運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-04-27 第68回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十七日(木曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 細田 吉藏君    理事 箕輪  登君 理事 内藤 良平君    理事 田中 昭二君 理事 河村  勝君       江藤 隆美君   小此木彦三郎君       唐沢俊二郎君    佐藤 守良君       塩川正十郎君    關谷 勝利君       羽田  孜君    福井  勇君       山村新治郎君    井岡 大治君       勝澤 芳雄君    金丸 徳重君       久保 三郎君    斉藤 正男君       松本 忠助君    宮井 泰良君       田代 文久君  出席公述人         交通評論家   角本 良平君         明治大学教授  清水 義汎君         流通経済大学教         授       高橋 秀雄君         日本消費者連盟         代表委員    竹内 直一君         三菱綜合研究所         常務取締役   牧野  昇君         法政大学教授  力石 定一君         主     婦 稲葉 敏子君         全国消費者団体         連絡会代表幹事 工藤 芳郎君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正巳君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出  第四二号)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について公聴会に入ります。  本日御出席願いました公述人は、交通評論家角本良平君、明治大学教授清水義汎君、流通経済大学教授高橋秀雄君、日本消費者連盟代表委員竹内直一君、三菱綜合研究所常務取締役牧野昇君、法政大学教授力石定一君、稲葉敏子君、全国消費者団体連絡会代表幹事工藤芳郎君、以上八名の方々でございます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席いただきましてまことにありがとうございました。申すまでもなく、本案は重要な案件でありまして、本委員会といたしましても慎重なる審議を続けているところであります。この機会に広く各界から御意見を拝聴いたしまして、審査の参考にいたしたいと存ずる次第であります。何とぞ公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序について申し上げますと、まず御出席八名の公述人各位からお一人十五分程度意見を順次お述べいただきまして、その後、委員から公述人各位に対して質疑を行なうことになっております。  なお、念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  御意見をお述べいただく順序は、角本公述人清水公述人高橋公述人竹内公述人牧野公述人力石公述人稲葉公述人工藤公述人の順でお願いいたします。  なお、力石公述人は所用のため十二時三十分に退席いたしたいとの申し出がありますので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。  それでは、まず角本公述人にお願いいたします。
  3. 角本良平

    角本公述人 私の意見を申し上げます。  国鉄運賃の今回の値上げは当然であり、私はこれに賛成をいたします。ただし、その内容を見ますと、自動車時代以前の仕組みそのままでございまして、このような古い制度を受け継いでいたのでは根本的な解決にはならないと思いますので、できますればそういった点を今後に配慮していただきたいと思います。自動車時代と私が申し上げ意味は、自動車時代になりますと、これはどこの国の鉄道におきましても利用者が伸びなくなりますし、過去の営業規模をそのまま維持するといたしますと赤字におちいるのは避けることができません。その赤字が慢性化してまいりますと、従業員管理者のほうも士気が落ちてまいりまして、士気が落ちますとさらに経営内容が悪くなっていくというふうに悪循環をしてまいります。わが国鉄がそのような状態になることは国民としては絶対に避けてもらいたいと思います。  そこで、このような状態におちいらないための解決策は、私は三つの点をあわせて考えなければいけないと思います。第一は、営業規模を縮小いたしまして、赤字発生源といいますか、コストが最も高くついて、他の交通手段に譲ってもいいとか、あるいは他の交通手段と比較して不利であるという部分の輸送サービスを切り捨てていくという考え方であります。もちろんそのためには、最小限の輸送を確保するためにバスやトラックを動かすということも必要であります。第二の点は、運賃を引き上げ運賃収入増加をはかるということであり、第三は、政府、地方自治体などからの助成や赤字の補償で運賃以外の収入増加するということであります。この三つ以外の方法は私はないと思います。しばしば技術革新とか合理化とか増収努力ということも強調されます。確かにそういったことによりまして若干の経費節減とか増収はできると思いますけれども、これらのことは、たとえ経営黒字であったとしても当然行なうべき施策でございます。しかし、これらの施策をすでに長年継続しておる場合には、いまからそれらの施策に効果を大きく期待することはできないと思います。そこで現在の法律体系のもとでは、運賃原価を償えるんだというふうな前提で考えられているのではなかろうかと思いますが、そうした点の反省が、いま申し上げ三つの点をあわせて実行していくというふうに変わっていかなければいけないと思います。  そこで、変わっていく場合に考えなければいけない点は、負担の公平ということでございます。負担の公平という場合に、いろいろな当事者間の負担の公平がございます。  まず第一に申し上げたいのは、利用者あるいは間接の受益者も含みました利用者納税者との関係でございます。一般原則といたしますと、世の中の通常の商品を買うときには、利用者がそのために必要な経費を払うというのが原則でございまして、国鉄も長年そのルールを貫いてきていたと思います。しかし交通の世界では、初期の段階でまだ需要が十分出ないというような場合には、補助政策もとられていた場合がございます。今日の段階で、納税者がどれだけ負担し、利用者とどういうふうに負担を分け合うのが公平かというようなことを考えてみますと、利用者負担能力限度を越えるというような場合で、しかも輸送サービスを確保するというようなときには、これは公共補助も必要になりますけれども、現在までの運賃値上げが、所得の増加の割合の範囲内で大体運賃増加分負担できるというような場合には、利用者は当然負担すべきであろうということが言えます。しかしそれと同時に、たとえば大都市の鉄道のように、路面の交通が行き詰まったがゆえにコストの高い輸送サービスが必要になってくるというような場合には、鉄道旅客を吸収できるだけの限度運賃を押えなければいけないというような面もございます。それから他の交通手段へ、たとえば港湾とか空港とか道路一般財源が出ておれば、鉄道の公平な競争を確保する意味で、鉄道についてもそのような一般財源からの支出を考えなければいけない。そういった点を考え合わせまして、利用者納税者との負担の公平をはかるということが必要かと思います。今回四十七年度の予算案におきまして、一般財源からもかなりの大幅な支出が前年に比べてなされるということでございますし、今回の運賃値上げ程度のことは、利用者としても負担しなければいけないのではなかろうかということであります。特にこの場合に、納税者利用者いずれの場合から考えましても大切なことは、すでに鉄道としての使命が終わったところも残しておきながら、なおかつ両当事者負担をかけるということはぜひとも反省しなければいけないと思います。  第二番目に、負担の公平を考えなければならないのは、普通旅客定期旅客関係でございまして、このことは、サラリーマンが乗るときと家族が乗るときと、家族サラリーマンの二倍払わなければいけない、二倍以上払わなければいけないということを考えてみれば、この制度がいかにおかしいかということがわかります。  それから第三の負担の公平は、貨物等級制の問題でございますが、これは現在、法案の中でもある程度の是正が入っておりまして、将来はむしろ大量に出すかどうか、輸送コストの高いか低いかによりまして、運賃の差を設けるほうが合理的ではなかろうかと思います。  それから第四の点は、路線相互の間の問題でございまして、東海道新幹線のように、コストの二倍以上もお客が払わなければいけないということは、いかにも不合理でございます。そうした点を是正して、むしろある線で生ずる黒字は、ある限度内におさまるように運賃料金を設定するというような考え方を取り入れるべきではなかろうかと思っております。  意見の最後は、手続の問題でございます。しばしば、三年に一回運賃値上げがあるというふうな説がございます。あるいは最近新聞で見ましたところでは、バス運賃は二年に一度見直しをするというふうな記事が出ておりました。私は、運賃は、他の物価がやはりそのつど変化していく、あるいは公務員の給与ベースは一年一度査定されるというようなことを考えますと、運賃も毎年見直しをするという制度に改めたらどうか。そしてその運賃を見直す際に、権威のある機関をおつくり願いまして、今日しばしば行なわれますように、運賃値上げのために管理者が非常なエネルギーを使わなければいけない、そういったことを避けまして、むしろ管理者エネルギーはもっと内部管理に向けていただきたい。輸送サービスをよくするために彼らが全力をあげられるようにすべきではなかろうか。もはや過去の独占時代鉄道ではございませんし、そうした制度全体を考え合わせて、これからの運賃政策をおきめくだされば幸いだと思います。  以上で、私の意見を終わります。(拍手
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、清水公述人にお願いいたします。
  5. 清水義汎

    清水公述人 国有鉄道運賃法に関する意見と、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法二つ法案について意見を申し上げたいと思います。  まず、最初に国有鉄道運賃法に関する意見を述べたいと思いますが、まず第一点は、今回の運賃値上げ議論するにあたりまして、運賃改正に伴う資料について、私は若干の大きな問題点を含んでいるというふうに考えるわけでございます。なぜならば、旅客貨物につきましてそれぞれ一定のパーセンテージの値上げ申請をしておりますが、運賃改正に関する諸資料拝見をしておりますと、旅客貨物のそれぞれが明確に原価が示されてないという点がございます。この点につきましては、先般私も運輸審議会で、国鉄運賃改正について意見を申し述べる機会がございましたが、運輸審議会自体も、旅客貨物のそれぞれの原価については資料がないということでございます。従来、私鉄あるいはタクシー等におきましても、運賃申請の際には、原価が明らかにされて、その上で適当な値上げ審議をされるというのが慣習だというふうに私は理解をしております。原価が明確に示されないで何%の値上げが適当かというふうに提示をされましても、そこにはきわめてむずかしい問題が出てくる、そういう意味で今回の運賃値上げについては、従来の旅客貨物に分けた資料提示は、四十四年度以降はそれが総合原価主義という名のもとに一切捨てられてしまっているというところに第一点の問題があるというふうに私はいわざるを得ないわけであります。  それから第二点は、国有鉄道運賃法との関係で、今回の運賃値上げにはやはり大きな問題を含んでいるというふうにいわざるを得ないわけであります。御承知のように、国有鉄道運賃法におきましては、公正妥当性ということを大きな柱の一つにしております。今回の運賃改正がはたして公正妥当性を欠くかどうかという点でございますが、私は三点から、この点について公正、妥当性を欠いているというふうに考えている次第でございます。  その第一点は、国鉄私鉄との運賃格差が非常に開いてしまう。東京でありますれば、首都圏の中で、小田急と国鉄、あるいは他の私鉄国鉄賃率が非常に開いてしまう。現在でも各民鉄相互間において、キロ当たり賃率が違う現状がございますが、これがはなはだしい格差が出てくるということになりますと、国有鉄道運賃の公正、妥当性という問題に私は重大に抵触をしてくるんではないかという点が第一点であります。  それから二番目は、旅客運賃貨物運賃との関係であります。昭和三十一年から四十五年までの推移を見てまいりますと、新幹線につきましては、三十九年から四十五年まで、私の概算では総計二千七百四十四億の利益を計上をしております。在来線におきましても、三十一年から四十五年までを締めてみますと、約四百四十八億の利益をあげております。ところが逆に貨物のほうを見ますと、プラスマイナスいたしまして約七千七百七十億という赤字を出しているということであります。いわば貨物輸送赤字旅客運賃によって埋めていくという形が今日まで踏襲をされているということでございます。そうなりますと、貨物運賃旅客運賃相互間の中で公正、妥当性があるのかという点にきわめて疑問を感じざるを得ないということであります。  それから三番目は、運賃料金との関係であります。従来、運賃輸送対価として規定をされていたというふうに私は理解をしております。料金はむしろ使用料という形の中で規定をされていると思います。そういう関係の中から、運賃法の中では、基本運賃については、重大事項として国会審議の中で決定をされるという仕組みになっておりますが、料金につきましては国会審議対象外に置かれております。ところが、東海道新幹線等を見ますと、運賃料金との金額の差というものがきわめて近接をしてしまっている。一時期におきましては、運賃より料金のほうが高いという現象を示しております。また、ダイヤ改正等におきまして、特急、急行の増発という中で実質的に収益をあげていく施策がとられております。そういう点を考えますと、今日の国鉄料金というものは実質的に運賃化しているというふうに私は見られる側面があるというふうに理解をいたします。そうなりますと、運賃法改正の場合におきまして、基礎運賃審議の中に、料金との関係の中で議論をしてまいりませんと、実質的な利用者のほうに負担がかかってまいりますところの運賃といいますのは、料金運賃含めてこれは輸送費として支払うわけでございますので、この辺を利用者サイドに立って考えてみた場合、従来の運賃料金のような区分の中で、基礎運賃だけを取り上げての議論というものが現実に即応しなくなってきているんではないか、かように私は考えるわけでございます。  次に、国鉄運賃法の第二の問題は、国有鉄道運賃法の中で「賃金及び物価の安定に寄与する」ということが定められております。現在の経済事情の中で、国有鉄道国鉄財政再建企業財政再建というアプローチを中心にいたしました運賃改正というものが、「物価の安定に寄与する」という点にはたして抵触しないで済むかいなかという問題でございます。  先般、政府当局及び与党の中で御発表になりました新国鉄財政再建対策要綱拝見をいたしましても、今回と五十年度及び五十三年度にそれぞれ実収一五%の運賃改定を行なう、それだけではなくして、五十六年度に通賃改定につき検討を行なうという路線が示されております。こうなっておりますと、一面においては政府経済物価安定政策というビジョン片一方にありながら、片一方では慢性的なインフレーションを是認をするという中で、運賃改定で先取りをしていくという形になりますと、この公共料金物価上昇、インフレ的な傾向というものが相互関連作用の中で、かえって物価上昇にプラスの、物価上昇というものを促進させる作用を与えるのではないかということを杞憂するわけでございます。そういう意味では、国鉄運賃法の中での「物価の安定に寄与する」という観点から考えた場合に、今回の運賃が立法の精神に抵触しやしないかという点を考えるわけでございます。  第三点は、旅客をなぜ上げなければならないかという点について大きな問題を私は含んでいると思います。東海道新幹線等につきましては、営業係数が四十幾つというふうにいわれておる。山手線につきましては貨物含めて六十幾つということがいわれておる。このことは通勤線を主体である山手線の場合でも倍近くもうかる、東海道新幹線の場合には倍以上もうかるということであります。しかも昭和四十五年度の決算を拝見をしておりますと、赤字が千三百二十五億ということでありますが、この中で在来線鉄道貨物運賃貨物輸送の中で出る赤が約千八百二十三億というふうにもいわれております。そうなりますと、旅客のほうで四百九十七億の黒を出しておる。しかも東海道新幹線の場合には営業係数四四でありまして、千百六十億の利益をあげておる。在来線の場合には六百六十三の赤字でございますけれども、しかし旅客輸送全体を見ますと四百九十七という赤字になる。そうなりますと、いわば総原価主義というたてまえでまいりますと、旅客運賃赤字になっていないから上げなくていいという形になってまいります。いわば、総原価主義路線別原価主義というものをたくみに使いながら運賃値上げに操作をしていくということがもしあるとするならば、これは重大な問題だというふうに考えるわけでございます。  以上の点を考えますと、私は今回の国有鉄道運賃法に対しては反対をせざるを得ないということでございます。  次に、日本国有鉄道財政再建特別措置法について意見を申し上げたいと思います。  現在の国鉄赤字というものが、単に企業努力だけでは解決し得ないところにきているということは、政府部内及び関係機関ではすでにある程度是認したところだと思います。で、そのことは昨年度の総合交通政策運政審中間報告の中で、交通はむしろ被害者であるということばを使っていることが、その事実を私は端的に示していると思います。いわばこのことは、現在の交通の危機の一番重要な背景である企業外の要因を取り除かなければ、交通再建は不可能であるということであります。そのように考えますと、私は、日本国有鉄道の場合でもその例外ではないというふうに考えております。そうしますと、いわば新全国総合開発計画というものが発表されております。これと交通というものをどのようにセットしていくか。むしろ産業立地であるとか、あるいは都市計画であるとか、全国総合開発計画というものをセットしながら、一面においては先行投資路線としての機能を持たせていく、一面においては過疎過密の解消の中で、輸送自体が最大限に機能を発揮するような外的の条件を整備していく、こういう点が問題の意識なり、一つビジョンとしては政府のほうでもお考えだというふうに理解をいたします。そうだといたしますれば、それが具体的なポリシーとして出されませんと、ビジョンだけでは行政は執行ができないわけでございます。そういう点で、いま申し上げたような形の政策というものがセットされた中で国有鉄道財政再建というものが考えられる、そしてそれを前提とした特別措置法というものがございませんと、単なる利息のたな上げであるとか、あるいは合理化であるとか、あるいは運賃値上げだけでは、基本的に問題は解決をしないということでございます。  第二点は、政府努力の問題でございます。国鉄問題につきましては、国鉄企業側に対して再建に対する努力要請ということが各方面からいわれておりますが、政府努力が相当必要になってきているということでございます。御承知のように、日鉄法第五条におきましても、予算範囲内で必要とあれば出資ができるということが規定をされておる。現在政府管掌債務その他の負債が三兆億である。昨年までの時限で、国鉄の総資本というものは百数十億である。百数十億の企業が三兆億の借り入れを行なって、この元利返済を行なうということはきわめて不可能なことだというふうに理解をしなければなりません。かつて、昭和三十八年ごろイギリス国有鉄道でいわゆるビーチングプランというのが発表をされた。イギリスにおいても国有鉄道再建問題というのは非常に議論になったことは御承知のごときでありますが、イギリスの場合におきましても、一兆数千億の負債をたな上げをしているという処置をとっております。現在日本国有鉄道の置かれた基盤あるいは生産の能力等を考えますと、三兆億の負債というものを元利返済をするということは、ほぼ不可能に近いというふうに見なければなりません。この辺のばく大な負債というものを、国家の政策の中で、国の財政の中で解決をいたしませんと、きわめてむずかしいという問題が出てくるわけでございます。そういう点を考えますと、私は、財政上の観点から、道路財政交通財政というものをワンセットにした中で考えていきませんと、道路建設予算で考える、国鉄運輸予算の中で考えるという形で切り離しているところに、政策的にも財源的にも非常にむずかしさがあるのではないかというふうに考える次第でございます。道路建設投資につきましては、御承知のように十数兆億という金が支出をされております。道路五カ年計画を見ましても今後数兆億は考えられております。年間約一兆の金が出ておる。しかし、道路建設投資の結果が今日のようなモータリゼーションの弊害なり、あるいは交通公害の弊害なり、鉄道というものを非常に困窮におとしいれた諸矛盾を出していることを、ここで反省しなければならないと思います。そういう点から、国有鉄道財政再建という形の中で特別措置法改正され、何らかのてこ入れをしようという意図については、私も敬意を払うものでございますが、原案のような形ではほぼ解決の見通しがないのではないか、より抜本的な、より強力な処置を行なうべきであるという観点から、この法案については私は反対の意向を表明したい。  以上をもちまして、私の意見を終わらしていただきたいと思います。(拍手
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、高橋公述人にお願い申し上げます。
  7. 高橋秀雄

    高橋公述人 私は流通経済大学高橋秀雄であります。  私は、今回提案されました国鉄運賃問題その他の問題につきまして、条件つき賛成をするものであります。  以下、どういう条件かということをこれから簡単に申し上げたいと思います。  日本経済が高度な成長を遂げております状態前提にし、また交通革命が進行しておって、他の運輸機関との附に競争が行なわれているという現時点における国有鉄道運賃問題について、私の意見を申し上げます。  そこで、運賃値上げの問題を二つに分けまして考えたいと思います。その一つ企業経営維持のための収入水準、いわゆるレートレベルの問題であります。またその二は、この一たんきめたレートレベルを確保するためにどういう運賃制度、すなわちレートストラクチュア、またはタリフシステムをどういうふうにきめていくかという問題、この二つの面から意見を申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、運賃水準の問題でありますが、国鉄が能率的な経営のもとにおいて、予定される運輸量を運ぶに要する経営の費用は運賃収入によってまかなわれなければならないのでありまして、この点におきましては原案賛成であります。その理由は、まず第一に物価観点であります。物価政策との関係であります。物価政策観点から、鉄道運賃公共料金一つであるからといって、これを低く押えて、公の資金で、あるいは財政で補助をするということは、二つの面から見て好ましくないと私は考えるのであります。  その一つは、運賃値上げ物価に影響するからといいましても、国鉄の事業費の七三%は人件費でありまして、労働集約的な鉄道経営にありましては、有形財すなわち第二次産業の生産のように、労働生産性の向上によって、毎年行なわれておるところのベースアップの財源を見出すことはできないのであります。しかも、完全雇用下における労働力を確保しておきますためには、賃金のベースアップは不可避であります。生産性をこえてベースアップが行なわれるときに、それは当然に運賃に影響することは言うまでもないのであります。たとえそれを一時押えてみましても、現在のような高度成長期にありましては、長期的には必ずこれを避けることはできないのであります。でありますから、この多額の人件費におけるベースアップを考える場合に、それが運賃に影響をしてくるということは当然であり、それがまた物価に影響をしてくるということも当然なのであります。物価運賃に限らず、ほかの流通関係におきましても労働集約的な部面が非常に多いのでありまして、工場の生産のような、労働生産性を向上するということが非常に困難であります。工場の場合には労働生産性が向上して卸売り物価はあまり上がっておりませんが、流通関係を通してわれわれ消費者の手に入る場合には、必ずそれが届くなる、その根本の原因は流通費にあるわけであります。これに対する対策は別の面から考えていくべきであろうと思います。  それから、国の補助によって運賃値上げをすることは、まあ昔の鉄道独占時代であった場合ならば、あるいは不経済線のようなもの、あるいは政策的な路線につきまして、場合によっては補助をするということも考えられるかもしれませんが、現在のような他の運輸機関競争をしておる現状におきまして、他の運輸機関の場合にはその経営費の全部を企業収入に求めておりますのに、他の運輸機関競争するその競争相手の国鉄が、政府の補助のもとに競争するということは、不当競争を国の援助のもとに行なうことになりまして不公平であります。でありますから、私は、国鉄運賃について是正するということはこの際当然であろうと思うのであります。なお、トラック運賃につきましても、四十六年一月以降各地で部分的に一割三分ないし一割五分の値上げが行なわれておりますし、海運の場合も運賃値上げが行なわれております。  それから、赤字経営を続けるということは、また国民経済から見ましても、国鉄利用者による資源のいわゆる適正配分、日本経済の効率的な運営ということを考える場合に、それを歪曲されることになる。これは物価安定政策会議の第三調査部会の四月一日の答申においても述べておられるとおりでありまして、これに重ねて申し上げません。  それから第二に、運賃水準の問題を考える場合に、その基準の一つとなります鉄道の卒業費についてでありますが、国有鉄道経営の中には企業経営が可能な部分、いわゆる新幹線のような、あるいはほかの幹線区間の部分と、撤去廃業を予定されておる地方線区の経常と二つありますが、その二つの場合の運賃の水準の考え方を区別して考えることが必要であろうと思うのであります。でありますから、その区別する方法として、幹線区の経営の勘定と地方線区の勘定区分を別にしまして、幹線区における水準としましては、現在の事業費のほかに自己資本相当部分についての計算利子、原案には計上されておりませんが、いわゆる自己資本に対する計算利子というものをレートベースとして計上しなければ、国民生活の水準向上あるいは福祉社会の需要に応じて鉄道サービスを改善するために借り入れ金をしようとしても、その利子が支払えないということになるのであります。  また廃業を予定されておる地方線区の資本関係の費用でありますが、この地方線区は、原案によりますれば将来五カ年間に漸次廃業していくということになっておりますが、そういう廃業線区につきましてはその資産はいわゆる埋没資産でありまして、これに関連する資本コストはレートベースから控除をしてたな上げするか、あるいはその他の方策を講じてこれを除いてレートレベルを考える必要があろうと思うのであります。もしこういう形で地方線区のレートレベルを考えましてもその平均賃率は相当高いものになりまして、とても地方線区の人が負担できないということになりましょうから、幹線区の場合の賃率水準よりも高くなる部分につきましては、原案のような方法でもって地方自治体または国の補給を考えるということは賛成であります。  なお、この鉄道事業の合理化、近代化によりまして能率的な経営を行なうことは必要であります。そうして能率経営によって従事員を数年間に十一万人減員することが予定されておりますが、この点については私は必ずしも賛成できないのであります。技術革新交通革命によりまして鉄道事業そのものの事業範囲は縮小または改善されることになりましても、国有鉄道という企業体の経営はこれを別の観点から再検討して、いわゆる多角経営によりまして鉄道事業部門の過剰になった人員をその方面に吸収しまして、それらの十一万人の人を整理するのではなくて、事業から排除するのではなくて、その人を包容して経営していくという新しい経営理念を確立していくことがこれからあと必要であろうと思うのであります。もちろんその新しい多角経営をやるということになりましても、それについてはいろいろ方法がありましょうが、単なる思いつきばかりでなく、やはりこのために相当の研究開発の資金を投じまして、たとえば民間企業におきまして積極的にやってるところでは売り上げの三%ぐらいは研究開発資金に使っているわけでありますが、国有鉄道企業の場合にもその例外でない。やはり各企業とも多角経営によって経済自体の変革に応じた経営管理が行なわれておるのでありますから、国鉄の場合にもやはりそういう方策を講じまして、それによって従事員が安心して職につけるというような根本的な経営理念の確立ということが必要でありましょう。あるいはそのためには法律の改正も必要かもしれませんが、法律を改正しても、とにかく四十数万の人、あるいはそれよりもふやしても、国鉄の事業、国有鉄道という企業体そのものが伸びていくというのでなければ職員は安心してこれに協力していくことがだんだんできなくなるということになるのではないかと私は考えるのであります。  次に今度は、以上申し上げましたようなことで賃率の水準がきまりますれば、その水準の収入を確保するための賃率制度、レートストラクチュア、それをどうするかという問題であります。  レートレベルを前に申し上げましたようにして一応決定できましたならば、それを具体的に個々の旅客または貨物負担させる賃率制度としましては、その予定収人額をサービス群別に、サービスの特性、サービスと個別原価関係競争運賃関係などを考えまして、基本的な表定賃率制度を構成することになるのでありますが、大体において原案考え方賛成であります。その細目につきまして一々意見を述べますことは時間の関係もありますので、特に考慮していただきたい二、三の点を申し上げます。  サービス群別、いわゆる旅客貨物別、あるいは急行・普通別とか、そういうサービス群別に、旅客貨物それぞれの原価をどう考えるかということがまず問題になります。幹線区を対象として、群別賃率として旅客貨物の同者を対等に考えるか、旅客貨物それぞれがコストを十分に負担するかどうかということになりますと、旅客貨物それぞれ競争関係程度は違っております。したがって、ここでまず貨物関係について申し上げますと、貨物関係におきましてはだんだん近代化が遊んでいく、フレートライナーとか、コンテナ化、その他中間の小さな駅を整理するとか、いろいろ近代化が進みますと、だんだんコストをカバーするようになってくるということを見込まれておるのでありますが、それまでは一応貨物関係コストの最低限といたしましてはアボイダブルコスト、回避可能原価というものを基準とすることが必要であろうと思うのであります。米国では日本と違いまして、旅客関係において回避可能原価旅客輸送をしなければ費用がかからないであろうと思われるその原価を基礎にして旅客関係経営をすることを考えられておるのでありますが、日本の場合はその逆でありまして、貨物関係においてこれを考えていくのでなければ鉄道経営全体としての経営ができないということになろうと思うのであります。国鉄の長期計画によって近代化が進んでくると、五十五年度においては営業係数貨物関係においても九九%ぐらいになるということが予想されておるのでありますから、それまでの間は赤字経営ということになりましょうが、コスト負担についてやはり特別な配慮をして、旅客貨物総合して相互扶助いわゆる内部調整という方法をとることはやむを得ないと思うのであります。また、旅客関係の内部におきましても、さしあたりは通勤定期と一般旅客との関係における内部調整も同様に考えていくことはやむを得ないと思います。しかし、通勤定期運賃原価の調整とか、あるいは輸送力の増強、混雑の緩和につきましては、特別な配慮が望ましいと思うのであります。  それから貨物運輸の問題といたしまして、小口扱いと客車便小荷物との統合を原案では考えられておりますが、方向としては大体賛成でありますが、何ぶんこの制度を利用する荷主は一般大衆や中小企業関係のものが多いのでありますから、制度改正の影響につきまして特別な配慮が望ましいのであります。  そこで、原案にあっては、重量階梯賃率としてかなりの、配慮がなされておりますが、私としては、貨物の五トンコンテナよりも小さいユニットロードとして、実情をよく検討してもっと小さいボックスパレットのようなユニットロードシステムと、それに見合った低賃率のものを設けるというような配慮が必要ではないかと思うのであります。  また、車扱い貨物に対する賃率といたしまして、原案のように、四等級を三等級にするという表定賃率を基準としてきめるといたしましても、その運用としましては、動態的な輸送の実情を考えまして、弾力的な賃率を考えていくということが企業経営を維持する上において特に必要であろうと思うのであります。  以上、簡単でありますが、私の所見を終わります。(拍手
  8. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、竹内公述人にお願い申し上げます。
  9. 竹内直一

