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1972-04-06 第68回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月六日(木曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 田川 誠一君 理事 前田 正男君    理事 石川 次夫君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 之久君       加藤 陽三君    森  喜朗君       井上 普方君    堂森 芳夫君       三木 喜夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       粟山 ひで君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君  委員外出席者         原子力委員会委         員       山田太三郎君         科学技術庁研究         調整局宇宙開発         参事官     市瀬 輝雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(宇宙開発及び原  子力開発に関する問題等)      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石川次夫君。
  3. 石川次夫

    石川委員 きょうは科学技術政策全般にわたっての質問をしようと思ったのでありますが、実は大臣も次官もどちらも来ておられないので、私はだれに質問をしていいかわからぬという状態なんですが、実は科学技術政策全般ということになると局長に対する質問というわけにはいかないわけなんですね。
  4. 渡部一郎

    渡部委員長 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  5. 渡部一郎

    渡部委員長 速記を始めて。
  6. 石川次夫

    石川委員 実は、科学技術行政施政方針に対する質問ということで、本来なら大臣がいなければちょっと質問をしにくい性質のものなんであります。ところが、きょうは政務次官もいらっしゃらないというようなことでは、私、どうもだれに質問をしていいかわからぬということで、一時中断をせざるを得なかったわけなんでありますけれども、政務次官はそのうち見えるということでありますので、その間、原子力関係で、ほんの短い時間でございますけれども質問をしておきたいと思うのであります。きょうは原子力委員会のほうから山田委員も見えておられますので、ECCS関係について若干質問をいたしたい。  これは、われわれのほうから再三申し入れをいたしておりますように、過度集中、それから環境基準というものをきめろというふうな問題、それに対応して原子力の公害に対するところの工学的な対策あるいは環境的な意味での対策、それをもっと強化して組織化してもらいたいということを申し上げておったわけなんですけれども、その中で、工学的な問題として、ECCS関係アメリカあたりでも相当大きくクローズアップされておるわけであります。これは原子力産業新聞でありますから間違いのないところだろうと思うのでありますけれども、アメリカAECは最近ECCS問題の公聴会に関連をして、約六十点に及ぶ内部資料というものを公表しておる。公表されなかったのはわずか二点ぐらいであって、あとはほとんど要求に沿って公表されておるということなんであります。これは相当膨大なものになるのじゃないかと思うのでありますけれども、これはどういうものであるかということについてここで御説明を受けるというわけにはまいらないと思うのです。私ども工学専門家ではありませんから、これを見てもわからないと思うのでありますけれども、この公表された資料というものについて、一度ひとつお手持ちになっておられるのだったら御提出いただけるかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  7. 成田壽治

    成田政府委員 アメリカECCS問題の資料はまだ日本には来ておらないのでありまして、いま外交ルートでいろいろ取り寄せるべく交渉しておりますが、相当膨大なもので、相当コストもかかるということで、いま入手についていろいろ交渉しておるところでございます。
  8. 石川次夫

    石川委員 ECCSタスクフォースが一応の提案をし、それに基づいて日本の場合は設計をしておるので、日本の場合には安全性は確保されておるということで、ECCS実験段階で非常な問題になった去年、われわれのほうから、こういう問題がある以上は日本のものを見直しをしなくてはいかぬのじゃないか、したがって、当分の間このECCSの問題を解決する間はこの運転というものをスローダウンをしなくちゃいかぬというようなことで申し入れをいたしておったわけなんでありますけれども、アメリカへ行っていろいろ検討した結果、タスクフォース基準日本では取り入れておる、アメリカで問題になったのはそれ以前のものであるというようなことで、このまま継続運転をしてもよろしいという結論を出しておるようであります。ところが、アメリカのほうの状態を見ますと、この暫定基準が必ずしも十分ではないということで、ECCSが改良されるまでは発電所許可はストップすべきである。これはAEC原子炉基準局システム性能部長のモーリス・ローゼンという人がそういうことを言っておるわけであります。これはきわめて権威のある人の権威のある意見ではないか、こういうふうに思わざるを得ない。  そこで、タスクフォースのメモというものに基づいて、軽水炉安全性審査に用いられておるところのコンピューターコード問題点がさらに指摘をされておる。コンピューターコードの能力と限界が明確になって軽水炉安全性に関してより正確な判断ができるようになるまで、その間原子炉出力上昇を禁止する措置をとるように要請をされておるわけであります。それから現在の原子炉安全審査安全性評価に採用されているコードによるところの計算結果は非常に限られた制限のもとに出てきたもので、技術的に正当化し得るものではない。したがって、タスクフォースが新しいシステム開発、それから現在の設計妥当性評価に要する実験必要性を認めておらないのだということが指摘されておる。  したがって、日本ではタスクフォースの勧告に従って設計をされたものであるから差しつかえないのだというような安易な考え方に立っておるやに見受けられるわけであります。ところが、このアメリカの情報というものが原子力産業新聞にも明記されておりますように、資料公開をされましてから環境衛生関係立場のほうから鋭い攻撃がなされておる。相当これは公開場所でこれから論議の的になろうとしておる。しかも、この疑問を提出しておる中には、ECCSが改良されるまではストップすべきだという強硬な意見の中に、先ほど申し上げたAEC性能部長のモーリス・ローゼンさんまで入っておる、こういうことになっておるわけであります。  去年、アメリカ皆さん方が行かれて、ECCS安全性はだいじょうぶなんだというふうな結論を簡単に出されておりますけれども、アメリカ自体が、タスクフォース基準というものは正確ではない、こういうふうに言っておる。——言っておるというように断定されたわけではございませんにしても、そういう意見が強く出されておる。日本の場合は、御承知のように、アメリカよりも相当これから密度が高くなろうとしておる軽水炉原子力発電所が予定をされておるわけであります。したがって、人口の密度も高いわけでありますから、ECCSの完全な安全性の見通しというものが立たない限り、付近の住民にいつどういうときにどんな大きな影響を与えるかわからぬ、こういうことをよほど慎重に検討しなければならぬと思うのでありますけれども、どうもアメリカタスクフォース基準だから、それに基づいておるのだからそれでいいのだというふうな非常に安易な考え方で、運転をしてもよろしい、許可をしてもよろしいというふうなかっこうになっておるということは、アメリカ以上に厳格でなければならない日本の実情というものを無視して、アメリカほどの技術までいっていない日本技術段階で安易にそれを許可している、あるいは運転継続を認めておるという態度は反省をしなければならぬのじゃなかろうか、こういう感じがしてならないわけであります。その点について、山田委員の御説明を願いたいと思います。
  9. 山田太三郎

    山田説明員 ECCSルールメーキング・ヒヤリングというのが行なわれておりまして、その際に、ただいま石川先生指摘のような資料も提出されたわけでございます。しかし、それはAEC内部資料でございまして、それらは十分検討の上、AECが出しておりますインテリムクライテリア中間基準といいますか、それが出されておるということであるわけでございます。それで、いま批判をした人はやはり非常に技術的のレベルが高い人でありますから、これが単なる流説であるというふうに葬り去るわけにはいきませんけれども、しかし、それらはすべて検討の上、現在のインテリムクライテリアでよろしいということを、AEC全体としては決定しておるわけでございます。  なお、先ほどの御指摘のように、日本がそんなものをただうのみにして、アメリカが言っているからいいんだ、こういうような考えで、たとえば大飯の場合であるとかあるいは美浜の三号の場合であるとかを審査したというふうに御指摘でございますけれども、そうではございません。いま指摘がありましたような問題につきましても、日本でももちろん検討いたしました。その上になお日本としては独自の検討もいろいろ加えまして、現在のAECのやっておる計算方式でどんな答えが出るであろうかということをいろいろ検討いたしました。  このAEC仮定は非常にコンサーバティブでありまして、非常に悲観的な結果が出るような計算であるということは、全体として非常に明らかでありまして、つい最近にも、同じルールメーキング・ヒヤリングにおきまして、アメリカのメーカーがいろいろと、いま自分が考えて一番いい方法であるというような計算結果を出しております。それによりますと、AEC計算した、あるいはAECの与えました仮定によって計算した結果に比べて、はるかに低い燃料被覆温度であるという結果を出しております。しかしながら、われわれとしては、先ほど先生の御指摘のように、AECがヒヤリングにおきまして冒頭にAEC全体の意見を出しておりますが、それをいろいろ検討いたしまして、その上で非常に安全過ぎると思われる点については目をつぶりまして、これはどうも少しあぶないのではなかろうかという点についていろいろ計算をいたしまして、その結果も一応出してございます。  その結果、日本でとりました方法は、AECはなるほど二千三百度Fというものを燃料被覆基準である、こうきめておるけれども、日本としてはそれにはちょっと従っていけないかもしれない。計算仮定が非常に悲観的過ぎるものがあるわけですけれども、それらを目をつぶりまして、やや楽観的な結果が出るのではなかろうかという点を二、三計算をいたしまして、それによって、その計算の結果においてたとえばAEC計算よりも百度ぐらい温度が上になるかもしれないという場合もあり得るということを検討の結果出しまして、日本では、大飯あるいは美浜三号につきましては、二千三百度ではなくて二千百五十度Fという温度、すなわち、この計算が実際には非常に低い温度になるはずなんですけれども、その悲観的な計算を除いて、仮定に少しでもあやふやな点がありそうなところについては厳重にチェックいたしました結果を入れまして、二千百五十度Fをこえてはならぬというのを日本安全審査会が内規的に決定いたしまして、その方法に従って許可をいたしております。それによりまして、燃料出力あるいは出力密度というものについての制限を加えておるということでございます。
  10. 石川次夫

