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1972-03-15 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十五日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 始関 伊平君 理事 林  義郎君    理事 藤波 孝生君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君    理事 西田 八郎君       伊東 正義君    梶山 静六君       橋本龍太郎君    村田敬次郎君       阿部未喜男君    土井たか子君       古寺  宏君    米原  昶君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         環境政務次官  小澤 太郎君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君         建設省道路局長 高橋国一郎君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   竹岡 勝美君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         環境庁大気保全         局自動車公害課         長       小林 育夫君         文部省管理局教         育施設部長   菅野  誠君         厚生省薬務局薬         事課長     山高 章夫君         農林省農政局参         事官      川田 則雄君         水産庁調査研究         部長      松下 友成君         通商産業省公害         保安局鉱山課長 蓼沼 美夫君         通商産業省化学         工業局化学第二         課長      小幡 八郎君         運輸省航空局飛         行場部長    丸居 幹一君         建設省道路局国         道第一課長   菊池 三男君     ――――――――――――― 三月十四日  特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案(内閣  提出第八〇号) 同月十三日  狩猟者団体法制定に関する請願外一件(加藤常  太郎紹介)(第一五五三号)  同(椎名悦三郎紹介)(第一五五四号)  同(篠田弘作紹介)(第一五五五号)  同外一件(田川誠一紹介)(第一五五六号)  同外一件(早川崇紹介)(第一五五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十一日  自然保護法早期制定に関する陳情書  (第一三六号)  公害関係測定機器整備助成に関する陳情書  (第一三七号)  大気汚染による被害対策に関する陳情書  (第一三八号)  全国禁猟制反対に関する陳情書外一件  (第一三九号)  家畜のふん尿処理対策に関する陳情書  (第  一四〇号)  石鎚国定公園自然保護に関する陳情書  (第一四一号)  磐梯朝日国立公園朝日地区ブナ等伐採中止  に関する陳情書  (第一四  二号)  大杉谷大日嵓ダム建設反対に関する陳情書  (第一四三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(休廃止鉱  山の公害問題等)      ――――◇―――――
  2. 田中武夫

    田中委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 去る三月七日の日に、当委員会におきまして参考人を招致いたしまして、休廃止鉱山公害対策につきまして質疑を行なったのであります。私は、その質疑を通じまして、各参考人の辺につきましてきょうはお尋ねをしたいと思います。当日行なわれました問題は、一般休廃止鉱山状況、それに対する対策、また鉱山業界の態度、そういったものについていろいろと質疑があったわけでありますが、同時に、宮崎県から土呂久鉱山に関する斉藤正健教諭を呼びまして、その辺の実情も聞いたわけであります。  まず最初に、土呂久の問題につきまして、環境庁はこれからどういうふうなことでこの調査なり対策を進めていかれるのか、この点について簡単に御説明をいただきたい、こう思います。
  4. 大石武一

    大石国務大臣 いま土呂久がいろいろな公害の問題あるいは公害病の問題につきまして議論になっております。これを何とかして早急に解決をして、その方針をきめてまいりたいと考えております。現在、住民の一斉健康調査を行ないまして、いま問題になり得るような、そのような疑いのあるへのを精密検査中でございます。その結果を待ちまして、はっきりと公害病であるかどうかという判断がつくと思いますので、そういうことを土台にして早く——検査の結果待ちをいたしております。その結果、さらにわれわれがほかのいろいろな人に再診断をする必要があればこれをやらなければなりませんし、その後は、いろいろその検査の結果を待ちまして判断いたしたいと考えております。  それからもう一つは、今後いわゆる休廃止鉱山の中に残っておるズリとかあるいは鉱滓の問題、それから坑道、こういうところから水がいろいろ出てまいります。こういう水について、これがどのような影響があるか、どのような重金属を含んでいるか、こういうのを十分検査しなければなりません。ことに坑内坑道から出てまいります水はとめようがありませんので、これはどうしたらいいか非常に問題になりますけれども、これにつきましては、まず最初に、いわゆる重金属その他の有害物質含有量なりその他のものを十分に検査いたしたいと思います。それは平常時だけではなくて、たとえば水の出たあと、いろいろないわゆる影響検査いたしまして、そしてそれに対する対策をきめてまいりたいと考えております。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 土呂久につきましては、ああいうふうに相当大きく騒がれた問題でありますので、私としては、できるだけ早く調査を進められ、診断を進められまして、適切な対策をとられることを切に要望しておきます。  ところで、これは土呂久の問題だけではなく、休廃止鉱山というのは全国にたくさんありますことは、先般来の当委員会質疑でも明らかなとおりであります。全国で千二百ある、こういうふうな話でありますが、私は、その一般的な問題としてこれは取り上げていかなければならない問題だろうと考えております。  先般の参考人からの意見聴取におきましてありました中で、平塚保明さんからのお話で、日本鉱山天照大神以来の話である、こういう話であります。たしか私の記憶では明治三十六年だったと思いますけれども、鉱業法が成立しました。その前にも、もちろん徳川時代には鉱山がありました。現在の鉱業法規定によりますと、鉱山は活動してなくても鉱業権者はいろいろな賠償の責任を負うというような規定がありますが、私は、今回における休廃止鉱山というこの問題につきまして、休止鉱山廃止鉱山とは少し違うのではないかと思うのであります。休止をしている鉱山でございますと、鉱業権者がはっきりしております。ところが、廃止をしたというのは、さかのぼれば非常にさかのぼる。明治時代徳川時代にもさかのぼりますし、極端なことを言えば、平塚さんのように天照大神時代まで鉱山というのはさかのぼるのだろうと思うのであります。  それで、一体その辺をどの程度まで調べていくかという問題は一つ考えていかなければいかぬ、どこの辺までやっていくかということであります。いわゆる廃止になりました鉱山というものは、鉱物がその辺に散らばっている、昔鉱業をやっておったところのいろいろな事業場その他のところで害が出てまいるのがありますけれども、鉱山そのものとしてはいわゆる自然鉱石状態にあるのだと思います。そういった自然鉱石を採掘いたしまして、それを選鉱するというような過程鉱業というものは営まれるわけでありますが、廃止鉱山という形になりますと、自然鉱石と同じ状態である。  そこで、先般の参考人意見にもありましたが、早稲田大学教授であります矢嶋さん、この方は地質のほうの専門家でありまして、鉱床学というほうの専門家であります。その先生の御意見を聞きますと、地球のまわりを取り巻いているところの地殻の中にはいろいろな鉱物があるということであります。たまたまそれが集まって鉱山になるような鉱物集積状況をもたらしておる、こういうことであります。そういたしますと、これは一般の山の自然状況、また鉱山のほうの状況からしてそういう判断ができるわけですが、人体に対する影響ということになりますと、砒素であれまたカドミであれ、いろいろなものにつきまして同じ状況にあるのだろうと思います。そういった場合に、これから対策を進めていかなければいかぬのですけれども、そういったいわゆる全く自然的な状態にあるところの鉱物状況、若干掘ってそれが放置されているような状況、それから相当に稼行しているような状況というので、それぞれ被害が出る程度その他は違ってくるのだろうと思うのであります。いろいろと健康被害その他が非常に重大な時期になってきておる現在でありますから、私は、これは徹底的にやらなければならないが、といって、自然状態にあるところのものまでも健康のためにどうのこうのするということは、ちょっとこれは現実問題としてもやれないような気がするのであります。その点で、どの辺までを一体調査をしていくか。  伝え聞くところによりますと、環境庁はいろいろな休廃止鉱山について全般的な点検をしていこうというふうな考えを持っておられるようでありますけれども、一体その自然的ないろいろな砒素であるとかカドミウムであるとかの排出の問題と、人為的なそういったものの排出の問題と、その点についてどういうふうな区別をしてやっておられるのか、またどういうふうな区別をしてそこをやっていこうとされているのか、その辺、何かお考えがありましたらお尋ねいたします。
  6. 船後正道

    ○船後政府委員 一般的に申し上げまして、環境汚染による問題につきましては、もちろん人為的な影響のほかに天然汚染によるものがあるわけでございまして、天然汚染によるものは、先生御指摘のように、地殻の中の平均的な賦存状況、いわゆるクラーク数でございますが、こういったものがあるわけでございますが、しかし、これは地域によりまして非常に濃度の高い天然賦存状況があるわけでございます。私どもが人体あるいは動植物等への影響という観点から環境汚染調査いたします場合には、こういった人為汚染天然汚染も一応区別することなく、一定濃度レベル以上に達しますれば、これは金属によって、元素によって違うわけでございますが、そういうところでもって環境調査をしておるわけでございます。その限りにおきましては、人為的な汚染天然汚染区別はないわけでございます。しかし、天然状況で平均よりもある程度汚染レベルの高いというところはやはり非常にウイークポイントでございますから、そういったところで特に人為的な汚染物質を出す場合には、より厳重なる規制を要するという理屈になるわけでございます。一般的には、いま申しましたように、一応両者を区別することなく、一定レベル以上の場合には危険であるとかおそれがあるからということでもって調整していくということでございます。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 私は別にいじめるつもりはないのですけれども、たとえば温泉というのがありますね。温泉というのはからだに非常によろしい。たとえば日本温泉を見ますと、大体硫黄泉というのが多いんだろうと思います。それから塩素分も入っておりまして、おそらくこれは全く自然的に出てきて、入れば非常に人体影響があるということであります。ところが、温泉というのは硫黄とか塩素だけでなく、いろんな重金属類が入っていて皮膚に対して刺激を与えたり何かするから、私はからだに対していい効果があるんだろうと思うのです。ところが、温泉のお湯をだあっと流しますと、温泉の下のほうでは田や畑に対しては影響相当あるんだろうと思います。現実にそういうところはたくさんございます。特に温泉硫黄分がだあっと流れてきますと、魚が死ぬとか、そういうことがいろいろございます。そういったことでございますから、私は全部調べられるのはもちろん必要なことだと思いますが、天然自然に存在する鉱物でありますから、その使い方によって相当に私は違ってくるんだろうと思うのであります。その辺をどういうふうにこれから考えていくか、これは環境一般の問題でありますから、この辺につきまして少し大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  8. 大石武一

    大石国務大臣 休廃止鉱山のように人為的にいろんな手を加えましたあとの始末につきましては、これは通産省それなり法律がございますからそちらにお尋ね願いたいと思いますか、天然自然に出る温泉のようなもの、あるいはそのほかにもっと産業一般のことについて基本的な考えを申し上げますと、私は結論的にはこう考えております。たとえば、われわれの生活に役立つどのようなすばらしいものであっても、ことに化学製品が一番問題になりますが、その製品をつくる過程において、廃棄物が有害であるという限りは、またはその有害な廃棄物を無害にするという手段、方法が見出されない限りは、私は、この製造なり使用は許すべきでない、いずれはそのような日本の行政に持っていかなければならぬと基本的には考えております。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 私もいまの御意見には全く賛成なんですが、天然自然に出てくるようなもので私はあるんじゃないかという気がするのです。人工につくりました、たとえば石油も、これはわれわれが使うガソリンであるとか重油であるとかというような形ではない。それは原油というものを精製して初めてできるわけであります。原油が一体害があるかどうかという問題でありますが、原油そのものについては私は取り上げない。天然自然にあるところの温泉のようなもの、さっき申し上げましたような天然自然に出てくるようなものは、これは全く天然現象だから私はほうっておいてもいいかなという気もするのですが、それまでもやはり人体に害があるというようなことになりますと、その辺をどうするか。たとえば、もう一つ申し上げますが、温泉というのはやはりからだにいい影響があるということで皆入るわけですけれども、からだにいい影響があるというのはやはり何か薬効があるのですね。薬効というのは、それも薬をたくさん飲んだら害になると同じようなことで、やはりその辺のリミットというものがあるんじゃないだろうかと思います。この辺につきまして、大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  10. 大石武一

    大石国務大臣 天然の中に人間の役にも立ち、また害にもなる、そのものに対する対策でありますから、いろいろな場合を想定できませんので、一応温泉に限って考えてみたいと思うのでありますが、温泉は当然われわれの生活に十分に利用、活用すべきものだと思います。幸いに大体いままで温泉によって人間の生命、健康に大きな被害を与えたということはまずございません。ただ、一部草津温泉のように強酸性の大量の温泉が川に流れ込みます場合には、いろいろな農作物に影響があるということでございます。そういうことで、幸いに温泉というのはそれほど人間にいろいろな大きな被害を与えるほどの量もありませんし、また草津のようなものはごく例が少ないと思うのです。こういうものに対してやはり当然温泉というものは人間生活に活用しなければなりませんが、そこから出てくる被害なり害毒につきまして、これはやはり政府なりどこなり、どこでもけっこうですが、対策を立ててその害を除去するようなことをするというようなことでおさまっていくのじゃないかと思います。温泉はしかしわいてくるんですから、人間が人為的に掘さくすることもありますけれども、そのような場合にはそれなり対策を講じていけば、別に公害とか何かに抵触しなくとも済むのじゃないかと考えております。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 きわめて法律的に言いますと、温泉といっても事業であります。温泉業というのはやはり事業であります。その事業活動というのはやはりあるわけです。事業活動によってやはり畑なりいろいろな川の魚に対して影響を及ぼしてくるということになれば、私はこれは一つ公害ということにはなるのだろうと思うのです。ただ、おっしゃるとおり、政府あるいは国でもって対策を講じていけば、私は現実問題としていいだろうと思うのです。  先ほどそういったことを申し上げたのは、温泉の例と、それからもう一つ一方には鉱山休廃止鉱山というのがある。休廃止鉱山で申しますと、さっき申しました天照大神時代にどこを掘ったか知りませんが、そういった鉱山というのは全く自然状態に返っているわけですね。そういったものは温泉と同じようにおそらくあまり害がないだろうと思うのです。かりに天昭夫神時代に掘った鉱山、どこを掘ったか知りませんけれども、それがずっとあったところにいままで全然影響がなかった。もしもいままで影響があれば、だれかが必ずここに行くと、昔だったら何か薬効があるということを言うし、また最近では、いろいろなことが出てきておかしいと言われるだろう。そういうことを言われてないところでしたら、私は、自然現象考えてもいいんじゃないだろうか、先ほどの温泉と同じような形で考えてもいいのじゃないだろうか、それらの対策考えておけばよろしいのじゃないかという気がするのです。  ところで、ちょっと話はそれますけれども、実はいろいろと鉱山経営をすると、単に鉱物を掘り出すだけじゃない、いろいろな薬品を外から持ってきて使うというのがあります。銅、鉛、亜鉛とかいうような鉱山でも、日本には非常にたくさんあるんですけれども、やはりそこでは青酸を使ったり何かしていろいろな選鉱をするということがあります。実は私の地元ですけれども、山口県に金ケ峠鉱山というのと王多鉱山というのがありますが、そこで実は先般青酸が発見されたというようなたいへんショッキングな新聞ニュースがありました。この点、たいしたことはなかったのだと私は思いますけれども、通産省のほうでどの程度調べておられるか、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  12. 久良知章悟

    久良知政府委員 ことしの一月に山口県警劇毒物の一斉点検をやったわけですが、そのときに山口県の美祢郡にあります金ケ峠鉱山、それから王多鉱山、これはいずれも休止中の鉱山でございます。この両鉱山選鉱場、それから試験室あとから劇毒物が発見されたのは事実でございます。どういう劇毒物が発見されたかと申しますと、金ケ峠鉱山におきましては、先生いまおっしゃいましたように、シアン化ナトリウムが約四キロ半、それからシアン化カリウムが五百グラムびんに約三分の一残ったもの、それからそのほかにメタ亜硝酸ソーダとか硫シアン化アンモン、それから塩酸カリウムとか重クロム酸カリウムだとか、かなりな劇物でございますが、そういうものが入った試薬のびんが残っておった。それから王多鉱山のほうは、硫酸第一鉄アンモンであるとか硫酸昇汞、苛性カリ、苛性ソーダというふうな薬品が、合計しまして約三十八キロ四百五十グラムというものが残っておるということがわかったわけでございます。所在広島鉱山保安監督部でございますが、直ちに現地に監督官を派遣させまして、県警と共同で調査をいたしました。劇毒物でございますので、その処理をさせたわけでございます。金ケ峠鉱山につきましては、宇部市の常磐化学工業にこれは大部分を引き取らしております。それから残りにつきましては、現在警察では保管をいたしております。それから王多鉱山の分につきましては、これは鉱業権者が引き取りまして所在の保健所と立ち会いの上に廃棄処分をいたしております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 いま申し上げたようなのは、やはり鉱山をやるといろんなそういったものを持ってきて、毒物劇物の取り締まりというものをやっておかなければいかぬ。警察のほうでやっていただくのももちろんですが、やはり鉱山保安監督という立場からもひとつその辺の取り扱いについては十分に指導をしていただきたい。これをお願いしておきます。  私は、そういうふうに、いま申しましたように自然的な条件と、人為的に鉱山の採掘をするとき、鉱業を営むときの過程においていろいろと毒物というものがもたらされるという問題と二つあるんだろうと思います。そういった点で、これはやらなければいかぬ。全国で千二百もあるところの鉱山にもやはり一斉調査をして、ひとつどの程度汚染状況になっているかということを調べてやらなければいかぬが、先般の高野参考人意見にもありましたが、当業界はあまり最近は金をもうけておりません、ドル・ショックでもって非常に影響を受けておりますというお話でありました。まあ業界の方ですから、そういうお話全部そのまま聞くわけにもいかぬでしょうけれども、やはり円の切り上げということになれば、日本鉱山業界というのは総体的には弱い地位になってくることはいなめない事実でありますから、だんだんと鉱山というのはこれから日本でやめていくものが多いだろうと思うのであります。これはやはり日本経済がそういうふうな形になって、鉱山という第一次産業からだんだんと第二次産業、第三次産業への方向に移っていくという一つのあらわれだと思いますが、私は、それはいかぬ、絶対に日本鉱山を掘らなければいかぬとは申しませんが、そういった過程におきまして、これから相当休止鉱山また廃止鉱山というのが出てくるんだろうと思います。  そういたしますと、やはり先ほど申したようないろんな問題が出てくる、これについてだれが一体責任をとるのか。私は、現在の鉱業法規定におきましても、基本的にいうと鉱業権者がその責任をとる、原則的にいうと鉱業権者がその責任をとるというたてまえになっているんだろうと思います。ところが、業界では、さっき話しましたように、なかなか金もないというような話であります。それで考えられますのは、お隣というか、隣接しているところの石炭鉱山の問題であります。御承知のとおり、石炭につきましては、石炭鉱害事業団であるとか石炭鉱業合理化事業団であるとか、いろんなものができております。そういった鉱害復旧その他につきましてもいろんなことをやっている。一体ああいったことまでやるつもりでやられるのか、いわゆる隣接金属鉱業石炭鉱業というものは相当違うから違うという考え方でやられるのか、その点につきまして、通産大臣おられませんが、公害保安局長さんからお答えいただきたいと思います。
  14. 久良知章悟

    久良知政府委員 前の劇毒物先生からの御注意でございますが、劇毒物取り扱いにつきましては、確かに強化の必要があるわけでございます。三月一日に各監督部局強化につきましての指示をいたしておりまして、そのほか劇毒物取り扱い、それから処理について金属鉱山等保安規則の一部改正を現在検討いたしております。  それから休廃止鉱山対策の今後の問題でございます。やはり先生ただいま御指摘いただきましたように、最近の鉱業界実情というものは非常な不況下にあって苦しいということのほかに、先ほどからいろいろお話がありましたように、公害そのものが非常に古い時代から蓄積したものを処理をしなければならないというふうな問題、それから従来問題でなかった有害物質というものが近年出てまいっております。将来についてもやはりそういうおそれもあるということでございますので、将来非常にばく大な費用がかかるのではないかということになりますと、なかなか鉱業権者、特に中小企業の場合にはその負担にたえかねるというふうな事情もあるわけでございます。先ほども先生石炭の例をお引きになられたわけでございますが、私どももやはり抜本的な対策というものが将来必要ではあるまいかというふうに考えておるわけでございまして、これにつきましては早急に検討いたして成案を得たい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、どうも非常にむずかしいのは、石炭の場合には、現地は市街地みたいなところで掘さくしていますから、わりとわかりやすいのです。石炭を掘って陥没したとか、あるいは土地が、家がいたんだとか、水が流れなくなったとか、いろいろなことがありまして、これは相当因果関係というものがはっきりわかるのです。ところが、金属鉱山の場合には、みな山の中にありますから、そういった問題というのはなかなかはっきりつかめない。実はこの前、私の地元で一つ炭鉱がやめたときも——炭鉱の中で、いままでずっと炭坑に入ってくるところの水を取り上げていたのです。それをいままでは炭鉱が経営して水を流しておったから畑のほうも潤った。ところが、今度は炭鉱がやめたものですから、炭坑のいままでの坑道の中にずっと水を流すということで、一般の民家のほうに水が流れなくなっちゃった。これも公害ではないか、特に山公害ではないかというような話がだいぶありまして、いろいろな問題が出てくるだろうと思うのです。大体金属鉱山というのは山間部にありますから非常にむずかしい問題だろうと思いますけれども、そこで、どの程度まで一体鉱業権者というものが責任を負うかという問題が私は一つのポイントになるだろうと思います。  現実問題の解決としては、いろんな金属鉱山廃止になったときに、もちろん人体に対する影響もありますが、そのほかのいろんな影響が出てまいりますから、そういったものをやるのは、やはり広い意味での公共事業的なことでやっていくのが一番いいのではないか。それに対して何か鉱業権者のほうも責任の度合いに応じてやっていく、金の支払いをしていく。ちょうど公害公害防止事業についての公共事業の負担を企業がしていくというような法律がありますが、そういったような考え方で何かやっていったほうがいいのじゃないだろうか。もちろん健康の問題は、これは全然別にしてもいいのですが、先ほど来申しているように、自然現象と人為現象というものが必ずしもはっきり区別がつかないというような問題もありますから、何かそういったシステムを考えていかないと、どこからどこまでが鉱山被害であるかというのが、私は非常に具体的な問題としてわかりにくくなっている、何かそういったシステムを少し考えていかないといかぬのじゃないかと思う。石炭鉱山のように鉱害賠償基金というふうなかっこうでやります各鉱業権者から一トン当たり何ぼという形で積み上げてやっていくという形でやりますと、なかなかうまくワークしないんではないだろうかという気がするのです。これはいままでのそういった点を参考にしていただいて、これからいろいろな案をつくっていただきたいと思うのです。  私の一つの気づきでありますけれども、いろんなそういった問題がある。どうも私の考えでは、石炭鉱山とは少し違うんじゃないだろうか。もちろん害という点においては同じだけれども、害の態様というものがだいぶ違ってきているのではないだろうかという気がするのであります。この辺につきまして、久良知さんはそのほうの大ベテランでありありますから、ひとつどういうふうなお考えを持っているか、あとこれからの政策にどうだこうだということではなくて、見解を持っておられるならば少しお聞かせいただきたいと思います。
  16. 久良知章悟

    久良知政府委員 石炭とそのほかの金属、非金属鉱業を比べまして、公害の態様ももちろん先生が先ほどおっしゃいましたように大いに異なるわけでございます。もう一つ産業の構造と申しますか、不況の影響と申しますか、これが大いに異なる点があるのではないかと思うわけでございます。  石炭につきましては、いわゆるエネルギーの斜陽ということ、エネルギー革命の影響を受けまして石炭鉱業全体が斜陽である。これが回復の見通しというものはなかなか立てにくい状況にあるわけでございます。国が相当程度の援助をし、かつ、いろいろな機関をつくって公害問題の解決に当たるということに歴史的になっていった経緯があるわけでございます。  金属、非金属鉱山について考えますと、確かに現在においては非常な不況でございますが、これが構造的に将来どうなるかということにつきましては、これは非常な検討を要する問題ではないだろうかと思うわけでございます。一方、金属、非金属のほうについて考えますと、先生先ほど言われましたように非常に歴史が古い。その歴史的な経過に従いましてこの公害というものが累積してきております。  それからもう一つ、特異な現象ではないかと思いますのは、御承知のように、鉱業法では、無過失賠償責任をさらに数年前から変えております。多少の公害というものはやむを得ない場合が多いわけでございますので、そういう場合にはむしろ賠償で問題を片づけるということで数年前まではやってきております。その結果の公害の累積というものがかなりあるわけでございますので、この点につきましては、やはり先生がおっしゃいますように、権者の責任と申しますか、そういうものはもちろんたてまえとしては権者の責任で片づけるべき問題ではございますけれども、責任の態様から考えますと、いま先生御指摘のように、公共事業として片づけるべき性格のものもかなりあるのではないかというふうに考えられるわけでございます。この点につきましては、今後の抜本策の検討の中で十分検討いたしまして、関係各省等の御意見も伺って将来の策をきめていきたい、そういうふうに考えます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 公害問題として休廃止鉱山の問題を取り上げる場合に、私は一つお願いしておきたいのは、先ほど大臣がおっしゃいましたように、天然自然現象というのは一つの循環体系であります。その循環体系の中で一つ鉱山業というものが集積をするわけですから、その循環をある程度までにおいて急速にどこかに集めていくという形でございます。それがまたうまく自然現象に持って返るというのが、私は、一番大きな、一つ公害対策としての自然の循環体系を乱さないということが一つの大きな方向だろうと思います。その基本的な考え方に立って、鉱山というものの場合に、鉱山がすべて害があるというような話でもない問題がなかなか多いだろうと思うのです。  それで、この自然現象から出てくるところの問題もありますから、その点はやはりひとつ考えて、ほんとうの循環体系をどうしていくかということを考えていかなくちゃならぬというのが一つと、現実には、鉱業法なりあるいは鉱山保安法なりの改正をしてやっていかなくちゃならぬ問題がだいぶあるだろうと思うのです。現在、鉱業法の問題であるとか鉱山保安法の問題は、これだけ公害が高まってないとき考えられておる法律でありますから、新しいこういった環境保全というか、循環体系をほんとうに確立していくというような考え方に立てば、やはり見直していかなくちゃならぬと思うのであります。それと同時に、やはり鉱山というものが先ほど来申し上げておるような特殊な事情に置かれておるという点も十分に考慮してやっていかなくちゃいかぬ。  ところで現実の問題としては、鉱山というのはこれから休廃止する場合が多いと思いますから、体廃止すると、鉱業権者というものは、ますますもうおれはやめたのだから、もうけもないからという話になると思います。したがって、この際、そういう機会をつかまえてやっていかないと、あとでいろいろな害が残って、ここの害がどうだこうだということになったらたいへんなことになると思いますから、ぜひ早急にこの対策を私は打ち出すべきだろうと思うのであります。この点につきまして大臣通産省のほうからお答えをいただきたいと思います。
  18. 大石武一

    大石国務大臣 休廃止鉱山につきましては、この処置は、もっぱら公害問題、環境保全の問題から考えていかなければならぬと思います。その場合のいろいろな処置をすることでございますが、やはりいま通産省で努力しておりますように、全国休廃止鉱山全部につきまして総点検を行ないまして、実際にいろいろな有害な物質をそこからたれ流しておるかどうかということの実態を知ることが大事だと思います。幸い、いま千何ぼにつきましては三年計画でやっておるのでありますが、今後も努力してもらいましてこの完全な実態の把握と、そして把握をしましたあとで、実際にそこから有害な物質が出る限りにおいては、何とかしてこれをとめるような処置をしなければならないと思います。現在稼働しております鉱山につきまして今後どうするかということは通産省の所管でございまして、私からかれこれ申し上げるわけにはまいりませんが、将来かりに休止あるいは廃止をした場合にも、その害毒を、有害物質をそこに流さないような処理をする責任を持たせることはどうしても大事だと思います。それにはいろいろな方法がありましょうが、そういうことは十分に通産省でも御検討のことと思いますが、そのような努力をしていきたいと考えております。
  19. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱山休止ないし廃止をいたしますと、急速に力がなくなっていくわけでございます。先生御指摘のような権者の傾向というものが確かにあるわけでございます。私ども、休廃止鉱山対策の第一歩は、現在生きておる山に対して公害防止対策を確実にやらせることであろうかと存じておりまして、それに努力をいたしておるわけでございます。次善の策といたしましては、やはり休止廃止の動きが出ましたときには、それをとらえましてあと始末を完全にやらせるということであろうかと思うのでございます。なお、そのためには、御承知のように鉱山保安法の二十六条と申しますか、そういう命令をもって実施をさせる権限も与えられておるわけでございます。それから廃止鉱山につきましては、廃止後五年間は、やはり鉱山保安法によって公害防止工事の施行を命ずる権限もあるわけでございます。そういう権限も活用いたしまして、できるだけ力のあるうちに問題を片づけていくということに努力をいたしていく所存でございます。  なお、先ほどから先生がおっしゃいますように、歴史的、長期的に見ますといろいろむずかしい問題があるわけでございます。こういう抜本的な解決につきましては、なお今後検討を重ねていきたいと思っております。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。これにて質問を終わります。
  21. 田中武夫

