運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-03-22 第68回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十二日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 正示啓次郎君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 西中  清君       石井  一君    西銘 順治君       野田 武夫君    福田 篤泰君       福永 一臣君    豊  永光君       黒田 寿男君    堂森 芳夫君       三宅 正一君    中川 嘉美君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務政務次官  大西 正男君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省情報文化         局文化事業部長 加川 隆明君  委員外出席者         文部省大学学術         局留学生課長  植木  浩君         文化庁長官官房         国際文化課長  沢田  徹君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 三月二十一日  辞任         補欠選任   中川 嘉美君     丸山  勇君 同日  辞任         補欠選任   丸山  勇君     中川 嘉美君 同月二十二日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君     ————————————— 三月十八日  航空業務に関する日本国政府ビルマ連邦政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一二号)  航空業務に関する日本国政府メキシコ合衆国  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一三)  渡り鳥及び絶滅のおそれのある烏頭並びにその  環境の保護に関する日本国政府アメリカ合衆  国政府との間の条約締結について承認を求め  るの件(条約第一四号) 同日  世界連邦建設の決議に関する請願中山利生君  紹介)(第二五五九号)  同(福田篤泰紹介)(第一六六八号)  同(塚原俊郎紹介)(第一七三五号)  核兵器完全禁止等に関する請願青柳盛雄君  紹介)(第一六五八号)  同(田代文久紹介)(第一六五九号)  同(谷口善太郎紹介)(第一六六〇号)  同(寺前巖紹介)(第一六六一号)  同(土橋一吉紹介)(第一六六二号)  同(東中光雄紹介)(第一六六三号)  同(不破哲三紹介)(第一六六四号)  同(松本善明紹介)(第一六六五号)  同(山原健二郎紹介)(第一六六六号)  同(米原昶紹介)(第一六六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際交流基金法案内閣提出第五六号)      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際交流基金法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井(一)委員 国際交流基金法案に関連をいたしまして、質疑を進めますが、せっかく大臣の御出席をいただいておりますが、適宜政府委員からでもお答えいただいてもけっこうでございます。  そこで、一般的な問題でありますが、アジア地域ヨーロッパアメリカ、中南米というふうにに分けまして、一体日本に対する関心の度合いが、こういう地域でどういうふうに差異があるのか、この点をどういうふうに把握されておられるでしょうか。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 アジア地域も、またアメリカも、わが国にとりましては非常に重要な地域でございますが、やはりアメリカわが国に対する理解、これは他の地域に比べまするとかなり私は進んでおる、こういうふうに思うのです。つまり、占領七年間というものを経過しておる、来たその七年間にわが国に駐留した軍人、軍属、これがアメリカへ帰ってきておる、こういうようなこと、そういうようなことを通じまして、おそらく私はヨーロッパなどに比べますると格段アメリカわが国に対する理解というものはあると思います。しかし、私がいま感じておりますことは、何といいますか、その後日米関係経済を軸として発展をしてきておる、その発展の中で、経済的な面が非常に強く出てきておるのでありまして、ほんとう日米国民がその立場をお互い理解しておるか、こういうことになると、心と心とのつながり、こういう面においてはなはだむなしいものを感ずる、こういうような感じがするわけであります。でありまするから、日米関係はもう政治的に見て非常に安定していると言われながらも、昨年のように一たび経済上の摩擦が起こるということになりますると、日米基本関係までが心配されるというような事態になる。私は、その辺、たいへん日米関係というものは日本にとって大事な関係であるだけに、なお今後密にしていかなければならない、こういうふうに考えます。  それから、アジア国々わが国に対する理解、これは私はとにかく、日本が戦後ゼロというか、廃墟の中から立ち上がって今日の地位を築き上げた、それに対する評価、これはかなり高いものがある、こういうふうに思うわけであります。しかし、同時に、そういう経済上の実力をたくわえた以上、日本アジア国々に対しまして、それ相応の貢献をなすべきである、それがまだ乏しいような状態じゃないかというような気持ちがあるのじゃあるまいか。私どもは、アジアは何といっても国際社会におきましては、ほんとう意味におけるところのはらからでございまするから、そのような気持ちで対応しなければならぬけれども、そのような気持ちアジアの諸国民理解していただく、これが非常に大事なことになってきておるんじゃないか、そういうふうに思います。
  5. 石井一

    石井(一)委員 私も同感でございますが、一般的に申しまして、日本に対する関心というのは、われわれが考えている以上にまだまだ低いものがある。これは外国へ出て非常に痛感するところでございますけれども、たとえば中国あたりに対する関心なんかのほうがよほど各国は高いんじゃなかろうか、現在こういう時期でもございますけれども、そういうことを感じるわけでございまして、やはりこれまで国際文化交流というふうな問題において非常にわが国は欠けた面があるんじゃなかろうかというふうなことを痛感するわけでありますが、この機会に大いに促進をしていただきたいということを考えるわけでございますけれども、特に日本に対する関心というのは、御指摘がありましたように、経済的にたとえばエコノミックアニマルであるとかなんとかいうふうなものだけが非常に誇大に受け取られておりまして、文化的な面などの受け取り方というものでまだまだ非常に問題点が多く残っておる、こういうことであります。  そこで、いま御答弁のございました地域的に見て、たとえばどの地域重点にこの国際文化交流を進めようというふうなお考えがあるのか、それともやはりグローバルに、総合的にやろうというお考えなのか、また、短期的なものと長期的なものと、一言文化交流といいましても、非常に意味の広いものでありますけれども、特にどういうところに重点を置いて進められようとしておるのか、この点についてちょっとお考えをいただきたい。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず、地域的に申し上げますれば、やはりわれわれの周辺、隣組であるところのアジア、そういうふうに思います。と同時に、わが国相互依存関係にあるアメリカ、この二つがとにかくまずわれわれが努力しなければならぬ対象だと思います。しかし、私どもは、何もこの二つ地域をしぼって考えておるわけじゃありません。世界じゅうを目標にするわけでありますけれども、とにもかくにもスタートでありまして、あれもこれも、あの地域もこの地域もというわけにもいかない。手はできるだけ伸ばしたいのでありまして、世界じゅう文化交流活動を展開したいと思いまするが、さしあたり着手段階ではその辺がスタートかと、かように考えているわけであります。  それから、いろいろ文化交流の手段というものはあるわけでありまするけれども、やはりさしあたり何と申しましても人の交流、そしてお互いに相手の国を知り合う、そこから理解というものがだんだんと生まれてくるんじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、人事交流、これを、これもあらゆる面においての交流をいたしたいと思いまするけれども着手段階といたしましては、その辺に重点を置いてしかるべきかと、かように考えております。
  7. 石井一

    石井(一)委員 本法の二十三条「業務範囲等」というところでございますけれども、ここで特に「海外における日本研究に対する援助及びあっせん並びに日本語普及」ということが指摘されておるわけでありますが、当局は、外国における日本研究者というようなものに対しての調査をしておられるか、そのリストを持っておられるか。それからこの「日本研究」という場合に、日本語だけでなしに、日本経済軍事政治その他いろいろな面までこの対象範囲の中に入るのかどうか、この点をひとつお願いいたします。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 この基金目的は、文化中心といたしましてわが国世界各国との間の交流理解を実現しよう、こういうことでございますが、文化交流といい相互理解の増進といい、これは非常に限られた範囲だ、こういうことでそれ自体目的が到達されるというふうには考えません。やはり相互理解文化はもとより中心になるわけでありますが、文化という意味はそう局限された狭い意味文化ということにとらわるべきではない、こういうふうに考えておりまして、幅広い心と心との触れ合いというものの実現を期しておる、その意味における文化交流である、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  9. 石井一

