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1972-05-11 第68回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 今澄  勇君    理事 大竹 太郎君 理事 河野 洋平君    理事 佐藤 守良君 理事 中村 弘海君    理事 丹羽 久章君 理事 後藤 俊男君    理事 宮井 泰良君 理事 渡辺 武三君       荒木萬壽夫君    奥田 敬和君       左藤  恵君    斉藤滋与史君       野中 英二君    浜田 幸一君       角屋堅次郎君    久保 三郎君       長谷部七郎君    松平 忠久君       沖本 泰幸君    土橋 一吉君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君  出席政府委員         水産庁長官   太田 康二君         運輸政務次官  佐藤 孝行君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         海上保安庁長官 手塚 良成君         海上保安庁次長 須賀貞之助君         高等海難審判庁         長官      早川 典夫君  委員外出席者         水産庁漁政部長 田中 慶二君         運輸省港湾局技         術参事官    竹内 良夫君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    伊庭 武男君     ————————————— 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     奥田 敬和君   横路 孝弘君     角屋堅次郎君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     唐沢俊二郎君   角屋堅次郎君     横路 孝弘君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海上交通安全法案内閣提出第一〇一号)      ————◇—————
  2. 今澄勇

    ○今澄委員長 これより会議を開きます。  海上交通安全法案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤守良君。
  3. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 実は私、昨日のっぴきならない用事で休んだので、昨日の委員会の各委員方質問の要旨をよく理解していないのですが、あるいは重複するかもしれませんけれども、御答弁願いたいと思う次第でございます。  六、七、八、九日と瀬戸内海区域視察をしたわけでございますが、実は回りまして意外に感じましたことは、漁業関係者から非常なる反対がこの法案について強いのではないか、このように思っていましたところ、原則的には賛成である、すなわち、少なくとも最小限ルールは必要である、ですが、沿岸漁業に対していままでの水産行政が非常に不十分で、貧困であるというようなことから、いろいろな要望があったわけでございます。こういう点につきましては、すでに長谷部委員からこの委員会視察報告があったかと思いますが、そういうことからしまして、私は、理想的に言いますならば、瀬戸内海とかあるいは東京湾等には大型船を入れないようにするのがいいのではないか、このように考えておるわけでございます。そういう問題を中心に、新全総とのからみ合いにつきまして質問いたしまして、そのあと基金問題等につきまして質問したいと思うわけでございます。私に与えられた時間は、実は急に関連で一人わが同僚委員がふえたものでございますから、一時間という時間でございますが、約四十分前後と思いますので、答弁はできるだけ簡明にお願いしたいと思います。  すでに皆さん方御存じと思いますが、昭和四十四年の五月三十日に新全国総合開発計画というものができたわけでございます。これは昭和六十年までの今後の日本のことにつきましていろいろ資料が整えてあるわけですが、特にその中の二七パージ、「第4計画主要課題」の中に「エネルギーの基地および流通体系整備」という項があるわけですが、特にその点につきましては、「石油については、その安定供給を確保するため、外洋に面した遠隔地に、超大型タンカーの入港可能な大規模原油輸入基地整備し、また、大量の石油の安全かつ効率的な輸送を図るため、石油パイプライン網の建設を推進する。」ということが実は書いてあるわけでございます。  また、運輸政策審議会で「総合交通体系に関する答申」が四十六年の七月三十一日に出ておりますが、その中で、一番重量な項目といたしまして、一七ページに「パイプライン等」という項目があるわけでございます。これは「総合交通施設整備計画」の項目の中でございますが、その中に「東京湾大阪湾等船舶輻輳が著しい港湾については、シーバースおよびCTS整備と同時併行的に原油パイプライン整備を行ない、外航タンカーの入湾規制を行なうべきである。」というようなことが実は運審答申されておるというようなことでございます。  大体ことしは——四十六年になりますか、四十七年になりますか、ちょっとはっきり記憶いたしておりませんが、約二億トンの原油が輸入される。この調子でいきますと、昭和六十年には約八億トンの原油が輸入されるのではないかということになってきますと、陸上輸送も非常に困難になってくるし、海上輸送も非常にむずかしいという場合には、パイプライン構想が浮かんでくるわけでございますが、実は経済企画庁も、あるいは運輸省も、この点非常に認めておるわけでございます。実は今度の海上交通安全法を出した場合に、いろいろな問題等ありますが、基本的には、超大型船は入れてもらいたくないという要望が強いわけでありますが、その意味におきまして運輸省でこの点につきましてどういう構想をお持ちか、一体どのように具体的にお考えになっているかということにつきまして、ひとつお聞きしたいわけです。
  4. 竹内良夫

    竹内説明員 いま先生のおっしゃいましたとおりに、新全総あるいは運輸審議会答申のとおりでございまして、狭水道であるとかあるいは船舶のふくそうする地域の外にやはりある程度シーバースCTSといいますか、集中的に油をためまして、そこからパイプで精製基地に運びたい、そういうような方向で進めるべきだと思いまして、現在運輸省といたしましてはそういう地点の調査を進めております。
  5. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 新全総の計画具体的資料としまして、国民総生産額が百三十から百五十兆円ということでございまして、これが昨年ドルショック等ありましたけれども、非常な経済の成長の伸びを考えまして、この手直しをいまお考えになっておるという状況でございまして、運輸省でも建設省でも経済企画庁でも、おそらく国民総生産額は二百兆円前後じゃないかということがいわれております。  それからまた、この「総合交通体系に関する答申」の資料を見ておりましても、最後のところに「輸送需要の予測(貨物)」という項がございますが、ここで特に国際輸送、これは十八億トンぐらい、その場合におそらく国内輸送というのは、%にしまして大体八から九%くらいだと思いますが、これ以下になることはないわけです。いま調査されたと言いましたが、具体的にどういう調査をされておるのですか。と申しますのは、早くしないと間に合わぬわけですね。その点につきまして、私は一番問題は特に東京湾だと思います。たとえば瀬戸内海を回ったうちで、水島航路など見ておりましても、一年に五百隻大型船が入る、一日に大体一・四隻と計算しますが、浦賀水道の場合は、一日に大体十五隻から二十隻くらい入る計算になります。たとえばタンカー一つとってみましても、昭和六十年になった場合に、二十万トンタンカーマラッカ海峡を一時間一ぱい通る、そのうちの半分は東京湾に入る、そうすると一時間半に一ぱい少なくとも超大型船が入る、ということになってきますと、その場合、これは実際漁業はできませんね。当然、東京湾の場合は、早くシーバース基地構想を実現してやらないとどうにもならないんじゃないか、このように思うわけでございます。その意味におきまして、どういうような地区からどういうような調査をされて、いつごろからこれを実施に移される予定かということを聞きたいわけです。
  6. 竹内良夫

    竹内説明員 先ほどの調査している個所は、東京湾瀬戸内海でございますけれども先生おっしゃるように、現在東京湾の年間の、港湾で取り扱っている貨物量が、私正確な数字は持っておりませんけれども、約四億トン程度でございます。四億トン程度といいますのは、戦前の最高の日本全体の貨物量に匹敵するわけでございますが、その四億トンのうら四分の一以上が油でございます。その油は、大型船原油が入ってくる。同時に、製品小型船で、ミズスマシのようにあっち行ったりこっち行ったりしているというような形でございますので、まず大きな船で持ってくる油を湾の外で受けまして、それをパイプラインで運ぶ。行く行くは製品パイプラインで運ぶことができますと、油の部分が非常に東京湾の中から負荷が減りますので、将来日本経済が非常に大きく発展いたしますと貨物がますます多くなる、それが、油が少なくなると、また受け入れることもできるというような形がございまして、油をパイプラインで受けることによりまして、東京湾大阪湾やあるいは瀬戸内海等の非常によいポテンシャルのところになおほかの貨物雑貨等生活必需品等が受け入れられるということもございます。危険を防止するというだけでなくて、そのような面からもぜひこれをやっていきたい。現在までに実は東京湾航路調査等をやっておりまして、航路調査等もこのパイプライン調査一緒にやっていきたいというふうに考えておりますが、現在、このパイプライン調査は、東京湾におきまして昭和四十六年度事業費で八千五百万円、瀬戸内海におきまして二千万円、それから昭和四十七年度、今年度の予定といたしましては、東京湾で六千三百万円、瀬戸内海で一千四百万円程度予定いたしまして調査を完了していきたいというように考えております。
  7. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 先ほど申しましたように、貨物量は、特に輸出輸入でございますが、その場合に三・七倍になる。約四倍になるわけであります。そうすると、船の計算でいきますと、船が大型化すると思いますが、最低三倍以上の船が浦賀水道に入港すると、現在一日十五はいなら、単純な計算ですが、四十五はいになるのじゃないか。四十五はいが二十四時間入ってきたら、何もできません。分に割った場合に、三十分に一ぱいだ、二十五分に一ぱいだ、そういうことになるかと思います。  そういう点を特に私は考えますと、やはり最小限ルールは必要である。また、この海上交通安全法というのは、ある意味では漁民の生命の安全を保持することにおいて必要であることはわかるのですが、日本全体としてのそういう基地構想を早くやってもらいたい。そうすれば問題は早く解決するのではないか、このように私は考えているわけでございます。いろいろ御努力されている姿はわかりますけれども、その点特にひとつなお一そうの御配慮をお願いしたい。  実は前からの私の持論の一つでございますが、去年の予算で、道路整備の第六次五カ年計画が十兆三千五百億円、そのうち財源が一兆円足りないということで、自動車新税特別会計で取りましてこれを配分することになったのは、御存じのとおりでございますが、そういう意味におきまして、海に関するそういうものを考えられないだろうか。と申しましても、たとえば皆さん方が幾らやろうと思っても、これはお金がなくてはできぬ。そうした場合に、そういうものを含めまして、たとえば海に関する運航税とかトン税とか——トン税は取っておられますけれども——というようなことで何か特別会計的なものをお考えになってその財源を補足するという形を考えるのが筋じゃないか、このように思っておるわけです。そういう点につきましてあなたの見解はどうでしょうか。
  8. 竹内良夫

    竹内説明員 現在二兆一千億円の五カ年計画計画しておりますけれども、おっしゃるとおり、財源が非常に大きな問題でございます。現在のところでは、大体税金によるもの、それと、たとえば民間の受益者負担という形をとっておりまして、先ほど先生のおっしゃいました大きな船等が港に入るような場合、その企業等から相当大量の——大量といいますか、負担を取るという仕組みはできておりますけれども、それにいたしましても、全体から見ますと微々たるものでございますので、先生のおっしゃるような財源を何とかして考えていくという点は、今後二兆一千億円をさらに大きくしなくてはいけないようなことを考えますと、必要なことでございます。私ども内々その点では勉強をしておる最中でございます。
  9. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 二兆一千五百億円というのは、第二次五カ年計画でつくられたわけですが、これがまたおそらく来年、再来年見直しされるかと思いますけれども、全体のバランスをとって考えた場合、財源は非常に足りないと思います。そういう意味におきまして、至急これを大臣とよく御相談されまして、少なくとも運航税か何らかそういうもので御配慮願いたい。ただいまスハルト大統領が来ておられまして、マラッカ海峡の問題が出ておりますが、国際的な問題もあるかと思います。そういう点を含めまして、あるいは外国船運航で取るということもあると思いますが、何かそういうものを講じないと、その計画の十分な実施はむずかしいのじゃないかということを感ずるわけであります。また特に、先ほど申しましたように、私は瀬戸内海の出身でございますが、瀬戸内海浦賀水道東京湾では非常な差がある。と申しますのは、一番緊急を要するのは私は東京湾ではないかと思います。そういう意味におきまして、第一番目に東京湾基地構想を早急に具体化して実施に移してもらいたいということを特にお願いしておきたいと思います。  それから、きのうですか、丹羽委員から御質問があったようでございますが、その中に水産庁長官とのやりとりがあったわけです。その場合に、結局被害は多少あるでしょう、これは何とか補償の形をとりたいと思うけれども法制局といろいろ話し合って、これが受忍の範囲内というような表現がありましたが、そういうことでどうも補償をするのはむずかしいというようなことで、航路上の漁ろうを禁止すれば補償の対象となると思うが、この辺についてはむしろ漁民の人が賛成ではないというようなことから、基金の問題が出ておるわけです。実は基金の内容につきましても、大体拠出額船主側から二十億から三十億、荷主側から十二億くらいの見通しであるということでありまして、三十二億から四十二億という非常に幅があるわけでございますが、この基金額は、ただぱっとつかみ金で考えておるのか、それとも、あるいは何回かの過去の被害実績等に基づきまして将来を予測しての数字的な根拠があっての金額ですか、その点についてお尋ねしたいわけです。     〔委員長退席渡辺(武)委員長代理着席
  10. 田中慶二

    田中説明員 いまお話しの、船主団体のほうから漁業者団体のほうにある程度の額を支出する、それは、今後この法律が施行される場合の協力を求めるというふうな形でそういう金額をお渡しする場合があることは、私どもも承知をいたしておるわけでございます。その額につきましても、現在のところ、昨日の運輸政務次官お話では、大体三十五億ないし三十七億程度、さらにそれをもう少し上積みするように考えていきたいというような趣旨のお話がございましたけれども、その額の算出基礎ということになりますと、これは非常にむずかしいわけでございます。また、そういう金額意味が、そういう協力に見合う、あるいはまた、言ってみますと迷惑料的な意味もございましょうし、そういうことで、実際の漁業被害額から算出するというようなことも非常にむずかしいわけであります。     〔渡辺(武)委員長代理退席委員長着席〕 また、いまこういう内湾におきます漁獲量というものは統計上出ておりますけれども、個々に新しくきめられます航路の中でどれだけの漁獲があったかということも、県のほうからはそういう推定量等をお出しいただいておりますけれども、これとても非常に問題がございます。そういうことでございますが、一応私どもといたしましては、内湾におきますそういう数字なり統計というふうなものから、その航路に占めます面積比等から出しまして、そこにどの程度、それぞれの漁業種類ごとに、被害といいますか、迷惑をこうむるか、ごく大ざっぱでございますけれども、そういうふうにして一体どれくらい漁獲量が減るだろうかというようなことを考えてみたことがございますが、これも、これがいいのかどうかという点になりますと、私ども確信が持てません。したがいまして、そういう点はそういう団体間でお話し合いがあってきまるべき数字だというように思いますが、私どもが、そういうふうなことで——ごく大ざっぱで、とてもこれがいいんだというような数字ではございませんが、大体そんなところで見当をつけてみますと、そういうふうな金額を、資本換算をいたしました場合に、一応まあその辺ぐらいの額かなというような感じもいたしておりますが、こういう根拠でこうなるとはなかなか申し上げられない問題でございます。
  11. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 実は私、きのうの委員会丹羽委員との質疑応答の簡単な要点、メモだけちょっと見せていただいたのですが、被害者が五万七千二百六十一人、こういう数字が出ておるのですね。そしてまた、たとえば三十五億にした場合に、この運営がどうされるかという問題、また、この金がたとえばそういう被害だけに充当されるのか、あるいはそれ以外にも充当されるのかというような問題もあるかと思いますが、大体この運営のしかたにも問題があるかと思います。でも、常識的にいえば、この三十五億——三十二億から四十二億の幅がありますが、その金は私は何とかして基金として、そしてこれが金利とかあるいは何か生んだ財源等運営していくという形になるんじゃないかと思います。そうした場合には、中をとって三十五億にしたとすると、金利年八分にしたとして二億六千万で、当然事務費等もかかるかと思いますが、そうすると、二億何千万かの金でこれが運営されるということになると、五万七千二百六十一人がその被害者であるという数字になりますと、何らか根拠がないというこういう数字は出てこないんじゃないか、こう私は思うわけです。と申しますのは、実は現地を回っておりまして、たとえば加害者不明の当て逃げとか、あるいは網を切られたとか、いろいろ聞きまして、いままでそのままになっておる場合が非常に多いわけですね。そういう意味におきまして、今度はそういうことによりまして、もちろん、この基金については特別の意見は出なかったし——反対意見も出ましたけれども、でも、やはり何らかのこの補償が出るんじゃないかという気持ちは多分に持っておるわけです。被害があったらすみやかにその被害を弁償してもらいたいという気持ちを持っておるわけです。その点を考えますと——私は、まあこの基金はいい制度じゃないと思います。何か漁ろう者皆さん方被害をこうむる、それを、国では出す金がないというようなことにおきまして、暫定的にこういう形でやむを得ないということでされたという、誠意はわかるわけですが——そうすると、そういう被害者の人数が出ておりますと、何か根拠があるんじゃないか。それからもう一つは、この基金運営されることによりまして出たもの、生んだものにつきまして、これがどういうふうに、いわゆるそういう被害者だけに与えられるものか、あるいはそれ以外のものにもこの資金は充当されるかということ、この点についてもう一回ひとつお願いしたいと思います。
  12. 田中慶二

