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山崎昇君 私は、
日本社会党を代表して、
補正予算三案に対し反対の討論を行なうものであります。
国際外交の焦点となっておりました中国の国連代表権問題は、去る十月二十六日の国連総会において、圧倒的多数をもって、中華人民共和国の国連招致と
国民政府の追放を内容とするアルバニア案が可決し、中華人民共和国の合法的権利が回復されました。国際世論の潮流に目をおおい、米国に追随して、重要事項あるいは逆重要事項指定などの方法により、中華人民共和国の国連参加を実質的に妨害する
政策をとってきた
佐藤内閣の外交は、もはや失敗であることは明らかであります。あやまちを改むるにはばかることなかれとありますが、失敗であることが明らかとなった今日、すみやかに日華条約を廃棄し、中華人民共和国との国交回復をはかることが当面の急務であるにもかかわらず、いまだ対中外交の転換に戸惑っていることはきわめて遺憾であります。
佐藤内閣の失政は、いまや外交ばかりではなく、経済、社会のあらゆる面に及んでおります。
佐藤内閣は、その成立以来
安定成長によるひずみの是正を経済
政策の基本とし、人間尊重の
政治と社会開発の推進を最大の公約としてきたにもかかわらず、経済は、四十
年度の構造不況に始まり四十二年から四十四
年度は岩戸景気を上回る超高度成長、四十六
年度はまた深刻な不況になるなど
安定成長どころか不
安定成長の連続であります。ひずみは是正されるどころか、物価、公害、過密、過疎などなど数えあげればきりがないほど拡大されております。企業の設備投資や輸出の増大によってGNPは世界第三位になったとはいうものの、個人消費支出や社会保障費等のGNPに占める割合は先進国中最低であり、下水道の普及率のごときは欧米諸国の三分の一にも満たない状態であります。
一方、ふえたものはGNPの規模と物価の上昇率公害及び減価が予想される外貨準備だけであるといっても過言ではありません。
佐藤内閣の
政策は、まさに大資本擁護のための産業発展と輸出増強の
政策であり、
国民生活無視の
政策であったことは明らかであります。
日本経済は、いまやこのような
佐藤内閣の
政策の失敗により、外には繊維協定、円切り上げ等の外圧を招き、国内経済は戦後最大の不況に直面しようといたしております。経済
政策はいまや景気の対策の面から見ても、
国民生活の面から見ても、産業発展より
国民福祉重視の
政策へと、根本的な転換を迫られているのであります。今回の
補正予算は、この意味において、経済
政策転換への好機であるにもかかわらず、その対応策はきわめて不十分であると言わねばなりません。
以下数点についてその理由を申し述べたいと
思います。
その第一は、減税についてであります。
国民福祉を最重点とした経済
政策への転換が当面の急務である以上、まず必要なことは、低所得者層を中心とした大幅な減税であります。低所得者層の減税は、消費性向が高く、個人消費支出の増大を通じて、景気対策の要請にも沿えるからであります。しかるに、今回の減税措置の内容を見ると、基礎控除などの所得控除引き上げと税率の緩和を半々とし、依然として高所得者層優遇の減税を行なっているのであります。また、来
年度の減税については、今回の減税と
年度当初の減税により、来
年度に生ずる減税効果は四千八百三十億円にのぼるとして、財源難を理由に減税を見送る意向を示しておりますが、これはドル・ショックの直後明らかにされた五千億減税構想と今
年度減税とをすりかえるものであり、
国民を欺くもはなはだしいものであります。石橋内閣の三十二
年度予算では、一兆円の
予算規模で一千億減税、一千億施策を行なっております。その十倍をこす来
年度の
予算規模で五千億円程度の減税ができないはずはないのであります。四千数百億円にのぼる租税特別措置の整理、社用消費をあおる交際費課税の拡大等々、財源はあると思われます。要はその姿勢であり、大企業、高所得者擁護の税制を、この機会に根本的に改めるべきであります。
その第二は、公共投資及び社会保障関係費についてであります。
景気が沈滞し、住宅や生活環境施設を中心とする社会資本の立ちおくれが目立っている以上、公共投資の追加が必要なことは当然でありますが、今回の補正の内容を見ると、景気浮揚策のための社会資本充実という美名に隠れて、実は、大企業に対する設備投資を国が肩がわりするものにほかなりません。つまり、その四割が道路、港湾、空港等の整備に充当されているのに対し、住宅は六%、生活環境施設は一六%の低位にとどまっており、依然として産業優先の色彩が濃く、福祉重点
政策への対応はきわめて不十分であります。また、社会保障関係費については、減税が上厚下薄のものとなった以上、当然に生活保護費や福祉年金の引き上げ、老人医療の無料化等恵まれない人たちに対する施策を中心に大幅に拡充すべきであるにもかかわらず、わずかに義務的
経費を百七十七億円補正したにとどまっております。
その第三は、物価対策についてであります。
不況下にあって
国民生活を圧迫している最大の要因は物価の上昇であります。
政府は、今
年度の改定見通しにおいて、消費者物価の上昇率を五・五%に据え置き、不況下の物価高というスタグフレーションの印象を
国民に与えるのを避けようとしておりますが、九月の全国消費者物価指数は、前年同月比ですでに八・四%、十月の東京都の区部の指数は六・八%の上昇を示し、不況下の物価高はもはや必至の情勢にあります。われわれは、これまで公共料金の抑制をはじめ、管理価格、野菜対策、地価対策等、生産、流通、消費にわたる強力な物価対策を繰り返し要求しておりますが、
政府は何
一つとして有効な措置を講じていないのであります。
補正予算に物価対策が示されないことは、きわめて遺憾であります。
その第四は、公債
政策についてであります。
公債の発行については、
財政法に認められている以上、われわれは全面的にこれを否定するものではありません。しかし、安易に公債を増発すべきでないことも、
財政法四条が例外的に認めている趣旨から見ても明らかであります。
政府は、今回の
補正予算において、減税及び歳出の追加と景気の停滞による歳入欠陥を補てんするため、七千九百億円の公債を追加発行することといたしておりますが、このうち三千八百億円はいわゆる歳入補てん債の性格を有するものであります。歳入補てん債は、歳入の欠陥を補てんするための赤字公債であり、建設公債とは厳に区別すべきものであります。この意味において、
昭和四十
年度の
補正予算に際しては、
財政法四条一項の例外的措置として特別立法により措置されたのでありますが、今回は歳入補てん債としての実体においては
昭和四十
年度の場合と少しも異なるところのない三千八百億円についても、公共事業費や出資及び
貸し付け金等の公債発行対象
経費の
ワク内にあることなどを理由に、特別立法の措置を講じていないことは、きわめて遺憾であります。公債増発への安易な態度は、
財政の節度の上から問題であるばかりでなく、やがてインフレ
財政へと導く危険があることは、
昭和五年の金解禁以後の
日本の
財政がたどった歴史を見ても明らかであります。このほか、地方
財政、
沖繩関係費、中小企業、繊維輸出規制対策等
予算措置はいずれも不十分であります。
以上述べましたように、
政府は目まぐるしく推移する情勢への的確な対応を示さないばかりか、世界の潮流に逆行し、依然として対米偏重、大企業本位の
政策を維持し続けようとしており、これらに関するわが党の
質疑に対しても、
国民が納得できる答弁はついに得ることができなかったのであります。
以上をもって
昭和四十六
年度補正予算三案に対する反対討論を終わります。