○廣瀬国務大臣 私どもの提唱いたしておりますいわゆる庶民金融、正確に申しますと、郵便貯金の預金者貸し付けの問題でございますが、これにつきましては、ただいまもおことばをいただきましたように野党の各党におかれましても大いに賛意を表され、また、ほとんどすべての党で、やるべきだという御決議を賜わりまして、私どもを激励くださっております。こういう御理解に対しましては、まずもって心からお礼を申し上げる次第でございます。予算
委員会あるいは逓信
委員会、またきょうは決算
委員会におきましてもそのようなおことばをちょうだいいたしまして、ほんとうに勇気が出てまいっておるような次第でございます。
この庶民金融と私ども申しております内容につきましては、先生もうすでに御
指摘のところでございますから、あえて
説明の必要はないかと思いますが、郵便貯金の預金者が生活上不時の入費があったというような場合に郵便貯金を引き出す、これは当然できることでございますけれども、郵便貯金は、その性質上、郵便貯金の大宗をなしますものは定額貯金というわけでございますが、こういうような貯金は、預けておきます期間が長くなれば長くなるだけ預けた人に有利な利回りになるわけで、郵便貯金の引き出しをやめなさいという郵便貯金の引き出し防止法といいますか、あるいはそのかわりに個人貸し付けをいたしますという立てかえでございますが、そういうような趣旨のものであるわけでございまして、大げさに融資だとか金融だとかいうような性質ではない、そういう産業に結びついた金融ではございませんで、ほんとうに生活を御救済する、生活の足しにしていただきたいというための貸し出し制度を創設したいというわけでございまして、ただいまお話しのように、簡易保険におきましてはもう五十年前から個人貸し付けの道を開いております。簡易保険と並んで郵便局でやっております郵便貯金で、簡易保険がそういうことをやっていて郵便貯金が許されないということはないと私は思うのでございます。こういうことももちろん考慮に入れておりますし、また諸外国の例をとりましても、郵便貯金をやっております国は大
部分の国が貸し出しもやっております。それから営利を離れて公共的に貯蓄銀行というものが外国にはございます。そういう公共的な貯蓄銀行におきましても、大
部分の貯蓄銀行が貯蓄とあわせて貸し出しもやっておるわけでございまして、そういう外国の例もございますし、また御承知のように国会におきましても、もうすでに四回も、郵便局においては庶民金融をなすべきだやるべきだということを、参議院において一回、衆議院においては三回も御決議をいただいておりますことにも私ども大いに激励を感じておりまして、ぜひやりたいと思っておるわけでございますが、ただいまどういう段階になっておるかと申しますと、大蔵省が反対いたしております理由は、第一に、これは公の場で、予算
委員会で大蔵大臣が答弁いたしまして、それを私またさらに反駁と申しますか、そういうことでございませんよということをやんわりまた
あとで答弁いたしたのでございますが、郵便貯金というものは預金制度である、貸し出しをやるということは制度の非常に大きな変革である、こういうふうにおっしゃるわけでございますけれども、もともと郵便貯金というものは預金者の福祉のためにある制度でございまして、したがって、郵便貯金法にも預金者の福祉を大いに考えなければならないというようにうたっておるわけでございます。したがって、金融だということになりますと制度の変革だということになるかもしれませんけれども、先刻申しましたように、預金者に、預金を引き出しては損になりますよ、あなたの福祉のためには別にお立てかえしますから、金をお使いなさい、という意味に解釈いたしますれば、預金者の福祉につながっておるわけでございまして、これは郵便貯金制度の本来的な使命ではないかというようなことすら考えるわけでございます。これは大蔵がかってに金融制度を創設するというように考えれば考えても差しつかえないと私どもは思うのでありまして、こういう制度は神さまのつくった制度ではございません。人間のつくった制度でございますから、必要なときには変革することが必要ではないか。たとえば、福祉政策が強調されております時代でありますから、こういうときにこそ制度の変革をやるべきではないか。もともと私どもは金融制度だとは思っておりません。預金者の福祉事業だと思っておりますけれども、制度の変革を考えましても、私はこういうときにこそ制度の変革をやるべきではないかと思っております。
それから、大蔵省のもう一つの言う分は、財投に影響がある、郵便貯金は財投の非常に重要な原資を出しておるではないか。財投に影響があると申しますけれども、先刻申し上げましたように、もともとこの立てかえをしなければ、貸し出しをしなければ、預金者は郵便貯金を引き出すわけでございますから、それで財投の金が減ってくるわけであります。減ってくるのを別に貸し出しの方法でカバーしようというわけでございますから、財投には全然
関係ない。多少
関係がございましても、二兆円も大体郵政省は大蔵省に納めておりますわけでございますから、その一分、二百億円、五分ということになれば一千億円。二百億円や一千億円を貸し出しましても、二百億円となれば九九%は従来のとおり財投にいきます、一千億円ならば九五%は財投に入るわけでございますから、財投にはほとんど
