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1972-05-31 第68回国会 衆議院 運輸委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月三十一日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 古屋  亨君    理事 内藤 良平君 理事 田中 昭二君       石井  一君    江藤 隆美君      小此木彦三郎君    唐沢俊二郎君       佐藤 守良君    菅波  茂君       關口 勝利君    羽田  孜君       井岡 大治君    勝澤 芳雄君       金丸 徳重君    久保 三郎君       米田 東吾君    松本 忠助君       宮井 泰良君    内海  清君       田代 文久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         運輸政務次官  佐藤 孝行君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         海上保安庁長官 手塚 良成君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正巳君     ————————————— 委員の異動 五月二十五日  辞任         補欠選任   石井  一君     石田 博英君  小此木彦三郎君     菅野和太郎君   菅波  茂君     村上信二郎君   羽田  孜君     中島 茂喜君  辞任         補欠選任   石田 博英君     石井  一君   菅野和太郎君    小此木彦三郎君   中島 茂喜君     羽田  孜君   村上信二郎君     菅波  茂君 同月三十一日  辞任         補欠選任   勝澤 芳雄君     米田 東吾君 同日  辞任         補欠選任   米田 東吾君     勝津 芳雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九八号)  港湾に関する件(新潟港におけるしゆんせつ船  爆発事故に関する問題)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  港湾に関する件について調査を進めます。  新潟港におけるしゅんせつ船爆発事故に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。米田東吾君。
  3. 米田東吾

    米田委員 私は、去る二十六日新潟港内に発生いたしました米軍機雷接触爆発を起こしましたしゅんせつ船海麟丸事故につきまして御質問を申し上げたいと思うのでございます。  政府側から本来であればこの事故につきまして当然説明があるはずだと思うのでありますけれども、時間の関係等で省略されておるようでありますが、いま配付されました資料によりまして私は若手の質問をしたいと思うのでございます。  まず最初に、現在なお一名の行くえ不明者が、発見されないまますでにきょうは五日目でございますか、たっておるわけでございますが、この行くえ不明者に対しまして人命尊重立場からいまどんな捜査が、あるいは対策が行なわれておるか。遺族の立場に立ちましてもいっときも早くこの行くえ不明の司厨次長遺体というもの——これは遺体であるかどうか断定できませんけれども、発見しておあげしなければならぬと思うわけでありますが、これを中心にいたしまして現在当局でこのしゅんせつ船事故対策について進めている現況をまづひとつ御報告いただきたいと思うのでございます。
  4. 栗栖義明

    栗栖政府委員 このたびの新潟港におきます海麟丸事故につきましては皆さんをはなはだお騒がせいたしまして申しわけございません。  これは私どもの直轄の船でございまして、先生指摘のようにただいま一名行くえ不明者がございまして、これは事故発生直後から、おもに船内船外に分けまして潜水夫その他を入れて捜査を続けておるわけでございますけれども、いまだに発見できないわけでございます。なお死亡されました次席船長さんはサロンで潜水夫によって発見したわけでございます。船内は何度も繰り返して調べておりますけれども、御承知のような状態でございますので、あるいは見落としがあってはいかぬということで繰り返して進めております。それからなお昨日の朝でございますか、船内であかない部屋がございましたので、これは水中切断であけまして潜水夫を入れましたけれども見つからない。で、現在船内を進めておりますけれども、船の外、これは御承知のように入り口信濃川河口でございますので、航路あるいは防波堤の外側、そういうところに潜水夫とそれから漁船方々の応援をいただきまして、海底捜査を進めておるというような実態でございます。
  5. 米田東吾

    米田委員 目撃者の話によりますと、爆発と同時に海麟丸甲板あるいは船の上から七、八名海中に飛び込んでおる。それが漁船やあるいはあなたのほうの救援の船で救われておるわけなのであります。また一部この東突堤に自力で泳ぎついて助かっておる方があるわけであります。飛び込んだ人の数がはっきりしておるわけではありませんし、まあ六、七名、新聞によっては五、六名というところもあります。不確定であります。したがって、あなたのほうはもっぱら船内におるのじゃないかということでずっと捜査をされておるようでありますけれども、この飛び込まれた中にあるいは井崎さんがおられるかもしらぬ。あそこは流れの早い港の入り口河口であります。したがって、すぐあれはもう海洋のほうに押し出されるということが当然あるわけであります。もっと広く、しかも、重点的に遺体の投棄についてもう少し機動力を発揮して、早くやられたらどうかと実は思うのでありますけれども、いかがでございますか。
  6. 栗栖義明

    栗栖政府委員 私ども現地から報告を受けましたし、私どもの参事官を現地へ派遣したわけでございますけれども、その当時の事後処理の模様を聞きますと、船内は当然さがしておりますけれども、当時新潟港にいました潜水夫を、ほかの作業に従事しておる者も全部集めまして、船内船外、両方調べております。ただ船外は、先生指摘のように、河口でございますので流れも早いということで、非常に船外作業が困難をきわめた。なお、土曜日から日曜日にかけまして海洋がしけまして、むずかしかったというふうな報告も聞いてございます。したがって、手を抜いたということではなくて、極力現在もなお一生懸命作業は続けておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  7. 米田東吾

    米田委員 これはひとつ早く、もう少し規模を広げて遺体捜索について全力をあげていただきたい、これは要望しておきたいと思います。  それから、原因はわかりましたか。はっきりしなかったようでございますが、新聞によりますと、二十九日にはあなたのほうで統一されました見解として、米軍が敷設した機雷である、それに接触して爆破したという断定をされたようでありますけれども原因がわかりましたら、もう一回明確に教えていただきたいと思います。
  8. 手塚良成

    手塚政府委員 私のほうで現地保安本部中心にいたしまして対策本部を設置して、いろいろ原因の究明に当たりました。その結果といたしまして、お手元の資料にもあるかと思いますが、機雷爆発によるものというふうに判定をいたしました。  その理由は、爆発地点と思われる海底から磁気機雷用コイルが発見された。このコイル自体から、専門の自衛隊の鑑定も経たわけでございますが、これは機雷コイルであるということがわかったということが一つであります。それから船体の左舷外板の破口が内側にめくれておる。これは内部からの爆発ではなくて、外部からのものであるということによるわけでございます。それから三器目左舷ドラグアーム、これは御承知のとおりの、この船の作業用ドラグアームの大部分が滅失した。二十五メートルの長さのうち十七メートル吹き飛んでおるという状態、さらにブリッジの前面のガラスから火薬反応というものが認められております。これは県警の鑑識課鑑識の結果でございます。さらにもう一つ目撃者が当時おりまして、相当高い水柱が上がるのを視認し、爆発音を聞いておる。  以上のような理由によりまして、これは関係機関皆さんとの合議の結果、機雷爆発であるというふうに判定をいたしました。
  9. 米田東吾

    米田委員 きわめて明確でございます。いろいろ努力をされました海上保安庁並びに港湾当局皆さんに、ほんとうに私は感謝をしたいと思います。  私も現場を見せてもらいましたし、それからこの海麟丸、その船にも行きまして、そしてこの破損を受けております甲板あるいは左舷状態船内状態等を見せてもらいました。おそらく機雷によるものであるということについては、私も目撃者の状況からして間違いない、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、ひとつ防衛庁長官にもお伺いをいたしたいのでございますが、このように原因が、一時は内部エンジン過熱だとか、あるいは燃料タンク爆発ではないかとか、いろいろ憶測がありましたけれども、最終的に戦時中米軍が敷設したであろう機雷接触をして、このような事故が起きた。四十六名中二名が、いまのところ一名行方不明、一名は遺体が発見されておる。残りの四十四名はすべて負傷され、その中で十二名が重傷、こういう痛ましい事態を実は引き起こしておるわけであります。私は犠牲者並びに被害者方々ほんとうにお見舞いを申し上げますし、御冥福を祈るものでございます。  この新潟港は、特定軍要港であります。しかも日本海側では最大の国際港、出入外国船の八〇%はソビエト船、最近は中国船、それから朝鮮民主主義人民共和国との関係におきましては、昭和三十四年以来人道の回復として、年々帰国船新潟港を出入りして、現在も二カ月ないし三カ月に一回船が入っておる。非常に重要な役割りを果たしておる港でありますし、かつこれは漁港が併設されておりますし、そしてまた佐渡観光等航路玄関口でもあり、佐渡等におきましては、年々いま約二百万ぐらいの観光人口新潟港中心にして佐渡に渡っておるという非常に重要性を増しておる港であります。この新潟港は、私の調べたところによりますと、多少日時の点で不正確な点があるかもしれませんが、昭和二十七年一月十五日には、運輸省告示をもって、新潟港は、航路安全宣言というものが発せられて、安全でございますという内外に向けての保征運輸省海上保安庁当局はなされておる。なお、その後、三十五年の四月の十六日、これは防衛庁機雷等についての掃海完了宣言といいますか、掃海が完了して安全であるという告示をされておる。これを受けて、運輸省新潟港水路あるいは外港、外の関係を含めまして、全般的に新潟港港域については安全であるという発表をなさっておるわけです。  このように、新潟港は二十七年以来皆さんの御努力によって、戦時中から想定されておりました機雷掃海あるいは障害物除去、これらの関係を完了されて、安全な港であるという状態で、このような港の機能というものを今日まで持ち続けてきたわけでありまして、ゆめゆめこのような戦争の落とし子といわれる米軍機雷が残っておって、それによって事故を起こす——幸いに今回は客船等によりまして大量の市民皆さん犠牲をしいるということはなかったのでございますけれども、いずれにしてもこのような事故が起きておるわけでありまして、まことに私は残念だと思うのであります。この新潟港掃海、それから航路安全、要するに新潟港安全性というものについてもう一回ひとつ私は、防衛庁長官から、従来、防衛庁が戦後新潟港にとってまいりました掃海作業、それからその現状というようなものについて御説明をいただきたいと思いますし、あわせてこの事故を契機にして、いま新潟県の知事はじめ港湾管理骨あるいは市長、港湾当局、あげて新潟港の安全について再点検をしてもらいたいという要請も当局のほうに出ておるはずだと思うのでありますが、これはまた県民、市民の声でもございます。昨年十一月には例のジュリアナ号の事件がございまして、あれも新潟港港域の中にあったというようなことで、新潟港が非常に欠陥港ではないかというイメージを与えるようなことになってまいりました。引き続き今回このような事故が起きておるわけでありまして、非常に港湾当局といたしましても、またわれわれ、新潟の港によって今後の新潟県の産業の発展あるいは民生の安定という方向で大いにひとつ盛り立てていかなければならないと思っている立場の者からいたしましても、この状態というものはきわめて遺憾でございますので、何とかしてこれは、この欠陥港であるといわれる新潟港の汚名を返上して、再度、この新潟港は安全である、そういう名実ともに備わった安全宣言をしなければならぬと思っておるわけでありますが、それらの関係につきましても、ひとつ防衛庁当局から御説明をいただきたいと思うのであります。特に、機雷処理掃海等関係につきましては、いま日本法規法令では、防衛庁がその衝に当たる責任を負っているように思います。したがいまして、これは海上保安庁関係もありましょうけれども、まず防衛庁当局の姿勢が私は問題であろう、こう思いましてお聞きするわけでありますから、お答えをいただきたいと思います。
  10. 江崎真澄

    江崎国務大臣 今回ああいう不祥事が起きましたことは全く残念なことであります。そればかりか、二十数年という時日を経てから埋没されておった機雷刺激を受けて爆発して大事故を起こし、全く残念に思っております。  御心配の点は、同様私ども政府当局としても全く遺憾に思っておりまするが、実は、防衛庁としては航行の安全を確保するという上からいわゆる掃海作業に当たっております。  そこで、毎年、まあ第二次大戦中の機雷掃海して今日に至っておりまするが、全国的に見て九三%という成果をあげておるわけです。これは、航行支障のないような海にする、こういうことで、まあ新潟港などはほんとうは一〇〇%なんです。一〇〇%地域ということになっておるわけでありまして、内海などが比較的おくれておる。それはなぜおくれるかというと、いけすがあるとか特定の漁場であるとかというわけで、いや、ここは網を引いても、いけすで何べんそれを利用しておっても危険はないから、そんなところへ入ってくれるな。うっかり入れば、いけすをどこかの地点に移してつくりかえなければならぬというようなことで、これはやや不可能に属することで、持ち主の拒否によって行なわれておらぬ、こういうところが七十数%というようなまだ低い地域になるわけであります。新潟港などは一〇〇%地域で、もう掃海完了航行は安全でありますということを宣言までしておる。それが一体どういうことだ、これは問題だと思います。  実は、自衛隊で現在実施しておりまする掃海というのは、発火機構の生きておる機雷処分、これが対象になるわけです。その発火機雷の死滅しておるもの、これはもう二十数年を経ておりまするので、そういった機雷処分までは行なっておりませんし、またそういう能力が事実上ないわけです。問題は、あの機雷も埋設されておったわけですが、深く土中に、ヘドロの中に埋まっておったと考えられる。これについては、実は昭和四十年に山中総務長官のところが中心になりまして、運輸省とか防衛庁とか、各省が一緒に検討をして、埋没されておるものをどうして発見するか、これはどうも情けない話でありまするが、これを探知する施設を持った会社というのは日本に一社しかないというわけです、民間企業で。まあしかし、深く埋没されておるものというのは事実上危険度はない。もうすでに、炸裂する能力はあっても、その付属部品というものが全部腐食したりして、もう事実上発火はしないという、大体この安全度を考えての標準で査定しても間違いない、こういうことになっているわけです。ただし、炸裂する能力は持っておりまするから、これに強い刺激を与えるというと、今度の場合のように爆発をして大事に至る。  そこで、そのときにいろんな申し合わせがあるわけでありまするが、自衛隊爆発物除去及び処理に当たる。むろん、海上保安庁としては船舶の交通の障害等の排除をはかられるわけですが、爆発物処理は私どものほうが引き受けるというわけです。  ところが、この地下に埋設されておりまする分については、こういうことになっておるわけです。四十五年十月十四日、機雷事故に対する対処方針というものがありまして、その第一は、未掃海海域については地元と調整をはかりつつ引き続き海上自衛隊掃海作業を実施する。  それから第二項で、海底を攪拌するような港湾工事が行なわれる場合は、残存している機雷爆発危険性があるので、運輸省港湾局及び海上保安庁は、工事実施責任者に対しこのような工事の施行前に確実に機雷探査を行なうよう十分の指導を行なう。これはまあ、埋設機雷を探知する設備を持っておるのは民間会社一社という情けないようなことですが、それはほとんどないということを意味するわけですね。そういう危険がうんとあるならば、これは三社にも十社にもなるわけですが。したがって、その攪拌するような、特に河口であるとか内陸地帯に近い——まあ今度はあれは河口ですが、内陸地帯に近い沿岸海域であるとかというところをしゅんせつしたり何かする場合には、よくこれを探知するということに規定づけられて、その結果機雷の存在が確認された場合は、海上自衛隊がその連絡を受けてこれを除去する。土中に埋まっておるものでも、あるぞということになったらこれは自衛隊、私どものほうが責任をもって処理する。  三として、なお国としては、機雷事故が発生するようなおそれがある場合には、損害てん補手段として船舶等に対する損害保険を活用するよう十分の指導を行なう。まあこれは一般常識論でありまするが……。  そういうわけで、実は防衛庁におきましても、地下ですでに機能を失っておる、ただ、爆薬が装てんされておるわけですから炸裂する能力はあっても、もう機雷としての機能を失っておる、しかも土中に埋設されておるものについては、これを探知する能力がない、こういうわけであります。そこで、またこれは防衛庁守備範囲でもないということになっておるわけです。このいわゆる政府統一見解でもそういうことになっておりますが、そうかといって、こんなことが起こっていいはずのものではありません。  そこで、きのうも同じような心配に立っての御質問が参議院の運輸委員会でもございました。たまたま運賃法の審議の最中で、隣に運輸大臣もおられましたので、これは従来総務長官調整役を買っておりまするので、したがって総務長官中心に、関係省庁急遽この結論を急ごうじゃないか、そして、こういうことについて自衛隊も将来責任を持てということであるならば、これは掃海艇ではなくて、いわゆる埋設されておる、埋没しておる機密を探知する探知器等設備をしなければならぬかというふうに考えておるわけであります。従来は航行支障のない——新潟港の場合は航行に全く支障はないわけでありまして、そういうことが機雷等処理完了というような宣言になってあらわれておるわけでありまして、埋設されておるものは、これはあろう。新潟港だけでいいましても、三百数十発まだ埋設されておるのではないか。しかしこれはよほどの、今回のようなああいう例外的なことのない限りは、危検性はない。もう鈍感、死滅しておるもの、こういう認定に立っておるわけであります。今回の船が、御承知のとおりに二千トン級のしゅんせつ船でありまして、しゅんせつの何か付属機器等を曳航しながら来たもののようですね。したがって、危険ありということで、攪拌するような場合には、あらかじめ十分探知をして安全を期されたいという、この統一見解の二項にたまたま触れた。全く残念に思っております。したがいまして、今後こういう繰り返しになりませんように、十分ひとつ横の関係省庁連絡をとりまして今後に期したい、かように考えております。
  11. 米田東吾

