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1972-04-25 第68回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十五日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 今澄  勇君    理事 大竹 太郎君 理事 河野 洋平君    理事 佐藤 守良君 理事 丹羽 久章君    理事 後藤 俊男君 理事 宮井 泰良君    理事 渡辺 武三君      小此木彦三郎君    左藤  恵君       野中 英二君    浜田 幸一君       山下 徳夫君    久保 三郎君       松平 忠久君    土橋 一吉君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君  出席政府委員         水産庁長官   太田 康二君         運輸政務次官  佐藤 孝行君         運大臣官房審議         官       見坊 力男君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         海上保安庁長官 手塚 良成君         海上保安庁次長 須賀貞之助君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     福田 勝一君         防衛庁装備局艦         船課長     佐伯 宗治君         外務省アメリカ         局外務参事官  橘  正忠君         大蔵省銀行局保         険部長     川口 嘉一君         水産庁漁政部長 田中 慶二君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日 辞任         補欠選任  大久保武雄君     浜田 幸一君     ————————————— 四月二十日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願(久保  三郎紹介)(第二六九八号)  同(斉藤正男紹介)(第二六九九号)  同(土井たか子紹介)(第二七〇〇号)  同(土井たか子紹介)(第二七九〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二八一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  海上交通安全法案内閣提出第一〇一号)      ————◇—————
  2. 今澄勇

    今澄委員長 これより会議を開きます。  海上交通安全法案を議題といたします。  この際、おはかりいたします。  本案審査のため、各地委員を派遣したいと存じます。つきましては、議長に対し委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 今澄勇

    今澄委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の氏名、人数、派遣期間派遣地その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 今澄勇

    今澄委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 今澄勇

    今澄委員長 次に、去る十九日、本案審査のため、東京湾視察してまいりましたので、この際、その報告を求めます。宮井泰良君。
  6. 宮井泰良

    宮井委員 海上交通安全法案審査のため、東京湾交通事情等について、去る四月十九日、浦賀水道航路及び中ノ瀬航路予定海域における船舶ふくそう状況、及び漁業海事関係者からの意見聴取に重点を置いて視察してまいりましたので、その概要を御報告申し上げます。  視察委員は、今澄委員長中村弘海君、丹羽久重君、渡辺武三君、小此木彦三郎君、松平忠久君、土橋一吉君、それに私、宮井泰良であります。  また、地元より議員浜田幸一君の御参加を得ました。  東京溝は、京浜港、千葉港などの大港湾を有し、これらの港への船舶入港隻数年間四十三万隻と、非常に交通ふくそうしている海域であります。中でも、浦賀水道は、一日の通航船舶が八百七十九隻で、一分間に一隻近い船が通航しております。このうち、巨大船は、多い口で十五隻程度通航となっております。このような東京湾交通事情を見ますと、船舶交通ふくそうするこの海域について、海難発生、これに伴う災害の発生を予防するため、海上交通規制を行なうことが焦眉の急務であると考えます。  以下、順を追って申し上げます。  東京港から海上保安庁新造水路測量船木更津港に向かい、船中で、海上保安庁長官から、海上保安の現況、特に東京湾における船舶交通ふくそう状況海難状況について説明を聴取いたしました。  次に、木更津市民会館において、海上交通安全法制定に対する千葉県及び千葉県漁連意見を聴取いたしました。  すなわち、千葉漁民は、年間延べ二千四百隻程度によって中ノ瀬航路浦賀水道航路付近で操業しておりますが、本法により漁ろう船巨大船を避けるようになりますと、そのことのために操業できなくなる場合もあるという意見であり、そこで、県からは、船舶交通の安全をはかるための何らかの規制が必要であることは理解するけれども法案について再考されたい、また、県漁連からは、生活が維持できる方法を考慮されたいとの意見が表明されました。  なお、君津地区安房地区漁民の代表からは、巨大船がひっきりなしに来るので困るという陳情がありました。  次に、木更津港から横浜港に向かい、海上保安庁が目下整備を進めている東京湾海上交通情報機構の一環である木牧レーダー局視察し、海上保安庁燈台部長から整備状況について説明を聴取し、レーダーテレビにより浦賀水道航路北部海域及び一日平均三百六十七隻が通航する中ノ瀬航路ふくそう状況を観察し、現状を放置することの危険性及び交通規制必要性を痛感し、この施設の早期完成が必要であると感じました。  次に、神奈川県庁において、神奈川県、神奈川県漁連横浜船主会東京湾海難防止協会及び東京商船大学中局教授から、本法制定に対する意見を聴取いたしました。  県からは、本法海上交通規制として当を得たものであると思うが、この規制によって航路付近については、小型底びき網、中型まき網、たこつぼ、一本釣り等漁業影響が生ずることも考えられるので、これについて何らかの救済措置が必要であること。  県漁連からは、漁船は、現在でも、エンジンをとめないでおいて巨大船を避けており、事故もないのに、本法漁船避航を定めることが理解できないこと。また、法案作成に際し、上部機関だけでなく、現地漁民の声を聞くべきであったこと。  横浜船主会東京湾海難防止協会からは、本法制定は、新潟沖ジュリアナ号事件のような海難東京湾発生することを未然に防止するために必要であるが、百トン以上の船舶の約九七%を占める一般船舶に関する航法現状より後退しているので、現状どおりにしてほしいこと。  さらに、中島教授からは、海を自由に使うために航路を設ける国が多いので、わが国航路を設けて通航分離を行なうことが望ましいこと、漁業問題は他国に類を見ないので、わが国独自の問題として慎重に審議するべきこと、また、人命安全の見地から旅客船を別扱いにしてはどうかなどの愚見を聴取しました。  横洪港から再度乗船し、浦賀水道に向かい、現在海上保安庁が行なっている航法指導の指標となっている五番ブイ、四番ブイ、また、航路を狭くしている第二及び第三海堡視察しました。現地における船舶ふくそう状況ははなはだしく、一望の視野の中に十数隻の船舶が入ってきました。  最後に、一転して中ノ瀬航路を北上し、中ノ瀬東の七番ブイ東京灯標を通過して東京港に帰着しました。  報告を終わるに臨み、千葉県、神奈川県、木更津市、漁業関係団体海事関係団体関係者に対し、深甚なる謝意を表したいと思います。  以上で報告を終わります。     —————————————
  7. 今澄勇

    今澄委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。渡辺武三君。
  8. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 大臣お忙しいようでございますので、まず大臣から御質問を申し上げていきたいと思います。  本法案が、わが国の狭水道における船舶交通の安全をはかるために、昭和四十二年ごろに立案をされて、その後幾多の討議を経て関係方面との調整がはかられ、さらには、与党である自由民主党の各級機関において決定がされ、その上に立って閣議決定されて今国会に提案をされておる、かように理解をいたしておるわけでございますが、これはそのとおりでございますか。
  9. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま大体そのとおりでございますが、やはりこれだけの法案を出しますにつきましては、各界、それに影響を及ぼす各方面という方の大かた意見におきましても、ある程度のコンセンサスを得られなくてはいけないものでございますので、実は四、五年この方、提案をいたしたいと思いましても、いろいろの障害でできませんでございました。それらの点につきまして調和をはかりまして、今回やっと提案にまでこぎつけたような次第でございます。
  10. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 大臣のお説によりますと、関係団体との調整も終わっておるんだ、このようにおっしゃっておるわけですが、現実の問題といたしまして、いまも報告がございましたように、私どもが先日浦賀水道視察いたしましたときにも、各県の漁業組合はこぞって反対という態度を出しております。さらには、与党である自民党内部においてもやはり反対意見があるようでございます。そういたしますと、冒頭にお尋ねをいたしましたような諸手続関係調整というものが、はたして大臣がおっしゃっておるように円滑にいっておったのかどうか。意見調整のままの部分が相当数残されておるのかどうか、この辺が多分に疑問になってまいるわけでございますが、その辺はいかがでしょうか。
  11. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまお話がございましたが、党内におきましても、水産漁民立場になりましていろいろの問題を御心配をいただきまして、いろいろ御指摘を受けたことは事実でございます。そのたびに再三再四討議いたしまして会議も開いてまいったことは事実でございますが、最終におきまして党内において決定してこのようになったわけでございます。また、関係団体につきましては、まだ法の趣旨、それと調和の問題につきまして、現場におきまして徹底を欠いておりまして御納得いただけない点も、いま御報告がございましたとおり、ありますのは、まことに残念に思っておる次第でございますが、私ども考えでは、ほんとう趣旨をわかっていただければ漸次御了解いただける、こういうふうに思っておる次第でございます。
  12. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういたしますと、過程においてはいろいろあったけれども現時点においては、自民党内部においてはそういうことはないので決定をしておるのだ、こういうことでございますね。  それでは、そういうことを前提にいたしまして、お尋ねを続けていきたいと思うわけでございます。  先ほども報告がございましたように、浦賀水道を実際に視察をいたしてまいりますと、ほんとう船舶ふくそうをいたしておりまして、現状のままでほんとう海上交通安全というものが守られるであろうかという危惧は、私ども実際目で見まして痛感をいたしたわけでございます。したがって、本法案が基本的にいわゆる海上交通の安全を守るために必要だ、こういう認識に私自身も立つわけでございますが、しかし、一方、そのために受ける犠牲といいますか、そういう方々への救済措置、この辺が、従来までの討議でいきますと、いわゆる漁業権のないところに補償はない、こういう政府側のお考えのようでございますが、本来、今度規制をされようとしている海域設定をされようといたしております航路の中には、現実にその漁業権なるものが設定されているところは一カ所もないのでございましょうか。
  13. 手塚良成

    手塚政府委員 私どもよりは水産庁のほうがよろしいかとも思いますが、いま予定しております十一航路、この航路につきまして、その範囲、区画、これをどうするかというのは、今後また政省令にまかせられておりますので、なお検討するつもりでおりますが、一応いま想定されております中では、たとえば伊良湖水道、それから来島海峡航路、この二カ所については、許可漁業のごく一部がこれにかかっておるという実情が原案の中で考えられております。しかし、この問題につきましては、なお今後関係方面との折衝、調整をいたしまして、漁業実情に沿うようにいたしたい、こう考えております。
  14. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私、実は漁業権について若干調べてみたのですが、漁業権は昔からございまして、途中において国がその漁業権そのものを買収するために約百七十八億ですかの補償金を出して国家漁業権を買収をしておる。その後、それをもとにして、国家が握った漁業権を今度許可制にして都道府県知事に存えて、これが各地の各海区における各漁業組合等漁業権として許可が与えられておる、こういうふうに理解をしておるわけでございます。  そこで、たいへん古いことでございますので、当時の漁ろう船その他が、設備その他から考えて確かに範囲か狭かったかもわからない。しかし、先日も視察に行ってみますと、国は漁業権はないと言っておるけれども、われわれのほうはもう二代、三代にわたってその海域で漁ろうをして生活をしてきたのだ、いわば既得権が生じておる、にもかかわらず、政府は、一貫して、漁業権のないところ補償はないという態度をおとりのようだ、これはしかし問題ではないか、こういう意見がきわめて強いようでございますが、その辺の問題です。実際に設定をされた時期と今日に至るまでの経過、その間における漁ろう船そのもの進歩等によって、漁ろうする海域というものは広まっておると思いますね。その辺の手直しがされないままに、現実の問題として、いま設定されようとしておる海域なり航路の中において長い間漁ろうが行なわれてきた。したがって、漁民立場からいけば、たまたまその海域漁業権と称するものの中に入らなくても、当然もう二代、三代とわたってそこで漁ろうをし、生活をしてきたわれわれの生活権既得権というものが生じておるはずだ、これを今回侵害をされるのに対して国家が何も補償しないという態度、これは少しけしからぬじゃないか、こういうことがあるわけでございますが、この辺について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  15. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 実はこの問題につきましては、何と申しましても、漁民立場に立ちまして漁民の利益を守るという点におきまして、官庁といたしましては水産庁でございますが、私は、初めこの立案をさせるにつきまして、水産庁十分協議をして水産庁の御協力を得なければこの法案提案もできぬということで、十分協議をさせた次第でございます。水産庁のほうにおきましても、いろいろ十分御検討をいただきまして、非常に御協力を願った。この点で、漁業の問題、それから補償の問題という点につきましていろいろ先生から御指摘がございましたが、現時点におきましては、正式に申しまして補償対象になるような漁業権はないというような御見解のように私承っておる次第でございます。また、水産業界、これは現場ではございません、中央水産業界のほうの全漁連という方面からも御意見を十分いただきまして、御協力も願ってやって、そういうふうになった次第でございます。それらの、いまの御指摘のような漁業権推移、それから現在の推移につきまして、私はあまり詳しく承知しておりませんので、その点を承知した関係局長から御説明させたい、こう思う次第でございます。
  16. 手塚良成

    手塚政府委員 漁業実態、その権利関係等につきましては、先生のおっしゃるようなことであろうと思います。ただ、本法案によって、漁業権との関係につきましては、基本的には両者のいわゆる共存共栄をはかるという大前提をとったわけでございまして、漁業との実質的な問題、この法案の施行によって起こる問題は、いわゆる巨大船避航という関係の問題ではないかと思うのです。それ以外は、一般漁業について、まず端的に言いますと、従来どおり漁業はできる、また、そういうふうにするような法制上の調整をとるというふうにやっておるわけでございます。  その巨大船避航という問題のみにつきましては、これは私ども考え方としては、やはり海面の使用というのは、漁ろうについての場であると同時に、一般船舶航行の場でもあるという大前提のもとに、そして両者調整し、共存共栄をはかるというからには、やはり一番行動不自由な巨大船というものを漁ろうの船が一時避航するということによって、その両者安全確保、ひいては漁ろうもできる、一般船舶航行もできる、こういうふうな考え方に立って避航の原則を立てておるわけでございます。したがいまして、そういった内容避航でございますので、これは漁ろう船安全確保のためでもあるという面におきまして、物理的不可能に近い巨大船というものを進航する、お互いに譲り合うというような観点内容考えますので、その間におきましては、これは法律的な補償という問題にはなじまない、お互いの互譲の精神の範囲内である、かように考えますので、ただいまおっしゃいました既得権的な考えにつきましては、そういった権利の制限ということには必ずしもならない、かように考えるわけでございます。
  17. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 本来、漁業権というものが現実になくても、数代にわたって実際にとってきた、この辺が、われわれがお聞きをした中では反対の最大の理由であったわけです。そこで、今回、おっしゃるように、安全をはかるためには交通整理をせざるを得ない、それがまた双方にとってのメリットでもある、こういう観点にお立ちになることは、私はけっこうだと思います。しかし、そのために多少でも操業に影響を及ぼす人々の補償の面を全然考え余地はないのだという考え方は、はたして妥当かどうかということになりますと、私は、やはり若干疑問の余地が残るのではないかと思う。本来的にそれで済むことであるならば、この間の委員会でも問題になりましたように、民間ベースにおける補償問題等も何ら起こってこないはずなんです。それは民間ベースでやればいいのだという考え方でなくて、国家そのものがやはり何らかの方法を講ずべきではないか、こういうことを、実はお尋ねをいたしておるわけです。  ところが、長官のお答えは、むしろ前面に交通安全、それが双方メリット、互いに譲り合う——それはまあそれでけっこうです。ところが、現実の問題としてそういうふうに起こってくる問題、これは多かれ少なかれ多少の問題はあろうかと思います。したがって、そういう問題について今後ともひとつ研究を重ねてもらいたい。特に、民間ベースにまかしておけばいいという問題では私はないと思いますので、そういうふうに何らかの補償の道を講じられる方法はないかどうか、これについての研究をひとつしていただきたい、かように考えるわけでございます。  そこで具体的な問題に入ってまいりたいと思いますが、先日私どもが見せていただきました浦賀水道、ここにおきまして、過去において衝突だとかあるいは座礁等海難事故がどのように起こっておるのか、あるいはそれらによって緊急的に講じられなければならない措置というものは一体どのようなものがあるとお考えになっておるでしょうか。
  18. 手塚良成