    石井(一)委員 日本語というのは非常に難解なことばでありまして、語学ハンディというものが日本文化交流をする場合に非常に大きなハンディになると思います。たとえば留学生わが国受け入れる場合でも、語学ハンディということによってなかなか十分にわれわれの意思を伝えにくい、その心のつながりというものを生み出していくということが非常にできにくいという面があるわけでありますけれども、たとえばこの基金によって外国での日本語の講座なりそういうふうなものをもこの範囲の中に入り得るのかどうか、この点をちょっとお伺いしたい。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 この日本語普及、これは考え方によっては非常にむずかしい問題を含んでおるわけでありますが、しかしこの法の体系といたしまして日本語普及というものが含まれるか含まれないかというようなお尋ねであるといたしますれば、これはもとよりこれを含む、こういうふうに御理解願いたいと存じます。
  11. 石井一

    石井(一)委員 それから留学生といいますか、人事交流その他の場合に、これはフルブライト基金でも、欧米から来るいわゆる研修者と東南アジアから来る研修者とにいろいろ支給費その他において差をつけておるようでありますけれども、これはたとえば日本受け入れた場合に、どちらの地域から来られてもやはりそれに必要な費用というふうなものは同じじゃないかという考え方もできますし、そこまでこまかいことまで詰まっておるのかどうかわかりませんけれども、その辺の問題についてはいかがですか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺までまだ詰めておるわけじゃございませんけれども、これは運営審議会ができますから、その辺で具体的によく詰めまして、そして実際的な運営をいたしたい、こういうふうに考えます。
  13. 石井一

    石井(一)委員 留学生の問題でありますけれども、これまで日本へやってまいりました留学生というものが、今度自分の国に帰って一体どういう仕事をしておるか、一体日本での留学が本人にとってどのように意義あるものになっておるか、こういう追跡調査とでも申しますか、こういうものをこれまで外務省おやりになっておりますか。
  14. 大和田渉

    大和田政府委員 いま先生の御指摘留学生とは少し違いますが、私のほうで研修員受け入れをやっております。研修員受け入れが終わったあと追跡の問題につきましては、たとえば同窓会を開くというようなことをやりまして、日本における研修の効果を自分の国へ帰ったあとどういうふうに発揮するか、あるいは実際に発揮できているかというようなことをいたしております。
  15. 石井一

    石井(一)委員 どうも私が伺ったところでは、日本での留学というものの評価が、外国ではまだまだ非常におくれている面がある。たとえばアメリカなりヨーロッパ留学するというふうなことのほうがよほど優先されておる。それはやはり日本における語学の問題であるとか受け入れ体制だとか、いろいろな面で反省を加えなければいかぬ問題があるように私は思うわけでございまして、トレーニングを終えたからもうそれで終わったという考え方ではなしに、国際人事交流が終わったからこれでということではなしに、それからあとに出てくるインパクトというものを私は十分に追跡する必要があるというふうに痛感するわけであります。  もう一つお伺いしますが、日本留学生外国へ出ていっていろいろ勉強しておる、あるいはどこかで仕事に従事しておる非常に多くの数が私はあると思いますけれども、これらの人々所在なり何なり、どういう仕事に従事してどういう貢献をしておるか、こういうのを追跡調査されておりますか。
  16. 加川隆明

    加川政府委員 御指摘の点につきましては、実はただいま日本人海外に参りましたときに、昔のように届け出制というのはございませんので、全く自由に海外に行かれるというようなので、なかなか把握しがたい状況でございます。ただし届け出のあった分については、一応各在外公館等でクラシファイいたしておりますけれども、十分とはいえないという状況でございます。
  17. 石井一

    石井(一)委員 いま御答弁ありましたように、届け出のあったものなんというのはごく一部でありまして、私はもうほとんどそれは把握できていないというのが現状じゃないかと思うのであります。私の体験から申しますと、たくさんの、戦後どれだけの人間がたとえばアメリカに行ったかということを追ってみると、これはもう膨大な数になると思いますが、その大部分が帰ってきております。ところが帰ってきていない人々があるわけで、この人々が私は一番重要だと思う。この人々は結局アメリカなりヨーロッパのどこかの社会で職を得て仕事をしておるわけですけれども、往々にして優秀な人ほど自分の国に、日本に帰ってきていない。ところがこの人々は、何年か何十年たっているうちに日本人の心というふうなものを失ってしまって、言うなれば非常に優秀な頭脳を持っておられる人々でありますけれども、結局無国籍者のような形で世界のどこかで仕事をしておられるという人々がある。私はこの人々日本人としてのプライドを持って仕事をしてもらうというふうな方向に持っていくということは、単に人事交流なり何なりをやる以上に非常に大きな意味があると思うわけでありまして、私は先ほど第一点に申しましたのは、日本トレーニングその他を受けて人事交流などをやって帰った人々追跡調査、その後のフォローアップということ。それからもう一つは、日本から送り出しているたくさんの留学生その他の人々世界における所在その他、こういうものを十分に追っていただくということも、結局非常に大きな意味をもたらすものである、こういうふうに痛感をするわけでございまして、この点ひとつ御指摘を申し上げておきたいと思います。  それで、大臣の時間が限られておるようでございますから、交流基金役員人当の構成がどうなるかということをお伺いしておきたいと思いますが、理事長一名と理事三、四名というふうな規定がございましたけれども、この人たちをどういうところから人選されようとされておるのか。またその基本的な運営方針、これは「外務大臣が監督する。」というふうに三十六条に規定されておりますけれども、結局大臣が監督されるといいましても自主的な理事会運営というふうなことになって、理事会構成というのは非常に重要だと思いますけれども、これに対してどういうお考えを持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 交流基金はその発足がことしの十月一日になるわけであります。したがって、その時期までにはかなりの時間があるわけでありまして、その具体的な人事構想は固めておりませんけれども、よくいわれるような何か古手救済だとかそういうようなことでなくて、ほんとうにこれはわが日本とすると革命的な事業着手をするということでありますので、それにふさわしい人事構成を実現しなければならない、こういうふうに考えております。そういう考え方により役員構成されるわけでございますから、その役員会運営はその方々によって適正に行なわれるというふうに思いますが、私がこの基金に対して期待するものは何であるかということは、これは外国にとにかく日本理解者をなるべく多くふやすということ、またわが日本国民国際的感覚を津々浦々に普及していくというようなことを文化事業中心にしてやっていくんだ、こういう考え方でありますが、その考え方をぜひ実現するためにじみちにひとつやっていくんだ、着実にやっていくんだという体制理事会といいますか役員会運営していただきたい、こういうふうに考えております。
  19. 石井一

    石井(一)委員 それではこれで最後にいたしますけれども、よく国内でも新しい機関ができますと、いわゆる官僚の天下りとでも申しますかそういう形の人事が行なわれがちである。私よく存じませんが、外務省関係海外技術協力事業団であるとかそのほかいろんなのがございますけれども、結局は清新はつらつな人事というふうなものが、実際問題として外国語学であるとかそういういろんなハンディがあります関係もございますけれども、特にこういう場合非常にやりにくい面が出ているんじゃないかと思いますが、たとえば今度のアメリカ日本大使なんか見ましても思い切った案といいますか民間人の登用というふうなことをやっておるようでございますから、これは大臣が遠大な構想スタートをされたこういう基金でありますので、従来のいわゆる官僚ベースに乗った人事構成でなしに、私はやはり最初が非常に大切だと思いますので、そういう点に関しましてもまだ時間がありますからいまここで何と申してもいたし方ありませんけれども、十分の大臣の御配慮をお願い申し上げまして、これで終わりたいと思います。
  20. 櫻内義雄

