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工藤公述人 国鉄問題につきまして、
国有鉄道運賃法、
国有鉄道財政再建促進
特別措置法の一部を
改正する
法律案というもので、私初めてこういう場に出るわけでありますが、運輸省の
鉄道監督局でおつくりになりました
資料を読ませていただきました。これに基づきまして、私は
国鉄運賃の
値上げに
反対する、
国有鉄道の一部
改正について
反対をする
意見を述べたいと思うわけでありますが、その前に、
国鉄運賃といったようなものが、皆さん方の供述を聞きましても、すべてこれは
公共料金であるという点については
意見が一致しているわけでございます。その点について私は調べてみたわけでございますけれども、現在の佐藤内閣が成立されましてからと、それ以前の比較をちょっとしてみました。佐藤内閣が成立する前の
昭和二十六年から三十九年の間、日本が独立をしたといわれてからでありますけれども、この十三年間で
政府の
関係する
公共料金が三十九回
値上げをされております。佐藤さんが四十年に就任をされましてから七年有余でありますけれども、今回の
値上げを含めますと、すでに四十回の
値上げになろうとしておるわけであります。私たちは、
公共料金がわずか七年有余で、それ以前の十三年間で三十九回であったものが、約半分の年月で四十回を数えるということに対して、生活が非常に圧迫されるというような状況にあることをまず最初に申し
上げないわけにはいかないわけであります。また、
政府の
関係の皆さん方が御尽力なさいまして、
公共料金の
値上げのストップということにつきましても、
昭和三十六年の三月、同年の七月、三十九年の一月、四十四年の三月、そして四十五年の十二月と、計五回の
公共料金のストップをおっしゃっていただいておりますけれども、これがなかなかうまくいかないというようなことで、私どもは生活に非常にあえいでいるわけでございます。
まず、この
運賃の
値上げ法律案の提案理由の説明を見せていただきましたが、この中で今回の法
改正の理由の第一が、「自動車
輸送の発達等による
輸送量の伸び悩み」ということが
一つと、それから二番目が「ベースアップ等による人件費の大幅な上昇等のため」ということにあるわけでございますが、この点について私たち消費者団体のほうで調べてみたわけでございます。
まず第一に、「
輸送量の伸び悩み」ということでございますけれども、
昭和二十五年を一〇〇といたしますと、指数の上で四十四年が二八二、四十五年で二八六ということでございます。数字からいいましても、
昭和四十四年が六十五億四千百万人の
輸送人員がありますし、四十五年が六十五億三千四百万人というような状況になっております。また
貨物輸送についてみましても、
昭和二十五年を一〇〇といたしますと、四十四年で一六二、四十五年で一六七、やはり全体としてはふえておるようでございます。
国有鉄道の出されました
資料によりましても、
貨物輸送との
関係等では相対的に減っているという点はございますけれども、やはり全体としては量的に伸びているということでございます。
貨物の
輸送でありますと、特にコンテナ
輸送は
昭和三十四年以来約四・五倍の伸びを示しております。また専用線の占める割合も、
昭和三十五年の四六・三%から四十五年の五七・九%というふうに伸びております。また物資別専用貨車、これも
昭和三十九年から四十五年の十月間の統計を見てみますと、たとえば自動車を
輸送する車両は当時二両でございましたけれども、これが九百二両に非常にふえております。それから鉄鋼用の車両でありますけれども、これも
昭和三十九年にはゼロであったものが、三百二十七両というふうにたいへんにふえております。石油用の車両も、当時百六十五両であっものが七千七百四十五両というふうに大幅にふえておるわけでございます。こういうふうに見てみますと、やはり
貨物等は特に質的に高い水準で伸びておるということで、この点について見ますと、これが今回の大幅な
運賃の
値上げの理由になるということについては納得しかねるわけでございます。
第二番目の問題につきまして、「ベースアップ等による人件費の大幅な上昇等のため」という理由が掲げられておりますけれども、これについて見ますと、
国鉄の
経営面の推移を見てみますと、
昭和三十五年を一〇〇といたしますと、借金の
返済は八七六%、利子の支払いが五七六%、人件費は二九四%、
経営費は二九五%。人件費の増は二九五%の
経営費よりも落ちるわけでございまして、
経営面を圧迫しておるのは、主としてやはり借金の