    石川委員 これはきわめて工学的な専門的なことでありますので、われわれがちょっとはかり知れないところがたくさんあるわけでありますけれども、ラルフ・ラップなどの意見によりますと、大体十秒で二千五百度になるというような可能性というものを前提として、いまのECCSではきわめて不十分ではないか、こういう意見が出されておるというふうに私は記憶をいたしておるわけであります。しかも、このECCSの不十分さといいますか、実験段階におけるところの実験の結果だけであって、実際問題として一体どうなるのだというふうな不安を含めて、これはバッテル・メモリアル・インスティチュートとかニューヨーク工業大学とかオークリッジ国立研究所あたり権威のある人が、これに対して非常に不安であるという疑義を提出しておるわけであります。私がここで工学的な問題を議論いたしましても、私専門でもありませんし十分な議論ができないことは非常に残念でございますけれども、こういう不安があって、しかもこれが公開場所で大いに論争される、こういうことが行なわれておるということは、実に注目すべきことではなかろうかという感じがするわけであります。  日本の場合には、科学技術庁なりあるいは原子力委員会が外国に行って調べた結果、タスクフォース基準に従っているのだから心配ないのだというような、一片の通告というか声明を発表しただけで、そのまま強引に進めてしまうというような観があるわけであります。これを公開をして、これに対して疑義を持っている学者日本には相当いるはずでありますから、したがって、その公開場所で堂々とECCS安全性の問題については討論をして疑問を明らかにするという、アメリカと同じような態度がどうしても必要なんじゃないか。特に日本の場合には原子力基本法というものがあって、公開原則というものが守られなければならぬことになっておるわけなんで、そういう努力がなされておらないということは、私は非常に心外なんであります。アメリカでさえこれだけ真剣に、たとえばLOFT計画というものについては五百人くらいの人が寄ってたかって検討しておる。日本では一体何人の人がそれだけの問題について検討しておるかというと、まことにお寒い限りなんです。そういう技術陣営が弱体であるにもかかわらず、何かアメリカよりも公開をしないで自信ありげな態度をとっておるというところに問題があるのではないか、こういう感じがしてならないわけです。  ECCSの問題はきわめて専門的な問題でありますけれども、どうも学者なんかに聞いてみても、実験段階としてはそういうことが言えても、現実の問題としてはこのECCSはきわめて危険なんじゃないか。十秒以内に二千度も温度が上がって、それを全部冷やすということは現実の問題としてできるのだろうかというような、これ肝あくまでも実験であって実際に使用したことはないわけでありますから、そういう不安というものがどうしても提出されざるを得ないような状態に置かれておる。それならそのように、やはり学者の中で大いに議論を起こして、この検討をするという態度が必要なんではないか。これは私のほうからも文書でもって提出いたしておりますけれども、このほかにもたくさんいろいろ問題がありますけれども、このECCS一つをとっても、公開の席上でもって堂々と議論をし解明する点がたくさんあるのではなかろうか、私はその努力をすべきではないかという気がするのですが、その点どうお考えになりますか。
  11. 山田太三郎

    山田説明員 先生の御指摘のとおりでありまして、原子力委員会あるいは科学技術庁長官でしたかに対しまして、たとえば日本科学者会議等でいろんな公開質問状が出てまいっております。その後もいろいろ出てまいっておりまして、それらについてはどう扱うべきであるかということをいろいろ検討しております。  なお、前の日本学術会議檜山さんが委員長だったわけですが、学術会議とは原子力委員会は年に四回くらい会合する機会がございまして、いわゆる公開ということではなくて、専門家だけの検討会をやろうではないかという話がございました。それが具体的に進行します前に、この檜山さんが学術会議を落選されたのでございますか、ちょっとストップしておりますけれども、そういう計画で地道に学問的な検討をやろうではないかということを考えております。ですから、そういった方向をやっていきたい、こういうふうに考えております。
  12. 石川次夫

    石川委員 タスクフォース基準によると、ECCSの問題についてもいろいろな文献が出ておるわけでありますが、最低一万件に一件は事故が出ることを考えなければならぬであろうというようなことを、私は何かで見たことがあるわけです。一万件に一件でも、百万キロワットの軽水炉でそういう事故が一たん起こったと仮定いたしますと、これはもうたいへんなことであります。もう絶対に原子力発電というものは不可能になってくるということをまず考えなければならぬということになれば、一万件に一件でもそれはあり得ないというところにまで安全性というものをとことんまで確認をするという態度がどうしても必要ではないか。もしこれがたとえば東海村または若狭湾でもけっこうなんでありますが、この事故が一たん起こったと仮定いたしますと、そこら辺の住民を全部退避をさせなければならぬということになりかねないという様相をはらんでおるわけであります。  そういう点で、このECCS、これだけアメリカでもって議論の対象になっておるわけでありますから、環境基準の問題はきょうは申し上げませんけれども、このECCSの問題だけでも、学者の間でもって大いに公開の席上で討論をするという公明正大な態度をとって、疑惑の起こらないような体制にしなければ、私は、反対運動をストップさせるなんということはとうてい不可能ではないだろうかという感じがしてならないわけなんであります。反対の論拠はほかにもたくさんあるのですが、その中のほんの一つにすぎないわけであります。  それで、このECCSだけを私、きょう一つの例として申し上げるわけなんでありますけれども、やはり原子力基本法にあるところの自主、民主、公開、特に公開原則というものは徹底して守ってもらいたい。このことなくしては、将来のエネルギーの大もとになるであろうと思われる原子力発電というものは不可能になってくるであろうという感じがしてならないわけなんで、これは学術会議専門家の間でもって、内密にということではないのでしょうけれども、そういう形ではなくて、大いに堂々と公開場所でもってこれを議論をするという態度が必要なんではないかと私は思うのですが、その点どうお考えになっていますか。
  13. 山田太三郎

    山田説明員 先ほどお話のありましたこの事故確率の問題につきましては、これは定説は実はございません。しかし、これはロス・オブ・クーラント・アクシデントといいますか、冷却材喪失事故というものが起こる確率がそうであるということでありまして、そのあとに起こるフィッションプロダクトが非常にたくさん出てくるということは、それはまた別の問題でございます。アメリカもそういう点については、最近、いろいろ考えてまいりまして、現在の安全審査に用いておる方法は、悪いことの多重化、すなわち、考えられないような悪い事故を全部積み重ねた状態においてどうなるかという計算をしておるのであるけれども、かりにパイプラプチャーが起こって、冷却材喪失事故が起こったといたしましても、実際の場合においては、そういう悪い条件が重なることはあり得ない状況、この安全審査で出てくると計算されておる放射性物質に対しては、その千分の一ぐらいが実際のものであろうというようなことを申しておることをつけ加えさせていただきます。  それから、ただいまの先生の最後の御意見でございますが、これは非常に工学的な問題でございまして、ただ大ぜいのところでわあわあやるから結果がいい話になるというのではなくて、やはりじっくりと専門家同士で話し合うということのほうが効果的ではないかというふうに私は考えております。
  14. 石川次夫

    石川委員 私も、しろうとを集めて大ぜいの席の中で公開をして議論をしろということを言っているわけではないのです。学術会議原子力委員会専門家だけで一部屋でもってこっそりやっているような印象を与えるようなやり方じゃなくて、これはだれもが認めるという場所でもってひとつ堂々と議論を戦わして疑義を明らかにするという態度が必要なんではないかということを申し上げているんで、たとえば反対運動をやっている連中をごっそり中へ入れてわあわあやらせるというようなことは毛頭考えておりませんが、しかし、アメリカでは、環境保護主義者というものの集まりのナショナルインタービナーですか、NIというのですね、これは大体しろうとも入っていると思うのですよ。この人たち公開質問状を出して、その人たちの背後には学者がついていて、その人たちとこのAECの安全を主張している方たちとの間で公開論争をやろうという、きわめて公明正大な態度なんですね。日本はそれ以上に安全性というものの必要性が強調されなければならぬ立場なんですから、私はこういう態度が必要なんだと思うのだけれども、まあおっしゃるように、これはしろうとの論議すべきことではないと思うのです。ですから、私は百歩譲っても、やはり公開の席でそういう疑問を持っている学者とそれからそういう疑問に答え皆さん方との間で堂々と議論をしたらいい。そういうことなくして、くさいものにはふたというような印象を与えることは、なおさら安全性に対して非常に疑惑を深めてしまうのではないかということを言いたいのであります。その点はどうお考えになっていますか。
  15. 山田太三郎