    田中説明員 ただいまの、そういう金がどの程度金額になるか、あるいはそれをどういうような形で受け取るか、あるいはどういうふうに使うかということについては、それはまだ今後の問題でございまして、また、漁業者としてどのようにそれに対応するか、まだ確定をいたしておりませんので、私どものほうでは軽々に申し上げられないのでございますけれども、私ども考えておりますのは、そういう金額の授受がもし実現をした場合には、やはりそれを関係漁業者が直ちに、ことばは悪いのですが、分け取りをするというような形でなしに、お話しのような基金というような形に積んでおきまして、そういう基金も、金額からいたしますと、そういう被害があった場合、すべての補償立てかえなり、そういうものに充てるという金額にしては非常に少のうございます。したがいまして、私どもとして考えられますことは、一つには、そういう何か事故があって休業をした場合に対して、とりあえず見舞い金をお出しするとか、あるいはまた、そういう加害者がわかっておる場合は、これは民事上で追及をすべきものでございますけれども、従来漁業者の方にはそういうひまも金もないということで泣き寝入りになっておるのでございますが、そういうものの費用の立てかえをするとか、あるいはそういう取り立ての代行をそういう基金運用益でもってしていくということ、あるいはそういう民事上の追及をいたします場合のコンサルタントといいますか、弁護士さんでございますが、海事審判のそういう方をコンサルタントに招いて、従来泣き寝入りになっておったものを民事として取り立てをやっていく、そういうふうなことに役に立ててはどうかというのが、私どもの一応考えておるところでございますけれども、これはあくまでも漁業者皆さんが自主的におきめになることでございますので、いまのところ、必ずこうなるとは申し上げられないわけですけれども、私どもとしてあえて指導をしろということであれば、そういうふうな方向考えてみたいと思っております。
  13. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 私がなぜそういう金額をしつこく聞いたかといいますと、たとえば数日前、ジュリアナ号賠償請求額が新聞に出ておりましたが、四億六、七千万円でした。それで足りませんね。そしてあの問題については、おそらく、相手は外国船でございますので、時間も相当かかる。こういう場合にはどうするか。したがってまた、おそらくいろいろな点につきまして資金が足りない場合はどうするのかという問題も出てくるわけです。そういう点につきまして、先ほど部長さんはうまく逃げられた感がするんですが、当然おそらく部長さんたちに御相談あって、行政指導をされると思うのですが、そういう点につきましても特に私は御配慮願いたいと思います。それから特に漁ろう船の場合、事故等がありまして、たとえば海事審判所ですか、そういうところへ行く場合も、非常に時間がかかる。何回も行くと、一日何千円収入が減るわけです。そういうようなことで、非常にいやがっている。だから、海難防止協会にそういう点が出た場合には、そういう手間をかけずにすみやかにそういう被害金が払われるというような形も特に考えていただきたい。このように考えているわけでございますゆえ、いいとは思いませんが、やむを得ない暫定措置としまして——いろいろな委員から質問があったと思いますが、損害補償制度とか、そういう形をぜひつくってもらいたいというふうに考えておりますが、暫定措置としてこれはやむを得ない、こう思いながら、そういう意味におきましては特に御配慮をお願いしておきます。  実は、あと海上保安庁長官にちょっとお尋ねしたいわけでございますが、今度回ってみまして、保安庁長官も一日おられて、あと次長さんが一緒に回られたわけでありますが、私、一番問題は、来島海峡における夜間航行禁止の問題、あれは航路標識を十分早く整備しないとこの実行はむずかしいんじゃないか。それからもう一つは、船の上限ですね。これはあとで触れますが、本四架橋の高さというものは六十五メーターと私は理解しておるわけでございます。そこでおのずから瀬戸内海には上限ができたという気がするわけでありますが、そういう意味におきまして、上限がどうなるのかということにつきまして、長官お話を聞きたいと思います。
  14. 手塚良成

    ○手塚政府委員 夜間航行の問題でございますが、巨大船についての公聴会におきます皆さんの御希望といいますか、御期待といいますか、この夜間航行をできるだけ禁止してもらいたいという点につきまして、従来われわれどもで一応検討いたしておりましたのは、やはり方針としてはそういうような方向が望ましい、つまり、ああいう巨大船の衝突あるいはそれに伴う災害という問題を考えますときには、夜間という時期の航行は適当ではなかろうというふうに思うわけです。ただ、やはり入出港した後の荷役等の関係からして、どうしてもそういうことにならざるを得ないというようなものもあるようであります。今度の法案によりますと、そういった巨大船についての時間調整ということをやるたてまえになっておりますので、そういった船側のサイドの要請、それに漁ろうを主としましたところの調整の問題、その辺を、やはりできるだけ夜間を避けるという方向によって調整の方針をとっていきたい、かように考えております。  それから、環境整備の問題についてでございますが、これは一般的な灯台を含めての航路標識全般、それから今度の法案自体に伴いますところの航路を明示しますようなブイ、あるいは右側航行、一方通行、右寄り通行というようなことを表示しますようなブイ、これの整備という問題、それからそういうものがどういうふうに設置をされておるかということを、外国船を含めまして、一般にわかるような海図等の整備の問題、いろいろあるかと思うわけです。これらにつきましては、やはりこれだけのルールを確立する上からには、こういうものについては従来以上に力を入れるべきであるというふうに思っております。さしあたりの航路の明示をしますためのブイの設置、これは現在十一航路につきまして百三十七基のブイを必要といたします。現在置かれておるものも一部ございますので、それを移設するというようなこと、それから、この実施が御承知のとおり一年後ということになっておりますから、その間にやらなければいけませんので、一部簡易なもの等をやりまして、実施の四十八年の初めまでにはそういったものはとりあえず整備を完了するという予定にいたしておりまして、その後において、この簡易なものとか暫定的にやりましたものの完成をいたしたい。合計金額で約三億余の金が必要かと思います。これは航路標識整備費という大ワクの中で、順位をつけまして、必要年度までにやる。最終完了、いま目標にしておりますのは、四十八年度で完了いたすということにいたしております。さしあたり、施行直後においてはこれは間違いなくやれるように考えております。  それから、もう一つの御質問の、本四架橋の橋げたといいますか、橋脚の高さとの関係、これは大型船上限でございますが、上限の問題は、再三皆さん御議論になるとおりでございまして、やはり大型船の入域制限という問題は、私どもはぜひこれはやるべきであるというふうに考えております。これを具体的にどういう点できめるかということは非常にむずかしい。もともと、大型船がどうしてこういうふうに入ってくるようになったかということは、御承知のとおりのやはり大きな産業立地政策という背景があるわけでございます。そういう立地条件もそれぞれの内湾航路等によっていろいろ違うわけでございますし、また、入る船の性質等もいろいろ違います。そこで、一律のきめ方というのももちろんあるかもしれませんが、そういった具体的な状況を反映しての個別のきめ方というのもあります。それから、現在航行しておる現実の姿も、浦賀あたり、東京湾あたりでは、いま一番大きいのが二十五万トンぐらいのも入っておるという現状もあるわけでございますので、これらのものも総合いたしまして、どの辺の上限にするか、これはひとつ各方面の御意見も十分尊重して、これから具体的にきめていきたい、かように考えております。
  15. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 いま航路標識等聞きましたが、上限の問題につきましては早く結論を出していただきたいということを考えておるわけでございます。  それで、私、実は現地を回っておりまして、海上保安庁の性格でもあるかと思いますが、たとえば漁ろう船が密漁して海上保安庁にしかられるというようなことから、体質的なものもあるかと思いますが、どうもきめのこまかいサービスというものがいささか欠けておるのではないかという点があるのではないかと思います。そういうような意味で、漁民の立場も十分尊重していただきまして、この法案施行後は十分きめのこまかいサービスをしていただきたい。漁ろう者気持ちを十分くんでいただくような行政をしていただくということで特に私は配慮要望しておきます。  それから、最後でございますが、本四架橋公団、実は私は選挙区が尾道でございますが、尾道−今治に瀬戸内海大橋というのが大体来年の夏ごろから着工に入るという予定になっておるわけでして、明石−鳴門、児島−坂出、尾道−今治、三本の橋がいよいよかかるわけでございますが、それにつきまして、その工事に支障があるかないかということでございます。この点につきましては、実は監理官と海上保安庁とで十分連絡をとられると思いますが、航路またはその周辺海域については、法の第二条及び三十条第一項第一号の規定により政令で定めることとなっておるが、これら航路が指定される東京湾、伊勢湾、瀬戸内海では、東京湾横断道路、伊勢湾架橋、本四連絡橋といった、国土開発上欠かすことのできないプロジェクトがあるわけです。これらの計画との調整が問題となってくると思うわけですが、政令で橋脚地点が航路及びその周辺海域に指定されると、架橋がむずかしくなるのではないかというふうな観点も出てくるわけでございますが、その点につきましてひとつ海上保安庁の見解をお聞きしたいわけであります。
  16. 手塚良成

    ○手塚政府委員 航路と架橋の問題でございますが、いま具体的に航路の幅はどういうふうにきめるかということは、これは省令に譲られておりますので、確定はいたしておりませんが、大体とり得るところ、これは地理的条件にもよりますが、とり得るところは、一方通行の場合には千四百をとりたいというふうに思っております。そこで、これがとれない航路ももちろんございますから、それよりもかなり狭いというところはもちろんあります。そこで、いま架橋のスパンのお話を現段階において聞いておりますところは、最大千五百というようなスパンが可能といいますか、考えられておるように仄聞をいたしております。そういうことになりますと、一応数字的にはその中にはまり得るというふうに思うのですが、これはさらに技術的に詰めらるべき問題だと思います。そういう具体的な数字は別にいたしましても、やはりこの架橋ができますと、いろいろな意味において現在の船の航行という問題とは調整を要すべきものが出る、潮流等もあるいは一部変わってくるという問題もございますし、また、そういう千四百の中には入りますけれども、今後のふくそう度合い等を考慮いたしますと、その橋のところで非常にたまりができるというようなおそれも常識的には考えられるというようなことなどもありまして、いろいろ問題はあるかと思うのですが、やはり橋そのものをかけるという国家的事業でもございますし、一方の安全という問題との調整をやはり十分考えなければいかぬというふうに思っております。いまおあげになりました三十条等々の関係におきましては、これはやはり一応許可というたてまえにはなると思いますが、そういった長期にわたる大事業でありますので、事前に十分打ち合わせまして、単なる許可でどうこうということではなしに、そういう相互の実態に即応した調整をしていきたい。現段階におきましても、そういう意味委員会というものがございまして、いろいろな角度からの検討が続けて行なわれておりますので、そういうものにおいて十分に審議をいたしたい、かように考えております。
  17. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 特に先ほど長官から出ました橋脚が問題になってくると私は思うのです。そういう意味におきまして、監理官と海上保安庁といろいろ折衝されておると思いますが、その折衝されておる過程におきまして、いま長官が、配慮するというようなことばで、明確に、心配ないということばは言ってないわけですが、どうですか、心配なくうまくいきますか、ちょっとその点を伺っておきたい。
  18. 伊庭武男

    ○伊庭説明員 お答えいたします。  いまたびたびお話もございましたように、本四架橋という事業は、実はまだ日本でも類のないような大規模な工事でございます。橋をつくりますについては、どこに橋の立脚の地点を置くか、それによりまして橋脚の長さというものも相当違ってくるわけであります。いま長官お話にございますように、千五百メートルぐらいのスパンということで現在は検討いたしておりますが、これがまた地点によってはもっと長くなることもあるかもしれない。ただ、そうなりますと、それが技術的に可能かどうかということが非常に問題になってまいります。可能でありましても、非常に多額の資金を要するということになりますと、これは技術的に可能であっても、資金的には不可能だということになります。それで、現在、海上保安庁といろいろ打ち合わせをいたしておりますが、われわれが建設省ないし公団として考えております現在の技術的なスパンの長さということで、航路あるいは周辺海域等をおきめいただくときに十分お話し合いをして、その部分の御了解はいただけるものというぐあいの話し合いはいたしております。ただ、その橋脚をつくりますときに、それが航路内には当然入りませんが、航路外の周辺地域になりましても、工事を行ないます場合には、当然、ある期間その工事をやりますので、航行安全上のいろいろな問題が出てくるかと思います。それにつきましては、海上保安庁その他関係協会等等の十分御指導をいただきまして、十分の航行安全の配慮はもちろんいたす所存でございますし、それについてまた今後とも御指導を仰いでまいりたいというぐあいに考えております。  以上でございます。
  19. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 いまの監理官の話で、大体心配ないような感じがするわけですが、海上保安庁長官におきましては、特に実はこれが中国、四国のほんとうの夢のかけ橋というわけでございまして、たいへん日本の産業にも寄与する面大であると思いますので、そういう意味におきまして、いろいろな問題点が多々あるかと思いますけれども、最大限、法の解釈というのは運用が非常に幅広いわけでございますし、たとえば明石なんかにつきましても、これはたしか千四百メートルでございましたか、そういうようなことで、航路幅その他についても問題があるかと思いますが、その点につきましては格段の御配慮を願いまして、ひとつ三本の大橋が順調にできますように御配慮をお願いいたす次第でございます。  それとともに、私は、将来の日本は特に油の輸送につきましては、海上交通も陸上交通もなかなか困難になってくるというようなことから、パイプライン構想というのは非常に重要視して、自民党部会においてもその一員として推進しているところでございますが、実はパイプラインを敷設する場合に、航路を横切る場合も多くなってくると思うのです。たとえば私が知っている事例では、京浜パイプラインというのがありますね、それが横浜から川崎へ航路を横切って敷設するということにつきましては、やはりこれもこの問題にひっかかってくるということでございますが、そういう意味におきましていろいろな点があると思いますけれども、これもできるだけひとつ格段に配慮していただかないと、日本パイプライン構想というのはなかなか生きてこない、このように考えておるわけでございますが、それについて長官のお考えはどうでございますか。
  20. 手塚良成

