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1972-06-02 第68回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月二日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 正示啓次郎君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 松本 七郎君 理事 西中  清君    理事 曽祢  益君       石井  一君    北澤 直吉君       小坂徳三郎君    黒田 寿男君       堂森 芳夫君    中川 嘉美君       渡部 一郎君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 高見 三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務政務次官  大西 正男君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省中近東ア         フリカ局長   魚本藤吉郎君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    穂崎  巧君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         海上保安庁次長 須賀貞之助君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   遠藤 又男君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青木正久君。
  3. 青木正久

    青木委員 五月二十四日の当委員会におきまして楢崎委員が取り上げた問題でございますけれども、朝鮮戦争のときに元山米軍敵前上陸をするとき日本海上保安隊掃海をやった。こういうことを楢崎委員が取り上げたわけでございます。私もこの問題を調べてみましたところ、どうも事実のように思えるわけでございますけれども、その後の調査の結果を防衛庁のほうからお知らせ願いたいと思います。
  4. 久保卓也

    久保政府委員 この前の御質問の中で大久保長官に関する件は海上保安庁のほうから御報告願いますが、掃海の事実関係について御報告いたしますると、朝鮮動乱が勃発しました際に、北鮮軍が、南鮮軍協力する国連軍作戦及び海上輸送を阻止する目的で、朝鮮半島の主要な港湾に各種機雷を多数敷設いたしております。  そこで昭和二十五年十月二日、米極東海軍司令官から、朝鮮掃海作業に関する協力日本側——指令を受けた者は海上保安庁長官でありますが、日本側要請をしてまいりました。当時の記録を調べてみますると、指令文書そのものは十月四日になっておりまするけれども、事実上の指令はおそらく十月二日であったろうというふうに思われます。そこで当時、日本政府といたしましては、連合軍による占領下にあったことでもあり、直ちに朝鮮掃海協力要請に応じまして、十月二日、海上保安庁長官は、特別掃海隊編成及び下関集結命令を発しております。編成その他わかっておりますが、一応省略をいたします。  そしてこの関係の事実は、簡単ではありまするが、十月九日の東京新聞、十月二十二日の毎日新聞にニュースが出ております。  そして二十五年十月六日、試航船一隻と掃海船二十一隻、巡視船四隻、計二十六隻をもって特別掃海隊編成をしまして、田村航路啓開本部長を総指揮官としまして下関集結をいたしております。  十月六日、同じ日でありますが、米極東海軍司令官から運輸省あてに、掃海船等の使用について次のような指令が出ております。連合軍最高司令官は、日本掃海船等日本政府朝鮮海域において使用することを認可する。したがって米極東海軍司令部によって将来出される指令に応ずるため、日本政府は、下関集結しているこれらの船舶に必要な命令を発することを指令する。朝鮮海域におけるこれらの任務に対する船舶の標識は、国際信号E旗を掲げること。さらに、これらの船舶に所属する人は、本任務中二倍の給与を受けるという指令が出されております。  日本特別掃海隊は、米第七艦隊の指揮下に四つの掃海隊試航船とに区分されまして、昭和二十五年十月十日より同年十二月六日まで約二カ月間、延べ掃海船四十三隻、試航船一隻、巡視船十隻と、延べ約千三百人の人員によって、元山、群山、仁川、海州、鎮南浦の掃海に従事をし、同年十二月十五日、特別掃海隊編成を解いております。  この掃海によりまして、約三百キロメートルの水路と約六百平方キロメートルにのぼる泊地を啓開し、二十七個の機雷を処分しました。しかしながらこの陰には、一隻の掃海船が触雷沈没、一隻は座礁沈没殉職者一名、負傷者八名を出したものであります。  当時の掃海に関しましては、非常に日本側でよくやったということで、米司令官から、ウエルダンという賞状といいますか、おほめのことば海上保安庁長官あてに出されておるということのようであります。  なお詳細な、たとえば場所別の船の隻数、参加人員掃海期間あるいは掃海区域等わかっておりますが、数字でありますので、一応以上で終わります。
  5. 青木正久

    青木委員 いまの御説明をお聞きしますと、大体楢崎議員が指摘した点がほんとうであるようなことでございますけれども、しかしながらこれは占領中のことでございまして、海外派兵とかあるいは憲法の問題といったような問題は私はないと思うわけであります。この前の委員会楢崎さんは、本件を知っておるのは元総理大臣吉田さん、大久保長官、それから三田という警備救難監、この三人だ、こういう御発言でございましたけれども、しかしながら私が調査したところによりますと、この問題はすでに過去少なくとも二回国会において取り上げられておる。まだこのほかにもあるのかもしれませんけれども、二回は少なくとも取り上げられておるわけであります。しかも約二十年前に取り上げられまして、一応議論をし尽くしております。結論が出たとは申し上げませんけれども、一応おさまっている問題でございます。  第一回は、昭和二十七年の十二月四日の衆議院予算委員会、この会議録にすでに載っておりまして、わが党の中曽根委員質問したことに対しまして、岡崎国務大臣答弁をしておるわけです。  さらに、第二回は、昭和二十九年三月二十七日の衆議院外務委員会会議録に出ております。このときは穂積委員穂積七郎委員だと思いますけれども、穂積さんが質問されまして、そして下田政府委員条約局長だろうと思います、これが答弁をされております。この会議録を見ましても、たとえば穂積委員は、「元山上陸作戦のときに掃海作業に勤務したということを一々ここでとらわれて言っておるわけじゃございません」こういう発言もしておりますし、また一方、下田政府委員答弁によりますと、「当時占領下にありました海上保安庁に対しまして、連合軍司令部からサービスの提供として、これは個人に対してではなくて、日本政府機関である海上保安庁に対して機雷清掃サービスを命ぜられたわけであります。」  こういう問答もあるわけでございます。  それを楢崎さん、この前、あたかも新しいことのように取り上げられたわけでございまして、その理由がよくわかりませんけれども、週刊現代にこの問題が出ました。さらに、最近出ました本で、「よみがえる日本海軍」という本がございます。これはジェームズ・E・アワーという人の書いた、時事通信社から刊行された本でございます。前回楢崎さんが質問された翌日に発行された本でございます。これにもこの問題が詳しく載っております。そういうために取り上げたのだと思いますけれども、私は、楢崎さんがこの前の外務委員会で長々と事実を読み上げました、そういうことにつきまして、昭和四十三年の戦略見積もりのときもそうでございますが、古い種と言ってはたいへん失礼でございますけれども、古いやつを順次火をつけられては、国民の中に迷惑をする場合もあるのではないか、この火を消すほうもたいへんでございまして、こういうことを考えましてきょう御質問をしているわけでございます。しかしながら、この際やはり明確にしておくほうがいいと思いますので、御質問をいたしたいと思います。  海上保安庁が、ほかの国の要請に基づいて、ほかの国の領海内の掃海作業、これに現在従事できるかどうか。たとえばベトナム封鎖しておりますところの機雷を、いまの保安庁が掃海作業をできるかどうか、いまの憲法のもとでできるかどうか、この点についてだけ、明確にしておく必要があると思いますので、御質問を申し上げます。
  6. 須賀貞之助

    須賀政府委員 お答えいたします。  御承知のように、事実問題でございますが、掃海に関する件につきましては、終戦後、第二復員省掃海部というところでやっておったわけでございますが、二十三年に運輸省掃海官船部というところに移りまして、二十三年五月、海上保安庁が発足と同時に、海上保安庁掃海課、それから組織が変わりまして二十五年六月、海上保安庁航路啓開部というものになったわけでございます。その後、二十七年八月に、現在の自衛隊のほうに組織人員ともに移っておるわけでございます。  したがいまして、私のほうの海上保安庁掃海に関与したのは、先ほどのまさに朝鮮掃海のときにあたるわけですが、これをはさんで約四年間私のほうでやっておったわけでございまして、現在におきましては、もちろん、掃海艇というものも一隻もございませんし、また掃海の訓練もいたしておりません。  なお、いま青木先生からの御質問でございますが、海上保安庁他国要請に応じてわが国領海外海域における掃海作業に従事することは、憲法上または海上保安庁法上許されるかどうかという御質問かと思いますが、掃海作業他国戦争に軍事的に協力するために行なわれるものであれば、わが国機関がそのような行為を行なうことは、憲法の許容するところでないことは明らかであるというふうに考えるわけでございます。なおお尋ねの、掃海作業要請国軍事的活動協力するために行なわれるものでなければ、憲法上は差しつかえない。しかし海上保安庁任務海上保安庁法で「海上における安全の確保に関する事務」とのみ定められておりまして、別段地域的な限界等は定めておられませんが、当然わが国の主権の及ぶ領海における安全の確保と、領海外海域においては日本船舶及び国民の安全の確保に限られることは明らかでありますから、わが国領海外海域において日本船舶、またわが国民の安全確保に必要な限度を越えて、当該海域の一般的な安全確保をはかるための掃海作業を行なうことは、海上保安庁法の認めるところではないというふうに考えておるわけでございます。
  7. 青木正久

    青木委員 終わります。
  8. 櫻内義雄

  9. 石井一

    石井(一)委員 外務大臣がまだお見えでないようでございますので、久保防衛局長がお見えのようでございますから、先般来新聞報道でも問題になっております、いわゆる久保論文に関連いたしまして伺いたい。  確かに極東情勢は非常に大きな変化を遂げておる今日、国防体制について再検討を加えなければいけないという示唆に富む提案である。私たち与党としても、こういう安全保障の問題について、少し積極的にこの機会に考え直さなければいかぬというふうに考えておったわけでございます。そういう面でひとつ久保理論をかりに推進いたしますとすると、わが国自衛力限界といいますか、そういうふうなものをどういうところに置くのか。少なくともアメリカのかさの下であるとか、アメリカとの安保体制というものに依存した形からもう少し脱却して、ある意味では自主的な立場に立たなければいかぬということにもうかがえるわけでございますけれども、その点について、わが国自衛力限界と申しますか、そのターゲットというものに対してどういう見解を持っておられるのか、この点からお伺いしておきます。
  10. 久保卓也

    久保政府委員 従来、われわれの考え方といたしましては、自衛力はもちろん国の自衛のための最小限の実力という抽象的な表現をいたしております。そういたしますと、自衛という観点に立ちますれば、外国からの脅威に対してわが国を守る、そのための自衛ということでありますから、外国脅威程度いかんによって自衛限度がきめられる。ところが外国脅威というものは質的にも量的にも将来変化し得る。したがいまして、われわれの持つべき自衛力限度もこれまた変化する、いうならば相対的なものである、こういうような説明をしております。したがいまして、この点については観念的には変わりません。そこで、そういった変わり得るかもしれない自衛力の相対的な限界というものから変えて、今日の日本の置かれている情勢というものはどういうものであるか、それに応じて、いうならば平時において持つべき自衛力というものはどうであるか、そういうふうに考えるべきではなかろうか。いま戦争を身近に考えるならば、これはやはり日本を守り得る自衛力というものを考えなければいけませんし、それはそれなりに計算はできます。しかしながら、いまは日本が置かれている状況というものはそういうものではなくて、やはり平和の見通しが相当長期にわたって続き得る。そういう時期における防衛力というものはどういうものであるべきかということを課題としてわれわれは考えています。いずれ四次防がきめられる過程の中で、少し具体的なアウトラインというものを描いてみたいというふうに考えておりますが、もうしばらくお待ちいただけばそういったようなものをある程度具体的な形でお示しできるのではないかというふうに思っております。
  11. 石井一

    石井(一)委員 基本的な考え方はわかりましたけれども、もう少し具体的に、たとえば現在進行しておる三次防、四次防というふうな体制を相当強化しなければ、あなたのおっしゃっておる有事駐留体制というものに入れないのか、あるいは現在の客観情勢から推察すると、現在の体制でもう自衛力としてはわが国の平和と安全を守るに足るという情勢なのか、この点はいかがですか。
  12. 久保卓也

    久保政府委員 米側日本とでは、日米安保体制が一応基本的にはあるわけで、その範囲内におきましては、たとえば核抑止力というものは米国に依存いたしますし、それからまた、もし戦略的な攻撃力というものが必要であれば、これまた日本憲法上は持つことは不適当である、やはり米側に依存しなければならない。そこで、日本の国土を守るに足る必要な範囲のもの、つまり専守防衛の範囲というものはわがほうが持つということでありますが、そういった観点に立ちますと、現在の三次防あるいは四次防で想定するものではまだ少しもの足りない。この点は将来の、先ほど申し上げた相対的な最小限自衛力という観点を別にいたしましても、平時において持つべき防衛力というものは、いま少し基盤的なものとして整備すべき必要があろう。私がいま検討しておりますところでは、四次防から五次防ぐらいで大体のかっこうはつくのではなかろうか、その場合に、これは前の中曽根長官が前国会でも申されたことでありますけれども、陸の十八万、空の約一千機というものはおそらく変わりますまい。海上自衛隊についてどの程度の艦艇を保有すべきものであるか、平時において一応当分の間われわれが保有の目標とすべきものはどの程度であるか、この点がなかなかむずかしくて、いま検討している最中であります。
  13. 石井一

    石井(一)委員 先日来から問題になりました、たとえばB52に関連するいわゆる事前協議制度不備と申しますか、不備ということばはどうかわかりませんけれども、あるいは沖繩返還に伴って基地の縮小問題その他、非常に事態が変遷してきたために、現実の問題として安保をやはり事務的な立場からどうしても再検討しなければいかぬ、そういう事情というものが最近持ち上がってきておるというふうにお感じになるのかどうか、安保条約の再検討という観点から、この点について御意見を伺いたいと思います。
  14. 久保卓也

    久保政府委員 B52でありますとか、本土から部隊がベトナムのほうに移動する問題、あるいは給油機問題等につきまして、これが発端となって再検討するということでは必ずしもございません。この点については安保条約の解釈、運用という問題で、もっぱら外務省の仕事であり、私のほうから云々すべき筋合いではないと思っております。ただ、私が問題といたそうと思ったことは、従来日米安保条約を堅持するというふうに政府は申しておりますけれども、どういう理由であるかということを必ずしも十分に国民説明していなかったのではなかろうかというような問題、そこで、あらためて一九五〇年代もしくは六〇年代につくられました安保条約が、今日においてどういう意義を持つのであるかということを理論的に解明したいという気持ち一つあったこと、それからもう一つは、ことしの二月一日でありますけれども、全米に向けましてテレビ放送がなされた。その内容というのが、米側から日米安保条約を廃棄すべきではないかというのがテーマでありました。それについて賛成論反対論がそれぞれかわされたわけでありますが、そういった動きがある。以前ある革新党の事務局におられた人が学者になっておられますが、そういう人の意見を聞きますと、この米側から廃棄すべきであるという意見というものは相当強いというような御意見もあります。それが確かかどうかは別といたしまして、そういったような問題がある。  それから防衛問題につきましては、常にアメリカがある世界的な戦略を出しますと、われわれはいつもそれをあと追いして、何かそれがもうそのときの憲法であるかのような考え方日本学者評論家、われわれも持ってしまうというようなことで、たとえばいまはニクソン・ドクトリンあるいはレアードのトータル・フォース・コンセプトといったようなものが金科玉条であってそれが変わらない憲法のようなものであるという印象を常に受けがちである。しかしながらアメリカの政策というものはやはりそのときどきによって大きく変化するものであるということを考えますと、一九七〇年代においてわれわれは先を見通しながらいろいろな問題をあらかじめ考えておく必要があるんじゃないか。いま私は安保条約をどうこうしようということを提案しておるのではありませんが、あらかじめいろいろなケースを検討してわれわれとしては施策を練っておく必要があるんじゃないか、そういう意味提案をしてみたわけであります。
  15. 石井一

    石井(一)委員 それではその問題それぐらいにいたしまして、ここ世界の話題の一つの焦点になっておりますいわゆるアラブゲリラの問題でございますけれども、日本人としてはまことに遺憾ということばに尽きるわけでございまして、新聞報道などでは政府はあらゆる処置をとられてその後の国際関係の悪化ということのないように万全の措置をとられておるようでありますけれども、福永特使を派遣された、こういうことでありますが、これ以外に今後どういう措置をとっていかれようとしているのか、経過は大体わかっておりますけれども、その面について外務省当局の御答弁をひとついただきたいと思います。
  16. 大西正男