    竹内公述人 私は、国鉄の問題について専門的な知識を持ち合わせません。したがいまして、消費者の立場から私の感じたことをありのままにお話しをしたいと思います。  まず、公共料金一般について、ものの考え方をこれからお話しをしたいと思いますが、最近政府は、公共料金値上げ政策、授業料、医療費、国鉄運賃その他軒並みに値上げが打ち出されましたので、私たちは公共料金というものの性格をどういうように政府が考えていられるのかという点に疑問を持ったものですから、この一月の末に各党に対しまして、自分たちは消費者の立場から公共料金についてこういうように考えるんだけれども、どうお考えですかという公開質問状を出しました。その中で、個別の公共料金についてそれぞれ考えを述べておりますけれども、いまそれは省きまして、公共料金の一般的な問題についてお話をいたしますと、まず公共料金の性格と、それからその負担原則、これについて私たちはこういうように考えるわけです。いまの日本の経済体制は、私経済原則、自由経済というような体制であるわけなんですけれども、そういう体制の中で、国だとか地方公共団体、こういったものが、役所仕事は能率が悪いと言われるにもかかわらず、あえて役所がこういった事業に手を出すのは何か理由があるに違いない、そういうように私経済体制の中で国が介入をするという目的は、やはり憲法で保障されている私たちの生存権あるいは教育を受ける権利、それから居住、移転の自由といったような基本的人権を確保するために、そしてすべての国民が平等にそのサービスを享受できるように、いわゆるナショナルミニマムあるいはシビルミニマム、こういったものを確保するために、国や地方公共団体がこういった事業に介入するはずだというように考えたわけです。その場合に、公共料金負担原則といいますと、それはやはり当然私的営利の原則である独立採算あるいは受益者負担、言いかえれば応益負担ですか、そういった考え方をとるべきではなくて、公共サービスの提供に対しては経済的な能力に応じた負担をする、いわゆる応能負担、いうならば相互扶助の精神に基づく応能負担原則が貫かるべきじゃないかというような考えを持ったわけです。  それから二番目に、物価政策公共料金政策との関連については、これはもう言うまでもなく、政府が先頭を切ってこういった公共料金上げれば物価上昇の引き金の役割りをすることはもう当然だ。したがいまして、そういうことになればいわゆる政府主導型の物価高を招くのはもう明らかだ。現在政府政策の第一順位として物価の安定ということを打ち出しておられるわけですけれども、そういう政府の公約にも反するではないか。したがって、この際公共料金値上げは凍結すべきだ、ストップすべきだというような意見を持ったわけです。  それから三番目に、そういうようなことをいうならば、金があればできるけれども金がないではないかというような反論が出るに違いない。したがいまして、公共料金政策と財源との関係において、私たちは先ほど申しましたように、応能負担原則を適用するならば、現在の企業保護的な租税特別措置、これを撤廃する、それから法人所得につきましても、個人所得と同じように累進課税の考えを導入すればとれる、そういうような考えを打ち出したわけなんですけれども、それに対して野党の各党は、私たちの考えに全面的に賛成だというお答えをいただいたわけです。ところが与党のほうではそれとは逆に、まず一番目には公共料金負担原則については受益者負担原則だ、公共料金も営利企業も金をかけてサービスを提供するんだから、そのサービスを受ける者がその費用を負担するのは当然だというようなお考え、その理由としまして、そのサービスを受けない人が利用する人の分まで負担するというのは不公平だというような理由を述べておられます。  それから二番目には、今回の公共料金値上げによって物価が上がるかどうかという点については、そういう心配はない、これは二月の段階ですが、ことしは野菜も値下がりしていることだから物価全体としてはそんなに上がらないから心配する必要はないというようなお答えでした。  それから三番目に、法人所得の累進課税については、これはいままで前例もないから賛成しがたいというようなお話であったのです。  こういうように、同じ私たちが、選挙民が選んだ各党の間で公共料金の問題にずいぶん大きな考え方に隔たりがあるということがわかったわけで、こういうように与野党の問で基本的な考え方で考えが一致しない、非常に私は驚いたわけなんですが、この点は国会でもって、真理は一つなんですから徹底的に議論をしていただきたい、どちらの言い分が正しいのか、どちらが間違っているのか、この点を私たち国民に明らかにしていただきたいということです。  次に、具体的に国鉄運賃について申し上げますと、国鉄赤字である、これはみんな承知しておるわけですけれども、その赤字の原因を見てみますと、まず第一は、公共負担政府から押しつけられておる、いろいろな割引制度その他。それから二番目には新線建設、これも政府から押しつけられておる。国鉄が自分から進んでつくっておるものばかりとは限らない。そういうような政府から押しつけられておるいろいろな負担。で、その事業をやるにあたって、これも独立採算という名のもとに借金経済オンリーだ。自己資金を獲得しないですべて金利つき、それから償還の義務を負う借金経済でやっていく、それが赤字の原因だろうと思うわけなんですが、そういうようにいまの国鉄がばく大な赤字をしょうことになったことについては、これはまず第一に政府の責任がございます。これは先ほどもお話がありましたように、政府が総合的な交通政策を持たない、そしてこの狭い国土にいわゆるマイカー主義ですね、私的交通機関をのさばらすような政策を黙認するばかりか、積極的に道路投資にばく大な金をつぎ込んでそれを助長した、これが第一点です。そして、逆に大量輸送機関である鉄道に対する投資を怠った、これが第一の責任だろうと思います。  それから第二には、国鉄赤字に変わったのは昭和三十九年度ですか、もうそのころから国鉄はこのままでほっておけばばく大な赤字が累積することがわかっていたにもかかわらず、非常に国鉄に対して政府は冷たく扱った、捨て子のように冷遇をしたというように考えるわけです。そしてやっと昭和四十四年に政府はいままでの態度を反省するということばを初めてお使いになって、財政再建のためにいろいろな措置をとるのだということを表明されたわけなんですが、ところが経営の基本である事業というものは自己資金でやるのがたてまえだ、これは民間私企業でも通用する大原則なんですけれども、それについての手当てというものは、昭和四十六年に初めて三十五億ですか、四十七年度にやっと三けたになって六百十六億、しかも今後十年間で一兆円、これは非常に大きな方向転換だというように自賛をなさいますけれども、国鉄の事業量からするならば、これはまことに少な過ぎやしないか。そういうことで、これまでの政府政策の誤り、そういったもののしりぬぐいを、政府もめんどうを見るから利用者も片棒をかつげ、いわゆる三方一両損式のやり方をやられるというのは、まことにわれわれ消費者にとっては迷惑至極でありますということなんです。やはり政府の責任によってこれだけの赤字が生じたのであれば、政府の才覚でもって予算のワク内でやりくりをしてしりぬぐいをすべきじゃないかというように考えるわけです。国民にしわ寄せをされるのはごめんですということです。  それから次に、国鉄の責任について申し上げたいんですが、そういうように国鉄が非常に異常な経営を続けてきたにもかかわらず、政府に対して強く自己資金をもっとよこせということをなぜ要求をしなかったのか、これは国鉄当局の怠慢ではないかというように考えるわけです。  それから二番目には、貨物輸送についてこれの近代化、合理化、これは終戦直後から課題になっていたはずにもかかわらず、これについてもそれを怠ってきた。そうして、取れるところからできるだけ取ろう。結局旅客にしわ寄せが来ておる。そして、その上にあのディスカバー・ジャパンというポスターに象徴されますように、国鉄のダイヤも、次第にレジャー本位のダイヤに切りかわって、一般の地域住民あるいは通勤者輸送に対するサービスというものは逆に落ちてきている。これはとんでもないことじゃないかというように考えるわけです。  公共的な大量輸送機関である国鉄のそのあるべき姿というものを考えてみますのに、これはその名のごとく国有鉄道、私たち国民の共有財産であるという認識に立つならば、鉄道の利用を誘導するためにどうすればいいか。これはもう簡単なことだろうと思いますが、とにかくいつでも乗れる。いつでも品物は送れる。そうして早く着く。二番目には安く利用できる。これはもうはっきりした原則だろうと思いますが、そういうことから考えますと、今回の措置というのは、そういうことに逆行する。国鉄運賃が上がれば、ますます自動車のほうに旅客貨物も走っていくじゃないかというように考えるわけなんです。そういう意味で今回の措置は反対であるということを表明せざるを得ません。  終わりに申し上げたいことは、公共料金の問題というのは、たとえば家計の中で一五%から二〇%くらいのわずかのウエートしか占めない。その中でもいま問題になっておる国鉄運賃、これはコンマ以下のウエートしかないから多少上げたっていいじゃないか、所得も上がっているんだからいいじゃないかというようなお考えだろうと思いますけれども、これは間違いではないか。先ほど来申し上げておりますように、この公共料金の問題は、憲法の精神に触れる大問題だ、そしてまた、政治の体質を左右する基本問題だ、そういうように考えますので、真剣に御議論をいただきたい。野党の皆さんは私たちの考えに賛成だという御返事をいただいておるんですが、その反対だというお考えを、事実でもって示していただきたい。そのお考えを徹底的に貫いていただきたい。それから与党の皆さんに対してお願いしたいことは、私たち消費者が公共料金値上げは困りますと言っておるわけなんですから、そういう私たち選挙民がそれはいやだと言っておることを謙虚に聞いていただきたい。自分たちは責任政党だから、国の政治を預かっているんだから、そう何でもかでも言うことを聞くわけにはいかないというお考えがあるといたしますと、それはやはり代議政治あるいは民主政治の原則にもとるような結果にあるいはなるんじゃないかということすら考えざるを得ないんです。ですから、いまのように与党と野党が公共料金の扱いについて意見が分かれているならば、徹底的に議論をしていただきたい。それから国民にも、自分たちはこう考えるんだがどうなんだということを真剣に聞いていただきたい。その上で、国の大方針をおきめいただきたい。そういうことをなさいませんと、私たちの政治に対する不信はますます増していくばかりだということを申し上げたいわけでございます。(拍手
  10. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、牧野公述人にお願いいたします。
  11. 牧野昇

    牧野公述人 牧野でございます。  国鉄運賃法特別措置法改正につきまして、私の意見を申し上げてみたいと思います。私は三つの点にしぼってお話し申し上げたいと思います。  一つは、運賃以外の手でこの赤字を解消した場合にはたして国民が満足するかどうか、この点が一つです。  第三点は、それでは運賃値上げ政府援助の分配が今回の比率でいいかどうかという点が第二点です。  第三点は、私は条件つき賛成でございますので、今回の値上げに対する条件というものが幾つかあるわけでございます。それはどういうものかということを最後にあげてみたいと思います。  まず、運賃以外の手でこの赤字を解消した場合に、国民は納得するかどうか。方法としては、年間二千五百億円、累積三兆円のもの、これを解消するためにまず三つの手があるわけです。  一つ利用者がこれを負担するということ、運賃値上げです。  二番目は何かというと、政府がこれを出す、これは国民一般が負担するということに言いかえたほうがいいと思います。税金を上げてその税金で国鉄赤字を埋めるということです。  三番目は何かというと、国鉄自身が企業努力で何とかこれを直そう、言いかえますと強力な合理化手段、人件費削限その他ですね。  この三つを比較いたしますと、二番目のいわゆる税金でこの赤字を落としていくということははたして問題がないだろうか。公共性という点からいいますと、たとえば通勤とか通学みたいなものは公共的なものですから、これは当然政府負担でいいわけですけれども、たとえばレジャーとかショッピングみたいなものに対して、ある人はレジャー、ショッピングに行く、しかし、レジャーにもショッピングにもいかない人が、がまんしている人が、レジャー、ショッピングに行く人の運賃負担してやるべきかどうかということが非常に問題だと思います。そういう点で、国民の一人として私もお話ししているわけですけれども、これはわれわれ利用者負担すべき分と、利用者負担しないで政府負担するべきものと、二つに分かれるのだということをおわかりいただけるのではなかろうかと思います。  三番目の点として国鉄合理化という点をあげてありますが、これは非常にむずかしいのです。むずかしいというのは、非常に労働集約的な産業ですね。人件費が全体の収入でいうと六三%ですね。総コストでいっても五二%、こういうものを一挙に合理化していくということは当然いわゆる人員削減とかいろいろな強行手段をとらなければいかぬ。これはすぐにやるのはむずかしいのです。時間がかかるという点ですね。  そういたしますと、第一の運賃値上げを適正にやるということが必要だ。いわゆる運賃値上げをストップいたしますとどういうことが起きるかといいますと、国民にとってはかえってまずいことが起きるのです。それは国家が持っている資源が最も適正な配分をしなければいけないのにそれを変えてくるわけです。言いかえますと、非常に安い交通サービスに異常な嗜好ができるわけです。それをなるべく使おうというような行動が起きてくるわけです。いわゆる国家資源の最適配分という見地からいうと、適当な値上げというものが必要だということになってくるわけでございます。  それでは不当に安いかどうかということを比較しなければいかぬ。いろいろな比較のしかたがあるわけでございますけれども、私は諸外国と比べて国鉄運賃が高いか低いかということからアプローチしてみたいと思うのです。  まず旅客でございます。旅客が一人一キロメートル、これを円に直しますと、これはUICの一九六九年版の統計でございますが、日本が四円〇八銭、西ドイツが七円〇八銭、約二倍近いですね。イギリスが六円。じゃ貨物はどうかというと、貨物は、これはトンの一キロ、円でございますが、日本は三円九十七銭、西ドイツが八円〇七銭、それからイギリスが七円三十二銭、こういうことでございます。言いかえますと、比較はいろいろ条件がございますけれども、安い、上げてもしかるべきだ、こういうことが言えるのじゃなかろうかと思うのです。あと消費者物価と比較いたしましても、これは前に話が出ましたので抜きますけれども、上がっておりませんから、そういう点で国鉄はやはり運賃値上げというものを適正にやるべきだ、こういうことになるわけです。  それでは第二点でございますけれども、運賃値上げ赤字をカバーする分と、それから政府財政投資で、出資で赤字をカバーする分の比率がはたして適当かどうかということになるわけでございます。大体公共サービスというものを一体どういうふうに考えるかというと、私は公共サービスのうちで二つに分けて考えたほうがいいと思うのです。一つは直接費のサービス、直接サービスですね。二番目は間接サービスです。直接サービスということになりますと、これは列車の運行の費用ですね。いわゆる電力が要る、あるいは運転手さんが要る、そういう直接の運行費用は利用者負担すべきものであって、税金で負担すべきものじゃないと考えるわけです。ところが間接の費用ですね、間接の費用というのは設備ですよ。たとえば道路と同じようなものです。さっきも話がございました。道路は、これは国家がつくっていますからね。それと同じように、鉄道の施設、レール、あるいはそれの補修、そういうものは間接のサービス費用でございますから、これは当然政府が出すべきものだ。こういうふうに分けて考えれば非常にはっきりすると思うのです。これは道路でも同じです。飛行機でも同じですね。港湾でも同じです。港湾は国がつくって、船がそれを利用しているわけです。同じようなことを考えればいい。そうすると、間接サービス費は国家が出す。そういたしますと、直接費と間接費が大体どのくらいの比率かということに話が入っていくわけでございますが、いま国鉄でいいますと、直接費と間接費は、直接費が大体七〇だ、それから間接費が三〇だ、こういうふうに考えてよろしいのじゃないかと思います。というのは、人件費が先ほどのように大体五〇%ちょっとこします。それ以外に、いろいろな電力費その他運行費が二〇%、足しますと七〇になりますね。利子その他は、これは間接に入ります。七〇、三〇、こういうことになるわけです。そういたしますと、今回の運賃値上げで大体どのくらいの増収になるかというと、千七百億円ですね。そうすると、千七百億円の七分の三だけは政府が出すべきだ、こういうことになるわけです。そうすると、約七百億円ですね。それにさっきの通勤通学の非常に高い割引率、これは公共と見ますから、これで約五百億出ていますから、合計千二百億。そういたしますと、現在千百億ですからやや低いけれども、今回のバランスはそう大きく修正する必要はないのじゃないか。言いかえますと、直接と間接の分配率に相応した分け方というふうに考えてよろしいのじゃなかろうかというわけでございます。そういう点で、今回の配分は大体このあたりでよろしいと私は考えておるわけでございます。  さて、三番目でございますけれども、運賃値上げのために条件をつけたわけです。四つばかりある。  第一は、便乗値上げというものがこれで出る。この可能性を押えなければいかぬ。この運賃値上げで大体どのくらい物価に影響があるか、これは産業連関表で出てくるわけですね。各産業間の連関で出てくるわけでございまして、これは消費者物価に対しては〇・〇九四%です。卸売り物価に対してはかなり上がりますけれども、〇・一四六%ですね。ただその中にはいろいろ差がございまして、運送をしなければならないものに対しては非常に影響が大きい。たとえばリンゴなんかは〇・二二%というようなこと、お米も〇・二二%。さっき消費者物価は平均では〇・〇九四と言いましたけれども、そういう運送の必要なものはやや高いということになるわけですね。ところがもっと大きな影響のあるのは、特に産業資材に対しては影響があるわけです。たとえばセメントですと二・五四%ですね。それから原木ですと三・六九%、銑鉄で二・〇八%、これは相当大きな上がりになるわけでございます。ここのところはいわゆる国家の再生産に必要なものということで、いわゆる長距離大量については、運賃の割引というものを当然考えなければいかぬ、こういうことになるわけです。  二番目は国鉄自身の経営合理化ということがあるわけでございます。われわれ国民として見ますと、どうも国鉄は生産性向上に対して反対しているような感じを受けるのです。これは私はマスコミ情報だからよくわかりませんけれども、そういうような印象というのは、非常に国民にとってはある種の反感を持つわけなんですね。それからもう一つは、人員の削減ということもございますけれども、遊休施設をだいぶ持っているんですね。それの活用、利用ということをはからなければいかぬ、こういうことが当然言えるんじゃなかろうかと思います。それが条件の第二点でございます。  第三点は、地方閑散線というんでございますが、これはどういうやり方をするかというと、国鉄がやはりこれを切り離す必要があるんじゃないかと思うのですね。そして地方の公共体と第三セクター的ないわゆる独立企業をつくって、そこで運営していくというような形をとる必要があるんじゃないか。何か廃止といいますと国民に非常にインパクトがあるんでして、実は代替機関なり、違った形での通常という表現をとられたほうが私はよろしいんじゃないかと思うのです。当然バスを使ってもいいんです。バスはただの道路の上で走りますから、これはそれほど赤字が出ないわけですから、そういう方途をとるということ。  それから第四点は、やはり国鉄が持っているイコールフッティングという、他の事業体との差というものをやはり修正してやる必要があるんじゃないか。たとえていいますと、トラックはただの道路で走っているけれども、国鉄は、前で線路を敷かなければならない。あるいは空港でも非常に安い使用料だ、こういう点は当然直してやらなければいかぬ。それから私鉄の比較をとりますけれども、私鉄は確かに配当しているんですね。しかし何が原因かというと、私鉄は不動産、たとえば線路を敷くとそこの土地が上がる。そしてそれをもうけるという一つの事業において、運ぶということ以外の仕事をしているんですね。それが利益になっているわけです。国鉄は非常に狭い範囲で押えられておりますから、国鉄の事業活動をもう少し広範にさせてあげる必要があるんじゃなかろうか、こういうことがございます。  こういうような条件をひとつ私がつけることによって、今回の値上げ条件づきで賛成、こういうふうに申し上げたいと思います。  以上でございます。(拍手
  12. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、力石公述人にお願いいたします。
  13. 力石定一