    米田委員 いま長官お話しになりましたように、いろいろ盲点は実はあろうかと思いますけれども、しかし長官も認められておりますように、現に新潟港周辺には約三百七十七発程度の、これも推定でありますから、はたしてそのとおりあるということはもちろん断定できませんが、当時米軍新潟港周辺にばらまいたであろう数から、いままで処理したものを引いた残りが大体三百七十七発程度というふうにいわれておるわけであります。少なくともこの程度のものがあるんじゃないかという疑いだけは、これはもうはっきりあるということになるわけであります。かりにこれが死んだ機雷であったといたしましても、このようなものをかかえて新潟港が安全であるという宣言を出すことは、これはできないと思うし、それはまた、かりに出したところで、これはもう虚構でしかないじゃないか。ことに長官も御承知だと思いますが、新潟港信濃川河口港であります。毎年いま第一港湾建設局が、このしゅんせつ船のような大型のものを配備して、そうして年間でしゅんせつ船だけで約百万トンのどろをさらっておるということであります。それでもなお、河口流れに応じて大量に吐き出されるものもそのほかにある。相当な土砂上流から流れてきておる。  それともう一つは、この図面にもありますけれども、ちょうど新潟港中心部の、中央埠頭から北埠頭のこの中心部のどてっぱらに通船川という川がありまして、この川の流域は、実は新潟の北越製紙の本工場で、これが紙パルプのたいへんなヘドロを出しておるわけです。非常にいま、これは公害防止立場で問題になっておりますけれどもヘドロ処理はまだ未解決であります。これが新潟港の海面に、しかも港の中心機能を持った中央埠頭山の下埠頭等のどてっぱらにこれが出ておる。そのほかに、この山の下工場地帯でありますから、廃棄物が多いのであります。絶えずこの新潟港は、ヘドロその他で埋められておる。したがって、しゅんせつというものは、これは新潟港の維持のためには決定的な条件になっているわけであります。それは避けることができないとすると、ヘドロやあるいは上流からの土砂で押し出されてくる。それから新潟は、毎年一回や二回は大洪水があります。要するに水害が多いところであります。そうしてそれは、長野県に降った雨でも、信濃川から全部新潟を通して日本海に入る。非常に海底の移動が激しいところであります。これはもう私どもしろうとの考えからしても、三百七十程度機雷がかりにどこかに死んでおったとしても、そういう港の海底の変動、あるいはヘドロあるいは土砂流出等によって、いつ水路といわれる安全なところに押し出されてくるかわからぬという危険性があると思う。今度のしゅんせつ船の場合でも、海麟丸の場合でも、私のいただいた資料によりますと、当然これは新潟港中心水路、しかも大体マイナス十二・五メートル程度は維持されている中心水路、そのややはじっこのほうを通ったようでありますけれども中心水路であります。ここにこのような機雷があるはずはない。これはもう二十年間ずっと、しょっちゅしゅんせつをやっておるわけでありますから、したがって、いま長官がおっしゃったように、四十五年の統一見解以降、港湾当局も通達か何かを出されまして、その第二項ですか、その線に沿った指導をなされておるようでありますが、それを受けて新潟一建の場合も、拡幅するような場合は自前で探査をしてやっておるようであります。しかしあけてある水路を、たまったところを掘るようなことは、これはやっておらない。これは港湾当局指導でもやらぬでもよろしいとなっている。そういうことで、やらなかった部分が今回たまたま偶然ですが、こういうふうになったわけであります。したがって、これは私は、どうしても新潟港のそういう持っている条件の特殊的なものからいきまして、この際ひとつ掃海作戦を防衛庁中心として、海上保安庁なりあるいは一建なり港湾当局なりが中心になって、しかもこれは港湾管理者を主体にしなければならぬと思いますけれども、大々的な掃海大作戦をやってもらわなければならぬじゃないか、こういうふうに私は思うのでありますけれども、いかがでございますか。これは長官港湾局長からも、ひとつ確固とした御返事をいただきたいし、それから海上保安庁長官からも、これは水路だけ責任を持てばいいということではありませんから、水路の安全を期するために港のそういうしゅんせつというようなものが必要になってくるし、それからこういう障害物除去というものが当然付随してくるわけでありますから、海上保安庁としても、私は、責任をもって港の安全というものは維持していただかなければなりませんし、ひとついまの私の質問について答弁もいただきたいと実は思うのであります。いかがでございましょうか。
  12. 江崎真澄

    江崎国務大臣 さっきも申し上げましたように、従来は航行支障を来たさない、そういう標準で掃海作業を行なっておった。今回の場合は、常時しゅんせつされておるところでそういうことがあるはずがない。なるほど御指摘のように、これは川がずいぶん流れ込んでおりますし、この地域そのものが信濃川そのものでもあるというような特殊性からいいまして、ヘドロと一緒に、台風でもあればこれが移動する。死滅した機雷であってもこれは炸裂する能力は蔵しておるというわけで、非常に危険なわけです。まあ今度の問題でも、もう少し政府側の訓令に基づいて事前に調査をする必要はあったのではないか。あるいはいまおっしゃるように、常時やっておるところだからその必要はなかったか、このあたりはいわゆる運輸省においてはっきり結論づけられるところと思いますが、万一という、まさかと思ったことがこういう形になってあらわれました以上は、これは政府としてほうっておける話ではないと思います。きわめて例外中の例外で、こういうことがしばしば起こるくらいなら、さっきも申し上げるように、埋没されておる機雷を探知する機器を持った会社日本じゅうに、この鉱工業の発進した日本に、たった一社だけということはないわけですから、全くの例外中の例外ではありますが、この悲惨事にかんがみまして、先ほども申し上げるように、急遽ひとつ横の各関係省庁連絡をとりまして善処をすることにいたしたいと思います。
  13. 栗栖義明

    栗栖政府委員 ただいま防衛庁長官もおっしゃいましたけれども、私のほうといたしましては、現実に第一線部隊が働いてこういう事故を起こしましたので、その点、どこかに盲点があったのではないかということは痛感しておる次第でございます。従来も、先生おっしゃいましたように、新しく掘るところは必ず磁気探査あるいは潜水探査をやって、過去にも、ほかの場所でありますけれども、見つけた例もございますけれども新潟は四十年以来、もっぱら維持しゅんせつであるということでありましたが、その辺もう一ぺんとくと検討しなければいかぬと思いますけれども、やはり私どものやっている作業につきましては、具体的にどういう方法でどうするかということを今後早急に検討いたしまして、こういう事故のないように十分配慮してまいりたい、そういうふうに考えております。
  14. 手塚良成

    手塚政府委員 海上航行の安全のみならず、全般的な安全につきまして私どもは大いに責任を感じておるわけでございますが、本件につきましては先般、四十五年に各省連絡会議でいろいろ今後の対処方針が出ております。そういう点は今後厳重にこれを履行するように、特に一般航行につきましては従来まず安全である、こういうことになっておりますので、新潟につきましては掃海完了ということで航行は安全である、こういうふうになっております。問題は、やはり今度事故が起こりましたように、海底を攪拌するような、ショックを与えるような二軍作業ということが一番問題ではないかと思います。これは先ほどの連絡会議におきましても十分その探査をするということがいわれておりますので、これは長年やっておることであるからその必要はない、省略でよろしいというようなことを今度新潟でやっておった、その辺が一つの問題であろうかと思います。私どもは、港長という立場におきまして、やはりそういった工事作業等についての許可を与えるというようなこともございまして、従来これについては国の立場では協議を受けるということで進めておりますが、この際にこういった問題については今後なお一そう注意をする、探査を厳重にやるというようなことを条件づけ、その履行を十分に監視をする。なおまた、この新潟特有の先ほど先生の御説明にありますように、非常に土砂がしょっちゅう流れ込んで水深が変化するという事態、これは海図等を見ましても今後水深につきましてはいろいろ問題があろうかと思います。従来も水深十メートルというのは確保されているというたてまえでありながら、それ以上の水深のものが、おりを見て掘さくをした直後の十二メートル半というのを目標にして入るということもやっておりますが、これらの問題についてやはり一定の規制なりを考えていく必要があるのではないか、こういった問題は直接私たちに関係があります。したがいまして、先ほど防衛庁長官も言われますような横の連絡を十分とりまして、いま私どもの本来業務を含めまして、再度十分な検討をいたして安全確保に万遺憾なきを期したい、かように考えております。
  15. 米田東吾

    米田委員 ぜひひとつお願いしたいと思います。  なお長官、この磁気探査、要するに機雷探査機能といいますか——磁気だけじゃないかもしれませんが、こういうものにつきましては、ひとつぜひ今後も新しい開発や装備の増強というような面についても私は要架したいと思いますし、このことは港湾当局に対してましても私は要望しておきたいと思います。  あともう時間もございませんので、もう二つだけこの際お聞きしておきますが、海麟丸の構造について私はひとつ問題を提起しておきたいと思います。  聞くところによりますと、この海麟丸は、四十五年でありますか、秋田港におきましても突堤の根っこか何かにぶつかって、船体に約八十センチ程度の電裂を生じて浸水しておる。コンフリーのブロックに鉄の船がぶつかって、鉄のほうが亀裂をして浸水したということであります。  それから今回のこの事故でありますが、私も船に乗ってみまして、爆発したのは推定は船首のほうであります。ところが、水はどのように入ったかわかりませんけれども、船尾のほうが全部水没しておるわけであります。しかもいろいろ説明によりますと、この船尾が水没して地についたのはほとんど瞬間的になっておる。大体三分か四分ぐらいの間に浸水しているとこういうのであります。ドカンとやられて十二メートル程度の穴があいたというのは船橋から前の左舷のほう。ところがうしろのほうが先に水没したというのは一体どういうわけなんだ。船の場合はその部屋、部屋に防水の壁というものが厳重になされて、隣の部屋まで浸水しても次の部屋は防げるという設計がなされているはずだと思う。普通の汽船や漁船はそういう設計をしているわけであります。ところがこれはそういうようなことを聞かされておりますので、この海麟丸の構造というものについても再検討する要はないか。工作船でありますからしゅんせつ機能を最大限に発揮するために、安全というものが見失われていないか。作業員の安全、乗務員、勤務者の安全というものが見失われておらぬかということを指摘しておきたいと思いますが、これは検討をお願いしておきたいと思います。  それから作業員の皆さんが、いま港湾当局に対して、安全が保障されなければ就労できないという意思表示をされて、就労の態度を保留するという通告をしておるというふうに聞いておるわけであります。私は、いまの新潟港のこの現状からいきまして、からだを張って船に乗ってしゅんせつをやる作業員の皆さんが、そういう心配をされて強く安全性を求めておるのは当然だと思うし理解できるわけです。このことについて港湾局長はどういうふうに安全性の確保について対処されようとするか。勤務条件等についてももう少し検討してくれという要望も出ておるようであります。夜間作業等についても検討を要するというふうにいわれておるわけであります。今回は幸いに十二時前後という昼間でありましたから混乱も非常に少なかったと思いますし犠牲も少なかったと思うのでありますが、もし夜間であったら、これがまた爆発でありますから、はたしてどうなっておったかということを考えるとりつ然たるものを感ずるわけでありまして、夜間作業についてもまた何とかせいということはわかるような気もいたします。このことについても検討していただきたいと思う。作業条件の改善等についてひとつ局長から答弁をもらいたい。  それから次に、人事院からおいでをいただいておるのでありますが、いろいろ調べてみますと、犠牲になられました二人の方並びに傷害の公務員の方々の今後の対策でありますけれども、まずお二人の補償の関係を見ますと、国家公務員災害補償法の関係からいきまして、きわめて不十分だと私は直感的に思うのです。人事院はこの法律の所管だそうでありますけれども、公務員の命をどういうふうに見積もっておられるのか。いまこれだけ人命尊重が第一の政治課題になっている。交通災害等によりましても強制保険が五百万円という強制力をもって処理されておる。ところが今度の場合は、身を挺して港湾の安全あるいは維持のために犠牲になられたお三人の方が、年金にして遺族の方にわずか九十万円程度、一時金にして葬祭料を含めて三十五、六万、四十万円程度、それしか出ないような法律、これを人事院は一体どういうふうにお考えになっておられるのか。国家公務員の命をどういうふうに評価されるか。基本的な問題だと私は思う、言いわけは成り立たないと私は思います、こういう状態に放置しておいて。この公務員の災害に対する法律の不備は、もう人事院の怠慢だと私は思います。現状に適応しない。したがって、これは早急に現状に見合った補償額の引き上げあるいは算定基準の改正、その他適当な措潰を加えなければならぬのじゃないか。いま時間がありませんから詳しいことは私申し上げませんけれども、こういう程度で放置しておくことは許されない。私はそれだけはっきり申し上げておきまして、人事院当局のこの問題についての見解をひとつお聞きしておきたいと思います。この間、前国会で、臨時議員立法で、警察官なんかについての補償について何か相当な措置を実はしたと思うのでありますけれども、このように港湾関係の職員なり、公務員の皆さん犠牲になられて、そしてあまりにも差別のある現状の法律の不備、これはひとつ早急に直さなければならぬと思いますので、御見解を聞いておきたいと思います。  なお、港湾当局に対しましては、現在入院されている負傷者の方々は、実は後遺症なんかの関係も残ると思うのであります。治療その他万全の措置をとってもらうことは当然でありますが、今後後遺症の関係等につきましても、負傷者の皆さん心配のないように、ひとつ法律等十分に活用して十二分の措置をしていただきたい、このことを御要望申し上げておきたいと思います。  以上の二つの点を御質問しまして、これについてお答えを聞いて、私の質問を終わります。たいへん時間をとりまして恐縮でございます。
  16. 栗栖義明