    大西政府委員 いまお話しのように、昨夜福永特使現地へ行かれたわけでありますが、今後外務省としまては、現地のその後の模様などもよく把握しなければなりませんが、被害を受けた方々に対してどういう——法律的あるいは国際法的にはともかくといたしまして、そういう被害を受けられた方々あるいは現地の物的な被害もあるかもわかりません。そういうことに対して何らかの形における日本国並び国民の遺憾の気持ちを形の上であらわす方法を検討して早急にこれを実行したい、こういうふうに考えております。
  17. 石井一

    石井(一)委員 これは日本人の三名の青年のやった行為であるということでありますけれども、やはり世界的に見た場合に日本人全体の責任のようにとられる節がある。われわれとしても大いに道義的な責任を痛感しなければいかぬ問題でございます。したがっていま政務次官お答えになりました物的損害なりあるいは危害を加えられた人々に対する補償というものに対しては万全なことをされるべきである、こういうふうに考えておるわけであります。ただこの問題が発端になって、たとえばすでに国連安保理提訴がなされておるというふうなことで、さらにさらに大きく問題が国際的に拡大をしていく、そういう場合も道義的責任は当然ございますけれども、政府としてはやはり政治的責任を持って対処をされるのか、これは非常にむずかしい問題でありますから慎重に検討されるべきでありますけれども、一体責任限界というものをどういうふうにお考えになるのか、ここから発生するあらゆる問題をすべて政府責任として受けとめられようとするのか、この点はいかがですか。
  18. 大西正男

    大西政府委員 いま安保理提訴されておるというふうな御発言がございましたが、これは外務省のほうで調べましたところによりますと、誤報のようでございます。ですからそういう提訴はされておらないということであると思います。  ただ、国連で一応問題にされておりまして、イスラエルなりアラブなり代表による発言があるわけでございます。その中でイスラエル代表発言では、例のイスラエル総理の事件が発生しました当時の議会における発言をやはり述べておるのでありまして、イスラエル国としてはこの三名の日本人の行動は日本政府、もちろん日本国民代表としては受け取らない、イスラエル日本と従来どおり国交を、友好関係を保っていく覚悟である、こういう趣旨の発言をされておるわけでございます。  そういう状況でありますが、いまお話しの一体どの限度政府としては責任といいますかそれを考えておるかということでございますが、これはいろいろ影響するところが多い問題でありますから、もちろん早急に慎重に考えなければならない問題だと思います。いま卒然としてここにお答え申し上げるわけにまいりませんが、そういうことでございます。
  19. 石井一

    石井(一)委員 道義的責任は十分考えなければいかぬという考え方でございますけれども、同時に個人責任といいますか国家責任といいますか、その限界というものもひとつ十分に国際法的に検討される必要があるのじゃなかろうか。今回の場合、パスポートも偽造されておるようでありますし、それも日本政府責任になると言えばそうかもわかりませんが、このうしろにはかなりの大きな背後関係があるということも徐々に判明しておるところでございますから、私はその辺の無制限の責任をおとりにならなければいけないのだろうかどうか、道義的責任はもちろんであるけれども、という点についてひとつ御検討いただきたい、こう思うわけでございます。この背景には国際的な相当広範なつながりがあるということが徐々に判明しておりますが、平時からたとえばこういう国際的な解放軍左翼グループ活動なり何なりというふうなものは在外公館を通じて外務省情報をずっとキャッチしておられるのかどうか、この点はいかがですか。
  20. 大西正男

    大西政府委員 新聞その他その後の情報によりまして、このいわゆるゲリラレバノン内においていろいろ策動しておったというふうなことが報ぜられておるわけでありますが、この問題につきましてもレバノン内におきましてわが国の出先がかなりフォローしておったようでございますが、まだ十分な詳細なところはわかっておりません。
  21. 石井一

    石井(一)委員 非常に国際的な情勢に影響の強い問題でありますから慎重に対処していただきまして遺憾なきを期していただきたい、こういうことをお願い申しておきます。  久保局長はもうお帰りになったわけですね。それでは、外務大臣はもう来られるようでありますが、この間うちから問題になっております、いわゆる原子力の平和利用といいますか、そういう問題に関連いたしまして、この核兵器の不拡散に関する条約の批准の時期ということが非常に問題になっておるということでございまして、わが国はその当事国になっておりながらまだ批准だけを残しておる、こういうふうなことである。そういうことから、わが国が何か核兵器を持つ世界の第六番目の国になるのじゃないかというふうな疑惑、世界的にそういうふうなものを与えておる、そういうふうなところがあるのじゃないかというふうに私は考えるわけでございますけれども、この批准に対する政府の、外務省内の考え方、あるいはまた外国のそういう疑惑に対してどういう考え方を持っておられるか、この点お答えいただきたいと思います。
  22. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えいたします。  核不拡散条約につきましては、署名以来批准を目標にいたしまして、外務省を中心にいろいろ検討をいたしております。この条約につきましては、先生御承知のとおりいろいろ条約の内容につきまして、特に平和利用に支障はないかどうか、また条約の内容が核兵器保有国と非保有国との関係において不平等ではないか、いろいろそういう観点からの、国内におきまする批判が多々ございます。私どもといたしましては、このような批判を十分にわきまえて、この批判に十分こたえるような国内体制を整えた上で批准をしなければならないというふうに思っております。  核政策につきましては、御承知のとおりわが国は非核の政策をはっきり打ち出しておりますし、そのような点については対外的にも常にそういうものを持たない。現在このNPT条約を批准できない理由はそういうこととは関係なく、国内的に十分納得のいく体制を整えた上で批准をするという観点から、若干時日がたっているということでございます。
  23. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問の申し出がありますから、これを許します。正示啓次郎君。
  24. 正示啓次郎

    ○正示委員 いま条約局長から核不拡散条約についての考え方が出されたのですが、いまわれわれは自民党の中で佐々木義武君を小委員長としまして、この問題と取り組んでおるわけでございます。新しいファクターといいますか、今度のニクソン訪ソに関連しての共同コミュニケ、あれでSALTの問題がああいう形で一つの何といいますか、解決とはいかないまでも端緒といいますか、そこに大きく進んだことは非常にけっこうだったと思うのでありますけれども、やはり米ソがああいう形で、いわゆる戦略兵器の制限というものを一応取りきめますると、どうしてもいわゆる非核保有国に相当圧力が今度は加わってくるのじゃないがということを、政治的な一つの新しいモメントと考えなければならないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。これは条約局長よりはむしろ国連局長あたりが来て、そういう話を聞くべきですが、幸いに大西政務次官おられるから、私の考えだけひとつこの際聞いておいていただいて、まあ党内は批准についてはいろいろな意見が出ておることはすでに御承知のとおりです。私はこの問題について、いま石井委員が言われたように、これは大きな問題でございますから、軽々に判断すべきじゃないと思います。慎重にあらゆる方面のことを考え、その結論を下すべきだと思いますが、そういう情勢一つあるということですね。これは米ソがああいうことに一歩大きく進んだという事態を踏まえて、外務省の中でも研究していただきたい問題ではないか、こういうふうに思うのであります。  それに関連して、もう一つはIRBMというんですか中距離弾道弾ですか、この問題が今度もSALTの米ソの間のあれから抜けておるわけですね。これも久保君おったらよかったのですが、久保君帰られたからけっこうですが、そこでこの問題もわれわれとしては大きく注意をしていく必要があるということを、そういう指摘がなされておるのであります。この間の米ソ共同コミュニケあるいはSALTの制限に関する話し合いの取りきめというふうなことを外務省はあらゆる角度から検討されて、それの日本への影響あるいは中国への影響、日中関係への影響、これを私はしっかりと、アジア局長幸い見えておりますから、ひとつ考えていかなければならぬ。たとえばチュメニの油の問題も、これはアメリカも一枚加わろうという体制は非常にけっこうでありますけれども、これは一体中国にどういうふうにはね返っていくのか、こういう問題、米ソがそこで大きくいろいろ取り上げた問題から、日本への波及、中国への波及、日中関係への波及、これをひとつしっかり分析しなければいかぬと思うんですね。ただ一般の日本の見方は、米ソの間に一つのあれはできたけれども、たいしたことはないんだというふうな判断、あるいはまたベトナムのことはまるでしりが抜けておるんだというふうに言っておりますが、私はむしろベトナムについては大きな前進がなされたんじゃないか。その後のベトナム情勢は、もう非常に御承知のように静かになりました。これは米ソがあそこで大きく取り上げなかった問題がむしろ大きな影響を現実に持ってきておるんじゃないか、こういうふうにも見られると思うのであります。  そこで全般的な問題は、これはひとつまた御検討の上次の機会に伺いますが、少なくともアジア局長がいまおられるから、ニクソン訪ソに伴って米ソ会談のあの結果が、日本、中国、日中関係、そういうものに対してどういうふうに影響したか、またこれから影響を及ぼさんとしておるか、特にベトナム問題、それらについて、アジア局長はそのほうのベテランですから、近く御栄転のうわさも出ておりますが、アジア局長として御答弁をお願いしたいと思います。
  25. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 お答え申し上げます。  米ソ会談につきましては非常に大きな意義を持っておることは、私たちも十分これを踏まえて、目下検討中でございます。  なお御指摘のように、コミュニケとか協定その他合意あるいは意見が併記されたような面に関して裏話がどうなっておるのか、あるいはほんとうに両首脳がどういう話をしたのかということに関しましての情報を目下なお収集中でございますので、断定的なことを申し上げるのにはまだ少し流動的な段階ではないか、かようには考えております。ただ、御指摘の日中関係への影響とかそういうものにつきましては、さらに慎重にこれをあらゆる角度から検討を続けております。  ベトナムの問題につきましては、当初伝えられたところによりますと、アメリカはこのベトナム問題の解決について、非常な意気込みでソ連と話しに行ったようにいわれておりますが、片や、確かにソ連はベトナム問題に大きな関係を持っておりますが、超大国が干渉してくるあるいは頭越しにこういう微妙な問題を解決するということに関しましては、ベトナム人の非常な反発もあるというところで、ソ連が介入することはおのずからそこに限度があることは当然でございまして、ただその辺の心証といいますか、米ソ間における腹のさぐり合いというものは相当微妙に行なわれたということだけは推定されるわけでございますが、実態はいまの段階ではつまびらかでございません。ただ、私たちといたしましては、はっきりきめられないにしましても、この米ソ両国がベトナム問題に関しまして、これが和平のほうに向かうように全力をあげて努力されることが念願されておるわけでございます。
  26. 正示啓次郎

    ○正示委員 それでは、アジア局長にひとつお願いしておきますが、SALTの中からIRBMが抜けておりますが、この問題が一つあって、これが非常に大きな影響を及ぼすのじゃないか。それからベトナムに関しましては、国際監視機構をどうするかというような問題、これはもう頭越しの問題なんかじゃなくて、実は米ソの間で非常にしっかりとしておかなければならぬ問題だと思うのです。そういうふうなことが抜けておると思うのです。それからアメリカの撤退期限がたしか六カ月とか四カ月とか、だんだん縮まっていますね。そういう関係を一体どう判断するかという問題。この米ソ会談に関連して、いまのような具体的な徴候を、脈搏とか熱の問題だと思うのですが、そういう徴候を私はここで具体的に一応指摘しておきますから、それについてこの次までにお調べを願って、そしてベトナムという病人の病態について、これからどうなるかという見通しをお出しいただきたい。そのことをお願いして、私の関連を終わります。
  27. 石井一

    石井(一)委員 それでは、きょうは中国問題について外務大臣の御所見をお伺いしたい、こう思っておったわけでございますが、時間も限られておりますようですから、ごく簡潔にお答えをいただいたらけっこうでございます。  そこで、ニクソンの訪中によりまして、いわゆる中国封じ込め政策というものが一応終末に来たというふうな評価も出ておりますし、いわゆる冷戦構造下におけるイデオロギー闘争というものがだんだんと消滅していく方向に向かってきた、確かに大きな一つの変化の徴候を示してきた、こういうことでありますが、米中共同声明などを読んでおりますと、一定の条件下で台湾からの撤兵ということもいわれておる今日、外務大臣は、台湾海峡における軍事的脅威がなお存在するだろうか、まずこの点いかがでございますか。
  28. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 率直簡明にお答え申し上げますが、台湾海峡における脅威は今回における会談の結果かなり減少してきた、こういうふうに見ておるのです。まだ定着まではいってないが、そういう顕著なる傾向を見せ始めておる、こういうふうに理解しております。
  29. 石井一

    石井(一)委員 次に、米ソの首脳会談の評価でございますけれども、これは前者の米中の会談が非常に象徴的、政治的な意義があったのに対して、非常に現実的に、経済的、技術面の協力体制であるとか、あるいはまた軍備縮小というように一歩前進した。それがひいてはやはりヨーロッパの緊張緩和というものに貢献をした、情勢はやはり一つ変わったというような認識を私はしておるわけでございますけれども、米ソ会談に関する簡単な御所見と、それから米中、米ソ両方がいわゆる冷戦構造というものに対して新しい足跡として、まだ定着はしてないにしても、評価できるとお考えかどうか、この点はいかがですか。
  30. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、今回の米ソ会談の成果、これを非常に高く評価しておるのです。つまり、冷戦構造から多極化へ、こういう世界情勢の中ではありまするけれども、やはり米ソ、この二大国が世界情勢の中でどういう関係に立つか、これはもう非常に大きな影響力を持つ問題である。この両国の首脳が相会して基本原則について合意した。この基本原則の精神は何だ、こういいますれば、平和共存である。ともかくこの二大強国が平和共存について誓い合ったというこの事実、そしてその中において象徴的な具体的な事例といたしまして、SALTの交渉であのとおりの前進を見た、こういうことですね。これは私は世界の動向に対して緊張緩和の方向へ向かって非常に印象的な一歩を前進せしめた、こういうふうな理解をいたしております。  それが今度は米中関係にどういう影響を及ぼすか、こういうようなお尋ねでございますが、そういう世界全体を包む緊張緩和の空気をかもし出したという意味合いにおいて、米中関係、これにも、またさらに、お尋ねはございませんでしたようでございまするが、中ソの関係というものにつきましても私は良好な雰囲気をかもし出しておる、こういうふうに見ております。
  31. 石井一

    石井(一)委員 だから、私には非常に簡明に、世界が非常に激動し、緊張緩和の方向に行っておる、こういう御表明であったように受け取れますが、ここでちょっと話題を変えるようでございますけれども、先日の内閣委員会あたりで、こういう時期に、この間うちから起こっておるいろいろな、安保における事前協議制とか、そのほか基地の撤去の問題、その他いろいろの問題がございまして、ある意味では日本国防体制安保体制というものを根本的に検討しなければいかぬのじゃないかというふうなことも、一部に、政府部内でもいわれておるようでございますが、新聞報道では、検討すべき余地があるというふうにお答えになっておるのか、いやしかし安保体制に限っては従来どおりの形で進めていくべきだ、こういうふうにお考えになっておるのか、この点はいかがですか。
  32. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま、政府部内で安保体制について改正を要するというような議論があるようなお話でございますが、そういうことはありませんです。わが国安保体制は堅持しなければならぬ。つまり、わが国は有史以来初めていくさに負けた。そこで、わが国国民のほとんど全部といっていいと思うのです、この中に、再びいくさはいたすまい、こういうコンセンサスがあるといっていいと思うのです。そこへ憲法第九条の制約がある。そうすると、私は自衛力漸増論であります。政府全体といたしましてもそう考えております。自衛力は漸増いたします、そして米兵は逐次それに見合って撤退をいたしてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、しかし、憲法の制約、国民感情のそういうような動向から見まして、わが国自衛力の増強には限界がある。わが国に対して起こり得べき侵略に対しまして、その抑止力としては十分なものは確保し得ない、そういう立場にある。そういう自衛力の不足を何によって補うか、これは政治の最高の責任である。国の安全、これは政治の最大の課題であります。そのことを考えまするときに、自衛力の不足を、抑止力の不足をどういうふうにして補うかというと、ただいま現実の問題といたしまして日米安全保障条約に依存せざるを得ない、こういう状況にありますので、この体制を変更するというような考え方は、政府部内にも私の頭の中にもどこにもございませんから、はっきりと申し上げます。
  33. 石井一

