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1972-05-25 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十五日(木曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 始関 伊平君 理事 八田 貞義君    理事 林  義郎君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君    理事 西田 八郎君       伊東 正義君    梶山 静六君       小島 徹三君    村田敬次郎君       阿部未喜男君    土井たか子君       古寺  宏君    浦井  洋君       米原  昶君  出席政府委員         環境政務次官  小澤 太郎君         環境庁長官官房         審議官     鷲巣 英策君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君  委員外出席者         参  考  人         (金沢大学教         授)      武内重五郎君         参  考  人         (金沢大学教         授)      石崎 有信君         参  考  人         (財団法人日本         公衆衛生協会カ         ドミウム研究会         会長)     重松 逸造君         参  考  人         (富山県立中央         病院院長)  村田  勇君         参  考  人         (萩野病院院         長)      萩野  昇君         参  考  人         (生野汚染地         域住民代表)  駒留喜代松君         参  考  人         (神戸大学教         授)      喜田村正次君         参  考  人         (三菱金属鉱業         株式会社取締役         総務部長)   木村  猛君     ————————————— 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   米原  昶君     浦井  洋君 同日 辞任          補欠選任   浦井  洋君     米原  昶君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(カドミウ ム汚染人体への影響問題)      ————◇—————
  2. 田中武夫

    田中委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特にカドミウム汚染人体への影響について調査を進めます。  本日は、参考人として、金沢大学教授武内重五郎君、金沢大学教授石崎有信君、財団法人日本公衆衛生協会カドミウム研究会会長重松逸造君、富山県立中央病院院長村田勇君、萩野病院院長萩野昇君、生野汚染地域住民代表駒留喜代松君、三菱金属鉱業株式会社取締役総務部長木村猛君、以上の方々が御出席になっております。また、後ほど神戸大学教授喜田村正次君が御出席になります。  この際、参考人各位委員会を代表いたしまして、委員長から一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本委員会におきましては、ただいまカドミウム汚染人体への影響について調査をいたしておりますが、申すまでもなく、重金属特にカドミウム汚染につきましては、富山神通川流域におけるイタイイタイ病をはじめとして、近くは兵庫生野地区汚染問題など、人の健康に重大な被害を生じ、また各地においては、カドミウムによる土壌汚染によって農産物の被害が起こり、住民日常生活に不安を与えるに至りました。  本委員会といたしましても、同問題の重要性にかんがみ、従来より論議を続け施策を行なってまいりましたが、本日は、わが国におけるカドミウム研究の権威である皆さんをはじめとして、参考人各位から貴重な御意見を承り、もって、本問題の対策樹立のため万全を期する所存であります。つきましては、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、本会議等の都合により、きわめて時間が制約されておりますので、恐縮ながら御意見の開陳はおのおの十分以内としていただきまして、あと委員の質疑にお答えいただくようお願い申し上げます。また、特に御発言のない方は省略していただいてけっこうでございます。よろしくお願いします。  それでは武内参考人からお願いいたします。武内参考人
  3. 武内重五郎

    武内参考人 御紹介いただきました金沢大学武内でございます。カドミウム人体に及ぼす影響について、私がいままで調べてきたことについて、ごく簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。  昭和四十年に金沢大学医学部に四人のイタイイタイ病患者さんが入院されました。その方たち金沢大学医学部で詳細にいろいろ検査をいたしました。そのときわかったことは、このイタイイタイ病患者さんが骨の病気のほかにじん臓の、特に尿細管と呼ばれる部分の機能的にあるいは組織学的に変化を持っている、こういうことでございました。その検査成績をもとにいたしまして、当時、私も含めましてその研究班は、イタイイタイ病という病気カドミウム人体にある程度以上蓄積してじん臓尿細管というところの障害を来たし、そしてそれにさらに栄養不足あるいは妊娠等々のいろいろな要因がそこに加わって、そして骨軟化症というものを来たした状態考えたらどうだろうか、こういうような見解を述べたのでございます。ところがその後いろいろ研究が進んでおりますうちに、このイタイイタイ病患者さんが治療の過程におきましてビタミンDを非常に大量に使っておるということが明らかになりました。ところがこのビタミンDというのがかなり大量、長期に使われますと、それ自体じん臓障害を来たしますので、私たちイタイイタイ病病気の本体を明らかにするのにはこのビタミンD治療なんかを受ける以前の、具体的に言いますと、昭和三十年ごろの患者さんについて、いろいろ調べ直してみる必要があるということに気がつきました。そこで昭和三十年ごろに入院され、そして詳しい検査が行なわれておる方たち記録についていろいろ検討し直してみましたところ、その時期の患者さんは骨の変化は非常に強いのにかかわらずじん臓障害がきわめて軽い。ほとんど問題にならない方がかなり多いということに気がつきました。そこで、それまでに抱いてきた、カドミウムがまずじん臓障害を起こし、それにいろいろの栄養不足等々が加わって骨軟化症という病気を来たす、こういう考えは根本的に再検討してみる必要があるのではないか、こういうことに気がついたのでございます。  そこで考えてみますと、骨軟化症という病気は、一つにはビタミンD不足があった場合に起こるもの、それからもう一つは、いま言いましたじん臓障害があって起こるグループと、それからもう一つは副甲状腺という臓器がございますが、そこに障害があって起こるもの、それからまだ現在原因のわからないもの、こういうふうに分かれるのでございます。いま言いましたように、イタイイタイ病という病気を、まずじん臓障害が起こって骨軟化症が起きたという考えがどうも成り立ちにくいとなりますと、あと残るもののうちで副甲状腺という臓器の異常、これはこの病気の場合全然問題にならないということがもうすでに明らかになっておりますので、必然的にビタミンD不足からだに起こったのではないかと考えざるを得ないということになったのでございます。  そこで振り返ってみますと、イタイイタイ病患者さんはビタミンDで著しくよくなる、あるいは骨が完全になおっておる、こういうふうなことが従来の経験で明らかにされております。そこで、ビタミンD体内における不足というものが、イタイイタイ病原因考える場合に非常に重大な要素ではないかという考えに立ち至ったのでございます。  時間の関係でその問題についてはこの程度にいたしますが、それで私の考えイタイイタイ病という病気が、まずビタミンD不足からだの中に起こった。それはビタミンD治療によって骨が非常によくなり、あるいはほとんど全治と言ってもいいような状態になった方もいらっしゃるのでございますが、その後ビタミンDが非常に大量かつ長期に使われたので、骨はよくなっていったけれども、その後じん臓障害のほうがだんだんと明らかになっていったのではないか。現在私どもが見ている患者さんの、特に昭和四十年に検査した患者さんのじん臓障害というものはそういうふうに考えたほうがむしろよく理解できるのではないだろうか、こういうように考えたのでございます。  問題はなぜイタイイタイ病患者さんのからだビタミンD不足という状態が引き起こったのか、こういうことでございます。これは昭和三十年ごろまでのいろいろの栄養の摂取の状態、その他詳しい検査が必要でございますけれども、これにつきましては残念ながら当時詳しい調査が行なわれないままに打ち切られております。でありますから、そういうことについてもう一度私たち資料を十分に持ち寄り、そしていろいろないままでに得られた資料を根本的に再検討してみることが、カドミウムという重金属人体に及ぼす影響を明らかにする上にきわめて大切なことである。今後の対策を立てる上にも必要欠くべからざる手段ではないか、このように考えておるのでございます。  以上で一応終わります。
  4. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、石崎参考人にお願いいたします。石崎参考人
  5. 石崎有信

    石崎参考人 金沢大学石崎でございます。  カドミウム人体に対する影響につきましては、いろいろの形の聖母がございます。カドミウム人体ないしは哺乳動物にとって必要な物質かどうかということについては、まだ完全な結論は得られておりませんが、まずいまのところ、なくて済む物質である、少なくともある量以上を越せば有害な作用を及ぼすということはわかっております。  そこで、現実に問題になります聖母は、工場におけるカドミウムを取り扱う従業員方々に見られておる中毒でございますが、しかし公害として問題になってきましたのは、ことに日本で問題になりましたのは、富山県に多発しましたイタイイタイ病が、その原因カドミウムであろうという学説が、昭和三十六、七年ころから、萩野、小林、吉岡といった方々によって言い出された時期からでございます。  そこで、その後私ども大学人間中心にしまして研究委員会が編成されまして、いろいろと研究が進められました結果が、このイタイイタイ病原因の一番おもなものはカドミウムであろうという結論に到達したことは、先ほど武内先生のおっしゃったとおりでございます。  その理由は、第一に、イタイイタイ病の発生した地区が、神通川の水を使う地帯に限るということであります。地理的な限局性が非常にはっきりしている。その発生した地域には、水田土壌の中にカドミウム汚染が認められる。それからまた、米の中にカドミウム汚染が認められる。しかも、そういった環境汚染程度の高い部落ほど発生率が高いということが見つかりました。この疫学的な見地が重要な根拠となったわけであります。  そのほかに、動物実験で、カドミウムによって骨の病変を起こし得るということも立証されたこと、それから患者解剖所見、ことにじん臓所見が、工場におけるカドミウム中毒患者として見られた剖検所見とよく一致する。そのことから、カドミウム原因であろうということが考えられてきたのですが、そのカドミウム人体に対する影響のメカニズムとして、じん臓病変が大きな役割りを演ずるだろうということは、昭和四十年度の住民検診の結果、そのイタイイタイ病の発生しております地区には、病気のあるなしにかかわらず、全然病気のない人でも、尿の異常所見の率が非常に高い、尿にたん白及び糖の出る人の率が高い。しかもそのたん白性質が、これはもう少しあとになってわかった事実でありますが、工場におけるカドミウム中毒に見られております低分子量たん白が、やはりイタイイタイ病患者及びその地区住民に非常に高率に見られる。その上に、その水田土壌汚染しましたカドミウムの出てきた場所が神岡鉱山から流れてきたものと考えざるを得ないということが、厚生省が主催した調査によりまして明らかになりました。その結論が、昭和四十三年に厚生省イタイイタイ病公害病の第一号と認定した原動力となった次第でございます。  この公害病として認定されました後に得られました知見では、一番重要なのは、それまでは患者さんの体内にはたしてカドミウムがたくさん異常に蓄積しているかどうかということについてはっきりした根拠はなかったのでございますが、私どもの分析しました結果、解剖に付せられた人たちの内臓に異常な、正常人に比較してははるかに高いカドミウム蓄積があるということがわかりました。  それからまた、学問的に非常に論争の種になっておりましたのは、カドミウムというものが微量ずつ体内に入ってもそれは出ていってしまう、からだにたまるということは考えにくいという説が強かったのでございますが、その後の研究の前進によって、人間体内ことにじん臓に一たんカドミウムがくっつきますとなかなか出ていかない。動物実験の結果によりますと、一応入ったカドミウムは一生涯出ていかないというふうに計算される。ですから、ごく微量ずつでもカドミウムをとっておりますと、じん臓に次第に蓄積していくということがわかりました。それがどの程度の量に達すれば有害であるかということについては、まだはっきりした結論を得ておりませんが、一たん入ったら出ていかない——少々は出ますけれども、なかなか出にくいものだということなどが明らかになりました。  もう一つ、はたしてカドミウムイタイイタイ病原因かどうかということに重大な疑義が投げかけられた一つのことは、カドミウム汚染神通川流域だけに限らない、他の地区にも幾らもあるじゃないか、その地区にはイタイイタイ病がちっとも出ていないじゃないかということなんであります。それに対する私の解釈は、それは汚染程度、歴史、それが問題なんだ、あの神通川地区のように長い期間、高度な汚染があったというところはないというふうに解釈すれば簡単に片づくのじゃないか。水俣病の問題の場合のように、第一の水俣病が出てきて初めて片がついたように、第二のイタイイタイ病を待望する、それが出なければ問題が解決しないというような考え方は非常におかしいということを私は思ってまいりました。ところが、その後の調査で石川県の梯川の流域に、骨に変化のある患者さんはおりませんが、少なくとも尿に異常の所見がある、イタイイタイ病と同じ性質所見のある人たちがかなり多い。十分神通川地区と似た率で見つかる。それと兵庫県の市川の流域に、これは私どもがやりました調査はごく少数の調査でありまして、最終的な結論と申し上げることはできませんが、十分カドミウム汚染によって人体影響があらわれていると考え得る、少なくとも考え得る所見を得ている。ある部落の五十歳以上の男女の住民についての尿異常の率は、全く神通川地区の高度に汚染された地区と同程度のものであるということを追加いたしまして、一応終わります。
  6. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、重松参考人にお願いいたします。重松参考人
  7. 重松逸造

    重松参考人 重松でございます。本日、私は日本公衆衛生協会カドミウム研究会会長として意見を述べるようにとのことでございますので、その観点から二、三、特にカドミウム研究会関連した事項を申し上げたいと思います。  このカドミウム研究会と申しますのは、恒常的に存在している研究会ではございませんで、昨年八月に第二回の全国集会を開いたということでございます。これは、公衆衛生協会お世話をしておりますカドミウム関係研究班が幾つもございます。おそらく私も全部覚えきれないくらいなんでございます。昨年度でも七つぐらいあったと思いますが、それぞれの研究班がいろいろな研究成果をあげつつあるわけでございますが、やはりある時点では横の連絡が必要であろうという趣旨が第一。それから、もちろんその公衆衛生協会研究班だけではなしに、いまや全国的にカドミウムに対する関心が高まってまいりまして、大ぜいの研究者研究を進めておられますので、そういう方々にも御参加願って、ひとつその時点までの進歩と問題点を発表し合おうということで昨年開いたわけでございます。それで、実は第一回というのを、やはり公衆衛生協会お世話をいたしまして、四十四年五月に開いております。このときは慢性カドミウム中毒並びにイタイイタイ病に関する医学研究会ということで、特にイタイイタイ病慢性カドミウム中毒という両者の関連を主題に取り上げたわけでございますが、その後の進展で、特にイタイイタイ病関連した研究が進むに従いまして、カドミウム中毒自身知識があまりにも不足しているということで、昨年の研究会の主眼はカドミウム中毒というものをひとつ掘り下げて検討してみてはというのが趣旨で、これは皆さん方にいろいろな御意見を出していただいて研究会を開いたわけであります。したがいまして、昨年の研究会の名称はカドミウム中毒に関する学術研究会ということになっております。  それで、具体的な中身につきましては、すでに研究会記録が出ておりますので、これを見ていただくことにいたしまして、内容的にはいま申し上げましたように、カドミウムに関する基礎的な問題を中心に検討しようということで、四部に分けて研究会を開いたわけでございます。  第一部といいますのはカドミウム環境汚染関連した問題、特にあそこがカドミウム汚染されているとかいないとかいう論議がいままでたびたびあるときに一番問題になりますのは、やはりどういう資料をどういう方法でとって調べたかというサンプリングの問題がございます。その点をここでは中心に討議いたしました。Aの方が調べたら汚染している、Bの方が調べたら違うというのは、ひとえにサンプリング方法が一定していないというところに原因があるわけでございます。そういう点でサンプリング方法というのはいかにあるべきか、どうするのが一番いいかという点を論議いたしました。  それから第二部では、カドミウム吸収排せつ及び蓄積、これもいまの石崎先生のお話とも関連しているのですが、カドミウム人体内に入ってどういうぐあいに吸収され、あるいはからだから出される、あるいはからだ蓄積されるかというこの問題がまださっぱりわかっていないということです。特に蓄積の問題は、一体日本人からだに正常にはどの程度カドミウムがあるものだろうかという、この答えが出ておりません。これを解決する方法は、やはり日本人でなくなられた方の臓器を剖検させていただく、これが一番重要な仕事になるのでございますが、この点が一番抜けているということでございます。ただ、この臓器調べ方も、やはり各人がばらばらにやるのではいけないので、統一したやり方というものをここで提唱したわけでございます。  それから第三部は、カドミウム中毒発現機序、これもいまの石崎先生の御発言にも含まれておったわけでございますが、カドミウム中毒というのは、ほんとうにどの程度とればどういう形で出てくるのかということが、いままでの知識はもっぱら職業性のものだけに限られております。いわゆる一般住民方々汚染地区におられ、汚染したものを摂取した場合に、ほんとうにこういう中毒という症状があらわれるかどうかという点の論議をしたわけでございます。  それから最後イタイイタイ病関連した問題を総括的に討議していただいたわけでございますが、この場合も、イタイイタイ病のいわゆるカドミウムとの関連ということにつきましては、まだ問題点は残しておるにしましても、前回の第一回の研究会で十分に討議をいたしておりますので、昨年度はもっぱらこのイタイイタイ病自身病態生理と申しますか、病気経過というものを明らかにしていこうということで、たとえば本日参考人でおいでの萩野先生からは、イタイイタイ病が発見されたときは一体どんな姿の病気であったかというようなことをやっていただくということで、イタイイタイ病病態生理ということを中心に討議いたしました。  それが昨年度の研究会の全貌でございますが、この研究会を通じまして、結論といたしましては、カドミウム中毒の起こり方、特に吸収排せつ蓄積というのは、先ほど申し上げましたようにまだ資料不足ではございますが、だんだんとわかってまいりました。したがいまして、もう少し、先ほど申し上げましたような、たとえば人体臓器の分析をもっとしっかりやるとか、あるいはこれからはサンプリングのしかたをもっと統一してきちっとやるとか、その辺をやっていけば、この全国的に問題になっておりますカドミウム汚染人体影響の問題というのはもっと明確になるだろうと考えております。特に最後イタイイタイ病のところでいつも問題になりますカドミウムとの関連でございますが、これは私研究会長として、その席でも申し上げたことでございますが、どうも原因ということばを皆さん方がまちまちに解釈しておられる。医学的な原因と申しますのは、ある結果を引き起こすのに、そのものがなければその結果が起こってこない、あったからといって起こるとは限らないもの、たとえば結核という病気原因結核菌でございますが、これは御存じのように結核菌があったからといって、みんな結核になるとは限らない。今日では百人が結核菌を飲み込みましても、せいぜい一人がなるかならぬかという程度でございます。それでも結核菌はりっぱに結核原因でございます。したがいまして、イタイイタイ病カドミウム関係を論じます場合に、イタイイタイ病原因カドミウムとするには、カドミウムがあったからといってイタイイタイ病にならなくてもいいわけでございます。ただしカドミウムがなければ絶対にイタイイタイ病にならないというならば、これはカドミウムをはっきりと原因と言っていいわけでございます。その辺の点が常にこんがらかって論議されておりますので、この研究会の席上でも私、申し上げたことでございますが、この席をかりまして、もう一度医学でいう原因とはこういうものだということだけをつけ加えさせていただきたいと思います。
  8. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、村田参考人にお願いいたします。村田参考人
  9. 村田勇

    村田参考人 富山県立中央病院の副院長村田でございます。  私は、昭和二十九年以来ずっとイタイイタイ病患者の診療、認定に携わり、その間臨床的及び動物実験、いろいろなことにつきまして研究してまいっております。そこできょう武内教授が先に発言されましたことと重複するとぐあいが悪いので、簡単に、患者というものがどういうような経過をたどってきたかというふうなことについてお話ししたいと思います。  私、恐縮でございますが、ここにはっきりした写真を持ってきたのでございますが、この一番右にあるのがイタイイタイ病患者レントゲン写真でございます。これは病理的にもそれから臨床的にも、あらゆる面から検索いたしまして、骨軟化症でございます。三十年代にはこのような臨床像で、こういう患者が非常にたくさん爆発的に発生しております。それが今度骨軟化症に対してはビタミンD治療というのが一番よろしいというふうなことは、これは医学的に現在まで決定しております。そこでビタミンD治療が行なわれたわけでございます。それで大体昭和三十六、七年ごろまでには、このまん中の写真でございますが、このように大体骨の所見はほとんど全部奇形を残して治癒しております。しかしその当時から引き続いてビタミンDというものがかなり長期間にわたって投与されております。これはレントゲンをずっと追及することによって大体把握することができます。それで大体昭和三十七年ごろまでには、イタイイタイ病の骨の所見はほとんどなおっております。ところがその以後、初めは薬であったのですが、それがあまり大量に投与されたために、これがかえって毒になったわけでございます。それから引き続き投与される、患者も飲む、こういったようなことで、昭和四十三年には前のイタイイタイ病と区別ができないようなレントゲン像になってきました。そこでこの二つを比較してみますと、臨床的にもそれから症状、病理的、すべての点においてなかなかこの二つを鑑別することがむずかしいような状態になっております。しかも昭和三十七、八年からイタイイタイ病——痛いというのはイタイイタイ病だという一つのことで、イタイイタイ病でない者もたとえば関節リューマチ、そういうふうな人もビタミンDの投与が行なわれております。そういう人がみな大体このような状態になってきております。私のいま言いたいのはこの腎性に起こってきたものであるかどうかということでございます。この時点においてはじん臓障害はきわめて軽微で、ほとんど骨に変化の来るようなじん臓障害ではありませんでした。ところが昭和三十七年ころには少しじん臓が悪くなってきております。骨を見ますと、むしろ年齢にしてはかえって骨が造骨性といいますか、非常に濃くなってきております。それでもうこの時点においてはビタミンDの投与を普通は中止しなければいけないわけであります。ところがそのまま引き続いてずっといったために新しく医原性の疾患が起こってきたということでございます。この時点においてはじん臓障害は少し悪くなった。しかも四十三年、現在においてはじん臓障害の非常に悪い者がたくさんおるということでございます。そういたしますと最初にイタイイタイ病が発生したときにはじん臓はあまり障害がなかったが、骨は骨軟化症という非常にひどい状態だった。ところが昭和三十七年ころからいろいろ学者の方が患者のいろいろな検索をされました。そのときにはすでにビタミンDがかなり投与されたあとじん臓がかなり悪くなっております。最近に至ってはもっと悪くなっております。そういう点からいいますと、カドミウムからだの中へ吸収されてじん臓障害してイタイイタイ病のこの骨の変化を起こしたということはありません。それでほかの地区でもいまいろいろ問題になっておりますが、骨に変化の来るような強い障害は、じん臓がかなり障害されなければ起こってこないという結論になります。  それともう一つは、かなり多数の人がビタミンDの投与を受けたために、たとえば例をあげますと、昭和四十二年ころには要観察者、これはイタイイタイ病ではありません、こういう方にもかなり大量のビタミンが投与されております。そのためにあたかもイタイイタイ病が起こってきたような錯覚を与えたということでございます。それでしかし私の考えでは、これは医原性の疾患であるけれどもやはりイタイイタイ病に付随して起こってきた疾患ですから、こういう人も救済されなければいけないというふうな見解をとっております。しかしこれはイタイイタイ病としての救済ではなくて、別の医原性疾患としての救済をすべきであろうというふうに考えております。
  10. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、萩野参考人にお願いいたします。萩野参考人
  11. 萩野昇

    萩野参考人 萩野でございます。  実は私、きょうは生野の問題でお話し申し上げると承ってまいりましたが、いままでのお話を承りますと、医原論に対しまして、つまりイタイイタイ病自体に関しての討論のような気がいたします。考えてみますと、この問題は国会のこの場で議論をするとなると、あまりにも時間がない。なお私はこの問題に関しましていまデータを集めております。近く国際学会に発表するという考えでおりますので、その詳細のデータはいずれ皆さんのお目にとまると思っております。しかしこのように問題がいろいろとこじれてまいりますと、たとえば武内教授のただいまの御発言村田先生のただいまの御発言、それに対しまして、石崎教授の御発言、そして重松教授のごりっぱな統括的な御発言、これらを皆さんあとでこの議事録をしっかりお読みいただくと、何を先生方が言っておられるかということがわかってくる。そこでおのずと、一番しんがりをうけました私の発言が、そういうところに触れざるを得ない。しかしそれには与えられた時間が十分間でございますので、あまりにも時間がない。これは特に開かれましたカドミウムイタイイタイ病との学術研究会においてさえ大きな問題になったのでございますから、十分やそこらでお話ししろとおっしゃっても無理でございます。しかし言わざるを得ませんので、ただいまから申し上げたいと思います。  このことについて申し上げますまでには、一体イタイイタイ病というものの経過がどういう状態であったのかということを簡単にお話ししなければいけないと思います。つまり皆さんがいままでの新聞で、雑誌でよく御存じのことでございます。しかし、そのことにいま一度触れないことにはこの結論が出ない。  と申しますのは、私が中国から帰ってまいりましてからこの病気をみた、富山の県立中央病院、市民病院、赤十字病院等へこの患者を送った、そのときにどういう返答が得られたかというと、じん臓がおかされているじゃないか、つまりたん白が出ている、そうして糖が出ているじゃないか、これらはじん臓である、糖尿であるという返事で私のところへ返されてまいりました。この事実が一つございます。その次に、骨に関してはわからないのだ、老人性のものじゃないか、その時点日本医学といたしましては、私当然だろうと思っております。  私はこれらの返答にあきたらないために、母校である金沢大学の宮田教授にこれを連絡いたしまして、宮田教授においでいただいた。宮田教授は、私は病理の教授であり、臨床のことはよくはわからないけれども、私の感じではこれは骨軟化症ではないだろうか、ビタミンDをやってみたらどうかということで、私は宮田教授の御指導のもとでビタミンD——そのときのDは肝油とハリバしかございませんでしたから、こういうものを投与いたしました。相当量投与いたしましたけれども、よくならない。それで宮田教授に御報告をいたしますと、それはビールスじゃないだろうか、そのころはビールスということばはなくてろ過性病原体と言っておりましたが、ではないだろうか。これはむずかしいぞ、動物実験をしてみようじゃないかということで、動物実験もいたしました。しかしカドミウムでございましたから、わからなかった。そうして私たちの暗中模索が続きまして、昭和三十年に至りまして、学者の先生が東京からおいでになって共同研究をしたい、皆さま御記憶あるかもしれませんが、東大の細谷教授に親しく御検査いただきまして、これは細菌性のものじゃないぞ、ビールスじゃないぞという決断を下され、私たちは骨系統疾患である骨軟化症という疑いを持ったのであります。そのときに私は、共同研究いたしました先生と同時に、イタイイタイ病原因ビタミンDの欠乏であるということを主体とした学会発表を行なっております。これは学会発表をお調べになっていただければわかりますが、そのときに本日御同席の村田先生もやはり私と共同研究をいたしました。この事の起こりは、多賀病院長という中央病院院長先生が、おまえはむずかしい病気をおれのところに送っているじゃないか、今度のイタイイタイ病に関してなぜ東京の学者と手を握るのだというおしかりを受けまして、私は先生のところに患者を送っているのだ、おたくの病院じん臓炎である、糖尿病であるという御診断で返されてきている。だから私はそれにあきたらないで、いろいろの学者と共同研究をしたのでございます、と答えますと、それは私の不明であった、それではこれから共同研究をしようというので、ここへ御出席村田先生と共同研究をいたしまして、これまたビタミンDの欠乏であるという共同発表をいたしております。  しかし私は、現地の医者といたしまして、患者とともに苦しみ、ともに喜んでいる現地の第一線の医者が、どう考えてみてもビタミンDの欠乏ではこれは解決できないということで、私は一人で研究いたしました。患者の発生を調べてみると、神通川の一定地区だけである。その地区患者栄養が悪いということは考えられない。戦争中から戦後にかけて食糧を増産しているところの農村、都市の人が食糧を買い出しに来る農村が、豚を飼い、鶏を飼ってビタミンをとっている農村の人が都市の人よりも栄養が悪いということは常識的に考えられない。そうして私は水を調べ、患者体内から出ている糖、たん白等が上流鉱山の亜鉛、鉛と結びついているという因果関係から、鉱毒説を発表したのが三十二年でございます。  ところで、三十年にビタミンD欠乏であると、栄養説を発表いたしましたときに、私はDを使いました。しかし私は鉱毒説の発表とともに、何かがあるんだ、鉱毒があるんだ、そうすると自然とDの使用ということに関心が薄らいできました。三十五年、六年になりますと、すでに御存じの小林教授の御指導を得、吉岡農学博士の御協力を得て、私たちはここにカドミウム説を発表いたしました。  そのときに私は、鉱山から金を取ろうとする悪徳医師、根拠がないのにでっち上げるいなかの医者だという悪名を受けたのでございますが、私たちは白紙の立場で研究し、白紙の立場で積み上げたこのデータがどうして日本医学界では認められないのだろうか、しようがない、アメリカへ発表しようということで、アメリカから研究費をいただいたのでございます。私たちはアメリカから研究費がいただけるとは、こういうことはつゆだに思いませんでした。そうしてそれが動機となって、いままで冷たかった学界の風、世間の風向きがあたたかく変わってまいりました。日本の国内でもそんならカドミウムに手をつけてみようじゃないかという学者がふえてまいりました。そしてついに四十三年には、イタイイタイ病原因カドミウムなのだ、それを流すのは上流の神岡鉱山が主体であるという厚生省結論が出たのでございます。  さてこれからが問題でございます。そんなら、同じカドミウムにおかされている他の地区になぜイタイイタイ病が出ないのか、この件につきましては、先ほど重松先生がすでに明快な御回答を与えておられます。その鉱山のキャリア、その住民の習慣、神通川地区のように神の通る川として、神通川の水を飲んでいるような地区がほかにあるのか、信仰に似た気持ちで、ああ神通川の水はうまいと彼女たちは言っております。しかもその地区には、女性のみならず男性もカドミウムにおかされている。これらのことは疫学的なことでございますから、疫学の専門の先生でないとわからない。疫学の専門と申しますと、きょう御出席石崎教授、重松教授は疫学の専門でございます。  時間がありませんのでそろそろ切り上げたいと思いますが、あとの時間でこれらの、皆さんが疑問に思っていられる点を鋭く御質問をいただきたい。私たちは良心に誓ってお答えしたい。  時間でございますか。
  12. 田中武夫