  21. 堂森芳夫

    堂森委員 大臣の時間の制限が非常にあるようでありますので、二、三の点についてまず大臣にこの国際交流基金法案に関連して質疑をしたい、こう思うのであります。  私は、今回この国際交流基金法案を出されるについて、あの予算編成当時の外務大臣の非常な努力を非常に多とするものでありまして、まず大臣が大いにがんばられたということについては私は大いに認めていいことだ、こういうふうに、私は別にあなたにおべっかを言うつもりはないのだが、ほんとうにそう思っておるのであります。   〔委員長退席永田委員長代理着席〕  そこで大臣に伺いたいのですが、すでに石井さんが御質問になった点でありますが、この法案をお出しになったその着想基盤というものをあなたはもちろん——ああいうふうに予算編成段階では非常にもめた案件であるが、どうしてもこれをやりたいんだ、こういうかたい決意で向かわれたのでありますから、その着想基盤というものをちゃんと幾つも持っておられると思う。それからまたこんな政府からもらった資料を見たって、スズメの涙ということばがありますが、諸外国欧米諸国文化交流事業に対する熱の入れ方、やはりお金の問題見たって、人の問題見たってまるで問題にならぬですね。これに対して外務大臣は将来どういうような大きなビジョンといいますか構想を持っておられるか、少し詳しくあなたの考え方を伺いたい、こう思います。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はこの数年来特に大蔵大臣に就任いたしましてから、そのうちでもさらに第二回目の大蔵大臣のころから痛感いたしておりますが、大蔵大臣仕事をしておりましても来客の二、三割あるいは三、四割くらいは海外の方です。そして私どもに求めるところは経済上の協力というようなことである。そういうような機会海外の私どもに接する態度、わが国に対する感じ、そういうものも受けとめてまいりましたが、そういうこともありますが、私は日本という国が経済上非常に強大な国になってきた。しかし日本軍事大国への道は選ばないという基本的な考え方を持っておるわけです。そういう行き方、これは私は世界歴史の中におきましては全く新しい国としての行き方ではあるまいか。持たんとすれば強大な軍備を持てる。また持たんとすれば核兵器まで持てる。そういう力を持ちながらもしかしそういうことはいたさない。そうして国の安全を保っていく、そういう政治姿勢を出しているわけです。と同時に、わが国は国として非常に特異体質の国である。どこかというと、経済的に見る場合におきましては世界経済大国と違いまして資源を国の中に持たない、そういう国でござい出す。ほとんど全部の重要資源海外に求める、そうしてそれを加工して海外に売り払う。そういうことを考えまするときに、わが国のこれからの行き方というものの前に大きく前提として考えなければならないことは世界の平和であり、また世界繁栄である。その世界の平和と繁栄わが国が尽くす、そこにわが国世界においての生きがいというものもあり、またわが国の国益というものも同時にこれと共存して存在し得る、こういうふうに考えられるわけであります。つまりわが日本はこれからもわが日本だけのことを考えて長い間の島国根性というようなものをよりどころにしては日本国をもう運営できないのであって、世界の中にみずからの繁栄を求める、世界の中にわが国の平和を求める、そういう考え方でなければならない。つまり国全体がそういう感覚を身につける、まず国際社会に処する、まあ一言で言いますと正しい国際感覚というものをわが国民自体が持つ、そういう世の中になってきておるし、同時にわが国世界じゅうに正しい理解者を持たなければならない、そういうふうに思うわけであります。そこで初めてわが日本軍備を持たないそういう姿において世界の平和、世界繁栄発展貢献し得るという崇高なる新しい国としてのあり方を実現し得るんじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、軍備を持たない、そこで余力が生ずる、戦前でいいますれば、予算でいうと、平時におきましてもその四割は軍事費に使った日本です。今日はどうだというと、自衛隊の費用はわずか八%くらいのものである。そういうことで余力ができる、その余力世界じゅうに向かって、おくれた国々繁栄発展のためへの協力ということももとより大事ではございますけれども、同時にわが国がそういう物の面ばかりではない、わが国と諸外国との心と心との触れ合いというか理解、これにもつとめなければならない、こういうふうに私はかねて考えたわけでありますが、そういう問題を取り上げてみますと、わが日本は残念ながらそういう面の仕事というものはまだほとんどやっておらない、それは多少のことはあります、ありますけれどもほんとうに高いそういう見地からのわが国国際交流事業というものはやっておらぬといってもいいと思うのです。  たとえばアメリカとの関係についていいますれば、フルブライト資金あるいはガリオア資金、そういうような金がアメリカ側から出まして、そしてわが国責年が一万五、六千人になりますか、アメリカの新しい技術を身につける、あるいは新しい文化を身につけるということができたわけです。その終戦直後の責年アメリカの力によってアメリカ技術文化を身につけて日本に帰ってくる、そうして今日とにかくアメリカとの間には、先ほど足らぬところがまだあると言いますが、曲がりなりにも日米関係というものが樹立されたゆえんのものは、アメリカの負担によるところのフルブライトアメリカの負担によるところのガリオアあるいは生産性本部の活動というものに依存するところがずいぶん多いんじゃないか、私はそういうふうに思うのです。しかし今日これだけの経済力になったわが日本とすると、そういう人の国の負担においてということは許されない、もちろんアメリカももうそういう企画はだんだんと減らしていきます、そういうことを考えますときに、わが日本がみずからの発意において、みずからの負担においてそういうことを世界に呼びかける、これはわが国としてどうしてもたどらなければならぬ道じゃあるまいか、そういうふうに考えるのであります。ましてやわが国よりもおくれておるアジアのわれわれのはらからとも考えられるような国々に対し決しては、むしろわが国の負担においてこれらの国々との間の相互理解を深めていくということこそ大事なことじゃあるまいか、そういうふうに考え、とにかくそういう考え方発展、実現させていく財政的基礎を安定したものにさせたい、と同時にその運営を役所の機構そのものとしてやるんでは、これは機動的な運営ができない、さればといってこれを民間にまかせるかというと民間ではそれだけの金は集まらない。そういうようなことで、今回国際交流基金という特殊法人を設立するということにいたしたわけであります。この基金はことしはもう半年、十月一日から発足する、半年分だから五十億だというのでありますが、民間の寄付等も集めるように努力をいたしますが、とにかく今度国会に授権をお願いしておる資本金は百億です。しかし、これは百億じゃほとんど仕事にならぬと思うのです。しかし初めてのことでありますから、ことしはやむを得ないが、私は数年中に何とかして千億円ぐらいな基金にいたしたい、その辺までいきますればかなりの仕事ができるんじゃあるまいか、そういうふうに考え、今後ともこの基金の目ざすところを実現するためにこの基金の強化に向かって努力をいたしていきたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、ひとつまた御協力のほどをお願い申し上げます。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 私はいま大臣のかなり長い答弁をお聞きしておったのですが、大臣も言われました、戦後のわが国海外留学というものはほとんどが海外基金にたよったものが多かった。これはわれわれが狭い島国根性を持つ必要はありませんが、しかしやはり一国の自主独立といいますか、そういう国民的な精神、そういう基盤、そういうものが独立国家にはなくちゃならぬ、当然のことであります。しかし、よその金で一万何千名の者が勉強してくる、国はこれに対してほとんどわずかです。私もこの法案について、文部省が幾らぐらいの金を使って学生を派遣しておるか、あるいは向こうからの教授を招聘しておるか、いろいろなことも聞いてみましたが、問題にならぬですね。  それからこれは外務大臣に私は、あるいはおまえと考えが違うと言われるかもしれませんが、日本の外交等にも、何かわれわれではどうしても納得できないような傾向が出てきておるのは、これはやはり、自分の金で海外の事情等もよく調べるとか勉強するとか、あるいは自分の金でどんどん海外外国人たち文化人等を呼んでそして日本というものをよく知ってもらうとか、そういう金がかかってないというところにも、日本の戦後の一つの大きな問題点はあったんじゃないか、こういう意味で、今度のこの基金法案ほんとうに実を結んでいくならば大きな効果を当然あげてくるものである、こういうふうに私は思うのであります。  