    手塚政府委員 一般的な海難ということでいきますと、まず全国で問題になります衝突、乗り上げ、それ以外ということの分数によりますと、四十六年度におきましては三千五百隻という海難実態がございます。その中で、いわゆる狭水道といいますか、この法案で問題にしております東京湾伊勢湾瀬戸内海、この三つのものにつきましては、全体の約八〇%弱くらいがそういう中で起こっておる。なお、それが航路ということで見ます場合に、これがさらに少なくはなりますが、たとえば浦賀水道及び中ノ瀬航路及びその付近ということになりますと、過去五年間で見ますと、衝突、乗り上げの海難事故は九十四隻ございます。これは五年間でございますから、平均いたしますと年間約二十ぱい弱ということになるかというふうに思います。これは一般船舶が八十八隻、漁船が六隻、こういう五年間浦賀水道の統計でございます。以下、伊良湖水道におきましては、そういった数字が十七隻、漁船が四隻で、一般が十三隻、それから瀬戸内海明石航路につきましては、総体が六十隻、一般船舶が五十七隻で、漁船が三隻、それから備讃瀬戸の各航路におきましては二百六十五隻、二百二十五隻が一般船舶で、漁船が三十隻、来島海峡におきましては八十八隻で、一般船舶七十六、漁船十二、その他が千九百五十八というのがございますが、大体以上のような航路海難状況でございます。  私どもは、これらの狭水道につきまして、従来、いま御審議願っておるような法律体系はございませんので、行政指導というたてまえでこの安全確保のいろいろなとり得る措置をとっております。特に、四十五年の十月三十日に浦賀水道におきましてコリントス号と第一新風丸という船の衝突事故がございました。これは一方はタンカーでございますが、このときの事故が非常に危険をはらんでおりましたことにかんがみまして、それまでにやっておりました行政指導をさらに強化するというような措置をとることにいたしました。  その内容は、船舶それ自体について、たとえばレーダーその他の機械装備を十分にやらせる、この範囲を広げる、あるいは標識について新しいものをそういった狭水道においてつけさせるというような、船舶装備そのもの、それから運航の面につきまして、特に、ただいま申し上げた事故では、一方は外船であるという事情にかんがみ、その外船が狭水道の特殊な地形条件を十分熟知しない、そういう面を予防するという意味で、できるだけ水先人をとらせる、いわゆる水先人を強制させるという制度がございますが、その制度の改善以前に、できるだけ自主的に水先人をとらせる、こういうような措置、さらには一般航法の問題といたしまして、私どもは、浦賀につきましては、推薦航路という言い方で、中央ブイを七個入れまして、いわゆる本邦で言う右側通行ということをやらせるように指導をいたしておりますが、そういったものの対象船舶、あるいはそういうものの履行の厳格さ、これを監視、実施確保をはかるためのパトロールボートの強化、こういったものを、先般四十五年十月三十日のあの事故後に指定をいたしまして、その実施確保をはかる、こういった浦賀に対応するものを、さらには地方の伊勢湾あるいは瀬戸内海というほうにもまたひとつ実施していきたい、こういうことで現在指導中ということでございます。
  19. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私の質問時間を一時保留しまして、大臣お帰りのようでございますので、次の土橋委員大臣への質問を譲りたいと思います。
  20. 今澄勇

  21. 土橋一吉

    土橋委員 大臣が忙しいので、十分間程度だけ、簡単に結論だけ聞かしていただけばけっこうで、内容説明は要りません。ただ、この問題について賛成反対かということだけ答えていただけばけっこうであります。  おそらく、大臣もあるいは運輸行当局の幹部の方も御承知と思いますが、昨日の読売新聞の中で、「ああ自然反故」「燃えよ環境革命」「荒廃加速」「死ぬのはあなただ」、こういう新聞記事が大々的に出ておるわけです。これはことしの六月、国連を中心環境保全をするための世界的な運動がいま起ころうといたしております。こういうことについて、第一の問題として、大臣賛成反対か。そんなことはどうでもいい、いや、そんなのはかまわない、佐藤政府の政策では新全総の内容を実現をするためにやむを得ないのだという観点に立つのかどうか、イエスかノーで答えていただきたいと思います。  筋二番目の問題は、いま問題になっておる中心は、いろいろございましょうが、タンカーの問題であります。それと、アメリカのいわゆる原子力空母というようなもの、原子力潜水艦、こういうものがやはり浦賀水道上り下りをするわけです。したがって、大型タンカーなどについては東京海に入れないでおいて、一定の場所にタンクをつくって、あるいはパイプでそこから川崎なり千葉工業地帯に送るとかいうような方法が好ましいのであって、狭い水道をそういうものが通過することによってたいへんな海難が生ずる。これは大臣も、新潟県のあのジュリアナ号についてお話があったように、火急にこれを進めなければならぬと自分も決意をした、こういうことをおっしゃっているのですが、こういう原子力関係、危険な兵器あるいは原油というようなものがもし海難に遭遇しますならば、たいへんな災害を生ずるわけです。したがって、業者として公海上あるいは水道航行する権利を持っておることは当然でございますけれども、しかし、そういう精神から見て、これを浦賀水道なり中ノ瀬水道に入れないで規制をするという方向について、賛成反対なのか、どうしてもそれを入れたほうがいい、せっかくコンビナートをつくっているのだから、それとの関係で入れたほうがいいという考えなのか、それとも、基本的にやはり東京湾の入り口で本来は規制すべきものである。その災害はまことに甚大であるので、こういうことに基本的に賛成であるのかどうか、第二点目です。  第三点目は、一体、業界から三十億円金をもらって、それも、業界といっても、これは石油業者です。それから鉄鋼業者です。同時に船主協会などから三十億円という大枚の金をもらって、一体どうする考えなのか。どういう方法でそんな金を集めることに賛成したのか。資本家というのは、大臣も御承知のように、自分の利益にならない金は一銭も出さないのです。いま春闘においてあれだけの大問題になっておるにもかかわらず、運輸省もそうでございますけれども、つまり国有鉄道が御承知のようにたいへんな低額回答をいたしまして、これから汽車がみなとまろうとしておる。つまり、資本家階級というのは、自分の利益にならないところには一銭の金も出さない。それが、三十億という大枚の金をそろえて一体何をしようとしておるのか、どういう意図であるのか。これは、佐藤政務次官のお話だと、自分も一生懸命努力したとおっしゃっておりますが、本来は政府が出すべきものであって、政府航路設定して、そうして交通安全の保障をするためにそういうものをつくるわけですから、そのことによって生ずるところの、たとえば海難防止のためであるとか、漁民のための権利を保障するということになれば、これは政府がやるべきだ。佐藤政務次官のお話によると、漁業法三十九条の規定によって、それ以外の場合には補償はできないということをおっしゃっておる。しかし、この法律を制定すれば、明らかにこれは漁業をやる人にとっては、一定の法律的な制限を受けるわけです。ですから、漁業権補償を規定しておる漁業法三十九条の規定以上にこの法律によって規制を受けるのですから、この法律を制定するとたんに、漁民に対するそういう一定の制限が出てくるわけです。したがって、政府は一億程度でこの問題を何とかしょうというお考えのようですが、やはり資本家階級の諸君から金をもらうのじゃなくて、政府がちゃんとした態度で、漁業ができないそういう漁民が持っておる期待権を補償する義務があるし、現実にそういう損害が生じた場合には、委員会などをつくりまして、漁民政府あるいは学者などによって、常に補償体制をとっていくということが必要じゃないか。  この三点について、大臣の明確な所見をお聞きしたいのです。
  22. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 後答弁を申し上げる時間がなくて、はなはだ恐縮でございます。  第一点の環境保全につきまして、これは絶対に必要でございます。私はそう考えます。  それから第二点の、大型タンカー東京湾に入れないで、外でチェックするということ、私は、根本の方針としては賛成でございます。ただ、御承知のとおり、ただいま燃料というものをどうしても石油にたよらなくてはいかぬという日本の現状でございまして、そのうちの九割がいま御審議をいただいております三海域、狭水道を通る、こういうふうな工場配置でございます。これらの工場配置その他の点も早急に検討しなくてはならぬ。それから、ただいまお話しのとおり……。
  23. 土橋一吉

    土橋委員 アメリカの空母とか潜水艦。
  24. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 そういったような危険なものをなるべく入れないようにすることは、原則として賛成でございます。賛成でございますが、しかし、現状でいきますと、先ほど申しましたとおり、いますぐ急にこれをするわけにいかない、こういうことがございますので、いろいろ総合的に検討を加えまして、漸次そっちの方面に持ってまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。ただ、軍事は別でございますが、原子力動力の一般潜水商船、これは将来の燃料革命と申しますか、そういう線に沿いまして、私のほうの船舶技術研究所でも、これはあくまでも商船でございますが、商船の研究はいまさせている次第でございます。世界の趨勢が進んでまいりまして、それらの被害のチェックが完全にできますれば、大型等は別といたしまして、これまた変わってくる、こういうふうに思っておる次第でございます。  それから第三点の問題でございますが、これはそういう方面まで国家補償が進んでくれば、これまた望ましいことでございます。しかし、現行のあらゆる条件からいたしまして、国家補償をどのくらいまで拡大をするかということの相対的の問題になってくるということでございますが、漁業補償というものをそこまで拡大するということは、いまの時点においては非常にむずかしい、こういうことでございますので、その点は、たとえば、いろいろの公共事業をする、あるいは交通規制をするというような場合、そういった影響を受ける方々に対する補償の問題をどの範囲にするかということと関連をいたしまして検討いたしてまいらなければならぬ、こういうふうに思う次第であります。   〔委員長退席、宮井委員長代理着席〕
  25. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 手塚長官、私の聞いたことにのみ簡単明瞭にお答え願いたいと思います。私、先ほど浦賀水道とわざわざお断わりしたのですけれども、各水道を事こまかく御説明いただいているわけですが、そういう時間が実はないわけです。だから、質問をいたしましたことにのみひとつ簡単明僚に答えていただくようにお願いをしておきます。  そこで、現在、危険物を積載して東京湾に入港いたしておる船舶は、一体月間どの程度あるのか、そのうちに、巨大船と称する大きな船は一体何隻ぐらいあるのか。長官のお答えによりますと、そのような大型船が入港するときにはいまでも行政指導を行なっておるんだ、こういうお話でございましたが、実際その行政指導を行なっておる現実の中で、行政指導なるものがどのような効果を持っておるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。   〔宮井委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 手塚良成

    手塚政府委員 危険物の積載船舶東京湾への入湾の状態ですが、危険物の範囲といいますのが、実は厳密にいいましてまだ確定しておりませんが、危険物船舶運送及び貯蔵規則というのがありまして、それにきめられておる危険物というものを一応対象考えてみますが、何と言いましても、その中では、爆発性物質としてのタンカー原油が一番多いわけです。そういうことから、この危険物積載船舶と申します場合に、まずタンカー、それ以外の危険物というふうに分けます場合に、タンカーは、東京湾へ、四十五年のデータによりますと、年間二万二千六百二十八隻入港しております。それ以外の危険物を積載した船舶は千二百九十九隻、合計して二万三千九百二十七隻というのが入湾をいたしております。そのタンカーの中で、巨大船に該当しますのが千二十七隻、こういう状態でございます。  これらについての行政指導という点の実施の状態は、一言で申し上げますと、決して上々のできではない。船舶の設備につきましては、専門家の船舶局長もおられますのでそちらに譲りますが、私ども考え実施をしております水先人実施状態、これなどは、パーセンテージでいきますと、二〇%弱ぐらいしか乗せるべきものが乗せないという状態でありますし、航法指導違反というようなものにつきましても、数は過去の実績からだんだん下がってはきておりますけれども、やはり依然としてあとを断たないということで、決して上々のできではございません。
  27. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういたしますと、いわゆる行政指導なるものはやはりなかなか実効があがらずに、いまのままでは依然としてやはり船舶交通安全上問題があるのだ、こういうことでございますか。
  28. 手塚良成

