○土橋
委員 私は、以下申し上げるところのわれわれの主張によって、運輸大臣がこの
法案を撤回されるかどうか、簡単にイエスかノーかで答えていただけばけっこうだと思います。
私は、この
法案についていろいろ審議される過程で
——特に
漁民の諸君、また沿岸
漁民の諸君が多大の損害を受けるわけです。特に、この法律が成立をしますと、いわゆる避航の義務を負うわけです。従来持っておる
漁業権あるいは魚介に対する権利が全く侵害されるわけです。したがって、たとえば高速道路をつくるにあたりましても、借地借家その他の問題がありますが、権利を保障しなければならぬというのが、憲法第二十九条の基本的な原則であると思っておるのです。それすらも保障しない。したがって、
漁民の諸君は、この問題については、あなたもお聞きのとおり、各府県においてはほとんど全面的に
反対だという声があるわけです。したがって、別途法律を同時に上程して救済するならわかりますけれ
ども、何かの便法によってこれを解決するということは、
佐藤政府がいまいよいよ孤城落日の観がありますので、非常に危険だといわなければなりません。したがって、
漁民の
漁業権と権利を守るという観点からも、まことに
賛成しがたいものであることは当然なんです。
第二番目の理由としては、御承知のように、
佐藤政府が唱えておりますように、高度
経済成長政策が今日非常に進んでおります。しかし、この春闘に見られますように労働者が大幅の賃上げを要求したり、
漁民が要するにもろもろの要求をしたり、農民が御承知のように非常に困っておる、この事実は、高度
経済成長政策が必ずしも勤労者階級に利益と幸福をもたらさないものであるということを、ある面においては証明しておると私は思うのです。今度の春闘は、御承知のように
——あなたも管轄でよく御承知でしょう。私鉄、国鉄が大闘争をやりました。従来にないストライキを敢行いたしました。そのために何十万という人が困ったわけです。それにもかかわらず、国鉄は最後まで御承知のようにゼロ回答を主張しておった。こういういきさつもありまして、何ら労働者の地位が向上しない、労働条件も改善しない、賃金の底上げをしないという状況下にあって、そして大資本は肥え太っているわけです。たとえば
東京湾を出入りをするそういう船は、秒をもって数えるほど通るわけです。あるいは、ついせんだって見学をいたしました水島の狭水道でも、年間に七万そうという船が通過するわけです。こういうことは、まことに、喜んでいいのか悲しんでいいのか、わからないという状況です。そうなってまいりますると、
大型タンカーあるいは原子力空母、あるいは薬物、危険物などを搭載している
船舶は、こういうところを他の漁船などに避航を命じて通過するということは、ある農民の代表は、昔の大名の土下座と同じじゃないかということを言っておりましたが、私は全くそのとおりだと思うのです。こういう
法案を通すことは、
大型タンカー、原子力空母あるいは毒物、薬物などの危険なものを搭載しておる
船舶を優先的に
航路という名前で通航させる、したがって、海洋の汚濁の問題、海難の問題、また、特に人命尊重の上から、この法律をつくりますと、むしろ逆効果であると思います。これが、やはり私たちがこの
法案についてどうしても
賛成できない点で、むしろ国際的な海上衝突予防法の規定に従いまして、あの原則を入れることがやはり沿岸
漁民を真に守るものであるし、自由民主党がよって立った今日の政権の基礎は、これら
漁民の諸君の大きな力でもあった、その
漁民を裏切って、大資本に奉仕をするようなこういう政策を掲げておることは、自由民主党の中でも問題があると私は思っております。これが第二点のおもな内容です。
第三番目は、六月の上旬に開かれるストックホルムの人間環境
会議、いわゆる地球を守る、環境を改善する、こういう基本的なわが国全体の、つまり公害をなくするという原則は、世界的な問題になってきておるわけです。これは先進国においては特にそうだと思います。したがって、環境保全をし、さらに環境をよくするということが必要であるにかかわらず、自由民主党は盛んに臨海工業地帯の造成なり大資本に有利な政策を進めておる。そのために海面が汚濁したり、赤潮が出たり、あるいは
