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1972-03-15 第68回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十五日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 正示啓次郎君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 西中  清君    理事 曽祢  益君       石井  一君    鯨岡 兵輔君       野田 武夫君    福田 篤泰君       福永 一臣君    山下 徳夫君       豊  永光君    黒田 寿男君       堂森 芳夫君    三宅 正一君       中川 嘉美君    渡部 一郎君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省情報文化         局文化事業部長 加川 隆明君  委員外出席者         外務省アジア局         南東アジア第一         課長      三宅 和助君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   谷口善太郎君     不破 哲三君 同月十五日  辞任         補欠選任   西銘 順治君     山下 徳夫君   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   山下 徳夫君     西銘 順治君   松本 善明君     不破 哲三君     ――――――――――――― 三月十三日  世界連邦建設の決議に関する請願(赤城宗徳君  紹介)(第一四九四号)  同(篠田弘作紹介)(第一四九五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十一日  日中国交回復促進に関する陳情書外十二件  (第一七号)  日朝友好促進に関する陳情書外二件  (第一八号)  沖繩返還協定批准促進に関する陳情書  (第  一三一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第一四号)  国際交流基金法案内閣提出第五六号)      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  外務公務員法の一部を改正する法律案及び国際交流基金法案の両案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま上程されております外務公務員法の一部を改正する法律案の審議にあたりまして、外務省公務員諸君は重要な外交の仕事に専念してもらっておるのでありますが、私はこの法律案改正に関連をして、わが国外務省公務員諸君姿勢といいますか、そういうものについて若干の質問をしまして、外務大臣から答弁を願いたい、こう思うのであります。  私は、一昨年以来、たとえばわが国アメリカとの間の繊維交渉経過をずっと見てきまして、そして昨年の十月のああいうような結果になったのでありますが、私は率直に申しまして、国民の間から、一体わが国外交というものがあるのだろうか、あの繊維交渉経過だけ見ておっても国民外務省というものに対して非常な不信の念を持っておると思うのです。これは、外務大臣もそんなことはないというような顔をしておられるように見受けますが、そんなことはないですよ。ある意味では、外務省のそうしたセンスといいますか、国際環境といいますか、あるいは国際的な流れといいますか、そういうものに対する認識というものが、戦後のわが国の特殊な事情からそうした的確な判断をやっていくというような体質になっていないのじゃないか、私はこういうふうに考えるのでありますが、外務大臣はどのような判断をしておられるでしょうか、まず承っておきたい、こう思います。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま堂森さんから繊維交渉をことあげされまして御意見が述べられておりますが、私も繊維交渉というものを見ておりまして、これは非常に異例交渉であった、こういうふうに思います。異例であるということは、これは率直にいいまして、あの交渉過程において外務省はこれにタッチすることが非常に少なかったわけです。普通の外交交渉の筋合いで行なわれなかった、こういうことを私はさしておるわけでございます。しかしあれはいろいろないきさつがありまして、これは御承知のとおりかと思いますが、ああいう交渉過程をたどったわけでありますが、しかし他の案件につきましては、外務省がいま外交担当庁といたしまして正しい姿勢であり、正しい行動をとっておるということにつきましては、私は一点の疑いも持っておりません。いま世界情勢多極化しておる、私そういうふうな判断をしておりますが、この判断においては間違いはない。また、多極化体制下においてわが国多極化外交施策を進めておる、これも私は間違いない行動である、こういうふうに思っておりますが、御指摘繊維交渉につきましては非常に異例なものであった、これで外務省のやり方を判断するんだということだけはひとつ御容赦願いたい、かように存じます。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 いやしかし大臣異例のことだからあれはよく了解せい、そういうことでは私は話は済まぬと思います。あの繊維交渉経過をずっと見ていまして、ほんとうに国民は率直にいいまして、一体日本外交があるのだろうか、こういう率直な疑問を、外務省に対する不信感というものを持ってきた、これは私は一例として言っておるだけなんです。  ことしの一月十六日だったかの新聞、私は的確には覚えていないのですが、毎日新聞に、米中の接近について、香港岡田総領事駐米大使である牛場氏との間に激論が戦わされた、こう書いてあります。あなた、新聞をお読みになりましたか。この二人の米中接近に対する——これは外務省内における重要なポストにおる人ですね。香港総領事という重要なポストにおる岡田氏と、それから駐米大使牛場君との間に根本的な米中接近についての認識が違う。その内容をずっと幾らでも私覚えていますから言ってもいいのですが、そういうふうに新聞に報道されておる。大臣を補任すべき——補佐といいますか、国際関係のそういう流れといいますか、そういう情勢といいますか、そういうものを的確につかんでいかなければならぬ重要なこの二人の間にすら全く違った認識——もちろんそれは大臣は、いかなる役所においてもいかなるところでも違った意見があるのはそれはあたりまえだ、こういうふうな考え方をお持ちであるかもしれません。重要な米中接近というこの事態に対する外務省の重要なポストにおる人たちの間に大きな意見の差があるというようなことが報道されておる。また、あげれば幾らでもあります。たとえば昨年の重要事項指定方式、この提案国になるかならないか、この問題に対する認識でもすでに、これは名前をあげてもいいわけですが、国連大使中川氏とそれから牛場大使との間においてまた何かそういう——まあ新聞報道ですよ。それは全部明らかに違うんだ。この日本の重要な外交の地位をになっておる二人の間でもそういう意見の全く違うような、全くといって、それはこの重要事項指定方式に対する態度についての考え方が非常に違うような意見政府に伝達されておったというようなこともあったというふうに新聞は報道しておりまして、幾らでもあるわけです、これは。こういうような事態というものは一体外務大臣はどのように認識しておられるでしょうか、もう一ぺん、もう少し答弁を願いたい、こう思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 堂森さん、政策が基本的にきまる過程ではいろんな議論があります。これはもう御承知のとおりと思います。私はむしろそれを奨励しておるのです。省内が黙りこくっちゃう、これは非常に危険な状態です。逆に、省内でいろんな議論が戦わされて、その結局は帰一する、こういうことこそが大事なことである、こういうふうに考えておるわけでありまして、牛場岡田の間で議論があった、私はそれは承知しておりませんけれども、それは当然議論があっていいんじゃないかと思います。ワシントンにおる牛場大使はどうしてもワシントンを基盤としての見方になる。香港におる岡田君はそういう香港という土地柄立場議論を展開する傾向を持つだろう、こういうふうにも思われる。ですから、その同者の間に意見相違が出てくる、これは私はそうあっていいと思います。要は、全責任は私が負っているわけですから、私がそれらのいろんな議論を集約し、また、国益を踏んまえまして裁断を下した、それに対して反対の議論が出るということであれば、これは許されることではない。私も断固たる処置をとらなければならない。しかし、過程において議論が出る、出れば出るほどいい、こういうことで、ちょっと堂森さんのいまの御所見とは私は違った形を持っていることを申し上げてお答えといたします。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 過程においていろんな意見が出てくるのは、それはあたりまえですね。それはあなたのおっしゃるとおりです。しかし、ことしの一月の論争ですよ、外務省において。すでに米中は接近が、もう昨年の夏以来現実に公表されて、それで日本外務省に、政府にはそういうことの発表の三分前に連絡があった、こういう状態ですよ。そして、ことしの一月になって、この米中接近についてのそういう認識のしかた、これは意見相違というのですが、あなた、そのときにはもっと的確な認識というものがはっきりしていかなければ、日本外交政策なんというものは立たないと思う。これは、ことしの一月になっても米中接近実相等について的確な判断をしておるというふうには、そういう論争をやっておるところに、私は、的確な、流動する世界情勢というものをつかんでいくような、そういう態勢に日本外務省諸君はなっているんじゃないか、こういうふうに考えるのでありますが、いかがですか。ことしの一月ですよ、あなた。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 一月、一月というふうに強調されますが、その牛場岡田議論というのは、電話ででもされたんでしょうか。二人はどこでも会っておりませんです。それがどういう形で議論をされたのか、ちょっと私もつかみかねますが、これはおそらく、堂森さんがおっしゃるのは、去年の暮れのことじゃないですか。たまたま牛場大使が去年の募れ帰朝しておった。その時期に岡田総領事をやはり一時帰朝せしめたわけです。そのころかと思います。それはどういうことかというと、サンクレメンテ会談に臨むにあたっていろいろ違った意見も聞いておこう、こういうことなんであります。そういう際に両方からいろいろな意見が出てくる、これは当然のことなんです。どうも、ちょっと時間的に、堂森さんのお話、伺っておりますと、何か誤解をされておるところがあるんじゃないか。そんなような感じがいたします。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 それは、論争を二人が、意見食い違いが強く出ておる、ことし——去年の暮れでもいいです。しかし、もう昨年、大きな、世界じゅうの世論を大きく刺激するような米中の接近というような事態が生まれてきておる。