    栗栖政府委員 先生の御質問にお答えする前に、ただいま入りましたニュースでございますが、先ほど御報告申し上げました行くえ不明の井崎さんでございますが、本日の午前十時五十八分に船内の操舵機室で発見されました。御報告申し上げます。  先ほどの先生の御質問にお答え申し上げます。  船体構造につきましては、特殊船であるから手を抜いたのじゃないかという御質問だろうと思いますが、実は作業船であるということ以前に、近海区域を航行する船舶ということで、船舶安全法によります検査をしていただきまして、これに合格しております。したがいまして、一般の船舶と同程度以上の構造を持っておると考えております。なお、この船は特殊な、いわゆるドラグサクションと申しましてアームを引っぱって走る船でございますから、横腹のところによくぶつかるという危険性がございますので、ぶつかる場所につきましては、特に補強してございます。したがいまして、船体が弱かったからああなったのじゃなくて、むしろ爆撃の力が強かったのじゃないかと考えている次第でございます。  それから次に、作業につきまして、先生指摘のように、第一線の作業員が危機感を持って不安に思っておりますけれども、これは皆さんが不安がるのは当然でございます。したがいまして、事故のありました翌日でございますけれども、とりあえず口頭で、いま作業をやっている場所についてもう一ぺん、いろいろな磁気探査もやってございますけれども、データを整理して検討しよう。そして、その結果を作業員にも話をして、皆さんが安心して働ける状態になるまでは作業をとめて話し合い、足りなかったらさらに調査をやれという指示を出してございます。具体的に新潟の今度のケースを詳細に調べまして、技術的にどうこうということは別にいたしまして、とりあえずそういう措置を講じてございます。  それから、勤務形態の問題でございますが、確かに一般と違いましてしょっちゅう港を出入りする船でございますので、こういう特殊性もございます。ただ夜間航行につきましては、むしろ新潟の場合、御承知のように昼間船が出入りしていて、場合によったら出入りの少ない夜にやらなければいけないということもあるわけでございます。そういうことにつきましては、私ども条件につきまして今後職員の意見もいろいろ聞きながら、職員組合とも十分話し合って詰めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  17. 島四男雄

    ○島政府委員 お答えいたします。  私ども立場といたしましては、公務員の勤務条件が少しでもよくなるようにということを心がけておるものでございますが、ただその問題については、何といっても国民の御納得が得られなければならないということで絶えずやっておるつもりでございます。  ところで、こういう災害補償につきましても、十分手厚い補償をすることによって、安んじて公務に励むということが必要なことは先生のおっしゃるとおりでございます。ただ公務員法の中でも、公務員の勤務条件については民間の情勢に適応しなければならないという規定がございます。また災害補償につきましては、労災あるいは労働基準法、その他の社会保険制度とのバランスを失しないようにしなければならないということが義務づけられておるわけでございます。  現在の国家公務員の災害補償の内容でございますが、これは国内的には、いま申しましたように労災とバランスをとって実施している次第でございます。また国際的に見ましても、ILO百二十一号条約で国際水準が定められておりますが、それとも見合ったものでございます。したがって、現行水準は、国際的また国内的には一応何ら遜色のないものであるということはいえようと思いますが、ただ私ども、民間におきましては、この労災保険法に定められているほかに、協約なりあるいは就業規則等によって若干上積みがなされておるやに聞いております。いわゆる法定外給付があるように聞いております。そういうものについて今後十分調査しまして、その上で今後の問題について対処していきたいというふうに考えております。
  18. 米田東吾

    米田委員 いまの答弁だけは納得できない。これは私は、きょうはいただいた時間がもう切れておるから論争いたしませんが、いずれかの委員会でまた人事院に来てもらいましてやりますけれども、全然見解が違うのですよ。国際的にバランスがとれておるとか、他の法令との関係があるとか、そんなことは言いわけとしてはわかりますけれども、少なくとも国家公務員の災害補償をねらったこの法律、これはとにかくはじき出した金額を見ればわかるじゃないですか。三十万や九十万で、命を失った人に対して手厚い保護がなされておりますなんて、あなた答弁ができますか。年金だ、一瞬金だという違いは多少ありましょうけれども……。だから、私はそこを言っているのであって、企業や各省がそれぞれかげんをして上積みするとか、そんなことはどこにでもあることなんです。あなたのほうで調査をするのはかってでありますけれども、そんなことで、この法律はまかなえますなんということは、私は言わせられないと思うのですよ。ですから、これはもう一回、私は別の委員会へ来てもらいましてもう少しあなたのほうと詰めたいと思いますが、いまの御答弁では納得できません。これははっきり申し上げておきたいと思います。ひとつ善処をお願い申し上げます。  以上です。      ————◇—————
  19. 小峯柳多

    小峯委員長 次に、臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。内海清君。
  20. 内海清

    内海(清)委員 臨時船舶建造調整法の一部改正は、すでに今日までいろいろ質問をされております。特にこの法案の内容そのものにつきましては、特別に大きく論議するものもきわめて少ないかと思います。しかし、この法律を適用しますにつきましては、その環境と申しますか、現在の海運造船の状態、こういうふうなものから少し論じなければならぬのじゃなかろうかと考えておるわけであります。  そこで、最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、実は大臣御病気で委員会に出てこられないという状況でございまして、一口も早く御全快を祈りたいと思いますが、次官おられますので、簡単にひとつ、これは大臣にお尋ねしたいと思っておりました問題でございますが、お尋ねいたします。  御承知のように、去年の十二月に、いわゆる交通の総合体系というものがきまりました。これはこの前の国鉄運賃法の場合にも私この問題でいろいろお尋ねしたわけでございますが、しかしこのときには国鉄問題が中心でございました。この総合交通体系というのはいろいろ、廃業立地の問題その他社会情勢の変化によって、わが国におきまする交通運輸の各機関がそれぞれ分野がきめられ、それがしかも有機的にあるいは具体的に実施されて、初めてわが国全体としての交通運輸の問題が解決していくのではないか。しかしあれを見ましても、主として国鉄問題が中心あるいは陸上問題が中心な点がきわめて多いと私は思うのであります。そのときの大臣の御答弁を見ますると、私、がいま申しましたような趣旨の質問に対して「総合交通体系における有機的の輸送機関の関連でございます。それについて御質問でございますが、御承知のように、昨年の六月御答申をいただきました運輸政策審議会におきまして、またただいま御指摘をいただきました、昨年の暮れにおきまする閣僚協におきまする総合交通体系の決定におきまして、各輸送機関の特性を勘案をいたしまして、そうしてその分野を一応定めた次第でございます。あるいは航空あるいは海上輸送あるいは附七輸送、陸上輸送のうちにおきましても、道路輸送によるトラック、乗用車、タクシーその他のもの、あるいはまた鉄道の大動脈でございます国鉄を中心として、私鉄その他の関係というようなあり方をきめた次第でございますが、」そうして、これをひとつ有機的に進めていくのだ、こういう御答弁がありまして、以下は国鉄を中心としてお話があったわけであります。そういう意味合いからいたしまして、この総合交通体系の中における海運というものの位置づけ、これは見ましても、ごくわずかな点が出ておるわけで、御存じだと思いますから一々申し上げませんけれども、どういうふうな位置づけになっておるのか、こういうことでございます。御承知のように、少なくとも国内輸送の面における、かつては物資の輸送で四二、三%のシェアを占めておった海運であり、現在は多少低下いたしておりましょう。陸上輸送の面は出ております。そのことについての御見解をひとつ承りたい、かように思います。
  21. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 大臣の本委員会における答弁をお読みいただいたわけですが、さらに私から大臣の答弁に補足という形で申し述べさしていただきたいと思います。  御承知のとおり、日本の造船、海運というのは基幹産業でございます。特に造船は世界の建造量の約五〇%を占めておる。しかしながら、造船と海運とは特に密接な、表裏一体の関係にございますので、先般のドルショックによってきわめて大きな打撃を受けておる。これに対して政府は、日本の基幹産業をいかにより永続的に世界の造船並びに海運界における現在の立場を維持させるかということでいろいろ苦慮されてその善後策を講じているのは先生承知のとおりでございます。したがいまして、今後は世界の五割の建造量を占めている日本の現状と、同時にまた輸出の秩序を保ちながら国際協調を進めていかなければならぬ、こういう考え方に立って造船政策並びに海運政策を進める所存でございます。しかしながら、必ずしも楽観を許されないので、現存経済企画庁において計画されている新しい海運政策ともきわめて関連が深いので、経済企画庁と調整をとりながら長期的視野に立った日本の海運政策を打ち出したい、かように考えております。
  22. 内海清

    内海(清)委員 いま御答弁をいただきましたが、私の質問がちょっと要領を得なかったのかもしれませんが、この総合交通体系というのは日本の国内のものですね。だから、これは日本の国内の交通輸送体系というものについてきめられておる。それによって今後政府としてはその線に沿って各交通運輸面を進めていこうということでございますね。これはこの前の国鉄の場合もその線に沿っていろいろ議論されたわけで、この総合交通体系における国鉄の位置づけというもの、国鉄の分野というものがそのとおりにいくならば、国鉄の再建も早いであろう、緒につくであろうということを私もいろいろ御意見を申し上げたわけです。  そこで、いま御承知のようにわが国におきましても、海運、ことに内航海運、これは非常な不況にあるわけです。ところが、総合交通体系で見れば、いままでわが国内における物資の輸送のかなりの分野を占めておった、そういう方面についても特別なものを見ない、安全であるとか、港湾の問題であるとかいうふうなものはございますけれども。したがって、私がいまお尋ねいたしましたのは、その総合交通体系の中でわが国の、小さく言えば内航、こういう問題をどういうふうな位置づけで考えておるのか、これは問題外であるのか。かつては四二、三%のシェアまで持っておったこの海運というものに対してどう考えておられるか、こういうことをお尋ね申し上げたわけでございます。
  23. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 この問題につきましては総合的問題でございますので、実は私よりもむしろ事務的には官房審議官の担任と思いますけれども、海運に関する限りは預かっておりますので、全般的に現在の海運の国内輸送に占めます地位ですね、それと今後の輸送需要に基づきます昭和六十年、その場合におきまする内航海運の地位というものにつきまして、運輸政策審議会において検討いたしました数字的な見通しにつきまして御参考までに申し上げます。  この総合交通体系に関する答申におきまして、昭和六十年の輸送需要を見通しております。これにつきましてはGNPが二百兆という想定でございまして、それに基づきました国内輸送の需要というものはどうなるだろうかという想定でございます。この場合に、御指摘のように航空、鉄道、自動車あるいは海運、パイプラインというような輸送機関別に全体の国内輸送の動きを算定いたしまして、それぞれのシェアといたしまして、海運はトンキロで四六%のシェアだ。現在大体四二、三%が実数でございますけれども、これを四六%くらいの位置づけにしたい。これから自動車が二九%、鉄道が二四%、パイプラインが一%というような位置づけでございます。この場合、海運の場合、その輸送のトンキロの数字といたしましては、要するに四十四年度の見通しの約四・七倍というところを見込んでおりまして、トンキロで申し上げますと八千三十億トンキロということで想定をいたしております。したがいまして、現在の内航海運の占めております国内輸送需要のシェアをそのまま伸ばしていくということで、きわめて重要性があるというふうに認識を持っております。
  24. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、総合交通体系の中における海運の位置づけは現在まで四二、三%というものを常に保ってきた、それを伸ばしていく、こういう形で考えられておるわけですね。わかりました。ですから、これが、あるいはいまの体制からいえば六十年度にどうなるか、これはもちろん未定でありますけれども、そういう計画であるということを承っておきたいと思うのであります。したがって、これが今後のいろいろ議論の一つのベースになるのじゃないかというふうに私は考えるわけであります。  そこで、さっき次官からもいろいろお話がございましたが、今日までのわが国の海運政策というものは、いわゆる経済の長期計画、経済社会発展計画を前提といたしましてきめられてきておるわけであります。これはもちろん、先般も計画造船そのものの議論もいろいろございましたけれども、結局は経済社会発展計画に基づきまして、わが国の貿易物資をいかに安全輸送するかということが一つの役目としてきめられてきたんだと思うのであります。この新海運政策は、御承知のように四十三年の十一月に策定された。そして当時の状況からいたしまして、経済成長率は八・五であったと思うのであります。それによりまして、四十四年から四十九年までの六カ年間にわが国の外航船舶は二千五十万総トン、これだけ必要である、こういうふうにきめられておったわけでありますけれども、さらに四十五年の五月にいわゆる新経済社会発展計画というものが出てまいりました。したがって、この発展計画によりまする経済成長率、すなわち一〇・六というものに対応いたしまして、四十五年の十一月にいわゆる改定新海運政策というものがきめられたわけであります。これによりますると、四十四年から四十九年までの六カ年間にわが国の外航船舶は二千八百万総トン程度の建造が必要である、こういうふうになって、その二千八百万総トンの中で千九百五十万トンは計画造船でやろう、こういうふうになっておると思うのであります。しかもその計画造船につきましてはそれぞれの財政措置が講ぜられておる、こういうことであるのであります。この四十五年の改定新海運政策以降、少なくとも四十五年、四十六年におきましては、これに見合った船の建造が行なわれて、むしろこれを上回るというふうな状態が出てきたわけでありますけれども、その後におきまする御承知の世界的な経済の長期や、ことにわが国におきましては戦後最悪といわれるほどの不況の状態になってまいりまして、平価の調整等も影響いたしまして、この経済の長期計画がいま改変されようかというときであります。おそらくこの秋ごろまでには改変されるのではないか、かように私ども伺っておるのでありますが、そうすると、わが国の海運政策あるいは計画造船というものも、その改定に伴いまして変えてこられなければならぬ。すなわち、四十四年から四十九年までの六カ年の二千八百万総トンというこの計画も、当然変わってくるのではなかろうか。しかもいまの情勢から考えるならば、これはスローダウンということばがいいかどうか、ちょっと今後の経済情勢のあれでありますけれども、少なくともスローダウンはされるのではあるまいか、こういうふうに私どもは見ておるわけであります。これはその長期経済計画が出てみなければわからぬということではないと思いますので、少なくとも運輸省当局におきましては、そういう情勢を踏まえてすでにいろいろ御研究になり、御計画もあることだと思うのであります。これらの点につきましてひとつ海運局長の御所見を伺いたいと思います。
  25. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  現在の新改定海運政策が策定されました経緯につきましては、先生指摘のとおりでございます。従来ございます経済社会発展計画に基づきまして、所要の輸入量あるいは所要の輸出量を運ぶ所要の船腹というものはいかにあるべきかということではじき出したのが二千八百万という船腹でございます。そのうち千九百五十万トンは国の財政資金を使いまして建造するということでございます。ただいま先生指摘されましたように、昨年来のドル・ショックを契機といたしまして国内、国際景気が非常に後退いたしました現在、非常に海運不況のさなかにございます。まず第一に荷動きが非常に減っております。それから船が余っておるということで国際海運市況が非常に停滞しておる。こういうときに従来のような船腹の建造でいいのだろうかという疑問がございます。いま御指摘のとおりと存じます。  そこで私どもといたしましては、実はこのもとになっております経済社会発展計画というものが今後手直しされるのではないか、そういう準備を経済企画庁はやっておるということを聞いております。したがいまして、理論的には、やはりこの前提となります経済社会発展計画というものが手直しされれば、それによって立ちますところの海運政策、建造計画というものも当然変わってきてしかるべきだと存じます。したがいまして、私どもといたしましては現在まだ作業に入っておりませんけれども、たとえば鉄鋼におきましては一九七五年、要するに五十年の目標が粗鋼生産で非常に減る。数字的に申し上げますと、これは通産省が一応試算しているのでございますけれども、原案では一九七五年時点、昭和五十年持点で粗鋼生産の見通しが一億六千万トン、それがおそらく一億二千万トンくらい下がるのではないか、約四千万トンくらいで進むのではないかということで、やはりそれに伴いまして輸入する鉄鉱石あるいは粘結炭でございますね、そういったものの輸入量も、現在の原案では、たとえば鉄鉱石につきましては一億九千三百万トンございますのが約五千万トンくらい減るんじゃないかというような試算をやっておるところでございます。また輸入の原油につきましてもやはり多少スローダウンいたしまして、原案では五十年時点では三億四千万キロリットルくらい輸入するんではないだろうかという見通しでございましたのが、約一割減っておりまして約三億キロリットルくらいになろうかということで、これは通産ではございませんで、石油審議会のほうでそういう試算をしております。そういうようなことで、生産面での手直しの検討が現在進んでおりますので、いずれ相当固まった時点におきまして私どもの結論のほうもそれに伴いまして改定していこうというつもりでおります。したがいまして、絶対量が減るわけではございませんけれども、いままでの伸び率がスローダウンするんだ、したがっていままでのような船腹が要るかどうか、これははじいてみないとわかりませんけれども、多少スローダウンするのであろうと私どもは予想しております。したがいまして、そういったような情勢でございまして、この秋に入るころにはひとつそういった面での検討を、特にこういった政策を担当をして検討していただくところの大臣の諮問機関でございます海運造船合理化審議会がございますが、そこでひとつ問題を提起いたしましていろいろな角度から検討してみたいというように現在考えておる次第でございます。
  26. 内海清