    力石公述人 国鉄赤字ということが非常に問題になるわけですが、主要な赤字の原因は貨物にあるわけです。四十五年度ですと千八百億の貨物赤字で、それを旅客黒字でちょっと減らしまして千五百億の赤字、こういうことになっているわけです。諸外国の貨物はどうか、諸外国は貨物黒字であります。全貨物輸送に占める鉄道貨物輸送のウエートは、諸外国は四〇%あります。日本は昭和三十五年に四〇%あったのがいま一八%に転落しております。そして大赤字を呈しているわけであります。ほかの国は四〇%のシェアを持っている。  この違いはどこから出てきたかということでありますが、第一は、トラック輸送に対して日本の国鉄は投げてしまって、新幹線でもうければいいというふうな調子であった。これに立ちおくれてしまった。トラック輸送との競争に対してはコンテナ輸送、短距離を自動車で運んで長距離、中距離はコンテナでもって対抗する。この投資が非常におくれた。国鉄のコンテナ輸送のウエートは、きびしく見ますと五%ぐらいしかありません。諸外国では二十数%がコンテナ輸送でやっている。したがって、非常に競争力がある。この投資が非常に立ちおくれたということが一つの原因であります。  第二番目の原因は、外国ではトラック輸送、中長距離トラックというものは安いように見えるけれども、道路をこわす、それから公害、騒音がものすごく大きい。それから交通事故もものすごく大きい、そういうあたりまでコストに入れて計算をして国鉄と比較しようじゃないか。国鉄は騒音は比較的限られておりますし、それから事故はほとんど少ない、こういうふうな費用まで入れて、トータルコストを、国鉄と中長距離トラックとを比較しますというと、中長距離トラックはえらい高いものにつくということがわかったわけであります。ドイツでレーバーという交通省の大臣が、そういう調査を経済研究所で求めまして、こういう結果が出ております。それに基づきまして、中長距離トラックは実は安いように見えるけれどもほんとうは高いのだということで、その間の差額を埋めるために輸送税をとる、あるいはあまりこれを野放しにしないような規制をするというふうなことをやりまして、トラックに奪い取られる貨物国鉄に譲らせるようにしたわけであります。その結果、国鉄貨物輸送量というのが非常に大きなシェアを確保しておる。これは、大量に運べばそれだけコストは下がる。量産効果が出てコストは下がるわけでありまして、貨物黒字を維持しているわけです。ですから、日本はほかの国と同じように貨物に対する総合的な交通政策をとっておれば、貨物黒字になり、新幹線で黒字ですから、日本の国鉄は成長産業として隆々たる好成績をあげていたであろうというふうに考えられるわけであります。日本の五百キロという長距離の全貨物輸送に占める国鉄のシェアは二五%。長距離というのは鉄道が得意とするところです。それがトラックが三〇%のシェアを持っております。こういうふうにして、トラックの全貨物輸送に占めるシェアというのは、かつては一〇数%だったのが、いまや四〇%にはね上がってきておるわけです。つまり、トラックにどんどんとられちゃった。これをなぜ防がなかったかということがいまや悔やまれるわけであります。これが一つのポイント。  第二のポイントは、マイカーを野放しにしてきたということであります。もっとマイカーを押えておれば、旅客でもっとかせげたはずであります。地方でも、マイカーに対する規制対策は、大都市でもやられておりますけれども、地方でももっともっとやって、鉄道を利用しなければいけないのだというふうな指導が交通政策の面でとられるべきであった。こういう点が非常に立ちおくれております。  で、私の考え方は、道路輸送というものと鉄道輸送というものを、公害まで入れて全コストを比較するという考え方を入れなければいけない。道路費用だけではなくて、トータルコストで見なければいけない、こういう思想が現在重要なんではないかと思うわけです。そういう観点で、交通投資を考えるとすると運輸省、道路投資は建設省という、こういう分け方というのは基本的に間違っておると思います。総合交通の合理的な資源配分の観点から、交通省という形に行政を再編成すべきである。建設省の道路部門は運輸省と合併して、総合交通省とする。そして建設省の中の住宅部門なんかは都市計画住宅省というふうな形に行政サイドを変える。そういう考え方で総合的に検討しなければいけないと思うのです。日本は供給者のサイドから行政が組まれておりますけれども、いまやニードのサイド、需要のほうから行政組織というものを再転換しないと、非常に非効率なことになってしまうということがいえるのではないかと思います。  第二番目に重要な点は、産業立地を野放しにしてきた結果、大都市に人口と産業がどんどん集中してしまって、地方は人が乗らないから、赤字線がどんどんふえてくる。大部市のほうはものすごく人口がふえて、複々線化をしなければいかぬ。複々線化したとたんに、それは昼間はがらがらで、逆方向はがらがらでありますから、複々線化が進めば進むほど赤字はふえてまいります。両方で赤字になって、またが裂けてパンク状態、これがいまの国鉄の状況ではないでしょうか。つまり、赤字路線を撤去していけばいくほど地方は住みにくくなってくるから、どんどん大都市に集中し、それを受けて立つ赤字路線を東京都でやらなければいかぬ、大阪でやらなければいかぬということになるわけです。これは悪循環でありまして、これを断ち切るために産業立地の誘導をしなければいけない。その誘導が、日本では道路投資と、鉄道を全国に、特に新幹線をつくることだといわれておりますが、これは分散効果もありますけれども、同時に集中効果も持っております。御存じのストロー効果といいまして、麦わらで水を吸い上げるように、産業人口を大都市にむしろ集中する面もあるわけです。したがって、これを分散の政策手段と考えるというところに間違いがある。これは中立的な手段でありまして、必要なインフラストラクチュアではありますけれども、中立的な手段と見なければいけない。分散のための政策手段としましては、もっとほかの政策を選ばなければならない。たとえば産業基盤投資、これを公共投資でやっておりますが、大都市にあと追い投資をやっているのをやめて、地方に先行投資をかける。地域別配分を変えることであります。イタリアでは、南イタリアに対して、公共投資の半分は南部にしなければいけないという法律があります。そういうふうな法律でささえられておればだいぶ違ってまいります。  それから、政府、自治体、あるいは公社、公団がいろいろな資材を買っておりますけれども、この資材の購入のしかたを変えます。大都市周辺に工場をつくったものからは買わない。地方に工場をつくったものから優先的に買ってあげましょう。優先買い付け法というような、バイ・アメリカン・アクトのような法律をつくるわけです。そして政府部門はそういう形で積極的に地方に行った工場からものを買うようにやる。鉄道の場合ですと、車両やレールは地方につくったものから買うので、東京付近の車両工場からは買いません、こういうような立地因子を公共部門がコントロールする。つまり景気変動調節の場合に、いろいろな金融条件や、その他コントロールしておりますが、あれと同じように、資源全体の地域配分、立地因子を、変動をコントロールする、こういうことが日本では全然やられてこなかった。その結果、国鉄がそれのしわ寄せを非常に大きく受けてきているというふうにいえるわけであります。そういうふうな産業分散政策というものを、有効な手段をもっと打ち込んでいかなければいけない。たとえば大都市の工場に対して、過密地域に対して課徴金をとる。それを地方に出た工場に対して補助金を与える、これはたいへん賛成であります。これをぜひやらなければいけないでしょう。それから、大都市のオフィスの集中を防ぐために、これに対しては規制をやると同時に課徴金をとる。北関東にオフィスをつくったものに対しては補助金を与える。そうすると逆方向の輸送が使われるようになりますし、複々線化をどんどんどんどん一点集中型でやるよりも、環状鉄道をつくってお互いにオフィス間をつないでいくというふうな多角的な都市形成をやれば、国鉄負担はずっと助かるわけであります。こういうふうな立地のコントロールというのが全然やられてこない。そうすると、国鉄のようなものは最も大きなしわ寄せを受けるわけです。まず国鉄は隗より始めよでありまして、国鉄の資材購入は一切これからは東京周辺、大防周辺からはしないというふうな声をまずあげて、全公共部門にこれを呼びかけるということをやるべきではないかというふうに思います。これが第二のポイントであります。  第三のポイントは財政上の資金、これをやっていきますと、私は相当日本の国鉄というのは成長してくる、バランスもとれてくると思うわけでありますが、新幹線でもそうでありますが、全国新幹線を先にだあっとやってしまう。道路投資と並行しておりますけれども、道路投資は公害が多いし、市政も多いし、これはたいへん非効率であります。むしろやればやるほど環境が悪化するかもしれない。新幹線を先にやってしまって、そうしてこの新幹線、いま東海道新幹線は夜使いません。レールの補修をしております。しかし、山陽新幹線では補修の要らない部分がだいぶふえてきております。全国ネットワークになりますと、夜補修していては商売になりません。遠いですから。そうしますと、そういうレールに技術革新が進んできた場合においては、コンテナ輸送が全国新幹線で行なわれるようになる。そうすると、重トラックの競争力は圧倒的に低下してしまうわけであります。それから、人件費の上昇によってもトラックのほうは低下してくるでしょう。そういう長期的な展望に立って公共投資、特に交通投資の部門別配分を合理化することであります。先取りした公共投資の配分をやる。財政の分野では、道路輸送に対する投資よりも、鉄道投資を優先させるという原則、こういう形に持っていかなければいけない。道路輸送を発展させますとマイカーがますますふえますし、トラック、マイトラック、どんどんふえてきて、それが鉄道を食ってしまう。その結果、それを使う人は安いのを使っているように見えますけれども、社会全体では非常な公害と事故と、そういうもので悩まなければいけない、こういう形になるわけであります。これがマーケットフェーリュアといいまして、市場の欠落した状態、市場メカニズムに沿ってやっていたら、かえって資源配分をそこなう、資源の最適配分をそこなうという、こういう現象が起きてきた。いままでの競争原理に基づくコントロールができない分野がここに出てきたということでありまして、日本は何でも競争原理、競争原理と言っていますけれども、競争原理でやれる分野とやれない分野というものがある。特にスペースというものを利用する場合には、競争原理というのは非常に限られてくる。だからこそ交通企業というのは、公益事業体としてある程度割り当て的に輸送量を最適に配分してきた。そこヘマイカーとマイトラックが野放しになって、それを全部無秩序に崩壊させてしまった。これが発展すればするほど公益事業体というものは、シロアリが柱を食うように崩壊していく。崩壊してくると不便であるから、またマイトラック、マイカー、こういうふうになってくる。マイカーがふえるとまた乗り手が減って崩壊してくる。こういう悪循環になっているわけです。これをどこかで断ち切るということをやらなければいけないということになるわけです。そういうふうな財政の部門別配分についての配慮が基本的に欠けているのではないかというふうに思います。  さて最後に、そういうことをやっていくにあたりましても若干の時間を要しますから、その間の赤字補てんをしていかなければならない。これに対する考え方が日本ではどうか。諸外国では赤字補てんに対しましてどういう態度をとっているか。日本は千五百億の赤字でたいへんだ、たいへんだといっておりますけれども、ドイツは四千億をこえる赤字であります。フランスは三千億の赤字イギリスもこれに肩を並べる赤字であります。これを毎年必ず公共負担分はちゃんと補償し、赤字分は補てんする。毎年ちゃんと解消する。国家の重要な部門であり、この赤字は非常に効率的な投資である。ほっといて崩壊してしまって、マイカーやマイトラックがふえて社会全体が悩むよりもずっと効率的な投資であるというので、積極的に毎年これを解消しているから、累積赤字による利子負担というものは存在しない。千五百億は大きな赤字といっていますけれども、ほかと比べればたいした数ではないわけであります。こういうふうなものは過渡的に財政で埋めていく。公共負担分について、地方の過疎線の維持であるとか、あるいは通勤通学とか、公共負担分をちゃんと埋めてやる。そうすると出てくる赤字に対して補助金を出す。外国の場合は二千億が補償金として出され、あと残りが補助金として追加されております。まあこういうふうな考え方でやっていく。  この財源はどこから出てくるか。一つは租税負担率を上げるということもあるでしょうけれども、今年度のように非常にデフレギャップが大きいときには、思い切った公債を出すべきときであります。二兆円の公債しか使っておりませんけれども、実際にはGNPギャップが十兆円もございますから、こういうときには少なくとも四兆円か五兆円の公債を出すべきであります。赤字公債であります。こういう赤字公債を出してはいけないという法律が大蔵省の手を縛っておりますけれども、この法律は外国には存在しません。こんな法律は終戦後の供給力不足の時期にできた法律でありまして、こういう均衡財政にこだわっておると、景気後退のときに何の対策もとれない。雇用を不安定にするというので、ケインズの理論に従って、こういう超均衡財政論的な考え方というものはとっくの昔にやめております。日本はこれに縛られていつまでもこれを確保している。そうすると財政が思い切った手段をとれないから、つまり赤字財政を出さないから料金上げ公共料金上げてインフレが進んでくる。赤字財政はインフレだといいますけれども、現在ではむしろ赤字財政をやらない、赤字公債を出さないからインフレが進んでいるというふうに見るべきではないかと思います。  大体において公共投資というものに結びついた公債というものはいつでも出す。不況のときには赤字公債、これがあたりまえ。日本は不況のときは建設公債をふやし、好況のときは建設公債を減らすというフィスカルポリシーでありますが、これは一ランクずれているわけでありまして、こういう不況期には赤字公債を出さなければいけない。出さないからインフレが進む。そういうけちけち財政が、現在のインフレーションの基本的原因になっているというふうに思います。  現在国際的な関係から見ましても、日本は外貨が二百億ドルにいま達しようとする、アメリカ、ドイツを抜いて世界一の外貨保有国になろうとしております。こういう状況で外国は黙っていないし、ドルはどんどん日本に流入してくるでありましょう。円切り上げに再び追い込まれる可能性がある。こういうときにけちけち財政をとるということは、完全な国際的なルール違反でありまして、日本はこういうときには外貨減らしのために積極的に財政を拡大して、国際収支の赤字をつくってやらなければいけない。そういう任務を放てきしておる。こういうことをやればまたたたかれるということになるわけでありまして、そういう意味でも現在の大蔵省の財政方針が基本的に間違っている。それに手を縛られた現在の国鉄再建計画というものは、基本的な考え方の足りなさを示しておるというふうに思いまして、そういう点について再検討されることを御要望いたしまして、私の考え方を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  14. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、稲葉公述人にお願いいたします。
  15. 稲葉敏子

    稲葉公述人 国鉄運賃値上げにつきましては、平素国鉄を利用する一人として、また他の公共料金も一斉に値上げされようとしている昨今の情勢からも、無条件には賛成しかねますが、政府財政再建対策として、長期かつ多額な助成金をもって抜本的強化をはかられる姿勢を示されている以上、私たちも過去百年、国内交通の大動脈として国民生活の向上と経済の発展をささえてきたその役割りの重要性を考えますれば、今後ともその使命の遂行を強く期待せざるを得ませんので、ここに国鉄運賃改定によって必ずや将来、安全、サービスの向上を還元されるものと信じ、条件つき賛成するものでございます。  実は私ごとでおそれ入りますが、私は三K赤字の最右翼と目されております医業をもって生計を立てておるものでございます。ともに内部にいろいろな矛盾を含んで赤字に悩んでおられる国鉄従業員の方にも、近く接する機会がございまして、いろいろ伺って、今回の問題に関しましては他人ごとと考えられず、関心を持っておりました。そこで申し込みさせていただきました。せっかくこのような機会を得ましたので、諸先生に一利用者として、日ごろこのような問題に関してどう受けとめているかということを述べさせていただき、参考に供したいと存じます。  まず第一に考えますのは、国鉄財政の悪化は、経済社会の変動もさることながら、輸送構造の変化にいち早く対応して合理化と近代化をはかられる努力とくふうをなされたとは申せ、見通しの甘さが大きな要因と存じます。一日も早くその改善を強く望むものでございます。しかしながら、一般企業のごとき経営合理化のみを急いで、三十九年三河島の惨事を例にあげるまでもございません。安全性を忘れられては困ります。  四月二十五日午後十一時、十二チャンネルで、ラッシュ時の国鉄ははたして安全かという討論がなされておりましたけれども、争論となっておりましたATSは、安全でないと組合はいい、国鉄側は組合のその解釈に問題があるといってつばぜり合いのみで、司会者はただヒステリックに、利用者は安心して乗っていられないと問題を提起するのみで、私には正直なところどこに問題があるのかよくわかりませんでした。テレビ出演の機会なのですから、労使とももっとわが保身のみのことばの遊戯に終わらせずに、国民に広く理解を求め、そのような姿勢を常に示しているんだということを私たちによくわからせていただくという、そういう基本的な姿勢を忘れては、私たち利用者不在であると私たちが感じても無理からぬ話になるのではないかと思います。これでは私の二人の子供は、現在国電によって通学しておりますけれども、ただ毎日無事に帰ってきてほしいと祈るだけで毎日を暮らさなければなりません。  たとえば慢性化しているラッシュ時の解消の問題につきましても、過密ダイヤを世界に誇るほどの国鉄が、これ以上増発が不可能なら、なぜ不可能なのだということを強く皆さまが率先して国民に訴えて、職場と住宅の接近政策を、むしろ政府に突き上げるというようなことを、努力をなさられてないのでしょうか。国鉄が国民と一緒にあるのだという意識が希薄なのではないでしょうか。私はむしろそういう政策が先決だと存じます。  最近の国鉄労組の方々の一連の行動は、利用者にとっては迷惑の一語に尽きます。しかし、ストップされ、この混乱を見るまでもなく、国鉄の存在は大であります。だとすれば、国鉄経営の維持のため、国の助成か、または運賃改正のいずれかの処置を講ずることが必要になるわけでしょうから、政府におかれましては、大幅な財政措置を講じていると聞いておりますし、それでもなお赤字であるとするならば、すべて国家で補うべきだ。そうしなければ、物価にはね返ってくるといわれる意見もわかりますけれども、財政援助すなわち税金によってすべてをまかなおうとする考えは、むしろ現在日本の資本主義社会においては片手落ちで、運賃のように利用者が特定できるものについては、その度合いに応じ利用者負担をするほうがむしろ公平と存じます。ならば、今回二四とも五%ともいわれております値上げの幅については、はたして妥当かどうかという問題になりますけれども、タクシーは一年二度も上がりました。これは公共性云々という点では非常に小さな問題だとされているかもしれませんけれども、私鉄国鉄運賃値上げ上げております。また一番考えなければならないのは、国民全体の所得が年々倍増されているということでございます。これは今回のように、大手労組の闘争が大いに功を奏しているのだという見方をなされる方もあるかもしれません。しかし片方では、インフレと見るか、自然増によるものであるかという見方は別といたしまして、諸物価の高騰を招いていることも事実でございます。そうしますと、貨物六年、旅客三年据え置いている国鉄運賃が、はたして他の物価との比較として見ましたならば、そう商いとはいえないのではないかと思います。これは私一人に限らず、一般の方々が大かたそのように感じているようでございます。物価の高騰を安定させる政策ならば、もっと値上がりの激しい生鮮食料品などは、生産者育成、計画生産、流通機構の改革など、直接的、効果的な方法は幾らでもあると存じます。運賃値上げのなかった年も物価は上がっております。物価問題はそれこそ超党派で真剣に問題解決に当たっていただきたく、諸先生にこの際深くお願い申し上げます。  私思いますのに、国鉄は読んで字のごとく日本国有鉄道でございまして、日本国民全体の財産であります。百年愛し、親しまれ、育ってきたものでございます。ラッシュ時に詰め込まれるときは、人間、現金なものでございますから、ただでも高いような気にもなります。しかし私、最近ヨーロッパを回って感じましたが、日ごろ接する職員の方々は、日本におきましては概して勤勉、親切でございます。台数の豊富さ、時間の正確さも世界に類を見ないのではないかと思います。このような点は高く評価されてもよい点だと思います。  以上の観点からしましても、一日も早く労使関係を正常化し、運営の健全化をはかり、その使命を全うしていただきたく、そのためには必要最小限の運賃改定を行なうことも、利用者負担することも、それはやむを得ないことと考えます。これは私一個人に限らず、一般庶民の偽らない心情でございます。諸先生の全般的な御努力をお願い申し上げ、私の公述を終わります。(拍手
  16. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、工藤公述人にお願いいたします。
  17. 工藤芳郎

