○
青柳委員 何かこのような、最初に言いましたようにきわめて有害だという立法であるとすら批判されているのを、早く通してしまわないとこれからも起こるであろうのも
施行後でなければとらえることができないから、とりあえずこれでも早く通しておいたほうがいいだろうという、そのえさに使われているような感じがするんですね。法的安定などといいますけれ
ども、いまこれだけ問題になっている時期に、この
法律ができるまでは、故意
過失の
立証がなかなかむずかしいだろうから、かってにやれというような気分でいるのに、これができたらさかのぼられるのじゃたまらない、法的安定が害されるのだというふうに
考えている人たちがいるだろうかということなんですよ。いまからすでにこの点は自粛自戒をしているわけなんだから。過去にさかのぼって二十年も三十年も前までさかのぼらせるということにもしあれがあるならば、これは別ですよ。三年の時効とかあるいは二十年の時効というのを設けてあるわけですから、あまり無際限に過去にさかのぼるという危険性はないのであって、弊害はちょっと
考えられないと私は思います。したがって、この遡及の問題については、やはり社公民が出しておられるように、
損害が
法律後に生じた場合には、
原因は
法律施行前であってもなおかつ
適用するというようにするのが次善の策ではなかろうかというふうに
考えます。この点は見解の相違になってしまいそうですから、これにとどめておきます。
さて、あとは
因果関係の
推定の問題ですが、これは無
過失損害賠償
責任制度を設ける場合の非常に重要な
部分だと思うのです。目玉といえばまさにこの辺のところにあるのではないかというふうに
考えます。一昨年の
公害国会で、
公害罪をきめる際に非常に論議の
対象になったのですけれ
ども、しかしあの
推定規定は通過したわけです。あれは危険が
発生するという状況をつくり出す場合に
推定が働きますが、今度の場合は
損害が
発生するという場合ですから、危険というような抽象的なものよりは、
損害ですからもっとはっきりしたものになると思うのです。
損害が
立証された、その
原因をなしているものは何か、それは
有害物質である、その
有害物質は一体どこから出てくるかというところが、この
因果関係の
推定の根本だろうと思うのですね。だから、
損害の
原因が
有害物質であることまでを
推定するなどということはちょっと
考えられないことであって、それは
被害者の、いわゆる原告のほうで、自分の病気が出たのはカドミウムならカドミウムのせいである。さてそのカドミウムは一体どこから出てきたか。天然にあらわれたわけではなくて、上流のほうにある
企業があって、そこでカドミウムをたれ流してきた。その結果として、自分の体内にカドミウムが蓄積せざるを得ない結果になったんだ。これは水銀の場合でも同じだろうと思うのですが。だからこの
原因をつくった人間がだれかということを
推定いたしませんというと、被告にされた
企業は、自分のところでもそのような
有害物質を出していることは否認できないから、これは認める。しかし自分のところのものではないというような詭弁を弄しまして、他に
原因を転嫁しようとする。こうなってまいりますと、せっかくこの
有害物質を出している人間に、その
責任を追及しようとしても、彼らはそれを回避するために、いたずらに
訴訟を遅延させながら他に
責任を転嫁するという抗弁を成り立たせる。だから故意
過失の点で問題のなかったイタイイタイ病の場合でさえも、
原因が三井鉱業所ではない、そういう抗弁で二年も三年もむだな時間を費やしたというようなことがあるわけなんですね。だから
排出をしている
企業は、まず自分の
責任ではないということを
立証しない限り、言ってみると悪意の
推定を受けるといいますか、
責任を第一次的に負うべき立場に置かされてくる。疑わしきを立場にある。疑わしきを罰するというんじゃなくて、疑わしいから、おまえのほうで疑わしくないというのならば、積極的に反証をあげて自分の身の潔白を明らかにすべきである。これは
民事の場合は決して民主主義のルールに反するものではないと思うのです。刑事事件でそんなことをやったらたいへんでございます。だから私は、これをどうして避けたのか、どうも最も目玉ともいうべき
部分が避けられてしまう、この点についてはもう何ら触れるところがないというこういうもので無
過失責任法が成立したんだということでは、これは国民をはなはだしく愚弄する結果になるんではなかろうかというふうに
考えます。これは野党だからそういうことを反対せんがために反対しているんだというんではなくて、大方の世論は、普通の商業新聞などのマスコミの論調など見ましても、この点は強調されているところだと思うのです。だからなぜ、せっかくそういう趣旨で出発した
環境庁の原案というものが、最終的にはこの
部分ついては触れないということになったのか、何か積極的にだめになる理由があったのか、その
説明をできるのでしたらしていただきたいと思う。