    田中委員長 けっこうです。続けてください。
  13. 萩野昇

    萩野参考人 そしてもう一つ。私は、Dの過剰によってじん障害が起こるという先ほどの御発表に対して、いま詳細なデータを持っております。そして、私がいま思うことは、三十七年のことが私の頭脳によみがえってまいります。なぜ日本の学会というのはこう狭量なんであろうか。私は三十七年のときにカドミウム説を唱えた。徹底的に罵倒された。鉱山から金を取ろうとする悪徳医師という汚名を着せられた。いままた、萩野の言うことはでたらめであるという刻印を押されようとしておる。どうして正しいことを正しい目で見ないのであろうか。たとえばの話、ビタミンDの過剰である、そのためにじん障害が起こった、そうすると、二十年当時のじん障害、三十年以前のじん障害がどのようにして解決されるのであろうか。いま一つ、要観察者としてイタイイタイ病じゃない者にDをやってじん障害が起こった、しからば——私はきょうこんな問題が起こるとは思いませんでしたから、しかも学会発表以前のデータでございますから持ってまいりませんでしたけれども、その患者たちは、県から、イタイイタイ病にはまだ至らないけれどもイタイイタイ病治療をしてもよろしいということで、治療をした患者、そのビタミンDを投与する以前の状態と、一年間投与した以後の状態と、そのデータを比べると、じん臓は毛頭悪くなっていない。しかもそのデータが私個人のデータであれば、萩野はデータを改ざんしているんじゃないかと思われますが、県のデータ、富山県の衛生研究所のデータでもって証明しています。私はこれらのことをいずれ学会に報告いたします。しかも私は、日本の学会では何か大きな力が曲げているんじゃないか、国際学会に発表して、信を白紙の海外の学者に問いたい。三十七年に起こったことがいま一度起こるんじゃないか。こうなると、日本医学界の体面はどこへ行くんだろうか。私は大きい声を出そうとは毛頭思っておりません。しかし、きょうここへ出席したのは、生野の問題であると承っておりましたが、何かとんでもない方向へ、学術論争のほうへ転化しておるようでございます。そうであれば、そのようにおっしゃっていただければ、データを持ってくる。また、もっとの時間を要求したい。しかし、与えられた時間が十分でございます。一分経過いたしましたので、これでやめたいと思います。  これからの御質問は、どうぞ御遠慮なく鋭い御質問をしていただきたい。私は学者として、良心に誓って正しいことをお答えしたいと思います。  これで終わります。
  14. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、駒留参考人にお願いいたします。駒留参考人
  15. 駒留喜代松

    ○駒留参考人 私は、兵庫県朝来郡生野町の生野鉱山周辺のカドミウム対策委員会会長であるところの駒留でございますが、今日地域住民代表として国会に招かれたのでございます。  私は、すでに三月十六日、土井先生が団長として調査に現地へおいでいただきましたとき、また、四月の十日に田中先生が団長として視察においでになられましたときに、かねてお話し申し上げましたとおり、また、田中先生には陳情書を出して陳情いたしております。その後、五月の四日に城戸先生が調査団の団長として生野町へ調査においでになられましたときも、文章は同じでございますが、こうして陳情したわけでございます。その陳情の内容について一言申し上げたいと思います。  このイタイイタイ病に対する県の特別診査委員会調査結果並びに国の鑑別診断研究班の見解についてお聞かせいただきましたが、他の調査結果、意見も十分に取り入れていただきたいということをお願いしております。地元の住民全員が、ただ県の権威者七人の方にまかせ切りにして、県においては、県を信用しなさいということば一点ばりをいただいてはおりますが、地域住民としてはこれに片寄って必ずしも信用し切っておるわけではありません。私ばかりではないのであります。これについては、同じく、県が七人の権威者をもってされるなら、国の鑑別診断班においてでも、地元住民の要望する——この地元住民の不安を解消するためには、手段を選ばずに、要望する同じく七人の先生方を入れてしていただけたら、私としてはどんなにうれしいことか。私だけじゃない、地元住民方々もみなこの不安を解消する一助になるのではなかろうかと私は思う次第でございます。その七人の方につきましては、失礼ではございますが、名前を読み上げさせていただきます。時間の都合もございますししますので、殿とか様とかは省かせていただきます。また、上下間違っておる点もございましょうが、この際書いた順番に読ませていただきます。  富山県衛生研究所長久保田憲太郎殿、金沢大学衛生学教室石崎教授、富山県婦中病院萩野医師、岡山大学小林純教授、京都大学衛生学教室西尾雅七殿、信州大学附属病院中央検査部金井正光教授、岡山医大整形外科児玉教授、この七人の方を同じく入れて、そして県と同じくしていただけたら、地元住民はどんなにか喜ぶばかりでなく、不安解消の一助になることは明らかなんでございます。それにもかかわりませず、ただ県を信用しなさい、県を信用しなさいでは、いままでやっておられたことについて、どうして県を信用し切ることができるでしょうか。現在追跡調査しておられる十三名のうち、生野には九名おります。その九名の方が保健所から、そのときは二、三日と言われましたが、入院してくれ、入院せよということを口頭で言うてこられたが、一人も行く人がなく、拒否された。なぜ拒否されたのかということを聞くと、県がするなれば何回やっても同じことだ、こういうことなんです。国の鑑別班においてされることなら喜んで行きましょう、こういうことばがありました。私はそれで、それはいけない、県がせっかくこのようにしていただけることは、国においてそのことを県にせよといわれてしておるんだから、これはどうしても行ってもらわなければならぬということで、何回となく足を運んで、一人一人に夜の十一時半から十二時までもかかって説得して、現在では神崎町から三人すでに入院して帰っております。そして生野から現在は三人入院しております。続いてこの二十九日にまた三人入院することになりました。こういうようにしておるのも、私としましては、県がそのようにしておることになぜ心配をせなければならぬのか、不安に思わなければならないのか、なぜ信用をしないのかということが、私自体は納得がいきかねるのです。  そこで、どういったようなものにするのかということになると、当然国にもこれは見のがしならざる責任があるんじゃないかと思います。ということは、企業の作業についてでも、現在までも作業監督所というものを国が設けて、そして監督のもとに作業を進めてきた中で、イタイイタイ病とかこういうカドミということは知らなかったのではありますけれども、それがただ作業ということのみにあって、保安は守っておったかと思います。それは間違いないと思いますけれども、こういうことについて、その中でカドミというものがはっきりと出されなかったこと自体が、立ちおくれたんじゃないかと思います。これによって、国にもいささかの責任を持ってもらいたいと思います。それによって、いま十三人といわれますけれども、十三人以外にも、まだ痛い痛いと苦しんでおる人もあるんです。そういうような人を、国の負担において一日も早く患者救済をお願いしたいんです、また、この陳情書の中には、しまいのほうに、生野町では大同年間とかといっておりますけれども、大同年間とは名ばかりではございますけれども、ここに私もちょっと記録したところを持っておりますが、大同二年、西暦八〇七年、このときに初めて発見したらしいです。そうして天正六年、一五七八年に鉱山奉行というものが設置されて、一七一七年、奉行所が代官所となったわけでございます。そうして明治元年、一八六八年、政府の直轄になっております。そうして明治二十二年、一八八九年、これが皇室財産となっておるのでございます。そうして御料局生野支庁が設置をされたのでございます。明治二十九年、一八九六年、三菱に払い下げを受けたのでございます。昭和二十五年、一九五〇年、太平鉱業株式会社にこれは引き継ぎをしたわけでございます。昭和二十七年、一九五二年、三菱金属鉱業所というものに変名したのでございます。このようにして、続けてずうっと、一千百年とかいう、歴史ある、深い因果関係のある生野町でございますので、医学的な問題は私はわかりませんが、ただ医学、医者というものばかりに片寄るものではないんじゃないかと私は思うのでございます。こういうものにつきましては、すべてこの因果関係というものを絶対に調べていただく必要があるんじゃなかろうかと思います。そうして、何がためにこのカドミというものができたのか、カドミはどこから出てきたのかと。ただ企業だ企業だと——それは企業がやったには違いない。違いないけれども、ただ企業ばかりのことであったなれば、いつまでかかっても患者の不安を解消することはむずかしいんじゃないかと思います。だから、日本国じゅうの皆さんが、日本人である限り、県知事のおっしゃったように、あれはごく一部だというような、簡単なのけにせないで、たとえ一人であっても、国民である限りは、どうしてもこれは解消せなけりゃならない問題だということを皆さん方に聞いていただきたいと思うのでございます。  つきましては、私はこの後時間のある限り申し上げたいのでございますが、時間も十分と制限されておりますので、質問された際にはまた出て、皆さん方にこのようなことをしゃべらせていただきたいと思います。とりあえず、このようなことについて、患者は、イタイイタイ病であるかどうかはわからない、けれども痛いことには間違いはない。夜寝ておっても、寝返りをするにも、トイレへ行くにもせよ、痛い痛いながらに行っている。寝たきり老人もおります。また、県に検診されなかった検査漏れの中にも、やはり一次から二次検診に持ち込まされた者もあるわけなんです。こういうようなことをしておきながら、これがほんとうのものだ、安心せよといっても、することができないのです。だから、誠意あるところのほんとうの解決方法を早期に見つけて、そうして早期に患者救済をお願いしたいのでございます。  まことに失礼いたしました。
  16. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  次に、喜田村参考人にお願いいたします。喜田村参考人
  17. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 神戸大学医学部で公衆衛生学を担当いたしております喜田村でございます。本日労働省関係委員会がございまして、おくれて参りました。まことに失礼いたしました。すでにほかの先生方お話がお済みになっておられまして、あるいは私がこれから申し上げますことは、一部、先生方が先に申し上げられたことと重なるかもわかりませんが、その点、あらかじめ御了承をお願いいたします。  カドミウム汚染人体影響ということにつきまして私の意見を述べろということでございますので、これを十分間ほど申し上げるわけでございます。  たん白毒だとかあるいは細胞毒と呼ばれております重金属、これの一つでございますカドミウムが、これが異常大量に体内臓器蓄積したときは、これはもう当然人体障害をもたらすものでございます。で、古くから特殊な職域におきまして、高濃度のカドミウムの粉じんあるいはフューム、これを長期間吸入しました作業者に、呼吸器障害あるいはじん機能変化といったものを伴いました慢性カドミウム聖母というものが発生したという報告はございます。これは、職域におきましては、吸入いたしますカドミウムの量も多い上に、呼吸器内に沈着いたしましたカドミウムというものがすべて体内にとけ込んで吸収されるからでございます。   〔委員長退席、始関委員長代理着席〕  重金属はもとより、どのような化学物質でございましても、これが異常大量に体内吸収蓄積すれば、人体障害を与えます。これは食塩でもビタミンでも、致死量というものは存在いたします。ことにビタミンのDというのは、これは過剰投与の害があるということは、これはよく知られておりまして、くる病あるいは骨軟化症といったものの治療にあたって注意を要するということは、これは医師の常識といってもよいのでございます。しかし、それだからと申しまして、こういった食塩だとかビタミン類というものの少量を持続的に摂取するということは、人体に何らの障害をもたらさないどころか、これがなくてはならない。これは周知のとおりでございます。すなわち、大量をある期間、短期間ですね、継続吸収したときに障害があらわれるからと申しまして、少量が長期間継続して吸収されまして、総吸収量が前者にひとしくなったから、あるいは前者を上回ったからといって、障害が起こるというふうに単純に考えますことは正しくございません。このことは、有害物質の生体への蓄積理論計算からも、あるいは動物実験の成績からも証明されております。また、このことは、逆に言いますと、いかなる有害物質であろうとも、ごく微量吸収され続けても人体障害を与えるものではないということを示すものでございます。たとえば、有毒物質の代表的なものと申してもよろしい水俣病原因毒物メチル水銀、これを例にとってみますと、このメチル水銀は、微量ではございますが、マグロだとかメカジキだとかいうものをはじめといたしまして、海水産、淡水産の魚介類には、古くからみなこれは含まれております。これは何も最近の環境汚染によりまして含まれるに至ったというものではございません。われわれの教室では、もうすでに、世界各地のと申しますか、あっちこっちの海域の魚介類を、数千匹に達するばかりの魚介類を分析を行なっておりますが、いまだかつてメチル水銀を含まないといったものを分析したことはございません。このことは、スウェーデンでも、あるいはアメリカでも同様の結果が得られております。   〔始関委員長代理退席、委員長着席〕 こうした一般の魚介類に含まれております微量のメチル水銀の含有濃度からいたしまして、一日大体百グラムから二百グラム程度の魚介類を食べ続ければ、三十年ほどで水俣病の発病量程度のメチル水銀が体内吸収されることになります。もしも、大量短期摂取の場合の総吸収量と少量長期の場合の総吸収量が同じであるかあるいは後者が上回れば、同じ障害を起こすというのでございましたら、昔から魚介を摂取しております民族、特に漁業従事者あるいはその家族に水俣病症状を示す者が多発していたはずでございます。ところが、現実にそのような者は一名もおりません。これは結局、吸収されました有害物質というものが体内蓄積する一方ではない、分解やあるいは排せつというものが行なわれるからでございまして、結局、有毒物質体内蓄積というものは、ある時点で平衡状態に達しまして、それ以上は、引き続き有毒物質が入ってまいりましても、吸収が行なわれましても、体内蓄積量は増加しない、こういうことになるからでございます。もちろん、その平衡状態に達しましたときの蓄積限界量というものは、一日の平均の吸収量に比例いたしまして、二倍量吸収していた人は蓄積量が二倍量にはふえるわけでございます。こういった蓄積の原則というものは、重金属を含めた有毒物質全般に共通して当てはまるものでございますが、一般の人々はもちろんのこと、医師の中にも、こういった点を誤解されている人がございまして、しばしばこれが——しばしばといいますか、ときによりましては、こういったことで社会不安を起こしたりあるいは混乱を招くこともございますので、こういった点は十分御理解願いたいと思います。  カドミウムもこの例には漏れないのでございまして、御承知のように、カドミウムは尿中に排せつされます。しかもその量は、カドミウム吸収体内蓄積が多いほど尿中への排せつが多いということでございますので、これは汚染地域の住民検診あたりにも用いられております。このことは、結局、吸収されたカドミウム体内にたまりっぱなしではないということを示す証拠でもございます。  一般の生活環境では、特殊職域におきますごとく、高濃度のカドミウム地域住民が持続的に吸入するというようなことはございません。カドミウム汚染地域でありましても、住民が暴露を受けるといいますのは、ほとんど飲食物を通じて経口摂取されるカドミウム、こう申してよろしいのでございます。大気の呼吸あるいは喫煙などによりまして少量は入ってまいりますが、これは量的に見まして問題にはならない。  この経口的に口から入りましたものは、すべて体内に入ったというふうに一般には解釈されておりますが、これはとんでもない間違いでございまして、口から入った重金属、特に水に溶けておりますような重金属でございましても、ほとんど腸管を素通りしまして大便の中に排せつされます。したがって、腸から吸収されるというのは、無機の重金属では大体五%以下といってよろしいのでございます。  これもしばしば水俣病原因毒物のメチル水銀と間違えられて——あのメチル水銀は、口から入れば、腸管から一〇〇%吸収されます。あれも重金属だ、だから重金属というものは、口から入ったら一〇〇%腸から吸収されてからだの中に入ると思われておりますが、これは大きな間違いでございます。  それと、カドミウム汚染地域でありましても、米にべらぼうに多量のカドミウム蓄積することはございません。やはり稲は重金属カドミウムによりまして障害を受けるから、カドミウムをあまり多量に吸収しますと稲が登熟しなくなります。このために、汚染地区の農家の保有米でも、大体カドミウムは平均一ないし二PPM以上含まれるということはないといわれております。したがって、汚染地区の人々がいわゆる持続して食べます米の平均のカドミウム濃度というのは、やはり一、二PPMをこえることはないとみなしてよろしいと思います。この点に関しましてもやはりメチル水銀と間違われる。メチル水銀は魚介類に非常に蓄積しやすい。しかも、蓄積しましても魚介類に障害を与えないで、それでこれを有毒化いたします。人がそれを食べて初めてそのおそろしい障害作用を発揮する、こういったのがメチル水銀のメチル水銀たる特色でございますが、これと同じように何でも食物に蓄積されて障害を及ぼすのだということではございません。  一方、厚生省のほうでは、動物実験の成績などを考慮いたしまして、約八十分の一の安全率をとりまして、一PPMのカドミウムを含んだ米なら毎日五百グラム食べましても長期間異常はないということを申しております。米のカドミウム安全基準一PPMと申しますのはこういった基準でございまして、一PPMを少しでもこえた米なら、長期間摂取すると慢性カドミウム中毒の危険があるという、そんな意味ではございません。これは極端な言い方をいたしますと、動物実験の結果をそのまま人に当てはめるならば、八〇PPMのカドミウムを含んだ米を長期間食べ続けても障害が見られない、こういった意味の数値でございます。  そういうことになりますと、慢性カドミウム中毒といわれておりますイタイイタイ病が発生した神通川流域では、住民が飲用したといわれます川の水あるいは井戸水というもののカドミウム濃度が高かったのではないかというふうに思われるかもしれませんが、これも現在のところは否定的でございます。この研究が始められた当初は、川の水や井戸の水の中に〇・五から〇・七PPMのカドミウムが検出された。その当時でございまして、昔はもっと高いというふうに考えられておったのでございますが、結局、そのカドミウム流出源あるいは神通川の年間の流量ということから考えまして、往時といえどもその川水あるいは井戸水の中には〇・〇一PPM、これは現在の環境基準あるいは飲料水の基準でございますが、それ以上はなかったというふうにいわれております。  もう時間がなくなりましたので、簡単に結論だけ申しておきますが、カドミウム汚染地域、全国で幾つかの要観察地域がございますが、結局そこでイタイイタイ病あるいは慢性のカドミウム中毒とみなされる者は一名も発見されておらない、それは御承知のとおりだろうと思います。  ただ最後に、誤解のないようにちょっとお断わりいたしておきたいのですが、結局、人体影響があろうとなかろうと、カドミウムの人為的な環境汚染というものは、これはもう自然生態系に影響を及ぼすかもしれませんし、あるいはひいては将来の人類の生存環境への影響という点も考慮しなければいけません。だから、決してそういったものは好ましいものではございません。したがって、カドミウムの人為的な環境汚染というものは極力減少せしめて汚染防止に努力すべきである、これはもう申すまでもございません。現にイタイイタイ病が発生していようと、しておるまいと、カドミウム汚染対策地域住民カドミウム暴露対策というものは、汚染地域ではとられております。イタイイタイ病原因カドミウムであるというならば、これでイタイイタイ病の発生防止には十分でございますが、原因がもしもほかにあるということになりますれば、今後状況いかんによりましては、これはイタイイタイ病が発生するおそれも生じてくるわけでございます。現に、カドミウム汚染と無関係にいわゆるイタイイタイ病とそっくりの骨軟化症が発生しているというところもございます。わが国でもそうしたことが起こらないとは限りません。そのときの責任というものは一体だれがとるかということになりますと、これはやはりイタイイタイ病あるいは慢性カドミウム汚染人体影響というものを研究いたしております学者にあるというふうに私は考えております。その意味で、この際、徹底的に科学的究明を行なうべきである、このように私考えておる次第でございます。  以上でございます。
  18. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  最後に、木村参考人にお願いいたします。木村参考人
  19. 木村猛

    木村参考人 私、三菱金属の木村でございます。  きょうのお話は、カドミウム汚染人体への影響という、きわめてむずかしい、私どもしろうとにはわからない問題でございまして、したがいまして、意見を申し上げることも何もございませんが、せっかくの機会でございますので、先生方に対するお礼と、一、二お願いを申し上げたいと思います。  生野鉱害問題につきましては、先生方にはたいへん御心労をわずらわしておりまして、また、先般わざわざ生野地区に御出向を願いまして実態調査をしていただきまして、たいへんありがとうございました。会社といたしましても、生野の鉱害問題については、各方面にたいへん御迷惑をかけておりますので、一日も早くこれを解決したいと考えておるわけでございます。  ところで、一つ二つお願いでございますが、先ほどからこの方面の御専門の先生方がいろいろお話をされておるわけでございますが、私どもといたしましては、生野地区における住民検診の結果、同地区においては、イタイイタイ病特有の骨所見を示した症例はないという国の鑑別診断委員会並びに兵庫県の見解を信頼しておるわけでございますけれども、先ほどいろいろお話しありましたように、なかなか疑問やら問題があるようでございます。したがいまして、地域住民はもちろんでございますが、私どもきわめて不安に感じておるわけでございますので、どうかこの本日の会合の結果をさらに進めまして、一日も早くこの関係を明らかにしていただきたいと思うことでございます。  次に、いささかちょっと的はずれになるきらいがあるわけでございますが、実はカドミウムの米の問題でございますが、カドミウムの含有〇・四PPM以上一PPM未満の米につきましては、国が買い上げをするが、配給しないということになっております。したがいまして、食品としては、厚生省におきましては、これは有害じゃないというような見解をとっておるようでございますけれども、いま言ったような、配給をしないという事柄のために、有害であるような誤解、そういうことを抱かせ、地域住民は、また私どもは非常に不安に感じておるわけでございます。したがいまして、このカドミウムの含有一PPM未満の産米の取り扱いについて、どうか適切なる処置をとっていただくようにお願いしたいと思います。このことによって、カドミウム中心とした汚染米の系争といいますか、そういう問題が大いに改善されるんじゃなかろうかと私は考えております。  最後に、まことに当然なことでございますが、私どもは、鉱害に対しましては、企業としての社会的な責任というものをより一そう心に入れまして、いまの問題になっておる生野問題を早急に誠意を持って早く解決したい、こういうように考えております。何しろ、長い、千年の歴史を持っておる鉱山でございます。私の会社としての関係も約八十年に及ぶこの鉱山であります。生野鉱山に対してはいろいろなイメージがあります。この美しい緑、そして雄大な山紫水明の生野地区が、この上とも鉱害問題でむしばまれるというようなことのないように、私どもは、この企業としての責任も考えながら、地域住民と協力いたしましてこの問題を解決していきたいと思いますので、どうか先生方におきましても一そうの御協力をくださいますようにお願いいたします。  これで私の話を終わることにいたします。
  20. 田中武夫

    田中委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。     —————————————
  21. 田中武夫

    田中委員長 引き続き、参考人に対する質疑を行ないます。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  22. 田中武夫

    田中委員長 速記を起こしてください。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、自民党を代表いたしまして、まず、本日御出席いただきました参考人に対しまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。たいへんお忙しいところをまげて御出席いただいたことに対しまして、また、現在問題となっておりますこの問題、特に生野鉱山の問題、さらにはイタイイタイ病の問題について、私は、若干なりとも寄与することができれば非常なけっこうなことじゃないか、こう考えております。  御承知のとおり、イタイイタイ病の問題につきましては、現在裁判の係属中であります。私は、裁判所で判断される問題はそちらで十分やっていただかなければならないと思いますが、同時に、先ほど来いろいろと議論が出ておりましたイタイイタイ病の問題につきまして、これはやはり国として対策をいろいろとっていかなければならない問題である。国会といたしましても、また政府当局としても、いろいろ対策をとっていかなければならない問題がたくさんあるように思うのであります。そういった観点で少しお話を聞いていきたいと思います。  今回こういった形で取り上げましたのは、直接的な発端は生野鉱山の問題であります。先ほど来いろいろとお話がありましたが、まず、駒留さんにお尋ねしたいのです。  それで、委員長、申しわけありませんが、簡単に御答弁いただくときには、そのままの席でお答えいただくことにしたらどうかと思います。ここまで来られるとなかなか時間がかかりますから、そういうことにしていただきたいと思います。  駒留さんにお尋ねしますが、九人でございますか、一体、九人の病状というものはどの程度のものかということです。簡単に申し上げますと、つえにたよっても歩けないくらいのような状況である、つまずいたりころんだりしただけで簡単に骨が折れる、全く寝た切りの状態にある、寝返りを打ったり笑ったりといったわずかな動作でも骨折を起こし、その際引き裂かれるような耐えがたい疼痛を訴えるというような方がおられるのかどうかという点、それからもう一つは、アヒルのようにしりを振って歩くような方がおられるのかという点、その二つの点ですね。おられるかどうかだけお答えいただきたいと思います。そのままでどうぞ。
  24. 駒留喜代松

    ○駒留参考人 うしろのほうの、アヒルのようにして歩くというような人はおります。それから、寝た切り老人であって、動けない人があるのです。それと、過去においてなくなった方のうちに、いまおっしゃられたような方がおったということです。その三点でございます。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 ありがとうございました。  次に、萩野先生にお尋ねしますが、先生にはいろいろと御診断いただきましてあれですが、簡単にお答えいただきたいと思います。  このイタイイタイ病の診断をされるにあたりましては、外部からのいまの駒留さんのような症状の問題の御診断があると思います。それから、骨軟化症になっているかどうかという形でのレントゲン診断の問題があると思います。それからじん障害がある、あるいは尿中にカドミウムが出るという三つの点が大体大きな診断だと思うのです。こういった診断につきまして、先生のほうは、この生野の問題について、イタイイタイ病であるという御診断をされたということを聞いておりますが、そこはその三つの点で条件は全部満足しておやりになったのか、その辺ちょっと御説明いただきたいと思います。
  26. 萩野昇