    石井(一)委員 現時点においてはそういう外務大臣としての御見解を持っておられるのもよく理解できるわけですが、私は先ほどから具体的にそういうことばでは申しておりませんが、安保ができた時点というのはやはり一つのイデオロギー対立があり、アメリカとの安保体制によって一つの仮想敵国というものをも想定しながらこういう体制に入った。ところが、これは先ほどから申しております問題で、何も定着はしておりませんけれども、徐々に国際情勢というものは非常に大きく変動をし始めておる。このときに安保堅持、自衛力漸増ということを御主張になることも一理ございますけれども、やはりもう少し国際情勢を先取りするという姿勢もまた同時にあっていいのじゃなかろうか、こういう感じがいたすわけであります。  ここは外務委員会でありますから、国防、安保の問題は、いまの御見解でよくわかりましたから、もうこれ以上申しませんけれども、ただ、日本の今後の外交を展開していくのに、この新しい時代に即応して、少しこの辺で政策の転換というものをしていかなければいかぬのじゃなかろうか。いわゆる対米一辺倒といいますかそういう形から脱却して、自主的な外交を展開すべき局面が来ておる、私はこういうふうに考えるわけでございますけれども、この点はいかがでございますか。
  34. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 石井君から、国際情勢を先取りしてそうして大いに積極的に新しい外交姿勢を示せ、こういう御意見でございますが、わが国ほど、国際情勢の前途を見通してそれに流動したかまえを示している国はないと私は思う。つまり、わが日本はいま世界における経済大国である。経済大国は、これは古今東西の歴史において、軍事大国になったものです。私どもが選ばんとすればその軍事大国への道も選ばれる。持たんとすれば強大な軍備が持てるのです。また核兵器も持たんとすれば持ち得る。しかしわが国はそうはしない。軍事力は自衛範囲にこれをとどめる、そうしてその余力をもって国内の整備、つまり世界に誇り縛るようなわれわれの生活環境をつくり出そう、また一半をさいて世界のおくれた国々のために奉仕しよう、これは全く経済大国としての新しい行き方なんです。私は、日本という国が世界の動きの帰趨というものを見きわめて——世界情勢はいまどういうふうに動いているかというと、私がいままでの世界情勢と非常に変わっておると見ますのは、世界第三次戦争、つまり大国が巻き込まれるような戦争は当分あるまい。絶対というふうには申し上げません。それは、あり得べき事態に対しましての備えは必要でありますけれども、まずまずわれわれの予見し得る将来において、この世界大戦争、大国が巻き込まれるような戦争はあり得まい、こういうふうに考える。  そういう情勢を踏んまえて、いま日本が、経済大国が今日までたどってきた歴史のあとは選ぶまい、こういう決意をしている。これは、日本の非常に大きな、世界における新しい外交の行き方なんです。その辺はよく理解し、自信を持ってわが国の行くえというものを見守ってもらいたいし、わが自民党政府がそういう態度を持っているということについて誇りを持ってもらいたい、かように存じます。
  35. 石井一

    石井(一)委員 平和主義者に徹し経済大国として前進するんだ、これは一つの断面として非常に正しい御見解でございます。しかし、外交問題として具体的な問題をとりますと、私はやはり、この局面に直面して、日本極東にある未承認国をなくす、分裂国家をできるだけなくすという努力をする。それからまた、アメリカとの国防、経済、その他いろいろの問題をもう一ぺんあらためて再調整するということが——これに対して、われわれが大きくなり経済大国になることも必要でありますけれども、現在具体的な問題としては一番の外交課題だと思います。  とりわけ一番重要なのは、やはり日中国交正常化に邁進すべき時期がもう来ておる。また外務大臣も、それが世界の流れであるということはたびたび御発言をしておられるところでございますが、時間がありませんから、いま私の申しました未承認国、分裂国の問題についてもたくさん議論はありますが、それは省略いたします。  そこで、中国問題を解決するのに日本で一番大きな問題になっているのは、台湾問題をどう処理するかということであります。日本国民の大多数は、中国との国交を回復はするけれども、台湾をほうり出すというのは忍びないという、東洋人的なそういう感覚を持っておる。私などもハト派の一員のつもりでありますが、自民党内でも——野党の諸君はまた別な考え方でございますけれども、中国に対する呼びかけは非常に強力にやるけれども、台湾に対する説得なり呼びかけというものを日本政府はどの程度熱心にやっておるのだろうか。いま一番必要なことは、中国の政治三原則を認める前に、台湾に対して、国連ではこういう立場に立った、現在の世界情勢はこうだと、一番ものが言えるのは日本であるのに、なぜこのきびしいがしかし親しい友人に対してそれだけの説得を政府は果敢にやらないのだろうかという、そういう一つの疑問と希望を私は持っておるわけでございますけれども、この点に関して外務大臣の御所見はいかがですか。
  36. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 石井君御指摘のように、日中問題を解決する上において越えなければならぬ問題がある。それは台湾問題です。これはつまり、現実的な処理ということがどうしても必要になってくる。その辺のことは、石井君いま御発言でございますが、よく心得てやっておるのです。これは非常に機微な問題ですから、こまかいことは申し上げません。ただ、はっきり申し上げることは、私は台湾問題の処理につきましても十分考えながらやっておる、こういうことです。万遺憾なきを期したい、かように考えております。
  37. 石井一

    石井(一)委員 何か繰り返すようですけれども、このステップは、中国との国交の問題を解決する前提として、どうしても踏み越えなければならぬ宿命である。外務大臣がいつも口にされる国際信義という面からも、日本は中国との国交正常化をするにしても、台湾に対する国際信義ということを考えれば、一番言いにくいところをやはり詰めなければいかぬ時期である。もう議論の段階ではない、完全に行動すべき段階であるというふうに私は考えるわけでございまして、蒋介石総統も一世の英雄なんでありますから、最後に中国のために自分が死すという決意を、やはり日本外務大臣くらいの大ものがきびしくしかし強く御表明になる時期が来ておる、これを避けては日中国交回復というものは実現しない、こういうことでございますから、御決意の表明もございましたのでこれ以上申しませんけれども、この点十分御勘案の上この問題の解決に当たっていただきたい、こういうことを御要望申し上げる次第でございます。  なお、おいでいただきますまでに、北方問題とか最近起こっておりますアラブ日本人ゲリラの問題に関していろいろと議論をさせていただいたわけでございますが、最後の結びとして、その後の経過なども新聞に報道されておりますし、また政府としても遺憾なきを期すために万全の措置をとっておられるということは先ほど政務次官からも御答弁があったところでございますが、私が一点指摘いたしましたことは、日本政府として三人の若い暴徒がやった行為に対して無限の責任をとるのかどうか。要するに、今後国連での問題になり、中東紛争のいろいろの原因にもなろうというときに、われわれは彼らの行ないが世界的に大きな問題であって道義的な責任は大いに感じなければいかぬわけでありますけれども、国家責任個人責任、道義責任と政治責任、こういう問題についても遺憾なきを期しながら事後処置をやっていかなければいかぬわけでありまして、こういう面も含めまして外務大臣としてはこの問題をどう取り上げられ——いま福永大使を派遣されたり何かしておりますけれども、今後どういうように収拾されようとしておられるのか、その決意と見通しのほどをお答えいただきたいと思います。
  38. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 本件につきましては、法律上の責任論ということを論議する者もおります。しかし私は、この問題を法律的角度から云々すべき問題というような小さい問題とは考えておらないのです。これは政治的または道義的な大きな問題である、こういうふうなとらえ方をいたしております。わが日本としては道義的責任を果たしていかなければならぬという立場にあるという認識であります。  そこで、その責任を果たすどういう方向の施策をとるかというと二つある。一つは、これは当面の事態の処理であります。これに対しましては、政府委員からお答えしておると思いますけれども、私どもが情報を入手したのはおとといの昼ごろです。そのころは日本人がどうも関与しておるらしいというようなことで、私はその当時はもう、日本人がこれに関与しておらなければということを祈る気持ちでありましたが、午後四時に至りまして、三人の犯人がおる、その犯人はいずれも日本人であるということがイスラエル大使館の通報によりまして確認をされるということになったわけです。非常に私はがく然といたしたわけでありますが、直ちに現地の大使をいたしましてイスラエル政府を訪問せしむる、こういうふうにいたしております。また、私自身が東京駐在の大使館を訪問いたしまして、遺憾の意を表明するという措置を講じ、なお、状況がさだかでありませんので、中近東アフリカ局の参事官等を現地へ急派するというような措置をとり、また、福永特使を、政府代表いたしましてイスラエル政府に対しまして遺憾の意を表明せしむるため、昨夜十時半に羽田空港を出発せしむるというような措置をとり、また福永特使に対しましては、わが国は必要なる措置をとる用意がある旨を先方に伝えるということを依頼をいたしておる、こういうようなことでございます。  そういう一連の応急の措置を通じまして、イスラエル政府並びにイスラエル国民の間には、対日感情において憂うべき徴候というものは出ておりません。むしろメイア・イスラエル首相は、この問題は日本政府日本国民にかかわりのないことであるというような意見の表明を閣議においていたしておるというような状況でございます。  ただ、世界各国での反響を見ますると、一部には、やはりカミカゼ日本青年というような表現もあるとか、あるいは真珠湾の再現だというようなことが言われるとか、もうとにかくわが日本国並び日本国民に対するイメージダウンこれ以上はなはだしきはない、こういうふうに見られるような状況もあるわけであります。  そういうような状況を踏まえまして、第二の問題は今後の措置であります。わが国は決してそういうような過激な者に代表されるような国ではない、どこまでも平和を尊重し、世界各国と友好裏にやっていきたい国民である、あの三人の犯人というものは全く異例のやからであるということを実証していくための一つ一つ措置を積み上げていかなければならぬ。同時に、こういう事件が再び起こらないように、これはもとよりわが国民が関与しておるばかりじゃない、世界的な問題として再びこういうような事態が起こらないような措置を国際的な協力のもとに進めていかなければならぬ。その国際的な協力をどういうふうに進めるかという問題、また、わが国自体といたしまして、こういう不逞のやからの再び出ないようにというような措置をどういうふうにして積み上げていくか、これらの対策、それらを総合的に思いを新たにしていかなければならぬというふうに存じますので、けさの閣議におきましても、私はさような発言をし、皆さんから御了承を得ている、そういうような次第でございます。
  39. 櫻内義雄

    櫻内委員長 午後四時再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後四時十二分開議
  40. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  引き続き国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。黒田寿男君。
  41. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、きょうは外務大臣に対しまして、先日の質問を続行します。おもに日中国交回復の問題を中心に質問したいと思います。  きょうの新聞に一斉に報道されたところによりますと、自民党の党紀委員会が藤山愛一郎氏に対しまして、党規違反の事実があるということを理由として、再審請求をけって従来どおりに有罪の決定をしたということであります。私は自民党員ではありませんから、他党である自民党の内部の党規事件についてかれこれとくちばしをいれるつもりはございません。しかしながら、この問題は単に一つの政党の常規違反関係の問題としてだけで私どもは済ますことはできない。日中国交回復運動の中で起きました重大な政治問題である、私どもはそういうふうに理解をするものです。そこで、この見地から問題を取り上げてみたいと思います。  まして、藤山氏は日中国交回復促進議員連盟の会長でありまして、私もこの超党派の議員組織である連盟の会員であります。そうして藤山氏処分の理由が日中議連と中日友好協会との共同声明の内容にあるとされておるのでありますから、自民党内の党規違反事件ではありましても、形式上はそういうものでありましても、私どもは無関心ではあり得ないのであります。自民党の中にも、従来の対中国政策の転換を求め、日中国交回復の実現を目ざす機運が盛り上がってきておりまして、この機運はいまやわが国の階層を問わず、党派を問わず、全国民的なものとなっております。この時期において自民党党紀委員会の決定内容は、まさにこの国民的動向の大きな流れに逆行するものであると見なければならぬ。私は、自民党のためにも、もしこのような決定がこのままの決定で終わりになるといたしますならばはなはだとらざるところである、そういうふうに思います。  外務大臣もかつてアヒルの水かきというような比喩を用いて日中の国交回復についていろいろと模索しておられることをみずから話されたことがありますが、私どもとの間に従来意見の隔たりはありましたけれども、大臣は大臣なりに努力しておられるということは、私どももこれを認めておる。今回のような、率直にいえば、頑迷固陋、旧態依然たる冷戦思想に基づく対中国観に立脚した党紀委員会の決定は、日中国交回復の機運に対しまして水をさすものである。これはむしろ益なくして害あるのみと言うても私は過言ではないと思います。  この党紀委員会の処罰の是非を外務大臣にお尋ねすることは筋違いかもしれませんが、これを党内に起こった政治的意味を持つできごとというような側面からとらえまして、ことに日中問題に関連のある重要な政治的できごとという見地から見て、私は外務大臣のこの決定に対する政治問題としての所見を承りたいと思うのです。
  42. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 藤山さんに対する自由民主党の党紀委員会の動きというのは、ずいぶん前に何か動きがありまして、藤山さんがどうも党規に違反しているというような委員会の決定があって、そして総務会へそれが報告された、そういうようなことは承知しておりますが、最近はそういう動きについて私全然承知しておりませんので、せっかくのお尋ねでございまするけれども、どうもお答えいたしがたい問題であるということをお答え申し上げます。
  43. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、外務大臣は一個の政治家である、こう考えておりますし、むろん政府と党のできごとの間の区別はありますけれども、しかしただいまのような、よくわからないという態度をとられることは、大臣はわからない問題だというようにお答えになりましても、その消極的態度自身がこの問題に対する大臣の一種の政治的態度を、おのずからあらわしておるんじゃないか、私はそういうように考えないわけにはいきません。  まあ、これはこれといたしまして、そこで、これは日中問題に関係いたしますから、この機会に多少この問題に関連して論じてみたいと思います。  日中議連と中日友好協会との共同声明の中の第一項目は、中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法政府である、こういうように表明しております。これは日中国交回復の基本原則の一つであります。さて、先日、佐藤首相はこの外務委員会に出席されまして、中華人民共和国は中国を代表する唯一正統政府であるというように答弁をせられました。この点は、日中議連と中日友好協会との共同声明の中の、右の、私がいま示しましたあの項目、これは最も重要な項目でありますが、この項目と同一の観点に立つものである、こう私は理解をするのであります。これについて外務大臣の所見を承りたいと思いますけれども、しかし、時間の関係もございますので、次の質問に移りまして、あわせて御答弁をお願いしたいと思います。  第一項目の次に、中国は台湾を含めて一つである。これは政府も認めておるところであります。そして、佐藤首相の答弁のごとく、中華人民共和国政府は中国を代表する唯一正統の政府であるから、台湾問題は中国の内政問題であって、いかなる外国の干渉も許されないものである、これはおのずと自明の理になってくるのでありまして、このことを、日中議連と中日友好協会との共同声明の、日中国交回復の基本原則の第二項目で表明しております。したがって、先般の、中華人民共和国政府は中国を代表する唯一正統政府であるという佐藤首相の答弁は、この第二項目と矛盾するものではない、首相答弁の線からすればこの第二項目は当然の帰結となってあらわれてくる、こういう筋道であると思います。これに対しても、外務大臣の見解を承りたい。  さらに、ついでに質問を続けますが、第三は、佐藤首相の答弁のとおりに中華人民共和国政府は中国を代表する唯一正統の政府であるから、一国一政府の原則に従って、中華人民共和国政府を相手として国交の正常化、国交の回復を実現する立場からすれば、中国の一部である台湾地域のみを事実上の支配権力のもとに置いておるのにすぎない、いわば反乱政府的存在にすぎないところの蒋介石政府とのいわゆる日華条約は、中華人民共和国との国交の回復の交渉に着手する前にその廃棄を表明するということはきわめて当然のことである、こう私どもは考える。日中議連と中日友好協会との共同声明の第三項目はこのことをうたっておるのである。先日の佐藤首相の答弁と、したがって、これは矛盾するものではない。佐藤首相の答弁の線からすれば、この第三項目は当然の帰結として出てくるものである、こういうように私どもは考えるわけであります。  佐藤首相の先日の当委員会における答弁が、首相の真意の表明であって、それが自民党及び政府の日中国交回復への道の前進を示すものであるといたしますならば、日中議連と中日友好協会との共同声明は、政府及び自民党の政策の進むべき方向を示したものでありまして、党規違反などという問題に問われるべきものでは絶対にないと私は思うのであります。かりに首相の答弁がその真意に出たものでなくて、過去によくありました例のように、そのときどきの、何というか、思いつきから出たことば、あるいは口のすべりというようなものであったといたしましても、そのことはそれとして、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一正統政府であるということは、首相の真意の那辺にあるかを問わず、これは客観的な真実でありまして、国連もこれを認めておるところでありますから、この正しい見地に立つ共同声明の内容は正しいものである。国民大多数の共鳴しておるところのものである。共同声明署名の責任者である藤山氏の立場はしたがって正しいものである。私は、議員連盟の会員として、藤山氏の立場を弁護せざるを得ないのであります。党紀委員会の決定をもし容認するということになりますというと、これは自民党とその政府国民から孤立する以外に行くところはないと私は思う。こういう問題について外務大臣の御意見を聞かしていただきたいと思います。これは政治論としてであります。
  44. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 日中問題についてことばの争いをするということ、これはあまり益のない問題だと、こういうふうに考えます。いま中国の対日三原則というものがある、またそれを日中議連というものが取り入れておる、その第一項目に中華人民共和国は中国を代表する政府であるというふうな言い回し、あるいは唯一正統という言い回し、あるいは正統政府という言い回し、いろいろありますが、これは私は、そういう議論はもう枝葉末節の議論だと、こういうふうに思うんです。わが国政府は中国と国交の回復をいたしたい、そして国交の正常化をいたしたいと、こういうことをいっておるんです。国交の正常化というのは一体何だと、こういいますれば、相互の承認行為あるいは外交関係の設定、これまで含めての意味であります。そういうことをいうんです。でありまするから、そういう立場を踏んまえて日中関係を論ずる、中国、中華人民共和国をどういうふうに理解する、おのずから結論はもう出てくるんだろうと思う。それを、正統の政府がどうの、あるいは唯一正統の政府がどうの、あるいは中国を代表する政府がどうのと、それはもう区々たることばの問題である、そういうふうに思うんです。そういう中国に対する基本的な考え方、北京政府との間に国交の正常化をいたしたい、この基本的なかまえに立って中華人民共和国を見るということになれば、ことばの問題ですね、それを論ずるというようなことは、私は、そう益のある問題じゃない、こういうふうに考えます。  それから第二の問題である台湾の領土帰属の問題、これは政府においても統一見解を出しておる、そういうことでありますから、黒田さんもそれをよく御了知のことと思いますが、これはわが国は、中華人民共和国が台湾は中華人民共和国の領土であるという主張をする、それには理解ができる、ただ法的にいいまするとこの領土の帰属を云々する立場にはない、こういうことをいっておるんで、私はもうこれは正しい立場である、こういうふうに考えております。  それから、日中国交正常化交渉を始める前に日華平和条約を破棄すべし、こういうような議論、これは賛成できません。これはどうしても日中国交正常化交渉、その過程あるいはその結果きめらるべき問題である、そういうふうに理解をいたしております。  藤山さんの関係につきましては、先ほども申し上げましたが、私はどういうことが議論になっているのかよく承知しておりません。おりませんから、その是否につきましてお答えするわけにはいかぬ。先ほど申し上げましたとおりであります。
  45. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの外務大臣の御答弁に対しまして一つ念を押しておきたいと思います。  佐藤首相が、中華人民共和国は中国を代表する唯一正統政府である、こういうような答弁をこの委員会においてされました。この表現を何か外務大臣ことばのあやに属する問題であるようにいま御答弁になりましたけれども、私どもはそういうふうには考えない。外交上の問題である政府の性格を表明することばは、そのことばの一句一句が非常に重要な政治的意味を持つものでありまして、したがって、佐藤総理が、中華人民共和国は中国を代表する唯一正統政府である、こう答弁せられたこのことばは、私どもはこれに重要な意味を認めたいと思います。ことばのあやかどうかということは、これは外務大臣の御解釈は別です。念のためにお伺いしますが、佐藤総理が、中華人民共和国は中国を代表する唯一正統の政府である、そう答弁されたことは、政府として何らこれに対し異論はありませんか。このとおりに認めてよろしいか。私は単なることばのあやとは認めない。
  46. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 全然異論はありません。つまり、いまは中華人民共和国は中国を代表する政府であると言いましても、あるいは中華人民共和国は中国を代表する正統政府であると申しましても、あるいは中華人民共和国は唯一正統の政府であると申しましても、これは同じ意味合いのものである、こういうふうに理解しております。
  47. 黒田寿男