    内海(清)委員 いまお話しになりました数値も私ども承知しておりますが、いずれにしても、これはおそらく七月になれば来年度予算の概算要求されるときだ。したがって、この経済社会発展計画が秋になるとすれば、それまでには、もちろんこれが前提になってそれが出てくれば、あなた方のほうの来年度予算に対する計画も手直しが必要になってくるかもしれませんけれども、少なくとも運輸省ではそれまでに一応のめどを固めなければならぬと思うのであります。したがって、いまの粗鋼の生産量の減あるいは原油の輸入の減、そういうふうなことを勘案されまして一応のめどをつけられると思うのであります。これに対しましては今後の、いろいろこの経済社会の状況もなお変わってくると思いますが、いまいろいろ言われておりますのは、本年度のいわゆる大型予算、景気の刺激予算というものがかなり効果が出てきたのではないかという見方もあるし、またいろいろそれに対してもそう楽観論もないように思うのであります。私どもはしろうとでなかなかこういう点を迷うわけでありますが、そういう点につきまして何か海運局のほうで見通しをつけて、こういう線で一応いこうではないかというふうなお考えがもしあるならば、ひとつこの際お伺いしたいと思います。
  27. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 実は数字的にまだそういった作業に入っておりません。したがいましていま数字でもってどうのと申し上げられませんですけれども、まず国際海運については、いまの通貨不安の問題等まだ残っておるようでございまして、依然としてやはり国際的な荷動きが非常に鈍いだろう、これは二、三年くらい続くだろうという業界の観測が主でございます。あるいは外国業界の観測もそうでございます。そういった国際通貨不安並びにそれに基づく世界的な荷動きがもとに戻るのはかなり先だと見ております。いま一つは、したがいまして現有の世界船腹、それから現有船台にある新造の船、これが稼働いたしますとかなり船腹が余裕が出てくるのではないか、かなりだぶつくのではないか、両方の点でしばらく海運市況は立ち直らないだろうという見通しを私どもは、実は精密な計算ではございませんけれども、そういう予想は立てております。それにつきましてそれではそれは何トンぐらいだという作業はまだ進んでおりませんけれども。  それから国内輸送につきましては、やはり当面では、鉄鋼の粗鋼生産が減りましたために、鉄鋼輸送の荷動きが減ったことから市況の急速な悪化が始まりまして、現在まだ内航船腹が一割以上くらい過剰だという状態が進んでおります。   〔委員長退席、宇田委員長代理着席〕 これにつきましては御承知のようにいろいろ対策を考えて現に実施しつつあるわけでございますけれども、これも国内景気が立ち直らないと、やはり内航市況もなかなかこれによって立ち直らないだろうということでございます。ただ、政府全般のそういった量気浮揚対策が早く功を奏するとなれば徐々に回復に立ち向かうと思いますが、現在ではまだしばらく底をついているというような状況でございます。いずれにいたしましてももうしばらく市況その他経済情勢の変化等を見守りまして、いずれそういった作業に入りたい、こう思っておる次第でございます。
  28. 内海清

    内海(清)委員 いまの段階でございますから、はっきりした数字的なものは出ないだろうということはよく承知しております。  それに関連しましてもう一つこの際お尋ねしておきたいと思いますのは、この改定の新海運政策によりますると、計画造船に対する利子補給の問題、これは四十八年度からは少しシビアになっていることは御承知のとおりであります。したがって、こういう海運市況の不況ということが反映して、いわゆる船主関係、船社関係におきましては、これに対してすでにいろいろあなた方のほうにも要望も出ておると思います。いろいろな要望もあるようでございます。つまりもう少し財政的な処置がほしいということがあるように私ども聞いております。その点に対してはいまどういうふうにお考えになっておられるか。
  29. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 先ほどまでは船腹量の問題でございましたんですが、計画造船では船腹量ともに、そういった諸般の問題も含めてやっております。そのおもなものが先生指摘の利子補給でございます。実はこの改定新海運政策では御指摘のように四十八年度、九年度は開銀によりまする利子補給を、コンテナ船を除きましてやめにしてしまうとシビアな手を打ったのでございまして、できるだけ自由的に海運業界が立ち直れるようにということで、そういうシビアな措置をとった、対策といいますか、計画をとったわけでございます。実は先ほども申しましたような不況が非常に深い。これは特に国際海運の面では国際的なマーケットでございまして、日本の国だけでどうこうできないようなマーケット、そこへまた国際競争をやっていくというのが国際海運の宿命でございます。したがいまして現在のような状況ですと、かなり外航海運企業の企業基盤が弱まってくるのじゃないか。したがいまして国際競争力自身も外国船に比べますと弱まってくる、これはある程度算定できますというふうに考えております。特にこの三月期決算を見ますと、一応八分配当、六分配当を続けておりますけれども、かなり苦しゅうございまして、むしろ資産の処分、船を売るとか、資産処分等でかつかつ間に合わしているというような点も多うございます。またさらに九月期に入りますと、おそらく三月期以上に決算が、業績が悪くなるのではないか、こう思います。したがいまして、御指摘のように、海運業界にとりましては、いま申しました利子補給を四十八年度からはなくす、開銀をなくす。市中銀行につきましては二%ございますので、その開銀のほうの利子補給を断ち切ることを何とか復活してほしいという要望が、先般の船主協会の総会におきましても、これは税制等の問題もあわせまして、そういう問題が出ております。私どもはそれを受けまして、いろいろこれから検討いたしまして、それで企業基盤が弱っているとか国際競争力が弱っているとか、しかもその原因が、たとえば円の切り上げとかそういったような原因で、必ずしも企業の責任だけとは言えないようなものがありますれば、これはやはりある程度考えなければならぬじゃないだろうか。まだ決定はいたしておりませんけれども、寄り寄り考えておりまして、この問題につきましても、先ほど申しました所要船腹の建造量の問題の見直しとともに、造船合理化審議会のほうへこれをおはかりいたしまして、いろいろな意見を深めていきたい、かように現在考えておる次第でございます。
  30. 内海清

    内海(清)委員 現在の大勢としては、大体そういうことだと思うのであります。いまお話しのように、海運の問題は、ただ国内の他の問題とバランスをとるというだけではいかない問題がある。世界的な情勢を把握してやらなければ国際競争ができないという面もございます。しかし、いままで国内的な議論としては、海運には相当の助成があるではないかというふうな議論もよくされてきております。そういう国内の他の産業に対しまする国の助成ということ、こういう面も十分今後考慮する必要もございましょうけれども、何と申しましても、貿易立国として立っておりますわが国としては、この海運の国際競争力ということは、国の基本にかかわる問題だ、かように私は考えるのであります。それらの点を、世界情勢等も十分考えられまして、この際——これはあとでまたお尋ねいたしますけれども、海運の経営状態も非常に悪化しておるようでありますから、わが国の海運が国際的に十分働き得るような体制をつくっていくということが重要な問題だと思いますので、その点はひとつ十分お考えいただきたいと要望しておきたいと思います。  次には、いまの海運局長のお話からいたしまして、いずれにしても、今後わが国のいわゆる外航船舶の建造量というものは、これはダウンしていくであろう。これは衆口の見るところだと思うのであります。したがって、これを今度はわが国の造船の立場から見ますと、これまた一つの大きな問題であります。今日のわが国の造船の能力から考えまして、それが減るならば、これを何かで補っていかなければならぬ、こういうことであります。それを補うのが、すなわち輸出船である。しかし輸出船もやはり世界の景気の停滞、経済の停滞というものが大きく影響しておるということで、これは当然影響を受けるものであります。輸出船について見ましても、四十六年度の受注量というものは、四十五年度に比べましてほとんど半分くらいに減っておるという状態であります。特にこの円切り上げ以後のわが国の輸出船の成約というものは、きわめてはなはだしい状況であります。非常にダウンしておるという状況、御承知のとおりでありますが、しかしこれをやはり何とか、国内船が減るならば輸出船で補うという方向に持っていかなければ、これまたわが国の造船業というものが三十一年以来世界のトップを行っておりますけれども、大きな問題になるだろう、かように思うのであります。ひとつ船舶局長さんに、この輸出船の受注の見通しはどういうものであろうかということをお尋ねをいたしたいと思うのです。
  31. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生指摘のように、輸出船の受注見通しについては、私ども四十七年度の受注見通しを一応先日立てたわけでございますが、当面世界的な景気停滞あるいは円切り上げ後の競争力の問題、また現在の国際通貨の不安定の問題、そういうことで、今年度の受注量につきましては、相当下がった量で考えていかざるを得ない。大体前年度の三〇%ぐらい落ちた五百万総トンぐらいの予想を立てております。またその次の四十八年度につきましては、まだ明らかにやっておりませんが、またこれも現在の見通しではそう伸びていく傾向も見られません。ただこれは長期的に見ますと、世界の経済の動向が変わってくるのじゃなかろうか。そういうときには、やはり海運界の伸長は相当見られる。あわせて造船界も相当大きな受注量があるであろう、輸出も相当伸びるであろうという、長期的にはそういう見方で、私ども造船界の今後の動向につきまして、そういう基本的な考え方で政策を進めておるわけでございます。一方現在手持ち工臓として大手造船では——輸出船にかかります分としては大体大手造船でございますが、大手造船では、三年半ぐらいの受注量は持っておりますので、当面の造船業の操業度に対しましてそう極端な影響はなかろうと思っております。
  32. 内海清

    内海(清)委員 まあいま非常に成約状況が悪くなっておる。これをもっと推進するためには、これはあとでお尋ねしようと思いましたが、この際申し上げれば、御承知のように、輸出船は、いまほとんど九十何%というものは円建てでやっておる。しかしそのために成約がむずかしいというものも出ておることは事実です。したがって、差損リスク保険というものがいま考えられておりますが、こういうものを早急に創設することによってこれを補う。この面は当然なさるべきだと私は思うのであります。もちろんこれは運輸省の主管でないかもしれません。しかし、この造船の輸出ということを考えるならば、運輸省としてもこの点は真剣に考えて、通産省あたりと連係しながらやっていかなければならぬ、こう思っておるのであります。その点につきましてひとつお伺いしたいと思います。
  33. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生仰せのように、最近に至りまして、非常に旺盛な新造需要というものを踏まえまして、わが国の輸出船の大部分が円建てになっております。この傾向は、私ども、本来非常に好ましいことだ、この傾向は今後も進めていきたいというふうに考えておりますが、また先生指摘のように、最近の国際通貨、特に円の不安定といいますか、によりまして、円建てで契約をしていくことが非常に困難なケースも間々見えるようになってまいっております。そこで、先ほどの輸出船の減退に対処するために、ドル建てあるいは外国通貨で受注をしなければならぬというふうな傾向も相半ふえるかと思います。そこで、そのために起こりますリスクの防除といたしまして、先住仰せのような為替差損保険というふうなものが通産省で考えられております。私どもは、造船の契約によりまして、船価が非常に高うございますので、為替差損もおのずから非常に大きくなってくるということでございますので、特にこの点につきましては、造船を忘れないように、早く内容のいいものをつくっていただくように通産省にお願いしておる次第でございます。まだ細部につきまして詰めが十分行き届いておらない。通産省も私ども立場は十分理解していただいておると存じております。
  34. 内海清

    内海(清)委員 この問題は、私は早急を要する問題だと思いまして、先般も通産省の担当官のお話を聞きましたけれども、これはもう運輸省としては、この際総力をあげてやっていただきたい。ただ通産省の主管だからということでそっちへまかすということであっては相ならぬと思うのであります。  この為替差損の問題につきましては、去年の十二月の円切り上げで造船界には大きな差損が出てきた。それに対する政府の措置もあったわけであります。これに対しましては、私はいろいろまあ考えておる問題がある。これはいまここでいろいろ議論する時間ございませんから、いずれ時期を変えたいと思いますけれども、この為替リスクの問題は、円切り上げがあるんじゃないかというので、少なくともわれわれのほうでも、四十五年の予算編成期ごろからいろいろ運輸省にも問題を持ち出してきた。四十六年の予算編成期にも申し込んできたし、四十七年の、本年度の予算編成のおりにも大臣にお話をした。これはちょうどニクソン声明の出る五日前、去年の八月十一日に私は、局長もあの席におられたと思います、出し入れをしておいた。ところが、それに対する、今度の差損問題に対する政府の措置というものに対して、私は実は大きな不満を持っておるわけであります。持っておるわけでありますが、これはきょうは省略いたしたいと思います。  それでは、時間がございませんので、これは簡単にお尋ねいたしますが、さっき海運局長からちょっとお話がありましたが、いま内航の海運市況が非常に悪いということです。これは実にはなはだしいものがございます。これに対しても、あらかじめ本年度の予算でも、政府も解撤なりあるいは係船なりというふうないろいろな措置を考えられておったはずでございますが、それらがどうなったか、さらにいまのこの不況に対してはどういう対策を考えておられるのか、その点を端的にお伺いいたしたいと思います。
  35. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 内航につきましては、昨年の暮れの、まあ予算の編成時期でございますが、まあ当面の過剰船腹でございますね、これをどうするかという問題、それとあわせまして、こういった不況になるたびにひどい目にあうというのはおかしいじゃないか、もっと体質を構造的に直すべきじゃないかという両方の意味からの、反省を行ないまして、業界ともいろいろ要望をお聞きしたりいたしまして、結果、まず当面といたしましては、まあこれはうしろ向きと言われますけれども、一般の貨物船が約一割ぐらい船腹が多いという算定が出ますので、約二十万デッドウエートでございますけれども、これを係船する。それからもう一つは、そのうち五万トンはつぶしてしまう、解撤するということで予算折衝いたしました結果、約二十二億ばかりの財政資金をつなぎ資金として、係船しまた解撤した船主にはそういうつなぎ資金を貸すということでまいりました。先般その予算も国会で御審議いただきまして、予算決定いたしました。実は四月、予算がきまりましたあとから直ちに——それまでに準備いたしておりましたが、実施に入りまして、現在この係船につきましては予定の十両刀重量トンに対しまして、現在すでに十万トンばかりの係船の実施の実績があがっております。これはまだ今後出てくると存じます。大体十三万トンくらいいくのじゃないかと思います。それから解撤のほうにつきましては、約五万トンを予定しておったのでございますけれども、現在は、実際に解撤のほかに、船をよそへ売る、外国へ輸出するというものも入っております。合わせまして約十万重量トンの希望が出ております。  そういう状況でございますので、実は前回の昭和四十一年、二年にかけまして、やはり内航不況ということで係船、解撤をやったのでございますけれども、一年くらいの間に景気が直りまして、むしろそんなに、解撤なり係船する希望が減ってしまいまして、歩初よりもずっと減ってしまったという例がございます。今回そういう点は十分念を押しまして、業界ともお打ち合わせをしたのでございますけれども、今回不況もだいぶ長引くということで、大体予定いたしました数量、あるいは解撤の場合はもう倍くらい出てきておるというような現況でございますので、こういった対策も実を結ぶのではないかというふうに、いま進行しております。  それからいま一つ、いまのはうしろ向きといいますか、そういった面での当面の対策でございますけれども、将来、これから今後不況になるたびにそういう船をつなぐとかいうふうなことではなしに、内航海運企業自身の企業体質を直すべきじゃないかという点につきましては、現在この業界等の間で、たとえば海運組合の組織の問題とかあるいは内航海運企業のオペレーターの船を持つ義務づけの量をふやすとか、あるいは今後できるだけ、一ぱい船主じゃなしに集約した形で複数の船を持つように、要するに企業規模の適正化といいますか、そういった面をどうしたらいいだろうか、いろいろ、組織面なりあるいは組合の調整機能の問題なり、あるいはそういった企業の規模の問題なり、あるいはオペレーターとオーナーとを別々にして、適正な用船料がオーナーに落ちるようにすべきだとか、荷主からきまった運賃をちゃんともらうとか、そういったような面につきましていろいろ対策を考えております。私どもこれは内航体質構造改善要綱というようなことで呼んでおりますが、現有内航総連合をはじめ傘下のいろんな組合と、この問題につきまして一つ一つ問題を取り上げまして、内航海運業法あるいは内航海運組合法に基づきまして、自主的にそういった面での改善が行なわれるように、いまいろいろやっております。たとえば組織の改正問題につきましてもだいぶ結論が出てまいりまして、なるべく早目に実施していこうじゃないかということでいろいろやっております。そういった成果を私ども実は期待しておるわけでございます。  なお、それ以外に、申し落としましたけれども、たとえば海外で、ちょうど日本の内航船くらいの船がほしいという発展途上国がございますれば、そういうところへ積極的に船を譲るということも考えておりまして、現在、たとえばインドネシアの内航海運の再建問題等につきましては、日本から海運造船アドバイザーグループを派遣いたしまして、インドネシアの内航の再建といいますか、それには日本の船が相当寄与するのじゃないかというような問題も検討しております。あるいはバングラデシュの国内輸送の再建につきましても船が要るということで、こういう点につきましても積極的に、機会があれば日本の船を、中古船も新船もありますけれども、そういうところにひとつ買ってもらおう、そういうことも考えております。いろいろやっておるのでございますけれども、できるだけ成果があがりますように努力いたしてみたいと思います。  なお、これだけではとても成果があがるかどうか、私は実は自信がないのですけれども、できるだけやってみまして、まだ足りないところがあれば足してやっていくということで、一歩一歩前進してやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  36. 内海清

