工場をつくって物を生産して、人の役にも立ちながら自分も非常に利潤をあげる、こういうことだと思うのです。これまではいいのですけれども、そのかわり、同時にできたいろいろな有害な廃棄物、これは自分の工場で必要がないから捨ててしまえといって捨てるだけのことなんです。別に罪の意識はないと思うのです。これが公害のもとなんですから、結局は日本人自身のそのようなものの考え方一つあると思うのです。これを直すことが一番大事だと思います。それはやはり学校教育と社会教育だと思います。くどい話になりますが、たとえば幼稚園から小学校、中学校、義務教育が九年あります。この間に、私は、徹底的にわれわれの社会を清潔に楽しく保っていくための基礎的な考え方を毎日毎日子供の心の中に打ち込む必要があると思うのです。たとえば朝集まりますとき、学校で校長が一分なり二分なりその話を毎日繰り返して、たとえば外へ紙くずを捨ててはいけない、そういうことを六、七回言ったら私は十分だろうと思うのです。そういうことを毎日毎日繰り返しやったなら、たとえばいま労働組合がいろいろなシュプレヒコールをやりますが、一つの綱領、シュプレヒコール、それと同じことだと思うのです。このような社会を楽しくもっていくためにはイデオロギーは関係ないと思うのです。そういう意味で、そのような教育を徹底的にやりましたならば、その子供が十年たって上に伸びていく場合には、理屈なしにそんなようなことはしないと思うのです。そういう子供が、十年、二十年、三十年たってごらんなさい、日本の社会に大きな部分を占めますと、そのような不潔なものがなくなるのじゃないか。かりに社会教育が足りなくておとうさんが捨てた場合には、おとうさんだめだ、拾いなさいと子供が言うと思うのです。そのような教育を私はぜひやりたいと思うのです。こういうことが日本の公害をなくす大きな基本ではないかと考えておるわけでございます。残念ながら必ずしもまだこの思想が、教育の方針がとられていないような気がしますけれども、こういうことを中心にして、こればかりではありませんけれども、そのようなことも実に大事なことではなかろうかと考えておる次第でございます。
  341. 西田八郎

    ○西田委員 ところが、中学校あるいは高校等の修学旅行を見てみますと、車内がよごれたのをきれいにするのですよ。そしておりていくのです。学校の教育の過程ではそういうことが行なわれているわけです。ところが一たん社会に出ていくと、おとながそれをむだなものにしてしまうわけですね。特に生産活動における利益の追求ということが、結局は人間関係の破壊、自然の自浄関係を破壊してまでも利益を追求しようという、その姿勢に私は問題があると思うわけです。先ほど新全総あるいは新々全総という話も出ておりましたけれども、要するに生産第一で、経済を成長せしめることがすべて人間の幸福につながるというものの考え方は、非常に大きな誤りではないか。だから、結局きれいな自然があってもその自然をこわして観光施設をつくって、そこへ人を呼ぶ。呼んで、自分さえ金もうけすればよい。そこには当然きたない水も流れるのです。ごみも捨てたり、不燃性のごみもたくさん出てくる。結局山の自然は破壊され、林、森の自然も破壊されるということになってしまいはしないか。ですから私は、環境庁長官のおっしゃられるような姿勢政府全体で貫かれたならば、いま時分こんな問題で、公害だ、自然環境保全だと言わなくても済むと思うのです。そこら辺のところを実際環境庁長官として、他の通産関係閣僚あるいは農業関係の閣僚等、それを制してでもやっていけるだけの自信があるかどうか、私はその点が伺いたい。これは非常に重要な問題で、それがなければ、これは幾ら保全をしようとしても私はむずかしいのじゃないかという気がいたします。
  342. 大石武一

    大石国務大臣 日本の公害なり自然環境破壊をなくすために、いま申しましたような学校教育、社会教育も必要だと思いますが、それ以外にも、逆に今度は強い規制によって、強制的にさせないように持っていくようにしなければなりません。現在のいわゆる公害に対する規制、そういった法律がそういうものだと私は思います。そういうことをできるだけきびしくして、そのような教育という両方面から持っていかなければなりませんが、おとなは実際の話、なかなか教育したって直りません。ですからこれは、やはりある程度法律規制をきびしくして、監視体制を強化する以外にない。私はそういうことで、そのような方針を進めておるわけでございます。  しかしもう一つは、清潔にする場合には、気がつかなくて自分がそこに捨てたら、なるほど恥かしいなあと思われるような、気がつくような、そのような清潔な体制をつくることも必要、それも一つの教育の方法だと私は思いますので、そのようなこともいま考えておるわけでございます。
  343. 西田八郎

    ○西田委員 結局、そういう姿勢からいきますと、第八条なんかは私はいささか疑問に思う点の一つで「国は、地域開発及び整備その他の自然環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定及びその実施に当たっては、自然環境の適正な保全について配慮するものとする。」これは「自然環境の適正な保全について配慮する」のじゃなくて、自然環境の適正を保全するためにほかのことを配慮すると書きかえるべきじゃないか。これは主客転倒の気がするのですけれども、この条文の趣旨についての精神をひとつ聞かしていただきたい。
  344. 首尾木一

    首尾木政府委員 この法律自然環境保全法でございますので、当然自然環境保全のことについて規定をいたしておるわけでございますが、各種の開発事業等を実施するにあたりましては、従前、そういったような自然環境保全ということについての十分な事前の検討ということが行なわれていなかったというようなことにかんがみまして、特にこの際、公共事業等、そういったようなことを実施する場合には、事前に自然環境に及ぼす影響というものを十分検討し、調査した上でこれを行なうべきだ、いわゆる環境アセスメントと申しますか、そういったようなことを今後強力に実施すべきだという意味規定でございます。その意味におきましては、この第八条というのは私ども当初原案から力を入れてこれをやろうというような考え方でおったものでございます。
  345. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、こういうふうに理解していいわけですか。自然環境の適正な保全をするために開発及び整備その他の自然環境に影響を及ぼす施策は留意しなければならないというふうに解釈して、自然環境保全することが主であって、そのためにいろいろな問題が、配慮されなければならないというふうに解釈していいのかどうか。
  346. 大石武一

    大石国務大臣 ことばの使い方ですけれども、自然環境を守るために開発するというのでは、ちょっと形が違ってくると思います。自然環境を守るためなら開発なんか初めからしないほうがいいと思うのです。ですから、開発はやむを得ない一つの国の政策だろうと思うのです。開発を行なうにあたっては当然自然環境保全するということを前提として、そうしてできるだけ自然を守りながらやっていくということが妥当な考えではなかろうかと考えます。
  347. 西田八郎

    ○西田委員 だからやむを得ない開発という名目のもとで自然が破壊されてきたのです。たとえば琵琶湖の安土干拓だとか中之湖の干拓だとかたくさんやっています。あれはヨシ原がつぶされたために琵琶湖の自然の浄化能力が減っていることは事実です。また瀬田川の流域に県の埋め立て地があります。ここは有名なアシ原地であった。ヨシなりアシはそういう意味では水を自浄する自浄作用能力の非常に強いものであった。ところが埋め立てによってそのヨシ原がつぶされてしまったために、汚濁は非常に進行しておるという状況があるわけです。それは滋賀県の開発のためだということで行なわれてきた。こういうことを考えますと、やはり私は自然環境保全に害を及ぼすようなそういう開発というのは、むしろしてはならないというようにしなければならない。自然環境の適正な保全を配慮するのではなしに、自然環境保全するためにそういう開発は考慮しなければならぬということでなければならぬじゃないかというふうに考えるのですが……。
  348. 大石武一

