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1972-05-25 第68回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十五日(木曜日)     午後一時八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 國場 幸昌君 理事 西銘 順治君    理事 本名  武君 理事 美濃 政市君    理事 中川 嘉美君       宇田 國榮君    大石 八治君       大野  明君    大村 襄治君       佐藤 文生君    佐藤 守良君       關谷 勝利君    田中 榮一君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    湊  徹郎君       森  喜朗君    山下 徳夫君       豊  永光君    大原  亨君       中谷 鉄也君    安井 吉典君       門司  亮君    安里積千代君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務省政亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ――――――――――――― 五月二十五日  理事二見伸明君同日理事辞任につき、その補欠  として中川嘉美君が理事に当選した。     ――――――――――――― 五月二十五日 沖繩住民等が受けた損害の補償に関する特別  措置法案安井吉典君外八名提出、衆法第三二号) 同月十九日  北方領土返還促進に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第三四六三号) 同月二十三日  北方領土問題対策協会融資内容改善に関する  請願中川一郎君紹介)(第四五五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十三日  北方領土早期返還に関する陳情書外二百十五  件  (第三二〇号)  P3-B潜哨戒機普天間飛行場移駐反対に  関する陳情書  (第三二一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任及び補欠選任の件についておはかりいたします。  理事二見伸明君より、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、中川嘉美君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 床次徳二

    床次委員長 沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。田中榮一君。
  6. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、北方領土の問題並びにそれに関連した問題につきまして、若干福田外務大臣質問いたします。  まず劈頭に申し上げますが、沖繩施政権返還ができまして、沖繩祖国日本に復帰したのでありますけれども、残念ながら北方領土はいまだわが国返還されていないのであります。したがいまして、まだ北方領土返還されないうちは戦後は終わっていないのではないかという感じでございます。  先般、私は、自由民主党北方領土対策委員長という資格におきまして各党の方と出まして、北方領土問題につきまして各党立場を聴衆に話をして、非常に印象が深かったものであります。各党意見等を承っておりますと、択捉国後歯舞色丹の四島は日本固有領土である、だからこれをぜひともソ連から返還をしてもらわなくてはならない、こういうことにつきましては意見はほとんど一致いたしております。そのほかに、ソ連以外のクリール列島及び南樺太の一部については、やはりこれも当然要求すべきものであるけれども、その過程におきまして若干各党意見がずれておるのじゃないかと思っております。しかし、当面の問題としましては、四島を日本固有領土としてソ連から回復を求めることにつきましては、これは四党の意見は大体全部一致いたしておるのであります。  そこで、私の考えるには、ソ連側に対して、四島が日本固有領土であるのだということをはっきり認識させる必要があるのじゃないかと思うのでありまするが、ソ連側としましては、おそらく千島列島の中にこれを含めて、クリール列島の中にこれを含めて四島も考えているのじゃないかと思うのです。平和条約第二条(C)項の関係からいいますると、千島列島南樺太は、これは日本がその権利、権限、請求権の一切を放棄するということになっております。したがって、この放棄の先はだれに放棄するか、どの国に放棄するかということは明記されていないのでありまするから、現在ソ連クリール列島並びに四島を占拠しておるということは、私どもは非常に不法な占拠じゃないかと思っておりまするが、もしも千島列島が四島を含むというようなソ連側の意向だとすると、それに対して返還請求するということもちょっとおかしなことになるわけでありまするが、いかがでしょうか。  この四島は、日本固有領土であるということは、ソ連側としてははたしてそういうことを意識しておるのでありましょうか、いかがでしょうか。  過去におきまして、すでに国会におきまして、四島返還決議をされておるのであります。その最初は昭和二十六年六月二日、第十回国会において、これは三党、自由、民主それから社会党党共同決議をしております。それから越えて昭和三十七年三月九日にもやはり固有領土返還決議をいたしております。それから四十年にも、これもやはり同じような趣旨で四島の返還決議、四十年四月六日、第四十八回国会におきまして四島を返還すべしという決議をいたしたのでありまするが、そういう点につきまして、ソ連側としてはあくまで四島が日本固有領土であるという意識がはたしてあるのであるか、その点がないと非常に困るのでありまするが、いかがでございましょうか。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 北方領土問題点、これは平和条約千島列島は、これは放棄する、こういうふうに書いてある。そこで、その千島列島とは一体何だ、こういうことにあるのじゃないか、そういうふうに思うのですが、わが国といたしましては、千島列島というものには国後択捉以南諸島は入らない、こういう見解、これはわが国固有領土である、こう言うのです。ところがソビエトのほうは、最近のことはあの問題は解決済みだと言って、理由は示しておりませんけれども、おそらく千島列島というと、国後択捉その他の、われわれの言う北方領土、これもあの中に入るのだという解釈をしておるのじゃないか、そういうふうに思われてならないのです。私のほうの立場は、沖繩と違いまして、あそこはわが国固有領土である、その上に施政権もまたわが国が持っておる、こういうふうに考えておる。そこヘソビエトが入ってきておる。これは全く不法な占拠である、こういうふうな立場をとっておるわけであります。
  8. 田中榮一