    手塚政府委員 行政指導にはおのずと限界がありますのでいろいろな問題がある、そういうことでございます。
  29. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 さらに、私ども見てまいりましたら、第二海堡、第三海堡というものがあるわけでございますが、これは、私どもしろうとの目から見ましても、たいへん航行に障害を及ぼしておるであろうために、航路そのものがS型になってしまっておる、こういうことがあるわけでございますが、この第二海堡、第三海堡をどのように処置をされようとしておるのか、具体的な計画がありましたら、お聞かせを願いたい。
  30. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 ただいま御指摘の第二、第三海堡でございますが、第二海堡は、御承知のとおり非常しっかりした施設でございまして、むしろ残したほうが、逆に、航路の標識といいますか、目安になるのじゃないかという感じがしてございます。ただ、第三海堡は、非常に水没がひどくて危険な状態にございますので、できるだけ早い機会に撤去いたしたいというふうに考えてございます。
  31. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 具体的には、できるだけということはどういうことですか。どの程度で撤去しようとか、そういう計画をひとつ……。
  32. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 第三海堡は、水深で三十五メートルから七メートルくらいのところに、明治の末期から大正の初めに人工で築造された非常に巨大な一種の島でございます。これを技術的にどういう方法で取るかということも必要でございますけれども、取る以上は、通行船舶にむしろ暗礁になるように残っちゃいけないということで、現在のところ、二十三メートルくらいまでは取らなければいかぬだろうということで検討してございます。  なお、現在、私どものほうの港湾技術研究所でも、東京湾全体の模型をつくって実験をやっておりますけれども、取った場合に流れがどう変わるかということも問題でございますので、これも検討してございますけれども、具体的にどういう方法でどういうふうに取るかということは、着々準備を進めておりますし、検討中でございます。
  33. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 どうもはっきりしないんですが、準備は進めておるけれども、検討中だ、取るのか取らぬのか、どっちなんですか。
  34. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 どうも説明が不十分で申しわけございません。取るつもりでございます。ただ、取り方の問題と、それから取ったあとの影響がございますので、詳しく申しますと、関東の大震災で、つくったものはこわれております。現地は調査してございますけれども、大きな二千トンくらいのブロックもこわれてへこんだり、あるいは捨て石がこわれたりというふうな実情でございますので、これをどういうふうな方法でどういうふうに取るかというが一点。それからもう一つは、御承知のように、あそこは船舶航行が激しいところでございますので、船舶航行に支障のないように大きな作業船をたくさん持っていかなければならない。その場合に、どういうふうな方法で作業船を持っていって、航行に極力障害を与えないで取ったらいいのかというふうな、技術的な施工的な問題がございますので、取るつもりで具体的な実施方法をいま検討しておるというのか実情でございます。
  35. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 聞き及ぶところによりますと、この問題は、いまに問題になったことではなくて、もう相当以前から問題になっておる。しかも、撤去計画なるものは相当以前に立てられたこともある。しかし、それが実施されないままに今日に至っておる。そのような現状の中でいまだにやはり検討中だということなんですが、その検討は一体いつまで続くんですか。具体的には大体どのくらいの目安をお持ちなんでしょうか。
  36. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 これは漁業者との相談もございますけれども、具体的に先ほど申し上げました施工の方法その他きまりましたら、漁業者とも御相談して、これも補償の問題が起こると思いますけれども、そういうことに入って話がつけば、できたら今年度でもやりたいと考えておる次第でございます。ただ、実施する前に作業船の基地その他がございますので、どこまでいけるかという問題がございますけれども、私どもといたしましては、早急に結論を出して進めたいというふうに念願しております。
  37. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは船舶局長にお尋ねをいたしたいと思いますが、御承知のように、陸上では、大型のほうが気をつけなければいかぬ、衝突をした場合に、少しでも大きなもののほうにより責任が重たい、こういう形でございますが、海の場合は、大きくなればなるほど、人間の運動神経、こういうものでいけば、船そのものの性能といいますか、停止あるいは旋回等の性能か、小型船に比べて著しく低下をするであろうということが予想されるわけですね。したがって、その進航する場合に、やはり巨大船を進航させたのではさらに危険が伴うであろう、したがって、早く運航できる小型船を進航させるということのほうが、より船舶交通安全上からは大切なんだ、こういうことであろうかと思いますが、具体的に、その巨大船なるものが停止をする場合、惰力によってどの程度まで進んでしまうのか、あるいは旋回はどういう状態になるのか、特に小型船等と比較をしてどの程度の違いがあるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  38. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生のお話のように、巨大船のほうが、確かに、旋回半径あるいは停止距離、そういうものが大きくなります。ただ、私どもといたしましては、そういう性能が、大きくなるに従って野方図に大きくなるようにはしないような、いろいろ技術的な検討を加えておるわけでございますか、それにいたしましても、そういう大きさに従って大きくなります。  ただいま御質問の例によって申し上げますと、総トン数千トン、長さ六十二メートルくらいでございますが、これの旋回半径は約百十メートルでございます。また、停止距離、これはエンジンを停止いたしまして直ちに後進エンジンをかけまして、そして船体が惰力によってどれだけ進むかという距離でございますが、これが約六百六十メートルくらいでございます。一方、総トン数三万トン、長さ二百メートルくらいの船でございますが、   〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕 これにおきましては、旋回半径が三百五十メートルで、ただいまの千トン型百十メートルに比べまして約三倍以上になっております。また、停止距離でございますが、停止距離は約二千メートルで、六百六十メートルに対比いたしますと、これも約三倍。それから次に、総トン数十万トン、これは長さ三百メートルくらいの船でございますが、これにおきましては、旋回半径が五百メートルくらい、停止距離は四千五百メートル程度でございます。大型船が急に他船等の障害物を回避することはたいへんむずかしい場合が多いかと思います。  このために、私どもは、大型タンカーレーダーの増設を行政指導いたしたり、また、運航者の運航マニュアルを作成してこれを渡したり、また一方、今後の開発といたしまして、急速停止用の水小パラシュートや操船性能の向上のための巨大船用のバウスラスターの開発を進めておるわけでございます。
  39. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 前回の審議の中で、人命尊重の立場から、航路航行する旅客船、これを避けさせるということはいけないんじゃないか、こういう御議論があったように記憶をいたしておるわけですが、私は、むしろ、そのような運動性能が巨大船になるほど鈍化をするということであるならば、かりに大型船、巨大船避航させるということにしますとむしろ危険性が増す、こういうふうに考えるわけです。その場合に、いわゆる人命尊重のために、旅客船が通るときには、巨大船避航させようとするとかえって危険性が増すのではなかろうか、こういうふうに思うわけですが、その辺はどうなんでしょうか。
  40. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生のおっしゃるとおりだと存じます。旅客船は船舶のスピードに重点を置いておる船でございますので、比較的大きな馬力のエンジンがついております。このことは、船舶の操縦性能にも、かじききの点で有利でございますので、旅客船のほうが行動しやすいという面があるかと考えます。
  41. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは再び保安庁長官にお伺いしたいのですが、実はこの問題がいろいろ前から問題になっておりながら、現実法案としてはなかなか制定されないために、四十五年の四月に、船長協会が、推薦航路として、独自に航路作成をいたしておるようでございますが、これについて、保安庁としてはどのようなお考え方をお持ちでしょうか。
  42. 手塚良成

    手塚政府委員 船長協会が、日本全国の沿岸でもって八カ所に、いま先生おっしゃる、いわゆる推薦航路といいますか、そういった通航分離方式の航路設定を自主的にきめております。これは目的が、そういう日本沿岸、そしてさらにこまかく見ますと、船の変針点、そこに集まってくる船というものも分離をしよう、こういう意図に基づくものでございまして、それ自体は、私は、安全確保観点から非常に望ましい。これを政府がやったらどうかというような問題については、いろいろ考え方があるかと思いますが、まず世界の船長に呼びかけて、船長協会として実施していく、これは非常によろしいことではないかと考えます。   〔佐膝(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは、航路考え方についてですが、いまお考えになっておるのは、まん中にブイを設置をして、両側を航路というふうにして規則をしよう、こういうふうに考えておられると思いますが、航路の両端にブイを浮かべて、その中を分離して通航する、いわゆるシーレーンの考え方ですね。こういう考え方というのは、海上保安庁はどういうふうにお考えでしょうか。
  44. 手塚良成

    手塚政府委員 いま先生のおっしゃるシーレーンという、一本の線という考え方ブイによる分け方、それから一つのベルトというので考え考え方というのがあると思います。このベルトは、いろいろ緊急の場合に非常に効用を発揮すると考えられますので、できますれば、航路設定には、そういうベルトまでつけられるような幅なり内容を持ったものがより適当かと思います。ただ、現実問題といたしましては、そういうゆとりのあるようなところでないとそういうものはできませんので、実際に設定しようという航路の地理的条件、あるいは船の進路、あるいは航行方法等によっていろいろであろうかと思います。
  45. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは、具体的な法案内容について少しく質問をしたいと思いますが、今回の法案でいきますと、いわゆる漁ろう船には、巨大船を除いて避航義務がなくなるわけですね。つまり、二百メートル以上の巨大船の場合にのみ、この設定される航路の中においては漁ろう船避航しなければいかぬ、そのほかの船舶については避航義務というものはないわけでございますね。そういたしますと、従来つくられておりました特定水域航行令でしたか、そういうものによっていろいろ規制をされておるわけですが、その現行規制をされておるものよりも、むしろ、本法ができることによって、後退する面といいますか、規制がゆるやかになる面が出てまいると思いますが、その辺はどのようになるのでございましょうか。
  46. 手塚良成

    手塚政府委員 おっしゃるように、特定水域航行令による避航関係といいますのは、漁ろう船一般船舶を全部避航する、こういうたてまえになっておりますし、今回の交通法では、巨大船のみを漁ろう船避航する、こういうことになっております。したがいまして、進航関係だけを見ますと、やや一般船舶にとってはその範囲が狭まるというような感じに見えます。しかしながら、一般船舶自体につきましては、船舶の設備、たとえばレーダー等の普及が相当向上したというような問題、あるいは航路標識の改善というような問題等々によりまして、そういう面で従来に増して非常にカバーをされてきた、こういうふうになります。また一方、特定水域航行令のそういった避航をする航行範囲、区域といいますのには、終戦直後における機雷の掃海との関係におきまして、掃海後の航路ということ、そこを通れば機雷との関係では安全であるというところが指定されており、その指定に基づいて、やはり避航においては、漁船一般船全体を避航するほうが、機電との関係においてより安全である、こういうたてまえがとられた範囲がございますので、そういった目的は現在のところすでに消滅をしてしまったという事態でありますから、前段申し上げたことと、後者の特水令の特殊な任務との関係におきまして、今度の交通法によるやり方で十分ではないか、かように考えます。
  47. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういたしますと、本法案制定をされ、施行をされた後は、特定水域航行令というのは一体どうなるのでしょうか。
  48. 手塚良成

    手塚政府委員 特定水域航行令の中には目的が二つございまして、ただいま御説明申し上げました掃海区域との関係という問題における水路の設定避航関係の問題と、それ以外に、特定水域航行令以前から行なわれておりましたものをこの政令によって踏襲した部面、すなわち、特殊な航路に特定の航法をしく、そしてそこに避航関係設定しておく、こういうカテゴリーのものが二つ入っております。  それで、前段の機雷との関係におきます問題は、先ほど申し上げましたような意味で、なくなります。それから、本来的に航行の安全という観点から持っておりました機能、この内容は、今度の交通法で全部これを受け入れられるということになります。避航関係におきましては若干相違がありますけれども、大半はこれを受け入れられる、こういうことになりますので、今度の交通法が制定されました場合には特水令を廃止する予定にいたしております。
  49. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 しかし、現在特水令が実施をされておる海域は、今度の本法がすべて適用されるというわけではないでしょう。つまり、今度の本法は、ある特定の漁域、特定の航路についてのみ適用をされる。いままで特定水域航行令が現実に効力を及ぼしておった範囲で、今回の本法が適用されないという地域が出てきますね。その場合でも特定水域航行令というのは廃止をされるわけですか。
  50. 手塚良成

    手塚政府委員 特定水域航行令で予定されております航路といいますか、この施行の範囲は、備讃瀬戸来島海峡、釣島水道、それ以外に、先ほどの掃海後の航路、この四つになっております。その前段のものについて、先ほど、大半が今度の交通法で踏襲をされると申し上げましたが、詳しくは、先生指摘のとおり、釣島水道というものについては今回手当てが全然いたしてありません。したがいまして、この面を単純に見ますと、それだけ今度の法律が弱体化されるという言い方になるかと思います。ただ、これにつきましては、私どもは、一つには、航路実情が、備讃瀬戸来島海峡等に比較しますと、地理的条件から見まして、必ずしもそれらに匹敵するほどのものではない、水路幅は広い、直線的であるというようなこと、それから過去の海難という実績を見ますときに、必ずしも他の海峡航路に比較してそれほど多くはない、こういった実情が一つと、さらに、やはり一番問題になりますのは、漁ろうとの調整という問題がございまして、できるだけ両者共存共栄をはかる、そういう漁業への直接的な圧迫を避ける、こういうようなことを考える、そういう総合的な見地から、今回対象十一航路の中からははずしております。しかし、これについての安全確保には、たとえば、この法律におきますところの航路の指定というような問題等をさらに十分検討いたしまして、安全確保の見地からの特殊なやり方、指定された航路ほどではございませんが、やはり一つの航路の安全運航のできるような方式を今後の政省令の段階において検討はいたしていきたい、かように考えております。
  51. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いずれにいたしましても、従来規制をされていた海域で、今回本法制定によって全然規制がなくなるという海域が出てくるということでございますね。そこにはやはり事情の変更として、掃海をする、いわゆる機雷の危険はもうなくなってきている、こういう御説明でございますが、機雷の危険性は確かになくなってきておると思いますけれども、逆に、航行する船舶の数はその当時よりも相当ふえておる、こういうことが言えるかと思いますね。したがって、機雷の危険はなくても、船舶同士がふくそうする航行といいますか、これが非常に密度が高くなってきておるのではないか、そういう面から、いずれやはり何らかの規制を加えなければならないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  52. 手塚良成

    手塚政府委員 いまの御質問は、十一航路全体につきまして将来ともにそれに限定をするかどうかという問題との関連にもなるかと思うのです。十一航路を指定いたしておりますのは、現状並びに近い将来を見通しました船舶ふくそう、それに地理的条件、こういうものを勘案いたしていま指定しようと考えておるわけでございまして、将来、いま先生のおっしゃいますように、他の航路におきましてやはりそういうものがふえてくる、特に釣島水道等におきましてはそういう見通しも十分考えられます、そういう事態にもしなります場合には、やはりこれは航路という面で考慮いたしていかなければならないかというふうに考えます。
  53. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いずれにいたしましても、船舶交通安全を確保するという意味でひとつ十分な検討を続けていただきたい、かように考えるわけでございます。  次に、具体的に法案内容について、第二十二条に、巨大船等の航行に関する通報義務が書いてあるわけでございますが、途中から言いますと「あらかじめ、」ということが書いてある。つまり、「船長は、あらかじめ、航行予定時刻その他の運輸省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならない。」というふうになっているわけですが、この「あらかじめ、」というのは、具体的にどの程度ですか。
  54. 手塚良成

    手塚政府委員 航路の入り口到達前十二時間並びに同じところへ到達する三時間前、こういう二回を原則として考えております。
  55. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 その場合は、通報した事項を変更するときもまた同じだ、こういうことになっておるわけですが、これは多分に気象条件その他によってそういうことが起こり得る可能性というものがあるわけですね。そういう場合でも、やはりこの罰則に従って罰を受けるのかどうか、さらに、その罰則は、具体的には一体だれがその罰金を支払うのでしょうか。
  56. 手塚良成

    手塚政府委員 変更がございましたら、変更のつど通報する。罰則につきましては、船長が直接受けることになります。
  57. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 たとえば、船長が直接通信ののキイをたたくわけではないと思いますので、船長は通信士に命じた、ところが、たまたま通信士が忘れてしまったというような場合をかりに想定をして、そういう場合でも、やはり船長が罰金を支払わなければいけないのですか。
  58. 手塚良成

    手塚政府委員 船長というたてまえで、船長はそういうことの罰則を受けることになると思いますが、当該通信士におきますそういった職務の解怠という問題につきましては、また別途な法令の規制を受けることになると思います。
  59. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いま答弁なさいました長官のおことばは、実際には法文上どこもないと思うのです。罰則の項で、工事船等は、これに違反があった場合は、実際その工事をしている人、さらにはそれを雇っている事業主、この者に併科をすることになっていますね。ところが、船舶のほうはほとんどもう船長にその責任が帰一する、こういうように法文上からは理解できるわけです。したがって、通信士が怠っても、その場合は、通信士も船長も両方が罰則規定が適用されるのだということにはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 手塚良成

    手塚政府委員 両方が受けるということにはならない。やはり船長というのは、航行中におきましてはこれは絶対的な責任者であるということでございまして、そういった部下の懈怠等につきましても、やはり総括者としての責任で罰則の適用を受ける、かようになると思います。
  61. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 これも、この前の審議の過程で、独占資本だから三万円は安いのじゃないか、三千万円くらい取ったらどうなんだという不規則発言があったようですが、これは船長が払うのでございますね。そうすると、船主なり事業者そのものが払うわけではないわけですね。もう一回確認しておきます。
  62. 手塚良成

    手塚政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  63. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それでは、二十二条の三号ですが、「船舶、いかだその他の物件を引き、」こういうことになっているわけですが、この「その他の物件」というのは何でしょうか。
  64. 手塚良成

    手塚政府委員 これは、ただいま考えておりますものとしましては、たとえば、ケーソンあるいは浮きドックあるいは海底の道路管というようなものを一応想定いたしております。
  65. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういたしますと、これは漁ろう船が網を引いておる場合もある。そういうのはどうなんでしょうか。
  66. 手塚良成