しかし牛場大使の言っておる認識のしかた、岡田総領事認識のしかたと全く——これは全くと言っていいと思うのです。——違う立場ですね。そういうことは、意見の差異があっていいというんなら、国連外交等を見ましても、世界じゅうのもの笑いになるようなああいう態度をやっておいて、そして意見相違はあってもそれは当然だというようなことで済まされるとは私は思わぬですが、いかがですか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 最終的に政府意見がきまりまして、それに対して下部機構において異見を唱えるという者があれば、これはまさに堂森さんが御指摘のような重大な問題であろうと思います。しかし、最終的な結論がきまります前に議論が出てくる、いろいろな議論があるということは、かえって私は歓迎することである。むしろ、外務省の役人がもう黙りこくっておって意見を述べないというような状態になりますと、これは非常に危険なことになる、そういうふうにさえ考えられるのです。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、私はそんなことを言っておるんじゃないですよ、あなた。外務官僚諸君が何にも言わないことになったら、それはたいへんなことですよ。しかしそういう、たとえば二人の意見というものの食い違いをわれわれがこう観察すると、そういうふうなことで米中接近というものを認識しておるような人たちがたくさんおって、それがやっぱり国連外交等にも大きく影響しておる、あるいはせんだっての予算委員会で問題になったような、台湾の問題等についてのあなたや佐藤さんのああいう答弁食い違いが出てきた問題等が惹起しておるというのもやっぱりそういうところから、そういう外務省体制から来ておると、私はこういうふうに考るから申し上げておるのであります。いかがでありますか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまのお話を承っておると、どうも外務省意見が四分五裂しておる、それじゃ外交ができないじゃないかというようなお話ですが、そんなことはありません。私が最終的な判断を下して、それに対して異議を唱えるという者がありますれば、私はこれを放置することはできません。私が締めくくりは最終的に責任を持ちますから、どうかその点は御安心のほどをお願い申し上げます。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、あなたはそういう高飛車におっしゃるんでは、私は幾らでも議論しますよ。たとえば日本外交の基本的な体制というものは、私は、考えようによってはこう言えると思うのです。まず、戦争に負けた。そしてアメモカが勝者であった、それで日本は敗者であった、そういう基本的な立場から日本外交は出発しておる。そして安保体制というものに入ってきた。そして、いわばアメリカ利益日本利益である、単純にいうならばそういう体制からずっと日本外交は進められてきた、そういう強い体質を持っておると私は思うのですね。そして、そういう強い体制というものが、たとえば牛場君のような議論というものに発生してきておる、こういうことが言えると思うのです。岡田君の意見というのは少数意見ですね、と私は思うのです。そういう体質をわが外交は持つ。外務省体制はそういうふうな体制になっておる、こう思うのですが、いかがでございますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 外交評論家がいままでの世界情勢冷戦構造だ、二極構造だというふうに見ておる。私もそのとおりに理解をしております。それが多極化してきておる。その多極化時代に即応した外交多極化というものがなければならぬ、こういうふうに考えるのです。それで二極化というか、冷戦構造下においてはソビエトアメリカ、これが二極でありますから、どうしてもわが国世界に臨む姿勢というものはアメリカに密着をする、そういうような形をとったと思うのです。これはやむを得ないことだったと思うのです。しかし、多極化ということになるとそういうわけにはいかない。いろいろな勢力が出てきておる。ソビエトロシアのことも考えなければならぬ。中国大陸のことも考えなければならぬ。ヨーロッパ大陸のことも考えなければならぬ。アジア地域のことも考えなければならぬ。しかし、とにかくわが国アメリカとの間に日米安全保障条約を結んでおりますから、アメリカとの関係はその他のいずれの極よりも重大だとは考えまするけれども、しかし目を世界じゅうに配った外交、選択の幅の非常に広い外交を展開するというかまえをとらなければならぬ時期に来ておる。私も現にそういう立場において諸施策を進めておる。これは堂森さんもよく御承知のようにモンゴリアの承認、これはアメリカとはだいぶ違う立場でございます。あるいはバングラデシュの承認につきましてもそうであります。あるいは北ベトナムに対する対処のしかた、これもアメリカとは行き方が違う。必ずしもアメリカと一から十まで一緒だというようなことになっておりません。おりませんのは、つまり世の中がそういうふうに変わってきておる、それに対する柔軟な対応をわが外務省はしておるということでありまして、御意見ではありまするけれども、まさに御意見のとおりの方向の諸施策を進めておるというのがわが外務省の現況であります。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 私はきょうは法律改正案に関連して聞いておるのでありますから、これは基本問題ですから他の機会にもっといろいろ議論してみたいと思います。  そこで、毎年のようにわれわれに配付されております「わが外交近況」という青書、これを私はひまをみては読んでおるのですが、この「外交基調」というものについて第二章で書いております。これを読んでみますと、どうもやはり私が心配しているようなことが出ておると思います。国際関係の基本的な構造には変化がない、こういう大前提です。こまかいことはかまわぬ。大事なことを私は言っておる。変化がないんだ、そういう認識ですね。あなたは多極化時代だから、大いにわが外交は、従来のような、日米安保体制のような姿だけでいくものではない、もっと多角化した外交をやっていくのだ、こういう体制になりつつある、こうおっしゃいますが、この青書ですね、あなたのところのバイブルかどうか知りませんが、そういうものをわれわれにいつも配付しておるのですから、これを読んでおるのです。  そこで、国際関係の基本的な構造は変わらぬのだ——そうでしょうか。国際的な基本的な構造というものは変わってないというふうに認識していいでしょうか。外務大臣、いかがです。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお手元にお持ちのものは、私持っておりませんけれども、それは出版はいつでございますか。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 四十六年版……。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 おそらく堂森さんの御引用のその書物は、昨年の三月ごろのものじゃないか、こういうふうに……。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 四十六年七月です。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 七月ですか。ですから出版は四十六年七月でありましても、あるいは一昨年時点まで、あるいはおそらく早くても去年の三月ごろまでの事態をとらえての解説書ではないか、こういうふうに思います。それはそれとして、私どもが多極化時代と申し上げておりますのは、一つは昨年のヨーロッパ連合へのイギリスの加盟決定、これをとらえておるわけです。もう一つ中国の去年の秋における国連への加盟、これをとらえておるわけであります。これで、世界構造がこの二つのできごとを象徴として非常に大きく変わってきた。その変わってきたことが、これが一つの形として出てきておる、こういうふうに見ておるのでありまして、それ以前の世界情勢というものは、先ほど申し上げましたように二極構造というか冷戦構造というか、そういうもので動いてきておる。もちろんその中に多極化時代への目ざし、そういうものはあったと思いますけれども、私はこの多極化時代というものが決定的にスタートする、そういう時期は去年であった、一九七一年であった、そういうふうにとらえておるわけであります。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、外務大臣、昨年の七月に発行されたものだから、それは以前の認識だ、こういう御説明のようでありますが、多極化時代なんというものはそんな去年から急に始まったものではないですよ。そういう認識わが国外交というものの時代おくれといいますかそういうものの原因があるとはっきり言えると思う。いずれまたこの点につきましては……。  どうもこの青書のいろいろな方針等、あるいは基本的な指針とか、いろいろな認識を読みますと、全部やっぱり現状を固定した考え方認識している。そして流動するこの激しい国際情勢というものに対応していけるような体制をとれないような、そういう体質わが国外務省がなっておる、こういうようなことに言っても過言でないのではないか、私はこういうふうに思うのであります。いかがでありますか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の「わが外交近況」でもその冒頭で申し上げておるのです。「一九七〇年度を通じて、国際情勢基調ともいうべき米ソ間のいわゆる平和共存関係には、基本的には何ら変動はなかった。しかし」——中を省略しますが、「将来国際関係構造面にも影響しかねない幾つかの微妙な変化の兆候もうかがわれた。」こういうことで、まさに堂森さんの御指摘のような認識のことが書いてあるわけなんです。この認識が的中したというか、七一年になりますと多極化を固定化するような、先ほど申し上げました現象が出てきておる。それに対応するかまえでやっておりますから、どうかひとつ御鞭撻のほどをお願いします。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから、次の問題に移っていきたいと思います。  先般、外務省三宅課長ハノイを訪問しております。これは新聞に報道されているとおりであります。私が当時聞いた話では、アメリカ政府は非常にこの三宅課長ハノイ訪問に対して難色を示しておるというふうなことを、私はある人たちから聞いておるのですが、ハノイ訪問についてアメリカ政府事前連絡して三宅課長を派遣したのですか。どういうわけでそういうことが必要なんですか。わが国独立国家ですよ。ハノイ外務省からだれを派遣しようが——目的とか意味とか、あとから少し聞きたいと思いますが、アメリカ政府にそういうことを連絡して、そして了解を得なければ、そういうこともしないとするならば、これはやはり問題があると思うのですが、いかがでございますか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 三宅課長ハノイ訪問に先立ちまして、その直前にアメリカ政府に通報いたしております。これは相談をしかけたわけじゃありません。わが国わが国の行くべき道がある。これはアメリカもそのことについては原則的によく了承しておるのです。たとえば一番大事な中国との接近、これにつきましても、アメリカにはアメリカの行き方があれば、わが日本にはわが日本の行き方がある。