    田中(榮)委員 そこで、もしもソ連側千島列島の中に歯舞色丹択捉国後が入っておるということになりますると、いわゆる千島列島全体、おそらくソ連側は全部これが入っておると思うのでありまするが、その場合において、ソ連側昭和三十一年十月十九日の日ソ共同宣言の中に歯舞色丹は返してやろうということでありまするが、そのことが少し理論的に矛盾になってくるような気もするのです。と申しますのは、自民党の大体の方針としましては、歯舞色丹択捉国後はぜひ返してもらいたい。そのほかの択捉以北占守島並びに樺太南部については、本件については将来しかるべき国際会議あるいは国際連合等において十分に協議する、国際間の問題として取り扱ってその所属を決定してもらいたい、そういう考えでございまするが、もしもこの択捉国後等がその中に入ってしまうとすると、国際会議に付さなくちゃならぬというようなことになるおそれもあるし、それからソ連がそれを引き渡すということも、理論的なことを申し上げまするが、不可能になってくるのじゃないかと思いまするが、その辺はどういうふうに解釈したらいいものでしょうか。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもは、千島列島わが国主張しておる北方領土は、これは明らかに区別をしております。北方領土は、これはわが国固有の島々である、それから千島列島は、南樺太とともにこれは国際条約によって放棄した島である。その帰属につきましては、わが国としてはかかわりのない問題である、こういう態度をとっておるわけなんです。これはわが国が放棄した相手国連合国でございまするから、その国々の間でどういう措置をとりますか、あるいは国際会議できめようとか、そういうようなことをしますかどうか、これはわかりませんけれども、これはとにかくわれわれ日本といたしますると、かかわりのないことである、かような見解をとっておるわけであります。
  10. 田中榮一

    田中(榮)委員 よく了承いたしました。  そこで日本固有の島である四島返還請求は、これは各党みんな意見が一致しておるようでありまするが、その後の島嶼の返還請求ということにつきましては、いろいろ手段方法等について、各党意見が多少ばらばらになっているのじゃないかと思いまするが、近く平和条約締結交渉が始まり、当然これは領土問題がいろいろ問題になってくると思うのでありまするが、私は、むしろこうした点までいわゆる国内国論統一と申しまするか、世論をはっきり統一をしておく必要があるのじゃないか。将来今後の問題としまして、国会における決議というものはこれは何回やったっていいと思うのでありまするが、こういう交渉開始一つの足場としまして、将来やはり国会において、いま一回くらいひとつ決議をしておく必要があるのじゃないかということも考えておりまするが、その辺について大臣としてはどういう御見解をお持ちでしょうか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 本問題は国論統一、これが非常に重大な問題だと、こういうふうに考えております。さらばこそ、政府の機構といたしましても沖繩北方対策庁というようなものができておる。またわが国主張はこうであるということにつきましては、ずいぶんいろいろな方法を通じましてPRをしておる。また国会におきましても数回にわたって御決議がある。私は、このわが国のとっておる態度につきましては、大体国民の間にかなりの浸透ができたというふうに考えておりますが、とにかくことしの暮れまでには第一回の平和条約交渉が始まる。その平和条約交渉の本体は何であるかというと、領土画定であります。でありますから、その前にはほんとうにこれまで以上に国内の結束を固めていく必要がある、こういうふうに考えまするし、また自由民主党のほうにおかれましても、各党との間にそういう御配慮をお願いしたい、かように考えております。
  12. 田中榮一