    山田説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、学術会議のたとえば原子力特別委員会とかそういう人だけと話し合ったのではもちろん答えになりません。しかし、そのバックには、日本科学者会議というような広い層があるようでございまして、そういうところからの選手といいますかに集まっていただいて話し合いをしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  16. 石川次夫

    石川委員 これは委員長においてもあとで配慮してもらいたいと思うのでありますが、これは学者の仲間でもたもたと議論をしているかっこうではなくて、だれもがわかるところで堂々と公開議論をするという公明な態度が必要なんではなかろうか。これなくしては、原子力安全性にほんとうに信頼を大衆につなぐということは不可能であろう、こういう感じがしてならない。ほかにもたくさんの原子力の問題については問題点があるわけでありますが、私は、ECCSアメリカのこの態度を見て、日本とはだいぶ違うな、堂々と公開の席上でやっている、大衆も参加している、こういう状態のもとに行なわれている。もちろん議論学者の間でかわすんでありましょうけれども、しかし、大衆もそれに参加をするという形で行なわれるこういう公明な態度は、日本原子力基本法がある以上は、なおさら強く必要とされるところではないんだろうかという感じがしてならないわけであります。  大飯の原電なんかにつきましても、これはきょうは申し上げるつもりはございませんけれども、やはり私は公開でもってやる。しかし、この公開の持ち方は、まあ非常に混乱状態におちいるような危険のあるようなことでやれと私は言っているわけではないので、やはり選ばれた人が少数、限られた人たちだけでやってもよろしいけれども、しかし、だれでもわかるような公明正大な形でもって公聴会というものは持つべきものである。  ECCSの問題については、これはきわめて学問的なことでありますから、しろうとが参加しなくても私はいいと思うのです。しかし、だれでもわかる、堂々と公開されたというかっこうでこれが行なわれることが必要なんです。こういう態度がなければ、これは少しわき道にそれるかもわかりませんけれども、核武装論というのが一部に相当出てきているわけであります。この核武装になるかならぬかということの決め手は、私は公開の一語に尽きると思うのです。公開をするかどうかということによってこの疑惑というものも払拭することができるということも十分に考えてもらわにゃならぬ。この安全性の問題だけじゃなくて、原子力というものはすべて公開されるんだ、こういう鉄則を貫くことによって初めて核武装の不安というものもぬぐい去ることができるということで、私は特にこれを強調したい。  この点は、原子力委員会のほうでも特に御配慮を願いたいということを強く要望いたしまして、このECCSの問題についてはきょうはこのくらいにしておきたいと思います。
  17. 渡部一郎

    渡部委員長 それでは速記をとめて。   〔速記中止
  18. 渡部一郎

    渡部委員長 速記を起こして。  近江巳記夫君。
  19. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、いろいろ時間の関係もあろうかと思いますので、まず初めにお聞きしたいのは、宇宙関係をひとつお聞きしたいと思うのです。昭和四十七年度の宇宙開発関係政府予算、これは二百四十億八千万と、前年度比五五%という大幅な増加を示しておるわけです。こういうことから見まして、わが国の宇宙開発もいよいよ本格化したような感を持つわけであります。  そこでお聞きしたいのは、現在のNロケットの計画を見ますと、将来の実用衛星の事情から逆算いたしますと、やはり再検討の必要があるんじゃないかという声を耳にするわけです。四十七年度予算で気象研究所に気象衛星のソフトウェア研究開発費として二億円ついておるわけですが、これは世界気象監視計画あるいは地球大気開発計画、GARPの一環として五十年から五十一年ごろ二百五十から三百キログラムの衛星をわが国が打ち上げることを想定しているといわれておるわけですが、こういうような状況の変化に対して科学技術庁としてはどういう認識をされておられるか、まずお聞きしたいと思うのです。
  20. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 気象衛星の打ち上げの問題が最近出てまいりましたが、これは四十五年度決定の宇宙開発計画にも、気象衛星はこのGARP計画等の進展を見ながら研究を進めていくというように明示されておりまして、気象庁におきましては、搭載機器等の研究を従来続けてきたわけでございます。国際機構としてのWMO等の計画が次第に具体的になるに従いまして、気象庁の研究もさらにそれと並行して進める必要があるということで、本年度も二億円の予算が計上されたわけでございます。  これと並行いたしまして、科学技術庁のほうにも、実用衛星をユーザーの側から開発の側、すなわち気象衛星について申し上げますと、気象庁が研究をし、それから開発をする宇宙開発事業団、この橋渡しをするための調査研究費というものが一千九百万ほど計上されました。したがいまして、この現在のN計画には載っておりませんけれども、国際協力という観点からこの気象衛星等の扱いをどのようにしていくかというのが、本年度の一つの中心的な宇宙開発の研究課題となるかと思います。  御存じのように、この気象衛星の問題は、GARP計画では四個の衛星を地球上に配置いたしまして、二個をアメリカが分担し、一つをフランス、それから残りの一個を日本に打ち上げてもらいたいという強い要望が出ているわけでございます。最近の情報によりますと、フランスが一国で上げるという計画を多少変更いたしまして、ヨーロッパの宇宙開発研究機構、いわゆるESROにこれを移しまして、いわゆるヨーロッパの共同計画ということでその一個を分担するように進んでいるようでございますが、わが国といたしましても、この気象衛星計画につきましては、日本一国の問題ではございませんので、東南アジア等の諸国との関連において、いわゆる国際協力という面からこれを取り上げて、この実現方に積極的に努力をしていこうというのが現在の状況でございます。  したがいまして、今後の宇宙開発計画におきましても、このような国際協力に基づく要請というものをどのように受けとめていくかということを、委員会におきましても真剣に検討していきたいという段階になっております。
  21. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、中国との国際協力ということもおっしゃったわけですが、正式なそういう要請というようなものはわが国に対してもあったわけですか。
  22. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 いまの御質問はちょっとはっきりいたしませんが、中国との協力ですか。——私は中国とは申し上げなかったと思います。東南アジアとの協力ということでございます。  中国と特にこれを協力していくという点には、まだ具体的に考えておりません。
  23. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然衛星であれば、そういう範囲には入ると思うのですよ。そういう点、いま東南アジアというように訂正されたわけですが、いずれにしても、これらはすべての国と国際協調していくという点において、この地球をカバーする衛星でもあるわけですし、その点、それじゃ今後科学技術庁としては、ほんとうにそういう科学技術という純粋な立場から、今後の中国との協調という点についてはどのようにお考えですか。
  24. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 この問題はちょっと私の手に負えない荷の重い御質問でございます。しかし、これらの問題につきましては、特に国際協力の問題につきましては、御存じのように、国際連合の中に宇宙空間平和利用委員会というのがございまして、この下部機構に科学技術小委員会がございます。そのような場でこの気象衛星等の問題あるいは将来の資源衛生の問題、こういうものを国際協力で実現するためのワーキンググループというものができておりますので、いま御質問のような中共との協力というような点は、こういう国連の場等を通じて今後行なわれていくのではなかろうかと考えております。
  25. 近江巳記夫

    ○近江委員 ニクソンが訪中したときに大々的な宇宙中継をやったわけです。そういう施設を今度中国が買うということになりまして、こういうことでココムのそういう緩和というものが大きく門戸を開いた。こういうことに最近は情勢が大きく変わってきておるわけです。中国だってそういう施設をすでに備えたわけでありますし、当然こういう純粋な科学的な立場において、これはやはり前向きに今後協力という点は考えていく必要があるのじゃないか、このように思うわけです。これについては官房長はどのように判断いたしておりますか。
  26. 井上保

    井上政府委員 中国問題につきましては、国全体としての今後の方針、動き方、そういうものを十分に検討いたしまして、そういうものとのそごを来たさない範囲におきまして、極力許される範囲で前向きに考えていきたい、こういうふうに考えております。
  27. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうような幅広い判断といいますか、そういうことについては、これは科学技術庁はどういう態度でいくのですか。これはすべて総理なり外務大臣の意向に沿うと、もちろん話し合いということは大事か知りませんが、科学技術庁としてはそれをどういうように積極的に推進していくか。私はやはりそういう自主的な見解を持つことが大事ではないかと思うのです。その点どのように考えておりますか。
  28. 井上保

    井上政府委員 先ほど申し上げましたように、国の方針がきまります過程におきましてはいろいろと議論があったと思いますけれども、そういう段階におきまして、全体との調和のとれた範囲におきまして積極的に考えていきたい、こういうふうに考えております。
  29. 近江巳記夫