    大石国務大臣 私も同じ考えです。ただ、やはり開発はある程度どこかやらなければならない。その地域を、守るべき自然と、自然を守りながらもある程度やむを得ない地域とは、考えなければならぬと思うのです。そういうことを十分に考えまして、そこがわれわれの仕事だと思うのです。どの地域をどのように自然環境保全すべきか、どの地域だけは、しかたがありませんが、開発に使っていい地域かというような一線を画することが一番大きな問題じゃないか。近い将来にはそのような一線を画すような基準をつくりたいというのがこの自然環境保全一つの私の願いであるわけであります。
  349. 西田八郎

    ○西田委員 では、答弁はどうあれ、条文がこれはやはりあとものをいうわけでありますから、これは記録にでもとどめておきたい問題で、いまのその長官の答弁、まだいささか私には十分納得できないわけですが、少なくとも自然の環境保全するために鋭意長官の権限をひとつ行使されることを希望しておきたいと思います。  次に問題は、自然環境保全するための保全事業というものがあるわけなんですが、この保全事業というのは一体どういうものをさされるのか、お教えをいただきたいと思います。
  350. 首尾木一

    首尾木政府委員 保全事業の種類でございますが、原生自然環境保全地域等において考えられます保全事業につきましては、たとえば保全のための標識でありますとかあるいは保全のための歩道でありますとか、あるいは防護施設といったようなものでございます。  それから、自然環境保全地域につきまして具体的に考えられます保全事業の種類といたしましては、植生復元施設、砂防施設、防火施設、給餌施設、これは鳥等の給餌施設であります。それから巡視歩道、病害虫防除施設その他、先ほど原生自然環境保全地域において申し上げました保全のための標識、制札、それから防護施設といったようなものでございまして、これは、要するに保全計画に基づきますその地域規制に関する施設についての事業を保全事業といっているわけでございます。
  351. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、そういう保全事業の中から第三十八条にいわれるような「著しく利益を受ける」というような行為が策定されるのかどうか。
  352. 首尾木一

    首尾木政府委員 これは、例としてはそれほどたくさんな例があるわけではございません。しかしながら、その土地が民有地であるといったような地域につきましては、その民有地の所有者等におきましてそういったような利益を生ずるというようなことがあり得るわけでございます。そういう際の負担を書いてあるわけでございます。
  353. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、実際にこの「受益者負担」というようなことが起こってくる可能性はきわめて少ないというふうに理解をしていいですか。
  354. 首尾木一

    首尾木政府委員 現在の自然公園法のほうにも同様な規定がございますが、事例といたしましては非常に少ない事例でございます。
  355. 西田八郎

    ○西田委員 これは私は規定として設ける必要もなかろうと思うのです。当然受益したってあたりまえのことであって、著しい利益を受けるようなことがはたしてあるのかどうか。まあ最近の土地成金のように何億というような収益があるということでもないだろうし、それに、わずかの金がそのことによって利益を得たからといって、負担をしなければならないというようなことは、私問題のように思うわけです。ただそれが、この「利益を受ける者」というその「者」の解釈ですが、それはいわゆる地方公共団体とかあるいは一つの構成されておる部落であるとか、まあいわゆる町内ですね、町というようなことに理解をしておられるのかどうか。そうだとするなら非常に問題があるように思うのですけれども……。
  356. 首尾木一

    首尾木政府委員 本条の趣旨は、この負担する者というのは具体的には個人を考えておるわけでございます。
  357. 西田八郎

    ○西田委員 ですから、そういう場合に、著しき利益というようなことは非常に問題——これは比較の問題ですからね。だから、この条文がはたしてあっていいものかどうか、若干疑問を感じますけれども、まあ私は要らないと思うのですけれども、これはまあ意見、修正というようなことになりますから、ここでは申し述べません。ただ問題は、その測定にあたっては十分配慮されるように希望しておきたいと思います。  さらに次に、原生自然環境保全地域の中にいわゆる私有地のようなものが含まれるのかどうか、現在考えられておられる範囲内に。
  358. 首尾木一

    首尾木政府委員 原生自然環境保全地域につきましては、その地域の所有権というものがほとんど利用の意味を失うということになりますので、そういう点につきましては、この法律では「国又は地方公共団体が所有」しておる公有地域についてのみ原生自然環境保全地域というものを指定するというような考え方に立っておるわけでございます。
  359. 西田八郎

    ○西田委員 そして、私有地はもう含まないというふうに理解していいのですか。
  360. 首尾木一

    首尾木政府委員 さようでございます。これはもし、調査等によりましてそういったような地域があり、これを原生自然環境保全地域として一体として管理する必要があるというようなことでございますれば、その土地を買い上げまして公有化した上で、それを原生自然環境保全地域に指定をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  361. 西田八郎

    ○西田委員 それは国が買い上げることになると思うのですが、その国が買い上げた場合、その価格等の査定は一体どうなるのか。
  362. 首尾木一

    首尾木政府委員 現在は国の買い上げということでございませんで、一応、先ほど以来お話が出ておりましたが、本年度、四十七年度の予算から地方公共団体都道府県で交付公債を出しまして、したがいまして、交付公債を交付することによって土地都道府県が所有する、都道府県の所有ということになります。したがいまして、その土地の買い上げ等につきましては、その価格決定等につきましては、これは、そういう土地の実情を十分よく知っております都道府県においてその土地の価格を評定するというようなことになろうかと考えております。
  363. 西田八郎

    ○西田委員 さらに、この地域内にすでに鉱区などが設定されているものはありませんか。
  364. 首尾木一

    首尾木政府委員 具体的な事例といたしましては、先ほど長官から、およそ十地域ばかりというようなことにつきまして頭に描いているということを申し上げたわけでございますが、具体的には、この地域についての鉱区設定というものは現在のところないように考えております。
  365. 西田八郎

    ○西田委員 そこで、この十四条ですが、「環境庁長官は、原生自然環境保全地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、」云々から、「当該土地を所管する行政機関の長の、地方公共団体が所有する場合にあっては当該地方公共団体の同意を得なければならない。」ここで非常に強い規定が出てきておるわけですが、これは同意が得られない場合にはどうなるんですか。
  366. 首尾木一

    首尾木政府委員 法律上、同意を得なければ指定するわけにはまいらないということでございますが、たとえばこれは国有地でありまして、それを所管いたしております行政機関の長と申しますとたとえば林野庁ということになります。それから農林大臣ということになりますし、また地方公共団体につきましては、この地方公共団体の議会の決定も経た同意ということになろうかと考えておりますが、公共団体でございますので、そういうすぐれた原生自然環境保全地域を指定をするということにつきましては、今後熱意を持って臨まれると考えておる次第でございまして、同意は得られるものというふうに考えておるわけでございます。
  367. 西田八郎