    田中(榮)委員 昭和三十一年の十一月ごろでありましたか、日ソ共同宣言等特別委員会というのがございまして、当時私は鳩山内閣の官房副長官をして側近におったのでありますが、その際に、この委員会において重光外務大臣鳩山総理社会党松本七郎君、自由民主党北澤直吉君の間にいろいろ質問のやりとりがあったのでありますが、その際に重光外務大臣がやはりいま福田大臣がおっしゃったような、領土問題についてはすでに先方解決済みと言っておりますのでという発言があるわけであります。もうすでにサンフランシスコ平和条約後におきましても、当時のソ連代表は今度来ましたグロムイコ外務大臣ソ連代表であったのでありますが、その当時から重光外務大臣も、先方はもう領土については解決済みとおっしゃっておるのであります。それから総理大臣もやはり同様の答弁をなすっていたことを私記憶いたしておりますが、そこで、ソ連側領土問題については解決済みだというその根拠でございますが、その根拠はあるいはヤルタ協定、あるいはポツダム宣言、あるいはまた日ソ共同宣言、あるいはまた平和条約第二条(C)項、そういったものを根拠にしておるやに聞いておるのでありますが、またその辺が私どもははっきり理解できないのでございますが、ソ連側領土問題については解決済みだというその根拠について、一体大臣としてはどういうふうに受け取っておられるのでありますか、その点お知らせ願いたいと思うのであります。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 本問題についてソビエト側解決済みだ、そう言うのです。その理由について一体どうだ、こう言うと、それは解決済みなんだ、こういうことで、解決済みで応酬をしておるというので、どうもどういう根拠でそう言うのかということを明らかにしないのです。しかし、私どもが想像してみますると、おそらく平和条約にいうクリールアイランド、これは南のほうまで含むというような解釈をとらない以上そういうことは言えないし、またヤルタいきさつがあるじゃないか、ポツダムいきさつがあるじゃないか、こういうこともその背景としてあるんじゃないか。  さらに考えてみますれば、鳩山首相が訪ソした際の共同宣言、あれで歯舞色丹諸島はこれを引き渡す、こう書いてある、国後択捉について何ら触れていないということは、あるいは言いがかりの根拠としておるのかもしれない。しかし、そう言う理由根拠をどこに持っているかということもさることながら、とにかくあそこを不法ではありますけれども占拠してしまってもうずいぶん日時もたっておる。ヨーロッパにおきましてもあるいは東方諸地域におきましても、第二次大戦後のあの領土問題、これは現状維持政策をとっておる、その一環としてそういうことを言んうじゃないか、こういうことは言えるのです。もし北方領土問題というものを日本主張に従って譲るということが起こると、これが日本以外の各方面に波及する問題ですということをしばしば言います。そういう領土政策上の立場、そういうものも背景としてあるのじゃないか、そういうふうに考えますが、これはあくまでも私の想像です。向こうがはっきり言っておることは、解決済みであるという一点であります。
  14. 田中榮一