    田中委員長 次に、島本虎三君。
  22. 島本虎三

    ○島本委員 三月七日に参考人が参りまして、意見の聴取がありました。それからいろいろ施策について承ってまいりましたが、私は、いま林君も同じような質問をしておりましたけれども、現行の休廃止鉱山に対しましていままでとってきたいろいろなやり方に対する批判、それから新たに休廃止鉱山対策をどういうふうにすればいいのか、同時に、それに対しての通産省内の体制はどうなのか、あわせて資金対策をどう考えるか、この辺に重点を置いて聞きたい、こういうふうに思うわけであります。  その前に環境庁長官も見えておりますし、これとあわせてぜひ聞いておきたい点が二、三ありますから、それに触れさせてもらいます。  世界的な大きい問題でありますけれども、いわゆるかけがえのない地球を守るというスローガンで六月の五日から十六日までですか、国連の人間環境会議が開かれることになり、これはもう日本からも、今後その問題については日本でも開くようにしてもらいたい、こういうようないわば申し出をもってすでに参加国の意向を打診済みである、こういうふうなことをいわれておるわけであります。日本はわざわざ環境庁ができ、優秀な大石長官をいただいてその対策に腐心しておるいわば公害先進国でありますから、この種の会議を開くのは、公害問題解決の促進のためにも効果は大いにあると思います。ことに冬季札幌オリンピック大会は成功でありましたし、データ通信によるいろいろな処理は、いまや世界にも誇るべき技術を持っておる状態であります。したがって、環境関係の問題処理のために一番いいチャンスじゃないかと思いますが、これは日本招致が可能であるのかどうか、この結果について、ひとつ長官の見解を承りたいと思うのです。
  23. 大石武一

    大石国務大臣 今年の六月にストックホルムにおきまして人間環境会議が開かれますことは御承知のとおりでございます。この会議には、私がそのときまで現職にとどまっておれば当然出席をいたしまして、いろいろと世界的な環境汚染防止にできるだけの努力をいたしてまいりたいと考えております。ただ、第二回目の環境会議日本で開いたらよかろうといういろいろな御意見がございます。ただいまの島本委員のお説のように、私どもも、やはり日本で開くことに大きな意義があると思いまして、でき得べくんばそのような方向に持ってまいりたいと考えておるわけでございますが、いろいろな事情がございます。以前はストロング事務局長はこういう見解を持っておったのです。ストックホルム会議のようなぜネラルコンファランスを将来定期的に開催するとの考え方は望ましくないということを発言しておりました。しか.し、各国を歩いての感触はそうであったが、その後の状況によりまして、少なくとももう一回同じようなゼネラルコンファランスは持ってもいい、それまでの間何か小さい委員会的なものを持ちまして、そうして一応持ってもいいけれども、将来このようなゼネラルコンファランスが再び必要となった時期にはいろいろな——やりたいけれども、定期的という印象を与えたくないということを初め申しておったわけでございます。  それにしても、やはり私は、どうしても今後ともこのような会議は開かなければならないと考えておりましたので、実は第四回目の準備委員会が六日からニューヨークで開かれておりますが、それに参ります場合にも、もしこのような会議を今後開く方針であったならば日本も立候補したいというような考えを一時あらわしておきなさいということを申し伝えてあったわけでありますが、昨日こういう電報が参りまして、ストロング事務局長の話では、「自分の承知している限りでは、いままでに第二回会議のホストに積極的な関心を示しているのは日本、メキシコ、豪の三カ国であり、メキシコ、豪両国はさらに新機関の本部招致についても関心を有しているようだが(注、ワルトハイム事務総長はオーストリアもかかる関心を有している旨先般のウィーンでの記者会見でほのめかした)日本ほどではない。右三カ国の中ではやはり日本が本命と見るべきで、日本の意向は非公式なレベルではあるがかなり広く知られているようである。第二回会議の必要性はストックホルム会議が近づくにつれてますます多くの国によって理解されるようになるだろうから、六月の本会議で意思表示をする可能性も決して排除されないと思う。いずれにしても今後さらに慎重に協議していくこととしたい。」ということでございます。  お説のとおり、第二回のこの会議日本で開かれる場合には、おそらく一九七五年ごろでしょうから、このころにはもちろん私はこの地位におるわけではございませんが、次の人がさらにこの会議を有効に持てるように煮詰めていくということでございましょうから、でき得べくんば日本で開けるように政府その他の了解も得てこの会議に臨みたいと考えております。
  24. 島本虎三

    ○島本委員 そういうふうに努力してもらいたいこととあわせて、この障害になるのは、やはり世界三十カ国の代表がストックホルムに集まってやる次の会議ですか、その七五年を目ざして、米国でも公害なき進歩というテーマで特別博覧会を開催する、そのこととぶつかっているので、なかなか日本は困難じゃないかといううわささえ流布されております。それならば話し合いによってどうにもできるのであって、やはりこの点は、環境庁長官が現職にとどまっていようといなかろうと、日本のためにこれは大いに努力をすべきであり、話し合いを継続すべきである、このように思いますから、この点はひとつ努力してやっていただきたい、こう思います。  それとあわせて、OECDの工業委員会できめられたいわゆる公害防止の費用の発生者負担の原則、いわゆるPPPというやつ、この原則、例外、これは一体どういうふうにして考え、どういうふうにしてこれを実施するつもりでしょうか。たとえばこれを強硬に進めることによって、世界的にやはり日本は特殊な事情であるということは、国内のわれわれはわかりますが、諸外国からすると、依然としてこの決定を骨抜きにし、日本公害たれ流しの状態においていわゆるソーシャルダンピングを強行するものである、こういうようなそしりを免れないおそれもあるので、この点は慎重でなければならないと思いますが、この実態をひとつ解明しておいてもらいたいと思います。
  25. 大石武一

    大石国務大臣 PPPのこの考え方は、私は原則的に賛成でございます。近い将来にはやはり世界的にこのような方向に政治は進んでまいると思います。ただ、それは非常にけっこうなことですが、それに達するまでにいろいろな手はず、順序がございます。日本のような公害で一ぱいの国は、初めからそれじゃ全部ポリューターズのほうで、企業のほうでこれを始末しますといっても、残念ながらこれはできません。ですから、やはりわれわれとしては、当然その原則は将来そのようにしなければならぬとは考えますが、それに近づくにはやはり段階を踏んでいかなければなりませんから、やはりある程度政府なり国のいろいろな援助なり、あるいはその企業との話し合いなり、そういうことによって一歩一歩この公害対策あるいは防止につとめてまいりまして、ある段階が来ましたら、このような原則に行政も立っていく、こうなるべきだろうと考えておるわけでございますが、なお、この前のOECDの委員会につきましては、船後局長が出席しておりますから、船後局長からいろいろなお答えをさせたいと思います。
  26. 船後正道

    ○船後政府委員 去る二月九日に開催されました第四回の環境委員会で、このPPPが採択されたわけであります。OECDの性格上環境政策の国際経済的影響というところに主眼を置きまして文章をまとめておるわけでございますが、各国の環境政策が異なることによりまして、それが国際貿易の上に重大なるひずみを与えることがないように、原則として各国政府はPPPということにのっとりまして、汚染のコストは汚染原因者が負担するという原則に立ちつつ、しかも、各国は、国際貿易上、環境政策を理由として、いろいろな非関税障壁を設けないというような合意をしようというのが大筋の内容でございます。
  27. 島本虎三

    ○島本委員 休廃止鉱山対策、こういうようなものは、過去においても現在においても、一つ公害発生の現象であり、またそれが何年か累積されて、いまや何が何だかわからない状態で、これからの被害が国民を惑わしておるわけです。   〔委員長退席、藤波委員長代理着席〕  こういうようなことに対してそのままにしておくか、また手厚い援護もしない、保護もしないでおいて、国際的にこういうようなことばかりやっていった場合は、これは少し疑いを受けないかどうか。これはやはり慎重に考えてやっていただきたい。もちろん国会では、中小企業に対しましての金融や税制面、こういうようなものは附帯決議もつけていろいろといままでやってきたところなんですが、一歩舞台が変わって世界的見地に立つと、往々にしてこれがまた誤解のもとになる。中では理解されても外では理解ができないということになっては困りますので、この点は十分考えて、大石環境庁長官のことですから、万遺憾なかろうと思いますが、ひとつ善処しておいてもらいたい。  これは前段の一つの要請でありますが、ひとつこの際ですから、長官の意見も聞いておきたいことがあるのです。  あなたが以前に、三月十日か何かにどこかで講演をしなすったようであります。それによると、公害税の構想を出して、企業がたれ流ししたり、またはいろいろなことをやったら、そこから税金を取る、こういうような構想を打ち出したようであります。なかなかそれは拍手かっさいを受けたようでありますけれども、いまの休廃止鉱山の点とあわせてみると、いまの現行法令によると、そういうようなものは、公害罪処罰法ができた一昨年の暮れから、社会的犯罪ということに公害自体もうすでに律しておるわけです。それと同時に、直罰主義、両罰規定さえも適用されているのであります。しかし、取りますよということによって、企業に対しては免罪符を与えることになるおそれがないかどうか、その構想をどういうふうにして実現していくつもりでこれは出したのか。これは国民は惑っているのじゃないかと思います。現行法制体系からして、これははっきり解明しておいてもらいたい、こう思います。
  28. 大石武一

    大石国務大臣 どうもこれは閣僚の一つの口害問題かもしれません。放言問題にならないように注意しておりますが、放言罪……(島本委員「口の口害だ」と呼ぶ)口害にならないように注意しておったわけでございますが、これはおそらく先日の日本記者クラブの会合におきまして話をしたときの内容かと思います。   〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕 これは、私ははっきりお断わりしまして、個人としての考えであって、別に環境庁としてまとまっているわけではない、このようなことを、まだ具体的にはなっておらないけれども、一応ぼんやりと考えておるということだけ少しおしゃべりしただけでございます。その内容も、ですから具体的な構想はまとまっておりませんから、いまどう申し上げていいかわかりませんが、私はこう思うのです。いまいろいろと、いわゆる公害を防止するために基準というものがつくられました。環境基準、排出基準というものの二つございまして、これで二重に規制をし、それを十分に監視をすることによって公害の予防の中心としているわけでございます。この二つの基準のうち、排出基準というのは、現実の煙突なり排水の中身を直接に規制することになりますが、その上に環境基準というものがございまして、つまりこれは、われわれが健康で明るく豊かな生活をするために望ましい最低の基準と申しますか、それを維持するだけの環境をつくるだけの制限基準というものが環境基準でございます。そうなっております。しかし現実には、この環境基準が必ずしも、そういうように望ましい理想的な姿できめてあるかと申しますと、そうではございません。いわばどうにかこうにかひどい被害を起こさないような、健康をこわさないような程度規制するような環境基準もございますし、私は、いまの環境基準というのは必ずしもわれわれの将来理想とするものではないと考えております。いずれ近い将来には十分にこの環境基準を一それは基準をつくるにはいろいろな科学的な研究基礎が必要でございますが、そういうものをとらえまして、できるだけ、将来われわれがすばらしい環境であり得るような、そのような理想的なものをだんだんつくってまいりたいと思うのです。  そうしますと、そのような理想的な環境基準が将来できますと、現在の環境基準というものは、これはいってみれば暫定的なものになる。そういうことで、私は、いまの環境基準が一つありまして、その上にさらにもう一段階、あるいはわかりませんが、理想的な環境基準をつくって、そのような理想的なものに各企業が足並みをそろえてもらうように将来努力してもらいたいと考えているわけなんです。  そのような場合に、企業は現在の環境基準を守っておれば何も罪はない、責任はないということだけであれば、なかなか、さらによりよい、いい環境基準には努力しがたいと思うのです。費用もかかります。将来、国では、そういうものに対しては、いわゆるPPPの原則によって、出せませんから、そうなりますと、なかなか上の環境にいきにくい。それを権力だけで持っていくのもなかなかたいへんだと思います。  そこで、やはりそれには企業にも、いまの段階よりさらに上の環境基準に向かって体制を整えてもらう努力をしてもらいたいと思うのです。その場合に、努力をしたものは、さっきかりに申しました、いわゆる公害税というものを払わなくてよろしい、安くしてよろしい、いまの環境基準を守っておるものは、日本のさらに環境をよくするために一応のタックスを取りたい、そうして努力したものに対してはタックスをなくすか減らすかして、その努力を認めていきたいという考えでございまして、金さえ出せば公害をまき散らしていいというわけではございません。そのようなばく然とした考えでございますから、いまここで御議論いただくほどまだ十分内容はそろっておりませんが、そのような考えを申し上げただけでございます。
  29. 島本虎三

    ○島本委員 それでわかりましたが、そうじゃございませんで、これは、きびしい新環境基準を設け、守られぬ企業に公害税を課する、大石環境庁長官構想を示す、こういうふうにして、でかく写真入りで出た以上、まだ煮詰まらないといっても、国民はそれを信頼するのです。それは確かに発想の先取りという意味ではすばらしい。しかし、混乱させることにおいての責任は、やはり長官も考えてやらないといけないのですから、この点は一応今後の参考にしておいていただいて、いま聞いたので内容はわかりましたけれども、この言ったことと、報道されたことと、いまの答弁とは、若干違いがあるようであります。私のほうでは、これが企業に対する、公害税を納めるならば免罪符になる、今度は鉱山なんかでも、廃止しても、公害税を納めるならあんなものはほっちゃらかしておいてもいいということになれば、せっかく通産省のやることに対して水をかけることにならないでしょうか、そのおそれもある、こういうことをおもんぱかっていま聞いたわけでありますから、今後新構想を発表する場合にも十分慎重にしておいてやったほうがよろしい。  次に、休廃止鉱山対策に入る前に、これはどうですか、通産省のほうで対策をつくったならば、それに順応する体制ができますか、できませんか。ちょっと唐突のようでありますけれども、いままで数多い石炭山のいわばガス突出による事故または爆発、いろいろな事故は、いままで十年以上十数年、二十数年にわたって、そのたびごとに対策が講ぜられてきているのです。それでも事故は一切減らないのであります。通産省の体制によれば後手後手になるのであります。こういうような体制では、せっかくここでやっても、休廃止鉱山に対する対策を練っても、これは焼け石に水になるのではなかろうか、木によって魚を求むるたぐいになるのではなかろうか。まず先に、この体制のほうがはっきりできているのかどうか、これを聞いておきたいと思います。
  30. 久良知章悟

    久良知政府委員 休廃止鉱山に関連いたします公害の量というものは、調査の進むに従いまして、相当量としてばく大なものでございますので、これに取り組みます体制というものについても、私どもかなり腰を据えてかからなければならないと覚悟をしておるわけでありますが、ガス突出等の技術的にも非常にむずかしい問題とは異なりまして、鉱害防止対策と申しますか、技術そのものについては大体鉱山の関連につきましてはすでに実用期に入っておるものでございますので、私どもといたしましては、体制を整備をし努力をすることによって、相当な効果をあげ得るというふうに考えておるわけでございます。
  31. 島本虎三

    ○島本委員 その相当に効果をあげ得るだろうということは、過去の実績において見るとそれは否定的です。それから現在、もらったこの資料によっても、鉱山の鉱害防止課を設置している状態がありますけれども、これは四十五年度には仙台、東京、四十六年には大阪、広島、福岡、四十七年には名古屋、四国でありますが、こういうような被害の一番多い北海道になぜないのですか。被害の一番多いのは北海道じゃありませんか。その北海道にやらないでおいて、これでもって対策が十分だといえますか。どうもだめですよ、それは。その理由をはっきりさせてください。
  32. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱害防止課につきましては、できるだけ早期に全国の全地域に配置をいたしたいわけでございますが、これは内部の事情ではございますが、やはり石炭関係の休閉山の進行に伴いまして、部内でそれを振りかえて、鉱害防止課をつくっていくということで努力いたしておるわけでございます。全国的に見ますと、やはり北海道がそういう石炭山との見合いの点において最後になったわけでございます。できるだけ早い機会に、北海道に鉱害防止課を設置いたしますように努力を続けたいと思います。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 こういうような休廃止鉱山、またこれによるところのいわば公害問題これについてはやはりずっと前からいわれておったのですが、その対策は機構的に全くできておらない。現に、もう北海道なんかこれから考えましょうというんじゃ、これは少しおそきに過ぎる。しかしながら、これはやらないよりいいですから、早くやるように、これはやらぬといけません。  もう一つこれは聞いておきたいのですけれども、予算委員会その他で通産大臣がはっきりと答弁したことで、PCBのあの問題、これははっきりとこれが露出しているようなもの、開放的なものに対しては製造を禁止して、もうすでにそれに対する措置をしたと言うのです。措置したはずなのに体制がどうなっているのですか。次から次へとこの被害があらわれてきておる。東京湾全体はすでに汚染されて、そして魚介類からも八〇〇PPMものそれが検出されている。もう感圧紙、こういうものに対しては製造を禁止したといいながらも幾らも出回っておる。こういうような状態のようです。これを見る場合には、京都でも衛生研究所の調査によっても、何でもない人を調査しても最高一三・三PPM検出されている。カネミ油症で死亡した人のPCBの最高値は一三PPMですから、普通の状態でも検出されていることになるのですよ。このあたり大臣は、ちゃんともう製造も中止したと言うのです。それでありながら次から次へと出されて、最近大阪それから四日市、この方面でも海底から陸上からいろいろ検出されて、母乳にまでそれが入っておるような状態まで現出した。いかにこれは禁止しても、もうすでにこれが広まっておる。製造したものに対する対策はどうするんだ、これがない。こういうようなことで山の問題を論じても、現在こういうような状態にしておいて、はたしてこれがもう抜本的な対策になるのかどうか。私、それが疑問なんです。このPCBの汚染に対して、大臣が、はっきりこれはもう禁止したと言いながらも、その残余のもの、また製造中のもの、またこういうものに対しての対策をどうしてはっきりさせないのですか。通産省のこれは企業擁護の一つの悪い欠点じゃありませんか。こういうようなのがある限り、山の対策をやっても何もならないので、まず論より証拠、この対策をはっきりさせておいてください。
  34. 久良知章悟

    久良知政府委員 PCBに対します通産省としましての包括的な対策については、先生御指摘のとおり、先ごろの予算委員会大臣から言明があったとおりでございますが、この具体的な実施をどうするかという問題でございますので、各担当の原局からお答えを申し上げさせていただきます。
  35. 小幡八郎

    ○小幡説明員 PCBの管理取り締まり対策といたしましては、先般大臣からも御説明ございましたように、開放系に対する出荷は昨年一ぱいで打ち切りまして、使用者側にありました在庫は、メーカー側に返却するというような指示をいたしまして、開放系の使用はことしの一月から停止されております。また、閉鎖系につきましては、これはただいま、今後回収に万全を期し得ない用途には出荷をしないという方針を定めまして、その方針に基づきまして、具体的に、どういう用途は今後どういうシステムで回収が可能であるか、どういう用途は回収できない用途であるかというふるい分けを現在検討しております。この結果が出次第、回収できないということになった用途には、出荷を停止するという措置をとりたいと思って、現在検討を進めておる次第でございます。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 これは、すでに出回っているものに対する対策ははっきりしていますが、それからの被害がもう出ているのです。  それと同時に、回収方法や使用の管理方法、こういうようなものに対して、これから考えるのじゃもうおそいのです。いままでの例によって、禁止されてから三年間製造をそのままやらしておったという例もあるのです。これがもう世界から指弾を受けているような状態もあるのです。それに対してだって、もういますぐ対策がなければならないはずなんです。同じ山の問題でやるにしても、対策がおくれたら、幾らあれができても何にもならないから、いまあるものに対する皆さんの対策を先に聞いているわけなんですが、いま出回ったものに対してはどういう対策をとっていますか。それから、回収方法とか使用の管理方法なんかは確立されていますか心これはもう一回念のために、
  37. 小幡八郎

    ○小幡説明員 すでに出回ったものについての回収ということは、これは非常にむずかしい問題がございます。努力はいたしておりますけれども、非常にむずかしい問題がございます。たとえば、開放系で塗料たとかあるいは可塑剤だとかそういうものに使われたPCBは、これはすでに他の物質とまざってしまっているということで、なかなか追跡も困難でございますので、これの回収ということは、これは非常に困難ではなかろうかというように考えております。  それから、大量に使われております電気機器用のトランスあるいはコンデンサー等につきましては、これも多方面に使われておりまして、非常に少量の小さなコンデンサーあるいはトランスというものについて各方面に散らばっているものの回収は、これも非常に困難ではなかろうか。ただ、大きなトランスとかあるいはコンデンサーというものについては、それが廃棄された場合に回収する必要もあるでしょうし、またできるのではないかということで、現在検討しておる次第でございます。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 どうも後手後手のようであります。肝心の対策がない。  では今度は、休廃止鉱山の場合には、いままでこういうようなのは数限りなく指摘されておったのですが、いままでこれに対してどういう方策をとってまいりましたか。
  39. 久良知章悟

    久良知政府委員 いままで休廃止鉱山対策といたしましてとった手でございますが、先ほど先生から御指摘あったわけでございますが、一つは私どもの内部の体制の強化の問題でございます。鉱害防止に専心をいたします鉱害防止課というものを四十五年から設置を開始いたしまして、今年で北海道を除きます七局については設置を終わるということであります。それから監督官でございますが、これの増員にやはり努力をいたしまして、一般保安を含めまして、鉱害防止に従事する監督官の数を四十五年から見ますと、百二十人でありましたものを四十六年には十九名増加をいたしまして、百三十九名といたしました。四十七年には三十二名を増加をいたしまして、百七十一名に増加をするという予定にいたしております。  それから、休廃止鉱山の監督をかなり強化をいたしております。たとえば鉱害防止義務者がおります休廃止鉱山に対しましては、ぴしぴしと指導、命令をいたしておるわけでございますが、たとえば四十五年度について見ますと、工事の金額にしまして約四億四千万円相当の鉱害防止対策工事を実施させたわけでございます。四十六年の四月から十二月の間について見ますと、約十億四千万相当の工事を実施させておるわけでございます。  それから次に、休廃止鉱山調査でございますが、これは前にも御説明申し上げましたように、昭和区十五年度から四カ年計画で実施をいたしておりまして、四十五年には七十四鉱山、四十六年には三百二十五鉱山ということで、四十五年度の予算が約二百九十万、それから四十六年には千二百六十六万、かなり予算面でも増強をいたしたわけでございます。  それから、この調査いたしました鉱山の中で鉱業権者か存在するものにつきましては、もちろん鉱業権者に指示、命令をいたしまして鉱害防止対策を必要に応じさせるわけでございますが、鉱業権が消滅をいたしましてから五年以上になるもの、それから五年以内でありましても鉱業権者がいない、わからないというふうなもの、あるいは法人等の解散をしておりまして事実上鉱害防止が不可能であるというふうなものにつきましては、これは今年度から休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金制度というものを発足をさせまして、地方公共団体が行ないます鉱害防止工事に対しまして、そめ費用の三分の二を国が補助するという制度を開いたわけでございます。これの予算が四十六年度におきましては、補助金で申しまして約八千七百四十七万、これに対しまして、四十七年度につきましてはこれを約二・六倍に増強したい。すなわち補助金で申しまして二億三千二百二十四万というふうな予算をただいま御審議をお願いしておるわけでございます。この制度によりまして、捨て石の堆積場の補強でありますとか、それから坑内水の流出防止工事というふうなかなり大口のもの今年度約十件、それから危害防止と申しますか、坑口に不時に入るとか、それから立て坑から落ちるというような危害防止を目的といたしました、坑口の閉塞工事というふうなものを十八件ほどやる予定にしております。本年度の分については、ほぼ順調に工事が三月一ぱいで大体完了する予定でおるわけでございます。  それからそのほか、現在稼行しております鉱山が休廃止をいたしますときに、鉱害防止対策を完全にするということが要諦であるように申し上げたわけでございますが、これを確実にいたしますために、金属鉱業鉱害基金というものを昨年の十月に設立を懲湧いたしました。業界二十七社でございます。これは全国の生産のシェアでいきますと九五%に当たるわけでございますが、こういう基金を設立をいたし、すでに活動を開始いたしております。  そういう対策をいままで講じてきたわけでございます。いずれも、四十五年度から非常に重点的に増強をしてきたというのが実情で、ございます。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 それがいわゆる長期的抜本対策である、こういうように理解していいんですか。
  41. 久良知章悟

    久良知政府委員 これはこの両三年来のことでございまして、私どもこれではやはり十分でないと考えております。先ほどからも申し上げましたように、現在蓄積をいたしております公害源の量、それから目標としなければならない鉱害防止の水準というものの考え方にかなりな進歩があるわけでございますので、やはり現在の方策だけでは不十分な面があるわけでございます。先ほど申し上げましたものは、これを増強すると同時に、そのほかの方策についても検討を進めていきたいということでございます。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 その他の方策に対して検討を進めていく、まあその内容等についても一日も早く成文化をしておいてもらいたい、このことを強く要請しますが、しかし、ただ私はいっでも残念なんです。これは安中公害被害者、こういうふうにして見ても、現在製錬所の工場が、無認可増設だとか無許可操業だとか、通産省の怠慢がどうしてもすぐ出てくる。それから、大分県の興人支社の告発が大分県によって行なわれておりますけれども、これも廃液のたれ流し、施設の届け出の怠りだとか怠慢だ、こういうことなんです。やはりこういうふうな考え方をやっても、体制自身が整わなければ何にもならない、次から次と起こってくる。この点も強く私は要請しておきたいと思うのです。いままでの答弁は私は理解いたします。しかし、この答弁を裏づける通産省自身の体制はなっていない。こういうふうになったら、幾らここで言っても実はあからない、このことを一番おそれるのです。対策はまだ不十分であります。十分これを検討して、今後ひとつ早く出してもらいたい、このことを心から要請しておきたいと思います。  なお、いままでの点で、大臣がいなくなったあとで質問することになっておりました阿部君が、大臣がいる間にというので、私の時間五分だけそっちのほうへ食い込ませてもらいますから、私の質問はこれで終わります。
  43. 田中武夫

    田中委員長 阿部君の関連質問を許します。阿部君。
  44. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣が予算委員会においでになるそうですから、休廃止鉱山の中でも、特に先般来この委員会で問題になってまいりました宮崎県の土呂久の鉱害の問題につきまして、御承知のように議論もしてまいりましたし、また参考人の出席を求めましていろいろ調査をしたところですが、その後、環境庁のほうで把握をされておる経過と対策について大臣からお伺いしておきたい。
  45. 大石武一