    萩野参考人 お答え申し上げます。  満足いたしております。特に骨においても満足しております。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 それでは、喜田村先生にお尋ねいたしますが、先生は兵庫県の健康調査特別診査委員長というのを同時にやっておられると思うのです。その辺につきましての県側の御見解はいかがなものか。いまの萩野先生のほうは、診断をこういうふうな形でやっておられるという話であります。そのデータはいただいておられるだろうと思うのですけれども、それから県側でも当然そういった点の診断はしておられるだろうと思いますが、その辺の診断の結果、これがない、こういうようなお話でありますか、どうですか、その辺を御説明いただきたいと思います。
  28. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 お答えいたします。  県に設けられました健康調査特別委員会では、結局、生野鉱山周辺地域カドミウム汚染地域で健康診断をいたしまして、それは厚生省が示しております要観察地域の健康調査、これに準じて行なったわけでございますが、その結果、三次検診までいたしまして、その結果といたしまして、結局、イタイイタイ病に特有な骨所見を有するものはない、また、じん臓機能には多少のこれは変化が見られるのですが、それは決してイタイイタイ病の骨所見、これにつながるものではない。その他の状況から推察いたしまして、将来ともこの地域ではイタイイタイ病が起こるおそれはないと考える、このような結論を出しました。  以上でございます。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 どうも、そういたしますと、レントゲンの診断の結果がどう判断されるかという問題、それからたん白の問題、尿中のカドミウムの問題、そういった点についての御見解の相違だと私は思うのです。この問題は私はここでやろうとは思わない。これは私たちが判断すべき問題でなくて、まさに医学の立場において判断してもらわなければいかぬ問題でありますから、先ほど駒留参考人が言っておられましたように、私はできるだけ早く結論を出してもらうことが一番必要なことだと思うのです。だから、ぜひ早急にその話を詰めていただきたい、それをお願いいたします。  それで、先ほどの委員長のお話でありますが、武内さんと村田さんが午後はおられないという話であります。せっかくの機会でありますから、武内先生にお尋ねをいたします。  先ほど先生のお話だとビタミンDを大量に使うとイタイイタイ病になるような可能性があるというようなお話でありました。それで、萩野さんからのお話では、特にそういったような問題からすると、昭和二十年代、または昭和三十年の初期におけるような問題についてなかなか説明ができないのではないか、こういうふうなお話がありました。その点につきましては、武内先生はどういうふうにお考えになるのか、その辺につきましての先生の御見解を承れば幸いと思います。
  30. 武内重五郎

    武内参考人 イタイイタイ病患者さんの、昭和三十年以前、つまりビタミンDがまだほとんど治療に使われておらなかったころの患者さんと、その以後かなり使われるようになってからの方での違いでございますが、これにつきましては、不幸にしてなくなられた方の解剖された方がいらっしゃいます。昭和三十年になくなられた方お二人の方を金沢大学の梶川教授が詳細に報告しておられますが、全身非常に強い栄養不良の状態があったということ、それから、骨にはこれは典型的な骨軟化症の強い所見があったということ、じん臓のほうは、これは動脈硬化性の萎縮じんと慢性じん盂じん炎という所見でございます。  同じころに、東京の河野病院の河野先生のところで、お二人かあるいは三人であったかの剖検された方がやはりいらっしゃいます。その方の臓器が実はちょっと現在見当たらないのだそうでございますが、その当時の剖検の記録は残されております。それによりますと、梶川教授が報告された所見と大体近いものではないか、こういうことでございます。  ところが、昭和四十年以後くらいになりますと、骨のほうはほとんどなおっておる。にもかかわらず、じん臓障害が著しく強い、こういうことでございます。したがって、昭和三十年以前の方のなくなられたのは、高度の栄養障害、あるいはそういう場合に肺炎等々が合併しやすいと思いますから、そういうことによってなくなられておると思います。それ以後の方は、はっきり死因がわかっておる方では、尿毒症でなくなっておる方がおられますし、ガンのような、イタイイタイ病関係のない病気でなくなられておることもございます。でございますから、昭和三十年以前の症例の、なぜなくなったかということの説明はさほど困難ではない、このように考えております。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 武内先生は内科の先生でありますから、じん臓とか、その他のほうの御専門だと思いますが、そういったいまの先生の御学説と申しますか、それというのは、一つには、そういった内科的な観点からすれば大体確立したところの考え方だというふうに考えてよろしゅうございますか。こういったことを先生にお尋ねするのは、先生は当然自分の説が正しいとおっしゃるでしょうけれども、一般的な内科学界と申しますか、そういった点からすれば、大体そういった説というのは常識的な説である、あるいは通説である、こういうふうに言えるのですか、どうですか。
  32. 武内重五郎

    武内参考人 私の考えにつきましては、「医学のあゆみ」という医学専門雑誌がございます。そこで二人で対談の形で私の考えをずっと詳細に発表してございます。その別冊を全国の大学の内科の教授の多数の方にお送りして批判を請うてございます。私、その方々からかなりたくさんお手紙をいただきましたけれども、おまえの考えに非常に賛成である、よく理解できるという御返事はずいぶんいただいておりますが、おまえの考えはこういう点で間違っているのじゃないかという手紙はまだ一通もいただいてございません。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 それから続きまして、村田先生にお尋ねいたします。  先生は整形外科の御専門だというふうに聞いておりますが、実は先ほど来骨のお話がありました。村田先生にお尋ねするのは、もう午前中でということですから、お尋ねするのですが、先生のお話だと、先ほどの萩野先生からのお話もありまして、何か最初は一緒にいろいろと御研究もやっておられたという話であります。先生のお話、ちょっとわからなかったのですが、私がどうも推察いたしますと、昭和二十年代、特に戦後の欠乏時代においては栄養も非常に少なかった、ビタミンDというものも相当に欠乏しておったのではないか。そういった時代に症状がひとつあらわれていく。それから中間段階になるとビタミンDをいろいろと投与したり何かすると、ビタミン状態も相当な状態になる。それから今度は、それをさらに続けていくと、ビタミンDが非常に豊富になってくる。欠乏の時代と豊富の時代ということは、私は政治的にも考えているのですけれども、欠乏の時代と豊富の時代——まん中の中庸の時代というのはいいんだけれども、欠乏しても悪いし、豊富になっても悪い、大体私はそういうふうに理解をしたのですけれども、その辺が先生のお話を説明するためには、欠乏の時代についても悪い、それから豊富の時代についても悪い、豊富の問題についても悪い、いずれも非常に悪いということになりますと、どこからどこまでが欠乏であり、どこからどこまでが豊富である、大体どこからどこまでといっても、厳密にどうだということは言えないにしても、ある程度まで、どの程度までが欠乏であり、どの程度が豊富だというようなことが一応おっしゃられないと、観念的にはわかっても、医学的な診断その他の問題についてなかなかむずかしいんだろうと私は思うのです。そういった点につきまして、先生のほうで、私はしろうとですからそういうことを申し上げるのですけれども医学的にはそういったことというのは一体成り立ち得るものかどうか、それから医学的には、全く豊富と欠乏というものだけ言えば大体いいものなのかどうなのか、その点もあわせて先生の御見解をもう一ぺん御説明いただきたいと思います。
  34. 村田勇

    村田参考人 いまの質問でございますが、ビタミンDは、骨軟化症には治療としては必須の薬であります。しかし、これを投与するときには、かなり注意して投与しなければいけない。と申しますのは、さっき話しましたような過剰症が起こってくる。その目安とするのはどこかといいますと、まずレントゲンの所見でございます。レントゲンにいままで萎縮性の変化のあったのが、造骨性の変化で生理的になおってきた段階では、もうビタミンDの投与はある程度中止すべきであろうということでございます。それからもう一つは、血液の中のカルシウムと燐の——ちょっとむずかしいかもしれないですが、これを調べます。生理的には、大体一一・〇ミリグラム・パー・デシリットル以内であれば、大体カルシウムは正常値ということになります。ところが、それを超過してきますと、いよいよこれは過剰症に入ってきたということでございます。それと同時に、その状態になってきますと、じん臓がかなり悪くなってくるということでございます。そういうのがある程度、そこでもしストップしておけば、D過剰に少々なってもそのまま大体おさまる。ところが、しばらくたってまた大量にやりますと、そうすると今度は非常に早くD過剰症が悪くなる。結果はどういうことになりますかというと、尿毒症を起こして死亡するということになります。実際は尿毒症を起こして死亡した者が、昭和三十七、八年以降においてはかなり見られます。特に要観察者の中でもそういうふうなものがあります。その資料のある程度は私は把握しておるのでございますが、全部は把握しておりません。と申しますのは、なかなかその投与というふうなものについて十分に県のほうで私に言ってもらえないので、それでその点が非常に私としては不満に感じております。ですから、少なくとも認定をしだしてからのDの投与というものがもっとはっきりすれば、その点がもっとはっきりしてくるんじゃないかというふうに考えております。  それで、さっき私の言ったのは、カドミウムによってじんが悪くなって、それから骨に変化が来るという考え方でございます。これがいまの大勢の考え方でございます。しかし、骨に変化が来るときには、まずカドミウムによってじんが悪くなって、それから骨に変化が来るというのが……。  で、骨に変化が来るという原因でございますが、いろいろないままでの研究によりますと、カドミウム中毒を起こしても骨には変化はほとんど来ないというのが大勢でございます。さっき話したように、昭和三十年の前半には、じん臓変化は骨に変化を起こすような状態ではなかった、しかし骨軟化症というものは厳然とあった。ところが、それが次第に時期がたつにつれて変わってきたということでございます。昭和三十七年ごろには、ほとんど骨の変化というものは正常にまで復しております。それが今度は行き過ぎたために、さっき写真でお見せしたようなああいう変化が起こってきた、これをまあ再発というふうな考え方をされたんじゃないか。これはじんによってイタイイタイ病が再発してきたんじゃないかということを考えられたと思います。ところが、再発ではなくて、それはD過剰症のレントゲン所見であった。それでなおDを投与した。そのためにますます悪くなって、昭和四十二年以降においては死亡者がかなり出てきた。しかもその死亡原因は尿毒症であったというふうな事実があります。  で、さっきの質問のところへ入っていくわけなんですが、やはり骨がある程度造骨性の変化になってきたときには、必ず血液の中のカルシウムを調べる、これはもう医学の鉄則なんです。もう十数年前に、子供でD過剰症を起こしてたいへんなことが起こったという事実があって、そういうふうなことで、カルシウムを調べなければいけないということは、もう鉄則になっております。ところが、期間の問題もあったのだろうと思いますが、そのカルシウムの検査ができなかった人が、再発というふうに誤診されたのではないかというふうに私は解釈をしております。大体三十七年ころからは、ビタミンDの投与はごく少量でなければいけないということ。それからもう一つ言いたいことは、その投与の量でございますが、要観察者に投与された量が、一年間に大体六千万から一億国際単位のDが投与されております。それも連続的に投与されております。これは天文学的な薬の量でありまして、そういう多量なものを、大体医学常識としては、少なくとも一年、二年続けてやったらたいへんなことになるということは、その治療をやっておられる方は当然私は知っておられるんじゃないかというふうに考えております。たまたまこういうことが起こったのですから、これはしかたがないと思います。それでよろしゅうございましょうか。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、私はたいへんなことになってくるかと思いますが、実は厚生省見解というのは四十三年の五月の八日に出ております。その最後に、治療法としては、ビタミンの大量投与などによって自覚症状を押えることが可能である、こういうことになっておる。御存じだと思います。いまの話だと、この大量投与というのをどの辺まで読むかというのは別にいたしまして、ビタミンDも非常にたくさん出てくると問題であるというふうなお話でありますから、私は、この厚生省見解で示されておる治療法についても相当に研究していかなければならない。少なくとも先生の学説を認める限りは、その点についての論争を私はしていただかなければならない問題だろうと思うのであります。  それと、実はそこで、いまちょっと先生お話しになりましたが、イタイイタイ病患者治療状況というのを環境庁のほうから私は数字をいただいております。この数字によりますと、合計八十八人の方が現在入院、通院を通じてやっておられるということであります。入院患者が二十八人、通院患者が六十人、合計八十八人、医療を要しない者というのが一人ありまして、合計八十九人ということになっておりますが、これはおそらく私は富山県に存在するところの病院だろうと思うのであります。したがって、私はひとつこれは委員長にお願いをしたいのですが、富山県の病院ですから、富山県のほうに、やはりまたカルテを出せということになると非常にむずかしい問題が私はあると思うのです。個人の秘密であるとかなんとかということがありますが、やはりこういった学問的な進歩をはかるためには、そういったいろいろなデータを出していただくことがぜひとも必要なことだと私は思うのであります。したがって、富山県を通じましてこういったことを措置していただくように、これは私はお願いをしたいと思います。  そこで、実はこの中で一番大きな病院でありますところの、たくさん持っておられるところの萩野先生のところの病院でありますが、先生も先ほど、学術論文をあわせて出すというふうなお話がありました。やはり学術論文を出していろいろと議論をしていただくためには、公正なデータに基づいて議論するのが一番正しいと私は思うのであります。したがって、先生のところで、患者の秘密を害しない範囲内において、どういった治療をされているか、患者の名前をABCDとかイロハニとかいうふうに書いていただいてもけっこうでありますから、そういった資料を出していただけるかどうか、先生からお答えいただきたいと思います。
  36. 萩野昇

    萩野参考人 いままとめております。出します。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのお話では、出していただけると、こういうことでございますね。出していただけるということで了解いたしまして、私は先に話を進めていきたいと思います。
  38. 田中武夫

    田中委員長 県を通じてのデータは、理事会の協議の上で請求します。  続けてください。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  喜田村先生にお尋ねしたいのですが、先ほどのお話だとちょっとわかりにくかったのですが、鼻から来る大気中のカドミウムの場合と、それから口から食物であるとかなんとかというものを通じてのカドミウムの摂取の場合、カドミウムに限らず、重金属の摂取の場合、だいぶ状態が違うんだ。それからもう一つは、体内に金属があっても、微量であるならば、食塩であるとか何とかということと同じことで、たいしたことはない。それから、ある程度まで入ると問題である。それから、しかし非常にたくさん入った場合には、またこれはある程度まで排出されるんだ、こういうふうなお話であります。私は一つお尋ねしたいのは、いわゆる大気中から入る経気道汚染の場合と、それから経口汚染の場合と、どの程度までの差があるのかということをひとつ言っていただきたい。  それから、そういった考え方、気道を通る場合と経口の場合と相当差があるのだということは、やはり公衆衛生学の立場からすれば、常識というか、通説というか、そういうことになっているのかどうか、この点について御説明いただきます。
  40. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  経気道吸収、経口吸収吸収率の差でございますね。鼻から入りますと、これは呼吸器の中に沈着するわけですね。そうすると、それがもう排出されるということはありませんので、結局、その沈着したものは全部溶けて吸収されます。(林(義)委員「血液の中に入る」と呼ぶ)ええ、血液の中に入ります。からだの中に入ります。ですから、沈着した分につきましては一〇〇%ですね。ただ、こう鼻から吸いましても、すっと吸って、すっとまた出るというのがございます。あまり小さな粉じんでございますと、すっと入って、すっと出ますので、ですから、鼻から入った場合に、吸ったものの何%が吸収されるかということは、これはいろいろ議論がございますが、約五〇%ぐらいは吸収するということでございます。それが通説になっております。  ところが、口から入りましたものは、これは口から入りまして、胃を通り、腸管を通りまして、それであと肛門から外部に排せつされる。腸から初めて吸収されまして、これがからだの中に入るんで、その率が、もしも重金属では非常に低い、五%以下というのが通説になっております。カドミウムで、動物実験あたりの結果ですと、二%前後、それから人間でやりました場合で五%以下という、そういった集積が出ております。ですから十倍ぐらい違うということです。  それともう一つ、吸入します絶対量が、特殊な職域あたりでは吸入します量そのものがかなり多いわけですね。といいますのは、作業環境におきます許容濃度というのが、一立方メートル当たり〇・一ミリグラムということになっております。そうしますと、一日平均大体八時間労働をいたしますと、そういったところでは、八立米ぐらい呼吸いたしますから、〇・八ミリグラムぐらい総量で吸入するわけでございます。それが五〇%吸収されました場合と、口から入りましたカドミウムでございますね、それは五%しか吸収されない、こういった場合と、それは入る量も違いますし、吸収率も違いますので、うんと体内吸収率が違ってくる、こういうことでございます。
  41. 林義郎

    ○林(義)委員 だいぶ時間が迫ってまいりましたのですが、あとでおそらく時間があると思いますから、よしますが、重松先生にお尋ねします。  重松先生はカドミウム研究会会長という形できょうもお話をいただきました。そういった形でありますが、先ほどからありました武内先生村田先生の学説につきましてどういうふうにお考えになりますか。およそとるに値しない考え方であるというふうにお考えになりますか。やはり一ぺんは検討してみなくちゃいかぬ学説であるし、当然カドミウム研究会で取り上げてみるべきであるというふうにお考えになりますか。その辺について簡単にお答えいただきます。
  42. 重松逸造

    重松参考人 いろいろな研究者の方がいろいろの学説をお出しになるのは、これはもう全く自由でございます。ただ、いま御質問にございましたように、これをみなで検討する価値があるかどうかという判断は、かなり主観的になるのでございますが、具体的には、このビタミンDの問題は、実はもうこのイタイイタイ病問題の当初からもちろん治療法としても関係しておりますし、その後のいろいろな面で、栄養面でも関連しておりますし、常につきまとっておる問題でございます。新たに武内先生あるいは村田先生の御提言がございますので、またこの機会に検討してみるということは、これは十分意義のあることだと考えております。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 時間もたったようでありますから、残りの質問はあとにさしていただきまして、これにて終わりたいと思います。
  44. 田中武夫

    田中委員長 次に、八田貞義君。
  45. 八田貞義

    ○八田委員 時間もあまりございませんから、簡単に質問をさしていただきます。  まず、きょうの御参考人の先生方にお尋ねしたいのでありますが、四十三年に厚生省見解が出されておるのでありますが、ただいま御参考人の方方の御意見を聞きますると、訂正しなければならぬ、こういうことを強く感ずるのでありますが、まずその点についてひとつ御答弁を願いたいのであります。  まず第一に重松先生から、厚生省見解に対してお述べ願いたいと思います。
  46. 重松逸造

    重松参考人 厚生省見解は、御存じのように、その時点までの研究成果をもとにしまして、行政当局が行政的な判断でつくられた見解でございます。その基礎になっております資料は、萩野先生はじめ、その後のわれわれが関係しております研究班でつくったものでございます。ただ、昨年度のカドミウム研究会でもいろいろな問題点が出されておりますように、その後カドミウム人体影響ということに関しましてだいぶ新しい点がわかってきておりますので、それらの点がもう少し明らかになりますれば、いま八田先生御指摘のように、訂正を要する部面も出てくるかと思います。ただ、いまの時点であれを直ちにどの部分を訂正するかということになりますと、いまの知識は、まだあれをあのままでいいとする考え方と、訂正をするという考え方が、五分五分と申しますか、その辺の部分が非常に多いと考えております。ただ、いずれにしましても、この学問が進歩すれば当然改められるべき点は改めなくちゃいけない、これはもう先生のおっしゃるとおりだと思います。
  47. 八田貞義

    ○八田委員 重松参考人にもう一つお伺いしたいのですが、そうしますと、腎性の骨軟化症を否定されるかどうかという問題ですが、あなたのお考えとして、腎性の骨軟化症という点を修正されるか、否定されるか、その点です。
  48. 重松逸造

    重松参考人 いまの時点では、いま申し上げましたように否定も肯定もまだできないと思います。
  49. 八田貞義

    ○八田委員 喜田村先生にお伺いしたいのですが、喜田村先生はずっと人間についての吸収排せつの問題を非常に意欲的に研究されておられるわけでありますが、そういう観点から、腎性骨軟化症イタイイタイ病は、そういうものだというふうにお考えになられましょうか。
  50. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 私といたしましては、イタイイタイ病といいますか、神通川流域におきます住民が腎性骨軟化症を起こすほどのカドミウムに暴露されたとは、疫学的なあれから考えられません。
  51. 八田貞義

    ○八田委員 もう一つ村田先生にお伺いしたいのですが、村田先生は、むしろ医原性の疾患だ、こういうふうに言われておられますね。村田先生は、腎性骨軟化症というものを否定されて、むしろ医原性の骨軟化症というものが起こってきたのだ、こういうふうなお話のように理解いたしたのでありますが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  52. 村田勇

    村田参考人 昭和三十年の骨軟化症は腎性ではない。しかし最近における骨軟化症は腎性のものである。その腎性のものはカドミウムによって起こってきたのではなく、ビタミンDの過剰投与によって起こってきたということでございます。したがって、カドミウムを主体として考えたときに、イタイイタイ病は腎性骨軟化症とは考えません。
  53. 八田貞義

    ○八田委員 時間もあとないのだそうですから、萩野先生にお伺いしたいのでありますが、萩野先生、五月二十三日の朝日新聞に先生のお話が載っておりますが、このお話全部先生肯定されますか。
  54. 萩野昇

    萩野参考人 この中で、読んでみますと、鉱毒説を唱えてから、特に昭和三十六年にカドミウム説を唱えてからは、治療中心としてビタミンDを使っていたということを中止したということになります。ですけれども、新しく来る者にはやはり使ってみる、ある程度使ってみようかということでございますが、いままでは主体として使っていた、それを主体として使うのを中止した、こういうことでございます。
  55. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、お伺いしたいのですが、いつまでビタミンDを投与されておりましたか。いつからやめられたか。それをはっきりおっしゃっていただきたい。
  56. 萩野昇

    萩野参考人 実は、カルテでございますが、古いカルテがないのでございます。と申しますのは、富山県の県会議長をしておりました宇於崎章吉という方が、私の親類でございます、この方が私に、おまえはイタイイタイ病研究を中止しろ、おまえにとってもプラスにならないのだからというアドバイスを受けたのであります。そこで私は非常に心配いたしまして、それほど喜ばれない研究ならやめよう、そこでくぎを一本打った、それならこのイタイイタイ病患者をだれが救済してくれるのかと言ったら、県には県立中央病院があるからそこですることになるからということで、それならやめましょうといって、私はそのときまで持っておりました資料も、こういうものがあるとつい研究に身が入るからというので廃棄したのでございます。それで前のカルテがないので、いまおっしゃいましたことに対してはっきりとしたデータはないわけでございます。しかしビタミンDを主として使った、非常に大量使ったという時期は、カドミウム説になりますと、栄養不足原因ではないんだから、カドミウム原因なんだからという意味で遠ざかってまいりました。はっきりしたデータは現在カルテがございませんから申し上げられませんが、四十三年の五月ごろでございました、海外の文献その他の文献で、Dの大量療法が腎性骨軟化症に非常にいいのだ。つまりビタミンDの欠乏からくる骨軟化症であれば少量でもきくんだ、もっと極端に言うと、Dを与えなくても、牛乳を与えると、牛乳の中にあるDあるいはカルシウムでもってぐっと、栄養からきた骨軟化症、つまりD欠乏の骨軟化症であればよくなるんだけれども、腎性骨軟化症の場合にはもっと大量に与えなければなおらない。そしてその大量に与えるメルクマールはすごく簡単である。臨床症状として吐きけがくる、御飯がまずくなる、下痢が起こる、このような症状が起こってくればやめればいい、これは非常にはっきりした臨床症状であるから、しかもそのビタミンDは大量に投与すると、うんと大量に投与すると劇的によくなるという文献を読みまして、それなら私はビタミンDによる骨軟化症ではないと考えた、カドミウムによるものと思った。しかしDをカドミウムによって腎臓がおかされて起こった骨軟化症とすれば、大量にやってみる必要がある。そこで、いま言ったような副作用に注意をして大量に与えたのは三十年の五月以降、四十年、それらのデータをいままとめております。
  57. 八田貞義

    ○八田委員 もうこれ一問だけです。
  58. 田中武夫

    田中委員長 申し上げますが、時間を守っていただかないと、あとの質問者が質問できなくなるのです。
  59. 八田貞義

    ○八田委員 承知しました。
  60. 田中武夫

    田中委員長 八田君、一問だけ許します。
  61. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、萩野先生は午後おいでになるようですからあとでその点を詳しくお聞きするのですが、私、最後村田先生にお伺いしたいのですが、いま萩野先生にお伺いしますると、ビタミンD以外の治療法があるようなことをお話しになったのですが、この点についてビタミンD以外の治療法というのは一体お考えになられますか、イタイイタイ病について。
  62. 村田勇

    村田参考人 骨軟化症に対しては、ビタミンD以外にはありません。
  63. 八田貞義

    ○八田委員 わかりました。   〔萩野参考人「それは片手落ちの質問だ」と呼ぶ〕
  64. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと、私語をやめてください。——それでは、萩野参考人発言を許します。
  65. 萩野昇

    萩野参考人 私たちは長い間患者を見ていまして、イタイイタイ病というのは、まず骨粗鬆症のような状態が起こってくる。ところで、その状態は何かと申しますと、イタイイタイ病の前提としての骨軟化症状態かもしれません。しかしレントゲン写真を見ますと、骨粗鬆症のように感じられます。これは医学界の常識でございます。そこで私たちはそういうことも勘案いたしまして、たん白同化ホルモン、パロチン、御存じでございましょう、ゴルフ骨折などに使っております唾液腺ホルモン、あるいは女性に多くて男性に少ない病気だから、セックスホルモンが何かの関係でやはり原因している。それで、そういうセックスホルモン、これらをやはり患者状態を気をつけながら投与する必要があるということで、そういうものを使っております。
  66. 田中武夫

    田中委員長 八田君の質疑は終わりました。  次に、島本虎三君。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 公害対策委員をやっておりますが、医学的なほうの知識は少し不足なようでございますので、その点はあらかじめ、よく教えるように御答弁願いたい、こういうように思うわけであります。  武内参考人カドミウム人体侵入から、じん臓障害を起こし栄養不良になり骨軟化症になる、この経路の御説明はよくわかりました。これは体内ビタミンD不足というような点はわかったのでありますが、そうすると、あとから村田参考人と思いましたが、レントゲン写真でその経過をよく説明していただいたわけであります。  それで、萩野先生のほうでは、以前と以後の問題に分けまして骨の変化についてどういうようなお考えであったのか、私ちょっと聞き漏らしましたから、その辺を少し解明願いたい、こういうふうに思うわけであります。順次お願いします。
  68. 武内重五郎

    武内参考人 もう一度ちょっとお聞きしてよろしゅうございますか。以前と以後の骨の……。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 骨の変化です。
  70. 武内重五郎

    武内参考人 昭和三十年以前のイタイイタイ病患者さんの骨の所見は、これは医学的には骨軟化症、そして骨鬆粗症がそれに加わった所見、こういうことでございます。それから最近、四十年以後の方は骨軟化症がまだ剖検されて、非常によく調べると少しあるような、発見するのにかなり苦労するという程度になおっておられる方、それから以前骨軟化症であったと臨床的に診断されて、剖検のときにはどこを調べても骨軟化症所見が見当たらないという方もいらっしゃいます。さらには、局所的にはむしろ骨硬化症といいますか、軟化ではなくて、むしろ骨が非常にかたくできておる、こういう方もいらっしゃいます。  ですから、三十年ごろの、つまりビタミンD治療をまだ受けておられなかったころの患者さんの骨と最近の方とでは著しく違っておると思います。これは整形外科の村田先生の臨床的な観察ばかりでなくて、病理の梶川教授も非常にそれを強調しておられるところでございます。
  71. 萩野昇

    萩野参考人 ちょっとお聞きしたいのですが、三十年でございますか、四十三年でございますか。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 先ほど写真を示しまして、骨の変化をよく説明していただいたわけでありますが、先生の御発表によりますと、これは私の聞き違いであるかもしれませんが、それをただしたいのですが、この以前と以後、そういうような治療に対しても骨に対しても変化がない、こう言ったように私は思ったのですが……。
  73. 萩野昇

    萩野参考人 それは四十三年と四年という意味の発言でございましたが……。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 たぶんそうだと思いますが、それはいかがでございますか。
  75. 萩野昇

    萩野参考人 四十三年に要観察者として治療をした人、それが一年後の四十四年の四月に同じ人を見ますと、骨の状態が改善されておる。と申しますのは、その人たちは一応イタイイタイ病の疑いがある。  もっと言いかえますと、私は一期から五期までに分けましたけれども、骨にはっきりと骨改変層、横のひびがあるか、そこで折れているか、これのみがイタイイタイ病と認定されているのであって、骨軟化症の軽度の者は骨盤粗症とレントゲン的に全く一緒でございます。これは先ほど言ったようにレントゲンの専門教授の常識でございます。これらの人が骨改変層がないからといって治療からはずれると、あるいは行政上のミスが起こるかもしれないからというので治療が許された。そういう人たちに私は三期という状態で一応治療した。その結果、骨の状態はよくなっている。しかもじん臓は悪くなっていない。なぜ悪くなっていないかといいますと、その間に一万三千六百単位ですかを与えた患者が、最初はじん障害があったにもかかわらず、それだけ投与しますと骨はよくなる。私、写真を持ってくればよかったのでありますが、こういう問題じゃないと思ったものですから持ってまいりませんでしたが、骨の状態がよくなると同時に、じん障害がどういうことかなおっています。もしビタミンDでじん障害が起こるものと仮定すれば、なぜその患者のじん障害が悪くならないのでしょうか。しかもこれは武内教授の弟子である県立中央病院の久保医長の診断でございます。かつて悪かった、逆によくなった、こういうような事実から私は先ほどの証言をした次第でございます。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、これはやはり私、念のために村田参考人にもいまの見解についてひとつ解明を願いたいと思います。
  77. 村田勇

