○
小澤(太)
政府委員 土井
先生のような
法律家でありませんから、私は
法律的な議論はいたしません。その議論は、先ほどの法務省並びに私
どものところの
局長の
説明で十分だと私は思っております。
ただ、
先生が聞きたいとおっしゃるのは、どういう経過で、最初原案にあったものが抜けたかということだろうと思うのです。それは
法律の問題もあると思いますが、あるいは政治的な考慮があったのではないか、そのことをお聞きになろうとしてさっきからいろいろ議論をやっておられるのではないか、こう私は聞いておったわけです。
そこで
お答えしたいのは、まず
法律論といたしましては、
先生がおっしゃったとおり、ほんとうに私
どもが
出しました最初のあの
因果関係の推定規定は、あってもなくても同じようなものだ、まさしく
先生の言われたとおりだと思うのです。これは先ほど法務省ないし私の局から
説明いたしましたように、あの
因果関係の推定は直ちにそのものずばりと推定されるわけではないので、その前に発生したもの、あるいはまたさっき言った三つのように、病気とその発生したものとの
因果関係があるか、それからその地域に住んでおるか、そういうことが立証された上で、その地域に住んでおって、そこに同じような病人があった場合に、ここにいまの推定規定が働くわけでございます。その前に三つのなお立証しなければならぬ問題があるわけです。ですから、そういう
意味では、
因果関係の推定といっても、実はまことに不完全きわまるものです。やはり
被害者のほうでは、さっき言ったような三つのことの立証をしなければならぬ。ところが、現在の
裁判は、これは先ほどから
説明がありますように、その
被害者の側から、原告から立証しなければならぬこの三つの推定をすでに
裁判所は
判断において乗り越えておられるのです。ですから、そういう時期に、もう効果の薄い推定規定だけで事足りるとは思わない。こういうことから、むしろ現在これを見送って、先ほど船後君が申し上げましたように、
裁判の動向がだんだん固定しつつある、それは第一審の判例しかありませんけれ
ども、これがほとん
どもう
裁判官の
考え方の中にも、社会的の通念の中にも固定化しつつある、この動向を見きわめて、そして
因果関係の推定の規定を置くならば、原案のようなものではなくて、先ほど御
答弁申し上げたように、もっと
因果関係の輪を、どの輪をつないで推定するか、こういうことを
検討する必要があるということに一応達したわけです。
なおかつ、これは私
ども政治的に
判断いたしますと、この
因果関係の推定が、
内容はまことに羊頭狗肉なんですよ。
先生のおっしゃるとおり、それがいかにも一切の
因果関係をこれでもって推定できるというような誤解を与えるということもあるのです。それから、そのために、それにたより過ぎて、
被害者がかえって有利でないということにもなり得る、そういうような誤解が起こり得るというようなこともございます。そしてまた一面においては、これをどのように運用するかという問題もいろいろあると思います。
裁判の実務は私は存じませんけれ
ども、いまのような
判断に立ちましてメリット、デメリットを
考えまして、この程度のものならばむしろ見送って、さらにその
因果関係の輪をどこにつなぐかということを、判例の動向とあわせながら、次の機会に持っていくのがむしろ実際的であり適当ではないか。そしていま申し上げた三つの
因果関係の推定を、つまり立証することを判例はすでに乗り越えております。乗り越えておることをさらにわれわれは
考えていくべきだろう、こういうような
考えでおるのが私
ども政治の
立場です。ほかから圧力があったとは全然
考えておりません。私
どもの
環境庁の
立場としては、そのようなことでわれわれが右顧左べんして左右されるような、そういう姿勢ではございません。そのことは私がここで
責任を持って申し上げます。どんな事実があったかということは私存じませんから、そういうことだけ申し上げます。