    大石国務大臣 なお詳しいことは係の課長からお話しいたさせますが、いまのところは、いろいろと全面的な住民の健康診察を行ないまして、そのうちから疑わしい者八人を選びまして、目下十分な精密検査をいたしております。これはもっと早くすればよかったのですが、やはり農家のことであり、旧正月を終えてからという希望があったようでございまして、それが終わってから通院をしたり入院しておるものですから、現在では宮崎の病院と延岡の病院で検査いたしておりますから、その検査の結果を待っておるわけでございます。それから、その他なお残っておりますよそへ出て働いている人、こういう人についても、相当の数は検診をいたしておるわけでございます。
  46. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それが進んで、この原因が明らかになった時点では、環境庁のほうとして十分な措置をとるようにお考えでございますか。
  47. 大石武一

    大石国務大臣 もちろんわれわれ環境庁というのは、要するに被害者なり住民の立場を守るのが責務でございますから、その結果によりましては、十分なとるべき処置はとってまいる所存でございます。
  48. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一点、所管の問題ですけれども、たとえば土呂久の鉱害の場合でも、通産省が監督指導しなければならない分野があり、あるいは環境については環境庁責任があり、あるいは砒素というそのものについては毒物劇物取り締まりの関係があり、それぞれ監督官庁、責任官庁が競合するわけでございますけれども、競合というのは、ある場合には非常に有益な場合もありますけれども、反面また責任をなすり合う、そういうようなおそれもあるようですが、この土呂久等のこの種の問題については、それぞれの所管はあるにしても、事今日の時点ではやはり環境庁を中心に運んでもらわなければならないのではないか、そういう気もいたしますが、このそれぞれの所管の関係について、長官のお考えを承っておきたいのです。
  49. 大石武一

    大石国務大臣 このような土呂久の問題まあその他もそうでありますが、こういうものをいろいろと調査をし解決をしてまいりますには、やはりいろいろな関係があり、役所と省庁と十分に相談をして、総合的な方針でいかなければならないのはおっしゃるとおりでございますが、競合はいたしません。これはお互いに協力でございます。幸いに、環境庁の仕事はあまりいろいろな現場の仕事は持っておりませんので、他の省庁にこれは全部やってもらわなければなりませんが、その間のいろいろな調整とかそういう総合的な仕事はいたしますので、その覚悟で努力いたしてまいります。
  50. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 関連質問を終わります。
  51. 田中武夫

    田中委員長 次に古寺宏君。
  52. 古寺宏

    ○古寺委員 通産省にお尋ねをいたしますが、青森県下北郡川内町の大揚鉱山並びに安部城鉱山の——これは休山中でございますか、鉱害が相当出ているようでございますが、これらの鉱山に対する通産省対策をお尋ねをしたいと思います。
  53. 久良知章悟

    久良知政府委員 先生お尋ねの下北川内鉱山それから大揚鉱山につきましては、私どもの調査によりますと、下北川内鉱山は四十六年の十月に休業いたしたわけでございますが、昔掘りました露天掘りのあとから、毎分約〇・四立米の排出水が出ております。この排出水の水素イオン濃度は、PH三というふうに低いものでございます。環境を汚染するおそれがございますので、休止後におきましても消石灰によります中和処理を行なわせておるわけでございます。やり方といたしましては、この排出水を導水いたしまして、消石灰の自動添加装置を設けまして、大体月に三トン半の消石灰を投入いたしまして、沈でん池を経て、排出時には大体PH七・二ということにしておるわけでございます。  そのほか、安部城川に沿いまして、道路わきに大正年間に堆積をいたしましたズリ山があるわけでございますが、これの安定に若干の問題があるわけでございます。のりじりの保護、それからのり面の傾斜等につきまして現在調査をいたしておりますが、もし改善の要があります場合には、これは指示をいたしまして工事をさせることにいたしております。それから、鉱山には現在係員が一名常駐をいたしまして、以上の中和処理それから施設一般の保安管理に当たっておるようでございます。  それからもう一つの大揚鉱山についてでございます。この鉱山は昭和四十二年の十月に採掘を中止いたしまして、その後、沈でん銅の採取だけを行なっておった鉱山でございますが、四十六年の十月に休山をいたしております。この鉱山の坑内水、それから堆積場の浸透水のPHも低いのでございまして、これにつきましては、排出量の減少をはかりますために、四十六年の六月に毎分〇・五立米の坑内水が出ておりました通洞坑の坑口を閉塞いたしまして、現在のところでは堆積場からの浸透水だけになっておるわけでございます。この堆積場の浸透水の水質を改善する必要があるわけでございまして、四十四年以降から、各堆積場の改善を行なわしておるわけでございます。昨年の十月にほぼ工事を完了いたしております。ただ、冬季の積雪のために一部工事の未完了のものがあるわけでございますが、これにつきましては、今月の月末または来月の初めに工事を再開させる予定にいたしておるわけでございます。堆積場を改書いたしました結果、堆積場の外の水と申しますか、普通われわれは場外水というふうに呼んでおりますが、この場外水の流入量が相当に減少されることになるわけでございますが、今後なお調査を行ないまして、その状況を見て解消していきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  54. 古寺宏

    ○古寺委員 この安部城鉱山のほうは、その排水の流れている流域と申しますか、安部城という部落から銀杏木という部落に至るまでの水田が減収を来たしておるのであります。さらにまた安部城という部落では、非常に体の悪い方が、健康被害が出ております。こういうことについて農林省並びに環境庁はどのような調査をなさったか、お尋ねをしたいと思います。
  55. 川田則雄

    ○川田説明員 いま先生御指摘のありました大場安部城の休廃止鉱山から流れ出た排水に対する作物の影響につきましては、青森県とも連絡をとっておりますが、科学技術庁の調査によりますと、大揚鉱山のほうは酸性水、その酸性水による水稲の生育が阻害されるという面積は約五ヘクタール、被害量が六・五トンというふうな報告を受けております。そういう酸性水が入るということにつきましては二つの影響がありまして、一つは、その水そのもの影響と、もう一つは、その水が入ることによって土壌が酸性化するというような、水稲の根が腐るというような現象が見られております。そういうことで、私たちのほうとしましては青森県ともよく連絡をとりまして、まず水が少なくなることが一番重要でございますが、それと同時に、どういう時期にどのくらいの酸性度のものがどういうぐあいに入って、作物の状況、土壌がどうなるというようなことの実態をさらに詳細に把握いたしたいと考えております。
  56. 山本宜正

    山本説明員 昨年の六月から七月にかけまして、青森県のむつ保健所及び川内町が、まわりの湯野川地区等四地域、二百二十二世帯、九百五十五人につきまして、訪問調査をしておる報告が私どものほうに参っております。その中で、異常を訴えた者が八十二名ということでございまして、その内容といたしましては、腰が痛い、あるいは鈍痛がある、だるい、こういうような症状を言っております。保健所の段階では、当時、農夫症ではないかという判断をしておるわけでございますが、これにつきましては県と連絡をいたしまして、さらに必要な調査を進めることがございますならば、その方向で調査をさせたい、こういうぐあいに考えておりまして、現在までのところ、環境庁としては直接の調査はしておらないわけでございます。
  57. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、大揚鉱山の下流にございます海岸が非常に汚濁をされまして、ホタテガイの奇型貝が発生しておる。昨年は約五千枚のホタテガイの奇型貝が採取をされておるのでございますが、これについて、水産庁はどういうような調査をおやりになったのか、お尋ねしたいと思います。
  58. 松下友成

    ○松下説明員 水産庁が青森県に委嘱をいたしまして調査した結果によりますと、この大揚湾の海水中に含まれております銅の含有量は、他の海域に比べまして若干多いという結果が得られております。得られました結果は、銅が約〇・〇一二PPMないし〇・〇八四PPMというふうに聞いております。
  59. 古寺宏

    ○古寺委員 水産庁はこの対策をどういうふうにお考えでしょうか。
  60. 松下友成

    ○松下説明員 青森県の当局とも現在打ち合わせ中でございますが、特に県のほうから、漁業の被害につきまして問題があるという報告は聞いておりません。しかし、問題が問題でございますので、さらに県当局とも十分打ち合わせ、必要があれば調査いたしたいというふうに考えております。
  61. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで通産省にお伺いをしたいのですが、当然この休廃止鉱山からの鉱害ということは通産省は把握をしておるわけでございますけれども、それに関係いたしておりますところの稲作の減収の問題健康被害の問題あるいは水産業に対する被害の問題については、各関係の省庁に対して、どういうような要請をしたのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  62. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱害の実態面の問題につきましては、これは巡回検査のときにいろいろ検査をいたしますし、必要があれば指示いたすわけでございますが、補償の問題につきましては、これはむしろ両当事者間の問題でございますので、両当事者から申し出があれば別でございますけれども、それがない場合、円満に補償その他で解決をいたしておるという場合には、必ずしも全部について把握ができないというのが実情でございます。
  63. 古寺宏

    ○古寺委員 この大揚鉱山あるいは安部城鉱山の場合には、仙台から監督官調査に行っておるわけですね。現地へ行きますと、これは全然鉱害の知識のない人でも——もう海面がまっかになっております。約二キロ四方にわたってまっかに海が汚濁されておる。あるいは安部城鉱山のほうの場合には、その道路の沿線の水田が全部減収を来たしておる。また通過をするその部落あるいは安部城には、たくさんそういう病人が発生しておる。そういうことについて私が仙台の局のほうにお尋ねした場合には、まだ全然そういうことを聞いておらない、こういうようなお話があったわけでございます。これは当然鉱害の防止を通産省がきちんとやっておれば、もう未然にこういうような問題は防止できたわけでございますが、いままで放置しておいたがために、こういうようないろいろな被害が発生しているわけでございます。したがって通産省としては、当然環境庁なりあるいは水産庁なりあるいは農林省、そしてまた県当局にもこの被害調査をお願いいたしまして、鉱害の防止というものを進めなければならなかったのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
  64. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱害の防止については、先ほど申し上げましたように実態面についてはやはり私どもも極力把握をしなければならないと考えておりますし、両鉱山につきまして、排出その他について問題があります場合には、もちろんこれは基準がはっきりきまっておるわけでございますので、それに応じて改善させるわけでございます。  それから、先生いま御指摘のように、はっきりと鉱害として出ておるというふうなケース、これはやはり、その大もとの問題があるからそういうふうになるわけでございます。排出水についての是非を判別する場合にも、そういう実態面の把握というのは非常に重要なことでございますので、今後とも、そういう面についてはなお一そう努力をいたしまして把握をいたしたいと思います。
  65. 古寺宏

    ○古寺委員 先日も現地へ参りまして実情調査してまいりましたが、大揚鉱山の場合でもPHは全然改善されておりません。あるいは安部城鉱山の堆積されておりますところのズリあるいはからみ、こういうものの分析も、通産省のほうは全然やっておらない。それでいながら全然心配がないというようなお話をしていらっしゃるわけでございますけれども、水産業にしましても農業にしましても、この鉱害が発生したのはもう何年も前から発生しておるわけです。当然こういうことはもうすでにわかっていることでございますので、こういう点については、もう少し責任をもってやっていただきませんと、休廃止鉱山の鉱害の防止というものはできないというふうに考えるわけでございます。そこで、私は環境庁長官にお尋ねしたいのですが、現在通産省全国休廃止鉱山調査をやっております。この通産省休廃止鉱山調査と並行いたしまして、やはり環境調査、あるいは農林省におきましては、当然土壌汚染、水産庁においてはこういうような水産業に対する影響があるわけでございますので、そういうような調査も並行して行なわなければ、これは実効をあげることができない、こういうふうに考えるわけでございますが、こういう点について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  66. 大石武一

    大石国務大臣 もしできるならば、全国のそのような五千といいますか一千何百といいますか、そういうものについて調査ができれば、これは一番けっこうだと思います。ただ御承知のように、問題は、人間でいえば第一次検診みたいなものでございまして、全部が患者と限りません。その中を拾い出すわけでございますから、通産省がやはりそれだけの能力を持っておりますから、とりあえず通産省でそのような十分な調査をしてもらいまして、その結果、やはりいろいろな問題が出れば、第二次検診のような形でわれわれが出てまいってもよかろう。いまのところわれわれはそのような全国組織もございませんし、そのような手もございません。やはり一次検診のような形で、通産省にそのような努力をしてもらうことがいまのところでは一番適当ではなかろうかと考えておるような次第でございます。
  67. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、現実に安部城鉱山、これはもう最近の鉱山ではございません。もう何十年、何百年前からの鉱山でございます。あるいは大揚鉱山もそうでございますね。そういうような鉱害によっていろいろな問題が発生しているわけなんですが、それを担当して調査をしておる通産省そのもの監督官が非常に数が少ない。あるいは実際に現地を調査しても、そういうような健康被害あるいは農作物の被害、水産被害、そういうものについては全然何にも言ってないわけです。そうしますというと、現地の住民だけが、被害者だけがいつまでも苦しんで、そして通産省のほうから第一次調査が終わって、環境庁のほうから健康調査なりいろいろなものを、二次検診なりやらないうちは救済ができない、そういうようなことになってしまうわけです。それではあまりにも、何といいますか、見殺しにするような措置だというふうに考えるわけですが、人命尊重の立場から、当然この通産省調査を並行して、環境調査あるいは健康調査というものは進めなければならぬ。そうでなければ、片手落ちの形式的な調査に終わってしまうわけですが、もう一度その点について大臣の見解を承りたいと思います。
  68. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお話しのように、現にそのような被害があるという住民の訴えがあるものにつきましては、これはもちろんその意見を十分取り入れまして、調査なり対策を立てる必要がございます。それはおっしゃるとおりであります。ただ、私の申しましたのは、一斉検診ということは、まだ被害があるかないかわからない、全体の姿のものに対しては、そのような通産中心でやっていただきたいということでありまして、現に被害がある、このような鉱害があるのだという訴えがあるもの、あるいはそれがわかっているものにつきましては、もちろんこれは直ちにあらゆる調査なり対策なりを立てることが必要だろうと考えます。
  69. 古寺宏

    ○古寺委員 ところが、この川内町というのは保健婦さんが一人しかいなかった。ここには開拓部落がございまして、そこには開拓保健婦というのがいらっしゃいまして、それが保健所のほうに、開拓がなくなって引き揚げまして、今年からやっとその分を増員していただいて二名にはなりましたが、保健婦さんが二名しかいらっしゃらない。町立の病院があるけれども、この病院もお医者さんがほとんどいないわけです。また、大湊には保健所がございますけれども、ここもほとんどお医者さんがいないわけです。そういうふうに医療の体制そのものが整っていないわけです。したがって、現地の住民の方は、一カ月に一度でいいから保健婦さんに訪問をしていただきたい、健康相談に乗っていただきたい、こういうふうに皆さんが希望していらっしゃるわけです。そういうような現地の実情というものを考えた場合に、いかに健康被害を受けた人がたくさんいらしても、環境庁なりあるいは県なりがこういう方々の検診をやっていただきませんと、鉱害によるいわゆる健康被害というものが発見できないわけです。そういうことについて、通産省のほうからはできるだけ内密に、しかもできるだけお金のかからないような休廃止鉱山に対する対策をしよう、こういうようないままでの形になっているわけでございます。したがいまして、当然こういうような健康被害あるいは環境被害考えられる地域については、通産省調査をまつまでもなく、並行して環境庁もやはりそういうような調査というものを今後進めていく必要があると私は思う。これは土呂久の場合でもそういうことが言えたと思うのです。ですから、今後はこういう点については積極的に環境庁としても通産省と力を合わして、そして環境被害というものの対策考えていただきたい、こう思うわけでありますが、大臣からもう一度御決意を承りたいと思います。
  70. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの古寺委員の御趣旨は私もごもっともだと思います。私も昭和十七年に川内に行ったことがございます。当時は非常に不便でありましたが、非常に風光の美しい、自然のいいところで、食べたホタテガイが非常においしかったことをいまでも記憶しておりますが、それは過去のことでございまして、いまあのような下北半島の大湊の町が、そのようなみじめな町になったかと思うと、非常にさびしい感じがいたします。おっしゃるとおり、いろいろな住民の不安なり苦痛の訴えなりがありましたら、そういうものは取り上げて対策を立てるのが当然行政の責任であります。われわれはもちろんその責任をのがれる気持ちはございません。喜んでその責めを負うわけでございますが、御承知のように、そういうものはまず最初に、実際にいえば県で取り上げまして、県で調査しなければならないものだと思います。ですから、住民も町なり市なりあるいは保健所を通じて、県というものが中心になってそれを調査したり、いろいろなことをするのが私は一番いい方法だと思います。そして、県から環境庁のほうにいろいろな協力を求めるなり何なりの必要があれば、当然県からわれわれに言ってくるべきでありまして、われわれもできたばかりの小さな役所でありまして、五百人しかおりませんので、なかなか手が回りませんし、鉱害の実際もなかなかわかりませんので、そういうようなことで努力はいたしますけれども、行政というものは国だけでやるわけではありません。国と、その次には県があり、町村という、お互いの分担があるのですから、県のほうでもそれは努力をしてもらうように、われわれこれから県のほうに連絡をいたしますが、その方向で全部一体となって、行政面からその対策を立ててまいりたいと考えます。
  71. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど農林省からも御答弁がございましたけれども、それはほんの一部分の被害の報告だけであって、実態というものはまだまだ広範囲にこの被害をこうむっているわけでございますので、農林省といたしましても、土壌汚染の問題について早急に調査を進めるように手を打っていただきたいと思います。  さらに水産庁につきましては、これは当然海底の底質のしゅんせつを行ないませんと、改善を行ないませんと、いつまでたってもホタテガイの被害はなくならないわけでございますので、そういう点については、公害対策として海底のしゅんせつ、そういうようなことを今年度はお考えになっているかどうか、承りたいと思います。
  72. 川田則雄

    ○川田説明員 いまお話がございましたことにつきまして、私たちのほうも川内町の川の河口に、いま土壌汚染の観測をする定点を設けて実際に調査をやっておりますが、県とも十分連絡をとって、実態を把握するようにつとめたいと思います。
  73. 松下友成

    ○松下説明員 水産庁といたしましても、四十七年度、川内湾のしゅんせつの予定はしておりますが、これはもし青森県のほうから御要求があれば、そのように取り計らいたいと思います。
  74. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、先ほどから休廃止鉱山の問題が審議をされているわけでございますが、通産省として、抜本的にこの休廃止鉱山の鉱害に対する対策をどういうふうに現在お考えになっていらっしゃるのか。先ほどの御答弁によりますと、これからいろいろと各省庁と検討してお考えになる、こういうお話でございましたが、通産省として現在持っておられる具体的な抜本対策、これについて承りたいと思います。
  75. 久良知章悟

    久良知政府委員 抜本策は、私も正直に申し上げまして非常にむずかしい問題でございます。現在具体的にどういう案を考えておるのかという御質問でございますけれども、ただいまこの席で御披露申し上げるほど煮詰まったものはないわけでございます。いずれにいたしましても、現在の諸制度の強化をいたすとともに、新しい対策につきましては、今後もまた先生方の御意見を承らしていただくわけでございますが、そういう御意見を参考にいたしまして、長期の対策考えていくつもりでございます。
  76. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうような抽象的なお話ではどうもぴんとこないわけでございますので、後ほどお伺いいたします。  そこで環境庁長官に、もういらっしゃらなくなるのでお尋ねしておきますが、現在、公害の指定地域の中にいらっしゃる公害病の患者さんは、六千人を突破しているようでございますけれども、指定地域以外のいわゆる患者さんというものはその数十倍に達するのではないか、こういうふうににいわれているわけでございます。そこで、現在、現行制度ではそういう指定地域内の方でないというと、公害病の救済がなされないわけでございますが、それ以外の地域の方々に対しても当然救済を考えなければならない、こう思うわけでございますが、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  77. 大石武一

    大石国務大臣 おっしゃるとおり、現在の制度では、公害地域の指定をしなければ、公害病患者のいわゆる手当てはできないことになっておるわけでございますけれども、私は、やはりあなたのお考えのとおり、一人でもそのような公害病患者がある場合には、それを指定地域内でないからといって、ほったらかしにすることはよくないことだと思うのです。こういうものも同じように、できるだけの国としての手当てをしてあげることが大事だと思います。それにはどうしたらいいか、指定地域を全然考えないで患者自体を認定したらいいのかどうか、いろいろこれは考えてまいります。これは、そういう制度ができた場合でございまして、私としても、いまどうしたらいいか、具体的な考え方を申し上げられませんが、いまの御趣旨は十分に考えまして、何かもう少し具体的なものを進めてまいりたいと考えます。
  78. 古寺宏

    ○古寺委員 それで、原因確定前の患者の救済あるいは補償というものが問題になるわけでございますが、これについては、公害補償基金制度というようなこともお考えになっているようでございますが、この制度の構想というものはどういうものでございましょうか。
  79. 大石武一

    大石国務大臣 公害基金制度というのは、いまわれわれが考えるよりも、いわゆる財界ですか、経済界の一部でそのようなものを考えておるようでございます。詳しい話はまだ聞いてもおりませんし、それほど具体的な構想もまだないかと思いますが、考えの基礎、土台は、公害病患者のいろいろな補償にあたりましては、とても一企業だけでは持ち切れないことがあるだろう、そうすると、それは一企業の責任であると見殺しにしないで、企業全体の責任として見てあげたほうが、一番やりやすいし、みんなも安心して、企業の繁栄になるのではないかというような考え方から、そのような構想が出ているように私聞いております。それも一つ考え方で、そういう考え方もけっこうでございます。ですから、そういうこともぜひ進められてほしいとは考えております。  また、これはもう詰めたことではありませんから、いま申し上げていいかどうかわかりませんが、先ほど島本委員の御質問に答えて、実は第二次、第三次と申しますか、環境基準の話を申し上げました。そのときに公害税の、タックスの話をいたしました。この税も、もし使えるならPPPの原則になってまいりますから、このタックスというのは当然企業が払うタックスですから、こういうものをたとえば患者救済の基金とか補償の基金にするとか、いろんなことにも使えるならばひとつ意味があるのではなかろうか、これはばく然とした考えですが、そういうことも一応考えておるわけでございます。
  80. 古寺宏

    ○古寺委員 公害税の問題がまた出ましたが、以前に私が大臣に質問した際には、公害税の問題については全く考えていない、将来もそういうことは考えないというような、そういうような強いお話があったように記憶しておるのでございますが、公害税という問題について最近はお考えになっておるようでございますが、これは、アメリカが現在取り入れておるいわゆる公害税と申しますか、こういうものに対する考え方と同じような立場でお考えになっていらっしゃるわけでございますか。
  81. 大石武一

    大石国務大臣 はなはだ申しわけありませんが、アメリカのことはよく存じませんので、これと比べるとかなんとかいうことはまだ何もございません。私は、なるほど去年の委員会の御質問に対して、確かに公害税のことはいま考えたくありませんと話したはずであります。これは当時は、やはり金さえ払えば公害を出してもいいのかという思想に変わりやすい、それでは公害の予防にはならないという考え方から、そのような答弁をたしかしたはずでございますが、近ごろ進歩したと申しますか、考えが多少変わりまして、やはりいま申し上げましたようなたれ流しを認めて、もちろん基準は守りますが、その基準を守ってもやはりタックスは取るという考えでございまして、多少考えが変わってきたのは先ほどお答えしたとおりでございます。
  82. 古寺宏

    ○古寺委員 アメリカの場合は硫黄廃棄税という立場になっておりまして、結局硫黄酸化物に対しての制度になっておるわけでございます。こういうようなお考えに立った発想なのか、あるいは独自の大臣としての御構想なのか、その点についてもう一度お尋ねしたいと思います。
  83. 大石武一

    大石国務大臣 そういう意見の発想というものは何かからヒントがあるものだと思うのです。いろいろ本を読んだとか話を聞いたとか、あるいはいろいろと考えて思いついたとかいうことがあるかと思います。どこからの発想かとはいいかねますが、アメリカのそのような詳しいことは別として、やはりそのようないろいろな世間のあり方、あるいは実態から、そう思いついたのかもしれません。しかし、これははたして自分の構想、考え方が正しいかどうか、これをさらに整理して、具体的に考えてみなければなりませんので、すぐできるかどうかわかりませんけれども、ただせっかくの御質問でございましたので、そのような考え方になったということを申し上げただけでございます。
  84. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど、県がもっと積極的にやればいいのではないかというような大臣の御答弁があったのですが、実際には、青森県といたしましても、休廃止鉱山鉱山保安監督部等と一緒になっていろいろ調査し、また、保安部のほうにもいろいろな資料等も提出いたしまして、これらの対策についてはいろいろと県のほうからもお願いがあったと思うわけでございますが、それに対する通産省の措置というものが非常に現状に合わない、不十.分な措置というものがとられてきておる、こういうふうに感じておるわけでございますが、その点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  85. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 ただいまの御質問でございますが、鉱山保安の監督体制といたしまして、一つの局または部においては数府県を持っております。公害の実態につきまして監督官が巡回をして調べるわけでございますけれども、その実態が十分に行なわれていない点もあると思われます。最近、特に地方公共団体、特に県でございますが、県の公害課あるいは公害部というところに巡回調査の際には必ず寄るように指示をいたしまして、そこでいろいろ情報をお聞きして対策を講ずるようにというふうに指示をいたしております。それから具体的に、たとえば大揚鉱山のケースでございますが、調査をいたしましたあとで二十二項目あるいは八項目という形の内容の指示をいたしまして、早急に改善の対策を行なっております。
  86. 古寺宏

    ○古寺委員 昨年の七月から十月にかけまして、青森県では九十カ所のうち二十五の休廃止鉱山調査をやっているわけでございますが、そのうちの十七鉱山がもうほとんど放置をされて、崩落というのですか、陥没ですか崩壊ですか、そういうところに対して被害防止のための坑口の閉塞とかあるいは禁さくというようなものが必要である、こういうふうに報告されております。あるいはずりの堆積場が川沿い、沢沿いに放置をされているために非常に鉱害の危険がある。現在通産省では休廃止鉱山鉱害防止工事ですか、こういうものの補助を行なっておりますけれども、今年度の予算を見ても非常に少ない。対象になる鉱山が非常に限られておる。しかも、少ない予算でこういう工事が行なわれるために、不十分な鉱害防止対策になっているわけでございますが、先ほどからお話がございましたような、昭和二十七年にできた臨時石炭鉱害復旧法でございますか、こういうような新しい法律というものをつくって、この問題に対処していかなければならないというふうに思うわけでございますが、通産省はその点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  87. 久良知章悟

    久良知政府委員 県が独自の立場で調査をされまして、いろいろ手当てをすべき個所を指摘をしておられるわけでございますが、この点につきましては、おそらく監督部に連絡をいただいておることと思いますし、連絡をいただいておれば、それに対する措置を監督部でどういうふうにとったかという問題があるわけでございます。これにつきましては私どもいま手元に資料を持ちませんので、至急調べまして、また別の機会にお答えを申し上げたいと思います。  それから、ただいま臨時石炭鉱害復旧法に類似のものを考えたらどうだという先生のサゼスチョンでございますが、将来の抜本的な長期対策というものについて、私どもまだ具体的に固まったものは持たないわけでございます。先ほど林先生からも御指摘があったわけでございますが、石炭の鉱害問題につきましては、いまの金属、非金属に比べますとかなりいろいろな面で手厚い国の力が入る形になっておるわけでございます。そういう方向といいますか、手本が一つあるわけでございます。そういう点を参考にいたしまして、将来考えていきたいと思っているわけでございます。
  88. 古寺宏

    ○古寺委員 四十六年十二月二十二日の衆議院の商工委員会で決議をしているわけですね。「鉱公害対策に関する法的措置を検討するとともに、無資力休閉止鉱山の鉱公害防止対策強化すること。」こういうふうに決議をされております。もうだいぶ日数もたっているわけでございますが、全然まだそういうことについて検討されていないとするならば、これはもう通産省休廃止鉱山に対しては全く意欲がない。鉱害のたれ流しを放置しておく考えとしか受け取れないわけでございますが、こういう決議がなされたのに、なぜ今日まで放置しておくのか。その点についてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  89. 久良知章悟