    ○手塚政府委員 今度の法案の中の三十条というのが、いまおっしゃったような問題の際の適用条項になるかと思っております。内容が、前から言われておりますような大型船の入域の制限などと密接な関連を持っておる内容でございまして、そういうものを実施する上、あるいは将来のそういう輸送機構の合理化というふうな観点からも、重大な問題でございます。これは、かりに、たとえば工事中一時的に航行制限の問題が起ころうとも、そういう作業には支障がないような進め方をすべきではなかろうかと思います。現在十一航路の状態を見まして、その全部に影響があるとも思いませんけれども、ありそうな航路を取り上げましても、でき上がった後における航行そのものには影響はない。工事作業中が非常に問題かという感じがいたしますが、その作業中についての扱い等については、十分この工事の実態に即応するやり方をしなければならないというふうに考えております。  なお、この法案の中に、臨時的にいろいろな交通整理をするということの条項が条文的に入れてございます。たとえば、そういう工事中に、ここできまっております特殊航行とはこういうような航行をとり得る、つまり、一方通行なり片側通行しておるのを、極端に言いますと逆をやり得るというようなことを臨時的にする権限を海上保安庁長官に与えられるようなことが法文にございますが、そういった法文の活用といいますか、現実に適用されるというのは、まさにそういったパイプラインの工事中、あるいは、先ほどお話の出ました本四架橋公団の工事の場合というようなことになっておりまして、海運の運航全体をやはりそういう工事の完遂に円滑化を期せられるように運用をしていきたい、かように考えております。
  21. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 長官の御答弁の趣旨で、ぜひ日本パイプライン構想がつぶれないような形においてできますことを私は特にお願いしておきます。  実は私、委員長にちょっと御了解を得たいわけですが、私の関連で浜田君が十一時に来るというのがまだ来ないわけでございますが、彼も実は特に浦賀水道東京湾を控えておりまして、若干の質問を試みたいという気持ちを持っておるわけでございます。そういうようなことでありまして、私の質問はこれで終わりまして、浜田君が来ましたら、次の質問者が済みましたあと、十五分間の質問を許していただければたいへん幸いと思いますが……。
  22. 今澄勇

    ○今澄委員長 はい、わかりました。
  23. 佐藤守良

    佐藤(守)委員 それじゃこれで私は質問を終わります。
  24. 今澄勇

  25. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 数年来非常に問題になっておりました海上交通安全法案が本特別委員会に付託をされまして、審議もいよいよ大詰めにきておるわけでございます。  私は、この特別委員会に付託されてから、委員各位の非常に熱心な御努力によって、あるいは東京湾であるとか、あるいは瀬戸内海であるとか、そういう今回の法案の適用海域あるいは適用航路の該当地区に直接参られまして現地のなまの声を承って、それを審議の中で生かして熱心な議論を展開されておる経過については、十分承知しておるつもりであります。ただ、この法案は、昭和四十二年以来非常に問題になってきた経緯等もありまして、その後の委員会の審議でも行政当局から明らかにされておりますように、直接法案の担当であります運輸省あるいは海上保安庁、さらに漁業関係で直接関連のあります水産庁あるいは関係団体というところで、寄り寄り法案の是正について熱心な議論が展開され、ある部分については当初案よりもある程度修正変更されて本法の提案になったという経緯についても、大綱については承知しておるつもりでございます。しかし、本委員会の中で、与野党でもずいぶん党派を越えて議論が展開される中の問題点の幾つかというのにはまだ問題が残されておる点が多いのでありまして、これは私、国会対策の関係の仕事をやっておるために十分なおぜん立てのできなかった点もありまするけれども、本来ならば、本委員会の審議の経過を十分勘案して、所要の問題点については本委員会の修正でりっぱなものをつくり上げるという姿勢が、私自身としては望ましかったと思うのでありますけれども、何せ国会の会期末の状況を迎えておるというふうなこと等もあり、また、本特別委員会そのものの議論としては相当深められてきたということで、きょうは本特別委員会において採決が行なわれるという時点に来ておるわけであります。  そこで、委員長に若干質問の関連でお伺いしておきたいのでありますが、きょうは最終段階でありますけれども、該当の運輸大臣あるいは私の質問に関連のあります農林大臣、これは、他の該当委員会の関係で、質問の時間中に出席が可能なのかどうでしょうか。
  26. 今澄勇

    ○今澄委員長 角屋委員にお答えします。  農林大臣については、ほかの委員会へ農林大臣は出ておるので、角屋委員の了解を得ておるからということで、出席がありません。それから運輸大臣については、総理とともに決算委員会に出ておりますが、これは十二時三十分より当委員会に出席するという連絡がありました。
  27. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そうすると、運輸大臣への質問は若干残させてもらってよろしゅうございますか。
  28. 今澄勇

    ○今澄委員長 あとで運輸大臣に一括して問題を残してください。
  29. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林大臣は参議院の農林水産委員会の土地改良法の関係があり、できれば若干の時間でもということで私希望しておいたのですが、きょうは六人からの質問があるからという経緯もあって、その点はあらかじめ私も事情については承知をしておるわけでございます。したがって、運輸大臣御出席の際に質問することにして、若干の点についての質問は保留するということにいたしておきたいと思います。  そこで、最初に、これは運輸省関係、水産庁関係両方から簡潔に、四十二年当時の原案と、今日提案しておる原案の改まった点をそれぞれの立場から御答弁願いたい。
  30. 手塚良成

    ○手塚政府委員 前の原案におきまして、第一は、この法の目的には、現在御審議願っておりますのは航行の安全ということをたてまえにいたしておりますが、これに航路の円滑化をはかるという要素が入っておったと思います。その円滑化を削除いたしました。それから法の適用海域の範囲でございますが、この適用海域の範囲を今回のものは縮小いたしております。たとえば漁港区域あるいは一般船舶が通常航行しない海域等を適用海域から除外するという問題。それから漁船、漁ろう中の船が巨大船を避けるという場合に、停留船舶は、これは従来のものは一般の場合にも、巨大船のみならず、ほかの船をも避けるということになっておりましたが、今度は巨大船だけを避ける。こういうような停留船というものの避航回数を少なくする。あるいは速度制限という問題、あるいは航路航行義務というような規定、これは新たに挿入するというようなこと。それから漁具の設置等の行為の場合に、軽易な行為としての工作物、工事、作業等の中から、そういうものについては規則の対象から除外するというような、この法文でいいます三十条、三十一条における本文ただし書きを新たにつけた。非常にこまかいことがございますけれども、大きな骨子はそういう点がもとの原案とは変わっておる点でございます。
  31. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 ただいま海上保安庁長官から御答弁があったわけでありますけれども、私どもの主とした関係で申しますと、第一条関係の適用海域の問題、それから第二章の第二節及び第三節でいわゆる漁ろう船等の特例があるわけでありますが、従来の案でございますと、漁ろう船ということで、ここでいう漁ろう船というのは、網とか、なわ、トロールによる漁ろうに従事しておる漁船、いわゆる航行不自由船が対象になっておるわけでありまして、これについては航行巨大船に対する避航義務のみがかかって、それ以外の漁船につきましてはすべて避航義務がかかるということになっておったわけでありますけれども、この点につきましては、これまた、ただいま海上保安庁長官から御説明のございましたように、停留している場合には、航路に沿って航行している船舶に対する避航義務を課さないということで、停泊している船舶、漁船につきましては、漁ろう船は別でございますが、それ以外の漁船につきましては、巨大船に対する避航義務だけが——と言うとちょっとあれでございますけれども、課せられたということで、むしろこの点にづきましては改善が見られた。  それから第三十条及び第三十一条の工事、作業等の規制の問題でございまして、これまた「通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定めるもの」については適用を除外する、この際運輸省令で定める漁具の設置その他の漁業を行なうために必要とされる行為というものは、特に支障のない限り、許可あるいは届け出の対象から除かれるというような点、こういった点がおもな点だろうというふうに考えております。
  32. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これまでの本特別委員会の各委員諸君の議論の中でもいろいろ出ておったわけでありますが、私、四十三条にわたる本法全体を見ておりまして、海上交通の安全をはかるという大前提は、もちろんわれわれもこれを了承しなければならぬ立場でありますけれども、要するに、第二条でいわれておる巨大船、長さ二百メートル以上の船舶ということになっておりますが、本特別委員会でも上限の規制という問題が議論として出ておりましたけれども、いわゆる巨大船優先主義というものが本法の中でずっと貫かれておる。もちろん、巨大船というのは、航行の場合には小回りがきかない、そういうことから、巨大船に対する避航義務というのは一般船舶あるいは漁ろう船等も負わなければならないということは、常識として考えられますけれども東京湾あるいは伊勢湾、瀬戸内海の現状でも非常に船舶が錯綜しておりますが、今後これがさらに錯綜していくということが最も大きな問題の一つになる。巨大船についてもっと将来展望に立ち、段階的な巨大船の入港についての規制というものが本法の考え方の中で明らかにされるのが本筋じゃないか、こういうふうに基本的に考えておるわけであります。それは、今後そういう事態の進展に即応して法改正等をやろうとするのか、あるいは当面そういう考え方を立法として打ち出して、その処理については段階的にするということまでなぜ踏み切り得なかったのかという点について、海上保安庁長官から御答弁願いたい。と申しますのは、これは全然性格は違いますけれども、たとえば公害対策基本法の場合、あるいはそれに関連する関連立法の場合は、工場立地でどんどん環境が汚染されていく、それに対して環境基準というのを設ける。これは一挙にそこに到達しないまでも、段階的に公害発生源に対して規制をきびしくしていく、全体として環境基準を整えるという考え方を出しておるわけですね。これは陸上交通でも海上交通でも、交通の安全をはからなければならぬという大前提に立って考えます場合に、巨大船についてもこれを上限なり何なりで規制して、かくかくの航路なりあるいは海域に入ってはいかぬというきびしい規制、いずれはそういう問題をやはり考えていかなければならぬ。立法論としてもそういう考え方をやはり大前提にしなければならぬ。そういう問題は立法の過程でどういうふうに議論されたか、あるいは今後の問題としてどう考えておるのかという点をひとつ答弁を願いたいと思います。
  33. 手塚良成

    ○手塚政府委員 巨大船、超巨大船と申しますか、これの入域制限の問題につきましてはたいへんいろいろ議論が多かったわけでありますが、まず、これの問題は、やはり船そのものをとめるとめないというだけでは事が済まない、つまり、こういう船が入らなければならないという背景があるわけでありまして、これはもう御承知のとおりで、臨海工業地帯におけるああいった製油所が多数でき、それのまた製油能力の増強、増設が行なわれるという現状、その他多数の工場のああいった立地された姿が、今回問題になっております内湾にあるわけであります。そういうものとの関連をやはり考慮してこの入域制限問題を処理していくということが一番大事であろうと思います。  そういう観点でまいります際に、やはりいまの段階説的なお考えで将来の問題としてこれが制限をすべきだと思うのですが、それをやるやり方、あるいはどういう限度、あるいはどういう場所からやるかというようなこと、これはやはり総合的な施策が非常に必要であろうと思います。これは一海上保安庁だけでできる問題ではございません。関係各省、関係の向きが非常に多数あるわけでございますので、いまの段階的に方針を示しながらやるというのは、一つのやり方の中でとらるべき方策かと思います。また、制限にいたしましても、航路によって、つまり、その背景になります工場地帯の実情等々を考慮しまして、航路別の制限というような問題もあるかと思いますし、また、超巨大船といいましても、から船のときはどうなんだというようなこまかい議論も出てまいるということもございます。あれやこれや総合的に検討する必要がございまして、いまのような段階説も、その中に織り込まれる一つの材料とは十分考えますが、そういう問題をひっくるめてひとつ関係各省との間でできるだけ早急にそういった方針の実現方に進めたいというのがいまの考え方でございまして、直ちにこれを法案の中に規定として盛り込むというのにはいささか時期尚早ではないかというので、ただいままで進めてまいったわけであります。
  34. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そういう巨大船優先主義の前提というものが、本法の現時点の提案の姿勢としてあるということが当然ございますから、したがって、法案の中のたとえば規制等の関係から見ましても、第二十二条の巨大船等航行に関する通報の問題、あるいはまた、巨大船等に対する指示の関係の問題、さらには、いわゆる避航義務との関係では、第三条第二項の、航路における一般的航行に関連をしての巨大船に対する避航の問題、あるいは「航路ごとの航法」の中での第十二条第一項あるいは第十四条第一項、第三項、第十七条第一項、第二項、第十九条第二項、第三項、第四項というふうな関連のところで、いずれも巨大船まかり通るという考え方に立っているわけですね。私は当初申し上げましたように、やはり立法そのものの大前提として、先ほど言ったような考え方が一つきちっとあって、そして適用海域あるいは適用航路別に実態に即してどうするかというふうにやることが、海上安全をはかる基本的な立場から、より正しいのではないか、基本的にそう思う。これは今後の問題としては、やはりそういう姿勢の転換ということが当然考えられなければならぬ。これはこういう海域、航路漁業操業をしておる者からいえば、巨大船の運航はどんどんふえていく、あるいはそれが自在になされる、そうして漁業その他において該当者は影響を受けてくる、場合によっては当たるものが出てくる。     〔委員長退席佐藤(守)委員長代理着席〕 あるいはまた、水質汚濁の問題の被害が起きてくるということになると、なぜそういう巨大船等についてもっときびしい規制をしないのか。そうでなくても、東京湾にいたしましても、過般新潟におきましてもそうですが、ああいう大事故がときどき起きる。それが現実に満載の中でなされておったらどういうことになるのかという不安もあって、これは単に巨大船だけではなしに、危険物搭載船の関係の問題もあわせてお伺いしたいのでありますが、この危険物搭載船については、これは立法的には、あとのほうの二十二条一項の二号のところで危険物搭載船というのが出てくる。これは現実論としては、危険物搭載船であり巨大船であるというものも当然出てくるのじゃないか。結局、巨大船に関することが二十二条までの間にずっといま読み上げましたように出てまいる。初めて二十二条で危険物搭載船というものが出てくる。本来ならば、海上交通安全という立場から見れば、第二条の定義のところで、危険物搭載船も、ちゃんと、こういう定義でござるということで書いて、そしてあと、海上交通安全のための必要なところで、単に巨大船だけではなしに、危険物搭載船の問題についても、質的な交通安全の適正をはかるという立場から、もっと該当条項についての必要な規制措置がより強化されていいんじゃないかという感じも率直に持っているわけでありますけれども、ちょっとお伺いしたいのは、巨大船というのは、長さ二百メートル以上ということ。危険物搭載船の場合は、ここにも書いてありますように、「原油、液化石油ガスその他の運輸省令で定める危険物を積載している船舶で総トン数が運輸省令で定める総トン数以上のものをいう。」こういうことで、トン数であれしておるわけですけれども、実際は危険物搭載船であり、しかも巨大船に該当するというものが出てくるわけでしょう。どうですか。
  35. 手塚良成

    ○手塚政府委員 ここで危険物という内容が法定されておりません、法律できめられてはおりませんが、これは、現在あります法制の中で危険物船舶運送及び貯蔵規則というものがございまして、その中に約十二カテゴリー、千二百種類ぐらいがきめられております。そういったものを運送しておる船といたしましては、いわゆるタンカー原油輸送しておりますのがやはり一種の危険物でございまして、これが船の中では非常に数も多いし、いま先生御指摘の巨大船と同じものということになるわけでございます。したがって、いま御指摘のような危険物を積んだ巨大船というのがあるということになります。これは数も多いし、大きさも大きいということは事実でございます。
  36. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そうすると、法の運営としては、長さ二百メートル以上という船舶、これに該当する場合は、後ほど出てくる二十二条の危険物搭載船——危険物搭載船については、危険物搭載船の該当のあれが出てきておる。結局、危険物搭載船であり巨大船に該当するものについては、先ほど読み上げた第三条第二項以下第十二条、十四条、十七条、十九条の関係については、当然これは巨大船とみなして、いわゆる巨大船に対する避航という形で運営される、こういうふうに理解していいのですか。
  37. 手塚良成