    ○西田委員 それは得られるものだから得なければならないとなったわけでしょうけれども、得られなかった場合どうするのかということを聞いておるわけですよ。特に国の所管する行政機関ですから、たとえば農林省との関係になるわけですね。そうすると、農林大臣と、まことに長官の前で言いにくいことですが、環境庁長官との力関係というものもある程度生じてきはしないか。少なくともこの環境保全法案が出てくるまでに農林省との間にすでにあれだけの問題が出てきたわけです。私どもは新聞でその報じられる範囲しか知りませんけれども、かなり林野庁が強硬な態度であったというようなことも言われておるし、そのために保安林というものが原生自然環境保全地域から除外されたというようなこともわれわれ聞いておるわけです。そうすると、ここで同意を得られない場合には、同意を得られるものということになると私はこの点非常に憂慮せざるを得ないというようなことを考えるわけですが、長官いかがですか。
  368. 大石武一

    大石国務大臣 これはおっしゃるとおり、一つの力関係もあると思います。いままで環境庁でございません、国立公園部がいろいろと満身創痍傷だらけのもとで、あらゆるスーパー林道であるとか観光道路によっていろいろ自然が破壊させられましたのは、これは一つは力関係であると思うのです。やはり一つの部でありまして非常に弱いところがあった、原因は。しかし今度は環境庁というりっぱな役所ができました。りっぱというのはおかしいですが、役所ができましてここががんばっているわけです。ですから、ここで役所はいま環境保全のため全力をあげて一団となってぶつかっている状態なんです。ですからやはり意気込みもございます。この意気込みに対してはやはり各官庁も相当の敬意を払ってくれているはずでございます。そこで、この力関係におきまして、いままでとは比べものにならないほどの力ができておりますので、その努力をもってすれば、必ずどのような官庁の長といえども理解を持ってこれは同意してくれると思います。また、このような法案ができるような現状になりましたことは、すでにある程度自然環境保全の理解ということができておるわけなんです。そういうことです。私はこの3のところにありますこのような同意は、私は大体において得られるものと考えておる次第でございます。
  369. 西田八郎

    ○西田委員 これは大石長官に、ぜひと激励をしておいても、内閣はいつかわるかわかりませんので、場合によると長官がかわられるかもわからない。しかし、そうなると、やはり条文の文言というのがたてにとられる、これは常識であろうと思う。したがって、そういう点はやはり十分な根回しも必要であろうし、また配慮が必要ではなかろうか。特に「同意を得なければならない。」ともってこられた理由、どうしても「同意を得なければならない。」というふうにしたその理由は一体何にあったのか、そこに私どもは悪いけれども憶測を働かさざるを得ないのですけれども、その「同意を」ということばが入ったそこの一番大きな問題点は何であったか。
  370. 首尾木一

    首尾木政府委員 先ほど申し上げましたように、原生自然環境保全地域といいますのは、この中における所有権の公有といいますか、その内容を提示するといったような重大な意味を持っておりますので、その土地を所管する行政機関、それから当該土地について、公共団体でございますが、当該土地を公有のものとして持っている趣旨といったようなことを考えますと、やはりその影響というものは重大でございますから、その所有者の同意というものを得た上で、その合意の上でこういったようなほとんど所有者としての利用の効力のないようなものをつくることが適当だというふうに考えたわけでございます。
  371. 西田八郎

    ○西田委員 ちょっと答弁があいまいではっきりしないのですが、結局同意を得なければならなくなった、そういう文言で規定をしなければならなくなった裏側には、やはりむずかしいものを含んでおるからだというふうに思うわけですよ。簡単に協議できめられる問題ではなかった。同意を得なければならぬというのは、それだけやはり固執をされる部分が多かったからではないか。そうすると、今後の問題きわめて困難だというふうに理解をするわけです。だから、これはここで議論してもしかたがないわけでありますが、ぜひその点は環境庁大いに力を発揮してもらいたいというふうに思うわけであります。  次に、案文の中にはかなり制限規定が多くあるわけであります。そしてまた立ち入り禁止区域等も指定されるわけでありますが、それに対する取り締まりは一体どうされるのか、お伺いしたいと思います。
  372. 首尾木一

    首尾木政府委員 原生自然環境保全地域の管理あるいは取り締まりということでございますが、これにつきましては、現在国立公園の管理員というものが全国に六十二名ございます。原生自然環境保全地域相当部分のものは現在の国立公園等の中にございます。今度はそれらの重要な地域につきまして、原生自然環境保全地域として指定するようなものもかなりあろうかと思いますので、そういったような地域につきましては、これは国立公園管理員というものが現実にもそういったようなところについての取り締まりということにタッチができようかと考えております。しかし、その他の地域あるいはこの法律によります広い自然環境保全地域といったようなものにつきまして、現在の国立公園管理員の手でこれを十分に守っていくということはほとんど不可能に近い現状にあると思っております。したがいまして、私どもはそういったような管理員の今後の充実をはかるとともに、当面都道府県における自然環境保全に関する行政に従事している職員の協力も得、また現在そういったようなところで国有林の管理に当たっている職員等もございますので、そういったようなところの協力を得まして、こういったようなところの取り締まりということについて遺憾なきを期していきたい、かように考えておるわけでございます。
  373. 西田八郎

    ○西田委員 そんなことではたして管理ができるのですか。よその職員にお願いする、こっちの職員にお願いする、そうして元締めは環境庁だというようなことで、環境庁長官は直接そういうところへ指令、命令権が届かないのにはたしてそんなことでこの大切な自然環境保全ができるのですか。
  374. 大石武一

    大石国務大臣 それはおっしゃるとおり非常に困難なことでございます。しかしいまの状態では、これは広大な地域になると思いますが、それに対するいろいろな人員というものは簡単に増員は困難だと思います。したがいまして、できる範囲でやはりやりくりする以外に道はございません。そこで、一部アルバイト、臨時ですね。ある程度の権部を付与したりあるいは、それは結局は林野庁と協力をして、やはり林野庁の協力のもとにそういうことに対する取り締まりなり見張りをしてもらわなければならない、いまの段階でそれ以外にやむを得ないのじゃないかと考えておる次第でございます。
  375. 田中武夫

    田中委員長 局長、何か補足ありますか。
  376. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま長官からお話を申し上げたところでございますが、特に補足をするものはございません。
  377. 西田八郎

    ○西田委員 長官、そういうことで、非常にむずかしい、しかしそれは協力を得てということですけれども、やはり自分の命令の届くところに人を置いておきたいのが長官の気持ちじゃなかろうかと思うのです。また、そうしなければほんとうにできないと私は思います。特に地方の職員にお願いするといったって、地方の職員に何の権限もないわけですよ。そんな者が入ってきて、おまえ何するのだといって文句を言っても、おまえだれやと聞かれたときにどうしますか。それはやはり一定の資格と権限を与えて守るという体制をとらなければ、取り締まりはできないと私は思うのですが、そういう構想はお持ちじゃないのですか。
  378. 大石武一

    大石国務大臣 それは、いまの西田委員のおっしゃるとおりなんです。われわれもそのようなことにしたいと考えておりますが、いま具体的なことをちょっと言いかねる面もございます。近い将来にはそのような体制を整えてまいりたいと考えております。
  379. 西田八郎

    ○西田委員 次に、自然公園法との関係ですけれども、自然環境保全地域に指定された場合、十七条に定められる各項目の行為を行なおうとするときには、これは長官の許可を必要とするのですね。
  380. 首尾木一