    村田参考人 いま一万単位と言っておられましたが、これは一億の間違いじゃなかったでしょうか。
  78. 萩野昇

    萩野参考人 そうですね。
  79. 村田勇

    村田参考人 そうすると一億ということになると——一万ということでは、これは常識的なものでございますが、しかし一億ですから、一年間に一億単位……。
  80. 萩野昇

    萩野参考人 一年じゃございません。二年間です。足かけ三年にわたる……。
  81. 村田勇

    村田参考人 私は投与量も全部見せていただきましたけれども、あれは一億三千万単位だったと記憶しております。それで、それだけのものがいきますとどうなるかということでございます。やはりじん臓の機能も悪くなっております。もう一つは血液を調べますと、カルシウムの量が多くなっております。これは明らかにD過剰症の症状でございます。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、これはなお念のためですが、いまの点について萩野先生のほうでよろしゅうございますか。——これはいかがなものでございましょうか。生野の場合には腎性の骨軟化症ではないのでしょうか、あるのでしょうか。いわゆるカドミウム中毒とわれわれは常識的に考えておりますところの症状と、生野の場合は違うのでしょうか。この点は十分私は知りたいのでございますが、この点については特に重松参考人にお伺いしたいと思います。
  83. 重松逸造

    重松参考人 生野の問題は、私もちろん直接現地も知りませんが、たまたま先般鑑別診断班に生野資料が提出されました場合に、班長は金沢大学の高瀬先生でございますが、お昼から夜まで延延とやりまして、座長がお疲れになって、私に後半の部分はかわって司会をしろということで司会をいたしたという、まあそれだけの縁でございますが、さて、いま島本先生御質問の、生野の例ははたして腎性骨軟化症であるかどうかということでございます。この判断は、まず骨の所見が先に立ちます。それに関しましては、もちろん私自身を含めまして、骨の専門家以外の方は積極的な発言はしておられないわけでございまして、もっぱら整形外科の先生は、その鑑別診断班の席上では、この骨は腎性の骨軟化症による骨折ではなしに、いわゆる外傷性の骨折であろうという整形外科学的な判断を示しておられますので、鑑別診断班としては、その専門家の御意見を採用したということでございます。それがあのような発表になっております。ただし、いまの腎性に関連しまして、生野地区の要観察者の方々じん臓所見に異常があるという点も、これもこの鑑別診断班で一致して認めております。ただ、この異常がはたしてカドミウムによる尿細管障害そのものであるか、あるいはほかの原因によるものであるかということは、あの時点ではまだ資料も足りないし、また一回だけのデータでもございましたので、もう一度その点だけは追跡検査をするということでございます。まあその席の座長をしておりましたので、皆さん方意見をまとめてお伝えしたということでございます。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 以前からこの研究に携わってまいっております萩野先生にはわれわれも敬意を表しているのでございますが、いろいろとわれわれが承った中で、カルシウム分の不足した人にカドミウム分が入った場合の症状、これがいわゆるカドミウムと、こういうような症状になってあらわれるものであるというように、私どもはしろうとなりに承っておりました。いまの生野の場合は、これはやはりカルシウム分が不足したような状態でございましょうか。婦中町の場合と違いがあるんでしょうか。この点ひとつお知らせ願いたいと思います。
  85. 田中武夫

    田中委員長 なお、先ほどの御発言を求めておられました点も含めて御発言願います。
  86. 萩野昇

    萩野参考人 まず第一のお答えでございますが、先ほど私は、じん障害がないと申しました。一億三千六百万と。ところで、それは私のほうで調べても、ないんでございます。しかし、公平を期するために、じん臓の御専門の武内教授の相弟子の富山県立中央病院の久保医長にお願いしてその患者を調べた——一億三千六百万でございます。たいへんな量でございます。その成績が私のほうへ参っております。しかし、私の口で申し上げるよりも、武内先生からおっしゃっていただいたほうが私公平だと思いますので、一言お願いし  ます。
  87. 武内重五郎

    武内参考人 萩野先生のほうから患者さん調べてほしいということで、確かに富山県立中央病院で調べるように依頼いたしました。そのときは、私には一万幾らと、さっきおっしゃったようなあの単位の患者さんであるというふうに言われておるんでございます。これは病理の梶川教授に萩野先生が御依頼になって、梶川教授がそれは単位が間違いじゃございませんかと言われましたら、いや間違っておりません、これが私がいままで使った一番多い量でございますと、こういうふうに返事があったということ、これはもう間違いございません。それから、先ほど、その方についてじん臓状態、現在そう大きいものではございませんが、外来でしかやられなかったので、まだかなりデータが不足しておりますが、先ほど、以前じん臓の機能が悪かったのに現在機能がよくなったというようなことをちょっとおっしゃいましたけれども、これはもう全く間違いでございます。富山県立中央病院ではそのとき一回だけしか調べておりません。以前のデータはありませんので、比較をしてございません。それから、そのときに久保医長というのがおもに調べたのでございますが、血清のカルシウムが明らかに高いので、この点、これはビタミンDがいきますと高くなりますが、それ以外に何か原因があるんじゃないか、ぜひ調べたいので、患者さんにぜひ入院して調べさせてほしいとお願いしたそうですが帰られたので、それ以後のことはわかっておりません。以上でございます。
  88. 萩野昇

    萩野参考人 いま一万と申しましたのは、数字で一万三千六百万単位とあったものですから、つい一万と申しました。考えますと一億ということになります。しかし数字で書きますと一万三千という数になりますので一それは、そういうことでございます。  それから、その患者さんは以前私のほうでたん白が出ております。それは、出ておるのがいまは出てない。もしそれだけの量のビタミンDを与えてそれほどのじん障害が起こるものであれば、もっとこの患者にじん障害が起こっていいと思う。おわかりいただけますか。それだけの大量を与えてじん障害が起こるものであれば、なぜこの患者だけが起こらないのか。しかもその患者は、私のほうで大量与えたファールでございます。  それから、ただいまの島本先生の御質問、お答えするとちょっと時間がかかるのでございますが、省略いたしましょうか。ちょっといただけますか。
  89. 田中武夫

    田中委員長 できるだけ御意見を聞くことに重点を置きたいと思いますが、午後に先生おっていただけますから、そのときにお願いいたしましょうか。
  90. 萩野昇

    萩野参考人 これはしかし非常に重大な問題なんで……。
  91. 田中武夫

    田中委員長 それではどうぞ続けてください。
  92. 萩野昇

    萩野参考人 ただいまの私に対する御質問は非常に重要なことなんです。私、これがきょうのキーポイントじゃないか、ハイライトじゃないかと考えております。  お答えいたします。カドミウム患者神通川地区以外に出た、それが、神通川地区と全く同様なものかどうかというように、先ほどの御質問はそう解釈してよろしゅうございますね。ところで、申し上げますが、われわれがカドミウムによってイタイイタイ病が起こるということを考えましたのは、その地区カドミウムに濃厚に汚染されて環境汚染があるということ、その次に、その環境汚染が住んでいる住民に何らかの影響を与えているというこの事実しかる後に、患者の身体的状態から、私たちは、これはカドミウム汚染であるんだという判断を下すわけであります。いま申し上げました、その地区カドミウムに濃厚汚染されているかどうかという問題に関しましては、その専門家である石崎教授が親しく現地へ足をお運びになって御調査した。これはあとで御報告あると思いますが、そのようなところに住んでいる患者、バックグラウンドがカドミウム濃厚汚染、しかもその濃厚汚染が、先ほど触れられましたように神通地区と全く同様である。石崎教授の御調査では、神通地区と石川県の梯川地区、それと生野鉱山のあの地区であると御証明されております。ところで、これを踏まえて申し上げますと、イタイイタイ病と認定するには、じゃ、おまえたちは何を根拠にしているんだと申しますと、大きく分けまして、腎の症状と血液の症状とレントゲンの所見とに分かれてまいります。これを詳しく御説明しておりますとおしかりを受けると思います。時間的に制限がございます。ただ、非常にグローブではございますが、大きく申し上げますと、まず、腎の中にたん白が出ている、糖も出ている、これらは糸毬体の影響じゃなくて尿細管影響で出ているものである。それはしかもそのたん白は低分子である。そうして尿中にカドミウムが非常に多いんだということでございます。しかしここに問題がございます。尿中カドミウムは、濃厚な汚染を受けているときは濃厚に出ますけれども、濃厚な汚染がとだえますと減ってまいります。これも文献がございますから御調査いただきたい。  その次に、血液の所見でございますが、血清の無機燐が下がってまいります。そしてアルカリフォスファターゼが上がってくる。これもいろいろ問題がございます。アルカリフォスファターゼは肝疾患が起こっても上がるじゃないか、しかもこれは濃厚な汚染を受けていて活発に働いているときには高くなるけれども、若干治癒期に向かい症状が落ち着いてくるともとの正常に戻る傾向、燐もまたしかりでございます。そして最後にレントゲンの所見骨軟化症の様相を呈する。これが過日問題になりました。と申しますのは、はっきりとした骨軟化症の症状がない場合にわれわれはイタイイタイ病とはいわないんだということでございます——けっこうでごさいましょう。しかし、先ほど申しましたように、レントゲンの専門家——私たちは医者でございます。レントゲンを見ることを知っております。武内教授は内科の教授でございます。レントゲンをごらんになることはお詳しゅうございます。村田先生は整形外科の先生でございます。レントゲンを見ることはお詳しゅうございます。しかし、私たち医学者の中ではレントゲンの専門家と申しますと、レントゲン科、放射線医学科の教授のことをさしております。これは日本だけじゃなくて、インターナショナル、世界各国の共通の意見でございます。私がかつてドイツに行きアメリカに参りましたときに、スペシャリストはどう言っているか——そのとき私はびっくりしました。スペシャリストとは何をいうんだろう。これははっきりわかったのは、レントゲン専攻の教授はどう言っているかという質問でございました。このような事実を踏まえてお話し申し上げますと、私のほうのデータでは、あの地区患者さんの中に大多数の人——私の検査したでございますよ。一般住民の大多数でなくて、大多数の私の検査した患者の中に蛋白が出ている。糖が出ている。尿中カドミウムは四十マイクログラム・パー・リッターも出ている。しかもディスクの電気泳動は典型的な低蛋白の様相を呈している。そして血中のアルカリフォスファターゼは、私のほうで調べますと三十五単位でございますけれども兵庫県では七十・七という単位が出ております。また、燐は兵庫県では三・二、私のほうでは三・〇、そうしてこのレントゲン写真が、私のいう骨改変層を呈している。  ところで、皆さんの御興味はこの一枚の写真にある。ここに先生方がおいでになります。この先生方は、これは外傷による骨折である——私はそのときびっくりいたしました。私たちが原書を読んだとき、日本の国の成書を読んだとき、私たち金沢大学の出身でございますが、平松教授はレントゲンのスペシャリストでございます。彼の書いた本の中にどう書いてあるか。外傷性のものであれば骨は転移がくる。この断端とこの断端が食い違う。御存じでございましょう。こういう骨折というのは、筋肉の基着部と基着部との間で折れる、外力がかかった場合。そうしますと、当然骨の断端と断端は食い違ってまいります。にもかかわらず、これは食い違っていない。一輪車を押してひっくり返って手をついて折ったものであれば、なぜこの断端は食い違わないのだろうか。これが第一の問題です。そして私はその患者のところでもう一度確かめてもらいました。私も確かめました。ひっくり返って事故で折ったんじゃございませんと本人が言う。なぜこの事実がすりかえられるのであろうか。これはテープもとってございます。  そして、その次にこのようなやはり例もございます。   〔萩野参考人写真を示す〕 この場所、大腿の頚部は外傷で折れやすい。もちろん私たち知っております。これらの骨折が起こった場合に、もともとどおり整形外科ではなおすことができる。もちろんできます。それはどういう場合かと申しますと、手術的にその部を切り開きまして、そうして手術的にもともとになおして、ちゃんと曲がらないように手術いたしますともともとになおります。この患者は手術を受けていないのでございます。ただ副木を当てただけ、そのような患者の骨折がどうしてこのような状態であるであろうか、私はそのようにおっしゃる方、非常にさびしく思う。なぜ日本の国ではこのような暴力が通るのであろうか、なぜ正しい医学が行なわれないのであろうか。いま申し上げたような次第で、私ははっきり申し上げます。イタイイタイ病の原点である婦中町の神通地区患者生野患者は、私は同一視をしております。
  93. 田中武夫

    田中委員長 島本君の質疑は終了いたしました。阿部君はいいですか。——次に、土井たか子君。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 きょうわざわざ参考人として足をお運びいただいて貴重な御意見をそれぞれお聞かせいただいたのは、言うまでもございません、全国のカドミウム汚染によるところの人体影響ということでありますが、特に今回は兵庫県の生野鉱山周辺のカドミウム汚染人体との関係、ここはその問題を具体的に考える場所だと私は思って質問させていただくわけです。  さて、先ほどから医学者としての御見解をるる承ったわけでございますが、具体的に申しまして、この兵庫県の生野鉱山周辺のカドミウム汚染にタッチなすった、またその人体への影響あるいは検診に対して調査研究をなすったお二方の先生がここにいらっしゃるわけでございますから、特にそれについてお尋ねいたしたいわけでありますが、兵庫県の健康調査特別診査委員会委員長とされまして喜田村教授は検査をなすった結果、全くこれはイタイイタイ病ではない、今後もイタイイタイ病が発生するという可能性は全くないという結論を出されたわけであります。その間、調査を始められてからどれくらいの期間を費やされてそういう結果をお出しになったのか。また先ほどは萩野先生からイタイイタイ病とこれを断定するという理由を非常にきめこまかに御説明賜わったわけでありますが、このクロ説とシロ説と、生野周辺のイタイイタイ病であるかどうかということについての判定の中身は全くまっこうから対立しておるわけであります。医学知識を持ちませんしろうとにもわかりますように、端的に決定的な根拠はここにあるということを両先生から、繰り返しになるかもしれませんけれども、ここで簡単に御説明賜わりたいと思います。
  95. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 私からお答えいたしますが、調査にどのくらいの期間を要したかということでございますが、昨年の四月から始めまして結論の出ましたのは三月、約一年間を要しまして、あの地域の一万三千人ですか、これを対象といたしまして一次検診、二次検診、三次検診とやってまいりました。それにいま申した一年間の期間を要したわけでございます。  それと生野地区イタイイタイ病があるかないかということでございますが、県の健康調査特別診査委員会が出しました結論といたしましては、先ほどもお答え申しましたように、イタイイタイ病に特有な骨変化を認める者はいない。じん臓変化は見られる者があるが、それは老人でもそのような変化を見られるから、それにカドミウム影響しておるかということは今後調査しなければならない。しかしそれが骨変化に、いわゆるイタイイタイ病に特有な骨所見と申しますと、結局先ほどの骨軟化症でございます。それにつながるものではないということ。それと第三番目に、現在もうすでに汚染対策もとられておりますので、将来これがイタイイタイ病になるというようなことは考えられない、こういう結論でございます。  それで、それの説明でございますが、結局いま申しましたように、県の健康調査特別診査委員会のほうといたしましては国の鑑別診断委員会委員をやっていらっしゃいます慶応大学の土屋教授、それと神戸大学の整形の柏木教授、大阪の市立大学医学部の堀内教授、それと兵庫県の県立ガンセンター病院院長をやっておられる、この方はレントゲンの御専攻でございますが、その院長木村院長、そういった方々委員にいたしまして、そこで慎重検討いたしまして出した結論でございます。これに対しまして、先ほど萩野さんがおっしゃいましたようにまっこうから反対のクロ説をお出しになりました。それで結局これは両者が言い合っておってもしかたがないということで、これが国のほうの鑑別診断委員会、これに上がったわけでございます。そこでレントゲンの写真を出しまして、ここにおいでになります重松先生あるいは村田先生、武内先生もおいでになりました。それから萩野先生もおられました。そこで結局検討いたしまして、先ほどこれも重松先生がお答えになりましたように、いわゆる骨軟化の所見は認められないということ、そういう結論が出たわけでございます。これは全員一致で出ました。ただじん臓変化につきましては確かに電気泳動その他で、カドミウムに特有かどうかわかりませんけれども、異状の見られるものがあるから、これを今後も検討していくということになりました次第でございます。  それでよろしゅうございましょうか。
  96. 萩野昇

    萩野参考人 きょうは大先輩の喜田村先生とまっこうから対立する。しかし私たちは学者の良心で言うべきことはやはり言わなければならない。しかもただいまのように辛らつな質問を浴びせかけられますと、遠慮しますと誤解されます。そこではっきり申し上げます。  ここに兵庫県の、私たちがあげたデータがございます。私のデータで勝負いたしますと、先ほどの質問のようにおまえは正直なのを出せとおっしゃる。非常に不愉快になりますから兵庫県のデータで勝負いたしますと、これはコピーでございますので、お分けしたいのですけれども兵庫県の許可がないと差し上げられません。秘密会の委員に分けられたものでございます。たん白がプラスである、糖がプラスである、尿中カドミウムが二十一マイクログラム・パー・リッター出ている。じゃ少ないじゃないか、三十以下じゃないか——これはあとで御説明いたします。それから兵庫県のデータでディスクの電気泳動、これはプラスでありました。これを御指導されたのは三洋電機の原田章博士でございます。彼はこれはそうだと認めております。指導している人が認めているのだから兵庫県が否定されるのはナンセンスです。そして申し上げたいことは、この表にあるようにアルカリフォスファターゼが高い、燐が低い。ところで皆さんに申し上げたいことは、それなら萩野兵庫県がけんかをして四つに組んだ、そのさいはいを環境庁のカドミウム鑑定委員会に委任した。そこでは骨軟化症ではないと言っている。私は毛頭言いません。ばからしくなって私は口を閉じてしまった。というのは、どういう結論かと申しますと、兵庫県が認めておられるのです。それは環境庁からテープを——ございましょう。環境庁、あのときのがありましょう。テープを取り寄せてお聞きいただきたい。はっきり渡辺という衛研の所長が、私たちはシロと言わないと言っております。私は、あなた方は医者じゃないか、長い間カドミウム研究で努力してきたのじゃないか、われわれには一つの常識があるんだ、こういうものをイタイイタイ病だという常識があるんだ、これだけのデータがそろっているのになぜ否定されるのですか、なぜシロといわれるのですかと私はうっぷんをぶちまけた。もう最後です。私の帰る汽車の時間が迫っている、これ以上言うと私は汽車に乗れない。それでぶちまけますと、そのときに衛研の渡辺所長は、私はシロとは言わない、マスコミがかってにシロと書いたのだ。そこで私は追っかけ言ったのです。あなた方は座談でおっしゃったのではないのですよ、記者会見を申し込まれて記者を集めておっしゃったんだ、それをマスコミがシロと受けとるのにあなた方に責任がないというのかと質問したのでございますが、それだからわれわれはこれから検査を続けていくんだ。このこの事実はテープにとってございます。また、ここに重松座長もおられます。私はうそは毛頭言わない。自分で認めておられるのである。しかもこの骨に関しては私は骨軟化症でございませんとは一言も言っていない。過日も生野の人から私はショッキングなことを聞いてびっくりした。環境庁のお役人が萩野骨軟化症ではないと言っているじゃないか。私は毛頭そういうことを申しません。この機会にはっきり申し上げます。そして、私はこの写真は先ほど申し上げたような理由でりっぱなミルクマンのプソイドフラクツール、疑似骨折でございます。というのは、完全な骨折に見えますけれども、どこかで一部はつながっているところがある。外傷による骨折であればこのように横には折れません。必ず斜めとか——こういうきれいな折れ方はいたしません。これは世界の学者——レントゲンの教授、専門家の共通の意見でございます。整形外科の教授がおっしゃった、だれだれがおっしゃった、これがこうなってまいりますと、整形外科、村田先生のように内臓外科、私のように開業医、武内先生のように内科医、これらの意見で議論をしておりますと、やはり四つに組まなければならなくなる。やはり専門家のレントゲンの教授の意見を聞くのが私は一番いい方法ではないかと思う。特にこの問題が広く海外に及びますと、私はこいねがっていることは、日本の学者の無能ぶりを発揮しなければいいが、この一言でございます。
  97. 田中武夫

    田中委員長 村田参考人からちょっと発言を求められておりますが、どうですか。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 いや、けっこうです。時間がもったいないですから、私、けっこうです。(村田参考人生野の検診のことで私レントゲンにタッチしておりますので……」と呼ぶ)
  99. 田中武夫

    田中委員長 それでは村田参考人発言を許します。
  100. 村田勇

    村田参考人 あのとき私も認定委員の一人としてレントゲンを見ました。大体七名かのレントゲン写真を全部見ました。その中には生理的な骨鬆粗症の所見はありましたけれども、一人も骨軟化症所見はありません。しかもいま問題になっておりますこの一例でございますが、これも骨軟化症ではございません。これは外傷性の骨折でございます。いま骨折のことでいろいろ言われましたが、整形外科のほうを見ますと横骨折ということばがあります。だからこれは外傷によって横骨折、横に折れることも幾らもある。だからこれは明らかに外傷性のものである。これがもし骨軟化症によるものであれば日本じゅう至るところにこういうレントゲン写真が出てくる。いままで私はずっとイタイイタイ病レントゲン写真をもう何万枚と見ております。それでイタイイタイ病のレントゲン所見と明らかにこれは異なる。もう一つちょっとつけ加えたいのですが、別に個人攻撃というわけではないのですが、生理的なレントゲン上の骨の骨梁といいますか、これを萩野先生がどう間違えられたのか、これも骨改変層であるというふうなことを言われたことだけをつけ加えておきます。これは生理的なものであって、骨改変層ではございません。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 一番大切なことは、やはりカドミウム汚染地域住民、疑似患者に対して不安を取り除くということだろうと私は思うのです。それが一番大事なことだと思うのです。ですから、患者、疑似患者あるいは汚染地域の住民というものの存在を無視してこういう問題は起こり得ない。また取り扱い方についても十分その存在、その立場というものを尊重しつつやることが私は大事な問題だと思います。それから考えますと、兵庫県の喜田村教授が調査をずっと実行なさるにあたりまして、また結果を発表される際に、たいへん失礼なものの言い方をいたしますけれども、先ごろここで御意見を述べられた中に、イタイイタイ病カドミウムではなくて、ほかの原因で何らかこういう症状を発生しているということになるのならば、それは学者の責任だというような趣旨の御発言がございました。そういうことからむしろお伺いしたいわけです。先生とは違った、この生野鉱山周辺のカドミウムによるところの症状、これをはっきりイタイイタイ病というふうに認定なさっておる萩野先生の存在があるわけですし、また住民方々もぜひ萩野先生の検診をお願いしたいというふうな意見をお持ちであることも事実であります。そこで、そういう見解、診断結果というものを発表なさる以前に、萩野先生についても意見を聴取する、いろいろ診断をするのに加わっていただくための努力というものをなさる必要があったのではないかということをわれわれは少し考えるわけです。これはやっぱり医学者としての立場から万全を期すとか、あるいは科学的にそごのないようにというふうな点から考えても、そういう措置があってよかったのじゃないかと思いますが、その点先生はどういうふうにお考えになってこの診断に臨まれたか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  102. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 私、先ほどカドミウム汚染人体への影響に関しまして、私の学問的な所見を述べました。しかしこの生野鉱山周辺地域汚染地域の健康診断につきましては、これは当然現在四十三年五月に出ました厚生省の見解が生きております。それに基づいての健康診断項目がきまっておりますので、その立場でもって検診に従事いたしまして、その立場で判断をいたしたわけでございます。その点は御了承いただきたいと思います。いまの、健康調査特別診査委員会というのが発足いたしまして、そこでまとまった結論を出す前に、現地の住民方々の感情を考慮して萩野先生になぜ意見を伺わなかったかという御質問だったと思いますが、その点は健康調査特別診査委員会というのが発足いたしましたときに、大体遠方から来ていただくのはたいへんだから、できるだけ地元に近い先生方でその委員を構成しようということで、これは県のほうのあれもございまして、それでお近くの先生方をお願いしたわけでございます。ただディスクの電気泳動の所見でございますね、これにつきましては慶応大学の土屋先生が御専門であるというので、土屋先生は東京においでになりますが、その先生をお呼びした、こういった次第でございまして、萩野先生がおっしゃっていることは、学会その他でわれわれも十分承知いたしておりますので、そういったものももちろん踏まえまして、それで結論を出した、こういう次第でございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 萩野先生から一言、その点についてのお話を承ります。
  104. 萩野昇

    萩野参考人 ただいまいたずらに人心を不安ならしめるという御発言がありました。私全く同感でございます。私の発言が人心を不安ならしめているのじゃなかろうか、これは私も非常に心配しております。というのは、私が鉱毒説を唱えてから、地元の人たちは嫁の来手がなくなる、お嫁に行けなくなる、米が売れなくなるというので、非常に私非難されたのでございます。その同じことが再び生野で起こるのじゃないか、それにもかかわらず、なぜそれを踏まえながらああいう発表をしたのかということをちょっと申し上げたい。  それは、一千年の歴史を有する生野鉱山が、その青年期、壮年期、老年期を通じましてのはなやかな鉱山活動を、まさに終わろうとしている、これは先ほどからのお話のとおり、ほんとうの天然死と申しますか、来年には休山するのでございます。この過程におきまして、私は現地に足を運びましていろいろ調査しますと、過去には骨が折れて、痛い痛いといって動けないで死んだ悲惨な患者、また特有なワッチェルガングをしながら歩行の不自由だった患者がたくさんいるという住民の証言を得たのであります。こういうことから考えますと、過去には大量のイタイイタイ病患者が発生していたということはうかがわれるのでございます。ただ、証拠がない、うかがわれるのでございます。そうして重症の患者たちは痛い痛いと嘆きながら死んでいった。現在残っているのはそのときの軽症の患者が、軽症であったばかりに生きながらえている。そのまさに証拠隠滅されようとしたしっぽをつかまれた。私は兵庫県のお立場はよくわかります。兵庫県の七人の委員の方は学者でございます。大学教授でございます。先ほどお見せした兵庫県のデータを見てこれはシロだなどとおっしゃるはずがないわけです。その説明を先ほど私は環境庁のテープに記録してあるとはっきり申し上げた。なかったらたいへんです。証拠隠滅になります。これを皆さんあとでお聞きください。そのように言っている兵庫県がなぜシロと発表したかといいますと、先ほど申されましたように、いたずらに人心を不安ならしめない、ほおっといてもいま残っている一握りの患者は死んでしまう、しかも鉱山は多彩な一生を終えて、いまここに往生安楽を唱える。あえて死者にむち打つ必要はないじゃないか。私たちはここで人心を不安ならしめないためにシロと言おうじゃないかという政治的発言だと思います。私は、それに対しては全く意見は申しません。私がもし兵庫県の委員の立場であったなら、このような状態のものを——これから壮年期を迎え、ますます鉱業事業が発展するのであれば、これを阻止しなければなりませんが、ほおっておいても自滅する会社をいまさらつかまえてみてもしようがないと思うからその気持ちになるのでございます。しかし学問は別でございます。先ほども言ったように、兵庫県の渡辺衛研所長が、私たちはシロと言っていない、マスコミがかってにそんなことをいっているんだ、私はこれでは納得がいかない。  以上でございます。
  105. 田中武夫

