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1972-06-07 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月七日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 始関 伊平君 理事 林  義郎君    理事 山本 幸雄君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君       伊東 正義君    久保田円次君       浜田 幸一君    村田敬次郎君       阿部未喜男君    加藤 清二君       土井たか子君    古寺  宏君       吉田 之久君    米原  昶君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)         (環境庁長官事         務代理)    木内 四郎君  出席政府委員         警察庁交通局長 片岡  誠君         環境庁長官官房         審議官     鷲巣 英策君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君  委員外出席者         環境庁大気保全         局企画課長   竹内 嘉巳君         文部省体育局審         議官      吉田 壽雄君         通商産業省重工         業局自動車課長 中村 泰男君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      根岸 正男君         工業技術院技術         参事官     木下  亨君         運輸省自動車局         整備部車両課長 飯塚 良政君         参  考  人         (東京公害局         長)      佐藤 八次君         参  考  人         (東京衛生局         予防部長)   中川 喜幹君         参  考  人         (東京立女子         短期大学学長) 岩本 経丸君         参  考  人         (横浜国立大学         助教授)    加藤 龍夫君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   合沢  栄君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     合沢  栄君 同月七日  辞任         補欠選任   合沢  栄君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     合沢  栄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(光化学ス  モッグ問題)      ————◇—————
  2. 田中武夫

    田中委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に、光化学スモッグ問題について、本日、参考人として、東京公害局長佐藤八次君、東京衛生局予防部長中川喜幹君、横浜国立大学助教授加藤龍夫君及び東京立正女子短期大学学長岩本経丸君、以上の方々の御出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中武夫

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、加藤参考人は午後から出席されますので、御了承願います。     —————————————
  4. 田中武夫

    田中委員長 この際、参考人各位委員会を代表いたしまして委員長から一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  御承知のごとく、わが国の環境問題は、急速な経済の発展を伴っておびただしい公害発生させ、人の健康に重大な被害を生じることになりました。  国民は、一人一人がこの問題に取り組み、本委員会といたしましても、先般来の国会より公害関係諸法整備拡充を行なってその対策実施してまいり、工場等排煙による大気汚染規制強化を見るに至りました。  しかしながら、町の至るところに野放しに自動車がはんらんし、その排気ガスによって各地において光化学スモッグ発生させ、連日のように町行く人や授業中の生徒、外で遊ぶ子供たちを襲い、被害を招いており、まさに人が喜ぶべき晴天の日が来れば一そうの不安をかき立てることになりました。  また、去る五月三十日、本委員会の一行が視察いたしました石神井南中学校のように、都心からも離れ、緑多い場所被害を生じ、夏期を待たず、また日夜を問わず、忍び寄るオキシダントは、光化学スモッグ生成人体への影響等、いまだに解明できない問題も多く含んでおり、その対策も急務となっております。  本日は、日夜本問題に取り組んでおられます参考人各位から貴重な御意見を承り、もって、その対策に万全を期する所存であります。  どうか、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、議事の整理上、御意見はお一人おおむね十分以内といたしまして、あと委員の質疑にお答えいただくようお願いを申し上げます。  それでは、まず佐藤参考人からお願いをいたします。佐藤参考人
  5. 佐藤八次

    佐藤参考人 東京都の公害局長佐藤でございます。  私から光化学スモッグ現状と現在東京都がとっております対策概要について御報告申し上げます。  光化学スモッグは、昭和四十五年に東京都立高校において発生いたしまして以来、今日まで、非常にむずかしい大気汚染現象としてわれわれ取り組んでおるわけでございますが、ことしに入りましていろいろな面で特色が出てまいってきております。  と申しますのは、まず本年第一回の注意報を出しましたのは四月の二十七日でございまして、四十六年は五月十七日でございました。したがいまして、非常に早い季節から発生が始まったということが第一の特徴でございます。  それから、発生と申しますか注意報頻度が非常に高い。昨年は、四月には、いまも御報告いたしましたように一回もございませんが、ことしは四月に二回、五月に六回、六月に一回と、合わせまして本日までに九回の注意報を出しておるわけでございます。これは昨年の同時期の注意報発令日に比べまして、非常に残念でございますが、三倍の頻度を持っておるということでございます。  それから三番目に、内陸部オキシダント濃度の上がる率と申しますか、高濃度発生する度合いが非常に多い。田無、青梅、八王子というような地域で高いオキシダント濃度を測定されておるわけでございます。  それから四番目に、後ほど予防部長のほうから詳細について御報告申し上げる予定でございますけれども、被害が多発かつ複雑化と申しますか、まあ多発しておるということでございます。六月六日現在約二千八百人でございまして、特に、御視察をいただきました練馬区の石神井南中学等におきましては、五月十二日、二十五、二十六、二十七、二十九日という五日間被害が出たという特殊な例を見たわけでございます。  きわめて概括でございますが、以上が今年の状況でございまして、東京都がこれまでとりました対策の総合的な面について御報告申し上げますと、委員長からもお話がございましたように、光化学スモッグ原因あるいはいろいろな問題点というものは、きわめて申しわけないのでございますけれども、未解明の分野が非常に多うございます。したがいまして、東京都におきましては、環境庁の御指導をいただきながらも、東京スモッグ対策研究プロジェクトチーム昭和四十六、七年度の二年間におきまして設置し、生成機序、どういうしかけで光化学スモッグが起こるのか、それから、起こった光化学スモッグは植物に、あるいは人体にどのような影響を与えるのであろうかというような問題点研究いたしますチームをつくって、現在鋭意その基本的な研究をやっておる最中でございます。  しかしながら、光化学スモッグ炭化水素という物質窒素酸化物に太陽の光線が当たり発生するということは、定説になっておるわけでございます。したがいまして、緊急時の対策とそれから平常時の総合対策というものを現在東京都におきまして立てております。緊急時の対策につきましては、予報注意報、警報、重大緊急報という四段階措置をそれぞれとるようなことにいたしておるわけでございますが、そういう段階になりますと、先ほど申しましたように、まず炭化水素窒素酸化物がございますが、窒素酸化物の点につきましては、固定発生源、つまり工場事業場でございますが、これにつきましては、大体予報注意報段階燃焼カットを二〇%お願いするということを大きな工場事業場等と協定を結んでございまして、予報注意報段階で確実に燃焼カット事業操短お願いしておる段階でございます。段階が進むにつれまして四〇%のカットお願いするというような用意も持っておるわけでございます。  それから、基本的に窒素酸化物という物質は、征伐すると申しますか、対策が、現在の科学的な技術の水準では非常に困難でございますので、炭化水素対策の焦点を当てていくのが最も効果的かつ早期の成果があがるのではないかという判断から、東京都におきましては、炭化水素削減ということに対策の重点を現在置いてございます。  これにつきましては、光化学スモック発生しない状況に持ち込むことが必要である。結局そうなりますと発生源対策ということが一番緊要でございますので、発生源について具体的な措置をやる。これにつきましては、発生源と申しますか、九七・九%、大体九八%近くは自動車排出ガスから炭化水素が出ておるという統計もございますので、自動車排出ガスを中心に対策を考えておるわけでございます。基本的には無公害エンジンの開発ということが望まれるわけでございますが、これは御案内のとおりに、アメリカにおきましても、マスキー法の考え方、実現の所要日時等からいたしまして、きょう、あすの事態にはなかなか間に合わないということでございますので、排出ガス減少装置でございますとか、あるいはブローバイガスと申しまして、エンジンから漏れておりますガスをさらに還元するような装置でございますとか、あるいはアイドリング時の一酸化窒素濃度を押えていくという方法でございますとか、それから先日警視庁と公害防止対策協議会を設けまして、交通量削減について打ち合わせている最中でございますけれども、交通量削減対策でございますとかいうような対策を総合いたしまして、炭化水素排出量を押えていこうという計画でございます。  これにつきましては、具体的には排出ガス減少装置の取りつけということになるわけでございますけれども、法律上義務化されておりませんので、東京都の公害防止条例に基づきまして、関係機関に要請という段階で現在お願いしている最中でございます。  そのほか、炭化水素でございますとか窒素酸化物排出基準等についても、政府において基準をおきめいただきたいというお願いもしておる最中でございますし、石油連盟石油メーカーに対しまして、燃料油改善等につきましてもいろいろお願いしている最中でございます。  非常にざっぱくな御説明でございますけれども、光化学スモック現状東京都が総合的にとっております対策概要でございます。よろしく御指導お願いいたします。(拍手
  6. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、中川参考人お願いいたします。中川参考人
  7. 中川喜幹

    中川参考人 中川でございます。私は昭和四十五年度以来都内各地に続発しておりますいわゆる光化学スモッグによる被害の概況と、衛生局といたしまして現在実施をいたしております研究調査等について、御説明を申し上げます。  まず、被害者届け出状況でございます。被害届け出の把握の問題につきましては、光化学スモッグによる被害が多くは一過性であるということもございまして、本人並びに保護者から、これによる被害と思うという届け出がございました場合には、それをそのまま数として計上いたしております。したがいまして、もっぱら個人個人判断によるものであるということでございます。  この三年間にわたりましての被害発生状況を見てまいりますと、昭和四十五年度に一万六十四人でございます。四十六年度は二万八千二百二十三人でございまして、四十七年度は、昨日までの累計が二千八百十六名になっております。  これをいろいろな観点から調べてみておりますが、幾つか特徴的なことがございます。学校に非常に多いということがまずいえると思います。被害届けの八〇%以上は小中学校等でございます。本年は、それに加えまして、一昨日以前は中学生が多いという傾向がやや目立っているような感じがいたします。昨日注意報が一部の地域に出ておりますが、昨日はかなり小学校等にも発生をしているようでございます。そのほか、地域的に見てまいりますと、やはり練馬杉並、板橋という地域例年被害が多いというようなこともございます。  次に、これらに対する調査及び対策でございますが、御承知のように、光化学スモッグによる被害と申しましても、まだまだ医学的にはわからない点が多うございます。つまり、未知疾病ということでございますので、現在の段階では、これがどういう形の病気であり、どういう仕組みで起こってくるかということをまず明らかにする必要がある段階だと考えております。したがいまして、私どもの取り組み方といたしましては、予防とか治療というものについては、現段階ではかなりむずかしゅうございまして、現在では主として調査研究実施をいたしまして、その結果から何らかの予防措置なり治療ということを考えていきたいというふうに考えているわけでございます。  現在、調査研究として行なっておりますのは、まず第一に疫学的な調査でございます。未知疾病に取り組む場合には、この役割りがかなり重要であろうというふうに考えております。  第二は、臨床医学的に十分徴底した検査を実施をすることでございます。今回、石神井南中学に起こりました被害につきましては、臨床家の非常に熱意ある協力が得られましたので、かなりそういう点では収穫はあったというふうに考えております。  それから第三は、こういう研究にきわめて重要な役割りを果たすものだと考えておりますが、動物等を使いました基礎医学的な研究でございます。この三本を柱といたしまして原因究明に取り組んでいる次第でございます。  対策といたしまして実施をしておりますことを御説明いたしますと、きわめて不十分なものではございますが、従来の発生状況から見まして運動負荷にかなり全身症状を強めているというようなことがございますので、運動負荷に対する配慮が必要であり、そういうことを助言をいたしてまいりまして、最近はオキシダント濃度の高くなる時間をはずして、なるべく午前中に体育をということで学校も対応してきたようでございますが、過日の石神井南中学の例を見ますと、それでもまだ問題があるのではないかというふうに考えております。  そのほか、きわめて素朴な対策でございますが、目を洗うとか、うがいをするとか、そのほか呼吸系に何らかのハンディキャップを持っている人が大気汚染によって症状が悪化するというようなことがございますので、そういう人たちに対しては注意報発令の際にはなるべく安静を保ち、戸外に出ないというようなことを指導しております。きわめて不十分な対策ではございますが、その程度のことでございまして、医学的な研究調査を進めて、もっと十分御要望にこたえられる対策にしていきたいというふうに考えております。  なお、時間の関係もございますので、石神井南中学につきましては、過日、中間的なまとめを臨床医学的な立場からいたしましたが、それについてはあとで時間がございましたら、御説明をいたしたいというふうに考えております。  以上でございます。(拍手
  8. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、岩本参考人お願いいたします。岩本参考人
  9. 岩本経丸

    岩本参考人 こういう機会を与えられましたことを、被害者の一人といたしまして、まことに感謝にたえないと思っております。  私は専門科学者調査のほうに向かう者でもございません。もっぱら被害者として常にその対策を講ずるために現実を見きわめてまいりました。理論とはずれたり科学的でないところがあるかもしれませんが、事実は事実としてひとつ申し上げたいと思います。  東京昭和四十五年の夏以来起ってまいりましたいわゆる光化学スモッグ発生源はもっぱら自動車排気に基づくという説がどうやら都の公的見解としてまとまりそうでございます。もしそういうように一般見解が定着いたしますと、多分に新しい疑問が残りますし、そればかりでなく、なおほかにあるかもしれない重大な発生源の探究が忘れ去られてしまうのではないかという心配を持つものであります。  東京に起こっておりますいわゆる光化学スモッグ被害から生ずる頭痛吐きけ、せき込み、呼吸困難、ついには失神するというまでに至りますような症状は、ロスアンゼルス型光化学スモッグから生ずる目がチカチカ、のどがイライラというような症状とは違っております。そこで、この事実は昭和四十五年七月の東京立高等学校に起こりました初発事例が、はたして光化学スモッグによるものであるかどうかと多分に疑問視した人々の問題点となったわけであります。しかしその後になりましてから同じような被害が続出いたしまして、そこで東京にはロサンゼルスと違った独得の複合汚染があるのではないかという考えが出てまいりまして、東京スモッグという名称も出てきたことは皆さま御存じのとおりです。ところがその後のシーズンはずれになりましてからの小康状態一般楽観を生んだためでございましょうか、都の公害研究所におかれても再びロサンゼルス的定説に逆戻りされたのではないかと、たいへん失礼でございますが、いま申し上げます。  また一般でも東京スモッグというような用語が使われなくなりまして、何か楽観気分が出たようでありますが、このときに意外にも、またしかも、早く反復いたしまして、頭痛吐きけしびれけいれん、発熱といったような、いままでは光化学スモッグ被害としては認められなかったような症状がその南中学に続発するに及びまして、これらの症状はいわゆる光化学スモッグ原因であるという、その公認というのでございましょうか、いままでは疑われておったのですが、それがどうやら公的に認められた第一回の事実として私は考えております。どうもいままでの疑惑のものが、どうやらこれはやっぱり東京光化学スモッグ原因だということが公的にしっかりとつかまれたと思います。  ところがせっかくここまで公害研究所の御研究がきたといたしましても、それから発生されるいろいろな御意見はどうも自動車からその原因が出てくると、自動車にばかりしぼられているようです。したがいまして、事実を見ております私にとっては、こういう事実がちっとも追求されていないと思うのです。それはどういう事実かというと、夏の南東微風のもとで杉並練馬その周辺緑地帯を襲い、しかも青年中期と前期に当る女子生徒に多くの被害を起こさせるという一種独得のミステリーと思いますが、そういうものはいまもって徹底的に解明されようとする姿勢や方向が出ておりません。これは、こういうような一種のミステリー自動車排気ガスだけを研究しても、あるいはロサンゼルス型スモッグ理論によっても不可能ではないかと私は思うのです。これは単なる信念であって何ら科学的な根拠がないといわれればそれまでですが、そこを公的な機関にしっかりととらまえていただいて解明していただかなければ東京の不安は去らない、特に教育現場の不安は去らないと思いますので、これを申し上げたいのです。  私がそういうようなことを一教育者として倫理学を専攻する者が、そういうようなものにどうしても縛りつけられたということについては、次のような四つ現実の事実がございます。それを申し上げます。  まず第一に現実被害発生状況から見ると、その発生要因自動車とは密接に結びつかず、まことに明瞭に風速、風向と結びついております。すなわち、五月下旬から十月上旬までのシーズン中でも、東、北、西よりの風のもとでは杉並やその周辺部にはほとんど被害を生じていないのに、南東微風下では必ずといってよいほど何かの被害異状が生じています。したがって、被害異状発生が、自動車よりもより以上に風向きと風速、そして風の進路中にある汚染大気に支配されているという事実が厳然として存在しているように思われます。それはなぜなのだろうか、この事実をどのように解釈したらよいか、それが第一の疑問でございます。  第二の疑問は、都の公害研に念を押したいことと、念を押して、それに御承認を得た上の疑問でございます。  新聞記事によりますと、杉並石神井南中学の一連の被害をやはり光化学スモッグ現象だと公認されたと思いますが、そのように解釈してよろしいでしょうか。  もしそうだとすると、ロサンゼルススモッグ東京スモッグの間には質的な違いがあるということが間接に証明されたと思いますが、そのように承知してよろしいでしょうか。  第三番目は、ロサンゼルス東京光化学スモッグに質的な相違があるとすると、それはどのようにわれわれは把握したらよいのか御教示を得たいと思います。  ロサンゼルス東京との違いは、車の燃料の違い、たとえば前富山大学助教授、現横浜国立大学助教授、今日も午後からお見えになるそうですが、加藤竜夫氏が指摘されるように、芳香族等がガソリンの中に混合されるということによって起こる特殊な自動車公害でございましょうか。私は、工場排煙とかその他各種の粉じん、羽田のジェット機の排気硫酸ミスト硝酸ミストというような各種のものがこの大都会の汚染空気の中にあるはずです。そういうものに対する追及をこの際強める必要があるのではないかということを申したいのです。  今度は大きい第三項目ですが、昭和四十五年七月十八日の初発被害のおりにあらわれた症状には四つございました。第一が、目がちかちか、のどがいらいら、これは軽症です。第二が、頭痛、吐き気、微熱、しびれというような中症のもの、第三が、一、二時間、数刻たちましてから次第に手足のしびれが出てきたり、けいれんが出てくるという第三の類型、第四は、せき込み、流涙、呼吸困難、全身けいれん失神——意識を喪失いたします、に至るような重症です。  当時、この中の二、三、四と重症のほうの症状は大きな疑惑をもって見られたものでしたが、昨年の大泉中学と今年の石神井南中学では二の中症があらわれ、同じく今年の石神井南中学と昨年の桜水高校では三があらわれ、四に近いものが昨年の磯子工業高校と大阪の羽衣女子高校に出ました。そしていままでは光化学スモッグ被害としてはおかしいといわれて、白眼視するといってはおかしいですけれども、専門家から現場の神経質だと批判されましたものがもはや疑う余地がなくなりました。  この四つ症状は、一昨年の東京立高校のときには四十三名の被害生徒全員にそれぞれ出ております。今年は場所と時を変えて、二と三があらわれ、幸いに四のような重症はまだ出ておりませんが、こういう症状の差や出かたはいろいろ違うようでございますけれども、すべての事例に共通したところがございます。それは何だと申しますと、まず自動車とは平生縁の遠いところで、森や川や池や畑等に取り巻かれ、南側に大きい校地を持ち、北側に大きく東西に伸びる鉄筋校舎を並べた学校に、南東微風のもとで起こることであります。これはただし城西地区でございます。杉並練馬の例でございます。これらの諸点から考えて、どうしても、自動車ばかりではなくて、それ以外の何かの一次ないし二次の汚染物質か、その上にまた何か地物の物理的条件も加わって、このような被害が起こっているのではないかというのが私の信念になってしまいました。都の公害研にも国の責任機関にも、この点を究明しようとする強い御意向、方向が出ておりませんが、それは私としてはそういうふうにお願いしたいと思うのです。  次は第四の大きい項目です。昭和四十六年、昨年の八月の中旬から九月中旬にかけまして、都の公害研大気汚染測定車が私どもの学校に常駐して、大気中のNO2の濃度の日別変動と、あわせてクラブ活動中の生徒に対して、三種の症状の出現頻度の日別変動とを測定いたしました。その二つの測定数値を照らし合わせましたところ、次のような結果が得られたのです。第一、NO2の濃度と比例して出現頻度が高まる症状は目の症状でありました。第二、せきなどの呼吸器系統にあらわれる症状はNO2の濃度関係しているような数値のあらわれたものと全く逆なものもあらわれておって、結局これは不確定だということでございました。第三番目、頭痛、倦怠感等の全身症状はNO2の濃度とは全く無関係にあらわれておりました。  さらに注意を要することは、この一、二、三の三つの症状の山はいつ出ているかというと、常に南東微風下の晴天のときに出ております。これは明らかに山が高くなっております。これは昨日出ました週刊朝日ですかに載っておりますが、どうもあれはめちゃくちゃな載せ方をされたようでございますので、もう少し正確に報道していただいたらありがたいと思ったのですが、おぼろげながらにはあの図表でわかるはずであります。ところが九月に入りまして北風が吹きましてからは、急にこの症状がゼロに近くなりました。したがって北風の日でも、九月の初旬でございますから、二十五度以上の気温が続いておりました。一日二十度という日がございましたが、都内では自動車はやはり変わりなく走っていたはずでございます。  さて、右のような各種事象を考え合わせますと、東京に起こるいわゆる光化学スモッグによってもたらされる被害なるものは、ロサンゼルス型スモッグの上に何かの、そしてもっと悪い汚染が加わっているところの東京独特のスモッグによって起こされていると思わざるを得ないのであります。現実の多くの事例に立ってみたとき、多くの今日の理論はこれらの現実から出発していないように思われます。  たいへん失礼なことを申し上げますが、衷情をお察しください。特に被害校の一校長であった私の実感には安心してこれらの理論に従えないようでございます。願わくば、科学的な対象はこれを広く選び、これらの数多い対象の分析の結果を総合いたしまして、視野の広い原因追及をされることを祈りまして、このありがたく与えられた機会を感謝して、私のお話を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手
  10. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  以上で、午前中の参考人からの意見聴取は終わりました。     —————————————
  11. 田中武夫

    田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、東京都からお見えの両参考人は都合により午前中だけでありますので、この点御了承をいただきたいと思います。  また本日は、環境庁長官事務代理木内国務大臣をはじめ、環境庁、警察庁、文部省、厚生省、通産省、運輸省等から、それぞれ政府委員政府関係者が出席しております。  それでは林義郎君。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 光化学スモッグの問題は四十五年からたいへん問題になっている。いま佐藤さん以下お話を聞かしていただきましたけれども、どこが、どういうふうな原因になっているかというところがなかなかはっきりわかっていないという話であります。私、お話を聞いておりました中で少しお尋ねをしたいと思います。特に東京都の方は本日は東京都議会もあるということで早々に御退席されることでございますから、せっかくの機会でありますから、東京都の方を中心にしてお話をさせていただきたいと思います。  佐藤さんのお話の中で、光化学スモッグ炭化水素、窒素化合物というものが原因である、これが定説になっている、こういうふうなお話でありました。岩本さんのお話だと、実はいろいろ複雑な問題があるというようなお話がございましたが、私も、実は、問題をほんとうに的確にとらえていくならば、虚心たんかいにやっていく必要があるのではないだろうかという気がするのです。特に岩本参考人は実際に被害を受けた立場からごらんになっておられますから、やはりその被害がどういうふうに起こってきたかということを虚心たんかいにとらえていかなければいかぬだろうと思うのでございますけれども、この辺についての、佐藤さんのほうで考えておられる点、どういうふうに考えておられるのかという点が一つです。  それからもう一つは、いろいろと研究をしておられる、環境庁のほうの指導も得ていろいろ上やっておられるというようなお話でありましたが、一体この光化学スモッグ研究について生成機序であるとか病気対策であるとかいうような研究部門の予算、そういったものは一体幾らぐらい東京都で組んでおられるのか、お示しいただきたいと思います。
  13. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  岩本校長先生のお話等につきましては、東京都の公害監視委員会のメンバーとしていろいろと都の公害行政についても常日ごろから御協力、御参加いただいておりますので、われわれといたしましても、体験に基づきます貴重な御意見として、常にその御意見につきましては行政の中に取り入れるような努力をしておるわけでございます。先生からもお話がございましたように、当然東京周辺には、自動車以外の発生源から、SO2でございますとか粉じん等多くの汚染物質が放出されておるということは事実でございます。そういう汚染物質自動車排気ガスを引きがねといたしまして光化学反応を起こしておるのである。したがいまして、自動車以外から出ております汚染物質につきましてもいろいろな反応があるということは推定しておるわけでございます。したがって、人の健康に関係のございます一次あるいは二次の汚染物質のすべてに影響があるのではないかと思っております。そういうことでございますので、先ほども申しましたように、予報注意報段階工場事業場には、光化学スモッグ時にSO2を減少するというようなねらいもございまして、燃料使用量を減らすようにしておるわけでございます。  それから、都では光化学反応によって起こります物質については総合的な全体的な調査をしておるわけでございます。石神井南におきます測定につきましても、オキシダント、オゾンそれから一酸化窒素、二酸化窒素それからSO2、ホルムアルデヒドというような物質のほかに、先ほど岩本先生から御指摘がございました硫酸イオン、俗にミストといわれる場合もございますけれども、これにつきましても、四十六年の立正高校の日中平均二〇・七二、夜間の平均一二・四五と大体同じ程度の硫酸イオンがあるということを石神井におきましては測定しておるわけでございます。なお、硝酸イオン等についても測定しておるというようなことで、いろいろと一次汚染物質あるいは二次汚染物質総体について総合的な研究をしておる、こういうことは事実でございます。  それから光化学に対します直接のあれを加えまして、公害研究所におきます研究費の予算は二億九千万円でございます。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 二億九千万円の内訳は大体どんなことになっておるのか、参考人でなくても説明員の方でも……。それじゃ参考人からお答えいただきます。
  15. 佐藤八次