    工藤公述人 国鉄問題につきまして、国有鉄道運賃法国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案というもので、私初めてこういう場に出るわけでありますが、運輸省の鉄道監督局でおつくりになりました資料を読ませていただきました。これに基づきまして、私は国鉄運賃値上げ反対する、国有鉄道の一部改正について反対をする意見を述べたいと思うわけでありますが、その前に、国鉄運賃といったようなものが、皆さん方の供述を聞きましても、すべてこれは公共料金であるという点については意見が一致しているわけでございます。その点について私は調べてみたわけでございますけれども、現在の佐藤内閣が成立されましてからと、それ以前の比較をちょっとしてみました。佐藤内閣が成立する前の昭和二十六年から三十九年の間、日本が独立をしたといわれてからでありますけれども、この十三年間で政府関係する公共料金が三十九回値上げをされております。佐藤さんが四十年に就任をされましてから七年有余でありますけれども、今回の値上げを含めますと、すでに四十回の値上げになろうとしておるわけであります。私たちは、公共料金がわずか七年有余で、それ以前の十三年間で三十九回であったものが、約半分の年月で四十回を数えるということに対して、生活が非常に圧迫されるというような状況にあることをまず最初に申し上げないわけにはいかないわけであります。また、政府関係の皆さん方が御尽力なさいまして、公共料金値上げのストップということにつきましても、昭和三十六年の三月、同年の七月、三十九年の一月、四十四年の三月、そして四十五年の十二月と、計五回の公共料金のストップをおっしゃっていただいておりますけれども、これがなかなかうまくいかないというようなことで、私どもは生活に非常にあえいでいるわけでございます。  まず、この運賃値上げ法律案の提案理由の説明を見せていただきましたが、この中で今回の法改正の理由の第一が、「自動車輸送の発達等による輸送量の伸び悩み」ということが一つと、それから二番目が「ベースアップ等による人件費の大幅な上昇等のため」ということにあるわけでございますが、この点について私たち消費者団体のほうで調べてみたわけでございます。  まず第一に、「輸送量の伸び悩み」ということでございますけれども、昭和二十五年を一〇〇といたしますと、指数の上で四十四年が二八二、四十五年で二八六ということでございます。数字からいいましても、昭和四十四年が六十五億四千百万人の輸送人員がありますし、四十五年が六十五億三千四百万人というような状況になっております。また貨物輸送についてみましても、昭和二十五年を一〇〇といたしますと、四十四年で一六二、四十五年で一六七、やはり全体としてはふえておるようでございます。国有鉄道の出されました資料によりましても、貨物輸送との関係等では相対的に減っているという点はございますけれども、やはり全体としては量的に伸びているということでございます。  貨物輸送でありますと、特にコンテナ輸送昭和三十四年以来約四・五倍の伸びを示しております。また専用線の占める割合も、昭和三十五年の四六・三%から四十五年の五七・九%というふうに伸びております。また物資別専用貨車、これも昭和三十九年から四十五年の十月間の統計を見てみますと、たとえば自動車を輸送する車両は当時二両でございましたけれども、これが九百二両に非常にふえております。それから鉄鋼用の車両でありますけれども、これも昭和三十九年にはゼロであったものが、三百二十七両というふうにたいへんにふえております。石油用の車両も、当時百六十五両であっものが七千七百四十五両というふうに大幅にふえておるわけでございます。こういうふうに見てみますと、やはり貨物等は特に質的に高い水準で伸びておるということで、この点について見ますと、これが今回の大幅な運賃値上げの理由になるということについては納得しかねるわけでございます。  第二番目の問題につきまして、「ベースアップ等による人件費の大幅な上昇等のため」という理由が掲げられておりますけれども、これについて見ますと、国鉄経営面の推移を見てみますと、昭和三十五年を一〇〇といたしますと、借金の返済は八七六%、利子の支払いが五七六%、人件費は二九四%、経営費は二九五%。人件費の増は二九五%の経営費よりも落ちるわけでございまして、経営面を圧迫しておるのは、主としてやはり借金の返済と利子の支払いであるというふうにいわざるを得ないわけで、この点につきましても、人件費の大幅なアップというようなことは特にいえないのではないか。さらに民間の賃金の上昇率、これは「賃金事情資料」等によって調べてみますと、昭和四十一年の民間が九・九%、国鉄の人件費が九・六%、四十二年が民間が一二・一%、国鉄一一・七、四十三年が一三・三に対して一一・八、四十四年が一八・六に対して一三・五、四十五年が一六・三の民間に対して国鉄が一五・四ということで、特に大幅な上昇が国鉄の人件費の中にあったというふうには見えないわけでございます。  以上の点につきまして、まず鉄道監督局が出されました資料の中身については、どうも納得しかねるということでございます。  次に、さらに中身を検討してみますと、けさから言われましたように、赤字ということがいわれておるわけでございますが、先ほどどなたか、先生方が言われましたように、赤字という点では、旅客運賃貨物運賃を分けて考えてみる必要があるわけでございまして、昭和四十年までは政府のほうで公表なさっておられます。この点では、昭和三十五年から四十年間の公表数字によりますと、旅客で二千九百二億のプラスでございます。貨物で一千六百三億のマイナスでございます。四十五年度の一番新しいところでは、ことしの三月十七日の予算委員会で磯崎総裁が御答弁をいたしておりましたところによりますと、新幹線で一千百億のプラス、その他の旅客で六百六十三億のマイナス、トータルで四百三十七億のプラスなんだ。貨物では逆に一千八百三十二億のマイナスが出ておるということでございまして、どうも旅客の点ではトータルとして黒字である、こういうことが出ておるわけでございます。そういう点につきまして、やはり私たちが利用するのは旅客でございますので、旅客運賃赤字という理由によって値上げをされるということについては筋が通らないのじゃないだろうか。たとえば、受益者負担というようなたてまえをかりにとったといたしましても、私たちがこの点について負担をする筋合いはないのじゃないか。むしろ貨物の方々のほうが受益者として優遇されておるのではないだろうかという気さえするわけでございます。  そこで、貨物の点を見てみますと、今度の値上げでも平均二四・六%といわれておりますけれども、これには内訳がございますわけで、一等級だとか四等級だとかいままでございましたが、今度は三等級に分けられるそうでございます。具体的な事例を見ますと、時計だとか、自動車だとか、工作機械といったようなものは六・七%の値上げだ。現三、四等級のもので、私たちの生活に密接な関係がありますお米、麦、タマネギ、下級鮮魚といったものは二九%の値上げになっておるということで、この点についても、平均二四・六%とはいいますけれども、中身で見てみますと、どうも私たちの庶民生活のほうはぐあいが悪い、こういうふうに私たちは思わざるを得ないわけでございます。  さらに、実例をもう一つ申し上げますと、これは現行の運賃の基準によって計算をしてみたわけでございますが、私は中央線を利用しておりますけれども、東小金井というところがございます。武蔵小金井の手前ですが、ここからある自動車会社、日産の自動車が運ばれております。これの東京−仙台間を計算いたしますと、一般の国民では、もしかりに私が送るといたしますと、一台について一万七千二百十円の費用がかかるわけであります。そのほかに梱包費用だとかいろいろなものがかかりますけれども、もしこういう日産さんやトヨタさんがお運びになるといたしますと、わずか四千七百円で運ぶことができるということで、私たちのほうもぜひこういうふうに安くできないものだろうか。それからまた、どうしてこういう格差があるのであろうかというような疑問も、率直に出さないわけにはまいりません。  次に、第三番目の問題といたしましては、赤字をつくってこられた背景でございますけれども、すでに何人かの識者が申されましたように、政府からの借り入れ金あるいは民間からの借り入れ金が、四十五年度まででもすでに二兆六千億、現在では三兆円にもなんなんとする、こういうふうな借り入れ金の問題、支払い利子でも、私たちが計算いたしましても一口に約五億に近いような利息をお払いになっている、こういう財政ではたいへんではないか。すでにいままでの間に、政府のほうで一般会計からもっと大幅に支出できなかったのであろうかというような点がございまして、この点についても、国鉄の幹部の方々や政府のほうで、すでにもっと配慮をされておられてよかったのではないか。私たち国民は一向に知らなかったと言っては京ことに申しわけないわけでありますけれども、ついぞ知らなかった。ましてや、国から国鉄がお金を借りていたんだというようなことさえ、普通の消費者の皆さんは知らなかった。国有鉄道なんだから、当然そんなものは、国民から選んだ国会の先生方が、ちゃんとしかるべく措置をされておったんだろうというふうに、実は考えておったわけでございます。ことし、新年度で千百二十八億、前年度に比べますと非常に大幅な一般会計からの支出がなされるそうでございますけれども、これはさらにさらに出していただきたい。赤字の問題と比較してみますと、利息の支払いにも満たない支出では、やはり赤字の解消にはならないのではないだろうか。ましてや、今回の計算どおりにもしかりにいくとしましても、増収が一千八百億ぐらいでございますから、これにももちろん満たないということで、どうもこの数字は、赤字を理由とする値上げは納得できない。また、先ほどどなたかお詳しく述べられましたので申し上げませんが、諸外国に比べましても政府支出が圧倒的に少ないという点も問題であろうと思います。  次に、第四番目の反対理由といたしまして、国鉄運賃というものは公共料金の中でもやはり横綱格であるというような点で諸物価の高騰を誘発して、国民生活を圧迫していくという点を見のがすことはできません。特に同じ競合関係にあるような私鉄運賃との格差はたいへんな状況でございます。小田急と国鉄の新宿−藤沢間がよく新聞紙上でも比較されておりますけれども、これは約三倍の格差が出るわけでございます。また、貨物運賃値上げについて見ましても、先ほど申し上げましたように、生鮮食料品といったようなものの値上げがされます。かりに下級鮮魚十一トンを釧路から東京駅まで運ぶといたしますと、現行では五万八千六百円、改定でいきますと七万六千百円で、差額が一万七千五百円、つまり二九・九%の上昇にこういう面ではなる。先ほどと若干ダブリますが、申し上げておきたいと思います。  それから、今回の運賃値上げは、どうも国民への見返りが非常に少ないのではないかということがはっきりいえるんじゃないだろうかと思います。最近起こりました船橋の事故の問題でも、団地の人たちや周辺の人はだいへんな危険を感じ、また今後に対して不安を抱いておるわけでございます。中央線が二五六%、山手線が二四八%、横須賀線が二八六%というような混雑度でございます。私鉄運賃値上げのときに、近鉄の社長さんがおっしゃいましたが、二四〇%というのはどういうことなんですと言ったら、新聞が読めますと言うのですけれども、私どもみたいな背の低い人間は、満員電車の中では新聞や雑誌を読むわけにはいかない。六尺豊かな方は読めるかもしれませんけれども、そういうわけにはまいらない。二平方メートルに六・六人の人間が入っているような状況でございます。これが二四〇%ですから、山手線でも中央線でもこれをはるかに上回るような状況が現にあるわけで、いつ私どもは生命の危険にさらされないとも限らない。ほんとうに日夜生命の危険にさらされながら通勤や通学をしておるというような現状でありますが、これに対する具体的な早期の解決方法が全く見当たらないということでございます。  先般、船橋事故のときに、私どもは国鉄の当局に申し入れに参りました。そのときに、国鉄の当局の方は、総務課長さんでございましたけれども、はっきり申しました。この問題はどうして後退しているのかと言いましたら、これは何度お約束をしても、実際は実行ができないから、こういうことをから約束することはかえって失礼に当たるんだということで、今度の計画では後退をさしておるんだ、こういうことを言われました。そこで、次の機会に運輸大臣にお会いしまして、この点は強く運輸大臣に申し入れをしたわけでございますが、大臣は、いや、そういうことは絶対にさせないということで、政府の責任ある立場として御回答いただいたわけでありますけれども、運輸委員会の諸先生方におかれましても、人ごとではなく、私たちの生命にかかわる問題でありますから、これについては具体的な早期の解決策をぜひともお願い申し上げたいわけでございます。  こういうふうな実情にある国鉄再建しようということで、関係各位の方々に長年御尽力をいただいておるわけでありますが、この点につきまして、私はやや疑問を申し上げたいわけであります。  一つは、国鉄財政再建をされる方々の会議がございますが、これは国鉄の運営、広い意味での運営と見て差しつかえないと思いますが、この点について、私はちょっと疑問に思っております。御存じのように、日本国有鉄道は、公共企業体といたしまして政治上、財政上、人事上、これは自主的な立場である、これがたてまえでありますし、この基本法は国有鉄道法でございます。国有鉄道法の第二十条を見ますと、兼職の禁止というのがございまして、国鉄の役員の方々がいろいろな面で制約を受けております。その三項を見ますと「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であつて日本国有鉄道と取引上密接な利害関係を有するもの又はそれらの者が法人であるときはその役員」というようなこと、こういった方々は国鉄の役員にはなれないことになっております。また第四項では「運輸事業を営む者であつて日本国有鉄道競争関係にある」方はなってはならない、これは当然のことでございます。ところがまさか国有鉄道法をそのまま適期される国鉄理事の方方や常務理事の方々がこういうことになっておられないことは承知しておりますけれども、実際の国鉄の運営に携わる、また国鉄再建というようなきわめて重要な基本的な問題に関与をされておられます再建推進会議のメンバーを私は見たわけでございますけれども、この中には、はっきり申し上げまして「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする」というような方々はたくさん入っておられます。製鉄会社の社長さん、あるいは軽金属会社の社長さん、あるいは螢光灯などをつくっておられます電機会社の社長さん、あるいは「運輸事業を営む者であつて日本国有鉄道競争関係にある」たとえば私鉄でありますが、私鉄会社の社長さん、こういった方が実はこの中に入っておられるわけです。こういう点を見ますと、脱法行為というふうにきめつけるわけにはまいらないと思いますけれども、この法の精神にどうも抵触するのではないだろうか。つまり日本国有鉄道の公正中立な健全な発達という点から見て、やや疑問に思うわけであります。こういう点についてもやはりこの機会に検討していただきたいと思います。  それからもう一つは、国鉄運賃等を値上げをする場合に、最終的には国会で御審議いただくわけでございますけれども、その間に運輸審議会というものがございます。これは先般審議会の公聴会に私も出席する機会をいただきましたが、その席ではあえて特に申し上げませんでしたけれども、審議会そのものは非常に大半なものでございますが、やはりその運営といいますか、一つは機構上の問題がございます。これはやはり現在の段階では、非常にこの国鉄問題というものに対しては  特に国鉄だけではございません、交通関係というような公共性の強い問題につきましては、幅広い国民が関心を抱いておるわけでございますので、そういう点については、ぜひともこういう構成メンバーにもそういう幅広い階層を参加させていただけないだろうかという点でございます。また運営の面につきましても、今回の国鉄運賃の問題でございますと、二月八日に運輸審議会が開かれまして、二月十二日にはすでに答申が、非常に早い答申でございますけれども、すでにそれまでに相当準備をされておったんだろうとは思いますけれども、ほんとうにこれは審議が十分なされたのであろうかというような点についても疑問に思うわけでございます。こういう点についても、このような機会に、審議のあり方について、最終的には国会で論議をされるわけではございますけれども、なお御検討をいただきたいと思うわけでございます。  最後に、それでは国鉄をどういうようにして、今回の法改正などに対してやっていったらいいのかということでございますが、一つはやはり国鉄というものが企業採算ベースの問題として取り扱われてはならないと思います。やはり公共交通機関としてあるわけでございますから、こういう観点からもっと位置づけられるべきではないだろうかと思います。そういう点から見ますと、借り入れ金などをやはり国が肩がわりしていただきたい。長期負債の国庫負担といいますか、こういう点。旅客貨物輸送などにおける各種の公共負担については国の予算に所要の措置を講じて、やはり全額国で負担をしていただきたい。これは私たちの納めた税金の適正な配分の問題でございますけれども、絶対値として国にお金がないというふうにわれわれは考えておりません。国に予算がないというふうに考えておりません。やはりこれは総理みずからがしょっちゅう言われておりますように、国民福祉、国民本位の民生予算優先の形で、ぜひともこういう問題については大幅に出していただきたいと思うわけでございます。また地方閑散線の廃止や、駅の無人化、小荷物の取り扱い駅の廃止などというものも今回関係があるようでございますけれども、これはぜひともその地域の住民と十分お話し合いをいただきまして、そういう合意の上で措置を講じていただきたいと思うわけでございます。  時間が参りましたので、私の意見を終わらしていただきます。(拍手
  18. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして、公述人各位の御意見の開陳は終了いたしました。  力石公述人には、御都合で早めにお帰りのようでございますが、きょうはお忙しいところを御出席いただきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)  午後一時二十分から公聴会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  19. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き公聴会を開きます。  公述人に対する質疑を行ないます。  なお、質疑の際には公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  20. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 公述人の皆さま方、本日はお忙しい中を御出席いただき、われわれ運輸委員会委員審議に際しまして非常に貴重なる御意見をお与えくださいましたことに対し、まずもって厚く御礼を申し上げます。それぞれの公述人の先生方、それぞれの立場でいい意見をおっしゃっていただきまして、私たち国会審議並びにいままで国鉄問題を研究してきた者といたしまして、ある面では非常に反省させられ、またある面では、そうだ、そういう点があったということ等も本日気がつくような面もあったわけでございます。   〔委員長退席、宇田委員長代理着席〕 われわれは国政を相当する国会議員として国鉄のあり方というものについては平素いろいろ勉強しております。また、私は自由民主党でございますが、自由民主党内部におきましても、昨年の六月からこの案をつくり上げます十二月末までに延べにして約百数十時間、二百時間になんなんとする時間をさきましてそれぞれの問題について深く検討し、しぼってまいりました。またこの当運輸委員会におきましては、やはり昨年来運輸委員会の中に国鉄問題小委員会をつくりました。これは数十時間、まあ四、五十時間ではないかと思いますが、その程度にわたりまして勉強してまいりました。そして最後には、運輸委員会における国鉄問題小委員会の最後の場面におきまして各党の国鉄再建案というものを出していただきました。出していただくようにお願いしましたのはかく言う私でございます。その場合に私自身にとりましてはいろいろ項目別に分けて各党に対してお願いしたわけでございます。  いま、その当時の小委員会における速記録がここにございますが、各党にお願いした項目別と申しますのは、まず一が、再建期間を、昭和四十四年から五十三年まで、つまり再建期間を在来どおりの再建期間でいくかいかないか、それを五十六年まで延ばすのはどうかといった点についての各党の意見。その次は、今後の国鉄輸送量と運輸収入をどう見ていくか、またどういうようにしなくてはならないかという問題であります。三は、先ほど来やはり御議論に出ておりましたが、あまり強く出なかった公共負担の是正の問題でございます。すなわち、通勤定期、通学定期、学割りあるいは新聞雑誌の公共割引、その他におけるところの暫定割引、貨物における特別措置、こういった問題。そしてそれに伴うそれぞれの政策効果というものはどのように出てくるかという問題。四番目は債務の取り扱いでございます。昭和四十六年度末において三兆一千億に債務がなる。その際の債務としては二通りある、政府管掌債務とそれ以外の債務、一兆七千億と一兆四千億、合わせて三兆一千億になる。これに対してどういう措置をしたらいいかといった問題。それからそれに伴う効果。それからこれはたびたび諸先生方からも意見が出ましたが、幹線系区と地方交通線とに分けた場合の地方交通線の運営、取り扱いをいかにするかといった問題、これが五番目でございます。六番目は人件費に対してどういう見方、態度をとるか。さらにこれに含めてベースアップをどのように見るかという問題。七番目は市町村納付金に対する態度。八番目は政府出資をどうやっていけばいいか。今日八十九億六千万円の国鉄資本というのでは過小過ぎるが、これに対する政府出資をどうやっていくかといった問題。あるいは工事規模をいままでの工事規模でいいのかどうかという問題。複線電化の問題もからみ、また福岡の場合は新幹線が線増工事であるといった問題等々も加味しました工事規模をどのようにしていくか。それから十番目は新幹線建設に対してどういう工事規模でどういう方法でどういうところをやっていくか。さらにそれが開通に伴うところの収入増を再建の中にどのように織り込んでいくか。十一番目は、鉄道建設公団の中の特にA・B線の取り扱いをいかにしていくかという問題でございます。それから十二番目は、きょう一、二の先生方がおっしゃられましたが、関連事業をどうさしていくかという問題であります。そして十三番目は、その他ということで、ほかにもいろいろございます。たとえば鉄道の施設を利用して営業されておる方々から一%、特別納付金をもらったら幾らになるかとか、あるいは国会議員のパスを廃止したらどうなるかとか、いろいろな、多方面にわたる議論をやってきたわけでございまして、ここへ各党の全部の案があるわけでございます。これは本日陳述いただきました先生方に一度ぜひ検討していただきたいと思います。きょう陳述していただいた方々の中に、政府与党の無能ぶりをおっしゃった方等もありますけれども、これについては触れません。私たちは私たちなりの立場で必死に勉強してきたわけでございます。  そこで質問に入るわけでございますけれども、今回の案を政府と自民党が中心になってつくったわけでございますが、特にその中で昭和四十四年につくった十カ年の措置法が、なぜ早くも破綻を来たしたかということが私たちの大きな眼目でありました。そしてまた今回あらためて改正するこの措置法、十カ年、五十六年まで延ばした場合に、はたして国鉄が国民の皆さん方に期待していただけるような姿で再建できるかできないか、こういう問題も議論いたしましたが、私たちが今回国鉄がこういうような立場に追い込められた原因、いろいろございます。いろいろございますが、一つはきょうお述べいただきましたように、借り入れ金の増大並びにそれに伴うところの利子という問題がございます。一つは人件費の問題がございます。一つ赤字路線の問題があるわけでございますけれども、この三つのはっきりした赤字の原因というものと国鉄再建に伴う性格として企業性と公共性をどういうように配分していくかという問題、さらに今回の運賃改定あるいは再建両方の案を通した場合の国民に対する見返り、国民皆さんに対するサービスの向上はどういう面で実施さしていくかということ、広範にやったわけでございます。  そこでひとつ清水公述人にこれから私お伺いしたいと思いますのは、昭和四十四年に運賃改定をやりました、そのときの増収額は千三百五十億であります。ところが清水公述人御存じのように、国鉄——きょうもまた春闘の賃上げ回答の問題が出ておりますが、一%国鉄職員の賃金アップをやりますと、八十五億要ります。千円賃金のベースアップをやりますと百三十五億要ります。昭和四十四年の国鉄の諸君のベースアップはたしか一三%だったと思います。これで千百億であります。国鉄の自然増収はわれわれは年間六%と見ております。そして運賃改定を平均一三%前後にやりましたけれども、昭和四十四年度だけで、運賃改定分の増収分の七割五分はベースアップ分に食われました。四十五年は運賃改定をやっておりません。しかし、同じようにベースアップを行ないました。これはよく皆さん方が言われるように、国鉄の労働者といえども食える賃金がなくてはならないということでありますが、今の運賃改定をわれわれは基本的には反対であるけれども、国鉄再建のための一つの方便としてやらざるを得ない。その増収見込み額は本年度千七百七十億であります。少し数字は違うかもわかりませんが、千七百七十億、きょうかりに一万円の賃金の勧告が出たとする。政府並びに国鉄がこれを完全に実施いたしたとしますと、その所要額は千三百五十億であります。そうしますと、千七百七十億、これも四月一日からの実施で千七百七十億にいたしておりますが、この運賃改定の実施がおくれる、ベースアップは四月から完全実施でさかのぼってかりに行なうといたしますと、ことしの運賃改定分はまるまる全部ベースアップ分に持っていくわけであります。もちろん公述人の皆さま方が言われておったように、基本的な施設分野においては国家がこれを行なうべし、そしてその他の輸送に伴うところの経費というのは利用者負担すべし、こういう御意見もございましたが  ほかにもいろいろわれわれは一兆円の出資とか利子補給とかいろいろいたしましたが、人件費というものと国鉄運賃増収というもの、ことばをかえていいますと、生産性向上の範囲内でこれをカバーするかどうかという問題がよく議論されますが、国鉄問題にそれを当てはめようとしたら私は無理だと思います。無理でありますけれども、一体どこら辺でこの人件費というものと国鉄輸送力増強という大きな任務、サービス改善という任務とそれに加うるところの国鉄職員のベースアツプというものを調和さしたらいいだろうかという点について御意見を承りたい。これは十二万人の自然減によるところの削減とかなんとかは別にしまして、今日ただいまにおける問題としてどうか。念のために申しますと、私たちは、国鉄は一年間に一万五千人退職される、そのうちの一万一千人ないし一万二千人は採用しない、そういう方法での十一万人の削減という案を出しておる。ところが一年に一万人やめてもらいましても、一人頭の年間経費は百七十万円といたしますと、一万人一年間に少なくなっても百七十億の節約にしかなりません。いま申しましたように一%のベースアップをやっても八十五億、千円のベースアップをやっても百三十五億という問題に遭遇しておるわけですが、それも別にしまして、単純に運賃改定運賃収入というものと人件費との関係についての御意見を承りたい、こう思います。
  21. 清水義汎

    清水公述人 御意見を申し上げたいと思いますが、いまの御質問の内容は単純なようでありますが、きわめて複雑な内容を含んでいると思いますので、二、三の角度から私の考え方を申し上げてみたいと思います。  一つ合理化との関係だと思うのです。業務量と職員数を見ておりますと、昭和三十年を一〇〇といたしますと四十五年には一七八という指数になっております。いわば国鉄一人当たりの労働者の業務量が一人当たり換算車両キロにいたしますと、三十年が四十に対しまして四十五年は七十一となっております。いわゆる先般の改定の行なわれました時点、四十四年を見ましても、六十六から七十一という形で、生産性の増強と国鉄労働者の業務量との関係は相当の成果をあげているというふうに私は見なければならないと思います。これが第一点であります。  それから第二の点でございますが、確かに御指摘のように自動車のような労働集約的産業ではありませんけれども、自動車交通とは違いますけれども、一般の直接生産部門と比べますと、交通企業の場合には労働集約的産業にむしろ近いような側面も持っております。そういう点で特に輸送の安全性ということを考えますと、単なる動力車乗務員以外の者をも含めてある程度の要員の確保、しかも注意力というものが十分に行ない得るような労働条件の背景の中で要員を確保しておきませんと安全性が阻害されてくる、こういう側面がございます。そういう点で国際規格を見ますと、国鉄当局の資料拝見いたしましても欧米の約倍に近い労働生産性をあげているということを考えますと、その意味では国鉄の職員管理が非常に悪いというふうには私は考えておりません。  それからベースアップの点でございますが、最近のベースアップが実質賃金の増加ということであれば、御質問のような趣旨がきわめて重要な問題になってくると思います。しかし小売り物価指数というものを中心にいたしまして消費生活の中での物価の値上がりが十数%というような現状の中では、国鉄のベースアップをパーセンテージに見ますと、昭和四十五年の場合が一般民間賃金の平均賃金が七万四千四百三十六円、国鉄の場合の基準内賃金の平均が七万五百六円という形で、民間の平均賃金より約四千円ほど下回っております。春闘での上昇率を見ましても、民間が一八・一%、国鉄が一五・四%、四十六年におきましては一六・五%、国鉄が一四・三%ということで、実質賃金の増加という形を見ますと、さほど春闘でのベースアップ分ほど上がっていないということになりますと、物価上昇との関連の中で公共料金なり国鉄経営との関係という点でとらえませんと、単なる賃金問題なりベースアップ分だけの問題としては言いきれない問題があるのではないか、かように私は考えております。
  22. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 清水公述人、いまのお話は、私、実は福岡における地方公聴会もやってきたのです。同じようなことを言われるのですが、その財源をどうするかと言っておるのです。アップの率とかその何ではないのです。われわれが国鉄再建を考える場合には、財源問題を、先ほどの公述人の皆さん方がおっしゃったように国民の負担からやるか、国民の税金から入れるか、国鉄内部の合理化から出すか、三つしかないのですから、私たちはその財源問題を考えないといけないわけです。国鉄の職員といえども、労働者諸君といえども国民並みのアップはほしいだろう、それはわれわれわかるのですが、その財源をどうするかということについての御意見を承りたい、こう思うわけであります。
  23. 清水義汎