    ○黒田委員 もう一度念のために質問しますが、中国を代表する唯一正統政府である、こうなれば、それが中華人民共和国政府であるという意味、これは間違いないことだと思いますけれども、そうしますれば、中国の中で他に政府であることをみずから呼号し得るような政権は、反乱政府として存在すればともかく、合法政府としてはそういうものは存在し得ない、こういう結論になるのであります。これは理の当然だ。そして、これが私は一番重要な事柄である、原則であるということを申し上げましたが、この原則からさっき言いました第二原則、第三原則——この第二、第三というのは別に重要性の比較で申すのじゃございませんが、とにかくこの第一原則をとる以上は、台湾問題は中国の内部問題であるという原則も出てまいりますし、それから第三問題、中国には一つしか政府はない、唯一正統政府は中華人民共和国政府以外にはない。かつて虚構の上で台湾政府を認めておったというだけで、現在としては、佐藤総理も中華人民共和国政府が中国における唯一正統の政府であると認めている。そういうことになれば、それ以外の何らかの政権と条約を結んでおるというような事実——過去にそういう事実があったということはそのまま私ども認めますけれども、現在、中華人民共和国を相手にして国交回復をやろうという立場からいえば、したがって、そういうもはや中国における合法政府でない一地方における反乱政権にすぎないものとの条約というものは、中華人民共和国政府を尊重する限り廃棄してかかるというのが当然のことじゃありませんか。だから、佐藤総理の言われたことば、そのことばから演繹していけば、当然そういう結論が出てくるわけですね。それを私は申し上げたのです。佐藤総理の言われた、中華人民共和国政府が唯一正統の中国政府であるということは認めるけれども、第二、第三の原則は認めないというのは、これは外務大臣の御見解としてはとうてい論理に合わぬものです。佐藤総理の言ったのが、あれは間違いであったと言われるのなら別です。あれがあれでいいのだと言われるなら、これはことばのあやではない、私はそう思います。このことを申し添えておきます。
  48. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 中華人民共和国は中国を代表する政府である。代表と言うのです。ですから——ほかに代表する政府がありますか。中国を代表する政府、それは唯一の政府である、またそれは正統の政府である、そういうことになるので、これを正統の政府と言おうが、あるいは唯一正統の政府と言おうが、あるいは代表する政府と言おうが、これはことばのあやであって、何ら本質的な違いはない、そういうことを申し上げているのです。それだから、その本質的に違いのないことを根拠といたしまして、第二、第三の問題に違いが出てくる、そういうふうな理解は、私といたしましては理解はいたしません、そういうことです。
  49. 黒田寿男

    ○黒田委員 ことばを少し変えて言ったほうが適切だと思いますので……。そこで、中国を代表する唯一正統政府、こういう言い方はいろいろある、ことばのあやだと言われました。そこでその主体ですね。いかなる政府がそれに当たるかということですね。それについて佐藤首相の答弁によれば、中華人民共和国政府がそれになるのだ。この主体、主語が中華人民共和国政府、このことが非常に重要です。これといまあなたのおっしゃいましたことばのあやがいろいろあるというのと結びつければ、私どもがかねて主張しておりますように、中華人民共和国政府こそが台湾を含めた全中国の人民を代表する唯一合法の政府であるということになる。そうじゃありませんか。だから、そうなってくれば、いま言いました第二、第三の原則は当然にあのような帰結になってくるのでありますから、第一を認められるなら、第二、第三については見解が違うということは私どもは認めることができないわけです。だから、第一が違うのだ、総理大臣が言ったことが間違いだと言われるなら論理が通ると思うのですけれども、あれでいいと言われるなら、これは外務大臣の論理のほうが通らぬ、私はそう考えます。このことはあまり繰り返して言いたくありません。これだけ言ったら、私はこの問題に対する見解は言い尽くしたと思いますから、次の問題に移ります。(福田国務大臣「答えが要るのですか。」と呼ぶ)いや、要りません。しかし、私がいま申したことは非常に重要なことですから……。
  50. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それじゃひとつ答えましょう。  私はこういうことを申し上げているのです。総理が中華人民共和国が中国の唯一正統の政府である、こういうことを申し上げた、これはもうはっきりしております。従来総理も私も、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういうふうに申し上げた。代表というのは一体どういうことなんだといえば、これは中国を包括的に代表する、こういうことなんでありまして、別に他に代表する人がおるんだというような考え方はないわけなんです。ですから、そこへ正統政府であるとかあるいは唯一であるとか、そういうことばをつけ加える必要もないことなんです。そういうことで、私は、それはいままで総理がおっしゃったことと内容においてはいささかの変わりはない、こういうことを申し上げているのです。黒田さんは、内容が変わってきたんだから第二、第三の問題の帰結も違うじゃないか、こうおっしゃいますが、内容はちっとも変わらない、言い回しが違っておるだけだ、したがって第二、第三の問題に対する影響、見解の変更というものはあり得ない、こういうことを申し上げているわけです。
  51. 黒田寿男

    ○黒田委員 あまりこのことについては繰り返して言いたくありませんが、単に代表するというのと唯一正統ということばをつけるということとは——従来の政府のいろいろとあいまいな、しょっちゅう言い直しをするような言いかたからみれば、この唯一正統ということばをつけたということは非常に重要なことですから、それはあってもなくても同じものだ、代表ということがあれば同じだというようには私どもは解釈しません。そうして、中華人民共和国はと総理は言われておるようでありますけれども、これは、「国」が「政府」であるというのはおかしいことですから、中華人民共和国「政府」は唯一正統政府というように表現を合わせなければならない、私はそういうように申し上げるわけです。  大体私は、いま申し上げた私の考えからいけば、三原則を政府も認めざるを得ない、三原則を認めたことになる、だからあの共同声明は正しいのではないか、それになぜけちをつけるのかということを申し上げたのです。これはこの程度で終えておきましょう。  そこで、私けげんに思いますのは、政府は相変わらず日台条約の破棄の表明にこだわっている。先ほど申しました佐藤総理のあの答弁からすれば、当然日中国交正常化の交渉に入る前に、国民政府との条約なるものは廃棄すべきである、このことを表明して交渉に入るべきだ、こういうふうに考えることは当然でありますが、この廃棄の表明もしないままで、しかも中華人民共和国政府と国交回復の交渉に入ろうとする。そうすると何かそこに、一つの中国を認めながら、台湾というものを否認できない、一つの中国を認めて、そしてもう一つ、台湾を依然として存続させていこう、一つの中国、一つの台湾というそういう考え方政府の頭の中にあるのじゃないか。だから、中国を相手に国交回復の交渉をする段階においてさえも、思い切って日台条約を廃棄するという表明ができない。台湾政権を残しておこう、すなわち一つの中国と一つの台湾という底意が依然としてあるのではなかろうか、私どもはそう考えざるを得ないのであります。これはどうでしょうか。
  52. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもは、どういうふうに言われましても、日華平和条約をただいま廃棄するという考えは持っておりません。どうもそういう議論は、日中政府間接触をいま始めようとしておるというやさきに、そんなことを言っているのがどういう益があるのだろうか、私はこういうふうに思います。私は、中華人民共和国におきましても、わが国が置かれている立場というものについては理解を持ち得る、こういうふうに考えております。  どうも黒田さんなんかは、中国の言う三原則、これを認めなければ日中政府間接触は始められないのだというような御気分のようでございますが、私はそうは考えないのです。いまの現実というものを無視してわが国が動くというわけにもいかない、そういう立場にあるわが日本考え方、これは私は中華人民共和国におきましても理解するところがあるであろう、こういうふうに思う。  私は、日華平和条約を廃棄しない、そういう立場において日中政府間接触というものを始めなければならないし、また始め得る、こういうふうに思っておるのです。まあ日中関係がどうなるか、交渉がどうなるか、その結果がどうなるか、そういうような過程において日華間の関係はおのずから結論が出てくるんだ、こういうふうに思っておるので、前々からそういうむずかしい議論をしておくことが、はたしてこの交渉を進める上においてどこに益するところがあるのだろうか、そういうことがふしぎでなりませんです。
  53. 黒田寿男