    佐藤参考人 東京都スモッグ調査研究が五千四百三十四万八千円でございます。このうち野外調査が七百九十六万一千円、それから発生源調査が七百七十万円、炭化水素金属PANの分析研究が一千五十八万七千円でございます。それから大気汚染排出係数、エミッションファクターといわれておる問題でございますが、これが一億六千万円、移動発生源が一億一千五百万円、固定発生源が四千五百万円、大気汚染物質にかかる環境基準設定のための基礎調査が二百七十万円、それから石油、重油等の燃料分析調査が三百万円、それから自動車走行量削減基本調査が二千二百万円、そのほか地域媛冷房計画の推進に千五百万円、それから燃料油販売実績調査が二百二十万円、大体以上でございます。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 ざっとお話を聞きますと、純粋の研究費というものは大体七千万円くらいでございますね。あとはいろいろと燃料からどう出てくるとか、自動車のいろいろな規制をするときの費用であるとか、いろいろそういう点があるからということであります。七千万円でありますが、環境庁のほうでは、一体この光化学スモッグ対策と申しますか、それの研究についてどのくらいの予算を組んでおるか、環境庁か科学技術庁から御答弁いただきます。
  17. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  本年度の私どもの光化学スモッグ対策予算といたしましては、総合調査費として一億三百万円を予算上計上しておるわけでございます。そのほか昨年、四十六年度におきまして一億三千万円ほどの予備費をいただきまして、本年度の光化学スモッグ調査の準備のためのたとえばスモッグチェンバー費であるとかあるいは冬の間のコリレーションスペクトルの測定費というものを見ていただいておるわけです。そのほか光化学スモッグに関連いたします各種政府関係機関のそれぞれの研究費につきましては、科学技術庁のほうで特別調整費というものを一昨年来組んでいただきまして、それぞれ関係各省において執行しておる、かように承知しておるところでございます。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのお話、対策費ということで一億三百万というお話でありますが、その中での研究費ということになると、あるいは環境庁でなくて科学技術庁のほうについておるのかもしれませんけれども、研究費というものはどのくらいついているのかわかりませんか。
  19. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 便宜私のほうからお答えさしていただきます。  光化学スモッグ関係調査研究費としましては、昭和四十五年度に科学技術庁のほうで特別研究促進調整費ということで五千二百二十七万六千円、そのほかに調査研究委託費が別に三百五十万円ございます。  なお、四十六年度におきましては、科学技術庁のほうを中心といたしました特別研究促進調整費が二千八百三十一万七千円、それから公害調査研究委託費が一千二百五十万円ということでございます。  本年度につきましては、現在まだ配分計画を検討中でございます。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話を聞きましたところでは、なかなか原因がわからない。原因もわからないから治療対策もできない。うがいをせいとかいう話がありました。目をよく洗うこととか、心臓が悪い人はあまり外に出ないこととかいうような話であります。非常に必細い話でありますけれども、これはやはり生成機序であるとか、どういうふうな原因で出てくるかということがはっきりわからなければ、その対策も立てようがない、これも全くごもっともな話でありますから、これは何とかして早くやらなければいかぬだろうと思います。  そこで一体いつごろになったら大体めどがつけられるのか。研究をやっておられるのだろうと思うのです。東京都のほうでも公害研究所がありますし、環境庁、それから科学技術庁からそれぞれ金を出してやっておられるのでありますけれども、大体いまの研究でいくと、いつごろになったら原因がはっきりするか。それから先ほどの岩本先生からのお話に、大体ある程度学問的にも答えられるということが、大体いつごろになったらめどがつくのか、その辺についてお示しいただきたいと思います。
  21. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  先ほども御説明申し上げたとおり、東京都におきましては、昭和四十六年と七年度の二カ年をもちまして、一応行政の対策ができるであろうところまで研究を詰めていくという計画を持っておるわけでございます。四十六年におきましても、中間報告をすでに研究グループの中から行政当局はもらっておりまして、その中間報告をすでに一部は行政の施策の中に取り入れておるわけでございます。  と申しますのは、従来は発令あるいは予報地域を、都心地域と東部地域と西部地域という三つの地域に分断しておったわけでございますが、気象との関係発生パターンとの関係等につきましては、広域的であるということと、一都三県に関連があるというようなこと、それから地域割り、風向性その他が、ある程度研究の成果としてわかってまいりましたので、東部、中部、西部、多摩南部というような四つ地域予報あるいは注意報その他対策を、地域的に区別して施策の中に取り込むというようなことも現にやっておるわけでございます。もちろん非常に複雑なメカニズムでございます。特に人体影響等につきましては、科学者の中には、二年度では、最終結論なりこうだというきめ手になることは、なかなか学問的にはいま断定はできないという部分もございますが、事態が非常に、一日もゆるがせにできない事態でございますので、できるだけ早く研究を進めていただくような措置東京都としてはとってまいりたい、こういうところでございます。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 お尋ねしているのは、最後のほうのことでありまして、先ほど岩本さんからお話がありましたように、非常にいろいろと問題がある。ロサンゼルス型ではないだろうという話であります。そういうことですと、衛生局予防部長さんのお話がありましたけれども、うがいをせいとか、からだのちょっと悪い者はあまり外に出るなとか、目を洗ったらよろしいとかいうような対策では、これは普通の手をきれいにしましょうというのとそんなに違わないのですね。やはり、病気になるということに対しては、その病気に対してどうするかというふうな問題が一番大切なことだと思うのです。それはやはりある程度まで原因がわからないと、病気の治療方法もできないだろうと思います。その他、病気の問題もありますし、それからもう一つ、ではどこをどうはずしていったらよろしいか。たとえば、やはり健康第一ということで考えてやらなくてはいかぬ問題でありますから、硫酸ミストのようなものであれば硫酸のやつは全部もうストップしてしまうとかいう荒っぽいことでもやらなければいかぬことになるのではないかと思うのです。そういった点をやはりはっきり詰めていくのが私は、科学技術行政のうちで出しているところの一番大きな問題だと思うのです。単に大体窒素化合物があるから、炭化水素があるから、ちょっと出たときに注意報を出しておけばよろしいということではなかなかないと思うのです。ほんとうの原因究明というものを相当やっていかなくてはならぬ。お話を聞いておりましても、毎年毎年ふえてきておるわけです。毎年毎年ふえてきておりますから、やはり、原因は、注意報を出したところでおさまらないわけですから、これはどうにもならないということだろうと思うのです。だから、やはりそこの辺が、めどをつけていかなくてはいかぬ。大体四十六年までで話がつくというわけではないと思うのです。そういった点について、そういったある程度まで学問的にもなにがあるし、それからぴしゃりとした対策がつくようなものの研究はどのくらいまでかかるかということであります。その点について私はお尋ねしておきます。  それから、もう一つお尋ねしますけれども、先ほど岩本先生のほうからお話がありました。そのお話の中で、四点ばかり、東京都のほうに対してどうだというようなお話がありました。その点についてのお答えもこの際聞かしておいていただけたら幸いだと思います。
  23. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  第一点は、自動車排気ガス以外の、まあ南風が吹いて工場等からいろいろな工場発生源の汚染物質が運ばれてきて、それが複合的な作用をして被害に結びついておるのではないかという御推定でございます。  この点につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、東京都におきましても、当然東京周辺には自動車以外の発生源からSO2や粉じん等多くの汚染源が放出されているということは事実でございます。したがいまして、そういうものが自動車排出ガスを引き金として光化学反応が起こっておるのだという推定をいたしております。  それから、空気のきれいな、緑の多いところにどうして被害が出るのだという御疑問でございます。この点につきましても、一次発生源が非常に濃度が低い、にもかかわらず汚染物質、二次反応の濃度が高いという事実がございます。これにつきましては、空気がきたなくよごれておるところは、反応が行なわれましても、維持できなくて、こわされる可能性が汚染物質であるのじゃないか。したがいまして、空気のきれいなところに運ばれてきたそういう反応に基づくものは、こわされないで滞留するという可能性が非常に強い、そういうことが大きな一つの特色になるのではないだろうか、こういう推定をいたしております。  それから、風向性と風速性につきましては、昨年も台風のあと第一次汚染物質が非常に低い数値を示したときに、定点観測をいたしまして、ずいぶん追ってまいったわけでございますが、そうした際に、SO2の減る度合いとオキシダントの増加のぐあいをグラフにしてまいりますと、やはりその時点におきましては移動発生源、何か常に下から汚染物質地域的に補給されているようなものではないか。移動発生源というものは何かということになりますと、都が推定しておりますのは自動車ではなかろうか、このように思っております。  それから風向、風速性につきましては、大体五キロから十五キロの海陸風の収斂域がございますが、そういうところに被害が非常に集中されておるということでございます。したがいまして、岩本先生の御疑問についてもいろいろと都のほうでも整理してお答えするようにいたしたい、このように思っております。
  24. 中川喜幹

    中川参考人 医学的な面からの御質問にお答えをいたしますと、今回の石神井南中学をかなりこまかく調べて感じておりますことは、冒頭に申し上げましたように、被害は御本人並びに保護者判断で出てきているわけでございますが、いろいろ詳細にわたって見てまいりますと、いわゆる光化学スモッグによる被害というものも、幾つかのパターンに分けて整理をした上で追求を進めていかなければ無理であろうというような感じを現在抱いております。今後いろいろな調査の面につきましても、そういう形で取り組んでいきたいというふうに考えております。最終的な医学的な解明ということは、相当の時間がかかると私は考えておりますが、とりあえず中間的なものでも二年をめどに出せるものは出していきたい、そういう考え方でございます。
  25. 田中武夫

    田中委員長 次に、島本虎三君。
  26. 島本虎三

    ○島本委員 いわゆる光化学スモッグ発生、またその対策、これは重要でございます。窒素酸化物炭化水素、それに太陽の光線が合してこういう現象を起こす。それは自動車工場、こういうふうに存じておりますが、ただいま岩本参考人の御意見等によりましても、自動車、近所の工場のみではない、南東微風が起こるその際に一番多い、こういうような発言でございます。   〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕 そうすると、いままでにまっ先に光化学スモッグ現象が起きたのは、これまた立正高校でございまして、それは岩本参考人のおられる場所であります。南東微風の吹いてくる根源は川崎であります。そうすると、東京都内の工場自動車のほかに、川崎の工業地帯のこういうような排気ガスによる被害も大きいのじゃないかということは、当然予想されるのでありますが、東京都はこういうふうな点も考えて対策をお練りでしょうか。この点について佐藤参考人岩本参考人の御意見を率直に伺いたいと思います。
  27. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  光化学スモッグ、いわゆる大気汚染地域的な問題につきましては、先ほど科学技術庁が、東京、千葉、神奈川、埼玉、一都三県は地形的に、気象学的に見ますと、一つの箱の中に入っているようなもので、空気の滞留があって、相互に汚染が影響し合っておるのだというような、二年にわたる研究の結果を発表しておりますが、われわれといたしましても、現在一都三県のそれぞれの測定点を全部テレメーター化いたしまして、それぞれの地点におきます測定値を全部ちょうだいして、総合的な判断なり対策を立てることの必要は十分認めておりまして、環境庁にも、お願いいたしまして、関係機関の協力、それから総合的な対策基準値と申しますか、注意報予報等の連絡のし合いと、基準の一致というような広域的な対策を現在やっておる最中でございます。
  28. 岩本経丸

    岩本参考人 申し上げます。  私どもの学校東京都の海抜三十五メートルにございます。高台です。その上に五階の建物がありまして、地上から約十七メートルでございますから、五十二、三メートルの高さです。そこに私どもはのぼりを立て、それから始終朝、昼、夕方でございますね、九時、十二時、三時ごろのぼります。全都が一望のもとに集まります。そういう肉眼観察で、まことに非科学的で原始的でございますが、私どもが被害を受けたときは明瞭に薄紫の変な、不愉快なものがたれ込めておりました。けさもその微小なるものが私のほうの学校に襲っておりました。それは向こうの森とこちらの間にたなびくのですね。そのたなびく方向、そして川崎方面はきょうは全然視界がききません。そして風は南々東が吹いております。そういう事実判断から申しますと、川崎ばかりでない。それから昔は羽田の飛行機の発着も見えたのですが、このごろは羽田の飛行場は全然見えません。そういうような状況で、京浜の一大工業地帯の風は杉並の空の上にも十分に流れておるということを私は考えるわけでございます。これは、もしあちらをお通りになりましたら、屋上から見ていただきますと、絶好な観察地点でございますので、一度ごらんいただきたいと思います。これは科学的な根拠はありませんけれども、明瞭に出てまいります。そして、反対側の西北の方面も非常なスモッグです。この西北の方面は、結局一列にずっと襲ってくるものが、全東京を襲っておると思います。その西北の方面には田無中学であるとか石神井南中学がございます。大体事実報告でございます。
  29. 島本虎三

    ○島本委員 これは東京都に伺いたい。  そういうふうになってまいりますと、やはり対策ももっと広くかつ迅速にやってほしいものであります。ただ、自動車排気ガスの一酸化炭素を減らすと炭化水素がふえる、したがって一酸化炭素を規制して減らすと、増加するところで、この炭化水素を除去する必要が当然ある。この具体策は技術的にはっきり確立しているのかどうか、まずその点を伺いたいと思いますが、この点技術的な立場ですから、佐藤参考人に伺います。
  30. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  風向きによりましてオキシダントなり汚染物質濃度がどのような変化をしていくのかという点につきましては、昨日気象庁当局の御協力もいただきまして、六月から六、七、八と三カ月間、専門調査員を置きまして、風向性とオキシダント等の汚染物質濃度との関係を追求したデータは東京都で持っております。その際、やはり風向性については南の場合もございますし、北の場合もあるということはございます。(島本委員「いや技術的にです。」と呼ぶ)それから排出ガスを減少する装置、一酸化炭素と炭化水素を減らして窒素酸化物を一定以下に押えるというような装置技術的に東京都のほうでは考え、現在触媒式排気ガス減少装置ということで指導基準をつくってございます。
  31. 島本虎三

    ○島本委員 最近、芳香族、アロマティック、これも大きい原因の一つになっている、こういわれておりますが、ガソリンの鉛を減らすかわりにこのアロマティックを増加させる、そういうような傾向は、当然アロマティックをふやすことはリフォーミングに欠けているのではないか、こう思われますが、このようにしてオクタン価を上げているこの事実は光化学現象を増加させることになるのじゃないかと思います。この点等については十分考え、なおかつ技術的にもまた業者なりにいろいろな規制措置を働かしてございましょうか、どうか。
  32. 佐藤八次

    佐藤参考人 ガソリンのオクタン価を高める方便として使われておりました鉛が、鉛問題を契機にいたしましてJIS規格で一定の期間に混合率を下げていくということは事実でございます。そのかわりにオクタン価を高める方法がとられるであろうということは推定されます。そのかわりにいま御指摘がございました芳香族等オクタン価を高めるものが使われるということも推定いたしております。したがいまして、われわれといたしましては活性力の強いそういうオクタン価を高める物質をガソリンの中に入れないようなお願い石油連盟その他の関係に現在いたしてございますし、ガソリンの抜き取りの検査も現在いたして分析中でございます。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 守られていますか。
  34. 佐藤八次

    佐藤参考人 基準がございませんので、守られておるかどうかという点につきましては、現在分析の数値等をにらみ合わせませんと御返答を申し上げられないのでございますけれども、こういうものを入れるについてはこの分量しか入れてはいけないという基準は現在ございませんので、できればその基準について政府のほうで統一的にお考えいただきたいという希望を持っております。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 鉛を減らしてオクタン価を上げるにはりフォーミングでなくてアルキレーションによることも必要である、こういわれておりますが、石油業者に対して指導しているかどうか。  それと、ただいま東京都から、いまのようにして芳香族の問題に対して、オクタン価を上げるための方法として逆にこの光化学現象を起こさせるような、こういうような油にして使っておられるようですが、この点指導は十分しておるのですか。これはどっちですか、通産省ですか、運輸省ですか。
  36. 根岸正男

    ○根岸説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  ガソリンというのは御承知のとおり、いま御指摘のありました芳香族とかあるいはオレフィン、パラフィン、ナフテン、そういうような系統のものがまざったものがガソリンということになっておるわけでございます。それで御承知のとおり四十五年から鉛を抜く。これは鉛を抜くという一つの理由は、鉛によります大気汚染の問題ばかりではなしに、自動車排気ガス、これを処理するためには当然エンジンの根本的な改造ということが必要でございますが、これは相当時間がかかる。そうしますと、排気ガスの処理装置をつけるということが必要になるわけでございます。この排気ガスの処理装置というのはどういう機構でできておるかと申しますと、触媒を使うという形になるわけでございます。触媒は御承知のとおり表面の作用で作用が行なわれます。ガソリンの中に鉛が入っておりますと、触媒がコーティングされまして触媒の機能を失うという問題がございまして、排気処理装置を効率的に使うためには鉛を抜くのが一つの方法であるという、先ほど申し上げました二つの、もう一つの目的といまの目的と二つの目的から鉛を抜くということをきめたわけでございます。それで鉛を抜きますと当然オクタン価は下がります。これはオクタン価が下がるということはもういまの現在の自動車エンジンで走れるところまで一応下がらざるを得ない。ただし芳香族あるいはオレフィン等はそれ以上なるべくふやせないということをわれわれは指導しております。現実に鉛抜きの指導を開始します前ではオレフィンが九・五%、芳香族が三九・二%という状態でありましたものが、四十六年下期ではオレフィンが八・九、これは少し下がっております。それから芳香族が四一・六、ちょっと上がってきておる。いまのこれはプレミアムでございます。それからレギュラーで申しますと、オレフィンが九・七、芳香族が三〇・三というものが、四十六年の下期では一〇・一、三〇・七というようなふうになってきておりまして、われわれとしてはそういう大幅に変わっておるとは考えておりません。なお、ただいまデータを持ってきておりませんが、四十三、四年ごろでは四五%ぐらい入った例もございます。以上簡単に……。
  37. 島本虎三

    ○島本委員 結局は長い時間費してしまって得るものは一つもないということですが、私どもは、これはちょっと残念ですが、じゃ端的に聞きますが、ただいま佐藤参考人のほうから、これはいろいろと窒素酸化物炭化水素の除去の方法等言われましたが、排出ガス装置の取りつけ、これついては法の規制がなく、やむを得なく都の条例のみで行なっているのである。したがって関係機関に要請するのみだ、こういうような開陳があったわけであります。そうするとガバナーをはじめ、こういうようなものに対しては、完全にこれを規制するのは通産省ですか運輸省ですか、これは完全にやっておりますか。そういうようなものを点検して、いわば排気ガス装置等については完全にやらしておりますか、自信をもって答えられますか、大事ですからこの点どちらに聞いたらいいのでしょうか。政府です。
  38. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 自動車排気ガス清浄装置というふうなものが、これは現在技術的に非常に研究されておりますけれども、その耐久性とかあるいは性能の均一性とかそういうふうな問題につきましてはこれは絶対だいじょうぶだというふうな確証が現在ではまだないわけでございます。そういうふうなわけで、現在技術的な研究を鋭意進めているような段階でございまして、法的な面であらゆる自動車に全部強制するというふうなところにまではまだ立ち至っておりませんけれども、試験的にそういうふうなものをつけて結果を見るということはやっております。(「アメリカはやっているんだろう」と呼ぶ者あり)アメリカでございますか。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 私語を禁じます。
  40. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 そういう状況でございます。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 その点についてもちょっと残念ですが、まだ行政的な措置としては遺憾な点が多いように思われます。東京都の皆さんほんとうに御苦労さんでございますが、この点ひとつ解明願います。  いずれにいたしましても車の台数がこのように多いような現状でして、都市周辺工場が現在のように稠密化しておる限り酸化窒素やオゾン、それから炭化水素、こういうような有害物質を根本的に減らすことはやはりいまの状態では不可能のように受け取れました。そうだったとすると、車の台数を抜本的に減らすか、別な交通機関を充実させる、こういうようなことが当然必要になってくるのじゃなかろうか。と同時に、東京や川崎のような大都市の工場を移転するか、大幅に何か転換させなければならないのじゃないか。そうでない限りにおいてはこの対策は完全にできないのじゃないか、こう思われますが、この点等に対していかがでございましょう。まあ私の意向としてはこれに反論してもらいたい。
  42. 佐藤八次

    佐藤参考人 先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、光化学スモッグ等の大気汚染は非常に広域的な現象であるということは事実でございます。したがいまして、対策も総合的な対策を基本的には要求されるということも理論的には事実でございます。都市構造でございますとか輸送機関の整備でございますとか、いろいろ総合的な対策で抜本的にやらなければ終局的な成果は得られないという話も理解できなくはないわけでございますけれども、都におきましては、現にきょうも、前日予報を、光化学スモッグ予報を出しておる事実がございますし、本日まで九回注意報を出して、二千八百人の被害の方がおられるという事実もございます。したがいまして、できるだけ早くそういう事実をなくするような行政の努力と申しますか、行政の責任があるとわれわれは自覚しておるわけでございます。  そういう点からいきますと、発生源を徹底的に征伐すると申しますか、整理していくということもやらなければならないと思っております。固定発生源等につきましては、環境庁とも協力いたしまして、K値規制でございますとか燃料規制でございますとか、総合的な対策を積極果敢にやってございます。特に大気を汚染します率が、東京の空で申しますと大体七五から八〇%に近い工場を直接都では現在押えてございまして、そこの煙突に計測器をつけまして、それをテレメーターで全部われわれの測定室につないでございます。どういう燃料をどう使ってこうだということがすぐわかるようになっております。それについては、特に硫黄分の少ない燃料を使っていただきたいとか、こういうときには燃焼カットまでお願いするということでやっておるわけでございまして、今後窒素酸化物等についてはますますやってまいりたいと思っておりますけれども、現段階では、シェアから申しますと、固定発生源については打つ手はある程度打っておるという自負を持っております。  あと残りますのが移動発生源でございまして、そういう点につきましてはやはり無公害エンジンの開発を基本的な策といたしまして、それまで二年ないし三年以上の日時が技術的にかかるということをアメリカにおいても推定されておりますので、できるだけ早く——ただいま、排出ガス減少装置等については技術的な問題もあるというおことばもございましたけれども、東京都におきまして、現在十三社の申請をいただいて走行テストをやっておる最中でございますが、その中にはきわめて優秀な排気ガス減少装置もございます。ぜひひとつそういう前向きの姿勢で——環境庁におきます通達によりましても、自動車排出ガスの防止装置の取りつけを勧奨するようにという緊急通達を都道府県にいただいておりますので、そういう面についてわれわれは積極果敢にやってまいる所存でございますが、政府におきましてもそういう措置をぜひ義務化の措置にしてつないでいただきたい、このように思うわけでございます。   〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 島本虎三

    ○島本委員 患者の措置に対しては十分に対策を練るように、それと同時に、政府のほうでもいままでの対策では根本的にまだとろいところが多いようですから、もっとこの問題に対しては真剣に取り組むように私は要請して終わります。
  44. 田中武夫

    田中委員長 次に、岡本富夫君。
  45. 岡本富夫

    ○岡本委員 光化学スモッグに対する退治方法、これをずばりひとつお聞きしたいと思うのです。東京都の佐藤公害局長からひとつお聞きしたいと思います。
  46. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。光化学スモッグに対する態度と申しますか対策という点で御説明いたします。  一番重要な対策発生源に対します対策だという自覚を持っております。発生源につきましては、固定発生源と移動発生源ということは先ほどから繰り返し御説明申し上げておるとおりでございます。  移動発生源等につきましては、SO2の排出濃度が、都におきましては、都内平均値から申しますと、昭和三十九年の空の〇・〇三九を割る数値を平均値として持つように現在なっております。あとは基本的に、先ほども申しましたように、自動車排出ガス対策であるということを抜本的に考えております。それから消極的と申しますか、現にそういう対策をやっておるさなかにおきましても被害者が出、注意報予報段階の行政措置も必要でございますので、そういう点につきましては、先ほども御報告いたしましたように原因の究明、発生気象でございますとか、それから植物の影響でございますとか人体影響等を現在鋭意研究をしておる。  以上でございます。
  47. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、自動車排気ガス対策について、アクロレインが光化学スモッグ公害の非常な原因ということを見のがしてはならないというような、これは加藤先生の研究があるわけですが、これに対して都の対策としてはどういうことでございますか。
  48. 佐藤八次

    佐藤参考人 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、石神井南中学等におきましても、考えられます汚染物質についてはできる限りの総合的な調査を現在東京都ではやっておるわけでございます。  アクロレインは、御指摘のように自動車排気ガスの中にも一次物質として排出されますし、光化学反応の過程におきましても出るということは化学的に定説でございます。しかも東京都ではホルムアルデヒド等の分析と申しますか、数値を現在石神井においてつかんでおるわけでございますが、アクロレインが存在するということは事実をつかんでおりますが、その定量化につきましてはいろいろ化学的な手法として問題があるように聞いております。現在その定量分析の方法論について公害研において一応の成果を見つつございますので、現地の調査確認、定量化への確認もやっておる最中でございます。
  49. 岡本富夫

    ○岡本委員 次は木内長官にひとつお聞きしますけれども、光化学スモッグによってこういった人体被害、なお植木の葉が多量に落ちている、こういうようないろいろな被害が起こっているわけでありますけれども、こういったものに対するところの総合調査、あるいはまたいろいろな対策、これは国ではどういうように考えておるのか、これをひとつお聞きしておきたい。
  50. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、実は私はきょうは環境庁長官の代理として伺っているようなわけでありまして——がしかし、科学技術庁長官であることは間違いありませんが、きょうは環境庁としてお呼び出し願いましたものですから、私のほうの政府委員を連れてきておりません。ですから私のお答えが十分であるかどうか疑問でありまするけれども、一応お答えいたしたいと思います。  きょうは諸先生方からいろいろなお話を伺って、また議員の先生方からいろいろお話を伺って、私はたいへんだめになったのでありまするけれども、それに関連しまして、いま御質問の、ちょっと違った見地からこのことを科学技術庁として見ているところをお答えしたいと思うのです。  科学技術庁におきましては資源調査会というのがあります。土地も資源である。そこで、その調査会は基本的にいろいろ調べまして、二年ばかり前から二十名ばかりの学者を動員し、かつ、気象庁その他関係各省庁が集まって調べてもらったわけです。ところで、その結果によりますと、それはこの辺は千五百メートルぐらいのところに綿帽子をかぶったようになっているそうです。それから下のいわゆる下層大気の中における大気の汚染の状態、またそれの表層ですね、地面の上におけるところの生物に及ぼす影響ということについて、資源調査会から私に勧告がありました。内田博士その他から調べていただいた報告があったのですが、それによりますと、先ほど岩本参考人からお話しになったことが非常に私は参考になると思うのですが、この辺は地形と風の向きによって、高密度のこの地帯というものが非常に大きな影響を受ける。それでさっき岩本参考人がお話しになったように、南風が吹いてくる、南東の風が吹いてくる、しかし東からの風も吹いてくる、そうすると、地図を広げてこう見ますと、大宮から南のほうの一帯というものが、そのほうから下のほうは東風で風の壁になるというのですね。そして南のほうからさっきお話のあったように微風が吹いてくる。そうすると、高密度のこの地帯というものは、石神井南中学、あの辺をずっとおおいまして、大気汚染の吹きだまりになるという報告があるわけです。  そこで、長くするとあれですから簡単に申しますが、いまお話のあったように、光化学スモッグ原因につきましては四十五年以来特別調査費を出しまして、いろいろ厚生省あるいは通産省あるいは労働省などで調べてもらっておったのですが、これはもちろん炭化水素窒素酸化物に太陽の光線が当たれば出るということはわかりますけれども、東京光化学スモッグというのは一体どういうメカニズムで発生しているのか、その測定技術などもまだ十分に解明されておりませんので、今度はそういうことをやろうということで四十五年からやっております。そこへ環境庁が出てきまして、さっきもお話があったように、さらに特別調査費を出してそれを研究しておるのですが、まだ十分な解明ができておらないのです。おらないのだが、いまの資源調査会の報告によりますと、単に自動車排気ガスとかそういうものだけでなく、ほかの空気の汚染がこの地域に吹きだまりになる、南風が吹いているようなときには吹きだまりになる、こういう報告がありまするので、それも今後の御審議に非常に御参考になるのではないかと思いまして、一言つけ加えて申し上げておく次第なんですが、そんなような状態でありまするので、それに対してはその勧告に従って気象の状態を調べなければならぬ、これは非常に大事なことで、風の向きなどを調べる。と同時に、植物その他の生物に対する影響も今後一そう研究を進めていかなければならぬ。と同時に、その原因となるところの廃棄物、自動車排気ガスだけじゃない、そのほかの汚染物質についても、これを規制する措置をすみやかに講じなければならない。今後これを減らしていかなければならぬが、さしあたりは現状よりも悪くしないようにしなくちゃならぬという勧告がありましたので、それを各省庁に連絡しまして、その対策を今後積極的に講ずるようにいま各省で打ち合わせをしておる次第でございます。
  51. 岡本富夫