    田中(榮)委員 この解決済みであるということだけではなかなか国民は納得しないのじゃないかと思うのであります。  それで先般の討論会におきましても、各党意見でこういう点は一致しております。やはり今後の領土問題を解決するには、政府当局相当努力をしないと壁が厚いからこれは非常に困難な仕事である、政府が懸命に努力すべきであるという点が一つと、それからもう一つは、北方領土の問題については、沖繩問題と異なって国民関心が非常に薄い、だから国民運動を猛烈に展開して、国民理解協力を求めるということが必要であるのだという点につきましては、全部各党が一致したような意見でありました。  そこで、私は国民世論を喚起し、国民関心を持たせるためには、なぜソ連が断わっているのか、解決済みだと一がいに言っておるけれども、その解決済みはこういう矛盾があるのだ、ソ連の言うことは全く理由のないことであるのだというようなある程度事情を解明したようなPRがありませんと、なかなか国民というものはついてこないのじゃないかと思うのであります。幸いに、沖礎問題につきましては沖繩県民百万が一致団結して、とにかく沖繩を盛り上げたわけでありまするが、北方領土の問題につきましては、わずかに一万五千の引き揚げ民が現在も細々と生活をしているだけで、とても声を立てるような力のあるものではございません。したがって、やはりこれにつきましては国民的協力を求める意味におきまして、ソ連解決済みだと言うことは矛盾しているのだ、理論がないのだということをいま少しPRしていただく必要があるのじゃないか、私どもはこう思っておりますが、大臣いかがでしょうか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どももそのとおりに考えております。そのとおりの努力はいたしておるんですが、いよいよ暮れまでには平和条約交渉が始まるんですから、この際、また一段とそのPR活動というものを活発にしたい。すでに御承知のとおり英文にまでいたしまして、こういうパンフレットを所要の方面に配付しているというような状況で、国際社会でもかなりの認識を持っておってくれると思うのです。この間中国の北京放送、あれなんかでも日本主張は支持される、こういうふうなことを言ってくれております。そういうようなことでたいへん私どもは喜んでおります。この上とも全国民に対しまして特に理解を深めていただくための努力をいたしたい、かように考えます。
  16. 田中榮一

    田中(榮)委員 それから昭和三十一年十一月二十日でありますか、日ソ共同宣言等特別委員会におきまして、これは社会党松本七郎君からの質問でございますが、質問趣旨は、将来締結されることが予想される平和条約に含まれる事項領土問題だけなのですかという質問に対しまして、時の外務大臣重光氏は、領土問題はこれに当然組み込まれなければならぬと思っているということをちょっと発言しておられるのでありますが、先般福田外務大臣があるところで、あるいはこの国会でございましたか、委員会でございましたか、今度の平和条約締結交渉するにあたって、領土問題を前提としなければならないのだ、領土問題をぜひ解決せねば平和条約には入れないのだ、平和条約交渉は進まないのだといった意味のおことばがあったように私聞こえたのでございまするが、今度の平和条約締結について、やはり領土の問題に関する事項を必ず平和条約の中に入れなくてはならぬのじゃないかと思うのでありまするが、その点はどういうような取り扱いなんでございましょうか。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約なり協定締結するという問題は相手のあることですから、その書き方にはいろいろの態様があろうと思いますが、いずれにしても実質的に領土問題、これが組み込まれない、しかもわが国主張のとおりに組み込まれないという平和条約は、私どもは予想しておりませんです。平和条約交渉とこう申しまするが、もう平和条約交渉は、領土画定交渉であると言っても過言でない、もちろん平和条約ですから経済の問題、文化の問題、技術の問題、いろいろな問題に触れると思いますけれども、実体は何かというと領土画定である、そういう理解であります。
  18. 田中榮一

    田中(榮)委員 よくわかりましたが、かりに領土問題の事項について、日本のほうで平和条約条項にこれをを組み込むということになりますると、今後、領土問題解決ということに対しましては、政府が非常な努力と困難にぶつかることも私は予想されるわけであります。われわれの予想するところは、相手方のソ連では、少なくとも領土問題については相当壁が厚いというふうに考えておりますが、もしそうした場合において、領土問題の交渉相当長引いていくといった場合におきましては、この条項平和条約の中に組み込むことができないということにかりになった場合におきましては、平和条約締結というものは相当先に長引いてしまう、先に持っていかれてしまうということも予想できるのでありますが、そういうことはいかがでしょうか。そういうこともあり得るでしょうか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 領土問題が解決しないままの平和条約締結ということは考えておりませんです。時間はかかりましても、粘り強くわが国主張を押し通す、その上平和条約締結する、そういう態度で臨みたいという考えでございます。
  20. 田中榮一