    ○黒田委員 この点について、もう一度だけ確かめておきたいと思います。  外務大臣は、一方において中華人民共和国との国交の回復を目ざしておられる。だから、新しい条約がそこにできるわけです。新しい条約を締結するということを目ざしておる。しかも他方、日台条約の廃棄ということはいまは考えていない。そうすると、中華人民共和国政府と蒋介石政権、この二つを相手とする条約の存続を考えておる、現在のところこう見なければなりません。  そうなってくると、台湾独立ということ、何とか台湾を中国より別にしておこうという考えがあるのではなかろうか。中国との条約を目ざしながらも、同時に蒋介石政権との条約の廃棄を思い切ることができない、その底には、そういう台湾独立という政治的意図があるのじゃないか、これに対してどうですかという質問をしてみたのです。
  54. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さような考え方は、私はとんでもない邪推であると思います。  わが国は、日華平和条約につきましては、日中政府間接触の過程において、またその結果を見ましてこれは自然に解決される問題である、こう言っておるので、二つの中国をつくる、そういうような考え方は持っておりませんです。また、二つの中国をつくる、つまり台湾の独立運動でありますとかそういうものについては一切これを助成しない、こういうことをはっきり言っているわけでありまして、どうも何か回り回って推測をされて立論をされておるようでありますが、私どもは、日華平和条約というものは日中政府間接触の過程においておのずから結論が出てくる問題である、そういうことを申し上げているのです。いま政府間接触が始まりもしない、ましてや日中の国交の正常化もできない、そういう段階においてまだ結論を出すわけにはいかぬ、こういうことを申し上げているわけです。
  55. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は、政府の政策を理解するために、順序としてただいま申し上げたような質問をしたのであります。  そこで、だいぶ明らかになってまいりましたが、二つの条約はあくまで存続させていこうという意思は政府はない、こうおっしゃいましたね。中国との条約を新たに締結するその過程においていま一つの条約は廃棄することになるのだ、だから二つの中国とか一つの中国、一つの台湾というようなことを考えておるのじゃない。いま即時に日華条約の廃棄という意思表示はしないけれども、中華人民共和国との新たなる条約の締結の過程において片一方はなくなってしまうのだ、そういう見通しを持っておるのだ、これはいわゆる出口論ですね。そうですか。ここで政府の意思をはっきり確かめておきたい。
  56. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これから日中の国交の正常化交渉を始めようとしているのです。まだそれが始まらないそういう段階で、こういう場合はどうの、ああいう場合はどうのということをこまかく詰めてない。それが一体国益というような立場から考えて必要なことであるかどうか、私はそういうふうに思うのです。私はいままで、日華平和条約は、日中国交正常化交渉、その過程において解決される、あるいはその結果として解決される、こういうことを申し上げているのです。これは十分御理解できることじゃないか。それをその先はどうだ、こうだ、これが一体、日中国交正常化交渉を円滑に進めていこうとする私どもの立場から見ますると、どうも都合のよくない御発言だというような感じがするのです。私どもはどこまでも日中国交正常化ということをやりたい、こういうふうに思っておる。そうして先ほど申し上げましたような見地に立って政府間接触を始めたい、こう言っているのです。これでもう全部おわかりじゃないか、こういうふうに思うのですが、先の先までどうなんだ、こうなんだ、そこまで詰めぬでいいのじゃないでしょうか。私どもとしては、そういうことに対しましてお答えすることは非常に支障がある、かように考えております。
  57. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもわかったようでわからないことを申されます。要するに、日華条約は、いまはそのままの状態にしておくけれども、やがては解消されるという見通しを持っておる、だから決して二つの中国とか、一つの中国、一つの台湾ということを考えておるのじゃないというようにお答えになったと思います。そう理解して間違いないですか。先の先の見通しなんかと言われますけれども、このくらいのことは見通しを持たないでどうして外交がやれましょうか。
  58. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私がいままで申し上げたことで御理解はいけると思います。これ以上つけ加えますることは、日中国交正常化を進めていく上において支障がある、そういうふうに考えますので、まことに恐縮ですがお答えいたしかねます。
  59. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府は支障があるという、われわれはそうは思わない、こういう意見の相違はしょっちゅうあるわけです。政府が秘密にする必要があると思うことを、われわれは知る権利によって大いにこれを国民に知らしめよと言う。これもわれわれと政府との意見の相違です。私どもは見通しをはっきり言ってしまえばいいと思う。しかし内容においてはそういうようになるのだけれども、ことばの上ではいまはそれをはっきりさせぬ、そのほうが支障がなくていい、こう言われるのならそういうふうに承っておきましょう。政府考え方はだいぶわかりました。賛成するといなとは別として、とにかくだいぶわかってきました。  それからきょうは時間が少ないので非常に困るのですが、もう一つだけお伺いしておきましょう。  外務大臣は午前中のこの委員会で、イスラエル空港において起こりました事件について、政治的、道義的責任をとって適切に対処したい、こう言われました。この問題について、私はきょうは触れません。今回の事件に対し、政治的、道義的責任を痛感して適切に対処すると言明せられたが、他方、政府は、非常に大きな他の問題に関する政治的、道義的責任をいままで見過ごしてきたのではないか。のではないかじゃない、見過ごしてきた。歴代の政府がそれを見過ごしてきた。外務大臣総理大臣の経歴を持っておられませんから、その責任を問うものではありません。吉田から佐藤までの責任を私は言うのであります。非常に大きな他の政治的、道義的責任問題について、みずからこれを見過ごすような態度を故意にとってきた。これをどう考えるかという問題です。これは言うまでもありませんが、中国人に対する深刻な戦争責任の問題であります。  私は、結論から先に申しますと、政府は日中国交の交渉の開始にあたりまして、中国人民とこれを代表する唯一合法政府である中華人民共和国政府とに対して、あの十五年間も続きました中国に対する侵略戦争責任について、これをとることをまず表明して、その上で日中国交回復の問題に着手すべきである。私は政府に対してぜひともそういうようにすべきだ、どのような政府が交渉に当たろうとも、そういうところから出発すべきであるということを私は申し上げる。  一体、日本軍国主義は前後十五年にわたりまして中国に対し侵略戦争を行なった。一千万人以上の——詳しくは申しませんが、一千万人以上の人命を奪い、五百億ドル以上の物質的損害を与え、精神的損害に至ってはこれを数字ではあらわすことは不可能であります。このような人的、物質的、精神的損害は一体いかなる地域の住民に与えたのでありましょうか。中国大陸の人民に対してでしょうか、それとも台湾の人民に対してであったのでしょうか。答えはおのずから明らかであります。全く明らかである。  政府は、日華条約で中国との戦争問題は片づいた、こう言うてきたのであります。吉田から佐藤までそう言うてきた、外務大臣が将来どういう態度に出られるかは別といたしまして、将来の日本政府は、政権を担当する者は、断じてこういう考えであってはならぬと思うのであります。吉田——佐藤までの政府はそう言うてきた。蒋介石は日本に対して責任を問わないと言うた、彼は実に寛大な政治家である、こういうことを言って、それで事は何か済んだように、けろっとした顔をしておった。これが吉田から佐藤までの政府の態度であったのであります。  しかし、蒋介石は、大陸の中国人の信頼を失って台湾に逃げ込んだ政治家ではありませんか。中国に対する戦争責任の問題を話し合うところの相手は、中国大陸で現実に日本軍国主義の侵略によって人的、物的、精神的損害をこうむったその中国人民であります。それに支持せられ、中国人民を代表する唯一合法の政府であるところの中華人民共和国政府ではないのでありましょうか。この人民を代表する政府こそが、中国に対する侵略戦争のあと始末をわが国において話し合う相手として選ぶべき政府である、政府はそう考えないかと私は聞きたい。  日中国交回復の問題には、先ほど申しましたような基本的な三原則がありますが、それとはまた別に、わが国の側からは、まずこの問題に対する正しい姿勢をきちっとしておくところから日中国交回復の交渉を始めるべきであると私は考えます。  私はどうもこういう点に関して政府に認識が薄いように思う。中国に対する侵略戦争中に中国人に対して日本軍国主義がどんなにはげしい残虐な行為をやったかということを具体的に記述した書物が最近わが国において三冊も出ました。外務大臣、読んでおられるかどうかわかりませんが、この問題については以前にも出版された別の書物もある。私はこの三冊の書物はここに持ってきております。皆さんにこれをお示しいたしませんが、持ってきた。外務大臣はお読みになっておるかどうか知りませんが、これは「中国の旅」「南京事件」それから「日本人は中国で何をしたか」副題として「中国人大量虐殺の記録」こういう書物でありまして、この書物の一ページ、一ページにとうてい読み続けていくことにたえられないような残虐な殺害、放火、略奪等の記事が載っておる。そしてまた挿入されておる写真もとうてい正視するにたえないような残忍な光景であります。ここでお見せ申し上げてもいい。しかしここで読み上げる時間も持ち合わせませんし、また写真を一々皆さん方にお見せをする時間の余裕もありません。書店の広告をするわけではありませんけれども、少なくともわが国の政治家はこれを十分に読まれる必要があると思います。  そこで私は外務大臣質問するのですが、私は、中国に対する戦争責任の問題を国際法上からの賠償問題という見地からはきょうは取り上げません。これはまた後日論ずることがあると思います。きょうはその見地からは取り上げません。わが国外国人に与えた損害の政治的、道義的責任問題の見地からこれを取り上げて外務大臣の所見をあらためて質問したいと思うわけであります。これはこの前にもちょっと触れましたが、時間がなくて中断しておりましたので、きょうそれを続けて問題にしたいと思うのであります。  私は、最初申しましたように、政府は日中国交の開始にあたって中国人民とこれを代表する唯一の合法政府である中華人民共和国政府に対して、まず侵略戦争責任をとることを表明する必要がある。この点について外務大臣はどうお考えになりますか。
  60. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 イスラエルの問題につきまして午前中、法的にいえばいろいろ問題がある、しかしこういう問題は法的に考えるべき問題ではないので、道義的、政治的な判断を下さなければならぬ、こういうふうに考えるということを申し上げたわけです。そこで日中間の問題もそういう種類の考慮をすることも必要であるということを考えております。わが国は、両国の戦争状態はこれが終結した、日華平和条約においてこれは解決済みである、こういう立場であります。しかしながら中国側において政府間折衝においてどういう立場をとってくるか、これは場合において妥当な結論を得たらいい問題だろう、こういうふうに考えております。ただそれとは別に、中国の国民に対しまして、日中戦争におきましてわが国が大陸をじゅうりんし、たいへん御迷惑をかけた、これにつきましては私は深甚な謝意を表さなければならない、陳謝の気持ちを持たなければならない。また、ざんげの気持ちで日中政府間接触というものは始めなければならぬ、こういうふうに考えているわけであります。私もごちごちの法律論、条約論ばかり言っているわけじゃない、そういう気持ちであるということをとくと御理解願います。
  61. 黒田寿男

    ○黒田委員 時間がまいりましたので、質問をやめますが、外務大臣の御所見は大体わかりました。いままで歴代の政府がほったらかしていて、台湾との間の条約で解決がついたというような顔をしておった問題について、今回新たに中華人民共和国政府と国交回復の交渉をするにあたって、いま申しましたような深刻な戦争責任の問題はこちらから触れていくというお話でございましたから、ぜひ私はそういう態度をとっていただきたいと思います。  そこでもう時間がございません。これに続いて質問したいと思うことがまだありますが、きょうはやめます。私は、政府がそういう態度をおとりになる限りは、日華条約で戦争は終結したというようなことは言えた義理ではないと思うのです。外務大臣は先日の私の質問に対しまして日華条約で中国との戦争は終結したと理解する、こういうお話でございました。これは私ども承服することはできない。ただ、いまのように戦争責任を自覚される限りは、戦争終結の問題につきましても、もうそれは済んだのだ、終結されておるのだというような、そういう間違った考えを固執されないで、従来の考えを改め、戦争はまだ終結していないのだという見地に立って、戦争を終結させる、そして平和条約を締結する、できればやがて不可侵条約の締結まで進める。私はそういう順序で進むべきであると思います。しかし、これにつきましては先般は外務大臣意見の違ったままで終わりましたが、きょうもまたこの問題を引き続いて論ずる時間がなくなりましたので、また機会がありましたらあらためて質問いたします。きょうは残念ながら時間がございませんので、これで質問を終わります。
  62. 櫻内義雄

    櫻内委員長 西中清君。
  63. 西中清

    ○西中委員 せんだっての当委員会でも御質問いたしました点について、時間がなかったものですから途中でやめたわけですが、外務大臣は沖繩におけるB52のベトナムに対する爆撃戦闘作戦行動、この往路は地上給油で事前協議である、だが帰路は戦闘作戦行動ではないから事前協議の対象にはならない、こういう解釈がございまして、これは非常に論議がなされましたが、私はいまだに釈然としておらないわけで、そういうことははたして国際的に通ずる問題なのかどうなのか、こういうことが依然として残っているわけでございます。いずれまたいろいろと洗い直しはされるのではないかとは思っておりますけれども、このお考えはいまも変わっておりませんでしょうか。まずそこから……。
  64. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、事前協議の対象となる場合は、わが国の基地から戦闘作戦行動のために発進する場合である、こういう意味であって、帰り道は戦闘作戦行動に対して発進するということでありませんので、事前協議の対象にはならない、こういう見解を申し上げたわけでありますが、その見解には今日も変わりはございません。
  65. 西中清

    ○西中委員 これについてはいろいろと問題があるのですが、一点だけ念を押して聞いておきたいと思うのですが、そういう見解でございますと、戦闘作戦命令を受けて発進するB52、こういったこと、それからそのほかの艦船とか、陸上部隊等も同じような問題になろうかと思いますが、それぞれが戦闘作戦行動の任務の終了は一体どうなのか、いま非常にあいまいで、帰りと行きというような言い方をされておりますが、どこまでが戦闘作戦行動で、どこからそうでなくなるのか、その辺の御見解をお伺いしたいのです。
  66. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれは、この戦闘作戦行動を非常に技術的に解釈しております。したがって、爆撃行為につきましては、爆弾を目的どおり、あるいは任務どおり投げ終わったときが戦闘作戦行動の終了だ、こういうように見ております。
  67. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、投げ終わった時点で北ベトナムの領域におっても戦闘作戦行動ではなくなった、こういう解釈になりますか。
  68. 吉野文六

    ○吉野政府委員 もちろん、そのあとで、実際上B52に対して先方の戦闘機が向かってくる、それに対してまたB52が防戦して機関銃を撃ち合う、これはまた事実行為としての戦闘作戦行動がその時点において部分的に始まった、こういうことでございます。
  69. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、対抗する相手方の戦闘機や航空機が攻めてくる、こういう範囲においては全部戦闘作戦行動になる、そう理解してよろしいのでございますか。
  70. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これはまさにいろいろの態様があると思いますが、たとえば偵察機が全然武装せずに敵の上空を飛んでおった、とところが偶然先方は、いわゆる機銃掃射をもって攻めてきた、こういうような場合に、偵察機としては逃げるにしかずで逃げるのだろうと思いますが、これをわれわれは戦闘作戦行動と見るかどうかということでございまして、普通は、これは戦闘作戦行動でないのじゃないか、こういうように考える次第でございます。
  71. 西中清

    ○西中委員 いま言うておるのは、B52の場合に爆弾は全部落とした、これから帰ろうというときに、相手方の飛行機が追いかけてきた、この範囲でものを言っているわけですが、その点はどうですか。
  72. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点も、事情はつまびらかにいたしませんが、もし機銃でこれに対して立ち向かい、かつそこに戦闘作戦行動が行なわれれば、これは戦闘作戦行動であるとわれわれは見ます。
  73. 西中清

    ○西中委員 これは仮定の問題ですが、沖繩に給油をするために帰ってくる、先ほどの論議ではこれは事前協議の対象にならないということでございますが、かりに現実問題起こり得ない問題は、別といたしまして、沖繩上空まで追いかけてきた場合は、これはやはり事前協議の対象になる、いわゆる戦闘作戦行動である、こう解釈できると思いますが、先ほどのお答えからいけば。それは理論的には間違いないでしょうか。
  74. 吉野文六

    ○吉野政府委員 かりに、B52が爆弾を投下したのち、たとえばグアムに向かって飛びつつある、そこへ北の戦闘機が追いかけてきて、戦闘作戦を展開する、ということになれば、その場においては戦闘作戦行動が行なわれておる、こういうようにわれわれは見ます。
  75. 西中清

    ○西中委員 いまグアムとおっしゃいましたが、沖繩の場合はどうですか。
  76. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれの見解では、普通B52の場合は、沖繩の方向へは飛んでこないのが普通でございます。一直線にグアムないしはタイの飛行場のほうに帰るのだろうと見ております。
  77. 西中清

    ○西中委員 ですから、仮定の問題としてお聞きしておるので、沖繩ならどうなんですか。やはり戦闘作戦行動は継続している、グアムと何ら違いはないと思いますが、どうでしょうか。
  78. 吉野文六

    ○吉野政府委員 B52につきましては、そのような事態はあり得ないわけでございますから、これは仮定の問題としてしかお答え申し上げることはできませんですが、少なくとも沖繩の方向にB52が飛んできて、そのあとに北側の戦闘機が追っかけてくる、しかもその間に機銃のやりとりがあるということであれば、それはどこに限らず戦闘作戦行動が続いておる、こういうように見なければならないだろうと思います。
  79. 西中清

    ○西中委員 やっと回りくどいのにお答えいただきましたが、そうすると、海兵隊なら海兵隊がやはり追っかけられて沖繩の軍港に入った場合でも同じことがいえますね。相手方がずっと攻めてきたということになれば、どうでしょうか。
  80. 吉野文六

    ○吉野政府委員 海兵隊は普通は軍艦に乗っておりまして、そして戦闘作戦行動に入る場合は、軍艦からおそらく上陸用舟艇ないしは飛行機によってパラシュートでおりるのだろうとわれわれは想像しておりますが、したがって、海兵隊が引き揚げてくる場合はもとの軍艦に帰ってくる、したがって、軍艦に乗っておる海兵隊に対していかなる戦闘作戦行動が北側から行なわれるかということは、あまり考えられないことだろうと思います。
  81. 西中清

    ○西中委員 考えられないとおっしゃいますけれども、現実問題として、海兵隊が輸送船団に搭乗しておる、北側からそれを攻める、これは公海上であろうとどこであろうと攻める、これは戦闘作戦行動になりませんか。
  82. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いずれにせよ、海兵隊は、第七艦隊の軍艦なり上陸用舟艇に引き揚げてくるわけでございますから、したがって、その場合の戦闘作戦行動というのは、むしろ第七艦隊の艦船対北側の軍、こういうことになるだろうと思います。
  83. 西中清