    ○岡本委員 非常に時間が短いので、あと古寺君に譲りまして、また午後から質問いたします。
  52. 田中武夫

    田中委員長 古寺宏君。
  53. 古寺宏

    ○古寺委員 与えられた時間が非常に限られておりますので、まとめて御質問し、御意見を承りたいと思います。  まず最初に申し上げたいのは、大気汚染被害者光化学スモッグ被害者によって、いわゆる光化学死ということが最近いわれるようになりました。将来こういうような危険性が起こらないということは断言できないと思うわけでございます。そこで、人命尊重の立場から、当然被害者のいわゆる診断方法の確立であるとか、あるいは治療方法の確立ということが非常に大きな問題になってまいります。原因物質の究明とともにこれはあわせて行なっていかなければならない問題ですが、いままでの経過を見ますと、ほとんどこの問題については手がつけられておらないような状況でございます。  そこで、第一にお伺いしたいことは、現在は限られた物質の測定、あるいは測定地点も非常に数が少ない、いろいろな問題があるわけでございますが、現状のままの測定でいいのかどうかということにつきまして、これは中川参考人にお伺いしたいと思います。  次は、先日石神井南中学校の問題がございまして、臨床的ないろいろな検査も行なわれたわけでございますが、血液学的な分析の検査の結果あるいはガス分析機による検査の結果、あるいは人間の内臓に対してどのような影響があったのかということについては、まだ発表がなされておりません。あるいは現在動物実験も行なわれているそうでございますが、それらの点についてもまだ発表がないわけでございますが、一体どういうような人体に対する被害があるのか、その点について中川参考人にお伺いしたいと思うわけでございます。  最後に、現在の検査設備車等の内容を見ますと、血液を採血しましても、それを大学とかいろんな検査機関に持っていかなければ検査ができないような体制になっているわけでございますが、これは東京都だけの問題じゃなしに、やはり政府がこの問題に真剣に取っ組んでいかなければならない重大な問題だと思うわけでございます。今日の事態までこういうような問題について非常に消極的な姿勢であった政府の責任というものは非常に大きいと思うわけでございますが、今後のこれらの問題に取り組む政府の決意について、科学技術庁長官からお伺いしたいと思います。
  54. 佐藤八次

    佐藤参考人 測定点についてお答えいたします。  現在の測定点だけでは十分でないという判断を持っております。一番問題になりますのは、定点測定をいたしております地域が、気象的にも地形的にも一定の地域を代表するいわゆる地域代表制があるのかどうかという点が、一番問題でございます。この問題につきましては、現在特定の地域におきまして、移動測定方式をもちまして一定期間ずつ測定をしながら、その中心あるいは最も適当なところに置けば、その地域を代表する定点測定になるかどうかの研究現実にやっておりますので、近いうちに結論を得まして、定点の測定点を再編成してまいりたいと思っております。  SO2等につきましては、大体東京地域八〇%を代表する地域代表性があるという実施調査の結果、定点観測を現在行なっておるところでございます。
  55. 中川喜幹

    中川参考人 診断方法の確立、治療方法の確立を一応目標にいたしまして、現在までもある程度のことは措置として講じてまいっております。  お尋ねの臨床的ないろいろな検査の結果でございますが、一昨日の夜、中間の発表をいたしましたが、これは一応早く住民にある程度のことはお知らせをし、必要以上に不安を持たれないようにということで、したわけでございます。いろいろな検査につきましてはまだ専門家の間で十分ディスカッションが終わっておりませんので、私から結論めいたことは申し上げかねますが、一応かなりいろいろな検査をやって、データーも出てはきております。しかしながら、血液、内臓等につきまして目立った変化は結果としては出ていないようでございます。動脈血のガス分析の結果につきましては、まだデータとして出てきておりません。  それからもつ一つ、これらの検査は、その後大森第一中学に患者が発生いたしまして、東京労災病院に収容された者もございますので、それらのデータがまとまりました段階で、これも含めて専門的な立場で十分検討をしていただき、その結果を待ってはっきりしたものを発表したい、そういうふうに考えております。
  56. 木内四郎

    ○木内国務大臣 ただいま政府対策がなまぬるいじゃないかというおしかりを受けたのですが、政府におきましては、先ほども申しましたようにすでに四十五年に光化学スモッグ発生のメカニズムの研究と、それからこれの分析、測定の技術の解明につきまして科学技術庁の研究促進調整費を出しまして、通産省あるいは厚生省あるいは労働省がみな協力してこれを始めておったのですが、そこへ今度は環境庁ができてきた。そこで環境庁は、昨年におきましては予備費から一億二千万ばかり出して、それからさらにことしは予算において一億二百万円。それによりましてこれに対する応急の調査をし、また対策を練っております。詳細なことは時間の関係もありますので省略さしていただきますが、もし御必要があれが政府委員から御説明申し上げます。(古寺委員「ちょっと待ってください。私がお尋ねしているのは……」と呼ぶ)いや、政府のほうでも何もやっておらぬじゃないかというお話でありますから……。(古寺委員「臨床的な問題いわゆる健康被害の問題です」と呼ぶ)  健康被害の問題等につきましては厚生省あるいは環境庁におきまして、いま申し上げました予算と予備費によりまして暫定の処置、応急の処置を講じております。この光化学スモッグ発生原因は、先ほどから先生方から御説明がいろいろありますように、まだ十分に解明されておらないのですよ。自動車排気ガスだけかというと必ずしもそうではない。(古寺委員「それはわかっております」と呼ぶ)私どもも、そういうことがあって非常に複雑なので、四十五年以来やっておりますが、まだそういうことが十分に解明されておらないということをまあ申し上げているわけでございます。
  57. 田中武夫

    田中委員長 古寺君、答弁漏れの点をひとつ言ってください。
  58. 古寺宏

    ○古寺委員 私の質問している要点が長官によくおわかりになっていないようですので申し上げたいのですが、確かに原因物質あるいはオキシダントの測定、いろんなものはやっております。しかしながら、先ほどから参考人等からもお話がございましたように、汚染物質というものの測定は限られたものしか測定されていないということが第一点でございます。  第二点は、一番大事な人命尊重の立場からなぜ病態生理的な医学的な原因の究明なりあるいは被害者のいわゆる治療方法の確立というものにもっと積極的な力を入れてやらなかったのか。具体的に申し上げますと、現在東京都では、あるいは神奈川県等ではプロジェクトチームをつくっていろいろやっております。しかしながらその内容というものは予算においても非常に限られておって、先ほど御説明申し上げましたように血液の問題にしても、被害者が出た地点から採血したものをわざわざ大学とかいろんなところへ持っていってから分析をしなければならないというような状況になっているわけなんです。なぜそういうことを政府はもっと積極的にいままでやらなかったのか、また今後そういう問題についてどう取り組む決意でいらっしゃるかという問題についてお尋ねしたわけなんです。ですから、先ほどは公害局長さんからは現在やっていらっしゃる汚染物質についての測定のお話がございましたが、現在まだ測定されていないいろんな汚染物質に対する今後の測定に対するお考えと、それから長官からはいまの問題についての御答弁をお願いしたいと思うわけです。
  59. 木内四郎

    ○木内国務大臣 先ほど来申し上げておりまするように光化学スモッグ発生のメカニズム、これさえも実はまだよく明らかになっておらないのですよ。そこがまあ非常に残念なんですけれども、もちろんこれは人命尊重のために原因はわからなくても病状によって臨床的な措置は当然とらなければなりませんので、東京都、神奈川県にまかせておくわけにはいきません。国におきましても厚生省を中心に環境庁も協力いたしまして、この問題は当然積極的に取り組んでいくべきものだと思っております。  それからさっき申しましたように、私どものほうへ資源調査会からも勧告がありましたように、単に自動車のあればかりじゃないというんですね。これは事情は非常に複雑である。それが吹きだまりのようになってみなこの地域に集まってきているんだから、それはそう簡単に解明するわけにはいかないんですよ。遺憾ながらですね。それで最善の努力をしているということだけを申し上げておきたいと思います。また将来もこれは大いに積極的にやっていかなきゃならぬ問題であるということだけを申し上げておきます。
  60. 佐藤八次

    佐藤参考人 お考えいたします。  現在、都におきまして二つの測定方法を持っています。自動測定の装置と、それから手分析によります測定の方法でございます。自動測定にはSO2、CO、NO、NOx、HC、——全炭化水素でございますが、それから粉じんというものは全部自動的に測定しテレメーター化してございます。それからオゾンでございますとかアルデヒド、アクロレイン、硫酸ミスト硝酸ミスト、ハイドロカーボンの組成分等につきましては現在手分析でやっております。  そのほか、現在衛生局チームのほうと協議をする段階でございますけれども、医学的あるいは臨床的な症状でそういう現象が出るのにはこういう汚染物質あるいはこういうものが考えられるんではなかろうかというところまで臨床の実例その他がデータとして出てまいるという段階になりますけれども、その引き継ぎを受けまして、その物質発生源を徹底的に追っていくという努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  61. 田中武夫

    田中委員長 次に、土井たか子君。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 時間のかげんがございますから、東京都の公害局長さんと衛生局予防部長さんに端的にお尋ねをすることにいたします。  一つは、先日石神井南中学校のほうのあの被害状況を視察に参りまして、そして現地でお伺いをして帰った結果、どうも被害が起こりましたのは午前十時三十分から十一時にかけてということでありました。いままでの例に従ってなすったことだと思いますが、体育責任者の方は朝のうちに体操するようにという指導をなすっていたようです。これはやはり緊急事態というふうなことでもあり、予報がなかったからということでもあるかもしれませんけれども、この辺は、教育指導ということと公害局との関係を、あの事例を通じて東京都のほうではどうお考えになっているか、その問題が一つ。  さらに、もうすでに被害者は出てしまっていろわけですが、この被害者についての治療を公費負担ですべきだと私たちは考えます。入院費などについてもそうだと思うのですが、これを東京都のほうではどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この問題が二つ。  それから三つ目は、これが一連の光化学スモッグによる現象かどうかという点は明らかじゃありません。先ほど、立正女子短大の岩本学長の御発言もございますから、一昨年からこちらに激増している現象全部が全部光化学スモッグによるものだというふうにきめつけてかかることもどうかと思いますけれども、しかし予報がないというありさまで被害が起こるということを未然に防ぐ。これは何といっても大事な問題であると思いますが、予報なしで被害を起こした場合に、これをあとどうするかという対策としては、予報なくして被害を起こさないようにということが一つ考えなきゃいけないことだと思うのです。そういうふうな措置をいまどのように講じていらっしゃるかということが三番目になります。  さらに、もう先ほどから御質問の中にも一部出ておりますけれども、東京都のほうは、いままで私たちの見聞いたしました限りでは、いわゆる光化学スモッグに限って申しました場合には工場より自動車のほうがはるかに発生寄与率が高いというふうに考えていらっしゃるようです。したがって、ガソリン車に対してアフターバーナーなどを取りつけるというふうなことも提唱なすっておりますが、現在ある都のガソリン車、その中でどの程度アフターバーナーを取りつけていらっしゃるかという問題、同様に政府関係の車についてはどの程度いまアフターバーナーを取りつけていらっしゃるかということもあわせて、これは政府関係にもお伺いしたいと思います。以上です。
  63. 佐藤八次

    佐藤参考人 私から三点についてお答えいたします。  従来、被害濃度というものは、ある程度相関的な関係があるというようなことで、濃度のピークになりますのが十三時から大体十五時の間という実績と申しますか、観測のデータがございますので、濃度の高くなる可能性のある午後については運動を差し控えるように、特に運動との関係は、先ほど予防部長からお話いたしましたように、非常に被害の度合いに関係があるということでございますので、運動については午前中というような指導をしてまいったわけでございます。しかしながら、予報という段階注意報という段階についての区分けもございますけれども、石神井南等の事例が起きましてから、予報段階で、体育的と申しますか、肉体的な運動等についてはできるだけ控えるようにという打ち合わせを教育庁のほうといたしているところでございます。  さらに、予報なくして被害を起こさないような措置はないのかという御質問でございますけれども現在濃度被害との関係を見てまいりますと、これは東京都の例ではございませんけれども、他県には、お申し出によって被害をチェックしたのではございますけれども、〇・〇一で被害の申し出があったというデータもございます。都におきましては、〇・〇三から被害の申し出をいただいておるわけでございまして、環境庁におきまして現在考えられておられます環境基準の〇・〇六等につきまして被害の事実を探究してまいりますと、相当数の被害届け出があるということでございます。したがいまして、予報を早期にして、できるだけ被害をとどめるという仕組みが一番理想的であろうかと思っておるわけでございますけれども、その予報を出す濃度基準をどのような点に置いたら一番よろしいのかということと、それから石神井南の臨床的な判断の結果、心因的な要素も、実際光化学による被害が出たあとに、光化学被害による引き金を端緒といたしまして、心因的な要素も判断しなければならないという臨床結果もございますので、現在、私のほうと教育庁のほうと、都の内部におきましては、学校体育あるいは生活指導という面について、こういう濃度の点と、それから予報なり注意報なりのシステムの方法論と、それから基本的には被害をなくすためにはどういう指導をしたらいいかという点を鋭意詰めておるわけでございますが、今年から、特に被害の多発しております、あるいは従来の研究から多発が考えられます地域には、無線を設置いたしまして、私のほうから濃度によりまして、生活指導の先生に逐次情報を入れて、予防的な対策をおとりいただくような措置お願いしようということで、電波、郵政省のほうからも無線の波をいただきまして、現在鋭意作業中でございます。  それから被害者治療の公費負担等につきましては、予防部長からもお話があろうかと思いますけれども、公害関係については、東京都は積極的に取り組むという基本姿勢がございますので、当然治療については公費負担を考えていくという方向で現在検討いたしております。  それから、現在どの程度アフターバーナーと申しますか、排気ガス減少装置をつけておるかという三番目の御質問でございますが、庁有車、都庁関係で、全部で四千台余ございますけれども、これには全部つけてございます。それから、昨年の九月から、先ほど申しましたように千五百の工場事業場関係機関に、アフターバーナーと申しますか、排気ガス減少装置をつけていただきたいという要請を全部の職員、私も参りまして、お願いしてございまして、その関係が現在一万一千台くらい事実上つける準備をいたしております。それから、そのほか千三百のうち、約半数がつけるということで検討願っておる、あと半数は現在検討中ということでございます。われわれといたしましては千八百cc以上のガソリン車、千五百以上のLPG車二十五万台につきましては、早い機会に、できれば今年中にあるいは四十八年度中にはアフターバーナーと申しますか、排出ガス減少装置をつけていただきたいという運動を現在展開中でございます。
  64. 中川喜幹

    中川参考人 医療費の公費負担は、いま公害局長がお答えを申し上げましたのが基本的な考え方でございます。ただ光化学スモッグ被害を見てまいりますと、きわめて一過性で、軽いものもございますので、どの辺に線を引くかということが一つの問題点であろうと思います。しかしながら、少なくとも入院をするようなものは、当然そういう措置を考えていくべきであろうと思いまして、今回のもとりあえずそういう措置をするつもりでおります。この被害の救済にあたりましても、現行の健康保険法、学校保健法、安全会法等もございますので、それらを適用してもなお自己負担があるのを最終的に公費で見ていく、そういう考え方で現在検討を進めているわけであります。
  65. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 アフターバーナーをどのくらい政府関係の車でつけているかという御質問でございますが、各省庁それぞれ行なっているかと思いますが、環境庁といたしまして、現在まだ整理された数字を持っておりません。なお、環境庁といたしましては、現在十七台車がございまして、それのうちの五台につきまして、いま試験的、実験的につけて利用しているのが現状でございます。さらに一般の各省庁の実施状況につきましては、運輸省の協力を得まして、数字を整理して御報告をいたしたいと思います。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 質問はもう終わりますが、ただいまのアフターバーナーの数字を聞いて、実は私はあきれ返っているのです。というのは、一昨年のあの柳町の鉛公害のときに、アフターバーナーの問題は、取りつけをたしか政府としては問題になさったはずであります。それから後の進展状況を私はいまお伺いしたわけです。まことに情けないし、それでもって光化学スモッグに対する対策がはたしてとれるのかどうか、何だか姿勢をはっきりここで見たような気がいたします。一言つけ加えさせていただいて、質問を終わります。
  67. 田中武夫

    田中委員長 次に、米原昶君。
  68. 米原昶

    ○米原委員 私の質問時間わずか五分ですから、ごく簡単に聞きます。  光化学スモッグ発生原因の根本的な究明ということは、いまのお話を聞きましても、まだまだすぐにできないことは明らかなんで、しかし徹底的に、総合的にこれを進めてもらいたいと思います。しかし何よりいま住民が感じているのは、とにかく緊急の措置としてやってもらいたいことというのが幾つかあります。  一つは、いま土井委員からも話されましたように、被害者の救済の問題です。私は全面的に公費で負担すべきだと思うのです。その点で東京都は、先日あの石神井南中学に行ったときにも、美濃部知事が見えて、全額その費用を出そうというような話をされたというので、一応安心しておりましたし、そういう措置をとられるということがいま話がありましたが、これは東京都、自治体だけにまかしておくべき問題じゃなくて、全国各地にも起こっているのですから、国のほうでも、さしあたって、その被害者の救済のための費用は全額出すべきだと当然考えるわけですが、この点について、政府のほうの見解、厚生省はどういうふうにされるつもりか、一言聞きたいということが一つです。  もう一つの問題ですが、原因が究明されなければいろいろ適切な措置がとれない面は確かにありますし、岩本参考人から申された点は非常に重要だと思います。そういう意味でも、東京発生している、ロサンゼルス型とは違うスモッグの特殊性ということを、もっと明瞭にしてもらいたいと思うのですが、しかし、とにかく光化学スモッグ炭化水素及び窒素酸化物から発生しているということだけでもわかっているわけでありますから、その措置ですね、少なくともいまの状態より発生を減少させるような措置を何とかとってもらいたいということは、住民の圧倒的な希望だと思うのです。その点で、いま土井君もただされましたが、有害ガス発生を防止する装置ですね。これは東京都のほうも、先ほどの公害局長の話では、かなり耐久性もあり、性能もいいものが、これは絶対というものはまだできていないことはわかりますけれども、かなりの程度のものがすでにできているという話もありました。日本からアメリカに売っている自動車にはそういう装置をつけているわけでしょう、そういうことをしないとアメリカのほうは買ってくれませんから。だから、それをやっているのに、なぜ日本の自動車に取りつけることを義務づけるようにしないのかという点が一番私たちの疑問なんですよ。まだ完全なものではないとか、性能にまだいろいろ不十分なところがあるということはわかるのですが、しかし、かなりの程度のものはもうできているのです。そうだとすると、一応そういうものをつけさせれば幾%かは減ると思うのです。そういう措置でもとらないと、自動車はどんどんふえますし、どうにもならないのじゃないか。それで何分の一に減るか、私は詳しいことは知りませんが、そういう点について、東京都のほうでも要望事項としてそういうことを業者のほうに要望しておられるようですけれども、これはやはり政府のほうで義務づけていかないといけないのじゃないかという点なんです。そういう点でもう一度佐藤公害局長のほうから、その点について東京都は要望しておられるわけですから、いまつけさせようとしておられる排気ガスの縮小装置というものはどの程度の性能を持っているのか、そういうものをもしも義務づけるとしたらどの程度の効果があると考えておられるのか、この点をお聞きしたいのと、運輸省のほうから、なぜそういうものをいまさしあたってつけさせるということをしないのか、この点について御回答いただきたいのです。
  69. 佐藤八次

    佐藤参考人 東京都の排出ガス減少装置は、触媒式再燃焼装置というようなことで、触媒を使いまして排出ガスを再燃焼させるというような仕組みでございます。燃焼を行ないますとどうしても窒素酸化物がふえるわけでございますので、その窒素酸化物を増加しないで一酸化炭素と炭化水素を減らすというような手法で排出ガスを減少するというような考え方でございます。しかも耐久性の問題につきましては、一万キロ走りました結果その能率が五〇%以下に下がらないという歩どまりを持っているものということであります。そういう装置につきましては、指導基準というものをつくりまして、こういう基準に合っているものについては、東京都として、おつけいただいてもだいじょうぶであるということで、現在十三社がその基準についての製品をお持ち込みいただきまして、現在走行テストを二千キロまで終わっている段階でございます。東京都におきましてつけました際にも、早稲田大学等と研究いたしまして、実績を見まして、東京都の庁有車全部につけてテストの結果一定の数字を得ましてやったわけでございますので、ぜひ義務化と申しますか、法律でそれを義務的に設置するような方向へいっていただきたい、このように思っております。
  70. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  71. 田中武夫

    田中委員長 速記を起こしてください。
  72. 船後正道

    ○船後政府委員 光化学スモッグによる被害者の救済の問題でございますが、基本的にはやはり光化学スモッグ発生機序の解明あるいは原因物質研究、こういう問題と関連しつつ国においても検討は進めていくわけでございますが、当面被害の起こっておりますのは非常に地域的な問題で、発生しております。階層も小中学生ということになっておりますので、さしあたりの問題といたしましては、先ほど東京都からお答えがございましたように、地域的に具体的に処理していただく、こういうことしかしかたがないのではないか、かように考えております。
  73. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 自動車排気ガスの中には、一酸化炭素、炭化水素窒素酸化物とがございますが、現在の自動車排気ガス清浄装置の効用というのは、一酸化炭素にきく、一部炭化水素にも多少きくというふうなものであります。現在私どものほうでも研究所等でいろいろ研究等しておりますけれども、現在のものは、数千キロで耐久性はなくなるというふうなデータが現在の段階では出ております。そうしますと、そのあとで触媒を取りかえない場合には、今度はあまりきき目のないものをつけて走っておる、そして、場合によりましては、その触媒がこなごなになって粉じんをまき散らしながら走るというふうなこともなきにしもあらずということもございますし、それから、現在自動車にはたとえばエンジンの気筒容積が千cc、あるいは千五百、あるいは二千とか、いろいろなものがございます。そういうふうなものに適合する排気ガス清浄装置をつけなければいけない。もしも適合していないものをつけた場合には、これはアメリカでも例がございましたけれども、あの部分は非常に熱を持ちますので、これはほんとうにごく少数の例でございますけれども、火災を発生した例もあるということで、その耐久性の問題と、それからあとは性能の問題ということにつきましては、まだ研究の余地がある。したがって、法律でどういうふうな車にも全部強制してつけるというふうな措置をとるということになりますと、耐久性があって非常に性能もいいというふうなものがなければ、そういうふうなことは現在のところは無理であろう。したがって、行政指導的にできるだけそういうふうなものをつけて、試験的に走行するというふうなものについてはけっこうであると思いますし、私どものほうといたしましても、性能のいい、また耐久性の非常に十分なものができた時点においては、法律で強制するというふうなことも将来は考えたいと思います。  それからなお、米国に輸出する車について排気ガスの清浄装置をつけて出す、そういうふうなことば現在はまだございませんで、これはたしか、私の記憶でございますけれども、一酸化炭素対策で、カリフォルニア周辺に出す車については一酸化炭素対策として多少そういうふうなデバイスをつけたものを出したこともあるということを聞いておりますけれども、現在はエンジンの性能向上等やらでそういうふうなものはつけていないというふうに聞いております。多少そういうふうな技術を残すために、数量はわずかですけれども、ついている例は多少あるかと思います。
  74. 米原昶

    ○米原委員 あとのほうの問題については、私が調べたところ専門家等にも会って聞いたのですが、炭化水素、一酸化炭素をかなり大きく減らして、窒素酸化物は少なくともほとんどふやさないような程度のものはもうできている。ただ、いろいろ運輸省のほうできめられる場合に相当業界の圧力があるので、この問題についてはあとで徹底的に私はやるつもりでおります。非常に、この状態では全く手がない、そしてどんどん光化学スモッグが起きてくるのではないか。全責任を政府が負わなくちゃならぬことになります。この点を警告を発しまして、私の質問を終わります。
  75. 田中武夫

    田中委員長 この際、午後一時十五分まで休館をしたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時三十三分開議
  76. 田中武夫

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、加藤参考人出席されましたので、御意見を聴取いたします。加藤参考人
  77. 加藤龍夫

