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大石国務大臣 いま
PCBの
被害につきましていろいろと議論を巻き起こしているようでございますが、これはまことに残念なことでございます。この
PCBが
人体に対してある
程度の
被害を与えるということは確かなようでございますが、どのような機転で、どのような
機序によって、どのような量で
人間に一体どのような
障害を与えるかということは、まだはっきりはわかっておらないようでございます。また、これに対する
対策もまだ何ら考えられておりません。これは確かに
行政面からいって手ぬるいことでございます。おしかりをいただいても当然のことと思いますけれ
ども、現
段階では、
現実としてその
対策も何にもできてはおりません。しかし、あの
カネミ油症ですか、あの
事件を考えましても、とにかく何らかの大きな影響を与えることは間違いございません。したがいまして、早急にこの
対策を立てることが、あるいはこの
治療法その他を考えることが大事な
段階と思います。
で、御
承知のように、いまいろいろな
報道やいろいろな話を聞きますと、至るところにこの
PCBが散在しておるようでございます。これは、どこに、どのような経路でいったかわかりませんが、少なくとも過去十年以上の長い間の無秩序な無意識的な
PCBの使い方が、このような各地にめちゃくちゃに散在されるような結果になったと思います。ですから、一体どれだけの
PCBがどういうものに入っておるかということは、ほとんどいまわからない
段階でございますから、
ほんとうのことを申し上げますと、まことに情けない話でございますが、どうしていいかわからないのはそのとおりであります。しかし、わからないからといってほっておくわけにはまいりません。ですから、まず最初にしなければならないことは、
PCBというものが何にどれだけ入っているかということを調べ得るような
分析の
手段を一日も早くつくり出すことだと思います。幸いに、いろいろな、
科学技術庁その他の
努力によりまして、あるいは
厚生省の
努力によりまして、
分析の
方法が大体統一されてきたようでございます。しかも、これは食物とかあるいはきれいな水であるとか、そういうものの
分析は、大体
方法はきまったようでございますから、これを用いまして、できるだけ早くいろいろなものの
PCBのあり方、いろいろなその分布のしかた、そういうものを徹底的にこれから調べてまいることが必要と思います。それからもう少し早くこの技術を進めて、いろいろな汚水その他よごれたもの、そういうようなものの中に含まれる
PCBも十分に
分析、測定できるような
手段を早くつくること、これが一番大事だと思います。同時に、その
PCBというものがどれほど
人体に影響するのか、どれだけの
毒性があるのかということは、一日も早く
生体実験をどんどん進めなければならないと思います。そういうことが、
人体に対する
被害の
程度あるいは
許容量というものをはかり得る
一つの
手段だと思います。この
二つを私はまっ先に
対策としてつくらなければならぬと思うのです。もちろん今後
PCBの
製造をどうするか、
使用をどうするかということは
通産省がたびたびいっておりますから、それを
現実に守ってもらいまして、なおいま出回っておる
製品の回収、そういうものもできるだけきびしく取り締まってもらわなければならないと私は思いますけれ
ども、その
二つをまっ先に考えることが必要だと思います。幸い、この
PCBは非常に
安定性が強くて分解しがたい
物質であるとは申しますけれ
ども、
体外に
排出されるのでございます。と申しますのは、いまいろいろな
報告がありますように、
母乳の中から
PCBが見出されたということは、とりもなおさず、それは
体外に
排出された
一つの証拠でございます。そういうことで、確かに
排出もされますから、私は、そういうことを十分に土台として、一日も早くその
治療なり
対策の
手段を見つけることが大事であると思います。ただ
PCBはこのとおり
日本至るところに散在してどう手をつけたらいいかわからないような様子でございます。しかし幸いに、いまだ大きな
被害が、
カネミ油症以外は出ておらないのはしあわせでございます。これはおそらく、われわれが口から取り入れたものの中に含まれる
PCBそのものが、全部直ちにわれわれのからだに蓄積されるものではないだろうと思うのです。そういうところにただ
一つ救いがあると思いますから、その
救いのある間に、できるだけいまのような
原則を早く忠実に実行いたしまして
対策を立ててまいりたい、それが必要だろうと考えております。