    清水公述人 この財源の問題は、今度の運賃改生につきましては人件費の上昇というのも値上げ一つになっておりますから、総体的な、総原価の中での赤字という形の中で運賃値上げ申請をされているわけであります。これは値上げの理由として考えておるわけであります。その場合に、値上げの理由及び背景という点については先ほど申し上げたとおりでございます。そうなりますと、財源上人件費だけをどうするのかということになりますと、現在の国鉄の会計制度というものを大きく変えていきませんと、財源だけは経常経費として、考える、それでは運賃値上げの場合も経常経費だけで考えるということになりますと、ある程度運賃分で負担をするということになります。問題は運賃を経常経費だけで考えるか総原価で考えるかということにかかっておりますので、その辺との関連の中で検討していただきたいというふうに考えます。
  24. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 時間がまいりましたのであと一点だけ。私、意見を述べ過ぎたのですけれども、これはわれわれにもある面では努力もさせていただきたい、こう思うわけでございます。経常経費分以外のものについては、工事補助から、今度は一兆円の出資とかいろいろやったわけですが、牧野公述人に一言簡単でよろしいですからお聞かせ願いたいと思うのですけれども、牧野公述人運賃値上げ条件ということでいろいろおっしゃっていただきました。特に便乗値上げを押えろ、国鉄自身の合理化をやれ、地方閑散線のやり方を考えろ、他の事業体との差というものを考えろと言われましたのですが、私たち昨年の暮れ、自民党の総合交通体系をつくりました。この場合における、昭和六十年度における鉄道、海運、陸上、こういうもののシェアをきめる問題で大激論を実はやったわけです。具体的に申し上げますと、経済企画庁と運輸省と建設省と通産省では、昭和六十年度における自動車の台数についても、片方は四千二百万台と言う、ある役所は三千六百万台、ある役所は三千八百万台ということで、きょうは多くの皆さんからマイカーを野放しにしておったのはけしからぬというお話がございましたが、その自民の分と、政府の分も——政的与党ですからわれわれはずいぶん激論して、七カ所ほど修正さしたのです。修正さしたのですが、そのときに、総合交通体系をつくって行なっていく場合に、自然の経済の流れのままの姿にしたほうがいいのか、そこに少し指導性を入れて、ある公述人はコントロールしろと言われるが、コントロール性をつけたらいいか。自然の経済の流れとコントロールをつけるという問題で、これは指数の問題とこれの問題で非常に激論があったのですが、これは牧野公述人力石先生がおっしゃったと思うのですが、牧野公述人、端的に申しましてそれはどちらがいいだろうかということについて、簡単にお教え願いたい、こう思います。
  25. 牧野昇

    牧野公述人 時間があまりございませんので、簡単に申し上げます。  私と力石公述人の違いは、力石先生は法律でやれということ、私は法律ではなかなかむずかしい、市場メカニズムでいくべきだということです。したがって、高い値段でもなおそれを使いたい人が使うような体制をとりませんと、法律でそれを規制するということは非常にむずかしいのじゃないか、私はこう思います。したがって、やはり経済メカニズムを中心として考えるべきだ、こう考えております。
  26. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたのでこれで終わります。
  27. 宇田國榮

    ○宇田委員長代理 井岡大治君。
  28. 井岡大治

    ○井岡委員 角本公述人にお伺いをいたしたいと思います。  角本公述人は、自動車時代になっておりながら過去の制度のワクの中では、幾ら再建をやろうとしても決して再建はできない、いわんや経済の基盤というものはできない、こういう御説で、それについて三つあげられたわけであります。経営権の縮小をはかっていくべきだ、こういうことと、運賃の引き上げをやるべきだが、しかし運賃だけではまかなうことは困難だ。それから地方公共団体等の援助を仰がなければいけない、こういうように言われておるわけですが、私は、国鉄というのは単に経営の面だけから考えるべきでないと思うのです。いわゆる国土の開発あるいは地域の開発、こういうことが国鉄の最大の使命である、こう考えるわけです。もちろんそうだからといって、経営が脆弱であっていいということにはなりませんけれども、少なくとも国が経営をしているその歴史というものは地域の開発にあった、こう思うわけです。そうしてそのことがかなり大きな成果をあげておるし、同時にいま政府がとっておる高度経済成長政策の中で、過疎と過密の現象を来たしておるのは、いわゆる国鉄の役割りというものを重視しなかった結果であろうし、そこに経済主義が強く働いた結果であろうと思うのです。そういう点から考えて、これらの問題をどうお考えになっておるか、まず最初にお伺いをいたしたいと思うのです。
  29. 角本良平

    角本公述人 いまの問題点につきましては、私はこういうふうに考えております。国鉄は単に国鉄経営だけを考えて運営するものではない、もしその立場をとるといたしますれば、それでは国鉄が独立採算でやれる以上の使命を与えるのか、あるいはそのような目的を持たせるとしましても、独立採算のワクの中でできる限度のことをやれということできめていくのか、目的はある方向としてかりに合点に達したとしても、それをどの程度物理的に数量的に実行させるのかというところに問題がしぼられていくと思います。私も国鉄は国が運営しておりますし、これは非常に重要な使命を持っておると思います。ですから、かりに国鉄国鉄運賃収入でできる限度以上の使命を与える、そういう必要が国としてあると認定される場合には、そのような措置をとるべきである。しかも自動車時代になったということは、そのような使命を運賃収入だけで達成することが非常にむずかしくなったということでもありますから、先ほど申し上げましたように三つの点が考えられねばいけない。その三番目にいま引用していただきましたように、国あるいは地方団体からの援助というものが入らなければいけない、そういうふうに考えたわけでございます。ただ、一点御質問の御趣旨と違いますのは、過疎過密というのは、国鉄とはたしてそんなに関係があったかという点では、私は疑問を持っております。それは国鉄がすでに存在する場所でありましても、人口減少の傾向がかなりの土地で進んでおるということを考えますと、過疎といわれる現象については必ずしも国鉄関係していないというふうに考えたほうがいいと思います。
  30. 井岡大治

    ○井岡委員 そこでもう一度お伺いいたしますが、それでは国鉄の独立採算のワク内でやれというのでなくて、やはりワク外のこともやらなければいけないじゃないか、またそれが国鉄の使命だ、こういうふうにいわれておるわけですが、そこで私たち、先ほど加藤君からもいろいろお話が出ておりましたけれども、今日国鉄経営困難になってきたことは、新線の建設にあったと思うわけです。戦後幾つかの線を敷いております。それは全部マイナスになっているわけです。同時に今後も新しく幾つかの線を敷こうとしているわけです。あるいは建設公団に敷いてもらってそれを運用しようとしている。しかしそれは幾らそういうことをやってみても、やはりそれはあくまでマイナスになるわけです。そういう点から考えて、これらの建設はだれがやるべきか、こういうことがやはり問題になってくると思います。そうでないと、自分では好まないところをみんなに国のために敷けといって敷かされて、そうしてそこから出た赤字を国民の運賃によってまかなっていこう、こういうことでは私は少し国は無責任だと思うのです。そういう点から考えて、いわゆるマイナス路線、初めからマイナスだということわかっているわけで、閑散線として地域開発のためにこういう意味で敷くわけですから、それらの問題についてだれが建設の費用を持ち、そして出る赤字に対してだれがどういうように責任を持つのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  31. 角本良平

    角本公述人 いまの点につきましては、新しい線あるいは改良工事でも私同じだと思いますが、将来生ずるであろう収支の損益を予想いたしまして、利益が出るとかあるいは収支を均衡させられるという自信のある場合はこれは問題がないわけでありますが、必ず赤字が予想されるという場合には、私は国及び地方団体と国鉄との間に補償契約を結んでおくべきだと思います。そのような制度を取り入れるということが、私が申し上げ自動車時代を考慮した制度であるということになるわけでありますが、補償契約の中で、私は国土全体の大幹線であるならば、その相手方は国だけでいいと思いますけれども、地方を主とした路線でありますならば、たとえば国道の基準と同じように、国が三分の二あるいは地方が三分の一というふうなある割合で将来生ずるであろう欠損については必ず補償するというような制度を取り入れたらどうか。そして責任を明確にしていきませんと、企業としての自主性もなくなりますし、先ほど申し上げましたように従業員士気も低下してしまうという心配をしておるわけであります。   〔宇田委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 井岡大治

    ○井岡委員 若干いろいろまだ問題がございますけれども、その点はたいへん参考になる御意見を聞かしていただきましてありがとうございました。  そこで、清水公述人にお伺いをするわけですが、清水公述人が、運賃改定の際にいつもわれわれは考えることなんだが、運賃原価というものがない、こういうように申されておるわけですが、この原価の因子といいますか、原価に何と何と何が要因になって、どう言っていいかわかりませんけれども、一つのなにになるか、この因子と申しますか、そういうものをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  33. 清水義汎

    清水公述人 私は原価というものを考えます場合に、一般の資本投下によるところの民間企業の場合の原価に対する概念と、それから公共事業であるとかあるいは国有鉄道のような公共企業体の、いわば行政の一環としての機能なり目的も持っている、それからみずからの資本力も持たない、それから資本市場での自由調達の市場原理が資本調達の面では適用できない一つの客観条件に置かれている、こういう場合においては必ずしも同一に見るべきでないという考え方を持っているのです。これは公営交通の場合もそうであります。地方公営交通にしても、原価というものを一般企業並みに扱っていきましても、御承知のように地方公営企業法で四十八年までに財政再建ができるんだと言明したにもかかわらず、むしろ財政状態はきわめて逼迫をしておる。内容的にはこれは国鉄と同じような条件を持っております。その場合に、私は国有鉄道のような場合に、公共施設なりあるいは公共資産として考える分については、原価の形から切りはずすべきではないか、これがまず第一点であります。  もう一つは、減価償却について最近定率法を使っておりますけれども、非常に大きな投資が行なわれる場合、これは財政再建計画でも四兆億の原資を必要とするといわれている、こういうばく大な投資を伴う場合に、定率法でいたしますと、資本力の強化という意味ではプラスになりますが、原価の中では非常に大きなこれがウエートを占めてしまう。むしろ物理的耐用年数を基準にして定額法にすることがいいのではないか。しかしその場合には、先ほどから種々の公述人から御議論になっておりますように、ここは一応論争の分かれ道だと思いますが、市場原理なり競争主義でやらしていくのか、あるいは、私は独占ということばはあえて使いたくありませんが、路線の専有権を与えていく、そして公共統制を行ないあるいは運輸調整を行なうという一つの基本的な政策次元の中で考えていくか、これによって変わると思いますが、競争前提にするならば当然民間的な要秦が入ってくる。しかし片面においては民間と同じような要素を持たない条件を持っているという点を考えますと、私は適当な時期に日鉄法等を含めてこの原価の基準をどういう形で考えていくのか、それからその場合の負担区分の明確化という点が出ませんと、この問題は解決がつかないんじゃないか。しかし地方公営企業なり日本国有鉄道の場合でございますと、私は経常経費をもって原価としてはじき出さない限りは基本的に問題はなかなか解決しないのではないか、かように考えております。
  34. 井岡大治

    ○井岡委員 高橋公述人にお伺いをいたしますが、よくわれわれ公共料金の値上がりについて、流通の問題と関連をして、物価の値上がりがする、まあ現実にそのとおりなんですが、特に私は私ごとで、実は毎日委員の諸君と話をしておるわけですが、物価対策の特別委員長をやっておるものですから、これが特に問題になるわけなんですが、公共料金の引き上げが流通の部門の中でどのぐらいの割合を占めるものか、この点をお伺いいたしたいと思うのです。
  35. 高橋秀雄

    高橋公述人 流通関係のうちで公共料金はどのぐらいの割合か、これは数字はいまこここで覚えておりませんが、とにかく流通部門のうちで鉄道は一%以下であり、先ほどほかの委員も言われましたように、千分の幾つという程度以下の程度でありまして、比率はそう大きいものではないと思います。しかし流通関係コストが、費用が労働集約性を持っておりますから、生産性を越えて上げれば必ず価格に影響するということははっきりしていると思います。ですから物価は別の面から考えていただきたいと思います。
  36. 井岡大治

    ○井岡委員 流通の面ではそうたいした影響を持たない、物価の問題は流通の問題でなくて、別な面から考慮すべきだ、こういうお話でございますけれども、そこのところ、ちょっと私と意見の違うところがございますけれども、たいへんありがとうございました。  そこで、もう一つお伺いをするわけですが、国の補助、これは国の経費あるいは税金、こういうように言われましたけれども、国鉄は単に利用者だけが受益するものでなくて、その際にも言われておりましたけれども、国鉄というのは国のものだ、あるいは国民の財産だ、そうだとすると、受益者負担というものについて、単に受益者負担というだけではいけない、やはり国の負担というものがあっていいのではないか。そういう意味で不当競争になるというお話でございますけれども、私は決して不当競争にならない、むしろそのことによる受益というのは国民全体が受けるのではないか。そういう意味で国の援助というか補助というか、こういうものを大幅にやっていいんじゃないか。そのことのほうがより国民には利益が大きいんじゃないか、こういうように思うのですが、この点いかがでございますか。
  37. 高橋秀雄

    高橋公述人 いまお尋ねがありましたが、私が申し上げましたのは、国鉄経営のうちで企業的に経営のできる部分とできない部分とがある。経営できる部分についてはコストを全額負担すべきであって、国の補助に求めてはいかぬということを申し上げたのであります。それから、もし企業経営できる部分につきまして国の補助のもとに低額に押えておくということになりますれば、国鉄は国の援助のもとに安い運賃で営業する。その競争機関のほうは全額自分の運賃収入でカバーしていかなければならない条件下にあるわけです。そうしますと、国鉄としてはいいかもしれませんけれども、相手の競争機関がおそらくそれに異議を申し立てるというふうになると思うのです。当然またそうなると思うのです。ですから、やはりそれぞれの交通機関が、サービスの質も違うのですから、それぞれサービスに対するコストをカバーするような運賃で自由競争をさせるという体制が自由主義経済における基本的な原則であって、国の援助のもとに国鉄だけ安い運賃競争させるということはあくまでも不当競争になると思うのです。  それから、地方閑散線区の場合は、これはもともとコストをカバーすることにすれば著しく運賃が向くなって、だれも利用する人がなくなるのですから、これは幹線区の運賃水準程度に抑えて、その足らぬところは地方自治体または国が援助するという原案のような方針に私は賛成であります。
  38. 井岡大治

    ○井岡委員 もう時間が来ましたので、もう一問、工藤公述人にお願いをしますが、私たち、毎日のように公共料金値上げ反対で、先ほど申し上げました仕事の関係から押しかけられておるわけですが、公共料金、特に国鉄運賃値上げすることによって、波及いわゆる便乗値上げ、こういうものが非常に多い、こういうことで、いままで消費者団体のほうでそのつどお調べになっておると思いますが、どういうように波及効果を及ぼしておるか、お聞かせをいただきたい、こう思うのです。
  39. 工藤芳郎

    工藤公述人 公共料金の中には御存じのように、このように国鉄運賃みたいに法律の改正を要するような問題のものと、政府の認可の下項の問題、許可をされる問題、いろいろあるわけですけれども、特にこの交通関係公共料金値上げ問題につきましては、数字の面での波及的な効果以前の問題といたしまして、住民の生活を根本的にゆさぶるといいますか、その他の物価の問題でありますと高ければ買わないというようなことができるわけであります。そのものに対する不買同盟というものができるわけですが、交通料金に対しては不買同盟をすることが大体できにくい、不可能に近い性格の問題であります。もう一つは、行政機構の面からいいまして大体政府の許認可事項にかかわる問題でありますので、この点について消費者から見ますと、公共料金の中での交通関係公共料金は非常にやっかいな問題であるわけです。  値上げをいたしますとどのようになるかという数字の面で申しますと、先ほどもちょっと申し上げましたように、まずたとえば新幹線をたくさん通すということになりますと、それ自体でもうすでに値上げになるというような性格もあります。先ほどもちょっと公述人の方々と雑談を申し上げたんですけれども、岡山まで新幹線で行くと、その途中の駅の人は戻ってくる。戻ってくる場合の料金は一体どうなるんだ、加算されるかどうかというような、新しい路線といいますか新幹線などによる高度なそういう技術によるもの、そういうものができただけで上がってくるという問題が第一にあると思います。これは需給関係の面からいいますと、本来国民が要求するものに従って政府につくっていただくということ、あるいは国鉄につくっていただくというのがいいんですけれども、いまの世の中は需要が供給を決定するのではなくて、逆に供給が需要を引き回しておる。お呼びでないもの、要求しないものをどんどんつくって、さあ乗ってくれ、さあ利用してくれとおっしゃるのですけれども、実をいうと必ずしも国民がそれを利用していないというような面がある。そういう点で新幹線の問題は非常に便利で高度な技術を持っておられるのですけれども、そういう点でまず第一あります。  それから波及的な効果といたしましては、生鮮食料品の値上げ、それから新聞雑誌の値上げ等が予想されます。それから私鉄運賃につきましては、先ほど申し上げましたようにたいへんな格差が生ずるであろうということでございます。またバス料金、地下鉄というようなことについても格差が生じますから、関係が出てくると思います。  また、住民のふところぐあいにはどういうふうに波及するかということで、私どもの消費者団体連絡会の調べによりますと、大体一一%の支出増、月額にして一万二千四百六十円くらいの支出増になるのではないだろうか。あるいはサラリーマン同盟というところがございまして、そこの婦人部の調査によりますと、物価上昇の実態は、政府の統計によりますと六・一%ということになりますけれども、実際はその一・五倍くらいになるのではないかということで、いま各地域ごとに運賃値上げによってどれぐらいふところぐあいが変わってくるかというのを、消費者は非常に計算しておるわけですけれども、いろいろな面に波及してくると思います。
  40. 井岡大治

    ○井岡委員 どうも各先生ありがとうございました。
  41. 小峯柳多

    小峯委員長 松本忠助君。
  42. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 本日は、公述人各位にはお忙しいところをおいでをいただきまして、いろいろ貴重な御意見を伺わせていただいてほんとうにありがとうございました。  最初に、角本先生にお伺いしたいのでございますが、四点ほど簡単な問題でございますが、先生の、値上げはやむを得ない、こういう御意見を承りました。今回の値上げによりますいわゆる便乗値上げ、これは起こるか起こらないか。もし起こるとすればこの値上げの率と申しますか、いろいろの業態があると思います。営業地下鉄もあるし、あるいは都営の地下鉄などもあると思いますけれども、まず概略国鉄値上げよりも高いか低いか。これがまず一点でございます。  第二の問題は、国鉄運賃値上げをいたします。私どもは当然物価に影響する、こう思うわけでございます。私どもの試算でも北海道全道で、貨物運賃が上がりますと年間約二百億増加になる、このように私ども推算をいたしております。これが消費君物価に影響しないかどうか。  第三点目でございますが、御承知のように国鉄の四十六年度の決算はただいま国鉄当局として一生懸命計算をやっているわけでございますが、われわれが先般国鉄総裁から聴取いたしたところによりますと、累積赤字が八千億になるということを聞き及んでおります。で、今回のこの新しい再建計画によりますところの向こう十カ年間どんなふうになるのかという収支の見通しについて私どもが資料を要求いたしまして、その資料をいただきました。その資料によりますと、四十七年から五十六年までに新たに発生するところの累積赤字が九千七百七十四億、こういうふうな巨額にのぼるということが判明をいたしました。ただいま申し上げました四十六年度末の累積赤字八千億と合計いたしますと、驚くなかれ累積赤字が一兆七千七百七十四億、こういうことになるわけであります。このことにつきましては、運輸大臣もお認めになりましたし、国鉄総裁も認めているわけでございます。私どもはこういう数字が十年後の五十六年の決算面にあらわれてくるということは再建ではない、再建なんというものじゃない、かえって悪化するじゃないか、こういうふうに言っているわけです。そこで国鉄の建て直しについては先生方からいろいろと御意見を伺いましたけれども、角本先生として国鉄財政再建はできるかどうかということでございます。先ほども稲葉公述人からお話がございました。国鉄はその名の示すごとく国民の全体の財産だ、こういうふうなお話が稲葉さんからございました。確かに国民の国鉄でございますし、国民の財産でございます。この再建計画が、私どもが見ますのに、あまりにもずさんでございます。その点、われわれはいままでの審議を通じまして数々その実例を指摘してまいりました。要するに、先生に伺いたいことは再建は可能かどうかということであります。これが三点目です。  四点目は、三月の十九日に私がこの委員会で質問しましたときに、値上げの回数は新しい再建期間の中で四十七年、五十年、五十三年の三回、こういうふうにいままで言われておりましたし、先ほども角本先生の御発言の中にも三回の値上げということを言っていらっしゃいました。しかしこれは、私の十九日の質問によりまして、三回はまっかなうそでございまして、四回目が五十六年に一〇%見込まれている。その一〇%の値上げを見込んでも、先ほど申し上げましたような、五十六年末には九千七百七十四億という累積赤字が出てくるわけでございます。いままで国鉄当局から説明を聞いておりましたのは三回でございます。しかし先般の質問によって四回ということが判明したわけでございますけれども、これらの点について、角本先生は三回であるか四回であるかということを御承知であったかどうか、この点お伺いしておきます。  以上四点についてまず先に角本先生から伺いたいと思います。
  43. 角本良平

    角本公述人 まず第一の点でございます。これは便乗値上げ交通についてあるかどうか、あるいは交通について値上げをするとすれば国鉄との比率の関係はどうかということであります。これについては三点考えなければいけないと思います。第一点は国鉄条件が違っている地域であるか同じ地域であるか。この面から見ますと、大都市の鉄道国鉄全体よりも有利な状態にありますし、地方の中小私鉄はむしろ国鉄赤字線に似た状態にある。その有利、不利によって値上げの比率は当然違っていいはずであります。第二の点は、投資を新しくしたか、あるいは近くしなければいけないのかどうかという点での違いでございます。これは利子や原価償却費の負担増加いたします。大都市の私鉄の場合に、新線あるいは大改良を計画するとすれば、こういった負担が出てまいります。第三点は人件費の比重の大きな交通手段であるかどうか、端的に申しますと、タクシーのように人件費の比重が非常に大きいというふうに考えられ、しかも労働者が集まらないというふうな性質のものは、どうしても値上げの幅は大きくなってくるというふうに考えたらどうか、以上三点の立場から具体的に判断すべきだと思います。  第二の物価への影響でありますが、確かに御指摘のようにある地域の輸送を計算いたしますと、そのようないろいろな数年が出てまいります。形式的には確かにその限りにおきまして物価にはね返るわけでありますが、すでに家計費に占める割合とかあるいは貨物輸送貨物の価格に影響する割合、そうしたものはおそらく行政当局から資料が示されていると思います。ただ私が一言申し上げたい点は、一般に生鮮食料品で一番よくあらわれるのですが、輸送費が固定しておりましても毎日野菜や魚の値段は上がったり下がったりするということでありますし、国鉄運賃が上がらなかった年も物価はかなり上がっておるというような過去の実績がありますと、必ずしも輸送費がそれほど強い影響力を持っているとは言えないと思います。それよりももっと大事なことは、輸送を安定させておくということのほうが長期にわたりましてわが国の経済発展を安定させる上で大切なことではなかろうか、先ほどから外国の鉄道のお話も出ましたけれども、私は外国の鉄道は決していい状態に運営されているとは思っておりません。その一番いい例はニューヨークの地下鉄でございますが、ああいった状態にわれわれが落ち込まないようにしていくということが、物価よりも何よりも大事なことではなかろうか。さらに長期的に考えますと、国鉄が人材を失っていくというような状態にまで追い込まれてしまいますと、かえってわれわれの輸送コストが高くなるというふうな結果にもなりかねないと思っております。  第三番目に御質問のありました収支の見通しでありますが、一言で申しますと、現実論としては私は再建という観念はおかしいと思っておりますし、再建という観念では再建は不可能であります。理論的には営業規模を縮小してまいりますれば、これはできないことではありません。現在の二万キロを一万キロにしてしまって、幹線筋だけを経営しろということでありますれば、これは私はできると思います。しかしながら自動車時代になりまして、自動車と競争しながら、しかも自動車では運び切れない部分、あるいは自動車よりもよりよいサービスを提供できるがゆえに、全国新幹線で赤字であってもつくっていく、そういったものを加えてまいりますと、国鉄を過去の制度のもとの、独立採算という形に返す意味での再建は未来永劫不可能である、そういった考え方こそ時代錯誤であると私は思っております。  第四番目は、私は三回と申し上げたつもりはございませんで、三年ごとというふうに申し上げたつもりでありますし、それからバスについては二年ごとという新聞記事が出ていたというふうに申し上げたつもりでありますが、私はこういった架空の議論はあまり意味がないと思っております。将来に対しては、私は毎年否定していただきたい、そのルールを確立しておいて、運賃についてあまりエネルギーを使わないでも経営者が安心して働ける、従業員も安心して働ける体制にすべきではなかろうかというふうに申し上げたつもりであります。
  44. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 なお角本先生にいまの件についてさらにいろいろお伺いしたいわけでございますが、時間もございませんので、次に移らせていただきます。  高橋先生に伺いたいわけでございますが、先生のお話は条件つき賛成、こういうふうに承りました。いろいろ先生のお話の中に出てまいりましたけれども、要するに人件費の問題でございますが、七三%の人件費はいわゆる国鉄のような労働集約型の産業においてはやむを得ないんだ、ベースアップも当然だというような御意見に承りました。  ところで、きょう二十七日、明日二十八日と国鉄のいわゆる四十八時間のストが行なわれているわけでございますが、この焦点はやはり給与の改定の問題だ、値上げの問題だと思います。ところで公労委の裁定について批判する、こういう意味ではなくて、学問的な立場から物価上昇に見合うところのベースアップ、定昇を含んで何%くらいが妥当なのか、具体的な金額にすると幾らくらいになるのかという点、先生の御意見があれば承りたいわけなんです。これが一点。  それから四十七年度から五十六年度までの新財政再建計画、この収支の見通し、資料によりますと人件費が五十三年までに十一万人の減員、そして定昇二・七%を含んで四十七年から五十年までは一二・一%、五十一年から五十三年までは、一・一%、五十四年から五十六年までは一〇・一%というのが、このいわゆる基礎的な資料、それを基礎にして人件費をはじいているというふうな国鉄の説明です。一方、いままでの過去三カ年間の実績を調べてみますと、四十四年が二一三・四%、四十五年が一五・一七、四十六年が一四・〇四%、このように過去三年の実績から見ましても、この国鉄の試算の前提となっている資料はあまりにも低過ぎるように私思います。これを基礎としたところの人件費の算出というものは、現実離れしている、甘い計算だ、こう私は思うのですけれども、先生の御意見はいかがでございましょうか。  それから第三点目が、物件費につきましても同様なことが言えるわけでございます。  大体十カ年間平均をいたしましても、物件費と人件費をあわせますと、事業費の八四%がこれを占めているわけですが、その物件費の、いわゆる毎年上がっていくところの物騰率を各年度とも三%アップというふうに国鉄は見ているわけですが、この程度の物騰率で済むとお考えでしょうか、済まないと思っていらっしゃるでしょうか、どちらでございましょうか。消費者物価の例をとるまでもなく、四十五年度には七・七%も上がっているというようなことから考えまして、私はこの物件費の物騰率というものはあまりにも低過ぎるんじゃないか、人件費も同じようなことが言えるのじゃないか。こうしたものを基礎としたところのいわゆる収支の見通しというものを十カ年後に見ましても、これはもう明らかにそれでは済まなくなってくる。人件費も上がる、物件費も上がる、そうするともう根本的にこの収支の見通しというものを誤ってしまうではないか、こういうふうに思いますので先生の御意見を承りたいわけなんです。  以上でございます。
  45. 高橋秀雄