    加藤参考人 私、加藤でございます。  七〇年以来すでに二年にわたりまして原因不明の光化学汚染現象が起こっておりますが、この原因に関しまして、私どもの研究室で研究して原因を推定した結果を御報告いたします。  私どもが連続的に観測を始めましたのは、去年の六月からでございます。約一年間のデーターを集めたわけでございます。現段階ではそれの観測結果、これは科学的なデーターでございます、及びそれに基づいて推定される現象のメカニズム、こういうことを述べる段階でございます。結論というような絶対的な結果というのはまだ今後の問題となっております。したがって、観測結果は、私持っておりますが、これは機会を得て報告させていただきますが、それに基づく推定というものをここで述べさせていただきます。  まず、こういう汚染現象の起こる場合には原因があるわけでございます。その原因の一つといたしまして、自動車排気ガスがあげられております。これは十数年前にロサンゼルスで行なわれた研究に基づいて、自動車排気ガスによる光化学というものが解明されております。実はこの自動車排気ガスというものの追跡ということは私ども十二年間にわたって断続的でございますがやってまいりました。その結果、まず東京周辺におきまして、質におきまして最初普通ガソリンというものが都市空気中に常時見られておりました。ついで不飽和低級炭化水素、ブテン類でございますが、これがたいへん多く見られた時期がございました。そうして二年前からは芳香族がたいへんまじったガソリン、こういうものが見られるに至りました。量について言いますと、自動車数は年間二割程度ずつ増加しております。そしてその排出量は膨大に増大しておるのでございますが、特に顕著な相違というものは、従来都心部における交通渋滞、アイドリングと申しますが、そういう汚染が、最近は周辺部の高速道路網の発達によりまして、排気量それから排出ガスの成分等に変化が見えてきておる、こういうことが状況判断として考えられます。  以上の質及び量の観点から考えまして、たまたま光化学が起こった時点というものと考えますと、原因及びその結果ということがわかるわけであります。原因はそのような自動車燃料の変化及び量の変化というのが一つ、それから結果というのは、光化学被害が従来起こらなかったのが起こり出した、こういうことでございます。その間を結ぶために、われわれはかスクロマトグラフという装置を使いまして空気の汚染質の全分析という立場で分析をしてまいりました。そしてその結果都市の大気中から見出される成分といたしまして、芳香族炭化水素の割合が非常に高いということがわかりました。千五百検体はかりまして、芳香族の割合が四四%に達しております。平均でございます。これは正確なデータの意味はまたあとで誤解のないようにいたしたいと思いますが、非常に高うございます。これに対しまして燃料の中の芳香族というのも、これも鉛を除外するという目的に入れかわりまして年々入ってきております。この状態はときどき変化はあるのですが、この二年間減少という傾向は見られておりません。現在三〇%程度が分析から出ておりますけれども、これとそれから空気中に出てくる値とは若干差がございます。このような点は厳密な解析が必要だと思います。そしてこの分析の結果、その原料以外に発見されました物質としてアクロレインがございます。光化学スモッグの成分といたしまして従来からいわれておりますようにアルデヒドあるいはPAN、そういうものの中で特にアクロレインが顕著に見出されたわけであります。分析をもっともっと正確にやればいろいろなものがわかるわけでございますけれども、現段階で観測結果から見ますと、場合によれば異常に高いということをわれわれが見出したわけでございます。そのアクロレインというのは、排気ガスの爆発過程でできるということと、それから空気中の光化学でできる、二つの経路がございます。この二つの経路を追及いたしますために室内及び観測実験をやった結果、芳香族を増した自動車の高速運転というものから多量に排出されるという傾向があります。それからもう一つ、スモッグチェンバーといったような人工的な照射実験によりましても、アクロレインが大量に出る場合がございます。  ただ、アクロレインというのは、アルデヒド一般も同じでございますが、そのスモッグの生成の途中のものでございます。これはオキシダントではないのであります。したがって、オキシダント系というものではひっかかってこないという性質がございますので、昨年の九月、このことを報告いたしまして、オキシダント系以外の汚染物の追及が必要であるということを私は述べたわけでございます。したがって、現在起こっておりますようなオキシダントが低いというときにも被害が出るというような場合の一つの原因物質として考えてもいいのじゃないか、こういうふうなことでございます。また、それ以外の何ものもないということでございます。特にアクロレインというのはそういう特異な性質を持っておるから、これに注目しなければならないというのがわれわれの考えでございます。  アクロレインの刺激というのは、これは目の刺激が明らかにありまして、たいへん強烈なものでございます。これは一時は毒ガスなどにも使用されるような劇薬でございます。これに関しまして、私自身が目の実験をいたしまして、その症状を豊島病院の蒲山医師に診断していただきました結果、スモッグ時に起きた症状と同一であるという証言を得ました。私は医者ではございませんから、症状その他のことについてはわかりませんが、少なくとも同じである、こういうことでございます。他のもので同じ症状があるかどうか、こういうことはわかりません。そういうことがわかりました。したがって、スモッグの症状を起こす一つの有力な物質として現に空気中にあるものでありますので、それを考えて、その生成経路というものを追及していくということが必要である、こういうふうに考えるわけであります。  研究というのは多方面のことが必要でございます。あるいは遠くの工場原因説だとか、あるいはまたもっと何かわからないものとか、硝酸ミストとかいろいろなことが考えられますけれども、一つでもわかったことというものは、やはりこれを追及していかなければならないというのが私どもの態度でございます。したがいまして、一応アクロレインというものが明らかに空気中にあるので、しかもこれが症状を呈するということ、そういうことをもとにいたしまして研究を続けたわけでございます。  一年間やりました結果によりますと、年間を通じましてアクロレインの計測率というのは一〇〇%に近いわけでございます。ときどきゼロというのがあります。ですけれども、ほぼ一〇〇%に近い値——正確にはデータでもってあとであれしますが、近い値で計測されております。しかも、その変動率が非常に高いわけでございます。大体空気中の汚染質というものは時々刻々百倍程度の範囲で変化しております。そのようなことから類推いたしますと、一時的に高い濃度が起こるということは十分考えられるということであります。  研究の方法といたしまして、現に被害の起こっている現場におってはかるというのが原則でございます。このために極力努力いたしましたが、実際のそういう交通混雑とか、われわれの研究室の微力というものがありまして、そういう努力の結果なかなかそういうところまでいきませんので、完全な証明というまでには至っておりませんが、そういうところにあればもっと高いのが出てもいいのではないかというような、そういう推定に十分なデータというものを集めております。  先ほど申しましたように、この測定したデータは千五百検体でございます。その千五百検体によって統計的にその変化というものをとりました結果、以上のような、アクロレインが非常に重要な影響がある、しかも酸化性のないそういうものがある、こういうことになったわけでございます。  さらにその推定を推し広めますと、大気というのは、私は十二年間大気の分析に携わってきておりますが、そういう経験から照らしまして、大気の構造というものは普通にいわれているような均一なものではございません。たいへん不安定なまだらな構造を持っていると考えます。その大気の構造に対しては原則というものがございまして、二、三それを申し述べますと、一つは、汚染は風上には起こらない、こういう簡単なことでございますが、ということ。それから、二種の違った気団、空気というものは容易にまざらないということですね。それから、汚染物があるところにたまるとかいう表現が使われますけれども、こういうことはあり得ません。濃いものが薄まらないということはあるのですけれども、たまるということはないわけでございます。それから、距離につれましてだんだん薄まっていくということです。  以上、四つ五つあげましたけれども、こういうことは熱力学というようなそういうことから考えまして、汚染質がたまったり一カ所に吹きだまりになったり、そういう現象というのは考えられない。一つが出ればかわりに一つが入ってくる、こういうことから考えまして、よく推定されているような——推定は自由でございますが、その原因説の中にはそういう原則に反するものがあるのではないかとわれわれは考えます。したがって、事複雑な現象であるということは事実でございます。これはそう簡単ではございませんが、ただそれが複雑で複合的な汚染であるとか、根拠もないのに常識に反するようなことは、私どもはとらないところでございます。  したがって、最も平易な常識的なデータだけから見たということになりますと、比較的簡単なんでありまして、そういう自動車から出ました芳香族を含みまして、非常に反応性も高いようなそういう気団が、あまりまだ遠くへ行かない範囲で光化学の反応でさらにそういう変化を受ける、それがそういう空気のまだら構造で濃いところと薄いところとありまして、その濃いようなところでは被害が起こる、そのような推定をいたしますと、どこで起こるかわからぬとかというようなことも、これは実は常識であたりまえのことになります。  それから、オキシダントというものとの関係があるもの、ない場合、ございます。当然オキシダントがあるような場合には反応がありますから、そういうときの被害というものもありますが、ない場合にも起こっているということの説明も、それほどむずかしいものではないわけであります。  そのようなことを考え合わせまして、このアクロレインが原因の一つである、しかも自動車の最近のいろんな変化によってこういうものができてくるだろうというような推定を現在まで否定する結果を得ておらない。ちょっと科学的な表現をいたしますと、積極的に、証明というのはたいへんでございますが、それを否定する材料がない、こういうのが現在の結果でございます。  最近起こりました石神井南中学の問題も、実は昨年アクロレインというものがある、オキシダント以外のそういう原因物質もあるというようなことがありましたもので、そのときに言ったことがこれに当てはまるのじゃないかというようなことで、新聞その他で問い合わせを受けた、こういう次第でございまして、特にわざわざそこへ行きまして、たままた一回だけはかって、そしてこれはこれにと、こういうことを申したわけではございません。前からやっておったやつを、あそこにもやはり同じものが見えた。ただし、一度だけ非常に高い値が出ておりますので、やはりそういう空気のまだら構造の中でそういう高いのが出るような現時点において関係があるのではないか、状況があるのではないかというふうに考えました。そのときに測定しました何点かの中に、一点だけでございますが、〇・一七PPMというような値も出ました。これはたいへん高い値でございます。外国などでいわれている値にいたしましても十数PPBでございますか、それくらいが普通の値でございますが、ときどきわれわれはもっと高い値を観測しております。全体の平均といたしましては約一〇PPBあるいはそれ以下という値が常時の値でございますが、そのように一〇〇を越える値もときどきあるということを申し添えておきます。  そのようなことで一つの推定を結論的に申しますと、自動車の廃ガスがかなりまとまって出まして、それが大体千分の一程度に薄まりまして、そして上昇いたします。そして光をそういうまとまった段階で受けまして、還元性のガスが徐々に酸化性のものに移ってきます。その途中で生成されるオゾン、オゾナイド、アルデヒド、それから最終的にはPAN、パーオキシベンジルナイトレートというようなものに進んでいきますが、その各段階に応じていろいろ作用が違うと思います。そのようなものがあまり遠くに行かない距離、先ほどのいろいろの原則から考えまして、あまり遠くいかない、せいぜい数百から一キロ程度というような距離においておりてくる、こういうのが一番自然に考えられる一つのモデルではないかと思います。したがって、被害が起きているところのまわりには必ず高速道路がある距離を隔ててあるというのが、そういうことを類推する地理的にいいました場合の一つの状況というふうにも考えております。  大体以上のような状況でございます。したがって、私の意見といたしましては、そういう原因不明の複合汚染とかその対策に結びつかない探求というのは廃しまして、原因がこういうところにあればたいへんであるから、つまり燃料を何とか規制をするとかあるいは高速道路の設計並びにその運行を正しくするとかいうようなある程度の対策が打てるというようなところから研究を進めていくというのを一つの方法の中に考えておるわけでございます。複合汚染ということになりますと全然対策が打てません。これは原因をぼやかす一つのそういう何と言いますか、一つの言い方をいたしますとそういうことになるわけでありまして、やはり一つ一つ原因を追及していくつもりでやった結果が以上のような、アクロレインというものを一つの問題にあげている、こういうことになったわけでございます。  またあとで質問その他ございますでしょうから、大体概要はそういうところでございます。(拍手
  78. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。     —————————————
  79. 田中武夫

    田中委員長 午前中に引き続き質疑を続行いたします。林義郎君。
  80. 林義郎

    ○林(義)委員 加藤先生には、非常な御研究の結果を発表していただきまして、ありがとうございました。  いまお話を聞いておりまして、われわれしろうとでありますからしろうとらしい質問を少しさしていただきます。  アクロレインというのは爆発過程で発生をするということでありますけれども、芳香族の中の一種だろうと思うのですが、その辺と、実はガソリンの中に必ず入ってなくちゃならないようなものなのかどうかという問題があると思うのですね。この辺についてどういうふうにお考えか、御説明をいただきます。
  81. 加藤龍夫

    加藤参考人 アクロレインはガソリンの中に入っておりませんし、これはアルデヒドでありまして燃料ではないわけですね。これは芳香族か脂肪族かということになりますと、これは芳香族ではございません。ベンゼン環がこわれてできると考えますので、芳香族ではございません。いまの御質問では、つまり燃料の中に芳香族が必ずなければならないのかどうかということだろうと思います。これはもともとガソリンの中に芳香族が幾らか入っておりまして、その分ではよろしいのでございますが、非常に大量に入っているということが私問題だろう、こういうふうに思います。大量に入れる必要はないのじゃないかと思います。実際自動車運転というようなことであった場合、その運転しやすさというようなことで、鉛、そのかわりに芳香族というものを入れるのでございますけれども、このように公害という都市周辺の問題が起こったような場合には、必ずしもそういうふうに大量に入れて高速度運転というもののために燃料をそれに合わせるということはしなくともいいのではないか、必要じゃないのじゃないかと思います。これはアメリカに行きましても必ず鉛を入れてないガソリンというのを売ることになっているらしいんですね。実際に売っております。それで運転してもよろしいわけです。そういう点で現在のようにそう多量に入れる必要はないのじゃないかというふうに思います。
  82. 林義郎

    ○林(義)委員 役所のほうはあとで聞きますが、そうしますと、アクロレインがいろいろと原因である。アクロレインというのはエンジンの爆発の過程で出る、こういうことでありますか。
  83. 加藤龍夫

    加藤参考人 大気中のアクロレインの出てくる原因は二つでございまして、一つはいま申しましたエンジンの爆発過程で出てくるものでございます。   〔委員長退席、岡本委員長代理着席〕 これは一定の指標がありましてある程度以上は上がりません。しかし一般的なアクロレインの見られる汚染というのは、自動車排気ガスなどから出てくるということによって説明ができるわけでございます。ある程度比例関係がございますからね。しかしそれは、エンジンというのはみな同じようなかっこうをしておりますから、ものすごい運転状態以外はそれほどたくさんではございません。またその出てきたアクロレインは、そのままでありますとこれは空気中で変化いたしまして、だんだんアクロレインはなくなっていく、こういうことでございます。  もう一つは光化学でできるわけです。御承知のように、光化学反応というのは、オゾンができましてオゾン化反応が進むというのがその中に含まれてございます。オゾン化反応が進みますと、アクロレインをはじめそれ以外のアルデヒドができる。これは一般の、正規のというか、オゾン化反応の結果アルデヒドができるということがある。したがって従来の観察でもオキシダントが上がった場合、同時にアルデヒドも上昇する、こういう観察が出ております。で、その場合の出方というのが実は問題でありまして、ときにおいて非常に高濃度ができる可能性があります、つまり光のエネルギーというものが加わって。私どもの実験の結果でも、まぜましてたくさんできるときもあります。また意外とできないときもあるわけで、たいへんその条件が微妙なものでございますので、なかなか正式な報告にまとめるまでにいかないのでございますけれども、かなり多量にできる場合があるということは事実でございます。したがってアクロレインの出てくる経路というのは二つありまして、一つはそのままエンジンから出てくる場合、これは運転状況が変わりますと、ときによってたくさん出ることがありますけれども、ある程度平均的になります。それから一たん出たものからこれは光化学反応で生成するというのがありまして、この場合はふだんはそうないのですけれども、ときによると高い濃度が出る可能性がある、こういうことでございます。
  84. 林義郎

    ○林(義)委員 そうするとエンジンから出るやつが一つ、それから光の反応によって出てくるやつが一つ、大体二つが原因であろう、こういうことでございますね。そうするとそのアクロレインというものが、さっきお話がありました中で毒ガスにも使用されているような毒性がある。先生にお尋ねするのはどうかと思いますが、アクロレインの毒物試験とかあるいはそれが慢性的にずっと伝わっているというような試験の結果は先生のところでやっておられるのかどうか。
  85. 加藤龍夫

    加藤参考人 従来そういう汚染質として、アクロレインの症状というものはあまり研究されておらなかったようでございます。したがって、これは神奈川の私立大学のほうで手分けをいたしまして、動物実験その他で昨年こういうことが一つ考えられましたものですから、手がけられまして、実験を進めておられると思います。そういういろいろな作用、ひどい場合にはけいれんまでいくような作用もあるというような結果が出ております。ほかにはあまりないようでございます。
  86. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、いろいろたくさん出てきておる、アクロレインというものがこうありますというところまでは、確かに二つの経路によってアクロレインが出てまいりますというのはわかるんです。  それから今度は、それがどの程度の量になったならば、人体にどういう影響を及ぼすかというような問題について、まだいま神奈川大学のほうでやっておられる、大体、こういうことでございますね。  それで、そういうことで、私は、先生にいろいろと御研究していただいて、非常にりっぱな研究だと思うんですけれども、やはり先生のところで医学的ないろいろな研究をやっていただく、医学というか、化学、ケミカルのほうの研究をやっていただく、それから人体に対する医学のほうの研究、両方全部やっていかなくちゃいかぬ。それから発生の機序のほうもやっていかなくちゃいかぬ。こう思うのですよ。そこでひょっと思ったんですけれども、これはとっぴな話かもしれませんけれども、アクロレインというのはそういった意味で発生源のほうですけれども、自動車の問題もありますけれども、化学工場か何かで発生されるというようなことはないんですか、あるんですか。
  87. 加藤龍夫

    加藤参考人 アクロレインを化学の原料に使っているところが若干ございます。しかしそれはこの近辺にはありません。そのもの自体は、化学工業というよりも、むしろ油脂を焼いたり、てんぷらでございます、あのてんぷらをやったときに、家庭でもそうですけれども、目がちかちかするのは、あれはアクロレインだということになっておりますけれども、そういうような小規模なところでは、これは出る可能性がございます。ですけれども、現在のようにこういう東京周辺一円というような場合には、そのことは考えられません。
  88. 林義郎

    ○林(義)委員 もう一つ、最後にお尋ねしておきますけれども、横浜国立大学でありますから、当然国のほうからいろいろと金も出ているだろうと思います。試験研究についての金がどういうふうな形で出ているのか、またこれからいろいろと研究をやらなくちゃいかぬということになれば、当然いろいろ金もかかるだろうと思います。その初はどういうことになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  89. 加藤龍夫

    加藤参考人 私どもは公害基礎工学の教室ということでございますので、教室の予算がこれは一まとめであるわけです。それを使っております。  それから研究生が私のところに三人ばかり来ておりますので、そういう研究生につきまして、これはお金がついております。たいへんやりくりは苦しゅうございますが、現在実際には自動車を運転するとか、そういう費用が一番大きいので、そうたくさんの費用はそのほかはかかっておりません。  それから機械を使うというのが私どもの実験でございますが、これは一部借り入れたりいたしまして、これは機械のメーカーさん——、私は分析化学が専門でございますので、そういうことでまかなっております。
  90. 林義郎

    ○林(義)委員 岩本参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほど最初に参考人から御陳述がありました中で、東京都のほうにこの辺もはっきりしてもらいたいということについてお話がありました。東京都の方がおられましたが、午前中しかおられないというので、午前中に東京都の方だけにお尋ねしたんですけれども、ああいったような御回答で先生よろしいのか。それからもう少しあの点は不十分であるとかいうような点について、岩本先生どういうふうにお考えになりますか。
  91. 岩本経丸

    岩本参考人 早くお帰りになりましたから、私のほうの参考人同士で話す機会がございませんで、実は私の期待しているようなお答えはあの中からは得られなかったのでがっかりしておるわけです。ただ、どっちかと申しますと、私は内輪でもありますので、あとまた公害局へ参りましてはっきりと聞きたいと思いますが、大体に頭痛とか吐きけ、発熱というようなものは、いままでは光化学スモッグ被害でないと公の人は否定されておったんだけれども、今回は明らかに東京都の公害局の方や研究所が公害である、光化学スモッグであるというような態度をおとりになりましたから、それが公的にこうだと言っていただきたいと私は思っておりました。そうすると、皆さんがやはりきっかりとして、その対策におかかりいただけるんだと思っておるんですが、いままではいつでもごまかして——たいへん失礼なことはになっちゃいますけれでも、あやふやに送られてしまったことを非常に残念だと思っております。これでよろしゅうございますか。
  92. 林義郎

    ○林(義)委員 非常にむずかしいと申しましては失礼かもしれませんけれども、いろいろな原因が私はあるだろうと思います。しかしいま加藤さんのお話のように、一つの原因がわかればそれをずっと追及していく、まあ何がたくさんあるからといって、一つのものを私はやめるわけにはいかない。それもずっとやっていかなくちゃいかぬだろうと思う。それからまた同時にたくさんの方々の御協力をいただいて、原因究明なりいろいろな点をやっていただかなくちゃいかぬだろうと思うんです。これは東京都だけの問題ではない、やはり全国的に私はこういった問題というのは、必ず出てくるだろうと思うんです。そういった意味で、私はひとつこれは提案をしたいんですけれども、どこかに政府のほうで中心になって、プロジェクトチームみたいなものをつくって、政府の役人だけではなかなかこの研究もできない、これはここに委託する、これはああするという形のチームをつくってやったらどうかと思うんです。運輸省のほうの研究もあるでしょうし、通産省のほうの研究もあるでしょうし、環境庁、科学技術庁、いろいろなところで研究していただかなくちゃいかぬ問題だろうと思うんです。何よりも大切なことは、ずばりいって岩本参考人がおっしゃったような問題に、そのものずばりで答えられるような対策を打ち出すことだろうと思うのであります。そういったためにはいろいろな方面から集まってやらなくちゃいかぬ、その辺の調整というか、お互いの力を合わしてやることが一番必要だと思いますので、そういったプロジェクトチームをつくる必要があるのではないか。はっきり申しますと、役所でばらばらにやっているからできないと私は思いますので、そういったお考えがあるかどうか、政府のほうから御答弁いただきたいと思います。どなたでもけっこうであります。これでもって私の質問を終わりますから、答弁がありましたら……。
  93. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 お答えいたします。  光化学スモッグのプロジェクトチームにつきましては、昨年から東京都それから大阪その他関係府県のまず役所関係の連絡会議を開きまして、研究をやっている次第でございますが、同時に光化学による大気汚染対策連絡会議ということで学識経験者にもお集まりいただきまして、現在研究しているのが現状でございます。
  94. 林義郎

    ○林(義)委員 やはりいろいろな方を入れてやっていただかなくちゃいかぬ。いまの加藤先生もたしか分析の専門だというお話がありましたこれども、やはり医学のほうの方も入っていただかなくちゃいかぬし、また当然被害者のほうの方もいろいろ入ってやっていただくようなことをぜひ早くやっていただきたい、それがこの問題の解決に一番早くなるんじゃないか、こう思います。政府のほうからはあの程度の御答弁しかありませんが、ひとつ十分御検討していただいて、一刻も早く原因究明、問題の解決に尽くされることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  95. 岡本富夫

    ○岡本委員長代理 次は、島本君。
  96. 島本虎三

    ○島本委員 加藤参考人、ほんとうに御苦労さんでございます。実は午前中の、東京都のいわば公害対策関係に活躍しておられる人たちと一緒に、十分議論し、検討してみたかったのでございますが、別々になりました。それで、いま先生のほうからの御意見の開陳によりまして、いわばアクロレインというようなもの、これは毒性の強いものでございまして、おもに車から出るもの、いわば光化学反応によるものであるということがわかりました。それでいま対策に、それぞれ車の規制と工場の煙の規制、こういうようなものを東京都でも考えられておられるようなんです。それはこれからの対策でございまして、私は大いにやってほしいと思います。  ただ、加藤参考人にこの際ですから伺っておきたいのは、午前中の岩本参考人のほうからの、以前に発生したいわゆる光化学スモッグ現象、それといま東京都がやっておられる対策との間に、若干まだまだ考えてみたほうがいいような気がしたわけであります。岩本参考人のほうから南東微風が吹いてきたという、それが、あるいは若干見えるような気もする、こういうような大気の流れのときに一番発生の度が多い。その方向は川崎のほうだ、こういうわけであります。そうすると、東京都では車の対策周辺工場のばい煙の対策を主にして考えられておられるようなんであります。新たに先生のほうからアクロレインの、この毒性の強い物質の指摘があったわけでございます。これらを考えてみますと、やはりこれは、単に東京都の車の規制だけでいいのかどうか、こういうようなこともちょっと疑問になってきているわけでありますが、先生のこれに対するお考えについてひとつ率直に伺いたい、こう思いましたので、失礼ですがお伺いいたします。
  97. 加藤龍夫

    加藤参考人 お答えいたします。  風が吹きますと汚染質が流れてくるということは、これは理の当然でございますが、先ほど私が申しましたように、大気の場合にはある原則がある。つまり一つの常識のような原則がございます。都内一面がスモッグ状のようなものにおおわれるというときは、微風がありまして、そして工場地帯からの煙も都内をおおっているというようなときてある。これは観測の結果そういう事実が——事実というか、見られるわけでございます。ただ問題なのは、大体十キロ、二十キロ離れた場合には、そういう出たものは薄くなるわけでございまして、先ほど言いましたように途中でたまって濃くなるということはないと私どもは考えておるわけでございます。したがって、風が収敵するとか、あるいはそういうスモッグ状がひどくなったというようなことは、局地的にいま私が申しましたような車の汚染がひどく起こりやすい、そういう確率が高い、そういう状況と一致する、こういうことでございます。ですから、川崎のほうから煙が参りまして、それが校庭に舞いおりて光化学スモッグ現象を起こすというようなことは、よほどの証明がない限りちょっと認められない、こういうふうに私は思うのでございます。ただし、そういう現象が見られるような都内全体の汚染がひどいようなときには、局地的に汚染が起こる可能性が非常に高いので、あちらこちらで起こる、こういうふうに考えております。したがって、対策ということになりますと、これは現に起こっている光化学ということだけで、大気汚染対策をするわけではないと思います。当然その煙をなくすということは努力をしていただくわけでございますし、川崎の寺部さんは、古くから公害対策をやっておられる方でございまして、日本で一番古い方ではないかと私は思いますが、一生懸命亜硫酸ガスその他を減らすという努力をいたしまして、川崎では横ばいあるいは若干減少ぎみというような観測結果が出ておりまして、たいへん努力なされたというふうに承りました。ですから、先ほどの周囲の状況から考えまして、そういうものがむしろ少し減っておるようなときに、その煙が起ってきたということは直接結びつかない、こういうふうに私は考えるわけでございます。ただし、そういう汚染がおおっておるときにはまた局地的に被害が起こる可能性が高いものですから、そういう現象が並行して見られるということは言えると思います。   〔岡本委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕 したがって、現在対策ということになりますと、この場合には打てるところから打っていくというのも一つの手ではないかと思います。もちろん煙突を規制し自動車を規制する、両方やっていただくということは、とにかくこれは当てものじゃございませんので、自動車を規制するかこっちを規制するか二者択一でどっちかやれば当たるだろう、そんなのじゃありません。できることをやっていかなければいけないと思います。   〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、自動車燃料その他の規制というのはやはりわりと早くできるのではないか。その気になればできるんじゃないか。それが完全に実証されないから、また工場原因があるからということでほっておいたというのがこの二年間の状態ではないかと私は思います。これでよろしゅうございますか。
  98. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。やはり朝からいてほしかったと思います。  それで岩本参考人ですが、ずっと東京都の対策も聞いておられたと思います。先生のところはまっ先にこの被害を受けた場所であります。そして先生も、それから被害者として十分観察を続けておられたように思います。私も十分知らなかったのですが、先生の御発表を聞いてちょっと思い当たるところがあるのですが、たとえば南東微風が吹いたというときに一番発生の率が高い、ほとんどそのときだ、こういうふうにおっしゃっておりましたけれども、その際、その風は上のほうからおりてくる風、横から流れてくる風、南東の風というと上のほうからおりてくる風、この率も大きいのだということを聞いて、いわゆるやませといっておりますが、そういうようなことも聞いておるのでありますが、そうだとすると逆転層の上におるようなこういうような一つの物質も下へおりてくる。それが横からも流れてくる。どうもそういうような気がして、しろうとなりに私も先生の所説を聞きまして、何かこの辺あたりに対する一つの対策も考えないといけないのじゃないか、こう思ったのです。被害者として先生は朝から東京都の対策を聞き、そして午後にも及び、いろいろ加藤先生の供述も聞かれたとおりなんですが、先生自身として、ここに公害関係の役所が、全部代表者が来ておりますから、この場所は遠慮が要りませんので、こういうような点が望ましい、こういうようになぜしないかという点がありましたならば、この際私にかわってはっきり聞いてやってほしい、こう思います。
  99. 岩本経丸

    岩本参考人 大気汚染はやはり雲をつかむようなことにもなりかねないので、私は何としましても、しろうと観察のような結果になりますが、事実を一つ申し上げます。被害を起こしました二日目から吹き流しを立てました。初めはコイのぼりのまるい吹き流しを立てました。先がこう割れております。五本か六本かに割れております。それが三カ月くらいのうちに妙に踊るのですね。踊ってしまいに女の子の三つ編みの髪と同じようにおしまいがみんなこう編まれてしまう。そして三つ編み状況になって棒状になってしまう。それはどういう原因か調べようと思って私は保存しておいたのですけれども、校長は酔狂にこんなものをとっておくといって燃してしまったのです。それを私はまことに残念だと思います。ですからいまの気流関係ですね、いまそれでおっしゃられたので、私はそれが上に上がったり、下へ下がったり、こうやっているうちに編んでしまって、みんな三つ編み状況になってしまった。髪の毛の三つ編みですね。そういう状況を見て、私は科学的にそれを解明することは自分の力ではできないのですが、ただ非常におもしろいと思って残しておいたものが、だめになりました。  それから、いままでは古いのぼりを使いましたけれども、今度はその保存が、どうしても昼夜立てておきますと二、二カ月しかもちません。そこで、新しい布を使って学校の職員が吹き流しをつくりましてやりましたが、やはり生命はせいぜい三カ月です。ですから、木綿のきれというものが三カ月ぐらいでずたずたに切れるものであるかどうか、単なる雨でなくて、何かほかにいろいろな汚染物質が作用するのか、そういうことも考えなければなりませんが、とにかく肉眼で見ますと、川崎方面から一面のスモッグが何の切れ目もなしに来ておりますね。ですから、川崎の途中には、考えますとその周辺には鶴見あり、大田、品川、それから目黒、渋谷、そして世田谷の東方をかすめて杉並に入ってまいりますが、ちょうど甲州街道からちょっと入ったところまでは、人家も樹密で、大都会の代表的汚染地帯が帯状に並んでいるわけです。だから、そこから流れてくると、川崎と発言するとたいへん私はしかられる向きがありましたのですけれども、川崎のほうから流れてくる風は大都会の代表的な汚染地帯をなめてくるわけですから、そこにそういういろんなものを含んだ汚染大気を湿度と並んで始終分析し、いろいろと研究していただくような機関がほしいと思うわけなんです。そういう点で大気が観測されていないのは事実じゃないか。だから、その点をやはり東京都の方に聞きたかったわけですけれども、ときどきは空気を採集されております。汚染大気も、汚染観測車も来て始終常置して観測されている、その御熱意には非常に感心いたしますけれども、あそこで朝八時半から夕方の四時ごろまで生徒とともに生活をしておりますと、どうもやはりその間隙を縫うていろいろと現象が起こりますので、その起こった現象、そのときに居合わしてくれて解析していただくとたいへんありがたいと思いますが、とにかく被害者としてかってな推測もできませんが、いろんな不可解な現象がたまっているわけです。その点だけは、どう私から申し上げていいかわかりませんが、実情はそういうわけでございます。どうもお答えにならないと思いますけれども、私も五里霧中におるわけでございまして、どうぞひとつ……。
  100. 島本虎三

