○
斉藤(正)
委員 そういう態度が、騒音に対する認識が足らぬと言われてもしかたないんですよ。
国鉄当局は、病院、学校周辺は優先的に防音壁その他を設けて対処しているでしょう。何を基準に対処しようとしているのか。科学的な根拠がなければ、強い要求があったからやったというだけじゃお粗末過ぎるんですよ。教えてあげますから、よく覚えておいてください。
文部省学校環境衛生基準では、窓をあけた教室内で五十五ホン以下、窓を締めた教室内で五十ホン以下なんですよ。いいですか。窓をあけても五十五、締めた場合には五十というんですよ。ここらを知らなくてああだこうだ言ったって、これは話にならぬ。先ほど環境庁のほうから一般の騒音基準については平均値がお示しになられて、これはまあ御承知になったと思うのですけれ
ども、こういう五十とか五十五とかという、国の機関である文部省がきめた学校環境衛生基準というのがあるんですよ。その近くをやはりそれ以上のもので突っ走っていることも、これは問題だと思う。せっかく
総裁から
答弁をいただきましたから、ひとつぜひ前向きで、激甚地の運行については御
検討をいただきたいと思う。
どういうことを被害者は言っているかというと、どこでどう調べたか知りませんけれ
ども、私
どももあまりよく知らなかったのですが、東海道新幹線の収支をちゃんとプリントにしまして、これを
関係者に分けるわけです。昭和三十九年度下半期においては収入百九十四億に対し、支出二百七十二億、
赤字七十八億だ。四十年度は、収入五百五十億に対して、支出が六百七十八億、
赤字が百二十八億だ。四十一には、収入八百九十二億に対し、支出は七百二十八億で、百六十四億の黒だ。四十三年は、収入千九十八億に対し、支出が七百五十二億で、三百四十六億の黒だ。四十三年は、千二百七十億の収入に対し、七百七十七億の支出で、四百九十三億の黒だ。もうとっくに投資を回収して、もうかってもうかってもうかり過ぎているんだ。百円もうける経費は四十四円であって、五十六円まるもうけだと書いてある。
こういうのは、私も運輸
委員でありますけれ
ども、あまり詳しくは知らなかった。こういうものを刷りものに刷って出しているのですよ。だから、
国鉄が
赤字だとか三兆円の借金があるだとかいったって、新幹線沿線の皆さんはそんなふうに考えないのです。もうたいへんもうけている、にもかかわらずわれわれのことはやってくれない。無理もないと思う、このことだけをとれば。そういう中で、ひとつ再
検討をしなければ、これからつくろうとしている
路線についてはますます火に油を注いだような形になって、反対運動は当然燃え上がってくる。しかし、その反対運動を押える何ものもない。あれよあれよという間に燎原の火のごとく
全国に燃え上がって、これからの新幹線は着工不可能になってくる。成田空港の二の舞い三の舞いを各所でやらなければ土地の取得等もできなくなるのではないかというおそれを持ち、ともに心配をするから言っているのであります。
そこで具体的に二、三伺いたいのでありますけれ
ども、私はここに、これはきわめていい例だと思うのでありますけれ
ども、昭和四十七年三月二十一日北九州市楠東地区対策
委員長村田正雄、
国鉄下関工事局土木課長鶴田安行、北九州市新幹線対策室主査出口隆、この三者が調印した
議事録確認書なるものを持っています。当然
国鉄にもありましょう。どういう
意味の
議事録を確認しているかというと、こういうことであります。すなわち一九七一年十月十九日、北九州市八幡区楠東地区新幹線対策
委員会委員長村田正雄氏が
国鉄下関工事
局長島田隆夫に対し要請書を出したわけであります。それは、
測量に関する要求について
表記の件に関しては、さきに当
委員会より
提出した要請書に対して本年六月十八日付貴職より回答書が出されました。これについて関係地元住民で慎重に
検討した結果、下記事項について貴職が同意されるならば、測量を行い、問題解決へ向かって一歩すすめる事を決定しました。貴職が地元総意にもとづくこの、要請に対し、誠意ある回答を十月三十一日までに文書で示されますよう、ここにつよく要請します。
なお、貴職の権限外とされる事項があれば、すみやかに関係先と協議の上、回答していただくようお願いします。
記
1、用地幅は盛土とし、
路線中心より片側それぞれ最低四十一・五mの緩衝緑地帯を設けること。なお、盛土のこう配は安全性を考慮の上、現行
国鉄案よりできるだけゆるやかなものとする。
2、用地内の家屋、宅地等については関係住民の意志を完全に尊重し、残地等の取りあつかいを含め、必要な買収、補償等を行うこと。
イ、緩衝地帯、
路線等にかかわらず、買収条件は同一とすること。
ロ、替地については、本人の希望にそった解決を
責任をもって行うこと。
3、市街化調整区域内に移転を希望する人については、その希望にそうよう
責任をもって解決すること。
4、
路線中心より片側それぞれ百m以内の家屋、土地等の被害については、新幹線によるものとみとめ、
国鉄の
責任においてこれを完全に補償すること。
5、当地区内の測量およびボーリング調査については、地元対策
委員会の承認を受けて実施すること。
以上の項目がみたされない場合は、測量には