    田中委員長 喜田村教授も萩野先生も午後に残っていただきますから、質問者も先ほど申しておりますように武内村田両先生にまず集中してください。  岡本富夫君。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは武内先生に先にお聞きいたしますけれども武内先生、先ほど私のほうへはあなたの意見は違うのだというような反対のあれも全然来ていないというようなお話でございましたが、これは大石環境庁長官に対して、富山県のイタイイタイ病の協議会あるいは対策会議といいますか、こうした人たちから、厚生省見解を否定する立場であり、三井さんの弁護に立つ立場であるから、今後これを解任してもらいたいというような要求書が来ておるのです。ですから、先ほど言ったのとちょっと私は異にしたわけであります。  それから村田先生は三井金属、要するに富山県のイタイイタイ病裁判についてのいろいろな関係はございませんか。弁護するとか、あるいは参考人に立つとか、そういう面をお二人からちょっとお聞きしたい。   〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  107. 武内重五郎

    武内参考人 私が、反対の意見が全然来ないと言ったのは、学問をやっている人から学問的な理由をもって反対を述べてきた人が一人もおらない、こういうことでございますので、いまのそれは学問的とは違いますので、私の先ほどの答弁とは全然問題の質が違うと思います。  それから、いま会社に加担する意見ということをちょっと言われましたけれども、私はあくまでも学問に加担しておるのでございます。あくまでも学問的に正しいかどうか、私がおそれるのは学問であって、私の言うことに反対ならば、学問的な根拠をもって反対していただきたいということを私は申しておるのでございます。私は会社がつぶれようとどうしようと何ら関心のないことでございます。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、石崎先生にお聞きしたいのですが、時間が非常に短いので……。  先生は親しく生野町のイタイイタイ病患者と目される人を診断されたわけでありますが、シロと言えるのか、あるいはノーなのか、これをひとつ簡単にお聞きしたいと思います。
  109. 石崎有信

    石崎参考人 私は患者を診断いたしておりません。患者は見ました。が、しかし臨床家でございませんし、臨床的立場から見たのではございません。ただ、かねてこのイタイイタイ病の尿所見というものについて研究しておりますので、尿をもらってきて、そして分析いたしました。その結果は、十分カドミウム汚染が存在し、かつそれが人体影響を及ぼしていると十分疑います。ただし、調査しました例が非常にわずかでございますから、最終的な結論ということは私は保留いたします。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、私のあと今度は、古寺委員は本職の医者でございますので、そっちからあれしていただきますが、萩野先生は、先ほどからレントゲン写真について骨軟化症である、あるいはまた兵庫県側としてはそうではないのだ、あるいはこういうようないろいろなあれがありましたがそれでは、萩野先生はレントゲンの専門の方にそのレントゲン写真を見てもらったか、そして何かそういう話があったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  111. 萩野昇

    萩野参考人 実はございます。はっきり骨軟化症と言われました。   〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ一言お答えしたいことは、その事実をきょうこの国会で私が言うとは思っていなかった、そのような鋭い質問が浴びせかけられるとは思わなかった。というのは、マスコミの人たちが、それを大きく、きょうの夕刊なりあすの新聞に出すのじゃないか、そうしますと、その先生に万が一御迷惑がかかると思うのでございますが、その先生ははっきり言っておられますので、お答えいたします。  先ほど申しましたように、整形外科の教授、内科の教授その他の教授が、これは外傷性だとおっしゃった。そこで、私は、金沢大学のレントゲンの教授平松博博士のところへ参りました。黙ってこの写真を出しました。先生、これはどうお思いになりますか、骨軟化症イタイイタイ病のようだな。これはどう思われますか。イタイイタイ病のようだ。これはどう思われますか。骨軟化症でウンバウッオーネ、ミルクマンのプソイドフラクッールと言ってもいいのじゃなかろうか。これはどう思われますか、これもまさにしかり。そうして私は申しました。先生、実は困ったのです。先生がそうおっしゃいますけれども、この大学の教授でそうじゃないと言う方、あるいは神戸大学の教授でそうじゃないと言う方があるのですが、先生はこれに対してどうお思いになりますかと言ったら、私は隠しごとはきらいですから、ありのままを申し上げましょう。どうしてこんなはっきりしたことをそう言うのだろうか、学問の真実は必ず通る、私はレントゲンの専門家としてそのように証明するとおっしゃった。  ところで、それはおまえ、証拠があるか、証拠がございます。御要求になれば——後ほどまたということでございますが、このような事実があるのでございます。なぜ、専門家の平松教授がはっきり言われた、それをほかの教授はそうじゃないと言われるのだろうか、私はこの際の軍配はやはりレントゲンの専門家の教授の意見をとりたいと思います。  ただ、最後に、きょうここでこのようなことを言うはめになるとは思っていませんでしたので、その点は、私、毛頭うそを申し上げるのじゃございませんが、ある程度お含みおきいただきたいと思っています。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、萩野先生から先ほどいろいろなお話がございまして、結局、最後は、先生のイタイイタイ病を長年手がけてこられたあれによって一期、二期、三期、四期、五期、こういうように分けられていまして、聞くところによると、四期、五期がイタイイタイ病の認定になる、それまではならない。これについて何とかしてこの被害者を救済しなければならぬというわけで、環境庁長官も、過日、その範囲を広げたい、近く広げるのだというようなお話がございました。  そこで、重松先生にお聞きしたいのですが、こういうイタイイタイ病の認定幅の拡大、疑わしい患者を救うためにそうするのだという環境庁長官の話もありまして、答申なさっておるそうですが、重松先生の御意見をひとつお伺いしたいと思うのですが……。
  113. 重松逸造

    重松参考人 ただいま御指摘のイタイイタイ病認定条件でございますが、これは昨年度環境庁から委託されまして、いまお話しのように、できれば疑わしい者も救えるようにということで、私ども研究班を結成しまして研究してまいりまして、先般、環境庁へ提出する運びになりました。その結果は、御指摘のように、できるだけ疑わしい方も救えるようにワクを広げようということでございます。もちろんこの疑わしいという意味は、学問的に全く関係がないというのが明らかな方までを入れるという意味ではございません。今日の学問の時点ではどちらとも言えないというふうな場合には、少しでも患者さんの利益になるようにしようというのが趣旨でございます。そういう観点からいま環境庁へ提出しておりますので、いずれ公表になると思いますが、この条件の中では、そういうカドミウム汚染地に長く住んでおられた方で、かつ——住んでおられただけでは、はたしてそのカドミウムに対する暴露があったかどうかは確かではありませんので、その住んでおられ、かつカドミウムが余分にからだに入るようなそういう暴露の機会があった方。それから先ほど来問題になっておりますいわゆる先天性の骨軟化症といいますか、そういうものではない、おとなになって骨軟化症の症状が出てきた方。特にイタイイタイ病の例から見ましても更年期以後の御婦人の方。それから三番目にはじん臓障害、特に尿細管障害が証明された方。この尿細管障害が先ほど来論議が出ておりますように、これがカドミウムによる尿細管障害ということが的確に証明できる手段があればいいのでございますが、今日の時点ではまだそれができませんので、そういう表現になっております。障害があった方。それから四番目にはレントゲン所見、あるいはもういまはレントゲンだけではなしにむしろ骨の一部を取って生検をする。要するに生きた材料を少しだけ取りまして、それを顕微鏡下で見ればより的確な診断ができるということで、そういうレントゲン所見にプラス、できればそういう生検もやって骨軟化症の症状がはっきり証明できた方。ただ、いまのレントゲンあるいは生検材料でもかなり疑わしいのだけれども、それだけでは典型的ではないような方も、ほかの血液所見その他の一般的な所見骨軟化症に合っていればそういう方もイタイイタイ病に準じて取り扱うという、そういう趣旨研究結果をいま出しております。  それで特に骨の所見がはっきりしない方。つまり尿細管障害までははっきりしているのだけれども、いま四番目に言いました条件がはっきりしない方は、現時点ではこの方がほんとうイタイイタイ病みたいになるかどうか、先ほど来話が出ました腎性骨軟化症というものになるかどうかというのは、いまの学問の時点では何とも言えない。少なくとも否定はできないので、そういう方は要観察者というワクで取り扱ってはどうか。これが研究班の結果でございます。  この条件が直ちにいまの生野の方に当てはまるかどうかという点につきましては、まだ幾つか検討すべき問題があろうかと思います。特にそのいまの三までの条件の方が、先ほど来論議がございますように、生野の方がほんとうにそういう典型的なものであるかどうかということが幾つか問題がございます。特に骨の所見に関してはまだ論議も残っておりますので、その辺はわれわれとしては、これは行政的な判断にまかせるべき問題であろうかと考えております。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 重松先生もう一つ兵庫県はもう全然これはシロである、こういうふうに発表されたわけですが、先生のほうでは、鑑別診断班のほうでは、これはまだもう一ぺん再調査しないといけないというお考えなのか、あとのお考えか、この点ひとつお聞きしたい。
  115. 重松逸造

    重松参考人 先生の言われたあと考えでございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、喜田村先生にお聞きしたいのですが、先生は先ほどお話の中で、重金属体内に大量に入ると人体影響があるということはわかる。しかしカドミあるいはまたそういう重金属がどんどん体内に入ってきても、ある程度たまるとあとは排出されるのだというようなお話でございまして、ですからそうしますとどんどん蓄積されていくばかりではないのだ、ある程度たまればもうおしまいだ、こういうようなお話でございましたが、その点についてもう一ぺんお聞きしたい。
  117. 田中武夫

    田中委員長 なお、先ほど発言を求められた点が簡単でしたら一緒にしてください、長ければあとの機会でけっこうでございます。
  118. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 それではいまの御質問からお答えいたしますが、結局ある程度たまったら排せつが起こるというのじゃなしに、結局人体、すべて生物はそうでございますが、そういった有害なものをいつまでもからだの中にためておくというようなことは、これは生物の本能としていたしません。そういうものは排せついたしますので、それが少しずつ排せつされていく。片方では入る。排せつされていく。それでずっとたまっていきますが、ある程度の年数がたちますと、それ以上はもうたまらない、こういう意味のことを申し上げたのでございます。そのときによけい、倍食べれば倍だけたまる、それはもう事実でございます。どんなに食べてもある一定のレベル以上ふえない、こういうことじゃございませんです。その人について、ずっと平均的に食べておれば、ある程度のところへ達して頭打ちになるという、こういう意味でございます。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、私も獣医をしばらくやったことがあるのですけれども、やはり人間、あるいは生物には、体力にいろいろと差別がありますよ。先生が先ほどからおっしゃったのも、一人の患者あるいは二人の患者、限定されたようなお話でございましたけれども、私はやはり差別があると思うのですね。ですから排出するところの力に限界がある。よく排出する人とあるいはあまり排出しない人と、こういうように、要するに病気に早くかかる人となかなかかからない人と、こういうような面を考えますと、私は先ほど先生がお話しの中で、ちょっと奇異に感じているわけです。  そこでもう一つお聞きしたいのは、骨軟化症がほかにもたくさんあるのだ、これは私も骨軟化症患者を見たことがありますけれども、これはカドミによる場合とそれからほかの原因によってなった場合もございましょう。しかし少なくともこの市川流域ですか、先生が研究なさった市川流域、バックグラウンドとして汚染米、そういうものがあるからそこにやはり基因があるのだ、こう考えたために、あなたのほうでは、県のほうとしてもこうして調査したのではないかと私は思うのす。ですから全然そんな、カドミ関係ないのだと言い切ることは、これはちょっと軽率ではないかと思うのですが、その点について……。
  120. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 おっしゃるように、確かに個体差というのはございます。ですから、かなりな安全率というのを見積もって安全基準というものはこしらえられてございます。たとえば米のカドミウムの安全基準一PPMと申しますのは、先ほど申しましたように八十分の一の安全率がかかっております。当然そういった個体差がありますと、多少の排せつ能力というのですか、に違いがございますので、すべてが同じようにいくとは限りませんけれども、しかしその個体の差というのはそんなに人によって百倍も出るだとか、普通の人が百分の一しか出ない、そんな個体差というのは考えにはございません。そういった程度の極端なものはございません。  それと、確かに生野周辺地区カドミウム汚染がありましたので、それが人体にいろいろ影響を及ぼしているのではないかということでもって、それで検診を始めたのでございます。それで骨軟化症所見を呈する者はないということで、カドミウムじん臓機能変化を生じますので、その分につきましては、そういった、それに似た変化を出す者がおりますので、それがカドミウム影響であるか、あるいはそうでないのか、その辺は今後さらに継続して調査していく、こういうことになっております。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま先生、そうするとカドミウム中毒に似たような症状を起こす者がいるからそのあとはまださらに調査するんだ、こういうお話ですね。
  122. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 じん臓の機能変化でございますよ。骨じゃございません。
  123. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に喜田村先生、あなたも兵庫県、私も兵庫県ですが、やはり地元の皆さんがいま被害者、ほんとうはもっと人体影響のある方もいらっしゃるのですが、そういう人たち兵庫県に対して、健康調査に非常に不信を持っているのですね。これはもう新聞で見たりいろいろな、あなたも御存じだと思うのです。そこでどうしても萩野先生を入れてくれというようないろんな意見住民として相当あるわけです。先生、委員長として、じゃあひとつ皆さんの声を聞いてみな救ってあげようじゃないかという考えであれば私は知事にも進言しますよ。そしてあと人たち調査のときにはやはりきちっとした住民が納得する診断をしていただけると私は非常にありがたいと思うのですが、その点いかがですか。
  124. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 委員会でございますので、私、委員長でございまして委員方々の御意見をお伺いいたしませんと、ここで私、委員長が独断でお答えするわけにもいきませんけれども、私個人といたしましては、やはり委員会のほうへいろいろデータを持ってきていただきませんと、ただ御本人の御意見だけをお伺いしているんじゃ委員会としての討論になりませんので、データを持っておいでになれば、これは委員会の先生方皆さん集めるのもたいへんでございますから、私委員長をいたしておりますその個人としては、いつでもお話をいたします一ということは申し上げております。そういったことで、皆さん方が納得なさるんでしたら、私は個人的なあれといたしましては、そのような場を持ちたい。ただそのときにやはりきちっと学問的な検討をいたしますので、しっかりしたデータを——データだけじゃない、その裏にあるものからすべてをわきまえて、それで持ってきていただきませんと、そういった委員会での討論にはなりませんので、その点お答えいたします。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 あとの質問は午後にいたします。
  126. 田中武夫

    田中委員長 古寺宏君。
  127. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に喜田村先生にお尋ねをいたしたいと思いますが、先生はわれわれの体内カドミウムがある程度蓄積されるとそれ以上は蓄積されない、ある程度の限界がある、こういうようなお話を先ほどなさったわけでありますが、先生のお考えでは、じん臓なり肝臓には大体どのくらいのカドミウム蓄積されるのが限界とお考えでしょうか。
  128. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 限界と申しますと、これはよけい食べればよけい蓄積いたします。ですから摂取量に応じていろいろございますので、いまの御質問は障害を及ぼす限界というふうに私解釈いたしましてお答え申し上げますが、結局カドミウムじん臓のほうに障害が起こりますのはじんの尿細管障害でございますので、じん臓のほうが機能障害を起こす蓄積量というのがいろいろ研究されております。スウェーデンのフリーバーグあたりは、じん臓に二百PPMですか、これだけ蓄積すると機能障害が始まる、こういうことを申しております。われわれのほうでも、一般人のほかの病気でなくなった、あるいは事故死でなくなった方々じん臓カドミウムをずっと分析いたしておりますが、汚染を受けてなくても、皮質のほうですと百をこすといったような方々が見られますし、それから群馬大学の野見山助教授、いま自治医大のほうにおいでになりましたが、野見山教授があそこでおはかりになった例では、二百PPMをこしておって異状がないといったような例も報告しておられます。ですからはっきり幾らをこしたら出るということは言えませんけれども、大体フリーバーグさんあたりが向こうのカドミウムワーカーでお調べになりました例から一応二百PPMということを発表されております。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 今回の委員会でもって結論を出していらっしゃいますが、安中の場合のような例を申し上げますと二万二千PPMというような結果が出ているわけでございますが、先生は一体どのくらいのカドミウム蓄積されているというふうに委員会結論を出されたのか、そしてまたこの十一人の方々に対して今後心配がないという結論を下されたその根拠、この点についてお伺いしたいと思います。
  130. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 もちろん体内カドミウム蓄積量をはかるわけにはまいりませんので、ですから尿中に出ますカドミウム、これが先ほど申しましたようにからだの中に多くたまっておれば多く出る、こういうことから、これは検診の一項目にも使われておりますが、その尿中のカドミウムから推定いたしまして、それが一応二次検診の目安になっております三十マイクログラム・パー・リッターをこえている者が三次検診の結果一名もいなかったということです。ですからそう重大な障害を及ぼすほどのカドミウム蓄積はしていないだろう、こういう推定が一つつきます。  それともう一つじん臓障害から骨の変化、いわゆる骨軟化症に至りますのは、これはやはり尿中に非常に燐が排せつされまして低燐血症を起こす、それで結局腎性の骨軟化症につながるということなんでございまして、ただたん白が出ればそれで必ず骨に変化が至る、こういうものではございません。ですから第三次検診で詳細にそういった血液、尿のカルシウム、燐を調べたわけでございます。それが結局正常範囲に入っておった。  それで、あそこは先ほどからお話もございますようにカドミウム汚染というのは非常に古くからある。第三次検診にのぼってきた方ですと七十、八十の方がずいぶんおられます。そういった方がいままで何十年暴露を受けてきて、かつその状態である。それで、いま環境汚染対策は立てられております。米も一PPM以上のものは食べないようにということになっております。ですから今後は暴露が減るわけでございます。いままでかなりな暴露を八十年受けてきた人がその骨には変化がいっていない。七十の人もそうだ。それで今後汚染がやむのだから、いま五十の人がこれから二十年暴露を受けましても骨変化を来たすというまでには至らない、こういうことから、将来ともイタイイタイ病が発生するとは考えられないということでございます。それは医者でございますから、絶対に起こらないというような結論は出しておりません。そんなことをやりますとこれは問題でございますので、サイエンスに絶対ということは言えませんから、そういう趣旨結論を出した次第でございます。
  131. 田中武夫

    田中委員長 古寺君に申し上げます。  武内村田参考人に対する資疑があればやってください。あとで他の参考人には次の機会を与えます。
  132. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは村田先生にお尋ねをいたしますが、先ほどビタミンD骨軟化症関係のお話があったわけでございますが、イタイイタイ病の認定をされた時点において、過去にビタミンDを投与したことのない患者さんのいわゆる骨の変化というものについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  133. 村田勇

    村田参考人 認定されたものでございますね。
  134. 古寺宏

    ○古寺委員 認定されてもされなくても、いずれでもけっこうです。
  135. 村田勇

    村田参考人 どう考えるとはどういうことでございますか。
  136. 古寺宏

    ○古寺委員 いわゆる三十年とか四十年という時点でございますが、三十年以前のものであろうと以後のものであろうと、ビタミンDを投与していない場合のいわゆるイタイイタイ病患者の骨の変化
  137. 村田勇

    村田参考人 これは脂肪性食品あるいはカルシウム、こういったようなものが食事によって多く入っていったときは、ビタミンDを投与していなくてもよくなることが多いのでございます。これは明らかに腎性のものではないという一つのきめ手になるというふうなことでございます。ですから、認定されたものの中でDを投与されなくてもよくなっている人もあるわけなんです。  ただ、私がさっき言いたかったことは、要するに公害というふうなものはできるだけの規制をしなければいけないけれども、ただ、少し何かあるとすぐ骨軟化症につながってくるということでございます。それは非常な不安を与えます。ですからその点、D過剰症、こういうことでも、骨軟化症と鑑別ができないような状態です。たとえばいま安中の話も出ましたし、それから生野の話も出ましたけれども、私のこの間から見ましたそのレントゲン写真状態において、もし予防の意味をもって大量のビタミンDが投与されるということになれば、これは本格的なビタミンDによるところの過剰症の骨変化が起こってくる可能性がある。だから、過去に富山県においてはそういうことがあったのですから、またこういうことを二度と繰り返してもらうと、これはたいへんなことであるということでございます。
  138. 田中武夫

    田中委員長 時間が参っておりますが、あと一問に限り許します。
  139. 古寺宏

    ○古寺委員 今回の生野の場合はビタミンDの過剰投与によるものというような御見解をお持ちなんでしょうか。
  140. 村田勇

    村田参考人 そういうものは全然ありません。これからあとは、わかりません。
  141. 田中武夫

    田中委員長 浦井洋君。  浦井君に申し上げます。本会議の振鈴が鳴りましたら、直ちに委員会は休憩いたします。それを御了承の上で質疑をお願いします。
  142. 浦井洋

    浦井委員 武内先生村田先生に限ってお尋ねをしたいのですが、私ここに「現代内科学大系」という本を持っております。これは私も医者なんで、先生方も御承知だと思うのですが、内科医に限らず、医師全体がこの本を教科書のように見ておるわけなんです。この六九年度版の中に「イタイイタイ病」という項があります。そこに武内先生が執筆をされておるわけなんですが、ここではカドミウムが第一の引き金である。そして第二の引き金としていろいろな栄養障害ビタミンD不足であるとか云々ということが書かれてあるわけなんです。これかきょうの先生のお話では変わったということになるわけなんです。そうしますと、第一点は、これは教科書みたいなものですから、これを書き直しをされるのかどうかですね。念のために聞いておきたい。  それともう一つは、そういうふうな先生の学説に基づいて、武内先生村田先生のほうで現在先生方の学説を満足しているような患者さんは一体何人くらいあるのかという点を聞いておきたいと思います。  それから、私は少数だろうというふうに思うわけなんですが、そういうようなことになりますならば、イタイイタイ病患者というのは現在認定をされておるだけでも神通川流域で百数十人、要観察者が約千人おられるそうでありますけれども、この要観察者も含めた約千人の方々に、ほとんど大部分、先生方が言われるようなビタミンD過剰症、ビタミンDの過剰投与が過去においてされておったのかどうか。その辺の調査なりデータなりをお持ちかどうかという点をお尋ねしたい。  もう時間がないので続けてやります。  それから先生が持っておられる、患者さんを含めたそういう神通川イタイイタイ病に悩んでおられるたくさんの方々ビタミンDが投与される前と投与されてあとの尿所見、あるいは血液の所見、こういうものをはっきりとつかんでおられるのかどうか。私なぜこういうことを申し上げるかというと、いま申し上げた二つの点がはっきりとそろってこそ、お二人の先生方の昨年八月の変説が成り立ち得るであろう。それが満足されない限りは、先生方の学説は認められないのではないかということを私の意見として申し述べておきたいと思う。  それから第三点、これは小さな問題かもわかりませんけれども、いま金沢大学の平松教授のレントゲンによって、あの写真では骨軟化症と骨粗鬆症とが同時にあるという証明がされたわけなんでございますが、この点について特に整形外科の専門であられる村田先生はどのように考えておられるか、これだけをお尋ねすればちょうど時間になる。
  143. 武内重五郎

    武内参考人 私の考えが変わった過程については一番最初に申し上げましたけれども、私どもが調べた昭和四十年入院された方、これはもうすでにビタミンDが非常に長く使われておった方でございます。私どもは当時、先ほど村田先生がおっしゃいましたけれども、それほど非常に大量投与があったということは実は知らなかったのです。ですから、そういう事実がわかってみると、もう一度、Dが使われていないときのはっきりと、それでしかもよく調べられた方について調べてみよう、こういうことで調べ直していったのでございます。そういたしますと、昭和三十年ころの症例には、じん臓の機能はほとんど変化がない。あってもわずかです。これはただあっても、ビタミンD不足そのものが同じようなじん臓尿細管の機能の変化を来たしますので、ですからそれでも十分説明できるのじゃないか。また、剖検の所見においても、外からじん臓尿細管障害する物質が入ったとは考えられない。これは病理の梶川教授がそういうふうな強い御意見を抱いておるわけです。ところが、昭和四十年ころになりますと、じん臓尿細管の機能も、それからまたじん臓の生検あるいは剖検、そういうものによってじん臓尿細管にはっきりとした変化が出てきている。しかも中には、昭和三十年に調べて、そして四十年にも同じ方で調べられております。  そこで言いたいことは、昭和三十年ころには骨の障害が非常に強かったけれども、その時点ではじん臓尿細管障害というのはきわめてわずかかほとんどない。ところが、四十年になると、骨のほうはなおっていっておるのに、じん臓のほうは逆にだんだんと機能が低下していっておる。
  144. 浦井洋

    浦井委員 何例くらいです。
  145. 武内重五郎

    武内参考人 これは何例といいましても、われわれが調べたのが四例調べております。それからそのほかに剖検されたケースというのがずいぶんありますから、それから……
  146. 浦井洋

    浦井委員 何例くらいですか。
  147. 武内重五郎

    武内参考人 全部で剖検されておる例は十一例でございます。ただし、そのうちの三例はイタイイタイ病と診断されたけれどもイタイイタイ病でないという症例があるわけです。そういうことです。それから富山のいまの村田先生のほうで、やはり初期からかなり長いことじん臓の機能の推移が調べられておる例というのが何例もございます。ですから、そういうことを総括して、私たちは、じん臓の機能に障害が起こったのは昭和三十年以前ではなくて、昭和三十年以後のできごとなのではないのか。そうすると、昭和三十年以後において、しかもかなり普遍的に患者さんのからだに入って、そしてじん臓障害する物質というのは何があるのだろうかということになるわけです。それは病歴の検査からすると、どうもビタミンD以外になかなか見つからない。あればそれを示してほしいのだということを私どもは言っているのでございます。ビタミンDがどのように使われ、その間にどういうことが……
  148. 浦井洋

    浦井委員 質問にぴしっと答えてください。例数は少ないということはわかったから……。
  149. 武内重五郎

    武内参考人 例数は少なくございません。われわれ調べた中では一番多い例数でございます。
  150. 田中武夫

    田中委員長 村田参考人。できるだけ簡潔にお願いいたします。
  151. 村田勇

    村田参考人 さっき変説は二方と言われたと思いますが、私は変説しておりません。私はメカニズムが違うと言っているだけで、イタイイタイ病は腎性骨軟化症でないということです。私は全然変えておりませんから、それは私の発表したものをみな読んでもらえば大体わかると思います。  それから、いまのDによるじんの変化ということは、これはレントゲン所見を私はずっと昭和三十年から連続で見ております。それであのような骨の変化を起こしてくるということは、いま話しのようにビタミンDよりほかに考えられません。
  152. 田中武夫

    田中委員長 この際、午後三時三十分まで休憩をいたします。    午後二時一分休憩      ————◇—————    午後三時三十九分開議
  153. 田中武夫