    手塚政府委員 それはこの中には入れないつもりでおります。通報関係につきましては、やはり本来的に安全の確保という交通方法の特則でございますので、そういったものについてはこの対象考えておりません。
  67. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういたしますと、第二十四条の二項で「漁ろうに従事している船舶は、」云々と、いろいろありまして、いわゆる定められた「交通方法に従わないで航行することができ、」という場合と、それから「及び第二十三条の規定による通報をしないで航行することができる。」こういうふうになっておるわけですが、第二十二条の中のこの通報規定は、つまり巨大船等の航行に関する通報義務です。これが「二十二条の規定による通報をしないで航行することができる。」とわざわざここに載せてあるのは、どういうわけですか。
  68. 手塚良成

    手塚政府委員 この通報義務をかけられます船につきましては、厳密にこの法律の形式からいきますと、今後具体的に省令等できめられる内容等がございまして、「その他の物件」の解釈につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、いまの漁ろう船の物件曳航等の関係におきましては、法文上二十四条二項で「二十二条の規定による通報をしないで航行することができる。」ということを明文で書きまして、この「その他の物件」の中には入らない、入らないがゆえにこの通報をしないでもよろしいということを明らかにしたわけでございます。
  69. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 入らなければ、通報しなくてもいいのはあたりまえの話であって、通報しなければいかぬものがここに書いてあるわけでしょう。特定のものに対して通報義務が課してあるわけでしょう。つまり、この二十二条では、限定通報責任義務が明らかになっておるわけです。その中に入っていない。入っていなければ、それは通報しないでもいいのですよ。書いてあるものが通報しなければいけない義務が発生しておるわけでしょう。にもかかわらず、なぜわざわざ二十四条で「規定による通報をしないで航行することができる。」ということを入れなければならないのかと聞いておるわけですよ。
  70. 手塚良成

    手塚政府委員 この二十二条三号の中には、そういった漁船関係のことは入らない。これは「船舶、いかだその他の物件を引き、」という「その他の物件」の、いま先生のおっしゃるような解釈上の問題があるかという点はございますが、この解釈につきましては、ただいま私が例をあげましたようなものは、最も明白なものを出しましたわけでありますが、解釈上だけから申しますと、船船というものを漁船が引くということがあるということは、あるいは考えられないかと思いますが、一部あったにいたしましても、これを明確に物件曳航から除いて、通報はさせないということを明文をもってきめるというのが、この二十四条の二項の趣旨であるわけであります。
  71. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 どうも説明がわけがわからぬ。通報義務がきめられてあるわけですから、その中に入っているか入っていないかということを私は先に質問したわけですよ。ところが、漁ろう船は入っていないのだ、こういうお答えですから、であるならば、なぜわざわざ二十四条でさらに通報しないでもいいのだということを書かなければいけないか、こう言っているわけですからね。まあいいです。ひとつあとでよく研究をしてください。  そこで、時間がないようでございますので、結論を急ぎますが、この法文を読んできましても、私ども実際に船、漁ろうというものにあまり関係ございませんのでむずかしいのかもわかりませんが、これは非常にむずかしいのですよ。難解なんですね。法律全体がそのような気もするわけですけれども、特にこの法律は難解なことが多いのではないだろうか。この項でいきましても、漁ろう船航行しているときは、通常の航路に従わなくてもいいのだ。つまり陸上でいうならば、車は左、人は右ときめられてあるけれども、右側通ってもいいのですよ、左側通ってもいい、どうでもお好きなように走ってよろしい、こういうことだろうと思うのですがね。ところが、現実によくよく見ていくと、航行という場合と、漁ろうをしながら網を移動させるといいますか、こういう場合とは、やはり厳密にいえば、区分をされていかなければいけないのではないだろうか。しかし、ことばそのものは、全部航行ということばになってしまっておる。この辺に非常に解釈上問題がふくそうしてくるのではないだろうか。移動なのか、航行しているのか。せっかくきめられた交通ルールを漁船は無視して走ってもよろしい、こういうこと、が響いてあると思うのですよ。「航行することができる。」というのだから、ことば上の解釈として、そういう解釈もできるのです。ところが、魚をとりながら移動する場合、こういうことになりますと、またぐっと変わってくると思うのですよ。その辺はいかがでしょうか。
  72. 手塚良成

    手塚政府委員 この法文の中で漁ろうに関係します船の表現を「漁ろう船等」ということばを使っておりますが、この「漁ろう船等」の定義といいますか、その範囲は、これまた第二条の定義にありますとおりで、「漁ろうに従事している船舶」と、それ以外の工事または作業に従事しておるものを「漁ろう船等」という。この「漁ろうに従事している」ということは何かというと、さらに「海上衝突予防法第一条第三項に規定する当該用語の意義による。」ということになっております。  これらを総合しまして、簡単に言いますと、実際に漁ろうをしておるというものについて、この本文における避航関係の問題あるいは適用除外の問題をかぶせておりまして、普通にいわゆる漁場に行く途中とかという、漁ろうそのものに従事しておるときでない際は、一般船舶と同様な一つのルールに従う、かように解釈すべきであると考えます。
  73. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それならば、漁ろうに従事している船舶航行をするということは、どういうことになるのですか。航行ということばが、ほかにもいろいろ出てくるわけですよ。漁ろうに従事しておる船舶は、あれは航行ですか。
  74. 手塚良成

    手塚政府委員 これは海上衝突予防法の中におきましても航行ということばが使ってありまして、その漁ろうに従事しておる船というのは航行中、こういうことになります。さらに、漁ろうの実際の形態をごらんになりました場合に、たとえば一本釣りをやっておるというような、エンジンをとめてやっておるような状態、これが一体航行なのかという御疑問があるかと思うのですが、この航行中というのは、さらに細分をいたしますと、実際にスピードを上げて航行しておる、これは当然行中でありますが、いわゆる停留ということば、エンジンをとめておりましても実際にある程度動いておる、こういう状態、これも、この法文では、航行中という定義で呼ぶことになっておりますので、いまのような、一見、われわれの通常観念では、とまっておるかと思われる停留状態というのは、やはり航行中という広い中に定義づけられる、こういう解釈でございます。
  75. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 時間がありませんので、私は質問を次回に譲りますが、いずれにいたしましても、この用語、いま長官がおっしゃったように、海上衝突予防法でも航行ということばを使っているのだ、他の法律でもそうなんだとおっしゃるけれども、他の法律では、航行ということばと移動ということばとは、全部厳密に区分をしておるのです。だから、この辺は、次回にまた質問をいたしますので、十分に御勉強をいただいて、もっと明確な御答弁をいただきたい、かように考えるわけでございます。  時間が参りましたので、本日はこれにて質問を終わります。
  76. 今澄勇

  77. 土橋一吉

    土橋委員 私は、第一番にお聞きしたい点は、去る三月の二十四日だったと思いますが、漁民の諸君が全国的に何百という漁船を出しまして、そして今度のこの法案については反対だという海上でのデモンストレーションを行なったのですが、私は、過日、千葉県と神奈川県の漁民代表の皆さんからこういう話を聞いております。千葉県の場合には、総水揚げが二百六十億であって、東京湾をめぐる内海では百三十億の水揚げをしておる、それから神奈川県の場合は、大体内海では二十六億程度の総水揚げをしておる、こういう御説明がございました。これが、今度の法案が通過するならば甚大な損害を受けるというので、佐倉宗五郎のような気持ちでわれわれは反対するのだ、こういうことを千葉県の漁民代表の方が仰せになっておられました。  今回の十一のいわゆる狭水道において、いまの神奈川県なり、あるいは千葉県、あるいは愛知県、さらには近所の三重県とか、あるいは瀬戸内の兵庫県をはじめとするこれらの県の漁民諸君は、大体どの程度の総水揚げをしておるのか。もちろん、たとえば千葉県の船で伊良湖岬に出ておるのもございましょうし、あるいは大分県の船で瀬戸内に入って漁業をやっておる人もいるでしょうが、各県大体どの程度の総水揚げをしておるのか、簡単に大まかな説明をしていただきたい。——それでは、これはあとにしまして、いま申し上げたように、大体百五十六億の水揚げが神奈川千葉の両県である。したがって、もしこの法案が通過するならば、漁民としては、得べかりし漁業上の利益が少なくとも三分の一は阻害される、こういうことが千葉県代表の方の御説明でございました。これは行かれた委員の方もお聞きになったとおりだと思います。  そこで、三分の一といえば、神奈川県と千葉県だけでも約五十億の損害が出てくるというふうに推定のできるものであります。でありますから、漁民諸君が全国的に、三月二十四日、写真でごらんになったと思うのですが、こういうふうなデモンストレーションをやっておるわけですね。これはいま春闘の戦いでもそういうことになっておるわけですが、それらをごらんになって、この漁民漁業を守る、生活を守る、こういうことについて基本的に一体どういう考えを持っておられるのか。政務次官、簡単でけっこうですが、どういう考えをもって対処しておられるのか。
  78. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 御承知のとおり、本法案の作成にあたって最も配慮した点は、いま御指摘のような、漁民のこの法案が通過することによって生ずる損害、これに最大のウエートを置いて、極力その被害を最小限度に食いとめよう、こういう考え方で本法案を作成しております。   〔委員長退席、渡辺(武)委員長代理着席〕
  79. 土橋一吉

    土橋委員 最大限の努力をするといっても、どの程度、どういう補償体制をとる考えでおられるのか。政府は、一億の金を五カ年間、五億の出資をいま予定されておるようです。五億程度では、いま申し上げた神奈川県と千葉県だけでも年間五十億の水揚げができない、こういうことを言っておるわけです。そうしますと、愛知県やあるいは三重県、あるいは瀬戸内の諸県の諸君は、常識的に考えましても、たいへんな損害がくるわけです。ただ一億程度の、いわゆる航路設定のために要する費用では、とても間に合わぬと思うのですが、具体的にはどういうふうにお考えなんですか。
  80. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 お手元にたしか資料をお配りしてあると思いますが、いわゆる漁船巨大船避航義務を負う。その巨大船というのは、お手元に配付している資料のとおり、最も多い浦賀水道でも、二十四時間平均して一〇・三でございます。その他、三隻ないし二隻、あるいは明石海峡で六・六隻、このような比率が統計上出ております。したがって、御指摘のようにそれほど被害を受けるとは私どもは判断しておりません。
  81. 土橋一吉

    土橋委員 これは端的な質問でありますが、両県の場合で五十億、全国的に各十一の水域をめぐる漁民の損害はおそらくこの数倍に及ぶものだと思うのです。そうすれば、当然、この法律をつくればそういうことが出てくるのですから——この前、同僚委員質問に対して、あなたは、漁業法の三十九条の規定は、一定の変更を要するとか、あるいはこういう事態が起こらなければ補償しないのだということを御説明になったようですけれども、この法律をつくれば、そういう補償問題については、当然この法律から、有権解釈によって、きちっとそういう状態がしいられるわけです。法律的にそういう義務をしょわされるわけです。したがって、県なり政府の認可を得て漁民が持っている、長い人は何代もやっているでしょう、そういう漁民生活権漁業権を守るということは、当然国家の責務としてやるべきことであって、これが推算もできていないということでは、漁民が大デモンストレーションを起こしてこの法案反対するのは当然でありまして、わが党は、漁民諸君の生活権利を守るという観点から、この法案については非常に問題があるというふうに考えておるわけであります。具体的な説明がないようでございますし、私のほうでもまだ初歩的な質問でありますので、この点についてはもっと煮詰めて、あるいは公聴会などでそれぞれの意見が出ると思いますので、それを参酌して、この法案については、重大な修正、ないしは、今回の国会上程については相当見合わせる問題があるというふうに私は考えております。  第二番目の問題は公害問題です。これは先ほど運輸大臣にも示しましたように、特に東京湾においては、京葉工業地帯、川崎あるいは東京、さらには横浜もございましょうが、この環境保全をするという問題は、ブルジョア新聞といわれておる読売新聞ですらも、これだけの記事を書いておるわけです。「死ぬのはあなただ」というふうに書いている。これは決して笑いごとではないと私は思うのです。いま国連においても、こういう問題でストックホルムで六月から会議を開いて、それで全体の機構の中にこれを大きくぶち込んでいって、大きく言えば、地球を守ろうじゃないか、われわれの生存を保障しようじゃないかという姿勢だと思うのです。これは佐藤政府の高度経済成長政策に対しても書いておりますけれども、新全総の基本的な問題について——ちょっと私、内容を読んでみましょう。そのほうが私が説明するよりもよくわかると思いますので……。  前後をはしょって重要部分だけ読んでみますと、「政府の基本政策はいぜん「開発偏重」のまま、環境破壊は日ごとに深刻さを増している。経済企画庁は四十七年度から三年がかりで新全国総合開発計画を改定の方向で総点検にとりかかるが、数字いじりの官製プランはもう許されない。「地球防衛戦争」への意識革命を組み入れた大胆なプランづくりが強く望まれる。」こういう題目で書いているわけです。そういたしまして、すでにこの問題については「警告・提案、あとは実行のみ」という題目で、「「現状のまま放置すれば、世界全体の一人当たりGNPが現在のアメリカの水準に達する紀元二〇〇〇年には、地球の汚染度はいまの十倍以上になる」——欧米や日本の政・財・学界リーダー約八十人で組織する研究団体ローマ・クラブは、このほど「成長への限界」と題する報告書でこう地球破滅を警告した。」「さらに報告書は、地球の破滅を避けるには「全世界の一人当たりの工業生産高を一九七五年の水準で凍結する」など経済成長一本ヤリの政策から脱GNPをはかるほかに取るべき道がない」こういうふうに書いておるわけです。ことに、佐藤総理の諮問機関である国土総合開発審議会(平田敬一郎会長)も、こういうふうにいっている。「国土開発政策の位置づけを一層、明確化する必要があり、新全総の総点検を行なうべきだ」というふうに意見を書いておるわけですね。あるいは大資本家の、それこそ独占資本の代表ともいわれる木川田一隆会長の経済審議会の環境研究委員会も、「政府のGNP第一主義の姿勢をきびしく批判する報告書をまとめた。」また、PPPの原則、汚染者負担の原則というのを打ち出しておる。そういうところの報告書でも、「汚染源である企業には排出防止の費用を負担させる。負担しきれない企業は、操業をストップさせる」こういうようにたいへんきびしい。そしてローマ・クラブの七つの提案というのを見ますと、地球を守る、人類全体を守る、こういう構想の上に立っておるわけですね。  ここから考えまして、先ほどの運輸大臣の発言によりますと、昨年の新潟県のいわゆるジュリアナ号でございますか、要するに、これの海難から急遽運輸省としてはこの法案をつくった、そして上程することを決意したというふうに説明されているわけです。そうすると、問題の中心は、御承知のように、海上交通規制するという問題が必要なことは言うまでもございません。これは当然でございますけれども、問題の中心点は、大型タンカーの問題であります。それから、いわゆる原子力潜水艦とか原子力空母の問題であります。そのほかに、危険な毒ガスとか、そういうものを搭載しておる船舶浦賀水道なりあるいは十一の水道航行させるという問題が、私は一番大きな問題だと思うのですよ。  こういう観点から申しますと、わが国の経済全体で考えますならば、当然、東京湾とか伊良湖水道とか、あるいは明石水道へ入る前に、つまり、そういう地域で原油が流れ出るとか、あるいは巨大船海難が起こってくるとかいうことになってまいるその事前において、これを防止するという体制をとらなければならぬのは言うまでもないことです。これは先ほど運輸大臣も、そういう方針が正しいということを言っておるわけです。ところが、今度の海上交通に関する法案から見ますと、そういう本来ならば規制しなければならない大型のタンカー、あるいは原子力空母とか原子力の潜水艦、こういうものが当然通ることを予定してこの法律をつくっておるわけですね。ですから、私はまことに不都合ではないかというふうに考えておるわけです。  そこであなたにお尋ねをしたいのですが、いざ起こった海難の災害ということを考えてみると、漁民諸君や一般のたとえば旅客船であるとか、フェリーボートであるとか、釣り舟であるとか、あるいは小さい船で事業をやっておる、そういう小さい船とか貨物船というもの、そういう中へまじって、そういう危険な船をなぜ一体この水道を通過させなければならぬのか。それは石油コンビナートとか横須賀のアメリカの軍事基地があるから、こういうことなんですね。そうなってまいりますと、この法案全体は、そういうことを予定して、つまり、そういう場合の海難はたいへんなことなんだ、新潟県でわかるじゃないか——この間あの船の中で見せていただきました映画を見ましても、だれが見ましてもぞっとするような状態です。そのことから、漁民が持っている基本的な権利や、一般船舶や旅客船とかフェリーボートのそういうものまでも侵すというのは、逆に言うならば、そういうものを見せておいて、そしてこわいから、おそろしいから、こういう法律をつくって規制をするのだ、こういうことならば、全く漁民あるいはそういう小さい船を犠牲にして、ただおそろしい災害が起こるということを前提にしておいて、一種の国家的な脅迫行為を行なって畏怖心を起こしておいて、だからこの法案を通過させればいいじゃないか、こういう結論にもなるように思えてしようがないのですよ。佐藤さん、どう考えていますか。
  82. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 自衛艦あるいは米軍等の話は別にいたしまして、私ども立場から言うと、原油あるいはLPG等、運輸省令で定める危険物を積載した船舶で、総トン数が運輸省令で定める総トン数以上のものについては、航路航行予定時刻等の事前通告、あるいは特別な灯火または標識の表示を、第二十二条第二号及び第二十七条で義務づけて、極力そういう危険を排するようにつとめております。
  83. 土橋一吉