    田中(榮)委員 私もそれを聞きまして非常に安心したわけでございます。  平和条約締結にあせるあまり、領土問題があと回しになるということになりますると、何のための平和条約締結であるか意味がなくなってしまいますので、これはあくまで、領土問題解決平和条約条項の中に組み込んでもらうというような考え方で進めていただくことを私どもは希望いたしておるのであります。  それからいま一つお伺いしますのは、今度、本年の二月二十一日から三日間でありますが、第五回の日ソ合同委員会が開かれまして、西シベリアにおけるチュメニ油田開発等が問題になったのであります。最近はまた、きのうの新聞でありますか、アメリカのベクテルコーポレーションという相当大きなパイプ、製鉄等の会社がソ連経済協力をしょう、それで新聞の報道するところによりますと、日米ソ連チュメニ油田開発協力するということがあるわけでありますが、こうしたソ連側の柔軟な態度日本経済協力を求めるというようなことは、これは雰囲気としては私は非常にいいのではないかと思うのでありますが、やはりこうしたことを踏んまえて、領土問題解決一つの場所として、そういう雰囲気をなるべく好転しつつ、領土問題に着手するということが私は最もいい立場ではないかと思うのでございますが、外務大臣としてはこの点についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 シベリア開発の問題が平和条約問題と取引になる、そういうふうには私は考えておらないのです。領土問題については、非常に置いておるところの比重というものが高いので、それとシベリア開発てんびんにかけてというような立場にはソビエトの側はない、こういう見方をいたしております。しかし、シベリア開発日本協力する、経済交流が盛んになっていくということは、これは、平和条約をわがほうの立場に立って締結をするというために非常にいい環境をつくり上げていく一つ材料になる、一つというとりは、有力なる材料になるであろう、そういう理解を持っております。
  22. 田中榮一

    田中(榮)委員 今度の北方領土問題を解決するにあたりまして、ソ連側としましても、かりにある程度日本側に譲歩するようなことがあるとした場合におきまして、やはり相当条件を提示するのではないかと思っておりますが、安保条約というものは、日本を含めての極東の安全と独立のために最も喫緊な条約であります。そういう意味におきまして、かりに日米間の安保条約に手がかがるようなことがあっては、これは一大事だと私は思っておるのであります。もちろんそういうことはなかろうと思っておるのでありますが、この点について、安保条約等のことについて、もしそういう条件等が提示された場合において日本としてはどういうことをおやりになりますか。私は、もう絶対に安保条約は手をつけるべきではないという考えのもとに御質問するわけでございますが……。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和条約締結交渉過程で、安保条約の廃棄が一つ条件というような出方をソビエトがしてくるかということになると、私は、そういうことはないのじゃないかと思うのです。かりにそういうことがありましても、わがほうはこれを受け入れるというわけにはまいりませんです。私は、まあ国際情勢等総合的に勘案いたしまして、日ソ平和条約安保条約とは両立し得るものであるという見解をとっております。
  24. 田中榮一

    田中(榮)委員 時間も参りましたので最後に一言お伺いいたしますが、ただいまモスクワにおきまして、ニクソン大統領ブレジネフ書記長その他ソ連首脳部とが会談を展開しておるのでありますが、その空気は協調ムードで非常にいいということを新聞が報道をいたしております。米中会談が先般行なわれ、今回、米ソ会談が行なわれたのであります。それで、世界外交というものはまさに三極外交といいますか、その間に日本等距離外交をしたほうがいいのではないかというような話もあるのでありますが、こういう三極外交の新しい世界外交情勢の展開につきまして、日本としては今後どういうような基本的な外交姿勢をとったらいいでありましょうか、それに対して外相の御意見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ三極外交ということがいわれますが、これは三つの極とも軍事大国であります。私ども日本はこれらの国と違いまして、経済大国といえるかもしれぬ、しかし軍事大国ではない、そういう国際社会一つのパワーといいますか、そういう中におきましては別格官幣大社みたいな立場にある、こういうふうに思うのです。私はその姿勢でいいと思うのです。いま世界中展望いたしてみまして、第三次世界大戦争が起こる、そういうふうな可能性というものは私どもは信じませんし、また、世界の多くの人々は、そんなことはあまり肌に感じておらぬのじゃないか、絶対とは申し上げませんけれども、予見し得る将来におきまして第三次世界大戦は起こりそうにない、そういう中におきまして軍事力を強化する、そういう意味合いはたいへん薄れてきている、こういうふうに見ておるわけでございます。  そこに今度は、経済力の持つ世界政治における比重というものが非常に高まっておる。私はそこから、軍事力を持たんとすれば持ち得る軍事力ではございますけれども、それを持たないで、そのよって生ずる余力をもって、あるいはおくれた国々に対して貢献をするとか、世界の各国の民生の向上安定に協力をする、これが今日の世界情勢においては、安全保障という見地から見ましても大きなウエートを占める問題ではあるまいか、そういうふうに思うのですが、ほかの国とは違った行き方。また、これまで世界の国々が経済大国になれば必ず軍事大国になった。今度わが日本は、新しい道、経済大国であるけれども軍事大国ではない、平和大国であるという道をばく進をするということ、これがこれから日本が進むべき正しい道ではあるまいか、その道を進みたい、私はかように考えております。
  26. 床次徳二