行くその道筋につきまして違いがあっても、これは主権国家としてお互いにやむを得ないことじゃないか。しかし重要な外交措置につきましては、同盟国でありますから、事前事後においてよく連絡をし合おうじゃないか、そういうことになっております。ハノイ三宅課長を派遣した、これもそういう精神で、わが国はこういう行動をとるということを通報した。アメリカは、何か文句を言ったようないまのお話でございますが、さようなことはございません。主権国家たる日本行動について文句を言うはずがない。アメリカは、ただこれを聞きおくというところであったことを率直に申し上げておきます。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 それは、あなたがそうおっしゃっても、外務大臣だから向こうが文句を言ったとは言われぬでしょうから、それはいいでしょう。  そこで、大臣は、三宅課長をどういう目的ハノイに派遣されたのか、あるいはどういうことを話し合いされたのでしょうか。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 このいきさつは、たまたまパリで日越の外交官同士の軽い話し合いの場がありまして、そこで北越側より、北越の状況も日本は見ておいたらどうだろうか、こういうふうに話が進んだわけでございます。そこで三宅課長を派遣するということになったわけなんですが、私がその話を受けまして、三宅課長を派遣することがいいというふうに判断しましたのは、いずれ南北間のベトナムに対する争い、これは終止符が打たれるであろう、その際にはアジア経済力のすぐれたわが国といたしまして、この地域の復興に無関心であるわけにはいかない、またその以前といえども実情を調査しておく必要があるのではないか、そういうようなことを考えながら三宅課長北越派遣は有意義なことである、こういうふうに考えまして裁断をいたしたわけであります。そういう裁断に基づいて三宅課長は行ってきたわけですが、会談の成果は具体的にはございません。これからお互いお互いを理解し合うような行動を、こういうことが大事じゃないかというような雰囲気であったと思いますが、具体的に取りきめをいたすとか、あるいは合意をいたすとか、そういうことはなかったのです。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると大臣答弁は、ことばを返して言えば、これから政府間の折衝に持っていく瀬踏みの程度であった、こういうことでございますか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府間接触ということをまだ考えておりません。おりませんけれども、また先の南北の和解後の事態を考えてみますると、事前わが国ベトナムの状況を南北ともに知っておく必要があるし、また北越におきましても日本の事情を知っておく必要があるだろう、そういうふうに考えたわけなんです。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、これから政府間の接触なんかに持っていく意図はない、こういう意味でございますか。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 当面、政府間接触ということ、つまり外交の正式の接触ということは考えていない。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 それじゃ、外務大臣についでにお尋ねしておきますが、外務大臣ベトナムの戦争というものは今後どういう経過をたどっていくだろうかという見通しを一応持たれておられると思うのですが、それも承っておきたい。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 ベトナムにつきましては形勢が一進一退という状態なんです。大きな流れといたしましては、これは和平へと動いておるわけであります。しかしアメリカ北ベトナム立場が若干違うところがある。そういうようなところがどういうふうに調整されていくか、これは今後の問題であります。こういうふうに見ておるのです。流れは、じぐざぐ、一進一退をたどりながらも和平への方向に動いていくだろう。時間的にどういうふうなタイミングになりますか、そこまでは私どもも予測はできませんけれども、これはそういう道筋をたどるに違いない、こういうふうに見ております。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので、いろいろまた次の機会に伺います。  そこで、ただいま審議の案件であります外務公務員法の一部改正のこの法律に関連して、私はこういうことを近ごろよく感ずるのであります。ときどきわれわれも海外へ出るわけです。最近若い外交官の職員の間に、海外で会う諸君の中で、かなりな諸君が、何か外交官としての仕事に非常に熱意を失っておるといいますか、そういう諸君によく会うのですが、そういうことをよく知っておられますか。われわれは民間へ行って働いたほうが、もっと情熱を持って働いていけるように思うとか、外交官としてのそういう仕事に対して非常に熱意を失ってきておる人が多いんじゃないかという印象を受けますか。外務大臣、そういうことを感じられませんですか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はまた着任八カ月で、そう権威のあることが言えるかどうか自信がありませんけれども、短い八カ月の私の体験からいたしますると、さような空気があるというようなことは感じませんでしたが、また何かそういう空気でもありますればたいへんなことですから、こういう場でないほうがいいと思いますが、ひとつお聞かせを願いたい、かように思います。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 そういう若い人にもよく出っくわしますよ。それはあなたもっとよく調査してください。もちろんそれは待遇の問題等一つ大きな原因になってくると思います。それは知っておられるでしょう、大臣は。そんなこと知らぬ、そんなぼんやりじゃないと私は思います。たくさん会いますよ、そんな人も。そういう訴えでよく意見を聞くわけですがね。  そこで、この法案の二、三の点を直接、これは事務当局でもいいですが、大公使の待命期間の延長というものの真の目的といいますか、真のねらいというのは一体どこにあるのですか。少し具体的に答弁願いたい、こう思います。
  36. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先生のお話しでございますが、待命全体の制度について期間を延長したわけではございません。待命と申しますのは、先生も御承知だと思いますが、ある任地を持っておりました大使がその任地を離れまして帰朝いたしまして、その次の任地に至るまでの間その地位を失わないようなための制度でございます。ただ、いろいろ人事の都合、それから今度新しく行きます任国のアグレマンをとるとか、それからまた向こうにまだ前任者がおるとかいうような問題がいろいろございまして、その期間が長くなる場合があるわけでございます。その長くなったときにこちらで有能な大使を遊ばしておくのもどうかと思いますし、それからまたいろいろ仕事がございますために、たとえば国連総会があるとかあるいはどこかのいわゆる重要な外交交渉がある、そういうふうなときに政府代表なり全権委員にいたしますわけでございます。これは臨時に派遣するわけでございます。派遣しましたときに、たとえば国連総会なんかは非常に長くかかりまして、待命期間というのは一年間で切れるものでございますから、国連総会が続いている間にその期間が切れてしまうと非常に都合が悪くなるわけでございます。その分だけを延ばしていただきたい。たとえば国連総会の政府代表になっている間は、その一年間の期限がきてもその分を延ばしていただきたい、それが今回の改正の趣旨でございます。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、具体的に最初からわかっておるわけじゃないわけですね。ちょっと質問のしかたがあれかもしれませんが、そのときになってみなければ、待命中の大公使の仕事が実際に出てこなければわからぬわけでしょう。
  38. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 このケースが出てまいります場合というのは、ある特別な任務を与えまして、その任務がこちらの、ある意味では一年間をこえていく形になるものでございますから、大体最初からわかっております会期のあるような、たとえば国連総会のような場合には、まあ起こらないと思いますけれども、ある長い交渉、たとえば平和交渉だとかそういうふうなことでずっと長く政府代表になっている場合にはそういう場合が起こるわけでございます。前には、予見できない場合があるわけでございます。そういうようなときのことをおもんぱかって延ばしていただこうとお願いしているわけでございます。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 現在特命中の大使、公使というのは何人ぐらいおられるのですか。
  40. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 的確にここに資料を持っておりませんが、この三月におやめになる方々を含めまして七、八人だったと記憶しております。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 すると、七、八名おられるとしましょう。この諸君が今度の法改正で何か新しい仕事についていくとか、そういう見通しを具体的に現在持っておるわけじゃないのですね。仕事が出てきてそうなったときに任命されて延長される、こういうことでございますか。
  42. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お話しのとおりでございます。現在具体的にこういうものにつけたいから延ばしたいということではございません。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 この法律は反対すべき何ものもないですから二、三の点を聞いておきました。  私の質問を終わります。
  44. 櫻内義雄