    土橋委員 通さないのが、一番危険が生じないじゃないですか、佐藤さん。そんなものを通して、東京湾で火事にでもなれば、波浪が非常に高いために、たとえば本船に警戒艇から乗り移るときだって、おそらく一メートル前後の差で波が打っておるわけですね。非常に危険なわけです。東京湾ですらもそうなんですから、最善の策は、そういう危険な原子力潜水艦であるとか空母であるとか、あるいはタンカーなどは、寄せつけない、それが一番安全でしょう。現在の科学の力や、また独占資本の、たとえばコンビナートの諸君の経済力をもってすれば、その湾の入り口に大きなタンクをつくるなり、あるいは、それこそパイプラインでコンビナートへ最も安全な方法で石油を輸送させるとか、そういう方法が一番いいじゃありませんか。何でそんな危険なものをこの浦賀水道伊良湖水道、明石海峡を通過させるのですか。通過してしまえば、いま申し上げるように波浪が出て、あるいは強風波浪注意報を幾ら出してみたところで、もしその船がうまくいけばいいですが、しかし、いまのような船舶の構造では必ず事故を起こすわけでしょう。事故を起こしてしまってから問題を幾ら検討してみたって、しようがないのですよ。もちろん、これは船舶の構造にも問題があるわけです。現在の気象に対するいろいろなそういう全体の内容をつかむことにも問題があります。また、レーダーでそういういろいろな船舶航行を察知して、それに適切な指導をするということについて、言っては悪いけれども海上保安庁だってまだなかなか不十分なものがあると思う。そうすると、そういう原子力潜水艦であるとか、原子力空母であるとか、あるいは十万トン、二十万トンなんというおそろしいタンカー東京湾伊良湖水道へ入れないことが一番いいんじゃございませんか。入れないで生ずる損害は、企業が金をもうけるためにそんなことをやっているのですから、当然その諸君の責任においてパイプをつくるなり、飛行機で輸送するなり、小型タンカーでどんどん運べば、一番安全じゃないですか。なぜその道をとらなかったのですか。なぜそういうものを入れることを前提にしてこんな法律をつくるのですか。おかしいじゃございませんか。  結局、あなた方の考えは、われわれ共産党が常に言うように、佐藤政府は大資本に奉仕をして対米従属的なそういう態度でおるから、問題が起こってくるのです。そうじゃございませんか。もし小さい船で、たとえば五百トンとか六百トンの船で、そして航行も自由に、回転も自由にきく、そしてお互いに譲り合いの精神でいけば、何もこの法律をつくらなくたって、いままでもちゃんと浦賀水道でも一般航行をしておったわけですよ。大型の三十七万トンとか二十万トンなんかのタンカーをつくらしておいて、これをどんどんそういう小さいところへ入れて、そのために事故が起こるんだという宣伝をして、そして石油コンビナートに直結する方法をなぜ講ずるのですか。現在の科学の力では十分できるじゃございませんか。房州なりあるいは三浦半島の先にきちっとしたものをつくって——現に陸路でそれをやっているじゃございませんか。たとえば横田のジェット燃料を輸送するのに、御承知のように、タンクローリーで、中央線−青梅線でやっておる。これは危険だというので、いま八王子に大きな石油ジェット燃料を貯蔵するところをつくって、そこからパイプで横田へ入れることをやっているのですから、できるわけじゃございませんか。政府指導すれば、金は持っているのですから、外貨だって百七十億ドルも持っているのですから、やったらいいじゃございませんか。なぜ狭いところをそんなものを通過させるのですか。佐藤さん、ひとつあなたのほんとうの気持ちを答弁いただきたい。ただ形式的なことじゃ困るわけです。
  84. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 私どものほうの関係で申しますと、ただいまの点は、港外にシーバースを設置したらどうか、あるいは海底パイプラインを早急に建設したらどうか、それまで一切そういう危険物の大型タンカーなんかは狭水道に入れるな、こういうお説のように思いますので、お答え申し上げますと、今国会にパイプライン法案が提出され、現在審議中であるのは、先生御承知のとおりだろうと思います。運輸省といたしましても、港外シーバースの構想を現在検討中で、昭和四十六年度東京湾に八千五百万円、瀬戸内海で二千万円の調査費をもって、設置場所、規模その他現在調査中であり、今年も引き続いてやる予定でございます。  その間、お説のとおり、超大型船が、この狭い、しかもふくそうしている狭水道に入ってくることはきわめて危険であるという考え方から、その建造については、狭水道以外の、たとえば鹿児島の悪人、こういう外海に必ず寄港して、現在海上交通安全法案規制海域となる地域には入港しない、そういうことで許可をいたしているような実情でございます。ただ、現状で一切狭水道に入るものをやめろという考え方は、日本の実情に合わず、その間の暫定措置として、私どもは何とか本法案を通過させて海上交通の安全を守ると同時に、将来はシーバースなりあるいは海底パイプライン等もあわせて検討していきたい、このように考えております。
  85. 土橋一吉

    土橋委員 そういう計画もわからないじゃないわけですが、もし二十万トンのタンカー東京湾において事故を起こしたということになれば、私は内容は詳しいことはよくわかりませんけれども、二十万トンの原油が東京湾に流れ出したということになってまいりますと、おそらくこれは漁民だけの問題じゃないと思うわけです。東京湾関係をするすべての船舶、あるいは関連を持っておる工場あるいは住宅、これらに及ぼす災害というものは、全く原爆が落ちたと同じようなたいへんな騒ぎになると思うんですよ。新潟のあの広いところであれだけの騒ぎをして、そしてイギリスから専門家を呼んでどんどん詰めた。ジュリアナ号の場合には量はわずかなものです。もし二十万トンの原油が流れたとか、あるいはアメリカ原子力空母がたとえばおそろしいそういうものを持って浦賀水道衝突をしたというようなことになってきたら、たいへんな騒ぎになるわけです。でありますから、私はそういうことから考えても、速急にこの法律については、大型タンカー、特に石油輸送の船、あるいは原子力空母あるいは潜水艦については、厳重な規制をする必要があると思う。  それで、私は海上保安庁長官にもお聞きしたいのですが、そういう場合に、そういういままでのやりとりの中から、たとえば空母がいまベトナムに出動する、二隻ぐらいたしか出ておるはずですが、これらの船は、危険なたいへんおそろしいものを搭載して航行しておるわけですよ。そういう場合に、海上保安庁長官としては規制はできないのですか。たとえば事前協議の対象になっている。ところが、外務大臣が答弁しておるように、出航命令を受けただけで、いわゆる出撃命令を受けてないといったような答弁で、ごまかしを繰り返しておるわけです。そうすると、あなたは国の官吏として、当然事前協議の対象になっておる船が、しかも、これはベトナムに向かって出撃をするということはわかっておるわけなんです。ただ出航命令を受けた、こういう白々しいうそを言っているが、途中から、公海に出てから出撃命令が出る、こういうふうになっておると思うんです。そういうときに、そういうただ形式的なことだけ踏んで、海上保安庁長官としては、その船待った、佐藤内閣の要するに事前協議の決定を経て出ておるかということをあなたは追及できないのですか、そこまで権限がないのですか、いかがですか。
  86. 手塚良成

    手塚政府委員 私どもの行動につきましては、海上保安庁法という法律にのっとって実施をいたしておりますが、この法律の中で、私どもの職務権限といたしましては、海上法令の励行、海上における警備、救難、灯台、水路の維持管理、こういうことになっておりまして、いま先生趣旨のような条約そのものあるいは外交レベルの問題について、われわれ実施官庁としてやる限度というのはおのずからあると思います。
  87. 土橋一吉

    土橋委員 あなたは、海上保安庁の責任、基本的なやる仕事は四つあると仰せになりました。一つは警備の問題、一つは海難の問題同時に、いわゆる水質汚濁、公害の問題、それと水路を守るという問題こういうふうにあなたは仰せになったと思うのです。そうしますと、このいずれの部分から見ても、原子力空母が通過するときは、警備の点からいっても、あるいは海難の点からいっても、あるいは水を汚濁する問題、水路の問題から見ても、全部ひっかかるわけです。大型タンカーの場合もそうですよ。これがもし事故を起こしたということになれば、この四つのあなたのほうの基本方針がみんなひっかかってくる。そうなれば、ただ通告義務があって、船が湾に入ってきて、その入り口まで来て、通告すればいいというものではなくて、あなたとしては、待て、いま入る時期ではない、ふくそうしているのだといって三日でも四日でもとめておくとか、あるいは、おまえが通過するのは夜分で、ほかの船舶が何もしていない、魚もとってない、そういう時期をねらって、では入りなさい、それだけの権限がもしなければ、この法律を通過させるとたいへんなことになってくる。そこのところを私は非常に強調しているわけなんです。ですから、最初申し上げましたように、この問題はわが国全体の、要するに、瀬戸内にいたしましても、あるいは名古屋のいわゆる中部工業地帯を兼ねておる伊良湖水道にいたしましても、国の運命と漁業全体をめぐるところの国民全体の問題であるわけです。ですから、あなたのほうの四つの基本原則を、どうしても、タンカー原子力空母をはじめとする危険物搭載の艦船について、これを徹底的に制限をするという体制をとりませんことにはいけないと思うのです。  第三番目の質問をいたしますが、あなたのつくっておる法律の中には、一番大切な人命尊重ということが一つも書いてないわけですね。一体どういうわけですか。交通安全は、陸上交通であろうと海上交通であろうと、人命の安全ということ、これが第一でございましょう。次は、海難によって生ずるところの原油の流出だとか、そういう危険物、そういうものでございましょう。第三番目には、要するに、すべての船舶は対等な立場に立って、漁業するものも、あるいは人を運ぶものも、あるいは貨物を運ぶものも、これは大きい船だから、大きい船に譲らなければならぬという理由はないわけですよ、基本的にいえば。たとえばヨットをやっておる人だって、つりをやっておる人だって、やはり基本的な権利を持っておるわけですから。それが大型船舶は、いま話があったように、何万トンという船は、迂回するのにも、たいへんな地域を利用しながら迂回をする、停止をする場合にも、たとえば十万トンとか二十万トンというのは、七百メートルとか千メートル行かなければ停止はできない。こんなやっかいなものは、いわば船としての機能を発揮しない。こんなものを何でこんなところへ入れるのですか。これは、率直に言ったら、船じゃありませんよ。船というものは、波が来た、それ、向こうから船が来る、敏捷によける、こういうものが船であって、これは船の範囲を逸脱しておるわけですよ。極端に言えば、これは不具者のような船なんですよ。単に膨大な原油を積んでおる、他国を侵略するためのたくさんのジェット機や原子力を持っておる、こういうまことにかたわな不都合千万なものをヨットやフェリーボートや旅客船と同じように取り扱うということは、どういうわけでそういうことをやるのですか。当然そんなものは制限もし、規制もし、検査もし、場合によっては停止を命じてきちんとする、これが民主主義国家における海上保安庁なり運輸大臣の基本的な責任じゃないでしょうか。それらの諸君は、戦争をやったり、ばく大なもうけを取るためにそんなものをつくって、そしてのこのことコンビナートまで入っていって、他の船を一切排斥する体制で金もうけしているじゃありませんか。ここにも規定がございますように、今日はまさに人命を尊重する時代だ、こういうようなものについては規制する時代だということをいわれておるわけです。それにもかかわらず、なぜこんな法律をつくって、そんなものに、いわば漁民諸君からいうならば優遇を与える、優先権を与えるのですか、私にはわからない。なぜ、国家という機構を利用して、そんな利益を特別な人や特別なグループの諸君に与えるのでしょうか。  佐藤さん、どう思いますか。国家というものはそんなことをしていいのですか。われわれはさようなものの考え方賛成できません。これからレジャーがだんだん進んでくるし、開発もされてくる。千葉県と神奈川県と東京都の間には無数のいろいろな航路が発展してくる。あるいはまた、あなただって、魚をつりたいといえば、そういうことも自由にできるような時代が来る。そうなってくると、そういうものが通過すること自身が、民主主義の基本原則に反する。しかもそれは金もうけのためである。国の燃料政策なんといううまいことばで言うと、何かそれに従わなければならぬような考えをするけれども、何も石炭をたいてもけっこうじゃありませんか。まきをたいても生活に不自由しないじゃありませんか。そんなものを入れてどうしようというのでありますか。だれがそれによって利益を受けるのですか。それによって被害を受けるのはだれなんですか。  私は、こういう観点から、この法案については全く賛成できないわけです。タンカーや空母や原子力潜水艦というものは東京湾に入れてはなりません。また、いまの状況においては、いわゆる伊良湖水道から中に入れてはならないものだと私は思うのです。ましてや、瀬戸内のあの狭いところで漁業やあるいは交通ふくそうしておるところへ何でこんなものを入れなければならぬのか、国家という名においてなぜそういう罪悪を重ねるか、明確なあなたの御答弁を願いたい。
  88. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 基本的に私と土橋先生とは異なる点もございますが、具体的な問題で申し上げますと、米軍に対する適用については、合衆国軍隊の地位に関する協定により、米国軍艦もわが国の法令を尊重するということになっております。したがって、弾薬その他危険物を積載してこの海域を通る場合は、できるだけこの規定に従うよう、外務省当局を通じて米軍に折衝する予定でございます。  なおまた日本の自衛艦については、その性格から、危険物積載船を運輸省令で定める際に、対象から除外してほしいという要望もございますが、安全確保の見地から現在防衛庁と慎重に検討中でございます。
  89. 土橋一吉