返済と利子の支払いであるというふうにいわざるを得ないわけで、この点につきましても、人件費の大幅なアップというようなことは特にいえないのではないか。さらに民間の賃金の上昇率、これは「賃金事情
資料」等によって調べてみますと、
昭和四十一年の民間が九・九%、
国鉄の人件費が九・六%、四十二年が民間が一二・一%、
国鉄一一・七、四十三年が一三・三に対して一一・八、四十四年が一八・六に対して一三・五、四十五年が一六・三の民間に対して
国鉄が一五・四ということで、特に大幅な上昇が
国鉄の人件費の中にあったというふうには見えないわけでございます。
以上の点につきまして、まず
鉄道監督局が出されました
資料の中身については、どうも納得しかねるということでございます。
次に、さらに中身を検討してみますと、けさから言われましたように、
赤字ということがいわれておるわけでございますが、先ほどどなたか、先生方が言われましたように、
赤字という点では、
旅客別
運賃と
貨物別
運賃を分けて考えてみる必要があるわけでございまして、
昭和四十年までは
政府のほうで公表なさっておられます。この点では、
昭和三十五年から四十年間の公表数字によりますと、
旅客で二千九百二億のプラスでございます。
貨物で一千六百三億のマイナスでございます。四十五年度の一番新しいところでは、ことしの三月十七日の
予算委員会で磯崎総裁が御答弁をいたしておりましたところによりますと、新幹線で一千百億のプラス、その他の
旅客で六百六十三億のマイナス、トータルで四百三十七億のプラスなんだ。
貨物では逆に一千八百三十二億のマイナスが出ておるということでございまして、どうも
旅客の点ではトータルとして
黒字である、こういうことが出ておるわけでございます。そういう点につきまして、やはり私たちが利用するのは
旅客でございますので、
旅客の
運賃を
赤字という理由によって
値上げをされるということについては筋が通らないのじゃないだろうか。たとえば、
受益者負担というようなたてまえをかりにとったといたしましても、私たちがこの点について
負担をする筋合いはないのじゃないか。むしろ
貨物の方々のほうが
受益者として優遇されておるのではないだろうかという気さえするわけでございます。
そこで、
貨物の点を見てみますと、今度の
値上げでも平均二四・六%といわれておりますけれども、これには内訳がございますわけで、一等級だとか四等級だとかいままでございましたが、今度は三等級に分けられるそうでございます。具体的な事例を見ますと、時計だとか、自動車だとか、工作機械といったようなものは六・七%の
値上げだ。現三、四等級のもので、私たちの生活に密接な
関係がありますお米、麦、タマネギ、下級鮮魚といったものは二九%の
値上げになっておるということで、この点についても、平均二四・六%とはいいますけれども、中身で見てみますと、どうも私たちの庶民生活のほうはぐあいが悪い、こういうふうに私たちは思わざるを得ないわけでございます。
さらに、実例をもう
一つ申し
上げますと、これは現行の
運賃の基準によって計算をしてみたわけでございますが、私は中央線を利用しておりますけれども、東小金井というところがございます。武蔵小金井の手前ですが、ここからある自動車会社、日産の自動車が運ばれております。これの東京−仙台間を計算いたしますと、一般の国民では、もしかりに私が送るといたしますと、一台について一万七千二百十円の費用がかかるわけであります。そのほかに梱包費用だとかいろいろなものがかかりますけれども、もしこういう日産さんやトヨタさんがお運びになるといたしますと、わずか四千七百円で運ぶことができるということで、私たちのほうもぜひこういうふうに安くできないものだろうか。それからまた、どうしてこういう
格差があるのであろうかというような疑問も、率直に出さないわけにはまいりません。
次に、第三番目の問題といたしましては、
赤字をつくってこられた背景でございますけれども、すでに何人かの識者が申されましたように、
政府からの借り入れ金あるいは民間からの借り入れ金が、四十五年度まででもすでに二兆六千億、現在では三兆円にもなんなんとする、こういうふうな借り入れ金の問題、支払い利子でも、私たちが計算いたしましても一口に約五億に近いような利息をお払いになっている、こういう
財政ではたいへんではないか。すでにいままでの間に、
政府のほうで一般会計からもっと大幅に
支出できなかったのであろうかというような点がございまして、この点についても、
国鉄の幹部の方々や
政府のほうで、すでにもっと配慮をされておられてよかったのではないか。私たち国民は一向に知らなかったと言っては京ことに申しわけないわけでありますけれども、ついぞ知らなかった。ましてや、国から
国鉄がお金を借りていたんだというようなことさえ、普通の消費者の皆さんは知らなかった。