そこで、私、あなたのほうからもらった資料を調べておりますと、いまも将来の、ビジョンということで一千億ぐらいにしたいという話でありましたが、諸外国文化事業外務省が使っておる予算、一九七一年でアメリカが大体百四十四億だ、こういうふうに書いてあります。それから人員は四百二十何名がこれに関係しておる。イギリスは、ブリティッシュ・カウンシルというものがあって、この団体で海外で四千名という人が使われて、そしてそうした文化事業に参画をしておる。その予算は七一年で七十八億何千万。それからドイツにおいては、これはまた大きいですな。ゲーテ・インスティテュートというものがあって、これが四百名ぐらいの職員がいるのですが、海外には二千数百名の人を使ってやっておる。予算を見ますと三百二、三十億使っておる。フランスでは六百億以上の金が使われておる、そして本省だけで四百名ぐらいの人がおって、在外の職員として八百名ぐらいの人がいる、あなたからもらった資料にそう書いておるわけです。下がってイタリアのほうでも、三十九億ぐらいの金が——一九七〇年の数字しかありません。四百名の人を使っておる、こういうふうになっておる。来年度の予算を見ますと、わが国は国際交流基金の百億——五十億がことし出資された。これは十月からの発足ですから、一億七千五百万円ですか、そして十一億二千八百万円を文化事業外務省が組まれ、この一億七千五百万円を含めて十二億三百万円ぐらいの金しか四十七年度といえども使われない。あなたのほうからの資料によりますと、この基金に働く職員は大体五十名の計画である。それから来年は五十億出して、そして百億になる、こういうことであります。そのようなまことに微々たるものでありますが、しかし私の聞いておるところでは、民間からの出資ですが、そういうものもまだ全然めどがついていないということですけれども大臣は一千億というようなことはどんなふうな経過でいくというふうに思っておられるのでしょうか、もう一ぺん承っておきたい。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 民間で三、四年前一千億円の財団構想というのがありまして、まさにその考えるところは私どもと同じような考えであり、私どももそういう話を民間から聞かされたわけです。ところが一千億円といっても、なかなか金が集まらないのです。それは民間で千億円といったらなかなかたいへんなことなんで、立ち消えというと語弊があるかもしれませんけれども、今日一千億円構想という民間の構想は具体的に進められておらないのです。私どもは、これはもうしかし民間の発意だけを当てにしているわけにいかぬ。日本とすると、もうこれだけ経済力がついてきた。そして世界の各方面から、日本の国の姿勢を問う、こういうような声さえも出てきておるわけなんです。  私は陛下のお供をしてヨーロッパを昨年の秋回った。そのとき、各国の首相あるいは外相、そういう人々は口々に言うておる。それはやはり、日本はこれだけの経済大国になって、われわれはとにかく目をそばだてておる、しかしその経済力をもって一体何をするんだ、こういうことなんですが、何もしなければ行く道はわかっておるじゃないか、軍事大国だ、こういうようなことを言う人もある。しかしわが国はそういう道を選ばないのです。私どもはそれにもかかわらず、あるいはエコノミックアニマルだとか、あるいは自国の利益に偏重した経済協力の陣を進めておる、こういうような批判をずいぶん聞かされるわけでありますが、それではわが国自体の存立が、もうこれからはやっていけない。そういうことについて非常に焦燥感を感ずるわけなんです。  そこで、これはもう政府がふん切るほかはない、こういうふうに考えまして、交流基金の設立ということになったわけでありますが、ことしはとにかく国会に対しまして百億円のこの基金ということをお願いいたしておるわけです。政府がそのうち五十億円を出し、そして残りは、これは民間にも御依頼をしたいと思いますが、何せいま民間は不況な状態でありますので、そう多くを期待することはできない。そこで来年度におきましては残りの五十億円、それから来年度の新しい考え方として、これに幾らを積むかということを考えなければならぬ、こういうふうに考えておるわけです。また来年度は来年度でこの基金の幅の拡大に関する議案を皆さんに御審議を願わなければならぬだろう、こういうふうに考えておるわけですが、とにかく数年中には千億財団というところまで持っていきたい。またその中におきましては、民間の経済状態が改善されますれば、民間にも何がしかの協力を得たい、こういうふうに考えているところでございます。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは質問のやり方を変えまして、大臣に所見を承っておきたいのです。  従来、政府ベースでいろんな文化交流仕事がやってこられました。文化交流と申しましても、文化の定義というのはなかなかむずかしいと思うのであります。あるいは狭くこれを定義する場合と、それから広く文化というものを定義したらうんと広いものになると私は思うのです。いろんなベースで、政府ベースでこの文化交流仕事をやってきたと思うのです。しかし、いろいろとやってきたが、なかなか実効がうまくあがらない。これではとても一流諸国家と比較しては問題にならぬ、こうお考えになったから今度の基金ができたのでありますが、従来の政府のベースによってやってきたこうした文化交流の政策のいろんなものにおいて、どんな問題点があったと大臣はお考えでしょうか。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまそういう仕事外務省もやっておる。文部省でもやっておる。それから文化庁でもやっております。その他の各省でもそれぞれそういう目的仕事をある程度はやっておるわけなんであります。私は、それらをほんとうは統合的に考えなければならぬ時期に来ておる、こういうふうに見ておるのでありまするが、しかし何せ一番問題点は資金量の問題である。全体を総合いたしましてもまだわずかな国際交流努力しかしておらぬ。この資金の量を拡大しなければならぬ。それには安定的な財政基盤というものをつくっておかなければならぬ、こういうふうに考えるわけなんでございまするが、同時にまた、ただいま申し上げましたような各省ばらばらでやっておる、これをどういうふうに調整するかという問題も起こってくるのでありますが、さしあたりまずその資金の安定した基盤をつくる。そのためには非常に困難な、各省に分かれておる文化交流事業の調整、統合の問題、そういうものは、これは現在の基盤の上に立ってそのままにしておくが、とにかくこの交流基金というものを設置いたしまして、そして財政的な基盤を整える。それで仕事をひとつ推進してみまして、その成果をまって、国全体としての交流努力をどういうふうな仕組みでしていくかというのを次の段階において考えてみたい、こういうのが私の考えでございます。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、大臣の御答弁のように、そういう点は確かに大いに問題点があると思うのですが、私はこういうふうに思うのです。  一つは、各省がやってきたこういう文化交流仕事には、やはり残念ながらセクショナリズムといいますか、なわ張りといいますか、そういうもので、なかなか密な連絡がとれた、ほんとうに効果をあげるような体制がなかったということが一つ問題点でなかったか。私事務当局に前もっていろいろ聞いてみたのですが、いやそれは、今度は十分各省と、文部省あるいは文化庁その他ともよく——たとえば中小企業センターなんというものが東南アジア諸国あるいはイラン等にございます。これはある意味では文化交流と狭い範囲では言えぬかもしれませんけれども、広い意味ではやはり一つ文化交流仕事だと思うのでありますが、そういう面についてのほんとうの効果というものも、密な各役所の連携といいますか、そういうものを、特に今回のこの交流基金法案がきまって発足しますれば、そういう面に大いに今後も努力を払ってもらいたい、こう思うのです。  それから、さっき石井委員も言っておられました、留学生が帰って自分の国で働いておる諸君たちのアフターケア、アフターサービスといいますか、そういうような努力というもの、同窓会を開くとか、そういう答弁がありましたが、私、これはかなり欠けているのじゃないか、こう思うんです。たとえば、これは必ずしも外務省だけの責任とか文部省だけの責任という意味で言っておるんじゃないのですが、私一昨年、外務省のお世話になって、東南アジア十カ国の各国経済大臣に、私が質問したいということを準備しておいてくれという手紙を外務省として出してもらい、外務委員だということで、しておいてもらいました。それで、各国全部、ほとんど十カ国の経済大臣等といろんなことを話す機会がありまして、自分では非常に有益であった、こう思うんです。