    田中委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  喜田村参考人から発言を求められておりますので、これを許します。喜田村参考人
  154. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 先ほど午前中の委員会萩野さんのほうから御発言がありましたことの内容に対しまして、私から少し追加を申し上げたいと思います。  まず、あの御発言の中で何かマル秘になってお配りするわけにはいかない、これが兵庫県のデータだということをお示しになりまして、その中でディスクの電気泳動のパターン、これを三洋電機の原田さんがこれはカドミウム中毒のパターンだということをおっしゃった、こういう旨の発言がございました。兵庫県は原田さんからディスクの泳動を習ったのだ、その教えた本人がそういうことを言ったのだという御発言がございました。私、原田さんとは同じ京都の公衆衛生の教室におりまして、よく存じております。ですけれども、いまのパターンをもって、これがカドミウム中毒のパターンだということをおっしゃったことはございません。  それから、同じくその御発言の中に、兵庫県の衛研の所長をやっておられる渡辺所長さんが、自分はシロだと言ったのは、自分が言ったのではない、マスコミが言ったのだというそういう御発言がございました。私やはり渡辺所長とは京都の教室におりましたときに御一緒におりました。いまでもすぐ隣同士に、建物が、衛研が医学部の隣にございますので、よく存じておりますが、そういった発言は渡辺所長さんはおっしゃっておりません。むしろ私が聞きましたのは逆でございまして、萩野さんがあれがクロだと言ったということをおっしゃったときに、萩野さんのほうが、おれが言ったのじゃない、あれはマスコミが言ったのだというふうにお答えになった、こう私は渡辺さんから直接お聞きをいたしております。  それから、先ほどレントゲン写真の読影はレントゲン科の教授でなければできないのだ、それが一番正しいのだということをおっしゃったのでございますが、それは確かに、レントゲンをとりますのはいろいろな部位をとります。消化管その他ということに関しましては、これはレントゲン科の先生の診断のほうが確かでございますが、事骨のレントゲン撮影の診断に関しましては、これはレントゲンの教授よりも整形外科の教授、このほうがよほど——整形外科というのは御承知のように、ほとんど骨ばかり取り扱っているので、そのほうが診断が確かでございます。事実この兵庫県におきましても、腎性骨軟化症というのがございますが、それのレントゲン写真を持っておられるのは、これは整形の教室の柏木教授のところでございます。放射線科にはそういった写真はございませんし、それと、先ほども少し申し上げましたように、兵庫県の健康調査特別診査委員会というのがありますね。これには神戸大学の放射線科の助教授を長年やっておられまして、ただいま兵庫県立がんセンター病院院長をやっておられます木村先生が委員に入っておられます。この方は、もう二十何年ですか、放射線科でレントゲンのほうを見ておられました。その先生もお加わりになっての診査の委員会で、やはり骨のことは、これは整形の先生のほうにおまかせしますという御発言でございました。  それと一部の患者さんで血液所見で非常に燐が低くなっておる、いわゆる低燐血症があるという、そういうような御発言がございましたが、これは低燐血症ではございません。こういった燐の値は正常値の範囲内でございました。  それとアルカリフォスファターゼ、これが非常に値が高かった。これはもう事実でございます。これはその患者さんが外傷性の骨折を起こしておりまして、それが非常な、治癒機転にあるわけでございます。そのために当然アルカリフォスファターゼの値は上昇いたします。  以上追加いたしておきます。
  155. 田中武夫

    田中委員長 萩野参考人も何かありますか。——それでは、萩野参考人にも発言を許します。萩野参考人
  156. 萩野昇

    萩野参考人 ちょっとお尋ね……。二番目の、シロと言わないということを、ちょっと私聞いていたのでございますがはっきり聞こえませんので、もう一度言ってください。
  157. 田中武夫

    田中委員長 それは何にですか——実は参考人から参考人に対する質疑応答ということはできませんので、委員の質問に答えるという手続を踏んでひとつその点は明らかにしていただきたいと思います。  それでは、質疑を続行いたします。八田貞義君。
  158. 八田貞義

    ○八田委員 時間の関係で簡単に御質問いたします。  さいぜん萩野参考人に、朝日新聞に載った先生のお話は間違いないかということをお尋ねしたわけでございますが、これを簡単に読んでみまして、先生にまた間違いないということを確認していただきたいと思うのです。  朝日新聞には、「ビタミンDの与えすぎ」「イタイイタイ病死亡の一因」こういうような見出しで五月二十三日に書かれております。これに対して萩野先生は、「戦前の例を説明できぬ」という見出しのもとに「私が治療した患者にはビタミンDの投与で死んだとみられる例はない。私がビタミンD患者に投与したのはビタミンD不足説を主張していた三十年ごろのことで、鉱毒説をとり始めた三十二年以後は患者治療にはビタミンDを使っていなかった。ところが四十三年ごろにウィーン大学のある教授が慢性カドミウムによる腎性骨軟化症にはビタミンDの大量投与が最も治療効果があると発表したため、再び一日十万から二十万単位のビタミンD患者に投与している。同病の死因がビタミンDの過剰投与によるものなら治療法のなかった戦前から神通川流域で苦しみながら死んでいった患者がたくさんいた事実が説明できなくなる。」こういうふうに書いてございますが、このあれには間違いございませんか。
  159. 萩野昇

    萩野参考人 間違ったところもあります。それは電話の照会でございまして、私の言ったことが非常に縮められております。縮められておる関係で、その表現は私の意に反する点もございます。
  160. 八田貞義

    ○八田委員 その点、ちょっとおっしゃっていただきましょうか。
  161. 萩野昇

    萩野参考人 私は外来の診察を終わりまして診察場におりますと、電話がかかってまいりました。そうして、きょうの県会の委員会ビタミンDの過剰によって患者が死んでいるという話があったのだけれども、この話について先生はどう思いますかという質問でした。私はそれを聞いて、どういう意味かと質問いたしましたら、先生のところにそういう例はあったのかということでございます。そこで私は、私の記憶している範囲でそういう例はない。私は一番最初に申しましたように、昭和二十一年にこの病気を発見いたしまして、そして昭和二十三年のころから宮田教授の御指導でビタミンDを使った。もしビタミンD欠乏性の骨軟化症であれば、少量であっても反応するのが常識でございます。反応しなかったので、私たちはDはきかない、先ほど一ぺん言っておりますから、くどいので省きますが。ところで、その後その使用を中止いたしまして、ろ過性病原体の検査に入ったわけでございます。三十年になりまして再びDを使った。しかし、これが私の鉱毒説の学会報告とともに、鉱毒が原因なんだから、いわゆるビタミンD欠乏による骨軟化症ではないんだろうということで、Dを使ってみようという気持ち半分と、Dを使ってもきかないんだという気持ちとで、だんだんDの使用がおろそかになった。三十六年にカドミウム説を唱えてから——カドミウム原因イタイイタイ病が起こっている。その一つは、動物実験もしなければならないけれどもカドミウムの毒性というものを研究するために、稲作のスポット試験にカドミウムを与えてみると、カドミウムの多い稲作ほど減産で、もう少しふえますと稲が死んでしまう。死んだ稲になってしまう。(八田委員「時間がありませんので簡単に」と呼ぶ)わかりますが、こうお話ししないとおわかりにならない。あなたはお医者さんでございますし、経歴がお深いのでございますから、理解していただきますために……(八田委員「いや、私の質問だけに……」と呼ぶ)
  162. 田中武夫

    田中委員長 私語はやめていただいて、参考人も質問の要点をとらえて御答弁を願います。
  163. 萩野昇

    萩野参考人 そこでDの服用が減ってまいりました。そういうことを電話で話したのでございます。そして、Dの服用がだんだん減ってきて使わなくなってきた。もちろん私は、全然使わないというわけでなく、中には全然Dを使わない人にはもう少し使ってみるかなという気持ちも動いております。そしてDの使用がだんだん減ってきたところへ、四十三年に——そこにカドミウムと書いてございますが、腎性骨軟化症でございます。腎性骨軟化症には大量のビタミンDが必要であるという文献を読みまして、じゃ一ぺん大量をやってみようじゃないかということで大量をやった。その結果、副作用に気をつけていたからそういう例はない、こういうふうに長く説明したわけでございます。それを新聞の方が、電話で話したものですから縮められてそのようになった。ですから私は、一部違う、こういうふうに申し上げます。
  164. 八田貞義

    ○八田委員 萩野先生にさらにお願いしたいのですが、そうしますと萩野先生は、この点においてビタミンD不足説を主張していた三十年ごろは患者に投与したりしておって、三十二年以後はビタミンD治療をやめた、こういうふうに新聞には書いてあるのですが、この点はお認めになりますか。
  165. 萩野昇

    萩野参考人 いま申しましたように、全くストップした々じゃなくて、使用を減少し、中心がそれから鉱毒の研究に移っておるわけでございます。つまりビタミンD欠乏性の骨軟化症とは思いませんから、そのほうの使用に重点を置かなかったということでございます。
  166. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、私は萩野先生に意地悪い質問をするわけではないですが、先生は、ウイーンのある大学教授が腎性骨軟化症にはビタミンDの大量投与が非常にきくのだということを言っておられますね。ウィーン大学の教授は一体どういう人なんでございますか。どういう教授が腎性骨軟化症ビタミンDの大量投与がきくんだ……。
  167. 萩野昇

    萩野参考人 文献は持っておりますが、名前はちょっといま記憶にございません。
  168. 八田貞義

    ○八田委員 時間もありませんから……。  萩野先生ビタミンDの投与を全然やめてしまったのではないのだ、その間ビタミンDはやっておったのだということは、先生が書かれた「イタイイタイ病との闘い」という昭和四十三年にお出しになったこの治療本を拝見しますと、三十年から四十三年まではずっとビタミンD治療をやっておられたように私はこの本から承知するわけなんです。  そこで私が萩野先生にもう一つお伺いしたいのは、ビタミンDの大量投与が鑑別診断の上にも非常に支障を来たす、じん障害を来たすのだということが問題になって、イタイイタイ病鑑別診断委員会が先生の病院に対して、ビタミンD投与期間あるいは投与量、治療経過を明らかにしたデータを出してくれ、こういうようなことを委員会から要求されたにかかわらず、これを全然出しておられない、こういうことを承知いたしておるのですが、この点いかがでしょうか。
  169. 萩野昇

    萩野参考人 委員会から正式にそういう要求はございません。ただ梶川教授がある人に関して知らしてくれと言われるので、私は報告しておきました。それから武内教授がつぶやきのように言っておられます。しかし委員会から正式にそういう要求はございません。
  170. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、委員会からはなかったけれども、その中の委員の方からはそういう要求があったということはお認めになるんでございますね。
  171. 萩野昇

    萩野参考人 また御説明すると長くなるといっておしかりを受けるのかもしれませんが、やはり事情を御説明しないとおわかりにならない。どういうことかといいますと、昭和四十三年に——私いま申し上げることは午前中に申し上げたかった。それで何回も手を上げたけれども指名がなかった。おられないところで言いたくない。おられるところで言いたかった。それはどういうことかというと、四十三年に、やはりイタイイタイ病治療をしておられます某病院で、ショッキングなDの中毒患者が出たのだそうでございます。そのとき私のほうはやはり気をつけておりましたけれども、そういうものがなかった。そしてそれを私は聞かせてもらってなかった。四十四年になりましてそのような事実を聞いたわけでございます。そしておまえのところにも出ているんじゃないか。その出ているんじゃないかと指定されました最初の例はミリアルツベルクローゼ、粟粒結核でございます。そして胸部の写真に非常にたくさんの石灰の沈着のような写真が写っております。これはDの過剰のための石灰沈着である、これはおまえのところの患者だろうという指摘を受けました。私はその写真を見て、ああこれは古里に入院したあの粟粒結核の人の写真だ、こう思いました。しかし一応Dの過剰があるといけないからというので照会してみますと、その患者さんはガフキー九号の結核菌を出しました粟粒結核で、すでになくなっておりました。そこで私は、私の手元にありましたその写真を某教授にお見せしたのでございます。先生、これは粟粒結核と思われますか、Dの過剰でございましょうか。これはもうりっぱな粟粒結核じゃないか、主治医はどう言っているのだ。古里の病院、国立結核療養所の先生は、これはりっぱな粟粒結核だと言っておられました。ああ、それなら私もやはりそういうふうに見るなということでその患者さんは過ぎたのでございますが、そのとき私は、この写真は粟粒結核と思っておる。しかしそのようなことがあったとすれば、私のほうも気をつけようというので再びDの使用は、全然やめたわけではございませんが、一応全面的に警戒したわけでございます。そうしてその後、その先生が学会に二回ばかり発表されましたスライドのデータを私見たのです。データを見ますと、なるほどDの過剰である。しかもその患者さんのイニシアルが私の病院患者ではないわけでございます。というのは、名前を出すことは禁止になっておりますから、一宇出して一字抜くというようなイニシアルが出ております。それが私の見てない患者。ああそうするとその病院でDの過剰があったのだな、そのデータを出しておられるな、私たちも気をつけなければならない、こう思って、私は第一線の臨床医といたしましてDの使用に非常に気をつけました。それがいつのころからかDの過剰は萩野の専売特許だといわぬばかりのことが陰でひそかに言いふらされておる。なぜ——私に直接もう少しアドバイスされてもいい。それは一度はアドバイスを受けました。これはおまえのところのDの過剰だろう。ミリアルツベルクローゼ、粟粒結核でございます。そうして私は気をつけていたのでございますが、それがいま先生の御指摘の新聞になってまいりました。私はむしょうに腹が立ちましたから、弁護士と相談いたしまして、名誉棄損で訴えなければいけないと思って厚生部長のところに電話をいたしました。これも、お調べいただけばわかります。とんでもないことを言っているじゃないか、部長は一体これをどう思っているのだと電話しましたら、先生、萩野病院萩野医師も出ておりませんよ、先生、何を高ぶっておるのですか。この一言で私はがっくりといたしました。萩野病院とも萩野医師とも言っていないじゃないか、先生、何言っているのだ。その前に私は厚生部長のところに参りまして、先生、どうも、考えてみてください、われわれは患者を救済するのが目的です、富山県に病院が幾つかある、その病院の医師の何人かが患者を見ている。その一番たくさん患者を見ているドクターが二人でお互いに砂のかけ合いをする、そして患者救済という本道を離れて変なところでジェラシーを起こし、厚生大臣がおまえのところだけ来たじゃないか、おまえは政治的に引っぱったのだろうとか、患者がおれのところにちっとも来ないじゃないかというような発言が行なわれている。一体われわれはどうなんだ。こういうつまらないことでお互いをけなし合うのがわれわれの道であろうか。もっとわれわれは大きな目的があるんじゃないか。手を取り合って、お互いに研究し合って、ディスカッションし合って、よりよく患者を救済するために進むのがわれわれの道じゃないか。私はその先生が一年先輩だからぐっとがまんをしている。しかしがまんにもほどがあるのだと厚生部長に言いましたら、厚生部長は、Dの過剰、過剰というけれども、子供の場合のDの過剰はある程度の弊害があるけれども、成人、特に老成期のこれから骨が退化しようという人たちのDの過剰は問題にならない。私は内科の医者だからよく知っている。先生、まあそうおこりなさんなということで、私は厚生部長のところから引き返してきた。そうして私は、はっきり私の名前が出れば告訴しよう、こういう覚悟をいまでもきめております。しかしそういうことはいたずらに問題をそらすことである。そして武内先生の、ビタミンDの欠乏によってイタイイタイ病が起こった、私はただいまの発言者の先生に一言申し上げたいことがある。というのは、この説は先生も御存じだと思いますが、どうぞ控訴審における、金沢の裁判所で行なわれた主尋問とその反対尋問をじっくりお読みいただきたい。主尋問で彼が答えたそのこと、反対尋問で自分の口でデータはございませんと言い切っているではありませんか。私はこういうことを言いたくない、あの地区住民はどう言っていると。企業の選ばれたエースがこのようにもろいのか、なぜその地位のある人が自分のデータを持たないで、自分は何にも研究しないでそういうことを言うのだ、いままでは権威の座におられるから、先生がああ言われるからには私たちも一考しなければならないと思って、謙虚な気持ちで反省を続けてまいりました。しかし私はそのときに民衆の直感というものはこわいものだと思いました。裁判長の偽証罪になるぞということばまで出ているのでございます。これは新聞に出ておりました。そして御自分でDの欠乏によって起こるイタイイタイ病が何ら根拠がないのだ、データを持っていないということを、しろうとの弁護士の質問に答えているのでございます。先生がきょうの御質問をされるからには、先生はしろうとじゃないのだから、十二分に御研究なさって私に質問を浴びせられる。しかしじっくりひとつ裁判所の記録をとってお読みいただきたい。私はこれ以上何も申し上げることはない。そしてきょう、いま申し上げたこのことばを、おられるときに言いたかった。それで私は再三手をあげた。しかし時間切れということで発言を許されなかったのですが、私はどなたがおいでになってもいま私の申し上げたことははっきり言うつもりでございます。
  172. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  173. 田中武夫

    田中委員長 速記を起こしてください。
  174. 八田貞義

    ○八田委員 萩野さんの御答弁があまり長いので、時間的にあれがないのですが、ただ、私は萩野さんに申し上げたいのですが、二回にわたる公開の研究会で見てみますと、スペキュレーションがあまりにも多過ぎるということが考えられるのですね。研究会論議にはあまりにもスペキュレーションが多過ぎる。これは一つは私は萩野さんがあまりにも鉱毒説を主張されるあまり、自己の見解だけをお述べになる。症例報告が非常に乏しいのですね、あなたの場合。そういう点が、スペキュレーションが非常に多過ぎるのだというような原因になっておるのだと私は思うのです。どうですか萩野さん、私はやはりこういったものを早く学界の意見が統一されまして、社会のいろいろな不安を解消し、患者さん方に対して安堵を与えるためにも、あなたはどんどんと症例報告をされまして、患者さんもオープンでいろいろな診断班に患者を見てもらう。そういうような襟度を大きくして、あなただけが患者を縛っておられて、そしてほかの委員会委員の人からデータを要求された場合、それを拒絶される、こういうようなことでは私はなかなかこの問題の解決は長引くと思うのです。どうですか。やはりこれはひとつ萩野さんは襟度を大きくされまして、何しろあなたはイタイイタイ病を発見された偉大なる貢献者でありますから、ひとつ広く患者を紹介しまして、少なくとも医師群に診断させまして、死後は剖検を実施して、その成績、所見というものを公表して、その資料を基礎にして論議を進める、こういうことが一番大切だと思うのです。それは萩野先生が自説を主張されることはまことによくわかるのですけれども、自説を主張するあまり、自己見解だけで時間をつぶすことをされずに、オープンで、この問題を公式の場に持ち出して、そしてみんなにいろいろな研究をしてもらうということが私は一番大切だと思うのですが、その点についてひとつ御意見を伺いたいと思います。
  175. 萩野昇

    萩野参考人 お答え申し上げます。  私は患者を独占したこともなければ、かかえたこともございません。と申しますのは、過日も委員会が、ここに重松先生がおられますが、ぜひ患者を見たいということで、私は患者を連れて中央病院に参りました。それが、患者が拒否して逃げてしまいました。非常に困りました。私は連れて行っているわけでございます。いま一つ、私の病院へおいでになる方は、私は全部お見せしています。たとえば過日、東大の第三内科の某という者だ、いろいろと患者を見せてほしいし、血液も尿もいただきたいとおいでになりました。私は最初お名刺をいただきたいと申し上げました。名刺を持ってきてない。婦長に、お名刺を持ってきておらぬといわれるけれども、おまえから一応いただいてみろ、そしてもしお名刺を持たれぬとおっしゃったら名前を書いてもらえ。しかし名刺を持たない、あとで書くということでお書きになりませんでした。それがたまたまあとで聞きましたら、東大の方でございますが、某所の方でございます。そこは、私の漏れ承るところでは、某企業から研究生が在室し、非常に活発に研究をしておいでになる。その研究は鉱毒説反対の研究であるとのことを承りました。その方が再びおいでになりました。私はやはり血液をとって差し上げ、尿をとって差し上げ、患者をオープンにお見せしています。看護婦に、どうぞ御自由に、これは事実でございます。もし御必要があればお名前を申し上げてもいいのですが、事実でございます。私は毛頭患者を隠さないし、患者を閉鎖もしてない。なぜそのような御質問をされるのでしょうか、あとでお答えいただきたい。何の根拠があってそういう個人の人格を非難するような御質問がこの場で出るのであろうか、お答えいただきたい。いま一つ、剖検例が少ない。確かに少のうございます。それは現地へ来てあなた御自身の手でお調べいただきたい。あそこは仏教王国でございます。剖検をすごくきらっております。しかも私は勧めて剖検をしております。それが病院にいる患者であれば何とか剖検させるように勧められますけれども、退院してしまっている患者、しかも初めから入院しない患者、きらう患者、これらは私たちがいかに勧めても、あとでお答えしますというのでも焼いております。これは宗教上の問題じゃないだろうか。ですから、いまの御質問を私だけにお浴びせになるその根拠は何かお持ちなんでございましょうか。いま一つ患者を私が独占しているのではございません。私以外の他の病院にもおります。中央病院にもおれば他の病院にもおる。一言お断わりいたしますが、私は先ほどから御注意も受けましたけれども、一度もその方の名前は申し上げておりません。先ほどから名前を申し上げておりません。ですからそれは御本人が、先ほどの件と一緒に、萩野先生の名前が出てないじゃないか、先生何を言っているんだというのと一緒で、私は名前は一言も申し上げてない。そうしてただいまのような御質問をされるのは実態をご存じなくてしておられる。いま一つ言わしていただきたいことは、きょうの出席生野のことについて聞きたいということでございました。なぜイタイイタイ病原因論がきょうここで行なわれなければならないのか、これは幾ら時間があっても足らないわけです。さっきから重松先生が言っておられるように、われわれが大きな時間をいただいて、先ほどのあなたのおことばじゃないけれども、謙虚な気持ちで、前向きの研究をまだ続けなければいけない問題です。先ほども環境庁は厚生省の見解をかえる意思があるかないか、私は、何かしら意図して生野問題をお取り上げになったのでございましょうけれども、もう少しすなおな御質問が出てき、すなおな答えをさせていただけるのじゃなかろうか、これが私のような第一線の開業医の切なる願いなのでございます。  もう一つつけ加えますと、おまえは症例が少ないとおっしゃいます。先生もいろいろなことを御存じでございましょう。いなかのささやかな三等病院病院ではございますが、私のところに医師をやるなという教授さえおります。金沢の大学の教授で。萩野に近づくな。私のところに来ておりました若い医者が来なくなりました。聞いてみると、先生のところに近づくなと注意された、このような状態で私の病院研究ができましょうか。いま一つ、私は研究費はいただいておりません。自分の水揚げで研究をし、自分の水揚げで私の研究を援助してくれる病院の勤務者を養って今日まで来ております。二十七年間という長い間、いただいたのは、アメリカから多額の研究費はいただきました。その後厚生省から五十万、県から百万、それは四十三年ごろです。その後私は自費で研究しております。先生が大学教授としてなら国からの費用で十分な研究費はございましょうが、われわれ診療の余暇で研究しているものが、どうしてそういうような活発な学会報告ができましょうか、もう少し私はあたたかい気持ちで指導していただきたい。先輩として、また国会議員として、また先生のはなやかな御経歴の大学教授として。私はこれを切にお願いいたします。
  176. 八田貞義

    ○八田委員 萩野先生からいろいろ御意見があったのですが、私は、あなたに申し上げたいのは、熱心な研究態度はまことに見上げるのでありますが、互いに討論できるようなデータを出し合って、そして問題の解明にあたるという態度が必要であろうということを申し上げたのです。ですからその点をあなたに要望しまして、時間もないからこれで質問を終わりますが、どうかそういう態度で今後も進んでいただきたいということをお願いする次第です。
  177. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  178. 田中武夫

    田中委員長 速記を始めてください。
  179. 萩野昇

    萩野参考人 私はいつでもデータを公開する態度でおります。ただし、私にだけ公開させまして、詳しいデータが私のほうへ渡されないのでございます。私は県に対して、私と同じ大量の患者を扱っている某病院のデータを見せてくれと言いましたら拒否されました。ですから私は、それであるからには私も進んで公開する必要はない。  以上でございます。
  180. 田中武夫

    田中委員長 次に、林義郎君。  林君に申し上げます。持ち時間が経過しておりますから、きわめて簡単に願います。
  181. 林義郎

    ○林(義)委員 時間がないようでありますから、簡単にお尋ねいたします。御答弁のほうもひとつできるだけ簡単にやっていただきたいと思います。  第一点は、先ほどの御陳述、また各先生からの御質問、それに対する答弁の中で、私ちょっと気になりましたことがありましたので、お尋ねするのですが、喜田村先生にまずお尋ねいたします。先生はたしか自分でカドミウムを飲んでやられたということじゃなかったかと思いますが、それはどういうふうな結果をもたらしたのか、先ほどの先生がいろいろお話ありました経気道、経口の問題そういったものにはそういった研究成果を入れて発表しておられるのか。それからそういった結果は学会で発表しておられるのかどうか、これもイエスかノーかくらいのことで御答弁をいただきたいと思います。  それから、萩野先生にお尋ねします。  私はいま八田先生からいろいろお話がありましたけれども、私お医者の問題はなかなかむずかしい。先ほども実は委員長にお願いしまして、富山県のほうに頼んでいろいろデータを出してもらうということをしたほうがいいではないかということを私申し上げたのです。それで実は萩野先生にお願いをしたいのですけれども、さっきお話の中でちょっとありましたことで、御親戚の方で県会議長をしておられた方がおられる、その方の御忠告でイタイイタイ病をやめたらどうかという話があった。そのときにやっておったものは捨てちゃった、何か喪失されたという話であります。そのあとにまたすぐに三十年とかぐらいの話がいろいろとデータを持っておって、それをまとめてお話をされるというようなお話が先ほどの御陳述の中にあったように記憶しております。したがって、先生がいま持っておられるのは、はっきりしておいていただきたいのは、いつからいつまでのデータをお持ちなのかどうか。それから、前のやつはもうなくなっているということですね。というのは、とかく私は先ほども話がだいぶ出ていますけれども、先生のほうは持っているのを隠しているのではないかとかどうだとかということがあるだろうと思うのです。私はこれはよけいな誤解を防ぐためには、先生がいつからいつまでのデータははっきり持っておる、それ以前のやつはもう実は私のところにはそういったものはないのだ、実はこういった理由でなくしちゃったのだ、こういうふうな話であれば、またそれではっきりいたしてくるだろうと思うのですね。そういったことをひとつ時間的な経過でもってひとつはっきりしていただきたいという点でございます。  それからもう一つの点、これは質問の中にありましたのですが、たしか喜田村先生のお話だったと思いますけれども、スウェーデンのフリーバーグは二〇〇PPMあるとじん臓障害を起こすという話だったと思うのです。私、しろうとでありますからよくわかりませんが、たしか昨年の三月に当委員会で問題にいたしました中村登子さんの問題二万四千何百PPMというやつがございます。たしかあのときの、私はいろいろなお話を通じてみますと、これのじん臓の中には相当にあるけれども、実は自殺される前におきましては、たん白であるとか、糖であるとかというのは、全部マイナスであるというような診断が私は出ていたと思うのです。そういたしますと、これはどういうことなのか、私もちょっとわかりかねますので、この点につきまして先生の御見解を承りたいと思います。
  182. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 第一点のほうからお答えいたします。  カドミウムの経口吸収率、これは非常に毒性と関連して問題になります。私自身で水溶性のカドミウムをすき腹に三べんに分けて五ミリグラム飲みました。そのときの腸間吸収率が五・三%、それとその次は四・四ミリの水溶性のカドミウムで米を炊飯いたしまして、それを一日三べんに分けて食べまして、それで腸間吸収率を測定いたしましたら、そのときの腸間吸収率が一・五二か三%だったと思いますが、こういう結果を得ております。これは昨年の八月に行なわれました第二回の慢性カドミウム並びにイタイイタイ病——第二回の研究集会において発表いたしております。  それと第二点の二〇〇PPM、じん臓カドミウムがたまれば、あの障害を起こすというのは、これはカロリンスカ研究所のフリーバーグさんがこういうことを自分の経験からおっしゃっております。これは一応安全サイドにこれは線を引きまして、大体二〇〇、極端にいいますと、二〇〇以下ならだいじょうぶということです。二〇〇をこえたら必ずそう出るものじゃない。それはつい三月だったか、おいでになったときもその話をしておられました。確かに安中で、たしかじん臓の中に二四〇か五〇あって何ともなかった方がおられる。先ほどの中村登子さんのあれじゃございませんけれども、そういう話をしました後に、フリーバーグが、それはおれが言ったのは、二〇〇こしたら必ずたん白が出るのじゃなくて、一応二〇〇というところに線を引いたのだ、そういうふうに答えておりました。それから先ほどの二万何千PPMといいますのは、あれはベースが違います。いまの二〇〇PPMというのは湿重量、なま重量で二〇〇PPMということでございます。先般の中村登子さんの二万PPMというのは、人間のアッシュ、灰重量当たりのPPMでございますから、百分の一くらいでお考えになったら、普通言うPPMということになります。
  183. 萩野昇

    萩野参考人 データを隠すとおっしゃることばが私にはほんとうに合点がいかないのでございます。しかしはっきり申し上げますと、そういうふうなのは三十年以前じゃないのでございます。四十年でございまして、私はその時点研究をやめようという気持ちで燃やしておるのでございます。それと研究をやめよと、アドバイスを受けてイタイイタイ病はほうろうと、そうしないと、身の危険を感ずる、私も凡人でございますから。われわれは五年間の保存しか医師法できめられておりませんから、それ以上のものはございません。何ら法的に縛られません。
  184. 林義郎