    高橋公述人 どうもだいぶん具体的な数字についてお尋ねでありますが、考え方を申し上げますと、第一の人件費の、最初はベースアップの金額を幾らにするかというお尋ねのようでありますが、その金額を幾らにするかというのはちょっとここでお答えすることはむずかしいと思いますが、これはやはり他の企業の賃金の上がり方とある程度均衡のとれた上がり方にせざるを得ないということはこの国鉄法の精神から見て当然だと思います。でありますから、外国におきましては、賃金改定、ベースアップのような場合の賃金改定計画なり審議をするときは、運賃審議と関連させてやるべきだという意見もあるくらいでありまして、ある程度一般物価が上がり、それから他の生活水準がしたがって上がり、そうしてほかの企業の賃金が上がりますと、これはほかの企業の場合には、あるいは第二次産業のような場合には生産性が上がって、その範囲内で賃金が上げられるのでありましょうが、その賃金率とバランスがとれないと、いまの完全雇用下においては適切な人を確保しておくことができないという意味におきまして、他の企業の賃金が幾らになるかということがきまりませんと、国鉄の賃金を幾らにしていいかということはお答えできないと思うのであります。  それから第二の、十一万人という人の減らし方につきまして、どういうように減っていくかということでありますが、これは国鉄が近代化の計画をしておられるようでありまして、今後旅客においては新幹線のような、——新幹線の場合には比較的労働集約じゃないというか、労働集約性が非常に薄い、むしろ資本集約的な性格を持っている。また貨物の場合でもフレートライナーとかコンテナのように、比較的コストのかからない列車で輸送する方式が確立される、あるいは操車場を経由しないでヤードパスにするとかいうような近代化がだんだん行なわれてきますと、人員の数が少なくても間に合うということになります。具体的に何人がいいかということは、私はここでお答えすることはちょっとむずかしいと思いますが。  それから第三の、物件費の上がり方でありますが、物件費の上がり方はいま御指摘にもありましたように、大体国鉄の購入する物品の単価が、単価というか、購入量の単位が大きいので、結局、最終の小売り業者から買われるのでなくて、大体メーカーとか大口で取引されるという関係から、卸売り物価に近い上がり方をするのじゃないかと私は考えるのであります。しばらく前に、国鉄のものについての物価指数というものを調べたことがありますが、その場合には、一般の卸売り物価とよく似たような指数を示しております。ですから、消費者物価とは全然違う見方をしていくというのはこれは当然だと思います。それでその率が四%がいいか三%がいいかということはここで簡単にお答えいたしかねると思いますので、お許し願いたいと思います。
  46. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もうちょっと高橋先生に伺いたいのですが、いまのお話の中の十一万人の減員という問題は、いわゆる自然に、国鉄を定年になってやめていく人でありまして、そういうものも含んで定昇二・七%として、先ほど申し上げたような率で四十七年から五十年、五十年から五十六年というふうに四年なり三年なりに切って、そのベースアップ率を一応の基礎にしているわけでして、私はこれは低くないかという考えなんです。先生の御意見、低いか高いかその一点だけひとつもう一度。国鉄が算出している基礎が、過去の実績から比べてみて私は低過ぎるように思います。これで五十六年までの人件費の算出をしていくとたいへんな、人件費の算出が少な過ぎて、予算を計上しても毎年毎年それでは足らなくなってくるという現象になってくるわけです。それで先生に伺いたいところは低いか高いかということです。
  47. 高橋秀雄

    高橋公述人 人が現実に減っていきますのは、年をとって定年に達したから減っていくということになるのでありますが、幾らの人で経営するかということが結局何人を要するかという問題になるのでありまして、幾らの人員を要するか、それは国鉄の近代化の進め方いかんにあるのでありまして、それのいかんによっては、十二万人減っても鉄道事業部門においてはやっていけるという見通しだと私は数字を見たわけであります。ですから、その数字をなおこまかく検討すればあるいは出るかもしれませんけれども、まだそこまでは検討いたしておりませんので、国鉄の出された数字を信頼したいと思うのであります。このわずかな人でやっていくということは、結局国鉄が近代化をして、操車場経由をしないヤードパスの列車を出すとか、フレートライナーをどの程度出すかというような、そういう近代化施策がどの程度進むかということと関連するのでありまして、その関連するのは長期計画によってその計画が進められるのでありますから、その長期計画内容をこまかく検討しないと、何人がいいかということの判断はできないと思うのであります。私は時間がありませんので、一応国鉄計画を信頼してそれを基準とすればこうなる。しかし私としては先ほども申しましたように、人を減らしてその少ない人員でやっていくというのでなくて、やはり国鉄がそういう人たちもなお包容して、多角的経営によって吸収していくというような方法でなければ従事員が安心して職場におれないということになりはしないかということを申し上げたわけであります。
  48. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 どうもありがとうございました。いろいろ貴重な御意見をいただきまして、なおまだ若干ふに落ちない点もございますので、いずれまた先生の教室に伺うなりして教えていただきたい、このように思っております。
  49. 小峯柳多

    小峯委員長 河村勝君。
  50. 河村勝

    ○河村委員 角本さんと清水さんと高橋さん、お三方に質問いたします。まとめて申し上げます。  角本さんに、新幹線の運賃コストの倍くらい取っておるということは明らかに矛盾である、これは安くしろということだろうと思いますが、その場合、さっき松本委員の質問に対してちょっと触れられたようですが、よくわかりませんでしたが、そういうことになりますと、完全総原価主義はやめてしまって、完全な線区別運賃方式を、取れ、そういうことであるのかどうか。それとも不採算線区を大幅に切り捨てろという意味なのか。その辺のところの見解をお聞きをしたい。  それから、清水さんは、旅客運賃についてはペイをしているにもかかわらず、貨物運賃赤字を埋め合わせするために旅客運賃上げるというのはおかしい、こういう趣旨だったと思います。理倫的には確かにそのとおりだと思います。そこで、現実の問題の処理をするにあたって、貨物輸送貨物で大赤字を出しているのは、確かに国鉄当局が長いこと貨物の近代化を怠ってきたというところに一番大きな原因がありますが、今回の十カ年計画でかなり貨物の近代化は進められるようてありますが、それでも国の——力石さんがお帰りになってしまいましたけれども、国のいろんな総合政策の誘導とあわせて一緒にやりましても、まあ十年ないし十五年ぐらいの中期的な見通しに立たなければ黒字にはならないだろうと思います。そこで、その間の問題の取り扱い方として、貨物から生まれる赤字を一体どういうふうに処理をするのが適当だというふうに考えておられるのか。  それから、角本さんと清水さんと両方にお尋ねをいたしますが、国鉄で名前をつけたいわゆる地方交通線というものがあります。約二万キロ。これはいわゆる赤字ローカル線とは違って、準幹線的な性格を持つものでありますから、これは撤去するわけには、まず大部分はできないと思います。ところが現実にはここから生まれてくる赤字というものが約二千億近く、国鉄赤字のほとんど九九%までがここから生まれているという現実があるわけですね。ところが今回の政府再建計画はこの点に何ら触れるところがない。だから机上の空論になってしまって、政府の援助としてはかなりの大幅なものではあるけれども、それは長期債務のたな上げであるとか、あるいはこれからの投資の利子補給、若干の資本出資はあります。ですけれども、この問題に触れないものですから、長期資産を見ましても、一応数字でつじつまを合わせているだけであって、これで十年後にほんとうに償却の黒字になるということは考えられないと思います。であれば、一体再建計画を皆さんがつくられるとすれば、いわゆるこの一万キロの地方交通線というものをどういうふうに位置づけ、どういうふうに扱うことが適当であると思われるか、それをお伺いしたい。  それから高橋さんにお伺いしたいのですが、高橋さんは、先ほど十一万人の合理化によって人員をそれだけ減らしてしまうのは反対だ、これは企業内に残して、もっと多角経営によってその人員を消化するべきだ、こういうお話でしたね。それができるなら、それは一番私も望ましいと思う。現実に十一万人、数字の上では合理化ができても、自然減耗——首を切ることはできないわけですから、自然減耗で処理していけば、どうしても、新しく採用することがたとえできても、ほんのわずかになってしまいますから、年齢的に非常な空白の部分ができてしまって、年齢構成が悪くなりますから、おっしゃるようなことは非常に望ましいと思いますが、しかし実際の問題としてはどうか。いま若干関連事業などを少しずつ拡大をしてやっております。これからも法律改正をすればかなりのことはできるかもしらぬけれども、十一万人の企業というのは、国鉄を除いた日本最大の企業がもう一つ生まれるわけですね。そんなものが一体関連事業としてできるとお考えであるか。ありとすれば、どのような構想をお持ちであるか。それを伺いたい。
  51. 角本良平

    角本公述人 第一番目の点の新幹線の私の発言にからみましての御質問でありますが、私は総原価主義はやめるべきだと思っております。したがいまして、当然路線別運賃を設定するという考え方をとりたいと思います。ただ、その場合に、すべての路線をすべて正確に算定して運賃を個別に設けるということは、手続的な繁雑さが当然出てまいります。それからいま一つは、自動車との競争を考えますと、当然コストを反映するといいましても、運賃設定の限界がございます。そうした限界の中でたとえば四段階ぐらいの運賃を設けて、ABCDのそれぞれの運賃を個々の路線に割り当てていくというふうな考え方をとるのが妥当ではなかろうか。これは負担の公平という立場から申し上げておる議論でございますし、まだ同時に、資源の最適配分という立場からもそうしたほうがいいのではなかろうかということであります。  それから、第三番目に御質問のありました地方交通線の問題であります。私は、御質問の御意見と違いまして、一万キロの全体が準幹線として撤去できないというふうには考えておりません。その中には撤去できるものも、あるいは撤去できないものも含まれている。両方に分かれると思います。私の過去の経験から申し上げて、大体一万キロのうちでも輸送量の比較的多い五千キロと比較的少ないほうの五千キロとではかなり事情が違っているのではなかろうか。現在地方閑散線といわれております部分がさらにその中にあるわけでありますが、私は、最初の段階では、一番輸送量の少ないほうの五千キロぐらいが撤去の対象になっていくのではなかろうか。特にこれから道路の整備が末端まで進みますのと、それから乗用車の普及が、まだ当分は進むと思います。現在すでに十人に一台ぐらいになっていると思いますし、自動車全体としては五人に一台ぐらいだと思いますけれども、それがいま少し進んだ段階で当然撤去を進めるべきではなかろうか。これらの路線輸送量を見ましても、幹線筋の輸送量はある程度伸びておりましても、地方交通線のほうの伸びが小さい、あるいは減少であるという事実がございますし、そういった過去の傾向を考え合わせまして、むしろ撤去に踏み切るべきではなかろうかと思うわけであります。その場合、残る線につきまして、だれがその欠損を負担するかということにつきましては、これは先ほども触れましたけれども、やはり地方もそれを必要とするということでありますれば、地方としても責任を持つということで、たとえば赤字の三分の一は地方で負担し三分の二は国が出すというふうな制度で運営すれば、地方も常時自分の金額支出を通じましてその路線の必要性を判断できるのではなかろうか、そのように考えております。
  52. 清水義汎

    清水公述人 第一点は貨物赤字に対する処理の問題でございます。この貨物赤字に対する処理は、大きく分けて私は二つの角度から考えていかなければならない。一つ貨物輸送量は非常に自動車にとられてきて、貨物輸送の効率的な輸送、それから貨物収益をあげるという面で大きな支障がきている。ところが自動車に貨物が流れているという流れ方が正常な流れ方であるかどうかという点に私はメスを入れていかなければいかぬと思うのです。御承知のようにトラック業界は運賃と過積みという形でダブルダンピングが行なわれております。しかも白タクと営業行為の判別自体があいまいになってきている。しかも行政上半ば実質的に自由化された中できわめて戦国時代でございます。こういう流れ方を放任をしておきまして、総合的な貨物輸送体系の中での国鉄貨物輸送をどうするかということになりますと、長期展望に立ちましてもいろいろな混乱が出てくることが予想される。まず政策の面ではその辺の詰めが一つの角度だと思います。  それからもう一点は、貨物運賃に対しまして負担力のある貨物については、賃率そのものを原価主義で貫徹をすべきであるというふうに考えます。負担力のないものあるいは社会政策なり経済政策上割引賃率を適用しなければならないものについては、公共負担分として国の経済政策的な観点から国家がその差額について負担をすべきではないか。ですから、賃率そのものはやはり明確に原価に基づいてはじいておかなければならない。その運賃をだれが負担をするか、国がどの程度補助をするかというのはその次の問題になってくるというふうに考えます。  それから第二の地方交通線の赤字の問題でございますが、これも先ほど私、総論的に申し上げましたように、最終的にははたして地域開発をやっても立て直っていかない路線であるのかどうか、この角度が一つ。もう一つは社会的必要路線として企業採算ベースを度外視しても存置せざるを得ない路線なのかという角度から変わってくると思います。前者の場合でございますれば、当然これは一つ先行投資路線として考えていかなければならない。もう一つは当然これは社会政策路線でございますから、これらの路線については行政路線としての角度から検討せざるを得ない時期に来ているのではないか。現在、御承知のように地方のバス路線、都市のバス路線につきましては自治省サイドでも行政路線の基準について検討が進められているというふうに聞いております。国鉄の場合におきましても、これは民鉄と違うそこが一つの特徴だと思いますが、事業経営の能率化という形、企業採算というものを全く度外視するということは私はできないと思いますが、行政路線としての位置づけとそれに対する対策という角度からこの地方交通線については国がある程度めんどうを見る。それから地方自治体で財政負担力のふる自治体についてはこれに対しても一般会計からの補助をしていくという形の中で検討せざるを得ないんではないか、かように考えております。
  53. 高橋秀雄

    高橋公述人 経営の多角化の問題についてお答えいたします。  十一万人の人を減らすといいましても、その人は一年で十一万人でなくて、十年なり相当長期にわたって十二万人である。したがって、毎年相当数といってもそう多くじゃないと思うのです。  それからもう一つは、そんな新しい仕事があるかというお話でございますが、各事業ともやはり研究開発費を相当投じて、一般産業でも売り上げの二%あるいは三%投じておるのですが、国鉄がやはり二%あるいは三%といえば二百億なり三百億になる。せめて二百億なり三百億の研究投資をして、そうしてこれからあと何をやったらいいかということを積極的に考えれば、この非常に流動的な変転の多い、技術革新のいろいろ行なわれる現在の日本経済前提とするとき必ずしも不可能じゃない。たとえば、ほかの産業におきましても、肥料会社が繊維を開発しておるし、繊維会社が化粧品なり建材をつくっておるというふうに、新しいものをつくり出して、そうして昔と違った経営目的のものも包容して、そうして従来持っておった従事員を包容し、それをなお拡張し、成長させているのが各企業の現状なのであります。国鉄だけがその現状からのがれて鉄道事業だけに固執するというその態度を改めて、多角経営によって新しい事業分野を開発していくということになれば必ずしも不可能じゃない。他の産業がその例を示しておるわけでありますから、その例によって十分にやることはできると思うのであります。簡単な一つの例をいえば、国鉄の用地の平面利用を立体化するという問題もありましょうし、あるいは国鉄が買っておる品物、あるいはこれからあと使う品物について新しい製品を開発するということもできるでしょう。ただ問題は、現在の国鉄法において関連事業に対する制約をしておりますから、その制約を排除するということは当然でありましょうが、それさえ直せば必ずしも不可能じゃないというふうに私は考えるわけです。もちろん現在の人にそれをやってもらわなければいかぬというのではなくて、そのためには資金を投じ、あるいは他からのノーハウなりあるいは技術なりを導入して、そうして研究開発を進めていくということが必要じゃないかと思うのであります。
  54. 河村勝

    ○河村委員 どうもありがとうございました。
  55. 小峯柳多

    小峯委員長 この際申し上げます。  牧野公述人は所用のため退席いたします。牧野公述人には御多用のところ貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。(拍手)  質疑を続行いたします。江藤隆美君。
  56. 江藤隆美

    ○江藤委員 まず単刀直入に角本公述人にお尋ねをいたします。  先ほど、運賃もさることながら輸送が安定することが国家の長期経済を展望したときに非常に大事なことだとおっしゃいましたが、私は傾聴すべき御意見だと思います。そこで、御意見の中で若干食い違いもあります。地方交通線、地方閑散線等については私なりの考え方もありますけれども、この際は時間もありませんからそれは除くといたしまして、御意見を承りました中に、運賃は毎年見直すべきである、毎年奔走すべきである、こういう御意見がございました。手続としては、御存じのように国鉄運賃は法律改正を要することであります。したがいまして、御意見によりますと、たとえば政令事項に委任して、毎年物価、賃金とスライド制にせよ、こういう御意見でありましょうか、端的に御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  57. 角本良平

    角本公述人 いまの運賃値上げの手続の点につきましては、私は最終的には当然国会がおきめになることであるとは思いますけれども、その手続について国会で法律でおきめになって、毎年の査定の方法につきましては、権威のある機関をつくって、そこでつくったものが予算に反映するという形で間接に国会で御審議なさるという形のほうが妥当ではなかろうかというふうに考えております。
  58. 江藤隆美

    ○江藤委員 今回は運賃が二三・四、貨物が二四・六、一気に上げるのはたいへん高いじゃないか。だから、これから人件費あるいは物件費、下がるはずはないのですから、上げるならば、毎年権威のある機関をつくって、そしてそこで査定をしたものを上げていく、国会はその手続をちゃんと踏んでおく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。——わかりました。  それでは、清水先生にひとつ。先ほどのお尋ねの続になりますが、私は自民党でありますから、これはもう遺憾ながら値上げ賛成であります。私どもはこれは与党でございますから、本来からいたしますと、値上げをするというのは私どもがどろをかぶるわけであります。いかなる物価といえども、私どもは上がることにはだれよりも神経を使うし、だれよりも困る立場に立たされるわけでございます。したがって、無条件値上げをすることがいいとは私どもは一つも考えておりませんし、また据え置かれるものであるならば据え置いたほうが一番いい、こういうふうに考えております。しかしながら、御存じのように借り入れ金が三兆一千億もある。累積赤字が八千百十九億もある。人件費が八千億をこえる。経常経費を入れると両方でもう九七%とってしまう。一兆一千億の収入の中で九七%というのはもう人件費と物件費でとられてしまう。今度また仲裁裁定が出まして、おそらく一万円台になるということになれば、今回の値上げの千七百八十八億の大部分はこれもなくなってしまう。運賃上げちゃいかぬ、それならば賃金の財源は一体どうするのかということであります。どこから持ってきたら先生、いいと思いますか。もう当面の問題です。予算は間もなく成立をしようとしております。予算はもう成立をする、賃金は上げろと言う、財源はない、一体どこから持ってきたらいいと思いますか。率直にお聞かせをいただきたい。
  59. 清水義汎

    清水公述人 私は、いまの御質問で御指摘になったように、与党なり政府が好んでいたずらに国鉄運賃上げるというふうに私も考えておりません。問題は、国鉄をどうとらえていくか、それからもう一つは、この交通全体の予算というものをどう見ていくのか。それから運賃に対する負担限度をどうしていくかというところの意見の相違だというふうに私は理解しております。  そこで、確かに大幅な借り入れ金の中で、あるいは累積赤字増加する中で、当面の克服をどうしていくのかという点が日本国有鉄道という企業サイドから見ても必要だ、これはわかっております。そこで端的に申し上げますならば、貨物運賃に対して、今回の値上げ率を見ましても、賃率で見てまいりますと、必ずしも黒字にならない。そういたしますと、賃率黒字にならないものをそのまま置いておきますと、そこにまた大きな矛盾が拡大をされやしないか、そういう意味で、貨物運賃に対する賃率是正に対してもう少しお考えがいただけないかという点が第一点であります。  それから第二点につきましては、交通総合予算の中で道路建設費と鉄道に対する助成予算というものを一本化する中で、せっかく総合交通体系という一つの総合的な政策をお出しになっているわけでありますから、予算しもそれとのからみで検討する中で、財源の調整というものができないものかというふうに考えております。
  60. 江藤隆美

    ○江藤委員 公労法の第十六条には、御存じのように「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によって所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」こう書いてあるわけです。これをまた議論していると長くなりますが、要するに予算上資金上見通しが立たなければいかなる金も出してはいかぬのだ、こういうところに今回の国鉄運賃改定は追い込まれておるわけです。そこで、いま先年のおっしゃった、貨物赤字出しておるのだから貨物を何とかしたらいいじゃないか、こういう御意見であります。これはもうその差額を全部国家が見てやるということならば問題は全部解決するのです。全部見てやればいい。どなたでしたかおっしゃったように、工藤さんでしたか、野菜なんか上がって、大会社が使っておる物資等は非常に割り安になっておる、だからそれはいかぬのだとおっしゃったけれども、回り回ってくれば全部これは国民の生活に影響するもので、私はその区別というものはなかなか困難だと思います。これは直接国民の生活に影響する。これは違うんだ、これは高くていい、こっちだけは政府が援助する、こういう分け方は非常にむずかしい。鉄といえども石炭といえども石油といえども、あるいは菜っぱのきれ端といえども、これは全部国民の生活に影響する、こういうふうに考えるべきである。私はそう思うのでありますが、そうなると、へたにこの貨物運賃をいじりますと、トラックにとられる、カーフェリーにとられる、あるいはまた船にとられるというところに日本の交通体系の問題点があることは、もう御存じのとおりだろうと思います。  そこで先生としては、そういう方法をとれば、国が助成せぬ限りは今度は物価が値上がりをしてくる、こういうことになりやしないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。  それからもう一つ、私は端的に先、伺っておきます。私どもは、どうにもこうにもしようがなくて運賃改定という問題に取り組んでおるわけでありますが、もう民間企業体は十何%、一〇%くらいでしょうか、一万円台に乗せるというときですから、公労協もおそらくそういうことになってくるのじゃないかと思います。どうしても国鉄の皆さんが人並みの生活をやり努力をしてくださる、そういう職場をつくるためには、私どもはできるだけ誠意を持って他産業並みに上げてあげるべきだと思っています。だが金がない。一体どうしたらいいですか。先生、教えてください。
  61. 清水義汎