    櫻内委員長 中川嘉美君。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  45. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 外務公務員法の一部を改正する法律案に関連しまして、まず二、三伺っておきたいと思います。  わが国外交の円滑な遂行のためには、それに関連するところの各省との相互協力ということが必要なことは言うまでもないわけであります。もしその間に見解の相違があったために政府の対外交渉に支障があってはならない、こういうことだと思います。しかるに、実際にはそうした立場相違から外務省と他省との間で対立が生まれやすいということは常に指摘されておるわけであります。たとえば日米繊維交渉でもって外務、通産の二元交渉日本交渉能力を著しく弱めておる、そういった評価が事実あるわけであります。このように外務省と他省との間に立場相違から摩擦か生じたりあるいは他国との交渉の場合にその交渉が弱められたりするということは、これはもう厳に戒められなければならないと私は思います。  そこで、各省間のこういった調整はどのようになされておるか、まず質問に先立ちましてこの点を伺っておきたいと思います。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話ごもっともな点でありまして、いま各省間の調整の仕事、これは非常に大事だと思います。つまりいまは内政、外交一体というようなことが要請される時期である。と同時に、わが国世界に対する影響力、また世界から受ける影響度、これが非常に高まってきておる。そこでまたそういう中において外交的な視野から内政を見る、こういう必要、これも非常に大きくなってきておる、こういうふうに観念をいたしておるわけであります。そこで外交と内政との調整、これには特に意を用いなければならないし、同時に、それだけにまた困難な諸問題も起きてくるわけであります。  そこで、その調整の仕組みといたしましては、一般の外交案件につきましては、これは私と総理が中心になって閣議で意見の調整をする、こういをことになります。それから、特に経済案件について調整を要することが多いのであります。その中でも対外経済協力をどうするかということについての調整、これは非常にひんぱんでございます。これは外務省におきましてはそういう仕事を担任の審議官を置きまして、いま安川審議官がその役をやっておりますが、安川審議官を中心にいたしまして各省との調整に当たっておる。そうして調整がつかない場合はどうするかというと、閣僚レベルに上げるわけであります。私と通産大臣、あるいは私と農林大臣あるいは一緒に集まって調整することがある。それで片づかないという場合におきましては、そういうことはめったにございませんけれども、総理大臣がこれを裁断する、こういうふうな仕組みであります。調整は十分とれておるというふうに存じますが、いかにいたしましても、ただいま申し上げましたように調整ということが非常に大事な段階で、かつ困難な諸問題もありますので、これからも調整が円滑にいくようにということで一段と努力をいたしていきたい、かように考えております。
  47. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほど私がちょっと触れましたように日米繊維交渉が非常にいい例であって、外務、通産の二元交渉ということを申しましたけれども、そういった交渉能力が非常に弱まったという評価がある以上、いま大臣が御答弁された線に沿って今後そのようなことがないようにひとつ御尽力をいただきたい、このように申し上げて次の質問に入りたいと思います。  今回の法案にも大いに関係ありとして実は伺うわけですが、イギリスと中国とが共同声明を発表した、いよいよ名実ともに両国が大使を交換して国交を正常化したわけであります。これについて外務省は今日までどのような情報を得ておられたか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは先週の土曜日にイギリスのほうから事前通報を受けております。それからまた、同時にいよいよ共同声明が発表され、また国会においてこれが報告されるという段階になりましても、詳細な説明を受けておるわけであります。わが国においてもそういう重大な外交上のステップをとるというような際におきましては、友好国であるイギリスにも通報するということが例となっておりますが、わが国におきましてもそういう通報並びに説明を受けておる、これが現況でございます。
  49. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 去る二月二十八日にわが党の矢野書記長が予算委員会におきまして、総理が、台湾は中華人民共和国に帰属すると言明したときに、いろいろ諸外国の反響があったといわれておりますが、この点に関してどのような反響があったか。せんだっての外務委員会でも本件に関連して一部触れておられた同僚議員がおられましたけれども、在外公館からどのような報告があったか、この点はいかがでしょうか。諸外国の反響といったことについて御答弁いただきたいと思います。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国がああいう統一見解を出す前にかなりの反響があったわけです。つまり日本の各新聞、テレビ等において、日本の総理大臣が、台湾は中国の一部である、こういうような発言をされた、こういうことが報道される、それについての各国からの反響というものがかなりありました。かなりの国から、あれはどういう意味合いであるかということの照会に接しております。しかし統一見解が出てからは、これという反響はさしたるものはございません。大体そういうことだったらといって受け流しておるというのが概況であるか、かように見ております。
  51. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 反響についてはいまお答えいただいたことかと思います。私がいまお伺いしたのは、こういうことに関連して在外公館からどのような報告があったか、このことについてお答えをいただいておりませんので、この点ひとつお答えいただきたい。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 つまり統一見解の出る前の段階、その段階におきましては、在外公館から駐在国の意見なり照会なりそういったものを本省に対しまして報告をいたしてきております。それから統一見解が出てきてからは、まあ在外公館からあまり、さして、私がいま記憶にとどまるような大きな意見具申でありますとかあるいは反響についての状況説明でありますとか、そういうものは出てきておりません。こういう状況でございます
  53. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 その際にイギリスから、例の総理発言に対して非常に好意的な反響があったと、このようにいわれておりますが、はたして実際にそうであったかどうか。正式に駐日イギリス大使館あるいは駐英大使館に対して、イギリス外務省から何かそういう申し入れがあったかどうかという点、こういう点についてはどうですか。イギリスについてひとつ……。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 イギリスは、そういう総理大臣の発言があったように報道されておるが真相はどうかという、照会程度のことがあったことが本省に報告されております。
  55. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私の記憶ではありますけれども、たしかイギリスの論評の中に、その照会程度とおっしゃったから申し上げるのですが、日本では福田さんのほうが佐藤さんより偉いのかというようなことも報道されたらしいのですが、その点はこの程度にいたしておきたいと思います。  イギリスは、台湾は中国領の一省であり、中華人民共和国は全中国を統治する唯一の合法政府であるということを認めたわけでありますが、このことはイギリス政府が台湾の帰属を決定したことになるわけですが、この期に至って政府はなおも台湾帰属ということを明確にできないかということを私は実は聞きたいわけです。この点はどうですか。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 私ども日本は、イギリスと違いまして、台湾は放棄しちゃったのです。ですから、放棄した台湾の帰属について何ら有権的な発言をする立場にない。これはその放棄を受けた連合国の一つであるところのイギリスとは違った立場にあるわけであります。しかしそれにもかかわらず、わが国は中華人民共和国が国連加盟をしたこと、またポツダム宣言を受諾したこと、その前提としてカイロ宣言があること、そういうようなことを考えますときに、中華人民共和国が、台湾は中華人民共和国の領土であると主張するその気持ちはわかる、これをよく認識しておる、こういう立場になるわけなんです。そこはイギリスと非常に違う点である、このことだけはひとつ御理解願いたいと思います。
  57. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 しかし政府は、台湾帰属の決定というものは国際会議だとかあるいは関係会議できめるのだ、このように言っておられるわけですが、イギリスは、先ほども申しましたように、今日、独自の見識とそれから判断でもって台湾の帰属を決定したわけであります。わが国はサンフランシスコ平和条約で帰属未決定のまま権利権限を放棄した。なるほど、先ほど言われたとおりでありますが、その後において、他の諸国と同様に独自の判断で台湾帰属を決定する権利はあると私は考えますけれども、もう一度この点はっきりさしていただきたい。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国はサンフランシスコ条約で台湾、澎湖島の領土権を放棄しちゃったのですから、これに対して発言権はないのです。発言権のあるのは放棄を受けた連合国である、この見解、これはただいまでも変わっておらない。それから中川さんがいま、イギリスが非常に断定的に台湾帰属問題をきめたんだというお話であります。ところがイギリス政府にわがほうから今度は逆に、一体そういうことかというと、なかなか明快な返事がないのです。イギリス政府の声明で理解してください、また国会におけるヒューム外務大臣の野党に対する答弁で理解してくれ、こう言うのでありますが、その野党の質問というのはまさに中川さんがいまお尋ねになった事項です。今度のイギリス政府のとった措置は、台湾の帰属についての従来のイギリス政府の見解を変更したものかという質問で、それに対してヒューム外務大臣はまともにこれに対して答えておりません。やはりコミュニケに書いてあるようなことを言っておるわけでありまして、さらにわが国といたしまして根掘り葉掘りというか、かなりしつこくイギリスの外務当局にも照会し意見を聞いておるのですが、それ以上のことは言えない、こういうことを言い、かつ、アクノレジということばを使っておりますが、あれはアメリカが米中共同声明において使ったアクノレジと同じ意味だ、こういうふうに理解してくれということを言っておるにとどまりまして、どうも帰属問題について明確な意思表示をいたしておりません。こういうことをつけ加えさせていただきます。
  59. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この点に関しましてはさらにいろいろお聞きしたいところでありますけれども、国際情勢に関する質疑のときにまたさらに詰めさせていただきたい、こう思います。  きょうは外務公務員法の一部を改正する法律案、これは法律案そのものに関してはこれといった質問は出てこないようですけれども、外務省は、現在どういう諸国が中華人民共和国を承認しようとしているか、こういったことを在外公館を通じて報告を受けているかどうかということですね、この点はどうでしょうか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国問題ということになると、世界じゅうに駐在しておりますところのわが出先機関は、詳細にその国の立場というものを報告してきております。ことに問題が起こる、あるいは統一見解の問題だとか、それ以前の問題だとか、そういうような何か特定の問題があるというと、その特定の問題に焦点を置きまして、事こまかにその国における見方なり反響なり、その国自身の傾向、そういうものを申し述べてきておるわけであります。  いまわが国が当面しておる最大の外交課題は何かというと中国問題でありますから、中国問題、その他外交案件には目を配り、その駐在国の動向、また駐在国ばかりじゃありません、その国から見た近隣の国々の動向までも含めまして、いろいろ意見を具申したり情報を送ってきたりしている、こういう現状でございます。