    土橋委員 いまの佐藤さんの御答弁では、私は非常に見解が違うとか、共産主義者と資本主義者とはものの見方が違うとか、そういう問題ではないわけです。いま東京湾をめぐるところの漁民の利益をどう守るのか、東京湾の安全を守るためにはどうしたらいいのか、もしそういう船が海難を起こしてばく大な原油が流れたときどうするか、それをとめようじゃないかということじゃありませんか。私が共産主義者だから、あなたが資本主義者だからといって、これは見解の相違じゃないのです。そういうことを言って答弁するわけにはいかないとか、あるいはそういう質問には答えられないなんという、よく総理大臣はでたらめなことを言うけれども、私たちは、この漁民権利をどうして守るのか、一般航行者の権利をどうして保護するのか、こんな怪物のようなものをなぜしいて入れなければならぬのか。それを入れるのは、先ほど申し上げたように、独占資本、金もうけのために、なるたけコストが安くて、大型の船をつくって、それでずうっと入っていって、そこでのうのうと石油のタンクの中に入れるとか、あるいはアメリカはいまベトナム戦争をやっているでしょう、だれだって、この戦争は——アメリカの本国だって御承知のようにあれだけの騒ぎをして、学生諸君やその他がデモをやっているでしょう。何十万という人がデモをやっている。そんなものがのこのこと、ベトナムの人たちを殺すために、焼き払うために、日本の横須賀の基地を中心に出ていくことに対して、政府は黙って見ているじゃございませんか。このことは結局日本の政治体制、軍事体制、外交体制にも——このアメリカ帝国主義というものはどんなことをやっておるのか、もうあなたも御承知でしょう。そんな船をなぜ通過させるのか。私は、主義主張が違うからという問題ではないと思うのですよ。こういう不都合なことをやっておる諸君に対する航行権利をなぜ認めなければならぬのか。しかもそれは日本が出撃の中心になっているでしょう、いま岩国と横須賀港が。そうなってくると、もし事態が急迫をして、北ベトナムなり南ベトナム解放軍が、そういう重要な地点へミグなりそういう戦闘機をもって爆撃したら、一コロにわれわれは大きな被害を受けるじゃございませんか。それが安保条約という内容ですか。そうなると安保条約なんてなくしたらいいじゃないですか。何の必要があって安保条約を守らなければならない理由がありますか。先ほどあなたは、地位協定の規定による——地位協定の規定というのは、御承知のように、アメリカと日本が対等の立場に立って、地位協定第二条の規定によって、彼らが基地をほしいと言ったときにその基地を提供する、つまり、区域と施設を提供する義務をしょっているだけであって、船が自由に行くというようなことは地位協定には書いておりませんよ。これは民間の一般の船と同じように通過していくのであって、これは地位協定によって船は通過するわけじゃないのですよ。地位協定は全部で二十八条文があって、その二条によって、区域と施設を提供することについて義務をしょっているわけですよ。ですから、端的に言いまして、こういう考え方は共産主義者だからそうだ、資本主義者はそうじゃないということじゃなしに、いま申し上げたように、具体的に起こってくる災害や一般権利をどう保障するかというところに問題の中心があるのであって、これは帝国主義者も共産主義者も、そうでない者も、この問題についてはひとしく検討しなければならぬ問題です。いかがですか。私の言うことは間違いで、共産主義者の理論を展開しておりますか。
  90. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 米軍のことについては、先ほどお答えしたとおりでございます。私が考えが違うと申し上げたのは、いわゆる危険物とみなされるものの中には、先ほどの御指摘ですと、主としてタンカーをさしておるようですけれども、それを一切いまの時点で東京湾、狭水道に入れるなということには、私はあなたと考えを異にします。そのためにこそ、そういう危険を排除するためにこそ、海上交通安全法を最大公約数として、今回どうしてもこの国会を通過させて、そういう危険を未然に防止したい、かように考えておるわけでございます。
  91. 土橋一吉

    土橋委員 もうあと十分ぐらいしかありませんので、これ以上そうたくさんいたしませんが、よくアメリカの諸君は、たとえば銃撃の試射場においてたまが吹っ飛んでいって隣の民家のたとえば屋根を破ったとか、あるいはたまが落ちていく、そういうとき、百万分の一のミステリーだ、こんなことは想像できないことであるというようなことをよく彼らは言うわけですよ。と同じように、あなたも、この法律をつくれば百万分の一ぐらいしか事故の確率はないだろう、まあ大体安全だ、こういうものの考え方に立っておるわけですね。一番安全なのは、こんなものを通過させないのが一番安全でしょう。それで、資本家はばく大な金を持っておるのですから、百七十億ドルの外貨を持っておるのですから、それらの諸君が利子だけ集めてお互いにやれば、長大なパイプをつくれるでしょう。なぜそのことを政府指導しないのですか。危険なところに入れて、百万分の一の確率だと言うが、そういうことだって、あるいはきょう起こって、また明日起こるかもしれない。現在の船舶の構造等の関係からいうと、当然でございましょう。そういうものをなぜおつくりになるのか。入れないのが一番安全でございましょう。そうすればまた別の方法でその安全を確保して、十一の水道交通を保障することができるわけですね。問題は要するにタンカーですよ。鉱物船やあるいはほかの貨物船だったら、もし海難がありましても沈んでしまうから、それほど大きな問題は起こりません。問題の起こるのは、原子力の問題とタンカーの問題でございましょう。この二つは大体特定したものですよ。それ以外のものは毒ガスくらいです。そうしますと、そういうものに何で口をかけてやって、のこのこ京葉工業地帯まで運ばしてやったり、川崎まで持っていかして、そうして金をもうけさしてやることに政府協力するのですか。政府というものはそんなものじゃないでしょう。独占資本の諸君のために政府をつくっておるわけじゃないでしょう。どうなんですか。どこまでも働く人の一億の国民をひとしく安全にして生活を守ってやるという観点でございましょう。東京湾周辺でそういう問題が起こったときに、被害を受けるのは東京周辺の神奈川千葉東京でございましょう。その人たちの生活を保障し、安全を守ってやるということになれば、こんなものを入れないのが一番いいでしょう。なぜそんなものをのこのこ入れるのですか。アメリカ原子力潜水艦や空母も同じことです。なぜそんなものを浦賀水道や中ノ瀬水道を通過させるのですか。内容はきわめてはっきりしておりますよ。国家の名においてこういう法律を上程してきて、そうしてそれが自由に航行する。それは全く船舶としての従来の機能を持っていない。つまり、たとえば死角のところに漁船がいるとか、あるいはヨットがいるとか、あるいは先に船がいても、もうどうにもならないような、そういう怪物のようなものを入れて保障してやらなければならぬのか、私にはわからないのですよ。ですから、あなたの答弁は、いろいろお聞きをしましたけれども、自由民主党としてはやはり国民の政治をやっておるのでしょう。独占資本のために政治をやっておるのではないでしょう。もしそれならば別ですよ。あなた方は大資本や石油コンビナートの諸君からいろいろ金をちょうだいしておるのでしようがないというなら、われわれもってのほかです。あなた方は金は金でもらったらいい。国民の立場に立って、やはり法律やそういう規制をすることでございましょう。どうですか、佐藤さん、これはもう意見の相違とか、そういうことじゃないですよ。そういう危険なものを入れないのが一番安全です。入れてしまえば、百分の一とか千分の一とか申しても、非常に危険であって、しかもそのことが国民生活に多大の影響をするし、万が一事故が起これはもうたいへんなことです。なぜそういう危険なことをおやりになるのですか。その基本的な一番肝心なところを答えてくださればけっこうです。どういうわけで入れるのか、なぜ制限しないのか。
  92. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 単純に申しますと、入れないにこしたことはないと私も思います。しかし、いまの時点で、入れないで済まされない国家機構なりそういう体制ができておる、社会環境ができておる、それを無視して、単純に、すべてのものを入れるなという考え方には、私は、せっかくですが、同意するわけにはいきません。したがって、将来の問題として、先ほど申し上げたようなシーバースなり——パイプラインは幸いに今国会に提案されております。私はやはりそういう方向に変わるべきだと思い、運輸省も、そういう方向で調査費もつけて、いずれの個所が適当か、あるいは規模がどうかということで検討しておるのは、先ほどお答えしたとおりでございます。
  93. 土橋一吉

    土橋委員 最後に私は、佐藤さん、そういう考え方は間違いだと思うのですよ。昨年の十一月にジュリアナ号がああいう事故を起こして、きょうは四月十五日ですよ、ほんとうにやる気ならば、海底パイプなんかつくることはできるでしょう。ケーブルだって同じことですよ。しかも資力があって、またそれだけやる能力を持っておる。石油業者とか鉄鋼業者なんて、それこそ親方日の丸のようなばく大な金を持っておるのです。そういう諸君になぜ強制的に、おまえつくりなさい、東京湾に入らないようにしろと言えないのですか。これはできるじゃございませんか。それをやらないでおいて、こういう法律をつくって、のうのうとして他の漁民やあるいは小さい船舶を圧迫しながらそれが石油コンビナートの港へ入って、石油を入れる。こうなってくると、一体佐藤政府というのはこの独占資本とどういう関係に立っているかということを国民はみな疑わざるを得ないのですよ。だから、漁民諸君が、去る三月二十四日に、御承知のように何百という船舶を集めて、要するに佐倉宗五郎になってもやるという決意を示すというのは、ほんとうにあなた方ができないという——ぎりぎりではそれをやればできる体制にありながら、それをやらせようとしない。それで、三十億ばかりの金を出して通過させる、そんなことをやはり自由民主党は画策をしておると言っても言い過ぎではないと私は思うのです。特に、あなた方は三十億の金については、先ほどの委員会でもいろいろ説明してくださいました。   〔渡辺(武)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その三十億という金は、漁民の何百億という損害を補償するに足りないではありませんか。ましてや、それが一つの基金となって、それから出てくる利子とか、そういうもので幾らか補償するというようなことじゃ解決しないのでございます。あなたも漁民関係については詳しい専門家だとおっしゃっていましたが、漁民がそんなことで満足しますか。生活の問題です。漁業権を守る問題です。また、東京周辺の生活を守る問題です。公害から守る問題です。こういう点をひとつ十分考えていただいて、さらにこの問題はどういう大きな結果を及ぼすのであるか、もし事故でも起こりましたら、これは残念なことであるけれども、私がいま申し上げた、入れないのにこしたことはない。入れて事故を起こした場合に、その責任は重大ですよ。また単に、責任が重大というだけで済まされない問題です。これは東京湾あるいは伊勢湾、あるいは瀬戸内全体に関する、要するに、漁業あるいは海運、地域住民の生活の問題に至大な影響を持っている問題であります。でありますから、こういう大型タンカー及び原子力空母あるいは危険なものを搭載している船については、重大な関心とこれを規制するということを切に私は願いまして、質問を終わらせていただきます。
  94. 今澄勇

  95. 浜田幸一

    浜田委員 お許しをいただきまして、私は本法案に対する諸点について質問をさしていただきたいと存じます。時間が限られておりまするので、質問も簡単にいたしますので、ひとつ答弁も簡潔に御答弁を賜わりまするようお願い申し上げておきます。  まず政務次官にお伺いをいたします。本法案を作成するにあたって、東京湾の総合利用計画、すなわち、五年後の東京湾は、現在の東京湾船舶航行にどのような変化をもたらすのか、これが第一点。第二点は、十年後の東京湾の利用計画というものは、現状とどのような変化をもたらすのか。この二点、お伺いいたします。
  96. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 お答えいたします。  たいへんめんどうな問題で、はたして私の答弁が御希望のお答えになるかどうかわかりませんが、ここ何日かの審議を通じて感ずることは、東京湾現状がはたしてこれ以上大型タンカーなり航行する船舶を受け入れる能力があるかどうかというと、私も現状ではすでに限界に達しているのではなかろうかと存じます。したがって、国全体としてのビジョンなり東京湾の将来のあり方というものを、むしろおそきに失している感がありますが、そういう政策を早急に樹立して東京湾の今後というもののビジョンを確立する必要があるのではなかろうか、かように考えます。
  97. 浜田幸一

    浜田委員 もう一点、政務次官にお伺いいたします。  そうすると、政府は、東京湾総合利用計画なるものを立案せずして、この法案をとりあえずの施策として取り上げられたわけですか。少なくとも運輸省あるいは通産省で出されている書類を拝見いたしますと、現在の水揚げ量の四倍に到達する時点がある、それはおそらく十カ年後ではないのか、あるいは二・五倍の水揚げ量になるのが五カ年後であるのか、そういう資料に基づいて、当然交通ふくそうするという問題は、いまの三倍、四倍になるということは明らかな事実ですね。そういう問題を基本的に解決しようとしないで、小手先の問題だけを取り上げられても、それは全体の海上交通の解決策にはならないのではないですか。その点、もし政務次官でおわかりでなければ、担当省の局長さんでもお伺いさせていただきたいと思います。港湾局長、いかがですか、その点。
  98. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 現在、これは昭和四十五年の実績でございますけれども東京湾で扱っております港湾の貨物の量は、約三億八千万トンでございます。そのうち東京湾内で動いております貨物、これは約七千万トンでございます。ざっと申しますと約四億トンが東京湾に出入りしております。こういうふうな実績がございます。私どもの手元でいまいろいろ検討してございますけれども、一応試算として持っております数字で申し上げますと、昭和五十年になりますと、現在三億八千万、約四億トン近い貨物が、約六億トンになるのじゃないかというふうに推定をしてございます。  なお、昭和六十年につきましては、いろいろ今後の全国的な見方があると思いますけれども、私どもは、工業生産のほうは大体もう五十年で限界にくるだろう、そうすれば、東京湾周辺の一千万以上の方々が住んでおられる生活の必需物資、そういうものが中心になってくる。そういうふうに考えますと、やはり八億六千万トン程度のものが動くのじゃないかというように考えておる次第でございます。  ただ、具体的に各港でそういうものを前提にして港湾審議会その他で港の計画について御検討願っておりますけれども、そのほかに、まだ作業は完全に済んでございませんので、先ほど御指摘がございましたけれども関係各省庁、六省庁ございますけれども、この六省庁集まりまして、もう一ぺん再検討し直そうということで、担当各課長クラスあるいは局長クラスでいま勉強している最中でございます。
  99. 浜田幸一

    浜田委員 いま数字が明確にされましたが、もう一回確認させていただきますが、日本の総水揚げ量のうち、東京湾で水揚げされているトン数はどの程度ですか。
  100. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 水揚げ量と申しますと、貨物でございますか。——貨物は、昭和四十五年で申しますと、実績で、全国の港湾の総取り扱い量は十八億五千万トン、そのうち東京湾で三億八千二百万、そういう数字でございます。
  101. 浜田幸一