    ○西中委員 時間もありませんから、海兵隊のほうはまた別の機会にしまして、B52は、先ほどそのように認識しておられる、少なくとも、そうなると、帰路は全部事前協議の対象にならない、これは戦闘作戦行動でないなどということは、非常に大ざっぱな判断ではないか、これは非常に矛盾だろうと私は思っております。そう言えば、またそうじゃないとおっしゃるから、それ以上お話いたしませんが、そういう点では非常に問題が多い、矛盾がある、こういう考え方に私は立たざるを得ないわけであります。外務大臣、どうでしょうか、最終的に。B52の場合です。
  84. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど申し上げたとおりです。帰路は事前協議の対象にしておりません。しかしB52につきましては、沖繩県民の感情を考慮いたしまして、緊急着陸といえども繰り返すことがないように慎重にしてもらいたい、こういうことを申し入れております。同時に沖繩にB52がベトナム戦争のために移駐してくるということについては、これは絶対ないようにということを要請し、これをアメリカも了としておる、こういうことでありますので、ひとつ御安心願いたい、かように存じます。
  85. 西中清

    ○西中委員 現実問題としての話で、先ほどからおっしゃっておるようで、先ほども吉野局長がはっきり答えられましたように、これは起こり得た場合には、当然戦闘作戦行動が行なわれておる、こういう段階に、部分に含まれてしまうと思います。  もう一つの見解といたしまして、少なくとも旧日本軍等では、戦闘作戦行動というものは、基地に帰投して、指揮官任務終了の報告を行なって初めて終わるというのが、これはもう常識的なものじゃないか、こういうようにも思うわけですが、そういう点でいっても、帰路地上給油をすることも当然往路と同じ意味を持っている。要するにグアムまで帰ってそうして司令官に任務終了の報告をする、ここで初めて戦闘作戦行動が終わりである、こういうように考えるのは私は戦時の慣習ともいえるのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  86. 高島益郎

    ○高島政府委員 戦闘作戦行動の始期及び終期につきまして、私ども軍事的にどういう点が終期かということについてはつまびらかにいたしませんけれども、少なくとも安保条約の第六条の交換公文にございますのは、日本から行なわれる戦闘作戦行動の基地としての日本国の施設及び区域の使用、これを事前協議の対象にするということでございますので、いずれにいたしましても日本から発進したのでないB52につきまして、たまたま沖繩に給油のために来たという事態につきましては、これは当然対象にならないというのがわれわれの解釈でございます。
  87. 西中清

    ○西中委員 その場合に、帰路は問題がないんだという言い方をされておりますが、そうしますと、戦闘作戦行動はもう終了したんだ。爆弾を落としてそれで終わりなんだ。この時点で相手方が反撃してきた場合には、これは違法ということになるのでしょうか。その点はどうでしょうか。
  88. 高島益郎

    ○高島政府委員 仮定の問題でございまするけれども、全く仮定の問題といたしまして、日本の基地から発進したのでないB52につきまして、それがたまたま任務終了後反撃を受ける。それが沖繩周辺で戦闘が行なわれる。B52につきまして私はどういう装備があるか存じませんのですが、沖繩の周辺で戦闘が行なわれる。これは事実上の戦闘行為でございまして、そのこと自体が日本から行なわれる戦闘作戦行動というものとは全く異質の問題であろうというふうに思います。
  89. 西中清

    ○西中委員 先ほどグアムに帰る、こういう立場でものをおっしゃっておりますが、現時点においてはなるほどB52は沖繩には駐留しておらない。しかし一つの仮定としてB52が沖繩に駐留した場合、ベトナムから帰ってくる、そしてKC130がその途中でもしも給油をするという場合には、これは事前協議の対象になるでしょうか、ならないでしょうか。もう一ぺん申しましょう。沖繩からたち、帰ってくるのも沖繩である。途中で給油をする場合、これはどうなるでしょうか。
  90. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生の御質問が、これは全く考えられない仮定でございまするけれども、沖繩にB52が駐留して沖繩から爆撃のために発進する。これはもう当然その段階で事前協議の対象になりますので、その他のことについてはもう言う必要のない問題であろうと思います。
  91. 西中清

    ○西中委員 これは問題が変わりますが、過日外務大臣は、ベトナムの戦争の激化に際して、米軍のベトナム戦争介入は北からの侵略に対する自衛権行使であるというように答弁をされておる。これは何回もなさっておると思います。そうしますと、外務大臣の御認識は、北ベトナムは侵略者であるという御認識であるわけですか。どうでしょうか、その点は。
  92. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういうふうには言っていないのです。私は非常に注意深く言っているのですが、そういうふうにアメリカは主張しておる、こういうことであります。北にも北のまた主張がありましょう、そういうことで、その黒白はこれは安保理事会において結論を出すべき問題である、こういうふうに言っているわけです。誤解がないように申し上げますが、わが国は北ベトナムに対するアメリカの政策、これはもともとからこれを深く理解をし支持する立場です。ただ、支持する立場でありますが、そのベトナム政策に含まれるところのアメリカの軍事行動、その一つ一つが戦時法規に照らしてどうであるとか、あるいは国連の憲章の精神に照らしてどうであるとか、そういうことになりますると、私どもはこれは判定のらち外の問題である、これは安保理事会において判定すべき問題である、こういうことを申し上げておるわけであります。
  93. 西中清

    ○西中委員 それでアメリカ自衛権行使として、北ベトナムのダムの堤防、工場、鉄橋等の爆撃は陸戦法規に確立されている戦時目標主義の逸脱ではないか、このように私たちは考えるわけです。一言で言えば、陸戦法規が禁止しておる無差別の攻撃であるというように私たちは考えるけれども、その点は御見解はどうでしょうか。
  94. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 軍事行動を含めまして、アメリカのベトナム政策につきましては、わが国はこれを深く理解し、かつ支持をしておるわけです。ただその一つ一つの行動が戦時法規に対してどうかとか、あるいは国連の憲章の精神に対してどうであるかということは、わが国は判定すべき立場にはない、これは国連において判定すべき問題である、こういうことであります。
  95. 西中清

    ○西中委員 国連で判定すべき問題だとおっしゃっても、これは実際上はあり得ないことだろうと思います。その論議はこの前もやりましたので省略いたしますけれども、そういう現実性のない答弁をされても非常に国民としてはわからぬわけですね。現実問題としては、今日までベトナム戦争については議題にも上がっていない。それが、国連できめるまではこっちは言うべき立場でないんだというような、ほんとうにあり得ないことを答弁としておっしゃっておるというのは、私は非常に残念だと思っております。  そこで、時間もありませんから外務大臣に御見解を聞いておきたいのですが、パリ会談の南ベトナム臨時革命政府首席代表であるグェン・チ・ビン女史が過日日本政府に対して発言をいたしておりまして、御存じだろうと思います。この中で沖繩をベトナム侵略のための最大の米軍基地として米軍に提供していることは、佐藤政権の戦争犯罪における共犯行為として責任は重大であるというように言っております。これについては外務大臣はどういうような御見解を持っておられるのか、お伺いいたします。
  96. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ベトナムにおいて戦闘行為がありまするから、日米安全保障条約を締結をいたしておりまするわが国といたしますると、わが国米軍が駐とんしておる、そういう関係から何らかの影響はある、そういうふうに考えますが、どこまでもわが国を軍事作戦行動の基地にはいたさないというかたい方針をとっておりますので、北ベトナムがそうおっしゃることは、私は多少行き過ぎじゃあるまいか、そういうふうに考えます。
  97. 西中清

    ○西中委員 それではVOAについて若干のお伺いをしておきます。これはアメリカ局長にお願いしたいのですが、過日私はいわゆるVOAが五年の期限で継続して置かれるということで御質問をいたしました。その中で、私は聞いておかなかったのですが、吉野さんが御丁寧にお答えいただいた中で、いささかの疑問を持った部分がございます。それは何かというと、VOAの撤去についてお答えになっている段で、二年後には先方と協議をする。「その協議の過程において先方はどこどこへ移りたい、ついては、先方としては工事その他について日本側の、場合によっては何か援助をしてくれというようなことを、つまり援助というのは工事の建設に援助を頼むということを言ってくるかとは思いますけれども、」こういうような御答弁がございました。この援助というのは一体何ものでしょうか、詳しく御説明いただきたい。
  98. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この援助は、たとえば工事を請け負ってくれとか、日本は技術が進んでおるから、日本の請負師はこういうことが簡単にできるんじゃないか、アメリカのエンジニアに頼めば非常に時間がかかるから頼む、そういうようなものをあっせんしてくれ、そういうようなことを私は申したわけでございます。
  99. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、この援助は単に協力というような軽いものであって、財政負担の関係のあるものではない、こういう御見解でしょうか。
  100. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  101. 西中清

    ○西中委員 これは、私は聞いておらないのに、吉野さんの頭のすみにあったということで、何らかの話し合いはあったのでしょうか。
  102. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、VOAの移転問題を論じたときに、わがほうはなるべく早く出てくれ、ところが先方は、いやいやなかなか建設それから適当な場所をさがしたりその他について時間がかかる、こういうようなことを言い合いまして、その際、一体建設はどのくらいかかるんだといってわが国関係者にも問い合わせたところが、たとえば土地をさがすのに一年くらい、建設するのに二年くらい、こういうようなことを言ったわけでございます。したがってわがほうは、それではわれわれの工事によればそのくらいでできるんじゃないかというような話をしたときに、先方は、あるいは将来日本側の請負師に頼むかもわからぬ、その際はあっせんしてくれ、こういうようなことでありまして、別にそれ以上深い話はないわけでございますから、おそらくアメリカ側は、工事をする場合には日本の請負師ではなくて、あるいはアメリカのエンジニアを使うことが多いんじゃないか、こういうように考えておりますが、この点は将来の問題でございます。
  103. 西中清

    ○西中委員 どうも私は、援助とおっしゃるから、予算が関連して要るんじゃないかというように受け取ったわけですが、いまのお話ですと、絶対にあり得ない、こういうことで一応の安心はします。しかしアメリカ側からもしもこの移転について何らかの財政的な援助をお願いしたいという要求が出た場合は、外務大臣、どのような態度をとられるでしょうか。
  104. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ側から援助をお願いしたいというケースは想像できませんし、かりにそういうことがありましてもお断わり申し上げます。
  105. 西中清

    ○西中委員 この前質問をいたしましたときに、吉野さんだったと思いますが、沖繩の米軍基地の縮小について六千五百万ドルというものが一応話題にのぼった、こういう御答弁がございました。これは外務大臣、やはり日米安保関係で払わなければならない、こういうお考えだろうと思いますが、その点はどうでしょうか。
  106. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 六千五百万ドルという額は、六千五百万ドルになるのか、あるいはそんなに行かぬで済むのか、あるいはそれ以上になるのか、それは額はわかりませんが、アメリカ軍の基地の整理統合という問題が起こりますれば、その金額はわがほうにおいて負担をする、こういうふうに観念しております。
  107. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、私たちは当面、少なくとも沖繩交渉の段階のお話し合いの中にはかにもこういったものがまだあるんじゃないか、こういうふうに感ずるわけですが、ほかに財政的な負担を負わなければならないと予測できるようなことはございますでしょうか。
  108. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そのほかにはいま想像できません。その六千五百万ドルという問題も全く仮定の問題でありまして、これがそんなにかかるか、かからないのか、その辺もわかりません。これは沖繩交渉できまった問題ではないのです。基地協定が沖繩にも適用になる当然の結果としてそうなっていくというだけの話でございます。
  109. 西中清

    ○西中委員 将来のために私は重ねて念を押しておきたいのですが、VOAについて移転の援助は断わると先ほどおっしゃいましたが、これは当然のことであるし、財政的にもそういうことは無理なんじゃないかというように私は考えております。そういう関係で支出をするということは無理な話ではないかというふうに思いますが、その点はどうでしょうか。
  110. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 沖繩交渉の経過から見まして、VOAの移転につきましてわが国が負担に応ずるという必要は全然ありませんし、もしそういう申し出がありましても、これははっきりお断わり申し上げます。
  111. 西中清

    ○西中委員 質問時間も参りましたので、以上で終わりますが、これは次の機会でけっこうでございますから御答弁をいただきたいのです。  というのは、先日の原子力協定の審議の際に、わが党の同僚委員から質問をいたしました。そのときに、アメリカ、イギリスは核防条約の当事国になったのだから、日米、日英の原子力協定の付属文書に規定されているような協議を米、英とわが国との間で行なったかという質問をいたしました。これに対して政府側は、やっていない、こう御答弁になっております。じゃ、なぜやらないのか、その理由はどうなんだ。これに対して穂崎参事官がお答えになっておりますが、そのときに、米国との書簡の交換では、日米両国が核防条約の当事国となった場合に協議を行なうと規定されている。そのあと、英国との場合も同様でありますというような御答弁をされておるわけですが、これは少しおかしいんじゃないか。英国との場合は「前記の協議は、いかなる場合においても、いずれか一方又は双方の当事国政府が核兵器の拡散防止のための条約の当事国となったときには行なわれ、」こういうように条文ではなっておる、このように私は理解をしておりますが、その後これは変更されたのか。それとも英国の場合も同様であるという御答弁は間違いであったのか。これは時間もかかるでしょうから、次の機会に教えていただいてけっこうでございます。
  112. 穂崎巧

    ○穂崎政府委員 お答えいたします。  実は先日私が答弁申し上げましたときに、英国の場合も同様であると申しましたのは非常に舌足らずでございまして、そのために誤解を招きましたことをおわびいたします。私が申しましたのは、結論的に同じだということでございますけれども、英国の場合は、協定の了解覚書で、さっき先生のおっしゃいましたように、いずれか一方または双方が核拡散防止条約の当事国となったときは協議を行なうということになっております。ただこのいかなる場合にも協議を行なうと書いてあります意味は、協議を申し入れる権利があるということでございまして、協議を求めると言ってきた場合は必ず受けなければいかぬ、そういう意味でございまして、そういう意味におきまして、こちらからも向こうからも協議の申し入れはございませんから、したがっていままで協議はやっていないという意味でございます。結論的にはアメリカの場合と同様に協議をやったことがないということでございます。
  113. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢益君。
  114. 曾禰益