  61. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 大臣からいま御答弁をいただいたように、スムーズにそういった情報が入ってきておるというのであれば私もそれほど心配はしませんけれども、やはり先ほど堂森委員から関連した御質問があったように、聞くところによりますと、最近外務省の職員でもって在外勤務を敬遠する向きが非常にある。また現に在外勤務中の職員からもそういった苦情を聞くわけでありますが、そのおもな理由は一体何だろうかということなんですね。やはり情報提供というものを万全の態勢で、一つ漏らさずというわけにはかりにいかないとしましても、一〇〇%近い情報をどんどん流せるだけの活動といいますか、そういったものが在外公館になければならないはずであります。  つまり、在勤俸が低いために生活が楽でない、だから本国で勤務するほうがましだとか、あるいは子弟の教育上在外勤務を希望しない等の理由があろうかと私は思うのですけれども、いずれもこれらは深刻な問題であると思います。外務省当局は、これらの問題に対してどういうふうに対処されるか、実際にそういう問題の起きている場合についてどういう対処をされるかをお答えいただきたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が外務省に着任しまして、わりあいに重要な事項の情報が出先から本省に届くのがおくれがちであるというような感じがしたことがございまして、一体それはどういうわけなんだ、そういうことはもう電話ででも知らしてくるというぐらいの気の配り方でいいのじゃないかというような話をいたしましたところ、それは電報で打つと安あがりだ、電話だと高くかかって、どうも会計課のほうで何か問題が出てくるというような話があったことがありましたが、私はもう重大な外交案件の情報、これは機密保持という点がありまして電話で済まされない場合があるのです、そういう場合は格別であります。しかしそうでもない場合は、金の問題で情報が手に入るのがおくれる、こういうようなことが絶対にあってはならないということを、ここにおられる官房長にもよく申しまして、かなり情報の人手、スピードの促進をされておる。  それから、念のために申し上げますが、本省に集まる情報は、同時になるべく世界じゅうの在外公館にもその同じ情報を与えておくというようにしておるのです。ですから、世界じゅうに駐在しておるところの在外公館が一つの頭、一つの心で動くような体制、これはかなり十分整備されておる、こう申しても差しつかえないだろうと思います。
  63. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いまも完全な御答弁をいただけなかったような気がします。なぜかと申しますと、要するに在勤俸の問題、あるいは子弟の教育上の問題、いろいろございまして、どうも行きたくないんだ、あるいは行ってもあまり能率があがらないんだというような点を私は心配して、質問の中にそういった趣旨のことばを入れたわけですが、私は、その在外公館のうちで生活費の高い国とかあるいは生活環境のよくない場所で勤務する者に対しては、この法律で定められているところの在勤俸以外に、何か特別手当を与えるくらいの配慮があってもいいんじゃないだろうか、実はこういった見解からこの質問を続けてきたわけですけれども、これは大蔵省だと思いますが、これに対して大蔵省が非常に難色を示しているかどうかという問題、あるいはまた大蔵省としてはいま申し上げたような事情に対して予算上の考慮は可能であるのかどうか、この特別手当に関してどういう考え方をもっておられるか、御答弁いただければと思います。
  64. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先生のおっしゃるような問題はときどき起こっております。事実いろいろ、ある国につきましては非常に物価の高騰が激しいとかいうような問題、それから特に住宅なんかに関しては非常な高騰を示している場合がございまして、生活が苦しくなるということはございます。  そういうことがございますために、毎年住宅手当の問題、それから全体の在勤基本手当の問題、いろいろ取り上げて大蔵省と折衝しておるわけでありますが、今回の予算の政府原案の中に入っておりますが、在勤基本手当の大幅と申しますか、われわれから見てまあまあという程度高くすることを入れております。  その場合に、在勤俸自体に、先生いまおっしゃいましたような特殊勤務と申しますか、非常瘴癘地におけるいわゆるハードシップアローアンスと申しますか、非常につらいという要素を入れた手当の分が在勤基本手当の中に入れた形になっております。そういうものも実情に即して順次かえていきたい。それからまた、事実今度の政府原案にはある程度までそれを実現し得たと思っております。
  65. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は要するにここにおいてはあまりこまかい点を聞こうとして申し上げているわけではないので、そういうことが影響して情報活動が非常に遅延してしまうとか、そういう一つの漏れが発生するとか、そういうことがないようにという立場から、実は御質問したというわけです。このことに関連して来年度予算で外務省は人員増を要求したかどうか。また実際の要求に対して大蔵省はどれぐらいにそれを査定したかという問題なんですが、この点はどうでしょうか。
  66. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 人員増は要求いたしました。そうしてある程度の人員をつけていただきました。ただし、先生御承知のように、現在政府職員と申しますのは全体的に行政整理をやっております。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 毎年定員の何%という頭から切っていくその分が、自動的に減っていくわけでございます。したがって、その分を取り返してその上につけないと実際の増員にはならないわけでございます。その形で勘定いたしまして、今回三十人前後の増員を認めていただきました。
  67. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間もあまりありませんので個個に詳しくはお聞きできません。  休暇帰国制度ですけれども、この休暇帰国制度の改善について法的措置がとられるわけでありますが、これを裏づける予算的な措置は十分になされているのかどうか、この辺を非常に心配するわけですけれども、この辺はどうですか。
  68. 佐藤正二

    佐藤(正)政府委員 休暇帰国制度は、先生お話しのとおり、現在の四年を三年にいたしますと、どうしても旅費がたくさんかかります。その分の旅費は今回の政府原案には認められております。現行制度と申しますのは、昭和四十六年度ですが、百八十人分の休暇帰国の分がついておるわけでございますが、昭和四十七年度については二百十人分の旅費をつけてもらっております。
  69. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それで、今度の法改正によって在外勤務の職員が、いま言われた四年に一回の休暇を三年に短縮する、これには異論はないわけですけれども、実際に三年ごとに休暇帰国ができるかどうかという事実上の問題ですね。これはもうそんなに機械的にいくわけじゃない。私自身、十年ほど前ですけれども海外事務所におったことがありますけれども、そんな簡単に、机の上で計算したようなわけにいかない問題がいろいろある。そういうわけで、私思うのですけれども、単なる職員の権利で、実際にこういった権利の行使はできないんじゃないか、こういうことを心配するわけであります。つまり在外公館に勤務する職員が少ないために六十日の休暇を実際には出せない、こういったことにはならないかと私は思うわけです。こういった場合には、暫時空白といったようなものを埋めるために補充者を充てるとかということは法制上できないのかどうかという問題、この点は考えられたことはありますか、どうですか。
  70. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先生非常に実情を御存じでまことにありがたいのですが、そのとおりです。非常に少数の公館につきましてはなかなかこの権利を行使するのがむずかしいのでございます。ただし、なるべくできるように、本省といたしましてはとめないように、とめないようにもっていっておるつもりでございまして、たとえば一年のうちのあるひまな期間にいつでもとれというようなことを指示しているわけでございます。それでも非常に少数の公館、あるいはある仕事が出まして非常に忙しくなっている公館は、なかなかとりにくいという実情があることは事実でございますが、できる限りこの権利を行使し得るように指導しております。
  71. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 在外公館の人員と事務量ですね、先ほど申し上げたような、いろいろ数字では割り切れない非常に忙しい状態に置かれる場合が多いのですが、事務量の問題、繁忙の度合いによっては確実にこの制度を適用し得ないと私は思うわけです。それでその実施についてはどのようにして行なうのかということをいまお聞きしかけておるわけでありますが、実施面において不公平が生ずることがないように希望しておきたいと思います。  それから私は先進各国においてもこういった在外外務職員に対してわが国の休暇帰国制度に該当する制度があると思うのですが、それらとの比較においてどのように考えておられるか、この点を伺います。
  72. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 御承知のとおりございます。これは各国の制度は、先進国におきましては、わが国の制度よりもだいぶ進んでおります。と申しますのは、わが国の制度でございますと、三年に一度、いままでは四年に一度でしたが、今度の法改正にいたしましても三年に一度でございます。  例を申し上げますと、たとえばドイツでございますと、在外勤務一ないし三年、と申しますのは勤務地によって違いますが、二ないし三カ月の休暇帰国、ベルギーが在外勤務三年以上で三カ月、スウェーデンが在外勤務二年ごとに一回、アメリカが在外勤務十八カ月で一回、四十五ないし六十六日間の帰国、フランスは存外勤務期間とは関係なく年次休暇の一部として自国に帰れるようになっております。それからイギリスが十二カ月ないし二十四カ月、これも勤務地によって違いますが、それで一回、イタリアが在外勤務八カ月以上で年次休暇を利用するというような状態になっております。
