○藤尾
政府委員 事が私に関することでございますから、こういった機会をお与えをいただきまして非常にありがとうございます。
ただいま私は参議院の公害
委員会でも呼び出されまして、きびしくおしかりをちょうだいいたしたのでございますが、私も二十年新聞記者でございます。でございますから新聞がいかなるものであるかということは私も知っております。御案内のとおり、今日公害という問題は、私
どものこれからの政治の中に占める最も大きな問題の
一つだと私は思うのです。したがいまして、これに対して不遜な態度をとるというようなことは政治家としてあるまじきことでございまして、そのような態度をとる政治家は厳に糾弾をせられなければならぬ。私はこの点は全く朝日新聞の御言い分とまことに見解は同じでございます。ただ、私のところに参られまするということは、非常に私自身も予期しておりませんし、実は公害という問題につきましては、鉱山という問題につきましては通産省、あるいは
環境という問題につきましては
環境庁、あるいはそれが及ぼす影響ということにつきましては厚生省が扱うべき問題でございまして、もし陳情団の方々がそういった
趣旨で私のところへおいでを願ったのならば、私はお断わりをしたはずでございます。しかしながら事実はそうでございませんで、ちょうど私の部屋の隣の隣が中島議員の部屋でございまして、中島さんが太田の選挙区でいらっしゃいます。そういった
意味合いで、おまえのところへ陳情が行くから聞けということでございましたので、これも、だから役所ではございません。会館でおいでを願ったのに御応接をさせていただいたわけでございます。その際に、私は御案内のとおり栃木県でございますから、しかも太田に接しております足利あるいは佐野、藤岡、渡良瀬というのは私の
地域でございます。でございまするので、私は前回通産政務次官をさしていただきましたときから、特に御案内のとおり、通産政務次官をさしていただきましたときには当時の大平
大臣が繊維問題その他で非常にお忙しくいらっしゃいましたので、石炭問題と公害問題につきましては私が主として当たらしていただいたわけでございます。でございますので、そのときに社会党の島本
委員からの御
質問がございまして以来、この足尾の問題が問題になったわけでございますけれ
ども、私も私の選挙区でございますからそれなりの勉強をいたしておったわけであります。したがいまして、皆さま方おいでになられまして、六項目の要求をするということでございました。
第一は、いままでの鉱毒の問題につきましては一切が古河の責任である、こういうことが明記してございます。私はこの前も、それは衆議院での記録をごらんいただきますとおわかりいただけると思いますけれ
ども、足尾の歴史といいますものは非常に長うございます。古河がその責任を持ちましたのは明治からでございます。でございますから、いま古河は一部しか操業をいたしておりませんけれ
ども、その取っておりまする鉱滓あるいは残土というようなものが非常にうずたかく山のように積まれておりまして、それが長い間の雨風に当たって渡良瀬川に流れ出してきておる。そういうことにつきまして、いろいろな問題に対する責任が究明せられるわけでありまするけれ
ども、明治あるいは大正、昭和の初期におきましては、こういった問題は少なくとも、残念ではございまするが、政治問題あるいは社会問題として提起をされたことがなかったのであります。幸いにいたしまして非常に文明が進化し、そして政治の純度が上がってまいりまして、社会的にも政治的にも人間の住む
環境ということが非常に大切であるという観点から、この問題に根本的に対処しなければならぬではないかということで、公害問題が起こってまいりましたのは近々ここ五、六年の問題でございます。したがいまして、私といたしましてもそれより以前の古河の責任と、あるいはそれ以前の江戸
時代の責任というようなものについて、これをどうするかということにつきましては別途これは
考えなければならない問題がある。少なくとも公害の問題といいますものが提起せられました以降における問題につきまする古河の責任というものは、私は免れないと思います。そういった
意味合いにおきまして、当時私は通産政務次官といたしまして、カドミウムの問題が問題になりましたので、直ちに古河に命じまして、カドミウムの流出防止という措置をとらせたつもりでございます。したがいまして、その後新聞報道によりますると、古河自体の発表でございまするからこれは会社も責任をもって言っておるのだと思いまするけれ
ども、渡良瀬川の栃木県から出て群馬県に入りまた栃木県に返ってくる長い長い流域の中で、いろいろな地点でこれを調べられました結果、今日ではこの地点におきまするカドミウムの流出量はある
基準以下になっておるということを発表いたしております。私は、これは会社の発表でございますから必ずしもそれが正しいとは思いませんけれ
ども、これはこれなりに私は
