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1972-03-23 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 始関 伊平君 理事 八田 貞義君    理事 林  義郎君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君       伊東 正義君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    村田敬次郎君       加藤 清二君    土井たか子君       米原  昶君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         総理府総務副長         官       砂田 重民君         中央公害審査委         員会委員長   小澤 文雄君         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         土地調整委員会         委員長     谷口  寛君         土地調整委員会         事務局長    上原 達郎君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君     ――――――――――――― 三月十八日  狩猟者団体法制定に関する請願外七件(河野洋  平君紹介)(第一六〇九号)  同外六件(福田篤泰紹介)(第一六一〇号)  同(三原朝雄紹介)(第一六一一号)  同(坂村吉正紹介)(第一六五二号)  同(山崎平八郎紹介)(第一六五三号)  同外三件(小此木彦三郎紹介)(第一七七四号)  同(田川誠一紹介)(第一七七五号)  水俣病名称変更に関する請願外十一件(坂田  道太紹介)(第一七一六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害等調整委員会設置法案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 田中武夫

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害等調整委員会設置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 公害等調整委員会設置法案が出ておりますが、この法案土地調整委員会公害等調整委員会二つを合体する、こういうことであります。それと同時に、従来の公害等調整委員会のやっておりました仕事範囲を拡大するというのが趣旨であるようであります。内容につきましてはたくさんの問題がありますが、いろいろな問題をお尋ねしたいと思いますので、それぞれいろいろ分担が各省にわたっておるようでありますから、ひとつ権限のある方から、その点しかるべくお答えをいただきたいと思います。  まず、新しい機構でありますが、この新しい機構は、いま申し上げましたように二つ委員会を統合するものでありますが、委員会が何か縮小されているのではないかという感じがするのであります。中央公害審査委員会ではいままで委員六人、土地調整委員会では委員五人、これを合計いたしますと十一人になります。今回のは、二つ合併いたしまして七人ということになっております。土地調整委員会でも相当仕事があったようでありますし、また中央公害審査委員会はこれから相当仕事があると私は思っておりますが、はたしてこの七人でいいのかどうか。それと、その辺についてどういうふうに考えておられるのかというのが第一点であります。  それから第二番目は、この委員会はいろいろと実務的な問題を検討していかなければならない。特に公害紛争処理であるとかということになりますと、非常に技術的な観点につきましてやらなくちゃならない。単に法律的な問題だけではないと思うのであります。そういったような事務局スタッフというものが一体どういうふうになっているのか、事務局機構人員というものはどういうふうに考えておられるのかという点が第二点であります。  それから第三点は、そういった点につきまして一体予算上の措置はどういうふうになっているのか。はたして十分な予算があるのかどうかというようなことでありますけれども、その点につきまして、まずお尋ねいたします。
  4. 砂田重民

    砂田政府委員 お答えいたします。  従来、中央公害審査委員会林委員のおっしゃいますとおり委員長一名及び委員五名、この定員事件処理に当たってまいりました。今後この統合後の委員会におきまして新たに公害紛争にかかる裁定を行なうことに伴いまして、委員数をそういう意味から申しますと、むしろ一名増ということになるわけでございます。委員長を含めまして都合七人で処理をすることに相なります。従来の土地調整委員会処理をしてまいりました業務は、過去五年間の実績がございますので、その事務量等から勘案をいたしまして、今後とも量的にはさして多くないという予測をいたしております。新しい委員会業務の遂行につきましては、当面は委員数の面で支障を来たすようなことはない、このように考えております。また、事務当局から、私どもがそういうふうな将来の予測を立てました過去の実績等について、必要があれば御報告申し上げたいと思います。  なお、事務局事務処理の問題について御質問がございましたが、今回統合されますこの委員会事務局長事務局次長一人ずつ、その他の職員三十四名、これは都合三十六人でありますけれども、従来の土地調定員の十七名、それから中公審定員の十九名、これを合わせました数と合致するわけでありまして、委員会が当面予想いたします事務量から勘案いたしますと、さしあたりはこの人員の配置で事務処理できるもの、かように考えております。なお、事務局職員のうちには、委員会が準司法的権能を持つ委員会でありますから、「弁護士となる資格を有する者を加えなければならない。」こういうふうにきめておりますし、委員会関係をいたしますことになります分野林委員が御心配になるような専門的な知識がまた必要でございますので、知識、経験を十分に有する者を加えるように、こういう配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  5. 川村皓章

    川村政府委員 それでは今度新たに発足することとなる公害等調整委員会予算はただいま国会で御審議をいただいておりますが、その内容といたしましては、これを一本にして組んでございます。したがいまして、本年度は中央公害審査委員会土地調整委員会がそれぞれ別に組まれてございましたので、それを合算いたしまして、四十六年度の予算額は一応人件費も含めまして、一億五千九百二十万二千円というかっこうになっておりました。それが四十七年度といたしましてはトータルで一億六千六百二万二千円というかっこうになっておりまして、その間の伸び率は四%ちょっとのところでございます。しかしながら、この中には人件費を含んでおりますので、この人件費の額が約一億一千万ばかりがそれぞれ入ることになりますので、実際には人件費を除いた額と申しますのは約四千五百万が四十六年度でございますが、これが五千五百万というかっこうになっております。ただし、この内訳の中にたまたま中央公害審査委員会が庁舎がございません関係で、町村会館に行っておりました。その借り上げ費等が入っております関係上、これはいわば当然減になってしかるべき金でございますが、その辺から実質的に考えました場合には、相当伸び率になっておりますので、一応当面の四十七年度の発足にあたりましては、これで支障がないものというふうに考えております。  以上でございます。
  6. 林義郎

    ○林(義)委員 全体の伸び率として四%というお話であります。今回できます公害等調整委員会は、いままでの中央公害審査委員会よりは仕事内容が非常にふえてきておる。あとでいろいろ私御質問いたしますが、いろいろな問題において、特に技術的なスタッフ相当入れなくちゃいかぬのではないかと思います。スタッフを常駐の人として入れるかあるいは専門家に委託して、いろいろと調査をしてもらうということが相当に必要となってくるだろうと思うのであります。特に今回の法律によりまして、公害関係裁定制度というものができるわけであります。そういった場合におきまして、たとえば証拠調べとか証拠保全とか、事実の調査をすることができるようになっておる。これは職権でもってやるわけであります。さらに不特定の相手を申し立てによって原因裁定をするというような規定もあります。そういった点につきまして、この委員会のする仕事というものはやはり相当にふえてくるだろうと私は思うのであります。いままでの単に中央公害審査委員会土地調整委員会をプラスした仕事だけではない新しい仕事が私は出てきておるだろうと思うのであります。そういった点からいたしまして、公害の問題でありますから私は常にこの委員会で申し上げているのですけれども公害の問題というものはやはり技術的な問題を解決していかなければならないと同時に、医学的な見地についての審理もしていかなければならない。そういった点で、いろいろなそういった新しい科学の分野仕事というものが非常にふえてくる。しかもそれを職権でやろうということになれば、ますますそういった仕事についての事務というものが私はふえてくるのが当然だろうと思うのであります。いまのお話でありますと、そういった点につきまして十分な予算的配慮がしてあるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  7. 砂田重民

    砂田政府委員 御質問の御趣旨のような心配は、私どもも正直申し上げて持つわけでございます。ただ、やはり予算編成をいたしますときに、従来あるいはここ一、二年ばかりの間の司法の手にゆだねられた公害紛争件数等々、こういうことから持ち込まれるであろうと思われる件数と申しますか、数と申しますか、そういうものを見当をつけて考えて、一応の予算編成をいたさなければなりません。お話のような専門技術的なことも多うございますので、それぞれの分野の方々に専門委員になっていただくというようなことも、当然考えてまいらなければなりませんけれども、明確に、本年は何件ということを初めからきめてかかるわけにはまいりませんので、ただいま事務局長から御説明を申し上げましたような予算を一応組んだわけでありますけれども、年次途中におきまして事は公害という重大な問題、きわめて社会性の高い問題でありますので、思わざる予算の不足を来たすようなことがありました場合には、当然これはその時点で予算上の別の配慮をいたさなければならない、かように考えておる次第でございます。
  8. 林義郎

    ○林(義)委員 いま副長官からのお話しのとおり、公害というのは非常に社会的に重要な問題であります。私はぜひ予算のワクにとらわれずにほんとうにいい裁定なり調停なりをしていただきたい、そういった点につきまして、私は当委員会としても、各党からあとでおそらく御質問があるでしょうけれども、当委員会としては一番大切なことだと思うのであります。予算がないからこういった審理ができない、予算がないから真実がきわめられないということであれば、私は逆立ちした議論だと思います。真実をきわめることが何よりも大切でありますから、そういった点におきましては、政府全体の立場におかれて十分な配慮をお願いしておきたいと思います。  次に、この当公害委員会でいろいろと議論されました中央公害審査委員会法律を先般も改正いたしましたときに議論がありましたのですが、国家行政組織法三条機関に今度はなるということであります。従来は八条機関でありました。そういった形で今回三条機関にされたのは単に土地調整委員会と合体したからということだけではないだろうと思うのでございます。この公害紛争のためにもやはり三条機関が必要であるという御判断に立っての今回の改正であろうというふうに私は考えておりますが、その点はどういうふうなお考えによってやるのか。この辺は現在の中央公害審査委員会事務局長さんからでもお答えいただきたいと思います。
  9. 川村皓章

    川村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま林先生の御質問でございますが、今度の公害等調整委員会三条機関にした理由についての端的な御質問であろうかと存じます。  もう先生これは十分御存じのとおり、国家行政組織法三条の合議制機関と申しますのは、その所掌いたします事務の質及び量が相当な量に上がりまして、固有事務局相当数専任職員を置いて処理することが適当なものということが一般的な定義として言えるかと存じます。そこで、今度の公害等調整委員会は、いわゆる準司法的機関といたしまして、公害にかかる紛争につきまして現在まで行なっておりました調停あるいは仲裁、それに加えて裁定を行なおうということでございまして、従来土地調整委員会が行なっておりました鉱業権設定に関する不服の裁定等をもあわせて行なうことと相なります。したがいまして、この新機関委員長及び委員は独立して職権を行使し得る、なお一定の事由に該当しなければ罷免されないというような強い独立性中立性が十分に担保されている必要がございます。さらに事件当事者等につきまして出頭を命じたり、文書物件提出を命じたり、あるいは場合により立ち入り検査も行なう等の職務を遂行する上に必要な権限が付与されております。また、そのために委員会固有事務局も置かれております。  以上のような観点からいろいろ勘案をいたしまして、これを第三条機関ということにいたしたわけでございします。  なお、先ほど砂田長官お答えを申し上げた点で、この際ちょっと補足をさせていただきますが、先ほどの調査費について十分配慮しているかということについて、この際補足させていただきますと、あらかじめ実は出てくる件数が何件だということは予算編成する前にきまっているわけではございませんので、その点は苦しい点が正直にいってございます。しかしながら四十六年度は約五百万の公害紛争調査経費を持っておりましたものが四十七年度は二千三十万ということで、四倍ちょっとというものを一応見ていただいております。  以上、補足してお答えをいたしておきます。
  10. 林義郎

    ○林(義)委員 私はもう一つちょっとその組織全体の問題としてお尋ねしておきますが、従来の土地調整委員会仕事というのはこれからやはりこの当委員会処理されることになると思うのです。とかく公害処理のほうは先ほど砂田長官からもお話がありましたように、非常に社会的な重要な問題。しかしながら土地調整のほうも決して不必要な仕事ではないのであります。一体この土地調整委員会のほうの仕事というのは、大体いままでどのくらいあって、これからはどういうふうな形で当公害等調整委員会処理をしていかれるのか。土地調整委員会の方おられますか。おられるならば、そのほうからでもお答えいただいたらと思います。
  11. 上原達郎

