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米花参考人 私、経営学をやっている
人間でございますので、その面から
地域開発問題をやってきました。そういう観点から、今度の
琵琶湖、
淀川水系の問題をどう考え、あるいは今度の特別
措置法に関連する位置づけをどう考えるかということについて、若干申し延べさしていただきたいと思います。
琵琶湖、
淀川水系の問題は三つの側面に問題意識が、
地域問題からいうとあるように思うのであります。直接的には
水資源と水の
利用側との問題であるわけでありますけれども、よりレベルを高めて申しますと、先ほどからお話がございましたように、近畿一千万あるいは一千二百万ぐらいの人々の水ということからの広域的な機能と、しかし
琵琶湖を中心として九十万以上の
方々が、その
地域で
生活をしておられる、仕事をしておられる、そういう
地域社会的な問題と広域的な問題との間におけるかかわりの問題もあるわけであります。第三にもう一つは、われわれは未来への期待というものが無限であり、次の世代次の世代へといまよりも悪くないもの、よりよいものを移していかなければならないということ、現在の人々の仕事と
生活の条件を整えなければならないということ、しかも資源とか土地
利用とかいうものには限りがあるというような、三つの側.面に問題があると思うのであります。そうしますと、そういう、たとえば水の場合には——ここの場合は水でございますけれども、水にかかわるところの関係機関なり関係主体というものが非常に多いという中において、いまのようなむずかしい問題を少しでも
解決しながら次の世代へ、あるいはまた現在の人々の仕事と
生活の中で役立てていかなければならないという問題、これは
地域開発問題に共通の問題としていま当面しているわけでございます。しかもいまその関係主体、府県、国の各機関の中で、とにもかくにも一応共通の出発点というものがここで整えられようとしているというふうな解釈ができようかと思うのであります。したがって、これは問題の
解決ではなくて、これからの出発点である、
問題解決への出発点という意味の取り組み方が必要でなかろうかというふうに思うのであります。
いまから十年余り前のことなのでございますけれども、当時国連の経済社会局次長をしておりましたワイズマンをはじめとして、六人の欧米の
都市問題の専門家が阪神
都市圏の
調査に参りました。近畿圏的な視点からこの問題に取り組んだわけでございます。若干、関西の者も協力したわけでありますが、その報告の一つの中に、
琵琶湖、
淀川の水の問題というのは、何よりもその関係各機関あるいは各主体の間の協力方式、共同方式をさがしだすことが最も大切な緊急の課題であるというふうなことが指摘されたことを出い出すのでございます。そういう
方々は、あるいはあたかもアメリカのTVA方式のようなことが一部頭にあったと思うのでございますけれども、むしろ問題に応じて協力をする方式をその中からさがし求めて、それに基づいてやっていかなければならないというふうな指摘があったと思うのであります。その意味では、
琵琶湖、
淀川水系の問題というのは、いまやっと出発点に立とうとしているというふうな見方もできるのではなかろうかというふうに思うのであります。そういう観点からこれを見ますと、むしろ、かりにこの問題がいま
法案によって進められるといたしましても、これは出発点であるという見方、そして私、いろいろな分野にとうてい及びませんけれども、何といっても二つの側面から考えてみたいのであります。
一つは、水
利用というものが、先ほどからもお話がございますように、
水質問題と密接不可分であるということ、しかも、さしあたりこれは
昭和五十五年ごろをめどにして進められるようでございますが、五十五年以後、六十年、六十五年、七十年ということを考えたらどうなるのかということを考えますと、こういう出発点を
前提にしてい系ら本格的に——いままでも
淀川水質協議会であるとか
淀川水系水資源開発基本計画とか、いろいろあって、おやりになっているようでございますけれども、より広い視野から、
水質と
水量の問題を含めて、本格的な取り組み方をしていかなければならないであろう。水の
需要というものを、質と量を含めまして、このままほっとするのではなしに、もしいまからやっておかなかったならば、かりに十年したあとどうなるかということを考えてもいろいろな問題が出てまいります。むしろここを出発点として、関係の主体が寄って、水の循環
利用も進められておるといいながら、もっとシステム的な問題についていろいろな提案が専門の方からもなされているようでございますので、そういういろいろな
研究成果を活用しながら、この問題と取り組めるような方向というものが一つ非常に必要でなかろうかというように思うのであります。
もう一つの問題は、水というものは、
上流から
下流まで一体として、あるいはその
地域の
生活なり仕事を含めて考れていかなければならないという問題からしまして、
琵琶湖の総合
開発というのは保全と
開発ということが指摘されておるのでございますが、その
計画の具体的なことを私はよく
承知しておりませんけれども、そういう総合的な
計画あるいは保全と
開発というのでしょうか、それの
計画というものを進めていくのには、とにかく
琵琶湖、
淀川というものはやはり非常に大きなものでございますので、しかもいままでわれわれの経験しない、未知なるもの、未経験なものに次々出くわしながらこれをやっていくのでございますから、その
計画の中におけるフレキシブルな進め方といいますか、そういう一つ一つについて体得しながら進めていけるような、フレキシブルな
計画のとり方ということをまず
前提に考えてほしいと思うのであります。
それからまた、
計画というものは総合されましても、実施段階でなかなかうまくいかない。特に
琵琶湖の問題なんかは関係が非常に複雑でございます。複雑というのは、国の各機関なり公団であるとか、あるいは県、市町村、あるいはその他のもろもろの
関係者が多いわけであります。その中において総合ということは一体どういうことであるか、問題に応じて協力できるような仕組みなりあるいは姿勢というものをその中で持っていかなければならないであろうということであります。これは、
計画が総合されても、実施の段階でタイミングが一つ狂いますと、非常に違った、似ても似つかぬものになるおそれがある。したがって、
計画の実施についてのタイミングを十分考えて、問題意識の中でこの問題を考えていく必要があるだろうと思うのであります。
それからまた、こういうものを担当されるところの
行政機関というものは、きまったときには問題意識は非常に明確でございまして、それぞれの方が苦労なさっておるのでありますけれども、たいてい異動がございます。異動してまいりますと、担当者がかわりますと、形は残るのでありますが、初めの問題意識なりきびしさなりくふうなりというものがどこかえいって、受け付けられなくなってしまう。そこで似ても似つかぬものになるおそれがございますので、そういう面も十分くふうしてほしいと思うのであります。
以上のような点を頭に置きまして今度の問題を考えますと、一つの水というものを手がかりにしながら、
上流から
下流までが一緒になってこの問題を考える、そういう理想的な体系というのはまだ
かなりの距離があると思われるのでありますけれども、少なくとも水なら水だけで問題を考えようというのではなしに、水と
地域の
生活なりあるいは自然と
人間との関係であるとか、あるいは
上流と
下流との関係を考えながらこれを進めていくという第一歩になろうかと思うのであります。こういう、初めに申しました問題意識というものは、現在の日本の
地域開発問題で各所で当面しておって、しかもこれがバランスがとれないでうまくいかないということが、非常に多くの地点にございます。その意味では、不完全ながらそういう一つの取り組み方についての出発点ということが今度いえそうに思いますので、これがもしうまくいかなかったならば、今後の広域的なこういう取り組み方というものを進めるのに非常に支障を来たすであろうと思いますし、一つ一つについて多少ともいい成果をあげていくということができれば、これは今後の一つの手がかりにもなるだろうと思うのであります。そういう意味で、そういう問題というものを十分意識した中でこの問題の取り組み方を進めていただきたいということを申し上げまして、私の一応の説明を終わらせていただきます。