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渡辺(武)
委員 周知徹底に対して十分なる時間と労力を惜しまないようにやらなければいかぬとおっしゃるのですが、この
海上衝突予防法なんかは、相当長年月にわたって本来は
適用されておるわけですね。ところが、やはり立場が違うことによって、自己の立場により、より有利な解釈をなさるわけだ。いまだに、この
法案の
審議にあたって私
どもがいろいろ
お話を聞きにいきますと、そういう主張が出てきておるわけです。
海上衝突予防法では
漁船の
避航義務は全然ないんだ、これは
一般船がすべて進航していかなければならぬ、そうなっている、こう言われるのですが、しかし、実際よくよく読んでみますと、必ずしもそうではないのですね。
後段のただし書きがついているんだから。それほどに
周知徹底なんというのはなかなかできにくいわけですよ。また、それほどにむずかしい問題であるならば、なおさら私は、ほんとに一々
説明を加え、何回も何回も
説明を加えてようやく理解できるというような法文ではなくて、むしろもっとすっきり簡単明瞭に、さっと読めばわかるというような、そういうことが必要ではないだろうか、こう思いまして、特に私が読みました中で一番難解な字句等についていま
お尋ねをしたわけです。現実の問題としてそうなんですよ。いまだに解釈がまちまちだ。今度の場合でも、進航義務があると言われるから、よくよく読んでいきますと、その
避航義務たるや、いわゆるきめられた
航路の中できめられた航法に従わないときにのみ進航義務がある。したがって、走っておるときには
避航義務を課せられていない、こういうことです。ところが今度は、そういうことになっておるにもかかわらず、
漁民の立場になりますと、もうこれは全面的に
操業すらできないのだ、いわゆる生活権が脅かされるんだ、こういう強い主張になってあらわれてきておる。しかし、
漁民の方々から見れば私は無理はないのだろうと思う。まずどうなるだろうかと見たら、避航しなければならないとなっているから、その他こまかいことはやめて、いやこれはかなわぬぞということになってくると思うのです。だから、その辺はもう少し
——全体的にそういうところがあるのじゃないか。今後の問題としてそのほかの中にも解釈上非常に問題になってまいりますのは、たとえばびょう泊とか停留とかいうことばがあるわけですね。一体びょう泊なのか停留なのか、どちらなんだ。びょう泊はいけないけれ
ども停留はいいんだというような場合に、一体どうなっているのだろうか。びょう泊とは、大体いかりをおろしてそこで休むので寝てしまう、これをびょう泊というのだ、こういうことになるだろうと思いますが、しからば停留とは何だということになってきますと、非常にむずかしくなってきてしまうんです。だから、これは解釈のしかたで、結局自己の置かれた立場によってそれぞれが解釈をされていくということですから、この辺はまだまだ研究の余地がある問題ではないだろうか。特に法文上難解な字句その他については、もっとわかりやすく
——事故が起こってから、お互いの立場の中で主張をされて、そうしてなかなか海難事故そのものの処理が長引いていくというような問題が出てくるのではないだろうか、あるいは裁判所そのものも判断に困るような法律の字句が使ってあったのでは、解釈のしかたによって変わってくる、こういうことは非常に好ましくないのではないだろうか。そのためにむだな労力と時間、これは
海上保安庁の方々たいへんだと思いますよ。これだけの難解な法文をほんとうに
周知徹底せしめる、しかも大きな船は、われわれの
調査によってもきわめて外航船が多い、そうして外国から入ってくる物資のうちの半数以上を外航船というのが占めているわけですから、つまり、外国の船員に対して、外国の船長に対して十分
説明をしていかなくちゃいかぬ、こういうことになってまいりますね。そうなりますと、これは国際法上いろいろ通例としてやられておることはわりあいに理解しやすいと思うのですが、日本だけの特例としていろいろなこまかいことが設けられ、しかもそれらが非常に難解だということになりますと、これこそまたたいへんな問題になってくるのではないか。しかもそうしょっちゅう港におるわけではございませんから、たまに日本の港に入ってくるそういう外航船に対しての
周知徹底、これまたたいへんなことであろう。そういうことを
考えますと、どうしてもっと法文そのものの内容が簡単明瞭にわかりやすい、疑義の起こらないような方向で書けないのかどうか。書けるとするならば、今後の問題としてひとつ早急にそういう点に研究をしていただいて、改めていただきたい、
要望をいたしておく次第でございます。
次に、
巨大船が通航する場合にはこれは通報義務が課せらております。先回の
お話では、十二時間と三時間前の二回を予定しておるのだ、こういうことでございます。先ほどの質疑の中にも若干
関係をいたしておったと思いますが、私はむしろ、それらをどうして
漁ろう船に
周知徹底をするのか、その連絡方法、それはどのようなものを
考えておられるのか。
さらに、あわせて
お尋ねをいたしておきますが、たとえば
危険物積載船、これは中
小型船といたしましょう。
愛媛の沖合いで先日シアンか何か流出をした、こういう
お話でございました。ところが、たまたまその
船舶は通信施設を持っていなかった。ために、船長は海に飛び込んであわてて通報をした、こういうことを言っておられました。そうなりますとこれは非常に問題があるのではないだろうか。これもいろいろ調べていきますと、船員法の十九条だとか、あるいは危険物
船舶運送及び貯蔵規則というようなものの中にそれぞれ
報告義務は定められておりますけれ
ども、しかし、
報告の手段は別に書いてないわけですから、本来、毒物だとか劇物というものが流出をしてしまったというような場合に、それから自己の持てる小さい船で人間そのものがこいで岸に着いてそして通報しておったのでは、もう処置そのものが非常に手おくれになってしまう、そして付近一帯にその害を及ぼしてしまう、あるいは人命にも重大な影響を与えるというようなことがあろうかと思います。したがって、
前段は、
長官から、
漁ろう船に対してどのような連絡手段を
考えておられるのか。
後段で
お尋ねをいたしておりますのは、むしろ危険物を積載するような
船舶に万一事故が起こった場合に、一体どのような形で連絡かなされるであろうか。確かに
報告義務だけは書いてありますね。そういう場合は、保安庁
長官あるいはどこどこ本部長、管区を経由して
長官に届けなければならぬ、こういうことにはなっておるわけですが、それは単なる届け出義務というものであって、いわゆる緊急の場合の連絡処置、こういうものが、一生懸命さがしましたけれ
ども、実はないようなんです。われわれが
現地視察いたしましたときも、たまたまそういう事故があって、連絡手段がなかったものですから、船長は海を泳いでそうして通報したんだ、こういう
お話を聞いてきたわけです。この辺の
海上保安庁の見解をひとつお聞かせ願いたい。