    上原政府委員 御質問お答えいたします。  現在私どものほうで扱っております仕事は、いろいろ権限規定はございますが、主として具体的な事案となってあらわれてまいりますものはおよそ三つの柱として建てることができると思います。  一つは、鉱区禁止地域指定に関する事項でございます。これは鉱業権を新しく設定することが公益の観点から適当でないと認める地域につきまして、各省大臣あるいは都道府県知事請求をまちまして、当委員会がその請求にかかる地域範囲並びに請求にかかる法定鉱物の種類を指定いたしまして、学問上いわゆる一般処分としてわれわれは法規命令をなし得るというふうに受け取っているわけでありますが、そういう指定処分をいたします。その場合、その効果といたしまして、当該禁止地域として指定しました当該地域につきましては、所管の通産局長鉱業権設定ができない、こういう効果が付せられております。  それからもちろん同じような手続によりまして、指定を存続させていく必要がなくなったと思われるときは、やはり前に申し上げたような請求権者解除請求をする、こういう手続もございます。ただし、解除制度が行なわれたことはいまだ事例はございません。  それからいまの御質問でございますが、当委員会は設立されました昭和二十六年以後ちょうど満二十一年有余になりますが、その間いま申し上げた鉱区禁止地域指定関係は百五十六件に及んでおりまして、大体その二十年間の受理件数動きを見ますと、必ずしも平均値的なものは出せませんが、最近五カ年間の例をとりますと、毎年六ないし七件という割合で請求を受けております。ですから将来もこのような傾向で、大体横ばいのような形で受理件数推移が見られるのではないかと存じております。  それから第二番目の業務といたしましては、鉱業法採石法砂利採取法あるいは河川法農地法森林法自然公園法、そういうふうな土地の利用に関する諸種の行政法規が十二ございますが、いま申し上げた法律の中に定める特定処分、しかもこれは鉱業とか採石業砂利採取のような地下資源的なものあるいは建材的なもの、材料的なものですね、そういう業種との調整に関することが不服の理由となったもの、たとえば鉱業権者国立公園特別保護地区内で掘採しようとする場合、現在は環境庁長官の許可をいただくことになっておりますが、そういうような特定処分に限りまして行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法等の例外といたしまして、一般不服審査による方式によって不服申し立てをすることを許さず、直接土地調整委員会裁定申請をする。また、不服審査法に認められるような訴訟行政不服申し立て選択主義は許されないのでありまして、直接裁判所に出訴することはできないというような機構になっております。それで、そういう裁定申請等が出ますと、対審構造と申しますか、処分庁及び処分を受けた者あるいはその処分により法律上の不利益を受けるような者、すなわち当事者を並べまして、準司法的手続によりまして審理し、口頭弁論証拠調べ等を行ないまして審理いたしまして、裁決を下すわけであります。この件数が当委員会設置されまして以来三十八件に達しております。受理件数でございます。そのうち処理をいたしましたものは三十五件で残り三件が目下係属中であります。これの伸びもいわゆる各年別の受理傾向を見ますと、最近五カ年間の数字をとりますとおおむね三件程度になっておりますが、行政不服というのは必ずしもいま申し上げたようにいわゆる傾向値的なもので判断するわけにいかないので、そこのところは将来同じような推移でいくかどうかはちょっと断言いたしかねる次第でございます。  それから第三の柱は、土地収用法上あるいは森林法上、事業認定あるいは収用委員会収用裁決等に関する異議申し立てまたは審査請求建設大臣ないし農林大臣になされますと、その場合いま申し上げた主管大臣はその審査請求ないしは異議申し立てに対して決定または裁決をくだすときに、事前にわが委員会意見を徴しなければならない、そういう規定がございます。そういう事案設置以来百二十八件を数えていまして、こういうものは比較的簡単な事案でございますから、いずれも請求受理いたしました年内には大体処理を完了しております。   〔委員長退席始関委員長代理着席〕 これも大体最近五カ年間の動きを見ますと、年間十三件とか十四件とかいう数字に達しておるわけであります。  冗長にわたりましたが一応答弁いたしました。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 土地調整委員会仕事もいま申されましたように非常にむずかしい仕事でありますから、ひとつこれもできるだけ早く解決するような方向でやっていただきたい。公害のほうばかりをとらえるということなく、ひとつやっていただくことをお願いいたしておきます。  長官がお見えになりましたので、ひとつお尋ねをしたいのですが、いわゆるチッソの問題であります。これも私が当選いたしましてから最初に当委員会に配属になって、千種委員会となりました水俣病補償委員会というのがあります。当時千種さんのお世話のもとに昭和四十五年の五月でございましたか、裁定というか補償の話し合いができて補償調停ができたということがございました。その後におきまして、以前から、昭和四十三年だったと私は思っておりますが、四十三年からいわゆる熊本地裁訴訟がかかっておりまして、調停訴訟と同時に進んだという問題が依然として続いております。最近いろいろと問題がございますが、いわゆる中央交渉派というのと自主交渉派というのがあって、いろいろと騒動が起こっているということであります。この中央公害審査委員会におかれましては、両方の当事者から調停申請が出されておるということで、調停でありますから、双方当事者合意しなければならないということは、合意の上で調停する、合意がなかったならば調停できないということでありますが、この問題の現段階は一体どういうふうになっているのか、長官あるいはどなたからでもけっこうでありますから、ひとつ現在の段階はどういうふうになっているのか説明いただきたいと思います。
  13. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 お答えいたします。  さきチッソ患者及び会社双方からそれぞれ調停申請が出ました。その後いま御指摘のありましたように、自主交渉派とそれからそうでない、調停で解決をしてほしいという側との間に意見の対立があったようでございまして、そのためにさき申請したチッソ側のほうでも、どういうふうにするかということについていろいろ交渉を重ねていたようでございますが、結局チッソのほうでは調停申請を取り下げまして、そして患者のほうから申請の出ている分についてだけ中央公害審査委員会調停事件が残っております。そしてそれにつきましては、申請のありました当時に現地職員が行きまして、実情を調査し、大体の見通しをつけまして、本年に入りましてからその事件を担当する調停委員三名がすでに何回か現地調停委員会を開きまして、現に調停進行中でございます。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 私の知っている範囲では、いわゆる調停交渉に応じようというのが三十一人、それからいわゆる自主交渉派というのが十六人だというふうに聞いております。現在はその自主交渉派のほうにつきましてもやるということになっておりますが、そうですかということが一つ。  それからもう一つは、現在熊本なり鹿児島県でいろいろと新患者認定をしておられる、こういうふうなことです。この新認定患者認定医療救済のほうの関係でおやりになるのでありまして、この中央公害審査委員会仕事とは一応違うわけでありますけれども、これはだんだんと患者がふえてまいります。いままでは三十一人対十六人というような話でありますが、今度百六十人全部やられるかわかりませんけれども、だんだんふえてくる。そうするとこれは調停といってもいまさっきのようなお話で、繰り返し繰り返しやるということになると、これは私はたいへんなことになるのだろうと思うのです。その辺についてどういうふうな形でこの紛争処理しようとされているのか、この辺についてのお考えをお尋ねしたいと思います。
  15. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 先ほど御指摘のありました、現在調停申請している患者は三十一名、自主交渉派は十六名、これは先生指摘のとおりでございます。そのうち自主交渉派十六名につきましては、結局会社側からの調停申請が取り下げになりました結果、現在私ども中央公害審査委員会には調停は係属しておりません。それで申請がございませんので、職権調停を進める道もございませんので、これはそのままになっております。しかしこの分についても、もし将来事態が変わりまして調停申請がありますれば、またそれについて手続を進めることは当然のことでございます。  それから患者認定については、第一次患者認定が十八名、これは昨年十月でございます。それから第二次が十二月に二十九名、合計四十七名になっておりますけれども、新聞などで伝えられますところによりますと、今後非常にたくさん出る可能性があるわけでございます。それにつきましては、各患者ごとに、事案ごとにそれぞれ事情は違っているとはいいますものの、やはりあの地域での一つの共通の原因から出てくる共通の被害関係でございますから、おのずから解決についても共通点が多かろうということでございます。それでそれにつきましては、現在の段階でどういうふうに具体的に解決をつけるか、調停手続で解決をつけるかということにつきまして慎重に検討しておりまして、現在現に係属している事件の解決がおそらく今後出てくる事件についても一つの指針になることになるだろうと思います。したがって、多数の事件が出るだろうと思いますけれども、それについては最初の解決を十分に当事者の納得するしっかりした線に落ちつけるようにいたしまして、その後は現在の能力で処理できるようにしたい、そういうふうに考えております。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 今回のこの法案が出るときにそういった点がいろいろ問題になったようであります。新聞報道にも出ておりましたが、調停ということ、ここでどうしても調停に応じないというような話、それでしょうがない、一方は取り下げをする、調停があれば当然でありますけれども、今度は裁定制度という若干強制的なものをこの委員会の中の仕事として持ってこられたわけであります。私考えますのに、公害紛争というのはやはり両当事者がいろいろな話し合いをしていかなければならない、調停という方法であれあるいは和解という方法であれいろいろ方法があるだろうと思います。最終的には裁判でもって解決をするということになるのが、私は現体制下における一番スムーズな方法であろうと思うのであります。したがって、今度の裁定制度については、原因裁定については両方から申し出がある、責任裁定は被害者のほうから出てまいる、こういうふうなことになると思いますが、いまのようなたとえばチッソの具体的な例をとりましても、あるいは自主交渉派というようなところあるいは調停にも乗らない、いかない、裁定にもいかないというようなところは困るというようなことが私は出てくるだろうと思います。しかしながらそういった形で調停をやって話し合いをしていこうというのがこれは基本原則でありますから、なぜ一体話し合いをしないんだろうかというきわめて素朴な疑問が私は出るのでありますが、なぜそういうふうな形で調停あるいは一いろいろな方がおられるわけですから、そういったところで調停をしますというところに乗らないのであろうかということが一点。  それからもう一つの問題は、今度の新しい裁定制度でそういった点についてどういうふうなあれを考えられるのか、この辺についての御見解を出していただきたいと思います。
  17. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 いまの自主交渉派がどうしても調停、話し合いに乗ってこないというのが私どものほうでも非常に残念に思うわけでございまして、そもそも事件の起きた当初に現地職員が行きまして調査をしましたときにも、何とかしてこれを患者のほうでも話し合いに乗るようにできないものかというふうに考えまして、そちらのほうとの接触を得ようと思っていろいろ配慮したわけでございますけれども、結局それはできなかったという実情でございます。それからその後になりましても、現地に行きましたときに、すでにもうチッソのほうからの調停申請が取り下げになった後でも、かりにもし向こうのほうから接触があり調停の話をしようという機運がございましたらもちろんそれは望むところでございまして、そういうことがあれば非常にありがたいと思ったのですけれども、結局現在までのところはそういう機運になっておりません。いずれにしても話し合いでございますから、双方の対立が非常に激しくてどうしても話し合いの機運が熟しないというときには、調停あるいは仲裁という制度は何としてもそこに限界がございまして、そこから先には進めないわけでございます。ただ今度ここで御審議願います裁定につきましては、話し合いができなかったときに、やはりそれぞれ定められている申請者のほうから一方的に申請があってもそれを取り上げてそして手続を進めていくということになります。しかしその場合でもやはりスタートはそうでございましても、事案の解決のためには話し合いによる解決が一番適当な場合が相当あるだろうと思われます。そういうことも考慮いたしまして、いま御審議願っております法案の中には裁定中でも職権でも調停を行なうことができるというようなことも織り込んでございます。そしてそういう話し合いができなくてどうしても対立が解けない、しかも一方はそれに対する最終的な解決を求めるというときには、これは委員会といたしまして法律規定に従いまして十分資料を集め、証拠調べもいたしまして、それについて少なくとも委員会としては、あたかも裁判所が判断をすると同じように、厳正中立に十分審議を尽くして結論を出すということにいたしたいと思っております。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 そういった裁定制度ということになりますと、まあ原因裁定の場合におきまして、水俣病というのは、やはりすべての患者について同じような原因だろうと思います。補償の金額とかなんとかということ、いわゆる責任裁定というような形になりますと、これは各人各人でいろいろ違ってくる。どういった水銀が流れてどうなったという原因の問題につきましては、やはり同じと考えなくてはならないのだろうと思います。そうした場合に、一ぺん裁定を出しますとその裁定効果というようなものはすべての地域とすべてのそういった問題に及ぶという効果があるんだろうと思うのですけれども、そういった点、それにつきましてあらためてまた裁判所に出訴をすることができるという形での救済で十分なのかどうか、この辺についてどういうふうにお考えになっておられますか。
  19. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 おっしゃいましたとおりに、原因裁定は多くの場合に各事案について共通の問題だろうと思います。もちろん特別の場合にはあるいはたとえばある患者がその問題になっている有害物質からそういう病気になったのかどうかという、特定の病状についていやそうではないだろう、たとえば脳溢血か何かからそういう病状が出てくるのだろうというそういう問題はあるだろうと思いますけれども、これは例外でございまして、一般的に広範な地域で同様な病状が出たというときには因果関係は共通に考えるのが普通だろうと思います。それで、そういう場合には原因裁定によって因果関係が明らかになりますれば、それについては当然関係の行政庁も考慮を払うことになりましょうし、それから関係当事者もそれを前提にして、たとえば相互の話し合い、和解あるいはそれを前提にずる調停、そういったようなことで解決する場合が非常に多かろうと思います。  それからもしそういうふうにして解決しないで、最後にそれが裁判所にいったという場合にも原因裁定で使われましたいろいろな資料は当事者としてもそれを裁判の資料として使うことができるわけでございます。  それから原因裁定手続では、その時点での日本の最高の技術水準、学問的な水準を動員して結論を出すことになろうと思いますので、それによる結論に対しては裁判所で審理されるときにも非常に有力な認定材料になることと思います。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 原因裁定の問題についてお尋ねしますが、今回の法律では相手方の特定を一時留保することを認めるという規定があります。昨年の十一月でしたか十二月でしたか、私は当委員会におきましていろいろとお話を申し上げた。瀬戸内海はたいへん汚染をしておる。赤潮が非常に発生をしておりますが、その赤潮の原因がどこにあるかわからないという問題で、現在水産庁その他で調査をしておる。赤潮の問題は瀬戸内海だけではない。全国に広がっております。私の地元にももちろん瀬戸内海沿岸がありますが、また響、玄界灘、朝鮮海峡をはさんだこちらのほうにも及んできているのであります。   〔始関委員長代理退席、委員長着席〕 現地で水産大学の専門家の人の話によりますと、福岡県にあります響灘でいろいろと開発をしておる、その開発の影響がだんだん北のほうに流れてきて、山口県の北部の海岸のほうに影響を及ぼしていることは明らかである、こういうふうな発言をしておられるのであります。そのときに、響灘開発の影響があるというけれども、一体だれがどうなっておるか、この委員会でやるときには、響灘の開発主体というものは福岡県か、あるいは港の管理組合であるか、あるいはそこに建つところの工場であるか、だれかということが非常にわからないことがあります。私は、こういった形で相手方の特定を一時留保することができるという規定が入っておれば、そういったことは当然相手方を特定しないでやれるんではないかと思います。この点が第一点です。  それから第二点は、実は被害を受けたほうは漁民であります。漁業者であります。これはそのときの委員会の議事録を見ていただければわかりますけれども、いろいろな養殖というものをやっている、あるいは沿岸で漁業をしているところが被害を受けております。こういった被害を受けている連中というのは概してそんなにたくさんの訴訟費用を払うだけの能力を持っていない。また、そんなむずかしい問題を議論するだけの力はないのであります。そういった場合におきましては、この裁定申し立てれば、証拠調べとか証拠保全とか事実の調査というものは、公害紛争処理委員会において、職権をもって調べる。職権をもって調べるということは当委員会の費用において調べられるということだと思いますが、そういうふうに解してよろしいのかどうか、お尋ねしておきます。
  21. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 お答えいたします。  まず第一点の特定の問題でございますが、仰せのとおり、実際公害が発生しました場合に、その原因者を、相手方を特定して申請するのが原則でありますけれども、その特定が非常に被害者にとってはむずかしいという例は考えられるわけでございまして、御指摘のその響灘の事案そのものがどうだということは私はちょっとわかりませんので、具体的なことについては申せませんから抽象的に申しますが、やはりそういう場合に、特定のために手間取って、それで時日を経過し、場合によってはぐずぐずしていて時効も完成してしまうというようなことでは非常に困りますので、そういうときには不特定のままで申請だけはする、そして申請があってから後に、その申請人のほうでも調査するでしょうが、しかし同時に委員会でもそれについて協力しまして、そして相手方を特定できる状態にまで持っていけるように努力をする、そして特定できる状態になりましたらそこでその相手方を特定しまして、それを相手に本格的に裁定手続を進めていくというのが今度の案でございます。でございますから、そういう場合に、不特定のために救済が得られない、そのために時効が完成してしまうというようなことは今度は少なくなる、ほとんどなくなるんじゃないかと思います。  それから御指摘の第二の点でございますが、たとえばそういう場合に、一般漁民というのは無資力である、そのために十分の資料の提出もできないだろうということは、まことに仰せのとおりでございまして、これをそのままにしておきますと、本来いかに委員会が公平に手続を進めて正しい結論を出そうと思いましても、一方のほうが無資力のために十分の資料が出せない、出すことのできるはずの資料さえも出せないということになりましたら、結果としてはまことに不公平なことになってしまうのです。いかに主観的に公正を期しても、それはついにそういう結果を得られないということになりますので、これはどうしても双方の資料を十分に出さして、公平に判断資料をそろえるというためには、あくまでその無資力な人に対して手助けをしてあげるということが必要だと思います。その点につきましては、もちろん委員会として、すべての資料は全部委員会職権で、当事者は手をこまねいていても委員会がみんな集めてやるという、そういうたてまえじゃありませんので、判断資料は申請人と被申請人がそれぞれ提出するのは当然でございますけれども、しかし同時に、いまの無資力のために当然わかるべき資料さえも出せないというような場合が考えられますので、そういうときには委員会としてはいろいろな方法でそういう資料は職権でも集める、そうして当事者の立場をできるだけ対等に、平等に近づけて公平な結論を出すようにしたい、そういうふうに考えております。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 今回の裁定につきまして、やはりいろいろとおやりになる事案が出てまいりましていろいろとおやりになる。そのときにやはり一つのルールというものがあるだろうと思います。いろいろな問題を解決する、補償を払う、こういうことでございますが、そのいわゆる責任裁定を行なうという問題につきまして、いまのよりどころとしてはやはり民法原則しかないと思うのであります。民法七百九条、七百十九条の規定にならざるを得ないと私は思うのであります。御承知のとおり、今回、別の法案で無過失賠償責任制度というものを立法化しようということを考えておりますが、この点に関しまして当委員会で行なわれるところの裁定については、そのルールというものはいままでどういうふうになっておったのか、またそのルールは今度そういった法律を変えることによって一体どういうふうなことになるのか、その点についての基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 田中武夫