    ○林(義)委員 いや、私先ほどお話し申し上げたのは、先生が御親戚の方からの忠告でという話でありましたから。要するに、五年間はあるということに了解してよろしゅうございますね。
  185. 萩野昇

    萩野参考人 はい。
  186. 林義郎

    ○林(義)委員 私はそれではもう大体質問内容は終わりますが、私は萩野先生ほか皆さん方が非常にこういった形で一生懸命やられて、イタイイタイ病というものがはっきりしてきたということは非常に高く評価していい問題だと思います。またとにかく長い間あった病気の問題でありますから、そういった点におきまして新しい説を立てられて、厚生省見解をつくり、研究を発展させたという功績は私は非常に高く評価をしていいと思いますけれども、ただ科学というものはやはりいろいろと進歩してくるわけであります。科学というものは一つ一つ進歩してくる。私はそれならば、一つの道標というふうに私は考えていかなければならないような問題だろうと思うのであります。したがって、いろいろな点で、その後におきましていろいろと議論もあるし、いろいろと学説も出る、また現実の問題として、その後においていろいろな治療がされますし、いろいろな研究もされますし、そういったものがありますから、やはりそういった新しい事実に基づいて新しい目標をつくっていくということが私は一番必要なことだろうと思うのですね。しかし、そのためにはやはり何といったところでいろいろなデータというものをできるだけたくさん集めて、それをやはりオープンな場、公開の場において討論していただくということが一番必要なことだと思うのですね。それでなければ、私は科学の進歩というものはあり得ない、こういうふうに考えています。そういった意味で、ひとつ重松先生にお願いをしたいのですが、これは厚生省なり、あるいは環境庁との関係もあると思いますけれども、こういった問題が出てまいっているのですから、できるだけ早くカドミウム研究集会を開いていただきたい。それをお願いしたいのでございますが、その辺、重松先生どうお考えになりますか。
  187. 重松逸造

    重松参考人 おっしゃるとおりでございまして、皆さん方の努力のおかげで日々新しい事実がわかってきておりますので、必要とあれば、いつでも研究集会を開いてみんなでフリーディスカッションをやりたい、こう考えております。
  188. 林義郎

    ○林(義)委員 私はできるだけそういったフリーディスカッションによりまして、ものごとというものをはっきりすることが、最初にお話ししました駒留さんの要望に一番こたえることじゃないか、非常に困っておられるわけです。だから、私はここでいろいろ科学的な議論はあります。ありますけれども、どうも私は考えるに、駒留さんのほうの問題をそんな科学論争のためにおくらせるということは、非常に私は困ることになるだろうと思うのであります。ですから、それはそれ、これはこれというふうにやるのがいいのじゃないかと思いますが、もっとも参考人に申し上げるような話でもないのでありますから、あらためて当委員会におきまして、政府その他と質疑をかわしたいと思います。  これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
  189. 田中武夫

    田中委員長 次に、土井たか子君。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 時間の制限がございますから、大きく三問、それぞれきょうの参考人方々にお尋ねするということにいたしたいと思います。  まず、一問目は、兵庫県の生野鉱山周辺のカドミウム汚染によるところの人体に対する影響 これをイタイイタイ病と判定し、片やイタイイタイ病ではないという判定の谷間にあって、一番苦悩し、当惑なすっているのは、やはり住民方々ではなかろうかと思うのです。  そこで、きょうは、医学者の立場でそれぞれ専門的なお話も伺うことができたわけでありますが、要は、これから先、それならばどうやっていくべきかという問題だと思うのです。どうやっていったら一番被害者に対しての救済にかなうか、あるいはその発生源に対してこういう被害をさらに続出させることを食いとめることになるかという問題だと思うのですが、国の鑑別診断研究班にゆだねておけばよいじゃないかという御意見もあるかもしれませんけれども、それぞれやはり責任ある立場において、どういうふうに今後のあり方を、こうあってほしいとお考えになるかということをひとつお尋ねしたいわけです。  やはり健康被害について、健康被害を除去する、そして患者さんに対しては診療してそれをなおすということと同時に、やはり健康被害のもとになっているものを断たなければならないという問題もございますから、さらに申し上げますと、刑法でいうところの疑わしきは罰せずじゃなくて、やはりこの節は、こういう問題は疑わしいものに対しての対策を十分に講ずることこそ大切な問題じゃなかろうかという考えも込めて、ひとつ私はお尋ねをするわけであります。どうか、四先生いらっしゃいますから、お一人お一人からまずこの問題について御意見を賜わることにいたします。
  191. 石崎有信

    石崎参考人 こういう申し上げ方をするのは非常におかしいかもしれませんが、この生野の問題に関する環境庁主催か厚生省主催か知りませんが、鑑別診断委員会の態度というものに、横から見ていて非常に、何かおかしいな、あのような態度でいいのかなと思う点がある。端的に申しますと、いま御質問になったことに対して、非常に簡単な実用的な解決策がある。  骨軟化症骨軟化症でないか、それはレントゲン写真でも最後的なきめ手にならない。限界線になるとわからない。それからまた、骨生検、骨を取ってきて顕微鏡で調べても、全部がわかるとは限らない。境目でわからないものがある。それからまた、血清所見骨軟化症になるとアルカリフォスファターゼが上がり、無機燐が下がるといわれておりますが、決してそうとは限らない。ちっとも下がらないものもある。文献によれば、最後のきめ手は何か、簡単なことだ、ビタミンDをやってみなさいと書いてある。もし単純なるビタミンD欠乏のものならば、低単位のもの、たとえば二千単位、それを一カ月ぐらいやってみれば必ずよくなっていく。それでよくならなかったら、思い切って十万単位やる。腎性の骨軟化症ならば、尿細管障害型のものならば、十万単位やればたいていきくということはすでによく経験されていること、イタイイタイ病でも経験されていることです。だからそれをやってみればいいのです。それを一、二カ月続けて、それでもよくならなかったら、副作用さえなかったら、もっと思い切って単位を上げてみる。そのときはもちろん副作用を十分警戒しながらやっていけばいいのです。簡単なことなんです。それは患者に対する処置の問題、それで診断がついてしまう。ぐずぐず論議してひまをかける必要はない。  それで、カドミウムと腎と骨との関係、これは非常にむずかしい医学の問題なんです。これはまだ全然未解決の問題です。まるでじん臓ほんとうにやられていかないと骨にいかないように考えている学者がおるが、それは大間違いなんです。じん臓がほとんど何にも変化がないときに骨があらわれてくるということ、そのおそれが幾らもあるということは、すでに外国の学者は何べんも書いていることなんです。その観点に立つときに、じん臓病変がなかったのに骨に病変があったから、これは腎性のものでないなんて、そういうことは絶対に言えることでない。ところが、おもしろいことに、そういうような患者でも数年たつとちゃんとじんのほうにやはり変化が出てくる。尿所見変化が出てくる。しかもそういう患者は、骨はビタミンD大量投与でよくなるが、じんの変化は骨の変化と無関係にどんどん前進していって、しまいにはじん不全で死ぬ例がたくさんある。そういうことはすでに文献にはっきり書いてあることなんです。ですから、これは現在のイタイイタイ病患者さん、最近よく、骨はいいが、じん臓が悪くなって死んでいく患者さんがある。そのとおり、その文献に出ているそのとおり、何にも矛盾しないのです。  そして、それは治療の問題で、私専門ではありませんからそれ以上は申し上げませんが、私の専門の予防医学の立場から申しますならば、この住民検診の前に環境調査がなぜほんとうに先行しなかったか。まず、これは公害病である以上、環境汚染で起こっているわけなんだから、環境の調査のほうが先行すべきなんです。そこのところをしっかりつかまえて、ここに環境が汚染されているから住民被害がないか、それを調査すべきだと思うのです。  その被害調査方法論については、私ども神通川の経験ですでにいろいろと論文を発表しております。それを参考にしていただいたら、けっこう能率のいい方法も見つかる。それから、過去の経験より、もっと能率のいい尿中アミノ酸を見る方法を、私ことしの学会にも発表しております。それは住民検診の一番鋭敏な方法だと思います。環境汚染のある地帯だけをつかまえてそれをおやりになれば、はたして人体影響があるかないかというのが簡単につかめる。それでもし人体影響があるならば、当然その環境の整備、たとえば石川県なんかどんどん土壌改良をやっておりますが、その水田はもう耕作停止しておりますが、そういった施策が進められていっていいはずです。  以上で終わります。
  192. 重松逸造

    重松参考人 生野の問題は、私データだけしか知らないわけでございますが、少なくともいままで既存の七カ所ございますカドミウム汚染地区住民人たちとはちょっと違う。それが先般の鑑別診断班でも、さらに特に尿所見中心に検討を要するという結論になった理由でございますが、その意味からいいましても、ひとつ一刻も早くいま再検査の結果を出して明確な判定を下したい。  それから、いまイタイイタイ病かどうかということを疑われております二、三の特定の患者さんにつきましては、石崎先生の御意見と全く一緒でございます。
  193. 萩野昇

    萩野参考人 私の申し上げたいことをそのまま石崎教授が言われましたので、省きます。  ただ御質問の要旨で、どうすればいいのか、これははっきりいたしております。一・〇PPM以上のカドミウムが産米から取れているのですから、なぜ兵庫県はカドミウム汚染地区に御指定を申請をされないのだろうか。おわかりでございますか。当然おやりになればいいじゃないか。そして兵庫県の七人委員会で何もこれをおやりになる必要はないので、環境庁で実施されればいいわけです。過日も環境庁のお役人が現地視察においでになったけれども、かけ足——環境庁かあるいは国会か、私知りませんけれども、マスコミの表現によると、かけ足で、住民が不満を訴えている。なぜこういうようなことをなさるのだろうか。そしてじっくりと指定されてお調べにならないのか。私はこんなわかりきったことをお答えさせられるとは思わなかった。  そして、患者の判定に関しましては、石崎教授と全く一緒でございます。
  194. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 先ほども申し上げましたように、兵庫県ではまず環境汚染調査を実施いたしまして、それで地域指定をやりまして、一万三千人を対象といたしましてこの健康診断を実施しているわけでございます。あまりにも広範囲になっておりますので、結局一年間かかりまして、先般第三次検診の結果が出ましてそれを発表いたしました。  それで今後でございますが、これを国の鑑別診断委員会に持ってまいりましたところが、これはもう県と全く同様の結論でございまして、繰り返し申しますが、骨にはイタイイタイ病特有の変化はなかった。ただ、じん臓機能検査においては、カドミウム影響というものを否定し得ないものがあらわれておるから、これについてはさらに精密に検査を行なう。これは現在再検査をやっております。確かに住民方々が非常に不安を持っていらっしゃいますので、私ども健康調査特別診査委員会といたしましても、できるだけ早期にそういった不安をなくするように努力いたしていきたい、こう考えております。  それと、先ほどビタミンDをそれならやってみろということでございますが、そのDをやってよくなったか、よくならないかというその所見が先ほどお話のレントゲンの写真でもなかなかわからない。死後剖検をしてみなければわからない。それから血液のあれも当てにならない。それでは何を一体——本人が痛いというているのを、痛くなくなったらきいたというのか、そういう主観的なものでは、私どもといたしましては判定することができませんので——まあ確かにDの欠乏であるという証拠が出ましたら、これはそういった治療に当たります。もちろん、それから県といたしましても、確かに患者さんの訴えということはございます。ですからそういった患者さんには専門医を派遣して診断、治療ですか——痛いというのはいろいろな原因で痛いのでございますから、骨軟化症で痛いという場合ももちろんありますが、その他いろいろな骨粗鬆症でも痛いのでございますし、関節リューマチでも痛いのでございますし、農夫症でも痛いのでございます。ですから、それが痛いからみんなイタイイタイ病だ、それでビタミンDをやるというようなところまでは、これは実際専門の先生方が現地へ行って診療をおやりになるということに県のほうできまっておりますから、それに待ちたいと思います。  それと、先ほど申しました一万三千人を対象といたしたのでございますが、当然御都合やなんかで漏れた住民の方がおられますので、その方々につきましてはやはり再検査をやるというふうに県のほうでいたしております。  以上でございます。
  195. 石崎有信

    石崎参考人 ただいまの喜田村教授の御発言にからんで、さらに追加してお話いたしますが、私、生野の現地へ行ってみました印象では、汚染はきわめて限局性が強い。ですから米なり土壌なりの調査が十分に進めば、その汚染されている区域は案外狭い区域なんです。一万何千というような住民にならないはずです。もっともっと、少なくとも汚染濃厚なところに重点を置いて検査することができると思います。それで能率のいい検査ができたのじゃないかということと、もう一つ、先ほど私ビタミンDをやってみろと言ったのは、少なくともこのミルクマンのプソイドフラクツールの疑いのある所見は、それはだれが見たって、そう疑えば十分疑えるのです。単なる骨折かどうか、それは専門にまかすとして、もしそういうものがあれば、それにビタミンDをやってみるというのはきわめて自然なことです。イタイイタイ病のごく初期の一番しっかりした報告としては中川君が書いた報告があります。昭和三十五年に発表しております。そこに写真が出ているのが、全く同じ骨の折れ方です。それがビタミンD治療でどんどんなおっている。写真がちゃんと出ているのです。だから、やってみて、そのようになっていけば、これと同等のものであるということが簡単に鑑別できます。  それから文献によりますと、おとなの場合、骨軟化症の治癒があらわれたかどうかは自覚症状が一番先にあらわれてくる。痛みがすっととれてくる。それでもって幾らも判定できる。そう私は考えています。
  196. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 いまの石崎先生の御発言関係してお答え申しますが、確かに、環境調査をやりましてそれで結局米に一PPM以上のカドミウムが含まれている、この地域は非常に狭うございます。しかし兵庫県といたしましては大事をとりまして、〇・四PPM以上の地域を一応汚染地域といたしまして、一以下なら絶対影響がないかということがいえない、そういった御心配がまだ住民方々にもございますので、それで広範囲の地域を設定してそれを汚染地域としていまのように検診をいたしていきまして、それで結局は最後ぐっとしぼって、第二次、第三次検診のは非常に限局性になっております。  それと、もちろんレントゲンの写真でミルクマンの症候群というのがあらわれておるというものでございましたら、これはもう当然ビタミンDをやる、これは私も賛成でございます。ただ、いまのところはそういったような患者さんがいないということでございます。確かに骨折した患者さんはおりますけれども、これはビタミンDをやらずとも非常に化骨が促進しておりまして、あえてDをあげなくても自然にどんどん、お年の割りには非常に化骨が進んでいる。萩野先生はこの間のとき、これは牛乳を三本飲んだからだとおっしゃったのですけれども、牛乳三本でもそのくらい化骨が促進するのでございましたら、あえてもうDの治療ということはやらなくてもいいんじゃないか、このように私は考えます。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 時間の制約があるものですから、私は非常に大まかな質問をさしていただいているわけで、ここで医学論争をお伺いするという余裕がないわけです。したがいまして、これから先の対策についてどうあってほしいと思われるかという点をお伺いしたかったわけでありますから、それについてさらに繰り返しになりますので、これはもう差しおきます。  それでさらに三菱金属鉱業株式会社の取締役総務部長さんでいらっしゃる木村さんにお伺いしたいのですが、午前中の御発言の中に、企業としての責任を考えているという御発言がございました。そこで、具体的にどういうふうな企業としての責任をこれからおとりになるおつもりがあるかということを承っておきたいのです。  それは私たちが見聞いたしております限りでも、四十八年の三月を目安に鉱山の採掘をおやめになるという予定がおありになるようですが、しかし採掘はやめられても、採掘権そのものは放棄なさらないということでありますから、それからすれば、十分にそれに対する対策、それから今後のこういうカドミウム汚染に対する予防対策というものもお考えになっていらっしゃるはずだと思うのです。そこのところも込めてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  198. 木村猛

    木村参考人 ただいまのお尋ねにお答え申し上げます。  私が午前中に企業の責任と申し上げましたのは、これは一般的な企業として、最近きわめて公害の問題がクローズアップした。企業というものはやはり公害というものをなくしてというか、それを防御する、あるいは今後ともそういうものを絶対起こさない、そういう精神をもってやらなければならぬ、こういうことを申し上げたわけでございます。  それで第二の閉山の問題でございますが、閉山はどうしてやるかということは別といたしまして、来年の三月にまことに残念ながら閉山をすることになりました。しかし、これにつきましては、私どもは歴史ある鉱山でございますので何とか続けていきたいということで、あらゆる手をもって延命策をやったわけでございますが、遺憾ながら鉱量が少なくなっておるということと、もう一つは安全の問題で山が非常に盤圧によりまして崩壊するという危険な状態になっておりますので、これを閉山するわけでございますが、しかし閉山につきましては、公害の現在やっておるいろいろの設備をさらに強化いたしまして、一切今後問題にならないようにやること、それからもう一つ地域住民の意向というものを聞きまして、そこにおけるところの従業員の配置転換というものを考える、さらにもう一つは長い生野との関係は、われわれはほんとうに切っても切れない関係がございまして、いろいろ閉山後の要望なんかも出ておりますので、これを真剣に取り上げて、閉山後も地域社会の発展に何とか協力していかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから先ほどの質問に関連してでございますけれども、現在私どもは、去年からいろいろと精密な調査をしていただきまして、汚染米の数量あるいはそれに関する地域を指定されております。したがいまして、汚染米に対しまして法できめられたことは完全に実施することにしておりますし、また土壌汚染防止法によりまして、先生も御承知かと思いますが、例の一号地、二号地、これを指定を受けました。これをどういうふうにして早く今後そういう悪い米が出ないようにするかということに対しましても、県当局と十分打ち合わせ、また住民皆さん方の御意見も聞いて、これを早急にひとつ進めていきたい、かように考えております。  それからもう一つは現在補償問題が出ております。去年もありまして、これは円満解決したわけでございますが、すでにことしになりまして最近二回ほどやっております。これも住民の約八つの町長さん方を対象にしてやっておるわけでございますが、そうした地域住民皆さん方の感情というものを考慮いたしまして、できるだけ企業として当然考えなければならぬというものに対しましてはこれを解決していく、早く円満にこの問題を解決しなければならぬと考えております。ただ、私は午前中からこの生野の問題につきまして諸先生方の意見を聞いておるのでございますが、まことに私は県なり国の、生野にはイタイイタイ病はないんだということを信じておるわけでございますが、なかなか話を聞いてみるとさようでないようでございます。非常に心配でございます。どうかこの両先生方におきましてもひとつ、先ほどから八田先生あるいは林先生のほうから、データを出し合って何とか早くこれを解決してやったらどうかというお話があったわけでございますので、どうか先生方におきましても、この両者の御意見というものをよく突き合わせまして、どうか結論を出して、そして私どもはもちろんでございますが、その地域住民が安心できますように、早く不安をなくしていただくように、ひとつ御協力していただきたいと思います。  最後になりましたが、土井先生には二回ほど生野のほうにわざわざ来ていただきまして実態をよく調査していただきまして、まことにありがとうございました。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 もうあと一問は簡単に。これはきょうの住民の代表で足を運んでいただいております駒留さんにお伺いしておきたいと思うのです。  これは三月二十五日から二十六日にかけてのできごとだったはずですが、富山イタイイタイ病の訴訟の弁護団の方々が、イタイイタイ病の実情とカドミウムとの因果関係を調べるために生野町に足を運ばれたはずであります。その周辺でいろいろ見聞なさっている間に、警察の方々患者さんの宅を訪れていろいろと調査をなさったという具体的な事実が明るみに出たということを私は新聞紙上知ったわけですが、そういう事実があったかどうかということが一つと、それから、もしあったとすれば中身はどういうことかということについて、駒留さんが御存じの限りを、ひとつ簡単にお聞かせいただければ幸いです。
  200. 駒留喜代松

    ○駒留参考人 各先生方には長い間、こうして互いに説明を詳しくしていただきましてまことにありがとうございました。  つきましては、土井先生より御質問がありましたので、それについてお答えさせていただきます。  あのときは、青法協というんですか、そこの方が来ておられたらしいです。そのお方にはよう出合っておらないんですけれども、しかし和田山警察生野派出所になるわけであります。生野の刑事さんと、以前は交番であったんですけれども、おまわりさんと二人が来られたらしいんです。そのときにはついて回っておらないから詳しい実態はわかりませんでしたが、来ることは来られて、その家に——名前をあげて申しますが、渕本ナミエさん、あの方の家へ来られたんです。ナミエさんがちょうど隣の家へ遊びに行っておることが、遊びにじゃないんですけれども、孫が勉強しなければならぬがために、新聞記者なんかの方がたくさん入ってこられては耳ざわりになって勉強できないから、おばあさんどこかへ行っておきなさいというようなことから隣に行ったらしいんです。それを知らずに警察の方が、そのナミエさんのむすことか、また嫁入り先になった娘とかいったところに三軒も四軒もずっと探し歩いたということで、たいへんむすこなんかも心配されたということで、夕方になって、おばあさんどんな悪いことをしたんじゃと、警察の方が血眼になって探しておるというようなことを言うたので、おばあさんもたいへん立腹されたということです。それについて、そのときは私はおらなかったんですけれども、後日県警の方が二名私の家に来られて、そうして、ほんとうであるかうそであるかということを、青法協のほうより抗議を申し込まれておるんだ、実態を知りたいんだということで来られたから、私はそのときにはタッチしておりませんからわかりませんから、本人のところに行きましょうというようなことで連れていきましたんです。本人に聞いてみますると、あの方は萩野先生に検診を受けておられるんです。ところが、だれに連れていってもらったんじゃ、萩野先生のところはどのような検診のしかたをしたとかいうようなことを詳しく聞かれたということなんです。ところがおばあさんは、どこの先生でも同じことや、こうしてみたんじゃ、ああしてみたんじゃ、おまえにこんな病気あるんだということを詳しく教えてくれる医者はおそらく日本の国にはありません、こういうように言われたらしいんです。それでそのまま帰ったということでございます。これは事実でございますけれども、そのあとで私もそういうようにいって、生野の警察の方は刑事でありますけれども、もうすでに定年を過ぎておる人なんです。もう近いうちにやめなければならないような年のいった方でありますので、この方を取り上げてどうこういうようなことになっては、その人の今後の人望にかかわる問題やと思いましたから、県警の方に頼んで、これはおばあさんの誤解であったということで、相手は年寄りのことであるしするので、これは別にそれを取り上げて問題にしようとも考えておるようなことはありませんから、これでなかったことにしてお帰りなさいというようなことで、もみ消したような形にして帰したわけなんです。これは事実あることはあったんですけれども、警察の方もそれほど調べようと思って来たんじゃないらしいんです。おばあさんの人身について心配されて来られたということが事実でございます。ところが聞くほうの方から見ればそう言ったように聞えたんじゃないんかということなんです。私としてもそう悟りましたから、県警の方に、そういうようなことで、言うほうと聞くほうとの開きがあるんだからというようなことで帰っていただいたような次第でございます。  終わります。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  202. 田中武夫

    田中委員長 次に、岡本富夫君。
  203. 岡本富夫

    ○岡本委員 午前中に引き続きまして、たいへん参考人の方はお疲れと思いますが、もうじき終わりますから……。  そこで、最初にちょっとお聞きしたいのですが、重松先生、この間厚生省の、四十三年に見解を発表されたときの責任者と伺っておりますけれども、その後鑑別診断班の皆さんのつくられたイタイイタイ病認定基準、あるいはまた調査基準、こういうものをもって、兵庫県も各県もやっておるのだ、こういうことでありますが、そうすると、私は相当権威がなければならないと思うのです。したがいまして、簡単に、何かあるとくるくる変わるようではこれは話にならないと思うのですが、そこで、先ほど午前中も先生からお答えをいただいたわけですが、生野においてイタイイタイ病でないと直ちには判断はできない、まだカドミ中毒——カドミが出ているのだから再検査しなければならぬ。ですから、直ちにイタイイタイ病はないと判断はできない、こういうようなお話がございましたのですが、そのとおりでございましょうか。
  204. 重松逸造

    重松参考人 おっしゃるとおりでございます。
  205. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、いま環境庁の鑑別診断班の責任者として重松先生に来ていただいておるわけでありますから、まだ生野町にはイタイイタイ病はないとは断定できないのだというときにおきまして、もしも環境庁が、生野においては、要するに兵庫県においてはイタイイタイ病はないのだ、こういうような断定するような発表をしたとしますと、これは早計だと私は思うのです。重松先生の御意見を……。
  206. 重松逸造

    重松参考人 先ほどの私の答えもちょっと正確を欠いたかもしれませんが、先生、イタイイタイ病ということばで表現されておりますが、私の申し上げました意味は、あの生野地区住民方々カドミウム汚染による人体影響があるかないかということは、いまの段階ではきっぱりとシロとは言い切れないというのが正確な表現でございます。  さて、いまおっしゃいましたイタイイタイ病、特にそのイタイイタイ病という意味は、認定条件のほうで実は別にきめてございますが、鑑別診断班が出しました、前回の生野に関する見解のとおりに、骨軟化症と思われるレントゲン所見は、あの時点では一応否定しております。ただ、そのほかの所見に関しては、特に尿所見中心とした所見に関してはまだ問題点があるので、その点は再検査で確かめていきたいというのが、あの時点における鑑別診断班の見解でございます。
  207. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、骨軟化症のレントゲンの写真の結果と、それのいろいろ議論があったということでありますが、カドミ中毒、これは十分考えられる。今後まださらにこれの影響がどうなっているかということを調べていきますと、これは確かにイタイイタイ病というはっきりしたものも出てくるのではないか、そういう過程ではないかと思うのですが、いかがですか。
  208. 重松逸造

    重松参考人 大体おっしゃるとおりなんでございます。ただその点で、イタイイタイ病という、そのことばの意味が、実はけさほど来もいろいろ論議がありまして、かなり混乱いたしております。その点で、今回別の、認定条件の研究班のほうで一応イタイイタイ病の認定条件というものをいまの時点で新たにきめましたので、その条件に合ったものが出るかどうか、これがやはり問題になろうかと思います。  ただ、その認定条件のことは、先ほど私、四カ条あげましたが、いまの生野のデータでは、四カ条の中の四番目が典型的な骨所見でございますが、いまのところは、イタイイタイ病に関する典型的な骨所見は、この前の鑑別診断班では一応否定されておる。ただその三番目までの尿細管障害を疑われる尿所見というものは、あの時点でもありますので、将来はこれは、あるいはイタイイタイ病にまで発展することがあるかもしれません。その意味で、今回の認定条件は、そのようなグループの方は要観察者にすべしであるという意見を出したわけでございます。
  209. 岡本富夫

    ○岡本委員 わかりました。  そうすると、イタイイタイ病の認定条件というものも、今度先生方いろいろ研究してくださって、少し幅を広げて、そして患者を救済していこうというような環境庁長官の意見と同じように先ほどお聞きしました。そうしますと、いずれにしましても、これからさらに調査していきますと——そのために、兵庫県も再調査しておるわけでございますから、そうしますと、環境庁がもうすでにイタイイタイ病は全然ないのだというようにいますぐに発表するということは、私は、早計であろう、こういうように思うのですが、これについて萩野先生重松先生の両方から御意見をひとつお伺いしたい。
  210. 萩野昇

    萩野参考人 私、聞いていたのでございますが、もし質問にはずれましたらお許しをいただきたい。  環境庁が生野鉱山にイタイイタイ病並びにイタイイタイ病につながるじん障害がないと御発表になるという御質問でございましたら、これはとんでもないことでございます。いまそれをお聞きして非常にショックを受けているのでございます。なぜかと申しますと、私、かつてこういうことを聞いたのでございます。萩野、おまえは、こういうことを知っておるか、環境庁で富山県以外にイタイイタイ病を出すなという空気があるぞ、いま一つ昭和四十三年の厚生省の決定を変えようとしておる空気がある。私、びっくりいたしました。大石長官をトップにする環境庁がそのようなことはあり得ないじゃないか。なぜそんなばかなことを言うのだと申しましたら、中堅幹部以上にそういう動きがあるのだ。私、びっくりいたしまして、そういうばかなことを言ってもらっちゃ困る、そういうことが公になると、これは責任問題になるぞ。ところでいまお話を承りますと、まことにいやな感じがいたしました。しかし、私は、環境庁の良心にかけて、そういうような発表はないものと信じております。
  211. 重松逸造