国有鉄道なんだから、当然そんなものは、国民から選んだ
国会の先生方が、ちゃんとしかるべく措置をされておったんだろうというふうに、実は考えておったわけでございます。ことし、新年度で千百二十八億、前年度に比べますと非常に大幅な一般会計からの
支出がなされるそうでございますけれども、これはさらにさらに出していただきたい。
赤字の問題と比較してみますと、利息の支払いにも満たない
支出では、やはり
赤字の解消にはならないのではないだろうか。ましてや、今回の計算どおりにもしかりにいくとしましても、
増収が一千八百億ぐらいでございますから、これにももちろん満たないということで、どうもこの数字は、
赤字を理由とする
値上げは納得できない。また、先ほどどなたかお詳しく述べられましたので申し
上げませんが、諸外国に比べましても
政府の
支出が圧倒的に少ないという点も問題であろうと思います。
次に、第四番目の
反対理由といたしまして、
国鉄の
運賃というものは
公共料金の中でもやはり横綱格であるというような点で諸
物価の高騰を誘発して、国民生活を圧迫していくという点を見のがすことはできません。特に同じ競合
関係にあるような
私鉄運賃との
格差はたいへんな状況でございます。小田急と
国鉄の新宿−藤沢間がよく新聞紙上でも比較されておりますけれども、これは約三倍の
格差が出るわけでございます。また、
貨物運賃の
値上げについて見ましても、先ほど申し
上げましたように、生鮮食料品といったようなものの
値上げがされます。かりに下級鮮魚十一トンを釧路から東京駅まで運ぶといたしますと、現行では五万八千六百円、
改定でいきますと七万六千百円で、差額が一万七千五百円、つまり二九・九%の上昇にこういう面ではなる。先ほどと若干ダブリますが、申し
上げておきたいと思います。
それから、今回の
運賃の
値上げは、どうも国民への見返りが非常に少ないのではないかということがはっきりいえるんじゃないだろうかと思います。最近起こりました船橋の事故の問題でも、団地の人たちや周辺の人はだいへんな危険を感じ、また今後に対して不安を抱いておるわけでございます。中央線が二五六%、
山手線が二四八%、横須賀線が二八六%というような混雑度でございます。
私鉄運賃の
値上げのときに、近鉄の社長さんがおっしゃいましたが、二四〇%というのはどういうことなんですと言ったら、新聞が読めますと言うのですけれども、私どもみたいな背の低い人間は、満員電車の中では新聞や雑誌を読むわけにはいかない。六尺豊かな方は読めるかもしれませんけれども、そういうわけにはまいらない。二平方メートルに六・六人の人間が入っているような状況でございます。これが二四〇%ですから、
山手線でも中央線でもこれをはるかに上回るような状況が現にあるわけで、いつ私どもは生命の危険にさらされないとも限らない。ほんとうに日夜生命の危険にさらされながら通勤や通学をしておるというような現状でありますが、これに対する具体的な早期の
解決方法が全く見当たらないということでございます。
先般、船橋事故のときに、私どもは
国鉄の当局に申し入れに参りました。そのときに、
国鉄の当局の方は、総務課長さんでございましたけれども、はっきり申しました。この問題はどうして後退しているのかと言いましたら、これは何度お約束をしても、実際は実行ができないから、こういうことをから約束することはかえって失礼に当たるんだということで、今度の
計画では後退をさしておるんだ、こういうことを言われました。そこで、次の
機会に運輸大臣にお会いしまして、この点は強く運輸大臣に申し入れをしたわけでございますが、大臣は、いや、そういうことは絶対にさせないということで、
政府の責任ある立場として御回答いただいたわけでありますけれども、運輸
委員会の諸先生方におかれましても、人ごとではなく、私たちの生命にかかわる問題でありますから、これについては具体的な早期の
解決策をぜひともお願い申し
上げたいわけでございます。
こういうふうな実情にある
国鉄を
再建しようということで、
関係各位の方々に長年御尽力をいただいておるわけでありますが、この点につきまして、私はやや疑問を申し
上げたいわけであります。
一つは、
国鉄財政再建をされる方々の会議がございますが、これは
国鉄の運営、広い
意味での運営と見て差しつかえないと思いますが、この点について、私はちょっと疑問に思っております。御存じのように、
日本国有鉄道は、公共
企業体といたしまして政治上、
財政上、人事上、これは自主的な立場である、これがたてまえでありますし、この基本法は
国有鉄道法でございます。
国有鉄道法の第二十条を見ますと、兼職の禁止というのがございまして、