    ○曽祢委員 私、きょうは安保条約それから基地の問題、自衛力問題等にも触れた御質問をする予定でございますが、高見文部大臣に非常に無理をして御出席いただいたので、先に御質問申し上げます。  テルアビブにおける例のパレスチナ解放人民戦線と関連を持った、不幸なことであるけれども、わが国の若い者三人がやりました暴挙について質問申し上げたいと思います。  先刻外務大臣からも当面の措置、その中には日本側としてのイスラエル政府に対する陳謝、そのための特使の派遣その他の当面の措置についてお話がありました。また、このような事故の再発防止についてのことも考えているように伺いました。これらのことについても、外務省の領分に関しては、たとえば特に旅客機の乗っ取り、あるいは旅客機に武器携帯で入る、こういう不法分子の取り締まりについてどういう国際協力をやるのか。さらにわが国の国内措置として、どうもいまの法令の網をくぐれば、戸籍抄本持ってきて全然違った人間が自分の写真を貼付してパスポートをとってしまうということもできるような、そういう抜け穴もあるのじゃないかという気がしますし、さらに出入国管理、外国人の入国についてもまた日本人の出国についても、不法分子について取り締まりがぴりっとしてないような気もいたします。それから国内における外国人の活動等についても、これは同じことですけれども、少しだらしがないのじゃないかという気もいたします。  これらの問題についても、これは外務大臣に伺いたいと思っているのですけれども、いま日本人としてこの問題について一番考えなきゃならないのは、外国にすまない、これは非常に必要なことであるし、それから法律論は別としても何らかの誠意をあらわす。つまり被害者に対する実質的なお見舞いとかは大いにやるべきだ。ただ、私のおそれているのは、イスラエル側としては、これはもともと解放民族戦線が悪いのだということに重点を置いているので、そうなると、日本人が何かやや安心してしまうというところがあったのではたいへんなことになるのではないか。外務大臣が言われた、この事件が与えた日本人のイメージダウンこれよりはなはだしきはなし、それが私は非常に大きな問題だと思う。日本の信用を失墜した、日本人の気味悪さと残忍性、無目的な暴力、これに対する深刻な自己反省が行なわれるのが一番必要なんで、外国側の評判を気にするのではなく日本側の姿勢を正すということが大切で、いま一番問われているところじゃないかと思う。  そういう意味で考えてまいりますと、これは外務大臣の分野もありましょうけれども、やはり基本において日本の政治の姿勢、たとえば言うまでもなく経済優先主義、人間性に対する尊重が足りない、この政治姿勢に大きな責任がある。同時に人間形成について、これは高見文部大臣に問題がかかってくるのじゃないかと思うのですが、そういったような日本の教育の欠陥に非常に大きな責任があるのじゃないか。特に外国から見れば、赤軍派のハイジャック、連合赤軍のあのまことに残酷きわまりないリンチ問題あるいは警察官等に対する暴力的射殺や何かの犯行、そうして今回の事件、これはやはりそういった若い者、特に学生等を中心とする若い者の行き方に非常に問題があるのではないか。そういう意味でこれは佐藤内閣全体の責任ではないかと思うのですが、四十五年の秋のあの大学紛争が大学の封鎖というものに対する措置が、いわゆる臨時措置法が一応成功したといいますか、封鎖状態がなくなったら、それでほんとうの大学の改革なり教育改革に対する熱意と緊急性に対する認識が完全にどこかへ行ってしまった。そのひずみが赤軍派、あるいは連合赤軍、そして今度のPFLPのこういった国際的な行動に走っている。私にはそういうふうに考えられてしようがない。これはラジオで聞いた程度のあれですけれども、きょうの閣議で文部大臣もこの問題に触れられたそうですが、たまたま通産大臣の意見として聞いたのですけれども、学生の管理を強化する。ただ、管理を強化するなどという問題ではないのではないか。それは学校の姿勢もよくないし、一部の無責任な革命をあおるような言動をしている教授なんかも大いに反省してもらわなければならぬと思いますが、学生の管理の問題としてとらえるところに本質から全然はずれた間違った点があるのではないか。私は文相が閣議でどう言われたか聞いておりませんが、そんな問題ではない。まず、大学の改革についての熱意を示してないじゃないか。大学の改革ばかりでなく、今回の場合見てみると、この学生の岡本ですか、いかにも何にも知らないんだな。イスラエルアラブとの間の西暦始まって以来の二千年になんなんとするいろいろな紛争のどこに問題があるかも知らずに、解放戦線に日本人だったらうまくパスしてやれるのではないかというところに乗せられておるような幼稚さというか、そのくせ人命に対する尊敬の念が全然欠けておる態度、こういう学生を生んでいるということに対するわれわれ親としての、あるいは成人した日本人としての、特に政府としての反省が足りないのではないか。また教育者の子供が不幸にしてこういうものを二人も出している親と子との断絶というものも、家庭の教育という問題としてももっと真剣に考えるべきではないか。いろいろ考えれば考えるほどやはり基本的には政治姿勢にあるのではないか。もう一つは、教育の改革というものがいまや絶対やらなければならない全く緊急の課題になっているのに、佐藤内閣全体の政治姿勢から、何でもやっかいなことはあと回しにしろといったようなその日暮らし。大学の紛争という形がなくなると大学の改革がどこかに——これは一部の大学側の責任でもあると思いますけれども、政府の姿勢がなっていないのではないか。高見さんはこういう問題について非常にまじめな方であるし、中教審の答申というものにやはり聞くべきものが一部あるのではないかと思うのですが、そういう問題をほんとうにとらえて——新しい中教審のメンバーはけっこうです。本気に教育改革、その中には大学ばかりでなく、幼稚園に行くのにもその前にどこかの塾に入って幼稚園の予備校までできている、すべての教育課程というものは次の教育課程のただ試験の、しかもマル・バツ教育の一つの試験に通りさえすればいいのだというようなことがあるのではないか。つまりわが国の学歴偏重でほんとうの教育が尊重されていない、この大欠陥がここにあらわれているのではないか。そういう意味で高見さん、ひとつこの際あなたの分野を徹底的に直していく必要があると思うのですけれども、あなたのお考えを伺いたいと思います。あとで外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  115. 高見三郎

    ○高見国務大臣 国際的にまことに申しわけない事件を引き起こしまして、しかもその中には国立大学の学生がおったということは、文教を預かっております私といたしましてはまことに責任の重大さを感じております。  先生御指摘のとおり、終戦後の教育は民主主義教育だ、人命尊重の教育だということで終始貫いてまいりました。ところが、結果は逆に出ておるのが今日の姿であります。私はこのことをまず反省してみなければならないと思うのであります。  御指摘のように、私は大学だけを責めてもこのことの解決にはならないと考えております。幼時から小、中、高等学校、大学を通じ、さらに社会教育を通じまして、生涯にわたる教育の中においてほんとうの意味での人間の尊重、人命の尊重というものを国民全体に理解してもらう教育のシステムというものを打ち出さなければならないと思っておるのであります。ことに中教審の答申が、生涯にわたる教育ということを特に強調しておりますゆえんのものも私はそこにあるだろうと存ずるのであります。大学紛争が一段落いたしましたからといって、大学が必ずしも正常化したという姿でないことは曽祢先生もよく御承知のとおりだと思います。私は、一時紛争がおさまっておるという状態で大学が正常な姿に戻ったというような安易な考え方はいたしておりません。少なくとも日本の教育制度というものについて根本的にメスを入れてみなければならない時期が来ておる。それが中教審の答申をいただきました段階における私の仕事である。答申は中教審がなさったのでありまするけれども、行政は私がやる立場であります。政府がやるべきであります。この意味においては、私は、実はけさも鹿児島大学の学長がお見えになりまして、この犯行をいたしました学生について詳しく事情を伺ったのでありまするけれども、どうも大学の管理体制のみを責めているわけにもまいりません。しかも、この学生はハイジャック事件に関係いたしました学生の弟であります。でありますが、警察当局は若干のマークをしておったようでありまするけれども、学校における日常の授業は非常にまじめに受けておった。たまたま今年三月、一年間の休学を友人の手を通して出したのでございまするけれども、大学当局といたしましては友人の手からの代理の休学届けは受けられないというので、父親であります熊本県に居住いたしております元小学校の校長をやっておった人でありまするが、この人を呼びましてどうするのだということを聞きましたところが、おとうさんのほうからぜひ一年休学さしてやってもらいたいということを直接申し出がありましたので、休学処分にした。私、管理の面から申しますると、この点に、大学を責める理由はないと思います。思いますが、しかし、いまの大学がいまのままでいいのかということになると、先生御指摘のとおりの数多くの問題があるわけでありまして、この意味におきましては私は教育制度改革のために全力を尽くしてまいりますと同時に、今度の被害を受けられました方々に対して心から弔意を表し、日本国民としてまことに恥ずかしい思いをいたしておるわけでありまして、これは一にも二にも、私は戦後の教育にどこか欠けておるところがあるということを率直に認めざるを得ないと反省をいたしておる次第であります。今後私どもは、大学の管理運営等につきましては、本日も通達を出したばかりでありまするけれども、それだけでは解決する問題ではございません。同時にまた、教育改革の問題は曽祢先生御承知のとおり、これは相当の実験実証を積み重ねて実証の上に立っての確信のある改革でなければ、思いつきの改革をやってはならないということが私自身の自戒いたしておるところでございますので、いかにも手ぬるいというおしかりを受けるかもしれませんけれども、私は事いやしくも民族の教育というものは、相当長い目で見なければならないという観点に立って鋭意検討をいたしておるところであるというように御理解をいただきたいと存じます。
  116. 曾禰益

    ○曽祢委員 文部大臣とのあれは時間がありませんからまた次の機会にいたしまして、どうぞお引き取り願います。  この問題でもまだ外務大臣に伺いたいと思ったのですけれども、私の持ち時間がもうなくなってしまいましたので、外務大臣、全然話が変わりまして、最近外務大臣の本院内閣委員会における大出議員に対するお答えの中あるいはきのうでしたか、参議院の質疑応答等を通じていろいろ安保条約について、簡単にいえば有事来援といいますか、長い目で見ての話とは思いますけれども、駐留基地がほんとうに大体なくなる方向で、しかしアメリカとの日米安保条約の抑止力が残って、そして必要な場合にはアメリカが助けに来る、こういうような有事来援というようなことに対してもやや賛成的であるかにとられるお話のようであります。また事前協議についても、昨日のあれはいろいろあったようですけれども、事前協議ばかりでなくて随時協議、安保条約第六条じゃなくて第四条を活用したらどうだという意見に対しても、それもそうだな、そういうことが断片的に伝わってまいりますと、なかなかいいじゃないか、前向きじゃないか、ことに安保条約については私どもの考えに近いのじゃないかというような評価も起こるかもしれないのです。私は、これはしかし断片的じゃいかぬと思うのですね、こういう問題は。で、実は時間は短いのですけれども、真意那辺にありや。  これは私はどうしても、この間からの当委員会における応酬、また私の総理並びにあなたに対する質疑、あなたの応答からも、やはり当面必要なのはベトナムに過剰介入しないようにしないように、極東というような問題はなるべく制限的に考えていく。それからまたこれは外務大臣がよく言われる、とにかく沖繩も返ってきて、ほんとうに全部重要な基地をかかえたまま、しかもベトナム戦争が少なくとも一時的にもせよ激化しているのだから、事前協議についても、やはり十二年ばかりたっているのですから、洗い直してみる。  それからもう一つは、基本的には国際情勢がとにかく中米、中ソの会談等を通じて台湾海峡における緊張、これもよほどいいほうになってきている。それから何といっても朝鮮半島の情勢もやや明るい方向に向いていることは事実、そういうような関係から基地の問題、安保条約の今後のあり方を考えると、やはりますます過密化する太平洋ベルト地帯の基地問題はかえって日米安保協力上にマイナスのファクターにもなるから、安全保障条約の今後のあり方としては、基地駐留のほとんどないような、しかし第七艦隊は日本に来て補給し、あるいは修理するというようなことの状態として、特に航空基地というもの、たとえば嘉手納基地みたいな非常な攻撃的なもの、これはやめてもらう。それで基地は大体民間に返還するけれども、必要欠くべからざるものは自衛隊がこれを引き受ける形というようなことが真剣に少し考えられていいのではないか。ほんとうにそういう意味でお考えになってのお話なのか。これは久保局長意見等も加えての——むろん江崎長官にも伺いたいのです。まず安保条約の基本に触れる問題として外務大臣の真意といいますか、特に内閣委員会での応酬、それからきのうの参議院の、あれはだれでしたか、水口議員に対する、そこら辺のところをちょっと、はっきり踏まえてのお答えを願いたいと思う。
  117. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私どもは安保条約はこれを必要とする、こういう立場に立っておるわけです。しかしながら、いま日本がこれだけの経済力をたくわえるに至った。その日本日本の安全の多くをアメリカに依存をする、こういう状態は好ましくない、こういうふうに考えます。わが国わが国としてできる限りの自衛力を増強し、そしてそれに伴って米軍日本撤退ということを考えなければならぬ、そういうふうに考えておるわけです。ただ、わが国は、午前中も申し上げましたが、憲法上の制約もある、国民的のコンセンサスもある、そういうようなことから、自衛力の増強には限界がある。それでは抑止力として必要を満たすわけにはいかぬ。そこで、抑止力の足らざるところを日米安全保障条約によって補なう、こういうたてまえをとるわけであります。そういう考えが基本的な考えでございますが、自衛力を増強する、それに伴って米軍が逐次撤退をする、そう申しますると、まあ曽祢さんのよくおっしゃる有事駐留というような形になってくるだろうと思いますが、しかし、第一線部隊がかりにいなくなりましても有事駐留が実効ある活動をなすためには、どうしても有事においてこれを迎ええる施設、つまり補給とか補修とかそういうような後方施設、これが残る必要はあるだろう、こういうふうに思うのです。また迎えるだけの施設、その土地等を含めまして、ある程度の基地というものを保存するということも必要だろう、こういうふうに考えますから、完全に米軍が撤退をする、有事駐留だからといって全部米兵がいなくなる、こういう状態は安保条約を必要とするという考えに立つ私どもとしては、これは想像できない。しかし、思想的には有事駐留というとそういうような考え方、そういうふうになるわけですが、これを技術的、現実的に申し上げますると、米兵が全部撤退をして、そして有事になってまたやってくるということは、これは実際問題として不可能なことであろう、そういうふうに考えます。  それから、きのう参議院で水口委員質問に対しまして私はこう答えたのです。随時協議という制度があるじゃないか、これは安保条約第四条であります。これが実施、活用されてない、発動したらいいじゃないか、こう言うから、いや随時協議はしょっちゅうやっております、やっておりますが、事重要な条約実施上の諸問題がありますれば、その際は銘打ってこの条約第四条による随時協議という形をとってもこれはまあけっこうだし、それをとりましょう、こういうふうなお答えをしておる、こういうことでございます。
  118. 曾禰益

    ○曽祢委員 私も、限定された意味で、日米安保条約は有用である、こういう考えでありますが、ただ駐留は、常時駐留することにはいろいろなマイナス面もあるので、したがって、常時駐留を制度的の問題としていろいろ議論はあるでしょうけれども、少なくとも実際はミニマムにしていく。いま外務大臣も言われたように、これは第七艦隊の補給なり修理なり、こういうものは必要でしょう、ですからそういうこと。それから、まあ通信施設のある種のものは、これは必要かもしれない。しかし、特に一番問題になるのは、何といっても飛行場というものが一番問題になる。そういうものについては、なるべくけばけばしい駐留というものはなくしていく。それはもう西ドイツや何かの場合と全然違いますからね。向こうは、西ドイツやベルリンなんかは、何だかんだといっても東西の兵力の相互縮減というものが進まない限りは、見せかけでアメリカにいてもらったほうがいいのですから、そういうのと日米関係は非常に違うので、基本的には常時の駐留を減らして有事即応の協力体制をどういうふうにつくったらいいかということ、私はそういうふうに考える。これは真剣にひとつまじめに、多少時間をかけてでも考える必要がある。この点はお互いに、時間がありませんから今後の研究題目にしたいと思うのです。  そこで次に、それにも関連いたしますけれども、私は、防衛庁の人が何か言ったら何でもかんでもけしからぬと言うつもりは毛頭ありません。久保局長の考えなんかも、やはりぼくなんかのを勉強したのかな、だんだんりこうになってきたと思うのですけれども、しかし、北村連合艦隊司令長官なんかのあれはよくないですね。あれは攻撃型空母を持つのだあるいは原子力によって動く、いわゆる潜水艦も持ちたい、そういったようないわゆる制服組の欲で、浴や夢といいますか、そういう先走った姿は、これはほんとうの意味のシビリアンコントロールではないというふうに私は考える。そういう点についてはやはりきちんとした規律が守られなければいかぬ。と同時に久保君のような研究は大いにやったらいい、やる必要がある。ただそれが、外務大臣にもあとで伺いたいのですけれども、そういうものの具体的なあらわれは、かつて中曽根君が長官のときにかなり思い切ったことを提案しているわけですね。ほんとうに有事来援方式をとろうと思えば、アメリカの飛行場等は明け渡してもらう。そして要らないものは——要らないというか——なるべく民間にお返しするか、必要なものは自衛隊が預かる、そうして共用する。それを考えた場合に問題になるのは、どうしても地位協定の問題があるわけです。地位協定の第二条4の(a)(b)いずれかということは、いまの協定そのまますなおに読めば、どっちかが主導権を持っておる。基地に一時だけ借用できるというのはほんとうの意味の共用ではないのですね。そこで、まじめに考えると、かなり継続的にも両方が使えるということを考えると、地位協定そのものを前向きに直していく、そういう問題が出たのです。当時の外務大臣は、そんなことを言ったらたいへんだ、安保条約の改定の問題ともからむのだから、大論争になったらたいへんだという、もう逃げの姿勢で、絶対に地位協定はいじらぬということで逃げた。逃げただけでは済しないのですね。ですから、外務大臣も、事前協議で押えるだろうし、安保条約の運用においても考えるだろうし、また地位協定も必要に応じて直すものは直したらいいじゃないか。いきなり直すというふうにきめる必要はないけれども、そういうものも検討していくときに、初めて有事即応体制というものが具体化してくるのではないか。こういう意味で、かなりいい方向なら奨励の意味を含めて、長官に伺いたいのですけれども、どうですか、そういう点について有事即応体制に近づくという場合に、やはり口で言うだけではいかぬので、戦略の見積もりの問題もございましょうが、基本姿勢としてあまり大き過ぎない自衛隊、あまり規模の大きくいかないという体制としてはたいへんけっこうなんです。それから基地等の利用についてどうしたら有事即応体制がとれるのか。その場合地位協定の検討もする必要があるのではないかということに対するお答えを伺いたいと思うのです。
  119. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 有事駐留と申しますか、そういうものの考え方においては、私、さっき外務大臣説明されたとおりにものごとを考えております。久保論文も引き合いに出されましたが、これは久保君が個人として一つ意見を述べたのであって、いま防衛庁全体の意見になっておるわけでもありません。そればかりか、彼の論文を私二回ほど読んでみたのでありまするが、日米安全保障条約は必要であるという前提に立ってこれを多面的に政治の面、経済の面、そういった面でももっと密接にいくべきだ。有事駐留につきましては、やはり飛行場等々がなくていいという議論にはなっておりません。やはり必要に応じていつでも来るというためには、ある程度相手の主張も認めなければならぬのではないか。有事即応体制というものはそういうところから始まる。そればかりか、少なくとも日本としても、これに協力を待つ形だということは主張として出ておるわけであります。しかし同時にアメリカに対しては、さっき外務大臣も触れておられたように、安全保障条約のもと、基地というものもだんだん縮小の方向に向かってしかるべきではないか。それはアメリカ側にも努力をしてもらいたい。全体の背景としては、日米安全保障条約は日本側は必要であるが、むしろアメリカ側は、一体基地の提供だけはしてくれるが、アメリカに何か事があった場合——今度は米ソの戦略核兵器の不実行とか制限の問題等によりまして平和の方向が打ち出されて、たいへん好ましい形ではあるが、アメリカに危険があったときには何ら日本協力しないじゃないか、基地の提供だけじゃないか、むしろ日米安保条約は破棄すべきだという意見アメリカの政治家の間に顕著であることは、これは曽祢さんも御存じのとおりであります。したがって、そういうものを踏まえながら、いろんな場合を想定してわがほうも考えてみる必要があるというのが、論文の背景をなしておる一番の根本のような気が私はいたします。したがいまして、アメリカにも基地の縮小、これは私、いま日本本土の場合はおおむね理想的にいっておると思います。沖繩の場合は、これはまだ返還されて間がないわけでありまするから、非常に大きな基地がそこに居すわっておるという形、しかもベトナムがエスカレートして、今日ああいう好まざる方向にいっておる。しかし、これなどは近い将来において、私はやはりだんだん縮小されてしかるべきものというふうに考えております。
  120. 曾禰益