    田中委員長 小澤政府委員、もうちょっと大きな声で。
  24. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 はい、わかりました。  責任裁定におきましても、この裁定の原理になる基準は、これは仰せのとおり民法でございます。民法そのほかの実体法でございます。裁定制度というのは、ただ普通考えますと、場合によってはもう実体法にとらわれないで妥当な結論を出す裁定というのも考えられないではないのかもしれませんけれども、私どもいま準備しておる裁定制度はそうではございませんので、ちょうど裁判所の行なう裁判と同じように、紛争に対して実体法規を適用してその結論を宣言するという性格のものとしてございます。したがって、その裁定についてのルールと申しましても、これは全く現行の実体法がそれ自体でございまして、その実体法をどういうふうに変更して、そして実体法的な別なルールをつくるという考えはございません。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 実体法を見てやるということでございますが、裁判のほうにおきましてもいわゆる因果関係の推定というのは、単独公害の問題につきましては阿賀野川の事件の判例、それから神通川の事件の判例等で、相当裁判所のほうにおいてもいままでの考え方からすれば進んだ考え方をしておられるのであります。この裁定をおやりなんですから、裁判所よりはさらに進んだ考え方を出していただいてもいいと私は思うのでありますけれども、そういった単独犯の場合と、もう一つ複合犯というものがある、複合公害というものがあると思うのであります。これはなかなかむずかしい問題があると私は思うのであります。たとえて言いますと、これは委員長法律専門家ですからそういったことを少しお尋ねをしたいと思うのですが、ABCDという四社がある。それぞれ公害の排出基準を守ってずっと操業しておる。そしてそれまでは何もなかった。ところが、たまたまA社に事故があって大量のものが排出された、あるいは事故が起きてそれによって相当なSO2が拡散された、しかもその事故の期間が相当長引いたというような場合、そういった場合にはいまの考え方からすれば一体どういった理論を適用――A社が非常に排出している、その結果健康被害を生じたというような場合には、A社だけが原因になるのか、B社もC社もD社も同じように若干は排出しておったんだから、B、C、Dも利害関係人ということになるのか、あるいは原因になるのか、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  26. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 先ほど裁定の基準は実体法だと申しましたのは、あるいはことばが少し足りないので失礼したかもしれませんけれども、実体法と申しますのは、決して民法の条文に書いてあるその条文のとおりに形式的に読むというのではございません。民法ができましてからもうすでに半世紀以上経過しまして、民法についてはいろいろな解釈が進んでおるのでございまして、私が先ほど裁定の基準は実体法であるというふうに申し述べましたのは、そういう長い間に累積された解釈の集積、判例、学説そのほかのいろいろな成果によりまして集積されて、自然自然に条文の明文の字句がいろいろ補充されて現状にマッチするように解釈されてきておりますが、その解釈されている結果の実体法という趣旨でございます。決して条文の字句そのものに盲従するという趣旨のものではございません。それでその解釈の中には、たとえば不法行為につきまして立証責任の問題もございますし、それから立証責任の問題までいかないで、実は個々の事案を解決するときには経験則がかなり働いてきます。経験則の一環としてたとえば事実上の推定あるいは一応の推定というようなことばを使うこともございますが、これは立証責任とはまた――立証責任そのものではございませんけれども、事実の認定についてはこういうことが非常に有力に働いてくるということもございます。それで、そういう原則を全部考慮に入れました上での実体法の適用、そういうものを全部入れました実体法を裁定の基準にするということになろうかと思います。  それで、ただいま御指摘になりましたA、B、C、D、幾つかの環境基準に合った工場があって、そしてばい煙を排出している。ところが、そのうちA社だけが何か思いがけない事故のために基準を越えた大量のばい煙を排出した。そしてどこかその近所にいる人が、ばい煙中毒症というような病気もございますか、よく知りませんが、ばい煙中毒症にかかりた。そういうときには一体どこが原因になるのかというようなお尋ねのように伺いました。たとえば普通の場合ですと、これは環境基準を守っているということが当然に無責任ということには必ずしもならないのでございまして、環境基準を守っておっても場合によっては民法上の不法行為を構成する場合もございます。しかし普通はそういうことは比較的少ないだろうと思います。ところが、いまA社のばい煙が環境基準をはるかに越えて大量に出る。そしてその後に、そのばい煙から当然病気の起こりそうな時期にすぐそのそばで病人がおったというようなことになると、これはおそらく事実上の推定が働くんじゃないかと思います。これは現行法のままでも事実上の推定が働く場合が多いんじゃないかと思いますが、しかし事実上の推定というものはやはり反証も許されますから、もしその病気がA社のばい煙ではないということのはっきりした別の事情があれば、これは結論は変わってしまいます。そういったことは結局ケース・バイ・ケースの問題になりまして、一がいにどうだということをきめつけることはできませんですけれども、御指摘のような場合には、いまの事実上の推定が働く場合がかなりあるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 時間が参ったようでありますが、お許しを得て、少しいまの問題に触れさせていただきたいと思います。  もう一つお尋ねします。A、B、Cと三つありまして、こうやっておった。これは平和的にやっておって、いままで一つも害毒がなかった。ところが新たにD社というのが入ってきて、D社が大量にばあっとばらまいた。さっきの場合は事故の場合です。今度はD社が入ってきて、ずっとばらまく。つくっているものは同じものです。排出物も同じであります。そのときにD社というのは当然責任があるのですね、自分が汚染物をまいた。これは相当まいたということがはっきりしている。そのときに、同じものであるからAもBもCもDもすべて責任があるということはなかなかいえないだろうと私は思う、それだけとらえてみますと。それもいまのたてまえからすれば、A、B、C社がもしも何か害毒を流しておるということであれば、被害者のほうからA、B、C社がいろいろとこういった原因があるんだということを立証しない限りはできないというのが原則だろうと私は思うのです。そういったときに、七百十九条の共同不法行為の共同という概念に照らしてみて、同じものを出しているから共同ということがいえるのかどうか、ということが一つの問題です。  もう一つ問題は、いわゆる七百十九条の共同不法行為の問題でございます。この点につきまして、委員長法律専門家でありますから、この共同についてどういった学説があるのか、この辺について御見解を承りたいと思います。
  28. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 非常にむずかしいお尋ねでございますが、最初に仰せになりましたA、B、Cがそれぞれ平穏にそして無害な排煙を出しておるときに、そのあとからD社という別の会社が出て、そして明らかに有害なばい煙をどんどん出した、その結果病気にかかった人があるということになれば、D社に賠償責任があるということは当然だろうと思います。そこまではよろしいのですが、その場合にA、B、Cがはたして責任を負う必要があるかないかということになりますと、これは事案をよく見ないとわかりませんので、かりにD社のばい煙をもろにかぶったけれども、その人は非常に健康なためによく耐えて、そしてもうあと一歩というところまで持ちこたえた、そういうときに、それを知りながら隣のA社がまたしたということになりますと、これはどういうことになるか、その辺は非常にどうも……。そうなると問題はだいぶむずかしくなってくると思います。必ずしも隣のものが無責任といえるかどうか、すこぶる問題だと思います。  それからA、B、C、Dそれぞれが基準を全部守っている、しかしそれを全部合わせると健康に支障があるというような場合、(「そういうケースが多いんだ」と呼ぶ者あり)そういう場合もあるのです。当然、日常経験するところでございますが、これはやはりいろいろ説が分かれておりまして、私ここでそれを一々御説明申し上げるだけの準備もまだしておりません。それは勉強すればわかりますけれども、いまここで皆さまにこうだと言って結論をおきめいただくだけの準備が、申しわけありませんが、してございませんのと、それから現に、伺いますとその点については別の法案も御審議なされておられるそうですから、むしろそちらのほうの方が御審議になっていらっしゃると思いますので……。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 実は私お尋ねしましたのは、別の法案というお話がありましたけれども委員長法律専門家である、全部法律専門家でありますから、私は、いまお話がありましたように、事案としてこうやって具体的なケースをあげていかなければならない。そうすると、A社から出た煙がどうだとか、あるいはB社から出た煙がどうだとかいう具体的な問題になる。  それからもう一つは、共同性という問題は、具体的案件としては非常に密接にからみついてくる問題だろうと思います。意図があって共同したのかどうか、また客観的に共同と見られるかどうかということは、流したところのものにも関連してまいりますし、A社が流した、B社が流した、それぞれが流して合計してどうだという問題もありますし、A社とB社とC社が客観的に共同になるかどうかという問題もありまして、それがどういう結果をもたらしたかという問題と共同してやったかという二つの点は、非常に密接に結びついている問題であろうという気がするのであります。そういった点につきましては、いまお話がありましたようにまた別のところで議論さしていただきたいと思いますけれども、きょうはこの法案でございますから……。  私はこの法案の中で一つ聞いておきたいのは、そういった場合におきまして、原因裁定については申請趣旨以外の事項についても裁定をすることができるという規定がある。それからさらに利害関係者に手続参加を認める、こういうふうな規定になっております。そういったときにはいろいろな人を呼んでおやりになるということだろうと思うのであります。全部呼んで、とにかくおまえはいいとか、おまえはどうだとかこうだとかいうことをやるというのが今度の規定だろうと思いますけれども、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  30. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 そのとおりに解釈してけっこうだと思います。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 時間のあれがありますので、私の質問はこれくらいにさしていただきます。どうもありがとうございました。
  32. 田中武夫

    田中委員長 次に、島本虎三君。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 長官が来ておりますが、今回提案されております公害等調整委員会設置法、設置法と実体法、これは正式には紛争処理法の一部改正法案になろうかと思いますが、いままでは設置法と実体法のいわゆる改正法案は別々にこれを出しておったのです。沖繩国会以来どうもこういうようなものを一まとめにして出してくるような傾向が生じてきておる。今回の場合も設置法と実体法を一本にして、従来の慣行を破って提案されてきた。ここだけかと思ったら、今度逓信委員会関係のほうにも同じような、あれは電話債券の関係法律もそれ一本で提案されていたものが、今度同じ時期に改正される特例法二つをまぜて、三つ全部を一本の法律にして出してきた。沖繩国会以来法律提出の体系が変わったのかどうか、また、それを変えなければならないという根本的な理由は何なのか、この点においてははっきりしておかないと困るのじゃないかと思うのであります。これはどういうことでございましょう。
  34. 山中貞則

    ○山中国務大臣 別段他意のあることではありません。今回の改正は三条機関に新しく生まれ変わるということが重大なポイントの一つでありますから、これは設置法になるわけですね。しかしながら、なぜ三条機関にするのかといえば、それは厳正中立そして権威を持つ裁定制度を導入するから。これは表裏一体の関係であって、これを二つに分けて、内閣委員会公害環境の委員会で別々に議論して、それでいいかというと、私は、これは公害委員会のほうにおいて、なぜ三条機関にしなければならないかも含めて議論をしていただくのが最もよろしいと考えておるわけでございまして、別段、めんどうくさいから二つ一つにしたという、そんないいかげんなものじゃありません。また国会軽視でもありませんし、政府のほうで、実体法と設置法というものを今後はめんどうくさいからたばねて提案しようというような話は一ぺんもあったわけではありませんし、別段そういう方針を変えたというわけでもありません。健康保険なんか、逆に二つに分けて出すのではないですか。そういうようなこともありまして、私のほうとして別段他意があってやっておるわけではありませんが、審議の便に資するためという気持ちは若干あります。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、健康保険を二つに分けて出したということは、どういう法律に分けて出していますか。あれはかってに政府のほうで財政的な見地から抜本改正という名前で出してきた。本体の基本的なやつはあとから出してくる。あれは政府の欺瞞なんです。そういうようなこともあるということですから、それは明らかにしておかないといけないのです。沖繩関係を経てから出してきたのはこれだけじゃない。逓信委員会に電電公社関係法律案が三つのやつを一つにして出されている。いやしくも閣僚の一人として、私が常々尊敬しております山中総理府総務長官、沖繩国会以来こういう傾向が出てきたことに何らかの原因があるのか。もし、そうでない、これは簡便にして要を得るための方法だとするならば、設置法として出されている現在の法律体系は間違いなのか。今後のためにも、まず基本的な考え方をはっきりしておいたほうがいいと思います。決して意地悪い質問じゃないのですが、はっきりしておいたほうがいいと思って聞いているのです。この傾向があるのは事実です。  そうすると、これは内閣のほうへやったならばめんどうくさくなる、公害のほうへやれば専門的に審議してもらえる、こういうようなことで法制局のほうで適宜操作をして、こっちのほうへ回してよこした、こういうようなことはないということですか。
  36. 山中貞則

    ○山中国務大臣 こちらのほうへ回したのは議院運営委員会であります。私たちは、二つに分けて設置法と実体法とを同じ国会で別な場所で議論するのもおかしいだろうと思って、やはり本来は、三条機関に移行する、そのことも重大でありますし、なぜ移行するのかといえば、裁定権を付与して独立の権能を与えるということが一体になっておるわけでありますから、もとの公害紛争処理法の一部改正だけであるならば当然そうしましたでしょうし、また三条機関へそのまま移行するなら、もちろん設置法ですから、きちんと分けられるかと思いますが、これは不即一体のものとして相当思い切った手段としてとったわけでありますから、それを国会のほうでどこにゆだねるかというのをきめてもらったということであります。
  37. 島本虎三

    ○島本委員 どこにゆだねるかきめてもらう、この法律に一本にしてみる場合に、いまの長官の――ほかのほうにも同じ法律が出ている。これがあるから、政府の方針としてこういうように変わってきたのかどうか。ここだけならいまの長官の明快な答弁で理解できるが、他にもある。この傾向を聞いているのですが、他のほうは関知したい、こういうことになるわけですね。  これは性格の異なっている二つ委員会一つに統括して機能的に十分効果を発揮できる、こういうようなことの考えのようですが、この点はどうですか。組み合わせた場合に、十分本来の目的、機能を果たし得るということになりますか。それとも、今後この問題点を改正すべき点として何かお考えがありますか。
  38. 山中貞則

    ○山中国務大臣 土地調整委員会は長年歴史を持っておりますし、もともと三条機関として出発しております。したがって裁定権も付与されておる。したがって、これを一緒にいたしましても、これを運用するにあたって、土地調整委員会仕事がきわめて多忙であって、政府の行政の審判役として絶えず膨大な量をかかえて仕事をしておるという実態がございますれば別でありますけれども、大体いままでの実態は、先ほど事務局長も報告しておったようでありますが、そのような実態を考えますと、一緒になって仕事をしていても、同じような紛争処理あるいは行政処理に対する苦情の審判あるいは裁定というものを行なうわけでありますから、むしろ能率的に運用していくことが可能であると考えたわけであります。まあ、あっさりといえば、土地調整委員会を八条機関に移して逆に中央公害審査委員会三条機関ということも考えないではありませんでしたが、いろいろと調べてみますと、やはり土地調整委員会でも相当な行政上の権利を与えられております。当初出発したときにはこれは鉱業権設定と農業その他の周辺の利害等の調整にすぎなかったようでありますけれども、まあその当時の世相から見ますと食糧増産ということ等の問題も多分にあったと思いますが、しかし、その後できた法律で、土地収用その他において全部その別個の法律で、たとえば土地調整委員会意見を聞かなければならない等引っぱってきてあるものですから、いまではそう簡単に三条機関でない八条機関に移すことはきわめて困難になっておるというような実態もだんだんわかってまいりましたので、やはり三条機関としての土地調整委員会の権能を政府として残しておく必要があると考えて、最も効率的な方法として、二つを合体して運用してもらうことにしたということでありまして、本来別々であるべきものが一つになった場合において、若干の、出発の当初は事務段階等においていろいろの勉強なり何なりをお互いにしなければならぬ点は確かにあると思いますが、これは努力をして克服をしていけば、私は運営上支障はないと考えております。
  39. 島本虎三

    ○島本委員 国家行政組織法三条機関にした。準司法的な権限を持っている、これを強力に行なえる機関である。これには当然独立性中立性が要請されるものであるということ。今後は、研究機関も十分これを持った上でこれははっきりするのでなければ、今後の問題処理の中に相当困難性をもたらす。これは縦横無尽に使わなければならないような場面が相当出てまいるんじゃないか。その場合には独立した研究機関を持つのか、また、研究機関は何に依拠しようとするのか、この点の考え方をこの際お伺いしておきたいと思います。どちらでもけっこうです。
  40. 山中貞則