調査してしかるべきものであるということを第一に
考えております。そこで、そういった問題につきまして、今日無過失賠償責任という問題が非常に大きな問題としてこれから先、取り上げられようとしておるときでございますから、非常に問題が深刻でございまするけれ
ども、無過失であるという——昔は私は無過失だと思うのですが、そういったものに対する責任をどうとるか、だれがとるか、あるいは無過失賠償責任というものが確立をいたしました際に、いつの時点を境にしてとるべきかというなとにつきましては、これは非常にこれからの検討が必要である。したがいまして、その検討がなされて、そして社会的にも政治的にも、この時点以降における責任は一切とるべきであるというようなことでございましたならば、これは当然私は皆さま方ともにその先頭に立って古河の究明をいたします。しかし今日におきましてはまだそういった法ができておりませんから、これにつきまして一がいに全部が全部古河が悪いんだという御主張というものはなお検討を要するではないか。この点では皆さま方と意見が違うんだとということを第一に申し上げました。
第二は、いまの流出する汚染物資の中の重金属の中で銅が含まれておるかどうかという問題でございます。この問題につきましては、ただいまのところでは銅は含まれていないようでございます。近く、含まれるようでございますけれ
ども、そういった際におきましては、私は新たにこの銅に対する責任を古河がとるかあるいは国がとるかということをやらなければならぬと思います。
第三に、カドミウムを含んだ米が太田
地区で出ておるようであります。これにつきましては県が買い上げておりまするけれ
ども、そういったことで事が済む問題ではございませんので、当然農業に対する根本的な検討、作物の検討をされるときに、国なり県なり農協なりあるいは地元なりが一体になってこれに対処すべきである。たとえば果樹にするとか桑にするとか、あるいは花をつくるとかいうことで、そういったものに対する援助を積極的にするというようなことが、私は政治にかけられた責任だと
考えております。そういった
意味におきまして、最終的に、いまの水俣病のように、あるいはイタイイタイ病のように、からだが不自由になって、ほんとうにもうどうにもならぬ、こういった場合に、その責任をどうとるかという場合には、からだをもとになおすということはできないわけでありますから、最後の最後の
手段として、金によってこれだけのことをさしていただきますからひとつお許しをいただきたいという解決の方法はございますけれ
ども、のっけからすべて金だというものの
考え方には私は賛同ができない。むしろ、いまPCBとかなんとかいう問題も同じでございますけれ
ども、問題の本質が根本的に究明せられておりません。そういった問題につきまして、国なり県なり、学界なり地元なりというものが一体になって、根本的な原因を芟除するためにあらゆる努力をするというのが政治家としての責任うに私は
考えるのでございます。
ただこの場合に、ただいまこうやってお呼び出しをいただいておるわけでありますけれ
ども、
建設省の立場といたしまして私
どもとして
考えるべき問題は、河川の底に沈でんしておる重金属だとかなんとかいうものに対してどうするかという問題であろうと思います。こういった問題につき序しては、根本的に芟除することができるならばそれに越したことはございませんけれ
ども、今日のところ、技術的にもなおかつそういったところまでいっておりませんから、来られました方々の御意見と私の意見の間には
相当の開きがある、そういうことを申し上げましてお帰りを願ったわけであります。この
委員会でももう皆さま方御案内のとおり、私は巧言令言をしないということを信条にいたしております。したがいまして、陳情においでになられました際に、ごもっともでございます、そのとおりでございますと言ってお帰り願うならばこれは何でもございませんけれ
ども、私は、一たんいいとか悪いとか言ったことは必ずやらなければ政治家としての信念にそむく、かように思っておりまするし、いいことは賛成、悪いことは反対ということを言うのが私の性格でございます。これはいいも悪いもありません。
そこで、そういった問題がございまして、おまえの弁解はどうだということでございますけれ
ども、新聞の立場からいたしましたならば、これは編集権というものがございます。編集権という立場でこういったことを、こういった時期だから、政治家のやつが言うのはけしからぬということでお取り上げになられた、この朝日新聞の見識に対して私
ども文句を言うべき筋合いではありません。しかもそれには、非常に小さくはございますけれ
ども、私の言い分も出ております。私はそのこと自体が不公正であるとか、それに対して文句を言うとか、男らしくない態度はとりたくない。甘んじてその御批判は御批判としてちょうだいすべきである、かように
考えて、いま神妙にいたしておるところでございます。