その一つのプログラムの中で、タイとインドネシアとそれからシンガポール等で、日本留学した、日本の学校で勉強して、帰って、そして向こうで日本の商社等に働いておる、そういう人たちをそれぞれの国でできるだけ大使館を通じて集めてもらいまして、それでいろいろなことを聞く機会があったのです。そうすると、残念なことに、わが国がいろいろな犠牲を払って、しかも彼らも、日本に来れば、英語とかドイツ語とか、フランス語をも覚えて、そして日本語を覚えて、勉強するわけでしょう。それがヨーロッパへ行けばその国のことばだけでストレートに学問ができるというような、非常な悪い条件に耐えつつ日本へ行って勉強した。それで、私たちは日本が好きだから日本へ行ったんであります、日本ではたいへんいろいろお世話になって感謝して帰ってきた。そこで、向こうへ行って、タイならタイあるいはインドネシアで日本の商社に働いておるとどうも日本がきらいになってきたという人が相当あるんですね。それはどういうわけですかというと、日本の商社とか企業というのは、日本語でいうとえげつないというのですね。一生懸命幾らやってもいつまでも下働きしかさせてくれない、一生懸命やっておると何か産業スパイみたいな目で見られるような気がするという人もおりました。何か非常に日本人となじめないということが、日本におるときと違って、現地に帰ってきて日本人の商社等に入るとそういうふうなことになってきたというようなことを述懐しておる、その日本留学した、日本の大学を出ていったような人が。それでも、おれは日本が好きだからやっぱり日本に対するそういう感情はいままでどおり続けて持っていきたいと思うが、仕事に実際についておると、どうもそういう面がいろいろあるんだという話を述懐した人が、タイでもインドネシアでも相当おったんです。これは単に外務省や文部省だけの責任、そう言っているわけじゃないんですが、これはわが国にとっては大きな問題だと思うのです。そういう意味で、やっぱり今後この国際交流基金というものをこれからヨーロッパ世界の並みにしていこうといっても、千億つくっても並みにならぬですよ。そういう意味じゃ、もう問題にならぬです、金の入れ方から。問題にならぬと思うのですな。千億なんと言わぬで、もっと大きく言われたらいいと思うのですがね。こういうことに金をつぎ込んでいくということは、私は、今後のわが国の国際的な地位をいろいろと決定していく一つの大きな元手になると思うのです、それは直ちにいろいろな効果はないかもしれませんけれどもね。そしてあなたは、日本軍備を持って軍事大国にならぬのだと大いに決意を持ってこの法律の発案に当たったんだ、これからこれを大きなものにしていくんだと、こういうことでありますが、アフターケア——しかし小規模、これはおっしゃいました。問題にならぬ。こんな小さなものじゃ効果が出るはずがないです、わずかな金で。ということでありますが、そういう意味で、私は、もっともっと将来に向かって、従来のそういう欠点、小さかったことが第一であります。大きなものにしていってもらいたい、こう思うのですが、もう一ぺん大臣の御答弁を願いたいと思います。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 堂森さんの御意見、私全く同感ですが、やっぱり私も痛感しておることがあるんですが、日本留学をして、国へ帰って日本理解者として働く人も、これはある。しかし同時に、日本批判家になっちゃう、そういう傾向もあるんです。非常に残念なことに思います。日本の国といたしましては、国際交流、この問題につきましては、ほかの国と違って言語の障害、これがある。これを乗り越える、こういう必要があるわけでありまして、そのことを考えると、諸外国のやっておる努力のまた数倍の努力をしなければ、ほんとう国際社会における地歩というものは築けないんじゃないか、私はそういうふうに思うのです。それはやっぱりこの交流事業につぎ込む金の量、これが私はとにかく最大の当面の問題になってきておる、こういうふうに考えるわけでありますが、同時にそのアフターケア、それに、実行面においてはよほど気をつけなきゃいかぬ。それにはわが国側において、わが国国際社会に臨む意識の統一、これが必要だろうと思うのです。わが日本はもうわが日本だけの繁栄だけを考えたんじゃやっていけないんだ、やはり世界繁栄の中にわが日本繁栄を求める、また世界の平和の中にわが日本の平和を求めるんだと、そういう国民的なコンセンサス、これを早く定着させるという必要があろうかと、こういうふうに思うのでありますが、同時に海外に対する努力、これも並行させなけりゃならぬ。海外になるべく多くの理解者をつくっておくという必要がある。そこで私は、まあいろいろなことが考えられると思いますが、やはりこれは順を追うていかなきゃなりませんけれども、しかしまあとにかくわが国とつき合いのある国、この国に一つくらいずつは、かなり誇るに足る日本文化センターというようなものを一つ一つつくっていく。そこへ、わが国で学んだ青年がいつでも集まれるというような仕組みだとか、その構想を進めなければならぬと考えて、量、質ともに充実した国際交流事業、これを推し進めることがわが国としてほんとうに焦眉の急になってきておる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がもうあまりありませんが、そこで、私が聞いておるところでは、この国際交流基金法がいよいよ十月に発足する。そこで、政府考えておるところでは、さしあたりアメリカと東南アジア重点を置いていくであろう、こういうふうに聞いておるのであります。もちろん対アメリカ、東南アジアのそういう交流は大事なことは、これは私否定するものではありません。しかし、これだけではやっぱりわれわれも満足できないのであります。それはもちろん大臣もそうだというお考えでありましょうが、この共産圏の国に対して、この基金はどういうふうな考え方文化交流に対処していかれるか。それからまた、国交のあるソ連のような国、あるいは東ヨーロッパのような国と、中国とか北朝鮮というふうな国交のない共産圏の国に対してとはまた少しニュアンスも政府は違うという答弁されるかもしれませんが、共産圏全体に対してどういうような態度でいかれるのか。それからまた、私は太平洋圏といいますか、太平洋に面した諸国に対しても、やっぱりその重点を置いていくというふうに——もちろん、それはもうアメリカ、東南アジアもそうでありますが、私はラテンアメリカというのは非常にわれわれ日本に対して、特に第二次大戦後、非常によい感情を持っておるという国が多いと思うのであります。こういう方面にももっと今後大きな重点を置いて、そうした事業を進めていく必要があると思いますが、こういう共産圏それからラテンアメリカ等に対してどういうふうにやっていかれるか。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず共産圏との間の文化交流の問題でありまするが、私はこれは他の自由主義諸国との間に文化交流の面におきまして差別をする理由はない、こういうふうに考えておりまして、それは私ども考え世界的規模という中に、等距離というとあるいはおかしく響くかもしれませんけれども、同じウエートをもってこの問題を考えていきたい、こういう基本的な考え方でございまして、現に東欧諸国でありますとか、あるいはソビエトとか、そういう政治上の問題が少なくなった国々に対しましては今日でも交流が盛んになってきておりますが、共産主義国であるから交流事業は他の自由主義諸国と差別をするというようなことはいたさないということを、基本的な考え方として持っておる次第でございます。  それから、ラテンアメリカ国々、特にそのラテンアメリカの植民地である南米の国々なんかは、わが国の移民もずいぶん行っておる地域が多いわけでありますから、この国々との間の交流関係、これも急がなければならぬ問題だ、こういうふうに考えておりますが、何せ発想を大いに新たにして、これからそういう仕事に取り組もう、こういう段階でございますので、あれもこれも全部一度にというわけにはまいりませんものですから、そこでやはり順序というものが出てくるかと思いますが、堂森さん御指摘のとおり、共産圏の問題も、また特にラテンアメリカの問題、これは重大な問題として私ども考えておる。なるべくすみやかにそれらの国々との間に具体的な施策を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間が来ましたから終わりますが、共産圏との交流事業は、やはり国交がない国とも国交を正常化していくということは、これは政府もいかなる国ともそうだと思いますから、文化交流ということについてはやはりこれは同じ考え方で、国交がない国に対しても、もっと積極的になるということを私は要望したいと思うのであります。  時間もありませんから終わりますが、問題はこんなちっぽけな規模では問題にならぬ、こういうことを頭に置いて、一ぺんにいかなくとも、数年間には一千億——一千億でも少ないですよ。もっと大きなものにしていくような気持ちでやるべきだ、こういうふうに私は考えるのであります。大臣の今後の善処を希望しまして、私の質問を終わります。
  32. 櫻内義雄