    ○山中国務大臣 研究機関を、この委員会に付属したものを独立して持たせようという構想はありません。そのかわり、個々の申請案件について非常に高度の専門的な知識を要することは当然予想されることでありますから、それぞれのケースについて専門委員を、しかも総理大臣が委嘱する専門委員という高度の権威あるものを委嘱することによって、実際上、それぞれの分野における研究機関の、最高の学識と経験を持っておられる方々で構成する専門委員の方々に、その分野における最高の助言と指導をしてもらうということで補完していけるはずであると考えております。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、この独立性中立性を保持した国家行政組織法三条機関にした。しかしながら、この裁定に不服な場合には当然これは司法救済を受けることができる。こういうようなことになった場合には、一たん結論を出したら、司法救済によって今度は救済を受けることが一そうむずかしくなる傾向がないか。これと同時に、運用のいかんによっては、これはほんとうにそういうようなおそれさえも生ずることであって、結果的には国民を不安と落胆におとしいれるような結果を招来しないかどうか、これも予想されるわけでありますが、こういうような点等に対してはどのように配慮してございますか。
  42. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、新しい三条機関によって裁定等が下されて、それに対して不服だということで、これは裁判を行なう権利を――行政は最終審として持つことはできませんから、そうすると、それを妨げることはできませんから、訴えたにしても、中央公害審査委員会の厳重な裁定されたものに対して逃げたほうが、これはもう明らかに裁判の過程においても実態上も、あるいは手続上も、中央公害審査委員会裁定を逃げていった者のほうがきわめて不利な状態に立つということは明白でありますから、むしろこれはここで預かることによって国民に心配あるいは落胆を与えることでは絶対なくて、ここにかかった以上、それを自分たちが不利だからといって逃げ出したほうは、たとえ裁判を受ける権利を持っていたとしても、それは自分で不利なハンデをしょって訴訟をすることになる、私はそう思っておりますが、法律の専門的な議論小澤委員長の助けを借りたいと思います。
  43. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 特に申し上げるほどのことでもないかもしれませんけれども、裁判所が行政庁の処分、決定というものに対して、それに拘束される理由は全然ないのでございまして、ことに戦後二十数年の経過をごらんくださいますと、行政庁の判断、結論というものを裁判所がどのように厳格な目でそれを再吟味し、しばしばそれを変更しているかということが――その事例は非常にたくさんございまして、裁判所の、独立して行政庁の判断をさらに再審査するという体制はもう動かすことのできない状態になっておるものと思います。それで、裁定についてもこれは全く同様だろうと思いますので、特に裁定が裁判所を拘束するというようなことは、現在のところ、この法案には全然載っていないのでございます。そして、裁定に対する不服の訴訟というものもこの法案では、いわゆる抗告訴訟という行政訴訟の形ではなくて、通常の民事訴訟にしております。この点からいっても、裁判所は裁定に対しては全く白紙で臨むということになろうかと思います。もちろん裁定は十分の、その時点での国内のきわめて高度な知識の協力を得まして、できる限りの最善、最高の結論を出すことになると思いますので、結論が正しければ、これは裁判所で当然それを尊重されることとは思いますけれども、しかし法的に裁判所を拘束するというような考えは、こちらの中にはございませんし、それから裁判所もそのときに、尊重するにしても非常にきびしい、厳格な視点からそれを再審査した上で同じ結論になるんじゃないかと、そういうことに思われますので、御心配のようなことはないかと思います。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 わかったようで、よく理解はまだできませんが、これは徐々に、これから何回かやるうちに理解できるんでしょうが、具体的な問題として一つ例証を示しますから、これでひとつ、どういうふうにするのか、方針を手に取るように教えてもらいたい。というのは、いま水俣病が発生して、四十四年の五月に厚生省段階補償処理委員会というものができまして、それに一任した人たちがそれぞれ額が決定されてございます。そしていま今度新たに訴訟派の人が訴訟を起こして、そしていまだに争っているという状態もあります。そして新たに新認定患者は自主交渉だということで、いますわり込みまでしたり直接交渉したりして、いま自主交渉を展開中である。三つに分かれていまそれぞれ行なわれておりますけれども、この内容を見ます場合には、会社側のほうとしては以前四十四年五月厚生省の補償処理委員会の一任派へ出したものと見合うような決定しか出せないということをまず言っている。それと同時に訴訟派の人はこれでは不足ですから当然訴訟しているわけです。そして、水俣新認定患者、これは自主交渉派は、そのいずれでも足りないからまた自主交渉を展開しているわけであります。これは回り回っているわけです。もし、自主交渉派といわれる人たちがここにきめられた裁定を仰いできた場合には、現在訴訟中のものも、もうすでに一任して終わっているものもあります。会社側ではもう一任して終わったものの古いもののほうに右へならえをさせようとしております。その場合には、裁定を仰いできたと仮定したならば、委員長はどのような裁定を下すおかまえでございましょうか。ひとつ手にとるように教えていただきたいと思います。
  45. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 端的に申し上げますと、自主交渉派裁定を求めてきたときに、その裁定では前の例として二つばかりありますが、それよりも高く出すのか、安く出すのかということかとも思いますが、これはどうも具体的な、もう全く具体的な事案でございまして、それについては全く私どものほうでも、第一、仮定的にどういう結論を出すかということは審査してみないとわからないことでございますし、それから、これについていろいろこまかいことを具体的にここで仮定して論議をするということは、やはり現に係属しております訴訟に対してもいろいろ考えなければならないことと思いますし、それからまた、事実、現在中央公害審査委員会患者側からの申請によって調停が係属しておりまして、これが進行中でございまして、これに対するその当事者のいろいろな考え方、当事者に対する心理的な影響というととも考えなければなりませんので、具体的な事案について具体的にこの問題についてどうするということはお許し願いたいと思うのでございますけれども、抽象的に少し述べさしていただきますと、これはまあ水俣病と限りません。そのほかの何かほかの公害病をお考え願いたいと思うのでございますけれども、そういう申請がありましたら、双方の出した資料は十分に審査しますし、それからおそらく患者という人たちは無資力の方が多いだろうと思いますから、患者側の方から資料を出していただくとしてもそれにはおのずから限度があるんじゃないかと思います。双方の資料を比較した場合には患者側のほうの資料にどうしても不足が多かろうと思いますが、そういう場合にはこの委員会としては自主的に事実の調査、あるいは職権による証拠調べというふうな道がございますので、そういう権限を十分に活用して、本来出すべくして出されないような資料というものの補充には十分力をいれる。そして、できるだけ双方を資料の点についても平等な立場に持ち上げるようにして、そして正しい結論を得るようにつとめる。もちろん結論を得るためには、その準拠となるものは実体法でございまして、実体法の、特に問題になるのは民法の不法行為の規定でございますが、民法の不法行為の規定を適用する場合には一番問題になるのは因果関係と故意、過失だろうと思います。もちろん事案によっては特別法で無過失責任を認めている例もございまして、そういう場合には故意、過失の問題はしばらく全審査の対象から消えますので、ここはそれだけ楽になるわけでございますけれども、いずれにしても因果関係が非常にむずかしい問題の一つでございます。そうして事案によっては故意、過失の問題、その点に焦点を当てまして十分に審査をして、そうしてほんとうに被害者が相手方として出してきた企業側に賠償責任があるということになれば、そこで金額をきめるということになりますので、その金額につきましても、これは裁定でございますから、一律に幾ら幾らということにはならないのが普通ではないかと思います。やはりそれぞれの事案、各患者一人一人の実情に応じてそれぞれに民法を適用したほんとうに的確なる金額を考えていくということになろうかと思います。もちろんその結果が場合によってはずっと一律になるという場合もあるいはないわけでもございませんけれども、しかしたてまえとしては全部一律ということではなくて、それぞれ各人について賠償の責任及び額を考究していくということになろうかと思います。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろな場合が予想されますので、何か抽象的になって私は理解がまだ不十分です。しかしこれだけは――いわゆる国家行政組織法の第三条機関である、準司法的な機構、機能を具備しておる。そうしてこれまた独立性中立性が明確なものであって、それによって裁定を出す、こういうようなことになりますと、現に訴訟中のそういうようなものにも当然影響があるのではなかろうか。そうして出されたその結論に対しては調停進行中のものであっても、やはりそれに重大な影響をもたらすのではなかろうか。そうして過去にもうすでに出されておった人、その中でも不満足だと表明した人にもその影響が当然及ぶのじゃなかろうか、こう思われるわけなんです。裁定というようなものはそれほどの重みがあるものである、こういうふうにも考えられますが、そうなりますと具体的な問題として、いま一つの例をとりましたが、他にもこういう例が中にはあろうかと思います。訴訟中のものにも影響する、司法裁判のほうに移したものにも影響が当然くる。それから今度はもうすでに行なわれて、賠償という一つの決定を終わったものでも額があまりにも少な過ぎるところで泣き寝入りしている者があればそれにも影響が及ぶ、こういうようなものであるのかないのかということなんですが、この点はどうもつまびらかでないものですから、この点だけもう一回ひとつ教えていただけませんか。
  47. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 裁定が裁判あるいはそのほかのすでになされた調停あるいはこれからなされる調停に対して、法律的に効力を及ぼすものでないことはこれは明らかだろうと思います。法律上は当然それはそちらに対して拘束的な効力を及ぼすものではございませんけれども、しかし先ほどから申しますような手続を経て、その事案については一番適切だという裁定が出ましたら、そうして当事者がそれに服しているといったような場合には、それと全く同じような事案で、同じような事案、事情等に差等のないような事案当事者としてはあるいは直接に話し合いをする場合、あるいは調停和解などをする場合に、いまの裁定の結論に、事実上これを非常に大きなウエートを置いて参考にするだろうということはこれは考えられることでございます。  それから裁判につきましては、これは先ほども申しましたように裁判所は厳格にその事案に対して法律を適用するわけでございますから、たとえ裁定があったってそれをしんしゃくして結論を左右するということは、これは全く考えられないことと思います。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 この裁定の中には原因裁定とそれから責任裁定と、こういうようなのが置かれておるようでありますけれども、この環境保全への原因裁定は含まれているのですか。また原因裁定の中には人体の健康にかかわるものだけなのですか、この辺の守備範囲はどういうふうになっておりますか。
  49. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 原因裁定については特に限定はございませんので、一般の公害についてその条文に書いてあるような条件のもとではすべて原因裁定の対象になっております。必ずしも生命健康の被害だけには限定されておりません。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 今後原因裁定、こういうようなものを求められる場合には、いろいろな場合も多かろうと思いますけれども、これもすべて被害者からの一方的な要請によって発動するんですか。
  51. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 原因裁定は、因果関係について争いがある場合に、その紛争を取り除くためのものでございますので、必ずしも被害者からの申請だけに限定はしておりません。これは被害者からであろうと加害者からであろうと、その因果関係をめぐる紛争当事者は、どちらからも申請できるというたてまえになっております。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろと今後複雑な、一つ裁定に持ち込まれるケースも出てこようと思います。また例をあげてほんとうに失礼ですけれども、先ほど林委員も言っていた、赤潮の到来によってこうむる漁業被害あるいは財産権の被害、こういうようなものが当然予想されます。それと同時に、いま問題になっている光化学スモッグによるところの裁定なんかも被害者から要請が来るのじゃないか、こういうように思うわけです。こういうような問題に対して、現在の科学を動員してでもまだ解明が不十分だ、ややわかっていますけれども、この範囲が広過ぎる、まあ多種多様だと思います。その場合には、この責任裁定と申しますか原因裁定と申しますか、それと両方から一緒に裁定の申し込みがあって、そして救済の申し込みがあった場合には、一方は原因裁定に出た、一方では責任裁定のほうに出た。このようにして赤潮または光化学スモッグのような、こういうような問題に対してある場合には、これはそのために決定がむずかしくなり、長引く、あるいはまた形骸化するようなことになりはしないかということをおそれます。こういうような考え方は取り越し苦労でございます。
  53. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 たとえば赤潮につきましては、これは現に赤潮によって漁業被害を受けている例が全国各所にございますが、その赤潮の原因について、それがたとえば工場排水、どの程度の工場排水がその原因であるか、あるいは工場排水以外に何か原因があるのかということについては、御承知のように学問的にまだほんとうに究明され尽くした状態ではないような部面もあるかのように私は承知しております。  ところが、そういうときに責任裁定にしろ原因裁定にしろ、もし裁定申請がございますれば、やはりその具体的な事案について、その赤潮の原因となるものは何であるかということについて、現在の最高の科学技術の援助を得まして、できるだけの結論を出すということになろうかと思います。  ただ、それが技術の水準が、現にある部門についてどんどん発展、発達中であって、そして、きのうの技術がきょうあすにも変わる、そして次々に新しい事件が解明されていくといったような場合もあろうかと思いますが、そういう場合に、かりにいますぐ結論を出すということになればなかなか原因の解明はできない。しかし、もう少し待てば原因の解明がはっきりしてくるだろうという場合があるいは起こるかもしれませんが、そういうときにはやはり急いで、そして不十分な状態のままで妥当でない結論を無理に出すというよりは、現在試験中の結果を待つとかなんとか、そういうことによってより正しい結論を得る方向に手続の進行を考えるといったようなことも考えられるかと思います。ただ、その点になりますと、非常に微妙な問題でございまして、問題がむずかしいからしばらくたな上げにするということは、これはたいへんなことでございます。そういうことは当然考えられませんけれども、しかし、学問の進展のテンポと合わせて、場合によっては、やがてすぐ目の前に見えている結論が期待できるような場合にはそれを待つといったような場合もあろうかと思います。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 それで、たとえばこれまた例ですが、これはまことに困難で、裁定ができるかどうか。窒素酸化物は、排気ガスから三五%から五三%ぐらいまで、それと同時に、工場から排出されるもの五〇%から六五%ぐらいまでだ、こういわれております。それから炭化水素は、排気ガスによるものが九八%から九九%ぐらいまで、同時に、これは工場からのものが一%から二%程度である。それが空中で紫外線か何か物質とぶつかって、そして光科学スモッグによる被害を人に及ぼすという点で責任裁定を求め、損害賠償を請求したら、これはどういうふうに、どなたがお払いになって、だれが責任者になりますか。
  55. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 具体的な事案になってみませんとはっきりしたことは言えませんが、いま御指摘のような場合は原因が非常に広範でございまして、おそらくその手続の中で特定の加害者の排出したガスが原因であるということを認定するについては非常に困難があろうと思います。しかし、もしそれを当事者から提出された資料、それから委員会の収集した資料などによって、はっきりとこの企業の大量なガスが少なくともそれ自体で十分にこの被害を引き起こすに足りるんだということが認定できるような事案がございましたら、おそらく責任裁定あるいは原因裁定により、その企業の責任をはっきりさせることができるんじゃないかと思います。ただ、そういう場合はあくまで仮定でございまして、その企業の排出ガスが原因であることが認定できる場合だけに限られるわけでございます。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 総務長官、これはどういうふうなことになります。
  57. 山中貞則

    ○山中国務大臣 法律専門家というのはなかなかむずかしい話をされるので、質問するほうも答弁するほうも――私などは常識論者のほうでありますけれども田中委員長あたりもだいぶ専門家論争が好きなほうですが……。そういう問題が裁定に持ち込まれたという場合ですね。光化学スモッグの場合は、いまの私たちの考え方ではきわめて困難な裁定案件になろうと思います。  東京の杉並で光化学の被害が現に健康被害として起こった。しかし、いま言われたように、原因の分析は単純にいって、そのときの風のぐあいその他から考えて、川崎工場地帯からのものが三分の二、それから自動車の排気ガス中のものが三分の一というようにかりになっても、自動車のほうは完全につかまえられませんね。たまたまその時間にそこを通りがかっていた自動車を、何台かを加害者であるという認定はできないわけでありますから、これはやはり排気ガスの規制――アメリカにおいてもマスキー法に対する抵抗がいろいろあるようでありますけれども、これは世界の趨勢ですし、ましてや、日本のメーカーが国内ではバーナーをつけないでアメリカ向けにはバーナーをつけて出しているような、そういう非良心的な態度であるうちは、やはり自動車というものは依然として日本の場合に加害者の一員であることは否定できない、こういうことは言えると思うのです。その自動車製造メーカーもしくは乗っている人たちを一人一人つかまえてというのには、その因果関係からあまり離れ過ぎるし、あるいはまた、突発的にそこへ走っていた車が初めて走る車であっても、加害者に認定するということはむずかしいだろうと思うのです。しかしながら、無過失賠償と違って裁定に持ち込んだ場合においては、相手方を特定しないでも持ち込めるわけですけれども、大体特定をして持ち込むというのが常識だと思いますが、その場合においては、やはりその当時の気象条件あるいは汚染源と名ざしされたところの排出基準の順守状況、あるいは複合汚染で蓄積されたためのそれが被害として起こる光化学現象への貢献度、こういうようなものは、私はつかんでつかまえられないことはないと思います。したがって、一つの事例をとって言ってみれば、一番困難な問題は、いまの光化学スモッグ的なものであろう。赤潮については、これは工場排水あるいは屎尿投棄、こういうものがプランクトンの異常発生につながっておるやに現在のところは常識上見られておりますが、これもやはり屎尿処理を許しておるのが国の法律だ、こういうようなこともございますし、たとえば瀬戸内海に例をとるならば瀬戸内海には投棄してはならぬということにおいおいなっていくと思いますが、そういう環境が整っていけば、なおかつ赤潮が発生して漁業者が被害を受ければ、これは明らかにその日の海流なりあるいは気象条件その他等から判断をして、どこの工場群の排出口から出たものが赤潮発生の遠因となっておるというようなことを突きとめていくことは私は可能だろうと思います。しかし、そのような一々の案件を、こういう案件が出た場合には裁定はどういうふうになされるかということを議論するのは、現実の時点においては少し問題があるのではないかと思います。私の議論は全く、法案提出いたしました責任者としてのそういう立場からの案件に対する私の判断であって、これは持ち込まれてみなければ、委員長の言われるように、やはりケース・バイ・ケースの裁定しか下せないのではなかろうか、そういうふうにいまのところは考えます。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 それで公害という、また環境保全という、こういうようなことになりますと、最近では世界的な一つの現象、地球的範囲にまで大きくなっておりますから、そういうような中で、もしこれができて、最高のこれは法律だということで、この適用を大いに慫慂し、またそれに信頼を寄せて裁定を仰ぐ、こういうようなことに今後はなってくる、私はそういうふうに思うから、これを聞いているのである。その場合には現在の光化学スモッグに類するものや、この赤潮、こういうようなものについてはなかなかむずかしいようなケース、これも予想される、これは大体わかりました。しかしながら、やはりもう少し限定していく、被害者から訴えがあって、独自に企業に立ち人って調査したり、原因を究明したり、損害の賠償を命じたりすることはできるのだ、そうだとすると、これは差しとめ命令も当然それはあると解釈されるべきですか、解釈されないべきですか、これはどうですか。
  59. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 差しとめ命令はこの法案には載っておりません。現在裁判所でも一体差しとめ命令が出せるか出せないかという点についてはたいへん問題がございまして、たとえばある公害が直接に隣地なりその近傍の土地所有者に対して被害を及ぼす、そういうようなことになりますと、これは土地所有権に基づいて一種の物上請求権といっておりますが、その物上請求権に基づいて差しとめを求めるというような例はございます。しかし、そういう条件の具備される例というのは比較的わずかでございまして、差しとめをしてほしい被害者というのは広範な地域の広範な住民でございまして、その住民は土地所有権も持っていない、あるいは建物所有権も持っていない、ですから不動産所有権に基づいて請求するというような道はない、そうすると、何で請求するかということになりますと、これはいろいろございまして、たとえば人格権に基づく請求、あるいは環境権に基づいてそういうことができるだろうという考え方、あるいは不法行為の規定そのものに基づいてそれが請求できるであろうという学説、最近いろいろな説が唱えられまして、まだきまるところまではいっておりません。たとえば最後の不法行為に基づいて差しとめ請求ができるという説なども、条文の上から見ると、民法七百九条とは明らかに違っております。民法七百九条では、損害の賠償を請求することができるということになっておりまして、そしてしかもそのあとに損害賠償というのは金銭をもって行なわれるということになっておりますので、金銭賠償以外には原則として考えられないのでありますが、少なくとも、差しとめ請求というようなものを民法の条文からすぐ出すということは、なかなかむずかしいことでございますけれども、現在ではそれにもかかわらず、そういう学説まで出ております。そういった複雑な問題は、これはやはり裁判所の判断にまかせるのが一番よろしいかと思われますので、少なくとも学説が浮動し、またどちらに落ちつくかわからないような問題について、いきなり行政権が最終的な結論を民法の解釈として出すということは、国民の私権を守るという立場からもいかがなものかと思われます。そういうわけで、本来裁定で差しとめ請求するというのはまだ適当ではないのではないかと思われますのと、それからそもそもそういう公害が起きております場合に、その発生の前提になるいろいろな条件を調べて、そしてそれに対して行政措置をやるということは、これは当然行政権の作用でございまして、現に昨年成立いたしました公害立法にも、それぞれ差しとめ請求に関する差しとめもできるような権限を与えておる例もありまして、こういうものは民法上差しとめ請求権があるかないかという法律判断は非常にむずかしい。法律判断を積み上げて、その上で行政権である委員会がそういう判断をするよりは、むしろ端的に個々の例に応じて行政の規制の発動によって目的を達するほうがはるかに敏速ではないかというふうに考えられますので、法案では差しとめ請求は盛ってございません。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 専門的な法律解釈になると、今度うちのほうでも優秀なる選手がおりますから、後ほどお出まし願って、十分やってもらいたい、こういうように思いますが、私のほうはどうもそれには弱いのでありまして、長官あたりがちょうどいいようであります。  それで今度、国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、総理府の外局として設置することになって、その所掌事務権限及び組織云々次のとおりということで、ずっとございます。そして今度公害紛争処理法の定めるところによって調停、仲裁及び裁定を行なう、裁定がつくのです。そうすると、調停、仲裁はいままで出ておった、そうすると、いままでどおりとすると、調停、仲裁の内容については非公開というのが原則、非公開が原則であるような秘密主義は、法的な責任や道義的な責任をすべて回避しているもので、またはそうでなくて、あいまいにしようとするものであって、加害者には有利であっても、被害者には不利なことを招く傾向があるので、この制度はあまりにも利用されないから、これは公開制にしてみたらどうか、こういうような議論が以前からあったわけであります。そうすると、裁定を入れても、現在の調停、仲裁、これについてはいままでどおりであって、新たにこういうような改正される内容はないものである、こういうようなことになるのですかどうか。長官いかがですか。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは国会論議を通じて私もいろいろと質疑応答をいたした点でありまして、あっせん、調停、仲裁、これはやはり当事者合意、そして話し合い、そして円満なる結論への導入ということに行政機関として手を貸すわけでありますから、それを公開をして、間々見られるような険悪な空気の中で両者が話し合いをするということは、これは望めないと思います。しかしながら、裁定になればこれはもう司法権ではありませんが、それに準ずる行政の最高の権限をもってさばく、結論をつけるということをやるわけでありますから、これはもう大体原則は公開としてよろしい、しかし特に支障があると委員会が判断をした場合には非公開にすることもできるというたてまえをとったということであります。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 そっちのほうは前からのものでわかります。それと同時に、どうですか。思い切って、騒音や振動などの、軍事基地に対するいろいろな不平、不満について裁定を求めてきた場合には、これはどうなりますか。
  63. 山中貞則