    ○近江委員 これ以上言っても前へ進まぬと思いますから……。  いずれにしても、国際協力という立場において、経済においても文化においても科学においても、あらゆる角度からいろいろと協力を進めていく、これは大事じゃないでしょうか。そういう点、いまの御答弁は一歩もからを破っておらないといいますか、もう少しその辺の考え方も、科学技術庁としても、今後は一国に閉じこもってどうだこうだといっておる時代ではないわけです。そういう点やはり新しい発想といいますか、そういう広い視野に立ってものごとを考えていく、これをやはり科学技術庁の中でも大いに進めていただく必要があるのじゃないか?これを申し上げておきます。  それから、前平泉科学技術庁長官が、昨年の十月に、Nロケット計画のこれまでの動きにとらわれず白紙の立場からロケット問題を再検討してほしい、このように要請されたと聞いておるわけですが、事実であるかどうか。また、その背景は何であるかについてお聞きしたいと思います。
  30. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 いまのお尋ねは事実でございます。科学技術庁長官は、御存じのように原子力委員長それから宇宙開発委員長をつとめておられまして、宇宙開発委員長立場からとしてもわが国の宇宙開発計画を真剣にお考えいただいたわけでございまして、その際に、ユーザー等のいろいろな要望が現在のNロケット開発計画というようなものとうまくかみ合っているのであろうかどうか、特に先ほどの気象衛星のような問題は国際協力という強い線が出てきておる、これらの調整を少し考えてみる必要があるのではないかというようなお考えから、もう一度じっくり国際的な広い視野から見直してみる必要があるのではないかというような御下問ではなかったかと存じます。私、いろいろその会議等も開かれまして出ておりませんので、わかりませんが、そのように伺っております。
  31. 近江巳記夫

    ○近江委員 官房長はその辺のことについてはどのように聞いておりますか。
  32. 井上保

    井上政府委員 現在の開発計画におきまして、打ち上げる時期の問題あるいは大きさの問題等につきまして、需要者側等の要望が必ずしも完全に満たし得るかどうかという点に疑問がややございまして、それにつきまして調整をはかる必要があるというような観点からそういう御意見があった、こういうふうに考えております。
  33. 近江巳記夫

    ○近江委員 つまり、この宇宙開発計画、Nロケット計画の再検討ということを意向として示した、こういうことですか。
  34. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 再検討ということばが適当かどうかわかりませんが、一応現行の宇宙開発計画が策定された段階において、まだ具体的な計画として盛り込むには早い、不確定な要素のある気象衛星のようなものがあったわけでありますが、それが逐次表面にあらわれてきた、だからそれらの調整を十分考えていけという御意向だったと思います。
  35. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういういまの御答弁からいきますと、この地球大気開発計画、GARPですか、これを見ますと、五十年過ぎに二百五十から三百キログラムの衛星を打ち上げる、こういう要請、いまのNロケット計画によれば百キログラムの実用静止衛星を五十二年に打ち上げるというようなこと、こういう二つの相異なる情勢の中でGARP計画に今後どのように対処していくかということなんですね。これについてはどういうように考えておりますか。
  36. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 現行のNロケット開発計画それからもろもろの衛星の計画というものは、わが国が宇宙開発を進めていく上にこれはどうしても越えなければならない、第一階梯としてマスターしなければならない計画であるとわれわれ考えております。それでいろいろな大きな衛星の需要等が来ましても、その衛星を打ち上げるためのロケットを即座に現在の計画を変更して開発するということは、これは技術の進め方からいっても好ましいことではないと思います。特にわが国のいま計画いたしておりますロケットの開発というのは、液体ロケットを中心にいたしまして、これは今後の宇宙開発の最も中心的な役割りになる技術かと考えますので、これをとりあえず開発する。その開発の目標は一応衛星を静止軌道に、百キロ程度の衛星を静止軌道に上げるという程度のものでございますが、これをマスターすることによってさらに次に二百キロ、あるいは二百五十キロ、三百キロというような衛星を打ち上げる改善の基礎的技術が確立されるわけでございまして、これはどうしてもわが国としても推進しなければならぬ。しかし、国際的協力というような面から、時期的に間に合わない要請に対しては、これは別途考える必要もあるのではないかというのが現在の状況でございます。まあ将来、その間どうしてもこれは国際信義、あるいは国際協力、ひいてはこれがわが国の国民生活に及ぼすというような観点から、この衛星を確実に日本も四個のうち一個を打ち上げていこうというようなことに決定が下されますと、それの実現方法としてはいろいろ考えられると思います。たとえば衛星は日本開発して、ロケットは国際協力によって他の国に打ち上げを依頼する。そうすることによってこの国際的にきまっておる五十年あるいは五十一年の衛星の配置が可能になるというようなことも考えられるかと思います。しかし、これも当初のものは現在のN計画とマッチいたしませんけれども、御存じのように衛星の寿命というのは三年ないし四年ということでございますので、第二号と申しますか、同じ種類の衛星でも、二号目にはわれわれが開発した技術を改善することによってわが国の手でみずから打ち上げができるという構想もあるわけでございます。したがいまして、四十七年度におきましては、これらの外界からの要請をどのように実現していくかという点で委員会でも大いに検討を加えていただくことになっております。
  37. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、国際協力のそうした立場から要請されるということで、しかし、わが国のN計画でいけば打ち上げることはできない、他国に打ち上げてもらう。となれば、他国といったってこれはどこですか。
  38. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 いまその可能性がありますのはアメリカでございます。
  39. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう国際環境の中、また、わが国のそういうような宇宙開発計画、こういうようなズレ、こういうことについてはもう当初からこれは予測されておったことですよ。そういうことについていままで何回も変更もし、なおかつこういう大きな狂いが生じてきておる。こういうことはやはり宇宙開発関係、また宇宙開発委員会ですか、それからさらにまた、政府の皆さん方の状況認識の甘さじゃないか、私はこう思うのです。しかも宇宙開発計画のたびたびの変更について、そういう批判を避けるために追加という形でポストNの計画を上乗せていくのじゃないかというような姿勢が見られるわけです。この宇宙開発というものは一体国民にとって何であるのかという、その辺のチェックというか検討というものがなされてないのじゃないか、このように思うわけです。この辺についてはどのようにお考えですか。
  40. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 ただいまの御質問に対しましては、まず前段のほうの宇宙開発委員会の認識が不足ではなかったかという点でございますが、これは御存じのように、宇宙開発委員会にもそれぞれ計画部会、技術部会あるいは参与その他の制度を設けておりまして、斯界の権威の皆さまのお声を聞きながら、世界の趨勢におくれないような計画にしていこうという努力を続けているわけでございます。再三気象衛星を例に引いて恐縮でございますが、気象衛星の場合にも、将来のそのような可能性があるので、現在もすでに計画の中に研究を開始しておけということを明示しているようなわけでございまして、決して、計画を策定する時点において考えられるあらゆる要素を考えておりまして、特に大きな認識上のミスがあるというようなことはないと私信じております。  しかし、御存じのように、この宇宙開発におきます技術は、まさに日進月歩の最たるものではないかと思います。まことに変転きわまりないといいますか、国際情勢の中にある国際協力の問題も出てまいりますが、技術的にも非常に進歩がはなはだしい。そういういろいろな外界の情勢等に対処いたしまして、これらを絶えず織り込んでいくと申しますか、現行の計画にそごがないかということを反省していくために、宇宙開発計画の冒頭にも明記してございますように、毎年見直しを実施して、そのときの現状にマッチするようにしていくのだということをしてございます。したがいまして、昨年も一昨年も、この宇宙開発計画の見直しは続けてまいりました。ただ、これを朝令暮改で絶えず変えているというわけではございません。ただ一番大きな改定というのが昭和四十五年になされたわけでございまして、その以後は大きな改定等も行なっておりません。それで、ただいまの気象衛星問題にいたしましても、当時から予測されている問題でございますので、これが次第に煮詰まった段階計画に繰り込んでいくというのが、これから行なわれる作業でございまして、宇宙開発委員会におかれましても、絶えず新しい情勢に対処していくという努力は続けられているわけでございます。  それから、国民生活の上にこの宇宙開発がどのように反映しているか、そういう観点から考えておるかという点でございますが、これもまさに気象衛星等は国民生活と非常に密接に関連する宇宙技術一つでございます。これらもいま国際協力の一環として取り上げることによって、まさに宇宙開発の成果が国民に直結してくるというようにわれわれ考えますので、特に四十七年度の計画の見直し、それからそれによって指摘される具体的な問題点等の一つとして、この気象衛星等は取り上げられると思いますが、それを四十七年度の宇宙開発計画の作業におきまして、十分国民生活というような観点からもこれを検討して、もしそれが非常に裨益するものであれば、ぜひこの実現をはかるように計画に組み入れていくということに相なるかと思います。
  41. 近江巳記夫