    内海(清)委員 内航海運対策というのは非常にむずかしいということは、私は十分知っております。いまお話しの四十一年度のも、なかなか政府の施策が進まなかった。まあ幸いにして、あのときには景気が比較的早く直ってきたということがこれを救うたわけであります。今度、はたしてそういうふうな状態になるかどうか。いろいろ考えておられるようでありますけれども、これはもう早急にやらなければ、業者がもう立ち行かぬようになってはおそいんですよ。どうも従来の、あるいは政府においてもいろいろ計画は立てられますが、それが早急に、強力に実施されたということがきわめて少ない、ことに内航に対しては。これはまあむずかしい面があることは十分承知しております。しておりますけれども、今回の場合は、私はなかなか容易なことではないというふうに見ておる。それだけに、ひとつ運輸省のほうでも格別な意をこれに払って、早急に実施していただかなければならぬ。いろいろありますけれども、時間がございませんから私はそれは申し上げませんが、いずれまた機会があれば論じたいと思います。  さらた、いまの内航に関連して今度は造船関係でありますけれども、これがまた非常な不況であります。ことに東日本といいますか、東北のほうはまだ漁船などがあるからある程度いいけれども、西に至りましては実にはなはだしいものでありまして、もう五百総トン以下のものは半減以下になっておるということであります。あるいは二千トンくらいのものでも、これは幸い特殊船といいますか、タンカーとか作業船とかいうものがある程度あるために、いま何とかこれをやっておるという状況であります。一般的にいいますならば、中小造船というものはいま非常な問題になっておる。それは一年もたちますとむしろ非常な社会問題になるんじゃないかというぐらいに私は考えております。これに対しまする適切な対策があるのかどうか、ひとつお尋ねいたしたいと思います。時間がございませんから、簡単にひとつお願いいたします。
  37. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生の仰せのとおりに、内航海運並びに最近の近海海運の停滞によりまして、これらを操業の中心といたしております西日本の流船所、特に西日本の造船所がたいへん操業度の低下によりまして苦しい状態にあり、また今後も非常にきびしい状態になろうかと思います。これに対する積極的な方策といたしまして、需要が減退いたしましたので直ちにどうこうする積極的な政策が非常にむずかしゅうございまして、私ども苦慮しているわけでございますが、まず第一点といたしましては、何とかこの苦境にたえるということで、一般の中小企業対策としてなされております運転資金等の融資のほかに、造船関係のみに限りまして特別な融資を行なっていく。それから将来対策といたしましては、これらの造船所の基盤強化、近代化、合理化、そういうものを進めますとともに、新たな需要というものを喚起していく。それは一つは、先ほど海運局長からお話がございましたような発展途上国、そういうものに対する需要の開発、それからまた新規の高性能船舶の開発をいたしまして、新たな需要を開いていく。すでに私ども内航海運の非常に需要の多い499あるいは999のタンカー等につきましては、この自動化船の設計を運輸省中心になって試設計をまとめて業界に示しておるというような段階でございます。
  38. 内海清

    内海(清)委員 造船関係は、何と申しましても、前提に海運があるわけです。したがって、そういう点から考えますならば、ひとつ海運関係におきまして造船の点もお考えいただいて、そうして積極的な対策をお考えいただきたい。もちろん十分海運局、船舶局の間の連絡はあると思いますけれども、これを特にお願いしておきたいと思います。  なお、さっきお話のございました内航過剰船腹の売船という問題、これもいろいろあると思いますが、ただこれは、船を売っただけではまた困る。したがって、これに対するアフターサービス的な、主としていわゆる修繕といいますか、そういう面もあわせて考えなければ、これは成り立たぬ問題だということを考えますので、その点もこの際特にお願いしておきたいと思います。  最後ですが、実はこの間、中核六社の営業成績推移表というものをいただきました。いろいろお話をいただいたのでありますが、これを見ますと、利益率と申しましょうか、資本に対する利益率の面を見ますと、海運集約をやりましたのが三十九年であります。その三十九年の海運の集約年次と同水準程度までこれが低下しておるということであります。これは、実は私は非常に驚いたわけであります。これではせっかく三十九年に国も非常な決意をし、船主も非常な熱意を持ってやったこの海運の集約の効果というものは全く減殺されたのではないかという気がいたすのであります。こうなると、また海運関係についてはあらためて新しい一つの施策が必要になってくるのではなかろうか、まあそれさえ考えるのであります。この表で見ますと、平均の総資本に対する経常利益の率を見ますと、三十九年が三・六である。そして四十六年の下期を見ますと、これが三・四まで下がっておるのであります。これが非常にいいときは、四十五年が最もいいので六・三である。それが四十六年の下期になると三・四に下がっておるのであります。これは三十九年の集約時におきまする三・六よりもまだ低下しておる。これは一体どういうことであろうかと思うのであります。その点についてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 宇田國榮

    ○宇田委員長代理 この際、申し上げます。時間の関係上、簡潔な答弁をお願いします。
  40. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 御指摘の点は、確かに三十九年が三・六で、四十六年の三月期が三・四ということでございますが、これは経常利益、要するに総資本、これは他人資本と自己資本とございますが、足したものの比率でございますけれども、確かに三十九年当時よりも下がっております。実は今期の決算では、経常利益が百六十九億ということで、三十九年度が百三十四億、あまり変わっていないわけですね。そのわりに資本がふえておるということで、結果三十九年よりも劣った数字が出ております。これは三十九年が総収人が約二千四百五十億でございます。これに対しまして今回の総収入が下期だけで一千四百四十七億、収入は非常に上がっておるのでございますけれども、それに対しまして常業費用のほうは、三十九年当時が約二千百八十億、これに対しまして、四十六年度下期だけで、要するに半年だけで三千三百十一億というふうにふえております。したがいまして、収入が非常にふえておりますけれども、費用もふえておるということで、差し引き経常利益がこの下期は非常に減ってしまった。四十五年度の年間は五百二億あったのが、四十六年度は上期、下期合わせまして、約三百九十億に下がってしまった。これは要するに昨年来の荷動きの減少、運賃収入の比較的な減少、それから為替差損による得べかりし収入の減少、あるいは米国の港湾ストライキの関係、そういったようなものが積み重なりまして、収入のわりに費用がふえたということで、こういったことになったのでございます。したがいまして、比較いたしますと確かに悪くなっております。これはこういった不況ということを非常に反映しているのではないか、こう思います。ただ、これまでこういった再建整備をやっておりました結果、企業業績も四十二、三年度からずっと上がってまいりました。企業体力もついてまいりました。したがいまして、もしそれをしなかったらもっとひどくなっただろうということは言えると思います。  以上でございます。
  41. 内海清

    内海(清)委員 いまいろいろ御説明がありましたが、この営業収入に対する経常利益を見ましても、この比奉を見ましても、三十九年は五・五が四十六年の下期は四・九に低下しておる。これはいろいろ説明がありますが、要するに経営内容が悪化しておるということでございますか。
  42. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 さようでございます。
  43. 内海清

    内海(清)委員 そういうことですね。そうすれば、運輸省として、海運局として、これに対して何かお考えになっていることがありませばお聞かせいただきたい。それを承りまして終わります。
  44. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 先ほど申しましたように、確かに不況を反映いたしまして企業業績が悪化しているということでございます。これに対しましては、先ほども申しましたように、業界筋におきましては、たとえば来年度以降やめにすることにしております開銀に対する利子補給をまた前に戻してくれとか税制面でのいろいろな措置とか、いろいろな要望が出ております。いま私どもそういった要望を聞きながら今後どうすべきかということをこれから考えていきたいと思っております。御了承願います。
  45. 内海清

    内海(清)委員 これで終わります。
  46. 宇田國榮

    ○宇田委員長代理 午後一時二十分から再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  47. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮井泰良君。
  48. 宮井泰良

    ○宮井委員 同僚委員からもすでにそれぞれ質問もあったと思いますので、たいへん重複する点が多々あると思いますが、私なりに質問をいたしたい、このように考えておりますので、政府側皆さんも専門的なこともそうですが、よくわかるように、ひとつこまかくできるだけ平易に答弁をお願いいたしたいと思います。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕  そこで臨時船舶建造調整法昭和三十八年、第十六国入会で外航船舶の建造許可制度を商船隊の再建が一応目標に到達すると考えられる時期を四カ年に限って実施するとありますが、この見通しはその後引き続いて延長しているところから見通しを誤ったのではないか、このように私なりに考えるわけですが、その点の見解をひとつお伺いいたします。
  49. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先生仰せのように、臨時船舶建造調整法昭和二十八年に制定されました当時は、戦後の壊滅的な打撃を受けました外航海運の整備ということでございましたが、その後今日までその目的は変わっておりませんが、さらにその後いろいろあらわれました船舶の大型化あるいは船舶受注形態、非常に輸出船がふえてきたとか高度な船舶が出てくる、そういうことで臨時船舶建造調整法の持っております船台確保とか船質確保とか航路適合性あるいは船腹調整、そういうものの重要度の姿化はございましたが、いろいろ情勢の変化で続いたわけでございます。当時、四年間の見通しということでありましたけれども、その点からいえば、わが国の海運界の非常な成長ということを考えますとなおさらに必要であるというふうに考えまして、見通しの問題になりますと非常にお答えしにくい点もございますが、いろいろな変化ができてきたということでないかと存じます。
  50. 宮井泰良

    ○宮井委員 大型化しておる、急テンポに船舶の建造というものは進んだ、こういうことでありますが、第一次の改正は第二十四回国会、これは昭和三十一年、第二次改正が第三十回国会昭和三十五年、第三次改正は第四十六回国会昭和三十九年、第四次改正は第五十八回国会昭和四十三年と、このように改正をしておるわけでありますが、このように何回も延長するのなら一つの法律として、改正しなくてもいいものをある程度長期につくったらどうなんだ、こう思うわけなんです。それとも、それができないのは法制局に遠慮をされておるのかということを考えるわけですが、その点はいかがですか。
  51. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 臨時船舶建造調整法先生御存じのように、外航船舶の建造にあたりまして一船ごとにその建造の許可をやっていくというふうなことでございますが、こういうことは一方民間の企業の自主的な活動ということから考えますと非常な制約にもなるかと存じます。そこで民間の自主的な活動というものを考えれば、こういうものはそう永続させるべきではないという基本的な考え方を持ちまして、一方わが国の外航海運の健全な発展、これに先ほど申し上げましたようないろいろ必要な要因がございます。それを来たしていく必要のある期間、臨時的にこの法律を存続させていくという考え方でございます。
  52. 宮井泰良

    ○宮井委員 それならその逆からいきますと、わが国の造船界はもうすでに一本立ちしておる、そういうふうに拠る点もあるわけですね。本法の制定の趣旨にありますように、商船隊の再建について政府調整機能を持たなくてもよい、このような法律はなくてもよいという考えもあるのですね。逆に言うとこんな法律は要らないじゃないか、またこの法律はあってないようなものと同じだ。この法律ができてからいままで不許可になったことが一度もない。さすればもうこのような法律はなくてもよろしい。こういう意見もあるのですが、この点はどうですか。
  53. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 確かに申請された船舶で、申請された段階以後にこの法律によりましてこれが不許可になった、実績は一隻もございません。ただ、たとえば先ほど申し上げました船台調整、この点につきまして御説明いたしますと、最近輸出船がわが国の建造能力の約六〇%程度を占めておりますが、この輸出船の建造許可にあたりましては、国内船の建造につきまして船台の確保が十分にされておるかどうかというふうなことを事前に十分チェックいたしまして許可がなされておる、この法律が事前に働いておるということではないかと考えております。また現在、三十何万トンあるいは四十何方トンの超大型タンカーの建造許可がなされてきておりますが、これらの建造許可におきましては、その船舶の建造にあたりましての当該造船所が持っております計画、特に安全、またこの船舶航行いたします航路につきまして、その船舶の適合性、そういうものを事前に十分チェックして、そして許可をいたしておるというようなことで、本法律は最近の大型化あるいは高度化、あるいは受注の形態、そういうものの変化にあたりましても十分によく働いておると私どもは、我田引水するわけでございませんが、考えております。
  54. 宮井泰良

    ○宮井委員 その点で政務次官の御見解を伺いますが、私が申しましたのは、必要な法律ならば、何回も改正しなくても長期的にがっちりしたものをつくったらどうか。逆に言うと、不許可のものはないし、いまそれが一つの力を発揮しておるという御答弁でしたけれども、われわれにはそれがわからない。逆に言いますと、このような法律はもうなくてもいいんじゃないか、そのように思うわけですが、その点を御答弁いただきたいと思います。
  55. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 率直に申し上げて、国際情勢が現状のような状態でなくて、また為替差損という予期せざる事態が到来しなければ、私はおっしゃるとおりこの法律は必ずしも必要だとは考えませんが、現在のような世界の海運界並びに造船界の現状、先般の為替損差による打撃等を考えたとき、やはりこの法律を有効に生かしてそういう社会環境の変化に伴うように調整することが必要じゃなかろうか。やがて現状のような国際情勢じゃなく、もっと緩和された自由経済ができるような時代になったときは、宮井先生のおっしゃるとおり本法律は必要なくなるのじゃなかろうか、かように考えますが、現在の時点では、むしろ本法案の趣旨を生かして、国際協調をはかりつつわが国の基幹産業を守っていきたい、かような考え方が本法案を提出した理由でございます。
  56. 宮井泰良