    ○山中国務大臣 今度の法律では典型公害は全部対象にして裁定を行なうようにしてありますが、前の公害紛争処理法を議論いたしましたときにも基地公害というようなものについて、当然行政の分野として包括して対象とすべきであるという議論がありました。しかしながら、基地公害のほうは、基地を所有し、もしくは基地を提供しておる防衛施設庁というものがみずからその責任を負うべきである。またそれに関連する苦情に対しても対処する法律も持っておるわけでありますから、そこで処理さるべきが――同じ行政の中であるけれども、特別な位置づけのものとして別個に処理せざるを得ないだろうということで答弁をいたしておりますが、その見解においては今回も変わっていないということであります。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 その点については若干の進歩も見られたかと思いましたが、変わっておらないようであります。それはそれで了解しておきます。  それで、いわゆる独立性中立性また研究機関を持った準司法的な権限を持つところの機関、いわゆる三条機関、これによって原因裁定、責任裁定、これも大体わかります。  ただ一つ、いまでもつかえているものがあるわけです。その場合は、多数の共同不法行為に対して先ほどいろいろな質疑がございましたけれども、共同不法行為については大審院判例では一致して全共同不法行為者に対しての連帯責任を認めているのではなかったか、こういうふうに思うのですが、これは違いますか。
  65. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 仰せのとおりでございます。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 そうした場合には、これは法律的に分割責任を認めるというやり方は、現在の大審院判例よりも後退した立場に立つということは、被害者救済の立場から見れば言えるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  67. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 共同不法行為の要件を満たしております場合は、現在の民法の適用では分割責任ということはできないことになります。やはり連帯責任ということになります。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。別の法律で分割責任を認めてやろうとする法律案がありますので、念のために聞いておきました。ありがとうございます。これで若干意を強うしたわけであります。法律によると、不遡及の原則というのがあるわけです。これを条文に盛らなければ、不遡及の原則は適用されないものでしょうか。それとも盛らなくても、法律の体系としてこれはもうすべてそういうような上に成り立って施行されるものであると解釈すべきでありましょうか。いかがでありましょうか。
  69. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 事案がよくわかりませんけれども、一般に不遡及の原則は、どの法律でも不遡及というのがたてまえになっております。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、こういうようなものはあえて個々の実体法に盛らなくても、たてまえになっておるからいいんだということですね。これは念のために聞いておきます。
  71. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 特に規定がなければ当然遡及はしないというふうに考えるのが普通ではないかと思います。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 これもひとつ念のために法律専門家であるあなたに今後のために聞いておくわけです。  それは、公害罪処罰法というのが一昨年の暮れにできました。健康被害に係る何とかと、めんどうくさい名前ですが、普通公害罪法、または公害罪処罰法といいます。これが制定された以後は、こういうようなものを出すことは社会的犯罪であるというふうにわれわれは理解して、これに臨んでおるわけであります。この法律の中には、おそれ云々でだいぶ問題になりましたけれども、しかし因果関係に関する推定規定というものが置いてあるわけです。そうすると、人権尊重のたてまえから厳格な立証を当然要求される刑罰規定に推定を置きながら、もし民事関係法律分野で因果関係推定の規定が削除されたということになると、条理が転倒されたものであって、これは効果のないものではなかろうかと思いますが、この辺の御見解はいかがですか。
  73. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 現にほかの法律にその問題があるそうでありますが、そうすると非常にむずかしい問題で、私よくわかりませんけれども、しかしいまの推定規定というのは、先ほどもこれは話が出ましたけれども、ある場合には現に民法の七百九条の適用の実際におきまして事実上の推定とか、あるいは一応の規定とかいう観念でもって、ある程度同じような結論になる場合もあろうかと思います。しかしそういう規定を置く必要があるかどうかということについては、特に現在上程されているこの法律につきましては意見がございません。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 第一読会は大体この程度にして、私はまだまだわかりません。以上質問したことについての結論は、残念ながら私まだよく理解しておりませんので、答弁が十分できなかった点や、私の不理解な点について、後日あらためてまたもう一回解明をしてもらいたい。このことを委員長を通じてお願いしておきたいと思います。  なお山中総理府総務長官に。電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案の中に、三つの法律を入れて他のほうに出しておるわけです。これは、その必要ある場合には、退職する人に対して現行規定よりもよけいやる、こういうような給与に関する法律も中に入れて、拡充のための暫定措置法を出しておる。電話の質権の設定、これが期限が切れるからというので、別個の法律もこれにつけて出しておる。念入りに二つもよけいつけて、三つの法律一つにして出しておる、こういう傾向がある。そのことを指摘したわけなんです。しかし今回の場合には明らかに公害等調整委員会設置法というような名前でこれが出ておりますが、しかし内容はまことに重要な、現在の公害事犯に対しての解決の妙手をここに盛ったような、いわゆる裁定権を持ったところの国家行政組織法第三条によるところのこういう機関ですから――これは沖繩国会でも一括して出した。今度の場合も紛争処理法と一つにして出してきておる。このために明敏なる委員長のはからいによって、議運並びにいろいろな方面の折衝によって当方に来たけれども、当然これは内閣委員会に行ってしまうような性格の名称であったということなんです。これはようやくのことで委員長の取り計らいによってここにこういうふうに来ることができたんですが、ともすれば向こうのほうに行って、こっちは審議せずじまいになったのではなかろうか、こういうおそれを抱きましたものですから、なるべく、二つに分けられるものなら分けて、はっきりしたほうがいいんじゃなかろうか。他にもこういうような法律案が出ているが、こういう傾向は十ぱ一からげというような考え方で、あまり好ましくないものであります。こういうような観点から先ほど質問したわけであります。特に本案については他意がないということなんですが、他にも同じようなことで他意のあるようなやつがたくさんありますので、今後法律を実施する過程において十分これは考えておいてもらいたい。閣僚の一人としてこの点は十分考えてもらいたい。これは要請をしておきたいと思います。  大体私の質問は第一読会これで終わらしてもらいます。ありがとうございました。
  75. 田中武夫

    田中委員長 島本君の質疑は終了いたしました。  午後一時五十分再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。    午後零時五十分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十九分開議
  76. 田中武夫

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出公害等調整委員会設置法案を議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  77. 岡本富夫

    ○岡本委員 ただいま議題となっております公害等調整委員会設置法について、これを見ますと、土地調整委員会と、それから中央公害対策審議会、これを一緒にしたような状態ですか。  そこでまず土地調のほうを先にお聞きしたいと思うのですけれども土地調整委員会が発足しましたのが昭和二十六年。これから大体何件くらいの調整業務を行なっているのか、この実態についてひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  78. 谷口寛

    ○谷口政府委員 お答え申し上げます。  昭和二十六年に発足いたしましてから昨年の十二月三十一日現在までを取り上げますると、業務のうちで鉱区禁止地域指定請求に関する行政処分というのがあるわけでありますが、これは全受理件数が百五十六件でございます。そのうち百四十八件を指定いたしました。指定の拒否二件、それから取り下げ四件、したがいまして、残りの八件が現在処理中でございます。それから処分関係裁定でございますが、これは全部で三十八件裁定申請がございまして、これにつきまして三十五件を処理いたしまして現在三件が係属いたしております。それから土地収用等の問題につきまして、関係大臣、たとえば建設大臣あるいは農林大臣等から意見の照会をしなければならない法律上の規定になっておりまするが、これらの意見照会に対する意見回答の事務につきましては、百二十八件処理いたしまして全件処理済みでございます。これはいま申し上げましたように、昨年末の処理状況であります。  その後新しい案件といたしまして、鉱区禁止地域についてはごく最近一件の申請がございました。それから意見照会については二件の新しい申請事案がございまするが、これは現在検討中でございます。  以上でございます。
  79. 岡本富夫

    ○岡本委員 行政管理庁のほうから、この土地調整委員会について御意見が出されていたのでありますが、これについてもう一ぺん、ひとつ行管のほうから明らかにしてもらいたいと思います。
  80. 平井廸郎

    ○平井政府委員 私実は着任後間がございませんが、過去において行政管理庁として土地調整委員会について特別に意見を出したという記憶がないようでございますが、忘れているといけませんので、もしそういうものがございますれば、あらためて御返事いたしたいと思います。
  81. 岡本富夫

    ○岡本委員 行管のほう、これはあなたのほうへちゃんと通知もして、それであなたも資料を持ってきておるんだ。だからそれをはっきりひとつ言ってもらわぬと、ぐあいが悪いというようなことではちょっと困るな。
  82. 平井廸郎

    ○平井政府委員 実は本日の私どもに対する質問事項として伺いました中に入っておりませんでしたので、早急に取り調べまして御返事申し上げます。
  83. 岡本富夫

    ○岡本委員 すぐ調査してください。  それでは、この土地調整委員会ができてから約二十年間、非常に件数も少ない。それに対して山中長官にひとつお聞きしたいのですが、あなたが四十六年の九月七日、当時山中総理府総務長官から土地調の存在というものに対して、こういうのはもうつぶしたらいいんだというような趣旨の発言が朝日新聞の記事に出ておったように思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 四十五年には、私もせっかくの数少ない第三条機関というもので、土地調整委員会が戦後二十年にわたって果たしてきた役割りは、もう大体鉱業権設定と農業を中心とする周辺の公益との調整、先ほどもちょっと言いましたが、その当時の社会情勢から考えますと、食糧増産一木やりの時代でありましたから、その役目を終わったのではないかということも考えておったわけです。しかし四十六年の御指摘の時点では、その後いろいろ調べてみますと、先ほど土地調委員長からもお話がありましたように、その後できた法律で、やはり農林、建設等の土地収用等について意見か聞くような、別途の法律土地調整委員会の権能に関係が出てまいっておることがわかりまして、これをやはり廃止するわけにはいかぬだろう。でありますので、この貴重な三条機関というものをせっかく持っておるならば、換骨奪胎した新しい別な角度から、公害紛争処理法を提案いたしましたときの質疑応答、意見の開陳あるいは附帯決議、日弁連の要請、こういうようなもの等から、やはり中央公害審査委員会というものは三条機関権限を持つものである。そして裁定権を付与すべき時代の要請であるということを考えました。そうすると三条機関は、新たに一つ増設するということは、これはきわめて、行管の意見を聞くまでもなく、閣議の決定等もありましてむずかしいことであります。そこでたまたま土地調整委員会について一年半ぐらい私研究をいたしました結果、大体二つのものを三条機関として一緒にしても、裁定内容その他事柄は違いますが、権能としては一緒にしてもほぼやっていけるという判断を得て、たぶんその時期は私が大蔵省に予算要求を総理府として取りまとめたとき、すなわち予算要求の中に土地調整委員会の存続に伴う予算といういままでの形式でなくて、新しい想定で現在お願いしておるような内容に沿った予算の要求をした。その段階において、土地調整委員会はもちろんそれに不満であるというようなことがあって、一部の記事に書かれたものだと思っております。
  85. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、土地調整委員会というものが、いま長官お話を聞きますと、非常に件数は少ないけれども必要だ、その後非常に必要になってきた、こういうお話でありますが、そうしますと、この土地調整委員会というのは、現在すでに三条機関としてあるわけです。そこにもう一つ公害紛争公害調整ですか、これは現在公害処理法案としてあって、それを一緒にするところがどうも明快になっていない。三条機関をふやしたらいかぬという考えで一緒にしたのか、あるいはまた悪い意味で言えば、土地調整委員会というのが非常に仕事が少ないから、それを助けるために一緒にして存続させようというようなことを言う人もいる。そういう意見もあるわけですが、その点について長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  86. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、忌憚のない言い方をして、両方の理由です。すなわち、三条機関をむやみやたらとふやすことはなかなかできないといった事柄が一つと、それから、それならば土地調整委員会は八条機関にでも移して、そして中央公害審査委員会裁定権を与えたものを三条機関にするかというドラスチックな方法をとるには、既存の三条機関として果たしてまいりました仕事で、今後も、法律のたてまえからいっても、件数は少なくともやっていかなければならない分野があるとすれば、数は少なくなりますが、事務職員等は同じでありますから、やはりこれは三条機関の中にそのまま存置をして、委員は皆さんが両方の仕事をやってもらうということで実行上も可能であるということで、もとに戻りますが、理由としてはその両方の理由をもってこのような改革を断行するということになったわけであります。
  87. 岡本富夫

    ○岡本委員 その点がどうも便宜主義のように思うのです。  行管のほうにひとつお聞きしたいのですが、三条機関をむやみやたらということばは当たりませんけれども公害紛争処理にあたっての委員会というものは、三条機関にして、そして裁定を加えるべきであるという意見をわれわれもこの前に出しましたけれども、そういったどうしても必要な三条機関というものはつくってよろしいのではないか、こういうふうにも考えるわけですが、あなたの御意見はいかがですか。
  88. 平井廸郎

    ○平井政府委員 最初に、先ほど御質問の点についてちょっとお断わり申し上げておきますが、調査いたしましたところ、行政管理庁としては特に土地調整委員会の件につきまして過去において御意見を申し上げたことはないようでございます。もちろん、この問題が出ましてから総理府の御協議を受けまして検討したことは事実でございますが、外に向かって御意見を申し上げるという形は出しておりませんので、念のために申し上げておきます。  それから先ほど御指摘の点でございますが、もちろん私ども行政機構を預かっている立場といたしまして、真に必要な行政機構につきましては、行政需要の動向に応じてこれを認めていくという立場にはやぶさかではございません。ただ、全体としてできるだけ簡素で能率的な行政形態を維持していくという観点からいたしますと、既存の行政機構の中で、それを有効に利用することによって全体としての数をふやさないで済むというようなケースにつきましては、できるだけそういう観点から処理をしていただくという態勢をとっておりまして、そういう点につきまして、総理府におかれましても今回のような御提案があったわけであります。私どもとしても、その趣旨に即して妥当であると考えた次第でございます。
  89. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもあなたのは、行政管理をしなければならぬ立場から、総理府の意向に従ったような気分がしてならないわけですけれども、私が指摘しておきたいことは、こういうように三条機関がすでにある、土地調がある。これに対してくっつけたという、便宜主義といいますか、ここにわれわれは非常に不満を感ずるわけでありますけれども、この問題であまりやっておると時間がありませんから……。  次に、これが合併した場合に、土地調仕事、それから中央公害審査委員会仕事が、両方ともきちんと縦分けしてやっていけるのかどうか。土地調委員がだいぶ減りますね。それから中公審のほうの委員も、合併しますから、やっぱり人数が減るわけですが、これで十分なのかどうか、そういう自信がおありかどうかということをまずお聞きしておきたいのです。
  90. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現在の土地調は、委員長一、委員四ということになっておりますが、この裁定業務は過半数の委員の出席で処理するということになっております。公害のほうは、委員長一、委員大ということで、三人のチームの裁定委員会というものがそれぞれケースごとにつくられて処理をしていくということでありまして、職員は全員両方の現有職員が一緒になって仕事をしてまいりますので、その処理については、その能力においても、処理事務においても、何ら支障なく行なわれるものと考えております。
  91. 岡本富夫