  33. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 まず国際交流基金法案に関しましてお伺いしたいことは、国際交流に関しまして政府、民間がそれぞれ実施していることでありますけれども、一長一短があるんじゃないか。そこで、伺いたいわけでありますけれども政府ベースで行なうところの国際交流と民間ベースで行なわれるところの国際交流のいわゆるメリットとデメリットについての今日までの、どういうぐあいにそれを感じ取っておられるか所見を伺いたいと思います。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かに中川さん御指摘のように、民間で行なう国際交流事業、それからまた政府の行なう交流事業、これはメリット、デメリット双方あると思うのです。つまり民間で行なう交流事業、これはややもいたしまするとわが国経済的利益に密着をする、こういうような傾向を、これは例外もありまするけれども、そういう傾向を持ちたがる。そういうようなことを考えるわけでありますが、もし民間の発意でやるそういう事業経済的な利害をこえてやり得るということになれば、たいへんこれはけっこうであり、現にそういうものも若干はある、こういうことでございますが、その辺に問題がある。それからもう一つ政府がやる場合にはどうだ、こういうことになりますると、やはりこれは文化交流事業といいながら、日本海外への勢力の拡大事業の一環であるというふうなとらえ方をするおそれはないか、そういうようなことをおそれるわけであります。ことにこれからこれを雄大な規模においてやっていくということになると、ますますそういうことを懸念されるわけでありまするが、それらを全部なくして、そうしてこれがほんとう日本の国が国際社会に臨む国としての使命観に基づいて行なわれるほんとうの善意の事業であるというようなことを実現するにはどうするか、こういうことになるとやはり完全な政府事業の形であるよりは、やはり特殊な財団を設定する。それで特殊な財団を設定するということになりますると、その運用いかんによりまするけれども、民間でこれを行なう、デメリットじゃなくてメリットのほう、これも生かし得るのではないか。デメリットはもとよりこれを解消し得るのじゃあるまいか。そういうふうな民間でやった場合のいい点も生かし得るし、また政府でやった場合のデメリット、そういうものも払拭できるし、そういう両面の作用を持たせるためにはやはりここで財団法人、特殊法人というような形を設定したほうがいいのじゃないかという結論に達した、かように御理解願います。
  35. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このことに関連しまして伺いますが、明治維新以来日本は西欧文明を摂取することには非常に積極的であったわけですけれども、同時に西欧の人々に対する劣等感といいますか、こういったものを植えつけたとも言えるのではないかと思います。今日わが国経済的に世界の大国にのし上がったというわけですけれども、遺憾ながら依然として西欧人に対する劣等感が消えない。しかし、その反面発展途上国の国民に対しては何となく優越感を持つ、こういう二面性を持っているのではないかと思いますが、こういった現実の否定面の解決というものがない限り、やはり私はこの国際文化交流というものはスムーズにいかないのではないか、このように思うわけですが、外務省として国内的にこういったことに関してどのような啓蒙活動を行なってこられたか、また今後はそういうことに対してどういう考えを持っておられるか、この辺、大臣にひとつ御答弁願いたいと思います。
  36. 加川隆明