    久良知政府委員 私ども、休廃止鉱山対策にはかなり努力をいたしておるつもりでございますが、その一つのあらわれといたしましては、休廃止鉱山鉱害防止等工事費の補助金が約八千七百万から二億三千万というふうに、二・六倍に増額を見たということでございます。
  90. 古寺宏

    ○古寺委員 いや、去年の予算に比べて二・六倍であっても、休廃止鉱山全体の対策費として見た場合には、これはスズメの涙にもつかないような少額でございます。私は、この安部城鉱山につきましても前に実際に分析をいたしまして、その結果に基づいていろいろと対策をお願いしたことがございます。しかしながら、今日までほとんど放置をされております。現在もいろいろと私どものほうでもこれらの地域の調査をしておりますので、その分析の結果に基づいて、今後さらにまた委員会で取り上げてまいりたいと思いますが、通産省はもちろんのこと、関係省庁におかれましては、この大揚鉱山あるいは安部城鉱山はもちろん、全国休廃止鉱山については、どうかもっと積極的に真剣に取り組んでいただきたい、こういうことを御要望申し上げまして質問を終わります。
  91. 田中武夫

    田中委員長 次に阿部未喜男君。
  92. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いま古寺委員からも質問があったのですが、特に通産省のほうにお伺いしたいのですけれども、通産省調査によりますと、現在稼働中の鉱山が千五百、それから休止中の鉱山が七百。これは鉱業権者があるわけですから、鉱害の対策にしろないしは人体公害が発生した場合でも第一義的には鉱業権者がその責任を負う、こういう原則になろうかと思いますけれども、そのほかに鉱業権が消滅しておる廃止鉱山が五千ないし六千というふうに大体推定されておるようでございます。この鉱害の対策について、確かにいまお話のあったような補助金制度等を一部設けてはあるようですけれども、これらの廃止鉱山あるいは資力のない鉱山人体公害を起こした場合の責任所在は一体どこにあるのか。この点をひとつ明らかにしていただきたい。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  93. 久良知章悟

    久良知政府委員 お待たせいたしまして恐縮でございますが、ただいま私どものほうで把握しております数を申し上げますと、稼行鉱山が千七十二、それから休止鉱山が二千百二十二、それから廃止鉱山につきましては五年以上のものが二千五百七、五年未満のものが四百八、合計いたしまして五千三十七というふうな数字になるわけでございますが、この中のいわゆる廃止鉱山について問題になるわけでございます。  廃止鉱山鉱業権を放棄いたしておるわけでございますが、ただいまの御質問の、鉱業権を放棄した山でいわゆる健康被害と申しますか、人体被害が出た場合の責任ということになるわけでございます。これは、放棄をいたしましてもそういう責任については継続をいたすわけでございますが、実際問題といたしまして、この廃止鉱山鉱業権者というものが、賠償その他の支払い能力がない。特に五年以上たちまして年数の多いものにつきましては鉱業権者所在が知れない、それから法人の場合にはすでに解散をしておるというふうな事情が非常に多いわけでございます。実態上の責任というものはなかなか追及しにくいのが実情でございます。
  94. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 確かに私は実態面としては局長の言うように把握しにくい面があろうと思います。しかしだからといって、少なくとも通産省が過去において鉱業権を承認をしたわけです。鉱業権を承認をして採鉱ないしは採掘を行なった業者が、その後鉱業権を放棄してわからなくなった。責任の追及は困難になって、そこに人体被害が起こったという場合に、それではその人体被害を受けた地域の住民は泣き寝入りをせよ、こういうことにもなりかねないと思うのですが、今日公害の問題がこれほど大きく社会問題になっているときに、通産省がそういう姿勢で鉱業権を扱っておる、責任所在について考えておるのは、これはゆゆしい問題だと思います。環境庁の次官お見えのようでありますが、いまお話ししましたように廃止鉱山で、もはや鉱業権の所在がないものについて、たまたまそこが人体被害を出すような鉱害を起こした場合に、一体国はどういう責任のとり方をするのか、これをひとつはっきりしておきたいと思うのです。
  95. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 ただいま通産省から御答弁申し上げましたような次第であるということは御理解いただけると思いますが、健康被害を起こしてこれが公害であるという認定の手続ができますれば、被害者救済法でもってとりあえず救済するというような措置を政府としてはとるのでありますが、終局の責任をどこに問うかということになりますと、これは民事法上の問題等もございますので、そこまではっきり私のほうから御回答はちょっと申し上げかねると思うのです。
  96. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 たしかに被害者救済法はありますけれども、これは終局的な責任所在が明確ではないわけでございますから、もう明らかに片方では責任所在を突きとめられない、困難だ、そういう事態が少なくとも廃止鉱山についてはあらかじめ想定をされるわけです。それについて国としては、この場合にはこれは軽々に国が負担をするというようなことは私も本意ではありません。しかし、少なくとも明らかな場合については、これは最終的に国が負担をするというふうな姿勢を明らかにしておく時点ではないかと思うのですが、その点どうでしょうか。政治的な判断を……。
  97. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 御承知のように公害被害者の救済に関する特別措置法は、とりあえずの措置として国が被害者の救済に当たるということでございまして、終局の責任をどこに置くかということは、別途先ほど申しましたような法の構成によって行なわれるわけでございます。それがなかなか実態上つかめないというようなこともありまして、そこになかなかむずかしい問題があろうかと思いますが、これは私ども将来やはり何らかの措置は考えていかなければならぬのだろうと思っております。今回の無過失の問題もいま政府部内でいろいろ審議をいたしておるわけでございますが、こういう問題に際しまして、いわゆる救済の方法をもっと広いベースで考えるということも必要かというような議論も出ておりますので、これはよく考えてまいりたいと思っております。
  98. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一つ関連をして通産省にお伺いしたいのですけれども、いわゆる鉱業権の消滅したもの、ないしは鉱業権消滅後五年以上を経過したものについて、いまとりあえずの措置としては鉱害防止工事補助金というような制度をもっていろいろな措置を講じられておるようでございますが、この中で、たしかあれは国が三分の二を負担し、地方自治体が三分の一の負担をするようになっておったと思うのですが、そうなれば鉱業権の認定にあたっては、これは通産省が、鉱山保安監督局ですか、あるいは部か、これを行なっておるのに、しりぬぐいだけは地方自治体も三分の一かつげ、こういうふうなことになると思うのですが、これは地方自治体のほうではかなり不満があるようですが、通産省どうお考えですか。
  99. 久良知章悟

    久良知政府委員 先生御指摘のように、現行制度では国が三分の二負担をいたします。三分の一はこれは地方公共団体と申しますか、現在では県でございますが、負担をしていただくということになっておるわけでございます。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 これはやはり確かに現在そういう不満がある程度あることは事実で、私どもは承知をいたしておるわけでございます。鉱山と申しますのはやはりその地域に密着した産業でございます。確かに現在においては迷惑を非常におかけいたしておるわけでございますが、その鉱山が稼行いたしておりましたときには、やはり地域の経済にかなりの貢献と申しますか御用にも立っておったわけでございますので、そういう点を考えまして、やはり幾分かは地方公共団体に負担をしていただきたい。もちろんその主は国が負担をするということで、三分の二が国、三分の一が地方公共団体という率でやったわけでございます。
  100. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは非常にむずかしい問題だと思うのですけれども、私は鉱業採鉱の場合に、その地方公共団体が全体的な、何といいますかメリットがあったというように考えるのか、ある特定の町村があったと考えるのか、その辺になかなかむずかしい問題が出てくるだろうと思いますけれども、ただ、いま通産省のお答えのように必ずしもメリットだけがあったのでなくて、それがあったためのデメリットだって私は相当あったのではないかという気もいたします。  非常にくどいようですけれども、土呂久の問題について先般私も現地を見せてもらいました。したがって、質問の内容については若干重複する部分もあろうかと思いますけれども、それは答弁をいただきながら、会議録を読んでみてもなお納得のできない部分についてでございますので、その点を了解していただきまして、少し土呂久の問題で詳細に質問させてもらいたいと思います。  現地に行きまして土呂久の歴史を調べてみますと、これはもう御承知のように明治の中期から亜砒酸の製造を始めておるようでございます。大正七年には下流二キロにわたって魚類が死滅をして、大正九年には鉱毒問題で阿砒酸の製造を一回中止しております。ところがこれはいまちょっと申し上げました、必ずしもメリットだけでなくて、明らかにデメリットですね。昭和四年には、亜砒酸がまのそばに住んでおった佐藤喜衛門さんという方の一家が、非常にせきをしながら次々に昭和四年以降死亡しておるという記録があるようでございます。このころから昭和十七年の操業中止まで亜砒酸の煙害の問題で地元の住民の方々の強い反対運動が繰り返されておったようでございます。昭和十七年に操業中止して、二十九年にまた再開して後もなお、鉱害問題がずっと尾を引いてきておった。こういう歴史が、おおまかに申し上げて鉱害関係では土呂久に残っておると思われます。  ところで私環境庁のほうにちょっとお伺いしたいのですけれども、本年の一月二十八日に環境庁と宮崎県の発表した統一見解によりますと、土呂久の病人の方々ですね、砒素との関係は見当たらず、今後も新しい鉱害発生のおそれはない、こういうように発表しておるのですけれども、ただいま申し上げてきました歴史的な土呂久の鉱害の経過を踏まえて、この発表に、統一見解に相違がないのかどうか、環境庁もお立ち会いになって発表されておるようでありますから、お伺いします。
  101. 船後正道

    ○船後政府委員 土呂久の問題につきまして、宮崎県が昨年の十一月以来進めてまいりました健康調査を中心とするいろいろな調査の中間報告を、一月二十八日に行ないました。この中間報告の機会に、環境庁からも担当官が出席したわけでございます。  この中間報告はあくまでも中間報告でございまして、それまでの調査で得られたところに従いまして、宮崎県のほうで担当者がまとめたものでございます。真実、実際問題といたしまして、土呂久における砒素被害がどういうことであるかという点につきましては、たとえば健康調査では、先ほど長官も申し上げましたように、現在八名の方の精密検診ということもいたしておりますし、それから受診されなかった方の調査その他の補足調査も現在続行中でございまして、それらの調査結果を待ちまして総合的に判断いたしたい、かように考えております。
  102. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ところで、この見解の発表に対して、少なくとも地元の方々が納得されておれば、私は何も別に申し上げることはないのですけれども、地元の住民の問では、ああいう簡単な問診、この問診の場合には保健婦さんなどが問診をしたようでございますけれども、形式的な内診、これは二百三十名を五時間で検診をしておるというのです。私は医学の臨床の経験はございませんから、したがって、二百三十名を五時間でやるということが妥当なものであるかどうかわかりませんけれども、地元の方々によると非常に形式的なものである、こういう一つの立証としてあげておるのです。それだけのことで砒素と関係がないと言われてもなかなか納得ができないわけでございます。こういうふうに言っておりますが、環境庁から派遣をされた方々はそうした宮崎県の行なった健康診断の内容等について、十分承知をされておったのかどうか、その辺もちょっとお伺いしてみたいと思うのですけれども……。
  103. 船後正道

    ○船後政府委員 環境庁といたしましては、宮崎県の調査の個々の内容につきまして、一々調べたというものではございませんでした。調査をするにつきましてのいろいろな調査の設計、調査方法等につきましては、十分打ち合わせをしてまいったわけでございますが、いずれも、たとえばいま御指摘になりました健康調査につきましては、疫学の原則に従いましてやった調査である、妥当なものである、こういう専門家の御意見も聞いておる次第でございます。ただ、調査の方法といたしましては、二百数十名の方からやるわけでございますが、初めはやはりアンケートあるいは問診ということになる、そこからさらにしぼっていきながらいろいろな検査ということに進んでまいるわけでありますから、個々の住民の方々にとりましては、自分はこの程度検査で済ませてしまったというような御印象もあろうかと存じますが、これらの問題につきましては、宮崎県のほうに、よく地元民の方にそういった事情を御説明するように、われわれも指導しておるところでございます。
  104. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 特に私が重視するのは、宮崎県が独自で行なっただけの中間報告ならば、それほど私は言わないのですけれども、少なくとも環境庁の方々がお立ち会いになって、この調査の結果に間違いがない、こういうふうに発表されておるわけなのですけれども、たとえば延岡の病院にお入りになっている患者の方について、桑原という皮膚科の医長は、病院に入っている四名全員が臨床的、組織的に慢性砒素中毒の症状に酷似しているということを診断なさっておるわけなのです。それにもかかわらず、片方では砒素との関係は見当たらない、こういうふべに新聞の発表が行なわれておる。この問の食い違いといいますか、あるいは発表されるにあたっての環境庁の方々の把握のしかたについて、私は非常に形式的で、ほんとうに地域の住民のことを考えながら調査に当たられたのだろうかということに疑問を持つのですが、同時に派遣をされました係官の方々からおそらく環境庁は十分事情をお聞きになっていると思うのですけれども、この点はどういうふうになっておりますか。
  105. 船後正道

    ○船後政府委員 中間報告は、先ほど申しましたように、昨年の十一月からことしの一月ごろまでやってまいりました。その調査の結果をまとめただけでございまして、環境庁が特にその調査の内容について、あるいは中間報告の結果につきまして、とやかく申したものではございません。中間報告でございますので、先ほど申しておりますように、ほんとうに砒素影響がどうであったかということは今後続行していくいろいろな調査の結果から総合判断されるわけでございまして、ただいま御指摘のような、延岡の病院の入院の方々も、そういった点から精密調査をしておるわけでございます。環境庁から参りました調査官も、そういう意味で、宮崎県が行ないました調査の内容そのものにあれこれ言ったわけのものではございません。
  106. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 しかしこれは、少なくとも環境庁が立ち会いました上で発表された内容のものです。名前まで言いませんけれども、ある環境庁の係官はこの調査の結果、砒素との関係はないというふうなことも新聞発表しております。新聞がうそと言われれば私はどうしようもありませんよ、私が新聞発表に立ち会ったわけではありませんから。私はちょっとこれは率直に言って環境庁としては軽率に過ぎたのではないかという気がするわけです。中間発表ならば、そのことを十分前置きして発表すればいいけれども、どうも新聞で見た限りは、むしろ結論的な言い方をしておる。たとえば、いま私が申し上げたように、砒素との関係は見当たらず、今後も新しい公害発生のおそれはない、こう環境庁の係官が一緒になって言い切るということは、ちょっと軽率じゃないか。あなたおっしゃるように、あくまで中間報告であるということならばわれわれも理解できるのですが、特に私がこのことを申し上げておるのは、今後慎重を期してもらわなければならないのは、この関係で地元の方々が非常に大きいショックを受けておるわけなんですよ。だからこれからの取り扱いについて慎重を期してもらいたいと思うのです。  それから次に、通産省のほうにお尋ねしますけれども、昭和四十六年五月十三日に、大切坑とそれから萱野坑という、戦前の二つについてかまの取りこわしを指示されております。このときにもう一つ残っておった大切坑の戦後の精錬施設を取りこわしを指示しなかったのはどういう意味なのですか。
  107. 久良知章悟

    久良知政府委員 昨年の五月に、大切坑、萱野坑にありました戦前の亜砒酸の焼き取りがまにつきましては、これの処分をいたしました。七月に終わったわけでございます。そのときに同じ大切坑にありました戦後の焼きがまの処理をしなかったのはどういうわけかというお尋ねでございます。これは戦前のものは大切坑の地並みにございまして、戦後新しくつくりましたのは、やはり地並みが低いと、煙と申しますか鉱煙が谷の中にたなびくという配慮から、八十メートルほど上部のほうにつくってあったものであります。大切坑の地並みの調査のときに、新しい焼き取りがまの所在につきまして、検査をいたしました監督官が気がつかなかったということで、これをこわし漏らしたというふうに私ども報告を受けております。
  108. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私どもも大体そういうふうに感じておるのですが、八十メートルなどというのはうそですよ、約二キロ近くあるのではないですか。前に取りこわしたかまと、一つ残ったかまは、いろいろうわさされましたけれども、私はそう思ったのです。これは率直に言って、監督官の方がおいでになって、道ばたにある二つのかまは気がついたから、これはつぶせと言ったけれども、ずっと高い山の中腹まで登っていくのはたいへんだから行かなかったのだろう、もしそうであったならば、調査そのもの責任はあるにしても、大体その取りこわしがおくれたことはわかるけれども、それを十一月になって急に取りこわしを命じた、これはどういうわけですか。
  109. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 この土呂久の問題が斉藤教諭の発表で問題になりまして、現地の精密調査をいたしたわけでございます。当初五月に参りましたときには、いま局長のほうから申し上げましたように、概査といいますか、そういう調査をいたしまして、必要な指示をいたしたわけでございますが、十一月にはでき得る範囲の人数を動員いたしまして調査した結果、そういうものが出てきて、取りこわしをさした、こういうことであります。
  110. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 続いて、厚生省お見えになっていますか——厚生省の方にお伺いしたいのですけれども、私ども行ってみましたところが、かまがブルドーザーでつぶしてあったけれども、まだ一部露出しているところがあるわけです。その一部露出しておったところに付着しておった土を持って帰ってきて、こっちで分析してもらったところによりますと、非常に砒素の含有が高い、ほとんど砒素だということなんです。聞くところによると、二のかまの取りこわしに対して、かまに付着しておった砒素を佐賀関製錬所というところへ二トンくらい運んだというのですけれども、私どもの取ったのは、おそらくその残りを取ったのではないかと思うのですが、厚生省の毒物及び劇物取締法の関係から申しますと、鉱石の間はこれに該当しないが、一たんこれを炉に入れて焼いて砒素に結晶したところからこれは毒物及び劇物の取り締まりの規定の適用を受けることになるのではないかと思うのですが、どうですか。
  111. 山高章夫

    ○山高説明員 おっしゃるとおりであると思います。
  112. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうなりますと、たとえばかまの取りこわしというふうな際には、当然厚生省の所管の関係の方々が立ち会って、その指示を行なうということになるんじゃないかと思いますが、どうですか。
  113. 山高章夫

    ○山高説明員 現在毒物及び劇物取締法におきましては、毒物のうち特に毒性の強い特定毒物につきましては、それが付着しているものの取り扱いに関する技術上の基準を定められるようになっておりますが、御質問の亜砒酸の場合には特定毒物に該当いたしませんので、そのような措置は政令では行なうことができない、そういうことになっております。ただ御質問の、毒物が著しく多く、社会の通念上毒物指定の毒物と認識できるような程度になりますれば、これは明らかに毒劇法の適用を受けるものと考えられます。
  114. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ちょっといまのはわかりかねるのですが、それでは亜砒酸は毒物には入らないということですか。
  115. 山高章夫

    ○山高説明員 亜砒酸は毒物に入っております。
  116. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 毒物であれば、毒物の取り締まりの法が適用される、こう考えていいんじゃないですか。
  117. 山高章夫

    ○山高説明員 亜砒酸は毒物に該当いたしますので、当然毒劇法の適用を受けます。ただ、いまの先生の御質問の、かまの件でございますが、かまは毒物が付着しているものでございます。そういう意味で、かまの取り扱いについては毒劇法の上で取り扱いを定めるようにはただいまのところなっておりません。
  118. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 あなたいま、かまには毒物が付着しているのだとおっしゃったけれども、かまは付着ではありませんよ。かまでは毒物が生産されるのですよ。生産されたときにすでにあなたのほうの毒物取り締まりの法が適用されなければならぬ。最後に残ったものが付着であったかどうか議論の余地はありましょうけれども、しかし少なくともかまの中で結晶された毒物は亜砒酸ですよ。それが、おたくのほうの毒劇法の適用は受けませんか。
  119. 山高章夫

    ○山高説明員 お話しのような付着している毒物は、独立して流通するような形のものであれば、当然毒劇法の適用を受けることになります。
  120. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうも厚生省の答弁がはっきりしないのですが、では一体付着とはどの程度のものを付着というのですか。亜砒酸の場合には耳かき一ぱいあってもかなりの毒性を持っているはずですよ。かまといえば大きなものですよ。あなた、ごらんになったかどうか知りませんが、そのかまに一ぱい付着したら二トンですよ。二トンを運んだのですよ。二トンもあったものが単なる付着で済む問題ですか。
  121. 山高章夫

    ○山高説明員 私ども土呂久実情を現地で見ているわけではございませんが、土呂久のかまに付着しております亜砒酸を全部撤去して、佐賀関の製錬所に持っていったあとに微量付着しておるというふうに聞いておりますので、ただいまのような御答弁を申し上げたわけでございます。
  122. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 だからその付着しておった、いわゆる残ったのではなくて、かまをつぶすときにあった亜砒酸の処理について、おたくは指示をしなくてもいいのかということです。
  123. 山高章夫

    ○山高説明員 土呂久の場合に限って申し上げますと、通産省の係官と同時に保健衛生の見地から保健所のほうが立ち会っていると報告を受けております。
  124. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 立ち会っておったならば、その立ち会ったときの状況というのが報告されておると思うのですが、そのときはどういう状況だったか。私は特にくどく尋ねるのは、あとにまだたくさん残っておりそうな気がするからお伺いしているのですよ。
  125. 山高章夫

    ○山高説明員 はなはだ不十分ではございましょうけれども、ほとんど撤去されたというふうに報告を受けておりますが、重ねて調査いたしたいと思います。
  126. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それではもう一つ厚生省にお伺いしたいのですけれども、そこで、かまで焼くことまでは通産省が認可するのですが、焼いてでき上がった亜砒酸は毒物である。そうなりますと、その毒物に対してはおたくが取り締まりをしなければならない立場になる。そうすると、その途中で、これは昭和三十何年でしたか、廃業しておるわけですね。廃業して、その後操業していなくて何年間かずっと過ぎておったその期間中は、撤去する前まではそのかまの中に、おたくは付着ということばを使われますけれども、少なくとも二トンの亜砒酸がそのまま残っておったということになるわけですね。それに対しては通産省が亜砒酸について監督なり責任を持たねばならぬのか。おたくのほうで責任を持つものなのか。もし通産省がそれは採鉱権の問題だけで、製造された亜砒酸については責任がありませんというと、毒物ですから、勢いおたくのほうが責任を持たにゃならぬ。それでは一体通産省とおたくのほうとの関係、県で言うならば医務関係のほうと商工の関係になりますか、そういう関係との連携というものはどういう仕組みになっておるのですか。
  127. 山高章夫

    ○山高説明員 ただいまの御質問でございますが、登録を廃止したあとの監督はどうなっておるかということであると存じますが、通産省の御所管のことに関しましては私はよくわかりませんが、おそらく当然鉱山保安法なり何なりで監督があるものだと思います。厚生省の関係につきましては、登録を廃止しますと毒物劇物営業者でなくなるわけでございまして、法律上は通常の普通人、私どもと同じ地位になるわけであります。そういう観点からの監督は当然あるわけでございますが、実定法上は毒物劇物の表示とか、立ち入り検査をするとか、そういう権限は普通人と同じ立場になるわけでございますので、生じないことになっております。
  128. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 通産省の見解も伺いたいのですけれども、通産省は少なくとも採鉱権等については承認を与えますが、これが休廃業するというときも承認を与えるでしょう。これは届け出だけでいいと思うのですが、届け出があった。しかしそこに残っておるものが毒物劇物に該当するものかどうかは通産省ではおわかりにならぬと思うのです。それとも通産省で、その企業がやっておった内容がそういう人体に害を及ぼすような内容のものであったときには、特段の何か事後措置をやるような規定があるかどうか、それはどうなっておりますか。
  129. 久良知章悟

    久良知政府委員 焼き取りがま、この砒鉱の製錬施設でありますが、この廃止のときは届け出があるわけでございますが、三十七年のことでございますので、当時の事情をはっきりとはいたせない面もあるわけございますが、三十七年に廃止をしまして、一応施設としての廃止届けは出てきたわけでございます。砒鉱の焼き取り製錬ということについては、景気なり需要の動向によりましては将来また再開することもあるかもしれないというふうに、おそらく鉱業権者と申しますか、事業主のほうでは考えておったろうと思います。現に四十二年まではあの鉱山を再開するためにかなりな努力をいたしたようでございますが、結局それが実を結ばずに、中島鉱山から住友金属鉱山鉱業権が移ったという経緯も聞いておりますので、やはりそういう関係で施設としては一応廃止をしたけれども、かまそのものは残したいという気持ちが鉱業権者にあったのではないか、そういうふうに考えるわけでございます。私ども現在の事情から考えますと、砒素の焼き取り製錬というものがああいう形で今後操業が許されるということは考えられない時代だと思いますので、やはり砒素の付着した焼き取りがまが残っておるということがわかりましたときには、これはいろいろな砒素による被害を防止するという必要上から、なるべく早期に処置をする必要がある、そういうふうに現在では考えておるわけでございます。
  130. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これはどちらになるかわかりませんが、たしかこういう種類のものを扱うときには、取り扱い責任者とかいうような者が任命をされて扱うのだと思うのです。しかし、操業を停止して取り扱い責任者だけが山の中にぽつんと一人残るということは考えられません。土呂久の場合には、昭和三十七年に操業をやめて今日までの間に、このかまの毒物に対する何らの措置も講じられてない。注意が喚起されてなかったから、子供がその中に入って遊んでおる形跡がたくさんあるわけなんです。それを放置してあったという責任がどこにあるのか。私はいま責任を追及する気はないのです。ただ、それを明らかにしておかないと、今後にわたって同じような問題が起きたときにたいへんだという気がしますので、砒素を製造しておったかまが休業した場合に、そのあと調査をし監督をする責任がどこにあるのか、これだけはひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。
  131. 久良知章悟

    久良知政府委員 確かに先生御指摘のように、砒素の焼き取りがまについてはいろいろな危険が考えられますので、私どもといたしましては、土呂久の問題が明らかになりました時点におきまして、全国砒素鉱山、特に焼き取り製錬をいたしました鉱山に重点を置きまして一斉点検を行ないました。そのときに発見をいたしました焼き取りがまについては、早急に処理をいたすことにいたしております。
  132. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 必ずしも十分納得がいきませんが、しかし、これはどちらの所管になるかわかりませんけれども、これからこの種の状態が起きた場合には、単に鉱山保安監督局なり部に届け出るだけでなく、その鉱業権者は同時に県の衛生部といいますか、そういうところを通じても届け出るような義務づけをする必要があるのではないかという気がしますが、どうでしょうか。
  133. 山高章夫

    ○山高説明員 その点は先生のおっしゃるとおりだろうと思います。鉱業権者が特殊な劇物の製造業者として登録を受けている場合に、事業の休廃止をした場合には、当然廃止の届け出があるわけでございます。そういう点を十分に励行させる必要があると思います。また、先ほどお話しの取り扱い責任者の点でございますが、休廃止の場合には、今後問題の起こらないような措置をするように十分指導をする必要があると存じます。
  134. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それから、先ほど長官にはちょっとお伺いしたのですけれども、さっきお話のあったところでは、いまの地域の住民の方々について、もう一回全員にわたっての精密な検査をしてもらいたいという住民の強い御意向があるようですが、環境庁のほうはどういうお考えですか。
  135. 船後正道

    ○船後政府委員 土呂久健康調査は、先ほど申し上げましたように、現在八名の方の精密検査を行なっております。それからさらに未受診の方、県外へ出ておられた方、それも含めましての方々に呼びかけまして現在調査を進めております。  なお、いままでの調査砒素を中心としてまいったわけでございますが、最近、砒素以外の重金属汚染の疑いもあるのではないかというようなお話もあるわけでございまして、これらの問題も含めまして、さらに住民の方にどのような検査をするかという点につきましては、ともあれ精密検査の結果をもって判断いたしたい、かように考えております。
  136. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それから、この土呂久鉱山の流域で、ずっとこの川を下ってまいりますと、延岡の付近に船戸という部落があるようでございますけれども、この地域でも、かっては子馬がわらを食べるとふらふらして死ぬ、いわゆるふらふら病などといって、子馬が七、八頭ぐらいは続けて死んだということをいっていますし、それから稲などの作物が、従来にかわって非常に背たけの小さいものが出た。これはだれかこの前ここで質問されたようですけれども、この流域全体についての調査はどうなっておりますか。
  137. 岡安誠