    ○岡本委員 この土地調整中央公害審査委員会の両種が合併すると、さらにその審議というものがうまくいくようになるのか、そういうねらいはどうなのかということも一つお聞きしたいと思うのです。いかがですか。
  92. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず一番の目的は、中央公害審査委員会の現在のあっせん、仲裁、調停当事者合意に基づく仕事だけでは時代の要請に合わないということを自覚して、やはり三条機関に移行し、それに裁定権を与えるというのが一本の大きな柱です。  そこで、便宜主義というお話がありましたけれども三条機関がそうやたらにあるわけじゃありませんし、ふやすのはよほどのことでないとできませんし、また、土地調整委員会三条機関として残しても、先ほど申し上げましたような委員さんが全部そろっていなければやっていけないかどうかは、過去二十年の実績を見ました場合に、おそらくそういう必要もなかろう。したがって、新しい委員会の中で一緒に仕事をしていきます場合に、事務機構はそのままでありますから、委員さんがそれぞれ専門の分野といっても、今回は専門委員まで三十名以内任命することができるわけでありますので、手足も十分に持ち得る。また最高の識見も援助をさせ得るというようなことから、既往の土地調整委員会仕事もやはり円滑にやっていけると私は思っております。
  93. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもこの両種の委員が二種類の業務を両方行なうことができるというようなことができるかどうか。  そうしますと、たとえばいままで土地調委員であった人、中央公害審査委員会委員であった人、これがまじるわけですね。そして少し減るわけですが、そうしますと委員長が一人である。大体これでどちらに重点を置くようになるのでしょうか。その点をはっきりしてください。
  94. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先ほど申しましたように、時代の趨勢、要請からいって、公害紛争裁定を中心とする処理事務がやはり一番大きなウエートを持つようになるだろうと思うのです。しかし、昭和二十六年以来二十年以上の長い歴史を持っているわけでありますから、土地調整委員会事務もまた円滑をそこなうことのないように配慮はされなければならぬということであります。
  95. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、土地調分野というのはやっぱりどんどんなくなってくる。ですから、ひるがえって逆に言えば、今度は土地調を助けるために一緒にしたのじゃないか、なくするわけにいかないからというような安易な考えじゃないかという考え方もあるわけです。  そこで、いままでの土地調整委員会実績を見ますと、一番卑近な例をとりますと、昭和三十八年の三月四日に兵庫県の生野ダムの地域指定した土地調の結論が出ておりますけれども、これは、ダムをつくるためにそこの鉱区を掘さくしてはいけないという調停になっておる。逆に、これは掘さくしてもいいんだ、その鉱区を掘ってもいいんだという裁定をしたとします。しかし今度はその地域が環境破壊に――先ほどだれか環境保全ということも聞いておりましたが、環境保全のためにそこは掘さくしてはいけないというこの二つの対立したところの答えが出てきた場合、これはどういうようになりましょうかね。土地調のほうとそれから公害のほうと。公害審査委員会でもってこういう二つの結論が出た場合、どういうふうに、どこでこれをさばくのか、またどうするのか、こういう疑問を持つわけですが、いかがですか。
  96. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっと質問趣旨がわからない点がありますが……。中央公害審査委員会裁定を申し出てくるという場合に、一方においては土地調のほうに、また別な角度からの裁定を求めていくというケースがよくわからないのですけれども公害紛争のほうは、これは典型公害に関する一切の争いを裁定権まで付与して処理させようというわけでありますから、その場合に、典型公害関係するものであれば、それはそちらのほうの公害紛争裁定にかかるか、そうでないとすれば、全然別個なケースとして従前どおり鉱業権設定とか何とかというような行政処分に関する問題として土地調整委員会が所管していた部門の事項としてかかるか、もともと持ち込むときに両者はどちらかに分かれる問題であって、それを二つとも持ち込むということはあり得ないことだと私は思うのですけれども質問を取り違えているかもしれません。
  97. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほど聞いておりますと、島本君の質問に対して、ただ健康被害だけでなくして、財産権あるいは環境保全、こういう面の審査もするんだ、だから環境保全に対するところの訴えといいますか、これも裁定するんだという答弁があった。それに対して、今度はそれは環境保全に対するところの訴えで裁定してもらいたい、こういうやつがあると思うのです。  もう一つは、鉱区を掘さくさしてもらいたい、こういう調整の申し込みがあると思うのですよ。それがちょうど鉱区になっておりまして、鉱区を掘さくさしてもらいたい、これはおそらくまた土地調にかかってくると思うのですね。こういう二つのケースですね。その場合に、土地調のほうは確かに、それはたとえば環境庁なら環境庁で自然保護でいくんだけれども、実際にこれは必要だというので鉱区の掘さくを認める裁定をした、公害審査委員会のほうとしましては、それは環境を守るためにどうしても掘さくしてはいけない、こういう二つの結果が出るんじゃないかというような、これは老婆心ですけれども、じっと考えておるとそういう答えも出てくるわけですが、そういう場合はどうするのか、ひとつお聞きしたいのです。
  98. 山中貞則

    ○山中国務大臣 質問の意味がわかりました。それは、公害関係紛争処理する場合は、典型公害の健康及び財産等にかかる損害賠償あるいは因果関係の究明、こういうものについて原因裁定、責任裁定を求めてくるわけです。したがって、当事者間において、被害、加害の関係があるわけです。いまのお話だと、それは環境庁が環境関係でもしそういう自然破壊というものから訴えられてそれを聞くという場合は、環境庁の行政処分というような問題の分野ではなかろうかと思っておりますので、それが混淆されて同じ委員会の中で二つの論点として争われることはないと御承知願いたいと思います。
  99. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境保全については環境庁からだけではなくして、やはり地元の皆さんから、この環境はどうしても保護してもらいたいのだ、こういう訴えが最近出てきているのですよね。ですからそういう反対運動が起こって、これは何とかして残さなければいかぬという訴えが出てきたときに、それに対する裁定と、片一方ではその鉱区で掘さくさせいという訴えと、いままでの土地調の姿を見ていますと、ずっと読んでいますと、鉱区を掘さくさせてもらいたいというが土地調のほうにかかってきておるのですよ。こういう二つのケースになったときにこれはどうするかということが、私はじっと見ておると疑問になってきたのです。これ、ちょっと考えておいてください。
  100. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは先ほど答弁したとおりであって、そういうトラブルについては、それは今回の公害等調整委員会のほうには上がってこない。それは行政上のトラブルでしょうから環境庁あたりがさばくべきことであって――さばくという言い方はおかしいが、受け付けて処理すべきことであって、今回、いままで中央公害審査会がやってまいりました権限にプラス裁定権を与えた。そこに持ってこらるべき問題ではなくして、そこではあくまでも加害者、被害者、そして健康、物損、そういうもの等の関係が両者対立しているときに、あっせん、仲裁、調停、そうして裁定権を行使するということでございますから、そこに上がってこようのない分野であるということであります。
  101. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはもう一ぺん次の機会に、あとで議事録を見まして、じっと聞いていてどうもこの点が気になりますので、次の委員会にまたあれします。  そこで、この公害等調整委員会組織あるいは委員の構成について、まずこれの業務量の見通し、計画はどういうようになっておるのか、ひとつお聞きしたいのです。
  102. 川村皓章

    川村政府委員 これからの問題でございますので、これは多少推測も入るわけでありますが、一応お答えを申し上げます。  現在、まず中央公害審査会が行なっておりますいわば公害の部分について最初に申し上げますが、現在やっております調停、仲裁等につきましても引き続いてやるわけでございまして、これは現在までの実績は、法施行後一年余を経過いたしておりますが、実績としては現在六件という形になっておりますけれども、一応十件程度が年間としては見込まれるというふうに私ども考えておりますし、さらに今度新しくつけ加えます裁定制度につきましては、現在裁判所に新受事件と申しまして、新しく受け付けられる件数ないしは民事調停に受け付けられておる件数、そのうちの公害関係から推定をいたしておりまして、ほぼ十数件ぐらいが一応年間としては見込まれておりますので、合計いたしますと二十数件ぐらいということで公害関係を見込んでおる次第でございます。  それからなお土地調関係につきましては、先ほど土地調委員会から最近の件数を申し上げましたが、おおむねそのようなことで推移するのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  103. 岡本富夫

    ○岡本委員 処理する件数が非常に限定されてくると私は思うのです。  そこでちょっと問題になりますのは、法案の四十二条の十二、十三、この中に申請の不受理というのがあるのですよ。受理しない。たとえば四十二条の十二の2で被害の程度が軽微である、こういうときは受理しない。こういう姿勢では――被害の程度の軽微というようなことはだれがきめるかといえば、この調整委員会がきめるのでしょう。そういうことになりますと、たとえば現在の人員で大体これくらいしか受理できない、それ以上のものは全部不受理で飛ばせるということ、こういう姿勢は、ちょっと山中長官、変えていただかなければならぬ。まず全部受理はする、ここで仕事を意欲的にやっていく、こういうようにここは修正していただかなければならぬと思うのです。この責任裁定のところでもこういうふうに出ておりますが、この点いかがでしょう。
  104. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは実は量の問題ではなくて被害の程度のいわゆる質の問題であって、公害等調整委員会のほうで扱うほどのことでもないという的確なる客観的な判断をした場合、それが客観的にも妥当と認められる場合、そういう場合において原則を除外して申請受理しないことができるという意味でございますから、これは何もさばき切れないから持ってきたって手に余るものはもう受け付けないぞという意味ではありません。  必要なら、もっと詳しく小澤委員長のほうから答弁してもらいます。
  105. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、委員長からひとつ……。
  106. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 行政機関が普通の純然たる民事紛争につきまして裁定を行なうということは異例でございまして、特にこの公害についての社会性、公共性というものを考え、また公害紛争については普通の民事紛争と非常に違いまして、高度の技術性、専門性が必要であるということがございますので、それで特にこの行政委員会としての機動的な機能を十分活用して、紛争の迅速、適正な解決をはかろうというのが本来の制度趣旨でございます。こういう制度趣旨から考えますと、やはり社会的に重大な事案である、そしてしかも高度の技術的、専門的能力を要求されるというような事案について、これは漏れなく審理し、処理する必要がありますが、しかし数多くの事案の中には必ずしもそうでもない、日常の判断で結論の出る、しかもこれは、金額を言ってはあるいは語弊があるかもしれませんけれども、しかし社会的な重要性からいって、わざわざ中央機関をわずらわしてそれをやるということも、緊急性なり必要性なりにおいて、普通の、本来委員会審査になじむ事件とは隔たりがある事件がある程度あるということは、これは当然否定できないことだろうと思います。それでそういう事案につきましては、むしろそれをしいて中央で取り上げてやるということが、当事者にとっても、たとえば費用の負担などについても過大な費用がかかる場合もございましょうし、特にへんぴな地方、非常に離れた地方での軽微な事件といったようなものについては、場合によっては費用の償わない場合もありましょうし、しかもそれを当事者が何かの感情的な行きがかりから、是が非でも、たとえ家産を傾けてもこの問題を片づけたいというようなことが出ることも考えられますけれども、それは本来、公害調整委員会が正面から取り組むにはあまりにもふさわしくないという場合もあろうかと思いまして、それで「申請受理しないことができる。」というふうにしてあるわけでございます。
  107. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、まあ申請者が費用の点あるいはまたそういうものを加味してとても中央に持ち込むだけの力もないというようなことであれば、都道府県の公害審査会というのがあるわけですが、ここになぜ裁定権を持たせないのか。そうしますと、小さな――小さなといってはおかしいのですけれども、その地域裁定はどんどんそこで行なわれていくのではないか。中央だけに裁定権があって地方ではそれはない、こういう関係について、ひとつお答え願いたいと思います。
  108. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの小澤委員長の答弁であるいは少し誤解を生じたかと思いますが、先ほど私が言いましたように、事柄の質の問題で裁定に持ち込むほどのことでないというようなことは当然あり得ることなんです。もう感情的に、長いことやられていて、そしてじゃ中央公害審査委員会に持ち込むぞというようなこともあり得るわけですが、そこらはやはり、来たものは全部処理しなければならぬということになりますと全部かかえ込むわけですから、これは量の問題ではなくて質の問題として事柄について審査をするということは必要だと思います。そういうものはまた、いまおっしゃったようにそれならば地方の公害審査会のほうで、裁定に至らなくとも、それまでの段階の話し合いにしてもいいじゃないか、あるいは地方に裁定権を与えてもいいじゃないかという御意見が出てくるでありましょうが、そういうことは一応中央のほうで、裁定についてはこれはやはり司法権に隣接したところまでの強権と申しますか行政権を最高度に発揚することになるわけでありますから、各都道府県があっちこっちで同じ事柄の同じ内容の性質のものについて違った裁定をばらばらに下されてはまた非常に問題があります。これは裁判所の一審、二審、三審制度とまた違うわけでありますから、そこでやはり裁定については、中央における統一性というものは、全面的に一つの事柄、類似した現象については、その裁定というものが確立されていくようにという配慮でございます。したがって、各都道府県がそれぞれに裁定権を行使することについては現段階においてはまだ時期尚早であるという気持ちを持っております。
  109. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は被害者の立場、要するに住民のサイドに立ってものを考えるときに、まず受理をしてもらえない、こういう人たちは相当不満であろうと思うのですね。しからば、その受理をしない、不受理の場合の救済対策はどういうようにお考えになっているのでしょうか、これをひとつお聞きしたいのです。
  110. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 本来、受理、不受理が、このたてまえでは、いま言った公害紛争処理委員会が取り扱う事件の性質なり機能の本質からいいまして、もともと最もふさわしいものはやり、全くふさわしくないものはやらないという、そこに一つの裁量が入るのでございまして、行政庁にそういう裁量が認められておるときには、結局その裁量権の当否の問題は本来法律的にそれを救済するというところまではいかないものだろうと思います。そしていまの場合に、もしほんとうに関係者がそれで納得しなければ、それぞれの土地公害審査会がございますので、そこで調停なり仲裁なりを簡易にすぐにやってもらうという道もありますし、またそういう行政委員会処理されることに不満がありましたら、それぞれその地区地区に簡易裁判所なり地方裁判所の支部がございますので、そういうところで司法救済を求めるにいたしましても、その点は、その種類の事件なら比較的簡単にいくのじゃないかと思います。特に取り上げて、どうしてもこの不受理に対して特別の救済の手続をさらにつくるということは考えていないわけでございます。
  111. 岡本富夫

    ○岡本委員 もとに戻りますけれども、そういうことになると、受理する、しないということはこの調整委員会権限になるということになりますと、非常に国民としては、これを受けるところの住民としては不満があるということはもう御承知だろうと思うのですけれども、そこで司法救済を受けるというのだったら、そんなことは必要ないということになってくる。したがって、この法律のたてまえとして、何と申しましても司法救済では、いままでの事件を見ましてもなかなか救済がうまくいっていない、迅速でないというので、こういった裁定制度をきめてきちっとやっていこうという趣旨であれば、もしも中央でできなかったら地方でやる、地方でやればいろいろばらばらに行なわれるということだからぐあいが悪い――裁判所もあちこち地方にもだいぶありまして、若干ばらばらな答えも出ているわけですね。だから最高裁というのがあるわけですけれどもね。そうしますと、長官のおっしゃった地方に裁定権を持たせないという意見、この根拠がどうももうひとつはっきりしない、こういうふうに思うのですが、もう一ぺん……。
  112. 山中貞則

    ○山中国務大臣 もう一ぺんもとに戻りますが、「受理しないことができる。」というやつは、これは現在の中央公害審査委員会のいわゆる裁定権を付与された新しい機構でさばくのに値しないといいますか、そこまでの事柄ではないという判断の場合に初めて受理しないことができるのであって、いまあなたの心配しておられるようなケースで受理しないことは大体ないので、そういう被害者が救済されないじゃないか、いわゆる受け付けをしない、受理をしない行為によって初めから救済されないのじゃないかというような、そういうような被害者、加害者の立場があって、持ち込まれたものを拒否することはほとんどあり得ないことだというふうに思うわけです。  それから裁定権を地方にいまの段階で与えないというのは、これは先ほどもあなたのほうからお話のありましたように、現に裁判なら地方裁判所で違った判決があっても、その斉合性、統一性は最高裁の段階において最終的には確定を国の司法として定めるわけでありますから、司法権に隣接するようなところまでぎりぎりの権限を行政の委員会が持った場合に、これは被害者の立場に立っても加害者の立場に立っても、統一性、斉合性というものはきちんとしていなければならぬ。その意味では、そのような判断を要するものは中央委員会でやるということで当分はいかざるを得ないだろう、そう思うわけです。
  113. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも住民サイドの面からの御答弁ではなくして、政府の答弁でしょうから、われわれももう一つぴんとこないわけですけれども、この点については次の委員会に送ることにいたしまして、あまり時間がありませんから次に移ります。  責任裁定原因裁定、こういう二つ裁定になっておりますが、この必要性を具体的にお示し願いたい。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはやはり因果関係というのが一番大きな争点になっています。裁判になった場合でも、あるいはいまの話し合いを当事者合意でやる場合にも、因果関係の解明というものは、ことに被害者サイドからはきわめてむずかしい。物的な証拠なりデータなりをそろえるのに非常につらい。因果関係が大体はっきりしますと、あとは金額の問題に移るわけでありますから、因果関係というものは非常に重大なウエートを占めておる。そうすると、因果と責任と両方を一緒にしてやるよりも、因果関係裁定だけでも出れば話が済んでしまうケースも相当あると思いますし、また、それでなくてどうしても損害額まできめて争うんだということになれば、裁判以外にやるとすれば責任裁定のほうに持ち込んでもらうという仕分けをしたわけであります。したがって、おそらく原因裁定申請のほうが非常に多いだろうというふうに、いまの段階では想像できるところであります。
  115. 岡本富夫