    加川政府委員 中川先生の御質問でございますが、外務省といたしましては、御指摘のように先進国と後進国の人々を、片方を尊重し、片方をないがしろにするというようなことは全然考えておりません。現実に、たとえば文化交流予算にいたしましても、今度できますものも大体五〇、五〇、発展途上国に対して五〇%、先進国との交流に五〇%、こんなふうに考えております。それから、こちらに大和田局長もおられますけれども経済協力は膨大な金を使ってそういう面の御協力もいたしておりますので、特に私たちがそういう国内啓発というような面でそういうことを目的としてはやっておりません。ただ、外務省の姿勢自体がそういう形になって五〇、五〇、どちらも尊重し、やっておるということだと御了解いただきたいと思います。
  37. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 確かに外務省の立場から、そしてまたいま御答弁をいただいた金額的な立場からいけばそういうことにもなろうかと思いますけれども、しかしながら、現にこれは一例ですけれどもオリンピックの選手村ですか、そういったところにおける問題あるいは民宿等にも非常にこういった人種的な差別が出てきておる。こういうことが解決をされなければ国際文化交流も結局は名ばかりのものになってしまうのではないかと私は思うわけですが、どうかひとつ外務当局もこういった問題を当面の一つの大きな課題として検討をしていただきたい、このように思います。  次に伺いますが、戦前には多くの留学生、特にここで申し上げたいのは中国人ですが、こういう人が反日思想を抱いて帰国していった、こういう経緯もあるわけです。こういったことは最も好ましからざる傾向だと私は思いますが、何が理由でそういうふうな経緯が残されてしまったのかということが第一点。  そういうことの反省に基づいて、その誤まりをなくするためにも、せっかく設立されるところの基金が確固たる理念のもとに交流事業というものを推進することが望ましいと私は思いますけれども、この点についてはどのようなお考えを持っていらっしゃるか。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かに御指摘のような傾向はあるのです。私どもも実感を持っておるわけでありますが、私ども高等学校に学ぶ。そうすると、そこには多数の海外からの留学生がおるわけです。その方々が帰っていく。ことに中国関係が多かったわけですが、その一部は非常な親日家として日本と中国との間の理解のためにつとめる。が、一部の方は極端な反日行動を展開する、こういうふうなことになり、非常に残念なことに思いますが、一つ日本の国におるときに受ける感じ、そういうものもあろうかと思うのですが、その後の日本の国とその相手国とのあり方、国交のあり方、これも大きく作用していくのではないか。やはり私はそういうことを考えますときに、非常に大事なことは、どこの国とも友好の関係を持続する、こういうことじゃないか。そういう状態であると、日本において勉強された青年の諸君の気持ち、そういうものがやはり日本と相手国との間のパイプ役として非常に力を発揮する。ところが国交が正常化しますとそういう作用が非常に大きく減殺をされる、こういうことになってくるのではあるまいか、そういうふうに考えます。ですから私どもがいう平和外交、これはどうしても基本として展開をしていかなければならぬ。しかし、何時にまたその平和外交の中におきまして留学されるところの青年、こういう方々に対しては特別に深い関心理解とをもって接していくという国民全体の姿勢、それから同時に、現にそれらの青年をお世話するところの役所なりあるいはその他の機構なりの方々の心がまえ、こういうことがたいへん大事なことになるのではあるまいか。とにかくこれから発想の転換を行なうわけですから、その転換を背景といたしまして過去のような不幸な事態のないように心してまいらなければならぬ、かように考えております。
  39. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ここでことさらに日中問題をまた取り出すつもりはございませんけれども、この法案関係したことについてさらに進めてまいりたいと思います。  文化交流の人物の選定ですけれども政治的あるいは思想的な問題の種にならないようにすべきであるということが一つ。要するに政治的に片寄ってもならないし、あるいは思想的に片寄るようなことになってもならない。先ほど同僚委員からの御質問にもこのことに関連したことが出ておったようですが、社会主義国であるとか、あるいは分裂国家の問題等々、要するに韓国あるいは北朝鮮の問題、要するに片寄るようなことがあってはならない、こういうことでかなり時間をかけて実は御質疑をしたいわけですけれども、こういったことにひとつ十分な配慮を講じてもらいたいということですが、こういうことが今後この国際交流ということに関して片寄りということが絶対にないというふうにここでは了解してよろしいかどうか、一言で御答弁をいただきたいと思います。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 イデオロギーによってこの運営を差別して考えるということは、これは絶対にいたす考えはございません。ただ分裂国家という際には、これは文化交流と申しましても、政治面からの配慮、これがケース・バイ・ケースの問題として必要とされるということもあることも御理解願いたいのですが、基本的な考え方としてイデオロギーを超越した文化交流ということに御理解願ってこれは間違いございません。
  41. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 確かに政治的な配慮というふうにいまおっしゃられたわけですが、私たちが指摘していることはむしろここなんであって、そういうことがこの文化交流によってむしろ全く表に出てこないような、そういう大きな役目を持っているのじゃないか、このように私は思うわけでございます。一番最後に大臣が答弁された方向にひとつぜひ持っていっていただきたい。  それから時間があまりないのでどんどん急いじゃうのですが、聞くところによりますと、文部省は、これはきょうはもちろん文部省の方いらっしゃらない。国費留学生の里親制度というものをつくるというふうにいっておりますが、基金においても招聘する人を日本の一般庭で受け入れてもらって、そして日本人の生活を体験してもらうということが、それこそ心と心の触れ合いということにもなろうかと思いますし、また日本理解してもらう最も望ましい姿ではないかと思います。外務省は従来このような国民的機運の盛り上げについて何らかの方策をとったことがおありかどうか、その場合に篤志家に対する経済的な補助は行なったかどうか、また今後は予算措置等に関してどのような考えを持っておられるか、そういった面について、これは外務省でけっこうです、質問のなにが外務省の御見解を聞きたいわけですから。
  42. 加川隆明