    ○近江委員 この宇宙開発計画も、予算規模からいきますと二千億といわれておるわけですが、また今後のさらに発展を考えると、四千億とも五千億ともいわれておる。二千億としてもこれは原子力に匹敵する額ですし、今後の伸びを考えますと、それを上回ることがやはり予想されるわけです。これは確かに非常に大きなプロジェクトに私はなると思うのですが、このように雪だるま式にこの予算規模が拡大をしていく、そうして気がついたときには軍事利用に供されていた、こういう事態が来ないとは断言できないわけです。そういう点で、この管理能力という点で、正直申し上げていまのような状態でいいのかということにわれわれとしては非常に不安を持つわけです。これについてはどのようにお考えかということが一点。  それから、実際、メーカーにしても三菱重工あるいは石川島播磨、日産、この三社ですね。しかも猛烈な競争をやっておりますが、これは九〇%以上は三菱じゃないかと私は思うのです。御承知のように、三菱は防衛庁から大量の武器を引き受けてやっておるわけです。そういう点、これは前にも申し上げたことがありますけれども、実際宇宙開発といってもこれは両刃のやいばですよ。こういう点で、三社にしぼっておるわけですけれども、そういうようなあり方でいいかという問題が一つあるわけです。その辺の両刃のやいばという危険性についてはどういうように考えておられるか。これが二点目なんです。  その二点についてお聞きしたいと思います。
  42. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 最初の御質問でございますが、宇宙開発委員会が設置される前に宇宙開発審議会というものがございました。それらで幾つかの答申等がなされておりますが、その中でも特に重点的に強調されておりますのが宇宙開発の平和利用という問題でございます。それから、再三宇宙開発委員長すなわち科学技術庁長官も御答弁なさっておりますように、絶対に宇宙開発は平和利用に限るんだということをわれわれも承知いたしております。  それから、わが国で宇宙開発を推進していく、いわゆる開発の衝に当たりますのはただいまのところ宇宙開発事業団でございます。この宇宙開発事業団法第一条に、宇宙開発の目的といたしまして、この目的は平和利用に限るんだということをはっきりと明示してございます。したがいまして、わが国が開発していく宇宙開発における成果、技術というものは必ず平和目的に限られるんだというように考えておりますし、また、宇宙開発事業団が業者に製作を委託いたします。これらには、委託契約の際にその成果の第三者への移転等の問題を厳重に規定いたしておりまして、よく監視しております。その事業団をさらに科学技術庁が監視、監督しているという形をいまとっているわけでございます。この現在の体制というものは予算が幾ら大きくなっても私ども変更をする意図は毛頭ございません、この現在の体制を堅持していこうと考えております。これをもろ刃のやいばと申しまして、平和利用あるいは軍事利用という問題もございますが、いまのような体制の中で平和利用に徹していくというのが私どもの考えでございます。それ以上の点はひとつ大臣または政務次官等にお聞き願いたいと思います。
  43. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまのままでこれだけ膨大になってくる予算、それを管理していく——いま宇宙は研究調整局でやっているわけでしょう、そうでしょう。たとえば宇宙局をつくるとかそういう状況に応じた体制ということは考えられないのですか。そういう硬直した、一切もう変えないんだというような答弁は私はおかしいと思うんですよ。それが一つです。  それから、申し上げた三社のメーカーの間で非常に熾烈な競争が行なわれておるわけです。あくまで平和の目的に限るんだ、いまあなたも法律に基づいたそういう見解を発表されたわけです。しかし、この三社、特に三菱なんかは防衛産業ですよ、そういうところが非常な獲得競争をやっておる、こういうあり方については、あなた方は何の批判も持っていないのですか。こういう姿は当然だと思うのですか。どういう是正をはかっていくのですか。
  44. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 先ほどの御質問で、私、後段をちょっと割愛してたいへん失礼いたしました。  メーカー問題で一社に偏重しているのではないかという御質問でございましたが、私どもの宇宙開発を推進していく一つの目的といたしましては、宇宙開発における技術、いわゆる先端的な技術はわが国の産業等にも広く利用されるのが好ましいことでございますので、宇宙開発事業団における業務の委託、メーカーの選定等につきましても、これは宇宙開発事業団が自主的に行なうことは当然でございますが、やはり監督官庁としての科学技術庁におきましても非常な関心を持ちましてこれらはよく連絡をとっております。  まず、事業団等におけるメーカーの選定の基準といたしまして、科学技術庁等で考えておる、また国として考えております、この技術が多くのメーカーに均てんしてわが国の産業界のポテンシャルを上げていくという点、これには極力注意を払っておりまして、なるべく多くの企業がこの宇宙開発に参画できるように、それから一社に技術が片寄らないようにという観点からいろいろ選びまして、先ほど先生指摘のロケットの開発とすると実力からいいましてもこの三社でございますが、一応ロケット開発には参画しているわけでございます。そのシェアが非常に三菱重工に片寄っているという点、多少はございますが、朝日ジャーナル等に九〇%が三菱だというようなあれがございましたが、これは私どもが事業団の報告を聞きましても決してそんな極端なことはございません。三菱重工が開発技術技術者の面、それから宇宙開発計画を期限内に完遂するというような観点から見まして最もすぐれた技術を持っているところというには、これは間違いないと思いますが、そういう中でも他の石川島播磨あるいは日産というところのすぐれた技術を持ち寄りまして、なるべくこの三社のシェアが均分化されるような方向に努力をしつつそれぞれの発注をいまいたしておりまして、これは国といたしましてもまた事業団といたしましてもその趣旨をよく体しまして、極力一社に偏重することのないように努力している次第でございます。
  45. 近江巳記夫

    ○近江委員 これだけの巨額の予算を今後使っていくわけです。したがって、その波及効果といいますかそれを大きくすそ野を広げていく、これが大事だと思うのです。そういう特選傾向というものについて今後十分チェックをして、そしてまた特に注意すべきはその軍事転用、そちらのことについてチェックのできる体制を確立をしていただきたい、これについて政務次官ひとつ御決意をお聞きしたいと思います。
  46. 粟山ひで

    ○粟山政府委員 御趣旨はそのとおりでごもっともだと思いますので、今後とも監督の庁といたしまして、十分にほんとうの平和利用という目的からそれることのないよう厳重に注意していきたい、こう思っております。
  47. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと石川委員がおられますので、譲りたいと思いますが、先ほど次官がお見えになる前、地球大気開発計画、GARPという計画があるわけですが、わが国も四個のうち一個を打ち上げるという責任があるわけですけれども、今後東南アジアとは協力をしていく、中国については今後考えるといういま参事官のお話があったわけですが、こういう純粋な科学的な問題については、当然中国とのそういう国際協力という観点から大いに推進していくべきじゃないか、これについて政務次官のお考えをお伺いして終わりたいと思います。
  48. 粟山ひで

    ○粟山政府委員 いずれはそのようになることを希望し、期待いたします。ただいまの中国との関係の上で、当庁だけが先走るというわけにはいきませんから、十分そういうことは将来に対して考慮すべきであろうと思います。
  49. 近江巳記夫

    ○近江委員 政治が大きな石になって、そうして押えられて、その石がのかなければ頭を出せない。それよりも——もちろんそれは一番大事なんです。大事だけれども、いまの佐藤内閣であれば、私はできないと思います。そういう文化なり科学技術なり経済なり、こういうことは危険でも何でもないわけでしょう。そういう点で当然国際協力という立場から大いに推進していかなきゃならないことだと思うのです。したがって、ただ佐藤さんの意向がそうだからと、そういうことではなくて、これはだれが考えても推進すべきことなんです。そういう純粋な立場に立って科学技術庁としてはさらに力を入れたい、私は最高首脳陣がそういうお考えに立ってもらわなきゃ困ると思うのですね。それについてどうですか。
  50. 粟山ひで

    ○粟山政府委員 そういう姿勢でもって今後つとめたい、そのように思います。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではあと石川さんおられますので、終わります。
  52. 石川次夫

    石川委員 長官も次官もおられませんものですから、原子力ECCSについての質問だけで中断したわけでありますが、質問を継続いたします。ちょうどいま宇宙の話がありましたので、ちょっと二、三具体的な質問を申し上げたいと思うのであります。  去年、おととしあたりから、どうしても日本の単独のロケットの技術では百キロ以上のロケットを上げることはできぬ、そういうことで、実はソー・デルタの技術をダグラスから入れようという話が具体化しておったわけですが、この契約が済んだかどうか、その点だけちょっと伺いたい。
  53. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 ソー・デルタの技術導入に関しましては、全体の設計等の段階技術導入がすでに行なわれておりまして、あとは具体的な個々のハードウエア等の技術導入も、いよいよ今年度から開始されることになっております。
  54. 石川次夫