石油が流れ出るとか、あるいは
石油の船を洗った水がすでに沖繩県で、あなたも新聞でごらんのように、たいへん問題になっておるわけです。そうなってまいりますと、この法律をつくることによって、狭水道をそういうものが通過することは、いま海水の汚濁や、またそういう危険な問題をしいて引き入れるというふうに私は
考えざるを得ないのです。したがって、公海の中に大きなタンクでもつくって、そしてこれは
パイプラインにするとか、あるいはまた、液体ガスであればパイプで送るとか、あるいは
原油もそうでしょう、精製した
石油もそうでしょう、さもなければ飛行機で
輸送するとか、あるいはまた、だるま船のようなものをつくって、もう絶対衝突しても安全だというものをつくって
——かつて朝鮮を豊臣秀吉が攻めていったときに、カメの甲船というものをつくりまして戦争したといわれている。ああいうものをつくって、全く安全な
——これにほかの船が突き当たっても海難は起こりますけれ
ども、そういうものをつくってやることが必要ではないか。そういうこともやらないで、特に
石油資本はいま政府のいわゆる優先政策によってばく大な保護を受けております。ところが、昨年のドル・ショックで、御承知のように、九州のコンビナートでは三百人のところを五十人に減らすというので騒ぎを起こしておる。一方ではどんどんコンビナートをつくる。こういう矛盾した政策を掲げておる
佐藤政府では、この問題につきまして善処をすると申しましても、私は信用できないのですよ。
以上の三点が中心となって私は
反対なんです。絶対撤回してもらいたいというのが私の要求です。
第四番目の問題は、約四十億にわたるところの
資金を独占資本の諸君が中心になって出すという話を承ったわけです。ところが、独占資本というのは、労働問題や自分の金を出す問題についてなかなか渋いのですよ。自分がもうかることならばどんな危険をおかしてもどんどんやりますけれ
ども、これはそういう採算のとれないものだということになってくれば、彼らは非常にきたないものです。これらの諸君が四十億円出して、はたして一体どれだけの
漁民の災害防止や権利の保障ができるか、その点非常に私は疑問と言わざるを得ない。したがって、今日のメカニズムから言うならば、当然これは政府の責任においてそういう諸君から金を徴収して、あるいは金を集めて、政府がきわめて適切な方法で
漁民の権利を守るというならばいいのですけれ
ども、怪しげな諸君が集まって、よってもってお互いに食いつぶして、また一部の幹部諸君だけがうまくいって、沿岸
漁民や、一本釣りやあるいは零細
漁民は、ほんとうにそういう利益の均てんを受けることはできないと思うのです。こういうことはあなたはよく知っていらっしゃると思うのです。私よりもあなたは先輩だと思うのです。そういう中で、この法律を通せば
漁民がどう
反対するか、あるいは海水が汚濁され、どういう海難が起こるか。たった六千トンの昨年の十一月三十日のあの新潟沖における海難におきましても、あれだけの騒ぎをしておる。もし二十万トンの
タンカーの
事故が、
東京湾あるいは伊勢湾あるいは備讃水道において起こりますならば、これは目も当てることもできない。沿岸
漁民の生活を全く破壊をしてしまう、魚介類を破壊をしてしまう、こういう危険なことを包蔵しておる内容を持っておるこの
法案を、私はどうしても撤回をしてもらいたい。
以上四点について
意見を持っておるわけです。私は、この期に及んで、大臣はほんとうにいま申し上げたような点について真剣に
考えてくださるならば、すみやかに撤回をして、そして
漁民を救済するような法律が同時にできること、あるいは
大型タンカーなどは入港させない、あるいは
浦賀水道などに原子力空母、原子力潜水艦などは入港させない、それは外へ退避させる、アメリカの費用でそんなことはちゃんとやりなさい、ここまでこなければならないと私は信じておるわけです。したがって、あなたは撤回する意思があるのかどうか。以上の四点を申しまして、運輸大臣の善処方を私は希望しながら、撤回するかどうか、簡単にお答え願いたいと思います。