  73. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間があと少ししかありませんので、この辺で最後の段階に入ろうと思いますが、できたら外務大臣にお答えいただきたいと思いますが、わが国外交多極化する国際環境の中で活路を見出していくためには、激しく動くところの国際情勢の実態というものに対する的確な認識とそうして情報掌握ということが重要であると思います。これから申し上げることに関連した質問がこれまた堂森委員からさっき出かかっておりましたが、昨年の七月十六日の霞ケ関はニクソン訪中決定の発表で混乱をきわめた、こういう感じがいたします。報道によりますと、ニクソン訪中決定というものは外務省幹部は全くつんぼさじきに置かれてしまって、大部分の局長さんはテレビの実況放送ですね、これでもって初めて知った、そういうようなことも聞いております。あまりにもこれはお粗末ではないかと私には思われます。アメリカからの事前連絡が要するになきにひとしかったということも一つの問題ではありますけれども、在外公館と外務本省との伝達のシステムが十分に機能していなかったということは事実ではないかと思います。そのために外務当局に対する国民の評価というものが一段と低下したことは、これは多くの報道が伝えておるところでありますけれども、外務省としてその点どのように反省をしておるかどうか、事実国民のほとんどの人たちはテレビを見てあ然としたわけです。この点について御見解をお伺いいたします。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨年の七月十五日のニクソン訪中発表、これは世界じゅうのどこの国でも事前には知っておらなかったのです。正確にいいますと、二、三時間とか、その前くらいの時点では日本を含めて知っていた国もあるわけでありますが、しかし、ほんとうの実質的な意味において事前に知っておった国はありません。またそれほどアメリカではこの問題を非常に厳重に扱ってきた、こういうことなんで、これはアメリカ、外国のすることですからやむを得なかったことなんです。それでわが国がひとり世界に立ちおくれた情報システムであった、こういうふうに御批判をいただくのは私は当たらないのではあるまいか、そういうふうに考えております。いまわが外務省世界に張っておる情報網、これはかなり組織的であり、かなり実質的である、かように考えておるわけでありますが、何といっても情報ということは、これは情報化時代でもあり、わが外務省の生命とも申すべきものでありまするから、この上とも万遺漏なきように努力をいたしていきたい、かように考えております。
  75. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 確かに世界各国ともそういう連絡を受けてなかった。とすれば、わが国の在外公館が大いにひとつその辺を察知するだけのまた精鋭に育てあげていただきたいということを私はここで要望したいわけでありますが、外務省がこの情報を集めるための手段の中で、その中核となるのはやはり在外公館の役割りというものが一番大きいと思うのです。  ところで、この出先の在外公館の情報収集というものが的確でないと判断において重大な誤認を来たすおそれがある。本省は在外公館に対して情報収集について特別の訓令を出したり、あるいは情報収集についての基本的な指令というものは随時出されるのかどうかという問題です。また場合によっては本国政府の訓令を待っていたのでは情報収集についての時期を失することもある、このようにも考えられるわけでありますけれども、この辺の調整等はどのようになっておるか。向こうでじっと訓令を待っていたのでは話になりません。こういった点はどうでしょうか。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 世界各国から、そこに駐在しておる在外公館から本省に対しまして随時情報の提供があります。その情報は同時に世界各国の関係在外公館にまた流しております。ですからある問題があると、その問題に対する知識、これは本省も出先も一体となって持っておる、こういう状態に置かれておるわけなんです。ですから、問題が起こった、だから特別の訓令を出さなければ出先において反応を示さない、そういうような状態ではないのです。何か問題が起これば直ちに本省に対して情報を伝達してくる、こういう状態に置かれておりますが、しかし特に重要な問題につきましては特定の在外公館に対して、こういう筋からこういうふうな調べ方をしたらどうだとか、いろいろ指示し、訓令することがある。先ほど申し上げましたように、この問題は非常に寸刻を争う問題だから概要を電報でなくてもよろしい、電話で知らしてほしいというような指示をすることもある。とにかく迅速にかつ正確に情報が収集されるように最善の努力をいたしておる、そういう次第でございます。
  77. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 最後に伺いますけれども、情報と政策の立案、決定とは相互関係にあると思います。外務当局者は政策立案者と情報分析の担当者を区別してはたして行なわせているのか、あるいは分析結果の総合調整はどのように掌握されるかという問題が出てくるわけです。この辺の点は現状どのようになっておるか、最後にひとつお伺いしたいと思います。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 情報の収集とそれからそれに基づく政策判断、これを区別するということ、これはまたなかなかいろいろデメリットの面もある。ですから主管局といいますか、たとえば中国問題につきましてはその情報はアジア局に集中をするわけです。その集中された情報はまた各局に電信課を通じて流す、こういうような仕組みになっております。まあ、情報の収集、またそれに基づく政策の立案、これが有機的に一体化されておる、こういうふうにごらん願ったほうが正しいのではあるまいか、さように考えます。
  79. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 こういった点についてもいろいろと検討がなされていかなければならないほど事は非常に重要な問題だと思いますけれども、きょうは時間がございませんので、国際交流基金法案とあわせて一気にこの質問を終えるためにはあまりにも時間に制限があり過ぎると私は思います。きょうは外務公務員法の一部を改正する法律案のみをもって私の質問を終わりたいと思います。
  80. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢益君。
  81. 曾禰益

    ○曽祢委員 質問の最初に、同僚議員が質問せられた点ですから、イギリスと中国の共同声明ですかそれについて一点だけ伺いたいのですが、ちょうどこの前の外務委員会で私が米中共同コミュニケについて、その訳文について伺いました。つまり、海峡の両側の中国人がすべて、中国一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることをアクノレジする。そのアクノレジというのは、ぼくらの知っている限りにおいて、英語においては非常に幅広いことばである。承認に近い、あるいは承認といってもいいくらいの場合があるし、ほとんどテークノートに近い、ただ事実の認識程度の場合もある。これはやっぱり非常に重要な問題だというので、その中国語の訳文は、認識、レンシーと書いてあるということも含めて御質問したわけですが、皮肉にも今度の英中声明についてもイギリスはアクノレジ。ところが今度は中国側はそこで——中国の係がいなくなったようだけれども、これは日本新聞の伝えるところによれば、今度は認識でなく、同じアクノレジということばを承認と訳しているらしい。ところが中国語は、私は見ておりませんが、どうなっているのだかわかりません。もしおわかりだったら、根掘り葉掘りイギリスにお聞きになったそうですからおわかりだろうと思うのですけれども、どうなっておるのか。ほんとうにこれは承認ということで、中国側もレンシーでなくて承認ということばを使っておるのか。そうだとすると、アメリカのこの問題に対する態度はかなり数歩前進だという感じがするのですが、その点は実際問題としてどうでございますか、伺いたい。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 イギリス政府に聞いてみますと、アメリカで使ったあのアクノレジと同じである、こういうふうに申しております。そのアメリカで使ったアクノレジに幅広い解釈がある、こういうお話なんでございますが、これはそのアクノレジということばから判断するということは非常にむずかしいのじゃないかと思うのです。お話のように非常に幅の広い意味でありますから。そこで、イギリスの国会でも町党の陰の外務大臣だといわれる方の代表質問、それにはイギリス政府は台湾の領土帰属問題について従来の立場を変えたのか、そういう質問をしておる。そうすると、それに直接ヒューム外務大臣答弁をしておりません。で、やはりアクノレジということばを使っておる、こういうような状態であります。まあ私はイギリスのあの態度全体から見て、アメリカとは違う、こういうふうに考えておりまするけれども、領土の法的帰属問題につきましては、きわめてあいまいであって、はっきりした態度を示さない、こういうのが現況である。これ以上のお答えは私としてはいまの段階ではできないのです。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 そういうふうな魔術を使っておると思うのですけれども、中国語ではどうなっておるか。もしいまおわかりだったら、教えていただきたい。おわかりでないなら、この次の国際情勢のときにやるからいいのですけれども、おわかりですか。
  84. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私がお答えするのはまことに妙ですが、私が聞いておるところでは承認ということばを使っておると聞いておりますが、はっきりいたしませんから、この次のときにアジア局長から答弁させます。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 それじゃそのときにさらに質問させていただきます。  外務公務員法についてはすでに同僚委員からいろいろ御質問がありましたし、私はただ二点だけ伺いたいのです。  一つは、待命制度というものですけれども、制度そのもの、これはいろいろ美辞麗句を使っても、実際上はおやめになる大公使が一時やめる前にこういったようなプールのところに入って、特別に何かのさらにいいポストにつくことがなければ、それでやめていくというようなところのプールみたいなものだと思う。きわめて通俗、常識的に言えばそういうものだと思っているのですけれども、そうじゃないのですか。
  86. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 現在、先ほども御答弁いたしましたように、七人の方がおられまして、四人の方がおやめになる、三人の方はこの次にまた出られる。その後者のほうがむしろこの制度の本質だと私は了解しております。その何と申しますか、やめられてと申しますか、たとえばコンゴならコンゴの大使をやめて、そして帰ってまいりまして、その次のポストに行くまでの間が、身分がなくなってしまいますと、これはどうにもこうにもなりませんものでございますから、この間をつなぐというのが制度の本質だと私は考えております。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 しかし、これは水かけ論だと思いますけれども、士気を鼓舞する意味においてはそういうふうに言っておかなければいかぬでしょう。ほんとうは、もっと従来の統計から調べてみると、必ずしもそうでないような気もするのですよ。しかし、いずれにしても両方の意味もあって必要だというなら、これ以上やぼなことは申しません。まあいいですが、あえて一言言うならば、非常に有能な人だったら、任地にいるときからどこかのポストがきまるのじゃないかと思います。そのほうが普通だと思います。そういう感じがいたしますが、有用性があると言うのですから。これ以上質問はいたしません。  第二の点については、要するに本国に来る休暇制度ですが、これも同僚委員から御質問のあったことに尽きるのですけれども、かりに気候の悪いところで三年というやつが一年半でいいわけですね、これでいくと。これはもし権利を使えなかったような場合には、それはキャリーオーバーできるのですか。繰り越しできるのですか。