    ○岡安政府委員 五カ瀬川の流域につきましては、県でも従来から水質、土壌等の調査をいたしております。特にいまお話しの下流につきましては、県独自に、四十五年度におきまして、カドミウム、亜鉛、銅、砒素等の農作物における含有量、それから土壌中における残留量等について調査をいたしております。それによりますと、砒素相当土壌に残留いたしておるというようなことが出ております。ただ、幸いにしてカドミウムにつきましては、一PPM以上を含有する玄米は生産されておらないようでございますけれども、なお、それに近い量のカドミウムが含有されているという調査の結果もございますので、環境庁といたしましては、今年度さらに細密調査を実施いたしております。これによりまして、下流の地方におきます土壌等の調査はできるものと考えております。  さらに、上流等につきましては、先ほどの県の調査に加えまして、今年度さらに補足的に水質並びに土壌、農産物等の調査をいたしておりまして、間もなく調査結果も出ようというような段階でございます。
  138. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 その点については、せっかくの御努力を期待します。  それからもう一つは、厚生省のほうにお伺いいたしますが、土呂久鉱山毒物劇物の製造業の許可を受けておったのかどうか、わかりますか。
  139. 山高章夫

    ○山高説明員 土呂久鉱山は、毒物劇物製造業者としまして、昭和三十一年十月十一日に登録を受けてございます。そして、三十七年の十二月に廃止届が出ております。
  140. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それはどういうことになりますか。廃止届というのは、ただ届け出があればそれで終わる筋のものですか。どういうことなんですか。
  141. 山高章夫

    ○山高説明員 廃止届は、先生のおっしゃるとおりでございます。
  142. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、もしそういう亜砒酸などを製造するところが届け出を怠ってやった場合には、何か処罰なりの法の規定がありますか。
  143. 山高章夫

    ○山高説明員 登録を受けませんで製造業を行なった場合には、罰則の規定がございます。
  144. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 記録では、昭和三十一年以降亜砒酸を焼いたかどうかなかなかわかりにくいところが率直にいってあるのです。ありますけれども、こういう許可を受けておるということになると、先ほどの議論にもう一ぺん戻るのですけれども、許可を出しておるところについては、おたくはやっぱりかなり責任をもって監督をしなければならぬじゃないでしょうか。ただ、通産省が一方的に休業の届けを受け付けたというだけで済まないのじゃないですかね。何かそこに法的なあれはございませんか。
  145. 山高章夫

    ○山高説明員 毒物劇物取締法の規定によりますと、登録業者に幾つかの義務を課してございます。その義務は営業者に課しておる義務でございますが、盗難、紛失のおそれがないようにするとか、飛散、流出のおそれがないような措置を講ずるとか、あるいは運送中飛散、流出のおそれがないようにするとか、あるいは毒劇物について表示をさせるというような義務を課しておるわけでございます。そういう点につきましては、県知事を通じて監督を行なっておるわけでございます。
  146. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 おそらく想定するのに、鉱山法にしても、厚生省のほうの毒物及び劇物の取り締まりにしても、その法の制定の当時には想定をし得なかった事態が起こったんだ、私はそう思います。しかし、だからといってこのまま放置していいわけのものではありませんし、特に今日のような状態公害が問題になっておる時期でございますから、特に休廃止鉱山等における公害に及ぶようなものの取り締まりについてはせっかく各省庁の間で協力し合って、特に先ほど大石長官にもお願いしたのですが、次官、環境庁がその調整の役をとりながら、いやしくも住民にのみその負担がかかることのないように御努力をお願いしまして、私の質問を終わります。
  147. 田中武夫

    田中委員長 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  148. 田中武夫

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西田八郎君。
  149. 西田八郎

    ○西田委員 最初休廃止鉱山実情等について、現在通産省公害保安局で精査中であり、四十八年にすべてを完了するという御報告を受けておるわけでありますが、今回の、精査をしておられます四カ年計画の調査の中で、日本列島の鉱脈というものについても十分熟知した上に立ってそうした調査を進めてこられたかどうか。と申しますことは、鉱脈にはいろいろの鉱脈があるわけですが、それぞれの鉱床によって含有する金属の種類も違いましょうし、当然その鉱石の種類によっては硫砒系統あるいは珪砒系統、あるいはまた、ほとんどは硫黄を含んでいるようですけれども、その他の金属を含んでいるというふうに、採掘される鉱石によってあるいはまた埋蔵されている鉱石によって、それぞれ含有する金属の種類が違う。したがって、その金属の違いによって、またその地質によって、その含まれておる金属の流出する態様が違う。したがって、そうしたことを十分調査の上に立って今回の調査を進められてきたのかどうか、まずその点についてお伺いをしたいと思います。
  150. 久良知章悟

    久良知政府委員 重金属等の公害を防止するのを中心にいたしましてこの調査を始めたわけでございますが、この調査のもととなりましたのは、やはり、カドミウムを中心にいたしますいわゆる重金属公害というものが明らかになったことによるものでございます。したがいまして、重点的にねらいました鉱山というものは、金、銀、銅、鉛、亜鉛、水銀、砒素、こういうふうな鉱山の中から、稼行の規模でありますとか稼行期間というふうなものを勘案いたしまして、特に銅、鉛、亜鉛それからカドミウム、水銀、砒素というふうな重金属による公害発生のおそれが多いというふうに考えられる鉱山を選んだわけでございます。
  151. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、選ばれた鉱山の数はどれくらいになるのか、そして、それは当然現在操業中のものも含まれると思うが、含んで調査をされておるのか、あるいはもう休廃止鉱山だけでやられたのか、このどちらなのかひとつ……。
  152. 久良知章悟

    久良知政府委員 現在稼行しております鉱山につきましては、これはもちろん鉱害防止についての監督は私どもに責任があるわけでございますので、巡回検査をいたしますときには、いま申し上げましたようなものの重金属硫黄分による坑廃水の鉱害ということを含めまして重点的に調査をし、必要な事項については指示をするということでございますので、そのほかに休廃止鉱山についてこういう調査をプラスしてやったということでございます。
  153. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、そのプラスされました休廃止鉱山調査の対象になって現在もうすでに調査の終わったところは、これは地域別にやっておられるのだろうと思いますが、地域はどこどこなんですか。
  154. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  四十五年度から四カ年計画で調査を実施いたしまして、四十五年度の初年度に七十五鉱山調査を終了いたしております。四十六年度の予定は三百二十五鉱山でございますが、現在大半を終了いたして、今月末までには大体その予定の数字を達成する予定でございます。それから四十七年、八年、いまの予定でございますと同じく三百二、三十鉱山ということで、四年間に千五十鉱山というものを対象としております。それから、通産省の中の管内別といいますか、分け方別が八つございますが、初年度の七十五鉱山、これはやはり全国に分布しておりますので、七十五鉱山の内容は一つの管内が全部完了したということではなくて、平均的に調査をいたしております。四十六年度以降についても同じようにいたしておりまして、四カ年間で全部終わる、こういうような計画でございます。
  155. 西田八郎

    ○西田委員 その数字は前回の委員会で聞いたのですよ。ですから、おもにどういう地域に重点を置かれたかということをお尋ねしたいわけです。ということは、先ほど鉱脈との関係、鉱床との関係を聞きました。そうしますと、当然通産省では鉱脈別に鉱床の分布図というものを持っておられると思うのです。そこの地質もわかっていると思う。そうしますと、当然そこからどういう金属が採掘されておったかということもあらかじめわかるはずなんです。そうすれば当然人体影響を及ぼすおそれがあるとみなされるところを優先して調査されるべきではなかったかという点を聞きたいわけです。したがって、そういう点に重点が置かれたかどうかということを聞いているわけです。
  156. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 四十五年度、初年度にはカドミウムを中心にいたしまして調査をいたしております。それから、それが四十六年度は、四十五年度に引き続いて、カドミとそれから後半に至りましては砒素を重点的に取り上げて、カドミ砒素、こういう順番でいたしております。
  157. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、たとえばこの委員会で問題になりました土呂久等につきましては、一番早くその対象になって調査をされたというふうに解していいわけですか。
  158. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  調査対象項目の中の砒素につきましては、当初から一つの項目ということで考えておりましたけれども、実際の運営にあたりましてはやはりカドミウムの問題が非常に大きな問題になっておりますので、これを重点的に行なったというのが実情でございます。
  159. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、カドミを中心に調べて、カドミがあそこに微量にあったわけですね。そのときは砒素というものは対象になってなかったということですか。
  160. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 砒素も当初から問題の金属ではございましたけれども、カドミ鉱山とそれから砒素鉱山というものの親近性が、ものによってはわりあい薄うございますので、カドミ調査した場合に砒素というものが出てきて、砒素の問題というのがはっきり現われていくケースが少のうございます。それで今度の土呂久の問題が起こりましてから重点的に、過去において砒素を生産した鉱山あるいは製錬を行なった鉱山に対しまして調査を行なっていく予定であります。
  161. 西田八郎

    ○西田委員 実は私も多少鉱山業に関係をした経験がございますが、これは例でありますから必ずしもそういう意味で取り上げてもらっても困るのですけれども、兵庫県の養父郡に大杉という鉱山がある。これは磁硫鉄鉱で非常に硫黄分が多いけれども鉄鉱分も多い。もちろん亜鉛も含まれておるわけですが、これが当然カドミウムが入っているのじゃなかろうかという推測を私はするわけです。さらにそれがずっと下がってきて、夏梅から大屋にかけては硫砒ニッケルが相当たくさん戦時中に海軍の手によって採掘をされました。あそこは硫砒という限りは硫黄砒素とが含まれておると思うのですね。ここも当然やはりそうなければならぬというふうになりますし、同じような鉱床で明延の鉱山がありますね。そうして鉱脈を通っていけば生野の鉱山につながるわけです。そうしますとあの辺一面はやはり硫砒系統あるいは磁硫系統の鉱脈があると見なければならぬわけで、当然そうしたところの調査というものはもっと厳重を期さなければならなかったのじゃないかというふうに思うわけですが、そういう点について調査をされたのか、されなかったのか。
  162. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 四十五年度の鉱山別、県別実績の数値をいま手元に持っておりませんので、はなはだ申しわけございませんが、あとで……。
  163. 西田八郎

    ○西田委員 それではこれは資料も作成されておることと思いますので、ひとつ早急に委員会に提出されることを要求をしまして、次の質問に移りたいと思います。
  164. 田中武夫

    田中委員長 いいですね。
  165. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 はい。
  166. 西田八郎

    ○西田委員 そして精査されていけば当然問題の個所というものがわかってくるわけですね。それに対してそれではどういう対処をしてこられたのか、お伺いします。
  167. 久良知章悟

    久良知政府委員 休廃止鉱山調査をいたしますと、その鉱山の鉱害防止対策のために必要な工事というものが明らかになっていくわけでございまして、ただいままでにそういうふうに調査をいたしました山に対して、工事といたしましては、捨て石、ズリなどの堆積場の補強、それから坑廃水によります汚染、その除去のためのいろいろな処理施設、それから坑口の閉塞というふうなものの必要性の認められた鉱山があります。そういうふうな山につきまして対策工事の実施をはかったわけでございます。休止中と申しますか、鉱業権があるけれども現在は稼行をしていないというふうな山、それから鉱業権のない、放棄をいたしまして五年以内のものにつきましては、これは鉱業権者が明らかにおるわけでございますので、鉱業権者に対して工事の指示をいたして、改善をさせるように努力をしたわけでございます。廃止後五年以上たっておる山、それから五年以内でありましても、鉱業権者がいない、または法人等が鉱業権者であったものですでに解散をしておるというふうなもので、直接権者にこの改善を命ずることができないものにつきましては、これは休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金の制度を活用いたしまして、緊急性のあるものから地方公共団体とも相談をいたしまして、改善工事を進めてまいっておるわけでございます。
  168. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、いまもう一つ突っ込んで聞きたいのですが、これは改善しなければならない、あるいは防止工事をやらなければならないというふうに、要注意で、通産省でチェックされておる休廃止鉱山というのは一体どれくらいあるのですか。
  169. 久良知章悟

    久良知政府委員 先ほど申し上げました、つまり重金属による鉱害を防止するための特別の調査、それから一般巡回の一環として行なうものと二つあるわけでございますが、たとえば昭和四十五年度で申し上げますと、休廃止鉱山につきましては、延べにいたしまして三百八鉱山を巡回いたしまして、百四十二件の指示をいたしております。その工事を実施するのに要します金額が約四億三千八百万、一件当たり平均三百万くらいに相当するわけでございます。そういう数字でございます。それから昭和四十六年につきましては、これは四月から十二月末まででございますが、やはり巡回をいたしました鉱山が延べにいたしまして六百九十五鉱山、それから改善の指示をいたしましたのが件数にいたしまして二百五十八件、それから改善に要しました経費、工事費でございますが、これが一件当たり約四百万でございまして、十億四千二百万、そういうふうな工事をさせた、あるいはさせつつあるということでございます。
  170. 西田八郎

    ○西田委員 それで大体防止工事というものが完ぺきに行なわれたというふうに理解をしておられるのかどうか。いわゆる工事が終わったあとで一応点検に行かれるわけでしょう。そうしたら、その点検をしてこれでよろしいというふうにオーケーをされておるのかどうか。
  171. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱山にいたしましてもいろいろ事情があるわけでございます。中小鉱山、それからあるいは廃業寸前の山というふうなものがありますので、私どももかなり努力はいたしておりますが、発見しました要改善個所全部について即座に手当てがいくということでは残念ながらないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、無資力のものについては、これは地方公共団体とも話をいたしまして、三分の一地方に持っていただく、三分の二は国が出すというふうな方式で対策工事を進めなければならないというふうなものがある程度あるわけでございまして、こういうものにつきましては、発見をいたしましてからやはり工事ができ上がるというまでにはかなりな日数がかかっております。
  172. 西田八郎

    ○西田委員 私の聞いていることをどうも理解をしておられないようだと思うのだけれども、巡回をされたりあるいは現在稼行中のもので調査、監督に行かれ、そして要注意個所を指摘されて、当然それは指示されたように工事をしなければならぬ。もちろん工事を鉱業権者はしたと思う。したあとチェックしに行っておられるかどうか。そしてこれでよしというオーケーをしているのかどうか。もし悪ければ再改善の命令を出すようにしているのかどうかということを聞いているのです。
  173. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  鉱山は、巡回は大体A、B、C、Dというようなランクに分けておりまして、巡回を必要とする鉱山については回数を多く、それから比較的少ないというか、問題がないような鉱山については回数を少なくしておりますが、いまのところできれば年に一回は調査をするというようなことで考えております。工事をいたしましたあとで、その巡回のときに検査をいたしまして工事の結果を必ずフォローするということを原則に指示をしております。
  174. 西田八郎

    ○西田委員 そのようにしておられるにもかかわらず、あちらこちらで問題が起こってくるというのは、政務次官一体どういうことなんでしょうね。私は宮崎でも、先ほど土呂久の問題を話しましたけれども、これはあの流域というか、宮崎県には五十九からの鉱山がある。現在稼行中のものは二つ、あと五十七の鉱区が廃止もしくは休山、閉山をしているというような実態であるけれども、ここに含有されておる鉱石というものは、マンガンであるとかあるいは銅であるとか硫化鉱であるとか非常に重金属あるいは砒素等のおそれの多い鉱脈をかかえておるわけです。ですから、それらを重点的に調査をされてそうして改善命令を出されたあるいはそれのいわゆる義務者がおらぬときには国もしくは地方の公共団体との共同事業として防止事業をやった。それにもかかわらず、こういう問題が出てくる。たとえば土呂久の場合なんかは、確かに掘っておったところはそのままになっておる。ところが昔選鉱をしておったところで、ズリ、残滓ならまだしも、原鉱がそのまま野積みされたやつがそのままほうってあるところもあるわけです。これはおそらく聞けば、調査をしましたということでしょうけれども、一体そんな調査が何の役に立っておるのかということを考えますと、どうも回数をやることだけに、何か記録に残すということのみに重点を置かれておるのではないか。ほんとうにもっと真剣にどうあるべきかという形の中から調査をし、そして十分でなければ徹底的に監督をして防止工事をやらせるという姿勢でなければどうにもならないと私は思うのです。後ほど御質問申し上げますけれども、とにかく鉱山事業というのは非常に複雑な構造を持っておるわけです。したがって、特にその点は厳重にしないと、私はこれからも相当こうした問題が全国で多発してくるのではないかという心配をいたします。したがって、次官、私の聞きましたことについてお答えいただきたいと思います。
  175. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 これは健康被害の問題でございますから、これが現在稼働しておる鉱山であろうとあるいは休廃止鉱山であろうと、いやしくも住民の健康に被害を及ぼすという事実があれば、あるいはそのおそれがあれば、これに対して政府対策を講ずることは当然でございます。鉱業保安の関係からいって、五カ年間経過すれば行政上の監督の権限はないにいたしましても、住民の健康の保全ということからいいますと、だからといって、これは監督上の責任がないからといって、政府がこれを手放すということはできません。環境庁といたしましては、通産省その他と連絡をとりまして、全国の廃休止鉱山のリストアップをいたしまして、その中で健康被害の起こり得る可能性のあるものを、その水質、土壌を調べてみたい、総ざらいをしたい、こう考えております。
  176. 西田八郎

    ○西田委員 これは環境庁長官にお願いをすべきことであるかもわかりませんが、次官がお見えになっておりますので、ぜひこれは環境庁として通産省に閣議等で十分な督励を行なわれまして、これは昭和四十八年度といわれておるけれども、それまでに被害相当出てきてはどうにもならぬ問題ですから、多少の省内での機動力を行使してでも早めていただくようにお願いをしておきたいと思います。  そこで問題は、現在稼行中のものでいろいろ問題の出てきておる鉱山があるわけですが、通産省で把握しておられるいわゆる大企業といいますか、大手企業と中小企業との割合について、現在稼行中の鉱業権者、もちろん租鉱権者も含まれるでしょうが、その割合はどれくらいになっていますか。
  177. 久良知章悟

    久良知政府委員 手元に大鉱山と中小鉱山に関します資料の持ち合わせがございませんので、また後ほど御回答申し上げたいと思います。
  178. 西田八郎

    ○西田委員 それぐらいのことは把握しておいてくださいよ。大体の数字ぐらいはわかるだろうと思いますが、それじゃ全国で現在稼行しておる鉱山というのは幾つあるのですか。
  179. 久良知章悟

    久良知政府委員 千七十鉱山でございます。
  180. 西田八郎

    ○西田委員 千七十で有名なものはもうざっと数えてもわかるのじゃないかと思うのですが、ほとんどは中小でやっておる場合が多いと思うのです。ところが、中小の場合は鉱脈そのものが小さいわけですね。鉱塊鉱床で何十年も掘り続けてもだいじょうぶなところはみな大手が押えておるわけで、それから亜流的に流れておる鉱脈を追って、そして細々と、一日にダンプで何台かを掘り出す、その鉱石を現場で選鉱するかなんかして大手に売りつけているというのが現状ではなかろうかと思うのです。昔から鉱山をやる人のことを山師といいます。山師というのはきわめて危険な仕事をするということで、一朝当たればごついけれども、当たらなかった場合にはまる裸というようなことで、したがって、一たん鉱脈を当てて鉱山をやっているときにはきわめてはでなんです。鉱業をやっておられる方々は非常にはでなんです。ところが、いよいよ鉱脈が尽きてくると、お手上げということになって、一夜にしてがらりと生活も変わるほどの状態になるわけです。そうなって山を手放すわけでありますから、今度はその手放した山のあと処理をせいと言ったって、これは資力的にもできっこない問題だと思うのです。そういう中小の場合、一体どういうような方法でそうしたものを防止していくのか、これは非常に大きな問題であると思います。とにかくわずかな含有量の鉱石を低いコストで掘って、そしてそれをどこかの大手に何とか買ってもらってやっておるような鉱業権者が、ほんとうにもう脈が細くなってきて、次の鉱脈へ行くまでの探鉱すらできない。したがって、そこでもうお手上げというのが大体現在の中小の休廃止鉱山の実態ではなかろうか。そういうところに限って鉱害という問題の防止措置というものがとられていない。それが放任されてくるわけですから、よけい被害が大きくなるわけですね。したがって、そういう場合の処置というのをどういうふうに考えておられるか。
  181. 久良知章悟

    久良知政府委員 確かにこの中小鉱山の大部分のものにつきましては、先生が御指摘なさいましたように、有為転変常ならぬものが多いわけであります。先日の参考人お話の中でもその例を引いて話があったわけでございます。私どもはやはりそういうふうな山の実態を考えますと、稼行中に鉱害防止対策というものをできるだけやらせるというのがやはり一番の要諦であろう、そういうふうに考えております。
  182. 西田八郎

    ○西田委員 それはもう要諦ではありますよ。要諦ではありますけれども、事実上やってないから問題が起こってきているのですね。ですから、やれといったら、おそらくその業者はお手上げでしょう。そうすると、そこの資源というものは未採掘のまま活用されずに済んでしまうわけですから、これは国家全体の立場から見れば、もったいない話ですね。しかし、それをやれないということになれば、一体どうするか、これはきわめて重要な問題のように思うのです。特に、いま言われた千七十の中で、これは大部分が中小鉱山、そういうところはほとんどそれと同じような悩みを持っておるということになれば、これは日本鉱業界金属鉱業界全体にわたっての重要問題にも発展するのですよ。ですから、そういうのに対して、ただやらすということだけで監督するだけでは何にもならぬのじゃないか。具体的に施策を持たなければならぬと思うのですが、ひいてはそのことが国民の健康に関係するのです。私は何も業者を助けたいと思って言っているわけじゃない、業者を助けてやれと言っているわけじゃないのですが、そのことが人間の健康に被害を及ぼしているわけですから、これは十分な対策を立てていかなければならない。いま全然お持ちじゃないのですか。
  183. 久良知章悟

    久良知政府委員 やはり健康に関連をする問題でございますし、鉱害対策を十分やらせるためにあるいは閉山の時期が早まるということも事実問題としてあろうかと思いますが、やはりこの鉱害に対する要求というものが高まっている今日の実情から考えますと、その点もやむを得ないのではないか、やはり鉱害の量と利用し得る資源の量というものが相反しても、それはやむを得ないというふうに考えるわけでございます。
  184. 西田八郎

    ○西田委員 きわめて大事な姿勢でありますから、それぐらいで、どうしても日本の資源が足りなければこれは輸入という措置もとれるわけですから、やはりそういう点でできるだけ鉱害を出さないということを前提にして今後の鉱山の指導監督を強化してもらいたい。  ここでもう一つ聞きたいことは、先ほどもちょっと口にしましたけれども、戦時中に軍部の独裁といいますか、軍部の指示によって乱掘をされておる鉱山がかなりあると思うのです。ニッケルが足らぬからニッケルだけとれ、銅が足らぬから銅だけを掘れというようなことで、とにかく有望な相当のいろいろな金属を含有している鉱山であるけれども、そこの鉱石でもうニッケルだけ掘って、そうして他のものはズリと同じように捨てておったというようなところがあるわけです。これはもう通産省十分御存じだろうと思いますが、そういうところで戦後も野放しになっているところがかなりあるのじゃないか。そういうところのいわゆる鉱害防止事業というのは、先ほど言われたような形で国と地方との分担でやられることになろうと思いますけれども、現在そういうところで顕著なところを通産省として把握しておられるかどうか。
  185. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 休廃止鉱山の現状についていま調査していることは御承知のとおりでございますが、その原因が非常に昔のものであるか、あるいは戦争中のものであるかということは必ずしも具体的に把握はしておりません。
  186. 西田八郎

    ○西田委員 もともと、いまの土呂久の問題にしましても、戦時中に亜砒酸を必要とするということでやって、なお土呂久では、戦時中に亜砒酸以外に弗素でしたか、そんなものをとっておるでしょう。亜砒酸のかまのあったもう少しまた上のほうで、ちょっと名前を忘れたのですが、別の元素をとって、それを武田薬品に戦時中送っていたという話を聞きました。これもたしか毒を持つものですね。ですから、そういうことを戦時中にはもうむちゃくちゃにやらしておるわけです。それがほったらかされておるのを把握してないというのがおかしいんじゃないですか。それは有望な鉱山はだれかが鉱業権を移動させていると思うのですけれども、もうむちゃくちゃに乱掘されたところは手のつけようがないというので放任されているところか——私は一、二カ所指摘すれは知っているところもあるのですけれども、あるはずなんです。そういうところから出てくる鉱害責任というのはだれが持つのかということになれば、私は当時の軍部のやったことは、いまの政府が国の責任で解決すべき問題だというふうに思うのですけれども、どうでしょう。
  187. 久良知章悟

    久良知政府委員 どうも戦争中の採掘のあとが現在どういうふうになっておるのか、また、どういうふうな公害の原因になっておるのかという点につきましては、具体的に私どもまだ資料を把握していないものでございます。この点につきましても一度検討してみたいと思います。
  188. 西田八郎

    ○西田委員 次に、朝からこれで委員会としても何回目かの委員会で、土呂久から発端をしまして、休廃止鉱山の問題がいろいろ出てきたわけでありますけれども、やはりここで言えることは、現在のこうした鉱山の鉱害防除に対する確固たる法制上の規制といいますか規定というものが設けられなければならない時期にもう来ているのじゃないか。わずか鉱山保安法及び鉱業法規定をされておりますけれども、通産省もこれでは不十分であるということがはっきりわかったと思うのですね。したがって、こうした鉱山関係の鉱害防除のために、あらためて何か法律を整備して提案する——これは大臣じゃないと答えられぬかもしれないけれども、必要を感じておられるかどうか。
  189. 久良知章悟

    久良知政府委員 私ども、非常にむずかしい問題でもございます。そう遠くない過去に、鉱業法の改正というものを連年国会にお願いをいたしまして、成立を見なかったというふうな事実もあるわけでございます。鉱業法鉱山保安法というのが非常に大事な法律であるだけに、それの改正の問題というものをどうするか、どういうふうに考えるかという点について、この席で簡明にお答えを申すことは控えさせていただきたいと思います。
  190. 西田八郎

    ○西田委員 それは局長ということになれば無理もないことかもしれません。しかしこれは次の機会に大臣が来られたときにでも伺いたいと思いますが、少なくとも事務当局としては必要を感じておられるでしょう。事務当局として答えてください、政治責任を問いませんから。事務当局としてどうか……。
  191. 久良知章悟

    久良知政府委員 非常にむずかしい問題でございますので、私ども事務当局として先ほどもお答え申し上げたわけでございます。
  192. 西田八郎

    ○西田委員 それはあなたそんな姿勢では、あと休廃止鉱山の防止対策というのは全然成り立ちませんね。局長はかなりな権限を持っているのじゃないですか。その局長が答えられぬということはないでしょう。それは見直しの時期が来ているとかなんとか、その辺のところはやはり考えておられるのでしょう。どうです。
  193. 久良知章悟

    久良知政府委員 鉱業法につきまして私担当でないものでございますので、何ともお答えできないわけでございます。私、鉱山保安法についてはやはり運用の問題でありまして、法そのものについては現在のところ改正をするというふうな近々の必要性のある問題というのはない、むしろ運用の問題であろうかと思っております。
  194. 西田八郎