    石川委員 この関係の金額は大体どれくらいですか。この技術導入に要する費用。
  55. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 ただいまちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんので、正確な資料は後ほど提出させていただきたいと思います。
  56. 石川次夫

    石川委員 じゃ、その資料あとからいただくとして、大体二十五億ぐらいになるんじゃなかろうかと推定しておりますけれども、この導入にあたっていわゆるノーハウ、企業機密、こういうものはついておりますか。
  57. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 日米の宇宙協力に関します交換公文におきましては、秘密でないソー・デルタの技術日本に輸出するということでございまして、秘密なものにつきましてはブラックボックスのような形で入ってくるものもあると思いますが、さらにこれらを第三者に移転するということはできないという形になっております。したがいまして、現在入ってくるものは、アメリカ考えますいわゆる秘密でない技術だというようにわれわれ考えております。ただ、これは企業間の契約に基づく技術導入になりますので、その間にいろいろな取りきめがございます。しかし、それらのチェックは両国政府で行なっておるわけでございまして、企業機密に関する点はこれはあるかと思います。
  58. 石川次夫

    石川委員 私は、この宇宙開発を相当の費用をかけて、先ほど近江委員から質問がありましたように行なうわけなんですが、このねらいとしてはやはり技術の波及効果ということが大きなねらいなわけですね。したがって、企業機密というものが相当の部分を占めるということになると、波及効果というものは疑わしいという感じがしてならないので、その点が非常に心配なんですが、これはいずれ宇宙小委員会をそのうちやらなければいかぬと思うので、そのときに詳しいことを質問したいと思っておりますけれども、私はソー・デルタを入れても大体五百キロぐらいがせいぜいだと思います。  ところで、宇宙開発関係技術の波及効果で一番高く評価されておりますのは、言うまでもなくシステムエンジニアリングです。したがって、このソフトウエアのシステムエンジニアリングが確立された上で技術が導入される、その導入された技術に基づいてまたその上へ独自の力で上がっていけるというシステムが完成されていなければ、技術の波及効果というものは望めないわけです。それで五百キログラムのソー・デルタの技術を入れたと仮定いたしまして、あと大体一トンぐらいでなければ採算がとれないというのが定説です。大体、軽量化していく、あるいは非常に技術が進歩していくから、五百キロで間に合うんじゃないかという見方もありますけれども、いまのところは大体一トンぐらいでなければ採算がとれぬだろうというのが定説になっております。そうするとソー・デルタは大体五百キロが限界です。そうすると、アトラス・セントールの技術というものがまた必要になるわけですね。その場合に、ソー・デルタの技術が入ったからアトラス・セントールの技術までは独自で開拓できるんだというシステムが確立されておるかどうかということになると、私は日本では確立されておらないと思うんです。ただ単発的にその技術を入れて、あと一トンのものを上げるときは今度はアトラス・セントールをまた入れなきゃならぬというようなことでは、技術の波及効果というものは全然意味をなさないということになることを非常に懸念をしておるわけでありますけれども、そのシステムエンジニアリングは確立をされて、アトラス・セントールなんか入れなくても自分の力で一トンまでやれるというような見通しは立っておられますか。
  59. 市瀬輝雄

    ○市瀬説明員 導入された技術は、一応宇宙開発事業団に蓄積されることになっております。それからメーカーが委託を受けて製作をいたすわけでございますが、それらの技術につきましても、宇宙開発事業団がこれを他に移転する場合の権利と申しますか、あれを持っているわけでございまして、宇宙開発事業団すなわち国の開発機関がすべての技術を握っているわけでございますので、これを広く他の企業に活用させるということは可能だと考えております。
  60. 石川次夫

    石川委員 私の質問答えてないですね。五百キロまではソー・デルタは可能だけれども、一トンの衛星を上げるというときになると、アトラス・セントールの技術をまた入れるというふうな状態にならざるを得ないというのが現状ではないかと思うのです。だから、そういうふうに単発的に技術導入をしても、技術の波及効果というものは、ソフトウエアといいますか、システムエンジニアリングが確立されないで導入された技術というものは、何ら意味をなさないのではないかということを私はおそれておるわけです。  それとあと一つは、ソー・デルタの関係になりますと、おそらく硫酸ケロシンを使うということになって、相当危険度が高い、推力も弱いというのが定説ですね。私はどうも固体燃料というものに非常にこだわるのです。これは誘導性が非常に困難でしょうけれども、しかしながら、危険度は少ない。液体燃料になりますと、非常にコントロールはしやすいけれども、たとえば、やるのは種子島ですか、あそこには相当の人口があるのですけれども、万が一の事故が起こったら一体どうなるんだという不安が液体燃料の場合には非常に強いわけですね。そういうことを考えると、私は、ソー・デルタを導入したということは非常に軽率だったのではないかという気がしてしかたがない、私個人はそう思っております。  そういう点で宇宙開発について一番問題になりますのは、ソフトウェア、システムエンジニアリングというものはもうすでに宇宙開発技術から離れてひとり歩きしているわけですから、宇宙開発をやる意義は一体どこにあるのかということを考えると、宇宙開発の中における工学システムというものが確立をされて、技術を導入されれば、どんどんそれからのぼっていけるというふうな体制がなければならぬけれども、その体制なしに単発的に次々と技術を導入していくというかっこうだったら、私はナンセンスだという気持ちを持っているのです。そういう点で、その確立というものについて、よほど宇宙開発関係の方は責任をもって、これを反省をし、それを確立することに努力してもらわなければならぬ。相当膨大な国費を使うわけですから、その点は十分考えてもらわなければならぬという気がするわけです。  ソー・デルタの関係については、実用衛星はほとんど上げていないのですね。それからソー・デルタの関係では一九六八年から三回ほど事故も起こしているわけです。種子島でやって事故を起こしたら一体どうなるのだという不安感がどうしてもつきまとうのです。電気系統の事故なんかはまだいいのでありますけれども、油圧系統なんかの事故も起こっています。それから三段目のエンジンの事故も起こっています。何回も事故をやっている。しかも、実用衛星を上げた経験がない。そういう技術を導入してはたしていいのかどうか、正直のところ、私は前から非常に不安に思っております。そういうことのないような形、入れた以上はこれを生かして、しかもその上の段階のアトラス・セントールなどの技術を入れなくても済むような体制を確立することなくして、これだけを入れるということは非常な国費のむだ使いになるのではないかということ、その点を十分考えてもらいたいということを強く要望いたしておきます。  それで、私は宇宙衛星の関係ではまだまだ申し上げたいことはあるのですけれども、きょうはその質問をするつもりではなくて、近江さんが質問したので、たまたま関連したようなかっこうなんですけれども、宇宙開発関係でロケットにあまり重点を置き過ぎているのではないかという気がしてならないのです。ロケットにほとんど費用を使っているのですね。衛星のほうはつけ足しのようなかっこうです。費用からいっても体制からいっても、そういうかっこうになっております。私は日本考えるのは、もちろんロケットの技術というものも波及効果があるということは認めるのにやぶさかではありませんけれども、むしろ衛星の関係で、通信衛星あるいは気象衛星というものも国民生活に密着いたします。これはわかります。私個人の好みとしては、これは学者の中にもそういう意見があるのでありますけれども、たとえばこれからの食糧問題の関係で魚群探知衛星というふうなものはどうしても必要なんじゃないか、こういうふうに生活に密着したものをまずねらっていくということで、そういう遠大な計画のもとにこれからの宇宙開発というものはやってもらわなければならぬ。そうでないと、いたずらに国費を乱費しただけで、技術の波及効果というものはさっぱりない。ソフトウエア、システムエンジニアリングもさっぱり確立されておらなかったという結果になったのでは、たいへん国民に対して申しわけないことになるのではないかという気がしてならないので、私はきょうはこれを強く要望としてだけ申し上げておきます。こまかい点はあとでまた機会があったときに伺うということにいたします。  では、いよいよ本論に入るわけでありますけれども、科学技術政策全般についての問題で、この間科学技術会議でもって、一応七〇年代におけるところの科学技術政策に対する提言が行なわれておるわけであります。  そこでは、出てきた科学の成果というものと、また人類社会に対する影響というものを考えて、ソフトサイエンス、ライフサイエンス、環境科学、こういうものを確立しなければならぬといえ提言がなされておる。私はまことにそのとおりだと思うのですけれども、時を同じくして学術会議のほうでも、科学と人間のかかわり合いについて、まだ完成されたものではありませんが、一つの提言がなされております。これは結果的にはやはり科学技術会議で言ったことと同じような結論にはなるのでありますけれども、しかし、考え方の根本がたいへん姿勢が違っておる。私は、科学技術会議結論を間違っておると一がいにきめつけるつもりはございませんけれども、学術会議のほうの姿勢のほうがはるかに正しいと思うのです。それは人間と科学とのかかわり合いというものを根源的に洗い直していこう、こういう姿勢から出発して、結論はたまたま同じかもしれませんけれども、科学技術会議のほうの提言は、出てきた結果に対して科学技術政策の立場からどうしようという対応策を考えていこう、こういうことになっております。学術会議のほうはそうじゃないのです。人間と科学とのかかわり合い、科学が進歩することによって生産が増強され、合理化が進み、しかし、そのことによって公害が進み、あるいは人間疎外の現象が出てくる。あるいは情報化時代になればプライバシーの問題も出、また、人間の位置づけというものは一体どうなるんだという不安がある。こういう人間と科学とのかかわり合いの中に立って、それで科学技術政策というものを推進していかなければいけないのではないか、こういう提言がなされておるわけですけれども、この科学技術会議結論並びに施政方針演説などを伺いましても、何か出てきた現象に対して科学技術政策的な立場から対応策を考える、こういう姿勢になっておる。  私は、この委員会も科学技術振興対策特別委員会という名前がついていること自体に前から疑問を感じている。振興させることだけが能じゃないと思うのです。人間と科学とのかかわり合いをどうするんだという根源から洗い直して出直すべきときに来ているのではなかろうかという感じがしてならないので、学術会議のほうはまだはっきりしたきまった原稿にはなっておらないようでありますけれども、この提言などは十分取り入れて科学技術政策の姿勢をあらためて問い直すときに来ているのではなかろうか、こういう気がしてならないわけです。この点は長官に十分伺いたかったのでありますが、政務次官にひとつ所信を伺いたいと思うのです。
  61. 粟山ひで