    浜田委員 政務次官にお伺いします。  私は、この問題については、日本共産党のただいまの質問とは性格を異にするものであるということを明確にしておきたいと思いますが、とにかくその議論は別として、その点だけははっきり御確認の上で御答弁いただきたい。  まず第一点の問題は、東京湾の総合利用計画を政府は正しくまとめていない。まとめないところにパイプラインの問題だけが議論されても、これはどうにもならぬことだ。少なくとも、貨物全体の取り扱い量、東京湾の中において十年後は何億トンに押えるということがはっきりした上でこれらの計画は立案されてこなければならないと私は思う。ところが、現状——港湾局長はこの問題について説明足りませんが、港湾局長、京葉港の建設は許可なさっておるわけでしょう。その点、これは政務次官にお伺いしますが、京葉港はこれからつくられる、千葉港の整備は終わった、木更津港の拡大をする、そういう場合に、これは数字の上だけでははっきりできないような問題点がたくさん起こってくることは明らかだ。ましてや、船橋地域における習志野地区の埋め立ての問題、これが解決しなければ、湾岸道路はできない。埋め立てば許可しなければならない。ましてや、金田、木更津沖の埋め立てをしなければならない、そういう問題になってくると、あなた方がいままで答弁を重ねてきた問題、検討します、研究します、解決しますということが、逆に動いていっていると言わざるを得ません。私は、もういまの政府にそのやる気があるのかないのか、全く理解に苦しむのですが、政務次官としてこの問題の解決のためにどういう努力をされるのか、決意だけをひとつはっきりしておいていただきませんと、次の質問に入れませんので、ひとつお答えを願います。
  102. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 私は、御指摘のとおりだと思いますが、ただ、質問者の浜田先生と私と見解を異にするのは、東京湾の総合利用計画ができなければ、できた後においてでなければ海上交通法の作成に着手してはならぬというのは、私はいささか賛意を表しがたいのでございます。そういう問題ももちろんやらなければなりませんが、差し詰まって、航路ふくそうしていろいろ混乱を生じている海上の相互の安全をまずもって私ども立場としてはやっていきたい。もちろん、政府全体として東京湾の総合計画がいまだ日の目を見ないのは、私も国会議員の一人としていささか残念に思いますが、やはり国会議員という立場から、お互い協力して東京湾総合開発の将来のビジョンというものを早急に作成しなければならないのじゃなかろうか、こんなふうに考えています。
  103. 浜田幸一

    浜田委員 考え方を異にしておるということでありまするから、私は、この法案について法案内容をこれからお伺いしないと、政務次官と私の見解が異なっているのかどうかまだわかりませんが、私も自由民主党の党員の一人でありますから、政府提案に対して、政府提案そのものが国の全体の前進のために役立つものであるとするならば、反対するとは言っておりません。しかし、国家的な見地から見たならば、あなたが政務次官になられて、法案を通すために、あなたは海上交通法においてそこまで見解が違うということを言われるならば、あなたは昨年まで海上交通法に反対をしておったじゃないですか。反対したものが、政務次官になって賛成して、見解を異にするなんというような、そんな発言はおかしいじゃないですか。それなら、去年まで反対していた理由を先に申し述べてくださいよ。
  104. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 過程はそういうことですが、法案内容を根本的に変えたということです。たとえば、政府の、今回初めて、海上交通法を趣旨徹底させるために、一億円ずつ五年間政府が金を出すということもそうです。それから、大型船に対する義務とか、あるいは二百メートル以上の超大型船に対してのみ避航義務を加えるというように、内容において、当初考えておった法案内容をだいぶ変えて、船舶あるいは漁業に従事している漁船も成り立つように法案を改正したために、私は賛成をしているのであります。最初とだいぶ異なる点を御理解いただきたいと思います。
  105. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、これをやっていてもしかたがありませんから、ひとつ内容をお伺いしたいと思います。  まず第一に、東京湾の中で、中ノ瀬と浦賀水道、これは公海ですか、お伺いします。
  106. 手塚良成

    手塚政府委員 いわゆる内水といいますか、公海ではございません。
  107. 浜田幸一

    浜田委員 そうすると、これは日本国政府、すなわち水産庁管轄下における内水面であることは間違いありませんね。そうであるとすれば、その中で漁業を営んでいた人たちは、いままで無許可で営んでいたのかどうか、水産庁長官にお伺いいたします。
  108. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 お答え申し上げます。  漁業権に基づきまして適法に操業をいたしておったということでございます。
  109. 浜田幸一

    浜田委員 それでは政務次官にお伺いしますが、ただいまお答えをいただいたとおりでありますが、少なくとも六十数年以上、日本の水産庁から許可を得て漁業をしてきた、営業許可権を持っていた漁民に対して、一方的なルートの決定をする場合に、漁民との話し合い、あるいは漁民生活権を守ることに対して、政務次官はどのような配慮をされておるのですか。たとえば、大蔵省が一年間に一億ずつ、五カ年間で五億円出すということだけによって、内水面における許可漁業に対する解決策がなされているとは言えないでしょう。それはあくまでもPR費だけではないですか。どうなんですか、その点について。
  110. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 漁業者の生活権を不当に奪うことにならぬか、こういう御指摘でございますが、私どもは本法案を作成するにあたって最も配慮した点でございます。あるいは漁業補償をしたらどうか、こういう御指摘をなさる方もございますが、現在の法律体系では漁業補償には該当いたしません。  詳細については水産庁長官よりお答えさせます。
  111. 浜田幸一

    浜田委員 お伺いしますが、たとえば、いままでの感触の中で、少なくとも自由民主党の部分の中で説明される段階では、許可漁業であるという前提ではっきりそれは認定されておらなかったでしょう。あなた自身が自由民主党の国会議員に提案前に説得工作を続けているときにも、浦賀水域をはじめ中ノ瀬というところは、これは完全なる許可漁業対象であるということをはっきり言っておらなかったでしょう。私はこの問題について議論をするつもりはありませんけれども、少なくとも六十年以上その中で許可漁業権を与えていた。東京湾では百三十億円の所得を漁民があげているのです。その中の四〇%を占める地域を、あなたが今回の海上交通安全法を通過させるために、それは国の権限であるから、これをかってにルートを決定して、漁民に対しては法律がないから、この問題については解決策がないのだという言い分は、これは海上保安庁といえども、運輸省といえども水産庁といえども、言えないことではないですか。かりに、そういうことは、現在の段階では営業ができている、この法律がつくられた場合に、逃避義務が起こった場合に、これは利用ができないということになったら、これは漁民から生活権を奪うということにやはりなるのじゃないですか。私は、この問題について、これはもうはっきりしていただかなければならない問題だと思う。これは、少なくともそこに政府許可を与えた、そこで漁民生活する権限を与えた、その問題をかりにも少しでも侵害するような問題がこの法律によって起こってきた場合に、それに対する漁民の利益を守るものが何らかの形で出てきていなければならないのではないでしょうか。この点どうお考えになるでしょうか。
  112. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 漁業法の第三十九条の規定は、県知事が、公益上の必要から、漁業権の変更あるいは取り消し、行使の停止を命じた場合、漁業者に補償すべきもの、このような内容になっておりますが、今回の場合はこれと異なり、ともに共存する立場をとっているので、漁業権補償対象にはならない、同じ漁業権であっても、許可漁業と認可漁業権と共同漁業権と区画漁業権とおのずから性格が異なります。詳しいことは水産庁長官から御答弁させます。
  113. 浜田幸一

    浜田委員 これはたいへんなことです。それは私はそのことも知っております。しかし、許可が与えられて、そこで魚をとっていいと許可を与えた水産庁が、許可を取り上げるということにした場合に、法律の読み方はどうであったとした場合でも、取り上げるのに、それを使わせるわけにはいかないから取り上げるぞということだけで現在の国民の生産所得を守り得るのですか。これは水産庁長官にお伺いしましょう。
  114. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 今回の法律の提案にあたりまして、実は漁業に対する規制をわれわれできる限り少なくし、漁業に対する影響をできる限り、何と申しますか、緩和しようということで、これは政府部内のことでございますが、法案の作成の過程におきまして海上保安庁とも折衝いたしたわけでございます。  そこで一番問題になりますのは、今回の改正法律によりまして巨大船に対する避航義務が生じたという点が一点ございます。それから、航路につきまして、特定航路を定めまして、そこに船舶航行義務を生ずるというようなことで、多数の船がそこに航行するというような形で漁ろうの制限が起こることもあり得るというふうに考えるわけでございますが、この点につきましてはおそらくすでに討議もなされたかと思いますが、私どもといたしまして、そういった場合に一体漁業補償ができるかどうかという法理論上の問題があるわけでございますけれども、まあお互いに受忍する義務があるということで、直ちに補償の義務は発生しないというのが政府の統一見解になっておるわけでございまして、もちろん、漁業がそのために全くできなくなるわけではございませんので、補償の義務は生じない、受忍の義務の範囲に属するという見解になったわけでございます。
  115. 浜田幸一

    浜田委員 もう一点だけ水産庁長官にお伺いしておきますが、そうすると、この法律を通すことによってその地域における許可漁業権というものは取り上げないという解釈でよろしいわけですね。そのまま許可をする。しかし、そこから問題が起こってくるわけですね。許可を与えておきながら、この法律が通過したために実際にその水域において生産所得を高めることができなくなった場合においては、どういう解決方法をおとりなさるわけですか。
  116. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 お答え申し上げます。  許可は取り消すわけではございません。それから、私ども、知事の許可漁業どもあるわけでありますが、これらの許可は取り消すわけではございません。もちろん、避航義務を生ずることによって、一部漁業活動に影響なしとは言えないわけでございます。したがいまして、この点につきましては、これもすでに議論が出たかと思いますが、私どもの聞いておる話では、やはり関係者のほうが協力費という形で漁民協力費を払うということが、両団体間で話し合われておるというふうに聞いております。
  117. 浜田幸一

    浜田委員 この問題はもう少し掘り下げてやらなければいけませんが、いま協力費の問題が出ましたから、そちらに移らしていただきますが、たとえば協力費の三十億。本来日本の政府のとるべき姿というものは、世界に類例を見ないということであっても、特定港湾においては、入港するタンカー等についてはすでに税金で目的税を課していく。たとえば港湾入港税、あるいは航行税、そういうものを課して、特に東京湾とか瀬戸とか、そういう過密地帯に対しては目的税を課することによって、利用者が負担しなければならないものを政府が法律で定めていく、これが法律のほんとうの心じゃないですか。少なくとも私にいま疑惑を持たれているその問題、政府が取り上げないうちに、一般関係業者から、たとえば業者だけからそういうものを三十億円出させて協力させていくという形は、法律をつくる上において私は必ずしも公平ではないと思うのです。この法律をつくる上にあたって、業者がそういう形で協力するならば、政府並びに業者、企業、同時に担当、千葉県なら千葉県、東京都、東京湾利用者会議の名において、これは一定率の予算計上した中で漁民の救済をするとか、東京湾の浄化をはかるとか、よりよい価値ある東京湾をつくるとか瀬戸内海をつくるとか、そういう形に政府が踏み切らなければ、少なくとも法律をつくる上において、これによってプラス面もあるでしょうけれども、将来起こってくる問題に対する政府の姿勢というものは国民に正しくPRできないじゃないですか。その点、一つの法律をつくる場合に、金持ちが金を出し、そのことによって貧乏人を守るからこの法律は正当なんだという、そういう考え方について、政務次官、私はどうも納得がいかない。法律というものは、やはり太陽と同じで、金持ちでも貧乏人でも同じように光を与える、あたたかさを与える、心を与える、そういうものでなければならないと思うのに、一つの法律案をつくることによって、便法的に業者が三十億円の協力費を出すから、それによって漁民生活権が守られるという解決は、全く納得ができない。  具体的な実例をあげますと、本来ならば、そういう形をとられる前に、あなた方も六法全書をお読みでしょうから、六法全書の、自動車の損害賠償保障の条項をお開きいただかなければならない。少なくとも陸上交通法の中においては、ことに自動車については、自動車の損害賠償保障という法律があるわけです。海上交通安全法をもし保安庁がつくり上げるとするならば、この中に船舶損害賠償保障法というものをあわせて出してくるのが常識じゃないですか。海上交通の安全をはかるためにそういうあたたかい心があってもいいのではないか。いまのように業者から三十億円出させて、その中で漁民とのあつれきを解決するなんという、そんななまぬるい解決策ではなくて、船舶交通するにあたって、特に大型船舶、そういうものが交通することによって起こった被害について、その責任を持たせる。そうでなければ、瀬戸内海とか東京湾とか、そういうところには航行をさせない。その程度の基本的な考え方の確立があってもしかるべきだと思うのです。ところが、そういう問題については一言半句、現在までの議論の中でも触れられていませんね。同時に、政府はこの問題に対してどう取り扱おうかともしていないわけです。法律で定めなければならないことを、それはむずかしいからということでこちら側に置いておいて、業界から金を出させるから——だから、業界から金を出して解決をさせるということになるから、いま言われた日本共産党のようなああいう理論が展開されてくるのですよ。なぜ政務次官も、いまの共産党の質問に対して——私は政務次官ではない、政府ではないから、答える必要はないのですけれども、これから国民の前にはっきりしておかなければならないことは、共産党の代表のような理論を展開していったら、日本の経済は破壊すると私は考えるわけですよ。日本が経済国家としてこれから生存できなくなると思う。まきをたけばいい、炭を使えばいい、そんなふうに受け取れる理論に対してわれわれ耳を傾けている時間はないわけでしょう。いま必要なものだから、それは船舶航行を許しているわけです。しかし、船舶航行を許している中で、日本の経済を守り、成長させる努力をしている中で起こってきているこういう危険な行為に対して、海上交通安全法をつくろうとしているのですから、もっとあの質問に対してだって明確な政府の答弁がなければならないのですよ。私は、その問題については、議論はいつでもできることですからいたしませんけれども、少なくともそこまで、三十億なら三十億業界が金を出してやるということであるならば、私は、その業界の金をこの際断わって、日本の政府が、なぜ、漁民を説得するための経費として三十億の計上を、法律をつくるにあたって強く大蔵省に各省から要求しないのですか。少なくとも一年に一億ずつ、五年間で五億出すことだけによって、業界がその六倍の金の三十億というものを出して漁民との摩擦を避ける、そんな法律は、政務次官、あなたが幾ら胸を張ってお答えになったところで、私は正しい法律ではないと思う。それなら、この際、逆に日本の全漁民が三十億円の金を出して、あなたのところへお願いに行って、大型タンカー規制のためにわれわれの有利なように展開してくれと要求したら、あなたはやってくれるのですか。私は、そういう性格のものであってはならない、少なくとも本問題については、政府が法律をつくる以上、それによって起こり得る危険な状態、生活権の侵害、そういうものに対しては政府が責任をとるべきだと思う。その点、どうお考えですか。
  118. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 これによって何がしかのマイナスを生ずる漁民に対して政府補償せいという考え方ですが、私どもも、何とかこれによって多少なりとも被害を受ける漁民側にあたたかい配慮をしなければならぬという考え方から、大蔵と折衝いたしましたが、先ほど来申し上げているとおり、第三十九条ですか、これと今回の海上交通法とは本質的に異なるものである、そういう見解のもとに、遺憾ながら、政府補償するという形をとれないで現在に至っております。
  119. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、先ほど第一点で出しました自動車損害賠償保障法の内容と匹敵した船舶損害賠償保障法をつくる考え方はおありですか。少なくとも今回の場合は、船舶交通調整、そういうものの上に立って行なう場合に、三海域、十一航路が限定されているわけです。その中で事故が起こった場合には、あくまでも話し合いで行なうということで業界が責任を持つということでは、前進しないじゃないでしょうか。少なくともそれだけの意思がおありになるとすれば、これは当然船舶に対するその損害補償の責任というものを持たせる、陸上交通と全く同じ法律を海上交通の中に取り入れるという考え方は、海上保安庁にしても運輸省にしても、お持ちにならないんですか、どうなんですか。それぞれおわかりになる方から御答弁いただきます。
  120. 手塚良成