関係がない。それと別に、それよりもさらに根本的な問題は、貯金の引き出しを防止いたしまして、立てかえをするわけでございますから、これをやらなければ貯金の引き出しがあるわけでございまして、それで財投が減るということになるわけでございますから、そういう意味から申しましても、これは第一義的な考え方でございますが、財投には
関係ない、かように考えております。
もう一つ大蔵省が言いますことは、銀行業者が反対する、民間の企業に影響を与えるというように、ただいま先生おっしゃったことばのうちにもあったかと思いますが、そういうように大蔵省は言うのでございますけれども、これは銀行業者が庶民のことをいままで考えていなかったことが悪いのでございまして、五万、二十万、三十万という金は、いままでそういう庶民金融というのは銀行は全然やっておりませんわけでございます。大きな銀行ばかりでなく、信用金庫あたりもそういう庶民金融というのをやっていない。産業に
関係のある資金であればやりますけれども、生活資金というのは全然考えていないのです。何か不動産を担保に持ってこいとか、有力な保証人を立てなさいとかいって、庶民金融をしない。まさに銀行業者もブランクであったと私は思いますが、郵政省がこういうことを提唱するようになりまして庶民ローンということを言い出しておりますけれども、それだけでも大きな効果があったと思います。私どもは、銀行業者がやらないそのブランクを庶民金融で埋めたいというわけでございまして、決して民間の圧迫にはなっていない、民間の銀行業者の圧迫になっていない、こういうふうに考えております。
ただ心配なのは農協
関係でございますが、農協
関係は御承知のようにいま猛烈に反対しておりますけれども、私はせんだって連休を利用いたしまして郷里に帰りまして、私の選挙区はことごとく農民でございます、全部が農民でございますが、その農民に一々当たってみましたところが、いや、われわれとしては郵便局が預金者に貸し出しを始めるということは非常に喜んでおる、大歓迎でございます、われわれとしましては農協からも借りられ、それから郵便局からも借りられるということになれば、非常にしあわせが増進するわけだから、われわれとしては非常に喜んでおる。私は五十人くらいに当たりましたが、五十人ことごとく、一人だって反対がございませんでした。ことは私どもの
説明によったのかもしれませんけれども、農協の立場も十分
説明したのでございますけれども、一人の反対者もなく、ぜひやってくれという激励のことばを農民からいただいたわけでございまして、農協の中でも信用業務をやっていらっしゃる役員の方々はかなり刺激になっているかと思いますけれども、その刺激によってまた新しい道を開拓するというような方法もないではないと私は考えておりますわけでございます。そうして、農協に集まる金は大
部分が農産物を売った金を農民が預け、そうして農機具を買うとか農薬を買うとか、そういう農業
生産のための融資は農協から受けるというのがたてまえではないかと思うのであります。生活上の資金につきましては郵便局を御利用くださってもまことにけっこうだと思うのでございまして、両々相まって農民の福祉を増進していくことが肝要ではないか、このように考えております。でございますから、大蔵省の反対あるいは農協の反対はあえて私どもといたしましては当たらないような感がいたすわけでございます、でございますから、どんどん推進してまいりたいと思っております。ただ政府内におきまして——理想的に申しますと、今度の国会に政府提案で出したいという熱意を持っております。まだ現在も捨てておらないわけでございますけれども、大蔵省が必ずしも私とは同じ意見でないことは先刻申したとおりでございます。したがって熱意がないように推察されます。この間、大蔵大臣が参議院の大蔵
委員会で今度の国会では制定はむずかしいというような御答弁をなさったようなことが記事に載りましたので、さっそく私はそれに基づきまして大蔵大臣に抗議を申し込んだわけでございます。いや、そうはっきり言ってない、その証拠には新聞に載ったのは一つか二つではないか、全部の新聞に載っていないじゃないかというように御
指摘になりましたけれども、しかしいろいろ推測いたしますと、今度の国会に提案することはかなり困難であるというように私は見ております。もう少し極端なことを言いたいのですけれども、国会の場でございますから、あまりはっきりしたことは大蔵省に対して言えないわけでございます。それから先のことは御推察をいただきたいと思っておりますけれども、ただ幸いに各党で議員提案の動きがあるようでございまして、私はそちらにも非常に大きな期待を持っておりますわけでございまして、私といたしましては、この制度ができればいいわけでございますから、郵政省がつくったとか郵政大臣であったときにできたとかいうような、私は名前も何もちっともほしくございません、実を取ればいいわけでございますから、何とか皆さん方の御協力でぜひものにしていただきたい、こういうようにこいねがっておるわけでございます。