    ○宮井委員 為替差損の問題は、後ほどまた私も御質問いたしますからあれですが……。  そこで次の問題に移りますけれども、本法が制定され、その後、改正されるたびに四年間延長されておったわけですね。ところが今回は三年間である。この二年とした根拠はどの辺にあるのか。この点をお伺いいたします。
  57. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 本法案が特に直接的に結んでおります計画造船、改定新海運整備計画が四十九年まで立てられております。この海運整備計画のございます間、一応この法律の延長をお願いいたしたいということでございます。
  58. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、この船舶の建造需給事情ですが、年度別起工予定量を見ますと、国内船においては四十六年に五百万総トン、四十七年は五百四十五万総トン、四十八年は五百九十万総トン、四十九年が六百三十五万総トン、輸出船は四十六年、六百九十五万総トン、四十七年が九百五万総トン、四十八年が一千三十一万総トン、四十九年は一千二百三十五万総トン、この数字はこれはこれでよろしゅうございますか。
  59. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 ただいまの先生のおあげになりました数字は、国内船につきましては新海運整備計画の計画造船とそれから自己資金船とをお足しになった数字じゃないかと思いますが、私ども承知いたしております数字から申し上げますと——ただいま先生のおあげになった数字は、これは海運造船合理化審議会の造船施設部会で従来の受注見通し、現在の受注いたしております四十四年、四十五年の数字を成長を見込んであげたものでございまして、現在の状況から申し上げますと、四十九年度あるいは四十八年度あるいは少し見直すべき点があろうかと考えます。
  60. 宮井泰良

    ○宮井委員 いや、私の質問どおり答えてもらわないと困るのですね、この数字はよろしいですかどうですかという。次に聞くことをあなた、みな答えてしまったのですね。私は次に、この見通しは変わることはないかと、こういうふうに予定しておったのですが、それは見通しは変わる。じゃどうなるわけですか。
  61. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 新経済社会発展計画等の見通しの変更といいますか、再検討というようなことも現在経済企画庁で進められているやに伺いますが、それらの数字をもう一ぺん私どももできましたら検討させていただいて再検討いたしたいと考えております。現在のところは数字で申し上げるまでの段階には至っておりませんで、大体この数字がある程度ダウンしてくるのじゃなかろうかというところの見通ししか持っておらないのが現状でございます。
  62. 宮井泰良

    ○宮井委員 そういう数字をもうちょっと早く計算してもらいたいですね。この法律を出してくるときに、そういう見通しをやっておかないと、ある程度減る予定ですなんというそんなあやふやなことでは、われわれはこれをちょっと審議するのは判断がつきにくいわけですね。ある程度の数字なんというものは四十六年に何万総トンというぐらいのところをやはりちょっと掌握しておいてもらわないと……。  その点はちょっと考え直してもらいたいと思いますが、ドル・ショック以来の通貨不安で受注が減少しておる。これはいまもそういうお話でございますけれども、数字にしてどのくらい減っていっておるわけですか。
  63. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 ドル・ショック、昨年の八月十七日に変動相場制に移りまして以後、輸出船の受注はたいへん困難になっておりますといいますか、減ってきております。昨年度、四十六年度におきましては、四十五年度に比較いたしまして輸出船の受注は五七%に減っております。それから四十七年度におきましてはさらにそれが三〇%ぐらい減るであろうという予想を私ども立てております。三〇%と申しますと大体五百万総トンぐらいでございます。
  64. 宮井泰良

    ○宮井委員 輸出船の建造許可済みあるいは契約済みですね、これは四十六年建造予定量の九六%、四十七年度九三・九%、四十八年度は八三%、四十九年度は四〇・五%、こういうふうになっておる。国内船は四十六年度七一%、四十七年度三二%、四十八年、四十九年度は皆無ですね。国内船が悪い実情になっておりますね。それで、この輸出船の建造許可済み、契約済み、これは大体私の言うたとおりかどうか、あるいは国内船のパーセントもそれでいいか、国内船が悪い実情はなぜであるか、この点をお伺いします。
  65. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 ただいま先生のおあげになりました数字はそのとおりでございます。国内船が非常に悪いということは、わが国の昨年後半来の景気の停滞、特に大型船につきましては鉄鋼関係が非常に伸び悩んだ。一方内航中型、小型船のほうにおきましては、やはりわが国の景気の停滞がございますが、これも鉄鋼の関係が非常に大きな影響を受けております。あわせて最近におきまして近海の木材輸送需要の停滞、そういうものも相当な影響を受けけておるのじゃなかろうかと考えております。
  66. 宮井泰良

    ○宮井委員 景気の停滞、鉄鋼の関係、近海の木材輸送の停滞、こういう理由を局長はおあげになったわけですが、一面からいいますと、輸出船を多くしたために国内船の船台が不足したのではないか、こういう原因によってこのような国内船の受注の実態というものが悪くなっておる、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  67. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 先ほども申し上げましたように、本法によりましてわが国の船舶の建造につきましては十分な配慮を私どもいたしておりますし、また今後もいたすつもりでおりますので、そういうふうな輸出船が極端に伸びたから、わが国の船舶の建造が円滑にできなかったというふうな実態はなかったと考えております。ただ輸出船は、従来から数年先までの注文を正式に契約でやっておる。それから国内船につきましては、先物につきましてなかなかその十分先からその手配をするという商習慣がございませんような実態でございましたが、計画造船につきましては、現在三年先のものまで予約ができるような制度を加えておりますので、ただいま先生の御心配になりましたような国内船が特別な圧迫を加えられて、需要があるのに建造ができなかったというふうな実態は私どもなかったというふうに考えております。
  68. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは次に、新造船はそのワクが三千五百総トン以上であるということでありますが、三千五百総トン以下のものも、これはわずかであるけれどもあるはずであると思います。それではその分はどのようにやっていかれるおつもりてすか。
  69. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 三千五百総トン以下の新造船は全体的なトン数で言うますと、この臨時船舶建造調整法にかかわるものといたしましては、ほとんど一〇〇%カバーしております。隻数で申し上げまして八九%、一一%程度のものが落ちてくるということでございます。具体的な数字で申し上げますと、四十五年度の実績であげますと、建造許可対象の船舶が六百二隻ありましたが、三千五百総トン以上にこれを改定いたしますと、五百三十七隻になりまして、六十五隻の船が落ちてくる。ただ、これらの船をどうするかという点でございますが、非常にわが国の全体的な海運の関係から申し上げますと、その他に格段の影響力はない。一方、こういう規制になるものといたしましては、一部でも行政並びに企業の事務の簡易化をいたしたということでございます。
  70. 宮井泰良

    ○宮井委員 それではこれは海運局長になるかと思いますが、次に、海運嵐山の原則というものですね。海運というものは自由にどんどん民間において伸ばしていくものはどんどん伸ばすという、海運自由の原則というものがいま世界的にあるわけですが、造船王国わが国は、船舶造船においては世界的にもトップレベルでありますから、当然こういう考えはあるかもわかりませんが、発展途上国との間の関係ですね。幾多の発展途上国との経済的交流、これがあるわけですから、その点はどのように考えていくのか。いわゆる言うところの南北問題ですね。そういう問題から、政府の考えはどのように対処されておるか、この点を承りたい。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  海運自由の原則というのは古くからございまして、現在も先進海運国はそういう原則を標榜しております。日本もその一員でございますけれども、その主義の内容は、いま御指摘のように、海運は自由にどんどん活躍さすべしということと存じますけれども、さらにこれをもっと具体的に申し上げますと、結局どこの国へ出たり入ったりするのも、荷物を積み取る船はどこの国の国旗の船でもいいというのが海運自由の原則の一つの大きな柱でございます。それから、したがいまして、そういう船の国旗を差別して、この国のものを運ぶのはこの国のものでなければだめだというような規制を、政府が何か国内法のようなものをつくりまして、法的な規制をしてあるいは行政指導でもいいのでございますけれども政府がそれに関与して、そういう自由を防げる、これはいわゆる国旗差別政策といっております。海運自由の原則はそういった国旗差別政策というものに反対する。むしろ、そういった自由にどこの国の船も差別なしに積み取るのが海運自由の原則である、かように言うわけでございます。  そこで、なぜそういった国旗差別政策をやるのか、そういう主張をする国があるのかと申しますと、いま御指摘のように発展途上国はやはりこれから、自分の国の意向もありますし、あるいは自分の国の経済的な事由もありまして、やはり自分の国の商船隊を持ちたいという熱意に燃えております。日本もかつてはそうであったわけでございますが、そういう国々が自分の簡船隊を持って、自分の国に出入りする貨物は自分の船で運びたい、こういう熱意は当然のことと存じますし、また経済面からもその国の経済界からいって当然だと思います。これにつきましては、先進海運国もそういった道を歩んできたわけでございますから、これはわれわれも理解できるわけでございます。したがいまして、そういう国々がやはり健全な簡船隊の発達をはかるという意味で、そういったような差別政策をとるということはわかるのでございますけれども、それだけに終わったんでは困るのではなかろうか。まだ開始時期でございますからやむを得ぬと思いますけれども、だんだんそういう閥船隊がそろっていったら、これはやはり自由競争ということを原則として海運活動を行なうのが道じゃないだろうか、こういうふうに存じておるわけでございます。と申しますのは、たとえば、ある発展途上国が自分の国から輸出する大量の原料、これを全部自分の国の船で運ぶんだ、どこの国の船も来てはいかぬということになりますと、世界の貿易の流れ、その流れというものが非常に阻害されたりあるいは効率を害する。そこで、そういったような経済の流れに相反するのではないかという危惧がございますし、また、そういったものを輸入することにたよっている国のほうにおきましては、潤滑に輸入が入らないというようなこともあります。したがいまして、先進海運国としましては、そういう国がりっぱな商船隊をつくるように、資金の町なり、技術の面なり、あるいは船員の問題でいろいろ援助していこう、助成していこう、協力してやっていこうというような配慮をいたしまして、それでそういうりっぱな水準まで引き上げていこう、そしてお互いに自由に競争しようじゃないか、かようなことを先進海運国間で話し合って、思想統一をしておるわけでございます。そういう趣旨でございますので、そういったようなことを主張する国々とあるいは主義がぶつかり合うというようなことがありますが、そういう問題はやはり国際的な調整問題だと存じます。ところが、いまのような開発途上国ならいいんでございますけれども、アメリカとかいうような国で、そういう先進国でありながら、やはり自分の国のものは自分の国の船で運ぶというような政策を掲げて、他国の船が通ることを拒んでおるというような国もございまして、その辺の事情、非常に複雑でございます。が、いずれにいたしましても、今回のUNCTADの会議におきましても、そういう問題が討議されたのでございますが、やはり先進海運国といたしましては、やはり後進国のそういった要望を受け入れながら、たとえば同盟等に入れないというようなことはしないで迎え入れる、りっぱな商船隊をつくってあげる、そのかわりあくまで自由競争だぞというような趣旨でまいっておるわけでございます。したがいまして、今後それに反するような政策等につきましては調整の問題は残るかと思いますけれども、現状はそういうことでございますし、私どもの海運政策におきましても、現在そういう血で対処していきたいというふうに考えている次第でございます。
  72. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは発展途上国に対しては、商船隊がりっぱに自由競争できるようになるまで援助していくということですが、その点はそれでは具体的にわが国としてはどのような援助をいたしておるわけですか。
  73. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 発展途上国の海運に対する援助でございますけれども、今回のUNCTADの会議の総会が終わったのでございますけれども、そこでも発展途上国の簡船隊の開発、整備という議題があげられまして、要するに、今後十年間以内に発展途上国の商船隊は世界の船腹の一割にほぼ該当するくらいの力を出させる。そのために先進海運国は協力しようというような内容の決議もありまして、それには先進国ももちろん満場一致で採択いたした経緯がございます。日本といたしましても、現在は、一器多く行なわれておりますのは港湾の施設等についての援助、これは技術援助もございますし、それからそういった人の養成もやっておりますし、それから資金の援助も一部やっております。これからも大いにやっていくつもりであります。それから、たとえばインドネシア等におきまして、外航海運の整備をするということでございまして、それに必要な小さな造船所でございますね、あるいは船を修理する造修工事、そういったもの、あるいは港湾の整備、そういったものにつきまして技術的な援助あるいは資金援助をやるというかまえでおります。その他いろいろございまして、これからもいろいろ出てくることと存じます。  それからまた、定期航路の面におきましては、たとえばいままで非常に排他的だった定期航路、たとえば欧州と極東の間の定期航路、そういうところへたとえばマレーシアだとかタイランドとか、そういった発展途上国の船も入れる。そのためにシェアを分けてやるといったような意味でも、そういったような協力ももちろんやっております。今後そういった問題もだんだん出てくると思います。特にラテンアメリカあるいはアフリカ等におきましても出てまいると思います。船員の養成等も含めましてそういった意味の援助をやっていきたい、こういうように考えております。
  74. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは次に、これはちょっとまた別な観点からの御質問になるかもわかりませんが、船舶の大型化は最近とみに著しいものがあるわけであります。これによりますと、二千五百総トン以上について、上限についても船質調教正機能のチェックでやれる、この法律において上限のチェックはできる、こう思います。思いますが、際限なく大きくしていくのかどうか、何らかの限度を考えておられるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  75. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 船舶が十分な機能を発揮いたしますのに関連いたしまして、港湾の施設もございます。また、良質な船舶を建造いたしますには、建造にかかわります技術、また施設、そういうものもございます。現在の物理的なそういうものから考えますと、現在の建造能力は大体総デッドウエートでいいまして五十万デッドウエートトンくらいが限度かと考えておりますが、今後の大型化の要請、こういうものはさらに続いていくものと考えます。また、技術革新もそれにフォローしていき得るものというふうに考えておりますが、その上限につきましては、私ども現在、一昨年運輸技術審議会に諮問いたしまして、百万デッドウエートトンのタンカーの開発上の問題点、これは港湾施設、造船施設等もあわせて問題点の摘出とその解明、方策というものも御諮問いたしておりますが、この審議が現在進行いたしております。その審議の段階におきまして、百万トンの建造には相当ないろいろ開発しなければならない問題点がたくさん出ております。これらから考えますと、現在の日本の持っております技術を最大に発揮いたしまして、この十年といいますか、近い将来に日本が建造可能になる船舶の上限は百万トンあるいはそれよりちょっと下というふうな、私は現在の審議の過程からそういうふうな判断をいたしておる次第でございます。
  76. 宮井泰良