    ○曽祢委員 地位協定の点についてのお答えだけ伺って終わります。
  121. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはいまにわかに改定をするということについて、私どものほうからいま特別の意見はございません。むしろその問題については外務省側の意見にまちたい、こう考えております。
  122. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本善明君。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 私は、まずベトナムの問題について外務大臣に伺いたいと思うのであります。  ニクソン大統領がソビエトへ行って、テレビの演説で、ターニャを忘れない、一人の子供たりともターニャのような生活を送らせないように可能なことのすべてをしようという演説をしたことは覚えておられると思う。このターニャのことは、御存じのように、第二次世界大戦のレニングラード戦で、九百日、ヒトラーの軍隊が包囲をして、その中で飢死をする人約百万の犠牲が出た。十二歳のターニャは、食べるものがなくなっておかあさんが死に、おとうさんが死に、きょうだいもみな死んでいく、そういう中で自分もとうとう命がなくなるわけです。その日記を書いた。ところがこのことに触れてニクソン大統領は演説をしたわけだけれども、現在ベトナムで無数の、何千何万というターニャが生まれているのです。私はまことにこのニクソン大統領の演説はそら涙だ、まことに憤慨にたえない気持ちで聞いたわけですけれども、外務大臣、このターニャのこと、それからベトナムで子供がそういう運命になっているという問題についてどう考えておられるか、ニクソン大統領のその演説についてどう考えておられるか、まず御意見を伺いたいと思います。
  124. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ターニャについてのニクソン大統領の演説はたいへんよかった、こういうふうに思います。ベトナムにつきましては、早くベトナムが平和なベトナムになってほしいというふうに感じております。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 私はそういうような通り一ぺんの答弁はまことにニクソン大統領と同じそら涙で、実際にベトナムで子供がそういう運命に立っていることについて、外務大臣はいささかもお考えになっていないのじゃないかと思って、たいへん遺憾に思うわけです。  もう一つ伺いたいのは、いま堤防、ダムの破壊が爆撃によって行なわれておる。ハノイを初めとする紅河のデルタ地帯、あの部分にベトナム民主共和国の人口の半分が住んでいる。米作地帯もあります。この部分の中に洪水を起こさす、こういう計画であります。紅河の河底はかなりの部分が周辺の地域よりも高くなっておる。これは大洪水が起こるだろうということは予想されるわけです。これはかつてナチスがオランダについてやった。ニュールンベルグの国際法廷ではこの問題に触れて、軍事上の必要で絶対に正当づけることのできない膨大な荒廃が水攻めのために引き起こされたといって断じております。これはもうまことに悪質な戦争犯罪であって、当時アメリカ、イギリスの政府がさすがにやめろということを要求し、さすがにナチスもそれによって中止をしたというふうにいわれております。アメリカの首席検察官もニュールンベルグで、二十世紀の汚辱と邪悪の歴史的な教材だとまで言って、この提防の破壊を非難した。いまこれをアメリカ軍がやろうとしておるのです。ナチス、ヒトラーよりももっと残虐なみな殺し戦争をやろうとしているのです。これはあの第二次世界大戦のときのアメリカ、イギリス政府について考えてみても、こういう非人道的なことをやめろということを言うのは、日本のように平和を願うということが憲法でもきまっている国としては当然なことじゃないかと思います。この点について外務大臣は、アメリカ政府にそういうことを言うという考えはないかどうか。またこのような大洪水を起こさすような提防の破壊ということについてどう考えているか、この点を伺いたいと思います。
  126. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私はそういう話を全然聞いておりませんが、とにかく南北は戦争をしておる。その一つ一つの行動、つまり戦闘行動個々につきましてわが国が一方的に制約を加えるというような立場にはないと思うのです。われわれはどうしても双方が武器を捨ててテーブルに着くということを言う、それが精一ぱいだ、かように考えます。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 それでは伺いますが、いまのように戦闘行為が南北で行なわれているという場合には、そういう堤防破壊ということをやっても差しつかえない、それについては日本政府としては言わないのだ、こういうお考えですか。
  128. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 個々の戦闘行動につきましてあれこれ言う考えはございませんです。アメリカは、アメリカの行動は国連憲章五十一条に基づく自衛権の発動だ、こういうことを言っております。ですから、国連においてこれは判定をする。それでそういうようなことがありますれば、その判定を尊重するという立場にはなりまするけれども、わが国みずからがその個々の戦闘行動の一つ一つを取り上げまして、これはいい行動だ、これは悪い行動だというような立場にはありません、こういうことを申し上げているわけです。
  129. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、さらに伺いますが、どんな非人道的なことをアメリカがやろうともそういう考えですか。そういう民間のみんなが大洪水で死ぬというようなことを例にして私は申しました。すでに堤防の破壊攻撃はされております。どんな非人道的なことをアメリカ軍がやっても黙っている、これが日本政府の方針ですか。
  130. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私はアメリカが故意に非人道的なことをやっているというふうに考えておりませんです。これは戦闘でございますから飛ばっちりというようなこともありましょう。そういうようなことはありましようが、アメリカといえども非人道的と考えることをあえてやろうというようなそういう考え方はないと思う。爆撃にいたしましても、ちゃんと目標をきめてやっておる。それが間違って一般の大衆にも御迷惑を及ぼすというようなこともあり得る、こういうふうには思いまするけれども、これはもうアメリカといえどもとにかく何とかして早く平和になりたい、こういうふうな気持ちである、そういう国だと思います。その国が人道を無視して何でもかんでもやりまくるのだというような考え方はよもや持っておらぬ、かように確信をいたしております。
  131. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、間違って堤防を破壊しておるのではないのですよ。そういう方針でやっているのです。外務大臣がもしその事実についてお認めにならないならば、それは事実なんですけれども、ここではかりにそういう方針でアメリカ軍がやっているということならば、それをやめろということを申しますか。
  132. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカは非人道的なことをやろうという意図を持ってそんなことをやっているのであろうというふうに私は思いませんです。これはやはり戦争を早く終わらせたい、そういう手段としていろんなことをやっておる、こういうふうに思います。
  133. 松本善明

    松本(善)委員 端的に伺いますが、アメリカ軍が堤防破壊という方針を持って爆撃をするということは認めない、それは反対だ、許さない、こういう考えでおられるのかどうか。
  134. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 個々の戦闘行動につきまして一々あげつらうということはいたしませんです。
  135. 松本善明

    松本(善)委員 結局外務大臣は何度も答弁の機会があるにもかかわらず、この非人道的な改撃については何もアメリカには言う気はないということを何べんかの答弁の中で明らかにされたのだと思う。私はそういうような態度では日本は平和国家だというようなことはとうてい言えない。まさに侵略の加担者であるということは明白だと思います。  私は、もう一つC5Aギャラクシーの問題で伺いたいと思います。ベトナムにC5Aギャラクシーという輸送機が行っております。大きな飛行機です。これは二十八個のタイヤを持っておる。これは戦闘地域へそのまま輸送ができるようなそういう構造のものです。草地でも着陸できる。そういうものであって空中投下も可能である。十五分以内に着陸して離陸をする、その間に補給もする。そういうような直接戦闘地域へ補給をする飛行機なんです、輸送機なんです。これが日本からM48の重戦車などを運んでいるという事実があります。これはまさに戦闘地域へそのまま輸送、補給しているわけですよ。かつて赤城防衛庁長官が、空挺部隊がおりるそのときに弾薬や武器を投下する、これはまさに戦闘作戦行動だということを答弁したことがあります。C5Aギャラクシーはまさに日本を出発してベトナムの戦闘地域へそのまま武器を送るわけですね。これほど明白な戦闘作戦行動はないと思います。これは事前協議の対象になりますか。
  136. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  C5Aギャラクシーは、先生の御指摘のとおり非常に大きな空輸能力があり、かつわりあいに着陸その他が容易にできる飛行機だとわれわれは承知しております。しかしながら、これは非常に高価な飛行機でございまして、これが直接ただいま撃ち合っている中へ飛び込んでいって着陸するということは想像できないわけでございます。そしてあくまでも戦闘行動というのは、C5Aギャラクシーが運んできたタンクがやがて命令を受けて出ていくときに初めて戦闘作戦行動が開始されるというふうにわれわれは理解しております。もっともC5Aギャラクシーから空挺部隊を投下するような場合には、これはわれわれの従来の解釈では戦闘作戦行動に従事する、こういうことでございます。
  137. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、ベトナムはいまどこでも戦闘地域じゃないですか。ベトナムの中で戦闘地域でないのは一体どこなんです。どこでもいろいろ問題が起こっているでしょう。ベトナムの中でどこへ着陸すれば戦闘地域ではない、どこならば戦闘地域だ、こういう区別は一体外務省はやっているのですか。
  138. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまのように現実にどこで戦争が行なわれておるかということにつきましては、われわれは別に特に新聞報道その他の情報以外にはやっておりませんですが、しかしながら一応C5Aギャラクシーが着陸するのは飛行場であると思いますし、またそこへおりる以上、相手から直接攻撃を受けないということを前提としておりるだろうと思いますから、したがってただ単に輸送のためにこれが使われるということは直接戦闘作戦行動に参加したのではない、こういうふうに解釈をしております。
  139. 松本善明

    松本(善)委員 C5Aギャラクシーというのは飛行場におりるためにつくったのではないのです。それはもう明白なんです。だから十五分以内で着陸をして敵の攻撃のくる前にすぐに出かけていくということができるような構造になっているのです。それから空中投下もできるようになっている。まさに戦闘地域であるわけです。私の言い方が違っていれば久保防衛局長にも答えてもらいたいけれども、時間がないから違っていなければそのままでけっこうです。そういうようなC5Aギャラクシーがベトナムに行っている。まさにこれは戦車が戦闘地域に行ってすぐそのまま戦闘に入るのですよ。外務大臣にお聞きしたいのですけれども、どうも外務大臣はC5Aギャラクシーのことを御存じないらしいけれども、日本がそういうような根拠地になっている。直接ベトナムへ飛んでいって戦車をそのままおろして戦闘をする、それはかまわないのですか。それはかってにアメリカ軍がやっていいのですか。そういうふうに外務大臣が考えておられるかどうかお聞きしたいと思います。
  140. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 輸送する行為、補給する行為、これは事前協議の対象といたしておりません。たとえば戦車を横須賀から船でベトナムへ運搬する、これは事前協議の対象といたしておりませんです。私はいまの飛行機のことをよく知りませんけれども、同じことじゃないか、かように考えます。
  141. 松本善明

    松本(善)委員 私はそこまでくると外務大臣がまことに怠慢ではないかと思いますよ。C5Aギャラクシーがこれだけ飛んでいて、新しい作戦の形態として特別の構造につくられている。それをそういうふうな言い方でやられているというのはまことに遺憾だと思いますし、これは世界じゅうどこへでも飛んでいける、展開できる、こういうものを自由にされるということは、結局はアメリカ軍は日本の基地を自由に使えるということを外務大臣が言っているという以外の何ものでもないというふうに思うのです。  私は最後に沖繩の人たちの生活の問題をちょっと一言だけ聞いておきたいのですけれども、私は沖繩へきのう、おととい行きましたが、物価の値上がりが非常に異常なんです。外務大臣に、この委員会でもたびたび問題になってお聞きしたわけですが、為替の一ドル三百六十円で交換していればこういう事態は起こらなかったと思うのですが、この交換についてやらなかった。そのためにいまのような事態が起こり、県会議員団は超党派でいまやってきて、そして為替差損を補償しろということを言っている。それに対して総理大臣もお会いにならない、大蔵大臣もお会いにならない、それから通産大臣もお会いにならない、そういう状態なんです。総理大臣は沖繩県民に損害をかけないというふうに言った。そのことについて私は外務大臣に伺いたいのは、当時私たちが要求したのにかかわらず、一ドル三百六十円でかえるという措置をおとりにならなかった責任をどうお考えになっておるか、そしていま沖繩県民が実際に非常に損害を受けていることについてどうお考えになっておるか、これを最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います
  142. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは私の所管の問題でございませんから、私からお答えするわけにはまいりませんです。
  143. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、私が伺いたいのはいまの問題ではなくて、当時アメリカに折衝して為替一ドル三百六十円でかえるという措置をしろということを私どもは要求していたわけです。円切り上げの問題が起こった当時ですね。そのことを外務大臣としておやりにならなかった。いまそういう事態が起こっていることについて、あなたは何の責任もお感じにならないのかどうか、これを伺いたいわけです。
  144. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは国際的に通貨調整が行なわれた、こういうことでございまするから、その結果に基づいて通貨措置が行なわれる、こういうことになるのだろうと思う。通貨措置は去年の暮れ行なわれておるわけですからね。その後通貨の交換をするということになれば、新レートを基準にしていたすというほかないのじゃないでしょうか。別に私が職務を怠慢したということに何のかかわりもないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  145. 松本善明

    松本(善)委員 私は、外務大臣答弁は沖繩県民にとっては非常に冷たい仕打ちだというふうに受け取る、これは間違いないということを申し上げて、たいへん遺憾の意を表して、私の質問をこれで終わりたいというふうに思います。
  146. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる七日午後零時四十五分より理事会、午後一時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時三十三分散会