    首尾木政府委員 第二十五条の第四項におきましてそういうことになっております。
  381. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、自然公園法の第十七条でしたかね、国定公園においては、これは県知事の承認を得ればできる行為が、非常にこれに該当しておるわけですね。「工作物を新築し、改築し、又は増築する」「木竹を伐採すること。」「鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。」ずっと並んでおるわけであります。これは同じ項目なんですが、そうすると、国定公園のほうはこの指定地域からはずすということになっておりますね。一体これはどうなるのですか。片一方は環境庁長官、国定公園のほうは県知事でよろしいということになるわけですが、そこにそごは来たしませんか。
  382. 首尾木一

    首尾木政府委員 この法律によります自然環境保全地域における環境庁長官の権限というものも、この法律によりましてその一部を都道府県知事に委任することができるということになっておりますので、こまかいものにつきましては都道府県知事に委任をすることができるようになっております。これは先ほど先生から都道府県に何らの権限がないというふうなことでございましたが、そういう点につきましては環境庁長官の権限を都道府県知事に委任をした限度におきまして、それは当該都道府県の職員がその地域においてのいろいろの取り締まりといいますか、そういったようなものもできることが、この法律に根拠づけられてあるわけでございます。
  383. 西田八郎

    ○西田委員 ではちょっと私の読み違いかもしれませんが、その特別地域についてのそうした行為を知事に一時委譲するという規定はどこかにありますか。
  384. 首尾木一

    首尾木政府委員 第四十三条の規定でございます。
  385. 西田八郎

    ○西田委員 ありました。ありましたが、それにしても本質的に片一方は長官、片一方は知事というふうに、すでに法律で定められてあるわけですね。これはしかしどうしても問題が起きてくると思うのです。それは知事は御承知のように民選知事ですね。ですから民選知事である限りは、やはり県民の支持を得なければならぬということで、どこの都道府県にいっても与野党そう争っているところはないわけです。県民の福祉、利益のためにというようなことでやられると、これは長官考えることとおよそ違うことが出てくると思うのです。片一方は国定公園以外の地域長官の指定された特別地域、そういうところでは権限を知事に委譲されないと思う。片一方はすでに法律で国定公園として知事でよろしいということになってくると、その差をどうされるか、ギャップをどういうふうに調整されるか。これは重要な問題のように思うのですが、いかがでしょう。
  386. 大石武一

    大石国務大臣 おっしゃるように国定公園につきましても、これにつきましても、やはり環境庁長官と、その権限を知事に委任しておる権限とが分かれております。両者の協議事項もございます。こういうものはわれわれがそれをさせたくないと思えば、権限をとめることができますけれども、知事の権限にまかしてあるものは、やはりこれは知事の権限でありますから、必ずしもわれわれがそれを押えることはできません。おっしゃるとおり知事もりっぱな公職でありまして、正しいことをしてもらわなければなりませんし、りっぱな自然環境を守るための、そのような姿勢で協力してもらわなければなりませんが、おっしゃるとおりやはりいろいろな弱い面もありますから、必ずしも一〇〇%正しい判断が行なわれるかどうかというと、それははなはだ失礼でありますけれども多少疑問がないとはいえません。そういうことにつきましてはやはりわれわれもできるだけ話し合いをしまして、お互いに話し合いをすればある程度の理解はつけ得ると思うのです。だからわれわれはもっと強い権限を持ちたいと思います。今度の場合でも強い権限を持ちたいと思いましたけれども、こういうものはいろいろな役所のあれで、たとえば林野庁という農林省との交渉で非常に難航しますと同時に、また自治省という地方自治体を守るという権限を持った役所とも折衝しなければならない、こうしますと非常にむずかしい問題がございまして、なかなかやはりこちらの思うような権限を持った内容のものをつくれないのが現状でございまして、ある程度の後退かもしれませんが、やはり妥当しなければならぬ面があるのでございまして、実際ならば自然環境保全については、われわれはやはりできるだけ強い権限を持ちたいと思います。何ものにもさえぎられない正しい行政を行なうようにしたいと思いますけれども、やはりそのようないろいろな妥協が当分の間はやむを得ませんので、そういう低い段階からだんだん伸ばしていこうという考えで、この辺でがまんしたわけでございます。
  387. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと自然公園法との関係の調整のために話し合いはする。しかし都道府県の利害関係と国の利害というものは当然必ずしも一致するとはいえませんね。したがって、これは話し合いでの調整がなかなかむずかしいというような場合、自然環境保全するためには自然公園法の改正もあるいは起こるかと思うのですが、そういうことが起こり得た場合、自然公園法を改正するのか。あるいは自然公園法が現在あるから、この環境保全法を改正するのか、一体どちらに歩調を合わすかということなんです。
  388. 大石武一

    大石国務大臣 どちらに歩調を合わせますか、それは考え方ですが、別々になっているのは非常に形が悪いし、これはうまくありません。いずれは近い将来一本のものにしなければならぬと思います。たとえば現在の段階におきましても国立公園で守っておる地域の場合と原生自然の地域の場合では、これは原生自然の地域を守る権限がはるかに強いのです。ですからわれわれは国立公園地域原生地域もむしろこれに適用していこうという考えでありまして、自然に移行させて、どちらがどちらということは一つの未分化のような方向にできるだけ早く持ってまいりたいと考えておるわけであります。
  389. 西田八郎

    ○西田委員 続いて何条でしたか、生業ということばが出てくるわけです。環境保全はしなければならない。しかし生業に関しては、これはやはり「生業の安定」ということばがありますね。その生業の範囲についてひとつ考えておられる考え方をお聞かせいただきたい。
  390. 首尾木一

    首尾木政府委員 これはここに書いてございます代表的なものといたしましては農林漁業等を考えておるわけでございまして、「等」というものの中に何が入るかということでございますが、これは生業ということの範囲から申しまして、何といいますか大規模な工業といったようなもの、これはその中に入っておらないということは明瞭でございます。ただいまちょっとおことばがございましたような、なりわいと申しますか、そういったような性質の業態を考えておるわけでございます。
  391. 西田八郎

    ○西田委員 生業というのは非常にむずかしいのですね。生業か企業か職業かという、そこの区分というのは非常にむずかしいから私は聞いてみたわけです。なりわいということでしょう。食うていくために、生きていくための最小限度のことを考えてするのか、あるいはある程度文化的な高度のものも含めるのかということになってくると非常にむずかしい。そうすると、これは生業、これは生業でないという区分けをいつどういう基準できめるのか、非常にむずかしい問題だから私は聞いてみたのですが、その基準を一体どういうふうにお考えなのか。
  392. 大石武一

    大石国務大臣 これはどの分野でもそういうことはございます。結局はこれは正しい常識で判断する以外にないと思うのです。ですから私はいまでも、こういう基準ができる間、自分の常識を中心としていろいろな許可なり不許可のことをきめてまいりましたが、やはりそういうことじゃないでしょうか。やはり一つのある信念を持って、この立場からいわゆる良識と申しますか、そういうもので判断する以外に道はないと考えております。
  393. 西田八郎