    ○島本委員 それは私自身もよくわかるわけでございます。  次に加藤参考人に、いろいろと御所見を伺いまして、ことに燃料の場合、いろいろとございましたけれども、エンジンの爆発行程で出るアクロレインについて、やはり当然ガソリンそのものによる率も高いのじゃないか、私どもそう思われますが、これは間違いでしょうかどうか。それと同時に、いわゆる芳香族と申しますか、アロマティックが大きな原因になっていると見られておる。いまのガソリンの中に、鉛を減らしたかわりにアロマティックを増加させているのではないか。鉛を使っちゃだめだというのが一ころ大きい一つの問題として発生しましたので、今度そのあとに依然としてまだ起こってきているわけでありますから、そうすると今度はアロマティックをふやすにはりフォーミングにかけているのではないか、こう思っておりますけれども、このようにしてオクタン価を上げていること自身が、やはりいわゆるオキシダントを増加させているのじゃないかな、こう思われているわけです。  そういうような点を思い合わせまして、燃料、ガソリンそのものに対して、ひとつ先生のお考えを承っておきたいと思います。こういうような状態のガソリンが一番望ましい、またそれを行政的に指導できるならば一助にもなろうか、こう思うわけでありますが、ひとつこの点よろしくお教え願いたいと思います。
  101. 加藤龍夫

    加藤参考人 ガソリンの中の芳香族のふえ方ということになるわけでございますが、これは一部実験した範囲でございますが、だんだん燃料をふやしていくというようなことですが、あるいはもう一つは速度ということもあります。運転状況もあります。その燃料の芳香族及び運転状況というものも、ある程度まではさほどの影響はない。ある点をこえるとやはり全体的に見て好ましくないのじゃないか、こういうようなところがやはりあるのではないかというふうに、私、考えます。したがって、昔のガソリンは炭素数が五、六、七、八、九もございまして、それぞれの成分の量が同じ程度入っておったわけですけれども、最近のガソリンは五、六、七まではございますけれども、八は非常に少ない。九はほとんどございません。そのかわりにベンゼン、トルエン、キシレンというものが入っておる、これはいまおっしゃったように、ガソリン改質の過程でそういうようになっておると思います。その場合に、その程度の問題でありまして、これは現在のように非常にたくさん空気中にアロマティックが出てくるというような状況というのは、少し正常ではないのじゃないか、こういうふうに考えます。したがって、その若干でも減らすようにする。どこまで減らしていいかという線をきめまして、そういうところを厳重に規制するということを対策の一つにやはり加えていただきたい、こう思います。  その分折は、私どもはガスクロマトのチャートというもので見るわけでございます。空気の分折の結果というものをチャートで見るのでありますが、その中でトルエンなどは一つだけものすごく高い。これはちょっと一見しただけでどうも異常じゃないか。つまり、いままでの空気というのはいろいろな成分がほぼ均等にまざっておった。もともとの空気というのは全然ございません。きれいなものでございますが、都市のよごれた空気は均等にまざっておったというのが、最近のはそういう特殊なものだけが非常に高いというふうに変わってきております。こういうことは、空気中のそういう一つの反応が進むということに原因があるのではないか、こういうふうに考えるのが自然でございますので、そういう線で私どもは研究してまいったわけでございます。したがいまして、それをひとつ適当な線まで押えていく。全然使っちゃならぬというようなことは、これはもう量の問題でございますから、私も言えませんし、その必要もないのじゃないかと思います。しかし、そうやたらにふやさないでも、十分運輸というのは可能ではないかと思います。
  102. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、この際少し疑問としているところをもう一つ先生によって解明願いたいのですが、いわゆるオキシダント発生している場所は、岩本先生のいらっしゃる立正女子短大付近であるとか、またそれより幾分遠い石神井のほうであるとか、いわば緑の多い田園地帯に発生するわけであります。われわれは、こういうようなものは工場の多い、また都心部あたり自動車の交錯する場所で一番よけい発生するのじゃないか、こう思っておるのでありますけれども、こういうようなほうにはあまり発生した例は聞きませんで、緑したたるような田園地帯に発生しているということは、どうも私どもは解明に苦しむものでありますけれども、先生の御意見を承りたいと思います。
  103. 加藤龍夫

    加藤参考人 その疑問というのは現在の光化学スモッグの一つの特徴だと思いまして、やはりその疑問というものに矛盾しないというか、説明できるようなこと、それを考えるわけでございます。  その一つといたしまして、最初、立正学園、ああいうところで起こっておる。あんなところで起こるということはだれも予想しておりません。私もしておりませんでした。その場合すぐ見ましたのは、環七と甲州街道に囲まれて、あれは環七から八百メートルくらい、甲州街道から千五百メートルくらいでしょうか、ちょうど一キロ内外のそういう間であるというような一つの地点でございます。それから、あそこには善福寺川という川が流れておりまして、これは一番そういう気流がおりてきやすいところである、こういうふうに解釈いたしました。これは単なるそのときの判断でございますが、こういうところで起こるのはむしろ当然であろうというふうに解釈いたしましたが、現在まで、そういう考え方が間違っていたという例証はあがっておりません。  ひとつ空気のそういう例として御参考に持ってきたのをお見せいたしたいと思いますけれども、空気というのは一様じゃなくてしましま構造をとっているという例でございます。ここにその写真がございます。  これが普通の都市あるいはそういうところの空気の状況でございます。これは差し渡しが四百メートルくらいの範囲でこういうふうにできている。一酸化炭素の濃度が、非常に大量にほとんど同時にとりますとそういうことになって、赤いところが一〇PPM以上でございます。それからこれは等高線で濃度をかいておりまして、一番低い水色になっているのが四PPMの線であります。この黒い点が観測地点であります。これが道路をはさんだ普通の地区の空気の状況でございます。道路から離れるに従ってある程度低くなりますけれども、決してそんななめらかに低くなるのじゃなくて、ところどころきれいなところ、きたないところというのがまとまってあります。こういう構造には日本の各都市全部大体同じようじゃないかとわれわれの観測から考えております。こういうものを想定いたしまして、どういうところでそういう高濃度の汚染が起こるかということの一つの推定の根拠と申しますか、こういうものにはずれた結論というのはやはりまずいのではないかというふうに考えるのであります。  一様に襲ってくるというのは、ロサンゼルスではございます。一様に津波のようにやってくる。あれは、空気の状況はまるでこの辺とは違います。東京状況は、あっちに起こったりこっちに起こったりという状況があります。その道路から発生いたしましたのは、温度が高いですから、必ず上昇いたします。そういたしますと、そのすぐ数メートルわきに上から空気がおりてくる、こういう状況が見られると思います。これがそういう立正学園のあるような、少し道路の幅があるようなところでは、もう少し大きなしまになると思いますけれども、当然、道路から上がったものがしばらくたちましてまん中の道路から離れたところにおりてくる。これが常にきれいな空気ならばいいのですけれども、きたないのがおりてくるということになろうかと思います。したがって、道路がありましてせいぜい一キロ程度というようなところへおりてくるという推定は十分できるのではないか、こういうふうに考えます。ですから、ああいうところで起こるのはある程度当然だ、常識外ではないと考えております。(島本委員「町のまん中は起こらない」と呼ぶ)町のまん中が起こらないということは、これはまたちょっと別の意味がございまして、ビルがありましてだいぶ状況が違います。これは地方の町で、町のまん中ではないわけですけれども、町のまん中ではちょっと状況が違います。これはまず自動車がのろのろ運転しておって、アイドリングの排気ガス濃度が非常に高いのでございますけれども、排気の絶対量はあまり多くないと考えております。高速道路なんかで集団的に出るようなものが、量は非常に多いのじゃないかと思います。排気ガスの量というものは速度に比例してだんだん多くなってまいりますし、濃度が一定でありましても出る量は多くなるという関係がございますので、都心の道路のようなところとそういう高速道路のある周辺ということになりますと、その排気の絶対ポテンシャルと申しますか、それは案外高速道路の周辺のほうが高いことがある。その出方がちょっと違うということが一つあると思います。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 どうもありがとうございました。
  105. 田中武夫

    田中委員長 次に、土井たか子君。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 加藤先生はお昼からお出ましいただいたわけですが、午前中もいろいろ参考人の方々から御意見を聞きまして、いま環境庁も含めて各担当の皆さまもここにいらっしゃるわけですから、ひとつ許されました時間の範囲内で総合的に質問させていただきたいと思います。  まず端的にお伺いしますが、今度環境庁のほうが全国都道府県知事に通達を出されて、暫定措置として数項目にわたる措置をはっきりさせられたわけですが、けさほどの岩本先生のお話もございますが、必ずしも自動車排気ガスだけにこういう被害発生のもとを求めるわけにもいかない部面もあると思うのです。それがはっきり出てしまっていれば問題は別ですけれども、まだそこのところは研究段階でありますし、実態調査段階という域を出ておりませんから、そういう意味も含めまして工場街が近辺にあるとか、あるいは気流のかげんからするとそういう被害が起こりやすいとかというふうなことを一応頭の中に入れて、全国の中で特に光化学スモッグによるところの被害発生するであろうとおぼしき重点地域というものはお考えになったかどうか、その辺まずお伺いしたいと思うのです。
  107. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  私ども、光化学スモッグの連絡会議というのを昨年から関係都道府県との間に持っておるわけでございます。そのときに対象に入っていただきましたのが、現在まで被害が起きております埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫のほかに三重、岡山、福岡、京都というようなところが当面予測されるところではなかろうか。私どもとしてはその点は十分考えて、現在ブロック会議等においても注意をしておるつもりでございます。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、少なくともその連絡会議でいろいろ各都道府県からの事情が出るはずでありますが、そういうことを総合的にしんしゃくなすった上で今度の通達の中身ということになっているわけでありますか。
  109. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  おっしゃるように、私どもそれらの点を十分考慮いたしまして、しんしゃくしてと申しますか、今回の通達で対策をそれぞれ指示をしたというふうに考えております。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことをお伺いした上で、それではお尋ねをいたしますが、たとえばけさほどの岩本先生のお話によりますと、どうも方向からすると川崎方向にその源があるのではなかろうかという旨の御発言もあったわけです。これがそうであると断定をしてしまうのはまだ早いかもしれないけれども、しかし一応可能性の考えられることについては、やはりそれに対する対策を講ずるということが、もういま被害が出ているわけでありますから、いろいろ試案を練るよりもまずは着手をということのほうが先でありまして、やはり被害者の立場から考えますと一刻一秒、早ければ早いだけがよいような気持ちになられるのはあたりまえだと思うのですね。そういう点からしますと、川崎方向は御承知のとおりに煙突の高さを高くして拡散方式をとるということがやはり基本にあるようです。これは東京のとり方とはその点が特徴として違っておるということを私たちは一般的に認識しているわけですが、各都道府県によりまして、こういう工場とか事業所の排気、それからいまの大気汚染防止法で問題にされているいろいろな有害であると考えられる物質、それの規制のやり方について、まだまだはっきり一つの示された方向に沿って全部が規制をとっているとはいえないだろうと思うのですね。その点の問題についてはどういうふうに環境庁はお考えになっていらっしゃいますか。
  111. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  まず、当面の私どもの通達をいたしました考え方のほうから先に申し上げますと、今回の通達のときにも私どもはまず第一に固定発生源対策を掲げました。次いで自動車排気ガス対策という形で、それぞれ両面にわたって当面のところ予想される各分野にわたっての所要の措置を通達したところでございます。  それから第二点といたしまして、一般的な規制の問題でございますけれども、先生お話しございましたように、工場地帯では主として硫黄酸化物対策としてはいわゆるK値方式をとっております。K値による規制という方式をとっております。この点は別に東京都でも同様でございまして、硫黄酸化物を排出するばい煙発生施設については、やはり拡散を前提としたK値規制方式をとっている点は同様でございます。ただし、私ども昨年の暮れにK値の改定を行ないましたときには、それぞれ都道府県というよりもより広い地域を単位といたしまして、その中における硫黄酸化物の総量を一定の範囲内に押えていくといういわば地域総量という問題を頭におきながらK値の規制を改定をし、これの推進につとめてきたつもりでございます。なお、都心部、いわゆる工場地帯ではなくて、東京であるとか大阪、あるいは北のほうで例を申し上げますと、札幌市というようなところにつきましては、大気汚染防止法上も別途第十五条におきまして燃料の使用制限という規定がございます。私どもはS分の、低硫黄を前提にした燃料規制地域というものを設けまして、その角度から別に規制対策も講じておるわけでございます。そういう意味で、それぞれ都市型の大気汚染工場地域型の大気汚染というものにそれぞれの特徴がございますので、具体的な規制方式そのものについては県によってそれぞれの特徴が出ることはまた当然でございます。これらを決してそこなうことなく、大気汚染防止法の上にもこれらの特徴がより生かせるように、今後とも規制の指導、あるいは強化につとめてまいりたい、かように考えております。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 それはおっしゃるところは、つまり絶対量で押えていくということですね。排気するところの量の中身を押えていくという問題になろうかと思いますね。先ごろの通達の中身を見ますと、おっしゃるとおりに固定発生源対策というものと、それからそれとは別に、自動車のような流動的なものに対する対策と分けて考えていらっしゃるようです。固定発生源対策なんかについては、窒素酸化物の排出規制のために工場やビルや家庭に対して、発生のおそれのある場合については、これを原燃料などの燃焼量の削減を呼びかけていらっしゃるわけですね。  私はそのことは大事な問題だと思うのですが、もう一つは、これはもう近年激増した流動的な自動車の、ここで同じく取り扱われる物質としては、窒素酸化物があるだろうと思うのです。いま自動車排気ガスの中身で窒素酸化物の取り扱いはどういうことになっていますか。
  113. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えをいたします。  自動車排出ガスの許容限度の規制の中で現在まだ窒素酸化物の規制は行なわれておりません。これは御承知のようにいわゆるマスキー法対策という形で中央公害対策審議会の自動車公害専門委員会におきまして、現在許容限度を、窒素酸化物あるいは炭化水素あるいは粒子状物質、CO等も含めまして検討しておるところでございます。  なお運輸技術審議会が四十五年の七月に答申を出されました中間報告に基づきまして、四十八年からは窒素酸化物についての規制もあるいは炭化水素についても排出ガス規制というものを行ないたいということで、目下事務的な作業を取り急いでいるところでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 事務的な作業ということになったら案外これは早くできることではないかと私たちこう思うのですが、どうもこれは四十八年というのがいまおっしゃったとおり中間報告の中では出されているわけですが、四十八年まで待っている間に、もっともっと、これ、ことしの夏の光化学スモッグに対する被害が危ぶまれているやさきでありますから、この夏を越して秋を迎えるまでにおそらく私が予想しているよりもっとより以上の被害が出るかもしれない、みんなそれを危ぶんでいるときでしょう。まだあのときの中間報告そのままにおとりになって、四十八年四十八年とおっしゃるのは、どうも私は解せないのですよ。もう少しその中身については誠意を持って作業を急いでいただいて、窒素酸化物についても自動車排出ガスの中でこれこそくせ者だというので取り扱いをきつくしていただく、規制を早くはっきりさせていただく、これが必要だと思いますが、その点についての御所信はいかがです。
  115. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 御趣旨につきまして私ども全く同感でございます。私どものほうもそういう点についてできるだけの急ぎはしているつもりでございます。したがいまして、昭和四十八年度予定になっておりました規制について、できるものはこの三月の末にすでに、ことしの九月からの規制ということで一応取り入れて、炭化水素あるいは粒子状物質いわゆるディーゼル黒煙規制というようなものは少し早めて取り上げてみたわけであります。  ただけさほどからのお話にもあったと思いますけれども、窒素酸化物の規制ということにつきまして、現在の触媒方式を含めまして技術的にまだ完全なと申しますか、事務的に私どものほうで詰めの段階で、何といいますか数値をきちんと押え得る、そういう作業というものを取り急いでおるところでございます。御趣旨に従いまして私どもとしても、一日も早くこういった問題についての結論は急ぎたいと思っております。ただ基本的にいろいろな角度から、この問題むずかしい点もございまして、おくれておる点についてはたいへん申しわけないと思いますが、今後とも努力を重ねてまいりたいと思います。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 それは確かに急いでいただかなければ困る問題ですが、ガソリンの中身の問題にも一つは原因があるようですね。やはり添加物の中身がどういうふうに違っているかということによって、だいぶ取り扱いが違うでありましょうから、おそらくは窒素酸化物の量をどのように規制していくかということについても、その点がはっきりしないことには規制基準を設けるわけにはいかないだろう、これはしろうと判断でもそこのところは考えつく問題だろうと私は思うのです。  そこでこれはたいへんプリミティブな質問になって恐縮なんですけれども、ガソリンという問題に対する定義であります。ガソリンというのは一体どういうものをさして言うのであるか。加藤先生、このガソリンというのは、鉛であるとかいわゆる芳香族などを添加をした物体全体をガソリンと呼ぶのか、それとも鉛はなくてよい、芳香族はなくてよい、つまりいま私たちが一般的に添加物というふうに考えておりますものを除いてあとの油をさしてガソリンとも呼べるのか、一体その辺はどういうふうに私たち考えればようございましょう。
  117. 加藤龍夫

    加藤参考人 これの答えは私よりも実は通産省のほうになりましょうか。そういういろいろ役所的な用語がありますので、そういうほうが適当かと思います。  私の考えている範囲ということになりますと、つまりガソリン車という、自動車を走らせる燃料、こういうことになろうかと思います。その場合には普通、石油から分けてとったというのが主成分であって、それにいろいろ添加物が入っているもの、こういう定義になっておろうかと思いますので、その添加物を、あるものを入れたものが、どこまで入れてそれがガソリンであるかということに関しましては現在ちょっと持っておりませんけれども、これはそういう何といいますか、何々ガソリンと言うというような意味の用語的なそれらの、石油精製とか、そういう方面での一つのそういう習慣であろうかと思います。そちらのほうが一番正確なお答えができるのじゃないかと思います。
  118. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。ガソリンの定義といいますのは、学問上の定義もございますが、われわれ通常使っておりますのは、JISできめられております自動車ガソリンという定義は、これはそれぞれ留出温度で分けまして、摂氏七十度以下のものが一〇%、百二十五度以下のものが五〇%、百八十度以下のものが九〇%、二百五度以下のものが九七%含まれているものが自動車ガソリンと言うという定義になっております。ですから、先ほど御指摘のありましたこの中の油分の中に芳香族あるいはオレフィンその他のものがどういうふうに入っているかということについての定義はきまっておりません。そもそもガソリンというのは、御承知のとおり、そういうものが全部ミックスしたものが、添加物という形ではなしに、まざったものがガソリンということになっておるわけでございます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、ガソリンの中から鉛を抜き、それから添加されるいわゆる芳香族等々を全部抜いた物体に対しては、いま問題になるようなガソリン税というのはかからないということになりますか。
  120. 根岸正男

    ○根岸説明員 いまの土井先生の御質問では、要するに、そういう芳香族の入はないガソリンということでございますが、これは一番プリミティブな形は、要するにトッピングという装置がございまして、これは全部かけるわけでございます。そのときに、先ほど申し上げましたある温度でカットしました部分がいわゆる粗製ガソリンという形で出てまいるわけであります。これが一番プリミティブなガソリンの形でございますが、この中にも、当然先ほどの油分でございますから、芳香族もあるいはそういうそのときのオレフィン系のものも入ってまいるわけでございまして、いずれにいたしましても、ガソリンという形、揮発油という形で出てまいりますから、揮発油税は全部かかるわけでございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 その問題は、私追っかけたいのですけれども、時間のほうがそれを許してくれませんので、これはあとに譲ります。先にいま許されている時間の範囲内で、お伺いしておきたいことに進みましょう。  それは、先日運輸省の公害研究所のほうが、無公害エンジンというものが開発されるまでの当分の間にとるべき措置として、芳香族、炭化水素化合物の添加量というのを三〇%以下に押えるべきだというふうな意見が発表されたやに私たち聞くのです。この問題につきまして、加藤先生、何か御意見があればひとつ伺いたいわけです。
  122. 加藤龍夫

    加藤参考人 芳香族がほんとうの原因であるかどうかというようなことを突き詰めていけば、まだ問題は残っております。ですから、そういう態度を出していただくのはたいへん喜ばしいことだと思います。三〇%よりもうちょっと下回ったらなおいいと思います。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 それでは運輸省の公害研究所のほうの方も込めて、いま先生の御発言は、三〇%、もっとそれより以下であれば好ましいというような御発言であったわけですが、ひとつこういうことに対して法規制をする必要があると考えていらっしゃるかどうか、する用意があるかどうか、その点ひとつお伺いしたいのです。
  124. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 私どものほうでは自動車の構造、装置に関する法規制はしておりますが、燃料関係の規制等については権限外でございます。したがって、私どものほうでは、たとえば車検だとか、新車のテストの際に、排気ガスの有害物質が何%ということでやっておりますので、燃料関係の規制については私どものほうではしておりません。
  125. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  芳香族三〇%という制限の問題でございますが、これは先生もよく御承知のとおり、世界じゅうで芳香族の制限をしているところは国としてはございません。ただ、カリフォルニアが州の規制としまして、三〇%以下に押えるようにしようというような方向を出しておるわけでございます。われわれとしましてもこれは当然そういう方向がきまりますれば、やはりそれに応じたガソリンの組成を考えていかなければならぬと思います。ただ、先ほども島本先生の御質問のときにお答え申し上げましたとおり、ガソリンというものは、自動車エンジンに付随して、エンジンのスペックに合わせてガソリンがつくられるということでございますので、エンジンのほうからまずそういう要求が出なければ、なかなかかってにつくるわけにまいりません。自動車が動かなくなるという問題がございます。そういうことでございますので、われわれとしては、その方向がきまりますれば、それ相当のくふうをしてまいらなければならぬと思っております。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 あと一間だけお伺いして、時間がもう許されませんからやめます。  あと一問は、午前中私は予報なしの被害を防ぐ方法として、どういうことを東京都では心がけていらっしゃるかということをお伺いした中に御返答賜ったところによりますと、全体のオキシダント濃度、これは環境基準というものをもっときびしくする必要があるということが一つ御答弁の中に出てきたわけです。いま東京都のほうでは、都市公害対策審議会の大気部会が、現在の注意報が出る〇・一五PPMというものを〇・一〇PPMにきつくしていくことが必要ではなかろうかというふうな腹案を持たれつつあるようでありますが、環境庁のほうの中央公害対策審議会の中でもこういうオキシダント濃度についての環境基準についていま検討を重ねていらっしゃるということを私は承っておりますので、ひとつその点がどういうふうに考えられておるかということをお伺いしたいわけです。ただ時間の制約がありますから、私は先に言ってしまいますが、これはおそらく中央公害対策審議会のほうは、東京都がいまお考えになりつつある中身よりも、もうひとつきつい基準をお考えになっているようであります。〇・一五PPMの五分の二くらいをいわゆる注意報にしてはどうか、警報発令の〇・三PPMの五分の一くらいにこれをさらにきつくしてはどうかというようなことをお考えになっているようでありますが、もしそれが間違っていれば訂正していただきたいと思います。ただしかし、いずれにしろ、いまの注意報や警報発令より以上にきつくする場合には、ここにひとつ問題点が出てくる。これは御承知だと思いますが、いま東京都が考えております〇・一五PPMを〇・一〇PPMにした場合には、注意報は二、三日に一度くらいずつ出る、それから予報というものはほとんど毎日くらい出るということになりますと、事業所のほうは時間の操業短縮ということをしなければならない、場合によったら、事業の操業停止ということをしていかなければならない。それからもちろん、これは交通規制の問題についても、時間さえあれば聞こうとしましたが、私はあとの場合に回しますけれども、そういうことからすると、かなりこれに対しては困るというふうな非難の声も出てくることは覚悟の上でやらなければならない、したがいまして、この点はしかとした自信がおありになるかどうかという点をひとつ伺いたいのですよ。
  127. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  一部伝えられておりますオキシダント濃度についての〇・〇六という数値、あるいは窒素酸化物についての〇・〇二というような数値につきましては、これは環境基準としての数値でございます。したがいまして、この数値がそのまま大気汚染防止法の二十三条の一項及び四項による注意報なり警報の措置基準にそのまま移行するものではございません。したがいまして、私どもといたしましては、現在専門委員会においてまとめられておりますものを、今月の二十日の大気部会に報告をいたしまして、事務的な気持ちといたしましては、できれば七月中にでも環境基準設定という形をとりたいと思っておりまして、その結果、答申の内容等に即しまして、あらためて二十三条に基づきますいわゆる〇・一五あるいは〇・五というようなそれぞれの注意報あるいは警報基準値の改正を具体的にどの程度にするかについては、あらためて検討を重ねてまいりたい。したがって、いまのところ具体的に〇・一五という数値を直ちに政令を改正して動かすという段階にはまだ至っておりません。おそらくは都がある程度予定されておりまするような数値というものが、私どもも、もしよりシビアなものにするとすれば、その辺が限界ではなかろうかということも事務的には想定いたしております。なお学識経験者の御意見などを承りまして検討を重ねた上で結論を得たい、かように考えております。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間も超過しましたから、一応これで……。
  129. 田中武夫

    田中委員長 次に、岡本富夫君。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 加藤先生に最初にお聞きしますけれども、けさからこの光化学スモッグについていろいろと討論をしているわけでありますけれども、東京都の公害局長さんに聞きますれば、やはり発生源対策をやる、こういうことでありまして、この発生源対策につきまして、御承知のようにわが国では濃度規制、要するに煙突を高くして拡散するとかあるいは自動車のほうも濃度規制をやる。アメリカの状態を見ますれば、たとえば自動車の規制を見ますと、排気ガス対策は量規制になっております。したがって、今後わが国のこういった公害大気汚染をなくするためには、やはりこういった量規制にしなければならないんではないか、こういうようにも考えられるわけでありますが、先生の御意見をひとつ……。
  131. 加藤龍夫