    ○手塚政府委員 いまの御趣旨のとおりでございます。まず巨大船ということで適用条項は全部かかってまいります。あそこで危険物船としてあげておりますところの適用条項としては、そういう標識を掲げるということが一つと、それから航路の航行予定時刻の通報義務というものを課す、そのほか間接的な関連条件としては、海難事故等におけるところの必要な応急措置をとれというようなこと、これはほかの条文にもございますが、そういうような条件があると思います。要するに、標識、それから航路航行予定時刻の通報義務、こういうものがあると思います。したがって、これは全部かかってまいります。さらに巨大船は、巨大船にかぶるものとして、当然、いまおあげになった前からの条項は全部かぶってくる、こういうことでございます。
  38. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そうなりますと、これは技術的な問題になりますけれども、第二十七条「巨大船及び危険物積載船は、航行し、停留し、又はびよう泊をしているときは、運輸省令で定めるところにより燈火又は標識を表示しなければならない。」こういう標識表示の義務があります。この場合、両方にかかる場合の該当船は、灯火または標識の表示は実際上の問題としてはどういうやり方をやるのですか。
  39. 手塚良成

    ○手塚政府委員 危険物積載船のそういった灯火、標識について、これは今後確定する省令できめることになりますが、一応考えておりますのは、巨大船というものの灯火は、全周を照らす紅色灯火を三灯垂直線上に連掲、標識については、黒色円筒式の形象一個をつける、それから危険物積載船につきまして、灯火としては、全周を照らす紅色点滅灯一個をつける、それから標識としては、紅旗一流をつける、先ほどの原油輸送する巨大船はこの両方を併用してつける、こういうことになります。
  40. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、先ほど来の質疑で明らかなように、危険物搭載船であり、同時にそれは巨大船でもあるという場合のケースが当然考えられるわけですけれども、危険物搭載船については、いま海上保安庁長官の御答弁にもありましたように、第二十二条の関係、あるいは「巨大船等に対する指示」の二十三条の関係、あるいはまた、「巨大船及び危険物積載船の燈火等」の二十七条の関係、さらに、先ほどもちょっと答弁にありました「海難が発生した場合の措置」としての三十三条の関係、これが危険物搭載船該当の直接のところだと思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  41. 手塚良成

    ○手塚政府委員 お説のとおりでございます。
  42. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、この法文の全体として、危険物搭載船も含め、あるいは巨大船の優先主義をどのようにチェックするかという問題も含めて、具体的にどこをどういうふうに直すかということについては、これは本日の時点までにきちっとした成案を得るに至っておりませんが、海上の交通安全という立場から見ると、先ほど来の巨大船の関係あるいは危険物搭載船の関係程度の規制で、はたして現状においてもなおかつ十分であるのかどうかという点は、率直に言って、私は疑問を持っているわけであります。いずれにしても、そういう前提の問題は、これは議論だけで終わってもいけませんので、次の質問に入ります。  第一条の適用海域、及び第二条の航路の関係の問題で少しくお伺いしたいと思うのですが、いま伊勢湾の関係該当の海域になっておりますけれども、伊良湖水道の場合、きのうも若干関係者にはあらかじめ申し上げておきましたが、航路拡幅問題というのが運輸省第五港湾建設局でいま検討されておりまして、これが愛知、三重の関係漁協で非常に大きな問題になってきておるわけであります。伊良湖水道というのは、魚の魚道としても、あるいは漁業資源その他の立場から見ても、非常に重要なところでありまして、そこの伊良湖水道に関連するコズカミ礁あるいはシモフサ礁、丸山出シ、朝日礁、四つの岩礁のところ、いわゆる伊良湖水道の拡幅のためにこれに対して手を加えたいという検討が進められておるやに聞いておるわけですが、この問題も含め、運輸省として、いまの該当の十一航路の中でもそういった航路拡幅問題あるいはこの漁業との関連という問題がどういう段階のブランになっておるのか。過般、野党の渡辺委員のほうから、浦賀水道質問が、第三海堡の問題について展開されておりましたけれども、その問題も含めまして、航路拡張問題についての今後のプランについてまずお伺いしたいと思います。
  43. 竹内良夫

    竹内説明員 伊勢湾の入り口であります伊良湖水道につきましては、おっしゃるとおり、非常に事故も多うございます。だんだんと船の量も多くなりますので、これの改良につきまして現在調査をしております。第五港湾建設局を中心にいたしまして、昭和三十六年度から継続してやってまいりましたけれども、四十六年度におきまして八百五十万円、四十七年度におきまして六百五十万円の調査費用を投入いたしまして、現在調査を継続しております。伊良湖水道だけじゃなく、他の航路につきましては、東京湾航路瀬戸内海に関しまして備讃瀬戸、来島海峡、そのほか関門海峡につきまして調査をやっております。備讃瀬戸とか関門航路につきましては、現在改良の工事を施行中でございます。
  44. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは新法に伴うところの漁業被害についての、いわゆる国が責任をもって損失補償すべきでないかという議論については、過般来しばしばやられてきておるわけですけれども、同時に、交通量の増大に伴っていわゆる航路の拡幅問題というのが現に出ておるし、これからもそういうものが出てまいるということになってくるわけです。ただ、漁業者からいたしますと、単に航路が岩礁等を爆破して広くなればいいんだという問題だけでなしに、そこは魚の住みかになっておるし、あるいは魚道との関係があるし、それが大きく変更されるということになったら、それこそ、航行の場合の避航によるところの漁業制約の問題もあるけれども、根本的に漁業資源の問題として大きな修正が出てまいるということだと思うのでありますが、一体こういう問題を、第四次港湾整備計画等を進めていく場合に、水産サイドの問題として、両省の間あるいは両局長の間でどういう協議のもとにそういう問題が具体化されているのかという点は、水産庁の立場からどうでしょうか。
  45. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 運輸省の答弁にもございましたように、四十六年度から港湾計画の一環として調査をしておるということは、私どもにも連絡ございましたので、存じ上げておるわけでございます。ただ、先生も御指摘のとおり、ここの場所は、三重県では小浜漁協以下十九漁協、愛知県では豊原漁協以下十一漁協が瀬付き魚の一本釣りの好漁場であるということで、実はそれに非常に依存をしておるというようなことで、調査そのものにも反対をしておるという実情になっておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましても、実際にこれが今後どう進みますか、それの取り扱い自体についてなお運輸当局とも十分連絡をとって対処してまいらなければならぬと思うわけでございますけれども漁業とこの事業との調整問題につきましては、私どもといたしまして、運輸当局に対しましては、関係の漁民の意向も十分しんしゃくして、そう言ってもなかなかむずかしいことであるかもわかりませんけれども漁業に対して重大な影響を及ぼさないという立場に立ちまして、県当局はもちろんでございますが、関係漁民団体の方々並びに運輸当局とも相談の上、慎重に対処してまいりたい、かように存じております。
  46. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 伊良湖水道の拡幅問題は、海上交通安全という立場のサイドの運輸省から見れば、やりたいという意向があるだろうと思うわけですが、漁業サイドから見るとやはり非常に大きな問題であって、われわれとしてもそういう問題については漁業者の態度を深く理解もいたしておりますし、今後の問題についてはそういう立場でわれわれとしては対処せざるを得ない。ややもすると、きのうの質問の中でも、現地調査に行っても、水産庁が何をやってくれた、かにをやってくれたというありがたい話はちっとも聞いてないということが出ておりましたけれども、こういう問題の場合に、運輸省サイドだけでもちろんやり得ない問題であるし、双方で十分協議をしなければならぬ問題だと思いますが、特に漁業たん白資源の確保という大所高所の立場から、簡単に軽視されては断じていけないというふうに思うわけであります。今後の推移を見守りたいと思うわけであります。  ただ、こういった問題に関連をして、二十六条の関係、これは第一項、第二項、第三項にわたって「危険防止のための交通制限等」と、こういうことで書いてありますが、先ほども質問にありましたような、たとえば東京湾の架橋問題、伊勢湾の問題、あるいは本州と四国とを結ぶ架橋問題、こういうことも、二十六条の中では含まれた運営が海上交通安全対策上なされていくのだと思いますけれども、この二十六条の関係においては、直接に漁業との関係の場合には漁業補償問題というのは現実に出てくるわけでしょう。これはどうですか。
  47. 手塚良成

    ○手塚政府委員 この条文の適用が行なわれます場合は、いろいろなケースがあると考えます。たとえば、しゅんせつの場合、あるいは沈船の解体、引き揚げというような工事、作業が行なわれる場合、あるいは船が沈んだというような場合、あるいはやぐらの架設等、工作物がつくられるというような場合、あるいは天災地変等で橋梁が崩壊して海面上に放出されて、一般船舶の交通が危険である、こういうような場合、いろいろあると思います。そこで、この条文そのものは、こういった突発的な事故に対応して、従来の船舶航行が一時的に非常に危険になるという場合の臨機の措置を前提にしております。したがって、こういう場合は、陸上の場合でもそうかと思いますけれども、これが当然に補償と結びつくということではなかろうと考えます。しかし、この内容のいかんによっては、漁業に非常に制約的な、長期にわたる著しい被害ということになりました場合には、だれが補償するかということは別にいたしまして、そういった問題がやはり検討されなければならないというふうに考えます。
  48. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 たとえば、現にこの間浦賀水道の第三海堡の問題を取り上げたときでも、撤去計画については、いま漁業者との話し合いで補償問題等もこれあり、それの話が済めば実施にかかっていきたいのだ、こういうやりとりがありましたね。それからさらに、質疑には出ておりませんでしたけれども、備讃瀬戸では、すでに航路の拡幅問題について運輸省と関係の漁業者との間で話し合いをつけて工事を進めておるという経緯があるわけでしょう。したがって、そういったような場合も、二十六条の関係の中には、航行を制限する問題として当然含まれている。だから、二十六条そのものは、いわゆる受忍限度というか、何か突発的なことが起こって漁業に制約があったとき、それが短期間であればそういうこととして処理するというケースもあり得るかもしれぬけれども、相当長期にわたって漁業に制約がくる、また、今後の漁業資源その他の問題から見ても大きな影響を受けてくるというような工事の場合においては、二十六条そのものの中でも、いわゆる漁業補償という問題は当然出てくるわけでしょう。
  49. 手塚良成

    ○手塚政府委員 私、いまおあげになりました例の限り、たとえば第三海堡を取り除く、あるいは航路のしゅんせつをする、そういった例示の場合等は、やはりそういう工事に伴っての実態的な補償との関連問題だと理解をいたします。したがって、その工事に伴うところのいまの二十六条の発動がある場合は、この二十六条としての補償ではなしに、その実態に関連した意味補償である。実際にそういった工事が行なわれます場合には、その工事の主体者であるところのものがそういう補償考えていくのが、従来実情でございます。私どもはそれに伴う一時的な交通整理というのをこれでやるということになると考えます。
  50. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 海上交通安全法実施に伴う、たとえば巨大船に対する避航その他の関係で、漁業の制約、生活問題ということで国が責任をもって補償措置をとるべきでないか、こういうふうに問いただしますと、運輸大臣も佐藤政務次官も、いかにももののわかったような顔で、漁業法三十九条を引き合いに出して、いわゆる国が補償するということには直接なじまないのではないかといって切り返してきておるわけですけれども、これはしかし私ばかりでなしに、本法の運営の問題としての漁業上の制約、それに伴うところの損失等については、ここに与党の皆さんも来ておられますが、会議録を見ても、与野党あげて、これはいいころかげんではいけない、きちっとすべきであるという意見が大勢なんですね。で、いま言ったこの二十六条に関連する私の質問の点については、たとえば航路の拡幅問題に伴うところの漁業補償というものは、現実に数カ所出てきておる。そういうものについてはやはり補償ということがはっきりやられている。ところが、受忍限度という名において、避航義務に伴うところのいろいろな問題については、国は補償するのになじまないということで逃げるという点が、私どもとしてはどうも了承できないのですね。私は、こういう問題に関連をして、政府でも、今後の本法運営上の事態の進展いかんによっては、やはり答弁の中でも明らかにしておるように、国が当然考えなければならぬ事態であれば考えるというための検討をやっていきたいということを言っているわけですけれども、たとえば、私が数年来関係しておりました公害関係の立法の中では、いわゆる公害発生源の明らかなもの、あるいは明らかでないもの、いろいろ公害では出てくるわけですけれども、その場合に、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法というような問題の中でも、公害防止事業団に関係の向きからしかるべき拠出をして、そして原因不明のものについてもしかるべき措置をする、しかし、原因が明らかになれば、これは国が求償権に基づいてそれを取っていくのだという形をとっておる例があるわけですね。これは一つの立法例としてあるわけですけれども、今度の三十五億円というふうな問題でずいぶん本委員会でも議論をしておりますが、私ももともとは漁業関係の地域から出ているのですけれども漁民の立場として、迷惑料かあるいは何料か、日本の浪花節にはいささか向いた感情もあるかもしれぬけれども、しかし、気分としてはさえない、あと味の悪い、こういう形で金を基金でどうするとかこうするとかずいぶんいろいろ議論をして、あまり詳しく言うと消えてはいかぬと思うのか、その辺のところの歯切れがよかったり悪かったりするんだけれども、やるのなら——こういう公害のときのやつは、関係のところから拠出があって、それを全体として運営していく。二重の補償になるかどうかという議論もそのときもあったけれども、しかし、そういう立法例があるんだ。もっと大義名分を立てて筋道の通ったやり方をやらぬと、法案として出てきてないから議論のしようがないんだけれども、しかし話題には出てきておるものだから、議論をせざるを得ない。というのは、この種の大きな問題を取り扱う場合に、私どもとしては議論しにくい点もあるし、公害の立法例もあるけれども、もっと本法の俎上にのぼせて、すっきりした気持ちで処理することにならないのかどうかと言っているのだ。大詰めまで来ちゃって、ことにきょうは私は出席して言うのはあれなんだけれども、非常に残念なんです。これは漁民の立場から見たって、何となく割り切れない。なぜ海上保安庁の長官も水産庁の長官も、頭はいいはずなのに、こういうわかったようなわからぬような便法、方式でやろうとしたのか。同じ金を出すのなら、それを立法上に乗せて、きちっとやる。もちろん通航料その他の議論もありましたけれども、そういうのも一つ考え方だと私は思いますけれども、かりにこういう拠出をやるにしても、やるならば、立法の路線に乗せてやるという、そういう立場をなぜとらなかったのか。こういう新法制定は非常にまずいですよ。これはどうなんですか。
  51. 手塚良成