    ○西田委員 その良識なんですよ、問題は。その良識だけれども、その持ち方によっては相当やはり尺度が長くなったり短くなったり、大きくなったり小さくなったりするわけです。たとえば一つの漁村があるとしましょう。そこで全部が自分で漁船を一つずつ持ってやっている、この場合、はたしてそれが企業かというと、私はそれは一つの生業だというふうに理解していいのじゃないか。ところが漁船の大きさが、たとえば馬力が三十馬力と十五馬力とあった場合、三十馬力以上がときめれば、たまたま二人か三人おった場合に、生活程度、水準というのはそう変わらないのに、たまたま持っておったものが、漁船の機関の馬力によって指定された場合に、非常にそこにバランスというか、不公平ができてくるわけです。ですからそういうふうに常識だといわれても、そうするとまた常識で判断できない。ただここではそれが常識としても、今度は別の漁村へ行った場合には、そこは五十馬力のモーターが普通だというふうにいわれた場合に、またここに不公平が生じてきます。だからそういう尺度というものは明確にしておかないと、逆に言えば、これは生業だといって逃げられる方法も一つあるし、といってそれはいけないというふうに、ほんとうに生業というふうに解釈されるものまで企業のように判断されて保護されないというような場合も生じてくると思います。その点は私は非常にむずかしい問題であると思うけれども、ただ単にそういう常識で判断だということではなしに、やはり一定の基準を出してもらいたいということを要望しておきたいと思います。  次に、これは少し話がそれるかもわかりませんが、天然記念物等がたくさん指定されていますが、すでにそういう天然記念物の生息が困難になってきておる。ところが、文化財保護法の中で天然記念物というものは保護しなければならない、そしてその環境も守らなければならぬとなっておるわけですが、最近、トキにしてもホタルにしても、環境が守られてないという場合がたくさんあるわけです。ですからそれは文化財保護法のほうではどうにもならないものですね。これについて今度の自然環境保全法は効果が波及するのかどうか、お伺いしておきたい。
  394. 首尾木一

    首尾木政府委員 文化財保護法によります指定のございましたものも含みまして、こういったような地域の指定ということをやるような考え方になっております。
  395. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、現在この法律が適用されるということになると、たとえばここは有名なホタルの産地であった、その産地に工場が誘致されてきて、排水のためにホタルが死滅してしまったというより、ホタルの食う、食糧となるニナ類がその水の汚染のために死滅してしまって、ホタルがほとんど壊滅状態になっておるというような場合には、そうした工場の排水等についてもこれによって規制できるのか。
  396. 大石武一

    大石国務大臣 排水の問題は、これはいまの水の汚濁防止法、そういうほうでひとつ注意する以外にないと思うのです。ですから、問題は、そのような工場ができて、汚水を出して、そしてそのために環境破壊されてから発動するのでは、これはだめだと思うのです。それ以前に発動する。それ以前に工場が来ないように押えるというところに、この法律の生かし方があると思うのです。たとえば、加藤シヅエ委員長から言われたのですが、この前、テレビで見たけれども釧路のタンチョウヅル、あれは水路を掘ってあんなぶちこわすはずがないが、ぜひ何とかおまえ守れという御命令をいただきました。私もそう思う。ああいうものについては、そうこわすまでいっておりませんから、こういう法律を発動すればそれは守れると思うのです。そのような方面で、できるだけこれを守っていくほうに、もうでき上がってこわされたあとでは実際おそいのです。そういう意味で、予防的に早く網をかぶせるということが、大きい効果があるのではないかと、さっき申しましたが、考えておるわけであります。
  397. 西田八郎

    ○西田委員 そこで国定公園法とも関連が出てくるわけです。国定公園法ではそういうことが許されておるわけです。知事が承認をすればそういう工場を建ててもよろしいということになるわけでしょう。だから、いまおっしゃる長官の水質の排出基準というものは、これは人体の影響と健康被害並びに環境被害とはいうものの、非常に規制されておるもの以外でも、ニナというのが死んだりするわけですね。タンチョウヅルのえさにしてもそうです。生息地にしてもそうだと思う。そうすると、定められた基準を全然おかしてはいないけれども自然の破壊をしたということが出てくるわけです。そうすると、それが人体に影響を及ぼした場合には先日できました無過失でこれは無過失賠償を請求することができたとします、自然環境保全する場合のそれの保護は一体どこへ訴え出ればいいのか、一体どうしたらいいのかという問題が出てくるわけです。これではどうにもならぬということになるのなら、一体そういう自然というものは保護できるのかです。
  398. 大石武一

    大石国務大臣 先ほど西田委員からも御理解のあるお話がありましたように、やはり自然環境というものは、一片の法律とか一個の役所だけで守れるものではありませんで、全国民がそのような認識と協力を持たない限り不可能だと思います。そういう意味では、このような法律をつくりますことも、そのような国民に対する理解と協力の一つの大きな土台になると思うのです。ですから、そういうことで、これをつくりまして、さらに県の自然保護条例もこれをうしろからバックアップしてあげれば、そういうことが土台となりまして、おのずからやはり、各小さな地域にでも、そのようなものの考え方がしみ通っていきますし、そのような指導なり法律効果が波及してまいると思うのです。そういう意味で、これが土台となるという意味でございまして、これですべてのものが救えるというわけではないのでございまして、これがそういうことのすべての教育なりものの考え方を進める一つの大きな基盤となることを願っておるわけでございまして、早くそのような全国民的な協力と理解を持つようになりたいと考えるわけでございます。
  399. 西田八郎

    ○西田委員 最後に私は、この法案、天井のないかやとまでは言いませんけれども、そういう意味では、ばさっとかぶせた網ではあるけれども、ところどころに大きな穴があいておって、たいへん逃げるところがたくさんあると思う。つかまえてみると魚は小魚ばかりだったということにならないように、環境庁長官はじめ皆さまの一そうの努力をひとつ期待をいたしまして、私の質問を終わります。
  400. 田中武夫

    田中委員長 次に、米原昶君。
  401. 米原昶

    ○米原委員 自民党政府のいわゆる高度成長政策のもとで、日本自然環境が全国的に破壊されつつあるということに対して、非常に国民は憂慮しております。この問題については、先ほどのストックホルムの会議でも大臣みずから発言されたところでありまして、そういう意味でこの自然環境保全というようなものが出ることを大多数の国民が期待していたと思うのであります。ところが、この法案が国会の末期になってしまったということは、非常に残念であります。  出ました法案を見ますと、基本理念のところではわれわれが希望していたようなことが書かれてあります。その点私、評価もしますが、実際にできた法案を見ますと、これによって保全される環境がかなり制限されたものになるということを非常に残念に思うのです。たとえば自然環境保全について実際はいま都市の住民がむしろ期待していると思うのです、破壊があまりひどいから。ところが、都市生活環境保全するという点では、逆に致命的な弱点になっているのじゃないか。こういう点、非常に残念に思うのです。特に最初新聞紙に報道されたときには、環境庁の最初の構想というのはりっぱなものだったと思うのです。つまり、日本全土開発を凍結する、そして開発を許可制にする、こういう根本態度が最初にどかんとこう出ていた。私はこれには全面的に賛成なんです。ところが、この法案では、都市に対してはもう別の立法をつくるということで、次の通常国会まで持ち越されただけでなく、その他の地区自然環境についてもこの法案で全部カバーするというのではなくて、ごく限られた指定地域自然保護にとどまってしまったという点であります。これでは、最初に出されたものとまさに考え方が逆転してしまって、そして現在環境破壊している開発というもの、これを規制することがはたしてできるだろうかということを感ぜざるを得ないのでありますが、最初にこの点について長官の根本的な御意見を聞きたいと思います。
  402. 大石武一