    加藤参考人 量規制でやるのが順当だと思います。ただしその濃度というのは、実はこれは量が少なくて濃度が高いというのはまた別の問題がございます。たとえば現在の光化学スモッグのような場合、非常に広範な領域を考えた場合には、これは量でいかなければなりませんけれども、ある局所的な場合を考えた場合には、やはり濃度というものもかなりきいてくるものでございます。たとえばその反応が濃度が一〇〇の場合には起こる、五〇になると起こりにくいというようなこともあるわけです。ですから、その場合場合に応じてその濃度と量というのは持っていかなければならないのですが、いままでのところ濃度だけでやってある程度薄めりゃいいだろうというようなことがあって弊害が出ておりまして、量を基本にすべきだろう。それはいま現在とられている公害対策というものの進みぐあいから考えて、そういうふうに思います。ですから、量でやるほうが間違いがないというふうに思います。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境庁大気汚染局長がいませんので、鷲巣さん、今後いままでのような濃度規制でありますと、排気する量が多ければこれは結局量が多くこの狭い国に落ちてくるわけです。いまこのオキシダントの問題、スモッグの問題は、もう全国的に広がってきておるわけです。したがって、局部的であるようでありますけれどもまた全国的になってきた。このまま何年か推移しますと、今度は日本国じゅうこういったスモッグにおおわれてしまう。こういうことを考えますと、この付近で日本の考え方、規制のしかた、これは環境庁でも量規制をするんだということをよく長官も口にはしておるのですけれども、いかんせんこの量規制の方向に向いてないように思うのですが、今後これについてどういう考えを持っておるのか、ひとつ……。
  133. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 確かに御指摘のごとく、将来の方向といたしましては、総量規制という方向に進むべきだと考えておりますし、特に亜硫酸ガスなどにつきましては、当面いろいろな対策をいま研究しているのが現状でございます。ただ御指摘のございました窒素酸化物につきましては、現状ではたしか物を燃焼すれば必ず出てくるというようなものでございますので、この辺につきましては技術上の解明を待って、方向としましてはできれば総量規制というような形で検討を進めてまいりたいと考えております。
  134. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはもうこの狭い日本の国土においては、どうしても量規制というものが必要になってくる時代が来たのではないか。それでありますから、濃度規制よりも量規制に重きを置かなければならないと思うのです。  そこで時間の関係自動車排気ガス対策についてもう少し聞きたいと思うのですが、一九七五年、いよいよマスキー法案が米国では実施されることになると思うのです。そこでマスキー法によると、現在も自動車排気ガスに対しては量規制になっておりまして、二十三グラム・パーマイルですか、これが一九七五年にはその十分の一、二・三グラム・パーマイル、こういうようになってくれると思うのです、これはCOの場合を見ているわけですけれども。そうすると、わが国もこの米国のマスキー法に合わせなければ、車の輸出もできないし、また日本の国の排気ガス対策はこういうふうにしなければならないという時代に入ってきたのではないか。環境庁としてはこの自動車排気ガス対策排気ガスの環境基準といいますか排出基準、こういうものをどういうように考えておるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  135. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 自動車排気ガス中の有毒物質は、なるべく少ないほど好ましいというのは当然のことでございます。それで特にマスキー法との関係においては、御指摘のごとく条件に合わなければ日本の自動車の輸出は不可能であるわけでございますので、環境庁といたしましては、将来なるべくマスキー法の条件に合うような体制が一日も早く整いますよう、いろいろ関係方面との連携をとって努力していきたいと考えております。
  136. 岡本富夫

    ○岡本委員 運輸省、通産省、両方に聞きますけれども、現在日本の国の排気ガス濃度規制が二・五%、アメリカは量規制をしておりまして、先ほど申しましたように二十三グラム・パーマイル、これは計算すればこうなるのか。それから一九七五年になりますと、アメリカのマスキー法によると、量規制は二・三グラム・パーマイル、こうなりますと、わが国では、いまのパーセンテージでいったらどういうようになるのか、ひとつこの計算をどういうようにするのか明らかにしてもらいたいと思います。
  137. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 一酸化炭素の米国の現在の規制、一マイル当り乗用車で二十三グラム、これは一応換算をいたしますと一・八%ということになります。それで、ただこのやり方がちょっと日本と米国とでは違いまして、わが国の場合には最高値規制、どういう車でもそれ以上こえたら不合格というふうなことをやっておりますが、米国の場合には一応新車規制でございまして、これは平均値規制というふうなかっこうをとっておりまして、どういう車でも一型式の車についてその排ガス濃度というふうなものを全部プロットいたしまして、その平均値を測定することによって規制をしているというかっこうになっております。そういう点でこのパーセンテージが、向こうのほうが一・八%、日本のほうが現在のところは二・五%というふうなことが違っております。  それからもう一つは、米国のほうは走行モードと申しまして、排ガス規制をする場合の走行モードが高速型の走行モードでやっております。日本の場合には保安モードと称しまして、低速型の走行モードでやっておるということでございまして、このパーセンテージをそのまま比較することは妥当ではございませんで、もう一度これはどちらかの走行モードに換算し直して比較しなければならないということになるわけでございます。  それから昭和五十年度の重量規制、これは二・三グラムというやつについては現在のところ計算する資料をちょっと持ってきませんでしたので、後ほど調べたいと思います。
  138. 中村泰男

    ○中村説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、自動車排気ガス規制の方式といたしまして、現在では環境庁が一つの基準をつくるわけでございます。それを受けてのいわゆる保安基準と申しますか、自動車に置きかえての規制は、ただいま運輸省の車両課長がお答え申し上げましたが、運輸省のほうの基準でつくるわけでございます。したがいまして、いま車両課長のお答えいたしましたとおり、ある一つの目標がきまったときに、それをどういうテスト方法で、どういう数値で規制するかということは運輸省のほうできめる事項でございます。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると運輸省できめる、それからその基準を今度は環境庁できめると、こういうことになるのかね。どっちがきめるのですか。
  140. 中村泰男

    ○中村説明員 ただいま私の説明で先生の誤解を招いたようでございますが、私補足いたしますと、現在ではもとになる環境と申しますか、排出基準、どういう基準であるべきかという考え方は環境庁できめられる。それを受けまして具体的な実施のしかたは運輸省の保安基準できめられる、こういうふうに承知しております。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、環境庁はこれをどういうように——要するに私が先ほど説明したマスキー法に合わせるために、いま言いましたように日本ではいま自動車排気ガス二・五%ですよ。いま聞くと一・八%だというけれども、一・八%だったらこれは輸出できないはずだ。アメリカは二十三グラム・パーマイル、これは七五年になると二・三グラム・パーマイルになりますから、日本の規制はどの辺まで持っていくのか、何%になるのか。こういうことになるわけですが、その点いかがですか。
  142. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 アメリカと日本では先ほど運輸省のほうから話がございましたように、排気ガスの測定方式に差がございます。それで日本のほうでは、アメリカのほうの現在の測定方式を日本のやり方に換算いたしまして数値をきめる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  143. 岡本富夫

    ○岡本委員 だから私言うているじゃないですか。アメリカのマスキー法では、要するに七五年になりますと、いま二十三グラム・パーマイルのやつが、重量規制が今度は二・三グラム・パーマイルになるのだ、これに合わせなければ車は輸出できないし、日本はそこまで押えればいろいろこういったものがなくなってくるのですが、そこまで落とすには、換算したらどういうようになるのですかと聞いているのです、パーセンテージは。
  144. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  マスキー法の数値を日本式のほうに換算をいたしますと、五十年以降の数値がCOが二・一グラム・パーキロメートル、それからハイドロカーボン、炭化水素でございますが、一日当たり二グラム、それからこれが排出ガスの面からいきますと〇・二五グラム・パーキロメートル、それから窒素酸化物につきましては〇・二五グラム・パーキロメートル、こういう数値になっております。  ただ、先ほど運輸省の車両課長からもお話ございましたように、アメリカの場合は平均値を出しておりまして、わが国の場合の規制は、最高限度値を許容限度として定める形になりますので、これを平均値のばらつきをどこまで最高値に持っていくかという問題は別の問題としてもう一つ懸案としてまだ残っておるわけでございます。  以上でございます。
  145. 岡本富夫

    ○岡本委員 いずれにしましても、このアメリカの二・三グラム・パーマィルに合わさなければ輸出もできないし、このマスキー法に合わなくなるのですよね。いまごく一つの例をとりますれば自動車工業会また審議会でいろいろと計算をしたり、いろいろな問題点を出しておりますけれども、一九七五年にCOをとらえますと七グラムパーキロ、マイルにするとこれが十一・二グラム・パーマイル、こういうような計算が出ているわけですね。そうするとアメリカの二・三グラム・パーマイル、わが国の目標を見てみますと十一・二グラム・パーマイル、こういうことになればとても輸出どころか、こういう規制ができないのではないかというように考えられるわけですが、こういった問題をやはり取り締まり官庁である、また指導する官庁であるところの運輸省あるいはまた環境庁できちっとしたものを出さなければ、業者に出さしてあるいはまた自動車工業会あたりでどうなるのだというような数字だけでやっておるからいつまでたっても技術が進まないのじゃないかと私は思うのです。この点について環境庁それから運輸省、もう一ぺんはっきりしてもらいたい。
  146. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  私ども、自動車排出ガスの許容限度の長期目標、いわば昭和五十年度及び五十一年以降の許容限度の設定につきましては、少なくともアメリカのマスキー法の数値を十分配慮した数値ということが基本的な考え方でございます。その点につきましてはしばしば私ども大臣あるいは局長からも国会で明言されておるところでございまして、この点についても自動車公害専門委員会におきましても、そういう考え方で現在まで審議を進めてまいっております。近くその成案が得られるものと思っております。  またこういう考え方で、いわば運輸省なりあるいは通産省のほうにも御連絡をいただきながら、それぞれ具体的な準備というものを進めてまいりたい、かように考えております。
  147. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃアメリカのマスキー法、要するに一九七二年に二・三グラム・パーマイル、こうするためにはわが国の濃度規制を何%にすればこのようになるのか、この計算はできておりますか。
  148. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  その点先ほどお答えを申し上げたつもりでございましたが、答えが不十分でたいへん申しわけないと思います。私どもとしては、現在の許容限度のパーセント方式はこれは改めたい、かように考えております。つまり先ほど御説明申し上げましたように、たとえば〇・二五グラム・パーキロメートルというような形で示すのが本来妥当ではなかろうか。ただし数値そのものについては先ほど申しましたように、アメリカ側の数値というものは平均値でございますので、日本式の許容限度として、最高限度値でこの数値を示すように検討しなければならない。その点の検討に非常にまだ問題点をかかえておりまして、結論をまだ得るに至っていないということでございます。
  149. 岡本富夫

    ○岡本委員 〇・二五グラム・パーキロメートルですか、〇・二五ですか。
  150. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 COについては先ほど申しましたように、二・一グラム・パーキロメートル、一酸化炭素でございます。それから炭化水素HCでございますが、これは二グラム、一日当たり。これが一日当たりという分母をとりますか、あるいは走行テスト時というような取り方になりますかは若干アメリカ側のほうの見解ともまだ確認はいたしておりませんけれども、その点についての問題点は別といたしまして二グラム、一日当たり。それから走行による排出ガスについては〇・二五グラム・パーキロメートル。それから窒素酸化物につきましては〇・二五グラム・パーキロメートルというのが、マスキー法の数値を日本のキロメートル当たりに直しまして、私どもが将来の、これからの自動車排出ガスの許容限度の目標値としていま審議を進めておる基本数値になるということでございます。
  151. 岡本富夫

    ○岡本委員 この計算方式についてはもう一度またあとで詳しく聞きますけれども。  そこで、このマスキー法につきましてはアメリカのフォードですか、ここあたりもこれはとてもできないというようなことで一年の延期が申し出られた。しかしそれは却下になった、こういうことでありますが、わが国においてはこのマスキー法に合わせるような車の改造、こういうようなことができるのかどうか。たとえば東洋工業のロータリーエンジン、こういうようなことがちゃんと可能なのかどうか、これも一つ聞きたい。
  152. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 現在のところ、私どもの聞いておるところによりますと、マスキー法につきましては、一応米国環境庁がメーカーの一年延期申請を却下したということを聞いておりますが、向こうの大気汚染防止法ではもう一カ年間の猶予の再申請ができるというふうな規定があるそうでございまして、これは今後またそういうふうな点でいろいろ説明あるいは申請というふうなことが行なわれるかもしれないというふうなことを聞いております。現在では米国環境庁での公聴会等の話を聞きますと、米国の三大メーカーのGM、フォード、クライスラー等も現在の技術では無理であるというふうなことを盛んに主張しておる。そして米国環境庁のほうではどうしても無理だというふうな明確な根拠の提示がないから却下したというふうなことだったと聞いております。現在わが国の場合には一体どういうことかと申しますと、先ほどからいろいろお話がございましたけれども、環境庁が発足する以前に、ちょうど二年前でございますけれども、運輸技術審議会自動車部会で今後の排気ガス規制強化の長期計画というものをつくっております。それには昭和四十八年度の排出ガス規制と昭和五十年度の排出ガス規制というふうなものをすでに二年前に打ち出しておりますが、この昭和四十八年度規制というふうなものについては、現在のエンジンを何とか改造すればものになるかもしれないというふうな大体観測でございます。昭和五十年度の規制においては、一般のガソリンエンジンの場合には現在のエンジンを使ったのではどうにもならずに、あとは有効な自動車排気ガス清浄装置とかあるいは熱リアクターとかそういうふうなものをつけなければとうていこの規制を満足できないということでございますが、現在の問題点ではその排気ガス清浄装置の中に使う触媒というふうなものが、これはなかなかいいものがないというふうなことがいわれておりまして、現在では白金系の非常に高い金属を使うものと、それから安いその他の金属を使うものと二つあるというふうに聞いておりますが、そのめどが現在ではまだ完全についておるというところではないというふうな状況でございます。
  153. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうなってくると、どうしてもアフターバーナー、要するに排気ガスを取る装置をつくらなければならなくなってくると思うのですが、これについて現在どの辺まで技術が進んでおるのか。というよりも、私まず工業技術院でおそらくこういったアフターバーナーについても検定が必要であると思うのですね。あるいはまたJIS規格というものが必要になってくるのではないか。それでなければ、何でもかまわんつけた、これでは話にならないのであって、そういった検定あるいはまたJIS規格、こういう面の見通しはどうなっておるか、これをひとつお聞きしたいのです。
  154. 中村泰男

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  JISの問題は工業技術院でございますけれども、御質問が関連しておりますので、私から一括お答え申し上げます。  御指摘のとおり浄化装置の開発ということが今後の排気ガス対策を講ずる上で非常に大事でございます。特に運技審の答申の線でございましても、従来のエンジン改良だけでは間に合いませんで、アフターバーナーだけではございませんけれども、いろいろな浄化装置を組み合わせて対処していくことが必要でございます。ただ、ただいま運輸省からもお話ございましたとおり、現在の段階、かなりのメーカーが浄化装置の開発あるいは一部市販をしておりますけれども、確立された製品がないというのが現在の実情でございます。これにつきまして通産省といたしましては補助金、融資その他によりまして技術開発のバックアップもしておりますけれども、それと同時に、先生いま御指摘のとおりに物の性能をギャランティーするJISというようなものあるいは検査というようなものが一つの有効な方策かと思っております。JISの問題につきましてはかねてから検討いたしておりまして、工業技術院では昨年の十二月に正式にこの問題を取り上げ、自動車部品の工業会とも連携をとりまして準備作業を進めておる段階でございます。ただJISを制定するときには、先ほど来いろいろ御議論ございます環境基準と申しますか排出の目標基準でございますね、どういう基準にしていくかということがはっきりきまっていくことが、正確なJISという意味で必要だと思うわけでございます。むしろそれがなくとも試験方法その他できめようはございますが、こういう性能が果たせるものだということをJISではっきりしていかなければならないかと思います。そういう意味ではやはりJISの制定作業は排出基準の作業と並行して進めていくことが実際的なことかと存じております。ただ、一方そういうふうにJISの制定がおくれる場合にそのまま放置しておくことに問題がございますので、私ども、現在財団法人の日本自転車検査協会、こういう機関がございますが、この機関を活用しまして、第三者の公平な機関によりまして、浄化装置、メーカーから持ち込みさせまして、第三者的な、中立的な機関で、これは検査とか検定と申しますよりも試験でございます。試験して、こういう性能が出たというようなことを実証していく、これが浄化装置技術の向上にも役立ちますし、いろいろ取りつけ問題を進める上でも非常に有効な方策かと考えまして、現在その準備を急いでおる段階でございます。
  155. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま、通産省のほうでははっきりした基準がきまらないことにはアフターバーナーのほうのJIS規格もきまらないんだ、それから環境庁、あるいはまた運輸省のほうでははっきり環境基準というものがきまらないんだ、それじゃいつまでたってもどうしようもないんじゃないですか。先ほど岩本先生からもいろいろ被害状況の話がありました。一つは、やはり私が言ったように容量規制をしなければ、年間約二億キロリットル使われるというような——これもとんとんふえてくるかもわからない。どうしても工場に対しては容量規制をしていかなければならぬ、自動車排気ガス対策になってくると、これもやはり容量規制しなければならない。その自動車排気ガス対策について、先ほど言いましたように、今度はその基準がきまらない。ですから、結局くるくる回っていると何もできないことになるんじゃないですか。そして被害はどんどん起こってくる。学者の先生方は何が原因だろう、何が原因だろう。総合的な、やはりいろいろなものが入っておる、これがまだわからないというようなことでは、こういったオキシダントあるいはまたスモッグの問題も解決しないと私は思うのです。ですから、どれからか一つ一つ確実な手を打っていかなければ、そしてこれであったということにならなければならないのではないか。したがっていま各官庁の答えを聞いておりまして、これでは騒ぐだけですよ。そして病気になった人を、目を洗ったりなんかして簡単にやっている。しかし、去年、おととしぐらいですか、この光化学スモッグ発生しだしたのは。それで、去年よりことしのほうがまだ多い。これは要するに太陽光線によるのだというけれども、夜まで起こっておる。こうなってくれば、もっともっと国土がよごれて、そして、いまストックホルムで環境庁長官えらい反省のことばを言って世界から高く評価をされておりますけれども、反省しておる間に国民の健康というものはむしばまれていくと私は思うのです。ですから、経済成長優先ばかりであったというところにも問題があろうと思うのですけれども、まずこの自動車排気ガス対策、ここからでも手をつけていくということが大切であろうと思うのですが、いまのように排出基準がきまらぬから何もできない、こんなことではどうしようもないと私は思うのです。今度はこれについてどこが責任持つのかということになってくるわけです。結局は、公害対策本部の本部長であった佐藤さん、これもやめるからもうだめだとなると、どないなるかということになるのですね。国民としては非常に不安だと私は思うのです。ですから結論として、ほんとうは環境庁長官かあるいはまた小澤政務次官かだれかはっきりした結論を、責任を持てる人がないと話にならないと私は思うのですよ。ですから委員長に申し上げたいのですけれども、そういうわけですから、きょうこれ以上質問をしましてもこれは結局何もならない。ただこういうところがぐあい悪い、こういうところがぐあい悪いということだけで終わってしまうと私は思うのです。したがって、はっきりした責任の持てる長官あたりが出たときに、出席を求めてもう一度はっきりしなければならぬと私は思うのですが、それをお願いいたしまして、きょうはこれで終わります。
  156. 田中武夫

    田中委員長 次に、土井たか子君の保留質疑を認めます。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど中断いたしました質問に続きまして、さらに続行したいと思います。  けさほど東京都のほうからいろいろお話を承って、光化学スモッグ被害を起こしている、その発生源を見ていった場合に、やはりいろいろな事業所や工場よりも、より車の側面に非常に重点を置いて取り締まり、取り扱いというものを進めていらっしゃるという御趣旨のほどを私たちもうかがい知ることができたわけですが、先日来そういうふうな意味を込めまして、東京におけるいわゆる交通対策はいかにあるべきかという問題、これが一つの大きな問題としてクローズアップされております。これはまあ大きく考えてみると、やはり車の走行量の問題と道路に対する問題と二つあるのじゃなかろうかと思うのですが、警察のほうの側のこの問題に対する取り扱いはどのように考えられているかということを、基本的な問題としてひとつ教えていただきたい。それをまずお尋ねいたしましょう。順を追って申します。
  158. 片岡誠

    ○片岡政府委員 お答え申し上げます。私どもの立場から意見を申し上げたいと思います。  私どもは、現在東京都内で光化学スモッグによる被害発生しておる、何とか、私どもの力でできることがあればその抑制の一翼をにないたい、そういう気持ちがまず前提にございます。ただ、遺憾ながら、先ほど来お話がございましたように原因がどうもはっきりしない。その原因がはっきりしない、どの程度まで自動車が寄与したのか。しかも先般のような場合には従来のいわゆるオキシダントによる公害と何か異質なものがあるようにも見受けられる。そうすれば、はたして原因が那辺にあるかということの因果関係がわからないと、私どもとしても有効適切な規制の手段が見つからないという悩みを持っております。基本的には大都市の都心部における自動車交通量を抑制していくということにつきましては、東京都が考えておるのも私ども全く同じ方向だと思います。  ただ、抑制の手段として何が考えられるか。一つは通過交通を都心部へ乗り入れさせない方法だと思います。これには東京の場合には御承知のように放射線状の道路は非常に整備されてきましたけれども、環状線の道路の整備がおくれておる、これが一つ致命的な問題ではないかと思います。環状道路さえ十分整備されれば通過交通は何も好んで都心部に入ってこないという問題が一つございます。  それからもう一つは、通勤にしろあるいは業務用交通にしろ、社会的な需要が現にあるわけでございますから、その需要をマイカーとかライトバンからほかの交通機関に転換さすというのが一つの大きな方向だろうと思います。ただ、それには転換さすべき公共輸送機関の整備が問題になってくる。長期的に考えれば鉄軌道という問題、これの整備が基本的だろうと思いますけれども、短期的にはバスの有効利用ということがもっと考えられていいのではなかろうかというふうに私どもは考えております。  それから第三の問題としては、特に公害がひどくなってくる。緊急事態とまでいかなくても、それに近い事態になってきた場合には、そうも言っていられない。そのときにはやはり非常的な手段として不急不要の自動車を何らかの形でとめていくという問題が残ろうかと思います。現在私どもがとっております政策は、交通量削減のために間接的な規制をできるだけやっていく。それは主として駐車規制を中心にやっていっております。それからもう一つは、バスの優先レーンあるいは専用レーンというものを多くしていって、バスのほうに交通を転換していくという方向をやってまいりたい。  それから、もちろん特定の地点で特に公害発生が明確になり、その特定の地点の公害発生予防するために一定の特定の地点の交通の制限をやれば有効適切な方法であるということがわかれば、それもやってまいりたい。  以上、大体基本的にはそういう考え方で警視庁はじめ大府県の警察を指導いたしております。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 車の排気ガスの寄与度が高いか低いかというのは未知数であるから、まだこれからそれに対しての調査を要するという御発言の中身であったわけですが、きょうはお昼から横浜国立大学加藤先生のお話を承っておりますと、特にやはり自動車排気ガス光化学スモッグ現象をもたらしておるという点にたいへん重点を置いてお考えになっておる点がありありとよくわかりまして、特に高速道路が起こしておる弊害なんていうものがたいへん大きいということもしみじみとお聞きしたわけですが、いま環状線の整備をすると、東京都を通過するところの自動車はそれを利用するであろうから、ずいぶんその問題もいま考えておるより以上に解決されるのではなかろうかという意味の御発言だったんですが、寄与度が未知数であればあるほど、こういう問題に対しては徹底した対策を講ずるというのが、実は大事な問題ではなかろうかと私は思うのですね。そういう点からしますと、どれだけ道路整備をいたしましても、あとに続いて出てくる問題というのは、そこに激増する車の数であります。したがいまして、それは環状線を整備すれば、そこを通る自動車東京都を通過するから、東京都の被害はそれだけなくなるのではなくて、むしろ激増するとさえ考えられていいのじゃなかろうかという側面も出てくるように私は思うのですね。いま一般的に考えまして、光化学スモッグの緊急事態の際には、東京都の公安委員会に規制を申し入れる。委員会の決定に基づいて初めて警視庁が実施することになる、こういうたてまえになっておりますね。したがいまして、どうもスモッグ襲来に対して、この交通規制というものはあとから追っかけ追っかけで、十分に交通規制というものがスモッグの緊急事態に対応できるものにはいまなっていないように私は思うのですね。何らかこういう交通規制についてもっとスピーディーに即応して、緊急事態に対処する緊急対策としてとれるようなありさまであってほしいと思うのは、私一人ではなかろうと思うのですが、その点について何かお考えがあったら聞かせてください。
  160. 片岡誠

    ○片岡政府委員 初めの問題ですが、私は土井先生におことばを返すつもりで申し上げておるわけではございませんけれども、一番基本的には個別発生源対策だと思います。私はもっと環状道路はつくるべきである。そこの道路に交通量が多くても、排気ガス公害がないような自動車なり燃料にするというのが基本だと思います。そういう自動車をつくっていく、あるいは燃料を開発していくのが一番の根本的な解決策というのが、私どもの基本的な考えであります。  それから緊急事態、たとえばオキシダント値が〇・五PPMになるといったような場合には、これは相当ドラスチックなことも考えざるを得ないかもしれない。しかし現在の事態はまだそこまでいっていない。しかもたとえば交通規制をやる場合に、その規制によってはたして起こっているところの災害を有効適切に防止できるのかどうかというその因果関係のめどもつかないで規制をやるのは乱暴ではないだろうか。その辺の因果関係がもう少し何とか早く解明できないものだろうかということを私どもは待っているわけです。その辺で、きょうの加藤先生のお話、私も拝聴しておりまして、一つの、つまりいままでの酸化物による光化学ではなくして、還元物質による光化学という別の問題が出てまいっております。しかも比較的短距離の問題という御指摘がありましたので、そういう問題について環境庁なり都の公害局のほうで、因果関係研究をもう少し早めていただければ適切な手が打てるのではなかろうか、そういうふうに考えます。
  161. 田中武夫

    田中委員長 加藤教授、何か御意見がありますか。
  162. 加藤龍夫

    加藤参考人 ただいまの議論といいますか、それに対する意見を申し上げます。  先ほどの交通その他を、いろいろな打てるところから打っていくという姿勢と申しますか、それに関しましては私賛成でございますが、先ほどの御質問にあるように、環状道路を完成したらよくなるだろうということ、いろいろな含みではなくて、ただそのことだけで申しますと、道路をつくればつくるだけ悪くなるおそれがあるだろうということは言えると思います。ただし、もちろんそれはいまもいろいろな付帯条件がありますものですから、それだけということは言えませんけれども、いままでの傾向はそうであった、こういうふうに考えますので、その条件を変えない限りは、道路はふやさないほうがいいんじゃないかというようなことはどうも……。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 いまの加藤先生の御発言を承っていて私は気を強くするのですが、つまり先ほどの御答弁の中に、結局はそういう道路規制をやるとか交通整理をするとかいう問題以前に、自動車の構造自身を改善するとかあるいは自動車燃料の改善をするとかいうことが基本的に考えられなければならない。それはいわば理想の一つとしてあると思うのです。私たちの考えの中にあると思うのですが、しかしけさほどから承っておりまして、たとえばアンチノック剤として混入されているガソリンの中の芳香族炭化水素の減少措置の推進についてどうお考えですかということ一つ承っても、これについてしかとした、き然とした態度がないのですよ。そういうときに、東京都内は言うに及ばず、全国各地で大体工業地帯に近接したところあるいは工業地帯そのものに、いまいわゆる光化学スモッグ被害現象というのが続発しているわけですから、これはあっちにこっちにたらい回しをされて、いや道路さえつくればよいとおっしゃるけれども、片やはそうではないと言われる、また片やは道路をつくったって基本的な問題がよくならないとだめだというふうな意見もある。そういう意見の中にはさまれて事態は一向によくならないと思います。たらい回しはいいかげんでごめんでありまして、やはり具体的にどういうふうな措置を講ずるかということ、これに早く着手してほしいというのが、みんなの持っている率直な気持ちじゃないかと私は思うのです。そういう点からいいますと、私が先ほど来お尋ねしているのは、交通規制のあり方に対して、このスモッグ襲来というのは、地域的、時間的にきわめて限られているわけですから、こういう緊急事態に即応できる便法というものが何かあるのではないか。これは警察としてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるかという点をお伺いしているわけです。
  164. 片岡誠