    重松参考人 その先生のおっしゃる環境庁の発表というのを、私、正確には知らないのでございますが、おそらく鑑別診断班が環境庁に出しました報告書をそのまま出されたのだと思うのです。これはもう御存じだと思いますが、イタイイタイ病に見られる骨軟化症の骨所見を呈した例は認められなかったが、全員についてさらに一部の検査項目の追跡検査を実施した上でカドミウム影響があるかどうかを判断することとした。これが鑑別診断班の報告でございますので、おそらく環境庁もこのとおりのお考えではなかろうかと思います。
  212. 田中武夫

    田中委員長 この際、政府委員発言を許します。船後環境庁企画調整局長
  213. 船後正道

    ○船後政府委員 お許しを得まして、ただいま萩野参考人の御発言の中に、環境庁におきまして、たとえば富山県以外にイタイイタイ病患者を出すなというような気配が中堅層以下にある云々というような御発言がございましたが、環境庁といたしましては、全くそのような考え方は持っておりません。  なお、生野周辺の問題につきましては、すべて鑑別診断班における厳正なる医学的、化学的御検討の結果を尊重いたしまして、環境庁の意見をきめるわけでございますから、環境庁のほうから、そういう検討を抜きにして、生野地区におきましてイタイイタイ病患者がないとか、あるいはカドミウム中毒影響がないとか、そのようなことを申すはずは毛頭ございません。
  214. 岡本富夫

    ○岡本委員 明日か明後日か出されるところの公害白書、すでに環境庁で作成されておるようでありますから、委員長、この問題はそれが出た時点において、また当委員会において質疑をしてまいりたい、こう思っております。  そこで、もう一つお聞きしたいのです。あと専門的な問題は古寺委員に譲りまして、石崎先生は元イタイイタイ病の診断班長であったように承っておるのですが、そうでございましょうか。
  215. 石崎有信

    石崎参考人 富山県のイタイイタイ病認定委員会委員長をいたしておりましたことがございます。
  216. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、萩野先生あるいはまた石崎先生は、このイタイイタイ病については相当研究なさっておると思うのであります。  そこで、鑑別診断班の班長ですか、あるいは委員長というのは高瀬先生だと伺っておりますけれども、きょうは不在でございますし、また先ほど重松先生からのお話の中で、高瀬先生が御用事があると重松先生が中心になられるのだ、団長をやられたのだというようなお話でございます。そういうことになってまいりますと重松先生、石崎先生も非常にイタイイタイ病のそういった鑑別診断については権威者だと私は思うのですが、できれば先生の口からお口添えをいただいて、この中に入れていただくと非常に公平になるのではないか、こういうように考えられるのですが、いかがでございましょうか。
  217. 重松逸造

    重松参考人 私もときどきピンチヒッターで高瀬委員長の代役をやらされるだけのことでございまして、もちろん責任あることは申し上げられませんが、個人的には石崎先生に入っていただくことは大賛成でございます。ただし、実は鑑別診断班といいますのは、もともとこういうような認定作業といいますか、診査作業的なことをやるのが目的ではございませんで、本来の鑑別診断、いわゆる医学的な鑑別診断をやる目的でスタートをしたのが、途中でこの汚染地区問題ができ、そしてこういう患者さんあるいはその容疑の方々の認定的なことまで引き受けさせられたということで、実はそういう意味でメンバーの構成が、たとえば石崎先生も入っておらない。といいます意味は、石崎先生はもうほかの班で十二分に御活躍をしていただいておりますし、その間の連絡も十分あると思うのでございますから、そういうことですが、もしいまのような形の鑑別診断班が続くのならば、石崎先生にも入っていただくことは、私個人としては大賛成でございます。
  218. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に喜田村先生に。カドミを飲んで人体実験をされた、その勇気に対しては非常に敬意を表するわけでございますけれども、私どもの調べたところによりますと、水の中に溶かしたカドミ、これがイオン化されたときと、コロイド状になったときと、それから金属微粒子のものと、相当吸収率が違うのではないか、そういうような疑いも持てるわけでありますが、そういう試験をなさったのかどうか。それから人体実験につきまして、たった一回でなくて何年もずっと続けられたのかどうか。こういった面も非常に心配でございますので、ひとつお聞きしたいのです。それが一点。  最後にもう一つ。先ほど先生にちょっと提案申し上げた、要するに、兵庫県のいまこれからまだ診断する患者皆さんが、何としても萩野先生にも入ってもらいたいという希望が非常に多いわけでございますので、データでつき合わすのじゃなくて、一緒に立ち会って患者を診察してあげれば、そのデータでがたがたしなくてすぐに済むのじゃないか、こういう考えのもとで先ほど、あなたのほうから知事さんにも進言して一緒にやっていこう、そうして一日も早く私はこの患者皆さんを救ってあげたい、私はこの目でたくさん見ておりますので、特に一日も早く、こんな論争よりも患者皆さんを救ってあげることが大事である、私はそう思いますので、この二点についてお聞きしておきたいと思います。
  219. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 第一点の吸収の問題でございますが、私が実験いたしましたのは、イオンの状態カドミウムでございます。硝酸カドミウムを溶かしたのでございますので、イオンになっております。コロイドと金属の微粒子というのは大体同じことだろうと思うのでございますが、そういった状況で大気中に飛散する場合は、そういうべーパーになってそういったカドミウムが存在することはあるかもしれませんが、水のほうに出てまいります場合、それから米の中に入ります場合に、そういったかっこうで存在するということがありませんので、そういったのはやっておりません。ただ、そういったものになったら吸収が高まるのではないかという御質問でございますが、これは私自身でやってはおりませんけれども、そういったもので高まるということは、これはございません。——ございませんといっても、やってないからわかりませんけれども動物実験その他の結果から、そういったことは水溶性のものが一番吸収されやすいということになっております。そういった結果は考えられません。  それから、次の第二点でございます。確かに、現地においでになって診察をやって、それで外からわかるような、そんな患者さんはおられないと思うのでございます。結局、レントゲンをとるなり、尿をとってカドミウムをはかるなり、血液をとって燐をはかるなり何なり、いろいろな検査項目をやりまして、その結果を総合的に判断してこれがどうかという診断をつけるのが現在の医学の診断でございます。ですから先ほど申し上げましたように、そういったデータをおそろえになっておいでになりましたら御一緒に検討さしていただく。確かに、先ほど申しましたように、専門のお医者さんを県のほうが派遣して現地に行く、そういったときに御一緒においでになるということは、これはけっこうだと思いますが、ただそれは、そういった外から医者が聴診器を当てた、手を握ったでは、診断というものはつきませんですから、やはりいろいろな検査をやるということが必要で、そのデータをやはり一緒に持ってきていただいて検討する。それと、結局そういった検査の裏にあるものをわれわれ重視するわけなんで、裏にあるといいますか、どういうような方法で、どのようなことをやって、どのようなサンプルを選んでどうやったときにどうなった、その裏を全部踏まえませんと、ただディスク電気泳動をやったからこうなったといって、それだけでは、それを使う機械、それを流す濃縮のぐあい、それから条件、そういったことが全部必要になりますので、そういったことの備わったデータを持っておいでになれば、これはフランクに検討してみたい、こう考えております。
  220. 田中武夫

    田中委員長 岡本君に申し上げますが、これ以上やられますと古寺君の持ち時間がなくなりますが、よろしいですか。
  221. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、質問の時間が切れましたから、これで中止しまして古寺君に譲ります。
  222. 田中武夫

    田中委員長 古寺君。
  223. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、時間がございませんので、最初に萩野先生に、今回の生野地区イタイイタイ病と思われる患者さんは第何期の症状に当たるのか。これが第一点でございます。  次は、石崎先生にお尋ねしたいのは、先ほど喜田村先生から尿中カドミの問題がございましたが、データを拝見いたしますと非常にばらつきがございます。したがいまして、当然兵庫県でおやりになった調査だけでは、私は尿中のカドミの検査は十分ではなかったんではないか、こういうふうに考えられますので、この点については石崎先生からお答えを願いたいと思います。  さらに喜田村先生にお尋ねしたいのですが、いろいろ参考人方々の御意見を承りますと、非常にまだ未解明の問題がたくさんございます。さらに今回の調査の内容につきましても、今後検討すべき問題がたくさん残っているわけでございますので、これを全然心配がないというふうに断定することは非常に尚早ではなかったか。今後委員長としてこの問題についての責任をどういうふうにお感じになっていらっしゃるか。  以上、三点について承りたいと思います。
  224. 萩野昇

    萩野参考人 先ほどからお説明しておりますので、重複を避けます。ただ、私の調査したデータでは四〇マイクログラム・パー・リッターというカドミウムが出ております。これは公の機関でございます。  それからあの患者を何期と見るかという御質問にお答えします。骨折と見た場合に五期にするとします。しかし私たちは、あれは骨改変層と呼んでおります。なぜかと申しますと、骨折の場合には手術しないと必ず断端と断端が食い違ってまいります。手術もしないにあのようにきれいにそろっている場合には、これを骨改変層と呼んでいいと思います。言うなれば第四期でございます。
  225. 石崎有信

    石崎参考人 尿中カドミウムの量の実際的意義についてはかなりむずかしい問題がございます。私ども神通川地区の経験では、要するに尿中カドミウム量が高いということは、集団的に見ました場合に、その地区汚染があるということの証拠にはりっぱになり得ますが、個人にとりましてはそれはちっとも当てにならない。汚染されていてもあるときはたくさん出、あるときは非常に少ししか出ない場合が非常に多い。ことに一次尿ではかりました値では当てにならない。  ついでに申し上げますが、鑑別診断班が工場中毒の五〇マイクログラム・パー・リッターというものを基礎にいたしまして、三〇マイクログラム・パー・リッターで切っておりますことには、私は非常に不満であります。あのような限界は、住民の尿の実際の検査、そういうものの十分なデータを踏まえて、これ以上ならば安全であり、これ以上ならば危険であるという限界をきめるべきものであって、三〇マイクログラム・パー・リッターというきめ方は高過ぎると思っております。
  226. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 兵庫県の健康調査特別診査委員会が出した結論が尚早ではないか、それに対して責任を感じないかという御質問でございますが、われわれが先ほどから繰り返して申しておりますように、一万三千人を対象としてふるい分けふるい分けで結局第三次検診までかけての一年間の検査結果、これから判定いたしまして、国の鑑別診断委員会でもそういった結論が出ましたように、イタイイタイ病に特有な骨変化はないということを、やはり県としてもそれと同じ結論を出したわけでございます。それで結局こういった汚染がありまして、もしも万が一にでもそういった患者さんがあるということになりましたら、それは一万三千人からスクリーニングしていきまして、そんなものが一人とか二人とかそんな少数に出るわけのものではございません。必ずそういった同じような条件のもとに同じように生活しておられる方々、同じような年齢の方でしたら、それは何人とはいえませんけれども、たとえばイタイイタイ病地域でもイタイイタイ病といわれる方が百人近くですか、百人以上になりますか発生しておられます。そういった状況になるわけでございますが、そういったのが結局一名もそのより分けより分けの三次検診の中から出ませんので、ですから、そういったものがほかにはいない。  それと今後発生するおそれがないと申しますのは、これも先ほど申し上げましたように、過去ずっと汚染があって、そこで長く暮らしておった。昔は麦を食べた方もおられると思います。麦のカドミウムは御承知のように米よりもだいぶ三倍か四倍か高いというのが、平均値といたしまして、普通でございますが、そういったものをお食べになった方、そういった方々がいまのところ何ともないのですから、それに対していまは対策はとられておるわけでございます。もう一PPM以上の米は口に入らないように。ですから今後そういった方が、たとえば五十歳の方があるいは三十歳の方が今度あそこでずっと将来お暮らしになっても、骨に変化があるようないわゆる骨軟化症に発展するおそれはない、考えられないということでございます。絶対にないというようなことは申しておりませんから。これは委員会の諸先生方の全員の一致した御意見でございます。先ほどちょっと申し忘れましたが、その委員会委員の中に兵庫県の衛研の所長の渡辺先生とそれから大阪大学の第一内科の阿部教授、この方が先ほど申しました方々のほかに入っておられます。こういった方々の全員の一致した意見でございます。  ですから、私どもといたしましては、ああいった結論を出しましたことが尚早とは考えておりません。と申しますのは、骨軟化症というのは、これは午前中にお話があったと思いますが、いわゆるビタミンDの欠乏で起こるわけでございます。たまたまあの地区ビタミンDの欠乏で骨軟化症の方がおられるかもしれません、一万何千人について一々当たっていけば。そういったものが一人でも出た場合に、それがカドミウムによって起こった骨軟化症であるということは、もしもカドミでしたら、先ほど申しましたように一人だけぽつんと出ることはございません。ですから、そういうところ私ちょっとことばがへたであれですけれども、そういったものもないということを申し上げておるのではございません。カドミウムによってじん臓変化を起こして、それで腎性の骨軟化症を起こす、こういった患者さんはいまもいないし、将来これからも出るとは考えられない、こういう結論でございますので、その点少し——責任といまおっしゃいましたのですが、それは私ども全部医者でございますので、当然これは責任は負うわけでございます。
  227. 田中武夫

    田中委員長 もう時間が過ぎておるのですが、それじゃ、一問だけ。
  228. 古寺宏

    ○古寺委員 いま喜田村先生から、カドミウム汚染地域からある程度多数のいわゆる被害者が出なければ、イタイイタイ病とは考えられない、こういうような御発言があったわけでございます。私ども、休廃止鉱山あるいはカドミウム汚染地域を何十カ所も調査をしてまいりました。全国には何千カ所もございます。先ほど汚染対策が十二分にとられているから心配がない、こういうようなお話がございました。ある程度法律も整備されました。しかしながら、現実の問題としては完全な汚染対策というものは現在まだとられていないのが実情でございます。しかも、イタイイタイ病に認定されない、いわゆる公害病と思われるようなそういう患者さんが、そういう地域にはたくさんいらっしゃいます。そういう点から考えまして、多数発生しなければイタイイタイ病ではないんだ、カドミウム汚染によるものではないんだという考え方については、私は非常に疑問があると思います。  さらに、これは現在鑑別診断班に検討をゆだねられているわけでございますが、今後鑑別診断班としては、さらにこれを再調査をして、そして疑わしきは救済するという、この患者さんの立場に立って、尿の問題、あるいはじん臓の問題、骨の問題について検討するお考えがあるかどうか、これを重松先生からお伺いしたいと思います。
  229. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 誤解がございますとあれですから、お断わりするために発言いたします。  結局あの生野地区汚染地域がかなり限局されたとはいえ、かなりそこにたくさんの方々が住んでいらっしゃいます。その中で、かりに一人ですね、骨軟化症が出たという場合に、同じような暴露を受けて、同じような年数、同じようにしておられて、その方お一人だというようなことは、いままで疫学的にそういったことが考えられないわけでございますね。ですから、私そういったことを……(古寺委員「いや、これはまあ現在問題になっているのは十一人でございますね」と呼ぶ)はい、十一人です。いや、しかし、その中で私の申し上げているのは、イタイイタイ病の定義というのは、慢性カドミウム中毒による腎性骨軟化症が起こり、それにいろいろな妊娠栄養ですか、授乳、そういったものが加わってイタイイタイ病になるんだ。いわゆる腎性骨軟化症というのがこれが必要条件でございます。それがあるのがいまのところ一人もいないわけでございます。そういった意味で、将来ともその起こる——環境条件が改善された、確かに排出のほうはゼロになっているわけではございません。それは出ておりますけれども、しかし、おもに入りますのは結局米の中から入るカドミウムでございます。それに対しましては、一PPM以上のものはもう凍結いたしまして、いわゆる住民の口には入らないようになっておりますので……(古寺委員「全部凍結できないです」と呼ぶ)いや、一PPM以上のやつは凍結……(古寺委員「漏れているのがたくさんあります」と呼ぶ)
  230. 田中武夫

    田中委員長 私語はやめて、聞いてください。
  231. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 一応そういった手段をとっておりますので、それで人体の暴露汚染がまあ今後は減るから、ですから、いまの状態が続いても、出るおそれはない、こういう結論委員会として出したのでございます。
  232. 重松逸造

    重松参考人 鑑別診断班が、昭和四十七年度、本年度でございますが、どういうかっこうになるか、私、まだ知りませんので、いまの古寺先生の御質問に的確にはお答えできないわけでございますが、しかし鑑別診断班の編成がどうなるにしろ、生野に関しましては、先ほど申し上げましたような点では再検討が必要であるということは事実でございます。  それから、これはもう全く私の個人的見解でございますが、先ほど八田先生が的確におっしゃったように、非常にまだいろいろな点でスペキュレーションが多い。まあカドミウム中毒によってじん障害が起こるというのは、これは事実でございます。ただし、実際にいまのカドミウム汚染地域でじん障害が起こった的確なる例というものは、われわれまだつかんでいない。その意味では、実は先ほど私が申し上げましたように、この生野地区はあるいはその最初にして貴重な例かもしれないということでございます。  それから、このじん障害から骨軟化症に進むという段階もまだ不明確な点が非常に多い。むしろわからないところが大部分と言っていいと思います。  それからまたさらに、この骨軟化症が、その他の条件が加わってイタイイタイ病に進むというこの部分は、かなりの程度はわかっておりますが、まだこれも今後ほんとうに、じゃ典型的な骨軟化症イタイイタイ病のように、全身の骨がポキポキ折れるというところまでに至るかということは、おそらくこれからはそういう例はないのではないかと思いますが、しかしまだその辺も解明されていない。そういう点で私、先ほどちょっと申し上げましたように、鑑別診断班が本年度編成されるなら、本来の鑑別診断という、いま申し上げた盲点である研究面に重点を置いた研究班をぜひつくっていただきたいと希望いたしている次第でございます。
  233. 田中武夫

    田中委員長 次に、浦井洋君。
  234. 浦井洋

    浦井委員 簡単にお尋ねしますので、ひとつイエスかノーの程度でお答えを願いたい。石崎先生にお尋ねをいたします。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  けさ方からずっと石崎先生生野の五十歳以上の男女十七名について尿の検査結果を発表されたわけなんですが、あの中で尿中のカドミウム神通川流域汚染地区にほぼ一致しておる。さらに尿のたん白等がいずれも陽性に出ておるパーセンテージが、神通川患者が濃厚に発生しておる地域のパーセンテージにほぼ一致しておる。さらに平松教授の生野地区の三例の患者さんの骨軟化症、骨鬆粗症の診断も出てきたということで、私は生野にも神通川流域と同じようなイタイイタイ病患者がおられるものだというふうに思うわけでございますが、この点についてもう一度石崎先生のイエスかノーかの確認をお願いをしたいわけです。  それからついでに、そういうイエスというお答えをいただけるものと思うわけでございますけれども、そういうことでございますならば、私はこの生野を含めた市川流域で非常にいま汚染が限定されておると先生言われたわけでございますので一神通川流域と同じような程度の精密な検査を全員に、尿、血液あるいはレントゲン、こういうものの検査を徹底的にやって事態を明らかにすべきであるというふうに私は思うわけでございますが、これもイエスかノーでお答えを願えればはなはだ幸いでございます。
  235. 石崎有信

    石崎参考人 私の見解としましては、先ほどの第一問については、イエスでございます。  それから第二点についても、イエスでございます。
  236. 浦井洋

    浦井委員 ありがとうございます。  それでひとつ石崎先生も、それから、きょう私ようお尋ねをいたしませんけれども萩野先生も、それから駒留さんも、今後イタイイタイ病で苦しんでおられる患者さんやあるいは非常に困っておられる住民方々のためにがんばっていただきたい、こういうことをくれぐれもお願いをしたいわけでございます。  そこで、次に重松先生に。そういうことにのっとって、いままでのこのイタイイタイ病の認定基準というのは、やはり骨の変化にあまりにもウエートが置かれ過ぎておったということがほぼ明らかになってきたんだと思うわけでございます。したがって、ここで重松先生に御意見をお伺いしたいのは、相当この尿所見、特に尿中のアミノ酸の量、こういうようなものもわかってまいりましたし、非常に有力な診断の手がかりができてきたわけでございますので、この際、判定基準というものを尿や血液の所見も十分に取り入れて充実させるのがよいというふうに私は思うわけでございますが、これもひとつイエスかノーでお答え願えれば幸いでございます。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  237. 重松逸造

    重松参考人 イエスでございます。
  238. 浦井洋

    浦井委員 ありがとうございました。  それで、次に、喜田村先生にお尋ねをするわけでございますが、私はお尋ねしたいのは、先生の教室が、ことしの春の広島で行なわれました日本衛生学会で発表しておられる老人の尿たん白ディスク電気泳動像、これの抄録をいま手に入れておるわけでございます。そこでお願いは、これの完全な原文をいただきたいということでございます。これは私は抄録だというふうに理解するわけでございます。日衛誌からのリプリントでございます。これの発表された全文を、ひとつ詳しいのを資料としてお渡し願えればはなはだ幸いであると思うわけでございます。  いままでの石崎先生重松先生のそういう御意見から立脚するならば、喜田村先生の教室でやられておるこのデータというものは一もう詳しいことは時間がありませんので言いませんけれども、非常にカドミウム汚染地区住民というのは、これは市川流域だろうと思うのですけれども石崎先生重松先生の御意見に立脚すれば、先生の教室のデータからもイタイイタイ病であると認定できるような有力な手がかりを与えるものだというふうに私思うわけでございます。したがいまして、これの詳細な全文を渡していただきたいということと、何か簡単な御意見がございますならば、お答えを願いたいということでございます。  それで時間がございませんので、一緒にお願いしたいのですが、続いて、木村参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、いま現地の生野では、もちろんカドミウムに対する恐怖はあるわけでございますが、それだけでなく、たとえば砒素であるとか、あるいは銅であるとか、亜鉛であるとか、すずであるとか、こういうようなものの重金属による複合汚染の疑いがあるのではないかということで、非常に住民は不安に思っておるわけでございますが、ここでこれもひとつ資料を御提出願いたいというふうに私思うわけでございますが、特に砒素について、亜砒酸の製造の状況を、戦前も含めて現在に至るまでどのような実績をあげておられて、どのような経過をたどっておられるのかという点をお聞きしたいわけでございます。  それから第二点は、すずの製錬を今後もやっていかれるということでございますが、これはまあ生産工程の常識なんだそうでございますが、すずの製錬をやるときに必ず亜砒酸が出てくるということでございます。だから現在も私どもは亜砒酸がどんどんと出ておるのではないかというふうに思うわけなんです。だからこの出ておる亜砒酸というものをどのような方法で処理をされ回収をしておられるのか、こういう点をお聞きもし、ひとつ資料を提出していただきたい、このように私は思うわけでございます。  以上でございます。
  239. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 本年の四月に広島の学会で発表しましたデータでございますね。それのまだ詳しいレポートは書き上がってはおりませんけれども、それのもとになりましたなまデータは教室のほうにございますので、先生の神戸のほうにでもお届けできると思います。  それと第二点の、先ほどから繰り返して申しておりますように、尿のたん白変化が出ればこれはイタイイタイ病というわけではございませんので、やはり私どもはあくまでもイタイイタイ病というのは腎性骨軟化症、あの定義に基づいたイタイイタイ病のことを言っておるので、それでこれが出たからといって——それよりも、ございますように普通の何でもない、汚染とは無関係の老人でもそういうパターンが出る、頻度は少ないけれども確かに出る、ですからそういった点をもう少しはっきりしていきたいというわけで、最近はディスクの電気泳動というのはほんのスクリーニングにすぎないので、さらにそれから一歩進んだものを、ゲルろ過もあまり当てになりませんので、もう少しいいやつ、アミノ酸分析その他も加えまして、そういったことをいまの第二回の精密検査で実施いたしております。そういったデータがまた明らかになりましたならば、いずれ発表いたしたいと思います。
  240. 木村猛

    木村参考人 ただいまカドミ以外に砒素とかあるいは銅その他の複合汚染という問題についてお話があったようでございますが、私の鉱山はやはり昔は金、銀ということで、そのほかに銅、鉛、亜鉛ということで、確かに銅とかあるいはそういう亜鉛、それから砒素の話はもっとあとで申し上げますけれども、そういうものの汚染がないとは言えないと思いますが、その辺のデータにつきましては、きょう持っておりませんので、またいずれ調べまして御連絡できるようにしたいと思いますけれども、いまはっきりしたデータがここにございません。  それから亜砒酸のことでございますが、亜砒酸は実は生野におきましてはたしか大正の終わりだと思いますが、しばらく砒精鉱というものをやっておりましてこれをつくっておりました。しかし原料度品位がなくなりまして、それでやめております。  それで、もう一つはすずの中から砒素が出るのじゃないかということでございますが、実は私のほうでは現在すずもやっておりますが、すずの原鉱は鉱石から出るのとそれからすずのスクラップから出るのとございます。鉱石のほうにはあまり砒素はないのでございますが、たしかスクラップのほうから砒素が出るということで、すず製錬を始めたときに一応そういうスクラップからの原料を利用して亜砒酸をつくったということはありますけれども、最近はそのスクラップの中にも砒素の原料がなくなりまして、現在はいわゆる亜砒酸として精製することはできませんので、わずか煙灰というようなことで多少出ておるようでございますが、これは別に製品として出しておりません。
  241. 浦井洋

    浦井委員 処理をしておらないのですか。
  242. 木村猛

    木村参考人 ええ、しておりません。ですから、現在は亜砒酸の生産はやめております。数字的なことはちょっとまだ用意をしておりませんので……。
  243. 浦井洋

    浦井委員 喜田村先生は神戸大学の教授で、私は神戸医大の出身で直接教えてはいただかなかったわけでございますが、師弟の関係ということにはなるわけで、あまり厚かましいことは申し上げたくはないわけでありますけれども、先ほどの御返事ではコントロールもそれからカドミウム汚染地区住民のデータもあまりたいしたことはない、同じようなもので、老人性変化だろうというのようなお答えであったと私理解するわけでございますが、しかしこの先生の教室が出しておられるデータを見ましても、カドミウム汚染地住民の中でたん白陽性の人で糖も陽性の方は四七・八%、それからこれはコントロールとして、阪神地区の老人ホームのお年寄りをとらえたというふうに聞いておるわけでありますが、百七名、この中のたん白陽性の方の糖の陽性の率というのは一八%、四七・八と一八%といいますと、これは先生御専門の衛生学なり統計学なりの立場からいきまして有意の差があるというふうに私は理解するわけでございますけれども、その辺は、もし何でしたら、資料なりいろんな、まあこれだけの話で片づきませんから、いろんなお話をお伺いをしたいということを一言申し添えて、私の質問を終わります。
  244. 喜田村正次

    ○喜田村参考人 確かにおっしゃるとおりでございます。有意の差がございます。ですから、先ほども申し上げましたように、そういったものが、カドミウム影響だけしか出ないものでしたら、それが出ればこれはもうカドミウムとわかりますけれども、全然その汚染のない者でも出ます。ただ頻度が違うだけでですね。ですから、あるいはもう少し、阪神間の老人ホームじゃなくて、今度は同じような山村地域のああいった農業労働に多年従事された方、栄養もあの程度の方の、他の尿を取ってみたら四十何%出るかもしれませんので、その辺を今後さらに検討していく、これは、県のほうといたしましてもそういった検討をしていく、こういうことになっております。
  245. 田中武夫

    田中委員長 参考人の各先生方にお願いをいたしますが、委員各位からお願いをいたしました各資料は、できるだけ提出を願いたいと思います。  なお、御提出の際は個人に提出でなくて、当委員会を通じて御提出をお願いしたいと思います。衆議院の委員部のほうへお送り願いたいと思います。  以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただきまして、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  たいへん御苦労さまでございました。  次回は、明二十六日金曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十二分散会