    大石国務大臣 この案の内容がだいぶ一ころ紹介されまして、いろいろな各新聞紙上でも意見があったようでございますが、凍結するとか何とかというだいぶ強い表現でございましたが、私も実は近い将来はこの環境庁環境保全考え方中心として、日本国土が、先ほど申しましたように、たとえば保全すべき地域とかあるいは保護しながら開発に利用すべき地域とかいろいろな段階に分けて一線を画するような、そのようなところまで持っていきたいと考えております。しかし、それは時間がかかることです。と申しますのは、たとえばいろいろな行政上のむずかしい問題もありますけれども、われわれ自体も一線を画すだけのまだまだ資料がございません。やはり全国的にいろいろな環境容量と申しますか、そういうものを中心として、いろいろな調査を積み重ねた結果でないと、やはりそれの判断は下しにくいわけでございます。時間がかかることは、私は前に五年くらいかかろうと申しましたが、これは自分の簡単な勘でございますが、そういうことで、だいぶ時間をかけなければならないと思います。ただ、その考えを前提として、一応日本の一部の自然だけでも守っていこうというのは、いまあまり被害がひどいものですから、少しでも日本の、たとえば自然を残したい、原生林を残したいという気持から、いま急いでこの自然環境保全法案をつくったわけでございます。しかし、それもわれわれが、特に自然保護局が一所懸命になってこれは果たしていくと思いますから、たいした苦労だと思いますけれども、つくりました内容よりは後退しております、これは残念でありますけれども、現在の日本法律のつくり方、並びに提案のしかたなり行政府のあり方から考えますと、残念ですけれども、ここでがまんせざるを得ない。しかも、ここまで延びてきたのですから、やむを得ぬ、非常に残念に思いますけれども、一応それでも出さないよりは出したほうが足がかりができるという考えで、じっといまがまんしてまいったのでございます。
  403. 米原昶

    ○米原委員 自然環境保全という問題がいままでの経過からしても一気にできるとはもちろん思いませんし、ある程度実際には段階を踏まなければいかぬということもわかるのです。ただ、考え方ですね、やはり最初に出された一応日本全土開発を凍結するということ、開発基本的には許可制にするのだというこの構想だけは私は残しておいてほしかったと思います。もちろん一気にそういうことが、全部がそのままできない、それこそ段階的にしかできないかもしれませんが、基本的な考え方というものは残してもらうことが、むしろ全体を貫いて自然保護ということが貫けるのじゃないか、こういう点を遺憾に思うのです。もちろんいま出された法案にしましてもいままでの自然公園法などの規制からはずれた地域も含めて全国的な自然保護をはかろうとしているという点になっているわけですから、その点では積極面があること、もちろん私たちも評価します。しかし実際には全国的な自然保護についての基本的な考え方は、今後内閣総理大臣の作成による自然環境保全基本方針にゆだねられているわけであります。そこでこの基本方針というものが非常に重大になってくるわけです。  そこで、長官は先日、例の奈良県の会議で発言されまして、新全総との関係ですね、これに対して非常に断固たる発言をされた。これ、大多数の国民はやはり長官の発言を歓迎したと思うのです。ところがその後の閣議で何やらこう異論が出たらしくて、訂正されたというので、国民は逆にがっかりしちゃっているのですよ。この点ですね、私そのあたりが、長官自身は非常にりっぱな姿勢をとられるのだけれども、そういうことが起こるともうがたんと態度が変わってしまうのですね。非常に残念に思っているのです。これではこの保全法が通りましても、はたして自然保護態度が貫けるかどうかということを心配するわけなんです。これはあの問題だけではなくて、たとえば原子力発電所の問題にしましても、たとえば例の那知勝浦ですかあるいは瀬戸内海の鹿久居島のボーリングを認めるというようなことをやられたので、長官自身、非常に一般の国民からも長官に期待が集まっているのですけれども、ときどきそういうことをやられるというので、非常にその姿勢に動揺があるのじゃないか。そういう点で非常に心配しているわけですが、この法律でこれを適用していく場合に、たとえばいままでの新産業都市、工業整備特別地域とかあるいは低開発地域工業開発地区とかでこの法律で指定の対象になるところがある。いままでそうなっておるところで新しくこの対象の指定地域についてこれ以上の開発をさせないというようなことを一体考えておられるか。考えておられるとすれば具体的に聞きたいのです。
  404. 大石武一

    大石国務大臣 私もときどき、まあいろいろな発言がぐらぐらするようでございまして、いろいろな御心配をおかけして申しわけないと思っております。基本的なものの考え方、進め方はそう違いませんけれども、やはり強い発言になったりあるいは時に弱い発言になったりすることもございますので、そのような印象を与えたのかもしれませんが、必ずしも私の信念は根本的にぐらぐらしていると思いませんので、その点はひとつ御認識を願いたいと思います。  新全総問題につきましても、閣内でだいぶしかられました。しかられましたので、少し激し過ぎた発言のしかたについてはおわびをしました、反省をしましたが、その考え方を変えたということは決して申しておりませんので、その点はひとつ御認識を願いたいと思います。  それでいまのお話でございますが、どの地域が、今度いわゆる新全総とかあるいはその他いろいろな考え方開発をねらったか知りません、わかりませんけれども、われわれは日本の守るべき自然の大事なところはぜひ守ってまいりたい、こう考えまして、あながちいろいろないわゆる開発計画にこだわらないで、とらわれないで、自分たちの正しいと信ずる行政を進めてまいりたいと考えております。
  405. 米原昶

    ○米原委員 その考え方は一応わかりますが、そうするといままでの開発に指定されている地域に対しても、これを適用することはあり得るという考え方ですか。
  406. 大石武一

    大石国務大臣 ちょっと御趣旨がよくのみ込めませんけれども、もう開発の始まっている、たとえば鹿島であるとかそういうところに対してわれわれはこういう適用をすることはできないと思います。ただ小川原地区につきましても、これを指定することができないか。これもなかなか私はむずかしいと思う。現実には局長はそういうこともあり得ると申しましたけれども、あそこまで計画が進んでまいりますと、われわれとしては、その中の環境保全をするための努力をすることに全力をあげまして、それが一番の中心であって、あれをいわゆる法律で指定する保護地域に編入することができるかどうかは、これはなかなかむずかしいと思います。しかし、それ以外にまだ手のつけられないところで、いい地域につきましては、われわれはいわゆる自然公園法とか、この新しい環境保全法案によりまして、できるだけ広い地域を守ってまいりたいと考えております。
  407. 米原昶

    ○米原委員 いままでの経験からしましても、自然環境保全するためには、どうしても、自然環境破壊する開発ですね、すでにしているところに適用するのは確かにむずかしいでしょうが、これからそういう新しく開発して実際破壊される、こうなりそうなところには思い切って適用することのほうが必要じゃないか。これができないじゃ、法律をつくったって、ほとんど実際の役に立たないんじゃないかという気持ちがするのです。実際に、たとえば今度の案では、原生自然環境保全地域は、これのほうは全国で十五カ所ぐらいが対象として検討されているということを聞きましたけれども、自然環境保全地域のほうですね、そのほうは大体何カ所ぐらいのところが予定されておるのか、どれぐらいの面積のところが予定されておるのか。大体どういう構想でおられるのか、聞きたいのです。たとえば現在の国立公園地域、国定公園地域、全国で約三百万ヘクタールくらいあるということを聞いておりますが、そういうところでも、御存じのように、その国定公園地域に対して指定解除するかしないかという問題が起こっているわけです。ですから、大体それと比べて、全国で約三百万ヘクタールというのだけれども、今後自然環境保全地域として考えられているのは、現在の国立・国定公園地域と比べて何倍ぐらいの地域を指定されようと考えておられるのか、聞きたいのです。
  408. 首尾木一