国鉄の役員の方々がいろいろな面で制約を受けております。その三項を見ますと「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であつて
日本国有鉄道と取引上密接な利害
関係を有するもの又はそれらの者が法人であるときはその役員」というようなこと、こういった方々は
国鉄の役員にはなれないことになっております。また第四項では「運輸事業を営む者であつて
日本国有鉄道と
競争関係にある」方はなってはならない、これは当然のことでございます。ところがまさか
国有鉄道法をそのまま適期される
国鉄の
理事の方方や常務
理事の方々がこういうことになっておられないことは
承知しておりますけれども、実際の
国鉄の運営に携わる、また
国鉄の
再建というようなきわめて重要な基本的な問題に関与をされておられます
再建推進会議のメンバーを私は見たわけでございますけれども、この中には、はっきり申し
上げまして「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする」というような方々はたくさん入っておられます。製鉄会社の社長さん、あるいは軽金属会社の社長さん、あるいは螢光灯などをつくっておられます電
機会社の社長さん、あるいは「運輸事業を営む者であつて
日本国有鉄道と
競争関係にある」たとえば
私鉄でありますが、
私鉄会社の社長さん、こういった方が実はこの中に入っておられるわけです。こういう点を見ますと、脱法行為というふうにきめつけるわけにはまいらないと思いますけれども、この法の精神にどうも抵触するのではないだろうか。つまり
日本国有鉄道の公正中立な健全な発達という点から見て、やや疑問に思うわけであります。こういう点についてもやはりこの
機会に検討していただきたいと思います。
それからもう
一つは、
国鉄運賃等を
値上げをする場合に、最終的には
国会で御
審議いただくわけでございますけれども、その間に
運輸審議会というものがございます。これは先般
審議会の
公聴会に私も
出席する
機会をいただきましたが、その席ではあえて特に申し
上げませんでしたけれども、
審議会そのものは非常に大半なものでございますが、やはりその運営といいますか、
一つは機構上の問題がございます。これはやはり現在の
段階では、非常にこの
国鉄問題というものに対しては 特に
国鉄だけではございません、
交通関係というような公共性の強い問題につきましては、幅広い国民が関心を抱いておるわけでございますので、そういう点については、ぜひともこういう構成メンバーにもそういう幅広い階層を参加させていただけないだろうかという点でございます。また運営の面につきましても、今回の
国鉄運賃の問題でございますと、二月八日に
運輸審議会が開かれまして、二月十二日にはすでに答申が、非常に早い答申でございますけれども、すでにそれまでに相当準備をされておったんだろうとは思いますけれども、ほんとうにこれは
審議が十分なされたのであろうかというような点についても疑問に思うわけでございます。こういう点についても、このような
機会に、
審議のあり方について、最終的には
国会で論議をされるわけではございますけれども、なお御検討をいただきたいと思うわけでございます。
最後に、それでは
国鉄をどういうようにして、今回の法
改正などに対してやっていったらいいのかということでございますが、
一つはやはり
国鉄というものが
企業採算ベースの問題として取り扱われてはならないと思います。やはり公共
交通機関としてあるわけでございますから、こういう
観点からもっと位置づけられるべきではないだろうかと思います。そういう点から見ますと、借り入れ金などをやはり国が肩がわりしていただきたい。長期
負債の国庫
負担といいますか、こういう点。
旅客、
貨物輸送などにおける各種の公共
負担については国の
予算に所要の措置を講じて、やはり全額国で
負担をしていただきたい。これは私たちの納めた税金の適正な配分の問題でございますけれども、絶対値として国にお金がないというふうにわれわれは考えておりません。国に
予算がないというふうに考えておりません。やはりこれは総理みずからがしょっちゅう言われておりますように、国民福祉、国民本位の民生
予算優先の形で、ぜひともこういう問題については大幅に出していただきたいと思うわけでございます。また地方閑散線の廃止や、駅の無人化、小荷物の取り扱い駅の廃止などというものも今回
関係があるようでございますけれども、これはぜひともその地域の住民と十分お話し合いをいただきまして、そういう合意の上で措置を講じていただきたいと思うわけでございます。
時間が参りましたので、私の
意見を終わらしていただきます。(
拍手)