    手塚政府委員 先ほど来の補償の議論につきましては、水産庁からもお話のありましたように、私どもとしましては、お互いの譲り合いの範囲という問題と理解し、法律上これは補償という対象にはならないということに考えるわけです。業界自体かこれに対して——といいますか、自主的に相互の摩擦をできるだけ緩和するということの姿勢をおとりになること、これにつきましては、私どもは大いに協力をするというような姿勢でこれに臨んでおるわけですが、ただいま先生のおっしゃいました、具体的にわれわれの仕事の言い方でいいますと、原因者不明の海洋汚染あるいは当て逃げ等の場合における交通災害、そういった問題について、これの補償なり救済なりというものをどういうふうに考えていくかという問題であるわけであります。先般、ことしの二月にも、先生のおひざ元の木更津においてそういう大きな事件がありまして、私どももそれに対していろいろ反省をさせられたわけでございます。これは原因者が云々という問題と直接関係はない、また別な問題かとも思いますが、いずれにいたしましても、そういった原因不明という問題についての被害というのは、今後の船舶ふくそう度合い、数量、大きさ、そういったものの変化の非常に激しい状態から見ますと、そしてまた、その交通の態様から見ますと、そういった事態の起こることが多分に予想されるわけでございます。したがいまして、そういうものに対する、いま自動車でいわれますような賠償的な考え方、こういうものについては、私どもは鋭意検討いたさなければならないと考えますし、現に部内においてそういうものの考え方の整理、前向きで進むべき整理ということで、いろいろ問題点の検討をいたしておる次第でございまして、私は将来のある程度の見通しから考えますと、当然そういう措置はあってしかるべきだと考えております。
  121. 浜田幸一

    浜田委員 陸上交通の場合は、ひき逃げや、無保険自動車にひかれた場合、国に請求手続をすれば、加害にかわって国が支払う制度がある。これはなぜかと言うと、陸上交通の場合は陸上交通安全法があるわけです。海上交通安全法ができれば、こういう問題が起こってくるのはあたりまえじゃないですか。だから、これは特に委員長にも御配慮をいただかなければならない問題ですが、この海上交通安全法というものができた場合、その中で起こり得る事故についてはだれかしらが責任をとる法律をつくっておかなければならないことは、明らかでしょう。たとえば、私が次に質問しようと思いました油の問題ですね。東京湾のみならず、瀬戸内海においても、油の被害を八億食っても十億食っても、それを一年に一回ずつ繰り返していても、国は法律にないからこれは賠償できない、補償できない、漁民は守ってやれないという答弁の一点ばりでしょう。この間海上保安庁長官にたいへん迷惑をかけまして犯人を押えたと思えば、その民事裁判に三年も四年もかかる。そういう状態が実際に起こっているわけです。東京湾一例にしても、現実にそういう問題が起こっている。この間木更津で八億円の損害を受けた。千葉県はこれに対して、一億円の再生産資金というものを出した。しかし、私がその問題をどこにお願いに行っても、国は法律にないから補償はできないということで、漁民に対する再生産資金すら出し得ないじゃないですか。そういう中で、法律だけが、船を通してもいいという法律ですよ。これは、少なくとも船は自由に通ってもいいという法律でしょう。国が規制を加えた範囲内において入ってもいい。その中で油のたれ流しや事故が起こった場合、業界が責任を持つとすれば、いままで船から出された油の被害なんですが、なぜこの業界に三十億出させる前に、そういう問題が現実にあるわけですから、その損害補償を何とか漁民理解させるように努力してやらないのですか。その問題はそっちに置いておいて、海上交通安全法ができた場合においては漁民の説得代として三十億円の金は出しますよと業界が言っておりますということでは、先にやらなければならないことを放置しておいて、その船がだれであるにせよ、困っておるのは漁民なんですから、汚染されたのは東京湾沿岸の漁民ですから、そういう問題がどうも小手先に動くきらいがあるということを私は認めざるを得ない。もう救われないでしょう。実際問題として、八億円の被害を受けた船についていま裁判進行中だと聞いておりますけれども、実際あの裁判で国が負けて、それが犯人でなかったという場合の処置は一体どうされるのかということになりますね。それで明原丸という船が犯人ではなかったのだということになると、漁民はまた泣き寝入りするよりほかないということになる。その結果はどこにあらわれてくるかといえば、反発となってあらわれてくるでしょう。船が入っているから悪いんだ、そういう形に、これは反政府運動の一番大きな問題に利用されてくる。私は、そういう問題をいま少し真剣に検討してこの問題の処理はしていただかなければならないと思う。これは大事なことですから、私は念を押しておきたいと思う。三十億という金が交通安全法を通すために漁民に渡される。しかし、すでに船舶航行している現状の中から、だれが流したかわからない油によって沿岸漁民生活権を奪われている。こういうものに対して政府が前向きに解決する姿勢がなかったら、漁民はこの法律に同意するわけがないと思いますよ。その点、政務次官どうですか。
  122. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 先般の木更津沖の油濁事故は、私も実情を知っている者として、漁民側の立場に立って考えたとき、まことに怒りのやり場所もない、たいへん困っている問題だろうと思います。本法案と直接関係ございませんが、油濁の問題については現在私ども運輸省で検討させていることは、先般の委員会でお答えしたように、三十何億かの金をそのまま現金で関係漁民に支払うのか、あるいはそれを基金制度を設けて利息で恒久対策を考えるのか、これは最終的にいまだ結論を出しておりませんけれども関係者が話しの上結論を出すものと判断いたしておりますが、油濁防止については、私どもは当然この海上交通法とあわせて考えなければならないという考え方から、現在基金制度がいいのか、あるいはもっと他に適当な方法があるのかどうか、その場合政府はどういう形でこの法人格を持った団体に金を出されるのか、また、出すことでなければ、今回のような民間の方々に依存するということは、国の政治姿勢として間違いじゃなかろうか、そういう考え方から、どのような形が最も適当であるか、現在検討させている最中でございます。
  123. 浜田幸一

    浜田委員 政務次官からすばらしい答弁がありましたから、この問題については私は了としますけれども、ただ私は一つだけ申し上げておきます。きょう大蔵省からも川口保険部長が来ておりますが、いまのままでこの問題を解決するというのは、業界が政治を行なっていると同じなんですよ。政治の本質とは何か。一つの問題、交通安全法を通す場合に、漁民生活の安定にどのように役立つのか、同時に、片側において悩んでいる漁民なら漁民生活権をどう守り得るのか、それは守る行為を業界がするということは、政治がないということと全く同じじゃないですか。  そこで私はこの点について御一考をいただきたいと思うことは、この法律を皆さん方がどうしても通さなければならないとするならば、やはり大蔵当局ともっと強い折衝をして、業界が三十億出す前に、その使い方がどういう形であるにしても、政府の姿勢を示すべきだと私は思います。法律はつくるけれども政府は金を出さぬ、政府が出さぬ金を業界が出すということであれば、政治は日本政府がやっているんじゃないです。海上交通安全法に関する限り、それは業界が政治を行なっているんだという解釈をしても間違いじゃないでしょう。私はこのことを強く政府当局に申し入れておきます。法律がないから、法律に読めないから、補償はできない。できないものをなぜ業界がやらなければならないのかということなんです。政治に妥協が必要だというわけですね。政府は法律をもってしなければ漁業補償はできないけれども、そういう問題が起こった場合には業界に漁業補償をさせる、漁民を説得させるということは、すでに船舶業界が海上交通安全法を通じて日本の政治を行なうという解釈が成立するじゃありませんか。  特に私はこの際大蔵省の川口保険部長にお伺いをしておきます。大蔵省として、海上交通安全法を通過させた場合、現行法律の中で漁民を救うことができない。しかし、大蔵省も、海上交通安全法という法律を少なくとも海上に設けようとされているわけですから、その場合に、先ほど私が質問をいたしてまいりました自動車損害賠償保障法、これを船舶損害賠償保障法としてつくり上げる考え方をお持ちでしょうか。もしないとすれば、今後起こり得る無過失の責任問題、そういう問題は、政府の法律の節囲内では解決できない。たとえばその場合に、環境庁長官が来ればかっこうのいい答弁をされるでしょう。そのときどういうことを言うかというと、われわれはいま無過失の問題を法案として出しております。しかし、それは人間の健康管理に関する問題しか出ていない。そうすると、日本国民は、少なくともそういう中で油のたれ流しや交通事故が起こった場合でも、法律を通じて日本の政府に対して権利を主張することができなくなるわけですね。こういう総括的な考え方に対してどうお考えでしょうか。この点をあわせてひとつ御答弁をいただきたい。
  124. 川口嘉一

    ○川口説明員 ただいまお話のございました自賠責の関係と、いま御議論になっております海上交通からくる損害賠償の問題とは、考え方なり何なりに若干違うところがございますので、直ちに現在の自動車損害賠償保障法を海上交通にまで適用するということは無理じゃないかと思われます。  ただ、先生の御指摘の油濁の問題その他これの責任、損害賠償の問題、これは御承知のとおり国際的にも非常に問題になっておりまして、いろいろな国際条約もできて責任を明らかにする、あるいはその担保のためのいろいろな条約なり基金制度というようなものも検討されておる。その責任者が明らかでない場合に、自賠責の場合の保障勘定のような形のものも考えざるを得ないという先生のお考えは、私としましても、方向としてはそうあるべきところではないかと存じております。ただ、いま政務次官なり運輸省当局の方から御答弁ございましたように、方向としてはそういうことだと存じますが、それには種々関連する困難な問題もございますので、主管は運輸省のほうでございますけれども、私どもとしましても関係者の一人として、そういう対策を検討するにあたりましては、十分考えて検討に参加さしていただきたいと思っております。
  125. 浜田幸一

    浜田委員 再度確認をさしていただきたいと思いますが、この際政務次官にお約束をいただきたいと思うことは、いま大蔵の川口保険部長がお答えになったことは、私は正しい意見だと思う。というのは、自動車損害賠償保障法を直接これを船舶に充当するということは、これは実例がそれぞれ違いますから、できないにいたしましても、私はここで確認をとっておきたいことは、本法律案の作成にあたって補償制度の確立が必要だと思われる。そこで、何らかの方法でこの補償制度の確立をすることが私は急務だと思う。これに対して、運輸省を代表される政務次官としてどうお考えですか。御答弁いただきたいと思います。
  126. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 私どもは、大型船舶——大型船舶といっても、巨大船、今回の場合は、日本の国籍を有する巨大船、外航航路すべて一切、日本の国籍がある巨大船は約三百そうでございます。これらは確かに、漁民避航することによって、日本のいまの三海域に入る場合はこれは恩典があると思いますが、その他の中小船舶、大型船舶は何らそういう影響はないのであります。しかし、これらも国民生活にとっては大切な、かけがえのない存在だろうと私は思います。そういう問題も含めて考えたとき、いますぐ急に補償制度をと言われてもなかなか困難じゃなかろうか。しかし、一方が利益を得て一方が損害を受けるという場合は、当然補償ということもおのずから考えられる制度だろうと思いますので、鋭意検討はいたしますが、本法案の中にその補償ということを盛り込むということは、いまの時点ではちょっと時間的にも無理じゃなかろうか、こんなふうに判断しております。
  127. 浜田幸一

    浜田委員 そうすると、前向きには取り組むけれども——私はこの法案の中にということでなくて、当然、この法律をつくる意思を持たれたときにそういう補償制度の問題が確立されなければ——じゃ、だれが一体業界との話し合いをしたか。国の法律の中でできないから、業界が、善意でやるにしろ、あるいは政府がそういうものを奨励したにしろ、そういう三十億という金を出さなければこの法案の成立は無理だということを考えているわけでしょう。そうだとするならば、業界すら三十億の金を出してやろうとするならば、そういうものを公平に負担させるような条件というものは、国の法律の中で前向きに取り組んで解決していくのが当然じゃないでしょうか。ですから私は、何らかの形で補償制度はしなければならない。特に、保険制度の問題のことを言われますが、それは解決法をつくろうとするときの便法にすぎない。たとえば、漁業制度を確立する、漁民の利益を守るために保険制度考える、それはやっぱり一つの法律をつくるにあたっての前提条件でしょう。  私は、もう時間が参りましたから、まだ議論をしたい点が四点ばかりあるわけですけれども、限られた時間内で無理でありますから、特にこの際、政務次官にだけは、この問題については積極的に取り組んでいただきたい。このことを若い政治家のあなたに私は期待をしておきたいと思うのです。この点、あなたが政務次官をやめられてしまって、次の政務次官がやる気がなければそれでだめだということではなく、各省庁の代表もおられることですから、少なくとも補償制度の確立ということは政府が取り上げなければならない急務だと思う。このことを私は要求をいたしておきます。  それから、もう一点だけお聞きしたいのでありますが、どうでしょうか、水産庁長官。もし許可漁業を得ている地域から許可漁業を追い出すような状態になったときに、現行法の中では何も漁業補償できないわけでしょう。ということになると、もっと積極的な、一年なら一年見送って、漁民を正しく説得して、その航路指定水域をできるだけ狭いものにしてもらって、その地域に限定して許可漁業を取り消すような方法をとっていかなければ、正しい解決策にはならないと思う。ところが、この問題をやるためには漁業補償が必要だということになってくるわけですけれども、現行法ではできないわけです。そこで、法律をつくられる側にしても、何とか通したいから、危険を覚悟した上で法律をつくろうとしますね。危険を覚悟している。大型タンカー規制を加えると言っておりますけれども大型タンカーにだけ規制を加えることによって必ずしも航行の安全、自由というものを守れるとは私は思えない。そういうあいまいもこな、たとえばだれが考えてみても、非常に努力をした形、これは認めますけれども、その中における法の矛盾という点については、私はもう一回考え直していただかなければならないと思うわけです。私は実はそういう観点に立ってこの質問をさせていただいたわけでありまするが、この法律案は、現在の段階では時間尚早であると私は思う。いままで質疑応答された形の中で、いま少しお考えをいただかなければならない問題が数多くあると思うのですが、水産庁長官、いかがでしょう。
  128. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 この法案立案の過程におきまして、実は水産サイドでは、いま先生が御指摘になりましたように、航路を特定いたしまして、そこにおける漁業を一切禁止するというようなことをやったほうが徹底していいのではないかという議論があったことは群集でございます。これはあくまで漁業サイドの議論でございまして、そういったことになりますれば、まさに漁業権漁業あるいは知事許可漁業等がその区域では行なわれなくなるわけでございますから、当然補償対象になり得ると私は思うのでございます。ただ、現実の問題として、今回の法律におきましては進航義務だけがかかっておりまして、それが先ほど来申し上げておりますように、一応両者の受忍の義務の範囲に属するということで、これは直ちに補償対象にはなりがたい、こういうことで補償の規定が法律案の中には書かれなかった、こういう経緯があるわけでございます。  それから、先生指摘のとおり、油等による漁業被害、あるいは加害者不明の被害、あるいは当て逃げ、こういった被害者に対する損害賠償の措置につきましては、実はこれは政府部内のことでございますけれども、水産部会等におきましても、この点につきましては、やるべきであるというようなことも言われておるわけでございますから、先ほど来運輸当局も御答弁になりましたように、私どもといたしましても、至急関係各省と研究いたしまして、この対策を考えていかなければならないだろう、こういうことで取り組んでまいりたいと思っております。
  129. 浜田幸一

    浜田委員 どうもありがとうございました。
  130. 今澄勇

    今澄委員長 次回は、明二十六日水曜日午前十時より委員会を開会し、参考人から意見を聴取することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時一分散会