  88. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 三年をこえた場合にとなっておりますから、キャリーオーバーと申しますか、四年目でもできるわけでございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 いや、違うのです。そういうキャリーオーバーでなくて、たとえば瘴癘の地に、健康に悪いところに出た人は、実際上は一年半で権利ができるでしょう。しかし、あと一年半とても忙しくて、権利があっても使えないわけです。そこで三年つとめた。そうすると、あとの三年の二カ月しかないのか、四カ月のキャリーオーバーができるのかということを聞いているのです。
  90. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 そこで一緒にまとめてとるということはできないたてまえになっておりますが、たとえば二年目にとりまして——三年たってもよろしゅうございますが、三年目にとりまして、もう一つ権利が残っているわけでございますから、もう一度あとでとるということはできることになっております。と申しますのは、一回に四カ月とるということはできませんが、二度にとるということはできます。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうすると、一回四カ月はできないけれども、権利としては四カ月分はあるというわけですね。それを分けて使うならいいというわけですか。もう一ぺん確認しておきます。
  92. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 それの唯一の制約は、同一年度にはとれない、三年目にとりまして、それからもう一度その年度にとるということはできないという制約はあるのでございます。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 次にこの国際交流基金法案について伺いたいと思います。  第一に伺いたいのは、基金の目的とその関連をする事業、あるいは競合といいますか、競合するような事業との関係について伺いたいのですけれども、その場合国際文化振興会というものは、これは吸収することになるので、これはもうそれでいいと思うのですけれども、国際学友会はそのまま残るのですか、それはどういうふうになるのですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 国際文化といいますと、いろいろな仕組みがあります。それで御指摘の国際学友会、これもありますが、今回お願いをいたしておりますのは、国際文化振興会だけを吸収する。その他の問題、これはいろいろ重複あるいは競合、そういう問題がありますが、今後の検討問題にいたしたい、こういうふうに考えております。  と申しますのは、私はいま日本が経済的に非常に力のある国になってきた、そういう立場日本に対して世界各国がわが国に対しまして誤解だとか、そういうものがかなりあるわけであります。わが国はどうしたって世界の中の日本というような姿勢で動かなければならぬ、そういうときに、経済力が巨大化してきた、それにつれまして誤解も生ずるというような事態になったら、わが国の存立に大きな影響があるというようなことから、交流基金の設立を実は急いだのです。これはもう一刻も猶予できない問題だ、こういうふうに考えまして、今回お願いをしたわけですが、これからこの基金というものはかなり私の考えとしては拡大し、強化していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。相当の規模のものにまで持っていきたい、こういう考えですから、そういう段階でありますので、国際学反会、そこまで手が届かない、今後の問題といたしたい、かように考えております。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 わが国の対外的な文化活動といいますか、わが国及びわが国民による、この場合にやはり外務省が従来やっており、今度は国際交流基金等がやる事業と他のわが国の官庁がやる事業との境界線がなかなか引きにくいような問題がある。あるいは場合によっては重複しているような場合がある。そういう場合に大体の仕分けをする。たとえば文部省の関係事業との関係あるいは青年というような関係では総理府にも、これは日本の青年を出すほうが主かと思いますけれども、関連も出てくる。あるいは文化庁の仕事とも関連するやに思うのです。そこら辺のことをうまくやらないと、先ほど同僚委員指摘したような、何か単なるお役所のなわ張り争いみたいになってしまう。そこら辺のところについてはどういう大体の仕分けをされようとしているのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の点はまことにごもっともだと思うのです。そこで、この交流基金の仕事、これは外務省の監督のもとに行なわれますので、外務省と、重複するという問題は起こらないと思いますが、他の各省でやっておる仕事と競合関係が出てくると思います。その仕分けをどうするかということが非常に大きな問題にもなるわけでございますが、さしあたり私は、いまも申し上げましたが取り急ぎというようなことでこれを発足させるわけです。しかし、それにいたしましても、一応の各省のやっている仕事との分界というものがなければならぬ。そこで、今日この段階とすると、各省のやっている仕事はそのままとする、そしてこの基金との間の境界線をそれに従って調整を行なう、こういうふうに考えておるのですが、将来この基金が拡大強化される、私はしたい、こういうふうに思っております。その際にはいろいろな調整問題が出てくるだろう、こういうふうに思いますが、今日この段階といたしますと、現状をそのままにいたしておきまして、それを基礎にいたしまして調整をする、そして重複のないようにまた競合がないような運営をいたしていきたい、こういう考えを持っております。その辺につきましてはもう各省間との話し合いが十分にできております。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 大体現状に応じてやるということで、わかったようなしかしわからないようなもので、やっぱりなわ張り争いの危険があると思うのですね。ですから、大ざっぱに言って、いま十分に各省との話し合いはできているというけれども、私が考えてみると、日本の文化を紹介する、日本を知ってもらうというのが主ではないかと思うのです。むろん国際的な文化交流に日本が寄与するという面もあるでしょうけれども、この法律のトップに書いてある目的から言っても、日本の文化を知ってもらう、そのためにやる仕事は、それは日本の文化を向こうに持っていくような、たとえば歌舞伎を向こうに持っていくようなのも日本の文化を知ってもらうことであります。それから日本を勉強している外国人を呼ぶことも、これは当然この事業になる。しかし今度は逆に、日本のたとえば音楽家を向こうに行かせていいところにつけるとか勉強させる、あるいは外国の文化を吸収に行くほうは、これはむしろ国際文化事業というよりも、日本が外国の文化を吸収するほうのやつは、従来ならば学生というような関係で文部省がやり、あるいは青年を送るという意味では総理府がやるというふうな大まかなどっかにあれがあったと思うのです。その点については、これは大臣でなくてもけっこうですから、事務当局からでも御説明願いたい。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺は事前に各省との間で十分に連絡をいたしまして、調整がつけてあります。その具体的なことの御説明が必要でありますれば文化事業部長からお答え申し上げます。
  99. 曾禰益

    ○曽祢委員 これはぼくはうわさに聞いたので、実際は知らないけれども、たとえばパリにある日本の学生会館、その館長が外務省系だからいいとか悪いとかいうので——そういうつまらないポストだといっては悪いけれども、ポストが重要でないということじゃないけれども、そういうようなことまで各省が血道をあげてなわ張り争いするようなことが現実にあるやに聞いているのです。ですから、この点は制度の運営上非常に重要なので、大まかな点でいいですから、事務当局から教えてください。
  100. 加川隆明

    ○加川政府委員 ただいまの御指摘の点まさにそういうわけでございますので、私たちあるいは大臣のお考えもそうでございますけれども、わが国に対する理解の促進、それから日本文化の紹介、それから外国の文化を日本紹介するというようなことは外務省設置法の任務の中に入っております。これは外務省がやる。それからいまおっしゃったようにオーバーラップする面がございますけれども、たとえば日本の知識の水準あるいは文化の水準を向上させる、日本のそういう面を向上させるというものについては、従来とも各省が行なっておりますので、それを続けていく、こういうふうに了解いたしております。  なお、蛇足ではございますけれども、この種の文化交流事業というものは、語外国の例を見てもほとんどすべて外務省でやっております。英国、ドイツ、カナダ、フランス、スウェーデン、これはこういう基金みたいなものが、特殊法人みたいなものができてやっておりますし、それからアメリカ、イタリアは外務省が直接やっております。こういうのが現状でございます。
  101. 曾禰益

    ○曽祢委員 大体の仕分けはわかったと思いますけれども、実際問題としては、やはり外務大臣の働きによって調整をやっていくという必要があると思いますから、これは特に要望しておきます。  その次に、予算の出し方を見てみますと、外務省の文化事業部の予算というのと、それから国際交流基金の事業予算というように二つに分かれているのですね。その総合によって事業が行なわれる。ですから、費目が同じ費目になっておるのに予算のほうは両方に分かれている場合も多々あるわけですね。たとえば日本研究講座事業、これに対して四十七年度に六千九百万ですか、同じ項目に対して補助金が事業予算として五千三百万。それから日本語普及事業、これも両方に出ておる。それからアメリカ、カナダ日本研究学者の招聘についても、同じように交流基金のほうにも米加十一大学連合というように出ておる。これはどういうわけなのか。ある種のものはその年の予算として出し、ある種のものは基金のほうに繰り込む。どういうメリットでそういうふうに二つに分けてあるのか、この点を御説明願いたい。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしは交流基金が十月一日から発足するのです。それまでは、九月三十日までは国際文化振興会というものがありまして、そっちのほうはそっちのほうで半年分の仕事をやっておる。そういうような関係で、本年度全体からすると両建てみたいなことになりますが、十月一日交流基金が発足する、そういうことになった場合におきましては、その前の日に国際文化振興会のほうは解散をすることを考えておりますので、十月以降は一体となる、こういうふうに御理解願いたいのであります。