    首尾木政府委員 自然環境保全地域につきましては、これは実ははなはだ残念でございますが、まだどれくらいの大きさのものがとれるかということにつきまして、ただいま申し上げる程度の数字を持っておりません。これはできるだけそういう地域の指定ということについて努力をいたしまして、できるだけ広くとっていきたいという考え方でございます。     〔委員長退席始関委員長代理着席
  409. 米原昶

    ○米原委員 具体的な問題を一つ聞きます。  例の志布志湾ですが、私はあそこに二回、この前も行ってきたのですが、この委員会でも大臣が発言になって、いま鹿児島県のほうから出ている案ですね、ああいうものである限りは、国定公園の指定解除はできないというような発言が、先日もこの委員会でありました。実際に見ますと、あの志布志湾へ行ってみてわかるのは、国定公園の地域として指定されているのはほんの一部分です。あそこの自然環境を見ますと、単に一部じゃなくて、この法律ができたら、むしろあの地域の大部分自然環境保全地域として指定すべき場所じゃないかということを感ずるんですよ。そうすれば、あそこに起こっている問題もむしろ解決がつく。ただ、いままでの国定公園の指定解除だけじゃ、技術者にいろいろ聞いていますが、指定解除しなくたって、やろうと思ったらできるんだという意見もあるらしいのです。指定されている地域外のところにつくっていく。そうすると実際は、それをやられてしまうと、逆に、指定解除しないという方針をとっていても、そこのほうが先に一部分でも開発が起こってきますと、せっかく国定公園の指定を解除しないんだという考えでおられましても、事実上解除せざるを得ないところに環境庁が逆に追い込まれてしまうんです。そういう地域になっているということを、実は環境庁の方に来てもらって、国定公園の地域がどれだけの範囲があそこで指定されるかを聞きまして、そういう状態になっているということがわかったんですかね。ですからこういうところはまず——もちろんいろいろな条件を調べられなければなりませんが、私たちが一番望むのは、逆に今度のこの法案ができたら、自然環境保全地域として、あそこはああいうものにしないという考え方でまず指定してほしい、こう考えるわけですが、こういう点について見解を聞きたいと思います。
  410. 大石武一

    大石国務大臣 志布志湾につきましては、私は絶対に指定解除はしないとは申しません。しかしあの平和な環境破壊するおそれがある以上は、解除するからには、あの彼らの環境をよりよく保全できるような、より彼らの、住民の生活をしあわせにできるような確実な証明がなされれば、私はあえて、別に解除にちゅうちょするものではありませんけれども、そのような証明がない限りは断じてしないという方針をとっているわけでございます。おっやるように——実は先日、ある人か来て、あそこを指定解除せいという催促を受けたのでございます。聞きますと、あれより大隅半島には実にすばらしい自然がたくさんあるから、そこさえ守ればいいのだと言うのですから、私は逆に安心しまして、志布志湾も残しますが、大隅半島にもそのようなすばらしい地域があるなら、これもぜひ新しい法律案の中に盛り込んで、これを守ってやろうという気持ちになっているわけでございます。たとえば琵琶湖の開発法案が通りました。やむを得ず、これは通りましたが、反対等が——少なくとも琵琶湖の開発法かできましたにつきましては、あの琵琶湖の周囲がいたずらな開発によって汚されないように、より厳重にこれを監視する必要があると思うのです。そういう意味で、あそこをさらに国立公園に格上げするとか、あるいはさらにもっと国定公園の地域を広げるとか、あるいはこの法律を適用するとか何か考えて、その開発計画を立てますについても、いわゆる無秩序な不潔な破壊にならないように守ってやろうという考え方を持っているわけでございます。そのようなことで、おっしゃるとおり、先ほど西田委員にも、できるだけ広く網をかぶせたい意向であるということでございますが、その辺むしろ、何も開発のじゃまをするものではありませんけれども、無秩序な破壊から自然を守るためにはできるだけの先取りをした考え方を進めていきたいと思う次第でございます。
  411. 米原昶

    ○米原委員 実際は、あそこの地域に行ってみると、国定公園の指定地域になっているのはほんの一部で、その近辺の地域開発が始まったとすると、指定地域にすることができなくなってしまうのです。そういう点で、早くあそこをごらんになって積極的な手を打たないと、ああいう計画が発表されますと、実際は発表される前から、もううわさが立つだけで業者が暗躍するのです。もうあのあたりに行って一ぱいうわさを聞きました。つまり近辺の土地はほとんど買い占めちゃった、実際は。それは農地法違反ですが、鹿児島県の県庁に行って話しましたが、違反だけれども、実際はいろいろな名義でやっちゃっているんです。ですからやろうとするときはもうできないような既成事実がつくられてしまうんです。それで開発というのは、ああいうことをうっかり発表しますと、あとでどうしようもなくなってしまう。この点、心配するんです。せっかくこういう自然環境保全法というのがつくられる以上、やはりできるだけ早く一定のところを破壊させないという手を打っておかないと、その周辺から事実上はやられますと、指定することが実際上できなくなってしまう。手おくれになってしまう。この点をどうしても考えてもらいたいと思うのです。  それで、実際には具体的にどのような地域を指定するかということは政令に基づいて環境庁長官がされるわけですけれども、たとえば原生自然環境保全地域の場合でも、国有林は除外されておるわけです。その他国有地、公有地についても所有する行政機関の長の同意を要するということで、指定はかなり制約されているわけです、この法案を見ましても。そういう点でも早く構想を立てて、早く指定をしませんと、実際には長官自身の腹の中ではいまの新全総ではどうもまずいということがあると思うんのですけれども、実際はどんどんもう事実上進められてしまっておる。指定しょうと考えたときには手おくれになってしまう。この点が私一番問題点ではないかと思っているわけです。  それからもう一つの問題点は、これは指定されたところが保護されるということがこの法案の特徴なのですが、これはその指定が実際問題になってくると、指定地域に既成事実がもうできていましてなかなかしにくくなる。だから初めに予定されたより非常に狭いものになってしまって、法案を実行しょうと思っても役に立たないものになってしまうということを心配しているのです。同時に、こういう法案をつくりますと、逆に今度は指定されないところは何をやったっていいのだということにもなりかねないのです。指定されたところはなるほど自然は保護されるけれども、逆にこの法案で中途はんぱにやってしまいますと、指定されないところはどんどんやってもいいということにもなるわけで、そういう点がどうもこの法案では不十分じゃないか。この点、どう考えられるか、ひとつ長官の御意見を聞きたい。
  412. 大石武一

