○三宅
委員 あなたは話を横へすりかえる名手でありまして、今度の
事件なども、
言論に関する、それから
国家機密に関する、
国益に関する大きな、高い次元の問題をあっちのほうへ持っていっちゃって、どうもほんとうにすりかえるくせがあって、そういうことがじょうずだから七年半も政権を続けたのか知らぬけれども、私はどうもあまり尊敬しませんよ、そういう
態度は。
そこで私は、だからして、一体今度の問題で一番大きなもう一つの問題点は何であるかというと、
政府がうそをついたということですよ。(「ついてないよ」と呼ぶ者あり)ついてない、ついてないと言うけれども、あなたがあやまられて進退についての
表現までされましたのは、うそをついたということだ。そんなことをあなた、うそをつかぬなんと言って強弁してはいけません。少なくとも、
福田さんまでが言われたのかどうか知らぬけれども、
局長などは、そん事実ありません、電報打った事実もありません、電話で……。うそじゃないか、そんなことは明らかに。そういうことについてごまかしてはいけません。あれはあなた、
福田君が言われたとおり、あのときに、確かに交渉はあるけれども言えない、それから相手のあることだからして、四百万ドルの問題でも、あなた方の
立場から見ればけしからぬと言われるかもしらぬけれども、これだということでいかれまするなら、反対、賛成は別にして、その
態度ならよろしい。いやしくも国会に対してうそを言い、主権者たる
国民に対してうそを言う。今度の罪なんというものは、うそを言う罪というものは、私は西山君を引っぱったり
蓮見さんを引っぱったりすることよりはもっと大きな罪であって、
佐藤総理大臣をひとつ
逮捕しなければならぬけれども、
法律がない、その
法律が。
逮捕しない。そういう
法律がないのはどういう
意味であるかと申しまするならば、それは行政的な次元よりも国
会議員の
立場というものは、
政府の
立場というものはもっと高い次元だということであります。
イギリスにおきまして、何と申しましたか、陸軍大臣がスキャンダルを起こした。それが問題になりましたときに、男だからして——男だからといっていいわけじゃないけれども、スキャンダルが起きたこと自体は、それはそれとしてひとつ反省されればよろしいけれども、うそを言ったことはけしからぬといってとうとう首にしたじゃございませんか。イギリスの国会の伝統というものはそれですよ。
日本の
憲法においても、うそを言った、明らかにうそを言った、取り消してそれでよろしいというものではありません。
憲法において、うそを言って国に不利を与えても引っぱられたりいろいろすることがないのはどういうことかといえば、イギリスに始まった議会制
民主主義の伝統のとおりに、それはもっと高い次元において政治的
責任をとるということであります。日本では、どうも言い間違いでした、前言を取り消します、それでいっておりますけれども、イギリスの国会の伝統は、私もそう詳しいことは知りませんけれども、ともかくイギリスの国会の伝統は、うそを言ったらそれはもう承知をしない。そうして一ぺん言ったことは取り消させない。
言論に対して
責任を持ち、高い政治家としての進退については、その点では
責任を持つという
意味におきましても、私は、確かにあなたも
責任を持たれましたからこの間ああいう発言をされましたので、いまさら、あしたやめるのか、いつやめるなんというその質問をここで繰り返したいとは考えません。しかし、根本的な問題について、私はあなたに、もうあなたもやめられるわけになるからして、お互いに
政府対野党として対決する機会があるいはこれが最後かもしらぬ、私とあなたとの関係において。それで私は、友人としてあなたに一つ申し上げたいのであります。
それで、今度のうそつき
事件につきましても一、
政府のうそつき
事件についても、
福田君についても処分するとかなんとか言っておられるけれども、処分されるのはあなたですよ。それでトカゲのしっぽだけ切って、そしてあなただけ残るという行き方、もう内閣それ自体が
責任を負われるべきときだと思うのであります。しっぽ切りには私は反対だ。それは
福田君の
責任も重大だけれども、しっぽ切って自分だけが助かろう、そんなことを考えておられるので、この間の意思表示だから、それはそれでわかりますけれども、そこでこの間からの議論を見ておりましても、私はやはりこの問題一つについても非常な対決、食い違いがある。結局は国氏に判断してもらわなければなりませんから、ほんとうなら解散すべきですよ。しかし、いまあなたは解散するということを考えられたって、閣僚が判を押しやしない。あなたが解散してやったら、あなたの
総理で解散なんていったら、それこそべちゃ負けに負けると思いまするからして、それは承知なんかしませんよ。吉田さんの最後のときと同じことで、承知しません。したがって内閣総辞職をやられるべきであって、私は早いほうがいいと思いますけれども、あるいはあなたとすれば、予算が成立した機会と考えておられるかもしらない。それで、内閣総辞職のやり方について私はあなたに承りたいのであります。
その前に一つ、