    ○西田委員 まあこれ以上局長を追及してもお答えは出てこぬようですから、あと琵琶湖の水の問題で一、二問聞いておきたいと思うのですが、水質保全局長来ておられますか。−この間大石環境庁長官が滋賀県へ来られまして、非常にけっこうな演説をして帰られたわけであります。御承知のようにいま琵琶湖の総合開発というのが近畿圏整備本部で重要な問題になっておりますし、特別立法も出ようとしておるわけですが、しかしその法案の審議の過程といいますか、法案をつくる過程において問題になりましたのが琵琶湖の水位の問題ですね。需要県である大阪側の要求に応じて琵琶湖の水を、極限状態でありますけれども最低二メートルまで下げるというようなことになりますと、琵琶湖の水はちょっとこれは私の勘ですけれども、大体四分の一くらいの水が減水になるのじゃないか。そうするといま透明度が南湖で一メートル切れた、これが二メートルからの減水になると、希釈度が非常に低くなりますと、もっと汚濁度が高まるわけですね。これはもう放置できない状態になっておるわけでありますけれども、これに対して一体水質保全局として具体的に何か対策をしておられるかどうか。  これが最後の質問ですから重ねて質問だけ先にしますけれども、その汚濁の原因となる家庭洗剤あるいは農薬、そうしたものについて、さきの委員会のときに私は厚生省あるいは農林省、そして洗剤の場合、通産省だということでありましたが、そういうところと、洗剤を製造するときに混成をする薬品等について、汚濁の因子となっているものについて、十分検討を加えるべきだ、そういう連絡がとれているかという質問をいたしましたところ、そういう点は今後とっていくというふうにお答えになったわけですが、これは琵琶湖だけではなしに全国の河川について、もう河水の汚濁の原因にもなっておるわけです。産業公害として出てくるものは企業に対して徹底的にその責任を追及していかなければなりませんが、しかし一般家庭で許容されて使用されておる洗剤等その他のもので因子となっておる場合には、これはやはり国の責任政府責任において解決する努力をはからなければならないというふうに思うわけでありますけれども、その点について関係省庁との話し合いは進んでいるのかどうか。また検討をしておられるのかどうか。この二間について質問をしたい。
  195. 岡安誠

    ○岡安政府委員 琵琶湖の水質でございますが、現在私どもは、琵琶湖につきまして環境基準の設定というようなものを準備いたしております。大体目標としましては、本年度中には琵琶湖につきましての環境基準が設定できるものというふうに考えておりまして、現在の考え方は、現状よりも琵琶湖の水質を悪くしないということを考えておりまして、大体AAないしAくらいの水質基準になるのではなかろうかというふうに実は考えております。  それから洗剤のお話でございますけれども、これはやはりおっしゃるとおり大部分が家庭排水から出るものでございまして、下水道の整備というものにまたなければならないと考えております。ただ、現在の洗剤の中には下水道の処理におきましては分解しないものがございます。それを分解しやすいようなものにするという転換を通産省にお願いいたしておりまして、現在は相当部分がABSからLASですか、分解可能な洗剤のほうに変わりつつある、今後もその方向で御指導をお願いすることを通産省にもお願いをしておるわけであります。
  196. 西田八郎

    ○西田委員 最後に次官にお願いしておきたいのですが、いま局長の答弁のとおり、これは琵琶湖の水が非常によごれてきている。これは琵琶湖が所在する滋賀県だけの問題でなしに、むしろ滋賀県のほうはいいのですが、琵琶湖に流入する以前の水を使うところもあります。ところがこれが流出する下流府県、京都、大阪がたいへんなことになってくるわけです。ところが、いま聞くところによると琵琶湖総合開発の中心は、下流県に水をよこせということが中心のようでありますけれども、これはひとつ環境庁の立場から、水質保全ということにも重点を入れた総合開発ということを強力に御推進をしていただきたい。以上のことをお願いをいたしまして、時間が来ましたので終わります。
  197. 田中武夫

    田中委員長 それでは、次に、米原昶君。
  198. 米原昶

    ○米原委員 先日、土呂久の鉱害について、参考人を当委員会に呼びまして意見を聞いたときにも、現地の斉藤教諭が言っておりましたが、現地に行ってみますと、最初の宮崎県の医師会によって行なわれた健康調査に対する不満が非常に多かったわけです。実際先ほど長官の説明では、とにかく基準を出して、その基準に合ったやり方で検診したんだから一応その報告を認めるという態度をとっておられるようですが、一月二十八日に出された見解ですね、いわゆる中間報告、これは中間報告と言えば、それだけのものだけれども、しかもそれに環境庁の方も名を連ねて、そして砒素との関係はないとか、鉱害のおそれがないというような、そういう見解に環境庁が加わられたというのははなはだ遺憾なんです。その点で非常に現地で不満が多かったわけです。先ほど阿部委員も言っておられましたが、延岡病院の桑原医師、第一次検診のときにも参加された人です。その人が現に、第一次検診の結果七十九名のうち二十三名皮膚に砒素中毒と酷似した症状が認められたと発表されておる。これは一般の新聞にも出ておりますし、桑原医師は、学会で報告されているわけですね。これは非常に問題がある点だと思うのですが、こういう点を考えますと、どうしてもこれは全般的な再調査が必要じゃないか。先ほどの長官のお話では第一次、第二次、第三次検診に残してある疑わしい者八名、これを精密検査を行なって、その結果によってはもう一ぺん調査のやり直しも考えられるようなお話だったのです。これは相当問題があるんじゃないかと思うのです。現に参加した医師が、自信をもってそういうことを学会でも発表されているというような点。その点ではもう一度、少なくとも現地の希望としては、あとに二次検診、三次検診に残された疑わしい人という人たちよりも、私のほうがずっと病状は悪いんだと言っているような人が、私座談会に出たときおりましたが、なぜ私は何でもなかったのか。この人はぜんそく的な症状を起こしているんで、必ずしも砒素中毒とは言えないかもしれない。つまり砒素中毒という非常に限定された範囲で、そういう形で基準が出されて検診が行なわれたために、砒素中毒とは関係ないと簡単にきめられたような印象を受けるわけです。カドミウムとの関係とか、当時出ていた煙を吸ったために、私が会ったおばあさんは、とにかく慢性的なそういう病気の状態だと言っておりましたが、もっと総合的な検診をやられる必要があるんじゃないかというふうに私は痛切に感ずるわけですが、この点について、ひとつ次官の御意見を聞きたいと思うのです。
  199. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 長官からお答えがあったそうでありますが、私おりませんでしたが、現在八名の者を三次検診をやっている。そのほかに未検診の者について、所在地におらない者合わせて十九名の者をさらに検診をやる。その中から二次検診の必要のあるものを選び出してやる。さらに宮崎県におきましては検診を希望する者、これを検診していきたい、こういうことでございます。これは受け入れてやるつもりでございますから、そういう意味で地元の不安が救われるんじゃないか、私どももこういうやり方を推進いたしてまいりたい、こう思っております。
  200. 米原昶

    ○米原委員 希望する者を全部やるということなら、一応私は地元のその点についての不満は解決するんじゃないかという印象を持っております。その場合に、単に砒素中毒というのに限らないで、もう少し広い見地から見る必要があるんじゃないかというふうに感ずるわけですが、この点いかがでしょうか。
  201. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 砒素並びに重金属等について、いわゆる健康被害を起こす毒物または重金属等について調べるのがわれわれの仕事でございます。そういう意味で砒素以外の原因があるということがはっきりいたしますなら、検診のときにそれもあわせて行なうということは当然のことだと思っておるわけであります。
  202. 米原昶

    ○米原委員 それでもう一つの点でちょっとお尋ねしたいんですが、一斉の検診というのがたとえば水俣病についても熊本県から今度鹿児島県のほうにかけても先日行なわれました。そのところにも私行ったんですが、そのところでも一斉検診のやり方でやりますと、必ずいろいろな苦情が出ているんです、実をいうと。同じような性質のものがどうもあるらしいんですね。つまり簡単に基準が出まして、それにとにかく合ったやり方だけでやるというようなことのために問題が起こるんじゃないかと思うんですね。  もう一つの点からいいますと、私費用の点があるんじゃないか。今度の宮崎県の医師会に委託してやった検診という場合でも費用がどのくらい出たか私知りませんが、水俣病の検診なんかの場合に、政府のほうからもその補助金が出ておりますね。あれは一年間のああいう検診をやる場合の補助として出る予算は、一体どのくらいになっておるかということをちょっとお聞きしたいんですがね。
  203. 船後正道

    ○船後政府委員 四十六年度では総額で約一千万円程度でございます。
  204. 米原昶

    ○米原委員 大体そのくらいだということを私も聞いていたんですが、その中でたとえば水俣病に対して三百万円ですね、たしか出ているのが、そのほかに県からも出ているのかもしれませんが、医師会を動員してやるために、費用の点でもそのくらいな費用しか出ないということになると、医者のほうもあまり十分にやらないんじゃないかという点が考えられると思うんです。そういう点で、今後いろいろな公害病の検診ということは、各地に問題が起こるんじゃないかと思うんですが、そういう場合の補助金が一年間に一千万円しか組まれてないということはかなり問題じゃないか、そういう点を今後考えてもらいたいということが一つ要望です。  それと同時に、土呂久の場合行ってみますと、検診も検診ですが、同時にぜひ自分は医者のところに行って見てもらいたいというのが相当いるわけですね。ところが実際にはあそこがお医者のいるすぐそばです。自動車で行けば一時間もかからないんですね。その町まで出る。そこに行かなければお医者がいない。そこに行くのにバスが通っていないためにタクシーで行く。そうするとあのへんぴな山の中で医者に通うとなると片道で四百八十円、往復では大体千円ですね。だからとうていお医者にも見てもらえないような状態ですね。私はこれはひどいじゃないかといって、宮崎県知事に会ったときにも、あそこにはなぜ道路をつけないのかと事情を聞きましたところが、鉱業権を与えていた、そこで鉱山が当然つくるべきだという考え方でいたために、ほかの地域と比べて道路が逆に何もやられていない。すぐそばまでバスが来ているのですが、その村に入るとバスが通じない、こういうような状態があそこでは重なっているということを知ったのです。あんな場合にやはり被害者救済のために救済法の医療手当に準ずるようなものでも出してやらないと、医者に見てもらうことすらできないという状態だということがわかったのです。こういう場合に、医療費とか検診費、そういうものを出すようなやり方を考えていただきたいということを痛感した。この点何か解決法があるかどうか、ひとつ聞きたいと思います。
  205. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 いまお話しのような道路の問題あるいはお医者の配置の問題、こういうものは御承知のように当然県政の上において処理すべき問題であります。また政府としても、その過疎地域に対する施策が、自治省等から援助ができるようなかっこうになっておりますから、むしろ県政の上においていまお述べになりましたような立場に立って進めてもらうべき筋合いである、こう私は考えております。
  206. 米原昶

    ○米原委員 それはそのとおりだと思うのです。それだから私も県知事のほうに強く要望したのですが、ただ現実の問題としては、そういう事情のために現実の鉱害による被害の救済という問題も起こっておるわけですね。そこで、検診を受けるにもたいへんな金がかかるというような事態があった場合に、そういう場合の金を幾らかそのとき出すべきじゃないかということなんです。
  207. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 ほかの地区におきましても、先ほどお話がありましたように、四十六年度において一千万円、こういうような補助をいたしておりますが、これは県の側でいろいろやってみて、国の援助を願いたいという申し出によりまして、こちらから適当な処置をいたしておるわけでございますから、そういう観点で県がそこまで踏み切っていけるかどうか、そういうことを前提として考えてまいりたいと思います。
  208. 米原昶

    ○米原委員 それからもう一つ、先ほどの環境庁からのお答えで、土呂久を含めて宮崎県に休廃止鉱山が非常に多いし、最近ではそこから問題が起こっておる。そこで五カ瀬川ですか、あそこの水域だけに限らず、休廃止鉱山に関連する水域ですか、その地域の水質や土壌、それから農作物などの調査を、総点検を行なうという話がありましたが、その結果は大体いつごろわかることになっておりますか。そしてその結果は公表されることになっておるかどうか、お聞きしたいと思います。
  209. 岡安誠

    ○岡安政府委員 宮崎県の休廃止鉱山関係の環境調査でございますが、先ほどお答えいたしましたとおり、今年度じゅうに補足調査を完了するということで現在やっております。大体、五カ瀬川水系で三十七カ所の水質調査、それからそれ以外のところで十一カ所の水質調査、合計水質では四十八カ所の検査をする。それから飲料水系統では十二カ所、かんがい用水関係では三カ所、農用地土壌関係では十七カ所、農作物関係では八カ所というような調査を現在やっておりまして、本年度じゅうに完了いたしますれば、これは当然公表すべきだというふうに考えております。
  210. 米原昶

    ○米原委員 それでは通産省のほうにお聞きしたいのですが、土呂久に行ってみまして、鉱山保安行政というのがどうも問題が起こって世間の騒ぎになってからあとを追っているという印象を非常に強く受けたわけです。現在の鉱業権者である住友に対する指示を見ましても、どうも通産省はき然とした態度がとれていないのじゃないかということを痛感しました。完全に被害を防止するということをまず考えてやるのじゃなくて、企業にあまり負担がかからぬようにしようということが先に頭にきているのじゃないかということを感ずるわけです。たとえば十一月十六日に住友に対して指示をされた。これはほとんど応急的なものです。そして十二月二十日にまた指示を出されている。それでもまだ不十分で三月四日にまた指示を出された、こういうわけです。もちろん追加指示をどんどん出していくこと自体ちっとも悪いことじゃありませんが、何か世間で問題になってから追っかけて出しているような印象を受ける。  しかも実際の指示の実施状況ですね。十一月、十二月の指示事項すら、まだ工事が完了してないんじゃないかと思うのですが、いつ完了するかということ、それから三月四日の指示の内容はどういうことで、その工事はいつ完了するかという点について、ひとつ答えていただきたいのです。
  211. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。土呂久鉱山に対する改善の指示の状況とその実施状況でございますが、いまおっしゃいました四十六年十一月十六日の九項目については、すでに工事が完了しております。それから四十六年十二月二十日付で九項目出しておりますが、それも三月中旬完了いたす。もうそろそろ完了しているころでございます。それから三月四日に十三項目の追加指示をいたしまして、これについての工事は四月中旬という予定をしております。
  212. 米原昶

    ○米原委員 それからもう一つ、先ほども西田委員が要求されまして、まあ出すという話でしたが、休廃止鉱山調査結果ですね。これは大体四十八年に完了するということになっておりますが、これを一年繰り上げて四十七年で完了するというようなことはできないかどうか、この一点をまず聞きたい。
  213. 久良知章悟

    久良知政府委員 財政当局と長期計画としての約束があるわけでございますが、これが四カ年計画で四十五年から四十八年までの間に千五十鉱山調査をするということで進めておるわけでございます。これを一年繰り上げるということはなかなかむずかしい問題があろうかと思います。
  214. 米原昶

    ○米原委員 それは財政の点ですね。——そうしますと、私はそういう点にこそ思い切って予算も出して早くこういうことはやるほうがいいと思うのですが、とにかくいままでの調査結果、まとまった分だけでも、調査済みの鉱山の一覧と今後の対策の要、不要について、先ほど西田委員からも要求がありましたが、これをぜひこの委員会に資料として提出していただきたいのです。  そこでもう一つは、予算の点でも非常に不十分だし、鉱山監督官の数も——実際現場に行ってみますとこれじゃとうていできないということを痛感したわけです。数が少な過ぎる。公害防止関係の監督官については、確かに四十五年度以降はふえているというのは事実です。しかしこれをよく調べてみますと、石炭関係でいた人が不要になったところで、それをどんどん回して鉱山関係に回されている。そういう意味でふえているんですね。(「失業対策か」と呼ぶ者あり)そうなんです。だから、先ほど島本委員の言われた北海道だけはまだ鉱害防止課ができてないというのも、北海道の場合はまだ石炭関係で働いているから、人員の余剰が出てこないから鉱害防止課をつくらない、そういう事実だと思うのですが、この点どうですか。
  215. 久良知章悟

    久良知政府委員 全体として見ますと、北海道の監督局の人員も増員をいたしておりまして、北海道だけの問題ではないわけでございますが、新しい課を増設いたしますためには、現在ではやはりそれにかわるものをつぶさなければならないという一つのルールがあるわけでございます。私ども北海道の監督署を廃止をいたしまして、そのかわりに鉱害防止課を新設したいというふうに考えて進めておったわけでございますが、御承知のように、昨年の後半から北海道の炭鉱で災害が二、三頻発をいたしましたので、管内の監督署はやはりある程度存続せざるを得ないということで、一年だけ北海道の防止課というものの新設を見送ったというような事情がございます。
  216. 米原昶

    ○米原委員 ふえているとおっしゃいますけれども、私は実際にこの土呂久調査するために福岡の鉱山保安監督局に行っていろいろ事情を聞いたのですが、むしろ全体として監督官と技官の人員はここ数年来減少している。現在、局長以下七十七名であるという報告を聞きました。そのうちで休廃止鉱山を担当している鉱害防止課は監督官及び技官がわずか十二名しかいないのです。そうして休廃止鉱山は九州全体で六百三十三ある。そのうちで要監督鉱山が約百ある。その百ある鉱山を鉱害防止課の十二人で担当しておる。四カ年計画でこれを調べるとしても一年に二十五ずつ。これに稼働鉱山百を加えて百二十五です。この百二十五を十二名で監督する。監督官の仕事は非常に広範です。こういう状態では実際は監督できないことは明らかじゃないかと思うのです。福岡の監督局でも、増員を要求しているけれども、これは実際はできないのだということをしきりに言っておりました。いま言われているような調査、それもほんとうに鉱害防止のために念を入れた調査なんということは、この状態では実際不可能じゃないかということを痛感したのです。幾らやるとおっしゃいましても、これじゃ実際できないという状態になっている。鉱害防止という観点からしますと、これは思い切ってしばらくの間でも増員をしなければ解決つかぬじゃないか、これが私の得た結論なんですが、この点についてどう考えられるでしょうか。
  217. 久良知章悟

    久良知政府委員 監督の対象といたします鉱山の数と、それから現行の監督官、技官の数の比で見ますと、福岡が著しく人が少ない、鉱山が多いというわけではございません。こういうふうな人員と必要な仕事の量というものの比は、本省、地方を通じまして同様のレベルにあるということが事実でございます。私どもも人員の増加ということについては非常な努力をいたしておるわけでございますが、これはやはり全体としてのワクの問題等がございまして、なかなか思うにまかせないというのが実情でございます。
  218. 米原昶

    ○米原委員 その点では全体の総定員法ですか、そういういろいろなワクがあるのだろうと思いますけれども、鉱害防止の重要性という点からいいますと、この体制ではまずいのじゃないか。もちろん鉱害防止をやるためには、実際にその発生源となっている鉱業権者責任はきびしく追及しなくてはならぬ。しかし、それだけじゃ解決つかないのです。監督体制というものが全くいまの状態では不可能じゃないかという気がしました。同時に、休止鉱山も実際はほとんど何もやられてないけれども、すでに廃止されている鉱山も当然原因を引き起こした者の責任を追及するということは、ここでもありますが、ただそれだけで——いわゆる鉱害防止というのは、もともとの鉱業法ができたころの鉱害というのはいろいろな土砂くずれが起こるとか、そういうことの防止、むしろ災害防止ですね。現在いわれているような鉱害防止という問題じゃなかったように思うのです。最近になってむしろこれが中心になってきただけのことで、そういう観点からやられてきているために、実際ややこしい問題になっているのですね。そういう点からいいますと、休廃止鉱山に対する対策というのは、もちろん責任を負う人、発生源を追及するということは当然やらなければなりませんが、それだけに、そこに金を出されたら解決つくというような状態ではないと思うのです、実際には。その点では、林委員最初に言いましたように、もっと広い見地から、環境全体を保全するという見地から、土地の住民の健康を保持するという見地から思い切った仕事をやらなければ、ほんとうの鉱害防止もできないのではないかと思います。そういう点で、一種の公共事業として工事をやる。予算もそういう名目でとれるような措置を講じないと、これは解決つかぬじゃないかということをしみじみ感じたのですが、この点についてはどうでしょうか。ひとつ環境庁次官に御意見を聞きたいと思うのです。
  219. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 そういう公共事業としてやったらどうかというお考えのようでございますが、これは問題があると思います。こういう公害を及ぼすものについてはいわゆる原因者負担というのが原則でございまして、いわゆるPPPという、ポリューター・ペイズ・プリンシプルというのがOECDでも最近問題になっております。こういうものを公共事業として一般国民の負担においてやるべき問題であるかどうか。むしろ原因者のポリューターが原則として責任を持つ。これが不可能な場合において、あるいは公共性のある限度において国が援助する、あるいは地方自治体もこれに介入するというたてまえでいくべきだと思いますので、公共事業としてこれをやるということについては問題があると思います。
  220. 米原昶

    ○米原委員 それは私も言っているわけなんです。その点なんですよ。当然公害を引き起こす原因者の責任というもの、そこから原則として金を出すんだということはわかるのですよ。しかしそれだけにとらわれていたら実際の環境保全ができない実情になっているところから問題が起こっているのですよ。ですから、公共事業といいましてももっと広い意味で、たとえば砂防工事とか、いろいろな名目があると思うのです。全体の環境を保全しながら、その中で公害の関係の分はもちろん原因者から金を出させる。包み込む形で、一方では公共事業、それと鉱害防止を含めてやるような考え方はとれないかというのです。
  221. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 私がお答えしましたように、公共性の強い仕事についてはこれは別途公共事業としてやれるということでございますから、ただ健康被害を起こすからといって公共事業でもってこれを片づけるという考え方には私は賛意を表しがたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  222. 米原昶

    ○米原委員 私もその点以前から主張しているので、公害を引き起こしたところが責任を負うべきだ、この原則を含みながら、もっと広い意味で環境保全という立場から全体の地域の関係を言っているのですよ。そういう一環として、鉱害防止のことも含めて、そこの部分は責任者に負担させる、こういう考え方をひとつ考えていただきたいと思うわけです。  もう一つ鉱業法の問題が先ほども議論になりましたが、いまの鉱業法事業の自由という考え方に貫かれていると思いますが、たとえば事業を行なう場合に施業案を通産局長に出して、通産局長の認可が必要なわけですね。そして認可するときには、通産局長鉱山保安監督局長と協議を要すると、こういうふうに書かれております。ところが、事業廃止する場合、この場合には、つまり鉱業権の消滅する場合には、届け出だけでよろしいとこういうことになっておりますね。もちろん旧鉱業権者はその後五年間保安の責任があるということにはなっておりますが、行政の側としては、つまり通産局長と保安監督局長との間の保安についての処置の責任が法的には明確になっておりません。また鉱業権者が一年以上事業休止しようとする場合は通産局長の認可を要するとありますが、この場合も同じように、前述の事業を行なう場合と違って、保安監督局長との協議も法的には定めがない、こういうことになっておりますね。そういう点は通産省の内規で解決すればいいんだということになるのかもしれませんが、しかし、現実にいま問題が発生しているところを見ますと、要注意鉱山全国で千五十もあるというときに、今後の問題としては、何か届け出だけすれば自由にやめられるということは問題があるのじゃないか。やめる場合、休む場合には万全の措置をとってから、対策をとってからでないとやめられないのだということができるようなふうに、この点を改正したほうがいいんじゃないかということを私は痛感したのですが、この点いかが考えておられるでしょうか。
  223. 久良知章悟

    久良知政府委員 確かに先生おっしゃいますように、施業案につきましては、これは通産局長が認可をいたしますときには、保安に関する問題がやはり施業案の大部分を占めますので、鉱山保安監督局長と協議をいたすことになっておるわけでございます。施業案が認可されまして鉱山の稼行が始まりますと、一般の保安の問題それから鉱害防止の問題というものが大きく浮かび上がりまして、これについては監督局長なり監督部長責任になってまいるわけでございます。これの鉱山の巡回をいたしまして、保安のレベルが低下しないようにするということに努力をするわけでございます。鉱山の実態というものについては常に把握をしておかなければならないということになるわけでございます。先ほど申し上げましたように、この休廃止鉱山対策というものは、やはり現在稼行しておる、生きておる山の対策というものが中心になるわけでございますので、この鉱山がやめるというふうなことがわかりますと、その前にできるだけ必要なことはやらしておかなければいかぬということが第一に考えられるわけでございます。したがいまして、この稼行しておる山が廃止をするというときには、これはまあ比較的はっきりとわかるわけでございまして、法律的に協議とか認可というふうなことにしなくても、現行の制度でもこの点については問題がないのではないかと私ども考えています。
  224. 米原昶

    ○米原委員 それでは最後にひとつ労働省のほうに聞きます。  労働省では労働基準局長の特殊健康診断についてという通達を昭和三十四年の五月十四日付で出しておられます。これによると砒素についても診断することになっておりますが、砒素取り扱い事業所の診断は、いままで確実に行なわれているのでしょうか、どうですか。その点をお聞きしたい。
  225. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 いま先生御指摘のように、昭和三十四年に有害物質の特定のものといたしまして、砒素を取り上げて健康診断をするように指導通達をいたしました。これは指導通達と申しますのは、法令に基づいて強制的に実施を義務づけておるものではございません。ただ、その後有害物の取り扱いその他の実績を見まして、昨年特定化学物質等障害予防規則というのをつくりまして、その際には砒素を法令に基づいて義務づける健康診断の項目にあげました。したがいまして、昨年からは法律に基づいて実施をすることになりましたけれども、それ以前におきましては指導の段階でございますので、先生御指摘のように、指導の段階で必ずしも実施状況が十分でないという面があったかと思います。
  226. 米原昶

    ○米原委員 実際には労働衛生課の資料によりますと、全国的には砒素取り扱い事業についていままででも若干は健康診断が行なわれたところが出ておりますが、宮崎県の場合を見ますと、宮崎県の労働基準局の報告で見ますと、砒素取り扱い事業については、去年まで一カ所も診断をやったことがない、こういう報告になっております。これはいまおっしゃったことしからですか、——ことしからは義務的にやらなければならない、こういう意味ですか。
  227. 北川俊夫

    ○北川(俊)政府委員 昨年から規則によりまして義務づけたものでございます。したがいまして、先生お話の数字はおそらく一昨年の実績ではないかと思います。
  228. 米原昶

    ○米原委員 これは環境庁のほうにちょっと要望しておきたいのですが、少なくとも宮崎県についてみた場合は、ことに亜砒酸の被害を受けた労働者については、通産省鉱山保安局の関係のほうもあるいは労働省のほうもあるいは県当局も、いままで砒素被害については一ぺんも検査した実例がないということになっているんです。この点では今度の問題が起こるのはむしろ当然だ。いままでにも非常に問題が、——その地域に行ってみますと、明らかに亜砒酸中毒で死んだんだというような話を一ぱい聞くのですけれども、そういうことに対しては一切まだ報告が出ていないわけですね。この点は非常に重大な手落ちがあったんじゃないかという点を感じますので、この点について今後環境庁のほうでも十分注意していただきたいということを要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  229. 田中武夫

    田中委員長 次に、土井たか子君。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 先日、三月十日の日の当委員会で、すでに兵庫県の朝来郡にございます生野町の三菱金属鉱業所など三鉱山の排水流域のカドミウム汚染の問題につきまして各党から御質問がございました。その席で大石環境庁長官は、——やがてお見えになるはずでございますが、長官が御答弁をなすったことを総括して申しますと、兵庫県側とそれから住民側が、それぞれ実際の検診調査をいたしました結果が食い違っております中身について、兵庫県側のイタイイタイ病とは認定できないという調査について、これを信用するという向きの御答弁があったわけでございます。ところがその後、明けて十一日の日になりまして、兵庫県側が第三次十三人検診結果の健康調査の全データを公表いたしました。これはおそらく環境庁のほうにもこのデータの中身は送られてきておることと存じますが、その点いかがでございますか。まずその辺からお伺いいたしたいと思います。
  231. 船後正道