    ○手塚政府委員 いまのお話の議題は、やはり本法案に伴っての補償という問題になると考えます。この補償が必要かどうかということでの議論をまたいたしますと、要するに、漁ろう船が巨大船を避航するということに関連して何がしかの要求があるではないかという問題であると考えます。そのほか多数条文がございますけれども、これはもう法文をごらんになるとおり、一般漁ろう船についてはほとんど全部適用除外で、現状の漁ろうができるようにいたしてあるわけです。この巨大船との関係につきましては、これは考え方の基本といたしまして、やはり船舶の航行を安全にするという問題と、漁ろうを現状に即してできるだけ支障がないようにやるという問題との調和をどうするかという問題になると思うのです。そういう考え方でいった場合、やはり大型船、巨大船というのは、これは物理的に見まして非常に運転が不自由である。これはもう間違いのない事実でございまして、国際的な条約等の審議がなされる際に、やはりこういう巨大船、また、別名を深喫水船といっておりますけれども、こういうものについて、こういった進路保持、速力保持ということをやらせる立場に置くというのは国際的な考え方でもございます。これがやはり地形また潮流等の非常にきびしい狭水道という際には、またそれとして同様であろうと思うわけです。一方また、漁ろうもこういうところで行なわれておるわけでございますが、両方がそういう同じような場所を使うという立場になりました場合に、やはり双方の安全という見地から見ましても、どちらがどうするかということになりますと、そういうずうたいの大きな、運動性能の悪いというものに対して、運動性能のいいほう、これは相対的な問題かと思いますが、そういうものが一応避航をする。大きなずうたいのものについての進路をそのまま保持させて、そうでないものがその進路をよけるといいますか、別な進路をとる、こういうことにならざるを得ないのではなかろうかというふうに思うわけであります。そして現状を見ましてもまた、大体そういうようなことが現実として行なわれておるという実情でもあるわけでございます。そういう両方がそれぞれ、漁ろうも行なえるようにし、また、巨大船というものについての運動性能から見た安全確保というもの、この両方においてそれぞれ不便な点を譲り合って進んでいくという立場をこの法律は基本的にとっておるわけでございます。そういう範囲においては、やはり補償というものがこれにはなじまない。いろいろ各面の検討をいたしましたけれども、結論として、法律としてはそういうたてまえになっております。そういうことになりますと、いまのいろいろ言われております負担といいますか、協力金といいますか、そういった問題も、まともにこれを法令上取り上げて、こういう補償に対応したこういう内容のものであるというふうな取り上げ方はできないということになると考えるわけであります。幸い、業界一般におきましてそういった実情を考慮して、自主的にそういうものを進めるという動きがございました。私どもも、法の円滑な推進というたてまえ上非常に望ましいということで、こういった動きに協力をしておるというのが実情でございます。
  52. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の制約があるそうですが、私は、今度の国会の舞台でそこまで私どもがあるいは皆さんのほうに要求をして形が整えられるという時点でなければ、私どもが国会のいままでの委員会の議論を聞いておっても、いまの三十五億と巷間称せられる問題については、できるだけ、やはり次の国会の時点までに、筋の通った形で、この方法をとるか別の方法をとるかという議論は別として、かりにこの方法というものを含めて考える場合に、漁業者自身も心の晴れないような形で、何かこれからの問題について正規に相手方に対してものが言えるのかどうかということについてブレーキをかけられるような形ではなしに、正当にそういうものが出てくる、そういう形をやはり真剣に検討してもらいたいというふうに思います。これは要求をしておきます。  それから危険防止の三十条、三十一条の関係で、これは時間も十分ないのであれですが、きのうも議論の中で、大体漁業関係については、三十条の場合も、「ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定めるものについては、この限りでない。」こういうことの中に、三十条の場合も三十一条の場合も漁業の通常のものは含まれる。したがって、許可であるとかあるいは届け出であるとかいうふうなことの出てくるのは、考えられるとすれば、大型魚礁その他の問題である、こういうふうな話を説明として聞いておるわけです。そういうふうに理解してよろしいですか。
  53. 手塚良成

    ○手塚政府委員 そのとおりでございます。
  54. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 だとすると、結局大型魚礁等の場合は、これは水産庁長官でけっこうかと思いますけれども、三十条の第八項、あるいは三十一条の場合で言いますれば、三十一条第五項、第六項、こういう中で通常処理される性格になるのですか。そうでなくて、三十条の第一項の点でやるというケースが出てまいりましょうか。
  55. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 三十条と三十一条との関係で私どもから申し上げますと、御承知のとおり、三十条は、「航路又はその周辺の政令で定める海域」が対象になっておりまして、三十一条のほうは、いわゆる適用海域が対象になっておるわけでございます。適用海域のほうは、実はここで除かれる行為といたしまして、私どもといたしましては、いま先生がお尋ねになりましたような魚礁の設置、その他漁業生産の基盤の整備、また開発のために必要な行為を定めるということで、ここで一応魚礁の設置は省く。ところが、三十条のほうは「航路及びその周辺の海域」と書いてございますから、一般的ないわゆる漁具の設置、その他漁業を行なうために必要とされる行為というものははずされるわけでございますけれども、魚礁の設置などは対象になるということになっております。そこで、現在実施いたしております、私どもが公共事業として取り上げております大型魚礁の設置等につきましては、先生御承知のとおり、地方公共団体実施をしているということがあるわけでございますから、法律の扱いとしては、いま先生がおっしゃったようなことになるというふうに理解しております。
  56. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、時間の関係もありますので結びにしたいと思うのですが、私は本法案を見ておりまして、関係の必要な条項について、農林大臣との協議とかあるいは水産庁長官との協議というものは一言半句も出てこない。協議という形で条文上に出てくるのは、いま指摘した三十条、三十一条の関係で協議というのは条文上出てくる。ところが、ここの特別委員会で議論されている、いわゆる海上交通の安全という問題と漁業との調和、調整をはかるということであるとするならば、そういう大前提でこの法律ができておるとするならば、そういうことでいいのかどうかという問題が、率直に言って、ある。  それから、それとの関連で若干最後にお伺いしておきたいと思いますのは、第三十六条の関係で「運輸大臣は、この法律の施行に関する重要事項については、海上安全船員教育審議会の意見をきき、その意見を尊重しなければならない。」こういうことになっておりまして、この点については、運輸省から資料をもらいますと、運輸省設置法の第三十八条第二項に根拠規定を置いておるわけですが、まあ審議会の統廃合があって、新設をするということが困難であるという事情が内閣の方針としてもございますから、それは別にしても、この委員のメンバーを見ますと、とにかく、たとえば漁業にとれば全漁連の会長、大日本水産会の会長、こういうものが三十名の中の二人として入っておる。あとは大体船舶その他の関係の業界の責任者がメンバーの中心をなしておる。それに若干名の大学教授が入っているという状況なんですね。そういうところで海上交通安全のためのいわゆる重要事項について審議がされるという場合に、はたして両方の調整という立場で十分こなせるのかどうかという問題が——今後の政省令というのは、政令が大体七つ八つ、省令に至っては、数えてみると約三十くらいですね。そういうものも今後の規定いかんということが関係業界でも非常に関心事になっておりますけれども、そういう面で十分そういうものが反映されるのかどうか。だから、部会を設けてこの問題についてのプロパーの議論をやるのだということだそうでありますが、その場合の部会の構成とか今後の運営はどういうふうに考えているかということについて、御答弁をお願いしておきたい。
  57. 手塚良成

    ○手塚政府委員 海上安全船員教育審議会という組織は、運輸大臣の諮問に応じて、船舶の安全航行あるいは海上保安に関する重要事項、あるいは船員教育に関する重要事項、あるいは水先及び船舶職員法に定める重要事項、こういうものを審議するというたてまえでつくられておりまして、御承知かとも思いますけれども、現在部会が四つ設けられております。教育、水先、船舶職員、特別という部会でございます。おっしゃいますように、現在のこの部会に所属しております審議会の委員というのは、水産関係は二人でございまして、それ以外に農林次官というのがこの委員になっておられます。今回のこの法案がかりにできますという場合には、この内容は、相当重要な問題、特に水産との関連などが、実施施行上の問題といたしまして非常に多い内容を含んでおる。したがって、当然この審議会へいろいろ御諮問をして御意見を伺うということになるかと思いますが、これは、御指摘のとおり、こういう航行安全という問題を扱うにしては、この部会をながめましたときに、メンバーの構成なり部会の構成なりにやや適切でないうらみがあるかと思います。したがいまして、そういう面について一応部内的に検討いたしまして、十分な審議体制をとりたい、かように考えております。
  58. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間が非常にきびしく運営されておりますので、私この程度で終わりたいと思います。
  59. 今澄勇

    ○今澄委員長 官井泰良君。
  60. 宮井泰良

    ○宮井委員 この海上安全交通法が当委員会に付託されまして今日まで、東京湾あるいは伊勢湾瀬戸内海等をつぶさに視察いたしまして、また現地の方々のいろいろな意見をお聞きいたしてまいったわけでありまして、まあわが党の基本的な考え方も織りまぜまして、きょうは最終的な御質問といたしたいと思いますが、基本的には、大筋において、やはり今日のふくそうした狭水道におきましては、一たび事故が起きましたときに相当な被害が出る。それはもう幾多のタンカー事故に見られますとおり、大きな被害が出ておるわけでありまして、これからも心配が予想されるということで、どうしてもこれは何らかの形で規制というものをやっていかねばならないということは、本的に考えておるわけであります。  しかし、当初私どもがお聞きしておったことは、全漁連その他漁民の方々も大筋の了解をされておるということを聞いておったわけであります。ところが、やはり現地のいろいろな声を聞きますと、どうしても巨大船の優先ということで非常に漁民の方々の生活権が脅かされるという、私ども予想外の反対というものが起きてまいったわけでありまして、いろいろ私どももその点につきましては——海上交通法というものは世界的にございますが、日本はなぜこうしておくれてきたかといいますと、やはり日本独特の漁業権ということが非常にウエートが大きいものですから、これを無視してはやはりこの法律というものは通ることはできない、大いに論議をしていかねばならないということで、私どもも相当法案の修正ということも考えてまいったわけでありますが、交通安全法自体には、漁業権というものは、法制局の見解といたしましても、なかなかそれはなじまないものである。さすれば、別個に、海上安全、漁業の安全操業というふうな意味において、別個な法律というものを考えてはどうかということで、私どももいろいろと努力してまいりましたが、法制同といたしましても、時間的にも相当これは検討の余地があるということでございまして、     〔委員長退席渡辺(武)委員長代理着席〕 陸上における自賠責のような、そういった立法化というものを何らかの形でつくり上げていかねばならないということを私ども強く要望いたしておるわけでございまして、政務次官にお答えをいただきたいと思いますが、将来この油の需要量等が増加いたしまして、やはり漁業操業とこういった巨大船の航行というものが両立しがたいというふうなことが将来も予想されるわけでありまして、その際の漁業補償等も含めて、あるいはそういった漁業の安全操業という形における立法化ということを政府としてどのように将来されようとお考えになっておるか、この点をお伺いしたいわけであります。
  61. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 油濁による被害、特に加害者不明のもの、それから当て逃げの加害者不明のもの、こういうものに対して政府はどういう考え方で将来対処すべきか、そのような御質問と判断いたします。  今回皆さんの御理解のある御協力によって海上交通安全法が幸いにして制定されることを予想した場合、これによって問題の根本の解決には私はならぬと思います。いま御指摘のような問題を解決してこそ初めて根本的な解決になるのじゃなかろうか、かような考え方から、運輸省としては、すでに、加害者不明、特に油濁、当て逃げ、これらの問題についてどのような法制化が必要であるか、現在検討中でございます。ただ運輸省だけできめられる問題でもございません。他の関係官庁ともきわめて密接な問題もございますので、できることならば、ごく近い将来の国会において御審議いただくように準備を進める所存でございます。
  62. 宮井泰良

    ○宮井委員 政府としましても、来たるべき国会において立法化というものを検討し、またそれを実現されると、こういう前向きの御答弁でございますので、了とするわけでございます。どうか今後ひとつその面の一そうの努力を要望いたすものでございます。  そこで、港湾関係の方にお伺いいたしますが、やはりこの法律を制定するにあたりまして、何と申しましても、大きな議論になりましたことは、そういった狭水道に巨大船が入域するということ自体がどうかという、こういう議論が多くあったわけでありまして、私どもも最初からこれを主張いたしまして、政府において、CTSパイプライン構想、そういった大がかりな港湾整備というものをそういった狭水道に設置をいたしまして、この法案をかりに通すといたしましても、それを確約されて、必ず将来においてすみやかにそういった整備をいたしますというような確約をここでいただいて、そうしてさらには、具体的にどのように進めていきますというふうなことも含めてお約束を願えればと思うわけであります。     〔渡辺(武)委員長代理退席委員長着席
  63. 竹内良夫

    竹内説明員 港湾関係といたしましては、港湾整備と同時に航路整備等もやっておりますけれども、いまおっしゃいました御趣旨に基づきまして、巨大船のうち、特に油を運んでくるオイルタンカー等につきましては、狭水道の外で受けまして、そこからパイプライン等で運んでいくという考え方、あるいは外で受けたものを小型船でまた運んでいくというような考え方、それに基づきまして進めることが妥当だと思いまして、現在東京湾であるとかあるいは瀬戸内海を中心にいたしまして調査を進めている次第でございます。
  64. 宮井泰良

    ○宮井委員 その点、どうか具体的な基本計画に基づいてひとつしっかりした港湾整備を急いで、そうして将来狭水道に巨大船が入域せずに済むというふうな理想的な形に持っていってもらいたいということを要望いたしておきます。  そこで、これは水産庁のほうでも、どなたでもけっこうですが、今日海域が汚染され、あるいはまた漁場が減少していくということがございまして、高度成長のもとに、せんだっても視察に行きましたときは、鼻うたを歌いながら操業ができたのが、最近は畑の中にダンプカーが来るようなもので、相当私どもは苦しんでおるというような切実な声もあったようでありまして、そういったことから見ましても、内湾における漁業の保護並びに振興、そういったものを中心にした基本的な政策、こういったものが早急に急がれるのじゃないか。どうも今日の政府のやり方を見ておりましても、沿岸漁民に対する政策というものが非常に弱体ではないかということを感じておるわけであります。そういった基本的な政策のもとに今後進めていかれるということが最もいま望まれるのではないかと思うわけでありまして、その点の基本的な政策をどのように将来やっていくというようなことをお答えをしてもらいたいと思います。
  65. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 御承知のとおり、政府はさきに沿岸漁業等振興法を制定いたしまして、沿岸漁業の振興のために講ずべき施策を明定いたしまして実施いたしておるのでございますが、さらに、先年の国会におきまして水産資源開発促進法という法律を制定いたしました。この法律のねらいは、遠洋、沖合いについては除きますが、沿岸につきましては、増養殖を振興していく、このために、国が増養殖の開発の基本方針というものを立てまして、これに基づきまして各県ごとに地先水面に開発区域というのをつくりまして、そこでの他産業との調整をはかると同時に、増養殖を計画的に進めていくという事業を実施することにいたしておるのでございます。なお、これの裏づけといたしましては、これの第一次の構造改善事業が四十五年で一応終わりましたので、四十六年度から新しい事業としての沿岸漁業構造改善事業ということも実施をいたしておりますし、昨日も申し上げましたわけでございますけれども、栽培漁業というものの全国化を実施しようということで、瀬戸内海を除いてはまだ調査の段階でございますが、栽培漁業というものを今後推し進めていく。なお、沿岸におきますところの生産基盤でございますところの漁港につきましての整備というものは、現在第四次の漁港整備計画に基づいて実施いたしておるわけでございますけれども、最近におきますところの漁業生産量の増大、あるいは漁船の大型化、さらには増養殖の伸展というような新しい事態も踏まえまして、私どもといたしましては、今後検討した上で、できますれば四十八年度にまた第五次漁港整備計画というものを立ててまいる、これによりまして漁港の整備をはかる。いろいろな事業を実は沿岸漁業についても実施いたしておるわけでありまして、まあ漁民の方から見ますと不十分であるというおしかりを受ける点もあるかと思いますが、私どもとしましては、いま申し上げましたような法律、制度、あるいは予算措置を講じて実施をしていくということでございます。
  66. 宮井泰良