    ○岡本委員 責任裁定、責任には因果がつきものなんですね。原因があるから責任があるわけですから、被害者側から原因裁定だけをお願いしたいというようなことがあり得るかどうか、これをひとつ具体例をあげてもう一ぺん説明してください。
  116. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 問題はどうしても因果関係の存否が一番の根本でございまして、これはおそらく関係当事者も、ほんとうは互いに恨みを残すようなけんかはしたくない。しかし、その公害原因がとにかく相手にあるかないかがわからない。自分のほうはあると思うけれども、相手は否定する。そこでいつまでも結んで離れない、ほとんどの場合がそうだろうと思います。  それで当事者としても、原因さえはっきりすれば、もうあとは払うべきものは払う、あるいは原因さえはっきりして向こうがその非を認めるなら、もう金なんか要らないといったようなことは、日常幾らでも聞くことでございまして、やはり因果関係をはっきりさせるということがこの解決の半ばを過ぎるものである、そういうふうに思われますので、十分に効用を発揮するものであると考えております。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、こう解釈していいですか。たとえば、いま富山県でイタイイタイ病の裁判が行なわれておる。その裁判に対して、これはカドミウムの中毒によってイタイイタイ病になったんだ、厚生省でもまた住民側でもそう言っている。ところが企業側は、その点は原因がはっきりしていないから、こう反論を出している。その場合に、イタイイタイ病の原因というものはカドミウムである、あるいはない、こういう裁定をここへお願いすることができるわけですか。その点についてひとつはっきりしてください。
  118. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 そのとおりでございます。仰せのとおり、そういう問題が起きましたら、原因裁定では、イタイイタイ病は具体的な問題になりますからこれはちょっと避けさしていただきますけれども、たとえばどこかの鉱山の排出した重金属が問題になった、そして特定の病気の原因かどうかが問題になったといった場合には、原因裁定では、本件何々病は相手方の鉱山、工場等から排出した何々重金属が原因である、そういう宣言的な裁定をすることになります。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、この委員の資格を見ますと、人格高潔ですか、これに加えて、公正取引委員会もやはりこの三条機関ですが、法律あるいは経済、科学、こういうような専門家をやはり入れる必要があるんではないか、こういうようにも考えられるのですが、この点について。
  120. 山中貞則

    ○山中国務大臣 準司法的な行為を行ないますから、弁護士の資格を持っている者が入ることは当然のことでありますが、いまの問題点は、これは専門委員制度というものを新たに設けますから、そこで、研究機関なりいろんな学界の最高の人を委嘱して、その人たちの判断を仰ぐことによって、最高のレベルにおける判断が得られるということを期待しているわけであります。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 この場合、この最高の――先ほどからもだれかが質問したときに、最高の委員を任命するのだ、内閣総理大臣だから間違いないのだ、こういうような答弁をなさっておったんですけれども、こういったときの科学者あるいは医学者という場合に、往々にしてどの人が最高であるかというのは見分けのつかない場合が非常にあるんですよ。そういう場合は、内閣総理大臣が任命するんだから間違いない――ぼくは佐藤総理は全部は知らぬだろうと思いますよ、何もかもですね。ですから、それを批判する、また基準を定めるこの委員の中にやはりそういった科学的あるいはまた経済的知識のある人が入っていないと、私たちこういうことで必要なんですから総理大臣ひとつきめてください、そんなばかなことはないですね。そこのところはもうちょっとはっきりしていないように思うんですが……。
  122. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は形式を言ったのであって、その専門委員がどういう人でなければならないか、どういう人がふさわしいかという御判断は、法律の第十八条に「委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員三十人以内を置くことができる。」「専門委員は、委員会の申出に基づいて内閣総理大臣が任命する。」ですから、形式はそう申しましたけれども委員会先生方が合議をされて、このケースについては現在の日本の学界あるいは科学者、そういうところの中では衆目の見るところだれが第一人者だというような合議をして、それをもっていくわけでありますから、総理大臣が、いまの例のように、佐藤さんがかりにそうであったとして、この案件にはだれとだれがいいから総理大臣が専門委員を委嘱するという、そういうことを言ったわけではありません。
  123. 岡本富夫

    ○岡本委員 この委員の資格については、また次の機会に……。公正取引委員会の例もございます、三条機関ですからね。この辺についてもう一ぺん論議をしたいと思います。  そこで、裁定の執行力の問題でありますけれども、四十二条の二十ですか、「責任裁定があった場合において、裁定書の正本が当事者に送達された日から三十日以内に当該責任裁定に係る損害賠償に関する訴えが提起されないとき、又はその訴えが取り下げられたときは、その損害賠償に関し、当事者間に当該責任裁定と同一の内容合意が成立したものとみなす。」三十日というのは非常にこれは短いように思うわけですし、それから裁定の執行力の力といいますか、効力、これについてひとつお聞きしたいと思うのです。
  124. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 責任裁定の効力といたしましては、この第四十二条の二十に書いてございますように、それが一定の要件を満たしましたときにはその損害賠償に関して当事者間に当該責任裁定と同じ内容合意が成立したものとみなす、一口でいいますれば合意擬制の効力が生じます。合意擬制の効力が生じまするというと、もうその問題についてはその当事者相互間では、重ねて因果関係とかあるいは故意、過失とかの問題について、それと異なった主張をすることができなくなる、もうそれで裁定と同じように確定するということになります。したがって、たとえばそれについて強制執行をする必要があるというようなことになれば、もうその合意擬制された合意だけを理由にして裁判所にあるいは仮処分申し立てあるいは本案判決の申し立てをして、その手続ではほかのことは一切主張する必要がない。合意があるかないか、合意があったということだけを主張して立証すればそれで足りる。そういう効果があるわけです。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと土地収用法の第三条あるいは鉱業法九十七条あるいは独禁法の七十七条と同じ意味ではないわけですね、これは。
  126. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 いま御指摘になりました条文を、ちょっと宙で覚えておりませんので申しわけありませんけれども、ただ、合意擬制の効力は、これはほかにはありません。いまおあげになりました法律にも、民事上の損害賠償なりそのほかの法律関係について合意擬制の効力を生ずるという、そういう趣旨規定はございません。
  127. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間があれですから、もう一問だけ……。  四十二条の二十八で、原因裁定のところで(相手方の特定の留保)というところがありますが、この第一項では「相手方を特定しないことについてやむを得ない理由があるときは、その被害を主張する者は、相手方の特定を留保して原因裁定申請することができる。」ところが「裁定委員会は、相手方を特定させることが相当であると認めるときは、」「原因裁定申請した者に対し、期間を定めて、相手方の特定を命じなければならない。」先ほどもお話ししましたように、何ぼかの複合公害のときに、山本先生がいらっしゃるからよくわかると思いますけれども、四日市なら四日市にたくさん煙突がありこの複合汚染にやられている、だから被害者が申請するときに相手がだれだという特定をできない、ところが今度は裁定委員会のほうから、一カ月なら一カ月以内に特定の相手を出してこい、こういうのが一つ。それから、この法案を見ますと、その期間に相手方を特定して出してこなかったらもうこの原因裁定は取り下げだ、こういうようにどんどん1、2、3と後退すると思うのですよ。これはどうも大問題だと私は思うのです。それについて最後にお聞きして、委員長から時間だということですから、きょうはこれで終わりたいと思います。
  128. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 第一項、第二項、第三項とすっと読みまして、次から次へと間髪を入れず次の条項が働くということになりますと、おっしゃるとおりになって非常にテンポが早くなってしまうのですが、実際はそうではございませんで、とにかく特定できないときには特定しないままでも申請ができるというのが第一項でございまして、それによって、たとえばやがて消滅時効が完成しそうになっているなんというときに、とにかく救済の申し立てをする、そして原因裁定申請をすることによって時効の中断をはかるとかなんとか、そういうことがございます。それによって、申請をしておいてそれから相手方を特定するために必要な調査をするということになります。それはもちろん申請人もしなければなりませんけれども、特に公害被害者の中には資力が十分でないためにそういう調査さえ十分思うにまかせないという場合もあるだろうと思いますが、そういうときには委員会であるいは事実を調査をするなり何なりをして、その相手方がわかるように協力いたします。そしていよいよ委員会で、そういうふうにして双方が事後に出した資料、あるいは委員会自身が調査して得た資料などによって、もうこれで相手方は特定できるはずだという判断に達しましたときに初めて相手方の特定を命ずることになるのでございまして、申請書に相手方が書いていないからすぐに相手方の特定を命ずる、そういうふうな運用になるわけではございません。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますけれども、どうもこの点について、それならそのような書き方にしてもらわないと、特定のないところの申請が出てきた、ところが調整委員会が、どうもこんなにたくさんではどれがどれやらわからぬ、だからお前のほうできめてこいということになれば、被害者のほうはそんなに調査能力はないわけですから、一カ月なら一カ月という期間を言われたら、もういたし方ありません、こういうようなことになってしまうわけですから、ここのところの条文はもう少しわれわれのようなしろうとにもわかるように修正してもらわなければぐあいが悪い、こういうふうに私は思います。  これはこの次の委員会でまたあれしますから、きょうは時間ですからこれで終わります。
  130. 田中武夫

    田中委員長 次に、米原昶君。
  131. 米原昶

    ○米原委員 私はまず、公害紛争処理に今回裁定制度を取り入れられたそのことについて聞きたいのですが、公害紛争処理法が制定されたおりに山中さんが担当大臣だったと思うのですが、その委員会でも裁定制度を取り入れるべきだという声がかなりありました。そして、全会一致の附帯決議の中にこれが入れられたというようなことがありましたのを覚えておりますが、その全会一致の決議の趣旨を尊重されたというようなことが、今度裁定制度を取り入れられた一つの原因と考えていいでしょうか。
  132. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それが最も大きな原因で、私に課せられた課題であると思っておりましたから、そのことを検討した結果、結論を得たということでありますし、他面においては、当事者間の合意を前提としたものの範囲にとどまっていたのでは、やはり今日の時代の要請に敏速果敢に政府の行政が別な角度からこたえることがなかなか困難だということも自覚をいたしましたので、この際思い切って附帯決議の趣旨を実行するという意味において踏み切ったわけでございます。
  133. 米原昶

    ○米原委員 全会一致の決議を尊重されたということには、私も敬意を表します。  だが、この決議の中で御存じのようにもう一つ、基地公害の問題がやはり決議の中に入っていたわけです。防衛施設周辺の整備等に関する法律等をも含めて真剣に再検討するということがあったわけですが、この基地公害の問題は今度の法律でも全然含まれないということになっていると思うのですが、どうしてそうなったのかということも説明していただきたいと思います。
  134. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは附帯決議でありますから、当然そのことも検討をいたしたわけであります。しかし別途の公害規制法それぞれの中でも、基地に関する公害は防衛施設庁、そしてまた米軍の問題についても提供義務を負う国家として一応の窓口は防衛施設庁ということで、それぞれ法律も基地周辺の整備等に関する法律その他、紛争に対して一切の責任をまず防衛庁限りで負うということの仕組みになっておりますので、今回は私の段階でも、附帯決議の基地についての点は今回の法律の中に取り込むことができなかった。しかし、これはやはり現行の別途の法体系のワクの中で処理していって、それでできないということになったら、公害規制法その他全面的にもう一ぺん見直さなければならない時代がくると思いますが、もしそうなったら当然それを対象として範囲の中に入れていかなければならぬだろうと思いますけれども、現時点においては、防衛庁は防衛庁として基地の問題に責任を持つという体制を政府としては一応確立をしておりますので、やむを得ないことだと思います。
  135. 米原昶

    ○米原委員 防衛庁の方は呼んでないのであれですが、山中長官にちょっとお聞きしておきたいのです。  これは昨年の沖繩国会で、例の沖繩特別委員会でも議論になって社会党の石川次夫君が質問した中にもありましたが、例のアメリカ議会のサイミントン委員会の報告です。あのあとで私もそこを読んでみたのですが、石川君も言っているとおりのことが書いてある。つまり日本におけるアメリカ軍の基地による騒音公害、こういう問題をどう解決しているかというような質問がアメリカの議員から出て、それに対するアメリカ政府の答弁ですが、日本政府から何らこの問題については要請がないということを言っておりますね。だから何もしないのだ、そして基本的な原則としては、日本政府から要請があった場合には、基地の周辺を整備するとかあるいは基地を縮小するとかというような話し合いにはいつでも応ずる用意があるということを、日本政府には絶えずわれわれは言っている、しかし騒音公害に関しては全然一言も要請のあったことがないということを言っておるのです。これをどう考えられるでしょうか。ここに、日本政府のほうからそういう要請を一ぺんもやったことがないということをはっきり言っておりますが、こういうことを認められますか。
  136. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは防衛庁長官あたりに聞いてもらわないとわかりませんが、しかしアメリカもまあ内輪向けには調子のいいことを言うものだと思って私も聞かざるを得ないのですけれども、実際は防衛施設庁のほうでそういう米軍の基地の離着陸のきまったルート、それの一定の高度、一定の幅、そういうところにはやはり公共施設を中心に義務教育施設等の防音工事等をやっておるわけでありますから、これは全くアメリカさんには何も言わないで、被害が起こったら私たちでしりはぬぐいますから、はいはいといって、よもや防衛庁もそんなふざけたことはやってないと私は思います。しかし、防衛庁長官をいまだ一ぺんもやったことがございませんし、私はやらないほうがいいということのように思いますから、これはやはりそっちのほうから直接聞いてやってください。
  137. 米原昶

    ○米原委員 この問題は基本的に重要な問題なので、もちろん別の機会に本委員会に防衛庁長官に来てもらって、こういうことを事実かどうか確かめたいと思うのです。ですから、今回はその問題に触れませんが、やはり基地公害、特に騒音公害というのは、今度の立川の市民のあの問題にしましてもやはり騒音公害というものに対する反対が一番強いわけですから、この問題は自衛隊の問題ですけれども、決して軽視できないと思うのです。  もう一つ、今度の場合、単に基地公害だけではなくて、いわゆる従来どおりの公害対策基本法に書いてある公害だけに限られているのですね。実際にはいま東京都内なんかで一番大きく起きている紛争は日照権の問題です。あるいは電波障害の問題です。これが最近大都市では非常に起きているのですね。そういう問題を何とか解決してほしいというのは、おそらく要望の中では一番多いのではないでしょうか。そういう点もありますので、なぜこういうものを入れられなかったのかという点を聞きたいのです。
  138. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはまだ発表いたしておりませんが、公害問題について世論調査を実施いたしました。その内容を見ますると、やはり一番多いのは騒音公害に対する苦情であります。その次が振動ですね。そして意外と多いのが薬品公害、食品公害、こういうものをやはりどこかでかやってもらいたいというものと、日照権というのは大都市の主として住宅街に限定されておりますので、件数としてはそうよけいあがってきてませんが、その関係者はえらい大問題であると私も思います。しかしながら、やはり現在の公害基本法の中で典型公害としてそれらのものはとらえてありませんので、これは今後の課題としてやはり問題は残っておるという認識は私も持っております。
  139. 米原昶

    ○米原委員 それでは直接この法案について聞きますが、今度の公害等調整委員会は、土地調整委員会中央公害審査委員会とを統合したという形になっておるわけです。私第一に感じたのは、この二つ委員会は、紛争を解決する、裁定もやるという点は共通ですが、しかし性格からいうと紛争の態様からいうとかなり性格が違うものじゃないか。これを一緒にすることは必ずしも望ましいことでないのではないかということを第一に感ずるのです。土地調整委員会のほうは、「鉱業採石業又は砂利採取業と一般公益又は農業、林業その他の産業との調整を図る」というようなことが趣旨に書いてあります。まあどっちかというと産業対産業の紛争という性格をかなり強く持っている、それ以外にもありますが――というものだと思うのです。ところが公害紛争というのは主として、また大問題になってきているのは、大企業に対して住民側との間で起こった紛争、しかも住民の側はこの裁定――あとで聞きますが、裁判の費用もないような貧しい住民が方々の裁判紛争をやっておりますね。そういう点では、紛争処理につきましてもかなり紛争の態様が違うのじゃないか。公害紛争処理の場合そういう状態にありますから、被害者の救済という観点が何としましても強く出なくちゃならぬと思うのですね。こういう形の性格の異なる委員会二つ一緒にするということが必ずしもいい案でないのじゃないかということを第一に感じたのです。つまりほんとうに被害者を救済するという観点を貫き得ないのじゃないかということが第一の危惧する点なんです。この点について御説明いただきたいと思います。
  140. 山中貞則