    ○粟山政府委員 科学技術会議のほうでも、ただいまの環境問題などからして、いまおっしゃったように、この科学技術の振興というもののあり方については、人間の福祉の優先ということがうたわれているとは思いますけれども、しかし、ただいまの科学技術会議での答申に沿って、先生がおっしゃいますように、出てきた結果をそういう福祉に貢献させるということ以上に、それを目途として科学技術開発を進めるということのほうが当然のあり方であろう、そういう趣旨でもってやるべきであろうと思います。
  62. 石川次夫

    石川委員 どうもはっきりしないのですが、科学技術会議の提言は、私は一がいに間違いだとは言わないのです。科学技術政策のあり方としてはこういうあり方が一つあるんだけれども、もっと根源的に洗い直した立場から、結局私はこれからの科学技術政策というものを——ビッグサイエンスが中心としていま科学技術予算は動いておる。科学技術庁の予算は大体ことしは原子力、宇宙、海洋という三つのビッグプロジェクトでもって実に七百九十五億円、これは債務負担行偽というものは除かれております。去年に比べて百七十八億円もふえております。しかし、その他のいわゆる一般科学技術関係の費用は百六十八億円しかふえてない。このビッグサイエンス三つだけで、もうほとんどふえた分の半分以上を取ってしまっておるというようなあり方がはたしていいんだろうかというようなことも、また当面これは非常に問題にしなければならぬことではないのだろうかという気がするのです。  私は、前から基礎研究ということを非常に重視をして、これを拡大しなければいかぬ。もちろん基礎研究の大部分は大学において行なわれるわけでありますけれども、大学の問題を含め、科学技術庁とも相合体した意味での基礎研究というものをどうして興していくかということは非常に重要な問題で、いま日本が世界からいろいろなエコノミックアニマルとして批判を受けておりますけれども、その批判の中で一番痛烈な批判としてわれわれが耳に痛いのは、科学の分野で日本は一体何を貢献しているのだ。全部技術導入じゃないのか。そうしておいて、たとえばトランジスタにしても、それから自動車にしても、カラーテレビにしてもそうでありますが、技術は全部向こうから導入しておいて、安い賃金で売りまくっているのが日本だ。科学の分野で日本が協力しているなら、相当の程度売りまくってもエコノミックアニマルの批判は私は受けないと思うのです。ところが、現在の場合は、もう研究といえば原子力とか宇宙とか海洋とか、大きなビッグサイエンスにばっかり重点を置いている。基礎研究と、ほんとうの創造的な発見というものは何にもなされておらない。なされておらないということは、それだけの素質が日本人にないのかというと、私は絶対にそうではないと思うのです。十分に素質はあるんだけれども、そういう環境がない。予算が伴わない。そういう中で独創的なものを生み出せといっても、これは不可能なわけです。それで、私は前から提案をしている問題としては、基礎研究の基金というものを、どうしてもころがし予算的な形でもってつくりなさい。その中で自由濶達な学者の良心に基づいた基礎研究というものがなされなければ、日本はいつまでたっても技術導入に依存をしなければならぬ。原子力にしても、宇宙にしても、海洋にしても、ほとんど技術導入に依存をするというかっこうですけれども、しかし、アイゼンハワーの失政として一番あげられておるのは、あまりにもアメリカは安易に技術を流出させ過ぎた、こういう手きびしい批判があるわけです。だからヨーロッパや日本が非常に追っかけてきて強大な敵となってあらわれてきたんじゃないか。アイゼンハワーはなぜあんなに技術を表に出したのかという批判がアメリカの中で非常に手きびしいです。そういうことからして、これからの技術導入ということはいままでのような平たんな道ではあり得ない。クロスライセンスか何かでもなければどうしても技術導入はできないというふうな、きびしい環境になってくることは火を見るより明らかです。  したがって、ここで科学技術政策としては、このビッグサイエンスもけっこうです、これをやっていけないと私は申しません。これはこれなりにいかなければならぬけれども、基礎研究というものを十分にやらなければならぬし、また、その基礎研究は民間でやるといってもできないことなんですということも十分認識していただきたいと思います。民間では、各大きな企業でもってそれぞれ研究所を持っております。膨大な費用も使っておりますけれども、どうしてもそれが製品化されて売れるという前提でなければ、純粋基礎研究というものは許されない。だから、純粋基礎研究というものはどうしても政府機関でもってやらなければならぬということは、だれが見ても明らかなんです。その基礎研究の予算というものはきわめて少ないのではないか。それこそは科学技術庁がになうべきたいへんな使命だと私は思うのです。  たとえば、政府と民間との研究費の持ち方についても、日本では政府が二六%、これはますます減っていくのですね。七四%が民間、それから政府が二六%、これは前から比べると減っているのですよ。それから、四十四年がそうですが、四十五年になりますと、これは逆に政府のほうが二五%に減っております。ことしあたりはまだ減っているのではないかと思うのです。民間のほうは研究しなければならぬ、研究しなければならぬと相当な投資をしている。ところで、アメリカ、イギリス、フランスその他の国はどうなっているかというと、アメリカは六割が政府、イギリスが五〇、五〇、フランスが六七%、それから西ドイツで四一%政府出資ということになっております。  そうすると、日本の、これはいつでも言いふらされておることでありますけれども、三対七というのが大体逆にならなければいかぬ。七が政府、そして民間が三、このぐらいの目標でやらなければならぬというのに対して、だんだん政府の出す研究費の比率というものが減っていくという状態です。これは、ビッグサイエンスさえやればそれでいいんだ、こういう姿勢のあらわれが、基礎研究を軽視をしたあらわれがこういうところに出てきているのではないかという感じがしてならないわけです。  いままでよくいわれているように、国民所得、GNPの中で占める割合を二・五%に上げろという目標を掲げて、これがまだまだ二・〇二%ですか、二%台にかろうじて乗っけたというだけでございますけれども、これもほとんど民間に依存をしているというかっこうです。でありますから、大目標としては二・五%ではなくて、外国のようにGNPの中で占める割合が三%というのが、これが普通のようであります。そういう目標でぜひひとつ——科学技術会議のほうの提案は二・五%、もうとっくにできていなければならぬことなんですが、それが二・〇二%というふうに、かろうじて二%に乗っけたという状態。これからは技術でもって日本の国の繁栄をもたらさなければならぬということは、これはもうだれが見ても明らかなことで、しかも技術導入の道は非常に狭く閉ざされてくるということを考えると、これは非常に緊急を要する課題ではないか。これは何年かかかってゆっくりやるなんという問題ではないのだと私は思う。  それで、わずか二五%という状態政務次官としてはどうお考えになっているか、将来これをどうするというような決意があればひとつ伺いたいと思うのです。
  63. 粟山ひで

    ○粟山政府委員 いままでのわが国の姿勢というのは、やはりそういう基礎的な技術というものが他国に比して非常におくれていたので、それを早くに取り戻すという意味からそういう技術導入ということに力を入れていた、そう考えます。したがいまして、先生のおっしゃいますとおり、基礎科学の重要さというものはもう論をまたないところでございますから、おっしゃるように、もっと予算をその基礎研究に使えるように今後とも当庁としては努力をすべきである、そう考えます。
  64. 石川次夫