    ○片岡政府委員 いままでのオキシダントの問題の場合には相当広範囲にわたる、しかもそれは発生して発生地点の別のところ、たとえば都心部に発生してそれが逆転層に当たって郊外に落ちていく、そういうふうに私どもは了解しております。ところが今度はそれと様子がどうも違うのではないか。逆転層もない。しかもオキシダント値も非常に低い。何か異質な汚染物質があるのではなかろうかという気さえいたしております。私ども御承知のように牛込の柳町で鉛害が問題になったり一酸化炭素が問題になったというときには、場所も特定いたしておりますし、因果関係も明白だから、すぐ交通規制の手を打ったわけでございます。私どもは、そういう有効適切な手を打ちたいと思っているのですが、いかんせん、現実な因果関係ではなくても、たとえばこの辺を通っている自動車、その辺の集団からの影響がここへ来ているのだという相関性でもわかれば、押えにかかれると思います。それがまだ不明確であるというのが今回の致命的な問題ではないかというふうに感じております。だからその辺さえわかれば、それなりに私ども知恵をしぼって交通規制をやっていきたい。それが一つです。  それからもう一つは、基本的に交通量を減らしていく。不急不要と申しますか。ほかへ転換できる交通量があればそれは減らしていくという基本政策はずっととり続けておるわけです。その一番基礎は何かと申しますと、先ほど申した駐車規制対策、保管場所法も厳密に適用していく。車庫を持っていない人は車を持たせない。それから用事先に出ていけば必ず路外に駐車する。そういうふうな形で、車を持っている人はそれだけの社会的な負担を負っていくという仕組み、あるいはバスならバスをもっと定時運行できて、そこにお客さんを誘引できるような方策をとっていく、そういうことを昨年来続けてやっておりますが、これは強化してやっていく。大体そういう気持ちでおります。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 言うまでもないことですが、警察の中の特に交通係には、この光化学スモッグの警報体制が周知徹底できるようなちゃんとした体制にありますか。いかがですか。いま光化学スモッグの警報が出ているか出ていないか、それから予報がどういうぐあいになっているかというのはわかるような体制になっているかどうかです、警察の中で。
  166. 片岡誠

    ○片岡政府委員 私どもは内部的に規制指令装置も持っておりますし、交通管制センターにも入っておりますから、出れば直ちに第一線の駐在所、派出所まで徹底するルートは十分持っております。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 そのルートを通じて、いままでそれは十分にその機能を発揮しているというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、その辺ひとつ伺います。
  168. 片岡誠

    ○片岡政府委員 そこが先ほど申しました悩みがございます。というのは、打つべき具体的な手法がまだ定着しておりませんので、情報としては流します。しかし、出たときに、たとえばどこの警察署ではどういう手を打てという、それがまだ十分できないという悩みを持っております。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことになってきますと、この交通規制権のあり方というのをどういうふうに考えるかという根本的問題が一つは提起されるのではなかろうかと思うのです。いまのあり方のままで警察に全面的にゆだねてしまって、都のほうが、都の公安委員会を通じ、公安委員会の決定に基づいて警視庁が初めて実施することができるというふうな、こういうまどろっこしいルートを通じて初めて何とか交通に対しての規制がきくということでなくて、やっぱりこういう事態に即応できるような体制というのを考えていく。これは一番最初に申し上げたところにまた戻るわけですけれども、何らかそういう考えが一つあっていいんじゃないか。これは事務的な問題で片づくことじゃないと私は思います。やっぱり実態に対して即応しなければならないという問題を踏まえておりますから、だから、ここからここまでは警察の仕事だから断じていじくっていただいては困るとか、ここからここまではやっぱり私たちでやりたいのだという、お互いがなわ張り争いみたいなことをやりますと、これは一番思わしくない現象をもたらすわけで、その辺はお互いの協力体制から始まって、一体こういう規制のあり方をどこを中心に求めていったら一番即応できる、しかもこの被害地に対して非常に効果の大きい交通規制ということになるかという問題があろうかと私は思うのです。いま東京都の公害局と警察とのかかわり合いというのはどういうぐあいになっておりますか。
  170. 片岡誠

    ○片岡政府委員 新聞その他の報道で御承知だと思いますけれども、東京都のほうの副知事を中心とした関係者、警視庁のほうの副総監を中心とした関係者で、定例的な会議を開き出しております。そこで具体的な原因の問題なりあるいはそれに対する対策の問題を両者協議して事務的に詰めていこうという段階に入っております。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 そこまでは私も新聞を読んでおりますからわかるのですが、一体どういう時期を目標にして、少なくともいまの作業の中間報告的なものでもけっこうですが、出そうとなさっていらっしゃるのか、その辺をはっきりきょうは聞かしておいていただきたいと思います。
  172. 片岡誠

    ○片岡政府委員 まだ残念ながらその段階にまで至っておりません。討議を始めて二回目の会合をやったという段階で、まだ中間報告をいたすような段階には至っておりません。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 まだそういう段階ではないということでありますから、これもやはり遅々として進まずという感じがするので、もう私たちはそういうのを聞いておりますと、実はほんとうのところいらいらしてくるのです。何とか早い機会にこういうことについては最終案ではなかなかそれは出ない問題かもしれませんが、中間報告的なものでもひとつはっきりさせようじゃないかという姿勢で臨んでいただかなければ、実際に即応できる交通規制ではないと私は思うのです、いまのままじゃ。そういうことをまず申し上げて、さらに東京都については、被害者に対する治療費のあり方、はっきりこれは健康保険法、学校教育法等々でまかない切れない残部については公の費用でまかなうという御答弁をいただいておるわけですが、国のほうとして環境庁はこの問題についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ひとつお聞かせください。
  174. 船後正道

    ○船後政府委員 光化学スモッグによる被害の救済の問題は、午前中にもお答え申し上げたのでございますが、基本的には発生機序の解明あるいは原因物質等、こういった研究の進展とにらみ合わせて考えていかねばならぬ問題があると思いますが、ただ当面の被害の問題につきましては、現在のところ発生が非常に局地的でございますし、また時間的にも限られておる。あるいは被害を受けます者も小中学生を中心にしておるといったような事情がございますので、やはり当面の問題といたしましては、東京都が現在お考えになっておりますようなそれぞれの地方公共団体の実情に即して具体的に手当てをしていく、こういう方法で対処するほかはないと考えております。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、いまの御答弁からすれば、東京都は東京都で起こった場合にそれをどう考えるかをきめる。兵庫県は兵庫県できめる、大阪府は大阪府できめる、それぞれの自治体によって取り扱いが当然違ってきてもしかたがないということになりますね。
  176. 船後正道

    ○船後政府委員 やはり現在起こっております被害原因がどこにあるか、固定発生源というのが非常に原因として有力な地域もございましょうし、移動発生源が主とした原因であるといったようなケースもございますし、また物質が何であるかということにつきましてもいまなお未知の分野が多いわけでございますので、やはりさしあたりの問題としましては地域ごとに若干の事情を異にしてもやむを得ない。国といたしましては、これらを踏まえました上で、基本的な問題の解明と合わせてこの被害救済の問題も考えていきたいと思います。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 一過性であることでどの辺に被害の線を引くかというふうなことが実は問題点としてあろうというふうな東京都の場合は御答弁だったのですが、しかし入院患者については、はっきりと治療が必要であるという前提に立って治療費については全額を何とか都のほうでというふうな姿勢を出していらっしゃるわけですから、ずいぶん、それからいたしますといまの御答弁心細い限りだと思うのですね。やはりそれぞれの都道府県あるいは市町村のあり方によってずいぶん取り扱いが違うということをひとつきょうはお聞かせいただいたにすぎないように思います。国としての責任が一体どうなるのか。その点がどうもいまだお聞かせいただいてないようなぐあいでありまして、やはりその点ひとつはっきりした御答弁をいまここで聞かしておいていただきましょう。
  178. 船後正道

    ○船後政府委員 環境庁といたしましては、汚染の費用は本来原因者が負担すべきである、このたてまえはくずしたくないと考えております。そこで、原因者がだれであるかというのが実はこの光化学スモッグにつきましての大問題でございます。(「ない場合は国だろう」と呼ぶ者あり)ない場合は国であるという結論には直ちにならないわけでございまして、やはり私どもは先ほど来申しておりますように、この発生機序の問題、あるいは人体影響の問題、原因物質の問題、こういったことの究明とあわせて、この光化学スモッグに対する被害をいかなる仕組みで救済するかという基本問題を考えていきたい。ただ、現在起こっております現象は非常に地域的な問題でございますので、やはり本来地域住民の保健に対しましては、健康に対しましては、責任を持つところの地方公共団体におきまして具体的に処理していただく、こういう方法しかやむを得ないと考えております。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 これはしかし、歴然とした加害者があっての被害状況だということを考えなきゃいけないわけですね。自然発生的に出たわけでも何でもないのです。しかも被害者は、現象が起こるというふうなことを知っての上での問題でもないし、そうしてその原因をもたらしているのは何も地方自治体じゃないわけですから、これはわれわれがいまここで問題にしているいわゆる公害の一環として考えなきゃならない。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 そのときに、原因者負担というものの原則に立って考えるべきだとか、原因者がはっきりするまで究明の手をゆるめてはいかぬとかいうふうなことで、はたしてこれはいま激発しつつあるところの光化学スモッグ被害に対してしかとした国の態度といえるかどうかと私は思うのですよ。科学者なんかの意見を聞きましても、光化学スモッグ原因ということについては実に複雑であって、はっきりとそのことに対して究明できるというめどはいまだにないというふうな御発言をあっちに行ってもこっちに行っても伺います。しかも具体的な事例に当たってみた場合に、はたしてこれ自身が光化学スモッグのためであるといえるかどうかということも、認識が非常にむずかしいともいわれます。むずかしい、むずかしい、むずかしい、むずかしい、不明である、不明であるの積み重ねばっかりでありますと、結局これに対しての被害を一体だれがどういうふうにして補償していくのか自身も不明であるということで、葬り去られたら、被害者自身は泣くに泣けないと私は思うのです。私自身だって、いつ何どき光化学スモッグ被害を受けるかもしれない。一億総国民がそういう立場に置かれているのがいま日本の現状じゃないでしょうか。環境庁のそれぞれの職員の方々だって、いつ何どき被害者になられるかわからない。そのことをひとつ肝に銘じて考えていただきたいと思うのですよ。それを考えた場合に、国の責任というものが、被害について原因の究明をよくやって、原因の究明が明らかになってだれが原因者であるかというところから始まるのだから、まずは研究、究明が先立つものだ、いままだそれがはっきりしない段階で補償、補償といわれてもそれはちょっとできることではないと言われたときに、一体どういうふうにこの問題に対してはそのあと補償を持っていったらよいのか、私たちは困ります。どういうふうにしたらいいのか、よくわからない。県知事や府知事がそれにこたえる。あるいは都知事がそれにこたえる。そして何とか地方自治体の財源の中でその問題のやりくりをやってそれだけの補償をしようということになれば、それはそれまでまかなえるかもしれませんけれども、御承知のとおりいま地方財源からしても、それだけの光化学スモッグ対策に対処するための予算というものを置こうとすれば、これはたいへんな問題だと思うのです。大蔵省にいらしたから、そのことはよくわかると思うのですよ。ひとつそういうことも踏まえて、先ほどからの御答弁じゃもう通り一ぺん、形式的もいいころでありまして、私たちはどうしても納得できる答弁じゃないと思うのですよ。もう少し血の通った答弁をしていただくわけにはいかないですか。
  180. 船後正道

    ○船後政府委員 環境庁といたしましては、この光化学スモッグによる被害のみならず、一般的に大気汚染による健康被害はあるわけでございますから、そういったものをあわせまして、一体いかなる補償機構が妥当であるかという問題につきましては、検討いたしておるところでございます。特にむずかしいのは、原因者がはっきりしておる、あるいは原因物質がはっきりしておる、はっきりしていないまでも究明すれば可能であるというような分野につきましては、これは民事の手続でもって補償されることが可能でございますけれども、原因者が不特定多数である、あるいは原因物質が種々複合いたしまして、その結果としてある被害が生じてくるといったような場合には、これはおそらく民事の責任の限度を越えた問題ではなかろうかというような気もするわけでございます。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 このような問題に対処いたしますためには、少なくとも大気の汚染がなければこのような被害がなかったわけでございますから、その大気の汚染に寄与しておるもの、そういったものから何らかの拠出を求めて、そうして一つのシステムとして救済するというような制度をつくることが急務であろうと思います。国の責任はやはりそういう制度をすみやかにつくるところにあるのであって、国の予算から被害者を救済するということは、結局被害者である者の税金から被害者に金を出すというような結果にもなりかねないわけでございますから、私どもといたしましては、先ほど申しましたような一つの損害補償の制度というものをすみやかにつくりたい、こういうことで検討しておるところでございます。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 制度、制度とおっしゃいますが、制度も動かぬ制度では意味がない。動いてこそこの制度にはやはり意味があるわけでありまして、それぞれの研究あるいは対策をどのように講じたらいいかということの調査、そういうことに自治体がどれだけがんばるかということも、これは制度を動かす大きなきめ手になろうと思うのですね。そこで、先ほどから各自治体によってこの問題はどう取り扱われるかを最終的には決すべき問題であろうという御趣旨の御答弁ですから、そこで申し上げますが、それならば環境庁としては各自治体、特に光化学スモッグ被害地域、いままで何べんも被害が出ている自治体ですね、あるいはそういうふうな可能性が十分に予測される地域、そういうのを持っているところの自治体に対しては財源確保の上で御努力なさいますか、いかがですか。
  182. 船後正道

    ○船後政府委員 光化学スモッグ問題のみならず、最近の汚染の多様化、広域化に伴いまして、地方公共団体は、公害対策あるいは観測測定あるいは取り締まりあるいは調査研究といったことの支出はかなり増加いたしております。こういったことを踏まえまして、自治省では地方交付税の算定基準というものにつきましては、最近——私、本日は数字は持ってきておりませんが、毎年かなりの増額ということもいたしておりまして、通常の地方公共団体がこの公害対策を推進するにつきまして支障のないような措置をいたしておるところでございます。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 予算規模が増大すれば増額も当然あり得ることでありまして、全体から見て、増額というのは、年々予算規模が大きくなっているから増額も当然の結果だということも言い得るわけです。ひとつ、その点については意のあるところをほんとうに示していただきたいと思うのですよ。口先だけの答弁でなくて、実効のある答弁をほんとうにしていただきたいと思うのです。私は環境庁の実効ある答弁については期待をかけている一人ですから、ひとつそのところを十分にがんばっていただかないと、国の中で担当省局というと環境庁という一般国民の非常に期待もあるわけですし、その点ひとつ期待を裏切らないように、光化学スモッグ対策についても、これは環境庁として一つの意のあるところを示す機会だとすら私は考えますから、ひとつ重々にその点を申し上げたいと思います。  さて最後に、私は東京スモッグ対策研究プロジェクトチームというのがすでにあることを何べんもお聞きしているわけですが、例の石神井南中学校の事件について、六月五日か六日ごろに数字による中間報告を公にするということを承っておりますが、その中間報告が出たかどうかということについて答えていただけませんか。
  184. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  中間報告と申しますのは、都の衛生局のプロジェクトチームの保健対策研究グループ臨床医学的調査研究分科会というところでの中間発表というふうに私ども承っているわけでございます。六月の五日の午後九時に一応中間発表につきまして、データを示して発表されたものについて、私どもは都から報告を受けておるわけでございます。本来これは都のほうで——けさほどあるいは時間があれば御報告したいというふうに中川部長も言っておったところでございますが、便宜私から、都から聞いた限りにおいて、簡単に要点を申し上げたいと思います。  伺っておるケースについての被害事例につきましては、二十六日以前の発生例と二十七日以後の発生例とは、臨床医学的にそのパターンが異なる。それが第一点。  第二として、二十六日以前、特に二十六日の発生例については、軽度の眼科、耳鼻科的臨床所見が認められる。二十六日のかなり症状が重いものは、体育運動負荷があったものと見られる。粘膜刺激につきましては、何らかの汚染物質負荷があったと考えられるが、汚染物質は不明である。これに心因的要因が加わって頭痛しびれ等の症状発生したものと考えられる。  三番目に、二十七日以後の発生事例につきましては、粘膜刺激はほとんどなく、所見は痕跡程度である。頭痛、息苦しい等の全身症状が前面に出、症状の発現も午前八時半ごろである。呼吸の促迫、しびれなどの症状が反復しておりますが、暗示により軽快しているという例がある。この経過から見て、心因的要因が大きいものと考えられる。  四番目に、六月二日学校の再開後は、以前に症状のあった者に特定して発生している。現在、学校当局も、生徒の表情は明るくなってきたという報告がある。  五番目として、なお光化学スモッグによるものかどうかは必ずしも断定できないが、特に二十六日については、オキシダント濃度も低いし、運動負荷も午前中に行なわれている。五月十二日については、現段階では何とも言えない。しかし、五月十二日の被害者八人のうち三人は、午前中教室で、発症といいますか、症状があらわれており、残りの五人は午後になって症状があらわれている。いまのところ、光化学スモッグとの関係を否定する材料はない。  大体以上のような報告を私どもは都から受けておるわけであります。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 いま大略の御説明はいただいたわけですが、あらためて、東京衛生局から出ておりますこのプロジェクトチームの中間報告を資料として要求いたします。委員全部にいただくわけにいきませんか。
  186. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 都のほうからいただいておりますものを準備いたします。
  187. 田中武夫

    田中委員長 委員全部に配付してください。
  188. 岩本経丸

    岩本参考人 ただいまの御説明を承りますと、二年前の私どもの被害そっくりでございます。初めのうちは、光化学スモッグらしいということであったのですが、心因性によるということでうやむやになってしまいました。それと同時に確かに心因性によるというような状況あとに残ります。それで、約三カ月くらい、精神的な安定が得られるのに要すると思います。私のほうでは十一月ごろまでそういう不安が続きました。それで、これは女の子の特別なヒステリー連鎖反応だとかなんとかいいますけれども、第三者として見ていると、確かにそういう現象らしいというふうに校長の私も思いましたけれども、いまから考えてみると、まことに残酷な推定であって、被害を受けた生徒それ自体の精神的な打撃や肉体上に受けた影響というものはもっと医学が解明する必要がある。これをそういうような安易な解決で残してしまったら、将来取り返しのつかない被害が出てしまうということを私は懸念をいたします。いまだに日本の医学はその程度であるとするならば、まことに残念であると思います。それとまた、女子生徒がかかるということも、さっきは一つのミステリーとして申しましたけれども、これも、ただ単にヒステリーの連鎖反応だなんということですね。それから某ベストセラーズを書いた女史の作者までがそういうことを言っておりますけれども、これは女史みずからが女子を知らない。私もさっき青年前期と中期ということを申しましたが、中学校の終わりごろから高校の一年生あたりの女子生徒に非常に罹病率、被害率が多いということは、何かもっと解明すべきものがそこにあるように思います。ただ、わかりませんけれども、それをしっかりと感ずるわけでありますので、十分その点を関係者において御考慮をいただきたいと思います。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃこれで私の質問を終ります。ありがとうございました。
  190. 田中武夫

    田中委員長 次に、島本虎三君の留保質疑を認めます。島本虎三君。
  191. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろな関係でこま切れになりまして、参考人の皆さん並びに政府当局にこの際おわびを申し上げて、私としてもあと残す時間は十分詰めてまいりたい、こういうように思います。  まず、ただいま御答弁くださいました岩本さんに伺いたいと思いますが、東京の立正女子短期大学ではやはり同じようなことが起こった、こういうふうに報告がございましたし、その後いろいろと政府当局のこれに対する考え方や、会って話された内容等についての政府当局のこれに対する態度が、岩本さんの所見の中にも、いろいろ前回、この公開の場所でなく、われわれは伺ったわけであります。総理府総務長官の言もこれに対してあるようでございましたが、いままでのこの東京立女子短大の光化学スモッグに対する政府の、ことに総理府の態度はどのようなことでございましたか、この際ひとつ御発表願いたいと思います。
  192. 岩本経丸

    岩本参考人 私は、ただいまのところ——実は個人的なことを申し上げるようですが、被害にかかって驚いて私が走り出しましたら、おまえは反体制運動の手先になるなというきびしい御忠告をある筋から受けました。ところが、またしばらくたってから、おまえは体制告発の姿勢が足りないということをある方面からもしかられました。ただ私は、教育者として自分の預かっている生徒の人命にかかわるようなことだから、走り回ったわけであります。だから、その間において私はもう忙殺されましてどこへも連絡ができませんで、ただ自分でその生徒の入院先であるとか、経過であるとか、それから先から来訪される方々のための応接に忙殺されました。その間にただ、厚生省の当時の橋本公害課長さんからの話で、二日過ぎた後の月曜日二十日にこういう新聞記事を拝見いたしました。目がちかちか、のどがいらいらは光化学だが、吐きけ頭痛けいれん、それから倒れたなどというのは光化学でない。こういう倒れたというところも打ち消されたと思いましたから、私は電話をかけまして、倒れたというのは、いわゆる卒倒という意味ではないのだ、もちろん卒倒でなくて、もうたいへんなかっこうで自分の学校の医務室までかかえられてきた、それで寝台の上にどっと倒れたのだ。ところが、それがどういうふうに伝わったのですか、岩本という校長から取り消しが来た、倒れたんじゃないんだそうだ、そしてこれはどうもマスコミ公害じゃよと、こう発言された。それで大きな問題を残したことが新聞記事にもございますし、その発言された代議士は私の昔の友人でもありましたので、私は苦笑したわけであります。夕方、奥さまから電話がかかってきまして、岩本さん、何が起こったのですかというような話だったけれども、実はもういろいろの面で新聞記者の方と対決されて事済んだようですから、もう申し上げません、ただこういう公害のことについては政府の当局の方よろしくお願いいたしますと申したのですが、そういう一部のいろいろなこともございますが、実は政府の方面からは現場調査とかいうものは一度もございません。ただ今度は石神井南中学に各議員が行かれたりいろいろ責任の方が行かれたことについて、この二年間の間にその点はずいぶん真剣になられて、十分この問題を政治の責任に当たっておられる方が実際に思われたということについて、被害者の一人として感謝しているわけですが、まだまだ、実際のいままでのいろいろな御答弁を承っておりますと、どうも私には全く遠い遠い何だか他人ごとをおっしゃっているような気がいたしまして、ほんとうにこの事件を把握されているのかどうか疑わざるを得ないのです。たいへん反体制のようなことを申し上げるようですけれども、私は何でもありません。ただ一教師でございます。ただ教室の、教育の場の混乱と、手をつかねている教員の立場を代表して、ここでちょうどこういうことが出ましたから発言させていただくわけです。  それから山中総務長官は、参議院のどなたか、内田善利先生でございましたか、東京立正の被害はどうするんだとお尋ねになったときに、あれは光化学スモッグ被害だかどうだかまだわからない——これは新聞記事にあります。十月二十日ころの新聞だと思いますので、その新聞記事を見れば……。それから、私の印刷の中には大体新聞記事どおり引用したところもございますが、そのときにはまだ光化学スモッグ原因も不明であり、これが公害病であるということも断定ができないから、補償はしない、こういうことがございましたし、それから一番私どもに打撃を与えて困ったのは、橋本公害課長の御発言でございました。しかし、二年の経過がたっているうちに、それは日射病だとか、それは試験疲れであるとか、それはおまえのところの学校でしごいたんだろうとか、クラブ活動でしごいたんだろうかといったような症状が、ようやく公害現象によるところの被害であるということが認められた、それに二年を要したということですね。やはりこういうことを重ねえいると、イタイイタイ病であるとか何かと同じような結果が将来五年とか六年の後に出てくることを私は心配をいたします。  たいへんぶしつけなことを申しましたけれども、被害者の実感でございますので申し上げました。
  193. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。  やはりいま公害関係で唯一のよりどころになっておりますのは下級裁判の判例、しかし、この判例とても、やはり考え方によっては少数意見であります。また住民運動が起こって、それが新聞報道、マスコミにのり、どうにも耐えがたくなり、そういうような運動を通じて今後は法律ができ上がる。法律のあとを追っかけて行政がまたようやく動く。いつでも不満は行政に集中するのは、これまた当然であります。したがって、当局はこういうような一つの組織を考えながら、十分に初めから手を打つようにしなければならないと思います。いま聞いてみましても、やはり初めのうちは、ことばは悪うございますけれども、ほんとうに、ばかか反体制か、かってなことを言っているというふうにさげすまれるようなことばさえあるのです。しかし、いまや現実となってしまったから、行政のおくれを皆さんがまた追及されるのであります。いつもやはり行政は先へ先へいっても決して先になることはありません。こういうような点を十分考えてこれから手を打たないとだめなんです。中央におり本省におり本庁におるからえらいんじゃないです。皆さんの場合は、完全に国民の欲求にマッチし得るような行政をつかさどることが皆さんの価値なんです。どうもこの点は手おくれが多い。  同時に、今回の場合は特に学童の被害が目についた、目立った、こういうようなことを言われておりますが、文部省のこの対策はどうなってございますか。
  194. 吉田壽雄

    吉田説明員 お答えいたします。  文部省といたしましては、ただいまお話のございました昭和四十五年の七月の光化学スモッグの確認と申しますか、最初の被害でございましたけれども、あの時点におきまして、すでに全国の各都道府県の教育委員会あるいは都道府県知事に対しまして、体育局長から通達を出しまして、オキシダントと思われる公害発生の際の措置について、こういうことに留意して適切な指導、適切な措置をとっていただきたいということを通達でお願いいたしたわけでございます。実際にオキシダント発生した、あるいはまた被害発生が予想されるという場合には、すみやかに児童生徒を校舎内に入れて洗眼やあるいはうがいなどを十分に行なわせる、あるいはさらに学校医に直ちに連絡してその適切な指示を受けるようにというようなことを、特に各都道府県の教育長あるいは知事にお願いいたして今日に至っております。  それから、先ほども問題として出ました補償の問題でございますけれども、日本学校安全会に加入している学校の児童生徒が授業中、つまり、学校の管理下におきましてオキシダントによる被害をこうむりました場合には、その直接医療に要した費用につきまして、特殊法人の日本学校安全会のほうから所定の給付をいたすことになっております。  それから、大気汚染による公害影響を受けている地域に所在する公立の小中学校の児童生徒を対象といたしまして、前年度から、特に健康増進特別事業として、特別の健康診断並びに児童生徒を一定の期間恵まれた自然環境の中に教室を移動させまして心身の健康の増進をはかるというような趣旨から、特別の助成を講じておるわけでございまして、今年度におきましては前年度より相当大幅に予算も増額確保したつもりでございます。さらに、大気汚染公害を受けております学校の施設につきましては、二重窓を設ける、空気清浄装置を設けるというようなことで、公害防止を必要とする場合、あるいは公害によって特に学校の移転あるいは改築を必要とする場合には、その公害防止事業に対しまして国庫補助を行なっております。  こういうことで文部省としてもできるだけのことをしているつもりでございますけれども、今後さらに、特にまた予算面におきましては、四十八年度の概算要求においてこれを大幅に必要な予算を伸ばし、確保したい、こういうふうに考えている次第でございます。
  195. 島本虎三

    ○島本委員 現在この光化学スモッグ発生しております石神井の南中学ですか、それの付近の小学校、こういうような学校の児童に対する具体的な対策は何かおとりですか。
  196. 吉田壽雄

    吉田説明員 文部省から直接練馬区の教育委員会管下の公立の小中学校等に指示するというようなことはいたしておりませんけれども、東京都の教育委員会と密接な連携をとっておりまして、そうして東京都の教育委員会を通じて練馬区管下の小中学校にいろいろと指導その他をお願いしているところでございます。たとえば、ただいま申し上げましたいわゆる健康増進の特別事業、たとえば教室を緑の自然の中に移動させるという、通称グリーンスクールと申しておりますけれども、そういうグリーンスクールを練馬区管下の小中学校が計画されました場合には、文部省としても最優先的に助成措置を講じてまいりたいというようなことなども東京都の教育委員会の方々に申し上げているところでございます。
  197. 島本虎三

    ○島本委員 ついでですけれども、もう一つ、このスモッグの後遺症に対する不安が父兄の間に大きいと聞いております。それから、一度かかった生徒の握力が不足しておるということも報ぜられておりますが、この点等についてはどういうようなことですか。
  198. 吉田壽雄