二つ、これも私はあなたに伺っておかなければならぬ、認識を伺っておかなければならぬことがあります。あなたはいま、日本の現状についてどの程度の危機感を持っておられますか。いまの日本の現状というものは、日本の国に三つの大きな危機があった。明治の維新において、中国まで領土化した外国の侵略に対しまして、西欧帝国主義の侵略に対して、明治維新が日本の第一の危機であります。第二の危機は、戦争に負けた戦争のときであります。そうして私は、それに匹敵する第三の危機がいま来ておると思うのだが、あなたはそれだけの危機感を持っておられるかどうかということが、私は実は心配しているのであります。どういうことかと申しますというと、明治維新の改革をやって明治
政府ができまして、われわれの先輩大いに努力いたしましたけれども、日本人の悪いくせというものは、行き過ぎちまうということであります。節度が足らないということが、私は日本人の欠点じゃないかと思うのです。だからして、とうとう世界じゅうを相手に、富国強兵といっておって軍備で興った日本が軍備で滅びたのが第二次大戦、この間の大戦のときの経過であります。私はいまの危機は何かと言えば、経済で興った日本が経済で滅びる危険性があるということでございます。あなたはしばしば、GNPがどこまでいったとかなんとか言っておられるけれども国内自体についてだって、過密過疎の問題から、物価から、公害から住宅難から、交通事故から、私はこれだけだってほんとうに危機だと思いますけれども、もっと心配なのは、国際的に孤立化しちゃったということでございます。いまのような根性でやって、この間私は、実は
沖繩の尖閣列島の問題を見たいので、休みを利用いたしまして個人的に行ってきました。それで八重山群島へ入りますというと、驚いたのは、日本の不動産業者や会社が金を持っていって、坪百円ぐらいでもってあの土地をだあっと買い占めちゃっている。ああいう状態で国土を、先祖から受けて子孫に残さなければならない大事な国土をめちゃめちゃに、営利主義のためにしてしまうという姿勢で外国へ出ておりますれば、国際的にも孤立することは明らかですよ。そうして、もう一ぺん排日運動が方々に起きたときに軍備を使うという姿勢をとれば、東条英機の亡霊がまた出てくることは明らかです。私はその
意味において非常な危機感を抱いておるのでありますが、おそらくあなたも、そういう点についての憂慮は持っておられると思うのです。思うのですが、そういう状態が来た一番大きな原因が、どこにあったかということを私はあなたに聞きたい。私の見るところでは、私のほうにも
責任がありますけれども、力の足らぬ点がありますけれども、一番大きな原因は、二十数年にわたって自民党の一党政権が続いたということだと思う。その大きな累積したひずみが今日の日本の危機を来たらしておることと思うのでありまして、かりに
福田君がなられるか、田中君か、だれがなるか知らぬけれども、かりに次の総裁が出てきましてやったって、いまの姿勢を少しぐらいことばだけ直したって、あなたが内閣をとられたときだって、人間尊重ということは言われたでしょう、
社会開発とか言われたでしょう、言われたけれども、いわゆる大きな資本の営利主義というものに巻き込まれてしまって、できなかったじゃありませんか。その
意味におきまして、私は、ここで政権をかえなければならぬ時期が来ておると思うのであります。その政権をかえるという
意味におきましても、私は、あなたにひとつ大きな英断と決断を持ってもらいたいことは、二十一年続いた政権のたらい回しをまたやって、党内で権力闘争などをやるようなばかなことはやめて、あなたは一番早い時期に総辞職をされる、そうして自民党総裁の地位は残っておるのだから、あなたの先輩の吉田茂氏が、百四十三人というほんとうにいまの野党の持っておるよりも少なかった、比較第一党にしかならなかった
社会党に投票されて、片山内閣をつくられて、ともかくこういう慣例をつくろうとされましたことが、次に吉田さんの
政府が非常に長く続きました一つの原因なんですよ。今度はあなたが、もうここで、またあとの内閣を自民党で続かせるということではなくして、選挙管理内閣をわれわれにつくらせる。やりなさい。総辞職をして、すぐ
総理大臣は選ばなければならない。そのときに総裁として長い目で見たら、ほんとうに大局に立って考えたならば、総裁としてはここでひとつかえなければならない。野党連合内閣をつくらせて選挙管理内閣をつくらせる。それは、少なくともあなたの内閣よりは、野党の内閣でも
社会保障にもっと熱心になり、公害対策にもっと熱心になり、軍備の増強などは押えて、諸外国の軍国主義化などの疑問に対して大きく国際的にも寄与するということは、もうだれが見たって明らかなんですよ。それはあなたが、先輩の古田さんが考えたと同じように、特に人間は功をなせば去るということわざがあります。そうして大悟一番した人が、欲のない形において、一体日本の
民主主義をどう進めるかということをほんとうに考えられまするならば、私は、その点について野党に選挙管理内閣をつくらせることが適当だと思う。その上で選挙をやって、それでも野党の未成熟によって自民党がまたよけいとられますならば、それでほんとうに安定します。そうでなしに、たらい回しをして、それで金力を使ったりそういう
立場でもって選挙をやられていったら、日本の国はしまいに、ちょうどあぶないあぶないと言いながら大東亜戦争に入って滅亡したと同じように、経済のいわゆる高度成長の政策の行き過ぎのために、経済で興った日本が経済で滅びる危険性があると思うのであります。この点についてあなたどう考えておられるか、ひとつ——まあ答弁ができぬかもしれぬけれども、簡単に……。