    ○宮井委員 この海上交通安全法案というものができました後においても、そういった点は、なお現状よりもいろいろな問題が出てくると思いますが、その点も勘案してひとつ総合的に進めてもらいたいということを要望いたしておきます。  そこで、もうたびたび委員会でも出たと思いますが、政務次官にもう一度、くどいようですけれども、この三十数億円の業界から云々という問題は、当委員会におきまして私も最初質問をいたしまして、その間において当委員会——明らかにこのお金の使い道ということが一番重要なことでありまして、漁業の方々にとってそれがよりよき安全操業に結びつけば、それにこしたことはないわけであります。しかし、その実態というものも私どももあまりわかりませんし、また、その金利というような面を運用されるというようなことも伺ってはおりますけれども、はたして国がしっかりこれを見て、公平にお金が運用されるかどうかというふうなことがあるわけであります。海難防止協会にこれを付託するということ自体がいいか悪いかというふうなこともありますし、それが何らかの形で、立法ということではないのですけれども、何か歯どめとして国ががっちりとした管理のもとにそれを運用されるということが理想的であると思いますので、こういった意味の、私が当委員会で最初に、委員会終了までにこの点をはっきりしてもらいたいと要望いたしておきました点をここでお答えをいただきたいと思います。
  67. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 先ほど来の御審議をお聞きしてもおわかりのように、巨大船の通ることによって避航義務が課せられる漁船に対して補償すべきである、こういう議論がございましたが、今回の場合、漁ろう船の避航は、海上交通の安全をはかる一般船との間においてお互いに譲り合う、そういう範囲のもので、これが、国が補償する、あるいは漁業法第三十九条に該当しないのは、先ほど来委員会質疑応答でもおわかりいただけると思います。しかしながら、この漁ろう船の影響につき、社会的慣例により関係者間において何かの措置がなされ、その結果漁ろう船と巨大船との避航関係の円滑化がはかられ、かつまた海上の安全が確保できるならば、まことに望ましいことである、かような観点から、政府といたしましても、当事者間の自主性を尊重しながら何ぶんの協力をいたしてきたところでございます。  なお、金額については、船舶関係約二十億ないし二十三億、荷主関係、石油、鉄鋼含めて約十二億以上の金額がほぼ確定的と聞いております。さらにまた協力できる関係等がございますれば、側面から、もっと協力をいただくよう努力する所存でございます。  なお、この資金の運用については、結論的には、対象漁業者との協議に待つべきものと判断いたしますが、私どもと水産庁との今日までの折衝の結果から申し上げますと、これは俗に言う、単にその金額を避航義務を課せられる漁民にすぐ配分するという方法じゃなく、もっと恒久対策という観点からこの問題を考えるべきだ、かような考え方に立った場合、その運用益によって、たとえば漁業者の海上交通事故による休業見舞い金、こういうものを第一に考えてみたいと思うのです。第二には、漁業者の海上交通における相手側に対する損害賠償の取り立て、その経費立てかえ、これが第二点に考えられることです。第三は、海上交通事故についてのコンサルタントに対する謝礼金、こういうものも当然考えられていいんじゃないか。その他、余剰金が出れば、当然避航義務を課せられた漁業者に有意義な方法で使用されるべきものと判断いたしております。  いずれにしても、これは最初に申し上げたように、対象漁業者との協議によって決することでございます。御指摘のように、それが他の面に流用されたり、また公明正大でないような使途は、厳に慎まなければなりませんし、私どもとしても、何のためにこの金が支出され、かつまた、どういう方法で利用されているかということは、今後とも十分監督しながら、遺憾なきを期していく所存でございます。
  68. 宮井泰良

    ○宮井委員 私どももそれを今後見守っていきますし、お金の使途につきましては、政府もしっかりこれに取り組んで、そしてよりよき運用というものを要望いたしておくものであります。  そこで次に、特に各地の視察をいたしましていろいろな方の御意見を伺って、いまだに私が不審に思っておる点が一つあるわけでありまして、それは巨大船の航行ということですね。これは法令の中には、巨大船というものは、事前に海上保安庁長官に通告をいたしまして、そして何時何分にその航路を通過するという規定があるわけであります。そして海上保安庁長官はそれを受けて、航路の中でただいまそういった工事をやっておりますとか、また特殊な漁業操法をやっている場合、漁船等がすぐに避航できないというふうな場合におきましては、海上保安庁長官はこれをしばらく待機させるということの命令が出せるということであります。  これは海上保安庁長官にお尋ねしているのですが、そこで漁民の方々にもこの点をただしまして、そういった歯どめというものができておるんだから——たとえば一日に巨大船が六隻あるいは七隻というような、現時点においては比較的少ないのが現状である。伊勢湾等においても、聞くところによりますと、巨大船は一日に五隻ないし六隻というふうな通航しかないということで、それならば、海上保安庁長官が命令を出して、いまはまずいからちょっと巨大船の入港を待つように指示をすれば、その間に安全操業はできるのじゃないかということを漁民の方々にお伺いしましたところ、何ぶんにもこれから油の需要量がどんどんふえてまいるし、今後巨大船がどんどん建造されていく傾向にある現状である、また、場合によっては、同じ時間に何隻もの巨大船がそこに集中した場合に、退避せよと言っても、それは現状においては間に合わない、退避できるような現状ではないのだ、結局は巨大船に押し切られてしまうのだというような考え漁民の方は持っておるようでありました。どうもその辺のところが、私何回聞いても、海上保安庁の言われることと漁民の方々が言われることとよく理解ができないわけなんで、その点をひとつ海上保安庁長官の確固たる御見解をお伺いしたいのであります。
  69. 手塚良成

    ○手塚政府委員 巨大船と漁ろうとの調整、調和という問題でございまして、一応、法文の第三条第二項に、漁ろう船は巨大船を避航ということが書いてあるわけです。この法文のたてまえだけでは、なかなか現実問題がスムーズにいかないだろう、そこで、この予定時刻の報告という問題、それに関連しての調整指示権というようなものを発動して、できるだけ両者の共存共栄をはかろうということをるる御説明しておるわけですが、この調整の具体的な手段方法という問題につきまして、これはいま現にやっておる問題ではないわけでございます。十二時間前に予定を受ける、変更があればまた受ける、三時間前にまた通告を受ける、それらのものを漁協を通じて連絡をする、あるいは前進哨戒中の警戒船を通じて具体的に知らない船に伝えるように努力をする、そういうようなことをいま考え、実行に移すべく準備をしておりますが、なかなかそれでも不十分という問題はあるかと思います。思いますが、これは十分に今後はよくPRをいたしまして、そしてまた、こういうのがきまった以上、皆さん方のできるだけの御協力も仰ぐ。やはり両方の状態、船の一般航行の安全という問題、これはまたひいては漁船の安全ということでもございますので、この両者の調和ということが私は非常に大事だと思います。手段方法、具体的な問題については、今後いろいろな角度から、皆さんの御意見も聞いて、十分に慎重に、また、よく徹底するように研究をしていきたい、かように考えております。
  70. 宮井泰良

    ○宮井委員 将来そこを巨大船が通航する場合に一切の漁業ができなくなるという問題はなお残っておりますので、その点はひとつさらにそういうことのないように、漁業補償——先ほど政務次官は、将来立法化する、この法案以外の、別に陸上における自賠責のような、漁業の安全操業を守るための法律の立法化を急ぐということですから、その点とも兼ね合わせてひとつ進めていただきたいと思うものであります。  なお、時間がないようでありますから、最後に、通告いたしておりました海事審判の方に一間と、それから大臣がせっかくお見えでありますから、基本的な考えをお伺いしてそれに御答弁をいただく、それで私の質問を終えたいと思います。  海事審判の方に対する御質問は、当て逃げということでありまして、これは件数がわかれば件数と、審判の未了になっておるものがどのくらいあるか。これは非常に費用がかかりまして、なお時間がかかるということで、この当て逃げについては零細漁民は対抗できないということがあるわけであります。また犯人がなかなかあがらない。航路標識などはよくこわされるということでありまして、こういった問題等も含めてお答えをいただきたいと思います。海事審判の方にはそれだけであります。  あと運輸省の方には、危険物、毒物、劇物の運搬の実態と対策、これはごく小型の船舶においても、海水に毒物、劇物というものが流出いたしますと大きな被害になるわけでありまして、せんだっても愛媛県の知事さんなどの強い要望が出ておったようでありますが、こういったことに対してどのように今後対処されていくか、これは運輸省の方どなたでもお答えいただきたい。  そして最後に、大臣には、先ほどからも申し上げたのですが、政務次官からももちろんお答えいただきましたが、海上交通安全法というものでは漁業補償という問題は立法化がなかなかむずかしい、将来別個の、ただいま申し上げましたような、陸上における自賠責のような形における理想的な法律というものを立法化していくことが検討されておるようでありますので、それに対して大臣はどのように取り組んでいかれるかというかたい決意をここでお伺いしたいことと、先ほどもお伺いしましたが、政府の港湾整備、狭水道に巨大船が入港しないでもいいように、CTSパイプライン装置、そのようなことを早急に、そして政府において港湾のより拡充をはかっていくという問題が二点。それから三点は、何と言いましても、政府の基本的な内湾漁業保護並びに振興育成、これはもちろん水産庁その他関係省庁がございますが、運輸省としても、この法律の立法化というものを契機として、政府としてこれを強く打ち出していくといった構想といいますか、大臣の取り組んでいくその基本的な姿勢、この三点を大臣から御答弁いただいて、私の質問を終えたいと思います。
  71. 早川典夫

    ○早川政府委員 宮井先生にお答え申し上げます。  先生のお尋ねは、当て逃げの事件でどれくらい審判がやられておるかといったようなこと、それと、迅速にいっておるのかどうかというようなことだとお聞きいたしましたが、当て逃げは、年平均いたしますと大体二十件くらいでございます。そしてそのうち、審判にかかります事件は一、二件でございます。これは大型船と漁船がおもでございまして、その場合に、そのショックだとか音が大型船は聞こえない。そして証拠さえあがりましたらいつでもやります。  それから審判の促進は、当て逃げ事件が特におそくなるということはございませんで、むしろ早うなっております、審判のいままでの経験からいいますと。証拠さえあがりましたら早くやられております。それは先生のおっしゃるとおり、事件を早く片づけるということは、そのとおりだと私は思います。それで、目下全力を尽くして迅速化はやっておりますが、それとは別途に、海難審判制度調査委員会という、専門の方をお願いいたしまして、そしていま審判制度そのものを調査しまして、その結果を待って、より早くなるようにと、こういうふうに努力いたしておるところでございます。  以上でございます。
  72. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 船舶によります危険物の輸送並びに貯蔵につきましては、船舶安全法並びにこれを受けました危険物船舶運送及び貯蔵規則によりまして、すべての危険物並びにすべての船舶に規制がなされております。そこで、法の体系といたしましては整備は整っておると私ども考えておりますが、たとえば個品、つまり個々の品の輸送につきましては、千二百品目につきましてそれぞれ輸送の基準が定められておりますが、最近の非常な重化学工業の発達によりまして、さらに規制の基準を明示しなきゃならないというふうな実態も出ております。これらにつきまして、すでにその基準の内容につきましては検討を終えておりますので、これらを早急に省令なり何なりに明らかにしてやっていく。現在はこれは地方の海運局長が個別に審査をして許可をしておるという状態でございます。  次にまた、先ほど先生の御指摘になりましたように、愛媛県の北条市沖におきまして昨年アセトン・シアン・ヒドリンを搭載いたしました船舶が座碓、沈没いたしまして多量の毒物を流しました。この船舶はこの法の規制に従っておらない船舶でございました。直ちに私どもはそのときにこの法の順守徹底につきまして各業界に通達をいたしたところでございますが、この法律の順守徹底につきましてさらに努力をいたしていきたい。  それから、昨日御指摘がございましたが、危険物のこれらの法の規制におきましては、これらの危険物を運搬する船舶事故を起こさない、または、起こしましたときに危険、被害を広げない、そういうことを主体にして法制定がなされておりますが、これらは小型船が多うございますので、事故が起きましたときの通報設備、そういうものにつきましても今後考えていきたいというふうに思っております。
  73. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの御質問でございますが、第一の漁業補償につきましては、遺憾ながら、今回におきましては、予算上また法律上これをきめることはできなかった次第でございますが、先般も政務次官が御答弁申し上げましたとおり、それらの漁業被害が起こりました場合に何らかの措置を講じなくてはならないことは、これは当然でございまして、ことに加害者の原因不明の場合におきましても、やはり同様の補償をしなければならないということは当然のことでございますので、これは早急に運輸省といたしまして水産庁その他とも十分連絡をとりまして、先生方の御協力を得まして、それらに漁業補償漁民の皆さまに御迷惑をかけないような立法措置に持ってまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  それから第二の巨大船に対する措置でございます。これは御承知のとおり、巨大船がいいか悪いかという問題もございます。あまり隻数にしてうんと運航させるよりは、巨大船のあれをするという問題もございますが、いまの日本の内海湾におきまして、バースの関係上、巨大船もあまり寄港できないんじゃないかという問題もございます。その問題は、御承知のとおり、中のタンクサイズの問題がございまして、せっかく日本船舶につきましてはリードしておりまして、先般のICA ○の会議におきましても、ここにおります、ただいま御答弁申し上げました田坂局長が、いわゆる自分の試案を出しまして、それが世界をリードした、こういうことでございますので、その安全性や何かも十分はかってまいりますとともに、実は海洋におけるシーバースまたはパイプライン、こういうものを早急に整備してまいりまして、内海におきましてはそういったものをなるべく少なくしてまいりまして、そして漁業の皆さま、また国民の皆さまに安全を確保することが一番であろう、こういう方面の整備に早急に施策を実行するように持ってまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  第三の、漁民の皆さまの保護は、これは当然のことでございまして、私どものほうとしましては、水産庁その他とも十分連絡をとりまして、この上とも漁民の保護に遺憾なからしめるように注意してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  74. 今澄勇