    ○山中国務大臣 被害者救済の前提に立って、そして紛争処理をすみやかに妥結させるということの目的は、これは阻害されてはなりません。しかしながら三条機関としてこれをつくります際に、確かに風鈴が一つついたような感じになっていることは私も率直に認めます。他方、しかし三条機関として昭和二十六年以来土地調整委員会というものが置かれている。しかしながらその実際の受理件数、活動状態というようなものを見ました場合に、たとえば端的に言って、同じように総理府の外局として三条機関として公取がありますが、これはやや足らない点等もありますし、また先般も都道府県知事への権限委譲等もやったのでありますけれども、いずれにしてもやはり公取というものは自分たちのために役に立つ役所であるという一応のイメージは、国民は抱いていると私は思います。しかし土地調整委員会があるということを知っている人はほとんどないだろう。たまたまダムがつくられるとか、鉱業権設定が許可されそうになったとか、通産局はけしからぬとかいうようなことがあって、そして土地調整委員会というところで裁定までしてもらえるそうだ、あるいは取り消し等もしてもらえるそうだというようなことで、あがってくる件数が年間六件くらいあるわけでありまして、これを私もすっきりさせて、公害紛争処理だけを三条機関にして、そして必要であるならば土地調整委員会というものは八条機関くらいに移してもいいという気持ちもありまして、検討してみましたけれども、やはり裁定権を持っておりますと、三条機関からはずすわけにもいくまい。そこでいまおっしゃった点はすなおに認めますが、しかし一緒にやったらばこれは他方の活動、いままでの活動、新しく付与される権限を阻害するかということを考えますと、これは運用の面で事務当局機構はしっかりしておりますから、そのままでありますから、したがって委員さんが、いままで土地調整専門でやっておられました人が過半数できめていたものを、今回は委員長の指名する三名でそれぞれの件数処理に当たっていって、専門委員も三十名以内の学識経験者の人を任命されるという補足手段もありますから、まあ私もこれはちょっと異質のものが一つになっておる点は認めます。しかしそのことによってやはり三条機関がここに公害紛争処理のために登場できたわけでありますから、そして今後の事務処理についても大体やっていけるという自信がありますので、これはひとつ運営いたしましてやっぱりいけなかったということがありましたらもう一ぺん考え直さなければなりませんが、いまのところはやっていけるだろうと思っております。
  141. 米原昶

    ○米原委員 その点で私は最初の印象で委員の数も少し少ないのじゃないかと思ったのですが、先ほど委員長の話で土地調整のほうの仕事はそんなにないのだということを聞きまして、その点はそれとしまして、足りない点、専門委員及び事務局職員が補佐するという、それで専門委員事務局職員を強化するということに今度の構想では重点が置かれているように思うのです。しかし結局責任をほんとうの意味で持っているのは委員なんですね。委員みずからが証拠調べ、事実調べ、これを十分に行なえるのでなくちゃいけないのじゃないか。これが専門委員まかせ、事務局まかせになると、また別の意味のたいへんな弊害が起こる。委員が当然責任を持たなければならぬ、そういう点で、むしろ私は先ほどからの説明を聞いておりまして、事務局まかせになってしまうとこれは委員の責任が全うできないような逆の現象になってくるのではないかということを感ずるわけです。現在の土地調整委員会なんかでも、かなり事務局まかせになっているという批評が非常に多いということを聞いておるのです。しかしさっきも言いましたように、紛争処理の性格上、それでも土地調整委員会のほうはできたかもしれない。しかし公害紛争処理ということになりますと、これはたいへんな複雑な問題です。ジャーナリズムもかなりいま取り上げている問題でありまして、ここで不公正なような事態、あるいは責任ある委員の知らないうちに結論はもう事務局でつくられていたというようなことになると、たいへんな批判も出てくるのじゃないか。絶対に事務局まかせにしてはいけないということをこの際考えていただきたいのです。この点をどう考えられるか、ひとつ聞きたい。
  142. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは国会承認人事でございますから、いいかげんな人を選任することは事実上もできないわけであります。現在の小澤委員長、いま中央公害審査委員会で責任者としてやってもらっておりますが、これは私も率直にいって兄事いたしておりますし、司法分野においても最高の位になられる方であったはずであります。したがいまして、そのやっておられますことは純法律的に正しさを求め、そうして何のために委員会が存在しているかの意義について十分にわきまえてやっていただいておるようであります。将来、強力な権限をかさに着て事務局が暴走するというようなことは、この委員の選任次第によって防げることでありますので、国会承認人事でもあり、十分に国会の御了承を得られるような人選をすることで、実際上は事務当局のそのような――有能であればけっこうでありますけれども、有能を通り過ぎることが委員の人選によって起こるようなことのないようにいたしたいと考えております。
  143. 米原昶

    ○米原委員 その点で、一体実際はどうなるかという点で、この法案に基づく政令それから公害等調整委員会の規則、そういうものの案がおそらくできているのだろうと思うのですけれども、資料をぜひ委員会に出してもらいたいということを要望します。  もう一つは、先ほども岡本君から話がありましたが、「公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図る」という趣旨からいうと、どう考えても、私も都道府県の地方の公害審査委員会にも裁定権を与えるというふうにするのが適切だと思うのです。先ほどの説明ではどうも納得がいかないので、もう一度ひとつやってください。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは中央の委員会において、一応裁定権を実績として行政上積み重ねていって、やがて地方の都道府県の公害審査委員会会においても裁定までまかせられる分野ですね、地方が国の法律までさばくことはできないわけでありますから、そういう分野等が出てくるかもしれませんが、その場合でも、やはりせめて裁判のように中央委員会が二審制度くらいに何か置きませんと、やはり斉合性という意味において統一を欠くのではないかという懸念を持っております。したがって、発足当初から地方の審査委員会裁定権をゆだねるということは少し冒険じゃなかろうかと思っておるわけです。
  145. 米原昶

    ○米原委員 その問題はさらに今後の過程でもよく考慮してもらいたいと思います。  次に、手続費用の問題ですね。調停とか仲裁とか裁定等手続費用についてです。事件の規模や内容等からかなりの費用を負担しなければならぬ場合が当然起こってくる。その場合に被害者を救済できるような措置を講ずる規定をすべきじゃないかと私は考えるのです。ここでは手続費用は当事者が負担するということになっておりますが、代理人に対して被害当事者が支払う報酬もあわせてむしろ加害者に支払わせるという原則をきめるべきじゃないかと思います。その点いかがでしょう。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 前の紛争処理委員会のときにはそのような配慮をいたしてありましたので、政令段階で当然費用等の問題において仲裁の申請ができないというようなことがないようにいま作業をしておるとのことでございます。その点はなるべく早く政令案要綱、そういうものででもお示ししたいと考えております。  なお、決定をした場合のそれらの費用について加害者のほうに支払わせるということは、やはり裁定そのものにおいてそのようなことを妥当と認めれば可能になると思いますが、ちょっとそこ言で私も具体的な内容を知りませんので、ちょっと委員長から説明していただきます。
  147. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 費用につきましては、加害者負担という特別の原則はございません。これは裁定だけではなくて、従来の仲裁それから調停についても同様でございます。  ただ、実際問題としては、これは判例などでも出ておりますが、不法行為によって、たとえば弁護士費用とかそのほかそういう特別の費用を要した場合には、たとえ訴訟手続法上負担を定められてなくても、不法行為そのものに基づく損害として損害賠償の請求ができる、その損害賠償請求額の中にそれも加えることができるというのが判例でございまして、大体そういうことで進んでおります。
  148. 米原昶

    ○米原委員 それでは裁定制度についてですが、原因裁定について、その原因裁定申請を加害者にも認めているわけですが、これを認めますと、いままでのいろいろな公害関係の裁判の例から見ましても、加害者がその易しのぎや時間かせぎにこれを悪用してくるおそれは十分にあります。そういう点で、加害者には原則として申請権を認めないようにすべきではないかと私は思いますが、その点どうでしょうか。
  149. 山中貞則

    ○山中国務大臣 御意見は私ももっともだと思います。  ただ、他面、責任裁定の場合には、加害者というものが自分で、おれはこれくらい払いたいというのはおかしいのでそういうことはないのですが、原因裁定となりますと、やはり自分は明らに加害者の立場としてさばかるべきでない根拠を明瞭に持っているし、申し開きも立つという場合があると思うのです。これは内々の話ですが、前に某社が、われわれが俗にいう加害者の立場を持ちながら中央公害審査委員会に持ち込んで、そうして総会のときに、中公審に頼んであるから中公審に頼んであるからと逃げ回ったというようなことは、これは一つ理由は、裁定権という強権を持っていない審査委員会だということを承知の上でやったのではないかと私はそのとき思ったわけです。もしこれが裁定権がありましたら、そういうふうに総会対策で逃げ込もうなどと思ってみたところで、持ち込んだ先で裁定をやられますから、そう簡単に、すねに傷持つ、若干の内心じくじたるところがあれば、世間から見て加害者であるはずだと思われるものが持ち込むはずはない。したがって、もし当事者から申し出るということがありますのは、その場合においてよほどこれは加害者でないことが明白であるということが自分たちが立証できる、どうぞどこからでもお調べくださいというものが初めて持って出てくるであろうと私は思っておりまして、その点は、原因、責任の両方は区分けしてしかるべきであろうと思っております。
  150. 米原昶

    ○米原委員 その説明はわかりますが、悪用される場合がかなり起こるのではないかという点もあると思うのですよ。そういう点で、何かそういうことを防ぐような方法、規定をきめたほうがいいのではないかと私は思います。  それから中央委員会裁定申請受理しない場合には、その理由を当然文書で申請者に送達することになりますか。
  151. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 いまの不当目的で申請した場合でございますが、そういう場合にはまさに第四十二条の十二の二項に、諸般の事情を考慮して責任裁定をするのが相当でないと認めるときには受理しないことができるということになっておりますので、そういう不当目的、単なる遷延だけを目的とする不当目的ということになれば、この規定で防げると思います。
  152. 米原昶

    ○米原委員 職権原因裁定を行なう場合、これは具体的にはどういう場合が考えられますか。
  153. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 責任裁定手続中にだんだん事情がわかりまして、そして同じような問題が相当広範に起こっており、単に申請人だけの問題ではないというような場合、その公害の重要性から考えて、社会的にこれは相当影響力が大きいといったようなものについて、もしその因果関係が明らかになればそういう社会的な不安も解消することになるだろうというような、そういうような事情があるような場合が考えられると思いますが、そういう場合には当然職権でも原因裁定するということになろうかと思います。しかし、そのほかにもいろいろな場合があるかと思います。一例としてはそういう場合があるということであります。
  154. 米原昶

    ○米原委員 それともう一つ原因裁定において、申請事項以外の事項について裁定する場合、これはどういうような場合ですか。
  155. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 これは原因裁定申請を進めておる間に、たとえばその事件では申請人が甲会社を相手方として申請してきたといったような場合に、だんだん調べていくというと、甲会社の排出した廃水によるものではなくて、それは乙会社であるということがわかることもございます。そういう場合には、それをそのまま乙会社のほうに触れないで、甲会社関係だけで解決をつけたのでは、終局的な解決にならないので、その場合には乙会社の廃水が原因であるということを裁定できるようにしよう、そういうわけでございます。
  156. 米原昶

    ○米原委員 それから、裁定委員会が「代表当事者の選定を命ずることができる。」また「選定することができる。」とありますが、これは、その選定に同意した当事者との関係においてのみ代表選定の効力があるものと限定しないと、被害者全体の意思を職権で奪うことになるのではないかという感じがするのですが、この点、どうでしょうか。
  157. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 これは事案によりましては、どうしても多数当事者であって、それでその多数当事者の利益を守るためには、これが個々ばらばらにやるよりも、代表当事者を選んでやったほうがはるかに能率的に、そして有効に手続を進めることができるというような場合がございます。それでこういう代表当事者制度をつくったわけでございまして、その場合に、これはもちろんある場合には従来の当事者の意思によらないで代表当事者が選任されるという場合もないわけではございません。しかし、そういう場合には、本人の意思によらないで選定してもおそらくそれが本人の利益になると考えてやるわけでございますけれども、万一にもそれが本人の利益に反するようなことがあってはたいへんでございますから、それについてはいろいろ考えまして、たとえば、そういう場合には、本人のほうから、本人も手続を自分が出て選任をすることもできるという場合、それから、委員会のほうで本人の意向などを聞いて、適当でないと認めればそれは解任することもできる、あるいはさらに本人のほうからもその代理人の選定を取り消すとか変更することができる、そういう手当てをしております。
  158. 米原昶

    ○米原委員 つまり、そういう場合は当事者から同意を得るということが書いてあるが、何かこれを読んでみると、裁定委員会権限が必要以上に強過ぎるのではないか。被害者の意思が尊重されないおそれが、めったにはないと思うのですが、やり方によってはそういうことにもなりかねないような、裁定委員会にえらい強過ぎる権限が与えられておる印象がするので、私は聞いているのです。
  159. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは私のほうもそういう角度からの疑問を呈しまして、これだけで半日議論をしたわけです。いままでの日本の法律にはこのようなスタイルの文章がないですね。これはアメリカの連邦地方裁判所法でありますか、アメリカにおいて見られる新しい一つのタイプということで、それをモデルにしまして、日本の場合においても、最近は非常に不特定多数の人たちが被害者集団となって、ばらばらの行動であっても結論は一つのものを求めておるというような事情がありますので、いま言ったような選任の方法をとることがあり得る。しかし、その場合においては、本人はもちろんのこと、被害者と思われている人たちが拒否することもできるというようなことまでちゃんと補完をして、そういうスタイルを取り入れておりますので、この点で強権的な選抜によって被害が起こることはないと思っております。
  160. 米原昶

    ○米原委員 それから、裁定委員会には、調査権のほかに、文書とか物件の提出命令権を与えるべきではないか。その点をもっと強化すべきではないかという感じを受けるのです。この点どうでしょうか。
  161. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 これは第四十二条の十六の第一項三号でございますが、「裁定委員会は、申立てにより、又は職権で、」「事件関係のある文書又は物件の所持人に対し、当該文書若しくは物件の提出を命じ、又は提出された文書若しくは物件を留め置くこと。」ができる。なお、四号で、「事件関係のある場所に立ち入って、文書又は物件を検査すること。」ができる。そういう権限を設けております。
  162. 米原昶

    ○米原委員 それから裁判所との関係ですが、「裁判所は、責任裁定があるまで訴訟手続を中止することができる。」とありますが、裁定訴訟とは無関係に進行させるべきではないかと思うのでありますが、どうでしょうか。これはできるというだけで、それでいいわけですか。
  163. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 これは裁判所のほうで、全くその裁判所の意思で自由に中止することができるのでございまして、もし裁判所のほうでこれを進行する必要があると考えれば、裁定とは関係なしに手続を進めても一向にかまわないわけでございます。そして大体両方同時に並行するということはやはりむだが多い場合が多いだろうと思いますので、もし裁判所で中止しないで訴訟手続が進行しているならば、その間裁定委員会のほうでは手続を中止することもできる。しかし、場合によっては、いよいよ裁定が最終の段階になってから、ただ引き延ばしのために向こうに出訴して、実際はちっとも訴訟協力しないというようなこともあるかもしれません。ですから、そういう場合もいろいろございますので、両方とも裁量で中止することができるということにいたしております。
  164. 米原昶

    ○米原委員 それでは、これで最後です。  もう一つ、裁判所が中央委員会に対して原因裁定を嘱託できる、こういうふうになっておりますが、これは少なくとも被害当事者が同意した場合に限るとしておかないと、これは実際今後やってみた場合に、いま裁判がずいぶんいろいろな判例が出ておりますが、一体どちらのほうが有利かわからないという感じを受けておるのですが、少なくとも裁判所がこれを原因裁定を嘱託できるという場合は、少なくとも被害者当事者が同意した場合に限る、こういう規定を入れるのが妥当じゃないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  165. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 これは裁判所が嘱託するとしても全く補充的な手段になると思うのでございますが、この点はもともと当事者双方に対して全く公平な立場で審理に臨んでおります裁判所のその裁量に全部一任することにして、特にどちらか当事者の同意を要件にするとかどうとかいうことは、規定の上では盛ってございません。しかしおそらく裁判所でもこういう嘱託をなさるときには、おのずからもし当事者が非常に反対であればその点はお気づきになるでございましょうし、その点にはあまりきつい規定を置くほどのことはないのじゃないかと思いますが、裁判所の裁量におまかせするということでよろしいのじゃないかと思います。
  166. 米原昶

    ○米原委員 最後の点はやはり規定に明瞭に入れておいたほうが間違いないと私は思うのですが、一応これで質問を終わります。
  167. 田中武夫

    田中委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十二分散会