    床次委員長 箕輪登君。
  27. 箕輪登

    ○箕輪委員 ただいま田中委員からいろいろ御質問がございました。若干補足的にはなるのでございますが、外務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  ただいまお話のありました歯舞色丹国後択捉の四島がわが国固有領土であることは、私も確信してやみません。一八五五年、安政元年でございますが、いわゆる下田条約日本国とロシア国の修好条約によって、そのころから国後択捉がすでに日本国の領土であることは、ロシアも確認をいたしておるところでありますし、さらにまた、二十年後の一八七五年、樺太・千島交換条約、これは樺太にも日本人が住んでおりましたし、千島にも日本人が住んでおった。同様に樺太にも千島にもロシア人が住んでおった。両国の領土に関する協定がなかった時代でございますから、これを樺太は全部ロシアにやる、そしてまた、千島は全部日本に権限を移譲する、こういうような樺太・千島交換条約。この際もこの条約に載っているのは、国後択捉のさらに北にある得撫島から占守島に至る十八の島が列記されておって、交換する島の中には歯舞色丹国後択捉の四島が含まれておりません。これは大臣も御承知のとおりであります。したがって、もう徳川の昔からこの四島はわが国固有領土であることは、両国が歴然たる事実として認めておったところでありますが、それにもかかわらず終戦後、八月十五日の終戦でございますが、そのあと十七日の日あたりから未明に、ソ連のほうがカムチャッカ半島の先端から占守島に向かって攻めてきた、こういう戦記があるくらいであります。その戦記を見てみますと、占守島から一つ一つ南下して、島を占領していった。しかも得撫島まで来て、さて今度は択捉島に行くだろうと思っておったところが、択捉島には行かずに、ソ連の駆逐艦は北上してしまった。当時立ち会っておった水津という千島守備隊の参謀がいるのでありますが、いまなお東京におります。この人はロシア語を士官学校当時やっておったために、通訳でもってついていった。どうして択捉島に行かないんだ、国後島に行かないんだと聞いたところが、あれはおそらくアメリカが占領することになっておるんだ、したがってわれわれの任務はこれで終わったんだと言って、一たん船は帰っちゃったわけです。占守島まで、パラムシル島まで帰っちゃった。こういう事実から見ましても、あの終戦のどさくさのときですら彼らは国後択捉歯舞色丹というものは日本領土である、日本の本土はアメリカが占領することになっておりますから、これは自分たちの手の及ぶところではないということで、北上してしまって手をつけなかった。ところがアメリカがなかなか上陸しない、どさくさまぎれに彼らが不法に入ってきて、今日まで軍事占拠を続けた、こういう状態だと思うわけであります。したがって、わが国固有領土であることについては、いささかの疑念も私は持つものではございません。  そこで、この四島の返還をねばり強く今日までやってまいりました。たまたま、ことし一月にグロムイコソ連外務大臣が来られて、大臣といろいろな領土の問題を含めたお話があったと私は思うのであります。そこで日ソ共同コミュニケによりますと、先ほど来お話のありました、本年じゅうの双方に好都合な時期に、平和条約締結に関する交渉を行なうことに合意された、これが明らかになったわけであります。  そこで大臣にお尋ねを申し上げますが、一月にそういう話をせっかく合意されてグロムイコが帰られたわけでありますが、先ほどの田中委員質問を聞いておりましたが、まだ交渉が始まってたいように私は印象を受けたのであります。下交法というか、大使クラスで何かそういうお話し合いをされているのかどうか、されているならば模様をお伝えできる範囲でかまいませんからお伝えいただきたい、かように思うのであります。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ新関駐ソ大使とモスクワ政府との間に、平和条約交渉は始めておりません。しかし、段取りをどうするかという話はしておるわけです。で、大体暮れごろまでには第一回交渉をやりましょう、こういうことになっておるんです。晩秋から暮れにかけての時期になろうか、こういうふうに思いますが、その際に、議題を一体どういうふうにするかとか、だれが代表として話をするとか、その辺のことはまだ詰めておりませんが、だんだんとそういう問題に話を進めていく、こういうことになろうかと思います。
  29. 箕輪登