    清水公述人 これは一つの例を申し上げますと、これは先生方のほうが十分御承知だと思いますが、同じ政府の中でも、自治省が公営交通に対しては誤りをしたのだ、あまりにも財政再建という見地だけから見たために行き詰まりを来たした、この点について抜本的なやはり改正を考えなければいかぬということを申しております。私は、これがストレートに国鉄にくるとは思いませんけれども、しかし国鉄問題についても、従来の再建計画の経過、それから運賃値上げの経過を見ておりますと、もちろんサービスの向上なりあるいは輸送力の増強という点でプラスの面もございますけれども、矛盾の解決ができ得ない面が相変わらず継続してなされてきている。そういう点では、せっかく昨年総合交通体系という形を出され、しかもその中間報告の答申がなされておりますので、あの線に沿って少なくとも今回の国鉄財政再建計画及びそれに関連する運賃改定というのが考えられなければならないんじゃないか。  それから、これは私は外で見ておりますので、それはおまえはしろうとの判断だとおっしゃるかもわかりませんけれども、日本の予算規模からいたしますと、先ほど河村先生が御指摘のような程度予算を国家財政から支出することは、十分日本の政府予算能力はあるというふうに私は見ております。
  62. 江藤隆美

    ○江藤委員 まだいろいろお尋ねしたいのですが、時間がありませんから工藤さんにひとつお尋ねをします。  先ほど私、ちょっと聞き違いしたかしれませんから、そのときはひとつ御訂正をいただきたいと思いますが、たとえば十カ年間、昭和三十五年基準でしたか、利子は五百二十倍ほどになっている、借り入れ金は八百六十七倍になっている、そういうことでしたでしょうか。それから経費は二百九十五倍だ、人件費は二百九十四倍だ、だからベースアップしてもいいのだ。非常に倍率というものは、人件費は借金なんかに比べたらたいへん低いじゃないか、こういうふうな御意見だったと思いますが、私は人件費というものと将来利潤を生んでいく、国鉄の近代化を進めていくために投資をしていくものとの伸び率を、そのままにストレートに比較して人件費を議論するのはいかがかと思いますが、それについての御意見はどうでしょうか、まずそのことを。
  63. 工藤芳郎

    工藤公述人 私が申し上げましたのは、今度の国鉄運賃法並びに国鉄財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由の説明の中に、ベースアップなどによる人件費等の大幅な上昇などのため、ということが理由としてあげられておるわけですね。先ほど申しましたように、自動車輸送の発達などによる輸送量の伸び悩みということがありまして、もう一つはいま申し上げましたベースアップ等による云々というのがあるわけです。それが原因だということになると、この経営面の推移を見た場合に、人件費がそうその他の面について今度のような大幅な値上げをするほどの根拠にはならないのではないだろうかという点で申し上げたわけでございます。積極的な位置づけとして申し上げたわけではなくて、この提案理由の説明に反論するといいますか、そういう意味で、人件費のアップはそれほど大幅な値上げをする根拠にはならないのではないだろうかということで申し上げたわけです。
  64. 江藤隆美

    ○江藤委員 わかりました。  それでは、工藤さんにもう一つ端的に承ります。この際運賃改定をしないで——それはさっき清水さんからもいろいろ聞き、私どもも勉強しておりますから、いろいろな過去の推移あるいはまたもっと政府負担をすべきではなかったか、今日までの再建策について見通しが甘かったのではないか、今後の総合交通体系の中での位置づけというものはどういうことかとか、まあいろいろあります。ありますが、それはこの際は時間の関係で抜きにしまして、この際、運賃改定をしないで賃上げをしようと思ったら、給与の改定をしようと思ったら、どうしたらいいとお考えになりますか。
  65. 工藤芳郎

    工藤公述人 運賃値上げをしなければならないという理由は、さまざまな問題、悩みがおありだということはよくわかりますけれども、この問題を考えるのには、やはり日本のいまの現状の中で国民が置かれた立場、置かれている現状の生活、実態、こういったものを踏まえないことには、この議論は非常に平行線をたどるだろうと思うのです。先生方は十分それを御理解なさっておるだろうと思います。私たちが考えるのは、専門的に予算の面で何がどのようになっているということを必ずしも承知しているわけではございませんけれども、いま最も優先的に解決しなければならぬ問題は何か、いわゆる交通、公害、物価物価でいえば三Kの問題、こういったものは密接不可分の問題としてクローズアップされてきておる、しかも公害の問題などによっては人間の生命があやぶまれておる、こういう問題があります。  そこで、国鉄運賃というものがいま国民の中で現実に占める、運賃値上げによってもたらされる波及的、直接的な効果、それが将来、私が先ほど申し上げましたように非常に国民生活を不安たらしめるという問題があります。こういった問題が、非常に従来になくそういう不安が高まっておるわけでありますが、予算面からいいますと、何をどのように幾らといわれましても、私は予算をあずかっている立場ではございませんから何とも言えませんけれども、ただ何となくこうありそうに、できそうに思うこととしましては、国民のそういった民生の安定向上という点で、国家予算全体の中で何かこちらのほうに回していただけるものはないかと、逆にお願いをしたいわけではございます。たとえば現実に、いろいろな国際情勢の困難なむずかしい問題はありましょうけれども、これは現実に毎日ここを通っているジェット機だとかいうのはきょうじゅうにどうしても必要なんですか、二十億、三十億かかるような飛行機なんか必要かどうか。たとえばそういったものを回してもらえないだろうか、というのが一般の婦人や子供や老人の切なる願いだろうと思いますし、私はそういう点で、むずかしい数字はわかりませんけれども、何かそのようなものが先生方の御配慮によって国民生活優先の点で回していただけれは、先ほど力石先生もおっしゃいましたように八千億の累積赤字、三兆円以上の借り入れ金というものは、ことし一年で解決せぬかもしれませんけれども、近い将来、そういう国民的なコンセンサスは十分得られるような現状に来るだろうというふうに私は思います。
  66. 江藤隆美

    ○江藤委員 時間がなくなりますから、きょうは紅一点でお見えになっております稲葉さんに、最後に一言お尋ねしてよろしゅうございましょうか。——いま交通、公害、物価というのが国民の最大の関心だということを工藤さんははからずもおっしゃいました。その第一番の交通問題で、実質きのうから国鉄労組がストライキに入っております。民間は私どもはどうこう申し上げるわけにはまいりませんが、いわゆる法律でもって争議行為を禁止されておる国鉄は、実質きのうからきょう、またあしたもストライキをやろうとしておるわけであります。その問題は何だというと、これは賃金の値上げです。その賃金の値上げの裁定が出ないうちに、そのための公平機関があってストライキにかわるものとして裁定を出す、ところがそれを待たずに現在ストライキをやって、きのうからたいへん混乱しております。私どもは九州でありますから、みんなたいへん困っております。帰る者は帰れないし、来る者は途中で足どめを食う、物価も上がっている。こういうふうな行き方というものについて、一主婦としての立場からどういうふうにお受けとめになっておるか、素朴なお答えでけっこうでありますが伺いたい。私どもは決して頭を押えようとか、賃金を上げぬでいいとか何だとかいうことはちっとも考えておりません。ただ、そういうたとえ法律に禁止されておろうがどうしようが、あるいは公平機関意見が出るのを待たずに、国民の足を奪ってでも自分たちの意見を通していいという姿勢は、どうしてもとることができないのであります。私どもはこういう国会の中におりますから判断が狂いますといけませんので、主婦の御意見として一言お尋ねをしておきたいと思うわけであります。
  67. 稲葉敏子

    稲葉公述人 ただいまの御意見について、私がお答えをいたしたいと思います内容の半分ぐらいは、もう諸先生がお答えくださったようでございます。私も全くその意見には同感でございます。きょう私がここに出席さしていただきまして、このような真剣な高邁な討議をなされているということを身近に感じましたのは初めてでございます。当然労使間ではいろいろ日ごろから討議されていることとは存じますけれども、年中行事としてまるで毎年こういう紅旗を振りかざして力によるごり押しということをなされるということは、やはり私はいかなる理由がありましても、利用者としては納得いかない線でございます。これによって何千万の人の足を本日もとめられております。私ども利用者は一本のアシのごとき存在でございます。何ら対抗する手段も持ち合わせておりません。今後は、本日のような事態を迎えないためにも、日ごろから、先ほどおっしゃっていらっしゃいました、こういうものをきめる一つのルールを確立したらどうかという御意見がございましたけれども、私もそういうルールの確立を一日も早く望むものでございます。そうして、その場に常に利用者も参加して、労使間の問題点をはっきりさせて、その点を広く国民に知らせる努力を与野党ともどもなさっていただきたいと存じます。そのことによって、本日私が認識を深めましたと同じように、皆さんもきっと認識なさると思います。そういうことを広く広げていくことが、やはり世論の支持も得られ、結果的には皆さまの御希望に沿うような線を皆さんが寛容の精神をもってスムーズに認められるような基盤となるのじゃないかと思います。  結論を申し上げます。やはり力によるゴリ押しというものに対しては納得できません。
  68. 江藤隆美

    ○江藤委員 いろいろお尋ねしたいこともあるわけでありますが、時間が参りましたからこれで終わります。ありがとうございました。
  69. 小峯柳多

    小峯委員長 内藤良平君。
  70. 内藤良平

    ○内藤委員 内藤でございます。  どうもきょうは公述人の皆さんにはたいへんごくろうさまでございました。ありがとうございました。  最初に、私と同じ名の角本良平先生に。私、内藤良平といいますけれども、名前が同じものですから、常日ごろ先生のいろいろの御論文は読ましていただいております。先生のお手元にもちょっとメモを差し上げましたけれども、私は、国鉄がいまの自動車時代に対応するためにもいろいろ問題があると思っております。特に、先生は自動車時代以前の制度について配慮すべし、こういうご意見でありましたが、国鉄も百年になりましたけれども、何かやはり古いものが非常に、経営といいますか企業体の中に残っておりまして、歴史も古いせいかなかなかそれが抜けがたいようなものがある感じですね。例として機構のことも先生のお手元におあげしました。先生は国鉄の監査委員会に長らくおられましたので、私はやはり監査の面からもいろいろ平素お考えの点があると思います。どうぞひとつその点、その他いろいろなことについて、もしお考えがありましたら承りたい、かように思っておる次第なので、よろしくひとつお願いいたしたいと思います。
  71. 角本良平

    角本公述人 御質問の点について、第一は機構改革の必要があるかどうか。これは本社、支社、地方局、現場機関というふうな組織を従来とっておるわけであります。ときどき組織の若干の改正がございます。機構につきましては、私は、自動車時代になりましても、内部の輸送技術としては本質的な変化はございませんので、形式としては現在の組織でいいと思います。ただ、現場管理をもっと強化できるような体制にといいますか、本社以下が現場に目を向けられるようにというふうな考え方で権限を分けるといったようなことがあるいは必要かとも思います。それからこれは特に運輸省と国鉄との関係で、まず国鉄はできるだけ内部管理に重点が置けるようにということにもつながってまいります。それから会計面から考えました場合には、国鉄総裁の責任で運営できる部分とそうでない部分とをもっと明確にするということのほうが、機構改革よりもあるいは重要ではなかろうかと思います。  第二番目の民主的な運営ということでありますが、地方の局が地方の住民との間に断絶しているのではないかという点であります。これはたいへん心配な点でありまして、もちろん過去においてもその断絶がないように努力されてきたとは思いますけれども、はたして十分であったかどうかということは疑問がございます。  そこで、それでは民主的に運営するという場合に、そうはいいましても、すべての人の合意を得ることは不可能でありますから、やはりその地方の意向をだれが代表するか、県の問題は県知事、県議会というふうな形で代表していただかなければいけませんので、直接土地を提供する人、面接の利害人だけの意見でものを判断するということであってはいけない。その意味で、民主的といいましてもルールを明確にしておかなければいけないと思います。  それから、民主的にからみますいま一つの点は、発言をする以上は責任も持たなければばいけないということでありまして、先ほど申し上げましたように、地方交通線につきまして地方も負担しろというのは、そのような責任を持つためでございます。特に新しい線をつくれとか大改良をしろという積極的な場合にも、あるいはまた国鉄としては廃止すべきだと思っておる線の存続といったような場合にも、そうした補償についての責任ということを明確にしなければいけないと思います。  そこで第三の点の自動車時代国鉄の姿はどうあるべきかということでありますが、私は、自動車に対してかなり批判的な立場ではありますけれども、交通手段選択の順序といたしますと、人間の欲望としては自動車が第一にほしいのだ、これは全世界共通だろうと思います。それを無視して自動車撲滅論をいたしましても、これは無意味であります。道路をつくったから自動車がふえたのではなくて、やはり国民が自動車がほしいから道路をつくったのであります。道路をつくったことが国民の意向に反しているという考え方をとれば、これは非常な間違いであります。したがいまして、自動車があってもなおかつよりすぐれたサービスを提供できるか、あるいは自動車では運び切れないか、その場合に鉄道が生きてくるということであります。一つは新幹線のようなスピード、一つは通勤鉄道のような大量能力であります。  そこで、鉄道につきましては、よく都市間の輸送とかあるいは中長距離大量の貨物輸送とかいわれますけれども、もっと根本をさかのぼりますと、旅客貨物を通じまして、大量で、輸送の流れが定型的、これは発着地がきまっている、継続的、毎日出ている、こういった三つ条件がある場合に初めて鉄道は成り立つ、意味があるということであります。  こうした姿を考え、そうして運賃仕組みも先ほど申し上げたように直していくというふうなことを自動車時代国鉄の姿として考えていただいたらどうだろうかというふうに思っております。
  72. 内藤良平

    ○内藤委員 ありがとうございました。  それから清水先生に、例のATSの問題ですね。メモをおあげしましたけれども、われわれ運輸委員会国鉄問題を論じております。増収対策として輸送増強をいろいろやっておるわけでありますけれども、それが過密の運転といいますか、そういうぐあいに転化してきているわけですね。そこで実際に運転する運転の側の方々と管理する側の方々と、いわゆる安全問題を中心にしていろいろ問題が出ているわけであります。そこでまだ双方の間に合意点がないわけです。合意点がない中でこの問題はまだトラブルが残っておりまして、利用者の皆さんは毎日、また船橋のような事故があるのじゃないかという、あるいは何かの万一の事故があるのじゃないかというおそれを持ちながら乗っているわけですね。ここら辺の輸送力増強、増収対策、それから安全の問題、それから近代化、合理化、機械化、これを労使の場になりますと、いま申し上げましたようになかなか合意点が出ないのでありますけれども、国民の側から見てという立場で先生から一つの御見解を承りたい、こう思っているわけであります。よろしくひとつ……。
  73. 清水義汎

    清水公述人 国民の立場でということでございますが、ATSの問題で、少なくともこれから申し上げる二点については十分御協議いただきたいと思います。  ATSというものは、御承知のように信号機とセットされていて初めてあれは稼働いたします。国鉄の信号機のシステムは進行定位のシステムになっております。その場合に、通過駅の場合と停車駅の場合の問題があります。通過駅の場合でありますれば問題ありませんが、停車駅を通過駅と誤認をして走り出した場合におきましては大きな事故が発生をいたします。これが例の北海道の奈井江の事故が典型的な例でございます。そういう意味で、このATSというものが完全機器によって完全な安全性を保たれたというふうに考えますと誤りでありまして、やはり乗務員のこの取り扱いに対する訓練、それから十分に注意力が発揮できるような条件、こういうものをセットいたしませんと、この進行定位の現在の信号機のシステムの中では、ATSだけでは排除できない問題がある。同時に、奈井江の事故で見られますように、特にダイヤ改正の場合に乗務員の予備訓練が十分にされていませんと、必ずしもベテランの乗務員がダイヤ改正になりますとベテランでなくなってしまう。通過駅として十年なり十五年なり慣習的に乗務しております乗務員が、ある日突然これが停車駅になるといった場合に錯覚が起こります。これは心理学的に申しましても、絶対的に注意力によってすべてを処理するということは不可能だといわれておりますので、この辺はいわゆる教育の面と訓練の面、それからそれを維持し得るような条件の設定だと思います。  それから、第二の点は安全性との関係でございますが、特に大都市なり幹線輸送で非常に定員オーバーして乗っている場合には、制動距離が狂ってまいります。そうなりますと、ATSを装置しておきましてこれが作動いたしましても、予想された制動距離より延びてしまうことがあります。この場合には、やはり安全性が阻害をされてまいります。そういう面で、最近の国鉄の近代化の中で、新幹線等につきましては二百十キロ、将来二百五十キロというようなこともいわれておりまして、昔の飛行機と同じスピードであります。そうなりますと、この安全性の確認の中で特に十分な配慮を払っていただきたいと思いますし、特に定員の問題につきましては、当初新幹線も定員だけで輸送するということでありますが、たまたま事故がないという形の中で、座席定員オーバーしても現在乗れるという形になっております。万一の場合には非常に危険な状態が予想されます。  特に貨物の場合、私この間調べておりましたところが動物につきましては定員が確保されているのです。あるいは馬の輸送、豚の輸送、これは定員でございます。人間の輸送の場合には定員が確保されておらない。これは人間のほうが豚よりもじょうぶだという点でいいのかもわかりませんが、これにも一定の限界がございますので、特に運賃値上げサービス向上の中で、いわゆる居住性なりそれから安全性なり、快適愉快性の面で十分御配慮をいただければありがたいと思います。
  74. 内藤良平

    ○内藤委員 ちょっとまだ時間あるようですけれども、清水先生、じゃ、いま国鉄の労使で、運転方法で、ATSにからんで、運転する側とそれから管理する側と、安全であるとかあるいは安全でないとか、まだ合意点に達していないわけです。達していないために、いろいろまたトラブルが起きて輸送力の増強が停とんしているわけですね。それを国民的な立場から見た場合、そういう双方の、実際は管理する側、片方は運転する側、そこで安全度というものが合意点に達しないままに列車が運行されるということは、国民的立場から見ましてどういうものか、そこら辺のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  75. 清水義汎

    清水公述人 実はATS闘争に関係する問題だと思いますが、私も非常にその点につきましては疑問を感ぜざるを得ないのです。特に順法闘争という意味がきわめて一般には理解しにくい。もし順法闘争ということであれば、平常は違法をあえて行なっているということになる。違法をあえて行なうということは国民が絶えず危険にさらされている、こういうことでありますので、この順法闘争が行なわれることにも問題がございますし、また、順法闘争が行なわれるような条件、その中でもって非常にダイヤが乱れる。輸送力が停滞をする。これは利用者にとってはきわめてわからない問題になってしまう。こういう点はやはり早急に明確にしていただきたい。  特にATSの取り扱いについては、総裁の通達、それから社達、庫達、局達が、局によってかつては違っております。たとえば駅間のATSの作動については、ブザーが鳴ったら確認ボタンを押して、そして赤信号にならなければそのまま徐行運転しなさい。ところが、総裁通達によれば、ATSのブザーが鳴れば一たん停止を行なえ。この辺が今度は、総裁通達か局達かという形で議論の分かれ道になるとも思いますので、この辺はやはりこのATS取り扱い基準については、従来国鉄にはよく、本社の通達、社達、庫達あるいは局達という形で、解釈が若干違ってくる面がございますので、やはり全国統一路線網を持っております国鉄のような場合には、一本の通達と指示とそれから解釈論でいかれることが、特にATSの場合の微妙な見解の対立点を避けることになるのではないか、そういうように私は考えております。
  76. 小峯柳多

    小峯委員長 庫達というのはどういうことですか。
  77. 清水義汎

    清水公述人 従来の機関区、電車区、区長から出しているものです。
  78. 内藤良平

    ○内藤委員 それじゃ、どうもありがとうございました。
  79. 小峯柳多

    小峯委員長 田中昭二君。
  80. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 まず、角本先生にお尋ねいたしますが、今度の運賃値上げ条件つき賛成というような主体の上でのお話でございます。そこで、そういう立場に立っての御意見にしましても、私はちょっと先生の御趣旨が、現実の国鉄企業の実態と、それを監督します政府と、それからそのまたバックにおります与党の考え方というものを、いままでの国鉄経営再建運賃値上げ、過去に行なってきた運賃値上げ等を考えてみましても、先生の御意見をいろいろお聞きしまして、それが具体的にどう実行できるものだろうかと、これは失礼な言い方になりましたが、私は、現在のいろんな法律でも、いろんな法律に基づいて行なわれる仕事にしましても、その法律の規定が現実に行なわれるときに、どう国民全体の女全といいますか、豊かな生活を保障することになるかというような点を考えておりますものですから、これは全部に限って政府の行政の欠陥といえばもうそれまででございますが、その欠陥のある中で、先生のような御意見をどう具体化していくかということも大事なことではないか、このように思いまして、先生の御意見の、最初に赤字線の問題、少し赤字が多くなったから経営規模を縮小していくというような経営のしかたはどうだろうか。さらに収人の増加をはかっていくというような問題。三番目には、運賃負担というような問題で、いろいろサラリーマンとその家族が旅行する場合にはどうだというようなお話まで出ておりましたようでございますが、私は、失礼な言い方でございますが、先生のせっかくの御意見が、いまの政府、いまの与党、さらに国鉄の体質といいますか、マンモス化しまして、まず世間でよく国鉄というものを国民が批判する場合に、親方日の丸だ、官僚的くさみが抜けないというようなことが直感的に入ってくる、そういうものを現実に直せることがあるんではなかろうか、こういうことも考えてみまして、先生の御意見をその御意見のままでけっこうでございますから、まず具体的にいま政府に対してはこういう問題、かりにもう少し砕いて言えば、国鉄はあまり金をかけなくてもここを直せばいいんだ、与党はこういう考え方でバックアップすべきだ、こういうものがございましたならば、教えていただければたいへんありがたい、こう思います。
  81. 角本良平