    大石国務大臣 いまいろいろな御意見を承りまして非常に納得するところもございます。ただ、指定はやはりしなければならないと思うのです。指定しないところは逆にどんどん悪用されるところがある。そういうところはあるかもしれませんけれども、みながみなそうなるとは限りません。悪用したいということころはもうかるところでなければ悪用しないわけですから、みんながもうかるかどうか。それはやはり判断でしょうから、必ずしもそうとは思いませんけれども、いまの段階では、日本の全国土をみんな自然環境保全して押えておくというわけにもまいりませんで、やはり段階的に進めていかないと——やはり指定は早く、広い範囲にしてまいりたいと考えるわけでございます。いろいろな業者、ことに、悪徳ともあえて言いませんが、いろいろな業者が暗躍していろいろな開発の予定地域を先取りして、かえって無理無理開発へ追い込むような情勢があることは確かであります。われわれはこれについては、環境庁のみならず、日本全体としてこのようなものを押えつけなければ、この日本土地政策とか、何も実行できなくなりますので、これは十分に心する必要がありますが、私どもも自分らの範囲内におきましては、できるだけ暗躍を防ぐために先取りして、できるだけ早く広く指定するということが望ましいと考えておるわけでございます。  そのようにして、この法律ができましたならば——またこの法律か通りませんと、その方法も手段もありませんので、ひとつぜひ御協力いただきまして、早く通していただきまして、そうしてわれわれがたいした強い武器でないにしても、この武器を使って多少でも日本土地を守るよすがにいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  413. 米原昶

    ○米原委員 そういう点で法案の中に幾つか弱点があると思うのです。  実際にこれをカバーできるのは、私は住民運動だと思うわけなのです。実際にこういう法案を出すようになってきたのも、自然環境保全という考え方国民の中にはうはいとして高まっているということが背景にあると思うのですが、実際にそういう開発の予定をされると、まだきまりもしないそういうところも、もう業者がすぐに行って土地の買い占めをやったり、指定しょうにも指定できないような事態が起こる。それを押えていけるのはやはり住民の、世論の力だと思うのですよ。そういう意味でも住民のそういう意向を反映させるようにすることが非常に重要じゃないか。それが環境保全のためにも決定的な要因じゃないかとさえ、私はいままでの経験から思うのです。  そういう点で日本弁護士連合会が意見書をこの法案に対して出しておりますが、御存じでしょうか。そしてこの法案の修正意見も出ているのですが、その中の特徴は、日弁連が最近始終強調している例の環境権という考え方です。そういう意味でたとえばこういう考え方が出ているのですね。  修正意見、「自然環境保全地域の位置の決定・または保全計画の決定に際しては、その何れかの段階において、これを一カ月間公衆の縦覧に供し、これに意見のある場合、その者は、環境庁長官に意見書を提出することができるように」するとか、「その場合長官はこれを自然環境保全審議会に付議するようにするべきである。」とか、それから「保全地区地域の指定について、右のような環境権による国民の指定請求申立権について配慮した規定を置き、その申立審理については行政不服審査法中処分についての異議申立の規定を準用するようにすべきである。」とか、それから「保全地区内における行為の許可をする場合において許可のあったことおよびその理由について、何らかの方法で公衆に公示する制度をとり、何人もこれに対して異議申立訴訟ができるような措置を講ずべきである。」とか、「本法の保護法益を国民環境権の保護にあるという立場を徹底する」措置をとってほしいというようなことが、そして具体的な修正案まで出して意見書としてわれわれのところにも送ってきておるのですね。私これは非常に重要な点じゃないかと思ったのです。こういう点を取り入れられる用意はないかどうか、これを聞きいと思うのです。
  414. 大石武一

    大石国務大臣 日弁連からはいろいろと激励をいただいております。たとえば無過失賠償責任制度にしましても、あるいは今度の場合も、いろいろの御意見なりおしかり、御鞭撻をいただいておるわけであります。私どもは環境権というものについてはやはり重大に考えております。いずれ近い将来には環境権というものの考え方が定着しまして、当然それは国民環境を守る大きな一つの柱になると私は考えまして、そのような時期の早く来ることを願って努力したいと考えておるわけでございます。  ただ、いまいろいろ御意見がありましたので、一々お答えするわけにまいりませんが、一つその中に、指定をしたいと思ったなら一月前にそれを国民に公示していろいろ意見を聞いたらよかろうということでございますが、これは私はあまり賛成できないと思う。なぜかと申しますと、われわれはその土地をきめるのは、この地域に指定したいと思うからそういう方針でいるわけですね。ですからそれに対しては、実はだれも反対してもらいたくないのです。ところが公示しまして意見を聞くと、あと必ず反対の意見が出てまいります。それは利益を得たい者とかいろいろな手を使いまして出てまいりますと、かえって混乱していろいろ激しくなると思うのです。  私は住民運動というものは非常に大事に考えております。おっしゃるとおり日本自然保護運動がこれほど盛んになりましたのも、住民の中にこのような機運が非常に大きく醸成されておった。たまたま環境庁ができてそれに口火を切ったから、これは一ぺんに爆発したのだと思いますけれども、そのように住民運動というものはきわめて大事に思いまして、日本環境を守るためには住民運動を十分尊重して、これを正しく利用しなければならないと私考えております。  ですが、いまのような公示して意見を聞くなんということはかえって、あまり聞かないで、私は指定する方針でいる場合には、それは反対の意見など聞くと、またかえって指定しにくくなるでしょうから、むしろそういう場合には、できるだけ黙って早くさっとして網をかぶせるほうがいいのじゃないか。その場合に反対するのは、いわゆるそのような周辺地域にあって困るような商売人とかそれから企業とか、そういうのが反対するかと思いますが、そういうところだけだと思いますので、私はそのような考え方はかえってやりにくいのではないかと思いますが、その他のものについては、いまとやかく申し上げるだけの意見もございません。
  415. 米原昶

    ○米原委員 その場合の意見はなるほどわからぬではありませんが、もう一つ、こういうようなこともあるのです。保全区域内においてのある一定の業者なんかに工事を許可する場合にも、やはり許可をしていいかどうか、こういうことで住民の意見を求める、こういうように書いてあるのです。どうです。
  416. 大石武一

    大石国務大臣 さあ、それについても何と答えていいか、的確なお答えのしようもございません。やはりそれにはいい面もありましょうし、またいろいろ悪用する面もございましょうから、もう少し慎重に考えてまいりたいと思っております。
  417. 米原昶

    ○米原委員 もう一つは、これは前に鳥獣保護のときにも聞きましたけれども、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に司法警察権を持った職員を充てる問題がありましたですね。自然保護の場合にも鳥獣保護員と同様な自然保護員といいますか、自然保護官といいますか、こういうものを採用すべきじゃないかという、これは日弁連の意見書ですが、出ておりますが、この点についてはどう考えておられますか。
  418. 大石武一

    大石国務大臣 私は自然を保護するための相当の権限を持った司法権もけっこうです。そのような権限を持ったいろいろな保安官といいますか、そういう種類の者があったほうがいいというふうに考えます。しかしいまの段階では、この少数の人員の中で、定員の中では、そういうものはなかなか不可能だと思いますので、いろいろな段階考えまして、もう少しある時期が来たならば、そのような権限を持った者を中に置いて——いまは警察の協力を得てやるほかないと思いますが、そういう者も中にあってさらに広い協力を得ながら、われわれもそのような仕事ができる者を持つことが望ましいと考えるわけでございます。
  419. 米原昶

    ○米原委員 あまり時間もありませんから、もうこれで質問は終わります。  ただ最後に、これは非常に重要な、ほんとうをいいますと国民が期待していた法案だと思うのですよ。それが逆に会期のこういう末になって出てきたということは、はなはだ遺憾であるということを申し上げて、私の質問を終わります。   〔始関委員長代理退席委員長着席
  420. 田中武夫

    田中委員長 本日の質疑は終了いたしました。  次回は、来たる十六日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時十四分散会