    ○船後政府委員 生野鉱山の問題につきましては、兵庫県と打ち合わせてまいったのでございますが、先般の委員会でも申し上げたと思うのでございますが、十五日、明日でございますか、県の衛生部長が資料を持って上京してまいり事情を説明する、こちらはそれを聞く、こういう予定になっております。
  232. 土井たか子

    ○土井委員 それでは兵庫県現地においてはすでに公表されております。兵庫県側が発表なすった中身についてはまだ御存じないということになりますか。いかがですか。
  233. 船後正道

    ○船後政府委員 担当課長もいまだ報告を聞いていないようでございます。
  234. 土井たか子

    ○土井委員 新聞報道によりますと、兵庫県側はこの全データを公表すると同時に、環境庁のほうにもこのデータを送付するという向きのことが発表されております。したがいまして、当然これについては文書でこの環境庁のほうに到着しているはずだと思って私はお伺いしているわけでございますが、ほんとうにまだ来ておりませんですか。
  235. 船後正道

    ○船後政府委員 発送したと申しますればあるいは途中かもしれませんし、着いておる状態かもしれませんが、いずれにいたしましても私どもは当初県と打ち合わせどおり、明日県の衛生部長から実情を聴取する、こういうことになっております。
  236. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは十五日のはずでございます。
  237. 船後正道

    ○船後政府委員 失礼いたしました。きょうでございます。
  238. 土井たか子

    ○土井委員 先日は十五日という約束だったはずでございますから、明日でなくてきょうのことでございますね。
  239. 船後正道

    ○船後政府委員 失礼いたしました。本日来ておるはずでございますから、当委員会が終わりますればさっそく連絡いたしたい、かように考えております。
  240. 土井たか子

    ○土井委員 これはすでに兵庫県側は十一日に現地で公表しているデータなんでございますから、できる限り早く、現に兵庫県の生野町では骨の萎縮やじん機能の障害で苦しんでいるという患者さんがいるわけでございますので、それに対する救済の事後措置を講ずることのためにも、私はやはり環境庁に対して文書を即刻お送りになっているはずだと考えておりましたのが実は当たっておりませんで、ただいまびっくりしている始末です。  ところで、すでに公表されておりますこのデータからしますと——まだ御存じないはずでありますし、きょうそれは討議をなすっている、相談をなすっているということになるはずでございますけれども、あらまし言うと、二つばかりの特徴が浮かび上がっております。  一つは、十三人の第三次の検診の結果、尿の中で、富山県の衛生研究所がイタイイタイ病患者について行なったパターンと非常によく似たグロブリンたん白のパターンがほぼ全員にあらわれているという問題。  もう一つは、尿の中の銅が十三人の中の二人から、四十四年安中で行なわれた四人の平均が、一リットル中二十から三十マイクログラムを数倍も上回る、何と百八・一から百七十九・五マイクログラム、それが検出されているわけです。  おそらくこれから考えますと、今度県の公表されたデータによって見た場合、すでに兵庫県下ではそのデータから推して、カドミウム汚染と並んで銅の汚染も進んでいると見られなければならないのじゃないかという声が非常に高い。このことは、私はカドミウム汚染ということに対して徹底的に調査をしていただきたいし、それからいまの患者さんについてもできる限り悔いのない措置というものを一日も早く講じていただきたいと思うのでありますけれども、ここにいま一つ銅の問題が出てきているわけなんです。カドミウム汚染と並んで銅汚染の問題が出てきているわけなんです。これはすでに新聞でも報道されているのですけれども、兵庫県の衛生研究所長から、生野の場合というのは富山県の神通川通域と違い、カドミウムのほかのものがプラスされて影響しているようだというような発言もすでにあるわけであります。したがいまして、そういうふうな意味を込めて、やはり環境庁のほうとしてはこれに対する対策調査対策ということをどういうふうに今後進めたらよいかという、基本的な問題のあり方についての考え方をはっきりさせるということが追られるのじゃないかと思うのですが、この点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。ひとつお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。当然こういうことについては知っておいていただかなければこれはお仕事がつとまらないのじゃなかろうかと思いますから、ひとつこの点について意のあるところをお聞かせください。
  241. 山本宜正

    山本説明員 たいへんこまかいお尋ねでございますので、私も専門家でないのでよくお答えできるかどうかわかりませんが、いま生野の場合の県の発表の特徴として、いわゆるたん白の分画分析というものをするわけでございますが、そのパターンが富山県と似ているということでございますが、実は本日四時に県の衛生部長が参りまして個別のデータを持ってきて説明するということで、当委員会が終わったあとで私それを聞く予定になっておりますので、まだそれを見ておりません。  それから尿中の銅の問題でございますが、これにつきまして、人間の尿中の銅はどのくらいが基準値であるかということを、私よく調べませんと、いますぐにお答えできないのでございますが、この点もあわせまして県から聴取いたしまして、過去のいろいろなデータとも突き合わせてその問題も検討してみたい、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  242. 土井たか子

    ○土井委員 非常にこれは措置がスローモーションなんですね。後手後手もいいところだと私思います。それだけ大きな問題になっていることについて、兵庫県のほうでもう十一日にすでに発表していることを、きょう初めてそのデータに基づいてひとつ考えを四時からしてみようとおっしゃるわけですから、ずいぶんこういうことが対策に対する立ちおくれということを招いているのじゃないかということを、再確認いたしました。もうちょっと早くこれについてできなかったのかというふうなことを強く考えます。  さて、それはそうとしまして、イタイイタイ病という問題について、いままで一般考えられております内容というのは、御承知のとおりにカドミウムによる環境汚染暫定対策要領に基づいていろいろな基準が考えられ、またそれに対する対策が講じられているわけですが、いまイタイイタイ病と認定されるというのは、骨のひびや骨折や骨軟化症が認められる重症者だけであるわけですね。萩野医師らが今度兵庫県の生野町で見つけた四人の初期患者といわれる患者さんたちは、もちろんこの対象にはなっておりません。現実にカドミウム汚染がされまして、痛いと訴えている人たちを救うということのできない現行の認定制度というものは、どうも無意味ではないかという批判が、このところ非常に強くなってきております。イタイイタイ病の症状制定の一つのきめ手とされる、エックス線の写真で骨の三〇%以上が失われなければ異常があらわれないということをはっきり断言している学者の見解もあるわけですから、そういう点から考えますと、どうも国は四期以上の重症になって初めてイタイイタイ病と呼んでいるけれども、最近は早期発見こそ大切だ、もう一つ進んで予防対策こそ大切だということが一般に問題にされておりますときに、エックス線に大きな異常はあらわれませんそういう段階では、したがいまして埋もれたままで、初期患者の発見ということがずいぶんおくれてしまうということが、いまのイタイイタイ病の患者に対しての認定制度をとる限りあるのじゃないかと思うのです。したがいまして、制度の根本的な考え直しということも一つ大事でございますが、いまの制度のままでありましても救済の手というものを積極的に国や県というものがつとめていかなければ、私は初期の段階でイタイイタイ病患者というものの救済ということはできないし、ましてや予防措置を、これに対して先手先手を打ってこの対策を講じていくということはなかなかできかねる問題だと思うのです。先ほど来お聞きしたところでは、ずいぶん兵庫県の対策に対しての立ちおくれというものが実は目立ってきておりますし、そうして十一日から十五日、四日間もたっているのに、いまだに兵庫県のほうが公表したデータの中身についてもよく御存じないらしいというふうな実態でございますから、私はこういうことを申し上げながら、救済の手を差し伸べるということは、早期発見でなければならない。またもう一つ進んで予防措置ということまで手を差し伸べなければならないということを考えるにつけても、非常に残念なんですがこのたびの兵庫県のイタイイタイ病の病状について、国のほうとしては具体的にこれからどうなさろうとするのか、その点をひとつ御説明賜わりたいと思います。
  243. 山本宜正

    山本説明員 県が十一日に発表いたしまして、本日になりましたいきさつにつきましては、県のほうとの打ち合わせの結果、県のほうも県会等の事情があるので十五日に延ばしてくれということで、実は本日にいたしましたわけでございます。  それから今後の問題といたしましては、診断の面で一部疑義が生じているということでございますので、これにつきましては、カドミウムの中央レベルにおきますイタイイタイ病及びカドミウム中毒者の鑑別診断研究班というのがございますが、ここへデータを持ち寄っていただいて、そこで判定をするという方向で、県の協力を求めるということを実は考えておるようなわけであります。
  244. 土井たか子

    ○土井委員 これはいやがらせを言うわけじゃありませんけれども、県のほうが十五日ということを指定なすったから、きょう話し合いをなさるということであるようですが、もうすでに公表されたデータというものが現にあるわけですから、公表されている以上は、そのデータについて環境庁が御存じないというのは、私はこれはやはり職務怠慢じゃなかろうかと思うのです。これはたいへんに衆目を集めている問題でございますし、対策については緊急を要する問題だといわれているのが兵庫県の実態なんです。したがいまして、やはりこういうことについて環境庁のほうが、データの中身についても、開口一番私が質問をさせていただいたところ御存じないということが明らかでございますので、どうも心さびしい感じがいたします。  さて、いままで打ってこられたいろいろな対策というものが実は私は十分じゃないと思う。したがいまして、いま、これからの対策についても、私はいままでの十分でなかったことを挽回するという意味において、非常に強力に対策を講じていただく必要があると思うのですが、別に私は振り返っていままでの十分でなかったという点をあげつらってあれこれと糾弾するつもりはございません。しかしながら、今後類似の事情が起きました場合に、どういうふうにこういう問題について対処すべきかという意味も込めまして、ひとつお伺いしてみたいということがございます。  それは御承知だと思いますが、生野の鉱山周辺の地域ではカドミウム米が四十五年から検出されました。そうして凍結米や交換米が四十五年から四十六年にかけて、ウナギ登りどころじゃない、非常にこれはふえたわけでございます。たとえば生野町で凍結米の中身が四十五年の場合四千百二十キロに対して四十六年になりますと、二万八百七十五キロ、約五倍にも凍結米がふえている。少なくともやはり凍結米や交換米というものがふえてきたという実態に対して、環境庁のほうは全然知らぬ存ぜぬではいかぬと思うのです。カドミウムによるところの汚染米ということで凍結されたり交換することが認められているこの問題なんでありますから……。したがいまして、そういうことから考えてまいりますと、いま例のカドミウムによる環境汚染暫定対策要領の中身で、要観察地域に指定すべき場所というのはどういうことが基準になって考えられているのか。一体このカドミウム米が検出されたということが、兵庫県の生野の場合どういうふうにいままで考えられてきたのか、その点についてお答えいただきたいと思うのです。
  245. 船後正道

    ○船後政府委員 カドミウムによる環境汚染暫定対策要領では、まず初めに、調査を発動すべき一つの指標といたしまして、たとえば米が〇・四PPMといったような指標を取り上げ、これによりましてこの要領に書いております種々の調査をいたしまして、その結果、一日当たり成人の平均カドミウム摂取量が〇・三ミリグラムをこえているような場合には、当該地域を要観察地域として指定するということになっておるわけでございます。
  246. 土井たか子

    ○土井委員 それに対して要観察地域というふうに指定して、この兵庫県の生野地区については観察をすべきである、調査をすべきであるというふうに思量なすったわけでございますか。
  247. 船後正道

    ○船後政府委員 兵庫県におきましては、生野鉱山周辺におきましてカドミウム汚染の疑いがあるということから昨年の四月ごろから種々の調査をこの暫定対策要領に準じた調査でもって進めてまいりまして、その結果を、最終的には喜田村先生委員長とする健康調査特別診査委員会というものにかけて先般発表したということでございます。
  248. 土井たか子

    ○土井委員 それは県の段階の問題でございますね。環境庁並びに環境庁の前身、この問題に対して携わらなければならなかった厚生省のこれに対する対策という問題についてお聞きをしておるわけです。どういうふうな態度でこの問題について臨んでこられたか、その間の事情についてひとつお聞かせください。
  249. 船後正道

    ○船後政府委員 兵庫県ではこの暫定対策要領に準じた方法で調査を進めてまいったわけでございますが、なおこの最終的な判定につきまして現在意見が分かれておるわけでございます。  そういう事情でございますので、私どもといたしましては、今後この生野の鉱山の地域をこの対策要領に基づくところの要観察地域として指定すべきやいなやという問題も含めまして、県当局と事情聴取の打ち合わせをいたしたい、かように考えております。
  250. 土井たか子

    ○土井委員 それはこれからの問題でございまして、いままでそういう要観察地域に指定すべきやいなやということに対して、十分県当局との御討議をなすった経過があるかどうかという点についてひとつお聞かせください。
  251. 船後正道

    ○船後政府委員 私、環境庁へ参りましてからは、特にこの要観察地域とするかどうかということを兵庫県と直接に話し合ったことはございませんが、ただ、従来の経緯を聞いてみますと、兵庫県のほうではこの対策要領に準じた方法で調査をやっておるので、その結果を待っているというようなことでこれを進めてまいったというように承知いたしております。
  252. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、兵庫県のほうではおっしゃるとおりに要健康調査地域指定ということで、この地域についての調査を進めてこられた向きがございますが、しかし兵庫県は兵庫県で独自でそれは自治体として責任をもってこの調査を進める。しかしながら、先ほど申し上げましたとおりに、凍結米の中身を見たら生野町なんてこれは約五倍も四十五年から四十六年にふえておる。これは私はそう見過ごしてよい問題とは思わない。これは中身はなかなかゆゆしい問題だと思うのですよ。こういうふうになってまいりますと、県は県でそういう独自の調査をやるということでございましょうが、国は国の立場でこういうことに対しての調査、検診というものを進めてよいのではないか、そういう意味での要観察地域に指定をして、そうして調査を進めるということがあってもよいのではなかろうかと思いますが、その点どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  253. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど来申しておりますように、兵庫県で行ないました調査は、この要観察地域選定のための調査というものにつきましては、国の定めておりますいろいろな調査と同じような調査をしてきたわけでございますので、したがいまして、今後この地域を要観察地域にするかどうかという問題を含めまして兵庫県と打ち合わせをいたしたいということでございます。
  254. 土井たか子

    ○土井委員 全くこれはお伺いしても水かけ論の繰り返しになるわけですが、私はこれから先のことをお伺いしているわけではないのです。いままでの経過についてお伺いをしておいて——これは兵庫県の生野町だけの問題ではない。全国で、やはり付近に鉱山がある、そしてイタイイタイ病に類似したような患者さんがいらっしゃるというふうな場合には、やはり同じような態度で臨んでもらいたくないということを考えるものですから、先ほどからいままでのいきさつについて質問させていただいているわけでして、これから先のことはあとでお伺いいたします。いままでいわゆる厚生省の要観察地域指定、それからこのたびは環境庁の要観察地域指定ということにならなければならないはずだと思われるような状態があったわけですね。たとえば当初五十四部落の人について尿を調べたところが、尿の中にカドミウムについて九マイクログラム・パー・リットルの人たちが十五部落から出ているということがわかった。そこで県当局では第二次調査に入るということになったわけですけれども、この第二次調査が必要であるという段階で、やはりこういうことに注目をして、要観察地域指定にすべきかどうかという論議があってしかるべきではなかろうかとまず思います。それからさらに第三次調査に入るまでに尿中に三十マイクログラム・パー・リットルのカドミウムが検出された人が二人いた、三十マイクログラム・パー・リットル以下の人が十一人出たといういきさつがあって、第三次に入っているわけです。つまり、この二人と十一人、寄せて十三人がこのたびの県が公表しましたデータの対象になったわけですが、この場合にも、国の立場で環境庁が要観察地域に指定するかどうかということを御討議になる機会があったのじゃなかろうかとも考えられるのです。  大石環境庁長官がただいまお見えになりましたから特に長官にお伺いしますが、兵庫県生野町の例のカドミウム汚染について、いままで要観察地域指定ということでいろいろ討議をなさったといういきさつがあるかどうか、その辺についてひとつお伺いしたいのです。
  255. 大石武一

    大石国務大臣 生野地区のいろいろな公害の疑いの問題につきましてはいまいろいろと調査中でございます。これをカドミウムの要観察地域にするように努力したかどうかという御質問でございますが、それは事務的にはよく覚えておりません。しかしいずれにしても、要観察地域であってもなくても、そういう必要のあるところはわれわれは主部区別なしに努力いたします。検査でも何でもいたします。そういうことで、要観察地域にはなっておらなかったかもしれませんが、そういうこととは別に、あまりそう結果的には問題なしに何でも努力いたす考えでおりますので、その点はお含み願いたいと思います。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 長官はたいへん強気で、何でも努力するとおっしゃるわけですけれども、それでは具体的に、この生野地区に対しての検診並びに調査あるいは事後対策をどのようにお進めになるかという点について、きょうはぜひともお伺いしておきたいことがあるのです。  それは先日、十日でございましたね、公害委員会を開きましてこの問題について各党の方々から御質問をなさったというのは。あのあくる日の十一日に、県当局がこの十三人の第三次検診についての全データを公表したということを長官は御存じでいらっしゃいますか。
  257. 大石武一

    大石国務大臣 まだその報告は受けておりません。
  258. 土井たか子

    ○土井委員 これは県当局がすでに十一日に公表しておるわけですし、新聞公表によりますと、すぐに環境庁のほうにもこのデータを送って討議をしたいというふうな向きが発表されていたのが十一日の新聞なんです。したがいまして、きょうは十五日でございましょう。これは現に患者さんがあるわけですし、二つのこれに対しての評価があって、調査結果についていずれが正しいかということをいま論議しているさなかでございますから、患者さんの立場からすればたいへん不安なことだと思うのです。それから、これは事後的なことでございますけれども、患者さんに対しての治療というものを一日も早く促進しなければならないということを思いますと、いたずらに論争ばかりを繰り返していても意味がないと思うのです。そうしますと、スピーディーに事に対処なさるというのが環境庁としてとるべき態度のABCじゃなかろうか。十一日に公表されたことが環境庁の耳にまだ達してないというのは、県のほうから送ってないということがあるかもしれませんけれども、環境庁のほうも、データの中身をまだ御存じないというのはどうもスローモーに過ぎやせぬかという御質問を先ほどから私申し上げていたわけです。  さて、そこで申し上げたいのは、このたび県が公表しました中身を見ますと、これは富山県の衛生研究所がイタイイタイ病患者について行なったパターンとよく似たグロブリンたん白のパターンがほぼ十三人全員に認められるということが明らかになったということと、もう一つは、銅汚染というものも進んでいるということが明るみに出たことなんです。人数からいいますと十三人の中の二人でございますけれども、例の四十四年に安中で四人から検出された平均値一リットル当たり二十から三十一マイクログラムに比べますと、数倍も上回る百八・一から百七十九・五マイクログラムも検出されているわけですね。したがいまして、カドミウム汚染と同時に、銅汚染についてもひとつ検診と調査を進めなければならない、そういうことがどうも言えるようです。したがいまして、この節私の申し上げたいことは、環境庁に専門医師による鑑別診断研究班というのがございますね。あの鑑別診断研究班というものを活用して、この際兵庫県の生野町のカドミウム汚染について、十分なる検査、十分なる調査というものをお進めになる気がないかどうか。この前は検討するとおっしゃいましたけれども、ひとつそこのところ確固とした御答弁をきょうは承りたいと思うのです。いかがでございますか。
  259. 大石武一

    大石国務大臣 いまだいぶ土井委員におしかりを受けましたけれども、なるほど十一日に県が公表しまして環境庁に十五日の現在までその実態がわからないということは、まことにこれは奇妙なことだと思います。どういういきさつでありますか、もう少し取り調べますけれども、確かにおっしゃるとおり、少し連絡が手ぬるいような感じがいたします。おっしゃるとおり、すべて行政というものはスピーディーに的確にやることが必要でございますから、十分に心して進んでまいりたいと思います。  なお、ただいまのお話のような次第でありますと、なるほど確かに、今後イタイイタイ病の疑いがあれば、十分な検診なり対策を進めなければならぬような感じがいたします。ただ私は、人を疑うわけじゃありませんけれども、やはりもう一ぺんわれわれの耳で、目で確かめてみた報告というものを得てから一まだ聞いておりませんので、それを得てから、今後の対策を進めてまいらなければなりません。そういう立場にございますので、おっしゃることを十分に尊重いたしながら、もう少し事情を聞きまして、おっしゃるとおり鑑別診断班を派遣して調査をすることが必要なら、当然やります。大体いまのところは二十二日にやりたいという希望を事務当局は持っておるようでございますけれども、それはまだ正確に聞いておりませんが、もちろんそういうことが必要ならさっそくそのような鑑別診断を行なうように努力いたしますし、御承知のように、県の報告をまだ聞いておりませんから何とも言えませんが、萩野医師ですか、これはいわゆる専門家ですが、こういう人も来られて、非常な疑いを持っておられるようでございますから、こういうものも無視するわけにいかない。やはりその住民の不安を全部解消するような、疑問をなくするような処置をすることが非常に大事でございますから、一生懸命に、いま申しましたように、スピーディーに的確に今後の対策を進めてまいりたい、こう考えます。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいましたように、住民の不安を解消する、そしてスピーディーに対策を講ずるというふうな御趣旨の立場からしまして、二十二日に、私が先ほど申し上げました鑑別診断研究班の諸先生方がいろいろ調査研究を進めてくださる手はずだということでございますけれども、ここでもう一つ申し上げておきたいことがございます。  それは、研究班の中身を見ますと、その中に——例の昭和四十三年の五月の八日の厚生省見解、これは富山県におけるイタイイタイ病に関する厚生省の見解でございますが、あの見解の中身を見ますと、カドミウムがイタイイタイ病の原因であるということをはっきり厚生省としてはお認めになっていらっしゃるわけなんですね。ところが、この研究班の中の一人の先生は、イタイイタイ病は必ずしもカドミウムに原因があるとは思わないという立場の先生も入っていらっしゃるわけですから、その点どうも、二十二日にこういう研究班の手によって研究をお進めになる場合に、こういう先生の手によって研究が進められるということに対して、疑義なきにしもあらずなんです。そこでこの際やはり生野町のイタイイタイ病、これはまだイタイイタイ病と認定していいかどうかわかりませんが、疑似状況について研究調査をお進めになる節、この鑑別診断研究班の人員について、もう一度洗い直していただいて、適当である方を人選し直した結果その調査研究に当たらしめるように、指導をしていただきたいと思うのですが、その点はどのように長官お考えになっていらっしゃいますか。
  261. 大石武一

    大石国務大臣 学問というものは、私も同じような立場でおりますが、どのような場合でも、常に疑問というものを持って当たるということが私は一つの大事な態度だと思います。そういうことで、厚生省見解はイタイイタイ病はカドミウムが原因であるということになっております。私どももそう信じております。そうは信じますけれども、しかし、これからもさらにわれわれは努力して、なお別な問題がないかどうか、あやまちがないかどうか、あるいはさらにもっとほかの原因が加わってはいないかどうかということも疑って研究することは、私は必要なことじゃないかと思うのです。そういう意味で、かりにそのような疑問を持っておられる方には、金沢大学の教授と思いますが、そういう方がおられても、私は鑑別診断班には何らの障害にはならないと思います。それについて全部同じ考えの人が行ってもけっこうですし、中にやはり疑いを持つ人があってもその結果は決して間違えることは私はないと思います。それが疑いを持った人が大部分であるとか、そういうことならば問題になりましょうけれども、かりに十人のうち一人がそのような疑問を持った人が行きましても、私は結果にあやまちを生ずることはないと思います。そういうことで、それは理屈でございまして、もう少しみんなと相談いたしまして、一番よく鑑別診断ができるような方向で考え方を進めてまいりますが、理屈はそのような理屈で、あまり人の毛ぎらいはしなくてもいいような感じがするわけでございます。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 追い打ちをかけるようなことを申しますが、長官、さきに住民側の立場で不安を解消する、住民の人たちにこの問題についていろいろと不安をかけるということをできる限り早く取り除きたいというような御趣旨の御答弁をなさいましたね。先ほど申し上げました金沢大学のたしか教授なんですけれども、実は学問的立場がどうこうという問題ではないのです、百歩譲って。その問題じゃない。当初はイタイイタイ病というのはカドミウムに原因があるという立場に立っておられたのですけれども、後にその立場を変えられたわけなんです。そしてこれは富山の例のイタイイタイ病の事件にも関係をしていらっしゃる学者です。中身からしますと、あの事件、裁判の経過からいたしまして、明らかに企業者側に立っていろいろ見解を述べられたという向きが、第三者から客観的に見て思われる節もあるわけです。したがいまして、できる限りそういう疑義を招くような研究班員というのはこの節好ましくないというふうに考えられるわけですけれども、先ほどそれについてはいろいろ検討も重ねて適当な構成でもって研究調査に当たりたいという旨をおっしゃいましたから、ひとつ長官のおっしゃったように私たちは期待を寄せたいと思いますが、しかし一応は、こういう人たちによってこの検診調査を進めるということを、あらかじめ私たちにひとつ公表を賜わりますように、それを重ねてここでお願いをしておきたいと思うのです。
  263. 大石武一

    大石国務大臣 さっきの疑いを持った学者がおっても差しつかえないという見解は、私は純粋な学問的な立場からそう申したのでございます。そういう意味で、もちろんいま申したような、かりにいまお話しのようなことがあれば十分にわれわれもその点を考慮いたしまして、しかるべき人を派遣したいと思います。それから、その場合には、こういう人を鑑別診断に出しますということにつきましては御報告申し上げます。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、重ねて最後に一言だけ申し上げておいて私は終わりにしたいと思いますが、二十二日にいまおっしゃったような鑑別診断が研究班によって行なわれましたら、できる限り早くその中身についても公表を賜わりますようにお願いを申し上げます。それはやはり県当局のこれに対する見解と、それから住民側が依頼して出したところの診断結果とが食い違っていて、いま非常に混乱を来たしているというのが実情でございますから、やはり患者さんにしてみると不安は非常に強くつのっている一方だと思うのです。だから、やっぱりできる限り環境庁の立場で、国の立場でこの問題に対して研究調査の結果がこうなのだということを明るみに出されるということを待ち望んでいると思いますから、ひとつその点、客観的に見て的確性を持った研究調査をできる限り早くやって、そしてその結果が適正に生かされるような措置をできる限り早くひとつお願いを申し上げて、私質問を終わりたいと思います。
  265. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御発言ごもっともでございます。もちろんわれわれ環境庁としての立場と責任から判断をいたしますし、その結果についてはできるだけ早く皆さんにお伝えいたしたいと思います。
  266. 田中武夫

    田中委員長 土井君の質疑はこれで終了いたしました。  次に、岡本富夫君。
  267. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、いま聞いておりますと、私十日の日に当委員会でやりましたが、国の鑑別診断班の検討をする、これは確かにいいことと思いますけれども、ここでひとつ頭に入れていただきたいことは、兵庫県の健康調査委員の中に土屋さんという慶応大学の教授がおるわけですが、この人は富山でビラをまいて、イタイイタイ病はカドミウムが原因ではないのだ、こういう変なことを言って非常にひんしゅくを買った人であり、また裁判では会社側に立って反証の証人になっておる人です。したがって、これは中立ではないと私は思う。もう一人、先ほど話がありましたかどうかわかりませんが、もう一人の武内さんというのは、これは富山の裁判所で証言が変わりまして、裁判長から偽証罪になるというような注意を受けた人ですが、こういう人が入っているのではないか、こういうことをお聞きになっておりませんか。もしもこれがほんとうであればよく調べていただいて、こういう人が国の鑑別診断班の中に入っておるということは、ほんとうに中立的な立場の診断ができないのではないか、こういうように思うのですが、長官、いかがですか。
  268. 大石武一