    ○宮井委員 後ほどお尋ねしようと思っていましたが、いま言われたように運輸省は四十七万七千重量トンの建造許可のあと、運輸技術審議会に百万トンタンカーの技術開発を諮問した。石川島播磨においても四十六年、百万重量トンドックをすでに建設しておる。百万トン時代が来るといわれておるわけであります。一方、せんだっても海上安全交通法で非常に論議になりました大型巨大船優先の政策であるということで、百五十メートル以上の船はすべての船に優先して行くということで、一般船舶あるいは漁業権との問題等もからんでたいへんな問題になったわけであります。この船舶の大型化に伴わない現在の港湾施設整備、ちょっとこれは観点が港湾局長あたりへいくと思う、まあ政務次官もいらっしゃっておりますから——何回もお聞きしたことでもございますけれども、CTS装置、シーバース、パィプラィン構想ですね。あるいはまた瀬戸大橋などもでき上がっていくということで、さらには油の流出事故等勘案いたしますと、はたして——九州の喜入などは多少なりとも大型船に備えての港湾整備というものができておると思いますけれども、あるいはまた大型タンカーのほうが日本の油の需要に応じてかなっていくということもいわれています。もちろんマラッカ海峡を通らなくてもいい、ロンボク海峡を通っていっても採算がとれるから大型船のほうがいいという、こういう考えもありますけれども、いま申し上げましたような内航の現存の政府港湾政策その他のことから勘案して、はたして百万トンタンカーというものが上限としていいものかどうなのかという点は、大いに論議をされていかねばならない。後ほどお尋ねしますが、まだ欠陥船というふうな問題もありますし、その点総合的にちょっとお答えいただきたい。政務次官でもいいし船舶局長でも…。
  77. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 政務次賞のお答えになります前に、先ほど先生のおあげになりました百万トンの建造の施設がもうすでにできておるじゃないかという問題と、それから運輸審の諮問、いま審議の過程の一部を御説明申し上げまして、御質問の一部のお答えにいたしたいと存じます。  運輸審の百万トンの諮問におきまして、まず百万トンのタンカーというのは大体どういう船になるだろうかということが最初に検討されました。それによりますと、大体百万トンの船は、長さが約四百九十メートルくらい、幅が八十五メートルくらい、深さが四十四メートル。それで走りますとき満載で喫水が三十三メートル、馬力が九万馬力、大体四万五千馬力の推進機二軸で推遜するというような船になろうかと思います。  先生のお話がありました石川篇の、下にできております建造施設は、この船が物理的にはつくれるというような施設ではありますが、これは能率的にあるいは経済性あるいは安全性、すべてのことを脅えますと、この施設で完全に百万トンができるとは私ども考えておりません。  それから、私ども今後さらに超大型化を進めていく場合に、何におきましても最も大事なことはその安全性であるということの観点から、審議会の審議におきましても、たとえば構造あるいは推進関係あるいは艤装関係というふうな縦割りの検討部会で御検討願っておりますほかに、この全部を見渡して安全はどうだという安全部会で全体的な安全について御審議を願っております。申し上げたいのは、十分に安全を確保できるまではこういうものには手をつけていかないというふうなことでございます。ただ、タンカーにおきましては非常に油の輸送量がふえてくる。そういうことで大型化のほうがかえって安全ではないかというふうな観点で、百万トンタンカーをつくることが全体的な輸送形態として安全かどうか、形態的な意味におきます検討もあわせて現在審議をいたしておる段階でございます。  以上でございます。
  78. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは次に、先ほど政務次官からも出ましたが、ドル・ショック以来為替差損が非常に出ている。一ドル三百八円から三百二円などといわれておりまして、約六十円の損害である。造船業界は非常にショックを受けておるわけであります。政府対策として、差損の三分の三は税法処置で何とかする、キャッシュではやらない、三分の一は企業努力をせよ、このように言っておられるようでありますが、そのとおりに指示しておられるわけですか。
  79. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 為替差損につきましては、先生がおっしゃるように、たいへん造船業につきましての円滑な運営に影響があるものでございましたので、政府といたしましては何がしかのこれに対する救済措置を必要だと考えました。そこで税制の面とそれから金融の面と両方の措置によりまして、政府の財政上可能な救済措置をいたしたわけでございますが、三分の二の点につきましては、その当時造船界が政府の処置につきまして計算をいたしましたところ、これは大体差損によりまして収入が減りまして、法人税等が当然支払わなくて済むというふうなことも勘案いたしますと、大体三分の二になろうかというような業界が試算した数字がございます。それから言いますと、あとの三分の一は業界の企業努力でもってこれをカバーしていただきたいというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  80. 宮井泰良

    ○宮井委員 それならば、アメリカはベトナム戦争などでドルのたれ流しをしておる。そして円の再切り上げがまたいま問題になっておるわけであります。八年間の延べ払いでは相当の損害になると思いますが、それでいいのですか。
  81. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 ドルの価値が下がってきた、あるいは円の切り上げがあるというふうなことが言われ出しましたのは約二年前のことかと存じますが、造船界は幸いにいたしまして、そういう傾向が見えましたときにはちょうど非常に旺盛な新造需要にもささえられたわけでございますが、従来ドル建てでやってきた受注を円建てにほとんどの部分を変えてまいりました。そこで外貨債権三兆円のうちのドルにかかわるものは一兆六千億、その約半分であるというのがいまの実態でございますが、今後の問題といたしまして、またさらに円の不安があるということで、先ほども御審議がございましたけれども、一部ドル建てによらないとなかなか受注がしにくいというふうな状態も出ております。これらに対処いたしまして、今後通貨の調整がさらに行なわれたというふうな場合に対処するための方策は、私どもといたしまして為替差損保険等を推進する等の処置は講じていきたいというふうに考えております。
  82. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、世界的に見まして海運界は不況が押し寄せておる。また造船の意欲が非常におとろえてきておる。輸出船の受注実績はしたがって激減しておる。四十六年度の実績から比べ四十七年度は約半分になる。一カ月十隻相当の受注があったのが一カ月一隻、十分の一に落ちておる、これはそのようになっておるかどうか。鉄鋼の不足で鉄鋼船の建造をやめておるし、国内船も違約金を払って建造取り消しの状態である。二、三年前の好況の時期と全然違う。暗雲が晴れる見通しがない。この点はどう対処されるか、これをお伺いします。
  83. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 船舶受注のいまの商談の傾向は、大体先生のおっしゃるとおりかと考えます。一方、造船界は先ほども申し上げましたけれども、従来までの非常に旺盛な新造需要にこたえるために、施設の整備を続けてまいっておったわけでございますが、これらの観点から言いますと、この一、二年の間の受注動向は、非常にこれが長く続くということになれば非常に憂慮すべき事態かと考えます。ただ、現在大型造船界は、二年半ぐらいの工事量の受注をすでに持っておりますので、この不況が極端に長く続くことがなければ、何とか造船界は耐え得られる。それから長期的に見れば、私どもはさらに海運の造船需要は非常にふえてくるのではないかという観点で現存おります。
  84. 宮井泰良

    ○宮井委員 二年先ぐらいの受注があると言われますけれども、これはやがて取り消しの状態になってくるのじゃないかというようなことも思うのですね。それでこのような状況から見まして、この改定海運政策をまた改定せねばならぬのじゃないか。改定海運政策のまた改定、こういう状況ではありませんか、どうですか。
  85. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 改定海運政策の改定ということになりますか、やはり見直しはしなければならぬと思います。
  86. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで計画造船の手直しは必要ないか。国内でも船台を拡張して設備投資もばく大なものとなっておる。この点どう対処されていくかですね。過剰投資になっておるのじゃないか。この点はどうですか。
  87. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 船舶の施設につきましては、許可ベースで考えまして、現在の能力は総体的に千二百万総トンぐらいの建造能力があろうかと考えますが、現在のような不況が相当長期に続きました場合に、ある程度造船の操業度を下げる必要が出てくる。そういうふうな事態が起こりましたら、私どもといたしましては、各企業ごとに自主調整をやっていくように行政指導をいたしたいというふうな考えでおります。
  88. 宮井泰良

    ○宮井委員 中堅造船界では昨年あたりから大型ドック計画が相次いで出ておったわけですね。どのくらい許可されたのですか。
  89. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 昨年来からの許可につきまして、中型の造船所の大型化でございますが、中に二形態ございます。従来たとえば五千トンの建造船台でありましたものが、そのまま七千トンとか八千トンとか、その船台の長さあるいは幅をふやしていくという大型化の形と、それから旧式になりました造船所を廃止あるいは休止いたしまして、新たな立地に新たな近代的な造船施設をつくり、またこれが相当の、従来二万トンくらいの延造能力でありましたものが七、八万トンぐらいの建造能力になるというふうな二つの形態がございます。これら二つを合わせまして、いまちょっと計算いたしますが、すでに許可いたしましたものにつきましては四十一万総トンぐらい、今後数カ所の造船所が後段の超大型造船所の合理化、近代化ということで計画されておるものがございます。
  90. 宮井泰良

    ○宮井委員 それは設備過剰になっておりませんか。
  91. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 当面の需要、当面の受注ということから考えますと、先生心配のような傾向も一部にはいなめない。ただ、中型造船所は非常に設備が旧式化いたしております。それからいまの立地条件が都市に片寄っておりまして、今後都市労働にはなかなかたよれないというような実態がございます。また、現在の施設がいまの船舶需要になかなかフィットしてないというような状況もございます。また一方、船舶業は公害のきわめて少ない産業ということで、地域開発という面から、各地からの招致がございます。これらの観点からいいまして、当面の需給の状況と将来の需給の状況、両方を勘案いたしながら、これらの施設の増強については対処してまいりたいというふうに考えております。
  92. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは、そろそろ時間がなくなってきましたからひとつ簡単にお答えいただきたいと思いますが、GNP自由世界第二位、造船トップという海国日本でありますけれども、タンカーあってロマンなし、ロマンというのは客船である、一般には、船旅は外国船まかせである、これは情けないという声があるわけです。船旅というのは全部外国船にまかしておる。政府予算で建造調整費というのがオリンピック前についたが、これは伊勢湾台風の復旧費で吹き飛んだといわれております。この点、客船というものは、現在各県へ行きますと青年の船ということで、各農村の青年などを募りまして東南アジア方面へ青年がどんどん行っておりますね。これは青年の夢を育てるという意味において非常に必要なことであると私は脅えております。この点はどうお考えになっておりますか。
  93. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 海運の関係といたしましては、ぜひそういった客船も日本が持ちたいということで非常に熱望しております。しかし、現状ではそういった旅官船の採算問題等もございまして、必要な輸入量、輸出量をまかなう日本の貨物船をつくるのに精一ぱいだということでございまして、どうも旅客船まで手が回りかねるというのが現状でございます。したがいまして、国で、先般そういうような動きがあったと聞きましたけれども、そういったような助成でも大幅に出せば大きな客船もつくっていけると思いますが、財政情勢もありましてなかなか現在まで実現しておらないのでございます。これからは、そういった健全な、いい意味でのレジャーあるいは国際的な見聞を広める、いまの青年の船とかいうふうなことで、そういったような部面も大いにこれから必要と存じますので、船会社等におきましてそういうような希望が出ればぜひそういうものを実現さしたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても金の問題がありますので、そういうの問題を克服しながら、かつて日本が官船で世界をリードしたのでございますが、そういった意味ではなしに、健全な意味でのクルーザーといいますか、そういう客船むぜひ持ちたいというふうに実は私どもは念願しておるところでございます。具体的にいま特にそういった計画はございませんけれども、念願はいたしておる次第でございます。
  94. 宮井泰良

    ○宮井委員 世界最大のコンテナ船、五万四千五百総トン型コンテナ船の「えるべ丸」は、引き渡し前に欠陥船として引き渡しがおくれたということがありましたが、その後どうなりましたか。  それから、一緒に質問してしまいますが、「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」、これは相当論議をあれしましたが、どちらも原因不明で片づけられておる、それでいいのかどうか、この二点を簡単に。
  95. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 まず「えるべ丸」でございますが、「えるべ丸」は本年の三月二十四日に大阪府船三井船舶に引き渡されました大型の高速コンテナ船でございます。建造に当たりましたのは三井造船の玉野造船所でございますが、結論から申し上げますと、修理は非常に順調にいきまして、現在非常な好成績で運航いたしております。この事故は、木船は超大型の船舶といたしましては世界最初の三軸、三つのプロペラで推進しておるという船舶でございますが、この両側のプロペラを回しますシャフト、軸が非常に少しの量でございますが、推進中に片寄りができまして、その軸受けが焼損したというふうな事故でございました。簡単な事故でございましたけれども、ちょうど事故の修理に出たりますドックがあいておりませんで、約一カ月間ドックをさがすために時間を費やしたということでございます。軸受けに流します潤滑油のみぞの彫り方を変えたという簡単な修理だけであったのでございます。  次に、「ぼりばあ」、「かりふおるにあ」でございますが、先生承知のように、「ぼりばあ」につきましては造船合理化審議会の建議、一方「かりふおるにあ」の事故につきましては大型専用船海難特別調査委員会でございますかの御審議を得まして、この過程におきまして、原因につきましては先生おっしゃるように証拠となります船がございませんので、調査委員会では明らかには出し得なかったわけでございますが、現在海難審判庁でさらにこまかくこの調査をいたしておるわけでございます。これらの造船合理化審議会あるいは調査委員会におきまして、それにいたしましてもいろいろ配慮すべき点、それらについてそれぞれこまかくいろいろとるべき対策についての御質疑がございました。これらについて、私どもはすべてにわたって現在進めておりますが、これらの対策はいま現在順調に進んでおる段階でございます。
  96. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは、時間が参りましたから、最後に総合的に政務次官に御答弁をいただいて終わりたいと思いますが、先ほどからの論議をひとつ締めくくるという観点におきまして、ドル・ショック以来為替差損で造船業界が非常に困っておるというような問題あるいは輸出船の長期の受注のために船台を予定してどんどん設備投資をしておる、しかし、この際取り消しも来るのではないかというふうな問題等をかかえて、わが国の造船界が非常に苦境に立っておると思うのですが、その点運輸省といたしまして、また政府として今後根本的な抜本的な対策を講じていくというようなお考えをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  97. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 造船と海運というのは御指摘のように表裏一体の関係にあると私は思います。先般の為替差損並びに内外の需要の減退、円の切り上げ等、きわめて前途楽観を許さない現実に直面しているのでございます。考えてみると、日本の造船工業というのはわが国の基幹産業の一つであり、この基盤強化、育成が、わが国海運に対する船舶の安定供給のみならず、世界の需要の五〇%を建造している現状から考えて、世界海運界に対する船舶供給の責任からも、ぜひとも今後とも永続的に日本の基幹産業としてこれを守っていきたい、そういう考え方から、日本の置かれている立場をよく認識し、さらにまた秩序ある輸出を考え、国際協調を推進してまいりたい。造船についてはかように考えております。  また海運については、御承知のとおり改定新海運政策がありますが、現在の情勢の変化からかんがみまして、これもまた再検討せざるを得ない事態に至っていると考えます。経済企画庁においても経済政策の見通しについて多少手直しも加えるようでございます。これと歩調をあわせつつ長期的視野に立った日本海運並びに造船政策というものを早急に樹立していきたい、かように考えて前向きで進めていく所存でございます。
  98. 宮井泰良

    ○宮井委員 以上です。
  99. 小峯柳多

    小峯委員長 田代文久君。
  100. 田代文久

    ○田代委員 まず次官に御質問いたしますが、日本船舶造船群業というのは現在世第一位になっている。しかもこれが将来としては世界のそういう業界から日本の国際的な面から見て、この占めるシェアというのはおそらく日本が世界を独占するのじゃないか。現在過半数ということになっているんだけれども、それが六〇%あるいは七〇%、八〇%というふうになるのじゃないかという国際的な疑惑、これはよしあしは別として、とにかくそういうところまで発展してきているわけですね。そういう発展の原因はどこにあるかということをまずお聞かせ願いたいと思うのです。
  101. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 その原因ということですが、とりもなおさずわが国の海運政策の基本的な見通しについて誤りがなかったという点が第一にあげられると思います。同時にまた、民間企業並びに政府の造船業に対する意欲的な取り組み方、それから技術の面、それに伴う設備、こういういろいろな要素と、世界の客観情勢が同じ方向に向いておった、それが日本の造船工業界が世界の過半数の船舶の需要を満たす結果になったのじゃなかろうか、こう判断しています。
  102. 田代文久