    ○箕輪委員 グロムイコが帰られたその直後、ことしの一月の二十九日、外務大臣外交演説の中で、最後に外務大臣はこのようなことをおっしゃっております。「政府といたしましては、今後とも国民各位の強い支持のもとに、忍耐強くソ連との間に折衝を続け、わが国固有北方領土返還実現をはかり、もって一日も早くソ連との間に平和条約締結したいものと考えておる次第でございます。」そこで私は、この大臣外交演説を聞きまして、「一日も早く」と力を入れて大臣おっしゃったんだから、ことしの晩秋から暮れなんというものじゃなくて、あたたかいうちにそういう話が行なわれるのではないだろうか、こう期待をしていたのでありますが、いまお聞きしますと晩秋から十二月にかけて、そのころにやりたいという趣旨のお話でございます。これは、今年じゅうにやりたいというのに、わざわざ十二月なんという今年の一番最後に交渉するのは、私は一日も早くという趣旨にもとるのではないだろうか、できることならば沖繩も返ってきたんですから、固有領土である北方領土四島ともすみやかに返してもらう交渉をもう始められてけっこうじゃないだろうか、せっかくグロムイコも、にこにこ笑いながら平和条約をやろうじゃないか、その腹の中には、おそらく領土の問題も含めながら、おそらく歯舞色丹かもしれません、日本のほうはそういう四島要求するだろう、おれのほうは二島だぞ、そういう腹でそういうことをおっしゃったのかもしれませんけれども、そういうことで大臣との間に話がきまっておりますから、それを十二月なんということを聞くと何となくがっかりするのでありますが、早めてやることができるかどうか、ひとつ外務大臣から御所見を承りたいのであります。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、そう性急というわけにはいかぬと思うのです。実態はこれはなかなか紆余曲折のある交渉になろう、こういうふうに思います。私の気持ちは外交方針でも申し上げましたとおり、一日も早くこの問題を解決したい、心ははやっておるわけでございますけれども、息の長い交渉になろう。ですから、そのスタートがなかなか大事なんです。それをどういうふうな仕組みでやっていくか。簡単な形で、新関大使とグロムイコ外務大臣との間の交渉というような形でやっていくのか、あるいはもうぶっつけ外相会談というようなことに持っていくのか、あるいはもう首相間の会談というふうにするか、そのへん、よほどこれは前もっていろいろな情報を観察し、その判断を下してみなければならぬ諸問題があるわけです。ですからそう、あせるという気持ちではありながらも、はやばやとこの交渉を始めるというわけにもまいらぬ事情も御理解願いたい。とにかく、十分万全の準備を整えまして、第一回の交渉には臨みたい、こういうことだけはひとつ御理解願いたい、かように存じます。
  31. 箕輪登