応じかねますので、念のため申しそえます。こういう要請書が出て、それに対し日本国有鉄道下関工事局土木課長鶴田安行は回答を出したのであります。四十六年十一月八日測量に関する要求についての回答、前文は省略いたします。
1、1につきましては、昭和四十六年六月十八日付下工第九〇〇号にてご回答申し上げましたとおりでありますが、盛土の勾配は一割八分として在来設計よりゆるやかなものといたします。
緩衝地帯については、新幹線の事業対象として認可が受けられませんので、北九州市との協議において都市計画の一環として早急に
立案推進していただくよう
努力しておりますので、ご了承願います。
2、用地内の宅地、家屋等の補償については、関係人の方々の意志を尊重し、誠意をもって協議いたします。
(1)残地補償は勿論、その他の補償についても公平かつ適正な補償条件で処理させていただきます。
(2) 替地については、原則として金銭補償でお願いすることとしておりますが、特に事情のある方については、ご希望を尊重して協議させていただきます。
3、市街化調整区域内に代替地を希望される方に対しては、市当局の特別詮議により許可されるよう
努力いたします。
4、工事施工中の被害については、新幹線工事が原因と認められた実害について協議の上、補償いたします。
なお、事業完了後の被害についても地元の皆様のお申出にもとづき調査して補償の義務があると認められた場合は補償いたします。
5、測量およびボーリング調査については、
地元対策
委員会と協議の上実施いたします。このやりとりについて内容を確認をしたのが、いま私が申し上げました冒頭の
ことばになるわけであります。そしてこの確認書がこういうことになっています。
国鉄下関工事局は、別紙の通り文書回答を行ない、これに基づいて双方の話し合いを行なった。その結果は次の通り。
1、
国鉄が地元に約束したこと。
(1)回答書「第一項」について
国鉄は地元の要求している緩衝地帯の必要性については、基本的にその必要性を認め、その費用については、全額
国鉄負担はできないので市当局と話し合い、減点をもって実現に
努力する旨
見解をのべた。
地元は、市または
国鉄のいずれがどういう方法でやろうとも、要は緩衝地帯が実現できればよいとし、起業者である
国鉄が
責任をもって解決にあたるよう強く要求した。
(2) 回答書「第二項」について
国鉄当局は、本文にいう「協議」とは誠意をもって納得のゆく解決をはかることであり、交渉が継続中は、強制収用等の手続はとらないという
意味であり、交渉継続中とは、地元がひき続き協議、交渉を希望している間ということである、と約束し、地元はこれを了解した。
(3)回答書「第四項」について
前段に、
国鉄の
責任において補償する旨を挿入する。これは、起業者である
国鉄の
責任をあきらかにしたものであり、工事中の被害等について地元と業者の話合いに委ねて
国鉄が黙視することはせず、
国鉄の
責任において解決することを約束したものである。
2、
国鉄は以下の点については後日回答することになった。
(1)回答は
局長名の文書で行なうよう地元が要求している件について、
(2) 緩衝地帯の実現は「
国鉄が
責任をもって解決するよう」地元が求めている件について、
(3) 新幹線通過にともなう騒音、振動その他予想される公害に対して、
国鉄は設計上これをどのように防止するのか、具体的な数字を明示するよう地元が要求している件について、
(4) 新幹線による工事中または営業開始後の被害について誰がその認定をするかという件について、
(5)地元の発展に寄与する
立場に立って、新幹線の建設を行なうべきだとの地元の
意見について、これが、「
国鉄は以下の点については後日回答することになった。」という内容であります。
3、その他
地元は、地盤の状態についての
国鉄見解に反対であり、また、当日の
会議をもって基本要求が実現したとは評価できないので、測量の申し出については、これに同意しなかった。
こういうことになっていまして、非常に長い時間読み上げましたけれ
ども、新幹線建設にあたって関係地元と
——というのは自治体であります。関係地元自治体と、
国鉄当局と、しかも住民運動と思われるこの楠東地区対策
委員長が加わった三者の調印が行なわれたということは、きわめて意義があると私は思っているわけであります。内容は別として、きわめて意義が大きい。こういうケース
がいいとか悪いとかいうことは別として、現実の問題としてはきわめて貴重なものだというように、私はこれを高く評価するものであります。この場合ならば、なぜ
国鉄と北九州市との調印で済まなかったのか。なぜ地元自治体と起業者である
国鉄との間だけの調印なり覚え書きなりで済まなかったかという点に問題がありますけれ
ども、こういうような例が
全国にほかにもあるのかどうなのか。内容はとにかくとして、これが初めてのケースなのかどうなのか。地元自治体と
国鉄と住民の代表が加わった調印といったものが、ほかにも例があるのかどうなのか。あるならば、後刻、文書をぜひ出してほしいと私は思う。私が知っている限りでは、地元住民が加わった覚え書きの交換というのは、新幹線建設では初めてではなかろうかというように思うわけでありますけれ
ども、いかがでございましょうか。