    ○今澄委員長 土橋一吉君。
  75. 土橋一吉

    ○土橋委員 私は、以下申し上げるところのわれわれの主張によって、運輸大臣がこの法案を撤回されるかどうか、簡単にイエスかノーかで答えていただけばけっこうだと思います。  私は、この法案についていろいろ審議される過程で——特に漁民の諸君、また沿岸漁民の諸君が多大の損害を受けるわけです。特に、この法律が成立をしますと、いわゆる避航の義務を負うわけです。従来持っておる漁業権あるいは魚介に対する権利が全く侵害されるわけです。したがって、たとえば高速道路をつくるにあたりましても、借地借家その他の問題がありますが、権利を保障しなければならぬというのが、憲法第二十九条の基本的な原則であると思っておるのです。それすらも保障しない。したがって、漁民の諸君は、この問題については、あなたもお聞きのとおり、各府県においてはほとんど全面的に反対だという声があるわけです。したがって、別途法律を同時に上程して救済するならわかりますけれども、何かの便法によってこれを解決するということは、佐藤政府がいまいよいよ孤城落日の観がありますので、非常に危険だといわなければなりません。したがって、漁民漁業権と権利を守るという観点からも、まことに賛成しがたいものであることは当然なんです。  第二番目の理由としては、御承知のように、佐藤政府が唱えておりますように、高度経済成長政策が今日非常に進んでおります。しかし、この春闘に見られますように労働者が大幅の賃上げを要求したり、漁民が要するにもろもろの要求をしたり、農民が御承知のように非常に困っておる、この事実は、高度経済成長政策が必ずしも勤労者階級に利益と幸福をもたらさないものであるということを、ある面においては証明しておると私は思うのです。今度の春闘は、御承知のように——あなたも管轄でよく御承知でしょう。私鉄、国鉄が大闘争をやりました。従来にないストライキを敢行いたしました。そのために何十万という人が困ったわけです。それにもかかわらず、国鉄は最後まで御承知のようにゼロ回答を主張しておった。こういういきさつもありまして、何ら労働者の地位が向上しない、労働条件も改善しない、賃金の底上げをしないという状況下にあって、そして大資本は肥え太っているわけです。たとえば東京湾を出入りをするそういう船は、秒をもって数えるほど通るわけです。あるいは、ついせんだって見学をいたしました水島の狭水道でも、年間に七万そうという船が通過するわけです。こういうことは、まことに、喜んでいいのか悲しんでいいのか、わからないという状況です。そうなってまいりますると、大型タンカーあるいは原子力空母、あるいは薬物、危険物などを搭載している船舶は、こういうところを他の漁船などに避航を命じて通過するということは、ある農民の代表は、昔の大名の土下座と同じじゃないかということを言っておりましたが、私は全くそのとおりだと思うのです。こういう法案を通すことは、大型タンカー、原子力空母あるいは毒物、薬物などの危険なものを搭載しておる船舶を優先的に航路という名前で通航させる、したがって、海洋の汚濁の問題、海難の問題、また、特に人命尊重の上から、この法律をつくりますと、むしろ逆効果であると思います。これが、やはり私たちがこの法案についてどうしても賛成できない点で、むしろ国際的な海上衝突予防法の規定に従いまして、あの原則を入れることがやはり沿岸漁民を真に守るものであるし、自由民主党がよって立った今日の政権の基礎は、これら漁民の諸君の大きな力でもあった、その漁民を裏切って、大資本に奉仕をするようなこういう政策を掲げておることは、自由民主党の中でも問題があると私は思っております。これが第二点のおもな内容です。  第三番目は、六月の上旬に開かれるストックホルムの人間環境会議、いわゆる地球を守る、環境を改善する、こういう基本的なわが国全体の、つまり公害をなくするという原則は、世界的な問題になってきておるわけです。これは先進国においては特にそうだと思います。したがって、環境保全をし、さらに環境をよくするということが必要であるにかかわらず、自由民主党は盛んに臨海工業地帯の造成なり大資本に有利な政策を進めておる。そのために海面が汚濁したり、赤潮が出たり、あるいは石油が流れ出るとか、あるいは石油の船を洗った水がすでに沖繩県で、あなたも新聞でごらんのように、たいへん問題になっておるわけです。そうなってまいりますと、この法律をつくることによって、狭水道をそういうものが通過することは、いま海水の汚濁や、またそういう危険な問題をしいて引き入れるというふうに私は考えざるを得ないのです。したがって、公海の中に大きなタンクでもつくって、そしてこれはパイプラインにするとか、あるいはまた、液体ガスであればパイプで送るとか、あるいは原油もそうでしょう、精製した石油もそうでしょう、さもなければ飛行機で輸送するとか、あるいはまた、だるま船のようなものをつくって、もう絶対衝突しても安全だというものをつくって——かつて朝鮮を豊臣秀吉が攻めていったときに、カメの甲船というものをつくりまして戦争したといわれている。ああいうものをつくって、全く安全な——これにほかの船が突き当たっても海難は起こりますけれども、そういうものをつくってやることが必要ではないか。そういうこともやらないで、特に石油資本はいま政府のいわゆる優先政策によってばく大な保護を受けております。ところが、昨年のドル・ショックで、御承知のように、九州のコンビナートでは三百人のところを五十人に減らすというので騒ぎを起こしておる。一方ではどんどんコンビナートをつくる。こういう矛盾した政策を掲げておる佐藤政府では、この問題につきまして善処をすると申しましても、私は信用できないのですよ。  以上の三点が中心となって私は反対なんです。絶対撤回してもらいたいというのが私の要求です。  第四番目の問題は、約四十億にわたるところの資金を独占資本の諸君が中心になって出すという話を承ったわけです。ところが、独占資本というのは、労働問題や自分の金を出す問題についてなかなか渋いのですよ。自分がもうかることならばどんな危険をおかしてもどんどんやりますけれども、これはそういう採算のとれないものだということになってくれば、彼らは非常にきたないものです。これらの諸君が四十億円出して、はたして一体どれだけの漁民の災害防止や権利の保障ができるか、その点非常に私は疑問と言わざるを得ない。したがって、今日のメカニズムから言うならば、当然これは政府の責任においてそういう諸君から金を徴収して、あるいは金を集めて、政府がきわめて適切な方法で漁民の権利を守るというならばいいのですけれども、怪しげな諸君が集まって、よってもってお互いに食いつぶして、また一部の幹部諸君だけがうまくいって、沿岸漁民や、一本釣りやあるいは零細漁民は、ほんとうにそういう利益の均てんを受けることはできないと思うのです。こういうことはあなたはよく知っていらっしゃると思うのです。私よりもあなたは先輩だと思うのです。そういう中で、この法律を通せば漁民がどう反対するか、あるいは海水が汚濁され、どういう海難が起こるか。たった六千トンの昨年の十一月三十日のあの新潟沖における海難におきましても、あれだけの騒ぎをしておる。もし二十万トンのタンカー事故が、東京湾あるいは伊勢湾あるいは備讃水道において起こりますならば、これは目も当てることもできない。沿岸漁民の生活を全く破壊をしてしまう、魚介類を破壊をしてしまう、こういう危険なことを包蔵しておる内容を持っておるこの法案を、私はどうしても撤回をしてもらいたい。  以上四点について意見を持っておるわけです。私は、この期に及んで、大臣はほんとうにいま申し上げたような点について真剣に考えてくださるならば、すみやかに撤回をして、そして漁民を救済するような法律が同時にできること、あるいは大型タンカーなどは入港させない、あるいは浦賀水道などに原子力空母、原子力潜水艦などは入港させない、それは外へ退避させる、アメリカの費用でそんなことはちゃんとやりなさい、ここまでこなければならないと私は信じておるわけです。したがって、あなたは撤回する意思があるのかどうか。以上の四点を申しまして、運輸大臣の善処方を私は希望しながら、撤回するかどうか、簡単にお答え願いたいと思います。
  76. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまいろいろ述べられまして、撤回を御要求いただきました。実は与党内にも非常にその点でもっていろいろ議論のあるところでございますが、しかしながら、海上交通の安全と漁業者との調和をいかにすべきかということが問題でございまして、五年間非常にいろいろあらゆる角度から御論議をいただいた次第でございますが、現時点におきまして、今日港則法の適用のない狭水道につきまして、やはりある程度の規制をすることがどうしても必要であるという結論に達しまして、御了解を得ましてただいま御審議を願っておる次第でございまして、そういう意味におきまして、私どもぜひともこの際はこの法案に御賛成を願いたい、こういう趣旨でございます。よろしくお願いいたします。
  77. 土橋一吉

    ○土橋委員 最後に再確認したい。そのことに間違いはございませんか。そうして漁民の救済や沿岸住民の救済、あるいは巨大船の狭水道通過についてはこれをとめる考えはございませんか。
  78. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 それらの点も、いまの点を踏まえまして前向きには検討いたしますが、現実におきましては、御承知のとおり、いまの燃料革命によりまして油が一番大事な燃料になっておる。港湾設備その他においてやむを得ざるものである。その間におきまして、それらの事情を踏まえまして安全対策は十分に施策をしてまいる、こういうつもりであります。
  79. 今澄勇

  80. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣がせっかくおいでになったのですが、討論、採決前でありますので、簡潔に申し上げたいと思います。  私は、昭和四十二年以来、海上交通安全法案の問題が、運輸省、特に海上保安庁、あるいは漁業との調整の問題で水産庁、こういう間でいろいろ協議がされ、関係団体にも話が持ちかけられ、ただ末端までいっていないうらみがありまするけれども、苦心の策として今度の法案が出されてきたという経緯については、私ども理解できるのでございます。しかし、やはりせっかく海上交通安全法案を出すからには、われわれがなるほどというバックボーンがきちっと確立しておらなければならぬ、こう思うのです。本特別委員会でも与野党を通じて議論をされてまいりました、要するに三適用海域、十一航路をめぐってのいわゆる漁業者漁業操業権あるいは生活にかかわる問題について、実害が出たものについては政府が責任を持ってやるというバックボーンがきちっと確立しておれば、やはりわれわれの胸にすとんと落ちる一つの問題がある。しかし、この点については私は触れませんけれども、本来国会の舞台でわれわれが質問をし、政府自身が答弁していいのかどうかわかりませんけれども法案に何らない、話題として出ておる三十五億問題というものを、政府もしゃあしゃあとして答弁するし、われわれのほうも質問する。これは誤りなきを期するための善意に基づいての応答でありましても、本来ならば、正規に法律案の中身として提示があり、それに対して議論すべき性格のものである。そういう実害に対しては国の責任において補償をする。漁業法三十九条に基づく変更というようなものはありまするけれども、やはり私も漁村の出身ですが、漁業者の腑に落ちないですね。だから、いま直ちにこの時点でそれを百八十度転換をするということを運輸大臣に答弁の切りかえを求めることは至難と思いますけれども、私どもはこの法案が苦心の作であるということを認めながらも、なお基本的にバックボーンというものがすっきり通っていない。  その一つは、実害が出た場合にはやはり国が責任を持って総合的な補償をやるのだという点が明確になっていない。また事実、今後の検討問題に課せられておる。これは一体今後の検討を通じてすみやかにその答えが出てくるのかどうかということに対する考え方を聞きたいと同時に、先ほど私、質問の中でも行政当局にお尋ねをしたのですが、巷間伝えられる三十五億の問題が、こういう非公式の形でなしに——私はたまたま公害に関係しておりましたから、公害に係る健康被害の救済立法の問題に関連をして、事業者の拠出というのをやっておるのですね、そして原因の直接明らかなものについては国が求償権を行使するということもありましょうし、原因不明のものについては、そういう国あるいは地方自治団体あるいは業界というものの拠出をもってそして救済に充てるというやり方をやるわけですね。だから、当て逃げとか、あるいは漁場汚濁とか、いろいろな問題も含めて、総合的に考えなければならぬ今後の問題だと思いますけれども、それらについてもう少しきちっとした政府の姿勢というものを明確にしてもらいたい、こう思うのですが、第一にその点いかがですか。
  81. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの御指摘の趣旨の点は、確かに疑問が残ると思います。しかしながら、漁業権の有無ということが非常に問題になります。直ちにこれが国家補償を当然すべきかということが、法律上また予算上非常にやはり問題になりまして、今日のそういうような状態で、しかもこの過密状態をこのままほっておくわけにまいりませんので、いろいろ便宜措置を講じた次第でございます。  ただいま御指摘がございましたように、将来におきましては、先ほども政務次官、また私からも御答弁申し上げましたように、それらの問題も含めまして、漁業者の救済の詳細につきまして、あるいは買収問題、保険制度がいいか、その他あるいは国家としてある程度の助成をやらせる方法がいいか、原因不明のそういったような被害までも含めまして早急に検討いたしまして、水産庁のほうとも十分連絡をとりましてすみやかに立案をしたい、こういうふうに前向きでやりたいと思っておりますので、そういうふうに御了承願いたい、こう申し上げておきます。
  82. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 もう一つの点は、先ほどの特別委員会の議論の中でも出たことですが、また後ほど予定されております附帯決議の中でもこれが素案として出されたと承知しておりますけれども、やはり海上交通安全法案の中で、法案全体を見てもそうでありますし、該当条項を見てもそうであります、いわゆる巨大船優先主義、これがやはりそのまま法案全体を包んでおる。そういった、弱いものが遠慮しなければならない、あるいは避けなければならぬ——東京湾にいたしましても、伊勢湾にいたしましても、瀬戸内海にいたしましても、いまの錯綜状況、今後の状況から見て、やはり巨大船についての規制、湾内に入れないというような規制を立法的にも今日の時点で明らかにし、段階的にそれをどうやるかということを明示すべきだと私は思うのですね。それと、危険物搭載船の問題についても、あの程度のことでいいのかどうかという問題、一たん事故が起こったときはたいへんなことになる、したがって、政府から提案されたあの程度の規制でいいのかどうかという問題についても、率直に私は問題点を持っておるわけですね。それと、やはり海上交通安全という立場と、従来から操業しておる漁業者との調整問題、これは一番苦心を要したところで、そして今度の法案の提案になったのだという経緯を、今度の答弁の中でも明らかにされておるわけですけれども、なおかつ、やはり、たとえば農林大臣との協議とか、あるいは海上保安庁長官とかあるいは水産庁長官との協議とか、いろいろな問題については法文上明らかにされていないし、あるいはいろいろ重要な問題を議論をするという審議会のメンバーの構成においては、部会を新設してやるといっておりますけれども、はたして今後の政省令の制定について十分関係者の意見がいれられるのかどうかという点にも疑問なしとしないわけですね。そういう点も含めて、どういうふうに今後考えられるか、その点を伺っておきたいと思います。
  83. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの非常な御憂慮をいただきました御指摘の点、私も非常に心配をしておる次第であります。先般のジュリアナ号のあの新潟の事件、あのわずか二万トン足らずの船におきましてあれだけのことが出た次第であります。それらのことを見ましても、あれが御承知のとおり風浪の激しい日本海でございましたので、波の浄化作用によりまして事なきを得たからあの程度で安心を見たわけでありますが、これが内海とか、ただいまの狭水道などで起こりましたら、えらいことになるということを私ども非常に心配しておる一人であります。それゆえに、外海におけるところのシーバースの早期の建設、またパイプラインの建設ということによりまして、できるだけ巨大船をそういった狭水道に入れないということ、これは一番早くしなければいかぬという問題でございますが、現在のところ、油の八十数%がこの三狭水道に集まっておる、こういう現実の問題でございます。その点で、先ほど私も申し上げましたが、巨大船にいたしましても、この巨大船の安全性と申しますか、これは私は先般も本会議で御説明をした次第でございますが、飛行機のジャンボが安全であるか、小型機が安全であるか、こういう問題で、安全性のチェックの問題もございます。せっかく日本は世界一の船舶技術を持っておるところでございまして、研究させておる次第でございますが、それらも勘案をいたしまして、少なくともいま以上に国民の皆さんに不安を与えないような措置を何らかとらなければいかぬのではないかということで、先般のジュリアナ号事件以来、いませっかく検討させておる次第でありまして、さらに先生方の御指導をいただきまして早急にそれらの点の具体化もはかってまいりまして、国民の皆さんの御不安を一刻も早く解消いたしたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  84. 今澄勇