    ○箕輪委員 大臣からお話を承りますとそうかなという感じもいたしますが、大臣、かってこういうことばをおっしゃったのでありますが、私はあせるのあまり大臣にお願いを申し上げるのでありますが、もうそろそろアヒルの水かきくらいはやっておいてもいいんじゃないかという感じがするものですから申し上げたのであります。まあアヒルの水かきでからめて申し上げると申しわけございませんけれどもわが国の一番友好国でありますところのアメリカでは、いまニクソン大統領が向こうへ行っております。こうした外交問題は、特にサンフランシスコ平和条約の起草国でありますアメリカの大統領が向こうに行っておるんです。これは一番いい機会だと思いますが、外務省では、アメリカに何かこうしてほしいというようなことを頼むというか、そういうことはございませんか。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 機会あるごとにアメリカに対しましては、わが国北方領土問題に対する主張、これを申し上げ、理解を求めておるわけですが、アメリカも十分このことは理解をいたしております。ただ、いま米ソ会談が進行中である。非常にデリケートな時期でありますので、どういうことをどういう時期に話し合っているかというような点につきましては、お答えを差し控えさせていただきたい、お許し願いたい、かように存じます。
  33. 箕輪登

    ○箕輪委員 こういう時期でございますから、この問題について大臣にこれ以上深く御質問することは、お苦しみを与えることになりますので申し上げませんけれども、われわれが知っている範囲では、サンクレメンテで、これは大臣も御一緒でございます。北方領土の問題について、総理並びに外務大臣からいろいろとアメリカ側に話があったことは、新聞にも載っておりましたので覚えております。この間、副大統領が日本に参りました節にも、これは小さい記事でございましたが、一部の新聞に、総理が四島の問題について話された。確かに外務大臣おっしゃったとおり、機会を見て、あらゆる機会をつかみながら、アメリカにもその他の国々にもそういうことを申し上げておる、確かに理解ができるわけでございます。  そこで、アメリカの話が出ましたので、時間がございませんけれども、ひとつお尋ねを申し上げたいのでございますが、確かに四島はわが国固有領土でありますことは、先ほども申し上げたとおりでございます。しからば四島の以外の千島列島、これはサンフランシスコ平和条約わが国が放棄したところであるから、わがほうから発言する意思はないという御答弁が先ほどございました。しかし田中先生の質問にもありましたとおり、これは連合国に放棄したものであって、たしか平和条約に署名した国は四十八カ国だと記憶いたしておりますが、四十八カ国に放棄したのであって、その四十八カ国の中にはソ連は含まれていない、こういうことに今日相なっているわけであります。また、かってダレスがアメリカ上院のワイリーという議員のサンフランシスコ条約に対する質問に答えましていろいろ述べておりますが、その中で「対日平和条約起草の主たる責任を負ったアメリカその他の自由諸国は、この条約によって南樺太と千島に対する権限を、ソ連に与えるいかなる義務を負っているとは考えなかった」こういうことも言っております。そこで、いまの四島以北の十八島、この問題を考えますときに、これはポツダム宣言あるいはカイロ、こういったものから考えてみましても、領土不拡大の思想がこの中に入っていることは大臣も御承知のとおりであります。しかも、戦争によって奪取された領土は返してもらうのだということを言っておりますが、領土不拡大、戦争によって略奪された領土だけは日本から返してもらう、こういうことを言っているのであります。この十八島についても戦争で取った島でも何でもない。先ほど申し上げた樺太・千島の交換条約、明治八年のこの条約でもって平和的に交換した島でございますし、四島をまず返してもらって平和条約を結ぶことについては賛成でございますけれども、これ以北の十八島についてもわれわれは全く言う権利がないと大臣はお考えでございましょうか。この点をお尋ね申し上げておきたいと思います。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 箕輪委員のお話の御趣旨は私もよくわかるのです。しかし、終局的にこの島々の処置がどうなっているかというと、千島列島はこれを放棄する、こういうことになっておるわけでありまして、したがって今日の時点におきましては、わが国はこの島々の帰属につきましては何ら発言をする立場にない、こういうふうに思います。私はあくまでも法的なことを申し上げておるわけでありますが、いろいろのいきさつはあったでしょう。あったでしょうが、今日は、わが国はもうかかわりがない立場にある、こういうことであります。
  35. 箕輪登

    ○箕輪委員 残念ながら、もう本会議のベルが鳴る時間でございまして、もう少しお尋ね申し上げたいこともございましたが保留して、これで私のきょうの質問は終わりたいと思います。
  36. 床次徳二

    床次委員長 次回は明二十六日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十八分散会