    石川委員 これはほんとうは科学技術庁長官だけでもけりのつかぬ問題なんですね。総理大臣くらいにぼくは言いたいのですよ。こんなていたらくで一体どうするのだということはほんとうに心配なんです。科学技術関係日本の国の総予算の中に占める比率というのも、ずっと三・三%。四十四年、四十五年、四十六年、四十七年三・三%、全然ふえていないのです。国家予算の中でもふえていないのです。これはアメリカあたりは大体八%台、それからイギリスが五%、それからフランスが七%、ドイツが五%というふうに、政府の予算の中で占める比率というものは格段と違う。それからGNPの中で占める比率も日本はわずか二%に乗っけたというけれども、アメリカは三・五%、イギリスが三%、フランスが二・九%、西ドイツが二・六%と低いのですけれども、いずれにしても日本より低いところはないわけです。いかに研究というものへの投資を重視しているか、日本が軽視しているかということがはっきり数字になって出ておるわけです。  こういうことでは、日本がほんとうに科学の分野でなければ繁栄をもたらすことができないのだと政府がお考えになっているとすれば、それに伴う具体的な裏づけが何もなされておらないという結果がはっきりこの統計でも出ておるわけです。そういう点で、この目標としてのGNPに対する比率が二・五%というのはさしあたっての目標だけれども、いつまでたっても達成されない。これを三%ぐらいに目標を上げて、近い将来にこれを達成させる、しかも政府の出す割合が二五%なんということではなくて、少なくとも五〇、五〇ぐらいには持っていくというような遠大な計画を早急にひとつ立てなければならぬだろうと私は思うのです。そういう腰のすわった科学技術政策の基本的な姿勢というものがない限りは、いたずらに、ビッグサイエンスさえやっていればそれでいいんだというふうなことで、非常に安易な態度になってしまうのではないかということを、私は非常に懸念にたえません。  それで、このことについてはまたあらためて申し上げるとして、アメリカにおいても科学技術財団というのは相当大規模な金を——民間からも出しておりますけれども、ころがし予算として、年度年度に予算をきめてどういう目的でやるんだというこまかい統制を加えることなしに、自由濶達に使えるという基礎研究の基金というものがちゃんとできております。日本にはそれが全然ないわけです。非常に官僚統制がきびしくて、いわゆる文部省の科研費は今度百億円にやっとなりました、これは非常にけっこうなことだったと思うのですけれども、これも一々うるさいひもをつけて研究をさせるという制約を加えておるわけでありますけれども、そういう制約なしに自由に使える研究基金というものがどうしても必要ではないか。こういうことの実現のためにひとつぜひ科学技術庁として努力をしてもらわなければならぬ。これは科学技術庁だけではなかなかむずかしい問題なんですけれども、ぜひ科学技術庁としてもそういう目標に向かって何かの具体策というもの——これは、学術会議のほうからも、研究基金制度をつくれという問題は何回も提言されているのですね。もっともだと思うのです。ぜひそれを実現をさせるように努力をしてもらいたい。  それから、きょうはちょっと簡単に質問をしようと思ったものですからあまり多くを申し上げませんけれども、テクノロジーアセスメントの関係で若干伺いたいのです。  先ほども申し上げましたように、人間とそれから科学とのかかわり合いにおいて、科学が人間を不幸にするような事態が方々に出てきておる。不幸にしないため、あるいは社会的な影響というもののマイナスにならぬための事前の点検というものをやらない限り、とんでもないことになるのではないか。特にビッグサイエンスがそうです。それから最近特に私が心配いたしておりますのは、ライフサイエンスの関係においてであります。遺伝子が発見をされて、遺伝子を簡単な有機化合物から合成することに成功したわけですね。これはおととしです。コラーナ博士というのがたいへんな発見をした。そうなりますと、これからは人間の、もちろん体外受精ということも可能になってくるでしょう。それから遺伝子の制御ということもできるし、生命の合成も不可能ではない、夢ではないというような事態にまで発展をしていくんではなかろうか。そういうことになると、あらためて人間とは何ぞや、これが誤り用いられたら一体どうなるんだというような点を、いまからテクノロジーアセスメントというかっこうで事前に十分な点検を加えていかなければ、とんでもない事態を招来するのではなかろうか、こういう心配が非常に濃くなってまいりました。それから情報産業の場合でもそうです。これはプライバシーの侵害という問題もございますけれども、それ以上に人間とは一体何ぞや、コンピューターに支配をされる単なる歯車の一こまにすぎないのかということで、創造する喜びというものを人間から奪い去ってしまう、したがって生きがいというものを感じさせない、したがって世の中に反抗的になる人間というものを多く生んでくるということにならざるを得ないという必要性を持っているのが、この科学の進歩のもたらすところではなかろうかという感じがするわけです。こういうものを事前にやはり再点検をしていかなければならない。  このテクノロジーアセスメントは、アメリカでもって法案化されております。下院を通っていま上院にかかろうとしています。その法案の原案、お持ちですか。官房長官、いかがですか、御存じですか。
  65. 楢林愛朗

    楢林政府委員 ただいまの米国のアセスメント法案、これは下院に提出いたしました法案については持っております。
  66. 石川次夫

    石川委員 委員長、それは資料として皆さんにお配りいただけませんか。これはたいへん重要な法案だと思っております。アメリカではSSTなんか、いわばテクノロジーアセスメントというものによって、これはやめる、ビッグプロジェクトとして非常に金をつぎ込んだのでありますけれども、社会的影響というものを考えて取りやめるというようなことになったし、あらゆるビッグサイエンスあるいはライフサイエンスというものに対して事前点検というものがどうしても必要だということが、アメリカの世論になってきていますね。しかもこのテクノロジーアセスメントは政府がやるのではないのです。これは民間がやらなければならぬ。官僚ペースでは絶対だめだということも、これまた定説になっておるわけですね。どうしても官僚は行政上の責任を回避するという面が出てまいりますから、どうしても官僚ペースではいかぬ。したがって、アメリカの案もこれは官僚ペースでやるという形にはなっておらぬはずです。立法府が行なうということになっておるはずです。立法府でやるにしてもまだいろいろな問題がありますけれども、立法府でやるほうがまだベターだ。そうしてテクノロジーアセスメントの法案というものはどうしても日本でもつくってもらいたい。でなければ巨大科学というものは、単純に言って、原子力にしても宇宙にしても海洋にしてももろ刃の剣です。原子力は原子爆弾になるし、宇宙開発はICBMに転用されるという危険性があるし、海洋開発でも、あり方について私はいずれあらためて意見を申し上げたいと思いますけれども、海底居住なんかにあまり重点を入れると、これはやはり軍事利用だというふうな可能性が出てくるわけです。そういうことでいずれももろ刃の剣になっておる。こういうビッグサイエンスについても十分な事前点検、テクノロジーアセスメントというものはどうしても必要になってくるのではないだろうか。これは立法の場において行なうという体制がぜひ必要だと思います。したがって、その法案を参考までに出してもらいた  いのと、そういうことを将来日本においても行なうというような決意が政府にあるかどうか、伺いたいと思います。
  67. 楢林愛朗

    楢林政府委員 ただいまの米国の下院に提出いたしました法案、これは提出したときの法案でございまして、その後、審議結果その他でどういうふうになりましたかわかりませんが、下院にかけましたときの案はございますので、これは提出いたしたいと思います。その後どのように変化になったかということについては、まだよく把握しておりませんので、その点はお含みおき願いたいと思います。  なお、いま先生が御指摘のとおり、テクノロジーアセスメントということについては、科学技術会議でも重要な問題として提起しておりますし、われわれもこれを重要なものと考えておりますので、今後アセスメントの方法論の開発を通じながら適用についてさらに研究を進めていきたいというふうに考えて、現在調査を行なっておる次第でございます。
  68. 石川次夫

    石川委員 質問したいことはたくさんあるのですけれども、きょうはこの程度にしたいと思います。科学技術会議でもテクノロジーアセスメントというものの必要性を強調されております。しかもこれはいろいろな批判を総合してみますと、やはり官庁ぺースではないテクノロジーアセスメントでなければいかぬというのが定説のようになっております。したがって、アメリカでも立法府でこれを行なうということになっておるわけであります。科学技術会議のほうは提言をしただけで、具体的にどうするかというようなことは全然触れておらないわけですね。ただ必要だ、こう言っておるだけのことなんで、その具体的な裏づけというものはアメリカの法案も一つの参考資料になるでありましょうし、ぜひ日本でもこのテクノロジーアセスメントを行なうという制度を裏づける法案を出すという準備を急いでもらいたいと思います。それでないと、これからどんどんどんどん科学は進み、科学が進むに従って、公害だけではなくて、人間の存在理由をあらためて問い直さなければならぬような不幸な事態にならぬようにするために、どうしてもテクノロジーアセスメントというものは必要ではないか、こう痛感いたしますので、そのことを強く要望いたしまして、いずれあらためてこまかい点については質問をし直そうと思います。  きょうはこれで終わります。
  69. 渡部一郎

    渡部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時十九分散会