    大石国務大臣 先ほど土井委員にもお答えいたしましたように、私は学問的にはいろいろな種類の方がありていいと考えておりますので、別にそういう点からはだれを除外しなければならぬとは考えておりません。ただしいろいろなうわさがございます。そのうわさはおそらくほんとうでないと思いますけれども、もしそのようなうわさが流布されておりますと、それについてはその人にも御迷惑をかけますし、あるいはいろいろな誤解を生むおそれもありますから、そのような場合にはよくこちらで考えまして、そのような鑑別診断班をつくりたいと思います。その点はひとつおまかせ願いたいと思います。
  269. 岡本富夫

    ○岡本委員 この点は特にひとつ——なぜかなれば、要するに生野のカドミウムの中毒につきましては、親切にわれわれが調べた公明党の本部のあれと県のやつが出ておるのですが、その中に、先ほども話がありましたように十一人骨折、こういうのがはっきり兵庫県のほうでも発表しているわけですね。この点につきまして先ほど聞いていると、われわれ全然聞いてないからわからないのだ、こう環境庁は答弁なさるのですけれども、実は三日に県が発表するというときに、その前の日県から来ているわけですね。そうしてこういうように発表しますよということを、これは長官知らなかったと思うのですけれども、ぼくは十日にそのことを話したわけですが、課長はこれを知っておった。そのときに中の一般のデータ全部見て、これなら確かに県の言うとおりだというような疑義がないものにして発表するというのであれば、私は非常に納得いくと思うのですけれども、ただこれが県の最初の発表のあれですけれども、これだけで、いやけっこうですと言ったというのは、非常に問題があろうと思うのです。ですから、おそらく長官まであがってなくて——わざわざその前の日に県のデータは来ておるわけですからね。ですから、公表はしてなかったけれども、来ておったと思うのですね。そう疑わざるを得ないわけです。ですから、そういった面が、いままでのやり方のようにこそこそというのじゃなくて、やはり公表していくのが正しいのではないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  270. 船後正道

    ○船後政府委員 実は十一日に発表いたしましたものをいまだにわれわれが見ていないことはまことに怠慢ではございますが、ただ県のほうへは私どものほうが再三なるべく早く詳細なるデータを持って連絡に来てくれるように連絡いたしておったのでございますが、先方の種々の都合がございまして、十五日に上京する、こういうことでもってやむを得ず本日まで待っておったという次第でございまして、決して事前に県のほうからいろいろなことを言ってきたということではございません。
  271. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題で時間をとってはあれですか、そこで委員長にお願いしたいのですが、この間松本委員からも話がありましたように、喜田村教授、萩野先生あるいは小林先生に対するいろいろな記事があったそうでありますから、あとの研先がいろいろございましょうから、その結論が出たときにおきまして、当委員会参考人として呼んでいただきまして、はっきりさしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  272. 田中武夫

    田中委員長 岡本君に申し上げます。ただいまの御提案につきましては、後刻理事会で相談の上ぜひ実現するようにいたしたいと思います。
  273. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま騒音というものが全国的に非常に問題になっておりまして、その中で交通騒音についてひとつ御質問を申し上げたい。  時間の関係で非常に急ぎますけれども、はしょりますが、自動車の騒音に対して、幹線道路、特に近くの住民が非常に困っておるということで、実は長官に対して質問のような手紙が私のところに尼崎の平田さんという人から来ておるわけです。これはあとでなにしますが、騒音規制法の中に自動車の環境基準というのか、許容限度というものがございますが、自動車それ自体の騒音の基準とそれが走行したときの道路に及ぼすところの基準、この点について簡単にお答え願いたい。
  274. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  騒音規制法の十六条に許容限度の項がございます。これは先生御指摘の第一次的に個別の自動車から発生する騒音を規制することを主にしたものでございます。それで、この個別の騒音規制をして健康な生活環境を保護するという対策がこの十六条でございますが、自動車の交通量とかあるいは通行する自動車の種類あるいは道路構造等の問題がございますので、これだけでは十分にいきませんので、十七条に今度は一定の環境騒音の許容限度をつくってございます。したがいまして、十六条のほうは個々の自動車の発生源対策、十七条のほうは環境騒音対策、こういう趣旨で互いに補完をするという関係にあると考えられます。
  275. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういうことになっておるのでありますれば、十七条の、たとえば一つの例をとりますと、幹線道路二車線を見まして昼間七十ホン、朝と夕が六十五ホン、夜間が五十五ホンとなっておるのです。ところが自動車のほうの許容限度を見ますと、大きな、八トントラックでしょう、こういうのは八十ホンあるいは九十二ホン、こういうような限度になっておる。非常に高い車の許容にしておいて、それでそこを走らして、そこは低い。だからそれは、このとおりならないのです。この点についてはいかがですか。
  276. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 数字的には先生のおっしゃるとおりでございますが、これは距離が離れますので、どうしてもそのくらいの差をつけるということで、こういうふうな数字を用いたのでございます。
  277. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、その道路なら道路から大体一メートルのところではかるわけでしょう、これを見ますと。しかも九十何ホンというやつが何台も何台も来るのですよ。そうして、はたしてこの許容限度の、——要するにいま国道四十三号線、阪神の第二国道の問題を一つ例にとりますと、十数万台、一日に走るというのですね。そうすると、大きな九十何ホンというやつがどんどん走って、そして許容限度におさまるかというと、おさまらない。証拠に、各市で調べたデータが出ているわけです。ですから、騒音規制法のこの基準というのは、これはほんとうの机上計算であって、実際はそうではない、こういうふうに考えられますが、その点いかがですか。
  278. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 先生のおっしゃった自動車騒音の大きさの許容限度で、十六条の一項によります常時の自動車の場合の八十五ホンと書いてございます。これはちょうど車検をやりますときに個々の車が出す音として出しております。ただ、その次の十七条一項の総理府令できめておりますこの限度は、これは環境基準ではございませんが、環境基準は別にございますが、それの許容限度、すく規制には——環境基準としての規制ではございませんけれども、その集まった自動車の音ということで、先ほど言いました離れた場合等を考えてこういうことにしたのでございますから、これの、いま先生のおっしゃったいろいろな問題に関しては、交通規制その他道路運送車両法等によって規制をしていただく、こういう形でもって環境庁のほうはこの許容限度のほうの数字を押えておる、こういうことでございます。
  279. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、これは交通規制によってこの基準に押える、こういうようにいま承りましたけれども、警察庁のほうでは、規制課長さんですね、ひとつ実例をとりますから……。抽象的なことじゃ困る。ですから、四十三号線、大阪から神戸に行っている、これに対してはどういう規制をとっていらっしゃるのか。そして環境庁がきめたこの許容限度の中に入っておるのかどうか、これについてひとつお答えを願いたいのです。
  280. 田中武夫

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  281. 田中武夫

    田中委員長 それでは、速記を起こしてください。
  282. 竹岡勝美

    ○竹岡説明員 御承知のとおり第二阪神国道は片側五車線ございます。また、その上に阪神高速も走っておりまして、御承知のように一日十四万台車が走っております。この片側五車線の第二阪神国道につきましては、大型車の速度規制、これは通行時でございますけれども、普通の一般的な速度規制は行なっておりますが、それ以外の騒音関します通行禁止あるいは通行制限等の規制は行なっておりません。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  この五車線につきましては、一応現在、第一車線は軽自動、二、三車線は大型自動、それから第四車線は普通車というような通行区分の指導はやっておりますが、それ以外の規制はやっておりません。現実にここでもう、環境基準の十七条一項に基づきます基準、最高の八十ホンを現在は越えておる状況だと思います。
  283. 岡本富夫

    ○岡本委員 政務次官にお答え願いたいのですが、いま警察庁のほうからも答弁がありましたように、事実この環境基準といいますか、許容限度というものをはるかにみな越えておる。市の調査を見ましても、多いときは九十とか九十二、八十九、それがまた上の阪神高速と一緒になりましてすごい騒音で、この地域はもとはほとんど住宅地域だった。そこに道路が通りまして、そういうことになっているわけですが、これはここだけじゃなくて、あちらこちらにこの問題があると思うのですね。したがって、今後これに対する対策をどういうふうにお考えになっているか。
  284. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 たてまえといたしましては、先ほど私のほうの大気保全局長から申し上げましたように、環境庁において環境基準をつくりまして、政府の各機関がこれに従って、騒音が規制されるという努力をすべき筋合いのものであります。したがって、いま警察庁の交通局から、そういう騒音についての規制は行なっておりませんという答弁はいかがかと思うのであります。それが当然やるべきことをやっていないのか、やろうとしてできがたい状況にあるのか、この点をもう少し検討しなければならぬかと思いますが、事実やることができないというような場合に、環境基準を押しつけるということも現実に反します。しかもこれはその地域、地域によって、いま御指摘のように非常に複雑な道路のようでございますが、そういうところにおいてはどのような措置をとるかということ、これは総理府令の改正等のことも含めて、もっときめこまかにやっていくべきじゃないか、あなたのお話を聞きながらこう感じております。そういうようにやるのがほんとうじゃないかと思っております。  〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  285. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういうふうに答えられるとちょっと困るがね。やるのがあたりまえじゃないか、やってないのは国が悪いじゃないか、そういうふうに答えられるとちょっと困るのですが……。  そこで私提案としまして、まず一つは、自動車そのもの自体が発する音、これをもっと下げることが大事である。それはひとつ検討してもらいたい。  それからもう一つは、やはり何と申しましても、こうした幹線道路については緑地帯を設ける。たとえばいま歩道が横にあるわけです。この間に相当なスペースをとって緑地帯をうんと設ける。ただそえものみたいにちょっちょっちょっと、こうなるのじゃ、これは木がはえておるだけで、こんなのでは話にならないと思うのですね。もう一つは非常にあぶないのです。いまどんどん走っておりますから。そしてガードレールがないと困るということも言っております。  この二つについては建設省のほうの関係になると思うのですが、建設省いかがですか。
  286. 菊池三男

    菊池説明員 ただいまの四十三号線の騒音がたいへんひどいということはお話しのとおりでございます。それに対する対案として、いま先生が示されました、たとえば歩道に木を植える、歩道といっても六メートルございます。ですから、六メートルの歩道のところに木を植える余地はあるかと思いますけれども、ただ木を植えただけではどうも騒音に対しての効果というものは、相当密に植えませんと騒音効果にはならない。ただし、見た目なり感じという意味では、それは相当な心理的な効果はあると思いますけれども、ほんとうに音を絶つのですと、やはり塀をするとかそういうようなことをしないと、わりあいに音は消えないのではないかという気がいたします。また塀をつくりますと、沿道の人家の方が道路から出入りしておりますので、塀をぶつぶつ切らなければならぬということになりますと、やはり音はそこから出てしまいますので、そういう点の検討はいたしますけれども、そう大きな効果は望めないのではないかという気がいたします。  ただ建設省といたしましては、それじゃどうするのかということでございますが、いま湾岸の埋め立ち地に道路をつくるような計画がございますので、早くそれをつくり上げて、交通はなるべく湾岸のほうに回すというようなことを進めてまいりたいと考えております。
  287. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまのところ処置なしということなんですね。それでは住民が困るのです。しかも病気になったりノイローゼに一ぱいなっておる。私は二国だけの問題を話しているのではなくて、こういうようなところが全国至るところにあると思います。騒音と振動ですから吸音板をつける、こういう案もあなたのほうから出ておったと思いますけれども、一向につけないのです。いろいろな案を出されるのですけれども、やらない。それではこの付近の住民は、いいことを言うてもらってもやってもらわなかったら、毎日毎日どうしようもないのですよ。あなた課長だから、もう少し真剣に取り組んで、どうする、こうするという計画をひとつ立ててもらいたいと思うのです。いま持っている案では、大体いつごろまでかかるということの見当はついておりますか。壁がどうのこうのといいますけれども、私、精道小学校という学校の校庭がやかましいので、実はこの前文部省から予算をつけてもらって壁をつくった。そうすると約十ホン以上下がった。そのために子供たちは非常に喜んでおる、こういう例があるわけです。したがって、何もせずにいろんなことを言ってもらっても話にならないわけですが、もう一ぺん。
  288. 菊池三男

    菊池説明員 対策をいつまでにどうするかということになりますと、ちょっといまここで、それではいついつまでにこういうことをやりますというところまでまだ詰まっておりませんけれども、いろいろな問題がございます。たとえば吸音板にいたしましても、張ることはたやすうございますけれども、吸音板にもいろいろなものがありまして、そうまだ効果の、これならというのがありません。トンネルとかそういう特殊な場所には効果があるというものがありますけれども、わりあいに開放されたところにやる吸音板の効果ということはまだあまりよくわかっておりませんので、たとえば試験的にやるとかということですとあり得ますし、すぐまたやれますけれども、それを全面的にやるというところまではまだいっていない。それではそれをそのまま放置しているのかということになりますが、同じ四十三号の沿線で、これは大阪市内になりますけれども、木津川のところで非常にうるさいということで、これは阪神高速道路に乗りますランプというものは上り車線がある。そこで車がふかして上がりますので、それの音が非常にうるさいということで、そこには遮音壁を高速道路にずっとつけまして、これで十ホン以上下がったという実例もございます。それから、そういうところの坂路の手前にある信号はなるべくフリーにして、一度信号でとまりますとやはり発進音が大きくなるということで、そういう信号はなるべくやめてもらうとか、そういういろいろな対策は講じておりますけれども、それをいついつまでということはいまちょっとここで申し上げられませんけれども、できるだけ早急に検討いたしまして、また申し上げることにいたしたいと思います。
  289. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんな抽象的なことより、たとえば四十三号線を一つのテストケースにして、これは全国みなそういうところがありますから、これからさらにまたふえるわけですから、それをひとつテストケースにして、吸音板もつけて、そして植樹もやり、ガードレールもつける、あるいは防音壁でもよろしいから、住民が困るということはしかたがないとしまして、そういった一つの、あの線はそうたいしたことありませんからね。それから交通規制につきましても、これは夜間どんどん大きいやつが通るわけです。夜間は上の阪神高速道路に、上のバイパスにみな乗せてもらう、こういうような規制をすれば、まだ住民のほうもしばらくはしんぼうするのですけれども、いまのところではもうどうしようもないという限界に来ておる。その点についてひとつこれは環境庁の政務次官、やるのは向こうです、私は取り締まるほうだけなんと考えずに、強力にひとつ建設大臣あるいはまた警察庁のほうにも話をして実行していただきたい、これをお願いしたいのですが、いかがですか。
  290. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 先ほども申しましたように、環境基準というのは、これを守ってもらうという努力目標でありまして、ぜひともこれは守ってもらわなければならぬ。これは政府の各機関あげてこれを実行できるようにしてもらわなければならないので、現状に合わないからこれをゆるめるというような考えは私は持ちません。そういう意味合いで、これは、政府は一体でありますから、私のほうからもしかるべく関係省庁に十分な協力を求めよう、こう思っております。
  291. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、沿線の学校あるいは幼稚園、こういった学校施設が非常に、この騒音のために授業がとまり、あるいはまた子供たちの勉強に差しつかえておる。したがって、さしあたってのこういった騒音防止、これは文部省にひとつ答弁をいただきたいのですが、沿線の学校あるいは幼稚園の、精道幼稚園なら精道幼稚園の移転、こういう点について助成措置をしていく気があるのか、あるいはできるのかどうか、この点について。
  292. 菅野誠

    ○菅野説明員 教育施設部長の菅野でございます。お答え申し上げます。  文部省関係の学校施設の公害に対する防止措置につきましては、学校の特殊性も考えまして、できるだけいまおっしゃるような方向で努力してまいってきております。先ほどお話のありましたように、精道小学校につきましても、四十六年度の公害防止工事におきまして相当効果もあげた例もございます。ただいまお話がありました精道幼稚園、宮川小学校、今津小学校等につきましても、これは四十七年度の事業計画として、いま市におきまして計画を練っておることと思いますが、四十七年度の公害対策予算といたしましては、いま政府案として予定しております額といたしましては、四十六年度が三億三千五百万円に対しまして約二六%増、二倍以上になるわけでございますが、七億二千四百万円を計上をいたしております。これによりまして、その設置者である市町村から公害防止工事の申請が出てまいりますればそれを検討いたしまして、特に公害関係につきましては前向きに措置いたしたい、かように考えております。
  293. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、これはまた次の機会に一つ一つについてお聞きをしたいと思います、時間がありませんから。  そこで、この阪神道路公団の建設がいま西宮から大阪に向かってされつつあるわけでありますけれども、これは旧都市計画法では、四十四年の五月二十一日に事業決定を建設大臣がしているわけですが、新都市計画法によると、知事が決定してから住民の意見を聞くというように、非常に住民の意思を尊重しておる。しかしこの決定は旧都市計画法でありますから非常に住民の意思を聞かないというところに問題がいま起こって、非常に紛争が起こっておるわけです。建設省としてこの紛争に対してどういうような手を打つのか、これをひとつ建設省のほうからお聞きしたい。
  294. 高橋国一郎

    ○高橋(国)政府委員 ただいまの阪神西宮線の建設に対しまして地元からたいへんな反対があるようでございます。これにつきましては再三われわれのほうでも検討しておりまして、地元のほうの納得いかぬ間は着工させぬという方針で、ただいま着工をとめておる次第でございます。
  295. 岡本富夫

    ○岡本委員 旧都市計画法になっておりますからね、この点にやっぱり問題があろうと思うのですよ。ですから一つ一つ皆さんの意見——それからこの立ちのきにつきましても、土地代が、立ちのいたために、何か、二百万もよけい出さなければいかぬというような、非常な不合理な立ちのきの問題になっているわけですね。そういった面のこまかい問題につきまして、あなたのほうでよく検討をして、阪神道路公団のほうにもある程度のことは住民の意見を聞いていくような方法でなければならないと私は思うのです。ただ検討しておるだけではちょっとぐあいが悪いと思うのですがね、いまのところ一方的な強行をやっておりますからね。ひとつその点について建設省としてはどういう姿勢でやっていくか、これについてもう一ぺん……。
  296. 高橋国一郎

    ○高橋(国)政府委員 ただいまの件につきましては、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたように、阪神道路公団のほうは、地元のほうに七つの改善案をお示し申し上げまして御協議申し上げたわけでございますが、最終的には御納得がいただけずに、いまだに着工に至っておらないわけでございます。ただいまの件につきまして先ほど答弁申し上げましたように、地元の意見を十分お聞きしまして、地元の反対のある問は着工しないようにこちらから指示しておりますので、個々に、具体的に御意見をお聞きいたしまして、できるだけ納得のいくようにして、納得いただいたあとで着工するようにと指示した次第でございます。
  297. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間があまりありませんから、航空局にちょっとお聞きしたいんですが、昨年の十二月二十八日、環境庁長官から運輸大臣に対しての航空騒音対策についての勧告が出ておりますけれども、この勧告に対してどういうように手を打ち、またどういう結果を出してあるか、これについて簡単にひとつ伺いたい。
  298. 丸居幹一

    丸居説明員 大阪国際空港につきましては、この飛行場は内陸部にありますので、家屋がそのあたりに密集しておりますので、そういう関係で全面的に勧告に沿った処置をしていくこととしております。ただ、深夜の郵便機につきましては、これの代替輸送手段のできますのに伴って段階的に廃止していくということにしておりまして、この点につきましては郵政省ともいろいろ折衝を、われわれのほうも、また地元のほうからもだいぶ要望があるようですが、いたしておるところでございます。  それから東京につきましては、ちょうど二方向海に面しております、そういう地形上非常に有利な点もございますので、これについては多少差を設けまして、大阪は十時から七時まででございますけれども、東京については現状を大体維持する、ただしいま少し国際線あたりの離発着については必ずしも十一時から六時ということがよく守られておりませんので、この点についてやかましくそういうことの厳守についてエアラインを指導していきたいということにいたしております。
  299. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも歯切れの悪い答弁で、ちょっと納得しがたいのですが、やはり環境庁の勧告に対してはかっちりひとつまずこれが実行できるようにやることが大事だろうと思うのです。そこで、郵便機につきましても、着陸が四機あるいはまた発進が四機、こういうようなことですので、これを二機にするとか、そういうようにして少しでも迷惑をかけないようにしようというようなことができないのかどうか、これ、ひとついかがですか。
  300. 丸居幹一

    丸居説明員 郵便機につきましては、郵政省のほうと環境庁のほうといろいろ打ち合わせをされまして、徐々にこれを廃止していくということでお話がなされておるそうでございます。私のほうといたしましては、郵政省にもいろいろ御事情があるようでありますので、これは郵便という非常に公共性の強いものを運搬しておりまして、ただいま申しましたように、たとえば同じように大阪まで行くとしても、大阪まで運ぶようであるけれども、それは中国とか四国とかも含めた郵便物を運んでおるというように、及ぼす影響の範囲も非常に大きうございますので、郵政省と環境庁あたりとのお話し合いの上、代替輸送手段が考えられ次第徐々に廃止していただくという方向で甘んぜざるを得ないという段階なのでございます。
  301. 岡本富夫

    ○岡本委員 では環境庁にお聞きしますけれども、まずこの郵便機問題についての現在の交渉結果、あるいはこれからどうするかというのが一つ。それからもう一つ、昨年から非常にわれわれがやかましくいっておりました航空機騒音の環境基準は、これは大体年末ごろまでに出すというような長官のお答えだった、かっこうだけよかった、あと全然出てないんですね。これでは話にならぬのですが、大体いつごろちゃんときめるのかどうか、これをひとつ。
  302. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 初めの郵便機の問題につきましては、確かに公共性、迅速性の問題がございますが、私どもとしてはやはり住民の被害防止の問題、生活環境上の被害をできるだけ少なくしてほしいという指針の態度から、発着時間帯の変更と申しますか、一機でも二機でも、午後十時以前、午前七時以降に時間帯をずらす措置がとれないかということで、郵政省に検討を申し入れております。それから二番目の、環境基準はいつできるのかというお話でございますが、伊丹と羽田の問題が非常に大きな問題なので、緊急的な課題として暫定の指針を今回出したわけでございますが、全体的な環境基準となりますと、どうしてもこれは国際的な問題に入ってまいります。この点に関しましてはなお先生方に引き続き御勉強していただいておりますけれども、できるだけ早くやっていただくようにお願いしておきますが、期日をいまちょっと私からお約束できる段階でございませんので、御了承願いたいと思います。  長官が昨年申されましたのは、暫定的なものを取りあえずという意味で御答弁をいただいたのでございまして、環境基準も引き続き作業をやっておりますが、国際問題等がありますので、なおしばらく時間がかかるということでございます。
  303. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は早急にやはりきめてもらわないと、どこのところでも一緒ですが、羽田でもあるいは伊丹空港でも付近の人たちがこの問題については非常にやかましく環境庁に申し入れ、また要望しておるわけです。長官のときまたお聞きすることにします。  あと一般住宅の防音工事についても要望しておいたのですが、これについての経過はどうなっておるか。それからもう一つはコースの下を移転させるということでありますけれども、移転していただくについての補償費が非常に少ない。今度移るときに非常に地価が高くて移れないというのが、移転補償費がたくさん余っておる、予算をとってもらってもそれができないという大きな問題のネックになっておるわけですが、この二点について航空局のほうから……。
  304. 丸居幹一

    丸居説明員 民家の防音工事につきましては四十七年度に千六百万調査費をお願いしておりまして、これが成立しましたらこの調査費をもって、どういう防音工事をするのが一番効果的か、またどういう範囲に民家の防音工事を行なっていったらいいのか、それからどういう防音工事をすればどういう範囲において何ホンくらい違うかというような点について調査をいたしまして、この調査に基づいてできれば四十八年度、必ず四十八年度にやりたいというように思っておりますが、できれば四十八年度にこれの予算要求をいたしまして、四十八年度から民家の防音工事に着手したいというふうに考えております。  それから立ちのき補償の問題でございますが、これは先生がおっしゃっておるように、立ちのきの問題につきましては、そこの買い上げられた土地の価格だけでなかなか引っ越しするいい場所がないというようなことが立ちのきのネックになっておることは事実でございます。そこでどうしても代替地をどこかにつくりまして、そこへ移っていただくということがいまできる一番いい方法だ、もっといい方法を考えたいというふうに思っておりますが、ただいまのところはそれが一番いいということでそういう方法でいたしております。なかなかこれもむずかしゅうございまして、紆余曲折いたしましたが、近くそういう代替地ができまして、少しまとまって越していただけるような方向に進んでおるという状況でございます。
  305. 岡本富夫

    ○岡本委員 この移転補償につきましては、やはり一ところにまとめてしまうということはできないですよ。だから大蔵とよく交渉して事実に基づいた移転補償をしてあげるということが大事でありますからこれを要求しておきまして、時間がありませんから次にテレビの聴視料の減免区域の拡大をしていただきたい。これは事実尼崎の武庫川地区なんかは一番航空機の発進のほうの離陸コースになっておる。ところが、そこが減免措置になってない。あるいはもう一つは、騒音電話ですか、これも伊丹のほうは少し入ったけれども、ここは入ってない、こういうことで私は片手落ちではないかと思うのですが、この点についての御意見をひとつ。
  306. 丸居幹一

    丸居説明員 テレビの受信料の減免措置につきましては、その範囲を騒音コンターによってきめるべきである、それが合理的であるということを考えまして、コンター図の作製を急いでおったのでありますが、各時点におけるコンターというのが一応できてまいりましたので、そういうものを中心にして、今度はそれに合わして合理的な方法に直そうというふうに考えておりますが、それを契機といたしまして、いままで減免しておったところをやめるというふうな方法はなかなかできませんので、その範囲を広げるという方向で検討していきたいというふうに考えております。いま先生御指摘の尼崎市は、着陸側は尼崎市の一部に助成を行なっておるのでございますけれども、今度は離陸側においても騒音の被害の度合によりまして、尼崎市の北部においても助成ができるかどうかという点について検討をいたしたいというふうに思っています。
  307. 岡本富夫

    ○岡本委員 それについて検討をするということは、騒音の大きさをはかり、どれだけ迷惑をかけているかということをあなたのほうで検討するのだと思いますが、ちゃんとすでに一〇〇ホンから以上のデータが出ているわけですが、そうすると検討するのは何を検討するのか。要するにその付近にも拡大できるように予算の検討をするのか、その点についてひとつ最後にお聞きしておきたい。
  308. 丸居幹一

    丸居説明員 おっしゃるとおりに、予算をにらみ合わせて検討をしたいという意味でございます。
  309. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、この予算はわれわれ相当やかましく言って伸びておるはずですから、ひとつこの点については前向きに必ずやるということに検討して、実行していただきたい。  最後に関西新空港については次の機会に聞くことにいたしますけれども、政務次官、ひとつこの大阪伊丹空港あるいはまた羽田も一緒ですが、航空機の騒音については相当困っておるわけです。まず基準を早くきめることが第一。それから対策ももっともっと強力に——最近環境庁の何といいますか姿勢というものは後退してきたように私、思えてしようがない。そうでないならばひとつ予算の施行も相当大幅なものをつけてあるのですから、あなたのほうからやかましく勧告もし、注意もして、ひとつ早急にやってもらいたいと思うのです。最後にそれに対する決意をお聞きして終わりたいと思います。
  310. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 騒音の基準につきましては先ほど局長から申し上げましたように、かなり国際的な問題でもありますし、むずかしい問題もありますが、委員の諸先生、非常に積極的にいま意欲をもってやっていただいておりますので、私どももできるだけ早い機会にこの基準をつくりたい、かように思います。  それから両空港の問題でありますが、これはいまお聞きのとおり運輸省も非常に熱意をもって協力していただいております。ただわれわれの——ことに伊丹の場合は、あの環境等から申しましてかなりきついことを要求しております。その直後直ちにということも現実には合いませんので、いま運輸省その他いろいろ努力してもらっておりますから、これに期待をいたしますと同時に、私どものところでも協力し得るものは十分に協力して、勧告どおり実現することを一日も早く実行してもらいたい、こう考えております。
  311. 田中武夫

    田中委員長 これで本日予定の質疑は終了いたしました。次回は、来たる十七日金曜日、午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会