    加川政府委員 外務省は私費留学生に対しては国際学友会というものをつくりまして、御承知のとおり日本語を教え、それから一部宿泊施設もあるわけでございます。これが大体年間予算二億円程度のもので、私たちのほうから補助金が出ております。  それからそういう受け入れ施設といいますか、このごろ母親の会みたいなものがございまして、里親制度ですね、そういうものがありまして、この前も私のほうにお見えになりまして、わずかでございますけれども財政的な援助をした例が二件ございます。  なお、国費留学生については文部省が見えておりますので、あるいは委員長のあれで文部省からお答えいただきたいと思います。
  43. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それではだいぶ残っておりますし、次に進んでいきたいと思いますが、海外で見られるところのエコノミックアニマルとかあるいは醜い日本人とかいろいろなことばがいわれております。このいわゆる日本人批判ですね。こういうことを言うと、在外公館の広報活動が多少やはり不足しているのだというようなことを言われるかもしれませんけれども、やはりその根本は政府はじめ実業界が相手国側の心情を深く理解しないで、金ですべてを解決するという姿勢にも私は原因があったじゃないのか、こういうふうにも思うわけです。すなわち物に偏重して心を忘れているんじゃないか、実はこのように憂える者の一人でありますけれども政府もこの際こういったことに関して大いに反省をしていただくとともに、実業界に対する啓発ですね、こういったことも大いにやっていただきたい、このように思いますが、こういった日本人批判に対する何らかの具体策を考えておられるかどうか、この点がありましたら聞かしていただきたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま海外におきまして、特に発展途上国あたりで日本に対する批判というものもあるわけです。しかし大体において日本経済が非常に発展をしておる、それに対して尊敬の念を持ちこれを評価する、そういうことのほうが多いと思うのですが、しかしその反面において批判も出てくる、こういうことだろうか、こういうふうに思います。そういう批判が出てくる根源は何だということを考えてみますると、わが国はGNPに対しまして〇・九三%という多額の経済協力を行なっておる。世界じゅうで高くこれを買われておるような状態でありまするけれども、その経済協力という問題がどうも日本の商圏拡大というか、そういうものに結びついておる、密着をしておる、そこが批判をされておるんだ、こういうふうに思うので、これは民間人というよりはむしろ政府自体の姿勢、そういうものを大いに改めていく必要があるのではなかろうか、そういうふうに思いますが、もとより民間の方に対しましても、この民間の方々が一つ一つ経済協力仕事を実施していく、そういう立場にあるわけでございますから、これらの方々にも基本的に考え方の転換をしてもらわなければならぬ、こういうふうに思います。  今度交流基金ができますと、運営審議会というものができるわけでありますが、この運営審議会あたりにも財界の方も参加してもらいまして、ここでいろいろ思想の統一の場とする。その統一された見解を財界に持ち帰ってこれを徹底してもらう、普及してもらう、こういうようなことも一案ではなかろうか、そういうふうに考えておるわけですが、これは急転換は財界のことですからむずかしゅうございますが、徐々にではあるが精力的にそういう方向の努力をしてみたい、かように考えております。
  45. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにしても、生産第一主義なら生産第一主義ということに対する相当強烈な批判というもの、これは言うまでもないとしましても、ただいま御答弁いただいた理由がいろいろあるようですけれども、理由は何であれ、このような日本人批判というものをやはり払拭していくということが、私たちは外務省の大きな役目の一つではないか、このようにも思います。さっき在外公館の広報活動の問題もちょっとあげましたけれども、その点をひとつ、理由がないようなものに対する批判というものだけはきちっとしていかなければならない、このようにも思います。  次に、一般に特殊法人が新設される場合には、役員のいすをめぐって各省庁間の醜い争い、奪い合いといいますか、そういったものがあるように聞いておりますが、新聞報道等によりますと、この基金でもそのような動きがある。また岸信介名誉総裁説まで飛び出しておる。私はこれを見て非常にびっくりしたわけですけれども、実際にこの基金に名誉総裁などを置く必要があるのかどうかという問題。こういうことは言っていいかどうかと思いますけれども、少なくとも反共的なイデオロギーにこの特殊法人が利用されてはならないはずだ、このように私は思うわけであります。この点については大臣としてどのような見解を持っておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度できるこの機構は、これはあくまでも中立的な立場においてわが国理解者世界に求める、またわが国民の国際的感覚を養う、この面面の目的を実現をするということでありまして、これを通じましてわが国政治上の思想を推進するんだとか、あるいは他国の政治的な思想を妨害するんだとか、そういうふうなことは考えておりませんし、またそういうふうな実行は断じていたしませんから、御安心願いたいと思います。
  47. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この基金役員について、先ほどもちょっと出ておったようですが、官僚の天下りとかそういうことは絶対に避けなければならないんじゃないかということが一つ。  それから、これに対しては民間の文化人であるとか学者などのいわゆる有識者を選考してほしいと私は思いますが、これについてどういう考えを持っておられるか。またそういった人々の人選の腹づもりがあるのかどうか。  時間的に非常に詰まっておりますので、続けて聞いてまいりますが、この中に出ております理事長あるいは理事ですね、こういった人たちは外務当局から出すのかどうか。それと同時に運営審議会委員が二十人とここに出ております。この二十人の人たち委員の資格ですね、これがどういう資格であるのか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず役員の問題でありますが、これは私が先ほどから申し上げましたように、今度できる機構はほんとうに画期的な考え方に基づいてできるものである、それにふさわしい人事構成をしなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。何せまだ半年先の人事でございます。具体的にいまどうこうしようという考え方はありませんけれども、この画期的な考え方を実現するにふさわしい人材をそろえたい、こういうふうに考えております。  なお、運営審議会委員二十名ということになっておりますが、これも各界から委員を求めたい、その各界からの委員の求め方、これも役員の選考と同様に各界におけるこの問題について権威のある、かつこの問題について熱意のある人、そういう者をもって構成をいたしたい、こういう考えでございます。
  49. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 どうかひとつ大臣、御答弁にもありましたようなふさわしい人事構成を、こういったことを心から願うわけでありますが、こういった基金がいわゆる官僚行改化してしまうようなことがもしあったとすると、せっかくの基金の理念及び活動というものは必ず硬直化してしまう、そして十分な機能というものは果たせない、こういうおそれが出てくるわけでありますので、ひとつこの点を十分考慮していただきたい、このように思います。  これに関連いたしますけれども、この基金外務大臣の監督のもとに置かれるというふうになっておりますが、外務省としてはどの程度監督または行改指導をする考えであるか。特殊法人をつくる以上、かなり自由な運営というものをお認めになるのか。外務当局があまりにもいわゆる外務省的な行改指導というものを強めるということになってしまってはならないのじゃないか、このようなことも同時に心配するわけでありますが、そういうことになってしまえばもうどっちかといえば外務省が直轄でやってしまったほうがいいんだということになりかねないわけであります。この点に関して心配するわけでありますが、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 この機構を特殊法人としたそのゆえんのものは、これは官庁のやり方であってはならない、こういうふうに考えると同時に、また考え方といたしまして私が申し上げたような海外に多くの理解者をつくる、また国内の国際感覚を大いに養う、この二つの眼目、これと沿うものでなければならない、こういうふうな理由からであります。したがって、大筋におきましては、外務省といたしましてはこれが運営を誤らないような監督をしていかなければなりませんけれども、この具体的な運営につきましては運営審議会の総意でひとつきめていく、またそれを受けて役員会がその仕事の個々の実行に当たる、こういう仕組みをとっていこう、こういうふうに考えております。外務省は官庁の仕事としてこれを行なうという考え方は全然持っておらないわけでございます。
  51. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 もう時間がありませんので、最後にあと幾つかまとめてお聞きして結論に持っていきたいと思いますが、三十二条に運用資金の運用方法を定めておりますけれども、このいわゆる低金利傾向にある現在、運用益を見込みどおりにはたしてあげられるかどうか、そういう確信はおありかどうか、これが第一点でございます。  それから基金は民間からも出資を募集する旨の規定がありますけれども政府以外の者としては主としてどのような対象でどの程度の出資額を見込んでいるのか。これは万一設立時までに民間出資がなかったとき基金は設立できなくなるんじゃないか、あるいはこの基金の機能に支障を来たすことにならないかどうかという問題、これが第二点です。  それから国際文化振興会を吸収するというようにいわれておりますが、その職員の今後の身分保障については一体どういうふうになるか、この点をまとめて御答弁をいただきたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 第一は運用益ですね、これが低金利の関係で減っていくおそれはないかというお話でございますが、かりに低金利の傾向がありましてその果実が、運用益が減少するというようなことがありますれば、基金そのものをふやすとかあるいは一般の財政から事業費を補給するというようなことも考える場合があろうか、こういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、この基金は百億円というここでとまりだという考えは持っておりません。数年中に大体千億円を見当にいたした基金規模にいたしたい、こういうふうに考えておりますので、財政的な問題につきましてはそう私は不安はなかろう、こういうふうに考えております。  なお民間からの出資の見通し、これはいま不況状態下の財界でありますので——主として財界を考えておるわけでありますけれども、その財界の出資、これはそう多額は望めない。全然望めないということはありませんけれども、そう多額にはなり得ない、こういうふうに考えております。まあこれが多額になればなるでそれはプラスアルファだというくらいな考え方をいたしております。  第三に、国際文化振興会はその事業をこの基金で吸収をするというたてまえをとっておるわけでありますが、国際文化振興会において働いておる方々の吸収につきましてはそう問題の起こらないように妥当な受け入れ考えております。スムーズにやっていこう、かような考えであります。
  53. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それではもう時間が参りましたので、要望といいますか結論的にお話をしておきたいと思いますが、最近における外国のいわゆる日本軍国主義復活論議ですね、これも先ほども出ておりましたが。その責任は私は政府の姿勢にあると言わざるを得ないわけであります。経済的な発展を背景とするところの四次防の問題であるとか、あるいはまたマラッカ海峡生命線のこの論議、こういったものはかつて日本軍事進出によって被害を受けたアジア諸国に非常な疑惑を与えないとは言い切れない、このように思うわけです。政府もこの際国際社会の一員として日本のあるべき姿について基本的な路線を明確にして無用の誤解を受けることを避けるためにも慎重な言動をとっていただきたい。またこの基金運営につきましても、いわゆる親日家をつくるというより知日家をつくるという姿勢で、押しつけがましいPRだけはぜひ避けていただきたい。少なくとも戦前のような反日思想を抱かせることのないように十分ひとつ外務省としても気を配っていただきたいということを強く要望いたしまして、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  54. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会