    ○田代委員 これは私ども見解は非常に違っておりまして、たとえば技術が非常に進んでいるという点ではこれは納得できます。しかし、船舶の見通しが正しかったかどうかというようなことも、これは結果的にはいえるかもしれないけれども、私はこのように世界第一になった根本原因というのは、日本のそういう業界は政府によって非常に至れり尽くせりの援助がなされた。税制的にもあるいは金融的にもそういう点が実に至れり尽くせりの手が打たれてきたということが第一点と、それから第二は、これは日本の造船船舶企業に従事する労働者の賃金、労働条件が非常に劣悪である、安い。これがあなたたちから言われると、これは国際競争に勝つためにはやむを得ないのだとおっしゃるかもしれませんけれども、実に私はここにあると思うのですよ。あなたのおっしゃったような、日本がそういうふうに大発展をした基礎というのはやはりこの点に置かなければならないのじゃないかと思いますが、どうですか。
  103. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 造船企業に従事している従業員の努力にまつところも私は多いと思いますが、私の聞く範囲においては、日本の造船工業界がそういう従業員の労働力の犠牲の上に立って躍進をしたということは当たらないのじゃないか、かように考えております。
  104. 田代文久

    ○田代委員 これはとんでもないお考え方ですよ。全くそれは造船業者あるいはそういう大企業から見られた観点であって、ほんとうに客観的な正確度からいいますなら、日本の労働者の賃金が、とにかくそういう先進的な造船業界と実際に比較されても半分あるいはいいところでその五、六〇%というような低賃金でやられてきている。しかもそれは密度の高いあれでやられている。災害も多いというようなことできている。この観点をはずすならば根本的に私は間違っておると思うのです、実際に。そういう業者、企業本位の観点から日本の造船業が世界第一になったというようなことを言われたのでは、これは絶対に納得できません。しかしいずれその点は、他の点につきましてもこれは大いにけんかいたしますから次に行きます。  それとの関係で先ほど為替差損の問題の御質問がありましたが、非常に答弁が上すべりみたいな答弁ですね。とてもあんなことじゃ私ども納得できないのですが、実際三分の二の為替差損に対する政府の援助というやつは、金額で見積もって当時約二千五百十億円程度じゃないかと言われておったように思いますが、これは間違いありませんですか。
  105. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 当時いろいろ精算が各所でやられましていろいろな数字が出ましたが、正確に申し上げますと、造船業の為替差損は二千四百五十七億でございまして、一方造船業は外貨の債務を持っております。これから来る差益が約五十億ございますので、これから差益を引きますと三千四百七億、これは現在私ども考えておる今回の円の切り上げによって生じた造船業の差損であるというふうに考えております。
  106. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、そういうような援助を前提として三分の三ということになりますね。そういたしますとそれの根拠ですね。根拠はどういうところにあるのですか。そういう援助をなさねばならないという根拠ですね。
  107. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 総体的にいいまして、先ほど来から造船業はわが国の基幹産業である。それでこれに携わります従業員の数でいいましても二十五万人、また関連工業を加えますと約五十万人、非常に範囲の広い産業でございます。これらの産業が円滑に運営できないということになりますと、基幹産業であるということもあわせ考え、また国民生活に相当の影響があるということを考えますと、ここで救済措置はぜひ必要である。一方この差損をこうむったこと、これが必ずしも企業だけの責任ではないということをあわせ考えまして、救済措置をお願いしたわけでございます。
  108. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、いわゆる企業の努力と申しますか、企業自身が大体これについて責任を持つというのはやはり残り三分の一程度、これは金額にしまして八百億近くあるいは七百数十億、こういうことになりますか。
  109. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 この差損の対策によりましてどれだけのカバーができるかということにつきましては、各企業それぞれ異なった状況にありますし、また経理の状況も違ってくるということで、私どもこれで何%あるいは何分の一がカバーできるかというような詳細な数字は持っておりません。ただ、当時これらの処置がきまりましたときに、造船工業会におきまして試算されました数字が大体三分の二ぐらいであろうというふうなことであったわけでございます。私どもといたしましては財政の許す範囲内においてこれだけの処置をいたしたということでございます。
  110. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、業者が持たれる経理上のものと、またさっきちょっと出ていましたけれども、差損というものは単に造船業だけでなくて、ほかの産業も差損を受けておりますが、それは全部同じ比率なり考え方によってめんどう見る、政府としてはこういうことになっているわけですか。
  111. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 外資建て長期延べ払い債権を持っております企業全体に対する処置でございます。
  112. 田代文久

    ○田代委員 これは私ども計算してみたのですが、三分の一程度業者の努力いろいろなことによって、たてまえは自分で責任をお持ちになっておるということになっておるようですね。しかし実際上はいろいろの措置によって、これがほとんど消えてしまっているのではないかというような計算を私どもするのですが、その点どうですか。
  113. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 この差損対策が全部消えてしまって効果なしということでございましょうか。
  114. 田代文久

    ○田代委員 そうじゃなくて効果は大ありで、それは業者のほうとしては、自分のほうでとにかく負担するようなものは消えてしまっているのではないか、こういう意味なんですよ。
  115. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 その点におきましては、この三月期の決算におきましても、相当数の造船所が減配を余儀なくされておるというふうな実態から判断いたしましても、またこの処置がきまりましたあと、各業界からほうはいとして起こりました不満、そういうものから考えましても、私どもは差損が全部これでカバーされておるとは考えられません。
  116. 田代文久

    ○田代委員 ではこれはほかの面から御質問いたしますが、昭和四十七年度につまり財投から二千七百億円の船舶輸出の確保のための措置がとられるわけですね。この総額の中には、為替差損対策として決定された輸銀優遇融資に伴う所要資金を含む、こういうことになっておるわけですね。そういたしますとこの融資というのは、この中に含むといわれるのは大体どれぐらいなんですか。
  117. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 輸銀の融資につきましては、まず本来造船の輸出につきましては国際的に信用条件がきめられております。各国それぞれそのきめられた条件に従うためにいろいろな処置がございますが、金利が七・五%で頭金二〇%、あとの残りの八〇%は八年間延べ払い、この条件以上でやるということでございますが、日本の市中銀行の金利が高いというようなこと、資金量の確保というようなことから輸銀の融資がなされておるわけでございます。そこで本来、差損対策がございませんければ、大体二千五百五十億がそれに必要な額でございましたが、融資量を少しふやせるということで百五十億が追加融資になる計画になったわけでございます。
  118. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、この所要資金を含むというのを百五十億とおっしゃいましたが、これは例の三分の二の援助というやっとは全然別のワクなんですか、それはどういうことです。
  119. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 三分の二ということにつきましては、先ほど来から御説明いたしておりますが、三分の二ということをのけまして、今回の差損対策、その中の一環でございます。
  120. 田代文久

    ○田代委員 では次に進みますが、私どもとしましては、とにかくこの差損問題が起きたのは、佐藤内閣の政策の間違いからきたことなんであれなんですが、これはあまりに優遇され過ぎているのではないか。労働者に対してこれぐらいやってもらえれば、私ども双手をあげて拍手をいたしますけれども、これが全く逆になっているのではないかということを言いたいわけなんです。  そこでお尋ねしますけれども、四十七年度に三百四十万総トン数それから四十八年度に三百八十万総トン数が計画造船で建造されるということになっておるそうですが、この計画造船によって四十七年度あるいは四十八年度なされる政府の援助というやつは、これは一般会計から利子補給などを含めまして一体どれくらいの金額になるんですか。
  121. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  まず四十七年度の三百四十万トン外航船をつくるということに対しまして、財政資金は千二百億でございます。これは開銀融資でございますね。それから利子補給は百五十六億という予算をお認めいただいたわけでございます。
  122. 田代文久

    ○田代委員 いまのは四十七年度ですね。
  123. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 さようでございます。
  124. 田代文久

    ○田代委員 四十八年度分も聞きたいんですが、大体四十七年度で傾向がわかりますからけっこうですが、これも政府としては非常に至れり尽くせりの一画造船で、これは船主としては非常に歓迎されるところでしょう。  ところで、現在、船工協会がいわゆる為替差損の問題とかあるいは巷間いわれております不況というようなことを口実にして、政府援助の拡大を逆に提起されておるということを、新聞などで承っておりますが、研究、そういうことが起きておりますか。
  125. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 船主協会、これは業界の代表でございますけれども、先般の総会におきまして最近の業績の悪化から——四十八年度以降開銀に対します一部の利子補給、これをやめにするということを、私ども先般の新改定海運政策できめたのでございます。それを四十八年度からやめることをやめにしてくれ、それを四十六年、四十七年のべースに戻してくれということを要望しております。事実ございます。
  126. 田代文久

    ○田代委員 非常に不況だ不況だといわれますけれども、為替差損なんか現実に出ておりますから、そういうことはそこだけを見るといわれるかもしれませんけれども、部門別に——これは新聞発表なんですけれども、「各社とも造船部門が順調。これは過去に受注した新造船が売り上げに立ってきたためで、特に三菱重工業の造船部門は昨年九月期に比べ、四五・九%増」五〇%近い増というような、こういう数字が出ているわけで、単純な形で不況だ不況だと世間でいわれるようなことではないと思うのですね。これは、この船主協会としては非常に深い読みでやられているのじゃないかと私は思うのですよ。  そこで、時間がありませんから申し上げますけれども、大体、これはあまりに至れり尽くせりの、何もかも政府がおっかぶつちゃって損はさせないという形で、これは最初の質問に返るけれども、そういう至れり尽くせりの援助で、世界第一位のところまで来ている。私は世界第一位のことは反対ではありませんけれども、なり方が世界第一でなければいけない。労働者が非常に犠牲になることに対しては構成できないわけだ。そこで、やはり計画造船政策は、出面としては非常に問題じゃないか。政府は、船主協会がこういうさかねじを食わすような形で出てきていることに対して、助成の拡大をずっとやられるのかどうか。あるいは計画造船というようなもの、これをおやめになるつもりはないかどうか。私はやめるべきだと思うんです。その点の御答弁を願いたい。
  127. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 いま御質問の中に、船会社と造船会社とごっちゃにされておるところがあると思いますので、そこは誤解のないように願いたいと思うのです。私が申し上げたのは、海運会社の集まり、船主協会でございますね、これがそういう政策を打ち出しまして、それで開銀への利子補給をやめるのをやめてくれということを言っております。先生指摘の、いまの三菱造船とかいうのは、それは造船会社のことでございまして、海運会社と違うのでございます。造船会社のほうは多少益を出していると存じますけれども、海運会社のほうはかつかつ八分配当がやっとできた。九月期はおそらく中核五、六社の中でも配当ができなくなるかもしれないということでございまして、この点ちょっと誤解のないように願いたいと思います。  なお、造船会社のほうは差損関係で非常に苦しいということでございますけれども、いま御指摘の点は、船舶局長から答弁があると思いますが、船会社のほうは、三月期決算はかつかつ、いままでの八分配当、六分配当が維持できた。九月期はそれがあぶないだろうということでございます。非常に苦しい状況に立ち至っております。そこで、先ほど申しましたように船主協会が、利子補給をやめにすることはひとつ考え直してもらいたい、こういうことを先般総会できめまして、政府に要望いたしております。  実は私どもといたしましては、計画造船というのは、要するに日本の輸出入をまかなうための船腹、ある程度必要とする船腹をつくっていくということと、いま一つは、海運会社に対しまするいまの利子補給というような助成、この三本柱でやっておるわけでございますけれども、最初の船腹のほうにつきましては、今度経済社会発展計画のほうで見直されれば、それに基づきまして私どもがつくりました船腹量というものも見直さざるを得ないだろう。  いま一つの助成のほうの問題につきましては、いまそういったような要望がなされておりますが、これも三月期決算等を勘案いたしまして、一体どの程度企業基盤が弱っているんだろうか。特に競争相手が外国船でございますから、要するに外国船との採算点を比較いたしまして、それが非常に弱いということであれば、やはり考慮に入れなければならぬのじゃないかということで、これから検討に入るところでございます。できましたらば九月早々にでも、海運造船合理化審議会という大臣の諮問機関がございまして、そこにいろいろ専門家が出ておりますので、そこでいろいろな面で御討議いただきまして、その面では結論をお出しいただきたいと存じております。現在、ここですぐ補助を強めるというふうにきめたわけではございません。そういう要望があったので検討中だということでございます。
  128. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、いままでやってこられた計画造船、これはやめるべきだと私どもは先ほどから申しておりますが、これはとにかく変更されるとか、いままでどおりのようなそういうやり方ではいけない、やらない方向だ、詰めればこういうことになるわけですか。
  129. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 私のことばが足りなかったと思いますけれども、いままでの計画造船をいまここでやめるというわけではございませんで、いま中できめております建造量でございますね、その量がはたしてそれでいいかどうか。つまり、多少生産が落ちてまいりましたので、それに見合った船腹ということで手直しが要るんではないか、こういうことでございます。それが船腹量の問題でございますね。  もう一つ助成の問題につきましては、そういう業界の要望もあります。しかし、私どもといたしましては、来年度から二年間はもう海運の利子補給はやめにするというふうにきめておりますので、その点は一体どうしたらいいだろうか、両方の点を検討して手直ししていきたいというふうに考えているところでございます。計画造船そのものをやめにするわけではございません。
  130. 田代文久

    ○田代委員 これは意見になりますけれども、いままでのような形の、そういう量が減るからという問題はわかりますがね。しかし、質的な問題で、そういう綿にくるまったような形で造船事業をとにかくただ育てるということになることについては、われわれはこれは賛成できないと思うのですよ。ですから、この計画造船についてのいろいろの援助については、私は相当これはチェックするなり変更さるべきではないかということを申し上げたいのです。  次に、時間がありませんから申し上げますが、現在非常に公害がふえておる中で、いわゆる国際的にも無公害燃料の液化天然ガスタンカーの造船というものがいま非常に問題になっておるわけですね。ところが、これが日本には一隻もまだないそうですね。とにかく国際的にはそういう無公害燃料の液化天然ガスタンカーをどんどんつくるという方向に向いているのに、日本ではなぜつくらないのか。それからまた、これをつくらない、できない原因はどこにあるのか。また、運輸省当局としてはこれをどのように指導されておるのか、そういう点で質問したいと思うのです。
  131. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 わが国の造船界がまだ一隻も液化天然ガスの運搬船、これをつくっておらない、それはLNG船のことだろうと存じますが、本来、先ほど来から政務次官から申し上げられたと思いますが、造船界は海運界とのうらはらの関係で、実際的な需要を見て私どもその体制を整えていくということでございますが、最近におきまして相当この需要が出てきたということで、造船界はLNG船の建造体制を現在整えつつあります。造船界といたしましては、いまの船台衷情等もあわせ考えまして、また安全対策等もあわせ考えまして、大体昭和四十九年あるいは五十年、そのころには十分に建造体制が整う。これは船台があいてくる、LNG船をつくる船台が用意できるということもあわせ考えて、そのころを予定して、そのために鋭意いま準備を進めておる段階でございます。
  132. 田代文久

    ○田代委員 終わりますが、ではいまの造船、これは運輸省としてもそういうのは今後非常に需要がふえるので、そういう方向で指導しているというふうに理解していいわけですね。
  133. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 大体そういうことでございますが、本船は非常に危険物の性格もございますので、安全対策、また従来の船舶形態とはちょっと違う面がございますので、これらの船の品質管理、あるいは私ども携わっております検査体制をどうするかということもあわせ考えながら、このLNG船の開発には十分推進をしていくというふうに考え、またその方向で現在進んでおるわけでございます。
  134. 小峯柳多

    小峯委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明後六月二日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十三分散会