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川島(博)
政府委員 昨年の十月、
答申を受けました内容につきましては御案内のことと思いますが、その
答申の中で、
答申どおり
改正法案に盛り込まれなかった問題が若干ございます。
これについて順番に申し上げますと、まず
工場の
基準面積の引き上げについては、思い切って大幅に引き上げろ、こういう御提案をいただいたわけでございますが、特に住民生活と密着している生業的な小零細企業への影響を考慮いたしますと、やはりそこはある
程度のところで線を引かざるを得ないということになったわけでございます。御案内かと思いますが、当初私
どもの原案では、五百平米では少し高過ぎるということで、実は三百平米、九十坪以上まで下げたいということで関係方面と交渉いたしたわけでございますが、地元地方公共団体をはじめ
経済団体がこぞってそれでは困るということで、結局は五百平方メートルに落ちついた次第でございます。ちなみに申し上げますが、ロンドンにおきましても
制限基準面積は約四行六十五平方メートル以上でございますし、パリにおきましても、五十名以上の従業者を有するかまたは五百平米以上の作業場を有するかということが
基準になっております。したがいまして、これらとの比較から見ましても、また
わが国の実情から見ましても、まあこの際、線を半分の五百平方メートル
程度に引き下げることが妥当ではないかということで、五百平方メートルにいたしたわけでございます。
それから御指摘のように、
答申では「
工場の
移転、
分散を促進し、その配置の適正化をより積極的に図ることにより
都市環境の
整備改善を進めるためには、
制限施設の新設および
増設を
制限するだけでなく、その改築についても
制限する必要がある。」と、述べられております。この提案は、現行法のたてまえであります
集中抑制のための
工場の新
増設の
規制、すなわち
工業集積の絶対量の増加を押えるという立場を大きく踏み越えまして、既存の
工業集積の縮減を通じて
過密の緩和をはかるべしとするものでございまして、従来の新
増設の
制限とは質的に異なる
規制内容を含む画期的なものといってよろしいかと思います。
過密対策の前進のためにはきわめて有効な方策として評価できるわけでございますが、反面においてはまた検討すべき問題点も残されておるわけでございます。何となれば、上既存
工場の改築を原則として禁止するということになりますと、政策的には
制限区域の老朽
工場のスクラップダウンを強制し、
制限区域外への
移転を余儀なくせしめて
工場の再配置を促進しようとするものでございますが、
対象施設である老朽
工場の経営者にとっては、改築が許されないということになれば
移転か転廃業かの二者択一を迫られることになり、場合によっては企業の命運にかかわる、重大な問題でございます。したがいまして、このような企業経営に重要な制約を加える政策は、あわせて
移転、
分散を効果的に行なうための企業の誘導助成策、さらには転廃業を余儀なくされたものに対する
移転あと地や施設の買い取り請求を認めるかどうかなどなど、憲法二十九条との関連においても検討を要する問題点が多いわけでございます。したがいまして、
制限区域内における改築の実態、改築
制限の効果等に関するきめのこまかい吟味も含めまして、今後の検討をまって立法化することとし、今回はひとまず見送ることにいたしました。
首都圏整備審議会の
答申ではさらに
工業等制限区域の拡大につきまして、「
首都圏の
既成市街地およびその
周辺地域を
過密の
弊害を
防止して健全な大
都市圏域として
発展せしめるためには、
工場等制限法の適用
区域をすでに
過密化した
地域に限定することなく、今後における
過密の
弊害の予防を必要とする範囲に拡大すべきである。従って、
制限区域を
既成市街地全域に及ぼすことはもちろん、
近郊整備地帯であっても、すでに
工業の集積の著しい
地域、又は近い将来において
人口、
産業の
過度の
集中が予想される
地域については、
工業等制限法の
対象区域とする必要がある。」と述べています。この
答申を受けまして、私
ども事務局は、
昭和四十五年の国勢調査における
人口集中地区統計及び
工業統計等によって、
人口、炭業の集積度の高い地区として、東京都の北多摩の各市、千葉県の市川市から千葉市に至る臨海部――これは後背市街地を含めての話でございますが、市川市から千葉市に至る臨海部、埼玉県の川口市に連なる市街地、及び神奈川県では横浜市に連なる市街地等を
既成市街地に指定し、
工業等制限区域とすることが、妥当であると考え、具体案を示して関係地方公共団体と協議をいたしてまいりました。しかしながら残念なことにうまくいかなかったわけでございますが、その理由は、現在これらの、私
どもが拡大をはかった
近郊整備地帯は、
首都圏整備法上の
近郊整備地帯の指定を受けており、これに伴って、
首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊
整備地品等の
整備のための国の財政上の特別
措置に関する
法律によりまして、都府県に対する地方債の利子補給及び市町村に対する国庫補助負担率のかさ上げという特例
措置が講ぜられており、提案を受けた関係自治体は、
既成市街地に入ることによりこれらの恩典を失うことに強い反対の意向を示してまいっております。したがいまして、この際はとりあえず
工業等制限区域を上
既成市街地全域に拡大するにとどめ、
周辺の
近郊整備地帯を
制限区域に編入することにつきましてはなお慎重に検討し、関係自治体とも十分協議の上、できるだけ早い機会に
答申の
趣旨に沿った
改正を行ないたいというふうに考えております。