    吉田説明員 ただいま先生からお話のございましたようなそういう点につきましては、詳しいことをまだ東京都の教育委員会あるいは練馬区の教育委員会から伺っておりません。しかしながら、もしそういうことが現実にあるとすれば、できるだけ東京都の教育委員会あるいは練馬区の教育委員会、さらにはまた関係学校の校長、そういうような方々と密接な連携をとりまして御相談いたしまして、文部省としてできる範囲のことをいたしたい、こういう気持ちでいるわけでございます。
  199. 島本虎三

    ○島本委員 加藤参考人、ほんとうに長い間御苦労さんでありますけれども、いまいろいろと生徒のこと、学童のこと等を聞きました。その原因にさかのぼってみまして、注意報の発令基準に達しなかったのにこういうような被害発生したのがだいぶあるようでありまして、そういうような生徒被害者の数が約五百に達しておるようであります。目がちかちか、のどが痛むというようなのが一つの現象のようでありますけれども、先生の先ほどの陳述の中の一つに、原因として複合汚染対策にこれが十分結びついておらないというような発言があったように伺っているのです。そうなると、燃料規制や高速道路の規制、こういうものは当然必要じゃないかというふうにも承りましたが、この辺の考え方はどうなんでございましょうか。私十分聞いておりませんでしたので、この点の解明をひとつお願いをしたいと思うわけであります。
  200. 加藤龍夫

    加藤参考人 現在わかっている範囲の推定で申し上げますが、先ほど複合的ということを申しましたですけれども、これは工場自動車の複合とか、そういう原因がわからない違った原因の複合という意味ではないのでありまして、同じ自動車の中から出た排気ガス、その中にいろいろその時間的経過、そのときの条件によって還元性のもの、酸化性等反応中のものあるいは最終的はものがある、こういう意味の複合でございます。ですから、そういう原因は同じで対策も同じに立てられると考えております。  ただ、その場合に、先ほども空気のまだら状態というのをお見せいたしましたけれども、ああいうような非常に変動の激しい空気の状態というものから考えまして、その初期の段階で反応が終わるものあるいは経過中のもの、あるいは最終的までいくものと、いろいろなものがありますので、オキシダント濃度というものと結びつく場合と、それと結びつかない場合と、こういう場合があってしかるべきであろう、こういうことでございます。  ただ一つ残念なことは、そういういろいろの状況があります現場、現時点で資料の採集を行ないたい、これはもう一年前からそういうふうに考えております。これは汚染質は化学現象でございますから、その化学物質をつかまえさえすればある程度そういうことが一つずつわかっていくと思うのですけれども、現に行くこと自体が交通が一ぱいで、あるいは情報がなかなかこなかったりしまして手おくれになっております。そういうことで、現場に行きますとこういうことがわかると思いますけれども、そういう点が確かめられておらないのは残念であります。ですから、いまあるような毎日の変化その他から推定いたしまして、いまのようないろいろな段階のものがある。こういうように考えておるわけであります。
  201. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。  それで、先ほど岩本参考人からの貴重な御意見の発表がいろいろございました中で、南東微風に乗る場合が一番多いということを聞かされました。それで、川崎方面から来る煙による、こういうような点も直接感じられておるようでありますが、矢島重工業局長、そういうような場合、あなたたちはこういうような川崎に対しましてどういう方法をとるように考えておりますか。いまのように野放しでかってにやらしておきますか、それとも、今後、南東微風に乗ってくるこういうような障害——南東微風の際に一番障害が起きる、その流れてくる道筋は川崎方面であるということになりますと、これはやはり重大じゃないかと思います。重化学工業、やれやれ、それやれと大いに生産をあげながら、片一方にオキシダント発生させて、そして無事の児童や国民を痛めつけていくようなやり方は、行政として下の下でありますから、こういうようなことはやるべきじゃありません。重工業局長としての所見をこの際はっきり伺っておきたいと思います。
  202. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど岩本参考人の話を非常に参考になると思って伺っておったわけでございますが、川崎地帯には重化学工業がいろいろありますですが 先生御案内のとおりに、HCに関してはこれは大部分自動車関係ですけれども、問題は酸化窒素の関係だろうと思います。しかし、酸化窒素は見方によっていろいろございますし、私どももまだ正確に調査したその結果を聞いているわけではございませんが、発生量からいうと、固定発生源工場のものが相当あるんじゃなかろうかと思います。そういう意味において、工場の酸化窒素対策というものを、規制の面でも、それから排気量減少の面でも進めなきゃならぬと考えている次第でございますが、他方、自動車につきましては、不十分ながら酸化窒素対策というものはすでに進められているわけでございまして、これは結局いつできるかということだろうと思います。まあ運輸審議会の答申ベースというのは一応目標として達成できると思いますが、さらにそれ以上のものがいつできるかわかりませんが、工場のほうは非常におくれておりまして、まあ俗なことばで言えば、たとえば製鉄工場なんかにつきましては、率直に申し上げまして、対策がほとんど緒についていないということでございますので、こういう方面の研究をこれから至急にやっていかなきゃならぬと思います。  さらには立地面からもいろいろ考えなきゃならぬということでございまして、川崎の日本鋼管等につきましては、これは御案内のように、扇島移転問題その他でもって立地面のある程度の調整というのが行なわれますし、それによって工場のレイアウトその他も変わりますので、その観点からの改善というものもある程度期待できると思いますけれども、それだけでは不十分だろうと思います。  いずれにしても、工場面は遺憾ながら緒についていない。現在は、俗なことばで言えば、お手あげの状況であるということも言えるのではなかろうかと思いますが、それでは非常にまずいので、何らかの対策を進めなきゃならぬと思っておる次第でございます。
  203. 島本虎三

    ○島本委員 あなたも以前は通産省の公害部長であったのです。公害部長がいまや輝ける重工業局長になって、対策が全然立っていないとしたら、あなたの以前の対策を全部自分で否定するようなことになっちゃうじゃありませんか。これは通産省としてもいまの行き方じゃだめですよ。  したがって、いま製鉄工場関係は緒についていないということはわかりました。それから規制面でもこれからだということはわかりました。いつまでにやるつもりですか。
  204. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 私はほんとうに率直に申し上げたものですから、不十分だったと思いますけれども、実際問題として、先ほど申し上げたのが実情でございますが……。
  205. 島本虎三

    ○島本委員 やらないのか。
  206. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 やるわけです。そこで、やるわけでございますので……
  207. 島本虎三

    ○島本委員 いつまでに。一年か。
  208. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 いや、これは、そういうふうな、何年とかいうことはいま申し上げられませんけれども、やらなきゃならぬと思っておる次第でございます。率直なことを申し上げておる次第でございますので、はなただ恐縮でございますが、いつまでにという正確な年限を申し上げられませんけれども、やらなければならぬと深く思っている次第でございます。
  209. 島本虎三

    ○島本委員 久良知局長は、いま聞いたようなあんばいですけれども、あなたはその通産省における公害保安の立場を今度ははっきり自分で責任を持ってやらなければならない局長になっておりますが、これは重化学工業、ことに製鉄関係は全然やっておらない。それから、規制面においては、必要あるが、いまのところでは全然計画は立たない。一体これで通産省の計画はどうなっているのですか。
  210. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 この酸化窒素と申しますか、NOxの規制というものは、ただいま重工業局長からお話がございました、非常にむずかしい面があるわけでございます。そう申しますのは、排出の態様からいたしますと、硫黄の酸化物、SOと似たところがあるわけでございます。SO2につきましては、燃料中の硫黄分を下げる、あるいはSO2として出てきましたものを乾式あるいは湿式の排煙脱硫の装置を通すことによって、公害の汚濁源となるものを回収するということが可能な技術に達しておるわけでございますが、窒素酸化物につきましては、これはこの排出物の中に出てくる濃度がおもにその炉の中の温度によって支配をされるという面が多いということ、それから、硫黄のようにまだ脱硝技術というものが確立されていないというところにむずかしさがあるわけでございます。特に、先ほど重工業局長からお話がございましたように、炉の中の温度によって支配されるということから、製鉄におきましては非常にその点でむずかしさがあるわけでございますが、ボイラーその他につきましては、やはり燃焼温度を下げる、あるいは二回燃焼さしたり、それから冷却させるために空気をあとで加えるというふうな方法も実際のボイラーについて研究が進んでおるわけでございますので、私どもといたしましても、脱硝技術その他燃焼技術研究開発ということにはかなり力を入れておるわけでございます。産業界のそういう実情と同時に、やはり窒素酸化物に対する排出基準、環境基準というものについては、新しく設定をし、ないしは強化をするということも並行して進められるわけでございますので、技術の進歩を中心といたしまして、それに合わせて間に合うように実現をしていくということに重ねて努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  211. 島本虎三

    ○島本委員 努力はこれからですか。いままではもうすでに技術も十分発達しているじゃありませんか。世界で第二位のGNPを示しているようなこの実情の中に、これから考えるということが、これが公害保安局長の言だということは、ちょっといただけない。これから考えて、いままでの人はどうなるのですか。どうも皆さんの場合そういう考え方、無過失賠償責任法案をとっても、これから排出するものに適用するようなこういうような考え方で出してきたりして、どうも国民不在のような行政を皆さん自身考えて実行しようとする。これは公害の場合は手おくれだ。もうこれははっきり通産省てはわかった。それにしても——まだあるのですよ。まだあるけれども、あとへとっておく。  先ほど、もうほんとうに忙しい中を来てくださいました加藤参考人のほうで、これは燃料の規制と高速道路のこういうような規制も考えないといけないのじゃないかということが言外にございました。そういうような状態だとすると、燃料の規制あたりはもう以前から十分考えるようにこの委員会でも各委員から強力な発言があったはずでありますけれども、これは、運輸省の自動車局車両課長も来ておりますし、また通産省の重工業局の自動車課長も来ておりますが、こういうような燃料について十分考えて、どのような指導をいままでしてきたのですか。いままでいろいろ皆さんの質問もあったことだと思いますが、参考人意見等も聞いたことだと思いますが、こういうようなことを十分いままでやってまいりましたか。またこれからどうしようと思っておりますか。この両方からの御意見を賜わりたいと思います。
  212. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 先ほど私のお答え申し上げた中で、若干舌足らずの点があったかと思いますが、窒素酸化物につきましては、これはかなり前から真剣に解明につとめてまいっておりまして、先ほど申し上げましたように、ボイラーその他についての燃焼温度関係については一応解明はされておるわけでございますが、やはり規制をいたしますためには、すでにあるボイラーはどうするかという問題が非常に大きな分野としてあるわけでございますし、私ども規制の強化につきまして、実際に産業を指導いたしまして、その規制に合うように努力をさせておりますが、実際面にわたりましては、やはり先ほど重工業局長、それから私から申し上げましたように、いろいろ実施にあたって困難な点があるわけでございまして、それを押して規制の実現につとめておるという点については御了解を願いたいと思います。
  213. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  先ほど加藤先生のおっしゃいました燃料規制という意味がどういう意味であるか、私もなかなかちょっと了解しにくいところでございますが、先ほども先生の御質問のときに御説明申し上げましたとおり、特に自動車燃料というのは、自動車エンジンのほうからくるスペックできまるという性格もございますので、いま鉛抜きの結果、先ほどから芳香族がふえておるということがしばしばお話にありましたけれども、加藤先生の御説明でも、減少はしてない——ふえているとはおっしゃってなかったわけです。私も先ほど御説明しましたとおり、芳香族は、まあフラクチュエートはしておりますけれども、ふえてはおりません。ただそのかわりオクタン価が下がってきております。たとえば、ハイオクであれば、鉛抜きの以前においては百オクタン価以上のものがあったわけでありますが、いまや九十七、将来は九十五まで落としても自動車は動けるという保証がございますので、われわれは九十五まで鉛を抜いて落としていきます。そのかわり、大幅にそういう芳香族あるいはオレフィン等をふやしてカバーするというようなことはいたしませんというふうなことでまいっておるわけでございます。ですから、むしろ自動車エンジンの改造という問題は将来相当長期間必要とする問題でございますけれども、先ほど御説明したように、排気ガス対策というのは、まず排ガスの処理装置をつけて処理するというのが第一段階でございます。その排気ガス処理装置につきましては、先ほど運輸省からも御説明がありましたように、いろいろございますが、大体金属系の触媒を使った装置でございますが、これはどうしても鉛が入っていては性能が落ちてしまう。実際の実験例でございましても、大体一CCぐらい入っておるガソリンを使って排ガス処理装置を使いますと、二カ月ぐらいで一〇〇%から一〇%程度に落ちてしまうという実験もございます。ですから、鉛がどんどん減っていく、あるいはゼロになるという状態になりますれば、相当な効果が発揮できるし、あるいは四十九年の四月から鉛を抜くわけでございますが、そのころには、先ほどの御説明にもありましたように、研究開発の進歩も相当あると思いますし、われわれとしては、第一段の対応としては、そこで対応すべきではないかというふうに考えております。それから第二段としましては、エンジンの改造その他があった、あるいはないという問題は別としまして、やはり大気汚染の問題からいって芳香族をある程度押えるべきであるという考え方がはっきりするならば、これは土井先生の御質問にもお答えしたわけでございますが、それに対応するくふうをしなければならないだろうと思います。事実、これはアメリカのカリフォルニアの考え方を、石油業界も入れましていろいろのくふうはしているわけでございます。これは、先ほども御説明したガソリンの組成、ガソリンというものは何であるかということからいいまして、非常にむずかしい問題でございます。しかし、努力しなければならぬということは考えておるわけでございます。  非常に長くなりましたけれども……。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 貴重な御意見の陳述でございましたが、加藤参考人のほうからも、このアクロレインの物質について、エンジンの爆発行程で出るんだ、こういうふうな御意見の開陳が先ほどあったわけです。それといろいろな状態とが結びついて起きますけれども、こういうような場合には、エンジンの爆発行程で出るのだとすると、それらのいろいろな状態について、いまの貴重な意見を参考にしてアクロレインについては特に工業技術院でも考えるべきじゃないのか。いままで全然これに手をつけていなかったのかどうか。いまこういうようにして貴重な加藤参考人からの御意見の開陳がございましたけれども、これからこの問題の処理をするのか、いままでこれがわからなかったのかどうか、この点に対してひとつ意見をお聞かせ願いたいと思います。
  215. 木下亨

    ○木下説明員 お答え申し上げます。  工業技術院では、こういった、特にアクロレインについてでございますけれども、分析の方法につきましてかなり研究を進めております。ただ、これを減らす方法という面につきましては、まだこれからの研究でございます。
  216. 島本虎三

    ○島本委員 これでは工業技術院もなかなかおそいようであります。  なお、加藤参考人もだいぶお疲れになっただろうと思いますが、国会は得てしてこういうようなことなんでございまして、皆さんも疲れてもこの実態をよくひとつ認識くださいまして、おくれているこの事態をもう少し鞭撻してやってほしいと思うのです。やはりこういうような猛毒がエンジンの爆発行程で出るんだということ、また、こういうようなことが一つの被害の原動力にもなっているということがわかったのですが、まだこの研究さえも十分行なわれておらないようであります。まことに私は残念なのでありますが、政府に対して何か加藤参考人から言うことございませんか。なければいいのですが……。
  217. 加藤龍夫

    加藤参考人 特にそういう御質問でありますので、一言意見を申し上げます。  先ほど校長先生もおっしゃったようなことになりますが、私自身、光化学スモッグあるいは全般に大気汚染の問題を長くやってまいりまして、こういうところに出てきていろいろしゃべらされることもあまりないかと思いますので、一言申し上げたいと思います。  私、大学で研究をやっておりますけれども、私のところで一緒に働いているというのは研究生でございます。みんな夜昼、寝食を忘れて研究しております。そして、そういうことでやった結果を——一番最初立正学園で起こったときに、私、富山におりましたけれども、直ちに資料をとって帰りまして分析をいたしました。たいへん芳香族がたくさんある。まだ数回とっただけではわからないけれども、これが新しい原因になっているのじゃないか、こういう意見を、これはたしか八月三十一日だと思いますけれども、光化学スモック対策という学識経験者の集まりということでやりましたとき述べました。そのときに、ああそうかということで、全然取り上げられなかったのであります。その中のある一人の委員は、わざわざ同じところに行ってとったって何の意味もない、こういう発言をいたしました。そういうような姿勢であればこれはたいへんむずかしい問題がなかなか解決しないだろうということで、私はすごすご富山へ帰ったということがございます。そのことがずっと続いておると思うのです。これは私一人のことでなくて、そういう研究をしている方がもう少しあると思うのですけれども、みな同じような感じを抱いているのじゃないかというように思います。  先ほど申しましたように、体制とか反体制とか、そういうことは私は全然意見もございませんし、何もございませんけれども、実際に働いているところの、そしてそういうところから出てきたものを取り上げていただかないと、やはりこれからの公害対策ができないということと、原因がわからないということと、一つの同じ原因から来ているのじないかというふうにちょっと感ずるわけです。私一人ならよろしいのですけれども、やはり数人の若い者が苦労してやっているものですから、せっかくこういう機会に出てきましたので、一言そのことを申し述べたい、こういうように思ったわけであります。  その後、現在でもそうでございますけれども、去年の九月、アクロレインがあるので——アクロレインが全部ということは一つも申しておりません。わかったものの一つということで私どもは報告いたしました。そうしましたら、これもやはりある責任のある人でございますけれども、アクロレインなんてあるのはあたりまえだ、神奈川県のようないなかでそれを見つけたのは、いなかにしてはなかなかよくやった、こういうことを言われました。各省の間で協力しろとか、研究を進めなければならぬとか、手を打っているとか言っておりますけれども、一つもそれ以後私に相談も何もありませんでした。そして今回そういうオキシダントがなくても起こるということがあったものですから、たまたま去年のことを引き合いに出されたということで、そういう原因で私ここに引っ張り出されたというふうに解釈しておりますけれども、実は真剣に公害という未知のものを開発していくという姿勢——姿勢があるのかどうか知りませんけれども、実行の手がないのじゃないか。私も現在十万円のポンコツの車でもって資料をとって歩いております。大阪の高石地区にも行きましたし、四日市にも行きました。少しでもそういう工場であるか自動車であるかということで手がかりがあるようなところをつとめてとるというようなことでやっておりますけれども、実情としてそういうことがございます。これは、原因追及が進まないということと、それから対策が打てないことと根は同じじゃないかというような気がいたしますので、ちょっと——となたにとうということではございません。ただ、私はこういうことを年来の仕事としてやっておりますからかまいませんけれども、私についてきてやっている、きょうは徹夜で行けと言えば、言うことを聞いて行くという数人の若い者の努力が埋もれてしまうというようなことは情けないものですから、ちょっとこういうことを申し上げました。どうぞよろしくお願いいたします。
  218. 岩本経丸

    岩本参考人 ちょっと体験談を一つ。実はベンチに四人、テニスコートに四人、生徒が、九月の某旦二時半ごろ、出てけいこをしておりましたときに、私が校舎のバルコニーを歩いておりますと、四人の生徒のうち、すっと一人がしゃがみました。そうして、ごほんごほんと、せきをし出しました。そうすると、あと生徒がはっと足をとめてしゃがんだり、不安げにやっております。そうしてから、ベンチのほうへ行こうよとかなんとか言ってベンチのほうへ行きます。それで私はおかしいと思って、どうしたのだ、どうしたのだと言ったら、先生、変なんですと言う。それだったら、そんな風の吹きだまるそっちのほうへ行くんじゃない、逆だ、保健室、保健室と言って連れていきまして、見ましたところが、目がまっかになっておりまして、そうして相当呼吸が強くなっておりました。そのときは保健所にも届けません。それから寝かせまして、うがいをさせたり、校医さんのところへとにかく電話をさせたのですが、往診に出てしまっておらないということなんで、それから三十分ほど右往左往いたしましたが、いいあんばいにすぐなおりました。そのときの被害状況を見てみると、ほんの五秒か十秒の間のさっとしたできごとですね。これが大きいと、相当大きな衡撃を被害者には与えるものだ。ですから、光化学スモッグ被害にぽんとあったときには、かっと息が詰まってくる、目がちかちかと痛くなってくる、涙が出てくる、一どきに来ますから、その驚きで精神的なショックも大きいと思います。そういう起こった瞬間を見ております体験を一つ申し上げます。  それから風向きのこと、風速のことについては、清浦雷作という東京工大の教授がおられます。この方が硫酸ミストの説を出されましたし、私のほうの短大の屋上で三カ月間ほど連続粉じんの採集検査をされました。二十四時間粉じんを採集いたしますと、空気をろ過してそのろ過紙の上へたまるのですが、ねっとりとした、まっ黒なポマードのようなものが一面にべっとりつくわけですね。それは、見ますと、りつ然とするようなものです。それが、相当きれいだと思っている杉並の空で、二十四時間たつとそれだけのものが採集できるということでございます。それで、先ほど伺いますと、工業地帯にはまだ手がついておらない。そこで私は、そういう実情ならばと思って、りつ然としておるわけです。どうぞひとつ被害者に対する肉体上、精神上のショック——心因性というとすぐばかにするようですけれども、心因性が起るほどの被害があると考えていただけば、十分これを警戒していかなければならないし、この実際がわかるのは被害者だけであって、そして、一過性ということばも先ほどございましたが、一過性であるがゆえに、あとから見たのではわからない。それで、これは神経じゃないかというような取り扱いもされるわけです。被害者がかわいそうです。どうぞひとつ被害の実況について、これからそういう被害がとにかく起こりましたら、直ちに人をやるなり、お忙しい高官の方はなかなか行かれないでしょうけれども、十分現場をその直接の局の方、部の方、課の方によって見ていただきたいと思います。文部省からは国崎保健課長さんでございましたか、おいでいただきまして実情をよく見ていただきました。ありがとうございました。  それだけ申し上げます。
  219. 島本虎三

    ○島本委員 申しわけございませんが、その後先生のほうの学校では光化学スモッグによるところの被害発生しておられますか。
  220. 岩本経丸

    岩本参考人 いわゆる被害というようなものは、さっき申しましたテニスコートにおった者でございますね。  それから、私のところは、二日目から、先ほど申し上げましたように吹き流しを立てておりまして、吹き流しの下が棒と三十五度くらいのところでふわふわしているときが一番危険、それから今度は西北のほうにしっぽが流れておったらすっかり警戒、だから、注意報が出なくても私のほうは警戒をしております。それから東南の風でも、ほとんど七十度から八十度くらいでばたばたやったりしているときはもう安心です。そのときは、第二運動場と申しまして、南側に広い校地がございますが、そこに出ます。それから空が曇って——曇るというのは、スモッグがひどくなると、曇り空と変わらなくなります、東南の風のときのスモッグは。そういう全体のスモッグの状況を見通す屋上というのは都内になかなかございませんね。私のほうの学校は絶好の観察地でありますので、御紹介しておきます。そういうふうな警戒で、吹き流しはもう私のほうの学校教育上の大事なものとしてやっておりますが、それである程度防げております。おかしいというようなことがあっても、生徒はちゃんと心得て目を洗ったり適当にして、おかしいとなると引き揚げてしまいまして、体育館が地下にもありますし二階にもありますので、おかしいときは必ず体育館でやる、そうして南側の窓は締めて、北側をあけて体育館を使う、いろいろな配慮をして、どうやら私のほうはその後、たとえばすぐ隣りの和田中学校とか東田小学校とかいうところには何べんか被害が起こっておりますが、幸いに私のほうはそういうふうな被害は、届け出るような、あるいは校医さんのところにかけつけようというのが一回あっただけで、おかしいということはございますが、あとはございません。
  221. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような情勢でありますけれども、環境庁はまずこういうような情勢を一番的確に把握して指導しなければならない官庁であります。いま自然環境保全法案をおそまきながら出してくるようであります。最後になって出してくるわけですから、私たちは、熱心だというふうに理解していいのか、これはどうでもいいというふうにして出してきているのかわかりませんけれども、樹木を痛めるような現象、これは都内のいわゆる光化学スモッグによって、亜硫酸ガスだとか、こういうようなものによって相当影響があるものである。あと五十年もたったならば東京都内の樹木も危いではないか、こうさえいわれているのですが、どうもこの点に対する対策が十分でないままに自然環境保全法案を出してくるということは、これはどうも画竜点睛を欠くのではないかと思うのです。こういうような対策をまずやって、そして同時にこういうような法律を出してくるならいい。野放しにしておいてこういうような自然環境保全法案を考え出してくるということは、何だかこれはちぐはぐなような感じがするのです。光化学スモッグに対しては樹木は弱いものである、こういうような報道をされております。その組織上からしても、細胞やいろいろな作用の面からしても、十分栄養もとれないし、それによって枯れてしまうのだ、こういうことのようであります。そういうような状態にしておいて自然保護法もないだろうこういうふうに思うわけですが、一体こういうものの対策環境庁はどういうように考えているのですか。工業技術院ではまだそこまでいっておらない、運輸省のほうではまだその辺まで手がついていない、通産省に至ってはまだ重化学工業中心である、しかし、被害は遠慮なしに起きている、こういうような状態であります。ほんとうに自然環境保全をするというならば、この辺を先にちゃんと規制して、そしてこういうような法律を出すのがほんとうじゃないですか。このほうは野放しにしておいて、何の自然環境保全法ですか。これはひとつ船後企画調整局長の御高見を賜わります。
  222. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 お答えいたします。  たしか、大都市の樹木が排気ガスその他によりまして被害を受けているというのは事実でございます。これに対する対策といたしましては、もうすでに先生御存じのような、まず基本的には、自動車関係排気ガス対策、あるいは工場地帯全域におきましては各種燃料によって生ずる排気ガス対策、こういうものが必要であるわけでございまして、そのような方向でまずこれは市街地の緑の問題を考えているわけでございます。自然環境保全法案は、市街地は対象としていない、日本の昔からの美しい自然を美しい状態で保っていこうという法律でございまして、決して内容的にはお互いに矛盾はしていないと考えております。
  223. 島本虎三

    ○島本委員 市街地は木を枯らしてもいいのですか。
  224. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 ちょっと御質問の趣旨がわからなかったのですが……。
  225. 島本虎三

    ○島本委員 自然環境保全法と趣旨は相反しておらない、市街地のほうをこれに入れてないのだ、こういうような答弁でありますから、それならば、自然環境保全ということは、市街地の樹木はみな枯らしてもいいというような意味ですか。
  226. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 お答え申し上げます。  決してそういう趣旨ではございません。もちろん、市街地におきましても、緑を十分に保持するという必要はあるかと考えておるわけでございますが、自然環境保全法の対象としております地域が、たとえば大都市の中にある街路にある樹木とか、そういうものは対象としておらないということをお答え申し上げたわけでございます。
  227. 島本虎三

    ○島本委員 参考人にはまことに申しわけありませんが、実態はこうですから、皆さんの貴重な意見を今後どんどん賜わって、そしてともすれば渋滞しがちな行政府を大いに督励してやってもらいたい。皆さんの意見はまことに貴重であります。そして、こういうような機会は再々あればいいのでありますけれども、これはおそらくまれな機会でございます。まれな機会に遭遇して皆さんは貴重な意見をきょうは行政府にも聞いてもらったわけであります。この対策上これは大いに益するところ大なるものがある、こう私は確信しております。  なお、皆さんも、この光化学スモッグをはじめ公害防除のためにも十分考えて、専門のそれぞれの研究なり対策なりを今後大いに進めて、われわれもあわせて督励をしてもらいたい。この点は心からお願いする次第でありますけれども、私としても、行政府のほうにまだまだちょっと足りないので、残ったところを全部一つ一つ総点検したいのでありますけれども、委員長意見もあるから、いま漏れた人はこの次に必ずやることにして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  228. 田中武夫

    田中委員長 本日の質疑はこの程度にとどめます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多忙中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  御苦労さんでございました。  次回は、明八日木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会