  103. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうでもないんじゃないですか。振興会以外の仕事が学友会とかなんとかあって、これは基金ができても、基金が毎年やる事業というのはその基金の利子でやるわけでしょう。そのやっと、やはりそれだけでなく国際文化の仕事というのは別にあるんじゃないでしょうか。ちょっとその辺……。
  104. 加川隆明

    ○加川政府委員 御指摘の点は、ただいま大臣が申し上げましたように、一つは、十月一日から基金が発足する。それから直轄事業も私たちありますけれども、いま御指摘のようにこれも基金に移る部分がございます。そうすると、それは十月一日から基金のほうにかわる。したがって十月までは文化事業部の予算、こういう形になっておりますので、いま御指摘のように二本立てというふうに考えられます。しかしこれは来年度、四月一日からは——十月一日からもそうでありますけれども、一本になりまして、その他国際学友会等は、先ほど申し上げたとおり基金と別に私たちの事業として補助金を出す、こういうことになるわけでございます。
  105. 曾禰益

    ○曽祢委員 ですから十月一日以後、来年、四十八年度予算からも外務省の直轄事業はある。それから今度は国際文化基金のほうの仕事がある。やはりそれはあるんじゃないですか。どうなんですか。
  106. 加川隆明

    ○加川政府委員 たとえば例を申しますと、国際学友会その他の補助団体が少しあります。それから大きなものは国際文化振興会、それから文化協定に基づきますいろいろな委員会がございます、こういうものも私たちにあります。それからASPACに対する補助金、これは文化会議、たとえばこの間文化財保護の委員会を開きました、そんなようなことも私たちでやっておりますので、そういうものは私たちのものとして残る、こういうことでございます。
  107. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう二、三点伺いたいのです。  大体わが国の国際文化事業に対する予算というものは非常に貧弱ですね。いまからでもおそくはないですが、諸外国といってもいろいろございますけれども、アメリカ及び西欧のこういうことに熱心なフランス、イギリス、ドイツ等のこれに似たような国際文化事業に対する予算の大きさと比較して大体どんなものですか。おもなる諸国のあれと比較して説明してもらいたいと思います。
  108. 加川隆明

    ○加川政府委員 これは一九七一年でございますけれども、アメリカが大体百四十四億六千四百万円、英国が七十八億七千万円、ドイツが三百二十五億七千三百万円、フランスが六百七億四千万円、イタリアが三十八億九千八百万円、こういうことになっておりますので、われわれとしても皆さまの御支援をいただきまして大いにこれを伸ばしていきたい、こういうふうに考えております。
  109. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうすると百億じゃまだいばれないわけですね、福田さん。来年のことを言うのはおかしいけれども、百億でなくてもっとふやして——もっともこの百億の出資がフルに行なわれたあとでも——これは政府出資ですから、民間のあれもあるでしょうけれども、大体どのくらいのレベルにすみやかに持っていくというお考えですか。構想だけでけっこうです、伺っておきたい。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 この基金はことしが発足の年である、十月発足なものですから、この基金の現実の額は五十億円だ、ということは年額にすると百億円の基金、こういうことになって、百億円の基金をお願いしておる、こういうことなんですが、これは先ほどからお話がありますが、各省間との調整の問題もあります。また外務省で直轄でやっておる諸機関との調整の問題、そういうものもあるわけですが、そういうものも考慮しながら、これはわりあいに速いスピードで拡大をいたしていきたい、こういうふうに考えております。まあ何年先にどうのということまでいま申し上げられる段階じゃございませんけれども、まあ、そう遠からない機会に千億財団、そういうようなところにまでは持っていきたい、こういうような考えであります。
  111. 曾禰益

    ○曽祢委員 気宇広大でけっこうですが、そこで今度の予算の国別というか、地方別支出の方向を見ますと、どうも何かやはり日本を知ってもらいたいというのにもいろいろございますけれども、実際上はいろいろ、最近日米間がおかしくなっているのでアメリカの学者等にももっと日本に来てもらって日本を知ってもらう、これは私は反対じゃありません。学者ばかりでなくて労働組合の人も呼んだらいいので、賛成ですが、ただ、そういったようなほうだけでなくて、もう一つは発展途上の国、特にアジアの発展途上の国に対するそういう地理的なまなこの向け方。第三は、何といってもアジアの、中国をはじめとするいわゆる共産圏諸国、そういう地理的、国的の重点があると思うのですね。大体今回の予算を見ると、いわゆるアメリカ、カナダ中心だと思います。それを否定しません。非常に必要なんですね。もっともっとアメリカ日本を知ってもらわなければならぬ、日本アメリカにもっとPRしなければならぬことも事実です。それを否定しないのだけれども、ただ何かやはりアメリカ、カナダ中心主義だけに見える。したがって、発展途上の国及びアジアの共産圏諸国に日本を知らす、これは私は非常に必要なことだと思うのですが、その点についてどうお考えになるか。ことしの予算にはこうであるけれども、この次の方向はこうだというようなことについてでもいいですから、基本的な国際文化事業を、ただいわゆる西欧側にだけ向けるというのじゃだめだと思うのです、その意味で伺いたいと思うのです。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ基金百億円では、しょせんそうたいしたことはできないと思うのです。そこで私どもはさしあたりということを考えておるのですが、さしあたりは、いま御指摘の北米それから東南アジア諸国、これをスタートの段階においては二つの軸として、この間の関係を深めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、将来は、この基金が拡大するに伴いまして、その他の地域にも逐次これを拡大していく、こういう考えであります。決してアメリカ偏重というようなことじゃない、北米と東南アジア諸国、これを同列に置きましてそしてスタートしよう、こういう考えであります。
  113. 曾禰益

    ○曽祢委員 共産圏……。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はかねがね申し上げておるように、多極化時代である、しかも脱イデオロギーという国と国との接触の姿勢ということを考えておるわけでございまするから、したがって、文化交流の面におきましてもそのような基本的な方針でやっていく、こういうふうに考えております。
  115. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に、これは苦言になりますけれども、国際文化事業をやるという、外務省がこの間非常にいいことをしたと思ったのです。それは、アメリカから有力な労働組合のリーダー、実際上来た人は三人になりましたけれども、これを外務省の国際文化事業の一端として日本に呼ぶ、これは外務省大ヒットだと思ったところが、とんでもない大エラーをやりまして、この有力な人、特にアメリカ合同自動車労組、UAWの副会長のフレーザー、これはなかなかアメリカにおいてもソーシャル・スタンディングの高い人です。しかも、御夫人つきで呼んでいる。さすがに外務省はいきなことをすると思って感心したところが、この三カップル、あとお二人のやはり労働組合のリーダー、これが羽田に来たところが、外務省も労働省も、課長も係官も事務官も一人も来ていない。それの世話に出したのが、何か外務省が力を入れてつくっている外国人サービス係が一人ぽつんと来ておった。幸いにして同盟の国際部長が行っておったからよかったものの、全くこれは呼んでかえってマイナス、これこそ国費の乱用これに過ぐるものはない、こういうような事態がございまして、さっそく労組のほうからも注意があって、ほんとうは外務次官のところまで出かけていって大いに詰問もし、あやまりもして、そういうことのないように——まだ滞在中なんですよ。もうそれはそれで事務的には軌道に乗せましたが、あえてこの際国会の記録に残すというと何か意地が悪いようだけれども、外務大臣もせっかく国際文化基金をやろうというのに、いいことをやったのに、そういうつまらない形式主義で、たくさんお客さんが来るのだからうるさいや、聞いてみたら、この間消費者運動のアメリカの婦人たちを呼んだときから、外務省のあれは行っていないでそういう人に世話をさせている。それは宿屋の世話をさせるのと、儀礼的にも応接して、来たらさっそく日程の相談をするという、そういう心がまえ——仏つくって魂入れずですよ。絶対にそういうことのないように、しっかり外務大臣が掌握されて、せっかくいいことをやるのに大エラーをしないようにお願いしたいと思うのですが、外務大臣の御所見を聞いて、本日の質問を終わらしていただきます。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 その話は先般曽祢さんからじきじきに承りまして、私もこれは残念なことだったなという感じを持っております。今後はそのようなことがないように、実のある文化外交が展開されるように心してまいりますから、どうかひとつこの上とも御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  117. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいま議題となっております両案中、外務公務員法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  118. 櫻内義雄

    櫻内委員長 引き続き本案に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  外務公務員法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本条を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  119. 櫻内義雄

    櫻内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  121. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる三月十七日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時二十四分散会