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下平委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました
予備費の
使用等の
承諾を求める件に対しまして、不
承諾の意を表明いたしたいと思います。
その
理由は、まず
昭和四十五、四十六年度
予算並びにその財政運用につきまして、社会党は基本的に反対の
立場をとっておりますので、この観点から
予備費の
支出についても基本的に反対、
承諾をいたしかねるのであります。
その二つは、具体的な
予備費の
支出について改善をされている点を認めるにやぶさかではございませんが、なおその手続、その
支出の内容等についてしさいに
検討してみますると、
承諾しがたい点があります。
以下、若干の問題点を
指摘いたしたいと思います。
そもそも国の財政を処理するための基本方針は、憲法、財政法に明示をされておりまするが、国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいてこれを行使するときめました憲法八十三条、国費を
支出し、または国が債務を負担するには国会の議決に基づくことを必要とすると定めてありまする憲法八十五条、
予算は国会に提出してその審議を経なければならないときめている憲法八十六条の規定がその基本だと思います。これらの諸規定は、要するに国費の
支出は事前に国会における審議とその議決を必要としているものだと思います。
こうした基本に対しまして、やむを得ない
予算執行上の運用措置として認められているのが
予備費の制度であります。したがいまして、
予備費の
支出にあたりましては、厳格に憲法に定められた予見しがたい
予算の不足に限定をされるべきだと思います。
予備費の
支出は事後において国会の
承諾を求めるのだからよいではないかという解釈のもとに運用の幅を拡大をしていくごとは、
行政権の行き過ぎでありまして、場合によっては国会審議権を侵すことになると思います。こういう
考え方から、提案をされておりまする問題を見ますると、たいへん問題があると思います。したがいまして、国会におきましても、この
予備費と決算につきましては明らかに異なった扱いをいたしております。国会において政策
論議が十分に行なわれて、その結論としての
予算の執行経過を審議する決算と、国会において全く審議を経ない単なる行
政府の判断のみによって
支出をされた
予備費とは、おのずから審議のやり方も憲法上においても国会法上においても明らかに異なる区別がされております。すなわち
予備費の審議は、両院それぞれに提出される決算と異なりまして、
予算と同様国会の議決が必要とされている案件であり、かつ
予算と同様に衆議院の先議案件として取り扱いをされているわけであります。国会における審議の場所がたまたま決算
委員会という場所でありまして、そのときの決算と同時に取り扱われていることから、とかく
予備費の
使用についても安易に扱われていることは、単に
政府に自戒を求めるだけで労しに、議決
機関の院としても今後再考を要する問題点ではなかろうかと思います。
私ども社会党は、こうした理解のもとに立ちまして、ただいま上程をされました
予備費の
使用等を
検討いたしますと、その内容、手続において
承諾しがたい点があります。先ほど公明党さんの
質問にも出ておりましたとおり、たとえば
昭和四十六年度
自主流通米等にかかわる
良質米奨励金及び
米品質改良奨励金の
交付に必要な経費として
予備費から八十三億六千二百五十万七千円が
支出されておりまするが、これは
予備費として
支出すべき
性格のものではありません。これは御
承知のとおり、昨年の五月の四十六年度
生産者米価の
決定の際に、
政府と与党によって上積みされたいわゆる
政治加算金二百二十七億円の一部をなすものであります。この加算金は、御
承知のとおり、一昨年の
米価決定におきまして、
政府与党のなれ合いによりまして二百三十八億円が上積みされましたが、それをまた本年度も同様に行なっているのであります。
生産者米価を値上げすることに対して決して反対をするものではございませんけれども、
米価は御
承知のとおり
国民生活に重大な影響がありますし、また農民所得、農業に対して重大な影響を持つ政治上の大きな問題点でもあります。このような政策あるいは問題点を残す
米価というものが、単なる
政府与党の折衝のみにおいてなれ合いで、国会審議を無視して、あたかも
予備費は隠し財源だというような
考え方に立って
予備費で
支出することは、許されてはならないと思います。
また、原爆被爆者医療費に対しまして
予備費の
支出がなされておりまするが、これは医療費の不足約二億六千万円を補うために、被爆者手当
交付金その他の経費から流用をいたし、なお流用をしても不足するということで、二千九百十万八千円を
予備費から
支出を行なっているものでありまするが、ところがこの経過をしさいに見ますると、被爆者手当
交付金は約十億円であります。この中でこの医療費に流用をいたしましたのが一億五百万円、なお流用後において一億二百万円が不用額として
予算返上をされております。実質的には二億円の不用であります。なぜこの
関係を言うかといいますと、この
予算の
予備費の
使用は、年度末、三月においてすべて行なわれているわけであります。本来厳格に
予備費を考えていくならば、運用というものに責任を持って考えるとするならば、被爆者手当の流用のみでこの医療費の赤字は補てんができるはずであります。まさに
予備費使用の安易な運用を激化させている一面だと思います。
なお、佐藤総理の米国訪問に対する
支出、あるいは対米繊維の自主輸出規制に対する
支出などなども、私
たちの認めるところではありませんけれども、詳細は省略をいたしたいと思います。
以上の
理由と具体的な事実に基づきまして、私ども
日本社会党は、提案をされました本案件に対しましては、
承諾しがたいという意思を
最後に重ねて表明をいたしたいと思います。
以上です。