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福田国務大臣 私はこの数年来特に
大蔵大臣に就任いたしましてから、そのうちでもさらに第二回目の
大蔵大臣のころから痛感いたしておりますが、
大蔵大臣の
仕事をしておりましても来客の二、三割あるいは三、四割くらいは
海外の方です。そして私
どもに求めるところは
経済上の
協力というようなことである。そういうような
機会に
海外の私
どもに接する態度、
わが国に対する
感じ、そういうものも受けとめてまいりましたが、そういうこともありますが、私は
日本という国が
経済上非常に強大な国になってきた。しかし
日本は
軍事大国への道は選ばないという基本的な
考え方を持っておるわけです。そういう行き方、これは私は
世界歴史の中におきましては全く新しい国としての行き方ではあるまいか。持たんとすれば強大な
軍備を持てる。また持たんとすれば
核兵器まで持てる。そういう力を持ちながらもしかしそういうことはいたさない。そうして国の安全を保っていく、そういう
政治姿勢を出しているわけです。と同時に、
わが国は国として非常に
特異体質の国である。どこかというと、
経済的に見る場合におきましては
世界の
経済大国と違いまして
資源を国の中に持たない、そういう国でござい出す。ほとんど全部の
重要資源を
海外に求める、そうしてそれを加工して
海外に売り払う。そういうことを
考えまするときに、
わが国のこれからの行き方というものの前に大きく前提として
考えなければならないことは
世界の平和であり、また
世界の
繁栄である。その
世界の平和と
繁栄に
わが国が尽くす、そこに
わが国の
世界においての生きがいというものもあり、また
わが国の国益というものも同時にこれと共存して存在し得る、こういうふうに
考えられるわけであります。つまりわが
日本はこれからもわが
日本だけのことを
考えて長い間の島国根性というようなものをよりどころにしては
日本国をもう
運営できないのであって、
世界の中にみずからの
繁栄を求める、
世界の中に
わが国の平和を求める、そういう
考え方でなければならない。
つまり国全体がそういう
感覚を身につける、まず
国際社会に処する、まあ
一言で言いますと正しい
国際感覚というものをわが
国民自体が持つ、そういう世の中になってきておるし、同時に
わが国は
世界じゅうに正しい
理解者を持たなければならない、そういうふうに思うわけであります。そこで初めてわが
日本は
軍備を持たないそういう姿において
世界の平和、
世界の
繁栄、
発展に
貢献し得るという崇高なる新しい国としてのあり方を実現し得るんじゃあるまいか、そういうふうに
考えまして、
軍備を持たない、そこで
余力が生ずる、戦前でいいますれば、
予算でいうと、平時におきましてもその四割は
軍事費に使った
日本です。今日はどうだというと、自衛隊の
費用はわずか八%くらいのものである。そういうことで
余力ができる、その
余力は
世界じゅうに向かって、おくれた
国々の
繁栄、
発展のためへの
協力ということももとより大事ではございますけれ
ども、同時に
わが国がそういう物の面ばかりではない、
わが国と諸
外国との心と心との
触れ合いというか
理解、これにもつとめなければならない、こういうふうに私はかねて
考えたわけでありますが、そういう問題を取り上げてみますと、わが
日本は残念ながらそういう面の
仕事というものはまだほとんどやっておらない、それは多少のことはあります、ありますけれ
ども、
ほんとうに高いそういう見地からの
わが国の
国際交流事業というものはやっておらぬといってもいいと思うのです。
たとえば
アメリカとの
関係についていいますれば、
フルブライト資金あるいは
ガリオア資金、そういうような金が
アメリカ側から出まして、そして
わが国の
責年が一万五、六千人になりますか、
アメリカの新しい
技術を身につける、あるいは新しい
文化を身につけるということができたわけです。その終戦直後の
責年が
アメリカの力によって
アメリカの
技術、
文化を身につけて
日本に帰ってくる、そうして今日とにかく
アメリカとの間には、先ほど足らぬところがまだあると言いますが、曲がりなりにも
日米関係というものが樹立されたゆえんのものは、
アメリカの負担によるところの
フルブライト、
アメリカの負担によるところのガリオアあるいは生産性本部の活動というものに依存するところがずいぶん多いんじゃないか、私はそういうふうに思うのです。しかし今日これだけの
経済力になったわが
日本とすると、そういう人の国の負担においてということは許されない、もちろん
アメリカももうそういう企画はだんだんと減らしていきます、そういうことを
考えますときに、わが
日本がみずからの発意において、みずからの負担においてそういうことを
世界に呼びかける、これは
わが国としてどうしてもたどらなければならぬ道じゃあるまいか、そういうふうに
考えるのであります。ましてや
わが国よりもおくれておる
アジアのわれわれのはらからとも
考えられるような
国々に対し決しては、むしろ
わが国の負担においてこれらの
国々との間の
相互理解を深めていくということこそ大事なことじゃあるまいか、そういうふうに
考え、とにかくそういう
考え方を
発展、実現させていく財政的基礎を安定したものにさせたい、と同時にその
運営を役所の機構そのものとしてやるんでは、これは機動的な
運営ができない、さればといってこれを民間にまかせるかというと民間ではそれだけの金は集まらない。そういうようなことで、今回国際
交流基金という特殊法人を設立するということにいたしたわけであります。この
基金はことしはもう半年、十月一日から発足する、半年分だから五十億だというのでありますが、民間の寄付等も集めるように努力をいたしますが、とにかく今度国会に授権をお願いしておる資本金は百億です。しかし、これは百億じゃほとんど
仕事にならぬと思うのです。しかし初めてのことでありますから、ことしはやむを得ないが、私は数年中に何とかして千億円ぐらいな
基金にいたしたい、その辺までいきますればかなりの
仕事ができるんじゃあるまいか、そういうふうに
考え、今後ともこの
基金の目ざすところを実現するためにこの
基金の強化に向かって努力をいたしていきたい、こういうふうに
考えておるわけでありますが、ひとつまた御
協力のほどをお願い申し上げます。