    ○今澄委員長 浜田幸一君。
  85. 浜田幸一

    ○浜田委員 私は、過般、大臣がおられないときに、政務次官並びに海上保安庁長官水産庁長官と議論をさせていただきましたけれども、いまだ基本的な政府の姿勢に納得がいきませんので、あらためて大臣に御質問を申し上げたいと存じます。ただし、時間の制限がございますので、的確にお答えいただきたいことをお願い申し上げておきます。  いままでの大臣の御答弁を聞いてまいりますと、この法律をつくる形の中で、すべての安全は確保できないけれども、法律をつくったあとで、漁民の生活権を守ったり、あるいは交通の安全を守ったりするために必要な条件は、これから政府が責任を持って解決をしていくという答弁がされているわけであります。しかしながら、その答弁の中で理解できないことが幾つかあります。その点を私は質問したいと思います。  まず、運輸省計画として、私は例を東京湾にとらしていただきますが、東京湾の総合開発利用計画というものの樹立を持たない運輸省が、あるいは政府が、どのようにして交通の安全を保ちながら漁民の生活権を守ろうとされるのですか、私はこの点がまず第一に理解ができないところであります。私はあらゆる資料調査してみました。しかし、現在の自由民主党の姿勢の中に、あるいは運輸省計画の中に、今後の東京湾の総合利用についてはこのように解決をして安全を保ち、同時に日本国の経済生産性を保っていくのだという基本的なビジョンが確立されていないのであります。そういうような中で、いかに大臣が御答弁をされても、問題の解決にはならないと思いますが、一体具体的にどのような形で解決をされようとするのか。たとえば東京湾の海の浄化の問題、交通安全を正しく守る、その法律をつくることによって、船舶が大いばりで東京湾に入ってくる、油が流される。現在、明原丸の事件も御存じでありましょうが、わが沿岸漁民はその中で八億円の被害を受けておる。しかし、明原丸が犯人であるのかないのか、それはあくまで民事訴訟にかからなければ解決がつかない状態であります。それでは絶えず裏側で泣いていなければならないのは漁民である。私は、そういう東京湾を正しく利用するための計画、同時に、東京湾を正しく守るための政府のピジョン、あるいは沿岸漁民の生活を守るための施策、そういうものが一貫して政府の試案として出てこなければ、これは正しい解決策にはならないと思う。その点について大臣はどうお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  86. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 常々漁民保護の立場から御奮闘をいただき、いろいろ御示唆をいただきまして、この機会にあらためて敬意と感謝を表する次第でございますが、東京湾の環境整備をしまして海洋汚染から東京湾を守る、そして交通安全の点からいたしましていろいろの施策を講ずることは当然のことでございまして、そのためには、私が申し上げるまでもなく、地元で御奮闘いただきます浜田先生十分御承知のとおり、工場の再配置その他いろいろの問題がございます。それらのものをすっかり整備をしてまいりますことが、率直に申し上げまして、まず前提になると私は思う次第でございます。  御承知のとおり、今日の東京湾におきますところの船舶のふくそうの状況は非常なものでありまして、現実におきましてこれをこのままほうっておきましたならば、やはりいろいろな不測の事態が起こらぬとも限らない次第でございまして、しかも一方におきまして、先生御心配になりましたような漁民の安全、漁民の保護という立場もございますので、現時点におきましてはこれが最小限度の調和であるというふうに考えてせっかく御審議を願っている次第でございますので、何ぶんともよろしくお願いいたします。
  87. 浜田幸一

    ○浜田委員 私はこの問題で議論をいたしたいのでありますが、きょうは実は時間の制限がありますからできませんが、運輸大臣の在職中に、小手先の法律をつくることだけによって日本の海上交通の安全というものが守られるとは思いませんから、この点については運輸大臣の責任において正しい形をつくり上げるための努力をしていただきたいと私は思います。  特にその裏づけといたしまして、先ほど私が申し上げましたように、いままでの議論の中でたとえばこういう問題が出ております。加害者不明の当て逃げとか油の被害の問題が出た場合には、そういう問題については何らかの措置をとる、こういうことを言われております。それはこれから起こる問題でしょう。しかし、現実に東京湾の中において、この間、明原丸が犯人であろうということで、海上保安庁にも努力をしていただいて、ようやくこれが犯人だろうということで、追い詰めていったら、これは裁判になって二年も三年もかかる。現実の問題として、法律のない今日の中においても八億円の被害を受けているわけですね。そうしたら、いま答弁されている状態の中で、現実に起こっている被害については、運輸大臣としてはどういう解決をされようとしているのか。私どもは、この問題について犯人がきまって裁判になるまで漁民は待ちきれないから、再生産資金でも配慮してもらいたいということを言っているのですが、この問題については一言も回答がない。これらの問題は、先ほどからの答弁の中でどう処理されようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。
  88. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま御指摘のとおりと思う次第でございますが、それらの問題もございますので、先ほどから私御答弁申し上げましたとおり、それらの問題、加害者不明の問題も含めまして、漁民の皆さまの被害をいかにして救済するかということを早急に検討させて立案に持っていきまして、先生方の御協力をいただきましてそれらの漁民保護に遺憾なきを期したい、こう思っておる次第でございます。
  89. 浜田幸一

    ○浜田委員 きのうの新聞によりますと、佐藤政務次官が質問に答えて、今回の海上交通安全法の問題については漁業補償の及ぶ範囲ではないという記事が出ております。過般の答弁においてもそうされておりましたが、きょうの先生方の質問に対する答弁を聞いておりますと、やはり、それらの問題については努力します、早急に解決しますの一点ばりなんです。ところが、この海上交通安全法説明資料の中で、これは私の先輩であります佐藤守良理事から先ほども質問されたと思いますが、これを見ても、同じ取り扱いをすること自体がおかしいのだということを運輸省も納得しなければならないと思う。たとえば、その一一ページをお開きいただきますと、巨大船のところで、浦賀水道航路については十五隻、中ノ瀬航路は四隻ということで、あと合わせましてもこの数ととんとんなんですね。全部で三十ぱいのうち十四対十六なんです。東京湾の中に十四はいの大型船が入っている。(「十五だ」と呼ぶ者あり)数字によると、これは十四はいです。これはマラッカ海峡を通過する巨大船の半分が東京湾の中に入っておるということです。この数を大臣計算してみてください。たとえば、一日二十四時間として漁民の操業時間を十二時間とした場合に、一時間に一ぱい大型船東京湾浦賀水道あるいは中ノ瀬に入っていった場合に、漁ろう船が避航しなければならない義務を負わせられたら、ここは水産庁が漁民に対して許可漁業権を与えているその許可漁業権を、実際には大型船の通過によって取り上げるということになるではありませんが。いかにそうでないと言っても、実際には漁業はできない状態になることは明らかでしょう。その場合には、六十年間も許可を与えていた漁業権に対して、何ら措置をとることができないという理論は、私は正当な理論ではないと思う。少なくとも政府がすべての国民に対してあたたかい姿勢を保ちながら、日本の国の経済、生産性を高めていこうと努力されるならば、これらに対するあたたかい配慮は当然政府の基本的な理念として行なわなければならない問題ではないでしょうか。私はこの点を運輸大臣にお伺いします。もしかりにこの法案が通されて、ほんとうにこれから十五隻も二十隻もの船が浦賀水域から中ノ瀬を通る、そのために漁民が避航避航を連続することによって漁業が営めなくなった場合に、運輸大臣として、あるいは政府として、それでも漁民の生活を守る義務というもの、補償行為というものをされようとしないのかどうなのか、私はその点をお伺いしておきたいと思います。
  90. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの点、非常に御憂慮いだきまして恐縮でございますが、将来の問題におきまして、漁民の生活がそのためにそこなわれるというようなことが起こってまいりましたならば、先ほどからもお話がございましたが、国家といたしましても何らかの補償措置を講ずるように極力努力をするつもりでございます。先ほども申しましたが、起こる前から、いろいろの加害その他につきましては、いろいろな補償制度もただいまから検討して早期実現を期したい、こう思っておる次第でございます。また、巨大船につきましては、相当早い時間に海上保安庁に通告する義務を負わしておりますので、それらの点につきましても、漁民の皆さまにできるだけ支障のないように、運航時間その他の制限もしてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  91. 浜田幸一

    ○浜田委員 運輸大臣、私はこの点はっきりと事実の証明をしておかなければいけませんが、実は千葉県の漁業の水揚げ高は、全体で二百三十億円なんです。その場合に、太平洋沿岸の場合、これが二分の一であるわけです。そして内湾漁業東京湾が二分の一あるわけです。その約百十五億円あります東京湾の中の三分の一、すなわち、約四十五億円というものが、浦賀水域をはじめ中ノ瀬の中で水揚げされているわけです。この問題は、漁民が食えなくなるということだけではなしに、実際には現在問題になっている鮮魚の物価高の問題、流通問題、そういう物価の問題にも影響が出てくるのです。少なくともこの四十五億円の問題が実際に水揚げ高として減退した場合に、それを業界からまあまあ主義で三十億円集めてこれでPRをする、解決をするということで解決のできる問題ではないでしょう。私は、少なくともこれらの行為に対しては、現実に起こり得る問題に対しては、政府の責任をもって漁民の生活安定をする上において、日本経済、生産性も高めなければならないから、海上交通安全法の規定をするということであるならば、理解はできます。しかし、実際問題としてそういう問題が目前にあるのに、そういう問題には手をつけないでこの法律だけは通していく、これは大胆、やはりわれわれは日本列島の中で生活をする日本国民の一人として、漁民の生活を正しく守るために必要な条件として、運輸大臣、そういう事態になった場合には、法律は通さなければならないけれども、政府が責任を持って解決するという御答弁をいただきたいと思います。
  92. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 いまの御趣旨の点を体しまして、そういう事態の場合には、関係方面と十分連絡をいたしまして、漁民の御納得のいくような措置をできるだけとりたい、こう思います。
  93. 浜田幸一

    ○浜田委員 しつこいようでたいへん恐縮でございますが、その点については必ずお守りをいただきたいと思います。  特に私は佐藤政務次官にもう一点だけお伺いします。同じ問題でございます。  きのうまであなたは、漁業補償行為というものは、この海上交通安全法を通過させる上においてはこれは絶対に問題にならないとか、あるいは関連がないとか、そういう姿勢をとり続けておりました。いまあなたの上司である運輸大臣は、それらの問題が起こった場合においては、政府が関係各省と相談の上、政府の責任においてこれを解決するということを言われましたが、あなたの見解はいかがですか。きのうまでの見解ときょうの見解、お変わりになったかどうか、お答えをいただきたい。
  94. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 私がいままでここの委員会を通じて審議された過程で申し上げたのは、漁業法第三十九条の規定には残念ながら該当しないということを申し上げてきたのです。  それから、いま浦賀水道を十四そうないし十そうの大型タンカーが通る、その避航義務のために漁民が満足な操業ができないじゃないか、これをどうしてくれるんだ、こういうお話だと思います。御承知のとおり、今回の場合は、十二時間前、三時間前に連絡をする、通報する義務がございます。したがって、なるたけ統制をとって秩序ある航行をさして、被害最小限度に食いとめる、なおかつ、その上でも操業ができない、もっと大型タンカーが航行するために漁業そのものが根底から否定されるような事態が起きた場合、当然法律を改正して、実情に合うように措置をする考え方でございます。
  95. 浜田幸一

    ○浜田委員 時間があと三分間でありますから、もう一点だけ。  政務次官、それでは、この交通安全法がかりに制定されても、漁民は、あなた方が運輸大臣と政務次官をやっている限りは、絶対に泣くことはないのですね。このことに答弁をしてください。
  96. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 泣くとか笑うとかということじゃなくて、もっと私どもは政治家としてまじめに考えて、そして漁民に与える損害というものが起きた場合は、先ほど来申し上げたような、当然法律改正をして、実情に合うように問題の本質を解決したい、かように考えております。
  97. 浜田幸一

    ○浜田委員 大臣、いまの政務次官の答弁は、私に対する正しい答弁とは私はいえないと思うのです。それはやはりどこかしらに逃げがある。私は、政治家として問題の討論を行なう上において、答えを逃げてはいけないと思う。法律を通すのは政治家であるかもしれないけれども、法律を守るのは国民であるということなんです。国民が安心して日本の国家がつくり上げた法律を守りやすい、同時に守らなければならない義務を負う、そういう法律の制定をするにあたって、一つの法律をつくることによって安全性は確保できるけれども、その裏側で生活困窮をしいられるような状態があった場合は、それは正しい法律であるとはいえないと思う。このことについて大臣に私はお願いをしておきたいと思います。大臣の答弁の中では、はっきりと、この法律をつくり上げることによって漁業被害が起こったり油被害が起こったり、漁民の生活権の問題が侵されたりするときは、政府がこれを責任を持って解決をされるという御答弁をされましたけれども、そのことに間違いがないかどうか、最後の質問としてお伺いをさしていただきたいと存じます。
  98. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 重ねての御質問でございます。まことに恐縮でございますが、誠意をもって漁民の皆さまにそういった場合に困窮を来たさないように、あらゆる方面と連絡をいたしまして全力をあげましてこの救済に当たる所存でございます。
  99. 浜田幸一

    ○浜田委員 質問を終わります。(拍手)
  100. 今澄勇

    ○今澄委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  101. 今澄勇

    ○今澄委員長 これより討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  海上交通安全法案を採決いたします。  本案を可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  102. 今澄勇

    ○今澄委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  103. 今澄勇

    ○今澄委員長 この際、丹羽久章君、後藤俊男君、宮井泰良君、渡辺武三君から、四党共同提出にかかる本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者よりその趣旨の説明を求めます。丹羽久章君。
  104. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  本法案は、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海における海上交通の安全をはかろうとするものでありますが、これらの海域におきましては、原油類を積載した巨大タンカー、多数の乗客を収容する旅客船等各種の船舶が航行しておりますとともに、海を生活の場とし、日々漁業生産にいそしんでいる人々も数万を数えるのであります。  また、沿岸には多数の人口が集中し、わが国の経済をささえる工場群をはじめとする諸施設も立地しております。  したがいまして、これらの海域における海上交通の安全の確保が目下の急務であることは当然でありますが、そのためには、本法案の制定のみでなく、これに加えて、漁業活動との基本的な調整、原油類の輸送方式の改善等、船舶交通の背景にある問題についても、あたたかい配慮と長期的視野に立った対策を早急に確立することによって一そうの前進が見られるものであります。  この点、本法案でも、法文上できる限りの配慮がなされているわけでありますが、なおこれらの海域における海上交通の安全に関連して本法案のワクをこえる問題があり、これにつきましては、政府において総合的な施策を推進する必要があると考える次第であります。  次に、案文を朗読いたします。    海上交通安全法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、東京湾瀬戸内海、伊勢湾等における船舶航行の現状が、すでにふくそうその極に達していることにかんがみ、海上交通安全対策施策を総合的に推進して、所期の目的を達成するよう遺憾なきを期するとともに、とくに左に掲げる措置を強力に推進すべきである。  一 外海の適地に中継基地を設けパイプライン網の整備を急ぐ等、船舶航行ふくそうの緩和をはかると共に将来長期的に巨大船舶の内海航行について、上限規制等歯止めの措置を講ずること。  二 将来法指定航路におけるふくそうの増大化によりいかにしても船舶の航行安全と漁業操業とが実態的に両立しがたい場合においては、国の責任において漁業者に対する補償制度を確立すること。  三 加害者不明の漁船に対するあて逃げ、あるいは油害等による漁業の損害については、これを救済するための有効なる制度の確立をはかること。  四 政省令の改廃あるいは施行にあたつては、関係者の意見を尊重するよう特に配慮すること。  五 船舶交通のふくそうする海域における旅客船の航行安全については、人命尊重の観点から、一層安全対策の充実強化に努めること。  六 交通ふくそう、海域の汚染等による漁場の減少並びに漁業操業の制約に伴い関係漁民のこうむる影響にかんがみ、内湾漁業の保護並びに振興に関する基本的水産政策を早急に確立すること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  105. 今澄勇

    ○今澄委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 今澄勇

    ○今澄委員長 起立多数。よって、丹羽久章君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。丹羽運輸大臣。
  107. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまは、海上交通安全法案について、慎重御審議の結果、御採決をいただき、まことにありがとうございました。  また、決議されました附帯決議の内容につきましては、その趣旨を十分に尊重し、誠意をもって実施に当たる所存でございます。まことにありがとうございました。     —————————————
  108. 今澄勇

    ○今澄委員長 おはかりいたします。  ただいま議決されました本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 今澄勇

    ○今澄委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  110. 今澄勇

    ○今澄委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十一分散会