    角本公述人 まず実行できるかということでございます。私は国鉄のローカル線といいますか閑散線といいますか、地方交通線といいますか、そういったものの撤去のときに、いつも市内電車の議論を思い出すわけであります。東京の都電はいまやほとんどはずされてまいりまして、まだ若干残っておる。横浜の市電は先日はずれました。三十七、八年ごろ私たちがその議論をしたときには、まっこうから反対される方が圧倒的に多かったわけであります。しかし、今日十年近くの間にはずれてしまいました。歴史の流れというものは私は変えられないと思います。われれわが一見実行できないように見えましても、人々がそれを見放してしまえばそれにしがみついている者は葬り去られるということであります。  具体的に例を申し上げますと、富山県である高校を調べましたときに、地元の人たちはこの路線が必要であるということを主張していたのにもかかわらず、高校生のアンケート調査はあんなものは要らないということをはっきり、言っております。ですから、皆さまがどういう御判断をなさろうと、利用者のほうがもう見放しているということであります。  もう一つ例を申し上げます。金沢の市電はわりあいに早く撤去されました。非常に保守的な町でありながら、労組が非常に反対をしたのにもかかわらず、市民はあんなものは要らないと言ったわけであります。そういった時代に私は間もなく変わってくる、そのことが私が申し上げ自動車時代という意味でありまして、実行できるかどうかということは過去の条件下で考えてはいけないということを申し上げたいわけであります。中小私鉄あるいは大私鉄でも、輸送量の少ない路線はかなり線を撤去されてきております。ただ国鉄だけがむしろ反対の方向に動いていた。しかしながら、おそらく利用者はそれを見放すであろうという判断を私が持ちまして、そういった前提のもとにきょうの意見を申し上げた次第でございます。  そこで、私は赤字が多いから撤去しろという趣旨で決して申し上げているわけではございません。私が申し上げていることは、自動車が普及した段階において最小限の足は自動車で確保できるから、そうしてそのほうを人々が希望しているから、それは表に市町村長が言っていることと違いますけれども、実際は高校生の意見のほうが正しいわけであります。現実に利用者は減っておる、そういった姿を前提にいたしまして、輸送量が小さいところで道路で足りるところは道路で済ませるべきではないか、そういった路線は撤去すべきである。そうすると、まず最初の段階として一万キロのうちの五千キロくらいが浮かび上がってくるであろうということで申し上げているわけであります。  そこで、第二番目になるかとも思いますが、国鉄の体質を直せるかということでございます。この体質を直すということは非常に私はむずかしいと思います。内部でも努力はされておるでありましょうが、まず自動車についての認識が甘かったというような点でも、やはり国鉄の長年の独占の体質がそこに反映していたのではなかろうかという気がいたします。なかなかむずかしいと思いますけれども、これはやはり皆さまの御指導によりまして直していかなければいけない。それからもう一つは、私はいま申し上げ利用者の態度が当然国鉄に対して変わってくる、その中で国鉄自体もやがては目がさめるであろうというふうに思っております。  ただ、ここで一つだけお願いを申し上げさしていただくならば、国鉄の幹部をあまり国会に拘束していただくと彼らの内部の監督をする時間がなくなってしまうのではなかろうかという心配、これはたいへん皆さまに申しわけない発言でございますけれども、その意味からも先ほど申し上げましたように、できるだけルールをつくっていただきまして、彼らがここで時間的に拘束されることが少なくなるように、あるいは逆に言えば、ATSのような問題を一刻でも早く解決できるようにしてやっていただきたい。これはたいへん国民の一人として言うのは僣越でございますけれども、もし言わせていただければお願いしたいと思います。
  82. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私、たいへん貴重な意見だと思っていま聞いていました。反論するわけではございませんけれども、いい意見ですからもう少し具体的にお尋ねしてよろしゅうございましょうか。  赤字線の問題はたいへんよくわかったような気持ちがします。先生の御指摘は、結局私はお聞きしておりまして政府と与党がやる気になればできるのだ、結局先生がおっしゃったように、なくなるものならば国民はそれはなくなったとして見てもそこには必然的な結果しか出てこない、こういうような御意見でございますから、私はその先生の御意見政府並びに国鉄にそのままこれは反映させていかなければならない。もちろんそのバックにあります与党と政府とのかね合いというようなものが、私はそこにどうも原因があるのではないか。いつもいままでの再建論議にしましても、いまの国鉄幹部を酷使するなという問題にしましても、実際この場に来ておりましても私たちが必要としない者も呼んであるのです。また必要と思うその者が、いま分業化しております関係上、よく専門家でないとわからないというようなことで、やはり総裁の答弁を助ける者はまた局長さんとか常務とかこういうような形になっておりますものですから、そういう点を私は改革しなければいけないというような意味で受け取っておきたいと思うのです。  それに関連しましてお聞きしたいことは、収人の増加ですね、これがいまの通貨値上げによって確実に収入増加ということの結果が引き出せるかという点が一点でございます。  それと、先ほどの利用者負担納税者の公平というようなことの中に、いわゆるサラリーマン家族運賃は区別すべきであるというような、私初めて聞いた御意見なもんですから、もう少しその点をお聞きしたい、こう思います。
  83. 角本良平

    角本公述人 いまの御質問はたいへん私もむずかしい、答えにくい質問でございます。と申しますのは、現在不景気がいつまで続くかという予想が私のような能力ではとても将来の見通しが立ちません。もしもこれが好景気でありますならば、運賃値上げ率がそのまま収入増加になってくると思います。しかしながら、いまたいへん不景気であるということから、この運賃値上げがあるいは従来以上に輸送量の減退をもたらすかもしれないという要素がございます。したがいまして、総収入があるいは予算で見込まれたほどには増加しないという危険があるかと思います。特に、これが現在のように自動車が普及してまいりますと、もう高い鉄道には乗らない。先日のタクシーの料金値上げにおきましても、いままでよりも旅客の回復がおそかったという問題がございます。ですから、そういった状態がおそらくここしばらく続くのではなかろうかという気がいたしますから、堅実に、従来よりも控え目に予想をしたほうがいいのではなかろうかと思っております。  それから第二番目に、サラリーマンの家庭の話を申し上げましたが、現在運賃法で定期割引が、まあ大ざっぱにいえば五割以上割り引かなければいけない、少なくとも五割は割り引かなければいけないというふうな姿になっております。しかし、なぜ五割以上割り引かねばいけないかという具体的な根拠、合理的な説明が私はないと思います。ただ慣習としてそういったことが、たまたま二十三年前ですか、四年前ですかの時点で法律になったということだけだろうと思います。したがいまして、今日これだけ自動車時代になりまして、しかも国鉄の増強投資のかなりの部分が通勤者自体のためになされているということになりますと、その運賃負担というものを考え直してみるべきだ。従来は輸送能力の余力をもって通勤者を運ぶから割引率がかなり高率であっても経常的には負担にならないし、また社会政策的にもそのほうがよかったということであったと思いますが、もしも社会政策として行なうのであれば、そのために五割とか五割以上の割引が必要ということであれば、それは普通旅客負担で行なうのではなしに、別な、政府の措置で行なうべきことだと思います。しかも通勤定期につきましては雇用主がある程度負担するという慣行が一般でございますし、それに対して、家族のほうがその通勤者の二倍以上も支払わされているということは、私は、いかにも不公平であり、また不合理で、説明のつかないことであろう、そういう意味で、ぜひ御検討願いたいと申し上げた次第でございます。
  84. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 たいへんありがとうございました。  先ほど私は収入の問題を申し上げましたが、いま先生も、たいへん危険だというようなお感じもあるようでございますが、いままでの実績を見てみますと、確かにこの地検が当たっておるようでございます。運賃値上げをしたときには上昇率を示しておりますけれども、そのほかは大体として、まあ五、六%の収入の対前年の伸びくらいで、これはやはり収入増加ということはあまり期待できないということではないか。それは輸送シェアの問題もございますから、まあそれとしまして、私は何もここで国鉄だけを云々いたくないと思いますことは、国鉄もそれだけの努力収入の問題についてはしておるという、その考え方なり意気込みはあると思うのですが、先ほども話に出たと思いますが、関連事業の問題等も全部法律である程度規定されておりますものですから、そういう面については今後幅を広くしてやらなければいけないんじゃないか、こういうふうな気持ちでおります。  次に、清水先生にお尋ねいたしますが、運賃値上げ反対という意味ではたいへん貴重な御意見でありまして、感謝しておりますが、ただ再建につきまして先生のおことばは、余分なところを省いておっしゃったんだろうと思っておりますが、私は、今度の運賃値上げの基本になっておりますものも、政府の援助、それから国鉄企業努力、それから利用者負担、こういうことをうたっておりますが、その中で特に私は、この企業努力というものをまずしっかりやらなければいけない。ということは経理の面、財政国鉄経営の問題、これでいっても、その受けざらといいますか、利用者負担政府の援助と、それを受ける国鉄財政の中に穴があっては私は、それだけの効果があがらない、こういうふうな考え方企業努力というものが最優先しなければならない、こういう考え方を持っておるのでございますが、この点はいかがでございましょうか。大体そういう意味に受け取っておったのでございますが、先生のおことばだけとりますと、何か企業努力だけではできないというようなお話もあったものですから、まあ確認の意味でお尋ねするわけであります。
  85. 清水義汎

    清水公述人 私が企業努力でできないということは、企業努力が必要がない、もう余地がない、こういう意味ではございません。基本的な問題がそれだけでは解決しないという意味でございますが、御指摘のように企業努力の面につきましても、内部のことでございますので詳しくはわかりません。部分的に見ますと、営収のある営業所を外注へ放してしまっているというような部門もございます。特に東名高速の国鉄バス関係ではそういう指摘もあるようでございますので、そういう点ではやはり企業努力というものをやっていかなければならぬ。同時に単なる運賃値上げだけじゃなくて、輸送需要を拡大をしていくような国鉄側としての諸施策政府に要請していくのも、これも企業努力一つだと思います。同時に、長年の伝統でございますので、簡単に直らないとは思いますけれども、公共企業体の成立のときにいわれました企業のオートノミーとそれから企業経営の民主化、いわば官僚主義から脱皮をしていく、いわゆる能率化の原則というのが公共企業体の出発のときの精神であったかと思います。そういう意味では、いまだに、先ほどから何人かの方から御指摘のように、国鉄内部における官僚機構と官僚主義、こういう点がやはり能率化なり企業努力に対してマイナスになっている側面ということも考えられます。これは当然労務管理なり人当管理の面にも影響してくると思いますので、そういう点では全く、御質問者の言われるような趣旨に私も同意見でございます。
  86. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それで、私も国鉄の本社の幹部をいままで呼んでいろいろ話してみますと、経営というのは、中心に立つ人であれば、自分のところの経営内容というのは大体わかるはずだと思うのです。国鉄の幹部の方も、日本の最高の学府を出られて頭のいい方ばかりでございますから、わかっておかなければいけないのでしょうが、私がいままで聞いたところでは、二十年、三十年国鉄におっても、国鉄経営というのはさっぱりわからない、なおわからなくなった、こういう人がたくさんおるわけです。そういうことを聞きますものですから、私は、そういうことじゃいけない。やはり経営というのは大づかみはわかる、国民にも発表できる、こういう姿にならなければいけない、こう思っておりますし、こういう問題はまた国会でも今後論議を重ねてそうやっていきたいと思っております。  そこで、時間がなくなりましたが、策後に高橋先生に一言だけ、抽象的なことで相すみませんが……。先生のお話を聞いておりますと、企業としての収入の確保をしていかなければならないということが最初にあったと思います。  そこで、私は国有鉄道ということを考えれば、収益企業としてだけの立場では、私は、国民に訴える、国民のいま心配しておることにはかえって反発を受けるのじゃないか、こういうふうな感じがするわけでございますが、その点はひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
  87. 高橋秀雄

    高橋公述人 鉄道収入という問題でありますが、幹線区におきましては、これはやはりコストを回収するような運賃水準というものを当然考えていかなければならない。しかし支線区なりあるいは将来廃止するような線区につきましては別の考え方でいくということを申し上げたのであります。それから幹線区の場合にも、公共性を重んじ、あるいは社会のためにどうしても犠牲を払って賃率を安くしなければならぬという部門が、独占的経営がなされる部門についてそれがあれば、それはある程度運賃を下げるということはやむを得ないと思います。しかしその場合には、その下げたことによる負担分は国家が補償するということを当然考えられていかなければならぬと思うのであります。それから支線の場合は、先ほど申しましたように、コストを全部回収することはもともとできないのでありますから、前にも申しましたが、減価償却なり資本関係というものは、どうせ将来廃止する線区でありますから、ある程度やめて、それ以外のアウト・オブ・ポケット・コストという経常費について赤字が出れば、その赤字は——赤字というのは、幹線区と同じ収入水準についてみますと、コストよりも水準は低くなりますから、したがって、その赤字分は原案で考えられているような方法で補助をするということはやむを得ないと思うのであります。
  88. 田中昭二

    ○田中(昭)議員 たいへん時間がなくて残念でございますが、いまの高橋先生のお話で、もう少しいろいろお聞きした上でないと私も納得いかないような点がございます。また次の機会がありましたならお尋ねすることにいたしまして、きょうはほかの方にお聞きできませんでしたが、たいへんありがとうございました。
  89. 小峯柳多

    小峯委員長 田代文久君。
  90. 田代文久

    ○田代委員 公述人の方々には、長い間はなはだお気の毒でございますが、私が最後でございますから、ひとつ二十分ばかりごしんぼう願いたいと思います。  まず清水公述人にお伺いしたいのでございますが、御承知のようにまた政府発表によりましても、昭和三十九年からいわゆる——私どもこれはいわゆると思うのですけれども、いわゆる国鉄財政が急激に赤字になっているという説明を政府からも聞きますし、そういうように書かておるわけなんですけれども、これはいわゆる政府当局が説明しているような形で赤字が出た、いわゆる人件費がかさんだとか、あるいは輸送量が思うようにいかなかった、そういう点もありましょうけれども、もう少し大きな観点から考えまして、いわゆる三十九年という年は、大体どういう年代か。その少し前を考えますと、例の池田内閣の高度成長時代で、とにかく日本の経済が現在のGNPに非常に発展する基礎をつくって、発展してきた。しかしその中で、貧乏人は麦めしを食えというようなことを言うて池田さんは死んでいったのですけれども、そういう中でとにかく発展してきて、したがって、物資の国内における輸送とかなんとかというのは、とても飛躍的に発展してくる。ですからこの赤字というのは、そういう形でできたというよりは  私が非常に疑問に思ってぜひともお伺いしたいと思うのは、いわゆるそういう高度成長、したがって、特に大企業の発展となるわけなんですけれども、そういう中で鉄道輸送が果たす使命と申しますか、役刷りと申しますか、私どもから申しますと、これが片寄った形で発展させられた。そういう中からこの赤字というものは三十九年から飛躍的に出ているんじゃないか。この問題はやはりはっきりさせませんと、国鉄赤字の問題あるいは運輸政策に対する基本的な解決というものははっきりしないんじゃないか、このように考えますので、私がいま理解しているような理解のしかたが正しいかどうかという点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  91. 清水義汎

    清水公述人 結論から先に申し上げますと、一般輪としてはお考えのような形で私も見ております。  三十九年から非常に悪化をしたということでありますが、三十九年の決算を見ますと、この年から三百億の赤字が出ております。ところが、この三百億のこのときの赤字は、前年度と比較をいたしまして減価償却の方法を変更をいたしております。そして減価償却増が三百億出たわけであります。ですから会計のシステムが変わったわけでありますから、その意味でシビアに申しますと、前年度との決算報告と同一次元で比較検討はされない、することはできない。そういう論理的な問題は一つございます。  それからその後、御承知のように第一次、第二次、第三次中期計画の中で新幹線を中心に膨大な近代化の設備投資が行なわれております。そのために借り入れ金の増強、それから減価償却の増、こういう形の中で出てきておりますので、それを一言に申しますれば、高度経済成長の中での産業の発展に国鉄が奉仕をしてきたひずみが三十九年前後から急激に拡大をしていって、減少化をしていった、こういうふうに見ることができると思います。  これは釈迦に説法かもわかりませんけれども、同じ産業資本でも、交通資本が歴史的に世界各国とも産業資本に従属化している弱みを持っております。この点がいわゆる同じ産業といいましても、一般産業資本と交通資本とが同次元で対等な条件がない。ここにいわゆる経済成長の中における交通のひずみが出てきているわけでございまして、全般的な交通の危機はすでに昭和三十五年から徐々に表面化をしてきているということで、この三十九年前後からの全般的な交通の危機の問題は、日本における国鉄の全般的な——国鉄だけではなくして、日本の交通の危機の中で国鉄も同じようにきわめて深刻な状態が露呈化をした、かように私は考えております。
  92. 田代文久

    ○田代委員 非常にはっきりさしていただいたわけなんですが、次に、やはり同じく清水公述人にお願いしたいのです。  四十四年に、今度の再建計画を立てる前にも立てたわけですね。これがわずか三年にしてもう全然廃案みたいになってしまう。それで一応失敗という形をとっておりますけれども、まあ私の片寄った考え方かもしれませんが、これはいわゆる失敗というような性格のものではないんじゃないか。という意味は、大体そういうふうになるような計画としてこれは組まれておるんだ。ですから三年後の現在、四十七年度を起点とする今度の再建計画が出るのは——その失敗という意味は、これは失敗であることは間違いないのですけれども、むしろ私どもとしては意図的に、こういうふうに赤字が四十四年の段階においてはあるんだ、できているんだ、これじゃもうやっていけぬじゃないかというところで、結局運賃値上げ、それから労働者の首切りですね、合理化、削減という、むしろそこに比重がかかってきて、そうしてそのたびにこういう計画というものが出された。ですから、これは私どもがまじめに、まともにずっと計画を立てて、そしてやっていって、つまずいたというんでなくて、したがって、これはつまずいてもつまずかぬでもたいしたことない、計画を立てられる場合においては。むしろはっきり運賃値上げに成功し、あるいはまた労働者の人員削減に成功したという点がはっきり出てくれば、これは計画としては失敗でも何でもなかったんじゃないか、そのように私は考えるわけなんですが、そういう点から見まして、今度の計画は、私はやはりより以上これは意図的な形で出されているのじゃないか。もちろんこれは計画ですから意図的にならなければなりませんけれども、この意図的という意味は、まずこのように八千億円の赤字がある、借金が三兆円だ。償却前の赤字がこんなになるんだ。こんなんじゃとにかく国鉄というものはどうもこうもならぬ、投げ出したいくらいだというような印象を国民に与えながら、片方に出ておるのは、非常に物価高の中で、政府公共料金を押えるということを佐藤首相なんかは繰り返し繰り返し言いながら、実際においてはその公共料金の元凶である国鉄運賃値上げをやる。しかも、とにかく十一万の国鉄労働者の削減をやる。これは国鉄労働者の計算によりますと、単なる十一万ではない、いわゆる企業が大きく発展するあるいは輸送距離が延びるということを考えればこれは二十万をこえるというような計算を労働組合はやっているようですね。  その点はともかくとして、この要綱そのものによりましても、とにかく十一万の削減と書いてありますね。その十一万の削減というやつは、これは首切るのじゃないですよということを言います。これは首切るのではない。いわゆるなま首を切るのじゃないけれども、国鉄なりあるいは政府の答弁によりますと、とにかく国鉄労働者の年齢構成というやつは非常に高い。四十歳から五十歳の間の年齢構成が高い。何か年齢構成の高いことは国鉄労働者が犯罪者であるかのような見方なんですね。しかし四十歳から五十歳、五十五歳というのは、全く男の働き盛りと思いますよ、実際。だから、十年間にこの人員の十一万の削減ということは、なま首は切らないけれどもその人たちはやめていくのだからということですけれども、やめていくといっても、これはどうもお世話になりましたからということでやめていくのじゃないと私は思うのですよ。どうかな、君はもうやめたらどうかというような形で来ていることは間違いないのです、実際において。  ですから、そういう問題がございますから、この計画内容の、たとえば労働者の賃金のアップの十年間における見通しから申しましても、最終年度においてはとにかく一〇%から一一%に抑えるという形での計画になっていますね。これはすでにもう何回も数字の上でも明らかになっておりますけれども、国鉄労働者のいわゆるベースアップの比率というやつは、民間に比べていつも安いという実態になっていますね。しかもこの計画の中で、十年後において出るそのベースアップの見込みというやつは、とにかく一〇%そこそこという形で抑える。現在よりますます押える。大体その考え方は、非常に人件費を抑えるという意味でわかりますけれども、実際においてこれは全くそぐわない考え方ではないか。物価はどんどん上がる中で、そして全世界の、また日本の国民の生活水準が上がっていく中で、とにかく賃金水準が下がっていくというような見通しが十年間に立つか。全くこれは非科学的である。したがって、そういう意味におきまして、これは私は計画にならないと思うのです、こういう計画が出ている場合においては。あるいは、先ほども出ておりましたけれども、この物価の値上がりについての見込みなんかでも、これは私は非常に甘いのではないかと思う。  そこで、結輪を申し上げますと、やっぱりこの計画は、いわゆる新全総といわれておる計画ですね、そして新しい、いわゆる高度成長政策からもう一歩進んだ形における、そういう日本の全体の産業を大企業本位の形で発展させるというところから意図的に計画された計画であって、したがってこれは文字におきましては、十年後においてはいわゆる再建ができるという結論になっておりますけれども、実際においては、これはできないじゃないかというふうに私は考えるわけなんです。私は、この計画は必ず失敗するのじゃないかと思う。文字づらでは数字が合わされておりますけれども。したがって、この前のやつが三年間でパアになってしまった。そうすると今度は、これがまた十年間行って——十年間といって、十年一昔といいますけれども、現代ではこれはもう二昔ですよ。そういう先の計画が実際に成立するかどうか。その点で私は、大体政府が何を意図しているかということは十分読んだ上で、これは大体失敗せざるを得ないのじゃないかということを考えるわけですが、ひとつ清水公述人のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  93. 清水義汎

    清水公述人 非常にむずかしい質問でございまして、私はたまたま専門が交通でございますので、また本日は権威ある国会の場だということで、あまり推論を入れてしまいますとかえって失礼にも当たると思いますので、ある特定の意図があってこれをつくったかどうかという点になりますと、いろいろな推論は私もできますけれども、それに関する資料も持ち合わせておりませんので、意図の問題につきましては、私の手元に入っておりますのは、昭和四十七年一月十一日に大蔵大臣、運輸大臣、自民党政調会長、自民党国鉄再建懇談会座長の四人の方の連名による「国鉄財政再建対策要綱」というものしか読んでおりません。これだけ見て評価をしろというのは、実は非常に無理でございまして、いわばスローガンでございますから、スローガンだけで判断すること事体が非科学的だと思います。ただ、いままでの国鉄再建の経過から見ますと、たとえば東海道新幹線の場合には、当初予算たしか千六百数十億だったと思います。オリンピックの年度に開通いたしましたときには、四千億をこえておる。おそらくこれが民間企業でございましたら、株主総会でたいへんなことになったと思います。予算なり計画に非常に大きな支障を来たしておる。こういう点が第三次の計画の中でやはり同じような傾向が出てしまった。しかし第三次から、この四十四年の計画から今度の「国鉄財政再建対策要綱」というものができました過程の中には、当然総合交通体系というものの考え方がこれにセットされてやられたと思うわけでありますけれども、ただ、そこで一番問題なのは、御承知のようにわが国の交通はいろいろな経営主体で分担をしております。その場合に、国有鉄道の今日的な位置づけがどうなるのか、使命がどうなるのか、この辺の中でこの対策要綱というものが当然お考えになっておられると思いますが、総合交通体系の中でも総論部分でまだ終始をしておりまして、国鉄などについて各論的にそこがどう出るかが非常に明確でございませんので、私はその点にはまだ言及できないわけでありますが、それと本来はセットをされていかなければいけないのではないかという点が第一点でございます。  それから第二点は、政府出資が多くなるという、一兆円の出資を行なうということでありますが、これがいわゆる民間の資本の増資的な意味の出資とは、若干性格を異にしているということであります。いわゆる建設助成、しかも建設助成が中心になり、あとは今度路面を撤去するといういわゆるスクラップ・アンド・ビルドになってまいりますが、その原資調達の中で、この調達の原資を、利子負担であるとかそれから国が出すということになり、あとは合理化という問題になりますが、ただ問題は、ここが意見の分かれ道だと思いますが、私は資本調達を利用脅負旭で行なうということに企業として問題がある。これはやはり、資本調達というものは、先取りをしてはいけないということがございます。  それからこの合理化の問題につきましても、これは当然路線をどのくらい縮小するかという点とも関連いたしましようが、しかし新幹線ネットワークがどんどん進められていくということを考えますと、新規の、新しい近代化された設備に充当する労働者を一切採用しないでやれるということは、私も正式に聞いたわけではございませんが、国鉄当局の担当者自身も非常にむずかしいということを言っております。そうなりますと、いわゆるこの十一万の縮減が定年退職者だけを対象にして新規採用を一切しないということが、現実論として新幹線ネットワークの建設ということとのからみの中でできるかどうか、この辺には私も疑問を持っているわけであります。  それから同時に物価上昇、それから賃金アップ、こういうことになりますと、経済の安定期の場合におきましては長則の指数がはじけましょうが、現在のように毎年物価の上昇の水準に変動がある、ベースアップについても変動がある、しかも、国鉄の場合には、一般産業の民間労働者よりも若干低いということになっておりますと、少なくともアップ率くらいは同じにしなければならぬという傾向が出てくるというふうに、私は現実の問題としてはそうなるだろうと推察されます。そうなりますと、その辺のパーセンテージが狂う可能性がありはしないかという御指摘に対しては、私もその可能性は持っているというふうにお答えをしたいと思います。
  94. 田代文久

    ○田代委員 ありがとうございました。終わります。
  95. 小峯柳多

    小峯委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、御多用中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとう存じました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。(拍手)  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十分散会